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特表2024-517521負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20240416BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240416BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240416BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M4/36 A
H01M4/48
H01M4/36 E
H01M4/36 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527187
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 CN2022090258
(87)【国際公開番号】W WO2023201775
(87)【国際公開日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】202210431171.4
(32)【優先日】2022-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 奕
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽祐
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA19
5H050BA17
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA15
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本願は、負極材料の分野に関し、負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池を提供し、前記負極材料は、炭素材料とケイ素材料とを含む凝集体を有し、前記凝集体にアニオンが存在し、前記アニオンの含有量が、前記負極材料に対して0.001wt%~0.5wt%である。本願は、負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池を提供し、ケイ素負極材料の初回クーロン効率を向上させ、生産コストを低下させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材料とケイ素材料とを含む凝集体を有し、
前記ケイ素材料の凝集体に、アニオンが存在し、前記アニオンの含有量が、前記負極材料に対して0.001wt%~0.5wt%であることを特徴とする負極材料。
【請求項2】
以下の(1)~(9)のうちの少なくとも1つの特徴を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
(1)前記アニオンは、F、Cl、Br、NO 、SO 2-、NO2-及びPO 3-のうちの少なくとも1つを含む;
(2)前記ケイ素材料は、ケイ素単体、ケイ素合金及びケイ素酸化物のうちの少なくとも1つを含む;
(3)前記ケイ素材料は、ケイ素単体と、前記ケイ素単体の表面に存在するケイ素酸化物層とを含む;
(4)前記ケイ素材料は、ケイ素単体と、前記ケイ素単体の表面に存在するケイ素酸化物層とを含み、前記ケイ素酸化物層の厚さが1nm~50nmである;
(5)前記ケイ素材料のメジアン粒子径が1nm~500nmである;
(6)前記ケイ素材料の含有量が、前記負極材料に対して10質量%~80質量%である;
(7)前記炭素材料は、人工黒鉛、天然黒鉛、ソフト炭素、ハード炭素、アモルファスカーボン、活性炭、メソカーボンマイクロビーズ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン及び多孔質炭素のうちの少なくとも1つを含む;
(8)前記ケイ素材料の格子間サイトにアニオンが存在し、前記アニオンのイオン半径が118pm~940pmである;
(9)前記ケイ素材料の格子間サイト凝集体にアニオンが存在し、前記アニオンは、F、Cl、Brのうちの少なくとも1つを含む。
【請求項3】
以下の(1)~(6)のうちの少なくとも1つの特徴を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の負極材料。
(1)前記負極材料は、前記凝集体の少なくとも一部の表面に存在する炭素層をさらに含む;
(2)前記負極材料は、前記凝集体の少なくとも一部の表面に存在する炭素層をさらに含み、前記炭素層は、アモルファスカーボンを含む;
(3)前記負極材料は、前記凝集体の少なくとも一部の表面に被覆された炭素層をさらに含み、前記炭素層の厚さが、1nm~3000nmである;
(4)前記炭素材料の含有量が、前記負極材料に対して10質量%~60質量%である;
(5)前記負極材料のメジアン粒子径が0.5μm~30μmである;
(6)前記負極材料の比表面積が10m/g以下である。
【請求項4】
ケイ素源前駆体とアニオン含有無機塩とを含む混合液を加水分解させて、加水分解生成物を得る工程と、
前記加水分解生成物を還元し、ケイ素材料を得る工程と、
炭素材料と前記ケイ素材料とを含む凝集体を製造する工程とを含む、ことを特徴とする負極材料の製造方法。
【請求項5】
以下の(1)~(10)のうちの少なくとも1つの特徴を含む、ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
(1)前記ケイ素源前駆体は、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸メチル、ケイ酸ナトリウム、ポリシロキサン、トリメチルエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン及びシルセスキオキサンのうちの少なくとも1つを含む;
(2)前記アニオンは、F、Cl、Br、NO 、SO 2-、NO2-、及びPO 3-のうちの少なくとも1つを含む;
(3)前記混合液は第1の溶媒をさらに含み、前記第1の溶媒は、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、n-ブタノール、イソブタノール及びペンタノールのうちの少なくとも1つを含む;
(4)前記混合液は加水分解促進剤をさらに含む;
(5)前記混合液は加水分解促進剤をさらに含み、前記加水分解促進剤は、アンモニア水、尿素、塩酸、硫酸、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウムのうちの少なくとも1つを含む;
(6)前記加水分解反応は、撹拌しながら行い、前記加水分解反応の時間は、3h~10hである;
(7)前記方法は、ケイ素源前駆体とアニオン含有無機塩とを含む混合液を加水分解反応させる前、アニオン含有無機塩、第1の溶媒及び加水分解促進剤を混合して第1のプレミックスを形成し、ケイ素源前駆体と第1の溶媒を混合して第2のプレミックスを形成し、さらに前記第1のプレミックスと前記第2のプレミックスとを混合して混合液を得る工程をさらに含む;
(8)前記アニオンの含有量が、前記第1のプレミックスに対して5wt%~55wt%である;
(9)前記ケイ素源前駆体の含有量が、前記第2のプレミックスに対して10wt%~70wt%である;
(10)前記方法は、ケイ素源前駆体とアニオン含有無機塩とを含む混合液を加水分解反応させた後、前記加水分解生成物中の第1の溶媒を除去する工程をさらに含む。
【請求項6】
以下の(1)~(9)のうちの少なくとも1つの特徴を含む、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の製造方法。
(1)前記加水分解生成物を還元する工程は、前記加水分解生成物と還元性金属とを十分に混合した後、焼結処理を行うことを含む;
(2)前記加水分解生成物と前記還元性金属との質量比が100:(13~130)である;
(3)前記還元性金属は、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、カルシウム、及びカリウムのうちの少なくとも1つを含む;
(4)前記焼結処理は、温度が、600℃~1200℃であり、時間が、1h~10hである;
(5)前記焼結処理過程中に保護ガスを導入する;
(6)前記保護ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン及びクリプトンのうちの少なくとも1つを含む;
(7)前記方法は、前記加水分解生成物と還元性金属とを混合して、焼結処理を行った後、焼結生成物を酸洗、乾燥処理する工程をさらに含み、前記酸洗に使用される酸溶液は、塩酸、硫酸、硝酸のうちの少なくとも1つを含む;
(8)前記十分に混合する処理の方式は、機械撹拌、超音波分散、研磨分散のうちの少なくとも1つを含む;
(9)前記ケイ素材料のメジアン粒子径は、1nm~500nmである。
【請求項7】
前記炭素材料と前記ケイ素材料とを含む凝集体を製造する工程は、第1の炭素源と前記ケイ素材料とを含む第1の前駆体を一次熱処理し、前記第1の炭素源を炭化させるか、又は前記第1の炭素源を前記ケイ素材料と凝集させることを含む、ことを特徴とする請求項4~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
以下の(1)~(13)のうちの少なくとも1つの特徴を含む、ことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
(1)前記ケイ素材料と第1の炭素源との質量比が(5~50):(15~80)である;
(2)前記ケイ素材料は、ケイ素単体、ケイ素合金、及びケイ素酸化物のうちの少なくとも1つを含む;
(3)前記ケイ素材料は、ケイ素単体と、前記ケイ素単体の表面に存在するケイ素酸化物層とを含み、前記ケイ素酸化物層の厚さは、1nm~50nmである;
(4)前記第1の炭素源は、スクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトのうちの少なくとも1つを含む;
(5)前記第1の炭素源は、人工黒鉛、天然黒鉛、ソフト炭素、ハード炭素、アモルファスカーボン、活性炭、メソカーボンマイクロビーズ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、及び多孔質炭素のうちの少なくとも1つを含む;
(6)前記方法は、第1の炭素源と前記ケイ素材料を含む第1の前駆体を一次熱処理する前、第1の炭素源、第1の溶媒及び前記ケイ素材料を十分に分散させて第2の溶液を形成する工程をさらに含む;
(7)前記第1の溶媒は、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、n-ブタノール、イソブタノール及びペンタノールのうちの少なくとも1つを含む;
(8)前記十分に分散させる処理の方式は、機械撹拌、超音波分散、及び研磨分散のうちの少なくとも1つを含む;
(9)前記第2の溶媒を除去する具体的な方式は、第2の溶液を乾燥処理することを含む;
(10)前記乾燥処理は、温度が40℃~400℃であり、時間が1h~15hである;
(11)前記第1の炭素源は、人工黒鉛、天然黒鉛、ソフト炭素、ハード炭素、アモルファスカーボン、活性炭、メソカーボンマイクロビーズ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、及び多孔質炭素のうちの少なくとも1つを含み、前記一次熱処理は、温度が400℃~1000℃であり、時間が1h~5hである;
(12)前記第1の炭素源は、スクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトのうちの少なくとも1つを含み、前記一次熱処理は、温度が500℃~1000℃であり、時間が1h~5hである;
(13)前記一次熱処理は、保護雰囲気下で行い、前記保護雰囲気のガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン及びクリプトンのうちの少なくとも1つを含む。
【請求項9】
以下の(1)~(8)のうちの少なくとも1つの特徴を含む、ことを特徴とする請求項4~8のいずれか1項に記載の製造方法。
(1)前記方法は、前記凝集体を炭素被覆処理する工程をさらに含む;
(2)前記方法は、前記凝集体を炭素被覆処理する工程をさらに含み、前記炭素被覆処理の工程は、前記凝集体と第2の炭素源とを混合して二次熱処理することを含む;
(3)前記方法は、前記凝集体を炭素被覆処理する工程をさらに含み、前記炭素被覆処理の工程は、前記凝集体と第2の炭素源とを混合して二次熱処理することを含み、前記第2の炭素源は、スクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトのうちの少なくとも1つを含む;
(4)前記方法は、前記凝集体を炭素被覆処理する工程をさらに含み、前記炭素被覆処理の工程は、前記凝集体と第2の炭素源とを混合して二次熱処理することを含み、前記凝集体と前記第2の炭素源との質量比が(20~100):(10~80)である;
(5)前記方法は、前記凝集体を炭素被覆処理する工程をさらに含み、前記炭素被覆処理の工程は、前記凝集体と第2の炭素源とを混合して二次熱処理することを含み、前記二次熱処理は、温度が、800℃~900℃であり、時間が、1h~5hである。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1項に記載の負極材料又は請求項4~9のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された負極材料を含むリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、負極材料の技術分野に関し、具体的に、負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリチウムイオン電池は、エネルギー密度が大きく、出力パワーが高く、サイクル寿命が長く、環境汚染が少ないなどの利点を備えているため、電気自動車及び消費者向け電子製品(CE)に広く応用されている。ケイ素負極は、理論比容量が4200mAh/gに達し、黒鉛材料の10倍であり、容量が高く、由来が豊富であり、比較的安全であるなどの優位性を備えており、次世代の電池負極材料と広く認められている。しかし、ケイ素負極材料の初回クーロン効率は、まだ十分ではなく、これまで、一般的に80%~85%であり、ケイ素負極材料と高い初回クーロン効率を有するコバルト酸リチウム正極材料とを組み合わせて使用するのに不利であり、このため、ケイ素負極材料の初回クーロン効率が低いことは、ケイ素負極の更なる応用を制限している。
【0003】
したがって、ケイ素負極材料の初回クーロン効率を向上させることは、現在早急に解決すべき課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の問題点に鑑み、本願は、ケイ素負極材料の初回クーロン効率を向上させ、生産コストを低下させることができる負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1局面において、炭素材料とケイ素材料とを含む凝集体を有し、前記凝集体にアニオンが存在し、前記アニオンの含有量が、前記負極材料に対して0.001wt%~0.5wt%である負極材料を提供する。
【0006】
上記の技術案では、負極材料は、炭素材料とケイ素材料とを含む凝集体を有し、前記凝集体にアニオンが存在し、前記アニオンの含有量が、前記負極材料に対して0.001wt%~0.5wt%であることにより、アニオンは一般的に格子、線面等の欠陥及び表面等の位置に存在し、一定の範囲内で、アニオンの存在は、これらの位置の反応活性を向上させ、キャリアのさらなる輸送に寄与する。リチウムイオン及び電子の材料での拡散を促進し、キャリアの材料での輸送効率を高め、負極材料の初回クーロン効率を向上させる。
【0007】
一実施形態において、前記アニオンは、F、Cl、Br、NO 、SO 2-、NO2-及びPO 3-のうちの少なくとも1つを含む。
【0008】
一実施形態において、前記ケイ素材料は、ケイ素単体、ケイ素合金、及びケイ素酸化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0009】
一実施形態において、前記ケイ素材料は、ケイ素単体と、前記ケイ素単体の表面に存在するケイ素酸化物層とを含む。
【0010】
一実施形態において、前記ケイ素材料は、ケイ素単体と、前記ケイ素単体の表面に存在するケイ素酸化物層とを含み、前記ケイ素酸化物層の厚さが1nm~50nmである。
【0011】
一実施形態において、前記ケイ素材料のメジアン粒子径は、1nm~500nmである。
【0012】
一実施形態において、前記ケイ素材料の前記負極材料に対する質量比は、10%~80%である。
【0013】
一実施形態において、前記炭素材料は、人工黒鉛、天然黒鉛、ソフト炭素、ハード炭素、アモルファスカーボン、活性炭、メソカーボンマイクロビーズ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、及び多孔質炭素のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
一実施形態において、前記ケイ素材料の格子間サイトにアニオンが存在し、前記アニオンのイオン半径が118pm~940pmである。
【0015】
一実施形態において、前記ケイ素材料の格子間サイト凝集体にアニオンが存在し、前記アニオンは、F、Cl、Brのうちの少なくとも1つを含む。
【0016】
一実施形態において、前記負極材料は、前記凝集体の少なくとも一部の表面に存在する炭素層をさらに含む。
【0017】
一実施形態において、前記負極材料は、前記凝集体の少なくとも一部の表面に存在する炭素層をさらに含み、前記炭素層は、アモルファスカーボンを含む。
【0018】
一実施形態において、前記負極材料は、前記凝集体の少なくとも一部の表面に被覆された炭素層をさらに含み、前記炭素層の厚さが1nm~3000nmである。
【0019】
一実施形態において、前記炭素材料の前記負極材料に対する質量比は、10%~60%である。
【0020】
一実施形態において、前記負極材料のメジアン粒子径は、0.5μm~30μmである。
【0021】
一実施形態において、前記負極材料の比表面積は、10m/g以下である。
【0022】
第2局面において、ケイ素源前駆体とアニオン含有無機塩とを含む混合液を加水分解して、加水分解生成物を得る工程と、
前記加水分解生成物を還元し、格子間サイトにアニオンが存在するケイ素材料を得る工程と、
炭素材料と前記ケイ素材料とを含む凝集体を製造する工程とを含む負極材料の製造方法を提供する。
【0023】
該実施形態に係る製造方法では、アニオンを含有する無機塩を用い、ケイ素源前駆体にアニオンドーピングを行い、アニオン含有塩及びケイ素源前駆体は、いずれも水溶性であるため、加水分解過程において、両者は分子層面で均一な混合を実現することができ、その後、乾燥し、一部の陰イオンが加水分解生成物に残留し、最後に還元法により、アニオンを含有する負極材料を得る。
【0024】
一実施形態において、前記ケイ素源前駆体は、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸メチル、ケイ酸ナトリウム、ポリシロキサン、トリメチルエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、及びシルセスキオキサンのうちの少なくとも1つを含む。
【0025】
一実施形態において、前記アニオンは、F、Cl、Br、NO 、SO 2-、NO2-及びPO 3-のうちの少なくとも1つを含む。
【0026】
一実施形態において、前記混合液は、第1の溶媒をさらに含み、前記第1の溶媒は、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、n-ブタノール、イソブタノール及びペンタノールのうちの少なくとも1つを含む。
【0027】
一実施形態において、前記混合液は、加水分解促進剤をさらに含む。
【0028】
一実施形態において、前記混合液は、加水分解促進剤をさらに含み、前記加水分解促進剤は、アンモニア水、尿素、塩酸、硫酸、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸アンモニウム、及び塩化アンモニウムのうちの少なくとも1つを含む。
【0029】
一実施形態において、前記加水分解反応は、撹拌しながら行い、前記加水分解反応は、時間が、3h~10hである。
【0030】
一実施形態において、前記方法は、ケイ素源前駆体とアニオン含有無機塩とを含む混合液を加水分解反応する前、アニオン含有無機塩、第1の溶媒、及び加水分解促進剤を混合して第1のプレミックスを形成し、ケイ素源前駆体と第1の溶媒とを混合して第2のプレミックスを形成し、さらに前記第1のプレミックスと前記第2のプレミックスとを混合して混合液を得る工程をさらに含む。
【0031】
一実施形態において、前記アニオンの含有量は、前記第1のプレミックスに対して、5wt%~55wt%である。
【0032】
一実施形態において、前記ケイ素源前駆体の含有量は、前記第2のプレミックスに対して、10wt%~70wt%である。
【0033】
一実施形態において、前記方法は、ケイ素源前駆体とアニオン含有無機塩とを含む混合液を加水分解反応した後、前記加水分解生成物中の第1の溶媒を除去する工程をさらに含む。
【0034】
一実施形態において、前記加水分解生成物を還元する工程は、前記加水分解生成物と還元性金属とを十分に混合した後、焼結処理を行うことを含む。
【0035】
一実施形態において、前記加水分解生成物と前記還元性金属との質量比は、100:(13~130)である。
【0036】
一実施形態において、前記還元性金属は、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、カルシウム、及びカリウムのうちの少なくとも1つを含む。
【0037】
一実施形態において、前記焼結処理は、温度が、600℃~1200℃であり、時間が、1h~10hである。
【0038】
一実施形態において、前記焼結処理過程中に保護ガスを導入する。
【0039】
一実施形態において、前記保護ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンびクリプトンのうちの少なくとも1つを含む。
【0040】
一実施形態において、前記方法は、前記加水分解生成物と還元性金属とを混合して焼結処理した後、焼結生成物を酸洗、乾燥処理する工程をさらに含み、前記酸洗に使用される酸溶液は、塩酸、硫酸、硝酸のうちの少なくとも1つを含む。
【0041】
一実施形態において、前記十分に混合する処理の方式は、機械撹拌、超音波分散、研磨分散のうちの少なくとも1つを含む。
【0042】
一実施形態において、前記ケイ素材料のメジアン粒子径は1nm~500nmである。
【0043】
一実施形態において、前記炭素材料と前記ケイ素材料とを含む凝集体を製造する工程は、第1の炭素源と前記ケイ素材料とを含む第1の前駆体を一次熱処理し、前記第1の炭素源を炭化させる、又は、前記第1の炭素源と前記ケイ素材料とを凝集させることを含む。
【0044】
一実施形態において、前記ケイ素材料と第1の炭素源との質量比が(5~50):(15~80)である。
【0045】
一実施形態において、前記ケイ素材料は、ケイ素単体、ケイ素合金、及びケイ素酸化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0046】
一実施形態において、前記ケイ素材料はケイ素単体と、前記ケイ素単体の表面に存在するケイ素酸化物層とを含み、前記ケイ素酸化物層の厚さが1nm~50nmである。
【0047】
一実施形態において、前記第1の炭素源は、スクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトのうちの少なくとも1つを含む。
【0048】
一実施形態において、前記第1の炭素源は人工黒鉛、天然黒鉛、ソフト炭素、ハード炭素、アモルファスカーボン、活性炭、メソカーボンマイクロビーズ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、及び多孔質炭素のうちの少なくとも1つを含む。
【0049】
一実施形態において、前記方法は、第1の炭素源と前記ケイ素材料とを含む第1の前駆体を一次熱処理する前、第1の炭素源、第1の溶媒及び前記ケイ素材料を十分に分散させて第2の溶液を形成する工程をさらに含む。
【0050】
一実施形態において、前記第1の溶媒は、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、n-ブタノール、イソブタノール及びペンタノールのうちの少なくとも1つを含む。
【0051】
一実施形態において、前記十分に分散させる処理の方式は、機械撹拌、超音波分散、研磨分散のうちの少なくとも1つを含む。
【0052】
一実施形態において、前記第2の溶媒を除去する具体的な方式は、第2の溶液を乾燥処理することを含む。
【0053】
一実施形態において、前記乾燥処理の温度は、温度が、40℃~400℃であり、時間が、1h~15hである。
【0054】
一実施形態において、前記第1の炭素源は、人工黒鉛、天然黒鉛、ソフト炭素、ハード炭素、アモルファスカーボン、活性炭、メソカーボンマイクロビーズ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、及び多孔質炭素のうちの少なくとも1つを含み、前記一次熱処理は、温度が、400℃~1000℃であり、時間が、1h~5hである。
【0055】
一実施形態において、前記第1の炭素源は、スクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトのうちの少なくとも1つを含み、前記一次熱処理は、温度が、500℃~1000℃であり、時間が、1h~5hである。
【0056】
一実施形態において、前記一次熱処理は保護雰囲気で行い、前記保護雰囲気のガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン及びクリプトンのうちの少なくとも1つを含む。
【0057】
一実施形態において、前記方法は、前記凝集体を炭素被覆処理する工程をさらに含む。
【0058】
一実施形態において、前記方法は、前記凝集体を炭素被覆処理する工程をさらに含み、前記炭素被覆処理の工程は、前記凝集体と第2の炭素源とを混合して二次熱処理することを含む。
【0059】
一実施形態において、前記方法は、前記凝集体を炭素被覆処理する工程をさらに含み、前記炭素被覆処理の工程は、前記凝集体と第2の炭素源を混合して二次熱処理することを含み、前記第2の炭素源は、スクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトのうちの少なくとも1つを含む。
【0060】
一実施形態において、前記方法は、前記凝集体を炭素被覆処理する工程をさらに含み、前記炭素被覆処理の工程は、前記凝集体と第2の炭素源を混合して二次熱処理することを含み、前記凝集体と前記第2の炭素源との質量比が(20~100):(10~80)である。
【0061】
一実施形態において、前記二次熱処理は、温度が、800℃~900℃であり、時間が、1h~5hである。
【0062】
第3局面において、本願は、第1局面に記載の負極材料又は第2局面に記載の製造方法によって製造される負極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【発明の効果】
【0063】
本願の技術的解決手段は、少なくとも以下の有益な効果を有する。
【0064】
本願に係る負極材料は、ケイ素材料と炭素材料とを含む凝集体を有し、前記凝集体にアニオンが存在し、前記アニオンの含有量が、前記負極材料に対して0.001wt%~0.5wt%であることにより、アニオンは一般的に格子、線面等の欠陥及び表面等の位置に存在し、一定の範囲内で、アニオンの存在は、これらの位置の反応活性を向上させ、キャリアのさらなる輸送に寄与する。リチウムイオン及び電子の材料での拡散を促進し、キャリアの材料での輸送効率を高め、負極材料の初回クーロン効率を向上させる。
【0065】
次に、本願に係る負極材料の製造方法は、アニオンを含有する無機塩を用い、ケイ素源前駆体にアニオンドーピングを行い、アニオン含有塩及びケイ素源前駆体は、いずれも水溶性であるため、加水分解過程において、両者は分子層面で均一な混合を実現することができ、その後、乾燥し、一部の陰イオンが加水分解生成物に残留し、最後に還元法により、アニオンを含有する負極材料を得る。
【0066】
本願に係る製造方法は、生産の規模化に適しており、製造された負極材料は、ケイ素負極材料の初回クーロン効率を向上させ、生産コストを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】本発明実施例に係る負極材料の製造方法のフローチャートである。
図2】本発明実施例1で製造された負極材料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図3】本発明実施例1で製造された負極材料のXRDチャートである。
図4】本発明実施例1で製造された負極材料の初回充放電曲線図である。
図5】本発明実施例1で製造された負極材料のサイクル性能曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下に述べられるのは、本発明実施例の好ましい実施形態である。なお、当業者にとって、本発明実施例の原理から逸脱せず、いくつかの改良及び変更を実行することができ、これらの改良及び変更も本発明の保護範囲内にあると認識される。
【0069】
一実施形態の負極材料では、前記負極材料は、炭素材料とケイ素材料とを含む凝集体を有し、前記凝集体にアニオンが存在し、前記アニオンの含有量が、前記負極材料に対して0.001wt%~0.5wt%である。
【0070】
本実施形態の負極材料は、ケイ素材料と炭素材料を含む凝集体を有し、前記凝集体にアニオンが存在し、前記アニオンの含有量が、前記負極材料に対して0.001wt%~0.5wt%であることにより、アニオンは一般的に格子、線面等の欠陥及び表面等の位置に存在し、一定の範囲内で、アニオンの存在は、これらの位置の反応活性を向上させ、キャリアのさらなる輸送に寄与する。リチウムイオン及び電子の材料での拡散を促進し、キャリアの材料での輸送効率を高め、負極材料の初回クーロン効率を向上させる。
【0071】
前記アニオンの含有量は、前記負極材料に対して、0.001wt%~0.5wt%であり、具体的に、0.001wt%、0.005wt%、0.008wt%、0.009wt%、0.01wt%、0.02wt%、0.03wt%、0.05wt%、0.08wt%、0.1wt%、0.2wt%、0.3wt%又は0.5wt%などであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定しない。アニオンの含有量が高すぎると、一部のアニオンは、リチウムイオンと結合反応して、一部のLiを「縛り」、材料の初回クーロン効率、サイクル性能曲線寿命特性を劣化させる。アニオンの含有量が低すぎると、リチウムイオン及び電子の拡散効率の改善が明らかではなく、材料の電気化学的性能が向上しにくい。
【0072】
いくつかの実施形態において、アニオンは、F、Cl、Br、NO 、SO 2-、NO2-及びPO 3-のうちの少なくとも1つを含む。試験を重ねた結果、アニオンは、Cl又はSO 2-が好ましい。
【0073】
いくつかの実施形態において、前記ケイ素材料は、ケイ素単体、ケイ素合金、及びケイ素酸化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0074】
いくつかの実施形態において、ケイ素合金は、ニッケルケイ素合金、鉄ケイ素合金、マグネシウムケイ素合金、銅ケイ素合金、ケイ素マンガン合金、及びアルミニウムケイ素合金のうちの少なくとも1つを含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、ケイ素材料のメジアン粒子径は、1nm~500nmであり、具体的に、1nm、5nm、10nm、15nm、20nm、30nm、40nm、50nm、100nm、200nm、300nm、400nm又は500nm等であってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定しない。試験を重ねた結果、ナノオーダーのケイ素材料は、表面エネルギーが高く、充放電中に凝集しやすく、粒子の構造強度が高く、ケイ素体積の膨張を抑えることができる。しかし、ナノオーダーのケイ素材料は、表面エネルギーの高いから、充放電中に凝集しやすい。ケイ素材料の粒子径が小さすぎると、生産プロセスのコストが高まる。ケイ素材料のメジアン粒子径は、1nm~200nmが好ましい。1nm~100nmがより好ましい。
【0076】
いくつかの実施形態において、前記ケイ素材料は、ケイ素単体と、前記ケイ素単体の表面に存在するケイ素酸化物層とを含み、ケイ素酸化物層の存在によりケイ素同士と電解液との接触から保護することに有利であり、これに加え、ケイ素の部分的な膨張を緩衝し、サイクルの安定性を向上させることもできる。
【0077】
ここで、ケイ素酸化物層の厚さは、1nm~50nmであり、具体的に、1nm、5nm、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、38nm、40nm、48nm又は50nm等であってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定しない。
【0078】
いくつかの実施形態において、炭素材料は、人工黒鉛、天然黒鉛、ソフト炭素、ハード炭素、アモルファスカーボン、活性炭、メソカーボンマイクロビーズ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、及び多孔質炭素のうちの少なくとも1つを含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、ケイ素材料の格子間サイトにアニオンが存在し、アニオンのイオン半径を118pm~940pmの範囲に制御することにより、一部のアニオンがケイ素の格子間サイトに入り、格子欠陥を形成し、これらの格子欠陥はリチウムイオンの輸送のための追加のチャンネルを提供し、リチウムイオンの材料での拡散を促進し、リチウムイオンの材料での輸送効率を高め、負極材料の初回クーロン効率を向上させる。前記アニオンのイオン半径は、具体的に、118pm、158pm、220pm 、460pm、570pm、780pm又は940pm等であってもよく、これらに限定しない。
いくつかの実施形態において、ケイ素材料の格子間サイトにアニオンが存在し、前記アニオンは、F、Cl、Brのうちの少なくとも1つを含む。これらアニオンのイオン半径が118pm~940pmであることで、一部のアニオンがケイ素の格子間サイトに入る。
【0080】
いくつかの実施形態において、前記ケイ素材料の前記負極材料に対する質量比は、10%~80%であり、具体的に、10%、20%、29%、45%、57%、62%、70%、80%等であってもよい。もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定しない。
【0081】
さらに、負極材料は、凝集体の少なくとも一部の表面に被覆された炭素層をさらに含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、炭素層は、凝集体の表面に分布している。
【0083】
いくつかの実施形態において、炭素層の炭素材料は、アモルファスカーボンを含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、炭素層の厚さは、1nm~3000nmである。なお、前記凝集体の表面に被覆された炭素層は、活物質と電解液との接触を減らし、不動態化膜の生成を減少させ、電池の可逆電気容量を向上させることができ、また、ケイ素材料による体積膨張を抑えることもできる。
【0085】
具体的に、炭素層の厚さは、1nm、50nm、180nm、200nm、350nm、400nm、550nm、850nm、950nm、1050nm、1500nm、2000nm、2500nm又は3000nm等であってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定しない。炭素層が厚すぎると、炭素の割合が高すぎ、高比容量の複合材料の取得に不利であり、炭素層が薄すぎると、負極材料の導電性向上に不利であり、且つ材料の体積膨張に対する抑制作用が低く、その結果、長期サイクル性能が悪くなる。炭素層の厚さは、50nm~800nmが好ましい。炭素層の厚さは、100nm~500nmがより好ましい。
【0086】
いくつかの実施形態において、前記炭素材料の前記負極材料に対する質量比は、10%~60%であり、具体的に、10%、20%、25%、29%、34%、45%、57%、60%等であってもよい。もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定しない。なお、ここでの炭素材料の質量比は、凝集体中の炭素材料及び炭素層中の炭素材料を含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、負極材料のメジアン粒子径は、0.5μm~30μmである。具体的に、0.5μm、1μm、5μm、8μm、10μm、13μm、15μm、18μm、20μm、25μm又は30μm等であってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定しない。なお、負極材料のメジアン粒子径を上記範囲内に制御することで、負極材料のサイクル性能向上に有利である。
【0088】
いくつかの実施形態において、負極材料の比表面積は、10m/g以下である。具体的に、10m/g、8m/g、7m/g、5m/g、3m/g、2m/g、1m/g又は0.5m/gなどであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定しない。なお、負極材料の比表面積を上記範囲内に制御することで、体積膨張を抑えたり、負極材料のサイクル性能を向上させたりすることに有利である。
【0089】
なお、上記各実施形態の負極材料は、互いに矛盾がない限り、任意に組み合わせてもよく、例えば、負極材料の粒子の破壊強度、気孔率を組み合わせて限定するなどが可能である。
【0090】
別の局面では、本願は、負極材料の製造方法を提供し、図1に示すように、方法は以下の工程を含む。
ケイ素源前駆体とアニオン含有無機塩とを含む混合液を加水分解して、加水分解生成物を得る工程S10;
前記加水分解生成物を還元し、ケイ素材料を得る工程S20;
炭素材料と前記ケイ素材料とを含む凝集体を製造する工程S30。
【0091】
本願に係る負極材料の製造方法では、アニオンを含有する無機塩を用い、ケイ素源前駆体にアニオンドーピングを行い、アニオン含有塩及びケイ素源前駆体は、いずれも水溶性であるため、加水分解過程において、両者は分子層面で均一な混合を実現することができ、その後、乾燥し、一部の陰イオンが加水分解生成物に残留し、最後に還元法により、アニオンを含有する負極材料を得る。
【0092】
以下、実施例を参照しながら本願の製造方法を詳細に説明する。
【0093】
工程S10では、ケイ素源前駆体とアニオン含有無機塩とを含む混合液を加水分解して、加水分解生成物を得る。
【0094】
いくつかの実施形態において、混合液は、第1の溶媒及び加水分解促進剤をさらに含む。具体的に、ケイ素源前駆体、アニオン含有無機塩、加水分解促進剤及び第1の溶媒の混合に分級混合の方式を使用してもよい。具体的に、アニオン含有無機塩、第1の溶媒及び加水分解促進剤を混合して第1のプレミックスを形成し、ケイ素源前駆体と第1の溶媒を混合して第2のプレミックスを形成し、さらに第1のプレミックスと第2のプレミックスを混合することにより、分級混合が実現される。なお、当業者であれば、活物質、第1の炭素源及び溶媒の具体的な成分に応じて分級混合の原則に従って、適切な分級混合操作を利用し、ケイ素源前駆体を十分に混合することができる。
【0095】
いくつかの実施形態において、無機塩の化学一般式は、MRである(式において、M金属は、Zn、K、Na、Al、Mg、Ca及びLiから選ばれる少なくとも1つであってもよく、アニオンRは、F、Cl、Br、NO 、SO 2-、NO2-及びPO 3-のうちの少なくとも1つを含む)。
【0096】
いくつかの実施形態において、アニオンRの含有量は、第1のプレミックスに対して、5wt%~55wt%であり、具体的に、5wt%、10wt%、15wt%、20wt%、25wt%、30wt%、35wt%、45wt%又は55wt%などであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定しない。
【0097】
いくつかの実施形態において、前記第2のプレミックス中の前記ケイ素源前駆体の質量含有量は10~70wt%であり、具体的に、10wt%、15wt%、20wt%、25wt%、30wt%、35wt%、45wt%、55wt%、60wt%又は70wt%などであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定しない。
【0098】
いくつかの実施形態において、前記ケイ素源前駆体は、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸メチル、ケイ酸ナトリウム、ポリシロキサン、トリメチルエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、及びシルセスキオキサンのうちの少なくとも1つを含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、前記第1の溶媒は、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、n-ブタノール、イソブタノール及びペンタノールのうちの少なくとも1つを含み;
【0100】
いくつかの実施形態において、前記加水分解促進剤は、アンモニア水、尿素、塩酸、硫酸、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム等のうちの少なくとも1つを含み;
【0101】
いくつかの実施形態において、前記加水分解反応は、撹拌しながら行い、前記加水分解反応は、時間が、3h~10hである。
【0102】
上記原材料の質量比、加水分解反応の時間及び温度を制御することにより、ケイ素源前駆体を十分に加水分解させ、アニオン含有ケイ素酸化物材料を得ることができる。
【0103】
いくつかの実施形態において、ケイ素源前駆体とアニオン含有無機塩とを含む混合液を加水分解反応した後、前記方法は、前記加水分解生成物中の第1の溶媒を除去する工程をさらに含む。
【0104】
具体的に、加水分解後の加水分解生成物をろ過、乾燥処理してもよい。
【0105】
いくつかの実施形態において、ろ過は、真空吸引ろ過、ろ紙によるろ過等であってもよい。
【0106】
いくつかの実施形態において、乾燥処理は、温度が、40℃~600℃であり、具体的に、40℃、50℃、80℃、100℃、120℃、250℃、380℃、400℃、500℃、580℃又は600℃等であってもよく、乾燥処理は、時間が、1h~15hであり、具体的に、1h、3h、5h、7h、9h、10h、12h又は15h等であってもよく、乾燥処理方式は、例えば、炉内乾燥、凍結乾燥、撹拌蒸発乾燥、スプレードライ等であってもよく、本実施例における乾燥処理は、加水分解生成物中の溶媒をできる限り除去する。
【0107】
工程S20では、前記加水分解生成物を還元し、ケイ素材料を得る。
【0108】
いくつかの実施形態において、前記加水分解生成物を還元する工程は、前記加水分解生成物と還元性金属とを十分に混合した後、焼結処理を行うことを含む。
【0109】
いくつかの実施形態において、前記加水分解生成物と前記還元性金属との質量比は、100:(13~130)であり、具体的に、100:13、100:18、100:28、100:45、100:68、100:88、100:94、100:100又は100:130等であってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定しない。還元性金属の添加量が多すぎると、加水分解生成物がケイ素及びケイ素の合金に還元されてもよく、還元性金属の添加量が少なすぎると、加水分解生成物がケイ素及びケイ素酸化物に還元されてもよい。
【0110】
いくつかの実施形態において、前記十分に混合する処理の方式は、機械撹拌、超音波分散、研磨分散のうちの少なくとも1つを含む。好ましくは、研磨分散が使用され、アニオン含有ケイ素酸化物材料を分散させ、アニオン含有ケイ素酸化物材料が凝集することを回避し、さらにケイ素酸化物材料を小さなナノ粒子に分散させることができるためである。好ましくは、湿式ボールミルが使用され、湿式ボールミルによる分散時間を0.5h~10hに制御すると、十分に研磨することで組成成分をより均一に混合し、アニオン含有ケイ素酸化物材料のメジアン粒子径を1nm~500nmにすることができる。
【0111】
いくつかの実施形態において、前記還元性金属は、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、カルシウム、カリウムのうちの少なくとも1つを含む。
【0112】
いくつかの実施形態において、前記焼結処理は、温度が、600℃~1200℃であり、焼結処理の温度は、具体的に、600℃、650℃、700℃、800℃、820℃、950℃、980℃、1000℃、1100℃、1150℃又は1200℃等であってもよく、焼結処理は、時間が、1h~10hであり、具体的に、1h、3h、5h、6h、7h、8h、9h又は10h等であってもよい。
【0113】
いくつかの実施形態において、前記焼結処理過程中に保護ガスを導入する。
【0114】
いくつかの実施形態において、前記保護ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン及びクリプトンのうちの少なくとも1つを含む。
【0115】
いくつかの実施形態において、前記加水分解生成物と還元性金属とを混合して焼結処理した後、前記方法は、焼結生成物を酸洗、乾燥処理する工程をさらに含む。
【0116】
具体的に、前記酸洗に使用される酸溶液は、塩酸、硫酸、硝酸のうちの少なくとも1つを含む。酸洗処理により、金属不純物が除去され、且つ表面に一層のケイ素酸化物が形成される。
【0117】
いくつかの実施形態において、前記乾燥処理は、温度が、40℃~400℃であり、具体的に、40℃、50℃、80℃、100℃、200℃、300℃、400℃などであってもよく、乾燥処理は、時間が、1h~15hであり、具体的に、1h、3h、5h、7h、9h、10h、12h又は15hなどであってもよく、乾燥処理の方式は、例えば、炉内乾燥であってもよい。
【0118】
乾燥後の第1の前駆体は、さらに分散させてもよく、分散は、研磨分散であってもよく、分散時間は、0.5h~9hであり、具体的に、0.5h、1.5h、2.5h、3.5h、4.5h、5.5h、7.5h又は9hなどであってもよく、本実施例における研磨分散では、分散後のアニオン含有ナノケイ素の粒度のサイズを制御する。
【0119】
工程S30では、炭素材料と前記ケイ素材料とを含む凝集体を製造する。
【0120】
いくつかの実施形態において、工程S30は、具体的に、第1の炭素源と前記ケイ素材料とを含む第1の前駆体を一次熱処理し、前記第1の炭素源を炭化させる、又は、前記第1の炭素源と前記ケイ素材料とを凝集させることを含む。
【0121】
いくつかの実施形態において、前記ケイ素材料と第1の炭素源との質量比は、(5~50):(15~80)であり、具体的に、5:15、15:15、25:15、30:15、50:15、25:40、25:50、30:65、50:75又は50:80等であってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定しない。
【0122】
いくつかの実施形態において、前記第1の炭素源は、スクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトのうちの少なくとも1つを含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、前記第1の炭素源は、人工黒鉛、天然黒鉛、ソフト炭素、ハード炭素、アモルファスカーボン、活性炭、メソカーボンマイクロビーズ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、及び多孔質炭素のうちの少なくとも1つを含み;
【0124】
いくつかの実施形態において、前記方法は、第1の炭素源と前記ケイ素材料とを含む第1の前駆体を一次熱処理する前、第1の炭素源、第1の溶媒及び前記ケイ素材料を十分に分散させて第2の溶液を形成する工程をさらに含む。
【0125】
いくつかの実施形態において、前記第1の溶媒は、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、n-ブタノール、イソブタノール及びペンタノールのうちの少なくとも1つを含む。
【0126】
いくつかの実施形態において、前記十分に分散させる処理の方式は、機械撹拌、超音波分散、研磨分散のうちの少なくとも1つを含む。
【0127】
いくつかの実施形態において、前記第2の溶媒を除去する具体的な方式は、第2の溶液を乾燥処理することを含む。
【0128】
いくつかの実施形態において、前記乾燥処理は、温度が、40℃~400℃であり、具体的に、40℃、50℃、80℃、100℃、200℃、300℃、400℃などであってもよく、乾燥処理は、時間が、1h~15hであり、具体的に、1h、3h、5h、7h、9h、10h、12h又は15hなどであってもよく、乾燥処理方式は、例えば、炉内乾燥であってもよい。
【0129】
いくつかの実施形態において、前記第1の炭素源は、人工黒鉛、天然黒鉛、ソフト炭素、ハード炭素、アモルファスカーボン、活性炭、メソカーボンマイクロビーズ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、及び多孔質炭素のうちの少なくとも1つを含み、前記一次熱処理は、温度が、400℃~1000℃であり、具体的に、400℃、450℃、510℃、620℃、730℃、840℃、850℃、870℃、890℃、900℃、950℃、1000℃などであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定しない。一次熱処理は、時間が、1h~5hであり、具体的に、1h、1.5h、2h、2.5h、3h、3.5h、4h又は5hなどであってもよい。
【0130】
いくつかの実施形態において、前記第1の炭素源は、スクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトのうちの少なくとも1つを含み、前記一次熱処理は、温度が、500℃~1000℃であり、具体的に、500℃、510℃、620℃、730℃、840℃、850℃、870℃、890℃、900℃、950℃、1000℃などであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定しない。一次熱処理のは、時間が、1h~5hであり、具体的に、1h、1.5h、2h、2.5h、3h、3.5h、4h又は5hなどであってもよい。
【0131】
いくつかの実施形態において、前記一次熱処理は、保護雰囲気で行われる。
【0132】
いくつかの実施形態において、前記一次熱処理は、保護雰囲気で行い、前記保護雰囲気のガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン及びクリプトンのうちの少なくとも1つを含む。
【0133】
工程S40では、凝集体を炭素被覆処理して、負極材料を得る。
【0134】
なお、本実施形態の負極材料は、炭素被覆されなくてもよく、この場合、工程S50を省略してもよい。
【0135】
いくつかの実施形態において、炭素被覆処理の具体的な工程は、凝集体と第2の炭素源とを混合して二次熱処理してもよい。
【0136】
いくつかの実施形態において、第2の炭素源は、スクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトのうちの少なくとも1つを含む。
【0137】
いくつかの実施形態において、凝集体と第2の炭素源との質量比は、(20~100):(10~80)である。凝集体と第2の炭素源との質量比は、20:10、30:15、50:60、80:30、90:20、100:10などであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定しない。
【0138】
いくつかの実施形態において、二次熱処理の方式は、例えば、真空焼結、熱圧焼結又は常圧焼結であってもよい。二次熱処理は、温度が、800℃~900℃である。具体的に、800℃、810℃、820℃、830℃、840℃、850℃、860℃、870℃、880℃、890℃、900℃などであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定しない。
【0139】
いくつかの実施形態において、二次熱処理は、時間が、1h~5hであり、具体的に、1h、2h、3h、4h、5hなどであってもよいが、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定しない。
【0140】
いくつかの実施形態において、二次熱処理は、保護雰囲気で行い、保護雰囲気のガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン及びクリプトンのうちの少なくとも1つを含む。
【0141】
いくつかの実施形態において、二次熱処理後、さらに粉砕、篩分け及び脱磁のうちの少なくとも1つを含み、好ましくは、二次熱処理後、粉砕、篩分け及び脱磁を順に行う。
【0142】
いくつかの実施形態において、粉砕手段は、機械式粉砕機、気流式粉砕機、低温粉砕機のうちのいずれかであってもよい。
【0143】
いくつかの実施形態において、篩分け手段は、固定篩、ドラムスクリーン、共振篩、ロールスクリーン、振動篩、チェーンスクリーンのうちのいずれかであっておよく、篩分けによるメッシュは、500メッシュ以上であり、具体的に、篩分けによるメッシュは、500メッシュ、600メッシュ、700メッシュ、800メッシュなどであってもよく、負極材料の粒子径が上記範囲内に制御すると、負極材料のサイクル性能向上に有利である。
【0144】
いくつかの実施形態において、脱磁装置は、永久磁石式ドラム型磁選機、電磁分離機、脈動高勾配磁気分離機のうちのいずれかであり、脱磁は負極材料の磁性物質の含有量を最終的に制御し、並びに、リチウムイオン電池の放電効果及び電池の使用中の安全性への磁性物質による影響を回避することを目的とする。
【0145】
なお、本願の前記凝集体にアニオンが存在するとともに、凝集体にカチオンが存在し、このため、負極材料は、全体として充電バランスを維持する。具体的に、製造過程に使用される無機塩原料におけるカチオンの種類が異なり、半径の大きさも異なる。半径がケイ素材料格子間サイトよりも小さいカチオンの一部は、ケイ素材料中のケイ素原子の位置に占め、半径がケイ素材料格子間サイトよりも大きいカチオンの一部は、ケイ素材料の格子間サイトに入り、さらに一部は、ケイ素材料の格子間サイトに入る。
【0146】
第3局面において、本願は、第1局面に記載の負極材料又は第2局面に記載の製造方法によって製造された負極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
本明細書における前記メジアン径は、平均粒径を指し、その物理的意味は、粒子の累積粒度分布パーセントが50%に達する時に対応する粒径であり、マルバーン粒度計により測定される。マルバーン粒度計は、粒子による光の散乱現象を利用し、散乱光エネルギーの分布に基づいて被測定粒子の粒径分布を総合的に換算される。
【0147】
以下、複数の実施例により本発明をさらに説明する。ただし、本発明の実施例は、以下の具体的な実施例に限定されない。本発明の主旨を変えない範囲内で、適宜に変更を行って実施することも可能である。
【0148】
実施例1
本実施例に係る負極材料の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)ZnCl:エタノール:水:アンモニア水を5:48:17:4の質量比で配合して第1のプレミックスを得た後、オルトケイ酸エチル:エタノールを3.1:30の質量比で配合して第2のプレミックスを得、第1のプレミックスを第2のプレミックスにゆっくりと加添加し、4h撹拌し第1の溶液を得た後、遠心分離してClイオン含有ケイ素酸化物を得る。
(2)乾燥後のケイ素酸化物と金属マグネシウム粉とを100:84の質量比で混合した後、熱処理炉に投入して900℃で4h焼結し、塩酸で焼結生成物を酸洗して乾燥し、メジアン粒子径120nmのClイオン含有ケイ素材料を得る。
(3)Clイオン含有ケイ素材料とスクロースとを70:35.9の質量比でn-ブタノール溶液に加え、50min超音波処理した後、高速分散機にて2時間分散させて第2の溶液を得、その後、第2の溶液を100℃で撹拌しながら蒸発乾燥し、第1の前駆体を得る。
(4)第1の前駆体とフルクトースとを100:35の質量比で混合した後、高温ボックス炉に混合物を投入して、窒素を導入し、800℃の条件で3h熱処理後、粉砕して500メッシュの篩にかけて、負極材料を得る。
本実施例で製造された負極材料は、炭素材料とケイ素材料とを含む凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層とを有し、前記ケイ素材料は、ナノケイ素単体及び前記ケイ素単体の表面に存在するケイ素酸化物層であり、前記ケイ素酸化物層の厚さは、10nmであり、負極材料のメジアン粒子径は、14μmであり、比表面積は、2.2m/gであり、炭素層の平均厚さは、460nmであり、凝集体及びケイ素材料の格子間サイトにはClイオンが存在し、Clイオンの負極材料に対する質量含有量は590ppmであった。
図2は、本実施例で製造された負極材料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、図3は、本実施例で製造された負極材料のXRD図であり、図3から分かるように、負極材料は、明らかなケイ素の特徴的ピークがあった。
【0149】
実施例2
本実施例に係る負極材料の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)NaSO:エタノール:水:アンモニア水を6:48:16:4の質量比で配合して第1のプレミックスを得た後、オルトケイ酸エチル:エタノールを5.1:30の質量比で配合して第2のプレミックスを得、第1のプレミックスを第2のプレミックスにゆっくりと加え、4h撹拌して第1の溶液を得た後、遠心分離してSO 2-イオン含有ケイ素酸化物を得る。
(2)乾燥後のケイ素酸化物と金属亜鉛粉とを100:75の質量比で混合した後、熱処理炉に投入して800℃で4h焼結し、硫酸で焼結生成物を酸洗して乾燥し、SO 2-イオン含有ケイ素材料を得、SO 2-イオン含有ケイ素材料のメジアン粒子径は200nmである。
(3)SO 2-イオン含有ケイ素材料とスクロースとを60:35.9の質量比でn-ブタノール溶液に加え、60min超音波処理した後、高速分散機にて5時間分散させて第2の溶液を得、その後、第2の溶液を100℃で撹拌しながら蒸発乾燥し、第1の前駆体を得る。
(4)第1の前駆体とフルクトースとを70:35の質量比で混合した後、混合物を高温ボックス炉に投入して、窒素を導入し、900℃の条件で3h熱処理後、粉砕して500メッシュの篩にかけて、負極材料を得る。
本実施例で製造された負極材料は、炭素材料とケイ素材料とを含む凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層とを有し、前記ケイ素材料は、ケイ素単体と、前記ケイ素単体の表面に存在するケイ素酸化物層とを含み、前記ケイ素酸化物層の厚さは、20nmであり、負極材料のメジアン粒子径は、12μmであり、比表面積は、3.2m/gであり、炭素層の平均厚さは、560nmであり、凝集体にSO 2-イオンが存在し、SO 2-イオンの負極材料に対する質量含有量は、980ppmであった。
【0150】
実施例3
本実施例に係る負極材料の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)KF:エタノール:水:アンモニア水を3:55:16:5の質量比で配合して第1のプレミックスを得た後、オルトケイ酸エチル:エタノールを5.0:35の質量比で配合して第2のプレミックスを得、第1のプレミックスを第2のプレミックスにゆっくりと加え、4h撹拌して第1の溶液を得た後、遠心分離してFイオン含有ケイ素酸化物を得る。
(2)乾燥後のケイ素酸化物と金属ナトリウム粉とを100:75の質量比で混合した後、熱処理炉に投入して500℃で4h焼結し、塩酸で焼結生成物を酸洗して乾燥し、Fイオン含有ケイ素材料を得、Fイオン含有ケイ素材料のメジアン粒子径は、80nmである。
(3)Fイオン含有ケイ素材料とスクロースとを90:30.9の質量比でn-ブタノール溶液に加え、60min超音波処理した後、高速分散機にて4時間分散させて第2の溶液を得、その後、第2の溶液を100℃で撹拌しながら蒸発乾燥し、第1の前駆体を得る。
(4)第1の前駆体とフルクトースとを80:45の質量比で混合した後、混合物を高温ボックス炉に投入して、窒素を導入し、890℃の条件で3h熱処理後、粉砕して500メッシュの篩にかけて、負極材料を得る。
本実施例で製造された負極材料は、炭素材料とケイ素材料とを含む凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層とを有し、前記ケイ素材料は、ケイ素単体と、前記ケイ素単体の表面に存在するケイ素酸化物層とを含み、前記ケイ素酸化物層の厚さは、10nmであり、負極材料のメジアン粒子径は、11μmであり、比表面積は、1.2m/gであり、炭素層の平均厚さは、760nmであり、凝集体及びケイ素材料の格子間サイトにFイオンが存在し、Fイオンの負極材料に対する質量含有量は、280ppmであった。
【0151】
実施例4
本実施例に係る負極材料の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)KCl:Mg(NO):エタノール:水:アンモニア水を3:7:55:16:5の質量比で配合して第1のプレミックスを得た後、オルトケイ酸メチル:エタノールを5.5:39の質量比で配合して第2のプレミックスを得、第1のプレミックスを第2のプレミックスにゆっくりと加え、5h撹拌して第1の溶液を得た後、遠心分離してClイオン、NO 2-イオン含有ケイ素酸化物を得る。
(2)乾燥後のケイ素酸化物と金属マグネシウム粉とを100:70の質量比で混合した後、熱処理炉に投入して800℃で4h焼結し、塩酸で焼結生成物を酸洗して乾燥し、Clイオン、NO 2-イオン含有ケイ素材料を得、Clイオン、NO 2-イオン含有ケイ素材料のメジアン粒子径は、50nmである。
(3)Clイオン、NO 2-イオン含有ケイ素材料とフルクトースとを90:30.9の質量比でプロパノール溶液に加え、60min超音波処理した後、高速分散機にて2時間分散させて第2の溶液を得、その後、第2の溶液を100℃で撹拌しながら蒸発乾燥し、第1の前駆体を得る。
(4)第1の前駆体とポリ塩化ビニルとを90:55の質量比で混合した後、混合物を高温ボックス炉に投入して、窒素を導入し、990℃の条件で8h熱処理後、粉砕して500メッシュの篩にかけて、負極材料を得る。
本実施例で製造された負極材料は、炭素材料とケイ素材料とを含む凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層とを有し、前記ケイ素材料は、ケイ素単体と、前記ケイ素単体の表面に存在するケイ素酸化物層とを含み、前記ケイ素酸化物層の厚さは、15nmであり、負極材料のメジアン粒子径は、12.7μmであり、比表面積は、1.9m/gであり、炭素層の平均厚さは、460nmであり、凝集体にClイオンとNO 2-イオンが存在し、ケイ素材料の格子間サイトにClイオンが存在し、ClイオンとNO 2-イオンの負極材料に対する全質量含有量は2180ppmであった。
【0152】
実施例5
本実施例に係る負極材料の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)NaBr:LiSO:エタノール:水:アンモニア水を2:2:51:14:5の質量比で配合して第1のプレミックスを得た後、オルトケイ酸エチル:エタノールを3.5:39の質量比で配合して第2のプレミックスを得、第1のプレミックスを第2のプレミックスにゆっくりと加え、2h撹拌して第1の溶液を得た後、遠心分離して、Brイオン、SO 2-イオン含有ケイ素酸化物を得る。
(2)乾燥後のケイ素酸化物と金属マグネシウム粉とを100:70の質量比で混合した後、熱処理炉に投入して800℃で4h焼結し、硫酸で焼結生成物を酸洗して乾燥し、Brイオン、SO 2-イオン含有ケイ素材料を得、Brイオン、SO 2-イオン含有ケイ素材料のメジアン粒子径は、300nmである。
(3)Brイオン、SO 2-イオン含有ケイ素材料とスクロースとを70:50.9の質量比でn-ペンタノール溶液に加え、60min超音波処理した後、プラネタリーボールミルにて4hボールミーリングして第2の溶液を得、その後、第2の溶液を100℃で撹拌しながら蒸発乾燥し、第1の前駆体を得る。
(4)第1の前駆体とフェノール樹脂とを92:45の質量比で混合した後、混合物を高温ボックス炉に投入して、窒素を導入し、1000℃の条件で2h熱処理後、粉砕して500メッシュの篩にかけて、負極材料を得る。
本実施例で製造された負極材料は、炭素材料とケイ素材料とを含む凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層とを有し、前記ケイ素材料は、ケイ素単体と、前記ケイ素単体の表面に存在するケイ素酸化物層とを含み、前記ケイ素酸化物層の厚さは、20nmであり、負極材料のメジアン粒子径は、9.5μmであり、比表面積は、2.9m/gであり、炭素層の平均厚さは、960nmであり、凝集体にBrイオン、SO 2-イオンが存在し、ケイ素材料の格子間サイトにBrイオンが存在し、Brイオン、SO 2-イオンの負極材料に対する全質量含有量は、1080ppmである。
【0153】
実施例6
本実施例に係る負極材料の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)ZnCl:エタノール:水:アンモニア水:オルトケイ酸エチルを5:78:17:4:3.1の質量比で配合して第1の溶液を得て、4h撹拌した後、遠心分離してClイオン含有ケイ素酸化物を得る。
(2)乾燥後のケイ素酸化物と金属マグネシウム粉とを100:131の質量比で混合した後、熱処理炉に投入して900℃で4h焼結し、塩酸で焼結生成物を酸洗して乾燥し、Clイオン含有ケイ素材料を得る。Clイオン含有ケイ素材料のメジアン粒子径は、120nmである。
(3)Clイオン含有ケイ素材料とスクロースとを70:35.9の質量比でn-ブタノール溶液に加え、50min超音波処理した後、高速分散機にて2時間分散させて第2の溶液を得、その後、第2の溶液を100℃で撹拌しながら蒸発乾燥し、第1の前駆体を得る。
(4)第1の前駆体とフルクトースとを100:35の質量比で混合した後、混合物を高温ボックス炉に投入して、窒素を導入し、800℃の条件で3h熱処理後、粉砕して500メッシュの篩にかけて、負極材料を得る。
本実施例で製造された負極材料は、炭素材料とケイ素材料とを含む凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層とを有し、前記ケイ素材料は、ケイ素単体及びマグネシウムケイ素合金を含む。負極材料のメジアン粒子径は、12μmであり、比表面積は、2.3m/gであり、炭素層の平均厚さは、500nmであり、凝集体及びケイ素材料の格子間サイトにClイオンが存在し、Clイオンのの負極材料に対する質量含有量は、550ppmであった。
【0154】
実施例7
本実施例に係る負極材料の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)ZnCl:エタノール:水:アンモニア水を5:48:17:4の質量比で配合して第1のプレミックスを得た後、オルトケイ酸エチル:エタノールを3.1:30の質量比で配合して第2のプレミックスを得、第1のプレミックスを第2のプレミックスにゆっくりと加え、4h撹拌して第1の溶液を得た後、遠心分離してClイオン含有ケイ素酸化物を得る。
(2)乾燥後のケイ素酸化物と金属アルミニウム粉とを100:140の質量比で混合した後、熱処理炉に投入して900℃で4h焼結し、塩酸で焼結生成物を酸洗して乾燥し、Clイオン含有ケイ素材料を得る。Clイオン含有ケイ素材料のメジアン粒子径は、450nmである。
(3)Clイオン含有ケイ素材料とスクロースとを70:35.9の質量比でn-ブタノール溶液に加え、50min超音波処理した後、高速分散機にて2時間分散させて第2の溶液を得、その後、第2の溶液を100℃で撹拌しながら蒸発乾燥し、第1の前駆体を得る。
(4)第1の前駆体を高温ボックス炉に投入し、窒素を導入し、800℃の条件で3h熱処理後、粉砕して500メッシュの篩にかけて、凝集体を得る。
本実施例で製造された負極材料は、炭素材料とケイ素材料とを含む凝集体を有し、前記ケイ素材料は、ケイ素単体と、アルミニウムケイ素合金を含み、負極材料のメジアン粒子径は、12μmであり、比表面積は、3.0m/gであり、炭素層の平均厚さは、559nmであり、凝集体及びケイ素材料の格子間サイトにClイオンが存在し、Clイオンの負極材料に対する質量含有量は、2500ppmである。
【0155】
実施例8
実施例8において、工程(2)における焼結温度を500℃とする以外、実施例1とほぼ同様にする。
本実施例で製造された負極材料は、炭素材料とケイ素材料とを含む凝集体を有し、ケイ素材料は、ケイ素単体及び前記ケイ素単体の表面に存在するケイ素酸化物層であり、前記ケイ素酸化物層の厚さは、10nmであり、負極材料のメジアン粒子径は、13μmであり、比表面積は、2.1m/gであり、炭素層の平均厚さは、490nmであり、凝集体及びケイ素材料の格子間サイトにClイオンが存在し、Clイオンの負極材料に対する質量含有量は、620ppmであった。
【0156】
実施例9
実施例9において、工程(2)では、酸洗処理を行わない以外、実施例1とほぼ同様にする。
本実施例で製造された負極材料は、炭素材料とケイ素材料とを含む凝集体を有し、ケイ素材料は、ケイ素単体であり、負極材料のメジアン粒子径は、17μmであり、比表面積は、3.2m/gであり、炭素層の平均厚さは、560nmであり、凝集体及びケイ素材料にClイオンが存在し、Clイオンの負極材料に対する質量含有量は290ppmであった。
【0157】
比較例1
ZnCl:エタノール:水:アンモニア水を10:48:17:4の質量比で配合して第1の溶液を得る以外、実施例1とほぼ同様にして、負極材料を製造する。
本実施例で製造された負極材料は、炭素材料とケイ素材料とを含む凝集体を有し、前記ケイ素材料は、ケイ素単体及び前記ケイ素単体の表面に存在するケイ素酸化物層であり、前記ケイ素酸化物層の厚さは、10nmであり、負極材料の負極材料のメジアン粒子径は、19μmであり、比表面積は、3.0m/gであり、炭素層の平均厚さは、620nmであり、凝集体及びケイ素材料の格子間サイトにClイオンが存在し、Clイオンの負極材料に対する質量含有量は5970ppmである。
【0158】
比較例2
ZnCl:エタノール:水:アンモニア水を0.5:48:17:4の質量比で配合して第1の溶液を得る以外、実施例1とほぼ同様にして、負極材料を製造する。
本実施例で製造された負極材料は、炭素材料とケイ素材料とを含む凝集体を有し、前記ケイ素材料は、ケイ素単体及び前記ケイ素単体の表面に存在するケイ素酸化物層であり、前記ケイ素酸化物層の厚さは、10nmであり、負極材料のメジアン粒子径は、20μmであり、比表面積は、3.8m/gであり、炭素層の平均厚さは、580nmであり、凝集体及びケイ素材料の格子間サイトにClイオンが存在し、Clイオンの負極材料に対する質量含有量は、9ppmである。
【0159】
比較例3
塩化物を添加しなかった以外、実施例1とほぼ同様にして負極材料を製造する。
本実施例で製造された負極材料は、ケイ素材料と炭素材料を含む凝集体と、凝集体の表面に被覆された炭素層とを有し、前記ケイ素材料は、ケイ素単体及び前記ケイ素単体の表面に存在するケイ素酸化物層とであり、前記ケイ素酸化物層の厚さは、14nmであり、負極材料のメジアン粒子径は、10μmであり、比表面積は、2.9m/gであり、炭素層の平均厚さは、440nmであった。凝集体にClイオンが存在しなかった。
【0160】
測定方法
(1)負極材料のメジアン粒子径の測定方法:
マルベンレーザー粒度計で負極材料の平均粒子径であるメジアン粒子径を測定する。
(2)負極材料の比表面積の測定方法:
MicromeriticsTriStar3020自動比表面積/細孔分布測定装置を用いて、負極材料の比表面積を測定し、一定質量の粉体を秤量し、真空加熱状態で完全脱気を行い、表面吸着物質を除去した後、窒素吸着法を用いて、窒素吸着量から粒子の比表面積を算出する。
(3)負極材料の炭素層厚さの測定方法:
集束イオンビーム顕微鏡(FIB-SEM)装置で材料を切断加工し、走査電子顕微鏡像で測定して炭素層の平均厚さを得る。
(4)負極材料中のアニオンのタイプ及び含有量の測定方法:
イオンクロマトグラフィーを用いて、負極材料に存在するアニオンのタイプと含有量を測定する。
(5)ケイ素材料の格子間サイトにおけるアニオンを測定する方法
ナノイオンプローブ(Nano-SIMS)を用い、負極材料を測定し、入射イオンビームエネルギーが140evより高い場合、ケイ素材料の格子間サイトにアニオン存在することを示す。
(6)電気化学測定
以下の方法で電気化学的サイクル性能を測定する。固形分が50%となるように、製造されたケイ素炭素複合負極材料、導電剤及び接着剤を質量比94:1:5で溶媒に溶解して混合し、銅箔集電体に塗布し、真空乾燥させ、負極シートを製造する。そして、従来の成熟した技術で製造された三元正極シート、1mol/LのLiPF/エチレンカーボネート+ジメチルカーボネート+メチルエチルカーボネート(v/v=1:1:1)電解液、Celgard2400セパレータフィルム、ケースを従来の製造技術でボタン型リチウムイオン電池に組み立てる。マイクロメーターでリチウムイオン電池の極片の初期厚さH0を測定する。リチウムイオン電池の充放電試験は、WuhanLANDelectronics社製LAND電池用測定システムで、常温条件で、0.2Cで定電流充放電し、充放電電圧を2.75~4.2Vとする。初回可逆容量、初回充電容量及び初回放電容量を得る。初回クーロン効率=初回放電容量/初回充電容量
100サイクル繰り返し、放電容量をリチウムイオン電池の残容量として記録し、容量維持率=残容量/初期容量*100%である。
【0161】
上記性能測定の結果は、以下のとおりである。
表1 性能対比結果表
【表1】
【0162】
図4は、本発明の実施例1で製造された負極材料の初回充放電曲線であり、図4に示すように、実施例1で製造された負極材料は、初回充放電容量が高く、初回クーロン効率も高い。
【0163】
図5は、本発明の実施例1で製造された負極材料のサイクル性能曲線であり、図5に示すように、該負極材料は、優れたサイクル性能を有し、100サイクルしても、容量維持率は、93.7%である。
【0164】
表1に示すように、実施例1~7で製造された負極材料は、活物質と炭素材料を含む凝集体を有する。凝集体におけるアニオンは、キャリアのさらなる輸送に寄与する。リチウムイオン及び電子の材料での拡散を促進し、キャリアの材料での輸送効率を高め、負極材料の初回クーロン効率を向上させる。
【0165】
そのうち、実施例7に係る負極材料は、製造過程において、炭素被覆処理しないため、活物質材料が電解液に直接接触し、形成されたSEI膜が、不安定になり、サイクル性能が劣化する。
【0166】
実施例8に係る負極材料は、製造過程において、焼結温度が500℃であり、温度が高すぎるため、炭化が不十分になり、被覆効果が悪く、初回効率が低下する。
【0167】
実施例9に係る負極材料は、製造過程において、工程(2)で酸洗処理を行わず、その結果、金属酸化物等の不純物が存在し、材料の容量が低下し、初回効率も低下する。
【0168】
比較例1に係る負極材料は、製造過程において、工程(1)における原材料中の無機塩の含有量が高すぎ、凝集体中のアニオンの含有量が高すぎ、一部のイオンがリチウムイオンと結合反応し、一部のLiを「縛り」、材料の初回クーロン効率、サイクル寿命特性を劣化させる。
【0169】
比較例2に係る負極材料は、製造過程において、工程(1)における原材料中の無機塩含有量が低すぎ、凝集体中のアニオンの含有量が低すぎ、材料の電気化学的性能が向上しにくく、材料の初回クーロン効率、サイクル寿命特性を劣化させる。
【0170】
比較例3に係る負極材料は、製造過程において、工程(1)における原材料に無機塩を添加しないので、材料の電気化学的性能が向上しにくい。
【0171】
以上より、好適な実施例を参照しながら本発明を開示したが、これらの内容は、特許請求の範囲を限定するものではない。当業者が本発明の主旨を逸脱せず、種々の可能な変更や修正を行うことができる。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲に限定される範囲に準じるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材料とケイ素材料とを含む凝集体を有し、
前記ケイ素材料の凝集体に、アニオンが存在し、前記アニオンの含有量が、前記負極材料に対して0.001wt%~0.5wt%であることを特徴とする負極材料。
【請求項2】
以下の(1)~(9)のうちの少なくとも1つの特徴を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
(1)前記アニオンは、F、Cl、Br、NO 、SO 2-、NO2-及びPO 3-のうちの少なくとも1つを含む;
(2)前記ケイ素材料は、ケイ素単体、ケイ素合金及びケイ素酸化物のうちの少なくとも1つを含む;
(3)前記ケイ素材料は、ケイ素単体と、前記ケイ素単体の表面に存在するケイ素酸化物層とを含む;
(4)前記ケイ素材料は、ケイ素単体と、前記ケイ素単体の表面に存在するケイ素酸化物層とを含み、前記ケイ素酸化物層の厚さが1nm~50nmである;
(5)前記ケイ素材料のメジアン粒子径が1nm~500nmである;
(6)前記ケイ素材料の含有量が、前記負極材料に対して10質量%~80質量%である;
(7)前記炭素材料は、人工黒鉛、天然黒鉛、ソフト炭素、ハード炭素、アモルファスカーボン、活性炭、メソカーボンマイクロビーズ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン及び多孔質炭素のうちの少なくとも1つを含む;
(8)前記ケイ素材料の格子間サイトにアニオンが存在し、前記アニオンのイオン半径が118pm~940pmである;
(9)前記ケイ素材料の格子間サイト凝集体にアニオンが存在し、前記アニオンは、F、Cl、Brのうちの少なくとも1つを含む。
【請求項3】
以下の(1)~(6)のうちの少なくとも1つの特徴を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の負極材料。
(1)前記負極材料は、前記凝集体の少なくとも一部の表面に存在する炭素層をさらに含む;
(2)前記負極材料は、前記凝集体の少なくとも一部の表面に存在する炭素層をさらに含み、前記炭素層は、アモルファスカーボンを含む;
(3)前記負極材料は、前記凝集体の少なくとも一部の表面に被覆された炭素層をさらに含み、前記炭素層の厚さが、1nm~3000nmである;
(4)前記炭素材料の含有量が、前記負極材料に対して10質量%~60質量%である;
(5)前記負極材料のメジアン粒子径が0.5μm~30μmである;
(6)前記負極材料の比表面積が10m/g以下である。
【請求項4】
ケイ素源前駆体とアニオン含有無機塩とを含む混合液を加水分解させて、加水分解生成物を得る工程と、
前記加水分解生成物を還元し、ケイ素材料を得る工程と、
炭素材料と前記ケイ素材料とを含む凝集体を製造する工程とを含む、ことを特徴とする負極材料の製造方法。
【請求項5】
以下の(1)~(10)のうちの少なくとも1つの特徴を含む、ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
(1)前記ケイ素源前駆体は、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸メチル、ケイ酸ナトリウム、ポリシロキサン、トリメチルエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン及びシルセスキオキサンのうちの少なくとも1つを含む;
(2)前記アニオンは、F、Cl、Br、NO 、SO 2-、NO2-、及びPO 3-のうちの少なくとも1つを含む;
(3)前記混合液は第1の溶媒をさらに含み、前記第1の溶媒は、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、n-ブタノール、イソブタノール及びペンタノールのうちの少なくとも1つを含む;
(4)前記混合液は加水分解促進剤をさらに含む;
(5)前記混合液は加水分解促進剤をさらに含み、前記加水分解促進剤は、アンモニア水、尿素、塩酸、硫酸、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウムのうちの少なくとも1つを含む;
(6)前記加水分解反応は、撹拌しながら行い、前記加水分解反応の時間は、3h~10hである;
(7)前記方法は、ケイ素源前駆体とアニオン含有無機塩とを含む混合液を加水分解反応させる前、アニオン含有無機塩、第1の溶媒及び加水分解促進剤を混合して第1のプレミックスを形成し、ケイ素源前駆体と第1の溶媒を混合して第2のプレミックスを形成し、さらに前記第1のプレミックスと前記第2のプレミックスとを混合して混合液を得る工程をさらに含む;
(8)前記アニオンの含有量が、前記第1のプレミックスに対して5wt%~55wt%である;
(9)前記ケイ素源前駆体の含有量が、前記第2のプレミックスに対して10wt%~70wt%である;
(10)前記方法は、ケイ素源前駆体とアニオン含有無機塩とを含む混合液を加水分解反応させた後、前記加水分解生成物中の第1の溶媒を除去する工程をさらに含む。
【請求項6】
以下の(1)~(9)のうちの少なくとも1つの特徴を含む、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の製造方法。
(1)前記加水分解生成物を還元する工程は、前記加水分解生成物と還元性金属とを十分に混合した後、焼結処理を行うことを含む;
(2)前記加水分解生成物と前記還元性金属との質量比が100:(13~130)である;
(3)前記還元性金属は、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、カルシウム、及びカリウムのうちの少なくとも1つを含む;
(4)前記焼結処理は、温度が、600℃~1200℃であり、時間が、1h~10hである;
(5)前記焼結処理過程中に保護ガスを導入する;
(6)前記保護ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン及びクリプトンのうちの少なくとも1つを含む;
(7)前記方法は、前記加水分解生成物と還元性金属とを混合して、焼結処理を行った後、焼結生成物を酸洗、乾燥処理する工程をさらに含み、前記酸洗に使用される酸溶液は、塩酸、硫酸、硝酸のうちの少なくとも1つを含む;
(8)前記十分に混合する処理の方式は、機械撹拌、超音波分散、研磨分散のうちの少なくとも1つを含む;
(9)前記ケイ素材料のメジアン粒子径は、1nm~500nmである。
【請求項7】
前記炭素材料と前記ケイ素材料とを含む凝集体を製造する工程は、第1の炭素源と前記ケイ素材料とを含む第1の前駆体を一次熱処理し、前記第1の炭素源を炭化させるか、又は前記第1の炭素源を前記ケイ素材料と凝集させることを含む、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項8】
以下の(1)~(13)のうちの少なくとも1つの特徴を含む、ことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
(1)前記ケイ素材料と第1の炭素源との質量比が(5~50):(15~80)である;
(2)前記ケイ素材料は、ケイ素単体、ケイ素合金、及びケイ素酸化物のうちの少なくとも1つを含む;
(3)前記ケイ素材料は、ケイ素単体と、前記ケイ素単体の表面に存在するケイ素酸化物層とを含み、前記ケイ素酸化物層の厚さは、1nm~50nmである;
(4)前記第1の炭素源は、スクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトのうちの少なくとも1つを含む;
(5)前記第1の炭素源は、人工黒鉛、天然黒鉛、ソフト炭素、ハード炭素、アモルファスカーボン、活性炭、メソカーボンマイクロビーズ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、及び多孔質炭素のうちの少なくとも1つを含む;
(6)前記方法は、第1の炭素源と前記ケイ素材料を含む第1の前駆体を一次熱処理する前、第1の炭素源、第1の溶媒及び前記ケイ素材料を十分に分散させて第2の溶液を形成する工程をさらに含む;
(7)前記第1の溶媒は、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、n-ブタノール、イソブタノール及びペンタノールのうちの少なくとも1つを含む;
(8)前記十分に分散させる処理の方式は、機械撹拌、超音波分散、及び研磨分散のうちの少なくとも1つを含む;
(9)前記第2の溶媒を除去する具体的な方式は、第2の溶液を乾燥処理することを含む;
(10)前記乾燥処理は、温度が40℃~400℃であり、時間が1h~15hである;
(11)前記第1の炭素源は、人工黒鉛、天然黒鉛、ソフト炭素、ハード炭素、アモルファスカーボン、活性炭、メソカーボンマイクロビーズ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、及び多孔質炭素のうちの少なくとも1つを含み、前記一次熱処理は、温度が400℃~1000℃であり、時間が1h~5hである;
(12)前記第1の炭素源は、スクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトのうちの少なくとも1つを含み、前記一次熱処理は、温度が500℃~1000℃であり、時間が1h~5hである;
(13)前記一次熱処理は、保護雰囲気下で行い、前記保護雰囲気のガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン及びクリプトンのうちの少なくとも1つを含む。
【請求項9】
以下の(1)~()のうちの少なくとも1つの特徴を含む、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の製造方法。
(1)前記方法は、前記凝集体を炭素被覆処理する工程をさらに含む;
(2)前記方法は、前記凝集体を炭素被覆処理する工程をさらに含み、前記炭素被覆処理の工程は、前記凝集体と第2の炭素源とを混合して二次熱処理することを含む;
(3)前記方法は、前記凝集体を炭素被覆処理する工程をさらに含み、前記炭素被覆処理の工程は、前記凝集体と第2の炭素源とを混合して二次熱処理することを含み、前記第2の炭素源は、スクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトのうちの少なくとも1つを含む;
(4)前記方法は、前記凝集体を炭素被覆処理する工程をさらに含み、前記炭素被覆処理の工程は、前記凝集体と第2の炭素源とを混合して二次熱処理することを含み、前記凝集体と前記第2の炭素源との質量比が(20~100):(10~80)である;
(5)前記方法は、前記凝集体を炭素被覆処理する工程をさらに含み、前記炭素被覆処理の工程は、前記凝集体と第2の炭素源とを混合して二次熱処理することを含み、前記二次熱処理は、温度が、800℃~900℃であり、時間が、1h~5hである。
【請求項10】
請求項1もしくは2に記載の負極材料又は請求項4もしくは5に記載の製造方法によって製造された負極材料を含むリチウムイオン電池。
【国際調査報告】