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特表2024-517497通信ネットワークにおけるルーティングを最適化するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】通信ネットワークにおけるルーティングを最適化するための方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 45/122 20220101AFI20240415BHJP
【FI】
H04L45/122
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570455
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2022075644
(87)【国際公開番号】W WO2023041643
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】102021004920.9
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】21204993.6
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522288832
【氏名又は名称】フジツウ テクノロジー ソリューションズ ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】595135947
【氏名又は名称】ドイチェ テレコム アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Deutsche Telekom AG
【住所又は居所原語表記】Friedrich-Ebert-Allee 140, D-53113 Bonn, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ガイツ・マーク
(72)【発明者】
【氏名】ホルシュケ・オリバー
(72)【発明者】
【氏名】シュラー・ティミー
(72)【発明者】
【氏名】ミュンヒ・クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シンケル・フリッツ
(72)【発明者】
【氏名】エンゲル・セバスチャン
【テーマコード(参考)】
5K030
【Fターム(参考)】
5K030HD03
5K030LB05
5K030MB01
(57)【要約】
本発明は、量子概念プロセッサ(6)を使用して、通信ネットワーク(1)におけるデータトラフィックのルーティングを最適化するためのコンピュータ実装方法に関する。キャプチャされたトラフィック要求(5a, 5b)の各起点ノード(o)と各宛先ノード(d)との間の可能な通信経路のうち、短い可能性がある通信経路のセット(p)が指定される。短い可能性がある通信経路のセット内のエッジ(e)には、それぞれの使用率容量制限が割り当てられる。エッジ(e)の部分容量使用率は、エッジ(e)のそれぞれの使用率容量制限に基づいて計算される。次いで、計算された部分容量使用率が、二次応力関数の項として定式化される。量子論的概念プロセッサ(6)を使用して、二次応力関数が最小となるように、各トラフィック要求(5a、5b)に対して、短い可能性がある通信経路のセット(p)から1つの短い通信経路(p1、p2)を選択することにより、最適化されたルーティングが決定される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データトラフィックのルーティングのために通信経路のエッジ(4)を介して接続可能な複数の通信ノード(2)を有する通信ネットワーク(1)において、前記データトラフィックのルーティングを最適化するためのコンピュータ実装方法であって、
トラフィック要求のセット(5)をキャプチャすることであって、各トラフィック要求(5a、5b)は、前記複数の通信ノード(2)のうち、起点ノード(o)から宛先ノード(d)への決定されたデータボリュームの転送を指定する、ことと、
前記トラフィック要求のセット(5)において指定されたそれぞれの起点ノード(o)とそれぞれの宛先ノード(d)との間の可能な通信経路のうち、短い可能性がある通信経路のセット(p)を指定することであって、前記短い可能性がある通信経路のセット(p)内の前記エッジ(e)にそれぞれの使用率容量制限が割り当てられる、ことと、
前記トラフィック要求のセット(5)に対して、前記短い可能性がある通信経路のセット(p)内の前記エッジ(e)の部分容量使用率を計算し、前記部分容量使用率は、前記それぞれの使用率容量制限に基づいて計算される、ことと、
計算された前記部分容量使用率を二次応力関数の項として定式化することと、
量子論的概念プロセッサ(6)を使用して、前記二次応力関数が最小となるように、前記トラフィック要求のセット(5)の各トラフィック要求(5a、5b)に対して、前記短い可能性がある通信経路のセット(p)から1つの短い通信経路(p1~p4)を選択することにより、最適化されたルーティングを決定することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記複数の通信ノード(2)のうち可能性があるセグメントノードのセット(s)を指定することであって、前記可能性があるセグメントノード(s1、s2)の各々は、起点ノード(o)と宛先ノード(d)との間の前記短い可能性がある通信経路のセット(p)のメンバーとして、短い可能性がある通信経路(p1~p4)を中間ノードとして定義する、ことと、
前記二次応力関数において、セグメントノード項を定式化することであって、前記セグメントノード項は、それぞれの短い可能性がある通信経路(p1~p4)の前記エッジ(e)の計算された前記部分容量使用率を、前記それぞれの短い可能性がある通信経路(p1~p4)につながる前記可能性があるセグメントノードのセット(s)内のそれらのセグメントノード(s1、s2)と接続する、ことと、
前記量子論的概念プロセッサ(6)を使用して、前記最適化されたルーティングの決定のために前記二次応力関数が最小化されるように、前記セグメントノード項を計算して、前記可能性があるセグメントノードのセット(s)内のセグメントノード(s1、s2)を選択することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セグメントノード項は、前記トラフィック要求のセット(5)の各トラフィック要求が、最も短い経路に沿って、又は前記それぞれの起点ノードと前記それぞれの宛先ノードとの間の正確に1つのセグメントノード(s1、s2)を介してルーティングされるという経路条件を考慮して計算される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記セグメントノード項は、前記トラフィック要求のセット(5)の各トラフィック要求(5a、5b)が、最も短い経路に沿って、又は、前記それぞれの起点ノード(o)と前記それぞれの宛先ノード(d)との間の複数のセグメントノード(s1、s2)を介してルーティングされるという経路条件を考慮して計算される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記セグメントノード項は、選択されたセグメントノード(s1、s2)の数が最小になるようにコスト条件を考慮して計算される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記二次応力関数は、二次制約なし二値最適(QUBO)関数として定式化される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記二次応力関数、並びに前記経路条件及び前記コスト条件のうちの少なくとも1つは、各々が大域的なQUBO関数に向けて重み付け及び結合される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記トラフィック要求のセット(5)からトラフィック要求のサブセット(7)を選択することと、
前記トラフィック要求のサブセット(7)に対して方法を実行することと、
前記トラフィック要求のサブセット(7)に対して決定され最適化された前記ルーティングを記憶することと、
前記トラフィック要求のサブセット(7)に対して決定され最適化された前記ルーティングを考慮して、前記可能性がある短い通信経路のセット内の前記エッジ(e)のそれぞれの残りの使用率容量制限を更新することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記可能性があるセグメントノードのセット(s)から可能性があるセグメントノードのサブセット(8)を選択することと、
前記可能性があるセグメントノードのサブセット(8)に対して前記方法を実行することと、をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記トラフィック要求のセット(5)の全てのトラフィック要求(5a、5b)が処理されるまで、前記方法が残りのトラフィック要求(5a、5b)に対して反復的に実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法の1つ以上のステップを実行するように構成された、量子概念プロセッサ(6)、特に、デジタルアニーリング処理ユニット又は量子アニーリング処理ユニット。
【請求項12】
命令を含むコンピュータプログラムであって、前記命令は、前記コンピュータプログラムが1つ以上のプロセッサによって実行されるときに、前記1つ以上のプロセッサの各々に、請求項1に記載の方法の1つ以上のステップを実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
請求項1に記載の方法によって決定された最適化されたルーティングを検証するように構成された、ネットワークプランナーのためのワークプレイス。
【請求項15】
データトラフィックがルーティングされる通信ネットワーク(1)の複数の通信ノード(2)への1つ以上のインターフェースを含むインターフェース構成であって、請求項1に記載の方法によって決定された最適化されたルーティングを、前記通信ネットワーク(1)の前記通信ノード(2)に自動的に展開するように構成されたインターフェース構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データトラフィックのルーティングのために通信経路のエッジ(リンク)を介して接続可能な複数の通信ノードを有する通信ネットワークにおいて、データトラフィックのルーティングを最適化するためのコンピュータ実装方法に関する。本発明は、そのような方法を実行するために構成された量子概念プロセッサ、及びそのような方法を実行するように実装されたコンピュータプログラムにも関する。
【背景技術】
【0002】
通信ネットワークにおけるデータトラフィックに関する今日の要求は、これらの時代に劇的に増加している。最近の5Gの導入により、ますます多くのデバイス及びアプリケーションがデータトラフィックを新たなピークに押し上げている。さらに、デジタル化され分散化された作業の要求の増加と、民間世帯の国内環境におけるストリーミング要求の増加も、この傾向に大きく寄与している。インターネットのような通信ネットワークを介して転送されるデータ量の増加は、サービスプロバイダにとって大きな課題を課している。通信ネットワークの輻輳とユーザ体験の劣化を回避するために、トラフィックエンジニアリング技術は、ネットワークインフラストラクチャの比較的低速で高価な拡張を補完するために展開される。
【0003】
通信ネットワークにおけるデータトラフィック管理のために最も広く展開されているエンジニアリング技術は、リンク重みに関して計算される最も短い経路を前提として動作する。これらの重みは、リンク容量、すなわち、開始ノードから、そのリンクによってそれぞれエッジで接続された終了ノードまで、リンクを介してルーティングすることができる単位時間当たりの最大データ量に関連することが多い。データストリームの起点ノードから宛先ノードへの最終的なルーティングは、中間ノード及び所与のリンク又はエッジを考慮して、発見された最も短い経路の識別された経路に基づく。その結果、トラフィック要求をガイドするための最も単純で実用的な技法は、リンクメトリック又はIGP(Interior Gateway Protocols)メトリックとも呼ばれるこれらのリンク重みの操作によるものである。エッジのリンク重みが高いほど、データがそれぞれのエッジを介してルーティングされる確率が高くなる。このアプローチに従って、反応的な方法で、特定のリンクに過大な負荷がかかる傾向があるときはいつでも、リンク重みが局所的に適応される。より体系的な方式では、この問題は、線形整数コンピュータプログラムを適用することによってさらに処理され、ここでは、最適化の目標は、ネットワークにおける最大リンク容量使用の最小化である。しかし、大域的に最適なメトリックのセットを見つけるタスクは非常に複雑である。計算の複雑さに関しては、このタスクはNP困難である。これは、各リンクメトリックが多数の通信経路に影響を与える可能性があるためである。
【0004】
これまでに適用された線形最適化技術は、冗長性、地理的サブグループ又はサブドメイン(例えば、1つのモデルで考慮されるヨーロッパのネットワークと米国のネットワーク)、衛星の包含、サービス品質、QoS、関係などの実際の非線形条件を考慮するときに、急速に限界に達する。さらに、既知の技術は、ネットワーク内の通信経路における未使用の容量使用率及びリンク容量の過負荷の問題につながることが多く、ここでは、多くのリンクがその容量限界に近い。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本開示の問題は、容量制限に関して通信ネットワーク内の通信経路の最適化された利用を可能にし、それによって最適化されたルーティングを達成する強化された技術を提供することにある。
【0006】
この問題は、請求項1に記載の方法によって解決される。さらなる実施形態は、従属する請求項及び以下の説明に記載される。
【0007】
この方法は、複数の通信ノードを有する通信ネットワークにおけるデータトラフィックのルーティングを最適化するためのコンピュータ手順手順である。通信ノードは、通信ネットワークのエッジによって接続される。一連のエッジは、データトラフィックのルーティングのための通信経路を生成する。したがって、このコンテキストにおける通信経路のエッジは、通信経路内の2つの隣接するノード間の接続を記載する。
【0008】
本方法は、-トラフィック要求のセットをキャプチャすることであって、各トラフィック要求は、複数の通信ノードのうち起点ノードから宛先ノードへの決定されたデータボリュームの転送を指定する、ことと、-トラフィック要求のセットにおいて指定されたそれぞれの起点ノードとそれぞれの宛先ノードとの間の可能な通信経路のうち、短い可能性がある通信経路のセットを指定することであって、短い可能性がある通信経路のセット内のエッジにそれぞれの使用率容量制限が割り当てられる、ことと、-トラフィック要求のセットに対して、短い可能性がある通信経路のセット内のエッジの部分容量使用率を計算し、部分容量使用率は、それぞれの使用率容量制限に基づいて計算される、ことと、-計算された部分容量使用率を二次応力関数の項として定式化することと、-量子論的概念プロセッサを使用して、二次応力関数が最小となるように、トラフィック要求のセットの各トラフィック要求に対して、短い可能性がある通信経路のセットから1つの短い通信経路を選択することにより、最適化されたルーティングを決定することと、を含む。
【0009】
この方法は、最適化された短い経路に沿って通信ネットワークにおいてネットワーク要求をルーティングする問題に確実に対処し、それにより、ネットワーク内のリンク容量が超過されることを最適化された方式で回避する。
【0010】
この方法を適用することにより、与えられたトラフィック要求ごとに、短い可能性がある通信経路のセットから短い通信経路に対する1つの最適な選択肢が選択され得る。この選択は、ネットワーク内の使用される通信経路内の全てのエッジ(リンク)の容量が、それらに沿ってルーティングされるトラフィック要求の総ボリュームの上限として尊重されるように選択される。
【0011】
このコンテキストにおける「トラフィック要求」は、3タプルとしてモデル化され、起点ノード(データストリームのソース)、終点ノード又は宛先ノード(データストリームの宛先)、及び起点と宛先の間で転送される決定されたデータトラフィックを定義する。焦点は、ネットワーク上で連続したデータストリームを提供することにあり、これは、与えられたトランスポートリンク上で指定された容量を超えることによって伝送中にデータが失われないようにモデル化され、ルーティングされる。このようなデータストリーム要求又は要求のデータ転送レートの測定は、現在、Gbps(ギガビット/秒)で指定されている。
【0012】
このコンテキストにおける「短い」通信経路は、トラフィック要求のセットにおいて指定されたそれぞれの起点ノードとそれぞれの宛先ノードとの間の決定された中間ノードを有する経路として、又は直接の最も短い経路として選択され得る。以下にさらに説明される詳細な実装によれば、それぞれの起点ノードとそれぞれの宛先ノードとの間の決定された中間ノード(いわゆるセグメントノード)を有する「短い」通信経路が、トラフィック要求のセットにおいて指定され、各々、起点からセグメントノードまでの最も短い経路と、セグメントノードから宛先ノードまでの最も短い経路と、からなる。
【0013】
それぞれの起点ノードとそれぞれの宛先ノードとの間のそのような短い経路を選択することによって、多かれ少なかれ直接ルーティングを達成することができ、それにより、非効率的な方式でかなりの容量使用率でそれぞれの通信経路に沿った複数のエッジに不利な負担をかける長い通信経路を回避する。
【0014】
それぞれの起点ノードとそれぞれの宛先ノードとの間の可能な通信経路のうち、短い可能性がある通信経路のセットは、例えば、ダイクストラアルゴリズム、又は効率的な最も短い経路アルゴリズムのクラスのうち、任意の他のアルゴリズムを適用することによって、予め決定される。
【0015】
短い可能性がある通信経路のセット内のエッジの部分容量使用率を計算し、計算された部分容量使用率を二次応力関数の項として定式化することによって、上記に説明した最適化問題の複雑さに対処するために二次最適化問題を定式化することができる。このような二次最適化問題の適用は、通信経路の個々のエッジ上での高い容量使用率を大きく不利にする二次応力関数を定式化することができるという効果を有する。
【0016】
このようにして、量子論的概念プロセッサを使用して、二次応力関数が最小となるように、トラフィック要求のセットの各トラフィック要求に対して、短い可能性がある通信経路のセットから1つの短い通信経路を選択することにより、最適化されたルーティングが決定される。二次応力関数の最小値は、大域的な最小値であることが好ましいが、局所的な最小値とすることもできる。
【0017】
したがって、本方法は、容量制限に関してネットワークの均一な最小の利用を達成するために、ネットワークの均一な最小の利用と、ネットワーク内の容量制限までの距離の分布という技術的効果と利点を有する。同時に、本方法は、通信ネットワーク内の各トラフィック要求に対して、それぞれの起点ノードとそれぞれの宛先ノードとの間の短い経路の選択を提供する。
【0018】
基礎となる二次最適化問題は、上述したように、非常に複雑である。これは、選択された1つの通信経路が他の通信経路に影響を与える可能性があること、及びネットワーク内の複数の起点ノードと宛先ノードとの間で管理される膨大な量のデータトラフィックによるものだけではない。また、考慮しなければならない多くの実際的な制約があるため、この問題は非常に複雑である。より多くの制約が実装されるにつれて、このような問題はより複雑になり、解くことが困難になる。これは、トラフィックエンジニアリング解が迅速に必要とされる場合、例えば、予期しないネットワーク障害への対応として、又はレイテンシ(可能な限り最も短い経路、可能な限り最小のIPホップ)、冗長性(モデルは、1つ以上/多数のエッジの障害、計画された停止、又はネットワークリンクのメンテナンスに対して冗長とすべきである)、ドメイン(EU、US)又は階層(コアネットワーク、アクセスネットワーク)などのさらなる実際的な制約を考慮している場合には、問題があるか、困難である。ここに記載された方法は、根本的な問題がますます複雑になる従来のアプローチと比較して、その強度を有利に示す。言い換えれば、上記に説明されたような実際的な制約を考慮した複雑な最適化問題に対して、ここに記載された方法は、従来の技術に対してかなりの強さを有する。
【0019】
ここに記載された方法は、量子コンピューティングに触発されたアプローチを利用する。トラフィック要求のセットに対する最適化された通信経路を決定するための二次応力関数の最適解の計算は、いわゆる量子論的概念プロセッサによって実行される。本開示のコンテキストにおける量子概念プロセッサとして、いわゆる「イジングモデル」又は等価な二次制約なし二値問題を解くプロセッサが定義される。例えば、量子アニーリングや量子アニーリングエミュレーションを用いて最適化問題を解くように構成されたプロセッサである。このようなプロセッサは、例えば、従来のハードウェア技術、例えば、相補型金属酸化物半導体(CMOS)技術に基づく。このような量子概念プロセッサの例として、富士通のデジタルアニーラがある。代替的には、他の任意の量子プロセッサを、本明細書に記載された方法に使用することができ、将来は、実際の量子ビット技術に基づく技術も使用することができる。このような量子概念プロセッサのさらなる例は、DWaveの量子アニーラ(例えば5000Q)だけでなく、QAOA又はVQEなどの量子最適化アルゴリズムを利用する量子論的ゲートコンピュータ(IBM、Rigetti、OpenSuperQ、IonQ 又はHoneywell)もある。
【0020】
言い換えれば、本明細書で定義される量子概念プロセッサは、特殊なプロセッサの古典的技術、量子ゲートコンピュータ、又は量子アニーラのいずれかで、いわゆる二次制約なし二値最適化(QUBO)関数の最小化の概念を実現するプロセッサである。
【0021】
少なくとも1つの実装では、本方法は、-複数の通信ノードのうち可能性があるセグメントノードのセットを指定することであって、可能性があるセグメントノードの各々は、起点ノードと宛先ノードとの間の短い可能性がある通信経路のセットのメンバーとして、短い可能性がある通信経路を中間ノードとして定義する、ことと、-二次応力関数において、セグメントノード項を定式化することであって、セグメントノード項は、それぞれの短い可能性がある通信経路のエッジの計算された部分容量使用率を、それぞれの短い可能性がある通信経路につながる可能性のセグメントノードのセット内のそれらのセグメントノードと接続する、ことと、-量子論的概念プロセッサを使用して、最適化されたルーティングの決定のために二次応力関数が最小化されるように、セグメントノード項を計算して、可能性があるセグメントノードのセット内のセグメントノードを選択することと、をさらに含む。
【0022】
このようにして、各トラフィック要求に対して、1つ以上のセグメントノードが個別に決定され、いわゆるセグメントルーティング(SR)プロトコルを実装することができる。したがって、複数の通信ノードのうち可能性があるセグメントノードのセットが指定され、可能性のあるセグメントノードの各々は、起点ノードと宛先ノードとの間の短い可能性がある通信経路のセットのメンバーとして、中間ノードとして短い可能性がある通信経路を定義する。セグメントルーティング(SR)は、個別の起点ノードと宛先ノード間の代替的な通信経路を定義する概念である。起点ノードと宛先ノードの各対に対して、1つ以上のいわゆるセグメントノードのシーケンスが選択され、次いで、起点と宛先との間の経路が、起点と最初のセグメントノードの間の最も短い経路、セグメントノードのシーケンスにおけるセグメントノードとそのそれぞれの後続ノードの間の最も短い経路、及び最後のセグメントノードと宛先ノードの間の最も短い経路の連結として与えられる。SRの特殊化はnSR(n-Segment-Routing)であり、ここでは、最大n-1セグメントノード、したがってn個の最も短い経路セグメントが、起点と宛先との間のルートとして可能である。これは、いわゆるSPRING(Source Packet Routing in Networking)の概念である。SRは、それぞれの起点ノードとそれぞれの宛先ノードとの間にある1つ以上のセグメントノードを用いて、データトラフィックのルーティングにおける特定の変形又は適応を元に戻すことができるので、さらなる自由度を与える。これは、静的な最も短い経路と、データトラフィックの柔軟で可変的なルーティングとの間のエレガントな妥協点を提供する。
【0023】
例えば、それぞれの起点ノードとそれぞれの宛先ノードとの間の直接の最も短い経路が利用可能でない例示的なケース、例えば、ネットワーク内の構築作業又はメンテナンスにより、SRは、さらなる自由度を提供する。このようにして、選択された迂回は、上記に説明した方法における最適化された経路を決定するステップにおいて選択され得るが、それにもかかわらず、上記に説明した意味では依然として短い最適化された経路である。しかし、ネットワーク内の最適化され分布した全体的な容量使用率を考慮すると、SRはさらなる自由度を提供する。このようにして、(例えば、異なるセグメントノードを介した)異なるトラフィック要求に対する異なる短い経路は、ネットワーク内の通信経路のそれぞれのエッジでの容量使用率の過負荷又は重大な増加を回避するために選択できる。
【0024】
可能性がある通信経路内のエッジの計算された部分容量使用率を、可能性があるセグメントノード(セグメントノード項)と接続することにより、SRに従った異なるトラフィック要求に対する通信経路への異なるセグメントノードの割り当てを考慮した上で、二次応力関数の最適解(最小値)を計算することが可能である。このようにして、各トラフィック要求に対する1つ以上のそれぞれのセグメントノードの最適化された選択が、上記に説明した最適化問題を満たすために達成され得る。したがって、1つのトラフィック要求に対して選択された通信経路が、他のトラフィック要求に対して可能な他の通信経路に与える影響が緩和され得る。したがって、SRの自由度を適用することによって、ネットワーク内の全体的な容量使用率を分布させるために、異なるトラフィック要求に対する異なる短い通信経路を、ネットワーク内の異なるセグメントノードに向けることができる。それぞれのセグメントノードの最適化された選択は、量子概念プロセッサによって実行される。
【0025】
可能性があるセグメントノードのセットは、各トラフィック要求に対して、全ての可能なセグメントノードのサブセットが、対応する通信経路が、通信経路内の関係するエッジの所定の容量使用率に関して、それぞれの起点ノードとそれぞれの宛先ノードとの間の最も短い経路に近くなるように選択されるということを考慮して、予め選択され得る。セグメントノードは、ルータ、すなわち、ノード又はインターフェース、すなわち、ノードなどの物理的なネットワーク要素を表すことができる。
【0026】
本方法の少なくとも1つの実装では、セグメントノード項は、トラフィック要求のセットの各トラフィック要求が、最も短い経路に沿って、又はそれぞれの起点ノードとそれぞれの宛先ノードとの間の正確に1つのセグメントノードを介してルーティングされるという経路条件を考慮して計算される。このような経路条件は、いわゆる2セグメントルーティング(2SR)プロトコルを実現する方法の制約又は「境界」を形成する。実際のネットワークでは、2SRは、一般のSRと比較して十分な柔軟性と自由度を既に提供しているが、それにもかかわらず、膨大な数のセグメントノードが実装されることを回避することが分かった。これにより、実装コストを低く抑える。追加的に、2SRでは、全てのトラフィック要求の最も短い経路に近い最適化されたルーティングを可能する。トラフィック要求のセットの各トラフィック要求に対して、量子概念プロセッサは、上記に説明されたように、二次応力関数の最小値を達成するために、それぞれの起点ノードからそれぞれの宛先ノードまでの最も短い経路、又は可能性があるセグメントノードのセットから1つの選択されたセグメントノードにわたる2SR経路のいずれかを選択する。
【0027】
本方法の代替的な実装では、セグメントノード項は、トラフィック要求のセットの各トラフィック要求が、最も短い経路に沿って、又はそれぞれの起点ノードとそれぞれの宛先ノードとの間の複数のセグメントノードを介してルーティングされるという経路条件を考慮して計算される。このような経路条件は、2セグメントルーティング(2SR)プロトコルの代わりにセグメントルーティング(SR)プロトコルを実現する方法に対する制約又は「境界」を形成する。
【0028】
この方法の少なくとも1つの実施態様では、セグメントノード項は、選択されたセグメントノードの数が最小になるようにコスト条件を考慮して計算される。このようにして、展開及び維持コストを最小限に抑えるために、割り当てられたセグメントノードの総数の最小化に関連する方法において、追加の最適化目標が定式化され、考慮される。理論的アプローチでは、割り当てられたセグメントノードの数が多いほど、量子論的概念プロセッサによって見出される二次応力関数の解はより最適になる。しかし、セグメントノードの数が多いということは、セグメントノードの展開とメンテナンスのコストが高いことを意味する。割り当てセグメントノードの全体数を最小化する追加の最適化目標を用いて、二次応力関数の最小化を量子論的概念プロセッサによって達成することができ、それにより、割り当てられたセグメントノードの総コストの低減と最小化を達成する。どちらの最適化に焦点を当てるべきかに応じて、両方の最適化基準を互いにバランスさせることができる。
【0029】
この方法の少なくとも1つの実装では、二次応力関数は、二次制約なし二値最適(QUBO)関数として定式化される。このQUBO関数は、上記の方法により、全てのトラフィック要求の最適化されたルーティングのために、この最適化問題を解決する量子概念プロセッサの「入力」として機能する。一般に言えば、QUBOは、ビット又は量子ビット(以下、Qビット)として量子概念プロセッサ内で表現される二値変数の二次多項式である。本開示の最適化問題のコンテキストでは、QUBO関数は、異なるQビットの関数として、可能性がある通信経路内のそれぞれのエッジの部分容量使用率の可能性がある寄与の合計を表し、各Qビットは、値「0」又は値「1」を仮定することができる経路代替の選択を表す。二次最適化問題(二次応力関数)を解くために、量子論的概念プロセッサは、二次最適化問題を最小化するような解を見つけるために、異なるQビットの異なるセッティングを実行する。このようにして、最適化問題のQUBO表現は、ここで適用される量子概念コンピューティングに関してエレガントな特性を有する。
【0030】
この方法の少なくとも1つの実装では、二次応力関数、並びに経路条件及びコスト条件のうちの少なくとも1つは、上記に説明されたように、各々が大域的なQUBO関数に向けて重み付け及び結合される。これには、異なる部分的な最適化問題を互いに対して重み付けされ得るという利点を有する。例えば、選択されたセグメントノードの数に依存する二次応力関数及びコスト条件は、コスト低減又はネットワーク内の均一なトラフィック分布の優先度に応じて、互いに重み付けされる。
【0031】
少なくとも1つの実装では、本方法は、-トラフィック要求のセットからトラフィック要求のサブセットを選択することと、-トラフィック要求のサブセットに対して方法を実行することと、-トラフィック要求のサブセットに対して決定され最適化されたルーティングを記憶することと、-トラフィック要求のサブセットに対して決定され最適化されたルーティングを考慮して、可能性がある短い通信経路のセット内のエッジのそれぞれの残りの使用率容量制限を更新することと、をさらに含む。
【0032】
このようにして、一種の分解戦略に従うことができる。これは、二次最適化問題を解くための量子概念プロセッサのハードウェア性能が制限されているにもかかわらず、説明した方法を処理するのに有利であるか、必要でさえある。二次最適化問題を定式化するために必要な変数の数が多いと仮定する。今日、現在の量子概念プロセッサの可能性は依然として制限されている。したがって、非常に複雑な二次最適化問題は、最適解を見つけるために反復的に処理できるいくつかの部分解に分解されなければならない。各反復において、1つの部分解が量子概念プロセッサによって見つけられる。
【0033】
例えば、SR問題として定式化された二次最適化問題のQUBO定式化を考慮すると、上記に説明されたように、最適化問題を定式化するために必要なビット変数(Qビット)の数は、例えば|D|x|S|であり、式中、|D|は処理されるべきトラフィック要求の数であり、|S|は要求ごとに考慮されるセグメントノードの数である。本開示の基礎となる典型的なデータセットでは、トラフィック要求の数|D|は、典型的には数千であり、セグメントノードのセット|S|は、ほぼ50のセグメントノードを含んでもよい。
【0034】
さらに、今日の典型的な量子概念プロセッサが10.000ビット変数(Qビット)のオーダで二次最適化問題を解くことができることを考慮すると、全体の最適化問題は問題分解の助けを借りて反復的に解かれなければならない。
【0035】
したがって、最適化問題は、上記に説明した方策によって反復的に分解され得、ここでは、トラフィック要求のセットからトラフィック要求のサブセットが選択され、記載した方法がトラフィック要求のサブセットに対して実行される。続いて、トラフィック要求のサブセットに対して決定され最適化されたルーティングが記憶され、トラフィック要求のサブセットに対して決定され最適化されたルーティングを考慮して、可能性がある短い通信経路のセット内のエッジのそれぞれ残りの使用率容量制限が更新される。
【0036】
例示的な実装によれば、問題を分解するために、トラフィック要求は、ボリュームによって降順にソートされ、要求の別々の部分にスプリットされる。特に、最大のボリュームを有する要求を最初に考慮し、次に最小のボリュームを有する要求を考慮することができる。次いで、最大のボリュームの要求から始めて、対応するルーティング最適化問題を反復的に定式化し、量子概念プロセッサの助けを借りて、要求の各別々の部分に対して最適化する。要求の各別々の部分に対する部分解が記憶され、エッジ容量は、前の反復で見つかった部分解に対応する使用率によって低減される。次いで、本方法は、要求の次のサブセットで処理される。このようにして、エッジ容量のより高い部分を必要とする大きいボリュームのトラフィック要求は、アルゴリズムの初期の反復で考慮され、一方、より小さいボリュームの要求はアルゴリズムの後の反復で考慮され、ネットワークの残りの容量に分布されるため、容量がほとんど消費されないネットワークにアクセスすることができる。
【0037】
少なくとも1つの実装では、本方法は、-可能性があるセグメントノードのセットから可能性があるセグメントノードのサブセットを選択すること-可能性があるセグメントノードのサブセットに対して方法を実行することと、をさらに含む。
【0038】
このような実装は、上記に説明されたように、SRを考慮した、さらに特殊化した分解戦略を提供する。変数(Qビット)をさらに保存するために、可能性があるセグメントノードのセット|S|は、各トラフィック要求に対する可能性があるセグメントノードのセットからの可能性があるセグメントノードのサブセットに制限され得る。次いで、最適化された解(二次最適化問題の最小値)の意味で、各トラフィック要求に対して計算され選択されたセグメントノードは、本方法の次の反復の前に記憶される。例えば、各トラフィック要求に対する可能性があるセグメントノードのサブセットは、それぞれのトラフィック要求の各起点ノードと宛先ノードとの間の最も短い経路に極めて近いセグメントノードとして予め選択され得る。
【0039】
さらなる実装によれば、上記に説明した分解手順のうちの1つ以上が、トラフィック要求のセットの全てのトラフィック要求が処理されるまで、残りのトラフィック要求に対して反復的に実行される。
【0040】
上述の問題は、添付の特許請求の範囲に請求されてれている量子概念プロセッサによっても解決される。量子概念プロセッサは、上記のような方法の1つ以上のステップを実行するために構成される。例示的な実装によれば、量子概念プロセッサは、デジタルアニーリング処理ユニットである。このユニットは、上記に説明されたように、量子アニーリング又は量子アニーリングエミュレーションを実行するように特別に構成され得る。量子概念プロセッサは、任意のタイプの上記に説明したもののうちのものとすることができる。
【0041】
上述の問題は、命令を含むコンピュータプログラムであって、命令は、プログラムが1つ以上のプロセッサによって実行されるときに、1つ以上のプロセッサの各々に、上述の記載の方法の1つ以上のステップを実行させる、コンピュータプログラムによっても解決される。これらのプロセッサのうちの少なくとも1つは、例えば、上記に説明されたような量子概念プロセッサである。他のプロセッサは、コンピュータプログラムを実行することによって、上記に説明されたような方法の予備的ステップ又は反復的ステップを処理するために構成され得る。
【0042】
さらに、上述されたような方法によって決定された最適化経路を検証するためにネットワークプランナーのためのワークプレイスによっても上述の問題は解決される。このようなワークプレイスは、例えば、上述されたような方法によって決定された最適化された経路の(自動又は半自動の)検証のために構成された検証手段を有する。これは、ネットワークプランナーが、上述されたような方法によって見つけられた最適化結果を検証するのに機能する。検証手段は、ソフトウェア及び/又はハードウェアで実装され得る。例えば、ワークプレイスは、上述されたような方法を実行する量子概念プロセッサを含むシステムと通信するか、又はこれに接続され得る。次いで、結果は、ワークプレイスに引き継がれ得る。
【0043】
さらに、上述の問題はまた、データトラフィックがルーティングされる通信ネットワークの複数の通信ノードへの1つ以上のインターフェースを含むインターフェース構成によっても解決され、インターフェース構成は、上述されたような方法によって決定された最適化されたルーティングを、通信ネットワークの通信ノードに自動的に展開するように構成されている。このようにして、上述されたような方法によって決定された最適化されたルーティングは、それぞれの通信ネットワークの複数の通信ノードに(自動的に又は半自動的に)展開され得る。例えば、インターフェース構成は、上述のされたようなワークプレイス、又は上述されたような方法を実行する量子概念プロセッサを含むシステムと通信するか、又はこれに接続され得る。結果は、インターフェース構成に引き継がれ得る。
【0044】
さらに、コンピュータ実施手順の上記に説明したステップのうちの1つ以上のための予備的な方策として、それぞれの最適化の前に通信ネットワークからパラメータを読み出し、そのようなパラメータを説明されたコンピュータ実施最適化手順に入力するためのインターフェースが実装又は使用され得る。パラメータは、例えば、ネットワーク構成、ネットワークのグラフ記述のための隣接情報、ネットワーク内の利用可能な容量、及び予想されるトラフィック要求を含む。
【0045】
上記に説明された方法に関連して単独で又は互いに組み合わせて記載される任意の態様、特徴、効果及び方策は、上記に説明された量子概念プロセッサ又はコンピュータプログラムに関連して単独で又は互いに組み合わせて記載される態様、特徴、効果及び方策に適用されるか、又は類似の表現を見つけることができ、逆もまた同様である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本発明は、複数の図面の助けを借りていくつかの実装を考慮して、以下にさらに記載される。
【0047】
図1】従来のアプローチに従ったトラフィック要求の例示的なルーティングを有する通信ネットワークの例示的な構成を示す。
図2A】代替的なアプローチに従ったトラフィック要求の例示的なルーティングを有する通信ネットワークの例示的な構成を示す。
図2B】本発明によるアプローチに従ったトラフィック要求の例示的なルーティングを有する通信ネットワークの例示的な構成を示す。
図3】起点ノードと宛先ノードとの間のトラフィック要求のルーティングのための可能性がある通信経路の例示的な概略図を示す。
図4A】本発明によるアプローチに従う部分的な最適化問題の例示的な数学的定式化を示す。
図4B】本発明によるアプローチに従う部分的な最適化問題の例示的な数学的定式化を示す。
図4C】本発明によるアプローチに従う部分的な最適化問題の例示的な数学的定式化を示す。
図4D】本発明によるアプローチに従う部分的な最適化問題の例示的な数学的定式化を示す。
図5】本発明によるアプローチを実行するアルゴリズムの例示的な概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、従来のアプローチに従ったトラフィック要求5a及び5bの例示的なルーティングを有する通信ネットワーク1の例示的な構成を示す。通信ネットワーク1は、複数の通信ノード2を含む、2つの隣接する通信ノード2間の接続4をエッジと呼ぶ。これは、通信ノード2と別の通信ノード2cとの間で示され、これらは、接続4を介して相互に通信することができる。通信ネットワーク1の歴史的に成長した構成及び実装に応じて、いくつかの通信ノード2は、いわゆる集約ノード3に集約される。図1に例示的に示されるように、例えば、通信ノード2aは、集約ノード3a内に集約され、他の通信ノード2b、2d、2eは、集約ノード3b内に集約される。
【0049】
通信ノード2は、例えば、ネットワーク1内の着信及び発信データトラフィックをルーティングするための、いわゆるラベルエッジルータ(LER)である。集約ノード3は、メタノードと呼ばれ、ネットワーク1の特定の領域におけるLERの集約ゾーンである。例えば、集約ノード3は、通信が行われるべき決定された経済地域又は都市の集中集約ゾーンである。他のアプリケーションでは、集約ノード3は、例えば、産業ネットワーク又はトラフィックネットワークなどのエンティティとすることができる。
【0050】
通信ネットワーク1は、一般に、部分的にマッシュされている。これは、全ての通信ノード2が他の全ての通信ノード2と接続されているわけではないことを意味する。その代わりに、ネットワーク1に実装されたいくつかの通信ノード2の間には、例えば、ネットワーク1の歴史的発展から生じた、いくつかの接続4(点線の接続を参照)しかない。それぞれの通信ノード2間の接続4は、例えば、光ファイバ接続によって実装される。しかし、無線技術(例えば、5G)及び銅線/DSL技術などの他の技術も一般に適用可能である。
【0051】
上記に説明したように、図1は、トラフィック要求5a及び5bの特定のシナリオを示し、それに従って、特定のデータ量が、ネットワーク1内のそれぞれの通信ノード2間で転送されなければならない。例示的に示されるように、第1のトラフィック要求5aは、集約ノード3a内の通信ノード2aと、集約ノード3d内の別の通信ノード2fとの間にある。第2のトラフィック要求5bは、集約ノード3b内の通信ノード2eと、繰り返しになるが集約ノード3d内の通信ノード2fとの間にある。したがって、各トラフィック要求5a及び5bは、起点ノードから宛先ノードに転送される決定された量を定義する。図1による例示的なシナリオでは、トラフィック要求5aに対する起点ノードは通信ノード2aであるが、トラフィック要求5aに対する宛先ノードは通信ノード2fである。同様に、トラフィック要求5bに対して、起点ノードは通信ノード2eであり、宛先ノードは通信ノード2fである。
【0052】
代替の実装では、トラフィック要求は、それぞれの集約ノード3内のどの内部通信ノード2で通信が開始又は終了するかに関係なく、集約ノード3間の要求として定義することができる。例えば、要求5a、5bは、集約ノード3aと3dとの間の要求(要求5a)、集約ノード3bと3dとの間の要求(要求5b)と定義することができる。このような実装では、それぞれの集約ノードとその内部通信ノードとの間に「仮想」エッジがあり、仮想エッジは非常に高い容量を有する。これは、それぞれの集約ノード3内の内部通信ノード2上で通信が開始又は終了することが重要な役割を果たさないという効果につながる。
【0053】
各トラフィック要求5a及び5bは、ネットワーク1にネットワークの容量の使用率、すなわち、ネットワーク1内のそれぞれの通信ノード2間の可能性がある通信経路のそれぞれの接続4の容量の使用率で負担をかける。図1の例示的なシナリオでは、トラフィック要求5aは、通信ノード2b、2c、2d、2e、及び2fを介して、通信ノード2aから通信ノード2fに転送される。これと並行して、通信ノード2eと2fとの間の接続4を介して、トラフィック要求5bが単純に転送される。このシナリオでは、2つの欠点が発生する。第1の欠点は、トラフィック要求5aを転送するための通信経路が長く、ネットワーク1を通って複雑であることにある。この転送は、トラフィック要求5aを転送するためにネットワーク1内の複数の通信ノード2と接続4を埋め込んでいる。第2の欠点は、トラフィック要求5a及び5bの両方が、最終的に、通信ノード2e及び2fの間の接続4を介して転送されるという事実にある。したがって、ノード2eと2fとの間の接続4のリンク容量は、かなりの程度までの負荷となる。これは、ノード2eと2fとの間の接続4の過負荷につながり、レイテンシの増加又はデータの損失などをもたらすことがある。
【0054】
図2Aは、代替的なアプローチに従ったトラフィック要求5a及び5b(上記を参照)の例示的なルーティングを伴う通信ネットワーク1の例示的な構成を示す。図2Aに従うシナリオでは、中間ノードs、以下ではセグメントノードsと呼ぶが、トラフィック要求5aをルーティングするために決定される。セグメントノードsは、他の通信ノード2b、2eと共に集約ノード3b内に構成されている。図1と比較すると、例えば、通信ノード2d(図1を参照)は、図2Aのシナリオにより、セグメントノードsとして宣言されている。これにより、繰り返しになる通信ノード2aから開始して、通信ノード2b、セグメントノードs、通信ノード2e、2fに続く代替的な通信経路で、トラフィック要求5aが転送される。
【0055】
図2Aによるシナリオは、トラフィック要求5aの転送のための通信経路が、短い経路又は最も短い経路戦略に近くなり、それにより、ネットワーク1内の関与する通信ノード2及び接続4の数を低く(少なくとも図1のシナリオよりも低く)保ち、図1のシナリオよりも有利である。しかし、図2Aのシナリオにおいても、他の欠点が残っており、それによれば、ノード2eと2fとの間の接続4には、トラフィック要求5aと5bの両方がネットワーク1のこの接続を通り、依然として重い負荷がかかっている。
【0056】
図2Bは、図1及び図2Aによる通信ネットワーク1の例示的な構成を示すが、ここでは、トラフィック要求5a及び5bの例示的なルーティングが本発明によるアプローチに従う。図2Bのシナリオでは、最適化されたセグメントノードsが選択され、これは、図2Aによる集約ノード3bの代わりに集約ノード3e内にある。これにより、ノード2aから開始して、通信ノード2b、2c、セグメントノードs、及び通信ノード2g及び2fとする通信経路内で、トラフィック要求5aが転送される。他のトラフィック要求5bは、図1及び図2Aによるシナリオのように、2つの通信ノード2e及び2fの間で転送される。
【0057】
したがって、図2Bによるシナリオは、トラフィック要求5aを、起点ノード2aと宛先ノード2fとの間の依然として比較的短い経路上で転送する。しかし、図2Bによるシナリオの実質的な価値は、その宛先2fに向かう最終ルートセグメント上のトラフィック要求5aが、ノード2eと2fとの間の接続4を介してではなく、ノード2gと2fとの間の接続4を介して転送されるという事実にある。これにより、ノード2eとノード2fとの間の接続4には、トラフィック要求5bのトラフィックのみの負荷がかかる。
【0058】
したがって、図2Bのシナリオは、図1及び2Aによるアプローチの欠点を解決し、それにより、ネットワーク1内で転送されなければならない全てのトラフィック要求5に対して、ネットワーク1内の接続4の全体的な容量使用率の均一で最適化された分布と共に、ネットワーク1内の短い経路通信を達成する。
【0059】
以下では、図2Bによるアプローチの実装をさらに詳細に説明する。
【0060】
解決すべき最適化問題は、数学的に定式化された二次応力関数(コア最適化問題)が最小化されるように、各トラフィック要求5に対して、短い可能性がある通信経路のセットから1つの短い通信経路を選択することによって、ネットワーク1を通る最適化されたルーティングを決定することにある。これは、ネットワーク1内の全てのトラフィック要求5に対して、選択された通信経路内の接続4の全体的な容量使用率がネットワーク1内で均一に最小化され得るという効果と組み合わされて、最も短い経路戦略に可能な限り近いそれぞれの通信経路を選択するという目的を果たすと共に、技術的効果を有する。これにより、それぞれの通信経路にある接続4のいくつかに、大きな負担又は過大な負荷がかかることが回避される、一方、他の接続4の小さな負荷は、そのようなストレスを著しく低下させることができる。
【0061】
上記の効果を達成するために、通信ネットワーク1内のルーティングを最適化するためのコンピュータ実装アルゴリズム方法が実装される。これは、以下に説明される。
【0062】
図3は、起点ノードo1、o2と宛先ノードd1、d2との間のトラフィック要求のルーティングのための可能性がある通信経路p1~p4の概略図を示す。図3の例示的なシナリオでは、2つの別個の起点ノードo1及びo2が実装され、一方、1つの宛先ノードは、宛先ノードd1又は宛先ノードd2のいずれかとして機能する。このようにして、2つのトラフィック要求が定義され、一方は、起点o1と宛先d1の間のトラフィック要求で、他方は、別の起点o2と同じ宛先d2との間のトラフィック要求である。決定されたデータボリュームは、o1、d1とo2、d2の間で転送される。ここで、中心的な最適化問題は、最も短い経路アプローチに可能な限り短い通信経路が選択され、同時に、ネットワーク内の容量の全体的な使用率がネットワーク内で均一に最小化されるように、可能性がある通信経路内の接続の全体的な容量使用率が最小化されるように、トラフィック要求o1、d1及びo2、d2に対する最適な通信経路を選択し、決定することにある。
【0063】
図3によれば、短い可能性がある通信経路p1~p4のセットが予め指定される。これは、例えば、転送される各トラフィック要求に対して、起点ノードo1、o2と宛先ノードのd1、d2の2つの対の間の短い可能性がある通信経路を計算するダイクストラアルゴリズムの適用を通じて行うことができる。図3に例示的に示されているように、経路p1は、o1からセグメントノードs2を介してd1に至る。経路p2は、o1からセグメントノードs1を介してd1に至る。経路p3は、o2からセグメントノードs2を介してd2に至る。経路p4は、o2からセグメントノードs1を介してd2に至る。これらは、それぞれの起点o1とo2から宛先d1/d2に向かうデータトラフィックのルーティングするための可能な通信経路がある。
【0064】
セグメントノードs1、s2は、それぞれの通信経路における中継ノードとして機能する。それぞれのトラフィック要求に対して最適化された短い通信経路を計算するという中心的な最適化問題にもかかわらず、この最適化問題における特別な態様は、中心的な最適化問題が依然として満たされるように、トラフィック要求の伝送のためのセグメントノードsを選択することにある。セグメントノードs1、s2の構成の主な利点は、トラフィック要求のルーティングの自由度と柔軟性が得られることにある。図3は、上記に説明したように、2セグメントルーティング(2SR)プロトコルを例示的に実装する。
【0065】
図3は、エッジe1及びe2としてさらに参照され、可能性がある通信経路内にあり得る2つの例示的な接続をさらに示す。エッジe1は、セグメントノードs1と宛先d1/d2との間に構成され、エッジe2は、セグメントノードs2と宛先d1/d2との間に構成される。
【0066】
起点o1、o2と宛先d1/d2の間のトラフィック要求のルーティングに対して、異なるオプションを仮定する。o1からd1へのルーティングのオプションは、データトラフィックo1、d1がエッジe2を介して転送されるような経路p1である。o1からd1へのルーティングの別のオプションは、データトラフィックo1、d1がエッジe1を介して転送されるような経路p2である。データトラフィックo2、d2に対しても同様の仮定が適用され得る。ここで、第1のオプションは、データトラフィックo2、d2がエッジe2を介してルーティングされるような経路p3である。o2からd2へのルーティングのための第2のオプションは、データトラフィックo2、d2がエッジe1を介してルーティングされるような経路p4である。データトラフィックo1,d1及びo2,d2のルーティングのためのこれらの異なるオプションから分かるように、o1,d1及びo2,d2のための通信経路の組み合わせがあり、2つのエッジe1及びe2にはそれぞれ、1つのトラフィック要求のみの負担がかかる。これは、例えば、経路p1を通るo1,d1と経路p4を通るo2,d2で与えられる。しかし、エッジe1及びe2の一方に両方のトラフィック要求の負荷が実質的かつ重くかかり、エッジe1及びe2の他方が全く使用されない通信経路の可能な組み合わせもある。これは、例えば、経路p1を通るo1,d1と経路p3を通るo2,d2(又は、経路p2を通るo1、d1と経路p4を通るo2、d1)で与えられる。
【0067】
後者の組み合わせは、エッジe1及びe2のうちの一方の容量使用率が著しく高く、それぞれのエッジの過負荷又は故障をもたらす可能性があるという重大な欠点を有する。したがって、最適化問題は、全体的な容量使用率が両方のエッジe1及びe2の両方にわたって分布するように、トラフィック要求o1、d1及びo2、d2に対する通信経路を決定し、選択することにある。このような最適化問題の特殊な実装では、セグメントノードs1及びs2のそれぞれの割り当ては、o1、d1及びo2、d2の転送のためのそれぞれの通信経路の最適化された選択に対して実行される。
【0068】
このような最適化問題を解くために、短い可能性がある通信経路のセット内の全てのエッジの部分容量使用率を、トラフィック要求のセット全体に対して計算することができる。図3に例示的に与えられるように、このような方策は、トラフィック要求o1、d1及びo2、d2の各々に対するエッジe1及びe2の各々の部分容量使用率の計算を含む。それぞれのエッジの「部分容量使用率」とは、各エッジのそれぞれの使用率容量制限に基づいて、このエッジを介して伝送される各トラフィック要求に必要な容量使用率の部分が計算されることを意味する。
【0069】
例えば、図3に関して、各トラフィック要求o1,d1及びo2,d2が、各エッジe1及びe2の最大使用率容量の半分を必要とすると仮定する(すなわち、容量の50%)。これは、各エッジe1及びe2に、各トラフィック要求o1、d1及びo2、d2に対する使用容量の半分の負担がかかることを意味する。言い換えると、例えば、o1,d1が経路p1を通り、o2,d2が経路p4を通る場合、エッジe1とe2の両方に、それらの使用率容量制限の50%の負担がかかる。そうでなければ、例えば、o1、d1が経路p1を通り、o2、d2が経路p3を通る場合、エッジe2には、十分かつ完全に負担がかかり(2x50%=100%)、それにより、その容量制限に達し、e2のエッジ容量全体の使用をもたらす。同様の仮定は、エッジe1に関して、o1、d1が経路p2を通り、o2、d2がp4を通る場合に適用され得る。
【0070】
このような部分容量使用率の計算は、図3のシナリオでは、可能性がある通信経路p1からp4内にある残りの全てのエッジに対して実行される。次いで、計算された部分容量使用率は、以下で詳細に説明し、かつ図4Cを参照して、二次応力関数の項として定式化される。
【0071】
図4A図4Dは、図2B及び図3に関して、上記に説明されたようなアプローチに従う部分的な最適化問題の例示的な数学的定式化を示す。図4A図4Dの数学的定式化は、いわゆるハミルトニアン関数、短いハミルトニアンとして表される。
【0072】
図4Aの数学的定式化は、それぞれの起点と目的地との間(o,d)の各トラフィック要求が、最も短い経路に沿って、又はそれぞれの起点ノードoとそれぞれの宛先ノードdの間の正確に1つのセグメントノードを介してルーティングされる経路条件を定式化する。図3の例示的なシナリオに関して、これは、トラフィックo1,d1及びトラフィックo2,d2が、最も短い経路(図3には明示的に示されていない)に沿って、又は、正確に1つのセグメントノードs1、s2を介して、ルーティングされ得ることを意味する。これは、トラフィック要求o1、d1及びo2、d2の各々に対して、各要求に対して1つのセグメントノードs1又はs2のみが選択され得ることを意味する。
【0073】
図4aの数学的定式化は、値「0」又は値「1」(又は、その両方が特定の確率を有する)を仮定することができ、ビット(又は、以下で使用されるようなqビット)として量子論的概念プロセッサにおいて表されるバイナリ変数
【数1】
の合計項として定式化される。各セグメントノードsに対して、また、起点oから宛先dまでの各トラフィック要求o、dを考慮して、それぞれのQビット
【数2】
がセットされ得る。それぞれのQビット
【数3】
は、それぞれのセグメントノードsがそれぞれの通信経路に含まれる場合、値「1」にセットされ、含まれない場合、値「0」にセットされる。図4Aのハミルトニアンの定式化を考慮すると、ハミルトニアンは「0」に等しくなければならない。これは、各トラフィック要求o、dに対して、1つのQビット
【数4】
のみが値「1」を仮定し、他のセグメントノードsに対する他の全てのQビット
【数5】
が値「0」を有するように、1つの単一セグメントノードsのみが選択される場合にのみ満たされる。そうでなければ、複数のセグメントノードsが選択される場合、図4Aの条件は満たされない。図4Aのハミルトニアンとして数学的に定式化された経路条件は、最も短い経路戦略に近い通信経路のみを計算するために、1つの単一セグメントノードsを介した通信経路のみを選択することができるという効果を有する。
【0074】
図4Bの数学的定式化は、ネットワーク1内の使用されるセグメントノード全体の数に関するコスト条件を定式化する。このハミルトニアンは、全てのトラフィック要求o、dにわたって、(ルーティングのために選択されたセグメントノードを示す)値「1」を有する全てのQビット
【数6】
を合計する。ここで、部分的な最適化問題は、図4Bのハミルトニアンを最小化することによって、選択されたセグメントノードの数を最小化することにある。このコスト条件は、展開を維持し、コストを可能な限り低く維持する(これらのコストを最小化する)ために、使用されるセグメントノードの数をグローバルに最適化するという意味で、可能な限り最小化するという目的のために機能する。
【0075】
図4Cによるハミルトニアンの数学的定式化は、全てのトラフィック要求o、dに対する可能性がある短い通信経路のセットp内の全てのエッジeの計算された部分容量使用率を考慮した二次応力関数として定式化されるコア最適化問題を表す。したがって、ここでのコア最適化問題は、ネットワーク内の全てのトラフィック要求に対して最適化された通信経路を見つけるために、図4Cによりハミルトニアンを最小化することにある。
【0076】
図4Cのハミルトニアンは、全てのトラフィック要求o、dを考慮し、さらに、通信経路pを選択するために選択され得るセグメントノードのセットsを考慮して、可能性がある通信経路p内の各エッジeに対する合計項を考慮する。図4Aの式が満たされると仮定すると、図4Cのハミルトニアンは、可能性がある通信経路pの一部である全てのエッジeの全ての計算された部分容量使用率
【数7】
の合計を記載する。ここで、
【数8】
は、トラフィック要求のボリュームを表し、
【数9】
は、それぞれのエッジeの容量を表す。部分容量使用率
【数10】
は、セグメントノード項に向けてそれぞれのQビット
【数11】
と接続される。上述したように、Qビット
【数12】
は、それぞれのQビット
【数13】
に関連付けられたセグメントノードsが考慮されるかどうかに応じて、値「0」又は値「1」のいずれかを仮定することができる。
【0077】
図4Cのハミルトニアンは、2つの主要な項t1及びt2を有する。t1は、2SRアプローチによりルーティングを定式化し、t1の最初の式は、起点oとセグメントノードsの間のセグメントにおける全ての要求o、dの全ての部分容量使用率
【数14】
を合計する。次に、t1の第2の式は、それぞれのセグメントノードsと宛先dとの間のセグメントにおける全ての要求o、dの全ての分数容量使用率
【数15】
を合計する。第2の項t2は、これらの最も短い経路内にある全てのエッジeの部分容量使用率
【数16】
を合計することによって、全ての要求o、dに対する最も短い経路を考慮する。最も短い経路は、可能なセグメントノードsが選択されないように定義される。
【0078】
図4Cのハミルトニアンは、項t1又は項t2のいずれか(ただし、両方ではない)が考慮されるように定式化される。したがって、1つのセグメントノードsを持つ経路を選択することも、セグメントノードsを有さない最も短い経路を選択され得る。これは、それぞれのQビット
【数17】
のセッティングによるものである。少なくとも1つのセグメントノードsが選択された場合、少なくとも1つのQビット
【数18】
は値「1」を有する。この場合、Qビット
【数19】
(そのうちの1つは値「1」を有する)を乗算した項t1が考慮される。しかし、この場合、t2の項t21が「0」となるので、第2の項t2は「0」となる。これに対して、セグメントノードsが選択されない場合に、全てのQビット
【数20】
は値「0」を有し、項t1は「0」で乗算され、考慮されないことをもたらす。しかし、この場合、第2の項t2は、その内部の式t21が「1」となるため考慮される。
【0079】
0より大きく1以下の値を持つべき乗パラメータ「q」は、追加の問題固有の制御パラメータとして使用され得る。q<1の場合、より小さなボリュームの要求は、小さなエッジ容量を有する最も短い経路のセットをもたらすセグメントノードに優先的に割り当てられる。これに対して、q=1の場合、全ての要求は、それ以上の優先度なしに均等に分布する。
【0080】
このようにして、図4Cのハミルトニアンは、各要求o、dに対して通信経路pを選択するために、最も短い経路又は排他的に1つのセグメントノードsのいずれかを考慮するように定式化され、それにより、可能性がある通信経路pのそれぞれの部分にある全てのエッジeの全ての部分容量使用率
【数21】
を考慮する。
【0081】
2つのエッジe1及びe2の例示に対する図3のシナリオを考慮すると、図4Cによるハミルトニアンは、q=1で以下の式を有することができる。
【数22】
【0082】
各要求o1,d1及びo2,d2がそれぞれのエッジe1,e2にその容量の半分(50%)の負担をかけるという仮定の下で、上記に説明されたように、o1,d1及びo2,d2が異なるセグメントノードsを介してルーティングされる場合、上記の項は最小値に達する。そして、上記の項は以下のようである。
【数23】
【0083】
そうでなければ、o1,d1及びo2,d2が1つの共通セグメントノードs1又はs2を介してルーティングされる場合(他のセグメントノードは使用されない)、上記の項は以下のようである。
【数24】
したがって、ネットワークのコスト/ストレスは、後者の解の方が高く、上記の解よりも悪い。
【0084】
上記の例は、2つの要求o1, s1及びo2,d2に対して異なるセグメントノードsを選択することが、ネットワークにわたる全体的な容量使用率を分布させるとともに、短い経路ルーティングの最適化目標を達成するための好ましい解であることを示している。
【0085】
図4Cのハミルトニアンは、一般に、ネットワーク内の全てのトラフィック要求に対して、それぞれのQビット
【数25】
の値の異なるセッティング通して実行する量子論的概念プロセッサによって解かれ、それによってハミルトニアンのそれぞれの結果を計算する。そうすることの目標は、Qビット
【数26】
のそれぞれのセット値に対するハミルトニアンの最小値を見つけることである。図4Cのハミルトニアンのそれぞれの最小値が見つかるとすぐに、この最小値につながるQビット
【数27】
のそれぞれの値が記憶され、最終的に、それぞれのトラフィック要求のそれぞれの通信経路を定義する。これは、各Qビット
【数28】
が、上記に説明したように、各要求o、dに対して正確に1つのセグメントノードsを介して、2SRアプローチによる最も短い経路又はルーティングのいずれかを定義するという事実による。したがって、量子概念プロセッサを使用して図4Cのハミルトニアンの最小値を計算することによって、各トラフィック要求o、dに対して、短い可能性がある通信経路から1つの短い通信経路pを選択することによって、最適化されたルーティングが計算される。
【0086】
図4Dは、最終的に、図4A図4Cによる3つの部分的な最適化問題にそれぞれの重み付け係数A、B、Cを乗算し、大域的な最適化問題に向けて合計される、全体的な最適化問題の大域的なQUBO定式化を示す。この大域的な最適化問題は、最終的に、量子概念プロセッサ内でコンピュータ実装アルゴリズムを適用することによって処理される。この点に関して、図4Cによるハミルトニアンの最小化が行われ、それにより、図4A及び4Bに従ったハミルトニアンにおいて定式化されたさらなる最適化制約が考慮される。
【0087】
特に、図4Bのハミルトニアンに関して、図4Cのハミルトニアンの最小値と、図4Bのハミルトニアンで定式化された使用されるセグメントノードsの数に依存するコストの最小値との間で妥協点が計算される。図4Cのハミルトニアンの大域的な最小値は、選択され使用されるセグメントノードsの数を著しく増加させることによって見つけられ得る。しかし、これは、図4Bのハミルトニアンで表されるように、セグメントノードsの展開及び維持コストを著しく増加させる。対照的に、セグメントノードsの展開及び維持のためのコストを厳密に最小化すること(実際には、セグメントノードを全く選択しないこと)は、図4Cのハミルトニアンが十分な最小値に到達するために満足に解くことができないという事実につながるであろう。
【0088】
図4Dで定式化された大域的な最適化問題は、ルーティングのために使用されるセグメントノードの全体数の最小化を考慮し(図4B)、さらに各トラフィック要求に対してセグメントノードを1つだけ選択するか、まったく選択できないという制約を考慮して(図4A)、容量使用率に対する二次応力関数の最小値を見つけようとすること(図4C)によって、これらの部分的な最適化問題の間の決定された妥協点を尊重する。
【0089】
図4Dによる重み付け係数A、B、及びCの助けを借りて、異なる重み付け及び異なる部分的な最適化問題への焦点がセットされ得る。例えば、係数Bが係数Cよりも大きい場合、最大容量使用率の最小化と容量使用率の均一な分布に焦点が置かれる。そうでなければ、係数Bが係数Cよりも小さい場合、使用されるセグメントノードの全体的なコストの最小化に焦点がより当てられる。加えて、係数Aは、例えば、非常に高くセットすることができるため、この制約は、最適化中に実質的に違反されることはない。数学的定式化A>B、C>0の代替として、例えば、別の数学的定式化は、A>B>0、C>=0である。
【0090】
図5は、上記に説明したアプローチを実行するアルゴリズムの例示的な概略図を示す。図5は、トラフィック要求のセット5を考慮した、上記に説明した方法のステップ及び手順の処理を示し、これらのトラフィック要求5は、分解された方式で処理される。これは、図4Aから4Dに関して上記に説明されたように、最適化問題を解くための量子概念プロセッサ6のハードウェア性能が制限されているにもかかわらず、説明した方法を処理するのに利点を有するか、又は必要でさえある。二次最適化問題は、非常に複雑であり、最適解を見つけるために反復的に処理できるいくつかの部分解に分解されなければならない。各反復において、1つの部分解が量子概念プロセッサ6によって見つけられる。
【0091】
したがって、問題を分解するために、トラフィック要求5は、ボリュームによって降順にソートされ、要求の別々の部分にスプリットされる。特に、より高いボリュームを有するトラフィック要求5を最初に考慮し、次により小さいボリュームを有する要求を考慮することができる。この目的のために、図5によるアルゴリズムの実装において、最初に、トラフィック要求5のサブセット7が考慮される。例えば、トラフィック要求5のサブセット7は、トラフィック要求5のセット全体の中の全体のボリュームの特定のパーセンテージを含む。例えば、サブセット7は、ネットワークを介して伝送されるトラフィックボリュームの30%を含む。次のステップでは、トラフィック要求5のこのサブセット7に対して、可能性があるセグメントノードsのセットから可能性があるセグメントノードsのサブセット8が選択される。このようにして、可能性があるセグメントノードsの全体数は、トラフィック要求5の選択されたサブセット7に関して最も関連する可能性があるセグメントノードsのサブセット8に低減される。例えば、各トラフィック要求5に対する可能性があるセグメントノードsのサブセット8は、サブセット7の一部であるそれぞれのトラフィック要求5のそれぞれの起点ノードと宛先ノードとの間の最も短い経路に非常に近いセグメントノードsとして予め選択され得る。
【0092】
セグメントノードsの選択されたサブセット8を有するトラフィック要求5の前処理されたサブセット7は、次いで、量子概念プロセッサ6内のアルゴリズム手順に入力される。例えば、図5による量子概念プロセッサ6は、量子アニーリングエミュレーションによって最適化問題を解くように構成されている。量子概念プロセッサ6は、図4Dによる全体の最適化問題の数学的定式化を適用する。次いで、量子概念プロセッサ6は、セグメントノードsの選択されたサブセット8を用いて、図4Dにより、大域的な最適化問題の最適化された解をトラフィック要求5のサブセット7に対して計算する。
【0093】
アルゴリズム手順が完了した後、図4Dによる大域的な最適化問題の最終的に計算された最小値が、トラフィック要求5のそれぞれのサブセット7に対して量子概念プロセッサ6から出力される。次いで、最適化問題の見つかった最適値により決定した通信経路pが、トラフィック要求5のサブセット7に対して記憶される。
【0094】
さらに、トラフィック要求5のサブセット7に対して決定され最適化されたルーティングが、ネットワーク内の特定の量の容量を既に必要としていることを考慮して、可能性がある短い通信経路pのセット内のエッジのそれぞれの残りの使用率容量制限が更新される。任意の要求が残っている場合、トラフィック要求のセットの全てのトラフィック要求5が処理されるまで、手順が残りのトラフィック要求5に対して反復的に実行される。この場合、ネットワークを介して決定された通信経路を介して転送される全てのトラフィック要求5の最大容量使用率が計算される。次いで、アルゴリズムが終了する。
【0095】
したがって、図2B図4Dに関する上記の実装及び説明に基づく、図5によるコンピュータ実施アルゴリズム手順を適用することによって、最適化されたルーティングが、通信ネットワーク1を介して個々に選択された短い通信経路上の全てのトラフィック要求に対して提供され得る。
【0096】
QUBO表現としての最適化問題の定式化は、プロセッサ6内でのここで適用される量子概念コンピューティングに関してエレガントな特性を有する。今日、量子概念コンピューティングは依然として大きな限界に達している。しかし、量子コンピュータに向けてコンピュータ科学がますます発展するにつれて、ここに記載されたアプローチは、将来さらに強化され、発展する可能性がある。例えば、量子コンピューティングが、基礎となる最適化問題の複雑さの増大にますます適用可能になるときに、図5の観点から説明される分解戦略は、ますます低減され得、これは、最適化問題が、分解ステップ及び問題の反復を伴わずに、全体として、ますます処理され、計算され得ることを意味する。さらに、量子コンピューティングがますます適用可能になるにつれて、ますます増加するQビット数、ますます複雑な最適化問題、及び/又はますます非線形制約を、ここで説明するアプローチによって考慮することができる。
【0097】
本明細書で説明するアプローチは、主に通信ネットワークに適用可能である。しかし、このアプローチは、鉄道ネットワーク、エネルギーグリッド、交通ネットワークなど、他の任意のネットワークにも適用でき、ここで、特定の「トラフィック」又は「負荷」が、最適化された経路を介してネットワーク全体に伝送されなくてはならない。
【0098】
本明細書に示され説明される実施形態は、例示にすぎない。
【符号の説明】
【0099】
1 通信ネットワーク
2、2a~2f 通信ノード
3、3a~3e 集約ノード
4 隣接するノード間の接続
5 トラフィック要求のセット
5a、5b トラフィック要求
6 量子コンセプトプロセッサ
7 トラフィック要求のサブセット
8 セグメントノードのサブセット
d、d1、d2 宛先ノード
e、e1、e2 エッジ
o、o1、o2 起点ノード
p、p1~p4 可能性がある通信経路
s セグメントノードのセット
s1、s2 セグメントノード
t1、t2、t21 二次応力関数の項
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
【国際調査報告】