(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】光触媒装置
(51)【国際特許分類】
B01J 35/39 20240101AFI20240416BHJP
B01J 19/12 20060101ALI20240416BHJP
C01B 3/04 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B01J35/39
B01J19/12 C
C01B3/04 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562212
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 AU2022050300
(87)【国際公開番号】W WO2022213145
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521106175
【氏名又は名称】ジ ユニヴァーシティ オブ アデレード
【氏名又は名称原語表記】The University of Adelaide
(71)【出願人】
【識別番号】523381446
【氏名又は名称】フリンダース ユニヴァーシティ
【氏名又は名称原語表記】Flinders University
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】メサ, グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】アルヴィノ, ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン, ガンサー
(72)【発明者】
【氏名】オズボーン, ディー. ジェー.
【テーマコード(参考)】
4G075
4G169
【Fターム(参考)】
4G075AA05
4G075AA13
4G075BA04
4G075BA05
4G075CA03
4G075CA32
4G075CA33
4G075CA34
4G075CA54
4G075EA06
4G075EB01
4G075EB32
4G075EB33
4G075FB02
4G075FB06
4G169AA03
4G169AA15
4G169BA48A
4G169BB06A
4G169BC12A
4G169BC16A
4G169BC50A
4G169CC33
4G169DA05
4G169HA01
4G169HA02
4G169HB01
4G169HB06
4G169HC02
4G169HC29
4G169HE09
4G169HF02
4G169HF03
(57)【要約】
本開示は、高エネルギー成分(可視光を含む紫外線等)と低エネルギー成分(可視光を含む赤外線等)の両方のスペクトルを含む放射線源を使用して、液体状又は気体状のH
2Oを光触媒分解して水素と酸素を生成する装置及び方法に関する。即ち、本装置及び本方法は共に、H
2Oを分解するために、放射線源の全スペクトルを利用するか又は伴う。本装置及び本方法は共に、放射線源からの放射線を窓を介して光触媒に導いてH
2Oを光触媒分解するように配置及び構成された少なくとも1つの光学素子を含む放射線集光組立体を利用する。生成された水素と酸素は、続いて貯蔵されて燃料源として使用することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源を使用してH
2Oを光触媒分解するための装置であって、光触媒分解されるH
2Oを受け入れる反応容器と、放射線集光組立体とを備え、
前記反応容器が、
前記放射線源からの放射線を前記反応容器の中に受け入れるための窓と、
H
2Oを前記反応容器の中に受け入れるための注入口と、
前記反応容器内に配置された光触媒であって、放射線吸収粒子を含み、使用時に、前記放射線吸収粒子が放射線を吸収して前記H
2Oを水素と酸素に光触媒分解するようにした、光触媒と、
前記水素と酸素を前記反応容器から排出するための排出口と、
を備え、
前記放射線集光組立体が、
放射線を前記窓へと向けるように配置及び構成された少なくとも1つの光学素子を備える、
装置。
【請求項2】
前記窓が、前記注入口から前記排出口までの前記H
2Oの流路に対して垂直な伸長方向に細長い、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光触媒が前記細長い窓と同じ方向に細長く、前記放射線集光組立体が、前記窓の前記伸長方向に平行で前記H
2Oの流路に垂直な長手方向に延びている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記H
2O及び光触媒分解された水素と酸素が前記光触媒によって前記窓から離されるようにされた、請求項1乃至3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
使用時に、前記窓を介して前記光触媒によって吸収される前記放射線を前記光触媒分解された水素と酸素が妨げないように、前記H
2Oが前記反応容器を通って導かれる、請求項1乃至4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記窓が前記反応容器の下側に配置され、前記少なくとも1つの光学素子が放射線を前記反応容器の下側から前記窓へと向けるように配置されている、請求項1乃至5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記窓が、赤外線(IR)反射コーティングでコーティングされた外面を有し、使用時に、前記赤外線(IR)反射コーティングが前記反応容器内の温度を下げるように作用する、請求項1乃至6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記窓が、アップコンバージョンコーティングでコーティングされた外面を有する、請求項1乃至7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記アップコンバージョンコーティングが、前記向けられた放射線の長波長を短波長に変換するように作用する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記反応容器が、前記反応容器の後部又は側部から外方に延びる1つ又は複数のフィンをさらに有し、使用時に、前記1つ又は複数のフィン及び前記赤外線(IR)反射コーティングが前記反応容器内の温度を下げるように作用する、請求項7乃至9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記放射線源が、高エネルギー成分と低エネルギー成分の両方で構成されたスペクトルを有する、請求項1乃至10の何れか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記放射線源が太陽放射であり、前記スペクトルが、可視光を含む紫外線(UV)成分と赤外線(IR)成分の両方の太陽スペクトルの全体を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記赤外線(IR)成分が、前記太陽スペクトルの可視光を少なくとも部分的に含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記窓が、前記高エネルギー成分と前記低エネルギー成分の両方の前記スペクトルを含む前記放射線源からの放射線を前記反応容器の中に受け入れるようにされている、請求項11乃至13の何れか一項に記載の装置。
【請求項15】
使用時に、前記放射線吸収粒子が、H
2Oを光触媒分解するために前記スペクトルの前記高エネルギー成分を吸収する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
使用時に、前記スペクトルの前記低エネルギー成分が、光触媒分解される前記H
2Oの温度を上昇させる、請求項14又は15に記載の装置。
【請求項17】
使用時に、前記スペクトルの前記低エネルギー成分が、前記H
2Oが前記放射線吸収粒子によって光触媒分解される速度を増加させる、請求項14乃至16の何れか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記放射線集光組立体が複数の光学素子を備え、前記光学素子のそれぞれが、前記放射線源からの放射線を反射して集光するための1つ又は複数の反射体を有する、請求項1乃至17の何れか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記1つ又は複数の反射体が、前記放射線源の前記高エネルギー成分と前記低エネルギー成分の両方を反射して集光する、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記光学素子がリニアフレネルリフレクタ(LFR)である、請求項18又は19に記載の装置。
【請求項21】
前記窓が細長く、前記LFRが前記放射線源からの放射線を前記窓の細長い長さに沿うように向ける、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記光学素子が放物面トラフであり、前記窓が細長く、前記放物面トラフが前記放射線源からの放射線を前記窓の細長い長さに沿うように向けるための凹形状を有する、請求項18乃至20の何れか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記光学素子が前記放射線源を追跡するように位置決め及び調整可能であり、使用時に、前記放射線集光組立体の前記光学素子が、前記窓へと向けられた、前記放射線源の放射線及び高エネルギー成分と低エネルギー成分の両方を含む前記スペクトルが最大になるように、位置決め及び調整される、請求項18乃至22の何れか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記光学素子のそれぞれが、前記放射線源からの放射線を屈折させて集光するための1つ又は複数の屈折体を有する、請求項1乃至17の何れか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記1つ又は複数の屈折体が、前記放射線源の前記高エネルギー成分と低エネルギー成分の両方を屈折させて集光する1つ又は複数の収束レンズである、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記反応容器がジャケットによって囲まれており、前記ジャケットは、冷却流体が前記ジャケットを通って流れて前記反応容器を冷却することを可能にするように、1つ又は複数の注入ポート及び1つ又は複数の対応する排出ポートを備え、使用時に、前記冷却流体が、前記反応容器によって加熱されて、加熱流体副生成物として使用するために前記1つ又は複数の排出ポートの下流に導かれる、請求項1乃至25の何れか一項に記載の装置。
【請求項27】
放射線源を使用してH
2Oを光触媒分解するための装置であって、光触媒分解されるH
2Oを受け入れる反応容器と、放射線集光組立体とを備え、
前記反応容器が、
前記反応容器の下側に配置されて、前記放射線源からの放射線を受け入れるための窓と、
H
2Oを前記反応容器の中に受け入れるための注入口と、
前記反応容器内に配置された光触媒であって、放射線吸収粒子を含み、使用時に、前記放射線吸収粒子が放射線を吸収して前記H
2Oを水素と酸素に光触媒分解するようにした、光触媒と、
前記水素と酸素を前記反応容器から排出するための排出口と、
を備え、
前記放射線集光組立体が、
放射線を前記窓へと向けるように配置及び構成された少なくとも1つの光学素子を備え、
使用時に、前記窓を介して前記光触媒によって吸収される前記放射線を前記光触媒分解された水素と酸素が妨げないように、前記H
2Oが前記反応容器を通して導かれるようにされた、装置。
【請求項28】
放射線源を使用してH
2Oを光触媒分解するための装置であって、反応容器と放射線集光組立体を備え、
前記反応容器が、
H
2Oを前記反応容器の中に受け入れるための注入口と、
前記反応容器内に配置された光触媒であって、放射線吸収粒子を含み、使用時に、前記放射線吸収粒子が放射線を吸収して前記H
2Oを水素と酸素に光触媒分解するようにされた、光触媒と、
前記水素と酸素を前記反応容器から排出するための排出口と、
前記注入口から前記排出口までの前記H
2Oの流路に垂直な方向に細長い窓であって、前記放射線源からの放射線を前記反応容器の中に受け入れる窓と、
を備え、
前記放射線集光組立体が、前記窓の細長い方向に平行な長手方向に延びており、
前記放射線集光組立体が、放射線を前記細長い窓へと向けるように配置及び構成された少なくとも1つの光学素子を備える、装置。
【請求項29】
放射線源を使用してH
2Oを光触媒分解する方法であって、
(a)放射線吸収粒子を含む光触媒が中に配置された反応容器の注入口を通してH
2Oを流すステップと、
(b)放射線集光組立体を使用して前記放射線源からの高エネルギー成分及び低エネルギー成分を含むスペクトルを有する放射線を集光し、前記集光した放射線を前記反応容器内の前記H
2Oの流路に垂直な方向に延びる細長い窓に向けるステップと、
(c)前記放射線吸収粒子が前記スペクトルの前記高エネルギー成分を吸収して前記H
2Oを水素と酸素に光触媒分解し、且つ前記スペクトルの前記低エネルギー成分が前記反応容器内の前記H
2Oの温度を上昇させるように、前記集光した放射線に前記H
2Oと前記光触媒の両方を前記細長い窓を介して曝すステップと、
(d)生成された水素と酸素を前記反応容器の排出口を介して排出するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、「PHOTOCATALYTIC APPARATUS」と題され、2021年4月6日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2021900997号の優先権を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、光触媒を用いた水素生成の分野に関する。特定の実施形態において、本開示は、放射線源を使用してH2Oを光触媒分解することにより水素を生成するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、世界のエネルギー(産業エネルギーや輸送エネルギーなど)の約90%は化石燃料エネルギーに由来しており、その経済的な手頃さと利用可能性を経済に提示してきた。しかし、エネルギー需要の増加、人口の増加、及び環境への関心の高まりにより、世界経済は化石燃料エネルギー源の枯渇を認識し、化石燃料に代わる再生可能エネルギー源への転換の必要性を認識している。
【0004】
多くの研究者やイノベーターは、エネルギー生産のための代替方法(水力発電、風力発電、地熱発電、太陽光発電など)を設計することに焦点を当ててきたが、これらの代替方法の中には、その効率や適用性を低下させる多くの実際的な制限(開発、維持、生産されたエネルギーの貯蔵に関連する高いコストなど)がしばしばある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
代替エネルギー源としての太陽エネルギーは、化石燃料に代わる最も有望な候補としてしばしば考えられている。水(H2O)を光触媒分解する太陽エネルギーの利用は、燃料として使用するための水素をクリーンかつ貯蔵可能に製造するための有望かつシンプルな戦略である。現在利用可能な光触媒分解技術では、水素(H2)と酸素(O2)の発生反応が光触媒上で行われ、H2燃料は出口で回収又は貯蔵される。しかし、これらの既存技術は、太陽光のエネルギー密度が低いために、太陽熱から水素への変換(STH)出力が低く、スケーラビリティの点でも問題がある。従って、太陽エネルギーを利用してH2Oを光触媒分解する装置及び方法において、これに関連する上記の課題を克服することが望まれている。
【0006】
本発明は、このような背景とそれに伴う問題及び困難に対してなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態は、高エネルギー成分及び低エネルギー成分の両方を含むスペクトルを含む放射線源を使用して、液体又は気体のいずれかの形態のH2Oを光触媒分解して、水素及び酸素を生成するための装置及び方法に関する。本開示の実施形態は、高エネルギー成分及び低エネルギー成分の両方を含むスペクトルを含む放射線源を使用して、液体又は気体のいずれかの形態のH2Oを光触媒分解して、水素及び酸素を生成するための装置及び方法に関する。
【0008】
本開示の第1の態様によれば、放射線源を使用してH2Oを光触媒分解するための装置が提供され、この装置は、光触媒分解されるH2Oを受け入れるための反応容器と、放射線集光組立体とを備える。反応容器は、放射線源からの放射線を反応容器の中に受け入れるための窓と、H2Oを反応容器の中に受け入れるための注入口と、反応容器内に配置された光触媒であって、放射線吸収粒子を含み、使用時に、放射線吸収粒子が放射線を吸収してH2Oを水素と酸素に光触媒分解するようにした光触媒と、水素と酸素を反応容器から排出するための排出口と、を備える。放射線集光組立体は、放射線を窓へと向けるように配置及び構成された少なくとも1つの光学素子を備える。
【0009】
一実施形態では、窓が、注入口から排出口までのH2Oの流路に対して垂直な伸長方向に細長い。
【0010】
一実施形態では、窓の細長い長さは、注入口から排出口までの長さよりも大きい。
【0011】
一実施形態では、光触媒は細長い窓と同じ方向に細長く、放射線集光組立体が窓の伸長方向と平行でH2Oの流路に垂直な長手方向に延びている。
【0012】
一実施形態では、H2Oと光触媒分解された水素と酸素は、光触媒によって窓から離される。
【0013】
一実施形態では、使用時に、窓を介して光触媒によって吸収される放射線を光触媒分解された水素と酸素が妨げないように、H2Oが反応容器を通って導かれる。
【0014】
一実施形態では、窓が反応容器の下側に配置され、少なくとも1つの光学素子が放射線を反応容器の下側から窓へと向けるように配置されている。
【0015】
一実施形態では、反応容器は、窓と光触媒との間にチャネルをさらに備え、チャネルは、窓と光触媒との間にH2Oを収容するようなサイズ及び形状である。
【0016】
一実施形態では、チャネルの厚さは、窓と光触媒との間で1mm未満である。別の実施形態では、チャネルの厚さは窓と光触媒の間で1mmより大きい。
【0017】
一実施形態では、窓は、赤外線(IR)反射コーティングでコーティングされた外面を有する。別の実施形態では、窓は、アップコンバージョンコーティングでコーティングされた外面を有する。
【0018】
一実施形態では、アップコンバージョンコーティングは、向けられた放射線からの長波長を短波長に変換するように作用し、赤外線(IR)反射コーティングは、反応容器内の温度を下げるように作用する。
【0019】
一実施形態において、反応容器は、反応容器の後部又は側部から外方に延びる1つ又は複数のフィンを更に含み、使用中、1つ又は複数のフィン及び赤外線(IR)反射コーティングが、反応容器内の温度を下げるように作用する。
【0020】
一実施形態では、放射線源は、太陽放射、熱放射、電磁放射のうちの1つ又は複数である。
【0021】
一実施形態では、放射線源は、高エネルギー成分と低エネルギー成分の両方を含むスペクトルを有する。
【0022】
一実施形態では、高エネルギー成分は可視光を含む紫外線(UV)成分であり、低エネルギー成分は可視光を含む赤外線(IR)成分である。
【0023】
一実施形態では、放射線源は太陽放射であり、スペクトルは、可視光を含む紫外線(UV)成分と可視光を含む赤外線(IR)成分の両方の太陽スペクトルの全体を含む。
【0024】
一実施形態では、窓は、高エネルギー成分と低エネルギー成分の両方のスペクトルを含む放射線源からの放射線を反応容器内に受け入れるように構成される。
【0025】
一実施形態では、使用中、放射線吸収粒子は、H2Oを光触媒分解するためにスペクトルの高エネルギー成分を吸収する。
【0026】
一実施形態では、使用中、スペクトルの低エネルギー成分は、光触媒分解されるH2Oの温度を上昇させる。
【0027】
一実施形態では、使用中、スペクトルの低エネルギー成分は、H2Oが放射線吸収粒子によって光触媒分解される速度を増加させる。
【0028】
一実施形態では、放射線集光組立体は複数の光学素子を備え、光学素子のそれぞれが、放射線源からの放射線を反射して集光するための1つ又は複数の反射体を有する。別の実施形態では、放射線集光組立体は、複数の光学素子を有し、光学素子のそれぞれは、放射線源からの放射線を屈折させて集光するための1つ又は複数の屈折体を有する。
【0029】
一実施形態では、1つ又は複数の反射体は、放射線源の高エネルギー成分と低エネルギー成分の両方を反射して集光する。別の実施形態において、1つ又は複数の屈折体は、放射線源の高エネルギーと低エネルギー成分の両方を屈折させて集光する。
【0030】
一実施形態では、1つ又は複数の屈折体は1つ又は複数の収束レンズである。
【0031】
一実施形態では、光学素子はリニアフレネルリフレクタ(LFR)である。
【0032】
一実施形態では、窓は細長く、LFRは放射線源からの放射線の線状ビームを窓の細長い長さに沿うように向ける。
【0033】
一実施形態では、光学素子は放物面トラフであり、窓は細長く、放物面トラフは、放射線源からの放射線の線状ビームを窓の細長い長さに沿うように向けるための凹形状を有する。
【0034】
一実施形態では、光学素子は、放射線源を追跡するように位置決め及び調整可能であり、使用時に、放射線集光組立体の光学素子は、窓へと向けられた、放射線源の放射線及び高エネルギー及び低エネルギー成分の両方を含むスペクトルが最大になるように、位置決め及び調整される。
【0035】
一実施形態では、放射線源は太陽である。
【0036】
一実施形態では、放射線集光組立体は、窓が高エネルギー成分と低エネルギー成分の両方の太陽放射スペクトルの全てを受け入れて反応容器内でH2Oを光触媒分解するように、太陽からの放射線を反射して集光する。
【0037】
一実施形態では、放射線集光組立体は、使用時に、窓によって受け入れられる反射スペクトルが一つの太陽のものよりも大きい高エネルギーと低エネルギーの両方の成分を含むように、太陽からの放射線を増幅する。
【0038】
一実施形態では、装置は、水素を酸素から分離するためのセパレータをさらに備える。
【0039】
一実施形態では、セパレータは反応容器の排出口と流体連通している。
【0040】
一実施形態では、H2Oは液相又は気相のいずれか、あるいは両方である。
【0041】
一実施形態では、放射線吸収粒子は、H2Oを光触媒分解するために放射線を吸収することができるマイクロ粒子、ナノ粒子、又はピコ粒子のうちの1つ又は複数からなる。
【0042】
一実施形態では、放射線吸収粒子は半導体である。
【0043】
一実施形態では、放射線吸収粒子は放射線吸収材料である。
【0044】
一実施形態において、反応容器はジャケットによって囲まれており、ジャケットは、冷却流体がジャケットを通って流れて反応容器を冷却することを可能にするように、1つ又は複数の注入ポート及び1つ又は複数の対応する排出ポートを備え、使用時に、冷却流体は反応容器によって加熱されて加熱流体副生成物として使用するために1つ又は複数の排出ポートの下流に導かれる。
【0045】
一実施形態では、反応容器は加圧されている。
【0046】
本開示の第2の態様によれば、放射線源を使用してH2Oを光触媒分解するための装置が提供され、この装置は、光触媒分解されるH2Oを受け入れる反応容器と、放射線集光組立体とを備える。反応容器が、反応容器の下側に配置されて、放射線源からの放射線を受け入れるための窓と、H2Oを反応容器の中に受け入れるための注入口と、反応容器内に配置された光触媒であって、放射線吸収粒子を含み、使用時に、放射線吸収粒子が放射線を吸収してH2Oを水素と酸素に光触媒分解するようにした光触媒と、水素と酸素を反応容器から排出するための排出口と、を備える。放射線集光組立体が、放射線を窓へと向けるように配置及び構成された少なくとも1つの光学素子を備える。使用時に、窓を介して光触媒によって吸収される放射線を光触媒分解された水素と酸素が妨げないように、H2Oが反応容器を通して導かれるようにされる。
【0047】
本開示の追加の態様によれば、放射線源を使用してH2Oを光触媒分解するための装置が提供され、この装置は、反応容器と放射線集光組立体を備える。反応容器が、H2Oを反応容器の中に受け入れるための注入口と、反応容器内に配置された光触媒であって、放射線吸収粒子を含み、使用時に、放射線吸収粒子が放射線を吸収してH2Oを水素と酸素に光触媒分解するようにした光触媒と、水素と酸素を反応容器から排出するための排出口と、注入口から排出口までのH2Oの流路に垂直な方向に細長い窓であって、放射線源からの放射線を反応容器の中に受け入れる窓と、を備える。放射線集光組立体が、窓の細長い方向に平行な長手方向に延びており、放射線集光組立体が、放射線を細長い窓へと向けるように配置及び構成された少なくとも1つの光学素子を備える。
【0048】
本開示の第2の態様によれば、放射線源を使用してH2Oを光触媒分解する方法が提供され、この方法は、(a)放射線吸収粒子を含む光触媒が中に配置された反応容器の注入口を通してH2Oを流すステップと、(b)放射線集光組立体を使用して放射線源からの高エネルギー成分及び低エネルギー成分を含むスペクトルを有する放射線を集光し、集光した放射線を反応容器内のH2Oの流路に垂直な方向に延びる細長い窓に向けるステップと、(c)放射線吸収粒子がスペクトルの高エネルギー成分を吸収してH2Oを水素と酸素に光触媒分解し、且つスペクトルの低エネルギー成分が反応容器内のH2Oの温度を上昇させるように、集光した放射線にH2Oと光触媒の両方を細長い窓を介して曝すステップと、(d)生成された水素と酸素を反応容器の排出口を介して排出するステップと、を含む。
【0049】
一実施形態では、排出口で排出された水素と酸素は、続いて排出口と流体連通するセパレータで分離される。
【0050】
一実施形態では、放射線源は太陽であり、放射線は太陽放射であり、スペクトルは太陽スペクトルである。
【0051】
一実施形態では、高エネルギー成分は可視光を含む紫外線(UV)であり、低エネルギー成分は可視光を含む赤外線(IR)である。
【0052】
一実施形態では、放射線集光組立体は、使用時に太陽からの太陽放射を増幅して、窓によって受け入れられる反射スペクトルが一太陽のものよりも大きい高エネルギー成分と低エネルギー成分の両方を含むようにする。
【0053】
本開示の追加の態様によれば、水素と酸素を生成する方法が提供され、この方法は、反応容器内に収容された放射線吸収粒子を含む光触媒を用いてH2Oを光触媒分解することと、放射線源から放出される高エネルギー成分と低エネルギー成分の両方を光触媒反応において利用するように、放射線集光組立体を使って放射線源を光触媒とH2Oの両方に集中させることとを含む。
【0054】
本開示のさらなる態様によれば、H2Oから水素と酸素を生成する方法が提供され、この方法は、放射線吸収粒子の光触媒を含む反応容器にH2Oを流すことと、放射線集光組立体を使って、放射線源からの高エネルギー成分と低エネルギー成分の両方のスペクトルを含む放射線を反応容器の窓、ひいては光触媒とH2Oに集光することとを含む。放射線吸収粒子がスペクトルの高エネルギー成分を吸収してH2Oを光触媒分解し、スペクトルの低エネルギー成分が反応容器内のH2Oの温度を上昇させる。
【0055】
一実施形態では、H2Oは、廃水や他のプロセスの副生成水などの汚れた水である。
【0056】
一実施形態では、H2Oは、スペクトルの低エネルギー成分による温度上昇によって気相になるように蒸留され、したがって精製される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本開示の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0058】
【
図1】放射線源を使用してH
2Oを光触媒分解するための装置の概略透視図である。
【0059】
【0060】
【
図3】
図1及び
図2の装置で使用する圧力レギュレーターとユージオメーターの側面図である。
【0061】
【
図4】装置及び放射線源からの向けられた放射線に対して反応容器が延びる方向を示す、
図1の装置の代替的な概略的斜視図である。
【0062】
【
図5】複数のリニアフレネルリフレクタシステムをH
2O供給源に接続した状態で使用する、
図1から
図4の複数の装置の例である。
【0063】
【
図6】上記図のいずれかの装置の放射線源として使用することができる太陽スペクトルのスペクトル部分(すなわち成分)を示す図である。
【0064】
【
図7】
図1及び
図4のいずれかの装置を使用した、温度上昇時のH
2(ガス)生成速度を示すグラフである。
【0065】
【
図8】
図1及び
図4のいずれかの装置を使用した、温度上昇時のH
2及びO
2発生速度を示すグラフである。
【0066】
【
図9】直線関係が存在すると仮定して、アレニウスの関係に従って温度を上昇させた場合のH
2ガス発生速度を示すグラフである。
【0067】
【
図10】装置の代替実施形態であり、装置は反応容器の下側に配置された窓を含む。
【0068】
【
図11】
図1の線A-Aに沿った装置の断面図である。
【0069】
【
図12】光触媒(上記図のいずれか)の応答が放射線源からの放射線の増加に対して線形であることを示す図である。
【0070】
【
図13A】
図10の装置の組からなるレシーバ組立体を示す概略図であり、各装置は、複数の光学素子からなる放射線集光組立体が配置される水平面に対して角度をなしている。
【0071】
【0072】
【
図14】
図1及び
図4のいずれかの装置を用いて時間単位で測定された光子束に対するH
2ガス発生速度を示すグラフである。
【0073】
以下の説明において、同様の参照符号は、図全体を通じて同様の部分又は対応する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
図のいずれかを参照すると、高エネルギー成分(可視光を含む紫外線等)及び低エネルギー成分(可視光を含む赤外線等)の両方のスペクトルを含む放射線源を使用して、液体又は気体の形態にある水(以下、互換的に「H2O」と称する)を光触媒分解して、水素(以下、互換的に「H2」と称する)と酸素(以下、互換的に「O2」と称する)を生成するための装置及び方法が開示されている。以下の開示から明らかなように、生成されたH2及びO2は、続いてエネルギー生産方法のために貯蔵又は使用され得る化学燃料とみなすことができる。また、以下の開示の実施形態のいずれかにおいて、水を光触媒分解するための装置及び方法は、放射線源の全スペクトルを利用する又は必要とすることが明らかであろう。さらに、本開示の以下の実施形態のいずれかにおいて、本装置及び方法は、連続的に水を光触媒分解して、化学燃料として利用され得る水素及び酸素を生成するために特に適用可能であることが明らかであろう。
【0075】
特に、本開示は、放射線源(200)を使用してH2Oを光触媒分解するための装置(100)に関する。装置(100)は、光触媒分解されるH2Oを受け入れるための反応容器(10)と、放射線集光組立体(20)とを備える。
【0076】
さらに、本開示は、反応容器(10)内に収容された放射線吸収粒子を含む光触媒(11)を使用してH2Oを光触媒分解し、放射線集光組立体(20)を使用して放射線源(200)を光触媒(11)及びH2Oの両方に集光して、光触媒反応において放射線源から放出される高エネルギー成分及び低エネルギー成分の両方を利用することによってH2を生成する方法にも関する。
【0077】
さらに、本明細書で説明する放射線源のスペクトルの高エネルギー成分は、代替的に、光子励起成分とみなされ、スペクトル内の可視光を少なくとも部分的に含む成分であってもよい。このようにして、スペクトルの高エネルギー成分は、H2Oが光触媒分解されるように光子を励起するために光触媒(11)によって利用される。同様に、本明細書で説明する放射線源のスペクトルの低エネルギー成分は、反応容器(10)内の温度を上昇させるために、スペクトル内の可視光を少なくとも部分的に含む成分であってもよい。このように、スペクトルの高エネルギー成分と低エネルギー成分は、両方とも、少なくとも部分的に、スペクトル内の可視光を含むので、重なり合う可能性があると考えられる。
【0078】
図1~
図5、
図10及び
図11のいずれかを参照すると、一実施形態では、反応容器(10)は、放射線源(200)からの放射線を反応容器(10)内に受け入れるための窓(12)と、H
2Oを反応容器(10)内に受け入れるための注入口(13)と、反応容器(10)内に配置された光触媒(11)と、H
2及びO
2を反応容器(10)から排出するための排出口(14)とを備える。使用時、光触媒(11)の放射線吸収粒子が放射線を吸収して、H
2Oを光触媒分解してH
2とO
2にする。放射線集光組立体(20)は、放射線を反応容器(10)の窓(12)に向けるように配置及び構築された少なくとも1つの光学素子(21)を備える。この実施形態では、光触媒(11)はシートであり、反応容器(10)内に固定されている。
【0079】
本明細書で説明する放射線源(200)は、太陽放射、熱放射、又は電磁放射の1つ又は複数であってもよい。再生可能な方法でH2Oを光触媒分解してH2及びO2を生成するように、すなわち、化学燃料を生成するのにクリーンで環境に優しい方法となるように、放射線源(200)が選択されることが意図されている。放射線源(200)はまた、高エネルギー成分と低エネルギー成分の両方のスペクトルを含むように選択される。本開示の実施形態のいずれかにおける装置(100)又は方法のいずれかのための理想的な放射線源(200)の1つは、スペクトルが、高エネルギー成分として可視光を少なくとも部分的に含む紫外線(UV)及び低エネルギー成分として可視光を少なくとも部分的に含む赤外線(IR)の全太陽スペクトルを含む太陽放射である。
【0080】
放射線源(200)として太陽放射を利用することで、H
2Oを光触媒分解してH
2とO
2を生成するための、再生可能でクリーンかつ環境的に利用可能な放射線源が確保される。従来、H
2生成のための光触媒分解には、太陽スペクトルの紫外線(すなわち高エネルギー)成分のみが利用されてきた。このような従来の技術では、H
2Oを光触媒分解するために太陽スペクトルのUV成分のみを利用することは、太陽スペクトルのUV成分が全太陽スペクトルの約8%しかないという点で問題がある。太陽スペクトルの低エネルギー成分(IR)は、スペクトルの大部分を占めており、従来は利用されていないか、又は既存のH
2生成技術にとっては問題があった(例えば、IR放射は半導体のバンドギャップを超えて電子を励起するのに十分なエネルギーがない)。
図6は、太陽スペクトルの割合を図式化したものであり、UV及び可視光(VIS)は「高エネルギー」と表示されたグラフの部分及びグラフの上部x軸に沿ってUVA/UVBと表示された部分として示されており、IR(可視光VISを少なくとも部分的に含むことが示されている)は「低エネルギー」と表示されたグラフの部分及びグラフの上部x軸に沿ってIR-A/IR-B/IR-Cと表示された部分として示されている。高エネルギー成分(可視光を含むUV)が光触媒分解によりH
2OをH
2とO
2に分解し、低エネルギー成分(少なくとも部分的に可視光を含むIR)が光触媒分解されるH
2Oの温度を上昇させるようにして、H
2Oを光触媒分解するために全ての/全太陽スペクトルを利用することが本開示の意図である。
【0081】
次に、
図1から
図5のいずれかを参照すると、装置(100)の一実施形態において、反応容器(10)は、窓(12)と光触媒(11)との間にチャネル(図示せず)を備える。チャネルは、窓(12)と光触媒(11)との間にH
2Oを収容するようなサイズ及び形状を有する。チャネルは反応容器(10)の注入口(13)と排出口(14)の間に渡り、H
2Oが光触媒(11)に曝されるように注入口(13)から導かれ、それによって光触媒(11)の光触媒吸収粒子がH
2OをH
2とO
2に分解し、それらは排出口(14)に導かれる。
【0082】
上記実施形態において、チャネルは、窓(12)と光触媒(11)との間で1mm未満の幅を有していてもよい。代替案として、窓(12)と光触媒(11)との間の幅は1mmより大きくてもよい。すなわち、チャネルは、窓(12)と光触媒(11)との間にH2Oを収容してチャネル内のH2O層が1mmよりも厚くなるようにサイズ及び形状が設定される。チャネルの幅が1mmより大きい場合、チャネル内のH2O層は、チャネルの幅が1mmより小さい場合よりも重くなる。
【0083】
上記とは別の一実施形態では、反応容器(10)は、H2O、及びそれから光触媒分解された水素及び酸素を窓(12)及び光触媒(11)から分離することができる手段を備える。すなわち、この代替実施形態では、H2Oは、光触媒(11)によって吸収される放射線が窓(12)を介して受け入れられることを光触媒分解された水素及び酸素が妨げないように、注入口(13)から排出口(14)まで反応容器(10)を通して導かれる。この代替実施形態では、この手段は、H2O及び光触媒分解された水素と酸素を、窓(12)を通して光触媒(11)によって受け取られる向けられた放射線を妨害/遮断/反射/低減しないように物理的に分離することが理解されよう。この代替実施形態の利点は、上記手段を介してH2O、水素及び酸素を物理的に分離して光触媒(11)に到達する向けられた放射線を妨げないようにすることによって、使用中の反応容器(10)が排出口(14)での水素及び酸素のより高い収率を有利に達成することにある。
【0084】
追加的に、この代替的な実施形態において、窓(12)及び光触媒(11)は共に、好ましくは平坦な設計、形状又は構成を採用されることが理解されるであろう。これにより、窓(12)及び光触媒(11)の平坦な設計、形状又は構成は、反応容器(10)が、光触媒(11)に到達する向けられた放射線を妨げないようにH2O、水素及び水を物理的に分離する手段を有することをより容易に可能にする。
【0085】
更に、H2O、水素、及び酸素は、液体、蒸気、又は気体の状態であってもよく、該手段は、光触媒(11)に到達する向けられた放射線を妨げないように、これらの状態のいずれか1つを物理的に分離することが可能であることが理解されるであろう。また、H2O、水素、及び酸素が物理的に離されず、光触媒(11)が向けられた放射線を受けるのを妨げる場合、これらの液体、蒸気、又は気体の状態は、向けられた放射線が光触媒(11)に与えるH2Oを光触媒分解する効果を反映又は減少させる可能性があることも理解されよう。
【0086】
図1~
図5、
図10又は
図11のいずれかを更に参照すると、一実施形態では、窓(12)は、高エネルギー成分と低エネルギー成分の両方のスペクトルを含む放射線源(200)からの放射線を反応容器(10)内に受け入れるように構成されている。すなわち、窓(12)は、放射線源のスペクトルの高エネルギー成分と低エネルギー成分の両方を透過させることができる、ガラス等の半透明又は透明な材料とすることができる。窓(12)が製造される材料は、好ましくは、向けられた放射線を光触媒(11)ができるだけ多く吸収できるものである。特に、窓(12)が製造される材料は、高エネルギー成分(可視光を含むUV)と低エネルギー成分(IR)をできるだけ多く光触媒(11)にまで透過させるものが選択される。低エネルギー成分は、窓(12)を介して反応容器(10)によって受け取られない場合があり、低エネルギー成分は、反応容器(10)内のH
2Oの温度を上昇させるために容器(10)上に直接照射される場合があることが理解されよう。
【0087】
上記実施形態のいずれかにおいて、使用中の装置(100)は、放射線吸収粒子が反応容器(10)内で光触媒分解するために放射線源(200)のスペクトルからの高エネルギー成分を吸収するように、窓(12)を介して放射線源(200)からの放射線を反応容器(10)内に受け入れる。すなわち、使用時には、反応容器(10)の注入口(13)でH2Oが受け入れられ又は注入され、放射線源(200)のスペクトルの高エネルギー成分が光触媒分解に利用されるように、放射線源(200)の放射線が窓(12)に向けられる。
【0088】
上記実施形態のいずれかにおいて、使用中の装置(100)は、放射線源(200)のスペクトルからの低エネルギー成分が光触媒分解されるH2Oの温度を上昇させるように、窓(12)を介して放射線源(200)からの放射線を反応容器(10)内に受け入れる。すなわち、使用時には、反応容器(10)の注入口(13)でH2Oが受け入れられ又は注入され、窓(12)が、放射線源(200)のスペクトルの低エネルギー成分をH2Oに伝達又は透過させてその温度を上昇させるように、放射線源(200)の放射線が窓(12)に向けられる。窓(12)は、スペクトルの低エネルギー成分を反応容器(10)内のH2Oに伝達又は透過させることができるように選択されることが理解されよう。別の形態においては、放射線源(200)のスペクトルの低エネルギー成分は、反応容器(10)が反応容器(10)内のH2Oの温度を上昇させるためにスペクトルの低エネルギー成分を伝達又は透過することができるように、反応容器(10)上に直接照射することができる。
【0089】
また、この実施形態では、使用時に、放射線源(200)のスペクトルの低エネルギー成分は、H2Oが放射線吸収粒子によって光触媒分解される速度を有利に増加させる。すなわち、放射線源(200)のスペクトルの高エネルギー成分と低エネルギー成分の両方のスペクトル全体を利用することにより、装置(100)は、高エネルギー成分を利用してH2Oを光触媒分解し、低エネルギー成分を利用してH2Oが分解される速度を有利に増加させることができる。このようにして、スペクトル全体が使用され、有利には光触媒反応の速度が増加するため、装置(100)は放射線源(200)のスペクトルの低エネルギー成分を利用してH2及びO2の生成速度を増加させることができる。
【0090】
ここで
図8、
図9及び
図12を参照すると、一実施形態では、装置(100)によって光触媒分解されるH
2Oの温度を上昇させた場合の効果がグラフで示されている。最初に
図8を参照すると、温度上昇に伴うH
2ガス及びO
2ガスの発生速度がグラフで示されている。実験室での試験及び実験データに基づいて、装置(100)は、生成された化学燃料(ガス)がH
2:O
2=約2:1であることを実証している。
図8は、H
2及びO
2生成速度(ガス発生速度、mole/hr)が温度の関数であること(すなわち、ガスの総生成量対温度の傾き)を示している。
図2に示すように、装置(100)の実験室試験では、90℃でのH
2発生(すなわち装置(100)のH
2発生速度)は、23℃での約3倍であることが実証されている。すなわち、スペクトルの低エネルギー成分を利用し、光触媒分解されるH
2Oの温度を上昇させることで、装置(100)は有利にH
2生成を増加させることができる。
図9を参照すると、150℃と200℃と表示されたデータ点は、装置(100)の実験データを外挿したものであり、直線的な関係が外挿によって示されている。
【0091】
図8と
図9では、H
2発生速度(mole/hr)を1000/温度(ケルビン)の関数としてプロットし、温度上昇に伴う顕著な低下のないH
2発生対温度の線形依存性を示している。この化学反応速度の温度依存性は、例えばアレニウスの式に従う。
k=Ae
-Ea/RT
【0092】
図11と
図12は、kと1000/Tをプロットすると、傾きが-E
a/Rに等しい直線が得られることを示している。ここで、kは速度定数、Aは前指数、E
aは活性化エネルギー、Rは一般気体定数(8.314JK
-1mol
-1)、Tは絶対温度(ケルビン)である。特に
図9を参照して、アレニウスの挙動が成り立つと仮定すると、温度の上昇に伴うH
2生成の予測を行うことができる。
図9は、一定の傾きで直線に投影すると、23℃でのH
2生成量と比較して、150℃では6倍、200℃では9倍のH
2生成量が得られることを示している。
【0093】
図12では、装置(100)によって光触媒分解されたH
2Oの結果物である水素(H
2)発生速度が、太陽濃度の関数としてグラフで表されている。実験室での試験と実験データに基づいて、装置(100)は、向けられた放射線(200)(すなわち
図12の太陽集中)の増加に伴う光触媒(11)の反応が、有利には直線的な関係が得られることを実証している。
図14では、水素(Y軸に「生成ガス体積」と表示)の生成速度が、分単位の時間の関数としてグラフ化されており、光子束(又は向けられた放射線強度)の増加の効果を示している。この図では、本明細書に記載される実施形態のいずれかの光触媒(11)が表されており、実験室試験及び実験データに基づいて、光触媒(11)は、放射線強度が増加するにつれて水素の生成量が増加することが実証されている。
【0094】
一実施形態では、図のいずれかを参照して、光触媒(11)の放射線吸収粒子は、H
2Oを光触媒分解するために熱放射線を吸収することができるマイクロ粒子、ナノ粒子、又はピコ粒子のうちの1つ又は複数を有するようにできる。代替実施形態では、光触媒(11)の放射線吸収粒子は、アルミニウムドープSrTiO
3光触媒とすることができる。この代替実施形態の一例では、光触媒(11)は半導体とすることができる。この代替実施形態の別の例では、光触媒(11)は放射線吸収材料とすることができる。この光触媒は、365nmで約50%の見かけの量子収率を有し、太陽放射が放射線源(200)である場合、この光触媒は、全体として~0.4%の太陽光-水素変換効率(「STH」)を有する。
図7を参照すると、50%UV-ATA LEDを放射線源(200)として使用する装置(100)が図示されている。この図において、50%UV-ATA LEDは、最大出力55mW/cm
2で365nmであり、太陽11個分(即ち、太陽の高エネルギー成分としてUV出力の11倍、低エネルギー成分としてIR出力の11倍)に相当し、注入口(13)で注入又は受け入れられるH
2Oは液相である。
図7は、反応容器(10)内の温度を変化させた場合(温度は、反応容器が配置されているオーブンの温度を上昇させることによって変化させる)に、時間(反応時間)にわたって生成されるH
2とO
2の合計(ガス量)を示している。図から、反応容器(10)内の温度が上昇するにつれて、時間当たりのH
2生成量が増加し、したがって放射線源(200)のスペクトルの低エネルギー成分を利用することによって、H
2生成量が増加することが注目される。光触媒(11)の放射線吸収粒子(光触媒としての)は、本発明の焦点ではなく、変化する温度条件下で動作可能でありながら、H
2OをH
2とO
2に光触媒分解できるような、本明細書で説明していない代替光触媒であってもよいことが理解されよう。
【0095】
上記の実施形態のいずれかにおいて、特に
図1及び
図4を参照すると、反応容器(10)の窓(12)は細長く、矢印(80)で示される伸長方向は、注入口(13)から排出口(14)までのH
2Oの流路に対して垂直である。細長い窓(12)は、H
2Oの流路の長さよりも長い細長い長さを有し、H
2Oの流路の長さは注入口(13)から排出口(14)までの長さである。
【0096】
この特定の配置では、光触媒(11)も細長く、細長い窓(12)と同じ方向に延びているようにすることができる。この配置は、窓(12)と光触媒(11)の両方の表面積を最大にして、そこに放射線が向けられることを可能にする一方で、H2Oが注入口(13)から排出口(14)に流れる際にH2Oが受ける温度上昇を最小にする。つまり、H2O流路の長さに対する細長い窓(12)の寸法は、H2Oが注入口(13)から排出口(14)へ流れる際の温度上昇を最小限に抑えるように設計されている。
【0097】
さらに、放射線集光組立体(20)は、窓(12)と光触媒(11)の両方の伸長方向と平行な長手方向に延びている。従って、放射線集光組立体(20)が延びる長手方向は、H2O流路に対して垂直である。
【0098】
H2Oが注入口(13)から排出口(14)へ流れる際にH2Oが受ける温度上昇は、光触媒分解された水素と酸素が窓(12)を介して光触媒(11)によって吸収される放射線を妨げないようにH2Oが反応容器(10)内を通って導かれるという特徴により、流路内での予期せぬ局所的な温度変動が発生しないという点で支援される。
【0099】
本発明者らは、H2Oの流路の長さよりも大きい細長い長さを有する細長い窓(12)を有する反応容器(10)を構築すること、及び窓(12)の細長い方向と平行な長手方向に延びるように放射線集光組立体(20)を配置することによって、H2Oが注入口(13)から排出口(14)に流れる際にH2Oが受ける温度上昇を最小化することが、H2Oを光触媒分解して水素と酸素にする提示されたプロセスにとって特に有利であることを驚きを持って見出した。
【0100】
次に
図5を参照すると、一実施形態では、放射線集光組立体(20)は、複数の光学素子(21)を備え、光学素子(21)の各々は、放射線源(200)からの放射線を反射及び集光するための1つ又は複数の反射体を備える。すなわち、1つ又は複数の反射体は、光触媒(11)を介してH
2Oを光触媒分解し、同時にH
2O温度を上昇させるように、放射線源(200)の低エネルギー(少なくとも部分的に可視光を含むIR)及び高エネルギー(可視光を含むUV)成分の両方を、反応容器(10)の窓(12)上に反射及び集光することができる。この実施形態では、光学素子(21)は放射線源(200)を追跡できるように位置調整可能である。放射線源(200)が太陽である例では、光学素子(21)は、日照時間中に太陽を追跡して反応容器(10)の窓(12)に向けられる太陽放射を最大化/維持/制御してH
2Oを光触媒分解するように、位置決め及び調整可能であることが理解されよう。
【0101】
上記に対する代替実施形態では、放射線集光組立体(20)は、複数の光学素子(21)を備えていてもよく、光学素子(21)の各々は、放射線源(200)からの放射線を屈折させて集光するための1つ又は複数の屈折体(図示せず)を備える。即ち、この代替実施形態では、1つ又は複数の屈折体は、放射線源の高エネルギー成分及び低エネルギー成分の両方を屈折させて集光する。更に、この代替実施形態では、1つ又は複数の屈折体は、1つ又は複数の収束レンズである。図には示されていないが、複数の光学素子(21)は、放射線源(200)からの放射線を反射させるための反射体と屈折させるための屈折体の両方を備え得ることが理解されよう。
【0102】
引き続き
図5を参照すると、放射線集光組立体(20)の一実施形態では、光学素子(21)は、(この例では太陽が放射線源(200)となるので)太陽放射を集光して向ける際に使用されることで知られているリニアフレネルリフレクタ(LFR)である。図に示されているように、LFRは、
図8に最もよく示されるように、太陽(200)からの太陽放射を集光して方向付けることができる典型的には放物面トラフである光学素子(21)のアレイを備える。図示されていないが、代替案では、LFRは、太陽(200)からの太陽放射を集光して向けることができる平坦な(線形の)ミラーである光学素子のアレイを備えていてもよい。いずれかの実施形態では、反応容器(10)の窓(12)は細長く、LFRは放射線源(200)からの放射線を窓(17)の細長い長さに沿うように向ける。細長い窓(12)及び光学素子(21)は、放射線源からの放射線を窓(17)の細長い長さに沿うように向けるように、凹形状を有するか、又は平坦(直線状)形状(図示せず)を有するかのいずれかとすることができる。LFRの光学素子(21)は、特に、可視光を含む高エネルギー成分が光触媒分解に使用され、低エネルギー成分が光触媒分解されるH
2Oの温度を上昇させるために使用されるように、放射線源(200)の高エネルギー成分と低エネルギー成分との両方を含む全スペクトルを細長い窓(17)に向けてそこを透過させることができることが理解されよう。
【0103】
放射線集光組立体(20)がリニアフレネルリフレクタ(LFR)である上記実施形態では、太陽が放射線源(200)である場合に反応容器(10)の窓(12)を移動させる必要がないという利点があることが理解されよう。むしろ、放射線源(200)である太陽を空を横切って追跡するのはLFRである。このようにして、反応容器(10)の注入口(13)と排出口(14)は、容器(10)がLFRから向けられた放射線を受けるときに静止したままであるため、有利に固定され得る。
【0104】
上記実施形態では、放射線集光組立体(20)のLFR光学素子(21)は、放射線源(200)の放射線と反応容器(10)の窓(12)に向けられた高エネルギー成分と低エネルギー成分の両方からなるスペクトルとを最大にするように位置決め及び調整される。反応容器(10)は、放射線集光組立体(20)の、
図5によって最もよく示される、LFR光学素子(21)のアレイの上方に配置されてもよく、光学素子(21)は、放射線源(200)からの放射線が窓(12)に向けられるように位置決め及び調整される。この実施形態では、反応容器(10)は、台形キャビティレシーバ(図示せず)を有する本体を備え、窓(12)が台形キャビティ内に配置され、放射線源(200)からの放射線が台形キャビティ内に向けられるようにすることができる。
【0105】
ここで
図13A及び
図13Bを参照すると、複数の光学素子(21)を備える放射線集光組立体(20)の代替実施形態が図示されており、放射線集光組立体(20)は水平面(これは平坦な水平面であってもよい)上に配置されている。この代替実施形態では、1つ又は複数の反応容器(10)を組み合わせてレシーバ(300)を形成してもよく、それにより、1つ又は複数の反応容器(10)は、水平面に対して平行ではなく、水平面に対して角度をなしている。
図13Bに示されるように、2つの反応容器(10)が水平面に対して角度をなして、各容器(10)の細長い窓(12)とレシーバ(300)の表面(310)との間に三角柱を形成する。レシーバ(300)の表面(310)は、特に、放射線集光組立体(20)からの向けられた放射線がそこを通過して各容器(10)の各細長い窓(12)に照射されるように設計されている。この配置では、表面(310)及びレシーバ(300)は細長く、細長い方向は、先の実施形態で説明した細長い窓(12)と同じ方向である。細長い窓(12)と表面(310)との間に形成された三角柱内には、空洞がある。この代替実施形態では、水平に対して傾斜していることにより、各反応容器(10)内でH
2Oが光触媒分解されて水素と酸素とになるとき、有利には、生成された水素ガスと酸素ガスとが、それぞれの光触媒(11)からそれぞれの排出口(14)へ速やかに流れる。
【0106】
再び
図5を参照すると、太陽を放射線源(200)として使用してH
2Oを光触媒分解するために各反応容器(10)の対応する放射線集光組立体(20)としてLFR光学素子(21)を利用した、実地での複数の装置(100)の例が示されている。この実施形態では、H
2Oは、貯水池(30)から供給され、ポンプ(40)を介して各装置(100)の注入口(13)に圧送され、光触媒分解されて化学燃料のH
2とO
2になり、続けて対応する排出口(14)から排出されて、対応するH
2とO
2の貯蔵設備(50)内に貯蔵される。貯蔵設備(50)内に貯蔵されたH
2とO
2は、続けて必要に応じてエネルギー生産のための化学燃料として使用することができる。このようにして、装置(100)は、(50)のような設備内に容易に捕捉及び貯蔵される化学燃料として、H
2OをH
2及びO
2に光触媒分解することができ、化学燃料を生成するために放射線源(200)のスペクトル全体を使用して放射線源を最大限に使用するために、
図5に示されるように有利に拡張可能である。
図5の一実施形態では、放射線源(200)は理想的には太陽であり、IR(少なくとも部分的に可視光を含んでいてもよい)とUV(可視光を含んでいてもよい)の両方からなる太陽スペクトル全体が、光触媒分解のために装置(100)によって利用されることが理解されよう。
【0107】
放射線集光組立体(20)の光学素子(21)としてLFRを採用する上記実施形態では、放射線源(200)が太陽であるシナリオにおいて、放射線集光組立体(20)は、窓(12)が高エネルギー及び低エネルギーの両方の完全な太陽スペクトルを受け入れて反応容器(10)内でH
2Oを光触媒分解するように、太陽からの太陽放射線を反射及び集光する。この実施形態における放射線集光組立体(20)の利点は、窓(12)によって受け取られる反射された(又は向けられた)太陽スペクトルが、一の太陽のものよりも大きい高エネルギー(可視光を含む成分であるUV)と低エネルギー(少なくとも部分的に可視光を含む可能性があるIR)の両方を含むように、太陽からの太陽放射を増幅する能力である(即ち、太陽スペクトルのUV及びIR成分が窓に直接照射される太陽のものよりも大きくなるように増幅される)。
図5によって示されるように、本明細書に開示される装置(100)は、太陽放射を集光するために、図示されるような既存のLFRシステムに有利に統合され得ることが理解されるであろう。
【0108】
上記実施形態では、装置(100)は、H2をO2から分離するためのセパレータ(60)をさらに備えることができる。セパレータ(60)は、反応容器(10)の排出口(14)の下流に配置され、導管(61)を介して接続される。セパレータ(60)は、反応容器(10)の排出口(14)と流体連通しており、H2排出口(図示せず)及びO2排出口(図示せず)を有していてもよく、それによりH2排出口はH2貯蔵設備と、O2排出口はO2貯蔵設備(50)とそれぞれ流体連通しているようにできることが理解されよう。
【0109】
上記実施形態では、反応容器(10)を加圧することができる。すなわち、反応容器(10)の注入口(13)で受け入れられたH
2Oは、注入口(13)からH
2Oを流すように加圧され、H
2Oは、窓(12)を介して受け入れられた放射線源(200)の高エネルギー成分と低エネルギー成分の両方に曝される光触媒(11)の放射線吸収粒子によって光触媒分解され、続いて、H
2及びO
2の化学燃料が、反応容器(10)の排出口(14)から排出されるようにできる。この実施形態では、
図3を参照すると、反応容器は、反応容器(10)の注入口(13)と流体連通している背圧調整器(70)によって加圧することができる。
【0110】
上記の実施形態では、反応容器はまた、
図3に示されるユージオメーター(80)を含んでもよい。ここで、ユージオメーター(80)は、排出口(14)におけるH
2/O
2混合物の体積の変化を測定することによって、生成されたH
2及びO
2の体積を反応容器(10)の排出口(14)において測定するために使用される。このようにして、反応容器(10)の排出口(14)と流体連通したユージオメーター(80)は、生成されたH
2とO
2の比率を監視することができる。
【0111】
上記実施形態では、反応容器(10)又は装置(100)の注入口(13)に注入又は受け入れられたH2Oは、液相又は気相のいずれか、又は両方である。理想的には、光触媒分解される注入口(13)に注入又は受け入れられたH2Oは清浄な水であるが、代替実施形態では、「汚れた水」(廃水又は他のプロセスの副生成水など)を、H2を生成するために上記実施形態の装置(100)又は方法によって利用することができることが理解されよう。この代替実施形態では、注入口(13)で注入又は受け入れられたH2Oは、液相又は気相のいずれか、又は両方であり得、「汚れた水」が代わりに使用される。また、この代替実施形態では、「汚れた水」が気相である場合、気相とするために蒸留されている可能性がある。さらに、「汚れた水」の蒸留は、放射線源(200)の低エネルギー成分への曝露中に装置(100)内で行われてもよい。汚れた水」の蒸留は、実質的に水を浄化し、生成されたH2及びO2から不純物を分離することが理解されよう。
【0112】
上記の実施形態から、装置(100)又は方法が、H2Oを光触媒分解してH2を生成するための放射線源(200)として太陽エネルギーを使用することを理想的には意図していることが開示されていることは明らかであろう。太陽エネルギーは、現在及び将来のエネルギー需要を満たすのに役立つ無料で無限に利用可能なクリーンなエネルギー源である。従って、上記実施形態に開示された装置(100)及び方法の重要な利点は、H2Oを光触媒分解して、化学燃料の形態として使用可能かつ貯蔵可能な水素(H2)を生成するために、このエネルギーを利用することである。上記実施形態に開示された装置(100)及び方法の更なる利点は、H2Oを光触媒分解することによってO2(すなわち酸素)も生成することができ、このO2もまた、他のエネルギー又は化学物質生産の必要性のために化学燃料として使用することができることである。
【0113】
上記の実施形態では、装置(100)がH2Oを光触媒分解することによってH2とO2を共生成し、H2とO2の両方が発熱反応してエネルギーを放出することも明らかであろう。H2とO2の2:1の化学量論的混合物の自己発火温度は570℃であり、これは、装置(100)がH2Oを光触媒分解するように動作するための「最高温度」であり、H2Oの温度がこの自己発火温度570℃以下になるように放射線源(200)のスペクトルの低エネルギー(IR)成分を反応容器(10)の窓(12)に適用するための上限であることが理解される。H2Oが反応容器(10)内で気相又は蒸気相であるシナリオでは、反応容器(10)内にH2とO2の両方が存在する混合物が存在し、これにより自己発火温度が570℃より高くなる。すなわち、有利には、反応容器(10)内にH2とO2が存在することにより、自動着火プロセスが効果的に抑制される。
【0114】
上記の実施形態においては、
図10によって最もよく示されるように、窓(12)は、赤外線(IR)反射コーティング又はアップコンバージョンコーティングのような1つ又は複数のコーティング(19)でコーティングされ得る外面を備える。窓(12)の外面上の1つ又は複数のコーティングは、指向された放射線からの高温に対して窓(12)を保護するのを補助する熱絶縁層を提供すること、飛散防止特性を窓(12)に提供するのを補助すること、又は指向された放射線を増幅又は改善するのを補助する特性を窓(12)に提供するのを補助すること等の多くの目的を果たすことができるが、その目的はこれらに限定されない。
【0115】
一実施例において、窓(12)の外面が赤外線(IR)反射コーティング(19)を有する場合、IR反射コーティングは、断熱層であることによって反応容器(10)内の温度を下げるように作用する。この実施例では、IR反射コーティングは、さらに、窓(12)、光触媒(11)、及び向けられた放射線によって与えられる高温による損耗を受ける可能性のある反応容器(10)の他の構成要素の寿命を延ばすのを助けることができる。さらに、この例では、IR反射コーティングの使用は、放射線源(200)からのより高い高エネルギー成分(可視光を含むUV)の使用を可能にする一方で、反応容器(10)内の温度をH2及びO2の自己発火温度570℃以下に維持することに役立つことになり得る。
【0116】
窓(12)の外面がアップコンバージョンコーティング(19)を有する別の実施例では、アップコンバージョンコーティングは、放射線が窓(12)に向けられたときに、向けられた放射線からの長波長を短波長に変換するように作用する。この実施例では、向けられた放射線の長波長を短波長に変換することにより、アップコンバージョンコーティングは、光触媒(11)の、H2Oを水素と酸素に光触媒分解する能力の効率を有利に向上させる。さらに、この例では、アップコンバージョンコーティングは、可視光子を紫外線(UV)光子に変換する。
【0117】
ここで
図2を参照すると、一実施形態では、反応容器(10)内の温度及び光触媒(11)の温度を、H
2及びO
2化学燃料生成物の自己発火温度570℃以下に維持するのを補助するために、反応容器(10)は、反応容器(10)の後部(16)又は側部(図示せず)から外方に延びる1つ又は複数の冷却フィン(15)を更に有していてもよい。
図2に示されるように、1つ又は複数の冷却フィン(15)は、反応容器(10)内の温度を分散させるように、反応容器(10)の後部(16)から垂直に外方に延び、隣接する冷却フィン(15)から間隔を空けて配置されてもよい。有利には、1つ又は複数の冷却フィン(15)を有することで、反応容器(10)内の温度を下げるように作用し、その結果、放射線源(200)からのより高い高エネルギー成分(可視光を含む紫外線)の使用を可能にしながら、反応容器(10)内の温度がH
2及びO
2の自己発火温度570℃に達することなく、放射線源(200)からの低エネルギー成分(赤外線)をより高くすることができる。反応容器(10)内の温度を下げるための1つ又は複数の冷却フィン(15)の使用は、反応容器(10)に対する受動的な冷却機能であることが理解されよう。図示されていないが、この実施形態では、1つ又は複数の冷却フィン(15)と窓(12)の外面に施された赤外線(IR)コーティングを組み合わせて、反応容器(10)内の温度をさらに下げるように作用させることができることが理解されよう。
【0118】
図示しない別の実施形態では、反応容器(10)は、ジャケット(図示せず)によって囲まれてもよく、ジャケットは、反応容器(10)を冷却するために冷却流体がジャケットを通って流れることを可能にするように、1つ又は複数の注入ポート及び1つ又は複数の対応する排出ポートを備える。このようにして、ジャケットは、反応容器(10)内の温度を能動的に下げるように作用する。上記の実施形態及び実施例と同様に、ジャケットは、反応容器(10)内の温度をH2及びO2の自己発火温度570℃以下に維持するのを補助する一方で、放射線源(200)からのより高い高エネルギー成分(可視光を含む成分)の使用を可能にする。冷却流体は、ジャケットの使用時に、反応容器(10)によって加熱され、1つ又は複数の排出ポートの下流に導かれ、続けて加熱流体副生成物(例えば、スターリングエンジン、エネルギー生成のために加熱流体を利用する他のプロセス、又は単にプラントによって必要とされる加熱流体として使用される)として使用することができる。このようにして、1つ又は複数の排出ポートの下流の加熱された冷却流体は、装置(100)の結果としての付加的な燃料として機能し得ることが理解されよう。
【0119】
図10によって最もよく示される代替実施形態では、窓(12)は反応容器(10)の下側に配置される。この配置では、放射線集光組立体(20)の少なくとも1つの光学素子(21)は、放射線を反応容器(10)の下側から窓(12)に向けるように構成されている。この実施形態では、反応容器(10)は、窓(12)の下側の位置によって画定され、同下側から向けられた放射線を受け入れる、倒立容器(10)又は上下反転容器(10)と見なすことができる。
図10に示すこの実施形態では、光触媒(11)は窓(12)に隣接しており、H
2O及びそこから光触媒分解された水素と酸素が、光触媒(11)によって窓(12)から物理的に離されるようになっている。この実施形態では、有利には、H
2O、水素、及び酸素は、窓(12)を介して光触媒(11)によって吸収される放射線を妨げない。したがって、この実施形態では、液体、蒸気又は気体の相は、光触媒(11)に向けられた放射線を反射/偏向/妨害/低減しない。この実施形態では、窓(12)の外面は反応容器(10)の下面にあり、赤外線(IR)反射コーティングとアップコンバージョンコーティング(19)の1つ又は複数でコーティングされていてもよい。
【0120】
上記実施形態において、反応容器(10)は、窓(12)と反応容器の本体との間に配置されたシール(22)をさらに含んでもよい。シール(22)は、反応容器(10)からのH2O、水素又は酸素の流出を防止するように特に設計されている。シール(22)は、Oリングシール、又はH2O、水素若しくは酸素の流出を防止することができる他の弾性シールであってもよい。シール(22)はまた、反応容器(10)内の温度(又は温度勾配)を封じ込める、又は維持する特性を含んでいてもよい。
【0121】
上記実施形態のいずれかで説明した装置(100)に加えて、放射線源(200)を使用してH2Oを光触媒分解するための例示的な方法は、以下のステップを含んでもよい:
a)上記実施形態のいずれか1つに記載の、反応容器(10)の注入口(13)と排出口(14)との間に配置された放射線吸収粒子を含む光触媒(11)を有する反応容器(10)の注入口(13)を通してH2Oを流すこと;
b)上記実施形態のいずれか1つの放射線集光組立体(20)を使用して、放射線源(200)からの高エネルギー(可視光を含むUV)成分と低エネルギー(少なくとも部分的に可視光を含むIR)成分とを含むスペクトルを含む放射線を集光し、集光された放射線を、反応容器(10)のH2Oの流路に垂直な方向に伸長する窓(12)に向けること;
c)放射線吸収粒子がスペクトルの高エネルギー(可視光を含む紫外線)成分を吸収してH2Oを光触媒分解し、且つスペクトルの低エネルギー(少なくとも部分的に可視光を含む赤外線)成分が反応容器(10)内のH2Oの温度を上昇させるように、集光した放射線にH2Oと光触媒(11)の両方を細長い窓(12)を通して曝すこと;
d)得られたH2及びO2を反応容器の排出口(14)を通して排出すること;及び
e)続いて、排出口(14)と流体連通しているセパレータ(60)で、排出されたH2をO2から分離し、H2とO2をそれぞれの貯蔵設備(50)に貯蔵すること。
【0122】
上記の方法において、理想的には、利用される放射線源(200)は太陽であり、放射線は太陽放射であり、スペクトルは可視光を含む紫外線と赤外線成分の両方を有する太陽スペクトルであることが理解されよう。また、この方法では、放射線集光組立体(20)は、使用時に、窓(12)によって受け入れられた反射スペクトルが太陽(又は1つの太陽)よりも大きな高エネルギー(可視光を含む紫外線)と低エネルギー(赤外線)の両方の成分を含むように、太陽からの太陽放射線を増幅する。上記の方法及び装置(100)の実施形態から、太陽スペクトルの高エネルギー(可視光を含むUV)成分及び低エネルギー(少なくとも部分的に可視光を含むIR)成分の両方を利用することによって、H2OをH2及びO2化学燃料に光触媒分解することによる、拡張可能、貯蔵可能で、再生可能なエネルギーソリューションが提供されることが理解されるであろう。開示された方法及び装置(100)の主な利点は、H2Oを光触媒分解してH2及びO2を生成する際に他の副生成物が発生しないことである。
【0123】
装置(100)又は方法の上記実施形態では、本開示は、放射線源(200)を使用してH2Oを光触媒分解し、水素及び酸素を連続的に生成することが理解されるであろう。すなわち、一般に「バッチ生産」方法である水素生成の既存の態様とは対照的に、本開示は、放射線源(200)が反応容器(10)の窓(12)に向けられて集光されることが可能であることを条件として、注入口(13)を通して反応容器(10)にH2Oを連続的に流し、続けて排出口(14)を通して得られたH2及びO2を排出することを可能にする。このようにして、本開示は、H2及びO2化学燃料を製造するための、拡張可能、貯蔵可能で、再生可能なエネルギーソリューションである装置(100)及び方法を提供する。
【0124】
本明細書における先行技術への言及は、そのような先行技術が一般的な一般知識の一部を形成していることを認めるものではなく、また、そのようなことを示唆するものでもない。
【0125】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されている用語「備える」及び「含む」並びにそれらの派生語(例えば、備える、備えている、含む、含んでいる)は、その用語が指す特徴を包含するものとみなされ、別段の記載又は暗示がない限り、追加の特徴の存在を排除することを意味するものではないことが理解されよう。
【0126】
場合によっては、簡潔性及び/又は本開示の範囲の理解を助けるために、単一の実施形態が複数の特徴を組み合わせていることがある。このような場合、これらの複数の特徴は、別々に(別々の実施形態で)提供されてもよいし、任意の他の適切な組み合わせで提供されてもよいことを理解されたい。代わりに、別個の特徴が別個の実施形態で記載されている場合、別段の記載又は暗示がない限り、これらの別個の特徴を単一の実施形態に組み合わせることができる。これは、任意の組み合わせで組み替え可能な特許請求の範囲にも適用される。すなわち、請求項は、他の請求項に定義された特徴を含むように補正することができる。さらに、項目のリストのうちの「少なくとも1つ」に言及する語句は、単一部材を含むそれらの項目の任意の組み合わせを指す。一例として、「a、b、又はcのうちの少なくとも一つ」は、a、b、c、a-b、a-c、b-c、及びa-b-cをカバーすることを意図している。
【0127】
本開示は、その使用において、記載された特定の用途又は適用に限定されないことが、当業者には理解されるであろう。また、本開示は、その好ましい実施形態において、本明細書に記載又は描写された特定の要素及び/又は特徴に関しても制限されない。本開示は、その実施形態又は説明された実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって規定されて定義される範囲から逸脱することなく、多数の構成変更、修正及び置換が可能であることが理解されるであろう。
【国際調査報告】