(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】流体チャネル内の流体をシフトさせる装置及び方法、この装置の使用、及び触覚ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
F15B 15/10 20060101AFI20240416BHJP
G09B 21/00 20060101ALI20240416BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
F15B15/10
G09B21/00 B
G06F3/01 560
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560392
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2022057858
(87)【国際公開番号】W WO2022207472
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519251243
【氏名又は名称】グラスソマー ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】523371159
【氏名又は名称】アルベルト-ルートヴィヒス-ユニベルシテート フライブルク
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コッツ-ヘルマー フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ラップ バスティアン
【テーマコード(参考)】
3H081
5E555
【Fターム(参考)】
3H081AA18
3H081BB05
3H081CC24
3H081CC26
3H081DD01
3H081DD21
3H081HH10
5E555AA08
5E555BA02
5E555BB02
5E555BC30
5E555DA24
5E555FA01
(57)【要約】
本発明は、流体チャネル内の流体をシフトさせる装置及び方法に関する。装置は、少なくとも1つのチャンバー15を備える流体チャネル20であって、各チャンバー15は、電解質を含む流体12によって充填され、少なくとも2つの入口17を有し、各入口17は、少なくとも1つのチャンバー15の断面よりも小さい断面を有する、流体チャネル20と、流体チャネル20の流体12内に封入され、少なくとも1つのチャンバー15をシールするとともに、制御信号30に応答して、流体チャネル20内の流体12のシフトを制御するシール制御要素13と、少なくとも1対の電極8であって、電極8が少なくとも1つのチャンバー15と流体接触し、制御信号30に応答して、シール制御要素13に作用する電気毛細管力をもたらすように配置される、少なくとも1対の電極8とを備え、シール制御要素13は、流体12の表面張力よりも高い表面張力を有し、制御信号30が存在しない場合、シール制御要素13の少なくとも一部が、固有の毛細管力に起因して、少なくとも1つのチャンバー15のうちの1つに捕捉され、それにより、少なくとも1つのチャンバー15のうちの上記1つをシールするようになっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体シフト装置(100)であって、
少なくとも1つのチャンバー(15)を備える流体チャネル(20)であって、各チャンバー(15)は、電解質を含む流体(12)によって充填され、少なくとも2つの入口(17)を有し、各入口(17)は、前記少なくとも1つのチャンバー(15)の断面よりも小さい断面を有する、流体チャネル(20)と、
前記流体チャネル(20)の前記流体(12)内に封入され、前記少なくとも1つのチャンバー(15)をシールするとともに、制御信号(30)に応答して、前記流体チャネル(20)内の前記流体(12)のシフトを制御するシール制御要素(13)と、
少なくとも1対の電極(8)であって、該電極(8)が前記少なくとも1つのチャンバー(15)と流体接触し、前記制御信号(30)に応答して、前記シール制御要素(13)に作用する電気毛細管力をもたらすように配置される、少なくとも1対の電極(8)と、
を備え、
前記シール制御要素(13)は、前記流体(12)の表面張力よりも高い表面張力を有し、前記制御信号(30)が存在しない場合、前記シール制御要素(13)の少なくとも一部が、固有の毛細管力に起因して、前記少なくとも1つのチャンバー(15)のうちの1つに捕捉され、それにより、前記少なくとも1つのチャンバー(15)のうちの前記1つをシールするようになっている、流体シフト装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(100)であって、前記シール制御要素(13)は、前記流体(12)と非混和である流体セグメントである、装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置(100)であって、該装置(100)は、前記制御信号(30)に応答して、第1の安定状態から第2の安定状態に切り替わるように構成され、前記シール制御要素(13)及び前記制御信号(30)は、前記シール制御要素(13)の前記表面張力が、前記制御信号(30)が存在する場合に低減され、前記制御信号(30)が存在しない場合に以前の値まで再び増大するように構成される、装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の装置(100)であって、前記制御信号(30)に応答して、
前記シール制御要素(13)は、前記流体チャネル(20)の長手方向軸に沿って第1のチャンバーから第2のチャンバーに変位し、又は、
前記シール制御要素(13)は、前記流体チャネル(20)の前記長手方向軸に対して直交して変位することにより、前記流体(12)が前記流体チャネル(20)の前記長手方向軸に沿って前記少なくとも1つのチャンバー(15)に入る及び/又は通ることを可能にする、装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の装置(100)であって、前記流体チャネル(20)内に流体を圧送するポンプ(P)を更に備える、装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の装置(100)であって、
前記流体チャネル(20)の端部は、弾性膜(6)によってシールされ、
特に、前記弾性膜(6)は、作動要素であり、前記流体チャネル(20)は、アクチュエータチャネルであり、該装置(100)は、双安定アクチュエータである、装置。
【請求項7】
前記流体チャネル(20)内で前記流体(12)をシフトさせることによってタクセルが規定される、触覚ディスプレイ(200)のための請求項1~6のいずれか1項に記載の装置(100)の使用。
【請求項8】
触覚ディスプレイ(200)であって、請求項1~6のいずれか1項に記載の複数の装置(100)を備え、前記装置(100)は、行又は行列にして配置され、前記複数の装置(100)のそれぞれは、前記複数の装置(100)のそれぞれに流体(12)を提供するシフトチャネル(10)と流体接触する、触覚ディスプレイ。
【請求項9】
請求項8に記載の触覚ディスプレイ(200)であって、前記複数の装置(100)のそれぞれの前記電極(8)に制御信号(30)を印加する制御ユニットを更に備える、触覚ディスプレイ。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の触覚ディスプレイ(200)であって、前記流体(12)を前記複数の装置(100)の各流体チャネル(20)内に圧送するポンプ(P)を更に備え、前記ポンプ(P)は、好ましくは単一のシリンジポンプである、触覚ディスプレイ。
【請求項11】
制御信号(30)によって流体チャネル(20)内の流体(12)をシフトさせる方法であって、前記流体チャネル(20)は、少なくとも1つのチャンバー(15)を備え、各チャンバー(15)は、少なくとも2つの入口(17)を有し、電解質を含む流体(12)によって充填され、各入口(17)は、前記少なくとも1つのチャンバー(15)の断面よりも小さい断面を有し、前記制御信号(30)が存在しない場合、前記流体チャネル(20)の前記流体(12)内に封入されたシール制御要素(13)の少なくとも一部が、固有の毛細管力に起因して、前記少なくとも1つのチャンバー(15)のうちの1つに捕捉され、それにより、前記少なくとも1つのチャンバー(15)のうちの前記1つをシールし、該方法は、
前記制御信号(30)を、前記少なくとも1つのチャンバー(15)と流体接触する1対の電極(8)に対して又は前記1対の電極(8)間に印加し、それにより、前記シール制御要素(13)に作用する電気毛細管力を引き起こすことを含む、方法。
【請求項12】
前記印加される制御信号(30)は、前記制御信号(30)によって引き起こされた前記電気毛細管力が、前記固有の毛細管力に反作用し、前記固有の毛細管力よりも大きくなり、それにより、前記シール制御要素(13)が、前記制御信号(30)に応答して、前記少なくとも1つのチャンバー(15)のうちの前記1つから少なくとも部分的に移動し、それにより、前記流体チャネル(20)内の前記流体(12)のシフトを可能にするように構成され、及び/又は、
前記印加される制御信号(30)は、前記シール制御要素(13)の表面張力を低減するように構成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記流体(12)の前記シフトは、自己推進式に、及び/又は流体(12)を前記流体チャネル(20)内に及び/又は前記流体チャネル(20)外に圧送することによって行われる、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記流体チャネル(20)内の前記流体(12)をシフトさせることによってタクセルを規定することを更に含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体チャネル内の流体をシフトさせる装置及び方法に関する。特に、本発明は、マイクロアクチュエータに関し、より具体的には、触覚ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロアクチュエータは、直線運動又は角運動を生成する小フットプリントの高集積装置を必要とする多くの用途において重要な要素である。拡縮性の高い集積アクチュエータアレイを必要とする1つの用途は、高密度集積に好適なマイクロ流体用途である。これらの装置は、例えば、重要な試薬の小規模かつ高密度のコンビナトリアル合成及び薬物スクリーニングに必要な分析及び合成システムにおける重要な構成要素である。これらの装置はまた、例えば、視覚情報が十分でない及び/又は実現可能でないために触覚情報の提供を必要とする用途における支援システムのための触覚装置において、重要な構成要素である。一例として、触覚ディスプレイは、運転者を交通状況に目を配らせたまま動的触覚情報によって誘導することができる、自動車用途におけるコンソールのために想定されている。触覚ディスプレイの別の重要な応用分野は、視覚障害者用のハプティックディスプレイである。アリストテレスが人間の五感を初めて分類して以来、視覚は、最も重要なものとして傑出している。非常に多くの方法で視覚化されている世界では、視覚情報を認識する能力は最重要である。「百聞は一見に如かず(A picture is worth a thousand words:一枚の絵は千の言葉に値する)」という諺は、膨大な情報密度が視覚情報にエンコードされることを簡潔に示している。道路標識から地図、統計グラフ、科学的プレゼンテーション、更には単純な、例えばエレベーター内における標示、スマートフォン又はデスクトップPC用のソフトウェア及びアプリにおけるグラフィカルユーザーインターフェースに至るまで、視覚なくして現代の情報技術とやり取りすることがどうして可能であろうか。世界保健機関(WHO)によると、これは、世界中の2億8500万人を超える人々にとっての現実である。視覚障害は、発展途上国においても先進国においてもよく見られる。情報技術の時代において、視覚情報を認識できないことは、インクルージョンに対する主な阻害要因となる。視覚障害者は、視覚フィードバックの不足を補うために、2つの他の感覚、すなわち、聴覚及び触覚に頼っている。聴覚補助の例は、例えば電子メール又はテキストファイルからのテキスト情報を可聴情報に変換する、いわゆるスクリーンリーダー又はテキスト読上げ装置である。代替的に、テキストを1行だけ出力する、いわゆる点字ライン(Braille lines)を使用することもできる。テキストは、6つの触覚ピクセル(タクセル(taxels)と呼ぶ)のアレイを使用して1つの文字をエンコードする点字にエンコードされる。1つの点字ラインは、最大80文字を出力し、約10000ユーロのコストがかかる。これは、1文字あたり125ユーロ、及びアクチュエータあたり20ユーロという金額に相当する。ただし、これらのシステムは、グラフィックコンテンツを出力することはできない。チャート、図表、又は地図は、スクリーンリーダーでも点字ラインでも処理することができない。したがって、晴眼者がデスクトップPCを操作する際に当然に役立つウィンドウ、メニュー、アイコン、ピクトグラム、又はフライアウトバーは、視覚障害のあるユーザーには依然としてアクセス不能である。グラフィカルユーザーインターフェースを用いず、出力として1行のテキストのみに依拠して現在のコンピュータープログラム、最先端のアプリ又はウェブページを操作することを想像されたい。これは、1970年代初頭のコンソール型コンピューターの水準であり、晴眼者のユーザーにとっては遠い昔の時代である。
【0003】
グラフィックコンテンツを出力するシステムはどうしても必要となるが、いわゆる触覚ディスプレイは市販されていない。触覚ディスプレイは、デジタルピクセルグラフィックを「触知可能」なタクセルグラフィックに変換することから、晴眼者用のグラフィックディスプレイと同等のものである。晴眼者ユーザー用のディスプレイ技術は、ここ数十年で目覚ましく向上し、4Kを超える解像度のスクリーンがモバイルデバイス上でも利用可能な水準にまで進化した。触覚ディスプレイ技術がそれと並行して進化してこなかったのは何故か。その理由は単純である。事実上、個々にアドレス指定可能な数百万個の発光器(LED)のアレイである大規模なディスプレイを作製することは、制御電子機構の観点から簡単である。一方、事実上、個々にアドレス指定可能な数千個のアクチュエータによるアクチュエータアレイである触覚ディスプレイを作製することは、好適な特性を有するアクチュエータが目下のところ存在しないため、はるかに困難である。国際基準に準拠するためには、アクチュエータ間の距離は、1.4mm(触覚グラフィック読取りに必要な解像度である18dpi)とすべきであり、少なくとも500μmのタクセル高さ(触覚読取りに必要な「コントラスト」)を可能にするとともに、約100mNの力(人間の指によって加えられる力)に耐えなければならない。
【0004】
本発明において、欧州有数の視覚障害者用ツール開発機構であるカールスルーエ工科大学の視覚障害者研究センター(独語:「Studienzentrum fuer Sehgeschaedigte(SZS)」)と協力して、70人の視覚障害者ユーザー間のユーザー研究を行った。この研究の結果によると、触覚ディスプレイは、持ち運び可能とすべきであるため、アクチュエータは、オン状態からオフ状態に、またその逆に切り替えるためにのみ電力を必要とする双安定のものでなければならない。許容可能なリフレッシュレート、すなわち、ページ全体が「触覚的に見える」までに必要な時間は、10秒未満であるべきである。ディスプレイのサイズは、30000(150×200)個のアクチュエータに対応するフルグラフィック解像度のDIN-A4サイズとすべきである。このディスプレイは、1000ユーロ未満のコストとすべきであり、これを換算すると、アクチュエータあたり僅か3ユーロセントのコストである。現代であれば好適なアクチュエータが利用可能であるはずだと考える人もいるであろう。しかしながら、現行の技術水準のアクチュエータは、要件のリストを満たしていない。要求される間隔が僅か1.4mmであることは、例えば、電気モーター又はステッパーモーターでは十分に小型化することができないため、ほとんどの巨視的なアクチュエータにとって問題となる。加えて、大規模並列化に最適でないアクチュエータ構想を使用すると、通常、アクチュエータあたりのコストはあまりにも高くなりすぎる。例として、アクチュエータあたり約2ユーロのコストがかかる1990年代初頭のピンプリンターヘッドの機械アクチュエータが挙げられる。点字ラインに使用される標準的なアクチュエータは、複雑な駆動電子機構を必要とする双安定でないピエゾアクチュエータであり、最も重要なことには、非常に高価でもある。従来の点字ラインでは、アクチュエータあたり約20ユーロのコストがかかる。興味深いことに、例えば、metec AG社によるこれらのアクチュエータを使用する市販のシステムが存在する。例えば、アクチュエータあたりのコストは、4ユーロであり得るが、タクセルの数に比例して金額が変化することに起因して、これらのディスプレイは数万ユーロの範囲の高額となる。これらのシステムは、エンドユーザーにとって手頃でないことは明白であり、したがって、実用上の妥当性はほとんどない。また、これらのシステムは、健康保険によってカバーされない。このため、新規の触覚ディスプレイシステムに向けた取り組みには行き詰まりが生じている。システムの費用がまかなえないため、視覚障害者ユーザーは、これらのシステムを購入することができず、その結果、そのようなシステムを開発する産業上の原動力がほとんどない。アクチュエータあたりのコストが市販のシステムで最も低いことから、metec AG社による「Hyperflat」システムが、触覚グラフィックディスプレイの事実上のゴールドスタンダードである。このシステムは、76×48個のピクセルを有するディスプレイに対応する3645個のタクセルしかサポートしない。そのようなディスプレイは、極端に簡略化されたグラフィックを表示することにしか好適でない。比較として、1989年からの初代の任天堂ゲームボーイは、160×144個のピクセルを有するディスプレイを有していた。ほぼ30年も前のゲームボーイでも、現在の触覚ディスプレイのピクセル数の6倍のピクセルを有する。
【0005】
従来の巨視的なアクチュエータを何万個も直線的に並べることによって、30000個のタクセルを有する触覚ディスプレイのアクチュエータアレイを構築することは不可能である。唯一の可能性は、マイクロアクチュエータを使用して高密度のアクチュエータアレイを得ることである。そのようなアレイに好適なアクチュエータが満たさなければならない前提条件は、例えば、DIN 32976:2007-08に与えられており、本発明者他によって広範なユーザー研究において更に改良された。
-タクセル間隔は、触覚グラフィック読取りに必要とされる解像度である1.4mm(18dpi)とする。
-グラフィック触覚ディスプレイのサイズは、DIN-A4とする。18dpi解像度において、これは、大体30000(150×200)個のアクチュエータと同等である。
-アクチュエータは、少なくとも0.5mmというタクセル高さ、すなわち、アクチュエータストロークを可能にしなければならない。
-アクチュエータは、少なくとも100mNの保持力に耐えなければならない。
-アクチュエータは、双安定とする。すなわち、オン状態及びオフ状態をラッチ可能でなければならず、エネルギーは、状態の変化中にのみ消費されるものとする。切替えに必要なエネルギー消費は、ディスプレイがバッテリによって動作することが可能であり、したがって、モバイル触覚ディスプレイを構築することが可能であるように、少なくなければならない。
-許容可能なリフレッシュレートは、10秒を下回るものとする。
-理想的には、アクチュエータは、異なるアクチュエータストロークをサポートするものとする。異なる高さのタクセルを使用することにより、「グレースケールカラー」のエンコードを可能にする。
-ディスプレイの総コストは、1000ユーロよりも少ないものとし、アクチュエータあたりのコストは3ユーロセントという結果となる。
【0006】
例えば、特許文献1は、流体ラッチ機構と、高密度集積に好適でないかなり複雑な論理ユニットとを備える点字装置を記載している。特許文献2は、磁界を印加することによって引き起こされる粘度変化を利用する磁気粘性点字点を記載している。この構想は、拡縮性が悪く、高強度の磁界を発生させるのに、通常は嵩高な外部構成要素を必要とする。特許文献3は、触覚ディスプレイに好適な熱空気圧アクチュエータを記載しているが、その保持力はかなり小さい。これは、熱空気圧アクチュエータに共通の問題に悩まされる。特許文献4及び特許文献5は、点字ディスプレイの構築に使用することができる相変化に基づく構想を記載しているが、局所的な相変化を引き起こすことが必要であるため、大量のエネルギーを必要とする。さらに、基本的な作動構想が、相変化アクチュエータに関連して特許文献6に記載されている。この構想は機能するが、相変化アクチュエータは非常に遅く、非常にエネルギーを消費する。さらに、特許文献7は、複数の流体要素が設けられる触覚装置を記載している。流体要素は、導電性流体及び電気絶縁性流体をそれぞれ収容する毛細管を含み、伝導性流体及び絶縁性流体は、本質的に非混和であり、互いに重なって配置される。電源によって、電気毛細管圧力の結果として流体レベルを変化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0158367号
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0299905号
【特許文献3】国際公開第2003/081052号
【特許文献4】米国特許出願公開第2014/0034141号
【特許文献5】米国特許第9689408号
【特許文献6】国際公開第2013/139418号
【特許文献7】国際公開第2004/001943号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ユーザーの必要性によりよく対処する触覚ディスプレイの実現を可能にする構想(装置及び方法)を提供することである。特に、本発明の課題は、触覚ディスプレイを提供することである。これらの課題は、独立請求項の主題によって解決される。好ましい実施の形態は、従属請求項によって定義される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様によれば、流体シフト装置、すなわち、流体チャネル内の流体をシフトさせる装置が提供される。本装置は、
少なくとも1つのチャンバーを備える流体チャネルであって、各チャンバーは、電解質を含む流体によって充填され、少なくとも2つの入口を有し、各入口は、少なくとも1つのチャンバーの断面よりも小さい断面を有する、流体チャネルと、
流体チャネルの流体内に封入され、少なくとも1つのチャンバーをシールするとともに、制御信号に応答して、流体チャネル内の流体のシフトを制御するシール制御要素と、
少なくとも1対の電極であって、電極が少なくとも1つのチャンバーと流体接触し、制御信号に応答して、シール制御要素に作用する電気毛細管力をもたらすように配置される、少なくとも1対の電極と、
を備え、
シール制御要素は、流体の表面張力よりも高い表面張力を有し、制御信号が存在しない場合、シール制御要素の少なくとも一部(及び/又は部分)が、固有の毛細管力に起因して、少なくとも1つのチャンバーのうちの1つに捕捉され、それにより、少なくとも1つのチャンバーのうちの上記1つをシールするようになっている。
【0010】
流体シフト装置は、流体チャネルを開閉する、特に、流体チャネルのゲート(ここではチャンバーの形態)を開閉する装置であることが好ましい。特に、流体シフト装置は、アクチュエータ若しくはマイクロアクチュエータのために又はアクチュエータ若しくはマイクロアクチュエータとして使用するのに好適な装置である。特に、流体シフト装置は、(集積)アクチュエータ又は(集積)マイクロアクチュエータである。アクチュエータ又はマイクロアクチュエータは、大規模並列化に好適であることが有利である。
【0011】
流体チャネルの流体は、液体であることが好ましい。したがって、この場合、装置は、液体シフト装置と呼ばれ得る。例えば、「ガリンスタン」を流体又は液体として使用することができる。流体は、電解質、すなわち、極性溶媒(水等)に溶解されると導電性溶液を生成する物質を含む。本発明において、「電解質」という用語は、特に、導電性溶液として理解される。したがって、流体は、そのような導電性溶液、したがって電解質であり得る。
【0012】
装置は、1つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ等)のチャンバーを備える。各チャンバーは、少なくとも2つの入口を有する。換言すれば、各チャンバーは、少なくとも2つの入口に(直接)接続される。複数のチャンバーの場合、チャンバー及び入口は、2つのチャンバーが1つ(同一)の入口を有し、すなわち、2つのチャンバーが1つ(同一)の入口によって接続されるように配置することができる。換言すれば、1つ(同一)の入口は、2つのチャンバーに関連付けることができる。少なくとも1つのチャンバー及び/又は入口は、円筒形状を有することができる。
【0013】
シール制御要素は、シール機能及び制御機能を有し、すなわち、シール制御要素は、シール要素でも制御要素でもある。シール制御要素は、少なくとも1つのチャンバーを(耐圧及び/又は流体密に)シールするのに好適である。特に、シール制御要素又はシール制御要素の少なくとも一部が、少なくとも1つのチャンバーのうちの1つに位置する及び/又は捕捉される場合、シール制御要素は、シール制御要素(又はシール制御要素の少なくとも一部)が位置する及び/又は捕捉される上記チャンバーをシールする。換言すれば、シール制御要素は、シール制御要素が位置する及び/又は捕捉されるチャンバーを通る流体の流れを防止するのに好適である。さらに、シール制御要素は、制御信号に応答して、流体チャネル内の流体のシフト(変位)を制御するのに好適である。換言すれば、シール制御要素は、少なくとも1つのチャンバー及び/又は少なくとも2つの入口内の又はそれらを通る流体の流れを制御するのに好適である。
【0014】
制御信号は、特に電気信号、すなわち、電位又は電圧である。特に、制御信号は、少なくとも1つのシール制御要素に作用する電気毛細管力を引き起こす外部トリガーである。装置は、制御信号を生成し、少なくとも1対の電極に印加する制御ユニット(例えば、プロセッサによって制御される1つ以上の電圧源)を更に備えることができる。
【0015】
少なくとも1対の電極は、電極が少なくとも1つのチャンバーと流体接触するように流体チャネル内に配置される。特に、電極は、電解質と接触し、したがって、シール制御要素と流体接触する。特に、少なくとも1対の電極は、流体チャネル内に配置される。電極は、制御信号に応答して、シール制御要素に作用する電気毛細管力及び/又は電気毛細管圧力を引き起こすように構成される。
【0016】
さらに、シール制御要素は、流体の表面張力(及び/又は表面エネルギー)よりも(はるかに)高い表面張力(及び/又は表面エネルギー)を有し、制御信号が存在しない場合、シール制御要素の少なくとも一部は、固有の毛細管力(及び/又は固有の毛細管圧力)に起因して、少なくとも1つのチャンバーのうちの1つに捕捉されるようになっている。換言すれば、シール制御要素は、流体の表面張力(及び/又は表面エネルギー)よりも(はるかに)高い表面張力(及び/又は表面エネルギー)を有し、制御信号が存在しない場合、シール制御要素は、固有の毛細管力に起因して、少なくとも1つのチャンバーのうちの(少なくとも)1つによって引き寄せられるようになっている。本発明において、「固有の毛細管力」(又は「固有の毛細管圧力」)とは、毛細管効果に起因して内在的に(すなわち、制御信号等の外部の影響又はトリガーなしに)生じる力(又は圧力)として理解される。
【0017】
装置は、少なくとも1つのシール制御要素を備えることができ、すなわち、装置は、複数のシール制御要素(例えば、2つ、3つ、4つ等のシール制御要素)を備えることができる。全てのシール制御要素は、同様又は同じ特性を有することが好ましい。特に、各シール制御要素は、流体の表面張力(及び/又は表面エネルギー)よりも高い表面張力(及び/又は表面エネルギー)を有し、制御信号が存在しない場合、シール制御要素は、少なくとも1つのチャンバーのうちの1つに捕捉され、それにより、少なくとも1つのチャンバーのうちの上記1つをシールするようになっている。
【0018】
装置の安定状態において、シール制御要素は、少なくとも1つのチャンバーのうちの1つの内部に位置し、少なくとも2つの入口の(小)寸法及びシール制御要素の(高)表面張力の結果として生じる固有の(正の)毛細管力及び/又は圧力に起因して、少なくとも1つのチャンバーのうちの上記1つから移動する(すなわち、少なくとも1つのチャンバーのうちの上記1つの入口内に及び/又は上記1つの入口を通って移動する)ことが防止されることが好ましい。そのような安定状態において、シール制御要素は、チャンバーをシールし、すなわち、シール制御要素が位置する及び/又は捕捉されるチャンバーを通る流体の流れを阻止する。
【0019】
特に、本発明は、マイクロ流体力学に固有の効果である毛細管現象に基づく。毛細管現象は、液体が物質を濡らす能力(又は濡らさない能力)を規定する表面張力の結果である。毛細管力は、微視的なシステムでは通常無視できるが、(例えば、チャネルの)寸法が小さくなると顕著になる。液体が物質を濡らすと、すなわち、90度よりも小さい(静的)接触角を形成すると、液体は、負の毛細管圧力の結果として外的に印加される力なしに、この物質から作製された微視的なチャネルに引き込まれる。この毛細管効果は、毛細管マイクロ流体力学の基礎をなす。毛細管現象がこれほど強力になるのは、システムが小型化される場合に毛細管現象が非常に良好に拡張されるためである。ほとんどの作動原理では、力が長さスケールのより高い乗数で増減するため、システムを小型化すると力が著しく弱くなる。例えば、空気圧及び液圧力は2乗で増減し、磁力は3乗~4乗で増減する。表面張力は、専ら線形に増減するが、毛細管力は、唯一の例外として、長さが縮小すると増大する。このため、毛細管現象は、小型化に非常に好適である。
【0020】
本発明は、これまで探求されてこなかった方法で毛細管現象を利用する。概して、毛細管マイクロ流体力学は、負の毛細管圧力、すなわち、マイクロチャネルが液体を引き込む能力を利用する。しかしながら、本発明は、逆の効果、すなわち、液体がマイクロチャネルに浸入することを防止する正の毛細管力及び/又は圧力を使用する。
【0021】
各入口は、少なくとも1つのチャンバーの断面よりも小さい断面を有する。特に、少なくとも1つのチャンバーは、毛細管効果が無視できるような寸法(例えば、直径)を有し、少なくとも2つの入口は、毛細管効果が顕著である(すなわち、無視できない)ような寸法(例えば、直径)を有し得る。したがって、各入口(又は少なくとも2つの入口)は、毛細管バリアをなすことができる。換言すれば、少なくとも1つのチャンバーとは対照的に、各入口(又は少なくとも2つの入口)は、毛細管効果が無視できず、したがって、各入口(又は少なくとも2つの入口)が毛細管バリアとして作用するような小さな断面を有し得る。
【0022】
特に、各入口は、少なくとも1つのチャンバーの断面よりも小さい断面を有し、シール制御要素は、流体の表面張力よりも高い表面張力を有し、制御信号が存在しない場合、シール制御要素の少なくとも一部及び/又は部分が、固有の毛細管力に起因して少なくとも1つのチャンバーのうちの1つに捕捉され、それにより、少なくとも1つのチャンバーのうちの上記1つをシールするようになっている。換言すれば、各入口は、少なくとも1つのチャンバーの断面よりも小さい断面を有し、シール制御要素は、流体の表面張力よりも高い表面張力を有し、制御信号が存在しない場合、シール制御要素は、固有の毛細管力に起因して、少なくとも1つのチャンバーのうちの(少なくとも)1つによって引き寄せられるようになっている。
【0023】
特に、各入口は、少なくとも1つのチャンバーの断面よりも小さい断面を有し、シール制御要素は、流体の表面張力よりも高い表面張力を有し、
制御信号が存在しない場合(シール制御要素又はシール制御要素の少なくとも一部が少なくとも1つのチャンバーのうちの1つに捕捉される場合)、少なくとも1つのシール制御要素に作用する固有の(正の)毛細管力及び/又は圧力により、シール制御要素が、少なくとも1つのチャンバーのうちの上記1つから移動することを防止し、及び/又は、
制御信号が、少なくとも1つのシール制御要素に作用する電気毛細管力(及び/又は圧力)を引き起こし、それにより、シール制御要素が、少なくとも1つのチャンバーのうちの上記1つから少なくとも部分的に移動することを可能にするように構成される。特に、電気毛細管力及び/又は圧力は、固有の(正の)毛細管力及び/又は圧力に反作用する。
【0024】
更なる好ましい実施の形態において、シール制御要素は、流体と非混和である流体セグメントである。換言すれば、シール制御要素は、流体チャネルの流体(キャリア流体又はキャリア液体とも称する)のセグメントである。シール制御要素は、流体(キャリア液体)に挿入される非混和性液体のプラグとすることができる。より具体的には、シール制御要素は、キャリア液体と非混和である高い表面張力の液体を含む又はそのような液体から作製される。例えば、シール制御要素は、液体金属を含む又は液体金属から作製することができる。代替的に又は加えて、シール制御要素は、共晶塩溶液及び/又はイオンゲルを含む又は共晶塩溶液及び/又はイオンゲルから作製することができる。
【0025】
更なる好ましい実施の形態において、装置は、制御信号に応答して、第1の安定状態から第2の安定状態に切り替わるように構成され、シール制御要素及び制御信号は、シール制御要素の表面張力(及び/又は表面エネルギー)が、制御信号が存在する場合(すなわち、制御信号がオンに切り替えられた場合)に低減し、制御信号が存在しない場合(すなわち、制御信号がオフに切り替えられた場合)に以前の値まで再び増大するように構成される。したがって、装置は双安定である。すなわち、制御信号を印加し、制御信号を除去した後、装置は再び安定状態になる。特に、装置は、少なくとも1対の電極に対して又は少なくとも1対の電極間に電位(又は電圧)が印加されるのに応答して、第1の安定状態から第2の安定状態に切り替わるように構成される。特に、第1の安定状態から第2の安定状態への切替えは、流体チャネル内のシール制御要素の変位に起因して行われる。
【0026】
制御信号に応答して、シール制御要素は、流体チャネルの長手方向軸に沿って第1のチャンバーから第2のチャンバーに変位することが好ましい。流体チャネルの長手方向軸は、作動方向に対応する。第1のチャンバーから第2のチャンバーへのシール制御要素の変位は、特に、第1のチャンバーと第2のチャンバーとを接続する入口を通って行われる。代替的に、シール制御要素は、流体チャネルの長手方向軸(及び/又は作動方向)に対して直交して変位することにより、流体が流体チャネルの長手方向軸に沿って(すなわち、作動方向において)少なくとも1つのチャンバーに入る及び/又は通ることを可能にする。特に、流体チャネルの長手方向軸(及び/又は作動方向)に対して直交するシール制御要素の変位により、少なくとも1つのチャンバーを通る経路が開放される。
【0027】
更なる好ましい実施の形態において、装置は、流体を流体チャネル内に(及び好ましくは流体チャネル外に)圧送するポンプ(特に単一のシリンジポンプ)を更に備える。ポンプは、単一のシリンジポンプであることが好ましい。特に、流体チャネルは、アクチュエータチャネルであり、流体は、供給チャネル(主チャネル又はシフトチャネルとも称する)とアクチュエータチャネルとの間で圧送される。
【0028】
更なる好ましい実施の形態において、流体チャネルの端部(及び/又は装置の端部)は、可逆的に変形可能な(すなわち、弾性)膜によってシールされる。したがって、弾性膜は、装置の端部及び/又は流体チャネルの端部に配置される。弾性膜は、流体チャネル内の流体をシフトさせることによって変形することができる。弾性膜は作動要素であり、流体チャネルはアクチュエータチャネルであり、装置は双安定アクチュエータであることが好ましい。特に、装置の弾性膜は、タクセル(すなわち、触覚ピクセル)を規定及び/又は設定するように機能する。したがって、アクチュエータは、触覚アクチュエータと呼ばれ得る。
【0029】
本発明の更なる態様は、触覚ディスプレイのための本発明に係る装置の使用に関する。タクセルは、流体チャネル内の流体をシフトさせることによって規定される。特に、弾性膜等の作動要素は、流体チャネル内の流体をシフトさせることによって変形し、それにより、タクセルを規定する。特に、流体チャネル内の流体を作動要素の方向にシフトさせることにより、作動要素は変形し、個別の高さを有する隆起を形成する。さらに、流体チャネル内の流体を反対方向に、すなわち、作動要素から離れるようにシフトさせることにより、作動要素の復元力に起因して、作動要素の変形が回復する(すなわち、隆起が解消される)。したがって、換言すれば、タクセルの規定の値又は状態(例えば、隆起の有無)は、流体チャネル内の流体をシフトさせることによってもたらすことができる。隆起の有無、したがって、タクセルの値は、装置の作動要素に触れることによって識別することができる。さらに、本発明に係る装置を複数使用することにより、複数のタクセルを提供することができる。それにより、例えば、複数の触覚による文字及び/又は記号を表すことが可能である。
【0030】
本発明の更なる態様によれば、触覚ディスプレイが提供される。触覚ディスプレイは、
本発明に係る複数の流体シフト装置を備え、装置は、行又は行列(複数の行及び列を含む行列)にして配置され、複数の装置のそれぞれは、複数の装置のそれぞれに流体を提供する(共通の)シフトチャネルに接続される。
【0031】
特に、共通のシフトチャネルは、複数の装置の各流体チャネルに流体を提供する。
【0032】
好ましい実施の形態において、触覚ディスプレイは、複数の装置のそれぞれの電極に制御信号を印加する制御ユニットを更に備える。制御ユニットは、プロセッサ及び/又は少なくとも1つの電圧源を備えることが好ましい。特に、少なくとも1つの電圧源は、装置の少なくとも1対の電極に接続される。
【0033】
更なる好ましい実施の形態において、触覚ディスプレイは、流体を複数の装置の各流体チャネル内に(及び好ましくは各流体チャネル外に)圧送するポンプを更に備え、ポンプは、単一のシリンジポンプであることが好ましい。特に、触覚ディスプレイのポンプは、装置のそれぞれに対して共通のポンプである。
【0034】
特に、本発明は、流体を誘導するのに好適なチャネルを開閉する装置を提供する。本装置は、
固体材料から作製される構成要素であって、
少なくとも2つの入口を有する少なくとも1つのチャンバーを有し、
上記チャンバーと流体接触するように配置される少なくとも1対の電極を有し、
少なくとも2つの入口は、チャンバーに直接接続してより小さな断面を形成するような形状である、構成要素と、
上記チャンバー及び上記少なくとも2つの入口に充填され、上記少なくとも2つの電極と流体接触する電解質であって、
上記電解質は、例えば、液体金属等のはるかに高い表面エネルギーを有する少なくとも1つの流体セグメントを封入し、
はるかに高い表面エネルギーを有する上記少なくとも1つの流体セグメントは、上記チャンバーの内部に位置し、そこから、上記チャネルのより小さな断面、及びはるかに高い表面エネルギーによって及ぼされる正の毛細管圧力に起因して、上記入口を介して上記電解質を変位させることによって除去することができず、
上記チャンバーの内部のはるかに高い表面エネルギーを有する上記少なくとも1つの流体セグメントは、上記少なくとも2つの入口を通る流れを阻止する流体シール要素として作用する、電解質と、
を備える。
【0035】
上記少なくとも2つの入口を通る流れの開放は、
はるかに高い表面エネルギーを有する上記少なくとも1つの流体セグメントと流体接触する上記少なくとも2つの電極間に電位を印加することにより、表面エネルギーを低減し、
それにより、上記少なくとも第1の流体セグメントが、上記少なくとも2つの入口をシールしないように上記チャンバー内で変位することを可能にし、それにより、チャンバーを通る流体の動きを可能にし、
それにより、上記流体セグメントを上記チャンバー内に残したまま迂回するか、又は上記入口のうちの1つを通ってチャンバー外に変位させる、
ことによって実行することができる。
【0036】
上記入口を通る流れの閉鎖は、
上記少なくとも1つの流体セグメントと流体接触する上記少なくとも2つの電極間の上記電位を除去し、
それにより、その表面エネルギーを初期値に戻るように増大させ、
それにより、上記少なくとも2つの入口を通る流れを再びシールする、
ことによって実行することができる。
【0037】
本発明の更なる態様によれば、制御信号によって流体チャネル内の流体をシフトさせる方法が提供される。流体チャネルは、少なくとも1つのチャンバーを備え、各チャンバーは、少なくとも2つの入口を有し、電解質を含む流体によって充填され、各入口は、少なくとも1つのチャンバーの断面よりも小さい断面を有する。制御信号が存在しない場合、流体チャネルの流体内に封入されたシール制御要素は、固有の(正の)毛細管力に起因して少なくとも1つのチャンバーのうちの1つに捕捉され、それにより、少なくとも1つのチャンバーのうちの上記1つをシールする。換言すれば、制御信号が存在しない場合、シール制御要素は、チャンバー外に移動することができない。本方法は、
少なくとも1つのチャンバー(ひいてはシール制御要素)と流体接触する1対の電極に対して又は1対の電極間に制御信号を印加し、それにより、シール制御要素に作用する電気毛細管力(及び/又は電気毛細管圧力)を引き起こすことを含む。
【0038】
好ましい実施の形態において、印加される制御信号は、制御信号によって引き起こされる電気毛細管力(及び/又は圧力)が、固有の毛細管力に反作用し、固有の毛細管力よりも大きくなり、それにより、制御信号に応答して、シール制御要素がチャンバーから少なくとも部分的に移動し、それにより、流体チャネル内の流体のシフトを可能にするように構成される。加えて又は代替的に、印加される制御信号は、シール制御要素の表面張力(及び/又は表面エネルギー)を低減するように構成される。特に、制御信号に応答して、シール制御要素の濡れ性を変化させることができる。より具体的には、制御信号が存在しない場合、シール制御要素は、非濡れ状態にあり、制御信号を印加することによって、シール制御要素は、濡れ状態になる又は濡れ状態へと変化する。
【0039】
更なる好ましい実施の形態において、流体及び/又は流体セグメントのシフトは、(負の)毛細管力に起因し得る自己推進式で行われる。流体及び/又は流体セグメントのシフトが「自己推進式」に行われるという表現は、特に、流体及び/又は流体セグメントが本質的に自ら移動することを意味する。そのような自己移動は、正から負の毛細管圧力へと逆転する表面張力の低減によって引き起こされ得る。代替的に又は加えて、流体及び/又は流体セグメントのシフトは、流体を流体チャネル内に及び/又は流体チャネル外に圧送することによって行われる。特に、制御信号を印加することにより、シール制御要素を、流体チャネルの長手方向軸に沿って(すなわち、作動方向に沿って)第1のチャンバーから第2のチャンバーに(第1のチャンバーと第2のチャンバーとを接続する入口を通って)変位させることができる。代替的に、シール制御要素は、流体チャネルの長手方向軸に対して直交して(すなわち、作動方向に対して直交して)変位することにより、流体が流体チャネルの長手方向軸に沿って(すなわち、作動方向に)少なくとも1つのチャンバーに入る及び/又は通ることを可能にする。
【0040】
更なる好ましい実施の形態において、方法は、流体チャネル内の流体をシフトさせることによってタクセルを規定することを含む。特に、流体チャネル内の流体をシフトさせることによって、作動要素(弾性膜)が変形し、変形した作動要素の変形度及び/又は高さにより、タクセル(より具体的には、タクセルの値又は状態)が規定される。各タクセルは、作動要素の変形度及び/又は高さに関連して、2つの値又は状態、すなわち、「高」及び「低」を有することができる。
【0041】
本発明の利点の1つは、グレースケール表現もサポートする、すなわち、タクセルが2つよりも多くの値又は状態を有することができることである。これは、例えば、2つよりも多くのチャンバーを提供することによって達成することができる。少なくとも1つの実施の形態において、作動要素の変形度は、流体チャネル(アクチュエータチャネル)内のシール制御要素の位置に依存する。シール制御要素が複数のチャンバーのうちの1つに位置する場合に安定状態が達成されることから、作動要素の変形度は、シール制御要素がどのチャンバーに位置するかに依存する。特に、作動要素の(安定な)変形度の数は、チャンバーの数に対応し得る。したがって、チャンバーがより多くなると、(安定な)変形度がより多くなり、したがって、タクセルの値がより多くなる。したがって、装置又は流体チャネル(アクチュエータチャネル)が2つよりも多くのチャンバーを備える本発明の好ましい実施の形態は、触覚による白黒表現をサポートするだけでなく、触覚によるグレースケール表現もサポートする。
【0042】
上述の更なる独立の態様について、及び特にこれに関する好ましい実施形態について、第1の態様の実施形態に関して上述した又は後述される説明も当てはまる。特に、本発明の1つの独立の態様について、及びこれに関する好ましい実施形態について、他のそれぞれの態様の実施形態に関して上述した又は後述される説明も当てはまる。
【0043】
課題を解決する個々の実施形態を、図を参照して例として後述する。この場合、記載される個々の実施形態は、特許請求される主題を実施するのに絶対に必要ではないが、特定の用途において所望の特性を提供する特徴を一部有する。これに関して、後述される実施形態の特徴の全てを有しない実施形態も、記載される技術的な教示に該当する様式で開示されているものとみなされることが意図される。さらに、不必要な繰返しを避けるために、後述される実施形態の中から個々の実施形態に関して特定の特徴のみが言及される。したがって、個々の実施形態は、単独で検討されるだけでなく、共同で検討されることも意図されることが指摘される。この共同の検討に基づいて、当業者であれば、個々の実施形態は、他の実施形態の個々の又は複数の特徴を含むことによって変更することもできることが理解される。個々の実施形態と、他の実施形態に関して記載される個々の又は複数の特徴との体系的な組合せが望ましく好都合である場合があり、したがって、考慮されること、また、本明細書に包含されるものとみなされることが指摘される。
【0044】
本発明の上記及び他の目的、特徴、及び利点は、好ましい実施形態の以下の説明及び添付の図面を読むことでより明らかとなる。本明細書に記載される主題の他の特徴及び利点は、その説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかとなる。別々に説明された実施形態であっても、その単一の特徴及び機能は、追加の実施形態を損なうことなく組み合わせることができることを理解すべきである。本開示は、例として示され、添付の図によって制限されない。
【0045】
本発明の好ましい実施形態を、添付図面に関連して例示的に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】a~cは、本発明を使用することができるシフト/ゲートアクチュエータの概略図である。
【
図2】a~dは、本発明の例示的な実施形態に係る装置の概略図である。
図2のa~
図2のdは、本発明の基本構想を説明するために装置の異なる状態を示している。
図2のeは、本発明の例示的な実施形態に係る触覚ディスプレイの概略図を示している。
【
図3】本発明の流体機械的実現可能性を示すために、毛細管直径に応じた毛細管圧力を示す図である。
【
図4】a~eは、「ラチェットロックモード」と称する本発明の好ましい実施形態に係る装置の概略図である。
図4のa~
図4のeは、装置の異なる状態を示している。
【
図5】a~dは、「スライドロックモード」と称する本発明の更なる好ましい実施形態に係る装置の概略図である。
図5のa~
図5のdは、装置の異なる状態を示している。
【
図6】a~dは、「スライドロックモード」の別の例示的な実施形態に係る装置の概略図である。
図6のa~
図6のdは、装置の異なる状態を示している。
【
図7】本発明に係る構想と比較して、機械的タクセルを使用した大規模触覚ディスプレイの従来のアクチュエータ構想の概要を示す図である。合致する、満たされる、及び/又は好適である特性は、チェックマークが示され、合致しない、満たさない、及び/又は好適でない特性は、バツ印で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下の詳細な説明は、本発明の例示的な実施形態に関する。本発明の他の実施形態は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内で可能である。図面全体を通して、同じ参照符号は、同じ又は同様の要素に使用される。
【0048】
本発明は、相変化アクチュエータに関連して特許文献6に記載される基本的な作動構想を概念的に土台とする。「シフト/ゲート作動」と称するこの基本的な作動構想は、
図1のa~cに示されている。
【0049】
シフト/ゲートアクチュエータの構想は、「マイクロアクチュエータに必要な全ての好適な機能を1つの構成要素に統合することは可能でないため、機能を分割する」という1つの指針に則っている。特に、バランスを取る必要があるパラメーターは以下である。
-高い駆動力を伴う大きく制御可能なアクチュエータストローク、
-高い保持力を伴う双安定性、
-大規模並列化。
【0050】
これらの特性を1つの装置に統合しようとする代わりに、
図1のa~cに示されているシフト/ゲートアクチュエータ1は、特性を分割する。アクチュエータ1は、マイクロ流体チャネル10(マイクロ流体シフトチャネルと称する)を使用する。このチャネル10から、いくつかの個別のチャネル20(アクチュエータチャネルと称する)が分岐し、作動チャネル20は、幾何学的に同一とすることができる。触覚ディスプレイの場合、全てのこれらの作動チャネル20は、弾性膜6によって閉鎖される。シフトチャネル10は、強力で精密に制御可能であるが、小型化はされていないポンプ、例えば、シリンジポンプ(
図1のa~
図1のcに明示されていないが、
図1のbにおける「シフト動作」及び矢印によって示されている)等に接続される。アクチュエータチャネル20のそれぞれは、単一の弁3によってシールすることができる。これらの弁3は、シフトチャネル10内の液体のシフト動作に対するゲートとして作用する(以降、ゲートと称する)。液体がシフトチャネル10内に圧送されると、ゲート3が開放しているアクチュエータのみが作動する。他の全てのアクチュエータは、シールされているため、現在位置に留まる。作動すると、ゲート3が閉鎖され、新しいアクチュエータ状態がシフトチャネル10から再びシールされ、これを使用して、アクチュエータの異なるセットを作動させることができる。
【0051】
したがって、
図1のaによれば、マイクロ流体シフトチャネル10は、ゲート3(すなわち、小さな弁)によってシールされるいくつかのアクチュエータチャネル20を動作させる。
図1のbによれば、これらの弁3のうちのいくつかを選択的に開放することにより、シフトチャネル10内に圧送された液体の体積がアクチュエータチャネル20内に浸入し、それにより、膜6を伸張させ、したがって、アクチュエータ1を作動させることが可能になる。
図1のcによれば、ゲート3の閉鎖により、アクチュエータ1がロックされ、双安定状態になる。
【0052】
基本的な動作原理は、以下のステップを繰り返す。
a)作動させる必要があるアクチュエータを判断する。
b)これらのアクチュエータのそれぞれのゲート3を開放する。
c)必要量の液体をシフトチャネル10内に圧送することにより、開放ゲートアクチュエータの全てを並列して伸張させる、又は、シフトチャネル10外に液体を圧送することにより、以前に設定されたタクセルを消去する。
d)ゲートを閉鎖することにより、設定位置をシールする。
【0053】
この構想は、全ての上述した要件を可能にする。すなわち、
-アクチュエータストロークは、大きくても小さくてもよく、(小型化されていないことを考慮すると)大きな駆動力及び非常に良好な制御(ストロークあたり僅か数ピコリットルまで)をサポートする(外部)ポンプの作動にのみ依存する。
-アクチュエータは、本質的に双安定である。ゲートの閉鎖により、設定位置に関わらず、現在のアクチュエータ状態をロックする。ゲートがしっかりとロックされると、保持力はかなり大きくなり得る。
-この構想は、事実上、数千個のアクチュエータを同時に設定することができるため、大規模並列化を可能にする。
【0054】
現在のところ、シフト/ゲートアクチュエータは、1つの重要な項目、すなわち、低電力、高速、拡縮可能、及び製造が容易な弁を構築する賢明な方法を欠いている。特許文献6に記載されているように、チャネル内で溶融されることによってゲートをなす液体ワックスを使用してもよい。ワックスが固体の場合は、ゲートは閉鎖する。ワックスが溶融した場合は、ゲートは開放する。この構想は機能するが、相変化アクチュエータは、非常に遅く、非常にエネルギーを消費する。したがって、シフト/ゲートアクチュエータ構想がその可能性を完全に利用することができるのは、ゲートを実現する新規の構想が利用可能である場合のみである。本発明は、まさにこの解決策を提供する。
【0055】
本発明は、流体シフト装置を提供し、特にグラフィック触覚ディスプレイに好適な、大規模並列化された個々にアドレス指定可能なアクチュエータアレイを可能にする新規のアクチュエータを特に提供する。本発明において、この新規のアクチュエータは、「毛細管弁アクチュエータ」と呼ばれ、マイクロ流体力学に固有の効果である毛細管現象に基づいている。
【0056】
既に上述したように、毛細管現象は、液体が物質を濡らす能力(又は濡らさない能力)を規定する表面張力の結果である。表面張力は、専ら線形に増減するが、毛細管力は、唯一の例外として、長さが縮小すると増大する。これにより、毛細管現象は、小型化に非常に好適となる。同じく上述したように、毛細管マイクロ流体力学は、概して、負の毛細管圧力、すなわち、マイクロチャネルが液体を引き込む能力を利用する。しかしながら、本発明に記載される毛細管弁アクチュエータは、逆の効果、すなわち、液体がマイクロチャネルに浸入するのを防止する正の毛細管圧力を使用する。液体が物質上で90度よりも大きい(静的)接触角を形成する場合、この物質から作製されるマイクロチャネルは、液体に対するバリアをなす。これは、例えば、液体金属ポロシメトリー、すなわち、非濡れ性の液体(通常は液体金属)を空隙容積に押し込むことによって岩石の気孔サイズ分布を測定する技法から知られる。これらの実験において、正の毛細管現象の圧力は、数百バールを容易に超える。同等の寸法を与えられると、工学的に設計されたマイクロチャネルは、受動的な毛細管バリア、例えば弁として作用する。毛細管力(液体の表面張力、基板の自由表面エネルギー、及びチャネル寸法)を規定するパラメーターを調整することにより、マイクロチャネルは、毛細管バリアとして作用する領域、すなわち、液体の浸入が停止される場所を有するように設計することができる。これらのパラメーターのうちの任意のものを局所的に変更する外部トリガーを追加することにより、毛細管バリアを除去し、したがって、弁を開放することが可能になる。
【0057】
毛細管効果は空気/液体/固体界面においてのみ生じるため、毛細管バリアは、液体がチャネル内に完全に浸入すると無効になる。しかしながら、液体が、異なる濡れ性を有する目立たないセグメントから構成される場合、例えば、セグメント化された流れの形態である場合、この効果を繰り返すことができる。例えば、セグメント化された流れは、非混和性液体の1つ以上のプラグをキャリア液体に(繰り返し)挿入することによって、マイクロ流体力学において実装することができる。重力の作用はマイクロ流体力学において無視することができる(通常、ボンド数が非常に小さい)ため、これらのプラグは、液体が異なる密度を有する場合でも安定に保たれる。
【0058】
図2のa~dは、本発明の例示的な実施形態に係る装置100の概略図を示している。図示の実施形態において、装置100は、アクチュエータ装置である。しかしながら、本発明の原理構想は、より包括的には、流体チャネル内で流体をシフトさせることに関し、そのため、装置100がアクチュエータに必須の全ての構成要素を含むことを必要としないことを理解されたい。したがって、装置100は、単に流体シフト装置に関するものであり得るが、本発明の基本構想は、この構想をアクチュエータ及び特に触覚ディスプレイのために使用する観点から記載される。
【0059】
流体シフト装置100は、少なくとも1つのチャンバー15を備える作動チャネル20を備える。各チャンバーは、電解質を含む流体又はキャリア液体12によって充填され、少なくとも2つの入口17を有する。キャリア液体12は、シフトチャネル10(主チャネルとも称する)によって提供される。
図2のbに示されているように、キャリア液体12は、シフトチャネル10から作動チャネル20内に液体12を圧送することによって提供することができる。このために、
図2のbにおいて参照符号Pで示されている(外部)ポンプを使用することができる。さらに、装置100は、少なくとも1つのチャンバー15をシールするとともに、制御信号30に応答して、作動チャネル20内の液体12のシフトを制御するために、作動チャネル20のキャリア液体12内に封入されるシール制御要素13を備える。制御信号30の状態、すなわち、制御信号がオン又はオフのいずれに切り替えられているかは、
図2のa~dにおいて「on」及び「off」によって示されている。制御信号は、
図2のa~dに明示されていない少なくとも1対の電極に印加される。電極が少なくとも1つのチャンバー15と流体接触し、制御信号30に応答して、シール制御要素13に作用する電気毛細管力を引き起こすように、少なくとも1対の電極が配置される。
図4のa~e及び
図5のa~dを参照されたい。
【0060】
図2のa~dから見ることができるように、各入口17は、少なくとも1つのチャンバー15の断面よりも小さい断面を有する。さらに、シール制御要素13は、キャリア液体12の表面張力よりも高い表面張力を有し、それにより、制御信号30が存在しない場合、シール制御要素13は、固有の毛細管力に起因して、少なくとも1つのチャンバー15のうちの1つに捕捉される。
図2のa~dに示されている実施形態において、装置100は、2つのチャンバー15を備え、各チャンバー15は、2つの入口17を有する。
図2のaにおいて、シール制御要素13は、2つのチャンバー15のうちの一方(すなわち、2つのチャンバーのうちの下にある方)に捕捉され、
図2のcにおいて、シール制御要素13は、2つのチャンバー15のうちのもう一方(すなわち、2つのチャンバーのうちの上にある方)に捕捉される。シール制御要素13がチャンバー15のうちの一方に位置し及び/又は捕捉されると、シール制御要素13が位置する及び/又は捕捉されたチャンバーはシールされる。そのような状況又は状態において、作動チャネル20は、流体又は液体がシールされたチャネルを通過することができないことから、閉鎖される。
【0061】
さらに、装置100は、装置100の端部に配置され、作動チャネル20の対応する端部をシールする弾性膜6を備える。弾性膜6は、作動チャネル20内の流体12のシフトによって作動する作動要素として機能する。
【0062】
図2のa~
図2のdのそれぞれは、本発明の基本原理を記載するために、装置100の別々の状態を示している。特に、基本原理は、3つの構成要素、すなわち、毛細管バリア(入口17によって実現される)、外部トリガー(制御信号30によって実現される)、及びセグメント化された流れ(シール制御要素13によって実現される)を組み合わせる。単一のアクチュエータ100は、弾性膜6によってシールされるアクチュエータチャネル20を備える。アクチュエータチャネル20は、1つの主マイクロ流体チャネル10から分岐し、そのチャネルから及びそのチャネル内には、液体12を単一の(シリンジ)ポンプPによって調べることができる(すなわち、1つのポンプが全てのアクチュエータ100を動作させる)。アクチュエータチャネル20は、毛細管バリア17によって相互接続される目立たないチャンバー15へと細分化される。チャンバー15は、毛細管力が無視できるように、すなわち、毛細管バリア17よりも大きい直径を有して設計される。さらに、非混和性プラグ13がキャリア液体12内に挿入され、したがって、セグメント化された流れを形成する。各アクチュエータチャネル20は、これらのプラグ13のうちの1つが、主チャネル10に沿って更に上に位置する好適なマイクロ流体構造内に生成されることを特徴とする。
【0063】
シール制御要素(非混和性プラグ)13は、高い表面張力及び低い粘度を有する液体から作製されることが好ましい。例えば、液体金属は、高い表面張力(数百mN/m、少なくとも水よりも大きい程度)及び通常は水の範囲の非常に低い粘度(数mPa・s)を有することから、液体金属をシール制御要素13として使用することができる。すなわち、シール制御要素13は、マイクロチャネルに入るときに大きな正の毛細管圧力を受けるが、一度チャネルに浸入すると、低粘度であるために容易に流れる。
【0064】
最初、シール制御要素13は、アクチュエータチャネル20に沿って第1のチャンバー15内に位置する。シール制御要素13は、2つの毛細管バリア17間に捕捉され、チャンバー15をシールする。これは、アクチュエータ100の安定したオフ状態(膜が撓んでいない、
図2のa)である。その後、アクチュエータは、毛細管バリア17内のシール制御要素13の濡れ挙動を非濡れから濡れへと局所的に変化させる外部トリガー(制御信号30)によって切り替えられる。
図2のa~dの略図によって示されているように、非濡れ挙動は、θ>90度の接触角によって特徴付けられ、濡れ挙動は、θ<90度の接触角によって特徴付けられる。シール制御要素13のこの濡れ挙動の変化により、シール制御要素13は、毛細管バリア17に入り、第1の(下側)チャンバー15から第2の(上側)チャンバー15に移動することができ(
図2のbを参照)、それにより、流体チャネル20内の流体12の体積ΔVをシフトさせ、弾性膜6を変形させる。外部トリガー(制御信号30)をオフに切り替えることにより、毛細管バリア17内のシール制御要素13の濡れ挙動は、濡れから非濡れへと再び変化する。したがって、シール制御要素13は、第2の(上側)チャンバー15内に捕捉される(
図2のcを参照)。この安定なオン状態において、弾性膜6は、伸張され、指40で感知可能である高さを形成する。したがって、弾性膜6によって、タクセルを規定及び/又は設定することができ、タクセルは、
図2のa及び
図2のcにそれぞれ示されているように、個別の値(弾性膜6の個別の高さの形態)を有する。外部トリガー(制御信号30)が再びオンに切り替えられると、毛細管バリア17内のシール制御要素13の濡れ挙動が非濡れから濡れへと再び変化し、それにより、毛細管バリア17(ゲート)を再び開放する(すなわち、シール制御要素13が毛細管バリア17に再び入ることができる)。伸張した弾性膜6の復元力により、シール制御要素13は、第2の(上側)チャンバーから第1の(下側)チャンバーに移動する(
図2のdを参照)。それにより、流体12の体積ΔVは、(弾性膜6から離れるように)流体チャネル20内でシフトし、弾性膜6の変形が回復する。膜の復元力が十分でない場合(小さなハブの場合に起こり得る)、ポンプは、流体12の体積ΔVをシフトチャネル10外に、ひいては流体チャネル20外に圧送し、すなわち、ポンプによって負のΔV、すなわち吸引を印加及び/又は発生させることができる。外部トリガー(制御信号30)をオフに切り替えた後、
図2のaに示されている安定したオフ状態に再び達する。
【0065】
図2のeにおいて、複数の装置100の配置が示されており、各装置100は、共通のシフトチャネル10と流体接触する。複数の装置100は、行又は行列にして配置され、それにより、触覚ディスプレイ200を形成する。触覚ディスプレイ100は、外部制御ユニットによって制御することができる。代替的に、触覚ディスプレイ200は、制御信号30を複数の装置100のそれぞれの電極8に印加する制御ユニットを備えてもよい。さらに、触覚ディスプレイは、シフトチャネル10からアクチュエータ100のアクチュエータチャネル20内に流体12を圧送するポンプを備えることができる。
図2のeに示されているように、各アクチュエータ装置100は、対応する制御信号(
図2のeに明示されていない)によって個々に制御することができ、すなわち、各アクチュエータ装置100について、アクチュエータチャネル20内のシール制御要素13の位置を個々に調整することができる。この位置に応じて、各アクチュエータ100は、個別のタクセル値を規定する。
【0066】
毛細管バリア17内のプラグ13の濡れ挙動の非濡れから濡れへの変化(
図2のa~dに示されている)は、いずれもキャリア/プラグ/界面における表面張力を変化させるいくつかのメカニズムによって達成することができる。特に、2つの主な効果、すなわち、連続エレクトロウェッティング(CEW:continuous electrowetting)及び誘電体上のエレクトロウェッティング(EWOD:electrowetting-on-dielectrics)を使用することができる。CEW及びEWODは、電気毛細管現象(EC:electrocapillarity)、すなわち、最終的に正の毛細管圧力(
図2のbを参照)を上回る電気毛細管圧力(ECP:electrocapillary pressure)を引き起こすマイクロチャネル内の固体/流体界面張力の静電的制御に基づく2つの効果である。
【0067】
毛細管圧力p
CAPは、以下のように計算することができる。
【数1】
【0068】
上記式1において、γは、液体(例えば、プラグ又はシール制御要素13)の表面張力であり、dは、毛細管(例えば、毛細管バリア又は入口17)の直径であり、θは、接触角を示している。
【0069】
一方、電気毛細管圧力p
ECPは、以下のように計算することができる。
【数2】
【0070】
上記式2において、lは、毛細管(例えば、毛細管バリア又は入口17)の長さであり、dは、毛細管の直径であり、Aは、毛細管の断面積であり、Vは、毛細管の容積であり、Δγは、液体(例えば、プラグ又はシール制御要素13)の表面張力の変化であり、ε0は、真空誘電率であり、εrは、液体の比誘電率である。
【0071】
双方の式において最も重要な数値は、マイクロチャネルの直径dである。正の毛細管圧力が保持圧力(すなわち、アクチュエータ100及び/又は弾性膜6にかかる圧力)を超えると、毛細管バリア又はゲート17がその目的を効果的に満たす。一方で、作動中、電気毛細管圧力pECPが正の毛細管圧力pCAPに等しくなるか又はそれを超えると、ゲートが開放することができる。
【0072】
図3は、チャネル直径d及び触覚読取り中に必要とされる保持圧力に応じた作用力を示している。正の毛細管圧力p
CAP及び電気毛細管圧力p
ECPが、液体としてガリンスタンを使用するCEW及びEWOD(50nmのパリレンCを誘電層とする)に関して、式1及び式2に従って計算される。正の毛細管圧力p
CAPの反対方向に作用する電気毛細管圧力p
ECPは、絶対値として
図3に示されている。正(θ
0=140度、ガラス上でのガリンスタンの濡れ角)から負(θ
0=70度)の毛細管圧力への変換は、90度を超える及び90度を下回る2つの静的接触角について示されている。
【0073】
図3に見ることができるように、10μmを下回るチャネル直径では、毛細管ゲートは、正の毛細管圧力p
CAPがアクチュエータ100における力を超えると効果的に閉鎖される。アクチュエータ100が電極に電位を印加すると(CEW及びEWODの双方を使用する)、電気毛細管圧力p
ECPは、正の毛細管圧力p
CAPを超える。この場合、液体金属プラグ13は、シフトチャネル10内に印加される圧力によって毛細管バリア17を越えて次の目立たないチャンバー15内に移動し、それにより、アクチュエータ100が1つのアクチュエータ増分iだけ変位し(
図2のcを参照)、膜6を膨らませ、したがって、タクセルを規定及び/又は設定することができる。その後、外部トリガー30が除去され、毛細管バリア17における濡れ挙動が濡れから非濡れへと再び切り替わり、それにより、プラグ13が再び適所にロックされる(
図2のc)。これは、アクチュエータ100の安定したオン状態である。オフ状態への回復は、この動作を反転することによって行われる(
図2のd)。外部トリガー30は、毛細管バリア17を除去し、プラグ13は、(自己推進式に、又は膜6の弛緩力若しくはポンプPを介して印加される吸引によって駆動されて)下側チャンバー15内に再び移動し、そこで、再び適所にロックされる。
【0074】
以下において、「ラチェットロックモード」及び「スライドロックモード」と称する、アクチュエータ100の2つの主モードを説明する。
図4のa~eは、「ラチェットロックモード」を示しており、
図5のa~d及び
図6のa~dは、「スライドロックモード」を示している。
【0075】
図4のa~eに示されている、いわゆるラチェットロックモードにおいて、シール制御要素13(例えば、液体金属)は、低い(S1)及び高い(S2)正の毛細管圧力を有するセグメントS1及びS2を含む周期的な構造を有する流体チャネル20に沿って移動し、第1のセグメントS1は、個別の「ラチェットチャンバー」(チャンバー15)として機能し、後者のセグメントS2は、「毛細管ゲート」(入口17)として機能する。電極8は、個々にアドレス指定可能な電極のセットを、単一の毛細管バリア又はゲート17を局所的に開放するように動作させることができるように配置される。特に、電極8のセットは、毛細管ゲート(入口17)のそれぞれにわたって液体金属プラグ(シール制御要素13)を作動させることができるように配置される。
【0076】
より具体的には、
図4のa~eに示されているように、非混和性液体金属プラグ13は、アクチュエータチャネル20に沿って位置するラチェットチャンバー15のうちの1つに捕捉される。ラチェットチャンバー15は、このアクチュエータチャネル20に沿った低い正の毛細管圧力のセクションS1であり、セクションS1には、毛細管ゲートとして作用する高い正の毛細管圧力のセクションS2が交わる。電極8は、液体金属プラグ13が各バリアを横切って個々に移動することができるように配置される。作動は、共通のシフトチャネル10から開始する。電極8が作動されない場合、すなわち、制御信号30(特に電圧)が電極8に印加されない場合、液体金属プラグ13が捕捉及び/又は制止されて、移動することができず、したがって、タクセルは、現在位置に設定される(
図4のaを参照。これによると、シール制御要素13が3つのチャンバーのうちの第2のチャンバーに捕捉される)。1対の電極8間に制御信号30を印加することによって毛細管ゲートのうちの1つを開放することで、ゲートのうちの1つを開放し、シフトチャネル10を介して印加される力及び/又は圧力によってシール制御要素13を移動させ、タクセルを設定する(
図4のbを参照。これによると、シール制御要素13は、入口17を通って第2のチャンバーから第3のチャンバーに移動する)。電極8から制御信号30を除去すると、タクセルが再びロックされる(
図4のcを参照。これによると、シール制御要素13が第3のチャンバーに捕捉される)。タクセルのリセットは、同様に、膨張した膜6によって及ぼされる戻り駆動力及び/又は圧力によって開始する(
図4のd及び
図4のeを参照)。代替的に又は加えて、タクセルのリセットは、自己推進式に達成されてもよい。更に代替的に又は加えて、タクセルのリセットは、流体12の個別の体積ΔVをシフトチャネル10外に、ひいては流体チャネル20外に圧送することによって、すなわち、ポンプを介して印加される吸引によって達成することができる。すなわち、1対の電極8間に制御信号30を印加することによって、ゲートのうちの1つが再び開放し、膨張した膜6によって生じる力及び/又は圧力によってシール制御要素13が元に戻る(例えば、第3のチャンバーから第2のチャンバーへ、
図4のdを参照)。電極8から制御信号30を除去すると、タクセルがロックされる(
図4のeを参照。これによると、シール制御要素13は、第2のチャンバーに再び捕捉される)。
【0077】
したがって、
図4のa~eに示されている実施形態によれば、装置100は、3つのチャンバー15を備え、各チャンバー15は、2つの入口17を有する。制御信号30が存在しない場合、シール制御要素又はプラグ13は、3つのチャンバー15のうちの1つに捕捉される。シール制御要素13及び制御信号30は、シール制御要素13の表面張力が、制御信号30が存在する場合に低減され、制御信号30が存在しない場合に以前の値まで再び増大するように構成される。それにより、装置100は、制御信号30に応答して、第1の安定状態(例えば、オフ状態又はオン状態)から第2の安定状態(例えば、オン状態又はオフ状態)に切り替えられるように構成される。より具体的には、ラチェットロックモードにおいて、シール制御要素13は、制御信号30に応答して、流体チャネル20の長手方向軸に沿って第1のチャンバーから第2のチャンバーに変位する。
【0078】
ラチェットロック構成は、
図4のa~eに示されているように、直感的には構築が比較的簡単であるが、チャネルの成形に特に精密さが必要であり、多くの電極対を作動させる必要があることから、制御電子機構が複雑となるため、製造が困難である。加えて、作動チャネル20は、タクセル作動に必要な総体積を収容するのに十分に長くなければならず、すなわち、作動チャネル20は、長さが十分でなければならない。単一のタクセルは、マイクロチャネルに必要とされる小寸法において、最大作動のために数マイクロリットルが必要であることを前提とすると、作動チャネル20は、数cmの長さがなければならない。このことは、アクチュエータアレイの製造を著しく困難にする。
【0079】
図5のa~d及び
図6のa~dに示されている、いわゆるスライドロックモードにおいて、液体金属プラグ(シール制御要素13)は、アクチュエータチャネル20に対して垂直に動作し、摺動ロックと同様にアクチュエータチャネル20をシールする。主な作動は、上述したラチェットロックモードと同じシフトメカニズムによって実行される。ただし、ラチェットロックモードとは対照的に、スライドロック構成は、シール制御要素13の非常に小さな距離の移動しか必要とせず、アクチュエータあたり1対の電極8しか必要としないため、全体の構成は、ラチェットロックモードと比較して、構築がはるかに簡単である。加えて、例えば、グレースケールのエンコードのためにタクセルを任意の高さに設定することは、ここではラチェットモードの個別の位置ロックが適用されないため、このモードでは非常に簡単である。ラチェットモードでは、グレースケール値がエンコードされる場合、別のラチェットチャンバー15、毛細管バリア17、及び別の電極8の組を、タクセルの個別の位置ごとに追加する必要がある。スライドロックモードは、タクセルの位置設定がシフトチャネルのみを介して制御されるため、連続的である。
【0080】
より具体的には、
図5のa~dに示されているように、非混和性液体金属プラグ13の少なくとも一部が、左右の2つのデッドエンドチャネルに接続された電極8を有する円形チャンバー15に引き寄せられて捕捉される。チャネルの成形により、液体金属プラグ13は、チャンバー15に連続的に押し込まれ、したがって、アクチュエータチャネル20をシールする。シフトチャネル10は、アクチュエータチャネル20に対して垂直に動作する。電極8が作動しない場合、すなわち、制御信号30(電圧U)が電極8に印加されない場合(
図5のaを参照)、プラグ13は、チャンバー15をシールし、したがって、タクセルをロックする。
図5のaにおいて、タクセルは、平坦(オフ)状態にある。電極8間に電圧U(制御信号30)を印加すると(
図5のbを参照)、液体金属13が流体チャネル20に対して垂直に移動又は引き出され、したがって、摺動ロックと同様に少なくとも部分的に退避するように移動する。これにより、シフトチャネル10からの圧力によってタクセルが作動する。制御信号30(電圧U)を除去すると、チャンバー15が閉鎖され、したがって、タクセルは、伸張(オン)状態に設定される(
図5のcを参照)。タクセルのリセットは、同様に開始する。すなわち、電極8間に制御信号30を再び印加することにより(
図5のdを参照)、液体金属プラグ13が流体チャネル20に対して垂直に移動又は引き出され、それにより、摺動ロックと同様に、シール制御要素13がチャンバー15外に少なくとも部分的に移動する。これにより、弾性膜6からの復元力又は圧力によって膜6の変形又は伸張が解消され、それにより、タクセルが再び平坦(オフ)状態になる。代替的に又は加えて、膜6の変形又は伸張は、自己推進式に解消されてもよい。更に代替的に又は加えて、膜6の変形又は伸張は、流体12の個別の体積ΔVをシフトチャネル10外に、ひいては流体チャネル20外に圧送することにより、すなわち、ポンプを介して印加される吸引により、解消されてもよい。その後、制御信号30(電圧U)を除去することにより、チャンバー15が再び閉鎖し、したがって、タクセルが
図5のaの初期状態(オフ状態)にロックされる。
【0081】
図5のa~dに示されている例では、チャンバー15は円形の形状を有するが、チャンバー15は、代替的に、流体チャネル20をロックするのに好適な異なる形状を有してもよい。例えば、
図6のa~dに示されているように、チャンバー15は、入口17の交差部として形成することができる。したがって、チャンバー15は、十字形状及び/又は十字形断面を有することができる。
図6のa~dの装置100は、
図5のa~dの装置100と同様に機能する。電極8が作動しない場合、すなわち、制御信号30(電圧U)が電極8に印加されない場合(
図6のaを参照)、毛細管力に起因して、プラグ13がチャンバー15によって引き寄せられる。この状態の位置に起因して、プラグ13は、チャンバー15をシールし、したがって、タクセルをロックする。
図6のaにおいて、タクセルは、平坦(オフ)状態にある。電極8間に電圧U(制御信号30)を印加することにより(
図6のbを参照)、液体金属13が流体チャネル20に対して垂直に移動又は引き出され、したがって、摺動ロックと同様に少なくとも部分的に退避するように移動する。これにより、シフトチャネル10からの圧力によってタクセルが作動する。制御信号30(電圧U)を除去することにより、プラグ13は、入口17の交差部に戻るように移動し、チャンバー15を閉鎖し、それにより、タクセルが伸張(オン)状態に設定される(
図6のcを参照)。タクセルのリセットは、同様に開始する。すなわち、電極8間に制御信号30を再び印加することにより(
図6のdを参照)、液体金属プラグ13が流体チャネル20に対して垂直に移動又は引き出され、それにより、摺動ロックと同様に、シール制御要素13がチャンバー15外に少なくとも部分的に移動する。これにより、弾性膜6からの復元力又は圧力によって膜6の変形又は伸張が解消され、それにより、タクセルが再び平坦(オフ)状態になる。代替的に又は加えて、膜6の変形又は伸張は、自己推進式に解消されてもよい。更に代替的に又は加えて、膜6の変形又は伸張は、流体12の個別の体積ΔVをシフトチャネル10外に、ひいては流体チャネル20外に圧送することにより、すなわち、ポンプを介して印加される吸引により、解消されてもよい。その後、制御信号30(電圧U)を除去することにより、チャンバー15が再び閉鎖し、したがって、タクセルが
図6のaの初期状態(オフ状態)にロックされる。
【0082】
したがって、
図5のa~d又は
図6のa~dのいずれかに示されている実施形態によれば、装置100は、少なくとも2つの入口17を有する1つのみのチャンバー15を備える。制御信号30が存在しない場合、シール制御要素13の少なくとも一部が上記チャンバー15内に捕捉される。シール制御要素13及び制御信号30は、シール制御要素13の表面張力が、制御信号30が存在する場合に低減され、制御信号30が存在しない場合に以前の値まで再び増大するように構成される。それにより、装置100は、制御信号30に応答して、第1の安定状態(例えば、オフ状態又はオン状態)から第2の安定状態(例えば、オン状態又はオフ状態)に切り替えられるように構成される。より具体的には、スライドロックモードにおいて、シール制御要素13は、制御信号30に応答して、流体チャネル20の長手方向軸に対して直交して変位することにより、流体12が流体チャネル20の長手方向軸に沿ってチャンバー15に入る及び/又は通過することを可能にする。
【0083】
以下において、従来のアクチュエータと比較して、本発明に係る構想に基づくアクチュエータの更なる特徴、特性、及び/又は利点を指摘する。
【0084】
関連する科学的な現行技術は、マイクロアクチュエータの分野である。しかしながら、必要とされる特性のうちの多くは、従来のマイクロアクチュエータでは問題がある。触覚ディスプレイに必要とされる1.4mmピッチは、ほとんどのマイクロアクチュエータの横サイズよりもはるかに小さい。マイクロアクチュエータのコアとなる構成要素が微視的な規模であっても、マイクロアクチュエータは、多くの場合、嵩高な外部構成要素(磁石、ばね、固定具)を必要とするため、高密度集積には不適となる。加えて、多くのマイクロアクチュエータは、触覚ディスプレイに必要とされる100mNの保持力をサポートせず、0.5mmの範囲のアクチュエータストロークは困難である。双安定(ラッチ可能)マイクロアクチュエータが求められる場合、選択肢は更に制限される。高密度集積の観点から、多くのアクチュエータは、ハイブリッド製造プロセス、手動組立て、又は特殊かつ高価な材料を必要とすることに悩まされる。アクチュエータが高密度集積を可能にする場合でも、例えば、高磁界又は高電界を発生させるために必要とされる嵩高な外部構成要素がそれを阻む。
【0085】
概して、現行の技術水準のマイクロアクチュエータは、最も重要なパラメーター、すなわち、アクチュエータストローク、安定性、集積密度、コスト、及び横サイズの間で常に妥協している。1つの特性を向上させると、通常、別の特性が悪化する。例として、アクチュエータストロークを増大させなければならない場合、通常、より強力で嵩高な構成要素を使用する必要があり、したがって、サイズが増大し、集積密度が減少する。高密度集積が実証されている唯一のマイクロアクチュエータは、デジタルマイクロミラー装置(DMD:digital micromirror device)を駆動する静電アクチュエータである。しかしながら、これらのアクチュエータは、数μmのアクチュエータストロークしか達成せず、保持力を事実上有しない。さらに、Quakeグループによって開発された空気圧膜弁に基づくマイクロ流体力学大規模集積(MLSI:microfluidics large-scale integration)が、触覚ディスプレイの選択肢として論じられている。M. A. Unger, H. P. Chou et al., Science, 288, 113 (2000)、及びT. Thorsen, S. J. Maerkl et al., Science, 298, 580 (2002)を参照されたい。しかしながら、MLSIは、実際の弁のみを小型化し、アクチュエータ自体は小型化しないマイクロ流体弁プラットホームとして設計される。Quake弁は、作動のために巨視的な外部空気圧弁を必要とする。加えて、空気圧弁の数を低減するために、MLSIは、オンチップ弁を個々に並列して設定することを可能にしない(逆)多重化構想を利用する。さらに、相変化物質に基づく、最大588個の個々にアドレス指定可能かつ双安定の弁を備える熱アクチュエータアレイが開発されている。C. Richter, K. Sachsenheimer et al., Microfluid. Nanofluid., 20, 130 (2016)を参照されたい。しかしながら、これらの構想は、触覚ディスプレイにおける使用には遅すぎるものであった。
【0086】
図7は、既知のマイクロアクチュエータ構想の使用によって触覚ディスプレイを構築するための注目すべき試みをリストにしている。ピエゾアクチュエータは、触覚ディスプレイに使用される最初のアクチュエータの1つである。H. Hernandez, E. Preza et al., Electronics, Robotics and Automotive Mechanics Conference, 2009. CERMA'09., 402 (2009)を参照されたい。ピエゾアクチュエータは、商業的な点字ライン及び触覚ディスプレイにおける事実上のスタンダードではあるが、非常に高価で、双安定でなく、したがって、モバイル触覚ディスプレイには不適である。MLSIと同様に、空気圧作動は、高密度集積を阻み、通常、タクセルの機械的安定性が不十分になる。X. Wu, H. Zhu et al., TRANSDUCERS 2007-2007 International Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems Conference, 1409 (2007)を参照されたい。或る特定のポリマーの圧電特性を利用する電気活性ポリマーは、タクセルアクチュエータを生成する代替的な手段として研究されている。しかしながら、これは、非常に高い電界を必要とするため、高密度集積には不適であることがわかっている。H. S. Lee, H. Phung et al., Sensors and Actuators A: Physical, 205, 191 (2014)を参照されたい。熱空気圧アクチュエータに基づくアクチュエータは、形状記憶合金及び形状記憶ポリマーと同様に、タクセルの機械的安定性が劣る。J. S. Lee及びS. Lucyszyn, Journal of Microelectromechanical Systems, 14, 673 (2005)、並びにT. Matsunaga, K. Totsu et al., Displays, 34, 89 (2013)を参照されたい。光活性ポリマーの使用は、コストの点で良好な拡縮性が見込まれる比較的最近のアプローチであるが、タクセル高さは数十μmの範囲でしか達成しない。N. Torras, K. Zinoviev et al., Sensors and Actuators A: Physical, 208, 104 (2014)を参照されたい。別の選択肢は、タクセルを設定するのに磁界を使用することであり、これは、「Tactonom」システムによって採用されるアプローチである。しかしながら、磁界は、局所的に限定された様式で発生させることは難しく、したがって、システムは、タクセルごとに個々に設定を行うため、システムは遅くなり、持ち運び可能でなくなる。
【0087】
さらに、振動、熱、摩擦係数の局所的変化に基づく、及び人間の指に直接電流を印加することによる非機械的なアクチュエータに関するいくつかの説明がなされている。しかしながら、これらの作動メカニズムの全ては、触覚読取りに十分な解像度で人間の感覚によって感知することはできない。人間の指でタッチする解像度は、桁違いに高い。加えて、電気的及び熱的作動は、指の痛みを誘発する。K. A. Kaczmarek, J. G. Webster et al., IEEE Trans. Biomed. Eng., 38, 1 (1991)を参照されたい。
【0088】
コンピューターマウス上に少数の機械的アクチュエータを有し、コンピューターマウスがページ上を移動し、CCDチップを介して処理される情報に従ってタクセルを設定することによって、「静的な」大規模触覚ディスプレイを設計する試みもなされている。N. Rajaei, M. Ohka et al., International Journal of Advanced Robotic Systems, 13, 1729881416658170 (2016)を参照されたい。このプロセス中、人間の指は、静止したままであり、動きによってページを「探索」することはしない。構築ははるかに簡単であるが、人間の触覚的な知覚にはスライド動作が必要であるため、これらのシステムにおける触覚可読性は非常に悪い。A. Russomanno, S. O'Modhrain et al., IEEE Trans. Haptics, 8, 287 (2015)を参照されたい。また、このアプローチは、望ましいものである、10本の指全てが並列してページを「探索」することはしない。E. Wilhelm, A. Voigt et al., MULTIsensory Interaction and Assitive Technology, Madeira, Portugal (2015)を参照されたい。
【0089】
したがって、
図7に示されているように、従来のアクチュエータ構想のそれぞれには、これらの従来のアクチュエータ構想が、触覚ディスプレイに必要とされる全ての特性を提供しないという欠点がある。一方、本発明において提供される構想によれば、これらの欠点は克服される。
【0090】
特に、本発明の構想に基づくアクチュエータは、基礎研究にとって、特に大規模触覚ディスプレイにとって先駆的な新規の構想となるいくつかの固有の特徴を有し得る。
-アクチュエータは双安定である。その安定性は、全体的に流体物理学に基づき、すなわち、ばね、シール要素、磁石、コイル等は必要としない。
-タクセルは、正の毛細管圧力が100mNを超える力をサポートするため、機械的に非常に安定である。
-アクチュエータが双安定であるため、エネルギーは、状態を切り替えるためにのみ必要とされる。電気毛細管作動に必要なエネルギーは、非常に少なく、通常、数μWの範囲である。
-アクチュエータは、受動的なマイクロ流体チャネル又はチャネルネットワークを備え、可動な機械的構成要素を有しない。
-アクチュエータは、フットプリントが小さく、したがって、触覚グラフィックディスプレイに十分な解像度(1.4mmの間隔)で高密度集積することができる。
-正しく選択される場合、外部トリガーは、低電圧の制御信号によって動作することができる。CEWは、5V未満の電圧を必要とし、EWODは、より高い電圧を必要とする。
-低電圧の制御信号によって数千のトリガーをアドレス指定することは実施が簡単であるため、アクチュエータの数を非常に多くすることができる。
-シール制御要素の変位が自己推進式であるか、又は多くのシール制御要素を単一の(シリンジ)ポンプによって並列に変位させることができることから、多くのアクチュエータを同時に設定することができる(
図2のeを参照)。
-アクチュエータは高速である。電界の印加とCEW及びEWODにおける流れの誘導との間の待ち時間は、数ミリ秒の範囲である。電気毛細管駆動の場合、毎秒数センチメートルの流量を達成することができる。
-アクチュエータアレイは、コストの点で非常に良好な拡縮性を有する。アクチュエータを追加するごとに、別のアクチュエータチャネルを追加するだけなので、プラグ材料及びデジタル制御チャネルのコストは、アクチュエータあたり僅か数ユーロセントとなる。
-アクチュエータは、アクチュエータチャネルに沿って更なるチャンバーを追加することによって、異なるストロークをサポートすることができ、これにより、様々な増分にわたってアクチュエータを変位させることを可能にする。触覚ディスプレイの場合、異なるタクセル高さによって「グレースケール値のエンコード」が可能になる。
【0091】
本発明の更なる特徴、態様、及び実施形態は、以下の項目において下記に提供される。
【0092】
項目1:少なくとも1つのチャンバー(15)を備える流体チャネル(20)であって、各チャンバー(15)は、電解質を含む流体(12)によって充填され、少なくとも2つの入口(17)を有する、流体チャネル(20)と、
流体チャネル(20)の流体(12)内に封入され、少なくとも1つのチャンバー(15)をシールするとともに、制御信号(30)に応答して、流体チャネル(20)内の流体(12)のシフトを制御するシール制御要素(13)と、
少なくとも1対の電極(8)であって、電極(8)が少なくとも1つのチャンバー(15)と流体接触し、制御信号(30)に応答して、シール制御要素(13)に作用する電気毛細管力をもたらすように配置される、少なくとも1対の電極(8)と、
を備え、
シール制御要素(13)は、流体(12)の表面張力よりも高い表面張力を有し、制御信号(30)が存在しない場合、シール制御要素(13)の少なくとも一部が、固有の毛細管力に起因して、少なくとも1つのチャンバー(15)のうちの1つに捕捉され、それにより、少なくとも1つのチャンバー(15)のうちの上記1つをシールするようになっている、流体シフト装置(100)。
【0093】
項目2:各入口(17)は、少なくとも1つのチャンバー(15)の断面よりも小さい断面を有する、項目1に記載の装置(100)。
【0094】
項目3:シール制御要素(13)は、流体(12)と非混和である流体セグメントである、項目1又は2に記載の装置(100)。
【0095】
項目4:装置(100)は、制御信号(30)に応答して、第1の安定状態から第2の安定状態に切り替わるように構成され、シール制御要素(13)及び制御信号(30)は、シール制御要素(13)の表面張力が、制御信号(30)が存在する場合に低減され、制御信号(30)が存在しない場合に以前の値まで再び増大するように構成される、項目1~3のいずれか1つに記載の装置(100)。
【0096】
項目5:制御信号(30)に応答して、
シール制御要素(13)は、流体チャネル(20)の長手方向軸に沿って第1のチャンバーから第2のチャンバーに変位し、又は、
シール制御要素(13)は、流体チャネル(20)の長手方向軸に対して直交して変位することにより、流体(12)が流体チャネル(20)の長手方向軸に沿って少なくとも1つのチャンバー(15)に入る及び/又は通ることを可能にする、項目1~4のいずれか1つに記載の装置(100)。
【0097】
項目6:流体チャネル(20)内に流体を圧送するポンプ(P)を更に備える、項目1~5のいずれか1つに記載の装置(100)。
【0098】
項目7:流体チャネル(20)の端部は、弾性膜(6)によってシールされ、
特に、弾性膜(6)は、作動要素であり、流体チャネル(20)は、アクチュエータチャネルであり、装置(100)は、双安定アクチュエータである、項目1~6のいずれか1つに記載の装置(100)。
【0099】
項目8:流体チャネル(20)内で流体(12)をシフトさせることによってタクセルが規定される、触覚ディスプレイ(200)のための項目1~7のいずれか1つに記載の装置(100)の使用。
【0100】
項目9:項目1~7のいずれか1つに記載の複数の装置(100)を備え、装置(100)は、行又は行列にして配置され、複数の装置(100)のそれぞれは、複数の装置(100)のそれぞれに流体(12)を提供するシフトチャネル(10)と流体接触する、触覚ディスプレイ(200)。
【0101】
項目10:複数の装置(100)のそれぞれの電極(8)に制御信号(30)を印加する制御ユニットを更に備える、項目9に記載の触覚ディスプレイ(200)。
【0102】
項目11:流体(12)を複数の装置(100)の各流体チャネル(20)内に圧送するポンプ(P)を更に備え、ポンプ(P)は、好ましくは単一のシリンジポンプである、項目9又は10に記載の触覚ディスプレイ(200)。
【0103】
項目12:制御信号(30)によって流体チャネル(20)内の流体(12)をシフトさせる方法であって、流体チャネル(20)は、少なくとも1つのチャンバー(15)を備え、各チャンバー(15)は、電解質を含む流体(12)によって充填され、制御信号(30)が存在しない場合、流体チャネル(20)の流体(12)内に封入されたシール制御要素(13)の少なくとも一部が、固有の毛細管力に起因して、少なくとも1つのチャンバー(15)のうちの1つに捕捉され、それにより、少なくとも1つのチャンバー(15)のうちの上記1つをシールし、方法は、
制御信号(30)を、少なくとも1つのチャンバー(15)と流体接触する1対の電極(8)に対して又は1対の電極(8)間に印加し、それにより、シール制御要素(13)に作用する電気毛細管力を引き起こすことを含む、方法。
【0104】
項目13:印加される制御信号(30)は、制御信号(30)によって引き起こされた電気毛細管力が、固有の毛細管力に反作用し、固有の毛細管力よりも大きくなり、それにより、シール制御要素(13)が、制御信号(30)に応答して、少なくとも1つのチャンバー(15)のうちの上記1つから少なくとも部分的に移動し、それにより、流体チャネル(20)内の流体(12)のシフトを可能にするように構成され、及び/又は、
印加される制御信号(30)は、シール制御要素(13)の表面張力を低減するように構成される、項目12に記載の方法。
【0105】
項目14:流体(12)のシフトは、自己推進式に、及び/又は流体(12)を流体チャネル(20)内に及び/又は流体チャネル(20)外に圧送することによって行われる、項目12又は13に記載の方法。
【0106】
項目15:流体チャネル(20)内の流体(12)をシフトさせることによってタクセルを規定することを更に含む、項目12~14のいずれか1つに記載の方法。
【符号の説明】
【0107】
1 シフト/ゲートアクチュエータ
3 ゲート(弁)
5 アクチュエータチャンバー
6 弾性膜(作動要素)
8 電極
10 主チャネル(シフトチャネル)
12 キャリア液体(流体)
13 不混和プラグ(シール制御要素)
15 チャンバー
17 毛細管バリア(入口)
20 作動チャネル(流体チャネル)
30 制御信号
40 指
100 アクチュエータ(装置)
200 アクチュエータのアレイ(触覚ディスプレイ)
i 増分
P ポンプ
S1 第1のセグメント
S2 第2のセグメント
U 電圧(制御信号)
ΔV シフト動作に起因する電圧差(シフト体積)
【手続補正書】
【提出日】2022-09-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体シフト装置(100)であって、
少なくとも1つのチャンバー(15)を備える流体チャネル(20)であって、各チャンバー(15)は、電解質を含む流体(12)によって充填され、少なくとも2つの入口(17)を有し、各入口(17)は、前記少なくとも1つのチャンバー(15)の断面よりも小さい断面を有する、流体チャネル(20)と、
前記流体チャネル(20)の前記流体(12)内に封入され、前記少なくとも1つのチャンバー(15)をシールするとともに、制御信号(30)に応答して、前記流体チャネル(20)内の前記流体(12)のシフトを制御するシール制御要素(13)と、
少なくとも1対の電極(8)であって、該電極(8)が前記少なくとも1つのチャンバー(15)と流体接触し、前記制御信号(30)に応答して、前記シール制御要素(13)に作用する電気毛細管力をもたらすように配置される、少なくとも1対の電極(8)と、
を備え、
前記シール制御要素(13)は、前記流体(12)の表面張力よりも高い表面張力を有し、前記制御信号(30)が存在しない場合、前記シール制御要素(13)の少なくとも一部が、固有の毛細管力に起因して、前記少なくとも1つのチャンバー(15)のうちの1つに捕捉され、それにより、前記少なくとも1つのチャンバー(15)のうちの前記1つをシールするようになっている、流体シフト装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(100)であって、前記シール制御要素(13)は、前記流体(12)と非混和である流体セグメントである、装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置(100)であって、該装置(100)は、前記制御信号(30)に応答して、第1の安定状態から第2の安定状態に切り替わるように構成され、前記シール制御要素(13)及び前記制御信号(30)は、前記シール制御要素(13)の前記表面張力が、前記制御信号(30)が存在する場合に低減され、前記制御信号(30)が存在しない場合に以前の値まで再び増大するように構成される、装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の装置(100)であって、前記制御信号(30)に応答して、
前記シール制御要素(13)は、前記流体チャネル(20)の長手方向軸に沿って第1のチャンバーから第2のチャンバーに変位し、又は、
前記シール制御要素(13)は、前記流体チャネル(20)の前記長手方向軸に対して直交して変位することにより、前記流体(12)が前記流体チャネル(20)の前記長手方向軸に沿って前記少なくとも1つのチャンバー(15)に入る及び/又は通ることを可能にする、装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の装置(100)であって、前記流体チャネル(20)内に流体を圧送するポンプ(P)を更に備える、装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の装置(100)であって、
前記流体チャネル(20)の端部は、弾性膜(6)によってシールされ、
特に、前記弾性膜(6)は、作動要素であり、前記流体チャネル(20)は、アクチュエータチャネルであり、該装置(100)は、双安定アクチュエータである、装置。
【請求項7】
前記流体チャネル(20)内で前記流体(12)をシフトさせることによってタクセルが規定される、触覚ディスプレイ(200)のための請求項1~6のいずれか1項に記載の装置(100)の使用。
【請求項8】
触覚ディスプレイ(200)であって、請求項1~6のいずれか1項に記載の複数の装置(100)を備え、前記装置(100)は、行又は行列にして配置され、前記複数の装置(100)のそれぞれは、前記複数の装置(100)のそれぞれに流体(12)を提供するシフトチャネル(10)と流体接触する、触覚ディスプレイ。
【請求項9】
請求項8に記載の触覚ディスプレイ(200)であって、前記複数の装置(100)のそれぞれの前記電極(8)に制御信号(30)を印加する制御ユニットを更に備える、触覚ディスプレイ。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の触覚ディスプレイ(200)であって、前記流体(12)を前記複数の装置(100)の各流体チャネル(20)内に圧送するポンプ(P)を更に備え、前記ポンプ(P)は、好ましくは単一のシリンジポンプである、触覚ディスプレイ。
【請求項11】
制御信号(30)によって流体チャネル(20)内の流体(12)をシフトさせる方法であって、前記流体チャネル(20)は、少なくとも1つのチャンバー(15)を備え、各チャンバー(15)は、少なくとも2つの入口(17)を有し、電解質を含む流体(12)によって充填され、各入口(17)は、前記少なくとも1つのチャンバー(15)の断面よりも小さい断面を有し、前記制御信号(30)が存在しない場合、前記流体チャネル(20)の前記流体(12)内に封入
され、前記少なくとも1つのチャンバー(15)をシールするとともに、前記制御信号(30)に応答して、前記流体チャネル(20)内の前記流体(12)のシフトを制御するシール制御要素(13)の少なくとも一部が、固有の毛細管力に起因して、前記少なくとも1つのチャンバー(15)のうちの1つに捕捉され、それにより、前記少なくとも1つのチャンバー(15)のうちの前記1つをシールし、
前記シール制御要素(13)は、前記流体(12)の表面張力よりも高い表面張力を有し、該方法は、
前記制御信号(30)を、前記少なくとも1つのチャンバー(15)と流体接触する1対の電極(8)に対して又は前記1対の電極(8)間に印加し、それにより、前記シール制御要素(13)に作用する電気毛細管力を引き起こすことを含む、方法。
【請求項12】
前記印加される制御信号(30)は、前記制御信号(30)によって引き起こされた前記電気毛細管力が、前記固有の毛細管力に反作用し、前記固有の毛細管力よりも大きくなり、それにより、前記シール制御要素(13)が、前記制御信号(30)に応答して、前記少なくとも1つのチャンバー(15)のうちの前記1つから少なくとも部分的に移動し、それにより、前記流体チャネル(20)内の前記流体(12)のシフトを可能にするように構成され、及び/又は、
前記印加される制御信号(30)は、前記シール制御要素(13)の表面張力を低減するように構成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記流体(12)の前記シフトは、自己推進式に、及び/又は流体(12)を前記流体チャネル(20)内に及び/又は前記流体チャネル(20)外に圧送することによって行われる、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記流体チャネル(20)内の前記流体(12)をシフトさせることによってタクセルを規定することを更に含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】