(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】レーザ源と被治療組織との間のカップリングインターフェース
(51)【国際特許分類】
A61F 9/009 20060101AFI20240415BHJP
【FI】
A61F9/009
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513557
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2022062236
(87)【国際公開番号】W WO2022234060
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518356419
【氏名又は名称】ケラノヴァ
【氏名又は名称原語表記】KERANOVA
【住所又は居所原語表記】109 Rue de la Montat, Le Ginkgo, 42000 SAINT ETIENNE France
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】ロマノ、ファブリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】ベルナール、オーレリアン
(57)【要約】
本発明は、レーザ源と被治療組織との間のカップリングインターフェースであって、当該カップリングインターフェースが、リング(3)とゲルブロック(4)とを備え、前記リング(3)が、二重壁のパーティション(31)と、レーザ源によって生成されたレーザビームを透過させる窓(33)であって、当該リングの遠位端を閉じるように当該リングの遠位端に密閉的に取り付けられている窓(33)と、を有するものであり、前記ゲルブロック(4)が、前記リングの作用ハウジング内に配置されることが意図されたものであることを特徴とする、カップリングインターフェースに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ源と被治療組織との間のカップリングインターフェース(2)であって、当該カップリングインターフェースが
- 被治療組織(2)と接触するための近位端(P)と、反対側の遠位端(D)とを有するリング(3)、および
- ゲルブロック(4)
を備え、
前記リング(3)が、
・ 二重壁パーティション(31)であって、当該二重壁パーティション(31)が
■ 上端と下端とを有する内側側壁(311)、及び
■ 上端と下端とを有する外側側壁(312)を有し、
ここで、内側側壁(311)の下端は、外側側壁(312)の下端(3121)よりも遠位端(D)に近く、内側側壁及び外側側壁(311、312)の各上端は、内側側壁及び外側側壁(311、312)の各下端よりも遠位端(D)に近い、二重壁パーティション(31);
・ 内側側壁と外側側壁(311、312)の各下端の間に存在し、貫通内腔(321)を含む、有孔ディスク(32);
・ 前記リング(3)の遠位端(D)を閉じるように、内側側壁及び外側側壁(311、312)の各上端に密閉して取り付けられ、前記レーザ源によって生成されたレーザビームを透過させる窓(33)であって、当該窓(33)は、
■有孔ディスク(32)、内側側壁(311)及び外側側壁(312)の周囲の吸引チャンバ(35)と、
■内側側壁(311)の中央に配置された作用ハウジング(36)と
を画定するものである、窓(33);および
・ 吸引チャンバ(35)に開口するように、外側側壁(312)の内面と外面との間に延びる吸引チャネル(34)であって、当該吸引チャネル(34)は、吸引チャンバ(35)によって画定される内部空間において真空を発生させるための吸引モジュールに接続されるように意図されている、吸引チャネル(34);
を含むものであり、
前記ゲルブロック(4)が、作用ハウジング(36)内に着脱可能に取り付けられることが意図され、前記二重壁パーティションの内側側壁に沿って摺動可能であり、かつ、下記:
・ 内側側壁(311)の形状を補完する形状を有し、内側側壁(311)の内面に接触するように意図されているサイドフランク(41);
・ 窓(33)と接触するように意図されている、実質的に平坦な円形の上方基部(42);および
・ 前記被治療組織(2)と接触するように意図されている下方基部(43)
を含むものである、
ことを特徴とする、カップリングインターフェース。
【請求項2】
前記ゲルブロック(4)の高さ(H)は、前記二重壁パーティション(31)の内側側壁(311)の高さ(h1)と実質的に等しいことを特徴とする、請求項1に記載のカップリングインターフェース。
【請求項3】
前記二重壁パーティション(31)及び前記ゲルブロック(4)は円筒形状であり、前記ゲルブロック(4)の直径は、前記二重壁パーティション(31)の内側側壁(311)の直径と実質的に等しく、例えば11~14ミリメートルの間である、先行する請求項のいずれか一項に記載のカップリングインターフェース。
【請求項4】
前記ゲルブロック(4)の下方基部(43)が凹形状であり、上方基部(42)と下方基部(43)との間の距離が、
- 下方基部(43)の中央において1~2.5ミリメートルの範囲内であり、
- 下方基部(43)の周囲において実質的に4.5及び6ミリメートルに等しい、
ことを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載のカップリングインターフェース。
【請求項5】
前記ゲルブロック(4)の下方基部(43)が凹形状であり、下方基部(43)の曲率半径が6.5~8.5ミリメートルの範囲内である、先行する請求項のいずれか一項に記載のカップリングインターフェース。
【請求項6】
前記外側側壁(312)の高さ(h2)が、前記内側側壁(311)の下端が前記外側側壁(312)の下端(3121)よりも前記窓(33)に近づくように、前記内側側壁(311)の高さ(h1)よりも大きく、前記内側側壁及び前記外側側壁(311、312)の各下端と接続する前記有孔ディスク(32)が、前記貫通内腔(321)の軸が前記リング(3)の縦軸(A-A’)に向けられるように、実質的に円錐台形状である、先行する請求項のいずれか一項に記載のカップリングインターフェース。
【請求項7】
前記貫通内腔(321)によって覆われている前記有孔ディスク(32)の表面積は、前記貫通内腔(321)によって覆われていない前記有孔ディスク(32)の表面積よりも大きいことを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載のカップリングインターフェース。
【請求項8】
前記リング(3)は、その最大直径のリムで開口する円錐台形状のフランジ(39)をさらに有し、当該フランジ(39)は、その最小直径のリムによって前記外側側壁(312)の上端に接続されている、先行する請求項のいずれか一項に記載のカップリングインターフェース。
【請求項9】
前記リング(3)は、最大直径のリムと一体化した環状の鍔(37)をさらに含み、当該鍔(37)は、半径方向に外側に延び、前記フランジ(39)と反対側のその表面上に可撓性のゴム層(38)を含む、先行の請求項に記載のカップリングインターフェース。
【請求項10】
前記二重壁パーティション(31)、前記フランジ(39)、及び前記環状の鍔(37)が一体である、先行の請求項に記載のカップリングインターフェース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザによって実施される外科手術の技術分野に関し、より詳細には、特に角膜又は水晶体を切開する用途のための眼科手術の分野に関する。
【0002】
本発明は、角膜又は水晶体などのヒト又は動物の被治療組織にレーザ源をカップリングするための適合インターフェースに関する。
【0003】
レーザ源とは、1フェムト秒から100ピコ秒の間の、好ましくは1フェムト秒から1000フェムト秒の間の、特に100フェムト秒のオーダーでの持続時間を有する超短パルスの形態でレーザビームを放射することができる光源を意味する。
【背景技術】
【0004】
角膜又は水晶体を切開する手術のような、レーザ源を用いた眼の外科手術を行うことは技術水準から周知である。
【0005】
レーザ源は、例えば、角膜の間質にレーザビームを集束させ、隣接する小さなキャビテーション気泡を連続させ、そして切開線を形成することにより、角膜組織を切開することができる器具である。
【0006】
より正確には、角膜におけるレーザビームの集束中に、レーザ源の強度が光学破壊閾値と呼ばれる閾値を超えると、非線形イオン化によりプラズマが発生する。その後、キャビテーションバブルが形成され、周辺組織の非常に局所的な破壊を引き起こす。したがって、レーザ源によって実際に除去される体積は、破壊された領域に比べて非常に小さい。
【0007】
レーザ源を患者の眼にカップリングさせるために、患者の眼とレーザ源との間に配置される適合インターフェースを使用することが知られている。
【0008】
このようなカップリングインターフェースにより、中央かつレーザ源から既知の距離で、安定した一定の位置に眼球を保持することが可能となり、治療の間にわたって、いかなる動きも回避することができる。
【0009】
1.
従来技術で知られているカップリングインターフェース
1.1.
既存のカップリングインターフェースの第1の例
1.1.1.
一般的な説明
図1は、従来技術のカップリングインターフェースの第1の例を示す。カップリングインターフェースは、軸A-A’を有する円錐台1を含むリングを備える。円錐台1は両端が開いている。円錐台1の大基部11は、レーザ源の端部を受けるように意図されている。円錐台1の小基部は、眼2に接触するように意図されている。カップリングインターフェースはまた、以下を含む:
- 小基部の周辺に延びる環状ガス流溝12と、
- 半径方向外方に延び、接続ノズル123を介して環状溝12を外部吸引装置(図示せず)に接続できる管状アクセス部材122。
【0010】
環状溝12は、患者の眼2に押し付けられるように意図されている二つの円形リム124、125によって画定されるU字形状の断面を有する。吸引装置自体は当業者に知られており、円形リム124、125が眼2に適用されると、環状溝12内に真空を形成することができる。環状溝12内に真空を発生させることにより、治療の全期間にわたる吸引効果により、眼2の上にカップリングインターフェースを固定することができる。
【0011】
1.1.2.既存のカップリングインターフェースの第1の例の動作原理
このようなカップリングインターフェースの動作原理は以下の通りである。
【0012】
まず、施術者は、カップリングインターフェースのリングを眼2に装着する。
【0013】
リングが正確に位置決めされ、中央に配置されると、吸引装置が作動して環状溝12と眼2との間に画定された空間に真空を発生させ、吸引によって眼2上のカップリングインターフェースを固定する。
【0014】
リングが眼2に固定されると、円錐1を、角膜の屈折率に近い屈折率を有する液体で、角膜が浸漬されるまで、充填する。このようにして角膜を浸漬した液体は、角膜のジオプターを光学的に消去することにより、角膜を通るレーザビームの軌道を単純化するとの利点を有する。
【0015】
次いで、レーザ源をカップリングインターフェースの上方に配置し、レーザ源の遠位部分をカップリングインターフェースに挿入してロックすることにより、眼2とレーザの光軸とを治療期間にわたって整列させ、確実に保持する。
【0016】
1.1.3.既存のカップリングインターフェースの第1の例の欠点
このようなカップリングインターフェースには多くの欠点がある。
【0017】
1.1.3.1.密閉を確実にするためにインターフェースに加えられる圧力
眼2上のカップリングインターフェースの吸引の効率は、円形リム124、125と眼2との間の密閉の質に依存する。
【0018】
したがって、各円形リム124、125の接触線の全周にわたって完全な接触が得られなければならない。
【0019】
これは必ずしも単純ではなく、患者の眼はすべて異なっており、眼球の表面は必ずしも各円形リム124、125間の傾斜に追従するわけではない。
【0020】
したがって、患者の眼におけるこのような不均一性を克服するためには、カップリングインターフェースのリングを強く押して、溝12と眼2との間の良好な密閉を得る必要があり、これは患者の快適性と安全性を損なう。実際、十分な密閉を得るためにカップリングインターフェースのリングに加えられる力が、結膜内に円形リム124、125が入る傾向がある。
【0021】
密閉を達成するために加えられる力は、ときに非常に大きく、患者の不快感は痛みを伴う傾向がある。さらに、この圧力は短時間であっても、直ちに患者の眼圧を上昇させ、一部のリスクのある患者(強度近視、網膜剥離の病歴、又は緑内障の患者)にあっては重篤な副作用を引き起こす可能性がある。
【0022】
1.1.3.2.真空レベル
カップリングインターフェースを所定の位置に保持するためには、真空のレベルが大きくなければならない。
【0023】
実際、眼球の微小運動と吸引解除の傾向に抵抗するためには、吸引力は大きくなければならない。
【0024】
しかしながら、吸引力Fは、真空P及びこの真空が適用される表面Sの関数であることが知られている。すなわち:
F=P×S
【0025】
従来のカップリングインターフェースでは、真空が適用される表面は小さく(すなわち、2つの円形リムの間の眼の表面に限定される)、眼の微小運動と吸引解除の傾向に抵抗できる吸引力Fを得るためには、有意な値の真空を適用する必要がある。
【0026】
適用される真空の重要性は、ときに結膜出血(結膜下の吸引に関連する赤血球の滲出)の出現につながる。表在性斑状出血は一般的に非常に限定的であり、視力に影響を及ぼさないが、患者にとって常に懸念材料であり、非常に魅力的ではないため、その出現を制限することが望ましい。
【0027】
1.1.3.3.コスト
従来のカップリングインターフェースの中には、特別な手術装置と共に動作するものもある。これらは、吸引システムを、ポンプ、ノズル、真空センサと統合しなければならなかった。それぞれのシステムが特殊であるため、これらの付属品をすべて購入する必要がある。本発明は、このような不必要な出費を回避する。実際、この患者インターフェースは、手術室に既に存在する付属品、特に超音波乳化吸引装置と共に動作する。後者は真空センサ付き吸引ポンプと注入ラインを備え、既に十分なノズルを備えている。本発明者らの実験的な試験は、本発明の目的である、新規カップリングインターフェースが超音波乳化吸引装置と共に完璧に動作し、顧客に実質的な節約をもたらすことを示している。
【0028】
1.2.既存のカップリングインターフェースの第2の例
前述の欠点を克服するために、WO2018154038は、以下を含むカップリングインターフェースを提案している:
- 側壁、被治療組織に接触するための近位端、及びレーザ源の端部を受け入れるための遠位端を含むリング、
- レーザ源によって生成されるレーザビームを透過させる窓であって、リングの遠位端を閉鎖するようにリング上に密閉されて取り付けられた窓、
- 側壁の内面と外面の間に延びる吸引貫通チャネルであって、窓と側壁と眼球の上部との間に画定された内部空間に真空を発生させるための吸引モジュールに接続されるように意図されている吸引チャネル、
- 側壁の内面と外面の間に延びる灌流貫通路であって、内部空間への液体の注入を可能にするために灌流モジュールに接続されるように意図されている灌流貫通路。
【0029】
カップリングインターフェースの内部空間全体に真空を発生させることにより、真空が作用する表面積は、
図1に示すカップリングインターフェース(真空が円形リムのみに適用される)と比較して大幅に増加する。これにより、眼に適用される真空レベルを低下させ、高すぎる真空による副作用の軽減に寄与する。カップリング操作は患者にとってより快適なものとなる。
【0030】
このインターフェースには多くの利点があるが、患者の眼は1ミクロンから数十ミクロン動くことがある。しかし、特定の切開を行う場合は、角膜が完全に固定されたままであることが望ましい。
【0031】
DE 10 2005 040338には、レーザ治療装置を患者の眼に機械的にカップリングさせるためのアダプタが記載されている。DE 10 2005 040338に記載のアダプタは、ヒト角膜の湾曲に適合した下面を有するガラスレンズ本体と、このレンズ本体を囲むホルダーとを備える。
【0032】
WO2019/104256には、調節可能な眼内レンズ照射システムのための患者インターフェースが記載されている。
【0033】
本発明の目的は、WO2018154038に記載されたカップリングインターフェースと同じ利点を有し、患者の眼を完全に(10ミクロン未満の眼球の移動)固定することができる新規カップリングインターフェースを提供することである。
【発明の概要】
【0034】
この目的のために、本発明は、レーザ源と被治療組織との間のカップリングインターフェースであって、当該カップリングインターフェースが
- 被治療組織と接触するための近位端と、反対側の遠位端とを有するリング、および
- ゲルブロック
を備え、
前記リングが、
・ 二重壁パーティション(31)であって、当該二重壁パーティション(31)が
■ 上端と下端を有する内側の(円筒形状の)側壁、及び
■ 上端と下端を有する外側の(円筒形状の)側壁を有し、
ここで、内側側壁の下端は、外側側壁の下端よりも遠位端に近く、内側側壁及び外側側壁の各上端は、内側側壁及び外側側壁の各下端よりも遠位端に近い、二重壁パーティション;
・ 内側側壁及び外側側壁の各下端の間に存在し、貫通内腔を含む、有孔ディスク;
・ レーザ源によって生成されたレーザビームを透過させる窓であって、リングの遠位端を閉じるように、内側側壁及び外側側壁の各上端に密閉して取り付けられ、
■有孔ディスク、内側側壁及び外側側壁の周辺にある吸引チャンバと、
■内側側壁の中央に配置された作用ハウジングと
を画定するものである、窓;および
・ (内壁と外壁の間の)吸引チャンバに開口するように、外側側壁の内面と外面との間に延びる吸引チャネルであって、吸引チャンバとの間に画定された内部空間に真空を発生させるための吸引モジュールに接続されるように意図されている、吸引チャネル;
を含むものであり、
前記ゲルブロックが、作用ハウジング内に配置されるように意図された、以下を有する:
・ 内側側壁の形状を補完する形状を有し、内側側壁の内面に接触するように意図されているサイドフランク;
・ 窓と接触するように意図されている、実質的に平坦な円形の上方基部;
・ 被治療組織と接触するように意図されている、円形で凹形の下方基部
を含むものである、
ことを特徴とする、カップリングインターフェースを提案する。
【0035】
ゲルブロックは、有利には、作用ハウジング内に着脱可能に取り付けられる。さらに、ゲルブロックは、二重壁パーティションの内側側壁に沿って摺動可能である。さらに、ゲルブロックは変形可能である。
【0036】
上述したカップリングインターフェースは、特に、二重壁パーティションを含むリングと、二重壁パーティションの上端に取り付けられた窓と、窓と二重壁パーティションの内側側壁とで区切られた作用ハウジングと、作用ハウジング内に取り外し可能に取り付けられたゲルブロックとを含む点において、既存のインターフェースと異なる。
【0037】
これらの特徴の組合せは、例えば、(ガラスレンズ本体の使用を提案する)DE10 200 5040 338に記載のアダプタとは異なり(同文献では、ガラスレンズ本体の下面の形状に順応するように(大きなベアリング力の適用を介して)変形されるのは患者の眼である)、患者の眼の形状に適合するカップリングインターフェースを有することを可能にする。
【0038】
ゲルブロックを使用することにより、手術中に患者の眼が移動するというリスクを低減することができる。実際、眼とゲルブロックとの間の接触面の摩擦係数は、WO2018154038で提案されているような角膜の屈折率に近い屈折率を有する眼と液体との間の接触面の摩擦係数よりも大きい。また、ゲルブロックを使用することで、角膜が垂直方向に移動するというリスクを減らすこともできる(ヒドロゲルは液体よりも垂直方向の移動を制限する)。これは、(乱視矯正のための弓状切開などの)非貫通角膜切開にとって非常に重要である。
【0039】
しかしながら、本発明は、カップリング液をゲルブロックに置換することに限定されるものではない。実際、WO2018154038に記載された装置に関連する利点から利益を得るために、本発明者らは、WO2018154038に従ってカップリングインターフェースの全体構造を再考しなければならなかった。
【0040】
特に、二重壁パーティションの存在は、ゲルブロックが吸引チャネルを介して吸引されることを防止することを可能にする。また、二重壁パーティションの存在は、患者インターフェースを装着したときにゲルブロックが中央に配置されることを確保する。
【0041】
さらに、二重壁パーティションとゲルブロックとの組み合わせは、
図1に示すような従来技術の解決手段と比較して、患者の不快感を低減することを可能にする。実際、
図1に示されるインターフェースでは、2つの円形リム124、125(すなわち、内側リム124及び外側リム125)が患者の眼に接触するように意図されており、これは、施術者がリングを強く押して、患者の眼とこれらの円形リム124、125各々との間の完全な接触を確保することを必要とする。本発明においては、ゲルブロックは、内側リムを置換する。したがって、二重壁パーティションは、患者の眼に接触するように意図されている単一のリムを有し、
- ゲルブロックの変形性によって、ゲルブロックと患者の眼との間の完全な接触が達成され、さらに
- 二重壁パーティションの単一リムと患者の眼との間の完全な接触は、使用者が大きなベアリング力を適用することを必要としない(
図1に示される先行技術の患者インターフェースで提案されているような、眼と二つの同心リムとの間ではなく、眼と単一の円形リムとの間の完全な接触(360°の接触が常に得られる球上のリングの原理)を得る方が容易である)。
【0042】
より具体的には、
図1に示される患者インターフェースを設定するために、患者インターフェースの形状に順応するように(大きなベアリング力の適用を介して)変形されるのは患者の眼である。逆に、本発明の解決手段によれば、以下を使用することにより、患者の眼の形状に順応するのは患者インターフェースである:
- 患者の目に接触する単一のリムを持つ二重壁パーティションと、
- 変形可能な可動性ゲルブロック。
【0043】
このようなカップリングインターフェースは、患者の眼の不動性を保証しながら、迅速かつ無痛の吸引を可能にする。このカップリングインターフェースは、吸引モジュールの使用と互換性があり、吸引モジュールは、眼科手術室で一般的に見られる装置、すなわち、必要なセンサを備えた十分な性能を有する超音波乳化吸引装置又はその他の吸引モジュールに統合することができる。もちろん、本発明は、非統合吸引モジュールの使用にも適合する。
【0044】
ゲルブロックとして幾つかのモデルを提供することができ、各ゲルブロックモデルの凹状円形下方基部は、他のゲルブロックモデルの凹状円形下方基部の曲率半径とは異なる曲率半径を有する。
【0045】
実際:
- ゲルブロックの変形性は制限されており(弾性率が0.1から1MPaの間)、
- 眼の大きさは患者によって異なるため、
患者の眼を拘束する必要なく、すべての眼の大きさにゲルブロックを最適に適合させるために、ゲルブロックの幾つかのモデルを有することは有利であろう。
【0046】
このため、本発明者らは3つのゲルブロックモデルを開発した:
- 7.1ミリメートルの曲率半径を有する円形の凹状の下方基部を有するゲルブロックの第1のモデル、
- 7.6ミリメートルの曲率半径を有する円形の凹状の下方基部を有するゲルブロックの第2のモデル、
- 8.1ミリメートルの曲率半径を有する円形の凹状の下方基部を有するゲルブロックの第3のモデル。
【0047】
もちろん、読者は、3つより多くの(又は3つより少ない)ゲルブロックモデルを提供できることを理解するであろう。いずれの場合も、術前の標準的な眼の測定に基づいて、施術者が特定の患者に最適なゲルブロックモデルを選択することができる。
【0048】
カップリングインターフェースの好ましい非限定的な態様は、以下のとおりである:
- ゲルブロックは、0.1~1MPaの間の弾性率を有する材料で作製されてもよい;
- ゲルブロックの高さは、二重壁パーティションの内側側壁の高さと実質的に等しくてもよい;
- 二重壁パーティション及びゲルブロックは円筒形状であってもよく、ゲルブロックの直径は、二重壁パーティションの内側側壁の直径と実質的に等しく、例えば11~14ミリメートルの間である;
- ゲルブロックの下方基部は凹形状であってもよく、上方基部と下方基部の間の距離が
・ 下方基部の中央において1~2.5ミリメートルの範囲内であり、
・ 下方基部の周囲において実質的に4.5及び6ミリメートルに等しい;
- ゲルブロックの下方基部は凹形状であってもよく、下方基部の曲率半径は6.5~8.5ミリメートルの間である;
- 外側側壁の高さは、内側側壁の下端が外側側壁の下端よりも窓に近づくように、内側側壁の高さよりも大きくてもよく、内側側壁と外側側壁の各下端と接続する有孔ディスクは、内腔の軸がリングの縦軸方向に向くように実質的に円錐台形状を有する;
- 貫通内腔によって覆われている有孔ディスクの表面積は、貫通内腔によって覆われていない有孔ディスクの表面積より大きくてもよい;
- リングは、最大直径のリムにおいて開いた円錐台形のフランジをさらに含み、フランジは、最小直径のリムによって外側側壁の上端に接続されていてもよい;
- リングは、最大直径のリムと一体化した環状の鍔をさらに有することができ、鍔は、半径方向に外側に延び、フランジと反対側のその表面上に柔軟なゴム層を含む;
- 二重壁パーティション、フランジ、及び環状の鍔は一体であってもよい。
【0049】
また、本発明は、レーザ源と被治療組織との間にカップリングインターフェースを設置する方法に関し、
前記カップリングインターフェースは、
- リングであって:
・内側側壁及び外側側壁を有する二重壁パーティション、
・内側側壁及び外側側壁の各下端の間に存在する有孔ディスク、
・内側側壁及び外側側壁の各上端に取り付けられた、レーザビームを透過させる窓を有し、
ここで、内側側壁及び外側側壁、有孔ディスク、及び窓がリングの吸引チャンバを画定し、また窓と内側側壁がリングの作用ハウジングを画定する、リングと、
- サイドフランク、上方基部、及び下方基部を含むゲルブロックと、を備え、
前記方法は、以下の工程を含む:
- ゲルブロックを作用ハウジングに挿入する工程、
- ゲルブロックを含むリングを被治療組織の上に配置する工程(中央に配置する)、
- 接触させる工程であって、
・ 被治療組織の周辺領域において、被治療組織と外側側壁の下端とを接触させる工程、及び
・ 被治療組織の中央領域において、被治療組織とゲルブロックの下方基部とを接触させる工程、
- 吸引装置を作動させて、リングの内側側壁とゲルブロックのサイドフランクとの間の吸引チャンバ内に真空を形成する工程、
- 所望の真空閾値に達したら直ちに吸引装置を不作動にする工程、
- 治療の全期間を通して一定の真空を保持する工程。
【0050】
治療が完了したら、吸引チャンバ内の大気圧を回復することによって、カップリングインターフェースを、被治療組織から分離する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図を参照して、例示的かつ非限定的な目的のためにされる以下の説明から明確に明らかになるであろう。
【
図1】
図1は、従来技術のカップリングインターフェースの概略図である。
【
図2】
図2は、本発明によるカップリングインターフェースの概略図である。
【
図3】
図3は、本発明によるカップリングインターフェースの概略図である。
【
図4】
図4は、本発明によるカップリングインターフェースの取り付け方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
次に、本発明に係るカップリングインターフェースについて、図を用いて説明する。これらの異なる図では、同等の要素は同一の符号で示されている。
【0053】
カップリングインターフェースは、レーザ源と被治療対象2との間に配置されることが意図されている。対象2は、例えば眼球、より具体的には角膜又は水晶体などの被治療ヒト又は動物組織である。
【0054】
本明細書の残りの部分では、本発明を、ヒト又は動物の眼の角膜の治療を例に挙げて説明する。しかし、本発明によるカップリングインターフェースが他の用途で使用できることは、当業者にとって自明である。
【0055】
1.
カップリングインターフェースの一般的な説明
図2を参照すると、カップリングインターフェースは、以下を含む:
- 縦軸A-A’に沿って延び、近位端P及び遠位端Dを有するリング3と、
- 概して円筒形状を有するゲルブロック4。
【0056】
リング3は、内壁及び外壁311、312を有する二重壁パーティション31と、パーティション31の一方の端部にある有孔ディスク32(
図3)と、パーティション31の他方の端部にあるレーザ光線を透過させる窓33と、パーティション31の壁311、312の間に開口する吸引チャネル34とを備える。二重壁パーティション31は、外壁312の下端3121のみがリング3の外側に突出するように配置されている。この下端3121は、リング3の近位端Pを形成する。具体的には、外側側壁312の下端3121は、リング3の単一の稜線を構成しており、リング3は、患者の眼2と球体の外周で接触するように意図されている。
【0057】
窓33は、リング3の遠位端Dに密閉して取り付けられて遠位端Dを閉じる。したがって、リング3は、患者の眼2と接触することが意図された近位端Pのみが開口している。
【0058】
パーティション31、ディスク32、及び窓33は、リング内の二つの空間:
- 吸引ユニットを吸引チャネル34に接続することによって真空を生成することができる円形状の吸引チャンバ35、及び
- ゲルブロック4を受け入れるように構成され、レーザ源から放射されたレーザ光がそれを通過して被治療組織2に適用される、作用ハウジング36
を定める。
【0059】
患者の眼2にカップリングインターフェースを固定するために、ゲルブロック4をワーキングハウジング36内に装着し、リング3及びゲルブロック4を患者の眼2上に配置し、吸引チャンバ35内に真空を形成する。
【0060】
真空を適用する前に、患者の眼2は、
- ゲルブロック4で、及び
- 外側側壁312の下端3121で、
患者インターフェースに接触される(患者の眼2と接触した状態の単一の稜線を構成する)。
【0061】
したがって、既存のカップリングインターフェースとは異なり、真空の生成による眼2へのカップリングインターフェースの取り付けは、環状溝を画定する2つの円形リムの間での完全なベアリングを必要としない。
【0062】
この新規な設計(すなわち、単一の円形リム3121及び変形可能なゲルブロック4の存在)により、真空の生成は単純化され、患者にとってより快適である。なぜなら、(ゲルブロックの変形を介して)眼の形状に適合するのはカップリングインターフェースであって、(
図1に示される装置の場合のように)患者インターフェースの形状に眼が適合するわけではないからである。
【0063】
次に、本発明に係るカップリングインターフェースについて説明する。
【0064】
2.
カップリングインターフェースの詳細な説明
2.1.
リング
図2及び
図3を参照すると、二重壁パーティション31、有孔ディスク32、透明窓33、及び吸引チャネル34を備えるリング3が図示されている。
【0065】
2.1.1.二重壁パーティション
二重壁パーティション31は、概して円筒状であり、両端部が開口している。
【0066】
具体的には、二重壁パーティション31は、内側側壁311と外側側壁312とから構成されている。各側壁311、312は、それぞれの上端及び下端を含む。前述したように、外壁312の下端3121は、患者の眼2に接触するように意図されている。従って、外側側壁312の下端3121は、有利には、眼2の形状に最もよく適合するようにフレア状であってもよい。外壁312のフレア状の下端3121は、(例えば)非外傷的な方法で眼2の外面に適用可能な、外側に湾曲した概して円錐台の形状を有することができる。
図2を参照すると、このフレア状の下端3121は、接線方向のベアリングを可能にするために、眼2の曲率半径と実質的に等しい曲率半径の凹状プロファイルを有する。
【0067】
図3に示すように、内側側壁311の下端は、リング3の内側に凹んでいる。具体的には、外側側壁312の下端3121は外側に突出し、内側側壁311の下端は縦軸A-A’に沿ってリング3の内側に向かってオフセットされている。
【0068】
特に、内側側壁311の高さh1は外側側壁312の高さh2よりも小さいので、内側側壁311の下端は外側側壁312の下端3121よりも窓33に近い。
【0069】
従って、カップリングインターフェースは、患者の眼2と接触するように意図された単一の円形状の稜線を含む。カップリングインターフェースが、(
図1に示すような従来のカップリングインターフェースで提案された2つの円形リムではなく)単一の円形状の接触稜線を含むという事実は、眼2とリング3との間の接触線の全周にわたって完全な接触を達成することを容易にする。
【0070】
2.1.2.有孔ディスク
有孔ディスク32は、二重壁パーティション31の内側側壁及び外側側壁311、312を接続可能にする。有孔ディスク32は、カップリングインターフェースが患者の眼2上に配置されたとき、患者の眼2の強膜と協働するように意図された貫通内腔321又は凹部を含み、吸引チャンバ35内に真空が生成され、結膜がこれらの凹部内にわずかに吸引され、したがって、不吸引のリスクを低減する一体的なアセンブリを形成する。
【0071】
図3に示す実施形態では、有孔ディスク32は、ディスク32の内腔の軸がリング3の内側に向けられるような実質的に円錐台形状の形状を有する。もちろん、有孔ディスク32は他の形状であってもよい。例えば、有孔ディスク32は、トランケートされたトーラスの形態を有することができる。この場合、有孔ディスク32の曲率半径は、患者の眼2に対するディスク32の適合を最適化するために、5~10ミリメートルの範囲から選択される。
【0072】
貫通内腔321の数及び形状は、意図される用途に応じて変化してもよい。好ましくは、内腔321によって覆われているディスク32の表面積は、内腔321によって覆われていないディスク32の表面積よりも大きい。これにより、吸引力が適用される眼の表面を最大化することが可能となり、したがって、カップリングインターフェースが患者の眼2上の位置に確実に保持されるために必要な真空レベル(すなわち真空の強度)を最小化することが可能となる。
【0073】
2.1.3.
窓
図2を参照すると、レーザ源によって生成されたビームを透過させる窓33は、二重壁パーティション31の内側側壁及び外側側壁311、312の各上端に密閉的に取り付けられている。
【0074】
窓33は、円盤状である。もちろん、窓33は、目的とする用途に応じて他の形状(正方形、長方形、楕円形)を有してもよい。
【0075】
窓33は、ガラス又はプラスチック(ポリカーボネート、ポリ(メタクリル酸メチル)など)のような種々の材料で設計することができる。
【0076】
図2及び
図3に示す実施形態では、窓33及び二重壁パーティション31は、二つの別々の部分で構成される。それにもかかわらず、いくつかの実施形態では、窓33及び二重壁パーティション31は、一つの部分(モノブロック)で形成することができる。これにより、二重壁パーティション31と窓33との接合部における漏れのリスクを制限することができる。
【0077】
窓33と二重壁パーティション31がリング3の二つの別々の部分である場合、窓33は、接着、溶接、又は窓33を二重壁パーティション31に密閉して取り付けることを可能にするその他の技術によって二重壁パーティション31に取り付けることができる。
【0078】
窓33は、レーザビームの透過をその波長に従って向上させるために、反射防止であってもよく、又は、任意の他のタイプの光学的処理がされていてもよい。
【0079】
2.1.4.吸引チャネル
また、リング3は、二重壁パーティション31の外側側壁312に形成された管状の貫通チャネル34を備える。「吸引チャネル」と呼ばれるこのチャネルは、二重壁パーティション31の内壁及び外壁311、312との間に開口し、軸A-A’に垂直に、半径方向外側に、延びる。
【0080】
吸引チャネル34は、ノズルを介して遠隔装置をカップリングインターフェースに接続することを可能にする。特に、吸引チャネル34は、窓33、内側側壁及び外側側壁311、312、及び有孔ディスク32の間に画定された吸引チャンバ35内に真空を生成する吸引装置にカップリングインターフェースを接続することを可能にする。
【0081】
単一のチャネル34の存在は、カップリングインターフェースのフットプリント(取付面積)を制限し、ノズル及びコネクタの数を減少させる。
【0082】
2.1.5.リングの他のオプション要素
上記の要素に加えて、リング3は、その最小直径のリムによって外側側壁312の上端に接続される円錐台形状のフランジ39を含んでもよい。
【0083】
このようなフランジ39は、その最大直径のリムで開口しており、フランジ39の半径方向外側に延びる環状の鍔37と一体とされる。
【0084】
有利には、この環状の鍔37は、フランジ39と反対側のその表面上に可撓性ゴムの層38を含む。これにより、レーザ源を吸引によりカップリングインターフェースに容易に固定することができる。実際、レーザ源をカップリングインターフェースに固定するためにいくつかの解決手段(機械的、磁気的など)が考えられるとしても、この固定プロセス中の「痙攣」のリスクを制限するために、真空による固定手段を使用することが好ましい。
【0085】
2.2.ゲルブロック
また、カップリングインターフェースは、リング3と協働することが意図されたゲルブロック4を備える。
【0086】
図3を参照すると、ゲルブロック4は、概して円筒形状である。ゲルブロック4は以下を含む:
- 内側側壁の形状を補完する形状を有するサイドフランク41、
- 実質的に平坦な円形の上方基部42、
- 凹状の円形の下方基部43。
【0087】
ゲルブロック4は、リング3の作用ハウジング36内に配置されるように意図されている。具体的には、ゲルブロック4のサイドフランク41が内側側壁311の内面に接触し、上方基部42が窓33に接触し、下方基部43が患者の眼2に接触するように意図されている。
【0088】
このため、下方基部43は、5~10ミリメートルの範囲、好ましくは6.5~8.5ミリメートルの範囲で選択される曲率半径によって画定される凹部を有する。これにより、患者の眼2に対する下方基部の適合が最適化される。
【0089】
有利には、ゲルブロック4は、フェムト秒レーザの伝搬に適合する光学特性を有するヒドロゲル又は他の生体適合性かつ殺菌可能な透明可撓性材料であってもよい。例えば、ヒドロドロゲルは、フルオロシリコーンと親水性モノマーの混合物を含むことができる。含水率が70%を超える、50%~70%の間の、又は30%~50%の間のヒドロゲルなど様々なヒドロゲル改変体を使用することができる。これにより、異なる潤滑特性及び光学特性、ならびに異なる圧縮率の値を有するゲルブロックを得ることが可能となる。
【0090】
いずれの場合も、ゲルブロック4が作用ハウジング36と密接に協働するように、ゲルブロック4の寸法及び形状が決定される。
【0091】
特に、ゲルブロック4の高さHは、内側側壁311の高さh1と実質的に等しいか、わずかに大きいことが好ましい。これにより、真空生成中にゲルブロックが吸引チャンバ35に向かって移動するリスク、また真空生成中にゲルブロックが組織と窓との間で圧縮されるリスクを制限することが可能となる。したがって、ゲルブロックが中心(中央)から外れる(ずれる)リスクが低減される。これにより、カップリングインターフェースが、治療される眼2に押しつけられたとき、
- ゲルブロック4と窓33の間の、及び/又は
- ゲルブロック4と患者の眼2との間の
気泡の存在を回避する。
【0092】
また、ゲルブロック4の直径は、内側側壁311の直径(11~14ミリメートル)と実質的に等しいか、それよりもわずかに小さいことが好ましい。これにより、軸A-A’に沿った移動性を確保することができ、ゲルブロックの作用ハウジングへの挿入を容易にすることができる。
【0093】
最後に、ゲルブロック4が患者の眼2を所定の位置に保持するために、ゲルブロック4の上方基部と下方基部の間の距離は、
- 円形状の下方基部の中央において1~2.5ミリメートルの範囲内とすることができ、
- 下方基部の周辺において実質的に4.5及び6ミリメートルに等しくなり得る。
【0094】
3.
動作原理
次に、本発明によるカップリングインターフェースの動作原理を、
図2及び
図3に示すカップリングインターフェース及び
図4に示す方法を参照してより詳細に説明する。
【0095】
吸引チャネル34は、ノズルを介して吸引装置(図示せず)に予め接続されているものとする。
【0096】
第1のステップ100において、施術者は、ゲルブロック4を(無菌状態で)作用ハウジング36内に挿入し、ゲルブロックの遠位平坦部分が窓33に接着するまで、ゲルブロック4をハウジングの底部に押し込む。
【0097】
第2のステップ200において、施術者は、眼の中心と、リング及びゲルブロック4からなるアセンブリとが整列するように、リング3とゲルブロック4とを眼2の上方に配置させる。カップリングインターフェース(リング+ゲルブロック)が患者の眼の中心に配置されたとき、施術者は、外側側壁312の下端3121を患者の眼2の周辺部、より正確には、結膜で覆われた眼球の表面と接触させる。
【0098】
カップリングインターフェースが患者の眼2の中心に適切に配置されると、施術者は吸引装置を作動させる(ステップ300)。吸引装置の作動により、吸引を適用する吸引チャンバ35内に真空を形成することができる。この真空の生成により、眼2の強膜を覆う結膜が有孔ディスク32の貫通内腔321により吸引される。これにより、カップリングインターフェースに対する眼2の相対的な動きが制限される。貫通内腔321の向き(その対称軸は軸A-A’に向けられている)は、眼2を固定する傾向のある患者の眼2への接線力の適用を可能にし、眼2を固定しやすくする。
【0099】
眼2は、一方で外側側壁312の下端3121を押圧し、他方でゲルブロック4を押圧する。ゲルブロックは、その可鍛性により、患者の眼2の形状に完全に適合する。
【0100】
カップリングインターフェースが眼2に吸着されると、施術者は、吸引装置を作動させたまま、カップリングインターフェース上へのレーザ源のドッキングを制御する(ステップ400)。レーザ源(例えば、WO2019/145487に記載された関節アームに取り付けられ得る)のカップリングインターフェースへの固定は、カップリングインターフェースの予期しない動きを制限するために、吸引によって行うことが有利である。
【0101】
4.結論
眼科で実施され、レーザ源(特に、フェムト秒レーザ)を使用する外科的処置は、典型的には、眼球を保持するためのシステムを使用し、このシステムは、レーザビームへの患者の曝露の全期間を通してアクティブでなければならない。
【0102】
実際には、眼球が予期せず、無制御に動く場合、その作用が想定されていない領域にビームが到達し、多かれ少なかれ重篤な眼内構造の病変を生じるリスクがある。
【0103】
上述のカップリングインターフェースは、眼球の最適な保持を可能にし、レーザビームを正確に標的に向けるために、眼球の空間内の位置に関する正確な知識を施術者に提供する。
【0104】
読者は、本明細書に記載された新規な教示及び利点から物理的に逸脱することなく、上述の本発明に多くの改変を加えることができることを理解するであろう。
【国際調査報告】