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特表2024-517565改良された積層造形用の剥離支持材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】改良された積層造形用の剥離支持材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20240416BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20240416BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20240416BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20240416BHJP
   B29C 64/40 20170101ALI20240416BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240416BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240416BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240416BHJP
   B32B 25/16 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B32B27/30 B
C08L51/04
C08L25/08
B29C64/118
B29C64/40
B33Y10/00
B33Y70/00
B33Y80/00
B32B25/16
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023559095
(86)(22)【出願日】2022-04-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 US2022025037
(87)【国際公開番号】W WO2022225815
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/176,604
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514073570
【氏名又は名称】ジャビル インク
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】フライ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】レッシュ,レヴィ
(72)【発明者】
【氏名】カディドロ,ジャック
【テーマコード(参考)】
4F100
4F213
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AK12A
4F100AK12B
4F100AK24A
4F100AK24B
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK28A
4F100AK28B
4F100AK41C
4F100AK42C
4F100AK46C
4F100AL01A
4F100AL01B
4F100AL05A
4F100AL05B
4F100AL09A
4F100AL09B
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
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4F100EH17
4F100YY00A
4F100YY00B
4F213AA13
4F213AA24
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4F213WB01
4F213WL02
4F213WL23
4F213WL24
4F213WL25
4F213WL27
4F213WL32
4F213WL62
4J002BC04X
4J002BH01X
4J002BN14W
4J002BN15W
4J002BP01X
4J002GF00
(57)【要約】
一般的な構築材料(例えば、ポリアミド又はポリエステル)用の支持材料として有用な積層造形組成物は、スチレン系マトリクス内に分散した重合共役ジエンの個別のドメインを有するエラストマー強化スチレン系ポリマーと、ビニル芳香族-無水マレイン酸共重合体とのブレンドで構成される。該組成物は、押出法(例えば、溶融フィラメント製造)などの積層造形法における支持材料として使用することができる。該組成物は、下層部分又は残留接着支持材料を破壊することなく機械的除去を可能にしつつ、所望の支持を促進するために所望の接着を実現するように調整することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系マトリクス内に分散した重合共役ジエンの個別のドメインを有するエラストマー強化スチレン系ポリマーとビニル芳香族-無水マレイン酸共重合体とのブレンドを含む組成物。
【請求項2】
前記エラストマー強化スチレン系ポリマーが、スチレンと共役ジエンと任意選択的に不飽和ニトリルとの共重合体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エラストマー強化スチレン系ポリマーが、スチレンとブタジエンとの共重合体である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記共役ジエンが、前記エラストマー強化スチレン系ポリマーの約5質量%から15質量%の量で存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ビニル芳香族-無水マレイン酸共重合体が、スチレン-無水マレイン酸共重合体、無水マレイン酸がグラフトされたビニル芳香族ブロックエラストマー、又はそれらの組合せである、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ビニル芳香族ブロックエラストマーが、スチレン-(ブタジエン)-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-イソプレン-ブチレン-スチレン(SIBS)、スチレン-(エチレン-ブチレン)-スチレン(SEBS)、又はそれらの混合物である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ビニル芳香族ブロックエラストマーが前記SEBSである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ビニル芳香族-無水マレイン酸共重合体が、該ビニル芳香族-無水マレイン酸共重合体の約5質量%から50質量%の無水マレイン酸量を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
アクリレートとビニル芳香族単量体との共重合体をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記アクリレート-ビニル芳香族共重合体が、共役ジエン、不飽和ニトリル、又はそれらの組合せをさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記アクリレート-ビニル芳香族共重合体が、メタクリル酸メチル-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(MABS)の共重合体である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物がフィラメントである、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記フィラメントが約1ミリメートルから約3ミリメートルの直径を有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
互いに融着されてなる請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物の少なくとも2つの層を含む積層造形物品。
【請求項15】
前記物品が溶融フィラメント製造によって形成される、請求項14に記載の積層造形物品。
【請求項16】
前記組成物が支持材料である、請求項14又は15に記載の積層造形物品。
【請求項17】
前記支持材料が、ポリエステル、ポリアミド、又はそれらの組合せである構築材料を支持する、請求項16に記載の積層造形物品。
【請求項18】
前記ポリエステルが、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート、又はそれらの混合物である、請求項17に記載の積層造形物品。
【請求項19】
積層造形物体を形成する方法であって、
請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物を加熱し、3D印刷押出ノズルを通して押出成形して支持押出物を形成し、同時に構築材料を加熱し、第2の3D印刷押出ノズルを通して押出成形して構築押出物を形成する工程、及び
複数の層が制御可能に堆積し、融着して積層造形物品を形成するように前記支持押出物及び構築押出物を堆積する工程であって、前記支持押出物が前記構築材料の一部を支持する、工程
を含む、方法。
【請求項20】
前記積層造形物品の冷却後に、前記支持押出物を前記構築材料から機械的に剥離する工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記構築材料がポリアミド又はポリエステルである、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記押出が、溶融フィラメント製造、又は粉末若しくはペレットの押出によるものである、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物がペレット又は粉末である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照することによって本明細書に援用される、2021年4月19日に出願された米国仮特許出願第63/176,604号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、溶融フィラメント製造(FFF)などの積層造形プロセスに用いられる支持材料に関する。特に、本発明は、ポリアミド及びポリエステルなどの構築材料のための剥離支持材料に関する。
【背景技術】
【0003】
三次元(3D)印刷プロセスとしても知られる、さまざまな積層造形プロセスを使用して、ある特定の材料を特定の位置及び/又は層に融着又は接着することによって三次元物体を形成することができる。材料をコンピュータ制御下で結合又は固化して(例えば、コンピュータ支援設計(CAD)モデルから作業して)、液体分子、ポリマーを含む押出材料、又は粉末粒子などの材料を用いて三次元物体を生成することができ、これらは、層ごとの手法及び印刷ヘッド堆積手法を含むさまざまな方法で融着及び/又は積層することができる。さまざまなタイプの積層造形プロセスには、結合剤噴射、指向性エネルギー堆積、材料押出、材料噴射、粉末床融着、シート積層、液槽光重合、及び溶融フィラメント製造が含まれる。
【0004】
溶融フィラメント製造(FFF)は、1つ以上の熱可塑性材料を含みうる連続フィラメントを使用した積層造形プロセスである。フィラメントは、移動する加熱された押出機印刷ヘッドを通じてコイルから吐出され、印刷ヘッドから3次元で堆積されて印刷された物体を形成する。印刷ヘッドは、2次元(例えば、x-y平面)内を移動して、一度に印刷される物体の1つの水平面又は層を堆積する。印刷ヘッド及び/又は印刷される物体は、第3の次元(例えば、x-y平面に対するz軸)を移動して、以前に堆積された層に接着する後続の層を開始するが、これについては特許文献1及び2にさらに記載されている。この技法はフィラメントの溶融及び押出成形を必要とすることから、構築材料(「構築ポリマー」)は熱可塑性ポリマーに限定されていた。典型的には、FFF法による印刷に最も成功している熱可塑性ポリマーは、脂肪族ポリアミド(例えば、ナイロン6,6)及びポリ乳酸(PLA)などのポリエステルである。
【0005】
支持されていない部材を有する可能性のある複雑な部品を製造するFFF法では、別個の印刷押出ノズルから押出成形される除去可能な支持材料(「支持ポリマー」)を使用する必要がある。典型的には、支持材料は、特許文献3~6に記載されているように、水中に溶解したポリマーで構成されている。特許文献2では、支持ポリマーと構築ポリマーとの間の界面層は水溶性であり、支持材料の剥離を可能にするために用いられていた。もっと最近では、ポリエーテルイミド及びポリエーテルケトンなどの特定の高温構築ポリマーを支持するための剥離支持材料(ポリエーテルスルホンポリマーブレンド及びポリフェニレン)が特許文献7及び8に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,121,329号明細書
【特許文献2】米国特許第5,503,785号明細書
【特許文献3】米国特許第6,790,403号明細書
【特許文献4】米国特許第7,754,807号明細書
【特許文献5】米国特許第8,822,590号明細書
【特許文献6】米国特許第10,100,168号明細書
【特許文献7】米国特許第10,059,053号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2020/00189181号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、上記のような先行技術の複雑さ及び問題の1つ以上を回避しつつ、一般的に用いられるポリアミド及びポリエステルを含むさまざまな構築ポリマーの支持を可能にする押出積層造形のための支持材料を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
支持を与えるのに十分な結合がありつつ、さらに下層部分に損傷を与えずに又は実質的な残留物を残さずに機械的に除去することができるポリアミド及びポリエステルのための剥離支持材料は、特定のビニル芳香族-共役ジエン共重合体とビニル-芳香族-無水マレイン酸共重合体とのブレンドによって形成することができることが見出された。限定するものではないが、共役ジエンドメインは、十分な量で存在すると、ポリアミド又はポリエステル構築材料からの所望の離型を実現し、無水マレイン酸共重合体は、製造中に構築材料を適切に支持するのに十分な量の接着を実現すると考えられる。
【0009】
本発明の第1の態様は、スチレン系マトリクス内に分散した重合共役ジエンの個別のドメインを有するエラストマー強化スチレン系ポリマーとビニル芳香族-無水マレイン酸共重合体とを含むポリマーのブレンドからなる積層造形組成物である。該積層造形組成物は、上述のFFFなどの任意の押出ベースの積層造形法、又はベース層及び後続の層上に制御可能に堆積されるノズルを通じた粉末又はペレットの加熱及び融着を包含する他の押出法において使用することができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、互いに融着されてなる第1の態様に記載の組成物の少なくとも2つの層を含む、積層造形物品である。
【0011】
本発明の第3の態様は、積層造形物体を形成する方法を含み、該方法は、
第1の態様に記載の組成物を加熱し、3D印刷押出ノズルを通して押出成形して支持押出物を形成し、同時に構築材料を加熱し、第2の3D印刷押出ノズルを通して押出成形して構築押出物を形成する工程、並びに
複数の層が制御可能に堆積及び融着されて積層造形物品を形成するように支持押出物及び構築押出物を堆積する工程であって、支持押出物が構築材料の一部を支持する、工程
を含む。
【0012】
本発明の積層造形組成物及び積層造形物品を形成する方法は、特に、ポリアミド(例えば、ナイロン6;ナイロン6,6;ナイロン4,6;ナイロン6,9;ナイロン5,10;ナイロン6,10;ナイロン11;ナイロン6,12、及びナイロン12)並びにポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリ乳酸)などの構築材料/ポリマーのための支持材料として有用である。適用可能なさらなる領域は、本明細書に提供される説明から明らかになるであろう。この概要における説明及び特定の例は、例示のみを目的とすることが意図されており、本開示の範囲を限定することは意図されていない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の技術の説明は、1つ以上の発明の主題、製造、及び使用の本質において単に例示的なものであり、本出願、又は本出願に対する優先権を主張して提出される可能性のある他の出願、又はそこから発行される特許において請求されるいずれかの特定の発明の範囲、用途、又は使用を制限することを意図したものではない。別途明示的に示されている場合を除き、この説明におけるすべての数値量は、技術の最も広い範囲を説明する際に、「約」という言葉によって修飾されているものとして理解されるべきであり、すべての幾何学的及び空間的記述子は、「実質的に」という言葉によって修飾されているものとして理解されるべきである。数値に適用される場合の「約」は、計算又は測定により値に若干の誤差が許容されることを示している(値の正確さに対する何らかの手法で;値に近似している又は合理的に近い;ほぼ)。何らかの理由で、「約」及び/又は「実質的に」によってもたらされる不正確さが、この通常の意味で当該技術分野において他の方法で理解されない場合、本明細書で用いられる「約」及び/又は「実質的に」は、少なくとも、そのようなパラメータを測定又は使用する通常の方法から生じうる変動を示す。
【0014】
組成物は、ビニル芳香族-無水マレイン酸とブレンドされた、スチレン系マトリクス内に分散した重合共役ジエンの個別のドメインを有するエラストマー強化スチレン系ポリマーで構成される。概して、ブレンドされたポリマーは互いに混和性があり、相分離することなく均一なブレンドを形成する(すなわち、実質的に単一相として機能する)。
【0015】
エラストマードメイン/粒子で強化された熱可塑性ポリマー(「強化熱可塑性ポリマー」)は、芳香族ビニル単量体及び該芳香族ビニル単量体とコモノマーとの重合に用いられる任意の溶媒に溶解した重合共役ジエン(エラストマー)の存在下で重合されたビニル芳香族単量体で構成される。該ビニル芳香族単量体は、典型的には、次式の単量体である:
Ar-C(R1)=C(R1)
式中、各R1は、存在ごとに独立して、水素若しくはアルキルであるか、又は別のR1とともに環を形成し、Arは、フェニル、ハロフェニル、アルキルフェニル、アルキルハロフェニル、ナフチル、ピリジニル、又はアントラセニルであり、ここで、任意のアルキル基は1から6個の炭素原子を含み、任意選択的に官能基で一置換又は複数置換されていてもよい。例えば、ハロ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボニル、及びカルボキシルなどである。典型的には、ビニル芳香族単量体は、20個以下の炭素と単一のビニル基とを有する。一実施形態では、Arはフェニル又はアルキルフェニルであり、典型的にはフェニルである。典型的なビニル芳香族単量体には、スチレン(それによってシンジオタクチックポリスチレンブロックが生成されうる条件を含む)、α-メチルスチレン、ビニルトルエンのすべての異性体、とりわけパラビニルトルエン、エチルスチレンのすべての異性体、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、及びそれらの混合物が含まれる。典型的には、ビニル芳香族単量体はスチレンである。ビニル芳香族単量体のさらなる例には、ここに参照することによって本明細書に組み込まれる、米国特許第4,666,987号;同第4,572,819号、及び同第4,585,825号の各明細書に記載されるものが含まれる。
【0016】
ビニル芳香族単量体は、不飽和ニトリルなどの他の付加重合性単量体と共重合することができる。不飽和ニトリルには、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フマロニトリル、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。不飽和ニトリルはアクリロニトリルとすることができる。共重合体は、不飽和ニトリルを、該共重合体の0.1質量パーセント以上、約1質量パーセント以上、又は約2質量パーセント以上の量で含むことができる。共重合体は、1つ以上の不飽和ニトリルを、共重合体の約40質量パーセント以下、約35質量パーセント以下、約30質量パーセント以下、又は約20質量パーセント以下の量で含むことができる。しかしながら、エラストマードメイン/粒子で強化された熱可塑性ポリマーは、不飽和ニトリルを含むさらなるコモノマーを無視できる量しか含まないか、又は全く含まないことが望ましい。
【0017】
スチレン系マトリクス内のエラストマードメインは、エラストマー強化スチレン系ポリマーを形成する際にドメインへと相分離する任意の重合共役ジエンでありうる。エラストマー(重合共役ジエン)は、スチレン系マトリクスポリマーと架橋するか、グラフト化されるか、又はスチレン系ポリマー内に吸蔵されているが、まだ分離されていてもよい。架橋は、共役ジエンの鎖内及び鎖間の架橋、又は重合共役ジエン(例えば、ポリブタジエン)とスチレン系マトリクスポリマーの鎖間に生じる架橋、又はそれらの組合せから生じうる。
【0018】
実例として、スチレン系マトリクス内にエラストマードメイン又は粒子を形成する重合共役アルケン(例えば、ジエン)は、スチレン系マトリクス内の分離ドメインを強化又は形成するのに適したものであればよい。概して、共役アルケン単量体は、次式のものである:
C=CR-CR=CR
式中、各Rは、存在ごとに独立して、水素、又は炭素数1から4のアルキルであり、任意の2つのR基が環を形成してもよい。望ましくは、共役アルケンは、少なくとも4個の炭素かつ約20個以下の炭素を有する共役ジエン単量体である。共役アルケン単量体は、2つ以上の共役二重結合を有することができる。例には、1,3-ブタジエン(ブタジエン)、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2-メチル-1,3-ペンタジエン、及び同様の化合物、並びにそれらの混合物が含まれる。単量体は、ブタジエン、イソプレン、又はそれらの組合せであることが望ましい。
【0019】
エラストマー強化スチレン系ポリマー中のエラストマーの量は、剥離支持材料を製造するのに有用な任意の量でありうる。実例として、エラストマー強化スチレン系ポリマーがABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンターポリマー)又はHIPS(耐衝撃性ポリスチレン)である場合、共役アルケン(例えば、ブタジエン)の量は、典型的には、ABS又はHIPSポリマー(すなわち、充填剤などの他の添加剤は含まれていない)の約1質量%、又は5質量%から約40質量%、30質量%、25質量%、20質量%、又は15質量%の範囲である。典型的には、熱可塑性ポリマー内のエラストマーの粒子サイズ/ドメインサイズは、球相当直径が約0.1マイクロメートルから約10マイクロメートルであり、これらは、既知の顕微鏡写真技法などの適切な方法によって決定することができる。
【0020】
エラストマー強化スチレン系ポリマーの例には、以下の商品名で入手可能なものなど、市販のHIPSが含まれる:STYRON(Trinseo LLC.社(米国ミシガン州)から入手可能)。
【0021】
組成物はまた、エラストマー強化スチレン系ポリマーとブレンドされたスチレン-無水マレイン酸(SMA)共重合体でも構成される。SMAは、ビニル芳香族単量体と無水マレイン酸との共重合体である。ビニル芳香族単量体は、上記のもののいずれか1つであってよく、スチレンが望ましい。このようなSMAポリマーはよく知られており、米国特許第2,286,062号;同第2,606,891号;同第2,769,804号;及び、同第3,336,267号の各明細書に記載されている。
【0022】
無水マレイン酸(MA)は、積層造形プロセス中に適切な支持を実現するために支持ポリマーへの適切な結合を促進する量で存在する。MAの量は、特定の支持ポリマー(例えば、特定のポリアミド又はポリエステル)に応じて決まる。無水マレイン酸単量体(MA)の量は、典型的には、SMAの少なくとも約1モル%、5モル%、10モル%、25モル%から約85モル%、75モル%、60モル%、又は50モル%までである。
【0023】
SMA及びエラストマー強化スチレン並びに積層されうるさらなるポリマーの分子量及びメルトフローは、FFFなどの押出成形を使用する積層造形に有用でありうる。典型的には、重量平均分子量は、約5,000又は50,000g/モルから1,000,000g/モルまでの範囲でありうる。典型的には、メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238において約0.1から120g/10分(230℃/2.16kg)でありうる。望ましくは、MFRは、約1、2、又は5から100、75、又は50g/10分までである。
【0024】
有用でありうるSMAの例には、以下の商品名で市販されているものが含まれる:XIRAN(Polyscope社(Holland)から市販される)、SMA(Cray Valley USA,LLC.社(米国ペンシルベニア州)から市販される)、及びSCRIPSET(Solenis LLC.社(米国デラウェア州)から市販される)。
【0025】
概して、組成物中に存在するエラストマー強化スチレン系ポリマーの量は、組成物中に存在するポリマー(例えば、弾性強化ポリマー、SMA、及び任意のさらなるポリマー)の約25質量%又は30質量%から40質量%又は50質量%までである。組成物のポリマーのバランスは、SMA単独、又は以下に記載されるさらなるポリマーとの組合せでありうる。さらなるポリマーが用いられる場合、SMAの量は、組成物中に存在するポリマーの約5質量%、10質量%、15質量%、20質量%から45質量%、40質量%、又は30質量%までであってよく、残りはさらなるポリマーである。
【0026】
組成物は、1つ以上の所望の特性を促進するためにさらなるポリマーから構成されてもよい。例えば、支持ポリマーがポリ乳酸などのポリエステルである場合、アクリレートとビニル芳香族単量体との共重合体(これには上記の共役ジエン又は不飽和ニトリルなどのさらなる単量体が含まれてもよい)を添加することが望ましい場合がある。アクリレート及びビニル芳香族共重合体は、ポリエステル構築材料への接着性をさらに調整するのに望ましい場合がある。アクリレート単量体は、当技術分野で知られているものなどの任意の適切なものであってよく、概して、次式のように表すことができる:
【0027】
【化1】
【0028】
式中、R’は、水素又は炭素数1から4の脂肪族基であり、R”は、炭素数1から18又は炭素数1から12の直鎖状又は環状の脂肪族基である。望ましくは、R’は水素又はメチルであり、R”は、炭素数1から4の直鎖状脂肪族基である。アクリレートとビニル芳香族ポリマーとの共重合体の例には、米国特許第2,363,044号;同第3,054,783号;及び同第3,080,348号の各明細書に記載されているものが含まれる。有用なアクリレート-ビニル芳香族共重合体の例には、MS(メタクリル酸メチル-スチレン共重合体)、MBS(メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体)、及びMABS(メタクリル酸メチル-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)として知られるものが含まれる。このようなポリマーは、次の商品名で入手することができる:TERLUX(Ineos社(ベルギー国)から入手可能)、TERLUX(BASF社(ドイツ国)から入手可能);TXポリマー、THポリマー、及びTPポリマー(デンカ株式会社(日本国)から入手可能)。
【0029】
組成物は、充填剤、可塑剤、潤滑剤、安定剤など、ポリマー及び積層造形技術で知られているような他の添加剤で構成されてもよい。充填剤が存在する場合には、概して、充填剤は、約0.05m/gから約120m/gまでの比表面積を有するが、望ましくは、0.1、0.5、1、2m/gから約50、25、20、又は10m/gまでの比表面積を有する。充填剤粒子は、個別の粒子であっても、ヒュームドシリカ及びカーボンブラックに一般的に見られるような硬い凝集体であってもよい。望ましくは、充填剤は個々の粒子である。充填剤の量は、組成物に対して広い範囲にわたって変化しうる。典型的には、充填剤の量は、組成物の約1質量%、2質量%、5質量%、10質量%から70質量%、60質量%、50質量%、40質量%、又は30質量%までである。充填剤の特定の量は、得られる組成物、フィラメント、又はそれから形成される物品の剛性、引張強度、靱性、耐熱性、色、及び透明度などの1つ以上の所望の特性を実現するために調整することもできる。
【0030】
概して、充填剤は任意の形状(例えば、板状、ブロック状、針状、ウィスカ球状、細断繊維、又はそれらの組合せ)でありうる。望ましくは、充填剤は、アスペクト比が少なくとも2から50である、針状形態を有し、ここで針状性とは、形態が針状であるか又は板状であることを意味するが、好ましくは板状である。針状とは、2つのより小さい同等の寸法(通常は高さ及び幅と呼ばれる)と、1つの大きい寸法(通常は長さ)が存在することを意味する。板状とは、2つのある程度同等の大きな寸法(通常は幅及び長さ)と、1つのより小さい寸法(通常は高さ)が存在することを意味する。より好ましくは、アスペクト比は、少なくとも3、4、又は5から25、20、又は15までである。平均アスペクト比は、粒子のランダムな代表サンプル(例えば、100から200個の粒子)の最長寸法及び最短寸法を測定する顕微鏡技法によって決定することができる。
【0031】
充填剤の粒子サイズは、処理可能性及び機械的特性に対する所望の効果が実現されないほど大きすぎても(例えば、フィラメントの最小寸法にわたるか、又は積層造形で通常遭遇する条件下で曲げるとフィラメントが破損しやすくなる)小さすぎてもならない、有用なサイズである必要がある。有用なサイズを規定する際、粒子サイズ及びサイズ分布は、メジアン径(D50)、D10、D90、及び最大サイズ制限によって与えられる。サイズは、低固体負荷量での液体中の固体の分散体を使用してレーザ光散乱法(レイリー又はミー、ミー散乱が好ましい)によって測定される体積による球相当直径である。D10は、粒子の10%がより小さいサイズを有するサイズであり、D50(中央値)は、粒子の50%がより小さいサイズを有するサイズであり、D90は、体積で粒子の90%がより小さいサイズを有するサイズである。概して、充填剤は、0.1マイクロメートルから25マイクロメートルの球相当直径中央値(D50)粒子サイズ、0.05から5マイクロメートルのD10、20から60マイクロメートルのD90を有し、実質的に、約100マイクロメートル、又はさらには50マイクロメートルを超える粒子はなく、また約0.01マイクロメートルより小さい粒子はない。望ましくは、中央値は、0.5から5又は10マイクロメートルまでであり、D10は0.2から2マイクロメートルであり、D90は、5、10、又は20から40マイクロメートルまでである。
【0032】
充填剤は、当技術分野で知られているものなど、任意の有用な充填剤でありうる。充填剤の例には、セラミック、金属、炭素(例えば、グラファイト、カーボンブラック、グラフェン)、印刷温度で溶融又は分解しないポリマー微粒子(例えば、架橋ポリマー微粒子、加硫ゴム微粒子など)、植物ベースの充填剤(例えば、木材、ナッツの殻、穀物、及びもみ殻の粉又は粒子)が含まれる。例示的な充填剤には、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、珪灰石、粘土、硫酸カルシウム、マイカ、無機ガラス(例えば、シリカ、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルカリアルミノケイ酸塩など)、酸化物(例えば、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ「石英」、及びカルシア)、炭化物(例えば、炭化ホウ素及び炭化ケイ素)、窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム)、酸窒化物の組合せ、酸炭化物、又はそれらの組合せが含まれる。ある特定の実施形態では、充填剤は、タルク、粘土鉱物、細断された無機ガラス、金属繊維又はカーボンファイバー、ムライト、マイカ、珪灰石、又はそれらの組合せなどの針状充填剤を含む。特定の実施形態では、充填剤はタルク又はカーボンファイバーで構成される。
【0033】
ポリマーを加熱及びブレンドするのに有用な任意の方法、例えばポリマーを溶融ブレンドして組成物を形成するための知られている方法を使用することができる。加熱する場合は、典型的には、剪断を適用して望ましいブレンドを実現する。例示的には、加熱及びブレンドは、当技術分野で知られているような単軸又は二軸スクリュ押出機において実施することができる。剪断量は、ブレンド内並びに他の添加剤内のポリマーの所望の分布を実現するのに有用な任意の量でありうる。押出機は、ポリマーのブレンド及び分散を促進するために、ある温度に保持することも、押出機の長さに沿って勾配を持たせることもできる。
【0034】
組成物は、溶融フィラメント製造法などのさまざまな3D印刷法に有用なさまざまな形態へと形成することができる。例えば、組成物は、物体を印刷するために溶融フィラメント製造法に供給することができる、ペレット、1つ以上のロッドへと形成することができる。このようなペレット、ロッドは押出機に供給され、そこで組成物がさらにフィラメントへと形成される。フィラメントは、さまざまな印刷ヘッドを使用してさまざまな物体を印刷するためのさまざまな溶融フィラメント製造法において使用するために、断面形状、直径、及び長さ寸法を決定することができる。フィラメントは、印刷プロセスで使用しながら形成することができ、あるいは、後で印刷プロセスにおいて使用するために事前に形成して保管することもできる。フィラメントは、保管及び分配に役立てるためにスプールに巻き付けることができる。フィラメントは、熱間押出法及び冷間押出法など、さまざまなダイを使用するさまざまな押出法を含むさまざまな方法で成形することができる。
【0035】
溶融フィラメント製造法は、アイテムを印刷するために組成物の材料押出を使用することができ、ここで、組成物の原料が押出機を通して押し出される。フィラメントは、スプール上に巻き付けられたフィラメントの形態で三次元印刷装置又はシステム内で使用することができる。三次元印刷装置又はシステムは、コールドエンド及びホットエンドを含むことができる。コールドエンドは、ギアベース又はローラベースの供給デバイスを使用してスプールからフィラメントを引き出し、フィラメントを扱い、ステッピングモータによって供給速度を制御することができる。コールドエンドはフィラメント原料をホットエンドへとさらに前進させることができる。ホットエンドは、加熱チャンバ及びノズルを含むことができ、加熱チャンバは、フィラメントを溶融して薄い液体へと変換する液化装置を含む。これにより、溶融組成物がノズルから出て、堆積される表面に接着することができる薄い粘着性のビードを形成することが可能となる。ノズルは、任意の有用な直径を有することができ、典型的には、所望の解像度に応じて、0.1又は0.2mmから3mm又は2mmの間の直径を有する。組成、印刷される物体、及び印刷プロセスの所望の解像度に応じて、さまざまなタイプのノズル及び加熱方法が用いられる。
【0036】
積層造形によって物品を形成する場合には、本発明の組成物(支持材料)は、印刷ノズルを通して押し出され、上述したような同時に押し出される構築材料(例えば、ポリアミド又はポリエステル)を支持する1つ以上の層を堆積する。積層造形物品が形成されると、支持材料は、構築材料から機械的に除去されて最終的な積層造形物品を形成することができ、これは典型的には、形成された物品が冷却した後に実施される。支持材料が残っている場合には、研磨によって、又は無水物含有共重合体を溶解することが知られているアルカリ性水溶液中などでの溶解によって除去することができる。
【0037】
溶融フィラメント製造装置又はシステムは、押出機を使用することができ、ここで、ステッピングモータ及びホットエンドと連動して、フィラメントが溶融され、そこから押出成形される。ステッピングモータは、フィラメントを掴み、フィラメントをホットエンドへと供給し、フィラメント組成物を溶融して印刷面に堆積させることができる。溶融フィラメント製造装置又はシステムは、ダイレクトドライブ押出機又はBowden押出機を使用することができる。ダイレクトドライブ押出機は、印刷ヘッド自体にステッピングモータを有することができ、フィラメントをホットエンドに直接押し込むことができる。この構成は、x軸に沿って移動するときにステッピングモータの力を伝達する印刷ヘッドを有する。Bowden押出機は、印刷ヘッドから離れたフレーム上にモータを有することができ、Bowdenチューブを採用している。モータは、フィラメントをBowdenチューブ(例えば、PTFEチューブ)を通して印刷ヘッドへと送ることができる。チューブは、フィラメントを固定モータから可動ホットエンドまで誘導し、印刷プロセス中のホットエンドの動きによってフィラメントが切れる又は伸びるのを防ぐ。
【0038】
物体を印刷する方法には、本明細書に記載される組成物を使用することが含まれる。例えば、組成物から形成されたフィラメントを提供することができ、溶融フィラメント製造プロセスにおいてフィラメントを使用して物体を印刷することができる。フィラメントを提供することは、組成物を押出成形してフィラメントを形成することを含むことができる。ある特定の実施形態では、組成物を押出成形することは、ダイレクトドライブ押出機及びBowden押出機のうちの一方を使用してフィラメントを形成することを含むことができる。
【0039】
物品は、本明細書で提供される溶融フィラメント製造プロセスによって調製することができる。このような物品は、記載した組成物から形成されたフィラメントを提供し、溶融フィラメント製造プロセスにおいてフィラメントを使用して物体を印刷して、本発明の組成物の少なくとも2つの層で構成される積層造形物品を形成することによって調製することができる。フィラメントは、加熱の有無にかかわらず、典型的には加熱しながら組成物をダイを通して押出成形することによって形成することができる。このような溶融フィラメント製造プロセスを使用した三次元印刷によって製造された物体は、機械加工、フライス加工、研磨、コーティング、塗装、メッキ、堆積などによってさらに加工することができる。
【実施例
【0040】
以下の非限定的な実施例は、本技術のさらなる態様を実証する。特に断りのない限り、すべての%は重量によるものである。
【0041】
実施例1~6
支持材料組成物は、25%のSEBS-MAH02520C、およそ約2%の無水マレイン酸含有量を有するグラフト無水マレイン酸(Graft Polymers社、スロベニア国リュブリャナ所在)、約90mg KOH/gの酸価を有する25%のスチレン-無水マレイン酸共重合体(XIBOND120、Polyscope Polymers社、オランダ国)、及び50%のHIPs(STYROSOLUTION PS 5601、Songhan Plastic Technology Co.Ltd.社、中国)を、バレル直径27mm、長さと直径との比40/1を有する二軸スクリュ押出機内で200から210℃でブレンドして作製される。この組成物は、さまざまな構築材料である、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、PETG(グリコール変性ポリエチレンテレフタレート)、ナイロン6、ナイロン12、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレンスチレンブロック共重合体熱可塑性エラストマー)、及びカーボンファイバー(35%)で強化したナイロン12と同時に印刷され、それぞれ実施例1~6である。PLAを支持材料として使用する実施例7も作製される。
【0042】
Cの形状をした構築材料の試験片が印刷され、ここで、Cの上部及び下部の水平部分の間に支持材料が印刷される。各支持材料は十分に接着し、歪みなく構築材料を支持した。実施例1~6の各々の支持材料は、6インチ(約15.24cm)のピックプローブを使用して、下層の支持部分に歪み又は損傷を与えることなく機械的に除去され、支持材料の残留物はない。実施例7の支持材料は構築材料に十分には接着せず、その結果、接着不足に起因してPLA物品が反り、所望の形状を形成することができなくなった。
【0043】
実施例8
支持材料組成物は、25%のSEBS-MAH02520C(およそ約2%の無水マレイン酸含有量を有する);25%のXIBOND120スチレン-g-ma(約90mg KOH/gの酸価を有する);STYROSOLUTION PS 5601 25%のHIPs、及び25%のMABS(POLYLAC PA-758、Chi Mei Corporation社(中国所在)、200℃、5Kgで3g/10分のMFRを有するメタクリル酸メチルアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体)を、バレル直径27mm、長さと直径との比40/1を有する二軸スクリュ押出機内で、200から210℃でブレンドして作製される。組成物は、PLA構築材料と同時に印刷される。
【0044】
構築材料の試験片は、実施例1~7について説明した方法と同じ方法で作製される。実施例8の支持材料は、6インチ(約15.24cm)のピックプローブを使用して、下層の支持部分に歪み又は損傷を与えることなく機械的に除去され、支持材料の残留物はない。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
構築材料の試験片は、実施例1~7について説明した方法と同じ方法で作製される。実施例8の支持材料は、6インチ(約15.24cm)のピックプローブを使用して、下層の支持部分に歪み又は損傷を与えることなく機械的に除去され、支持材料の残留物はない。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
スチレン系マトリクス内に分散した重合共役ジエンの個別のドメインを有するエラストマー強化スチレン系ポリマーとビニル芳香族-無水マレイン酸共重合体とのブレンドを含む組成物。
実施形態2
前記エラストマー強化スチレン系ポリマーが、スチレンと共役ジエンと任意選択的に不飽和ニトリルとの共重合体である、実施形態1に記載の組成物。
実施形態3
前記エラストマー強化スチレン系ポリマーが、スチレンとブタジエンとの共重合体である、実施形態1又は2に記載の組成物。
実施形態4
前記共役ジエンが、前記エラストマー強化スチレン系ポリマーの約5質量%から15質量%の量で存在する、実施形態1から3のいずれか一つに記載の組成物。
実施形態5
前記ビニル芳香族-無水マレイン酸共重合体が、スチレン-無水マレイン酸共重合体、無水マレイン酸がグラフトされたビニル芳香族ブロックエラストマー、又はそれらの組合せである、実施形態1から4のいずれか一つに記載の組成物。
実施形態6
前記ビニル芳香族ブロックエラストマーが、スチレン-(ブタジエン)-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-イソプレン-ブチレン-スチレン(SIBS)、スチレン-(エチレン-ブチレン)-スチレン(SEBS)、又はそれらの混合物である、実施形態5に記載の組成物。
実施形態7
前記ビニル芳香族ブロックエラストマーが前記SEBSである、実施形態6に記載の組成物。
実施形態8
前記ビニル芳香族-無水マレイン酸共重合体が、該ビニル芳香族-無水マレイン酸共重合体の約5質量%から50質量%の無水マレイン酸量を有する、実施形態1から7のいずれか一つに記載の組成物。
実施形態9
アクリレートとビニル芳香族単量体との共重合体をさらに含む、実施形態1から8のいずれか一つに記載の組成物。
実施形態10
前記アクリレート-ビニル芳香族共重合体が、共役ジエン、不飽和ニトリル、又はそれらの組合せをさらに含む、実施形態9に記載の組成物。
実施形態11
前記アクリレート-ビニル芳香族共重合体が、メタクリル酸メチル-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(MABS)の共重合体である、実施形態10に記載の組成物。
実施形態12
前記組成物がフィラメントである、実施形態1から11のいずれか一つに記載の組成物。
実施形態13
前記フィラメントが約1ミリメートルから約3ミリメートルの直径を有する、実施形態12に記載の組成物。
実施形態14
互いに融着されてなる実施形態1から13のいずれか一つに記載の組成物の少なくとも2つの層を含む積層造形物品。
実施形態15
前記物品が溶融フィラメント製造によって形成される、実施形態14に記載の積層造形物品。
実施形態16
前記組成物が支持材料である、実施形態14又は15に記載の積層造形物品。
実施形態17
前記支持材料が、ポリエステル、ポリアミド、又はそれらの組合せである構築材料を支持する、実施形態16に記載の積層造形物品。
実施形態18
前記ポリエステルが、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート、又はそれらの混合物である、実施形態17に記載の積層造形物品。
実施形態19
積層造形物体を形成する方法であって、
実施形態1から13のいずれか一つに記載の組成物を加熱し、3D印刷押出ノズルを通して押出成形して支持押出物を形成し、同時に構築材料を加熱し、第2の3D印刷押出ノズルを通して押出成形して構築押出物を形成する工程、及び
複数の層が制御可能に堆積し、融着して積層造形物品を形成するように前記支持押出物及び構築押出物を堆積する工程であって、前記支持押出物が前記構築材料の一部を支持する、工程
を含む、方法。
実施形態20
前記積層造形物品の冷却後に、前記支持押出物を前記構築材料から機械的に剥離する工程をさらに含む、実施形態19に記載の方法。
実施形態21
前記構築材料がポリアミド又はポリエステルである、実施形態19又は20に記載の方法。
実施形態22
前記押出が、溶融フィラメント製造、又は粉末若しくはペレットの押出によるものである、実施形態19から21のいずれか一つに記載の方法。
実施形態23
前記組成物がペレット又は粉末である、実施形態1から13のいずれか一つに記載の組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに融着されてなる、スチレン系マトリクス内に分散した重合共役ジエンの個別のドメインを有するエラストマー強化スチレン系ポリマーとビニル芳香族-無水マレイン酸共重合体とのブレンドを含む組成物の少なくとも2つの層を含む積層造形物品。
【請求項2】
前記物品が溶融フィラメント製造によって形成される、請求項1に記載の積層造形物品。
【請求項3】
前記組成物が支持材料である、請求項1に記載の積層造形物品。
【請求項4】
前記支持材料が、ポリエステル、ポリアミド、又はそれらの組合せである構築材料を支持する、請求項3に記載の積層造形物品。
【請求項5】
前記ポリエステルが、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート、又はそれらの混合物である、請求項4に記載の積層造形物品。
【請求項6】
積層造形物体を形成する方法であって、
スチレン系マトリクス内に分散した重合共役ジエンの個別のドメインを有するエラストマー強化スチレン系ポリマーとビニル芳香族-無水マレイン酸共重合体とのブレンドを含む組成物を加熱し、3D印刷押出ノズルを通して押出成形して支持押出物を形成し、同時に構築材料を加熱し、第2の3D印刷押出ノズルを通して押出成形して構築押出物を形成する工程、及び
複数の層が制御可能に堆積し、融着して積層造形物品を形成するように前記支持押出物及び構築押出物を堆積する工程であって、前記支持押出物が前記構築材料の一部を支持する、工程
を含む、方法。
【請求項7】
前記積層造形物品の冷却後に、前記支持押出物を前記構築材料から機械的に剥離する工程をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記構築材料がポリアミド又はポリエステルである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記押出が、溶融フィラメント製造、又は粉末若しくはペレットの押出によるものである、請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記共役ジエンが、前記エラストマー強化スチレン系ポリマーの約5質量%から15質量%の量で存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層造形物品。
【国際調査報告】