(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】熱交換反応器シール装置
(51)【国際特許分類】
B01J 8/02 20060101AFI20240416BHJP
B01J 8/06 20060101ALI20240416BHJP
F28D 7/16 20060101ALN20240416BHJP
C01B 3/38 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
B01J8/02 Z
B01J8/06
F28D7/16 A
C01B3/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532785
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(85)【翻訳文提出日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 GB2022050318
(87)【国際公開番号】W WO2022180354
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ファーネル、ピーター ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】グラハム、サイモン
【テーマコード(参考)】
3L103
4G070
4G140
【Fターム(参考)】
3L103AA35
4G070AA01
4G070AB05
4G070BB02
4G070CA25
4G070CA30
4G070CB02
4G070CB17
4G070CB18
4G070DA06
4G140EA03
4G140EA06
4G140EB14
4G140EB22
4G140EB44
4G140EC02
(57)【要約】
1つ以上の管を備える熱交換反応器での使用に適した管シールデバイスであって、該管シールデバイスは、シール管と、シール管内に配設されて重なり領域を提供する内管と、を備え、該内管は、該重なり領域内に、(i)低圧領域を形成する、断面積が減少した内部狭窄部と、(ii)狭窄部の断面積よりも大きい断面積の、狭窄部に隣接する膨張領域と、(iii)該低圧領域を内管の外部につなぐ、内管の壁を通る1つ以上の通路と、を有し、管シールデバイスは、内管の低圧領域に対応する重なり領域においてシール管の内面の周りに形成された1本以上の溝を更に含む、管シールデバイスが説明される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の管を備える熱交換反応器での使用に適した管シールデバイスであって、前記管シールデバイスは、シール管と、前記シール管内に配設されて重なり領域を提供する内管と、を備え、前記内管は、前記重なり領域内に、(i)低圧領域を形成する、断面積が減少した内部狭窄部と、(ii)前記狭窄部の断面積よりも大きい断面積の、前記狭窄部に隣接する膨張領域と、(iii)前記低圧領域を前記内管の外部につなぐ、前記内管の壁を通る1つ以上の通路と、を有し、前記管シールデバイスは、前記内管の前記低圧領域に対応する前記重なり領域において前記シール管の内面の周りに形成された1本以上の溝を更に備える、管シールデバイス。
【請求項2】
1本以上の溝が、前記内管の前記膨張領域に対応する前記重なり領域に付加的に提供される、請求項1に記載の管シールデバイス。
【請求項3】
前記膨張領域内の前記1本以上の溝は、前記内管の外面上又は前記シール管の前記内面上に、好ましくは前記内管の前記外面上に提供される、請求項2に記載の管シールデバイス。
【請求項4】
前記内管の前記低圧領域に対応する前記重なり領域において、前記シール管上に位置する1~30本の溝、好ましくは5~20本の溝を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の管シールデバイス。
【請求項5】
前記1本以上の溝は、正方形若しくは長方形の形態を有するか、又はU字形、V字形、若しくはこれらの任意の組み合わせである、請求項1~4のいずれか一項に記載の管シールデバイス。
【請求項6】
この領域内の前記1本以上の溝は、2~20mm、好ましくは6~14mmの範囲の幅を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の管シールデバイス。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の管シールデバイスを含む1つ以上の熱交換管を備える、熱交換反応器。
【請求項8】
プロセス流体供給ゾーン、熱交換ゾーン、及びプロセス流体取り出しゾーンと、前記ゾーンを互いに分離する第1の境界手段及び第2の境界手段と、前記境界手段のうちの1つに固定され、前記熱交換ゾーンを通って延在する1つ以上の熱交換管と、それぞれの熱交換管のための管シールデバイスと、を備え、前記管シールデバイスは、シール管及び内管を備え、前記管シールデバイスの前記シール管は、前記境界手段のうちの1つに固定され、前記内管がその関連するシール管と摺動係合し、それによって重なり領域を形成するように、前記内管と実質的に同軸状に配設されている、請求項7に記載の熱交換反応器。
【請求項9】
前記熱交換管は、水蒸気改質触媒を包含する、請求項8に記載の熱交換反応器。
【請求項10】
前記熱交換ゾーン内に1つ以上の横断バッフルを備える、請求項8又は請求項9に記載の熱交換反応器。
【請求項11】
前記管シールデバイスは、前記熱交換ゾーンと前記取り出しゾーンとの間の前記境界手段に固定されている、請求項8~10のいずれか一項に記載の熱交換反応器。
【請求項12】
プロセス流体が前記管を通過した後に前記プロセス流体の部分燃焼をもたらし、前記部分燃焼後のガスを熱交換媒体として前記熱交換水蒸気改質器に供給するように設計された部分燃焼手段に動作可能に接続された、熱交換水蒸気改質器の形態である、請求項8~11のいずれか一項に記載の熱交換反応器。
【請求項13】
前記部分燃焼手段は、前記部分燃焼ガスが前記熱交換媒体として前記熱交換改質器に供給される前に通過する改質触媒床を含む、請求項12に記載の熱交換反応器。
【請求項14】
(a)境界手段によって熱交換ゾーンから分離されたプロセス流体供給ゾーンを有する熱交換反応器にプロセス流体を供給する工程と、(b)前記プロセス流体を、前記プロセス流体供給ゾーンから、前記熱交換ゾーンを通って延在する1つ以上の熱交換管に通過させる工程であって、前記プロセス流体は、前記熱交換ゾーン内の前記管を通過する前記プロセス流体よりも低い圧力で熱交換媒体との熱交換に供される、工程と、(c)前記プロセス流体を、前記熱交換管から、第2の境界手段によって前記熱交換ゾーンから分離されたプロセス流体取り出しゾーンに送る工程と、(d)前記プロセス流体取り出しゾーンからの前記プロセス流体を更なる処理工程に供する工程と、(e)得られた処理済みプロセス流体を前記熱交換媒体として前記熱交換ゾーンに通過させる工程と、を含むプロセスであって、前記1つ以上の熱交換管のそれぞれは、前記境界手段のうちの一方に固定され、管シールデバイスによって前記境界手段のうちの他方と係合し、前記管シールデバイスは、前記境界手段のうちの前記他方に固定されたシール管と、それぞれの熱交換管に接続され、前記シール管内に配設されて重なり領域を提供する内管と、を備え、前記内管は、前記重なり領域内に、(i)低圧領域を形成する、断面積が減少した内部狭窄部と、(ii)前記低圧領域の、前記プロセス流体の流れ方向において下流側の前記狭窄部の断面積よりも大きい断面積の膨張領域と、(iii)前記低圧領域を前記内管の前記外部につなぐ、前記内管の前記壁を通る1つ以上の通路と、を有し、前記管シールデバイスは、前記内管の前記低圧領域に対応する前記重なり領域において前記シール管の内面の周りに形成された1本以上の溝を含む、プロセス。
【請求項15】
前記熱交換反応器は、水蒸気改質触媒を包含する1つ以上の外部加熱管を包含する熱交換改質器を含み、前記水蒸気改質触媒に改質器供給物が通されて合成ガスが生成され、前記管を加熱するために使用される前記熱交換媒体は、前記改質器供給物よりも低圧である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記交換水蒸気改質器は、プロセス流体が前記管を通過した後に前記プロセス流体の部分燃焼をもたらし、前記部分燃焼後の前記ガスを熱交換媒体として前記熱交換水蒸気改質器に供給するように設計された部分燃焼手段に動作可能に接続される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記部分燃焼手段は、前記部分燃焼ガスが前記熱交換媒体として前記熱交換改質器に供給される前に通過する改質触媒床を含む、請求項16に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール装置及び熱交換反応器におけるシール装置の使用、並びにそのような装置を使用するプロセス、特に触媒水蒸気改質プロセスに関する。
【0002】
外部から加熱される管を包含する熱交換反応器装置では、プロセス流体を運ぶ管と、管を通過するプロセス流体との熱交換において熱交換媒体が通過するゾーンの境界を画定する管板などの手段との間に著しい熱膨張差が存在しやすい。管が、管を通過するプロセス流体よりも低圧である、管の外部の周りを流れる熱交換媒体によって加熱される場合、1つの解決策は、シール管と、低圧領域を提供する狭窄部を有し、低圧領域と内管の外部をつなぐ、内管の壁を通る通路も有する、シール管内に移動可能に配設された内管と、を備えた、それぞれの管に接続されたシールデバイスを採用することであった。このようにして、プロセス流体と熱交換媒体との混合が防止又は低減される。国際公開第9705947号は、そのような装置を開示している。
【0003】
本出願人は、内管の外部とシール管の内部との間の環状空間内に乱流を発生させることによってシールデバイス内の熱交換媒体の流れを乱すことにより、熱交換媒体とプロセス流体との混合量を低減することができることを見出した。
【0004】
したがって、本発明は、1つ以上の管を備える熱交換反応器での使用に適した管シールデバイスであって、該管シールデバイスは、シール管と、シール管内に配設されて重なり領域を提供する内管と、を備え、該内管は、該重なり領域内に、(i)低圧領域を形成する、断面積が減少した内部狭窄部と、(ii)狭窄部の断面積よりも大きい断面積の、狭窄部に隣接する膨張領域と、(iii)該低圧領域を内管の外部につなぐ、内管の壁を通る1つ以上の通路と、を有し、管シールデバイスは、内管の低圧領域に対応する重なり領域においてシール管の内面の周りに形成された1本以上の溝を更に備える、管シールデバイスを提供する。
【0005】
本発明は更に、管シールデバイスを含む1つ以上の熱交換管を含む熱交換反応器、並びに反応器及び管シールデバイスを使用するプロセスを提供する。
【0006】
管シールデバイスを含む熱交換反応器装置は、管の外部の周りを流れる熱交換媒体が管を通過するプロセス流体よりも低い圧力である場合に特に有用である。
【0007】
内管の外部ではなくシール管の内部に溝を提供することによって、熱交換媒体によってそこに運ばれる材料による内管の付着汚れが低減される。これは、管シールデバイスの長期性能を改善し、汚れが付着したシール管が定期的なメンテナンス中に交換されることを可能にすることによってメンテナンスを簡略化することができる。更に、シール管の内部に溝を提供することにより、潜在的により多くの溝が存在することが可能になる。
【0008】
プロセス流体と熱交換媒体との混合を更に減少させるために、内管の膨張領域に対応する重なり領域に1本以上の溝が付加的に存在してもよい。膨張領域内の1本以上の溝は、内管の外面上にあってもよく、シール管の内面上にあってもよい。好ましくは、内管の膨張領域に対応する重なり領域内の1本以上の溝は、内管の外面上に配設される。なぜなら、これは製造を簡略化するからである。
【0009】
管シールデバイスを含む熱交換反応器装置は、プロセス流体供給ゾーン、熱交換ゾーン、及びプロセス流体取り出しゾーンと、それらのゾーンを互いに分離する第1の境界手段及び第2の境界手段と、該境界手段のうちの1つに固定され、熱交換ゾーンを通って延在する1つ以上の熱交換管と、を含み得る。プロセス流体は、プロセス流体供給ゾーンから、1つ以上の熱交換管を通って、プロセス流体取り出しゾーンに流れ込み得る。それぞれの熱交換管には、管シールデバイスが提供される。管シールデバイスのシール管は、該境界手段のうちの1つに固定され得る。管シールデバイスの内管は、それぞれの熱交換管上に提供される。シール管は、内管がその関連するシール管と摺動係合し、それによって重なり領域を形成するように、内管と実質的に同軸状に配設される。
【0010】
管シールデバイスのそれぞれの内管には、(i)内管内に低圧領域を形成する、断面積が減少した内部狭窄部と、(ii)該狭窄部の下流の狭窄部の断面積よりも大きい断面積の膨張領域と、(iii)該低圧領域を内管の外部につなぐ、内管の壁を通る1つ以上の通路と、が提供され、該通路は、該重なり領域内に位置し、それによって、流体が熱交換ゾーンから該重なり領域を通って該内管内の該低圧領域に入るための流路を提供する。
【0011】
それぞれの管シールデバイスは、内管の低圧領域に対応する重なり領域においてシール管の内面の周りに形成された1本以上の溝を含む。
【0012】
上記のタイプの熱交換反応器では、プロセス流体は、プロセス流体供給ゾーンから熱交換媒体が通過するケーシングによって画定される熱交換ゾーン内に配設された1つ以上の熱交換管に通し、次いでプロセス流体取り出しゾーン内に送られる。管板などの手段が、ゾーンを分離するために提供される。そのように、管板は、熱交換媒体が通過する熱交換ゾーンを、熱交換管の内部と連通して管へのプロセス流体の供給又は管からのプロセス流体の取り出しを可能にするプレナムチャンバなどのゾーンから分離し得る。代替の構成は、熱交換ゾーン内に配設されたヘッダーパイプを使用してプロセス流体供給ゾーンを画定することを伴い、プロセス流体はヘッダーパイプに供給され、そこから熱交換管に流入して通過する。同様に、管からのプロセス流体の取り出し用にヘッダーパイプが提供されてもよい。あるいは、管板とヘッダーパイプとの組み合わせがあってもよい。このような管板又はヘッダーは、熱交換ゾーンとプロセス流体供給ゾーン及びプロセス流体取り出しゾーンとの間の境界を画定するので、本明細書では境界手段と呼ばれる。
【0013】
熱交換管上に内管を提供することによって、及び熱交換反応器内の境界手段にシール管を接続することによって、熱交換管の熱膨張及び収縮によって引き起こされる長手方向の動きに対応し得る。
【0014】
使用時には、内管内の低圧領域のために、熱交換媒体は内管の内部に引き込まれ得、そこで熱交換媒体は内管を通って流れるプロセス流体と混合する。
【0015】
熱交換反応器は、1つ以上の熱交換管、例えば1~10本の管を包含し得るが、例えば水蒸気改質プロセスで使用される熱交換反応器は、数十本又は更には数百本の管、例えば10~2000本の管を包含してもよい。管は、内径25~150mmであってもよく、管の壁厚は、管のサイズに応じて2~13mmの範囲であってもよい。管は、5~15メートルの長さであってもよい。このような長さ、特に10~15メートルでは、管シールデバイスを使用しないと長手方向の膨張が特に問題となる。管は、ステンレス鋼などの適切な金属から製造され得る。熱交換反応器は、熱交換媒体を、熱交換ゾーンを通る蛇行様式で移動させ、それによって熱交換を向上させるために、1つ以上の横断バッフルを備えてもよい。
【0016】
管シールデバイスは、内管を備える。内管は、熱交換管の一端に接続されてもよく、又は熱交換管の端部として形成されてもよい。内管は、熱交換管と同じ直径を有してもよく、又は好ましくは熱交換管よりも狭い直径を有してもよい。内管は、多角形又は円筒形であってもよいが、重なり領域において内管の外面とシール管の内面との間に均一な隙間空間が形成されるような形状であることが好ましい。内管は、管内に低圧領域を形成する内部狭窄部と、狭窄部に隣接して管内に膨張ゾーンを形成する拡大された部分と、を有する。内管の壁を通る1つ以上の通路が、低圧領域を内管の外部につなぐ。低圧領域を内管の外部につなぐ1~20個の通路があってもよい。通路は、内管とシール管との間の隙間空間に開口するように等間隔に配置されることが望ましい。使用時、デバイスは、膨張ゾーンが低圧ゾーンの下流に位置するように配向される。例えば、管シールデバイスが熱交換管の最下端に位置する垂直下降流構成では、膨張領域は内管の狭窄部の下になる。狭窄部、低圧領域、及び膨張領域の相対的なサイズは、管のサイズに部分的に依存する。例えば、内径約100mmの熱交換管を含む一実施形態では、内管を形成する管の部分は、内径約18mm及び長さ約108mmの低圧領域に開口する内径約12mmの狭窄部まで内部で先細になる、約25mmの内部寸法を有してもよい。低圧領域の端部において、内管は、約78mmの長さにわたって18mmの直径から約31mmの外径までフレア状であってもよい。低圧領域と内管の外部との間に、直径3mmの12個の等間隔の通路が提供されてもよい。
【0017】
シール管の内面と内管の外面との間の重なり領域には、隙間空間、例えば環状の間隙が存在する。これにより、内管は、シール管内で長手方向に自由に動くことができる。シール管の内面と熱交換管の内管部分の外面との間の隙間の厚さは、約0.1~0.5mmであってもよい。例えば、上述の実施形態では、間隙は約0.2mmであってもよい。
【0018】
管シールデバイスは、シール管も備える。シール管は、多角形又は円筒形であってもよいが、均一な隙間空間が維持されるように、内管と同じ形状を有することが好ましい。円筒形シール管及び円筒形内管を備える管シールデバイスは、製造がより単純であり、圧力下において高温で使用するのにより適しているので好ましい。
【0019】
管シールデバイスは、シール管の内面上に1本以上の溝を含む。シール管の内面上の1本以上の溝は、内管の低圧領域に対応する重なり領域においてシール管の内面上に形成される。シール管の内面上の1本以上の溝は、クレネレーションとして、すなわち、正方形又は長方形の形態を有するものとして形成されてもよく、又は溝は、U字形、V字形、若しくはこれらの任意の組み合わせであってもよい。正方形又は長方形の溝は、重なり領域において改善された乱流を提供し得る。
【0020】
溝は、シール管デバイスの内面に1つ以上のチャネルを切り込むことによって形成されてもよい。代替として、溝は、例えば、シール管デバイスの内側に内径の異なるリングの層状構成を使用することによって、又はシール管デバイス内に溝付き外形を圧延することによって、切断せずに形成されてもよい。
【0021】
溝のサイズは、管のサイズ及び管壁の厚さに応じて、幅2~20mm、例えば幅6~14mm、深さ1~7mmであってもよい。望ましくは、溝の深さは、強度上の理由から、管の壁厚の約50%以下である。内管の低圧領域に対応する重なり領域において、シール管上に位置する1~30本の溝、例えば2~25本の溝、好ましくは5~20本の溝があってもよい。これは、溝が内管上に位置し、この領域の溝の数が内管のサイズによって8本以下に制限されるデバイスに対する改善である。シール管の内壁に溝を配置することによって、溝は低圧領域を越えて延在し得る。
【0022】
加えて、内管の膨張領域に対応する重なり領域に、1本以上の溝であってもよい。1本以上の溝が内管の外面上にあるか、又はシール管の内面上にあるかにかかわらず、それらはクレネレーションとして、すなわち、正方形又は長方形の形態を有するものとして形成されてもよく、又は溝はU字形、V字形、若しくはこれらの任意の組み合わせであってもよい。この領域における溝のサイズはまた、幅が2~20mm、例えば幅が6~14mm、深さが1~7mmであってもよい。膨張領域における溝の数は、低圧領域における溝の数と同じであってもよく、又はそれより多くてもよい。例えば、シール管の内面又は内管の外面に位置する1~30本の溝、例えば2~25本の溝、好ましくは5~20本の溝が、内管の膨張領域に対応する重なり領域にあってもよい。
【0023】
1本以上の溝は、望ましくは、管シールデバイスを通るガスの流れを妨げるように配置される。1本以上の溝は、内管を通るプロセス流体の流れに対して垂直に配置されてもよく、又は溝は、ねじ山のような螺旋状に形成されてもよい。
【0024】
低圧領域又は膨張領域のいずれかに2本以上の溝が存在する場合、それらは互いに平行であることが好ましい。
【0025】
本発明は、(a)境界手段によって熱交換ゾーンから分離されたプロセス流体供給ゾーンを有する熱交換反応器にプロセス流体を供給する工程と、(b)該プロセス流体を、該プロセス流体供給ゾーンから、該熱交換ゾーンを通って延在する1つ以上の熱交換管に通過させる工程であって、該プロセス流体は、該熱交換ゾーン内の管を通過するプロセス流体よりも低い圧力で熱交換媒体との熱交換に供される、工程と、(c)該プロセス流体を、該熱交換管から、第2の境界手段によって該熱交換ゾーンから分離されたプロセス流体取り出しゾーンに送る工程と、(d)該プロセス流体取り出しゾーンからのプロセス流体を更なる処理工程に供する工程と、(e)得られた処理済みプロセス流体を熱交換媒体として熱交換ゾーンに通過させる工程と、を含むプロセスであって、該1つ以上の熱交換管のそれぞれは、該境界手段のうちの一方に固定され、管シールデバイスによって該境界手段のうちの他方と係合し、該管シールデバイスは、該境界手段のうちの他方に固定されたシール管と、それぞれの熱交換管に接続され、シール管内に配設されて重なり領域を提供する内管と、を備え、該内管は、該重なり領域内に、(i)低圧領域を形成する、断面積が減少した内部狭窄部と、(ii)該低圧領域の、該プロセス流体の流れ方向において下流側の狭窄部の断面積よりも大きい断面積の膨張領域と、(iii)該低圧領域を内管の外部につなぐ、内管の壁を通る1つ以上の通路と、を有し、管シールデバイスは、内管の低圧領域に対応する重なり領域においてシール管の内面の周りに形成された1本以上の溝を含む、プロセスを更に提供する。
【0026】
プロセスにおいて、熱交換ゾーンに供給された処理済みプロセス流体の一部は、管シールデバイスに入り、1つ以上の通路を通って低圧領域に入る。
【0027】
プロセスにおいて、熱交換媒体は、管を通過したプロセス流体であるが、熱交換媒体として使用される前に更なる処理に供されたものである。この更なる処理は、熱交換媒体が1つ以上の熱交換管に熱を与えるように、プロセス流体が加熱される工程を含むことが好ましい。
【0028】
管シールデバイスは、熱交換水蒸気改質器、又はガス加熱改質器、すなわち、合成ガスを発生させるために改質器供給物を通過させる水蒸気改質触媒を包含する1つ以上の外部加熱管を包含し、熱交換が管を加熱するために使用される媒体である、熱交換反応器において特に有用である。このようなプロセスにおいて、熱交換媒体は、典型的には、改質器供給物よりも低圧である。
【0029】
このプロセス及び装置は、炭化水素の水蒸気改質に特に有用であり、炭化水素供給原料と水蒸気との混合物は、水蒸気改質触媒、例えばニッケル含有水蒸気改質触媒を包含する熱交換管に通されて一次改質ガスが形成され、次いで一次改質ガスは、酸素含有ガスとの部分燃焼に供され、得られた部分燃焼ガスは、熱交換ゾーンにおける熱交換媒体として使用される。好ましくは、部分燃焼ガスは、熱交換媒体として使用される前に、更なる改質を行うために、二次改質触媒の床に通される。
【0030】
内管内の狭窄部の結果として、低圧領域が内管内に形成される。狭窄部を適切にサイズ決めすることによって、通常運転時の低圧領域内の圧力は、熱交換ゾーン内の圧力よりも低くなり得、その結果、熱交換媒体、例えばプロセス流体取り出しゾーンから取り出されたプロセス流体の二次改質生成物が、熱交換ゾーンからシール管と内管との間の隙間空間を通って、内管の壁の該通路を通って低圧領域内に流れる。低圧領域の下流では、プロセス流体は、低圧領域よりも高いプロセス流体圧力を与える膨張領域で膨張する。その結果、プロセス流体が内管の出口端部から、隙間空間を通って、通路へ、そして低圧領域内に逆流又は再循環することもあり得る。
【0031】
管シールデバイスは、好ましくは、熱交換ゾーンとプロセス流体取り出しゾーンとの間の境界手段に提供される。したがって、シール管は、好ましくは、その境界手段に固定され、一方、内管を含む1つ以上の熱交換管は、プロセス流体入口ゾーンと熱交換ゾーンとの間の境界手段、例えば管板に固定される。この構成では、内管は、熱交換ゾーンとプロセス流体取り出しゾーンとの間の境界手段に隣接する熱交換管の端部に形成され、したがって、この境界手段でシール管と係合して管シールデバイスを形成する。これは、プロセス流体が熱交換管を通過する際に実質的な圧力低下を受ける場合、例えば熱交換管が触媒を包含する場合に特に好ましい。シール管は、境界手段から熱交換ゾーン内に突出していてもよく、又は境界手段の反対側で、境界手段から戻るようにプロセス流体取り出しゾーン内に延在してもよい。
【0032】
水蒸気改質において、炭化水素供給原料は典型的にはメタン含有ガスである。改質プロセスの間、メタンは水蒸気と反応して、水素及び酸化炭素を生成する。存在する2つ以上の炭素原子を含有する任意の炭化水素が、メタン、一酸化炭素、及び水素に変換される。水蒸気改質反応は、350℃を超える温度で水蒸気改質触媒上の管で行われ、典型的には、管を出るプロセス流体は、650~950℃の範囲の温度である。管の外側を流れる熱交換媒体は、500~2000℃の範囲の温度を有し得る。
【0033】
本装置及びプロセスは、フィッシャー・トロプシュ合成によって得られる水素、メタノール、ジメチルエーテル、オレフィン、アンモニア、尿素、又は炭化水素液体(例えば、ディーゼル燃料)の製造のプロセスの一部として使用することができる。したがって、本発明の装置を使用して、又は本発明のプロセスにおいて得られる改質ガス混合物は、水素分離、メタノール合成、ジメチルエーテル合成、オレフィン合成、アンモニア合成、又は炭化水素液体合成の工程を含む更なるプロセス工程に供されてもよい。これらの工程を達成するために、既知のプロセスを使用することができる。
【0034】
主に熱交換水蒸気改質に関して上述したが、本発明は、かなりの熱膨張差に対応しなければならず、プロセス流体への熱交換媒体の漏れが好ましくない他の熱交換用途にも有用であることが理解されるであろう。例としては、例えば、メタノール又はアンモニア合成など、発熱反応のようなプロセス工程への供給物が、プロセス工程からの排液との熱交換によって加熱される、供給/排液熱交換器が挙げられる。そのような場合、熱交換管は、前述の改質プロセスの場合のように、プロセス流体が熱交換を受けている間にプロセス流体に対して触媒反応が行われることが望まれない限り、触媒を含まなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明は、添付の図面を参照することによって更に説明される。
【0036】
【
図1】境界手段が管板である、本発明の一実施形態による管シールデバイスを包含する熱交換反応器の概略断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による管シールデバイスの断面図である。
【0037】
図1には、シェル壁及び管板14及び15によって画定された3つのゾーン11、12、13を囲む外側断熱圧力シェル10を有する熱交換水蒸気改質器が示されている。プロセス流体供給ゾーンであるゾーン11は、シェル壁10及び管板14によって画定される。ゾーン11は、プロセス流体供給導管16が提供され、かつ、管板14に固定され、そこから下方に延在する複数の垂直管17を有する。採用される管の数は稼働規模に依存し、5本の管のみが示されているが、典型的には50本以上のこのような管が存在し得る。管17には、水蒸気改質触媒18、例えば、耐火性酸化物担持ニッケル触媒及び/又は構造化水蒸気改質触媒の多孔円筒ペレットが充填されている。熱交換ゾーンであるゾーン12は、シェル壁10並びに管板14及び15によって画定される。熱交換管17は、熱交換ゾーン12を通って延在し、管シールデバイス20と係合する。管シールデバイス20はそれぞれ、管板15に固定されたシール管21を備え、熱交換ゾーン12において、触媒充填管17の底部から延在する触媒を含まない内管部分22と係合する。熱交換ゾーン12には、管17の底部付近でシェル10内に位置付けられた導管23を介して、加熱媒体、例えば自己熱改質又は二次改質によって生成された合成ガスが供給される。加熱媒体は、管17と熱を交換する熱交換ゾーン内を上方に通過し、次いで、管17の頂部付近でシェル10内に位置付けられた導管24を介して熱交換ゾーン12から除去される。横断バッフル25は、加熱媒体を、改質器を横切って水平に方向転換させ、管17との熱交換を高めるように作用する。プロセス流体取り出しゾーンであるゾーン13は、シェル10の壁及び管板15によって画定される。管シールデバイス20は、開放端であり、管板15を通って取り出しゾーン13内に延在する。改質されたガスは、管17から管シールデバイス20を通って取り出しゾーン13に入り、そこからプロセス流体取り出し導管26によって除去される。
【0038】
使用時には、炭化水素及び水蒸気を含むプロセス流体は、高温及び高圧で導管16を通ってプロセス流体供給ゾーン11に供給され、そこから触媒充填管17を通って下方に供給される。熱交換ゾーン12において熱媒体と熱交換され、水蒸気改質反応が起こる。改質を受けるガス混合物は、管17を通過し、そこから管シールデバイス20を通って取り出しゾーン13に至り、そこから取り出し導管26によって除去される。取り出し導管26から回収された改質ガスは、特に自己熱改質又は二次改質によって加熱される更なる処理に供され、更に処理されたガスは、熱交換媒体として導管23を介して熱交換改質器に送られる。導管23を介して供給される熱交換媒体の圧力は、管17を通過するガスよりも低い。
【0039】
図2では、垂直に配向され、
図1に示される実施形態によるデバイスを通る下降流用に配置された管シールデバイス20が示されている。管シールデバイス20は、外側のシール管21と内管22とを備えている。内管21は、シール管22の内側に位置して重なり領域を提供し、垂直方向に自由に摺動する。使用時、内管22は、熱交換管の最下部30に固定される。熱交換管の最下部30及び内管22の接続部分は、25mmの内径を有し、触媒を含まない。内管22は、25mmの内径から12mmの内径の狭窄部31まで先細になり、狭窄部31から18mmの内径及び108mmの長さの低圧領域32まで拡大する。内管は、低圧領域32の直径18mmから膨張領域33の外径31mmまで、78mmの長さにわたって広がっている。狭窄部31の下流側の低圧領域32と、シール管21の内面と内管22の外面との間の環状隙間35との間には、直径3mmの通路34が12個設けられている。シール管21と内管22の外面との間の環状隙間35の厚さは0.2mmである。
【0040】
シール管21は、重なり領域において内管22に面するシール管21の内面に切り込まれた7本の平行な7mm幅の正方形切断溝36を含む。溝は、通路34に隣接する低圧領域32内の位置から、内管22が熱交換管の最下部30に接続される場所に向かって、かつそれを越えて上方に延在する。このように溝を提供することにより、溝が内管22の外面上に切り込まれた場合よりも多くの溝が存在することが可能になることが分かる。
【0041】
この実施形態では、更に6本の平行な7mm幅の直角切断溝37が、通路34に隣接する位置から膨張領域33に向かって下方に内管22の外面に切り込まれている。
【0042】
内管22及びシール管21の長さは、始動時、すなわち装置が周囲温度にあるとき及び通常の動作温度にあるときの両方で、通路34及び内管22の開放端がシール管21内にあるような長さである。
【0043】
フランジ38は、管シールデバイス20を管板に固定することを可能にするために、重なり領域の端部を越えてシール管21の最下部に提供される。
【国際調査報告】