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特表2024-517460ステロイド酸ベースの免疫原エンハンサー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】ステロイド酸ベースの免疫原エンハンサー
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/39 20060101AFI20240415BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20240415BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240415BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20240415BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20240415BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20240415BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20240415BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20240415BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
A61K39/39
C12N5/078 ZNA
C12N5/10
C07K7/08
C07K14/00
C07K7/06
C12N5/071
A61K47/62
A61K39/00 H
A61K39/02
A61K39/12
A61K39/215
A61K39/00 K
A61P35/00
A61P31/12
A61P31/10
A61P31/04
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568364
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 CA2022050714
(87)【国際公開番号】W WO2022232945
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/201,620
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/362,494
(32)【優先日】2022-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520423390
【氏名又は名称】ディフェンス・セラピューティクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ボードワン、シモン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BD27
4B065BD29
4B065BD32
4B065BD34
4B065CA25
4B065CA45
4C076CC07
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA07
4C085BA49
4C085BA51
4C085BA71
4C085BB01
4C085CC01
4C085CC03
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF12
4C085FF17
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA15
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA55
4H045EA20
4H045FA20
4H045FA50
(57)【要約】
目的の抗原と混和するための免疫原エンハンサーが本明細書に記載されている。エンハンサーは、一般に、混和された抗原に対する適応免疫応答を改善若しくは修飾するのに十分な量のステロイド酸及び/又はステロイド酸-ペプチドコンジュゲートを含む。実施形態では、ステロイド酸は、胆汁酸であってもよく、ペプチドは、抗原提示及び/又は抗原交差提示を促進し、それによって抗原に対する改善された細胞性免疫又は改善された細胞性及び体液性免疫を誘発し得る核局在化シグナルなどの1つ以上の機能性ドメインを含んでもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原提示のエンハンサーと混和された抗原を含む組成物であって、前記エンハンサーが、前記エンハンサーを欠く対応する組成物の投与と比較して、抗原提示細胞への前記組成物の投与時に前記抗原の提示を改善するのに十分な量のステロイド酸及び/又はステロイド酸-ペプチドコンジュゲートを含む、組成物。
【請求項2】
前記エンハンサー中又は前記ステロイド酸-ペプチドコンジュゲート中の前記ステロイド酸が、エンドソームの内側リーフレット上へのセラミド蓄積を誘発し、それによって前記抗原提示細胞内のエンドソーム膜を不安定化させ、前記抗原のサイトゾルへのエンドソーム脱出を促進するステロイド酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エンハンサー中又は前記ステロイド酸-ペプチドコンジュゲート中の前記ステロイド酸が、セラミドを形成する酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)に媒介されるスフィンゴミエリンの切断の増加を誘発するステロイド酸である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記エンハンサー中又は前記ステロイド酸-ペプチドコンジュゲート中の前記ステロイド酸が、胆汁酸である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記エンハンサー中又は前記ステロイド酸-ペプチドコンジュゲート中の前記ステロイド酸が、一次胆汁酸又は二次胆汁酸である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記エンハンサー中又は前記ステロイド酸-ペプチドコンジュゲート中の前記ステロイド酸が、
(a)コール酸(CA)、ケノデオキシコール酸(CDCA)、デオキシコール酸(DCA)、リトコール酸(LCA)、グリココール酸(GCA)、タウロコール酸(TCA)、グリコデオキシコール酸(GDCA)、グリコケノデオキシコール酸(GCDCA)、タウロデオキシコール酸(TDCA)、グリコリトコール酸(GLCA)、タウロリトコール酸(TLCA)、タウロヒオデオキシコール酸(THDCA)、タウロケノデオキシコール酸(TCDCA)、ウルソコール酸(UCA)、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、若しくはグリコウルソデオキシコール酸(GUDCA)である胆汁酸、
(b)前記(a)の胆汁酸の類似体であって、エンドサイトーシスを誘導する、エンドソームの内側リーフレット上へのセラミド蓄積を誘発する、セラミドを形成する酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)に媒介されるスフィンゴミエリンの切断の増加を誘発する、及び/若しくはコール酸の疎水性よりも大きい疎水性を有する類似体、
(c)コール酸よりも疎水性である胆汁酸若しくは胆汁酸類似体(例えば、CDCA、DCA、LCA、TCA、TDCA、TCDCA、GCA、GDCA、又はGCDCA)、又は
(d)(a)~(c)の任意の組み合わせであるか、あるいはそれらを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記エンハンサー中又は前記ステロイド酸-ペプチドコンジュゲート中の前記ステロイド酸が、グリコデオキシコール酸(GDCA)、グリコケノデオキシコール酸(GCDCA)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、若しくはリトコール酸(LCA)であるか、又はそれらを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ペプチドが、核局在化シグナル(NLS)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記NLSが、古典的NLS(例えば、K-K/R-X-K/Rモチーフを含む)、PY-NLS(例えば、前記NLSのC末端に向かうものなどの1つ以上のPYモチーフを含む、又はモチーフR-X2~5-PYを含む及び/若しくはKapβ2結合活性を有する)、PL-NLS(例えば、前記NLSのC末端に向かうものなどの1つ以上のPLモチーフを含む)、リボソームNLS、核小体標的化シグナルを更に含むNLS、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記NLSが、SV40 NLS、cMyc NLS、hnRNPA1 M9 NLS、hnRNP D NLS、hnRNP M NLS、PQBP-1 NLS、HuR NLS、Tus NLS、ヌクレオプラスミンNLS、NLS1 RPS17、NLS2 RPS17、NLS3 RPS17、若しくはNLS2-RGドメインRSP17であるか、又はそれらに由来する、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項11】
前記NLSが、少なくとも3つの酸性残基(例えば、R/K)及び/又は少なくとも3つの塩基性残基(例えば、E/D)を含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ペプチドが、エンドソーム脱出を促進するエンドソーム分解モチーフを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ペプチドが、エンドサイトーシス及び/又はエンドソーム形成を刺激するタンパク質形質導入ドメインを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記ペプチドが、タンパク質形質導入ドメイン又は細胞膜透過性ペプチドを欠いている、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記ペプチドが、非免疫原性ペプチドである、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記ペプチドが、少なくとも7、8、9、10、11、若しくは12のアミノ酸長を有し、50~100以下のアミノ酸長を有し、かつ/又は10~100のアミノ酸長を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記ペプチドが、配列番号1~8若しくは10~16のいずれか1つのペプチド、又はその変異体であって、
(a)前記ステロイド酸にコンジュゲート化された場合、対応する非コンジュゲート化ステロイド酸の抗原提示活性と比較して、前記ステロイド酸に改善された抗原提示活性を付与するか、
(b)核局在化及び/又はエンドソーム分解活性を有するか、
(c)1、2、3、4、若しくは5個以下のアミノ酸の置換又は欠失で、配列番号1~8若しくは10~16のいずれか1つのペプチドとは異なるか、又は
(d)(a)~(c)の任意の組み合わせである、ペプチド、又はその変異体を含むか、あるいはそれからなる、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記エンハンサーが、ステロイド酸-ペプチドコンジュゲートを含み、前記ステロイド酸が、前記ペプチドであって、
(a)1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、若しくは10:1、又は1:1~10:1のステロイド酸:ペプチドのモル比で、
(b)前記ペプチドの遊離アミノ基及び/若しくは遊離チオール基(例えば、リシン又はシステインの)にある、
(c)前記ペプチドのN末端にあるか、若しくはそれに向かう(例えば、N端残基の遊離アミノ基にある、及び/又はN端システイン残基のチオール基にある)、又は
(d)(a)~(c)の任意の組み合わせである、ペプチド、にコンジュゲート化されている、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物中のエンハンサーの抗原に対するモル比が、少なくとも0.01:1、0.05:1、0.1:1、0.2:1、0.5:1、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1であり、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、50:1、100:1、250:1、500:1、1000:1以下であり、かつ/又は1:1~1000:1、1:1~500:1、1:1~250:1、1:1~200:1である、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記抗原が、1つ以上のMHCクラスIエピトープ及び/又はMHCクラスIIエピトープを含むポリペプチド抗原である、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記ポリペプチド抗原が、
(a)腫瘍関連抗原(TAA)、腫瘍特異的抗原(TSA)、ネオアンチゲン、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、ワクチン接種及び/若しくは免疫療法による治療に適した疾患若しくは障害に関連する抗原、又はそれらの任意の抗原性断片、あるいは
(b)コロナウイルス抗原(例えば、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、SARS-CoVスパイクタンパク質、若しくはその抗原性断片、又は単一塩基変異体抗原、変異フレームシフト抗原、スプライス変異体抗原、遺伝子融合抗原、内因性レトロエレメント抗原などのがん抗原、又はヒト白血球抗原(HLA)-体細胞変異由来抗原あるいは翻訳後TSA、ウイルス由来のがん抗原(例えばヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス、又はエプスタイン-バールウイルス(EBV))、がん-精巣抗原、HER2、PSA、TRP-1、TRP-2、EpCAM、GPC3、CEA、MUC1、MAGE-A1、NY-ESO-1、SSX-2、メソテリン(MSLN)、EGFR、細胞ライセート又は腫瘍由来の他の物質(例えば、腫瘍由来のエクソソーム)などの別のクラスの抗原であるか、又はそれらを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記エンハンサーが、
(i)前記エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、前記抗原のサイトゾル送達の増加、
(ii)前記エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、前記抗原の総細胞送達の増加、
(iii)前記エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、前記抗原に対する細胞性免疫の増強、
(iv)前記エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、前記抗原への曝露時のCD8+T細胞によるIFN-γ産生の増加、
(v)前記エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、前記抗原に対する体液性免疫の増強、
(vi)前記エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、前記抗原に対する抗体種の多様性の増大、又は
(vii)(i)~(vi)の任意の組み合わせを可能にする、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
薬学的に許容される賦形剤及び/又はアジュバントを更に含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
細胞集団及び請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物を含む、細胞培養物。
【請求項25】
前記細胞が、免疫細胞(例えば、T細胞)、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージ、遺伝子操作された抗原提示細胞)、MHCクラスI発現細胞、MHCクラスII発現細胞、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項24に記載の細胞培養物。
【請求項26】
請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物を含むか、又は請求項24若しくは25に記載の細胞培養物を使用して産生された細胞を含む、ワクチン。
【請求項27】
治療用又は予防用ワクチン(例えば、抗がんワクチン、抗ウイルスワクチン、又は抗細菌ワクチン)である、請求項26に記載のワクチン。
【請求項28】
対象における目的の抗原に対する増強された適応免疫応答を誘発するための方法であって、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項24若しくは25に記載の細胞培養物を使用して産生された細胞を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項29】
感染症に対して対象にワクチン接種するための方法であって、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物又は請求項24若しくは25に記載の細胞培養物を使用して産生された細胞を前記対象に投与することを含み、前記抗原が、前記感染症を引き起こす病原体(例えば、ウイルス、細菌、真菌)の抗原性断片を含む、方法。
【請求項30】
対象におけるがんを治療するための方法であって、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物又は請求項24若しくは25に記載の細胞培養物を使用して産生された細胞を前記対象に投与することを含み、前記抗原が、前記がんを引き起こす細胞において過剰発現されるか、又は異常に発現される、方法。
【請求項31】
抗原と混和して、使用するためのステロイド酸-ペプチドコンジュゲート。
【請求項32】
前記ステロイド酸-コンジュゲート及び/又は前記抗原が、請求項1~22のいずれか一項に記載されるものである、請求項31に記載の使用するためのステロイド酸-ペプチドコンジュゲート。
【請求項33】
対象において免疫応答を生成するための、又は対象において免疫応答を生成するための医薬の製造のための、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物又は請求項24若しくは25に記載の細胞培養物の使用。
【請求項34】
前記免疫応答が、前記エンハンサーを欠く対応する組成物又は細胞培養物から生成されるものと比較して、前記抗原に対する細胞性免疫の増強、前記抗原への曝露時のCD8+T細胞によるIFN-γ産生の増大、前記に対する体液性免疫の増強、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項33に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、抗原の免疫原性を増強する方法に関する。より具体的には、本明細書は、抗原免疫原性を改善するためのステロイド酸及びステロイド酸-ペプチドコンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
サブユニットワクチンは一般に最も安全なワクチンと考えられているが、このような抗原は防御的かつ長期持続性の免疫を提供するための十分に強い免疫応答を惹起しない可能性がある。したがって、サブユニットワクチンの免疫原性及び有効性を改善する方法が非常に望ましい。
【発明の概要】
【0003】
第1の態様では、本明細書には、抗原提示のエンハンサーと混和された抗原を含む免疫原性組成物であって、エンハンサーが、エンハンサーを欠く対応する組成物の投与と比較して、抗原提示細胞への組成物の投与時に抗原の提示を改善するのに十分な量のステロイド酸及び/又はステロイド酸-ペプチドコンジュゲートを含む、免疫原性組成物、が記載される。実施形態では、ステロイド酸は、胆汁酸又は胆汁酸類似体であってもよく、ペプチドは、核局在化シグナル、エンドソーム脱出シグナル、及び/又はタンパク質形質導入ドメインなどの機能性ドメインを含んでもよい。
【0004】
更なる態様では、本明細書には、細胞集団、及び本明細書に記載される免疫原性組成物を含む細胞培養物が記載される。更なる態様では、本明細書には、本明細書に記載される免疫原性組成物を含むか、又は本明細書に記載される細胞培養物を使用して産生された細胞を含むワクチンが記載される。更なる態様では、本明細書には、対象における目的の抗原に対する増強された適応免疫応答を誘発するための方法が記載され、方法は、本明細書に記載される組成物、又は本明細書に記載される細胞培養物を使用して産生された細胞を対象に投与することを含む。
【0005】
更なる態様では、本明細書には、免疫原性を増強するために抗原と混和して使用するための、又は対象において免疫応答を生成するための医薬の製造に使用するためのステロイド酸-ペプチドコンジュゲートが記載される。
【0006】
一般的定義
見出し及び他の識別子、例えば、(a)、(b)、(i)、(ii)などは、明細書及び特許請求の範囲を読みやすくするために提示されるにすぎない。明細書又は特許請求の範囲における見出し又は他の識別子の使用は、工程又は要素がアルファベット順若しくは数字順に、又はそれらが提示される順で実行されることを必ずしも必要とはしない。
【0007】
特許請求の範囲及び/又は明細書において用語「含む」と併せて使用される場合の単語「a」又は「an」の使用は、「1つ」を意味する場合もあるが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、及び「1つ又は2つ以上」の意味とも一致する。
【0008】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、用語「comprising(含む)」(並びに「comprise」及び「comprises」などの任意の形態の「comprising」)、「having(有する)」(並びに「have」及び「has」などの任意の形態の「having」)「including(含む)」(並びに「includes」及び「include」などの任意の形態の「including」)又は「containing(含有する)」(並びに「contains」及び「contain」などの任意の形態の「containing」)は、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素又は方法の工程を除外するものではない。
【0009】
用語「約」は、値がその値を決定するために使用される装置又は方法の誤差の標準偏差を含むことを示すために使用される。概して、「約」という用語は、10%までの可能性のある変動を示すことを意味する。したがって、値の1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10%の変動は、「約」という用語に含まれる。別途指示がない限り、範囲の前の「約」という用語の使用は、範囲の両端に適用される。
【0010】
本説明の他の目的、利点、及び特徴は、添付の図面を参照して単なる例として示される、その特定の実施形態の以下の非限定的な説明を読むことによって、より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
添付の図は以下のとおりである。
図1】OVA応答OT-I(CD8)細胞を評価するための骨髄由来樹状細胞(bone marrow-derived dendritic cell、BMDC)による抗原交差提示アッセイの結果を示す。マウスBMDCを、抗原(ovalbumin、OVA)単独、コール酸(cholic acid、CA)単独、コール酸-NLSペプチドコンジュゲート(CA-SV40NLS)単独、CAの抗原に対する種々の比(CA:OVA=22:1、12:1、8:1、4:1、及び2:1)、又はコール酸-NLSペプチドコンジュゲートの抗原に対する種々の比(CA-SV40NLS:OVA=22:1、12:1、8:1、4:1、及び2:1)で3時間パルスした。次いで、パルスしたBMDCをOT-Iマウス由来CD8 T細胞と共培養し、IFN-γレベルを交差提示活性の尺度として定量した。
図2】胆汁酸-SV40NLSコンジュゲートの抗原提示活性に対する種々の胆汁酸の効果を示す。この実験のために、BMDCを抗原提示細胞として使用し(n=6)、モル比(胆汁酸/ペプチド/コンジュゲート):抗原は、4:1であった。試験した対照は、抗原なし(「PBS」)、抗原単独(「OVA単独」)、非コンジュゲート化NLSペプチド(「SV40NLS」)、OVAと混合した非コンジュゲート化コール酸(「CA」)、及びOVAと混合した陽性対照ペプチドSIINFEKL(配列番号9)(「SIINFEKL」)を含んでいた。破線は、OVA単独で得られたシグナルを表す。胆汁酸:コール酸(CA);グリコデオキシコール酸(GDCA);グリコケノデオキシコール酸(GCDCA);ウルソデオキシコール酸(UDCA);及びリトコール酸(LCA)である。
図3】コール酸-NLSペプチドコンジュゲートの抗原提示活性に対する種々のNLSペプチドの効果を示す。破線は、OVA単独で得られたシグナルを表す。24時間のインキュベーション後に読み出しを行い、エラーバーはSD(n=6)を表す。この実験のために、BMDCを抗原提示細胞として使用した。
図4】コール酸-NLSペプチドコンジュゲートの抗原提示活性に対する種々のNLSペプチドの効果を示す。破線は、OVA単独で得られたシグナルを表す。単一の実験からの24時間のインキュベーション後に読み出しを行った。CA-ペプチドコンジュゲート:OVAのモル比は、22:1であった。この実験のために、BMDCを抗原提示細胞として使用した。
図5】コール酸-NLSペプチドコンジュゲートの抗原提示活性に対する種々のNLSペプチドの効果を示す。この実験のために、BMDCを抗原提示細胞として使用した。破線は、OVA単独で得られたシグナルを表す。単一の実験からの24時間のインキュベーション後に読み出しを行った。CA-ペプチドコンジュゲート:OVAのモル比は、以下のとおりであった:CA-GWG-SV40NLS(12:1)、CA-hnRNP M NLS(12:1)、CA-NLS2-RPS17 NLS(22:1)、CA-HuR NLS(22:1)、CA-cMyc NLS(2:1)、CA-NLS3-RPS17 NLS(22:1)、CA-NLS2-RG-RPS17 NLS(2:1)、CA-PQBP1 NLS(8:1)、CA-hnRNPA1 M9 NLS(22:1)、及びCA-SV40 NLS(2:1)。
図6】コール酸-NLSペプチドコンジュゲートの抗原提示活性に対する種々のNLSペプチドの効果を示す。この実験のために、交差提示間葉系間質細胞(mesenchymal stromal cell、MSC)株を抗原提示細胞として使用した。破線は、OVA単独で得られたシグナルを表す。24時間のインキュベーション後に読み出しを行った。CA-ペプチドコンジュゲート:OVAのモル比は、以下のとおりであった:CA-GWG-SV40NLS(2:1)、CA-hnRNP M NLS(8:1)、CA-hnRNP D NLS(12:1)、CA-NLS2-RG-RPS17(4:1)、CA-cMyc NLS(12:1)、CA-HuR NLS(12:1)、CA-Tus NLS(2:1)、CA-NLS2-RPS17 NLS(4:1)、CA-PQBP1 NLS(12:1)、CA-hnRNPA1 M9 NLS(2:1)、及びCA-SV40 NLS(2:1)。
図7A】コール酸-NLSペプチドコンジュゲートの抗原内在化活性に対する種々のNLSペプチドの効果を示す。この実験のために、交差提示間葉系間質細胞(MSC)株を抗原提示細胞として使用し、これをAlexa Fluor 647で標識したOVA(すなわち、OVA647)(商標)でパルスした。OVA647の蛍光をフローサイトメトリーによって測定した。CA(NLS1 RPS17[図7A]、NLS3 RPS17[図7B]、PQBP-1[図7C]、及びhnRNPA1 M9 NLS[図7D])の抗原に対する種々の比(CA:OVA=22:1、12:1、8:1、4:1、及び2:1)を試験した(2:1でのhnRNPA1 M9 NLS)。
図7B】コール酸-NLSペプチドコンジュゲートの抗原内在化活性に対する種々のNLSペプチドの効果を示す。この実験のために、交差提示間葉系間質細胞(MSC)株を抗原提示細胞として使用し、これをAlexa Fluor 647で標識したOVA(すなわち、OVA647)(商標)でパルスした。OVA647の蛍光をフローサイトメトリーによって測定した。CA(NLS1 RPS17[図7A]、NLS3 RPS17[図7B]、PQBP-1[図7C]、及びhnRNPA1 M9 NLS[図7D])の抗原に対する種々の比(CA:OVA=22:1、12:1、8:1、4:1、及び2:1)を試験した(2:1でのhnRNPA1 M9 NLS)。
図7C】コール酸-NLSペプチドコンジュゲートの抗原内在化活性に対する種々のNLSペプチドの効果を示す。この実験のために、交差提示間葉系間質細胞(MSC)株を抗原提示細胞として使用し、これをAlexa Fluor 647で標識したOVA(すなわち、OVA647)(商標)でパルスした。OVA647の蛍光をフローサイトメトリーによって測定した。CA(NLS1 RPS17[図7A]、NLS3 RPS17[図7B]、PQBP-1[図7C]、及びhnRNPA1 M9 NLS[図7D])の抗原に対する種々の比(CA:OVA=22:1、12:1、8:1、4:1、及び2:1)を試験した(2:1でのhnRNPA1 M9 NLS)。
図7D】コール酸-NLSペプチドコンジュゲートの抗原内在化活性に対する種々のNLSペプチドの効果を示す。この実験のために、交差提示間葉系間質細胞(MSC)株を抗原提示細胞として使用し、これをAlexa Fluor 647で標識したOVA(すなわち、OVA647)(商標)でパルスした。OVA647の蛍光をフローサイトメトリーによって測定した。CA(NLS1 RPS17[図7A]、NLS3 RPS17[図7B]、PQBP-1[図7C]、及びhnRNPA1 M9 NLS[図7D])の抗原に対する種々の比(CA:OVA=22:1、12:1、8:1、4:1、及び2:1)を試験した(2:1でのhnRNPA1 M9 NLS)。
図8A】コール酸-NLSペプチドコンジュゲートの抗原プロセシング活性に対する種々のNLSペプチドの効果を示す。この実験のために、交差提示間葉系間質細胞(MSC)株を抗原提示細胞として使用し、これをDQ(商標)オボアルブミン(すなわち、OVADQ)でパルスした。OVADQの蛍光をフローサイトメトリーによって測定した。CA(NLS1 RSP17[図8A]、NLS3 RPS17[図8B]、PQBP-1[図8C]、及びhnRNPA1 M9 NLS[図8D])の抗原に対する種々の比(CA:OVA=22:1、12:1、8:1、4:1、及び2:1)を試験した(2:1でのhnRNPA1 M9 NLS)。
図8B】コール酸-NLSペプチドコンジュゲートの抗原プロセシング活性に対する種々のNLSペプチドの効果を示す。この実験のために、交差提示間葉系間質細胞(MSC)株を抗原提示細胞として使用し、これをDQ(商標)オボアルブミン(すなわち、OVADQ)でパルスした。OVADQの蛍光をフローサイトメトリーによって測定した。CA(NLS1 RSP17[図8A]、NLS3 RPS17[図8B]、PQBP-1[図8C]、及びhnRNPA1 M9 NLS[図8D])の抗原に対する種々の比(CA:OVA=22:1、12:1、8:1、4:1、及び2:1)を試験した(2:1でのhnRNPA1 M9 NLS)。
図8C】コール酸-NLSペプチドコンジュゲートの抗原プロセシング活性に対する種々のNLSペプチドの効果を示す。この実験のために、交差提示間葉系間質細胞(MSC)株を抗原提示細胞として使用し、これをDQ(商標)オボアルブミン(すなわち、OVADQ)でパルスした。OVADQの蛍光をフローサイトメトリーによって測定した。CA(NLS1 RSP17[図8A]、NLS3 RPS17[図8B]、PQBP-1[図8C]、及びhnRNPA1 M9 NLS[図8D])の抗原に対する種々の比(CA:OVA=22:1、12:1、8:1、4:1、及び2:1)を試験した(2:1でのhnRNPA1 M9 NLS)。
図8D】コール酸-NLSペプチドコンジュゲートの抗原プロセシング活性に対する種々のNLSペプチドの効果を示す。この実験のために、交差提示間葉系間質細胞(MSC)株を抗原提示細胞として使用し、これをDQ(商標)オボアルブミン(すなわち、OVADQ)でパルスした。OVADQの蛍光をフローサイトメトリーによって測定した。CA(NLS1 RSP17[図8A]、NLS3 RPS17[図8B]、PQBP-1[図8C]、及びhnRNPA1 M9 NLS[図8D])の抗原に対する種々の比(CA:OVA=22:1、12:1、8:1、4:1、及び2:1)を試験した(2:1でのhnRNPA1 M9 NLS)。
【0012】
配列表
本出願は2022年5月5日に作成されたコンピュータ可読形式の配列表を含む。コンピュータ可読形式は参照により本明細書に組み込まれる。
【0013】
【表1】
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書には、抗原に対する適応免疫応答を改善若しくは修飾することに関する組成物、細胞、及び方法が記載される。いくつかの態様では、本発明は、抗原をステロイド酸又はステロイド酸-ペプチドコンジュゲートと混和することによって、抗原に対する、抗原提示を改善する、並びに/又は改善された細胞性免疫若しくは改善された細胞性及び体液性免疫を誘発するという本明細書における実証に起因する。いくつかの実施形態では、本明細書には、抗原提示及び/又は適応免疫のエンハンサーとしてのステロイド酸又はステロイド酸-ペプチドコンジュゲートの使用が記載される。有利なことに、本明細書に記載のエンハンサーは、抗原に共有的にコンジュゲート化されず、それによって、目的の抗原に合わせて調整可能なエンハンサー:抗原モル比で種々の抗原を有する製剤に迅速に適合可能な多用途のプラットフォームを提供する。
【0015】
第1の態様では、本明細書には、抗原提示のエンハンサーと混和された抗原を含む組成物が記載される。本明細書で使用される場合、「混和」又は「混和すること」という用語は、2つの別個の成分の組み合わせを単一の組成物にすることを指し、これらの成分は、共有的にコンジュゲート化していないか、又は他の方法で一緒に反応していない。いくつかの実施形態では、エンハンサーは、エンハンサーを欠く対応する組成物の投与と比較して、抗原提示細胞への組成物の投与(例えば、インビトロ、エクスビボ、又はインビボ)時に抗原の提示を改善するのに十分な量のステロイド酸を含み得る。いくつかの実施形態では、エンハンサーは、エンハンサーを欠く対応する組成物の投与と比較して、抗原提示細胞への組成物の投与(例えば、インビトロ、エクスビボ、又はインビボ)時に抗原の提示を改善するのに十分な量のステロイド酸-ペプチドコンジュゲートを含み得る。
【0016】
ポリペプチド抗原は通常、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)によって捕捉されるが、最初はエンドソームに捕捉される。リソソームへのエンドソームの成熟によって、pHが低下し、非特異的な抗原の分解を媒介するタンパク質分解酵素を活性化させる。結果として、生成された抗原性断片のいくつかは、次いで、エンドソーム孔を通過してサイトゾルに到達することができ、そこで、MHCクラスIの提示の前に更なる抗原の分解がプロテアソーム機構によって生じる。このプロセスは自然に生じるが、最終的にエンドソームから放出される生成された抗原性断片は、小さくかつ/又は損傷されている可能性があり、それらはプロテアソーム分解に適切ではなく、それによってそれらのMHCクラスIの提示が妨げられ、したがってそれに基づく細胞性免疫が妨げられる。理論に束縛されるものではないが、本明細書に記載の免疫原エンハンサーとの抗原の混和により、抗原の内在化/エンドソーム脱出を促進し、それら(又はより大きな抗原断片)がよりネイティブな立体構造でかつ/又はより大量にサイトゾルに到達することを可能にすることができる。結果として、これらのよりネイティブな抗原のプロテアソーム分解は、抗原提示細胞の表面でMHCクラスIを介して提示されるより多数のかつ/又は多様な免疫原性及び/又は安定性ペプチドをもたらし、それによって強力なT細胞の活性化を惹起することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のステロイド酸(例えば、エンハンサー中及び/又はステロイド酸-ペプチドコンジュゲート中)は、内在化されたカーゴのエンドサイトーシス及び/又はエンドソーム脱出を増強するステロイド酸であってもよい。理論に束縛されるものではないが、ステロイド酸(例えば、胆汁酸及び胆汁酸類似体)は、ウイルスによって利用/活用され、例えば、ウイルスのエンドサイトーシス取り込み及び/又はエンドソーム脱出を増加させてサイトゾルへのアクセスを得ることによって、ウイルスの宿主細胞への感染を促進することが示されている(Shivanna et al.,2014;Shivanna et al.,2015;Murakami et al.,2020)。例えば、胆汁酸は、酵素の酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)を始動させて、エンドソームの内側リーフレット上でスフィンゴミエリンをセラミドに切断することが示されている。セラミド量の増加によって、膜が不安定化してエンドソーム脱出が促進される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のステロイド酸は、エンドソームの内側リーフレット上へのセラミド蓄積を誘発し、それによってエンドソーム膜を不安定化させ、細胞内送達時に修飾ポリペプチド抗原のエンドソーム脱出を促進するものを含んでもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のステロイド酸は、セラミドを形成する酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)に媒介されるスフィンゴミエリンの切断の増加を誘発するものを含んでもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のステロイド酸は、一次胆汁酸又は二次胆汁酸などの胆汁酸であってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のステロイド酸は、1つ以上の胆汁酸部分を含む胆汁酸オリゴマーであってもよい(Al-Hilal et al.,2014)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のステロイド酸は、コール酸(CA)、ケノデオキシコール酸(chenodeoxycholic acid、CDCA)、デオキシコール酸(deoxycholic acid、DCA)、リトコール酸(LCA)、グリココール酸(glycocholic acid、GCA)、タウロコール酸(taurocholic acid、TCA)、グリコデオキシコール酸(GDCA)、グリコケノデオキシコール酸(GCDCA)、タウロデオキシコール酸(TDCA)、グリコリトコール酸(GLCA)、タウロリトコール酸(taurolithocholic acid、TLCA)、タウロヒオデオキシコール酸(taurohyodeoxycholic acid、THDCA)、タウロケノデオキシコール酸(taurochenodeoxycholic acid、TCDCA)、ウルソコール酸(ursocholic acid、UCA)、タウロウルソデオキシコール酸(tauroursodeoxycholic acid、TUDCA)、ウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid、UDCA)、若しくはグリコウルソデオキシコール酸(glycoursodeoxycholic acid、GUDCA)である胆汁酸であるか、又はそれらを含んでもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のステロイド酸は、グリコデオキシコール酸(GDCA)、グリコケノデオキシコール酸(GCDCA)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、リトコール酸(LCA)、又は本明細書に記載のエンハンサー中で採用される場合に抗原に対する抗原提示及び/若しくは適応免疫を増強するその類似体であるか、又はそれらを含んでもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のステロイド酸は、本明細書に記載の胆汁酸の類似体であって、エンドサイトーシスを誘導する、エンドソームの内側リーフレット上へのセラミド蓄積を誘発する、セラミドを形成する酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)に媒介されるスフィンゴミエリンの切断の増加を誘発する、及び/又はコール酸の疎水性よりも大きい疎水性を有する、類似体であるか、又はそれを含んでもよい。
【0019】
GCDCA、TCA、GCA、及びCAなどの疎水性胆汁酸(UDCAなどの親水性胆汁酸ではない)は、頂端膜上のASMに媒介されるセラミド蓄積を介してエンドソーム取り込み及びエンドソーム脱出を増強することによって、宿主腸細胞におけるGII.3ヒトノロウイルスの感染と複製を増加させることが示された(Murakami et al.,2020)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のステロイド酸は、コール酸よりも疎水性である胆汁酸又は胆汁酸類似体を含むか、又はそれからなり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチド抗原とのコンジュゲート化に適したステロイド酸は、コール酸よりも疎水性である胆汁酸又は胆汁酸類似体(例えば、CDCA、DCA、LCA、TCA、TDCA、TCDCA、GCA、GDCA、又はGCDCA;Hanafi et al.,2018)を含むか、又はそれからなる。
【0020】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のステロイド酸-ペプチドコンジュゲートに含まれるペプチドは、免疫原性を更に増強し得る所望の機能性をコンジュゲートに付与する(例えば、細胞内標的化、核局在化、核小体局在化、エンドソーム脱出、及び/又はタンパク質形質導入)1つ以上のドメインを含んでもよい。本明細書で使用される場合、「ドメイン」とは一般に、特定の機能性を有するタンパク質の一部を指す。いくつかのドメインはタンパク質の残りの部分から分離されたときにもそれらの機能を保存し、したがって、モジュールの様式で使用することができる。多くのタンパク質ドメインのモジュール特性は、本明細書に記載されるペプチド内でのそれらの配置に関して柔軟性を提供することができる。しかし、いくつかのドメインは、ペプチドの特定の位置(例えば、N又はC端領域、又はその間)で遺伝子操作された場合に、より良好に機能することができる。その内因性タンパク質内でのドメインの位置は、ドメインがペプチド内のどこに遺伝子操作されるべきかの指標であり得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、特定の細胞内区画に対する修飾ポリペプチド抗原の標的化を促進する細胞内標的化シグナルを含んでもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のペプチドは、核局在化シグナル(nuclear localization signal、NLS)を含んでもよい。いくつかの態様では、本明細書に記載のNLSは、古典的NLS(例えば、K-K/R-X-K/Rモチーフを含む)、PY-NLS(例えば、NLSのC末端に向かうものなどの1つ以上のPYモチーフを含む)、PL-NLS(例えば、NLSのC末端に向かうものなどの1つ以上のPLモチーフを含む)、リボソームNLS、核小体標的化シグナルを更に含むNLS、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のNLSは、以下の一般コンセンサス配列を含んでもよく、(i)K(K/R)X(K/R)、(ii)(K/R)(K/R)X10~12(K/R)3/5、ここで、(K/R)3/5は5個の連続するアミノ酸のうちの3個のリシン又はアルギニン残基を表し、(iii)KRX10~12KRRK、(iv)KRX10~12K(K/R)(K/R)、又は(v)KRX10~12K(K/R)X(K/R)、ここで、Xは任意のアミノ酸である(Sun et al.,2016)。
【0023】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のNLSは、疎水性及び/又は塩基性NLSであってもよい。いくつかの態様では、本明細書に記載のNLSは、少なくとも3、4、若しくは5個の酸性残基(例えば、R/K)及び/又は少なくとも3、4、若しくは5個の塩基性残基(例えば、E/D)を含んでもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のNLSは、SV-40ラージT抗原からのNLS(例えば、SV40 NLS)、c-Myc NLS、hnRNP A1タンパク中の酸性M9ドメイン(例えば、hnRNPA1 M9 NLS)、hnRNP D NLS、hnRNP M NLS、PQBP-1 NLS、HuR NLS、Tus NLS、ヌクレオプラスミンNLS、NLS1 RPS17、NLS2 RPS17、NLS3 RPS17、又はNLS2-RGドメインRSP17であるか、又はそれらに由来し得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される核局在化シグナルは、SV-40ラージT抗原由来のNLS(例えば、PKKKRKV;配列番号1又は2)又は他の古典的NLSを含んでもよく、又はそれらに由来してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される核局在化シグナルは、非古典的NLS(例えば、hnRNP A1タンパク質中の酸性M9ドメイン、酵母の転写リプレッサーMatα2中の配列KIPIK;PY-NLS;リボソームNLS;又はU snRNPの複合シグナル)を含んでもよく、又はそれらに由来してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される核局在化シグナルは、配列番号1~8又は10~16のいずれか1つ又はその任意の部分のアミノ酸配列を含むか、又は本質的にそれからなる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核局在化シグナルは、SV40 NLS(例えば配列番号1又は2に含まれる)、GWG-SV40 NLS(例えば配列番号3に含まれる)、hnRNPA1 M9 NLS(例えば配列番号4に含まれる)、hnRNP D NLS(例えば配列番号5に含まれる)、hnRNP M NLS(例えば配列番号10に含まれる)、PQBP-1 NLS(例えば配列番号6に含まれる)、NLS2-RGドメインRPS17(例えば配列番号11に含まれる)、NLS1 RPS17(例えば配列番号15に含まれる)、NLS2 RPS17(例えば配列番号7に含まれる)、NLS3 RPS17(例えば配列番号8に含まれる)、cMyc NLS(例えば配列番号12に含まれる)、HuR NLS(例えば配列番号13に含まれる)、Tus NLS(例えば配列番号14に含まれる)、又はヌクレオプラスミンNLS(例えば配列番号16に含まれる)である核局在化シグナルを含むか、又はそれらから本質的になる。場合によっては、上記で言及された配列番号は、ポリペプチド抗原へのコンジュゲート化を容易にするために使用されたN端システイン残基(例えば、N端システイン残基のチオール基)を含む。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で言及されるNLS配列は、配列番号1~8又は10~16の任意の1つに含まれるN端システイン残基を除外してもよい。いくつかの実施形態では、所与のポリペプチド抗原とのステロイド酸-ペプチドのコンジュゲート化を容易にするために(例えば、本明細書に記載のペプチドのN端部分からC端部分に向かって)付加又は挿入される他の官能基もまた想定される(例えば、カルボキシル基、合成アミノ酸など)。例えば、ペプチドは、C端アミド及び/又はN端システインを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ペプチドは、エンドソーム脱出モチーフ、又はタンパク質形質導入、又は細胞膜透過性モチーフを含まない。
【0026】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のNLSは、PQBP-1 NLS(例えば、配列番号6の少なくとも残基3~21を含む)又は核内輸送受容体Kapβ2に結合する別のNLSであってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のNLSは、Kapβ2に結合するPQBP-1に必要であることが見出されたモチーフR-X2~5-PYを含んでもよい(Liu et al.,2020)。
【0027】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のNLSは、抗原提示細胞への内在化時に抗原のエンドソーム脱出を促進するエンドソーム分解モチーフを含んでもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のNLSは、エンドサイトーシス及び/又はエンドソーム形成を刺激し、それによって抗原提示細胞への内在化を促進するタンパク質形質導入ドメインを含んでもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のNLSは、タンパク質形質導入ドメイン又は細胞膜透過性ペプチドを欠いていてもよく、これは、抗原と比較して、ステロイド酸コンジュゲートのより迅速な内在化の誘発を回避するのに有利であり得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のペプチドは、エンドサイトーシス、エンドソーム形成、又は細胞内送達を細胞非特異的な様式で刺激するタンパク質形質導入ドメイン(protein transduction domain、PTD)を含んでもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、好ましくは非免疫原性ペプチドであり、それによって、ステロイド酸-ペプチドコンジュゲートエンハンサー中のペプチドに対してではなく、目的の抗原に対して生成される免疫応答を支持する。例えば、Azuar et al.,2019は、コール酸をA群レンサ球菌由来の抗原性ペプチドにコンジュゲート化し、これは、報告によれば、ロッド様ナノ粒子へと自己集合し、抗原性ペプチドに対するより強い体液性免疫反応を誘発した。本明細書に記載のエンハンサーに対するそのような体液性免疫応答は望ましくない。
【0030】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のペプチドは、少なくとも7、8、9、10、11、若しくは12のアミノ酸長を有し、50~100以下のアミノ酸長を有し、かつ/又は10~100のアミノ酸長を有してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のペプチドは、配列番号1~8若しくは10~16のいずれか1つのペプチド、又はその変異体であって、(a)ステロイド酸にコンジュゲート化された場合、対応する非コンジュゲート化ステロイド酸の抗原提示活性と比較して、ステロイド酸に改善された抗原提示活性を付与するか、(b)核局在化及び/又はエンドソーム分解活性を有するか、(c)1、2、3、4、若しくは5個以下のアミノ酸の置換又は欠失で、配列番号1~8若しくは10~16のいずれか1つのペプチドとは異なるか、又は(d)(a)~(c)の任意の組み合わせである、ペプチド、又はその変異体を含むか、又はそれからなり得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のエンハンサーは、ステロイド酸-ペプチドコンジュゲートを含み、ステロイド酸が、ペプチドであって、(a)1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、若しくは10:1、又は1:1~10:1のステロイド酸:ペプチドのモル比で、(b)ペプチドの遊離アミノ基及び/又は遊離チオール基(例えば、リシン又はシステインの)にある、(c)ペプチドのN末端にあるか、又はそれに向かう(例えば、N端残基の遊離アミノ基にある、及び/又はN端システイン残基のチオール基にある)、又は(d)(a)~(c)の任意の組み合わせである、ペプチドにコンジュゲート化されている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のステロイド酸は、ペプチド内の任意の適切な官能基でペプチドにコンジュゲート化されてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物中のエンハンサーの抗原に対するモル比は、少なくとも0.01:1、0.05:1、0.1:1、0.2:1、0.5:1、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1であり、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、50:1、100:1、250:1、500:1、1000:1以下であり、かつ/又は1:1~1000:1、1:1~500:1、1:1~250:1、1:1~200:1であってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗原は、腫瘍関連抗原(tumor-associated antigen、TAA)、腫瘍特異的抗原(tumor-specific antigen、TSA)、ネオアンチゲン、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、ワクチン接種、及び/若しくは免疫療法による治療に適した疾患若しくは障害に関連する抗原、又はそれらの任意の抗原性断片であってもよいか、又はそれらを含んでもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗原は、SARS-CoV-2若しくはSARS-CoV由来のスパイクタンパク質、又はその抗原性変異体若しくは抗原性断片であってもよく、又はそれを含んでもよい。いくつかの実施形態では、TAA、TSA、及び/又はネオアンチゲンは、単一塩基変異体抗原、変異フレームシフト抗原、スプライス変異体抗原、遺伝子融合抗原、内因性レトロエレメント抗原、又は別のクラスの抗原、例えばヒト白血球抗原(HLA)-体細胞変異由来抗原あるいは翻訳後TSAであってもよい(Smith et al.,2019)。いくつかの実施形態では、TSAは、ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus、HPV)、サイトメガロウイルス、又はエプスタイン-バールウイルス(Epstein-Barr virus、EBV)などのウイルス由来がんの抗原であってもよい。いくつかの実施形態では、TAAは、がん-精巣抗原、HER2、PSA、TRP-1、TRP-2、EpCAM、GPC3、CEA、MUC1、MAGE-A1、NY-ESO-1、SSX-2、メソテリン(mesothelin、MSLN)、又はEGFRであってもよく、又はそれらを含んでもよい(Patel et al.,2017;Tagliamonte et al.,2014)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗原は、細胞ライセート又は腫瘍由来のエクソソームなどの腫瘍由来他の物質であってもよく、又はそれらを含んでもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるエンハンサーは、エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原のサイトゾル送達の増加を可能にし得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるエンハンサーは、エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原の総細胞送達の増加を可能にし得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるエンハンサーは、エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原に対する細胞性免疫の増強を可能にし得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるエンハンサーは、エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原への曝露時にCD8+T細胞によるIFN-γ産生の増加を可能にし得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるエンハンサーは、エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原に対する体液性免疫の増強を可能にし得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるエンハンサーは、エンハンサーを欠く対応する組成物(例えば、免疫原性が乏しいエピトープに対する抗体を含む)と比較して、抗原に対する抗体種の多様性(又は生物学的多様性)の増大を可能にし得る。
【0035】
いくつかの態様では、本明細書には、細胞集団及び本明細書に記載される組成物(例えば、抗原及び抗原提示のエンハンサーを含む)を含む細胞培養物が記載される。いくつかの実施形態では、細胞は、免疫細胞(例えば、T細胞)、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージ、遺伝子操作された抗原提示細胞)、MHCクラスI発現細胞、MHCクラスII発現細胞、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、薬学的に許容される賦形剤及び/又はアジュバント(例えば、ヒト又は動物への使用に適切なワクチンアジュバント)を更に含んでもよい。
【0037】
いくつかの態様では、本明細書には、本明細書に記載される組成物を含むか、又は本明細書に記載される細胞培養物若しくは細胞集団を使用して産生された細胞を含むワクチンが記載される。いくつかの実施形態では、ワクチンは、治療用又は予防用のワクチン(例えば、抗がんワクチン、抗ウイルスワクチン、又は抗細菌ワクチン)であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫原エンハンサーは、免疫原エンハンサーが存在しないものと比較して、免疫応答を生成するために必要とされる免疫原性組成物(例えば、ワクチン)中に配合される抗原及び/又は抗原提示細胞の量を減らすことが可能であり得る。
【0038】
いくつかの態様では、本明細書には、対象における目的の抗原に対する増強された適応免疫応答を誘発する方法が記載され、方法は、本明細書に記載される組成物又は本明細書に記載される細胞培養物を使用して産生された細胞を対象に投与することを含む。
【0039】
いくつかの態様では、本明細書には、感染症に対して対象にワクチン接種するための方法が記載され、方法は、本明細書に記載される組成物又は本明細書に記載される細胞培養物を使用して産生された細胞を対象に投与することを含み、抗原が、感染症を引き起こす病原体(例えば、ウイルス、細菌、真菌)の抗原性断片を含む。
【0040】
いくつかの態様では、本明細書には、対象におけるがんを治療するための方法が記載され、方法は、本明細書に記載される組成物又は本明細書に記載される細胞培養物を使用して産生された細胞を対象に投与することを含み、抗原が、がんを引き起こす細胞において過剰発現されるか、又は異常に発現される。
【0041】
更なる態様において、本明細書は、ワクチン接種及び/又は免疫療法による治療に適した疾患又は障害を治療又は予防するための方法を記載し、方法は、本明細書に記載の免疫原性組成物を対象に投与することを含む。
【0042】
いくつかの態様では、本明細書には、抗原と混和して使用するためのステロイド酸-ペプチドコンジュゲートが記載される。いくつかの実施形態では、ステロイド酸-ペプチドコンジュゲートの抗原との混和は、(i)エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原のサイトゾル送達の増加、(ii)エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原の総細胞送達の増加、(iii)エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原に対する細胞性免疫の増強、(iv)エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原への曝露時のCD8+T細胞によるIFN-γ産生の増加、(v)エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原に対する体液性免疫の増強、(vi)エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原に対する抗体種の多様性の増大、又は(vii)(i)~(vi)の任意の組み合わせを可能にする。
【0043】
いくつかの態様では、本明細書には、療法に使用するための、本明細書に記載される組成物、又は本明細書に記載される培養物を使用して産生された細胞集団が記載される。
【0044】
いくつかの態様では、本明細書には、対象において免疫応答を生成するための、又は対象において免疫応答を生成するための医薬(例えば、ワクチン)の製造のための、本明細書に記載される組成物又は本明細書に記載される培養物を使用して産生された細胞集団の使用が記載される。いくつかの実施形態では、免疫応答は、エンハンサーを欠く対応する組成物又は細胞培養物から生成されるものと比較して、抗原に対する細胞性免疫の増強、上記抗原への曝露時のCD8+T細胞によるIFN-γ産生の増大、上記に対する体液性免疫の増強、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0045】
項目
いくつかの態様では、本明細書には、以下の項目のうちの1つ以上が記載される。
1.抗原提示のエンハンサーと混和された抗原を含む組成物であって、エンハンサーが、エンハンサーを欠く対応する組成物の投与と比較して、抗原提示細胞への組成物の投与時に抗原の提示を改善するのに十分な量のステロイド酸及び/又はステロイド酸-ペプチドコンジュゲートを含む、組成物。
2.エンハンサー中又はステロイド酸-ペプチドコンジュゲート中のステロイド酸が、エンドソームの内側リーフレット上へのセラミド蓄積を誘発し、それによって抗原提示細胞内のエンドソーム膜を不安定化させ、抗原のサイトゾルへのエンドソーム脱出を促進するステロイド酸である、項目1に記載の組成物。
3.エンハンサー中又はステロイド酸-ペプチドコンジュゲート中のステロイド酸が、セラミドを形成する酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)に媒介されるスフィンゴミエリンの切断の増加を誘発するステロイド酸である、項目1又は2に記載の組成物。
4.エンハンサー中又はステロイド酸-ペプチドコンジュゲート中のステロイド酸が、胆汁酸である、項目1~3のいずれか1つに記載の組成物。
5.エンハンサー中又はステロイド酸-ペプチドコンジュゲート中のステロイド酸が、一次胆汁酸又は二次胆汁酸である、項目1~4のいずれか1つに記載の組成物。
6.エンハンサー中又はステロイド酸-ペプチドコンジュゲート中のステロイド酸が、(a)コール酸(CA)、ケノデオキシコール酸(CDCA)、デオキシコール酸(DCA)、リトコール酸(LCA)、グリココール酸(GCA)、タウロコール酸(TCA)、グリコデオキシコール酸(GDCA)、グリコケノデオキシコール酸(GCDCA)、タウロデオキシコール酸(TDCA)、グリコリトコール酸(GLCA)、タウロリトコール酸(TLCA)、タウロヒオデオキシコール酸(THDCA)、タウロケノデオキシコール酸(TCDCA)、ウルソコール酸(UCA)、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、又はグリコウルソデオキシコール酸(GUDCA)である胆汁酸、(b)(a)の胆汁酸の類似体であって、エンドサイトーシスを誘導する、エンドソームの内側リーフレット上へのセラミド蓄積を誘発する、セラミドを形成する酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)に媒介されるスフィンゴミエリンの切断の増加を誘発する、及び/又はコール酸の疎水性よりも大きい疎水性を有する類似体、(c)コール酸よりも疎水性である胆汁酸又は胆汁酸類似体(例えば、CDCA、DCA、LCA、TCA、TDCA、TCDCA、GCA、GDCA、又はGCDCA)、又は(d)(a)~(c)の任意の組み合わせであるか、又はそれらを含む、項目1~5のいずれか1つに記載の組成物。
7.エンハンサー中又はステロイド酸-ペプチドコンジュゲート中のステロイド酸が、グリコデオキシコール酸(GDCA)、グリコケノデオキシコール酸(GCDCA)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、若しくはリトコール酸(LCA)であるか、又はそれらを含む、項目1~6のいずれか1つに記載の組成物。
8.ペプチドが、核局在化シグナル(NLS)を含む、項目1~7のいずれか1つに記載の組成物。
9.NLSが、古典的NLS(例えば、K-K/R-X-K/Rモチーフを含む)、PY-NLS(例えば、NLSのC末端に向かうものなどの1つ以上のPYモチーフを含む、又はモチーフR-X2~5-PYを含む及び/若しくはKapβ2結合活性を有する)、PL-NLS(例えば、NLSのC末端に向かうものなどの1つ以上のPLモチーフを含む)、リボソームNLS、核小体標的化シグナルを更に含むNLS、又はそれらの任意の組み合わせである、項目8に記載の組成物。
10.NLSが、SV40 NLS、cMyc NLS、hnRNPA1 M9 NLS、hnRNP D NLS、hnRNP M NLS、PQBP-1 NLS、HuR NLS、Tus NLS、ヌクレオプラスミンNLS、NLS1 RPS17、NLS2 RPS17、NLS3 RPS17、若しくはNLS2-RGドメインRSP17であるか、又はそれらに由来する、項目8又は9に記載の組成物。
11.NLSが、少なくとも3つの酸性残基(例えば、R/K)及び/又は少なくとも3つの塩基性残基(例えば、E/D)を含む、項目8~10のいずれか1つに記載の組成物。
12.ペプチドが、エンドソーム脱出を促進するエンドソーム分解モチーフを含む、項目1~11のいずれか1つに記載の組成物。
13.ペプチドが、エンドサイトーシス及び/又はエンドソーム形成を刺激するタンパク質形質導入ドメインを含む、項目1~12のいずれか1つに記載の組成物。
14.ペプチドが、タンパク質形質導入ドメイン又は細胞膜透過性ペプチドを欠いている、項目1~12のいずれか1つに記載の組成物。
15.ペプチドが、非免疫原性ペプチドである、項目1~14のいずれか1つに記載の組成物。
16.ペプチドが、少なくとも7、8、9、10、11、若しくは12のアミノ酸長を有し、50~100以下のアミノ酸長を有し、かつ/又は10~100のアミノ酸長を有する、項目1~15のいずれか1つに記載の組成物。
17.ペプチドが、配列番号1~8若しくは10~16のいずれか1つのペプチド、又はその変異体であって、(a)ステロイド酸にコンジュゲート化された場合、対応する非コンジュゲート化ステロイド酸の抗原提示活性と比較して、ステロイド酸に改善された抗原提示活性を付与するか、(b)核局在化及び/又はエンドソーム分解活性を有するか、(c)1、2、3、4、若しくは5個以下のアミノ酸の置換又は欠失で、配列番号1~8若しくは10~16のいずれか1つのペプチドとは異なるか、又は(d)(a)~(c)の任意の組み合わせである、ペプチド、又はその変異体を含むか、又はそれからなる、項目1~16のいずれか1つに記載の組成物。
18.エンハンサーが、ステロイド酸-ペプチドコンジュゲートを含み、ステロイド酸が、ペプチドであって、(a)1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、若しくは10:1、又は1:1~10:1のステロイド酸:ペプチドのモル比で、(b)ペプチドの遊離アミノ基及び/若しくは遊離チオール基(例えば、リシン又はシステインの)にある、(c)ペプチドのN末端にあるか、若しくはそれに向かう(例えば、N端残基の遊離アミノ基にある、及び/又はN端システイン残基のチオール基にある)、又は(d)(a)~(c)の任意の組み合わせである、ペプチド、にコンジュゲート化されている、項目1~17のいずれか1つに記載の組成物。
19.組成物中のエンハンサーの抗原に対するモル比が、少なくとも0.01:1、0.05:1、0.1:1、0.2:1、0.5:1、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1であり、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、50:1、100:1、250:1、500:1、1000:1以下であり、かつ/又は1:1~1000:1、1:1~500:1、1:1~250:1、1:1~200:1である、項目1~18のいずれか1つに記載の組成物。
20.抗原が、1つ以上のMHCクラスIエピトープ及び/又はMHCクラスIIエピトープを含むポリペプチド抗原である、項目1~19のいずれか1つに記載の組成物。
21.ポリペプチド抗原が、(a)腫瘍関連抗原(TAA)、腫瘍特異的抗原(TSA)、ネオアンチゲン、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、ワクチン接種及び/若しくは免疫療法による治療に適した疾若しくは障害に関連する抗原、又はそれらの任意の抗原性断片、あるいは(b)コロナウイルス抗原(例えば、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、SARS-CoVスパイクタンパク質、又はその抗原性断片、又は単一塩基変異体抗原、変異フレームシフト抗原、スプライス変異体抗原、遺伝子融合抗原、内因性レトロエレメント抗原などのがん抗原、又はヒト白血球抗原(HLA)-体細胞変異由来抗原あるいは翻訳後TSA、ウイルス由来のがん抗原(例えばヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス、又はエプスタイン-バールウイルス(EBV))、がん-精巣抗原、HER2、PSA、TRP-1、TRP-2、EpCAM、GPC3、CEA、MUC1、MAGE-A1、NY-ESO-1、SSX-2、メソテリン(MSLN)、EGFR、細胞ライセート又は腫瘍由来の他の物質(例えば、腫瘍由来のエクソソーム)などの別のクラスの抗原であるか、又はそれらを含む、項目20に記載の組成物。
22.エンハンサーが、(i)エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原のサイトゾル送達の増加、(ii)エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原の総細胞送達の増加、(iii)エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原に対する細胞性免疫の増強、(iv)エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原への曝露時のCD8+T細胞によるIFN-γ産生の増加、(v)エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原に対する体液性免疫の増強、(vi)エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原に対する抗体種の多様性の増大、又は(vii)(i)~(vi)の任意の組み合わせを可能にする、項目1~21のいずれか1つに記載の組成物。
23.薬学的に許容される賦形剤及び/又はアジュバントを更に含む、項目1~22のいずれか1つに記載の組成物。
24.細胞集団及び項目1~23のいずれか1つに記載の組成物を含む、細胞培養物。
25.細胞が、免疫細胞(例えば、T細胞)、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージ、遺伝子操作された抗原提示細胞)、MHCクラスI発現細胞、MHCクラスII発現細胞、又はそれらの任意の組み合わせを含む、項目24に記載の細胞培養物。
26.項目1~22のいずれか1つに記載の組成物を含むか、又は項目24若しくは25に記載の細胞培養物を使用して産生された細胞を含む、ワクチン。
27.治療用又は予防用ワクチン(例えば、抗がんワクチン、抗ウイルスワクチン、又は抗細菌ワクチン)である、項目26に記載のワクチン。
28.対象における目的の抗原に対する増強された適応免疫応答を誘発するための方法であって、項目1~23のいずれか1つに記載の組成物、又は項目24若しくは25に記載の細胞培養物を使用して産生された細胞を対象に投与することを含む、方法。
29.感染症に対して対象にワクチン接種するための方法であって、項目1~23のいずれか1つに記載の組成物又は項目24若しくは25に記載の細胞培養物を使用して産生された細胞を対象に投与することを含み、抗原が、感染症を引き起こす病原体(例えば、ウイルス、細菌、真菌)の抗原性断片を含む、方法。
30.対象におけるがんを治療するための方法であって、項目1~23のいずれか1つに記載の組成物又は項目24若しくは25に記載の細胞培養物を使用して産生された細胞を対象に投与することを含み、抗原が、がんを引き起こす細胞において過剰発現されるか、又は異常に発現される、方法。
31.抗原と混和して、使用するためのステロイド酸-ペプチドコンジュゲート。
32.ステロイド酸-コンジュゲート及び/又は抗原が、項目1~22のいずれか1つに記載されるものである、項目31に記載の使用するためのステロイド酸-ペプチドコンジュゲート。
33.対象において免疫応答を生成するための、又は対象において免疫応答を生成するための医薬(例えば、ワクチン)の製造のための、項目1~23のいずれか1つに記載の組成物又は項目24若しくは25に記載の細胞培養物の使用。
34.免疫応答が、エンハンサーを欠く対応する組成物又は細胞培養物から生成されるものと比較して、上記抗原に対する細胞性免疫の増強、上記抗原への曝露時のCD8+T細胞によるIFN-γ産生の増大、上記に対する体液性免疫の増強、又はそれらの任意の組み合わせを含む、項目33に記載の使用。
35.ポリペプチド抗原の免疫原性を改善する方法であって、方法が、ポリペプチド抗原を抗原提示のエンハンサーと混和することを含み、エンハンサーが、エンハンサーを欠く対応する組成物の投与と比較して、抗原提示細胞又は対象への投与時にポリペプチド抗原の提示を改善するのに十分な量の胆汁酸-ペプチドコンジュゲートを含み、胆汁酸-ペプチドコンジュゲートに含まれるペプチドが、核局在化シグナル(NLS)を含む、方法。
36.胆汁酸が、コール酸(CA)、ケノデオキシコール酸(CDCA)、デオキシコール酸(DCA)、リトコール酸(LCA)、グリココール酸(GCA)、タウロコール酸(TCA)、グリコデオキシコール酸(GDCA)、グリコケノデオキシコール酸(GCDCA)、タウロデオキシコール酸(TDCA)、グリコリトコール酸(GLCA)、タウロリトコール酸(TLCA)、タウロヒオデオキシコール酸(THDCA)、タウロケノデオキシコール酸(TCDCA)、ウルソコール酸(UCA)、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、又はグリコウルソデオキシコール酸(GUDCA)である、項目35に記載の方法。
37.胆汁酸が、CA、CDCA、DCA、LCA、GCA、TCA、GDCA、GCDCA、TDCA、GLCA、TLCA、THDCA、TCDCA、UCA、TUDCA、UDCA、又はGUDCAの類似体であり、類似体が、エンドサイトーシスを誘導する、エンドソームの内側リーフレット上へのセラミド蓄積を誘発する、又はセラミドを形成する酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)に媒介されるスフィンゴミエリンの切断の増加を引き起こす、項目35又は36に記載の方法。
38.ステロイド酸が、グリコデオキシコール酸(GDCA)、グリコケノデオキシコール酸(GCDCA)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、又はリトコール酸(LCA)であるか、又はそれらを含む、項目35又は36に記載の方法。
39.NLSが、SV40 NLS(配列番号1又は2)、GWG-SV40NLS(配列番号3)、hnRNPA1 M9 NLS(配列番号4)、hnRNP D NLS(配列番号5)、hnRNP M NLS(配列番号10)、PQBP-1 NLS(配列番号6)、NLS2-RGドメインRPS17(配列番号11)、NLS1 RPS17(配列番号15)、NLS2 RPS17(配列番号7)、NLS3 RPS17(配列番号8)、cMyc NLS(配列番号12)、HuR NLS(配列番号13)、Tus NLS(配列番号14)又はヌクレオプラスミンNLS(配列番号16)である、項目35~38のいずれか1つに記載の方法。
40.NLSが、核局在化活性を有するNLSの変異体であり、NLSが、配列番号1~8若しくは10~16のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、項目35~38のいずれか1つに記載の方法。
41.ペプチドが、非免疫原性ペプチドである、項目35~40のいずれか1つに記載の方法。
42.ペプチドが、10~100のアミノ酸長を有する、項目35~41のいずれか1つに記載の方法。
43.組成物中のエンハンサーの抗原に対するモル比が、1:1~1000:1である、項目35~41のいずれか1つに記載の方法。
44.組成物中のエンハンサーの抗原に対するモル比が、1:1~500:1である、項目35~41のいずれか1つに記載の方法。
45.組成物中のエンハンサーの抗原に対するモル比が、1:1~250:1である、項目35~41のいずれか1つに記載の方法。
46.抗原が、1つ以上のMHCクラスIエピトープ及び/又はMHCクラスIIエピトープを含むポリペプチド抗原である、項目35~45のいずれか1つに記載の方法。
47.ポリペプチド抗原が、腫瘍関連抗原(TAA)、腫瘍特異的抗原(TSA)、腫瘍由来の細胞ライセート、腫瘍由来のエクソソーム、ネオアンチゲン、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、又はワクチン接種及び/若しくは免疫療法による治療に適した疾患又は障害に関連する他の抗原であるか、又はそれを含む、項目35~46のいずれか1つに記載の方法。
48.ポリペプチド抗原が、SARS-CoVスパイクタンパク質若しくはその抗原性断片であるか、又はそれを含む、項目35~47のいずれか1つに記載の方法。
49.エンハンサーが、(i)エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原のサイトゾル送達の増加、(ii)エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原の総細胞送達の増加、(iii)エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原に対する細胞性免疫の増強、(iv)エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原への曝露時のCD8+T細胞によるIFN-γ産生の増加、(v)エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原に対する体液性免疫の増強、(vi)エンハンサーを欠く対応する組成物と比較して、抗原に対する抗体種の多様性の増大、又は(vii)(i)~(vi)の任意の組み合わせを可能にする、項目35~48のいずれか1つに記載の方法。
50.免疫原性組成物であって、項目35に記載のポリペプチド抗原及び抗原提示エンハンサー、又は項目1に記載のポリペプチド抗原及び抗原提示エンハンサーを含む細胞集団、並びに薬学的に許容される賦形剤及び/又はアジュバントを含む、免疫原性組成物。
51.細胞集団が、樹状細胞、B細胞、T細胞、マクロファージ、遺伝子操作された抗原提示細胞、MHCクラスI発現細胞、MHCクラスII発現細胞、又はそれらの任意の組み合わせを含む、項目50に記載の免疫原性組成物。
52.対象における目的の抗原に対する増強された適応免疫応答を誘発するための方法であって、項目50又は51に記載の免疫原性組成物を対象に投与することを含む、方法。
【実施例
【0046】
実施例1:一般的な材料及び方法
胆汁酸-NLS部分の生成
胆汁酸-NLS部分を、以前にBeaudoin et al.,2016に記載されたコール酸-NLS(ChAcNLS)の合成と同様に合成した。例えば、CA-SV40NLSでは、コール酸を、リンカーアミノ酸に隣接するSV40ラージT抗原(配列番号2)由来の核局在化シグナルを含む13merペプチド(CGYGPKKKRKVGG;配列番号1)のN端システイン残基の遊離アミノ基とコンジュゲート化した。
【0047】
骨髄由来樹状細胞の生成
マウス骨髄由来樹状細胞(BMDC)を、10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum、FBS)、50U/mLのペニシリン-ストレプトマイシン、2mMのL-グルタミン、10mMのHEPES、1%MEM非必須アミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム、0.5mMのベータ-メルカプトエタノールを補充したRPMI(商標)1640を使用して、マウス大腿骨から全骨髄を洗い流すことによって生成した。赤血球を溶解させた後、細胞を50ng/mLのマウス組換えGM-CSFを補充した培地中で培養した。培地を2、4、6及び8日目に交換した。9日目に、培地を、組換えマウスGM-CSF及び大腸菌O111由来のLPS(1ng/mL)を含むように置き換えて、樹状細胞(DC)の成熟を刺激した。成熟したDCを、それらの表面のCD3、CD19、NK1.1、CD11c、CD80、CD86、及びI-Abの発現についてフローサイトメトリーで評価した。
【0048】
抗原交差提示アッセイ
抗原交差提示を評価するために、細胞を24ウェルプレート(Corning;Massachusetts,United States)にウェル当たり25×10個の細胞で播種し、次いで、種々の濃度の抗原又は抗原含有混和物を3時間パルスした。パルス時間の終わりに、細胞を洗浄して過剰な抗原を除去し、製造業者のプロトコルに従ってT細胞単離キットを使用して、OT-Iマウスの脾臓から精製した10個/mLのCD8 T細胞と共培養した。72時間後、上清を回収して、市販の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によってサイトカインの産生を定量するために使用した。
【0049】
B3Zレポーター系を用いた抗原提示アッセイ
様々な胆汁酸-NLS結合体を、B3Zレポーター系を用いてスクリーニングした。B3Z細胞株は、H2-K-SIINFEKL複合体に特異的なT細胞ハイブリドーマである。そのTCRを介して活性化されると、LacZレポーター遺伝子(NFATプロモーターの制御下)が発現される。簡潔には、1.5×10個のBMDC又は2.5×10個のMSCを、オボアルブミン(OVA)及び胆汁酸-NLSコンジュゲートの混合条件で処理した5×10個のB3Z細胞と、37℃、5% COで一晩共培養した。翌日、全ての細胞をPBS(pH7.4)で2回洗浄し、細胞ペレットを、0.15mMのクロロフェノールレッド-β-D-ガラクトピラノシド(CPRG)基質(Calbiochem,La Jolla,CA)、0.125%NP40(EMD Sciences,La Jolla,CA)、9mMのMgCl(Aldrich,USA)、及び100mMの2-メルカプトエタノールをPBS中に含有する100μLの溶解バッファーを加えることによって溶解させた。37℃で5時間又は24時間インキュベートした後、636nmを参照波長として570nmで吸光度を測定した。これらの実験のために、OVAを5~10mg/mLでPBS(pH7.3)に再懸濁した。種々の胆汁酸-NLSコンジュゲートを、10mg/mLでHOに再懸濁した。胆汁酸-NLSコンジュゲート:抗原混和物を、表2に従って種々のモル比で調製した。
【0050】
【表2】
【0051】
実施例2:コール酸及びコール酸-SV40NLSがOVA抗原の交差提示/免疫原性を増強する
交差提示アッセイを実行して、抗原との非共有結合混和物における抗原の交差提示及び/又は免疫原性を改善し得る薬剤についてスクリーニングした。マウスBMDCを、抗原単独、又は種々の比で候補免疫原エンハンサーと混合した抗原のいずれかでプレパルスした。次いで、パルスしたBMDCをOT-Iマウスの脾臓由来のCD8 T細胞と共培養し、CD8 T細胞によって産生されたIFN-γの量を交差提示活性の尺度として定量した。予備スクリーニングにより、コール酸及びコール酸-NLSペプチドコンジュゲートを潜在的な免疫原エンハンサーとして同定した。図1は、BMDCを、抗原オボアルブミン単独(「OVA単独」)、コール酸単独(「CA単独」)、コール酸-NLSペプチドコンジュゲート単独(「CA-SV40NLS単独」)、又はコール酸:抗原混和物(「CA:OVA」)若しくはコール酸-NLSペプチドコンジュゲート:抗原混和物(「CA-SV40NLS:OVA」)の種々の比でプレパルスした交差提示アッセイの結果を示す。興味深いことに、試験したコール酸:抗原混和物(CA:OVA)の最も高い比でプレパルスしたBMDCは、OVA抗原単独でプレパルスしたBMDCと比較して、産生されたIFN-γの量の最大3倍の増加をもたらした。際立って、試験したコール酸-NLSペプチドコンジュゲート:抗原混和物(CA-SV40NLS:OVA)の最も高い比でプレパルスしたBMDCは、OVA抗原単独でプレパルスしたBMDCと比較して、産生されたIFN-γの量の6~7倍の増加をもたらした。
【0052】
実施例3:種々の胆汁酸とコンジュゲート化したSV40NLSの存在下での抗原提示の増強
CA-SV40NLSの変異体を、このコンジュゲートについて観察された抗原交差提示増強活性に関する構造-活性関係を調査するために合成した。より具体的には、SV40NLSペプチド(配列番号1)にコンジュゲート化した種々の胆汁酸を有するコンジュゲートを合成し、抗原提示に対するそれらの効果を、実施例1に記載されるように、OVA抗原とともにB3Zレポーター系を使用することによって評価した。図2の結果は、OVAをCA-SV40NLSコンジュゲートと混合した場合、OVA抗原単独(「OVA単独」;破線)と比較して、抗原交差提示の増大を観察したことを示す。これらの結果は、OT-I CD8 T細胞ベースのアッセイを使用して観察されたものと一致した(図1)。興味深いことに、コール酸を胆汁酸:グリコデオキシコール酸(GDCA)、グリコケノデオキシコール酸(GCDCA)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、又はリトコール酸(LCA)で置き換えた場合、CA-SV40NLSに匹敵するか、又はより高い抗原交差提示が観察された。図2では、OVAを非コンジュゲート化コール酸(「CA」)又はSV40NLSペプチド(「SV40NLS」)のいずれかと混合した場合、抗原単独(「OVA」)よりも優れた抗原交差提示の増加は観察されなかったが、図1で使用したOT-I CD8 T細胞ベースのアッセイと比較して、B3Zレポーター系の低い感度が要因であった可能性がある。興味深いことに、同じB3Zレポーター系を使用したその後のアッセイでは、OVAを非コンジュゲート化グリコウルソデオキシコール酸(GUDCA;22:1)と混合した場合、OVA単独(データで示さず)よりも優れた最大約30%のB3Z応答(OD570)の増加が明らかになった。更に、GUDCAの免疫原エンハンサー活性は、試験した全てのGUDCA:OVAモル比(すなわち、2:1、4:1、8:1、12:1、及び22:1)で観察された。
【0053】
実施例4:種々の胆汁酸とコンジュゲート化したSV40NLSの存在下での抗原提示の増強
SV40NLSペプチドが他のNLSのペプチドを含むペプチドで置き換えられたたCA-SV40NLSの更なる変異体を合成し(表3)、CA-NLSペプチドコンジュゲートの抗原提示活性を、実施例1に記載されるようにB3Zレポーター系を使用して評価した。以下のコンジュゲート:抗原のモル比を各コンジュゲートについて試験した:2:1、4:1、8:1、12:1及び22:1。図3~6の結果は、種々のコンジュゲートの抗原提示活性をそのコンジュゲートについて最も高いB3Z応答(OD570)をもたらしたコンジュゲート:抗原の比で比較する。
【0054】
【表3】
【0055】
図3~6の結果は、一般に、抗原提示の増加が、種々のタイプの核局在化シグナルを含み、かつ種々のアミノ酸配列を有するペプチドにコンジュゲート化されたコール酸の存在下で、抗原提示細胞を抗原に曝露することによって達成することができることを示す。
【0056】
BMDCを抗原提示細胞として使用して、グルタメートが豊富なペプチドPQBP-1 NLSを、際立って高い抗原提示活性と関連付けた(図3及び5)。更に、NLS2-RGドメインRPS17、NLS3-RPS17、cMyc NLS、及びHuR NLSペプチドもまた、高い抗原提示活性と関連付けた。興味深いことに、ペプチドGWG-SV40NLSを、SV40NLSよりも高い抗原提示活性と関連付け、これは、隣接する芳香族アミノ酸(WW又はGWWG)の添加が活性に有益であることを示唆している(図3~5を参照されたい)。同様の結果を、抗原提示細胞としてDC細胞株(DC2.4)を使用して観察した。
【0057】
抗原提示細胞としてMSCの交差提示細胞株を使用して、様々なコール酸ペプチドコンジュゲートがOVAの抗原提示を増強した(図6)。BMDCと同様に、PQBP-1 NLS、HuR NLS、及びGWG-SV40NLSを、OVA単独又はCA-SV40NLSと混合したOVAと比較して、際立って高い抗原提示活性と関連付けた。
【0058】
抗原提示に対する胆汁酸ペプチドコンジュゲートの効果を更に詳細に調べるために、抗原内在化及びプロセシングを評価した。MSC細胞株を、様々なモル比の種々の胆汁酸ペプチドコンジュゲート、NLS1-RPS17[図7A]、NLS3 RPS17[図7B]、PQBP-1[図7C]、及びhnRNPA1 M9 NLS[図7D])の存在下で、AF647でOVA標識してパルスし、蛍光をフローサイトメトリーによって評価した。胆汁酸コンジュゲートでは、一般に比率の増加とともに、OVA内在化を増強することが示された。OVAプロセシングを、図7A~7Dと同じ胆汁酸ペプチドコンジュゲートの存在下で、MSC細胞株をDQ(商標)-オボアルブミン(OVA-DQ)でパルスすることによって評価した。胆汁酸コンジュゲートNLS1-RPS17[図8A]、NLS3 RPS17[図8B]、PQBP-1[図8C]、及びhnRNPA1 M9 NLS[図8D])では、一般に比率の増加とともに、OVAプロセシングを増強することが示された。
【0059】
要するに、これらのデータは、抗原提示の増強における胆汁酸ペプチドコンジュゲートの多用途性及び能力を実証する。
【0060】
参考文献
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
【配列表】
2024517460000001.app
【国際調査報告】