(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】パルスLIDARシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 17/34 20200101AFI20240415BHJP
G01S 17/95 20060101ALI20240415BHJP
G01P 5/26 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
G01S17/34
G01S17/95
G01P5/26 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023568307
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 FR2022050781
(87)【国際公開番号】W WO2022234211
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518023164
【氏名又は名称】オフィス ナショナル デテュード エ ドゥ ルシェルシュ アエロスパシアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ロンバール,ロラン
(72)【発明者】
【氏名】ドルフィ-ブトゥイル,アニエス
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA07
5J084AB08
5J084BA03
5J084BA36
5J084BB31
5J084BB40
5J084DA01
5J084DA08
5J084DA09
5J084EA01
(57)【要約】
パルスLIDARシステム(100)は、同時に放出される複数のパルススペクトル成分の重畳として各パルス(I)を形成するように構成された伝送経路(10)を有する。このようにして、ヘテロダイン検出信号の信号対雑音比が改善される。この種のLIDARシステムは光ファイバを使用して実施することができ、大気速度測定を実行するのに特に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスLIDARシステム(100)であり、前記システムによって標的(T)に向かって連続的に放出される一連の放射線パルス(I)によって受けるドップラー効果周波数シフト(ν
Doppler)の値を、前記標的上での再帰反射または後方散乱の後に受け取られた前記パルスの一部と、前記システムによって放出される前記パルスとの間で決定し、前記周波数シフトについて決定された前記値に基づいて、前記システムの光放出方向に平行な前記標的の速度成分(V
T)の推定値を提供するように適合されたシステムであって、
前記システム(100)は、
前記一連のパルス(I)を生成するように構成された伝送経路(10)と、
前記標的(T)上での再帰反射または後方散乱の後に受け取られた前記パルス部分(RI)を検出し、前記一連のパルス(I)に対応するヘテロダイン検出信号を生成するように構成された検出経路(20)と、
前記一連のパルス(I)に対応するヘテロダイン検出寄与から前記周波数シフト(ν
Doppler)の値が生じるように、前記ヘテロダイン検出信号のスペクトル分析を実行するように適合されたスペクトル分析モジュール(30)と、を備え、
前記伝送経路(10)は、同時に放出され、スペクトル的に離散し、異なる中心波長値に一対一で関連する複数のパルススペクトル成分の重畳としてパルス(I)の各々を形成するようにさらに構成され、
前記システム(100)は、前記スペクトル分析モジュール(30)によって決定された前記周波数シフト(ν
Doppler)の値が、前記一連のパルス(I)のパルススペクトル成分にそれぞれ対応する複数のヘテロダイン検出寄与から生じるように、適合されることを特徴とするパルスLIDARシステム(100)。
【請求項2】
前記システムは、前記標的(T)を形成する懸濁粒子を含む大気の部分に向かって前記放射線パルス(I)を放出するように向けられたときに、空気流速成分の推定値を提供するように適合され、前記粒子は、前記放射線を後方散乱させるものである、請求項1に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項3】
前記伝送経路(10)は、各パルス(I)の前記スペクトル成分が少なくとも10MHz、好ましくは少なくとも20MHz、最大で2000MHzだけスペクトル的に分離されるようにさらに構成される、請求項1または2に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項4】
前記伝送経路(10)は、スペクトル的に隣接する前記パルススペクトル成分の任意の2つの間に存在するスペクトル差(Δν
1)が、隣接するパルススペクトル成分の様々なペアの間で一定であるようにさらに構成される、請求項1~3の何れか一項に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項5】
前記伝送経路(10)は、各パルス(I)を構成するスペクトル的に離散しているパルススペクトル成分の数が2~20、好ましくは4~12であるようにさらに構成される、請求項1~4の何れか一項に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項6】
前記伝送経路(10)は、
初期レーザ放射線(R
0)を生成するように適合されたレーザ放出源(11)と;
コム発生変調器(17)の制御入力に印加される変調信号に従って、前記初期レーザ放射線(R
0)を修正するように構成されたコム発生変調器(17)と;
前記コム発生変調器(17)の前記制御入力に前記変調信号を印加するように接続される変調信号発生器(18)と、を備え、
前記変調信号は、前記初期レーザ放射線(R
0)が前記コム発生変調器(17)によって、1対1にパルススペクトル成分を形成するように意図された1組のスペクトル成分に変換するものである、請求項1~5の何れか一項に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項7】
前記パルス(I)の前記パルススペクトル成分に1対1に対応する基準スペクトル成分を、各パルススペクトル成分と当該パルススペクトル成分に対応する前記基準スペクトル成分との間の、全てのパルススペクトル成分について同一であるスペクトルシフト(Δν
0)と共に含む光基準信号(RR)を受け取るために、前記検出経路の基準入力は前記伝送経路の二次出力に接続され、
前記検出経路(20)によって生成された前記ヘテロダイン検出信号における前記パルススペクトル成分に関連する前記ヘテロダイン検出寄与は、全てスペクトル的に重畳される、請求項1~6の何れか一項に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項8】
前記伝送経路(10)の前記二次出力(16)は、前記伝送経路における前記放射線の伝播方向に対して、前記コム発生変調器(17)の下流の前記伝送経路に位置する、請求項6または7に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項9】
前記検出経路(20)の基準入力は、単色である光基準信号(RR)を受け取るために、前記伝送経路(10)の二次出力(16)に接続され、
前記検出経路(20)によって生成された前記ヘテロダイン検出信号における前記パルススペクトル成分に関連する前記ヘテロダイン検出寄与は、前記パルススペクトル成分の分布に従って互いに対してスペクトル的にシフトされ、
前記スペクトル分析モジュール(30)は、前記ヘテロダイン検出寄与の各々に対する中心周波数値に基づいて前記ドップラー効果周波数シフト(ν
Doppler)の値を推定するように構成される、請求項1~6の何れか一項に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項10】
前記伝送経路(10)の前記二次出力(16)は、前記伝送経路における前記放射線の伝播方向に対して、前記コム発生変調器(17)の上流の前記伝送経路に位置する、請求項6または9に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項11】
前記伝送経路(10)および/または前記検出経路(20)は、前記伝送経路および/または前記検出経路の構成要素を相互接続するために、光ファイバ技術によって実装される、請求項1~10の何れか一項に記載のLIDARシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパルスLIDARシステムに関し、特に、大気速度測定を実行するように適合されたLIDARシステムに関する。LIDARはLight Detection And Rangingの頭字語であるが、LIDARシステムは離れて速度測定を実行するのに非常に適している。
【背景技術】
【0002】
離れて風速を決定することは、多くの分野、特に航空機の安全性において有用であり、例えば、空港滑走路付近の乱気流の存在を検出するために、または航空機の構造上の突風によって引き起こされる早すぎる摩耗の影響を補償するために、飛行中の航空機に乗っているときに風の突風を検出するために有用である。そのような知識が有用である他の分野は、ウィンドファームサイトの調査及び管理、又は天気予報のための宇宙からの大気流の測定である。
【0003】
公知の方法では、パルスLIDARシステムが、LIDARシステムの放射方向に平行な標的の速度成分、ならびにLIDARシステムから標的を分離する距離を測定することを可能にする。特に、大気速度測定のために構成されたパルスLIDARシステムは、LIDARシステムの放出方向に平行な風速成分の推定値を、この放出方向に沿って測定された分離距離の関数として得ることを可能にする。しかし、このような大気速度測定では、LIDARシステムによって検出され、風速の測定結果が得られる信号は、空気中に浮遊する粒子によって引き起こされる放出パルスの後方散乱によって生成される。これらの検出信号は非常に低い強度を有するので、それらに関連する信号対雑音比を改善することが重要である。
【0004】
また、既知の方法で、パルスLIDARシステムがヘテロダイン検出を使用するとき、すなわち、システムが放射と検出との間でコヒーレントであるとき、その信号対雑音比はE・PRF1/2に比例し、ここで、Eは後方散乱され、次いで検出されるそれぞれのパルスのエネルギーであり、PRFはパルス繰り返し周波数(pulse repetition frequency)である。したがって、エネルギーEおよび周波数PRFの値を増加させるための努力がなされる。
【0005】
エネルギーEの増加は、LIDARシステムによって放出される各パルスのエネルギーを増加させることによって達成することができる。実際、放射線は最初はレーザ源によって生成され、レーザ源自体は外部に向かって放出される放射線のパワーに制限を課さない。しかしながら、光ファイバ接続技術を使用することによるLIDARシステムの実装は、かなりの利点、特に、システムのロバスト性の増大、およびシステムの光学部品を互いに対して位置合わせするための機構の排除を提供する。しかし、光ファイバ内で発生する誘導ブリルアン散乱(SBS)という既知の現象は、各放出パルスが有することができるピークパワー値を制限する。
【0006】
さらに、周波数PRFは、LIDARシステムの範囲によって制限される。実際、標的に向かって放出される放射線のパルスは、検出された各放射線部分をパルス放出の正しいモーメントと相関させて、これから標的から離れている距離の値を推定するために、次のパルスが放出される前に戻って検出されることが必要である。言い換えれば、周波数PRFは、式:PRF<C/(2・L)(式中、Cは光速である)に従ってLIDARシステムに対して規定される範囲Lによって制限される。
【0007】
したがって、ヘテロダイン検出信号の信号対雑音比の結果として生じる結果のために、放出されたパルスのエネルギーおよびパルスの繰り返し周波数に対するこれらの制限は、測定結果、特に大気速度測定結果の精度を向上させることを妨げる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この状況に基づいて、本発明の1つの目的は、検出信号の信号対雑音比が改善される新しいパルスLIDARシステムを提案することである。
【0009】
本発明の補足的な目的は、そのようなLIDARシステムがLIDARシステム内の光学部品を相互接続するための光ファイバの使用と互換性があることである。
【0010】
本発明の別の補足的な目的は、このようなLIDARシステムを大気速度測定に適合させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらまたは他の目的のうちの少なくとも1つを達成するために、本発明の一態様が提供するパルスLIDARシステムは、前記システムによって標的に向かって連続的に放出される一連の放射線パルスによって受けるドップラー効果周波数シフトの値を、前記標的上での再帰反射または後方散乱の後に受け取られるパルスの部分と、前記システムによって放出される同じパルスとの間で決定するように適合される。次に前記システムは、前記周波数シフトについて決定された値に基づいて、前記システムの光放出方向に平行な前記標的の速度成分の推定値を提供する。この目的のために、前記システムは:
-前記一連のパルスを生成するように構成された伝送経路と、
-前記標的上での再帰反射または後方散乱の後に受け取られた前記パルス部分を検出し、前記一連のパルスに対応するヘテロダイン検出信号を生成するように構成された検出経路と、
-前記一連のパルスに対応するヘテロダイン検出寄与から前記周波数シフト(νDoppler)の値が生じるように、前記ヘテロダイン検出信号のスペクトル分析を実行するように適合されたスペクトル分析モジュール(30)と、を備える。
前記スペクトル分析を実行するための複数のパルスの使用は、信号対雑音比の初期改善を提供し、前記LIDARシステムによって提供される測定結果の精度は、それに応じて改善される。
【0012】
本発明によれば、前記LIDARシステムは、以下の追加の特徴を有する:
-前記伝送経路は、同時に放出され、スペクトル的に離散し、異なる中心波長値に1対1で関連する複数のパルススペクトル成分の重ね合わせとしてパルスの各々を形成するようにさらに構成され、
-前記システムは、前記スペクトル分析モジュールによって決定される前記周波数シフトの値が、前記一連のパルスの前記パルススペクトル成分にそれぞれ対応する複数のヘテロダイン検出寄与から生じるように適合される。
【0013】
本発明の文脈において、スペクトル的に離散しているパルススペクトル成分という用語は、成分間でパルススペクトル強度が各パルススペクトル成分の最大スペクトル強度値の5%未満、好ましくは1%未満になる、各パルスのスペクトルの成分を意味すると理解される。
【0014】
したがって、各パルスは決められた誘導ブリルアン散乱閾値よりも大きいピークパワー値を有することができ、一方で、各パルススペクトル成分は、前記誘導ブリルアン散乱閾値よりも小さい個々のピーク電力値を別個に有する。言い換えれば、前記伝送経路の光ファイバベースの実装によって引き起こされるピーク放出パワーの制限が満たされ、一方で、各パルスが増加されたエネルギー値を有することができる。このため、本発明は、前記LIDARシステムがその伝送経路に光ファイバ技術を使用するときに特に適している。
【0015】
さらに、前記パルスの前記パルススペクトル成分にそれぞれ対応する全ての前記ヘテロダイン検出寄与は、前記標的の運動によって生じるドップラー効果に起因する前記周波数シフトの値を得ることに寄与する。したがって、本発明の前記システムは、事実上の周波数PRFに、各パルス内の離散しているスペクトル成分の数を乗算し、一方で、変化しない前記LIDARシステムの範囲Lを維持する動作を有する。したがって、本発明は、前記ヘテロダイン検出信号に関連する信号対雑音比のさらなる改善を提供する。それに応じて、前記ドップラー効果周波数シフトについて得られる値の精度が高められる。別の観点によれば、範囲Lの一定の値について、測定結果において同一の精度を維持しながら、本発明の前記LIDARシステムはスペクトル的に離散し、各放出パルスを構成するパルススペクトル成分の数に等しい係数だけ、前記ヘテロダイン検出信号の蓄積時間を低減することを可能にすることができる。
【0016】
本発明全般で、LIDARシステムによって連続的に放出されるパルスは、スペクトル的に離散している複数のスペクトル成分をそれぞれ有するものの、同一である必要はない。したがって、2つのパルスは、それらのスペクトル成分の少なくとも一部の平均波長値によって異なることができ、特に、スペクトル成分間に存在する差によって互いから異なることができる。したがって、複数のスペクトル成分を有するパルスの組成は、測定シーケンスを実行するために放出される一連のパルス中に、この一連の間に周期的にまたはランダムに変化し得る。連続的に放出されるパルス間のこのよう差異によって、パルス繰り返し周波数(PRF)を一定値に保ちながら、LIDARシステムの範囲を増加することができる。実際、2つのパルスが同一である場合、標的に向かって放出された放射線のパルスが次のパルスを放出する前に戻って検出されることは、パルスが放出された正しい時間と各検出された放射線部分を相関させて、標的から離れている距離の値を推定するために、必要である。言い換えると、連続するパルスが同一であるとき、周波数PRFは、式:PRF<C/(2・L)(式中、Cは光速である)に従ってLIDARシステムに対して規定される範囲Lによって制限される。したがって、異なる連続パルスを使用することにより、LIDARシステムの範囲Lを周波数PRFに対して等しい値で増加させること、すなわちLIDARシステムの一定の範囲Lで周波数PRFの値を増加させることが可能になる。したがって、各測定シーケンスの個々の持続時間を低減することができる。いくつかの異なるスペクトル組成がパルスのために使用されるとき、周期的に繰り返されながら、各測定シーケンスの個々の持続時間はしたがって、LIDARシステムの一定の範囲Lにおいて、異なるスペクトル組成の数によって分割され得る。
【0017】
本発明の前記LIDARシステムの前記伝送経路は、
-初期レーザ放射線を生成するように適合されたレーザ放出源であって、この初期レーザ放射は好ましくは単色または準単色であるレーザ放出源と;
-当該コム発生変調器の制御入力に印加される変調信号に従って、前記初期レーザ放射を修正するように構成されたコム発生変調器と;
-前記コム発生変調器の前記制御入力に前記変調信号を印加するように接続される変調信号発生器と、を備える。
前記変調信号は、前記初期レーザ放射線が前記コム発生変調器によって、1対1に前記パルススペクトル成分を形成するように意図された1組のスペクトル成分に変換されるようにするものである。言い換えれば、前記変調器を出る光放射線は、コム形スペクトル構造を有する。
【0018】
本発明の第1の実施形態において、前記検出経路の基準入力は、(前記パルスの前記パルススペクトル成分に1対1で対応する基準スペクトル成分を、各パルススペクトル成分と前記基準スペクトル成分のうち対応する成分との間の、全ての前記パルススペクトル成分について同一であるスペクトルシフト(Δν0)と共に含む)光基準信号を受け取るために、前記伝送経路の二次出力に接続されてもよい。このようにして、前記検出経路によって生成された前記ヘテロダイン検出信号における前記パルススペクトル成分に関連する前記ヘテロダイン検出寄与は、全てスペクトル的に重畳される。言い換えれば、前記ヘテロダイン検出信号は、複数のパルススペクトル成分によって生成された全ての寄与を組み合わせる単一のピークによってスペクトル的に形成される。そのような第1の実施形態では、前記検出経路の前記基準入力に接続された前記伝送経路の前記二次出力が、前記伝送経路における前記放射線の伝播方向に対して、前記コム発生変調器の下流の前記伝送経路に位置することができる。
【0019】
本発明の第2の実施形態において、前記検出経路の前記基準入力は、単色または準単色である光基準信号を受け取るために、異なる位置にある前記伝送経路の二次出力に接続されてもよい。そして、前記検出経路によって生成された前記ヘテロダイン検出信号における前記パルススペクトル成分に関連する前記ヘテロダイン検出寄与は、前記パルススペクトル成分の分布に従って互いに対してスペクトル的にシフトされる。この場合、前記スペクトル分析モジュールは、前記ヘテロダイン検出寄与のそれぞれに対する中心周波数値に基づいて、前記ドップラー効果周波数シフトの値を推定するように適合される。このような第2の実施形態では、前記検出経路の前記基準入力に接続された前記伝送経路の前記二次出力は、この伝送経路における前記放射線の伝播方向に対して、前記コム発生変調器の上流の前記伝送経路に位置することができる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、以下の追加の特徴のうちの少なくとも1つが、単独で、または組み合わせて、任意に再現されてもよい:
-前記LIDARシステムは、前記標的を形成する懸濁粒子を含む大気の部分に向かって前記放射線パルスを放出するように向けられたときに、空気流速成分の推定値を提供するように適合されてよく、前記粒子は、前記放射線を後方散乱させるものである;
-前記伝送経路は、各パルスの前記スペクトル成分が少なくとも10MHz、好ましくは少なくとも20MHz、最大で2000MHzだけスペクトル的に分離されるように、さらに構成されてもよく;
-前記伝送経路は、スペクトル的に隣接する前記パルススペクトル成分の任意の2つの間に存在するスペクトル差が、隣接するパルススペクトル成分の様々なペアの間で一定であるようにさらに構成されてもよく;
-前記伝送経路は、各パルスを構成するスペクトル的に離散しているパルススペクトル成分の数が2~20、好ましくは4~12であるようにさらに構成されてもよく;
-各パルススペクトル成分は、単色または準単色であってもよく;
-前記コム発生変調器は、このような変調器が使用されるとき、電気光学変調器であってもよく;
-前記変調信号発生器は、このような発生器が使用されるとき、任意波形の電気発生器であってもよく;
-前記伝送経路および/または前記検出経路は、この伝送経路および/または検出経路の構成要素を相互接続するために、光ファイバ技術によって実装されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の特徴および利点は、添付の図面を参照して、いくつかの非限定的な例示的な実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになるのであろう。
【
図1a】従来技術から知られているようなヘテロダイン検出を用いたパルスLIDAR装置のブロック図である。
【
図1b】
図1aのLIDARシステムの動作に関連する2つのグループ分けされたスペクトル図である。
【
図2】本発明に係るLIDARシステムの動作のためのパルスの可能なスペクトル構成を示すタイミング図である。
【
図3a】本発明の第1の実施形態について[
図1a]に対応する図である。
【
図3b】
図3aの本発明の第1の実施形態のLIDARシステムについて[
図1b]に対応する図である。
【
図4a】本発明の第2の実施形態について[
図1a]に対応する図である。
【
図4b】
図4aの本発明の第2の実施形態のLIDARシステムについて[
図1b]に対応する図である。
【
図5】本発明の別の実施形態について[
図2]に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
これらの図において、全ての構成要素は記号的に表され、異なる図において示される同一の参照符号は、同一であるか又は同一の機能を有する要素を示す。明瞭にするために、LIDARシステムにおけるその使用が当業者に知られており、本発明に直接関係しない構成要素は、以下では説明しない。そのような場合、本発明に対するそれらの可能な適応は、当業者の範囲内である。[
図1a]、[
図3a]及び[
図4a]において、使用される以下の参照符号は、ここに示される意味を有する:
100 ヘテロダイン検出を用いたパルスLIDARについて一般名称
10 伝送経路
11 LASERと表示されるレーザ放出源
12 MAOと表示される周波数シフトおよびパルス切断変調器
13 AMPLと表示される光増幅器。
【0023】
14 光サーキュレータ
15 OPTと表示される放出光学系。
【0024】
16 伝送経路の二次出力
20 検出経路
21 DETECTと表示されるヘテロダイン検出器。
【0025】
30 ANALYSと表示されるスペクトル分析モジュール。
【0026】
[
図1a]は、本発明の以前から知られていたシステム100を示す。
【0027】
伝送経路10は、レーザ放出源11と、変調器12と、光増幅器13と、光サーキュレータ14と、放出光学系15とを備える。レーザ放出源11は例えば、約1550nm(ナノメートル)の放出波長および600μJ(マイクロジュール)のパワーでの、連続放出源であってもよい。したがって、それは、単色または準単色である初期レーザ放射線R0を生成する。初期レーザ放射線R0は変調器12に伝送される。変調器12は、音響光学タイプの変調器であってもよい。それは、受け取った放射線から、例えば10kHz(キロヘルツ)であり得るパルス繰り返し周波数PRFを用いて、個々の持続時間が200ns(ナノ秒)~800nsであり得る同一のパルスIを形成するように制御される。同時に、変調器12は、例えば100MHz(メガヘルツ)に等しくすることができる周波数シフトΔν0を適用することによって、放射線の光周波数をシフトするように制御することができる。変調器12によって生成されたパルスIは、増幅器13によって増幅され、そして、光サーキュレータ14を介して放出光学系15に伝送される。放出光学系15は、例えば望遠鏡構造を有することができる。増幅されたパルスIはしたがって、LIDARシステム100の外部にあり、システム100の放出方向に沿って測定される、それから距離Dに位置する標的Tに向かって伝送される。原則として、分離距離Dはシステム100の範囲L未満であり、その範囲は、一例として、おそらく約15km(キロメートル)に等しい。
【0028】
このように[
図1a]のシステム100によって放出される全てのパルスIは同一であり、単色または準単色である。
【0029】
二次出力16は、レーザ放出源11とパルスIのシフト及び分離専用の変調器12との間の伝送経路10に配置される。
【0030】
検出経路20は、伝送経路10と放出光学系15および光サーキュレータ14を共有し、さらにヘテロダイン検出器21を備える。検出経路20内で、光学系15の1つの機能は標的Tによって再帰反射または後方散乱されたパルスIの部分RIを収集することである。ヘテロダイン検出器21は、光学系15によって収集された再帰反射または後方散乱されたパルスの部分RIを光サーキュレータ14を介して受け取り、この伝送経路の二次出力16を介して伝送経路10から収集された光基準信号RRを同時に受け取るように光学的に結合される。言い換えれば、二次出力16は、検出経路20専用の光サーキュレータ14の出力に加えて、ヘテロダイン検出器21に光学的に結合される。ヘテロダイン検出器21はフォトダイオード、特に超高速フォトダイオードであってもよく、その上に、二次出力16から来る光基準信号RRと、標的Tから来るパルス部分RIとが集束される。
【0031】
スペクトル分析モジュール30は、システム100の動作中に検出器21によって生成されたヘテロダイン検出信号をスペクトル分析するように構成される。これは、このスペクトル分析から、光基準信号RRとパルス部分RIとの間に存在する周波数シフトの値を推定するように構成される。このようにして得られた周波数シフトの値を、システム100の放出方向に平行な、標的Tについての速度成分値VTに変換するようにさらに構成される。公知の方法では、VT=-λ0・(νm-Δν0)/2であり、ここで、
λ0はレーザ放出源11の波長を示し、上述の例示では約1550nmに等しく、
Δν0はさらに、変調器12によって適用される周波数シフトを示し、上述の例示では100MHzに等しく、
νmは、ヘテロダイン検出信号のスペクトル分解における最大強度位置または中心ピーク位置に関連する、無線周波数領域またはRF領域内の周波数である。
【0032】
システム100は、好ましくは光ファイバ技術を使用して実装される。そのような場合、光増幅器13は、「エルビウムドープファイバ増幅器」のためにEDFAによって指定されるタイプのものとすることができる。初期レーザ放射線R0は、第1の光ファイバセグメントS1によってレーザ放出源11から変調器12に伝送され、そして、第2の光ファイバセグメントS2を介して増幅器13に伝送される。さらに、光学系15によって収集された再帰反射または後方散乱されたパルス部分RIは、それらをヘテロダイン検出器21に伝達するために、光サーキュレータ14の出力で第3の光ファイバセグメントS3に注入される。並行して、伝送経路10の二次出力16は、光ファイバカプラによって実装され、第4の光ファイバセグメントS4によってヘテロダイン検出器21に接続される。
【0033】
再帰反射点標的を有する直前に説明したシステム100の動作のために、ヘテロダイン検出信号は、周波数ν
mで正弦波変動を有する。[
図1b]の上側の図は、ヘテロダイン検出器21によって受け取られた放射線のスペクトル組成を示す。[
図1b]のこの上側の図の横軸は、λで表され、ナノメートル(nm)で表される、光領域における波長値を識別する。縦軸は、任意の単位で、スペクトル強度値を識別する。ヘテロダイン検出器21によって受け取られる放射線は二次出力16から伝達される光基準信号RRから構成される第1の寄与と、標的Tによって再帰反射されたパルス部分RIに対応する第2の寄与とを備える。[
図1a]のシステム100について、光基準信号RRは初期レーザ放射線R
0の一部であり、その結果、[
図1b]の上側の図における対応する寄与はRRと示される非常に狭いピークである。標的Tがシステム100の放出方向に沿った単一の位置に位置するとき、第2の寄与も、RIと示される狭いピークの形状を有する。[
図1b]の下側の図は、上側の図に示されるように検出器21によって受け取った放射線のスペクトル組成に対応するヘテロダイン検出信号のスペクトル組成を示す。ヘテロダイン検出信号は単一のピークからなり、その周波数はν
m=Δν
0+ν
Dopplerであり、ν
Doppler≒-2・V
T/λ
1、λ
1は、LIDARシステム100によって放出される放射線の波長である。[
図1b]の下側の図の横軸は、fで示され、メガヘルツ(MHz)で表される、RF領域における周波数値を識別する。縦軸はまた、ヘテロダイン検出信号のスペクトル強度値を識別するための任意の単位である。
【0034】
大気速度測定専用のシステム100の動作について、パルスIは、放出光学系15から出発して、システム100の外部のパルスビームの経路に沿って分布する多数の標的によって後方散乱される。空気中に浮遊する粒子またはエアロゾルから構成されるこれらの標的は、ビームの経路内の各位置に存在する空気移動の局所速度の関数として沿って引っ張られる。当業者は一般に、標的のそのような分布を、「拡張標的」、「分布標的」、または「体積標的」と呼ぶ。したがって、光学系15によって収集され、そして検出器21に伝送されるパルス部分RIは、パルスIの部分的な後方散乱が生じる、システム100の放出方向に沿った異なる分離距離に対応して、経時的に広がる。さらに、それらは、部分的な後方散乱がそれぞれ生じる場所での放出方向に平行な局所的な風速に応じて変化するように周波数シフトされる。そしてヘテロダイン検出信号は、より複雑な時間的変動を有する。モジュール30によって実行されるスペクトル分析は既知であると想定され、その結果として、分離距離Dの異なる値に1対1で割り当てられる一連の速度値V
Tを提供する。既知の方法では分離距離Dにおける分解能が、放出されたパルスIの個々の持続時間によって決定され、この個々の持続時間をLIDARシステム100の外部のパルス伝播速度の2倍で除算したものに等しい。[
図1b]の図と比較して、検出器21によって受け取られた放射線のスペクトル組成におけるパルス部分RIに対応するピークが拡大される。RF領域におけるヘテロダイン検出信号のスペクトル組成のピークは、相関的に広げられる。
【0035】
[
図2]の図の横軸はtで示される時間を特定し、その縦軸は、本発明に係るLIDARシステム100の瞬間放出波長λ
1を特定する。波長λ
1は、ナノメートル(nm)で表される。この図によれば、LIDARシステム100によって放出される各パルスIは、同時に、したがって重畳されてパルスを形成する複数のパルススペクトル成分からなる。各パルススペクトル成分は単色または準単色であり、各パルスIを、一例として、10個のそのようなパルススペクトル成分から構成することができる。2つのスペクトル的に隣接するパルススペクトル成分の波長値間の差は一定であり得るが、これは必ずしもそうである必要はない。それらは任意の値であり得るが、再帰反射または後方散乱されたパルス部分RIが有する周波数シフトが異なるパルス間の全ての分離間隔内に含まれるのに十分である。この目的のために、これらの差は好ましくは30MHzまたは50MHzより大きく、この下限は誘導ブリルアン散乱の低減を得るのに十分である。それらが一定であるとき、隣接するスペクトル成分間の波長差は波長増分と呼ばれ、Δλ
1と表される。波長増分Δλ
1は、-C・Δλ
1 /λ
0
2に等しい周波数増分Δν
1に対応する。この後者の増分は、例えばRF領域において200MHzに等しくあることができる。したがって、各パルスIはコム(comb,櫛)からスペクトル的に構成され、LIDARシステム100によって連続的に放出される全てのパルスIはこの同じ個々の組成を有して同一である。このようにうまく放出されたパルスIは、2μs(マイクロ秒)に等しい個々の持続時間を有することができ、100μs毎に放出される。
【0036】
ここで説明した例示では、パルスIのパルス繰返し周波数は10kHzに等しく、一方、標的速度を測定するために有効なパルス周波数、すなわち周波数PRFはこのパルス繰返し周波数とパルスIのそれぞれにおけるパルススペクトル成分の数との積、すなわち100kHzに等しい。
【0037】
本発明によるこのような動作は、[
図3a]に示すようなLIDARシステム100によって行うことができる。このシステムは、伝送経路10が追加の変調器17および変調信号発生器18をさらに備えることを除いて、[
図1a]のシステムと同様のハードウェアアーキテクチャを有する。変調器17は、電気光学変調器タイプであってもよく、MEOと表される。それは、レーザ放出源11と電気音響変調器12との間の第1の光ファイバセグメントS1に挿入される。変調信号発生器18は、AWGと表される任意波形発生器タイプであり得る。発生器18は変調器17の制御入力に、n個の正弦波成分の和から構成され得る電気変調信号を伝送するようにプログラムされ、ここで、nは整数であり、nは1~9の間、好ましくは5以下であり得る。既知の方法では、電気光学変調器が入力として供給される光放射線の位相を変調する。電気変調信号の各正弦波成分の振幅は、一般に変調深さと呼ばれる無次元調整パラメータに比例する。したがって、レーザ源11から来る初期レーザ放射線R
0は、変調器17によって、離散している線の形態の複数のスペクトル成分の重ね合わせを含む放射線R
1に変換される。電気変調信号の各正弦波成分は、放射線R
1の複数のスペクトル成分を、初期レーザ放射線R
0の波長値λ
0に対してスペクトル対称であるように、生成する。このようにして生成された全てのスペクトル成分の位置は、電気変調信号における正弦波成分の数と、それらのそれぞれの変調深さに採用された値とに依存する。放射線R
1は波長値λ
0のスペクトル成分を含んでも、含まなくてもよい。[
図2]はスペクトル成分が各パルスI内でスペクトル的に等距離であることを示しているが、必ずしもそうとは限らない。例として、電気変調信号には、以下の組成が可能である:
-その変調深さについて1.44の数値に関連する単一の正弦波変調成分であって、波長:λ
0、λ
0-Δλ
1、及びλ
0+Δλ
1に位置する3本のスペクトル的に離散している線から主に構成される放射線R
1をもたらし、ここで、Δλ
1は放射線R
1における連続する線間の波長差であり、これらの3本の線は、実質的に同一であるそれぞれの強度を有する単一の正弦波変調成分;
-その変調深さが2.6であることに関連する単一の正弦波変調成分であって、波長:λ
0-2・Δλ
1、λ
0-Δλ
1、λ
0+Δλ
1及びλ
0+2・Δλ
1に位置する4本のスペクトル的に離散している線から主に構成される放射線R
1をもたらし、これらの4本の線はそれぞれ実質的に同一の強度を有する単一の正弦波変調成分;
-それぞれの変調深さについて1.44の値に関連する、例えば100MHz及び30MHzに等しいそれぞれの周波数を有する2つの正弦波変調成分であって、それぞれの強度が実質的に同一である9つのスペクトル的に離散している線から主に構成される放射線R
1をもたらす2つの正弦波変調成分。
【0038】
次に、変調器12は、放射線R1のスペクトル成分の各々に周波数シフトΔν0を適用する。さらに、時間的に分離されたパルスへの細分を全てのスペクトル成分に適用し、その結果、伝送経路10によって外部に向けて放出される各パルスIは、パルスの持続時間にわたって全て重畳される複数のスペクトル成分から構成される。当業者の用語では変調器17によって出力される放射線R1は、システム100によって放出されるそれぞれのパルスIと同様に、ここではスペクトル成分のコムで構成される。好ましくは、周波数増分Δν1が、コムのスペクトル成分がスペクトル的に離散しているように、電気変調信号とレーザ源11の成分のスペクトル幅の合計よりも大きい。
【0039】
任意波形発生器の使用に代えて、電気変調信号のn個の正弦波成分は、n個のアナログ電気発振器の組み合わせによって生成されてもよい。電気変調信号を発生するこのような代替的なモードは、実際には実施するのがより簡単であり得る。
【0040】
再帰反射されると、各パルススペクトル成分は、ドップラー効果によりスペクトル的にシフトされる。周波数増分Δν1が波長λ0に対応する光周波数よりもはるかに低いと仮定すると、全てのパルススペクトル成分は、同じドップラー効果周波数シフトνDopplerを受ける。加えて、周波数増分Δν1は、周波数シフトΔν0に加えられたドップラー効果周波数シフトνDopplerについて予想され得る全ての数値よりも大きくなるように選択される。
【0041】
[
図3a]の実施形態では、伝送経路10の二次出力16が変調器17と変調器12との間に配置される。このようにして、ヘテロダイン検出器21に伝達される光基準信号RRは、放射線R
1の一部である。したがって、光基準信号RRも、周波数増分Δν
1を有するコムによって構成される。
【0042】
[
図3b]の上側の図に示されるように、ヘテロダイン検出器21によって受け取られる放射線のスペクトル構成は、そして、RRと示される周波数増分Δν
1のコムと、RIと示され、再帰反射または後方散乱され、次いで光学系15によって収集されたパルス部分に対応する追加コムとを含む。この追加コムは測定情報を含む。これは、光周波数に関して、コムRRに対してΔν
0+ν
Dopplerだけシフトされ、また、周波数増分としてΔν
1を有する。ヘテロダイン検出の間、コムRRの各スペクトル成分はコムRIの各スペクトル成分と干渉を形成するが、適切なフィルタリングは、スペクトル的に隣接していない(例えば0.3・Δν
1よりも互いから離れている)コムRRの成分とコムRIの成分との間の全ての干渉を排除する。このようなフィルタリングはその特性応答時間のために、検出器21自体によって実行されることが可能である。ヘテロダイン検出信号に残っているのは、コムRRの成分と、それに対してΔν
0+ν
DopplerだけシフトされたコムRIの成分との間の干渉に対応する寄与だけである。これらの寄与は[
図3b]の下側の図に見られるように、ヘテロダイン検出信号において互いにスペクトル的に重畳される。これらのパルススペクトル成分は検出器21に到達するパルス部分RIにおいて互いにインコヒーレントであるが、ヘテロダイン検出信号は、[
図1a]のシステム100と比較して、スペクトル上で計算される増加した信号対雑音比値を有する。[
図3a]のこの実施形態では、スペクトル分析モジュール30が[
図1a]のシステム100のものと同一であり得る。
【0043】
[
図4a]の実施形態は、伝送経路10における二次出力16の位置によって[
図3a]の実施形態と区別される。それはレーザ放出源11とコム発生変調器17との間に配置される。変調器17および変調信号発生器18は、[
図3a]の実施形態のものと同一であり得、電気変調信号は変更されない。したがって、システム100によって外部に向けて放出されるパルスIは、同じスペクトル組成を有する。一方、新しい二次出力16から伝達される光基準信号RRは、[
図1a]のシステム100で発生するものと同一である。[
図4b]の上側の図に示されるように、ヘテロダイン検出器21によって受け取られる放射線のスペクトルは、レーザ放出源11からの放出に対応するピークRRと、収集された再帰反射または後方散乱されたパルス部分RIによって形成されるコムとを含む。この第2のコムは、再びRIと表される。コムRIのそれぞれのスペクトル成分は、ここでも、周波数シフトν
Dopplerの影響を受けるパルススペクトル成分に対応する。これらのスペクトル成分は、収集された再帰反射または後方散乱パルス部分RIにおいて再びインコヒーレントである。ヘテロダイン検出器21が十分に短い応答時間を有するとき、ヘテロダイン検出信号は、コムRIのスペクトル成分の各々とのピークRRのスペクトル成分の干渉から構成される。ヘテロダイン検出信号はそして、複数のスペクトル成分から構成され、それらのRF中心周波数値はΔν
0+ν
Doppler+i・Δν
1であり、ここで、iは、ヘテロダイン検出信号のスペクトル成分を識別する整数指標である。ヘテロダイン検出信号のこのスペクトル構成を[
図4b]の下側の図に示す。スペクトル分析モジュール30は、中心値Δν
0+ν
Doppler+i・Δν
1について測定されたRF周波数値に基づいて、ドップラー効果周波数シフトν
Dopplerの値を決定する。例えば、中心値Δν
0+ν
Doppler+i・Δν
1の各々に基づいてν
Dopplerの基本値が決定され、基本値を平均することによってν
Dopplerの最終値が計算される。RIピークの個々の位置から推定されるν
Dopplerの基本値を決定するために、同じピークの中心周波数値の代わりに、ヘテロダイン検出信号のスペクトルにおけるRIピークの最大強度値に対応するRF周波数値を使用することができる。
【0044】
距離分解能の実装は、サンプリングされた分離距離値に関する速度測定結果を得るために、[
図3a]および[
図4a]の実装形態に関連して説明されていないが、そのような距離分解能を得る原理は[
図1a]のシステム100について説明したように使用することができる。
【0045】
[
図3a]および[
図4a]の実施形態で、各パルススペクトル成分は、(光ファイバセグメントS1およびS2において、ならびに光増幅器13、光サーキュレータ14、これらの間の光ファイバセグメントおよび放出光学系15に至る光ファイバセグメントにおいて生じる)誘導ブリルアン散乱の閾値をちょうど下回る個々のピークパワー値を有することができる。[
図1a]のシステムと比較して、スピード計測を実行するためにシステム100によって外部に向けて放出される各パルスIのパワーに、各パルスで利用されるスペクトル成分の個数n
compを乗算する。このようにして、ヘテロダイン検出を用いたLIDARシステムの動作のために、因子n
comp
1/2による改良が得られる。したがって、本発明に係るヘテロダイン検出を用いたパルスLIDARシステムは、再帰反射または後方散乱パルス部分が低パワーまたは非常に低パワーを有する測定条件に特に適している。したがって、大気速度測定を実行するのに特に適している。
【0046】
上述した本発明の実施形態では、LIDARシステムによって連続的に放出されるパルスのそれぞれのスペクトル組成は同一である。しかし、この特徴は、本発明に必要ではない。[
図5]はLIDARシステムによって連続的に放出される一連のパルスIを示しており、それぞれのパルスIは、波長差2・Δλ
1によって分離された2つの離散しているスペクトル成分から構成されている。この成分間スペクトル差2・Δλ
1は2つの連続するパルスIの間で、例えば完全な一連のパルスIの間に周期的に変化する。このような一連の可変スペクトル成分のパルスの使用は[
図3a]および[
図4a]の本発明に係るLIDARシステムの2つの実施形態に適合する。[
図5]に示す一連の放出パルスは、双方の場合で電気光学変調器17を適切に制御することによって得られる。[
図5]はパルス当たり2つのスペクトル成分のみを示しているが、パルス当たりのスペクトル成分の数はより多くてもよい。特に、しかし任意に、電気光学変調器17の制御は、音響光学変調器12に伝送される以前に変調器17から直接的に到来する放射線R
1が、レーザ放出源11の波長値λ
0における任意の有意なスペクトル振幅成分を欠くように構成され得る。
【0047】
本発明は記載された利点の少なくとも一部を保持しながら、上で詳細に説明された実施形態の二次的態様を修正しながら再現され得ることが理解される。特に、以下のような変形が可能である:
- 記載された実施形態において使用される構成要素の幾つかは、他の構成要素によって、または同等の機能を生成する構成要素の組合せによって置き換えることができる。例えば、各電気光学変調器は、変調器として使用される半導体光増幅器(semiconductor optical amplifier、SOA)に置き換えることができる;
- 本発明全般で、LIDARシステムによって放出される各パルスを構成するためのスペクトル的に離散しているパルススペクトル成分がそれぞれ有する成分強度が等しい必要はない。言い換えれば、各パルスを構成するためのスペクトル的に離散しているパルススペクトル成分は、同じ放出パルス内である成分ごとに異なる最大スペクトル強度またはそれぞれの総強度を有することができる;
- 記載された全ての数値は例示の目的のために過ぎず、ヘテロダイン検出を用いたパルスLIDARシステムのために考慮される用途に応じて変更することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスLIDARシステム(100)であり、前記システムによって標的(T)に向かって連続的に放出される一連の放射線パルス(I)によって受けるドップラー効果周波数シフト(ν
Doppler)の値を、前記標的上での再帰反射または後方散乱の後に受け取られた前記パルスの一部と、前記システムによって放出される前記パルスとの間で決定し、前記周波数シフトについて決定された前記値に基づいて、前記システムの光放出方向に平行な前記標的の速度成分(V
T)の推定値を提供するように適合されたシステムであって、
前記システム(100)は、
前記一連のパルス(I)を生成するように構成された伝送経路(10)と、
前記標的(T)上での再帰反射または後方散乱の後に受け取られた前記パルス部分(RI)を検出し、前記一連のパルス(I)に対応するヘテロダイン検出信号を生成するように構成された検出経路(20)と、
前記一連のパルス(I)に対応するヘテロダイン検出寄与から前記周波数シフト(ν
Doppler)の値が生じるように、前記ヘテロダイン検出信号のスペクトル分析を実行するように適合されたスペクトル分析モジュール(30)と、を備え、
前記伝送経路(10)は、同時に放出され、スペクトル的に離散し、異なる中心波長値に一対一で関連する複数のパルススペクトル成分の重畳としてパルス(I)の各々を形成するようにさらに構成され、
前記システム(100)は、前記スペクトル分析モジュール(30)によって決定された前記周波数シフト(ν
Doppler)の値が、前記一連のパルス(I)のパルススペクトル成分にそれぞれ対応する複数のヘテロダイン検出寄与から生じるように、適合され
、
前記システム(100)はさらに、連続的に放出される2つのパルス(I)の離散している前記パルススペクトル成分が、前記2つの連続的なパルスの間で変化する成分間スペクトル差によって、分離されるように、かつ、前記成分間スペクトル差が、完全な前記一連のパルスの間に周期的に変化するように、構成されることを特徴とするパルスLIDARシステム(100)。
【請求項2】
前記システムは、前記標的(T)を形成する懸濁粒子を含む大気の部分に向かって前記放射線パルス(I)を放出するように向けられたときに、空気流速成分の推定値を提供するように適合され、前記粒子は、前記放射線を後方散乱させるものである、請求項1に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項3】
前記伝送経路(10)は、各パルス(I)の前記スペクトル成分が少なくとも10MHz、好ましくは少なくとも20MHz、最大で2000MHzだけスペクトル的に分離されるようにさらに構成される、
請求項1に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項4】
前記伝送経路(10)は、スペクトル的に隣接する前記パルススペクトル成分の任意の2つの間に存在するスペクトル差(Δν
1)が、隣接するパルススペクトル成分の様々なペアの間で一定であるようにさらに構成される、
請求項1に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項5】
前記伝送経路(10)は、各パルス(I)を構成するスペクトル的に離散しているパルススペクトル成分の数が2~20、好ましくは4~12であるようにさらに構成される、
請求項1に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項6】
前記伝送経路(10)は、
初期レーザ放射線(R
0)を生成するように適合されたレーザ放出源(11)と;
コム生成変調器(17)の制御入力に印加される変調信号に従って、前記初期レーザ放射線(R
0)を修正するように構成されたコム生成変調器(17)と;
前記コム発生変調器(17)の前記制御入力に前記変調信号を印加するように接続される変調信号発生器(18)と、を備え、
前記変調信号は、前記初期レーザ放射線(R
0)が前記コム生成変調器(17)によって、1対1にパルススペクトル成分を形成するように意図された1組のスペクトル成分に変換するものである、
請求項1に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項7】
前記コム生成変調器(17)は、電気光学タイプであり、連続的に放出される2つのパルスの間で変化する前記成分間スペクトル差を有する前記一連のパルス(I)は、前記電気光学コム生成変調器の制御によって、得られる、請求項6に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項8】
前記電気光学コム生成変調器の前記制御は、前記変調器によって直接的に生成される前記放射線(R
1
)が、音響光学タイプ(12)のパルス内への周波数シフトおよび分離専用の変調器に伝送される前に、前記レーザ放出源(1)の放出波長値でスペクトル成分を欠いている、請求項7に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項9】
前記パルス(I)の前記パルススペクトル成分に1対1に対応する基準スペクトル成分を、各パルススペクトル成分と当該パルススペクトル成分に対応する前記基準スペクトル成分との間の、全てのパルススペクトル成分について同一であるスペクトルシフト(Δν
0)と共に含む光基準信号(RR)を受け取るために、前記検出経路の基準入力は前記伝送経路の二次出力に接続され、
前記検出経路(20)によって生成された前記ヘテロダイン検出信号における前記パルススペクトル成分に関連する前記ヘテロダイン検出寄与は、全てスペクトル的に重畳される、
請求項1に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項10】
前記パルスの前記パルススペクトル成分に1対1に対応する基準スペクトル成分を、各パルススペクトル成分と当該パルススペクトル成分に対応する前記基準スペクトル成分との間の、全てのパルススペクトル成分について同一であるスペクトルシフトと共に含む光基準信号を受け取るために、前記検出経路の基準入力は前記伝送経路の二次出力に接続され、
前記検出経路によって生成された前記ヘテロダイン検出信号における前記パルススペクトル成分に関連する前記ヘテロダイン検出寄与は、全てスペクトル的に重畳され、
前記伝送経路(10)の前記二次出力(16)は、前記伝送経路における前記放射線の伝播方向に対して、前記コム生成変調
器の下流の前記伝送経路に位置する、
請求項6に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項11】
前記検出経路(20)の基準入力は、単色である光基準信号(RR)を受け取るために、前記伝送経路(10)の二次出力(16)に接続され、
前記検出経路(20)によって生成された前記ヘテロダイン検出信号における前記パルススペクトル成分に関連する前記ヘテロダイン検出寄与は、前記パルススペクトル成分の分布に従って互いに対してスペクトル的にシフトされ、
前記スペクトル分析モジュール(30)は、前記ヘテロダイン検出寄与の各々に対する中心周波数値に基づいて前記ドップラー効果周波数シフト(ν
Doppler)の値を推定するように構成される、
請求項1に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項12】
前記検出経路の基準入力は、単色である光基準信号を受け取るために、前記伝送経路の二次出力に接続され、
前記検出経路によって生成された前記ヘテロダイン検出信号における前記パルススペクトル成分に関連する前記ヘテロダイン検出寄与は、前記パルススペクトル成分の分布に従って互いに対してスペクトル的にシフトされ、
前記スペクトル分析モジュールは、前記ヘテロダイン検出寄与の各々に対する中心周波数値に基づいて前記ドップラー効果周波数シフトの値を推定するように構成され、
前記伝送経路(10)の前記二次出力(16)は、前記伝送経路における前記放射線の伝播方向に対して、前記コム生成変調器(17)の上流の前記伝送経路に位置する、
請求項6に記載のパルスLIDARシステム(100)。
【請求項13】
前記伝送経路(10)
および前記検出経路(20)
の少なくとも一方は、前記伝送経路
または前記検出経路の構成要素を相互接続するために、光ファイバ技術によって実装される、請求項1~10の何れか一項に記載のLIDARシステム(100)。
【国際調査報告】