(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】セパレータプレート
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0226 20160101AFI20240416BHJP
H01M 8/0213 20160101ALI20240416BHJP
H01M 8/18 20060101ALI20240416BHJP
H01M 8/0221 20160101ALI20240416BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H01M8/0226
H01M8/0213
H01M8/18
H01M8/0221
B03C3/40 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560707
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 EP2022057454
(87)【国際公開番号】W WO2022207405
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】102021203265.6
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514194886
【氏名又は名称】エスジーエル・カーボン・エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オズヴィン・エッティンガー
(72)【発明者】
【氏名】ヨーナス・シュミッツ
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・シューベルト
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・カマーマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ノルマ・カルラ・ミナー
【テーマコード(参考)】
4D054
5H126
【Fターム(参考)】
4D054AA11
5H126AA12
5H126BB05
5H126BB06
5H126BB10
5H126DD04
5H126FF02
5H126GG05
5H126GG18
5H126HH01
5H126HH02
5H126HH03
5H126HH06
5H126HH08
5H126HH10
5H126JJ00
5H126JJ03
5H126JJ05
5H126JJ06
5H126JJ08
5H126JJ09
(57)【要約】
本発明は、セパレータプレート、セパレータプレートを製造するための方法、およびセパレータプレートの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュロマー樹脂を含浸させた炭素繊維強化カーボンの単層を備えるセパレータプレートであって、連続的な導電性カーボンネットワークを有し、0.5mm未満の厚さと、30Mpa超の引張強度と、を有するセパレータプレート。
【請求項2】
8mΩcm
2未満の体積抵抗を有する請求項1に記載のセパレータプレート。
【請求項3】
1.7g/cm
3未満の密度を有する請求項1または2に記載のセパレータプレート。
【請求項4】
前記炭素繊維強化カーボンは、炭素繊維同士の間に炭素とバインダの架橋を有する炭素繊維織物の単層を備える、請求項1に記載のセパレータプレート。
【請求項5】
前記デュロマー樹脂は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、フラン樹脂と、ベンゾオキサジン樹脂との群から選択された樹脂を含む、請求項1または2に記載のセパレータプレート。
【請求項6】
前記デュロマー樹脂は、分散されたフィラーを含む、請求項1または2に記載のセパレータプレート。
【請求項7】
フィラーの質量分率が、0質量%~40質量%である、請求項5または6に記載のセパレータプレート。
【請求項8】
5×10
-5cm
2/s未満の透過係数を有する請求項1または2に記載のセパレータプレート。
【請求項9】
前記デュロマー樹脂を含浸させた前記炭素繊維強化カーボンの表面は、構造化されている、請求項1または2に記載のセパレータプレート。
【請求項10】
前記セパレータプレートの断面は、フィラーの濃度勾配を有する、請求項6または7に記載のセパレータプレート。
【請求項11】
請求項1に記載のセパレータプレートを製造するための方法であって、
炭素繊維織物を提供するステップaと、
前記炭素繊維織物に炭素ドナーを含浸させるステップbと、
温度が1300℃よりも高い不活性気体雰囲気において、含浸させた前記炭素繊維織物を高温処理するステップcと、
デュロマー樹脂を提供するステップdと、
前記ステップcにおいて得られた前記炭素繊維強化カーボンに、前記ステップdにおいて提供された前記デュロマー樹脂を含浸させるステップeと、
前記ステップeからの樹脂を含浸させた前記炭素繊維強化カーボンを1~50barの圧力下で硬化させ押圧するステップfと、を含む方法。
【請求項12】
前記ステップfに続いて、表面を両側での研削、爆砕、化学的処理、またはプラズマ処理によって活性化する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
0質量%~40質量%のフィラーを前記デュロマー樹脂中に分散させる、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記押圧するステップは、構造化ツールを用いて実施される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
セパレータプレートの、レドックスフロー電池もしくは燃料電池における使用または静電空気清浄デバイス用の電極としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータプレート、セパレータプレートを製造するための方法、およびセパレータプレートの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プロトン交換膜(PEM)燃料電池、リン酸燃料電池、またはレドックスフロー電池におけるセパレータプレートまたはバイポーラプレートは、金属ベースであるか、または炭素ベースである。金属プレートは非常に安定しており、非常に薄くすることができる(<0.2mm)が、金属を腐食から保護し、したがって、システム全体の耐用年数を延ばす必要がある。金属プレートは、腐食から保護するために貴金属または炭素/黒鉛でコーティングされることが多い。この手法は、非常にコストがかかるという欠点を有する。炭素ベースのプレートは、腐食の問題を有しないが、機械的に不安定となり、したがって、壁厚さが大きく、一般に0.6mmを超える。壁厚さが大きいと、システム全体の構造量および重量が悪影響を受け、それによって、材料の生産コストが高く材料の使用量が多いことに起因してコストが高くなる。加えて、セパレータプレートを無限材料として製造することができる場合、最終製品が多数設置され、これによって生産コストが低減するので有利である。
【0003】
たとえば、特許文献1に記載されているように、燃料電池またはレドックスフロー電池における気体拡散層用の一次製品として炭素繊維紙が知られている。そこに記載されている方法は、連続的なプロセスにおいて実施することができる。炭素繊維紙は、フェノール樹脂スラリが含浸され、次いで炭化または黒鉛化される(特許文献1の実施形態1を参照)。炭素繊維紙、ならびにスラリ含浸および炭化/黒鉛化後の第1の中間製品は、多孔性が非常に高く、すなわち、透過性が非常に高く、機械的安定性が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、上述の従来技術の欠点を解消するセパレータプレート、ならびにその製造および使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題は、セパレータプレートであって、デュロマー樹脂を含浸させた炭素繊維強化カーボンの単層を備え、連続的な導電性カーボンネットワークを有し、厚さが0.5mm未満、好ましくは0.1~0.3mmであり、引張強度が30MPaよりも大きく、好ましくは35MPaを超え、特に好ましくは45MPaを超えるセパレータプレートを提供することによって実現される。
【0007】
本発明の文脈では、連続的な導電性ネットワークは、中断されないネットワークを指すものと理解される。
【0008】
セパレータプレートの厚さは、壁厚さを指すものと理解され、厚さが0.5mm未満であると、機械的に十分安定しており、重量が少なく、したがって、燃料電池全体の層構造内の必要な構造量が少ないので有利である。引張強度が30MPaを超えると、セパレータプレートは十分に機械的に安定しており、そのため、小さい厚さで製造し操作することができる。厚さが0.5mmよりも大きいと、体積抵抗が非常に大きくなり、燃料電池全体が非効率的になる。
【0009】
本発明によれば、セパレータプレートは、体積抵抗が8mΩcm2未満であり、好ましくは5mΩcm2未満であり、特に好ましくは3mΩcm2未満である。体積抵抗が8mΩcm2よりも大きい場合、抵抗損が過度に大きくなり、燃料電池が非効率的になり、たとえば、過度に加熱される。体積抵抗の測定については以下に説明する。
【0010】
セパレータプレートは有利には、密度が1.7g/cm3未満であり、好ましくは1.4g/cm3未満であり、特に好ましくは1.3g/cm3未満である。密度が1.7g/cm3よりも大きい場合、得られるセパレータプレートの重量が大きくなるという欠点が悪影響を及ぼす。
【0011】
本発明によれば、炭素繊維強化カーボンは、炭素繊維間に炭素バインダ架橋を有する炭素繊維織物の単層を含む。これにより、炭素繊維間の炭素バインダ架橋によって、連続的な導電性ネットワークが形成されるので、依然として良好な導電性を有する繊維強化に起因して特に薄く高張力のセパレータプレートが得られる。
【0012】
有利には、炭素繊維織物は、炭素繊維紙、炭素繊維不織布、炭素繊維織物、またはステーブル繊維織物の群から得られる。
【0013】
炭素繊維紙の製造では、水性短炭素繊維バインダ混合物のスラリが抄紙機におけるスクリーン上に堆積される。乾燥ステップの後、短く切断された繊維が互いに組み合わされ、炭素繊維が平面配向(2次元構造)における紙の平面内で整列される。一方、炭素繊維不織布は、短繊維を湿潤保存または乾燥保存することによって製造される3次元構造であり、この3次元構造は、針または水噴射を使用する機械的強化プロセスによって製造される。炭素繊維織物は、平行に延びず、したがって交差する少なくとも2つの糸系を有する織物繊維である。ステープル繊維織物は、牽切され撚り合わされたフィラメントから作られる織糸である。
【0014】
本発明によれば、デュロマー樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、またはベンゾオキサジン樹脂の群から得られる樹脂を含む。
【0015】
デュロマー樹脂は、カーボンネットワークに基づいて導電性を維持しつつ炭素繊維織物の孔を閉鎖する。さらに、これによって密度および機械的強度を高める。
【0016】
有利には、デュロマー樹脂は、分散フィラーを含む。
【0017】
フィラーは、カーボンブラック、膨張黒鉛、天然または合成黒鉛、グラウンド炭素繊維、またはそれらの混合物の群から選択される。フィラーは、連続的な導電性カーボンネットワークがフィラーによってさらに膨張するので導電性をさらに高めることができる。フィラーはまた、フィラー粒子の形態に応じて、たとえば、含浸させるカーボンネットワークがよりうまく湿潤することに起因して孔の形成を防止するか、または血小板状異方性形態の場合に歯付き層をガスバリアとして形成することによって、セパレータプレートの密度に対して好ましい効果を有することができる。
【0018】
本発明によれば、フィラーの質量分率は、0質量%~40質量%であり、好ましくは5質量%~20質量%であり、特に好ましくは8質量%~15質量%である。5質量%未満では、導電性が十分高くならず、40質量%よりも高いと、粘度が高くなって、含浸の完全性に対する問題が生じる。
【0019】
有利なことに、セパレータプレートの断面は、フィラーの濃度勾配を有する。このことは、フィラーが、粒子のサイズおよび形態に応じて、主に表面上に留まり、濃度勾配を形成させることができることを意味する。このことは、セパレータプレートの外側領域により高濃度のフィラーがあり、セパレータプレートの内側領域により低濃度のフィラーがあることを意味する。濃度勾配は、フィラーのタイプ、特に粒径に依存する。フィラーが主に表面上に留まることによって、セパレータプレートの密度がさらに高くなり、導電性が向上し、接触抵抗が低下する。
【0020】
セパレータプレートは有利には、透過係数が5×10-5cm2/s未満であり、好ましくは1×10-5cm2/s未満である。透過係数が5×10-5cm2/s未満であると、セパレータプレートは、技術的に密なセパレータプレートと見なされ、すなわち、この技術的な密度は、それぞれに異なる気体または液体空間用のセパレータプレートとして使用するための要件を満たす。
【0021】
本発明によれば、デュロマー樹脂を含浸させた炭素繊維強化カーボンの表面は構造化される。この構造化によって、気体/液体の目標とされる制御された供給、および生じる場合がある反応生成物の除去が可能になる。さらに、この構造化は、スタック構造の水冷に使用することができる。
【0022】
本発明の別の主題は、セパレータプレートを製造するための方法であって、以下のステップを含む。
a)炭素繊維織物を提供するステップ
b)炭素繊維織物に炭素ドナーを含浸させるステップ
c)温度が1300℃よりも高く、好ましくは1700℃よりも高く、特に好ましくは2000℃よりも高い不活性気体雰囲気において含浸させた炭素繊維織物を高温処理するステップ
d)デュロマー樹脂系を提供するステップ
e)ステップc)において取得された炭素繊維強化カーボンにステップd)において提供されたデュロマー樹脂系を含浸させるステップ
f)ステップe)からの樹脂を含浸させた炭素繊維強化カーボンを1~50barの圧力下で硬化させ押圧するステップ
【0023】
本発明の文脈では、ステップb)における炭素ドナーは、炭素収率が20質量%を超え、追加的に炭素、黒鉛、またはカーボンブラックを充填することができる樹脂を指すものと理解される。不活性気体雰囲気は、窒素またはアルゴン雰囲気を指すものと理解される。含浸ステップb)およびe)は、一方の側または両側で実施することができる。デュロマー樹脂系による含浸ならびにステップe)およびf)における硬化および押圧は、炭素繊維強化カーボンの密度および機械的強度を高め、このため、セパレータプレートは非常に薄い構成を有することができる。
【0024】
ステップf)に続いて、有利には、両側における研削、爆砕、化学的処理、またはプラズマ処理によって表面を活性化することができる。この活性化は、セパレータプレート上に存在する場合がある電気的絶縁層(樹脂層)を除去することができる。
【0025】
有利には、0質量%~40質量%、好ましくは5質量%~20質量%、特に好ましくは8質量%~15質量%のフィラーをデュロマー樹脂系に分散させる。フィラーは、導電性および密度をさらに高めるかまたは改善することができる。
【0026】
押圧するステップは有利には、構造化されたツールを用いて実行される。ツールは、エンボス加工ローラ、成形ローラまたはプレートを指すものと理解される。構造化ツールは、押圧するステップにおいて変形を実現する。押圧するステップは、デュロマー樹脂系が炭素繊維織物の内部にさらに食い込むのを可能にし、フィラーは、粒子のサイズに応じて、主に表面上に留まることが可能になり、濃度勾配を形成させる。このことは、セパレータプレートが断面において、セパレータプレートの両側でセパレータプレートの外側から内側に減少する濃度勾配を有することを意味する。濃度勾配は、フィラーのタイプ、特に粒径に依存する。フィラーが主に表面上に留まるので、導電性を改善し、接触抵抗を低減させることができ、セパレータプレートの密度をさらに高めることが可能になる。
【0027】
本発明によれば、方法は連続的な方法またはバッチ方法として実施することができる。特に、連続的な方法が有利である。
【0028】
別の主題は、セパレータプレートの、レドックスフロー電池もしくは燃料電池における使用または静電空気清浄デバイス用の電極としての使用である。
【0029】
以下では、純粋に一例として、有利な実施形態により、添付の図面を参照しながら本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】デュロマー樹脂(2)を含む炭素繊維強化カーボン(1)の単層を備えるセパレータプレート(4)を示す図である。
【
図2】デュロマー樹脂(2)およびフィラー(3)を含む炭素繊維強化カーボン(1)の単層を備えるセパレータプレート(4)を示す図である。
【
図3】デュロマー樹脂(2)およびフィラー(3)を含む炭素繊維強化カーボン(1)の単層を備えるセパレータプレート(4)を示す図である。
【
図4】炭素繊維強化カーボン(1)の単層の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
【
図5】本発明によるセパレータプレートのマイクログラフを示す図である。
【
図6】ダイアグラム1:表面圧力の関数としての体積抵抗。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、デュロマー樹脂(2)を含浸させた炭素繊維強化カーボン(1)の単層を備えるセパレータプレート(4)を示す。
【0032】
図2は、デュロマー樹脂(2)を含浸され、フィラー(3)を有する、炭素繊維強化カーボン(1)の単層を備えるセパレータプレート(4)を示す。フィラーの特性に起因して、フィラーが多孔性の炭素繊維強化カーボン(1)の内部にほんのわずかしか食い込まないようにする濃度勾配が生じる。
【0033】
図3は、デュロマー樹脂(2)を含浸され、フィラー(3)を有する、炭素繊維強化カーボン(1)の単層を備えるセパレータプレート(4)を示す。フィラーの様々な粒径に起因して、より小さい粒子は、より大きい粒子よりもさらに炭素繊維強化カーボン(1)の内部に食い込む。
【0034】
図4は、デュロマー樹脂系を用いて密封される前の多孔性の炭素繊維強化カーボン(1)のSEM画像を示す。炭素繊維間の炭素バインダ架橋が明確に見える。繊維とバインダ架橋との組合せは、連続的な導電性ネットワークを形成する。
【0035】
図5は、外側領域にフィラーが蓄積されており、内側の方のフィラー濃度が低くなっている、本発明によるセパレータプレートのマイクログラフを示す。
【0036】
ダイアグラム1は、表面圧力に基づく体積抵抗を示す。(低い表面圧力において)最初は高い体積抵抗が純粋な材料抵抗を表すだけでなく、接触抵抗のかなりの部分も反映していることが明らかになる。表面圧力が高くなるにつれて、接触抵抗が低下し、測定される体積抵抗は、材料抵抗の寄与によって支配される。表面圧力が1~1.5MPaの範囲では、ほぼ定常体積抵抗レベルに達する。1MPaの表面圧力レベルは、燃料電池スタックにおける実適用条件に概ね相当する。ダイアグラム1は、実施形態1を外部GDL(気体拡散層)の参照測定値と一緒に示している。セパレータプレートの追加の材料層は、2つのGDL層を含むサンドイッチ層構造の全体的な抵抗に対する寄与のわずかな部分に過ぎないことがわかる。
【0037】
以下に、実施形態を使用して本発明について説明する。ただし、実施形態は本発明の限定を表すものではない。
【0038】
セパレータプレートは後述のように製造することができる。
【0039】
測定方法
体積抵抗
体積抵抗についての用途対応測定値を取得するには、得られた硬化されたセパレータプレートを、2つの気体拡散層(GDL 22BB、SIGRACET(登録商標))間の燃料電池における構成に類似の層サンドイッチにおいて測定する。次式を使用して体積抵抗Rzを計算する:
Rz=ΔU・A/ΔI
【0040】
ΔUは、電極間の電圧であり、Aは、サンプルの表面積であり、ΔIは、電流である。
【0041】
電極は、酸化表面によって生じる場合がある境界抵抗を回避するために金でコーティングされる。測定の間、5psi(米国単位)~1.5MPaのそれぞれに異なる接触圧力が印加され、同時に層厚さが判定される。GDL 22BBで作られた追加の材料層の影響を判定するために、2つのGDL 22BB層のみを用いて基準測定を実施した。この直列接続では材料抵抗が加算されるので、サンプルの材料抵抗をGDL 22BB/サンプル/GDL 22BB層構造の抵抗と2つのGDL 22BB層の基準測定値との差として判定することができる。
【0042】
透過係数
透過係数は、DIN51935:2019-06に従って測定される。
【0043】
強度
強度をDIN EN ISO13934-1:2013-08に基づく引張強度テストによって判定した。標準準拠テストでは、長さが160mmで一貫した一定幅が50mmのビームをテスト試料形状として使用し、これからの逸脱としてテーパされた試料形状を使用した。テーパされた試料形状も、幅が50mmであり、自由亀裂長さは同じ長さであるが、クランピング領域内の破壊を回避するためにクランピング領域の幅は80mmである。
【0044】
密度
直径が50mmの円形サンプルに重みを加えることによって、幾何学的密度を判定した。
【0045】
炭素繊維強化カーボンの単層は、たとえば、特許文献1に記載されたように製造することができる。
【0046】
実施形態1:
(5psiの荷重で測定された)厚さが225μmの炭素繊維強化カーボン(1)の単層(SGL Carbon GmbHからGDL 36 AA、SIGRACET(登録商標)の名称で市販されている)の一方の側を、フィルムアプリケータを使用して厚さが180μmのエポキシ樹脂膜(2)でコーティングし、7質量%の導電性カーボンブラック(Imerys Graphite & Carbonから市販されているSuper P)をエポキシ樹脂中に分散させる。次いで、コーティングされた単層をホットプレスにおいて圧力32.5barおよび130℃で60分間硬化させる。
【0047】
1MPaの圧力における体積抵抗は7.8mΩcm2である。透過係数は2.2×10-6cm2/sである。このように取得されたセパレータプレートの厚さは210μmである(5psiの荷重で測定された)。幾何学的密度は1.14g/cm3である。引張強度は47MPaである。
【0048】
実施形態2
(5psiの荷重で測定された)厚さが225μmの炭素繊維強化カーボン(1)の単層(SGL Carbon GmbHからGDL 36 AA、SIGRACET(登録商標)の名称で市販されている)の両側を、厚さが130μmのエポキシ樹脂膜(2)でコーティングし、9質量%の膨張黒鉛(SGL Carbonから市販されているSigratherm(登録商標)GFG5)をエポキシ樹脂中に分散させる。次いで、コーティングされた単層をホットプレスにおいて圧力32.5barおよび130℃で60分間硬化させる。
【0049】
1MPaの表面圧力における体積抵抗は7.7mΩcm2である。透過係数は1.4×10-5cm2/sである。このように取得されたセパレータプレートの厚さは200μmである(5psiの荷重で測定された)。幾何学的密度は1.18g/cm3である。引張強度は39MPaである。
【0050】
実施形態3
(5psiの荷重で測定された)厚さが225μmの炭素繊維強化カーボン(1)の単層(SGL Carbon GmbHからGDL 36 AA、SIGRACET(登録商標)の名称で市販されている)の一方の側を、フィルムアプリケータを使用して厚さが180μmのエポキシ樹脂膜(2)でコーティングし、9質量%の導電性カーボンブラック(Imerys Graphite & Carbonから市販されているSuper P)をエポキシ樹脂中に分散させる。次いで、コーティングされた単層をホットプレスにおいて圧力32.5barおよび130℃で60分間硬化させる。
【0051】
1MPaの圧力における体積抵抗は3.8mΩcm2である。透過係数は5.5×10-6cm2/sである。このように取得されたセパレータプレートの厚さは202μmである(5psiの荷重で測定された)。幾何学的密度は1.04g/cm3である。
【0052】
実施形態4
(5psiの荷重で測定された)厚さが225μmの炭素繊維強化カーボン(1)の単層(SGL Carbon GmbHからGDL 36 AA、SIGRACET(登録商標)の名称で市販されている)の一方の側を、厚さが180μmのエポキシ樹脂膜(2)でコーティングし、10質量%のフィラーをエポキシ樹脂中に分散させる。10質量%は、70対30の比率の導電性カーボンブラック(Imerysから市販されているSuper P)および膨張黒鉛(SGL Carbonから市販されているSigratherm(登録商標)GFG5)で構成されている。次いで、コーティングされた単層をホットプレスにおいて圧力32.5barおよび130℃で60分間硬化させる。
【0053】
1MPaの表面圧力における体積抵抗は6.2mΩcm2である。透過係数は2.2×10-6cm2/sである。このように取得されたセパレータプレートの厚さは220μmである(5psiの荷重で測定された)。幾何学的密度は1.18g/cm3である。
【0054】
実施形態5
(5psiの荷重で測定された)厚さが225μmの炭素繊維強化カーボン(1)の単層(SGL Carbon GmbHからGDL 36 AA、SIGRACET(登録商標)の名称で市販されている)の一方の側を、厚さが180μmのエポキシ樹脂膜(2)でコーティングし、10質量%のフィラーをエポキシ樹脂中に分散させる。10質量%は、30対70の比率の導電性カーボンブラック(Imerys Graphite & Carbonから市販されているSuper P)および膨張黒鉛(SGL Carbonから市販されているSigratherm(登録商標)GFG5)で構成されている。次いで、コーティングされた単層をホットプレスにおいて圧力32.5barおよび130℃で60分間硬化させる。
【0055】
1MPaの表面圧力における体積抵抗は8mΩcm2である。透過係数は3.7×10-6cm2/sである。このように取得されたセパレータプレートの厚さは208μmである(5psiの荷重で測定された)。幾何学的密度は1.04g/cm3である。
【0056】
実施形態6:
(5psiの荷重で測定された)厚さが225μmの炭素繊維強化カーボン(1)の単層(SGL Carbon GmbHからGDL 36 AA、SIGRACET(登録商標)の名称で市販されている)の一方の側を、フィルムアプリケータを使用して厚さが180μmのエポキシ樹脂膜(2)でコーティングし、7質量%の導電性カーボンブラック(Imerys Graphite & Carbonから市販されているSuper P)をエポキシ樹脂中に分散させる。次いで、コーティングされた単層をホットプレスにおいて圧力10barおよび130℃で60分間硬化させる。
【0057】
1MPaの圧力における体積抵抗は5.4mΩcm2である。透過係数は3.9×10-6cm2/sである。このように取得されたセパレータプレートの厚さは205μmである(5psiの荷重で測定された)。幾何学的密度は1.15g/cm3である。
【符号の説明】
【0058】
1 炭素繊維強化カーボンの単層
2 デュロマー樹脂
3 フィラー
4 セパレータプレート
【国際調査報告】