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特表2024-517580微生物細胞から栄養補給剤を製造するための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】微生物細胞から栄養補給剤を製造するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20240416BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20240416BHJP
【FI】
C12N1/20 C
A23L33/135
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560847
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 FI2022050228
(87)【国際公開番号】W WO2022229503
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】20215488
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522120255
【氏名又は名称】ソーラー フーズ オサケユイチア
(74)【代理人】
【識別番号】100145849
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 眞樹子
(72)【発明者】
【氏名】ディレク エルチリ-クーラ
(72)【発明者】
【氏名】ユハ ペッカ ピットカエーネン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
【Fターム(参考)】
4B018MD85
4B018ME14
4B018MF04
4B018MF06
4B065AA01X
4B065BD04
4B065BD08
4B065BD10
4B065BD15
4B065BD18
4B065CA41
(57)【要約】
微生物細胞から栄養補給剤を製造する方法の開示である。この方法は、バイオマスを得るために微生物細胞を培養することと、バイオマスを55℃から80℃までの温度で10分から60分までのインキュベーション時間にわたる熱処理によりインキュベートすることと、固相から液相を分離して除去することによりバイオマスを濃縮して、栄養補給剤の総重量の2%から40%までの乾物含量を得ることと、を含む。前述の方法を使用して微生物細胞から栄養補給剤を製造するシステムも開示される。システムは、前述の方法の各工程を実施するためのバイオリアクタ、熱交換器及びセパレータを含む。
【選択図】
図6





























【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物細胞から栄養補給剤を製造する方法であって、前記方法は、
-前記微生物細胞を培養して、グラム陰性菌を含むバイオマスを得ることと、
-前記バイオマスを、前記微生物細胞の壁を少なくとも部分的に分解するために、55℃から80℃までの温度で10分から60分までのインキュベーション時間にわたる熱処理によりインキュベートすることと、
-前記インキュベートされたバイオマスを、前記栄養補給剤の総重量の2%から40%までの乾物含量を得るために、固相から液相を分離して除去することによって濃縮することと、及び、
-前記栄養補給剤を、前記微生物細胞の前記壁を少なくとも部分的に分解するための少なくとも1回の高圧均質化で均質化することと、を含む方法。
【請求項2】
前記乾物含量は、前記栄養補給剤の総重量の、
-5%から30%まで、又は
-好ましくは8%から25%まで、
である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微生物産物の総重量の94%から99%までの乾物含量を得るために、前記栄養補給剤を乾燥させることを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記インキュベーション温度が、
-55℃から70℃まで、又は
-好ましくは60℃から68℃までであり、
前記インキュベーション時間が、
-15分から40分まで、又は
-好ましくは20分から30分までである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記栄養補給剤を高水分押出しで押出すことを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記均質化することが、
-800バールから2000バールまで、又は
-好ましくは900バールから1000バールまで
の圧力下で行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記分離することが、遠心分離、濾過のうちの少なくとも1つから選択される分離方法を用いて行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記乾燥することが、ドラム乾燥又は噴霧乾燥の少なくとも1つとして選択され、乾燥温度が120℃から180℃までである、請求項3~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記微生物細胞が、VTT-E-193585又はその誘導体として寄託された分離細菌株を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
微生物細胞から栄養補給剤を製造するためのシステムであって、前記システムは、
-グラム陰性細菌を含むバイオマスを得るために、前記微生物細胞を培養するためのバイオリアクタと、
-前記微生物細胞の壁を部分的に分解するための、55℃から80℃までのインキュベーション温度及び10分から60分までのインキュベーション時間を有する熱交換器と、
-前記栄養補給剤の総重量の2%から40%までの乾物含量を得るために、固相と液相とを分離するためのセパレータと、及び、
-前記栄養補給剤の前記微生物細胞の前記壁を少なくとも部分的に分解するための高圧ホモジナイザと、を備える、システム。
【請求項11】
前記栄養補給剤の総重量の94%から99%までの乾物含量を得るための乾燥機を更に備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
高水分押出で前記微生物産物を押出すための押出機を更に備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記熱交換器が、タンク熱交換器、管状熱交換器、又はプレート熱交換器のうちの少なくとも1つであるように選択される、請求項10~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記高圧ホモジナイザ内の前記圧力が、800バールから2000バールまで、又は好ましくは900バールから1000バールまでである、請求項10~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記セパレータが、遠心分離機、フィルタの少なくとも一方であるように選択される、請求項10~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記乾燥機が、ドラム乾燥機又は噴霧乾燥機の少なくとも1つであるように選択される、請求項11~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記微生物細胞が、VTT-E-193585又はその誘導体として寄託された分離細菌株を含む、請求項10~16のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、増殖した微生物塊のバイオプロセシングに関し、より具体的には、微生物細胞から栄養補給剤を製造する方法及びシステムに関する。これに関して、本開示は、製造中、特に下流処理中に、食品原料、特に単一細胞栄養補給剤からエンドトキシンを除去することに関する。
【背景技術】
【0002】
食品科学及び技術における現在のイノベーションの爆発と共に、代替食品、特に代替タンパク質等の代替的な及び新たな食品概念が導入されている。これに関して、微生物は、天然資源の使用を最小限に抑え、温室効果ガスの排出を最小限に抑えてバイオリアクタ内で増殖され、そしてバイオマスを食品又は飼料に変換することは、有望で持続可能なタンパク質製造方法である。代替肉(Quorn(登録商標))の形態のマイコプロテイン(真菌バイオマス)又は飼料添加物として使用される様々な細菌バイオマス(例えば、Pekilo(登録商標)、Uniprotein(登録商標))等のような、商業的な例は既にほとんど存在しない。これらの場合、微生物バイオマスは少量で見られる汚染物質ではなく、食品又は飼料の大部分を構成する。グラム陰性細菌(大腸菌(E.coli)及びバクテロイデス(Bacteroidetes)等)を単一の供給源又はより大きな細菌叢の一部として使用してこれらの食品及び飼料の概念を調製する場合、エンドトキシン含有量の制御が非常に重要になる。
【0003】
特に、グラム陰性菌は我々の環境の一部であり、それによる摂取又は吸入の結果としてヒトの腸内細菌叢に寄与する。グラム陰性菌は、腸から血流に移行し、ヒト免疫系の刺激をもたらす能力を有する。具体的には、リポ多糖(LPS)の一種である微生物エンドトキシンは、毒性作用を引き起こす前述の刺激を担う。より具体的には、エンドトキシンは、血液中に十分に大量に放出されると、低悪性度の炎症、肝臓損傷、糖尿病、肥満及び血中エンドトキシンの低レベルに関連する認知障害の他に、発熱及び場合によっては致死的な敗血症性ショックを含む毒性作用をもたらす。
【0004】
ヒト(又は家畜)の毎日の食事におけるエンドトキシン含有量の最大の供給源は、グラム陰性菌による食物の汚染である。摂取されるエンドトキシンの他の最も一般的な供給源は、プロバイオティックカプセル、サプリメント又は他の食品原料である。グラム陰性プロバイオティクスの大部分は、大腸菌(E.coli)株であるか、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属する。通常、食品が摂取されると、腸の上皮細胞は、細菌及びLPSが血流に移行するのを防ぐ粘液層の産生を伴う物理的障壁として作用する。しかしながら、内毒素血症又はリーキーガット症候群(leaky gut syndrome)の場合、粘膜分解のために細菌移行が起こり得る。さらに、摂取されたエンドトキシンは健康リスクを含まないので、摂取された例に対して設定されたエンドトキシン限界はなく、これはまた、腸内に存在するグラム陰性菌レベルと比較した場合、そのような取り込みに起因する低い細胞密度に関連する(Wassenaar and Zimmerman,2018で論じられる)。
【0005】
エンドトキシンの体内への侵入を防止するための従来の技術には、エンドトキシンの存在に関する体内に侵入する任意の食品又は医薬品の予備試験が含まれる。これに関して、非経口薬及び注射用デバイスを含む医薬品は、市場に出荷される前に試験される。これに関して、エンドトキシン量をそれぞれ推定し、微生物エンドトキシンを破壊するために、高度なアッセイ及び滅菌技術が採用されている。しかしながら、微生物エンドトキシンは熱安定性が高く、通常の滅菌条件下では破壊されない。従来、実験室規模では、微生物エンドトキシンは、250℃の温度に30分超若しくは180℃の温度で3時間超、又は少なくとも0.1Mの強度の酸若しくはアルカリに曝露された場合に不活性化され得る。タンパク質溶液の他のエンドトキシン除去方法は、通常、イオン交換クロマトグラフィー、固定化されたL-ヒスチジン、ポリ-L-リジン、ポリ(メチルL-グルタメート)、及びポリミキシンB等の親和性吸着剤、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、スクロース勾配遠心分離、及びTriton X114相分離、濾過、親和性吸着剤、活性炭、ナノ粒子ベースの方法等を含むクロマトグラフィー又は界面活性剤相分配に基づく。特に、エンドトキシンを完全に除去し、生成物を非発熱原性にするためには、複数のサイクルを実施する必要がある。これらのプロセスは、製薬産業において利用されており、例えば、グラム陰性菌による抗生物質の製造又は静脈内薬物及びデバイスにおける汚染リスクの排除である。
【0006】
しかしながら、食品は、内毒素学(血液中のLPSの存在)の観点から静脈内医薬品とは異なると考えられている。したがって、前述の技術は、関連する高いコスト、試薬によって導入される潜在的な毒性、並びに食品及び医薬用途における異なる純度レベル要件のために、食品製造に適用可能ではない。さらに、食品の汚染リスクを排除する以外に、食品産業で特に使用される既知のプロセスはなく、これは良好な製造及び取扱い慣行を所定の位置に保つことを意味する。
【0007】
したがって、前述の議論に照らして、エンドトキシンを低減しながら微生物細胞から栄養補給剤を製造するための従来の技術に関連する欠点を克服する必要性がそこに存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、微生物細胞から栄養補給剤を製造する方法を提供しようとするものである。本開示はまた、微生物細胞から栄養補給剤を製造するシステムを提供しようとする。本開示は、食品、機能性食品等におけるエンドトキシンを効率的に低減するという既存の課題に対する解決策を提供しようとするものである。本開示の目的は、従来技術で遭遇する問題を少なくとも部分的に克服する解決策を提供することであり、栄養補給剤中のエンドトキシンレベルの低下をもたらす微生物細胞から栄養補給剤を製造し、その結果、本質的に熱不活性化乾燥栄養補給剤として記載されるスラリー又は粉末の形態の食品又は飼料製造のために当該栄養補給剤を使用するための効率的で堅牢な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、本開示の実施形態は、微生物細胞から栄養補給剤を製造する方法であって、当該方法は、
-前記微生物細胞を培養して、グラム陰性菌を含むバイオマスを得ることと、
-前記バイオマスを、前記微生物細胞の壁を少なくとも部分的に分解するために、55℃から80℃までの温度で10分から60分までのインキュベーション時間にわたる熱処理によりインキュベートすることと、
-前記インキュベートされたバイオマスを、前記栄養補給剤の総重量の2%から40%までの乾物含量を得るために、固相から液相を分離して除去することによって濃縮することと、及び、
-前記栄養補給剤を、前記微生物細胞の前記壁を少なくとも部分的に分解するための少なくとも1回の高圧均質化で均質化することとを含む、微生物細胞から栄養補給剤を製造する方法、を提供する。
【0010】
別の態様では、本開示の実施形態は、微生物細胞から栄養補給剤を製造するシステムであって、当該システムは、
-グラム陰性細菌を含むバイオマスを得るために、前記微生物細胞を培養するためのバイオリアクタと、
-前記微生物細胞の壁を部分的に分解するための、55℃から80℃までのインキュベーション温度及び10分から60分までのインキュベーション時間を有する熱交換器と、
-前記栄養補給剤の総重量の2%から40%までの乾物含量を得るために、固相と液相とを分離するためのセパレータと、及び、
-前記栄養補給剤の前記微生物細胞の前記壁を少なくとも部分的に分解するための高圧ホモジナイザと、を備える、微生物細胞から栄養補給剤を製造するためのシステムを提供する。
【0011】
本開示の実施形態は、先行技術における前述の問題を実質的に排除するか、又は少なくとも部分的に対処し、それを食品加工に容易に使用するために、培養、インキュベート及び分離を含むバイオプロセスを提供することを可能にする。さらに、前述のバイオプロセスの選択された条件は、製造に多大な運用コストを追加することなく、微生物細胞から製造され、エンドトキシンレベルが低下したグラム陰性菌を含む最終栄養補給剤をもたらす。
【0012】
本開示の更なる態様、利点、特徴及び目的は、添付の特許請求の範囲と併せて解釈される例示的な実施形態の図面及び詳細な説明から明らかになるであろう。
【0013】
本開示の特徴は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲から逸脱することなく、様々な組み合わせで組み合わせることができることが理解されよう。
【0014】
(図面の概要)
上記の概要、並びに例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読めばよりよく理解される。本開示を例示する目的で、本開示の例示的な構成が図面に示されている。しかしながら、本開示は、本明細書に開示される特定の方法及び手段に限定されない。さらに、当業者は、図面が縮尺通りではないことを理解しうる。可能な限り、同様の要素は同じ番号で示されている。
【0015】
以下の図を参照して、ここでは、本開示の実施形態を単なる例として説明する。
【0016】
なお、添付図面において、下線が引かれた数字は、下線が引かれた数字が上に位置する項目、又は、下線が引かれた数字が隣接する項目を表すために用いられる。下線が引かれていない番号は、下線が引かれていない番号を項目に連結する線によって識別される項目に関する。番号に下線が引かれておらず、関連する矢印を伴う場合、下線が引かれていない番号は、矢印が指し示している一般的な項目を識別するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本開示の一実施形態による、微生物細胞から栄養補給剤を製造する方法の工程を示すフローチャートである。
図2図2は、本開示の一実施形態による、微生物細胞から栄養補給剤を製造する方法の工程を示すフローチャートである。
図3図3は、本開示の一実施形態による、低エンドトキシン細菌バイオマス製造プロセスの例示である。
図4図4は、本開示の一実施形態による、微生物細胞から栄養補給剤を製造するシステムのブロック図である。
図5図5は、本開示の一実施形態による、高水分食肉代替品を製造するシステムのブロック図である。
図6図6は、本開示の一実施形態による、高水分食肉代替品を製造するプロセスの概略図である。
図7図7Aは、本開示の一実施形態による、中間のエンドトキシン活性を示す異なるサンプルのLALアッセイ結果である。図7Bは、本開示の一実施形態による、中間のエンドトキシン活性を示す異なるサンプルのLALアッセイ結果である。
図8図8は、本開示の一実施形態による、中間のエンドトキシン活性を示す異なるサンプルのLALアッセイ結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の詳細な説明は、本開示の実施形態及びそれらを行うことができる方法を示す。本開示を実施するいくつかの態様が開示されているが、当業者であれば、本開示を実施又は実行するための他の実施形態も可能であることを認識しうる。
【0019】
一態様では、本開示の実施形態は、微生物細胞から栄養補給剤を製造する方法を提供し、当該方法は、
-前記微生物細胞を培養して、グラム陰性菌を含むバイオマスを得ることと、
-前記バイオマスを、前記微生物細胞の壁を少なくとも部分的に分解するために、55℃から80℃までの温度で10分から60分までのインキュベーション時間にわたる熱処理によりインキュベートすることと、
-前記インキュベートされたバイオマスを、前記栄養補給剤の総重量の2%から40%までの乾物含量を得るために、固相から液相を分離して除去することによって濃縮することと、及び、
-前記栄養補給剤を、前記微生物細胞の前記壁を少なくとも部分的に分解するための少なくとも1回の高圧均質化で均質化することと、を含む。
【0020】
別の態様では、本開示の実施形態は、微生物細胞から栄養補給剤を製造するシステムを提供し、当該システムは、
-グラム陰性細菌を含むバイオマスを得るために、前記微生物細胞を培養するためのバイオリアクタと、
-前記微生物細胞の壁を部分的に分解するための、55℃から80℃までのインキュベーション温度及び10分から60分までのインキュベーション時間を有する熱交換器と、
-前記栄養補給剤の総重量の2%から40%までの乾物含量を得るために、固相と液相とを分離するためのセパレータと、及び、
-前記栄養補給剤の前記微生物細胞の前記壁を少なくとも部分的に分解するための高圧ホモジナイザと、を備える。
【0021】
本開示は、微生物細胞から栄養補給剤を製造する前述の方法を提供する。本開示の方法は、バイオマスを製造するために微生物細胞を増殖させることと、食品又は飼料における使用のための栄養補給剤を製造するために、下流処理によって当該バイオマスを処理することとを含む。グラム陰性菌を含むバイオマスの処理プロセスは、微生物細胞の細胞膜を効果的に破壊し、細胞膜から微生物エンドトキシン(リポ多糖)を放出するための培養、インキュベーション及び分離の工程を含む。有益なことに、処理プロセスは、飼料、食品又は食品原料の製造のために、エンドトキシンの量が著しく減少した濃縮栄養補給剤を提供する。さらに、本開示の方法は、細菌、真菌、原生動物、植物細胞、動物細胞等を含むがこれらに限定されない多種多様な細胞を、栄養補給剤を製造するためのその増殖及び処理のために利用することを可能にし、それにより、現在の食品システムが持続可能でなく、環境損傷の大きな原因であるという事実に起因する、ヒト(及び家畜)の食事における代替食品、特に代替タンパク質の否定できない必要性に関連する問題を解決する。さらに、前述の方法の選択された条件は、製造に多大な運用コストを追加することなく、エンドトキシンレベルが低下した微生物細胞から製造される最終栄養補給剤をもたらす。
【0022】
本開示を通して、本明細書で使用される場合、「栄養補給剤」という用語は、微生物細胞から抽出された栄養補給剤を指す。栄養補給剤は、炭水化物、脂肪又は任意の他の化合物を含まないか又は無視できる程度のタンパク質の濃縮源を提供する。或いは、微生物細胞から製造される栄養補給剤はタンパク質を含み、また、ビタミン及びミネラル等の化合物、例えば鉄で強化される。特に、タンパク質は身体の構成要素であり、典型的には筋肉の構築及び回復に不可欠である。長期間の過剰なタンパク質消費から報告される腎臓、肝臓及び身体の骨とカルシウムのバランスへの影響を回避するために、タンパク質消費を監視すべきであることが理解されるであろう。通常、健康な体には、体重1キログラム当たり約0.5~2.5グラムのタンパク質が1日当たり消費されるべきである。任意に、栄養補給剤を、ヒト又は動物(鳥類、魚類等を含む)による摂取のために、水、乳、果物又は野菜のジュース又はスムージー等と混合することができる。
【0023】
微生物細胞から栄養補給剤を製造する方法は、バイオマスを得るために微生物細胞を培養することを含む。ここで使用される場合、「微生物細胞」という用語は、タンパク質の豊富な供給源である微生物を指す。微生物には、典型的には、細菌、古細菌、真菌、原生生物等が含まれる。微生物細胞は、微生物塊を構築するために制御された条件下で培養される。ここで使用される場合、「バイオマス」という用語は、初期量の微生物細胞(接種材料)から増殖し、更に再生産し続ける培養培地等のサンプル中の生体成分(すなわち、微生物)の量の尺度を指す。バイオマスを得るために、単一の種類の微生物又は微生物の組み合わせを増殖させることができることが理解されうる。微生物はより短い繁殖時間を有し、したがって、高細胞密度の微生物塊を産生するために迅速に増殖させることができることが理解されうる。さらに、微生物細胞はタンパク質の豊富な供給源であり、したがって、単一細胞タンパク質、すなわち、例えばヒトによる消費のための動物又は植物由来タンパク質の潜在的な代替物を製造するために利用され得る。しかしながら、微生物細胞はサイズが小さく密度が低いため、消費者のタンパク質需要を満たすために大量の微生物塊を産生する必要がある。さらに、より大量の微生物塊を採取することは、非常に効率的なマイクロスケール実験装置を必要とするため、そこから単一の微生物細胞及びタンパク質を回収することと比較して、より容易で費用効率が高い。言い換えれば、微生物細胞から食品原料栄養補給剤を製造するのに十分かつ実行可能な細胞密度を得ることは重要であり、最適な増殖条件で微生物細胞を培養することによって達成される。
【0024】
特に、微生物は、好気性、嫌気性及び通性の条件の範囲の異なる種類の増殖条件で増殖する能力を有する。さらに、微生物は、適切な自然環境又は人工系で増殖する。人工システムは、所与の微生物に適した自然環境を模倣するように構成される。典型的には、出発材料として作用する微生物の接種材料(すなわち、少量の)は、人工システムにおいて最適な増殖条件下でより多くの微生物を増殖させるために使用される。さらに、微生物は、制御された環境で、最適な増殖(すなわち、バイオマス)を達成するために規定の期間増殖させることができる。微生物の最適な増殖は、例えば、タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、繊維等を含むヒト栄養において、及びこの場合は微生物細胞から栄養補給剤を製造するためのような、後の使用のためにその後に回収されるそのバイオマス又は微生物増殖の副生成物に付随する。
【0025】
任意に、人工システムは、例えばバイオリアクタとして実装される。「バイオリアクタ」という用語は、規定の及び制御された物理的及び化学的条件下で、微生物細胞(例えばストック溶液から)の接種物の培養、微生物の増殖、並びに消費者の栄養上の、薬学的な又はエネルギーのニーズを満たすのに役立つ生体分子の産生に必要な生物学的及び/又は生化学的反応を意図した容器を指す。バイオマスを得るために必要な制御条件としては、最適なガス(二酸化炭素、水素、酸素等)、ミネラル、液相が挙げられる。任意に、バイオリアクタでは、微生物細胞の増殖は連続的であり、バイオマスの目標細胞密度が達成されると、例えば微生物細胞から栄養補給剤を製造する等のために、バイオマスはバイオリアクタから連続的に又はバッチ式で抽出される。例示的な実施態様では、バイオマス培養プロセスは、微生物細胞がストック溶液からバイオリアクタにロードされた状態でバイオリアクタ内で実施される。バイオマスは、微生物に応じて、制御された条件下で、炭素源、窒素源、エネルギー源、ミネラル及び他の特定の栄養素を含む増殖培地中で培養される。バイオリアクタでは、細胞増殖は連続的であり、バイオマスは目標細胞密度に達するとバイオリアクタから出る。回収されたバイオマスは、バイオマス又は処理されたバイオマスから得られた最終生成物から微生物エンドトキシンを低減又は除去するための処理工程に供される。いくつかの用途では、最終生成物は、部分的にのみ脱水されてもよく、又は全く脱水されなくてもよいことが理解されうる。
【0026】
バイオマスはグラム陰性菌を含む。グラム陰性菌は、グラム染色法で使用されるクリスタルバイオレット染色を保持しない細菌である。我々の環境の一部を形成するグラム陰性菌は、毎日摂取又は吸入される。グラム陰性菌としては、大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、エルシニア・ペスチス(Yersinia pestis)等が挙げられる。グラム陰性菌は、抗生物質、洗浄剤、リゾチーム、及び他の物理的又は化学的分解手段から細菌を保護する外膜を含む。さらに、外膜は複合リポ多糖(LPS)を含む。
【0027】
LPSは、多糖領域に共有結合した脂質領域を有する複雑な分子である。それは、細胞壁の外膜上に緻密でわずかに負に帯電したネットワークを形成し、内側の細胞に損傷を与える可能性がある化合物及び他の細胞から細胞を遮蔽するが、層は栄養素を入れるのに十分緩い(Wassenaar and Zimmerman,2018に記載)。構造的観点から、LPSにおいて3つの異なる領域が区別される。第1は、脂質Aであり、分子の唯一の脂質部分であり、その脂肪酸は、アンカーのように、分子が微生物細胞の外膜に挿入されることを可能にする。第2は、コアであり、脂質部分に連結され、稀で特異的な炭水化物を含有するオリゴ糖である。第3は、O鎖であり、O抗原性多糖と考えることができる長い糖鎖を形成するオリゴ糖の繰り返し単位からなる。注目すべきことに、LPSの毒性は主に脂質Aに起因するが、多糖は毒性が低い。微生物細胞中のLPSの一部はエンドトキシンであるが、全てのLPSが毒性活性を有するわけではないため、エンドトキシンとみなすことはできない。特に、脂質Aのいくつかの脂肪酸はβヒドロキシル化されており、他の生体分子には記載されていないため、エンドトキシンの特異的マーカーと考えられている。
【0028】
エンドトキシンは、グラム陰性菌の外膜中のLPS(脂質領域及び多糖領域で構成される)である。ヒト病原体(サルモネラ(Salmonella)、ナイセリア(Neisseria)、エルシニア(Yersinia)、ボルデテラ(Bordetella)等)、共生細菌(エシェリキア(Escherichia)、バクテロイデス(Bacteroides)、ベイロネラ(Veillonella)等)、又は環境細菌(リゾビア(Rhizobia)、キサントモナス(Xanthomonas)、一部のシュードモナス(Pseudomonas)等)さえもエンドトキシンを含有する。エンドトキシンは、血液中に十分に大量に放出される場合、免疫系の強力な刺激因子である。具体的には、エンドトキシンの脂質部分(すなわち、脂質A)は、エンドトキシンの毒性活性に寄与する。全てのエンドトキシンはLPSであるが、全てのLPSはエンドトキシンではないことが理解されうる。したがって、微生物エンドトキシンがヒト又は動物の体内に侵入するのを防ぐことが重要である。これに関して、バイオマスは、より安全で適切な最終生成物(すなわち、微生物細胞からの栄養補給剤)を消費者に提供するために、そこからエンドトキシンを低減するように処理される。一般に、グラム陽性菌はエンドトキシン除去を必要としないことが理解されるだろう。しかしながら、通常、グラム陽性菌を培養する場合、純粋な培養が必要でない場合、グラム陰性菌も存在し得る。そのような場合、当該グラム陽性菌の培養物は、グラム陰性菌に由来する微生物エンドトキシンを減少させるために処理する必要がある。
【0029】
任意に、微生物細胞は、VTT-E-193585又はその誘導体として寄託された分離細菌株を含む。当該分離細菌株又はその誘導体は、本質的に微生物エンドトキシンの供給源であるグラム陰性細菌である。当該分離細菌株又はその誘導体は遺伝的に安定であり、最適な条件からストレスの多い条件に及ぶ広範囲の処理条件で経時的に増殖させることができることが理解されうる。ここで使用される場合、「遺伝的に安定」という用語は、変化に抵抗し、複数世代又は細胞分裂(理想的には数百から数千の細胞分裂)にわたってその遺伝子型を維持する種又は株/単離体の特徴を指す。任意に、当該分離細菌株又はその誘導体は、エネルギー源として水素ガスを利用し、炭素源として二酸化炭素を利用する。有益には、当該株又はその誘導体は鉄及びビタミンB12を含む。さらに、当該株又はその誘導体から得られる最終生成物は、マメの異臭(bean-off-flavor)を有さず、したがって風味付けしやすい。おそらく、最終生成物は、旨味(すなわち、味が良い又は「肉のような」)の風味も有する。さらに、最終生成物は、そのさらに下流処理時にタンパク質の多い栄養補給剤をもたらす。
【0030】
ここで使用される場合、「下流処理」という用語は、バイオマスを得るためのバイオリアクタ内の微生物細胞培養に続くプロセスを指す。バイオマスの下流処理は、バイオマスを生理学的及び機械的条件に供することによって微生物エンドトキシンを低減又は除去することを可能にし、消費者、ヒト及び動物による使用にとって安全であるエンドトキシンが低減された又はエンドトキシンを含まない最終生成物を提供する。典型的には、下流処理は、熱処理(以下、「インキュベートすること」と呼ぶ)、加水分解、濃縮(以下、「分離すること」と呼ぶ)、任意に均質化すること及び脱水すること(以下、「乾燥すること」と呼ぶ)等の工程を含む。下流プロセスは、本開示に開示される微生物細胞から栄養補給剤を製造するための方法の工程であることが理解されうる。
【0031】
これに関して、本方法は、バイオマスを得た後、55℃から80℃までの温度で10分から60分までのインキュベーション時間にわたる熱処理によりバイオマスをインキュベートすることを含む。ここで使用される場合、「インキュベートすること」又は「インキュベーション」という用語は、選択された温度で選択されたインキュベーション時間にわたって行われる熱処理を指す。換言すれば、インキュベートすることにより、バイオマスは、温度等の適切な条件、及び任意に、例えば微生物の増殖及びバイオマスの更なる発生を可能にするための湿度及び大気組成を含む他の補完条件に供される。特に、バイオマスをインキュベートすることにより、微生物は、そのライフサイクルの異なる段階、例えば誘導期(lag phase)、対数期(log phase)、定常期(stationary phase)及び減少期(decline phase)を通して増殖することが可能になる。その後、後期対数期又は初期静止期のバイオマスは、典型的には、例えば、本開示に開示されるように微生物細胞から栄養補給剤を製造する等、その栄養上の利点のために使用されることが理解されうる。有益には、適切な温度でインキュベートすることで、微生物が特定の化学的及び構造的変化を受けて、更なる下流処理を可能にすることが可能になる。バイオマスを55℃から80℃までの温度で10分から60分までのインキュベーション時間にわたる熱処理によりインキュベートすると、微生物の細胞壁構造の外膜の加水分解が生じ、バイオマスの更なる処理中、例えばその分離段階中に、LPS含有成分(エンドトキシン等)の部分的除去をもたらす。インキュベーション温度は、例えば、55、56、57、58、59、60、65、70又は75℃から56、57、58、59、60、65、70、75又は80℃までであり得る。インキュベーション期間は、例えば、10、15、20、25、30、35又は40分から20、25、30、35、40、55又は60分までであり得る。さらに、外膜細胞壁の部分分解は、少なくとも10~1000倍低いエンドトキシン応答を有する最終生成物をもたらす。更に当該温度範囲は微生物の代謝活性を停止させ、例えば、当該温度範囲はバイオマスを不活性化する。
【0032】
任意に、インキュベーション温度は、55℃から70℃まで、又は好ましくは60℃から68℃までである。インキュベーション温度は、例えば、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66又は67℃から61、62、63、64、65、66、67、68、69又は70℃までであり得る。インキュベーション温度は、例えば、60、61、62、63、64、65、66又は67℃から61、62、63、64、65、66、67又は68℃までであり得る。
【0033】
任意に、インキュベーション時間は、15分から40分まで、又は好ましくは20分から30分までである。インキュベーション期間は、例えば、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30又は35分から20、22、24、26、28、30、35又は40分までであり得る。インキュベーション期間は、例えば、20、22、24、26又は28分から22、24、26、28又は30分までであり得る。
【0034】
有益には、選択された温度範囲及びインキュベーション時間でのバイオマスの前述のインキュベーションは、細胞壁からのLPSの部分的除去をもたらす細胞壁の外膜構造の加水分解をもたらす。さらに、60℃から68℃までの温度及び20分から30分までのインキュベーション時間でのバイオマスのインキュベーションは、細胞壁からのLPSの最も効率的な除去をもたらした。任意に、バイオマスをインキュベートすることは、バッチインキュベーション、連続インキュベーションの少なくとも1つであるように選択される。特に、バッチインキュベーションは、バッチでバイオマスをより長い所定のインキュベーション時間インキュベートし、インキュベートされたバイオマスの総量が一緒に、すなわちオールインオールアウト(all-in all-out)で取り出され、次いで次のインキュベーションサイクルのために新たに開始することに関する。連続インキュベーションは、より短いインキュベーション時間に関し、更なる処理のためにバイオマスを日常的に取り出し、そこから最終生成物、すなわち栄養補給剤を得ることに関する。
【0035】
さらに、本方法は、固相から液相を分離して除去することによってバイオマスを濃縮して、栄養補給剤の総重量の2%から40%までの乾物含量を得ることを含む。栄養補給剤の総重量に占める乾物含量は、例えば、2、4、6、8、10、15、20、25、30又は35%から6、8、10、15、20、25、30、35%から40%までであり得る。乾物含量が高いほど、栄養補給剤中のタンパク質のレベルが高くなる。しかしながら、栄養補給剤の総重量に占める乾物含量が40%を超えると、栄養補給剤の構造が流動しにくくなり、食品の製造方法に用いることが困難となる。グラム陰性菌を含むバイオマスを濃縮することにより、バイオマスの固相から過剰な液相を除去することが可能になる。バイオマスの液相は、LPS含有エンドトキシンを含む細胞壁構造の加水分解された成分を含む。固相から液相を分離して除去すると、濃縮されたバイオマスにはエンドトキシンが低減された状態が残る。インキュベーション中に、LPSの一部が放出され、細胞から漏出する。分離中、液相の大部分が除去され、液相中に存在するLPSが除去される。
【0036】
任意に、乾物含量は、栄養補給剤の総重量の5%から30%まで、又は好ましくは8%から25%までである。栄養補給剤の総重量のうち乾物含量は、例えば、5、6、7、8、9、10、15又は20%から8、10、15、20%又は25%までであり得る。
【0037】
任意に、分離することは、遠心分離、濾過の少なくとも1つから選択される分離方法を用いて行われる。遠心分離は、典型的には、サイズ、形状、密度、粘度又は分離に使用されるロータの速度に従って、固相及び液相を含む、溶液から粒子を分離するための技術である。これに関して、溶液は遠心分離機チューブに入れられ、次いで遠心分離機チューブはロータに入れられ、一定の速度で回転される。任意に、遠心分離は、10000×g~20000×gの間の範囲の遠心力で行われる。遠心分離により、培養ブロスの固相から液相の約90~95%が分離される。遠心分離は、液相と固相を分離する最も効率的で最も簡単な方法であり、それにより、主に液相に存在するエンドトキシンを濃縮バイオマスから除去することが理解されうる。濾過技術は、典型的には、半透膜上に固相を保持しながら液相を通過させる、当該半透膜を介して液相及び固相を分離する。任意で、濾過はセラミックフィルタを用いて行うことができる。濾過は、液相と固相とを分離する最もエネルギー効率の良い方法を提供し、それにより、主に液相に存在するエンドトキシンを濃縮バイオマスから除去する。
【0038】
この方法は、微生物細胞の壁を少なくとも部分的に分解するための少なくとも1回の高圧均質化で栄養補給剤を均質化することを含む。ここで使用される場合、「均質化すること」という用語は、微生物細胞壁の物理的破壊の手段を指す。微生物細胞をインキュベートすると、微生物細胞壁の最外膜が部分的に破壊され、バイオマスを均質化すると、微生物細胞壁が更に破壊されることが理解されうる。高圧均質化(HPH)は、物理的(機械的)破壊による微生物細胞壁破壊のための最も効果的な技術である。バイオマスの均質化から生じる細胞壁破壊は、微生物細胞からの残りのエンドトキシンを部分的に分解することが理解されうる。高圧均質化プロセスは、細胞の部分的溶解及びバイオマスの可溶性タンパク質含有量の増加をもたらし、それによって食品原料としてのバイオマスの機能的特性を改善する。さらに、バイオマスを均質化すると、分離プロセス後に残留するエンドトキシンが更に除去され、それによりバイオマスから更に減少される。したがって、均質化することにより、微生物細胞から製造され、グラム陰性菌を含有する栄養補給剤中のエンドトキシンレベルを低下させ、栄養補助食品をヒトの消費にとって安全なものとする。
【0039】
典型的には、均質化技術は、細胞破壊を促進するために、流体フロー、粒子間相互作用、及び圧力降下を利用する。ここで使用される場合、「高圧均質化」という用語は、サンプルを均質化し、及び/又はサンプル内の任意の成分の粒径を減少させることを意図した、例えば、高圧又は剪断力の任意の組み合わせ等の複数の力をサンプルに供する均質化デバイス(詳細は後述する)として実装されたシステムを介して、(分離プロセス後に残存する)固相及び液相を含むバイオマス等のサンプルの流れを強制的に流す物理的又は機械的プロセスを指す。
【0040】
任意に、均質化することは、800バールから2000バールまでの圧力での少なくとも1回の高圧均質化として実施される。任意に、均質化圧力は、典型的には、800、1000、1200、1400、1600又は1800バールから1000、1200、1400、1600、1800又は2000バールまでであり得る。ここで使用される場合、「少なくとも1回の実施」という用語は、濃縮バイオマスが細胞破壊効率を高めるために受けるサイクル又はパスの数を指す。任意に、濃縮バイオマスは、800~2000バールの上述の均質化圧力に1回、2回又は3回供される。均質化プロセスの間、タンパク質は、微生物細胞からバイオマスの残りの液相(すなわち、分離プロセス後)に部分的に放出されることが理解されうる。有益なことに、均質化プロセスは、細胞の部分的溶解及びバイオマスの可溶性タンパク質含有量の増加をもたらし、それによって食品原料としてのバイオマスの機能特性を改善する。さらに、バイオマスを均質化すると、分離プロセス後に残留するエンドトキシンが更に除去され、それによりバイオマスから更に減少される。
【0041】
任意に、高圧均質化は、900バールから1000バールまでの圧力で行われる。任意に、均質化圧力は、典型的には900、910、920、930、940、950、960、970、980又は990バールから910、920、930、940、950、960、970、980、990又は1000バールまでであり得る。均質化圧力の当該範囲は、均質化されたバイオマス中の増加した可溶性タンパク質含有量及び減少したエンドトキシンレベルを有する最良の結果を提供し、減少したエンドトキシンレベルと比較した可溶性タンパク質含有量の比が最適である。
【0042】
任意に、本方法は、栄養補給剤の総重量の94%から99%までの乾物含量を得るために栄養補給剤を乾燥させることを含む。ここで使用される場合、「乾燥させること」という用語は、バイオマス等の原料から液体を乾燥させるプロセスを指す。任意に、バイオマスの乾燥は、例えば乾燥ドラム等の閉鎖系でバイオマスを回転させながら比較的低い温度にバイオマスを供するか、又は高温ガスを使用して急速に乾燥させることによって達成される。バイオマスの乾燥は、栄養補給剤又はそれに由来する粉末の容易かつ効果的な貯蔵を可能にすることが理解されうる。さらに、バイオマスを乾燥させることは、栄養補給剤又は粉末を潜在的な侵入、及び、それによりヒト又は動物による消費に適さなくなることから防止する。さらに、バイオマスを乾燥させると、栄養補給剤の乾物含量が増加する。乾燥プロセス後の栄養補給剤の乾物含量は、典型的には、94、94.5、95、96、97又は98%から94.5、95、96、97、98又は99%までである。任意に、乾燥プロセスの後に、最終生成物を均質化して、最終生成物の粉末形態、すなわち栄養補給剤を得る。
【0043】
任意に、乾燥は、ドラム乾燥又は噴霧乾燥の少なくとも1つとして選択され、乾燥温度は120℃から180℃までである。ドラム乾燥は、比較的低温の回転式の高容量乾燥ドラム内で栄養補給剤を回転させてドラム乾燥製品のシートを製造するプロセスである。その後、ドラム乾燥された製品のシートは、最終生成物、すなわち栄養補給剤に粉砕される。有益なことに、ドラム乾燥は、他の乾燥技術を使用して乾燥することができない高粘度サンプルに適している。噴霧乾燥は、高温ガス(窒素又は酸素等)の噴霧を利用して、バイオマスを急速に乾燥させる。噴霧乾燥は、食品及び医薬品等の熱に敏感なサンプルを乾燥させるのに適している。乾燥栄養補給剤は、インキュベーション、分離及び均質化の工程後には、インキュベーションされていない、及び/又は均質化されていないサンプルと比較して、エンドトキシンのレベルが低下している。さらに、栄養補給剤は、食品許容レベルに低下したエンドトキシンレベルを有する。乾燥は、典型的には、120、125、130、135、140、150、160又は170℃から125、130、135、140、150、160、170又は180℃までの範囲のドラム温度で行われる。前述の温度範囲での乾燥は、栄養補給剤中の液体(又は水)を乾燥させてその粉末形態を得ることが理解されうる。粉末形態は貯蔵が容易であり、貯蔵寿命がより長い。また、前述の温度範囲は、前述の培養及び/又はバイオマスの下流処理の工程のいずれかの間に栄養補給剤と共に増殖する可能性がある望ましくない微生物又は病原体を死滅させる。さらに、栄養補給剤を乾燥させることにより、栄養補給剤を効率的に粉砕して、所望の粒径を有する最終生成物を得ることが容易になる。
【0044】
任意に、本方法は、高水分押出で栄養補給剤を押出すことを更に含む。ここで使用される場合、「押出すこと」という用語は、食品等の材料を、スライス、ブロック、ピース、キューブ等の固定断面(望ましい形態)の製品に成形するプロセスを指す。これに関して、材料は、所望の断面のダイに押し込まれ、圧縮応力及び剪断応力に供される。ここで使用される場合、「高水分押出」という用語は、高水分食肉代替品(HMMA)の製造にしばしば使用される熱機械調理プロセスを指す。典型的には、HMMAは、肉のような質感及び口当たりを模倣するために植物ベースの原料から作られる。HMMA製品は、例えば、肉繊維に似た微小線維構造を示し得る。関連製品は、ビーガンナゲット及びバーガーパテに使用されるテクスチャ加工された野菜タンパク質(TVP)、又はグルテンミートタイプの製品である。HMMA製品は、HMMA製品の栄養及び風味を強化するために、スパイス、栄養素、薬品等の他の原料と更に混合されてもよい。
【0045】
さらに、高水分押出を使用して乾燥栄養補給剤から製造されたHMMA製品は、栄養補給剤自体のレベルと比較して、劇的に低下したエンドトキシンレベルを示した。高水分押出は、HMMA製品中のエンドトキシンを>4000EU/gから<0.5EU/gに減少させることができる。さらに、栄養補給剤の高水分押出は、エンドトキシン応答を示さないHMMA生成物をもたらした。
【0046】
場合によっては、バイオマスを押出した後、缶又はパウチパケット等の容器に栄養補給剤を保管してもよく、容器はその端部で排気及び密封される。有益には、適切な保管は、製品の処理後の汚染を防止する。非衛生的な処理又は処理後の汚染は、一般に、生鮮食品及び他の食品におけるエンドトキシンレベルの増加の原因である。
【0047】
本開示はまた、上記のようなシステムに関する。上記で開示された様々な実施形態及び変形形態は、必要な変更を加えてシステムに適用される。
【0048】
任意に、バイオリアクタは、円筒形、円錐形、直方体又は立方体等の形状を有してもよい。任意に、バイオリアクタの容積は、例えば10リットル、100リットル、200リットル、1000リットル等である。任意に、バイオリアクタは、バイオリアクタ内で処理される内容物に対して不活性な材料から製造される。一例では、製造材料は、ステンレス鋼(例えば、タイプ304、316又は316リットル)、他の適切な金属又は合金、ガラス材料、繊維、セラミック、プラスチック材料、及び/又はそれらの組み合わせであってもよい。さらに、製造材料は、典型的には、防水性であり、微生物濃度、バイオマス生産、撹拌力、通気力、動作圧力、温度、酸、アルカリ等の様々な生物学的、生化学的及び/又は機械的プロセスの研磨効果に耐えるのに十分な強度を有する。典型的には、バイオリアクタは、内容物の重量を保持し、様々な生物学的、生化学的及び/又は機械的プロセスを実行するのに十分な厚さを有する。さらに、バイオリアクタは、好ましくは、滅菌条件を抑制するようなものでなければならない。
【0049】
バイオマスのインキュベーションは、典型的な熱交換器で行われる。熱交換器は、2つ以上の流体間で熱を伝達するためのシステムユーザである。これに関して、熱交換器は、熱交換流体が互いに平行に移動するか、又は熱交換流体が互いに反対方向に移動するように、平行流又は逆流のいずれかから選択されたフロー配置を有し得る。通常、熱交換器は、工業規模で広く使用されており、当業者に周知である。
【0050】
任意に、熱交換器は、タンク熱交換器、管状熱交換器、又はプレート熱交換器のうちの少なくとも1つであるように選択される。任意に、タンク熱交換器は、例えばジャケットタンク式熱交換器である。ジャケットタンク式熱交換器は、加熱(又は冷却)流体が循環する加熱容器の周りの加熱(又は冷却)「ジャケット」を使用することによって、その中の内容物を加熱(又は冷却)するように設計された加熱容器である。管状熱交換器は、加熱(又は冷却)されるべき流体を含む一組のチューブを備え、熱を提供(又は吸収)するために、(熱交換に対して)第2の流体が一組のチューブ上を流れる。管状熱交換器は、高圧用途に適している。プレート熱交換器は、ガスケット配置で互いに束ねられた複数の伝熱プレートを含み、プレートの各対は、流体が流れるための2つの別個のチャネルシステムを提供する。
【0051】
バイオマスの液相及び固相の分離は、工業規模で広く使用されている遠心分離機又は濾過ユニット、例えば膜フィルタ又はセラミックフィルタで行うことができる。遠心分離機は、典型的には、溶液中の成分をその粒径に基づいて分離するための遠心分離技術を使用する。膜濾過ユニットは、溶液の固相及び液相を分離するために半透膜を利用する濾過技術に基づいて動作する。遠心分離機は、濾過と比較して細菌細胞を濃縮するために好ましいことが理解されうる。
【0052】
均質化デバイスは、材料を破壊又は均質化する物理的又は機械的方法を使用する。典型的には、使用される均質化デバイスとしては、乳鉢及び乳棒、ブレンダー、ビーズミル、超音波処理装置、ロータステータ等が挙げられる。高圧均質化(HPH)は、細胞破壊効率を高めるための均質化デバイスを通る少なくとも1回のパス、例えば1、2、又は3回のパスを含む。
【0053】
任意に、均質化デバイスは高圧ホモジナイザであり、高圧ホモジナイザ内の圧力は、800バールから2000バールまで、又は好ましくは900バールから1000バールまでである。高圧ホモジナイザは、典型的には、細胞構造を破壊するために非常に高い圧力を使用する。任意に、均質化デバイスは液体ミルである。液体ミルは、典型的には、剪断力を使用して細胞構造を破壊する。
【0054】
バイオマスは乾燥機で乾燥される。典型的には、乾燥機は、直接的又は間接的な熱供給を使用して、サンプルの液相、ここでは栄養補給剤を乾燥させる。これに関して、乾燥機は、当業者に公知の様々な技術を使用して加熱された(又は凍結乾燥等で冷却された)ガスの流れを使用する。任意に、乾燥機は、ドラム乾燥機又は噴霧乾燥機の少なくとも1つであるように選択される。ドラム乾燥機は、バイオマス等のスラリー材料を収容し、その中の材料を比較的低温で回転させてドラム乾燥製品のシートを製造するように構成された回転式の大容量容器である。ドラム乾燥された生成物は、フレーク又は粉末形態に更に粉砕又は仕上げされてもよい。任意に、ドラム乾燥機は、2~7バールの範囲の蒸気圧を提供する二重ドラム乾燥機である。二重ドラム乾燥機の圧力は、例えば、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5又は6バールから2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5又は7バールまでであってもよい。噴霧乾燥機は、高温ガスを使用することによってスラリー材料を迅速に乾燥させることを可能にする。噴霧乾燥は、典型的には、感熱性材料に適している。
【0055】
任意に、システムは、高水分押出で栄養補給剤を押出すための押出機を更に備える。押出機は、典型的には、材料に形状又は所望の断面を提供するために材料を通過させるために使用される画定された(又は固定された)断面を有するシステムである。押出機は、通常、押出機から押出される最終生成物を成形するために、摩擦(通過材料と押出機との間の)及び摩擦の結果として生じる圧力に起因する熱を使用する。
【0056】
任意に、微生物細胞は、VTT-E-193585又はその誘導体として寄託された分離細菌株を含む。
【実施例
【0057】
(実験結果)
カブトガニ血球抽出物(LAL)アッセイ:LALアッセイは、サンプル中の微生物エンドトキシンを同定及び定量するための熱量測定法である。LALアッセイは非常に高感度であり、市場での製品の出荷のため薬局方によって要請されている。LALアッセイは、エンドトキシンの存在下でリンパを凝固させることができるカブトガニの血球細胞からの酵素カスケードによって作用する。大腸菌(Escherichia coli)株から調製された汎用参照標準エンドトキシン(RSE)に基づいて、以下の値が確立された:0.2ngのLPS=1エンドトキシン単位[EU]。これに関して、LALアッセイは活性を測定することのみを目的とし、その量への変換は大腸菌LPS応答のみに基づくことが理解されうる。また、構造的に異なる全てのLPSは、LALアッセイに対して異なって反応する。さらに、LALアッセイは比色法であるため、材料が可溶性でなければ使用することができない。不溶性医療用デバイスをアッセイするためには、欧州薬局方によって定義されたプロトコルに従うことが必要である。当該規則で定義されたパラメータに基づいて、粉末サンプルを、水への分散、定義された時間での撹拌、遠心分離、上清の濾過によるような、LALアッセイに先立つ抽出に供した。濾液を、その中のエンドトキシンを定量するためのLALアッセイに供した。
【0058】
LALアッセイを、本開示の出願人によって、微生物細胞の培養から得られた微生物バイオマスサンプル及びバイオマスの異なる下流処理経路を介して得られた栄養補給剤サンプルの分析に使用した。下流処理の経路に関係なく、全ての栄養補給剤は、例えば粉乳よりも高いが、同じセット内で分析された乳酸菌錠剤又はスピルリナ粉末に匹敵する毒性活性(サンプル1グラム当たりのエンドトキシン単位(EU/g)として測定)を示した。以下の表1は、高いエンドトキシン活性(100000~3000000EU/g)及びその下流処理によるその減少を示す、いくつかの微生物バイオマスサンプルに対して実施したLALアッセイの結果を提供する。LALアッセイ値は、カイネティック比色法又は発色LALアッセイを使用した同じサンプルの反復を表す。1日目及び2日目の栄養補給剤サンプルは、12日間間隔を空け、2日目及び3日目の栄養補助食品サンプルは、30日間間隔を空けられた。示されるように、インキュベーション及び乾燥前の高圧均質化(HPH)を経なかった栄養補給剤サンプル(すなわち、サンプルV0)は、中程度のエンドトキシン活性(すなわち、6000EU/g~15000EU/g)を示した。しかしながら、インキュベーション及び乾燥前のHPHプロセス(すなわち、サンプルV1)に供した栄養補給剤サンプルは、エンドトキシン活性の明らかな減少を示した(すなわち、50EU/g未満~200EU/gの値)。
【0059】
【表1】

表1:いくつかの微生物バイオマスサンプルに対して行ったLALアッセイ
【0060】
LALアッセイも、セパレータ上清(上記の分離された液相と呼ばれる)に対して行った。インキュベートしたバイオマス(V1)の分離された液相は、非インキュベートバッチ(V0)と比較してより高いEU/mL値を繰り返し示したことが観察された。これにより、LPSがインキュベーション中に外細胞膜から離れ、分離工程中に分離された液相と共に除去されることを示す。
【0061】
以下の表2は、2つの栄養補給剤サンプル及びそれらのそれぞれの押出物(高水分押出後に得られる)のLALアッセイ結果を提供する。
【0062】
【表2】

表2:栄養補給剤サンプル及びそれらの各押出物のLALアッセイ結果
【0063】
(図面の詳細な説明)
図1を参照すると、本開示の一実施形態による、微生物細胞から栄養補給剤を製造する方法の工程を示すフローチャート100が示されている。工程102では、微生物細胞を培養してバイオマスを得る。工程104では、バイオマスを、55℃から80℃までの温度で10分から60分までのインキュベーション時間にわたる熱処理によりインキュベートする。工程106では、固相から液相を分離して除去することによってバイオマスを濃縮して、栄養補給剤の総重量の2%から40%までの乾物含量を得る。工程108では、栄養補給剤は、微生物細胞の壁を少なくとも部分的に分解するための少なくとも1回の高圧均質化で均質化される。
【0064】
工程102、104、106及び108は例示にすぎず、本特許請求の範囲から逸脱することなく、1つ以上の工程が追加され、1以上の工程が削除され、又は1以上の工程が異なる順序で提供される他の代替形態も提供され得る。
【0065】
図1は、明確にするための単なる例であり、本特許請求の範囲を過度に限定するべきではないことが当業者には理解されうる。当業者は、本開示の実施形態の多くの変形、代替、及び修正を認識するであろう。一例では、工程102、104及び106に記載されるプロセスは、最終生成物に到達するために異なるシーケンスに従ってもよい。
【0066】
図2を参照すると、本開示の任意の実施形態による、タンパク質粉末を製造する方法の工程を示すフローチャート100が示されている。工程102では、微生物細胞を培養してバイオマスを得る。工程104では、バイオマスを、55℃から80℃までの温度で10分から60分までのインキュベーション時間にわたる熱処理によりインキュベートする。工程106では、固相から液相を分離して除去することによってバイオマスを濃縮して、微生物細胞から栄養補給剤の総重量の2%から40%までの乾物含量を得る。工程108では、バイオマスは、微生物細胞の壁を少なくとも部分的に分解するために均質化される。工程110では、バイオマスを乾燥させて、栄養補給剤の総重量の94%から99%までの乾物含量を得る。
【0067】
工程102、104、106、108及び110は例示にすぎず、本特許請求の範囲から逸脱することなく、1つ以上の工程が追加され、1以上の工程が削除され、又は1以上の工程が異なる順序で提供される他の代替形態も提供され得る。
【0068】
図3を参照すると、本開示の一実施形態による低エンドトキシン細菌バイオマス製造プロセスの図が示されている。示されるように、微生物細胞壁は、微生物細胞の細胞壁からの突出する線として表されるリポ多糖含有エンドトキシンを含む。微生物細胞は、例えばバイオリアクタ(図示せず)内で培養される。微生物細胞(単一の微生物細胞として表される)を熱処理によりインキュベートして、その細胞壁の外膜を部分的に加水分解する。その後、部分的に加水分解された微生物細胞をセパレータに通して、細胞壁から除去されたエンドトキシンを含有する微生物細胞の液相を、その部分加水分解中に分離する。微生物細胞の固相は、部分的に除去されたエンドトキシンを含む液相の分離により、エンドトキシン含有量が減少して濃縮される。続いて、濃縮された微生物細胞(又はバイオマス)を均質化し、その後乾燥させる。乾燥させると、バイオマスは、上に記載されるLALアッセイ等のアッセイ法を使用して測定した場合に、通常は10~1000倍低いエンドトキシンレベルを有する粉末形態で得られる。
【0069】
図4を参照すると、本開示の一実施形態による、微生物細胞320から栄養補給剤を製造するためのシステム300のブロック図が示されている。システム300は、バイオマスを得るために微生物細胞304を培養するためのバイオリアクタ302であって、その増殖のための増殖培地306及び微生物細胞304を備えるバイオリアクタと、55℃から75℃までの温度で15分から40分までのインキュベーション時間にわたってインキュベーションするための熱交換器308と、バイオマスの固相314から液相312を分離するためのセパレータ310と、バイオマスの微生物細胞304の壁を少なくとも部分的に分解するための均質化デバイス316と、及び94%から99%までの乾物含量を有するバイオマスの粉末320形態を得るためにバイオマスを乾燥させるための乾燥機318とを備える。
【0070】
図5を参照すると、本開示の一実施形態による、高水分食肉代替品422を製造するためのシステム400のブロック図が示されている。システム400は、バイオマスを得るために微生物細胞404を培養するためのバイオリアクタ402であって、その増殖のための増殖培地406及び微生物細胞404を備えるバイオリアクタと、55℃から75℃までの温度で15分から40分までのインキュベーション時間にわたってインキュベーションするための熱交換器408と、バイオマスの固相414から液相412を分離するためのセパレータ410と、バイオマスの微生物細胞404の壁を少なくとも部分的に分解するための均質化デバイス416と、バイオマスを乾燥させるための乾燥機418と、及びバイオマスを乾燥させた後、高水分押出でバイオマスを押出成形して高水分食肉代替品422を得るための押出成形機420とを備える。
【0071】
図6を参照すると、本開示の一実施形態による、高水分食肉代替品510を製造するプロセスの概略図が示されている。示されるように、バイオマスサンプル502は、乾燥機504で乾燥され、押出機506を通過する。押出機506には、乾燥したバイオマスサンプルに水分を供給するために、水フィード508から水が供給される。押出機506は、押出機506内のセクション506A、506B、506C等の複数のバレルセクションを通してバイオマスサンプルを押出すように構成される。押出機506は、その端部に、50℃等の所定の温度で動作し、押出機506、続いて冷却ダイ510から出る高水分食肉代替品512を冷却するように構成された冷却ダイ510を備える。高水分食肉代替品512はエンドトキシンを含有しない。さらに、押出機506は、モータMによって動作する。
【0072】
図7A図7B及び図8を参照すると、本開示の一実施形態による、中間のエンドトキシン活性を示す異なるサンプルのLALアッセイ結果が示される。図6Aは、粉末サンプルに対して行われたLALアッセイの結果を示す。図6Bは、セパレータ上清又はエンドトキシンを含有する液相に対して行われたLALアッセイの結果を示す。LALアッセイは、水に分散され、ボルテックスされ、遠心分離され、上清部分が濾過され、カイネティック比色法を用いてLAL試薬と混合される粉末サンプルを含む。
【0073】
図7Aに示されるように、エンドトキシン活性は、68℃の温度で30分間のインキュベーション時間のインキュベーションによって処理された栄養補給剤サンプルのサンプルにおいて低下している。示されるように、インキュベーション及び乾燥前の高圧均質化(HPH)を経なかった栄養補給剤サンプル(すなわち、サンプルV0)は、中程度のエンドトキシン活性(すなわち、6000EU/g~15000EU/g)を示した。しかしながら、インキュベーション及びHPHプロセスに供した栄養補給剤サンプル(すなわち、サンプルV1)は、エンドトキシン活性の明らかな減少、すなわち50EU/g未満~200EU/gの値を示した。
【0074】
図7Bに示されるように、エンドトキシン活性は、68℃~75℃の範囲の温度で20分~35分のインキュベーション時間にわたってインキュベーションされたセパレータ上清のサンプル(すなわち、サンプルV1)において、インキュベーションに供されなかったセパレータ上清のサンプル(すなわち、サンプルV0)と比較して高い。
【0075】
図8に示すように、サンプル1グラム当たりのエンドトキシン単位の量(EU/g)から測定されるエンドトキシン活性は、全バイオマス、すなわちインキュベートされておらず、均質化されていない(すなわち、V0)バイオマスの場合に最も高い。さらに、インキュベートされなかった均質化されたサンプル(すなわち、V0.5)のEU/g値は、インキュベートされず均質化されなかったサンプル(すなわち、V0)と比較して低い。さらに、インキュベーション及び均質化(すなわち、V1)に供したサンプルは、最小EU/g値を有する。インキュベーション及び均質化を行わなかったサンプル(V0)、又は均質化のみを行ったサンプル(V0.5)と比較して、インキュベーション及び均質化したサンプル(V1)の毒性活性の明らかな減少が繰り返し観察された。
【0076】
本特許請求の範囲によって規定される本開示の範囲から逸脱することなく、上記で説明された本開示の実施形態に対する修正が可能である。本開示を記載及び特許請求するために使用される「含む(including)」、「備える(comprising)」、「組み込む(incorporating)」、「有する(have)」、「である(is)」等の表現は、非排他的な方法で解釈されること、すなわち、明示的に記載されていない項目、成分又は要素も存在することを可能にすることを意図している。単数形への言及はまた、複数形に関連すると解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物細胞から栄養補給剤を製造する方法であって、前記方法は、
-前記微生物細胞を培養して、グラム陰性菌を含むバイオマスを得ることと、
-前記バイオマスを、前記微生物細胞の壁を少なくとも部分的に分解するために、55℃から80℃までの温度で10分から60分までのインキュベーション時間にわたる熱処理によりインキュベートすることと、
-前記インキュベートされたバイオマスを、前記栄養補給剤の総重量の2%から40%までの乾物含量を得るために、固相から液相を分離して除去することによって濃縮することと、及び、
-前記栄養補給剤を、前記微生物細胞の前記壁を少なくとも部分的に分解するための少なくとも1回の高圧均質化で均質化することと、を含む方法。
【請求項2】
前記乾物含量は、前記栄養補給剤の総重量の、
-5%から30%まで、又は
%から25%まで、
である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微生物産物の総重量の94%から99%までの乾物含量を得るために、前記栄養補給剤を乾燥させることを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記インキュベーション温度が、
-55℃から70℃まで、又は
0℃から68℃までであり、
前記インキュベーション時間が、
-15分から40分まで、又は
0分から30分までである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記栄養補給剤を高水分押出しで押出すことを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記均質化することが、
-800バールから2000バールまで、又は
00バールから1000バールまで
の圧力下で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記分離することが、遠心分離、濾過のうちの少なくとも1つから選択される分離方法を用いて行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記乾燥することが、ドラム乾燥又は噴霧乾燥の少なくとも1つとして選択され、乾燥温度が120℃から180℃までである、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記微生物細胞が、VTT-E-193585又はその誘導体として寄託された分離細菌株を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
微生物細胞から栄養補給剤を製造するためのシステムであって、前記システムは、
-グラム陰性細菌を含むバイオマスを得るために、前記微生物細胞を培養するためのバイオリアクタと、
-前記微生物細胞の壁を部分的に分解するための、55℃から80℃までのインキュベーション温度及び10分から60分までのインキュベーション時間を有する熱交換器と、
-前記栄養補給剤の総重量の2%から40%までの乾物含量を得るために、固相と液相とを分離するためのセパレータと、及び、
-前記栄養補給剤の前記微生物細胞の前記壁を少なくとも部分的に分解するための高圧ホモジナイザと、を備える、システム。
【請求項11】
前記栄養補給剤の総重量の94%から99%までの乾物含量を得るための乾燥機を更に備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
高水分押出で前記微生物産物を押出すための押出機を更に備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記熱交換器が、タンク熱交換器、管状熱交換器、又はプレート熱交換器のうちの少なくとも1つであるように選択される、請求項10~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記高圧ホモジナイザ内の前記圧力が、800バールから2000バールまで、又は00バールから1000バールまでである、請求項10~1のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記セパレータが、遠心分離機、フィルタの少なくとも一方であるように選択される、請求項10~1のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記乾燥機が、ドラム乾燥機又は噴霧乾燥機の少なくとも1つであるように選択される、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項17】
前記微生物細胞が、VTT-E-193585又はその誘導体として寄託された分離細菌株を含む、請求項10~1のいずれか一項に記載のシステム。

【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
任意に、バイオリアクタは、円筒形、円錐形、直方体又は立方体等の形状を有してもよい。任意に、バイオリアクタの容積は、例えば10リットル、100リットル、200リットル、1000リットル等である。任意に、バイオリアクタは、バイオリアクタ内で処理される内容物に対して不活性な材料から製造される。一例では、製造材料は、ステンレス鋼(例えば、タイプ304、又は316リットル)、他の適切な金属又は合金、ガラス材料、繊維、セラミック、プラスチック材料、及び/又はそれらの組み合わせであってもよい。さらに、製造材料は、典型的には、防水性であり、微生物濃度、バイオマス生産、撹拌力、通気力、動作圧力、温度、酸、アルカリ等の様々な生物学的、生化学的及び/又は機械的プロセスの研磨効果に耐えるのに十分な強度を有する。典型的には、バイオリアクタは、内容物の重量を保持し、様々な生物学的、生化学的及び/又は機械的プロセスを実行するのに十分な厚さを有する。さらに、バイオリアクタは、好ましくは、滅菌条件を抑制するようなものでなければならない。
【国際調査報告】