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特表2024-517537珪素含有負極活物質及びそれを含む負極シート、二次電池及び電力消費装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】珪素含有負極活物質及びそれを含む負極シート、二次電池及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20240416BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240416BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240416BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240416BHJP
   C01B 33/113 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/36 C
H01M4/38 Z
H01M4/13
H01M4/134
H01M4/62 Z
H01M4/36 E
C01B33/113 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547213
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 CN2022083444
(87)【国際公開番号】W WO2023184098
(87)【国際公開日】2023-10-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】武雅▲楽▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼明
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼▲継▼民
【テーマコード(参考)】
4G072
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072BB03
4G072DD04
4G072HH13
4G072HH14
4G072JJ47
4G072MM31
4G072RR12
4G072TT01
4G072TT05
4G072TT30
4G072UU30
5H050AA08
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA10
5H050EA28
5H050FA05
5H050FA16
5H050FA17
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA11
5H050HA14
5H050HA17
(57)【要約】
本願は、珪素含有負極活物質、及びそれを含む負極シート、二次電池及び電力消費装置を提供する。前記珪素含有負極活物質は、珪素系材料及び前記珪素系材料の表面に位置する導電層を含み、前記導電層はポリマー及び一次元導電材料を含み、ここで、前記ポリマーは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、アミノ基、カルボニル基、ニトロ基のうちの1種類又は複数種類を含む極性官能基を含み、前記ポリマーにおける極性官能基の質量百分率は、A1であり、前記珪素系材料における珪素元素の質量百分率は、A2であり、前記珪素含有負極活物質は、A2が5%~100%であり、かつA2/A1が0.2~8であることを満たす。本願の珪素含有負極活物質は、良好な電子伝導性、小さい体積膨張効果及び高い可逆容量並びに初回クーロン効率を同時に両立させることができ、かつ負極シートに作製された後にも良好な電子伝導性を保持することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪素含有負極活物質であって、
珪素系材料と、
前記珪素系材料の表面に位置し、ポリマー及び一次元導電材料を含む導電層とを含み、
ここで、前記ポリマーは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、アミノ基、カルボニル基、ニトロ基のうちの1種類又は複数種類を含む極性官能基を含み、
前記ポリマーにおける極性官能基の質量百分率は、A1であり、前記珪素系材料における珪素元素の質量百分率は、A2であり、前記珪素含有負極活物質は、A2が5%~100%であり、かつA2/A1が0.2~8であることを満たす、珪素含有負極活物質。
【請求項2】
A2が10%~80%であり、かつA2/A1が0.6~2.5である、請求項1に記載の珪素含有負極活物質。
【請求項3】
A1が5%~90%であり、選択的に10%~75%である、請求項1又は2に記載の珪素含有負極活物質。
【請求項4】
前記ポリマーの重量平均分子量はB1であり、B1は10万以上であり、選択的に20万~100万である、請求項1~3のいずれか一項に記載の珪素含有負極活物質。
【請求項5】
前記一次元導電材料のアスペクト比はB2であり、B2は100~20000であり、選択的に2000~20000である、請求項1~4のいずれか一項に記載の珪素含有負極活物質。
【請求項6】
B1/B2は5~200であり、選択的に5~50である、請求項5に記載の珪素含有負極活物質。
【請求項7】
前記一次元導電材料の直径は、1nm~30nmであり、及び/又は、
前記一次元導電材料の長さは、0.5μm~20μmである、請求項5に記載の珪素含有負極活物質。
【請求項8】
前記ポリマーのガラス転移温度は、150℃以下であり、選択的に-10℃~120℃であり、及び/又は、
前記ポリマーの結晶化度は、80%以下であり、選択的に10%~70%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の珪素含有負極活物質。
【請求項9】
前記ポリマーは、(メタ)アクリル酸及びその塩のホモポリマー又はコポリマー、ヒドロキシメチルセルロース及びその塩のホモポリマー又はコポリマー、アルギン酸及びその塩のホモポリマー又はコポリマー、ポリアセトアミドホモポリマー又はコポリマー、アクリルアミドホモポリマー又はコポリマー、ビニルアルコールホモポリマー又はコポリマーのうちの1種類又は複数種類を含む、請求項8に記載の珪素含有負極活物質。
【請求項10】
前記一次元導電材料は、カーボンナノチューブを含み、選択的に、前記カーボンナノチューブは以下の条件(1)~(3)のうちの少なくとも一つを満たす。
(1)前記カーボンナノチューブの炭素含有量は90%以上であり、
(2)前記カーボンナノチューブのI/Iは40以上であり、Iは前記カーボンナノチューブのラマンスペクトルにおいて1500cm-1~1650cm-1の範囲に位置するピーク強度を示し、Iは前記カーボンナノチューブのラマンスペクトルにおいて100cm-1~200cm-1の範囲に位置するピーク強度を示し、
(3)前記カーボンナノチューブの比表面積は、500m/g以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の珪素含有負極活物質。
【請求項11】
前記珪素系材料は、単体珪素、珪素酸化物、珪素炭素化合物、珪素合金のうちの1種類又は複数種類を含み、選択的に、前記珪素系材料にリチウム、マグネシウムのうちの1種類又は2種類の元素が更にドープされる、請求項1~10のいずれか一項に記載の珪素含有負極活物質。
【請求項12】
前記珪素含有負極活物質の総質量に基づいて、
前記珪素系材料の質量百分率は、W1であり、W1は90%~98%であり、
前記ポリマーの質量百分率は、W2であり、W2は1%~9%であり、
前記一次元導電材料の質量百分率は、W3であり、W3は0.1%~1%であり、
選択的に、W2/W3は、7~20である、請求項1~11のいずれか一項に記載の珪素含有負極活物質。
【請求項13】
前記導電層の厚さは、1nm~2μmである、請求項1~12のいずれか一項に記載の珪素含有負極活物質。
【請求項14】
前記珪素含有負極活物質の粉末抵抗率は、0.70Ω・cm~0.89Ω・cmであり、及び/又は、
前記珪素含有負極活物質の平均粒径Dv50は、2μm~10μmであり、及び/又は、
前記珪素含有負極活物質の比表面積は、0.8m/g~5m/gであり、及び/又は、
前記珪素含有負極活物質のI/Iは、0.1~200であり、Iは前記珪素含有負極活物質のラマンスペクトルにおいて1500cm-1~1650cm-1の範囲に位置するピーク強度を示し、Iは前記珪素含有負極活物質のラマンスペクトルにおいて100cm-1~200cm-1の範囲に位置するピーク強度を示す、請求項1~13のいずれか一項に記載の珪素含有負極活物質。
【請求項15】
負極集電体及び前記負極集電体の少なくとも一つの表面に位置する負極膜層を含む負極シートであって、
ここで、前記負極膜層は請求項1~14のいずれか一項に記載の珪素含有負極活物質、導電剤及び接着剤を含み、
選択的に、前記負極膜層は、黒鉛を更に含む、負極シート。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載の珪素含有負極活物質、又は請求項15に記載の負極シートを含む、二次電池。
【請求項17】
請求項16に記載の二次電池を含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電池技術分野に属し、具体的には珪素含有負極活物質、及びそれを含む負極シート、二次電池及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池は、水力、火力、風力及び太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動工具、電動自転車、電動オートバイ、電気自動車、軍事装置、航空宇宙等の複数の分野に広く応用されている。二次電池の応用及び普及に伴い、そのエネルギー密度がますます多く注目されている。黒鉛は、二次電池の最も一般的な負極活物質であるが、その理論的な1グラムあたりの容量は、372mAh/gだけであり、そのエネルギー密度の向上の余地は非常に限られている。珪素系材料は、4200mAh/gに達する理論的な1グラムあたりの容量を有し、最も発展の将来性を有する負極活物質である。しかし、珪素系材料は、体積膨張が高くかつ電子導電性が低いという欠陥が存在するため、珪素系材料の大規模的な商業化応用に対し深刻な影響を与えている。
【発明の概要】
【0003】
本願は、珪素含有負極活物質、及びそれを含む負極シート、二次電池及び電力消費装置の提供を目的としており、本願の珪素含有負極活物質は、良好な電子伝導性、小さい体積膨張効果及び高い可逆容量並びに初回クーロン効率を同時に両立させることができると共に、負極シートに作製された後にも良好な電子伝導性を保持することができる。
【0004】
本願の第1の態様は、珪素含有負極活物質であって、
珪素系材料と、
前記珪素系材料の表面に位置し、ポリマー及び一次元導電材料を含む導電層とを含み、
ここで、前記ポリマーは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、アミノ基、カルボニル基、ニトロ基のうちの1種類又は複数種類を含む極性官能基を含み、
前記ポリマーにおける極性官能基の質量百分率は、A1であり、前記珪素系材料における珪素元素の質量百分率は、A2であり、前記珪素含有負極活物質は、A2が5%~100%であり、かつA2/A1が0.2~8であることを満たす、珪素含有負極活物質を提供する。
【0005】
導電層におけるポリマーは、極性官能基を含有する。発明者らが研究した発見として、ポリマーにおける極性官能基の質量百分率A1と珪素系材料における珪素元素の質量百分率A2との間の関係を調節することによりA2/A1を0.2~8の間に制御した時、ポリマーの極性官能基と一次元導電材料表面の官能基との間、ポリマーの極性官能基と珪素系材料表面の官能基との間にいずれも適量の水素結合を形成することを保証することができる。それにより、一次元導電材料が珪素系材料表面に効果的に固定され、かつスラリーの撹拌分散過程において導電層が完全に脱落しないことができる。また、A2/A1が0.2~8の間に制御される時、ポリマーと一次元導電材料とは相互に架橋し、絡み合うことができ、それにより導電層はフレキシブル性を有しかつ漁網のように珪素系材料の表面を強固に被覆することができる。したがって、本願の珪素含有負極活物質自体は、良好な電子伝導性を有し、かつ負極シートに応用された後も良好な電子伝導性を保持することができる。
【0006】
本願の任意の実施形態において、A2は10%~80%であり、かつA2/A1は0.6~2.5である。この時、本願の珪素含有負極活物質はより良い電子伝導性、より高い可逆容量及び初回クーロン効率並びにより低い体積膨張効果を有することができる。
【0007】
本願の任意の実施形態において、A1は5%~90%であり、選択的に10%~75%である。ポリマーの極性官能基の含有量が適切な範囲内にある場合、ポリマーの極性官能基と一次元導電材料表面の官能基との間、ポリマーの極性官能基と珪素系材料表面の官能基との間にいずれも適量の水素結合を形成することを保証し、それにより一次元導電材料を珪素系材料表面に効果的に固定し、珪素含有負極活物質の電子伝導性を更に向上させ、珪素含有負極活物質と電解質との間の副反応を減少させ、珪素含有負極活物質の体積膨張を緩和することができる。
【0008】
本願の任意の実施形態において、前記ポリマーの重量平均分子量はB1であり、B1は10万以上であり、選択的に20万~100万である。
【0009】
本願の任意の実施形態において、前記一次元導電材料のアスペクト比はB2であり、B2は100~20000であり、選択的に2000~20000である。一次元導電材料のアスペクト比が適切な範囲内にある場合、珪素系材料の表面に相互に絡み合って良好な被覆効果を形成し、一方では珪素系材料の表面に長距離導電作用を提供することができ、他方で導電層が漁網式の架橋網状構造を形成することに役立ち、珪素系材料の表面の電子伝導性及び体積膨張をよりよく改善することができる。
【0010】
本願の任意の実施形態において、B1/B2は5~200であり、選択的に5~50である。B1/B2が適切な範囲内にある場合、珪素含有負極活物質はより高い電子伝導性及びより低い体積膨張を有することができる。
【0011】
本願の任意の実施形態において、前記一次元導電材料の直径は1nm~30nmである。一次元導電材料の直径が適切な範囲内にある場合、ポリマーと一次元導電材料とは、よりよく互いに架橋して絡み合い、更に導電層が漁網式の架橋網状構造を形成しかつ珪素系材料の表面を被覆することに役立つことができる。従って、この時に珪素含有負極活物質は、より良い電子伝導性及びより低い体積膨張を有することができる。
【0012】
本願の任意の実施形態において、前記一次元導電材料の長さは0.5μm~20μmである。一次元導電材料の長さが適切な範囲内にある場合、ポリマーと一次元導電材料とはよりよく互いに架橋し、絡み合い、更に導電層が漁網式の架橋網状構造を形成しかつ珪素系材料の表面を被覆することに役立つことができる。従って、この時に珪素含有負極活物質は、より良い電子伝導性及びより低い体積膨張を有することができる。
【0013】
本願の任意の実施形態において、前記ポリマーのガラス転移温度は150℃以下であり、選択的に-10℃~120℃である。
【0014】
本願の任意の実施形態において、前記ポリマーの結晶化度は80%以下であり、選択的に10%~70%である。
【0015】
ポリマーが適切なガラス転移温度及び結晶化度を有する場合、ポリマーと一次元導電材料とはよりよく架橋し、絡み合うことができる。この時、導電層は漁網のように珪素系材料の表面を強固に被覆し、珪素系材料の表面の電子伝導性及び体積膨張をよりよく改善することができる。
【0016】
本願の任意の実施形態において、前記ポリマーは、(メタ)アクリル酸及びその塩のホモポリマー又はコポリマー、ヒドロキシメチルセルロース及びその塩のホモポリマー又はコポリマー、アルギン酸及びその塩のホモポリマー又はコポリマー、ポリアセトアミドホモポリマー又はコポリマー、アクリルアミドホモポリマー又はコポリマー、ビニルアルコールホモポリマー又はコポリマーのうちの1種類又は複数種類を含む。これらのポリマーは一次元導電材料とよりよく架橋し、絡み合うことができる。この時、導電層は、漁網のように珪素系材料の表面を強固に被覆し、珪素系材料の表面の電子伝導性及び体積膨張をよりよく改善することができる。
【0017】
本願の任意の実施形態において、前記一次元導電材料は、カーボンナノチューブを含む。
【0018】
選択的に、前記カーボンナノチューブの炭素含有量は90%以上である。カーボンナノチューブの炭素含有量が高いほど、その不純物の含有量が少なくなり、電子導電性が良くなり、更に珪素含有負極活物質はより良い電子導電性を有することができる。
【0019】
選択的に、前記カーボンナノチューブのI/Iは、40以上であり、Iは前記カーボンナノチューブのラマンスペクトルにおいて1500cm-1~1650cm-1の範囲に位置するピーク強度を示し、Iは前記カーボンナノチューブのラマンスペクトルにおいて100cm-1~200cm-1の範囲に位置するピーク強度を示す。カーボンナノチューブのI/Iが適切な範囲内にある場合、カーボンナノチューブ自体の欠陥が少なくかつ引張強度が高いため、形成された導電層は良好なフレキシブル性と大きな引張強度を同時に両立させることができ、それにより珪素系材料の体積膨張を効果的に緩和することができる。
【0020】
選択的に、前記カーボンナノチューブの比表面積が500m/g以上である。カーボンナノチューブの比表面積が適切な範囲内にある場合、それとポリマーとの接触面積が大きく、より多くの水素結合を形成することができ、それによりポリマーとの間の相互分散に役立ち、更に均一で安定した導電層を形成することができる。
【0021】
本願の任意の実施形態において、前記珪素系材料は、単体珪素、珪素酸化物、珪素炭素化合物、珪素合金のうちの1種類又は複数種類を含む。選択的に、前記珪素系材料にリチウム、マグネシウムのうちの1種類又は2種類の元素が更にドープされる。
【0022】
本願の任意の実施形態において、前記珪素含有負極活物質の総質量に基づいて、前記珪素系材料の質量百分率であるW1は90%~98%であり、前記ポリマーの質量百分率であるW2は1%~9%であり、前記一次元導電材料の質量百分率であるW3は0.1%~1%である。
【0023】
本願の任意の実施形態において、W2/W3は7~20である。W2/W3が適切な範囲内にある場合、ポリマーの極性官能基と一次元導電材料表面の官能基との間、ポリマーの極性官能基と珪素系材料表面の官能基との間にいずれも適量の水素結合を形成することを保証することができる。それにより、一次元導電材料を珪素系材料表面に効果的に固定し、珪素系材料表面の電子伝導性及び体積膨張をよりよく改善することができる。
【0024】
本願の任意の実施形態において、前記導電層の厚さは1nm~2μmである。
【0025】
本願の任意の実施形態において、前記珪素含有負極活物質の粉末抵抗率は0.70Ω・cm~0.89Ω・cmである。
【0026】
本願の任意の実施形態において、前記珪素含有負極活物質の平均粒径Dv50は2μm~10μmである。
【0027】
本願の任意の実施形態において、前記珪素含有負極活物質の比表面積は0.8m/g~5m/gである。
【0028】
本願の任意の実施形態において、前記珪素含有負極活物質のI/Iは0.1~200であり、Iは前記珪素含有負極活物質のラマンスペクトルにおいて1500cm-1~1650cm-1の範囲に位置するピーク強度を示し、Iは前記珪素含有負極活物質のラマンスペクトルにおいて100cm-1~200cm-1の範囲に位置するピーク強度を示す。
【0029】
本願の第2の態様は、負極集電体及び前記負極集電体の少なくとも一つの表面に位置する負極膜層を含み、ここで、前記負極膜層は本願の第1の態様の珪素含有負極活物質、導電剤及び接着剤を含む負極シートを提供する。
【0030】
本願の珪素含有負極活物質は、良好な電子伝導性、小さい体積膨張効果及び高い可逆容量並びに初回クーロン効率を同時に両立させることができ、かつ負極シートに作製された後も良好な電子伝導性を保持することができる。従って、本願の負極シートは、良好な電子伝導性、高い容量及び初回クーロン効率並びに小さい体積膨張を同時に両立させることができる。
【0031】
本願の任意の実施形態において、前記負極膜層は黒鉛を更に含む。
【0032】
本願の第3の態様は、本願の第1の態様の珪素含有負極活物質、又は本願の第2の態様の負極シートを含む二次電池を提供する。
【0033】
本願の第4の態様は、本願の第3の態様の二次電池を含む電力消費装置を提供する。
【0034】
本願の二次電池は、高いエネルギー密度及び良好なサイクル性能と貯蔵性能を同時に両立させることができる。本願の電力消費装置は本願が提供する二次電池を含むため、少なくとも前記二次電池と同様の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下は、本願の実施例に必要な図面を簡単に紹介する。明らかに、以下に説明された図面は、本願のいくつかの実施形態に過ぎず、当業者にとって、創造的労働をしない前提で、更に図面に基づいて他の図面を取得することができる。図面において、図面は、必ずしも実際の比率に応じて描かれない。ここで、符号の説明は以下のとおりである。1電池パック、2上部箱体、3下部箱体、4電池モジュール、5二次電池、51ケース、52電極アセンブリ、53カバープレート。
図1】本願の二次電池の一実施形態の模式図である。
図2図1の二次電池の実施形態の分解模式図である。
図3】本願の電池モジュールの一実施形態の模式図である。
図4】本願の電池パックの一実施形態の模式図である。
図5図4に示す電池パックの実施形態の分解模式図である。
図6】本願の二次電池を電源として含む電力消費装置の一実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、適宜的に図面を参照しながら本願を具体的に開示した珪素含有負極活物質、及びそれを含む負極シート、二次電池及び電力消費装置の実施形態を詳細に説明する。ただし、不必要な詳細な説明を省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細な説明、実際の同じ構造の重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを回避し、当業者の理解を容易にするためのものである。また、図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供されたものであり、特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0037】
本願に開示された「範囲」は、下限及び上限の形式で限定され、所定の範囲は一つの下限及び一つの上限を選択することにより限定され、選択された下限及び上限は、特に範囲の境界を限定する。このような方式で限定する範囲は、端点を含み又は端点を含まず、かつ任意に組み合わせることができ、即ち任意の下限は任意の上限と組み合わせて一つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対し60~120及び80~110の範囲を列挙すれば、60~110及び80~120の範囲も予想されると理解される。また、最小範囲値1及び2、及び最大範囲値3、4及び5を列挙すると、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5という範囲は全て予想される。本願において、他の説明がない限り、数値範囲「a~b」は、a~bの間の任意の実数組合せの縮約表現を示し、ここでa及びbは、いずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は本明細書において全て「0~5」の間の全ての実数を示し、「0~5」はこれらの数値の組み合わせの縮約表現である。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現する場合、当該パラメータが例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12等の整数であることが開示されていることに相当する。
【0038】
特に説明しない場合、本願の全ての実施形態及び選択可能な実施形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成可能であり、かつこのような技術案は本願の開示内容に含まれると考えられるべきである。
【0039】
特に説明しない場合、本願の全ての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成可能であり、かつこのような技術案は本願の開示内容に含まれると考えられるべきである。
【0040】
特に説明しない場合、本願の全てのステップを順に行うことができ、ランダムに行うこともでき、好ましくは順に行う。例えば、前記方法がステップ(a)及び(b)を含むとは、前記方法が順に行うステップ(a)及び(b)を含むことができ、順に行うステップ(b)及び(a)を含むこともできることを示す。例えば、前記方法が更にステップ(c)を含むことができるとは、ステップ(c)が任意の順序で前記方法に加えることができることを示す。例えば、前記方法はステップ(a)、(b)及び(c)を含むことができ、ステップ(a)、(c)及び(b)を含むこともでき、更にステップ(c)、(a)及び(b)などを含むことができる。
【0041】
特に説明しない場合、本願に言及された「有する」、「備える」及び「含む」は開放式であり、閉鎖式であってもよい。例えば、前記「有する」、「備える」及び「含む」は、列挙されない他の成分を更に有する、備えるか又は含むことができ、列挙された成分のみを備えるか又は含むことができることを示す。
【0042】
特に説明しない場合、本願において、「又は」との用語は包括的である。例えば、「A又はB」とのフレーズは「A、B、又はA及びBの両方」を表す。より具体的には、以下のいずれかの条件はいずれも「A又はB」との条件を満たす。Aは真(又は存在)でありかつBは偽(又は存在しない)であり、Aは偽(又は存在しない)でありかつBは真(又は存在)であり、或いはAとBはいずれも真(又は存在)である。
【0043】
現在、珪素系材料は、二次電池に適用される場合、一般的に黒鉛、接着剤、導電剤などと均一に撹拌分散された後に負極集電体の表面に塗布する必要がある。しかしながら、本願の発明者は研究過程において、撹拌分散過程で大部分の導電剤が黒鉛表面に凝集し、少ない導電剤が珪素系材料の表面に位置し、それにより負極シートにおける珪素系材料表面の電子伝導性が依然として悪くなり、二次電池のエネルギー密度を効果的に向上させることができないことを発見した。
【0044】
これに鑑み、有効な技術手段を採用して負極シートにおける珪素系材料表面の電子伝導性を改善する必要がある。
【0045】
本願の実施形態に係る第1の態様は、珪素含有負極活物質を提供し、それ自体が良好な電子伝導性を有し、かつ負極シートに応用された後も良好な電子伝導性を保持することができる。具体的には、本願の実施形態に係る第1の態様の珪素含有負極活物質は、珪素系材料及び前記珪素系材料の表面に位置する導電層を含み、前記導電層はポリマー及び一次元導電材料を含み、ここで、前記ポリマーは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、アミノ基、カルボニル基、ニトロ基のうちの1種類又は複数種類を含む極性官能基を含む。前記ポリマーにおける極性官能基の質量百分率はA1であり、前記珪素系材料における珪素元素の質量百分率はA2であり、前記珪素含有負極活物質は、A2が5%~100%でありかつA2/A1が0.2~8であることを満たす。
【0046】
珪素系材料は、単体珪素、珪素酸化物(例えば、SiOx、0<x≦2)、珪素炭素化合物(例えば、被覆型構造、埋め込み式構造)、珪素合金のうちの1種類又は複数種類を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、前記珪素系材料は、リチウム、マグネシウムのうちの1種類又は2種類の元素を更にドープすることができる。本願では、珪素系材料にリチウム及びマグネシウムをドープする方式は特に限定されず、例えば電気化学堆積法を採用することができる。
【0047】
珪素系材料における珪素元素の質量百分率は、A2であり、A2は、5%~100%である。選択的に、A2は5%~95%、10%~90%、10%~85%、10%~80%、15%~85%、20%~80%、25%~75%、30%~70%、35%~65%又は40%~60%である。A2が適切な範囲内にある場合、珪素系材料は、高い1グラムあたりの容量と低い体積膨張効果とを同時に両立させることができる。
【0048】
導電層におけるポリマーは、極性官能基を含有する。発明者らが研究した発見として、ポリマーにおける極性官能基の質量百分率A1と珪素系材料における珪素元素の質量百分率A2との間の関係を調節することによりA2/A1を0.2~8の間に制御した時、ポリマーにの極性官能基と一次元導電材料表面の官能基との間、ポリマーの極性官能基と珪素系材料表面の官能基との間にいずれも適量の水素結合を形成することを保証することができる。それにより、一次元導電材料が珪素系材料表面に効果的に固定され、かつスラリーの撹拌分散過程において導電層が完全に脱落しないことができる。また、A2/A1が0.2~8の間に制御される時、ポリマーと一次元導電材料とは相互に架橋し、絡み合うことができ、それにより導電層はフレキシブル性を有しかつ漁網のように珪素系材料の表面を強固に被覆することができる。したがって、本願の珪素含有負極活物質自体は、良好な電子伝導性を有し、かつ負極シートに応用された後も良好な電子伝導性を保持することができる。
【0049】
発明者らが更に研究した発見として、A2/A1が0.2よりも小さい場合、ポリマーにおける極性官能基の含有量が相対的に高く、珪素系材料における珪素元素の含有量が相対的に少なくなる。この時、ポリマーにおける大部分の極性官能基は、一次元導電材料の表面の官能基と水素結合を形成して架橋反応を起こし又は絡み合い、少ない極性官能基が珪素系材料の表面の官能基と水素結合を形成する状況が発生し、導電層がスラリーの撹拌分散過程で脱落しやすく、珪素系材料と緊密に結合できないことをもたらす。したがって、A2/A1が0.2よりも小さい場合、作製された負極シートにおける珪素含有負極活物質の電子伝導性は、依然として悪くなる。
【0050】
発明者らが更に研究した発見として、A2/A1が8よりも大きい場合、ポリマーにおける極性官能基の含有量が相対的に少なく、珪素系材料における珪素元素の含有量が相対的に多くなる。この時、ポリマーにおける大部分の極性官能基は、珪素系材料表面の官能基と優先的に水素結合を形成し、少量の極性官能基は、一次元導電材料表面の官能基と水素結合を形成し、それにより導電層は漁網式の架橋網状構造を形成することができない。したがって、A2/A1が8よりも大きい場合、ポリマーは、珪素含有負極活物質の横方向に良好な被覆効果を形成することができず、珪素含有負極活物質の縦方向のみに珪素系材料と水素結合により結合することができる。この時、一次元導電材料は、珪素系材料の表面に効果的に固定できず、作製された負極シートにおける珪素含有負極活物質の電子伝導性は依然として悪くなる。
【0051】
また、珪素系材料は、巨大な体積膨張効果も存在している。従来の接着剤は、珪素系材料の体積膨張を効果的に緩和するか又は抑制することができず、かつ珪素系材料はイオンを絶えず脱離するか又は挿入する過程で粉末化することができる。また、珪素系材料は、長期に循環した後に電解質と副反応し、それにより二次電池のサイクル性能に対し影響を及ぼす。
【0052】
本願の導電層は、フレキシブル性構造を有し、かつ漁網のように珪素系材料の表面に強固に被覆され、一方では一次元導電材料を珪素系材料の表面に効果的に固定し、珪素含有負極活物質の電子伝導性を向上させることができ、他方では珪素系材料と電解質との間の持続的な副反応を減少させ、活性イオンの不可逆的な消耗を低減することができる。また、本願の導電層は、フレキシブル性構造であり、更に珪素系材料の応力集中による体積膨張効果を緩和し、かつ珪素系材料が粉末化する確率を低下させることを果たすことができる。
【0053】
したがって、本願の珪素含有負極活物質は、良好な電子伝導性、小さい体積膨張効果及び高い可逆容量並びに初回クーロン効率を同時に両立させることができる。それにより、それを用いた二次電池は、高いエネルギー密度及び良好なサイクル性能と貯蔵性能を同時に両立させることができる。
【0054】
いくつかの実施例において、A2/A1は、0.2~7、0.3~6、0.4~5、0.5~4、0.6~2.5又は0.6~2であってもよい。この時、珪素含有負極活物質の電子伝導性がよりも高く、体積膨張効果がよりも小さく、可逆容量及び初回クーロン効率がよりも高い。
【0055】
いくつかの実施例において、A2は、10%~80%でありかつA2/A1は0.6~2.5である。この時、本願の珪素含有負極活物質は、より良い電子伝導性、より高い可逆容量及び初回クーロン効率、並びにより低い体積膨張効果を有することができる。
【0056】
いくつかの実施例において、A1は、5%~90%である。選択的に、A1は10%~90%、20%~90%、30%~90%、40%~90%、10%~75%、20%~75%、30%~75%又は40%~75%である。ポリマーにおける極性官能基の含有量が適切な範囲内にある場合、ポリマーの極性官能基と一次元導電材料表面の官能基との間、ポリマーの極性官能基と珪素系材料表面の官能基との間にいずれも適量の水素結合を形成することを保証することができる。それにより、一次元導電材料が珪素系材料表面に効果的に固定され、珪素含有負極活物質の電子伝導性を更に向上させ、珪素含有負極活物質と電解質との間の副反応を減少させ、珪素含有負極活物質の体積膨張を緩和することができる。
【0057】
ポリマーにおける極性官能基の含有量が低い場合、ポリマーは珪素含有負極活物質の縦方向に珪素系材料の表面の官能基と適量の水素結合を形成することができず、それにより導電層が脱落する可能性がある。同時に、ポリマーは珪素含有負極活物質の横方向に一次元導電材料表面の官能基と適量の水素結合を形成することができず、それにより一次元導電材料が珪素系材料の表面に効果的に固定できない可能性がある。
【0058】
ポリマーにおける極性官能基の含有量が高い場合、ポリマーが自己架橋しやすく、それが珪素含有負極活物質の横方向に一次元導電材料との間の相互分散効果が悪くなり、更に均一で安定した導電層を形成しにくく、かつ導電層に応力集中の領域及び電子導電性が悪い領域が存在しやすい。したがって、ポリマーにおける極性官能基の含有量が高い場合、珪素系材料の体積膨張に対する改善効果が明らかではなく、同時に珪素系材料の表面部分領域の電子伝導性が悪いため、珪素含有負極活物質の可逆容量及び初回クーロン効率の向上が明らかではないことをもたらす。
【0059】
いくつかの実施例において、前記ポリマーの重量平均分子量(無次元量)は、B1であり、B1は10万以上である。選択的に、B1は20万~100万である。
【0060】
いくつかの実施例において、前記一次元導電材料のアスペクト比は、B2であり、B2は100~20000である。選択的に、B2は、200~20000、500~20000、1000~20000、1500~20000、2000~20000、3000~20000、4000~20000、200~15000、500~15000、1000~15000、1500~15000、2000~15000、3000~15000、4000~15000、200~10000、500~10000、1000~10000、1500~10000、2000~10000、3000~10000又は4000~10000である。
【0061】
一次元導電材料のアスペクト比が適切な範囲内にある場合、珪素系材料の表面に相互に絡み合って良好な被覆効果を形成し、一方では珪素系材料の表面に長距離導電作用を提供することができ、他方で導電層が漁網式の架橋網状構造を形成することに役立ち、珪素系材料の表面の電子伝導性及び体積膨張をよりよく改善することができる。
【0062】
一次元導電材料のアスペクト比が小さい場合、その長距離導電性が悪く、かつ自体が絡み合いにくく、ポリマーとの間に相互に絡み合って良好な被覆効果を形成しにくく、それにより珪素系材料の表面に構造が完全な導電層を形成しない可能性があり、更に珪素系材料表面の電子伝導性及び体積膨張の改善効果が明らかではない可能性がある。一次元導電材料のアスペクト比が大きい場合、一次元導電材料がより自己絡み合いやすく、それとポリマーとの間の相互分散効果が悪くなり、更に均一で安定した導電層を形成しにくく、かつ導電層に応力集中領域及び電子導電性が悪い領域が存在しやすく、それにより珪素系材料表面の電子伝導性及び体積膨張の改善効果が明らかではない可能性がある。
【0063】
いくつかの実施例において、前記ポリマーの重量平均分子量B1と前記一次元導電材料のアスペクト比B2は、B1/B2が5~200であることを満たす。選択的に、B1/B2は、5~150、5~100、5~90、5~80、5~70、5~60、5~50、10~90、10~80、10~70、10~60、10~50、15~90、15~80、15~70、15~60又は15~50である。
【0064】
B1/B2が適切な範囲内にある場合、ポリマーと一次元導電材料とは、よりよく互いに分散し、均一で安定した導電層を形成することができる。B1/B2が適切な範囲内にある場合、ポリマーと一次元導電材料とは互いに架橋し、絡み合うことができ、それにより導電層が漁網式の架橋網状構造を形成しかつ珪素系材料の表面を被覆することに役立つ。B1/B2が適切な範囲内にある場合、ポリマーの極性官能基と一次元導電材料の表面の官能基との間、ポリマーの極性官能基と珪素系材料の表面の官能基との間に適量の水素結合を形成し、それにより一次元導電材料を珪素系材料の表面に効果的に固定することに役立つ。したがって、B1/B2が適切な範囲内にある場合、珪素含有負極活物質は、より良い電子伝導性及びよりも低い体積膨張を有することができる。
【0065】
いくつかの実施例において、前記一次元導電材料の直径は、1nm~30nmである。選択的に、前記一次元導電材料の直径は、2nm~30nm、2nm~25nm、2nm~20nm、2nm~15nm、2nm~10nm、5nm~30nm、5nm~25nm、5nm~20nm、5nm~15nm又は5nm~10nmである。
【0066】
一次元導電材料の直径が適切な範囲内にある場合、ポリマーと一次元導電材料とは、よりよく互いに架橋し、絡み合うことができ、更に導電層が漁網式の架橋網状構造を形成しかつ珪素系材料の表面を被覆することに役立つ。従って、この時に珪素含有負極活物質は、より良い電子導電性及びより低い体積膨張を有することができる。
【0067】
一次元導電材料の直径が小さい場合、その表面エネルギーは一般的に大きく、自己凝集が発生しやすく、それが導電層において一次元線形形態を保持しにくい。この時、それとポリマーとの間の相互分散効果が悪くなり、更に均一で安定した導電層を形成しにくくかつ導電層に応力集中領域及び電子導電性が悪い領域が存在しやすく、それにより珪素系材料表面の電子伝導性及び体積膨張の改善効果が明らかではない可能性がある。一次元導電材料の直径が大きい場合、一次元導電材料の表面欠陥が多く、同時にそのフレキシブル性が悪くなり、強靭な導電層を形成することができず、それにより珪素系材料表面の電子導電性及び体積膨張の改善効果が明らかではない可能性がある。
【0068】
いくつかの実施例において、前記一次元導電材料の長さは、0.5μm~20μmである。選択的に、前記一次元導電材料の長さは1μm~20μm、1μm~18μm、1μm~16μm、1μm~14μm、1μm~12μm、1μm~10μm、1μm~8μm、2μm~20μm、2μm~18μm、2μm~16μm、2μm~14μm、2μm~12μm、2μm~10μm、2μm~8μmである。
【0069】
一次元導電材料の長さが適切な範囲内にある場合、ポリマーと一次元導電材料とはよりよく互いに架橋し、絡み合うことができ、更に導電層が漁網式の架橋網状構造を形成しかつ珪素系材料の表面を被覆することに役立つ。従って、この時に珪素含有負極活物質は、より良い電子導電性及びより低い体積膨張を有することができる。
【0070】
一次元導電材料は、長さが小さい場合、ポリマーとの間に互いに絡み合って良好な被覆効果を形成しにくいため、一次元導電材料が珪素系材料の表面に効果的に固定できず、それにより珪素系材料の表面の電子導電性及び体積膨張の改善効果が明らかではない可能性がある。一次元導電材料の長さが大きい場合、それは自己凝集が発生しやすく、導電層において一次元線形形態を保持しにくく、この時にそれとポリマーとの間の相互分散効果が悪くなり、更に均一で安定した導電層を形成しにくく、かつ導電層に応力集中領域及び電子導電性が悪い領域が出現しやすく、それにより珪素系材料表面の電子伝導性及び体積膨張の改善効果が明らかではない可能性がある。
【0071】
いくつかの実施例において、前記ポリマーのガラス転移温度(Tg)は150℃以下であり、選択的に、前記ポリマーのガラス転移温度は~10℃~120℃である。いくつかの実施例において、前記ポリマーの結晶化度は80%以下であり、選択的に、前記ポリマーの結晶化度は10%~70%である。ポリマーが適切なガラス転移温度及び結晶化度を有する場合、ポリマーと一次元導電材料とがよりよく架橋し、絡み合うことができる。この時、導電層は漁網のように珪素系材料の表面に強固に被覆され、珪素系材料の表面の電子伝導性及び体積膨張をよりよく改善することができる。
【0072】
いくつかの実施例において、前記ポリマーは、(メタ)アクリル酸及びその塩のホモポリマー又はコポリマー、ヒドロキシメチルセルロース及びその塩のホモポリマー又はコポリマー、アルギン酸及びその塩のホモポリマー又はコポリマー、ポリアセトアミドホモポリマー又はコポリマー、アクリルアミドホモポリマー又はコポリマー、ビニルアルコールホモポリマー又はコポリマーのうちの1種類又は複数種類を含むが、これらに限定されない。本願において、「コポリマー」は、ランダムコポリマー、交互コポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーのうちのいずれかを示す。コポリマーは上記モノマーの間の共重合であってもよく、他のモノマー、特にビニル系モノマーとの共重合であってもよい。ビニル系モノマーは、アクリル酸、アクリルアミド、アクリル酸エステル、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、酢酸ビニルのうちの1種類又は複数種類を含むが、これらに限定されない。
【0073】
選択的に、前記ポリマーは、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸マグネシウム、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシメチルセルロースカリウム、ヒドロキシメチルセルロースリチウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸リチウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸アルミニウム、ポリアセトアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、(メタ)アクリル酸-アクリルアミドコポリマー、(メタ)アクリル酸-アクリルアミド-エチレンのコポリマー、エチレン-(メタ)アクリル酸コポリマー、(メタ)アクリル酸-酢酸ビニルのコポリマー樹脂、(メタ)アクリル酸-エチレン-酢酸ビニルのコポリマー、(メタ)アクリル酸-アクリル酸エステルのコポリマー、エチレン-ビニルアルコールのコポリマーのうちの1種類又は複数種類を含む。
【0074】
これらのポリマーは、一次元導電材料とよりよく架橋し、絡み合うことができる。この時、導電層は、漁網のように珪素系材料の表面に強固に被覆され、珪素系材料の表面の電子伝導性及び体積膨張をよりよく改善することができる。同時に、これらのポリマーが適切な含有量の極性官能基を有する場合、一次元導電材料の表面の官能基又は欠陥と適量の水素結合を形成することができる。それにより、導電層はフレキシブル性と靭性を同時に両立させ、更に珪素系材料の体積膨張を更に緩和することができる。
【0075】
いくつかの実施例において、前記一次元導電材料は、カーボンナノチューブ、金属繊維、炭素繊維、中空の炭素繊維のうちの1種類又は複数種類を含む。選択的に、前記一次元導電材料は、例えば単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ又はそれらの組み合わせを含むカーボンナノチューブを含む。
【0076】
選択的に、前記カーボンナノチューブの炭素含有量は、90%以上である。カーボンナノチューブの炭素含有量が高いほど、その不純物の含有量が少なくなり、電子導電性が良くなり、更に珪素含有負極活物質がより良好な電子導電性を有することができる。
【0077】
選択的に、前記カーボンナノチューブのI/Iは、40以上であり、Iは前記カーボンナノチューブのラマンスペクトルにおいて、1500cm-1~1650cm-1の範囲に位置するピーク強度を示し、Iは前記カーボンナノチューブのラマンスペクトルにおいて100cm-1~200cm-1の範囲に位置するピーク強度を示す。カーボンナノチューブのI/Iが適切な範囲内にある場合、カーボンナノチューブ自体の欠陥が少なくかつ引張強度が高いため、形成された導電層は良好なフレキシブル性と大きな引張強度を同時に両立させることができ、それにより珪素系材料の体積膨張を効果的に緩和することができる。
【0078】
選択的に、前記カーボンナノチューブの比表面積が500m/g以上である。カーボンナノチューブは、その比表面積が適切な範囲内にある場合、ポリマーとの接触面積が大きく、より多くの水素結合を形成することができ、それによりポリマーとの間の相互分散に役立ち、更に均一で安定した導電層を形成することができる。
【0079】
いくつかの実施例において、前記珪素含有負極活物質の総質量に基づいて、前記珪素系材料の質量百分率はW1であり、W1は90%~98%である。
【0080】
いくつかの実施例において、前記珪素含有負極活物質の総質量に基づいて、前記ポリマーの質量百分率はW2であり、W2は1%~9%である。ポリマーの含有量が適切な範囲内にある場合、一次元導電材料が珪素系材料の表面に十分に被覆されることを保証することができ、珪素系材料の表面の大部分(例えば70%以上、80%以上、90%以上、95%以上)ひらいて全部が被覆されることを保証することができる。この時、珪素系材料表面の電子伝導性及び体積膨張をよりよく改善し、珪素系材料と電解質との接触を減少させ、SEI膜の分解及び破裂を低減しかつ珪素含有負極活物質が粉末化する確率を低減することができる。
【0081】
いくつかの実施例において、前記珪素含有負極活物質の総質量に基づいて、前記一次元導電材料の質量百分率はW3であり、W3は0.1%~1%である。一次元導電材料の含有量が適切な範囲内にある場合、珪素含有負極活物質の表面が良好な電子伝導性を有することを保証すると共に、珪素系材料の表面に漁網式の被覆構造を形成することを保証することができる。それにより、電子分極を減少させかつ珪素系材料の体積膨張をよりよく緩和することができる。
【0082】
いくつかの実施例において、前記ポリマーと前記一次元導電材料との質量比W2/W3は7~20である。選択的に、W2/W3は7~20、7~18、7~16、7~14、9~20、9~18、9~16又は9~14である。
【0083】
W2/W3が適切な範囲内にある場合、ポリマーの極性官能基と一次元導電材料表面の官能基との間、ポリマーの極性官能基と珪素系材料表面の官能基との間にいずれも適量の水素結合を形成することを保証することができる。それにより、一次元導電材料が珪素系材料表面に効果的に固定され、珪素系材料表面の電子伝導性及び体積膨張をよりよく改善することができる。
【0084】
ポリマーと一次元導電材料との質量比が大きい場合、珪素含有負極活物質の縦方向でポリマーと珪素系材料との間に多くの水素結合が存在するが、珪素含有負極活物質の横方向でポリマーと一次元導電材料との間に多くの水素結合を形成して効果的な架橋、絡み合いを行うことができず、更に導電層の強度が影響を受け、珪素系材料の表面の電子伝導性及び体積膨張の改善が明らかではない可能性がある。
【0085】
ポリマーと一次元導電材料の質量比が小さい場合、珪素含有負極活物質の縦方向でポリマーと珪素系材料との間に形成された水素結合が減少し、導電層と珪素系材料との間の親和性が影響を受け、それにより導電層がスラリーの撹拌分散過程で脱落する可能性がある。
【0086】
いくつかの実施例において、前記導電層の厚さが1nm~2μmである。導電層の厚さが小さい場合、それは珪素系材料の体積膨張への緩和が明らかではない可能性がある。導電層の厚さが大きい場合、活性イオンの脱離又は挿入時の抵抗力が増加する可能性があり、導電層内外の間に濃度差が形成されやすく、それにより珪素系材料の可逆的な1グラムあたりの容量及び初回クーロン効率に対し影響を及ぼす可能性がある。
【0087】
いくつかの実施例において、前記珪素含有負極活物質の粉末抵抗率は、0.70Ω・cm~0.89Ω・cmである。選択的に、前記珪素含有負極活物質の粉末抵抗率は0.70Ω・cm~0.85Ω・cm、0.70Ω・cm~0.82Ω・cm又は0.70Ω・cm~0.80Ω・cmである。
【0088】
いくつかの実施例において、前記珪素含有負極活物質の比表面積は0.8m/g~5m/gである。珪素含有負極活物質は、その比表面積が適切な範囲内にある場合、同時により高い容量及びより高い初回クーロン効率を有することができる。
【0089】
いくつかの実施例において、前記珪素含有負極活物質の平均粒径Dv50は、2μm~10μmである。珪素含有負極活物質の平均粒径Dv50が適切な範囲内にある場合、活性イオン及び電子の輸送性能を同時に向上させることに役立つ。
【0090】
いくつかの実施例において、前記珪素含有負極活物質のI/Iは0.1~200であり、Iは前記珪素含有負極活物質のラマンスペクトルにおいて1500cm-1~1650cm-1の範囲に位置するピーク強度を示し、Iは前記珪素含有負極活物質のラマンスペクトルにおいて100cm-1~200cm-1の範囲に位置するピーク強度を示す。
【0091】
本願において、材料における元素の含有量(例えば珪素系材料における珪素元素の質量百分率、カーボンナノチューブにおける炭素含有量等)はいずれも本分野の公知の意味であり、本分野の公知の装置及び方法で測定することができる。例えば、X線光電子分光分析(XPS)を用いて測定することができる。
【0092】
本願において、ポリマーの極性官能基の質量百分率は、本分野の公知の意味であり、本分野の公知の装置及び方法で測定することができる。例えば、滴定法(例えば、酸塩基滴定法、酸化還元滴定法、沈殿滴定法)、水分測定法、ガス測定法、比色分析法、赤外分光法、核磁気共鳴分光法を用いて測定することができる。
【0093】
本願において、ポリマーの重量平均分子量は、本分野の公知の意味であり、本分野の公知の装置及び方法で測定することができる。例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。試験は、アジレント(Agilent)1290 Infinity II GPCシステムを採用することができる。
【0094】
本願において、ポリマーのガラス転移温度は、本分野の公知の意味であり、本分野の公知の装置及び方法で測定することができる。例えば、中国の標準であるGB/T29611-2013 生ゴムのガラス転移温度の示差走査熱量測定法(DSC)を参照して測定することができる。試験は、メトラー-トレド(Mettler-Toledo)のDSC-3型の示差走査熱量計を採用することができる。
【0095】
本願において、ポリマーの結晶化度は、本分野の公知の意味であり、本分野の公知の装置及び方法で測定することができる。例えば、示差走査熱量法(DSC)を用いて測定することができる。
【0096】
本願において、材料の粉末抵抗率は、本分野の公知の意味であり、本分野の公知の装置及び方法で測定することができる。例えば、中国の標準であるGB/T30835-2014を参照して四端子法を用いて測定することができる。試料の質量は、0.6g~0.7gであってもよく、試験の圧力は16Mpaであってもよい。
【0097】
本願において、材料の平均粒径Dv50は、本分野の公知の意味であり、材料の累積体積分布パーセントが50%に達する時に対応する粒径を示し、本分野の公知の装置及び方法で測定することができる。例えば、中国の標準であるGB/T19077-2016 粒度分布のレーザー回折法を参照し、レーザー粒度分析計、例えば英国のマルバーン社のMastersizer2000E型のレーザー粒度分析計を用いて測定しやすい。
【0098】
本願において、材料の比表面積は、本分野の公知の意味であり、本分野の公知の装置及び方法で測定することができる。例えば、中国の標準であるGB/T19587-2017を参照してガス吸着法による比表面積の分析試験方法を採用して試験し、かつBET(Brunauer Emmett Teller)法で計算することができる。ここで、ガス吸着法による比表面積の分析試験は、米国のマイクロメリティックス社(Micromeritics)のTri-Star 3020型の比表面積・細孔分布測定装置により行うことができる。
[作製方法]
【0099】
本願の実施形態に係る第1の態様は、本願の実施形態に係る第1の態様のいずれかの実施例の珪素含有負極活物質を作製することができる珪素含有負極活物質の作製方法を更に提供する。
【0100】
本願の珪素含有負極活物質の作製方法は、ポリマー及び一次元導電材料を含む第1のスラリーを提供するステップ(1)と、珪素系材料を第1のスラリーにゆっくりと添加し均一に撹拌分散させて第2のスラリーを得て、その後に第2のスラリーを乾燥させて珪素含有負極活物質を得るステップ(2)と、を含む。
【0101】
選択的に、ステップ(1)における第1のスラリーの固体含有量は0.8%~30%である。
【0102】
選択的に、ステップ(2)における第2のスラリーは、その固体含有量が、3%~50%であり、その室温での粘度が50cps~1500cpsである。第2のスラリーの固体含有量及び粘度が低い場合、第2のスラリーが沈降し、それにより珪素系材料の表面をよく被覆することができない可能性がある。第2のスラリーの固体含有量及び粘度が高い場合、第2のスラリーがゲル化し、乾燥を行うことができない可能性がある。
【0103】
選択的に、ステップ(2)における撹拌分散の回転速度は400回転/min~800回転/minであり、撹拌分散の時間は1h~3hである。
【0104】
選択的に、ステップ(2)における乾燥方式は噴霧乾燥であるが、本願はこれに限定されない。更に、噴霧乾燥の温度は120℃~300℃であってもよい。噴霧乾燥温度が適切な範囲内にある場合、ポリマーの間及びポリマーと一次元導電材料との間で水素結合により結合して漁網式の架橋網状構造を形成し、珪素系材料の電子伝導性を向上させ、珪素系材料と電解質との間の持続的な副反応を減少させ、珪素系材料の体積膨張を緩和することに役立つ。
【0105】
噴霧乾燥の温度が120℃よりも低い場合、珪素系材料表面の導電層の被覆面積が小さく、それにより珪素系材料と電解質との間の副反応が多くなる可能性がある。噴霧乾燥の温度が300℃よりも高い場合、ポリマーは、脱水縮合反応が発生しやすく、導電層の構造が変化することをもたらす。
【0106】
ステップ(1)において、ポリマーと一次元導電材料を同時に脱イオン水に加えて第1のスラリーを得てもよく、ポリマーと一次元導電材料とを分けて添加して第1のスラリーを得てもよい。例えば、いくつかの実施例において、第1のスラリーの作製方法は、一次元導電材料を脱イオン水に加えて撹拌して均一に分散させて導電性スラリーを得るステップ(11)と、ポリマーをステップ(11)で得られた導電性スラリーにゆっくりと添加して均一に撹拌して分散させて、第1のスラリーを得るステップ(12)とを含む。
【0107】
選択的に、ステップ(11)で得られた導電性スラリーの固体含有量は0.8%~10%である。
【0108】
選択的に、ステップ(11)における撹拌分散の回転速度は200回転/min~600回転/minであり、分散の時間は20min~60minである。
【0109】
選択的に、ステップ(12)における撹拌分散の回転速度は200回転/min~600回転/minであり、分散の時間は20min~60minである。
負極シート
【0110】
本願の実施形態に係る第2の態様は、本願の実施形態に係る第1の態様の珪素含有負極活物質を含む負極シートを提供する。
【0111】
本願の実施形態に係る第1の態様の珪素含有負極活物質は、良好な電子伝導性、小さい体積膨張効果及び高い可逆容量及び初回クーロン効率を同時に両立させることができる。また、負極シートに作製された後も良好な電子伝導性を保持することができるため、本願の負極シートは良好な電子伝導性、高い容量及び初回クーロン効率並びに小さい体積膨張を同時に両立させることができる。
【0112】
いくつかの実施例において、前記負極シートは、負極集電体及び前記負極集電体の少なくとも一つの表面に位置する負極膜層を含む。ここで、前記負極膜層は、本願の実施形態に係る第1の態様の珪素含有負極活物質、導電剤及び接着剤を含む。例えば、前記負極集電体は自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、前記負極膜層は前記負極集電体の二つの対向表面のうちのいずれか一つ又は両方に設けられている。
【0113】
いくつかの実施例において、前記負極膜層の総質量に基づいて、前記珪素含有負極活物質の質量百分率は5%~40%であってもよく、選択的に5%~25%である。
【0114】
いくつかの実施例において、前記負極膜層は、上記珪素含有負極活物質を含む以外に、本分野の公知の二次電池に用いられる他の負極活物質、例えば黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛又はそれらの混合)、ソフトカーボン、ハードカーボン、チタン酸リチウムのうちの少なくとも1種類を更に含むことができる。選択的に、前記他の負極活物質は、黒鉛を含む。いくつかの実施例において、前記負極膜層の総質量に基づいて、前記黒鉛の質量百分率は55%~90%であってもよく、選択的に70%~90%である。
【0115】
本願の負極シートは、前記導電剤の種類に対し特に制限しない。例として、前記導電剤は超伝導カーボン、導電性黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの少なくとも1種類を含むことができる。いくつかの実施例において、前記負極膜層の総質量に基づいて、前記導電剤の質量百分率は5%以下であり、選択的に0.1%~5%である。
【0116】
本願の負極シートは、前記接着剤の種類に対し特に制限しない。例として、前記接着剤はスチレンブタジエンゴム(SBR)、水溶性不飽和樹脂SR-1B、水性アクリル系樹脂(例えば、ポリアクリル酸PAA、ポリメタクリル酸PMAA、ポリアクリル酸ナトリウムPAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、カルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも1種類を含むことができる。いくつかの実施例において、前記負極膜層の総質量に基づいて、前記接着剤の質量百分率は5%以下であり、選択的に0.1%~5%である。
【0117】
いくつかの実施例において、前記負極膜層は、他の助剤を更に選択的に含むことができる。例として、他の助剤は、増粘剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、PTCサーミスタ材料等を含むことができる。いくつかの実施例において、前記負極膜層の総質量に基づいて、前記他の助剤の質量百分率は2%以下であり、選択的に0.1%~2%である。
【0118】
いくつかの実施例において、前記負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用することができる。金属箔シートの例として、銅箔を採用することができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも一方の表面に形成された金属材料層とを含んでいてもよい。例として、金属材料は銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、銀合金から選択される少なくとも1種類であってもよい。例として、高分子材料基層はポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)等から選択されることができる。
【0119】
前記負極膜層は、通常、負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスにより形成される。前記負極スラリーは、通常、負極活物質、導電剤、接着剤、その他の選択可能な助剤を溶媒に分散させて均一に撹拌することにより形成される。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよいが、これらに限定されない。
【0120】
前記負極シートは、前記負極膜層以外の他の付加機能層を排除するものではない。例えば、いくつかの実施例において、本願の前記負極シートは前記負極集電体と前記負極膜層との間に挟まれ、前記負極集電体の表面に設置された導電性下引き層(例えば導電剤及び接着剤で構成される)を更に含む。いくつかの他の実施例において、本願に係る負極シートは前記負極膜層の表面を覆う保護層を更に含む。
二次電池
【0121】
本願の実施形態に係る第3の態様は、本願の実施形態に係る第1の態様の珪素含有負極活物質、又は本願の実施形態に係る第2の態様の負極シートを含む二次電池を提供する。それにより、本願の二次電池が高いエネルギー密度及び良好なサイクル性能と貯蔵性能を同時に両立させることができる。
【0122】
二次電池は、充電電池又は蓄電池とも呼ばれ、電池が放電した後に充電の方式により活物質を活性化して使用し続けることができる電池を指す。一般的に、二次電池は、電極アセンブリ及び電解質を含み、電極アセンブリは正極シート、負極シート及びセパレータを含む。セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設置され、主に正負極の短絡を防止する役割を果たし、同時に活性イオンを通過させることができる。電解質は正極シートと負極シートとの間に活性イオンを伝導する役割を果たす。
[負極シート]
【0123】
本願の二次電池に用いられる負極シートは、本願の実施の形態に係る第2の態様の何れか実施例に記載の負極シートである。
[正極シート]
【0124】
いくつかの実施例において、前記正極シートは、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも一つの表面に設置されかつ正極活物質を含む正極膜層とを含む。例えば、前記正極集電体は、自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有する。前記正極膜層は、前記正極集電体の二つの対向表面のうちのいずれか一つ又は両方に設けられている。
【0125】
前記正極膜層は、正極活物質を含み、前記正極活物質は本分野で公知の二次電池に用いられる正極活物質を採用することができる。例えば、前記正極活物質はリチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びそのそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも1種類を含むことができる。リチウム遷移金属酸化物の例としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの少なくとも1種類を含むことができる。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例としては、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材料及びそのそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも1種類を含むことができる。本願は、これらの材料に限定されず、二次電池正極活物質として用いられる従来の公知の他の材料を使用することができる。これらの正極活物質は1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0126】
いくつかの実施例において、二次電池のエネルギー密度を更に向上させるために、前記正極活物質は式1に示されるリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含むことができる。
【0127】
LiNiCo式1
【0128】
式1中、0.8≦a≦1.2、0.5≦b<1、0<c<1、0<d<1、1≦e≦2、0≦f≦1、Mは、Mn、Al、Zr、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti及びBから選択される1種類又は複数種類であり、Aは、N、F、S及びClから選択される1種類又は複数種類である。
【0129】
本願において、上記各正極活物質の改質化合物は前記正極活物質にドーピング改質を行い、表面被覆改質を行い、又はドーピング改質及び表面被覆改質を同時に行うことができる。
【0130】
いくつかの実施例において、前記正極膜層は、更に導電剤を選択可能に含むことができる。本願は、前記導電剤の種類に対し特に制限しない。例として、前記導電剤は超伝導カーボン、導電性黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの少なくとも1種類を含む。いくつかの実施例において、前記正極膜層の総質量に基づいて、前記導電剤の質量百分率は5%以下であり、選択的に0.1%~5%である。
【0131】
いくつかの実施例において、前記正極膜層は、更に接着剤を選択可能に含んでもよい。本願は、前記接着剤の種類に対し特に制限しない。例として、前記接着剤はポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレンの三元コポリマー、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレンの三元コポリマー、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレのンコポリマー、フッ素含有アクリレート系樹脂のうちの少なくとも1種類を含むことができる。いくつかの実施例において、前記正極膜層の総質量に基づいて、前記接着剤の質量百分率は5%以下であり、選択的に0.1%~5%である。
【0132】
いくつかの実施例において、前記正極集電体は金属箔シート又は複合集電体を採用することができる。金属箔シートの例として、アルミニウム箔を採用することができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも一方の表面に形成された金属材料層とを含んでいてもよい。例として、金属材料はアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、銀合金から選択される少なくとも1種類であってもよい。例として、高分子材料基層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)等から選択されることができる。
【0133】
前記正極膜層は、通常、正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスにより形成される。前記正極スラリーは、通常、正極活物質、選択可能な導電剤、選択可能な接着剤、及び任意の他の成分を溶媒に分散させて均一に撹拌することにより形成される。溶媒はN-メチルピロリドン(NMP)であってもよいが、これに限定されない。
[電解質]
【0134】
本願は、前記電解質の種類に対し具体的に制限せず、需要に応じて選択することができる。例えば、前記電解質は固体電解質及び液体電解質(即ち電解液)から選択される少なくとも1種類であってもよい。
【0135】
いくつかの実施例において、前記電解質は、電解質塩及び溶媒を含む電解液を採用する。
【0136】
前記電解質塩の種類は、具体的に制限されず、実際の需要に応じて選択することができる。いくつかの実施例において、例として、前記電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、リチウムビスフルオロスルホニルイミド(LiFSI)、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTFS)、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム(LiDFOB)、ジシュウ酸ホウ酸リチウム(LiBOB)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、リチウムジフルオロビスオキサレートホスフェート(LiDFOP)、リチウムテトラフルオロオキサレートホスフェート(LiTFOP)のうちの少なくとも1種類を含むことができる。
【0137】
前記溶媒の種類は、具体的に制限されず、実際の需要に応じて選択することができる。いくつかの実施例において、例として、前記溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)のうちの少なくとも1種類を含むことができる。
【0138】
いくつかの実施例において、前記電解液に添加剤を更に選択的に含むことができる。例えば、前記添加剤は負極成膜添加剤を含むことができ、正極成膜添加剤を含むこともでき、電池のある性能を改善することができる添加剤、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温電力性能を改善する添加剤などを更に含むことができる。
[セパレータ]
【0139】
電解液を採用する二次電池、及び固体電解質を採用するいくつかの二次電池は、セパレータを更に含む。前記セパレータは前記正極シートと前記負極シートとの間に設置され、主に正極と負極との短絡を防止する作用を果たし、同時に活性イオンを通過させることができる。本願は、前記セパレータの種類に対し特に制限せず、任意の公知の良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する多孔質構造セパレータを選択することができる。
【0140】
いくつかの実施例において、前記セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも1種類を含むことができる。前記セパレータは単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよい。前記セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料が同じであるか又は異なる。
【0141】
いくつかの実施例において、前記正極シート、前記セパレータ及び前記負極シートは巻回プロセス又は積層プロセスにより電極アセンブリに作製されることができる。
【0142】
いくつかの実施例において、前記二次電池は、外装を含むことができる。当該外装は、上記電極アセンブリ及び電解質を封止するために用いることができる。
【0143】
いくつかの実施例において、前記二次電池の外装は、ハードケースであってもよく、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼ケースなどである。前記二次電池の外装はソフトパッケージであってもよく、例えばバグ式ソフトパッケージである。前記ソフトパッケージの材質はプラスチックであってもよく、例えばポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等のうちの少なくとも1種類である。
【0144】
本願の二次電池の形状は特に限定されず、円柱形、角形又は他の任意の形状であってもよい。図1は、一例としての角形構造の二次電池5である。
【0145】
いくつかの実施例において、図2に示すように、外装はケース51及びカバープレート53を含むことができる。ここで、ケース51は底板と底板に接続された側板を含み、底板と側板が囲んで収容キャビティを形成する。ケース51は、収容キャビティに連通する開口を有し、カバープレート53は、前記開口をカバーすることで、前記収容キャビティを閉鎖する。正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスにより電極アセンブリ52を形成する。電極アセンブリ52は、前記収容キャビティに封止されている。電解液は、電極アセンブリ52に含浸されている。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は一つ又は複数であってもよく、需要に応じて調節することができる。
【0146】
本願の二次電池の作製方法は公知である。いくつかの実施例において、正極シート、セパレータ、負極シート及び電解液を組み立てて二次電池を形成することができる。例として、正極シート、セパレータ、負極シートを巻回プロセス又は積層プロセスにより電極アセンブリを形成し、電極アセンブリを外装に置き、乾燥した後に電解液を注入し、真空封止、静置、化成、整形などの工程を経て、二次電池を得る。
【0147】
本願のいくつかの実施例において、本願に係る二次電池を電池モジュールに組み立てることができる。電池モジュールに含まれる二次電池の数は複数であってもよく、具体的な数は電池モジュールの応用及び容量に応じて調整することができる。
【0148】
図3は、一例としての電池モジュール4の模式図である。図3に示すように、電池モジュール4において、複数の二次電池5は電池モジュール4の長さ方向に沿って順に配列して設置されてもよい。当然のことながら、他の任意の方式で配列することができる。当該複数の二次電池5は、更に締結具によって固定されていてもよい。
【0149】
選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングを更に含み、複数の二次電池5は当該収容空間に収容されている。
【0150】
いくつかの実施例において、上記電池モジュールは、更に電池パックに組み立てることができる。電池パックに含まれる電池モジュールの数量は電池パックの応用及び容量に応じて調整することができる。
【0151】
図4及び図5は、一例としての電池パック1の模式図である。図4及び図5に示すように、電池パック1に電池ボックスと電池ボックスに設置された複数の電池モジュール4とを含むことができる。電池ボックスは上筐体2及び下筐体3を含み、上筐体2は下筐体3をカバーし、かつ電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成するために用いられる。複数の電池モジュール4は、電池ボックス内に任意に配置することができる。
電力消費装置
【0152】
本願の実施形態に係る第4の態様は、本願の二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1種類を含む電力消費装置を提供する。前記二次電池、電池モジュール又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として用いられてもよく、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記電力消費装置は、移動機器(例えば携帯電話、ノートパソコン等)、電動車両(例えば純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電気トラック等)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等であってもよいが、これらに限定されない。
【0153】
前記電力消費装置は、その使用需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0154】
図6は、一例としての電力消費装置の模式図である。当該電力消費装置は、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。当該電力消費装置の高電力及び高エネルギー密度への需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。
【0155】
他の例としての電力消費装置は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコン等であってもよい。当該電力消費装置は、通常薄型化が求められ、二次電池を電源として採用することができる。
実施例
【0156】
以下の実施例は、本願の開示する内容をより具体的に説明し、これらの実施例は単に説明を説明するために用いられ、本願の開示する内容の範囲内で様々な修正及び変更を行うことは当業者にとって明らかである。特に断らない限り、以下の実施例に記載された全ての部、百分率、及び比はいずれも質量に基づいたものである。また、実施例で使用された全ての試薬を購入して取得するか又は従来の方法に従って合成して取得することができ、かつ更に処理する必要とせず直接使用可能である。また、実施例で使用された装置をいずれも購入して取得することができる。
実施例1
珪素含有負極活物質の調製
【0157】
直径が3nmであり、長さが10μmであり、アスペクト比が3333であるカーボンナノチューブ(CNT、一次元導電材料)を脱イオン水に加えて300回転/minの回転速度で30min撹拌分散し、導電性スラリーを得る。重量平均分子量が30万であり、極性官能基(実施例1ではカルボキシル基)の質量含有量が25%であるエチレン-アクリル酸のコポリマー(ポリマー)を導電性スラリーにゆっくりと添加して300回転/minの回転速度で30min撹拌分散させ、第1のスラリーを得る。珪素元素の質量含有量が48%である珪素酸化物(珪素系材料)を第1のスラリーにゆっくりと添加して500回転/minの回転速度で1h撹拌分散し、第2のスラリーを得て、その後に第2のスラリーを180℃で噴霧乾燥して珪素含有負極活物質を得る。珪素含有負極活物質において、珪素酸化物、ポリマー、一次元導電材料の質量比は96.6:3.0:0.4である。
負極シートの作製
【0158】
上記珪素含有負極活物質、黒鉛、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、カーボンブラック(Super P)を質量比81.3:14.3:2:1.2:1.2で適量の溶剤である脱イオン水に十分に撹拌して混合させ、均一な負極スラリーを形成する。負極スラリーを負極集電体である銅箔の表面に均一に塗布し、乾燥、冷間プレスを経て、負極シートを得る。
正極シートの作製
【0159】
正極活物質であるLiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811)、導電剤であるカーボンブラック(Super P)、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量比97:1:2で適量の溶剤であるNMP中で十分に撹拌して混合し、均一な正極スラリーを形成する。正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔の表面に均一に塗布し、乾燥、冷間プレスを経て、正極シートを得る。
電解液の調製
【0160】
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1で混合して有機溶媒を得て、次に十分に乾燥したLiPFを上記有機溶媒に溶解し、濃度が1mol/Lの電解液を調製する。
セパレータの作製
【0161】
セパレータとしては、多孔質ポリエチレンフィルムを用いる。
二次電池の作製
【0162】
正極シート、セパレータ、負極シートを順に積層して巻回し、電極アセンブリを得る。電極アセンブリを外装に置き、乾燥した後に電解液を注入し、真空封止、静置、化成、整形などの工程を経て、二次電池を得る。
実施例2~38、比較例1~4
【0163】
二次電池の作製方法は、実施例1と類似し、異なる点は、珪素含有負極活物質の作製パラメータである。具体的には表1を参照する。
【0164】
【表1】
試験過程
(1)珪素含有負極活物質の粉末抵抗率の試験
【0165】
中国の標準であるGB/T30835-2014を参照し、FT-341A四端子法粉末抵抗率試験機を用いて上記作製された珪素含有負極活物質の粉末抵抗率を測定する。試料の質量は0.6g~0.7gであり、試験の圧力は16Mpaである。
(2)初回可逆的な1グラムあたりの容量及び初回クーロン効率の試験
【0166】
上記作製された負極シートを小さいウエハに打ち抜きた後、金属リチウムシートを対極とし、ポリエチレン(PE)フィルムをセパレータとしてアルゴンガスで保護されたグローブボックス中でCR2430型のボタン型電池に組み立てる。得られたボタン型電池を12時間静置した後、25℃で、0.05Cの定電流で0.005Vまで放電し、10分間静置した後に50μAの電流で0.005Vまで定電流放電し、更に10分間静置した後に10μAで0.005Vまで定電流放電し、3回放電の総容量を記録し、ボタン型電池の初回放電容量とする。次にボタン型電池を0.1Cの定電流で2Vまで充電し、ボタン型電池の初回充電容量を記録する。
【0167】
負極シートの初回可逆的な1グラムあたりの容量(mAh/g)=ボタン型電池の初回充電容量/(珪素含有負極活物質の質量+黒鉛の質量)
【0168】
負極シートの初回クーロン効率=(ボタン型電池の初回充電容量/ボタン型電池の初回放電容量)×100%
(3)体積膨張性能の試験
【0169】
25℃で、二次電池を1Cの定電流で2.5Vまで放電し、次に0.5Cの定電流で4.25Vまで充電し、この時に二次電池は100%SOCである。二次電池を解体した後、この時の負極シートの厚さを試験してHとし、負極シートの初期厚さをHとする。負極シートの厚さ増加率(%)=(H/H-1)×100%。
【0170】
負極シートの厚さ増加率により、負極シート及び二次電池の体積膨張を示すことができる。ここで、負極シートの厚さ増加率が小さいほど、負極シート及び二次電池の体積膨張が小さくなる。
【0171】
実施例1~38及び比較例1~4の試験結果を表2に示す。
【0172】
【表2】
【0173】
表2の試験結果から分かるように、比較例1に比べて、本願の提供する珪素含有負極活物質は、低い粉末抵抗率を有し、負極シートは同時に高い可逆的な1グラムあたりの容量及び初回クーロン効率及び小さい体積膨張を有する。可能な原因は、ポリマーの極性官能基と一次元導電材料の表面の官能基との間、ポリマーの極性官能基と珪素系材料の表面の官能基との間にいずれも適量の水素結合を形成することができ、それにより一次元導電材料を珪素系材料の表面に効果的に固定することができることにある。また、ポリマーと一次元導電材料とは互いに架橋し、絡み合うことができ、それにより導電層はフレキシブル性を有しかつ漁網のように珪素系材料の表面を強固に被覆することができる。したがって、本願の珪素含有負極活物質は、良好な電子伝導性、小さい体積膨張効果及び高い可逆的な1グラムあたりの容量及び初回クーロン効率を同時に両立させることができ、かつ負極シートに応用された後も良好な電子伝導性を保持することができる。
【0174】
比較例2は、珪素含有負極活物質を作製する時に、カーボンナノチューブ分散液と珪素酸化物を混合した後に乾燥させ、この時にカーボンナノチューブと珪素酸化物との結合が強固ではない。スラリー撹拌分散過程において、カーボンナノチューブが脱落しやすく、それにより珪素含有負極活物質の電子伝導性、可逆的な1グラムあたりの容量及び初回クーロン効率の向上が明らかではなく、同時にその体積膨張が依然として高い。
【0175】
実施例1~11及び比較例3、実施例12~14及び比較例4の試験結果から分かるように、A2/A1を適切な範囲内(0.2~8の間)に制御した場合、珪素含有負極活物質は、低い粉末抵抗率を有し、負極シートは同時に高い可逆的な1グラムあたりの容量及び初回クーロン効率及び小さい体積膨張を有する。比較例3において、A2/A1が8よりも大きい場合、ポリマーは珪素含有負極活物質の縦方向のみに水素結合により珪素系材料と結合することができ、珪素含有負極活物質の横方向に良好な被覆効果を形成することができない。したがって、この時にカーボンナノチューブと珪素酸化物との結合は強固ではなく、スラリーの撹拌分散過程において、カーボンナノチューブが脱落しやすく、それにより負極シートの可逆的な1グラムあたりの容量及び初回クーロン効率の向上が明らかではなく、同時にその体積膨張が依然として高い。比較例4において、A2/A1が0.2よりも小さい場合、ポリマーにおける大部分の極性官能基はカーボンナノチューブの表面の官能基と水素結合を形成して架橋反応を起こし又は絡み合い、少ない極性官能基が珪素炭素化合物の表面の官能基と水素結合を形成する状況が発生する。したがって、この時にカーボンナノチューブと珪素炭素化合物との結合は強固ではなく、スラリーの撹拌分散過程において、カーボンナノチューブが脱落しやすく、それにより負極シートの可逆的な1グラムあたりの容量及び初回クーロン効率の向上が明らかではなく、同時にその体積膨張が依然として高い。
【0176】
実施例1~11の試験結果から分かるように、ポリマーにおける極性官能基の含有量が適切な範囲内にある場合、負極シートの可逆的な1グラムあたりの容量及び初回クーロン効率がより高く、同時にその体積膨張もより小さい。
【0177】
実施例15~実施例24の試験結果から分かるように、カーボンナノチューブのアスペクト比及び/又はポリマーの重量平均分子量とカーボンナノチューブのアスペクト比との比が適切な範囲内にある場合、負極シートの可逆的な1グラムあたりの容量及び初回クーロン効率がより高く、同時にその体積膨張もより小さい。
【0178】
実施例25~31の試験結果から分かるように、ポリマーとカーボンナノチューブとの質量比が適切な範囲内にある場合、負極シートの可逆的な1グラムあたりの容量及び初回クーロン効率がより高く、同時にその体積膨張もより小さい。
【0179】
なお、本願は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示のみであり、本願の技術案の範囲内に技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏する実施形態はいずれも本願の技術的範囲に含まれる。また、本願の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者が想到できる各種類の変形を実施の形態に加える形態、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も、本願の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】