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特表2024-517563流体デバイスの作製および製造された流体デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】流体デバイスの作製および製造された流体デバイス
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20240416BHJP
   C04B 35/569 20060101ALI20240416BHJP
   C04B 35/622 20060101ALI20240416BHJP
   B28B 7/34 20060101ALI20240416BHJP
   F28F 21/04 20060101ALI20240416BHJP
   B30B 11/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B01J19/00 321
C04B35/569
C04B35/622
B28B7/34 A
F28F21/04
B30B11/00 Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558797
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 US2022021132
(87)【国際公開番号】W WO2022204019
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】63/166,612
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】バーキー,ジョージ エドワード
(72)【発明者】
【氏名】クーノ,アレクサンダー リー
(72)【発明者】
【氏名】サザーランド,ジェイムズ スコット
【テーマコード(参考)】
4G053
4G075
【Fターム(参考)】
4G053CA08
4G053CA21
4G053EA45
4G053EA47
4G053EB17
4G075AA02
4G075AA39
4G075AA56
4G075BA05
4G075BA06
4G075BA10
4G075BB03
4G075BB05
4G075BD07
4G075DA02
4G075DA12
4G075DA18
4G075EB50
4G075FA12
4G075FA14
4G075FB02
4G075FB04
4G075FB06
4G075FB12
(57)【要約】
デバイスを通って延在する蛇行した流体通路を有するモノリシックな実質的に閉気孔性のセラミック流体デバイスを形成するためのデバイスおよびプロセスであって、蛇行した流体通路は、平滑な内表面を有し、セラミック本体の材料は、少なくともセラミック本体の対向し合う主面間に連続的かつ均一な結晶粒の分布を有する、デバイスおよびプロセス。このプロセスは、バインダーでコーティングされたセラミック粉末の体積内に流体通路ポジティブモールドを位置決めすることと、モールドが中にあるセラミック粉末の体積をプレス成形してプレス成形体を形成することと、プレス成形体を加熱してモールドを除去することと、プレス成形体を焼結することと、を含む。セラミック粉末の体積の第1の安定特性とモールドの第2の安定特性との間の関係は、プレス成形後および/または加熱中のプレス成形体の不連続性を防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体デバイスであって、
モノリシックな閉気孔性のセラミック本体と、
前記セラミック本体を通って延在していて、平滑な内表面を有する蛇行した流体通路と、
を備え、
前記セラミック本体の材料は、前記セラミック本体の少なくとも対向し合う主面間に連続的かつ均一な結晶粒の分布を有する、
流体デバイス。
【請求項2】
前記材料の結晶粒が10μm未満の結晶粒サイズを有する、請求項1記載の流体デバイス。
【請求項3】
前記平滑な内表面が10μmRa未満の表面粗さを有する、請求項1記載の流体デバイス。
【請求項4】
前記セラミック本体の材料が炭化ケイ素(SiC)である、請求項1記載の流体デバイス。
【請求項5】
前記SiCの密度が、SiCの理論最大密度の少なくとも95%である、請求項4記載の流体デバイス。
【請求項6】
流体デバイスを形成するための方法であって、
蛇行した形状を有する通路の通路ポジティブモールドを、バインダーでコーティングされたセラミック粉末の体積内に位置決めするステップと、
前記通路ポジティブモールドが中にある、前記バインダーでコーティングされたセラミック粉末の体積をプレス成形してプレス成形体を形成するステップと、
前記プレス成形体を加熱して前記通路ポジティブモールドを除去するステップと、
前記プレス成形体を焼結して、前記プレス成形体を通って延在する蛇行した流体通路を有する高密度で閉気孔性のセラミック本体を形成するステップと、
を含み、
前記バインダーでコーティングされたセラミック粉末の体積の第1の安定特性と前記通路ポジティブモールドの第2の安定特性との間の関係が、プレス成形後および/または加熱中の前記プレス成形体の不連続性を防止する、
方法。
【請求項7】
前記第1の安定特性が、第1の解放変位を含み、前記第2の安定特性が、プレス成形後の前記第1の解放変位よりも小さい第2の解放変位を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記第1の安定特性が、第1の解放変位を含み、前記第2の安定特性が、プレス成形後の前記第1の解放変位よりも大きい第2の解放変位を含む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記第1の安定特性が、前記バインダーでコーティングされたセラミック粉末のバインダー強度をさらに含み、前記バインダー強度は、前記プレス成形体に対する前記通路ポジティブモールドの解放力を打ち消すように構成される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記第1の安定特性が、前記バインダーでコーティングされたセラミック粉末のバインダー強度を含み、前記バインダー強度は、加熱中の前記プレス成形体に対する通路ポジティブモールドの力を打ち消すように構成される、請求項6記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、米国特許法第119条のもと、2021年3月26日に出願された米国仮特許出願第63/166,612号明細書の優先権の利益を主張し、その内容が依拠され、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示は、対象とする気孔率を有するセラミック構造体の作製方法に関し、より詳細には、構造体またはデバイスを通ってまたはその内部に延在する、平滑な表面の蛇行した内部通路を有する、高密度で閉気孔性のモノリシックなセラミック構造体、特に高密度で閉気孔性のモノリシックな炭化ケイ素流体デバイスの作製方法、および構造体または流体デバイス自体に関する。
【背景技術】
【0003】
炭化ケイ素セラミック(SiC)は、フローケミストリー製造用および/または実験室作業用の流体モジュールならびに他の技術的用途の構造体にとって望ましい材料である。SiCは比較的高い熱伝導率を有し、吸熱または発熱反応の実行および制御に有用である。SiCは、優れた物理的耐久性および耐熱衝撃性を有する。SiCはまた、極めて優れた耐薬品性も備えている。しかしながら、これらの性質は、高い硬度および摩損性と相まって、蛇行した内部通路を有するSiCフローモジュールなどの内部特徴を有するSiC構造体の実用的な製造を困難にしている。
【0004】
SiCで形成されたフローリアクターおよび他の構造体は、多くの場合、サンドイッチアセンブリ法により調製される。未加工セラミック本体はプレスされてスラブになり、次いで、CNC機械加工、モールディング、またはプレス成形操作などを使用して、一般に1つの主面上で成形される。未加工本体の焼成後、焼成された2つのスラブは、セラミック材料の中間接合層を用いて、またはそのような接合層なしで、成形された表面を互いに対向させて接合される(後者は拡散接合と呼ばれることもある)。第2の焼成ステップでは、接合部が溶融され(かつ/または接合層が緻密化されて)、1つ以上の内部チャネルを有する本体が製造される。
【0005】
サンドイッチアセンブリ接合法は、作製された流体モジュールに問題を引き起こす可能性がある。中間層を有して接合されたモジュールでは、多孔質界面が接合層に形成されることがある。これらは液体を閉じ込める可能性があり、汚染/洗浄の困難さおよび機械的な故障(気孔内での凍結などによる)を招く。拡散接合により中間接合層を介さずに接合されたモジュールは、比較的粗いセラミック結晶粒を含む必要があるか、またはその結果、望ましくないレベルの粗さを有する内部チャネル表面を生成する。
【0006】
別の手法では、未加工状態のSiCシートの複数の層を製造し、流体モジュールをスライスごとに構築するのに必要な形状に切断することができる。このようなアプローチでは、内部通路の湾曲したプロファイルに小さな段差状の構造が生じる傾向がある。流体モジュールを空にし、かつ洗浄/パージするために、内部通路の壁プロファイルが滑らかで、小さな段差状の構造がないことが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、改善された内部通路表面性質を有する、具体的には、一般に気孔率が低いか、またはシール位置において大きな多孔質界面がなく、表面粗さが低く、かつ壁プロファイルが平滑な内部通路を有する、SiC流体モジュールおよび他のSiC構造体、ならびにSiC流体モジュールおよび他のSiC構造体を作製する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のいくつかの態様によれば、モノリシックな実質的に閉気孔性のSiC構造体、例えば流体モジュールであって、構造体内部にまたはモジュールを通って延在する蛇行した流体通路を有し、この蛇行した流体通路は内表面を有し、この内表面は0.1~80μmRaの範囲の表面粗さを有する、SiC構造体、例えば流体モジュールが提供される。
【0009】
本開示のいくつかの追加の態様によれば、実質的に閉気孔性のモノリシックなSiC構造体または流体モジュールを形成するためのプロセスであって、このプロセスは、バインダーでコーティングされた粉末であるSiC粉末の体積内に、ポジティブモールド(positive mold)、例えば流体通路ポジティブモールドを位置決めすることと、モールドが中にあるSiC粉末の体積をプレス成形してプレス成形体を形成することと、プレス成形体を加熱してモールドを除去することと、プレス成形体を焼結して、プレス成形体内部にまたはそれを通って延在する蛇行した流体通路を有するモノリシックなSiC構造体または流体モジュールを形成することと、を含む、プロセスが提供される。
【0010】
本開示の構造体またはモジュールは、開気孔率が非常に低く(0.1%以下と低い)、蛇行した通路内表面の粗さが低い(0.1μmRaと低い)。これにより、流体が浸入に耐える内部通路を有する構造体または流体モジュールが提供される。したがって、流体モジュールの場合、モジュールは、洗浄が容易であり、使用中の圧力損失が低い。使用中、フローモジュールの平滑な内壁表面付近の流体境界層は、より粗い表面から生じる境界層に比べて薄く、より良好な混合および熱交換性能を提供する。
【0011】
本開示の更なる態様によれば、SiC構造体、より具体的には、フローリアクター用のSiC流体モジュールを形成するためのプロセスが提供される。このプロセスは、蛇行した形状を有する通路の流体通路モールドなどのポジティブモールドを、バインダーでコーティングされたSiC粉末の体積内に位置決めすることと、モールドが中にあるSiC粉末の体積をプレス成形してプレス成形体を形成することと、プレス成形体を加熱してモールドを除去することと、プレス成形体を焼結して、プレス成形体を通って延在する蛇行した流体通路を有するモノリシックなSiC流体モジュールを形成することと、を含む。プレスは、一軸プレス成形を含むことができる。プレスは、静水圧プレスにおける静水圧プレス成形を含むことができる。プレス成形体を加熱してモールドを除去することは、プレス成形体を加熱しながら、プレス成形体を2回目または継続的にプレス成形することを含むことができる。最初のプレス成形が静水圧プレスで実行される場合、2回目または継続的なプレス成形は、同じプレスで実行することができる。
【0012】
このプロセスは、プレス成形体を焼結する前に、プレス成形体を脱バインダーすることも含むことができる。このプロセスは、通路モールドを成形することによって、または通路モールドを3D印刷することによって、蛇行した形状を有する通路の通路ポジティブモールドを形成することも含むことができる。一代替案によれば、通路ポジティブモールドを形成することは、低融点材料の外層を有する通路ポジティブモールドを形成することも含むことができ、この低融点材料は、通路ポジティブモールドの残りの部分の融点よりも低い融点を有する。低融点材料の融点は、通路ポジティブモールドの残りの部分の融点よりも少なくとも5℃低くすることができる。
【0013】
開示された方法およびその変形例は、上述の望ましい特徴を有するSiC構造体、例えばSiC流体モジュールの実用的な製造を可能にする。
【0014】
追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載され、当業者にはその説明から容易に明らかになるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、および添付の図面を含む本明細書に記載の実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【0015】
前述の一般的な説明と以下の詳細な説明とはいずれも、単に例示的なものであり、本開示および添付の特許請求の範囲の性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを意図していることを理解されたい。
【0016】
添付の図面は、本開示の原理の更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、1つ以上の実施形態を示し、説明とともに、本開示の原理および動作を例として説明する。本明細書および図面に開示された本開示の様々な特徴は、任意の組み合わせで使用できることを理解されたい。非限定的な例として、本開示の様々な特徴は、以下の実施形態に従って互いに組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下、添付図面の図について説明する。図は必ずしも縮尺どおりではなく、図の特定の特徴および特定の図は、明瞭性および簡潔性の観点から、縮尺的または概略的に誇張して示されている場合がある。
図1】流体通路の特定の特徴を示す、流体デバイスに有用なタイプの流体通路の概略を示す平面線図である。
図2】本開示の流体デバイスの実施形態の外観斜視図である。
図3】本開示の流体デバイスの実施形態の横断面線図である。
図4】本開示の流体デバイスを製造するための方法のいくつかの実施形態を示すフローチャートを示す。
図5図4に記載される方法のいくつかの実施形態の段階的な一連の横断面図である。
図6】本開示の方法を実施する際に有用な圧縮解放曲線(compression release curves)を示すグラフである。
図7図4の方法のプレス成形ステップおよび/または脱モールド(demolding)ステップを実行するための装置の一実施形態の横断面図を示す。
図8】未加工状態の粉末プレスされるセラミック本体を囲い込む流体密閉バッグを通して加えられる圧力で脱モールドを実行することができるプロセスの実施形態のフローチャートを示す。
図9図4の方法のプレス成形ステップおよび/もしくは脱モールドステップ、ならびに/または図8の脱モールドを実行する際に使用するための装置の一実施形態の横断面図を示す。
図10図8に従ったプロセスなどによる脱モールド中および脱モールド後に未加工状態の粉末プレスされるセラミック本体およびモールド材料が取り得る形態の横断面図を示す。
図11図8に従ったプロセスなどによる脱モールド中および脱モールド後に未加工状態の粉末プレスされるセラミック本体およびモールド材料が取り得る形態の横断面図を示す。
図12図9の装置の要素の追加的または代替実施形態の横断面図を示す。
図13図9の装置の要素の別の追加的または代替実施形態の横断面図を示す。
図14図9の装置の要素のさらに別の追加的または代替実施形態の横断面図を示す。
図15図9の装置の要素のさらにまた別の追加的または代替実施形態の横断面図を示す。
図16図9の装置の要素のさらにもう1つの追加的または代替実施形態の横断面図を示す。
図17】本開示の方法を実施する際に有用な流体通路モールド用の候補材料の圧縮および/または放出曲線を示すグラフである。
図18】本開示の方法を実施する際に有用な流体通路モールド用の候補材料の圧縮および/または放出曲線を示すグラフである。
図19】本開示の方法を実施する際に有用な流体通路モールド用の候補材料の圧縮および/または放出曲線を示すグラフである。
図20】流体デバイスの微細構造を示す、図2に示される断面平面などの断面平面に沿ったSiC流体デバイスの横断面のX線コンピュータ断層撮影画像を示す。
図21】サンドイッチアセンブリ法を使用して形成された先行技術の流体モジュールの横断面画像であり、モジュールの接合されたSiC本体間の密度が低下した接合部を示す図である。
図22】本開示の方法に従って処理された焼結SiC材料のサンプルの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図23】従来の拡散接合法に従って処理された焼結SiC材料のサンプルの顕微鏡写真画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載され、当業者にはその説明から容易に明らかになるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、および添付の図面を含む本明細書に記載の実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【0019】
本明細書で使用される場合、「および(ならびに)/または(もしくは)」という用語は、2つ以上の項目のリストで使用される場合、リストされた項目のいずれか1つを単独で採用することができるか、またはリストされた項目の2つ以上の任意の組み合わせを採用することができることを意味する。例えば、組成物が成分A、B、および/またはCを含むと記載されている場合、組成物は、A単独;B単独;C単独;AおよびBの組み合わせ;AおよびCの組み合わせ;BおよびCの組み合わせ;またはA、B、およびCの組み合わせを含むことができる。
【0020】
本明細書において、第1および第2、上位および下位などの関係用語は、1つの実体または行為を別の実体または行為から区別するためにのみ使用され、そのような実体または行為間の実際のそのような関係または順序を必ずしも要求または暗示するものではない。
【0021】
当業者および本開示を作成または使用する者は、本開示の修正を思いつくであろう。したがって、図面に示され、上で説明された実施形態は、単に例示を目的としており、均等論を含む特許法の原則に従って解釈されるように、以下の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲を限定することを意図するものではないことが理解される。
【0022】
本開示の目的上、「結合された(coupled)」(結合(couple)、結合(coupling)、結合された(coupled)などのそのすべての形態)は、一般に、2つの構成要素が互いに直接的または間接的に接合することを意味する。このような接合は、本質的に静止していてもよいし、可動であってもよい。このような接合は、2つの構成要素と、互いにまたは2つの構成要素と一体的に単一のユニット本体として形成される任意の追加的な中間部材とで達成され得る。このような接合は、特に明記しない限り、本質的に永久的であってもよいし、本質的に取り外し可能または解放可能であってもよい。
【0023】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、量、サイズ、配合、パラメーター、ならびに他の量および特性が正確ではなく、また正確である必要はないが、公差、換算係数、四捨五入、測定誤差など、および当業者に知られている他の要因を反映して、所望に応じて近似値および/またはより大きい値もしくはより小さい値になり得ることを意味する。「約」という用語が、値または範囲の終点を説明する際に使用される場合、本開示は、言及される特定の値または終点を含むと理解されるべきである。本明細書における数値または範囲の端点が「約」を記載しているか否かにかかわらず、数値または範囲の端点は、「約」によって修飾されたものと、「約」によって修飾されていないものとの2つの実施形態を含むことを意図している。さらに、各範囲の端点は、他の端点との関係においても、他の端点とは独立しても重量であることが理解されるであろう。
【0024】
本明細書で使用される「実質的な」、「実質的に」という用語、およびそれらの変形は、記載された特徴が値または記述と等しいか、またはほぼ等しいことを示すことを意図している。例えば、「実質的に平坦な」表面は、平面であるか、またはほぼ平面である表面を示すことを意図している。さらに、「実質的に」は、2つの値が等しいか、またはほぼ等しいことを示すことを意図している。いくつかの実施形態では、「実質的に」は、互いの約10%以内、例えば互いの約5%以内、または互いの約2%以内の値を示すことができる。
【0025】
本明細書で使用される方向に関する用語、例えば、上、下、右、左、前、後、上位、下位、上方、下方などは、描写された図を参照することによってのみ作成されるものであり、絶対的な方向を暗示することを意図するものではない。
【0026】
本明細書で使用される場合、「the」、「a」、または「an」という用語は、「少なくとも1つ」を意味し、明示的にそうでないことが示されない限り、「1つだけ」に限定されるべきではない。したがって、例えば、「構成要素」への言及は、文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、2つ以上のそのような構成要素を有する実施形態を含む。
【0027】
本明細書で使用される場合、「蛇行した(tortuous)」通路とは、通路を直接通る視線がなく、通路の経路が少なくとも2つの異なる曲率半径を有し、通路の経路が数学的および幾何学的に、通路に沿って任意に間隔をあけて連続する位置で取られた通路の連続する最小面積平面断面の、通路に沿った連続する幾何学的中心によって形成される曲線(すなわち、所与の平面横断面の角度は、通路に沿った特定の位置で、平面横断面の面積が最小になる角度である)として定義される、通路を指す。典型的な機械加工に基づく形成技術は、一般に、このような蛇行した通路を形成するには不十分である。このような通路には、通路をサブ通路(対応するサブパスを伴う)に分割または諸分割したもの、およびサブ通路(および対応するサブパス)を再結合または諸再結合したものが含まれることがある。
【0028】
本明細書で使用される場合、「モノリシックな」SiC構造体は、あらゆるスケールにおいてセラミック構造の不均一性がゼロであることを暗示するものではない。「モノリシックな」SiC構造体または「モノリシックな」SiC流体モジュールとは、「モノリシックな」という用語が本明細書で定義されるように、SiC構造体または流体モジュールであって、それを通って延在する1つ以上の蛇行した通路を有し、図3に示されるように、構造体またはモジュール300の外部表面から1つ以上の通路Pの平均垂直深さdよりも大きい長さを有するセラミック構造体において、(通路以外の)不均一性、開口部、または相互接続された空隙が存在しない、SiC構造体または流体モジュールを指す。非平面形状または円形形状などの他の幾何学的形状を有するSiC構造体またはSiC流体モジュールの場合、「モノリシックな」という用語は、SiC構造体または流体モジュールであって、それを通って延在する1つ以上の蛇行した通路を有し、(i)構造体またはモジュールの外部表面からの1つ以上の通路Pの最小深さ、および(ii)1つ以上の通路Pの互いに離間した別々の部分間の最小間隔を超える長さを有するセラミック構造体において、(通路以外の)不均一性、開口部、または相互接続された空隙が存在しない、SiC構造体または流体モジュールを指す。構造体またはモジュールの外部から通路への、および/または通路の互いに離間した別個の部分間の流体連通を意図的に可能にすべく、構造体またはモジュールに機械加工および/またはモールド成形される流体ポート、例えば入口ポートおよび/または出口ポートは、平均垂直深さ、最小深さ、および/または最小間隔の決定から除外される。このようなモノリシックなSiC構造体またはモノリシックなSiCフローモジュールを提供することは、フローリアクター流体モジュールまたは同様の製品の流体気密性および良好な耐圧性を確保するのに役立つ。
【0029】
フローリアクター(図示せず)用の流体デバイス300が図1図3に開示されている。流体デバイス300は、モノリシックな閉気孔性のセラミック本体200と、セラミック本体200を通る経路に沿って延在する蛇行した流体通路Pとを備える。セラミック本体200は、バインダーによって一緒に保持され、粉末粒子を一緒に融合して構造体にするために熱処理された任意のプレス可能な粉末を含むセラミック材料から形成される。いくつかの実施形態におけるセラミック材料は、酸化物セラミック、非酸化物セラミック、ガラスセラミック、ガラス粉末、金属粉末、および高密度で閉気孔性のモノリシックな構造を可能にする他のセラミックを含む。酸化物セラミックは、金属元素(例えば、Al、Zr、Ti、Mg)または半金属元素(Si)と酸素との無機化合物である。酸化物は窒素や炭素と結合して、より複雑な酸窒化物セラミックまたは酸炭化物セラミックを形成することができる。非酸化物セラミックは、無機の非金属材料であり、それには炭化物、窒化物、ホウ化物、ケイ化物などが含まれる。セラミック本体200に使用することができる非酸化物セラミックのいくつかの例としては、炭化ホウ素(BC)、窒化ホウ素(BN)、炭化タングステン(WC)、二ホウ化チタン(TiB)、二ホウ化ジルコニウム(ZrB)、二ケイ化モリブデン(MoSi)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si)、サイアロン(ケイ素アルミニウム酸窒化物)が挙げられる。例示的な実施形態におけるセラミック本体200は、SiCから形成される。
【0030】
蛇行した流体通路Pは内表面210を有する。内表面210は、0.1~80μmRa、または0.1~50、0.1~40、0.1~30、0.1~20、0.1~10、0.1~5、さらには0.1~1μmRaの範囲の表面粗さを有し、これは一般にSiC流体デバイスが以前に達成したものよりも低い。内表面210の表面粗さは、内表面210の任意の測定プロファイルに沿って存在する。例えば、経路に対して垂直な向きの平面横断面で見た場合、内表面210は、通路Pの経路を完全に取り囲む内側プロファイルを画定する。内表面210の表面粗さは、経路に沿ったすべての位置で内側プロファイルの全体に沿って存在する。内表面210はまた、セラミック本体200のモノリシックな構造により、内表面210に沿って、接合部または継ぎ目または段差または不連続性を有しない。
【0031】
更なる実施形態によれば、流体デバイス300のセラミック本体200は、セラミック材料の理論最大密度の少なくとも95%、さらには理論最大密度の少なくとも96、97、98、または99%の密度を有する。SiCなどの多結晶材料の理論最大密度(最大理論密度、理論密度、結晶密度、またはX線密度としても知られている)は、焼結材料の完全な単結晶の密度である。したがって、理論的最大密度は、焼結材料の所与の構造相について達成可能な最大密度である。
【0032】
例示的な実施形態では、セラミック材料は六方晶6H構造を有するα-SiCである。焼結SiC(6H)の理論的最大密度は、3.214±0.001g/cmである。Munro, Ronald G., “Material Properties of a Sintered α-SiC,” Journal of Physical and Chemical Reference Data, 26, 1195 (1997)。他の実施形態におけるセラミック材料は、SiCの異なる結晶形態または全く異なるセラミックを含む。焼結SiCの他の結晶形態の理論最大密度は、例えば3.166~3.214g/cmの範囲内で、焼結SiC(6H)の理論最大密度と異なることがある。同様に、他の焼結セラミックの理論最大密度も焼結SiC(6H)の理論最大密度とは異なる。本明細書で使用される場合、「高密度」セラミック本体とは、セラミック本体の焼結セラミック材料が、セラミック材料の理論最大密度の少なくとも95%の密度を有するセラミック本体である。
【0033】
実施形態によれば、流体デバイス300のセラミック本体200は、1%未満、さらには0.5%未満、0.4%未満、0.2%未満または0.1%未満の開気孔率を有する。実施形態におけるセラミック本体200は、3%未満、または1.5%未満、さらには0.5%未満の閉気孔率を有する。本明細書で使用される場合、「閉気孔性の」セラミック本体とは、セラミック本体のセラミック材料が、材料中の気孔またはセルが、隣接する気孔またはセルのみと隔離または連結され、流体に対する透過性を有しないように閉じられた気孔トポロジーを示すセラミック本体である。
【0034】
更なる実施形態によれば、デバイス300のセラミック本体200は、少なくとも50バール(5MPa)、さらには少なくとも100バール(10MPa)、または150バール(15MPa)の加圧水試験下の内部耐圧性を有する。
【0035】
実施形態による蛇行した流体通路Pは、高さhだけ分離された床212および天井214と、床212と天井214とを繋ぐ2つの対向し合う側壁216とを含む。側壁は、高さhおよび(使用時の主流れ方向に対応する)通路に沿った方向に対して垂直に測定された幅w(図1)によって分離される。さらに、幅wは、高さhの2分の1に対応する位置で測定される。実施形態によれば、蛇行した流体通路の高さhは、0.1~20mm、または0.2~15mm、または0.3~12mmの範囲である。
【0036】
実施形態によれば、側壁216が床212に接する流体通路Pの内表面210は、0.1mm以上、または0.3mm以上、さらには0.6mm以上、または1mmまたは1mm、または1cm、または2cmの半径曲率(参照番号218で)を有する。
【0037】
図4および図5を参照して後述するような流体デバイス300を形成するためのプロセスにより、経路に対して垂直な向きの平面横断面で見た場合、内表面210の内側プロファイルは、蛇行した流体通路Pを通って流体を搬送するのに適した任意の横断面形状を有することができる。例えば、内側プロファイルは、図3を参照して上で記載したように、側壁216と床212との交点または天井214との交点にフィレット218を有する正方形または長方形などの四辺形の横断面形状を有することができる。内側プロファイルは、円形の横断面形状を有することができ、これにより、より高い耐圧性が可能になる。内側プロファイルは、円形でも多角形でもない横断面形状、例えば、楕円形の横断面形状を有することができる。このような幾何学的形状の場合、横断面の水力直径は、内側プロファイルの形状と、蛇行した流体通路Pを通る流れとの関係を記述するためのパラメーターを提供することができる。
【0038】
図4および図5を参照すると、実施形態によれば、これらの特性または他の望ましい性質性のうちの1つ以上を有するフローリアクター用のSiCデバイスを形成するためのプロセスは、通路モールドとバインダーでコーティングされたSiC粉末(このような粉末は、以下に示すような様々な供給業者から市販されている)とを取得または作製するステップ20を含むことができる。通路モールドは、モールド成形、機械加工、3D印刷、または他の適切な形成技術、またはそれらの組み合わせによって取得することができる。通路モールドの材料は、望ましくは、比較的非圧縮性の材料である。通路モールドの材料は、熱可塑性材料とすることができる。
【0039】
プロセスはさらに、図4のステップ30で説明され、図5Aの横断面で表されるように、プレス筐体(またはダイ)100を(部分的に)充填するステップを含むことができ、プレス筐体100はプラグ110で閉じられており、バインダーでコーティングされたSiC粉末120が充填される。次に、通路モールド130がSiC粉末120の上/中に置かれ(図5B)、SiC粉末120が通路モールド130を囲むように、追加量のSiC粉末が通路モールド130の上に置かれる(図5C図4のステップ30)。次に、ピストンまたはラム140をプレス筐体100に挿入し、上方から一軸力AFを加えて、通路モールド130が中にあるSiC粉末120を圧縮して(図5D図4のステップ40)、プレス成形体150を形成する。ラム140によって加えられた力AFは、SiC粉末に35~40MPaの最大圧力を発生させるように構成される。最大圧力は、バインダーでコーティングされた粉末および通路モールドがそれぞれ異なる材料から形成される更なる実施形態では異なり得る。反力または同等の反作用力AF(図示せず)が、このステップの間、プラグ110に供給される。次に、プラグ110が自由に動くようになった状態で、プレス成形体150が、ピストン140に加えられる(より小さな)力AFによって取り出される(図5E図4のステップ50)。
【0040】
次に、プレス筐体100から解放されたプレス成形体150は、穴あけなどにより、選択された位置で機械加工されて、プレス成形体150の外側から通路モールド130まで延在する穴または流体ポート160を形成する(図5F図4のステップ54)。別の代替案では、穴または流体ポートの形状をモールドの一部として含むモールドを使用して穴を形成することができるため、これは任意のステップであることに留意されたい。また、さらに別の変形例として、穴あけを延期し、後述する脱モールドステップ60の一部として使用することもできる。
【0041】
次に、好ましくは比較的高い速度で、プレス成形体150を加熱することで、通路モールド130が溶融し、プレス成形体150から流出することによって、および/またはさらに吹き出されるおよび/または吸い出されることによって、プレス成形体150から除去されるようにする(図5G図4のステップ60)。さらに別の代替案では、このステップ60を2つの部分に分けることができ、この場合、最初にプレス成形体を加熱し、次に、別個に、モールド材料が本体から流出することができる。さらに別の代替案では、プレス成形体150を加熱してモールドを溶融し、本体がまだ熱いうちにのみ穴または流体ポートをあけてモールド材料を流出させ、このようにして脱モールドを完了させることによって、サンプルを脱モールドすることも可能である。必要に応じて、加熱は部分的な真空下で行ってもよい。
【0042】
最後に、プレス成形体150を脱バインダーしてSiC粉末バインダーを除去し、焼成(焼結)してプレス成形体を緻密化し、さらに固化してモノリシックなSiC本体200にする(図5H図4のステップ70)。
【0043】
図4のフローチャートに示されるように、追加的または代替的なステップは、ステップ72、脱バインダー、ステップ82、焼結前のサンディングまたは他の機械加工などによる外表面の成形または予備成形、およびステップ84、焼結後の研削などによる外表面の仕上げ加工を含むことができる。
【0044】
焼結は、コーティングされたSiC粉末の供給業者によって指定または推奨されるように実行することができる。このような供給業者には、例えば、Panadyne Inc.(米国ペンシルバニア州モンゴメリービル)、GNP Ceramics(米国ニューヨーク州バッファロー)、H. C. Starck(ドイツ国ヘルムスドルフ)、およびIKH(Industriekeramik Hochrhein GmbH)(ドイツ国ヴテシンゲン)が含まれる。脱バインダーおよび焼成サイクル(1つのチャンバー内で連続して、または個別に実行される)の一例としては、以下の3つのステップを挙げることができる:(1)バインダーを強化または補強するために、空気中、150±25℃の温度などでバインダーを硬化させるステップ、(2)N中などの非酸素環境下、600±25℃で脱バインダーするステップ、および(3)Ar中などの非酸素環境下、2100±50℃で焼成するステップ。時間、温度、ガス、ランプレートテーブルの一例を、以下の表に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
図6は、本開示の方法を実施する際に有用な圧縮解放曲線を示すグラフである。グラフの曲線は、SiC粉末120の第1の安定特性と通路モールド130の第2の安定特性との間の望ましい関係を示している。実際には、圧縮解放曲線は、セラミック粉末または通路モールドのそれぞれのサンプルを、測定された最大力までプレスでプレス成形し、次いで、サンプルによって生成される反力を測定し続けながらプレスの変位を減少させることによって、実験的に生成することができる。このような実験のいくつかについては、図17図19を参照して後述する。第1の安定特性の結果として、SiC粉末120は、図6の圧縮解放曲線170に従う変位にわたって最大圧縮状態から膨張または反発し、第1の解放変位(release displacement)を規定する。同様に、第2の安定特性の結果として、通路モールド130は、図6の圧縮解放曲線180に従う変位にわたって最大圧縮状態から膨張または反発し、第2の解放変位を規定する。圧縮解放曲線170および180は、距離(x軸)対力(y軸)の単位でグラフ化されている。
【0047】
力-変位曲線が低下するにつれて左へ湾曲していくのは、解放段階中にサンプルからどれだけの蓄積エネルギーが解放されたかを示している。サンプルの比較を簡単にするために、各サンプルの力-変位曲線は、解放段階の曲線が初期解放時に揃うようにシフトされている。曲線の左向きの傾向は、プレスの上向きの動きと、プレスにかかる反力が同時に減少することとに対応している。圧縮解放曲線170に沿ったSiC粉末材料120の第1の解放変位は、圧縮解放曲線180に沿った通路モールド130の材料の第2の解放変位よりも大きいことが好ましい。第1の解放変位は、好ましくは、圧縮解放曲線170および180の全体に沿って第2の解放変位よりも大きい。第1の解放変位と第2の解放変位との間のこのような関係は、プレス成形後、加熱中、またはプレス成形後および加熱中のプレス成形体150における亀裂などの不連続性を防止するのに有益である。
【0048】
圧縮曲線に沿った圧縮変位(図示せず)は特に重要ではない。しかしながら、SiC解放変位が通路モールド解放変位よりも大きくなるように、比較的非圧縮性のモールド材料を使用することは、プレス成形後のステップ中にプレス成形体の構造的完全性を維持するのに役立つ。さらに、平滑な通路内壁を達成するためには、一般により小さい粒子サイズを有するコーティングされたSiC粉末が好ましく、一般により大きい硬度を有する通路モールド材料も同様に好ましい。
【0049】
更なる実施形態では、通路モールド130の材料の第2の解放変位は、圧縮解放曲線170および180の一部または全体に沿って、SiC粉末120の第1の解放変位よりも大きくなり得る。第1の解放変位と第2の解放変位との間のこの関係により、通路モールド130の材料は、通路モールド130がその周囲のプレスされるSiC本体に力を及ぼすように、プレス成形後にSiC粉末120よりも大きく膨張することができる。通路モールド130の膨張がSiC粉末120の膨張よりも大きい場合、SiC粉末に引張歪みが生じることがある。引張歪みが未加工のプレスされるSiC粉末の極限引張強度を超えると、通路モールド130に隣接するSiC粉末に亀裂が現れることがある。
【0050】
この望ましくない結果に対処するために、SiC粉末120の第1の安定特性は、プレス成形後の通路モールド130の解放力に対抗するように構成されたバインダー強度をさらに含むことができる。バインダーでコーティングされたSiC粉末120は、噴霧乾燥プロセスを使用して直径50~200μmの顆粒にまとめられたサブマイクロメートルSiC粉末から形成され、バインダーによって囲まれた六方晶6H構造を有するα-SiCの粒子を含む。バインダーのバインダー強度は、バインダーの種類および量に関係する。バインダーのバインダー強度は、未加工本体の引張強度へのその影響によって特徴付けることができる。未加工のプレスされる噴霧乾燥SiC粉末の引張強さは、ASTM E399-09に記載されているように、亀裂開口変位(COD)試験を使用して測定することができる。使用することができるバインダーの非網羅的なリストには、フェノール樹脂、フェノール、ホルムアルデヒド、コールタールピッチ、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート、ワックス、ポリエチレングリコール、酢酸、エテニルエステル、カーボンブラック、およびトリエタノールアミンが含まれる。一実施形態では、SiC(6H)粒子はフェノール樹脂バインダーでコーティングされる。バインダーの量は、焼結後に高密度で閉気孔性のセラミック本体を実現するのに十分な程度に少ない。
【0051】
亀裂形成に関連する別の問題は、通路モールド130を溶融してプレス成形体から除去するためのプレス成形体の加熱中に生じることがある。具体的には、溶融時の通路モールド130の体積膨張(典型的には10~30体積%)により、未加工のSiCプレス成形体に応力が誘発されることがある。状況によっては、この誘発された応力が打ち消されないと、通路にすぐ隣接する領域に亀裂が形成されることがある。更なる実施形態では、バインダーでコーティングされたSiC粉末120のバインダー強度は、通路モールド130を除去するためのプレス成形体の加熱中に、プレス成形体に対する通路モールド130の力を打ち消すように構成される。例えば、バインダーでコーティングされたSiC粉末120のバインダー強度は、未加工のプレスされるSiC粉末の引張強度が、未加工本体の亀裂をさもなければ誘発するであろう加熱/脱モールドプロセス中に生成される力を打ち消すのに十分であるように、増加または設定される。
【0052】
図7は、プレス成形体150の外側に圧力を加えながら、図4の脱モールドステップ60を実行するための、または任意選択でプレス成形ステップ40を実行するための、または任意選択でプレス成形ステップ40および脱モールドステップ60の両方を実行するための、装置400の一実施形態を横断面で示す。
【0053】
脱モールド中にプレス成形体150に圧力が加えられる脱モールドステップ60の実施形態に使用されるように、装置400は、プレスの形態、または任意選択で静水圧プレスもしくは準静水圧プレスの形態であり、蓋252または他の開閉手段を備えるなど、開閉可能なフレーム250を含み、内側および外側を備える。1つ以上の可撓性膜262,264,266,268は、フレーム250内に位置決めされ、フレーム250の内側に面する第1の表面と、第1の表面に(直接)向き合う第2の表面とを有し、第2の表面は、加圧流体Fの供給に接続された、または接続されることになる流体ライン、接続部、ポートなどを有する密閉体積の少なくとも一部を形成する。装置400はまた、任意選択で、1つ以上の可撓性膜262,264,266,268を介して、流体によって未加工状態の粉末プレスされるセラミック本体150に圧力が加えられている間に、未加工状態の粉末プレスされるセラミック本体150から溶融時にモールド130の材料が排出され得るクリアランスまたは通路またはポートまたは導管282,284などを含む。流体源Fによって供給される流体は、実施形態によれば、未加工状態の粉末プレスされるセラミック本体150を加熱することによってモールド材料にエネルギーを供給する加熱液体とすることができる。
【0054】
代替の実施形態では、流体源Fは、圧縮空気または窒素などの圧力下のガスを供給することができ、装置400はまた、1つ以上の可撓性膜262,264,266,268の第1の表面上に位置決めされた1つ以上の可撓性加熱パッド272,274,276,278を含むことができる。装置の可撓性加熱パッドは、(1)入力エネルギーが個々に制御され得る複数のゾーン、および/または(2)電気エネルギーの供給源Eによってエネルギーが供給され得る個々に通電可能な複数のより小さい加熱パッド(図示せず)を備えることができる。
【0055】
脱モールドのための操作において、図7の装置または類似の実施形態では、未加工状態の粉末プレスされるセラミック本体150内の内部モールド130にエネルギーが加えられて内部モールドの材料が溶融され、それと同時に、1つ以上の可撓性膜を介して流体圧力が未加工状態の粉末プレスされるセラミック本体150の少なくとも2つの対向し合う外部表面(2つの最も大きな表面)に加えられ、その間、(1)溶融したモールド材料を未加工状態の粉末プレスされるセラミック本体から排出させること、(2)溶融したモールド材料を未加工状態の粉末プレスされるセラミック本体から吹き出すこと、(3)溶融したモールド材料を未加工状態の粉末プレスされるセラミック本体から吸い出すこと、のうちの1つ以上を行ってモールドが除去される。代替的に、プレス成形体150が加圧されている間にモールド材料を溶融させてもよいが、プレス成形体150が装置400から取り出された後など、圧力を除去した後、溶融したモールド材料を流出させることもできる。未加工状態の粉末プレスされるセラミック本体を加熱することによりモールドを加熱することによって、内部モールドにエネルギーを加えることができる。例えば、すべての面に個々の可撓性膜を持たせるなどして、未加工状態の粉末プレスされるセラミック本体のすべての面に等しい圧力が加えられる場合、静水圧または準静水圧を加えることができる。
【0056】
本発明の追加的な代替態様によれば、図7のプレス装置400は、図4の方法のプレス成形ステップ40を実行するために、代替的または追加的に使用することができる。このようなプレス成形中、SiC粉末(プレス成形前)または結果として生じるプレス成形体(プレス成形中およびプレス成形後)は、プレス成形ステップ40の間、モールドは固体のまま溶融されないことが望ましいため、加熱されない。プレス成形中は10MPa~300MPa、望ましくは20MPa~150MPa、より具体的には30MPa~50MPaの範囲の圧力を使用することができるが、脱モールド中の圧力ははるかに低く、望ましくは0.3MPa~20MPa、1MPa~10MPa、最も具体的には3MPa~5MPaの範囲である。したがって、装置400がプレス成形および脱モールドの両方に使用される場合、モールドの任意の大幅な加熱が行われる前に、一般にプレス成形に使用される高圧から脱モールドに使用される低圧まで減圧される必要がある。
【0057】
本発明の追加的な実施形態によれば、脱モールドのために、またはプレス成形および脱モールドの両方のために圧力が加えられる可撓性膜は、静水圧プレスのより典型的な方法であるように、未加工状態の粉末プレスされるセラミック本体を囲い込む流体密閉バッグの形態、もっと正確に言えば、図7のように、粉末および結果として生じるプレス成形体150の周りに配置された2つ以上の複数の膜の形態を取ることができる。この場合、フレームの内側と、未加工状態の粉末プレスされるセラミック本体を囲い込む流体密閉バッグの外側との間の内部空間は、加圧流体Fで満たされる。
【0058】
この態様による未加工のプレスされる流体デバイスを脱モールドする一実施形態のプロセスステップを図8のフローチャートに示し、このプロセスを実行する際に使用する静水圧プレス装置の横断面を図9に示す。両方の図を参照すると、プロセス500は、1つ以上の内部通路モールド130が中にある未加工状態の粉末プレスされるセラミック本体150を流体密閉バッグ320にシールするステップ510を含む。図9に見られるように、バッグ320は、ポリマーで形成することができる上位層322および下位層324を一緒につまんで加熱することなどによって、シール領域326で一緒にシールされた上位層322および下位層324を含むことができる。必要に応じて、複数の列の熱的に製造されたシールをシール領域326で使用することができる。真空シールを使用することができ、好ましいが必須ではない。バッグは、チャンバー350内の流体340に対して流体密閉されており、例えば、それは水であり得る。
【0059】
さらに図9において、プレスチャンバー350は、プロセス500のステップ512において、望ましくはモールドを溶融するための目標温度(例えば、ワックスベースのモールドの場合は50℃まで)に予熱された流体を保持する。ステップ514では、未加工状態の粉末プレスされるセラミック本体150を中にシールしたバッグ320を、次いで、静水圧プレスチャンバー流体340内に降下させる。次に、ステップ515では、静水圧プレスチャンバーが閉じられ、シールされ、チャンバー流体に圧力が加えられ(例えば、100~600PSI(0.6895MPa~4.137MPa)の範囲)、本体150の全表面に実質的に静水圧を生じさせる。ステップ516では、圧力および温度を90分などの一定時間維持し、通路モールド130の材料を溶融させる。
【0060】
前述したように、通路モールドは、ワックスベースの材料とすることができる。未加工状態の粉末プレスされるセラミック本体150が高温流体によって加熱されると、通路モールド130も加熱され、モールド材料が、膨張、軟化、および溶融し始める。膨張は、本体150内の通路の内壁に外向きの力を生じさせる。この外向きの力は、少なくとも部分的には、バッグ320を通して本体150の外表面に加えられる、矢印330で表される静水圧プレス力によって打ち消され、かつ/または平衡される。
【0061】
溶融したモールド材料は、図1および図2に示されるポートIP1,IP2,IP,OPなどの任意のポート、または特にそのために提供される通気孔もしくは他の通路(図8には示されていない)に移動することができる。また、モールド材料が溶融するにつれて、その粘度は、内部通路の周りの領域において本体150の粉末顆粒間の小さな隙間に流れ込むことができる程度まで低下させることができる。
【0062】
ステップ516の時間が終了した後、ステップ518でチャンバー350内の圧力を大気圧まで下げ、ステップ522でチャンバーを開いてバッグ320および本体150を取り出し、ステップ524でバッグ320を本体150から取り出す。ステップ522および524の間、本体は、好ましくは、ステップ526において、オーブン(例えば、空気中175℃)で本体150を加熱するなどして、残存するモールド材料が完全に除去されるまで、モールド材料の再凝固を防ぐために十分に保温(例えば、50℃以上)される。加熱中、本体は、モールド材料が1つ以上のポートIP1,IP2,IP,OPを通って排出できるように向きを変えることができる。
【0063】
ステップ526で本体150をオーブンで加熱する前に、本体およびモールド材料は、図9の横断面に一般的に描写されている状態であってもよい。図10に示されるように、空隙360が、ポートまたは通気孔(図示せず)および/または内部通路を取り囲む本体150の領域364へのモールド材料の移動に起因して現れることがある。ステップ526の加熱後、モールド130は、図11の横断面に示されるように、通路Pおよび本体150から完全に除去されている。別個のステップとしてのオーブンでの加熱の代替案として、焼結前のプレス成形体の焼成の初期段階(プレス成形体の脱バインダーおよび圧密の前または一部として)において、残りのモールド材料を揮発させて除去することができる。
【0064】
図12の横断面に示される本開示の別の代替的な態様によれば、荷重-分配プレート370を本体150とバッグ320との間に位置決めすることができる。これらのプレート30は、例えば、可撓性の金属またはポリマーシートの形態であり、370は、静水圧の局所的な力を本体150のより広い領域にわたって分配させて、モールド130の材料が溶融する脱モールド中にその圧力が内部流体通路を崩壊させる任意の傾向を防ぐことができる。このようなプレートは、図12に示されるように、通路130のより大きな寸法に平行な本体の表面で特に有用であり得る。
【0065】
図7の実施形態に関して上で議論したように、特に加圧流体として液体ではなく気体が使用される場合には、任意選択でヒーターを使用することができ、これは、例えば、荷重-分配プレート370に加えて、または荷重-分配プレート370に組み込んで使用することができる。
【0066】
図7の実施形態に関しても議論したように、図9の静水圧プレスチャンバー350は、図3のステップ40と同様に、プレス成形体150を形成するためのSiC粉末のプレス成形を実行するために、代替的にまたは追加的に、同様に使用することができる。
【0067】
図13の横断面は、図7のプレス装置であれ、図9の静水圧プレスチャンバーであれ、溶融したモールド材料の除去を提供および/または支援するために使用することができる追加的または代替的な特徴を描写している。図13に見られるように、1つ以上のリザーバフレーム380が、本体150の1つ以上の外面に対して位置決めされ得る。リザーバフレーム380は、本体150と、リザーバフレーム380内のリザーバ382と接触する比較的大きな表面積を含む。モールド材料の流出のための1つ以上のポートまたは通気口386は、内部通路モールド130からリザーバ382に通じている。リザーバフレーム380が本体150に接触する表面領域は本体150に圧力を伝え、一方、リザーバ382はモールド材料が軟化して流動する際に溶融したモールド材料384を受け入れる。
【0068】
別の追加的または代替的な態様では、1つ以上のポートまたは通気孔386の代替案として、図14では、1つ以上の隆起部388または「隆起部チャネル」388(隆起部の下にチャネルを形成する隆起部)が、荷重-分配プレート370の1つ以上に含めて、隆起部チャネル388に沿って関連するリザーバフレーム380への溶融モールド材料の流れを可能にすることができる。図に示されるように、この態様におけるリザーバフレーム380は、リザーバフレーム380の隣接する面上にリザーバへの開口部を有し、リザーバフレーム380が位置決めされる本体150の側面と完全に接触することができる。
【0069】
図13および図14によって表される別の代替実施形態によれば、モールドの除去を支援するために圧力差が望ましいが、気密バッグ320および関連する圧力チャンバー350の外側への通路が望まれないか、または利用できない場合には、図13および図14のチャンバー382のうちの1つ以上を液体で部分的に満たしてもよく、これは、加熱されると本体150の残りの部分とともに、チャンバー382のうちの1つ以上の方向からモールド材料に蒸気圧を加える。1つ以上の他のチャンバー382,384は液体を含まず、したがって蒸気圧によってこれらのチャンバーに向かって押し出される溶融したモールド材料を受け入れることができる。
【0070】
図13および図14によって表すことができるさらに別の代替実施形態によれば、モールドの除去を支援するために圧力差が望ましいが、気密バッグ320および関連する圧力チャンバー350の外部への通路が望まれないか、または利用できない場合、および図示の実施形態が脱モールドのみに使用され、プレス成形ステップには追加的に使用されない場合、図13および図14のチャンバー382のうちの1つ以上が圧縮可能な材料で形成されるか、または圧縮可能な材料を含むことができ、チャンバーが本体150と一緒に静水圧下に置かれたときに、チャンバーは圧縮され、チャンバー382のうちの1つ以上の方向からモールド材料にガス圧を生じるようになる。1つ以上の他のチャンバー382,384は圧縮可能ではなく、したがって圧縮可能なチャンバーの圧縮によってそれらに向かって押し出される溶融したモールド材料を受け入れることができる。
【0071】
図15の横断面で示されるさらに別の追加的または代替的な態様では、本体150の1つ以上の表面に、キャビティ392を有する荷重-分配プレート390を採用することができる。キャビティ392は(図示の横断面以外の平面で)相互に連結され、入力ポートまたは出力ポートIP,OPは、キャビティ392のうちの1つ以上に整列される。通路モールド130からの溶融したモールド材料は、モールド材料が軟化して流動するにつれて、キャビティ392に流入することができる。
【0072】
図16の横断面に示されるさらに別の追加的または代替的な態様では、一端が入力ポートまたは出力ポートに接合され、チャンバー350を通って延在し、シール396が流体の気密性を維持する、1つ以上のチューブ394を使用することができる。この態様では、溶融したモールド材料の除去を支援するために、(図の上部の矢印で表されるように)圧力を加えるか、(図の下部の矢印で表されるように)真空を加えるか、またはその両方を行うことができる。
【0073】
モールド材料およびモールド形成
上述のように、通路モールドは、モールド成形、機械加工、3D印刷、または他の適切な形成技術もしくはそれらの組み合わせによって取得することができる。通路モールドの材料は、有機熱可塑性プラスチックなどの有機材料とすることができる。モールド材料は、加熱/溶融中の膨張を減少させる1つの方法として、材料内に懸濁または他の方法で分散された有機もしくは無機の粒子を含むことができる。前述のように、通路モールドの材料は、望ましくは、比較的非圧縮性の材料-具体的には、図6に関連して上記で説明したように、圧縮後のプレスされたSiC粉末の反発に対して圧縮後の反発が低い材料-である。粒子を装填したモールド材料は、圧縮後により低い反発を示すことができる。圧縮下である程度の非弾性変形が可能なモールド材料も、当然、低い反発を示す傾向がある(例えば、高い損失弾性率を有する材料)。例えば、架橋がほとんどない、または全くないポリマー物質、および/または圧縮時に局所的な破壊または微小破壊を可能にする局所的な硬度または脆性をいくらか有する材料は、低い反発を示すことができる。有用なモールド材料としては、炭素および/または無機粒子などの懸濁粒子を有するワックス、ロジン含有ワックス、高弾性率の脆い熱可塑性プラスチック、さらにはココアバター中のココア粉末などの有機脂肪中に懸濁する有機固体-またはこれらの組み合わせ-を挙げることができる。低融点金属合金もモールド材料として有用であり得、特に溶融時の膨張が小さいか、あるいは全くない合金が有用であり得る。
【0074】
図17図19は、様々な材料の圧縮および/または解放曲線の実験的決定のグラフである。圧縮を含むインストロン3400シリーズ万能試験機(Instron、米国マサチューセッツ州ノーウッド)を使用して、様々な材料の弾性率および損失弾性率を特徴付けるための試験を実施した。インストロンは、ダイに保持されたサンプル材料に既知の圧縮変位を加え、次いでサンプルによって発生する反力を測定するように構成された。結果として生じる荷重-変位の関係は、各サンプルが制御可能に圧縮され(圧縮段階)、次いで制御可能に圧縮から解放される(解放段階)際に評価された。インストロンの測定は、より大きいSiC流体デバイスがプレス成形中に被る力を模倣するように構成された力条件下で実施された。インストロンが発生させることができ、ロードセルが維持できる最大力は1200Nに制限されているため、直径0.75インチ(1.905cm)のダイを使用して材料サンプルを準備した。レッドワックス(red wax)(McMaster-Carr)、積層ワックス(stacking wax)(Universal Photonics #444)、蜜蝋(McMaster-Carr)、ベイワックス(bay wax)、およびギラデリ100%カカオチョコレートを含む、公称厚さ8mmおよび直径0.75インチ(1.905cm)の数種類のワックスサンプルを準備した。各サンプルを直径0.75インチ(1.905cm)のダイに入れ、インストロンにより一定速度で圧縮し、サンプルから発生する反力が1200Nに達した時点で圧縮を終了した。最大1200Nまで圧縮した後、変位を減少させながら、サンプルから発生する反力を測定し続けた。
【0075】
図17は、これらの注目したサンプルの力-変位曲線のグラフである。様々なサンプルの比較を簡単にするために、各サンプルの力-変位曲線は、すべての解放相曲線が最初の解放の時点で互いに並ぶようにシフトされた。各サンプルとも、変位が小さくなるにつれて反力は劇的に低下したが、瞬間的にゼロになったわけではない。力-変位曲線が低下するにつれて左へ湾曲していくのは、解放段階中にサンプルからどれだけの蓄積エネルギーが解放されたかを示している。圧縮の負の値は、ピストンの上昇運動に対応している。このプロットは、サンプルによって解放段階中での反応が大きく異なることを示している。レッドワックスやベイワックスなど、解放段階中に大きな変位距離にわたって反力を提供するサンプルもあれば、チョコレートおよび積層ワックスなど、変位に伴って反力が急速に減少するサンプルもある。
【0076】
解放段階の力-変位曲線下の面積は、解放段階中にサンプルによってどれだけの蓄積エネルギーが解放されたかを示している。力-変位曲線が水平の荷重=0Nの線に到達する点は、サンプルによって提供されるスプリングバックの指標となる。例えば、チョコレートおよび積層ワックスのサンプルのスプリングバックは、約0.07mmであった。サンプルの厚さは10~12mmであったため、これはサンプルの厚さ1mmあたり約7μmのスプリングバックに相当する。低いスプリングバックを示す材料は、SiC流体デバイスの通路を亀裂なしでプレス成形するための材料として優れた候補となるはずである。プレス成形実験から、チョコレートおよび積層ワックスから作られた通路モールドを使用して、亀裂のないSiC流体デバイスを作製できることが示される。
【0077】
亀裂の形成は、通路モールドを取り囲むSiC粉末のスプリングバック膨張の関数でもある。解放段階中のSiC粉末サンプルの反力対圧縮変位の測定も行った。実験では、力-変位曲線は、約0.13mmの圧縮で荷重=0Nの線に合致することが判明した。サンプルの厚さは10mmであったため、これはサンプルの厚さ1mmあたり約13μmのスプリングバックに相当する。SiC粉末サンプルの力-変位曲線は、図17のグラフで、様々な材料サンプルの力-変位曲線上にプロットされる。力-変位曲線がSiC粉末の曲線を完全に下回るサンプルは、通路モールドとして使用され、亀裂が発生することなくSiC流体デバイスでプレス成形された。力-変位曲線がSiC粉末曲線を完全に上回るサンプルは、プレス成形に亀裂が発生することがある。
【0078】
図18は、異なるタイプの積層ワックスの力-変位曲線のグラフである。この追加研究の1つの目的は、周囲のSiC粉末に亀裂を発生させることなくプレス成形できる硬質ワックス(平滑な内部チャネル側壁用)を特定することであった。ワックスは、図17を参照して上述したアプローチに従ってインストロンで特性評価された。図18は、6つのワックスの圧縮段階および解放段階の両方における力-変位曲線を示している。この実験で試験した6つのワックスは、すべてUniversal Photonics社から調達した。材料が本明細書に記載される属性を有し、関係を満たすならば、他の供給業者および通路モールド用の他の材料を使用してもよい。圧縮段階中の傾斜が急なサンプルはより硬く、平滑な内部チャンネル側壁表面を提供することが期待される。力-変位曲線は、解放段階の開始時にすべての曲線が重なるように左にシフトされた。ユニボンド5.0接着剤およびPX-15 B&Lピッチを除くすべてのサンプルの力-変位曲線は、SiC粉末の力変位曲線(プロット内の青い実線)のかなり下に位置している。プレス成形実験では、Universal Photonics社の積層ワックス#4、#5、#6、#444はすべて、亀裂のないSiC流体デバイスを製造した。Universal Photonics社の#75175ホールディングワックス(Holding Wax)およびUniversal Photonics社のOptical Quality Rosinを含む他のワックスも、プレス成形後に亀裂のないSiC流体デバイスをもたらすことが示されている。これらの他のワックスは、高いデュロメーター性能を提供し、内部チャネルの側壁表面の粗さを低減することになるため魅力的である。
【0079】
通路モールド130は、図17および図19を参照して特定した材料とは異なる材料から形成することができる。いくつかの実施形態では、通路モールド130の材料は以下の性質を有する。第1に、通路モールド材料は高損失弾性率(G’’)を有し、剛性バネ状本体のようにエネルギーを蓄積する代わりに、エネルギーは本体の物理的再編成によって失われる。多くの高損失弾性材料は液体のような性質を持ち、再編成によってエネルギーを放散させることができる。バルク流動ができないように材料が物理的に拘束されている場合、高損失弾性材料は分子スケールの再編成および発熱によってエネルギーを放散する。第2に、通路モールド材料は、プレス成形の過度のスプリングバックおよび亀裂を防止するのに十分な低さの弾性率(または貯蔵弾性率)(G’)を有する。通路モールド材料が弾性率G’の優先度を満たす場合、通路モールド材料は、プレス成形後に平滑な内部チャネル側壁の形成を可能にするために高い硬度も有していることが好ましく、これは、できるだけ高い弾性率G’と直接相関する傾向がある。高い弾性率(例えば、硬度)の通路モールド材料は、プレス成形中にSiC顆粒の侵入を防止することによって平滑な側壁を生成する。
【0080】
図19は、最大変位における変位保持の影響を示すグラフである。インストロンによるワックスサンプルの特性評価には、最大変位での変位保持を含めることができる。測定は、この一定の変位構成では、サンプル反力が時間の経過とともに急速に低下することを示している。これは、サンプルに蓄積されたエネルギーが失われつつあることを示している。図19は、一定の変位で保持している間の荷重-時間曲線を提供し、反力の減少率がサンプルによってどのように劇的に変化するかを示している。
【0081】
更なる実施形態では、フローリアクター用のSiCデバイスを形成するためのプロセスは、プレス成形サイクル中に一定の変位保持を含む。保持の完了後、モールド材料の反力は、プレス成形の完了後にそのスプリングバックが同様に低減されるように低減される。実際には、一定の圧力で保持を導入するのが好ましい。モールドだけがプレス成形される場合、モールド材料は徐々に圧縮されることになる。しかしながら、実際のSiC流体デバイスの作製では、モールドは四方をSiC粉末に囲まれている。SiC粉末は圧力が高くなると次第に非圧縮性となるため、一定の圧力が保持されている間、モールドの追加的な圧縮は最小限に抑えられる。その結果、通路モールドはエネルギーを放散し、それによってスプリングバックが低減し、亀裂のないSiC流体デバイス(これは他の方法ではプレス成形後に亀裂が発生する可能性がある)の製造につながる。SiC流体デバイスの亀裂をなくすには、最大加圧後1分間のプレス成形保持が有効であることが判明している。このプロセスは、他の実施形態では、より長いまたはより短い時間のプレス成形保持を有することができる。さらに、プレス成形保持は、可変圧力、例えば、保持期間中に増加または減少する保持圧力を含むことができる。保持圧力が変化する実施形態では、保持圧力は、保持期間中に線形または指数関数的に変化することができる。
【0082】
モールドを加熱して溶融し除去する際、モールド材料が十分に低粘度になってモールド材料が流出し、膨張圧力が緩和される前に、モールド材料が望ましいものよりも膨張する可能性がある。モールドの除去中に発生する圧力が過大な場合、形成される通路が損傷する可能性がある。この潜在的な問題に対処する追加の代替実施形態として、モールドの残りの部分または内側部分よりも融点の低い材料の外層を有するモールドを使用することができる。モールドの残りの部分よりも十分に低い融点を有する低融点材料を選択することによって、モールドを加熱してモールドを除去する際に、モールド全体が著しく膨張する前に外層が低粘度に移行することができ、次いで、モールドの残りの部分がさらに加熱されて膨張し、次いで溶融するにつれて外層が流出し、さもなければ望ましくないほど高くなる可能性のある圧力を緩和することができる。低融点材料の融点とモールドの残りの部分の融点との間の融点分離は、望ましくは少なくとも5℃、さらには20℃、さらには40℃であるが、一般的には80℃以下である。外層は、二次モールド成形またはディップ成形などによって形成することができる。
【0083】
本明細書で使用される「モノリシックな」とは、上記(段落[0049])で規定される意味を有する。しかしながら、出願人は、特許請求の範囲において、モノリシックが、代替的に、本体の全体を通して任意の方向に連続的かつ均一な分布を有する結晶粒の連鎖を有する多結晶セラミック材料の焼結体として定義され得るように、明示的にそのように記載されている場合、モノリシックを別様に定義する権利を留保し、例えば、単一の焼結サイクル中に結晶粒の成長が同時に起こる場合であって、本体が、本明細書で開示されるように、内部通路および結晶粒間の間隙孔を含むことがあり、任意選択で、ほとんどの間隙孔が5μm未満、例えば2~3μmの範囲の最大横断寸法を有する場合、および/または本体が、(観察可能および/または検出可能な)接合部で互いに接合された、例えば、サンドイッチアセンブリ法により調製された構成要素の場合には接合面で接合された、別個の構成要素(例えば、本体の半分)を含まない場合である。接合部は、例えば、肉眼、断面の顕微鏡分析、走査型電子顕微鏡(SEM)、遠赤外反射分光法、電子後方散乱回折法(EBSD)、エッチング後の表面形状計による測定、オージェ電子分光法(AES)、X線光電子分光法(XPS)、および/またはX線CTスキャニングによる組成変動によって観察可能および/または検出可能である。接合部は、本体を通る任意の方向における材料の気孔率、組成、および/または密度の急激な変化によって示されることもある。接合部はまた、材料を通る結晶粒の分布の乱れまたは不調和によって示されることもある。
【0084】
図20は、例えば、断面平面202(図2)に沿った、モノリシックな閉気孔率セラミック本体200の横断面のX線コンピュータ断層撮影(CT)画像であり、本体200の微細構造を示している。図2に示される本体200は、長さl、幅w、および厚さtを有する直方体形状を有しているが、更なる実施形態における本体は、本明細書に記載のプロセスを可能にする任意の形状を有することができる。本体200の幅wは、図20の表示における左右に対応し、本体200の厚さtは、図20の表示における上下に対応する。厚さtは、対向し合う主面206間に延在して示されており、この主面206は、本体の矩形実施形態では、本体200の他の対向面よりも大きな表面積を有する概ね平面状の対向面である。通路Pの3つの部分が、左部分、中央部分、および右部分を含む横断面画像に示されている。前述のように、内表面210は、通路の経路を取り囲む内側プロファイルを画定する。CT画像で使用される陰影の強度は、本体200の材料の密度に対応する。明るい領域は、本体の密度の高い領域(例えば、通路部分の対の間の領域)に対応し、暗い領域は、本体の密度の低い領域(例えば、通路Pによって画定される空隙)に対応する。モノリシックな閉気孔性の本体200は、本明細書に記載のプロセスに従ってプレス加工、加熱、および焼結される単一体積のセラミック粒子から形成されるため、本体を通るあらゆる密度勾配は、図20のCT画像に示されるように緩やかである。
【0085】
対照的に、2つ以上の別個のセラミック基材本体を接合する基材接合技術によって形成されたセラミック本体には、必ず継ぎ目または接合部が生じることになる。図21は、当該技術分野で知られているテープ接合法を使用して形成された接合部の横断面画像である。接合材料と基材との間にいくらかの相互拡散が生じる可能性がある一方で、接合部は周囲のSiC基材よりも目に見えて密度が低く、接合部における接合本体を通る密度勾配は急激である。こうした急激な密度変化は、バルクSiCと比較して基材の機械的接合が弱くなることがある。また、密度が低い接合部では、望ましくない気孔が生じることもある。
【0086】
いくつかの実施形態におけるセラミック本体200の焼結多結晶セラミック材料の結晶粒は、単峰性(モノモーダルとも呼ばれる)結晶粒サイズ分布および最大結晶粒サイズを有する微細構造を有する。単峰性結晶粒サイズ分布とは、特定の結晶粒サイズの分布に沿って単一の明確なピークまたはモードを有する結晶粒サイズ分布である。一方、多峰性結晶粒サイズ分布とは、複数の異なる結晶粒サイズの分布に沿って複数の明確なピークまたはモードを有する結晶粒サイズ分布である。結晶粒サイズ分布に加えて、いくつかの実施形態におけるセラミック材料は、20μm未満、さらには10μm未満、5μm未満、または2μm未満の最大結晶粒サイズを有する。本明細書で使用される場合、結晶粒の鎖の「連続的かつ均一な分布」とは、例えば、セラミック本体の任意の2つ以上の任意の体積断面について、セラミック本体全体にわたって、結晶粒間のサイズおよび/または空間的関係が、互いに隣接しているか、または互いに間隔をあけて配置されているかを比較した場合、セラミック本体のセラミック材料の全体にわたって、結晶粒間のサイズおよび/または空間的関係が一貫していることを意味する。結晶粒の鎖の「連続的かつ均一な分布」は、セラミック本体200中のSiC材料の相の分布または量を指すこともできる。いくつかの実施形態では、セラミック本体200のα-SiCの含有割合は95%、98%、または99%よりも大きく、セラミック本体200のβ-SiCの含有割合は1%または0%よりも小さい。
【0087】
図22は、本開示の方法に従って処理されたSiC焼結体のサンプルのSEM画像である。SiC材料の個々の結晶粒は、画像において明るい領域および暗い領域として現れる。画像に示されるように、結晶粒は、示されたサンプルの全体を通して連続的かつ均一な分布を有する結晶粒の鎖として材料内で組織化されている。図23は、従来の拡散接合法を使用して製造された焼結SiC材料のサンプルの顕微鏡写真画像である。図23に示されるセラミック材料は、大きな粗粒と小さな細粒とが混在しており、サンプル全体に識別できない形で分布している。図23に示されるセラミック本体中の結晶粒の分布は、二峰性の結晶粒サイズ分布を有するセラミック材料を示している。
【0088】
本明細書に開示された、および/または本明細書に開示された方法によって製造されたデバイスは、一般に、混合、反応性分離、抽出、結晶化、沈殿を含む分離、または他の方法で、流体の多相混合物を含む流体または流体の混合物、および固体も含む流体の多相混合物を含む流体または流体の混合物を、微細構造内で処理することを伴う任意のプロセスを実行する際に有用である。この処理は、物理的プロセス、有機種、無機種、または有機種と無機種との両方の相互変換をもたらすプロセスとして定義される化学反応、生化学的プロセス、または任意の他の形態の処理を含むことができる。以下の非限定的な反応のリストは、開示された方法および/またはデバイスを用いて実行することができる:酸化;還元;置換;除去;付加;リガンド交換;金属交換;およびイオン交換。より具体的には、下の非限定的なリストのいずれかの反応は、開示された方法および/またはデバイスを用いて実行することができる:重合;アルキル化;脱アルキル化;ニトロ化;過酸化;スルホキシ化;エポキシ化;アンモ酸化;水素化;脱水素化;有機金属反応;貴金属化学/均一系触媒反応;カルボニル化;チオカルボニル化;アルコキシル化;ハロゲン化;脱ハロゲン化水素;脱ハロゲン化;ヒドロホルミル化;カルボキシル化;脱炭酸;アミノ化;アリール化;ペプチドカップリング;アルドール縮合;シクロ縮合;脱水素環化;エステル化;アミド化;複素環合成;脱水;アルコール分解;加水分解;アンモノリシス;エーテル化;酵素合成;ケタール化;ケン化;異性化;第四級化;ホルミル化;相間移動反応;シリル化;ニトリル合成;リン酸化;オゾン分解;アジド化学;メタセシス;ヒドロシリル化;カップリング反応;および酵素反応。
【0089】
開示されたプロセスおよび製造可能な構造体は、SiC構造体を提供することができ、この構造体は、モノリシックな閉気孔性のSiC本体;およびSiC本体内に延在する蛇行した流体通路を含み、この蛇行した流体通路は、内面を有し、内面は、10μmRa未満、または0.1~5μmRaの範囲内、または0.1~1μmRaの範囲内の表面粗さを有するという点で、追加の応用分野に拡張することができる。
【0090】
構造体のSiCは、SiCの理論最大密度(複数の場合はその任意の平均値)の少なくとも95、96、97、98、または99%の密度を有する。構造体のSiCは、1%未満、0.5%未満、または0.1%未満の開気孔率を有する。構造体のSiCは、3%未満、1.5%未満、さらには0.5%未満の閉気孔率を有する。
【0091】
加圧水試験下での構造体の内部耐圧性は、少なくとも50バール(5MPa)、または少なくとも100バール(10MPa)、または少なくとも150バール(15MPa)とすることができる。
【0092】
SiC構造体は、高さhだけ分離した床および天井と、床と天井とを繋ぐ2つの対向し合う側壁とを含む蛇行した流体通路の内表面を有することができ、側壁は、高さhに対して垂直に、かつ高さhの2分の1に対応する位置で測定された幅wだけ分離され、蛇行した流体通路の高さhは0.1~20mmの範囲内である。蛇行した流体通路の高さhは、0.2~15mmの範囲内、または0.3~12mmの範囲内とすることができる。
【0093】
内部通路を有するSiC構造体を形成するためのプロセスは、蛇行した形状を有する通路の流体通路ポジティブモールドを、バインダーでコーティングされたSiC粉末の体積内に位置決めすることと、モールドが中にあるSiC粉末の体積をプレスしてプレス成形体を形成することと、プレス成形体を加熱してモールドを除去することと、プレス成形体を焼結して、内部に蛇行した流体通路を有するモノリシックなSiC構造体を形成することと、を含むことができる。モールドが中にある体積のSiC粉末をプレスすることは、一軸プレス成形または静水圧プレス成形を含むことができる。プレス成形体を加熱してモールドを除去することは、プレス成形体を加熱しながらプレス成形体をプレス成形することを含むことができる。このプロセスは、プレス成形体を焼結する前にプレス成形体を脱バインダーすることをさらに含むことができる。このプロセスは、通路モールドを成形および/または3D印刷することによって、蛇行した形状を有する通路の通路ポジティブモールドを形成することをさらに含むことができる。
【0094】
このプロセスは、低融点材料の外側層を有する通路ポジティブモールドを形成することをさらに含むことができ、低融点材料は、通路ポジティブモールドの残りの部分の融点よりも低い融点を有する。低融点材料の融点は、通路ポジティブモールドの残りの部分の融点よりも少なくとも5℃低くすることができる。
【0095】
本開示の第1の態様は、流体デバイスであって、モノリシックな閉気孔性のセラミック本体と、セラミック本体を通って延在していて、平滑な内表面を有する蛇行した流体通路と、を備え、セラミック本体の材料は、セラミック本体の少なくとも対向し合う主面間に連続的かつ均一な結晶粒の分布を有する、流体デバイスを含む。
【0096】
本開示の第2の態様は、材料の結晶粒が10μm未満の結晶粒サイズを有する、第1の態様に記載の流体デバイスを含む。
【0097】
本開示の第3の態様は、平滑な内表面が10μmRa未満の表面粗さを有する、第1の態様に記載の流体デバイスを含む。
【0098】
本開示の第4の態様は、セラミック本体の材料が炭化ケイ素(SiC)である、第1の態様に記載の流体デバイスを含む。
【0099】
本開示の第5の態様は、SiCの密度が、SiCの理論最大密度の少なくとも95%である、第4の態様に記載の流体デバイスを含む。
【0100】
本開示の第6の態様は、セラミック本体の材料が1%未満の開気孔率を有する、第5の態様に記載の流体デバイスを含む。
【0101】
本開示の第7の態様は、加圧水試験下でのセラミック本体の内部耐圧性が少なくとも50バール(5MPa)である、第1の態様に記載の流体デバイスを含む。
【0102】
本開示の第8の態様は、蛇行した流体通路の内表面が、高さhだけ分離された床および天井と、床と天井とを繋ぐ2つの対向し合う側壁とを含み、側壁は、高さhに対して垂直に、かつ高さhの2分の1に対応する位置で測定された幅wだけ分離され、蛇行した流体通路の高さhは0.1~20mmの範囲内である、第1の態様に記載の流体デバイスを含む。
【0103】
本開示の第9の態様は、蛇行した流体通路の高さhが0.2~15mmの範囲内である、第8の態様に記載の流体デバイスを含む。
【0104】
本開示の第10の態様は、側壁と床との交点における内表面が0.1~3mmの範囲の曲率半径を有する、第8の態様に記載の流体デバイスを含む。
【0105】
本開示の第11の態様は、流体デバイスを形成するための方法であって、蛇行した形状を有する通路の通路ポジティブモールドを、バインダーでコーティングされたセラミック粉末の体積内に位置決めすることと、通路ポジティブモールドが中にある、バインダーでコーティングされたセラミック粉末の体積をプレス成形してプレス成形体を形成することと、プレス成形体を加熱して通路ポジティブモールドを除去することと、プレス成形体を焼結して、プレス成形体を通って延在する蛇行した流体通路を有する高密度で閉気孔性のセラミック本体を形成することと、を含み、バインダーでコーティングされたセラミック粉末の体積の第1の安定特性と通路ポジティブモールドの第2の安定特性との間の関係が、プレス成形後および/または加熱中のプレス成形体の不連続性を防止する、方法を含む。
【0106】
本開示の第12の態様は、第1の安定特性が、第1の解放変位を含み、第2の安定特性が、プレス成形後の第1の解放変位よりも小さい第2の解放変位を含む、第11の態様に記載の方法を含む。
【0107】
本開示の第13の態様は、第1の安定特性が、第1の解放変位を含み、第2の安定特性が、プレス成形後の第1の解放変位よりも大きい第2の解放変位を含む、第11の態様に記載の方法を含む。
【0108】
本開示の第14の態様は、第1の安定特性が、バインダーでコーティングされたセラミック粉末のバインダー強度をさらに含み、バインダー強度は、プレス成形体に対する通路ポジティブモールドの解放力を打ち消すように構成される、第13の態様に記載の方法を含む。
【0109】
本開示の第15の態様は、第1の安定特性が、バインダーでコーティングされたセラミック粉末のバインダー強度を含み、バインダー強度は、加熱中のプレス成形体に対する通路ポジティブモールドの力を打ち消すように構成される、第11の態様に記載の方法を含む。
【0110】
本開示の第16の態様は、モールドが中にある、バインダーでコーティングされたセラミック粉末の体積をプレス成形することが、一軸プレス成形を含む、第11の態様に記載の方法を含む。
【0111】
本開示の第17の態様は、モールドが中にある、バインダーでコーティングされたセラミック粉末の体積をプレス成形することが、静水圧プレス成形を含む、第11の態様に記載の方法を含む。
【0112】
本開示の第18の態様は、プレス成形体を加熱してモールドを除去することが、プレス成形体を加熱しながらプレス成形体をプレス成形することを含む、第11の態様に記載の方法を含む。
【0113】
本開示の第19の態様は、通路モールドをモールド成形することによって、蛇行した形状を有する通路の通路ポジティブモールドを形成することをさらに含む、第11の態様に記載の方法を含む。
【0114】
本開示の第20の態様は、低融点材料の外層を有する通路ポジティブモールドを形成することをさらに含み、低融点材料は、通路ポジティブモールドの残りの部分の融点よりも低い融点を有する、第11の態様に記載の方法を含む。
【0115】
例示的な実施形態および実施例は、説明の目的で記載されているが、前述の説明は、開示の範囲および添付の特許請求の範囲を限定することを何ら意図するものではない。したがって、本開示の精神および様々な原則から実質的に逸脱することなく、上記の実施形態および実施例に変形および修正を加えることができる。すべてのそのような修正および変形は、本開示の範囲内に含まれ、以下の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【0116】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0117】
実施形態1
流体デバイスであって、
モノリシックな閉気孔性のセラミック本体と、
前記セラミック本体を通って延在していて、平滑な内表面を有する蛇行した流体通路と、
を備え、
前記セラミック本体の材料は、前記セラミック本体の少なくとも対向し合う主面間に連続的かつ均一な結晶粒の分布を有する、
流体デバイス。
【0118】
実施形態2
前記材料の結晶粒が10μm未満の結晶粒サイズを有する、実施形態1記載の流体デバイス。
【0119】
実施形態3
前記平滑な内表面が10μmRa未満の表面粗さを有する、実施形態1記載の流体デバイス。
【0120】
実施形態4
前記セラミック本体の材料が炭化ケイ素(SiC)である、実施形態1記載の流体デバイス。
【0121】
実施形態5
前記SiCの密度が、SiCの理論最大密度の少なくとも95%である、実施形態4記載の流体デバイス。
【0122】
実施形態6
前記セラミック本体の材料が1%未満の開気孔率を有する、実施形態5記載の流体デバイス。
【0123】
実施形態7
加圧水試験下での前記セラミック本体の内部耐圧性が少なくとも50バール(5MPa)である、実施形態1記載の流体デバイス。
【0124】
実施形態8
蛇行した流体通路の前記内表面が、高さhだけ分離された床および天井と、前記床と前記天井とを繋ぐ2つの対向し合う側壁とを含み、前記側壁は、前記高さhに対して垂直に、かつ前記高さhの2分の1に対応する位置で測定された幅wだけ分離され、前記蛇行した流体通路の高さhは0.1~20mmの範囲内である、実施形態1記載の流体デバイス。
【0125】
実施形態9
前記蛇行した流体通路の高さhが0.2~15mmの範囲内である、実施形態8記載の流体デバイス。
【0126】
実施形態10
前記側壁と前記床との交点における前記内表面が0.1~3mmの範囲の曲率半径を有する、実施形態8記載の流体デバイス。
【0127】
実施形態11
流体デバイスを形成するための方法であって、
蛇行した形状を有する通路の通路ポジティブモールドを、バインダーでコーティングされたセラミック粉末の体積内に位置決めするステップと、
前記通路ポジティブモールドが中にある、前記バインダーでコーティングされたセラミック粉末の体積をプレス成形してプレス成形体を形成するステップと、
前記プレス成形体を加熱して前記通路ポジティブモールドを除去するステップと、
前記プレス成形体を焼結して、前記プレス成形体を通って延在する蛇行した流体通路を有する高密度で閉気孔性のセラミック本体を形成するステップと、
を含み、
前記バインダーでコーティングされたセラミック粉末の体積の第1の安定特性と前記通路ポジティブモールドの第2の安定特性との間の関係が、プレス成形後および/または加熱中の前記プレス成形体の不連続性を防止する、
方法。
【0128】
実施形態12
前記第1の安定特性が、第1の解放変位を含み、前記第2の安定特性が、プレス成形後の前記第1の解放変位よりも小さい第2の解放変位を含む、実施形態11記載の方法。
【0129】
実施形態13
前記第1の安定特性が、第1の解放変位を含み、前記第2の安定特性が、プレス成形後の前記第1の解放変位よりも大きい第2の解放変位を含む、実施形態11記載の方法。
【0130】
実施形態14
前記第1の安定特性が、前記バインダーでコーティングされたセラミック粉末のバインダー強度をさらに含み、前記バインダー強度は、前記プレス成形体に対する前記通路ポジティブモールドの解放力を打ち消すように構成される、実施形態13記載の方法。
【0131】
実施形態15
前記第1の安定特性が、前記バインダーでコーティングされたセラミック粉末のバインダー強度を含み、前記バインダー強度は、加熱中の前記プレス成形体に対する通路ポジティブモールドの力を打ち消すように構成される、実施形態11記載の方法。
【0132】
実施形態16
前記モールドが中にある、前記バインダーでコーティングされたセラミック粉末の体積をプレス成形するステップが、一軸プレス成形を含む、実施形態11記載の方法。
【0133】
実施形態17
前記モールドが中にある、前記バインダーでコーティングされたセラミック粉末の体積をプレス成形するステップが、静水圧プレス成形を含む、実施形態11記載の方法。
【0134】
実施形態18
前記プレス成形体を加熱して前記モールドを除去するステップが、前記プレス成形体を加熱しながら前記プレス成形体をプレス成形するステップを含む、実施形態11記載の方法。
【0135】
実施形態19
前記通路モールドをモールド成形することによって、蛇行した形状を有する通路の通路ポジティブモールドを形成するステップをさらに含む、実施形態11記載の方法。
【0136】
実施形態20
低融点材料の外層を有する通路ポジティブモールドを形成するステップをさらに含み、前記低融点材料は、前記通路ポジティブモールドの残りの部分の融点よりも低い融点を有する、実施形態11記載の方法。
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【国際調査報告】