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特表2024-517519固体撮像装置、及び固体撮像装置を備えた撮像装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】固体撮像装置、及び固体撮像装置を備えた撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/70 20230101AFI20240416BHJP
【FI】
H04N25/70
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525509
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 CN2022084177
(87)【国際公開番号】W WO2023184265
(87)【国際公開日】2023-10-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516180667
【氏名又は名称】北京小米移動軟件有限公司
【氏名又は名称原語表記】Beijing Xiaomi Mobile Software Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.018, Floor 8, Building 6, Yard 33, Middle Xierqi Road, Haidian District, Beijing 100085, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山下 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 篤
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CX43
5C024GX02
5C024GY18
5C024HX40
5C024HX50
(57)【要約】
入力する光に応じて光電変換により電荷が生じる光電変換素子と、電荷を当該電荷の量に応じた電圧に変換するフローティングディフュージョンと、フローティングディフュージョンに接続され且つ光電変換素子からオーバーフローした電荷を蓄積可能な保持容量と、フローティングディフュージョンで変換された電圧に基づく信号を処理する信号処理部と、を備え、信号処理部は、保持容量を用いて読み出された信号の処理手段を複数有する。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力する光に応じて光電変換により電荷が生じる光電変換素子と、
前記電荷を当該電荷の量に応じた電圧に変換するフローティングディフュージョンと、
前記フローティングディフュージョンに接続され且つ前記光電変換素子からオーバーフローした前記電荷を蓄積可能な保持容量と、
前記フローティングディフュージョンで変換された前記電圧に基づく信号を処理する信号処理部と、を備え、
前記信号処理部は、前記保持容量を用いて読み出された前記信号の処理手段を複数有する、固体撮像装置。
【請求項2】
前記複数の処理手段は、相関二重サンプリング手段と、前記保持容量のリセット時の電圧に基づいて信号を補正する補正手段と、を含む、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
入力する光に応じて光電変換により電荷が生じる光電変換素子と、
前記電荷を当該電荷の量に応じた電圧に変換するフローティングディフュージョンと、
前記フローティングディフュージョンに接続され且つ前記光電変換素子からオーバーフローした前記電荷を蓄積可能な保持容量と、
前記フローティングディフュージョンで変換された前記電圧に基づく信号を処理する信号処理部と、を備え、
前記信号処理部は、
前記光電変換素子への前記光の入力によって生成される前記電荷が該光電変換素子からオーバーフローしない第一状態のときは、前記フローティングディフュージョンでの変換ゲインの異なる前記信号に対し、それぞれ相関二重サンプリングを行い、
前記光電変換素子への前記光の入力によって生成される前記電荷が該光電変換素子からオーバーフローした第二状態のときは、前記信号に対し、前記保持容量のリセット時の電圧に基づいて補正する、固体撮像装置。
【請求項4】
前記光電変換素子と前記フローティングディフュージョンとを接続する第1スイッチトランジスタと、
前記フローティングディフュージョンと前記保持容量とを接続する第2スイッチトランジスタと、
前記保持容量とリセット電位とを接続する第3スイッチトランジスタと、
各スイッチトランジスタを制御する制御部と、を備え、
前記フローティングディフュージョンは、前記第2スイッチトランジスタと前記第3スイッチトランジスタとを順に介して前記リセット電位と接続され、
前記信号処理部は、
前記光電変換素子への前記光の入力後に、前記第1~第3スイッチトランジスタがオフの状態から前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオンされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第1信号とし、
前記第1信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第2信号とし、
前記第2信号が得られた後に前記制御部によって前記第1スイッチトランジスタがオン及びオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第3信号とし、
前記第3信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオンされた状態で前記第1スイッチトランジスタがオン及びオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第4信号とし、
前記第4信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオンされた状態で前記第3スイッチトランジスタがオン及びオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第5信号としたときに、
これら前記第1~第5信号に基づいて該固体撮像装置から外部に出力される出力信号を生成する、請求項2又は3に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記相関二重サンプリングは、前記第4信号と前記第1信号との差分に基づく第1差分信号を求める信号処理と、前記第3信号と前記第2信号との差分に基づく第2差分信号を求める信号処理と、のそれぞれに含まれ、
前記保持容量のリセット時の電圧に基づく補正は、前記第4信号と前記第5信号との差分に基づく第3差分信号を求める信号処理に含まれる、請求項4に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
少なくとも前記光電変換素子の容量に基づいて設定される第1閾値、及び少なくとも前記フローティングディフュージョンの容量に基づいて設定される第2閾値を格納する記憶部を備え、
前記信号処理部は、
前記第3差分信号の値と前記第1閾値とを比較し、前記第3差分信号の値が前記第1閾値より大きいときに、該第3差分信号を前記出力信号として出力し、
前記第3差分信号の値と前記第1閾値とを比較した結果、前記第3差分信号の値が前記第1閾値以下のときは、前記第1差分信号の値と前記第2閾値とを比較し、前記第1差分信号の値が前記第2閾値より大きいときに、該第1差分信号を前記出力信号として出力し、
前記第1差分信号の値と前記第2閾値とを比較した結果、前記第1差分信号の値が前記第2閾値以下のときは、前記第2差分信号を前記出力信号として出力する、請求項5に記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記保持容量である第1保持容量と異なる第2保持容量であって、前記光電変換素子からオーバーフローした前記電荷を蓄積可能な第2保持容量と、
前記光電変換素子と前記フローティングディフュージョンとを接続する第1スイッチトランジスタと、
前記フローティングディフュージョンと前記保持容量とを接続する第2スイッチトランジスタと、
前記第2保持容量とリセット電位とを接続する第3スイッチトランジスタと、
前記第1保持容量と前記第2保持容量とを接続する第4スイッチトランジスタと、
各スイッチトランジスタを制御する制御部と、を備え、
前記フローティングディフュージョンは、前記第2スイッチトランジスタと前記第4スイッチトランジスタとを順に介して前記第2保持容量と接続されると共に、前記第2スイッチトランジスタと前記第4スイッチトランジスタと前記第3スイッチトランジスタとを順に介して前記リセット電位と接続され、
前記第1保持容量は、前記第4スイッチトランジスタと前記第3スイッチトランジスタとを順に介して前記リセット電位と接続され、
前記信号処理部は、
前記光電変換素子への前記光の入力後に、前記第1~第4スイッチトランジスタがオフの状態から前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオンされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第1信号とし、
前記第1信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第2信号とし、
前記第2信号が得られた後に前記制御部によって前記第1スイッチトランジスタがオン及びオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第3信号とし、
前記第3信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオンされた状態で前記第1スイッチトランジスタがオン及びオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第4信号とし、
前記第4信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタ及び前記第4スイッチトランジスタがオンされた状態で前記第1スイッチトランジスタがオン及びオフされたされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第15信号とし、
前記第15信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタ及び前記第4スイッチトランジスタがオンされた状態で前記第3スイッチトランジスタがオン及びオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第16信号とし、
前記第16信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオンされた状態で前記第4スイッチトランジスタがオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第17信号としたときに、
これら第1~第4信号及び第15~第17信号に基づいて該固体撮像装置から外部に出力される出力信号を生成する、請求項2又は3に記載の固体撮像装置。
【請求項8】
前記相関二重サンプリングは、前記第4信号と前記第1信号との差分に基づく第1差分信号を求める信号処理と、前記第3信号と前記第2信号との差分に基づく第2差分信号を求める信号処理と、のそれぞれに含まれ、
前記保持容量のリセット時の電圧に基づく補正は、前記第4信号と前記第17信号との差分に基づく第3差分信号を求める信号処理と、前記第15信号と前記第16信号との差分に基づく第4差分信号を求める信号処理と、のそれぞれに含まれる、請求項7に記載の固体撮像装置。
【請求項9】
少なくとも前記光電変換素子の容量に基づいて設定される第1閾値、少なくとも前記フローティングディフュージョンの容量に基づいて設定される第2閾値、及び少なくとも前記フローティングディフュージョンの容量及び前記第1保持容量に基づいて設定される第3閾値を格納する記憶部を備え、
前記信号処理部は、
前記第4差分信号の値と前記第3閾値とを比較し、前記第4差分信号の値が前記第3閾値より大きいときに、該第4差分信号を前記出力信号として出力し、
前記第4差分信号の値と前記第3閾値とを比較した結果、前記第4差分信号の値が前記第3閾値以下のときは、前記第3差分信号の値と前記第1閾値とを比較し、前記第3差分信号の値が前記第1閾値より大きいときに、該第3差分信号を前記出力信号として出力し、
前記第3差分信号の値と前記第1閾値とを比較した結果、前記第3差分信号の値が前記第1閾値以下のときは、前記第1差分信号の値と前記第2閾値とを比較し、前記第1差分信号の値が前記第2閾値より大きいときに、該第1差分信号を前記出力信号として出力し、
前記第1差分信号の値と前記第2閾値とを比較した結果、前記第1差分信号の値が前記第2閾値以下のときは、前記第2差分信号を前記出力信号として出力する、請求項8に記載の固体撮像装置。
【請求項10】
前記第1保持容量は、前記第2保持容量より小さい、請求項7~9のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の固体撮像装置を備えた撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置、及び固体撮像装置を備えた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハイダイナミックレンジを実現した固体撮像素子が知られている(US2017/0099423号公報参照)。
【0003】
この固体撮像素子は、いわゆる横型オーバーフロー蓄積容量(Lateral Overflow Integration Capacitor:LOFIC)を備えたCMOSイメージセンサー等であり、この固体撮像素子500の各画素501は、図14及び図15に示すように、フォトダイオード(光電変換素子)502と、フォトダイオード502で生じた電荷を当該電荷の量に応じた電圧に変換するフローティングディフュージョン503と、フォトダイオード502からオーバーフローした電荷を蓄積可能な横型オーバーフロー蓄積容量504と、を備えている。尚、図14及び図15のポテンシャル図における各領域の符号は、図14の等価回路図の対応する構成に付された符号の後ろにPを加えたものを使用している。また、図15の符号t1~t9は、図16に示す各トランジスタの駆動タイミングt1~t9と対応する符号である。
【0004】
この固体撮像素子500の各画素501では、フォトダイオード502への入射光の光量が大きいときに、該フォトダイオード502からオーバーフローしてきた電荷が横型オーバーフロー蓄積容量504(図15における符号504Pで示す領域参照)に蓄積され、この横型オーバーフロー蓄積容量504に蓄積された電荷も読み出すことで、ハイダイナミックレンジ(即ち、フォトダイオード502の容量以上の入力ダイナミックレンジ)を実現している。
【0005】
具体的に、各画素501では、フォトダイオード502への入射光の光量が大きいとき、即ち、フォトダイオード502において生じた電荷がその容量を超えてオーバーフローしたときには、フローティングディフュージョン503での変換ゲインが高い状態(即ち、フローティングディフュージョン503と横型オーバーフロー蓄積容量504との間に配置されているスイッチトランジスタ505がオフの状態)でフォトダイオード502からの電荷を読み出し(図16のt4~t7参照)、続けて、フローティングディフュージョン503での変換ゲインを低くして(即ち、フローティングディフュージョン503と横型オーバーフロー蓄積容量504との間に配置されているスイッチトランジスタ505がオンの状態)でフォトダイオード502と横型オーバーフロー蓄積容量504との合計の電荷を読み出す(図16のt8~t11参照)ことで、フォトダイオード502の容量以上の入力ダイナミックレンジを実現している。
【0006】
しかしながら、上記の固体撮像素子500では、フォトダイオード502において入射光によって生じた電荷を蓄積している間に暗電流が生じたり、横型オーバーフロー蓄積容量504においてリセットレベル(リセット信号)を知るために行われるリセット読み出しによって熱雑音が生じたりするが、相関二重サンプリングを行うことができないため、SN比が劣化する。
【0007】
詳しくは、各画素501では、光量の大きな光が入力したときに、フォトダイオード502からオーバーフローした電荷のうち、フローティングディフュージョン503で保持できない電荷が横型オーバーフロー蓄積容量504に蓄積され、この横型オーバーフロー蓄積容量504に蓄積された電荷が読み出された後、横型オーバーフロー蓄積容量504が画素のリセット信号によって読み出されていた。
【0008】
このため、フォトダイオード502の容量を超えた信号量(光量の大きな光)を画素501で読み取ることはできたが、フォトダイオード502から電荷がオーバーフローし始める光量の前後において、横型オーバーフロー蓄積容量504のリセットレベルが有する熱雑音と、フォトダイオード502からオーバーフローした電荷(信号)に重ね合わされる暗電流及びそのショットノイズとの影響により、図17に示すような大きなSN比の非連続性(ギャップ)Gが生じてしまう。
【0009】
このようなSN比の非連続性は、緩やかに諧調が変わる被写体、例えば、空、肌、雲等でとくに目立ってしまい、固体撮像素子500の画質を低下させる要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US2017/0099423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、ハイダイナミックレンジを実現しつつもSN比のギャップに起因する画質低下を抑えることができる固体撮像装置、及び固体撮像装置を備えた撮像装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る固体撮像装置は、
入力する光に応じて光電変換により電荷が生じる光電変換素子と、
前記電荷を当該電荷の量に応じた電圧に変換するフローティングディフュージョンと、
前記フローティングディフュージョンに接続され且つ前記光電変換素子からオーバーフローした前記電荷を蓄積可能な保持容量と、
前記フローティングディフュージョンで変換された前記電圧に基づく信号を処理する信号処理部と、を備え、
前記信号処理部は、前記保持容量を用いて読み出された前記信号の処理手段を複数有する。
【0013】
前記固体撮像装置では、
前記複数の処理手段は、相関二重サンプリング手段と、前記保持容量のリセット時の電圧に基づいて信号を補正する補正手段と、を含んでもよい。
【0014】
また、本発明に係る固体撮像装置は、
入力する光に応じて光電変換により電荷が生じる光電変換素子と、
前記電荷を当該電荷の量に応じた電圧に変換するフローティングディフュージョンと、
前記フローティングディフュージョンに接続され且つ前記光電変換素子からオーバーフローした前記電荷を蓄積可能な保持容量と、
前記フローティングディフュージョンで変換された前記電圧に基づく信号を処理する信号処理部と、を備え、
前記信号処理部は、
前記光電変換素子への前記光の入力によって生成される前記電荷が該光電変換素子からオーバーフローしない第一状態のときは、前記フローティングディフュージョンでの変換ゲインの異なる前記信号に対し、それぞれ相関二重サンプリングを行い、
前記光電変換素子への前記光の入力によって生成される前記電荷が該光電変換素子からオーバーフローした第二状態のときは、前記信号に対し、前記保持容量のリセット時の電圧に基づいて補正する。
【0015】
また、前記固体撮像装置は、
前記光電変換素子と前記フローティングディフュージョンとを接続する第1スイッチトランジスタと、
前記フローティングディフュージョンと前記保持容量とを接続する第2スイッチトランジスタと、
前記保持容量とリセット電位とを接続する第3スイッチトランジスタと、
各スイッチトランジスタを制御する制御部と、を備え、
前記フローティングディフュージョンは、前記第2スイッチトランジスタと前記第3スイッチトランジスタとを順に介して前記リセット電位と接続され、
前記信号処理部は、
前記光電変換素子への前記光の入力後に、前記第1~第3スイッチトランジスタがオフの状態から前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオンされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第1信号とし、
前記第1信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第2信号とし、
前記第2信号が得られた後に前記制御部によって前記第1スイッチトランジスタがオン及びオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第3信号とし、
前記第3信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオンされた状態で前記第1スイッチトランジスタがオン及びオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第4信号とし、
前記第4信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオンされた状態で前記第3スイッチトランジスタがオン及びオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第5信号としたときに、
これら前記第1~第5信号に基づいて該固体撮像装置から外部に出力される出力信号を生成してもよい。
【0016】
また、前記固体撮像装置では、
前記相関二重サンプリングは、前記第4信号と前記第1信号との差分に基づく第1差分信号を求める信号処理と、前記第3信号と前記第2信号との差分に基づく第2差分信号を求める信号処理と、のそれぞれに含まれ、
前記保持容量のリセット時の電圧に基づく補正は、前記第4信号と前記第5信号との差分に基づく第3差分信号を求める信号処理に含まれてもよい。
【0017】
また、前記固体撮像装置は、
少なくとも前記光電変換素子の容量に基づいて設定される第1閾値、及び少なくとも前記フローティングディフュージョンの容量に基づいて設定される第2閾値を格納する記憶部を備え、
前記信号処理部は、
前記第3差分信号の値と前記第1閾値とを比較し、前記第3差分信号の値が前記第1閾値より大きいときに、該第3差分信号を前記出力信号として出力し、
前記第3差分信号の値と前記第1閾値とを比較した結果、前記第3差分信号の値が前記第1閾値以下のときは、前記第1差分信号の値と前記第2閾値とを比較し、前記第1差分信号の値が前記第2閾値より大きいときに、該第1差分信号を前記出力信号として出力し、
前記第1差分信号の値と前記第2閾値とを比較した結果、前記第1差分信号の値が前記第2閾値以下のときは、前記第2差分信号を前記出力信号として出力してもよい。
【0018】
また、前記固体撮像装置では、
前記保持容量である第1保持容量と異なる第2保持容量であって、前記光電変換素子からオーバーフローした前記電荷を蓄積可能な第2保持容量と、
前記光電変換素子と前記フローティングディフュージョンとを接続する第1スイッチトランジスタと、
前記フローティングディフュージョンと前記保持容量とを接続する第2スイッチトランジスタと、
前記第2保持容量とリセット電位とを接続する第3スイッチトランジスタと、
前記第1保持容量と前記第2保持容量とを接続する第4スイッチトランジスタと、
各スイッチトランジスタを制御する制御部と、を備え、
前記フローティングディフュージョンは、前記第2スイッチトランジスタと前記第4スイッチトランジスタとを順に介して前記第2保持容量と接続されると共に、前記第2スイッチトランジスタと前記第4スイッチトランジスタと前記第3スイッチトランジスタとを順に介して前記リセット電位と接続され、
前記第1保持容量は、前記第4スイッチトランジスタと前記第3スイッチトランジスタとを順に介して前記リセット電位と接続され、
前記信号処理部は、
前記光電変換素子への前記光の入力後に、前記第1~第4スイッチトランジスタがオフの状態から前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオンされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第1信号とし、
前記第1信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第2信号とし、
前記第2信号が得られた後に前記制御部によって前記第1スイッチトランジスタがオン及びオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第3信号とし、
前記第3信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオンされた状態で前記第1スイッチトランジスタがオン及びオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第4信号とし、
前記第4信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタ及び前記第4スイッチトランジスタがオンされた状態で前記第1スイッチトランジスタがオン及びオフされたされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第15信号とし、
前記第15信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタ及び前記第4スイッチトランジスタがオンされた状態で前記第3スイッチトランジスタがオン及びオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第16信号とし、
前記第16信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオンされた状態で前記第4スイッチトランジスタがオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第17信号としたときに、
これら第1~第4信号及び第15~第17信号に基づいて該固体撮像装置から外部に出力される出力信号を生成してもよい。
【0019】
また、前記固体撮像装置では、
前記相関二重サンプリングは、前記第4信号と前記第1信号との差分に基づく第1差分信号を求める信号処理と、前記第3信号と前記第2信号との差分に基づく第2差分信号を求める信号処理と、のそれぞれに含まれ、
前記保持容量のリセット時の電圧に基づく補正は、前記第4信号と前記第17信号との差分に基づく第3差分信号を求める信号処理と、前記第15信号と前記第16信号との差分に基づく第4差分信号を求める信号処理と、のそれぞれに含まれてもよい。
【0020】
また、前記固体撮像装置は、
少なくとも前記光電変換素子の容量に基づいて設定される第1閾値、少なくとも前記フローティングディフュージョンの容量に基づいて設定される第2閾値、及び少なくとも前記フローティングディフュージョンの容量及び前記第1保持容量に基づいて設定される第3閾値を格納する記憶部を備え、
前記信号処理部は、
前記第4差分信号の値と前記第3閾値とを比較し、前記第4差分信号の値が前記第3閾値より大きいときに、該第4差分信号を前記出力信号として出力し、
前記第4差分信号の値と前記第3閾値とを比較した結果、前記第4差分信号の値が前記第3閾値以下のときは、前記第3差分信号の値と前記第1閾値とを比較し、前記第3差分信号の値が前記第1閾値より大きいときに、該第3差分信号を前記出力信号として出力し、
前記第3差分信号の値と前記第1閾値とを比較した結果、前記第3差分信号の値が前記第1閾値以下のときは、前記第1差分信号の値と前記第2閾値とを比較し、前記第1差分信号の値が前記第2閾値より大きいときに、該第1差分信号を前記出力信号として出力し、
前記第1差分信号の値と前記第2閾値とを比較した結果、前記第1差分信号の値が前記第2閾値以下のときは、前記第2差分信号を前記出力信号として出力してもよい。
【0021】
また、前記固体撮像装置では、
前記第1保持容量は、前記第2保持容量より小さくてもよい。
【0022】
また、本発明に係る撮像装置は、上記の何れかの固体撮像装置を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、第一実施形態に係る固体撮像装置の構成を示す図である。
図2図2は、前記固体撮像装置が備える画素の等価回路図である。
図3図3は、前記画素の駆動タイミングと該駆動タイミングと対応する画素信号とを示す図である。
図4図4は、前記画素の駆動タイミングと該駆動タイミングと対応する画素信号とを示す図である。
図5図5は、前記画素の駆動タイミングと該駆動タイミングと対応する画素信号とを示す図である。
図6図6は、前記固体撮像装置が備える信号処理部のデータフローチャートである。
図7図7は、前記画素の入出力特性を表すグラフである。
図8図8は、前記画素のSN比を示すグラフである。
図9図9は、第二実施形態に係る固体撮像装置の構成を示す図である。
図10図10は、前記固体撮像装置が備える画素の等価回路図である。
図11図11は、前記画素のタイミングチャートである。
図12図12は、前記固体撮像装置が備える信号処理部のデータフローチャートである。
図13図13は、前記画素のSN比を示すグラフである。
図14図14は、従来の固体撮像装置が備える画素の等価回路図、及びポテンシャル図である。
図15図15は、前記画素での信号電荷の流れを示すポテンシャル図である。
図16図16は、前記画素の駆動タイミングを示す図である。
図17図17は、前記画素のSN比を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本実施形態の固体撮像装置は、
入力する光に応じて光電変換により電荷が生じる光電変換素子と、
前記電荷を当該電荷の量に応じた電圧に変換するフローティングディフュージョンと、
前記フローティングディフュージョンに接続され且つ前記光電変換素子からオーバーフローした前記電荷を蓄積可能な保持容量と、
前記フローティングディフュージョンで変換された前記電圧に基づく信号を処理する信号処理部と、を備え、
前記信号処理部は、前記保持容量を用いて読み出された前記信号の処理手段を複数有する。
【0025】
かかる構成によれば、入力する光の光量が大きい範囲では保持容量がオーバーフローした電荷を蓄積することでハイダイナミックレンジを実現しつつも、光電変換素子に入力する光の光量(光電変換素子で生じる電荷の量)に応じた信号処理によって生成された信号を出力することでSN比のグラフにおける非連続の位置(光量)でのギャップを好適に抑え、これにより、該ギャップに起因する画質低下を抑えている。詳しくは、以下の通りである。
【0026】
光の入力によって光電変換素子で生じた電荷が該光電変換素子の容量を超えてオーバーフローしても、保持容量がこのオーバーフローした電荷を蓄積し、光電変換素子で生じた電荷のフローティングディフュージョンからの読み出しのときにこの保持容量に蓄積された電荷も読み出すことで、光電変換素子の容量以上の入力ダイナミックレンジ(即ち、ハイダイナミックレンジ)を実現している。
【0027】
また、保持容量を用いて光電変換素子で生じた電荷を読み出したときの信号に対し、複数の処理手段によって適宜信号処理されることで、SN比のグラフにおける非連続の位置(光量)でのギャップが好適に抑えられる。
【0028】
この場合、例えば、
前記複数の処理手段は、相関二重サンプリング手段と、前記保持容量のリセット時の電圧に基づいて信号を補正する補正手段と、を含んでもよい。
【0029】
このように、保持容量を用いて光電変換素子で生じた電荷を読み出した信号に対して相関二重サンプリングが行われることで、該信号は、光電変換素子での電荷の蓄積中に生じた暗電流や保持容量で生じる熱雑音の影響を受けない若しくは十分に抑えられる。また、入力する光の光量が大きく、光電変換素子から電荷がオーバーフローしたときには、このオーバーフローした電荷を蓄積した保持容量を用いて光電変換素子で生じた電荷を読み出した信号に対して保持容量のリセット時の電圧に基づく補正が行われるが、この補正された信号は、光電変換素子で生じた暗電流や保持容量で生じる熱雑音等の影響を受ける。しかし、前記オーバーフローする光量では、読み出される信号(電荷数)が大きいため、該信号において相対的に暗電流や熱雑音の影響が小さくなり、これにより、SN比のグラフにおける非連続位置(前記オーバーフローし始める位置)でのギャップが抑えられる(例えば、図8に示すギャップG1、G2参照)。
【0030】
また、本実施形態の記固体撮像装置は、
入力する光に応じて光電変換により電荷が生じる光電変換素子と、
前記電荷を当該電荷の量に応じた電圧に変換するフローティングディフュージョンと、
前記フローティングディフュージョンに接続され且つ前記光電変換素子からオーバーフローした前記電荷を蓄積可能な保持容量と、
前記フローティングディフュージョンで変換された前記電圧に基づく信号を処理する信号処理部と、を備え、
前記信号処理部は、
前記光電変換素子への前記光の入力によって生成される前記電荷が該光電変換素子からオーバーフローしない第一状態のときは、前記フローティングディフュージョンでの変換ゲインの異なる前記信号に対し、それぞれ相関二重サンプリングを行い、
前記光電変換素子への前記光の入力によって生成される前記電荷が該光電変換素子からオーバーフローした第二状態のときは、前記信号に対し、前記保持容量のリセット時の電圧に基づいて補正する。
【0031】
かかる構成によれば、入力する光の光量が大きい範囲(即ち、光電変換素子への前記光の入力によって生成される前記電荷が該光電変換素子からオーバーフローした第二状態)では保持容量がオーバーフローした電荷を蓄積することでハイダイナミックレンジを実現しつつも、光電変換素子に入力する光の光量(光電変換素子で生じる電荷の量)に応じた信号処理によって生成された信号を出力することでSN比のグラフにおける非連続の位置(光量)でのギャップを好適に抑え、これにより、該ギャップに起因する画質低下を抑えている。詳しくは、以下の通りである。
【0032】
光の入力によって光電変換素子で生じた電荷が該光電変換素子の容量を超えてオーバーフローしても、保持容量がこのオーバーフローした電荷を蓄積し、光電変換素子で生じた電荷(信号)のフローティングディフュージョンからの読み出しのときにこの保持容量に蓄積された電荷も読み出すことで、光電変換素子の容量以上の入力ダイナミックレンジ(即ち、ハイダイナミックレンジ)を実現している。
【0033】
また、第一状態において、光電変換素子で生じる電荷のフローティングディフュージョンからの異なる変換ゲインでの読み出し(例えば、高変換ゲインでの読み出しと、低変換ゲインでの読み出しと)では、いずれも相関二重サンプリングが可能であるため、これら読み出した信号は、光電変換素子での電荷の蓄積中に生じた暗電流や保持容量で生じる熱雑音の影響を受けない若しくは十分に抑えられるため、SN比のグラフにおける非連続位置(変換ゲインが切り替わる位置)でのギャップが抑えられる(例えば、図8のギャップG1参照)。
【0034】
一方、光電変換素子から電荷がオーバーフローした状態(第二状態)での読み出し信号は、保持容量のリセット時の電圧に基づいて補正されるが、相関二重サンプリングができないため光電変換素子で生じた暗電流や保持容量で生じる熱雑音等の影響を受ける。しかし、前記オーバーフローする光量では、読み出される信号(電荷数)が大きいため、該信号において相対的に暗電流や熱雑音の影響が小さくなり、これにより、SN比のグラフにおける非連続位置(前記オーバーフローし始める位置)でのギャップが抑えられる(例えば、図8のギャップG2参照)。
【0035】
以上のように、上記構成によれば、SN比のグラフにおいて非連続位置でのギャップがそれぞれ抑えられる(小さくなる)ため、該ギャップに起因する画質低下が効果的に抑えられる。
【0036】
また、前記固体撮像装置は、
前記光電変換素子と前記フローティングディフュージョンとを接続する第1スイッチトランジスタと、
前記フローティングディフュージョンと前記保持容量とを接続する第2スイッチトランジスタと、
前記保持容量とリセット電位とを接続する第3スイッチトランジスタと、
各スイッチトランジスタを制御する制御部と、を備え、
前記フローティングディフュージョンは、前記第2スイッチトランジスタと前記第3スイッチトランジスタとを順に介して前記リセット電位と接続され、
前記信号処理部は、
前記光電変換素子への前記光の入力後に、前記第1~第3スイッチトランジスタがオフの状態から前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオンされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第1信号とし、
前記第1信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第2信号とし、
前記第2信号が得られた後に前記制御部によって前記第1スイッチトランジスタがオン及びオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第3信号とし、
前記第3信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオンされた状態で前記第1スイッチトランジスタがオン及びオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第4信号とし、
前記第4信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオンされた状態で前記第3スイッチトランジスタがオン及びオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第5信号としたときに、
これら前記第1~第5信号に基づいて該固体撮像装置から外部に出力される出力信号を生成してもよい。
【0037】
このように、光電変換素子の電荷の一回の蓄積(光の一回の入力)において、五つの信号(第1~第5信号)を得ることで、入力する光の光量(光電変換素子で生じる電荷の量)に応じて、相関二重サンプリングによる信号処理と、保持容量のリセット時の電圧に基づいて補正する信号処理とのいずれの信号処理にも対応することが可能となる。
【0038】
この場合、例えば、前記固体撮像装置において、
前記相関二重サンプリングは、前記第4信号と前記第1信号との差分に基づく第1差分信号を求める信号処理と、前記第3信号と前記第2信号との差分に基づく第2差分信号を求める信号処理と、のそれぞれに含まれ、
前記保持容量のリセット時の電圧に基づく補正は、前記第4信号と前記第5信号との差分に基づく第3差分信号を求める信号処理に含まれる。
【0039】
また、前記固体撮像装置は、
少なくとも前記光電変換素子の容量に基づいて設定される第1閾値、及び少なくとも前記フローティングディフュージョンの容量に基づいて設定される第2閾値を格納する記憶部を備え、
前記信号処理部は、
前記第3差分信号の値と前記第1閾値とを比較し、前記第3差分信号の値が前記第1閾値より大きいときに、該第3差分信号を前記出力信号として出力し、
前記第3差分信号の値と前記第1閾値とを比較した結果、前記第3差分信号の値が前記第1閾値以下のときは、前記第1差分信号の値と前記第2閾値とを比較し、前記第1差分信号の値が前記第2閾値より大きいときに、該第1差分信号を前記出力信号として出力し、
前記第1差分信号の値と前記第2閾値とを比較した結果、前記第1差分信号の値が前記第2閾値以下のときは、前記第2差分信号を前記出力信号として出力してもよい。
【0040】
このように、信号処理部が二つの閾値を用いて出力する信号を選択することにより、光電変換素子に入力する光の光量(光電変換素子で生じる電荷の量)に応じた信号処理、即ち、相関二重サンプリングによる信号処理と、保持容量のリセット時の電圧に基づいて補正する信号処理との切り替えやこれらの処理によって生成された信号の選択等がより確実に行われる。
【0041】
また、前記固体撮像装置は、
前記保持容量である第1保持容量と異なる第2保持容量であって、前記光電変換素子からオーバーフローした前記電荷を蓄積可能な第2保持容量と、
前記光電変換素子と前記フローティングディフュージョンとを接続する第1スイッチトランジスタと、
前記フローティングディフュージョンと前記保持容量とを接続する第2スイッチトランジスタと、
前記第2保持容量とリセット電位とを接続する第3スイッチトランジスタと、
前記第1保持容量と前記第2保持容量とを接続する第4スイッチトランジスタと、
各スイッチトランジスタを制御する制御部と、を備え、
前記フローティングディフュージョンは、前記第2スイッチトランジスタと前記第4スイッチトランジスタとを順に介して前記第2保持容量と接続されると共に、前記第2スイッチトランジスタと前記第4スイッチトランジスタと前記第3スイッチトランジスタとを順に介して前記リセット電位と接続され、
前記第1保持容量は、前記第4スイッチトランジスタと前記第3スイッチトランジスタとを順に介して前記リセット電位と接続され、
前記信号処理部は、
前記光電変換素子への前記光の入力後に、前記第1~第4スイッチトランジスタがオフの状態から前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオンされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第1信号とし、
前記第1信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第2信号とし、
前記第2信号が得られた後に前記制御部によって前記第1スイッチトランジスタがオン及びオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第3信号とし、
前記第3信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオンされた状態で前記第1スイッチトランジスタがオン及びオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第4信号とし、
前記第4信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタ及び前記第4スイッチトランジスタがオンされた状態で前記第1スイッチトランジスタがオン及びオフされたされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第15信号とし、
前記第15信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタ及び前記第4スイッチトランジスタがオンされた状態で前記第3スイッチトランジスタがオン及びオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第16信号とし、
前記第16信号が得られた後に前記制御部によって前記第2スイッチトランジスタがオンされた状態で前記第4スイッチトランジスタがオフされたときの前記フローティングディフュージョンの電圧に基づく信号を第17信号としたときに、
これら第1~第4信号及び第15~第17信号に基づいて該固体撮像装置から外部に出力される出力信号を生成してもよい。
【0042】
このように、光電変換素子の電荷の一回の蓄積(光の一回の入力)において、七つの信号(第1~第4信号及び第15~第17信号)を得ることで、入力する光の光量(光電変換素子で生じる電荷の量)に応じて、相関二重サンプリングによる信号処理と、保持容量のリセット時の電圧に基づいて補正する信号処理とのいずれの信号処理にも対応することが可能となる。
【0043】
しかも、光電変換素子からオーバーフローした電荷を蓄積可能な二つの保持容量(第1保持容量、第2保持容量)を備え、光電変換素子で生じた電荷の量に応じて使用される保持容量の数が調整されることで、熱雑音等の保持容量に起因する画質低下を抑えることができる。即ち、保持容量が大きいほどノイズの原因となる熱雑音等が大きくなるため、光電変換素子で生じた電荷の蓄積に第1保持容量を使用するが第2保持容量を使用しない場合には、同じ容量(第1保持容量と第2保持容量の合計の容量)を一つの保持容量で確保する構成に比べ、熱雑音等の保持容量に起因する画質低下が抑えられる。
【0044】
この場合、例えば、前記固体撮像装置において、
前記相関二重サンプリングは、前記第4信号と前記第1信号との差分に基づく第1差分信号を求める信号処理と、前記第3信号と前記第2信号との差分に基づく第2差分信号を求める信号処理と、のそれぞれに含まれ、
前記保持容量のリセット時の電圧に基づく補正は、前記第4信号と前記第17信号との差分に基づく第3差分信号を求める信号処理と、前記第15信号と前記第16信号との差分に基づく第4差分信号を求める信号処理と、のそれぞれに含まれる。
【0045】
また、前記固体撮像装置は、
少なくとも前記光電変換素子の容量に基づいて設定される第1閾値、少なくとも前記フローティングディフュージョンの容量に基づいて設定される第2閾値、及び少なくとも前記フローティングディフュージョンの容量及び前記第1保持容量に基づいて設定される第3閾値を格納する記憶部を備え、
前記信号処理部は、
前記第4差分信号の値と前記第3閾値とを比較し、前記第4差分信号の値が前記第3閾値より大きいときに、該第4差分信号を前記出力信号として出力し、
前記第4差分信号の値と前記第3閾値とを比較した結果、前記第4差分信号の値が前記第3閾値以下のときは、前記第3差分信号の値と前記第1閾値とを比較し、前記第3差分信号の値が前記第1閾値より大きいときに、該第3差分信号を前記出力信号として出力し、
前記第3差分信号の値と前記第1閾値とを比較した結果、前記第3差分信号の値が前記第1閾値以下のときは、前記第1差分信号の値と前記第2閾値とを比較し、前記第1差分信号の値が前記第2閾値より大きいときに、該第1差分信号を前記出力信号として出力し、
前記第1差分信号の値と前記第2閾値とを比較した結果、前記第1差分信号の値が前記第2閾値以下のときは、前記第2差分信号を前記出力信号として出力してもよい。
【0046】
このように、信号処理部が三つの閾値を用いて出力する信号を選択することにより、光電変換素子に入力する光の光量(光電変換素子で生じる電荷の量)に応じた信号処理、即ち、相関二重サンプリングによる信号処理と、保持容量のリセット時の電圧に基づいて補正する信号処理との切り替えやこれらの処理によって生成された信号の選択等がより確実に行われる。
【0047】
また、前記固体撮像装置では、
前記第1保持容量は、前記第2保持容量より小さいことが好ましい。
【0048】
保持容量に蓄積される電荷の数が大きくなるほど、保持容量から読み出される前記電荷の数に応じた信号に対するノイズ(熱雑音等の保持容量に起因するノイズ)の相対的な大きさが抑えられる、即ち、前記ノイズの画質に対する影響が抑えられる。このため、光電変換素子からの電荷の数が少ないときに使用される第1保持容量を小さくしてこの第1保持容量のみが使用されるときに該第1保持容量で生じるノイズを抑えると共に、光電変換素子からの電荷の数が大きくなって前記ノイズの画質に対する影響が相対的に小さくなるときに使用される第2保持容量を大きくすることで、ハイダイナミックレンジを実現しつつ保持容量に起因する画質の低下を好適に抑えることができる。
【0049】
また、本実施形態の撮像装置は、上記のいずれかの固体撮像装置を備えている。
【0050】
以下、本発明の第一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0051】
[撮像装置の構成例]
本実施形態の撮像装置は、例えばスマートフォンやデジタルカメラである。また、本実施形態の固体撮像装置は、撮像装置に組み込まれ、CMOSイメージセンサー等の固体撮像素子(SOLID STATE IMAGE SENSOR)を含む。尚、固体撮像装置1は、少なくとも固体撮像素子を含み、本実施形態の固体撮像装置1は、CMOSイメージセンサー(固体撮像素子)と、信号処理部7と、メモリ8と、を含む。
【0052】
具体的に、この撮像装置に組み込まれた固体撮像装置1は、図1に示すように、画素アレイ部2と、垂直駆動部3と、複数のカラム信号処理部4と、水平駆動部5と、制御部6と、信号処理部7とを備える。また、固体撮像装置1は、信号処理部7で処理される信号等を格納可能なメモリ8を備える。本実施形態の固体撮像装置1において、少なくとも画素アレイ部2と垂直駆動部3と複数のカラム信号処理部4と水平駆動部5と制御部6とが、CMOSイメージセンサーを構成する。
【0053】
少なくとも、画素アレイ部2、垂直駆動部3、カラム信号処理部4、水平駆動部5、制御部6、及び信号処理部7は、同一の半導体基板上又は電気的に接続された複数の半導体基板上に配置されている。尚、信号処理部7及びメモリ8は、画素アレイ部2、垂直駆動部3、カラム信号処理部4、水平駆動部5、及び制御部6が配置された半導体基板に配置されてもよく、異なる基板上等に配置されていてもよい。即ち、信号処理部7及びメモリ8の配置場所は限定されない。
【0054】
画素アレイ部2は、行列状に2次元配置される複数の画素10を有する。これら複数の画素10のそれぞれは、入力した光(入射光)を光電変換して入力光量に応じた量の信号電荷(電荷)を内部に蓄積し、この蓄積した信号電荷を出力することが可能な光電変換素子11を有する有効単位画素である。各画素10の具体的な構成の詳細については、後述する。
【0055】
また、複数の画素10は、有効単位画素の他に、光電変換素子のない構造のダミー単位画素や、受光面が遮光されることで外部からの光の入力が遮断された遮光単位画素等を含んでもよい。この遮光単位画素は、受光面が遮光された構造である以外は、有効単位画素と同様の構成を備えている。
【0056】
また、画素アレイ部2は、行列状の画素配列に対して、行毎に配置され且つそれぞれが行方向に延びる複数の行信号線21と、列毎に配置され且つそれぞれが列方向に延びる複数の列信号線22と、を有する。これら複数の行信号線21のそれぞれは、垂直駆動部3に接続され、複数の列信号線22のそれぞれは、対応するカラム信号処理部4に接続されている。
【0057】
垂直駆動部3は、例えばシフトレジスタによって構成され、所定の行信号線21を選択して、選択された行信号線21に画素10を駆動するためのパルス(信号)を供給し、行単位で画素10を駆動する。詳しくは、垂直駆動部3は、画素アレイ部2の各画素10を行単位で順次垂直方向に選択走査し、各画素10の光電変換素子11において入力光量に応じて生成された信号電荷に基づく画素信号を、列信号線22を通してカラム信号処理部4に供給する。
【0058】
複数のカラム信号処理部4のそれぞれは、画素10の列ごとに配置されており、一行分の画素10から出力される画素信号を画素列ごとにノイズ除去などの信号処理を行う。本実施形態の各カラム信号処理部4は、画素固有の固定パターンノイズを除去するための相関二重サンプリング(Correlated Double Sampling:CDS)及びA/D(Analog/Digital)変換等の信号処理を行う。
【0059】
水平駆動部5は、例えばシフトレジスタによって構成され、水平走査パルスを順次出力することによって、複数のカラム信号処理部4のそれぞれを順番に選択し、各カラム信号処理部4で信号処理された画素信号を順番に信号処理部7に出力させる。
【0060】
制御部6は、固体撮像装置1の各部の動作を制御する。具体的に、制御部6は、入力クロック信号と、動作モードなどを指令するデータと、を受け取ると共に、固体撮像装置1の内部情報などのデータを出力する。詳しくは、制御部6は、垂直同期信号、水平同期信号、及び、マスタクロック信号に基づいて、垂直駆動部3、カラム信号処理部4、及び、水平駆動部5等の動作の基準となるクロック信号や制御信号を生成し、この生成したクロック信号や制御信号を、垂直駆動部3、カラム信号処理部4、及び、水平駆動部5等に出力する。
【0061】
信号処理部7は、各カラム信号処理部4から出力される画素信号に対して演算処理等の種々の信号処理を行う。具体的に、信号処理部7は、画素信号についての演算を行う演算部71と、演算部での演算結果についての判断を行う判断部72と、判断部の判断結果に基づいて信号を出力するセレクタ73と、を有する(図6参照)。本実施形態の信号処理部7は、DSP(Digital Signal Processor)である。また、信号処理部7での具体的な処理内容については後述する。
【0062】
尚、信号処理部7の具体的な配置場所は限定されない。本実施形態の固体撮像装置1では、信号処理部7は、CMOSイメージセンサーと異なる位置に配置されているが、信号処理部7の全構成がCMOSイメージセンサーに配置(搭載)されていてもよく、信号処理部7の一部の構成がCMOSイメージセンサーに配置されていてもよい。
【0063】
メモリ8は、ラインメモリ、フレームメモリ、FIFO等であり、各カラム信号処理部4から出力される画素信号等を格納できる。このメモリ8の具体的な構成については、後述する。
【0064】
[画素の構成]
続いて、画素アレイ部2に行列状に配置されている画素10の具体的な構造について、図2を参照しつつ説明する。
【0065】
画素10は、入力する光に応じて光電変換により信号電荷が生じる光電変換素子11と、光電変換素子11で生じた信号電荷を当該信号電荷の量に応じた電圧信号(電圧)に変換するフローティングディフュージョン12と、フローティングディフュージョン12に接続され且つ光電変換素子11からオーバーフローした信号電荷を蓄積可能な保持容量13と、を備える。本実施形態の光電変換素子11は、例えばフォトダイオードである。
【0066】
また、画素10は、光電変換素子11とフローティングディフュージョン12とを接続する転送トランジスタ(第1スイッチトランジスタ)14と、フローティングディフュージョン12と保持容量13とを接続する保持スイッチトランジスタ(第2スイッチトランジスタ)15と、保持容量13とリセット電源(リセット電位)VDD1とを接続するリセットトランジスタ(第3スイッチトランジスタ)16と、フローティングディフュージョン12の電圧信号を増幅する増幅トランジスタ17と、増幅トランジスタ17と列信号線22とを接続する選択トランジスタ18と、を備える。
【0067】
これら行列状に配置される複数の画素10に対し、複数の行信号線21が、画素行毎に配線されている。そして、垂直駆動部3から行信号線21を介して、各種の駆動信号φTX、φS、φRES、φSELが各画素10に供給される。これらの駆動信号φTX、φS、φRES、φSELは、上述のパルスである。
【0068】
フローティングディフュージョン12は、光電変換素子11で生じた信号電荷を電圧信号に電荷電圧変換して出力する。本実施形態のフローティングディフュージョン12は、保持スイッチトランジスタ15とリセットトランジスタ16とを順に介してリセット電源VDD1とも接続されている。
【0069】
保持容量13は、キャパシタであり、上述のように保持スイッチトランジスタ15を介してフローティングディフュージョン12と接続されると共に、リセットトランジスタ16を介してリセット電源VDD1とも接続されている。
【0070】
転送トランジスタ14のゲート電極には、駆動信号φTXが印加される。この駆動信号φTXは、制御部6からの信号(指令)に基づき垂直駆動部3から出力される。駆動信号φTXがHiになると(即ち、転送トランジスタ14がオンになると)、転送トランジスタ14の転送ゲートが導通状態となり、光電変換素子11に蓄積されている信号電荷が、該転送トランジスタ14を介してフローティングディフュージョン12に転送される。尚、駆動信号φTXがLowになると、転送トランジスタ14は、オフになる。
【0071】
保持スイッチトランジスタ15のゲート電極には、駆動信号φSが印加される。この駆動信号φSは、制御部6からの信号に基づき垂直駆動部3から出力される。駆動信号φSがHiになる(即ち、保持スイッチトランジスタ15がオンになる)と、保持スイッチトランジスタ15の保持ゲートが導通状態となり、信号電荷がフローティングディフュージョン12から保持容量13に移動可能となる。尚、駆動信号φSがLowになると、保持スイッチトランジスタ15は、オフになる。また、保持スイッチトランジスタ15がオフでも、信号電荷が光電変換素子11からオーバーフローしたときに保持容量13に蓄積されるよう、保持スイッチトランジスタ15の保持ゲート(ポテンシャル障壁)が調整されている。
【0072】
リセットトランジスタ16のゲート電極には、駆動信号φRESが印加される。この駆動信号φRESは、制御部6からの信号に基づき垂直駆動部3から出力される。駆動信号φRESがHiになる(即ち、リセットトランジスタ16がオンになる)と、リセットトランジスタ16のリセットゲートが導通状態となり、保持スイッチトランジスタ15のゲート電極に印加される駆動信号φSに応じてフローティングディフュージョン12及び保持容量13の電位、又は、保持容量13の電位がリセット電源(リセット電位)VDD1のレベル(リセットレベル)にリセットされる。尚、駆動信号φRESがLowになると、リセットトランジスタ16は、オフになる。
【0073】
増幅トランジスタ17では、ゲート電極がフローティングディフュージョン12に接続されると共に、ドレイン電極が電源VDD2に接続されている。この増幅トランジスタ17は、フローティングディフュージョン12の電圧を画素信号として読み出す読み出し回路(いわゆるソースフォロア回路SF)の入力部となる。即ち、増幅トランジスタ17は、ソース電極が選択トランジスタ18を介して列信号線22に接続されることにより、当該列信号線22の一端に接続される定電流源とソースフォロア回路SFを構成する。
【0074】
選択トランジスタ18は、増幅トランジスタ17のソース電極と列信号線22とに接続される。選択トランジスタ18のゲート電極には、駆動信号φSELが印加される。この駆動信号φSELは、制御部6からの信号に基づき垂直駆動部3から出力される。駆動信号φSELがHiになる(即ち、選択トランジスタ18がオンになる)と、選択トランジスタ18の選択ゲートが導通状態になり、画素10が選択状態となる。これにより、増幅トランジスタ17から出力される画素信号が、選択トランジスタ18を介して、列信号線22に出力される。尚、駆動信号φSELがLowになると、選択トランジスタ18はオフになる。
【0075】
[固体撮像装置の画素の駆動例]
以上のように構成される画素10の駆動タイミングについて、図3図5も参照しつつ説明する。尚、図3図5は、画素10の駆動信号(制御信号のパルス)と、それに応じて列信号線22に現れる出力電圧(画素信号)を示し、これら図3図5において、駆動信号φSEL、φRES、φS、φTXは、それぞれ同じであり、各図におけるVoutは、出力電圧を示す。
【0076】
先ず、時刻t01において、選択トランジスタ18がオフの状態で、転送トランジスタ14と、保持スイッチトランジスタ15と、リセットトランジスタ16とがオンされ、フローティングディフュージョン12と保持容量13とがリセットレベルになる。
【0077】
このように、フローティングディフュージョン12がリセット電源VDD1につながった状態で転送トランジスタ14がオフされることで光電変換素子11が浮遊状態となり、光電変換素子11において光の入力により生じた信号電荷の蓄積が開始される。
【0078】
この転送トランジスタ14のオフとほぼ同時に(詳しくは、わずかに遅れて)、保持スイッチトランジスタ15と、リセットトランジスタ16とがそれぞれオフされることで、フローティングディフュージョン12と保持容量13も浮遊状態になる。このとき、光電変換素子11から信号電荷がオーバーフローした(溢れてきた)場合に、フローティングディフュージョン12と保持容量13とは、このオーバーフローしてきた信号電荷を保持(蓄積)可能である。
【0079】
このように転送トランジスタ14、保持スイッチトランジスタ15、及びリセットトランジスタ16がオフになった状態で、転送トランジスタ14がオフになってから所定の蓄積期間ΔTの経過後の時刻t02から、当該画素10の画素信号の読み出しが始まる。
【0080】
具体的に、画素10の各スイッチトランジスタ14~16、18がオフの状態から、制御部6(詳しくは、制御部6の指令を受けた垂直駆動部3)が駆動信号φSELをHiにして選択トランジスタ18をオンすると、該画素10が列信号線22と接続される。
【0081】
その後、制御部6が駆動信号φSをHiにして保持スイッチトランジスタ15をオンすることで、フローティングディフュージョン12と保持容量13とが電気的に接続される。これにより、フローティングディフュージョン12と保持容量13とにおける熱雑音(詳しくは、熱雑音電荷)と、光電変換素子11における信号電荷の蓄積期間中に発生した暗電流(詳しくは、暗電流によって生じた暗電流電荷)等とが混合され、そのときのフローティングディフュージョン12の電圧(保持容量参照電位)がソースフォロア回路SFに現れた時刻t03から有限の時間をかけて該ソースフォロア回路SFから読み出され、A/D変換された後に第1信号(画素信号)としてメモリ8に格納される。
【0082】
本実施形態の固体撮像装置1では、カラム信号処理部4においてA/D変換された状態(即ち、デジタル信号に変換された状態)で第1信号がメモリ8に格納されるが、この構成に限定されない。ソースフォロア回路SFから読み出された画素信号(フローティングディフュージョン12の電圧)がアナログ信号のままで以降の各処理が行われてもよい。尚、後のタイミングでソースフォロア回路SFから読み出される画素信号(第2~第5信号)も同様である。
【0083】
次に、時刻t04において、制御部6が駆動信号φSをLowにして保持スイッチトランジスタ15をオフし、フローティングディフュージョン12と保持容量13とを電気的に切り離す。この状態で、フローティングディフュージョン12の電位(フローティングディフュージョン参照電位)がソースフォロア回路SFから読み出され、A/D変換された後に第2信号(画素信号)としてメモリ8に記憶される。この第2信号は、保持スイッチトランジスタ15に記憶された暗電流成分も含んでいる。
【0084】
次に、時刻t05において、制御部6が駆動信号φTXをHiにして転送トランジスタ14をオンし、光電変換素子11が蓄積期間ΔTの間に蓄積した信号電荷をフローティングディフュージョン12に転送した後、駆動信号φTXをLowにして転送トランジスタ14をオフする。
【0085】
その信号が、時刻t06においてソースフォロア回路SFから読み出され、A/D変換された後に第3信号(画素信号)としてメモリ8に記憶される。
【0086】
次に、時刻t07において、制御部6が駆動信号φSをHiにして保持スイッチトランジスタ15をオンすることでフローティングディフュージョン12と保持容量13とを導通させた後、再度、駆動信号φTXをHi及びLowにして転送トランジスタ14をオン及びオフする。このときのフローティングディフュージョン12の電圧は、ソースフォロア回路SFから読み出され、A/D変換された後に第4信号(画素信号)としてメモリ8に記憶される。
【0087】
最後に、時刻t08において、制御部6が駆動信号φRESをHiにしてリセットトランジスタ16をオンすることでフローティングディフュージョン12と保持容量13とをリセット電源(リセット電位)VDD1に接続し、フローティングディフュージョン12と保持容量13との信号電荷を全て初期化する(リセットする)。この初期化されたフローティングディフュージョン12と保持容量13との電圧(リセットレベル)が、ソースフォロア回路SFから読み出され、A/D変換された後に第5信号(画素信号)としてメモリ8に記憶される。
【0088】
以上の画素10の駆動において、蓄積期間ΔTの間に画素10(光電変換素子11)に入力する光によって生じる信号電荷が光電変換素子11の保持できる容量を超えておらず、且つ、フローティングディフュージョン12のみで光電変換素子11が蓄積(保持)した信号電荷を取り扱える場合(第一前提の場合:図3参照)には、時刻t05において、フローティングディフュージョン12の取扱い限界未満の信号電荷がフローティングディフュージョン12に転送され、ソースフォロア回路SFから読み出された画素信号(フローティングディフュージョン12の電圧)はそれに応じて変化する(Vout参照)。このとき、画素信号(フローティングディフュージョン12の電圧:図3におけるVout参照)は、A/D変換の範囲(入力ダイナミックレンジ)を超えない。即ち、フローティングディフュージョン12ではオーバーフローせずに信号が正しく保持されている。
【0089】
また、時刻t07において、ソースフォロア回路SFから読み出された第4信号(画素信号)は、再度の転送トランジスタ14のオン及びオフによって光電変換素子11からフローティングディフュージョン12への新たな信号電荷の転送がないため、光電変換素子11から転送された信号電荷をフローティングディフュージョン12と保持容量13の容量比で分割した状態でのフローティングディフュージョン12の電圧に応じた信号となる。
【0090】
この第一前提の場合、図6にも示すように、信号処理部7が第3信号から第2信号を減算することにより、画素10で光電変換された最終信号(信号Z)が復元される。詳しくは、以下の通りである。
【0091】
第2信号は、光電変換素子11での信号電荷の蓄積中(即ち、蓄積期間ΔTの間)にフローティングディフュージョン12と保持容量13とにおいて生じた暗電流と、時刻t01でのリセット後に生じた熱雑音とを全て含むが、この第2信号に加算するように光電変換素子11からフローティングディフュージョン12に信号電荷が転送されて第3信号が生成されることで、相関二重サンプリングが可能となる。これにより、信号処理部7において第3信号から第2信号が減算等されることにより(図6の第1信号処理参照)、暗電流と熱雑音とが、回路のCMRR(同相信号除去比)で決まる性能に基づき実用上ほぼ完全に除去され、その結果、画素10で光電変換された最終信号(信号Z)が復元される。
【0092】
尚、第一前提の場合、メモリ8に格納された他の信号(第1信号、第4信号、及び第5信号)は、最終信号(信号Z)の復元には不要である。
【0093】
また、蓄積期間ΔTの間に画素10(光電変換素子11)に入力する光によって生じる信号電荷が光電変換素子11の保持できる容量を超えていないため光電変換素子11からオーバーフローしないが、フローティングディフュージョン12の取り扱える量を超過し、且つ、フローティングディフュージョン12と保持容量13とが電気的に接続された状態では取り扱える量である場合(第二前提の場合:図4参照)には、時刻t06において得られる第3信号は、光電変換素子11に蓄積された信号電荷がフローティングディフュージョン12で取り扱える量を超えているので、フローティングディフュージョン12が飽和した状態の信号である。
【0094】
しかし、時刻t06から時刻t07において保持スイッチトランジスタ15がオンされて保持容量13がフローティングディフュージョン12に電気的に接続された状態で、再度、光電変換素子11からフローティングディフュージョン12への信号電荷の転送が行われることで、蓄積期間ΔTの間に光電変換素子11で生じた全ての信号電荷についての信号が第4信号として得られる。
【0095】
この第二前提の場合、信号処理部7が第4信号から第1信号を減算等することにより、画素10で光電変換された最終信号(信号Y)が復元される。詳しくは、以下の通りである。
【0096】
第1信号は、光電変換素子11での信号電荷の蓄積中にフローティングディフュージョン12と保持容量13とにおいて生じた暗電流と、時刻t01でのリセット後に生じた熱雑音等を全て含むが、この第1信号に加算するように、保持容量13が電気的に接続された状態のフローティングディフュージョン12に光電変換素子11から全ての信号電荷が転送されて第4信号が生成されることで、相関二重サンプリングが可能となる。これにより、信号処理部7において第4信号から第1信号が減算されることにより(図6の第2信号処理参照)、暗電流と熱雑音が、回路のCMRRで決まる性能に基づき実用上ほぼ完全に除去され、その結果、画素10で光電変換された最終信号(信号Y)が復元される。
【0097】
尚、第二前提の場合、メモリ8に記憶された他の信号(第2信号、第3信号、及び第5信号)は、最終信号(信号Y)の復元には不要である。
【0098】
また、蓄積期間ΔTの間に画素10(光電変換素子11)に入力する光によって生じる信号電荷が光電変換素子11の保持できる容量を超えているため光電変換素子11から保持容量13へオーバーフローするが、フローティングディフュージョン12と保持容量13とが電気的に接続された状態では取り扱える量である場合(第三前提の場合:図5参照)には、時刻t03において、既にフローティングディフュージョン12と保持容量13とに光電変換素子11からオーバーフローした信号電荷が蓄積されているため、第一前提や第二前提と同様の暗電流及び熱雑音と、オーバーフローした信号電荷と、に応じた出力(画素信号)が第1信号、第2信号としてメモリ8に格納される。
【0099】
また、時刻t05において、転送トランジスタ14がオンされて光電変換素子11に蓄積された信号電荷が該光電変換素子11からフローティングディフュージョン12に転送されるが、光電変換素子11が満状態であるため、第3信号は、光電変換素子11が飽和した状態の信号である。
【0100】
また、時刻t07において、初期の暗電流と熱雑音に加えられた形で全ての信号電荷(光電変換素子11に蓄積された信号電荷と光電変換素子11からオーバーフローした信号電荷と)がフローティングディフュージョン12と保持容量13に保持(蓄積)された状態でフローティングディフュージョン12の電圧がソースフォロア回路SFから読み出され、この読み出された画素信号が第4信号としてメモリ8に記録される。
【0101】
また、時刻t08で得られる第5信号は、光電変換素子11に蓄積されていた信号電荷に関係のないリセットレベル(画素10のリセット信号)である。
【0102】
この第三前提の場合、信号処理部7が第4信号から第5信号を減算等することにより(図6の第3信号処理参照)、画素10で光電変換された最終信号(信号X)が復元される。詳しくは、以下の通りである。
【0103】
第一前提及び第二前提の場合と異なり、第三前提の場合には、第1信号は、光電変換素子11からオーバーフローした信号電荷を含んだ信号であるため、基準となるリセットレベルとして利用できない。このため、ソースフォロア回路SFから蓄積期間ΔTの間に光電変換素子11で生じた全ての信号電荷を含む信号の読み出しが終わった後、時刻t08において、再度、画素10が初期化され、この再度の初期化後に読み出された画素信号がリセットレベル(第5信号)としてメモリ8に記録される。
【0104】
このリセットレベル(第5信号)は、時刻t08においてフローティングディフュージョン12と保持容量13とが低インピーダンス状態になった後に浮遊状態になっているため、第1信号から第4信号までの読み出しの際のリセットレベルとは異なる。このため、第5信号において、容量値と温度、ボルツマン定数で決まる熱雑音の影響、及び、蓄積期間ΔTの間の暗電流とそのショットノイズの影響は、無視できない。
【0105】
しかし、光電変換素子11の容量がフローティングディフュージョン12の容量(取り扱い信号量)よりも十分に大きく(本実施形態の例では、2倍以上に)設定され、且つ、フローティングディフュージョン12と保持容量13とを合わせた容量(取り扱い信号量)が光電変換素子11の容量よりも十分に大きく(本実施形態の例では、1.5倍以上に)設定されることで、前述の熱雑音、蓄積期間ΔTの暗電流とそのショットノイズは、光電変換素子11に蓄積された信号電荷についての信号に含まれるショットノイズに比べて十分小さくなる。これにより、固体撮像装置1を備えたスマートフォンやカメラ等における最終イメージの画質への影響が十分に抑えられる。その結果、信号処理部7において第4信号から第5信号が減算等されることにより(図6の第3信号処理参照)、画素10で光電変換された最終信号(信号X)が復元される。
【0106】
以上のように、画素10において光電変換された最終信号の復元のために、本実施形態の固体撮像装置1では、信号処理部7が上述の前提(第一~第三前提)に応じた信号処理(演算)を行う。詳しくは、以下の通りである。
【0107】
ある画素10から各画素信号(第1~第5信号)が読み出された後、その画素信号は、メモリ8に格納され、各画素10の変換結果に対し、信号処理部7において、逐一処理、並列処理、パイプライン処理等が行われる。
【0108】
ここで、本実施形態のメモリ8は、図6に示すように、第1信号を格納する第1信号記憶部801と、第2信号を格納する第2信号記憶部802と、第3信号を格納する第3信号記憶部803と、第4信号を格納する第4信号記憶部804と、第5信号を格納する第5信号記憶部805と、暗電流を考慮したオフセット(任意)値を格納するオフセット量記憶部820と、固体撮像装置1における光入力に対する信号出力を単調かつ連続に変化するように信号を調整するための第1ゲイン係数を格納する第1ゲイン記憶部831と、電荷電圧変換ゲインを調整するための第2ゲイン係数を格納する第2ゲイン記憶部832と、を有する。
【0109】
また、メモリ8は、第1閾値を格納する第1閾値記憶部841と、第2閾値を格納する第2閾値記憶部842と、も有する。
【0110】
この第1閾値は、少なくとも光電変換素子11の容量に基づいて設定される値である。詳しくは、第1閾値は、光電変換素子11の容量で決まる最大の信号量を検出ばらつきや光電変換素子11の個体ばらつきを加味して設定した値である。例えば、本実施形態の第1閾値は、図7において信号Yの信号量が飽和したときの光量の値(第2区間と第3区間の境界位置)より小さく且つ前記飽和したときの光量近傍に設定された縦線(一点鎖線)との交点と対応する信号量の値である。ここで、図7は、横軸を画素への入力光量、縦軸を信号X、Y、Zの信号量(画素信号量)としたときの入出力特性を表すグラフである。
【0111】
また、第2閾値は、少なくともフローティングディフュージョン12の容量に基づいて設定される値である。詳しくは、第2閾値は、フローティングディフュージョン12の容量で決まる最大の信号量を検出ばらつきや光電変換素子11の個体ばらつきを加味して設定した値である。例えば、本実施形態の第2閾値は、信号Zの信号量が飽和したときの光量の値(第1区間と第2区間の境界位置)より小さく且つ前記飽和したときの光量の近傍に設定された縦線(一点鎖線)との交点と対応する信号量の値である。
【0112】
図6に戻り、具体的には、信号処理部7において、画素10毎の画素信号(第1~第5信号)に対して、演算部71が、メモリ8の第3信号記憶部803に格納された第3信号と第2信号記憶部802に格納された第2信号との差分から信号(第2差分信号)Zを算出し(第1信号処理)、メモリ8の第4信号記憶部804に格納された第4信号と第1信号記憶部801に格納された第1信号との差分に第2ゲイン記憶部832に格納された第2ゲイン係数を積算することで信号(第1差分信号)Yを算出し(第2信号処理)、メモリ8の第4信号記憶部804に格納された第4信号と第5信号記憶部805に格納された第5信号との差分にオフセット量記憶部820に格納されたオフセット値を加算した後、第1ゲイン記憶部831に格納された第1ゲイン係数を積算することで信号(第3差分信号)Xを算出する(第3信号処理)。これら演算部71によって算出された信号X、信号Y、信号Zは、最終出力手前のセレクタ73に入力され、出力指示を待つ。
【0113】
このように演算部71において信号X、信号Y、信号Zが算出されると、判断部72は、先ず、信号Xと第1閾値記憶部841に格納されている第1閾値とを比較し、信号Xが第1閾値より大きいときに、セレクタ73に信号Xの出力を指示する。
【0114】
この信号Xと第1閾値との比較において、信号Xが第1閾値以下のときには、判断部72は、続いて信号Yと第2閾値記憶部842に格納されている第2閾値とを比較し、信号Yが第2閾値より大きいときに、セレクタ73に信号Yの出力を指示する。
【0115】
この信号Yと第2閾値との比較において、信号Yが第2閾値以下のときには、判断部72は、セレクタ73に信号Zの出力を指示する。
【0116】
判断部72によって上述の何れかの指示(出力指示指令)がセレクタ73に入力されると、セレクタ73は、入力された指示に基づいて信号X、信号Y、信号Zのいずれかの信号(処理結果)を出力する。
【0117】
ここで、上述の判断部72での判断の順序について説明する。
【0118】
図7に示すように、信号Yの信号量は、第4信号の読み出し時の飽和により、第4区間において入力光量が大きくなるほど減少する。また、信号Zの信号量は、第2区間で飽和してしまい、第3区間以降において光量が大きくなるほど減少する。
【0119】
このため、判断部72において、判断の条件分岐の第一条件として信号Yや信号Zが用いられると、条件をみたす画素信号量(即ち、同じ信号量となる入力光量)が、入力光量の少ない区間のときと入力光量の多い区間のときとの二つの連続ではない区間に存在することになるため(図7における信号量Aを示す二点鎖線と信号Yを示す線との二つの交点a1、a2、及び信号量Bを示す線と信号Zを示す線との二つの交点b1、b2参照)、どちらの区間の条件(前記の二つの交点のいずれ)が選ばれるかがわからないことから判断の誤り(偽判定)が生じてしまう。このため、本実施形態の判断部72は、信号量の減少する区間のない信号Xを最初の判断基準として使い、その後、信号Yを使うようにして、前記判断の誤りの発生を防いでいる。
【0120】
尚、上述の判断の順序は、必須ではなく、例えば、画素10に入力する光量がわかっている等によって誤った判断(上述の偽判定)が発生しない場合には、判断の条件分岐の第一条件に信号Y等が用いられてもよい。
【0121】
以上の固体撮像装置1は、入力する光に応じて光電変換により信号電荷が生じる光電変換素子11と、信号電荷を当該信号電荷の量に応じた電圧に変換するフローティングディフュージョン12と、フローティングディフュージョン12に接続され且つ光電変換素子11からオーバーフローした信号電荷を蓄積可能な保持容量13と、フローティングディフュージョン12で変換された電圧に基づく信号を処理する信号処理部7と、を備える。そして、この信号処理部7は、保持容量13を用いて読み出された画素信号の処理手段を複数有する。
【0122】
この固体撮像装置1は、光電変換素子11に入力する光の光量(入力光量)が大きい範囲(例えば、図7における第3区間)では保持容量13が光電変換素子11からオーバーフローした信号電荷を蓄積することでハイダイナミックレンジを実現しつつも、光電変換素子11に入力する光の光量(光電変換素子11で生じる信号電荷の量)に応じた信号処理によって生成された信号を出力することでSN比のグラフにおける非連続の位置(光量)でのギャップ(図8のグラフにおける非連続部分の上下方向の間隔)G1、G2を好適に抑え、これにより、該固体撮像装置1を配置されたカメラ等の最終イメージにおける該ギャップG1、G2に起因する画質低下が抑えられる。詳しくは、以下の通りである。
【0123】
光の入力によって光電変換素子11で生じた信号電荷が該光電変換素子11の容量を超えてオーバーフローしても、保持容量13がこのオーバーフローした信号電荷を蓄積し、光電変換素子11で生じた信号電荷のフローティングディフュージョン12からの読み出しのときに、この保持容量13に蓄積された信号電荷も読み出すことで、本実施形態の固体撮像装置1は、光電変換素子11の容量以上の入力ダイナミックレンジ(即ち、ハイダイナミックレンジ)を実現している。
【0124】
また、保持容量13を用いて光電変換素子11で生じた信号電荷を読み出したときの画素信号に対し、信号処理部7において複数の処理手段によって適宜信号処理されることで、SN比のグラフにおける非連続の位置(光量)でのギャップG1、G2が好適に抑えられる(図8参照)。
【0125】
また、本実施形態の固体撮像装置1において、信号処理部7での前記複数の処理手段は、相関二重サンプリングと、保持容量13のリセット時の電圧に基づく信号の補正と、を含む。
【0126】
このように、保持容量13を用いて光電変換素子11で生じた信号電荷を読み出した信号に対して相関二重サンプリングが行われる(例えば、演算部71による第3信号から第2信号を減算する処理(図6の第1信号処理参照)や、第4信号から第1信号を減算する処理(図6の第2信号処理参照)等が行われる)ことで、該信号は、光電変換素子11での信号電荷の蓄積中(即ち、蓄積期間ΔTの間)に生じた暗電流や保持容量13で生じる熱雑音の影響を受けない若しくは十分に抑えられる。
【0127】
また、入力する光の光量が大きく、光電変換素子11から信号電荷がオーバーフローしたときには、このオーバーフローした信号電荷を蓄積した保持容量13を用いて光電変換素子11で生じた信号電荷を読み出した信号に対して、保持容量13のリセット時の電圧に基づく補正が行われる(例えば、演算部71による第4信号から第5信号を減算する処理(図6の第3信号処理参照)等が行われるが、この補正された信号は、光電変換素子11で生じた暗電流や保持容量13で生じる熱雑音等の影響を受ける。
【0128】
しかし、前記オーバーフローする光量では、読み出される信号(信号電荷の電荷数)が大きいため、該信号において相対的に暗電流や熱雑音の影響が小さくなり、これにより、SN比のグラフにおける非連続位置(前記オーバーフローし始める位置)でのギャップG2が抑えられる(図8参照)。
【0129】
詳しくは、本実施形態の信号処理部7は、光電変換素子11への蓄積期間ΔTの間の光の入力によって生成される信号電荷が該光電変換素子11からオーバーフローしない第一状態のとき(即ち、入力光量が図7では第1閾値に対応する光量より左側の範囲であり、図8ではギャップG2より左側の範囲)は、フローティングディフュージョン12での変換ゲインの異なる画素信号に対し、それぞれ相関二重サンプリングを行い、光電変換素子11への蓄積期間ΔTの間の光の入力によって生成される信号電荷が該光電変換素子11からオーバーフローした第二状態のとき(即ち、入力光量が図7では第1閾値に対応する光量から、第3区間と第4区間の境界までの範囲であり、図8では、ギャップG2からSN比のプロットの右端までの範囲)は、前記画素信号に対し、保持容量のリセット時の電圧に基づいて補正する。
【0130】
このように、光電変換素子11で生じる信号電荷のフローティングディフュージョン12からの異なる変換ゲインでの読み出し(例えば、高変換ゲイン、即ち、フローティングディフュージョン12と保持容量13とが電気的に切り離された状態での読み出しと、低変換ゲイン、即ち、フローティングディフュージョン12と保持容量13とが電気的に接続された状態での読み出しと)では、いずれも相関二重サンプリングが可能である。このため、これら読み出した画素信号は、光電変換素子11での信号電荷の蓄積中に生じた暗電流や保持容量で生じる熱雑音の影響を受けない若しくは十分に抑えられる。これにより、SN比のグラフにおける非連続位置(変換ゲインが切り替わる位置)でのギャップG1が抑えられる(図8参照)。
【0131】
一方、光電変換素子11から信号電荷がオーバーフローした状態(第二状態)での読み出し信号(画素信号)は、保持容量13のリセット時(図3図5の時刻t08におけるリセットトランジスタ16のオン及びオフ時)の電圧に基づいて補正されるが、相関二重サンプリングができないため光電変換素子11で生じた暗電流や保持容量13で生じる熱雑音等の影響を受ける。しかし、前記オーバーフローする光量では、読み出される画素信号(電荷数)が大きいため、該画素信号において相対的に暗電流や熱雑音の影響が小さくなり、これにより、SN比のグラフにおける非連続位置(前記オーバーフローし始める位置)でのギャップG2が抑えられる(図8参照)。
【0132】
以上のように、本実施形態の固体撮像装置1によれば、SN比のグラフにおいて非連続位置での各ギャップG1、G2がそれぞれ抑えられる(換言すると、小さくなる)ため、固体撮像装置1が配置されたカメラ等での最終イメージにおいて該ギャップG1、G2に起因する画質低下が効果的に抑えられる。
【0133】
より具体的に、本実施形態の固体撮像装置1は、光電変換素子11とフローティングディフュージョン12とを接続する転送トランジスタ(第1スイッチトランジスタ)14と、フローティングディフュージョン12と保持容量13とを接続する保持スイッチトランジスタ(第2スイッチトランジスタ)15と、保持容量13とリセット電源(リセット電位)VDD1とを接続するリセットトランジスタ(第3スイッチトランジスタ)16と、各スイッチトランジスタ14、15、16を制御する制御部6と、を備える。そして、フローティングディフュージョン12は、保持スイッチトランジスタ15とリセットトランジスタ16とを順に介してリセット電源VDD1とも接続されている。
【0134】
また、この固体撮像装置1の信号処理部7は、蓄積期間ΔTの間の光電変換素子11への光の入力後に、転送トランジスタ14、保持スイッチトランジスタ15、リセットトランジスタ16がオフの状態から制御部6によって保持スイッチトランジスタ15がオンされたときのフローティングディフュージョン12の電圧に基づく信号を第1信号とし、第1信号が得られた後に制御部6によって保持スイッチトランジスタ15がオフされたときのフローティングディフュージョン12の電圧に基づく信号を第2信号とし、第2信号が得られた後に制御部6によって転送トランジスタ14がオン及びオフされたときのフローティングディフュージョン12の電圧に基づく信号を第3信号とし、第3信号が得られた後に制御部6によって保持スイッチトランジスタ15がオンされた状態で転送トランジスタ14がオン及びオフされたときのフローティングディフュージョン12の電圧に基づく信号を第4信号とし、第4信号が得られた後に制御部6によって保持スイッチトランジスタ15がオンされた状態でリセットトランジスタ16がオン及びオフされたときのフローティングディフュージョン12の電圧に基づく信号を第5信号としたときに、これら第1~第5信号に基づいて該固体撮像装置1から外部に出力される出力信号(信号X、信号Y、信号Z)を生成する。
【0135】
このように、光電変換素子11の信号電荷の一回の蓄積(光の一回の入力)において、五つの信号(第1~第5信号)を得ることで、入力する光の光量(光電変換素子11で生じる信号電荷の量)に応じて、相関二重サンプリングによる信号処理と、保持容量13のリセット時(図3図5における時刻t08のリセットトランジスタ16のオン及びオフ時)の電圧に基づいて補正する信号処理とのいずれの信号処理にも対応することが可能となる。
【0136】
尚、本実施形態の固体撮像装置1において、相関二重サンプリングは、第4信号と第1信号との差分に基づく信号Yを求める演算(第3信号処理)と、第3信号と第2信号との差分に基づく信号Zを求める演算(第1信号処理)と、のそれぞれに含まれる。また、保持容量13のリセット時の電圧に基づく補正は、第4信号と第5信号との差分に基づく信号Xを求める演算(第2信号処理)に含まれる。
【0137】
また、本実施形態の固体撮像装置1は、光電変換素子11の容量に基づいて設定される第1閾値、及びフローティングディフュージョン12の容量に基づいて設定される第2閾値を格納するメモリ(記憶部)8を備えている。そして、信号処理部7は、信号Xの値と第1閾値とを比較し、信号Xの値が第1閾値より大きいときに、該信号Xを出力信号として出力し、信号Xの値と第1閾値とを比較した結果、信号Xの値が第1閾値以下のときは、信号Yの値と第2閾値とを比較し、信号Yの値が第2閾値より大きいときに、該信号Yを出力信号として出力し、信号Yの値と第2閾値とを比較した結果、信号Yの値が第2閾値以下のときは、信号Zを出力信号として出力する。
【0138】
このように、信号処理部7が二つの閾値を用いて出力する信号X、Y、Zを選択(判断)することにより、光電変換素子11に入力する光の光量(光電変換素子11で生じる信号電荷の量)に応じた信号処理、即ち、相関二重サンプリングによる信号処理と、保持容量13のリセット時の電圧に基づいて補正する信号処理との切り替えやこれらの処理によって生成された信号の選択等がより確実に行われる。
【0139】
従来のDual conversion gainを用いる固体撮像装置では、光電変換素子の容量を超えた入力ダイナミックレンジが得られず、横型オーバーフロー蓄積容量を備えた固体撮像装置では、蓄積期間ΔTの間に生じる暗電流と、横型オーバーフロー蓄積容量のリセットレベルを得るためのリセット読み出しによって生じる熱雑音等によってSN比が劣化していたが、以上のように、本実施形態の固体撮像装置1は、保持容量13をDual Conversion Gainの役目ではなく横型オーバーフロー蓄積容量として使用し、新たな画素駆動タイミング(即ち、画素10における各トランジスタ14~16の新規な駆動タイミング)と信号処理部7での所定の信号処理を行うことによって、光電変換素子11の容量より大きな入力ダイナミックレンジ(ハイダイナミックレンジ)を実現しつつ、得られる画素信号における横型オーバーフロー蓄積容量(保持容量13)に蓄積される暗電流が及ぼす影響とリセットノイズが及ぼす影響を軽減することを可能にしている。
【0140】
また、この効果は、光電変換素子11の容量(飽和電荷)をフローティングディフュージョン12の容量よりも大きくすることで向上させることができる。
【0141】
次に、本発明の第二実施形態について図9図13を参照しつつ説明するが、上記第一実施形態と同様の構成には同一符号を用いると共に詳細な説明を省略し、異なる構成についてのみ詳細に説明する。
【0142】
[撮像装置の構成例]
本実施形態の撮像装置も、第一実施形態の撮像装置と同様に、例えばスマートフォンやデジタルカメラであり、固体撮像装置1は、撮像装置に組み込まれ、CMOSイメージセンサー(固体撮像素子)を含む。
【0143】
この撮像装置に組み込まれた固体撮像装置1Aは、第一実施形態の固体撮像装置1と同様の構成を備える。即ち、固体撮像装置1Aは、図9に示すように、画素アレイ部2と、垂直駆動部3と、複数のカラム信号処理部4と、水平駆動部5と、制御部6と、信号処理部7と、メモリ8Aと、備える。
【0144】
本実施形態の固体撮像装置1Aにおいても、画素アレイ部2は、行列状に2次元配置される複数の画素10Aを有し、信号処理部7は、演算部71Aと判断部72Aとセレクタ73とを有する(図12参照)。
【0145】
[画素の構成]
続いて、画素アレイ部2に行列状に配置されている画素10Aの具体的な構造について、図10を参照しつつ説明する。
【0146】
画素10Aは、光電変換素子11と、フローティングディフュージョン12と、第一実施形態の保持容量と同じ構成(容量)の第1保持容量13と、第1保持容量13と異なる第2保持容量13Aと、を備える。
【0147】
また、画素10Aは、光電変換素子11とフローティングディフュージョン12とを接続する転送トランジスタ(第1スイッチトランジスタ)14と、フローティングディフュージョン12と第1保持容量13とを接続する第1保持スイッチトランジスタ(第2スイッチトランジスタ)15と、第2保持容量13Aとリセット電源(リセット電位)VDD1とを接続するリセットトランジスタ(第3スイッチトランジスタ)16と、第1保持容量13と第2保持容量13Aとを接続する第2保持スイッチトランジスタ(第4スイッチトランジスタ)15Aと、フローティングディフュージョン12の電圧信号を増幅する増幅トランジスタ17と、増幅トランジスタ17と列信号線22とを接続する選択トランジスタ18と、を備える。
【0148】
フローティングディフュージョン12は、第一実施形態と同様に、光電変換素子11で生じた信号電荷を電圧信号に電荷電圧変換して出力する。本実施形態のフローティングディフュージョン12は、第1保持スイッチトランジスタ15と第2保持スイッチトランジスタ15Aとを順に介して第2保持容量13Aと接続される。また、このフローティングディフュージョン12は、第1保持スイッチトランジスタ15と第2保持スイッチトランジスタ15Aとリセットトランジスタ16とを順に介してリセット電源VDD1と接続されている。
【0149】
第1保持容量13と第2保持容量13Aとは、それぞれキャパシタであり、第一実施形態の保持容量13と同様に、光電変換素子11からオーバーフローした信号電荷をそれぞれ蓄積可能である。具体的に、信号電荷が光電変換素子11からオーバーフローしたときは、この信号電荷は、先ず、第1保持容量13に蓄積される。そして、第1保持容量13もオーバーフローした後、このオーバーフローした信号電荷が第2保持容量13Aに蓄積される。
【0150】
また、第1保持容量13は、第2保持スイッチトランジスタ15Aとリセットトランジスタ16とを順に介してリセット電源VDD1とも接続されている。この第1保持容量13は、第2保持容量13Aより小さい。詳しくは、第1保持容量13の蓄積(保持)できる信号電荷の容量は、第2保持容量13Aの蓄積(保持)できる信号電荷の容量より小さい。
【0151】
第1保持スイッチトランジスタ15のゲート電極には、駆動信号φSが印加される。この駆動信号φSは、制御部6からの信号に基づき垂直駆動部3から出力される。駆動信号φSがHiになる(即ち、第1保持スイッチトランジスタ15がオンになる)と、第1保持スイッチトランジスタ15の第1保持ゲートが導通状態となり、フローティングディフュージョン12からの信号電荷が第1保持容量13に移動可能となる。尚、駆動信号φSがLowになると、第1保持スイッチトランジスタ15は、オフになる。また、第1保持スイッチトランジスタ15がオフでも、信号電荷が光電変換素子11からオーバーフローしたときに第1保持容量13に蓄積されるよう、第1保持スイッチトランジスタ15の第1保持ゲート(ポテンシャル障壁)が調整されている。本実施形態の第1保持スイッチトランジスタ15は、第一実施形態の保持スイッチトランジスタと同じ構成である。
【0152】
第2保持スイッチトランジスタ15Aのゲート電極には、駆動信号φS1が印加される。この駆動信号φS1は、制御部6からの信号に基づき垂直駆動部3から出力される。駆動信号φS1がHiになる(即ち、第2保持スイッチトランジスタ15Aがオンになる)と、第2保持スイッチトランジスタ15Aの第2保持ゲートが導通状態となり、第1保持スイッチトランジスタ15がオンであれば、フローティングディフュージョン12からの信号電荷が第2保持容量13Aに移動可能となる。尚、駆動信号φS1がLowになると、第2保持スイッチトランジスタ15Aは、オフになる。また、第2保持スイッチトランジスタ15Aがオフでも、信号電荷が光電変換素子11からオーバーフローし且つ第1保持容量13からもオーバーフローしたときに第2保持容量13Aに蓄積されるよう、第2保持スイッチトランジスタ15Aの第2保持ゲート(ポテンシャル障壁)が調整されている。
【0153】
本実施形態のリセットトランジスタ16では、駆動信号φRESがHiになって該リセットトランジスタ16がオンになると、第1保持スイッチトランジスタ15のゲート電極に印加される駆動信号φS及び第2保持スイッチトランジスタ15Aのゲート電極に印加される駆動信号φS1に応じて、フローティングディフュージョン12と第1保持容量13と第2保持容量13Aとの電位、第1保持容量13と第2保持容量13Aとの電位、又は第2保持容量13Aの電位がリセット電源(リセット電位)VDD1のレベル(リセットレベル)にリセットされる。
【0154】
[固体撮像装置の画素の駆動例]
以上のように構成される画素10Aの駆動タイミングについて、図11も参照しつつ説明する。
【0155】
先ず、時刻t01において、選択トランジスタ18がオフの状態で、転送トランジスタ14と、第1保持スイッチトランジスタ15と、第2保持スイッチトランジスタ15Aと、リセットトランジスタ16と、がオンされ、フローティングディフュージョン12と第1保持容量13と第2保持容量13Aとがリセットレベルになる。
【0156】
このように、フローティングディフュージョン12がリセット電源VDD1につながった状態で転送トランジスタ14がオフされることで光電変換素子11が浮遊状態となり、光電変換素子11において光の入力により生じた信号電荷の蓄積が開始される。
【0157】
この転送トランジスタ14のオフとほぼ同時に(詳しくは、わずかに遅れて)、第1保持スイッチトランジスタ15と、第2保持スイッチトランジスタ15Aと、リセットトランジスタ16とがそれぞれオフされることで、フローティングディフュージョン12と第1保持容量13と第2保持容量13Aも浮遊状態になる。これにより、光電変換素子11から信号電荷がオーバーフローした(溢れてきた)場合に、フローティングディフュージョン12と第1保持容量13と第2保持容量13Aとがこのオーバーフローしてきた信号電荷を保持(蓄積)可能となる。
【0158】
このように転送トランジスタ14、第1保持スイッチトランジスタ15、第2保持スイッチトランジスタ15A、及びリセットトランジスタ16がオフになった後、所定の蓄積期間ΔTの経過後の時刻t02から、当該画素10Aの画素信号の読み出しが始まる。
【0159】
具体的に、画素10Aの各トランジスタ14~16、18がオフの状態から、制御部6(詳しくは、垂直駆動部3を介して制御部6)が駆動信号φSELをHiにして選択トランジスタ18をオンすると、該画素10Aが列信号線22と接続される。
【0160】
その後、制御部6が駆動信号φSをHiにして第1保持スイッチトランジスタ15をオンすることで、フローティングディフュージョン12と第1保持容量13とが電気的に接続される。これにより、フローティングディフュージョン12と第1保持容量13とにおける熱雑音電荷と、光電変換素子11における信号電荷の蓄積期間中に発生した暗電流によって生じた暗電流電荷等とが混合され、そのときのフローティングディフュージョン12の電圧(保持容量参照電位)がソースフォロア回路SFに現れた時刻t03から有限の時間をかけて該ソースフォロア回路SFから読み出され、A/D変換された後に第1信号(画素信号)としてメモリ8Aに格納される。
【0161】
本実施形態の固体撮像装置1Aも、第一実施形態の固体撮像装置1と同様に、カラム信号処理部4においてA/D変換された状態(即ち、デジタル信号に変換された状態)で第1信号がメモリ8Aに格納されるが、この構成に限定されない。ソースフォロア回路SFから読み出された画素信号(フローティングディフュージョン12の電圧)がアナログ信号のままで以降の各処理が行われてもよい。尚、後のタイミングでソースフォロア回路SFから読み出される画素信号(第2~第5信号)も同様である。
【0162】
次に、時刻t04において、制御部6が駆動信号φSをLowにして第1保持スイッチトランジスタ15をオフし、フローティングディフュージョン12と第1保持容量13とを電気的に切り離す。この状態で、フローティングディフュージョン12の電位(フローティングディフュージョン参照電位)がソースフォロア回路SFから読み出され、A/D変換された後に第2信号(画素信号)としてメモリ8Aに記憶される。この第2信号は、第1保持スイッチトランジスタ15に記憶された暗電流成分も含んでいる。
【0163】
次に、時刻t05において、制御部6が駆動信号φTXをHiにして転送トランジスタ14をオンし、光電変換素子11が蓄積期間ΔTの間に蓄積した信号電荷をフローティングディフュージョン12に転送した後、駆動信号φTXをLowにして転送トランジスタ14をオフする。
【0164】
その信号が、時刻t06においてソースフォロア回路SFから読み出され、A/D変換された後に第3信号(画素信号)としてメモリ8Aに記憶される。
【0165】
次に、時刻t17において、制御部6が駆動信号φSをHiにして第1保持スイッチトランジスタ15をオンすることでフローティングディフュージョン12と第1保持容量13とを導通させた後、再度、駆動信号φTXをHi及びLowにして転送トランジスタ14をオン及びオフする。このときのフローティングディフュージョン12の電圧は、ソースフォロア回路SFから読み出され、A/D変換された後に第4信号(画素信号)としてメモリ8Aに記憶される。
【0166】
このように時刻t17において光電変換素子11に蓄積された信号電荷が第1保持容量13へ転送された後、時刻t18において、制御部6が駆動信号φS1をHiにして第2保持スイッチトランジスタ15Aをオンすることでフローティングディフュージョン12及び第1保持容量13と、第2保持容量13Aと、を導通させる。そして、制御部6は、この状態から、再度、駆動信号φTXをHi及びLowにして転送トランジスタ14をオン及びオフする。このときのフローティングディフュージョン12の電圧は、ソースフォロア回路SFから読み出され、A/D変換された後に第15信号(画素信号)としてメモリ8Aに記憶される。このとき、蓄積期間ΔTの間に光電変換素子11からオーバーフローしてきた信号電荷が第2保持容量13Aに蓄積されていた場合(第四前提)には、この信号電荷が第15信号に含まれている。
【0167】
次に、時刻t19において、制御部6が駆動信号φRESをHiにしてリセットトランジスタ16をオンしてフローティングディフュージョン12と第1保持容量13と第2保持容量13Aとをリセット電源(リセット電位)VDD1に接続し、フローティングディフュージョン12と第1保持容量13と第2保持容量13Aとの信号電荷を全て初期化する。この初期化されたフローティングディフュージョン12と第1保持容量13と第2保持容量13Aとの電圧(リセットレベル)がソースフォロア回路SFから読み出され、A/D変換された後に第16信号(画素信号)としてメモリ8Aに記憶される。
【0168】
最後に、時刻t1Aにおいて、制御部6が駆動信号φS1をLowにして第2保持スイッチトランジスタ15Aをオフすることで第1保持容量13と第2保持容量13Aとを切り離した状態でのフローティングディフュージョン12と第1保持容量13との電圧(リセットレベル)がソースフォロア回路SFから読み出され、A/D変換された後に第17信号(画素信号)としてメモリ8Aに記憶される。
【0169】
本実施形態の固体撮像装置1Aでは、画素10Aで光電変換された最終信号を復元するために、信号処理部7が上述の前提(第一~第四前提)に応じた信号処理を行う。詳しくは、以下の通りである。
【0170】
ある画素10Aから各画素信号(第1~第4信号及び第15~第17信号)が読み出された後、その画素信号は、メモリ8Aに格納され、各画素10Aの変換結果に対し、信号処理部7において、逐一処理、並列処理、パイプライン処理等が行われる。
【0171】
ここで、本実施形態のメモリ8Aは、図12に示すように、第1信号を格納する第1信号記憶部801と、第2信号を格納する第2信号記憶部802と、第3信号を格納する第3信号記憶部803と、第4信号を格納する第4信号記憶部804と、第15信号を格納する第15信号記憶部815と、第16信号を格納する第16信号記憶部816と、第17信号を格納する第17信号記憶部817と、第1保持容量13の暗電流を考慮した第1オフセット値(任意)を格納する第1オフセット量記憶部821と、同様に第2保持容量13Aの暗電流を考慮した第2オフセット値を格納する第2オフセット量記憶部822と、電荷電圧変換ゲインを調整するための第1ゲイン係数を格納する第1ゲイン記憶部831と、電荷電圧変換ゲインを調整するための第2ゲイン係数を格納する第2ゲイン記憶部832と、電荷電圧変換ゲインを調整するための第3ゲイン係数を格納する第3ゲイン記憶部833と、を有する。また、メモリ8Aは、第1閾値記憶部841と、第2閾値記憶部842と、第3閾値を格納する第3閾値記憶部843と、を有する。この第3閾値は、少なくともフローティングディフュージョン12の容量、第1保持容量13、及び第2保持容量13Aに基づいて設定される。具体的に、第3閾値は、例えば第2保持容量13Aが飽和する信号量である。
【0172】
具体的には、信号処理部7において、画素10A毎の画素信号(第1~第4信号、第15~第17信号)に対して、信号処理部7の演算部71Aが、メモリ8Aの第15信号記憶部815に格納された第15信号と第16信号記憶部816に格納された第16信号との差分に第2オフセット量記憶部822に格納された第2オフセット値を加算した後、第3ゲイン記憶部833に格納された第3ゲイン係数を積算することで信号(第4差分信号)αを算出し(第4信号処理)、メモリ8Aの第3信号記憶部803に格納された第3信号と第2信号記憶部802に格納された第2信号との差分から信号(第2差分信号)Zを算出し(第1信号処理)、メモリ8Aの第4信号記憶部804に格納された第4信号と第1信号記憶部801に格納された第1信号との差分に第2ゲイン記憶部832に格納された第2ゲイン係数を積算することで信号(第1差分信号)Yを算出し(第2信号処理)、メモリ8Aの第4信号記憶部804に格納された第4信号と第17信号記憶部817に格納された第17信号との差分に第1オフセット量記憶部821に格納された第1オフセット値を加算した後、第1ゲイン記憶部831に格納された第1ゲイン係数を積算する(第3信号処理)ことで信号(第3差分信号)Xを算出する。これら演算部71Aによって算出された信号α、信号X、信号Y、信号Zは、最終出力手前のセレクタ73に入力され、出力指示を待つ。
【0173】
このように演算部71Aにおいて信号α、信号X、信号Y、信号Zが算出されると、判断部72Aは、先ず、信号αと第3閾値記憶部843に格納されている第3閾値とを比較し、信号αが第3閾値より大きいときに、セレクタ73に信号αの出力を指示する。
【0174】
この信号αと第3閾値との比較において、信号αが第3閾値以下のときには、判断部72Aは、続いて信号Xと第1閾値記憶部841に格納されている第1閾値とを比較し、信号Xが第1閾値より大きいときに、セレクタ73に信号Xの出力を指示する。
【0175】
この信号Xと第1閾値との比較において、信号Xが第1閾値以下のときには、判断部72Aは、続いて信号Yと第2閾値記憶部842に格納されている第2閾値とを比較し、信号Yが第2閾値より大きいときに、セレクタ73に信号Yの出力を指示する。
【0176】
この信号Yと第2閾値との比較において、信号Yが第2閾値以下のときには、判断部72Aは、セレクタ73に信号Zの出力を指示する。
【0177】
判断部72Aによって上述の何れかの指示(出力指示指令)がセレクタ73に入力されると、セレクタ73は、入力された指示に基づいて信号α、信号X、信号Y、信号Zのいずれかの信号(処理結果)を出力する。
【0178】
尚、上述の判断部72Aでの判断においても、第一実施形態の判断部72での判断と同様に、信号Zと信号Yの偽判定を防ぐような順序で判断を行っている。
【0179】
本実施形態の固体撮像装置1Aは、第1保持容量13と異なる第2保持容量13Aであって、光電変換素子11からオーバーフローした信号電荷を蓄積可能な第2保持容量13Aと、光電変換素子11とフローティングディフュージョン12とを接続する転送トランジスタ(第1スイッチトランジスタ)14と、フローティングディフュージョン12と第1保持容量13とを接続する第1保持スイッチトランジスタ(第2スイッチトランジスタ)15と、第2保持容量13Aとリセット電源(リセット電位)VDD1とを接続するリセットトランジスタ(第3スイッチトランジスタ)16と、第1保持容量13と第2保持容量13Aとを接続する第2保持スイッチトランジスタ(第4スイッチトランジスタ)15Aと、を備える。そして、フローティングディフュージョン12は、第1保持スイッチトランジスタ15と第2保持スイッチトランジスタ15Aとを順に介して第2保持容量13Aと接続されている。さらに、フローティングディフュージョン12は、第1保持スイッチトランジスタ15と第2保持スイッチトランジスタ15Aとリセットトランジスタ16とを順に介してリセット電源VDD1と接続されている。また、第1保持容量13は、第2保持スイッチトランジスタ15Aとリセットトランジスタ16とを順に介してリセット電源VDD1と接続されている。
【0180】
また、この固体撮像装置1Aの信号処理部7は、蓄積期間ΔTの間の光電変換素子11への光の入力後に、転送トランジスタ14、第1保持スイッチトランジスタ15、第2保持スイッチトランジスタ15A、リセットトランジスタ16がオフの状態から制御部6によって第1保持スイッチトランジスタ15がオンされたときのフローティングディフュージョン12の電圧に基づく信号を第1信号とし、第1信号が得られた後に制御部6によって第1保持スイッチトランジスタ15がオフされたときのフローティングディフュージョン12の電圧に基づく信号を第2信号とし、第2信号が得られた後に制御部6によって転送トランジスタ14がオン及びオフされたときのフローティングディフュージョン12の電圧に基づく信号を第3信号とし、第3信号が得られた後に制御部6によって第1保持スイッチトランジスタ15がオンされた状態で転送トランジスタ14がオン及びオフされたときのフローティングディフュージョン12の電圧に基づく信号を第4信号とし、第4信号が得られた後に制御部6によって第1保持スイッチトランジスタ15及び第2保持スイッチトランジスタ15Aがオンされた状態で転送トランジスタ14がオン及びオフされたされたときのフローティングディフュージョン12の電圧に基づく信号を第15信号とし、第15信号が得られた後に制御部6によって第1保持スイッチトランジスタ15及び第2保持スイッチトランジスタ15Aがオンされた状態でリセットトランジスタ16がオン及びオフされたときのフローティングディフュージョン12の電圧に基づく信号を第16信号とし、第16信号が得られた後に制御部6によって第1保持スイッチトランジスタ15がオンされた状態で第2保持スイッチトランジスタ15Aがオフされたときのフローティングディフュージョン12の電圧に基づく信号を第17信号としたときに、これら第1~第4信号及び第15~第17信号に基づいて該固体撮像装置1Aから外部に出力される出力信号(信号α、信号X、信号Y、信号Z)を生成する。
【0181】
以上のように構成される本実施形態の固体撮像装置1Aは、光電変換素子11に入力する光の光量が大きい範囲では第1保持容量13や第2保持容量13Aが光電変換素子11からオーバーフローした信号電荷を蓄積することでハイダイナミックレンジを実現しつつも、光電変換素子11に入力する光の光量(光電変換素子11で生じる信号電荷の量)に応じた信号処理によって生成された信号を出力することでSN比のグラフにおける非連続の位置(光量)でのギャップG1、G2、G3を好適に抑え(図13参照)、これにより、該固体撮像装置1Aを配置されたカメラ等の最終イメージにおける該ギャップG1、G2、G3に起因する画質低下が抑えられる。
【0182】
また、画素10Aが、第1保持容量13に加えて第2保持容量13Aを備えている、即ち、複数の保持容量を備えているため、一つの保持容量のみを備える画素に比べて光電変換素子11からオーバーフローした信号電荷を蓄積できる容量が大きくなるため、ダイナミックレンジがより大きくなる。
【0183】
しかも、画素10A(光電変換素子11)に入力する光が、光電変換素子11からオーバーフローした信号電荷を第2保持容量13Aが蓄積し始める光量のときに、SN比のグラフにおいて非連続性が生じ、この非連続位置におけるギャップG3が比較的大きなギャップとなる(図13参照)が、SN比の絶対値が大きい位置でのギャップであるため、該固体撮像装置1Aを配置されたカメラ等における最終イメージにおいて、ギャップG3に起因する視覚的な影響は軽微である。
【0184】
また、上述のように、光電変換素子11の信号電荷の一回の蓄積(光の一回の入力)において、七つの信号(第1~第4信号及び第15~第17信号)を得ることで、入力する光の光量(光電変換素子11で生じる信号電荷の量)に応じて、相関二重サンプリングによる信号処理と、保持容量(第1保持容量13、第2保持容量13A)のリセット時の電圧に基づいて補正する信号処理とのいずれの信号処理にも対応することが可能となる。
【0185】
しかも、光電変換素子11からオーバーフローした信号電荷を蓄積可能な複数の保持容量(本実施形態の例では、第1保持容量13と第2保持容量13Aとの二つの保持容量)を備え、光電変換素子11で生じた信号電荷の量に応じて使用される保持容量の数が調整されることで、熱雑音等の保持容量に起因する画質低下を抑えることができる。即ち、保持容量が大きいほどノイズの原因となる熱雑音等が大きくなるため、光電変換素子11で生じた信号電荷の蓄積に第1保持容量13を使用するが第2保持容量13Aを使用しない場合には、同じ容量(第1保持容量13と第2保持容量13Aの合計の容量)を一つの保持容量で確保する構成に比べ、熱雑音等の保持容量に起因する画質低下が抑えられる。
【0186】
尚、本実施形態の固体撮像装置1Aにおいて、相関二重サンプリングは、第4信号と第1信号との差分に基づく信号(第1差分信号)Yを求める演算(第2信号処理)と、第3信号と第2信号との差分に基づく信号(第2差分信号)Zを求める演算(第1信号処理)と、のそれぞれに含まれる。また、保持容量(第1保持容量13、第2保持容量13A)のリセット時の電圧に基づく補正は、第4信号と第17信号との差分に基づく信号(第3差分信号)Xを求める演算(第3信号処理)と、第15信号と第16信号との差分に基づく信号(第4差分信号)αを求める演算(第4信号処理)と、のそれぞれに含まれる。
【0187】
また、本実施形態の固体撮像装置1Aは、少なくとも光電変換素子11の容量に基づいて設定される第1閾値、少なくともフローティングディフュージョン12の容量に基づいて設定される第2閾値、及び少なくともフローティングディフュージョン12の容量及び第1保持容量13に基づいて設定される第3閾値を格納するメモリ(記憶部)8Aを備えている。そして、信号処理部7は、信号(第4差分信号)αの値と第3閾値とを比較し、信号αの値が第3閾値より大きいときに、該信号αを出力信号として出力し、信号αの値と第3閾値とを比較した結果、信号αの値が第3閾値以下のときは、信号(第3差分信号)Xの値と第1閾値とを比較し、信号Xの値が第1閾値より大きいときに、該信号Xを出力信号として出力し、信号Xの値と第1閾値とを比較した結果、信号Xの値が第1閾値以下のときは、信号(第1差分信号)Yの値と第2閾値とを比較し、信号Yの値が第2閾値より大きいときに、該信号Yを出力信号として出力し、信号Yの値と第2閾値とを比較した結果、信号Yの値が第2閾値以下のときは、信号(第2差分信号)Zを出力信号として出力する。
【0188】
このように、信号処理部7が三つの閾値を用いて出力する信号α、X、Y、Zを選択することにより、光電変換素子11に入力する光の光量(光電変換素子11で生じる電荷の量)に応じた信号処理、即ち、相関二重サンプリングによる信号処理と、保持容量(第1保持容量13、第2保持容量13A)のリセット時の電圧に基づいて補正する信号処理との切り替えやこれらの処理によって生成された信号の選択等がより確実に行われる。
【0189】
また、本実施形態の固体撮像装置1Aでは、第1保持容量13は、第2保持容量13Aより小さい。
【0190】
保持容量に蓄積される信号電荷の数が大きくなるほど、保持容量から読み出される信号電荷の数に応じた信号に対するノイズ(熱雑音等の保持容量に起因するノイズ)の相対的な大きさが抑えられる、即ち、前記ノイズの画質に対する影響が抑えられる。このため、光電変換素子11からの信号電荷の数が少ないときに使用される第1保持容量13を小さくしてこの第1保持容量13のみが使用されるときに該第1保持容量13で生じるノイズを抑えると共に、光電変換素子11からの信号電荷の数が大きくなって前記ノイズの画質に対する影響が相対的に小さくなるときに使用される第2保持容量13Aを大きくすることで、ハイダイナミックレンジを実現しつつ保持容量に起因する画質の低下を好適に抑えることができる。
【0191】
以上のように、本実施形態の固体撮像装置1Aも、第一実施形態の固体撮像装置1と同様に、第1保持容量13及び第2保持容量13AをDual Conversion Gainの役目では無く横型オーバーフロー蓄積容量として使用し、新たな画素駆動タイミング(即ち、画素10における各トランジスタ14~16の新規な駆動タイミング)と信号処理部7での所定の信号処理を行うことによって、光電変換素子11の容量より大きな入力ダイナミックレンジ(ハイダイナミックレンジ)を実現しつつ、得られる画素信号における横型オーバーフロー蓄積容量(第1保持容量13及び第2保持容量13A)に蓄積される暗電流が及ぼす影響とリセットノイズが及ぼす影響を軽減することを可能にしている。
【0192】
また、この効果は、第一実施形態の固体撮像装置1と同様に、光電変換素子11の容量(飽和電荷)をフローティングディフュージョン12の容量よりも大きくすることで向上させることができる。
【0193】
尚、本発明の固体撮像装置、及び固体撮像装置を備える撮像装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0194】
上記第一及び第二実施形態の固体撮像装置1、1Aに含まれるCMOSイメージセンサーは、少なくとも画素アレイ部2と垂直駆動部3と複数のカラム信号処理部4と水平駆動部5と制御部6とを有するが、この構成に限定されない。CMOSイメージセンサー(固体撮像素子)は、信号処理部7やメモリ8を含んでもよい。即ち、演算処理部によって算出された各信号(第1~第5信号、又は、第1~第4及び第15~第17信号)は、画素信号の読み出し回路、DSP、固体撮像装置が組み込まれるスマートフォンやカメラ等のシステムに格納(保持)される構成でもよい。
【0195】
また、信号処理部7における信号処理(信号の積和演算や閾値を用いた判断等)の具体的な構成は、限定されない。例えば、信号処理部7では、閾値の前後で信号同士の重みづけ加算を行い、読み出しの違いに基づくノイズの差が緩やかな濃淡の変化部で目立たないようにする信号処理が行われてもよく、単純な一次関数のゲインではなく二次関数のゲイン、若しくはルックアップテーブルを用いる等の信号処理が行われてもよい。即ち、信号処理部7において、どのような閾値判断と積和演算が行われるかは設計項目であり、信号処理部7は、五つの信号(第1~第5信号)、又は七つの信号(第1~第4信号、及び第15~第17信号)を閾値判断と積和演算等を用いて一つの最終信号を作り上げる構成であればよい。
【0196】
また、上記第一及び第二実施形態の固体撮像装置1、1Aでは、光の入力によって光電変換素子から信号電荷がオーバーフローした場合に画素信号の補正に用いられる保持容量13、13Aのリセットレベル(リセット時の電圧:第一及び第二実施形態の例では、第5信号や第16信号)は、第4信号や第15信号の直後に取得している、即ち、光電変換素子11への光の入力毎に行われるが、この構成には限定されない。例えば、初期に保持容量の前記リセットレベルが取得され、この取得されたリセットレベルが既知の値として光電変換素子11に光が入力する度に使用される構成でもよい。
【0197】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易に成し得ることであると認識すべきである。従って、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0198】
1、1A…固体撮像装置、2…画素アレイ部、21…行信号線、22…列信号線、3…垂直駆動部、4…カラム信号処理部、5…水平駆動部、6…制御部、7…信号処理部、71、71A…演算部、72、72A…判断部、73…セレクタ、8、8A…メモリ(記憶部)、801…第1信号記憶部、802…第2信号記憶部、803…第3信号記憶部、804…第4信号記憶部、805…第5信号記憶部、815…第15信号記憶部、816…第16信号記憶部、817…第17信号記憶部、820…オフセット量記憶部、821…第1オフセット量記憶部、822…第2オフセット量記憶部、831…第1ゲイン記憶部、832…第2ゲイン記憶部、833…第3ゲイン記憶部、841…第1閾値記憶部、842…第2閾値記憶部、843…第3閾値記憶部、10、10A…画素、11…光電変換素子、12…フローティングディフュージョン、13…保持容量、第1保持容量、13A…第2保持容量、14…転送トランジスタ(第1スイッチトランジスタ)、15…保持スイッチトランジスタ、第1保持スイッチトランジスタ(第2スイッチトランジスタ)、15A…第2保持スイッチトランジスタ(第4スイッチトランジスタ)、16…リセットトランジスタ(第3スイッチトランジスタ)、17…増幅トランジスタ、18…選択トランジスタ、500…固体撮像装置、501…画素、502…フォトダイオード、503…フローティングディフュージョン、504…横型オーバーフロー蓄積容量、505…スイッチトランジスタ、G1、G2、G3…ギャップ、SF…ソースフォロア回路、VDD1…リセット電源(リセット電位)、VDD2…電源、X…信号(第3差分信号)、Y…信号(第1差分信号)、Z…信号(第2差分信号)、α…信号(第4差分信号)、φRES、φS、φS1、φSEL、φTX…駆動信号
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【国際調査報告】