(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】無線周波数タグ・システム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/82 20060101AFI20240415BHJP
G01S 13/34 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
G01S13/82
G01S13/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513560
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 GB2022051176
(87)【国際公開番号】W WO2022238690
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523422565
【氏名又は名称】アンゴカ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロバートソン、クレマー クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】クラーク、スティーブン
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB18
5J070AB19
5J070AB22
5J070AB24
5J070AD02
5J070AF03
5J070AH31
5J070AH40
5J070BC08
5J070BC13
(57)【要約】
無線周波数タグ・システム。アクティブ標的を識別することができるFMCWレーダ・システムが記述されている。システムは、インテロゲータ・レーダ及び無線周波数タグを備える。タグは、1セットの複数の離散固定周波数から選択された一連の異なる離散固定周波数の送信を介して2進コードを送信するようになされた送信器を備える。インテロゲータ・レーダは、第1のモードと第2のモードとの間で切り替え可能に実施可能なように構成される。第1のモードでは、インテロゲータは、それの動眼視野内のパッシブ物体の存在を識別するために、FMCW信号を生成及び送信する。第2のモードでは、インテロゲータ・レーダは、FMCW信号と比較して相対的に固定された周波数信号を送信し、2進コードを識別するためにタグから受信された一連の離散固定周波数と相対的に固定された周波数信号を混合する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インテロゲータ・レーダ及びタグを備えるレーダ及び無線周波数タグ・システムであって、前記タグが、物体に固定され、
前記タグが、それを介してタグが1セットの離散固定周波数から選択された一連の異なる離散固定周波数の送信を介して2進コードを送信するようになされた送信器を含み、
前記インテロゲータが、送信器と、受信器と、ミキサと、第1の信号及び第2の信号を生成するようになされた信号ジェネレータとを備え、前記第1の信号が、FM信号であり、前記第2の信号が、前記FM信号と比較して相対的に固定された周波数を有する、そして、
前記インテロゲータが、
前記信号ジェネレータ手段が前記第1の信号を生成する第1のモードであり、前記送信器が、視野を横断して前記第1の信号を送信し、前記受信器が、反射された前記第1の信号を前記インテロゲータ・レーダの視野内の前記物体から受信するように配置され、前記受信器が、前記送信された第1の信号を前記受信信号と、前記ミキサにおいて、混合するようになされる、前記第1のモードと、
前記信号ジェネレータが前記第2の信号を生成する第2のモードであり、前記第2の信号が、前記2進コードを識別するために前記タグから受信された前記一連の離散固定周波数と前記ミキサにおいて混合される、前記第2のモードと
の間で切り替え可能に実施可能なように構成された、レーダ及び無線周波数タグ・システム。
【請求項2】
前記第2のモードにおいて、前記インテロゲータ・レーダが、起動信号を送信するようになされ、前記タグが、前記起動信号を受信することに応答して前記一連の離散固定周波数を送信するようになされた、請求項1に記載の無線周波数タグ・システム。
【請求項3】
前記タグが、前記一連の離散固定周波数を生成するようになされたローカル信号ジェネレータを備える、請求項1又は2に記載の無線周波数タグ・システム。
【請求項4】
前記タグが、前記起動信号を受信することに応答して前記一連の離散固定周波数を少なくとも2度送信するようになされた、請求項3に記載の無線周波数タグ・システム。
【請求項5】
前記起動信号が、一連の離散固定周波数を含み、前記タグが、前記一連の離散固定周波数によって定義された2進コードを識別するようになされた、請求項2から4までのいずれか一項に記載の無線周波数タグ・システム。
【請求項6】
さらなるタグを含み、前記さらなるタグが、それを介してタグが1セットの離散固定周波数から選択された一連の異なる離散固定周波数の送信を介して異なる2進コードを送信するようになされた送信器を備える、請求項1から5までのいずれか一項に記載の無線周波数タグ・システム。
【請求項7】
前記インテロゲータが、第2の起動信号を送信するようになされ、前記タグが、前記起動信号を受信することに応答して前記2進コードを送信するようになされ、前記さらなるタグが、前記第2の起動信号を受信することに応答して前記さらなる2進コードを送信するようになされた、請求項6に記載の無線周波数タグ・システム。
【請求項8】
送信器と、受信器と、第1の信号及び第2の信号を生成するようになされた信号ジェネレータ手段とを備える、請求項1から7までのいずれか一項に記載のレーダ及び無線周波数タグ・システムのインテロゲータ・レーダであって、前記第1の信号が、FM信号であり、前記第2の信号が、前記FM信号と比較して相対的に固定された周波数を有し、
前記インテロゲータが、
前記信号ジェネレータ手段が前記第1の信号を生成する第1のモードであり、前記送信器が、視野を横断して前記第1の信号を送信し、前記受信器が、前記インテロゲータ・レーダの視野内の物体から反射された前記第1の信号を受信するように配置され、前記受信器が、前記送信された第1の信号を前記受信信号と混合するようになされた、前記第1のモードと、
前記信号ジェネレータが前記第2の信号を生成する第2のモードであり、前記第2の信号が、前記2進コードを識別するために、前記タグから受信された前記一連の離散固定周波数と混合される、前記第2のモードと
の間で切り替え可能に実施可能なように構成された、前記インテロゲータ・レーダ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
短距離使用、すなわち、1000m以下、向けに設計された最も近代的なレーダは、周波数変調搬送波(FMCW:frequency modulated carrier wave)で動作する。この手法では、搬送波は、送信するレーダによって急速に変調される。エネルギーが視野内の物体に反射し、このエネルギーのうちレーダによって受信される一部分が、送信搬送波信号と混合される。送信信号と受信信号との間の周波数差(ビート周波数/中間周波数)が、物体までの距離を測定するために、使用される。
【0002】
米国特許第6100840号は、パルス・ドップラ・レーダ・インテロゲータを備えるタグ・システムに関する。タグは、インテロゲータが2進コードとして解釈する離散周波数を含むインテロゲータへ信号を反射するように、パルス・ドップラ・レーダからの受信パルスを修正するようになされたアクティブ・レーダ反射器を備える。
【0003】
タグからの反射リターンを確保することは、インテロゲータに対してより大きな相対速度を有する物体と間違えることはできず、タグは、受信周波数を非アクティブ物体に予期されるリターンのバンド外にある周波数に移す必要がある。これは、インテロゲータが、そうでない場合に必要とするよりも、より広い中間周波数バンドで動作する必要がある、ということを意味する。
【0004】
特に、FMCWレーダ内では、任意の中間周波数が非アクティブ標的に帰し得、したがって、中間周波数の特定のサブバンドをアクティブ標的検出専用にすることは不可能なので、そのようなシステムは、FMCWレーダと互換性がない。
【0005】
さらに、パルス・ドップラ・システムは、これらの範囲において物体を検出するために必要な非常に短いパルスを生成することが困難なので、一般に、非常に短い距離、すなわち、数百メートル、における物体の検出及び測距に適していない。
【0006】
米国特許出願第2004/189511号は、主に自動車にアクセスするために使用されることを意図されたアクセス制御システムについて記述する。基地局20(車両内)とコード送信器(キー)との間の範囲、及びキー・コードが、基地局20内の評価ユニット24によって、同時に決定される。これを行うために、評価ユニット24は、2つの復調器を有する必要がある:Sig4からSig1を抽出するための第1の復調器と、SigCHTからSigHTを抽出するための第2の復調器。
【0007】
欧州特許出願公開第1672386号明細書は、レーダとトランスポンダ・デバイスとの間の距離決定のための位相変調並びにレーダとトランスポンダとの間のデータ送信を可能にする振幅変調を用いるCWレーダ・システムについて記述する。これらの2つの変調プロセスを実施するために、レーダ・デバイスは、別個のミキサ136、140を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6100840号
【特許文献2】米国特許出願第2004/189511号
【特許文献3】欧州特許出願公開第1672386号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の一態様によれば、インテロゲータ・レーダ及びタグを備えるレーダ及び無線周波数タグ・システムが提供され、そこにおいて、前記タグは、物体に固定され、タグは、それを介してタグが1セットの離散固定周波数から選択された一連の異なる離散固定周波数の送信を介して2進コードを送信するようになされた、送信器を含み、インテロゲータ・レーダは、送信器と、受信器と、第1の信号及び第2の信号を生成するようになされた信号ジェネレータ手段とを備え、そこにおいて、第1の信号は、FM信号であり、第2の信号は、FM信号と比較して相対的に固定された周波数を有し、そこにおいて、インテロゲータは、信号ジェネレータ手段が、第1の信号を生成し、送信器が、視野を横断して第1の信号を送信し、受信器が、反射された第1の信号をインテロゲータ・レーダの視野内の物体から受信するように配置され、受信器が、送信された第1の信号を受信信号と混合するようになされた、第1のモードと、信号ジェネレータが、第2の信号を生成し、第2の信号が、2進コードを識別するために、タグから受信された一連の離散固定周波数と混合される、第2のモードとの間で切り替え可能に実施可能なように構成される。
【0010】
第1のモードでは、インテロゲータ・レーダは、送信信号と受信信号との周波数差(ビート周波数/中間周波数)を使用して動眼視野内のパッシブ及び/又はアクティブ物体の存在を識別する及びその範囲を決定する従来の方法で動作する。時々、インテロゲータ・レーダは、第1のモードに切り替わって戻る前に2進コードを動眼視野内の任意のアクティブ標的から受信するために(たとえば、前記アクティブ・デバイスを識別するために)、第2のモードに一時的に切り替わり得る。有利には、レーダ・システムは、単一のミキサ及び信号ジェネレータのみを使用して、両方のモードで動作することができる。これは、現存するFMCWレーダ・システムが、レーダ・システム・ハードウェアに変更又は追加する必要なしにアクティブ標的を識別するように、関連ソフトウェアを更新することを介して、なされることを可能にする。
【0011】
第2の信号は、ダウン・コンバートされた信号内の2進コードの識別を簡単にするために、FM信号と比較して相対的に固定された周波数を有する。したがって、有利には、第2の信号は、実質的に固定された周波数を有する。したがって、インテロゲータは、受信器を再構成せずにモードを切り替えることができる。
【0012】
インテロゲータ・レーダは、短距離レーダでもよい、すなわち、インテロゲータの2kmの範囲内の物体を検出するようになされ、好ましくはインテロゲータ・レーダの100メートル以内の物体を検出することができる。
【0013】
FM信号は、連続波(FMCW)信号でもよい。
【0014】
タグは、一連の離散固定周波数をブロードキャストするようになされ得る。別法として、より好ましくは、第2のモードにあるとき、インテロゲータは、起動信号と起動信号を受信することに応答して2進コードを送信するように構成されたタグとを送信するように構成され得る。
【0015】
一連の異なる離散固定周波数の送信は、搬送波信号に個別の周波数変更を行うことを介して非2進周波数偏移キーイング変調プロセスによって行われ得る。変調されていない搬送波信号は、第2の信号と実質的に同じ周波数を有し得る。
【0016】
異なる離散固定周波数のセットの各周波数は、2進コードの別個のビットに対応し得、各ビットの値は、離散固定周波数のセット内のビットの関連周波数の送信又は送信の欠如によって決定される。たとえば、送信される周波数の欠如は、その周波数に関連するビットを値=0にセットし得、その周波数の送信は、ビットを値=1にセットする。コード内のビットの順番は、セット内の周波数の位置によって、あらかじめ決定され得る。
【0017】
その結果として、異なる離散固定周波数のセットは、通常は、2進コードのビットの数と等しい又はそれを超える異なる離散固定周波数の数(N)を含むことになる。したがって、通常は、N>2である。
【0018】
原則として、タグ及びインテロゲータが適切に構成された場合、周波数のうちの1つ又は複数が、同時に送信され得るが、タグの送信器は、順に異なる離散固定周波数のそれぞれを送信するようになされ得る。
【0019】
2進コードは、タグを識別し得る、すなわち、タグに特有でもよい。2進コードは、タグが取り付けられた物体を識別し得、別法として、2進コードは、タグが取り付けられた物体のタイプを識別し得る、すなわち、タグに特有でなくてもよいが、タグが取り付けられた物体のタイプに特有でもよい。
【0020】
起動信号は、単一の実質的に固定された周波数の、有利には第2の信号と同じ周波数の、信号を含み得る。リターンが、第2の信号と同じ周波数のものになるとき、インテロゲータにおいて受信される視野を有する物体からの起動信号の反射は、最小中間周波数応答を生み出すことになるので、これは、有利である。たとえば、ドップラ・シフトの結果として、生み出されたいずれも、タグに帰するリターンとは容易に区別され得る。
【0021】
有利には、インテロゲータは、第2の信号を送信して起動信号を提供するように構成される。言い換えれば、起動信号は、第2の信号を含み得る又は第2の信号で構成され得、有利には、第2の信号と実質的に同一である。したがって、有利には、インテロゲータは、信号を生成する信号ジェネレータと信号を起動信号及び第2の信号を提供する2つの実質的に同一の信号に分けるための手段とを備える。
【0022】
インテロゲータが、第2のモードで動作している間、起動信号は、連続波信号として送信され得る、すなわち、実質的に連続して送信され得、別法として、起動信号は、パルス信号でもよい。
【0023】
別法として、起動信号及び第2の信号は、2進コードに対応する一連の離散固定周波数を含み得る。一連の離散固定周波数は、順に送信器によって送信され得る。
【0024】
起動信号及び第2の信号が、一連の実質的に固定された周波数を備える場合、動眼視野における非アクティブ物体からのリターンは、実質的に、中間周波数応答がもしあればそれらのリターンがミキサにおいて混合されて、最小を生み出す、第2の信号と、任意のドップラ・シフトは別として、同じ周波数であることになる。
【0025】
起動信号は、有利には、その一連の実質的に固定された周波数のそれぞれの送信の終わりとその一連の内の次の周波数の送信の初めとの間の遅延を含む。この遅延は、有利には、リターンが動眼視野内の非アクティブ物体から予期されることになる時間枠より長い。これは、インテロゲータが次の周波数を生成及び送信していれば、前の送信された周波数からの物体からのリターンは受信されず、結果として、次の周波数に現在もあることになる及びそうでない場合にはスプリアス出力信号を生み出すであろう第2の信号と混合されない、ということを確実にする。必要な遅延の長さは、インテロゲータの効果的範囲に依存することになる。たとえば、2kmまで離れた標的を検出する、短距離レーダについては、少なくとも15μsの遅延が、適切であろう。
【0026】
起動信号の一連の離散固定周波数は、第2の信号の周波数偏移変調によってエンコードされ得る。
【0027】
信号ジェネレータ手段は、第1の信号と第2の信号の両方を生成するためにコントローラからの制御下で実施可能な電圧制御の発振器を備え得る。別法として、信号ジェネレータは、第1の信号及び第2の信号を生成するために、別個の発振器を備え得る。
【0028】
1つの配置では、タグは、一連の離散固定周波数を生成するようになされた、電子発振器を含む、ローカル信号ジェネレータを備え得る。
【0029】
別法として、既製のFMCWレーダ・システムの入手しやすさを理由としてほとんどの適用において恐らくは好ましくないが、タグは、インテロゲータに向けて修正信号を反射する前に受信信号を受信及び修正するようになされたアクティブ反射器手段を備え得る。
【0030】
1つの適用では、インテロゲータは、たとえば、自律型自動車の運転者支援システム及び/又はコントローラの一部として、自動車によって運ばれ得る。
【0031】
タグは、ストリート・ファニチャのアイテムにおいて運ばれ得る。その場合、2進コードは、ストリート・ファニチャのタイプ、たとえば、タグが道路標識(及び任意選択でそのタイプ)、電柱、又は交通信号のセットに取り付けられているかどうか、を識別し得る。
【0032】
別の例示的適用では、インテロゲータは、たとえば、非常に低い高度、たとえば、<200m、で地上を横断して飛行するように実施可能な、無人航空機によって運ばれ得る。タグは、地上の構造物及び/又は別の航空機に貼り付けられ得る。
【0033】
そのようなものとして、システムは、さらなるタグを備え得、さらなるタグは、それを介してさらなるタグが離散固定周波数のセットから選択された異なる一連の異なる離散固定周波数の送信を介して異なる2進コードを送信するようになされた、送信器を備える。
【0034】
インテロゲータ・レーダは、第1の起動信号とは異なる第2の起動信号を送信するようになされ得、そこにおいて、さらなるタグは、第2の起動信号を受信することに応答して異なる2進コードを送信するようになされる。異なるタグが、異なる起動信号に応答するとき、これは、インテロゲータ・レーダに対して類似のアジマス位置にある異なるタグを区別するための手段を提供する。
【0035】
別法として又は追加で、第2の起動信号は、第1の起動信号に対して異なる周波数バンドで送信され得、そこで、第1の起動信号及び第2の起動信号は、一連の実質的に固定された周波数を備え、第2の起動信号は、第1の起動信号に対して周波数の異なる選択を備え得る。
【0036】
ここで、例として以下の図を参照して、発明が、説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】インテロゲータ及びタグ・トランスポンダを示すレーダ及び無線周波数タグ・システムの概略図である。
【
図2】5ビット幅コードのシミュレーションされたパワー・スペクトルのイラストレーションである。
【
図3】インテロゲータがアクティブ標的検出モードで動作している間の、交換中のインテロゲータ及びタグによって送信される周波数を示す概略図である。
【
図4】値11101の起動コードを受信したときのタグのミキサの出力において予期されるビート周波数のシミュレーションされたスペクトルである。
【
図5】値11001のIDコードを受信したときのインテロゲータのミキサの出力において予期されるビート周波数のシミュレーションされたスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、インテロゲータ・レーダ100とインテロゲータ・レーダ100の動眼視野内の物体(図示せず)に取り付けられたタグ・トランスポンダ(タグ)200とを備えるレーダ及び無線周波数タグ・システムの簡略化された概略図である。
【0039】
インテロゲータ・レーダ100は、送信アンテナ101、別個の受信アンテナ102、電圧制御の発振器(VCO:voltage-controlled oscillator)103、スイッチ104、低ノイズ増幅器105、無線周波数ミキサ106、フィルタ107、アナログ-デジタル・コンバータ108、及び、デジタル信号プロセッサ(DSP:digital signal processor)111、モード・セレクタ副機能113を含むコントローラ112を含む機能を実装するプロセッサ・システム110を備える。
【0040】
インテロゲータ・レーダ100は、送信器と受信器の両方が同時に動作することを可能にするように構成された別個の送信アパーチャ及び受信アパーチャを有する。
【0041】
プロセッサ・システム110はまた、タグ200及び/又はタグ200が取り付けられた物体を識別するタグIDコードの及び各IDコード対応情報のリストを含むコード・ライブラリ114を保持するコンピュータ可読メモリを含む。
【0042】
インテロゲータ・コントローラ112のモード選択機能113の制御下で、インテロゲータ・レーダ100は、FMCWレーダ・モードとアクティブ標的検出モードとの間で切り替え可能に実施可能である。
【0043】
FMCWレーダ・モードでは、FMCW信号が、動眼視野にわたり送信アンテナ101を介して送信されるように、スイッチ104は、閉じており、VCO103は、急速変調搬送波信号を生成させた。
【0044】
動作周波数などのパラメータ、変調パターン(たとえば、鋸歯状、三角形又は正弦)、及び掃引バンド幅傾斜は、適用要件に依存することになる。ほとんどの適用は、短距離使用、すなわち、インテロゲータ100から100m未満の物体の測距をしばしば含むことになる2キロメートル以内の測距物体、のためであることになる、ということが想定される。自動車適用については、76GHzから81GHzの間の動作周波数が、適している。前述の範囲における必要な分解能を提供するために、1μs当り10Khzを超える掃引バンド幅傾斜が、適切であるが、1μs当り1MHzを超えるのがさらに好ましい。しかしながら、これらの値は、制限と見なされるべきではない。
【0045】
動眼視野において物体から受信器アンテナ102において受信されたFMCW信号の反射リターンは、低ノイズ増幅器105によって増幅され、ミキサ106に入力される。VCO103の出力はまた、VCO103の出力が、送信されている信号と実質的に同一である受信器アンテナ102において受信された信号と混合されるようにローカル発振器(lo:local oscillator)信号を同時に提供するように、ミキサ106の入力に接続される。混合されるとき、反射リターンは、インテロゲータからの物体の範囲を示すミキサ103の出力において中間周波数の存在を生じさせるlo信号に対して異なる周波数を有する。中間周波数の振幅(電力)は、物体のレーダ横断面を示す。
【0046】
ミキサ106からの出力は、所望の中間周波数を分離するためにフィルタ107によってフィルタ処理され、ADC108によってデジタル化され、DSP111に渡される。潜在的標的の詳細は、たとえば、インテロゲータが接続されたシステムに、出力115を介して出力される。たとえば、車両の高度運転者支援システム(又は、自律型車両の場合、制御システム)。
【0047】
送信アンテナ101は、アジマス及び/又は高度に関する正確に位置を識別された物体に広い動眼視野にわたって掃引され得る狭ビームに関してFMCW信号が焦点を合わされることを可能にして、位相アレイ・アンテナ、有利には電子的にスキャンされた位相アレイ・アンテナ、によって実装され得る。
【0048】
この動作は、FMCWレーダには従来通りのことであり、したがって、さらに詳述はされない。
【0049】
時々、モード・セレクタ副機能113の制御下で、インテロゲータ100は、動眼視野内の任意のアクティブ標的の存在を決定する及びそれを識別するために、アクティブ標的検出モードに一時的に切り替えられる。
【0050】
モード・セレクタ副機能113は、たとえば、ある特定の期間が経過した後、ある特定の数のFMCW周波数掃引が完了した後、又は、適用可能であれば、動眼視野を横断するFMCWビームのある特定の数の掃引の後に、周期的にアクティブ標的検出モードに動作を切り替えるように構成され得る。
【0051】
別法として、又は追加で、モード・セレクタ副機能113は、動眼視野内の新しい物体の存在を識別することに応答してインテロゲータをアクティブ標的検出モードに切り替え得る。
【0052】
アクティブ標的検出モードでは、コントローラ113の制御下で、VCO103は、1セットの周波数から選択された実質的に固定された周波数RF信号のシーケンスを生成する。選択された周波数は、コード・ライブラリ114において保持された2進起動コードを表す。シーケンスは、送信器101によって送信され、ミキサ103に入力されるlo信号として使用される。
【0053】
遅延は、動眼視野内の物体からの任意のリターンを受信するために要する時間より長い、シーケンスの各周波数の送信の中止とシーケンス内の次の送信の開始との間で提供される。これは、前の送信された周波数からのリターンの結果として生成されている中間周波数がその後の生成された周波数のloと混合されることを防止する。短距離適用について、任意のリターンが、数マイクロ秒以内で予期されることになり、その場合、遅延の適切な持続期間は、≧数十マイクロ秒であろう。実際には、シーケンスの次の周波数をVCO103に生成させるためにコントローラ112が要する時間は、予期されるリターンを受信するために要する時間より長く、したがって、送信シーケンス内のこの遅延の意図的な提供は、必要であると予期されない。これは、単一のプログラミング動作が、通常は、周波数チャープを生成するために使用されることになる、FMCWモードでの動作と対照をなす。
【0054】
起動コードが、FMCWバンド内の周波数(fc)の搬送波を変調する周波数偏移キーを介して送信される。搬送波周波数に関連する周波数バンドは、サブバンドに分けられ、各サブバンドは、2進コード内の特定のビット位置に割り当てられている。サブバンド内の周波数の存在又は欠如は、ビット位置のビット値を示す。
【0055】
図2は、5ビット2進コードにおけるビット位置へのサブバンドの例示的割り当てを示す概略図である。
【0056】
周波数バンドは、サブバンドに分けられ、第1のサブバンドは、fc+750kHzを中心とし、その他のサブバンドは、750kHzの倍数、すなわち、fc+2*750kHz、fc+3*750kHz、fc+4*750kHz、fc+5*750kHz、を中心とする。これは、Nビット2進数が使用されるfc+N*750kHzまで拡張され得る、ということが理解されよう。fc未満の同じ間隔によって段階付けられた周波数もまた、使用され得る、たとえば、fc-750KHz。
【0057】
図3を参照すると、値11101の5つの2進ビット・コードを送信するために、信号が、周波数fc+750kHz、fc+2*750kHz、fc+3*750kHz、及びfc+5*750kHzのそれぞれにおいて、しかしfc+4*750kHzにおいてではなく、送信される。この例示的プロトコルでは、周波数の存在は、ビット値=1に対応し、周波数の欠如は、ビット値=0に対応する。
【0058】
インテロゲータ100は、存在する任意のタグ200による完全な受信の可能性を高めるために、少なくとも2度、コードを送信する。周波数のセットの各周波数は、特定のビット位置に割り当てられるので、周波数がタグ200によって受信される順番は、重要でない。したがって、周波数が送信される順番もまた重要でない、ということもまた明らかである。コードが送信された後は、インテロゲータ100は、応答を待つために、送信を停止する(コントローラ112がスイッチ104を開く)。VCO103は、受信器アンテナ102から受信された任意の信号と混合されるためにミキサ104に継続して入力される搬送波周波数、fc、を生成し続ける。
【0059】
間隔値の750kHzは、重要ではない。それでも、周波数のセットの各周波数の間の間隔値は、セットのどの周波数が送信されたかを識別する際に曖昧さを引き起こす、インテロゲータ100とタグ200との相対速度差の結果としての、ドップラ・シフトを防止するのに十分に大きくなければならない(又は、言い換えれば、その各サブバンドが十分に広い)。
【0060】
図1に戻って参照すると、タグ・トランスポンダ200は、共用される送信及び受信アンテナ201及び循環装置201A、ミキサ202、スイッチ204を介してミキサ202とアンテナ201の両方に接続された出力を有するVCO203、フィルタ205、ADC206、並びにデジタル信号プロセッサ(DSP)211及びコントローラ212を含む機能を実装するトランスポンダ・プロセッサ210を備える。コントローラ212は、2進起動コード213とタグ200を識別する2進IDコード214とを保持するコンピュータ可読メモリを含む。
【0061】
それのデフォルト動作モードにおいて、タグ200は、ミキサ202が、アンテナ201において受信された信号をVCO203によって生成された周波数fc(すなわち、搬送波周波数と同じもの)のlo信号と混合する、パッシブ・リスニング・モードで動作する。ミキサ202の出力は、フィルタ204を使用してフィルタ処理され、ADC205によってデジタル化され、起動コードを聞くタグのDSP211によって処理される。
【0062】
ミキサ202におけるfcとの混合の後の値11101の5ビット2進コードを受信したときに予期される中間周波数のスペクトルが、
図4に示されている。
【0063】
コントローラ212が、起動コードの受信を決定した後は、コントローラ212は、応答してそれのIDコード214を送信するために、タグ200を一時的にアクティブにする。
【0064】
IDコードは、起動コードを送信するためにインテロゲータ100によって使用されるものとしての搬送波fcを変調する周波数偏移キーの同じプロセスを使用して、すなわち周波数のセットから選択された異なる固定周波数のシーケンスを送信することを介して、送信される。
【0065】
図3に戻って参照すると、たとえば、IDコードが、値11001の5ビット2進コードである場合、VCO203は、コントローラ212の制御下で、fc+3*750kHz又はfc+4*750kHzではなく、周波数fc+750kHz、fc+2*750kHz及びfc+5*750kHzを生成させられる。
【0066】
IDコードに対応する一連の周波数は、コントローラ212の制御下でVCO203によって生成され、スイッチ204を閉じることによってコントローラ212によってVCO203と接続されたアンテナ201を介して送信される。
【0067】
送信信号は、インテロゲータ受信器102において受信され、増幅器105によって増幅され、それらがVCO103からの周波数fcのローカル発振器信号と混合されるミキサ104に入力される。
【0068】
値11001の5ビット2進コードを受信したときにミキサ106の出力において予期される中間周波数(ビート周波数)のスペクトルが、
図5に示されている。
【0069】
受信されたコードは、タグ及び/又はタグが取り付けられた物体の識別と接続されたシステムに出力115を介して出力される識別情報とを決定するために、コード・ライブラリ214において検索される。
【0070】
FMCWレーダ・モードでのように、送信器101は、動眼視野を横断して狭ビームを掃引するように構成され得る。各ボアサイト位置において、起動コードが、送信され、次のボアサイト位置に移動すること及び繰り返すことの前に受信されることになる存在する任意のタグ200からのリターンのリスニング期間がその後に続く。このようにして、動眼視野内のアジマス及び/又は高度におけるタグ200の正確な位置情報が、取得され得る。検出されたタグ200までの範囲は、次いで、タグ200が検出されたアジマスにおいて、FMCWレーダ・モードで範囲を測定することによって、決定される。
【0071】
タグが対象の物体に関連付けられていない、たとえば、地上のナビゲーション・ビーコンとして使用されている、又は相対的に小さなレーダ横断面を有する物体に取り付けられている、適用において、タグ200は、拡大された明白なレーダ横断面をインテロゲータ100に提供するためにレーダ反射器(3面の、又は他の)を含み得る又はそれに取り付けられ得る。
【0072】
FMCWレーダ・モード及びアクティブ標的検出モードを一緒に使用することは、クラッタに対するタグの検出並びに2D又は3D位置決めを可能にする。
【0073】
IDコードは、タグの恒久識別子を提供するタグ200の不揮発性メモリにプログラムされ得る。別法として、タグ200は、コードが変更され得るように、再プログラムされ得る。
【0074】
前述の技法はまた、タグ200に追加情報をインテロゲータに送信させるために使用され得る。たとえば、タグがストリート・ファニチャに取り付けられた適用において、タグは、それに近接して生じる動的イベントの警報を提供する、たとえば、道路交通事故又は道路上の氷の存在などの一時性劣悪道路条件につながる環境要因の警報を提供する、ために必要に応じて再プログラムされ得る。
【0075】
前述のシステムに対するより単純な変形形態において、タグ200は、特定の単一固定周波数信号、たとえば、変調されていない搬送波周波数信号、を受信することに応答してそれのIDコード214を送信するようにアクティブにされ得る。前のように、インテロゲータ100のVCO103は、同じ信号をミキサ104に提供することになる。
【0076】
さらなる単純化において、タグ200は、代わりに、周期的にそれのIDコードをブロードキャストするように構成され得る。その場合、インテロゲータ100は、アクティブ標的検出モードにあるときに、起動信号を送信する必要はない。IDコードが送信される搬送波周波数は、FMCWレーダ・モードでの動作中にインテロゲータにおいてスプリアス信号を作成するタグ200からの送信を回避するために、FMCWレーダ・モードで送信されるFMCWチャープのバンド外にあるように選択され得る。しかしながら、この変形形態は、それが、動眼視野のアジマス又は高度内のタグの正確な位置決めを可能にしない、それが、電力消費の増加を必要とし、利用可能なバンド幅を非効率的に使用する、ということを含むいくつかの理由で、好ましくない。
【0077】
同じ搬送波周波数がそれぞれに起動信号及びIDコードを送信するためにインテロゲータ及びタグによって使用されるということが好ましいが、これは必須ではない。
【0078】
複数のタグが、同じアジマスで現れることが予期され得、したがって、両方が同時にアクティブにされ得る、適用では、異なるタグは、異なるコード又は異なる周波数バンドで送信される同じコードによってアクティブにされるように構成され得る。その場合、インテロゲータは、タグを順次にアクティブにするために各アジマス位置において順次に異なる起動コードを送信する(又は異なるバンドにおいてコードを繰り返す)ように構成され得る。
【0079】
共用アンテナ及び循環装置ではなくて、タグは、インテロゲータのように、代わりに別個の送信及び受信アンテナを備え得る。
【国際調査報告】