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特表2024-517564神経原線維変化の蛍光マーカーおよびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】神経原線維変化の蛍光マーカーおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/06 20060101AFI20240416BHJP
   C07F 5/02 20060101ALI20240416BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240416BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240416BHJP
   G01N 33/533 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C09K11/06 660
C09K11/06
C07F5/02 D
G01N21/64 F
G01N33/53 D
G01N33/533
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558943
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 IB2022053673
(87)【国際公開番号】W WO2022224151
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】102021000010382
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522037470
【氏名又は名称】フォンダツィオーネ インスチトゥート イタリアーノ ディ テクノロジア
(71)【出願人】
【識別番号】523294308
【氏名又は名称】ディスラプティブ テクノロジカル アドバンシス イン ライフ サイエンス エッセ.エッレ.エッレ. - ソシエタ’ ベネフィット、イン フォルマ アブレヴィアータ、ディテールズ エッセ.エッレ.エッレ.エッセビ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボッフィ、アルバート
(72)【発明者】
【氏名】ギルガ、フランチェスカ
(72)【発明者】
【氏名】ソロペルト、アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ディ アンジェラアントニオ、シルビア
【テーマコード(参考)】
2G043
4H048
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043DA02
2G043EA01
4H048AA03
4H048AB92
4H048AC25
4H048VA11
4H048VA32
4H048VA77
4H048VB10
(57)【要約】
本発明は、タウタンパク質に選択的に結合する新規な蛍光マーカー、その使用、対象の網膜におけるタウタンパク質の神経原線維変化を撮像するための方法、ならびに前記方法の実施を可能にする装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

のタウタンパク質に選択的に結合する蛍光マーカーであって、
式中、XおよびYが、EもしくはZの立体配置で二重結合によって、または芳香族もしくは複素芳香族のパラ置換環によって、または芳香族もしくは複素芳香族の1,4二置換環によって連結された炭素原子であり、
Rが、水素、ハロゲン、NH(RA)、N(RA)、NHC(=O)RA、ORA、OC(=O)RA、SRA、SORA、SORA、OSORA、OSORA、C(RA)、またはC5-7芳香族もしくは脂肪族の複素環であり、および
各置換基において、RAが、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、CF、窒素、酸素および硫黄の中から選択される最大3個の独立した複素原子を含むC1-7飽和または不飽和鎖、直鎖または分岐鎖、C5-7シクロアルキル、フェニル、C5-7複素環またはn-エチレングリコールである、
上記蛍光マーカー。
【請求項2】
XおよびYが、芳香族パラ置換環によって、または芳香族1,4二置換環によって連結された炭素原子であり、
Rが、水素、ハロゲン、NH(RA)、N(RA)、NHC(=O)RA、ORA、OC(=O)RA、SRA、SORA、SORA、OSORA、OSORA、C(RA)、またはC5-7芳香族もしくは脂肪族の複素環であり、および
各置換基において、RAが、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、CF、窒素、酸素および硫黄の中から選択される最大3個の独立した複素原子を含むC1-7飽和または不飽和鎖、直鎖または分岐鎖、C5-7シクロアルキル、フェニル、C5-7複素環またはn-エチレングリコールである、
請求項1に記載の蛍光マーカー。
【請求項3】
Rが、NH、NH(CH)、N(CH、N(Ph)、イミダゾール、モルホリン、ピペラジンである、請求項2に記載の蛍光マーカー。
【請求項4】
3-((E)-4-((E)-4-(ジメチルアミノ)スチリル)スチリル)-5,5-ジフルオロ-1-メチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド、
3-((E)-4-((E)-4-(ジフェニルアミノ)スチリル)スチリル)-5,5-ジフルオロ-1-メチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド、
3-((E)-4-((E)-4-アミノスチリル)スチリル)-5,5-ジフルオロ-1-メチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド、
5,5-ジフルオロ-1-メチル-3-((E)-4-((E)-4-(メチルアミノ)スチリル)スチリル)-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド、
5,5-ジフルオロ-1-メチル-3-((1E,3E,5E)-6-(ピロリジン-1-イル)ヘキサ-1,3,5-トリエン-1-イル)-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド、
5,5-ジフルオロ-1-メチル-3-((E)-4-((E)-4-モルホリノスチリル)スチリル)-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド、
5,5-ジフルオロ-1-メチル-3-((E)-4-((E)-4-(ピペラジン-1-イル)スチリル)スチリル)-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド、
3-((E)-4-((E)-4-(1H-イミダゾール-1-イル)スチリル)スチリル)-5,5-ジフルオロ-1-メチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド
から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の蛍光マーカー。
【請求項5】
3-((E)-4-((E)-4-(ジメチルアミノ)スチリル)スチリル)-5,5-ジフルオロ-1-メチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイドである、請求項4に記載の蛍光マーカー。
【請求項6】
350~650nmの励起波長および450~800nmの発光波長を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の蛍光マーカー。
【請求項7】
i.4,4-ジフルオロ-1,3-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンを式II
【化2】

(式中、XおよびYは、EもしくはZの立体配置で二重結合によって、または芳香族もしくは複素芳香族のパラ置換環によって、または芳香族もしくは複素芳香族の1,4二置換環によって連結された炭素原子であり、
Rは、水素、ハロゲン、NH(RA)、N(RA)、NHC(=O)RA、ORA、OC(=O)RA、SRA、SORA、SORA、OSORA、OSORA、C(RA)、またはC5-7芳香族もしくは脂肪族の複素環であり、各置換基において、RAは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、CF、窒素、酸素および硫黄の中から選択される最大3個の独立した複素原子を含むC1-7飽和または不飽和鎖、直鎖または分岐鎖、C5-7シクロアルキル、フェニル、C5-7複素環またはn-エチレングリコールである)
のアルデヒドとのクネーフェナーゲル縮合反応に供する段階と、
ii.段階iで得られた溶液を液液抽出(LLE)に供し、続いて精製段階により、前記式Iの蛍光マーカーを提供する段階と
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の蛍光マーカーの調製方法。
【請求項8】
段階i.が、ピペリジンおよび酢酸の存在下で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記式IIのアルデヒドが、トランス-4-[2-(4-ジメチルアミノフェニル)ビニル]ベンズアルデヒドである、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
段階iiが、
ii.a 段階iで得られた溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液(NHCl)を添加する段階と、
ii.b 段階ii.aで得られた混合物を液液抽出(LLE)に供する段階と、
ii.c 段階ii.bで得られた水相を分離する段階と、
ii.d 段階ii.bで得られた有機相を回収し、NaSOで脱水する段階と、
を含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の蛍光マーカーと、1つ以上の追加の賦形剤および/または担体とを含む組成物。
【請求項12】
経口組成物または眼科用組成物の形態の、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
タウタンパク質の神経原線維変化の検出に使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の蛍光マーカーまたは請求項11もしくは12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか一項に記載の蛍光マーカーまたは請求項11に記載の前記蛍光マーカーを含む組成物を、前記蛍光マーカーがタウタンパク質の神経原線維変化に結合する条件下で生体試料と接触させる段階と、
前記生体試料に結合した前記蛍光マーカーを検出する段階と
を含む、タウタンパク質の神経原線維変化を検出するための方法。
【請求項15】
請求項1~6のいずれか一項に記載の蛍光マーカーまたは請求項11もしくは12に記載の前記蛍光マーカーを含む組成物を対象に投与する段階と、
前記対象の網膜の非侵襲的蛍光撮像を実施する段階であって、前記蛍光マーカーからの蛍光の検出が、前記マーカーの前記網膜への結合を示す、段階と、
を含む、撮像方法。
【請求項16】
請求項1~6のいずれか一項に記載の蛍光マーカーまたは請求項11に記載の前記蛍光マーカーを含む組成物を対象に投与し、複数の連続した時点ti(iは0~nである)において、前記対象の網膜上で非侵襲的定量的蛍光撮像を実施して、対応する蛍光値を得る段階と、
時間の関数としての蛍光グラフを決定するために前記得られた蛍光値を使用する段階と
を含む、蛍光グラフを決定するための方法。
【請求項17】
前記連続した時点が、各時点と後続の時点との間の1週間もしくは複数週間、または1ヶ月もしくは複数ヶ月の期間によって隔てられる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記非侵襲的蛍光撮像が、投与から30分~1日後に実施される、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記蛍光撮像が、350~650nmに含まれる波長(λ)を有する光源を対象の網膜に照射し、前記蛍光マーカーによって発光された蛍光を検出および/または定量することによって行われる、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記蛍光マーカーまたは前記組成物が、経口投与されるか、または眼軟膏もしくは点眼剤の形態で投与される、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タウタンパク質の神経原線維変化に選択的に結合する新規な蛍光マーカー、該マーカーを含む組成物、その使用、対象の網膜におけるタウタンパク質の神経原線維変化を撮像するための方法、ならびに該方法の実施を可能にする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、老人性認知症の症例の80%超を占める神経変性疾患である。ADの発症機序の根底にある限られた科学的証拠では、標的化された有効な治療法および診断を開発することが困難であり、今日まで、高リスク患者の生活の改善または医療費の削減を可能にする有効な予防を保証する解決策は見出されていない[Graham V.W.ら、2017]。発症機序を解明するための多数の研究および製薬業界の努力にもかかわらず、ADを治療するかまたは症状の進行を有意に遮断する有効な治療法は依然として存在しない[Masters C.Lら、2015;Graham V.W.ら、2017]。その結果、ADを予防することができる治療戦略を開発するために、研究は、この疾患の正確な、好ましくは早期の、および特異的な診断方法の研究に焦点を当ててきた。脳脊髄液分析(CSF)[Olsson B.ら、2016]および診断用神経画像技術[Pietrzak K.ら、2018]の導入後、多くの進歩があった。
【0003】
これらの技術により、ADに関連する脳およびバイオマーカーにおける機能的変化の存在を研究できる。
【0004】
しかしながら、これらの技術は、比較的特異的かつ選択的であるにもかかわらず、多くの制限(非常に高価で侵襲的であり、認知障害が既に進行している場合にのみ明らかな陽性結果を提供する)があり、したがって、唯一の診断ツールとして使用することができず、病態生理学的形質の死後評価に関連付けられなければならない。
【0005】
ADについて3つの主要なバイオマーカーが同定されている。
βアミロイド斑の主成分であるAβ42ペプチド、
該高リン酸化タンパク質の結合単位(P-Tau)、および
神経原線維変化(NFT)の重要な要素である総タウ単量体(t-タウ)。
【0006】
近年、認知症患者におけるβアミロイド斑の存在および量は、疾患自体の進行および臨床症状に完全には関連し得ないことが示されている。対照的に、多くの研究により、タウタンパク質の神経原線維変化の数と疾患進行とのより厳密な相関が示されている。
【0007】
これに関して、ADバイオマーカーを同定するためのいくつかの蛍光プローブが文献に記載されており、および/または特許されているが、これらのうちの限られた数だけがタウタンパク質の凝集体に対してインビボで高度に選択的であり、今日まで、タウ特異的フルオロフォアは市販されていない。したがって、タウタンパク質のNFTに高度に選択的に結合することができる新しいクラスのフルオロフォアを同定する必要性が強く感じられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、式I
【化1】

のタウタンパク質に選択的に結合する新規な蛍光マーカーを提供し、
式中、XおよびYは、EもしくはZの立体配置で二重結合によって、または芳香族もしくは複素芳香族のパラ置換環によって、または芳香族もしくは複素芳香族の1,4二置換環によって連結された炭素原子であり、
Rは、水素、ハロゲン、NH(RA)、N(RA)、NHC(=O)RA、ORA、OC(=O)RA、SRA、SORA、SORA、OSORA、OSORA、C(RA)、またはC5-7芳香族もしくは脂肪族の複素環であり、および
各置換基において、RAは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、CF、窒素、酸素および硫黄の中から選択される最大3個の独立した複素原子を含むC1-7飽和または不飽和鎖、直鎖または分岐鎖、C5-7シクロアルキル、フェニル、C5-7複素環またはn-エチレングリコールである。
【0009】
本明細書の実験の項で報告されたデータから明白であるように、本発明者らは、式Iの蛍光マーカー、特に本明細書ではBT1-BT4およびBT6として定義される蛍光化合物が、微小管結合タウタンパク質のR3領域に存在し、かつタンパク質自体が原線維に集合する傾向を担う、PHF6断片の6量体モデルに対して高い結合親和性を有することを見出した。
【0010】
以下に示すインビトロアッセイによって得られた結果は、該蛍光化合物が、タウタンパク質の神経原線維凝集物に選択的に結合することができる新規で有効なマーカーであることを明確に示している。
【0011】
本発明はさらに、式Iの蛍光マーカーを調製するための方法、ならびに該マーカーを使用する撮像方法を提供する。
【0012】
有利には、本発明の蛍光マーカーは、血液脳関門の効率的な透過および網膜内のタウタンパク質の神経原線維変化に結合する能力を実証する。神経原線維タウ変化はタウオパチーに関連するため、対象の網膜における神経原線維変化の検出は、タウオパチーの診断における関連情報として、またはタウオパチーの診断を補助するために使用することができる。
【0013】
現在、タウ神経原線維変化を検出する従来の方法のほとんどは、脳組織の死後分析に基づいている。タウオパチーの早期診断に対する1つの主要な課題は、これらが一般に脳内の異常なタウ沈着の免疫組織化学的実証だけでなく、脳内の他の非タウタンパク質の有無および量の検出、ならびに脳の異なる領域におけるタウの形態学的特徴の研究も含むため、従来の診断方法の複雑性によって表される。
【0014】
有利には、本発明の蛍光マーカーは、血液脳関門を通過するそれらの能力と共に、タウタンパク質の神経原線維変化に対するそれらの高い親和性および特異性のおかげで、新規な撮像方法を提供するために使用することができ、タウオパチーの効果的で非侵襲的な早期診断を可能にする情報を得るために専門家によってその後分析することができる画像、またはタウオパチーの医学的治療の有効性の評価および/もしくはタウオパチーの進行の評価に使用することができる画像を提供する。
【0015】
したがって、本発明の対象は、
-式I
【化2】

の蛍光マーカー
(式中、XおよびYは、EもしくはZの立体配置で二重結合によって、または芳香族もしくは複素芳香族のパラ置換環によって、または芳香族もしくは複素芳香族の1,4二置換環によって連結された炭素原子であり、
Rは、水素、ハロゲン、NH(RA)、N(RA)、NHC(=O)RA、ORA、OC(=O)RA、SRA、SORA、SORA、OSORA、OSORA、C(RA)、またはC5-7芳香族もしくは脂肪族の複素環であり、および
各置換基において、RAは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、CF、窒素、酸素および硫黄の中から選択される最大3個の独立した複素原子を含むC1-7飽和または不飽和鎖、直鎖または分岐鎖、C5-7シクロアルキル、フェニル、C5-7複素環またはn-エチレングリコールであり、該マーカーは、タウタンパク質神経原線維変化に選択的に結合する)、
【0016】
-i.4,4-ジフルオロ-1,3-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンを式II
【化3】

(式中、XおよびYが、EもしくはZの立体配置で二重結合によって、または芳香族もしくは複素芳香族のパラ置換環によって、または芳香族もしくは複素芳香族の1,4二置換環によって連結された炭素原子であり、
Rが、水素、ハロゲン、NH(RA)、N(RA)、NHC(=O)RA、ORA、OC(=O)RA、SRA、SORA、SORA、OSORA、OSORA、C(RA)、またはC5-7芳香族もしくは脂肪族の複素環であり、および
各置換基において、RAが、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、CF、窒素、酸素および硫黄の中から選択される最大3個の独立した複素原子を含むC1-7飽和または不飽和鎖、直鎖または分岐鎖、C5-7シクロアルキル、フェニル、C5-7複素環またはn-エチレングリコールである)
のアルデヒドとのクネーフェナーゲル縮合反応に供する段階と、
ii.段階iで得られた溶液を液液抽出(LLE)に供し、続いて精製段階により、式Iの前記蛍光マーカーを得る段階と
を含む、式Iの蛍光マーカーの調製方法、
【0017】
-式Iの蛍光マーカーと、1つ以上の追加の賦形剤および/または担体とを含む組成物、
【0018】
-タウタンパク質の神経原線維変化の検出に使用するための、本明細書で定義される式Iの蛍光マーカーまたは式Iのマーカーを含む組成物、
【0019】
-式Iの蛍光マーカーまたは式Iの蛍光マーカーを含む組成物を、該蛍光マーカーがタウタンパク質の神経原線維変化に結合する条件下で生体試料と接触させる段階と、
該生体試料に結合した式Iの蛍光マーカーを検出する段階と
を含む、タウタンパク質の神経原線維変化を検出するための方法、
【0020】
-本明細書に記載されるように式Iの蛍光マーカーまたは式Iの蛍光マーカーを含む組成物を対象に投与する段階と、
該対象の網膜の非侵襲的蛍光撮像を実施する段階と(式Iの該マーカーからの蛍光の検出が、該マーカーの網膜への結合を示す)
を含む、撮像方法、
【0021】
-式1の蛍光マーカーまたは式1の蛍光マーカーを含む組成物を対象に投与し、複数の連続した時点ti(iは0~nである)において、該対象の網膜上で非侵襲的定量的蛍光撮像を実施して、対応する蛍光値を得る段階と、
得られた蛍光値を使用して蛍光グラフを決定する段階と
を含む、蛍光グラフを決定するための方法、
【0022】
-対象の網膜におけるタウタンパク質の神経原線維変化の量の進行を監視するためのコンピュータプログラムであって、電子コンピュータ上で実行されると、時点tでの第1の蛍光値fおよび1つ以上の時点tでの1つ以上の蛍光値fを提供する命令リストを含み(nは、0より大きい整数であり、その後の各時点tで漸進的に増加し、各tは、t後の時点に対応し、該値は本明細書で定義される方法のいずれかで得られる)、
該値の各々をfからfまで漸進的に比較する段階と、
各f蛍光値が、fより低く、上記fより低い場合に、該神経原線維変化量の減少を検出する段階と、
各f蛍光値が、fより高く、上記fより高い場合に、該神経原線維変化量の増加を検出する段階と、
各f蛍光値が、fおよび上記fと同じまたは実質的に同じである場合に、該神経原線維変化量の変動が実質的に存在しないことを検出する段階と、
を実施する、コンピュータプログラム、
【0023】
-対象の網膜における本発明の式Iのマーカーの蛍光レベルの自動測定のための装置であって、少なくとも(i)該対象の網膜を照射するために発光するように構成された光源(該光は、350nm~650nmに含まれる波長を有する)と、(ii)該光源で網膜を照射したときに、該蛍光マーカーによって発せられた蛍光を検出および/または定量化するように構成された光学ユニットとを備え、該装置が、本明細書に記載の方法のいずれかを実施するように構成される、装置、
【0024】
-本明細書および特許請求の範囲に記載の方法のいずれかを実施するための本発明による装置の使用、
である。
【0025】
本発明のさらなる利点、ならびに特徴および使用形態は、純粋に例として示されるいくつかの好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0026】
用語解説
本発明のBODIPYは、当技術分野で一般的に意図される意味を有し、すなわち、その分子がジピロメテン基Cに結合した二フッ化ホウ素基BFからなる式CBNを有する化学化合物の技術的一般名であり、具体的には、IUPAC命名法における化合物4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンである。一般名は、「ボロン-ジピロメテン」の略称である。
【0027】
芳香族および非芳香族という用語は、最先端で一般的に理解されている通りであり、したがって、それぞれ任意の芳香族複素環および任意の非芳香族複素環を示し得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、「眼組織」という用語は、哺乳動物の眼および/または視神経の任意の組織、例えば網膜または黄斑および中心窩などの網膜周辺内の下部構造を含み得る。網膜は、網膜の内顆粒層および網膜の網膜神経節細胞のうちの1つ以上を含み得る。
【0029】
タウ1プローブは、Verwilst Pら、“Rational Design of in Vivo Tau Tangle-Selective Near-Infrared Fluorophores:Expanding the BODIPY Universe.”J Am Chem Soc.2017 Sep 27;139(38):13393-13403による論文に記載されている構造である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】式Iの化合物の一般式。
図2】タウ原線維腔へのBT1化合物の結合ポーズ。
図3】(A)BT1(100μM)と37℃で30分間インキュベーションし、抗T22抗体および抗AT8抗体で染色した後のインビトロで30日目のヒトiPSC由来の皮質ニューロンを示す代表的な二値化蛍光画像。 (B)TAU1(100μM)と37℃で30分間インキュベーションし、抗T22抗体および抗AT8抗体で染色した後のインビトロで30日目のヒトiPSC由来の皮質ニューロンを示す代表的な二値化蛍光画像。 (C)上記の代表的画像の蛍光合成。BT1の蛍光画像は、検出において555/15nmフィルタを用いた520nmでの励起を使用して得られ、TAU1は、検出において510/5nmフィルタを用いた470nmでの励起を使用して得られた。両プローブが表示される。細胞核をDAPIで染色した。(D)プローブ特異性は、Image Jを使用して決定された総抗体強度のうちのBT1またはTAU1によって覆われた領域内の抗体強度の比として算出される(n=3)。画像は、60倍の倍率を使用してFV10i共焦点顕微鏡で取得された。
図4】(A)BT1(100μM)と37℃で30分間インキュベーションし、抗T22抗体および抗AT8抗体で染色した後のインビトロで30日目のヒトiPSC由来の網膜神経節細胞を示す代表的な二値化蛍光画像。 (B)TAU1(100μM)と37℃で30分間インキュベーションし、抗T22抗体および抗AT8抗体で染色した後のインビトロで30日目のヒトiPSC由来の網膜神経節細胞を示す代表的な二値化蛍光画像。 (C)上記の代表的画像の蛍光合成。BT1の蛍光画像は、検出において555/15nmフィルタを用いた520nmでの励起を使用して得られ、TAU1は、検出において510/5nmフィルタを用いた470nmでの励起を使用して得られた。両プローブが表示される。細胞核をDAPIで染色した。 (D)プローブ特異性は、Image Jを使用して決定された総抗体強度のうちのBT1またはTAU1によって覆われた領域内の抗体強度の比として算出される(n=3)。画像は、60倍の倍率を使用してFV10i共焦点顕微鏡で取得された。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明者らは、BIODIPY由来分子の中から、式I
【化4】

のタウタンパク質に選択的に結合する新規な蛍光マーカーを同定し、
式中、XおよびYは、EもしくはZの立体配置で二重結合によって、または複素芳香族もしくは芳香族のパラ置換環によって、または芳香族もしくは複素芳香族の1,4二置換環によって連結された炭素原子であり、
Rは、水素、ハロゲン、NH(RA)、N(RA)、NHC(=O)RA、ORA、OC(=O)RA、SRA、SORA、SORA、OSORA、OSORA、C(RA)、またはC5-7芳香族もしくは脂肪族の複素環であり、および
各置換基において、RAは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、CF、窒素、酸素および硫黄の中から選択される最大3個の独立した複素原子を含むC1-7飽和または不飽和鎖、直鎖または分岐鎖、C5-7シクロアルキル、フェニル、C5-7複素環またはn-エチレングリコールである。
【0032】
式Iの化合物は、タウタンパク質神経原線維変化(NFT)に対して高い親和性を有する蛍光分子である。
【0033】
本発明の式Iの蛍光マーカーは、血液脳関門の効率的な透過を示す親油性化合物である。
【0034】
本発明の一実施形態は、上記で定義した式Iの蛍光マーカーに関し、XおよびYは、芳香族パラ置換環または芳香族1,4二置換環によって連結された炭素原子である。
Rは、H、ハロゲン、NH(RA)、N(RA)、NHC(=O)RA、ORA、OC(=O)RA、SRA、SORA、SORA、OSORA、OSORA、C(RA)、またはC5-7芳香族もしくは脂肪族の複素環であり、および
各置換基において、RAは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、CF、窒素、酸素および硫黄の中から選択される最大3個の独立したヘテロ原子を含むC1-7飽和または不飽和鎖、直鎖または分岐鎖、C5-7シクロアルキル、フェニル、C5-7複素環またはn-エチレングリコールである。
【0035】
本発明によれば、好ましい芳香族複素環は、ピロール、イミダゾールおよびピペリジンの中から選択される。
【0036】
本発明によれば、好ましい非芳香族複素環は、モルホリン、ピペラゾールおよびピロリジンの中から選択される。
【0037】
好ましい一実施形態では、Rは、NH、NH(CH)、N(CH、N(Ph)、イミダゾール、モルホリン、ピペラジンから選択される。
【0038】
式Iの蛍光マーカーの非限定的な例としては、3-((E)-4-((E)-4-(ジメチルアミノ)スチリル)スチリル)-5,5-ジフルオロ-1-メチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド(本明細書、図面およびスキームにおいてBT1とも呼ばれる)、
3-((E)-4-((E)-4-(ジフェニルアミノ)スチリル)スチリル)-5,5-ジフルオロ-1-メチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド(本明細書およびスキームにおいてBT2とも呼ばれる)、
3-((E)-4-((E)-4-アミノスチリル)スチリル)-5,5-ジフルオロ-1-メチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド(本明細書およびスキームではBT3とも呼ばれる)、
5,5-ジフルオロ-1-メチル-3-((E)-4-((E)-4-(メチルアミノ)スチリル)スチリル)-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド(本明細書およびスキームにおいてBT4とも呼ばれる)、
5,5-ジフルオロ-1-メチル-3-((1E,3E,5E)-6-(ピロリジン-1-イル)ヘキサ-1,3,5トリエン-1-イル)-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド(本明細書およびスキームではBT5とも呼ばれる)、
5,5-ジフルオロ-1-メチル-3-((E)-4-((E)-4-モルホリノスチリル)スチリル)-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド(本明細書およびスキームにおいてBT6とも呼ばれる)、
5,5-ジフルオロ-1-メチル-3-((E)-4-((E)-4-(ピペラジン-1-イル)スチリル)スチリル)-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド(本明細書およびスキームにおいてBT7とも呼ばれる)、
および3-((E)-4-((E)-4-(1H-イミダゾール-1-イル)スチリル)スチリル)-5,5-ジフルオロ-1-メチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド(本明細書およびスキームではBT8とも呼ばれる)
が挙げられる。
【0039】
したがって、式Iの蛍光マーカーは、
3-((E)-4-((E)-4-(ジメチルアミノ)スチリル)スチリル)-5,5-ジフルオロ-1-メチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド(BT1)、
3-((E)-4-((E)-4-(ジフェニルアミノ)スチリル)スチリル)-5,5-ジフルオロ-1-メチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド(BT2)、
3-((E)-4-((E)-4-アミノスチリル)スチリル)-5,5-ジフルオロ-1-メチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド(BT3)、
5,5-ジフルオロ-1-メチル-3-((E)-4-((E)-4-(メチルアミノ)スチリル)スチリル)-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド(BT4)、
5,5-ジフルオロ-1-メチル-3-((1E,3E,5E)-6-(ピロリジン-1-イル)ヘキサ-1,3,5-トリエン-1-イル)-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド(BT5)、
5,5-ジフルオロ-1-メチル-3-((E)-4-((E)-4-モルホリノスチリル)スチリル)-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド(BT6)、
5,5-ジフルオロ-1-メチル-3-((E)-4-((E)-4-(ピペラジン-1-イル)スチリル)スチリル)-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド(BT7)、
3-((E)-4-((E)-4-(1H-イミダゾール-1-イル)スチリル)スチリル)-5,5-ジフルオロ-1-メチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド(BT8)
のうちの1つであり得る。
【0040】
蛍光マーカーBT1~BT8の化学構造を以下のスキーム1に示す。
【0041】
【化5】

スキーム1-化合物BT1~BT8の構造
好ましい実施形態では、蛍光マーカーは、3-((E)-4-((E)-4-(ジメチルアミノ)スチリル)スチリル)-5,5-ジフルオロ-1-メチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイドである。
【0042】
本発明の蛍光マーカーは、350~650nmの励起波長および450~800nmの発光波長を特徴とする。
【0043】
本発明はさらに、既定の式Iの蛍光マーカーの調製方法であって、
i.4,4-ジフルオロ-1,3-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンを式II
【化6】

(式中、XおよびYが、EもしくはZの立体配置で二重結合によって、または複素芳香族もしくは芳香族のパラ置換環によって、または芳香族もしくは複素芳香族の1,4二置換環によって連結された炭素原子であり、
Rが、水素、ハロゲン、NH(RA)、N(RA)、NHC(=O)RA、ORA、OC(=O)RA、SRA、SORA、SORA、OSORA、OSORA、C(RA)、またはC5-7芳香族もしくは脂肪族の複素環であり、および
各置換基において、RAが、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、CF、窒素、酸素および硫黄の中から選択される最大3個の独立した複素原子を含むC1-7飽和または不飽和鎖、直鎖または分岐鎖、C5-7シクロアルキル、フェニル、C5-7複素環またはn-エチレングリコールである)
のアルデヒドとのクネーフェナーゲル縮合反応に供する段階と、
ii.段階iで得られた溶液を液液抽出(LLE)に供し、続いて精製段階により、式Iの前記蛍光マーカーを得る段階と
を含む、調製方法を提供する。
【0044】
一実施形態では、該クネーフェナーゲル反応は、溶媒としてトルエン(またはベンゼンまたはトリフルオロメチルベンゼン)を使用して、ピペリジン(またはピロリジン)および酢酸の存在下、Dean-Stark条件下で行われる。クネーフェナーゲル反応は、還流下で2~4時間行われ得る。
【0045】
本発明の具体的な一実施形態では、上記方法の段階iiは、以下の段階を含む。
ii.a段階iで得られた溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液(NHCl)を添加する段階、
ii.b段階ii.aで得られた混合物を液液抽出(LLE)に供する段階、
ii.c段階ii.bで得られた水相を分離する段階、
ii.d段階ii.bで得られた有機相を回収し、NaSOで脱水する段階。
【0046】
該液液抽出(LLE)は、有機溶媒としてDCM(ジクロロメタン)を用いて行うことができる。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、式Iの該蛍光マーカーを提供するための精製段階は、クロマトグラフィーによって行われる。具体的な一実施形態では、該精製は、以下の溶離剤混合物:ヘキサン:酢酸エチルを9:1の比で使用するフラッシュクロマトグラフィーによって行うことができる。
【0048】
上記方法の好ましい一実施形態では、式IIの該アルデヒドは、トランス-4-[2-(4-ジメチルアミノフェニル)ビニル]ベンズアルデヒドである。
【0049】
該トランス-4-[2-(4-ジメチルアミノフェニル)ビニル]ベンズアルデヒドは、4-ブロモベンズアルデヒドを、適切な触媒および炭酸カリウムの存在下で4-ジメチルアミノスチレンとヘック反応させることによって得ることができる。
【0050】
4-ブロモベンズアルデヒドおよび4-ジメチルアミノスチレンから出発する該トランス-4-[2-(4-ジメチルアミノフェニル)ビニル]ベンズアルデヒドを製造するために使用することができる適切な触媒は、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)中で酢酸パラジウム(II)(Pd(CHCOO))をトリフェニルホスフィン(PPh)と混合することによってその場で調製される触媒である。
【0051】
本発明はまた、本発明の少なくとも1つの蛍光マーカーと、場合により1つ以上の担体および/または賦形剤とを含む組成物に関する。
【0052】
適切な担体および/または賦形剤は、本発明の式Iの蛍光マーカーを溶解または安定に分散させることを可能にするという条件で、例えば、DMSOなどの溶媒、好ましくは薬学的に許容される溶媒である。
【0053】
該組成物中の式Iの蛍光マーカーの濃度は、本発明の蛍光マーカーの種類に応じて調整することができる。一実施形態では、蛍光マーカーの濃度は、0.5マイクロモル~50ミリモルの範囲であり得る。該組成物に含まれる賦形剤は、蛍光マーカーの所望の投与量が得られるように調整することができる。
【0054】
本発明の組成物は、好ましくは経口組成物の形態または眼科用組成物の形態である。
【0055】
経口組成物は、溶液、懸濁液、ゲル、軟質または硬質ゼラチン、カプセル、錠剤、ロゼンジ、粉末、顆粒、丸剤、オレオゲルの形態であり得る。
【0056】
経口投与に適した組成物を調製するための、当技術分野で知られる任意の適切な担体または賦形剤を当業者が使用することができる。
【0057】
本発明による眼科用組成物は、点眼剤、眼軟膏または眼科用ローションの形態であり得る。
【0058】
眼科用組成物に適した組成物を調製するための、当技術分野で知られる任意の適切な担体または賦形剤を当業者が使用することができる。
【0059】
本発明の一態様では、タウタンパク質の神経原線維変化の検出に使用するための、式Iの蛍光マーカーまたは前述の蛍光マーカーを含む組成物に言及する。
【0060】
一実施形態において、本発明では、対象におけるタウタンパク質の神経原線維変化の検出に使用するための、式Iの蛍光マーカーまたは前述の蛍光マーカーを含む組成物に言及し、換言すれば、本発明ではまた、インビボでの対象におけるタウタンパク質の神経原線維変化の検出に使用するための、式Iの蛍光マーカーまたは前述の蛍光マーカーを含む組成物に言及する。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、本明細書で教示される蛍光マーカーまたは組成物のいずれも、タウタンパク質の神経原線維変化の検出に使用するために、それを必要とする対象に投与することができる。上述のように、該検出は対象において行うことができ、侵襲的ツールなしでインビボで行うことができる。
【0062】
本発明のさらなる実施形態では、検出は、オルガノイドを含む適切な試料に対してインビトロで実施することができる。
【0063】
特に、本発明はさらに、
-式Iの蛍光マーカーまたは既定の式Iの蛍光マーカーを含む組成物を、該蛍光マーカーがタウタンパク質の神経原線維変化に結合する条件下で生体試料と接触させる段階と、
生体試料に結合した該蛍光マーカーを検出する段階と
を含む、タウタンパク質の神経原線維変化を検出するための方法を提供する。
【0064】
上記の方法を用いて分析することができる生体試料の非限定的な例としては、眼組織、脳組織または嗅覚上皮が挙げられる。好ましい一実施形態では、該生体試料は眼組織である。
【0065】
一実施形態では、上記方法の接触段階は、37℃の温度で行うことができる。蛍光マーカーが、分析される生体試料中に存在するタウタンパク質の神経原線維変化に選択的に結合するように、該接触段階では10~120分に含まれる持続時間がある。
【0066】
該蛍光マーカーの存在下で生体試料をインキュベーションする期間は、適用される蛍光マーカーの量に依存するが、上述の範囲内である。一実施形態では、接触時間は30分である。
【0067】
好ましくは、該接触段階において、本発明の蛍光マーカーは、0.5マイクロモル~50ミリモルの範囲の濃度である。
【0068】
上記の方法は、該接触段階の後に、任意の過剰の該蛍光マーカーが生体試料から除去される洗浄段階をさらに含み得る。
【0069】
一実施形態では、生体試料内のタウタンパク質の神経原線維変化に結合した本発明の蛍光マーカーのいずれかの存在および/または量は、蛍光測定、好ましくは蛍光撮像によって決定することができる。
【0070】
蛍光撮像は、当技術分野で知られる蛍光撮像技術のいずれかに従って実施することができる。例えば、該生体試料内のタウタンパク質の神経原線維変化に対する本発明の蛍光マーカーの結合の定性的評価および/または定量的評価は、顕微鏡技術を使用して達成することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、上記の本発明方法の検出段階は、以下の段階をさらに含む。
該生体試料を光源で照射する段階(光源は、結合した蛍光マーカーからの蛍光発光を決定するのに適した波長(λ)を有する)、および
該蛍光マーカーによって発光された蛍光を検出し、場合により定量する段階(該発光した蛍光が約450nm~800nmの範囲の波長を有する)。
【0072】
励起光源は、分析される生体試料の任意の他の成分の励起を回避するように狭い発光範囲を有することが好ましい。一実施形態では、光源は、約350~650nmの範囲の波長を有し、好ましくは559nmに等しい。
【0073】
本発明のさらに別の実施形態は、
-本明細書で定義されるように式Iの蛍光マーカーまたは該蛍光マーカーを含む組成物を対象に投与する段階と、
該対象の網膜の非侵襲的蛍光撮像を実施する段階と(該蛍光マーカーからの蛍光の検出が、該マーカーの網膜への結合を示す)
を含む、撮像方法に関する。
【0074】
一実施形態では、本発明による式Iの蛍光マーカーまたは式Iの該蛍光マーカーを含む組成物は、経口投与または眼投与によって対象に投与することができる。
【0075】
好ましい実施形態では、本明細書で教示される蛍光マーカーまたは該蛍光マーカーを含む組成物のいずれかは、蛍光測定の少なくとも30分から1日前に該対象に投与される。例として、投与は、蛍光測定の少なくとも1時間前、2時間前、少なくとも4時間前、少なくとも8時間前、巧みには少なくとも12時間前、少なくとも16時間前である。血液脳関門を効率的に透過するその能力のおかげで、本発明の式Iの蛍光マーカーは、投与後に網膜に到達し、その中に存在するタウタンパク質の神経原線維変化に選択的に結合することができる。
【0076】
該結合に必要な時間は、マーカーまたは組成物の投与のために選択された方法に応じて異なる。眼投与の形態での局所投与は、経口投与と比較して、その後の蛍光検出ステム(stem)のためのより短い時間を必要とするであろう。
【0077】
一実施形態では、本発明の蛍光マーカーは、単位投与量当たり0.5マイクロモル~50ミリモルを含む量で投与される。
【0078】
本発明の方法による対象の網膜の蛍光撮像は、非侵襲的である限り、当技術分野で知られる任意の蛍光撮像技術によって実施することができる。非侵襲的蛍光撮像技術の非限定的な例には、走査レーザー検眼鏡検査(SLO)、共焦点走査レーザー検眼鏡検査(cSLO)、または蛍光寿命撮像検眼鏡検査(FLIO)が含まれる。蛍光撮像は定性的または定量的であり得、換言すれば、単に蛍光の有無を示すことができ、または検出された蛍光の量を定量することができる。
【0079】
例として、網膜の非侵襲的蛍光撮像は、網膜内のタウタンパク質の神経原線維変化に結合した本発明の蛍光マーカーによって発光された蛍光を検出および/または定量するための手段と共に、該対象の網膜を照射するための光源を使用することによって実施することができ、該発光蛍光は、約450~800nmの範囲の発光波長を有する。
【0080】
本明細書で使用される場合、「光源」は、対象の網膜を照射するように構成され得る任意の光源であり得、該対象の網膜内の本発明の結合した蛍光マーカーからの蛍光発光を決定するのに適した波長を有する。好ましい一実施形態では、該光源は、350~650nmに含まれ、好ましくは559nmに相当する波長を有する。
【0081】
本発明の一実施形態によれば、網膜内の本発明の結合した蛍光マーカーによって発光された蛍光を検出および/または定量することは、蛍光検出および記録のために構成された任意の適切な装置によって行うことができる。適切な装置の例は、該対象の網膜の照射の結果として生成された蛍光を受け取り、網膜内のタウタンパク質の神経原線維変化に結合した式Iの蛍光マーカーによって発光された蛍光を検出するように構成されたユニットを含む装置であり、すなわち網膜に結合した該蛍光マーカーの存在を識別し、および/またはその量を定量することを可能にする。該変化に捕捉された量が、その検出のために十分な蛍光を発光するのに十分であるため、本発明の蛍光マーカーは、網膜に結合した場合にのみ検出可能である。結合していない自由に拡散するマーカーは、その低い水溶性のために、観察される蛍光シグナルに寄与する可能性は低い。
【0082】
一実施形態では、装置は、適切な光源で照射される網膜に結合したマーカーによって発光された蛍光のカメラ画像を形成するように構成されたカメラを備えることができる。
【0083】
そのような装置は、収集された蛍光強度を分析し、専用のコンピュータプログラムおよび/または公衆に利用可能な任意の適切なソフトウェアを使用して、例えば、該結合したマーカーの平均蛍光強度値を算出することによって、網膜内の本発明の蛍光マーカーの定量的測定値を提供するようにプログラムされ得る。
【0084】
したがって、本発明の一実施形態では、上記の撮像方法は、網膜内のタウタンパク質のNFTに結合した式Iの蛍光マーカーによって生成される蛍光のピーク強度を決定することを含み得る。タウタンパク質のNFTに結合した蛍光マーカーの量は、該ピーク強度に基づいて決定することができる。
【0085】
例として、網膜内のタウタンパク質のNFTに結合した本発明の式Iの蛍光マーカーは、ピコ秒レーザーパルスによって励起することができ、蛍光発光は、時間相関単一光子計数(TCSPC)技術を使用して検出することができる。
【0086】
有利には、本発明の撮像方法を用いて対象の網膜の蛍光を検出して得られた画像をタウオパチーの診断に使用することができる。神経原線維タウ変化はタウオパチーに関連するため、網膜における神経原線維変化の検出は、診断のために、またはタウオパチーの診断を補助するために使用することができる。
【0087】
本明細書で使用される場合、「タウオパチー」という用語は、タウタンパク質が神経原線維または神経膠原線維変化(NFT)に凝集すること、例えばアルツハイマー病、ダウン症候群、筋萎縮性側索硬化症、ピック病、パーキンソン病、原発性加齢性タウオパチー(PART)、慢性外傷性脳症(CTE)、進行性核上性麻痺(PSP)、皮質基底核変性症(CDB)、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、リティコ-ボディグ病(グアムのパーキンソン認知症複合)、神経節膠腫および神経節細胞腫、髄膜腫症、後脳炎性パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)、ならびに鉛脳症、結節性硬化症、パントテン酸キナーゼ関連神経変性症およびリポフスチン沈着症を含む神経変性疾患の部類を包含する。
【0088】
好ましい一実施形態では、該タウオパチーが、アルツハイマー病、ダウン症候群、筋萎縮性側索硬化症、ピック病またはパーキンソン病から選択され、好ましくはアルツハイマー病である。
【0089】
本発明の一実施形態によれば、生体試料中のタウタンパク質の神経原線維変化を検出するための方法または本明細書に記載の任意の撮像方法は、タウオパチーの診断を補助するために、他の撮像技術、例えばアミロイドタンパク質を検出するための技術によって得られた結果と組み合わせることができる。
【0090】
請求項1~6のいずれか一項に記載の蛍光マーカーまたは請求項11に記載の該蛍光マーカーを含む組成物を対象に投与し、複数の連続した時点ti(iは0~nである)において、該対象の網膜上で非侵襲的定量的蛍光撮像を実施して、対応する蛍光値を得る段階と、
得られた蛍光値を使用して時間の関数としての蛍光グラフを決定する段階と
を含む、蛍光グラフを決定するための方法。
【0091】
上述の方法を実施する際に、i=0の時点tは、監視が開始される時間を表す。iが0+1~nまで増加する整数値である連続した時点tは、互いに後続する時点であり、それらの時間的連続はi値の増加によって示される。
【0092】
したがって、i=0の時点tは、監視が開始された時点であり、このtでの網膜の式Iの蛍光マーカーの蛍光値は、網膜内の該蛍光の時間的進行を評価することができる開始蛍光値と考えることができる。
【0093】
網膜の非侵襲的定量的蛍光撮像は、時点tが時点tに先行し、時点tに先行するなどのように、i=0であるt後の時点およびi=1~nへの進行で互いに続く時点において繰り返すことができる。
【0094】
したがって、上記の方法に従って後続の各tiについて得られた画像内の蛍光値の比較を、時間の関数としての蛍光のグラフで詳述することができる。
【0095】
上記の方法によって提供されるようなグラフは、タウオパチーに対する医学的治療の有効性を評価するため、またはタウオパチーの時間的進行を評価するために有利に使用することができる。
【0096】
この場合、i=0の時間tは、医学的治療結果が監視される時間に対応し、これは有利には処置自体の開始前であり得るが、処置が既に開始された後であっても処置中の任意の時間に導入することができる。
【0097】
上記の方法によって提供されるグラフにおける蛍光の漸進的な減少または安定性は、タウオパチーの改善における医学的治療の有効性を示し得る。グラフの意味および関連する有効性の程度は、臨床専門家によるグラフの解釈によって評価することができる。
【0098】
上記の方法によって提供されるグラフにおける蛍光の漸進的な増加は、医学的治療の無効性を示し得る。グラフの意味および関連する無効性の程度は、臨床専門家によるグラフの解釈によって評価することができる。
【0099】
場合によっては、食習慣および生活様式の変更が、医学的治療を受ける前に対象に提案され得る。これらの場合、例えば、食習慣および生活様式の変化が疾患に良い影響を及ぼすか否かを確認するために、疾患の進行を経時的に監視することが有用であり得る。
【0100】
上記の方法によって提供されるグラフは、疾患に及ぼす該変化の影響を監視するために使用することができる。
【0101】
いずれにせよ、可能な治療効果が評価されるか否かにかかわらず、対象のタウオパチーの進行を監視することは、医師にとって興味深い可能性がある。
【0102】
したがって、本明細書に記載の蛍光グラフを決定する方法は、対象のタウオパチーの進行を監視するために有利に使用することができる。
【0103】
一般的な撮像方法の説明において式Iの蛍光マーカーまたは該蛍光マーカーを含む組成物の投与様式および投与量に関して以前に記載されたことは、上記の他の方法のいずれにも当てはまる。
【0104】
分析対象の網膜の非侵襲的定量的蛍光撮像は、本明細書で前述したものを含む、当技術分野で知られる非侵襲的蛍光撮像技術のいずれか1つに従って実施することができる。特に、本発明の好ましい一実施形態によれば、上記撮像方法のいずれにおいても、該蛍光撮像は、350~650nmに含まれる波長(λ)を有する光源を前記対象の網膜に照射し、前記蛍光マーカーによって発光された蛍光を検出および/または定量することによって行われる。
【0105】
網膜の蛍光撮像を含む上記の方法のいずれも、「正規化」、該対象の網膜から発光されたバックグラウンド自己蛍光に基づいて、タウタンパク質のNFTに結合した本発明の蛍光マーカーの決定された量または蛍光レベルをさらに含み得る。本明細書で使用される場合、そのような「正規化」は、タウタンパク質のNFTに結合した本発明の蛍光マーカーから発光される蛍光の量からバックグラウンド自己蛍光の量を差し引くことを含み、そのような量の比を決定することも含み、そのような正規化された結果を、タウタンパク質のNFTに結合した本発明の式Iの蛍光マーカー量の正規化された尺度として使用することを含み得る。
【0106】
網膜におけるタウタンパク質の神経原線維変化の検出は、タウオパチーの早期かつ非侵襲的な診断を可能にし、本発明の蛍光マーカーの高い特異性は、変化の検出をより高感度かつ正確にし、それによって疾患の早期診断を改善する。
【0107】
それにより、本発明の撮像方法は、疾患の早期診断の後、通常は診断が不可能な段階での該疾患の適切な治療が続くタウオパチーの治療方法に使用することができる。
【0108】
さらに、本発明はまた、タウオパチーの治療方法も包含し、該方法では、医学的治療の有効性は、本発明によって提供される時間の関数としての蛍光のグラフの分析によって監視され、医学的治療は、該監視の結果に応じて、担当医によって継続、変動または変更される。
【0109】
以下の実験節は、限定ではなく例示のみを目的として提供され、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲を限定することを意図しない。特許請求の範囲は、説明の不可欠な部分である。
【実施例
【0110】

例1-タウタンパク質神経原線維変化(NFT)および分子ドッキングのための選択マーカーの設計
以下のスキーム2に示すように、13~19Åの電子供与体部分と受容体部分との間の距離および異なる極性を特徴とする、脂肪族アミン、環状および非または芳香族で終わる高度の共役系を有する3位で官能化されたBODIPYコアからなる、BT1~BT8と呼ばれる一連の蛍光プローブが設計されている。
【0111】
【化7】

スキーム2-化合物BT1~8の構造。
NFTに対する選択性を評価し、任意の異なる候補を除外するために、タンパク質自体が原線維に集合する傾向を担うPHF6断片の結晶構造に対してコンピュータで分子をスクリーニングした。微小管に結合するタウタンパク質のR3領域に存在するPHF6断片のヘキサペプチド306VQIVYK311の6量体モデルを、文献に報告された手順に従って、伸長および対称演算子を用いて構築した[Verwilst P.ら、2017]。
【0112】
PDB-ID 5K7N.[de la Cruz M.J.ら、2017]によってコードされるペプチドの高分解能結晶構造を、6-Wedを構築するためのモデル系として使用した。小分子のドッキングは、ペプチドモノマーによって形成された保存された両親媒性トンネルの内部で行った。AutoDock4.2[Morris G.M.ら、2009]を用いて分子ドッキングを行った。
【0113】
リガンドをPicto(OpenEye)で描画し、続いてOMEGA(OpenEye)を使用して三次元フォーマットに変換した。[Hawkins PCDら、2010] OpenEyeおよびAutoDock4.2ソフトウェアは、ホウ素を含有する化合物をドッキングするための力場パラメータを提供せず、この理由から、ホウ素原子は炭素原子ハイブリダイズsp3で置き換えられていることに留意されたい。pH 7.4分子のイオン化状態をQUACPAC(OpenEye)(QUACPAC 2.0.2.2:OpenEye Scientific Software,Santa Fe,NM.Http://www.eyesopen.com)で評価し、AutoDockと互換性のある特定のフォーマットPDBQTをAutoDockTool GUI [Morris G.M.ら、2009]で生成した。
【0114】
各リガンドについて、遺伝的アルゴリズムの10回の実行を行い、統計的に最も関連するドッキングポーズを、スコアの組み合わせ分析および目視検査によって決定した。
【0115】
タウ原線維腔へのBT1化合物の結合ポーズを図2に示す。
【0116】
以下の表1は、化合物BT1~BT8について予測される結合親和性をまとめたものである。
【表1】

BT1化合物は、インシリコ親和性、結合立体構造および極性に関して、タウタンパク質NFTの選択マーカーとして最も有望な化合物であることが分かった。
【0117】
例2-BT1化合物の設計および合成
要するに、BT1化合物の合成のために、合成の2段階戦略、すなわち、選択された市販のBodipyコアとトランス-4-[2-(4-ジメチルアミノフェニル)ビニル]ベンズアルデヒドとのクネーフェナーゲル縮合が開発され、後者は、(スキーム3に示すように)反応の立体選択性を促進するために適切に選択された触媒の存在下で、4-ブロモベンズアルデヒドと4-ジメチルアミノスチレンと(両方とも市販されている)のヘック反応によって合成された。
【0118】
化学物質、試薬および分析方法
すべての試薬および溶媒は市販されており、さらに精製することなく使用されている。
【0119】
シリカゲル(230~400メッシュ)をカラムフラッシュクロマトグラフィーによる精製に使用した。すべての反応を薄層クロマトグラフィー(TLC)によって監視し、f254蛍光ゲルシリカプレート(Sigma-Aldrich 99569)を使用した。融点B-454装置を用いて融点を決定した。1Hおよび13C NMRスペクトルは、標準物質としてテトラメチルシレン(TMS)を使用して、Bruker 400 Ultra Shield(商標)装置(1H NMRについては400MHz、13C NMRについては100MHz)で記録した。化学置換は、百万分率(ppm)で報告される。多重度は、以下のように報告されている:一重項(s)、二重項(d)、三重項(t)および多重項(m)。エレクトロスプレーイオン化(ESI)を備えたThermo Finnigan LXQリニアイオントラップ質量分析計を用いて質量分析を行った。Bruker BioApexフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FT-ICR)を用いて、高分解能質量スペクトル(HR-MS)を記録した。
【0120】
合成手順
トランス-4-[2-(4-ジメチルアミノフェニル)ビニル]ベンズアルデヒド(2)化合物を、以下のスキーム3に示すヘック反応によって調製した。
【0121】
【化8】

スキーム3-化合物2の合成
触媒をその場で調製した。酢酸パラジウム(II)Pd(CH3COO)2)(Merck Life Science 3375-31-3)(16.8mg、0.075mmol)およびトリフェニルホスフィン(PPh3)(Merck Life Science 603-35-0)(19.7mg、0.075mmol)は、ジメチルホルムアミド(DMF)に可溶である(Merck Life Science 6812-2)。10分後、4-ブロモベンズアルデヒド3(Merck Life Science 1122-91-4)(202mg、1.5mmol)、4-ジメチルアミノスチレン4(構成要素、Merck Life Science 2039-80-70)(264.6mg、1.8mmol)および炭酸カリウム(K2CO3)(Merck Life Science 584-08-7)(414mg、3.00mmol)を含むDMF(3ml)の溶液を触媒溶液に添加した。反応物を80℃で4時間撹拌したままにした。その後、反応物をCH2Cl2(3回)で抽出し、有機相を合わせ、無水Na2SO4で脱水し、減圧下で濃縮した。冷ヘキサン結晶化により、トランス-4-[2-(4-ジメチルアミノフェニル)ビニル]ベンズアルデヒド2化合物(1,074mmol、270mg)を収率72%で得た。
【0122】
黄色固体(収率72%)。mp:218.0~220.0℃。
H NMR(400 MHz,CDCl)δ 9.96(s,1H),7.83(d,J=8.2 Hz,2H),7.60(d,J=8.2 Hz,2H),7.45(d,J=8.7 Hz,2H),7.21(d,J=16.2 Hz,1H),6.94(d,J=16.2 Hz,1H),6.72(d,J=8.7 Hz,2H),3.01(s,5H).13C NMR(101 MHz,CDCl)δ 191.75,150.77,144.69,134.62,132.66,130.40,128.33,126.38,124.86,122.82,112.40,40.47.ESI-MS(m/z):[M+H]1718NOの計算値252.13、実測値252.17。
【0123】
化合物BT1は、クネーフェナーゲル縮合によって調製されている(以下のスキーム4)。
【0124】
【化9】

スキーム4-化合物BT1の合成
ピペリジン(Merck Life Science 110-89-4)(0.35ml、6.12mmol)および酢酸(Merck Life Science 64-19-7)(0.35ml、3.5mmol)の存在下で、4,4-ジフルオロ-1,3-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インディセン(TCI Europe 154793-49-4)(100mg、0.45mmol)およびトランス-4-[2-(4-ジメチルアミノフェニル)ビニル]ベンズアルデヒド(112.95mg、0.45mmol)を含むトルエン(Merck Life Science 108-88-3)10ml溶液を120℃で2~4時間蒸留した。その後、ディーンスタークを除去した。反応物を室温にし、NHCl塩化アンモニウム水溶液50mlを添加した。続いて、水相をCHCl(3×50ml)で抽出し、有機相を合わせ、無水NaSOで脱水し、減圧下で濃縮した。反応原料を、9:1比のヘキサン溶離液混合物:酢酸エチルを使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。化合物3-((E)-4-((E)-4-(ジメチルアミノ)スチリル)スチリル)-5,5-ジフルオロ-1-メチル-5H-ジピロル[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイドBT1(mmol、mg)を収率33%で得た。
【0125】
黒色固体(収率33%)。mp:257~262℃。
H NMR(400 MHz,CDCl)δ 7.64-7.56(m,4H),7.53(d,J=8.2 Hz,2H),7.47-7.41(m,J=8.2 Hz,3H),7.23(s,1H),7.16(d,J=16.2 Hz,1H),6.94(d,J=16.2 Hz,1H),6.83(s,1H),6.72(d,J=8.2 Hz,2H),6.49-6.46(m,1H),2.99(s,6H),2.34(s,3H).
13C NMR(101 MHz,CDCl)δ 159.68,140.93,140.73,138.75,134.63,133.69,131.02,130.30,129.00,128.41,126.96,126.12,125.63,123.60,123.36,118.80,117.96,117.84,117.42,116.77,112.80,40.68,30.26.ESI-MS(m/z):[M+H]1826BFの計算値453.22、実測値454.33。
【0126】
例3-インビトロ試験
ヒトiPSCの維持
ヒト誘導多能性幹細胞(hiPSC)を、成長因子を低減させたMatrigelコーティングプレート(Corning、希釈率1:100)上のmTeSR Plus培地(STEMCELL Technologies)中、37℃、5% CO2でクローン増殖によって維持した。
【0127】
ヒトiPSCの網膜神経節細胞への分化
分化プロトコルは、若干の変更を加えたSluch V.ら、2017の改訂版であった。ヒトiPSCを、1×Accutase(Merck Life science)を用いて単一細胞に解離させ、10μM Rock阻害剤Y-27632(Peprotech)を補充したmTeSR Plusにおいて1000細胞/mm2の密度で成長因子を低減させたMatrigelコーティングプレートに播種した。播種日をマイナス2日(D-2)とした。
【0128】
翌日(D-1)、幹細胞培地を、50% DMEM/F12 [1:1]、1% GlutaMAXを含む50% Neurobasal、1%非必須アミノ酸(NEAA)、1% N2 Supplement、およびビタミンAを含まない2% B27 Supplement(すべてThermoFisher Scientific製)からなる神経原性基本培地(N2B27)で完全に置き換えた。さらに24時間後(D0)、新鮮なN2B27培地に、25μM フォルスコリン(Peprotech)、1μM ドルソモルフィン(Peprotech)、2.5μM IDE2(Peprotech)および10mM ニコチンアミド(Peprotech)からなる小分子の混合物を補充した。この段階で、前腹側前脳への幹細胞の拘束を増強するために、培地を毎日交換した。
【0129】
播種の約1週間後(D7)、均一でコンフルエントな神経上皮様シートが見え、細胞を1×Accutaseで解離させ、N2B27+10μM Rock Inhibitor中1000/mm2の密度でポリ-L-オルニチン/ラミニンコーティング(Merck Life science)皿に播種した。翌日、培地を25μM フォルスコリンおよび10mM ニコチンアミドを含むN2B27に切り替え、次の3~4日間毎日交換した。その後、N2B27に25μM フォルスコリン、10 ng/mL IGF1(Peprotech)および10 ng/mL FGF2(Peprotech)のみを補充し、週に2回リフレッシュして網膜前駆細胞の増殖および増大を促進した。
【0130】
高密度コンフルエント状態(D18~20付近)に達すると、網膜前駆細胞シートを1×Accutaseで解離させ、700細胞/mm2の密度でポリ-L-オルニチン/ラミニンコーティング皿に播種した。増殖状態からの脱出およびRGC成熟を強化するために、N2B27培地に10μM Rock阻害剤(播種のみ)、10μM DAPT(Peprotech)、25μM Forskolinを補充し、培地を30日~35日目まで3日ごとに交換した。
【0131】
ヒトiPSCの皮質ニューロンへの分化
ドキシサイクリン誘発性ヒトNGN2遺伝子過剰発現に基づく2段階プロトコルを用いて、ヒトiPSC-皮質ニューロンを分化させた。簡潔には、ヒトiPS細胞を1×Accutaseで処理し、10μM Rock阻害剤Y-27632を含有するmTeSR Plus中、1000細胞/mm2の密度で成長因子を低減させたMatrigelコーティングプレート上に播種した。播種日をマイナス3日(D-3)とする。播種の1日後(D-2)、培地を、2μg/mL ドキシサイクリン(Merck Life Science)が補充されるDMEM/F12 [1:1]、1% N2サプリメント、1% NEAA、1% GlutaMAXからなるN2培地に切り替えて、ヒトNGN2発現を誘導する。N2培地を毎日リフレッシュした。3日後(D0)、生まれたばかりのニューロンをAccutaseにより解離させ、PDL/ラミニンコーティング皿に、500細胞/mm2の密度で、Neurobasal、ビタミンAを含む2% B27、1% GlutaMAX、0、5μg/mL ラミニン(Merck Life Science)、20 ng/mL BDNF(Peprotech)、20 ng/mL アスコルビン酸(Peprotech)、2μg/mL ドキシサイクリン、10μM Rock阻害剤Y-27632および10μM DAPTを補充した10 ng/mL GDNF(Peprotech)からなる成熟培地に播種した。24時間後、Y-27632を除去し、DAPTおよびドキシサイクリンを5日目まで培地に維持した。場合により、5μM Ara-C(Merck Life Science)を6日目から10日目まで培地に添加して、非ニューロン増殖性細胞を除去した。その後、実験ウィンドウがD30付近に達するまで、培地を毎週半分交換した。
【0132】
BODIPYベースプローブによる染色
ヒトiPSC由来ニューロン培養物を、100μM TAU1プローブまたは100μM BT1プローブのいずれかと37℃で30分間インキュベーションし、次いで、室温で15分間、作りたての4% 冷PFAで固定した。
【0133】
タウ1プローブは、Verwilst Pら、“Rational Design of in Vivo Tau Tangle-Selective Near-Infrared Fluorophores:Expanding the BODIPY Universe.”J Am Chem Soc.2017 Sep 27;139(38):13393-13403による論文に記載されている構造である。
【0134】
免疫細胞化学
固定されたhiPSC由来の皮質ニューロンおよびRGCを、0.2% Triton X-100(Merck Life Science)を含む1×TBSで透過処理し、1×TBS、0.2% Triton X-100および5%ヤギ血清(Merck Life Science)を含有するブロッキング溶液中で1時間インキュベーションした。したがって、細胞を、一次抗体を含有するブロッキング溶液中で4℃で一晩インキュベーションした。この試験で使用した一次抗体は、ヤギ抗PHF-tau Ser202/Thr205(AT8;希釈1:200;Thermo Fisher Scientific)およびマウス抗オリゴマーTAU(T22;希釈1:200;Merck Life Science)であり、続いて二次抗体(希釈1:1000)と共に室温で1時間インキュベーションした。画像は、60倍の水浸対物レンズを備えたFV10i共焦点システム(Olympus)で取得した。視野当たりの蛍光強度は、ソフトウェアイメージJを使用して決定した。
【0135】
細胞内TAU凝集体を特異的に染色するBT1プローブの能力を、二値化プローブシグナル内で検出された抗体蛍光シグナルの関数として決定した。
【0136】
図3および図4は、インビトロで30日後にiPSC由来の皮質ニューロンおよび網膜ニューロンの単層培養物で検出されたT22抗体、AT8抗体およびBT1またはTAU1プローブの二値化シグナルを示す。興味深いことに、BT1プローブは、T22に関してAT8シグナルとのより高い共局在化を示し、BT1プローブが、TAUのオリゴマー状態ではなく、リン酸化TAUイソ型で濃縮された細胞内凝集体を優先的に染色することを示している。
【0137】
さらに、BT1プローブは、TAU1プローブと比較した場合、リン酸化凝集体を検出するより高い能力を示す。異なる性能ではあるが、BT1プローブによって示されるAT8陽性凝集物の増強された検出は、iPSC由来皮質ニューロンとiPSC由来網膜神経節細胞との間で保存されるが、TAU1プローブの性能は同等である。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-09-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

のタウタンパク質に選択的に結合する蛍光マーカーであって、
式中、XおよびYが、EもしくはZの立体配置で二重結合によって、または芳香族もしくは複素芳香族のパラ置換環によって、または芳香族もしくは複素芳香族の1,4二置換環によって連結された炭素原子であり、
Rが、水素、ハロゲン、NH(RA)、N(RA)、NHC(=O)RA、ORA、OC(=O)RA、SRA、SORA、SORA、OSORA、OSORA、C(RA)、またはC5-7芳香族もしくは脂肪族の複素環であり、および
各置換基において、RAが、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、CF、窒素、酸素および硫黄の中から選択される最大3個の独立した複素原子を含むC1-7飽和または不飽和鎖、直鎖または分岐鎖、C5-7シクロアルキル、フェニル、C5-7複素環またはn-エチレングリコールである、
上記蛍光マーカー。
【請求項2】
XおよびYが、芳香族パラ置換環によって、または芳香族1,4二置換環によって連結された炭素原子であり、
Rが、水素、ハロゲン、NH(RA)、N(RA)、NHC(=O)RA、ORA、OC(=O)RA、SRA、SORA、SORA、OSORA、OSORA、C(RA)、またはC5-7芳香族もしくは脂肪族の複素環であり、および
各置換基において、RAが、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、CF、窒素、酸素および硫黄の中から選択される最大3個の独立した複素原子を含むC1-7飽和または不飽和鎖、直鎖または分岐鎖、C5-7シクロアルキル、フェニル、C5-7複素環またはn-エチレングリコールである、
請求項1に記載の蛍光マーカー。
【請求項3】
Rが、NH、NH(CH)、N(CH、N(Ph)、イミダゾール、モルホリン、またはピペラジンである、請求項2に記載の蛍光マーカー。
【請求項4】
3-((E)-4-((E)-4-(ジメチルアミノ)スチリル)スチリル)-5,5-ジフルオロ-1-メチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド、
3-((E)-4-((E)-4-(ジフェニルアミノ)スチリル)スチリル)-5,5-ジフルオロ-1-メチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド、
3-((E)-4-((E)-4-アミノスチリル)スチリル)-5,5-ジフルオロ-1-メチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド、
5,5-ジフルオロ-1-メチル-3-((E)-4-((E)-4-(メチルアミノ)スチリル)スチリル)-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド、
5,5-ジフルオロ-1-メチル-3-((1E,3E,5E)-6-(ピロリジン-1-イル)ヘキサ-1,3,5-トリエン-1-イル)-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド、
5,5-ジフルオロ-1-メチル-3-((E)-4-((E)-4-モルホリノスチリル)スチリル)-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド、
5,5-ジフルオロ-1-メチル-3-((E)-4-((E)-4-(ピペラジン-1-イル)スチリル)スチリル)-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド、
3-((E)-4-((E)-4-(1H-イミダゾール-1-イル)スチリル)スチリル)-5,5-ジフルオロ-1-メチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイド
から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の蛍光マーカー。
【請求項5】
3-((E)-4-((E)-4-(ジメチルアミノ)スチリル)スチリル)-5,5-ジフルオロ-1-メチル-5H-ジピロロ[1,2-c:2’,1’-f] [1,3,2]ジアザボリニン-4-イウム-5-ウイドである、請求項4に記載の蛍光マーカー。
【請求項6】
350~650nmの励起波長および450~800nmの発光波長を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の蛍光マーカー。
【請求項7】
i.4,4-ジフルオロ-1,3-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンを式II
【化2】

(式中、XおよびYは、EもしくはZの立体配置で二重結合によって、または芳香族もしくは複素芳香族のパラ置換環によって、または芳香族もしくは複素芳香族の1,4二置換環によって連結された炭素原子であり、
Rは、水素、ハロゲン、NH(RA)、N(RA)、NHC(=O)RA、ORA、OC(=O)RA、SRA、SORA、SORA、OSORA、OSORA、C(RA)、またはC5-7芳香族もしくは脂肪族の複素環であり、各置換基において、RAは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、CF、窒素、酸素および硫黄の中から選択される最大3個の独立した複素原子を含むC1-7飽和または不飽和鎖、直鎖または分岐鎖、C5-7シクロアルキル、フェニル、C5-7複素環またはn-エチレングリコールである)
のアルデヒドとのクネーフェナーゲル縮合反応に供する段階と、
ii.段階iで得られた溶液を液液抽出(LLE)に供し、続いて精製段階により、前記式Iの蛍光マーカーを提供する段階と
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の蛍光マーカーの調製方法。
【請求項8】
段階i.が、ピペリジンおよび酢酸の存在下で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記式IIのアルデヒドが、トランス-4-[2-(4-ジメチルアミノフェニル)ビニル]ベンズアルデヒドである、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
段階iiが、
ii.a 段階iで得られた溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液(NHCl)を添加する段階と、
ii.b 段階ii.aで得られた混合物を液液抽出(LLE)に供する段階と、
ii.c 段階ii.bで得られた水相を分離する段階と、
ii.d 段階ii.bで得られた有機相を回収し、NaSOで脱水する段階と、
を含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の蛍光マーカーと、1つ以上の追加の賦形剤および/または担体とを含む組成物。
【請求項12】
経口組成物または眼科用組成物の形態の、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
タウタンパク質の神経原線維変化の検出に使用するための、請求項11もしくは12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか一項に記載の蛍光マーカーまたは請求項11に記載の組成物を、前記蛍光マーカーがタウタンパク質の神経原線維変化に結合する条件下で接触させた生体試料に結合した前記蛍光マーカーを検出する段
含む、タウタンパク質の神経原線維変化を検出するための方法。
【請求項15】
請求項1~6のいずれか一項に記載の蛍光マーカーまたは請求項11もしくは12に記載の組成物を投与された対象の網膜の非侵襲的蛍光撮像を実施する段階であって、前記蛍光マーカーからの蛍光の検出が、前記マーカーの前記網膜への結合を示す、段
含む、撮像方法。
【請求項16】
数の連続した時点ti(iは0~nである)において、請求項1~6のいずれか一項に記載の蛍光マーカーまたは請求項11に記載の組成物を投与された対象の網膜上で非侵襲的定量的蛍光撮像を実施して、対応する蛍光値を得る段階と、
時間の関数としての蛍光グラフを決定するために前記得られた蛍光値を使用する段階と
を含む、蛍光グラフを決定するための方法。
【請求項17】
前記連続した時点が、各時点と後続の時点との間の1週間もしくは複数週間、または1ヶ月もしくは複数ヶ月の期間によって隔てられる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記非侵襲的蛍光撮像が、投与から30分~1日後に実施される、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記蛍光撮像が、350~650nmに含まれる波長(λ)を有する光源を対象の網膜に照射し、前記蛍光マーカーによって発光された蛍光を検出および/または定量することによって行われる、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記蛍光マーカーまたは前記組成物が、経口投与されるか、または眼軟膏もしくは点眼剤の形態で投与される、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】