(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】生細胞及び/又は粒子状不純物の検出のためのFIM-CNN
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20240416BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20240416BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20240416BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240416BHJP
G16H 70/60 20180101ALI20240416BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240416BHJP
G06V 10/82 20220101ALI20240416BHJP
G06V 20/69 20220101ALI20240416BHJP
【FI】
C12Q1/04
G01N33/483 C
G01N33/48 M
G01N21/64 F
G16H70/60
G06T7/00 350C
G06T7/00 630
G06V10/82
G06V20/69
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562164
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2022059445
(87)【国際公開番号】W WO2022214662
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519459528
【氏名又は名称】コリオリス ファーマ リサーチ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CORIOLIS PHARMA RESEARCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Fraunhoferstrasse 18b 82152 Martinsried Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】ハウエ, アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】メンツェン, ティム
(72)【発明者】
【氏名】グラバレック, アダム
(72)【発明者】
【氏名】ロッシュ, アレクサンドラ
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
4B063
5L096
5L099
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA02
2G043DA05
2G043EA01
2G043FA02
2G043NA01
2G045AA25
2G045CB01
2G045FA19
2G045FA37
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QR41
4B063QS39
4B063QX01
5L096AA06
5L096CA04
5L096DA02
5L096EA43
5L096GA51
5L096HA11
5L096JA22
5L096KA04
5L099AA03
(57)【要約】
本明細書に提示される開示は、細胞ベースの生成物試料中の生細胞及び粒子状細胞不純物を定量する方法を提供する。方法は、フローイメージング顕微鏡法(flow-imaging microscopy:FIM)画像を分類することを学習する畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network:CNN)上で実施される。CNNの学習は、生細胞及び異なる種類の不純物の分類画像の訓練セットを使用することによって達成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞ベースの生成物試料中の単一の生細胞及び/又は粒子状不純物を定量するための方法であって、
a)単一の生細胞、破片、及び壊死細胞、アポトーシス細胞、ダブレット細胞、磁気ビーズ、又は付加物のうちの少なくとも1つを含む分類されたフローイメージング顕微鏡法(flow-imaging microscopy:FIM)画像の訓練セットを提供することと、
b)工程(a)の前記分類された画像を用いて畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network:CNN)を訓練することと、
c)前記生成物試料からのFIM画像を捕捉することと、
d)工程(b)で得られた前記訓練されたCNNを工程(c)の前記FIM画像に適用することによって、単一の生細胞、破片、及び壊死細胞、アポトーシス細胞、ダブレット細胞、磁気ビーズ又は付加物の少なくとも1つを同定することと、
e)工程(d)で同定された前記単一の生細胞及び/又は前記粒子状不純物を定量することと、
を含む、細胞ベースの生成物試料中の単一の生細胞及び/又は粒子状不純物を定量するための方法。
【請求項2】
前記分類された画像のセットが、
単一の生細胞、壊死細胞、アポトーシス細胞、ダブレット細胞、磁気ビーズ、付加物及び破片;
単一の生細胞、ダブレット細胞、磁気ビーズ、付加物及び破片;
単一の生細胞、壊死細胞及び破片;又は
単一の生細胞、壊死細胞、アポトーシス細胞、及び破片
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)の前記分類された画像が、
i)細胞懸濁液を提供することと、
ii)壊死、アポトーシス、細胞破片、付加物、又はそれらの任意の組合せを誘導する前記細胞懸濁条件に適用することと、
iii)任意選択的に、前記細胞を標識することと、
iv)前記細胞懸濁液のFIM画像を取得することと、
v)前記FIM画像を分類することと、
を含む方法によって取得される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
壊死を誘導するため及び/又は破片を誘導するための前記培養条件は、前記細胞培養物をストレス条件に供することを含み、
アポトーシスを誘導するための前記培養条件は、前記細胞培養物をアポトーシス促進試薬と共にインキュベートすることを含み、
付加物を誘導するための前記培養条件は、前記細胞を磁気ビーズと共にインキュベートすることを含み、又は
それらの任意の組合せである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
壊死を誘導するための前記ストレス条件が、機械的ストレス、振盪ストレス、凍結解凍、熱、エタノールとのインキュベーション、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アポトーシス促進剤がスタウロスポリンを含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞の一部が、約1:1の比で前記磁気ビーズと共にインキュベートされる、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
i)壊死を誘導する前記条件は、細胞を、10%エタノールを含む細胞培養物中、55℃で90分間、又は37℃で90分間インキュベートすることを含み、
ii)アポトーシスを誘導する前記条件は、前記細胞を1μMスタウロスポリンと共に37℃で3時間インキュベートすることを含み、
iii)破片を誘導する前記条件は、2mL微量遠心管中で2分間細胞をボルテックスすること、又は前記細胞を-140℃~37℃の2回の凍結解凍サイクルに供することを含み、
iv)付加物を誘導する前記条件は、磁気ビーズを細胞と1:1の比で37℃で1.5時間インキュベートすることを含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記訓練セットからの前記壊死細胞が、10%エタノールを含む細胞培養物中で37℃で90分間インキュベートした細胞、及び55℃で90分間インキュベートした細胞を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記訓練セットからの前記生細胞が、低張培地中でインキュベートされた細胞、等張培地中でインキュベートされた細胞、及び高張培地中でインキュベートされた細胞を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)の前記分類された画像が、
i)前記細胞ベースの産物の試料を得ることと、
ii)任意選択で、工程(i)の前記試料の前記細胞を標識することと、
iii)工程(i)又は(ii)の前記試料のFIM画像を取得することと、
iv)前記FIM画像を分類することと、
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
前記CNNは、
画像の事前訓練セットを用いて工程(b)の前に事前訓練され、
VGG-19アーキテクチャを含むか、又は
工程(b)の前記訓練中に、その最後の2つの完全に接続された層が活性であるか、又はその最初の10の層が凍結されていること、又は
それらの組合せを含む、
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)の前記訓練が、Adam最適化アルゴリズム又はSGD最適化アルゴリズムを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞産物がT細胞を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
細胞ベースの生成物試料中の単一の生細胞及び/又は粒子状不純物を定量するための方法であって、
a)単一の生細胞、壊死細胞、及び/又はアポトーシス細胞を含む細胞懸濁液を提供することと、
b)イメージングフローサイトメータを使用して前記細胞懸濁液から明視野画像及び蛍光シグナルを同時に得ることであって、
前記蛍光シグナルは、前記明視野画像が生細胞、壊死細胞、又はアポトーシス細胞を含むかどうかに従って、分類標識を前記明視野画像に帰属させるために使用される、ことと、
c)工程(b)の明視野画像を用いた畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を訓練することと、
d)前記生成物試料からのフローイメージング顕微鏡法(FIM)画像を捕捉することと、
e)工程(c)で得られた前記訓練されたCNNを工程(d)の前記FIM画像に適用することによって、単一の生細胞、破片、及び壊死細胞、アポトーシス細胞、ダブレット細胞、磁気ビーズ又は付加物の少なくとも1つを同定することと、
f)工程(e)で同定された前記単一の生細胞及び/又は前記粒子状不純物を定量することと、
を含む、細胞ベースの生成物試料中の単一の生細胞及び/又は粒子状不純物を定量するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に提示される開示は、細胞ベースの生成物試料中の生細胞及び粒子状細胞不純物を定量する方法を提供する。方法は、フローイメージング顕微鏡法(flow-imaging microscopy:FIM)画像を分類することを学習する畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network:CNN)上で実施される。CNNの学習は、生細胞及び異なる種類の不純物の分類画像の訓練セットを使用することによって達成される。
【背景技術】
【0002】
臨床試験に入り、商業的使用のために主要な規制機関によって承認されている細胞ベースの医薬品(CBMP)の数は、毎年一貫して増加している。これらの革新的な治療製品の使用から出現した有望な臨床データにもかかわらず、製造、製剤開発及び分析特性評価の分野において多くの課題が残っている。
【0003】
ほとんどのCBMPは、本質的に脆弱であり、タンパク質ベースの製品などの他の生物治療薬と比較して不利な条件にはるかに影響を受けやすい生細胞からなる。それにもかかわらず、CBMPの種類(例えば、自己由来又は同種異系、遺伝子改変又は非改変)にかかわらず、患者に投与される前に複数の複雑な製造工程を経ることが多い。CBMPがそれらの産生中に受ける主な処理工程には、健康なドナー又は患者からの細胞の単離、エクスビボ細胞操作、製剤化、保存、及び放出及び投与前の品質管理が含まれる。更に、上に列挙した各工程の間に、CBMPの輸送、凍結解凍又は手動操作が行われる。臨床部位特異的な取り扱い手順では、生成物の処理及び投与の違いも生じる。そのような多様で多段階の製造及び取り扱いプロセスは、凍結解凍、表面関連ストレス(すなわち、機械的ストレス)、熱及び酸化ストレスなどの様々な意図的及び/又は偶発的な環境ストレス因子に細胞をさらす。これらの種類のストレスのそれぞれは、偶発的な細胞死をもたらし得る。したがって、これらのストレス条件下での細胞安定性に対する製剤パラメータの影響の試験は、関与するストレス因子に対する製品の感受性をよりよく理解するために考慮されるべきである。これは、治療失敗の潜在的なリスク及び製品品質の悪さに起因する深刻な悪影響の発生を軽減するために使用することができる新しい洞察に寄与する可能性が高い。
【0004】
CBMP中の微粒子不純物の導入又は形成は、これらの製剤の製造及び取り扱いに関連する潜在的なリスクの1つである。CBMPに見られる粒子は、プロセス又は細胞産物自体のいずれかに由来し得る。プロセス関連粒子状不純物には、細胞の活性化及び増殖に使用される非効果的に除去された抗体被覆磁気ビーズ、細胞形質導入工程で利用されるウイルスベクター、外因性粒子(ガラス、繊維、ゴム)、又は一次容器由来の浸出液が含まれ得る。細胞懸濁液の滅菌濾過は、細胞の固有のサイズのために不可能である。したがって、それらの除去が完了していない場合、望ましくないマイクロメートルサイズの粒子が生成物中に残る。一方、細胞不純物は、細胞に由来する材料を含む。これらは、非生細胞又は非治療細胞、並びに細胞凝集体及び細胞破片であり得る。例えば、極端な生理学的条件(パイロトーシス)にさらされた細胞で誘導された壊死は、原形質膜の破裂、細胞内内容物の放出及び破片粒子の形成をもたらす。細胞成分が小胞にパッケージングされ、免疫系による除去を促進するために適切なカスパーゼによって消化されるアポトーシス(プログラム)細胞死とは対照的に、壊死は強力な炎症特性を有する破片を生成する。これらの破片粒子からの結果の1つは、投与時の有害な免疫応答であり得る。更に、より大きなマイクロメートルサイズの粒子をより小さな血管に導入すると、血栓塞栓症による組織損傷を引き起こす可能性がある。
【0005】
強制分解研究は、一般に、分析方法及び製剤スクリーニングの確立の一部として任意の医薬品の開発に含まれる。意図された貯蔵条件でのリアルタイム安定性研究に加えて、強制分解研究を適用して、例えばタンパク質ベースのバイオ医薬品の貯蔵寿命を推定し、適切な貯蔵及び取扱い条件を定義する。更に、この種の研究は、有害な状態への薬物製品の偶発的な曝露をシミュレートし、製品のライフサイクル全体にわたって薬物製品に発生する潜在的なリスクの評価を助けることができる。これらの研究はまた、製剤開発中に適切な賦形剤を選択するのに役立ち、その目的は、活性医薬成分の最大安定性を達成する成分混合物を決定することである。製造可能性、重要品質特性(CQA)、分解経路及びCBMP中の生成物分解物は、例えばタンパク質ベースの治療薬とは実質的に異なるが、強制分解研究の同じ概念は、CBMPのプロセス及び生成物開発に非常に関連し得る。
【0006】
患者への投与前のCBMPの広範な試験は、製品が安全で、有効で、良好な品質であることを保証する規制上の義務である。試験パラメータには、細胞の同一性、純度、活性及び効力が含まれるが、細胞及び非細胞材料も同定及び認定されなければならない。この目的のために、製品品質の特性評価及び安定性試験のための信頼性の高い分析方法が必要である。
【0007】
細胞ベースの生成物中の不純物を定量するための自動化された標識フリーの方法が依然として必要とされている。ニューラルネットワークは、異なるタイプの画像を分類するために有益であることが示された。しかしながら、細胞産物のフローイメージング顕微鏡法(FIM)の分析のためのそれらの適用は、例えば、各集団からの正確に選択された細胞画像からなるかなりのデータセットでニューラルネットワークを訓練するなど、いくつかの課題を伴う。本明細書に開示されるように、そのような訓練データセットを得ることは、いくつかの困難を包含し、混合粒子画像を有するデータセットは、FIM取得細胞画像の分類において多数のエラーをもたらす。更に、ニューラルネットワークがそのような多数の誤って分類された画像を含むデータセットで訓練されるほど十分に堅牢であるかどうかは予測できない。
【0008】
本出願は、生細胞、壊死細胞、アポトーシス細胞、破片粒子、磁気ビーズ、及び付加物(ビーズ(複数可)が付着した単一細胞)の定量のためのハイスループットかつ標識なしの方法を確立するために畳み込みニューラルネットワークと組み合わせたフローイメージング顕微鏡法(FIM-CNN)を開示する。
【発明の概要】
【0009】
一態様では、細胞ベースの生成物試料中の単一の生細胞及び/又は粒子状不純物を定量するための方法が本明細書で開示され、当該方法は、a)単一の生細胞、破片、及び壊死細胞、アポトーシス細胞、ダブレット細胞、磁気ビーズ、又は付加物のうちの少なくとも1つを含む分類されたフローイメージング顕微鏡法(FIM)画像の訓練セットを提供することと、b)工程(a)の分類された画像を用いて畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を訓練することと、c)当該生成物試料からのFIM画像を捕捉することと、d)工程(b)で得られた訓練されたCNNを工程(c)のFIM画像に適用することによって、単一の生細胞、壊死細胞、アポトーシス細胞、ダブレット細胞、磁気ビーズ、付加物、及び破片の少なくとも1つを同定することと、e)工程(d)で同定された単一の生細胞及び/又は粒子状不純物を定量することと、を含む。
【0010】
いくつかの関連する態様では、分類された画像のセットは、単一の生細胞、壊死細胞、アポトーシス細胞、ダブレット細胞、磁気ビーズ、付加物及び破片;単一の生細胞、ダブレット細胞、磁気ビーズ、付加物及び破片;単一の生細胞、壊死細胞及び破片;又は単一の生細胞、壊死細胞、アポトーシス細胞、及び破片を含む。
【0011】
いくつかの関連する態様では、工程(a)の分類された画像は、i)細胞懸濁液を提供することと、ii)当該細胞培養物において壊死、アポトーシス、細胞破片、付加物又はそれらの任意の組合せを誘導するための当該細胞懸濁条件に適用することと、iii)場合により、細胞を標識することと、iv)当該細胞培養物のFIM画像の取得することと、v)当該FIM画像を分類することと、を含む方法によって得られる。
【0012】
いくつかの関連する態様では、壊死を誘導するため及び/又は破片を誘導するための培養条件は、当該細胞培養物をストレス条件に供することを含み、アポトーシスを誘導するための当該培養条件は、当該細胞培養物をアポトーシス促進試薬と共にインキュベートすることを含み、付加物を誘導するための当該培養条件は、当該細胞を磁気ビーズと共にインキュベートすることを含み、又はそれらの任意の組合せである。
【0013】
いくつかの関連する態様では、壊死を誘導するためのストレス条件は、振盪ストレス、凍結解凍サイクル、熱、エタノールとのインキュベーション、又はそれらの任意の組合せを含む。いくつかの関連する態様では、アポトーシス促進剤はスタウロスポリンを含む。いくつかの関連する態様では、細胞を当該磁気ビーズと約1:1の比でインキュベートする。
【0014】
いくつかの関連する態様では、壊死を誘導する条件は、細胞を、10%エタノールを含む細胞培養物中、55℃で90分間、又は37℃で90分間インキュベートすることを含み、アポトーシスを誘導する条件は、細胞を1μMスタウロスポリンと共に37℃で3時間インキュベートすることを含み、破片を誘導する条件は、2mL微量遠心管中で2分間細胞をボルテックスすること、又は細胞を-140℃~37℃の2回の凍結解凍サイクルに供することを含み、付加物を誘導する条件は、磁気ビーズを細胞と1:1の比で37℃で1.5時間インキュベートすることを含む。
【0015】
いくつかの関連する態様では、訓練セットからの壊死細胞は、10%エタノールを含む細胞培養物中で37℃で90分間インキュベートした細胞、及び55℃で90分間インキュベートした細胞を含む。いくつかの関連する態様では、工程(a)の分類された画像は、i)当該細胞ベースの産物の試料を得ることと、ii)任意選択で、工程(i)の当該試料の細胞を標識することと、iii)工程(i)又は(ii)の当該試料のFIM画像を取得することと、iv)当該FIM画像を分類することと、を含む。
【0016】
いくつかの関連する態様では、訓練セットからの生細胞は、低張培地中でインキュベートされた細胞、等張培地中でインキュベートされた細胞、及び高張培地中でインキュベートされた細胞を含む。
【0017】
いくつかの関連する態様では、CNNは、画像の事前訓練セットを用いて工程(b)の前に事前訓練される。いくつかの関連する態様では、CNNは、VGG-19アーキテクチャを備える。いくつかの関連する態様では工程(b)の当該訓練中に、当該CNNの最後の2つの完全接続層のみがアクティブであるか、又は当該CNNの最初の10層が凍結されている。
【0018】
いくつかの関連する態様では、工程(b)の訓練は、Adam最適化アルゴリズム又はSGD最適化アルゴリズムを含む。いくつかの関連する態様では、細胞産物はT細胞を含む。
【0019】
いくつかの態様では、細胞ベースの生成物試料中の単一の生細胞及び/又は粒子状不純物を定量するための方法が本明細書で開示され、当該方法は、a)単一の生細胞、壊死細胞、及び/又はアポトーシス細胞を含む細胞懸濁液を提供することと、b)イメージングフローサイトメータを使用して当該細胞懸濁液から明視野画像及び蛍光シグナルを同時に得ることであって、当該蛍光シグナルは、当該明視野画像が生細胞、壊死細胞、又はアポトーシス細胞を含むかどうかに従って、分類標識を当該明視野画像に帰属させるために使用される、ことと、c)工程(b)の明視野画像を用いた畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を訓練することと、d)当該生成物試料からのフローイメージング顕微鏡法(FIM)画像を捕捉することと、e)工程(c)で得られた訓練されたCNNを工程(d)のFIM画像に適用することによって、単一の生細胞、破片、及び壊死細胞、アポトーシス細胞、ダブレット細胞、磁気ビーズ又は付加物の少なくとも1つを同定することと、f)工程(e)で同定された単一の生細胞及び/又は粒子状不純物を定量することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】FlowCamソフトウェアからの出力データを使用することによって5つの粒子集団を識別するために使用されるクラスタリングされた形態学的パラメータを示す図である。添付の番号を有する矢印は、粒子集団の分離が行われた順序を示す。
【
図2】畳み込みニューラルネットワーク(CNN)のワークフローの概略図である。最初に、VGG-19ネットワークを用いた再訓練のために、各粒子クラスからの4,000個から最大4,500個の画像の集合が手動で選択される。再訓練中、ネットワークの最後の2つの層における重みのカーネルは、重みパラメータを更新し、入力データに基づいて代表的な画像記述子を抽出する。再訓練が完了すると、ネットワークを使用して、新しい画像の粒子クラスを予測することができる。出力は、指定されたクラスに割り当てられた画像の確率として与えられる。
【
図3】3つの異なる調製セットアップにおけるダイナビーズの理論的濃度に関して、フローイメージング顕微鏡法を使用することによって決定されたダイナビーズの回収率(濃度)を示す図である。
【
図4】FIM-CNNによって測定される付加物の濃度を示す図である。
【
図5】誤った焦点設定(上)及び正しい焦点設定(下)でFlowCamを使用することによって収集された画像を示す図である。
【
図6】機械学習モデルの訓練結果に対して得られた混同行列を示す図である。画像データセットは、ジギトニン処理(
図6A)、熱及びエタノール処理(
図6B)、熱及びエタノール処理+形態学的パラメータを使用した各クラスの画像データセットのキュレーション(
図6C)から得られた壊死細胞を含んでいた。
【
図7A】FlowCamを使用することによって得られた各集団クラスの代表的な画像を示す図である。
【
図7B】FlowCamを使用することによって得られた各集団クラスの代表的な画像を示す図である。
【
図7C】FlowCamを使用することによって得られた各集団クラスの代表的な画像を示す図である。全ての画像は、提示目的のために拡大された。
図7Aは、375,000細胞/mL濃度のJurkat細胞を含有する試料の粒径分布を示す。
図7Bは、68,000ビーズ/mL濃度でダイナビーズを含有する試料の粒径分布を示す。
図7Cは、ダイナビーズを含むJurkat細胞を含有する試料の粒径分布を示す。
【
図8A】FlowCamソフトウェアから出力された形態学的パラメータを使用することによるダイナビーズ画像の分類を示す図である。
【
図8B】FlowCamソフトウェアから出力された形態学的パラメータを使用することによるダイナビーズ画像の分類を示す図である。
図8Aは、RPMI緩衝液(DB対照、グレー)及び細胞懸濁液(DB+細胞、黒色)に懸濁した一連のダイナビーズの濃度で測定したダイナビーズの濃度を示す。
図8Bは、RPMI緩衝液(灰色)及び細胞懸濁液(黒色)中のダイナビーズの回収率(左のy軸)及び変動係数(右のy軸)を示す。エラーバーは、6回の反復の平均値の標準偏差を表す。変動係数(%)を6回の反復測定から計算した。
【
図9A】CNNを用いたダイナビーズ(DB)分類の結果を示す図である。
【
図9B】CNNを用いたダイナビーズ(DB)分類の結果を示す図である。
図9Aは、RPMI培地(DB 対照、グレー)及びJurkat細胞懸濁液(DB+細胞、黒色)に懸濁したダイナビーズの濃度系列におけるダイナビーズの濃度の決定を示す。
図9Bは、RPMI培地(白四角)及びJurkat細胞懸濁液(黒四角)におけるダイナビーズの回収率(左y軸、黒)及び対応する変動係数(CV;右y軸、赤)を示す。エラーバーは、6回の反復の平均値の標準偏差を表す。変動係数値(%)は、6回の反復測定から計算した。
【
図10A】定量された細胞の総数の数に対するダイナビーズの影響を示す。
【
図10B】定量された細胞の総数の数に対するダイナビーズの影響を示す。
【
図10C】定量された細胞の総数の数に対するダイナビーズの影響を示す。
図10Aは、異なる濃度の添加ダイナビーズを有する試料においてCNN(黒棒)及び粒子形態学的パラメータ(空の棒)を使用することによって決定された細胞濃度を示す。
図10Bは、異なる濃度の添加ダイナビーズを有する試料においてCNN(黒棒)及び粒子形態学的パラメータ(空の棒)を使用することによって決定された破片濃度を示す。
図10Cは、異なる濃度の添加ダイナビーズを有する試料においてCNN(黒棒)及び粒子形態学的パラメータ(空の棒)を使用することによって決定された細胞付加物を示す。エラーバーは、日内の3連測定からの平均濃度の標準偏差を表す。
【
図11A】FlowCamを使用して決定した場合の異なるダイナビーズ標的濃度を有するダイナビーズ懸濁液中の細胞又は付加物として分類された粒子の誤差率を示す図である。
【
図11B】FlowCamを使用して決定した場合の375000細胞/mLの細胞懸濁液中のダイナビーズ及び付加物の誤差率を示す図である。誤差率は、CNNを使用することによる誤って分類された粒子(黒棒)、及び粒子形態学的パラメータを使用することによる誤って分類された及び未分類の粒子(白棒)に基づく。エラーバーは、6連の平均値の標準偏差である。
【
図12】80,000ビーズ/mLの濃度のダイナビーズ懸濁液(充填)及びダイナビーズを補充した細胞懸濁液(空)について、FlowCam-CNNによって決定された分類された粒子画像の確率分布(0.01の単位でビニング)を示す図である。代表的な画像は、ダイナビーズクラスに属するそれらの割り当てられた確率で示されている。
【
図13A】RPMI培地(制御;充填バー)及び細胞懸濁液(空のバー)中のダイナビーズの濃度を示す図である。
【
図13B】RPMI培地(制御;充填バー)及び細胞懸濁液(空のバー)中のダイナビーズの濃度を示す図である。
【
図13C】RPMI培地(制御;充填バー)及び細胞懸濁液(空のバー)中のダイナビーズの濃度を示す図である。20,000(
図13A)、50,000(
図13B)及び100,000(
図13C)のダイナビーズ/mLの参照濃度で、3つの異なる細胞濃度(x軸;血球計算を使用して決定)を試験した。エラーバーは、細胞懸濁液中のダイナビーズの3連測定値及びRPMI培地中のダイナビーズの非多重測定値の標準偏差を表す。
【
図14A】新たに解凍された細胞の手動ゲーティングを示す図である。
【
図14B】熱処理された細胞の手動ゲーティングを示す図である。
【
図14C】アネキシンV-FITC及びヨウ化プロピジウム(PI)アッセイを使用することによってカンプトテシン処理された細胞の手動ゲーティングを示す図である。
【
図14D】新たに解凍された細胞の手動ゲーティングを示す図である。
【
図14E】カルセイン-AMアッセイを使用することによって測定されたジギトニン処理された細胞の手動ゲーティングを示す図である。
【
図15A】CNNモデルの訓練のために選択された例示的なFlowCam画像を示す図である。
【
図15B】モデル訓練中に使用されなかった画像データセットに対する交差検証分析から得られた混同行列の図である。
【
図15C】FlowCamを用いて測定した、ボルテックスした(破片粒子が濃縮された)、熱処理した(壊死細胞が濃縮された)及び新たに解凍した(生細胞)細胞懸濁液の粒径分布の図である。
【
図16A】5℃、25℃及び37℃で解凍した後の細胞アリコートの測定値を示す図である。
【
図16B】5℃、25℃及び37℃で解凍した後の細胞アリコートの測定値を示す図である。
【
図16C】5℃、25℃及び37℃で解凍した後の細胞アリコートの測定値を示す図である。
【
図16D】5℃、25℃及び37℃で解凍した後の細胞アリコートの測定値を示す図である。
図16Aは、FIM-CNN(FIM)及び自動細胞計数(ACC)を使用することによって測定された細胞破片、生細胞及び壊死細胞の濃度の決定を示す。
図16Bは、カルセイン-AM(CA)、ヨウ化プロピナトリウム(PI)及びFIM-CNNアッセイを実施することによる細胞生存率の測定を示す。
図16Cは、アネキシンV-FITCアッセイによる細胞アポトーシスの評価を示す。
図16Dは、LDH放出による細胞アポトーシスの評価を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【
図17A】Jurkat細胞のサイズ分布に対する解凍の効果を示す図である。
【
図17B】Jurkat細胞のサイズ分布に対する解凍の効果を示す図である。
図17Aは、5℃及び37℃で解凍した後にFIMを使用して測定したセル直径を示す。
図17Bは、5℃で解凍した後のJurkat細胞懸濁液中で検出された粒子の例示的な画像を示す。
【
図18A】1回の凍結-解凍工程の前(T0)、-18℃で3時間保存した後(T1)又はRTで3時間保存した後(対照)のいずれかの後、3つの異なる濃度のDMSOを補充した細胞懸濁液を示す図である。
【
図18B】1回の凍結-解凍工程の前(T0)、-18℃で3時間保存した後(T1)又はRTで3時間保存した後(対照)のいずれかの後、3つの異なる濃度のDMSOを補充した細胞懸濁液を示す図である。
【
図18C】1回の凍結-解凍工程の前(T0)、-18℃で3時間保存した後(T1)又はRTで3時間保存した後(対照)のいずれかの後、3つの異なる濃度のDMSOを補充した細胞懸濁液を示す図である。
図18Aは、FIMによって測定された総(生存+壊死+アポトーシス)細胞の濃度を示す。
図18Bは、破片粒子の濃度を示す。
図18Cは、カルセイン-AM(CA)、ヨウ化プロピジウム(PI)及びFIM-CNN(FIM)アッセイを使用することによって決定される細胞生存率を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【
図19A】1回の凍結-解凍工程の前(T0)、-18℃で3時間保存した後(T1)又はRTで3時間保存した後(対照)のいずれかの後、3つの異なる濃度のジメチルスルホキシド(DMSO)を補充した細胞懸濁液を示す図である。
【
図19B】1回の凍結-解凍工程の前(T0)、-18℃で3時間保存した後(T1)又はRTで3時間保存した後(対照)のいずれかの後、3つの異なる濃度のジメチルスルホキシド(DMSO)を補充した細胞懸濁液を示す図である。
図19Aは、LDH放出アッセイを示す。
図19Bは、イメージングフローサイトメトリ(アネキシンV-FITCアッセイ)を使用することによって定量化されたアポトーシス細胞画分を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【
図20A】室温での振盪前(T0)及び振盪後(T1)又は休止保存後(対照)の、FBS(10%(v/v))を含まない又は含む細胞懸濁液を示す図である。
【
図20B】室温での振盪前(T0)及び振盪後(T1)又は休止保存後(対照)の、FBS(10%(v/v))を含まない又は含む細胞懸濁液を示す図である。
【
図20C】室温での振盪前(T0)及び振盪後(T1)又は休止保存後(対照)の、FBS(10%(v/v))を含まない又は含む細胞懸濁液を示す図である。
図20Aは、FIMを使用することによる細胞(生存及び壊死)及び破片粒子の総濃度を示す。
図20B及び20Cは、所与の時点でイメージングフローサイトメトリ(アネキシンV-FITCアッセイ)を使用することによって定量化されたLDH放出(
図20B)及びアポトーシス細胞画分(
図20C)を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【
図21】10%(v/v)FBSの非存在下及び存在下で水平方向に振盪した後にカルセイン-AM(CA)、ヨウ化プロピナトリウム(PI)及びFIM-CNN(FIM)アッセイを実施することによる細胞生存率の測定を示す図である。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【
図22】生細胞、壊死細胞、アポトーシス細胞及び破片粒子を分類するために再訓練されたCNNの混同マトリックスを示す図であり、再訓練に使用されたアポトーシス細胞はカンプトテシンを使用することによって誘導された。
【
図23】14時間の時間経過にわたるカンプトテシンあり及びなしの細胞懸濁液(37℃及び5%CO2での細胞懸濁液のインキュベーション)における、蛍光ベースのフローサイトメトリアッセイ及びFIM-CNNを使用することによって測定されたアポトーシス細胞の割合を示す図である。
【
図24】4つのカテゴリ:生存(健康な)細胞、壊死細胞、アポトーシス細胞及び破片からの画像を示す図である。
【
図25】4つのカテゴリ:生存(健康な)細胞、壊死細胞、アポトーシス細胞及び破片の混同マトリックスを示す図である。
【
図26】CNNが蛍光ベースのフローサイトメトリアッセイと比較して生細胞の数を過小評価したことを示す図である。最も可能性の高いCNNは、焦点が合っている生細胞の「過剰選択」のために健康な細胞をアポトーシスとして誤って分類し、焦点が合っていない生細胞は訓練データセットから省略された。
【
図27】焦点の合っていない画像を試験データセットから除去した後の細胞数のCNN推定を示す図である。
【
図28A】明視野画像及びイメージングフローサイトメトリによって得られたカルセイン-AM染色(蛍光基準)で訓練したCNNによる生細胞及び壊死細胞の分類を示す図である。
【
図28B】明視野画像及びイメージングフローサイトメトリによって得られたカルセイン-AM染色(蛍光基準)で訓練したCNNによる生細胞及び壊死細胞の分類を示す図である。
図28Aは、壊死を誘導するためにジギトニンで処理した試料を示す。
図28Bは、解凍したばかりの細胞を示す。
【
図29A】明視野画像及びイメージングフローサイトメトリによって得られたアネキシンV-FITC/PI染色(蛍光基準)で訓練されたCNNによるアポトーシス細胞及び生細胞の分類を示す図である。
【
図29B】明視野画像及びイメージングフローサイトメトリによって得られたアネキシンV-FITC/PI染色(蛍光基準)で訓練されたCNNによるアポトーシス細胞及び生細胞の分類を示す図である。
図29Aは、アポトーシスを誘導するためにカンプトテシンで処理した試料を示す。
図29Bは、陰性対照として未処理試料を示す。
【
図30】生存(健康な)細胞、壊死細胞及びアポトーシス細胞を分類するCNNの混同行列を示す図である。
【
図31】生存(健康)細胞、壊死細胞、アポトーシス細胞、及び破片を分類するCNNの混同行列を示す図である。CNNを、
図25に使用した生細胞、アポトーシス細胞及び破片を含む調製物の最適化された訓練画像データセット、及び壊死細胞の新しい調製物からの画像で訓練した。
【
図32】壊死細胞の2つの異なる訓練データセット(1-01及び1-02)で訓練されたCNN分類器によって得られた予測クラスの分布を示す図である。蛍光ベースのフローサイトメトリによって決定されるクラスの分布を参照として使用する。
【
図33】等張(Iso)、低張(Hypo)及び高張(Hyper)条件でインキュベートしたCNN分類生細胞、壊死細胞、アポトーシス細胞及び破片の混同マトリックスを示す図である。
【
図34】蛍光ベースのフローサイトメトリアッセイと、等張溶液(2-00)中でインキュベートしたCNN分類生細胞の予測との比較を示す図である。生細胞は、Iso、Hypo及びHyperクラスの合計を表す。
【
図35A】220~450mOsm/kgの範囲のオスモル濃度でFlowCam測定の前に5分間インキュベートした細胞を有する試料のCNN分類を示す図である。
【
図35B】220~450mOsm/kgの範囲のオスモル濃度でFlowCam測定の前に5分間インキュベートした細胞を有する試料のCNN分類を示す図である。
図35Aは、Hyper、Iso、Hypo、壊死及びアポトーシスクラスへの分類を示す。
図35Bは、生細胞の分類を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本主題は、本開示の一部を形成する以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解され得る。本開示は、本明細書に記載及び/又は示される特定の製品、方法、条件又はパラメータに限定されず、本明細書で使用される用語は、単なる例として特定の実施形態を説明するためのものであり、特許請求される開示を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0022】
本明細書で他に定義されない限り、本出願に関連して使用される科学的及び技術的用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。更に、文脈上別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0023】
本開示では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数の言及を含み、特定の数値への言及は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、少なくともその特定の値を含む。本明細書で使用される「複数」という用語は、2つ以上を意味する。先行詞「約」を使用して値が近似値として表される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。全ての範囲は包括的であり、組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、示された数又は数の範囲から0.0001~10%の間の逸脱を指す。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、示された数又は数の範囲から最大25%の逸脱を指す。「含む(comprises)」という用語は、列挙された全ての要素を包含することを意味するが、追加の指定されていない要素も含むことができ、全て同じ品質及び意味を有する「包含する(encompasses)」、「含む(includes)」、又は「含有する(contains)」という用語と互換的に使用され得る。「からなり」という用語は、列挙された要素又は工程から構成されることを意味し、全て同じ品質及び意味を有する「から構成される」という用語と互換的に使用され得る。
【0024】
本開示は、細胞ベースの生成物試料中の単一の生細胞及び/又は粒子状不純物を定量するための方法に関し、当該方法は、
a.単一の生細胞、破片、及び壊死細胞、アポトーシス細胞、ダブレット細胞、磁気ビーズ、又は付加物のうちの少なくとも1つを含む分類されたフローイメージング顕微鏡法(FIM)画像の訓練セットを提供することと、
b.工程(a)の分類された画像を用いて畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を訓練することと、
c.当該生成物試料からFIM画像を捕捉することと、
d.工程(b)で得られた訓練されたCNNを工程(c)のFIM画像に適用することによって、単一の生細胞、破片、及び壊死細胞、アポトーシス細胞、ダブレット細胞、磁気ビーズ又は付加物の少なくとも1つを同定することと、
e.工程(d)で同定された単一の生細胞及び/又は粒子状不純物を定量することと、
を含む。
【0025】
細胞及び微粒子不純物
いくつかの実施形態では、細胞は、医薬品に使用される任意の種類の細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、癌免疫療法に使用される任意の種類の細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、リンホカイン活性化キラー細胞、T細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、又は樹状細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は遺伝子操作された細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞はキメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞はCAR-T細胞を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、細胞は、再生医療に使用される任意の種類の細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、幹細胞、前駆細胞、分化細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、人工多能性体細胞(iPSC)、脂肪細胞、心筋細胞、軟骨細胞、膵島細胞、又はインスリン産生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は遺伝子療法に使用される細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は体細胞を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、細胞は、同種細胞又は自己細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞はヒト又は動物細胞を含む。
【0028】
当業者は、CARが、T細胞に特定のタンパク質を標的化する能力を与える操作された受容体タンパク質を含むことを理解するであろう。これらの受容体は、抗原結合機能及びT細胞活性化機能の両方を組み合わせて単一の受容体にする。このようにCARを発現させることにより、T細胞はCARによって認識される抗原に結合することができ、その存在下で活性化される。
【0029】
当業者は、生細胞が、培養物中又は任意の適切な培地中で増殖することができる細胞を指すことを理解するであろう。これは、増殖及び/又は再生することができない死細胞である非生細胞とは対照的である。細胞が生細胞であるかどうかを判定するための多くの方法が当技術分野で利用可能であり、これらの方法には、比色法、コールターカウンター、フローサイトメトリ、及び形態学に基づく方法が含まれる。
【0030】
いくつかの実施形態では、訓練セットで使用される生細胞の画像は、同様の培養条件下で増殖させた生細胞の画像を含む。本明細書で提供される実験データは、各カテゴリ内の異種画像を用いてCNNを訓練することによって、CNN分類器の精度を高めることができることを示している。したがって、いくつかの実施形態では、訓練セットの生細胞画像は、異なる浸透圧を有する溶液に懸濁した生細胞の画像を含む。いくつかの実施形態では、画像訓練セットは、等張条件で懸濁した生細胞、低張条件で懸濁した生細胞、及び高張条件で懸濁した生細胞の画像を含む。いくつかの実施形態では、CNNは、異なるオスモル濃度下で懸濁された全ての生細胞を生細胞の単一カテゴリに分類する。
【0031】
いくつかの実施形態では、低張溶液は、細胞よりも低い濃度の溶質を含む。いくつかの実施形態では、低張溶液は、220、250又は270mOsm/kgのオスモル濃度を含む。当該低張性浸透圧は、例えば、リン酸生理食塩水緩衝液(PBS)を水中で希釈することによって得ることができる。いくつかの実施形態では、高張溶液は、細胞よりも高濃度の溶質を含む。いくつかの実施形態では、高張液は、350、400、420又は450mOsm/kgのオスモル濃度を含む。当該高張性浸透圧は、異なる量のスクロースをPBSに添加することによって得ることができる。いくつかの実施形態では、任意の等張細胞培地、例えばPBSを、等張条件で細胞をインキュベートするために使用することができる。
【0032】
当業者は、微粒子不純物という用語が、細胞生成物中に存在する任意の望ましくない分子を指し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、粒子不純物は、非細胞不純物を含む。いくつかの実施形態では、非細胞不純物は、磁気ビーズを含む。
【0033】
当業者は、細胞を磁気的に選別するためにいくつかの磁気ビーズが当技術分野で利用可能であることを理解するであろう。これらのいずれも、本明細書に開示される方法で使用することができる。いくつかの実施形態では、磁気ビーズはダイナビーズを含む。いくつかの実施形態では、磁気ビーズは、抗体でコーティングされた磁気微粒子を含む。いくつかの実施形態では、磁気ビーズは、抗体でコーティングされた磁気ナノ粒子を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、微粒子不純物は、細胞由来不純物を含む。いくつかの実施形態では、細胞由来不純物は破片を含む。いくつかの実施形態では、細胞由来不純物は壊死細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞由来不純物は、アポトーシス細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞由来不純物は、ダブレット細胞を含む。
【0035】
本明細書で使用される場合、「ダブレット細胞」という用語は、単一の顕微鏡画像に捕捉された2つの細胞を指す。いくつかの実施形態では、ダブレット細胞は、物理的に結合した2つの細胞を指す。いくつかの実施形態では、ダブレット細胞は、単一の画像に捕捉され、それらが単一細胞であるかのように検出される近接した2つの細胞を指す。ダブレット細胞が物理的に結合していない場合、それらは必ずしも医薬不純物又は臨床不純物と見なされない。しかし、非結合ダブレット細胞は、細胞の正確な定量化を妨げるので、本明細書では不純物と見なされる。いくつかの実施形態では、特定されたダブレット細胞は、細胞の決定された総濃度を報告する目的で、2つの細胞としてカウントされる。
【0036】
本明細書に開示される方法は、細胞を含む任意の組成物中の細胞及び不純物を定量するために適用することができる。いくつかの実施形態では、方法は、細胞ベースの生成物試料中の細胞及び不純物を定量するために適用される。当業者は、細胞ベースの製品が、医薬製品、医薬品又は医薬、すなわち、疾患を治療、治癒、予防若しくは診断するために、又は幸福を促進するために使用される組成物を含むことを理解するであろう。更に、細胞ベースの製品は、承認された薬物、薬物候補、又は製薬会社によって研究、試験、保存、開発、標識、製造、市販、販売及び/又は流通されている製品を含む。
【0037】
当業者であれば、試料は、分析された細胞ベースの産物の任意の部分を含み得る。いくつかの実施形態では、試料は、細胞ベースの産物の構成を表すためにランダムに得られた細胞産物の体積を含む。いくつかの実施形態では、試料は、異なる時点で、又は細胞産物の異なる部分から採取された多数の試料を含む。いくつかの実施形態では、試料は全細胞産物を含む。
【0038】
畳み込みニューラルネットワーク
本明細書に開示される方法は、細胞ベースの生成物中の細胞及び/又は不純物を同定するためのニューラルネットワークの使用を含む。当業者は、ニューラルネットワーク又は人工ニューラルネットワークが、エッジによって相互接続されたニューロンと呼ばれる接続されたノードの集合を指すことを理解するであろう。ニューラルネットワーク及び画像認識のためのその使用の説明は、例えば、Valueva MV et al.(2020).Application of the residue number system to reduce hardware costs of the convolutional neural network implementation.Mathematics and Computers in Simulation.Elsevier BV.177:232-243.doi:10.1016/j.matcom.2020.04.031.ISSN 0378-4754に見出すことができる。ニューロン及びエッジは、学習又は訓練プロセス中に調整される重みを有する。本開示では、当該学習は、単一の生細胞、破片、壊死細胞、アポトーシス細胞、ダブレット細胞、磁気ビーズ、及び/又は付加物の分類画像のセットを提供することを含む。典型的には、ニューロンは層に集約される。顕微鏡画像としての信号は、場合によっては複数回層を横切った後に、第1の層(入力層)から最終層(出力層)に移動する。
【0039】
ディープニューラルネットワークは、入力層と出力層との間に複数の層を有するニューラルネットワークである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、深層ニューラルネットワークの使用を含む。畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は、視覚画像の分析に一般的に適用される深層ニューラルネットワークの一種である。CNNは多層の全結合ネットワークであり、すなわち、ある層の各ニューロンは次の層の全てのニューロンに結合される。
【0040】
本明細書に開示される方法では、CNNの入力層には、細胞ベースの産物試料の拡大画像が供給される。いくつかの実施形態では、当該画像は、フローイメージング顕微鏡法(FIM)によって得られる。当業者は、「動態画像分析」と呼ばれることもあるFIMが、フローセルの画像を捕捉するように配置及び構成された顕微鏡からなる任意の機器を含むことを理解するであろう。多数のFIMシステムが当技術分野で利用可能であり、それらのいずれも本明細書に開示される方法と共に使用することができる。いくつかの実施形態では、FIMは、FlowCam(登録商標)(Yokogawa Fluid Imaging Technologies Inc.)を含む。いくつかの実施形態では、FIMは、MFI(商標)(ProteinSimple)、iSpect IDA-10(Shimadzu)、Occhio(Occhio Instruments SA)及びFlowSight(登録商標)Imaging Flow Cytometer(メルク)を含む群から選択される。
【0041】
いくつかの実施形態では、フローイメージング顕微鏡法画像を得ることは、デジタルカメラで視野の画像をキャプチャすることと、各粒子のバイナリ画像を作成するために、グレースケール閾値化プロセスで当該画像を任意選択的にセグメント化することとを含む。いくつかの実施形態では、画像は、光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、偏光顕微鏡、位相差顕微鏡、又は微分干渉顕微鏡によって得られる。
【0042】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、分析された試料中の単一生細胞、壊死細胞、アポトーシス細胞、ダブレット細胞、磁気ビーズ、付加物又は破片の数を定量する。いくつかの実施形態では、当該定量化は、各画像をカテゴリ、例えば単一の生細胞、アポトーシス細胞などに割り当てることと、各カテゴリに割り当てられた画像の数を追加することと、を含む。いくつかの実施形態では、当該定量する工程は、試料中の単一の生細胞及び/又は不純物の数を提供する工程を含む。いくつかの実施形態では、当該定量化は、分析された画像のそれぞれについて確率関数を計算することを含む。いくつかの実施形態では、当該定量化は、分析された全ての画像の確率関数を追加することを含む。
【0043】
当業者は、画像分類のためのCNNが異なるアーキテクチャを含み得ることを理解するであろう。これらのアーキテクチャのいずれも、本明細書に開示される方法で使用することができる。いくつかの実施形態では、CNNはVGG-19アーキテクチャを含み、その説明は、例えば、Simonyan K et al.Very deep convolutional networks for large-scale image recognition;2014.http://arxiv.org/pdf/1409.1556v6に見出され得る。VGG-19は、19層の深さ及び224x224の画像入力サイズを含むニューラルネットワークアーキテクチャである。VGG-19 CNNは、ImageNetデータベースからの100万を超える画像で事前訓練された。VGG-19CNNは、画像を1000の物体カテゴリに分類することが示された。
【0044】
いくつかの実施形態では、CNN接続層の一部のみがアクティブであり、残りはフリーズしている。細胞画像データセットを用いた訓練中に、任意の数の層をアクティブにすることができる。いくつかの実施形態では、最後の2つの完全に接続された層は、訓練中にアクティブである。いくつかの実施形態では、最初の10層は凍結され、残りは活性である。
【0045】
CNNを訓練するために多数のアルゴリズムを使用することができ、これらのうちのいずれかを本明細書に開示されるCNNを訓練するために適用することができる。いくつかの実施形態では、CNNはAdam最適化アルゴリズムで訓練される。いくつかの実施形態では、CNNは、SGD最適化アルゴリズムで訓練される。
【0046】
訓練セット
本明細書に開示される方法は、異なるカテゴリからの分類された画像のセットでCNNを訓練することを含む。いくつかの実施形態では、カテゴリは、単一生細胞、壊死細胞、アポトーシス細胞、ダブレット細胞、磁気ビーズ、付加物及び破片を含む群から選択される。いくつかの実施形態では、訓練セットは、2、3、4、5、6、7、又はそれ以上のカテゴリからの画像を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、訓練セットは、単一生細胞、壊死細胞、アポトーシス細胞、ダブレット細胞、磁気ビーズ、付加物及び破片を含む。いくつかの実施形態では、訓練セットは、単一生細胞、ダブレット細胞、磁気ビーズ、付加物及び破片を含む。いくつかの実施形態では、訓練セットは、単一の生細胞、壊死細胞、及び破片を含む。いくつかの実施形態では、訓練セットは、単一の生細胞、壊死細胞、アポトーシス細胞、及び破片を含む。
【0048】
CNNがカテゴリの区別を正確に学習するためには、CNNは、最初に、当該カテゴリに正しく割り当てられた多数の画像で訓練されなければならない。訓練セットにおける画像の標識付けの誤りは、当該カテゴリのメンバを識別するCNNの将来の能力を低下させる。例えば、生細胞をアポトーシスとして標識することは、生細胞とアポトーシス細胞とを分化させるCNNの将来の能力を損なうであろう。訓練画像の正しい標識は些細なものに見えるかもしれないが、実際には、多くの複雑な障害を引き起こす。
a.細胞培養物は数百万個の細胞を含み、それらは同じ外部条件に対して異なる反応をする。例えば、アポトーシス促進剤による細胞集団の処理は、通常、その集団のほんの一部においてアポトーシスを誘導する。そのようなアポトーシス促進処理を受けた全ての細胞を「アポトーシス」として標識し、CNNを訓練するために当該標識を使用することは、CNNの成績に有害であろう。この場合、アポトーシス細胞と非アポトーシス細胞とを区別するCNNの能力は低くなる。
b.原則として、細胞をアポトーシスマーカーで標識することとして、細胞がアポトーシスであるかどうかを確認するために多数の方法が利用可能である。これらの方法は静的顕微鏡法で広く使用されているが、システムの固有の特性のためにFIMに適用することはできない。FIMでは、流れている流体がフローセルを通過するときに画像が撮影され、(細胞の性質を確認するための)蛍光画像を(CNNを訓練するための)明視野画像と同時に取得することはできない。
c.したがって、本明細書で提案される溶液は、生細胞、壊死細胞、アポトーシス細胞、又は付加物の高度に均一な集団を得ること、及びそれら全ての細胞を対応するカテゴリに割り当てることを含む。集団は十分に均質であるため、CNNは誤標識に耐えることができ、なお高い分類精度を達成する。
【0049】
本明細書に開示された訓練セットを用いてFIM-CNNを正確に訓練することが可能である、本明細書に提示された発見は、驚くべきことであり、予想外である。
【0050】
多数の異なる画像訓練セットを試験したが、CNNを十分に訓練することができなかった。実施例の項で詳述したように、広範な実験及び分析の後にのみ、適切な画像セットを得た。
【0051】
いくつかの実施形態では、訓練セットは、
i)細胞懸濁液を提供することと、
ii)当該細胞培養物において、壊死、アポトーシス、細胞破片、付加物、又はそれらの任意の組合せを誘導するための当該細胞懸濁条件に適用することと、
iii)必要に応じて、細胞及び他の粒子状不純物を標識することと、
iv)当該細胞培養物のFIM画像を取得することと、
v)当該FIM画像を分類することと、
を含む方法によって得られる。
【0052】
いくつかの実施形態では、工程(i)の細胞の種類は、細胞ベースの培養試料の細胞の種類と同様である。いくつかの実施形態では、工程(i)の細胞懸濁液は、細胞ベース生成物の細胞懸濁液と同様である。当業者は、本明細書に開示される方法が、細胞ベースの製品に適した任意の種類の細胞に適用可能であることを理解するであろう。
【0053】
いくつかの実施形態では、壊死を誘導するための細胞培養条件は、細胞をストレス条件に供することを含む。いくつかの実施形態では、ストレス状態は、振盪ストレスを含む。いくつかの実施形態では、振盪ストレスは、室温で約185rpmで約3時間撹拌することを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、ストレス状態は凍結解凍サイクルを含む。いくつかの実施形態では、凍結解凍サイクルは、例えばDMSOなどの溶媒を細胞培養試料に1%、2.5%、5%及び10%の濃度に添加し、次いで試料を-18℃で少なくとも約3時間凍結し、次いで試料を37℃で2分間解凍することを含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、ストレス条件は、細胞培養物を熱ストレスに曝露することを含む。いくつかの実施形態では、熱ストレスは、細胞を約55℃に約90分間曝露することを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、ストレス条件はエタノールとのインキュベーションを含む。いくつかの実施形態では、エタノールとのインキュベーションは、エタノールを細胞培養試料に37℃で90分間10%の濃度に添加することを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、ストレス状態は、振盪ストレス、凍結解凍サイクル、熱及びエタノールインキュベーションのうちの2つ以上の組合せを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、CNNは、異なる方法によって得られた壊死細胞の画像で訓練される。例えば、CNNは、第1の細胞群を37℃で90分間、10%エタノール中でインキュベートすることによって得られた壊死細胞の画像によって、及び第2の細胞群を55℃で90分間インキュベートすることによって得られた壊死細胞の画像によっても訓練することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、アポトーシスを誘導するための細胞培養条件は、細胞をアポトーシス促進試薬とインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態では、アポトーシス促進剤は約1μMのスタウロスポリンを含み、その場合、細胞は約3時間インキュベートされ得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、付加物を誘導するための細胞培養条件は、ダイナビーズの存在下、約1:1の数比で約1.5時間、細胞をインキュベートすることを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、訓練セット画像に使用される細胞が標識される。当業者であれば、本明細書で調査される細胞表現型及び/又は不純物を標識するために多数のマーカーが利用可能であることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、アポトーシスを決定するためのアッセイは、アネキシンV、DNA染色、活性化カスパーゼ検出器、細胞質シトクロムC、グルタチオン、又はそれらの組合せで細胞を標識することを含む。いくつかの実施形態では、壊死を決定するためのアッセイは、例えばRIPK3又はMLKLで細胞を標識することを含む。いくつかの実施形態では、強度、シグマ強度、凸性、緻密性及びアスペクト比などの形態学的フィルタを使用して、生細胞、壊死細胞、アポトーシス細胞、破片、ビーズ及び付加物を同定することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、訓練セットの画像は、フローイメージング顕微鏡法(FIM)によって得られる。当業者は、FIMが、流れの中の液体試料の顕微鏡画像を得ることを可能にするシステムであることを理解するであろう。FIMは、超高精度コンピュータ制御シリンジポンプを使用して、光路に垂直なフローセルを通して流体試料を引き出す。光学系は顕微鏡に類似しており、流体中の粒子がフローセルを通過するときに粒子のリアルタイム画像を捕捉するために使用される。
【0063】
いくつかの実施形態では、訓練セットの細胞画像は、当該細胞に適用された治療に従ってカテゴリに分類される。例えば、アポトーシス促進剤で処理した細胞培養物からの全ての細胞画像は、アポトーシス細胞として分類される。いくつかの実施形態では、細胞画像は手動で分類される。いくつかの実施形態では、細胞は、所定の形態学的パラメータに従ってカテゴリに分類される。いくつかの実施形態では、形態学的パラメータは、顕微鏡画像を分析するための関連ソフトウェアによって測定される。いくつかの実施形態では、強度、シグマ強度、凸性、緻密性及びアスペクト比から選択される少なくとも1つのパラメータを使用して、細胞画像をカテゴリに割り当てる。いくつかの実施形態では、各細胞画像は視覚的に分析され、手動でカテゴリに割り当てられる。
【0064】
いくつかの実施形態では、生細胞の画像は、サイズフィルタ(10μm~20μm)及びアスペクト比フィルタ(0.6~1.0)を適用することによって分類される。いくつかの実施形態では、生細胞の画像の分類は、目に見えるアポトーシス性ブレブ及びより粗い表面を有する細胞を除外することによって、更に手動で精密化される。
【0065】
いくつかの実施形態では、アポトーシス誘導のための条件を受けた細胞からの全ての画像が、アポトーシス細胞として分類される。いくつかの実施形態では、細胞画像は、破片及び凝集物を除外するサイズフィルタ(10~20μm)を適用することによって、及び残存する生細胞画像を除外する円形度フィルタ(0.9未満)を適用することによって、アポトーシス細胞カテゴリに分類される。
【0066】
いくつかの実施形態では、壊死誘導のための条件を受けた細胞からの全ての画像が壊死細胞として分類される。いくつかの実施形態では、生細胞及び壊死細胞の手動で選択された画像は、アスペクト比、円形適合、凸性、シグマ強度及び対称性などの形態学的パラメータに従ってフィルタリングされる。列挙された各形態学的パラメータについて、粒子(細胞)は、モデルの訓練への入力のために選択されるために、手動で選択された集団(生存又は壊死細胞集団)の10パーセンタイルと90パーセンタイルとの間の値を有していなければならない。
【0067】
いくつかの実施形態では、付加物を形成するための条件を受けた細胞からの全ての画像が、付加物細胞として分類される。いくつかの実施形態では、付加物からの画像は、平均粒子強度値に基づいて分類される。いくつかの実施形態では、ダブレット細胞からの単一細胞の分離は、アスペクト比パラメータに基づいて行われる。
【0068】
いくつかの実施形態では、磁気ビーズ及び付加物からの画像は、それらの低透過性値に従って分類される。いくつかの実施形態では、細胞又は破片の画像は、それらの高度に透明な値に従って選択される。いくつかの実施形態では、破片粒子を除外するために画像選択を手動で二重チェックする。
【0069】
いくつかの実施形態では、訓練セットの分類画像は、細胞ベースの産物の試料を得ることと、当該試料のFIM画像を得ることと、本明細書に開示される分類方法のいずれかによって当該FIM画像を分類することと、を基本的に含む方法によって得られる。
【0070】
当業者は、ニューラルネットワークを一般的な画像データセットで事前訓練することができることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、CNNの事前訓練は、訓練セットを用いてCNNを訓練するための良好な開始点を提供するようにネットワークの重みが調整されるプロセスを含む。いくつかの実施形態では、CNNは、http://image-net.orgからダウンロードすることができるImageNetデータセットで事前訓練されている。
【0071】
画像分類
目的のカテゴリの学習に続いて、CNNは、新しい画像をそれらのカテゴリのうちの1つに分類することができる。いくつかの実施形態では、CNNの入力層には、細胞ベースの生成物試料から得られた画像が供給され、当該画像は、単一の生細胞、破片、壊死細胞、アポトーシス細胞、ダブレット細胞、磁気ビーズ、又は付加物から選択されるカテゴリに分類される。いくつかの実施形態では、CNN出力は確率関数を含み、当該確率関数は、各カテゴリに属する解析された画像の確率を含む。いくつかの実施形態では、CNN出力は、解析された画像をカテゴリに割り当てることを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、CNNによって提供される結果に関数を適用する工程を含む。いくつかの実施形態では、当該関数は、生成物-細胞試料中の生細胞及び/又は不純物の数を予測することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、品質管理プロセスの一部であり、当分野で公知の任意の他の品質管理分析と組み合わせることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、蛍光マーカーを使用して訓練セットの画像を標識することを含む。当業者は、生細胞、壊死細胞及びアポトーシス細胞を蛍光標識するための細胞マーカーが当技術分野で利用可能であることを理解するであろう。これらのマーカーのいずれも、本明細書に開示される方法で実施することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、FIMは、明視野画像及び細胞懸濁液の蛍光シグナルを同時に取得する。続いて、蛍光シグナルを使用して明視野画像を標識する。いくつかの実施形態では、蛍光シグナルは、細胞が生存可能であるか、アポトーシスであるか、又は壊死しているかを示し、それに応じてその明視野画像を分類し、それに応じて明視野画像を標識する。いくつかの実施形態では、当該標識付き明視野画像は、CNNを訓練するために使用される。
【0075】
当業者は、任意の細胞表現型を示す任意の細胞マーカーが本明細書に開示される方法に適用され得ることを理解するであろう。したがって、例えば、本明細書中に開示される方法は、任意の膜タンパク質を発現する細胞を認識するようにCNNを訓練するために使用され得る。
【実施例】
【0076】
以下の実施例は、本明細書に開示される技術のいくつかの実施形態をより完全に説明するために提示される。しかしながら、それらは決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0077】
実施例1-実施例1~12の材料及び方法
別段の記載がない限り、以下に記載される材料及び方法は、実施例1~12に関する。
【0078】
細胞及び試料の調製 T細胞白血病細胞(Jurkat、クローンE6-1、ATCC(登録商標)TIB152TM)は、Leiden University Medical Centre(LUMC)によって、総細胞濃度107細胞/mLの凍結1mLアリコートとして提供され、使用前に冷凍庫で-140℃で保存された。Jurkat細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS;Life Technologies,Eugene,OR,USA)及び10%ジメチルスルホキシド(DMSO)(Life Technologies)が補充される高グルコースRPMI1640(RPMI培地;ThermoFisher,Waltham,MA,USA)に製剤化した。ダイナビーズ Human T-Activator CD3/CD28 for T Cell Expansion and Activation、及び低タンパク質結合収集チューブをThermoFisherから購入した。滅菌5mLエッペンドルフチューブをVWR(Ismaning,Germany)から購入した。
【0079】
この試験でモデルT細胞として使用したJurkat細胞を解凍し、分析前にRPMI培地で新たに調製した。凍結細胞アリコートを36℃で解凍し、約40mLのRPMI培地に再懸濁した。残留FBS及びDMSOを除去するために、細胞懸濁液を300rcfで10分間、20℃で遠心分離した。特に明記しない限り、上清を除去し、ペレットを10mLのRPMI培地に再懸濁した。特に明記しない限り、細胞(生細胞及び死細胞)の平均濃度は477,188±85,914細胞/mLであり、血球計算法(後述)によって決定した平均生存率は81%±9%(n=8)であった。細胞含有試料を解凍後4時間まで測定し、その間、細胞生存率は影響を受けなかった。
【0080】
ダイナビーズをRPMI培地で106ビーズ/mLの中間ストック濃度(公称ダイナビーズ濃度の希釈係数に基づく)に希釈し、2~8℃で最大1ヶ月間保存した。必要量の中間ストックを細胞試料に添加して、所望のダイナビーズ濃度にした。以下の実施例に記載のダイナビーズの参照濃度は、希釈計算から得られた試料中のダイナビーズの予想濃度及び製造業者によって記載された元のビーズ濃度である。製造業者はダイナビーズの定量化のためにFlowCamを使用しないことに留意しなければならず、したがって、参照濃度と測定濃度との間の系統的偏差が予想されるべきである。
【0081】
血球計算 細胞生存率及び総細胞濃度を、10倍の倍率(Zeiss)で、Bright-Line血球計算ガラス(Merck,Darmstadt,Germany)及びAxiostar Plus顕微鏡(Zeiss,Jena,Germany)を使用することによって決定した。洗浄した細胞懸濁液を滅菌濾過した0.4%トリパンブルー溶液(Merck,Darmstadt,Germany)で2倍希釈した。次に、10mLの混合物を血球計算に入れ、製造業者の推奨に従って、少なくとも100個の細胞を計数した(生存染色されていない細胞及び非生存染色細胞の両方)。
【0082】
フローイメージング顕微鏡法 マイクロメートルサイズ粒子の特性評価のために、80mmフローセル及び10倍対物レンズを備えたFlowCam 8100(Fluid Imaging Technologies,Scarborough,ME,USA)を使用した。機器を、VisualSpreadsheetソフトウェア(v4.10.8)を使用することによって操作した。流速0.18mL/minで分析を行い、検出閾値を暗画素17、明画素15とした。画像は、高解像度CMOSカメラ(1920x1200ピクセル)を用いて27フレーム/秒で撮影した。合計で0.5mLの試料体積を約70%の効率で分析した(すなわち、測定された試料体積は-0.35mLであった)。試料測定間の洗浄工程は、2%Hellmanex III及び高度に精製された水でフローセルを完全に洗浄することを含んだ。直径は球相当径(ESD)として報告され、撮像前処理にはフィルタを適用しなかった。特に明記しない限り、試料を3連又は6連で測定した。
【0083】
この試験内で測定された試料は、5つの異なる集団:単一細胞、ダブレット細胞、ダイナビーズ、付加物(少なくとも1つのビーズと少なくとも1つの細胞との組合せとして定義される)及び破片(任意の他の細胞型及び非細胞型の粒子)の粒子を含んでいた。細胞の総決定濃度を報告するために、単一細胞、付加物及び2xダブレット細胞のカウントを合計した。測定された試料中のダイナビーズの決定された濃度は、ダイナビーズ及び付加物の合計数から導出された。
【0084】
集団識別のための粒子画像の生成 閾値の確立及びCNNの訓練を、各集団クラスの手動選択画像(4,000~4,500)に対して実行し、これは、高い分類精度(0.99超)に達するようにモデルを訓練するのに十分であることが示された。破片及び付加物の選択プロセスを容易にするために、FlowCam分析の前に、それぞれの粒子の数が増加した試料を生成した。破片を表す粒子が濃縮された試料を、新たに再懸濁した(凍結保護剤を含まない)細胞懸濁液を2回の凍結解凍サイクル(-140~36℃)に供することによって得た。多数の付加物を有する試料を、細胞(500,000細胞/mL)をダイナビーズの存在下、1:1の数比で37℃及び5%CO2で1.5時間インキュベートすることによって作製した。
【0085】
FlowCam用の形態学的フィルタの開発 FlowCamシステムのVisualSpreadsheetソフトウェアは、測定された試料内の各検出された粒子について30の形態学的パラメータを出力する。これらの利用可能なパラメータのうちの5つ(強度、シグマ強度、凸性、緻密性及びアスペクト比)は、粒子集団に対して最も高い分解能を有することが分かった。各集団クラスの粒子特性の値は、1mmサイズのビンに更にクラスター化され、ボックスプロットに示されている(
図1)。各粒子をそのクラスに割り当てるために使用される閾値を開発するために、Weinbuch D et al.Micro-flow imaging and resonant mass measurement(Archimedes)-complementary methods to quantitatively differentiate protein particles and silicone oil droplets.J Pharm Sci.2013;102(7):2152-65.(https://doi.org/10.1002/jps.23552)に報告されるもののような手法を、シリコーン油及びタンパク質凝集粒子の識別に使用した。簡潔には、段階的アプローチに従った。
【0086】
最初に、ダイナビーズ及び付加物を、平均粒子強度値に基づいて細胞(単一及びダブレット)及び破片から分離した。1μmの各サイズビンについて、「低透明」粒子(ダイナビーズ及び付加物)の10番目の四分位数及び「高透明」粒子(細胞及び破片)の90番目の四分位数の平均値をサイズの関数として計算した。1つの集団のみが存在するサイズ領域については、カットオフ閾値を、95番目の四分位パラメータ値より下又は上に手動で調整した。更に、4度多項式関数を3μm~35μmのこれらの点に当てはめ、閾値セットを上回る又は下回る特定の直径の試験粒子をいずれかの群に割り当てた。第2に、ダイナビーズからの付加物及び破片からの細胞の分離を可能にする、緻密性、凸性及びシグマ強度の閾値を同様の様式で導出した。単一細胞及びダブレット細胞の分離のために、アスペクト比パラメータを適用した。したがって、各試験粒子は、特定の集団クラスに割り当てられる少なくとも3つの基準を満たしていなければならない。3μm未満の直径を有する全ての粒子を破片集団に割り当てた。
【0087】
深層畳み込みニューラルネットワーク Simonyan K et al.Very deep convolutional networks for large-scale image recognition;2014.http://arxiv.org/pdf/1409.1556v6に記載されるように、VGG-19アーキテクチャは、CNNの基礎として使用される。このアーキテクチャは、19の畳み込み(重み)層を含み、広範囲の視覚的オブジェクトフィーチャを捕捉することができる。ネットワーク重みは、層への入力を参照として、畳み込み層を学習残差関数として再定式化することによって最適化される。最後の2つの完全に接続された層のみを微調整することにより、事前訓練モデルのフィーチャの複雑さを粒子分類タスクのために最適化することができる。微調整のために、画像データセットを訓練セット、検証セット及び試験セットに、それぞれ0.8、0.1及び0.1の比率で分割した。データセットのこのような分割は、クラスのバランスを維持することを目的としており、したがって、ファインチューニングは特定のクラスに偏っていない。深層学習モデルは、Adam最適化アルゴリズムを用いて30エポックで微調整された。機械学習モデルを、Keras(2.2.4)-Tensorflow(1.13.1)Python(3.7.3)ライブラリに実装し、11GBのVRAMを有するNvidia Turing GPUで実行した。CNNを使用することによる画像解析のための単純化されたワークフローを
図2に示す。
【0088】
データ分析 データの統計分析をOrigin 2016(Origin-Lab Corporation,Northampton,MA,USA)で行った。箱ひげ図は、中央の長方形が第1から第3の四分位に及び、ひげが5から95パーセンタイル値までの範囲のデータの分布を表す。平均値の比較のために、a=0.05(95%信頼区間)の両側スチューデントt検定を使用した。検出限界(LOD)及び定量限界(LOQ)は、ダイナビーズについて試験した全範囲の値を使用することによって決定し、各ビーズ濃度について6回の測定反復を実施した。式1及び2を用いてLOD及びLOQを計算した。
【0089】
(1)LOD=(3:3*σ)/S
【0090】
(2)LOQ=(10*σ)/S
【0091】
ここで、σはy切片の標準誤差であり、Sは線形回帰直線の傾きである。
【0092】
実施例2-ダイナビーズの高回収率を得るためのプロトコル
これらの実験の目的は、CNNの訓練のためにダイナビーズ画像を得るための最良のプロトコルを決定することであった。
【0093】
方法 以下の3つのセットアップの有効性を比較した。
【0094】
セットアップ1 一次パッケージ中のダイナビーズの均質化は、製造業者の指示に従って行った。ビーズの希釈及び均質化は、通常のEppendorfピペットチップを使用してポリプロピレン2.0mL微量遠心管で行った。ボルテックスによって各希釈物の均質化を行った。
【0095】
セットアップ2.一次パッケージ中のダイナビーズの均質化は、製造業者の指示に従って行った。ビーズの希釈及び均質化は、通常のEppendorfピペットチップを使用してポリプロピレン2.0mL微量遠心管で行った。各希釈物の均質化は回転機によって行った。
【0096】
セットアップ3.一次パッケージ中のダイナビーズの均質化は、製造業者の指示に従って行った。ビーズの希釈は、低タンパク質結合2.0mL微量遠心管及び低保持ピペットチップを用いて行った。ボルテックスによって各希釈物の均質化を行った。
【0097】
結果:セットアップ3は、ダイナビーズ懸濁液の調製方法を記載する。この方法に従って調製されたダイナビーズは、60%を超える回収率で再現性よく定量することができた(
図3)。
【0098】
実施例3-付加物画像の生成
これらの実験の目的は、付加物画像のデータセットを生成することであった。
【0099】
方法 細胞を細胞インキュベーター(37℃、5%CO2)中でダイナビーズと共に1:1の比で3時間インキュベートした。ピペッティングによって細胞を再懸濁し、FlowCam法によって定量した。1つ又は複数のダイナビーズに付着した細胞の画像を操作者が手動で選択した。異なる量の添加ダイナビーズで生成された付加物を、FlowCam-CNNによって定量した。
【0100】
結果 付加物の数は、細胞懸濁液中に存在するダイナビーズの数と共に増加したことが検出された(
図4)。
【0101】
実施例4-FlowCam測定のための適切な焦点の選択
これらの実験の目的は、FlowCam測定のための適切な焦点を選択することであった。適切な焦点は、再現可能な品質の画像を取得し、機械学習モデルの一貫した性能を達成することを可能にするべきである。
【0102】
方法 平均強度及びエッジ勾配値を使用して、細胞画像を捕捉するための最適な焦点設定の選択を支援した。細胞を用いて集束設定を確立したら、標準適合性試験基準の平均強度値及びエッジ勾配値を得るために、ポリスチレン標準粒子の反復測定を実施した(n=9)。細胞懸濁液の測定を行う前に、ポリスチレン標準粒子の測定を行い、焦点設定を所定の平均強度及びエッジ勾配値に調整することが必要であった。
【0103】
結果 機械学習を使用することによる分類のための一貫した画質を有する細胞画像を収集した(
図5)。ポリスチレン標準粒子を使用して正しい焦点設定(平均強度及びエッジ勾配値に基づく)を試験及び確認するシステム適合性試験を確立した。
【0104】
実施例5-訓練データセットのための画像の選択
これらの実験の目的は、高割合の生細胞、壊死細胞及び破片粒子を含む画像を選択することであった。
【0105】
方法 壊死を誘導するための細胞処理方法の確立。細胞をジギトニン(RPMI培地中の目標濃度:1μM、5μM、10μM)、熱(55℃で1.5時間)又はエタノール(10%v/v、37℃で1.5時間)で処理した。
【0106】
訓練データセットを管理し、各集団の「エッジケース」を排除するために形態学的基準を確立した。訓練のために撮影された画像は、各クラスごとに選択された画像集団全体の10~90パーセンタイルの範囲内で、以下の形態学的パラメータの値を有する必要があった:アスペクト比、円形適合、緻密性、凸性、伸び、強度、粗さ、シグマ強度、対称性、透明性。
【0107】
結果 訓練された機械学習モデルを使用した分類精度は、96%超に達した(
図6A~
図6C)。
【0108】
実施例6-細胞懸濁液中の粒子集団の同定
ダイナビーズを補充した細胞懸濁液の分析を、FlowCam及び5つの異なる粒子集団の生成された画像の代表的な例を使用することによって行った。単一細胞、破片及びダイナビーズに加えて、2つの捕捉された細胞(ダブレット細胞)並びに1つ又は複数の隣接するダイナビーズ(付加物)を有する細胞を有する顕著な数の画像が観察された。細胞(ビーズなし)、ダイナビーズ(細胞なし)及び細胞とダイナビーズとの混合物を含有する試料の粒径分布を
図7A~7Cに示す。細胞を含有する試料は、10μm~16μmの広いピークを示し、Jurkat細胞を表していた(
図7A)。更に、検出の下限サイズで鋭いピークが観察され、破片に割り当てられた。ダイナビーズは、3.5μm及び6.0μmに最大値を有する二峰性ピークを示した(
図7B)。これらの値は、合焦(鮮明)及び非合焦(ぼやけ)画像から測定されたビーズのサイズを表し、製造業者によって明言される4.5μmの平均ビーズ直径に近い。ダイナビーズと細胞との混合物の粒径分布は、細胞とビーズとの合計のように見えた(
図7C)。これらの試料は、他の試料には明らかに存在しない付加物(
図7、上部パネル)を含むことが分かったが、付加物の数は比較的少なく、全体のサイズ分布に実質的に影響を及ぼさなかった。
【0109】
実施例7-粒子分類のための形態学的パラメータ
RPMI培地に懸濁したビーズについて、FlowCamソフトウェアを用いて選択した形態学的パラメータに基づいて、測定されたダイナビーズ濃度と希釈係数に由来する予想ダイナビーズ濃度との間に線形関係が見出され、R
2=0.95の線形性を有した(
図8A)。細胞の存在下でのビーズの測定(血球計算を用いた約500,000個の総細胞/mL)は、同様の線形相関をもたらした(R
2=0.98)。しかしながら、予想外にも多数の未分類粒子(すなわち、5つのクラスのいずれにも該当しない形態学的パラメータを有する粒子)が見出された。細胞の存在下で測定されたダイナビーズ濃度の変動係数は、対照試料と比較して著しく高かった。更に、最低3つの参照濃度での細胞懸濁液中のダイナビーズの回収率は100%超であり、このアプローチを使用した場合、多数の破片及び他の粒子がダイナビーズ(又は付加物)として誤って分類されたことが示唆された。RPMI培地に懸濁したダイナビーズは、25%(最低ダイナビーズ濃度)から85%(最高ダイナビーズ濃度)までの回収率を示した。全体として、FlowCamソフトウェアから出力された形態学的粒子パラメータを使用すると、ダイナビーズの検出濃度と参照濃度との間に良好な相関が得られた。しかしながら、多数の未分類粒子及び決定された粒子濃度の顕著な変動は、この分類アプローチの脆弱性を示している。
【0110】
実施例8-粒子分類のためのCNN
従来の形態学的フィルタは、細胞懸濁液中の粒子集団を正確に識別することができなかった。したがって、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を生のFlowCam画像の解析に適用した。実施例1に記載されるように、予め選択されたデータセットを有する再訓練されたFlowCam-CNNモデルを使用して、試料当たり平均140,000個の画像を個々の粒子クラスに分類した。
【0111】
形態学的粒子パラメータ出力に基づく結果とは対照的に、FlowCam-CNN分析は、ダイナビーズを含む又は含まない全ての粒子存在細胞懸濁液(血球計を使用して計数された500,000細胞/mL)の分類をもたらした(
図9)。試験したダイナビーズ濃度範囲全体にわたる線形性は、両方の試料セットについて0.95超であり、勾配値は0.8であった。細胞及び50,000ビーズ/mL超を含有する試料は、80%超の回収値及び15%未満の変動係数を有していた。測定されたビーズ濃度の相対誤差は明らかにランダムであり、測定された最低ビーズ濃度を除いて、細胞を含む試料ではゼロ付近の均一な分布を示した。参照濃度60,000ビーズ/mL未満で無細胞RPMI培地に懸濁したダイナビーズは、細胞を含有する試料と比較してより低い回収率を示し、試験範囲内の75%の回収率を超えた。測定されたダイナビーズ濃度の変動係数は、50,000ビーズ/mL未満の試料では10%超であり、より高い試験ビーズ濃度では10%未満であった。したがって、FlowCam-CNNを使用することによるビーズの定量のための最適なダイナビーズ濃度は、約45,000ビーズ/mL~少なくとも200,000ビーズ/mLであると決定された。
【0112】
自動画像分類(FlowCam-CNN)を支援したFlowCam法を、分析手順の検証のためのICH Q2(R1)ガイドラインと整合させて検査した。細胞の非存在下及び存在下でのダイナビーズ検出の正確性、精度、LOD、LOQ及び線形関係を評価し、結果を表1に示す。表1については、研究で試験したダイナビーズ濃度についてLOD及びLOQを決定し、
図9に示した。正確性及び精度は、LOQを超えるダイナビーズ濃度について決定した。細胞濃度は約375,000細胞/mLであった。
【0113】
【0114】
LOD及びLOQはそれぞれ15,000及び45,000ビーズ/mLであったが、細胞の非存在下のダイナビーズ懸濁液についてはわずかにより高い値が見出された。正確性及び精度(再現性)を、LOQを超えるダイナビーズ濃度について計算し、値は、3回の測定の2つの日内セットの平均を示す。正確性は、参照濃度(回収%)に対するダイナビーズで添加した回収率として決定した。精度は、50,000ビーズ/mL未満の参照濃度で細胞の非存在下でビーズについて実質的により低いことが分かった。この濃度を超えると、細胞の存在は定量の精度に影響を及ぼさなかった。更に、ダイナビーズ濃度測定の精度を変動係数(CV%)として評価し、全体の値は10%未満であった。
【0115】
実施例9-細胞性粒子状物質の特徴づけ
非細胞粒子の特性評価のための方法を開発することに加えて、破片(潜在的不純物)並びに細胞及び付加物を定量した。
【0116】
Jurkat細胞懸濁液中のダイナビーズの試験濃度(
図9)を一定の細胞濃度(FlowCamで測定して385,711±59,337細胞/mL)で試験した。ダイナビーズの存在は、定量された細胞の総数の数に有意な影響を及ぼさなかった(t検定、両側、P>0.17;
図10A)。更に、ダイナビーズなし及びダイナビーズありの細胞試料中の破片として分類された検出された粒子の数は、非常に同等であった。更に、検出された付加物の数は、細胞試料中に存在するビーズの濃度が高いほど増加した(
図10B及び
図10C)。
【0117】
実施例10-誤分類
誤分類率は、一回の測定で取得される画像の数が多い(一回の測定で100,000超)ため、間接的に計算された。全ての測定試料(ダイナビーズ及び細胞懸濁液)に破片粒子が存在しており、したがって、この集団の誤分類率は考慮されなかった。
図11Aは、誤って検出された細胞(単一、ダブレット及び付加物)及び異なる参照濃度のダイナビーズ懸濁液内の未分類粒子の割合を表す。
図11Bは、375,000細胞/mLの細胞濃度での細胞のみの懸濁液中の検出されたダイナビーズ及び付加物並びに未分類粒子の誤差率を示す(FlowCamによって測定)。どちらの場合も、CNNを使用してデータを処理した場合、誤分類率は非常に低かった(2%未満)。更に、誤って分類された粒子の割合が細胞懸濁液中のビーズの試験濃度のそれぞれについて類似していたので、誤差率はダイナビーズのスパイクイン量とは無関係であった。形態学的パラメータを使用することによって分析された粒子は、はるかに高い不正確さ及び未分類の割合を示し、これは比較的高い誤差率(CNNと比較して最大50倍高い)によって反映されている。
【0118】
図12は、Dynaビーズとして分類された粒子画像の、深層学習分類によって決定された確率分布を示す。細胞の存在下及び非存在下でダイナビーズ(80,000ビーズ/mL)のFlowCam測定中に粒子画像を収集した。分類ネットワークでは、ソフトマックス回帰関数を統合し、これは、計算された重みを確率分布に変換し、確率0.2未満の全ての場合を拒否する活性化関数である。RPMI培地中に懸濁したダイナビーズを有する試料について、ビーズクラスに分類された画像の大部分は1に等しい確率を有し、ネットワークが非常に高い信頼性で割り当てを行ったことを確認した。更に、この高い信頼性は、Jurkat細胞を含有する試料において1の確率を有するビーズの同様のカウントが見出されたため、試料中の細胞物質の存在によって影響されなかった。結論として、これらのデータは、FlowCam-CNNを使用することによる画像分類が非常に正確であることを実証している。
【0119】
実施例11-測定に対する細胞濃度の影響
FlowCam-CNNによる細胞懸濁液中のダイナビーズの定量に対するJurkat細胞濃度の影響を調査し、結果を
図13に示す。最大約500,000細胞/mLの細胞濃度を有する試料に添加したダイナビーズ(血球計算を用いて測定した場合)は、細胞の存在下で同様の測定ビーズ濃度をもたらした。最高試験細胞濃度(900,000細胞/mL)では、50,000及び100,000ビーズ/mLの参照ダイナビーズ濃度で検出されたビーズの過小評価が観察された。このような過小評価は、最低試験ダイナビーズ濃度(20,000ビーズ/mL)では観察されなかった。更に、対照試料は、細胞懸濁液を含む試料と比較して、より低いダイナビーズ回収率を示した。
【0120】
実施例12-実施例1~11の要約
細胞ベースの医療製品(CBMP)中の細胞及び非細胞(すなわち、異物)粒子状物質の特性評価は、良質の安全な製品を保証するために重要である。更に、一部の細胞産物の分析試験に利用可能な時間が限られているため、簡単で迅速かつ包括的な方法が緊急に必要とされている。
【0121】
この研究では、CAR-T細胞などのT細胞の代用として機能するJurkat細胞と、CAR-T細胞産物中の代表的な潜在的なプロセス関連粒子状不純物として機能するダイナビーズ CD3/CD28とを含むモデル系を使用した。CD3及びCD28モノクローナル抗体にカップリングされたこれらの超常磁性ビーズは、CBMPの産生に使用される。しかし、最終製剤化工程前のそれらの除去は依然として困難である。より重要なことに、ダイナビーズの潜在的な毒性に関する報告を考慮すると、製造プロセスにおいてこれらの不純物の効果的かつ一貫した除去を示す方法が必要である。したがって、この研究では、ダイナビーズ及び細胞の識別及びダイナビーズ濃度の評価のためのFIMの実現可能性を評価した。ダイナビーズはT細胞とサイズ及び形態学的特性が異なるので、これは可能であると仮定された。
【0122】
FIMベースの方法は、面倒な準備工程なしに高い試料数の迅速な測定が可能なハイスループット技術であるため、CBMPを特徴付けるための利点を提供し得る。最も一般的に使用される2つのFIMシステムは、FlowCam及びMicro-Flow Imaging(MFI)である。FlowCam技術の欠点は、撮像システムの視野内の焦点深度が狭いことに起因する、比較的不正確な粒子サイジングであり得る。結果として、均一な直径の粒子は二峰性分布を示す可能性があり、これは本研究でも観察された。予想外にも、正確なサイジングは、本システムの精度にとって重要ではなかった。しかしながら、合焦画像及び非合焦画像は両方とも同じ粒子クラスに割り当てられるべきであり、分類プロセスの複雑さの増大を意味する。
【0123】
試験に使用した細胞の生存率及び総濃度の検証は、血球計算盤を使用して行った。FlowCamを使用して決定された細胞濃度は、手動計数と比較して低く、その差は約20%であった。更に、FlowCamによって検出されたダイナビーズの濃度は、製造業者によって記載された参照濃度から逸脱しており、すなわち、特に低濃度のダイナビーズについて、回収率は常に100%未満であった。しかしながら、これは、Multisizer 4e Coulter-Counter分析装置(定量化のために製造業者によって使用される方法)による測定が同様の結果を示したため、試料調製中のビーズの損失に起因する可能性が最も高い。更に、予備研究は、ダイナビーズの決定された濃度に対する使用された実験室用使い捨て用品(例えば、低タンパク質結合材料、体積対表面比)の有意な影響を示した。表面に対する抗体コーティングビーズの高い親和性は、おそらくダイナビーズのポリプロピレンチューブ及び試料取り扱いに使用されるチップへの接着をもたらした。興味深いことに、測定された濃度範囲にわたって、無細胞RPMI緩衝液(対照)中のダイナビーズと比較して、細胞の存在下でダイナビーズについてより一貫したより高い回収率が観察された。特に、低濃度(60000ビーズ/mL未満)でのビーズの顕著な損失が無細胞対照試料で観察され、50%未満の回収率をもたらした。ダイナビーズのこのような高い損失は、細胞含有試料では観察されず、最も可能性の高い破片及び他の細胞関連物質が自由表面を占有し、ビーズ吸着を競合的に減少させた。ビーズ対T細胞比はT細胞活性化又は精製にとって重要であるので、無細胞培地での希釈が関与するビーズ調製工程は、所望のビーズ濃度に達し、一貫した製造プロセスを保証するために慎重に考慮されるべきである。
【0124】
FIMを使用する場合、高度に不均一な試料内に見出される特定の粒子集団の正確な定量化のために、可能な境界アプローチが必要とされる。機器のオペレーティングソフトウェアによる出力パラメータは、形態に基づいて粒子を識別するのに役立つ可能性があるが、高いエラーレートになりやすい可能性がある。ダイナビーズ画像の均一性は、各粒子パラメータの同様の値をもたらし、ダイナビーズのみの試料については、開発されたフィルタは誤分類がほとんどなく、未分類の粒子が5%であった。しかしながら、細胞、細胞凝集体及び破片の形態学的性質は非常に不均一であり、これらの粒子パラメータの各々の分布は非常に分散していた(
図1)。更に、付加物及び細胞は、多くの場合、ほとんどの粒子パラメータについて交換可能な値を有していた。細胞のみを含む画像の誤差率(誤分類及び未分類粒子)は、形態学的フィルタを開発するために使用されたデータセットでは約20%であった。細胞及びダイナビーズ懸濁液の誤差率は、試験データセットで約10%であった。形態学的パラメータを使用することによる異なる粒子集団群の識別における高い能力の欠如は、CNNに基づく自動画像分類方法を使用する主な動機の1つであった。
【0125】
ニューラルネットワークの高性能は、ほとんどの場合、ネットワークを訓練するための大規模なデータセットに基づいている。VGG-19などのCNN全体の訓練を成功させるためには、クラスごとに数百万個の標識化画像が必要である。FIM技術は、比較的短期間で比較的多数の画像を低試料消費で収集することができる用途によく適しているが、高品質の訓練データセットの洗浄及び標識付けは依然として課題である。事前訓練されたVGG-19はImageNetデータセット上のフィーチャを効率的に区別することができたので、比較的少数の標識されたFlowCam画像を使用することによって最後の2つの完全に接続された層を微調整すると、ダイナビーズの区別及び定量化のための強力なCNNが得られた。誤分類率はCNNで有意に減少し、ダイナビーズを添加した細胞試料ではわずか0.2%であった。FlowCam-CNNは、細胞懸濁液中の広い濃度範囲のダイナビーズを定量することができ、広い動的範囲を示した。更に、LOQを超える細胞懸濁液中のダイナビーズ濃度の決定における高精度(CV%5%未満)は、プロセス関連粒子の定量化のためのロバストなアプローチとしてこの方法を提示する。
【0126】
決定された総細胞及び破片濃度は、懸濁液に添加されたダイナビーズの数に影響されなかった。予想通り、検出された付加物の数は、ビーズが細胞と相互作用する可能性がより高いため、試料中のダイナビーズの濃度が増加するにつれて増加した。更に、500,000細胞/mLの濃度は、細胞懸濁液中のダイナビーズの定量に影響を及ぼさないことを示した。しかし、試験した最高細胞濃度では、標的濃度50,000及び100,000ビーズ/mLにスパイクしたダイナビーズの回収の明確な減少が観察された。この回収率の低下は、20,000ビーズ/mLの最低ダイナビーズ濃度では観察されなかった。可能な説明は、単一の細胞に付着したダイナビーズをカウントするためのアプローチであり得る。粒子が「付加物」として分類された場合は、単一の細胞と単一のダイナビーズからなると考えられ、これは大部分の場合に当てはまる。しかしながら、細胞又はダイナビーズの数が増加するにつれて、画像当たり2つ以上の接着ダイナビーズを有する細胞を捕捉する確率が高くなる。したがって、ダイナビーズの過小評価は、高密度細胞集団におけるビーズの不正確な計数に関連していた可能性がある。
【0127】
前述の実施例は、関連する粒子状不純物の検出、特徴付け及び定量のためのCNNと組み合わせたFIMに基づく信頼性の高い方法を教示している。それらは、ビーズ濃度が決定されたLOQを超える場合、少量のダイナビーズを細胞懸濁液中で検出することができ、高い計数精度が達成されることを示す。更に、細胞及び細胞不純物、例えば細胞凝集体及び付加物もまた、CNNを使用することによって分類することができる。これらの粒子の定量化は、CBMPの製造プロセスの監視に役立ち、安定性試験などのプロセス及び製品の特性評価に役立つ。
【0128】
実施例13-実施例14~18の材料及び方法
別段の記載がない限り、以下に記載される材料及び方法は、実施例14~18に関する。
【0129】
細胞及び試料の調製 T細胞白血病細胞(Jurkat、クローンE6-1、ATCC(登録商標)TIB152(商標))は、Leiden University Medical Centre(LUMC)によって、1x107細胞/mLの総細胞濃度で凍結1mLアリコートとして提供され(NucleoCounter3000[Chemometec]を使用して細胞を計数した)、使用前に-145℃で保存された。Jurkat細胞を、10%(v/v)ウシ胎児血清(FBS;Life Technologies,USA)及び10%(v/v)ジメチルスルホキシド(DMSO)(Life Technologies,Carlsbad,USA)を補充した高グルコースRPMI1640(RPMI培地;ThermoFisher,Waltham,USA)中に製剤化した。洗浄及び希釈工程のために、RPMI培地、1xリン酸緩衝生理食塩水(Gibco(商標)、pH7.4;ThermoFisher,Waltham,USA)又はウシ胎児血清染色緩衝液(FisherScientific,New Hampshire,USA)を使用した。FBS(熱失活滅菌濾過)及びDMSO(ハイブリドーマに適しており、99.7%以上)は、Sigma-Aldrich((St.Louis,USA)から購入した。Dead Cell Apoptosis Kit(アネキシンV、フルオレセインイソチオシアネート[FITC]及びヨウ化プロピジウム[PI])、カルセインAM色素及びCyQUANT(商標)LDHキットは、(ThermoFisher,Waltham,USA)から購入した。
【0130】
強制分解試験 Jurkat細胞を、以下に記載されるように、3種類の強制分解試験に曝露した。3種類のストレス条件のそれぞれを、異なる日に2連で実施した。ストレス負荷された試料は、細胞懸濁液の品質を評価するための直交法を使用することによって特徴付けられた。
【0131】
解凍ストレス 単一の1mlの凍結細胞アリコートを、ドライアイス上の-145℃での貯蔵から水浴(GFL,Burgwedel,Germany)に移し、37℃で1分間30秒間解凍した(デフォルトの解凍条件)。他の解凍温度の調査のために、細胞をまた、25℃の水浴中で2分間40秒間及び5℃で4分間25秒間解凍した。水浴中で解凍して、クライオバイアルの壁に付着した氷のみを溶解した。更に、部分的に凍結した細胞懸濁液の1mlアリコートを、解凍温度に平衡化した40mLのRPMI培地に移し、氷核の残りは数秒以内に溶解した。細胞懸濁液を350xgで10分間20℃で遠心分離した後、上清を廃棄し、ペレットを5mlのRPMI培地に再懸濁した。総細胞濃度及び生存率を、CASYカウンター(Bremen,Germany)を使用することによって評価し、1x106細胞/mlへの希釈を、必要な体積のRPMI培地(記載される場合、DMSO又はFBSを含有する)の添加によって行った。したがって、Jurkat細胞懸濁液を3つの規定温度で解凍した。
【0132】
凍結解凍ストレス 湿氷で冷却したDMSOを細胞懸濁液にゆっくり添加して(湿氷に入れて)、1x106細胞/mlの細胞濃度で目標濃度1%、2.5%、5%及び10%(v/v)に達した。更に、1.8mlのNalgeneクライオバイアルに5つの1mlアリコートを調製し、-18℃で3時間凍結させた。この時間量は、アリコートの完全な凍結に十分であった。分析の前に、試料を37℃で2分間解凍し、プールし、新鮮なRPMI培地で洗浄した。対照試料を20℃で3時間保存し、そうでなければ凍結解凍試料と同様に処理した。
【0133】
解凍ストレス 1x106細胞/mlの濃度の細胞(10%[v/v]のFBSの有無にかかわらず)を、1.8mlの体積容量を有する5つのNalgeneクライオバイアル(ThermoScientific,Waltham,USA、)に充填した(1ml)。クライオバイアルを、IC4000シェーカー(IKA,Germany)を使用することにより、25℃、185rpmでの一定の水平撹拌によって振盪した。プールされた細胞アリコートの細胞懸濁液の分析を3時間の振盪後に行った。対照試料を静的に保存し、クライオバイアル内で25℃で光から保護し、続いてプールした。
【0134】
フローイメージング顕微鏡法(FlowCam、FIM)細胞(生存及び壊死)及び破片粒子を、50μmフローセルを備えたFlowCam 8100(Fluid Imaging Technologies,Scarborough,USA)を使用することによって定量化した。使用された対物レンズは20倍の倍率をもたらし、試料撮像は、高解像度CMOSカメラ(1920x1200ピクセル)によって毎秒27フレームで実行された。合計で140μLの試料体積が約63%の効率で測定された(すなわち、画像化された試料体積は約87μLであった)。フローセル内で画像化された粒子は、明るいピクセル及び暗いピクセルに対して12の強度閾値で検出された。試料測定間の洗浄工程は、Terg-a-zyme(登録商標)酵素洗剤(1%[w/v])及び高度に精製された水でフローセルを徹底的に洗浄することを含んだ。特に明記しない限り、収集した画像を形態学的フィルタを用いて選別せず、試料を3連で測定した。
【0135】
畳み込みニューラルネットワークを用いた画像解析 FlowCamを用いて撮影した粒子画像を、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて解析した。CNNは、実施例1に記載のVGG-19アーキテクチャに基づいていた。簡単に説明すると、最大プーリング層及びドロップアウト層で区切られた、修正された線形単位活性化関数を使用するVGG-19ネットワークを、ImageNetデータセット(http://image-net.org)で事前訓練した。ネットワークの再訓練は、計算時間を節約し、その事前学習されたフィーチャ認識能力を維持することによってモデルの精度を改善するために、最初の10層を凍結して実行された。ファインチューニングのために、データセットを訓練、検証及び試験のためにそれぞれ8:1:1の比率に分割した。モデルは、SGD最適化アルゴリズム及び0.001の学習率で19エポックを実行することによって最適化された。機械学習モデルは、Keras(2.2.4)、Tensorflow(1.13.1)Python(3.7.3)ライブラリを使用して実行し、11GBのVRAMを有するNvidia Turing GPUで実行した。
【0136】
集団識別のための粒子画像の生成 CNNを、生細胞、壊死細胞及び破片粒子という3つの集団の各々の手動標識画像(4,000~4,500)で再訓練した。生細胞の画像を、(PIアッセイに基づいて)86.8%の生存率を有するJurkat細胞からなる測定試料から手動で選択した。壊死細胞の選択のために、2つの別個の方法を使用して細胞壊死を誘導した。最初に、熱(55℃で90分間)で処理した細胞懸濁液のFlowCam画像を収集し、7.6%の生存率を示した(PIアッセイに基づく)。次に、細胞をエタノール(10%(v/v))と共に37℃で90分間インキュベートした後に画像化し、12.8%の決定された生存率を有した(PIアッセイに基づく)。ネットワーク微調整のための生細胞及び壊死細胞の画像集団を更に定義するために、2つの集団のアスペクト比、円適合、凸性、シグマ強度及び対称性などの形態学的パラメータを使用した。生細胞及び壊死細胞として、手動で選択した集団の10パーセンタイルと90パーセンタイルとの間に入る形態学的パラメータ値の粒子(細胞)のみをモデルの訓練への入力とした。およそ2分間又は2回の凍結解凍サイクル(-140℃~37℃)のボルテックスに供した細胞の測定懸濁液から、破片粒子の画像を手動で選択した。
【0137】
自動細胞計数:150μmの毛細管を備えたCASY TTC150(Omni Life Science,Bremen,Germany)細胞計数器を自動細胞計数に使用した。分析直前に細胞をCASYton(Omni Life Science,Bremen,Germany)で100倍希釈した。試料を二連で測定し、各測定は400μLの5サブランからなり、分析ごとに5,000を超えるイベントがカウントされた。
【0138】
イメージングフローサイトメトリ 細胞代謝に基づく細胞生存率を評価するために、イメージングフローサイトメトリを、分析される試料中6.3nMの最終濃度で、膜透過性色素カルセイン-AM(カルセイン-AMアッセイ)と組み合わせて使用した。色素添加後、細胞を室温で30分間(暗所で)インキュベートし、200μlの染色緩衝液(FBSあり;BD Bioscience,New Jersey,USA)で更に洗浄した。続いて、Amnis FlowSightイメージングフローサイトメータ(Luminex,Seattle,USA)を用いて試料を分析し、IDEAS6.2.183(Luminex,Seattle,USA)画像分析ソフトウェアを用いてデータを分析した。試料測定は、中感度モード(132mm/秒)で20倍の倍率の対物レンズを使用して行った。側方散乱レーザーを10mWに設定し、488nm蛍光励起レーザーを12mWに設定した。カルセイン-AM染色細胞の画像をチャネル02(532/55nm)に記録した。明視野取得は、自動的に設定された強度でチャネル9(582/25nm)に設定された。勾配RMS30超を有する粒子のみを真の事象として収集した。細胞集団のみで細胞生存率を評価するために、適切な形態学的フィルタを適用して、細胞と破片粒子とを区別した。全集団からの生細胞の割合に基づいて細胞生存率を計算した(
図14A~14E)。各測定は2連で行った。
【0139】
細胞のアポトーシス及び壊死を、細胞をFITC及びPIで標識した後、イメージングフローサイトメトリによって決定した。試料調製は、Dead Cell Apoptosis Kitの説明書に従って行った。室温で暗所で15分間インキュベートした後、試料を分析まで湿った氷上に保った。FlowSightイメージングフローサイトメータの励起出力を4mWに調整した後、上記のカルセイン-AMアッセイについて記載したのと同じ機器設定を使用した。FITCについてはチャンネル02(532/55nm)及びPIについてはチャンネル4(610/30nm)における明視野並びに蛍光画像を記録した。平均強度、面積、アスペクト比及びチャネル09からの調節に基づく適切な形態学的フィルタを適用して、単一細胞と細胞凝集物又は破片粒子とを区別した。明視野画像に基づいて単一細胞を選択したら、チャネル02(蛍光)からの平均強度値を、陽性染色された細胞を生細胞として分類した粒子領域(侵食マスク)に対してプロットした。細胞生存率は、
図14A~
図14Eに示す全集団からの生細胞の割合に基づいて計算した。
【0140】
乳酸デヒドロゲナーゼ放出アッセイ 乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイ(CyQUANT;ThermoFisher,Waltham,USA)を使用することによって、細胞膜の完全性を評価した。細胞の完全性の喪失を、原形質膜への損傷時に放出されるLDHのレベルに基づいて測定した。このアッセイは、NADH+の並行形成を伴うLDHの存在下でのラクテートのピルバートへの変換に基づく。Tecan Sparkプレートリーダー(Tecan,Mannedorf,Switzerland)を使用して、490nmで吸光度測定を行い、680nmの参照吸光度を用いた。総細胞濃度をRPMI培地を用いて約150,000細胞/mLに調整した。(細胞濃度はこのアッセイの線形範囲内とする(データは示さず))。細胞を37℃及び5%CO2で45分間(スパイク水又はTriton X-100と共に)インキュベートした後、製造業者のプロトコルに従ってアッセイを行った。培地中のLDHの量の放出を、式3に従って計算した。
【0141】
【0142】
自発的LDH活性は、水でスパイクした細胞懸濁液の測定値に基づいており、最大LDH活性値は、10%(v/v)の目標濃度までTriton X-100でスパイクした細胞懸濁液から導出された。各試料の結果は、4つの複製ウェルの測定値に基づく。
【0143】
実施例14-細胞数、細胞生存率及び破片粒子濃度の測定のためのFIM-CNN
生細胞及び壊死細胞並びに破片粒子(
図15A)のFlowCam画像を使用して、画像分類のためにCNNを訓練した。モデルを用いて破片粒子を分類するためのリコール値(集団に存在する全ての真陽性の陽性同定の割合)は99.5%であり、この分類アプローチの高い信頼性が証明された(
図15B)。生細胞集団及び壊死細胞集団について同様のリコール値が達成された(それぞれ94.0%及び96.6%)。分類モデルの性能を評価するために、F1スコアは、精度及びリコールの加重平均を評価するために使用される追加のメトリックである。ここで、破片、生細胞及び壊死細胞についてのF1スコアは、それぞれ0.991、0.933及び0.919であると決定された。このような高い値は、ネットワークの再訓練の試験段階中に誤って分類された画像の数が少ないことを裏付けている。したがって、本研究では、生細胞及び壊死細胞の濃度を決定するための、並びに不均一なサイズ分布を有する破片粒子を定量化するための新規方法として、FIM-CNNが提示される(
図15C)。
【0144】
実施例15-解凍温度の効果
凍結Jurkat細胞懸濁液を5℃、25℃及び37℃で解凍して、細胞品質に対する解凍温度の影響を評価した(
図16A)。FIM-CNN及び自動細胞計数は、解凍温度の上昇と共に生細胞の回収の増加を示した。同等の濃度の生細胞を両方の方法から得たが、壊死細胞及び破片粒子のカウントは実質的に異なっていた。FIM-CNNは、5℃で解凍した試料中のより多くの壊死細胞、並びに解凍温度の低下に伴う破片粒子の濃度の増加を測定した。5℃の最低試験解凍温度で、細胞懸濁液は、37℃及び20℃で解凍した細胞懸濁液では観察されなかった暗色及び高密度の粒子を含めて、4x10
6個/mLを超える破片粒子を含有した(
図17A~
図17B)。
【0145】
37℃及び20℃で解凍したアリコートについて、高い細胞生存率が記録された(
図17B)。2つの蛍光ベースの方法は、86%~91%の間の生存率を示したが、FIM-CNN値では63%~71%であった。しかしながら、カルセイン-AM、PI及びFIM-CNNアッセイに従って5℃で解凍したアリコートについて、細胞生存率の43%、50%及び22%への明確な低下がそれぞれ観察された。3つの解凍温度全てについて、2つの蛍光ベースのアッセイとFIM-CNNとを比較すると、決定された細胞生存率の絶対値に不一致があった。
【0146】
アネキシンV-FITCアッセイは、細胞がより低い温度で解凍した場合にアポトーシスを受ける可能性がより高いことを示唆する(
図16C)。特に、5℃で解凍した細胞懸濁液では、アポトーシス細胞の顕著な増加が観察され得る。あまり顕著ではないが、LDH放出アッセイで同様の傾向が観察された(
図16D)。
【0147】
実施例16-凍結解凍の効果
RPMI培地及びDMSO(0%、1%、2.5%、5%及び10%[v/v])中に製剤化したJurkat細胞を、細胞懸濁液を-18℃で3時間貯蔵及び37℃で2分間解凍することを含む1回の凍結解凍サイクルに供した。0%及び1%(v/v)DMSOを含む細胞懸濁液の凍結解凍は、細胞数の98%超の減少をもたらし、これらの条件下では実質的に全ての細胞がそれらの生存率を失うことを示している(データは示さず)。
【0148】
細胞(生存及び壊死)及び破片粒子の濃度を、FIM-CNNを用いて決定した(
図18A~18B)。より高いDMSO濃度では、より低い試験凍結保護剤濃度と比較して、1回の凍結解凍サイクル後により高い総細胞濃度が観察された。更に、10%(v/v)DMSOを含む細胞懸濁液は、凍結解凍後に最も少ない数の破片粒子を含んでいた。凍結前(T0)及び室温での3時間の貯蔵後(対照)の総細胞濃度は、各試験DMSO濃度について同等であった。しかし、10%(v/v)DMSOを含む対照細胞懸濁液は、T0及びより低いDMSO含有量を有する細胞懸濁液と比較して、わずかに高い破片含有量を示した。
【0149】
興味深いことに、凍結解凍後に決定された細胞生存率は、使用したアッセイに大きく依存していた(
図18C)。カルセイン-AMアッセイは、DMSO含有量及び時点に関係なく、85~90%の細胞生存率で、細胞生存率の最小の変化を示唆した。対照的に、PIアッセイ及びFIM-CNNアッセイは、2.5%(v/v)DMSOで凍結した細胞懸濁液の生存の顕著な(約20%)損失を示し、この濃度の凍結保護剤は凍結時の細胞安定化には不十分であることを示した。PIアッセイはまた、T0と比較して、凍結解凍試料及び対照試料について5%及び10%(v/v)DMSOを含む細胞懸濁液の細胞生存率が約10%のより小さい滴であったのに対して、FIMは、10%(v/v)DMSOを含有する細胞製剤についてのみ細胞生存率のそのような低下を示した。DMSOの毒性効果は、PIアッセイに従って各試験濃度について室温で3時間曝露した後、FIMに基づいて10%(v/v)で細胞生存率の喪失によって実証された。PI及びFIMからの結果に基づいて、DMSOの最良の細胞安定化特性は5%(v/v)で達成された。
【0150】
培地中のLDH放出の増加が、凍結解凍を受けた、又はDMSOの存在下、室温で保存した細胞懸濁液において観察された(
図19A)。異なるDMSO濃度を有する細胞製剤では、LDH濃度のわずかな差しか観察されなかった。しかし、5%(v/v)DMSOで凍結した細胞は、2.5%及び10%(v/v)の懸濁液と比較して、より少ないLDH放出を示した。同様に、アポトーシス細胞の割合は、凍結解凍時に5%(v/v)の細胞懸濁液で最小であった(
図19B)。
【0151】
実施例17-振盪ストレスの影響
Jurkat細胞懸濁液を10%(v/v)FBSの存在下及び非存在下で水平方向に振盪した。
図20Aは、所与の時点における2つの細胞製剤中の生細胞及び壊死細胞並びにFIM-CNNによって測定された破片粒子の総濃度を示す。振盪ストレス後、FBSを含有する細胞懸濁液と比較して、FBSを含まない製剤では細胞の総数の実質的な減少が観察された。両方の製剤について、破片粒子の濃度の顕著な増加が観察された。特に、FBSを補充したストレスを受けた細胞懸濁液中に存在する破片は、破裂した細胞だけでなく、FBS中に存在する凝集タンパク質にも由来していた(10%[v/v]FBSを含むストレスRPMI培地で観察され、データは示さず)。振盪ストレス及び休止保存後の細胞生存率は、使用した3つ全ての方法によるT0での細胞の生存率と非常に類似していた(
図21)。
【0152】
ストレスを受けた細胞懸濁液におけるLDH放出は、FBS含有量に関係なく、T0細胞懸濁液又は対照細胞懸濁液と比較して高かった。細胞生存率及び細胞濃度が全てのサンプリング点で不変のままであるという観察を考慮すると、FBSを含む製剤におけるLDH放出の増加は予想外であった。FBSを含む製剤及び含まない製剤を振盪した後、アポトーシス細胞画分のわずかな増加が観察されたが、振盪していない対照でも同様の増加が観察された。したがって、振盪ストレスは、この研究では細胞アポトーシスに検出可能な影響を及ぼさなかった。
【0153】
実施例18-実施例13~17の要約
現在承認されているCBMPは、凍結保存(凍結液体)又は非凍結(液体)状態のいずれかで保存される。両方の場合において、細胞は、例えば、投与前の診療所における凍結解凍又は取り扱いから生じるあらゆる種類のストレス因子に曝露され得る。これは、細胞損傷、品質の低下及び潜在的な臨床的意義の低下、例えば重篤な有害作用又は薬物有効性の欠如を引き起こし得る。細胞は、シグナル伝達経路及びストレス応答タンパク質を活性化することによって、一定数のストレス刺激を扱う機構を発達させている。しかし、有害因子の閾値を超えると、細胞は膜の完全性を突然失うか、プログラム死を受ける可能性がある。ヒトの体内では、自然免疫系のマクロファージ及び樹状細胞は、死細胞を除去するための適切な機構を備えている。しかしながら、CBMPでは、死細胞及び細胞破片などの形成され得る任意の細胞分解物が生成物内に残り、更なる細胞分解を加速する可能性がある。更に、突然破壊された細胞に由来する破片粒子は、アポトーシス細胞の「eat-me」シグナルが欠損している。投与後、そのような壊死細胞及び破片粒子は、潜在的に炎症応答をもたらす免疫系を誘因し得る。
【0154】
生細胞濃度は、CBMPの最も重要な品質属性の1つと考えられている。細胞膜又は細胞代謝の完全性に基づく多様な生存率アッセイが利用可能である。しかしながら、一般的な生存率アッセイは、高価な蛍光色素、インキュベーション時間を伴う多段階調製手順、又は培地成分との干渉を包含する蛍光染色を含む。更に、フローサイトメータにおける手動ゲーティングは、大きく偏っており、異なるオペレータ間で再現することが困難である。したがって、これらのアッセイの欠点は、壊死細胞の定量化のためのロバストでハイスループットな方法であるそれらの能力を制限する。更に、古典的なトリパンブルー排除及び他の比色アッセイは、精度が低いことを特徴とし、しばしば細胞に対する細胞傷害効果を示す。
【0155】
本明細書に開示される研究では、細胞の形態学的外観に基づいて最大200,000細胞/mLの懸濁液中の生細胞及び壊死細胞の数を正確に決定するために、FIM-CNNを適用した。壊死は、細胞の丸み及び細胞質の膨潤を含む、細胞の外観に対するいくつかの形態学的変化によって現れる。これらは、ヒトの眼に対するFlowCam画像では明らかではなく、FlowCamソフトウェアによって出力された形態学的パラメータを使用して区別することは困難である。しかしながら、CNNモデルに実装されたパターン認識アルゴリズムは、複雑なフィンガープリント、すなわち異なるストレス条件で形成されたタンパク質凝集体構造をうまく区別することが示されており、この研究では細胞関連粒子の分類に成功することが証明された。使用される生存率アッセイの各々は、生存率が評価される異なる基礎を考慮すると、異なる結果をもたらし得ることに留意すべきである。例えば、カルセイン-AMアッセイを使用する場合、一部のアポトーシス細胞は代謝的に活性であり、陽性染色を示すが、他は壊死として分類され得る。アネキシンV-FITC及びPIアッセイでは、PI陽性細胞のみが壊死細胞として分類され、初期アポトーシスを受けた細胞は生存可能と見なされた。これらの実験で使用した条件では、FIM-CNNを使用してアポトーシス細胞を識別することは不可能であったため、アポトーシス細胞を生細胞又は壊死細胞のいずれかとしてランダムに分類した。
【0156】
CBMPなどの非経口中の粒子状物質の特性評価は、薬局方のモノグラフに記載されており、製品は、10μm及び25μmを超えるサイズのサブビジブル粒子不純物の許容限界を満たすべきである。しかしながら、細胞の粒子状の性質を考えると、ヒト細胞がサブビジブルなサイズ範囲(典型的には7~30μm)内に入るので、注射可能な製品に適用可能な特定の粒子試験要件を満たすことは困難である。サブビジブル粒子不純物の定量化のための標準的な薬局方方法の1つである光遮蔽は、細胞と他の微粒子とを区別しない。したがって、数百μl以内の粒子に関する形態学的データを提供するハイスループット顕微鏡法は、細胞ベースの製品中の微粒子を評価するための有望なツールである。
【0157】
ここで、FIM-CNNを使用することにより、1~50μmのサイズの破片粒子の濃度について信頼できる数を得ることができた。破片粒子は、脂質、タンパク質、核酸、及び潜在的に他の外因性粒子の混合物からなるので、CBMP中の粒子状不純物と見なすことができる。それにもかかわらず、一般的に適用される細胞特性評価方法は、細胞懸濁液内の破片含有量を報告せず、これらの薬物製品の製品品質(一貫性及び安定性)及び安全性に対する潜在的な影響に関する関連情報を省略する可能性が高い。更に、細胞懸濁液中の明視野顕微鏡を使用することによって画像化された破片含有量を以前に使用して、後期アポトーシス初代ヒト肝細胞及びMDCK細胞のレベルを評価した。同様に、ストレス条件への細胞の曝露は、細胞生存率及び総細胞数の減少とよく相関する細胞破片の増加をもたらしたことが観察された。
【0158】
少なくとも1つの凍結解凍サイクルが含まれるいくつかのCBMPの独自のサプライチェーンは、製品の完全性を保存する上で凍結保存を非常に重要にする。ヒト細胞の凍結保存は広く研究されており、複数の因子がこのプロセスにおいて重要であることが見出された。凍結及び解凍速度は、解凍後に機能性細胞の高い回収を達成するために最適化されるべき最も重要なパラメータのうちの2つである。しかしながら、最適条件は細胞懸濁液ごとに異なり、解凍速度の影響は、細胞に対する凍結速度の影響と比較してあまり理解されていない。この試験で使用したJurkat細胞を、10%(v/v)DMSOを用いて1℃/分-1の速度で制御凍結した。水浴中での5℃でのその後の解凍は、細胞の生存率及びアポトーシス率に悪影響を及ぼした。細胞に対する低速解凍の悪影響は、氷の再結晶に起因し得る。凍結中に形成された転移性氷結晶は、5℃で解凍するとより大きな結晶を形成し、細胞タンパク質の変性及び膜の破壊をもたらし得る。解凍温度を低下させるとマウスリンパ球の生存率が低下することを報告したThorpe et al.によって同様の観察が行われた。一方、本明細書に提示される結果は、解凍温度がT細胞の生存に最小限の影響しか及ぼさなかった以前の研究と一致していない。生存率の低下に加えて、より低い解凍温度で破片粒子の濃度の増加が観察され、最も低い解凍温度で高密度で不規則な粒子が観察された。このような破片粒子は、20℃及び37℃で解凍した細胞懸濁液では観察されなかった。
【0159】
凍結保護剤の存在は、超低温(液体窒素の気相120℃未満)で保存された細胞の凍結保存に重要である。DMSOは、現在、凍結生物学において最も広く使用されている凍結保護剤である。その両親媒性及び水結合特性は、細胞膜を容易に通過することを可能にし、それによって細胞質からの水の流出を回避し、したがって凍結時の細胞脱水を防止する。5~10%(v/v)などの一般的に使用されるDMSO濃度では、大きな細胞内及び細胞外結晶格子の形成は、水分子と干渉することによって防止される。氷結晶の形成及び細胞生存率の維持は冷却速度にも依存し、好ましい非常に遅い冷却速度(0.1℃/分-1)は微細な樹枝状氷構造を生成し、速い冷却速度(10℃/分-1)は大きな氷結晶を生成する。本研究では、Jurkat細胞を、意図しない凍結を模倣するために、0%~10%の範囲の濃度でDMSOの存在下、-18℃で受動的(制御されない)凍結に供した。最も低い試験DMSO濃度(すなわち、0%及び1%)は、細胞生存率のほぼ完全な喪失が観察されたため、凍結解凍時に細胞に対していかなる凍結保護も示さなかった。対照的に、10%(v/v)の最高試験DMSO濃度は、1回の凍結解凍サイクル後に最も高い細胞回収率を示し、細胞懸濁液中に存在する破片粒子の量は最も少なかった。しかし、最も高い試験DMSO濃度を有する対照試料(室温で保存)は、細胞に対するその細胞毒性効果のためである可能性が最も高い、経時的な破片粒子の増加を示した。
【0160】
予想外にも、この試験で使用した3つの生存率アッセイは、各試験DMSO濃度での凍結解凍に対する保護の程度について決定的な結果を提供しなかった。カルセイン-AMアッセイは、凍結解凍後の細胞生存率の変化の検出において最も感度が低いことを示したが、PI及びFIMアッセイは、2.5%(v/v)DMSOを含む懸濁液において生存率の実質的な低下を検出した。しかし、5%及び10%(v/v)DMSOを含む細胞懸濁液では、凍結解凍試料及び対照試料のPIアッセイで生存率の低下が観察されたが、FIMは、5%(v/v)DMSOでは凍結解凍が細胞生存率に及ぼす影響が最小限であることを示唆した。異なるアッセイは、それらの異なる測定原理のために、細胞生存率に対するそれらの感度のレベルが異なり得る。更に、5%(v/v)DMSOを含む解凍後の細胞懸濁液は、他の2つの試験DMSO濃度と比較して、アポトーシス細胞の最小画分(アネキシンV-FITCアッセイに基づく)及び最も低いLDH放出を示した。末梢血幹細胞についても同様の観察を行った。5%DMSOによる凍結保存後、10%DMSOを含む懸濁液と比較して、より少ないアポトーシス細胞及び壊死細胞を測定した。PD-1受容体及びそれらのリガンドとの相互作用を介したDMSOのアポトーシス誘導効果は、アポトーシス細胞含有量のほぼ2倍の増加が記録された対照群で観察された。
【0161】
機械的ストレスは、バイオ医薬品が処理及び取り扱い中にさらされる最も頻繁なストレス因子である可能性がある。固体-液体及び空気-液体界面は、撹拌中のタンパク質系製剤中の粒子の形成において重要な役割を果たす。それにより、界面ストレス及び機械的衝撃時のタンパク質凝集を減少させるために、両親媒性非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート20又は80)が一般的に使用される。残念ながら、ポリソルベートは低濃度であっても細胞に対する溶解効果を有するので、そのようなアプローチはCBMPには成功しない可能性がある。今日まで、穏やかな振盪条件は、主に細胞増殖の目的で、又はエクスビボ組織モデルを作成するための細胞凝集体の形成を誘導するために、細胞懸濁液に適用されていた。この研究では、タンパク質ベースの治療薬に有害な影響を及ぼすことが示されている潜在的な「現実の」機械的ストレスを模倣するために、より厳しいストレス条件が導入された。クライオバイアルに充填し、垂直に配置した細胞懸濁液は、500rpmまでの振盪速度によって影響を受けなかった。しかしながら、クライオバイアルを水平に配置すると、185rpmで比較的短い振盪ストレス後に総細胞濃度の劇的な(約50%)損失がもたらされた。細胞生存率は、2つの蛍光ベースの方法及びFIM-CNNによる機械的ストレスによって影響されなかったが、LDH放出及びアポトーシスは、対照試料と比較して著しく増加した。培地中の遊離LDHの増加は、細胞品質の低下を示唆し、直交細胞特性評価技術を使用する価値を示す。更に、FBSは、振盪時に細胞に対する保護効果を示した。FBSは、細胞培養で一般的に使用されるサプリメントであり、機械的ストレスから細胞を保護する可能性があるが、下流の処理工程で除去することが困難なプロセス関連不純物と考えられている。更に、FBSは、機械的ストレスの際に凝集及び粒子形成を受けやすいタンパク質を含有する。タンパク質凝集体は、それ自体が望ましくない免疫原性を誘発する可能性があり、これにより、CBMP中の微粒子不純物に関して別の望ましくない見過ごされた複雑性が追加される。最終的には、CBMPの決定ベースの製剤戦略を可能にするために、強制分解研究に供する細胞懸濁液において、より広範囲の化合物を試験すべきである。
【0162】
本明細書では、Jurkat細胞をモデルとして使用し、細胞損傷を決定するためのFIM-CNNを使用して、細胞安定性及び製剤の評価における系統的強制分解試験の適用が開示される。不死化細胞の均一な細胞株は、診療所で使用される細胞試料の挙動を完全に反映していない可能性がある。初代ヒト細胞の加齢は、形態学的細胞フィーチャにはるかに大きな不均一性を導入し、品質パラメータの取得のためのより大きな課題をもたらす。しかし、画像分類にCNNを適用することにより、細胞懸濁液の特性評価のための堅牢で迅速な分析ツールとしてFIMを利用することが可能になり、これは「現実の」試料の評価に応用する可能性がある。他の確立されたアプローチに加えて、FIM-CNNを使用することによって細胞生存率を評価し、方法間の良好な相関が観察された。更に、CBMP中の破片粒子の定量化は、FIM-CNNでのみ可能であり、細胞懸濁液中の微粒子不純物のレベルを監視する方法の能力を強調した。全体として、この研究は、熱ストレス、凍結解凍ストレス及び浸透ストレスがCBMPに関する製剤研究に関連するツールであることを示す。更に、本明細書では、CBMPの品質に対する各ストレス因子の影響をよりよく理解するために広範囲の分析方法を選択することの重要性が提示される。
【0163】
実施例19-アポトーシス細胞の同定
以下の材料及び方法を使用して、生細胞、アポトーシス細胞及び壊死細胞並びに破片粒子を同定した。
【0164】
フローイメージング顕微鏡法(FlowCam、FIM)細胞(生存、アポトーシス、及び壊死)及び破片粒子を、50μmフローセルを備えたFlowCam 8100(Fluid Imaging Technologies,Scarborough,USA)を使用することによって定量化した。使用された対物レンズは20倍の倍率をもたらし、試料撮像は、高解像度CMOSカメラ(1920x1200ピクセル)によって毎秒27フレームで実行された。合計で140μLの試料体積が約63%の効率で測定された(すなわち、画像化された試料体積は約87μLであった)。フローセル内で画像化された粒子は、明るいピクセル及び暗いピクセルに対して12の閾値で検出された。試料測定間の洗浄工程は、Terg-a-zyme(登録商標)酵素洗剤(1%[w/v])及び高度に精製された水でフローセルを徹底的に洗浄することを含んだ。特に明記しない限り、収集した画像を形態学的フィルタを用いて選別せず、試料を3連で測定した。
【0165】
畳み込みニューラルネットワークを用いた画像解析
【0166】
FlowCamを用いて撮影した粒子画像を、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて解析した。CNNは、実施例1に記載のVGG-19アーキテクチャに基づいていた。簡単に説明すると、最大プーリング層及びドロップアウト層で区切られた、修正された線形単位活性化関数を使用するVGG-19ネットワークを、ImageNetデータセットで事前訓練した。ネットワークの再訓練は、計算時間を節約し、その事前学習されたフィーチャ認識能力を維持することによってモデルの精度を改善するために、最初の10層を凍結して実行された。ファインチューニングのために、データセットを訓練、検証及び試験のためにそれぞれ8:1:1の比率に分割した。モデルは、SGD最適化アルゴリズム及び0.0005の学習率で15エポックを実行することによって最適化された。機械学習モデルは、Keras(2.2.4)、Tensorflow(1.13.1)Python(3.7.3)ライブラリを使用して実行し、11GBのVRAMを有するNvidia Turing GPUで実行した。
【0167】
集団識別のための粒子画像の生成
【0168】
CNNを、生細胞、アポトーシス細胞、壊死細胞及び破片粒子の4つの集団のそれぞれの手動標識画像(4,000~4,500)で再訓練した。
【0169】
生細胞の画像を、(PIアッセイに基づいて)91.6%の生存率を有する新たに収集したJurkat細胞からなる測定試料から手動で選択した。画像選択は、サイズフィルタ(10~20μm)及びアスペクト比フィルタ(0.6~1.0)を適用することによって行った。更に、目に見えるアポトーシス性ブレブ及びより粗い表面を有する細胞を除外することによって、画像選択を手作業で精緻化した。アポトーシス細胞の画像を生成するために、Jurkat細胞をスタウロスポリンで3時間処理した(1μM~5x105細胞)。フローサイトメトリ(アネキシンV-FITC)で確認したところ、アポトーシス率は約90~95%であった。サイズフィルタ(10~20μm)を適用して破片及び凝集物を除外し、円形度フィルタ(0.9未満)を使用して残りの生細胞画像を除外した。細胞選択を手動でダブルチェックし、いくつかの破片粒子を除外した。壊死細胞の選択のために、2つの別個の方法を使用して細胞壊死を誘導した。最初に、熱(55℃で90分間)で処理した細胞懸濁液のFlowCam画像を収集し、7.6%の生存率を示した(PIアッセイに基づく)。次に、細胞をエタノール(10%(v/v))と共に37℃で90分間インキュベートした後に画像化し、12.8%の決定された生存率を有した(PIアッセイに基づく)。ネットワーク再訓練のための壊死細胞の画像集団を更に定義するために、集団のアスペクト比、円適合、凸性、シグマ強度及び対称性などの形態学的パラメータを使用した。壊死細胞として、手動で選択した集団の10パーセンタイルと90パーセンタイルとの間に入る形態学的パラメータ値の粒子(細胞)のみをモデルの訓練への入力とした。およそ2分間又は2回の凍結解凍サイクル(-140℃~37℃)のボルテックスに供した細胞の測定懸濁液から、破片粒子の画像を手動で選択した。
【0170】
実施例20-アポトーシス細胞の画像の生成(1)
方法 細胞をカンプトテシン(8μM、37℃及び5%CO2で14時間)で処理した。処理細胞の画像を手動で選択した。CNNを、手動で選択した生細胞、壊死細胞、アポトーシス細胞及び破片粒子で再訓練した。
【0171】
結果 アポトーシス細胞集団を含めた場合、分類精度は低かった-78.4%(
図22)。モデルの精度は、経時的なアポトーシスの変化を検出するには不十分であった(
図23)。
【0172】
実施例21-アポトーシス細胞の画像の生成(2)
本実験の目的は、他のクラスに属する細胞画像をほとんど又は全く伴わずに各クラスの細胞画像ライブラリを生成すること、例えば、アポトーシス試料中の壊死細胞を最小限に抑えることであった。
【0173】
方法 アポトーシス細胞を生成するために、試薬スタウロスポリンを使用し(1μM~500.000細胞/mL)、フローサイトメータを用いた蛍光ベースのアッセイによってアポトーシス率を確認した。アネキシンV-FITC&PIによる二重染色を使用して、生細胞、アポトーシス細胞及び壊死細胞を識別した。アポトーシス率は約90%、生細胞は約2%、壊死細胞は約6%であった。更に、大量の破片粒子が試料内に存在し、これは、前方散乱及び側方散乱によるゲーティングによってフローサイトメトリ分析で除外された。アポトーシス試料をFlowCam装置と並行して測定した(3回の測定)。サイズフィルタ(面積ベースの直径6~25μm)、円形度フィルタ(0.5~1)及びアスペクト比(0.6~1)を適用することによって、大部分の破片粒子を容易に排除することができた。残りの破片粒子並びに健康な細胞及び壊死細胞の排除は、細胞画像の量(複製当たり90,000個)並びに肉眼による形態学的外観の密接な類似性に起因して、より大きな課題である。
【0174】
新たに収集した細胞をFlowCamによって測定した。蛍光ベースのフローサイトメトリアッセイを使用することによる参照測定により、92%超の生細胞、約3%のアポトーシス細胞、5%の壊死細胞という高い細胞健康が確認された。細胞破片を、上記で説明したフィルタを使用することによって除外し、更に、細胞画像を操作者によって手動で二重にチェックした。アポトーシス試料又は壊死試料からの画像に類似する全ての細胞画像を除外した。更に、完全に焦点が合っておらず丸い全ての細胞画像も除外した。
【0175】
結果 例示的な画像を
図24に示す。この新しいデータセットを用いて新しいCNNモデルを訓練し、訓練の結果を
図25に示す。
【0176】
得られたCNNを用いて試料を試験した場合、細胞生存率の過小評価が起こり、約20~25%の蛍光ベースのフローサイトメトリアッセイに対する偏差を示した(
図26)。健康な細胞の手動再選択はCNNのバイアスをもたらした可能性があり、焦点の合っていない細胞は破片、壊死又はアポトーシスとして分類されたが、健康な細胞としては分類されなかった。
【0177】
過剰選択がどの程度CNNにバイアスをかけたかを確認するために、エッジ勾配(焦点のパラメータ)に関する事前フィルタを試験した。詳細には、FlowCam測定から得られた画像は、エッジ勾配フィルタ(50~70)でCNN解析の前にフィルタリングされ、残りの集束細胞画像のみがCNNモデルで試験された。CNNによって得られた結果は、約10~15%のより低い偏差でのAn.V-FITCアッセイ(蛍光ベースのフローサイトメトリアッセイ)とよりよく一致した。
【0178】
焦点が合っていない細胞画像を試験データセットから除去した場合、CNNは比較的より多くの生細胞(及びより少ないアポトーシス細胞)を示した(
図27)。この結果は、焦点が合っていなかった生細胞がアポトーシス細胞として誤って分類されたことを示唆している。
【0179】
実施例22-訓練画像を選択するための蛍光信号の使用
本実験の目的は、蛍光シグナルによって壊死細胞、アポトーシス細胞及び生細胞を同定し、当該細胞の明視野画像を使用してCNNを訓練することであった。
【0180】
方法 前の実施例に記載のCNNを、壊死細胞、アポトーシス細胞及び生細胞の明視野画像で訓練した。明視野画像は、機器の蛍光チャネルの同時蛍光シグナルに基づいて選択した。このアプローチを使用することにより、壊死細胞(陽性PIシグナル)、アポトーシス細胞(陽性アネキシンV-FITCシグナル)、及び生細胞(陽性カルセイン-AMシグナル)を個々に同定し、続いてCNNの訓練に使用することができる。
【0181】
生細胞又は壊死細胞を決定するために、2つの細胞試料をカルセイン-AMで染色した。更に、アポトーシス及び壊死の決定のために、2つの試料をアネキシンV-FITC及びPIで染色した。
【0182】
Amnis FlowSightイメージングフローサイトメータ(Luminex,Seattle,USA)を用いて試料を分析し、IDEAS6.2.183(Luminex,Seattle,USA)画像分析ソフトウェアを用いてデータを分析した。試料測定は、中感度モード(132mm/秒)で20倍の倍率の対物レンズを使用して行った。カルセイン-AM染色細胞の画像を蛍光チャネル02(532/55nm)で記録した。488nmの蛍光励起レーザーを12mWに設定した。明視野取得は、自動的に設定された強度でチャネル9(582/25nm)に設定された。アネキシンV-FITC/PIの場合、FlowSightイメージングフローサイトメータの励起出力を4mWに低下させ、カルセイン-AMアッセイについて上述したのと同じ装置設定を使用した。アネキシンV-FITCについてはチャンネル02(532/55nm)及びPIについてはチャンネル04(610/30nm)における明視野並びに蛍光画像を記録した。
【0183】
CNNの訓練のために、例えば、使用した細胞の4000個の明視野画像を集団から撮影した。壊死細胞については、PIを検出する蛍光チャネルの陽性シグナルに対応する明視野チャネルから画像を撮影した。アポトーシス細胞については、アネキシンV-FITCによる陽性蛍光染色に対応する明視野から画像を撮影した。生細胞については、カルセイン-AMを検出する蛍光チャネルの陽性シグナルに対応する明視野チャネルから画像を撮影した。この実験では、破片粒子を分析から除外した。
【0184】
結果 カルセイン-AM染色を使用することによる生細胞と壊死細胞との間の分化からの結果を
図28に示す。壊死を誘導するためにジギトニンで処理した細胞試料について、明視野画像及び蛍光を使用したCNN間の結果は良好に一致した(
図28A)。解凍したばかりの細胞試料の場合、CNNは、蛍光基準と比較して壊死細胞の数を過大評価した(
図28B)。
【0185】
カンプトテシンを用いてアポトーシスを誘導した場合、CNNはアポトーシス細胞の集団を過大評価した(
図29A)。更に、明視野画像を蛍光基準と比較して使用するCNNによって、明らかに壊死細胞及び生細胞がアポトーシス細胞として同定された(
図29A)。同様に、未処理の陰性対照では、CNNは生細胞の数を過小評価した(
図29B)。
【0186】
図30は、生細胞、壊死細胞及びアポトーシス細胞の分類のための混同行列を示す。
【0187】
実施例23-壊死の誘導のロバスト性及びCNNの再訓練
本実験の目的は、壊死の誘導及びCNNの再訓練のロバスト性を実証するために、壊死細胞画像の新しいデータセットを生成し、新しいCNNを再訓練することであった。
【0188】
方法 CNNを、実施例21に記載の方法に従って新たに選択した訓練画像ライブラリを用いて再訓練した。そのために、生細胞、アポトーシス細胞及び細胞破片について生成された細胞画像を再検討し、4,000~5,000の画像を手動で選択した。壊死クラスについては、細胞を55℃で90分間インキュベートすることによって、又は細胞を10%(v/v)エタノールと共に90分間インキュベートすることによって壊死を誘導することによって新しいデータセットを生成した。約4,000~5,000の壊死細胞画像を手動で選択した。
【0189】
結果 2つの異なる方法によって得られた壊死細胞の新しいデータセットを用いて新しいCNNを再訓練すると、4つのクラス全ての良好な分類精度が得られ(
図31)、以前のCNNの再訓練からの結果に匹敵した(
図25)。次に、訓練の一部ではない測定からの画像を使用することによって、壊死細胞の2つの異なるデータセットで訓練されたCNNによって得られた予測クラスの分布を、蛍光ベースのフローサイトメトリによって得られたクラスの分布と比較した。新しい壊死細胞のセットで訓練されたCNNは、健康な細胞の予測においてより正確であり(
図32)、CNNの再訓練及び最適化された訓練データセットのロバスト性を実証した。
【0190】
実施例24-異なる形態を有する生細胞の生成
本研究の目的は、異なる形態を有する生存(健康な)細胞を識別するようにCNNを訓練することであった。そうするために、細胞を異なるオスモル濃度を有する溶液に懸濁し、したがって細胞の体積、ひいては細胞の形態に影響を与えた。
【0191】
方法 リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を高度に精製した水で希釈することによって、低張性範囲で溶液を調製した。オスモル濃度は、220、250及び270mOsm/kgであった。更に、高張性PBS溶液を、異なる量のスクロースを添加することによって調製した。オスモル濃度は、350、400、420及び450mOsm/kgであった。等張条件のために、PBSを製造者によって提供されるように使用した。新たに収集した細胞を使用して、各浸透圧範囲、すなわち低張性、等張性及び高張性の生細胞の画像訓練ライブラリを作成した。等張性試料の細胞生存率を、アネキシンV-FITC/PI及びカルセインAM/PI蛍光アッセイによって確認した。アネキシンV-FITC/PIアッセイにより、77%生細胞、9%アポトーシス細胞及び14%壊死細胞が測定された。カルセインAM/PIアッセイにより、89%の生細胞及び11%の壊死細胞が測定された。細胞を遠心分離し、FlowCam測定の前に5分間、調整した浸透圧で各溶液に再懸濁した。生細胞の画像を、各浸透圧範囲(4,000~5,000画像)について6~25μm(直径(ABD))の間のサイズ範囲で手動で選択した。CNNをこれらの新しい生細胞画像で訓練したが、アポトーシス細胞、壊死細胞及び細胞破片の訓練ライブラリは実施例23で使用したものであった。
【0192】
結果 健康な細胞を各浸透圧範囲について「Hypo」、「Iso」及び「Hyper」に分けた。これにより、低張(膨潤)及び高張(収縮)溶液条件における異なる細胞形態のために、生細胞の訓練画像内の不均一性が回避された。CNNを、6つのカテゴリ:低張溶液中の細胞、等張溶液中の細胞、高張溶液中の細胞、アポトーシス細胞、壊死細胞及び破片粒子の各々から手動で選択した画像(4,000~4,500)で訓練した。
【0193】
6つの細胞カテゴリで訓練されたCNNは、高い分類精度を示した(
図33)。次いで、クラスIso、Hypo及びHyperを組み合わせて、予測生細胞の総量を決定した。CNNは、蛍光ベースのフローサイトメトリで得られたクラスの分布に類似し(
図34)、以前のモデル1-01及び1-02に類似した(
図32)予測クラスの分布を有していた。
【0194】
続いて、健康な細胞を220mOsm/kg~450mOsm/kgの範囲のオスモル濃度で5分間インキュベートし、それらの画像をFIMによって捕捉し、次いでCNNによって分類した。CNNは、細胞をインキュベートしたオスモル濃度条件(Hyper、Iso、Hypo)に従って細胞を分類することに成功した。予想通り、オスモル濃度が減少するにつれて、「Hypo」クラスの生細胞の数は増加し(低張範囲300mOsm/kg未満)、一方、「Hyper」クラスの細胞数は、オスモル濃度の増加と共に増加した(高張範囲300mOsm/kg超)(
図35A及び
図35B)。
【国際調査報告】