(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】ベクター及びニコチン作動薬の併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20240415BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240415BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240415BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20240415BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240415BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240415BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240415BHJP
A61K 38/18 20060101ALI20240415BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240415BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20240415BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240415BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20240415BHJP
C12N 15/861 20060101ALN20240415BHJP
C12N 15/867 20060101ALN20240415BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240415BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P27/02 ZNA
A61P43/00 121
A61K31/55
A61K31/506
A61K35/76
A61K48/00
A61K38/18
A61K38/17
A61K35/761
A61P31/12
C12N15/864 100Z
C12N15/861 Z
C12N15/867 Z
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568362
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 US2022027653
(87)【国際公開番号】W WO2022235786
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517139152
【氏名又は名称】オイスター ポイント ファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー アラン ナウ
(72)【発明者】
【氏名】エリック シー.カールソン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA20
4C084BA44
4C084DB59
4C084DC50
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4C084MA58
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4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA331
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4C086MA13
4C086MA59
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZB33
4C086ZC41
4C086ZC75
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA02
4C087MA58
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA33
4C087ZB33
4C087ZC75
(57)【要約】
眼表面障害、角膜障害又は前房障害の治療のための治療薬の生物学的利用能及び/又は効能を増加させる方法が提供される。特に、涙の産生は、電気刺激、超音波刺激及び/又はnAChRα7アゴニストなどの薬物(例えば、バレニクリン、(R)-5-((E)-2-ピロリジン-3-イルビニル)ピリミジン、5-{(E)-2-[(3R)-ピロリジン-3-イル]ビニル}ピリミジン又は(R,E)-5-((2-ピロリジン-3-イル)ビニル)ピリミジン)の投与によって増加する。提供される最初の治療剤には、治療遺伝子産物(例えば、生物学的製剤)を発現する組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが含まれる。関連組成物の使用方法もまた、提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を治療する方法であって、以下の:
a.有効量の最初の治療薬を眼又は眼と流体連絡を取っている組織に投与すること;及び
b.涙の産生を増加させる処置を投与すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記涙の産生を増加させる処置は、有効量のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記nAChRアゴニストは、α4β2、α3β4、α3α5β4及び/又はα4α6β2のnAChRサブタイプの完全アゴニストである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記nAChRアゴニストは、バレニクリン又はその薬学的に許容される塩である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記nAChRアゴニストは、(R)-5-((E)-2-ピロリジン-3-イルビニル)ピリミジン又はその薬学的に許容される塩である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記涙の産生を増加させる処置は、局所鼻腔内投与を介して投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記局所鼻腔内投与は、鼻腔用スプレーを経由している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記最初の治療薬は、一方又は両方の涙腺への腔内注射又は局所投与を介して投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の投与の後で投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の投与の後7日目より投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記涙の産生を増加させる処置は、前篩骨神経の効果的な電気刺激である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記眼と流体連絡を取っている組織は、涙腺、涙管、角膜、角膜上皮、角膜上皮幹細胞、結膜、涙点及び涙小管の1つ又は任意の組み合わせである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記眼球と流体連絡を取っている組織は、角膜である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記眼と流体連絡を取っている組織は、涙腺である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、最初の治療薬単独の投与と比較して、所定時間における対象の眼の涙液膜に送達される最初の治療薬の量の増加をもたらす、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、最初の治療薬単独の投与と比較して、所定時間における対象の眼の角膜に送達される最初の治療薬の量の増加をもたらす、請求項1~13又は15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記所定時間は、約5分である、請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記所定時間は、約1時間である、請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記最初の治療薬の有効量を投与することは、遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む組成物の有効量を、対象の少なくとも1つの涙腺に投与することを含み、前記最初の治療薬が遺伝子産物又はその機能的変異体を含む、請求項1~請求項18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記遺伝子産物は、治療用タンパク質である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記治療用タンパク質は、神経成長因子(NGF)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記治療用タンパク質は、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ウイルスベクターは、ワクシニアウイルスベクターである、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターである、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記AAVベクターは、血清型5(AAV5)、血清型2(AAV2)、血清型8(AAV8)又は血清型9(AAV9)のAAVである、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物は、約1×10
12ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)のAAVベクターを含む、請求項23又は請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物は、約6.2×10
12ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)のAAVベクターを含む、請求項23又は請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記約50μL~約100μLの組成物が投与される、請求項19~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記方法は、対象の眼の涙液膜における遺伝子産物の発現をもたらす、請求項19~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記方法は、対象の眼の角膜における遺伝子産物の発現をもたらす、請求項19~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記方法は、ウイルスベクター単独の投与と比較して、所定時間における涙液膜に送達される遺伝子産物の量の増加をもたらす、請求項19~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記所定時間は、約5分である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記所定時間は、約1時間である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害は、神経麻痺性角膜症、眼表面の化学熱傷、角膜創傷、角膜潰瘍、遷延性角膜上皮欠損、ドライアイ疾患、三叉神経及び/又は眼の単純ヘルペスウイルス感染、三叉神経及び/又は眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染又は角膜神経の糖尿病合併症である、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
遺伝子産物を、それを必要とする対象の少なくとも片眼の眼表面に送達する方法であって、以下の:
a.遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む組成物の有効量を、対象の少なくとも1つの涙腺に投与すること;及び
b.有効量のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又はその薬学的に許容される塩を、局所鼻腔内投与を介して投与すること、
を含む、方法。
【請求項38】
前記遺伝子産物は、治療用タンパク質である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記治療用タンパク質は、神経成長因子(NGF)である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記治療用タンパク質は、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項37~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記ウイルスベクターは、ワクシニアウイルスベクターである、請求項37~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターである、請求項37~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである、請求項37~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記AAVベクターは、血清型5(AAV5)、血清型2(AAV2)、血清型8(AAV8)又は血清型9(AAV9)のAAVである、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物は、約1×10
12ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)のAAVベクターを含む、請求項41又は請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記組成物は、当たり約6.2×10
12ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)のAAVベクターを含む、請求項41又は請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記ウイルスベクターを含む組成物の約50μL~約100μLが投与される、請求項37~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の投与の後で投与される、請求項37~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の投与の後7日目より投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記方法は、対象の眼の涙液膜における遺伝子産物の発現をもたらす、請求項37~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記方法は、対象の眼の角膜における遺伝子産物の発現をもたらす、請求項37~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記方法は、ウイルスベクター単独の投与と比較して、所定時間における涙液膜に送達される遺伝子産物の量の増加をもたらす、請求項37~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記所定時間は、約5分である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記所定時間は、約1時間である、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記方法は、ウイルスベクター単独の投与と比較して、所定時間における眼表面に送達される遺伝子産物の量の増加をもたらす、請求項37~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記所定時間は、約5分である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記所定時間は、約1時間である、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記nAChRアゴニストは、α4β2、α3β4、α3α5β4及び/又はα4α6β2のnAChRサブタイプの完全アゴニストである、請求項37~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記nAChRアゴニストは、バレニクリン又はその薬学的に許容される塩である、請求項37~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記nAChRアゴニストは、(R)-5-((E)-2-ピロリジン-3-イルビニル)ピリミジン又はその薬学的に許容される塩である、請求項37~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記nAChRアゴニストは、局所鼻腔内投与を介して投与される、請求項37~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記ウイルスベクターを含む組成物は、腔内注射を介して投与される、請求項37~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害は、神経麻痺性角膜症、眼表面の化学熱傷、角膜創傷、角膜潰瘍、遷延性角膜上皮欠損、ドライアイ疾患、三叉神経及び/又は眼の単純ヘルペスウイルス感染、三叉神経及び/又は眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染又は角膜神経の糖尿病合併症である、請求項37~63のいずれか一に記載の方法。
【請求項65】
対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を治療する方法に使用するための、最初の治療薬及び涙の産生を増加させる処置であって、以下の:
a.有効量の最初の治療薬を眼又は眼と流体連絡を取っている組織に投与すること;及び
b.涙の産生を増加させる処置を投与すること、
を含む、最初の治療薬及び涙の産生を増加させる処置。
【請求項66】
前記涙の産生を増加させる処置は、有効量のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項65に記載の使用のための、最初の治療薬及び涙の産生を増加させる処置。
【請求項67】
前記nAChRアゴニストは、バレニクリン又はその薬学的に許容される塩である、請求項66に記載の使用のための、最初の治療薬及び涙の産生を増加させる処置。
【請求項68】
前記涙の産生を増加させる処置は、局所鼻腔内投与を介して投与される、請求項65~67のいずれか一項に記載の使用のための、最初の治療薬及び涙の産生を増加させる処置。
【請求項69】
前記有効量の最初の治療薬を投与することは、遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む組成物の有効量を、対象の少なくとも1つの涙腺に投与することを含み、前記最初の治療薬が遺伝子産物又はその機能的変異体を含む、請求項65~67のいずれか一項に記載の最初の治療薬及び涙の産生を増加させる処置。
【請求項70】
眼疾患、障害又は症状を治療するための医薬の製造に使用するための、最初の治療薬及び涙の産生を増加させる処置。
【請求項71】
以下の:
(a)遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む第一の組成物;及び
(b)ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニストを含む第二の組成物、
を含むキットであって、それを必要とする対象において、本明細書中に記述されている疾患、障害又は症状の治療又は進行を遅延するための指示。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月7日に出願された米国仮特許出願シリアル番号63/185,897の利益を主張する。その全内容は、この参照により本明細書中に援用される。
【0002】
配列表の参照
本出願は、EFS-Webを介してASCII形式で電子的に提出された配列表(Sequence Listing)を含み、その全体が参照することにより本明細書に援用される。2022年4月29日に作成された前記ASCIIのコピーは、OYST_016_02WO_SeqList_ST25と名付けられ、サイズは72,423バイトである。
【0003】
本発明は、一般に、眼表面及び角膜障害の医学的治療、特に、涙の産生を増加させる薬剤の共投与による治療の改善に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
ドライアイ疾患;細菌性、真菌性及びウイルス性角膜炎;神経麻痺性角膜症、眼瞼炎、シェーグレン症候群;アレルギー性結膜炎、春季カタル、ウイルス性結膜炎及び細菌性結膜炎;緑内障;角膜新生血管;翼状片;角膜ジストロフィー(円錐角膜、フックスジストロフィー、格子ジストロフィー及びマップドットフィンガープリントジストロフィー)並びに他の眼表面及び角膜障害の医学的治療が知られている。さらに、緑内障、老眼、近視及び他の前房障害(anterior chamber disorders)の医学的治療が知られている。これらの医学的治療としては、局所点眼薬、小分子薬剤、生物学的製剤などが挙げられる。
【0005】
眼障害の治療に使用される治療薬としては、シクロスポリン(RESTASIS、ZYCLORIN又はCYCLOKATとして販売されている);リフィテグラスト(XIIDRA);免疫調節剤(ボクロスポリン、タクロリムス、ピメクロリムス);ヤヌスキナーゼ(JAK)3阻害薬(タソシチニブ);分泌促進剤又は粘膜保護剤(ジクアホゾール、レバミピド、エカベト);二糖類保護薬(トレハロース);非ステロイド性抗炎症薬(ブロムフェナク);ステロイド(デキサメタゾン、EGP-437、コルチコステロイド、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、フルオロメトロン及びロテプレドノール含有薬剤);ステロイド温存薬(steroid-sparing drugs)(ミコフェノレート、アザチオプリン、シクロホスファミド);脂肪酸(オメガ3脂肪酸、レゾルビンE1);広域スペクトル抗菌薬(フルオロキノロン)、抗ウイルス又は抗真菌薬;抗生物質(テトラサイクリン)及びその誘導体(ドキシサイクリン)、マクロライド系抗生物質(アジスロマイシン);自己血清;合成潤滑剤;局所ビタミンA;マスト細胞安定化剤(例えば、ネドクロミル、ロドキサミド)、抗ヒスタミン薬(例えば、エメダスチン、ロラチジン、クロルフェナミン)又は複合マスト細胞安定化剤/抗ヒスタミン薬(例えば、オロパタジン);潤滑剤(ヒアルロナート、カルメロース、ヒプロメロース、ポリビニルアルコール、パラフィン又は脂質若しくは浸透圧保護剤を含む潤滑剤(例えば、グリセリン及びL-カルニチン)、N-アセチルシステイン);エモリエント(ワセリン、ミネラルオイル、ラノリン、ヒマシ油)含有軟膏が挙げられる。さらに、緑内障のような前房障害は、プロスタグランジンアナログ、β遮断薬、α作動薬、炭酸脱水酵素阻害薬及びrhoキナーゼ阻害薬で治療される。
【0006】
原理として、ウイルスベクターのようなベクターを用いて治療薬を眼に送達することが可能である。ワクシニア、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、涙腺細胞及び/又は涙腺組織の初代培養物、例えば、Rochaら、IOVS 52:9567-72(2011);Nominatoら、IOVS 59:6036-44(2018)を形質導入することが示されている。
【0007】
眼表面障害及び前房障害の医学的治療の改善は望ましいことになる。
【発明の概要】
【0008】
概要
本開示は、対象における涙の産生を増加させることによって、眼表面障害及び角膜障害の医学的治療を改善するための併用療法及び方法を提供する。電気刺激、超音波刺激及び/又は薬物の投与によって涙の産生が増加すると、一又は複数の最初の治療薬の生物学的利用能及び/又は効能を改善されることができる。例えば、最初の治療薬の眼表面への送達の量、分布及び/又は速度を改善されることができる。涙の産生の増加は、眼に隣接する組織で組み換え発現されたタンパク質(複数可)、抗体若しくはフラグメント抗体(例えば、Fabs)又は核酸などの遺伝子産物(複数可)の眼への送達を改善するのに特に効果的である。
【0009】
その結果、本開示は、涙の産生を増加させる処置を投与することによって、最初の治療薬の生物学的利用能を増加させる方法を提供する。涙の産生を増加させる処置は、限定されるものではないが(without limitation)、電気刺激、超音波刺激、小分子薬剤又は生物学的薬物であってもよい。特定の実施形態において、小分子薬剤は、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニストである。
【0010】
様々な最初の治療薬及び最初の治療薬をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクター又は非ウイルスベクターは、本開示の方法において使用されることができる。最初の治療薬は、限定されるものではないが、小分子薬剤又は生物学的薬物(例えば、タンパク質又は核酸)であってもよい。
【0011】
本開示は、さらに、ウイルスベクター(例えば、ワクシニア、アデノウイルス又はアデノ随伴ウイルス)及びニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニストを投与することによって、対象の眼の涙液膜に遺伝子産物を送達する方法を提供する。ウイルスベクターは、対象への注射又は対象の眼の近く(例えば、涙腺)への局所投与に適した組成物で提供される。このウイルスベクターの組成物は、涙腺に直接注射されることができる。ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニストは、有効量の局所鼻腔内投与を介して投与される。ウイルスベクターには、遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドが含まれる。nAChRアゴニストは、その薬学的に許容される塩として提供されることができる。
【0012】
様々な実施形態において、遺伝子産物は、治療用タンパク質、抗体若しくは抗体フラグメント(例えば、Fab)又は受容体デコイ(例えば、可溶性受容体又は「トラップ」分子)である。いくつかの実施形態において、治療用タンパク質は、神経成長因子(NGF)、グリア細胞由来神経栄養因子(glial-cell derived neurotrophic factor)(GDNF)、RNアーゼ(例えば、ランピラナーゼ)、血管内皮増殖因子(VEGF)、シアル酸結合Ig様レクチン8(SIGLEC-8)、腫瘍壊死因子(TNF-α)、上皮成長因子(EGF)、インターロイキン-1(IL-1)又はインターロイキン-2(IL-2)及びインターロイキン-6(IL-6)である。いくつかの実施形態において、治療用タンパク質は、抗体又は抗体フラグメントである。いくつかの実施形態において、治療用タンパク質は、IgEの受容体デコイ(receptor decoy)である。
【0013】
ウイルスベクターとしてアデノ随伴ウイルス(AAV)を採用する実施形態において、AAVは、血清型5(AAV5)、血清型2(AAV2)、血清型8(AAV8)、血清型9(AAV9)であってもよい。標的組織(例えば、涙腺)を効果的に形質導入する(transduces)血清型のような、様々な他の血清型又はそれらのハイブリッドが使用されてもよい。
【0014】
ウイルスベクターは、約1×107ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)、約5×107GC/mL、約1×108GC/mL、約5×108GC/mL.約1×109GC/mL、約5×109GC/mL、約1×1010GC/mL、約5×1010GC/mL、約1×1011GC/mL、約5×1011GC/mL、約1×1012GC/mL、約5×1012GC/mL又は約6.2×1012GC/mLのウイルスベクター(例えば、AAVベクター)など、様々な濃度で提供されることができる。約100μLの組成物が投与されてもよいか、あるいは他の容量が投与されてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態において、nAChRアゴニストは、バレニクリン又はその薬学的に許容される塩(例えば、酒石酸塩)である。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニストは、(R)-5-((E)-2-ピロリジン-3-イルビニル)ピリミジンであり、シンパニクリン、5-{(E)-2-[(3R)-ピロリジン-3-イル]ビニル}ピリミジン若しくは(R,E)-5-((2-ピロリジン-3-イル)ビニル)ピリミジン又はそれらの薬学的に許容される塩(例えば、ヘミ-ガラクタル酸又はモノ-クエン酸塩)としても知られている。nAChRアゴニストの局所鼻腔内投与は、鼻腔用スプレー又は他の適切な経路を経由することができる。
【0016】
有利には、本方法は、涙液膜における遺伝子産物の発現;対象の眼の角膜上か、あるいは角膜中での遺伝子産物の発現;及び/又はウイルスベクター単独の投与と比較した、処置の投与後の所定時間内に涙液膜に送達される遺伝子産物の量の増加をもたらす。所定時間は、約5分、約1時間、約1日、約1週間又は対照(例えば、ウイルスベクター単独)と比較した、涙液膜への遺伝子産物の送達の量若しくは速度の増加を検出するのに適した任意の時間枠であってもよい。
【0017】
本開示は、さらに、対象の眼の眼表面に遺伝子産物を送達する方法を提供する。この方法の変形及び実施形態には、涙液膜に遺伝子産物を送達するための上述のものが含まれる。有利には、本方法は、眼表面上における遺伝子産物の発現;及び/又はウイルスベクター単独の投与と比較した、所定時間(例えば、約5分、約1時間、約1日又は約1週間)内に眼表面に送達される遺伝子産物の量の増加をもたらす。
【0018】
さらに、本明細書中に開示される任意の方法で用いるウイルスベクター、医薬製剤、キット及び組成物が提供される。
【0019】
本開示のさらなる実施形態、特徴及び利点は、下記の詳細な説明から、かつ本開示の実施を通して明らかになるであろう。
【0020】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を治療する方法であって、以下の:
a.有効量の最初の治療薬を眼又は眼と流体連絡を取っている組織に投与すること;及び
b.涙の産生を増加させる処置を投与すること、
を含む、方法を提供する。
【0021】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、涙の産生を増加させる処置は、有効量のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又はその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニストは、nAChRサブタイプα4β2、α3β4、α3α5β4及び/又はα4α6β2のフルアゴニストである。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニストは、バレニクリン又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニストは、(R)-5-((E)-2-ピロリジン-3-イルビニル)ピリミジン又はその薬学的に許容される塩である。
【0022】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、涙の産生を増加させる処置は、局所鼻腔内投与を介して投与される。いくつかの実施形態において、局所鼻腔内投与は、鼻腔用スプレーを経由する。
【0023】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、最初の治療薬は、一方又は両方の涙腺への涙腺内注射又は局所投与を介して投与される。
【0024】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の投与後に投与される。いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の投与の後7日目より投与される。
【0025】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、涙の産生を増加させる処置は、前篩骨神経の効果的な電気刺激である。
【0026】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、眼と流体連絡を取っている組織は、涙腺、涙管(lacrimal duct)、角膜、角膜上皮、角膜上皮幹細胞(limbal stem cells)、結膜、涙点及び涙小管(lacrimal canaliculi)の1つ又は任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、眼と流体連絡を取っている組織は、角膜である。いくつかの実施形態において、眼と流体連絡を取っている組織は、涙腺である。
【0027】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、本方法は、最初の治療薬単独の投与と比較した、所定時間内に対象の眼の涙液膜に送達される最初の治療薬の量の増加をもたらす。いくつかの実施形態において、本方法は、最初の治療薬単独の投与と比較した、所定時間内に対象の眼の角膜に送達される最初の治療薬の量の増加をもたらす。
いくつかの実施形態において、所定時間は、約5分である。いくつかの実施形態において、所定時間は、約1時間である。
【0028】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、有効量の最初の治療薬を投与することは、遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む組成物の有効量を、対象の少なくとも1つの涙腺に投与することを含み、前記最初の治療薬は遺伝子産物又はその機能的変異体を含む。いくつかの実施形態において、遺伝子産物は治療用タンパク質である。いくつかの実施形態において、治療用タンパク質は、神経成長因子(NGF)である。いくつかの実施形態において、治療用タンパク質は、グリア由来神経栄養因子(Glial Derived Neurotrophic Factor)(GDNF)である。
【0029】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、ウイルスベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターはワクシニアウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターはアデノウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、血清型5(AAV5)、血清型2(AAV2)、血清型8(AAV8)又は血清型9(AAV9)のAAVである。
【0030】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、組成物は、約1×1012ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)のAAVベクターを含む。
【0031】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、組成物は、約6.2×1012ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)のAAVベクターを含む。
【0032】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、約50μL~約100μLの組成物が投与される。
【0033】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、本方法は、対象の眼の涙液膜における遺伝子産物の発現をもたらす。いくつかの実施形態において、本方法は、対象の眼の角膜における遺伝子産物の発現をもたらす。
【0034】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、本方法は、ウイルスベクターのみの投与と比較した、所定時間内に涙液膜に送達される遺伝子産物の量の増加をもたらす。いくつかの実施形態において、所定時間は約5分である。いくつかの実施形態において、所定時間は約1時間である。
【0035】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害は、神経麻痺性角膜症、眼表面の化学熱傷、角膜創傷、角膜潰瘍、遷延性角膜上皮欠損(persistent epithelial defect)、ドライアイ疾患、三叉神経及び/又は眼の単純ヘルペスウイルス感染、三叉神経及び/又は眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染又は角膜神経の糖尿病合併症である。
【0036】
いくつかの実施形態において、本開示は、遺伝子産物を、それを必要とする対象の少なくとも片眼の眼表面に送達する方法であって、以下の:
a.遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む組成物の有効量を、対象の少なくとも1つの涙腺に投与すること;及び
b.有効量のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又は薬学的に許容されるその塩を、局所鼻腔内投与を介して投与すること、
を含む、方法を提供する。
【0037】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、遺伝子産物は治療用タンパク質である。いくつかの実施形態において、治療用タンパク質は神経成長因子(NGF)である。いくつかの実施形態において、治療用タンパク質はグリア由来神経栄養因子(GDNF)である。
【0038】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、ウイルスベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターはワクシニアウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターはアデノウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、血清型5(AAV5)、血清型2(AAV2)、血清型8(AAV8)又は血清型9(AAV9)のAAVである。
【0039】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、組成物は、約1×1012ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)のAAVベクターを含む。
【0040】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、組成物は、約6.2×1012ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)のAAVベクターを含む。
【0041】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、ウイルスベクターを含む組成物の約50μL~約100μLが投与される。
【0042】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の投与後に投与される。いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の投与の後7日目より投与される。
【0043】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、本方法は、対象の眼の涙液膜における遺伝子産物の発現をもたらす。
【0044】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、本方法は、対象の眼の角膜における遺伝子産物の発現をもたらす。
【0045】
本明細書に記載のいくつかの実施形態において、本方法は、ウイルスベクター単独の投与と比較した、所定時間内に涙液膜に送達される遺伝子産物の量の増加をもたらす。いくつかの実施形態において、所定時間は約5分である。いくつかの実施形態において、所定時間は約1時間である。いくつかの実施形態において、本方法は、ウイルスベクター単独の投与と比較した、所定時間内に眼表面に送達される遺伝子産物の量の増加をもたらす。いくつかの実施形態において、所定時間は約5分である。いくつかの実施形態において、所定時間は約1時間である。
【0046】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、nAChRアゴニストは、nAChRサブタイプα4β2、α3β4、α3α5β4及び/又はα4α6β2のフルアゴニストである。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニストは、バレニクリン又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニストは、(R)-5-((E)-2-ピロリジン-3-イルビニル)ピリミジン又は薬学的に許容されるその塩である。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニストは、局所鼻腔内投与を介して投与される。
【0047】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、ウイルスベクターを含む組成物は、鼻腔内注射を介して投与される。
【0048】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害は、神経麻痺性角膜症、眼表面の化学熱傷、角膜創傷、角膜潰瘍、遷延性角膜上皮欠損、ドライアイ疾患、三叉神経及び/又は眼の単純ヘルペスウイルス感染、三叉神経及び/又は眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染又は角膜神経の糖尿病性合併症である。
【0049】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を治療する方法に使用するための、最初の治療薬及び涙の産生を増加させるための処置を提供し、本方法は、以下の:
a.有効量の最初の治療薬を眼又は眼と流体連絡を取っている組織に投与すること;及び
b.涙の産生を増加させる処置を投与すること、
を含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、本開示は、使用のための最初の治療薬及び涙の産生を増加させる処置を提供し、涙の産生を増加させる処置は、有効量のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又は薬学的に許容されるその塩を含む。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニストは、バレニクリン又は薬学的に許容されるその塩である。いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は、鼻腔局所投与を介して投与される。
【0051】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、有効量の最初の治療薬を投与することは、遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む組成物の有効量を、対象の少なくとも1つの涙腺に投与することを含み、最初の治療薬が遺伝子産物又はその機能的変異体を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、本開示は、眼疾患、障害又は症状を治療するための医薬の製造に使用するための、最初の治療薬及び涙の産生を増加させる処置を提供する。
【0053】
いくつかの実施形態において、本開示は、以下の:
(a)遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む第1の組成物;及び
(b)ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニストを含む第2の組成物、
を含む、キット並びにそれを必要とする対象における本明細書中に記述されている疾患、障害又は症状の治療又は進行を遅延するための指示(instructions)を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1A】
図1Aは、ヒト被験者の涙腺へのウイルスベクターの送達の例を示す。
【0055】
【
図1B】
図1Bは、ヒト被験者の涙腺へのウイルスベクターの送達の例を示す。
【0056】
【
図2】
図2は、神経興奮剤の経鼻投与による副交感神経経路の刺激を介した、涙腺腺房細胞(lacrimal acinar cells)の涙液膜中への発現タンパク質の分泌及び涙誘導に関する涙腺生理学の描写を示す。
【0057】
【
図3】
図3は、対象が症状の重症度を記録するためのEye Deyness試験において用いられるビジュアルアナログスケールの例を示す。
【0058】
【
図4】
図4は、NEI/Industry Workshopスケールに基づく角膜表面の区分の格付け略図(a grading diagram)を示す。
【0059】
【
図5A】
図5Aは、調節エレメント及びヒト神経成長因子(hNGF)導入遺伝子を含む組み換えAAV(rAAV)発現カセットをコードする例示的ベクター(an illustrative vector)を示す。
【0060】
【
図5B】
図5Bは、調節エレメント及びヒトグリア由来神経栄養因子(hGDNF)導入遺伝子を含む組み換えAAV発現カセットをコードする例示的ベクターを示す。
【0061】
【
図6】
図6A~6Kは、抗eGFP抗体で染色した涙腺組織の画像である。涙腺は、eGFP導入遺伝子を有する発現カセットを含むrAAVビリオンで、涙腺内注射によって投与された。涙腺組織は、抗eGFP抗体で染色され、Egfp発現を評価した。黒矢印は、eGFP発現を示す染色を表示する。
【0062】
【
図7】
図7A~7Eは、抗hNGF抗体で染色した涙腺組織の画像である。涙腺は、hNGF導入遺伝子を有する発現カセットを送達するように操作されたrAAVビリオン(AAV9血清型)で、涙腺内注射によって投与された。涙腺組織は、抗hNGF抗体で染色され、hNGF発現を評価した。黒矢印は、hNGF発現を示す染色を表示する。
【0063】
【
図8】
図8は、AAV.hNGF及びバレニクリンで処置された動物における、涙液膜におけるhNGFの濃度を示すプロットである。タンパク質濃度は、AAV2.hNGF、AAV5.hNGF又はAAV9.hNGFの涙腺内投与後の指示された日数で、Dutch-beltedウサギから涙液膜を収集するためにシルマーティアストリップを用いて測定された。21日目、28日目及び41日目に、涙液誘発剤、バレニクリンの鼻腔内投与後に涙液膜が採取された。対照動物にはAAVを注射しなかった。
【0064】
【
図9】
図9は、逆方向末端反復(inverted terminal repeats)(ITR)、CAGプロモーター及び神経成長因子(NGF)導入遺伝子ポリヌクレオチドエレメントを有する配列番号:25のrAAV発現カセットを含む例示的プラスミドを示す。
【0065】
【
図10】
図10A~10Cは、ブタの涙液膜におけるhNFGβの濃度(pg/mL)を示すプロットである。ヒト神経成長因子をコードするアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)(AAV-hNGFβ)で形質導入した後、7日目、14日目、21日目、28日目及び35日目にブタ(n=4)の左目から涙液が採取された。AAV2-hNGFβ(
図10A)及びAAV5-hNGFβ(
図10B)は、導入後7日目に、MSDアッセイの標準曲線範囲内で検出可能なレベルのhNGFβを有した。AAV9-hNGFβ(
図10C)は、形質導入後7日目に、MSDアッセイの上限の定量レベルを超えるhNGFβの涙液レベルを有した。
【0066】
【
図11】
図11は、AAVプラスミドのITR間のエレメントを描写する概略図を示す。プラスミドは、CMVプロモーターの制御下において、N末端で分泌シグナルと結合しているEGFP(「secEGFP」)をコードする。ウッドチャック肝炎ウイルス翻訳後調節エレメント(WPRE)は、導入遺伝子発現を増加させる働きをして、ウシ成長ホルモンポリアデニル化(pA)シグナルの近位にある。
【0067】
【
図12】
図12は、AAV-secEGFP(AAV2又はAAV9血清型)の注射を受け、103日目に採取され、パラフィンに固定されたブタ涙腺の画像を提供する。抗GFP抗体及びDAPI(核)対比染色を用いて、5μM切片のIHCが実施された。画像は、共焦点顕微鏡を用いて100倍の倍率で撮影された。陰性対照動物は、注射を受けなかった。
【0068】
【
図13】
図13は、AAV9-secEGFPの注射を受け、103日目に採取され、パラフィンに固定されたブタ涙腺の画像を提供する。抗GFP抗体及びDAPI(核)対比染色を用いて、5μM切片のIHCが実施された。涙腺腺房細胞に加えて、延性上皮細胞(ductile epithelial cells)がAAV9によって形質導入されるように思われる(白矢印)。
【0069】
【
図14】
図14は、AAVの注射を受け、103日目に採取され、パラフィンに固定されたブタ涙腺の画像を提供する。5μMのパラフィン切片の100倍でのH&E染色は、炎症性浸潤、マクロ又はミクロの異常を明らかにしない。
【発明を実施するための形態】
【0070】
発明の詳細な説明
本発明者らは、対象における涙の産生を増加させることが、これらに限定されるものではないが、ドライアイ疾患;細菌性、真菌性及びウイルス性角膜炎;神経麻痺性角膜症、眼瞼炎、シェーグレン症候群;アレルギー性、ウイルス性及び細菌性結膜炎;緑内障;角膜新生血管;翼状片;角膜ジストロフィー(円錐角膜、フックスジストロフィー、格子ジストロフィー及びマップドットフィンガープリントジストロフィー)並びに他の眼表面及び角膜障害などの眼表面障害又は前房障害の治療において使用される様々な薬剤による医学的治療を改善することを認識している。さらに、本発明者らは、タンパク質(複数可)及び/又は核酸(複数可)のような遺伝子産物(複数可)を眼の周りの組織において組み換え発現させることが可能であること及び周囲の組織から眼への遺伝子産物(複数可)の送達が、涙の産生を刺激することによって改善されることを認識している。
【0071】
眼の医学的治療は、小分子薬剤及び生物学的薬剤を含む新しい治療薬(本明細書において、涙の産生を刺激する薬剤から区別するために、「治療薬」又は「最初の治療薬」と呼ばれる)の開発によって継続的に改善されている。以前は、ドライアイ及び角膜炎などの障害は、眼を潤すための人工涙液(局所点眼薬)でのみ治療されることができたが、現在では、眼表面障害又は前房障害に関して、様々な医学的治療法が開発されている。
【0072】
本開示の実施形態において、本明細書中に記述されている最初の治療薬又はその他は、例えば、ドライアイ疾患;細菌性、真菌性及びウイルス性の角膜炎;神経麻痺性角膜症、眼瞼炎、シェーグレン症候群;アレルギー性、ウイルス性及び細菌性の結膜炎;緑内障;角膜新生血管;翼状片;角膜ジストロフィー(円錐角膜、フックスジストロフィー、格子ジストロフィー及びマップドットフィンガープリントジストロフィー)並びに他の眼表面及び角膜障害を治療するために使用される。
【0073】
本開示は、対象における涙の産生を増加させることによって、眼表面障害又は前房障害の医学的治療を改善するための併用療法及び方法を提供する。本明細書中で使用する場合、「対象」とは、マウス、ウサギ、非ヒト霊長類(NHP)及びヒトを含む任意の哺乳動物を意味する。いくつかの実施形態において、対象は、ヒト又はNHPである。さらに、「個体」又は「患者」とは、「対象」と互換的に使用されることができる。電気刺激、超音波刺激及び/又は薬物の投与によって涙の産生が増加すると、一又は複数の最初の治療薬の生物学的利用能及び/又は効能が改善される。本明細書中で使用する場合、「生物学的利用能」という用語は、眼表面への(例えば、涙液膜における)送達の量、分布及び/又は速度、すなわち、対象の病状に対する影響から独立した薬剤の薬物動態学的特性を指す。例えば、最初の治療薬の送達の量、分布及び/又は速度を改善することができる。本明細書中で使用する場合、「量」という用語は、絶対量(例えば、タンパク質又はrAAV粒子の絶対量)又は濃度(例えば、溶液中のタンパク質の濃度)を指し、所定の実施例において言及される量が絶対量、濃度又はその両方を指すかどうかは、本明細書中で提供される文脈に基づいて当業者には明らかであろう。本明細書中で使用する場合、「有効性」という用語は、対象における病状に対する観察された効果を指す。例えば、ドライアイ障害の治療における有効性は、ドライアイの一又は複数の症状の減少を指す。涙の産生の増加は、眼に隣接する組織で組み換え発現されたタンパク質(複数可)又は核酸などの遺伝子産物(複数可)の眼への送達を改善する上で特に効果的であることができる。
【0074】
特定の実施形態において、本開示は、涙の産生を増加させる処置を投与することによって、最初の治療薬の生物学的利用能及び/又は効能を増加させる方法を提供する。いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は、有効量のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は電気刺激である。
【0075】
本明細書中で使用する場合、「投与する」、「投与すること」、「投与」などとは、薬理学的に有用である方法(例えば、対象における疾患、障害又は症状を治療すること)で、本明細書中に記述されている物質を対象に提供することを指す。
【0076】
特定の実施形態において、本開示は、遺伝子産物の発現のためのウイルスベクター(例えば、ワクシニア、アデノウイルス又はアデノ随伴ウイルス)及び涙の産生を増加させ、それによって遺伝子産物の生物学的利用能及び/又は効能を増加させる処置を投与することによって、対象の眼の涙液膜に遺伝子産物を送達する方法を提供する。
【0077】
涙の産生を増加させる処置
電気刺激
涙の産生を増加させる1つの処置は電気刺激である。例えば、前篩骨神経の電気刺激は、涙液量を増加させ、涙液浸透圧を低下させ、脂質を添加し、正常な涙液タンパク質の濃度を増加させ得る。前篩骨神経は、鼻粘膜の下に埋め込む神経刺激装置を用いるか、あるいはhttps://media.allergan.comで入手可能なProfessional Information Guideにしたがって使用されるTrueTear(登録商標)Intranasal Tear Neurostimulatorなどの鼻腔内刺激装置によって刺激され得る。鼻腔内刺激装置は、鼻柱から最大約28mmの深さで鼻の内側に接触し、その後、電気刺激を提供するために動作することができる。例示的な刺激方法は、Brintonら、Investigative Ophthalmology&Visual Science(以下、IOVS)58(4):2341-38において提供されている。
【0078】
振動刺激
いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は振動エネルギーである。いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は、iTEAR(登録商標)100を用いて活性化される振動エネルギーである。いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は振動刺激である。いくつかの実施形態において、振動エネルギー又は振動刺激は、外鼻神経を活性化して涙の産生を増加させる。
【0079】
超音波刺激
涙の産生を増加させる別の処置は超音波刺激である。例えば、音波は、例えば、US2018/0104514において記述されているように、患者の眼のまぶたに、若しくはまぶたを通して眼の他の構造物に、あるいは顔面領域の構造物に、若しくは構造物を通して安全に適用され、涙の産生を刺激することができる。いくつかの実施形態において、超音波は、例えば、涙腺へのウイルス又は非ウイルスベクターの投与後に、眼における涙腺による涙の産生を刺激するために使用される。例えば、約100Hz~300Hzで直接皮膚振動に曝露された場合、振動は、片側だけが刺激されたとき、涙の形成を両方に生じさせる。
【0080】
いくつかの実施形態において、超音波刺激は、ドライアイ疾患を治療するために開発されたiTearシステム(Olympic Ophthalmics)のような神経調節装置を用いて投与される。
【0081】
涙刺激薬
涙の産生を増加させるもう1つの処置は、涙刺激薬又はその薬学的に許容される塩である。本明細書中で使用する場合、「涙の産生を増加させる処置」という用語は、人工涙液(局所点眼薬としても知られる)を除外し、対象の涙腺によって涙の産生を増加させる処置のみを指す。
【0082】
涙刺激薬には、コリン作動薬(ピロカルピン、セビメリン)及びニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニストが含まれる。
【0083】
ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト
本開示の方法における使用に適したさらに例示的な涙刺激薬には、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又はその薬学的に許容される塩が含まれる。nAChRは、ニコチン及びアセチルコリン(そのプロトン化形態のニコチンに類似する)の両方に関して、高い親和性及び選択性を有し、α及びβサブユニットの組み合わせを含む、五量体のリガンド依存性イオンチャネルのクラスである。nAChRサブタイプの例には、α3β4、α4β2、α3α5β4及びα4α6β2が含まれるが、これらに限定されるものではない。例えば、鼻涙反射の誘発に関与する重要なnAChR受容体サブタイプは、鼻粘膜の三叉神経末端に位置するα4β2サブタイプである。
【0084】
nAChRアゴニストの投与は、受容体の感受性を抑制することができる。受容体の脱感作は、アゴニストの濃度が高くても、アゴニストに対する応答の低下をもたらし、さらに、治療の有効性の低下をもたらす。例えば、アゴニストに対するnAChR受容体の短期的な脱感作は、アゴニストの投与後24時間にわたって起こる可能性がある。受容体の脱感作の可能性は、アゴニストに対する有効な応答を維持するために、ある期間にわたって投与頻度を制限する可能性がある。
【0085】
nAChRアゴニストは、アセチルコリン(ACh)に関して、その受容体における応答と比較して、所定の受容体を活性化して応答を生じさせるその能力によって決定されるように、フル又はパーシャルアゴニストとして特徴付けられることができる。一般に、nAChRアゴニストは、AChと同等か、あるいはそれ以上の反応を所定の受容体への結合時に引き起こす場合、フルアゴニストである。nAChRアゴニストは、AChから生成される応答と比較すると、低い応答を受容体への結合時に引き起こす場合、パーシャルアゴニストである。
【0086】
受容体の活性化が決定され得るnAChRアゴニスト応答は、例えば、適切な細胞ベースのアッセイを用いて生成され得る。特定のnAChR受容体サブタイプを発現し、nAChRアゴニストに結合してnAChRアゴニストによって活性化されると、電流応答を生じるように設計された細胞は、化合物のアゴニストプロファイルを特徴付けるために使用され、したがって、受容体の活性化の量が決定されることができる。一般的なプロトコルの例は、以下に記述されている。
【0087】
最初に、特定のヒトnAChRサブタイプを発現する細胞は、AChに曝露される。AChは、受容体に結合して活性化し、それによって電流を誘発する。AChの濃度は、受容体の最大応答を引き起こすように選択される(例えば、1280マイクロモルのACh)。この電流は、ACh応答として記録され、100%nAChRアゴニスト応答として機能し、他のnAChRアゴニストに対する応答と比較される。洗浄後、細胞は、様々な濃度(例えば、0.1、0.3、1、3、10、30、100及び300マイクロモル)のnAChRアゴニストに曝露される。nAChRアゴニストへの曝露によって誘発される電流は、各nAChR濃度に関して測定され、記録される。その後、このnAChRアゴニスト応答データは、最大ACh誘発電流に対してユニティーに正規化され、nAChRアゴニスト濃度の対数の関数としてプロットされる。nAChRアゴニスト応答は、その後、ACh応答パーセンテージとして計算される。
【0088】
いくつかの態様において、nAChRアゴニストの相対的アゴニスト活性を決定する方法は、前記ACh応答が1ミリモル以上のACh溶液から誘発される条件を含む。
【0089】
同じ受容体タイプで決定された最大ACh応答と等しいか、あるいはそれ以上の応答を誘発するnAChRアゴニストは、フルアゴニストである。いくつかの態様において、ACh応答の100%未満の応答を誘発するnAChRアゴニストは、実験的ばらつきを考慮して、フルアゴニストとみなされることができる。例えば、試験又は測定方法間のばらつき及び統計的誤差は、応答結果の違いを説明することができる。いくつかの態様において、ACh応答の80%~120%を引き起こすnAChRアゴニストは、フルアゴニストとみなされる。いくつかの態様において、ACh応答の99%以上を引き起こすnAChRアゴニストは、フルアゴニストとみなされる。いくつかの態様において、ACh応答の95%以上を誘発するnAChRアゴニストは、フルアゴニストとみなされる。いくつかの態様において、ACh応答の90%以上を誘発するnAChRアゴニストは、フルアゴニストとみなされる。いくつかの態様において、ACh応答の85%以上を引き起こすnAChRアゴニストは、フルアゴニストとみなされる。いくつかの態様において、ACh応答の80%以上を誘発するnAChRアゴニストは、フルアゴニストとみなされる。
【0090】
実験のばらつきを考慮すると、nAChRアゴニストがACh応答の100%未満しか誘発しない場合、アゴニストは、一般にパーシャルアゴニストとみなされる。いくつかの態様において、ACh応答の95%未満を引き起こすnAChRアゴニストは、パーシャルアゴニストとみなされる。いくつかの態様において、ACh応答の90%未満を誘発するnAChRアゴニストは、パーシャルアゴニストとみなされる。いくつかの態様において、ACh応答の85%未満を誘発するnAChRアゴニストは、パーシャルアゴニストとみなされる。いくつかの態様において、ACh応答の80%未満を誘発するnAChRアゴニストは、パーシャルアゴニストとみなされる。
【0091】
いくつかの態様において、ACh応答の5%~95%を誘発するnAChRアゴニストは、パーシャルアゴニストとみなされる。いくつかの態様において、ACh応答の5%~90%を誘発するnAChRアゴニストは、パーシャルアゴニストとみなされる。いくつかの態様において、ACh応答の5%~85%を誘発するnAChRアゴニストは、パーシャルアゴニストとみなされる。いくつかの態様において、ACh応答の5%~80%を誘発するnAChRアゴニストは、パーシャルアゴニストとみなされる。
【0092】
いくつかの態様において、ACh応答の10%~95%を誘発するnAChRアゴニストは、パーシャルアゴニストとみなされる。いくつかの態様において、ACh応答の10%~90%を誘発するnAChRアゴニストは、パーシャルアゴニストとみなされる。いくつかの態様において、ACh応答の10%~85%を誘発するnAChRアゴニストは、パーシャルアゴニストとみなされる。いくつかの態様において、ACh応答の10%~80%を誘発するnAChRアゴニストは、パーシャルアゴニストとみなされる。
【0093】
比較的高濃度のアゴニストで低レベルの電気活性を生成するnAChRアゴニストは、弱いパーシャルアゴニストと表現される可能性がある。いくつかの態様において、ACh応答の30%以下を誘発するnAChRアゴニストは、弱いパーシャルアゴニストとみなされる。いくつかの態様において、ACh応答の25%以下を引き起こすnAChRアゴニストは、弱いパーシャルアゴニストとみなされる。いくつかの態様において、ACh応答の20%以下を引き起こすnAChRアゴニストは、弱いパーシャルアゴニストとみなされる。いくつかの態様において、比較的高濃度のnAChRアゴニストは、少なくとも100マイクロモルである。いくつかの態様において、比較的高濃度のnAChRアゴニストは、少なくとも200マイクロモルである。いくつかの態様において、比較的高濃度のnAChRアゴニストは、少なくとも300マイクロモル以上である。例えば、最大Ach誘発電流の25%を誘発する300マイクロモル濃度のnAChRアゴニストは、弱いパーシャルアゴニストとみなされる。
【0094】
いくつかの実施形態において、nAChRアゴニストはフルアゴニストである。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニストはパーシャルアゴニストである。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニストは弱いパーシャルアゴニストである。
【0095】
いくつかの実施形態において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、α3β4、α3α5β4、α4β2及びα4α6β2から選択されるnAChRサブタイプの少なくとも1つのアゴニストである。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、α3β4、α3α5β4、α4β2及びα4α6β2から選択される少なくとも2つのnAChRサブタイプのアゴニストである。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、α3β4、α3α5β4、α4β2及びα4α6β2から選択される少なくとも3つのnAChRサブタイプのアゴニストである。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、nAChRサブタイプα3β4のアゴニストである。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、nAChRサブタイプα3α5β4のアゴニストである。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、nAChRサブタイプα4β2のアゴニストである。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、nAChRサブタイプα4α6β2のアゴニストである。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、nAChRサブタイプα7のアゴニストである。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、nAChRサブタイプα7のアゴニストではない。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、nAChRサブタイプα7のフルアゴニストではない。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニストは、前述のサブタイプのフルアゴニストである。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニストは、前述のサブタイプのパーシャルアゴニストである。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニストは、前述のサブタイプの弱いパーシャルアゴニストである。
【0096】
「アルファ7」又は「α7」nAChRという用語は、ホモマーα7サブタイプを指し、前記nAChRの五量体サブユニットが完全にα7サブユニットで構成される。したがって、nAChRα7に結合して活性化するnAChRアゴニストは、nAChRホモマーα7受容体に結合して活性化するアゴニストである。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、nAChRアゴニストはα7受容体アゴニストではない。
【0097】
いくつかの実施形態において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、α3β4、α3α5β4、α4β2及びα4α6β2から選択される少なくとも1つのnAChRサブタイプに選択的に結合する。本明細書中で使用する場合、「選択的に結合する」又は「に対して選択的である」とは、化合物が少なくとも1つの参照nAChRサブタイプに関して、nAChRサブタイプに対してより高い親和性及び/又はより低い半最大有効濃度(EC50)を有するということを意味する。選択性は、EC50値における少なくとも5倍の親和性差、EC50値における少なくとも10倍の親和性差、EC50値における少なくとも20倍の親和性差又はEC50値における少なくとも50倍の親和性差と関連することができる。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、nAChRサブタイプα3β4に選択的に結合する。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、nAChRサブタイプα3α5β4に選択的に結合する。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、nAChRサブタイプα4β2に選択的に結合する。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、nAChRサブタイプα4α6β2に選択的に結合する。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、nAChRサブタイプα7に選択的に結合する。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、nAChRサブタイプα7に選択的に結合しない。
【0098】
本開示において企図されるnAChRアゴニストには、バレニクリン、その薬学的に許容される塩及び化合物1又はその薬学的に許容される塩が含まれる。いくつかの実施形態において、nAChRアゴニストはバレニクリンではない。
【0099】
バレニクリンは、nAChRサブタイプα7のフルアゴニスト及びサブタイプα3β4、α4β2、α6β2、α3α5β4及びα4α6β2のパーシャルアゴニストとして特徴付けられる。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、nAChRアゴニストは、バレニクリン又はその薬学的に許容される塩である。バレニクリンの薬学的に許容される塩には、バレニクリンタルトレートが含まれる。バレニクリンに関する追加の関連情報は、例えば、米国特許第9,504,644号、米国特許第9,504,645号、米国特許第9,532,944号、米国特許第9,597,284号及び米国特許第10,456,386号から入手できる。
【0100】
化合物1は、本明細書中に詳述されているように、以下の:
【化1】
構造を指す。
【0101】
化合物1の別の構造表示は、ここに:
【化2】
示される。
【0102】
化合物1はまた、その化学名で呼ばれる可能性もある。例えば、化合物1はまた、(R)-5-((E)-2-ピロリジン-3-イルビニル)ピリミジン又はシンパニクリン、5-{(E)-2-[(3R)-ピロリジン-3-イル]ビニル}ピリミジン及び(R,E)-5-((2-ピロリジン-3-イル)ビニル)ピリミジンを含むそれらの変形とも呼ばれている。
【0103】
化合物1は、nAChRサブタイプα4β2、α3β4、α3α5β4及びα4α6β2のフルアゴニストである。化合物1は、nAChRサブタイプα4β2及びα3β4のフルアゴニストである。
【0104】
化合物1は、サブタイプα3β2のパーシャルアゴニストである。
【0105】
化合物1は、サブタイプα7の弱いパーシャルアゴニストである。一例において、300マイクロモル濃度の化合物1シトラートは、最大ACh誘発電流の25%しか誘発しなかった。
【0106】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、nAChRアゴニストは、化合物1又はその薬学的に許容される塩であってもよい。化合物1の薬学的に許容される塩としては、ガラクタレート(例えば、ヘミ-ガラクタル酸二水和物)及びシトラート(例えば、モノ-シトラート)が挙げられる。化合物1の特許関連情報は、米国特許第7,098,331号、米国特許第7,714,001号、米国特許第8,063,068号、米国特許第8,067,443号、米国特許第8,604,191号、米国特許第9,145,396号、米国特許第9,981,949号、米国特許第8,633,222号及びPCT公開WO2017/177024から入手できる。
【0107】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、nAChRアゴニストは、(R)-5-((E)-2-ピロリジン-3-イルビニル)ピリミジン又はその薬学的に許容される塩である。本明細書に記載の実施形態の一部において、nAChRアゴニストは、(R)-5-((E)-2-ピロリジン-3-イルビニル)ピリミジン ヘミ-ガラクタル酸二水和物である。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、nAChRアゴニストは、(R)-5-((E)-2-ピロリジン-3-イルビニル)ピリミジン モノ-シトラートである。
【0108】
ポジティブアロステリックモジュレーター
いくつかの実施形態において、nAChRアゴニストは、ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)又はその薬学的に許容される塩と一緒に投与される。PAMは、nAChR上のアロステリック部位に結合し、生理的リガンド、アセチルコリン(ACh)又は本明細書中に記述されている別のnAChRアゴニストの存在下において、受容体の活性を正に、アロステリックに調節する又は/及びアロステリック結合部位を介して受容体のアゴニスト又はアンタゴニストとして単独で作用する。いくつかの実施形態において、PAMは、nAChRのアゴニスト及び/又はアンタゴニストとして単独では作用しない。本明細書中に記述されている方法は、nAChRアゴニストをnAChR PAMと組み合わせることによって、nAChRアゴニストの有効性が驚くほど改善され得るということを提供する。かかる組み合わせは、nAChRアゴニストの単独での投与と比較すると、ドライアイ疾患、眼不快感の治療又は涙の産生を増加させるためのnAChRアゴニストの有効性を改善するために非常に効率的である。
【0109】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、PAMは、17-β-エストラジオール、Br-PBTC、イベルメクチン、ガランタミン、ゲニステイン、5-ヒドロキシインドール、4BP-TQS、A-86774、CCMI、レバミソール、モランテル、LY-2087101、メカミルアミン、メントール、NS206、NS1738、NS9283、PNU-120596、RO5126946、TBS-345、dFBR及びHEPES又は前述のいずれかの薬学的に許容される塩からなる群より選択される。それぞれのコード名によって表される化学名は、以下に詳述されており、本明細書中で互換的に使用されることができる。
【表1】
【0110】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、PAMは、(R)-7-ブロモ-N-(ピペリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド(Br-PBTC)又は3-[3-(3-ピリジニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]ベンゾニトリル(NS9283)又は前述のいずれかの薬学的に許容される塩である。
【0111】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、PAMは、(R)-7-ブロモ-N-(ピペリジン-3-イル)ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド(Br-PBTC)又はその薬学的に許容される塩である。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、PAMは、3-[3-(3-ピリジニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]ベンゾニトリル(NS9283)又はその薬学的に許容される塩である。
【0112】
最初の治療薬
様々な実施形態において、本開示の方法は、最初の治療薬を投与することを含む。本開示の方法は、眼における分布が拡散の速度又は他の生物物理学的パラメータによって制限される最初の治療薬での使用に適している。かかる最初の治療薬には、立体効果によって拡散が制限される可能性のある大きな分子(タンパク質など)が含まれる可能性がある。しかしながら、小分子薬剤の生物学的利用能及び/又は効能は、特に眼における特定の組織及び/又は分子との結合が小分子薬剤の分布を遅延させる場合に改善される可能性がある。他の態様において、本開示の方法は、特定の腺(例えば、涙腺)に送達され、移植されるか、あるいは(ベクターなどで)発現された最初の治療薬の排出を増加させる。したがって、眼への最初の治療薬の送達及び眼表面上のその分布は、両方とも増加することができる。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は生物学的薬剤である。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は小分子薬剤である。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、核酸(例えば、DNA又はRNA)である。RNAには、リボザイム、干渉RNA、小ヘアピンRNA、アゴミル及びアンタゴミルが含まれる。DNAには、プラスミドDNA及び他の形態のDNAが含まれる。核酸は、裸のポリヌクレオチドとして送達されるか、あるいは非ウイルスベクターに封入されることができる。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、非ウイルスベクター(リポソーム、ナノ粒子など)又はウイルスベクターなどの核酸ベクターである。
【0113】
いくつかの実施形態において、本開示の方法において使用される最初の治療薬は、シクロスポリン(RESTASIS、ZYCLORIN又はCYCLOKATとして販売されている);リフィテグラスト(XIIDRA);免疫調節剤(ボクロスポリン、タクロリムス、ピメクロリムス);ヤヌスキナーゼ(JAK)3阻害薬(タソシチニブ);分泌促進剤又は粘膜保護剤(ジクアホゾール、レバミピド、エカベト);二糖類保護薬(トレハロース);非ステロイド性抗炎症薬(ブロムフェナク);ステロイド(デキサメタゾン、EGP-437、コルチコステロイド、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、フルオロメトロン、ロテマックス及びロテプレドノール含有薬剤);ステロイド温存薬(steroid-sparing drugs)(ミコフェノレート、アザチオプリン、シクロホスファミド);脂肪酸(オメガ3脂肪酸、レゾルビンE1);広域スペクトル抗菌薬(フルオロキノロン)、抗ウイルス又は抗真菌薬;抗生物質(テトラサイクリン)及びその誘導体(ドキシサイクリン)、マクロライド系抗生物質(アジスロマイシン);自己血清;局所ビタミンA;及びマスト細胞安定化剤(例えば、ネドクロミル、ロドキサミド)、抗ヒスタミン薬(例えば、エメダスチン、ロラチジン、クロルフェナミン)又は複合マスト細胞安定化薬/抗ヒスタミン薬(例えば、オロパタジン)である。いくつかの実施形態において、本開示の方法において使用される最初の治療薬は、プロスタグランジンアナログ、β遮断薬、α作動薬、炭酸脱水酵素阻害薬又はrhoキナーゼ阻害薬である。
【0114】
本開示の方法において使用される他の例示的な治療薬としては:局所アルブミン;神経成長因子;インスリン又はインスリン様成長因子1(IGF-1);成長因子(肝細胞増殖因子、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)-β);フィブロネクチン;インターロイキン-1(IL-1)経路阻害剤、例えば、アナキンラ又はEBI-005を含むが、これに限定されない炎症性サイトカイン経路の阻害剤;IL-6RアンタゴニストなどのIL-6経路阻害剤;エタネルセプト(Enbrel)、インフリキシマブ(Remicade)、アダリムマブ(Humira)、セルトリズマブペゴル(Cimzia)、ゴリムマブ(Simponi)及びESBA105などの腫瘍壊死因子-α(TNF-α)阻害剤;IL-12又はIL-23、IFN-γ、IL-17及びそれらの受容体を含む他の炎症性サイトカイン経路の阻害剤;IL-4及びIL-13などの抗炎症性サイトカイン;組織メタロプロテアーゼ阻害剤(TIMP)などのマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤;ケモカイン受容体2(CCR2)に対するアンタゴニストなどの炎症性ケモカイン経路の阻害剤;免疫グロブリン及び抗シトルリン化タンパク質自己抗体(ACPA)に対する抗体;絹タンパク質及びフィブロイン誘導体(例えば、SilkTech BiopharmaceuticalsによるSDP-4);FK506結合タンパク質(FK506BP)又はそれらの誘導体(例えば、PEP-1-FK506BP);抗CD4モノクローナル抗体などのT細胞を標的とする生物製剤(Arthritis Rheum.2004 Sep;50(9):2903-10);リツキシマブ、ベリムマブ及びエプラツズマブなどのB細胞を標的とする生物製剤;プロテオグリカン4(prg4)又はその潤滑フラグメントなどのムチンファミリータンパク質;ヒアルロン酸合成酵素(HA合成酵素);ラクリチン及びその誘導体;タンパク質リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)及び細胞間接着分子-1(ICAM-1)のアンタゴニスト;血管内皮増殖因子(VEGFs)及び対応するVEGF受容体(VEGFRs)のアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト、ラニビズマブ、ベバシズマブ及びMP0112)などの血管新生阻害剤(antiangiogenic agents);エラスチン様ペプチド;SLURP1ポリペプチド又はその誘導体;ガレクチン及びそれらのモジュレーターが挙げられる。
【0115】
いくつかの実施形態において、最初の治療薬は組み換えヒト神経成長因子(rhNGF)である。いくつかの実施形態において、本開示は、ベクター(例えば、AAVベクター)を用いて涙腺でrhNGFを発現させ、涙の産生を増加させる薬剤(例えば、電気刺激;又はバレニクリン、(R)-5-((E)-2-ピロリジン-3-イルビニル)ピリミジン、5-{(E)-2-[(3R)-ピロリジン-3-イル]ビニル}ピリミジン若しくは(R,E)-5-((2-ピロリジン-3-イル)ビニル)ピリミジンなどのnAChRアゴニスト又はそれらの薬学的に許容される塩)を投与する方法を提供する。
【0116】
いくつかの実施形態において、最初の治療薬はチモシンβ4(Tβ4)である。Tβ4は、43つのアミノ酸ペプチド(配列SDKPDMAEIEKFDKSKLKKTETQEKNPLPSKETIEQEKQAGES;配列番号:26を有する)であり、血小板、マクロファージ及び多形核細胞の主要な構成タンパク質であり、G-アクチン結合分子及びアクチン重合の調節因子として作用する。第II相臨床試験において、28日間の0.1%Tβ4眼科用製剤の投与は、ドライアイの患者における眼不快感及び角膜染色に対して有意な好ましい効果を引き起こした。Sosne G,Ousler GW(2015)Clin Ophthalmol.20:877-84.
【0117】
本開示の方法において使用される他の例示的な最初の治療薬には、インテグリンα4β1(VLA-4)のモジュレーターが含まれる。
【0118】
最初の治療薬は、水溶液、ゲル又は懸濁液での局所投与、眼周囲組織への注射による局所投与又は腺(例えば、涙腺)への注射による局所投与を含むが、これらに限定されない、任意の適切な方法によって眼に投与されることができる。
【0119】
本開示は、遺伝子産物(例えば、タンパク質又は核酸)をコードするポリヌクレオチドを送達するための最初の治療薬として、ウイルス又は非ウイルスベクターを投与する方法を提供する。本明細書中で使用する場合、「最初の治療薬」という用語には、眼に対して治療効果を有することができる遺伝子産物(例えば、タンパク質)をコードするポリヌクレオチドを送達するウイルス又は非ウイルスベクターが含まれる。同様に、最初の治療薬は、例えば、有効量で、眼表面に、あるいは眼表面を横切って発現し、分布した場合、望ましい生物学的効果を有する遺伝子産物の対象の組織からの発現を引き起こすことによって、間接的にその効果を発揮することができる。本明細書中で使用する場合、「有効量」とは、本明細書中に記述されている眼症状の症状及び/又は兆候を軽減するために十分である、本明細書中に記述されているrAAV、治療薬又は組成物の量又は用量を指す。
【0120】
当技術分野において知られているタンパク質及び核酸ベースの最初の治療薬は、遺伝子ベクターに変換され、それによって眼表面及び/又は角膜に送達するためにその場で発現し得る。したがって、例えば、限定するものではないが、本開示のウイルス又は非ウイルスベクターは、アルブミン;神経成長因子;インスリン又はインスリン様成長因子1(IGF-1);成長因子(肝細胞増殖因子、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)-β);フィブロネクチン;インターロイキン-1(IL-1)を含むが、これに限定されない炎症性サイトカイン経路阻害剤;経路阻害剤、例えば、アナキンラ又はEBI-005;IL-6RアンタゴニストなどのIL-6経路阻害剤;エタネルセプト(Enbrel)、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ及びESBA105などの腫瘍壊死因子-α(TNF-α)阻害剤;IL-12、IL-23、IFN-γ及びIL-17並びにそれらの受容体を含む他の炎症性サイトカイン経路阻害剤;IL-4、IL-13などの抗炎症性サイトカイン;組織メタロプロテアーゼ阻害剤(TIMP)などのマトリックスメタロプロテアーゼの阻害剤;ケモカイン受容体2(CCR2)に対するアンタゴニストなどの炎症性ケモカイン経路の阻害剤;免疫グロブリン及び抗シトルリン化タンパク質自己抗体(ACPA)に対する抗体;絹タンパク質及びフィブロイン誘導体(例えば、SilkTech BiopharmaceuticalsによるSDP-4);FK506結合タンパク質(FK506BP)又はそれらの誘導体(例えば、PEP-1-FK506BP);抗CD4モノクローナル抗体(Arthritis Rheum.2004 Sep;50(9):2903-10)などのT細胞を標的とする生物製剤;リツキシマブ、ベリムマブ、エプラツズマブなどのB細胞を標的とする生物製剤;プロテオグリカン4(prg4)又はその潤滑性フラグメントなどのムチンファミリータンパク質;ヒアルロン酸合成酵素(HA合成酵素);ラクリチン及びその誘導体;タンパク質リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)及び細胞間接着分子-1(ICAM-1)のアンタゴニスト;血管内皮増殖因子(VEGFs)及び対応するVEGF受容体(VEGFRs)のアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト、ラニビズマブ、ベバシズマブ及びMP0112)などの血管新生阻害剤;エラスチン様ペプチド;SLURP1ポリペプチド又はその誘導体;ガレクチン及びそれらのモジュレーターの1つ以上をコードするポリヌクレオチドを含むことができる。
【0121】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターは、組み換えヒト神経成長因子(rhNGF)をコードするポリヌクレオチドを含む。様々な実施形態において、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターは、治療用タンパク質、抗体若しくは抗体フラグメント(例えば、Fab)又は受容体デコイ(例えば、可溶性レセプター又は「トラップ」分子)をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターは、神経成長因子(NGF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、RNアーゼ(例えば、ランピラナーゼ)、血管内皮増殖因子(VEGF)、シアル酸結合Ig様レクチン8(SIGLEC-8)、腫瘍壊死因子(TNF-α)、上皮成長因子(EGF)、インターロイキン-1(IL-1)又はインターロイキン-2(IL-2)及びインターロイキン-6(IL-6)をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、治療用タンパク質は酵素である。いくつかの実施形態において、治療用抗体は可変新抗原受容体(VNAR)抗体である。いくつかの実施形態において、治療用抗体は免疫グロブリン新抗原受容体(IgNAR)抗体である。いくつかの実施形態において、ウイルス又は非ウイルスベクターは、抗体又は抗体フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターは、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ又はESBA105をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターは、IgEの受容体デコイをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターは、チモシンβ4(Tβ4)をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0122】
ウイルスベクター
ポリヌクレオチドベクターの治療的使用は、本開示の方法によって改善されることができる。本明細書中に記述されている、成長因子及びモノクローナル抗体を含むタンパク質薬剤(生物製剤)は、ポリヌクレオチドベクター(例えば、非ウイルスベクター又はウイルスベクター)において、任意に、眼に送達されることができる。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、涙腺に送達される。ワクシニア、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、涙腺細胞及び/又は涙腺組織の初代培養物を形質導入する。これら及び他のウイルスベクターは、適切なプロモーター又は強化エレメントの選択、選択された組織を形質導入する血清型の選択又はウイルスの偽型化によって、眼球に隣接する組織又は眼球と流体接続している組織で発現するために操作されることができる。
【0123】
涙腺への注射によるタンパク質産物をコードする導入遺伝子のウイルスベクターベースの送達(すなわち、涙腺内送達又は涙腺内投与)は、眼疾患及び症状の治療に有利であり得る。涙腺において産生され、対象の涙液中に分泌されるタンパク質は、翻訳後修飾(PTM)(タンパク質の生合成に続くタンパク質の共有結合的で、かつ一般に酵素的な修飾)のために改善される可能性があり、これによって、タンパク質がmRNAをポリペプチド鎖に翻訳するリボソームにより合成され、次に、PTMを受けて成熟タンパク質産物を形成する可能性がある。PTMは、エシェリヒア コリ(escherichia coli)のような細菌で作られることの多い組み換えヒトタンパク質の局所投与では得られないような、細胞シグナル伝達における重要な特性を与える可能性がある。さらに、補因子、シャペロン、酵素又は他のタンパク質を含む可能性のある天然の涙液成分とともに分泌される場合、涙液を介した投与は、局所投与されたタンパク質のみの投与では達成され得ない生物学的活性を付与することができる。
【0124】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、ウイルスベクターを投与することを含む。本明細書中で使用する場合、「ウイルスベクター」という用語は、ウイルスカプシド又はウイルスエンベロープのいずれかにカプセル化されたポリヌクレオチドを有し、標的細胞を形質導入するのに十分な一又は複数のウイルスタンパク質を有するウイルス粒子を指す。ウイルスベクターという用語には、複製ベクター及び非複製ベクター並びに統合ベクター及び非統合ベクターが含まれる。あらゆる眼の周りの組織の細胞を形質導入することができるウイルスベクターが使用され得る。ウイルスベクターは、形質導入が眼表面への遺伝子産物の発現につながるという条件で、対象の細胞を局所的又は全身的に形質導入することができる。眼表面への送達は、細胞から眼表面への直接分泌、眼表面への遺伝子産物のトランスサイトーシス又は循環系を介した眼表面への局在化を含むことができる。特定の実施形態において、本開示の方法は、ウイルスベクターを涙腺に投与することを含む。涙腺は、その生理学的機能が眼球上に分泌される涙の産生であるという点において、眼と流体接続している。
【0125】
「涙腺」とは、涙液膜の水層を分泌する対になったアーモンド形の外分泌腺(各眼に1つずつ)の他方又は両方を指す。涙腺は、各眼窩の外側上部、前頭骨によって形成された眼窩の涙窩に位置している。涙腺へのウイルスベクターの投与は、眼表面への局所投与、涙腺への直接注射及び/又は涙腺への局所投与によって達成されることができる。涙腺は、外科的に、あるいはまぶたの操作によってアクセスされることができる。まぶたの操作は、局所的に(例えば、ウイルスベクターを含む医薬組成物での組織の洗浄によって)投与するための組織へのアクセスを提供する。涙腺への直接注入は、涙腺上の皮膚を貫通することによって(
図1A)、あるいは涙腺にアクセスするためにまぶたを操作することによって(
図1B)行われることができる。涙腺は、涙液中にタンパク質を発現及び分泌する腺房細胞によって部分的に構成されている(
図2)。いくつかの実施形態において、rAAVは、
図1Aに描かれているように、直接注射によって涙腺に投与される。いくつかの実施形態において、rAAVは、
図1Bに描かれているように、まぶたを操作することによって涙腺に投与される。
【0126】
様々な実施形態において、ウイルスベクターは、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス又はアデノ随伴ウイルス(AAV)である。標準的な分子生物学技術は、ベクターとして使用するのに適したこれらの各ウイルスの組み換え型を作製するために存在する。ウイルスベクターには、偽型ベクター(例えば、VSV G又は他のウイルス由来のEnvタンパク質を有するレンチウイルスベクター)が含まれる。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターはAAVベクターである。AAVベクターには、自己相補性ベクター及び非自己相補性ベクターが含まれる。一又は複数のAAVベクターは、同時又は逐次的に投与され得る。いくつかの態様において、大きな遺伝子を細胞に導入するために、スプリットベクターシステムが使用され得る。例えば、従来のAAVベクターの~4.5kbのパッケージング限界のために、約4kbから約10kbまでの遺伝子は、形質導入された細胞内での組み換えが完全な遺伝子を含むポリヌクレオチドを産生するように構成された2つのAAVベクターに分かれることができる。より大きな遺伝子には、3つ以上のAAVベクターを使用することができる。本明細書において「遺伝子」という用語は、遺伝子産物を直接に(遺伝子産物がRNAである場合)、あるいはメッセンジャーRNA中間体を介して(遺伝子産物がタンパク質である場合)コードするDNAポリヌクレオチドを指す。本明細書中で使用する場合、「遺伝子産物」という用語は、ベクターが細胞に形質導入されたときに遺伝子から発現する望ましい産物を指す。様々な実施形態において、遺伝子産物は、治療用タンパク質、抗体若しくは抗体フラグメント又は受容体デコイである。本明細書中で使用する場合、「治療的」という用語は、眼表面上に有効濃度で十分な期間存在するときに、眼に治療効果をもたらすことができる遺伝子産物を示す。
【0127】
本開示の方法において有用な遺伝子産物は、眼表面及び/又は眼の涙液膜への送達を可能にするために、形質導入された細胞によって分泌される。いくつかの実施形態において、遺伝子産物はRNAである。いくつかの実施形態において、遺伝子産物は治療用タンパク質である。いくつかの実施形態において、治療用タンパク質は、神経成長因子(NGF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、RNアーゼ(例えば、ランピラナーゼ)又はシアル酸結合Ig様レクチン8(SIGLEC-8)である。いくつかの実施形態において、遺伝子産物は、全長タンパク質遺伝子産物としてか、あるいはタンパク質ジー産物の一部として、抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体又は多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。いくつかの実施形態において、抗体は、単一ドメイン抗体(sdAb)(すなわち、ナノボディ)である。
【0128】
したがって、例えば、限定するものではないが、本開示のウイルスベクターは、アルブミン;神経成長因子;インスリン又はインスリン様成長因子1(IGF-1);成長因子(肝細胞増殖因子、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)-β);フィブロネクチン;インターロイキン-1(IL-1)を含むがこれに限定されない炎症性サイトカイン経路の阻害剤;経路阻害剤、例えば、アナキンラ又はEBI-005;IL-6RアンタゴニストのようなIL-6経路阻害剤;エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ及びESBA105などの腫瘍壊死因子-α(TNF-α)阻害剤;IL-12又はIL-23、IFN-γ及びIL-17並びにそれらの受容体を含む他の炎症性サイトカイン経路の阻害剤;IL-4及びIL-13などの抗炎症性サイトカイン;組織メタロプロテアーゼ阻害剤(TIMP)などのマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤;ケモカイン受容体2(CCR2)に対するアンタゴニストなどの炎症性ケモカイン経路の阻害剤;免疫グロブリン及び抗シトルリン化タンパク質自己抗体(ACPA)に対する抗体;絹タンパク質及びフィブロイン誘導体(例えば、SilkTech BiopharmaceuticalsによるSDP-4);FK506結合タンパク質(FK506BP)又はそれらの誘導体(例えば、PEP-1-FK506BP);抗CD4モノクローナル抗体(Arthritis Rheum.2004 Sep;50(9):2903-10)などのT細胞を標的とする生物製剤;リツキシマブ、ベリムマブ及びエプラツズマブなどのB細胞を標的とする生物製剤;プロテオグリカン4(prg4)又はその潤滑性フラグメントなどのムチンファミリータンパク質;ヒアルロン酸合成酵素(HA合成酵素);ラクリチン及びその誘導体;タンパク質リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)及び細胞間接着分子-1(ICAM-1)のアンタゴニスト;血管内皮増殖因子(VEGFs)及び対応するVEGF受容体(VEGFRs)のアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト、ラニビズマブ、ベバシズマブ及びMP0112)などの血管新生阻害剤;エラスチン様ペプチド;SLURP1ポリペプチド又はその誘導体;ガレクチン及びそれらのモジュレーターの1つ以上をコードするポリヌクレオチドを含むことができる。
【0129】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、組み換えヒト神経成長因子(rhNGF)をコードするポリヌクレオチドを含む。様々な実施形態において、ウイルスベクターは、治療用タンパク質、抗体若しくは抗体フラグメント(例えば、Fab)又は受容体デコイ(例えば、可溶性レセプター又は「トラップ」分子)をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、神経成長因子(NGF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、RNアーゼ(例えば、ランピラナーゼ)、血管内皮増殖因子(VEGF)、シアル酸結合Ig様レクチン8(SIGLEC-8)、腫瘍壊死因子(TNF-α)、上皮成長因子(EGF)、インターロイキン-1(IL-1)又はインターロイキン-2(IL-2)及びインターロイキン-6(IL-6)をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、抗体又は抗体フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ又はゴリムマブをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、IgEの受容体デコイをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、チモシンβ4(Tβ4)をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0130】
発現カセット
いくつかの実施形態において、AAVウイルスベクターは組み換えAAVウイルスベクター(rAAV)である。いくつかの実施形態において、rAAVは、発現カセット及びカプシドタンパク質を含む。
【0131】
本開示のrAAVビリオンは、発現カセットを含んでもよい。本明細書中で使用する場合、「発現カセット」という用語は、目的のタンパク質又は導入遺伝子、例えば、神経栄養因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含み、逆末端反復によって挟まれたポリヌクレオチドを指す。発現カセットは、他のポリヌクレオチド配列、例えば、プロモーター、調節エレメント(例えば、一又は複数のプロモーター又はエンハンサー)、翻訳開始配列、コード配列及び終結配列をさらに含んでいてもよい。調節エレメントは、導入遺伝子に作動可能に連結され、発現を促進することができる。
【0132】
いくつかの実施形態において、本開示の発現カセットは、導入遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、導入遺伝子産物は、眼の疾患又は障害を治療し得るタンパク質である。例えば、導入遺伝子は、眼の維持又は恒常性を担うタンパク質、例えば、神経栄養因子である可能性がある。いくつかの実施形態において、発現カセットは、少なくとも1つの眼及び/又は涙腺における導入遺伝子の発現の増加を提供する。いくつかの実施形態において、導入遺伝子の発現は、未処置対象又は処置対象の対側眼における自然に発現する遺伝子の発現と比較して、5%、10%、15%、20%又は25%増加することができる。いくつかの実施形態において、導入遺伝子の発現は、未治療対象又は治療対象の対側眼における自然に発現する遺伝子の発現と比較して、1倍、2倍、3倍、4倍又は5倍増加することができる。いくつかの実施形態において、神経栄養因子の発現は、未治療対象又は治療対象の対側眼における神経栄養因子の発現と比較して、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%増加する。いくつかの実施形態において、神経栄養因子の発現は、未治療対象における又は治療対象の対側眼における神経栄養因子の発現と比較して、1倍、2倍、3倍、4倍又は5倍、6倍、7倍、8倍又は9倍増加することができる。いくつかの実施形態において、導入遺伝子は、処置された眼において任意の検出可能なレベルで発現することができる一方で、導入遺伝子は、処置されていない対象又は処置された対象の対側眼において発現しないいか、あるいは任意の検出不可能なレベルで発現することができる。別の言い方をすれば、rAAVビリオンが投与された眼又は涙腺は、導入遺伝子の内因性(すなわち、ネイティブ)発現のみを有する眼又は涙腺において、あるいは導入遺伝子の内因性(すなわち、ネイティブ)発現の分泌が低いか、あるいは損なわれている眼においてよりも高い存在量で導入遺伝子を発現させることができる。
【0133】
いくつかの実施形態において、導入遺伝子は神経栄養因子である。いくつかの実施形態において、神経栄養因子は、神経成長因子(NGF)タンパク質又はその機能的変異体である。本明細書中で使用する場合、「NGF」、「NGFβ」又は「神経成長因子β」は、ホモ二量体化して神経成長刺激活性を行うタンパク質をコードする遺伝子である神経成長因子を指す。NGFはまた、ニューロンの調節及び分化にも関与する。本明細書中で使用する場合、「NGFタンパク質」という用語は、任意の種由来のNGFタンパク質を指す。「機能的変異体」という用語は、配列置換、挿入、欠失及び/又はN末端若しくはC末端切断を有する変異体を指し、機能的変異体は参照タンパク質、例えば、ネイティブNGFタンパク質の一又は複数の機能を保持する。NGFは、主に神経細胞の成長、維持、増殖及び生存に関与する26kDaのポリペプチドである。角膜において、NGFは、その受容体trkANGFR及びp75NTRと結合し、角膜及び結膜の両方の治癒に関連するシグナル伝達経路を引き出す(Miceraら、Exp Eye Res.83:747-57(2006))。いくつかの実施形態において、NGFタンパク質は、配列番号.1を含む。いくつかの実施形態において、NGFタンパク質は、配列番号:1と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、NGFタンパク質は、配列番号:1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有する配列を共有する。いくつかの実施形態において、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号:2と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号:2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を共有する配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、コドン最適化される。いくつかの実施形態において、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号:17を含む。いくつかの実施形態において、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号:17と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号: 17と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を共有する配列によってコードされる。
【0134】
コドン最適化NGF
ATGAGCATGCTGTTTTACACCCTGATCACCGCCTTCCTGATCGGCATCCAGGCCGAGCCCCACAGCGAGAGCAACGTGCCCGCTGGACACACAATCCCTCAGGCCCACTGGACAAAACTGCAGCATAGCCTGGATACAGCCCTGAGAAGGGCCAGAAGCGCCCCTGCCGCCGCCATCGCCGCTAGAGTGGCCGGCCAGACAAGAAATATCACCGTGGACCCCCGGCTGTTCAAGAAAAGAAGACTGCGGTCTCCTAGAGTGCTCTTTTCAACACAGCCTCCTCGGGAAGCCGCTGATACCCAGGACCTGGACTTCGAGGTGGGAGGCGCCGCTCCTTTCAATAGAACCCACAGATCCAAGAGAAGCTCTAGCCACCCTATCTTCCACCGGGGCGAGTTCAGCGTGTGCGACAGCGTTTCTGTGTGGGTGGGAGATAAGACCACCGCAACCGATATCAAGGGCAAGGAAGTGATGGTGCTGGGCGAAGTGAACATCAACAACAGCGTCTTTAAGCAGTACTTCTTCGAGACAAAGTGCCGGGACCCAAACCCCGTGGACAGCGGCTGCAGAGGCATTGACTCCAAGCACTGGAACTCCTACTGCACCACAACACACACCTTCGTGAAGGCCCTGACCATGGACGGCAAACAAGCTGCCTGGCGGTTCATCAGAATCGACACCGCCTGTGTCTGTGTGCTGAGCAGAAAGGCCGTGCGCCGGGCCTAG(配列番号:17)
【0135】
いくつかの実施形態において、NGFタンパク質はヒトNGFタンパク質である。
【0136】
いくつかの実施形態において、神経栄養因子はグリア由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質である。本明細書中で使用する場合、「GDNFタンパク質」という用語は、任意の種由来のGDNFタンパク質を指す。「機能的変異体」という用語は、配列置換、挿入、欠失及び/又はN末端若しくはC末端の切断を有する変異体を指し、機能的変異体は参照タンパク質、例えば、ネイティブGDNFタンパク質の一又は複数の機能を保持する。GDNFは、21kDaのタンパク質であり、GDNFがその受容体GFRα-1に作用することによって、多種多様な神経系の成長、維持及び分化をサポートする(Qiら、Br J Ophthalmol.92:1269-74(2008)).いくつかの実施形態において、GDNFタンパク質は、配列番号:3を含む。いくつかの実施形態において、GDNFタンパク質は、配列番号:3と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、GDNFタンパク質は、配列番号:3と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%同一な配列を共有する。いくつかの実施形態において、GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号:4と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、GDNFタンパク質は、配列番号:4と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%同一な配列を共有する配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号:18を含む。いくつかの実施形態において、GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号:18と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、コドン最適化されている。いくつかの実施形態において、GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号:18と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を共有する配列によってコードされる。
【0137】
コドン最適化GDNF
ATGAACTGTGGGACGTTGTGGCCGTGTGCCTGGTCCTCCTGCACACCGCCTCCGCCTTTCCACTGCCTGCTGGAAAGCGGCCTCCTGAGGCCCCTGCTGAAGATAGAAGCCTGGGCAGAAGAAGAGCCCCCTTCGCCCTGAGCTCTGATAGCAACATGCCTGAGGACTACCCCGACCAGTTCGACGACGTGATGGACTTTATCCAGGCCACCATCAAGAGACTGAAACGGAGCCCTGACAAGCAGATGGCCGTGCTGCCTAGACGGGAAAGAAATAGACAGGCCGCAGCTGCCAACCCCGAGAACAGCAGAGGCAAAGGCCGGAGAGGCCAGAGGGGAAAAAACAGAGGATGTGTGCTGACCGCCATCCATCTGAACGTGACAGATCTGGGCCTGGGCTATGAGACCAAGGAAGAGCTGATCTTCAGATACTGCAGCGGCAGCTGCGACGCCGCCGAGACAACCTACGACAAGATCCTGAAGAACCTGTCCCGGAATCGGCGGCTGGTGTCTGACAAGGTGGGCCAAGCTTGCTGCAGACCAATTGCCTTCGACGATGATCTGTCTTTCCTGGATGACAACCTGGTGTACCACATCCTGAGAAAGCACAGCGCCAAGCGCTGCGGCTGTATCTAG(配列番号:18)
【0138】
いくつかの実施形態において、GDNFはヒトGDNFである。
【表2】
【0139】
いくつかの実施形態において、本開示の発現カセットは、プロモーターを含む。本明細書中で使用する場合、「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼの結合を指示し、それによってRNA合成を促進するDNA配列、すなわち、転写を指示するのに十分な最小配列を指す。プロモーターは、導入遺伝子、例えば、神経栄養因子と作動可能に連結し得る。導入遺伝子の転写は、それが作動可能に連結されているプロモーターによって開始され、制御され得る。例えば、導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーターを含む発現カセットは、RNA合成がプロモーターで開始されれば、導入遺伝子を発現するであろう。プロモーター及び対応するタンパク質又はポリペプチドの発現は、広範囲の細胞、組織及び種において強く活性であることを意味するユビキタスであるか、あるいは胞型特異的、組織特異的又は種特異的であってもよい。プロモーターは、継続的に活性化することを意味する「構成的」であるか、あるいは生物学的若しくは生物学的因子の存在若しくは非存在によって活性化又は不活性化され得ることを意味する「誘導可能」であってもよい。また、本発明の核酸構築物又はベクターには、プロモーター配列と連続していてもいなくてもよいエンハンサー配列が含まれる。エンハンサー配列は、プロモーター依存性遺伝子発現に影響を及ぼし、ネイティブ遺伝子の5’領域又は3’領域に位置してもよい。
【0140】
プロモーター領域が、少なくとも1つの眼及び/又は涙腺におけるNGF又はGNDFタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の発現を促進する限り、本明細書中の任意の適切なプロモーター領域又はその中のプロモーター配列は、対象のポリヌクレオチドカセットにおいて使用され得る。いくつかの実施形態において、プロモーターは、哺乳動物の眼及び/又は涙腺における遺伝子の発現を促進する。いくつかの実施形態において、発現カセットは、細胞型特異的プロモーターを含む。プロモーターは、眼の細胞及び/又は涙腺の細胞における転写を特異的に促進し得る。
【0141】
いくつかの実施形態において、プロモーターはCAGプロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、配列番号:5を含む。いくつかの実施形態において、プロモーターは、配列番号:5と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、プロモーターは、CAGプロモーター配列(配列番号:5)と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を共有する。
【0142】
CAGプロモーター
ataacttacggtaaatggcccgcctggctgaccgcccaacgacccccgcccattgacgtcaataatgacgtatgttcccatagtaacgccaatagggactttccattgacgtcaatgggtggagtatttacggtaaactgcccacttggcagtacatcaagtgtatcatatgccaagtacgccccctattgacgtcaatgacggtaaatggcccgcctggcattatgcccagtacatgaccttatgggactttcctacttggcagtacatctactcgaggccacgttctgcttcactctccccatctcccccccctccccacccccaattttgtatttatttattttttaattattttgtgcagcgatgggggcggggggggggggggggcgcgcgccaggcggggcggggcggggcgaggggcggggcggggcgaggcggagaggtgcggcggcagccaatcagagcggcgcgctccgaaagtttccttttatggcgaggcggcggcggcggcggccctataaaaagcgaagcgcgcggcgggcgggagcgggatcagccaccgcggtggcggcctagagtcgacgaggaactgaaaaaccagaaagttaactg(配列番号:5)
【0143】
いくつかの実施形態において、プロモーターはCMVプロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、配列番号:16を含む。いくつかの実施形態において、プロモーターは、配列番号:16と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、プロモーターは、CMVプロモーター配列(配列番号:16)と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を共有する。
【0144】
CMVプロモーター
ctagttattaatagtaatcaattacggggtcattagttcatagcccatatatggagttccgcgttacataacttacggtaaatggcccgcctggctgaccgcccaacgacccccgcccattgacgtcaataatgacgtatgttcccatagtaacgccaatagggactttccattgacgtcaatgggtggactatttacggtaaactgcccacttggcagtacatcaagtgtatcatatgccaagtacgccccctattgacgtcaatgacggtaaatggcccgcctggcattatgcccagtacatgaccttatgggactttcctacttggcagtacatctacgtattagtcatcgctattaccatggtgatgcggttttggcagtacatcaatgggcgtggatagcggtttgactcacggggatttccaagtctccaccccattgacgtcaatgggagtttgttttggcaccaaaatcaacgggactttccaaaatgtcgtaacaactccgccccattgacgcaaatgggcggtaggcgtgtacggtgggaggtctatataagcagagctctctggctaactagagaacccactgcttactggcttatcgaaat(配列番号:16)
【0145】
いくつかの実施形態において、発現カセットは、ポリアデニル化配列に作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含む。適切なポリアデニル化配列には、ウシ成長ホルモンポリAシグナル(bGHpolyA)及びショートポリAシグナルが含まれる。いくつかの実施形態において、ポリアデニル化配列は、配列番号:21を含む。任意に、本開示のrAAVベクターは、ウッドチャック転写後制御エレメント(WPRE)を含む。いくつかの実施形態において、rAAVベクターは、配列番号:22を含むWPREを含む。
【0146】
>bGHpolyA配列
cgactgtgccttctagttgccagccatctgttgtttgcccctcccccgtgccttccttgaccctggaaggtgccactcccactgtcctttcctaataaaatgaggaaattgcatcgcattgtctgagtaggtgtcattctattctggggggtggggtggggcaggacagcaagggggaggattgggaagacaatagcaggcatgctggggatgcggtgggctctatgg(配列番号: 21)
【0147】
WPRE配列
tcctgttaatcaacctctggattacaaaatttgtgaaagattgactgatattcttaactatgttgctccttttacgctgtgtggatatgctgctttaatgcctctgtatcatgctattgcttcccgtacggctttcgttttctcctccttgtataaatcctggttgctgtctctttatgaggagttgtggcccgttgtccgtcaacgtggcgtggtgtgctctgtgtttgctgacgcaacccccactggctggggcattgccaccacctgtcaactcctttctgggactttcgctttccccctccctatcgccacggcagaactcatcgccgcctgccttgcccgctgctggacaggggctaggttgctgggcactgataattccgtggtgttgtcggggaagctgacgtc(配列番号: 22)
【0148】
いくつかの実施形態において、発現カセットは、配列番号:23を含む。いくつかの実施形態において、発現カセットは、配列番号:23と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、発現カセットは、配列番号:23と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一性を共有する配列を含む。
【0149】
GDNFをコードする配列を含む発現カセット
gcgcgctcgctcgctcactgaggccgcccgggcaaagcccgggcgtcgggcgacctttggtcgcccggcctcagtgagcgagcgagcgcgcagagagggagtggccaactccatcactaggggttccttgtagttaatgattaacggatctttacaaattcaagccaggtgatttcaacaaattttgctgacgatttaggcgcactatcccctaaactacaaattagaaaatagcgttccttgacactagtctagttattaatagtaatcaattacggggtcattagttcatagcccatatatggagttccgcgttacataacttacggtaaatggcccgcctggctgaccgcccaacgacccccgcccattgacgtcaataatgacgtatgttcccatagtaacgccaatagggactttccattgacgtcaatgggtggactatttacggtaaactgcccacttggcagtacatcaagtgtatcatatgccaagtacgccccctattgacgtcaatgacggtaaatggcccgcctggcattatgcccagtacatgaccttatgggactttcctacttggcagtacatctacgtattagtcatcgctattaccatggtgatgcggttttggcagtacatcaatgggcgtggatagcggtttgactcacggggatttccaagtctccaccccattgacgtcaatgggagtttgttttggcaccaaaatcaacgggactttccaaaatgtcgtaacaactccgccccattgacgcaaatgggcggtaggcgtgtacggtgggaggtctatataagcagagctctctggctaactagagaacccactgcttactggcttatcgaaataagctttctcaggggagatctcgtttagtgaaccgtcagatcctcactctcttccgcatcgctgtctgcgagggccagctgttgggctcgcggttgaggacaaactcttcgcggtctttccagtactcttggatcggaaacccgtcggcctccgaacggtactccgccaccgagggacctgagcgagtccgcatcgaccggatcggaaaacctctcgagaaaggcgtctaaccagtcacagtcgcaaggtaggctgagcaccgtggcgggcggcagcgggtggcggtcggggttgtttctggcggaggtgctgctgatgatgtaattaaagtaggcggtcttgagacggcggatggtcgaggtgaggtgtggcaggcttgagatccagctgttggggtgagtactccctctcaaaagcgggcattacttctgcgctaagattgtcagtttccaaaaacgaggaggatttgatattcacctggcccgatctggccatacacttgagtgacaatgacatccactttgcctttctctccacaggtgtccactcccaggtccaagtttaaacgccgccgccatgaagctgtgggacgttgtggccgtgtgcctggtcctcctgcacaccgcctccgcctttccactgcctgctggaaagcggcctcctgaggcccctgctgaagatagaagcctgggcagaagaagagcccccttcgccctgagctctgatagcaacatgcctgaggactaccccgaccagttcgacgacgtgatggactttatccaggccaccatcaagagactgaaacggagccctgacaagcagatggccgtgctgcctagacgggaaagaaatagacaggccgcagctgccaaccccgagaacagcagaggcaaaggccggagaggccagaggggaaaaaacagaggatgtgtgctgaccgccatccatctgaacgtgacagatctgggcctgggctatgagaccaaggaagagctgatcttcagatactgcagcggcagctgcgacgccgccgagacaacctacgacaagatcctgaagaacctgtcccggaatcggcggctggtgtctgacaaggtgggccaagcttgctgcagaccaattgccttcgacgatgatctgtctttcctggatgacaacctggtgtaccacatcctgagaaagcacagcgccaagcgctgcggctgtatctagtcctgttaatcaacctctggattacaaaatttgtgaaagattgactgatattcttaactatgttgctccttttacgctgtgtggatatgctgctttaatgcctctgtatcatgctattgcttcccgtacggctttcgttttctcctccttgtataaatcctggttgctgtctctttatgaggagttgtggcccgttgtccgtcaacgtggcgtggtgtgctctgtgtttgctgacgcaacccccactggctggggcattgccaccacctgtcaactcctttctgggactttcgctttccccctccctatcgccacggcagaactcatcgccgcctgccttgcccgctgctggacaggggctaggttgctgggcactgataattccgtggtgttgtcggggaagctgacgtccgactgtgccttctagttgccagccatctgttgtttgcccctcccccgtgccttccttgaccctggaaggtgccactcccactgtcctttcctaataaaatgaggaaattgcatcgcattgtctgagtaggtgtcattctattctggggggtggggtggggcaggacagcaagggggaggattgggaagacaatagcaggcatgctggggatgcggtgggctctatggagcgctggctagaattacctaccggcctccaccataccttcgatattcgcgcccactctcccattaatccgcacaagtggatgtgatgcgattgcccgctaagatagttaatcattaactacaaggaacccctagtgatggagttggccactccctctctgcgcgctcgctcgctcactgaggccgggcgaccaaaggtcgcccgacgcccgggctttgcccgggcggcctcagtgagcgagcgagcgcgc(配列番号:23)
【0150】
いくつかの実施形態において、発現カセットは、配列番号:24を含む。いくつかの実施形態において、発現カセットは、配列番号:24と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、発現カセットは、配列番号:24と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一性を共有する配列を含む。
【0151】
NGFをコードする配列を含む発現カセット
gcgcgctcgctcgctcactgaggccgcccgggcaaagcccgggcgtcgggcgacctttggtcgcccggcctcagtgagcgagcgagcgcgcagagagggagtggccaactccatcactaggggttccttgtagttaatgattaacggatctttacaaattcaagccaggtgatttcaacaaattttgctgacgatttaggcgcactatcccctaaactacaaattagaaaatagcgttccttgacactagtctagttattaatagtaatcaattacggggtcattagttcatagcccatatatggagttccgcgttacataacttacggtaaatggcccgcctggctgaccgcccaacgacccccgcccattgacgtcaataatgacgtatgttcccatagtaacgccaatagggactttccattgacgtcaatgggtggactatttacggtaaactgcccacttggcagtacatcaagtgtatcatatgccaagtacgccccctattgacgtcaatgacggtaaatggcccgcctggcattatgcccagtacatgaccttatgggactttcctacttggcagtacatctacgtattagtcatcgctattaccatggtgatgcggttttggcagtacatcaatgggcgtggatagcggtttgactcacggggatttccaagtctccaccccattgacgtcaatgggagtttgttttggcaccaaaatcaacgggactttccaaaatgtcgtaacaactccgccccattgacgcaaatgggcggtaggcgtgtacggtgggaggtctatataagcagagctctctggctaactagagaacccactgcttactggcttatcgaaataagctttctcaggggagatctcgtttagtgaaccgtcagatcctcactctcttccgcatcgctgtctgcgagggccagctgttgggctcgcggttgaggacaaactcttcgcggtctttccagtactcttggatcggaaacccgtcggcctccgaacggtactccgccaccgagggacctgagcgagtccgcatcgaccggatcggaaaacctctcgagaaaggcgtctaaccagtcacagtcgcaaggtaggctgagcaccgtggcgggcggcagcgggtggcggtcggggttgtttctggcggaggtgctgctgatgatgtaattaaagtaggcggtcttgagacggcggatggtcgaggtgaggtgtggcaggcttgagatccagctgttggggtgagtactccctctcaaaagcgggcattacttctgcgctaagattgtcagtttccaaaaacgaggaggatttgatattcacctggcccgatctggccatacacttgagtgacaatgacatccactttgcctttctctccacaggtgtccactcccaggtccaagtttaaacgccgccgccatgagcatgctgttttacaccctgatcaccgccttcctgatcggcatccaggccgagccccacagcgagagcaacgtgcccgctggacacacaatccctcaggcccactggacaaaactgcagcatagcctggatacagccctgagaagggccagaagcgcccctgccgccgccatcgccgctagagtggccggccagacaagaaatatcaccgtggacccccggctgttcaagaaaagaagactgcggtctcctagagtgctcttttcaacacagcctcctcgggaagccgctgatacccaggacctggacttcgaggtgggaggcgccgctcctttcaatagaacccacagatccaagagaagctctagccaccctatcttccaccggggcgagttcagcgtgtgcgacagcgtttctgtgtgggtgggagataagaccaccgcaaccgatatcaagggcaaggaagtgatggtgctgggcgaagtgaacatcaacaacagcgtctttaagcagtacttcttcgagacaaagtgccgggacccaaaccccgtggacagcggctgcagaggcattgactccaagcactggaactcctactgcaccacaacacacaccttcgtgaaggccctgaccatggacggcaaacaagctgcctggcggttcatcagaatcgacaccgcctgtgtctgtgtgctgagcagaaaggccgtgcgccgggcctagtcctgttaatcaacctctggattacaaaatttgtgaaagattgactgatattcttaactatgttgctccttttacgctgtgtggatatgctgctttaatgcctctgtatcatgctattgcttcccgtacggctttcgttttctcctccttgtataaatcctggttgctgtctctttatgaggagttgtggcccgttgtccgtcaacgtggcgtggtgtgctctgtgtttgctgacgcaacccccactggctggggcattgccaccacctgtcaactcctttctgggactttcgctttccccctccctatcgccacggcagaactcatcgccgcctgccttgcccgctgctggacaggggctaggttgctgggcactgataattccgtggtgttgtcggggaagctgacgtccgactgtgccttctagttgccagccatctgttgtttgcccctcccccgtgccttccttgaccctggaaggtgccactcccactgtcctttcctaataaaatgaggaaattgcatcgcattgtctgagtaggtgtcattctattctggggggtggggtggggcaggacagcaagggggaggattgggaagacaatagcaggcatgctggggatgcggtgggctctatggagcgctggctagaattacctaccggcctccaccataccttcgatattcgcgcccactctcccattaatccgcacaagtggatgtgatgcgattgcccgctaagatagttaatcattaactacaaggaacccctagtgatggagttggccactccctctctgcgcgctcgctcgctcactgaggccgggcgaccaaaggtcgcccgacgcccgggctttgcccgggcggcctcagtgagcgagcgagcgcgc(配列番号:24)
【0152】
いくつかの実施形態において、rAAVビリオンは、配列番号:25のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、rAAVビリオンは、
図9のプラスミドによって描写される発現カセットを含む。いくつかの実施形態において、発現カセットは、配列番号:25と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一の配列を含む。
【0153】
【0154】
組み換えAAVウイルス
本開示のいくつかの実施形態において、対象発現カセットは、例えば、眼障害を治療するために、対象の少なくとも1つの眼及び/又は涙腺に神経栄養因子を送達するために使用される。その結果、本開示のいくつかの実施形態において、対象の少なくとも1つの眼及び/又は涙腺における神経栄養因子の発現を提供する組成物は、遺伝子送達ベクターであり、前記遺伝子送達ベクターが本開示のポリヌクレオチドカセットを含む。
【0155】
いくつかの実施形態において、遺伝子導入ベクターはrAAVビリオンである。かかる実施形態において、対象発現カセットは、AAV逆末端反復配列を含む。いくつかの実施形態において、発現カセットは、機能的AAV逆転末端反復(ITR)配列によって、5’末端及び3’末端を挟まれている。「機能的AAV ITR配列」とは、ITR配列がAAVビリオンのレスキュー、複製及びパッケージングのために意図されたように機能することを意味する。これ故に、本開示の遺伝子送達ベクターで使用するためのAAV ITRは、野生型ヌクレオチド配列を有する必要はなく、ヌクレオチドの挿入、欠失又は置換によって変更されてもよく、あるいはAAV ITRは、いくつかのAAV血清型、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10のいずれかに由来してもよい。いくつかの実施形態において、AAV ITRは、AAV1に由来する。いくつかの実施形態において、AAV ITRは、AAV2に由来する。いくつかの実施形態において、AAV ITRは、AAV3由来である。いくつかの実施形態において、AAV ITRは、AAV4由来である。いくつかの実施形態において、AAV ITRは、AAV5由来である。いくつかの実施形態において、AAV ITRは、AAV6由来である。いくつかの実施形態において、AAV ITRは、AAV7由来である。いくつかの実施形態において、AAV ITRは、AAV9由来である。いくつかの実施形態において、AAV ITRは、AAV1由来である。いくつかの実施形態において、AAV ITRは、AAV10由来である。特定のrAAVビリオンは、野生型REP及び全部又は一部が欠失したCAP遺伝子を有するが、機能的なフランキングITR配列を保持している。いくつかの実施形態において、5’ITRは、配列番号:19を含む。いくつかの実施形態において、5’ITRは、配列番号:19と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、5’ITRは、配列番号:19と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を共有する。
【0156】
実例となる5’ITR配列
gcgcgctcgctcgctcactgaggccgcccgggcaaagcccgggcgtcgggcgacctttggtcgcccggcctcagtgagcgagcgagcgcgcagagagggagtggccaactccatcactaggggttccttgtagttaatgattaac(配列番号:19)
【0157】
いくつかの実施形態において、5’ITRは、配列番号:20を含む。いくつかの実施形態において、5’ITRは、配列番号:20と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、5’ITRは、配列番号:20と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を共有する。
【0158】
実例となる3’ITR配列
gttaatcattaactacaaggaacccctagtgatggagttggccactccctctctgcgcgctcgctcgctcactgaggccgggcgaccaaaggtcgcccgacgcccgggctttgcccgggcggcctcagtgagcgagcgagcgcgc(配列番号:20)
【0159】
このような実施形態において、rAAVビリオンは、当技術分野において知られているか、あるいは将来的に発見される任意のアデノ随伴ウイルス血清型に由来するAAVカプシドを含み、これには限定されるものではないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10などが含まれる。例えば、AAVカプシドは、野生型(又は「ネイティブ」)カプシドであってもよい。いくつかの実施形態において、rAAVビリオンは、AAV1由来のAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態において、rAAVビリオンは、AAV2由来のAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態において、rAAVビリオンは、AAV3由来のAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態において、rAAVビリオンは、AAV4由来のAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態において、rAAVビリオンは、AAV5由来のAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態において、rAAVビリオンは、AAV6由来のAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態において、rAAVビリオンは、AAV7由来のAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態において、rAAVビリオンは、AAV8由来のAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態において、rAAVビリオンは、AAV9由来のAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態において、rAAVビリオンは、AAV10由来のAAVカプシドを含む。特に関心のあるAAVカプシドには、AAV2、AAV5、AAV8及びAAV9が含まれる(表3)。
【0160】
しかしながら、ITRと同様に、カプシドは、野生型のヌクレオチド配列を有する必要はなく、むしろカプシドが眼球及び/又は涙腺の細胞を形質導入できる限り、VP1、VP2又はVP3配列のヌクレオチドの挿入、欠失又は置換によって改変されていてもよい。別の言い方をすれば、AAVカプシドは、変種AAVカプシドであってもよい。いくつかの実施形態において、rAAVビリオンは、1つのAAVのカプシド(cap)遺伝子並びに異なるAAVからのrep遺伝子及びITRを使用することによって作成された「偽型」AAV、例えば、AAV2からのrep及びAAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8又はAAV9からのcapを、AAV2に基づくベクターを含むプラスミドとともに使用することによって作成された偽型AAV2である。例えば、rAAVビリオンは、rAAV2/1、rAAV2/3、rAAV2/4、rAAV2/5、rAAV2/6、rAAV2/7、rAAV2/8、rAAV2/9などである可能性がある。いくつかの実施形態において、rAAVはrAAV2/1である。いくつかの実施形態において、rAAVはrAAV2/3である。いくつかの実施形態において、rAAVはrAAV2/4である。いくつかの実施形態において、rAAVはrAAV2/5である。いくつかの実施形態において、rAAVはrAAV2/6である。いくつかの実施形態において、rAAVはrAAV2/7である。いくつかの実施形態において、rAAVはrAAV2/8である。いくつかの実施形態において、rAAVはrAAV2/9である。
【0161】
いくつかの実施形態において、rAAVは、rAAVビリオンが独立してさらに複製してそのゲノムをパッケージ化することができないという点で、複製欠損である。例えば、眼及び/又は涙腺がrAAVビリオンで形質導入される場合、遺伝子は、形質導入された眼及び/又は涙腺で発現されるが、形質導入された眼及び/又は涙腺がAAV rep及びcap遺伝子並びにアクセサリー機能遺伝子を欠くという事実のために、rAAVは複製することができない。
【0162】
本明細書中に記述されているような発現カセットをカプセル化した本開示のrAAVビリオンは、ヘルパーフリー産生を用いて産生することができる。rAAVは、複製欠損ウイルスであり、通常、感染性rAAVビリオンのパッケージングにおいて、宿主細胞内にアデノウイルスなどの生体ヘルパーウイルスの構成要素が必要である。rAAVヘルパーフリー生産システムは、生体ヘルパーウイルスを使用することなく、感染性のrAAVビリオンを生産することができる。ヘルパーフリーシステムにおいて、宿主パッケージング細胞株は、3つのプラスミドとともに共導入される。最初のプラスミドは、rAAVビリオンのパッケージングに必要なアデノウイルス遺伝子産物(すなわち、E2A、E4及びVA RNA遺伝子)を含む。第2のプラスミドは、必要なAAV遺伝子(すなわち、REP及びCAP遺伝子)を含む。第3のプラスミドは、目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列及びITRによって挟まれたプロモーターを含む。宿主パッケージング細胞株は、例えば、AAV-293宿主細胞であり得る。好適な宿主細胞は、プラスミドによって供給されない、感染性rAAVビリオンのパッケージングに必要な追加成分を含む。いくつかの実施形態において、CAP遺伝子は、例えば、本明細書中に記述されているようなAAVカプシドタンパク質をコードし得る。いくつかの実施形態において、プロモーターは、本明細書中に記述されているようなプロモーター配列である。いくつかの実施形態において、プロモーター配列はCAG配列である。いくつかの実施形態において、目的のタンパク質は神経栄養因子である。いくつかの実施形態において、神経栄養因子はNGFである。いくつかの実施形態において、神経栄養因子はGDNFである。
【0163】
眼及び/又は涙腺に感染することが示されたAAV血清型には、AAV2、AAV5、AAV5w8及びAAV9が含まれる(Rochaら、supra)。いくつかの実施形態において、眼及び/又は涙腺に感染するために使用されるAAV血清型はAAV2である。いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、配列番号:6を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、配列番号:6と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、AAV2 VP1タンパク質(配列番号:6)と少なくとも95%、98%又は100%の同一性を共有する。いくつかの実施形態において、AAV2 VP1タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号:7を含む。いくつかの実施形態において、AAV2 VP1タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号:7と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、AAV2 VP1タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号:7と少なくとも95%、98%又は100%の同一性を共有する。いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、配列番号8を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、配列番号:8と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、AAV2 VP3タンパク質(配列番号:8)と少なくとも95%、98%又は100%の同一性を共有する。いくつかの実施形態において、AAV2 VP3タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号:9を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号:9と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、AAV2 VP3タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号:9と少なくとも95%、98%又は100%の同一性を共有する。いくつかの実施形態において、眼及び/又は涙腺に感染させるために使用されるAAV血清型は、AAV5である。いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、配列番号10を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、配列番号:10と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、AAV5カプシドタンパク質(配列番号:10)と少なくとも95%、98%又は100%の同一性を共有する。いくつかの実施形態において、AAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号:11を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号:11と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、AAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号:11と少なくとも95%、98%又は100%の同一性を共有する。いくつかの実施形態において、眼及び/又は涙腺に感染させるために使用されるAAV血清型は、AAV8である。いくつかの実施形態において、カプシドタンパク質は、配列番号:12を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、配列番号:12と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、AAV8カプシドタンパク質(配列番号:12)と少なくとも95%、98%又は100%の同一性を共有する。いくつかの実施形態において、AAV8カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号:13を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号:13と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、AAV8カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号:13と少なくとも95%、98%又は100%の同一性を共有する。いくつかの実施形態において、眼球及び/又は涙腺に感染させるために使用されるAAV血清型は、AAV9である。いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、配列番号:14を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、配列番号:14と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、AAV9カプシドタンパク質(配列番号:14)と少なくとも95%、98%又は100%の同一性を共有する。いくつかの実施形態において、AAV9カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号:15を含む。いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号:15と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態において、AAV9カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号:15と少なくとも95%、98%又は100%の同一性を共有する。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【0164】
いくつかの実施形態において、AAVベクターは、標的組織(例えば、涙腺)における高い形質導入効率のために選択された血清型を有する。既知のAAV血清型には、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、rh10、rh20、rh74などが含まれる。さらに、点変異、挿入及び/又は欠失を有する様々な組み換えカプシドタンパク質が当技術分野において知られている。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、rh10、rh20又はrh74のAAVベクターである。同様に、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、rh10、rh20又はrh74のカプシドタンパク質と相同なカプシドタンパク質(VP1、VP2及び/又はVP3)を含む。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、血清型AAV2、AAV5、AAV8又はAAV9のAAVベクターである。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、血清型AAV2のAAVベクターである。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、血清型AAV5のAAVベクターである。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、血清型AAV8のAAVベクターである。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、血清型AAV9のAAVベクターである。
【0165】
いくつかの実施形態において、AAVベクターは、ハイブリッドAAVベクター(すなわち、AAVの1つの血清型のものと相同な逆末端反復(ITR)配列を含むポリヌクレオチドゲノムを有するが、AAVの別の血清型のものと相同なカプシドタンパク質を有するAAVベクター)である。ハイブリッドAAVは、カプシドに続くITRによって設計される(例えば、AAV2/9は、AAV2のITR及びAAV9のカプシドを有するAAVを指す)。いくつかの実施形態において、AAVベクターはAAV2/5ベクターである。いくつかの実施形態において、AAVベクターはAAV2/8ベクターである。いくつかの実施形態において、AAVベクターはAAV2/9ベクターである。
【0166】
本開示のAAVベクターは、発現カセットを挟む2つのITRを含む。発現カセットは、プロモーター又はプロモーターに作動可能に連結された一又は複数の遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、プロモーターは、p5、p19又はp40プロモーターなどのAAVプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーターなどのアデノウイルスプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、乳頭腫ウイルスプロモーター、ポリオーマウイルスプロモーター、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)プロモーター、肉腫ウイルスプロモーター、SV40プロモーター、他のウイルスプロモーター、アクチンプロモーター、アミラーゼプロモーター、免疫グロブリンプロモーター、カリクレインプロモーター、メタロチオネインプロモーター、熱ショックプロモーター、内因性プロモーター、ラパマイシン又は他の小分子によって制御されるプロモーター、他の細胞プロモーター及び当業者に既知の他のプロモーターから選択される。いくつかの実施形態において、プロモーターはAAVプロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターはCMVプロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターはCAGプロモーターである。
【0167】
AAVベクターの生産における例示的な方法は、Kwon I,Schaffer DV.Pharm Res.25(3):489-99(2008);Wuら、Mol.Ther.4(3):316-27(2006);Burgerら、Mol.Ther.10(2):302-17(2004);Grimm D,Kay MA.Curr Gene Ther.3(4):281-304(2003);Deyle DR,Russell DW.Curr Opin Mol Ther.11(4):442-447(2009);McCartyら、Gene Ther.8(16):1248-54(2001);及びDuanら、Mol Ther.4(4):383-91(2001)において提示されている。
【0168】
本開示のウイルスベクターは、一般に、医薬組成物として対象に送達される。医薬組成物は、薬学的に許容される溶媒(例えば、水)及び一又は複数の賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、ほぼ中性pH(pH5、6、7、8又は9)の緩衝剤を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、リン酸緩衝生理食塩水(例えば、pH約7のPBS)を含む。医薬組成物は、薬学的に許容される塩を含んでもよい。塩の濃度は、医薬組成物が標的組織に対して等張であるか、あるいはほぼ等張であるように選択されることができる。
【0169】
様々な実施形態において、本開示の医薬組成物は、約1×108ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)、約5×108GC/mL、約1×109GC/mL、約5×109GC/mL、約1×1010GC/mL、約5×1010GC/mL、約1×1011GC/mL、約5×1011GC/mL、約1×1012GC/mL、約5×1012GC/mL、約5×1013GC/mL又は約1×1014GC/mLのウイルスベクター(例えば、AAVベクター)を含む。様々な実施形態において、本開示の医薬組成物は、約1×108ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)、約5×108GC/mL~約1×109GC/mL、約1×109GC/mL~約5×109GC/mL、約5×109GC/mL~約1×1010GC/mL、約1×1010GC/mL~約5×1010GC/mL、約5×1010GC/mL~約1×1011GC/mL、約1×1011GC/mL~約5×1011GC/mL、約5×1011GC/mL~約1×1012GC/mL、約1×1012GC/mL~約5×1012GC/mL、約5×1012GC/mL~約5×1013GC/mL又は約5×1013GC/mL~約1×1014GC/mLのウイルスベクター(例えば、AAVベクター)を含む。様々なさらなる実施形態において、本開示の医薬組成物は、約5×108GC/mL~約5×109GC/mL、約5×109GC/mL~約5×1010GC/mL、約5×1010GC/mL~約5×1011GC/mL、約5×1011GC/mL~約5×1012GC/mL又は約5×1012GC/mL~約1×1014GC/mLのウイルスベクター(例えば、AAVベクター)を含む。さらなる実施形態において、本開示の医薬組成物は、約5×108GC/mL~約5×1010GC/mL、約5×1010GC/mL~約5×1012GC/mL又は約5×1012GC/mL~約1×1014GC/mLのウイルスベクター(例えば、AAVベクター)を含む。
【0170】
いくつかの本開示の医薬組成物は、約1×1012GC/mL~約6.2×1012GC/mLのウイルスベクター(例えば、AAVベクター)を含む。いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、約1×1012GC/mL~約6.2×1012GC/mLのウイルスベクター(例えば、AAVベクター)を含む。
【0171】
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、約10μL、約20μL、約30μL、約40μL、約50μL、約60μL、約70μL、約80μL、約90μL、約100μL、110μL、約120μL、約130μL、約140μL、約150μL、約160μL、約170μL、約180μL、約190μL又は約200μLの総容量で投与される。いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、約10μL~約20μL、約20μL~約30μL、約30μL~約40μL、約40μL~約50μL、約50μL~約60μL、約60μL~約70μL、約70μL~約80μL、約80μL~約90μL、約90μL~約100μL、約100μL~約110μL、110μL~約120μL、約120μL~約130μL、約130μL~約140μL、約140μL~約150μL、約150μL~約160μL、約160μL~約170μL、約170μL~約180μL、約180μL~約190μL又は約190μL~約200μLの総容量で投与される。いくつかの実施形態において、約100μLの組成物が投与される。いくつかの実施形態において、約50μLの組成物が投与される。いくつかの実施形態において、約50μL~約100μLの組成物が投与される。
【0172】
ウイルスのポリヌクレオチドゲノムの既知濃度を有する参照試料を用いて作製した標準曲線を用いて、定量的ポリメラーゼ変化反応(qPCR)によって、1ミリリットル当たりのゲノムコピーは決定され得る。AAVに関して、使用される参照試料は、AAVベクターの生成に使用された転移プラスミドであることが多いが、他の参照試料が使用されてもよい。
【0173】
代替方法として、あるいは加えて、ウイルスベクターの濃度は、細胞株上でベクターを力価測定すること(titering)によって決定され得る。ウイルス力価は、通常、単位体積当たりのウイルス粒子(vp)(例えば、vp/mL)として表される。様々な実施形態において、本開示の医薬組成物は、約1×108ウイルス粒子/ミリリットル(vp/mL)、約5×108vp/mL、約1×109vp/mL、約5×109vp/mL、約1×1010vp/mL、約5×1010vp/mL、約1×1011vp/mL、約5×1011vp/mL、約1×1012vp/mL、約5×1012vp/mL、約5×1013vp/mL又は約1×1014vp/mLのウイルスベクター(例えば、AAVベクター)を含む。様々なさらなる実施形態において、本開示の医薬組成物は、約1×108ウイルス粒子/ミリリットル(vp/mL)~約5×108vp/mL、約5×108vp/mL~約1×109vp/mL、約1×109vp/mL~約5×109vp/mL、約5×109vp/mL~約1×1010vp/mL、約1×1010vp/mL~約5×1010vp/mL、約5×1010vp/mL~約1×1011vp/mL、約1×1011vp/mL~約5×1011vp/mL、約5×1011vp/mL~約1×1012vp/mL、約1×1012vp/mL~約5×1012vp/mL、約5×1012vp/mL~約5×1013vp/mL又は約5×1013vp/mL~約1×1014vp/mLのウイルスベクター(例えば、AAVベクター)を含む。
【0174】
使用方法
いくつかの実施形態において、本開示は、対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、対象において眼表面障害、角膜障害又は前房障害を治療する方法を提供する、a.有効量の最初の治療薬を眼又は眼と流体連絡をとっている組織に投与すること;及びb.涙の産生を増加させる処置を投与すること。
【0175】
いくつかの実施形態において、眼と流体連絡をとっている組織は、涙腺、涙小管、角膜、角膜上皮、角膜上皮幹細胞、結膜、涙点又は涙小管である。いくつかの実施形態において、眼と流体連絡をとっている組織は、一又は複数の涙腺、涙小管、角膜、角膜上皮、角膜上皮幹細胞、結膜、涙点又は涙小管である。いくつかの実施形態において、眼と流体連絡をとっている組織は涙腺である。いくつかの実施形態において、眼と流体連絡をとっている組織は角膜である。いくつかの実施形態において、眼と流体連絡をとっている組織は、角膜上皮である。いくつかの実施形態において、眼と流体連絡をとっている組織は角膜上皮幹細胞である。いくつかの実施形態において、眼と流体連絡をとっている組織は結膜である。いくつかの実施形態において、眼球と流体連絡をとっている組織は涙点である。いくつかの実施形態において、眼球と流体連絡をとっている組織は涙小管である。
【0176】
いくつかの実施形態において、眼球内の細胞は、最初の治療薬によって形質導入される。いくつかの実施形態において、針状細胞、管状細胞及び筋上皮細胞は、最初の治療薬によって形質導入される。いくつかの実施形態において、アシナール細胞は、最初の治療薬によって形質導入される。いくつかの実施形態において、管状細胞は、最初の治療薬によって形質導入される。いくつかの実施形態において、筋上皮細胞は、最初の治療薬によって形質導入される。
【0177】
本開示の方法及び組成物は、眼症状を有する対象において、眼表面を支持、維持及び/又は修復することができる。眼状態は、例えば、神経麻痺性角膜症、眼表面の化学熱傷、角膜創傷、角膜潰瘍、遷延性角膜上皮欠損、ドライアイ疾患、三叉神経及び/又は眼の単純ヘルペスウイルス感染、三叉神経及び/又は眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染及び角膜神経の糖尿病性合併症であり得る。いくつかの実施形態において、眼症状は神経麻痺性角膜症である。いくつかの実施形態において、眼症状は、眼表面の化学熱傷である。いくつかの実施形態において、眼症状は角膜創傷である。いくつかの実施形態において、眼症状は角膜潰瘍である。いくつかの実施形態において、眼症状は、遷延性角膜上皮欠損である。いくつかの実施形態において、眼症状はドライアイ疾患である。いくつかの実施形態において、眼症状は、三叉神経及び/又は眼の単純ヘルペスウイルス感染である。いくつかの実施形態において、眼症状は、三叉神経及び/又は眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染である。いくつかの実施形態において、眼症状は、角膜神経の糖尿病性合併症である。
【0178】
神経麻痺性角膜症又は神経麻痺性角膜症は、角膜の上皮角膜症、潰瘍形成及び穿孔として現れる。神経麻痺性角膜症は、角膜上皮の変性疾患であり、角膜神経支配の障害によって生じ、瞬きの障害又は涙の産生低下をもたらす。症状としては、角膜感受性の低下又は完全な喪失が挙げられる。神経麻痺性角膜症は、一又は複数の本明細書中に記述されているような眼科検査、下口蓋結膜のローズベンガル染色、涙液粘度、涙液分解時間、フルオレセイン染色、非治癒性角膜欠損の観察、デスメ膜内の腫脹及び浮腫性間質、角膜潰瘍、角膜穿孔及び角膜間質の融解の組み合わせの観察を用いて診断及び病期分類される。(Sacchettiら、Clin Ophthalmol.;8:571-579(2014))。
【0179】
いくつかの実施形態において、本開示は、眼表面の化学熱傷を有する対象において眼表面を維持及び/又は修復する方法を提供する。眼表面の化学熱傷は、典型的には、突然発症する激しい痛み、眼球上転及びまぶた痙攣として現れる。眼表面の化学熱傷は、眼科の精密検査を介して診断され得る。眼周囲の急性損傷徴候には、眼窩周囲の浮腫及び紅斑、深皮化した皮膚並びに睫毛及び眉毛の喪失が含まれる。他の徴候としては、角膜及び結膜上皮の欠損、ケモシス、結膜炎症、辺縁虚血、角膜混濁、無菌性潰瘍、浮腫、時には穿孔が挙げられる。高眼圧もまた症状であり、海綿体網膜の損傷及び/又は炎症に起因する可能性がある(Eslaniら、J Ophthalmol.;2014:196827(2014))。
【0180】
いくつかの実施形態において、本開示は、角膜創傷を有する対象において眼表面を維持及び/又は修復する方法を提供する。角膜創傷は、典型的には、眼痛、流涙、光に対する感受性及び異物感の症状を呈する。診断は、眼科検査、視力低下評価、角膜浸潤又は潰瘍の同定、低ピヨン又は低ヘマの同定、眼球貫通損傷の証拠、眼球構造内の異物の有無、不規則な瞳孔の同定並びに眼内容物の拡張の1つ以上を用いて実施される。さらに、フルオレセイン染色は、あらゆる角膜擦過傷の同定を助けるために使用されることができる(Wippermanら、Am Fam Physician;87(2):114-120(2013))。
【0181】
いくつかの実施形態において、本開示は、角膜潰瘍を有する対象において眼表面を維持及び/又は修復する方法を提供する。角膜潰瘍は、眼表面の損傷後、正常な2週間の期間内に角膜上皮の治癒不全がある場合に発生する。診断は、本明細書中に記述されているような眼科検査を用いて実施される。
【0182】
遷延性角膜上皮欠損は、眼表面の損傷後、正常な2週間以内に角膜上皮が治癒しない場合に起こる。診断は、本明細書中に記述されているような眼科検査を使用して実施される。
【0183】
いくつかの実施形態において、本開示は、ドライアイ疾患を有する対象において眼表面を維持及び/又は修復する方法を提供する。ドライアイ疾患は、目のかすみ、目の刺激、ギトギト感又は異物感、灼熱感、流涙、羞明、刺痛又は断続的な鋭い痛みを呈する。ドライアイ疾患は、本明細書中に記述されているような眼科検査、涙産生を評価するためのシルマーテスト又は涙機能指数分析、角膜上皮欠損を同定するためのフルオレセイン染色、ローズベンガル染色、リサミングリーン染色、涙分解時間、機能的視力検査及び涙メニスカス評価の1つ以上を使用して診断されることができる(Zeevら、Clin Ophthalmol.;8:581-590(2014))。
【0184】
いくつかの実施形態において、本開示は、単純ヘルペスウイルス感染を有する対象において眼表面を維持及び/又は修復する方法を提供する。三叉神経及び/又は眼の単純ヘルペスウイルス感染は、単純ヘルペス角膜炎としても知られ、充血、分泌物、涙目、刺激、かゆみ、痛み、羞明及び/又は点状病変を形成する粗い粒状の斑点を含む症状を呈する。診断は、本明細書中に記述されている眼科検査、細隙灯検査、リサミングリーン染色、ローズベンガル染色、PCR、免疫蛍光抗体アッセイ及びELISAアッセイの1つ以上を用いて実施される(Azherら、Clin Ophthalmol.11:185-191(2017)).
【0185】
いくつかの実施形態において、本開示は、水痘帯状疱疹ウイルス感染を有する対象において眼表面を維持及び/又は修復する方法を提供する。三叉神経の水痘帯状疱疹ウイルス感染は、眼帯ヘルペスでもあり、様々な程度の視力低下、痛み及び光感受性を呈する角膜合併症を有する。診断には、細隙灯検査、ローズベンガル染色及びフルオレセイン染色を用いた点状上皮角膜炎、樹枝状斑の隆起、粒状浸潤又は他の不整の確認が含まれる(Shaikhら、Am Fam Physician.66(9):1723-1730(2002))。
【0186】
いくつかの実施形態において、本開示は、角膜神経の糖尿病性合併症を有する対象において、眼表面を維持及び/又は修復する方法を提供する。角膜神経の糖尿病性合併症は、角膜厚の増加、上皮欠損、上皮脆弱性及び再発性びらん(recurrent erosions)、潰瘍、浮腫、表在性点状角膜炎、創傷修復の遅延及び不完全性、内皮変化、涙分泌低下、ドライアイ症候群並びに角膜感度の低下を含む角膜変化を呈する(Ljubimovら、Vision Res.;139:138-152(2017))。
【0187】
対象は、例えば、本明細書中に記述されている任意の症状又は眼障害を有し得る。
【0188】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記述されている方法は、最初の治療薬及び涙の産生を増加させる処置の投与前と比較して、一又は複数の眼疾患の症状が軽減されることをもたらす。本明細書中で使用する場合、「症状(symptoms)」とは、本明細書中に記述されているものを含む、所定の眼状態と関連している任意の診断基準又は症状を含む。いくつかの実施形態において、症状は、本開示の組成物の投与後に軽減され得る。いくつかの実施形態において、一又は複数の眼状態の症状は、未治療の対照対象における眼状態の症状と比較して軽減される。いくつかの実施形態において、一又は複数の眼状態の症状は、対眼における眼状態の症状と比較して軽減される。「対側眼」とは、本開示による組成物で処置された眼とは反対側にある対象の眼を意味する。対側の眼は、対象が両側の疾患に罹患しているか、あるいはモデル動物の場合において、両目の治療に至る実験プロトコルに供されている限り、治療の対照として使用され得る。
【0189】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を治療する方法において使用するための、最初の治療薬及び涙の産生を増加させるための処置を提供し、本方法は、以下の:
a.有効量の最初の治療薬を眼又は眼と流体連絡をとっている組織に投与すること;及び
b.涙の産生を増加させる処置を投与すること、
を含む。
【0190】
いくつかの実施形態において、使用するための最初の治療薬は、遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む組成物である。いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又はその薬学的に許容される塩である。
【0191】
いくつかの実施形態において、本開示は、眼表面障害、角膜障害又は前房障害を有する対象を治療するために使用するための、あるいは使用に適応可能な最初の治療薬を提供する。いくつかの実施形態において、使用のための最初の治療薬は、遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、使用のための最初の治療薬は、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むAAVベクターである。
【0192】
いくつかの実施形態において、本開示は、眼表面障害、角膜障害又は前房障害を有する対象を治療するために使用するための、あるいは使用に適応可能な、涙の産生を増加させる処置を提供する。いくつかの実施形態において、使用のために涙の産生を増加させる処置は、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニストである。いくつかの実施形態において、使用のために涙の産生を増加させる処置は、バレニクリンである。
【0193】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を治療する方法において使用するための、最初の治療薬及び涙の産生を増加させる処置を提供し、本方法は、以下の:
a.有効量の最初の治療薬を眼又は眼と流体連絡をとっている組織に投与することであって、前記最初の治療薬が遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターであり、前記最初の治療薬が対象の少なくとも1つの涙腺に投与されること;及び
b.涙の産生を増加させる処置を投与することであって、前記涙の産生を増加させる処置がニコチン性アセチルコリン受容体アゴニストであり、前記涙の産生を増加させる処置が局所鼻腔内投与を介して投与されること、
を含む。
【0194】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を治療する方法において使用するための、最初の治療薬及び涙の産生を増加させる処置を提供し、本方法は、以下の:
a.有効量の最初の治療薬を眼又は眼と流体連絡をとっている組織に投与することであって、前記最初の治療薬がnGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターであり、前記最初の治療薬が対象の少なくとも1つの涙腺に投与されること;及び
b.涙の産生を増加させる処置を投与することであって、前記涙の産生を増加させる処置がバレニクリン又はその薬学的に許容される塩であり、前記涙の産生を増加させる処置が局所鼻腔内投与を介して投与されること、
を含む。
【0195】
いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットはプロモーターに作動可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAVカプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは、プロモーターに作動可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAVカプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは、CAGプロモーターに作動可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0196】
いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは、プロモーターに作動可能に連結されたNGFをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:2と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:17と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:1と少なくとも95%の同一性を共有するアミノ酸配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAVカプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットはCAGプロモーターに作動可能に連結されたNGFをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0197】
いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットはプロモーターに作動可能に連結されたGDNFをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:4と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:18と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:3と少なくとも95%の同一性を共有するアミノ酸配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAVカプシドと発現カセットとを含むrAAVであり、前記発現カセットはCAGプロモーターに作動可能に連結されたGDNFをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0198】
いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV2カプシドと発現カセットとを含むrAAVであり、前記発現カセットはプロモーターに作動可能に連結されたNGFをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV2カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:2と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV2カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:17と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV2カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:1と少なくとも95%の同一性を共有するアミノ酸配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV2カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットはCAGプロモーターに作動可能に連結されたNGFをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0199】
いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV2カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットはプロモーターに作動可能に連結されたGDNFをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV2カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:4と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV2カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:18と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV2カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:3と少なくとも95%の同一性を共有するアミノ酸配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV2カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットはCAGプロモーターに作動可能に連結されたGDNFをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0200】
いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV5カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり前記発現カセットはプロモーターに作動可能に連結されたNGFをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV5カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:2と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV5カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:17と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV5カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:1と少なくとも95%の同一性を共有するアミノ酸配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV5カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットはCAGプロモーターに作動可能に連結されたNGFをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0201】
いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV5カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり前記発現カセットはプロモーターに作動可能に連結されたGDNFをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV5カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり前記発現カセットは配列番号:4と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV5カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:18と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、前記AAV5カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:3と少なくとも95%の同一性を共有するアミノ酸配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV5カプシド及びAAVカプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットはCAGプロモーターに作動可能に連結されたGDNFをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0202】
いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV9カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットはプロモーターに作動可能に連結されたNGFをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV9カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:2と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV9カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:17と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV9カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:1と少なくとも95%の同一性を共有するアミノ酸配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV9カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットはCAGプロモーターに作動可能に連結されたNGFをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0203】
いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV9カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットはプロモーターに作動可能に連結されたGDNFをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV9カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:4と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV9カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:18と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV9カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットは配列番号:3と少なくとも95%の同一性を共有するアミノ酸配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドはプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAV9カプシド及び発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットはCAGプロモーターに作動可能に連結されたGDNFをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0204】
いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAVカプシド及び配列番号:23を含むポリヌクレオチド配列を含む発現カセットを含むrAAVである。
【0205】
いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、AAVカプシド及び配列番号:24を含むポリヌクレオチド配列を含む発現カセットを含むrAAVである。
【0206】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を治療する方法であって、以下の:
(a)眼又は眼と流体連絡をとっている組織に有効量の最初の治療薬を投与することであって、前記最初の治療薬が発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットが神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含むこと、及び
(b)涙の産生を増加させる処置を投与すること、
を含む、方法を提供する。
【0207】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を治療する方法であって、以下の:
(a)眼又は眼と流体連絡をとっている組織に有効量の最初の治療薬を投与することであって、前記最初の治療薬が発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットがNGFをコードするポリヌクレオチドを含むこと、及び
(b)涙の産生を増加させる処置を投与すること、
を含む、方法を提供する。
【0208】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を治療する方法であって、以下の:
(a)眼又は眼と流体連絡をとっている組織に有効量の最初の治療薬を投与することであって、前記最初の治療薬が発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットがNGFをコードするポリヌクレオチドを含むこと、及び
(b)涙の産生を増加させる処置を投与することであって、前記処置が有効量のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又はその薬学的に許容される塩を含むこと、
を含む、方法を提供する。
【0209】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を治療する方法であって、以下の:
(a)眼又は眼と流体連絡をとっている組織に有効量の最初の治療薬を投与する工程であって、前記最初の治療薬が発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットがNGFをコードするポリヌクレオチドを含むこと、及び
(b)バレニクリン又はその薬学的に許容される塩を投与すること、
を含む、方法を提供する。
【0210】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を処置する方法であって、以下の:
(a)眼又は眼と流体連絡をとっている組織に有効量の最初の治療薬を投与する工程であって、前記最初の治療薬が発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットがGDNFをコードするポリヌクレオチドを含むこと、及び
(b)涙の産生を増加させる処置を投与すること、
を含む、方法を提供する。
【0211】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を治療する方法であって、以下の:
(a)眼又は眼と流体連絡をとっている組織に有効量の最初の治療薬を投与する工程であって、前記最初の治療薬が発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットがGDNFをコードするポリヌクレオチドを含むこと、及び
(b)涙の産生を増加させる処置を投与することであって、前記処置が有効量のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又はその薬学的に許容される塩を含むこと、
を含む、方法を提供する。
【0212】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を治療する方法であって、以下の:
(a)眼又は眼と流体連絡をとっている組織に有効量の最初の治療薬を投与することであって、前記最初の治療薬が発現カセットを含むrAAVであり、前記発現カセットがGDNFをコードするポリヌクレオチドを含むこと、及び
(b)バレニクリン又はその薬学的に許容される塩を投与すること、
を含む、方法を提供する。
【0213】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象において眼表面障害、角膜障害又は前房障害を有する患者を処置する方法であって、以下の:
a.有効量の最初の治療薬を眼又は眼と流体連絡をとっている組織に投与すること;及び
b.涙の産生を増加させる処置を投与すること、
を含む方法を提供し、前記方法は、対照処置の投与と比較して、涙液中の最初の治療薬の発現の増加をもたらす。
【0214】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象において眼表面障害、角膜障害又は前房障害を有する患者を治療する方法であって、以下の:
a.有効量の遺伝子産物を眼又は眼と流体連絡をとっている組織に投与すること;及び
b.涙の産生を増加させる処置を投与すること、
を含む方法を提供し、前記方法は、対照処置の投与と比較して、涙液中の遺伝子産物の発現の増加をもたらす。
【0215】
いくつかの実施形態において、本開示は、ドライアイ疾患;細菌性、真菌性又はウイルス性の角膜炎;神経麻痺性角膜症、眼瞼炎、シェーグレン症候群;アレルギー性結膜炎、春季カタル、ウイルス性結膜炎及び細菌性結膜炎;緑内障;角膜新生血管形成;翼状片;角膜ジストロフィー(円錐角膜、フックスジストロフィー、格子ジストロフィー及びマップドットフィンガープリントジストロフィー)又は他の眼表面及び角膜障害を有する患者を治療する方法であって、以下の:
a.有効量の最初の治療薬を眼球又は眼球と流体連絡をとっている組織に投与すること;及び
b.涙の産生を増加させる処置を投与すること、
を含む方法提供し、前記方法は、対照治療の投与と比較して、涙液中の最初の治療薬の発現の増加をもたらす。
【0216】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を有する患者を治療する方法であって、以下の:
a.有効量の最初の治療薬を眼又は眼と流体連絡をとっている組織に投与すること;及び
b.涙の産生を増加させる処置を投与すること、
を含む方法を提供し、前記方法は、対照処置の投与と比較して、涙液中の最初の治療薬の発現において、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍又は約10倍の増加をもたらす。
【0217】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を有する患者を治療する方法であって、以下の:
a.有効量の遺伝子産物を眼又は眼と流体連絡をとっている組織に投与すること;及び
b.涙の産生を増加させる処置を投与すること、
を含む方法を提供し、前記方法は、対照処置の投与と比較して、涙液中の遺伝子産物の発現において、5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍又は約10倍の増加をもたらす。
【0218】
いくつかの実施形態において、本開示は、ドライアイ疾患;細菌性、真菌性又はウイルス性の角膜炎;神経麻痺性角膜症、眼瞼炎、シェーグレン症候群;アレルギー性結膜炎、春季カタル、ウイルス性結膜炎及び細菌性結膜炎;緑内障;角膜新生血管形成;翼状片;角膜ジストロフィー(円錐角膜、フックスジストロフィー、格子ジストロフィー及びマップドットフィンガープリントジストロフィー)又は他の眼表面及び角膜障害を有する患者を治療する方法であって、以下の:
a.有効量の遺伝子産物を眼球又は眼球と流体連絡をとっている組織に投与すること;及び
b.涙の産生を増加させる処置を投与すること、
を含む方法提供し、前記方法は、対照処置の投与と比較して、涙液中の遺伝子産物の発現の5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍又は約10倍の増加をもたらす。
【0219】
いくつかの実施形態において、本開示は、ドライアイ疾患;細菌性、真菌性又はウイルス性の角膜炎;神経麻痺性角膜症、眼瞼炎、シェーグレン症候群;アレルギー性結膜炎、春季カタル、ウイルス性結膜炎及び細菌性結膜炎;緑内障;角膜新生血管形成;翼状片;角膜ジストロフィー(円錐角膜、フックスジストロフィー、格子ジストロフィー及びマップドットフィンガープリントジストロフィー)又は他の眼表面及び角膜障害を有する患者を治療する方法であって、以下の:
a.有効量の最初の治療薬を眼球又は眼球と流体連絡をとっている組織に投与すること;及び
b.涙の産生を増加させる処置を投与すること、
を含む方法提供し、前記方法は、対照処置の投与と比較して、涙液中の最初の治療薬の発現の5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍又は約10倍の増加をもたらす。
【0220】
いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態において、対照処置は、最初の治療薬単独の投与である。いくつかの実施形態において、対照処置は、対照溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)である。いくつかの実施形態において、対照処置は無投与である。
【0221】
有効な治療の指標
三叉副交感神経経路の特徴及び本明細書中に記述されている方法に対するその重要性について、ここで簡単に説明する。三叉神経は、眼神経、上顎神経及び下顎神経を含む。三叉神経の眼神経枝及び上顎神経枝は、求心性経路を形成する。鼻粘膜上皮及び侵害受容神経は、受容体とつながっており、鼻の中で反射の求心性肢を開始する。反射の求心性経路は、上唾液核から顔面神経(中間神経)に沿って被殻神経節に至り、そこから蝶形口蓋神経節を経由して大表在性鼻甲介神経を介して涙機能ユニットの腺(涙腺、マイボーム腺及び杯細胞)に向かう。Wongら、Neuroscience Letters 649:14-19(2017)を参照。健康な涙液組成は、複雑であり、表層脂質層、中間ムチン層、深層ムチン層から成る。これらの層を構成する各成分は、それぞれ異なる腺;マイボーム腺(脂質層)、涙腺(房水層)及び杯細胞(ムチン層)に由来する。動物における神経解剖学的研究は、三叉神経-副交感神経経路がこれらの腺のそれぞれを神経支配しているということを示している。本開示は、涙液成分を排泄する手段として三叉神経-副交感神経経路を刺激することを含む方法を提供する。
【0222】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、本方法は、鼻涙反射を活性化することを含むことができる。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、本方法は、三叉神経を活性化することを含んでもよい。本明細書中に記述されている実施形態一部において、本方法は、前篩骨神経を活性化することを含んでもよい。
【0223】
本明細書中に記述されている実施形態一部において、方法は、涙液膜の恒常性を改善することを含む。本明細書中に記述されている実施形態一部において、方法は、涙液膜の恒常性を再確立することを含む。いくつかの実施形態において、それを必要とする対象は、涙液膜の恒常性を欠いているか、あるいは涙液膜の恒常性が損なわれている。
【0224】
任意の本明細書中に開示される方法を用いて治療前、治療中かつ治療後の対象の状態を評価するために、様々な検査が利用可能である。本明細書中に記述されている実施形態一部において、対象の有効な治療は、一又は複数のa)ビジュアルアナログスケールによる眼乾燥スコア試験、b)シルマーテスト、c)角膜フルオレセイン染色試験及びd)眼表面疾患指数試験から成る群より選択される試験によって示される。眼疾患の徴候及び症状を評価する検査は、対象の検査スコアを得るために、標準化された条件又は再現可能な条件下で実施されることができる。条件には、対象に不利な影響を与えるように人工的に作られた環境に対象をさらすこと又は環境(温度、湿度、気流)が監視され、注意深く制御されることが含まれる。
【0225】
次のセクションは、ビジュアルアナログスケールによる眼乾燥スコア検査、シルマーテスト、角膜フルオレセイン染色検査及び眼表面疾患指数検査についてさらなる詳細を提供する。
【0226】
眼乾燥スコア検査
ビジュアルアナログスケールによる眼乾燥スコア検査は、対象のドライアイ疾患、流涙レベル又は眼不快感を評価するために使用されることができる。本検査は、ビジュアルアナログスケールを使用し、100mmの水平線を含み、0点の一方の端点は「不快感なし」と表示され、100点の他方の端点は「最大の不快感」と表示される。
図3は、ビジュアルアナログスケールの一例を示す。(実際の縮尺では示されていない)。対象は、不快感の程度を示す水平線上に縦に印を付けることによって、眼乾燥による眼症状を評価するよう求められる。その後、対象の回答が100mmスケール上のどの位置にあるかを特定することによって、眼乾燥スコアが得られる。
【0227】
mm単位で測定された眼乾燥スコアは、眼症状の重症度又は対象の特定の治療の有効性を評価するために使用され得る。この検査は、対象に5分ごとという頻度で投与されるという利点を有するため、検査管理者が対象の症状の経時的変化を注意深く観察することを可能にする。数値が高いほど眼症状に対する不快感が強いことを示し、数値が低いほど不快感が相対的に低いことを示す。眼乾燥スコアの低下は、治療がドライアイの治療、涙の分泌量の増加又は眼不快感の改善に有効であるという証拠である。経時的な眼乾燥スコアの減少は、眼症状の減少又は緩和の証拠であり、一般に対象の症状における改善を示す。
【0228】
本明細書中に開示される実施形態の一部において、有効な治療は、対象の眼乾燥スコアの統計的に有意な減少によって示され、前記対象の眼乾燥スコアの統計的に有意な減少は、対象に最初の治療薬の最初の用量又は任意に一又は複数の後続の用量及び涙の産生を増加させる処置の最初の用量又は任意に一又は複数の後続の用量を投与した後に決定され、前記対象の眼乾燥スコアは、a)最初の治療薬の初回用量及び涙の産生を増加させる処置の初回用量;b)対照を投与した対象の眼乾燥スコア;又はc)比較化合物を投与した対象の眼乾燥スコアと比較される。
【0229】
本明細書で使用する場合、「統計学的に有意」という用語は、2つ以上の群間で観察された差を評価するために、試験デザイン及び生成されたデータ型に基づいて当業者によって選択される分析方法を指し、前記分析は、差がランダムでないか、あるいは厳密に偶然によるものであるかを決定する。
【0230】
本明細書中に開示される実施形態の一部において、対象の眼乾燥スコアは、最初の治療薬の最初の用量及び涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与する前の対象の眼乾燥スコアと比較される。
【0231】
本明細書中に開示される実施形態の一部において、対象の眼乾燥スコアは、対照を投与された対象の眼乾燥スコアと比較される。
【0232】
本明細書中に開示される実施形態の一部において、対象の眼乾燥スコアは、比較化合物を投与された対象の眼乾燥スコアと比較される。
【0233】
本明細書中に開示される実施形態の一部において、対象の眼乾燥スコアは、対側の眼の眼乾燥スコアと比較される。
【0234】
いくつかの実施形態において、最初の治療薬及び本明細書中に記述されているような涙の産生を増加させる処置を投与された対象における対象の眼乾燥スコアの統計的に有意な減少は、対照と比較して観察される。
【0235】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象の眼乾燥スコアにおける統計的に有意な減少は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、80%、90%、95%、100%、125%、150%、200%、250%、300%又は350%である。
【0236】
いくつかの実施形態において、対照と比較して、最初の治療薬及び本明細書中に記述されている涙の産生を増加させる処置を投与された対象における対象の眼乾燥スコアの統計的に有意な減少が観察され、前記対象の眼乾燥スコアの統計的に有意な減少は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、80%、90%、95%、100%、125%、150%、200%、250%、300%又は350%である。
【0237】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象の眼乾燥スコアの統計的に有意な減少は、少なくとも3mm、少なくとも5mm、少なくとも10mm、少なくとも15mm、少なくとも20mm、少なくとも25mm、少なくとも30mm、少なくとも35mm、少なくとも40mm、少なくとも45mm又は少なくとも50mmである。いくつかの実施形態において、対照と比較して、最初の治療薬及び本明細書中に記述されている涙の産生を増加させる処置を投与された対象における対象の眼乾燥スコアの統計的に有意な減少が観察され、前記対象の眼乾燥スコアの統計的に有意な減少は、少なくとも3mm、少なくとも5mm、少なくとも10mm、少なくとも15mm、少なくとも20mm、少なくとも25mm、少なくとも30mm、少なくとも35mm、少なくとも40mm、少なくとも45mm又は少なくとも50mmである。
【0238】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象の眼乾燥スコアの統計的に有意な減少は、3mm~10mm、3mm~20mm、3mm~25mm、3mm~30mm、3mm~35mm、3mm~40mm、3mm~45mm、3mm~50mm、5mm~10mm、5mm~20mm、5mm~25mm、5mm~30mm、5mm~35mm、5mm~40mm、5mm~45mm、5mm~50mm、10mm~15mm、10mm~20mm、10mm~25mm、10mm~30mm、10mm~35mm、10mm~40mm、10mm~45mm、10mm~50mm、15mm~20mm、20mm~30mm、25mm~35mm、30mm~40mm、30mm~45mm又は30mm~50mmである。
【0239】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象の眼乾燥スコアにおける統計的に有意な減少は、0.05以下、0.01以下、0.005以下又は0.001以下のp値によって特徴付けられる。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象の眼乾燥スコアの統計的に有意な低下は、0.05以下のp値によって特徴付けられる。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象の眼乾燥スコアにおける統計的に有意な減少は、0.01以下のp値によって特徴付けられる。
【0240】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象の眼乾燥スコアにおける統計的に有意な減少は、有効量の最初の治療薬の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量の投与から、5分以内、10分以内、15分以内、20分以内、30分以内、45分以内又は60分以内である。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象の眼乾燥スコアの統計的に有意な減少は、有効量の最初の治療薬の最初の投与から、5分以内又は10分以内である。
【0241】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象の眼乾燥スコアの統計的に有意な減少は、有効量の最初の治療薬の最初の投与及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の投与の、1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、1週間以内、2週間以内、3週間以内、4週間以内、1ヶ月以内、2ヶ月以内、3ヶ月以内、4ヶ月以内、5ヶ月以内又は6ヶ月以内である。
【0242】
いくつかの実施形態において、対象の眼乾燥スコアの低下は、任意の本明細書中に開示されている方法又は組成物による治療後、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、9ヶ月又は1年間持続する。
【0243】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象の眼乾燥スコアの統計的に有意な減少は、最初の治療薬の最初の用量を投与した後に決定された対象の眼乾燥スコアに基づく。
【0244】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、統計的に有意な減少は、最初の治療薬の一又は複数の後続用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の1回目又は一又は複数の後続用量を投与した後に決定された対象の眼乾燥スコアに基づく。
【0245】
シルマースコアテスト
ドライアイ疾患は、涙の量及び涙の産生に影響を及ぼす。シルマーテストは、涙の産生を評価し、対象のドライアイ疾患、不十分な涙又は眼不快感の重症度を評価するために使用することができる。この検査では、両目で分泌される涙の量を測定する。この検査では、通常、まず対象の片目又は両目に麻酔薬を点眼する。この点眼薬は、テストストリップに反応して眼が充血するのを防ぐ。次に、検査担当者が片方又は両方の下まぶたの内側にろ紙を置き、対象は目を閉じる。5分後、試験担当者はろ紙を取り除き、涙がろ紙上をどの程度移動したかを評価する。シルマーテストは、片眼でも両眼でもよい。
【0246】
一般に、ろ紙上の水分量が少なければ少ないほど、その人の涙の量は少ない。健康な眼の場合、各紙片には通常10ミリメートル以上の水分が含まれている。水分量が10ミリメートル未満のシルマースコアは、ドライアイ、涙の量が異常に少ない又は眼の不快感を含む、以下の状態の1つ以上を示す可能性がある。
【0247】
シルマーテストは、対象の特定の治療の有効性を評価するために使用することができ、対象の症状の重症度の変化を一定期間にわたって監視するために複数回実施することができる。ドライアイ、涙不足又は眼不快感の治療を受けている対象のシルマースコアの経時的な増加は、涙の量又は涙の産生が増加している証拠であり、一般的に対象の状態の改善を示す。シルマースコアの経時的な増加は、治療がドライアイ疾患の治療、涙の分泌量の増加又は眼不快感の改善に有効であることの証拠である。
【0248】
本明細書中に開示される実施形態の一部において、有効な治療は、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加によって示され、前記対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、対象に最初の用量又は任意に、一又は複数の後続の用量を投与した後に決定される、前記対象のシルマースコアは、a)最初の治療薬の初回投与量及び涙の産生を増加させる処置の初回投与量又は任意に1回以上の後続投与量の投与前の対象のシルマースコア;b)対照を投与した対象のシルマースコア;又はc)比較化合物を投与した対象のシルマースコアと比較される。
【0249】
本明細書中に開示される実施形態の一部において、対象のシルマースコアは、最初の治療薬の最初の用量及び涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与する前の対象のシルマースコアと比較される。本明細書中に開示される実施形態の一部において、対象のシルマースコアは、対照を投与された対象のシルマースコアと比較される。本明細書中に開示される実施形態の一部において、対象のシルマースコアは、比較化合物を投与された対象のシルマースコアと比較される。
【0250】
いくつかの実施形態において、最初の治療薬及び本明細書中に記述されているような涙の産生を増加させる処置を投与された対象において、対照と比較して、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加が観察される。
【0251】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、80%、90%、95%、100%、125%、150%、200%、250%、300%又は350%である。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のシルマースコアの増加は、少なくとも100%、200%又は300%である。いくつかの実施形態において、最初の治療薬及び本明細書中に記述されているような涙の産生を増加させる処置を投与された対象において、対照と比較して、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加が観察され、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、80%、90%、95%、100%、125%、150%、200%、250%、300%又は350%である。
【0252】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、少なくとも3mm、少なくとも5mm、少なくとも10mm、少なくとも15mm、少なくとも20mm、少なくとも25mm、少なくとも30mm、少なくとも35mm、少なくとも40mm、少なくとも45mm又は少なくとも50mmである。
【0253】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、3mm~5mm、3mm~10mm、3mm~15mm、3mm~20mm、3mm~25mm、3mm~30mm、5mm~10mm、5mm~15mm、5mm~20mm、5mm~25mm、5mm~30mm、10mm~15mm、10mm~20mm、10mm~25mm、10mm~30mm、15mm~20mm、15mm~25mm、15mm~30mm、20mm~25mm又は20mm~30mmである。
【0254】
いくつかの実施形態において、最初の治療薬及び本明細書に記載の涙の産生を増加させる処置を投与された対象において、対照と比較して、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加が観察され、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、少なくとも3mm、少なくとも5mm、少なくとも10mm、少なくとも15mm、少なくとも20mm、少なくとも25mm、少なくとも30mm、少なくとも35mm、少なくとも40mm、少なくとも45mm又は少なくとも50mmである。
【0255】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、0.05以下、0.01以下、0.005以下又は0.001以下のp値によって特徴付けられる。
【0256】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、有効量の最初の治療薬及び任意選択で、涙の産生を増加させる治療の最初の用量の投与から、5分以内、10分以内、15分以内、20分以内、30分以内、45分以内又は60分以内である。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のシルマースコアの統計的に有意な減少は、有効量の最初の治療薬の最初の投与から5分以内である。
【0257】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、有効量の最初の治療薬の最初の投与及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の投与の投与から、1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、1週間以内、2週間以内、3週間以内、4週間以内、1ヶ月以内、2ヶ月以内、3ヶ月以内、4ヶ月以内、5ヶ月以内又は6ヶ月以内である。
【0258】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、急性に測定した場合、1分以内、2分以内、5分以内であり、あるいは本明細書中に開示される方法若しくは組成物にしたがって治療した後に慢性的に測定した場合、1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、1週間以内、2週間以内、3週間以内、4週間以内、1ヶ月以内、2ヶ月以内、3ヶ月以内、4ヶ月以内、5ヶ月以内、若しくは6ヶ月以内である。
【0259】
いくつかの実施形態において、対象のシルマースコアの増加は、本明細書中に開示される方法又は組成物のいずれかによる処置後、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、9ヶ月又は1年間持続する。
【0260】
いくつかの実施形態において、対象のシルマースコアの増加は、本明細書中に開示される方法又は組成物のいずれかによる処置の1分後、2分後、3分後又は少なくとも1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、4ヶ月後、5ヶ月後、6ヶ月後、9ヶ月後又は1年後に持続する。
【0261】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、最初の治療薬の最初の用量を投与した後に決定された対象のシルマースコアに基づく。
【0262】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、統計的に有意な増加は、最初の治療薬の一又は複数の後続用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の1回目又は一又は複数の後続用量を投与した後に決定された対象のシルマースコアに基づく。
【0263】
角膜フルオレセイン染色試験
角膜表面の変化は、ドライアイ疾患や眼不快感だけでなく、涙の流量不足や過度の乾燥と関連している。角膜表面の変化には、表面上皮細胞を保護するムチンコーティングの破壊及び/又は上皮細胞壁の損傷が含まれる。
【0264】
角膜フルオレセイン染色検査は、角膜表面の健康状態を判定するための診断検査であり、角膜表面の損傷領域を示すことができる。正常な角膜表面は、涙液中に注入された水溶性色素を取り込まない。しかし、損傷した上皮細胞は、水溶性色素を表面細胞内に拡散させる。損傷した上皮細胞を染色するフルオレセインは、角膜表面の乾燥の結果としての損傷を示す角膜表面上で可視化されることがある。
【0265】
角膜フルオレセイン染色検査を実施するには、片眼又は両眼にフルオレセインを塗布する。フルオレセインを浸透させ、表面細胞間の領域を染色する。この染色により、変性した細胞や変性した表面組織の束(フィラメント)を可視化することができる。その後、検査管理者は、角膜表面スコアリングシステムを使用して、観察された損傷の重症度を評価するために開発された。この採点システムは、ドライアイ治療を長期的にモニタリングするのに有用である。
図4は、採点システムに使用されているNEI/Industry Workshop Scaleを示している。他の同等の標準化された採点システムを使用してもよい。試験管理者は、角膜表面の損傷部位を採点し、角膜表面の損傷の重症度を反映する角膜スコアを計算する。
【0266】
検査管理者は、角膜スコアを使用して、対象の特定の治療の有効性を評価することができる。この検査は、対象の眼表面の重症度の変化を一定期間モニターするために複数回実施することができる。一般に、数値が高いほど角膜表面の損傷が大きいことを示し、数値が低いほど角膜表面の損傷が小さいことを示す。時間の経過とともに角膜スコアが低下することは、角膜表面の損傷が軽減している証拠である。角膜スコアの減少は、一般的に対象の状態の改善を示す。角膜スコアの経時的な減少は、治療がドライアイ疾患の治療、涙の産生の増加又は眼不快感の改善に有効であることの証拠でもある。
【0267】
本明細書中に開示される実施形態の一部において、有効な治療は、対象の角膜スコアの統計的に有意な減少によって示され、前記対象の角膜スコアの統計的に有意な減少は、対象に最初の用量又は任意に一又は複数の後続の用量を投与した後に決定され、前記対象の角膜スコアは、a)最初の治療薬の初回投与量及び涙の産生を増加させる処置の初回投与量又は任意に1回以上の後続投与量の投与前の対象の角膜スコア;b)対照を投与した対象の角膜スコア;又はc)比較化合物を投与した対象の角膜スコアと比較される。
【0268】
本明細書中に開示される実施形態の一部において、対象の角膜スコアは、最初の治療薬の最初の用量及び涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与する前の対象の角膜スコアと比較される。本明細書中に開示される実施形態の一部において、対象の角膜スコアは、対照を投与された対象の角膜スコアと比較される。本明細書中に開示される実施形態の一部において、対象の角膜スコアは、比較化合物を投与された対象の角膜スコアと比較される。
【0269】
いくつかの実施形態において、対象の角膜スコアの統計的に有意な減少は、対照と比較して、本明細書中に記述されているような最初の治療薬及び涙の産生を増加させる処置を投与された対象において観察される。
【0270】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象の角膜スコアの統計的に有意な減少は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、80%、90%、95%、100%、125%、150%、200%、250%、300%又は350%である。
【0271】
いくつかの実施形態において、最初の治療薬及び本明細書に記載の涙の産生を増加させる処置を投与された対象において、対照と比較して、対象の角膜スコアの統計的に有意な減少が観察され、前記対象の角膜スコアの統計的に有意な減少は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、80%、90%、95%、100%、125%、150%、200%、250%、300%又は350%である。
【0272】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象の角膜スコアの統計的に有意な減少は、0.05以下、0.01以下、0.005以下又は0.001以下のp値によって特徴付けられる。
【0273】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象の角膜スコアの統計的に有意な減少は、有効量の最初の治療薬及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量の投与から、5分以内、10分以内、15分以内、20分以内、30分以内、45分以内又は60分以内である。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象の角膜スコアの統計的に有意な減少は、有効量の最初の治療薬の最初の投与から5分以内である。
【0274】
いくつかの実施形態において、対象の角膜スコアの減少は、本明細書中に開示される方法又は組成物のいずれかによる治療後、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、9ヶ月又は1年間持続する。
【0275】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象の角膜スコアの統計的に有意な減少は、有効量の最初の治療薬の最初の投与及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の投与の投与から、1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、1週間以内、2週間以内、3週間以内、4週間以内、1ヶ月以内、2ヶ月以内、3ヶ月以内、4ヶ月以内、5ヶ月以内又は6ヶ月以内である。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象の角膜スコアの統計的に有意な減少は、最初の治療薬の最初の用量を投与した後に決定された対象の角膜スコアに基づく。
【0276】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、統計的に有意な減少は、最初の治療薬の一又は複数の後続用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の1回目又は一又は複数の後続用量を投与した後に決定された対象の角膜スコアに基づく。
【0277】
眼表面疾患指数試験
ドライアイ疾患の治療、涙の産生量の増加又は眼不快感の改善を受けた対象は、アンケートを通じて、自分の状態を診断し、ドライアイ症状の重症度を決定するために使用される重要な情報を提供することができる。よく設計されたアンケートは、再現性を検証することができ、応答的な回答を引き出す関連する質問で構成されるべきである。ドライアイに関する質問票の一例として、OSDI(Ocular Surface Disease Index)がある。これはドライアイ患者を対象とした12問の質問を含む調査で、症状の頻度を直接評価するための信頼性が高く有効な手段であることが示されている。評価対象となる眼症状には、灼熱感/チクチク感、かゆみ、異物感、眼不快感、眼乾燥感、羞明及び痛みが含まれるが、これらに限定されるものではない。ほとんどの人は問診票に慣れ親しんでおり、医療提供者が情報を収集する効率的な方法であることを理解している。また、口頭や視覚的な手がかりがないため、回答者に不注意な影響を与えることがなく、バイアスを減らすことができる。検査管理者は、対象からの回答を収集し、質問に対する対象の回答に基づいてOSDIを計算する。
【0278】
OSDIスコアは、眼症状の重症度及び対象の特定の治療の有効性を評価するために使用することができる。数値が高いほどドライアイの重症度が高いことを示す。経時的なOSDIスコアの低下は、眼症状の軽減又は緩和の証拠であり、一般に対象の状態の改善を示す。OSDIスコアの減少は、治療がドライアイ疾患の治療、涙の産生の増加又は眼不快感の改善に有効であることの証拠でもある。
【0279】
本明細書中に開示される実施形態の一部において、効果的な治療は、対象のOSDIスコアの統計的に有意な減少によって示され、対象のOSDIスコアの統計的に有意な減少は、対象に最初の用量又は任意に一又は複数の後続の用量を投与した後に決定される、前記対象のOSDIスコアは、a)最初の治療薬の初回用量及び涙の産生を増加させる処置の初回用量又は任意に一又は複数の後続用量の投与前の対象のOSDIスコア;b)対照を投与した対象のOSDIスコア;又はc)比較化合物を投与した対象のOSDIスコアと比較される。
【0280】
本明細書中に開示される実施形態の一部において、対象のOSDIスコアは、最初の治療薬の最初の用量及び涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与する前の対象のOSDIスコアと比較される。本明細書中に開示される実施形態の一部において、対象のOSDIスコアは、対照を投与された対象のOSDIスコアと比較される。本明細書中に開示される実施形態の一部において、対象のOSDIスコアは、比較化合物を投与された対象のOSDIスコアと比較される。
【0281】
いくつかの実施形態において、対象のOSDIスコアの統計的に有意な減少は、対照と比較して、最初の治療薬及び本明細書中に記述されている涙の産生を増加させる処置を投与された対象において観察される。
【0282】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のOSDIスコアにおける統計的に有意な減少は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、80%、90%、95%、100%、125%、150%、200%、250%、300%又は350%である。
【0283】
いくつかの実施形態において、対照と比較して、最初の治療薬及び本明細書に記載の涙の産生を増加させる処置を投与された対象における対象のOSDIスコアの統計的に有意な減少が観察され、前記対象のOSDIスコアの統計的に有意な減少は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、80%、90%、95%、100%、125%、150%、200%、250%、300%又は350%である。
【0284】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のOSDIスコアの統計的に有意な減少は、0.05以下、0.01以下、0.005以下又は0.001以下のp値によって特徴付けられる。
【0285】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のOSDIスコアの統計的に有意な減少は、有効量の最初の治療薬及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量の投与から、5分以内、10分以内、15分以内、20分以内、30分以内、45分以内又は60分以内である。本明細書に記載の実施形態の一部において、対象のOSDIスコアの統計的に有意な減少は、有効量の最初の治療薬の最初の投与から5分以内である。
【0286】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のOSDIスコアの統計的に有意な減少は、最初の治療薬の有効量の最初の投与及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の投与の、1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、1週間以内、2週間以内、3週間以内、4週間以内、1ヶ月以内、2ヶ月以内、3ヶ月以内、4ヶ月以内、5ヶ月以内又は6ヶ月以内である。
【0287】
いくつかの実施形態において、対象のOSDIスコアの低下は、本明細書中に開示される方法又は組成物のいずれかによる治療後、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、9ヶ月又は1年間持続する。
【0288】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のOSDIスコアの統計的に有意な減少は、最初の治療薬の最初の用量を投与した後に決定された対象のOSDIスコアに基づく。
【0289】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、統計的に有意な減少は、最初の治療薬の一又は複数の後続用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の1回目又は一又は複数の後続用量を投与した後に決定された対象のOSDIスコアに基づく。
【0290】
有効な治療の経時的維持
本開示は、対象のスコアの統計的に有意な改善が維持される期間にわたる有効な治療を提供する。本開示で使用され、対象のスコア(EDS、シルマー、角膜又はOSDI)における統計的に有意な改善の維持に関連する「維持される」という用語は、統計的に有意な改善が時間の経過とともに一定の閾値未満に減少しないことを指す。統計的に有意な改善は、後の時点で対象のスコアが変化しても維持され得る。最初の治療薬の初回投与後及び任意に、涙の産生を増加させる処置の初回投与後の改善は、追加投与なしで又は一又は複数の後続投与後も維持することができる。
【0291】
例えば、眼乾燥スコアが「10%以内に維持される」とは、対象の眼乾燥スコアの減少が、指定された時間の間に10%以上減少しないことを意味する。対象の眼乾燥スコアがさらに改善した場合も、統計的に有意な改善が維持されたとみなされる(例えば、眼乾燥スコアが規定時間中に15%さらに改善した場合、これは、「10%以内に維持された」とみなされる)。
【0292】
別の例において、最初の治療薬の初回投与及び任意に涙の産生を増加させる処置の初回投与を受けてから30分後に、対象の眼乾燥スコアに統計学的に有意な減少(改善)が見られ、後の時点で対象のスコアが同じかそれ以下であった(対象にとって有益であることを示す)場合、統計学的に有意な改善は維持されていると言われる。あるいは、後の時点で、対象の眼乾燥スコアが、最初の治療薬の初回投与及び任意に涙の産生を増加させる処置の初回投与を受けた30分後の眼乾燥スコアよりも大きい場合、対象は依然として治療上の利益を受けている可能性があり、後に決定されたスコアは、初回投与の前又は治療前のベースラインスコアと比較して、依然として統計的に有意な改善である可能性がある。
【0293】
別の例において、最初の治療薬の初回投与及び任意に、涙の産生を増加させる処置の初回投与を受けてから1週間後に、対象の眼乾燥のスコアに統計学的に有意な減少(改善)が見られ、後の時点で対象のスコアが同じかそれより低い(対象に利益があることを示す)場合、統計学的に有意な改善は維持されていると言われる。あるいは、後の時点で、対象の眼乾燥スコアが、最初の治療薬の初回投与及び任意に涙の産生を増加させる処置の初回投与を受けた1週間後の眼乾燥スコアよりも大きい場合、対象は依然として治療上の利益を受けている可能性があり、後に決定されたスコアは、初回投与の前又は治療前のベースラインスコアと比較して、依然として統計的に有意な改善である可能性がある。
【0294】
改善を構成するものは、測定されるスコアによって異なることに留意されたい。例えば、眼乾燥スコア、角膜スコア、OSDIスコアの改善は、スコアの数値の減少である。シルマーテストでは、改善とは通常、シルマースコアの数値の増加である。
【0295】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のスコア(例えば、EDS、シルマー、角膜又はOSDI)の統計的に有意な改善の維持とは、統計的に有意な改善が10%、20%、30%、40%、50%又は60%以上減少しないことを意味する。
【0296】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のスコア(例えば、EDS、シルマー、角膜又はOSDI)における統計的に有意な改善は、少なくとも30分、少なくとも45分、少なくとも60分、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも1日、少なくとも1週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月又は少なくとも12ヶ月維持される。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のスコアの統計的に有意な改善は、最初の治療薬の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量の投与から少なくとも30分間維持され、前記統計的に有意な改善は30%以上減少しない。いくつかの実施形態において、対象のスコアの統計的に有意な改善は、最初の治療薬の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量の投与から少なくとも1週間維持され、前記統計的に有意な改善は30%以上減少しない。
【0297】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のスコア(例えば、EDS、シルマー、角膜又はOSDI)における統計的に有意な改善は、最初の治療薬の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与した後、少なくとも30分間、少なくとも45分間、少なくとも60分間、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも1日、少なくとも1週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも9ヶ月間又は少なくとも12ヶ月間維持され、前記統計的に有意な改善は、最初の治療薬の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与した後5分以内の対象のスコアと比較して、10%、20%、30%、40%、50%又は60%以上減少しない。
【0298】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のスコア(例えば、EDS、シルマー、角膜又はOSDI)における統計的に有意な改善は、最初の治療薬の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与した後、少なくとも30分間、少なくとも45分間、少なくとも60分間、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも1日、少なくとも1週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも9ヶ月間又は少なくとも12ヶ月間維持され、前記統計的に有意な改善は、最初の治療薬の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与した後5分以内に、対象の対応する眼乾燥スコア、角膜スコア又はOSDIスコアと比較して、20%以上減少しない。
【0299】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のスコア(例えば、EDS、シルマー、角膜又はOSDI)における統計的に有意な改善は、最初の治療薬及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与した後、少なくとも30分間維持され、前記統計的に有意な改善は、最初の治療薬及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与した後5分以内に、対象のスコアと比較して10%、20%又は30%以上減少しない。
【0300】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のスコア(例えば、EDS、シルマー、角膜又はOSDI)の統計的に有意な改善は、最初の治療薬の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与した後、少なくとも4週間維持され、前記統計的に有意な改善は、最初の治療薬の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与した後、1週間以内の対象のスコアと比較して、10%、20%又は30%以上減少しない。
【0301】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のシルマースコアは、最初の治療薬の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与した後、少なくとも30分後、少なくとも45分後、少なくとも60分後、少なくとも2時間後、少なくとも4時間後、少なくとも6時間後、少なくとも8時間後、少なくとも1日後、少なくとも1週間後、少なくとも1ヶ月後、少なくとも3ヶ月後、少なくとも6ヶ月後、少なくとも9ヶ月後又は少なくとも12ヶ月後に、最初の処置の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与した後5分以内の対象の対応するシルマースコアと比較して、10%、20%、30%、40%、50%又は60%以上減少しない。
【0302】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象のシルマースコアは、最初の治療薬の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与した後、少なくとも30分後、少なくとも45分後、少なくとも60分後、少なくとも2時間後、少なくとも4時間後、少なくとも6時間後、少なくとも8時間後、少なくとも1日後、少なくとも1週間後、少なくとも1ヶ月後、少なくとも3ヶ月後、少なくとも6ヶ月後、少なくとも9ヶ月後又は少なくとも12ヶ月後に、最初の処置の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与した後5分以内の対象の対応するシルマースコアと比較して、30%以上減少しない。
【0303】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、最初の治療薬の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与してから少なくとも30分後の対象のシルマースコアは、最初の治療薬の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与してから5分以内の対象の対応するシルマースコアと比較して、30%、20%又は10%以上減少しない。
【0304】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、最初の治療薬の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与してから少なくとも4週間後の対象のシルマースコアは、最初の治療薬の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与してから1週間以内の対象の対応するシルマースコアと比較して、30%、20%又は10%以上減少しない。
【0305】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、最初の治療薬の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与してから少なくとも30分後、少なくとも45分後、少なくとも60分後、少なくとも2時間後、少なくとも4時間後、少なくとも6時間後、少なくとも8時間後、少なくとも1日後、少なくとも1週間後、少なくとも1ヶ月後、少なくとも3ヶ月後、少なくとも6ヶ月後、少なくとも9ヶ月後又は少なくとも12ヶ月後の対象の眼乾燥スコア、角膜スコア又はOSDIスコアは、最初の治療薬の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与してから5分以内の対象の対応する眼乾燥スコア、角膜スコア又はOSDIスコアと比較して、10%、20%、30%、40%、50%又は60%以上減少しない。
【0306】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、最初の治療薬の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与してから少なくとも30分後、少なくとも45分後、少なくとも60分後、少なくとも2時間後、少なくとも4時間後、少なくとも6時間後、少なくとも8時間後、少なくとも1日後、少なくとも1週間後、少なくとも1ヶ月後、少なくとも3ヶ月後、少なくとも6ヶ月後、少なくとも9ヶ月後又は少なくとも12ヶ月後の対象の眼乾燥スコア、角膜スコア又はOSDIスコアは、最初の治療薬の最初の用量及び任意に、涙の産生を増加させる処置の最初の用量を投与してから5分以内の対象の対応する眼乾燥スコア、角膜スコア又はOSDIスコアと比較して、30%以上減少しない。
【0307】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、最初の治療薬の初回投与及び任意に、涙の産生を増加させる処置の初回投与を行った後少なくとも30分後の対象の眼乾燥スコア、角膜スコア又はOSDIスコアは、最初の治療薬の初回投与及び任意に涙の産生を増加させる処置の初回投与を行った後5分以内の対象の対応する眼乾燥スコア、角膜スコア又はOSDIスコアと比較して、30%、20%又は10%以上減少しない。
【0308】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、最初の治療薬の初回投与及び任意に、涙の産生を増加させる処置の初回投与を行った後少なくとも4週間後の対象の眼乾燥スコア、角膜スコア又はOSDIスコアは、最初の治療薬の初回投与及び任意に涙の産生を増加させる処置の初回投与を行った後1週間以内の対象の対応する眼乾燥スコア、角膜スコア又はOSDIスコアと比較して、30%、20%又は10%以上減少しない。
【0309】
湿度
「湿度」という用語は、相対湿度を指す可能性がある。相対湿度は、所与の温度における水の平衡蒸気圧に対する水蒸気分圧の比である。相対湿度は温度と対象系の圧力に依存する。低温で高い相対湿度を達成するためにはより少ない水蒸気が必要であり、暖かい空気や高温の空気で高い相対湿度を達成するためにはより多くの水蒸気が必要である。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象は、対象のスコア(眼乾燥、シルマー、角膜、OSDI)の決定の間に相対湿度が低下した環境に存在する。
【0310】
特定の検査における対象の得点の決定の間に、対象は、対象に悪い影響を与えるように人為的に作り出された環境に存在するか、あるいははそのような環境に曝露される可能性がある。例えば、対象は、温度、湿度、気流が監視され、悪条件を作り出すように制御された部屋にいることができる。別の例において、対象は、乾燥ゴーグルを着用し、低相対湿度によって眼に悪条件が課される可能性がある。
【0311】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象の眼乾燥スコアの決定の間、対象のシルマースコアの決定の間、対象の角膜スコアの決定の間及び対象のOSDIスコアの決定の間、対象は、湿度が低下した環境に存在する。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象の眼乾燥スコアの決定の間、対象のシルマースコアの決定の間、対象の角膜スコアの決定の間及び対象のOSDIスコアの決定の間、対象は、湿度が低下し、室温より低いか、あるいは高い温度の環境に存在する。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、室温における低下した相対湿度は、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満又は5%未満である。室温は、摂氏15度(華氏59度)から摂氏25度(華氏77度)の間である。
【0312】
投与時期及び投与方法
対象に投与される用量のスケジュールは、各用量の有効期間、薬物の薬物動態プロファイル及び身体に対する用量の効果を含む様々な考慮事項に依存する。例えば、患者の状態が改善しない場合、医療提供者の判断により、対象の疾患又は状態の症状を改善するか、さもなければ制御、あるいは制限するために、最初の治療薬又は涙の産生を増加させる処置の投与頻度を増加させるか、あるいは慢性的に投与することができる。別の例において、対象の状態が改善した場合、医療提供者の判断により、対象の効果的な治療を維持しながら、最初の治療薬又は涙の産生を増加させる処置の投与回数を減らすことができる。例えば、1回以上の用量の投与間の期間を延長したり、対象に1回以上の用量を投与する日数間の期間を延長したりする。非限定的な例として、1回以上の用量の毎日の投与は、1日おき又は1週間に1回の1回以上の用量の投与に変更される。
【0313】
本明細書で使用される「用量」という用語は、最初の治療薬の用量又は涙の産生を増加させる処置の用量を指す場合がある。
【0314】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、最初の治療薬の用量は、遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドを運ぶウイルスベクターの用量である。このような場合、遺伝子産物の適切な用量(例えば、有効量)の送達は、一定期間にわたって治療上有効な量の遺伝子産物の発現を可能にする標的部位に適切な量/力価のウイルスベクターを投与することによって達成される。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターはAAVベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは涙腺に投与される。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、局所投与によって涙腺に投与される。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、直接注射によって涙腺に投与される。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターの投与は、一定期間(例えば、約1日、約2日、約4日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約9ヶ月、約12ヶ月又はそれ以上)の遺伝子産物の安定な産生をもたらす。
【0315】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターの用量は、遺伝子産物の安定な産生を約1週間もたらす。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターの用量は、遺伝子産物の安定な産生を約2週間もたらす。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターの用量は、遺伝子産物の安定な産生を約3週間もたらす。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターの用量は、遺伝子産物の安定な産生を約4週間もたらす。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターの用量は、遺伝子産物の安定な産生を約1ヶ月間もたらす。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターの用量は、遺伝子産物の安定な産生を約2ヶ月間もたらす。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターの用量は、遺伝子産物の安定な産生を約3ヶ月間もたらす。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターの用量は、遺伝子産物の安定な産生を約4ヶ月間もたらす。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターの用量は、遺伝子産物の安定な産生を約5ヶ月間もたらす。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターの用量は、遺伝子産物の安定な産生を約6ヶ月間もたらす。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターの用量は、遺伝子産物の安定な産生を約9ヶ月間もたらす。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターの用量は、約12ヶ月間遺伝子産物の安定な産生をもたらす。
【0316】
いくつかの実施形態において、本方法は、遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドを有するウイルスベクターを投与することによって、治療上有効な量の遺伝子産物を送達することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドを有するウイルスベクターを投与することによって、有効量の遺伝子産物を送達することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、最初の治療薬の最初の用量及び一又は複数の後続の用量を送達することを含む。一又は複数の後続用量は、最初の用量の後の一定期間後に投与される。いくつかの実施形態において、最初の投与及び次の後続の投与の間のこの期間は、少なくとも1日、少なくとも3日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月又はそれ以上である。いくつかの実施形態において、最初の投与と次の後続の投与との間のこの期間は、1~7日の間、1~4週間の間、2~6週間の間、4~8週間の間、1~3ヶ月の間、2~4ヶ月の間、3~6ヶ月の間、4~12ヶ月の間、6~24ヶ月の間である。いくつかの実施形態において、一又は複数の後続投与間の期間は、少なくとも1日、少なくとも3日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月又はそれ以上である。いくつかの実施形態において、一又は複数の後続投与間の期間は、1~7日の間、1~4週間の間、2~6週間の間、4~8週間の間、1~3ヶ月の間、2~4ヶ月の間、3~6ヶ月の間、4~12ヶ月の間、6~24ヶ月の間である。
【0317】
いくつかの実施形態において、最初の治療薬は反復投与される。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の用量で投与される。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は2回投与される。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は3回投与される。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は4回投与される。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は5回投与される。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は6回投与される。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は7用量で投与される。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は8回投与される。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は9用量で投与される。いくつかの実施形態において、最初の治療薬は10用量で投与される。
【0318】
いくつかの実施形態において、用量は、同じ濃度の最初の治療薬である。いくつかの実施形態において、用量は、異なる濃度の最初の治療薬である。いくつかの実施形態において、反復投与は、同じ眼又は涙腺に投与される。いくつかの実施形態において、反復投与は、少なくとも1つの眼又は涙腺に投与される。
【0319】
いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の投与とは別のスケジュールで投与される。いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の複数回の投与の間の期間を通して投与される。いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の最初の投与後に投与される。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、涙の産生を増加させる処置は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも1年又はそれ以上投与される。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、涙の産生を増加させる治療は、2~52週間、2~40週間、2~36週間、2~24週間、2~12週間、2~8週間、4~52週間、4~40週間、4~36週間、4~24週間、4~12週間、4~8週間、5~52週間、5~40週間、5~36週間、5~24週間、5~12週間、5~8週間、6~52週間、6~40週間、6~36週間、6~24週間、6~12週間又は6~8週間投与される。
【0320】
いくつかの実施形態において、本方法は、涙の産生を増加させる処置を投与することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、有効量の涙の産生を増加させる処置を送達することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、涙の産生を増加させる処置の最初の用量及び一又は複数の後続の用量を送達することを含む。一又は複数の後続用量は、最初の用量の後の一定期間後に投与される。いくつかの実施形態において、最初の投与及び次の後続の投与の間のこの期間は、少なくとも1日、少なくとも3日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月又はそれ以上である。いくつかの実施形態において、最初の投与と次の後続の投与との間のこの期間は、1~7日の間、1~4週間の間、2~6週間の間、4~8週間の間、1~3ヶ月の間、2~4ヶ月の間、3~6ヶ月の間、4~12ヶ月の間、6~24ヶ月の間である。いくつかの実施形態において、1つ以上の後続投与間の期間は、少なくとも1日、少なくとも3日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月又はそれ以上である。いくつかの実施形態において、1つ以上の後続投与間の期間は、1~7日の間、1~4週間の間、2~6週間の間、4~8週間の間、1~3ヶ月の間、2~4ヶ月の間、3~6ヶ月の間、4~12ヶ月の間、6~24ヶ月の間である。
【0321】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、最初の治療薬及び/又は涙の産生を増加させる処置の投与は、最初の治療薬の投与初日後に1日1~4回、最初の治療薬の投与初日後に1日1回、最初の治療薬の投与初日後に1日2回又は最初の治療薬の投与初日後に1日3回、それを必要とする対象に投与される。
【0322】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、投与間の時間の長さが増加される。例えば、4時間ごとの投与は、8時間又は12時間ごとの投与に変更される。
【0323】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、最初の治療薬の総量又は涙の産生を増加させる処置の総量は、1回あたりの投与量が経時的に減少する。例えば、2000マイクログラムの用量は、1000マイクログラムに低減され、低減された用量の投与は、対象の有効な治療を維持する。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、投与量の減少は、最初の治療薬又は涙の産生を増加させる処置の投与の減少によって提供される。例えば、鼻腔用スプレーとして投与される場合、涙の産生を増加させる処置の2回の投与又はスプレーを含む投与量は、1回のみのスプレーを投与することによって減少する。
【0324】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、投与は、各鼻孔への涙の産生を増加させる処置の複数の投与を含む。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、投与は、1つの鼻孔への涙の産生を増加させる処置の複数回の投与を含む。
【0325】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、投与は、各鼻孔への涙の産生を増加させる処置の単回投与を含む。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、投与は、1つの鼻孔への、涙の産生を増加させる処置の単回投与を含む。
【0326】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、涙の産生を増加させる処置は、1回の投与につき1つの鼻孔に投与される。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、涙の産生を増加させる処置は、1回の投与につき両方の鼻孔に投与される。
【0327】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、最初の治療薬又は涙の産生を増加させる処置は、少なくとも28日間投与される。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、最初の治療薬は、涙の産生を増加させる処置と同時又は間隔をおいて1回以上投与される。その後、涙の産生を増加させる処置の投与を継続することができる。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、涙の産生を増加させる処置は、少なくとも1ヶ月以上投与される。
【0328】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、涙の産生を増加させる処置は、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも7ヶ月間、少なくとも8ヶ月間、少なくとも9ヶ月間、少なくとも10ヶ月間、少なくとも11ヶ月間又は少なくとも1年間投与される。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、涙の産生を増加させる処置は、2~52週間、2~40週間、2~36週間、2~24週間、2~12週間、2~8週間、4~52週間、4~40週間、4~36週間、4~24週間、4~12週間、4~8週間、5~52週間、5~40週間、5~36週間、5~24週間、5~12週間、5~8週間、6~52週間、6~40週間、6~36週間、6~24週間、6~12週間又は6~8週間投与される。
【0329】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、本方法は、有効量の最初の治療薬の最初の投与及び一又は複数のその後の投与を含む。一又は複数の後続投与は、最初のの投与の一定期間後に投与される。この最初の投与及び次の後続投与の間の期間は、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間又は少なくとも8時間である。最初の投与と次の投与との間の期間は、1~3時間、2~4時間、3~6時間又は4~8時間である。つ以上の後続投与間の期間は、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間又は少なくとも8時間である。一又は複数の後続投与間の期間は、1~3時間、2~4時間、3~6時間又は4~8時間の間である。
【0330】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の後に、それを必要とする対象に投与される。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の前に、それを必要とする対象に投与される。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、涙の産生を増加させる処置及び最初の治療薬は、それを必要とする対象に同時に投与される。
【0331】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、本方法は、有効量の涙の産生を増加させる処置及び有効量の最初の治療薬を投与することを含む。いくつかの実施形態において、投与される最初の治療薬の各用量に対して、涙の産生を増加させる処置の用量が、最初の治療薬の前に投与される。いくつかの実施形態において、投与される最初の治療薬の各用量に対して、涙の産生を増加させる処置の用量が、最初の治療薬の後に投与される。いくつかの実施形態において、最初の治療薬の各投与量に対して、涙の産生を増加させる処置の投与量が、最初の治療薬と同時に投与される。いくつかの実施形態において、最初の治療薬の各用量に対して、涙の産生を増加させる処置の複数用量が、最初の治療薬の投与後に時間をかけて投与される。
【0332】
最初の治療薬及び涙の産生を増加させる処置とのいずれか一方又は両方の複数用量を一定期間にわたって対象に投与する慢性治療の過程において、対象は、涙の産生を増加させる処置の用量よりも最初の治療薬の用量を多く投与されることがあり、あるいはその逆もある。対象に投与される最初の治療薬の用量及び涙の産生を増加させる処置の用量の比率は、1:1である必要はない。比率は、対象に処方される投与レジメンに依存する。本明細書中に開示される実施形態の一部において、対象に投与される最初の治療薬の用量及び涙の産生を増加させる処置の用量の比は、治療コースにわたって1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9又は1:10である。
【0333】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、本方法は、有効量の最初の治療薬の最初の投与量及び一又は複数のその後の投与量を投与することを含む。
【0334】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、最初の治療薬の投与量及び有効量の涙の産生を増加させる処置の投与量の間の期間は、5分未満、5~60分の間、30~90分の間、1~3時間の間、1~8時間の間、1~12時間の間である、1~8時間の間、1~12時間の間、1~24時間の間、8~12時間の間、8~24時間の間、12~24時間の間、1~3日の間、1~7日の間、1~14日の間、1~28日の間、3~7日の間、3~14日の間、3~28日の間、7~14日の間又は7~28日の間である。
【0335】
ここに記述されている実施形態の一部において、本方法は、最初の治療薬の最初の用量及び一又は複数のその後の用量並びに涙の産生を増加させる処置の最初の用量及び一又は複数のその後の用量を投与することを含む。一又は複数の後続用量は、最初の用量の後の一定期間後に投与される。この最初の投与及び次の後続の投与の間の期間は、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間又は少なくとも8時間である。最初の投与及び次の投与の間の期間は、1~3時間、2~4時間、3~6時間又は4~8時間である。つ以上の後続投与間の期間は、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間又は少なくとも8時間である。一又は複数の後続投与間の期間は、1~3時間、2~4時間、3~6時間又は4~8時間の間である。
【0336】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、涙の産生を増加させる処置及び最初の治療薬は、別個の剤形でそれを必要とする対象に投与される。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、涙の産生を増加させる処置及び最初の治療薬は、組み合わせた剤形で、それを必要とする対象に投与される。
【0337】
いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の投与に続いて投与される。いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の投与から4日、5日、6日、7日、8日、9日又は10日後に投与される。いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の投与から4日後から投与される。いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の投与から5日後に投与される。いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の投与の6日後から投与される。いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の投与の7日後から投与される。いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の投与の8日後から投与される。いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の投与後9日目から投与される。いくつかの実施形態において、涙の産生を増加させる処置は、最初の治療薬の投与後10日目から投与される。
【0338】
涙刺激剤の投与量及び容量
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、本明細書中に記述されている投与量は、予防的治療及び/又は治療的処置のために投与される。治療的処置に有効な投与量は、疾患又は症状の重篤度及び経過、以前の治療、患者の健康、状態、体重及び薬剤に対する反応並びに治療する医療提供者の判断に依存する。治療上有効な量は、任意に、用量漸増臨床試験を含むが、これに限定されない方法によって決定される。
【0339】
予防的適用において、本明細書中に記述されている医薬製剤は、特定の疾患、障害又は症状に罹患しやすいか、そうでなければその危険性がある患者に投与される。このような量は、「予防的に有効な量又は用量」と定義される。この使用において、量は、疾患、障害又は症状の重篤度及び経過、以前の治療、患者の健康状態及び薬剤に対する反応並びに治療する医療提供者の判断に依存する。
【0340】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象に投与されるnAChRアゴニストの1回当たりの量は、5~4000マイクログラム、5~1000マイクログラム、10~2000マイクログラム、10~700マイクログラム、100~700マイクログラムである、100~600マイクログラム、100~500マイクログラム、200~700マイクログラム、200~600マイクログラム、200~500マイクログラム、300~600マイクログラム、300~500マイクログラム、900~4000マイクログラム、900~3000マイクログラム、900~2500マイクログラム、900~2000マイクログラム、1000~4000マイクログラム、1000~2500マイクログラム、1000~2000マイクログラム、1250~4000マイクログラム、1250~2500マイクログラム、1250~2000マイクログラム、1500~4000マイクログラム、1500~3000マイクログラム、1500~2500マイクログラム、1500~2000マイクログラム、1800~4000マイクログラム、1800~3000マイクログラム、1800~2500マイクログラム、1800~2250マイクログラム、2000~4000マイクログラム、2000~3000マイクログラム若しくは2000~2500マイクログラム又は薬学的に許容されるその塩の対応する量である。
【0341】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象に投与されるnAChRアゴニストの用量あたりの量は、900~2500マイクログラム、1000~2500マイクログラム、1500~3000マイクログラム、1800~2500マイクログラム、1800~2250マイクログラム又は薬学的に許容されるその塩の対応する量である。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象に投与されるバレニクリン又は化合物1の1回当たりの量は、900~2500マイクログラム、1000~2500マイクログラム、1500~3000マイクログラム、1800~2500マイクログラム、1800~2250マイクログラム又は薬学的に許容されるその塩の対応する量である。
【0342】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象に投与されるバレニクリンの1回当たりの量は、5~15マイクログラム、50~65マイクログラム、100~125マイクログラム又は薬学的に許容されるその塩の対応する量である。
【0343】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象に投与される化合物1の1回当たりの量は、150~300マイクログラム、900~1200マイクログラム、2100~2400マイクログラム又は薬学的に許容されるその塩の対応する量である。
【0344】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、nAChRアゴニストの薬学的に許容される塩が投与される。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、nAChRアゴニストの遊離塩基が投与される。
【0345】
対象に投与される医薬製剤の量は、投与経路及び送達デバイスの種類を含む様々な要因に依存する。鼻腔投与の場合、医薬製剤の容量は、有効量の薬物を鼻腔に送達するのに十分でなければならない。容量が少なすぎると、薬物が鼻腔に到達しない可能性がある。一方、対象に投与するのに実用的でない、不快である又は困難であるほど、容積を大きくすべきではない。さらに、容積が大きすぎると、医薬製剤が送達を意図していない部位に送達される可能性がある。その結果、医薬製剤が無駄になったり、組織に刺激を与えたりする可能性がある。例えば、投与量を200マイクロリットルから100マイクロリットルに減らすことにより、投与後の鼻腔内滴下が減少し、咽頭上部/軟口蓋の刺激の発生率が減少する可能性がある。
【0346】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、鼻腔投与のための医薬製剤で投与され、1投与あたりの医薬製剤の総容量は、50~250マイクロリットル、75~125マイクロリットル、150~250マイクロリットル又は175~225マイクロリットルである。
【0347】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、鼻腔投与用の医薬製剤で投与され、1投与あたりの医薬製剤の総容量は、約50マイクロリットル、約75マイクロリットル、約100マイクロリットル、約125マイクロリットル、約150マイクロリットル、約175マイクロリットル、約200マイクロリットル、約225マイクロリットル又は約250マイクロリットルである。
【0348】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、鼻腔投与用の医薬製剤で投与され、鼻孔あたりの医薬製剤の総容量は、50~250マイクロリットル、75~125マイクロリットル、150~250マイクロリットル又は175~225マイクロリットルである。
【0349】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、鼻腔投与用の医薬製剤で投与され、鼻孔あたりの医薬製剤の総容量は、約50マイクロリットル、約75マイクロリットル、約100マイクロリットル、約125マイクロリットル、約150マイクロリットル、約175マイクロリットル、約200マイクロリットル、約225マイクロリットル又は約250マイクロリットルである。
【0350】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、1mg/mL~40mg/mL、1mg/mL~30mg/mL、1mg/mL~20mg/mL、1mg/mL~10mg/mL、1mg/mL~5mg/mL、2mg/mL~40mg/mL2mg/mL~30mg/mL、2mg/mL~20mg/mL、2mg/mL~10mg/mL、2mg/mL~5mg/mL、5mg/mL~40mg/mL、5mg/mL~30mg/mL、5mg/mL~20mg/mL、5mg/mL~10mg/mL又は5mg/mL~15mg/mLのnAChRアゴニスト又は薬学的に許容されるその塩対応する量を含む鼻腔投与用医薬製剤で投与される。
【0351】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、鼻腔投与のための医薬製剤で投与され、前記用量あたりのnAChRアゴニストの濃度は、0.01%(w/v)~0.5%(w/v)、0.01%(w/v)~1.0%(w/v)、0.01%(w/v)~1.5%(w/v)、0.01%(w/v)~2.0%(w/v)、0.01%(w/v)~2.5%(w/v)、0.01%(w/v)~3.0%(w/v)、0.5%(w/v)~1.0%(w/v)、0.5%(w/v)~1.5%(w/v)、0.5%(w/v)~2.0%(w/v)、0.5%(w/v)~2.5%(w/v)、0.5%(w/v)~3.0%(w/v)、1.0%(w/v)~1.5%(w/v)、1.0%(w/v)~2.0%(w/v)、1.0%(w/v)~2.5%(w/v)、1.0%(w/v)~3.0%(w/v)、1.5%(w/v)~2.0%(w/v)、1.5%(w/v)~2.5%(w/v)、1.5%(w/v)~3.0%(w/v)、2.0%(w/v)~2.5%(w/v)若しくは2.0%(w/v)~3.0%(w/v)又は薬学的に許容されるその塩の対応する量である。
【0352】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、バレニクリン又はその薬学的に許容される塩は、鼻腔投与用の医薬製剤中に投与され、前記1投与あたりのバレニクリンの濃度は、約0.058%(w/v)又は約0.12%(w/v)又は薬学的に許容されるその塩の対応する量である。
【0353】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、バレニクリン又はその薬学的に許容される塩は、鼻腔投与用の医薬製剤で投与され、前記1投与当たりのバレニクリンの濃度は、約0.06%(w/v)未満又は0.15%(w/v)未満であるか、あるいは薬学的に許容されるその塩の対応する量である。
【0354】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、バレニクリン又はその薬学的に許容される塩は、鼻腔投与用の医薬製剤中に投与され、前記1用量あたりのバレニクリンの濃度は、約0.058%(w/v)又は約0.12%(w/v)又は薬学的に許容されるその塩の対応する量であり;及び前記1用量あたりの容量は、約50マイクロリットルである。
【0355】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、バレニクリン又はその薬学的に許容される塩は、鼻腔投与用の医薬製剤中で投与され、前記1用量あたりのバレニクリンの濃度は、約0.06%(w/v)未満又は0.15%(w/v)未満又は薬学的に許容されるその塩の対応する量であり;及び前記1用量あたりの容量は、約50マイクロリットルである。
【0356】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、バレニクリン又はその薬学的に許容される塩は、鼻腔投与用の医薬製剤中で投与され、前記1用量あたりのバレニクリンの濃度は、約0.058%(w/v)又は約0.12%(w/v)又は薬学的に許容されるその塩の対応する量であり;及び前記1用量あたりの容量は、約100マイクロリットルである。本明細書中の実施形態の一部において、100マイクロリットルの用量は、2つの50マイクロリットルのスプレーとして送達される。本明細書中の実施形態の一部において、100マイクロリットル用量は、単一の100マイクロリットルスプレーとして送達される。
【0357】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、バレニクリン又はその薬学的に許容される塩は、鼻腔投与用の薬学的製剤中で投与され、前記1用量あたりのバレニクリンの濃度は、約0.06%(w/v)未満又は0.15%(w/v)未満又は薬学的に許容されるその塩の対応する量であり;及び前記1用量あたりの容量は、約100マイクロリットルである。本明細書中の実施形態の一部において、100マイクロリットルの用量は、2つの50マイクロリットルのスプレーとして送達される。本明細書中の実施形態の一部において、100マイクロリットル用量は、単一の100マイクロリットルスプレーとして送達される。
【0358】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、nAChRアゴニストは、薬学的に許容される塩である。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、nAChRは、化合物1ガラクタレート(例えば、ヘミ-ガラクタル酸塩二水和物)又は化合物1シトラート(例えば、モノ-シトラート)である。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、化合物1は遊離塩基である。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、nAChRアゴニストはバレニクリンタルトレートである。
【0359】
それを必要とする対象に投与されるnAChRアゴニスト遊離塩基及び対応する量の塩は、医薬製剤のnAChRアゴニスト濃度及びそれを必要とする対象に投与される医薬製剤の容量に基づいて計算することができる。以下の例は、医薬製剤の濃度及び体積並びに対象に投与されるnAChRアゴニスト塩及び遊離塩基の量との関係を示す。
【0360】
例えば、2.0%の化合物1ヘミ-ガラクタル酸二水和物溶液は、溶液1mLあたり20mgの塩に相当する。2.0%化合物1ヘミガラクタル酸二水和物溶液は、1.1%化合物1遊離塩基溶液に相当する。1.1%の遊離塩基溶液は、11.1mg/mLの化合物1遊離塩基に相当する。
【0361】
50μLの2.0%化合物1ヘミ-ガラクタル酸二無水物溶液は約1000μgの化合物1ヘミ-ガラクタル酸二無水物を含み、これは約554μgの化合物1遊離塩基に相当する。同様に、100μLの2.0%化合物1ヘミ-ガラクタル酸二水和物溶液は、約2000μgの化合物1ヘミ-ガラクタル酸二水和物を含み、これは約1108μgの化合物1遊離塩基に相当する。塩の量及び対応する遊離塩基の量は、他の濃度又は容量についても同様の方法で計算することができる。
【0362】
別の例において、2.3%化合物1モノ-クエン酸溶液は、溶液1mLあたり23.2mgの塩に相当する。2.3%の化合物1モノ-クエン酸塩溶液は、1.1%の化合物1遊離塩基溶液に相当する。1.1%の遊離塩基溶液は、11.1mg/mLの化合物1の遊離塩基に相当する。
【0363】
50μLの2.3%化合物1モノ-クエン酸塩溶液は、約1161μgの化合物1モノ-シトラートを含み、これは約554μgの化合物1遊離塩基に相当する。同様に、100μLの2.3%化合物1モノクエン酸溶液は、約2,322μgの化合物1モノ-シトラートを含み、これは約1,108μgの化合物1遊離塩基に相当する。塩の量及び対応する遊離塩基の量は、他の濃度又は容量についても同様の方法で計算することができる。
【0364】
別の例において、0.10%酒石酸バレニクリン溶液は、溶液1mLあたり1.00mgの塩に相当する。0.10%酒石酸バレニクリン溶液は、溶液中0.0585%のバレニクリン遊離塩基に相当する。0.0585%の遊離塩基溶液は0.584mg/mLのバレニクリン遊離塩基に相当する。
【0365】
0.10%酒石酸バレニクリン溶液50μLは、約50μgのバレニクリンタルトレートを含み、これは約29.2μgの遊離塩基に相当する。同様に、0.10%酒石酸バレニクリン溶液100μLは、約100μgのバレニクリンタルトレートを含み、これはバレニクリン遊離塩基約58.5μgに相当する。塩の量及び対応する遊離塩基の量は、他の濃度又は容量についても同様の方法で計算することができる。
【0366】
別の例において、0.20%酒石酸バレニクリン溶液は、溶液1mLあたり2.00mgの塩に相当する。0.20%酒石酸バレニクリン溶液は、溶液中0.117%のバレニクリン遊離塩基に相当する。0.117%の遊離塩基溶液は1.17mg/mLのバレニクリン遊離塩基に相当する。
【0367】
0.20%酒石酸バレニクリン溶液50μLは、約100μgのバレニクリンタルトレートを含み、これは約58.5μgの遊離塩基に相当する。同様に、0.20%酒石酸バレニクリン溶液100μLは、約200μgのバレニクリンタルトレートを含み、これは約117μgの遊離塩基に相当する。塩の量及び対応する遊離塩基の量は、他の濃度又は容量についても同様の方法で計算することができる。
【0368】
対応する塩形態の量は、遊離塩基の量に乗算係数を乗じて計算することができる。乗算係数は、塩形態の分子量を遊離塩基の分子量で割ることにより算出される。例えば、式Iの化合物の遊離塩基の量をモノ-クエン酸塩に変換するための乗算係数は2.096である。式Iの遊離塩基の化合物の量をヘミ-ガラクタル酸二水和物に変換するための乗算係数は1.805である。バレニクリン遊離塩基の量をバレニクリンタルトレートに変換するための乗算係数は1.710である。
【0369】
遊離塩基の対応する量は、塩形態の量に乗算係数を乗じて計算することができる。この係数は、遊離塩基の分子量を塩形態の分子量で割ることにより算出される。例えば、バレニクリンタルトレートの量を遊離塩基に変換するための乗算係数は0.5846である。式Iモノ-シトラートの化合物の量を遊離塩基に変換するための乗算係数は0.477である。式Iヘミ-ガラクタル酸二水和物の化合物の量を遊離塩基に変換するための乗算係数は0.554である。
【0370】
本明細書中に開示される実施形態の一部において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、対象の鼻腔に投与される。本明細書に記載の医薬製剤には、液体、懸濁液、エアロゾル、ゲル、軟膏、乾燥粉末、クリーム、ペースト、ローション又はバームが含まれるが、これらに限定されない。
【0371】
本明細書中に開示される実施形態の一部において、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、スプレーポンプ、シリンジ、スポイト、ボトルネブライザー、噴霧ポンプ、吸入器、粉末噴霧装置、気化器、パッチ、薬用スティック、ピペット又は液体の噴射によって鼻腔内に投与される。
【0372】
いくつかの実施形態において、nAChRアゴニストは、TYRVAYA(バレニクリン溶液)点鼻スプレーであり、0.05mLごとに0.03mgのバレニクリン(酒石酸バレニクリン0.05mgに相当)を送達する点鼻スプレーである。タイバヤ(バレニクリン液)点鼻液は、0.6mg/mLの透明な点鼻用液剤である。
【0373】
副作用
本開示は、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩の局所投与(鼻腔内投与)の方法を提供する。局所投与は、血液脳関門を通過し得る薬物の量を制限することによって潜在的な副作用を低減することを含む、全身投与に対する利点を有する。本明細書中に開示される実施形態の一部において、投与されるnAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、全身的に生物学的に利用可能ではない。本明細書中に開示される実施形態の一部において、本方法は、望ましくない全身性の副作用をもたらさない。本明細書中に開示される実施形態の一部において、本方法は、望ましくない精神作用性の副作用をもたらさない。
【0374】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象は、涙の過剰分泌、咳、咽頭刺激、注入部位刺激、くしゃみ、鼻咽頭炎、鼻刺激、歯痛、口渇及び頭痛を含む群から選択される一又は複数の副作用を経験しない。
【0375】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象は、最初の用量又は1回以上の後続用量の投与から5分~60分以内に、涙の過剰分泌、咳、喉の刺激、注入部位の刺激、くしゃみ、鼻咽頭炎、鼻の刺激、歯痛、口渇及び頭痛を含む群から選択される一又は複数の副作用を経験しない。
【0376】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、涙の過剰分泌は、対象のシルマー(シルマー)スコアの20mmを超える増加によって示される。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、涙の過剰生産は、実用的でないか、あるいは望ましくない量の過剰な涙によって示される。例えば、対象のアイメイクを妨害するような量の涙又は対象が過剰な涙をティッシュで拭き取ったり吸収したりするような量の涙は、いずれも非実用的で望ましくない効果である。
【0377】
屈折矯正手術
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象者は、眼の屈折矯正手術を受けるか、あるいは受けたことがあるであろう。屈折矯正手術の例には、レーザー支援インサイチュ角膜切除術(LASIK)、乱視角膜切除術(AK)、光屈折矯正角膜切除術(PRK)及び辺縁弛緩切開術(LRI)が含まれる。使用するための方法、用途及び組成物のいくつかの実施形態において、屈折矯正手術は、レーザー支援インサイチュ角膜切除術(LASIK)である。使用するための方法、用途及び組成物のいくつかの実施形態において、屈折矯正手術は乱視角膜切除術(AK)である。使用するための方法、用途及び組成物のいくつかの実施形態において、屈折矯正手術は光屈折矯正角膜切除術(PRK)である。使用するための方法、用途及び組成物のいくつかの実施形態において、屈折矯正手術は辺縁弛緩切開術(LRI)である。いくつかの実施形態において、本明細書中に記述されている化合物又は組成物は、手術前及び手術後の両方に投与される。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象は、2週間以内に眼の屈折矯正手術を受けたか、あるいは2週間以内に眼の屈折矯正手術を受ける予定である。
【0378】
レーシック人口(LASIK POPULATION)
いくつかの実施形態において、本明細書中に記述されている最初の治療薬及び/又は涙の産生を増加させる処置は、手術前に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書中に記述されている最初の治療薬及び/又は涙の産生を増加させる処置は、手術後に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書中に記述されている最初の治療薬及び/又は涙の産生を増加させる処置は、手術前及び手術後の両方に投与される。本明細書中に記述されている実施形態の一部において、対象は、2週間以内にレーシック手術を受けたか、あるいは2週間以内にレーシック手術を受ける予定である。
【0379】
角膜炎
神経成長因子、上皮成長因子、トランスフォーミング増殖因子β、肝細胞増殖因子、血小板由来成長因子、血管内皮増殖因子、芽細胞成長因子、ケラチノサイト成長因子及びインスリン様成長因子を含む多くの生物学的に活性な成長因子が、正常な涙液膜に含まれている。角膜が刺激や圧力を感知すると、まぶたが閉じ、角膜と眼を保護するために涙が分泌される。
【0380】
神経麻痺性角膜症は、角膜の感受性を低下させる。神経麻痺性角膜症(NK)の患者は、角膜を支配する神経が適切に機能しないため、角膜の機能が損なわれている;NKにおいて、これらの神経は、正常に機能しないため、上皮と呼ばれる角膜の外側の層が破壊され、上皮欠損が生じる。さらに進行した神経麻痺性角膜症において、角膜間質と呼ばれる内層が破壊され、角膜が薄くなることをもたらす。これは、間質の「融解」と呼ばれる。間質の融解が進行すると、角膜は、ひどい程度まで薄くなり、その結果、眼球の内側に穴が開いたり、開口部ができたりして、感染症にかかり、眼球を失う可能性がある。NKは、角膜の創傷治癒不良、角膜の瘢痕化、視力低下など、さまざまな合併症を引き起こす可能性がある。角膜を支配する神経を損傷する可能性のある病態は多種多様である。
【0381】
障害がどの程度進行しているかによって、この障害を治療するためにさまざまな治療法が用いられる。最近では、組み換えヒト神経成長因子(rhNGF)(Oxervate、Dompe)がNKの治療に承認されている。残念ながら、この治療法には、製品を1日6回、2時間間隔で、8週間投与する必要があること、製品がピペットで送達されるため自己投与が面倒であること、製品を冷蔵保存する必要があること、4週間分のコストが10Kドル以上であることなど、いくつかの欠点がある。
【0382】
本開示は、角膜炎を有する対象を治療するための方法、使用、及び組成物を提供する。いくつかの実施形態において、角膜炎はNKである。いくつかの実施形態において、本明細書中に開示されるNKを有する対象を処置するための方法及び組成物は、天然の涙液を刺激する。いくつかの実施形態において、NKを有する対象は、本明細書中で提供される組成物を1日1回又は2回投与される。いくつかの実施形態において、NKを有する対象は、本明細書中で提供される組成物を1日1回又は2回、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間又は少なくとも8週間投与される。いくつかの実施形態において、NKを有する対象は、本明細書中で提供される組成物を1日2回、少なくとも8週間投与される。いくつかの実施形態において、NKを有する対象は、本明細書中で提供される組成物を1日2回、少なくとも8週間経鼻投与される。
【0383】
Cmax血漿濃度
本明細書に記載の方法及び使用は、涙の産生を増加させるために投与される薬物の局所的な経鼻投与を含む。開示される方法及び使用は、局所的な鼻腔内投与に対するものであるため、涙の産生を増加させるために投与される薬物(例えば、nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩)の循環血漿中の濃度は、全身投与形態(例えば、経口製剤の摂取)から達成される濃度と比較して低い。nAChRアゴニストの血漿中濃度が低いことにより、吐き気、睡眠障害、便秘、鼓腸、嘔吐、発疹及びそう痒症のような皮膚症状、頭痛、腹痛、消化不良、胃食道逆流症及び口渇のような全身循環中のnAChRアゴニストに関連する潜在的な望ましくない副作用を回避することができる。
【0384】
対象におけるnAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩の血漿中濃度を特徴付ける1つの方法は、Cmax(nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩が対象に投与された後、2回目の投与前に達成される最大又はピーク血清中濃度)を測定することである。Cmaxを決定する方法は、当技術分野において知られている。Cmaxを決定することを含む、式Iの化合物の薬物動態学的プロフィールを決定するために使用されるプロトコルの非限定的な例は、実施例3に提供される。
【0385】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、Cmaxは、対象について計算される。いくつかの実施形態において、Cmaxは、2人以上の対象の平均Cmaxから計算される。いくつかの実施形態において、Cmaxは、サブセット集団の平均Cmaxから計算される。
【0386】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、それを必要とする対象は、5ng/mL未満、4ng/mL未満、3ng/mL未満又は2ng/mL未満のnAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩の血漿中Cmaxを有する。
【0387】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、それを必要とする対象は、5ng/mL未満、4ng/mL未満、3ng/mL未満又は2ng/mL未満のnAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩の血漿中Cmaxを有する;及び前記それを必要とする対象は、10マイクログラム~150マイクログラム、10マイクログラム~100マイクログラム、10マイクログラム~50マイクログラム、50マイクログラム~150マイクログラム、50マイクログラム~100マイクログラム、100マイクログラム~1500マイクログラム、100マイクログラム~600マイクログラム、200マイクログラム~400マイクログラム、400マイクログラム~600マイクログラム又は750マイクログラム~1200マイクログラムのnAChRアゴニスト又は薬学的に許容されるその塩の対応する量を含む用量を投与された。
【0388】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、それを必要とする対象は、化合物1又はその薬学的に許容される塩の血漿中Cmaxを5ng/mL未満、4ng/mL未満、3ng/mL未満又は2ng/mL未満有し;及び前記それを必要とする対象は、100マイクログラム~1500マイクログラム、100マイクログラム~600マイクログラム、200マイクログラム~400マイクログラム、400マイクログラム~600マイクログラム又は750マイクログラム~1200マイクログラムの化合物1又は薬学的に許容されるその塩の対応する量を含む用量を投与された。
【0389】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、それを必要とする対象は、化合物1又はその薬学的に許容される塩の血漿中Cmaxを、5ng/mL未満、4ng/mL未満、3ng/mL未満又は2ng/mL未満有し;及び前記それを必要とする対象は、150マイクログラム~300マイクログラム、900マイクログラム~1200マイクログラム、2100マイクログラム~2400マイクログラムの化合物1又は薬学的に許容されるその塩の対応する量を含む用量を投与された。
【0390】
本明細書中に記述されている実施形態の一部において、それを必要とする対象は、バレニクリン又はその薬学的に許容される塩の血漿中Cmaxを、5ng/mL未満、4ng/mL未満、3ng/mL未満又は2ng/mL未満有し;及び前記それを必要とする対象は、5マイクログラム~15マイクログラム、50マイクログラム~65マイクログラム、100マイクログラム~125マイクログラムのバレニクリン又は薬学的に許容されるその塩の対応する量を含む用量を投与された。
【0391】
本開示全体を通じて、開示されるnAChRアゴニストの量は、製剤中に存在するnAChRアゴニスト遊離形態の量を指す。本明細書中で使用する場合、「対応する量」という用語は、製剤中に記載されるnAChR遊離形態の量を得るのに必要なnAChRアゴニストの薬学的に許容される塩の量を指す。化合物の塩の「対応する量」、例えば化合物1の薬学的に許容される塩の対応する量を計算する方法は、化合物の遊離形態と塩形態との間の分子量の差を考慮すれば、当業者には明らかであろう。例えば、175.24gの化合物1の遊離塩基は、316.34gのヘミ-ガラクタル酸二水和物塩又は367.36gのモノ-クエン酸塩に相当する。別の例では、211.267gのバレニクリン遊離塩基は、361.354gの酒石酸バレニクリンに相当する。
【0392】
本明細書において、「約(about)」という用語は、「約(approximately)」という用語と同義に使用される。例示的に、量に関する「約(about)」という用語の使用は、引用値からわずかに外れた値、例えば、プラス若しくはマイナス0.1%~20%、プラス若しくはマイナス0.1%~10%、プラス若しくはマイナス0.1%~5%又はプラス若しくはマイナス0.1%~2%を示す。
【0393】
本開示全体を通して、眼表面障害、角膜障害、前房障害を治療する方法又は遺伝子産物を眼表面に送達する方法の文脈内で議論された様々な実施形態は、医薬の製造に使用するための化合物、様々な方法に使用するための化合物、医薬製剤及びキットに関連する実施形態にも適用することができる。
【0394】
有利には、最初の治療薬が、対応する遺伝子産物を有するベクターを投与することによって送達される場合、本方法は、眼表面上での遺伝子産物の発現;及び/又はウイルスベクター単独の投与と比較して、所定時間(例えば、約1分、約2分、約4分、約3分、約5分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約8時間、約12時間、約18時間、約1日、約2日、約3日、約5日又は約1週間)において眼表面に送達される遺伝子産物の量の増加をもたらす。いくつかの実施形態において、所定時間は約5分である。いくつかの実施形態において、所定時間は約30分である。いくつかの実施形態において、所定時間は約1時間である。いくつかの実施形態において、所定時間は約2時間である。本明細書で使用する場合、「所定時間」toは、第1の基準時点(例えば、組成物の投与又はその後の任意の時点)及び第2の基準時点(生物学的サンプルの採取など)の間の時間間隔を指す。所定時間は、治療効果又は涙液産生増加の速度論などの理論的考察により、あるいは使用するアッセイに適切な所定時間を決定するための時間経過実験を行うことにより決定することができる。所定の時間は、眼表面、涙液膜又は別の解剖学的部位への選択された分子の変化率及び/又はフラックスの計算を可能にするように選択される。
【0395】
いくつかの実施形態において、眼表面上の遺伝子産物の発現及び/又は量を測定するために、眼表面から生物学的試料を採取するための採取装置が使用される。いくつかの実施形態において、採取装置は、最初の治療薬の投与後の所定の時間に試料を採取するために使用される。いくつかの実施形態において、採取装置は、一定時間(例えば、約1分、約2分、約4分、約3分、約5分、約30分又は約1時間)眼に適用される。いくつかの実施形態において、収集デバイスは、眼の下部暗嚢から流体を収集するために適用される。いくつかの実施形態において、収集装置は、涙半月板から流体を収集するために適用される。いくつかの実施形態において、収集装置は、眼球前膜から流体を収集するために適用される。いくつかの実施形態において、収集装置は芯である。いくつかの実施形態において、収集装置はシルマーストリップである。いくつかの実施形態において、収集装置は毛細管である。
【0396】
いくつかの実施形態において、眼表面上の遺伝子産物の量は、採取装置を適用して対象から流体を採取した後に、採取した生物学的試料中の遺伝子産物の量を決定することによって測定することができる。いくつかの実施形態において、タンパク質質量分光法を使用して遺伝子産物の量を定量することができる。非限定的な例として、収集された生物学的試料は、プロテアーゼ消化に供されることができ、次いで、遺伝子産物の量は、LC-MS/MS手順を介して定量され得る。質量分析に基づくタンパク質定量法は、当該技術分野において公知である。いくつかの実施形態において、収集された生物学的試料中の遺伝子産物の量は、ウェスタンブロット、ELISA、定量的PCR、ノーザンブロット、サザンブロット、ドットブロット、ラテラルフローアッセイ、生物層干渉計、蛍光分光法、発光分光法、紫外/可視分光法、分光光度計、分析的超遠心分離遠心分離、動的光散乱、サイズ排除クロマトグラフ、イオン交換クロマトグラフ、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー又は他の定量的若しくは半定量的分析法によって決定される。
【0397】
いくつかの実施形態において、収集された生物学的試料中の遺伝子産物の量は、タンパク質アレイによって決定することができる。いくつかの実施形態において、採取した生物学的試料中の遺伝子産物の量は、ウェスタンブロッティングによって決定することができる。いくつかの実施形態において、収集された生物学的試料中の遺伝子産物の量は、イムノブロットアッセイによって決定され得る。いくつかの実施形態において、採取した生物学的試料中の遺伝子産物の量は、電気泳動アッセイ(例えば、Agilent Bioanalyzer2100の使用)によって決定することができる。いくつかの実施形態において、採取した生物学的試料中の遺伝子産物の量は、マイクロ流体ベースのアッセイを用いて決定することができる。いくつかの実施形態において、収集された生物学的試料中の遺伝子産物の量は、マルチプレックスビーズベースの免疫蛍光サンドイッチアッセイを用いて決定され得る。アッセイ及び分析された遺伝子産物の非限定的な例は、D’Souza and Tong(2014)Eye and Vision 1:6中に記述されている。
【0398】
本明細書中で使用する場合、治療に対する対象の応答を表すための統計的に有意な変化は、所定のアッセイにおける対象のスコアの増減から計算することができる。対象のスコアの変化が統計的に有意であるかどうか及び2組のデータが互いに有意に異なるかどうかを決定する非限定的な例には、ANCOVAモデルに基づく計算並びにt検定及びノンパラメトリックWilcoxon順位和検定などの統計的仮説検定が含まれる。当技術分野において周知の他のモデル及び統計的仮説検定が企図される。
【0399】
医薬組成物及びキット
いくつかの実施形態において、眼球及び/又は涙腺の細胞を効果的に形質導入するのに適した任意の濃度のウイルス粒子を、in vitro又はin vivoで眼及び/又は涙腺の細胞と接触させるために調製することができる。例えば、ウイルス粒子は、108ベクターゲノム/mL又はそれ以上、例えば、5×108ベクターゲノム/mL;109ベクターゲノム/mL;5×109ベクターゲノム/mL、1010ベクターゲノム/mL、5×1010ベクターゲノム/mL;1011ベクターゲノム/mL;5×1011ベクターゲノム/mL;1012ベクターゲノム/mL;5×1012ベクターゲノム/mL;1013ベクターゲノム/mL;1.5×1013ベクターゲノム/mL;3×1013ベクターゲノム/mL;5×1013ベクターゲノム/mL;7.5×1013ベクターゲノム/mL;9×1013ベクターゲノム/mL;1×1014ベクターゲノム/mL、5×1014ベクターゲノム/mL又はそれ以上であるが、典型的には1×1015ベクターゲノム/mL以下の濃度で投与される。同様に、所望の効果を付与するか又は疾患を処置するために眼及び/又は涙腺の細胞に適切な形質導入を提供するのに適した任意の総数のウイルス粒子を、哺乳動物又は霊長類の眼に投与することができる。様々な実施形態において、少なくとも107;5×107;108;5×108;109;5×109、1010、5×1010;1011;5×1011;1012;5×1012;1013;1.5×1013;3×1013;5×1013;7.5×1013;9×1013、1×1014ウイルス粒子又は5×1014ウイルス粒子以上であるが、典型的には1×1015ウイルス粒子以下が、眼につき注入される。哺乳動物又は霊長類の眼へのベクターの投与の任意の適切な数を行うことができる。一実施形態において、本方法は、1回の投与を含み、他の実施形態において、主治医が適切と判断するように、複数回の投与を経時的に行う。
【0400】
対象のウイルスベクターは、限定するものではないが、1×108ベクターゲノム以上、例えば、1×109、1×1010、1×1011、1×1012又は1×1013ベクターゲノム以上、特定の実施態様において、1×1014ベクターゲノム以上を含むが、通常は4×1015ベクターゲノム以下である、任意の適切な単位用量に製剤化されることができる。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、限定されるものではないが、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012又は1×1013ベクターゲノム又はそれ以上を含む、任意の適切な単位用量に製剤化される。いくつかの態様において、単位投与量は、多くとも約5×1015ベクターゲノム、例えば1×1014ベクターゲノム以下、例えば1×1013、1×1012、1×1011、1×1010又は1×109ベクターゲノム以下、特定の態様において、1×108ベクターゲノム以下、及び典型的には1×108ベクターゲノム以下である。いくつかの態様において、単位投与量は、多くとも約5×1015ベクターゲノム、例えば1×1014ベクターゲノム以下、例えば1×1013、1×1012、1×1011、1×1010、1×109、1×108又は1×107ベクターゲノム以下である。いくつかの態様において、単位投与量は、1×1010~1×1011ベクターゲノムである。いくつかの態様において、単位投与量は、1×1010~3×1012ベクターゲノムである。いくつかの態様において、単位投与量は、1×109~3×1013ベクターゲノムである。いくつかの態様において、単位投与量は、1×108~3×1014ベクターゲノムである。
【0401】
いくつかの態様において、医薬組成物の単位投与量は、感染多重度(MOI)を用いて測定することができる。MOIとは、核酸が送達され得る細胞に対するベクターゲノム又はウイルスゲノムの比率又は倍数を意味する。いくつかの態様において、MOIは1×106であってもよい。いくつかの態様において、MOIは、1×105~1×107であってもよい。いくつかの態様において、MOIは、1×104~1×108であってもよい。いくつかの態様において、本開示の組み換えウイルスは、少なくとも約1×101、1×102、1×103、1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、1×1016、1×1017及び1×1018のMOIである。いくつかの態様において、本開示の組み換えウイルスは、1×108~3×1014MOIである。いくつかの態様において、本開示の組み換えウイルスは、多くとも約1×101、1×102、1×103、1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、1×1016、1×1017及び1×1018MOIである。
【0402】
いくつかの実施形態において、医薬組成物の量は、約1×108~約1×1015組み換えウイルス、約1×109~約1×1014組み換えウイルス、約1×1010~約1×1013組み換えウイルス又は約1×1011~約3×1012組み換えウイルスを含む。
【0403】
対象のウイルスベクター組成物の調製において、rAAVビリオンを産生するための任意の宿主細胞を採用することができ、これには、例えば、哺乳動物細胞(例えば、293細胞)、昆虫細胞(例えば、SF9細胞)、微生物及び酵母が含まれる。宿主細胞はまた、AAV rep及びcap遺伝子が宿主細胞内で安定に維持されるパッケージング細胞又はrAAVビリオンゲノムが安定に維持されパッケージングされるプロデューサー細胞でもあり得る。例示的なパッケージング細胞及びプロデューサー細胞は、SF-9、293、A549又はHeLa細胞由来である。
【0404】
本開示のウイルスベクターは、一般に医薬組成物として対象に送達される。医薬組成物は、薬学的に許容される溶媒(例えば、水など)及び一又は複数の賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、ほぼ中性pH(pH5、6、7、8又は9)の緩衝剤を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、リン酸緩衝生理食塩水(例えば、pH約7のPBS)を含む。医薬組成物は、薬学的に許容される塩を含んでもよい。塩の濃度は、医薬組成物が標的組織に対して等張であるか、あるいはほぼ等張であるように選択され得る。
【0405】
いくつかの実施形態において、本開示は、医薬品の製造における本明細書に記載のrAAVビリオンの使用を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、涙の産生を増加させる本明細書中に記述されている処置の使用を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書中に記述されている方法において使用するための医薬の製造における、本明細書中に記述されているrAAVビリオンの使用を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に記載の方法で使用するための医薬の製造における、涙の産生を増加させる本明細書に記載の処置の使用を提供する。
【0406】
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に記載のrAAVビリオンを含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、本明細書に記載のrAAVビリオンと、薬学的に許容される担体、送達剤又は賦形剤とを含む。
【0407】
いくつかの実施形態において、本開示は、涙の産生を増加させる本明細書に記載の治療剤を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、本明細書中に記述されている涙の産生を増加させる処置及び薬学的に許容される担体、送達剤又は賦形剤を含む。
【0408】
いくつかの実施形態において、本開示は、眼疾患、障害又は症状の治療のための医薬の製造における、本明細書に記載のrAAVビリオン又は医薬組成物の使用を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、眼疾患、障害又は症状の治療における使用のための、あるいは使用のために適応可能な、本明細書に記載のrAAVビリオン又は医薬組成物の使用を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、眼疾患、障害又は症状の治療のための医薬の製造における、本明細書中に記述されている涙の産生を増加させる処置又は本明細書中に記述されている医薬組成物の使用を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、眼疾患、障害又は症状の治療における使用のための、あるいは使用のために適応可能な、本明細書中に記述されている涙の産生を増加させる処置又は本明細書中に記述されている医薬組成物の使用を提供する。
【0409】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される担体は、リン酸緩衝生理食塩水を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、その意図される投与経路(例えば、鼻腔内投与又は鼻腔内投与)に適合するように製剤化される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、涙腺への投与のために処方される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、眼表面への投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、鼻腔投与用に製剤化される。
【0410】
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書中に記述されている2つの組成物及び使用説明書を含むキットを提供する。いくつかの実施形態において、キットは以下の:
(a)遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む第1の組成物;及び
(b)ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニストを含む第二の組成物、
を含む。
【0411】
いくつかの実施形態において、本開示は、以下の:
(a)遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む第1の組成物;及び
(b)ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニストを含む第2の組成物、
を含むキット並びにそれを必要とする対象において、本明細書中に記述されている疾患、障害又は症状の進行を治療又は遅延させるための指示を提供する。
【0412】
いくつかの実施形態において、キットは、キットの使用説明書を含む添付文書を含む。いくつかの実施形態において、キットは、遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクター及び薬学的に許容される担体を含む第1の組成物又はそれを必要とする対象において本明細書に記載の疾患、障害又は症状の進行を治療又は遅延させるための第1の組成物及び指示書を含む医薬組成物を含む。
いくつかの実施形態において、キットは、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト及び薬学的に許容される担体を含む第2の組成物又は第1の組成物及びそれを必要とする対象において本明細書中に記述されている疾患、障害又は症状の治療又は進行を遅延させるための指示書を含む医薬組成物を含む。
【0413】
例示的実施形態
本開示は、以下の実施形態に関する。このセクション全体を通して、実施形態という用語は、「E」の後に序数を付けて略記される。例えば、EI-1は、実施形態I-1に相当する。
【0414】
本開示のいくつかの実施形態は、以下のように、実施形態Iに関する:
【0415】
実施形態I-1。対象において眼表面障害、角膜障害又は前房障害を処置する方法であって、以下の:
a.有効量の最初の治療薬を眼又は眼と流体連絡をとっている組織に投与すること;及び
b.涙の産生を増加させる処置を投与すること、
を含む、方法。
【0416】
実施形態I-2.前記涙の産生を増加させる処置は、有効量のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又は薬学的に許容されるその塩を含む、実施形態I-1に記載の方法。
【0417】
実施形態I-3.前記nAChRアゴニストは、nAChRサブタイプα4β2、α3β4、α3α5β4及び/又はα4α6β2のフルアゴニストである、実施形態I-2に記載の方法。
【0418】
実施形態I-4.前記nAChRアゴニストはバレニクリンである、実施形態I-2に記載の方法。
【0419】
実施形態I-5.前記nAChRアゴニストは、(R)-5-((E)-2-ピロリジン-3-イルビニル)ピリミジン又はその薬学的に許容される塩である、実施形態I-2に記載の方法。
【0420】
実施形態I-6.前記涙の産生を増加させる処置は、局所鼻腔内投与を介して投与される、実施形態I-1~I-5のいずれか一項に記載の方法。
【0421】
実施形態I-7。前記局所鼻腔内投与は、鼻腔用スプレーを経由する、実施形態I-6に記載の方法。
【0422】
実施形態I-8.前記涙の産生を増加させる処置は、前篩骨神経の効果的な電気刺激である、実施形態I-1に記載の方法。
【0423】
実施形態I-9。前記方法は、最初の治療薬単独の投与と比較して、所定時間内に対象の眼の涙液膜に送達される最初の治療薬の量の増加をもたらす、実施形態I-1~I-8のいずれか一項に記載の方法。
【0424】
実施形態I-10.前記方法は、最初の治療薬単独の投与と比較して、所定時間内に対象の眼の角膜に送達される最初の治療薬の量の増加をもたらす、実施形態I-1~I-9のいずれか一項に記載の方法。
【0425】
実施形態I-11.前記所定時間は約5分である、実施形態I-9又はI-10に記載の方法。
【0426】
実施形態I-12.前記所定時間は約1時間である、実施形態I-9又はI-10に記載の方法。
【0427】
実施形態I-13.前記有効量の最初の治療薬を投与することは、遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む組成物の有効量を、対象の少なくとも1つの涙腺に投与することを含み、前記最初の治療薬が、遺伝子産物又はその機能的変異体を含む、実施形態I-1~I-12のいずれか一項に記載の方法。
【0428】
実施形態I-14.前記遺伝子産物は治療用タンパク質である、実施形態I-13に記載の方法。
【0429】
実施形態I-15.前記治療用タンパク質は神経成長因子(NGF)である、実施形態I-14に記載の方法。
【0430】
実施形態I-16.前記ウイルスベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、実施形態I-13~I-15のいずれか一項に記載の方法。
【0431】
実施形態I-17.前記ウイルスベクターはワクシニアウイルスベクターである、実施形態I-13~I-15のいずれか1項に記載の方法。
【0432】
実施形態I-18.前記ウイルスベクターはアデノウイルスベクターである、実施形態I-13~I-15のいずれか一項に記載の方法。
【0433】
実施形態I-19.前記ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである、実施形態I-13~I-15のいずれか一項に記載の方法。
【0434】
実施形態I-20。前記AAVベクターは、血清型5(AAV5)、血清型2(AAV2)、血清型8(AAV8)又は血清型9(AAV9)のAAVである、実施形態I-13~I-16のいずれか一項に記載の方法。
【0435】
実施形態I-21.前記組成物は、約1×1012ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)のAAVベクターを含む、実施形態I-13~I-16又はI-20のいずれか一項に記載の方法。
【0436】
実施形態I-22.前記組成物は、約6.2×1012ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)のAAVベクターを含む、実施形態I-13~I-16又はI-20のいずれか一項に記載の方法。
【0437】
実施形態I-23.前記約100μLの組成物が投与される、実施形態I-13~I-22のいずれか一項に記載の方法。
【0438】
実施形態I-24.前記方法は、対象の眼の涙液膜における遺伝子産物の発現をもたらす、実施形態I-13~I-23のいずれか一項に記載の方法。
【0439】
実施形態I-25。前記方法は、対象の眼の角膜における遺伝子産物の発現をもたらす、実施形態I-13~I-24のいずれか一項に記載の方法。
【0440】
実施形態I-26.前記方法は、AAVベクター単独の投与と比較して、所定時間内に涙液膜に送達される遺伝子産物の量の増加をもたらす、実施形態I-13~I-25のいずれか一項に記載の方法。
【0441】
実施形態I-27.前記所定時間は約5分である、実施形態I-26に記載の方法。
【0442】
実施形態I-28.前記所定時間は約1時間である、実施形態I-26に記載の方法。
【0443】
実施形態I-29.遺伝子産物を、それを必要とする対象の少なくとも一方の眼の眼表面に送達する方法であって、以下の:
a.遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む組成物の有効量を、対象の少なくとも1つの涙腺に投与すること;及び
b.有効量のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又はその薬学的に許容される塩を、局所鼻腔内投与を介して投与すること、
を含む、方法。
【0444】
実施形態I-30.前記遺伝子産物は治療用タンパク質である、実施形態I-29に記載の方法。
【0445】
実施形態I-31.前記治療用タンパク質は神経成長因子(NGF)である、実施形態I-30に記載の方法。
【0446】
実施形態I-32.前記ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、実施形態I-29~I-31のいずれか一項に記載の方法。
【0447】
実施形態I-33.前記ウイルスベクターはワクシニアウイルスベクターである、実施形態I-29~I-31のいずれか一項に記載の方法。
【0448】
実施形態I-34.前記ウイルスベクターはアデノウイルスベクターである、実施形態I-29~I-31のいずれか一項に記載の方法。
【0449】
実施形態I-35。前記ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである、実施形態I-29~I-31のいずれか一項に記載の方法。
【0450】
実施形態I-36。前記AAVベクターは、血清型5(AAV5)、血清型2(AAV2)、血清型8(AAV8)又は血清型9(AAV9)のAAVである、実施形態I-32に記載の方法。
【0451】
実施形態I-37.前記組成物は、約1×1012ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)のAAVベクターを含む、実施形態I-32又はI-36に記載の方法。
【0452】
実施形態I-38.前記組成物は、約6.2×1012ゲノムコピー/ml(GC/mL)のAAVベクターを含む、実施形態I-32又はI-36に記載の方法。
【0453】
実施形態I-39.前記ウイルスベクターを含む組成物組成物の約100μLが投与される、実施形態I-29~I-38のいずれか一項に記載の方法。
【0454】
実施形態I-40.前記方法は、対象の眼の涙液膜における遺伝子産物の発現をもたらす、実施形態I-29~I-39のいずれか一項に記載の方法。
【0455】
実施形態I-41。前記方法は、対象の眼の角膜における遺伝子産物の発現をもたらす、実施形態I-29~I-40のいずれか一項に記載の方法。
【0456】
実施形態I-42.前記方法は、AAVベクター単独の投与と比較して、所定時間内に涙液膜に送達される遺伝子産物の量の増加をもたらす、実施形態I-29~I-41のいずれか一項に記載の方法。
【0457】
実施形態I-43.前記所定時間は約5分である、実施形態I-42に記載の方法。
【0458】
実施形態I-44.前記所定時間は約1時間である、実施形態I-42に記載の方法。
【0459】
実施形態I-45.前記方法は、AAVベクター単独の投与と比較して、所定時間内に眼表面に送達される遺伝子産物の量の増加をもたらす、実施形態I-29~I-44のいずれか一項に記載の方法。
【0460】
実施形態I-46.前記所定時間は約5分である、実施形態I-45に記載の方法。
【0461】
実施形態I-47.前記所定時間は約1時間である、実施形態I-45に記載の方法。
【0462】
実施形態I-48.前記nAChRアゴニストは、nAChRサブタイプα4β2、α3β4、α3α5β4及び/又はα4α6β2のフルアゴニストである、実施形態I-29~I-47のいずれか一項に記載の方法。
【0463】
実施形態I-49.前記nAChRアゴニストはバレニクリンである、実施形態I-29~I-47のいずれか一項に記載の方法。
【0464】
実施形態I-50.前記nAChRアゴニストは、(R)-5-((E)-2-ピロリジン-3-イルビニル)ピリミジンである、実施形態I-29~I-48のいずれか一項に記載の方法。
【0465】
実施形態I-51.前記nAChRアゴニストは、局所鼻腔内投与を介して投与される、実施形態I-29~I-50のいずれか1つに記載の方法。
【0466】
本開示のいくつかの実施形態は、以下の実施形態IIに関する:
【0467】
実施形態II-1.対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を処置する方法において使用するための、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又は薬学的に許容されるその塩であって、前記方法は、前記対象に有効量の該nAChRアゴニスト又は薬学的に許容されるその塩を投与することを含み、
前記方法は、対象の眼又は眼と流体連絡をとっている組織に最初の治療薬を投与することをさらに含む。
【0468】
実施形態II-2.前記nAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩は、局所鼻腔内投与を介して投与される、実施形態II-1の使用のためのnAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩。
【0469】
実施形態II-3.前記局所鼻腔内投与は、鼻内スプレーを経由する、実施形態II-2の使用のためのnAChRアゴニスト又はその薬学的に許容される塩。
【0470】
実施形態II-4.対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を処置する方法における同時、別個又は連続的な使用のための、
a.最初の治療薬;及び
b.涙の産生を増加させる処置
の組み合わせ調製物であって:前記方法は、有効量の最初の治療薬を対象の眼又は眼と流体連絡をとっている組織に投与すること及び涙の産生を増加させる処置を投与することを含む。
【0471】
実施形態II-5.対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を治療する方法において使用するための最初の治療薬であって、前記方法は、前記最初の治療薬の有効量を、前記対象の眼又は該眼と流体連絡をとっている組織に投与することを含み、
前記方法は、対象に、涙の産生を増加させる処置を投与することをさらに含む。
【0472】
実施形態II-6.前記涙の産生を増加させる処置は、有効量のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又はその薬学的に許容される塩を含む、実施形態II-4の使用のための複合調製物又は実施形態II-5の使用のための最初の治療薬。
【0473】
実施形態II-7.前記nAChRアゴニストは、nAChRサブタイプα4β2、α3β4、α3α5β4及び/若しくはα4α6β2のフルアゴニストである、実施形態II-1~II-3のいずれか1つの使用のためのnAChRアゴニスト若しくはその塩又は実施形態II-6の使用のための併用製剤若しくは最初の治療薬。
【0474】
実施形態II-8.前記nAChRアゴニストはバレニクリンである、実施形態II-1~II-3のいずれか1つの使用のためのnAChRアゴニスト若しくはその塩又は実施形態II-6の使用のための併用製剤若しくは最初の治療薬。
【0475】
実施形態II-9.前記nAChRアゴニストは、(R)-5-((E)-2-ピロリジン-3-イルビニル)ピリミジン又は薬学的に許容されるその塩である、実施形態II-1~II-3のいずれか1つの使用のためのnAChRアゴニスト若しくはその塩又は実施形態II-6の使用のための併用製剤若しくは最初の治療薬。
【0476】
実施形態II-10.前記涙の産生を増加させる処置は、鼻腔局所投与により投与される、実施形態II-4~II-9のいずれか1つに記載の使用のための複合製剤又は最初の治療薬。
【0477】
実施形態II-11.前記局所鼻腔内投与は、鼻腔用スプレーを経由する、実施形態II-10の使用のための複合調製物又は最初の治療薬。
【0478】
実施形態II-12.前記涙の産生を増加させる処置は、前篩骨神経の効果的な電気刺激である、実施形態II-5の最初の治療薬。
【0479】
実施形態II-13.前記方法は、最初の治療薬単独の投与と比較して、所定の時間内に対象の眼の涙液膜に送達される最初の治療薬の量の増加をもたらす、実施形態II-1~II-12のいずれか一項に記載の使用のためのnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は最初の治療薬。
【0480】
実施形態II-14.前記方法は、最初の治療薬単独の投与と比較して、所定時間内に対象の眼の角膜に送達される最初の治療薬の量の増加をもたらす、実施形態II-1~II-13のいずれか一項に記載の使用のためのnAChRアゴニスト若しくはその塩、併用調製物又は最初の治療薬。
【0481】
実施形態II-15.前記所定時間は約5分である、実施形態II-13若しくはII-14に記載の使用のためのnAChRアゴニスト若しくはその塩、併用調製物又は最初の治療薬。
【0482】
実施形態II-16.前記所定時間は約1時間である、実施形態II-13若しくはII-14の使用のためのnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は最初の治療薬。
【0483】
実施形態II-17.前記最初の治療薬の有効量を投与することは、遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む組成物の有効量を、対象の少なくとも1つの涙腺に投与することを含み、前記最初の治療薬は、遺伝子産物又はその機能的変異体を含む、実施形態II-1~II-16のいずれか1つの使用のための、nAChRアゴニスト又はその塩、組み合わせ調製物又は最初の治療薬。
【0484】
実施形態II-18.前記遺伝子産物は治療用タンパク質である、実施形態II-17に記載の使用のためのnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は最初の治療薬。
【0485】
実施形態II-19.前記治療用タンパク質は神経成長因子(NGF)である、実施形態II-18に記載のnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は使用のための最初の治療薬。
【0486】
実施形態II-20.前記ウイルスベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、実施形態II-17~II-19のいずれか一項に記載のnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は使用のための最初の治療薬。
【0487】
実施形態II-21.前記ウイルスベクターはワクシニアウイルスベクターである、実施形態II-17~II-19のいずれか一項に記載の使用のためのnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は最初の治療薬。
【0488】
実施形態II-22.前記ウイルスベクターはアデノウイルスベクターである、実施形態II-17~II-19のいずれか1つの使用のためのnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は最初の治療薬。
【0489】
実施形態II-23.前記ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである、実施形態II-17~II-19のいずれか1つの使用のためのnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は最初の治療薬。
【0490】
実施形態II-24.前記AAVベクターは、血清型5(AAV5)、血清型2(AAV2)、血清型8(AAV8)又は血清型9(AAV9)のAAVである、実施形態II-17~II-20のいずれか一項に記載のnAChRアゴニスト若しくはその塩、複合調製物又は使用のための最初の治療薬。
【0491】
実施形態II-25.前記組成物は、AAVベクターの1ミリリットル当たり約1×1012ゲノムコピー(GC/mL)を含む、実施形態II-17~II-20又はII-24のいずれか1つの使用のためのnAChRアゴニスト又はその塩、複合製剤、最初の治療薬又はnAChRアゴニスト又はその塩。
【0492】
実施形態II-26.前記組成物は、AAVベクターの1ミリリットルあたり約6.2×1012ゲノムコピー(GC/mL)を含む、実施形態II-17~II-20又はII-24のいずれか一項に記載の使用のためのnAChRアゴニスト若しくはその塩、配合調製物又は最初の治療薬。
【0493】
実施形態II-27.前記約100μLの組成物が投与される、実施形態II-17~II-26のいずれか一項に記載の使用のためのnAChRアゴニスト若しくはその塩、配合調製物又は最初の治療薬。
【0494】
実施形態II-28.前記方法は、対象の眼の涙液膜における遺伝子産物の発現をもたらす、実施形態II-17~II-27のいずれか一項に記載のnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は使用のための最初の治療薬。
【0495】
実施形態II-29.前記方法は、対象の眼の角膜における遺伝子産物の発現をもたらす、実施形態II-17~II-28のいずれか一項に記載の使用のためのnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は最初の治療薬。
【0496】
実施形態II-30.前記方法は、AAVベクター単独の投与と比較して、所定時間内に涙液膜に送達される遺伝子産物の量の増加をもたらす、実施形態II-14~II-16のいずれか一項に記載の使用のためのnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物、最初の治療薬又はnAChRアゴニスト若しくはその塩。
【0497】
実施形態II-31.前記所定時間は約5分である、実施形態II-30の使用のためのnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は最初の治療薬。
【0498】
実施形態II-32.前記所定時間は約1時間である、実施形態II-30の使用のためのnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は最初の治療薬。
【0499】
実施形態II-33.ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又は薬学的に許容されるその塩であって、遺伝子産物を対象の少なくとも一方の眼の眼表面に送達することによって、対象の眼表面障害、角膜障害又は前房障害を処置する方法において使用するための、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又は薬学的に許容されるその塩であって、前記方法は、有効量のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又は薬学的に許容されるその塩を、局所鼻腔内投与を介して投与することを含み、
前記方法は、対象の少なくとも1つの涙腺に、遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む組成物の有効量を投与することをさらに含む。
【0500】
実施形態II-34.遺伝子産物を対象の少なくとも1つの眼の眼表面に送達することにより、対象の眼表面障害、角膜障害又は前房障害を処置する方法において、同時、別個又は連続的に使用するための:
a.遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む組成物;及び
b.ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又は薬学的に受容可能なその塩、
の組み合わせ調製物であって:前記方法は、対象の少なくとも1つの涙腺に有効量の組成物を投与すること及び局所鼻腔内投与により有効量のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0501】
実施形態II-35.遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む組成物であって、対象の少なくとも1つの眼の眼表面に遺伝子産物を送達することによって、対象の眼表面障害、角膜障害又は前房障害を処置する方法において使用するための組成物であって、前記方法は、前記組成物の有効量を前記対象の少なくとも1つの涙腺に投与することを含み、
前記方法は、局所鼻腔内投与により、有効量のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又はその薬学的に許容される塩を対象に投与することをさらに含む。
【0502】
実施形態II-36.前記遺伝子産物は治療用タンパク質である、実施形態II-33の使用のためのnAChRアゴニスト又はその塩、実施形態II-34の使用のための組み合わせ調製物、実施形態II-35の使用のための組成物。
【0503】
実施形態II-37.前記治療用タンパク質は神経成長因子(NGF)である、実施形態II-36のnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は使用のための組成物。
【0504】
実施形態II-38.前記ウイルスベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、実施形態II-33~II-37のいずれか一項に記載のnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は使用のための組成物。
【0505】
実施形態II-39.前記ウイルスベクターはワクシニアウイルスベクターである、実施形態II-33~II-37のいずれか一項に記載のnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は使用のための組成物。
【0506】
実施形態II-40.前記ウイルスベクターはアデノウイルスベクターである、実施形態II-33~II-37のいずれか一項に記載のnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は使用のための組成物。
【0507】
実施形態II-41.前記ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである、実施形態II-33~II-37のいずれか一項に記載のnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は使用のための組成物。
【0508】
実施形態II-42.前記AAVベクターは、血清型5(AAV5)、血清型2(AAV2)、血清型8(AAV8)又は血清型9(AAV9)のAAVである、実施形態II-38のnAChRアゴニスト又はその塩、組み合わせ調製物又は使用のための組成物。
【0509】
実施形態II-43.前記組成物は、約1×1012ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)のAAVベクターを含む、実施形態II-38若しくはII-42のnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は使用のための組成物。
【0510】
実施形態II-44.前記組成物は、約6.2×1012ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)のAAVベクターを含む、実施形態II-38若しくはII-42のnAChRアゴニスト若しくはその塩、配合調製物又は使用のための組成物。
【0511】
実施形態II-45.前記ウイルスベクターを含む組成物組成物の約100μLが投与される、実施形態II-33~II-44のいずれか一項に記載のnAChRアゴニスト若しくはその塩、配合調製物又は使用のための組成物。
【0512】
実施形態II-46.前記方法は、対象の眼の涙液膜における遺伝子産物の発現をもたらす、nAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は実施形態II-33~II-45のいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0513】
実施形態II-47.前記方法は、対象の眼の角膜における遺伝子産物の発現をもたらす、実施形態II-33~II-46のいずれか一項に記載のnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は使用のための組成物。
【0514】
実施形態II-48.前記方法は、AAVベクター単独の投与と比較して、所定時間内に涙液膜に送達される遺伝子産物の量の増加をもたらす、実施形態II-33~II-47のいずれか一項に記載のnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は使用のための組成物。
【0515】
実施形態II-49.前記所定時間は約5分である、実施形態II-48のnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は使用のための組成物。
【0516】
実施形態II-50.前記所定時間は約1時間である、実施形態II-48のnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は使用のための組成物。
【0517】
実施形態II-51.前記方法は、AAVベクター単独の投与と比較して、所定時間内に眼表面に送達される遺伝子産物の量の増加をもたらす、実施形態II-33~II-50のいずれか一項に記載のnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は使用のための組成物。
【0518】
実施形態II-52.前記所定時間は約5分である、実施形態II-51のnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は使用のための組成物。
【0519】
実施形態II-53.前記所定時間は約1時間である、実施形態II-51のnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は使用のための組成物。
【0520】
実施形態II-54.前記nAChRアゴニストは、nAChRサブタイプα4β2、α3β4、α3α5β4及び/又はα4α6β2のフルアゴニストである、実施形態II-33からII-53のいずれか一項に記載のnAChRアゴニスト若しくはその塩、組み合わせ調製物又は使用のための組成物。
【0521】
実施形態II-55.前記nAChRアゴニストはバレニクリンである、nAChRアゴニスト又はその塩、組み合わせ調製物又は実施形態II-33からII-53のいずれか1つの使用のための組成物。
実施形態II-56。前記nAChRアゴニストは、(R)-5-((E)-2-ピロリジン-3-イルビニル)ピリミジンである、実施形態II-33~II-54のいずれか一項に記載のnAChRアゴニスト若しくはその塩、併用調製物又は使用のための組成物。
【0522】
本開示のいくつかの実施形態は、以下の実施形態IIIに関する:
【0523】
実施形態III-1.対象において眼表面障害、角膜障害又は前房障害を治療する方法であって、以下を含む、方法:
【0524】
a.眼又は眼と流体連絡をとっている組織に、有効量の最初の治療薬を投与すること;及び
【0525】
b.涙の産生を増加させる処置を投与すること。
【0526】
実施形態III-2.前記涙の産生を増加させる処置が、有効量のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又は薬学的に許容されるその塩を含む、実施形態III-1に記載の方法。
【0527】
実施形態III-3.前記nAChRアゴニストが、nAChRサブタイプα4β2、α3β4、α3α5β4及び/又はα4α6β2のフルアゴニストである、実施形態III-2に記載の方法。
【0528】
実施形態III-4.前記nAChRアゴニストが、バレニクリン又はその薬学的に許容される塩である、実施形態III-2に記載の方法。
【0529】
実施形態III-5.前記nAChRアゴニストが、(R)-5-((E)-2-ピロリジン-3-イルビニル)ピリミジン又はその薬学的に許容される塩である、実施形態III-2に記載の方法。
【0530】
実施形態III-6.前記涙の産生を増加させる処置が、局所鼻腔内投与を介して投与される、実施形態III-1~III-5のいずれか一項に記載の方法。
【0531】
実施形態III-7.前記局所鼻腔内投与が鼻腔用スプレーを介して行われる、実施形態III-6に記載の方法。
【0532】
実施形態III-8.前記最初の治療薬が、一方若しくは両方の涙腺への涙腺内注射又は局所投与を介して投与される、実施形態III-1~III-7のいずれか一項に記載の方法。
【0533】
実施形態III-9.前記涙の産生を増加させる処置が、最初の治療薬の投与後に投与される、実施形態III-1~III-8のいずれか一項に記載の方法。
【0534】
実施形態III-10.前記涙の産生を増加させる処置が、最初の治療薬の投与に続いて7日後から投与される、実施形態III-9に記載の方法。
【0535】
実施形態III-11.前記涙の産生を増加させる処置が、前篩骨神経の効果的な電気刺激である、実施形態III-1に記載の方法。
【0536】
実施形態III-12.前記眼と流体連絡をとっている組織が、涙腺、涙小管、角膜、角膜上皮、角膜上皮幹細胞、結膜、涙点及び涙小管の1つ又は任意の組み合わせである、実施形態III-1~III-11のいずれか一項に記載の方法。
【0537】
実施形態III-13.前記眼と流体連絡をとっている組織が角膜である、実施形態III-1~III-12のいずれか一項に記載の方法。
【0538】
実施形態III-14.前記眼と流体連絡をとっている組織が涙腺である、実施形態III-1~III-12のいずれか一項に記載の方法。
【0539】
実施形態III-15。前記方法は、最初の治療薬単独の投与と比較して、所定時間内に対象の眼の涙液膜に送達される最初の治療薬の量の増加をもたらす、実施形態III-1~III-14のいずれか一項に記載の方法。
【0540】
実施形態III-16.前記方法は、最初の治療薬単独の投与と比較して、所定時間内に対象の眼の角膜に送達される最初の治療薬の量の増加をもたらす、実施形態III-1~III-13又はIII-15のいずれか一項に記載の方法。
【0541】
実施形態III-17.前記所定時間が約5分である、実施形態III-15又はIII-16に記載の方法。
【0542】
実施形態III-18.前記所定時間が約1時間である、実施形態III-15又はIII-16に記載の方法。
【0543】
実施形態III-19.前記有効量の最初の治療薬を投与することが、遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む組成物の有効量を、対象の少なくとも1つの涙腺に投与することを含み、前記最初の治療薬が、遺伝子産物又はその機能的変異体を含む、実施形態III-1~III-18のいずれか一項に記載の方法。
【0544】
実施形態III-20.前記遺伝子産物が治療用タンパク質である、実施形態III-19に記載の方法。
【0545】
実施形態III-21.前記治療用タンパク質が神経成長因子(NGF)である、実施形態III-20に記載の方法。
【0546】
実施形態III-22.前記治療用タンパク質がグリア由来神経栄養因子(GDNF)である、実施形態III-20に記載の方法。
【0547】
実施形態III-23.前記ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、実施形態III-19~III-22のいずれか一項に記載の方法。
【0548】
実施形態III-24.前記ウイルスベクターがワクシニアウイルスベクターである、実施形態III-19~III-22のいずれか一項に記載の方法。
【0549】
実施形態III-25。前記ウイルスベクターがアデノウイルスベクターである、実施形態III-19~III-22のいずれか一項に記載の方法。
【0550】
実施形態III-26。前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、実施形態III-19~III-22のいずれか一項に記載の方法。
【0551】
実施形態III-27。前記AAVベクターが、血清型5(AAV5)、血清型2(AAV2)、血清型8(AAV8)又は血清型9(AAV9)のAAVである、実施形態III-23に記載の方法。
【0552】
実施形態III-28.前記組成物が、約1×1012ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)のAAVベクターを含む、実施形態III-23又はIII-27に記載の方法。
【0553】
実施形態III-29.前記組成物が、約6.2×1012ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)のAAVベクターを含む、実施形態III-23又はIII-27に記載の方法。
【0554】
実施形態III-30.前記約50μL~約100μLの組成物が投与される、実施形態III-19~III-29のいずれか一項に記載の方法。
【0555】
実施形態III-31.前記方法が、対象の眼の涙液膜における遺伝子産物の発現をもたらす、実施形態III-1~III-30のいずれか一項に記載の方法。
【0556】
実施形態III-32.前記方法が、対象の眼の角膜における遺伝子産物の発現をもたらす、実施形態III-1~III-31のいずれか一項に記載の方法。
【0557】
実施形態III-33.前記方法が、ウイルスベクター単独の投与と比較して、所定の時間内に涙液膜に送達される遺伝子産物の量の増加をもたらす、実施形態III-19~III-32のいずれか一項に記載の方法。
【0558】
実施形態III-34.前記所定時間が約5分である、実施形態III-33に記載の方法。
【0559】
実施形態III-35.前記所定時間が約1時間である、実施形態III-33に記載の方法。
【0560】
実施形態III-36.前記対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害が、神経麻痺性角膜症、眼表面の化学熱傷、角膜創傷、角膜潰瘍遷延性角膜上皮欠損、ドライアイ疾患、三叉神経及び/又は眼の単純ヘルペスウイルス感染、三叉神経及び/又は眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染又は角膜神経の糖尿病性合併症である、実施形態III-1~III-35のいずれか一項に記載の方法。
【0561】
実施形態III-37.遺伝子産物を、それを必要とする対象の少なくとも片方の眼の眼表面に送達する方法であって、以下を含む、方法:
【0562】
a.遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む組成物の有効量を、対象の少なくとも1つの涙腺に投与すること;及び
【0563】
b.局所鼻投与を介して、有効量のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又はその薬学的に許容される塩を投与すること。
【0564】
実施形態III-38.前記遺伝子産物が治療用タンパク質である、実施形態III-37に記載の方法。
【0565】
実施形態III-39.前記治療用タンパク質が神経成長因子(NGF)である、実施形態III-38に記載の方法。
【0566】
実施形態III-40.前記治療用タンパク質がグリア由来神経栄養因子(GDNF)である、実施形態III-38に記載の方法。
【0567】
実施形態III-41.前記ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、実施形態III-37~III-40のいずれか一項に記載の方法。
【0568】
実施形態III-42.前記ウイルスベクターがワクシニアウイルスベクターである、実施形態III-37~III-40のいずれか一項に記載の方法。
【0569】
実施形態III-43.前記ウイルスベクターがアデノウイルスベクターである、実施形態III-37~III-40のいずれか一項に記載の方法。
【0570】
実施形態III-44.前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、実施形態III-37~III-40のいずれか一項に記載の方法。
【0571】
実施形態III-45.前記AAVベクターが、血清型5(AAV5)、血清型2(AAV2)、血清型8(AAV8)又は血清型9(AAV9)のAAVである、実施形態III-41に記載の方法。
【0572】
実施形態III-46.前記組成物が、AAVベクターの1ミリリットル当たり約1×1012ゲノムコピー(GC/mL)を含む、実施形態III-41又はIII-45に記載の方法。
【0573】
実施形態III-47.前記組成物が、約6.2×1012ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)のAAVベクターを含む、実施形態III-41又はIII-45に記載の方法。
【0574】
実施形態III-48.前記約50μL~約100μLのウイルスベクターを含む組成物が投与される、実施形態III-37~III-47のいずれか一項に記載の方法。
【0575】
実施形態III-49.前記涙の産生を増加させる処置が、最初の治療薬の投与に続いて投与される、実施形態III-37~III-48のいずれか一項に記載の方法。
【0576】
実施形態III-50.前記涙の産生を増加させる処置が、最初の治療薬の投与に続いて7日後から投与される、実施形態III-49に記載の方法。
【0577】
実施形態III-51.前記方法が、対象の眼の涙液膜における遺伝子産物の発現をもたらす、実施形態III-37~III-50のいずれか一項に記載の方法。
【0578】
実施形態III-52.前記方法が、対象の眼の角膜における遺伝子産物の発現をもたらす、実施形態III-37~III-50のいずれか一項に記載の方法。
【0579】
実施形態III-53.前記方法が、ウイルスベクター単独の投与と比較して、所定時間内に涙液膜に送達される遺伝子産物の量の増加をもたらす、実施形態III-37~III-52のいずれか一項に記載の方法。
【0580】
実施形態III-54.前記所定時間が約5分である、実施形態III-53に記載の方法。
【0581】
実施形態III-55.前記所定時間が約1時間である、実施形態III-53に記載の方法。
【0582】
実施形態III-56.前記方法は、ウイルスベクター単独の投与と比較して、所定時間内に眼表面に送達される遺伝子産物の量の増加をもたらす、実施形態III-37~III-52のいずれか一項に記載の方法。
【0583】
実施形態III-57.前記所定時間が約5分である、実施形態III-56に記載の方法。
【0584】
実施形態III-58.前記所定時間が約1時間である、実施形態III-56に記載の方法。
【0585】
実施形態III-59.前記nAChRアゴニストが、nAChRサブタイプα4β2、α3β4、α3α5β4及び/又はα4α6β2のフルアゴニストである、実施形態III-37~III-58のいずれか一項に記載の方法。
【0586】
実施形態III-60.前記nAChRアゴニストが、バレニクリン又はその薬学的に許容される塩である、実施形態III-37~III-58のいずれか一項に記載の方法。
【0587】
実施形態III-61.前記nAChRアゴニストが、(R)-5-((E)-2-ピロリジン-3-イルビニル)ピリミジン又はその薬学的に許容される塩である、実施形態III-37~III-59のいずれか一項に記載の方法。
【0588】
実施形態III-62.前記nAChRアゴニストが局所鼻腔内投与により投与される、実施形態III-37~III-61のいずれか一項に記載の方法。
【0589】
実施形態III-63.前記ウイルスベクターを含む組成物が、鼻腔内注射を介して投与される、実施形態III-37~III-62のいずれか一項に記載の方法。
【0590】
実施形態III-64.前記対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害が、神経麻痺性角膜症、眼表面の化学熱傷、角膜創傷、角膜潰瘍遷延性角膜上皮欠損、ドライアイ疾患、三叉神経及び/又は眼の単純ヘルペスウイルス感染、三叉神経及び/又は眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染又は角膜神経の糖尿病性合併症である、実施形態III-37~III-63のいずれか一項に記載の方法。
【0591】
実施形態III-65.対象における眼表面障害、角膜障害又は前房障害を治療する方法において使用するための、最初の治療薬及び涙の産生を増加させるための処置であって、方法は、以下の:
a.有効量の最初の治療薬を眼又は眼と流体連絡をとっている組織に投与すること;及び
b.涙の産生を増加させる処置を投与すること、
を含む、方法。
【0592】
実施形態III-66.前記涙の産生を増加させる処置が、有効量のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト又は薬学的に許容されるその塩を含む、実施形態III-65の使用のための最初の治療薬及び涙の産生を増加させる処置。
【0593】
実施形態III-67.前記nAChRアゴニストが、バレニクリン又はその薬学的に許容される塩である、実施形態III-66の使用のための最初の治療薬及び涙の産生を増加させる処置。
【0594】
実施形態III-68.前記涙の産生を増加させる処置が、鼻腔局所投与を介して投与される、実施形態III-65~III-67のいずれか1つの使用のための最初の治療薬及び涙の産生を増加させる処置。
【0595】
実施形態III-69.前記有効量の最初の治療薬を投与することが、遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む組成物の有効量を、対象の少なくとも1つの涙腺に投与することを含み、前記最初の治療薬が、遺伝子産物又はその機能的変異体を含む、実施形態III-65~III-67のいずれか一項に記載の最初の治療薬及び涙の産生を増加させる処置。
【0596】
実施形態III-70.眼疾患、障害又は症状を治療するための医薬の製造において使用するための最初の治療薬及び涙の産生を増加させる処置。
【0597】
実施形態III-71.以下の:
(a)遺伝子産物又はその機能的変異体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含む第1の組成物;及び
(b)ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニストを含む第2の組成物
を含むキットであって、それを必要とする対象において、本明細書中に記述されている疾患、障害又は症状の治療又は進行を遅延させるための指示。
【実施例】
【0598】
以下の具体例は、単に例示として解釈されるものであり、本開示の残りの部分を何ら限定するものではない。
【0599】
実施例1:涙腺内注射を介してrAAVによって送達される涙腺におけるGFP導入遺伝子の発現
この実施例は、ダッチベルテッドラビットに涙腺内注射として単回投与したrAAVビリオンの9日間のパイロット研究を示す。これは、涙腺への注射により1回投与されたrAAVビリオンの実施形態のパネルの有効性及び忍容性を評価する。パネルの各rAAVビリオン組成物は、2つの濃度(1×1012GC/mL及び6.2×1012GC/mL)で試験される。rAAVビリオンのパネルは、AAV2、AAV5、AAV8及びAAV9血清型を有するカプシドタンパク質を有する実施形態を含む。rAAVビリオンによって送達される発現カセットは、CAGプロモーターに作動可能に連結された強化型緑色蛍光タンパク質(eGFP)導入遺伝子をコードする。このアプローチは、細胞内での導入遺伝子の測定可能なCAGプロモーター駆動発現をもたらす涙腺の細胞に導入遺伝子を送達するための、カプシドタンパク質の血清型AAV2、AAV5、AAV8及びAAV9の実行可能性を評価した。
【0600】
動物試験は、チャールズリバーラボラトリーズ(CRL)の施設において、CRLのスタッフ科学職員によって実施された。
【0601】
動物試験系、飼育及び生体内モニタリング
この試験において使用された動物は、生後4~5ヶ月、体重1.3~2.3kgの雄のダッチベルテッドウサギであった。動物は、治療開始前に10日間馴化された。各動物は、個別に飼育され、通常の環境条件、給餌スケジュール及び獣医学的ケアを含む標準的な飼育プロトコルを用いて世話をした。
【0602】
rAAVウイルス組成物及び製剤
この研究において、CAGプロモーターに作動可能に連結されたeGFP導入遺伝子をコードする発現カセットを含むrAAVビリオンを含む組成物のパネルを、表4の条件下で涙腺内注射用に提供される。組成物は、異なるAAVカプシドタンパク質の血清型を有するrAAVビリオンを含む。組成物はOC-100a~dと表示されており、それぞれが異なるAAVカプシドタンパク質の血清型に対応している。鼻腔内注射用の用量製剤は、リン酸緩衝生理食塩水で希釈することによって、以下の表4において描写されている目標濃度で清浄な手順を用いて調製された。
【表5】
【0603】
rAAV組成物の鼻腔内注射
動物は、試験の1日目に涙腺内注射を介して投与された。試験された各組成物の製剤濃度、投与量、投与回数、動物及び涙腺の数の要約は、表5で見られる。注射に先立ち、動物は、デクスメデトミジン(0.25mg/kg)の筋肉内注射によって麻酔され、その後に必要に応じて、麻酔を維持するためにマスクを通してイソフルラン/酸素混合液が続いた。投与後、各眼に局所抗生物質が適用された。
【表6】
【0604】
生体分析
全ての動物からの耳介血管から、血液は、投与前の1日目に採集され、8日目及び9日目に再度採集された。血液サンプルは、血漿が遠心分離によって分離されるまで氷上に置かれた。血漿サンプルは、250μLのアリコート中に分離され、その後の分析のために-80℃で凍結された。
【0605】
8日目及び9日目に動物から眼の水分を収集するために、シルマーティアテストが実施された。テストストリップは、下まぶたの内側に約1分間置かれた。試験紙は取り除かれ、別のチューブに入れられ、その後の分析のために-80℃で凍結された。
【0606】
血漿サンプル及びシルマーテストストリップは、Syneos分析研究所で検証された手順を用いて、eGFPの濃度及びeGFP mRNAの濃度について分析された。血漿サンプルの分析は、eGFPタンパク質もeGFP mRNAも検出せず、rAAVの涙腺内送達が細胞溶解を誘導しなかったということを示した。この結果は、涙液内投与経路が安全にrAAVを送達するために使用されることができるということを示唆している。
【0607】
涙腺組織の免疫組織化学
動物は、ペントバルビタールナトリウムの静脈内注射による血液及び眼球水分の採取後、9日目に安楽死させた。左眼の矢状切片5枚及び左右の涙腺の切片を、Charles Riverラボの標準操作手順に従い、免疫組織化学(IHC)のために調製した。涙腺IHCサンプルをeGFP用に染色し、顕微鏡評価に供した。
【0608】
rAAV組成物をインビボで投与した涙腺組織におけるeGFP発現の効率を決定するために顕微鏡評価を行った。IHCサンプル中の単離された陽性腺房細胞は、GFP発現を示すピンク色から赤色の細胞質染色を有していた(
図6A~6K;黒矢印で示された例示的染色)。陽性eGFP発現は、6.2×10
12GC/mLのAAV2カプシドタンパク質(OC-100a)を含むrAAV組成物(
図6A)、1×10
12GC/mL(
図6B)及び6.2×10
12GC/mL(
図6C~6H)の両方のAAV5カプシドタンパク質を含むrAAV組成物並びに6.2×10
12GC/mLのAAV9カプシドタンパク質を含むrAAV組成物(
図6I~6K)で観察された。
【0609】
結論
本実施例のこれらの結果は、rAAVビリオンを使用して、直接注射により発現カセットを涙腺に送達できることを示している。この結果はまた、少なくともAAV2、AAV5又はAAV9血清型のカプシドタンパク質を含むrAAVビリオンを使用して、涙腺内の細胞に発現カセットを送達できることも示している。さらに、この結果は、CAGプロモーター配列に作動可能に連結された導入遺伝子を含む発現カセットの送達が、涙腺の細胞における導入遺伝子の発現をもたらすことを実証している。
【0610】
実施例2.涙腺内注射を介してrAAVにより送達される涙腺における神経栄養因子の発現
この実施例は、AAVベクターを涙腺内注射として投与した後、ダッチベルテッドウサギにバレニクリンを単回鼻腔内投与した7日間の単回投与試験を記述している。本試験では、2種類の投与量(100μL注射として1×10
12GC/mL又は6.2×10
12GC/mL)のAAVベクターを涙腺内注射として投与した後、バレニクリン点鼻液(50μLスプレーとして1.2mg/ml)を対象の鼻孔内に単回投与し、忍容性及び有効性を評価する。具体的には、この試験デザインには2つの主目的がある:
(1)ヒト神経成長因子(hNGF)又はヒトグリア由来神経栄養因子(hGDNF)をコードする発現カセットを含む血清型2、5又は9のアデノ随伴ウイルスベクター(AAV2、AAV5、AAV9)を用いて、涙腺のトランスダクションを評価すること。NGF及びhGDNFタンパク質は、角膜表面の維持及び健康に役割を果たす好中性因子である。
(2)バレニクリン点鼻薬により涙液産生を刺激することによって、眼表面に存在するタンパク質の相対量を増加させることを評価すること。
バレニクリンは以下の:
【化3】
化合物である。
【0611】
この研究では、実験用ウイルスベクター又は対照ベクターをダッチベルテッドラビットの涙腺に投与する。AAVx.hNGF及びAAVx.hGDNF(xは2、5又は9)ベクターは、それぞれhNGF及びhGDNFタンパク質をコードする導入遺伝子を含む。hNGF及びhGDNFは、AAV送達導入遺伝子の涙嚢内発現の実現可能性を示すための例示的治療用タンパク質であり、その涙膜への分泌は、バレニクリンなどの涙誘導剤を用いて増加させることができる。AAVx.nNGF及びAAVx.hGDNFは、6.2x1011GC/mLの用量で投与した。比較のためにビヒクルコントロールを使用する。
【0612】
動物は、7日目に麻酔下で、青色光と適切なフィルターを用いた細隙灯生体顕微鏡により評価される。この評価は、細隙灯写真で記録される。
【0613】
8日目に、動物に1.2mg/mlのバレニクリン点鼻薬を50μLのスプレーで各鼻孔に単回投与する。投与直後又は投与後数分以内に、動物は、麻酔下で青色光と適切なフィルターを用いた細隙灯生体顕微鏡検査により評価される。この評価は、細隙灯写真で記録する。
【0614】
方法
投与量(経路):涙腺内注射、各涙腺に100μL投与。投与頻度:各涙腺への単回注射。手順:麻酔下で、約100μLの参考品(PBS+0.001% F68)、AAVx.hNGF(6.2×10
11GC/mL)又はAAVx.hNGF(6.2×10
11GC/mL)を、直接可視化下で各涙腺に投与する。涙腺注射の手順は以下の通りである:(1)右(OD)上まぶたの下に垂直切開を行う;(2)涙腺が可視化されるまで、鈍的剥離を上眼窩縁まで拡張する;(3)涙腺に、0.1mLの参考品、AAVx.hNGF(6.2×10
12GC/mL)又はAAVx.hNGF(6.2×10
12GC/mL)を、27Gの1/2インチの滅菌針を有する1mLの滅菌注射器で注入する;(4)切開を縫合糸/シアノアクリレート接着剤で閉鎖する;及び(5)手順を左(OS)涙腺について繰り返す。遺伝子治療投与を表6に要約する。
【表7】
【0615】
鼻腔用スプレーによる涙液分泌促進
投与量(経路):鼻腔用スプレー、両方の鼻孔。投与回数:1回投与;50μLを各鼻孔に1回噴霧;8日目。手順:バレニクリン溶液1.2mg/mlを充填したAptar社製防腐剤無添加点鼻ポンプを用い、両鼻孔に50μL噴霧する。投与終了:8日目。鼻腔用スプレーによる涙刺激は表7にまとめた。
【表8】
a投与量は各動物に投与し、総投与量100μLを各鼻孔に均等に分割する(1回の投与につき1鼻孔あたり50μL)。
【0616】
涙組織における形質導入mRNAの定量
必要な涙腺の切片(0.005g~0.025g)を直ちにRNAlater(登録商標)に入れ(完全に浸漬)、室温で保存し、8時間以内に温度を4℃に維持するようにセットした冷蔵庫に移して一晩保存した。翌日、RNAlater(登録商標)を取り除き、サンプルを-80℃に保たれた冷凍庫で凍結保存した。このサンプルを、RT-qPCRを用いてhNGFの発現を分析した。
【0617】
硬膜腺、視神経、三叉神経及び上皮細胞擦過による鼻腔、鼻涙膜、眼外筋から(0.005g~0.01g)のサンプルを右側から採取し、RNAlaterに入れ(完全に浸漬)、室温で保存し、8時間以内に温度を4℃に保つように設定した冷蔵庫に移し、一晩保存する。翌日、RNAlater(登録商標)を取り除き、サンプルは、-80℃に保たれた冷凍庫で凍結保存され、vg DNA及びmRNA解析に供される。
【0618】
免疫組織化学(IHC)のための組織学的検査
左右の涙腺の適切な切片を、形態学的及び免疫組織化学的評価のために採取した。サンプルは、4%パラホルムアルデヒドに包埋し、70%エタノールで固定した。パラフィンブロッキング後、厚さ5μmの切片を得て、スライドにマウントした;各サンプルについて1切片をH&E染色し、免疫組織化学染色も行った。hNGFの染色は抗hNGF抗体を用いて行った。スライドを観察し、顕微鏡で撮影した画像でhNGFタンパク質の発現を評価した。
【0619】
シルマーテスト
7日目、14日目、21日目、28日目、41日目及び42日目に、動物から眼の水分を収集するためにシルマーティアテストを行った。テストストリップを下まぶたの内側に約1分間置いた。試験紙は取り出され、別のチューブに入れられ、その後の分析のために-80℃で凍結された。21日目、28日目、41日目にバレニクリンを経鼻投与した後、シルマーテスト紙を採取した。テストストリップを下まぶたの内側に約1分間置いた。試験紙は剥がされ、別のチューブに入れられ、その後の分析のために-80℃で凍結された。シルマーテスト紙に吸収されたタンパク質含量は、ELISAアッセイによりhNGFの濃度を分析した。
【0620】
結果
涙腺における導入遺伝子発現の定量化を表8に示す。
【表9】
【0621】
全てのビヒクルコントロール動物からの組織は、bGH遺伝子発現について陰性であると試験され、動物の投与、サンプル収集、RNA抽出及びRT-qPCR分析から交差汚染が十分に制御されたことを実証した。rAAVベクター由来のhGDNF mRNAは、全ての注射された涙腺組織において検出された。グループ3~6について、いくつかの注射された涙腺組織は、全RNA1μgあたり1151~585,401ssコピーのhNGF又はhGDNF mRNAを有していたが、他のいくつかは検出可能なベクター由来のmRNAを有していなかった。
【0622】
涙腺組織を、免疫組織化学を用いてhNGF発現についてさらに評価した(
図7A~7E)。涙腺内注射後、動物を安楽死させ、注射した涙腺の切片を免疫組織化学(IHC)のために調製した。涙腺IHCサンプルをhNGFについて染色し、顕微鏡評価に供した。rAAV組成物をインビボで投与した涙腺組織におけるhNGF発現の効率を決定するために顕微鏡評価を行った。
図7A及び
図7D~7Eは、AAV9血清型を有するrAAVを注射されたウサギの涙腺におけるIHC染色の例示的な例を示す(黒矢印で示す例示的な染色)。hNGF染色組織は、hNGF導入遺伝子の強い発現を示す。この結果は、ほとんど染色を示さず、したがってバックグラウンドによる染色を除外した陰性対照サンプル(
図7B及び
図7C)と比較することによって確認される。これらの結果は、rAAVの涙液内注射が、神経栄養因子導入遺伝子、例えばhNGFを涙液組織に送達し、発現させるために使用できることを示している。
【0623】
7日目、14日目、21日目、28日目、41日目及び42日目に、動物から眼の水分を採取するためにシルマーティアテストを実施した。テストストリップを下まぶたの内側に約1分間置いた。試験紙は取り出され、別のチューブに入れられ、その後の分析のために-80℃で凍結された。21日目、28日目、41日目にバレニクリンを経鼻投与した後、シルマーテスト紙を採取した。テストストリップを下まぶたの内側に約1分間置いた。試験紙は剥がされ、別のチューブに入れられ、その後の分析のために-80℃で凍結された。シルマーテストストリップに吸収されたタンパク質含量を、ELISAアッセイによりhNGFの濃度について分析した。
【0624】
シルマーテストストリップを、採取した涙液中のhNGFの濃度について分析した(
図8)。rAAV9.hNGFの涙腺内投与後、バレニクリンの鼻腔内投与がない場合、hNGF濃度は7日目及び14日目で一定であった。21日目、28日目及び41日目には、シルマーストリップ中のhNGF濃度は、7日目及び14日目の採取時に測定されたレベルよりも最大で約3倍まで増加したことから、バレニクリン経鼻投与により涙液中へのhNGF分泌が増加したことが示された。注目すべきことに、42日目、バレニクリン非存在下では、hNGF濃度の大きな低下が観察された。シルマーストリップ中のhNGF濃度は、rAAV9.hNGFを投与した動物で、rAAV5.hNGF又はrAAV2.hNGFよりも最も高かった。
【0625】
要約すると、結果は、hNGF及びhGDNFのような神経栄養因子が、AAV2、AAV5及びAAV9血清型を含むrAAVで鼻腔内注射を介して送達される場合に導入遺伝子として発現され、AAV9血清型が最良の結果を示すことを示す。さらに、バレニクリンなどの涙液誘発剤を経鼻投与すると、涙液中の発現導入遺伝子の濃度が増加した。
【0626】
実施例3.導入後のブタの涙におけるヒト神経成長因子βタンパク質の検出
12匹のブタ(Sus scrofa domesticus)から、7日、14日、21日、28日及び35日に涙を採取した、アデノ随伴ウイルス血清型2(n=4)、5(n=4)及び9(n=4)ベクターを利用して、ヒト神経成長因子をコードするアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)(AAV-hNGFβ)の単回投与(2e11vg/mL)を用いた涙腺導入(涙腺内注射による)の35日後に、12匹のブタ(Sus scfa domesticus)から涙を採取した。涙液サンプルの採取は、7日目、14日目、21日目、28日目、35日目に、麻酔をかけた動物の右目(OD)と左目(OS)の下まぶたの下にシルマーティアテストストリップを約120秒間個別に置いて行った。22~27日目、バレニクリン0.03mg溶液を1日2回(BID)各鼻孔に投与した。28日目の涙液採取では、0.03mgのバレニクリン溶液を涙液採取の2分前に点鼻ポンプで各鼻孔に投与した。全採取日において、シルマーティアテストストリップを液移行線のすぐ上で切断し、テストストリップの液飽和部分を直ちに氷上の微量遠心分離機に入れた。採取したサンプルは、ドライアイスで検査施設に出荷する前に、-20℃で保存した。
【0627】
左目のシルマー涙液試験片からタンパク質を抽出し、ヒト神経成長因子タンパク質(hNGFβ)を検出するメゾスケール発見アッセイを各試料について実施した。ヒトNGFβについてのMSDアッセイの最小及び最大標準曲線値は、それぞれ0.104~427pg/mLであった。(配列番号:25の発現カセットを含む;
図9に描写)の形質導入は、涙におけるhNFGβの発現を生じた(それぞれ
図10A~10C)。AAV9-hNGFβの導入は、検出のためにサンプルを16~128倍に希釈しなければならないほど高い発現を生じた(表8)。希釈研究から得られたAAV9-hNGFβ形質導入ブタからのhNGFβの平均計算涙液レベルは、5,612.84pg/mLである。hNGFβは、異なるタンパク質をコードするAAVベクターを利用する以前の研究から収集されたhNGF MSDデータに基づいて、非形質転換ブタ涙液中に検出されなかったことに留意すべきである。したがって、シルマーストリップ涙液サンプルの抽出物から検出されたhNGFβタンパク質は、MSDアッセイ中に容易に同定され、AAV-hNGFβ構築物による涙腺のトランスダクションに起因した。AAV2-hNGFβ(
図10A)について21日目に収集されたサンプルは、分析から省略された外れ値(Grubbの検定によって決定されたp<0.05)を含む。AAV9-hNGFβ(
図10C)に示されるように、7~35日目の間に有意な減少は観察されなかった。さらに、hNGFタンパク質レベルを、21日目(鼻腔用スプレーなし)、28日目(鼻腔用スプレー投与)及び35日目(鼻腔用スプレーなし)に採取されたAAV9--hNGFβを投与された動物からのサンプル間で比較した。鼻腔用スプレーを投与すると、AAV単独投与と比較して、涙のhNGFβタンパク質濃度が増加した(データは示さず)。
【0628】
合わせて、このデータは、hNGFβをコードするアデノウイルス関連ベクターによるブタ涙腺の形質導入が、検出可能な量のhNGFβの発現、分泌及び涙液への輸送をもたらしたことを実証する。発現は涙腺への導入後7日以内に検出可能であり、発現レベルの有意な変動は利用したAAV血清型に依存した。AAV9は7日以内に最高レベルの発現を示し、AAV2は最低レベルを示したが、ヒト神経成長因子βタンパク質の検出に利用された分析アッセイの範囲内であった。涙液中のAAV2タンパク質レベルは28日まで着実に増加したが、AAV5は最初の7日後に減少し、14日目から28日目には定常状態に達し、35日目にはさらに減少したようであった。AAV9を導入した動物は、7日目に涙液中に有意なレベルのhNGFが検出され、それは35日目まで一定であった。
【表10】
【0629】
実施例4:涙腺内注射を介してrAAVにより送達されたブタ涙腺におけるEGFP導入遺伝子の発現
研究の目的は、涙腺を、ブタにおいて関心のあるタンパク質で涙液を改変又は濃縮する方法として活用できるかどうかを評価することであった。その後、eGFPをコードするプラスミドを含むアデノウイルスベクターを送達した後、EGFPが涙腺の尖圭細胞で産生され、涙液中に分泌され得るかどうかを試験するために、in vivoで試験が実施された。EGFPをコードするcDNAを腺房細胞に導入するために、われわれのアプローチは、分泌型EGFP(secEGFP)をコードするcDNAを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)を涙腺に注射することであった。secEGFP用に2種類の血清型(2及び9)のAAVを作製するため、secEGFP発現に必須な要素を逆末端反復(ITR)の間に含むAAVトランスファープラスミドを作製した。ITR間のDNA配列は、製造されたAAV(
図11)にパッケージされた。
【0630】
AAVの11の血清型が同定されており、最もよく特徴付けられているのはAAV2である。AAVの偽型とは、形質導入効率を向上させるために、異なる血清型のカプシドとゲノムを混合することであり、これらの血清型はスラッシュで示されている。例えば、AAV2/5は血清型5のカプシドにパッケージされた血清型2を含むウイルスを示す。AAV5及びAAV9は、マウスの涙腺にルシフェラーゼレポーター遺伝子を導入できることが報告されている(Rochaら、Transduction,Tropism,and Biodistribution of AAV Vectors in the Lacrimal Gland,2011;52(13):9567-9572)。GFP及びマウス神経成長因子(mNGF)によるマウス涙腺への導入は、偽タイプAAV2/5及びAAV2/9で観察され、プレプリントサーバーサイトで最近報告された(Gautierら、AAV2/9-mediated gene transfer into murine lacrimal gland leads to a long-term targeted tear film modification;bioRxiv,2022)。
【0631】
デザイン分析及び方法論
分泌型EGFPの研究グレードAAV(血清型2及び9)は、シリオンで合成され、5×10
12のストック濃度で提供された。製造されたAAVが細胞を形質導入することを確実にするため、AAVは、CJ SolutionsによってHEK 293T細胞及びELISAを用いてin vitroで試験された。テキサスA&Mでは、8頭の家畜ブタにEGFPの涙腺内注射を1回だけ行い、右腺(OD;oculus dexter)には低用量、左腺(OS;oculus sinister)には高用量を投与した。最初の注射から6週間後、AAV2とAAV9の高用量による2回目の注射が行われた。この研究では、35日目にEGFP発現を評価した。涙液EGFPレベル確認後、涙腺におけるEGFPの存在を評価し、潜在的な炎症又は腺の異常を評価するため、2回目の注射から8週間後に試験を終了した。(表10及び11)。この試験では、鼻腔用スプレー投与は3週目から4週目の間に行われた(表12)。
【表11】
【表12】
vg=ウイルスゲノム
【表13】
mcg=マイクログラム
【0632】
2回目のAAV-secEGFP注射後、82日目にシルマーストリップを介して各眼から涙を採取した。涙は、シルマー涙テストストリップを下結膜嚢に置き、2分間そのままにしておくことにより採取した。涙タンパク質をシルマーティアテストストリップから抽出し、涙中のEGFPタンパク質の存在を検出するためにメソスケールディスカバリー(MSD)分析を行った。
【0633】
103日目に眼組織病理学のために涙腺を採取し、サンプルをEGFP免疫組織化学(IHC)のためにZyagen,Inc.(San Diego,CA)に送った。
【0634】
ELISA結果は、製造したAAV血清型がHEK 293T細胞を形質導入し、in vitroで分泌EGFPを産生し得ることを示した。涙液サンプル中のEGFP発現は、AAV導入82日後のMSD分析によって、eGFPレベルが>400pg/mLであることが確認され、IHCによっても確認された(
図12)。IHCは、EGFP発現が、AAV9と比較してAAV2について観察されたより大きな腺房細胞感染性を有する腺房細胞内にあることを示した。さらに、AAV9を注入した涙腺に関して、延性上皮細胞の形質導入が観察された(
図13)。AAVを繰り返し注射した後のブタ涙腺のヘマトキシリン・エオジン染色は、いかなる炎症性浸潤、萎縮又は浮腫も示さなかった(
図14)。
【0635】
AAV2-secEGFP又はAAV9-secEGFPのいずれかを注射されたブタ涙腺は、腺房細胞だけでなく延性上皮細胞にもEGFP導入遺伝子産物を発現した。涙腺で発現したEGFPは涙液中に分泌されることが確認された。さらに、AAV2又はAAV9を繰り返し注射した後、最初の注射で低用量又は高用量のAAVを投与した動物にかかわらず、安全性のシグナルや炎症性浸潤は観察されなかった。本研究の結果は、涙腺の腺房細胞が、涙液膜を修正及び/又は濃縮するための遺伝子治療アプローチの標的であることを示している。
* * * *
【0636】
本明細書において本発明の実施形態を示し、説明してきたが、当業者であれば、このような実施形態は例示としてのみ提供されることを理解されよう。本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更及び置換が当業者に生じるであろう。本明細書中に記述されている本発明の実施形態に対する様々な代替が、本発明を実施する際に採用され得ることが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を規定し、これらの特許請求の範囲及びその均等物の範囲内の方法及び構造はそれによってカバーされることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】