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特表2024-517547L.ロイテリ(L.REUTERI)のプレコンディショニング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】L.ロイテリ(L.REUTERI)のプレコンディショニング
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20240416BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20240416BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240416BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20240416BHJP
【FI】
C12N1/20 A
A61K35/747
A61P1/14
A61P1/04
A61P1/02
A61P1/16
A61P25/00
A61P25/18
A61P25/22
A61P25/24
A61P19/10
A61P19/08
A61P31/00
C12N1/20 C
A23L33/135
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555343
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 SE2022050247
(87)【国際公開番号】W WO2022191768
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】21162451.5
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】312014878
【氏名又は名称】バイオガイア エイビー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルース、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】オルカハダ、マリー ノエル
(72)【発明者】
【氏名】ボネ、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】サバティエ、マガリ
(72)【発明者】
【氏名】ブールキ、ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】プリウルト、ゲノレ エリアーヌ マリー
(72)【発明者】
【氏名】デ ブライン、フロラック
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE01
4B018MD86
4B018ME09
4B018ME11
4B018MF05
4B018MF06
4B018MF08
4B065AA30X
4B065AC20
4B065BB17
4B065BD10
4B065BD11
4B065CA41
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC56
4C087MA22
4C087MA28
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA43
4C087MA44
4C087MA52
4C087NA03
4C087ZA12
4C087ZA18
4C087ZA67
4C087ZA68
4C087ZA69
4C087ZA75
4C087ZA96
4C087ZA97
4C087ZB32
(57)【要約】
本発明は、ガラクトオリゴ糖(GOS)を含む培地中で細菌を増殖させる、いわゆるプレコンディショニングすることによって得られるプロバイオティックラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)株に関する。プレコンディショニング法は、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の増強効果、例えば、消化管内のミネラル吸収の改善をもたらす。本発明は、プロバイオティックラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)株を製造及び培養する方法、並びにそのような株の製品、及び第1及び第2の医学的使用を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレコンディショニングされたプロバイオティックラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)株を調製する方法であって、
a)ガラクトオリゴ糖(GOS)の存在下で増殖培地中でプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を培養し、それによって、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングする工程、及び
b)増殖培地からプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を採取する工程
を含む、上記方法。
【請求項2】
GOSが、工程a)では、増殖培地中の少なくとも0.2重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、さらに好ましくは少なくとも0.75重量%のGOSの量で増殖培地に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
GOSが、工程a)では、増殖培地中の最大8重量%のGOS、好ましくは最大7重量%のGOS、さらに好ましくは最大6重量%のGOS、及びさらになお好ましくは最大5重量%のGOS、例えば、最大4重量%のGOS、又は最大3%のGOSの量で増殖培地に添加される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
GOSが、工程a)では、増殖培地中の0.2重量%~8重量%の範囲、好ましくは0.5重量%~7重量%の範囲、さらに好ましくは0.75重量%~6重量%の範囲、及び最も好ましくは0.75重量%~5重量%の範囲、例えば、0.75重量%~4重量%、又は0.75重量%~3重量%のGOSの範囲で選択される量で増殖培地に添加される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)で増殖培地に添加されるGOSが、3~8の重合度(DP)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株が、L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 5289、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 6475、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32846、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32847、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32848、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32849、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33632、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33633、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33634、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33635、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32465、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32231、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32232、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6127及びL.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 4659からなる群から選択される少なくとも1つのL.ロイテリ(L.reuteri)株であり、好ましくは、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株が、L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 5289、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 6475、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32846、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32848、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32849、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32465及びL.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 4659からなる群から選択され、並びにさらに好ましくは、L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
採取されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を洗浄すること
をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
採取されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を乾燥させること
をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を乾燥させることが、採取されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を噴霧乾燥又は凍結乾燥させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
プレコンディショニングされたプロバイオティックラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)株の有効量を含む組成物であって、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株が、ガラクトオリゴ糖(GOS)の存在下で増殖培地中でL.ロイテリ(L.reuteri)株を培養することによって調製された組成物。
【請求項11】
プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を10cfu~1012cfuの量、好ましくは10cfu~1011cfuの量、さらに好ましくは10cfu~1010cfuの量、例えば、10cfu~10cfuの量で含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
粉末、小袋、錠剤、カプセル、油剤、エマルジョン、水中油型エマルジョン(o/wエマルジョン)及び油中水型エマルジョン(w/oエマルジョン)からなる群から選択される形態である、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
栄養組成物、医薬製剤、栄養補助食品、機能性食品及び機能性飲料製品からなる群から選択される投与可能な形態である、請求項10~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
L.ロイテリ(L.reuteri)株が、L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 5289、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 6475、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32846、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32847、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32848、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32849、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33632、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33633、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33634、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33635、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32465、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32231、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32232、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6127及びL.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 4659からなる群から選択される少なくとも1つのL.ロイテリ(L.reuteri)株であり、好ましくは、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株が、L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 5289、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 6475、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32846、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32848、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32849、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32465及びL.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 4659からなる群から選択され、並びにさらに好ましくは、L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938である、請求項10~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
凍結乾燥又は噴霧乾燥されたプレコンディショニングされたプロバイオティックラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)株の有効量を含む、請求項10~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、請求項10~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
健康な対象の消化管内の好ましくはL.ロイテリ(L.reuteri)株の生存率、持続性及び/又はプロバイオティック効果を改善するか又は増加させるための、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法に従って調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)株の有効量、又は請求項10~16のいずれか一項に記載の組成物の非治療的使用。
【請求項18】
生存率、持続性及び/又はプロバイオティック効果を改善するか又は増加させることが、
・健康な対象の腸管内のミネラルのバイオアベイラビリティの増加、好ましくはミネラル溶解度及び/もしくはミネラル吸収の増加であり、ここで、ミネラルが、マグネシウム、カルシウム及び鉄からなる群から好ましくは選択され、カルシウム及び鉄からなる群からさらに好ましくは選択され、並びに/又は
・健康な対象の腸管内のL.ロイテリ(L.reuteri)株のストレス耐性の増加、好ましくは健康な対象の腸管内の胆汁及び胃酸に対するストレス耐性の増加であり、並びに/又は
・健康な対象の腸管内の粘液へのL.ロイテリ(L.reuteri)株の接着の増加であり、並びに/又は
・健康な対象の腸管内の上皮完全性の増加であり、並びに/又は
・健康な対象の骨形成及び/もしくは骨ミネラル化の促進、及び/もしくは骨芽細胞の成熟、分化及び/もしくは活性の促進である、請求項17に記載の非治療的使用。
【請求項19】
医薬品として使用するための、請求項1~9のいずれか一項に従って調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)株の有効量を含む組成物、又は請求項10~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
対象が、腸バリアの破壊、又は粘膜内層の破壊に罹患しており、好ましくは、腸バリアの破壊、又は粘膜内層の破壊が、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、セリアック病、栄養不良、不安、ストレス、過敏性腸症候群(IBS)、クローン病、潰瘍性大腸炎、機能性消化管障害、例えば、機能性腹痛、下痢、乳児疝痛、感染性疾患、うつ病、自閉症スペクトラム障害、憩室性疾患、歯周炎、骨減少症及び/又は骨粗鬆症からなる群から選択される疾患又は病態に関連する、それを必要とする対象の疾患の予防及び/又は治療に使用するための、請求項1~9のいずれか一項に従って調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)株の有効量を含む組成物、或いは請求項10~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
ミネラルが、マグネシウム、カルシウム及び鉄からなる群から好ましくは選択され、並びにカルシウム及び鉄からなる群からさらに好ましくは選択される、それを必要とする対象のミネラル欠乏の予防及び/又は治療に使用するための、請求項1~9のいずれか一項に従って調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)株の有効量を含む組成物、或いは請求項10~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
対象が、鉄欠乏、好ましくは鉄欠乏性貧血に罹患している、請求項21に記載の使用のための組成物。
【請求項23】
骨喪失の予防及び/又は治療に使用するための、請求項1~9のいずれか一項に従って調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)株の有効量を含む組成物、又は請求項10~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
小児の骨又は歯の成長及び発達を促進するのに使用するための、請求項1~9のいずれか一項に従って調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)株の有効量を含む組成物、或いは請求項10~16のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物又は鳥類におけるプロバイオティックラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)株の生存率、持続性及び/又はプロバイオティック効果を増強することに一般に関する。本発明は、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を製造及び培養する方法、並びにそのような株を含有する製品を含む。さらに詳細には、本発明は、ガラクトオリゴ糖(GOS)を含む増殖培地中で細菌を増殖させ、それによって、生存率及び持続性を増強し、並びに/又はプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有益なプロバイオティック効果、例えば、ミネラル吸収の改善、消化管内の上皮完全性の保護効果の改善、及び骨形成及びミネラル化作用の改善を増強することによって得られるプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株に関する。さらに、本発明は、特定の状況でそのようなプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の生存率、持続性及び/又はプロバイオティック効果を増強するために特に選択される基質成分を含む調製物に関する。
【背景技術】
【0002】
プロバイオティクスは、「適切な量で投与すると、宿主に健康上の便益を与える生きた微生物」と定義される。これは、世界中で広く受け入れられている科学的定義である(例えば、Hill et al.2014;Nat.Rev.Gastro.&Hepathology,11:506-514を参照)。通常、栄養補助食品又は食品であるプロバイオティック製品は、個体が経験している様々な病態又は症状に推奨され得る。乳酸桿菌(lactobacilli)などの乳酸産生細菌は、様々な種類の食品、例えば、ヨーグルト中でプロバイオティクスとして一般的に使用されている。有害微生物の増殖及びコロニー形成は、そのような乳酸産生細菌によって、腸系内でのそれら自体のコロニー形成によって、利用可能な栄養素の競合によって、並びに/又は特定の物質、例えば、腸のpHを低下させる過酸化水素、バクテリオシン、及び/もしくは乳酸及び酢酸を含む有機酸の産生によって予防され得る。宿主と腸内微生物との間の相互作用が宿主の健康及び福利にとって重要であることは十分に確立されている。腸内微生物叢は、宿主に栄養素を提供するが、免疫応答、及び宿主の免疫系の調節及び発達、並びに炎症の軽減、及びアレルギー応答の予防にも関与し得る代謝産物を生成する。
【0003】
プレバイオティクスは、細菌及び真菌などの有益な微生物の増殖又は活性をそれらの増殖及び/又は活性を選択的に刺激することによって誘導する化合物である。プレバイオティクスは、健康上の便益を与えるそのような宿主微生物によって選択的に利用される基質である(例えば、Gibson et al.2017;Nat.Rev.Gastro.&Hepathology,14:491-502を参照)。したがって、消化管内では、プレバイオティクスは、腸内マイクロバイオームの組成を変化させることができる。食餌性プレバイオティクスは、典型的には、消化されずに消化管の上部を通過し、大腸に定着する有利な細菌の基質として作用することによって、それらの増殖又は活性を刺激する非消化性繊維化合物である。プレバイオティクスとしての機能を決定するために、様々な化合物が試験されている。フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)及びトランスガラクトオリゴ糖(TOS)は、最も一般的なプレバイオティクスである。このように、特定のプレバイオティクスを摂取すると、ヒトの健康に関連する微生物の集団を増加させることによって免疫機能を改善することができ、動物及びヒトの試験では、プレバイオティクスが有害細菌の集団を減少させることができることが示されている。したがって、プレバイオティクスは、対象の腸内の天然微生物叢によって、又はプレバイオティクスと同時に摂取されたプロバイオティック細菌によって発酵された場合に健康上の便益を提供する成分である。
【0004】
特定の種類のプレバイオティクスとプロバイオティクスとを組み合わせると、特定の相乗効果が生じることが一般に知られている。特に、プレバイオティックGOSと乳酸桿菌(lactobacilli)及びビフィズス菌(bifidobacteria)などのプロバイオティック微生物とを組み合わせた効果が実証されている(例えば、YUTAKA KANAMORI,MD et al.,Digestive Diseases and Sciences,Vol.46,No.9(September 2001),pp.2010-2016((C)2001)を参照)。プレバイオティクスとプロバイオティクスとの間のシンバイオティック(synbiotic)効果は、対象の消化(GI)管内のプロバイオティックによるプレバイオティックの消費に起因することが実証されている。
【0005】
プロバイオティック乳酸産生細菌の製造手順は、典型的には標準化されており、糖、例えばグルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース又はデキストロースなどの炭水化物源を含む増殖培地中で細菌を発酵させる工程を伴う。発酵後、プロバイオティック細菌は、通常、凍結保護及び凍結又は凍結乾燥され、最終製品に包装される。
【0006】
プロバイオティック乳酸菌の摂取は、インビボで様々な効果を有する。そのような重要な効果の1つは、そのようなプロバイオティック乳酸菌の存在によって顕著に影響を受け得る、必須ミネラルのバイオアベイラビリティである。体内のミネラルの含有量は、食物摂取からのそれらの供給に主に依存し、それらは消化管内で主に吸収されるが、食物摂取によるミネラルの単なる供給は、十分なミネラルのバイオアベイラビリティを必ずしももたらさない。ミネラルのバイオアベイラビリティに影響を及ぼす主な要因は、食物中のミネラルの含有量、食物中及び消化管内のミネラル間の相乗的及び拮抗的相互作用、食物中の錯化化合物又はキレート化合物の存在、並びに生物の健康状態及びその年齢である。また、腸内微生物叢、プロバイオティクス及びプレバイオティクスは、ミネラルのバイオアベイラビリティに顕著に影響を及ぼし、それによって、そのようなミネラルの吸収を増加又は減少させることができる。
【0007】
特定の要件は種間で異なるが、ミネラルはすべての生物種にとって不可欠である。ミネラルは、ヒト生物では多数の重要な機能を有し、例えば、とりわけ、鉄、カルシウム及びマグネシウムを含む。ミネラル欠乏、すなわち、典型的には、摂取するミネラルが推奨されるRDA量未満であることによる体内の低量又は準最適量のそのようなミネラルは、疾患につながる可能性があり、ミネラル過剰になる可能性がある。したがって、最適な健康のために正しい比率で正しい量のミネラルを得ることが極めて重要である。ほとんどの自然食は、これらのミネラルを適切なバランスで提供するが、健康を維持するのに十分ではない状況がある。
【0008】
近年の試験は、微生物叢とミネラルとの相互作用に関する新しい情報をもたらし、カルシウム及び鉄の代謝に対する腸内細菌の影響に主に関するものであった。老年人口、並びに閉経後の女性、及び男性間の骨粗鬆症の有病率の増加を考えると、カルシウム代謝、したがって、骨代謝及びその改善に関する新しいデータは、この分野の発展にとって重要である。対照的に、鉄と腸内微生物叢との間の有害な相互作用に関する研究の結果は、鉄補充に関する新しい勧告を作成するために、このミネラルのバイオアベイラビリティに関してさらに試験することが極めて必要とされていることを示している。
【0009】
また、プロバイオティック細菌の経口投与に伴う一般的な問題は、それらが消化管内のそれらの予定された位置に不十分な量で到達すること、及び/又はそれらがそれらの効果をもたらす腸管のこれらの位置ではプロバイオティック細菌の活性が不十分であることである。したがって、消化管内のプロバイオティック細菌の生存率、生存能及び生着は、プロバイオティック製品を製造する者にとって重大な課題である。結果として、プロバイオティック細菌の投与量を増加させなければならず、及び/又は所望のプロバイオティック効果を得るためにはさらに頻繁な投与が必要である。これはさらに、プロバイオティック細菌が所望の効果を十分に提供しない場合、不必要なコスト、望ましくない摂取頻度、及びおそらく健康上の便益の低下を伴う問題につながる。したがって、投与量を増加させることなくプロバイオティック効果を改善することが望ましい。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、特定の具体的なプロバイオティック微生物、例えば、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の生存率、持続性及び/又はプロバイオティック効果を、そのようなプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をそれを必要とする対象又は患者に投与する際に改善する、さらに効率的な手段、方法及び治療法を提供することである。さらに、それを必要とする対象又は患者のミネラル欠乏、特に、マグネシウム、鉄及び/又はカルシウムから選択されるミネラルのミネラル欠乏を予防及び/又は治療することが特定の目的である。
【0011】
これらの目的は、以下に対処されるように本発明によって解決される。
【0012】
本発明は、以下及び独立請求項に定義されている。本発明のさらなる実施形態は、本明細書及び従属請求項に定義されている。
【0013】
第1の態様では、本発明は、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を調製する方法を提供する。方法は、以下の工程を含む:
a)プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をGOSの存在下で培養し、それによって、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングする工程、及び
b)増殖培地からプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を採取する工程。
【0014】
本発明の方法の工程a)では、GOSの存在下でプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を培養すると、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株が形成される。
【0015】
第2の態様によれば、本発明は、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を含む組成物を提供する。プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株は、GOSの存在下でL.ロイテリ(L.reuteri)株を培養することによって調製されている。
【0016】
第3の態様では、本発明は、健康な対象の消化管内のプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の生存率、持続性及び/又はプロバイオティック効果を増加させるか又は増強するための、本発明に従って調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量の、又は本発明による組成物の非治療的使用を提供する。
【0017】
第4の態様によれば、本発明は、医薬品として使用するための、本発明に従って調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を含む組成物を提供する。
【0018】
第5の態様によれば、本発明は、それを必要とする対象の疾患の予防及び/又は治療における(治療的)使用のための、本発明に従って調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を含む組成物を提供する。対象は、この態様では、腸バリアの破壊、又は粘膜内層の破壊に罹患している。
【0019】
第6の態様によれば、本発明は、それを必要とする対象のミネラル欠乏の予防及び/又は治療に使用するための、本発明に従って調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を含む組成物を提供する。
【0020】
第7の態様によれば、本発明は、骨喪失の予防及び/又は治療に使用するための、本発明に従って調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を含む組成物を提供する。
【0021】
第8の態様によれば、本発明は、小児の骨又は歯の成長及び発達を促進するのに使用するための、本発明に従って調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を含む組成物を提供する。さらなる好ましい実施形態は、本明細書中以下及び従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ヒト消化系の動的インビトロシミュレータモデル、並びに小腸及び結腸インキュベーションをシミュレートする実験的手法である、short colonic SHIME(登録商標)モデルの図である。SHIME(登録商標)モデルは、様々な腸領域を代表する条件下で複雑な腸内微生物生態系の培養を可能にする。
図2】short colonic SHIME(登録商標)モデルにおいて本発明のプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を使用した結腸内の24時間及び48時間の時点でのマグネシウム及びカルシウムの溶解度を示す。結果は、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株が結腸内でマグネシウム及びカルシウムの溶解度を増強することを示す。これは、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株を、それを必要とする対象のマグネシウム及びカルシウムの吸収を促進するために使用することができることを示唆している。
図3】short colonic SHIME(登録商標)モデルにおいて本発明のプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を使用した48時間の時点での結腸内の鉄のバイオアクセシビリティを示す。結果は、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株が結腸内で鉄のバイオアクセシビリティを増強することを示す。これは、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株を、それを必要とする対象の鉄吸収を促進するために使用することができることを示唆している。
図4】細菌の酸ストレス耐性を示す。結果は、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株の方が、酸ストレスに対して耐性が高いことを示している(正規化された値)。結果は、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株の方が、消化管内で高い生存率及び持続性を有することを示唆している。
図5】プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株に関する胆汁ストレス耐性を示す。グラフは、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株が、胆汁に対して抵抗性の増加を有することを示す(正規化された値)。結果は、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)の方が、消化管内で高い生存率及び持続性を有することを示唆している。
図6】プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株が、毒素原性大腸菌(Escherichia coli)(ETEC)の有害作用からの上皮完全性の改善された保護をもたらすことを示す。結果は、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)が、消化管内で上皮バリアの保護効果を有することを示唆している。さらに、結果はまた、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)が、このプロセスに不可欠な細胞の損傷の減少を考慮すると、ミネラル吸収を改善することを示唆している。
図7】アルカリホスファターゼ(ALP)活性を測定する、7日目の骨芽細胞の初期分化を示す。結果は、L.ロイテリ(L.reuteri)株のプレコンディショニングが骨芽細胞内でALP活性の増加をもたらしたことを示しており、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株が骨芽細胞分化を刺激することができることを示唆している。
図8】21日目の時点での分化した骨芽細胞によって発現されるミネラル化のマーカーである、(mRNAレベルでの)オステオカルシン(oc)発現を示す。結果は、oc発現が、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株によって増強されるが、(プレコンディショニングされていない)L.ロイテリ(L.reuteri)株によっては増強されないことを示している。これは、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株が骨ミネラル化を刺激することができることを示唆している。
図9】4日目の時点での細胞移動度の尺度であるMC3T3遊走速度を示す。結果は、細胞遊走が、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)によって有意に減少するが、プレコンディショニングされていないL.ロイテリ(L.reuteri)株によっては有意に減少しないことを示している。これは、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株が骨芽細胞分化を刺激することができることを示唆している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を製造する際の発酵中に特定の基質成分を使用して、哺乳動物又は鳥類におけるラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)(L.ロイテリ(L.reuteri))株の生存率、持続性及び/又はプロバイオティック効果を増強する方法を提供する。本発明の発明者らは、本明細書に記載されるように、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の培養中にガラクトオリゴ糖(GOS)を使用すること、いわゆるGOSによるプレコンディショニングを含む方法を開発し、これは驚くべきことに、例えば、ミネラルのミネラル溶解度、アクセシビリティ及び/もしくは吸収の増加によって、消化管内の上皮バリア完全性の保護効果の改善によって、並びに/又はプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の投与時の対象もしくは患者の骨形成及び/もしくは骨ミネラル化の改善によって、L.ロイテリ(L.reuteri)株のプロバイオティック効果の増加、特にミネラルのバイオアベイラビリティの増加をもたらす。これらの効果は、驚くべきことに、プレバイオティックとしてのGOSと、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株とを、それを必要とする対象又は患者に併用投与しなくても得られる。したがって、本発明の目的は、GOSを用いてそのようなプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を調製する方法、とりわけ、哺乳動物又は鳥類の消化管内のミネラル溶解度、アクセシビリティ及び/又は吸収を増加させるためのプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の非治療的及び治療的使用に関する。
【0024】
驚くべきことに、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株はまた、生存率及び/又は持続性の改善、特に、粘液接着能の改善、胆汁及び胃酸に対するストレス耐性の改善を有することが見出された。これらの改善された特性はまた、プレバイオティック化合物の存在を必要とせずに、L.ロイテリ(L.reuteri)株のプロバイオティック効果をさらに改善し得る。そのような改善は、特に、本明細書でプレコンディショニング工程と呼ばれる、L.ロイテリ(L.reuteri)株のための特定の発酵成分としてのGOSの使用に起因する。生存率、持続性及び/又はプロバイオティック効果の改善、例えば、この追加の工程によって得られるL.ロイテリ(L.reuteri)のミネラル(鉄、マグネシウム及びカルシウム)溶解度の誘導、並びに生存率の改善、粘液接着能の改善、胆汁及び胃酸に対するストレス耐性の改善、上皮バリア完全性の保護効果の改善、骨形成及び/又は骨ミネラル化の改善は、投与量及び/もしくは投与頻度を減少させることを可能にするか、又は求められる健康効果を得るために必要な同じ用量のプロバイオティックによって達成される効果を改善する。
【0025】
したがって、本発明はまた、消化管内のミネラル溶解度、バイオアクセシビリティ、ひいてはミネラル吸収も増加させる溶液、組成物及び使用を提供することを目的とする。詳細には、そのような溶液は、それを必要とする対象、例えば、ミネラル取込みの増加を必要とする対象に投与される、ガラクトオリゴ糖(GOS)によってプレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株を含む組成物である。ミネラル溶解度、アクセシビリティ及び吸収の増加は、消化管、例えば、十二指腸、空腸、回腸及び/又は結腸内で起こる。
【0026】
本発明はまた、そのようなプレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株を組成物に添加することによって、消化管内のミネラル溶解度及びバイオアベイラビリティ並びにミネラル吸収の増加も達成され得るように、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングする方法を提供することを目的とする。
【0027】
上記を考慮して、以下が開示される。
【0028】
プロバイオティックラクトバチルス・ロイテリ(LACTOBACILLUS REUTERI)細菌株をプレコンディショニングする方法
第1の態様によれば、本発明は、プレコンディショニングされたプロバイオティックラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)株を調製する方法を提供する。方法は、以下の工程を含む:
a)プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をGOSの存在下で培養(cultivating)又は培養(culturing)し、それによって、L.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングする工程、及び
b)増殖培地からプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を採取する工程。
【0029】
本発明の方法の工程a)では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をGOSの存在下で培養し、それによって、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株を形成する。本発明の文脈では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の「プレコンディショニング」という用語は、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を産生するプロセス中にGOSを用いてプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を増殖させる、例えば、培養する(cultivating)、培養する(culturing)又は発酵させることを好ましくは意味する。GOSの存在下でのプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の培養は、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の形成をもたらす。
【0030】
したがって、本発明の方法は、第1の工程として、a)プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の細菌をGOSの存在下で培養し、それによって、L.ロイテリ(L.reuteri)株の細菌をプレコンディショニングすることを好ましくは含む。本発明の文脈では、用語「培養(cultivation)」、「培養する(culturing)」及び「発酵」は、区別なく使用される。
【0031】
次いで、工程b)では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株のプレコンディショニングされた細菌を増殖培地から採取する。用語「プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株」は、GOSを用いたプレコンディショニング工程を含む本発明の方法によって産生されるか、得られるか、又は得ることができるプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を指す。これに対応して、用語「プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株のプレコンディショニングされた細菌」は、GOSを用いたプレコンディショニング工程を含む本発明の方法によって産生されるか、得られるか、又は得ることができるプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の細菌を指す。
【0032】
本発明全体を通して使用されるラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)株は、一般に、任意のL.ロイテリ(L.reuteri)株、さらに好ましくは、任意の市販のL.ロイテリ(L.reuteri)株であり得る。これに関連して、用語「ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)株」及び「ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)細菌」は、同義的に使用され得る。これにより、過去数十年の間にDNA分析ツールがさらに洗練され、科学者が多くの新たな細菌種を発見することが可能になっただけでなく、ラクトバチルス(Lactobacillus)属の下に歴史的にグループ化された種が多様すぎて命名法の慣習に適合しなかったことを認識することが可能になったことに留意されたい。したがって、プロバイオティック群を正確かつ体系化した状態に保つために、ラクトバチルス(Lactobacillus)属は、23の新規の属を含む25の異なる属に分けられた。その結果、近年多くのプロバイオティクスに新たな属名が付与されている。したがって、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)の代替的な属名は、リモシラクトバチルス・ロイテリ(Limosilactobacillus reuteri)である。再分類プロセスは極めて近年のものであったため、本出願では、明確にするために、かつての属命名法、すなわち、ラクトバチルス(Lactobacillus)を使用する。ただし、改訂された属命名法及び代替名は、利用可能な再分類ツールを使用すれば誰でも容易に得ることができるはずである。
【0033】
組成物中に提供される目下好ましい細菌は、好ましくは本明細書で言及されるように、少なくとも1つのL.ロイテリ(L.reuteri)株、又は複数、すなわち、少なくとも2つのL.ロイテリ(L.reuteri)株の細菌である。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株は、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 5289、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 6475、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32846、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32847、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32848、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32849、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32465、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33632、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33633、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33634、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33635、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32231、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32232、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6127及びL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 4659からなる群から選択される少なくとも1つのL.ロイテリ(L.reuteri)株である。
【0035】
代替的又は追加的に、本明細書で使用されるL.ロイテリ(L.reuteri)株は、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 5289、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 6475、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32846、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32848、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32849、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32465又はL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 4659から選択される少なくとも1つのL.ロイテリ(L.reuteri)株から提供され得る。
【0036】
目下好ましいL.ロイテリ(L.reuteri)株は、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938である。
【0037】
特定の実施形態では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株は、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131及びL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475からなる群から選択され、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131及びL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475からなる群から好ましくは選択される。したがって、特定の実施形態では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株はL.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131である。別の特定の実施形態では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株はL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475である。
【0038】
代替的又は追加的に、本明細書で使用されるL.ロイテリ(L.reuteri)株は、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 5289、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 6475、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32846、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32848、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32849、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32465又はL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 4659から選択される少なくとも1つのL.ロイテリ(L.reuteri)株から提供され得る。
【0039】
ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)DSM 17938は、ブダペスト条約に従って、2006年1月30日にDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(Mascheroder Weg 1b,D-38124 Braunschweig,Germany)に寄託された。
【0040】
ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)DSM 27131は、ブダペスト条約に従って、2013年4月18日にLeibniz Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweig,Germany)に寄託された。
【0041】
ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)DSM 32846、DSM 32847、DSM 32848及びDSM 32849は、ブダペスト条約に従って、2018年7月4日にLeibniz Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweig,Germany)に寄託された。
【0042】
ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)DSM 32465は、ブダペスト条約に従って、2017年3月21日にLeibniz Institute DSMZ-German collection of Microorganisms and Cell Cultures(Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweig,Germany)に寄託された。
【0043】
ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)DSM 33632、DSM 33633、DSM 33634及びDSM 33635は、ブダペスト条約に従って、2020年9月9日にLeibniz Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweig,Germany)に寄託された。
【0044】
ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)DSM 32231及びDSM 32232は、ブダペスト条約に従って、2015年12月11日にLeibniz Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweig,Germany)に寄託された。
【0045】
ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)ATCC PTA 5289は、ブダペスト条約に従って、2003年6月25日にAmerican Type Culture Collection(10801 University Blvd.,Manassas,VA 20110-2209,U.S.)に寄託された。
【0046】
ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)ATCC PTA 6475は、ブダペスト条約に従って、2004年12月21日にAmerican Type Culture Collection(10801 University Blvd.,Manassas,VA 20110-2209,U.S.)に寄託された。
【0047】
ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)ATCC PTA 4659は、ブダペスト条約に従って、2002年9月11日にAmerican Type Culture Collection(10801 University Blvd.,Manassas,VA 20110-2209,U.S.)に寄託された。
【0048】
ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)ATCC PTA 6127は、ブダペスト条約に従って、2004年7月22日にAmerican Type Culture Collection(10801 University Blvd.,Manassas,VA 20110-2209,U.S.)に寄託された。
【0049】
本明細書で使用される用語「GOS」は、「ガラクトオリゴ糖」を意味する。ガラクトオリゴ糖(GOS)は、本明細書で使用される場合、典型的には、還元末端にガラクトース又はグルコースを有するβ結合ガラクトース部分からなる。そのようなGOSは、β-(1→2)、β-(1→3)、β-(1→4)又はβ-(1→6)結合ガラクトース部分を含有し、3~8ガラクトース単位の重合度(DP)を有し得る。したがって、GOSという用語は、好ましくは少なくとも3つのガラクトース単位を含むオリゴ糖、さらに好ましくは少なくとも4つのガラクトース単位を含む、好ましくは3~8ガラクトース単位の重合度(DP)を有するオリゴ糖と呼ばれる。したがって、工程a)で増殖培地に添加されるGOSは、3~8の重合度(DP)を有することが好ましい。
【0050】
オリゴ糖は、一部の哺乳動物、例えば、ウシ及びヒトの乳中に天然に存在する。GOSは、市販されており、β-ガラクトシダーゼのトランス-ガラクトシダーゼ活性によるラクトースからの生合成プロセスを介して合成され得る。生合成手順では、GOS形成は、高濃度のラクトース又はラクツロース、不完全なラクトース代謝回転、低い水分活性、及びトランスガラクトシル化を優先する酵素の使用によって通常促進される。そのようなプロセスから得られるGOSの結合型は、生合成に使用される酵素に特異的である。
【0051】
プロバイオティック細菌を増殖させるためのGOS源として本明細書で有利に使用され得る炭水化物の混合物の1つの特定の種類は、GOSと牛乳オリゴ糖との混合物である。特に、GOSと3’-シアリルラクトース(3’-SL)及び/又は6’-シアリルラクトース(6’-SL)との混合物が好ましく使用される。実際、そのような混合物は、ヒトの乳に類似するいくつかのオリゴ糖を含有し、これは、本発明の組成物が乳児用調製粉乳として、又は乳児用栄養補給剤として使用される場合に特に有利である。そのような有利な効果は、例えば、Simeoni et al.;“Gut microbiota analysis reveals a marked shift to bifidobacteria by a starter infant formula containing a synbiotic of bovine milk-derived oligosaccharides and Bifidobacterium animalis subsp.lactis CNCM I-3446”;Environ Microbiol,2016,18(7):2185-2195に記載されている。そのような組成物は、ホエー透過物を濃縮して濃縮ウシ乳オリゴ糖組成物を得、GOSを添加するか、又はβ-ガラクトシダーゼの作用によるラクトースの加水分解からインサイチュでGOSを生成することから典型的に得ることができる。
【0052】
プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングするために本発明の方法の工程a)で使用されるGOS源は、本質的に純粋なGOS(すなわち、少なくとも90%のGOSを有する成分)の形態で、又はGOSを含む混合物、例えば、炭水化物の混合物の一部として提供され得る。
【0053】
十分な量のGOSが増殖培地中に提供されることが好ましい。したがって、一実施形態によれば、GOS源は、工程a)では、増殖培地中の少なくとも0.2重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、さらになお好ましくは少なくとも0.75重量%のGOSの量で増殖培地に典型的に添加される。好ましい実施形態では、GOSは、増殖培地中の最大8重量%のGOS、例えば、最大7重量%のGOS、最大6重量%のGOS、又はさらには最大5重量%のGOS、さらに好ましくは最大4重量%のGOS、又はさらには最大3%のGOS、最大2重量%のGOS、又は最大1重量%のGOSの量で提供される。GOSの重量%は、増殖培地に基づいて好ましくは計算される(%w/w)。これらの上限範囲及び下限範囲の任意の組合せが本明細書に包含される。さらに好ましくは、GOSは、0.2重量%~8重量%、又はさらには0.2重量%~7重量%、又は0.2重量%~6重量%の範囲、さらに好ましくは0.5重量%~8重量%、又はさらには0.5重量%~7重量%、又は0.5重量%~6重量%の範囲、さらになお好ましくは0.75重量%~8重量%、又はさらには0.75重量%~7重量%、又は0.75重量%~6重量%の範囲、最も好ましくは0.75重量%~7重量%の範囲、0.75重量%~6重量%の範囲、又はさらには0.75重量%~5重量%の範囲、例えば、0.75重量%~3重量%、又は0.75重量%~4重量%の範囲で増殖培地に添加される。好ましくは、GOSは、増殖培地に基づいて好ましくは計算して(%w/w)、0.2重量%~8重量%の範囲、好ましくは0.5重量%~7重量%の範囲、さらに好ましくは0.75重量%~6重量%の範囲、最も好ましくは0.75重量%~5重量%の範囲、例えば、0.75重量%~4重量%、又は0.75重量%~3重量%の範囲で増殖培地に添加される。GOSの添加は、工程a)におけるプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の培養の開始時、途中もしくは終了時に、及び/又は一度に、段階的にもしくは連続的に好ましくは行われ得る。
【0054】
炭水化物の混合物がGOS源として使用される場合、そのような混合物中のGOSの量は、GOSを含有する混合物の乾燥重量に基づいて好ましくは計算して、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%、さらに好ましくは少なくとも40重量%、さらになお好ましくは少なくとも45重量%、最も好ましくは少なくとも48重量%であることが好ましい。
【0055】
一実施形態では、GOSは、工程a)におけるプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株のための基質、例えば、発酵基質として使用される。したがって、そのような実施形態では、GOSは、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の培養又は発酵中の炭素源として使用される。
【0056】
細菌が発酵中に炭素源としてGOSのみを消費する必要はないが、GOS源中のGOSの高い割合は、他の炭水化物の消費よりも発酵中の細菌によるGOSの消費を促進し、プレコンディショニング効果の改善をもたらす。二糖(例えば、ラクトース)などのさらに小さな炭水化物も存在し得、プレコンディショニング効果を補助する細菌によって消費され得る。したがって、GOS源が、GOSを含有する混合物の乾燥重量に基づいて好ましくは計算して、最大55重量%、好ましくは最大50重量%、さらに好ましくは最大45重量%、最も好ましくは最大42重量%の単糖もしくは二糖、及び/又は40重量%以下、好ましくは30重量%以下のラクトースを含むことも好ましい。一例として、GOS源として使用される炭水化物の混合物は、混合物、並びにラクトース、グルコース及び/又はガラクトース、及び任意に3’-SL及び/又は6’-SLによって形成される残部について上記で定義された量のGOSを含み得る。
【0057】
一実施形態では、培養培地は、電子受容体、例えば、フルクトース、シトラート、グリセロール及び/又は1,2-プロパンジオールも含む。
【0058】
特定の実施形態では、培養培地は、例えば、電子受容体として作用するフルクトースも含む。例示的であるが非限定的な例では、培養培地は、培養培地の乾燥重量に基づいて計算して、少なくとも0.2重量%のフルクトース、好ましくは少なくとも0.5重量%のフルクトース、さらに好ましくは少なくとも1重量%のフルクトース、さらになお好ましくは少なくとも1.5重量%のフルクトースを含み得る。これに対応して、例示的であるが非限定的な例では、培養培地は、16重量%超のフルクトース、好ましくは14重量%以下のフルクトース、さらに好ましくは12重量%以下のフルクトース、さらになお好ましくは10重量%以下のフルクトースを含まないことが好ましい。これらの上限範囲及び下限範囲の任意の組合せが本明細書に包含される。一実施形態では、培養培地は、0.25:1~5:1の範囲内、好ましくは0.5:1~4:1の範囲内、さらに好ましくは0.75~2.5:1の範囲内で選択される、電子受容体(例えば、フルクトース)とGOSとの重量%比を含む。特に、電子受容体(例えば、フルクトース)とGOSとの好ましい重量%比は、約1:1~約2:1の範囲内である。
【0059】
さらなる実施形態によれば、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を調製する方法の工程a)では、増殖培地へのGOSの添加は、培養工程の任意の時点、例えば、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の培養の開始時に、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の培養工程a)中に、さらに好ましくはプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の培養の開始時に、一度に、段階的に又は連続的に行われ得る。代替的に、又はさらには追加的に、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を調製する方法の工程a)では、増殖培地へのGOSの添加は、培養工程a)の途中又は終了時であってもよい。
【0060】
培養工程a)は、当業者に周知の方法で行われる。工程a)における培養は、滅菌標準増殖培地に規定された量の細菌(cfu(コロニー形成単位))を接種し、続いて、規定された温度(通常37℃)及びpH下でインキュベートする工程を含む。これに関連して、滅菌標準増殖培地の接種を開始するための細菌の規定された量(cfu)は、当業者によって当技術分野の一般的な知識及び実施に従って決定され得る。当業者が標準増殖培地を用いて同じ株の培養に使用するものと比較して、好ましくは培養条件を変更することなく、上記のGOSを含む増殖培地を用いて好適な収率を得ることができる。
【0061】
本発明の工程a)でL.ロイテリ(L.reuteri)株を培養する/発酵させるための標準増殖培地は、乳酸桿菌(lactobacilli)(LAB)に使用される任意の公知の標準増殖培地、例えば、MRS培地、又は任意のさらなる好適な培地であり得る。そのような標準増殖培地は、好ましくは市販されているが、周知の標準的なレシピに従って化合物を添加することによって生成されてもよい。L.ロイテリ(L.reuteri)株のための標準増殖培地は、炭水化物、例えば、デキストロース、スクロース、マルトース、フルクトース又はラクトースから選択される単糖、様々な窒素源、例えば、ペプトン、酵母抽出物、牛肉抽出物又はホエータンパク質、ミネラル、主にMn2+及びMg2+、並びに緩衝剤、例えば、LAB培地中で一般的に使用される緩衝液である酢酸ナトリウム(CHCOONa)、クエン酸三ナトリウム(Na)又はジナトリウムグリセロホスファート(CNaP)を典型的に含有し得る。緩衝活性を有する標準増殖培地に使用されている他の成分には、リン酸二ナトリウム(NaHPO)、クエン酸アンモニウム(NH)、リン酸三ナトリウム(NaPO)、重リン酸カリウム(potassium biphosphate)(KHPO)、リン酸三マグネシウムMg(PO、炭酸カルシウム(CaCO)及びリン酸二カリウム(KHPO)が含まれ得る。そのような標準増殖培地はまた、レシチン又はTween(登録商標)(例えば、Tween(登録商標)20、80及び85)などの広範囲の増殖因子、界面活性剤を含有し得る。培養/発酵は、生成される株に応じて嫌気的又は好気的条件下で行われ得るが、好ましくは嫌気的条件下で行われ得る。また、pHは、特定の株が増殖するのに最良であることが知られている条件に応じて制御されてもされなくてもよい。培養工程の温度及び期間は、株ごとに可変であり、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の培養の分野の当業者にも周知である。
【0062】
一実施形態によれば、本発明の方法の工程a)におけるプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の培養/発酵は、かなりの期間にわたって行われて、GOSの存在下で、典型的には少なくとも1時間の期間にわたって、好ましくは5~18時間の期間にわたって、同様に好ましくは7~14時間、さらに好ましくは10~13時間の期間にわたって、さらになお好ましくは約12時間の期間にわたって、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株のプレコンディショニングを可能にする。
【0063】
さらに、さらなる実施形態によれば、本発明の方法の工程a)におけるプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の培養/発酵は、25~45℃、好ましくは30~40℃の温度、さらになお好ましくは35~39℃、例えば、約37℃の温度で行われる。
【0064】
さらに、別の実施形態では、本発明の方法の工程a)におけるプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の培養/発酵は、3.0~7のpHで行われる。培養工程a)中のプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株のプレコンディショニング中のpHは、培養工程a)を通して制御されないか、又は一定の値に設定されてもよく、典型的には、培養工程a)中にモニタリング及び調整される。したがって、特にプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株のプレコンディショニング中にpHが制御されない場合、pHは3.0~7であり得る。あるいは、培養工程a)中にpHが制御される場合、pHは、約5.0~7.0、例えば、約5.0~6.0、約5.5~6.5(例えば、約6.0±0.2)又は約6.0~7.0(例えば、約6.6±0.2)の範囲に調整されてもよく、さらに好ましくは、pHは、約5.5~6.5の範囲に調整されてもよく、さらになお好ましくは、pHは、約6.0±0.4の範囲に調整されてもよく、最も好ましくは、pHは、約6.0±0.2の範囲に調整されてもよい。
【0065】
本発明の方法の工程a)におけるプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の培養/発酵の後、それによりプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株は、工程b)で採取される。増殖培地から細菌細胞を分離することを目的とする採取工程はまた、例えば、細菌を濃縮すること、遠心分離、濾過、膜濾過、デカンテーション、単離、精製など、好ましくはプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を遠心分離又は濃縮することによって、当業者に周知の方法で行われる。典型的には、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の採取は、工程a)における培養/発酵について上記で定義されたように少なくとも1時間の期間の後に工程b)で行われる。工程b)における採取は、単離された、又は少なくとも部分的に精製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を好ましくはもたらす。
【0066】
工程b)でプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を採取した後、採取された細胞は、典型的には(培養/発酵後に)微量の増殖培地を除去するために、さらなる処理の前に任意の工程c)で洗浄され得る。洗浄は、生理食塩水、ブライン又は任意のさらなる好適な液体のいずれかを用いて行われ得る。
【0067】
工程b)に従って増殖培地からプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を採取した直後に、又は任意の洗浄工程c)の後に、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株は、乾燥工程d)に供されてもよい。そのような乾燥工程d)は、当業者に公知の任意の方法、例えば、噴霧乾燥、流動床乾燥、空気対流乾燥、大気乾燥、ローラー乾燥又は凍結乾燥(freeze drying)、凍結乾燥(lyophilizing)、さらに好ましくは噴霧乾燥又は凍結乾燥によって行われ得る。噴霧乾燥は、例えば、国際公開第2017/001590号に記載されているように、保護剤の存在下で行われてもよい。
【0068】
任意に、増殖培地から採取した後及び/又はプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を洗浄した後に得られるプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株は、当業者に公知であるように、使用される乾燥方法及び乾燥させる細菌に応じて適宜、乾燥工程の前に、保護剤、例えば、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤(lyoprotectant)及び/又は担体とさらに混合されてもよい。したがって、好ましくは乾燥工程d)の前に、採取されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を保護剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤及び/又は担体を用いて処理する。そのような保護剤及び/又は担体には、グリセロール、脱脂乳、血清アルブミン、ペプトン、酵母抽出物、サッカロース、グルコース、ソルビトール、麦芽エキス、トレハロースなどが典型的に含まれる。市販の凍結保護剤には、例えば、凍結保護剤「Unipectine(商標)RS 150などが含まれるか、又は市販の凍結保護剤は、欧州特許第3016511号明細書、米国特許第2014/0004083号明細書、米国特許第2016/0298077号明細書などに記載されている通りである。
【0069】
代替的又は追加的に、増殖培地からの採取後、もしくは洗浄後、又はさらには乾燥後に得られる、すなわち、工程b)、c)又はd)のいずれかの後に得られるプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株は、さらなる保存及び/又は使用のために、例えば、一般的なカプセル化剤、例えば、アルギナート、アルギナート/プルラン、デンプン、キサンタン、キサンタンジェランガム混合物、ゼラチン、酢酸フタル酸セルロース、キトサン、又は任意のさらなる好適なカプセル化材料を使用してプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を含有するミクロスフェアを形成することによってカプセル化され得る。カプセル化は、周知であり、当業者によって行われ得る。
【0070】
プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.REUTERI)株を含む組成物
第2の態様によれば、本発明は、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を含む組成物を提供する。プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株は、GOSの存在下でプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を培養することによって調製されているか又は得られている。GOSの存在下でのプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株のそのようなプレコンディショニングは、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株を調製するための本発明の第1の態様の下で本明細書に記載の本発明の方法に従って典型的に行われる。既に上記で詳細に開示されているように、GOSの存在下でのプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の培養/発酵は、それに応じてプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングするのに十分な時間にわたって、例えば、少なくとも1時間の期間にわたって、好ましくは本明細書で定義されるプロセスに従って好ましくは行われる。
【0071】
本発明の関連する態様は、GOSの存在下でプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を培養することによって得られる又は得ることができるプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を定義する。
【0072】
この第2の態様による組成物は、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を含むプロバイオティック組成物である。
【0073】
前述のように、L.ロイテリ(L.reuteri)株は、特に好ましくは、L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 5289、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 6475、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32846、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32847、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32848、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32849、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33632、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33633、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33634、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33635、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32465、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32231、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32232、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6127及びL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 4659を含む又はそれらからなる群から好ましくは選択され、L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 5289、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 6475、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32846、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32848、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32849、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32465及びL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 4659を含む又はそれらからなる群からさらに好ましくは選択される、上記で定義された少なくとも1つのL.ロイテリ(L.reuteri)株又は複数のL.ロイテリ(L.reuteri)株であり、最も好ましくは、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株は、DSM 17938の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)株である。
【0074】
特定の実施形態では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株は、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131及びL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475からなる群から選択され、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131及びL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475からなる群から好ましくは選択される。したがって、特定の実施形態では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株はL.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131である。別の特定の実施形態では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株はL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475である。
【0075】
一実施形態では、L.ロイテリ(L.reuteri)株は、特に好ましくは、L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 5289、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 6475及びL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 4659からなる群から好ましくは選択される、上記で定義された少なくとも1つのL.ロイテリ(L.reuteri)株又は複数のL.ロイテリ(L.reuteri)株である。
【0076】
一実施形態では、L.ロイテリ(L.reuteri)株は、特に好ましくは、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32846、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32848、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32849、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131及びL.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32465からなる群から好ましくは選択される、上記で定義された少なくとも1つのL.ロイテリ(L.reuteri)株又は複数のL.ロイテリ(L.reuteri)株である。
【0077】
典型的には、本明細書で定義される、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の「有効量」は、典型的には10cfu~1012cfuの量、典型的には10cfu~1011cfuの量、好ましくは10cfu~1010cfu、又は10cfu~10cfuの量、同様に好ましくは10cfu~10cfu、10cfu~10cfuの量のプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を含み得る。あるいは、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株の量は、10cfu~1010cfuの量、又は10cfu~10cfuの量であり得る。好ましい量は、約10総cfu、例えば、10~10cfu、又は10~10cfuである。
【0078】
プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の上記量は、好ましくは、1日用量当たりのプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の量である。例えば、組成物の剤形又は投与量単位は、上記量のプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を好ましくは含む。
【0079】
プロバイオティック組成物は、本明細書で前述の乾燥形態のプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を含むことができる。そのような場合、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株は、好ましくは噴霧乾燥形態又は凍結乾燥形態である。したがって、一実施形態では、組成物は、凍結乾燥又は噴霧乾燥されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を含む。
【0080】
本明細書で定義されるプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を含む本発明の組成物は、プロバイオティック細菌が組み込まれ得る任意の種類の組成物、例えば、食品、飲料、動物飼料製品、ヒトもしくは動物用の栄養補給剤、医薬組成物又は化粧品組成物であり得る。さらに好ましくは、本発明の組成物は、栄養組成物、機能性食品(functional food product)などの食品、機能性飲料製品などの飲料、医薬製剤、栄養補助食品、栄養補給剤、機能性食品(nutraceutical)及びそれらの組合せからなる群から好ましくは選択される投与可能な形態で提供され得る。一実施形態では、投与可能な形態は、乳製品、乳系製品及びホエータンパク質系飲料からなる群から選択される。
【0081】
本発明の組成物は、固体又は液体であり得る。好ましくは、本発明の組成物は、粉末、小袋、錠剤、カプセルの形態で存在するか、又は油剤、エマルジョン、例えば、水中油型エマルジョン(o/wエマルジョン)、油中水型エマルジョン(w/oエマルジョン)などの形態であってよい。粉末形態で存在する場合、本発明の組成物は、最終消費者によって固体(粉末形態など)もしくは半固体形態(例えば、ペーストの形態など)で使用されること、又は代替的に、使用前に液体に再構成されることが意図され得る。
【0082】
本明細書で定義される食品及び飲料には、栄養及び/又は楽しみを提供するために、ヒトが経口摂取することを意図したあらゆる製品が含まれ得る。「食品」という表現、及び「飲料」という用語は、対象に栄養を与える組成物を通常意味する。この「食品」は、経口的又は腹腔内的に通常摂取されるべきであり、脂質又は脂肪源及びタンパク質源を含むことができる。同様に、「飲料」は、経口的に通常摂取されるべきであり、液体又は半液体であり、脂質又は脂肪源及びタンパク質源を含むことができる。
【0083】
本明細書で定義される食品及び飲料には、例えば、好ましくはヒトの摂取用、例えば、乳児及び/もしくは幼児用、妊娠中もしくは授乳中の女性、もしくは妊娠を望む女性用、健康状態が悪いために特別な栄養を必要とする個体用、又は高齢者用の栄養組成物が含まれ得る。さらに好ましくは、栄養組成物は、乳児用調製粉乳、乳児用シリアル、フォローアップ調製粉乳(follow-up formula)又はフォローオン調製粉乳(follow-on formula)、グローイングアップミルク(growing-up milk)、機能性乳、乳児食、乳児用シリアル組成物、並びに妊娠中及び授乳中の女性用又は妊娠を望む女性用の乳製品から選択される。食品及び飲料の他の例には、甘味及び風味のあるスナック、粉末飲料、シリアル製品及び乳製品、例えば、乳製品、ホエータンパク質系製品などが含まれる。特定の一実施形態によれば、本発明の組成物は、乳児用調製粉乳、フォローオン調製粉乳、グローイングアップミルク、又は妊娠中もしくは授乳中の女性用の製品である。さらなる特定の一実施形態では、本発明の組成物は乳児用調製粉乳であり得る。
【0084】
本発明の組成物はまた、動物用食品又は動物用(哺乳動物又は鳥類など)栄養補給剤の形態であり得る。好ましくは、動物は哺乳動物である。動物の例には、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、魚類、鳥類(家禽など)などが挙げられる。
【0085】
本明細書で使用される「乳児用調製粉乳」という表現は、生後数ヶ月間の乳児による特定の栄養用途を意図し、このカテゴリーの人の栄養要求を単独で満たす食料品を指す(参考文献:Article 2(c)of the European Commission Directive 91/321/EEC 2006/141/EC of 22 December 2006 on infant formulae and follow-on formulae;Reg 609/2013 art 2.1.c and Reg 2016/127)。また、乳児を対象とし、Codex Alimentarius(Codex STAN 72-1981)及びInfant Specialities(Food for Special Medical Purposeを含む)に定義されている栄養組成物を指す。「乳児用調製粉乳」という表現は、「スターター乳児用調製粉乳(starter infant formula)」及び「フォローアップ調製粉乳」又は「フォローオン調製粉乳」の両方を包含し、未熟児に提供される組成物を含む。
【0086】
「フォローアップ調製粉乳」又は「フォローオン調製粉乳」は、6ヶ月目以降に与えられる乳児栄養組成物である。これは、このカテゴリーの人の漸進的に多様化する食事における主要な液体要素を構成する。
【0087】
「乳児食」という表現は、生後数年間の乳児又は幼児による特定の栄養用途を意図した食料品を意味する。
【0088】
本発明の文脈では、用語「乳児」は、12月齢未満の小児を意味する。また、「幼児(young child)」という表現は、幼児(toddler)とも呼ばれる1~3歳の小児を意味する。「乳児用シリアル組成物」という表現は、生後数年間の乳児又は幼児による特定の栄養用途を意図した食料品を意味する。
【0089】
栄養補助食品又は栄養補給剤は、上述のように、粉末又は小袋又は錠剤又はカプセルの形態の液体、例えば、冷蔵液体、油剤、エマルジョン、例えば、水中油型エマルジョン(o/wエマルジョン)、油中水型エマルジョン(w/oエマルジョン)などの形態で典型的に存在する。好ましくは、栄養補助食品又は栄養補給剤は、粉末、小袋、錠剤、カプセル又は油剤の形態である。粉末サプリメントは、液体に溶解される、又は食品もしくは飲料に振りかけられるサプリメントを典型的に包含する。そのようなサプリメントは、それを摂取する対象に追加の栄養素及び/又は健康上の便益、並びに本明細書で定義され調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株などの他の有益な成分を提供することが意図される。したがって、本発明によるサプリメントは、上記で定義されたように、ヒト及び動物に栄養素及び/又は健康上の便益を提供するために使用され得る。栄養補助食品又は栄養補給剤には、例えば、任意の種類の食事又は栄養組成物に添加される粉末サプリメントとして、本明細書で定義され調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株が含まれる。
【0090】
医薬製品には、それを必要とする対象の有害な医学的状態を治療もしくは予防すること、又は良好な健康状態を促進することを意図した粉末、小袋、錠剤又はカプセル製品が含まれる。
【0091】
化粧品組成物は、身体に対する審美的効果を典型的に意図するものであり、局所使用用であってよいか、又は粉末、錠剤もしくはカプセルの形態で経口経路によって投与されてもよい。
【0092】
任意に、本発明の組成物は、最終生成物に改善された特性をさらに提供するために、本明細書で定義され調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株に加えて、GOSも含み得る。そのような改善された特性は、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株とGOSとの併用投与の相乗効果であり得る。GOSが含有される場合、そのようなGOSは、好ましくは上記で定義された通りである。さらに、そのようなGOSは、本発明の組成物中に、少なくとも1もしくは2g、好ましくは少なくとも3g、同様に好ましくは2~12g、もしくは2~10g、2~8g、もしくは2~7g、さらに好ましくは3~12g、同様にさらに好ましくは3~10g、例えば、3~8g、3~7g、3~6g、又は約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12g、もしくはそれによって形成される任意の範囲の量で含まれてもよい。
【0093】
プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株に添加されるGOSの上記量は、好ましくは1日用量当たりのGOSの量である。したがって、そのような実施形態では、組成物は、剤形又は投与量単位で提供される。そのような場合、そのような剤形又は投与量単位は、上記量のGOSを好ましくは含む。例えば、組成物の投与量単位は、少なくとも1gのGOSを含む。これは、GOSをプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株に添加して組成物の投与量単位を調製し、この投与量単位が少なくとも1gのGOSを含むことを意味する。
【0094】
特定の実施形態によれば、GOSは、本発明の組成物に添加されないか、又は本発明の組成物に含有されない。この特定の実施形態では、GOSは、本発明の方法の工程a)でL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングするためにのみ好ましくは使用され、本発明の組成物を調製する際にさらに添加されない。したがって、特定の実施形態では、本発明の組成物は、任意に、GOSを含む培養培地からプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を採取した後に残存する微量のGOSを除いて、いかなるGOSも欠く。本明細書で使用される微量とは、組成物1g当たり5mg未満のGOS、好ましくは組成物1g当たり1mg未満のGOS、さらに好ましくは組成物1g当たり0.5mg未満のGOS、さらになお好ましくは1g当たり0.1mg未満のGOS、最も好ましくは組成物1g当たり0.01mg未満のGOSを意味する。
【0095】
プレコンディショニングされたプロバイオティックプロバイオティックL.ロイテリ(L.REUTERI)株を含む本発明の組成物の用途
本発明は、プロバイオティック効果を改善するかもしくは増加させ、並びに/又は消化管内のミネラル溶解度及びバイオアベイラビリティ、及びミネラル吸収も増加させる組成物及び使用を提供することを目的とする。
【0096】
本明細書に示されるように、本発明の組成物は、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を製造する際の発酵中にGOSを特定の基質成分として使用して、哺乳動物又は鳥類におけるL.ロイテリ(L.reuteri)株のプロバイオティック効果を増強することを可能にする。本明細書に開示される方法は、特に本明細書に開示される非治療的及び治療的投与中に、L.ロイテリ(L.reuteri)株のプロバイオティック効果の増加がインビボで起こるように、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の培養中にGOSを使用することによってプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を特にプレコンディショニングする。これにより、特に、本明細書に記載されるように、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株又は組成物を投与すると、例えば、対象又は患者の消化管内のミネラルのミネラル溶解度、アクセシビリティ及び/又は吸収を増加させることによって、ミネラルのバイオアベイラビリティを増加させることができる。この驚くべき効果は、プレバイオティックとしてのGOSと、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株とを、それを必要とする対象又は患者に併用投与しなくても得ることができる。
【0097】
驚くべきことに、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株はまた、生存率及び持続性の増加、特に、粘液接着能の改善、胆汁及び胃酸に対するストレス耐性の改善を有することが見出された。これらの改善された特性はまた、プレバイオティック化合物の存在を必要とせずに、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)株のプロバイオティック効果をさらに改善し得る。プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を含む本発明の組成物を投与することによって、それを必要とする対象及び/又は患者に与えらされる、プレコンディショニング工程によって得られたラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)株のミネラル(鉄及びカルシウム)溶解度の誘導として例示される生存率、持続性及び/又はプロバイオティック効果の改善、並びに粘液接着能の改善、胆汁及び胃酸に対するストレス耐性の改善、上皮バリア完全性の保護効果の改善、骨形成及び/又は骨ミネラル化の改善は、必要とされるプロバイオティックの投与量及び/もしくは投与頻度を減少させることを可能にするか、又は求められる健康効果もしくは治療効果を得るための同じ用量のプロバイオティックによってさらに良好な効果を達成することを可能にする。
【0098】
さらに、本発明の組成物は、それを必要とする対象又は患者、例えば、ミネラル取込みの増加を必要とする対象又は患者に投与される、GOSによってプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を含む組成物である。ミネラル溶解度、アクセシビリティ及び吸収の増加は、消化管、例えば、十二指腸(小腸の最初の部分)、空腸(小腸の中央部分)、回腸(小腸の最後の部分)及び/又は結腸(大腸)内で起こる。本発明はまた、組成物へのそのようなプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株によって、消化管内のミネラル溶解度及びバイオアベイラビリティの増加並びにミネラル吸収の増加も達成され得るように、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングする方法を提供することを目的とする。
【0099】
特定の要件は種間で異なるが、ミネラルはすべての生物種にとって不可欠である。ミネラル欠乏は疾患につながる可能性があり、ミネラル過剰になる可能性がある。したがって、最適な健康のためには、正しい比率の正しい量のミネラルが必要である。ほとんどの自然食はミネラルを適切なバランスで提供するが、バランスのとれた食事ではミネラルに関して健康を維持するのに十分でない状況がある。上述のように、ミネラルは、生物では不可欠であり、多数の重要な機能を有する。
【0100】
例えば、鉄は、酸素及びミオグロビンの輸送を担う。さらに、鉄は、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ及びシトクロムなどの多くの酵素の一部である。鉄は、摂取した食物から鉄を吸収する消化管の一面を覆う細胞によって、十二指腸及び小腸上部にFe2+の形態で一般に吸収される。
【0101】
カルシウムは、とりわけ重要な骨成分及び酵素活性化因子である別の必須ミネラルである。カルシウムはまた、生体電気インパルスの伝導、血液凝固、筋収縮、炎症及びホルモン分泌に関与する。カルシウムは、活性形態のビタミンD(カルシトリオール)の存在下で小腸に一般に吸収される。
【0102】
マグネシウムは、骨成分であり、多くの他の機能の中でも、神経伝導及びリボソームプロセスに関与する。マグネシウムはまた、小腸に一般に吸収される。
【0103】
そのようなミネラルのいずれかのミネラル欠乏は、重度の合併症、病態及び疾患をもたらし得る。非治療的及び治療的な以下の使用は、例えば、栄養補給剤もしくは栄養飲料として本発明の組成物を提供することによって、例えば、非治療的に、健康な対象のミネラル欠乏を予防もしくは治療することによって、又は例えば、栄養組成物もしくは栄養飲料として、医薬組成物などとして上記で定義された組成物を投与もしくは供給することによって、それを必要とする対象のミネラル欠乏を予防もしくは治療することによって、そのようなミネラル欠乏に対処することが意図される。
【0104】
本発明はまた、GOSによってプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を使用して、消化管内のミネラル溶解度及びバイオアベイラビリティ並びにミネラル吸収も増加させる方法、組成物及び使用を提供する。本発明はさらに、特にGOSによってプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を投与又は使用することによって、消化管内のプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の酸耐性及び胆汁耐性を改善し、それによって、消化管内のプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の生存率及び持続性を増加させるための方法、組成物及び使用を含む。
【0105】
さらに、代替的又は追加的に、本発明の組成物は、それを必要とする対象又は患者、例えば、骨強度の増加を必要とする対象もしくは患者、又は骨粗鬆症を発症するリスクがある対象もしくは患者に投与される、GOSによってプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を含む組成物である。さらに、本発明の組成物は、それを必要とする対象又は患者に投与されるべきであり、対象又は患者は、腸バリアの破壊、もしくは粘膜内層の破壊のリスクがあるか、又はそれに罹患している。
【0106】
以下では、これに限定するものではないが、例示的な治療的及び非治療的用途(使用)が列挙される。これらの治療的及び非治療的用途は、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株だけでなく、本発明の組成物にも適用される。
【0107】
プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.REUTERI)株を含む組成物の非治療的使用
第3の態様によれば、本発明は、健康な対象の消化管内のL.ロイテリ(L.reuteri)株の生存率、持続性及び/又はプロバイオティック効果を増加させるか又は増強するための、典型的には投与可能な組成物の形態の、本発明に従って調製された、又は本明細書に記載されるようなプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量の非治療的使用を提供する。健康な対象の消化管内のプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株による生存率、持続性及び/又はプロバイオティック効果のそのような増加又は増強は、健康な対象の消化管内の未だプレコンディショニングされていないプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株と比較して典型的に決定されるべきである。
【0108】
一実施形態では、L.ロイテリ(L.reuteri)の生存率及び/又は持続性の増加は、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株のプロバイオティック効果の増加をもたらす。
【0109】
一実施形態では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株のプロバイオティック効果の増加は、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の生存率及び/又は持続性の増加である。
【0110】
一実施形態では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株のプロバイオティック効果の増加は、他の腸内微生物及び/又は宿主細胞などの周囲環境に対する効果の増加をもたらし得る、L.ロイテリ(L.reuteri)の生物活性などの活性の増加である。さらに詳細には、これらの効果は、ミネラル吸収の増加、上皮完全性の保護効果の増加、骨形成及び/もしくは骨ミネラル化の増加、並びに/又は骨芽細胞の成熟及び/もしくは活性の増加として例示され得る。別の実施形態では、L.ロイテリ(L.reuteri)のプロバイオティック効果の増加は、健康な微生物叢の促進である。
【0111】
プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株のプレコンディショニングは、L.ロイテリ(L.reuteri)株の生存率、持続性及び/又はプロバイオティック効果を改善するか又は増加させる。生存率、持続性及び/又はプロバイオティック効果のそのような改善又は増加は、例えば、以下であり得る
・対象の腸管内のミネラルのバイオアベイラビリティの増加、好ましくはミネラル溶解度及び/もしくはミネラル吸収の増加;並びに/又は
・対象の腸管内のL.ロイテリ(L.reuteri)株のストレス耐性の増加、好ましくは対象の腸管内の胆汁及び胃酸に対するストレス耐性の増加;並びに/又は
・対象の腸管内の粘液へのL.ロイテリ(L.reuteri)株の接着の増加;並びに/又は
・対象の腸管内のL.ロイテリ(L.reuteri)株の生存率及び/もしくは生着及び/もしくは生存能の増加;並びに/又は
・対象の腸管内の上皮完全性の増加;並びに/又は
・対象の骨形成及び/もしくは骨ミネラル化の促進;並びに/又は
・対象の骨芽細胞の成熟、分化及び/もしくは活性の促進。
【0112】
これらの様々な改善された特性には、とりわけ、上記に列挙された、及び例5~11に開示された特性が含まれる。生存率及び持続性の増加は、L.ロイテリ(L.reuteri)株のストレス耐性の増加、及び/又はL.ロイテリ(L.reuteri)株の粘液への接着の増加であり得る。プロバイオティック効果の増加は、例えば、対象の消化管内のミネラルのミネラル溶解度、アクセシビリティ及び/もしくは吸収を増加させることによるミネラルのバイオアベイラビリティの増加であり得、並びに/又は消化管内の上皮完全性の増加、及び/もしくは骨形成及び/もしくは骨ミネラル化の増加でもあり得る。ミネラルのバイオアベイラビリティの増加は、一実施形態では酵素機能の増加をもたらし得る。上述のように、ストレス耐性の増加は、消化管内の細菌の生存率及び/又は生着及び/又は生存能及び/又はL.ロイテリ(L.reuteri)株の持続性に正の効果を及ぼし得る。ストレス耐性の増加は、好ましくは、健康な対象の腸管内の胆汁及び胃酸に対するストレス耐性の増加である。そのような効果のいずれも、GOSによってプレコンディショニングされていないプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の効果と典型的に比較される。
【0113】
健康な対象の消化管内の典型的にはL.ロイテリ(L.reuteri)株のプロバイオティック効果の増加又は増強は、とりわけ、限定するものではないが、ミネラルのバイオアベイラビリティの増加、特に、対象の消化管内のミネラルのミネラル溶解度、アクセシビリティ及び/又は吸収の増加に関する。そのようなミネラルは、好ましくは、本明細書で言及される必須ミネラル、例えば、カルシウム、マグネシウム及び鉄、さらに好ましくはカルシウム及び/又は鉄である。
【0114】
これらの必須ミネラルのうち、カルシウムは、生体電気インパルスの伝導、血液凝固、筋収縮、炎症の予防、及びホルモン分泌に関与する。マグネシウムは、とりわけ、神経伝導及びリボソームプロセスに関与する。鉄は、多くの身体機能及びプロセスでは重要な因子であり、健康な細胞、皮膚、毛髪及び爪を維持するために必要である。
【0115】
好ましくは、健康な対象の消化管内のミネラル溶解度、アクセシビリティ及び/又は吸収を増加させることによる、健康な対象の腸管内の(そのような)ミネラルのバイオアベイラビリティの増加は、それによって、そのような身体機能及びプロセスのいずれかを増加させることを好ましくは可能にする。これらの態様は、特に、本発明の組成物が適用され得る非治療的及び美容的な適用に関する。
【0116】
対象の消化管内のミネラルのミネラル溶解度、アクセシビリティ及び/又は吸収に対するそのような効果に加えて、さらなる非治療的使用は、例えば、健康な対象の腸管内のストレス耐性の増加及び/もしくは粘液に接着する能力の増加、並びに/又は骨形成及び/もしくは骨ミネラル化の促進、並びに/又は健康な対象における骨芽細胞の成熟及び/もしくは活性の促進、並びに/又は健康な対象の消化管内の上皮完全性の増加による、L.ロイテリ(L.reuteri)株の生存率及び持続性の改善を包含し得る。ここでも、そのような効果は、健康な対象の消化管内の未だプレコンディショニングされていないプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株と比較して典型的に決定されるべきである。
【0117】
これに関連して、この非治療的使用の主な対象である健康な対象は、好ましくはそのような身体機能及び身体プロセスに対処するため、又はさらにはそれらを改善するために、運動選手、小児、幼児又は乳児、成人、高齢者、妊娠中の女性、ベジタリアン、授乳中の女性、伴侶動物、ネコ又はイヌ又は鳥類、例えば、家禽から選択され得る。そのような健康な対象は、本明細書に記載されるようないかなる病態又は疾患にも通常罹患しておらず、特にいかなるミネラル欠乏にも罹患していない。
【0118】
プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングするための上記の方法のいずれか、及びプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を含む本明細書で定義される組成物の特徴のいずれかは、本発明の第3の態様、すなわち、上記の本発明の組成物の非治療的使用に準用される。
【0119】
これは、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングする方法の特徴、並びにプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を含む組成物に使用される任意の成分及び量及びさらなる特徴に特に関する。組成物は、上記のような任意の形態で提供され得る。
【0120】
これに関連して、例えば、非治療的目的のための本発明の組成物は、固体もしくは液体であってよく、及び/又は粉末、小袋、錠剤、カプセルの形態で存在するか、もしくは油剤、エマルジョン、水中油型エマルジョン(o/wエマルジョン)もしくは油中水型エマルジョン(w/oエマルジョン)の形態であってよいことに留意されたい。
【0121】
さらに、非治療的目的のための本発明の組成物は、栄養組成物、医薬製剤、栄養補助食品、機能性食品、機能性飲料製品及びそれらの組合せ、例えば、乳製品、乳系製品、ホエータンパク質系飲料からなる群から好ましくは選択される投与可能な形態であり得る。
【0122】
前述のように、L.ロイテリ(L.reuteri)株は、L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 5289、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 6475、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32846、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32847、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32848、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32849、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33632、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33633、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33634、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33635、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32465、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32231、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32232、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6127及びL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 4659からなる群から好ましくは選択され、L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 5289、L.ロイテリ(L.reuteri)株ATCC PTA 6475、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32846、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32848、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32849、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32465及びL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 4659からなる群から好ましくは選択される、上記で定義された特に好ましい少なくとも1つのL.ロイテリ(L.reuteri)株又は複数のL.ロイテリ(L.reuteri)株であり、さらに好ましくは、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株はL.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938である。
【0123】
特定の実施形態では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株は、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131及びL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475からなる群から選択され、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131及びL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475からなる群から好ましくは選択される。したがって、特定の実施形態では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株はL.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131である。別の特定の実施形態では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株はL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475である。
【0124】
医薬品としての、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.REUTERI)株を含む組成物の使用
第4の態様によれば、本発明はまた、医薬品として使用するための、本発明に従って調製された、又は本明細書に記載されるプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を含む組成物を提供する。関連する態様は、医薬品として使用するためのプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を定義する。
【0125】
先と同様に、医薬品としてのそのような組成物の効果は、GOSによってプレコンディショニングされていないプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の効果と通常比較して、そのような医薬品を必要とする対象の消化管内のプロバイオティック効果の増加に特に関連する。
【0126】
医薬品としての本発明の組成物又はプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の使用に関連する治療効果は、とりわけ、本明細書で言及される疾患、特に、そのような疾患のいずれか、特に治療的用途の文脈において本明細書で明示的に言及される疾患(以下も参照)のリスクがあるか又はそれらに既に罹患している対象に対する適用のいずれかに関連する効果に対処する。
【0127】
プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングするための上記の方法のいずれか、及びプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を含む本明細書で定義される組成物の特徴のいずれかはまた、本発明の第4の態様、すなわち、医薬品としての本発明の組成物の使用に準用される。
【0128】
これは、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングする方法の特徴、並びにプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を含む組成物に使用される任意の成分及び量及びさらなる特徴に特に関する。組成物は、上記のような任意の形態で提供され得る。
【0129】
これに関連して、医薬品として使用するための本発明の組成物は、固体もしくは液体であってよいか、粉末、小袋、錠剤、カプセルの形態で存在してもよいか、又は油剤、エマルジョン、水中油型エマルジョン(o/wエマルジョン)もしくは油中水型エマルジョン(w/oエマルジョン)の形態であってよいことが特に好ましい。
【0130】
同様に、医薬品として使用するための本発明の組成物は、栄養組成物、医薬製剤、栄養補助食品、機能性食品、機能性飲料製品及びそれらの組合せ、例えば、乳製品、乳系製品、ホエータンパク質系飲料からなる群から好ましくは選択される投与可能な形態であり得る。
【0131】
前述のように、L.ロイテリ(L.reuteri)株は、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 5289、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32846、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32847、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32848、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32849、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33632、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33633、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33634、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33635、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32465、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32231、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32232、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6127及びL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 4659からなる群から好ましくは選択され、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 5289、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32846、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32848、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32849、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32465及びL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 4659からなる群から好ましくは選択される、上記で定義された特に好ましい少なくとも1つのL.ロイテリ(L.reuteri)株又は複数のL.ロイテリ(L.reuteri)株であり、さらに好ましくは、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株はL.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938である。
【0132】
特定の実施形態では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株は、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131及びL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475からなる群から選択され、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131及びL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475からなる群から好ましくは選択される。したがって、特定の実施形態では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株はL.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131である。別の特定の実施形態では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株はL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475である。
【0133】
プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.REUTERI)株を含む組成物の治療的使用
第5の態様によれば、本発明は、それを必要とする対象の疾患の予防及び/もしくは治療における使用のための、又はそのような疾患のリスクを低下させるかもしくは阻害するための、本発明に従って調製された、又は本明細書に記載されるプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を含む組成物を提供する。本発明の関連する態様は、それを必要とする対象の疾患の予防、低減もしくは阻害に使用するための、又はそのような疾患のリスクを低下させるかもしくは阻害するためのプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を定義する。
【0134】
本明細書で使用される場合、用語「治療(treatment)」、「治療する(treat)」及び「緩和するため(to alleviate)」には、予防的(prophylactic)又は予防的(preventive)処置(標的とされる病理学的状態又は障害の発症を予防する及び/又は遅延させる)、並びに診断された病理学的状態もしくは障害を治癒させる、減速させる、診断された病理学的状態もしくは障害の症状を軽減する、及び/又は診断された病理学的状態もしくは障害の進行を停止させる治療的措置、及び疾患に罹患するリスクがあるか、又は疾患に罹患した疑いがある対象、及び病気の対象、又は疾患もしくは医学的状態に罹患していると診断された対象の治療を含む、治癒的処置、治療的処置又は疾患改変処置が含まれる。該用語は、対象が完全に回復するまで治療されることを必ずしも意味しない。用語「治療(treatment)」及び「治療する(treat)」はまた、疾患に罹患していないが、不健康な状態などの発症の影響を受けやすい可能性がある個体の健康の維持及び/又は促進を指す。用語「治療(treatment)」及び「治療する(treat)」は、例えば、予防的処置の形態で、疾患を発症するリスクを低下させることをさらに含む。用語「治療(treatment)」、「治療する(treat)」及び「緩和するため(to alleviate)」はまた、1つ以上の一次予防的措置又は治療的措置の強化又は他の方法での増強を含むことを意図している。用語「治療(treatment)」、「治療する(treat)」及び「緩和するため(to alleviate)」は、疾患もしくは病態の食事管理、又は疾患もしくは病態の予防(prophylaxis)もしくは予防(prevention)のための食事管理を含むことをさらに意図している。
【0135】
一実施形態によれば、本発明は、それを必要とする対象のミネラル欠乏の予防及び/又は治療に使用するための、本発明の方法に従って調製された、又は本明細書で定義されるプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を含む組成物に関する。典型的には、それを必要とする対象はまた、典型的には、ミネラル欠乏を発症するリスクがある対象、又は既にミネラル欠乏に罹患している対象である。
【0136】
本発明のこの特定の文脈では、ミネラル欠乏は、カルシウム、マグネシウム及び/又は鉄の欠乏に好ましくは関する。それにより、以下に示されるように特定の疾患をもたらし得るのは必ずしも1つのミネラルのみの欠乏ではなく、さらに多くの場合、様々なミネラル、例えば、カルシウム、マグネシウム及び/又は鉄から選択される1つ以上のミネラルの組合せの欠如であり、その結果、発生し得る生理学的結果、及び様々な疾患/病態の組合せも重複する。
【0137】
前述のように、鉄欠乏は、身体が十分なミネラル鉄を有しない場合に起こる病態である。鉄欠乏は、異常に低いレベルの赤血球、及び鉄欠乏性貧血と呼ばれる病態をもたらすことが多い。その結果、鉄欠乏性貧血は、疲労、倦怠及び息切れを引き起こす。鉄はまた、多くの身体機能(免疫機能又は認知機能など)を維持するのに非常に重要であることが知られており、健康な細胞、皮膚、毛髪及び爪を維持するために必要である。
【0138】
したがって、特定の実施形態では、対象は、鉄欠乏、好ましくは鉄欠乏性貧血に罹患している。
【0139】
以下の人の群は、鉄欠乏性貧血のリスクが最も高く、したがって、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株組成物を投与されるのに適している;月経のある女性、特に月経期が重い場合、妊娠中もしくは授乳中の女性又は最近出産した女性、大きな手術又は身体的外傷を受け、失血した人、セリアック病などの胃腸疾患、潰瘍性大腸炎又はクローン病などの炎症性腸疾患を有する人、消化性潰瘍疾患を有する人、肥満症治療の手技、特に胃バイパス手術を受けた人、ベジタリアン、ビーガン、及び鉄に富んだ食物を含まない食事をしている他の人、1日16~24オンスを超える牛乳を飲む小児(牛乳は、鉄をほとんど含有しないだけでなく、鉄の吸収を減少させ、腸内層を刺激して慢性的な失血を引き起こす可能性もある)、並びに乳児、特に低出生体重であるか又は早産で生まれた乳児、及び/又は母乳又は調製粉乳から十分な鉄を得ていない乳児。一般に、小児は、成長加速現象中に余分な鉄を必要とする。そのような対象群のいずれも、本明細書では治療され得る。
【0140】
したがって、一実施形態では、対象の鉄欠乏、好ましくは鉄欠乏、好ましくは鉄欠乏性貧血を治療するために使用されるプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を含む本発明の組成物は、本発明に従って調製される通りであるか、又は本明細書に記載される通りである。
【0141】
さらに、慢性鉄欠乏は、骨喪失及び骨粗鬆症の公知の新たな危険因子である。カルシウムは、重要な骨成分、及び酵素の活性化因子である別の必須ミネラルである。カルシウムはまた、生体電気インパルスの伝導、血液凝固、筋収縮、炎症及びホルモン分泌に関与する。マグネシウムは、骨成分であり、神経伝導及びリボソームプロセスに関与する。
【0142】
本発明の組成物はまた、それを必要とする対象の鉄欠乏、好ましくは鉄欠乏性貧血の予防及び/もしくは治療に使用するためのものであり得、並びに/又は認知機能を促進し得、並びに/又は酸素輸送を促進し得、並びに/又は免疫機能を促進し得、並びに/又は倦怠もしくは疲労を低減し得る。
【0143】
したがって、一実施形態では、本発明は、対象のカルシウム及び/もしくはマグネシウム欠乏の予防及び/もしくは治療に使用するための、骨喪失の予防及び/もしくは治療に使用するための、骨形成及び/もしくはミネラル化及び/もしくは骨強度及び/もしくは歯の発達の促進に使用するための、及び/もしくは例えば、骨芽細胞の成熟及び/もしくは活性を促進することによる、特に小児及び乳児の成長及び発達の促進に使用するための、又は骨粗鬆症及び/もしくは骨減少症の治療に使用するためのプレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株を含む組成物を提供する。
【0144】
さらに、特にカルシウム欠乏を考慮して、筋肉の問題、例えば、痙攣、筋攣縮及び鈍痛、不眠症、眠気及び極端な疲労を含む疲労、皮膚及び爪の症状、湿疹、乾癬、発赤、かゆみ、皮膚水疱、骨粗鬆症及び骨減少症、有痛性月経前症候群(painful premenstrual syndrome)、歯科的問題、うつ病などに関連するさらなる病態及び/又は疾患が予防又は治療され得る。さらに、カルシウム欠乏(低カルシウム血症)はまた、早期乳児期の深刻な問題であり、これにより、上記段階の乳児は特定の標的群になる。これには、新生児の生後2~3日間に起こる新生児低カルシウム血症、及び生後1週間又は数週間に始まる後期低カルシウム血症が含まれる。また、ここで、カルシウムレベルはマグネシウムのレベルにある程度関連しているため、マグネシウムレベルが低いとカルシウムレベルが低くなり、マグネシウムレベルの低さは、さらなる危険因子となる可能性がある。そのような対象群又は患者群のいずれも、本明細書では治療され得る。
【0145】
さらに、特にマグネシウム欠乏を考慮して、倦怠、全体的な衰弱、筋痙攣、筋機能不全、心拍異常、振戦を伴う神経系の易刺激性の増加、知覚異常、動悸、血液中の低カリウムレベル、血液中の低カルシウムレベルをもたらす副甲状腺機能低下症、軟骨石灰化症、痙縮及びテタニー、片頭痛、てんかん発作、基底核石灰化、並びに極端な場合及び長期の場合の昏睡、又は知的障害に関連するさらなる病態及び/又は疾患が予防又は治療され得る。ここでも、そのような対象群又は患者群のいずれも、本明細書では治療され得る。
【0146】
さらなる実施形態によれば、本発明は、対象の腸管/消化管内で好ましくはプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の生存率、持続性及び/又はプロバイオティック効果を増加させるのに使用するためのプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を含む組成物を提供する。
【0147】
生存率、持続性及び/又はプロバイオティック効果のそのような改善又は増加は、例えば、以下として現れ得る:
・対象の腸管内のミネラルのバイオアベイラビリティの増加、好ましくはミネラル溶解度及び/もしくはミネラル吸収の増加として;並びに/又は
・対象の腸管内のL.ロイテリ(L.reuteri)株のストレス耐性の増加、好ましくは対象の腸管内の胆汁及び胃酸に対するストレス耐性の増加として;並びに/又は
・対象の腸管内の粘液へのL.ロイテリ(L.reuteri)株の接着の増加として;並びに/又は
・対象の腸管内の上皮完全性の増加として;並びに/又は
・対象の骨形成及び/もしくは骨ミネラル化の促進として;並びに/又は
・対象の骨芽細胞の成熟、分化及び/もしくは活性の促進。
【0148】
例えば、対象の腸管/消化管内のミネラルのバイオアベイラビリティの増加、及びさらなる効果を含むそのような効果は、本明細書で使用されるプレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株を調製する、GOSによるプレコンディショニング工程、並びに典型的には対象の消化管内のそのようなミネラルのミネラル溶解度、アクセシビリティ及び/又は吸収を増加させることによる、上記プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株が健康な対象の腸管内のミネラルのバイオアベイラビリティに正の影響を及ぼし、それを増加させる能力の観察される増加に特に起因する。これに関連して、特に関連するミネラルには、マグネシウム、カルシウム及び/又は鉄、好ましくはカルシウム及び鉄が含まれる。
【0149】
上記のように、本明細書で使用されるプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株はまた、それを必要とする対象の消化管内のプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)のストレス耐性に正の影響を及ぼし、それを増加させる。これは、胆汁及び酸性ストレス試験条件を使用したストレス耐性試験によって本発明者らによって説得力のある形で実証されている。それを必要とする対象の消化管内のプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)のストレス耐性のそのような改善は、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株の生存率及び持続性の増加によって現れる、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)が消化管内の胆汁及び酸の状態の変化に良好に耐える能力の改善につながる。
【0150】
本明細書で使用されるプレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株は、粘液への(プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の)接着に正の影響を及ぼし、それを増加させる。これは、該細菌が腸の上皮内層に近づくことができ、また腸内に長期間留まることができ、したがって、消化管内で持続する能力を増加させることから、該細菌がそのプロバイオティック効果及び治療効果を発揮する可能性に正の効果を及ぼすことができる。
【0151】
本明細書で使用されるプレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株はまた、消化管内の好ましくは腸上皮の上皮完全性を増加させる。これに関連して、腸バリアの主な機能は、管腔から循環への栄養素、電解質及び水の吸収を調節することであり、一方、微生物(例えば、病原性微生物)及び毒性管腔物質が循環に通過するのを防止するには、健康な状態を得るためにインタクトなバリアが不可欠であることに留意することが重要である。腸バリアの破壊、又は他の粘膜内層の破壊は、いくつかの多様な疾患及び病態、例えば、IBS、クローン病、潰瘍性大腸炎、機能性消化管障害(例えば、機能性腹痛)、下痢、乳児疝痛、感染性疾患、うつ病、自閉症スペクトラム障害、憩室性疾患、歯周炎、骨減少症及び骨粗鬆症からなる群から好ましくは選択される非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、セリアック病、栄養不良、不安、ストレス、過敏性腸症候群(IBS)、クローン病、潰瘍性大腸炎、機能性消化管障害(例えば、機能性腹痛)、下痢、乳児疝痛、感染性疾患、うつ病、自閉症スペクトラム障害、憩室性疾患、歯周炎、骨減少症及び/又は骨粗鬆症に関連する。
【0152】
一実施形態では、疾患又は病態は、NAFLD、セリアック病、栄養不良、不安、ストレス、IBS、クローン病、潰瘍性大腸炎、感染性疾患、うつ病、自閉症スペクトラム障害、憩室性疾患、下痢、骨減少症及び骨粗鬆症からなる群から選択され、IBS、クローン病、潰瘍性大腸炎、感染性疾患、うつ病、自閉症スペクトラム障害、憩室性疾患、下痢、骨減少症及び骨粗鬆症からなる群から好ましくは選択される。
【0153】
特定の実施形態では、疾患又は病態は、IBS、クローン病、潰瘍性大腸炎、憩室性疾患及び下痢からなる群から選択される。
【0154】
別の特定の実施形態では、疾患又は病態は乳児疝痛である。
【0155】
したがって、一実施形態によれば、本発明はまた、それを必要とする対象の疾患の予防及び/又は治療に使用するための、本発明の方法に従って調製された、又は本明細書で定義されるプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を含む組成物に関し、対象は、腸バリアの破壊、又は粘膜内層の破壊に罹患している。特定の実施形態では、腸バリアの破壊、又は粘膜内層の破壊は、過敏性腸症候群(IBS)、クローン病、潰瘍性大腸炎、機能性消化管障害、例えば、機能性腹痛、下痢、乳児疝痛、感染性疾患、うつ病、自閉症スペクトラム障害、憩室性疾患、歯周炎、骨減少症及び/又は骨粗鬆症から選択される疾患又は病態に関連する。
【0156】
本明細書で使用されるプレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株のさらなる正の効果は、骨形成及び/もしくは骨ミネラル化の促進、並びに/又は骨芽細胞の成熟、分化及び/もしくは活性を促進するためのものである。これは、骨芽細胞内のALP酵素活性の増加、及び細胞遊走の減少の結果によって本発明者らによって説得力のある形で実証されており、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株が骨芽細胞分化を刺激することができ、分化した骨芽細胞によって発現されるミネラル化のマーカーであるオステオカルシン発現の増強も刺激することができることを示唆している。
【0157】
そのため、本発明はまた、骨喪失の予防及び/もしくは治療に使用するための、並びに/又は小児の骨もしくは歯の成長及び発達の促進に使用するための、本発明の方法に従って調製された、又は本明細書で定義されるプレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を含む組成物に関する。
【0158】
したがって、治療される対象の腸管内のL.ロイテリ(L.reuteri)株の生存率、持続性及び/又はプロバイオティック効果の増加は、本明細書で言及される疾患のいずれかの治療に特に正の影響を及ぼし得ると考えられる。
【0159】
したがって、本明細書で特許請求される医学的使用はまた、その中で言及されている病態又は疾患のいずれかに典型的に関連して、それを必要とする対象の消化管内のL.ロイテリ(L.reuteri)株のストレス耐性の増加、それを必要とする対象の消化管内の粘液へのL.ロイテリ(L.reuteri)株の接着の増加及び/もしくは上皮完全性の増加、それを必要とする対象の消化管内のミネラル溶解度及び/もしくはミネラルアクセシビリティ及び/もしくはミネラル吸収の増加、並びに/又はそれを必要とする対象の骨形成及び/もしくは骨ミネラル化の増加を包含する。
【0160】
一般に、任意のそのような治療の対象、又はそのような治療を必要とする対象は、哺乳動物又は鳥類であり、好ましくはヒトであり、さらに好ましくは、小児、幼児又は乳児、高齢者、妊娠中の女性、ベジタリアン、授乳中の女性、伴侶動物から選択されるが、ペット、例えば、ネコもしくはイヌ、又は鳥類、例えば、家禽からも選択され、対象は、好ましくはミネラル欠乏を発症するリスクがあるか、又はミネラル欠乏を既に発症している。カルシウム欠乏のリスクがある集団、並びにそのような予防及び/又は治療にとって好ましい対象には、妊娠中の女性(特に妊娠後期)、授乳中の女性、閉経後の女性、高齢者、10代、及び/又は過体重の人が特に含まれる。低マグネシウム血症のリスクがある集団には、糖尿病患者、糖尿病のリスクがある患者、肥満患者及び/又は過体重患者などが特に含まれる。そのような対象及び患者群のいずれも、本明細書では治療され得る。
【0161】
また、これに関連して、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングするための上記の方法のいずれか、及びプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を含む本明細書で定義される組成物の特徴のいずれかはまた、本発明の第5の態様、すなわち、本明細書で定義される治療のいずれかにおける本発明の組成物の医学的又は治療的使用に準用される。
【0162】
これは、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングする方法の特徴、並びにプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を含む組成物に使用される任意の成分及び量及びさらなる特徴に特に関する。組成物は、上記のような任意の形態で提供され得る。
【0163】
これに関連して、本明細書に記載される医学的又は治療的使用のための本発明の組成物は、固体もしくは液体であってよいか、粉末、小袋、錠剤、カプセルの形態で存在してもよいか、又は油剤、エマルジョン、水中油型エマルジョン(o/wエマルジョン)もしくは油中水型エマルジョン(w/oエマルジョン)の形態であってよいことが特に好ましい。
【0164】
同様に、本明細書に記載の医学的又は治療的使用のための本発明の組成物は、栄養組成物、医薬製剤、栄養補助食品、機能性食品、機能性飲料製品及びそれらの組合せ、例えば、乳製品、乳系製品、ホエータンパク質系飲料からなる群から好ましくは選択される投与可能な形態であり得る。
【0165】
前述のように、L.ロイテリ(L.reuteri)株は、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 5289、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32846、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32847、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32848、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32849、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33632、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33633、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33634、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 33635、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32465、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32231、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32232、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6127及びL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 4659からなる群から好ましくは選択され、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 5289、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32846、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32848、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32849、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 32465及びL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 4659からなる群から好ましくは選択される、上記で定義された特に好ましい少なくとも1つのL.ロイテリ(L.reuteri)株又は複数のL.ロイテリ(L.reuteri)株であり、さらに好ましくは、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株はL.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938である。
【0166】
特定の実施形態では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株は、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131及びL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475からなる群から選択され、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131及びL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475からなる群から好ましくは選択される。したがって、特定の実施形態では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株はL.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131である。別の特定の実施形態では、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株はL.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475である。
【0167】
さらなる特定の実施形態によれば、本発明はまた、それを必要とする対象の疾患の治療方法を提供する。そのような疾患及び対象は、好ましくは、本明細書に記載される通りである。治療方法は、好ましくはプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングするための本発明の方法に従って調製された、又は本明細書に記載されるプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を対象に投与する工程を好ましくは含む。したがって、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株は、好ましくはプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングするための本発明の方法に従って、GOSの存在下で培養されたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株である。投与は、それを必要とする対象の疾患の予防及び/もしくは治療、又はそのような疾患のリスクの減少もしくは阻害を好ましくは可能にする。上記で定義された疾患のいずれも包含される。プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量は、本明細書に記載の本発明の組成物の形態で提供され得る。プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングするための本発明の方法、及び本発明の組成物について上述した特徴のいずれも同様に適用される。
【0168】
別の特定の実施形態によれば、本発明はまた、好ましくはプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングするための本発明の方法に従って調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株、又はそれを必要とする対象の疾患を予防及び/もしくは治療するための医薬品もしくは医薬組成物を調製するための本明細書に記載されるプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の使用を提供する。そのような疾患及び対象は、好ましくは、本明細書に記載される通りである。したがって、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株は、好ましくはプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングするための本発明の方法に従って、GOSの存在下で培養されたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株である。使用は、それを必要とする対象の疾患の予防及び/もしくは治療、又はそのような疾患のリスクの減少もしくは阻害を好ましくは可能にする。上記で定義された疾患のいずれも包含される。プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量は、本明細書に記載の本発明の組成物の形態で提供され得る。プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングするための本発明の方法、及び本発明の組成物について上述した特徴のいずれも同様に適用される。
【0169】
本発明のさらなる態様及び実施形態を以下に提示する。
【0170】
プレコンディショニングされたプロバイオティックラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)株を調製する方法において、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
a)ガラクトオリゴ糖(GOS)の存在下で増殖培地中でプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を培養し、それによって、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングする工程、及び
b)増殖培地からプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を採取する工程。
【0171】
GOSが、工程a)では、好ましくは工程a)におけるプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の培養の開始時、途中又は終了時の増殖培地に基づいて計算して(%w/w)、増殖培地中の少なくとも0.2重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、さらになお好ましくは少なくとも0.75重量%のGOS、好ましくは最大8重量%のGOS、例えば、最大7重量%のGOS、最大6重量%のGOS、又はさらには最大5重量%のGOS、さらに好ましくは最大4重量%のGOS、又はさらには最大3%のGOSの量で、例えば、0.2重量%~8重量%、又はさらには0.2重量%~7重量%、又は0.2重量%~6重量%の範囲で、さらに好ましくは0.5重量%~8重量%、又はさらには0.5重量%~7重量%、又は0.5重量%~6重量%の範囲で、さらになお好ましくは0.75重量%~8重量%、又はさらには0.75重量%~7重量%、又は0.75重量%~6重量%の範囲で、最も好ましくは0.75重量%~7重量%の範囲で、0.75重量%~6重量%の範囲で、又はさらには0.75重量%~5重量%の範囲、例えば、0.75重量%~3重量%、又は0.75重量%~4重量%の範囲で増殖培地に添加される、上記による方法。
【0172】
工程a)で増殖培地に添加されるGOSが、3~8の重合度(DP)を有する、上記のいずれかによる方法。
【0173】
プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株が、DSM 17938の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)株、ATCC PTA 5289の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)株、ATCC PTA 6475の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)株、DSM 32846の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)株、DSM 32848の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)、DSM 32849の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)、DSM 27131の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)、DSM 32465の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)、及びATCC PTA 4659の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)株を含む又はそれらからなる群から選択される少なくとも1つのL.ロイテリ(L.reuteri)株又は複数のL.ロイテリ(L.reuteri)株であり、好ましくは、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株が、DSM 17938の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)株である、上記のいずれかによる方法。
【0174】
プレコンディショニングされたプロバイオティックラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)株の有効量を含む組成物であって、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株が、好ましくは上記のいずれかによる方法に従って、ガラクトオリゴ糖(GOS)の存在下で増殖培地中でL.ロイテリ(L.reuteri)株を培養することによって調製されている組成物。
【0175】
プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株を10cfu~1012cfuの量、典型的には1日用量当たり10cfu~1011cfuの量、好ましくは1日用量当たり10cfu~1010cfuの量、又は1日用量当たり10cfu~10cfu、同様に好ましくは1日用量当たり10cfu~10cfuの量、1日用量当たり10cfu~10cfu、又は1日用量当たり10cfu~1010cfuの量、さらに好ましくは1日用量当たり約10cfu~10cfu、最も好ましくは1日用量当たり約10総cfu、例えば、1日用量当たり10~10cfu、又は1日用量当たり10~10cfuの量で含む、上記による組成物。
【0176】
組成物が、固体もしくは液体であり、及び/もしくは粉末、錠剤、カプセルの形態で存在するか、もしくは油剤、エマルジョン、水中油型エマルジョン(o/wエマルジョン)もしくは油中水型エマルジョン(w/oエマルジョン)の形態であり得、並びに/又は
組成物が、栄養組成物、医薬製剤、栄養補助食品、機能性食品、機能性飲料製品及びそれらの組合せ、例えば、乳製品、乳系製品、ホエータンパク質系飲料からなる群から好ましくは選択される投与可能な形態である、
上記のいずれかによる組成物。
【0177】
健康な対象の消化管内の好ましくはL.ロイテリ(L.reuteri)株の生存率、持続性及び/又はプロバイオティック効果を改善するか又は増加させるための、上記のいずれかの方法に従って調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量、又は上記のいずれかによる組成物の非治療的使用。
【0178】
生存率、持続性及び/又はプロバイオティック効果を改善するか又は増加させることが、
・健康な対象の腸管内のミネラルのバイオアベイラビリティの増加、好ましくはミネラル溶解度及び/もしくはミネラル吸収の増加であり、ここで、ミネラルが、マグネシウム、カルシウム及び/もしくは鉄、好ましくはカルシウム及び/もしくは鉄から任意に選択され、並びに/又は
・健康な対象の腸管内のL.ロイテリ(L.reuteri)株のストレス耐性の増加、好ましくは健康な対象の腸管内の胆汁及び胃酸に対するストレス耐性の増加であり、並びに/又は
・健康な対象の腸管内の粘液へのL.ロイテリ(L.reuteri)株の接着の増加であり、並びに/又は
・健康な対象の腸管内の上皮完全性の増加であり、並びに/又は
・健康な対象の骨形成及び/もしくは骨ミネラル化の促進、及び/もしくは骨芽細胞の成熟及び/もしくは活性の促進である、上記による非治療的使用。
【0179】
医薬品として使用するための、上記のいずれかに従って調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を含む組成物、又は上記のいずれかによる組成物。
【0180】
患者が、腸バリアの破壊、又は粘膜内層の破壊に罹患しており、好ましくは、腸バリアの破壊、又は粘膜内層の破壊が、過敏性腸症候群(IBS)、クローン病、潰瘍性大腸炎、機能性消化管障害、例えば、機能性腹痛、下痢、乳児疝痛、感染性疾患、うつ病、自閉症スペクトラム障害、憩室性疾患、歯周炎、骨減少症及び/又は骨粗鬆症から選択される疾患又は病態に関連する、それを必要とする患者の疾患の予防及び/又は治療に使用するための、上記のいずれかに従って調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を含む組成物、又は上記のいずれかによる組成物。
【0181】
ミネラルが、マグネシウム、カルシウム及び/又は鉄、好ましくはカルシウム及び/又は鉄から任意に選択される、それを必要とする患者のミネラル欠乏の予防及び/又は治療に使用するための、上記のいずれかに従って調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を含む組成物、又は上記のいずれかによる組成物。
【0182】
組成物が、それを必要とする患者の鉄欠乏、好ましくは鉄欠乏性貧血の予防及び/もしくは治療に使用するためのものであり、及び/もしくは認知機能を促進し、及び/もしくは酸素輸送を促進し、及び/もしくは免疫機能を促進し、及び/もしくは倦怠もしくは疲労を低減し、並びに/又は
組成物が、それを必要とする患者のカルシウム及び/もしくはマグネシウム欠乏の予防及び/もしくは治療に使用するためのものである、
上記による使用のための組成物。
【0183】
骨喪失の予防及び/もしくは治療に使用するための、並びに/又は小児の骨もしくは歯の成長及び発達を促進するための、並びに/又は筋機能を促進するための、並びに/又はそれを必要とする患者の神経系及び/もしくは骨もしくは筋関連状態の機能を促進するための、並びに/又はそれを必要とする患者の骨形成及び/もしくは骨ミネラル化及び/もしくは骨強度を促進するのに使用するための、上記のいずれかに従って調製されたプレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株の有効量を含む組成物、又は上記のいずれかによる組成物。
【0184】
L.ロイテリ(L.reuteri)株が、DSM 17938の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)株、ATCC PTA 5289の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)株、ATCC PTA 6475の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)株、DSM 32846の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)株、DSM 32848の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)、DSM 32849の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)、DSM 27131の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)、DSM 32465の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)、及びATCC PTA 4659の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)株を含む又はそれらからなる群から選択される少なくとも1つのL.ロイテリ(L.reuteri)株又は複数のL.ロイテリ(L.reuteri)株であり、好ましくは、プロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株が、DSM 17938の下に寄託されたL.ロイテリ(L.reuteri)株である、上記のいずれかによる使用のための組成物。
【0185】
本明細書に開示される詳細な説明の様々な態様及び実施形態は、本発明を作製及び使用するための特定の方法を例示するものであり、特許請求の範囲及び詳細な説明を考慮した場合に本発明の範囲を限定しないことを理解されたい。本発明の態様及び実施形態からの特徴は、本発明の同じ又は異なる態様及び実施形態からのさらなる特徴と組み合わせることができることも理解されるであろう。
【0186】
この詳細な説明及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0187】
記載されるすべての範囲は、上記範囲内に含まれるすべての数、整数又は分数を含むことを意図している。
【実施例
【0188】

例1-GOSによってL.ロイテリ(L.reuteri)株をプレコンディショニングする方法
内部産生されたL.ロイテリ(L.reuteri)株凍結スターター培養物(L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938)を使用して、炭素源として4%のウシ乳由来オリゴ糖(BMOS)と電子受容体として4%のフルクトース(乾物換算)とを含有する発酵培地に接種した。L.ロイテリ(L.reuteri)株の一晩培養物を使用して、炭素源として6%のBMOSと電子受容体として6%のフルクトース(乾物換算)とを含有する新鮮な発酵培地に接種した。プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株細胞を約10時間の発酵後に遠心分離によって採取し、その後、保護剤と混合し、噴霧乾燥させた。
【0189】
GOS源として使用したBMOS炭水化物混合物は、48%GOS、30%ラクトース、8%グルコース、3.9%ガラクトース及び>0.2%3’-SL+6’-SL(g/100gの乾物換算)から構成されていた。
【0190】
注入プレーティング(pour plating)によって、L.ロイテリ(L.reuteri)株の細胞数を決定した。要約すると、連続10倍希釈(serial decimal dilution)噴霧乾燥試料をトリプトン塩(Oxoid、LP0042)溶液中で行った。その後、100μLの適切な希釈液をペトリ皿に移し、MRS寒天(AES Chemunex,Bruz,France)と混合した。分析を2連で行った。次いで、プレートを37℃の好気的条件で48時間インキュベートした。1グラム当たりのコロニー形成単位(cfu/g)を、それらの算術平均を決定することによって、適切な希釈を用いてプレート上で計数されたコロニーの数から計算した。
【0191】
例2-プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株を含む組成物の製造方法
従来の市販のグローイングアップミルク組成物に、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株1グラム当たり5×10cfuの量を添加することによって、年齢層に適合したミネラルを含有する、グローイングアップミルクとも呼ばれる牛乳系幼児飲料を調製した。
【0192】
例3-プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)を含む油性配合プロバイオティック製品の製造
例7に記載の方法に従ってGOSを添加して、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938株を培養する。培養後、業界の標準的な方法を使用して、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938を凍結乾燥させる。製品は、良好な安定性及び貯蔵寿命のために作製された単一の(純粋な)細菌株を含む油性製剤である。製造プロセスの固有の特徴は、油を真空下に置くことによって油を乾燥させて、油中の水の大部分を除去し、製剤の安定性を増加させる工程である。本明細書で使用される油は、純粋な食用植物油、好ましくはヒマワリ油及び中鎖トリグリセリドである。
【0193】
成分の混合
1.Bolz混合機/タンク(Alfred BOLZ Apparatebau GmbH,Wangen im Allgau,Germany)内で、中鎖トリグリセリド、例えば、Akomed R(Karlshamns AB,Karlshamn Sweden)及びヒマワリ油、例えば、Akosun(Karlshamns AB,Karlshamn Sweden)を二酸化ケイ素(Cab-o-sil M5P,M5P,Cabot)と混合する。
【0194】
2.均質化
Sineポンプ及びdispax(Sine Pump,Arvada,Colorado)をBolzミキサーに接続し、混合物を均質化する。
【0195】
3.真空乾燥
混合物をBolzタンク内で10mBarの真空下で12時間乾燥させる。
【0196】
4.L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938細菌を添加する。約20kgの乾燥油混合物を50リットルのステンレス鋼容器に移す。好ましくは凍結乾燥されたL.ロイテリ(L.reuteri)細菌粉末(使用されるL.ロイテリ(L.reuteri)細菌の量は、油中に必要な量に応じて変動するが、一例は、1011CFU/gを有する培養物0.2kgを添加することである)を添加する。均質になるまでゆっくりと混合する。
【0197】
5.混合
L.ロイテリ(L.reuteri)細菌を含むプレミックスをBolzミキサーに戻す。
【0198】
6.排出
懸濁液を200リットルのガラス容器に排出し、窒素によって覆う。懸濁液を、ヒトへの経口投与に使用されるボトルに充填するまで容器内に保持する。
【0199】
例4-プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)を含む、錠剤形式のプロバイオティック製品の製造
例7に記載の方法に従ってGOSを添加して、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938株を培養する。培養後、業界の標準的な方法を使用して、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938を凍結乾燥させる。
【0200】
以下の工程は、グルコースカプセル化を含む、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938株を含有する錠剤の製造プロセスの一例を示す。錠剤製品の賦形剤、充填剤、香味剤、カプセル化剤、潤滑剤、固化防止剤、甘味料及び他の成分は、当該技術分野で知られているように、製品の有効性に影響を及ぼすことなく使用され得ることが理解される:
【0201】
1.溶融
SOFTISAN(商標)154(SASOL GMBH,Bad Homburg,Germany)を容器内で溶融させ、70℃に加熱して、結晶構造の完全な破壊を確実にする。次いで、これを52~55℃(その硬化点のすぐ上)まで冷却する。
【0202】
2.造粒
L.ロイテリ(L.reuteri)株凍結乾燥粉末をDiosna高剪断ミキサー/造粒機又は同等物に移す。約1分間、溶融したSOFTISAN(商標)154をL.ロイテリ(L.reuteri)株粉末にゆっくりと添加する。添加中はチョッパーを使用する。
【0203】
3.湿式ふるい分け
造粒直後にTornadoミルを使用して、1mmのふるい網に顆粒を通過させる。ふるい分けした顆粒を、PVCコーティングされたアルミニウム箔から作製されたaluパウチに詰め、ヒートシーラーを用いて密封してパウチを形成し、乾燥剤パウチとともに、混合するまで冷蔵保存する。造粒バッチを2つの錠剤バッチに分割する。
【0204】
4.当技術分野で公知の標準的なマイクロカプセル化方法を使用してカプセル化されたカプセル化D-グルコース(G8270、>99.5%グルコース、Sigma)を添加する。糖の量は、乾燥L.ロイテリ(L.reuteri)株の添加された粉末の総CFUに依存し、標準レベルは、細菌の10の総CFU当たり1グラムの糖であり得るが、これはまた、糖0.1グラムまで、又は0.01グラムから10グラムまで、さらには100グラムまで変動し得る。
【0205】
5.混合
全成分をミキサー内で均質なブレンドになるように混合する。
【0206】
6.圧縮
最終ブレンドを回転式タブレットプレスのホッパーに移し、Kilian圧縮機内で総重量765mgの錠剤を圧縮する。
【0207】
7.バルク包装
モレキュラーシーブの乾燥パウチとともに、錠剤をaluパウチに包装する。最終的な包装の少なくとも1週間前に、aluパウチをプラスチックのバケツに入れ、低温の場所に保管する。水素化パーム油であるSOFTISAN(商標)を使用すると、L.ロイテリ(L.reuteri)細胞を脂肪内にカプセル化し、環境的に保護することが可能になる。
【0208】
例5-プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株、並びに結腸内のカルシウム及びマグネシウムの溶解度の増加
a)SHIME(登録商標)モデル
この実験では、Human Microbial Ecosystem(SHIME(登録商標))の連続シミュレータの単純化されたシミュレーションを使用した。このSHIME(登録商標)モデルは、科学プロジェクト及び産業プロジェクトの両方に20年超にわたって広範囲に使用されており、インビボパラメータによって検証されている(例えば、Van den Abbeele et al.,Arabinoxylo-Oligosaccharides and Inulin Impact Inter-Individual Variation on Microbial Metabolism and Composition,Which Immunomodulates Human cells,J.Agric.Food chem.2018,66,5,1121-1130を参照)。
【0209】
一連の本実験のために、単純化されたSHIME(登録商標)システムとして、上部消化管(上部GIT、胃及び小腸)及び結腸状態を模倣する2段階バッチ系を使用した(図1)。これらの試験では、グローイングアップミルクとも呼ばれる、年齢層に適合したミネラルを含有する牛乳系幼児飲料を使用した。
【0210】
幼児の小腸内で起こる吸収過程をシミュレートするために、14kDaのカットオフを有するセルロース膜を使用することによって透析手法を適用した。透析膜内に小腸懸濁液を導入することによって、消化アミノ酸、糖、微量栄養素及びミネラルなどの分子を上部消化管マトリックスから徐々に除去した。さらに、幼児の胃内pHをシミュレートするために、1時間のインキュベーション中に5.5から3.0に進む、胃内インキュベーション中の緩やかなpH低下を実施した。また、最初の30分間の小腸インキュベーション(十二指腸)中、4.5の固定pHを実施して、利用可能なミネラルを最適に吸収させた。小腸相(空腸+回腸)の続く145分間に、pH7を導入した。胃及び小腸条件への曝露後のミルクマトリックスを、幼児の糞便試料を含有する結腸区画に移した。
【0211】
12ヶ月齢の乳児ドナーから、新鮮な糞便材料を採取した。糞便懸濁液を調製し、保護剤と混合した。短期結腸インキュベーションの開始時に、試験成分(例1によるL.ロイテリ(L.reuteri)株及びプレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株)を、結腸内に存在する基礎栄養素(例えば、ムチンなどの宿主由来グリカン)を含有する糖枯渇栄養培地に添加した。
【0212】
L.ロイテリ(L.reuteri)株及びプレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938を1×10CFU/リアクターで接種した。
【0213】
以下の結腸インキュベーションを行った:
・プロバイオティックを用いない対照インキュベーション(上部GIT消化ミルクのみ)
・上部GIT消化ミルク+L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938
・上部GIT消化ミルク+プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938
【0214】
結腸インキュベーションを、37℃で、振盪(90rpm)条件下で48時間行った。生物学的変動を説明するために、全実験を3連で行った。
【0215】
b)ミネラル(カルシウム及びマグネシウム)の分析
Ghent University(Belgium)の専門研究室によってカルシウム及びマグネシウムの分析を行った。試料を誘導結合プラズマ発光分光(ICP-OES)によって測定した。結腸区画内のミネラル分析のための試料を0時間後、24時間後及び48時間後に採取した。48時間の時点の前に結腸透析を行い、バイオアクセス可能なミネラル画分、及び不溶性ミネラル画分の値を得た。
【0216】
図2に見られるように、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株は、24時間及び48時間の両方の時点で結腸内のマグネシウム及びカルシウムのバイオアクセシビリティを増強する。これは、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株を、それを必要とする対象のマグネシウム及びカルシウムの吸収を促進するために使用することができることを示唆している。
【0217】
例6-プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株、及び結腸内の鉄のバイオアクセシビリティの増加
例5に記載されているように実験を行った。同様に、Ghent University(Belgium)の専門研究室によって鉄含有量の分析を行った。試料をICP-OESによって測定した。結腸区画内のミネラル分析のための試料を0時間後、24時間後及び48時間後に採取した。48時間の時点の前に結腸透析を行い、バイオアクセス可能なミネラル画分、及び不溶性ミネラル画分の値を得た。
【0218】
図3に見られるように、プレコンディショニングされたプロバイオティックL.ロイテリ(L.reuteri)株は、結腸内の鉄のバイオアクセシビリティを増強する。これは、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株を、それを必要とする対象の鉄吸収を促進するために使用することができることを示唆している。
【0219】
例7-プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株は消化管状態に対するストレス耐性を改善する
この実験のために、L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938を、該細菌を凍結乾燥させる前に、以下に記載される2つのストレスアッセイ、すなわち、酸耐性(c)又は胆汁耐性(d)のいずれかによってさらに試験するまで、様々な糖及び電子受容体(すなわち、3%BMOS+3%フルクトース、又は3%グルコース+3%フルクトース)を添加して培養した)。結果をe)の下に示す。
【0220】
a)バイオリアクターでの培養
10mlのMRS培地(Oxoid)に、-70℃で保存した凍結ストックから100μlを接種した。チューブを37℃で6時間インキュベートし、その後、500μlを使用して50mlのMRSをチューブに接種した。チューブを37℃で16~20時間インキュベートし、その後、全体積をバイオリアクターへの接種材料として使用した。
バイオリアクターでの培養条件:
作業体積:1L
培地:3%BMOS+3%フルクトース、又は3%グルコース+3%フルクトースを含む産業用MRS(iMRS)
通気:通気なし
温度:37℃
撹拌:250rpm
pH:6.00+/-0.1
培養時間:6~10時間
【0221】
iMRS成分
成分 量(g)
酵母抽出物 10
酵母ペプトン 10
クエン酸ナトリウム 2
酢酸ナトリウム 5
HPO
MgSO七水和物 0.1
硫酸マンガン七水和物 0.05
Tween(登録商標)80 1
L-システイン 0.1
精製水(800ml)
【0222】
NaOHを用いてpHを6.5に設定する。オートクレーブ(121℃、15分)し、その後、滅菌糖溶液(最終体積1000ml)を添加する。培養後、細菌を遠心分離によってペレット化し、50mlの10%スクロースに懸濁した。
【0223】
b)凍結乾燥
濃縮した細胞懸濁液を凍結乾燥ガラスバイアル(1ml/バイアル)に分注し、バイアルをウルトラフリーザー内で-50℃で2時間凍結した後、Labconco FreeZone Stoppering Tray Freeze-Dryerに移した。凍結乾燥スキームを以下のように設定した:凍結工程:-40℃で4時間;主乾燥:-35℃、0.102mbarで15分間、-10℃、0.102mbarで12.5時間;二次乾燥:-10℃、0.01mbarで30分間、25℃、0.01mbarで12時間。プロセスの終了時に、真空下でバイアルに蓋をし、その後の使用までバイアルを-20℃で保存した。
【0224】
c)ストレス耐性酸-アッセイ
培養し凍結乾燥させたL.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938の1つのバイアルを1mlのリン酸緩衝食塩水(PBS)(pH7.4)で再水和し、その後、10mlの合成胃液pH2.0*又はPBS(対照)で20倍に希釈した。チューブを37℃でインキュベートし、試料を0、50分、90分の時点で取り出し、段階希釈し(10-1~10-6)、MRS寒天プレートに播種した。プレートを37℃の嫌気性ジャー内で一晩インキュベートした後、コロニーを計数した。
【0225】
合成胃液pH2.0
8.3g/l プロテオースペプトン(Oxoid)
3.5g/l D-グルコース
2.05g/l NaCl
0.6g/l KHPO
0.11g/l CaCl
0.37g/l KCl
0.05g/l 胆汁
0.1g/l リゾチーム(使用前に添加する)
13.3mg/l ペプシン(使用前に添加する)
【0226】
1M HClを使用してpHを2.0に調整し、胃液を濾過滅菌する。
【0227】
d)ストレス耐性8%ウシ胆汁-アッセイ
培養し凍結乾燥させたL.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938細胞の1つのバイアルを1mlのPBS(pH7.4)で再水和し、その後、8%ウシ胆汁又はPBS(対照)を含む10mlのMRS(Oxoid)で20倍に希釈した。チューブを37℃でインキュベートし、その後、試料を0、30分、90分の時点で取り出し、段階希釈し(10-1~10-6)、MRS寒天プレートに播種した。プレートを37℃の嫌気性ジャー内で一晩インキュベートした後、コロニーを計数した。
【0228】
結果
c)及びd)の結果は、いずれのアッセイでも、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938(すなわち、3%BMOS+3%フルクトース中で培養)が、3%グルコース+3%フルクトース(L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938)中で培養されたL.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938と比較して、酸及び胆汁の両方に対するストレス耐性の改善を有したことを示している。図4及び図5を参照されたい。酸及び胆汁の両方に対するストレス耐性が増加した細菌は、ここでは2つの別個の試験で示されているように、生存率及び持続性の改善を有するなど、対象の消化管内でさらに良好に機能する。
【0229】
例8 プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株は粘液への接着を改善する
この実験のために、L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938を、該細菌を上記の例7に記載の手順に従って凍結乾燥させる前に、様々な糖及び電子受容体を添加して、バイオリアクター内で培養した。次いで、L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938を、以下に記載されるようにその接着特性について評価した。
【0230】
材料及び方法
a)粘液によるマイクロタイターウェルのコーティング
ブタの小腸から粘液を調製した。5cmの腸の内部をスパチュラによってこすり、材料を除去し、5mlの氷冷PBSに採取した。細胞及び粒子状物質を除去するために、得られた懸濁液を最初に11,000×gで10分間、次いで26,000×gで15分間遠心分離した。粘液調製物を使用するまで-20℃で保存した。
【0231】
粘液材料をPBS pH6でOD280=0.1に希釈し、マイクロタイターウェル(Greiner又はNunc MaxiSorb)(150μl/ウェル)内、4℃で一晩、ゆっくりと撹拌しながらインキュベートした。その後、ウェルを0.05%Tween(登録商標)20(PBST)を含むPBS(pH6.0)を用いて洗浄し、その後、1%Tween 20(pH6.0)を含む0.2mlのPBSを用いて1時間ブロッキングし、PBSTを用いて最後に2回洗浄する。
【0232】
b)細菌の調製
培養し凍結乾燥させたL.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938細胞の1つのバイアルを1mlのPBS(pH7.4)で再水和し、PBS 7.4+Tween(登録商標)20(0.05%)を用いて洗浄した。試料をOD 0.5に希釈し、その後、PBST 7.4(1ml)を用いて2回洗浄し、PBST pH6.0に最後に再懸濁した。MRSブロス中で懸濁液を希釈し、その後、嫌気的条件下37℃で48時間インキュベートしたMRS寒天プレート(Merck)に細菌をプレーティングすることによって、cfu/mlの数を分析した。
【0233】
c)結合
細菌懸濁液(150μl)を各ウェルに添加し、ゆっくりと撹拌しながら37℃で4時間インキュベートした。結合の4時間後、ウェルをPBST(0.05%Tween 20 pH6.0)を用いて3回洗浄し、150μLのトリプシンエチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液(ハンクス平衡塩類溶液中0.25%ブタトリプシン及び1mM EDTA・4Na)を用いて37℃で30分間処理し、その後、細菌懸濁液を段階希釈し、MRSプレートにプレーティングした。プレートを37℃で24時間、嫌気的条件下でインキュベートした。
【0234】
結果
プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938(すなわち、3%BMOS+3%フルクトース中で培養)は、3%グルコース+3%フルクトース(L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938)中で培養されたL.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938と比較して、改善された粘液結合及び接着能を有した。以下の表1を参照されたい。
【0235】
結果は、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938では、L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938と比較して、腸粘膜に付着する能力が改善されていることを示している。これは、該細菌が腸の上皮内層に近づくことができ、また腸内に長期間留まることができることから、該細菌がそのプロバイオティック効果を発揮する可能性に正の効果を及ぼすことができる。
【表1】
【0236】
例9 プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株は上皮完全性を保護する
この実験のために、L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938を、該細菌を上記の例7に記載の手順に従って凍結乾燥させる前に、様々な糖及び電子受容体を添加して、バイオリアクター内で培養した。次いで、以下に記載されるように、L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938を、毒素原性大腸菌(Escherichia coli)(ETEC)の有害作用から腸上皮を保護するその能力について評価した。
【0237】
材料及び方法
上皮細胞培養(Caco-2/HT29 MTX)
組織培養フラスコ内で、10%ウシ胎児血清、1%非必須アミノ酸並びに1%ペニシリン及びストレプトマイシンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、37℃、5%COの雰囲気下、相対湿度90%で、Caco-2細胞とHT29 MTX細胞とを別個に増殖させた。Caco-2細胞とHT29-MTX細胞とを25cm組織培養フラスコ内で増殖させ、0.25%トリプシン及び0.02%エチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液を使用して80~90%コンフルエンスで分割した。細胞を25cmフラスコ当たり6×10細胞の密度で播種した。
【0238】
細胞共培養
Caco-2細胞とHT29-MTX細胞とを、9:1の比率でTranswellインサート(Transwell-COLコラーゲンコーティングメンブレンフィルター)の頂端チャンバーに播種し、各インサートでは1×10細胞/cmの最終密度で12ウェルTranswellプレート内で増殖させた。細胞を同じ条件で維持し、培地(頂端側0.5ml、及び基底外側1.5ml)により21日間増殖させた。1日おきに培地を交換することにより、細胞を分化させることができた。
【0239】
細胞層の完全性
2つの方法、すなわち、経上皮電気抵抗(TEER)、及びフルオレセインイソチオシアナート-デキストラン(FITC-デキストラン)透過性の決定を使用して、細胞層の完全性を決定した。
【0240】
Millicell電気抵抗システム(Millipore,Darmstadt,Germany)を使用した経上皮電気抵抗(TEER)測定によって、実験中の細胞単層の完全性を決定した。3つの異なる領域を使用して、各ウェル内のTEER値を検出した(平均を使用)。250Ωcmを超えるTEER値を有するウェルを透過性試験に使用した。
【0241】
播種したCaco-2/HT29-MTX細胞を、PBS(pH7.4)を使用して再水和したL.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938細菌細胞(様々な炭素源を用いて培養し、上記の培養及び凍結乾燥手順に従って凍結乾燥させた)を用いて、細菌多重度(multiplicity of bacteria)(MOB)100で6時間前処理した後、ETEC(上皮完全性に破壊的な影響を及ぼすことが知られている毒素原性大腸菌(E.coli))を用いて、感染多重度(MOI)100でさらに6時間負荷した。ETEC(株853/67)を-70℃で保存した凍結ストックから接種し、10ml LBブロス(Miller’s)中で37℃で16時間増殖させた。次いで、1mlのETEC一晩培養物を100ml LBブロス(Miller’s)に37℃で4~6時間再接種した。TEERは、前処理、及びETECによる負荷の前に測定し、その後、負荷全体の最中、1時間おきに測定した。単層の傍細胞透過性を定量するために、ETECによる負荷の開始時に、インサートの頂端側に1mg/mLの4kDaフルオレセインイソチオシアナート-デキストラン(FITC-デキストラン;Sigma)を添加した。基底外側区画からの試料を6時間のインキュベーション後に採取した。次いで、FLUOstar Omega Microplate Reader(BMG Labtech,Ortenberg,Germany)を使用して、蛍光光度法(励起、485nm;発光、520nm)によって、拡散蛍光トレーサーを3連で分析した。
【0242】
結果
プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938(3%BMOS+3%フルクトース中で培養)は、3%グルコース+3%フルクトース(L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938)中で培養されたL.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938と比較して、ETECの有害作用から上皮バリア完全性を保護する改善された能力を有することが分かった。図6を参照されたい。
【0243】
これらの結果は、L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938のプレコンディショニングが、バリア完全性に対するその保護効果を改善することを示している。
【0244】
例10-骨に対する効果
マウス前骨芽細胞モデル:MC3T3-E1を使用して、インビトロ実験を行った(骨芽細胞は骨形成細胞である)。細胞を様々な条件に曝露した:48時間の結腸インキュベーション後、L.ロイテリ(L.reuteri)試料(プレコンディショニングあり及びなし)を補充した上部GIT消化ミルクを遠心分離し、濾過した後、培養培地(DMEM)に1%で添加した:
条件:
・消化ミルク(対照)
・消化ミルク+L.ロイテリ(L.reuteri)株
・消化ミルク+プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株
【0245】
読出し:
・ALP活性(酵素活性)。ALP酵素は、骨芽細胞が成熟すると、骨芽細胞によって発現される。したがって、これは、骨形成細胞(骨芽細胞)の分化の指標である。
【0246】
・オステオカルシン遺伝子発現は、骨芽細胞ミネラル化の指標である。
・MC3T3細胞遊走の指標としての閉鎖速度を測定するスクラッチアッセイ
【0247】
図7に見られるように、対照条件と対比してプレコンディショニングなしのL.ロイテリ(L.reuteri)株と比較して、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株の有意な優位性を伴う骨芽細胞分化に対する正の効果が観察された。骨芽細胞分化に対する影響は、骨形成速度、したがって成長速度に対する正の影響と関連し得る。
【0248】
図8に示すように、ミネラル化(後期骨芽細胞活性)は、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株の方が高い。ミネラル化が高くなれば、骨強度が増加され得る。
【0249】
図9に示すように、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)は対照と対比して細胞遊走を有意に減少させたが、プレコンディショニングされていないL.ロイテリ(L.reuteri)株はこのパラメータに有意に影響を及ぼさなかった。遊走のこの減少は、図7(ALP)に示すように、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)に曝露された場合の骨細胞の分化の増加と一致する。
【0250】
例11-様々なプレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株は、胆汁に対するストレス耐性の改善を示す
この実験では、3つの異なるL.ロイテリ(L.reuteri)細菌株、すなわち、L.ロイテリ(L.reuteri)DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475及びL.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131を試験した。L.ロイテリ(L.reuteri)株の各々を-70℃で保存した凍結ストックから接種し、10mlのMRSブロス(Oxoid)中で37℃で16時間増殖させた。1mlの一晩培養物を、3%BMOS+3%フルクトース、又は3%グルコース+3%フルクトースのいずれかを含む100mlのIMRS(上記の例7を参照)に37℃で16時間再接種した。次いで、細胞を遠心分離によってペレット化し、10%スクロース(5ml;20×濃縮)に再懸濁して、凍結乾燥を進めた。
【0251】
凍結乾燥
濃縮した細胞懸濁液を凍結乾燥ガラスバイアル(1ml/バイアル)に分注し、バイアルをウルトラフリーザー内で-50℃で2時間凍結した後、Labconco FreeZone Stoppering Tray Freeze-Dryerに移した。凍結乾燥スキームを以下のように設定した:凍結工程:-40℃で4時間;主乾燥:-35℃、0.102mbarで15分間、-10℃、0.102mbarで12.5時間;二次乾燥:-10℃、0.01mbarで30分間、25℃、0.01mbarで12時間。プロセスの終了時に、真空下でバイアルに蓋をし、その後の使用までバイアルを-20℃で保存した。
【0252】
ストレス耐性8%ウシ胆汁-アッセイ
培養し凍結乾燥させたL.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938細胞、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475細胞又はL.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131細胞(対照細胞及びプレコンディショニングされた細胞)のそれぞれ1つのバイアルを1mlのPBS(pH7.4)中で再水和し、その後、8%ウシ胆汁又はPBS(対照)を含む10mlのMRS(Oxoid)で20倍に希釈した。チューブを37℃でインキュベートし、0、30分(ATCC PTA 6475及びDSM 27131)、90分(ATCC PTA 6475、DSM 27131及びDSM 17938)の時点で、試料をさらに処理するために採取した。これらの試料を段階希釈し(10-1~10-6)、MRS寒天プレート上に播種し、これを嫌気性ジャー内で37℃で一晩インキュベートした後、コロニーを計数することによって細胞生存能を分析した。
【0253】
結果
この例の結果は、プレコンディショニングされたL.ロイテリ(L.reuteri)株(L.ロイテリ(L.reuteri)株DSM 17938、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC PTA 6475及びL.ロイテリ(L.reuteri)DSM 27131)(すなわち、3%BMOS+3%フルクトース中で培養)がいずれも、プレコンディショニングされていない、すなわち、全アッセイで3%グルコース+3%フルクトース中で培養された対応する対照株と比較して、胆汁に対するストレス耐性の改善を有したことを示している。以下の表2A及び表2Bを参照されたい。本明細書に示されるように、胆汁に対するストレス耐性が増加した細菌は、対象の消化管内でさらに良好に機能する、例えば、消化管状態に対する生存率及び持続性の改善を有すると予測される。ここに示される結果は、関連するアッセイでは、3つすべてのL.ロイテリ(L.reuteri)細菌株がストレス耐性の改善を有することを示している。
【表2】

【表3】

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】