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特表2024-517472貧血を処置するためのペラブレシブの使用
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  • 特表-貧血を処置するためのペラブレシブの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】貧血を処置するためのペラブレシブの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/55 20060101AFI20240415BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
A61K31/55
A61P7/06
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/519
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569830
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 US2022028457
(87)【国際公開番号】W WO2022240800
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】63/186,978
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513137422
【氏名又は名称】コンステレーション・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CONSTELLATION PHARMACEUTICALS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】コラック,ゲズデ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZA55
4C084ZC41
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086CB22
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA57
4C086MA59
4C086MA60
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA55
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、低い網状赤血球数と関係する病気を処置するためのペラブレシブおよびその医薬的に許容可能な塩の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象において低い網状赤血球数によって特性付けられる貧血を処置する方法であって、該対象に療法上有効量のペラブレシブまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、低い網状赤血球数が対象の全赤血球の約0.5%未満である方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、該対象が骨髄線維症を有する方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法であって、該貧血が、慢性腎不全の貧血、産生不足貧血、再生不良性貧血、鉄欠乏性貧血および炎症の貧血から選択される方法。
【請求項5】
それを必要とする対象において網状赤血球を増加させる方法であって、該対象に療法上有効量のペラブレシブまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することを含む方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、該対象がペラブレシブまたはその医薬的に許容可能な塩を投与する前に該対象における全赤血球の約0.5%未満の網状赤血球数を有する方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の方法であって、該対象が貧血を有する方法。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の方法であって、該対象が骨髄線維症を有する方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法であって、さらに該対象に療法上有効量のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤を投与することを含む方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、該JAK阻害剤がルキソリチニブである方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法であって、該ペラブレシブが形態A一水和物である方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001] 本出願は、2021年5月11日に出願された米国仮出願第63/186,978号に対する優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
[0002] 貧血は、人口のおおよそ25%、または世界中で16億人の人々に影響を及ぼす、より一般的な血液障害の1つである。貧血は、体が正常より低いレベルの健康な赤血球(RBC)を有する場合、またはそれらの内部のヘモグロビン濃度が正常より低い場合に起こる。ヘモグロビンは、赤血球が体の組織に酸素を運ぶのを可能にする。従って、十分な赤血球が存在しない場合、または血球が異常であるかもしくは十分なヘモグロビンが存在しない場合、血液が酸素を標的組織に運ぶ能力において低下した能力があるであろう。これは、結果として疲労、脱力感、めまい、息切れ、胸痛および頭痛のような症状をもたらす。未処置のままであった場合、貧血は、重度の疲労(人は日常的な仕事をこなすことができなくなるであろう)、妊娠合併症、心臓の問題、例えば心肥大または心不全をもたらし得、最も深刻な例では死をもたらし得る。
【0003】
[0003] 赤血球は、骨髄で生成され、そこで造血幹細胞が分化および発達し、最終的に網状赤血球を形成する。網状赤血球は、未熟な赤血球であり、網状赤血球の数は、それが最近の産生を表し、網状赤血球数および網状赤血球産生指数の決定を可能にするため、骨髄活性の良い指標である。これらの値は、生成の問題が貧血に寄与しているかどうかを決定するために使用されることができ、貧血に関する処置の進行をモニターするために使用されることもできる。ある場合には、貧血は、低増殖性(網状赤血球数が少ない)または高増殖性(網状赤血球数が多い)のどちらかである。低増殖性貧血は、典型的には骨髄が十分な赤血球を産生できない場合に見られる。高増殖性貧血は、短縮された赤血球の生存期間または出血を伴う。
【発明の概要】
【0004】
[0004] 2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミドは、本明細書においてペラブレシブという用語と互換的に使用され、米国特許第8,796,261号において化合物144として例示され、以下の構造式を有する:
【0005】
【化1】
【0006】
形態A一水和物のようなペラブレシブの結晶形態は、米国特許第9,969,747号に開示されており、一側面において、本発明の一部として含まれる。ペラブレシブは、BETタンパク質の機能を選択的に阻害することにより抗腫瘍活性を促進するように設計された強力かつ選択的な低分子である。例えば、J. Med. Chem., 2016; Feb. 25; 59(4): 1330-9参照。ペラブレシブの形態A一水和物は、骨髄線維症および関連する病気の処置に関して、単剤療法およびJAK阻害剤ルキソリチニブとの併用の両方として治験を受けている。例えば米国臨床試験NCT02158858およびNCT04603495ならびに国際公開第2020/112939号参照。
【0007】
[0005] 現在、ペラブレシブがヒト対象において網状赤血球数を増加させることが見出されている。例えば、図1参照。
[0006] 従って、貧血、特に低い網状赤血球数により特性付けられる貧血を処置するためにペラブレシブまたはその医薬的に許容可能な塩を使用する方法が、本明細書において提供される。
【0008】
[0007] それを必要とする対象において網状赤血球数を増加させるためにペラブレシブまたはその医薬的に許容可能な塩を使用する方法も、本明細書において提供される。
[0008] さらに、ペラブレシブまたはその医薬的に許容可能な塩をルキソリチニブのようなJAK阻害剤と組み合わせて、それを必要とする対象において網状赤血球数を増加させるため、または貧血、特に低い網状赤血球数により特性付けられる貧血を処置するために使用する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】[0009] 図1は、骨髄線維症を有する対象における網状赤血球数に対するペラブレシブの作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0010] 一態様において、それを必要とする対象において低い網状赤血球数によって特性付けられる貧血を処置する方法であって、その対象に療法上有効量のペラブレシブまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することを含む方法が、本明細書において提供される。対象における低い網状赤血球数によって特性付けられる貧血を処置するための医薬品の製造におけるペラブレシブまたはその医薬的に許容可能な塩の使用も提供される。さらに、対象における低い網状赤血球数によって特性付けられる貧血を処置するためのペラブレシブまたはその医薬的に許容可能な塩が提供される。
【0011】
[0011] 別の態様において、療法上有効量のペラブレシブまたはその医薬的に許容可能な塩を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において網状赤血球を増加させる方法が、提供される。それを必要とする対象において網状赤血球を増加させるための医薬品の製造におけるペラブレシブまたはその医薬的に許容可能な塩の使用も、提供される。さらに、それを必要とする対象において網状赤血球を増加させるための、ペラブレシブまたはその医薬的に許容可能な塩が、提供される。
【0012】
[0012] 用語“対象”および“患者”は、互換的に使用されることができ、処置を必要とする哺乳動物、例えばコンパニオンアニマル(例えばイヌ、ネコ等)、家畜(例えばウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等)および実験動物(例えばラット、マウス、モルモット等)を意味する。典型的には、対象は、処置を必要とするヒトである。
【0013】
[0013] 一側面において、開示された方法の1つ以上によって処置されている対象は、骨髄線維症を有し得る。
[0014] 用語“処置”、“処置する”および“処置すること”は、開示された病気(例えば貧血)またはその1つ以上の症状を本明細書で記載されるように逆行させること、緩和すること、発現の可能性を低減すること、またはその進行を阻害することを指す。ある態様において、処置は、1つ以上の症状が発現した後に施され得る(すなわち療法的処置)。他の態様において、処置は、症状の非存在下で施され得る。例えば、処置は、症状の開始前に(例えば症状の既往歴を考慮して、および/または遺伝的因子もしくは他の感受性因子を考慮して)感受性のある個体に投与され得る(すなわち予防的処置)。処置は、症状が消散した後も、例えばそれらの再発を予防するかまたは遅延させるために継続され得る。
【0014】
[0015] ペラブレシブは、単独で、例えば、単剤療法として、または他の有効医薬成分(API)と組み合わせて投与されることができる。一側面において、他のAPIは、ルキソリチニブのようなヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤である。
【0015】
[0016] 本明細書で使用される場合、ルキソリチニブは、以下の式を有するJAK阻害剤(R)-3-(4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)-3-シクロペンチルプロパンニトリルホスフェートを指す:
【0016】
【化2】
【0017】
[0017] 本明細書で使用される際、網状赤血球数は、絶対数または百分率として、最近の骨髄活性の反映であり、当技術分野で既知の手段によって測定され得る。正常な網状赤血球数、すなわち、低くも高くもない網状赤血球数は、典型的には対象中の全赤血球の約0.5%~約1.5%の範囲である。一側面において、低い網状赤血球数は、対象中の全赤血球の約0.5%未満である。
【0018】
[0018] 一側面において、低い網状赤血球数によって特性付けられる貧血は、慢性腎不全の貧血、産生不足貧血、再生不良性貧血、鉄欠乏性貧血および炎症の貧血から選択される。
【0019】
[0019] 一側面において、処置される対象は、輸血依存性である。別の側面において、処置される対象は、輸血非依存性である。
[0020] 用語“有効量”または“療法上有効量”は、互換的に使用され、対象において所望の医学的応答、例えば疾患の症状の低減および/または疾患の進行の遅延を引き出すであろう本明細書で記載される化合物の量を含む。
【0020】
[0021] ペラブレシブまたは本明細書で記載される塩類および他のAPIは、医薬組成物として配合され、選択された投与経路に適合した種々の形態で対象、例えばヒトに投与されることができる。そのような医薬組成物を投与する典型的な経路は、限定ではなく、経口、局所、頬、経皮、吸入、非経口、舌下、直腸、膣および鼻腔内を含む。非経口という用語は、本明細書で使用される際、皮下注射、静脈内、筋肉内、髄腔内、胸骨内注射または注入技法を含む。医薬組成物を配合する方法は、当技術分野で周知であり、例えば“Remington: The Science and Practice of Pharmacy,” University of the Sciences in Philadelphia, ed., 第21版, 2005, Lippincott, Williams & Wilkins, ペンシルベニア州フィラデルフィアにおいて開示されているような方法である。
【0021】
[0022] あらゆる特定の患者に関する特定の投与量および処置レジメンは、採用される特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、および処置している医師の判断ならびに処置されている特定の疾患の重症度を含む様々な要因に依存するであろう。組成物中の本明細書で記載される化合物の量も、組成物中の特定の化合物に依存するであろう。しかし、一側面において、単剤療法として使用される場合(すなわち、ルキソリチニブのようなJAK阻害剤を伴わない場合)、ペラブレシブまたはその医薬的に許容可能な塩は、例えば1日1回、2回または3回の投与のために、50mg~500mgの用量で配合されることができる。例えば、単剤療法では、ペラブレシブは、50mg~300mg/日、75mg~300mg/日、100mg~300mg/日、150mg~250mg/日、または150mg/日、175mg/日、200mg/日、225mg/日もしくは250mg/日の投与量で投与されることができる。他の側面において、JAK阻害剤、例えばルキソリチニブとの組み合わせで使用される場合、ペラブレシブまたはその医薬的に許容可能な塩は、例えば1日1回、2回または3回の、投与のために、50mg~500mgの用量で配合されることができる。例えば、併用療法において、ペラブレシブは、50mg~300mg/日、75mg~300mg/日、100mg~300mg/日、100mg~200mg/日または100mg/日、125mg/日、150mg/日、175mg/日もしくは200mg/日の投与量で投与され得る。
【実施例
【0022】
[0023] ペラブレシブおよび形態A一水和物は、それぞれ米国特許第8,796,261号および第9,969,747号に記載されている手順に従って得ることができる。
[0024] ペラブレシブ形態A一水和物を、(ルキソリチニブとの併用または非併用で)ヒト対象に、125mgQDの開始用量中央値および225mgQDの最大用量で、47週間の期間中央値の間投与した。この試験の結果を図1に示す(アーム1はペラブレシブ形態A、アーム2はルキソリチニブの併用でのペラブレシブ形態A)。示されるように、ペラブレシブは、網状赤血球を増加させ、ヘモグロビンを改善するのに有効であった。
【0023】
[0025] これのいくつかの態様を記載してきたが、本開示の化合物および方法を利用する他の態様を提供するために、我々の基本的な実施例を変更し得ることは明らかである。従って、本開示の範囲は、例として表した特定の態様によってではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されるべきであることが理解されるであろう。
【0024】
[0026] 本出願全体を通して引用された全ての参考文献(文献参照、発行済み特許、公開特許出願および同時係属中の特許出願を含む)の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に明示的に援用される。別途定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者に一般的に知られている意味と一致する。
図1
【国際調査報告】