(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】銅イオンを含む金属有機骨格及びそれを調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C08F 8/42 20060101AFI20240416BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240416BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20240416BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20240416BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240416BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C08F8/42
C08L101/00
C08L23/04
C08L23/10
C08L67/00
C08L23/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548805
(86)(22)【出願日】2022-02-15
(85)【翻訳文提出日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 US2022070671
(87)【国際公開番号】W WO2022174270
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502127766
【氏名又は名称】アールジェイ リー グループ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RJ LEE GROUP,INC.
(71)【出願人】
【識別番号】521439213
【氏名又は名称】アイオワ ステイト ユニヴァーシティ リサーチ ファウンデーション インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】301027074
【氏名又は名称】ユーティ―バテル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モナコ,スティーブン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リー,リチャード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】レヴィン,アラン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ウィストロム,ジョナサン ライル
(72)【発明者】
【氏名】ペロウトカ-ビガス,ネイサン ドリュー
(72)【発明者】
【氏名】セオドア,マーリン
(72)【発明者】
【氏名】パランサマン,マリアッパン パランス
(72)【発明者】
【氏名】ベレア,ブライアン ハワード
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AA002
4J002AA003
4J002AA012
4J002BB022
4J002BB023
4J002BB112
4J002BB113
4J002BB142
4J002BB143
4J002BB231
4J002CF002
4J002CF003
4J002DA076
4J002DE096
4J002EF117
4J002EG097
4J002EH147
4J002FD142
4J002FD146
4J002GA01
4J002GB00
4J002GE00
4J002GK01
4J100AA03P
4J100AJ09Q
4J100AK32Q
4J100CA04
4J100HA31
4J100HB39
4J100HC28
4J100HC33
4J100HE17
4J100HF05
4J100HG09
4J100JA11
4J100JA15
4J100JA51
4J100JA64
(57)【要約】
銅イオンを含む金属有機骨格(MOF)が提供される。MOFを含む樹脂粉末、顆粒、又はペレットも提供される。いくつかの実施形態では、樹脂粉末、顆粒、又はペレットは、抗菌物質である。MOFを含む繊維又はシートも提供される。いくつかの実施形態では、繊維又はシートは、抗菌物質である。MOFを調製するためのプロセスも提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅イオンを含む金属有機骨格(MOF)。
【請求項2】
前記銅イオンが、Cu
2+である、請求項1に記載のMOF。
【請求項3】
前記銅イオンが、テレフタレート又はテレフタレートエステルと錯体を形成している、請求項1又は2に記載のMOF。
【請求項4】
前記テレフタレートエステルが、テレフタレートグリコールエステルである、請求項1~3のいずれか一項に記載のMOF。
【請求項5】
前記テレフタレートグリコールエステルが、テレフタレートエチレングリコールエステル又はテレフタレートプロピレングリコールエステルである、請求項4に記載のMOF。
【請求項6】
前記銅イオンが、マレエートと錯体を形成している、請求項1~5のいずれか一項に記載のMOF。
【請求項7】
前記マレエートが、ポリ[エチレン-alt-マレイン酸]、ポリ[プロピレン-alt-マレイン酸]、ポリエチレン-graft-マレイン酸、及びポリプロピレン-graft-マレイン酸から選択される、請求項6に記載のMOF。
【請求項8】
前記銅イオンが、マレエート及びテレフタレート又はテレフタレートエステルと錯体を同時に形成する、請求項1~7のいずれか一項に記載のMOF。
【請求項9】
請求項1~9のいずれか一項に記載のMOFを含む組成物。
【請求項10】
樹脂粉末、顆粒、又はペレットの形態である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記樹脂粉末、顆粒、又はペレットが、抗菌物質である、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
マレエート/アルファオレフィンコポリマーでも、テレフタレート/エチレングリコールコポリマーでもないポリマーを更に含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
プラスチックを更に含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
ポリエステル、ポリエチレン、及びポリプロピレンから選択されるプラスチックを更に含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか一項に記載のMOFを含む製造物品。
【請求項16】
前記製造物品が、繊維、シート、及びフィルムから選択される、請求項15に記載の製造物品。
【請求項17】
前記製造物品が、織布又は不織布繊維である、請求項15に記載の製造物品。
【請求項18】
前記製造物品が、シートである、請求項15に記載の製造物品。
【請求項19】
前記製造物品が、抗菌物質である、請求項15~18のいずれか一項に記載の製造物品。
【請求項20】
銅イオンを含むMOFを調製するためのプロセスであって、前記プロセスが、銅(II)供給源をマレエートコポリマーと反応させることを含む、プロセス。
【請求項21】
前記マレエートコポリマーが、m-PPである、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記グリコールが、エチレングリコール又はプロピレングリコールである、請求項24に記載のプロセス。
【請求項23】
前記銅(II)供給源が、酸化銅(II)である、請求項21に記載のプロセス。
【請求項24】
前記銅(II)供給源が、水酸化銅(II)である、請求項21に記載のプロセス。
【請求項25】
前記反応混合物が、0.5重量%のCuを含有する、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記反応混合物が、170℃まで2時間加熱される、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記プロセスが、
クエンチし、それによって固体塊を形成するステップと、
ボールミルを用いて粉砕するステップと、を更に含む、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記反応混合物が、100gのm-PPを含有する、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
請求項24~28のいずれか一項に記載のプロセスによって得られた生成物。
【請求項30】
前記銅(II)供給源が、テレフタル酸銅(II)である、請求項21に記載のプロセス。
【請求項31】
前記銅(II)供給源が、テレフタル酸銅(II)エステルである、請求項21に記載のプロセス。
【請求項32】
前記テレフタル酸銅(II)エステルが、テレフタル酸銅(II)をグリコールと反応させることによって調製される、請求項23に記載のプロセス。
【請求項33】
前記反応混合物が、180℃まで6時間加熱される、請求項32に記載のプロセス。
【請求項34】
前記反応が、前記加熱の完了後にイソプロパノールを用いて希釈される、請求項33に記載のプロセス。
【請求項35】
形成される固体生成物が、遠心分離によって収集される、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記固体生成物を、イソプロパノールを用いてすすぐステップと、
前記固体生成物を、遠心分離を用いて収集するステップと、を更に含む、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
前記生成物をm-PPと反応させるステップを更に含む、請求項36に記載のプロセス。
【請求項38】
前記反応混合物が、170℃まで2時間加熱される、請求項37に記載のプロセス。
【請求項39】
前記プロセスが、
クエンチし、それによって固体塊を形成するステップと、
ボールミルを用いて粉砕するステップと、を更に含む、請求項38に記載のプロセス。
【請求項40】
請求項30~40のいずれか一項に記載のプロセスによって得られた生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「Metal Organic Frameworks Comprising Copper Ions and Processes for Preparing Same」と題された2021年2月15日に出願された米国特許出願第63/200,113号の優先権を主張する。
【0002】
銅イオンを含む金属有機骨格が提供される。金属有機骨格を調製するためのプロセスも提供される。
【背景技術】
【0003】
米国特許第8,507,644号は、金属-テレフタレートポリマーを作製する方法を記載している。これは、テレフタル酸と、酸化亜鉛又は酸化マグネシウムなどの金属酸化物との間の化学反応を記載している。
【0004】
米国特許第2,465,319号は、グリコールをテレフタル酸と共に加熱することによって、テレフタレートグリコールエステルを形成する方法を記載している。
【0005】
銅を含むポリマーを作製するための現在のプロセスは、溶融ブレンドプロセスを通してポリプロピレンに埋め込まれた銅又は酸化銅(II)のナノ粒子の使用を伴う。ナノ又はマイクロ銅粒子は、単純な分散によってプラスチックに組み込まれる。ナノ又はマイクロ銅粒子は大きく、抜け落ち又は著しい浸出が起こりやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
銅イオンを含む金属有機骨格(MOF)及びMOFを調製するためのプロセスに対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
銅イオンを含む金属有機骨格(MOF)が提供される。
【0008】
いくつかの実施形態では、銅イオンは、Cu2+である。
【0009】
いくつかの実施形態では、銅イオンは、テレフタレート又はテレフタレートエステルと錯体を形成している。
【0010】
いくつかの実施形態では、テレフタレートエステルは、テレフタレートグリコールエステルである。更なる実施形態では、テレフタレートグリコールエステルは、テレフタレートエチレングリコールエステル又はテレフタレートプロピレングリコールエステルである。
【0011】
いくつかの実施形態では、銅イオンは、マレエートと錯体を形成している。
【0012】
いくつかの実施形態では、マレエートは、マレイン酸又は無水マレイン酸と、アルファオレフィンとのコポリマーである。いくつかの実施形態では、マレエートは、マレイン酸とアルファオレフィンとのコポリマーである。いくつかの実施形態では、マレエートは、ポリ[エチレン-alt-マレイン酸]、ポリ[プロピレン-alt-マレイン酸]、ポリエチレン-graft-マレイン酸、又はポリプロピレン-graft-マレイン酸である。いくつかの実施形態では、マレエートは、無水マレイン酸-グラフト化ポリプロピレン(別名、ポリプロピレン-graft-無水マレイン酸)、無水マレイン酸-グラフト化ポリエチレン(別名、ポリエチレン-graft-無水マレイン酸)、ポリ[エチレン-alt-無水マレイン酸]、又はポリ[プロピレン-alt-無水マレイン酸]から誘導されている。いくつかの実施形態では、マレエートは、マレイン酸とポリエチレンとのコポリマー、及びマレイン酸とポリプロピレンとのコポリマーから選択される。
【0013】
いくつかの実施形態では、マレエートは、無水マレイン酸-グラフト化ポリプロピレン又は無水マレイン酸-グラフト化ポリエチレンである。
【0014】
いくつかの実施形態では、マレエートは、マレイン酸-グラフト化ポリプロピレン(別名、ポリプロピレン-graft-マレイン酸)、又はマレイン酸-グラフト化ポリエチレン(別名、ポリエチレン-graft-マレイン酸)である。
【0015】
いくつかの実施形態では、銅イオンは、マレエート及びテレフタレート又はテレフタレートエステルと錯体を同時に形成する。
【0016】
いくつかの実施形態では、MOFは、銅原子を更に含む。
【0017】
前述の実施形態のいずれか1つに記載のMOFを含む樹脂粉末、顆粒、又はペレットも提供される。いくつかの実施形態では、樹脂粉末、顆粒、又はペレットは、抗菌物質である。
【0018】
前述の実施形態のいずれか1つに記載のMOFを含む繊維が提供される。いくつかの実施形態では、繊維は、抗菌物質である。更なる実施形態では、繊維は、織布又は不織布である。
【0019】
前述の実施形態のいずれか1つに記載のMOFを含むシートが提供される。いくつかの実施形態では、繊維は、抗菌物質である。
【0020】
ポリマーとブレンドされた、前述の実施形態のいずれか1つに記載のMOFを含む組成物が提供される。
【0021】
プラスチックとブレンドされた、前述の実施形態のいずれか1つに記載のMOFを含む組成物が提供される。いくつかの実施形態では、プラスチックは、ポリエステル、ポリエチレン、又はポリプロピレンである。
【0022】
銅イオンを含むMOFを調製するためのプロセスであって、当該プロセスが、テレフタル酸銅(II)と、無水マレイン酸-グラフト化ポリプロピレン、無水マレイン酸-グラフト化ポリエチレン、ポリ[エチレン-alt-無水マレイン酸]、又はポリ[プロピレン-alt-無水マレイン酸]とを反応させることを含む、プロセスが提供される。
【0023】
銅イオンを含むMOFを調製するためのプロセスであって、当該プロセスが、テレフタル酸銅(II)と、マレイン酸-グラフト化ポリプロピレン、マレイン酸-グラフト化ポリエチレン、ポリ[エチレン-alt-マレイン酸]、又はポリ[プロピレン-alt-マレイン酸]とを反応させることを含む、プロセスが提供される。
【0024】
銅イオンを含むMOFを調製するためのプロセスであって、当該プロセスが、テレフタル酸銅(II)エステルと、無水マレイン酸-グラフト化ポリプロピレン、無水マレイン酸-グラフト化ポリエチレン、ポリ[エチレン-alt-無水マレイン酸]、又はポリ[プロピレン-alt-無水マレイン酸]とを反応させることを含む、プロセスが提供される。
【0025】
銅イオンを含むMOFを調製するためのプロセスであって、当該プロセスが、テレフタル酸銅(II)エステルと、マレイン酸-グラフト化ポリプロピレン、マレイン酸-グラフト化ポリエチレン、ポリ[エチレン-alt-マレイン酸]、又はポリ[プロピレン-alt-マレイン酸]とを反応させることを含む、プロセスが提供される。
【0026】
いくつかの実施形態では、テレフタル酸銅(II)エステルは、テレフタル酸銅(II)をグリコールと反応させることによって調製される。更なる実施形態では、グリコールは、エチレングリコール又はプロピレングリコールである。
【0027】
銅イオンを含むMOFを調製するためのプロセスであって、当該プロセスが、銅(II)供給源とマレエートコポリマーとを反応させるステップを含む、プロセスが提供される。
【0028】
銅(II)供給源とマレエートコポリマーとを反応させるステップを含むプロセスによって提供される生成物も提供される。
【0029】
テレフタル酸銅(II)、又はその誘導体、及びエチレングリコール、又はその誘導体を含む材料を調製するためのプロセスであって、テレフタル酸銅(II)を過剰のエチレングリコールと共に加熱するステップを含む、プロセスも提供される。いくつかの実施形態では、プロセスは、材料とマレエートコポリマーとを反応させる連続ステップを更に含む。
【0030】
テレフタル酸銅(II)を過剰のエチレングリコールと共に加熱するステップを含むプロセスによって提供される生成物も提供される。いくつかの実施形態では、プロセスは、材料とマレエートコポリマーとを反応させる連続ステップを更に含む。
【0031】
本発明の完全な理解は、添付の図面と併せて読むと、好ましい実施形態の以下の記載から得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】SARS-CoV-2ワシントン変異体に対する抗ウイルス活性を示す図である。(i)6時間(ii)24時間、(a)対照(ウイルスのみ)(b)PPを含む対照(c)Cu-m-PP(d)Cu-TP-m-PP、垂直軸=TCID
50。N.D.=検出されず。
【発明を実施するための形態】
【0033】
銅イオンを含む金属有機骨格(MOF)が提供される。
【0034】
いくつかの実施形態では、銅イオンは、Cu2+である。
【0035】
いくつかの実施形態では、銅イオンは、テレフタレート又はテレフタレートエステルと錯体を形成している。
【0036】
いくつかの実施形態では、テレフタレートエステルは、テレフタレートグリコールエステルである。更なる実施形態では、テレフタレートグリコールエステルは、テレフタレートエチレングリコールエステル又はテレフタレートプロピレングリコールエステルである。
【0037】
いくつかの実施形態では、銅イオンは、マレエートと錯体を形成している。
【0038】
いくつかの実施形態では、マレエートは、マレイン酸又は無水マレイン酸と、アルファオレフィンとのコポリマーである。
【0039】
いくつかの実施形態では、マレエートは、無水マレイン酸-グラフト化ポリプロピレン、無水マレイン酸-グラフト化ポリエチレン、ポリ[エチレン-alt-無水マレイン酸]、又はポリ[プロピレン-alt-無水マレイン酸]である。
【0040】
いくつかの実施形態では、マレエートは、マレイン酸-グラフト化ポリプロピレン、マレイン酸-グラフト化ポリエチレン、ポリ[エチレン-alt-マレイン酸]、又はポリ[プロピレン-alt-マレイン酸]である。
【0041】
銅イオンを含むMOFを調製するためのプロセスであって、当該プロセスが、銅(II)供給源とマレエートコポリマーとを反応させるステップを含む、プロセスが提供される。
【0042】
銅(II)供給源とマレエートコポリマーとを反応させるステップを含むプロセスによって提供される生成物も提供される。
【0043】
いくつかの実施形態では、マレエートコポリマーは、無水マレイン酸-グラフト化ポリプロピレン、無水マレイン酸-グラフト化ポリエチレン、ポリ[エチレン-alt-無水マレイン酸]、又はポリ[プロピレン-alt-無水マレイン酸]である。
【0044】
いくつかの実施形態では、マレエートコポリマーは、マレイン酸-グラフト化ポリプロピレン、マレイン酸-グラフト化ポリエチレン、ポリ[エチレン-alt-マレイン酸]、又はポリ[プロピレン-alt-マレイン酸]である。
【0045】
いくつかの実施形態では、銅(II)供給源は、酸化銅(II)である。いくつかの実施形態では、銅(II)供給源は、水酸化銅(II)である。いくつかの実施形態では、銅(II)供給源は、ハロゲン化銅(II)である。いくつかの実施形態では、銅(II)供給源は、水酸化銅(II)又は塩のアンモニア溶液である。いくつかの実施形態では、銅(II)供給源は、水酸化アンモニウム水溶液から調製された溶液に導入される。いくつかの実施形態では、銅(II)供給源は、高濃度水酸化アンモニウム水溶液から調製された溶液に導入される。
【0046】
いくつかの実施形態では、無水マレイン酸-グラフト化ポリマーに対する銅(II)供給源中の銅の質量比は、0.03未満である。いくつかの実施形態では、質量比は、0.03未満である。いくつかの実施形態では、質量比は、0.05~0.15である。いくつかの実施形態では、質量比は、0.05~0.10である。いくつかの実施形態では、質量比は、0.05±0.01である。いくつかの実施形態では、質量比は、0.05±0.002である。
【0047】
いくつかの実施形態では、500g未満のマレエートコポリマーが使用される。いくつかの実施形態では、200g未満のマレエートコポリマーが使用される。いくつかの実施形態では、150g未満のマレエートコポリマーが使用される。
【0048】
いくつかの実施形態では、銅(II)供給源及びマレエートコポリマーは、溶媒の不在下で反応する。いくつかの実施形態では、銅(II)供給源及びマレエートコポリマーは、最初は固体として反応する。いくつかの実施形態では、銅(II)供給源及びマレエートコポリマーは、溶融状態で反応する。
【0049】
いくつかの実施形態では、銅(II)供給源とマレエートコポリマーとの混合物は、150℃~180℃の最終温度まで加熱される。いくつかの実施形態では、混合物は、160℃~180℃の最終温度まで加熱される。いくつかの実施形態では、混合物は、165℃~180℃の最終温度まで加熱される。いくつかの実施形態では、混合物は、約170℃の最終温度まで加熱される。いくつかの実施形態では、混合物は、170℃±5℃の最終温度まで加熱される。
【0050】
いくつかの実施形態では、銅(II)供給源とマレエートコポリマーとの反応混合物は、最終温度で30分~240分の時間保持される。いくつかの実施形態では、反応は、最終温度で60分~210分の時間保持される。いくつかの実施形態では、反応は、最終温度で60分~210分の時間保持される。いくつかの実施形態では、反応は、最終温度で75分~180分の時間保持される。いくつかの実施形態では、反応は、最終温度で90分~150分の時間保持される。いくつかの実施形態では、反応は、最終温度で105分~135分の時間保持される。いくつかの実施形態では、反応は、最終温度で110分~130分の時間保持される。
【0051】
いくつかの実施形態では、銅(II)供給源とマレエートコポリマーとの反応混合物は、加熱プロセスの完了後に急速にクエンチされる。いくつかの実施形態では、加熱及びクエンチステップは、本質的に同じ条件下で合計2サイクルにわたって繰り返される。いくつかの実施形態では、加熱及びクエンチステップは、本質的に同じ条件下で合計3サイクルにわたって繰り返される。
【0052】
いくつかの実施形態では、銅(II)供給源とマレエートコポリマーとの反応の生成物は、145℃以上の融点を有する。いくつかの実施形態では、生成物は、150℃以上の融点を有する。いくつかの実施形態では、生成物は、152℃以上の融点を有する。いくつかの実施形態では、生成物は、154℃以上の融点を有する。
【0053】
テレフタル酸銅(II)、又はその誘導体、及びエチレングリコール、又はその誘導体を含む材料を調製するためのプロセスであって、テレフタル酸銅(II)を過剰のエチレングリコールと共に加熱するステップを含む、プロセスも提供される。いくつかの実施形態では、プロセスは、材料とマレエートコポリマーとを反応させる連続ステップを更に含む。
【0054】
テレフタル酸銅(II)を過剰のエチレングリコールと共に加熱するステップを含むプロセスによって提供される生成物も提供される。いくつかの実施形態では、プロセスは、材料とマレエートコポリマーとを反応させる連続ステップを更に含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、テレフタル酸銅(II)は、反応前に精製される。いくつかの実施形態では、テレフタル酸銅(II)は、エチレングリコールと組み合わせる前に25メッシュに粉砕される。いくつかの実施形態では、テレフタル酸銅(II)は、過剰のエチレングリコールと混合される場合、黒色スラリーを提供する。いくつかの実施形態では、テレフタル酸銅(II)とエチレングリコールとの混合物は、150℃~190℃の最終温度まで加熱される。いくつかの実施形態では、テレフタレート銅(II)とエチレングリコールとの混合物は、160℃~195℃の最終温度まで加熱される。いくつかの実施形態では、テレフタレート銅(II)とエチレングリコールの混合物は、170℃~190℃の最終温度まで加熱される。いくつかの実施形態では、反応は、最終温度で150分~540分の時間保持される。いくつかの実施形態では、反応は、最終温度で210分~480分の時間保持される。いくつかの実施形態では、反応は、最終温度で270分~450分の時間保持される。いくつかの実施形態では、反応は、最終温度で300分~420分の時間保持される。いくつかの実施形態では、反応は、最終温度で330分~390分の時間保持される。いくつかの実施形態では、反応物は、加熱の完了後にイソプロパノールを用いて希釈される。いくつかの実施形態では、固体生成物は、濾過によって収集される。いくつかの実施形態では、形成される固体生成物は、遠心分離によって収集される。いくつかの実施形態では、固体生成物は、イソプロパノールを用いてすすがれ、濾過又は遠心分離を用いて収集される。いくつかの実施形態では、イソプロパノールを用いるすすぎ及び収集ステップは、合計2サイクルにわたって繰り返される。いくつかの実施形態では、イソプロパノールを用いるすすぎ及び収集ステップは、合計2サイクル以上にわたって繰り返される。いくつかの実施形態では、固体生成物は、収集後に乾燥される。いくつかの実施形態では、固体生成物は、収集後に140℃以下で乾燥される。いくつかの実施形態では、固体生成物は、収集後に120℃以下で乾燥される。いくつかの実施形態では、固体生成物は、収集後に100℃以下で乾燥される。いくつかの実施形態では、固体生成物は、青緑色又はターコイズ色の外観を有する。
【0056】
いくつかの実施形態では、テレフタル酸銅(II)と過剰のエチレングリコールとの間の反応からの生成物(「テレフタレート/グリコール生成物」)は、マレエートコポリマーと更に反応する。いくつかの実施形態では、500g未満のテレフタレート/グリコール生成物が使用される。いくつかの実施形態では、200g未満のテレフタレート/グリコール生成物が使用される。いくつかの実施形態では、150g未満のテレフタレート/グリコール生成物が使用される。
【0057】
いくつかの実施形態では、銅(II)供給源とテレフタレート/グリコール生成物とは、溶媒の不在下で反応する。いくつかの実施形態では、銅(II)供給源とテレフタレート/グリコール生成物とは、最初は固体として反応する。いくつかの実施形態では、銅(II)供給源とテレフタレート/グリコール生成物とは、溶融状態で反応する。
【0058】
いくつかの実施形態では、銅(II)供給源とテレフタレート/グリコール生成物との混合物は、150℃~180℃の最終温度まで加熱される。いくつかの実施形態では、混合物は、160℃~180℃の最終温度まで加熱される。いくつかの実施形態では、混合物は、165℃~180℃の最終温度まで加熱される。いくつかの実施形態では、混合物は、約170℃の最終温度まで加熱される。いくつかの実施形態では、混合物は、170℃±5℃の最終温度まで加熱される。
【0059】
いくつかの実施形態では、銅(II)供給源とテレフタレート/グリコール生成物との反応混合物は、最終温度で30分~240分の時間保持される。いくつかの実施形態では、反応は、最終温度で60分~210分の時間保持される。いくつかの実施形態では、反応は、最終温度で60分~210分の時間保持される。いくつかの実施形態では、反応は、最終温度で75分~180分の時間保持される。いくつかの実施形態では、反応は、最終温度で90分~150分の時間保持される。いくつかの実施形態では、反応は、最終温度で105分~135分の時間保持される。いくつかの実施形態では、反応は、最終温度で110分~130分の時間保持される。
【0060】
前述の実施形態のいずれか1つに記載の材料を含む組成物も提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、樹脂粉末、顆粒、又はペレットの形態にある。いくつかの実施形態では、組成物は、マレエート/アルファオレフィンコポリマーでも、テレフタレート/エチレングリコールコポリマーでもないポリマーを更に含む。いくつかの実施形態では、ポリマーは、プラスチックである。いくつかの実施形態では、プラスチックは、ポリエステル、ポリエチレン、及びポリプロピレンから選択される。
【0061】
前述の実施形態のいずれか1つに記載の材料を含む製造物品も提供される。いくつかの実施形態では、製造物品は、繊維である。いくつかの実施形態では、製造物品は、織布又は不織布繊維である。いくつかの実施形態では、製造物品は、シートである。いくつかの実施形態では、製造物品は、フィルムである。
【0062】
定義
別段の定めがない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で言及される全ての刊行物及び特許は、参照により組み込まれる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「a」及び「an」という冠詞は、冠詞の目的語の1つ又は複数(例えば、少なくとも1つ)を指し得る。
【0064】
本明細書で使用される場合、「約」は、一般に、測定の性質又は精度を考慮した測定量に対する許容可能な誤差の程度を指す。例示的な誤差の程度は、所与の値又は値の範囲の5%以内である。
【0065】
1つ以上の特徴を「含む」として本明細書に記載される実施形態は、このような特徴「からなる」及び/又は「から本質的になる」に対応する実施形態の開示ともみなされ得る。
【0066】
濃度、量、体積、パーセンテージ、及び他の数値は、本明細書において、範囲形式で表され得る。このような範囲形式が単に便宜上及び簡潔化のために使用され、範囲の限定として明示的に列挙された数値だけでなく、各数値及びサブ範囲が明示的に列挙されているかのように、その範囲内に包含された全ての個々の数値又はサブ範囲を含むように柔軟に解釈されるべきであることも理解されたい。
【0067】
本明細書で使用される場合、「アルファオレフィン」という用語は、単一の末端オレフィンを含有する炭化水素を指す。したがって、アルファオレフィンは、構造断片「H2C=CH-」を含有する。いくつかの実施形態では、アルファオレフィンは、直鎖アルファオレフィンである。いくつかの実施形態では、アルファオレフィンは、12個以下の炭素を有する。いくつかの実施形態では、アルファオレフィンは、10個以下の炭素を有する。いくつかの実施形態では、アルファオレフィンは、8個以下の炭素を有する。いくつかの実施形態では、アルファオレフィンは、6個以下の炭素を有する。いくつかの実施形態では、アルファオレフィンは、4個以下の炭素を有する。いくつかの実施形態では、アルファオレフィンは、3個以下の炭素を有する。いくつかの実施形態では、アルファオレフィンは、エチレン及びプロピレンから選択される。
【0068】
本明細書で使用される場合、「抗菌物質」という用語は、微生物の存在を低減する材料を指す。いくつかの実施形態では、抗菌物質は、微生物を殺すのに有効である。いくつかの実施形態では、抗菌物質は、微生物の拡散を低減させるのに有効である。いくつかの実施形態では、抗菌物質は、微生物の生存能力を低減させるのに有効である。いくつかの実施形態では、抗菌物質は、1つ以上の種類の細菌に対して有効である。いくつかの実施形態では、抗菌物質は、1つ以上の種類のウイルスに対して有効である。いくつかの実施形態では、抗菌物質は、1つ以上の種類の原生動物に対して有効である。いくつかの実施形態では、抗菌物質は、1つ以上の種類の真菌に対して有効である。
【0069】
本明細書で使用される場合、「コポリマー」という用語は、2つ以上の非同一モノマーを含むポリマーを指す。したがって、本用語は、2つ以上の種類のオレフィンから誘導されるポリオレフィンを含む。単なる例として、エチレン及びプロピレンの重合からの生成物が、コポリマーの定義に含まれる。ブロックコポリマーも、コポリマーの定義に含まれる。
【0070】
本明細書で使用される場合、「マレエート」という用語は、マレイン酸及び無水マレイン酸、並びにマレイン酸及び/又は無水マレイン酸から誘導された化合物の両方を含むように使用され、アルファオレフィンと、マレイン酸又は無水マレイン酸のいずれかとの反応によって形成されたコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
本明細書で使用される場合、金属-有機骨格(「MOF」)という用語は、金属イオン及び/又は金属クラスター、並びに多重配位有機分子を含む材料を指す。いくつかの実施形態では、MOFは、一次元配位ポリマーを形成する。いくつかの実施形態では、MOFは、二次元配位ポリマーを形成する。いくつかの実施形態では、MOFは、三次元配位ポリマーを形成する。いくつかの実施形態では、配位ポリマーは、多重配位有機分子と空間内に交互に存在する金属イオン、又はクラスターから構成される。いくつかの実施形態では、金属と有機分子との間の配位の性質は、イオン性である。
【0072】
本明細書で使用される場合
、「ポリエチレンテレフタレート」という用語は、ポリエステルエチレンテレフタレートの代替呼称であり、「PET」は頭字語である。テレフタル酸を参照する場合、「TPA」は頭字語である。金属テレフタレートを指す場合、頭字語は、「TPA」を使用する。例えば、テレフタル酸銅(II)は、Cu-TPAとなる。
【0073】
本明細書で使用される場合、「EG」は、エチレングリコールを指す。本明細書で使用される場合、「IPA」は、イソプロパノールを指す。
【0074】
本明細書で使用される場合、m-PPは、マレエートとプロピレンとのコポリマーを指す。
【0075】
本明細書で使用される場合、Cu-m-PPは、銅(II)及びマレエートとプロピレンとのコポリマーを含む材料を指す。
【0076】
本明細書で使用される場合、「PP」は、ポリプロピレンを指す。
【0077】
本明細書で使用される場合、「Cu-TP-m-PP」は、実施例2に記載されるような、銅(II)エチレングリコールテレフタレートエステル及び無水マレイン酸-グラフト化ポリプロピレン材料を指す。
【0078】
本明細書で使用される場合、「TCID50」は、組織培養感染用量の中央値を指す。
【0079】
金属-有機骨格(MOF)
現在の技術は、単純な分散によってナノ又はマイクロ銅粒子をプラスチックに組み込むことである。本発明は、銅をMOF構造内に捕捉し、このような構造において銅をイオン形態で保持するか、又はそれを個々の原子としてプラスチックに放出するかのいずれかによって、銅をプラスチックに組み込む。これらのMOFでは、銅は化学的に結合され、組み込まれた銅のサイズは、現在の技術が説明するよりも1,000倍小さく、はるかにより均一に分散されている。マイクロ銅及びナノ銅は、高分解能電子顕微鏡によって見られ得るが、原子銅及びイオン銅は、均一な分散体として可視である。銅はMOFの化学構造内で捕捉され、化学的に結合され、周囲の環境に浸出する可能性が低い。
【0080】
銅イオンを含むMOFが提供される。
【0081】
銅イオンを含むMOFであって、銅イオンが、アルファオレフィンとマレイン酸との交互コポリマー(「ポリ[アルファオレフィン-alt-マレイン酸]」)からのカルボキシル基と、テレフタレートからのカルボキシル基との間で錯体を形成している、MOFも提供される(1a)。例として、R=Hの場合、ポリマーは、ポリ[エチレン-alt-マレイン酸]であり、R=CH3の場合、ポリマーは、ポリ[プロピレン-alt-マレイン酸]であり、R=Phの場合、ポリマーは、ポリ[スチレン-alt-マレイン酸]である。インデックス「n」は、材料全体を通して均一である必要がない整数を表す。本開示は、(1a)及び全体において示されるポリマーの全てのサイズ、平均分子量、及び多分散性を包含することが意図される。
【0082】
以下の(1a)及び本開示全体におけるカルボン酸(-COOH)も、部分的に又は完全にのいずれかで、脱プロトン化状態(-COO
-)において存在し得ることが当業者には理解されるであろう。本開示は、他に明示的に示されていない限り、(1a)及び全体におけるカルボン酸の全てのプロトン化状態を包含することが意図される。
【化1】
【0083】
銅イオンを含むMOFであって、銅イオンが、アルファオレフィンとマレイン酸とのグラフトコポリマー(「ポリ(アルファオレフィン)-graft-マレイン酸」)からのカルボキシル基と、テレフタレート(1b)からのカルボキシル基との間で錯体を形成している、MOFも提供される。例として、R=Hの場合、ポリマーは、ポリエチレン-graft-マレイン酸であり、R=CH3の場合、ポリマーは、ポリプロピレン-graft-マレイン酸であり、R=Phの場合、ポリマーは、ポリスチレン-graft-マレイン酸ある。
【0084】
グラフトコポリマーの性質に起因して、2つの化学的に非等価なカルボン酸が任意のマレイン酸モノマーに存在することが当業者には理解されるであろう:(i)ポリマー骨格に接続された-CH-基に直接結合したカルボン酸、及び(ii)介在する-CH
2-基を含有するカルボン酸。本開示は、任意の所与のモノマーにおいて、ポリマー全体にわたって均一、又は各モノマーにおいてランダムのいずれかで、カルボン酸のいずれかの脱プロトン化及びCu
2+中心への配位を想定する。単純化及び簡潔化のために、カルボン酸(i)のみが脱プロトン化され、(1b)及び連続式中のCu
2+中心に配位されるように示される。更に、インデックス「m」及び「n」は、同一であり得るか、又は異なり得、材料のバルク試料を通して又は単一のポリマーストランドを通してのいずれにおいても均一である必要がない整数を表す。
【化2】
【0085】
銅イオンを含むMOFであって、銅イオンが、ポリ[アルファオレフィン-alt-マレイン酸]からのカルボキシル基と、テレフタレートエチレングリコールエステルからのカルボキシル基との間で錯体を形成している、MOFも提供される。任意選択的に、銅イオンはまた、隣接するポリ[アルファオレフィン-alt-マレイン酸]からのカルボキシル基と、テレフタレートエチレングリコールエステル(2a)のヒドロキシル又はアルコキシド基との間で錯体を形成する。(2a)及び他の場所における脱プロトン化アルコキシドとして単純化及び簡潔化のために示されるヒドロキシルは、中性、プロトン化、ヒドロキシルとしても存在し得ることを理解されたい。この場合、媒体からの対イオン(反応混合物からのものか、又は意図的に材料に添加されたもののいずれか)は、電荷中性を満たし得る。本開示は、他に明示的に示されていない限り、(2a)及び全体におけるヒドロキシルの全てのプロトン化状態を包含することが意図される。
【化3】
【0086】
銅イオンを含むMOFであって、銅イオンが、ポリ(アルファオレフィン)-graft-マレイン酸からのカルボキシル基と、テレフタレートエチレングリコールエステルからのカルボキシル基との間で錯体を形成している、MOFも提供される。任意選択的に、銅イオンはまた、隣接するポリ(アルファオレフィン)-graft-マレイン酸からのカルボキシル基と、テレフタレートエチレングリコールエステルのヒドロキシル又はアルコキシド基との間で錯体を形成する(2b)。
【化4】
【0087】
銅イオンを含むMOFであって、銅イオンが、ポリ[アルファオレフィン-alt-マレイン酸]からのカルボキシル基と、テレフタレートエチレングリコールエステルからのヒドロキシル又はアルコキシド基との間で錯体を形成している、MOFも提供される(3a)。
【化5】
【0088】
銅イオンを含むMOFであって、銅イオンが、ポリ(アルファオレフィン)-graft-マレイン酸からのカルボキシル基と、テレフタレートエチレングリコールエステルからのヒドロキシル又はアルコキシド基との間で錯体を形成している、MOFも提供される(3b)。
【化6】
【0089】
銅イオンを含むMOFであって、銅イオンが、ポリ[アルファオレフィン-alt-マレイン酸]の隣接するストランドからの2つのカルボキシル基の間で錯体を形成している、MOFも提供される(4a)。
【化7】
【0090】
銅イオンを含むMOFであって、銅イオンが、ポリ(アルファオレフィン)-graft-マレイン酸の隣接するストランドからの2つのカルボキシル基の間で錯体を形成している、MOFも提供される(4b)。
【化8】
【0091】
銅イオンを含むMOFであって、銅イオンが、ポリ[アルファオレフィン-alt-マレイン酸]からのカルボキシル基と、4,4’-((エタン-1,2-ジイルビス(オキシ))ビス(カルボニル))ジ安息香酸(「エチレングリコールジエステル」)との間で錯体を形成している(5a)。テレフタル酸のエチレングリコールジエステルは、限定量のエチレングリコールを過剰のテレフタル酸と、フィッシャーエステル化条件下で反応させることによって、又は当該技術分野で既知の他のエステル化方法を使用することによって得られ得る。
【化9】
【0092】
銅イオンを含むMOFであって、銅イオンが、ポリ(アルファオレフィン)-graft-マレイン酸からのカルボキシル基と、4,4’-((エタン-1,2-ジイルビス(オキシ))ビス(カルボニル))ジ安息香酸(「エチレングリコールジエステル」)との間で錯体を形成している、MOFも提供される(5b)。テレフタル酸のエチレングリコールジエステルは、限定された量のエチレングリコールを過剰のテレフタル酸と、フィッシャーエステル化条件下で反応させることによって、又は当該技術分野で既知の他のエステル化方法を使用することによって得られ得る。
【化10】
【0093】
本明細書に開示される材料は、適切な銅(II)供給源と、マレエートとアルファオレフィンとのコポリマーとの混合によって得られ得る。材料は、本明細書に記載される実施形態によって包含される手順によって得られ得る。材料は、以下に記載される実施例によって開示されるものと類似の手順によって得られ得る。
【0094】
マレエートは、マレイン酸又は無水マレイン酸のいずれかであり得る。無水マレイン酸をアルファオレフィンと反応させることは、もともと無水物官能基を含み得ることを当業者は理解するであろう。これらの無水物官能基は、重合反応条件下で自然に加水分解し得、二塩基酸官能基を直接提供する。代替的に、重合反応の生成物中に存在する無水物官能基は、水分、水、又はアルカリ性水を用いてポリマーを処理することによって意図的に加水分解され得る。代替的に、これらの無水物官能基は、水酸化銅(II)又は酸化銅(II)と反応して、二塩基酸官能基を提供し得る。これらの反応は、周囲の水分の存在下で実施され得るか、又は水の存在下で実施され得る。
【0095】
前述の実施形態のいずれか1つでは、MOFは、銅原子を更に含み得る。
【0096】
MOFは、配合物を調整するための任意のマスターバッチ材料に組み込まれ得る。前述の実施形態のいずれか1つに記載のMOFを含む樹脂粉末、顆粒、又はペレットが提供される。いくつかの実施形態では、樹脂粉末、顆粒、又はペレットは、抗菌物質である。いくつかの実施形態では、MOFを含むプラスチックは、ダイを通して押し出され、短い細片に切断され、急速に冷却される。更なる実施形態では、細片は、それらのサイズ及び/又は形状を変更するように更に処理され得る。
【0097】
前述の実施形態のいずれか1つに記載のMOFを含む繊維が提供される。いくつかの実施形態では、繊維は、抗菌物質である。更なる実施形態では、繊維は、織布又は不織布である。プラスチックから繊維を作製するための任意の方法が、前述の実施形態のいずれか1つに記載のMOFを含む繊維を作製するために用いられ得る。いくつかの実施形態では、繊維は、ダイを通して溶融物から押し出される。
【0098】
前述の実施形態のいずれか1つに記載のMOFを含むシートが提供される。いくつかの実施形態では、シートは、抗菌物質である。プラスチックシートを作製するための任意の方法が、前述の実施形態のいずれか1つに記載のMOFを含むシートを作製するために用いられ得る。いくつかの実施形態では、シートは、織布又は不織布である。更なる実施形態では、シートは、不織布であり、一緒に結合された繊維を含む。なお更なる実施形態では、一緒に結合された繊維は、同じ長さを有し得るか、又は異なる長さを有し得るか、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0099】
ポリマーとブレンドされた、前述の実施形態のいずれか1つに記載のMOFを含む組成物が提供される。
【0100】
プラスチックとブレンドされた、前述の実施形態のいずれか1つに記載のMOFを含む組成物が提供される。プラスチックをブレンドするための任意の方法が、プラスチックとブレンドされた、前述の実施形態のいずれか1つに記載のMOFを含む組成物を作製するために用いられ得る。いくつかの実施形態では、プラスチックブレンドは、高剪断スクリューミキサ又は押出機内で行われる。いくつかの実施形態では、プラスチックは、ポリエステル、ポリエチレン、又はポリプロピレンである。更なる実施形態では、組成物は、抗菌物質である。
【0101】
MOFを調製するためのプロセス
銅イオンを含むMOFを調製するためのプロセスであって、当該プロセスが、テレフタル酸銅(II)と、無水マレイン酸-グラフト化ポリプロピレン又は無水マレイン酸-グラフト化ポリエチレンとを反応させることを含む、プロセスが提供される。
【0102】
いくつかの実施形態では、テレフタル酸銅(II)と無水マレイン酸-グラフト化ポリプロピレンとが反応して、(1b)を形成する。
【0103】
銅イオンを含むMOFを調製するためのプロセスであって、当該プロセスが、テレフタル酸銅(II)と、ポリ[プロピレン-alt-無水マレイン酸]又はポリ[エチレン-alt-無水マレイン酸]とを反応させることを含む、プロセスが提供される。
【0104】
いくつかの実施形態では、テレフタル酸銅(II)とポリ[プロピレン-alt-無水マレイン酸]とが反応して、(1a)を形成する。
【0105】
銅イオンを含むMOFを調製するためのプロセスであって、当該プロセスが、テレフタル酸銅(II)エステルと、無水マレイン酸-グラフト化ポリプロピレン又は無水マレイン酸-グラフト化ポリエチレンとを反応させることを含む、プロセスが提供される。いくつかの実施形態では、テレフタル酸銅(II)エステルは、テレフタル酸銅(II)をグリコールと反応させることによって調製される。更なる実施形態では、グリコールは、エチレングリコール又はプロピレングリコールである。
【0106】
銅イオンを含むMOFを調製するためのプロセスであって、当該プロセスが、テレフタル酸銅(II)エステルと、ポリ[プロピレン-alt-無水マレイン酸]又はポリ[エチレン-alt-無水マレイン酸]とを反応させることを含む、プロセスが提供される。いくつかの実施形態では、テレフタル酸銅(II)エステルは、テレフタル酸銅(II)をグリコールと反応させることによって調製される。更なる実施形態では、グリコールは、エチレングリコール又はプロピレングリコールである。
【0107】
いくつかの実施形態では、テレフタル酸銅(II)とエチレングリコールとが反応して、以下の銅エチレングリコールテレフタレートエステル(銅ポリエチレンテレフタレート)(5)を形成する。
【化11】
【0108】
いくつかの実施形態では、銅エチレングリコールテレフタレートエステルと無水マレイン酸-グラフト化ポリプロピレンとが反応して、(2b)又は(3b)又はこれらの混合物を形成する。
【0109】
いくつかの実施形態では、銅エチレングリコールテレフタレートエステルとポリ[プロピレン-alt-無水マレイン酸]が反応して、(2a)又は(3a)又はこれらの混合物を形成する。
【0110】
銅イオンを含むMOFを調製するためのプロセスであって、当該プロセスが、酸化銅(II)と、無水マレイン酸-グラフト化ポリプロピレン又は無水マレイン酸-グラフト化ポリエチレンとを反応させることを含む、プロセスが提供される。
【0111】
いくつかの実施形態では、酸化銅(II)と無水マレイン酸-グラフト化ポリエチレンとが反応して、(4b)を形成する。
【0112】
いくつかの実施形態では、酸化銅(II)とポリ[プロピレン-alt-無水マレイン酸]とが反応して、(4a)を形成する。
【0113】
銅イオンを含むMOFを調製するためのプロセスであって、当該プロセスが、水酸化銅(II)と、無水マレイン酸-グラフト化ポリプロピレン又は無水マレイン酸-グラフト化ポリエチレンとを反応させることを含む、プロセスが提供される。
【0114】
いくつかの実施形態では、水酸化銅(II)と無水マレイン酸-グラフト化ポリエチレンとが反応して、(4b)を形成する。
【0115】
いくつかの実施形態では、水酸化銅(II)とポリ[プロピレン-alt-無水マレイン酸]とが反応して、(4a)を形成する。
【実施例】
【0116】
実施例1:水酸化銅(II)及び無水マレイン酸-グラフト化ポリプロピレン
水酸化銅(II)粉末(Cu(OH)2)を、粉砕された無水マレイン酸-グラフト化ポリプロピレン粉末(m-PP)(Sigma-Aldrich、St.Louis、Missouri、製品番号427845)と、0.77gのCu(OH)2:100gのm-PPの比で物理的に混合して、公称0.5重量%のCu混合物を作成し、170℃まで2時間加熱した。0.5~1.5gのCu(OH)2:100gのm-PPの比が最適であることが判明し、0~3.0gのCu(OH)2:100gのm-PPの比が機能することが判明した。次いで、溶融混合物を急速にクエンチして、固体塊を形成した。次いで、この塊を、ボールミルを使用して10分間粉砕し、再溶融し、2回再固化し、合計3回の溶融-固化サイクルを行った。無水マレイン酸-グラフト化ポリプロピレンを溶融し、水酸化銅(II)を酸化銅(II)に変化させることなく、Cu(OH)2をマレイン酸基と反応させることが重要であった。無水マレイン酸-グラフト化ポリプロピレンの融点は、約156℃であると同時に、Cu(OH)2は、約185℃でCuOに分解する。
【0117】
いくつかの試行では、アンモニア中のCu(OH)2を、溶液として銅をm-PPに導入する手段として使用した。過剰の水酸化銅(II)を高濃度水酸化アンモニウム溶液(28~30%NH3ベース)に添加して、飽和溶液を作成した。溶液のアリコートをm-PPに混合し、次いで、混合物を上記のように処理した(溶融、粉砕など)。次いで、最終生成物中の銅濃度を測定して、液体溶液量とMOF中のCuの最終重量%との間の関係を確立した。MOF中のCuの最終重量%がわかると、必要に応じて液体:固体の比を調整して、MOF中の所望のCuの重量%を達成した。
【0118】
実施例2:銅(II)エチレングリコールテレフタレートエステル及び無水マレイン酸-グラフト化ポリプロピレン(「Cu-TP-m-PP」)
テレフタル酸銅(II)粉末は、米国特許第8,507,644号に教示されている方法を使用して生成され得るか、又は様々なベンダーから購入され得る。
【0119】
テレフタル酸銅(II)を精製するために、最初に25メッシュ(707μm)に粉砕し、過剰のエチレングリコール(EG)(Sigma-Aldrich、St.Louis、Missouri、製品番号102466)と混合して、黒色スラリーを形成した。スラリーを、空気中で180℃まで6時間加熱し、青緑色/ターコイズ色の液体(銅エチレングリコールテレフタレートエステル)を形成した。液体をイソプロパノール(IPA)中で懸濁し、100メッシュふるい(149μm)を通して濾過して、未反応の固体を除去した。銅エチレングリコールテレフタレートエステル-IPA混合物を遠心分離して、IPA(加えて過剰のエチレングリコール)を銅エチレングリコールテレフタレートエステルから分離した。追加のIPAをエステルと混合し、EGが除去されるまで、必要に応じてプロセスを繰り返した。湿潤銅エチレングリコールテレフタレートエステルを120℃で乾燥させた。得られた青緑色/ターコイズ色の粉末を100メッシュのふるいにかけた。
【0120】
米国特許第2,465,319号は、グリコールをテレフタル酸と共に加熱することによって、グリコールエステルを形成する方法を記載している。この特許取得済みの方法は、蒸留によって過剰のグリコールを除去し、更にグリコールの沸点(Sigma-Aldrich、St.Louis、MissouriによるEGの場合は197℃)を超えて加熱する。高純度のテレフタル酸の融点は、300℃超である(Sigma-Aldrich、St.Louis、Missouriによる)ことに留意されたい。現在記載されている方法は、TPAをCuTPAで置換する。Cuの酸化を防止するために、より低温のプロセスが望ましいと感じられたため、IPA法が開発された。EGは、IPAに可溶性であるが、Cuエチレングリコールテレフタレートエステルは、可溶性ではない。混合及び遠心分離すると、上層にIPA及びEG、下層にCuエチレングリコールテレフタレートエステルを有する二相混合物が形成される。
【0121】
次いで、乾燥したCuエチレングリコールテレフタレートエステルをm-PP粉末に添加し、実施例1と同様に処理した。
【0122】
実施例3:抗ウイルス活性
抗ウイルス活性を、Cu-PPディスクへの曝露後にウイルスによって死滅した細胞の蛍光測定値に基づいて、ウイルス量の尺度として組織の透明度を視覚的なスコアリングを使用して、組織培養感染性アッセイを用いて決定した。結果を
図1に示す。
【0123】
本明細書で言及される全ての刊行物及び特許は、参照により組み込まれる。記載された主題の様々な修正及び変形は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本発明は、特定の実施形態に関連して記載されているが、特許請求される本発明は、これらの実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、本発明を実施するための様々な修正は、当業者には明らかであり、以下の特許請求の範囲の範疇であることが意図される。
【国際調査報告】