(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】ウイルス性肺疾患を処置するためのプレリキサホルなどの化合物の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4709 20060101AFI20240415BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240415BHJP
A61K 31/395 20060101ALI20240415BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240415BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240415BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20240415BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
A61K31/4709
A61K45/00
A61K31/395
A61P11/00
A61P31/12
A61P31/16
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513556
(86)(22)【出願日】2022-05-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2022062227
(87)【国際公開番号】W WO2022234054
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522430947
【氏名又は名称】フォーリビング バイオテック
(71)【出願人】
【識別番号】516086358
【氏名又は名称】サントル ナショナル デ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】522430969
【氏名又は名称】インスティテュート パスツール デ リール
(71)【出願人】
【識別番号】522430970
【氏名又は名称】ユニバーシティ デ リール
(71)【出願人】
【識別番号】523416689
【氏名又は名称】センター ホスピタリエ ウニベルシテール デ リール
(71)【出願人】
【識別番号】521442659
【氏名又は名称】インスティテュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ ルシェルシュ メディカル
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ラテンバッハ,リヴァイタル
(72)【発明者】
【氏名】ビスマス,ケレン
(72)【発明者】
【氏名】ブレトン,ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】トロッテン,フランソア
(72)【発明者】
【氏名】センシオ,ヴァレンティン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA55
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA591
4C084ZB331
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA55
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB33
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、対象における、COVID-19とは異なるウイルス性肺疾患またはウイルス性肺疾患に起因する慢性呼吸窮迫症候群(CRDS)の処置に使用するための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩および/もしくは水和物であって、式(I)が、Z-R-A-R’-Yである化合物に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるCOVID-19とは異なるウイルス性肺疾患に起因する慢性呼吸窮迫症候群(CRDS)の処置に使用するための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩および/もしくは水和物であって、
ここで、式(I)は:
【化1】
である
(式中:
-ZおよびYは、同一であるかまたは異なり、以下を表し:
o1~6個の炭素原子を有するアルキル基であって、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、CN基、CF
3基、SO基、NO
2基、アミン基、ジフルオロ基または1~6個の炭素原子を有するアルキル基、S-アルキル基もしくはO-アルキル基で任意により置換されたアルキル基、または
o3~6個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基であって、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、CN基、CF
3基、SO基、NO
2基、アミン基、ジフルオロ基または1~6個の炭素原子を有するアルキル基、S-アルキル基もしくはO-アルキル基で任意により置換されたアリール基またはヘテロアリール基、または
o9~32個の環員を有し、互いに2個以上の炭素原子で隔てられた環に3~8個のアミン基を有する環式または複素環式ポリアミン基であって、任意により、3~6個の炭素原子、ヘテロ原子を有し、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ヘテロ原子、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、S-アルキル基もしくはO-アルキル基、または3~6個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基によって任意により置換されたアリール基またはヘテロアリール基を含む、環式または複素環式ポリアミン基、または
oD
1D
2N-基(式中、D
1およびD
2は、同一であるか異なっていてもよく、以下を表し:
・水素原子、または
・少なくとも1つのヒドロキシル基、ハロゲン原子、CF
3基、CN基、アミン基、または1~12個の炭素原子を有するアルキル基、O-アルキル基もしくはS-アルキル基によって任意により置換された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、
・少なくとも1つのヒドロキシル基、ハロゲン原子、CF
3基、CN基、アミン基、1~12個の炭素原子を有するアルキル基、O-アルキル基またはS-アルキル基によって任意により置換された3~12個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アルキルアリール基、アルキルヘテロアリール基またはアルキルヘテロポリアリール基、または
・D
1およびD
2は共に連結して、3~12個の炭素原子を有し、3~12個の炭素原子を有するアルキルヘテロアリール基によって任意により置換された少なくとも1つのアミン基によって任意により置換された窒素含有アリールまたはヘテロアリール基を形成し、ならびに
-Aは、以下を表す:
o3~12個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基、または
o1~6個の炭素原子を有するアルキル基、または
o-R
4-Y’-R
5-(式中、R
4およびR
5は、同一であるかまたは異なり、1~6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、Y’は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミド基、アミン基、アルコキシ基、エステル基、CF
3基、CN基、またはヒドロキシル基、アミン基または1~6個の炭素原子を有するO-アルキル基によって任意により置換された1~6個の炭素原子を有するアルキル基、O-アルキル基もしくはS-アルキル基によって任意により置換された3~6個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基を表し、ならびに
-RおよびR’は、同一であるかまたは異なり、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、またはR
1NR
2R
3基、または単結合を表し、ならびに
-R
1は、単結合または1~6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、ならびに
-R
2およびR
3は、同一であるかまたは異なり、水素原子、アミン基、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、または3~6個の炭素原子を有するアリール基もしくはヘテロアリール基を表し、ここで、3~6個の炭素原子を有するアリール基もしくはヘテロアリール基は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基によって任意により置換される)
式(I)の化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の使用のための化合物であって、式中、
-ZおよびYは、同一であるかまたは異なり、以下を表し:
o1~6個の炭素原子を有するアルキル基であって、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、CN基、CF
3基、SO基、NO
2基、アミン基、ジフルオロ基または1~6個の炭素原子を有するアルキル基、S-アルキル基もしくはO-アルキル基で任意により置換されたアルキル基、または
o3~6個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基であって、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、CN基、CF
3基、SO基、NO
2基、アミン基、ジフルオロ基または1~6個の炭素原子を有するアルキル基、S-アルキル基もしくはO-アルキル基で任意により置換されたアリール基またはヘテロアリール基、または
o9~32個の環員を有し、互いに2個以上の炭素原子で隔てられた環に3~8個のアミン基を有する環式または複素環式ポリアミン基であって、任意により、3~6個の炭素原子、ヘテロ原子を有し、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ヘテロ原子、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、S-アルキル基もしくはO-アルキル基、または3~6個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基によって任意により置換されたアリール基またはヘテロアリール基を含む、環式または複素環式ポリアミン基、ならびに
-Aは、3~12個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基を表し、ならびに
-RおよびR’は、同一であるかまたは異なり、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、またはR
1NR
2R
3基を表し、ならびに
-R
1は、単結合または1~6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、ならびに
-R
2およびR
3は、同一であるかまたは異なり、水素原子、アミン基、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、または3~6個の炭素原子を有するアリール基もしくはヘテロアリール基を表し、ここで、3~6個の炭素原子を有するアリール基もしくはヘテロアリール基は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基によって任意により置換される)
化合物。
【請求項3】
前記式(I)の化合物が、式(II)で表される、請求項1に記載の使用のための化合物:
【化2】
(式中:
-D
1およびD
2は、同一であっても異なっていてもよく、以下を表し:
o少なくとも1つのヒドロキシル基、ハロゲン原子、CF
3基、CN基、アミン基、または1~12個の炭素原子を有するアルキル基、O-アルキル基もしくはS-アルキル基によって任意により置換された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、
o少なくとも1つのヒドロキシル基、ハロゲン原子、CF
3基、CN基、アミン基、1~12個の炭素原子を有するアルキル基、O-アルキル基またはS-アルキル基によって任意により置換された3~12個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アルキルアリール基、アルキルヘテロアリール基またはアルキルヘテロポリアリール基、または
oD
1およびD
2は共に連結して、3~12個の炭素原子を有し、3~12個の炭素原子を有するアルキルヘテロアリール基によって任意により置換された少なくとも1つのアミン基によって任意により置換された窒素含有アリールまたはヘテロアリール基を形成し、
-Xは、以下を表す:
o1~6個の炭素原子を有するアルキル基、または
o-R
4-Y’-R
5-(式中、R
4およびR
5は、同一であるかまたは異なり、1~6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、Y’は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミド基、アミン基、アルコキシ基、エステル基、CF
3基、CN基、またはヒドロキシル基、アミン基または1~6個の炭素原子を有するO-アルキル基によって任意により置換された1~6個の炭素原子を有するアルキル基、O-アルキル基もしくはS-アルキル基によって任意により置換された3~6個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基を表す)。
【請求項4】
前記化合物が、1,1’-[1,4-フェニレン-ビス(メチレン)]-ビス-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカンである、請求項1または2に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための化合物であって、前記ウイルス性肺疾患が、インフルエンザウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、ライノウイルス、SARS-CoV2を除く重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)などのコロナウイルス、または中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、アデノウイルス、アルファウイルス、およびボカウイルスの中から選択されるウイルスによって引き起こされる、化合物。
【請求項6】
前記ウイルス性肺疾患が、インフルエンザ、細気管支炎、喉頭気管炎、肺疾患、熱帯呼吸器疾患、例えば、チクングンヤ熱、および肺炎の中から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
COVID-19とは異なるウイルス性肺疾患の処置において使用するための医薬組成物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物および薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの他の活性剤をさらに含む、請求項7に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項9】
前記他の活性剤が、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、セレコキシブ、ジクロフェナク、インドメタシン、オキサプロジン、およびピロキシカムなど、またはステロイド系抗炎症薬、例えば、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロンまたはプレドニゾロンを含む群から選択される抗炎症薬である、請求項8に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項10】
前記活性剤が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤およびLAG3阻害剤などの免疫チェックポイント阻害剤(ICI)を含む群から選択され、好ましくは、前記活性剤は、PD-1の阻害剤およびPD-L1の阻害剤である、請求項8または9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
治療有効量で投与される、請求項7~10のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項12】
請求項7~11のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物であって、静脈内、筋肉内、皮下または皮内経路を含む非経口経路によって投与される、医薬組成物。
【請求項13】
前記化合物が、プレリキサホルであり、プレリキサホルが、0.24mg/kg/日~1.44mg/kg/日の投与量で、少なくとも7日間、皮下経路を介して投与される、請求項7~12のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
前記化合物が、プレリキサホルであり、プレリキサホルが、10μg/kg/時間~80μg/kg/時間の投与量で、少なくとも7日間、連続して静脈内投与される、請求項7~13のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象における、COVID-19とは異なるウイルス性肺疾患を処置するための化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
肺疾患は、罹患率および死亡率の主な原因であり、その影響は今後増大することが予想される。呼吸器系ウイルスは、急性および慢性呼吸器感染症の最も一般的な原因であり、さらに呼吸器系ウイルスが慢性肺疾患の急性増悪の主因であることがますます認識されてきている。
【0003】
ウイルス感染は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を引き起こし得る。肺に影響を及ぼし、ARDSを引き起こし得る呼吸器系ウイルスの中で、パンデミックウイルスがリストの上位にあり、最近確認されたのはインフルエンザウイルスH5N1およびH1N12009である。しかし、他のウイルスも、重篤なARDSを引き起こし得る。これらのパンデミックウイルスを除き、呼吸器系ウイルスがウイルス性肺炎、細気管支炎、およびARDSの原因となることはほとんどない。
【0004】
慢性呼吸不全は、時間の経過とともに悪化する重篤な疾患であり、慢性呼吸窮迫症候群(CRDS)の形態になり得る。症状の重症度が増すことにより、心拍リズムの異常、呼吸停止が生じ得る、または昏睡状態になることがあり得る。
【0005】
既存の処置にもかかわらず、ウイルス性肺疾患、特に患者のARDSおよびCRDSの処置に対する有効な処置が依然として必要とされている。
【0006】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明による式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩および/もしくは水和物が、ウイルス性肺疾患、より具体的には急性または慢性呼吸窮迫症候群をもたらす疾患を処置できることを見出した。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明は、対象における、COVID-19とは異なるウイルス性肺疾患の処置に使用するための式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩および/もしくは水和物に関し、:
ここで、式(I)は:
【化1】
である
(式中:
-ZおよびYは、同一であるかまたは異なり、以下を表し:
o1~6個の炭素原子を有するアルキル基であって、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、CN基、CF
3基、SO基、NO
2基、アミン基、ジフルオロ基または1~6個の炭素原子を有するアルキル基、S-アルキル基もしくはO-アルキル基で任意により置換されたアルキル基、または
o3~6個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基であって、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、CN基、CF
3基、SO基、NO
2基、アミン基、ジフルオロ基または1~6個の炭素原子を有するアルキル基、S-アルキル基もしくはO-アルキル基で任意により置換されたアリール基またはヘテロアリール基、または
o9~32個の環員を有し、互いに2個以上の炭素原子で隔てられた環に3~8個のアミン基を有する環式または複素環式ポリアミン基であって、任意により、3~6個の炭素原子、ヘテロ原子を有し、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ヘテロ原子、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、S-アルキル基もしくはO-アルキル基、または3~6個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基によって任意により置換されたアリール基またはヘテロアリール基を含む、環式または複素環式ポリアミン基、または
oD
1D
2N-基(式中、D
1およびD
2は、同一であるか異なっていてもよく、以下を表し:
・水素原子、または
・少なくとも1つのヒドロキシル基、ハロゲン原子、CF
3基、CN基、アミン基、または1~12個の炭素原子を有するアルキル、O-アルキルもしくはS-アルキル基によって任意により置換された1~6個の炭素原子を有するアルキル基、
・少なくとも1つのヒドロキシル基、ハロゲン原子、CF
3基、CN基、アミン基、1~12個の炭素原子を有するアルキル、O-アルキル基もしくはS-アルキル基によって任意により置換された3~12個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アルキルアリール基、アルキルヘテロアリール基またはアルキルヘテロポリアリール基、または
・D
1およびD
2は共に連結して、3~12個の炭素原子を有し、3~12個の炭素原子を有するアルキルヘテロアリール基によって任意により置換された少なくとも1つのアミン基によって任意により置換された窒素含有アリールまたはヘテロアリール基を形成し、ならびに
-Aは、以下を表し:
o3~12個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基、または
o1~6個の炭素原子を有するアルキル基、または
o-R
4-Y’-R
5-(式中、R
4およびR
5は、同一であるかまたは異なり、1~6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、Y’は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミド基、アミン基、アルコキシ基、エステル基、CF
3基、CN基、またはヒドロキシル基、アミン基もしくは1~6個の炭素原子を有するO-アルキル基によって任意により置換された1~6個の炭素原子を有するアルキル基、O-アルキル基もしくはS-アルキル基によって任意により置換された3~6個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基を表し、ならびに
-RおよびR’は、同一であるかまたは異なり、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、またはR
1NR
2R
3基、または単結合を表し、ならびに
-R
1は、単結合または1~6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、ならびに
-R
2およびR
3は、同一であるかまたは異なり、水素原子、アミン基、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、または3~6個の炭素原子を有するアリール基もしくはヘテロアリール基を表し、ここで、3~6個の炭素原子を有する前記アリール基もしくはヘテロアリール基は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基によって任意により置換される)。
【0008】
より特定の態様では、本発明は、以下の化合物に関する:
-ZおよびYは、同一であるかまたは異なり、以下を表し:
o1~6個の炭素原子を有するアルキル基であって、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、CN基、CF3基、SO基、NO2基、アミン基、ジフルオロ基または1~6個の炭素原子を有するアルキル基、S-アルキル基もしくはO-アルキル基で任意により置換されたアルキル基、または
o3~6個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基であって、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、CN基、CF3基、SO基、NO2基、アミン基、ジフルオロ基または1~6個の炭素原子を有するアルキル基、S-アルキル基もしくはO-アルキル基で任意により置換されたアリール基またはヘテロアリール基、または
o9~32個の環員を有し、互いに2個以上の炭素原子で隔てられた環に3~8個のアミン基を有する環式または複素環式ポリアミン基であって、任意により、3~6個の炭素原子、ヘテロ原子を有し、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ヘテロ原子、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、S-アルキル基もしくはO-アルキル基、または3~6個の炭素原子を有するアリール基もしくはヘテロアリール基によって任意により置換された、環式または複素環式ポリアミン基、ならびに
-Aは、3~12個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基を表し、ならびに
-RおよびR’は、同一であるかまたは異なり、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、またはR1NR2R3基を表し、ならびに
-R1は、単結合または1~6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、ならびに
-R2およびR3は、同一であるかまたは異なり、水素原子、アミン基、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、または3~6個の炭素原子を有するアリール基もしくはヘテロアリール基を表し、ここで、3~6個の炭素原子を有するアリール基もしくはヘテロアリール基は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基によって任意により置換される。
【0009】
さらなる態様によれば、本発明は、上記の使用のための化合物に関し、前記式(I)の化合物は、式(II):
【化2】
によって表される
(式中:
-D
1およびD
2は、同一であっても異なっていてもよく、以下を表す:
o少なくとも1つのヒドロキシル基、ハロゲン原子、CF
3基、CN基、アミン基、または1~12個の炭素原子を有するアルキル基、O-アルキル基もしくはS-アルキル基によって任意により置換された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、
o少なくとも1つのヒドロキシル基、ハロゲン原子、CF
3基、CN基、アミン基、1~12個の炭素原子を有するアルキル基、O-アルキル基またはS-アルキル基によって任意により置換された3~12個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アルキルアリール基、アルキルヘテロアリール基またはアルキルヘテロポリアリール基、または
oD
1およびD
2は共に連結して、3~12個の炭素原子を有し、3~12個の炭素原子を有するアルキルヘテロアリール基によって任意により置換された少なくとも1つのアミン基によって任意により置換された窒素含有アリールまたはヘテロアリール基を形成し、ならびに
-Xは、以下を表す:
o1~6個の炭素原子を有するアルキル基、または
oR
4-Y’-R
5-(式中、R
4およびR
5は、同一であるかまたは異なり、1~6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、Y’は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミド基、アミン基、アルコキシ基、エステル基、CF
3基、CN基、またはヒドロキシル基、アミン基または1~6個の炭素原子を有するO-アルキル基によって任意により置換された1~6個の炭素原子を有するアルキル基、O-アルキル基もしくはS-アルキル基によって任意により置換された3~6個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基を表す)。
【0010】
さらにより特定の態様では、本発明は、対象におけるウイルス性肺疾患の処置に使用するための化合物であって、1,1’-[1,4-フェニレン-ビス(メチレン)]-ビス-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカンである化合物に関する。
【0011】
本発明のさらなる態様において、化合物は、対象におけるウイルス性肺疾患の処置に使用するためのものであり、ウイルス性肺疾患は、急性および/または慢性呼吸窮迫症候群をもたらす。
【0012】
なおさらなる態様では、本発明の化合物は、対象におけるウイルス性肺疾患の処置に使用するためのものであり、ウイルス性肺疾患は、インフルエンザウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、ライノウイルス、SARS-CoV2を除く重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)などのコロナウイルス、または中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、アデノウイルス、アルファウイルス、およびボカウイルスの中から選択されるウイルスによって引き起こされる。
【0013】
なおさらなる態様では、本発明の化合物は、対象におけるウイルス性肺疾患の処置に使用するためのものであり、ウイルス性肺疾患は、インフルエンザ、細気管支炎、喉頭気管炎、肺疾患、熱帯呼吸器疾患(例えば、チクングンヤ熱)、および肺炎の中から選択される。
【0014】
本発明はまた、COVID-19とは異なるウイルス性肺疾患の処置において使用するための医薬組成物であって、上記の化合物および薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物にも関する。
【0015】
より特定の態様では、上記のように使用するための医薬組成物は、少なくとも1つの他の活性剤をさらに含む。
【0016】
本発明のさらにより特定の態様では、本発明の医薬組成物の他の活性剤は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、セレコキシブ、ジクロフェナク、インドメタシン、オキサプロジン、およびピロキシカムなど、またはステロイド系抗炎症薬、例えば、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロンまたはプレドニゾロンを含む群から選択される抗炎症薬である。
【0017】
本発明のさらにより特定の態様では、本発明の医薬組成物の他の活性剤は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤などの免疫チェックポイント阻害剤(ICI)、CTLA-4阻害剤およびLAG3阻害剤を含む群から選択され、好ましくは、活性剤は、PD-1阻害剤およびPD-L1阻害剤である。
【0018】
本発明の特定の態様では、医薬組成物は、治療有効量で投与される。
【0019】
さらなる態様では、本発明の医薬組成物は、静脈内、筋肉内、皮下または皮内経路を含む非経口経路を介して投与される。
【0020】
さらなる態様では、本発明の医薬組成物の化合物は、プレリキサホルであり、プレリキサホルは、0.24mg/kg/日~1.44mg/kg/日の投与量で、少なくとも7日間、皮下経路を介して投与される。
【0021】
さらなる態様では、本発明の医薬組成物の化合物は、プレリキサホルであり、プレリキサホルは、10μg/kg/時間~80μg/kg/時間の投与量で、少なくとも7日間、連続して静脈内投与される。
【0022】
定義
本発明において、以下の用語は、以下の意味を有する:
【0023】
本発明の意味の範囲内で、「a」または「an」は、冠詞の文法的対象の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0024】
本発明の意味では、「約」は、本明細書では、ほぼ、大まかに、その周辺、またはその領域内を意味するために使用される。「約」という用語が数値範囲と併せて使用される場合、記載された数値の上および下の境界を拡張することによってその範囲を変更する。
【0025】
「アルキル」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、直鎖、分岐鎖、または環状の飽和ヒドロカルビル基を指す。典型的に、アルキル基は、1~12個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子、より好ましくは1~3個の炭素原子、さらに好ましくは1~2個の炭素原子を含む。アルキル基は、直鎖状または分枝鎖状であってもよく、本明細書に示すとおり置換されていてもよい。アルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチルおよびt-ブチル、ペンチルおよびその異性体(例えば、n-ペンチル、イソペンチル)、ならびにヘキシルおよびその異性体(例えば、n-ヘキシル、イソ-ヘキシル)が挙げられる。好ましいアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチルおよびt-ブチルが挙げられる。「ヘテロアルキル」、特に「ヘテロシクロアルキル」は、好ましくはO、P、N、SおよびSiからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含むアルキル、特にシクロアルキル基を指し、より好ましくはNである。「アルキルアリール」とは、少なくとも1つのアルキル基によって置換されたアリール基を指す。「アルコキシ」とは、O-アルキルを指す。
【0026】
「アミン」とは、-NH2基を指す。いくつかの実施形態では、アミン基は、置換されていてもよく、それにより第二級または第三級アミン基を提供する。
【0027】
「アリール」とは、少なくとも1つの芳香環を含む環状多価不飽和芳香族ヒドロカルビル基を指す。アリール基は、1つの環(すなわち、フェニル)を有してもよく、または共に縮合したまたは共有結合により連結した複数の芳香環(例えば、ナフチル)を有してもよい。典型的には、アリール基は、5~12個の炭素原子、好ましくは6~10個の炭素原子を有する。「ヘテロアリール」は、好ましくはO、P、N、SおよびSiからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むアリール基を指し、より好ましくはNである。「アリールアルキル」とは、少なくとも1つのアリール基によって置換されたアルキル基を指す。
【0028】
「少なくとも1つ」とは、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上を指す。
【0029】
「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを指す。好ましいハロゲン基としては、フルオロおよびクロロが挙げられる。
【0030】
「化合物の水和物」とは、化合物と1つ以上の薬学的に許容される溶媒分子とを含む分子複合体を指し、ここで、溶媒は、水である。
【0031】
「プレリキサホル(Plerixafor)(登録商標)」または「プレリキサホル(plerixafor)」は、化学名が1,1’-[1,4-フェニレン-ビス(メチレン)]-ビス-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカンであるビシクラム誘導体を指す。プレリキサホルはAMD3100という名前でも呼ばれており、そのCAS参照番号は110078-46-1である。
【0032】
「化合物の塩」とは、その化合物の酸付加塩または塩基塩を指す。好適な酸付加塩は、非毒性の塩を形成する酸から形成される。例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カムシル酸塩、クエン酸塩、サイクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2-ナプシラート、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸塩、糖酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、およびキシナホ酸塩が挙げられる。好適な塩基性塩としては、非毒性塩を形成する塩基から形成される。例としては、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、2-(ジエチルアミノ)エタノール、ジオラミン、エタノールアミン、グリシン、4-(2-ヒドロキシエチル)-モルホリン、リジン、マグネシウム、メグルミン、モルホリン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミンおよび亜鉛の塩が挙げられる。一実施形態では、塩は、臭化水素酸塩、塩酸塩、二臭化水素酸塩、二塩酸塩、亜鉛および銅の塩からなる群から選択される。
【0033】
本発明の意味の範囲内で、「対象」とは、本発明の組成物を投与される動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。本発明の意味において、対象は、患者、すなわち、医学的配慮を受けているヒト、医療を受けているヒトもしくは受けたヒト、または疾患の発症をモニターされているヒトであり得る。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、ウイルス性肺疾患の処置に使用するための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩および/もしくは水和物に関する。
【0035】
本発明によれば、ウイルス性肺疾患は、COVID-19とは異なる。
【0036】
式(I)は、
【化3】
である
(式中:
-ZおよびYは、同一であるかまたは異なり、以下を表す:
o1~6個の炭素原子を有するアルキル基であって、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、CN基、CF
3基、SO基、NO
2基、アミン基、ジフルオロ基、または1~6個の炭素原子を有するアルキル基、S-アルキル基もしくはO-アルキル基で任意により置換されたアルキル基、または
o3~6個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基であって、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、CN基、CF
3基、SO基、NO
2基、アミン基、ジフルオロ基、または1~6個の炭素原子を有するアルキル基、S-アルキル基もしくはO-アルキル基で任意により置換されたアリール基またはヘテロアリール基、または
o9~32個の環員を有し、互いに2個以上の炭素原子で隔てられた環に3~8個のアミン基を有する環式または複素環式ポリアミン基であって、任意により、3~6個の炭素原子、ヘテロ原子を有し、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ヘテロ原子、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、S-アルキル基もしくはO-アルキル基、または3~6個の炭素原子を有するアリール基もしくはヘテロアリール基によって任意により置換されたアリール基またはヘテロアリール基を含む、環式または複素環式ポリアミン基、または
oD
1D
2N-基(式中、D
1およびD
2は、同一であるか異なっていてもよく、以下を表し:
・水素原子、または
・少なくとも1つのヒドロキシル基、ハロゲン原子、CF
3基、CN基、アミン基、または1~12個の炭素原子を有するアルキル基、O-アルキル基もしくはS-アルキル基によって任意により置換された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、
・少なくとも1つのヒドロキシル基、ハロゲン原子、CF
3基、CN基、アミン基、1~12個の炭素原子を有するアルキル基、O-アルキル基またはS-アルキル基によって任意により置換された3~12個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アルキルアリール基、アルキルヘテロアリール基またはアルキルヘテロポリアリール基、または
・D
1およびD
2は共に連結して、3~12個の炭素原子を有し、3~12個の炭素原子を有するアルキルヘテロアリール基によって任意により置換された少なくとも1つのアミン基によって任意により置換された窒素含有アリールまたはヘテロアリール基を形成し、ならびに
-Aは、以下を表し:
o3~12個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基、または
o1~6個の炭素原子を有するアルキル基、または
o-R
4-Y’-R
5-(式中、R
4およびR
5は、同一であるかまたは異なり、1~6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、Y’は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミド基、アミン基、アルコキシ基、エステル基、CF
3基、CN基、またはヒドロキシル基、アミン基または1~6個の炭素原子を有するO-アルキル基によって任意により置換された1~6個の炭素原子を有するアルキル基、O-アルキル基もしくはS-アルキル基によって任意により置換された3~6個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基を表し、ならびに
-RおよびR’は、同一であるかまたは異なり、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、またはR
1NR
2R
3基、または単結合を表し、ならびに
-R
1は、単結合または1~6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、ならびに
-R
2およびR
3は、同一であるかまたは異なり、水素原子、アミン基、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、または3~6個の炭素原子を有するアリール基もしくはヘテロアリール基を表し、ここで、3~6個の炭素原子を有するアリール基もしくはヘテロアリール基は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基によって任意により置換される)。
【0037】
一実施形態では、式(I)は:
【化4】
である
(式中:
-ZおよびYは、同一であるかまたは異なり、以下を表す:
o1~6個の炭素原子を有するアルキル基であって、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、CN基、CF
3基、SO基、NO
2基、アミン基、ジフルオロ基または1~6個の炭素原子を有するアルキル基、S-アルキル基もしくはO-アルキル基で任意により置換されたアルキル基、または
o3~6個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基であって、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、CN基、CF
3基、SO基、NO
2基、アミン基、ジフルオロ基または1~6個の炭素原子を有するアルキル基、S-アルキル基もしくはO-アルキル基で任意により置換されたアリール基またはヘテロアリール基、または
o9~32個の環員を有し、互いに2個以上の炭素原子で隔てられた環に3~8個のアミン基を有する環式または複素環式ポリアミン基であって、任意により、3~6個の炭素原子、ヘテロ原子を有し、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ヘテロ原子、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、S-アルキル基もしくはO-アルキル基、または3~6個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基によって任意により置換されたアリール基またはヘテロアリール基を含む、環式または複素環式ポリアミン基、ならびに
-Aは、3~12個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基を表し、ならびに
-RおよびR’は、同一であるかまたは異なり、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、またはR
1NR
2R
3基を表し、ならびに
-R
1は、単結合または1~6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、ならびに
-R
2およびR
3は、同一であるかまたは異なり、水素原子、アミン基、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、または3~6個の炭素原子を有するアリール基もしくはヘテロアリール基を表し、ここで、3~6個の炭素原子を有するアリール基もしくはヘテロアリール基は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基によって任意により置換される)。
【0038】
一実施形態では、化合物は、式(I)の化合物であり、式中、
-ZおよびYは、同一であり、9~20個の環員を有し、互いに2個以上の炭素原子で隔てられている環に3~6個のアミン基を有する環状ポリアミン部分を表し、ならびに
-Aは、3~8個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基を表し、ならびに
-RおよびR’は、同一であるかまたは異なり、ZまたはYの窒素原子に連結したメチレンを表し、ここで、窒素原子は、置換されていない。
【0039】
一実施形態では、Zおよび/またはYは、9~32個の環員を含有し、そのうち3~8個が、窒素原子であり、前記窒素原子が、少なくとも2個の炭素原子によって互いに分離されている環状ポリアミンである。上記環状ポリアミンは、10~20個の環員、好ましくは14または16個の環員、より好ましくは14個の環員を含有し得る。上記環状ポリアミンは、3~6個の窒素原子、好ましくは4または5個の窒素原子、より好ましくは5個の窒素原子を含み得る。上記窒素原子は、少なくとも2個の炭素原子、特に2または3個の炭素原子によって互いに分離されていてもよい。前記環状ポリアミンは、窒素以外の追加のヘテロ原子、特に酸素または硫黄を含有してもよく、および/または追加の環系、特にピリジンに縮合してもよい。
【0040】
特に、Aは、フェニレン、ピリジン、チオフェン、ピラジンおよびイミダゾールからなる群から選択され得る。
【0041】
一実施形態では、式(I)の化合物は、以下の構造によって表される化合物からなる群から選択される:
【化5】
【0042】
好ましい一実施形態では、式(I)の化合物は、1,1'-[1,4-フェニレン-ビス(メチレン)]-ビス-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン(プレリキサホルまたはAMD3100とも呼ばれる)である。
【0043】
一実施形態では、式(I)の化合物は、以下の式(II)によって表される:
【化6】
(式中:
-D
1およびD
2は、同一であっても異なっていてもよく、以下を表し:
o少なくとも1つのヒドロキシル基、ハロゲン原子、CF
3基、CN基、アミン基、または1~12個の炭素原子を有するアルキル基、O-アルキル基もしくはS-アルキル基によって任意により置換された、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、
o少なくとも1つのヒドロキシル基、ハロゲン原子、CF
3基、CN基、アミン基、1~12個の炭素原子を有するアルキル基、O-アルキル基またはS-アルキル基によって任意により置換された3~12個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アルキルアリール基、アルキルヘテロアリール基またはアルキルヘテロポリアリール基、または
oD
1およびD
2は共に連結して、3~12個の炭素原子を有し、3~12個の炭素原子を有するアルキルヘテロアリール基によって任意により置換された少なくとも1つのアミン基によって任意により置換された窒素含有アリールまたはヘテロアリール基を形成し、ならびに
-Xは、以下を表す:
o1~6個の炭素原子を有するアルキル基、または
o-R
4-Y’-R
5-(式中、R
4およびR
5は、同一であるかまたは異なり、1~6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、Y’は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミド基、アミン基、アルコキシ基、エステル基、CF
3基、CN基、またはヒドロキシル基、アミン基または1~6個の炭素原子を有するO-アルキル基によって任意により置換された1~6個の炭素原子を有するアルキル基、O-アルキル基もしくはS-アルキル基によって任意により置換された3~6個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基を表す)。
【0044】
一実施形態では、Y’は、フェニレン、ピリジンおよびチオフェンからなる群から選択される。
【0045】
一実施形態では、式(I)の化合物は、上記の式(II)によって表される、式中、
-D1およびD2は、同一であっても異なっていてもよく、ヒドロキシル基または1~6個の炭素原子を有するアルキル基によって任意により置換された、3~12個の炭素原子を有するアリール基またはヘテロアリール基を表し、ならびに
-Xは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基を表す。
【0046】
特に、D1は、少なくとも1つの窒素原子を含む単環式または二環式縮合環系、例えば5,6,7,8-テトラヒドロキノリンであってもよい。
【0047】
特に、D2は、N、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する、単環式または縮合二環式の非置換または置換環系であり得る。D2は、置換または非置換のジヒドロキノリン、テトラヒドロキノリン、ピラノピリジン、ジヒドロピラノピリジン、チアピラノピリジン、ジヒドロチアピラノピリジン、ジヒドロナフチリジン、テトラヒドロナフチリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、およびベンゾオキサゾールからなる群から選択され得る。
【0048】
一実施形態では、式(I)の化合物は、以下の式(III)によって表される:
【化7】
式中:
-E
1は、1~12個の炭素原子を有するアルキル基、または3~12個の炭素原子を有するヘテロアリール基を表し、
-E
2は、1~12個の炭素原子を有し、アミン基によって置換されたヘテロアルキル基を表し、
-E
3は、1~12個の炭素原子を有するヘテロアルキル基を表す。
【0049】
一実施形態では、式(I)の化合物は、以下の構造によって表される化合物からなる群から選択される:
【化8】
【0050】
例えば、式(I)の化合物は、N’-(1H-ベンゾイミダゾール-2-イルメチル)-N’-[(8S)-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-8-イル]ブタン-1,4-ジアミン(AMD070またはマボリキサホルとも呼ばれる)であってもよい。
【0051】
一実施形態では、本発明に従って使用するための化合物は、以下からなる群から選択される:インドール系化合物、N-置換インドール化合物、ビシクラム化合物、シクラム模倣化合物、シクラム模倣化合物、パラキシリレンジアミン系化合物、グアニジン系化合物、テトラヒドロキノリン系化合物、および1,4-フェニレンビス(メチレン)化合物。
【0052】
好ましい実施形態によれば、本発明に従って使用するための化合物は、プレリキサホル(AMD3100)、ブリキサホル(TG-0054)、JM1657、AMD3329、AMD3465、マボリキサホル(AMD070)、MSX-122、CTCE-9908、WZ811、BKT-140からなる群から選択される。
【0053】
特に好ましい実施形態では、本発明に従って使用するための化合物は、1,1’-[1,4-フェニレン-ビス(メチレン)]-ビス-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカンであり、プレリキサホルまたはAMD3100とも称される。
【0054】
本明細書の意味において、「処置すること(treating)」または「処置(treatment)」または「緩和」という用語は、治療的処置および予防的方策または防止的方策の両方を指し、目的は、標的となる病的状態または障害を防止するかまたは遅らせる(弱める)ことである。処置を必要とする対象は、すでに障害を有している対象のみならず、障害を起こしやすい対象または障害を防止すべき対象も含む。本発明の方法に従って治療量の化合物を投与された後、患者が、病原性細胞の数の減少;全病原性である総細胞のパーセントの低下;ならびに/または特定の疾患もしくは状態に関連する症状のうちの1つ以上のある程度の緩和;罹患率および死亡率の低下、および生活の質の問題の改善のうちの1つ以上の観察可能および/または測定可能な減少、または非存在を示す場合、対象または哺乳動物は、感染症に対する「処置」が奏効している。処置の奏功および疾患の改善を判定するための上記のパラメータは、医師が精通しているルーチン手順によって容易に測定可能である。
【0055】
さらなる実施形態では、本発明の化合物は、急性および/または慢性呼吸窮迫症候群をもたらすウイルス性肺疾患の処置に使用するためのものである。
【0056】
特に好ましい実施形態では、本発明の化合物は、ウイルス性肺疾患に起因する慢性呼吸不全の処置に使用するためのものである。
【0057】
別の特に好ましい実施形態では、本発明の化合物は、ウイルス性肺疾患に起因する慢性呼吸窮迫症候群(CRDS)の処置に使用するためのものである。
【0058】
本発明の意味の範囲内では、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、びまん性肺胞損傷の一種である急性肺損傷(ALI)の最も重篤な形態として認識される。American-European Consensus Conference(AECC)は、ARDSを、心原性肺水腫のエビデンスが存在しない、両側肺浸潤および重度の低酸素血症を特徴とする急性状態と定義した。
【0059】
しかし、ウイルス性肺疾患に起因する慢性呼吸不全は、進行中の状態である。これは、時間の経過とともに徐々に進行するため、長期間の処置を必要とする。慢性呼吸不全は、通常、肺に空気を運ぶ気道が狭窄し、損傷を受けたときに生じる。慢性呼吸不全は、低酸素血性呼吸不全または高炭酸ガス性呼吸不全としても分類することができる。血中酸素レベルが低いことにより、低酸素血性呼吸不全が引き起こされる。二酸化炭素レベルが高いことにより、高炭酸ガス性呼吸不全が引き起こされる。本発明の特定の実施形態では、慢性呼吸不全は、慢性呼吸窮迫症候群である。
【0060】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、インフルエンザウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、ライノウイルス、SARS-CoV2を除く重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)などのコロナウイルス、または中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、アデノウイルス、アルファウイルス、およびボカウイルスによって引き起こされるウイルス性肺疾患の処置に使用するためのものである。
【0061】
さらなる実施形態では、本発明の化合物は、インフルエンザ、細気管支炎、喉頭気管炎、肺疾患、熱帯呼吸器疾患(例えば、チクングンヤ熱チクングンヤ熱など)、および肺炎の中から選択されるウイルス性肺疾患の処置に使用するためのものである。
【0062】
本発明はまた、上記のウイルス性肺疾患の処置のための医薬品の製造のための、上記の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩および/もしくは水和物の使用にも関する。
【0063】
本発明はまた、上記のウイルス性肺疾患の処置のための、上記の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩および/もしくは水和物の使用にも関する。
【0064】
本発明はまた、それを必要とする対象に本発明の式(I)の化合物の処置有効量を投与することを含む、上記のウイルス性肺疾患の処置方法に関する。
【0065】
特定の実施形態では、本発明は、ウイルス性肺(lung)(肺(pulmonary))疾患の処置に使用するための医薬組成物に関し、上記疾患は、COVID-19とは異なり、上記医薬組成物は、上記の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩および/もしくは水和物、および薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0066】
本発明の意味の範囲内で、「医薬組成物」という表現は、薬学的に許容されるビヒクルまたは賦形剤と組み合わされた有効成分を含む組成物を指す。医薬組成物は、治療的使用のためのものであり、健康に関する。特に、医薬組成物は、疾患の処置または予防に適応され得る。
【0067】
本発明の意味の範囲内で、「薬学的に許容される賦形剤」という表現は、薬学的に活性な剤が、製剤化されるおよび/または投与される溶媒または希釈剤として使用され、動物、好ましくはヒトに投与された場合に有害な反応、アレルギー反応、または他の反応を引き起こさない不活性ビヒクルまたは担体を指す。賦形剤としては、すべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。ヒトに投与する場合、調製物は、FDAまたはEMAなどの規制当局によって要求される滅菌性、一般的な安全性、および純度の基準を満たす必要がある。
【0068】
本発明のさらなる実施形態では、医薬組成物は、治療有効量で投与される。
【0069】
本発明の意味において、「治療有効量」という表現は、対象に顕著な負のまたは有害な副作用を引き起こすことなく、(1)疾患、障害または状態の発症を遅らせるまたは防止する;(2)疾患、障害、または状態の1つ以上の症状の進行、増悪、または悪化を遅らせる、または停止させる;(3)疾患、障害、または状態の症状の改善をもたらす;(4)疾患、障害、もしくは状態の重症度もしくは発生率を低下させる;または(5)疾患、障害、もしくは状態を治癒する;ことを目的とした、化合物のレベルまたは量を意味する。治療有効量は、予防的または防止的作用のために、疾患、障害または状態の発症の前に投与され得る。あるいはまたはさらに、治療有効量は、治療作用のために、疾患、障害または状態の開始後に投与され得る。
【0070】
本発明の意味の範囲内で、用語「投与」またはその変形形態(例えば「投与する」)は、活性剤または活性成分を、単独で、または薬学的に許容される組成物の一部として、状態、症状、または疾患を、処置または予防すべき対象に提供することを意味する。
【0071】
本発明のさらなる実施形態では、医薬組成物は、静脈内、筋肉内、皮下または皮内経路を含む非経口経路を介して投与される。
【0072】
本発明のさらなる実施形態では、本発明の医薬組成物は、注射されるものとする。本発明の意味の範囲内で、「注射可能な組成物」という表現は、限定的ではないが、例えば皮内、皮下、筋肉内、静脈内、または硬膜外投与経路によって、ヒトなどの動物、身体またはその一部に導入するのに好適な組成物を意味する。これは、無菌的である。
【0073】
本発明のより特定の実施形態では、医薬組成物は、プレリキサホルを含む。
【0074】
本発明のなおさらなる特定の態様では、プレリキサホルを含む医薬組成物は、0.20mg/kg/日~1.50mg/kg/日、好ましくは0.24mg/kg/日~1.44mg/kg/日の用量で、皮下経路を介して投与される。
【0075】
本発明のなおさらなる特定の態様では、プレリキサホルを含む医薬組成物は、10μg/kg/時間~80μg/kg/時間の投与量で、好ましくは連続的に静脈内投与される。
【0076】
本発明のなおさらなる特定の態様では、プレリキサホルを含む医薬組成物は、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日または10日の間、好ましくは7日間投与される。
【0077】
本発明のなおさらなる特定の態様では、プレリキサホルを含む医薬組成物は、少なくとも1回/日、少なくとも2回/日、少なくとも3回/日、少なくとも4回/日、少なくとも5回/日投与される。好ましくは、プレリキサホルを含む医薬組成物は、例えば朝に1回、晩に1回など、1日2回投与される。
【0078】
本発明のなおさらなる特定の態様では、プレリキサホルを含む医薬組成物は、0.24mg/kg/日~1.44mg/kg/日の投与量で7日間、皮下経路を介して投与される。
【0079】
本発明のなおさらなる特定の態様では、プレリキサホルを含む医薬組成物は、10μg/kg/時間~80μg/kg/時間の投与量で7日間連続的に静脈内投与される。
【0080】
さらなる実施形態では、本発明は、上記の化合物を含み、かつ活性剤をさらに含む医薬組成物に関する。
【0081】
本発明の意味によれば、前記のさらなる活性剤は、本発明の化合物とは異なる。
【0082】
本発明の特定の態様によれば、活性剤は、アスピリン、ナプロキセン、セレコキシブ、ジフルニサル、エトドラク、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、ナブメトン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサルテ、スリンダク、トルメチンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を含む群から選択される抗炎症薬である。
【0083】
本発明の特定の態様によれば、活性剤は、ベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロンアセトニド、メチルプレドニゾロン、またはプレドニゾロンなどのステロイド系抗炎症薬を含む群から選択される抗炎症薬である。
【0084】
本発明の特定の態様によれば、活性剤は、酸素である。
【0085】
さらなる実施形態では、本発明は、PD-1の阻害剤、PD-L1の阻害剤、CTLA-4の阻害剤およびLAG3の阻害剤などの免疫チェックポイント阻害剤(ICI)を含む群から選択される活性剤をさらに含む医薬組成物に関する。
【0086】
さらなる実施形態では、本発明は、PD-1の阻害剤およびPD-L1の阻害剤である活性剤をさらに含む医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【
図1A-1C】ヘマトキシリン&エオシン(H&E)で染色し、非感染マウスのナノズーマー(Sciempath laboratory,Hamamatsu)を使用してデジタル化したマウス、すなわち群1M(
図1A)、インフルエンザ感染マウス、すなわち群2M(
図1B)、およびプレリキサホル(20mg/kg)による処置を受けたインフルエンザ感染マウス、すなわち群6M(
図1C)の肺葉切片を示す写真である。
【
図2】MeyerholzおよびBeckによる、非感染マウス(1M-非感染)、感染マウス(2M-インフルエンザ)、プレリキサホル2.5mg/kgで処置した感染マウス(3M-インフルエンザ+プレリキサホル2.5mg/kg)、プレリキサホル5mg/kgで処置した感染マウス(4M-インフルエンザ+プレリキサホル5mg/kg)、プレリキサホル10mg/kgで処置した感染マウス(5M-インフルエンザ+プレリキサホル10mg/kg)、プレリキサホル20mg/kgで処置した感染マウス(6M-インフルエンザ+プレリキサホル20mg/kg)の合計スコア(平均±SEM;n=10(または非感染ビヒクル群については6)
***p<0.001群2Mと比較)を示すグラフである。このスコアでは、9つのパラメータ;細胞死/壊死、肺胞および/または血管周囲浮腫、ヒアリン膜またはフィブリン、うっ血、炎症、血栓、出血、II型過形成、合胞体を考慮する。
【
図3】非感染マウス(1M-非感染)、感染マウス(2M-インフルエンザ)、プレリキサホル2.5mg/kgで処置した感染マウス(3M-インフルエンザ+プレリキサホル2.5mg/kg)、プレリキサホル5mg/kgで処置した感染マウス(4M-インフルエンザ+プレリキサホル5mg/kg)、プレリキサホル10mg/kgで処置した感染マウス(5M-インフルエンザ+プレリキサホル10mg/kg)、プレリキサホル20mg/kgで処置した感染マウス(6M-インフルエンザ+プレリキサホル20mg/kg)の壊死細胞死スコア(平均±SEM;n=10(または非感染ビヒクル群については6)
*p<0.05、群2Mと比較)を表す。
【
図4】非感染マウス(1M-非感染)、感染マウス(2M-インフルエンザ)、プレリキサホル2.5mg/kgで処置した感染マウス(3M-インフルエンザ+プレリキサホル2.5mg/kg)、プレリキサホル5mg/kgで処置した感染マウス(4M-インフルエンザ+プレリキサホル5mg/kg)、プレリキサホル10mg/kgで処置した感染マウス(5M-インフルエンザ+プレリキサホル10mg/kg)、プレリキサホル20mg/kgで処置した感染マウス(6M-インフルエンザ+プレリキサホル20mg/kg)のヒアリン膜およびうっ血スコア(平均±SEM;n=10(または非感染ビヒクル群については6)
**p<0.01、群2Mと比較)を表す。
【
図5】非感染マウス(1M-非感染)、感染マウス(2M-インフルエンザ)、プレリキサホル2.5mg/kgで処置した感染マウス(3M-インフルエンザ+プレリキサホル2.5mg/kg)、プレリキサホル5mg/kgで処置した感染マウス(4M-インフルエンザ+プレリキサホル5mg/kg)、プレリキサホル10mg/kgで処置した感染マウス(5M-インフルエンザ+プレリキサホル10mg/kg)、プレリキサホル20mg/kgで処置した感染マウス(6M-インフルエンザ+プレリキサホル20mg/kg)の炎症スコア(平均±SEM;n=10(または非感染ビヒクル群については6)
***p<0.001、群2Mと比較)を表す。
【
図6】非感染マウス(1M-非感染)、感染マウス(2M-インフルエンザ)、プレリキサホル2.5mg/kgで処置した感染マウス(3M-インフルエンザ+プレリキサホル2.5mg/kg)、プレリキサホル5mg/kgで処置した感染マウス(4M-インフルエンザ+プレリキサホル5mg/kg)、プレリキサホル10mg/kgで処置した感染マウス(5M-インフルエンザ+プレリキサホル10mg/kg)、プレリキサホル20mg/kgで処置した感染マウス(6M-インフルエンザ+プレリキサホル20mg/kg)の肺ホモジネート中でのIL-6濃度(組織中pg/ml/g)(平均±SEM;n=10(または非感染ビヒクル群については6)
*p<0.05、群2Mと比較)を表すグラフである。
【
図7】非感染マウス(1M-非感染)、感染マウス(2M-インフルエンザ)、プレリキサホル2.5mg/kgで処置した感染マウス(3M-インフルエンザ+プレリキサホル2.5mg/kg)、プレリキサホル5mg/kgで処置した感染マウス(4M-インフルエンザ+プレリキサホル5mg/kg)、プレリキサホル10mg/kgで処置した感染マウス(5M-インフルエンザ+プレリキサホル10mg/kg)、プレリキサホル20mg/kgで処置した感染マウス(6M-インフルエンザ+プレリキサホル20mg/kg)の肺ホモジネート中でのCRP濃度(組織中pg/ml/g)(平均±SEM;n=10(または非感染ビヒクル群については6)
**p<0.01、群2Mと比較)を表すグラフである。
【
図8】非感染マウス(1M-非感染)、感染マウス(2M-インフルエンザ)、プレリキサホル2.5mg/kgで処置した感染マウス(3M-インフルエンザ+プレリキサホル2.5mg/kg)、プレリキサホル5mg/kgで処置した感染マウス(4M-インフルエンザ+プレリキサホル5mg/kg)、プレリキサホル10mg/kgで処置した感染マウス(5M-インフルエンザ+プレリキサホル10mg/kg)、プレリキサホル20mg/kgで処置した感染マウス(6M-インフルエンザ+プレリキサホル20mg/kg)の肺ホモジネート中でのC5a濃度(組織中pg/ml/g)(平均±SEM;n=10(または非感染ビヒクル群については6)
*p<0.05、
**p<0.01群2Mと比較)を表すグラフである。
【
図9】非感染マウス(1M-非感染)、感染マウス(2M-インフルエンザ)、プレリキサホル2.5mg/kgで処置した感染マウス(3M-インフルエンザ+プレリキサホル2.5mg/kg)、プレリキサホル5mg/kgで処置した感染マウス(4M-インフルエンザ+プレリキサホル5mg/kg)、プレリキサホル10mg/kgで処置した感染マウス(5M-インフルエンザ+プレリキサホル10mg/kg)、プレリキサホル20mg/kgで処置した感染マウス(6M-インフルエンザ+プレリキサホル20mg/kg)の肺ホモジネート中でのIL-1β濃度(組織中pg/ml/g)(平均±SEM;n=10(または非感染ビヒクル群については6)
*p<0.05、群2Mと比較)を表すグラフである。
【
図10】非感染マウス(1M-非感染)、感染マウス(2M-インフルエンザ)、プレリキサホル2.5mg/kgで処置した感染マウス(3M-インフルエンザ+プレリキサホル2.5mg/kg)、プレリキサホル5mg/kgで処置した感染マウス(4M-インフルエンザ+プレリキサホル5mg/kg)、プレリキサホル10mg/kgで処置した感染マウス(5M-インフルエンザ+プレリキサホル10mg/kg)、プレリキサホル20mg/kgで処置した感染マウス(6M-インフルエンザ+プレリキサホル20mg/kg)の肺ホモジネート中でのIL-17濃度(組織中pg/ml/g)(平均±SEM;n=10(または非感染ビヒクル群については6)
**p<0.01、群2Mと比較)を表すグラフである。
【
図11】非感染マウス(1M-非感染)、感染マウス(2M-インフルエンザ)、プレリキサホル2.5mg/kgで処置した感染マウス(3M-インフルエンザ+プレリキサホル2.5mg/kg)、プレリキサホル5mg/kgで処置した感染マウス(4M-インフルエンザ+プレリキサホル5mg/kg)、プレリキサホル10mg/kgで処置した感染マウス(5M-インフルエンザ+プレリキサホル10mg/kg)、プレリキサホル20mg/kgで処置した感染マウス(6M-インフルエンザ+プレリキサホル20mg/kg)の肺ホモジネート中でのTNFα濃度(組織中pg/ml/g)(平均±SEM;n=10(または非感染ビヒクル群については6)を表すグラフである。
【
図12】非感染マウス(「非感染」)、インフルエンザ感染マウス(「感染」)1mg/kg/日のプレリキサホルにより処置したインフルエンザ感染マウス(「感染+プレリキサホル1mg/kg」)、3mg/kg/日のプレリキサホルにより処置したインフルエンザ感染マウス(「感染+プレリキサホル3mg/kg」)、および10mg/kg/日のプレリキサホルにより処置したインフルエンザ感染マウス(「感染+プレリキサホル10mg/kg」)における、処置群(平均±SEM;n=4(非感染群では、3))ごとの肺における一般的な線維細胞の個々のレベルを表すグラフである。
【0088】
実施例
本発明は、以下の実施例によってさらに説明する。
【0089】
実施例1:材料および方法
インフルエンザAウイルスの感染およびビヒクル:H3N2インフルエンザAウイルス株Scotland/20/74(供給元Institut Pasteur de Lille)。
【0090】
プレリキサホル(AMD3100): SigmaまたはBio-techne。
【0091】
Elisa材料:Precellys溶解キット(硬組織ホモジナイズCK28、Bertin);RIPA緩衝液(Sigma)、完全錠剤ミニEASYpack(Roche)、マウスC反応性(CRP)デュオセット、マウス補体C5aデュオセット、マウスCXCL1/KCデュオセット、TNFα(R&D Systems)、IL-6、IL-1β、IL-17(Invitrogen)。
【0092】
H3N2インフルエンザAウイルス感染症:
【0093】
H3N2ウイルスストック溶液をPBSで希釈し、50μl中に50PFUを得た。H3N2を2M群~6M群のマウスに鼻腔内投与した(50μl)。群1MのマウスにはPBS(50μl)を与えた。
【0094】
処置のための製剤材料:
【0095】
注射用水(ビヒクル)は、群2Mの皮下(SC)注射(100μl)用に使用準備済として供給された。
【0096】
粉末として供給されるプレリキサホル(登録商標)を秤量し、水で適切に希釈し、群3M、4M、5M、および6Mに対してそれぞれ1.25、2.5、5、および10mg/kg(100μl)を1日2回皮下注射した。
【0097】
実験モデル
【0098】
動物
【0099】
種/系統:マウス/C57BL6/J
【0100】
性別/数/週齢:雄/9週目
【0101】
供給源:Janvier Labs,France.
【0102】
初期体重:平均体重は、25.03±0.8gであった。各群の最小および最大体重は、群平均体重の±20%を超えなかった。
【0103】
馴応期間:3日以上
【0104】
識別:テールおよびケージカードのカラーマーカー。
【0105】
動物管理:飼育
【0106】
動物の取り扱いは、Federation of European Laboratory Animal Science Associations(FELASA)のガイドラインに従って実施した。
【0107】
飼料:動物には、市販のげっ歯類用飼料(安全参照番号A04)を自由に与えた。動物には、濾過された飲料浸透水を自由に摂取させた。
【0108】
汚染物質:この試験の結果に影響を与える可能性のある汚染物質は、食料および水の供給源中には存在しなかった。
【0109】
環境条件:動物は、標準実験室条件下で飼育し、適切な新鮮な空気が供給され、空気濾過されていた。動物は、気候制御環境で維持した。温度範囲は、20~24°C、相対湿度は、30~70%であり、12時間の照明および12時間の消灯サイクルであった。
【0110】
ランダム化:マウスは、受け取り時にランダムにケージに割り当てた。
【0111】
H3N2ウイルスを使用して本手順を行ったため、動物実験は、動物バイオセーフティレベル2で実施した。
【0112】
獣医学的ケア:動物を、到着時に本試験に適合するかを検査した。動物を、罹患または死亡のいずれかの兆候の有無を毎日検査した。
【0113】
倫理委員会:本試験は、「The French Animal Welfare Act」に準拠し、「The French Board for Animal Experiments」に従って実施した。本試験は、「指令2010/63/UE」に準拠して、フランスの「Ministere de l’enseignement superieur et de la recherche」(倫理委員会n CEEA75)の承認下で実施した。
【0114】
実験の設計および条件
【0115】
人道的エンドポイント(すなわち、疼痛および/または苦痛を回避または制限するために使用できる、(潜在的な)疼痛および/または苦痛の動物実験における最も初期の指標):瀕死状態の動物は、いなかった。
【0116】
試験開始の定義:本試験では、IAV感染日を「0日目」と定義した。
【0117】
IAV手順:すべての手順を、バイオセーフティキャビネット2の下で実行した。
【0118】
ウイルス感染のために、200μlのリン酸緩衝食塩水(PBS)中の1.25mgのケタミンおよび0.25mgのキシラジンを腹腔内注射することによってマウスを麻酔した。次いで、マウスに、H3N2ウイルスの50プラーク形成単位(PFU)を含む50μlのPBSを鼻腔内感染させた。
【0119】
動物に、0日目に1回感染させた(群2M、3M、4M、5Mおよび6M)。群1M(非感染)に、50μlのPBSを鼻腔内投与した。
【0120】
処置の投与:
【0121】
処置は、マウスの背中に沿った皮膚をつかむことによりマウスの皮下(SC)に、1日2回、1日目から6日目まで投与した。親指と指の間の皮膚の根元に針を挿入し、溶液を注射した。プレリキサホル(登録商標)を1日2回、群3M(1.25mg/kg)、4M(2.5mg/kg)、5M(5mg/kg)および6M(10mg/kg)に投与した(100μl)。したがって、群3M、4M、5Mおよび6Mに対して、それぞれ、マウスに2.5、5、10および20mg/kgを6日間毎日投与した。群2Mには、1日2回水(100μl)を与えた。
【0122】
試験デザインおよびスケジュール
【0123】
本試験は、試験デザインについては表1、試験スケジュールについては表2に従って、2サイクル(マウス53匹/サイクル)で実施した。
【0124】
【0125】
【0126】
試験および評価
【0127】
罹患率および死亡率の観察:試験中、罹患率および死亡率を毎日測定した。
【0128】
体重:体重(合計8回の測定値)は、4P-PharmaのSOP No.010「実験動物の体重測定」に従って、試験開始前および試験終了まで毎日記録した。
【0129】
動物の屠殺、血液および組織の収集:7日目に、すべての群のマウスを頸椎脱臼により安楽死させた。
【0130】
組織学的分析のために、マウス10匹/群について、左肺葉を膨張させ、採取し、ホルムアルデヒド4%で固定した。右肺葉を採取し、重量を量り、急速冷凍し、タンパク質抽出のために-70℃で保存した。別の右肺葉を採取し、急速冷凍し、ARN抽出のために-70℃で保存した。
【0131】
組織学的分析:
【0132】
肺をホルムアルデヒド4%で24時間固定した。次に、肺をPBSですすぎ、エタノールに移し、組織学的処理および分析のために下請け業者(SCIEMPATH LABO)に送った。
【0133】
マウスの肺葉切片をヘマトキシリン&エオシン(H&E)で染色し、Nanozoomer(Hamamatsu,Sciempath laboratory)を使用してデジタル化した。
【0134】
Imai et al.(Imai et al.,Syrian hamster as a small animal model for SARS-CoV-2 infection and countermeasure development.PNAS.2020;117(28):16587-16595)ならびにMeyerholzおよび Beck(Meyerholz and Beck,Histopathologic evaluation and scoring of viral lung infection.Methods Mol Biol.2020;2099:205-220)を応用した二重組織病理学スコアリングシステムを使用して、マウスの肺の変化を判定した。合計9つの変数;(1)細胞死/壊死、(2)肺胞および/または血管周囲浮腫、(3)ヒアリン膜またはフィブリン、(4)炎症、(5)血栓、(6)うっ血、(7)出血、(8)II型過形成(9)合胞体を定性的に評価し、0~4のスコアでランク付けた。各基準について、スコアは、影響を受けた肺セクションが、「0」=存在しない、「1」=肺切片の1~10%、「2」=肺切片の11~25%、「3」=肺切片の26~50%、および「4」=50%超である。
【0135】
肺ホモジネートのELISA
【0136】
タンパク質抽出用の肺を小部分に切断し、500μlの抽出緩衝液(プロテアーゼ阻害剤カクテルを含むRIPA緩衝液)を含むCK28溶解チューブに移した。
【0137】
Precelyssホモジナイザーを使用し、5500rpmで10秒間の撹拌を3サイクル行い、サンプルを粉砕した。サンプルを氷上に置き、エッペンドルフチューブに移し、11000gで5分間遠心分離した。上清を新しいエッペンドルフチューブに集め、分析まで-70℃で保存した。
【0138】
製造業者の指示に従ってELISAを実施し、肺ホモジネート中のインターロイキン6(IL-6)、C反応性タンパク質(CRP)、補体成分5a(C5a)、ケモカイン(CXCモチーフ)リガンド1(CXCL1)、IL-1β、IL-17および腫瘍壊死因子α(TNFα)の産生を定量化した。サンプルは、CRPおよびC5aについては1:000、IL-6およびCXCL1については1:10、IL-1β、IL-17、およびTNFαについては1:3に希釈した。
【0139】
サイトカインの濃度(pg/ml)を対応する肺重量と相対化し、組織のpg/ml/gで結果を示した。
【0140】
統計分析:
【0141】
統計に関しては、中心となるマンホイットニー(ノンパラメトリック)検定を維持しながら、実験の期待値を反映した逐次検定戦略を適用した。最初に、非感染群(1M)とインフルエンザ群(2M)との差を比較した。有意差があることが判明した場合は、インフルエンザ+プレリキサホル20mg/kgで処置した動物(プレリキサホルの最大用量、群6M)およびインフルエンザ動物(群2M)との間の差を比較した。結果が有意であることが判明した場合は、有意差が観察されなくなるまで、低試験用量のプレリキサホルについて、降順(すなわち、群5M、4M、3M)に順次、インフルエンザとの統計的差異を試験した。
【0142】
実施例2:罹患率および死亡率の観察
試験中に死亡したまたは瀕死の状態にある動物は見られなかった。インフルエンザ感染は、非感染マウスと比較して、進行性かつ中程度の体重減少を引き起こした(7日目において、インフルエンザ処置マウスでは94±5%、非感染マウスでは103±4%、p<0,001)。10mg/kg以下の用量でのプレリキサホルによる処置では、体重減少は調節されなかった。しかし、20mg/kgのプレリキサホルの用量では、感染後7日目の体重減少が有意に減少した(インフルエンザ+プレリキサホル20mg/kg群では97±5%、インフルエンザ群では94±5%、p<0.05)。
【0143】
実施例3:組織学的分析
7日目の終了時に、肺を、群2M~6Mについては、マウス10匹/群(本試験は、サイクルごとに実施したため、サイクル1では6個の肺、サイクル2では4個の肺を収集した)、群1Mについては、マウス6匹(サイクル2で3個の肺)から収集した。SCIEMPATH LABOが、H&E切片の組織学的分析を実施した。予想通り、6匹の非感染動物(群1M)の肺切片は正常であり、いずれの病変もなかった。インフルエンザ処置マウス(群2M)では、動物は、亜急性および軽度から中等度の気管支間質性ウイルス性肺炎(最小から軽度の細気管支上皮壊死、血管周囲浮腫、軽度から中等度の多巣性細気管支肺胞および血管周囲の混合細胞(好中球性、組織球性、およびリンパ球性)の炎症、また、一部の動物では、別の血管うっ血および肺胞出血が存在する)を特徴とする病変を示した。注目すべきことに、何らかの不均一性が、主に第2のサイクルで観察され、一部の動物では、非常に最小の症状のみ呈し、局所的な血管周囲または細気管支混合細胞炎症が認められた(Meyerholzスコア=1)。プレリキサホルで処置したインフルエンザ感染マウス(群3M、4M、5Mおよび6M)は、群2で観察されたものと同様の肺病変を呈したが、その重症度、分布および発生率は、インフルエンザ処置マウスと比較してわずかに低かった。H&E肺切片の代表的な写真を
図1(A~C)に示す。
【0144】
組織学的合計スコアを、MeyerholzおよびBeckに従って計算し、表3および
図2に示す。このスコアでは、以下9つのパラメータを考慮する:細胞死/壊死(表4および
図3に示す個々のパラメータ)、肺胞および/または血管周囲浮腫、ヒアリン膜またはフィブリン、うっ血(最後の3つのパラメータを累積し、MeyerholzおよびBeckにより表5および
図4に示す)、炎症(表6および
図5に示す個別パラメータ)、血栓、出血、II型過形成、および合胞体。
【0145】
全体的に、プレリキサホルによる処置では、群2Mと比較して総スコアが低下した(インフルエンザ+プレリキサホル20mg/kgでは、2.80±2.35、インフルエンザでは4.50±2.72)。より具体的には、この減少は主に、壊死/細胞死の減少(インフルエンザ+プレリキサホル20mg/kgでは、0.40±0.70、インフルエンザでは0.90±0.74)ならびに浮腫、HMおよびうっ血スコア(インフルエンザ+プレリキサホルで20mg/kgは、0.60±0.52、インフルエンザでは、1.50±1.35)によるものであり、炎症スコアには影響を及ぼさなかった(インフルエンザ+プレリキサホル20mg/kgでは、1.60±1.17、インフルエンザでは、1.90±0.88)。
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
実施例4:肺ホモジネートでのELISA
群2M~6Mについては、マウス10匹/群、群1Mについてはマウス6匹/群において、7日目の終了時に肺を採取した。ELISAを肺ホモジネートに対して実施し、IL-6、CRP、C5a、CXCL-1、IL-1β、IL-17およびTNFαのレベルを評価した。
【0151】
肺ホモジネート中のIL-6レベル
【0152】
IL-6炎症誘発性サイトカイン濃度を肺ホモジネート中で評価した。
【0153】
非感染マウスの肺ホモジネート中のIL-6濃度は、低濃度で検出された。インフルエンザAウイルスの感染により、IL-6濃度が顕著に増加した(インフルエンザ群では、15055,10±9438,68pg/ml/g、非感染群では、1347,2412,49±639,38pg/ml/g、p<0,05)。感染マウスを2、5、5、10および20mg/kgのプレリキサホルにより処置しても、インフルエンザ群と比較して、IL-6レベルは顕著に調節されなかった。しかし、高用量のプレリキサホル20mg/kgでの処置では、この濃度は顕著に低下した(インフルエンザ+プレリキサホル20mg/kgでは、5408,82±3539,57pg/ml/g、インフルエンザでは、15055,10±9438,68pg/ml/g,p<0,05)。IL-6の平均濃度を表7および
図6に呈する。
【0154】
【0155】
実施例5:肺ホモジネート中のCRPレベル
IL-6分泌後に増加する急性期タンパク質であるCRP濃度も肺ホモジネート中で評価した。
【0156】
非感染マウスの肺ホモジネート中のCRP濃度は、比較的高濃度で検出された。インフルエンザAウイルスの感染により、CRP濃度が顕著に増加した(インフルエンザ群では、9243070,24±3683588,82pg/ml/g、非感染群では、2718616,67±824010,10pg/ml/g、p<0,01)。感染マウスを2、5、5、および10mg/kgのプレリキサホルにより処置しても、CRPレベルは顕著に調節されなかった。しかし、高用量のプレリキサホル20mg/kgでの処置では、この濃度が顕著に低下した(インフルエンザ+プレリキサホル20mg/kgでは、4488307,08±2059120,87pg/ml/g、インフルエンザでは、9243070,24±3683588,82pg/ml/g,p<0,01)。CRPの平均濃度を表8および
図7に示す。
【0157】
【0158】
実施例6:肺ホモジネート中のC5aレベル
多形核白血球の移動を刺激し、炎症部位への遊走を指示する強力なケモカインであるC5aの濃度を肺ホモジネート中で評価した。
【0159】
非感染マウスの肺ホモジネート中のC5a濃度は、比較的高濃度で検出された。インフルエンザAウイルスの感染により、C5a濃度が顕著に増加した(インフルエンザ群では、2540416,67±529299,86pg/ml/g、非感染群では、2540416,67±529299,86pg/ml/g、p<0,05)。感染マウスを2、5、5、および10mg/kgのプレリキサホルにより処置しても、C5aレベルは顕著に調節されなかった。しかし、高用量のプレリキサホル20mg/kgでの処置では、この濃度が顕著に低下した(インフルエンザ+プレリキサホル20mg/kgでは、2220172,76±972810,94pg/ml/g、インフルエンザでは、3758066,67±1249116,75pg/ml/g,p<0,01)。C5aの平均濃度を表9および
図8に示す。
【0160】
【0161】
実施例7: 結果:肺ホモジネート中のIL-1βレベル
肺ホモジネート中のIL-1β炎症誘発性サイトカイン濃度を評価した。
【0162】
非感染マウスの肺ホモジネート中のIL-1β濃度は、低濃度で検出された。インフルエンザAウイルスの感染により、IL-1β濃度が顕著に増加した(インフルエンザ群では、3502,64±2441,68pg/ml/g、非感染群では、1347,22±184,31pg/ml/g、p<0,05)。感染マウスを2、5、5、10および20mg/kgのプレリキサホルにより処置しても、IL-1βレベルは顕著に調節されなかった。IL-1βの平均濃度を表10および
図9に示す。
【0163】
【0164】
実施例8:肺ホモジネート中のIL-17レベル
肺ホモジネート中のIL-17炎症誘発性サイトカイン濃度を評価した。
【0165】
非感染マウスの肺ホモジネート中のIL-17濃度は、低濃度で検出された。インフルエンザAウイルスの感染により、IL-17濃度が顕著に低下した(インフルエンザ群では、575,58±138,84pg/ml/g、非感染群では、874,47±209,36pg/ml/g、p<0,01)。感染マウスを2、5、5、10および20mg/kgのプレリキサホルにより処置しても、IL-17レベルは顕著に調節されなかった。IL-17の平均濃度を表11および
図10に示す。
【0166】
【0167】
実施例9:肺ホモジネート中のTNFαレベル
炎症および免疫機能の重要な媒介因子であるTNFα濃度を肺ホモジネート中で評価した。
【0168】
非感染マウスの肺ホモジネート中のTNFα濃度は、低濃度で検出された。インフルエンザAウイルスの感染は、TNFα濃度は、調節されなかった(インフルエンザ群では、11038±6765,77pg/ml/g、非感染群では、11879,58±1803,85pg/ml/g)。感染マウスを2、5、5、および10mg/kgのプレリキサホルにより処置しても、TNFαレベルは顕著に調節されなかった。しかし、高用量のプレリキサホル20mg/kgでの処置は、この濃度をわずかに低下させた(インフルエンザ+プレリキサホル20mg/kgでは、6224,51±3014,54pg/ml/g、インフルエンザでは、11038,49±6765,77pg/ml/g)。TNFαの平均濃度を表12および
図11に示す。
【0169】
【0170】
実施例10:肺ホモジネート中の線維細胞レベル
この実施例で使用される材料および方法は、プレリキサホルの投与量に関する点を除いて、実施例1に記載のとおりである。処置は、マウスの背中に沿った皮膚をつかむことによりマウスの皮下(SC)に、1日2回、1日目から6日目まで投与した。親指と指の間の皮膚の根元に針を挿入し、溶液を注射した。プレリキサホル(登録商標)を、「感染+プレリキサホル1mg/kg」、「感染+プレリキサホル3mg/kg」、および「感染+プレリキサホル10mg/kg」の群に1日2回(100μl)投与した。したがって、「感染+プレリキサホル1mg/kg」群、「感染+プレリキサホル3mg/kg」群、および「感染+プレリキサホル10mg/kg」群について、マウスにそれぞれ、毎日1、3、および10mg/kgを7日間投与した。「感染」群には、水(100μl)を1日2回与えた。
【0171】
一般的な線維細胞の割合を、フローサイトメトリー分析によって肺中で評価した。線維細胞の割合を、抗体/蛍光色素、すなわちCD45+、FSP1+の組み合わせを使用して判定し、それらの生存率は、Live Dead細胞生存率アッセイを用いて評価した。試験された各条件について、一般的なゲーティング戦略に従って、異なる部分母集団を特定した。最初に、FSC-H(前方散乱高さ)およびSSC-H(側方散乱高さ)パラメータによる粒度測定およびサイズイベントに従って、目的の細胞を選択した。次に、選択された細胞上で線維細胞を、CD45+/FSP1+細胞として同定した。
【0172】
肺内で動員された線維細胞のパーセンテージを、マウス4匹/群の(非感染群では3匹)について7日目に評価した。結果を表12に示す。インフルエンザA感染により、肺中での線維細胞の動員が増加し(「感染」群では、28.05±26.78%、「非感染」群では、7.58±1.70%)、ウイルスによって誘導された線維細胞の炎症性動員が確認された。プレリキサホルによる処置では、試験したプレリキサホルの投与量に関係なく、肺における線維細胞の動員に有意な影響を与えることはなく、未処置マウスと比較して、処置マウスではプレリキサホルの用量効果は観察されない(「感染+プレリキサホル1mg/kg」、「感染+プレリキサホル3mg/kg」、および「感染+プレリキサホル10mg/kg」では、それぞれ19.77±19.93%、12.90±5.44%、23.86±18.39%、「感染」群では、28.05±26.78%)。
【国際調査報告】