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特表2024-517543負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池
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  • 特表-負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20240416BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240416BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240416BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/36 E
H01M4/48
H01M4/58
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553265
(86)(22)【出願日】2023-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 CN2023075339
(87)【国際公開番号】W WO2023202189
(87)【国際公開日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】202210432099.7
(32)【優先日】2022-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(71)【出願人】
【識別番号】521520935
【氏名又は名称】惠州市鼎元新能源科技有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523330503
【氏名又は名称】惠州市貝特瑞新材料科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】▲謝▼ ▲維▼
(72)【発明者】
【氏名】▲パン▼ 春雷
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼ 志▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】任 建国
(72)【発明者】
【氏名】▲賀▼ 雪琴
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA17
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB11
5H050CB29
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA06
5H050HA07
5H050HA09
5H050HA14
5H050HA15
5H050HA17
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】本出願は、負極材料の技術分野に属し、特に負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池に関する。
【解決手段】本出願は、負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池に関し、前記負極材料は、シリコン基材料コアと、前記シリコン基材料コアの少なくとも一部の表面に被覆された第1被覆層とを含み、前記第1被覆層のうねり度yの範囲は、1≧y≧0.10であり、前記第1被覆層のうねり度yは、式(I)で表され、
【数1】
そのうち、Rmaxは、前記第1被覆層の最大厚さ(nm)であり、Rminは、前記第1被覆層の最小厚さ(nm)であり、D50は、前記負極材料のメジアン径(μm)であり、Cは、前記第1被覆層の前記負極材料における質量割合(%)である。本出願の負極材料は、優れた導電性、循環性能、倍率性能の特徴を有し、かつ不可逆膨張の発生を抑制することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン系材料のコアと、前記コアの少なくとも表面に被覆された第1被覆層とを含み、前記第1被覆層のうねり度yの範囲は、1≧y≧0.10であり、前記第1被覆層のうねり度yは、式(I)で表されることを特徴とする負極材料。
【数1】
(式(I)において、Rmaxは、前記第1被覆層の最大厚さ(nm)であり、Rminは、前記第1被覆層の最小厚さ(nm)であり、D50は、前記負極材料のメジアン径(μm)であり、Cは、前記第1被覆層の前記負極材料における質量割合(%)である。)
【請求項2】
以下の特徴(1)~(7)のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
(1)前記シリコン系材料のコアは、結晶シリコン及びシリサイドを含み、前記シリサイドは、SiOx、シリカ、シリケート及びシリコン合金のうちの少なくとも一種を含み、そのうち、1.5≧x≧0.5である。
(2)前記シリコン系材料のコアは、結晶シリコン及びシリサイドを含み、前記シリサイドは、SiOx、シリカ、シリケート及びシリコン合金のうちの少なくとも一種を含み、そのうち、1.5≧x≧0.5であり、前記結晶シリコンの結晶粒径DSiは、2.5nm~15nmである。
(3)前記シリコン系材料のコアは、結晶シリコン及びシリサイドを含み、前記シリサイドは、SiOx、シリカ、シリケート及びシリコン合金のうちの少なくとも一種を含み、そのうち、1.5≧x≧0.5であり、前記結晶シリコンの結晶粒径は、DSiであり、前記シリケートの結晶粒径は、Dシリケートであり、Dシリケート/DSi=0.3~5.0である。
(4)前記シリコン系材料のコアは、結晶シリコン及びシリサイドを含み、前記シリサイドは、SiOx、シリカ、シリケート及びシリコン合金のうちの少なくとも一種を含み、そのうち、1.5≧x≧0.5であり、前記結晶シリコンの結晶粒径は、DSiであり、前記シリコン合金の結晶粒径は、Dシリコン合金であり、Dシリコン合金/DSi=0~2.0である。
(5)前記シリコン系材料のコアは、結晶シリコン及びシリサイドを含み、前記シリサイドは、SiOx、シリカ、シリケート及びシリコン合金のうちの少なくとも一種を含み、そのうち、1.5≧x≧0.5であり、前記シリコン合金は、シリコン鉄合金、シリコン銀合金、シリコンニッケル合金、シリコンコバルト合金、シリコンマンガン合金、シリコンインジウム合金、シリコンロジウム合金、シリコンルテニウム合金、シリコンイリジウム合金、シリコン白金合金、シリコンチタン合金及びシリコンモリブデン合金のうちの少なくとも一種を含む。
(6)前記シリコン系材料のコアは、結晶シリコン及びシリサイドを含み、前記シリサイドは、SiOx、シリカ、シリケート及びシリコン合金のうちの少なくとも一種を含み、そのうち、1.5≧x≧0.5であり、前記シリケートのカチオンは、金属元素を含む。
(7)前記シリコン系材料のコアのメジアン径は、1μm~13μmである。
【請求項3】
以下の特徴(1)~(8)のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
(1)前記第1被覆層は、炭素層を含み、前記炭素層の材質は、アモルファスカーボン、グラファイト、ソフトカーボン及びハードカーボンのうちの少なくとも一種を含む。
(2)前記第1被覆層は、有機ポリマー材料層を含み、前記有機ポリマー材料層の材質は、ポリアミン系化合物、ポリエステル系化合物及びポリエン系化合物のうちの少なくとも一種を含む。
(3)前記第1被覆層の表面形態は、花弁状、ストライプ状、テーパ状及び粒子状のうちの少なくとも一種を含む。
(4)前記第1被覆層の厚さは、10nm~500nmである。
(5)前記第1被覆層は、空隙を有し、前記空隙の孔径は、10nm~60nmである。
(6)前記第1被覆層の空隙率は、0.5%~15%である。
(7)前記シリコン系材料のコアは、第1ドーピング元素を含み、前記第1ドーピング元素は、リチウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、白金、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、インジウム、銀、金、チタン、モリブデン、アルミニウム、パラジウム、カルシウム、イリジウム、クロム、ガリウム、ロジウム及びルテニウムのうちの少なくとも一種を含む。
(8)前記第1被覆層は、第2ドーピング元素を含み、前記第2ドーピング元素は、窒素、フッ素、リン、硫黄及びホウ素のうちの少なくとも一種を含む。
【請求項4】
前記シリコン系材料のコアと前記第1被覆層との間には、さらに第2被覆層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項5】
前記第2被覆層は、以下の特徴(1)~(3)のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項4に記載の負極材料。
(1)前記第2被覆層の材質は、シリコン合金を含む。
(2)前記第2被覆層の材質は、シリコン合金を含み、前記シリコン合金は、シリコン鉄合金、シリコン銀合金、シリコンニッケル合金、シリコンコバルト合金、シリコンマンガン合金、シリコンインジウム合金、シリコンロジウム合金、シリコンルテニウム合金、シリコンイリジウム合金、シリコン白金合金、シリコンチタン合金及びシリコンモリブデン合金のうちの少なくとも一種を含む。
(3)前記第2被覆層の厚さは、0nm~10nm(0を除く)である。
【請求項6】
以下の特徴(1)~(5)のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
(1)前記負極材料のラマンスペクトルで測定したラマンイメージングにおいて、前記負極材料の1300cm-1~1400cm-1の最大ピーク強度I1と前記負極材料の1550cm-1~1650cm-1の最大ピーク強度I2との比は、0<I1/I2<3を満たし、かつ前記負極材料の480cm-1~540cm-1の最大ピーク強度I3と前記負極材料の1300cm-1~1400cm-1の最大ピーク強度I1との比は、1<I3/I1<4.5を満たす。
(2)前記負極材料のメジアン径D50は、1.5μm~15μmである。
(3)前記負極材料の炭素含有量は、0.5%~10%である。
(4)前記負極材料の粉末導電率は、0.1S/m~100S/mである。
(5)前記負極材料の比表面積は、0.8m2/g~10m2/gである。
【請求項7】
負極材料の製造方法であって、
有機炭素源、シリコン系材料及び有機溶媒を混合して前駆体を得るステップと、
前記前駆体を熱処理して負極材料を得るステップと、を含む。
【請求項8】
以下の特徴(1)~(7)のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
(1)前記有機炭素源は、アルケン、アルキン、アルカン、アルコール、カルボン酸、エステル、芳香環、ケトン及びエーテルのうちの少なくとも一種の有機物を含む。
(2)前記有機炭素源は、p-ジメチルビフェニル、ポリアクリル酸、フタロシアニン、ジフェニルエーテル、ポリビニルアセテート、ステアリン酸エチル及びドーパミンのうちの少なくとも一種を含む。
(3)前記有機炭素源は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、芳香環、アルキル基分岐鎖及びカルボニル基のうちの少なくとも一種を含有するニトリル類、アミン類、ニトロ化合物、硫化物、フッ化物、ホウ化物及びリン化物のうちの少なくとも一種の有機物を含む。
(4)前記有機炭素源は、5-クロロ-2-エトキシベンゼンボロン酸、フェニルスルフィド、ドーパミン及びフタロシアニンのうちの少なくとも一種を含む。
(5)前記有機炭素源は、有機ポリマー材料を含み、前記有機ポリマー材料は、ポリアミン系化合物、ポリエステル系化合物及びポリエン系化合物のうちの少なくとも一種を含む。
(6)前記有機炭素源は、金属錯体を含む。
(7)前記有機炭素源は、金属錯体を含み、前記金属錯体は、銅フタロシアニン、アルミニウムアセチルアセトナート、シヘキサチン及びコバルトイソプロポキシドのうちの少なくとも一種を含む。
【請求項9】
前記有機炭素源は、金属錯体を含み、前記金属錯体は、有機炭素材料と金属ソースとを錯体化することにより得られることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
以下の特徴(1)~(3)のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
(1)前記金属ソースは、リチウム源、マグネシウム源、ナトリウム源、銅源、鉄源、マンガン源、コバルト源、ニッケル源、インジウム源、銀源、金源、チタン源、モリブデン源、アルミニウム源、パラジウム源、カルシウム源、イリジウム源、白金源、ガリウム源、クロム源、ロジウム源及びルテニウム源のうちの少なくとも一種を含む。
(2)前記有機炭素材料は、アルコール、エーテル、芳香族化合物、ピロール、ピリジン、アルカン、ケトン、カルボン酸、ニトリル、有機アミン、ニトロ有機物、硫黄含有有機物及びリン含有有機物のうちの少なくとも一種を含む。
(3)前記金属ソースと前記有機炭素材料とのモル比は、(0~1):1(0を除く)である。
【請求項11】
以下の特徴(1)~(6)のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
(1)前記シリコン系材料は、Si、SiOx及びSiO2のうちの少なくとも一種を含み、そのうち、1.5≧x≧0.5である。
(2)前記シリコン系材料と有機炭素源との質量比は、1:(0.05~0.3)である。
(3)前記シリコン系材料と前記有機溶媒との質量比は、1:(1~2.5)である。
(4)前記有機溶媒は、炭酸ジメチル、テトラヒドロフラン、炭酸エステル、トルエン、ベンゼン、エチルエーテル、プロピレンオキシド、ケトン及びエチレングリコールジメチルエーテルのうちの少なくとも一種を含む。
(5)前記有機炭素源、シリコン系材料及び有機溶媒の混合は、撹拌条件下で行う。
(6)前記有機炭素源、シリコン系材料及び有機溶媒の混合時間は、3h~24hである。
【請求項12】
前記有機炭素源、シリコン系材料及び有機溶媒を混合した後に、混合した後の材料を蒸発結晶化するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項13】
以下の特徴(1)~(4)のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
(1)前記蒸発結晶の温度は、30℃~80℃である。
(2)前記蒸発結晶の時間は、3h~10hである。
(3)前記蒸発結晶は、第1保護雰囲気で行われる。
(4)前記蒸発結晶は、第1保護雰囲気で行われ、前記第1保護雰囲気は、アルゴンガス及び窒素ガスのうちの少なくとも一種を含む。
【請求項14】
以下の特徴(1)~(5)のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
(1)前記熱処理の温度は、400℃~1200℃である。
(2)前記熱処理の昇温速度は、1℃/min~5℃/minである。
(3)前記熱処理の保温時間は、3h~12hである。
(4)前記熱処理は、第2保護雰囲気で行われ、前記第2保護雰囲気は、アルゴンガスを含む。
(5)前記熱処理の圧力は、0.11 MPa~0.25 MPaである。
【請求項15】
リチウムイオン電池であって、請求項1~6のいずれか一項に記載の負極材料又は請求項7~14のいずれか一項に記載の方法で製造された負極材料を含む、ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年04月22日付で中国専利局に提出した、出願番号が2022104320997、発明の名称が「負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全ての内容を本出願に援用する。
本出願は、負極材料の技術分野に属し、特に負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン酸素材料は、リチウムイオン電池の負極材料として、主にいくつかの問題を解決する必要があり、そのうち、シリコン系材料自体の天然の欠点による膨張と低倍率等の問題を含み、シリコン酸素材料の膨張問題は、主に以下に起因することであり、シリコン酸素材料自体の大量のリチウム吸蔵が体積膨張を引き起こし、リチウムを放出・吸蔵することが巨大な体積変化差を引き起こし、シリコン酸素材料の表面のSEI膜を破壊し、活性表面を再び電解液に露出させ、それにより電解液の分解消耗をもたらし、SEIが再蒸着し、極片を徐々に膨張させる。倍率問題は、リチウムイオンがシリコン酸素系内部に入るためであり、内部移動効率がグラファイトの層間移行よりはるかに低く、同時にシリコン酸素系にリチウムが吸蔵され、内部でマイグレーションし、リチウム含有量が変化することにより、結晶相が変化するとともに、リチウムの拡散能力が低くになる。
【0003】
したがって、現在は低膨張及び高倍率性能を有する負極材料を急激に必要とする実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願は、負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池を提供することを目的とする。本出願の負極材料は、膨張を効果的に抑制することができるとともに、リチウム吸蔵効率及びリチウム吸蔵深さを向上させることができ、それにより負極材料の粉体導電性、倍率性能及び循環性能を大幅に向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様において、本出願の実施例は、負極材料を提供し、前記負極材料は、シリコン系材料のコアと、前記コアの少なくとも表面に被覆された第1被覆層とを含み、前記第1被覆層のうねり度yの範囲は、1≧y≧0.10であり、前記第1被覆層のうねり度yは、式(I)で表され、
【数1】
式(I)において、Rmaxは、前記第1被覆層の最大厚さ(nm)であり、Rminは、前記第1被覆層の最小厚さ(nm)であり、D50は、前記負極材料のメジアン径(μm)であり、Cは、前記第1被覆層の前記負極材料における質量割合(%)である。
【0006】
いくつかの実施形態において、前記負極材料は、以下の特徴(1)~(7)のうちの少なくとも1つのを含む。
(1)前記シリコン系材料のコアは、結晶シリコン及びシリサイドを含み、前記シリサイドは、SiOx、シリカ、シリケート及びシリコン合金のうちの少なくとも一種を含み、そのうち、1.5≧x≧0.5である。
(2)前記シリコン系材料のコアは、結晶シリコン及びシリサイドを含み、前記シリサイドは、SiOx、シリカ、シリケート及びシリコン合金のうちの少なくとも一種を含み、そのうち、1.5≧x≧0.5であり、前記結晶シリコンの結晶粒径DSiは、2.5nm~15nmである。
(3)前記シリコン系材料のコアは、結晶シリコン及びシリサイドを含み、前記シリサイドは、SiOx、シリカ、シリケート及びシリコン合金のうちの少なくとも一種を含み、そのうち、1.5≧x≧0.5であり、前記結晶シリコンの結晶粒径は、DSiであり、前記シリケートの結晶粒径は、Dシリケートであり、Dシリケート/DSi=0.3~5.0である。
(4)前記シリコン系材料のコアは、結晶シリコン及びシリサイドを含み、前記シリサイドは、SiOx、シリカ、シリケート及びシリコン合金のうちの少なくとも一種を含み、そのうち、1.5≧x≧0.5であり、前記結晶シリコンの結晶粒径は、DSiであり、前記シリコン合金の結晶粒径は、Dシリコン合金であり、Dシリコン合金/DSi=0~2.0である。
(5)前記シリコン系材料のコアは、結晶シリコン及びシリサイドを含み、前記シリサイドは、SiOx、シリカ、シリケート及びシリコン合金のうちの少なくとも一種を含み、そのうち、1.5≧x≧0.5であり、前記シリコン合金は、シリコン鉄合金、シリコン銀合金、シリコンニッケル合金、シリコンコバルト合金、シリコンマンガン合金、シリコンインジウム合金、シリコンロジウム合金、シリコンルテニウム合金、シリコンイリジウム合金、シリコン白金合金、シリコンチタン合金及びシリコンモリブデン合金のうちの少なくとも一種を含む。
(6)前記シリコン系材料のコアは、結晶シリコン及びシリサイドを含み、前記シリサイドは、SiOx、シリカ、シリケート及びシリコン合金のうちの少なくとも一種を含み、そのうち、1.5≧x≧0.5であり、前記シリケートのカチオンは、金属元素を含む。
(7)前記シリコン系材料のコアのメジアン径は、1μm~13μmである。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記負極材料は、以下の(1)~(8)のうちの少なくとも1つの特徴を含む。
(1)前記第1被覆層は、炭素層を含み、前記炭素層の材質は、アモルファスカーボン、グラファイト、ソフトカーボン及びハードカーボンのうちの少なくとも一種を含む。
(2)前記有機ポリマー材料層の材質は、ポリアミン系化合物、ポリエステル系化合物及びポリエン系化合物のうちの少なくとも一種を含む。
(3)前記第1被覆層の表面形態は、花弁状、ストライプ状、テーパ状及び粒子状のうちの少なくとも一種を含む。
(4)前記第1被覆層の厚さは、10nm~500nmである。
(5)前記第1被覆層は、空隙を有し、前記空隙の孔径は、10nm~60nmである。
(6)前記第1被覆層の空隙率は、0.5%~15%である。
(7)前記シリコン系材料のコアは、第1ドーピング元素を含み、前記第1ドーピング元素は、リチウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、白金、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、インジウム、銀、金、チタン、モリブデン、アルミニウム、パラジウム、カルシウム、イリジウム、クロム、ガリウム、ロジウム及びルテニウムのうちの少なくとも一種を含む。
(8)前記第1被覆層は、第2ドーピング元素を含み、前記第2ドーピング元素は、窒素、フッ素、リン、硫黄及びホウ素のうちの少なくとも一種を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記シリコン系材料のコアと前記第1被覆層との間には、さらに第2被覆層が設けられている。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記第2被覆層は、以下の(1)~(3)のうちの少なくとも1つの特徴を含む。
(1)前記第2被覆層の材質は、シリコン合金を含む。
(2)前記第2被覆層の材質は、シリコン合金を含み、前記シリコン合金は、シリコン鉄合金、シリコン銀合金、シリコンニッケル合金、シリコンコバルト合金、シリコンマンガン合金、シリコンインジウム合金、シリコンロジウム合金、シリコンルテニウム合金、シリコンイリジウム合金、シリコン白金合金、シリコンチタン合金及びシリコンモリブデン合金のうちの少なくとも一種を含む。
(3)前記第2被覆層の厚さは、0nm~10nm(0を含まない)である。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記負極材料は、以下の(1)~(5)のうちの少なくとも1つの特徴を含む。
(1)前記負極材料のラマンスペクトルで測定したラマンイメージングにおいて、前記負極材料の1300cm-1~1400cm-1の最大ピーク強度I1と前記負極材料の1550cm-1~1650cm-1の最大ピーク強度I2との比は、0<I1/I2<3を満たし、かつ前記負極材料の480cm-1~540cm-1の最大ピーク強度I3と前記負極材料の1300cm-1~1400cm-1の最大ピーク強度I1との比は、1<I3/I1<4.5を満たす。
(2)前記負極材料のメジアン径D50は、1.5μm~15μmである。
(3)前記負極材料の炭素含有量は、0.5%~10%である。
(4)前記負極材料の粉末導電率は、0.1S/m~100S/mである。
(5)前記負極材料の比表面積は、0.8m2/g~10m2/gである。
【0011】
第2態様において、本出願の実施例は、負極材料の製造方法を提供し、
有機炭素源、シリコン系材料及び有機溶媒を混合して前駆体を得るステップと、
前記前駆体を熱処理して負極材料を得るステップと、を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記製造方法は、以下の(1)~(7)のうちの少なくとも1つの特徴を含む。
(1)前記有機炭素源は、アルケン、アルキン、アルカン、アルコール、カルボン酸、エステル、芳香環、ケトン及びエーテルのうちの少なくとも一種の有機物を含む。
(2)前記有機炭素源は、p-ジメチルビフェニル、ポリアクリル酸、フタロシアニン、ジフェニルエーテル、ポリビニルアセテート、ステアリン酸エチル及びドーパミンのうちの少なくとも一種を含む。
(3)前記有機炭素源は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、芳香環、アルキル基分岐鎖及びカルボニル基のうちの少なくとも一種を含有するニトリル類、アミン類、ニトロ化合物、硫化物、フッ化物、ホウ化物及びリン化物のうちの少なくとも一種の有機物を含む。
(4)前記有機炭素源は、5-クロロ-2-エトキシベンゼンボロン酸、フェニルスルフィド、ドーパミン及びフタロシアニンのうちの少なくとも一種を含む。
(5)前記有機炭素源は、有機ポリマー材料を含み、前記有機ポリマー材料は、ポリアミン系化合物、ポリエステル系化合物及びポリエン系化合物のうちの少なくとも一種を含む。
(6)前記有機炭素源は、金属錯体を含む。
(7)前記有機炭素源は、金属錯体を含み、前記金属錯体は、銅フタロシアニン、アルミニウムアセチルアセトナート、シヘキサチン及びコバルトイソプロポキシドのうちの少なくとも一種を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記有機炭素源は、金属錯体を含み、前記金属錯体は、有機炭素材料と金属ソースとを錯体化することにより得られる。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記方法は、以下の(1)~(3)のうちの少なくとも1つの特徴を含む。
(1)前記金属ソースは、リチウム源、マグネシウム源、ナトリウム源、銅源、鉄源、マンガン源、コバルト源、ニッケル源、インジウム源、銀源、金源、チタン源、モリブデン源、アルミニウム源、パラジウム源、カルシウム源、イリジウム源、白金源、ガリウム源、クロム源、ロジウム源及びルテニウム源のうちの少なくとも一種を含む。
(2)前記有機炭素材料は、アルコール、エーテル、芳香族化合物、ピロール、ピリジン、アルカン、ケトン、カルボン酸、ニトリル、有機アミン、ニトロ有機物、硫黄含有有機物及びリン含有有機物のうちの少なくとも一種を含む。
(3)前記金属ソースと前記有機炭素材料とのモル比は、(0~1):1(0を含まない)である。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記方法は、以下の(1)~(6)のうちの少なくとも1つの特徴を含む。
(1)前記シリコン系材料は、Si、SiOx及びSiO2のうちの少なくとも一種を含み、そのうち、1.5≧x≧0.5である。
(2)前記シリコン系材料と有機炭素源との質量比は、1:(0.05~0.3)である。
(3)前記シリコン系材料と前記有機溶媒との質量比は、1:(1~2.5)である。
(4)前記有機溶媒は、炭酸ジメチル、テトラヒドロフラン、炭酸エステル、トルエン、ベンゼン、エチルエーテル、プロピレンオキシド、ケトン、およびエチレングリコールジメチルエーテルの少なくとも一種を含む。
(5)前記有機炭素源、シリコン系材料及び有機溶媒の混合は、撹拌条件下で行う。
(6)前記有機炭素源、シリコン系材料及び有機溶媒の混合時間は、3h~24hである。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記有機炭素源、シリコン系材料及び有機溶媒は、混合した後に、混合した後の材料を蒸発結晶化するステップをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記方法は、以下の(1)~(4)のうちの少なくとも1つの特徴を含む。
(1)前記蒸発結晶の温度は、30℃~80℃である。
(2)前記蒸発結晶の時間は、3h~10hである。
(3)前記蒸発結晶は、第1保護雰囲気で行われる。
(4)前記蒸発結晶は、第1保護雰囲気で行われ、前記第1保護雰囲気は、アルゴンガス及び窒素ガスのうちの少なくとも一種を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記方法は、以下の(1)~(5)のうちの少なくとも1つの特徴を含む。
(1)前記熱処理の温度は、400℃~1200℃である。
(2)前記熱処理の昇温速度は、1℃/min~5℃/minである。
(3)前記熱処理の保温時間は、3h~12hである。
(4)前記熱処理は、第2保護雰囲気で行われ、前記第2保護雰囲気は、アルゴンガスを含む。
(5)前記熱処理の圧力は、0.11 MPa~0.25 MPaである。
【0019】
第3態様において、本出願の実施例は、リチウムイオン電池を提供し、前記リチウムイオン電池は、第1態様に記載の負極材料又は第2態様に記載の方法で製造された負極材料を含む。
【発明の効果】
【0020】
本出願は、従来の技術に比べて、以下の有益な効果を奏しうる。
本出願に係る負極材料の第1被覆層は、一定のうねり度を有し、第1被覆層における導電ネットワークが拡張可能な範囲及び空間を示し、負極材料が拡張及び収縮の過程において、スラリー又は極片に製造する時に、負極材料と導電剤との接触面積を増加させることができ、シリコン系材料のコアと導電剤の電子通路との接続を保持し、負極材料の導電性、循環性能及び倍率性能の向上に役立ち、かつSEI界面を安定化させることによって、粉化を減少させ、副反応の発生を低減し、不可逆膨張の発生を抑制する。
【0021】
本出願は、有機炭素源、シリコン系材料及び有機溶媒を混合する方式を採用して、有機炭素源を液相環境でシリコン系材料の表面に均一に蒸着させ、さらに熱処理を行って、コアのシリコン系材料の表面に一定のうねり度を有する第1被覆層を形成させ、上記一定のうねり度を有する第1被覆層は、第1被覆層における導電性ネットワークが拡張可能な範囲及び空間を示し、負極材料の拡張及び収縮の過程において、スラリー又は極片を製造する時に、負極材料と導電剤との接触面積を増加させ、それにより負極材料の導電性、循環性能及び倍率性能を効果的に向上させることができる。また、第1被覆層は、負極材料の膨張過程において、第1被覆層の影響範囲を保持することができ、それによりSEIの破壊を低減し、負極材料の膨張を抑制する。本出願の製造方法は、プロセスが簡単で、製品の一致性が高く、大規模生産に適する。単純な炭素材料被覆プロセスで形成された負極材料に比べて、本出願の負極材料は、より高い倍率性能を有し、プロセス過程が簡単であり、コストが低減する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本出願の実施例又は従来の技術の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下に実施例又は従来の技術の説明に必要な図面を簡単に紹介し、明らかに、以下に説明する図面は本出願のいくつかの実施例にすぎず、当業者にとって、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【0023】
図1】本出願に係る負極材料の製造フローチャートである。
図2】比較例1で製造された負極材料のEDSマップである。
図3】本出願の実施例1で製造された負極材料のEDSマップである。
図4】実施例1、2、3、4及び比較例2で製造された負極材料の炭素層のSEMマップである。
図5】実施例1で製造された負極材料のXRDチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本出願の技術的解決手段をよりよく理解するために、以下に図面を参照して本出願の実施例を詳細に説明する。
【0025】
説明される実施例は、本出願の一部の実施例にすぎず、全ての実施例ではないことを明確にすべきである。本出願における実施例に基づいて、当業者が創造的な労力を要さずに成し得る他の実施例は、いずれも本出願の保護範囲に属する。
【0026】
また、用語「第1」、「第2」は、単に目的を説明するために用いられ、相対的な重要性を指示するか又は暗示する或いは指示された技術的特徴の数を暗黙的に指摘すると理解してはいけない。これにより、「第1」、「第2」によって限定される特徴は、1つ以上の該特徴を明示的又は暗黙的に含むことができる。
【0027】
本出願を理解しやすくするために、本出願において特定用語は適切に定義される。本出願において、別途定義されない限り、本出願に使用される科学的用語及び技術用語は、本出願の当業者が一般的に理解する意味を有する。
【0028】
本出願は、負極材料を提供し、負極材料は、シリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコアの少なくとも一部の表面に被覆された第1被覆層とを含み、第1被覆層のうねり度yの範囲は、1≧y≧0.10であり、第1被覆層のうねり度yは、式(I)で表される。
【数2】
(I)
式(I)において、 yは、第1被覆層のうねり度であり、1≧y≧0.10であり、Rmaxは、第1被覆層の最大厚さ(nm)であり、Rminは、第1被覆層の最小厚さ(nm)であり、D50は、負極材料のメジアン径(μm)であり、Cは、第1被覆層の負極材料における質量割合(%)である。そのうち、最大厚さRmax=Dmin(第1被覆層被覆後)-Dmin(第1被覆層被覆前)、最小厚さRmin=Dmax(第1被覆層被覆後)-Dmax(第1被覆層被覆前)、Dmin及びDmaxは、それぞれ粒度試験における最小粒度及び最大粒度である。
【0029】
上記解決手段において、本出願の第1被覆層は、一定のうねり度を有し、第1被覆層における導電ネットワークが拡張可能な範囲及び空間を示し、負極材料が拡張及び収縮の過程において、スラリー又は極片に製造する時に、負極材料と導電剤との接触面積を増加させることができ、シリコン系材料のコアと導電剤の電子通路との接続を保持し、負極材料の導電性、循環性能及び倍率性能の向上に役立ち、かつSEI界面を安定化させることによって、粉化を減少させ、副反応の発生を低減し、不可逆膨張の発生を抑制する。
【0030】
理解できるように、第1被覆層のうねり度は、負極材料の粒子の大きさ、第1被覆層の負極材料における質量比を考慮した後の負極材料粉体の表面の第1被覆層における第1被覆層の最大厚さと第1被覆層の最小厚さとの比率を指す。第1被覆層の最大厚さと第1被覆層の最小厚さとは、負極材料の粒子の大きさと第1被覆層の質量比を加重して考慮した後、その比が大きいほど、第1被覆層における導電性ネットワークの成長範囲及び空間が大きいことを示す。
【0031】
yの値の範囲は、0.10~1であり、理解できるように、第1被覆層の表面形態の差異が大きく、拡張された空間が多いほど、yは、1に近く、第1被覆層の表面が平滑であるほど、yは、0に近づく。具体的には、第1被覆層のうねり度yは、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、および1などの値であってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。本出願は、第1被覆層のうねり度を上記範囲内に制御し、それは特殊な形態の第1被覆層を形成し、充放電過程において3D拡張形態を保持することができ、循環過程において形態を保持し、極めて大きな導電接触面積を保持することができ、それにより負極材料の導電性及び倍率性能を向上させる。好ましくは、うねり度yの範囲は、1≧y≧0.15であり、さらに好ましくは、1≧y≧0.227であり、上記範囲内で、負極材料は、差異化形態から非常に明らかな倍率性能向上を得ることができる。
【0032】
いくつかの実施形態において、シリコン系材料のコアは、結晶シリコン及びシリサイドを含み、そのうち、シリサイドは、SiOx、シリカ、シリケート及びシリコン合金のうちの少なくとも一種を含み、1.5≧x≧0.5である。
【0033】
いくつかの実施形態において、結晶シリコンの結晶粒径DSiは、2.5nm~15nmであり、具体的には2.5nm、5nm、7nm、9nm、10nm、12nm及び15nmなどであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。結晶シリコンの結晶粒径が上記範囲内に制御され、負極材料の容量及び循環性能を向上させることに役立つ。
【0034】
いくつかの実施形態において、シリケートの結晶粒径は、Dシリケートであり、Dシリケート/DSi=0.3~5.0であり、Dシリケート/DSiは、具体的には0.3、0.5、1、2、3、4、5などであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。Dシリケート/DSiが5.0より大きいと、材料中の不活性成分の含有量が高くなり、容量の向上に不利であり、Dシリケート/DSiが0.3より小さいと、材料の初回効率の向上に不利である。
【0035】
いくつかの実施形態において、シリコン合金の結晶粒径は、Dシリコン合金であり、Dシリコン合金/DSi=0~2.0であり、Dシリコン合金/DSiは、具体的には0、0.5、1、1.5及び2.0などであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。シリコン合金と結晶シリコンの結晶粒径を上記範囲内に制御して、材料循環性能の向上に役立ち、Dシリコン合金/DSiが2.0より大きいと、材料の容量が低下する。理解できるように、Dシリコン合金/DSiが0である場合に、シリコン系材料のコアにシリコン合金が含まれないことを示す。
【0036】
いくつかの実施形態において、シリコン合金は、シリコン鉄合金、シリコン銀合金、シリコンニッケル合金、シリコンコバルト合金、シリコンマンガン合金、シリコンインジウム合金、シリコンロジウム合金、シリコンルテニウム合金、シリコンイリジウム合金、シリコン白金合金、シリコンチタン合金及びシリコンモリブデン合金のうちの少なくとも一種を含む。シリコン合金の存在により、シリコン系材料のコアの相が多くなり、各相間界面の面積が増大し、リチウムイオンの拡散抵抗を低下させ、それにより材料の倍率性能を向上させ、また、シリコン合金の存在は、ある程度でシリコン系材料のコアの膨張を抑制することができ、それにより材料の循環性能を向上させる。
【0037】
いくつかの実施形態において、シリケートのカチオンは、金属元素を含み、具体的には、シリケートは、例えばケイ酸リチウム、ケイ酸マグネシウム及びケイ酸ナトリウム等であってもよい。金属元素を含有するシリケートのコアは、酸素が完成品電池においてリチウムに対する影響を低減し、デッドリチウムの発生を減少させ、材料の初回効率を向上させることができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、シリコン系材料のコアのメジアン径は、1μm~13μmであり、シリコン系材料のコアのメジアン径は、例えば1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm及び13μmなどであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。
【0039】
いくつかの実施形態において、第1被覆層は、炭素層を含み、炭素層の材質は、アモルファスカーボン、グラファイト、ソフトカーボン及びハードカーボンのうちの少なくとも一種を含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、第1被覆層の表面形態は、花弁状、ストライプ状、テーパ状及び粒子状のうちの少なくとも一種を含み、上記不規則な第1被覆層形態は、導電性炭素の作用範囲を拡張することができ、負極材料として循環中において導電ネットワークとの接続を維持することができ、それにより材料の循環性能を向上させる。
【0041】
いくつかの実施形態において、第1被覆層の厚さは、10nm~500nmであり、第1被覆層の厚さは、例えば10nm、50nm、100nm、200nm、300nm、400nm及び500nmなどであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。
【0042】
いくつかの実施形態において、第1被覆層は、空隙を有し、空隙の存在は、電解液の浸潤深さを向上させ、リチウムイオンの拡散経路を短縮し、それにより材料の倍率性能を向上させることができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、空隙の孔径は、10nm~60nmであり、空隙の孔径は、具体的には10nm、20nm、30nm、40nm、50nm及び60nmなどであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。
【0044】
いくつかの実施形態において、第1被覆層の空隙率は、0.5%~15%であり、第1被覆層の空隙率は、0.5%、1%、2%、5%、8%、10%、12%及び15%などであり、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。
【0045】
いくつかの実施形態において、シリコン系材料のコアは、第1ドーピング元素を含み、第1ドーピング元素は、リチウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、インジウム、銀、金、チタン、モリブデン、アルミニウム、パラジウム、カルシウム、イリジウム、白金、クロム、ガリウム、ロジウム及びルテニウムのうちの少なくとも一種を含み、上記ドーピング元素の存在は、シリコン系材料のコアの電子構造を改善し、シリコン系材料のコアの導電性を改善し、負極材料の倍率性能を向上させ、かつ負極材料のリチウム深層吸蔵能力を向上させることができる。
【0046】
いくつかの実施形態において、第1被覆層は、第2ドーピング元素を含み、第2ドーピング元素は、窒素、フッ素、リン、硫黄及びホウ素のうちの少なくとも一種を含み、第2ドーピング元素の添加は、第1被覆層の導電性をさらに向上させることができ、材料と導電ネットワークとの接触面を向上させ、さらに材料の循環性能を向上させる。
【0047】
理解できるように、負極材料は、第1ドーピング元素及び/又は第2ドーピング元素を含むことにより、第1被覆層の含有量がより高く、残基量がより大きく、シリコン系材料のコアが第1被覆層に包まれることに役立つ。
【0048】
いくつかの実施形態において、シリコン系材料のコアと第1被覆層との間には、さらに第2被覆層が設けられている。
【0049】
いくつかの実施形態において、第2被覆層の材質は、シリコン合金を含む。第2被覆層は、高い導電性を有し、シリコン系材料のコアの表面に被覆されて、シリコン系材料のコアとのブリッジ作用を実現し、かつシリコン系材料コアの導電ネットワークの末端となり、シリコン系材料のコアの導電性を向上させ、さらに負極材料の導電性を向上させ、最終的に負極材料の倍率性能及びリチウム吸蔵深さを向上させることができる。また、第2被覆層の存在は、一定の程度でシリコン系コア材料の膨張を拘束することができ、それにより吸蔵されるリチウムの膨張をさらに制限し、材料の循環性能を向上させる。
【0050】
いくつかの実施形態において、シリコン合金は、シリコン鉄合金、シリコン銀合金、シリコンニッケル合金、シリコンコバルト合金、シリコンマンガン合金、シリコンインジウム合金、シリコンロジウム合金、シリコンルテニウム合金、シリコンイリジウム合金、シリコン白金合金、シリコンチタン合金及びシリコンモリブデン合金のうちの少なくとも一種を含む。
【0051】
いくつかの実施形態において、第2被覆層の厚さは、0~10nm(0を含まない)であり、第2被覆層の具体的な厚さは、0.1nm、0.5nm、1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm及び10nmなどであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。
【0052】
いくつかの実施形態において、負極材料のラマンスペクトルで測定したラマンイメージングにおいて、負極材料の1300cm-1~1400cm-1の最大ピーク強度I1と負極材料の1550cm-1~1650cm-1の最大ピーク強度I2との比は、0<I1/I2<3を満たし、具体的には、I1/I2は、例えば0.05、0.1、0.5、1、2及び2.5などであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。かつ負極材料の480cm-1~540cm-1の最大ピーク強度I3と負極材料の1300cm-1~1400cm-1の最大ピーク強度I1との比は、1<I3/I1<4.5を満たし、I3/I1は、例えば1.2、1.5、1.8、2、2.5、2.8、3.2、3.5、3.8、4.0及び4.3などであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。上記ピーク強度関係式は、材料中の炭素成分の分布を判定することに用いられ、I1/I2及びI3/I1を上記範囲内に制御して、好ましい炭素被覆効果を得ることができ、材料の導電性を向上させることに役立つ。
【0053】
いくつかの実施形態において、負極材料のラマンスペクトルで測定したラマンイメージングにおいて、負極材料の1350cm-1のピーク強度I1350と1580cm-1ピークの強度I1580との比は、0<I1350/I1580<3を満たし、かつ前記負極材料の510cm-1のピーク強度I510と1350cm-1のピーク強度I1350との比は、1<I510/I1350<4.5を満たす。
【0054】
いくつかの実施形態において、負極材料のメジアン径D50は、1.5μm~15μmであり、負極材料のメジアン径は例えば1.5μm、3μm、5μm、10μm、12μm、13μm、14μm及び15μmなどであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。負極材料のメジアン径D50を上記範囲内に制御して、負極材料の被覆層が完全で、再現性が高く、かつ被覆層の導電性が高いことを示す。
【0055】
いくつかの実施形態において、負極材料の炭素含有量は、0.5%~10%であり、負極材料の炭素含有量は、例えば0.5%、1%、2%、3%、5%、7%、8%及び10%などであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。
【0056】
いくつかの実施形態において、負極材料の粉末導電率は、0.1S/m~100S/mであり、負極材料の粉末導電率は、例えば0.1S/m、1S/m、5S/m、10S/m、20S/m、30S/m、50S/m、60S/m、70S/m、80S/m、90S/m及び100S/mなどであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。
【0057】
いくつかの実施形態において、負極材料の比表面積は、0.8m2/g~10m2/gであり、負極材料の比表面積は、例えば0.8m2/g、1m2/g、2m2/g、3m2/g、4m2/g、5m2/g、6m2/g、7m2/g、8m2/g、9m2/g及び10m2/gなどであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。
【0058】
本出願の実施例は、さらに負極材料の製造方法を提供し、
有機炭素源、シリコン系材料及び有機溶媒を混合して前駆体を得るステップS100と、
前駆体を熱処理して負極材料を得るステップS200と、を含む。
【0059】
上記技術的解決手段において、本出願は、有機炭素源、シリコン系材料及び有機溶媒を混合する方式を採用して、有機炭素源を液相環境でシリコン系材料の表面に均一に蒸着させ、さらに熱処理を経てコアシリコン系材料の表面に一定のうねり度を有する第1被覆層を形成し、上記一定のうねり度を有する第1被覆層は、第1被覆層における導電性ネットワークが拡張可能な範囲及び空間を示し、負極材料の拡張及び収縮の過程において、スラリー又は極片を製造する時に、負極材料と導電剤との接触面積を増加することを確保し、それにより負極材料の導電性、循環性能及び倍率性能を効果的に向上させることができる。また、第1被覆層は、負極材料の膨張過程において、第1被覆層の影響範囲を保持することができ、それによりSEIの破壊を低減し、負極材料の膨張を抑制する。本出願の製造方法は、プロセスが簡単で、製品の一致性が高く、大規模生産に適する。単純な炭素材料被覆プロセスで形成された負極材料に比べて、本出願の負極材料は、より高い倍率性能を有し、プロセス過程が簡単であり、コストが低減する。
【0060】
以下に、実施例を合わせて本出願の製造方法を具体的に説明し、図2に示すように、本出願の負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
ステップS100、有機炭素源、シリコン系材料及び有機溶媒を混合して、前駆体を得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、有機炭素源をまず有機溶媒に分散させ、さらにシリコン系材料を添加することができ、有機炭素源の分散均一性に役立つ。
【0062】
いくつかの実施形態において、有機炭素源は、アルケン、アルキン、アルカン、アルコール、カルボン酸、エステル、芳香環、ケトン及びエーテルのうちの少なくとも一種の有機物を含み、上記有機物は、一定の結晶型を有するだけでなく、有機溶媒に溶解することができ、本出願は、異なる有機末端官能基を有する有機炭素源を使用することにより、それがシリコン系材料の表面に吸着するとともに、これに乗じてシリコン系材料の表面に堆積して、表面被覆層の元の炭素層骨格を形成する。上記有機炭素源は、例えばp-ジメチルビフェニル、ポリアクリル酸、フタロシアニン、ジフェニルエーテル、ポリビニルアセテート、ステアリン酸エチル、ドーパミン等であってもよい。
【0063】
いくつかの実施形態において、有機炭素源は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、芳香環、アルキル基分岐鎖及びカルボニル基のうちの少なくとも一種を含有するニトリル、アミン、ニトロ化合物、硫化物、フッ化物、ホウ化物及びリン化物のうちの少なくとも一種の有機物を含み、上記有機物の存在は、材料の導電性を向上させることができる。前記有機炭素源は、例えば、5-クロロ-2-エトキシベンゼンボロン酸、フェニルスルフィド、ドーパミン及びフタロシアニン等であってもよい。
【0064】
いくつかの実施形態において、有機炭素源は、有機ポリマー材料を含み、有機ポリマー材料は、ポリアミン系化合物、ポリエステル系化合物及びポリエン系化合物のうちの少なくとも一種を含む。例示的に、有機ポリマー材料は、ポリ塩化ビニル、ポリドーパミン及びポリエチレンテレフタレートなどを含み、上記有機物の存在は、材料の導電性を向上させることができる。
【0065】
いくつかの実施形態において、有機炭素源は、金属錯体を含み、金属錯体は、銅フタロシアニン、アルミニウムアセチルアセトナート、シヘキサチン及びコバルトイソプロポキシドのうちの少なくとも一種を含み、当然のことながら他の金属錯体を選択することができ、理解できるように、金属錯体を採用する有機炭素源において、製造された負極材料に金属元素がドーピングされ、材料粒子の粉化を効果的に回避することができる。
【0066】
いくつかの実施形態において、金属錯体は、さらに有機炭素材料を金属ソースと錯体化して得ることができる。
【0067】
本出願の特殊な第1被覆層の形態は、合成過程において適切な金属-有機炭素源(金属部分-有機部分)を組み合わせて積層し、相互作用して、上記形態をよりよく形成することができ、出願人は、y=1-exp(-(Rmax-Rmin)/D50*C)の式を利用して上記積層程度を説明でき、及びどの程度で導電面積を拡大する作用を発揮できるかを説明できることを発見しました。
【0068】
いくつかの実施形態において、金属ソースは、リチウム源、マグネシウム源、ナトリウム源、銅源、鉄源、マンガン源、コバルト源、ニッケル源、インジウム源、銀源、金源、チタン源、モリブデン源、アルミニウム源、パラジウム源、カルシウム源、イリジウム源、白金源、ガリウム源、クロム源、ロジウム源及びルテニウム源のうちの少なくとも一種を含み、金属ソースは、例えば金属リチウム、金属マグネシウム及び金属銅などであってもよい。理解できるように、異なる活性の金属は、第1被覆層のうねり度yに対する影響が異なり、出願人は、金属の活性が大きいほど、第1被覆層のうねり度y値が大きいほど、負極材料の導電性、循環性能及び倍率性能を向上させることができることを発見しました。
【0069】
いくつかの実施形態において、有機炭素材料は、アルコール、エーテル、芳香族化合物、ピロール、ピリジン、アルカン、ケトン、カルボン酸、ニトリル、有機アミン、ニトロ有機物、硫黄含有有機物及びリン含有有機物のうちの少なくとも一種を含む。理解できるように、有機炭素材料は、上記有機炭素源と同じでもよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、金属ソースと有機炭素材料とのモル比は、(0~1):1(0を含まない)であり、、具体的には、金属ソースと有機炭素材料とのモル比は、具体的には0.1:1、0.2:1、0.3:1、0.4:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1及び1:1などであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。金属ソースと有機炭素材料とのモル比を上記範囲内に制御して、金属と有機炭素材料との十分な錯体化に役立ち、それにより有機炭素材料の蒸着量を向上させるとともに、有機炭素材料中の金属過剰な不純物の残留を防止する。
【0071】
いくつかの実施形態において、シリコン系材料は、Si、SiOx及びSiO2のうちの少なくとも一種を含み、そのうち、1.5≧x≧0.5である。
【0072】
いくつかの実施形態において、シリコン系材料と有機炭素源との質量比は、1:(0.05~0.3)であり、シリコン系材料と有機炭素源との質量比は、例えば1:0.05、1:0.1、1:0.2及び1:0.3などであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。
【0073】
いくつかの実施形態において、シリコン系材料と有機溶媒との質量比は、1:(1~2.5)であり、シリコン系材料と有機溶媒との質量比は、例えば1:1、1:1.5、1:2及び1:2.5などであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。
【0074】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、炭酸ジメチル、テトラヒドロフラン、炭酸エステル、トルエン、ベンゼン、エチルエーテル、プロピレンオキシド、ケトン及びエチレングリコールジメチルエーテルのうちの少なくとも一種を含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、有機炭素源とシリコン系材料と有機溶媒との混合時間は、3h~24hであり、具体的には、混合時間は、例えば3h、4h、5h、7h、8h、10h、12h、16h、18h、20h、22h及び24h等であってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。上記混合時間内に、有機炭素源は、シリコン系材料の表面に飽和吸着することができる。
【0076】
いくつかの実施形態において、有機炭素源、シリコン系材料及び有機溶剤の混合は撹拌状態で行い、撹拌の目的は、シリコン系材料を均一に分散させ、それが有機溶剤の底部に蒸着することを回避することである。本出願は、撹拌の方式を制限せず、例えば磁気撹拌及び撹拌パドル撹拌等であってもよい。
【0077】
いくつかの実施形態において、有機炭素源、シリコン系材料及び有機溶媒を混合した後に、混合した後の材料を蒸発結晶化するステップをさらに含む。具体的には、有機炭素源、シリコン系材料を有機溶媒と混合し、撹拌状態で3h~24h反応させ、反応後に蒸発結晶化を行って前駆体を得て、蒸発結晶化させる目的は、残留した有機溶媒を除去し、蒸発結晶化プロセスは、異なる有機溶媒に基づいて設置される。
【0078】
いくつかの実施形態において、蒸発結晶化の温度は、30℃~80℃であり、蒸発結晶化の温度は、例えば30℃、40℃、50℃、60℃、70℃及び80℃などであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。好ましくは、蒸発結晶化は、セグメント式加熱の方式を採用して実現することができ、一部の溶媒を蒸発させるとともに、有機炭素源を材料表面に規則的に蒸着させ、後続の熱処理過程における第1被覆層の表面形態の形成に役立つ。
【0079】
いくつかの実施形態において、蒸発結晶化の時間は、3h~10hであり、蒸発結晶化させる時間は、例えば3h、4h、5h、6h、7h、8h、9h及び10hなどであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。
【0080】
いくつかの実施形態において、蒸発結晶化は、第1保護雰囲気で行われ、第1保護雰囲気は、アルゴンガス及び窒素ガスのうちの少なくとも一種を含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、蒸発結晶化は、撹拌状態で行われ、蒸発結晶化プロセスにおいて撹拌し続けることにより溶質の蒸着吸着の均一性に役立つ。
【0082】
本出願は、有機炭素源、シリコン系材料を有機溶剤と混合し、効果的な結晶化及び撹拌プロセスにより、有機物表面の結晶骨格を形成し、ターゲット材料の前駆体を得る。
【0083】
ステップS200、前駆体を熱処理して、負極材料を得る。
【0084】
上記ステップにおいて、熱処理過程中、有機炭素源がシリコン系材料の表面に堆積して熱処理を経て第1被覆層を形成し、原料の選択及び熱処理により熱処理後の第1被覆層が特殊な形態(花弁状、ストライプ状、テーパ状及び粒子状等)及び多孔構造を呈し、シリコン系材料のコアと導電ネットワークとの接触面積を向上させ、さらに導電性を向上させることができる。
【0085】
いくつかの実施形態において、本出願の熱処理は、特殊な形態を有する被覆層を形成することができ、従来の化学気相蒸着被覆で製造された平らな表面と比較して、本出願は、有機炭素源から成長された炭素層であり、その表面形態が規則的ではなく、例えば、花弁状、ストライプ状、テーパ状及び粒子状のうちの少なくとも一種であってもよい。
【0086】
いくつかの実施形態において、熱処理の温度は、400℃~1200℃であり、熱処理の温度は、例えば400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃及び1200℃などであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。熱処理温度が400℃より低いと、熱処理が不完全であり、有機分子間の結合力が弱く、炭素層が脆弱であり、破壊されやすく、熱処理温度が1200℃より高いと、コアが変化し、コアの各成分の均一性が破壊され、コアの導電性が低下し、初回効率が低下する。
【0087】
いくつかの実施形態において、熱処理の昇温速度は、1℃/min~5℃/minであり、熱処理の昇温速度は、例えば1℃/min、2℃/min、3℃/min、4℃/min及び5℃/minなどであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。
【0088】
いくつかの実施形態において、熱処理の保温時間は、3h~12hであり、熱処理の保温時間は、例えば3h、4h、5h、6h、7h、8h、9h、10h、11h及び12hなどであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。
【0089】
いくつかの実施形態において、熱処理は、加圧条件下で行われ、熱処理の圧力は、0.11 MPa~0.25 MPaであり、具体的には、熱処理の圧力は、0.11 MPa、0.15 MPa、0.17 MPa、0.2 MPa、0.23 MPa及び0.25 MPaなどであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここでは限定されない。
【0090】
いくつかの実施形態において、第2保護雰囲気は、有機炭素源と反応しないガスを保護ガスとして選択し、熱処理が第2保護雰囲気で行い、第2保護雰囲気は、アルゴンガスを含む。
【0091】
本出願において、異なる原料を熱処理処理して得られた負極材料の構造が異なり、具体的に、
選択された有機炭素源は、アルケン、アルキン、アルカン、アルコール、カルボン酸、エステル、芳香環、ケトン及びエーテルのうちの少なくとも一種の有機物を含む場合に、熱処理処理により得られた負極材料であり、該負極材料は、シリコン系材料のコア及びシリコン系材料のコアに被覆される炭素層を含む。
【0092】
選択された有機炭素源は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、芳香環、アルキル基分岐鎖及びカルボニル基のうちの少なくとも一種を含有するニトリル類、アミン類、ニトロ化合物、硫化物、フッ化物、ホウ化物及びリン化物のうちの少なくとも一種の有機物又はポリアミン系化合物、ポリエステル系化合物及びポリエン系化合物のうちの少なくとも一種の有機物を含み、該有機物の炭素端は、N、S、B及びP等の元素を含み、熱処理処理によりドーピングされて炭素層中に入り、該負極材料は、シリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコアに被覆される炭素層とを含み、炭素層中には、第2ドーピング元素が含有され、第2ドーピング元素は、炭素被覆層の導電性を向上させることができる。
【0093】
金属錯体を有機炭素源として選択する場合に、金属錯体は、従来の金属錯体有機物を直接選択してもよく、有機炭素材料を金属ソースと錯体化して得てもよく、異なる金属種の錯体を熱処理処理して得られた負極材料の構造が異なり、具体的には以下のとおりである。
【0094】
金属錯体には、高活性な還元性金属元素が含まれる場合に、それは熱処理処理過程において、シリコン系材料のコアに入り、対応する金属シリケートを形成しやすく、得られた負極材料は、シリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコアに被覆された炭素被覆層とを含み、シリコン系材料のコアは、Si、SiOx(1.5≧x≧0.5)及びSiO2のうちの少なくとも一種で形成されたシリケートを含む。
【0095】
金属錯体に還元性の弱い金属元素が含まれる場合に、それは熱処理処理過程において金属元素がシリコン酸素内部のナノシリコンと反応してシリコン合金を形成し、得られた負極材料は、二層の被覆層を有し、具体的には、負極材料は、シリコン系材料のコアを含み、シリコン系材料のコアの少なくとも一部の表面には、合金層が被覆され、合金層の少なくとも一部の表面に炭素層が被覆される。合金層の存在は、シリコン系材料のコアの導電性を向上させ、材料の倍率性能を向上させることができる。例示的には、金属ソースがCuである場合に、金属錯体は、Cu錯体であり、Cu錯体は、表面炭素層に「花弁状」の複数層の多孔構造を形成させ、シート層構造は、導電炭素層の接触面積を増大させ、炭素層の延在距離及び影響範囲を向上させることができる。一方、孔状構造は、電解液を炭素層に浸漬させ、リチウムイオンの移動距離を短縮することができ、また炭素層SEIは、孔状構造内に形成され、延在されたシート層炭素は、SEIに被覆されずに、依然としてセル中の導電剤と接触することを保持することができ、それにより倍率性能を保証する。金属ソースがAlである場合に、金属錯体は、Al錯体であり、Al錯体は、表面炭素層に一定の粗繊維構造を有することができ、同様にSEI層の形成と同時に、導電層の突出点として、粒子が膨張収縮する時に導電層接触位置点を保持することに役立つ。
【0096】
以上をまとめると、本出願は、有機炭素源を採用して固体粉末(シリコン系材料)の表面に蒸着して、特殊結晶骨格を形成し、次に高温熱処理の形式で周辺被覆層に特殊な形態を取得させる。ドーピング元素は、有機物熱処理過程と共に粒子に入りかつ全体的に分布することができ、シリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコア-第1被覆層界面と、第1被覆層内とを含む。以上のプロセスにより被覆層の形態の最適化を実現することができ、それとともにドーピング元素を材料内部に入り、簡単なプロセスにより、負極材料の性能の大幅な向上を実現する。有機炭素源の熱処理後の特殊な形態は、導電性炭素との接触面積を拡大することができ、それにより循環性能を向上させ、導電性を向上させ、材料の膨張過程において被覆層の影響範囲を保持することができ、それによりSEIの破壊を低減し、膨張を抑制する。ドーピング元素は、さらに内部から材料の電気化学的性質を変更して向上させることができる。本出願の製造方法は、合成環境が温和であり、製品の収率が高く、合成プロセスフローを短縮し、高い電気化学性能を保証する上で、生産コストを効果的に低減し、工業化大規模生産に適し、極めて高い経済的価値を備える。
【0097】
第3態様において、本出願は、リチウムイオン電池を提供し、リチウムイオン電池は、上記製造方法で製造された負極材料を含む。
【0098】
本出願の実施例を説明するが、本出願は、その要旨を超えない限り、これらの例に限定されない。
【0099】
実施例1
p-ジメチルビフェニル(2g)、SiO(10g)、金属リチウム(1g)をエチレングリコールジメチルエーテル(10g)に加えた後、磁力で12h撹拌し、水浴恒温50℃で3h加熱し、70℃で3h加熱し、85℃で3h加熱した後、室温で撹拌して溶媒を揮発させた後、アルゴンガスの保護雰囲気で800℃で6h炭化熱処理処理した後、負極材料を得る。
【0100】
得られた負極材料は、SiとSiOx(1.5≧x≧0.5)とケイ酸リチウムとのシリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコアの表面に被覆された炭素層とを含み、図4(a)に示すように、炭素層の形態は、テーパ状構造であり、該負極材料のメジアン径は、5.0μmであり、粉末導電率は、10.9S/mであり、負極材料のI1350/I1580=1.3であり、I510/I1350=4.12である。
【0101】
実施例2
SiO(10g)、銅フタロシアニン(1g)をエチレングリコールジメチルエーテル(10g)に添加した後、磁力で12h撹拌した後、水浴恒温50℃で3h加熱し、70℃で3h加熱し、85℃で3h加熱した後、吸引濾過した後、乾燥Arガスを用いて完全に乾燥するまでパージし、保護ガスで800℃で6h炭化処理した後、負極材料を得る。
【0102】
得られた負極材料は、SiとSiOx(1.5≧x≧0.5)とSi-Cu合金とのシリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコアの表面に被覆された炭素層とを含み、図4(b)に示すように、炭素層の形態は、花弁状構造であり、該負極材料のメジアン径は、5.0μmであり、粉末導電率は、13.7S/mであり、負極材料のI1350/I1580=1.9であり、I510/I1350=3.99である。
【0103】
実施例3
SiO(10g)、アルミニウムアセチルアセトナート(1g)をエチレングリコールジメチルエーテル(10g)に添加した後、磁力で12h撹拌し、水浴恒温50℃で3h加熱し、70℃で3h加熱し、85℃で3h加熱した後、吸引濾過した後、乾燥Arガスを用いて完全に乾燥するまでパージし、保護ガスで800℃で6h炭化処理した後、負極材料を得る。
【0104】
得られた負極材料は、SiとSiOx(1.5≧x≧0.5)とケイ酸アルミニウムとのシリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコア表面に被覆された炭素層とを含み、図4(c)に示すように、炭素層の形態は、ストライプ状構造であり、該負極材料のメジアン径は、5.0μmであり、粉末導電率は、10.9S/mであり、負極材料のI1350/I1580=1.4であり、I510/I1350=4.32である。
【0105】
実施例4
SiO(10g)、ポリアクリル酸(1g)を水(10g)に添加した後、磁力で12h撹拌し、水浴恒温50℃で3h加熱し、70℃で3h加熱し、85℃で3h加熱した後、吸引濾過した後、乾燥Arガスを用いて完全に乾燥するまでパージし、保護ガスで800℃で6h炭化処理した後、負極材料を得る。
【0106】
得られた負極材料は、SiとSiOx(1.5≧x≧0.5)とのシリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコアの表面に被覆された炭素層とを含み、図4(d)に示すように、炭素層の形態は、粒子状構造であり、該負極材料のメジアン径は、5.0μmであり、粉末導電率は、11.0S/mであり、負極材料のI1350/I1580=1.4であり、I510/I1350=4.32である。
【0107】
実施例5
SiO(10g)、5-クロロ-2-エトキシベンゼンボロン酸(2g)を水(10g)に添加した後、磁力で12h撹拌し、水浴恒温50℃で3h加熱し、70℃で3h加熱し、85℃で3h加熱した後、吸引濾過した後、乾燥Arガスを用いて完全に乾燥するまでパージし、保護ガスで800℃で6h炭化処理した後、負極材料を得る。
【0108】
得られた負極材料は、SiとSiOx(1.5≧x≧0.5)とB23-SiO2とのシリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコアの表面に被覆された炭素層とを含み、炭素層中には、ホウ素元素が含まれ、炭素層の形態は、微細粒子分布構造であり、該負極材料のメジアン径は、5.0μmであり、粉末導電率は、10.6S/mであり、負極材料のI1350/I1580=1.2であり、I510/I1350=3.92である。
【0109】
実施例6
SiO(10g)、フェニルスルフィド(2g)をエチレングリコールジメチルエーテル(10g)に添加した後、磁力で12h撹拌し、水浴恒温50℃で3h加熱し、70℃で3h加熱し、85℃で3h加熱した後、吸引濾過した後、乾燥Arガスを用いて完全に乾燥するまでパージし、保護ガスで800℃で6h炭化処理した後、負極材料を得る。
【0110】
得られた負極材料は、Si、SiOx(1.5≧x≧0.5)、シリケート、複合シリケートのシリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコアの表面に被覆された炭素層とを含み、炭素層中には、硫黄元素を含み、炭素層の形態は、平坦化形態構造であり、該負極材料のメジアン径は、5.0μmであり、粉末導電率は、10.3S/mであり、負極材料のI1350/I1580=1.3であり、I510/I1350=3.82である。
【0111】
実施例7
p-ジメチルビフェニル(2g)、SiO(10g)、金属ナトリウム(1g)をエチレングリコールジメチルエーテル(10g)に添加した後、磁力で12h撹拌し、室温で撹拌乾燥して溶媒を揮発させた後、アルゴンガスの保護雰囲気で800℃で6h炭化処理した後、負極材料を得る。
【0112】
得られた負極材料は、Si、SiOx(1.5≧x≧0.5)、ケイ酸ナトリウムのシリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコアの表面に被覆された炭素層とを含み、炭素層の形態は、丘陵状の大粒子状構造であり、該負極材料のメジアン径は、5.0μmであり、粉末導電率は、10.1S/mであり、負極材料のI1350/I1580=1.1であり、I510/I1350=4.41である。
【0113】
実施例8
SiO(10g)、銅フタロシアニン(1g)、ニッケルフタロシアニン(1g)をエチレングリコールジメチルエーテル(10g)に添加した後、磁力で12h撹拌し、室温で撹拌乾燥して溶媒を揮発させた後、アルゴンガスの保護雰囲気で800℃で6h炭化処理した後、負極材料を得る。
【0114】
得られた負極材料は、SiとSiOx(1.5≧x≧0.5)とのシリコン系材料のコアを含み、シリコン系材料のコアの表面には、シリコン銅合金とシリコンニッケル合金の混合層及び上記混合層の表面に被覆された炭素層が被覆され、炭素層の形態は、ストライプ状構造であり、該負極材料のメジアン径は、5.0μmであり、粉末導電率は、11.9S/mであり、負極材料のI1350/I1580=1.5であり、I510/I1350=3.81である。
【0115】
実施例9
実施例5と異なり、炭化処理の温度は、350℃である。
【0116】
得られた負極材料は、SiとSiOx(1.5≧x≧0.5)とB23-SiO2とのシリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコアの表面に被覆された炭素層とを含み、炭素層中には、ホウ素元素が含まれ、炭素層の形態は、平坦化形態構造であり、該負極材料のメジアン径は、5.0μmであり、粉末導電率は、9.3S/mであり、負極材料のI1350/I1580=1.1であり、I510/I1350=4.12である。
【0117】
実施例10
実施例5と異なり、炭化処理の温度は、400℃である。
【0118】
得られた負極材料は、SiとSiOx(1.5≧x≧0.5)とB23-SiO2とのシリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコアの表面に被覆された炭素層とを含み、炭素層中には、ホウ素元素が含まれ、炭素層の形態は、平坦化形態構造であり、該負極材料のメジアン径は、5.0μmであり、粉末導電率は、9.6S/mであり、負極材料のI1350/I1580=1.21であり、I510/I1350=4.19である。
【0119】
実施例11
実施例5と異なり、炭化処理の温度は、1000℃である。
【0120】
得られた負極材料は、SiとSiOx(1.5≧x≧0.5)とB23-SiO2とのシリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコアの表面に被覆された炭素層とを含み、炭素層中には、ホウ素元素が含まれ、炭素層の形態は、小粒子構造であり、該負極材料のメジアン径は、5.0μmであり、粉末導電率は、9.9S/mであり、負極材料のI1350/I1580=1.0、I510/I1350=3.98である。
【0121】
実施例12
実施例5と異なり、炭化処理の温度は、1200℃である。
【0122】
得られた負極材料は、SiとSiOxとB23-SiO2とのシリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコアの表面に被覆された炭素層とを含み、炭素層中には、ホウ素元素が含まれ、炭素層の形態は、小粒子構造であり、該負極材料のメジアン径は、5.0μmであり、粉末導電率は、10.3S/mであり、負極材料のI1350/I1580=1.2であり、I510/I1350=3.7である。
【0123】
実施例13
実施例5と異なり、炭化処理の温度は、1300℃である。
【0124】
得られた負極材料は、SiとSiOx(1.5≧x≧0.5)とB23-SiO2とのシリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコアの表面に被覆された炭素層とを含み、炭素層中には、ホウ素元素が含まれ、炭素層の形態は、微細粒子構造であり、該負極材料のメジアン径は、5.0μmであり、粉末導電率は、9.5S/mであり、負極材料のI1350/I1580=1.2であり、I510/I1350=4.22である。
【0125】
実施例14
実施例5と異なり、原料に0.5gのマグネシウム粉末を添加する。
【0126】
得られた負極材料は、SiとSiOx(1.5≧x≧0.5)とB23-SiO2とのシリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコアの表面に被覆された炭素層とを含み、炭素層には、ホウ素元素が含まれ、かつ酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウム及び少量の炭酸マグネシウムが蒸着されている。炭素層の形態は、微細粒子構造であり、マグネシウム塩粒子も観測することができる。該負極材料のメジアン径は、5.0μmであり、粉末導電率は、7.3S/mであり、負極材料のI1350/I1580=0.9であり、I510/I1350=4.10である。
【0127】
実施例15
実施例1と異なり、「水浴恒温50℃で3h加熱し、70℃で3h加熱し、85℃で3h加熱する」を「水浴恒温85℃で9h加熱する」に置き換える。
【0128】
得られた負極材料は、SiとSiOx(1.5≧x≧0.5)とケイ酸リチウムとのシリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコアの表面に被覆された炭素層とを含み、炭素層の形態は、テーパ状構造であり、該負極材料のメジアン径は、5.0μmであり、粉末導電率は、10.5S/mであり、負極材料のI1350/I1580=1.3であり、I510/I1350=3.27である。
【0129】
実施例16
実施例1と異なり、金属リチウムの添加量は、2.0gである。
【0130】
得られた負極材料は、SiとSiOx(1.5≧x≧0.5)とケイ酸リチウムとのシリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコアの表面に被覆された炭素層とを含み、炭素層の形態は、テーパ状構造であり、該負極材料のメジアン径は、5.0μmであり、粉末導電率は、6.3S/mであり、負極材料のI1350/I1580=1.3であり、I510/I1350=3.57である。
【0131】
実施例17
実施例2と異なり、銅フタロシアニンの添加量は、4.0gである。
【0132】
得られた負極材料は、SiとSiOx(1.5≧x≧0.5)とSi-Cu合金とのシリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコアの表面に被覆された炭素層とを含み、炭素層の形態は、花弁状構造であり、該負極材料のメジアン径は、5.0μmであり、粉末導電率は、15.3S/mであり、負極材料のI1350/I1580=1.93であり、I510/I1350=3.61である。
【0133】
比較例1
負極材料として、シリコン酸素原料SiO(10g)をそのまま用いた。
【0134】
比較例2
シリコン酸素原料SiO(10g)を気相蒸着方法により炭化水素系有機炭素源、アルケン系有機炭素源又はアルキン系有機炭素源を炭素被覆し、同時に金属を還元し、自然冷却した後、負極材料を得る。
【0135】
得られた負極材料は、SiとSiOxとのシリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコアの表面に被覆された炭素被覆層とを含み、図4(e)に示すように、炭素被覆層の表面は、平坦な形態である。
【0136】
比較例3
1gのCuCl2を10gの脱イオン水に加え、完全に溶解した後、シリコン酸素原料SiO(10g)を添加し、磁力で12h撹拌し、水浴で60℃で2h加熱撹拌した後、吸引濾過して乾燥させ、気相蒸着方法により炭化水素系有機炭素源、アルケン系有機炭素源又はアルキン系有機炭素源を炭素被覆し、同時に金属を還元し、自然冷却した後、負極材料を得る。
【0137】
比較例4
1gのFeCl2を10gの脱イオン水に加え、完全に溶解した後、シリコン酸素原料SiO(10g)を添加し、磁力で12h撹拌し、水浴で60℃で2h加熱撹拌した後、吸引濾過して乾燥させ、気相蒸着方法により炭化水素系有機炭素源、アルケン系有機炭素源又はアルキン系有機炭素源を炭素被覆し、同時に金属を還元し、自然冷却した後、負極材料を得る。
【0138】
性能試験:
1、SEMを採用して負極材料のミクロ構造を特徴付ける。
2、EDSを採用して負極材料中の元素成分を特徴付ける。
3、マルバーン粒度計を採用して材料の粒径を測定し、本出願におけるDmin及びDmaxに対して、第1被覆層を除去した後にシリコン系材料のコアの粒径を測定することができ、例えば第1被覆層が炭素層である場合に、強熱法により炭素層を除去することができ、第1被覆層を除去した後に試験して得られた粒径は、被覆前の粒子の粒径と同等であると考えることができる。
4、CO2スペクトルを採用して、負極材料を焼成して負極材料の炭素含有量を測定する。
5、XRDを採用して結晶シリコン、シリケート及びシリコン合金の結晶粒径を計算する。
6、細孔分布解析法を採用して負極材料の孔容積を測定し、孔容積がΔVであり、負極材料の真密度Pを測定し、計算して負極材料の空隙率=ΔV/(ΔV+1/P)を得る。
7、マイクTristar3020型比表面積と孔径アナライザーを用いて負極材料に比表面積試験を行い、一定の質量粉末を秤取し、真空加熱状態で完全に脱気し、表面吸着質を除去した後、窒素ガス吸着法を用いて、窒素ガスを吸着する量により、粒子の比表面積を算出する。
8、粉末導電率は、三菱化学MCP-PD51粉末抵抗率テスターを採用して測定する。試験条件は、一定量の粉体材料を試料セル内に投入し、一定の圧力で測定して粉末導電率を得て、単位は、S/cmである。
9、ラマン測定器を採用して、ラマンスペクトルを測定し、試験範囲は、800cm-1~2000cm-1である。
10、以下の方法で電気化学的性能をテストする。
ボタン式電池負極極片の製造は本分野の公知の方法及びBTRTC/ZY/01-020ボタン式電池方法を採用して製造される。製造されたボタン式電池をLAND電池試験機で行い、常温条件で、0.2C定電流充放電を行い、充放電電圧を2.75~4.2Vに制限する。初回可逆容量、初回充電容量及び初回放電容量を取得する。
【0139】
初回クーロン効率=初回放電容量/初回充電容量
【0140】
50回循環を繰り返し、放電容量を記録し、リチウムイオン電池の残容量とし、容量維持率=残容量/初期容量*100%。
【0141】
50回極片膨張率(%)測定:負極材料をグラファイトに混合し、固定容量(450mAh/g)に調製し、極片になるように塗布し、極片の厚さd1を測定し、次にボタン式電池に組み立て試験し、50回を循環した後、電池を取り外し、極片の厚さd2を再び試験する。極片膨張率=(d2-d1)/d1*100%。
【0142】
各材料の容量の差異に基づいて、割合にわずかに差異があり、混合品の容量を標準480mAh/gの容量に設定し、それぞれ0.5C、1.0C及び2.0Cの倍率試験を行い、試験結果を表1~表3に示す。
【0143】
【表1】
【0144】
【表2】
【0145】
【表3】
【0146】
比較例及び実施例のテストの結果である表1~表3のデータにより以下を発見することができる。本出願の負極材料は、シリコン系材料のコアと、シリコン系材料のコアの少なくとも一部の表面に被覆された第1被覆層とを含み、該被覆層のうねり度yが0.1~1の間にあり、第1被覆層における導電性炭素が拡張可能な範囲及び空間を示し、負極材料の拡張及び収縮過程において、スラリー又は極片に製造する時に、負極材料と導電剤との接触面積を増加させることができ、シリコン系材料のコアと導電剤の電子通路との接続を保持し、負極材料の導電性、循環性能及び倍率性能の向上に役立ち、かつSEI界面を安定化させることによって、粉化を減少させ、副反応の発生を低減し、不可逆膨張の発生を抑制する。
【0147】
図2に示すように、比較例1の負極材料には、炭素層がなく、SEM及びEDS元素の分布から炭素層が発見されず、比較例1の負極材料の炭素含有量が非常に低くかつ他の比較例よりもはるかに低く、実施例1は、金属化処理された有機炭素源により、完成品の炭素含有量が1.21%に向上し、図3に示すように、実施例1のEDSマップから分かるように、この時にシリコン系材料のコア表面に既に炭素層が被覆され、炭素層の合成に成功したことを示す。
【0148】
実施例1におけるサンプルの可逆容量及び初回クーロン効率は、それぞれ1381.7mAh/g及び86.71%に達し、一般的な炭素被覆材料SiO@C(比較例2、初回効率76.4%)の電気化学的表現よりはるかに優れ、本出願の製造方法は、合成された負極材料、金属ソースと炭素層において、いずれもその性能の向上に対して作用を果たし、本出願は、簡略化プロセスを向上させるとともに、材料の初回効率を向上させ、プロセス改善を実現する。
【0149】
比較例3及び4においていくつかの還元性が低い金属(Cu及びFe)をドーピングしたサンプルを選択し、実施例1と比較して、低還元性金属の材料の初回効率及び倍率性能に対する向上効果が微弱である(表2)。かつ比較例3及び比較例4において、化学気相蒸着の方法を採用して炭素被覆を行い、金属を還元するとともに、高炭素量被覆層を実現することができ、化学気相蒸着は、外来有機炭素源により、高温で炭素ラジカルを形成し、炭素量は、自発的吸着結晶のサンプルよりはるかに高い。
【0150】
炭素含有量から金属錯体方式又は沈殿法により、いずれも金属ドーピングできることを発見でき、有機金属錯体を用いてドーピングする場合に、有機炭素端は、高温で熱処理が発生され、それによりドーピングするとともに、炭素被覆作用を完了する。図3のEDSマップから発見できるように、実施例1において、有機金属錯体を介して、金属をドーピングするとともに、炭素層の存在が観測された。同様の金属錯体を用いて、コアのドーピング及び炭素層被覆を行う実施例2も、Cu元素活性が低いため、シリケートを形成することができない。したがって、熱処理過程において、Cuは、炭素により金属0価銅に還元され、銅部分とシリコンベース部分とは、シリコン銅合金を生成する。Cu系金属有機物の蒸着過程における有機金属錯体の堆積結晶は、特殊な丘陵ハニカム状構造の雛形を形成し、熱処理して焼成した後に、図4(b)のようなハニカム丘陵状構造の炭素層の形態を形成し、上記構造により、導電性炭素と導電性ネットワークとの接触面積を大幅に向上させ、その有効接触範囲が増大し、炭素層が膨張収縮過程においてSi-metal及びmetal-C化学結合の結合により、活性シリコンと導電剤の電子通路との接続を保持し、材料循環保持率の向上に役立ち、かつSEI界面を安定化することによって、粉化を減少させ、副反応の発生を減少させ、不可逆膨張の発生を抑制する。それとともに、本出願の炭素被覆負極材料は、表面接触範囲が大きく、炭素繊維と異なり、本出願の負極材料は、直立性層状炭素被覆層(炭素被覆層の表面にカーボンナノチューブを成長させることができる)であり、充放電中に、3D拡張形態を保持することができ、循環過程において炭素形態を保持することができ、それにより極めて大きな導電接触面積を保持する。多孔状の周辺は、電解液の浸潤深さを向上させ、リチウムイオンの拡散経路を短縮し、倍率性能を向上させることができる。
【0151】
図5に示すように、実施例1の負極材料のXRDチャートにおいて、銅シリコン合金の存在を発見でき、Cuをドーピングしても、コアに入り、かつコアの組成を変更することに成功し、周辺の銅が還元された後、電子輸送経路全体を貫通し、電子電気伝導の向上を実現する。
【0152】
以上をまとめると、本出願で製造された負極材料は、倍率性能及び膨張性能の向上に突破を実現する。
【0153】
表3から分かるように、ボタン式電池循環膨張データから、いくつかの異なる金属の変化傾向の差異が大きいことが発見できる。循環容量維持率から見れば、強還元性の材料と比較例のサンプルとの相違は、ほとんどなく、高還元性金属は、高効率を際立たせることで一定の優位性を有することを示すが、循環維持率への寄与が大きくなく、炭素被覆層に優れた最適化が得られないためである。比較例1、比較例2、及び比較例3の容量維持率は、順に80.9%、78.7%及び78.1%であり、シリケートの容量維持率への影響が小さいことを示すが、別の態様から見ると、有機炭素で形成された炭素被覆層は、導電性をよく発揮することができる。これを基礎として、実施例1、2及び3のような多層の被覆された負極材料の容量維持率は、それぞれ91.7%、93.1%及び92.6%である。容量維持率は、大幅に向上し、膨張から見ると、合金層は、材料の膨張に一定の制限作用を有し、循環膨張を低下させ、実施例2の50回の極片膨張データを従来のサンプル(比較例2)のデータに比べて見ると、ボタン式電池極片の膨張は、44.2%から36.1%まで低下する。
【0154】
以上は、本出願の好ましい実施例に過ぎず、本出願を限定するものではなく、当業者にとって、本出願は様々な修正及び変更を有することができる。本出願の精神と原則内で、行われたいかなる修正、同等置換、改善などは、いずれも本出願の保護範囲内に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】