(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】レンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤由来のマイクロリボ核酸、その製造方法、及び使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20240416BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240416BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20240416BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/29 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
A61K31/7088
A61P31/16
A61P11/00
C12N15/29 ZNA
C12N15/10 100Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555359
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 CN2022094829
(87)【国際公開番号】W WO2023201836
(87)【国際公開日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】202210424718.8
(32)【優先日】2022-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511128206
【氏名又は名称】南通大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】顧 暁松
(72)【発明者】
【氏名】毛 蘇蘇
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼ 蕾蕾
(72)【発明者】
【氏名】楊 暁明
(72)【発明者】
【氏名】王 星輝
(72)【発明者】
【氏名】孫 華林
(72)【発明者】
【氏名】徐 来
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB33
(57)【要約】
本発明は、レンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤由来のマイクロリボ核酸、その製造方法、及び使用を開示し、前記マイクロリボ核酸は、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO.1~15で示されるmiRNAから選択され、好ましくは、人工合成されたQQ_159、植物QQ_159、QQ_159の前駆体形態又はQQ_159の成熟体形態を含む、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO.14で示されるQQ_159である。本発明は、レンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤から機能性植物マイクロリボ核酸又は該マイクロリボ核酸含有抽出物を抽出し、実験を通じて、該レンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤由来のマイクロリボ核酸QQ_159がウイルス性インフルエンザ及び新型コロナウイルス感染による肺炎に対して一定の阻害効果及び治療作用があることを実証している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤由来のマイクロリボ核酸であって、
前記マイクロリボ核酸は、novel_mir7、novel_mir33、novel_mir35、novel_mir10、novel_mir20、novel_mir5、novel_mir36、novel_mir28、novel_mir31、ppt-miR894、novel_mir32、novel_mir21、pab-miR3711、QQ_159又はbdi-miR159a-3pから選択され、
前記novel_mir7のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.1で示され、
前記novel_mir33のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.2で示され、
前記novel_mir35のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.3で示され、
前記novel_mir10のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.4で示され、
前記novel_mir20のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.5で示され、
前記novel_mir5のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.6で示され、
前記novel_mir36のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.7で示され、
前記novel_mir28のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.8示され、
前記novel_mir31のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.9示され、
前記ppt-miR894のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.10示され、
前記novel_mir32のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.11示され、
前記novel_mir21のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.12示され、
前記pab-miR3711のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.13示され、
前記QQ_159のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.14示され、
前記bdi-miR159a-3pのヌクレオチド配列がSEQ ID NO.15示される、ことを特徴とするレンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤由来のマイクロリボ核酸。
【請求項2】
前記マイクロリボ核酸は、人工合成されるQQ_159、植物QQ_159、QQ_159の前駆体形態又はQQ_159の成熟体形態を含むQQ_159である、ことを特徴とする請求項1に記載のレンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤由来のマイクロリボ核酸。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤由来のマイクロリボ核酸の製造方法であって、
レンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤300mLを50mL酵素除去遠沈管にそれぞれ入れて、2000rpmで遠心分離して不純物を除去し、1本ごとに10mLの上清を吸引して氷上に置き、煎剤の体積に対して3倍の割合でTRIzolls30mLを加え、激しく振って均一にした後、室温で10min静置し、その後、クロロホルム6mLを加え、激しく振って均一にし、10min静置するステップ1)と、
10000gを4℃で10min遠心分離し、上清を収集するステップ2)と、
等体積のイソプロパノールを加えて-20℃で1h沈殿させ、その後、12000gを15min遠心分離するステップ3)と、
上清を慎重に捨て、75%のエタノール5mLを加えて沈殿を洗浄し、12000gを4℃で5min遠心分離するステップ4)と、
遠心分離後、エタノールを慎重に捨てて、沈殿を残し、沈殿を乾燥させた後、65℃のDEPC水200μLを加えて溶解し、RNA濃度を測定するステップ5)と、
市販miRNA isolation kitを用いてmiRNAを精製し、カラムごとにRNAを100μg通し、管ごとにDEPC水60μLで溶解させるステップ6)と、
miRNAの濃度を測定し、8h凍結乾燥させた後、-80℃で保存するステップ7)と、を含む、ことを特徴とする製造方法。
【請求項4】
インフルエンザウイルスの複製を阻害する薬物の製造における、請求項2に記載のレンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤由来のマイクロリボ核酸の使用。
【請求項5】
ウイルス性インフルエンザを治療する薬物の製造における、請求項2に記載のレンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤由来のマイクロリボ核酸の使用。
【請求項6】
前記インフルエンザは、B型ビクトリアインフルエンザ又はH5N1鳥インフルエンザを含む、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の使用。
【請求項7】
SARS-CoV-2ウイルスの複製を阻害する薬物の製造における、請求項2に記載のレンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤由来のマイクロリボ核酸の使用。
【請求項8】
SARS-CoV-2ウイルスによるウイルス性肺炎を治療する薬物の製造における、請求項2に記載のレンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤由来のマイクロリボ核酸の使用。
【請求項9】
インフルエンザウイルス複製を阻害する、及び/又はインフルエンザを治療するための医薬組成物であって、
請求項2に記載のマイクロリボ核酸QQ_159と、薬学的に許容される担体と、を含む、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
SARS-CoV-2ウイルス複製を阻害する、及び/又はSARS-CoV-2ウイルスによるウイルス性肺炎を治療するための医薬組成物であって、
請求項2に記載のマイクロリボ核酸QQ_159と、薬学的に許容される担体と、を含む、ことを特徴とする医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学の技術分野に属し、具体的には、レンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤由来のマイクロリボ核酸、その製造方法、及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザ(インフルと略称)は哺乳類と家禽がよく罹患する急性呼吸器疾患であり、インフルエンザウイルスによって引き起こされ、伝染性が強く、伝播速度が速く、通常は単純な呼吸器感染を招き、咳、発熱、筋肉痛、寒気や発汗などの臨床症状を含み、不快感は2~8日持続し、通常は迅速に発病する。一部の患者、特に高齢者、幼児とその他の慢性疾患を有する患者は、ウイルス性又は二次性肺炎を引き起こしやすく、深刻な場合、呼吸困難と多臓器不全を伴う。抗インフルエンザ薬による治療は、現在、インフルエンザに対抗する常用手段の1つであり、一般的に患者の感染程度や患者の身体状況によって処方を決定する。インフルエンザウイルスは最も深く研究されている病原体の1種であるが、インフルエンザウイルスは非常に変異しやすいため、従来の制御及び治療プランは絶えず改善する必要があり、ウイルス性インフルエンザに対する新薬の開発は、現在の社会において強く求められており、また、国民の健康にとっても非常に重要である。
【0003】
新型コロナウイルス(新型コロナと略称)は、過去2年間で広く伝播していた新型ウイルスの1種で、主に飛沫の呼吸経路を通じて伝播し、最近、エアロゾル、物品を通じて接触感染する可能性があることがさらに発見され、伝染性が非常に強く、伝播速度が非常に速い。臨床症状は、主に発熱、疲労、空咳、嗅覚欠損/嗅覚障害であり、重症者の場合は呼吸困難、呼吸促迫、低酸素血症の深刻な肺炎を伴い、また、その他の合併症を引き起こすことがある。現在、新型コロナウイルスに対する特効性治療薬が存在しないため、世界中に大規模に広がっている。そのため、感染症対策の薬物需要に応じて、新型コロナウイルスに特異的に対応した新しい薬物を開発することは、新型コロナウイルスに対応し、国民の生命の安全を保障する重要な手段である。
【0004】
マイクロリボ核酸(microRNAs、miRNAsと略称)は小さい内因性非コードRNAである。通常、miRNAコード遺伝子はRNAポリメラーゼIIによって転写され、一次転写物を産生し、RNaseIIIエンドヌクレアーゼDroshaとDicerによって約21ヌクレオチドの小さなRNAに加工される。miRNAは、コード領域又は標的mRNAの3’と5’非翻訳領域との結合を通じて、転写後の遺伝子サイレンシングを媒介し、多種の生理病理プロセスにおいて重要な役割を発揮し、医学領域における応用の将来性が期待できる。
【0005】
ここ数年来、植物miRNAに関する研究は急速に発展し、主にアップレギュレーション/ダウンレギュレーション策略を通じてその生物学機能を研究し、多くの研究は、光合成作用、栄養安定状態、生長発育、ホルモンシグナル伝達及びストレス応答などの方面で重要な調節作用を発揮していることを明らかにし、さらに、植物miRNAが内因性miRNAとして動物の遺伝子発現を調節できることが確認された。大量の文献は、漢方薬がインフルエンザ及び新型コロナウイルスによる肺炎の予防と治療において積極的な作用を発揮したことを報告した。しかし、具体的にどの有効成分なのかは明らかになっていない。漢方薬にmiRNAを含むことを報告した文献があるが、漢方薬煎剤にどのような安定に存在するmiRNAが存在し、これらのmiRNAが動物の体内に入るとどのような機能を発揮するかはまだ不明である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術の欠点に対して、レンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤由来のマイクロリボ核酸、その製造方法、及び使用を提供し、レンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤から機能性植物マイクロリボ核酸又は該マイクロリボ核酸含有抽出物を抽出し、実験を通じて、該レンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤由来のマイクロリボ核酸QQ_159がウイルス性インフルエンザ及び新型コロナウイルス感染による肺炎に対して一定の阻害効果及び治療作用があることを実証している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の技術的解決手段によって達成される。
【0008】
レンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤由来のマイクロリボ核酸であって、前記マイクロリボ核酸は、novel_mir7、novel_mir33、novel_mir35、novel_mir10、novel_mir20、novel_mir5、novel_mir36、novel_mir28、novel_mir31、ppt-miR894、novel_mir32、novel_mir21、pab-miR3711、QQ_159又はbdi-miR159a-3pから選択され、
前記novel_mir7のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.1で示され、
前記novel_mir33のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.2で示され、
前記novel_mir35のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.3で示され、
前記novel_mir10のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.4で示され、
前記novel_mir20のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.5で示され、
前記novel_mir5のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.6で示され、
前記novel_mir36のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.7で示され、
前記novel_mir28のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.8で示され、
前記novel_mir31のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.9で示され、
前記ppt-miR894のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.10で示され、
前記novel_mir32のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.11で示され、
前記novel_mir21のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.12で示され、
前記pab-miR3711のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.13で示され、
前記QQ_159のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.14で示され、
前記bdi-miR159a-3pのヌクレオチド配列がSEQ ID NO.15で示される。
【0009】
好ましくは、前記マイクロリボ核酸は、人工合成されるQQ_159、植物QQ_159、QQ_159の前駆体形態又はQQ_159の成熟体形態を含むQQ_159である。
【0010】
レンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤由来のマイクロリボ核酸の製造方法であって、
レンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤300mLを50mL酵素除去遠沈管にそれぞれ入れて、2000rpmで遠心分離して不純物を除去し、1本ごとに10mLの上清を吸引して氷上に置き、煎剤の体積に対して3倍の割合でTRIzolls30mLを加え、激しく振って均一にした後、室温で10min静置し、その後、クロロホルム6mLを加え、激しく振って均一にし、10min静置するステップ1)と、
10000gを4℃で10min遠心分離し、上清を収集するステップ2)と、
等体積のイソプロパノールを加えて-20℃で1h沈殿させ、その後、12000gを15min遠心分離するステップ3)と、
上清を慎重に捨て、75%のエタノール5mLを加えて沈殿を洗浄し、12000gを4℃で5min遠心分離するステップ4)と、
遠心分離後、エタノールを慎重に捨てて、沈殿を残し、沈殿を乾燥させた後、65℃のDEPC水200μLを加えて溶解し、RNA濃度を測定するステップ5)と、
市販miRNA isolation kitを用いてmiRNAを精製し、カラムごとにRNAを100μg通し、管ごとにDEPC水60μLで溶解させるステップ6)と、
miRNAの濃度を測定し、8h凍結乾燥させた後、-80℃で保存するステップ7)と、を含む。
【0011】
インフルエンザウイルス複製を阻害する薬物の製造における、レンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤由来のマイクロリボ核酸QQ_159の使用。
【0012】
ウイルス性インフルエンザを治療する薬物の製造における、レンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤由来のマイクロリボ核酸QQ_159の使用。
【0013】
好ましくは、前記インフルエンザは、B型ビクトリアインフルエンザ又はH5N1鳥インフルエンザを含む。
【0014】
SARS-CoV-2ウイルス複製を阻害する薬物の製造における、レンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤由来のマイクロリボ核酸QQ_159の使用。
【0015】
SARS-CoV-2ウイルスによるウイルス性肺炎を治療する薬物の製造における、レンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤由来のマイクロリボ核酸QQ_159の使用。
【0016】
インフルエンザウイルス複製を阻害する、及び/又はインフルエンザを治療するための医薬組成物であって、上記のマイクロリボ核酸QQ_159と、薬学的に許容される担体と、を含む。
【0017】
SARS-CoV-2ウイルス複製を阻害する、及び/又はSARS-CoV-2ウイルスによるウイルス性肺炎を治療するための医薬組成物であって、上記のマイクロリボ核酸QQ_159と、薬学的に許容される担体と、を含む。
【0018】
B型ビクトリアインフルエンザ複製を非治療目的でインビトロ阻害する方法であって、上記のマイクロリボ核酸QQ_159をインフルエンザB型ビクトリアウイルスで感染された細胞と接触させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の有益な効果は以下の通りであり、
本発明は、漢方薬煎剤中のマイクロリボ核酸を抽出する実験方法を提供し、この方法を用いて、レンギョウ・オウギ複方漢方薬剤中に安定に存在する15種類のマイクロリボ核酸を初めて抽出し、同定した。その中で、QQ_159はウイルス性インフルエンザ及び新型コロナウイルス感染による肺炎に対して一定の阻害効果と治療作用があることが実証された。本発明は、漢方薬の抗ウイルスの天然有効成分を得るだけでなく、インフルエンザ又は新型コロナウイルスによる肺炎の臨床的な治療のためにも可能性のある核酸医薬を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例2においてreal-time PCRにより検出された、QQ_159によるB型インフルエンザウイルス量への阻害効果である。
【
図2】実施例3におけるQQ_159がH5N1鳥インフルエンザウイルスを感染したマウスの体重に及ぼす影響である。
【
図3】実施例3におけるQQ_159がH5N1鳥インフルエンザウイルスを感染したマウスの生存率に及ぼす影響である。
【
図4】実施例3においてHE染色により検出された、QQ_159によるH5N1鳥インフルエンザウイルスを感染したマウスの肺部炎症への阻害効果である。
【
図5】実施例3においてreal-time PCRにより検出された、QQ_159によるH5N1鳥インフルエンザウイルスを感染してから3日目(A)及び5日目(B)のマウスの肺部のウイルス量への阻害効果である。
【
図6】実施例4においてHE染色により検出された、QQ_159によるSARS-CoV-2ウイルスを感染したマウスの肺部炎症への阻害効果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の解決しようとする技術的課題、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下、図面及び具体的な実施例を参照して詳細に説明する。
【0022】
実施例1 レンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤からのマイクロリボ核酸の抽出
(1)レンギョウ・オウギ復方漢方薬(キンギンカ、レンギョウ、オウゴン、セイコウ、ショウオウギ、ショウビャクジュツ、カッコウ、ボウフウ、バクモンドウ、カンゾウ)煎剤300mLを50mL酵素除去遠沈管にそれぞれ入れて、2000rpmで遠心分離して不純物を除去し、1本ごとに10mLの上清を吸引して氷上に置き、煎剤の体積に対して3倍の割合でTRIzolls30mLを加え、激しく振って均一にした後、室温で10mindし、その後、クロロホルム6mLを加え、激しく振って均一にし、10min静置した。
(2)10000gを4℃で10min遠心分離し、上清を収集した。
(3)等体積のイソプロパノールを加えて1h(-20℃)沈殿させ、その後、12000gを15min遠心分離した。
(4)上清を慎重に捨て、75%のエタノール5mLを加えて沈殿を洗浄し、12000gを4℃で5min遠心分離した。
(5)遠心分離後、エタノールを慎重に捨てて、沈殿を残し、沈殿を乾燥させた後、65℃のDEPC水200μLを加えて溶解し、RNA濃度を測定した。
(6)市販miRNA isolation kitを用いてmiRNAを精製し(カラムごとにRNAを100μg通し)、管ごとにDEPC水60μLで溶解させた。
(7)miRNAの濃度を測定し、8h凍結乾燥させた後、-80℃で保存した。
(8)BGISEQ-500技術を用いてマイクロリボ核酸について配列決定を行い、配列決定結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0023】
実施例2 QQ_159がマーティン・ダービー犬腎臓(MDCK)細胞中のB型インフルエンザウイルス量に及ぼす影響の測定
(1)24ウェル培養プレート内でMDCK細胞を培養した。
(2)10nM、50nM又は100nMのQQ_159aをそれぞれ市販トランスフェクション試薬riboFECTTMCPでMDCK細胞にトランスフェクションしながら、同濃度のナンセンス配列をMDCK細胞にトランスフェクションして対照群とした。
(3)B型ビクトリア系インフルエンザウイルスで上記の細胞を感染させた。
(4)ウイルス感染24h後、上清を収集し、遠心分離して細胞を合わせ、RNAを抽出し、real-time PCRによりウイルス量を検出した。
【0024】
その結果、
図1に示すように、対照群と比べて、100nMQQ_159はMDCK細胞中のB型ビクトリア系インフルエンザウイルスのウイルス量を顕著に阻害できた。
【0025】
実施例3 QQ_159がH5N1亜型鳥インフルエンザウイルスを感染したマウスに与える治療効果
(1)6週齢のBALB/C雌マウスをH5N1亜型鳥インフルエンザウイルスに感染させてから2h後、薬物を腹腔内注射した。動物の群分け及び薬物の用量を以下の表2に示す。
【表2】
表2においては、混合RNAは、レンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤から一括抽出した混合RNAである。
(2)5日間連続して投与し、毎日、体重の変化を観察して記録した(体重の低下が30%を超えると、安楽死させ、死亡として扱う)。
(3)チャレンジ後の3日目、5日目にそれぞれ肺組織を採取し、HE染色により肺組織の炎症を検出した。
(4)real-time PCRにより肺組織のウイルス量を検出した。
(5)動物を10日目まで飼育し、生存率を観察した。
その結果、体重の変化に関しては、
図2に示すように、中等濃度QQ_159(120pmol/匹/日、M-QQ_159)、高濃度QQ_159(360pmol/匹/日、H-QQ_159)、及び混合RNA群では、チャレンジ後の7日目(
図2にはD8として示されている)に、体重変化がプラトーに入るが、感染対照群では、さらに低下する傾向があり、高濃度QQ_159群では、体重変化率が混合RNA群及び中等濃度QQ_159よりも僅かに高かった。生存率に関しては、
図3に示すように、中等濃度QQ_159群、及び混合RNA群では、生存率は70%に達し、高濃度QQ_159群では、生存率は50%であり、一方、感染群では、生存率は30%しかなかった。
図4に示すように、HE結果から、感染対照群と比較して、混合RNA群及び中等濃度QQ_159では、マウスの肺部炎症が明らかに軽減され、また、中等濃度QQ_159の阻害効果がより高いことが明らかになった。
図5Aに示すように、感染後の3日目に、中等濃度QQ_159群、高濃度QQ_159群、及び混合RNA群のいずれも、ウイルスの複製を効果的に阻害でき、
図5Bに示すように、感染後の5日目に、中等濃度QQ_159は、ウイルス複製を阻害する効果が明らかに低下し、一方、高濃度QQ_159群及び混合RNA群は、ウイルス複製の阻害効果がまだ良好であった。
【0026】
この実験から明らかなように、人工合成されるQQ_159及びレンギョウ・オウギ復方漢方薬煎剤から一括抽出された混合RNAは、H5N1鳥インフルエンザウイルスに対して一定の治療作用があり、体重の低下が遅くなり、死亡率が低下し、肺部炎症が軽減されることが所見された。
【0027】
実施例4 QQ_159によるSARS-CoV-2ウイルスに起因する肺炎の阻害効果の検討
(1)SARS-CoV-2を10
5TCID
50/mLで6~8週齢のhACE2遺伝子組換えマウスに点鼻感染した。
(2)5日間腹腔内注射(ip)投与した。1日目にウイルス感染2h後に投与した。実験の群分け及び薬物の用量を以下の表3に示す。
【表3】
(3)0、1、2、3、4、5日目に、体重及び症状をモニタした。
(4)感染後の5日目にマウスを殺し、肺組織を収集した。
(5)HE染色により肺組織の病理を検出した。
【0028】
その結果、
図6に示すように、120pmol/匹/日でQQ_159を注射した場合、SARS-CoV-2を感染したhACE2遺伝子組換えマウスの肺組織の炎症に対して一定の阻害効果があり、このことから、QQ_159は、SARS-CoV-2感染によるマウス肺炎に対して一定の阻害効果があることが分かった。
【0029】
以上は、本発明の好ましい実施形態にすぎず、なお、当業者にとっては、本発明の原理から逸脱することなく、いくつかの改良及び修正が加えられることができ、これらの改良及び修正は、本発明の保護範囲とみなされるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】