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特表2024-517595スマート配電コネクタを用いた航空機座席電力の電力管理
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】スマート配電コネクタを用いた航空機座席電力の電力管理
(51)【国際特許分類】
   B64D 11/06 20060101AFI20240416BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B64D11/06
H02J1/00 306K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562317
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 US2022023914
(87)【国際公開番号】W WO2022216987
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/171,685
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517077810
【氏名又は名称】アストロニクス アドバンスド エレクトロニック システムズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】パーシュリック デイビッド
【テーマコード(参考)】
5G165
【Fターム(参考)】
5G165BB04
5G165CA01
5G165EA06
5G165FA01
5G165GA04
5G165HA07
5G165JA09
5G165KA08
5G165LA02
(57)【要約】
航空機座席電力システムにおいて、スマート配電コネクタ(PDC)は、電源を複数の電力コンセントに接続する。各コンセントへの電力はPDCによって直接的に監視および制御され、続いて、PDCが電力源によって監視および制御される。電力源およびPDCは通信バスを共有しており、通信バスを介して、指示および応答が通信される。PDCは、指示を送信し、コンセントからの応答を監視し、そして、応答に反応することによって、コンセントと通信する能力を有する。システムによって、限られた電力供給からの電力管理ができる。PDCは電流制限を提供でき、より軽量でより小さいワイヤおよび他のコンポーネントの使用を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源システムであって、
DC電源に接続されるように構成され、少なくとも1つのコンセントにDC電力を供給し、次いで、前記少なくとも1つのコンセントが前記供給されたDC電力をDC負荷に供給可能になる、ように構成された、配電コネクタ(PDC)と、
前記PDCと前記少なくとも1つのDCコンセントとを接続するように構成された通信バスと、
を備える、電源システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電源システムであって、
前記PDCは、前記電源への通信リンクを介して、前記電力変換器からのコマンドによって、または航空機システム電力バスを介した航空機レベル電力コマンドによって、または別の制御入力によってもしくは電力支払いシステムから、変更され得る最大電力制限を設定されるように構成されている、電源システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電源システムであって、
前記PDCは、前記少なくとも1つのDCコンセントと通信し、前記DCコンセントを制御して前記DCコンセントの電力消費を低減し、前記少なくとも1つのDC負荷による電力消費が前記最大電力制限に達しているか、または超えているときに、新たな電力コントラクトを再ネゴシエートする、ように構成されたマイクロコントローラを備える、電源システム。
【請求項4】
請求項2に記載のシステムであって、
前記PDCはさらに、航空機上の座席グループにおける低電力DC負荷にDC電力を供給するように構成されており、前記低電力電子機器は、100W以下の電力を引き込んでいて、シートアクチュエータ、読書灯、機内エンターテイメントシステム、無線送信機/受信機、センサ、およびUSBコンセントを介して電力を引き込む機器からなる前記グループから選択される、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムであって、
前記DC電源は、航空機上の電力バスから電力を受けることが可能である、システム。
【請求項6】
請求項4に記載のシステムであって、
前記PDCは、航空機発電機から電力を受けることが可能である、システム。
【請求項7】
電力管理方法であって、
DC電源を提供する工程と、
前記DC電源と少なくとも1つのDC負荷との間に配置されたPDCを提供する工程であって、前記PDCは、バスを介して前記少なくとも1つのDC負荷に電気的にかつ通信可能に接続されている、工程と、
前記PDCに最大電力制限を予め設定する工程と、
前記少なくとも1つのDC負荷による前記電力消費が前記最大電力制限に達しているか、または超えているときに、前記少なくとも1つのDCコンセントの電力供給能力を制限するように、および、新たな電力コントラクトを再ネゴシエートするように、前記少なくとも1つのDCコンセントに指示する工程と、
を備える、電力管理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、さらに、
前記電源への通信リンクを介して、前記電力変換器からのコマンドによって、航空機システム電力バスを介した航空機レベル電力コマンドによって、または例えば電力支払いシステムからなどの別の制御入力によって、前記最大電力制限を変更する工程を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年4月7日に出願された米国仮出願第63/171,685号の優先権を主張するものであり、その全体を参照によって本明細書に援用する。
[開示の分野]
本開示は、航空機の座席に配置されたコンセントまたは他の負荷へ供給される電力を管理するのにスマート配電接続を用いるための、システムおよび方法に関する。
[開示の背景]
本開示の主題は、概して、航空機の乗客座席電力システムに関し、より具体的には、所望の全複合電力出力が、例えば28V航空機客室DC電力バスなどの航空機DC電力バス、または、例えば座席内電源(ISPS)、DC電源(DCPS)もしくは前述のDC28Vバスに電力を供給するDC電力変換器などの電力変換器、のいずれかの電力能力を超え得る電源システム、または、低電力の引き込みによって、より軽量、より小さなゲージのワイヤもしくはより小さなシステムコンポーネントの使用を可能にするであろう電源システム、に関する。通常、このような電源システムは、乗客座席に配置されたコンセントまたは他の負荷にDC電力を供給するが、AC電力も供給する実施形態が考えられる。本明細書で開示される主題は、デジタル通信能力を有するスマート配電コネクタ(PDC)を用いた電力管理を詳述している点において、先行する解決策とは異なる。
【0002】
現在、旅客機においては、DCPSは通常、多数のコンセントに接続されている負荷の種類に関する情報が限られているにもかかわらず、それら多数のコンセントへの最大定格電力をサポートしなければならない。本発明は、DCPSおよびPDCが、個々のコンセントに供給されている電力を制御することを可能にする。これにより、全ての取り付けられたコンセントの全定格電力の和がDCPSの定格電力よりも大きくなり得るシステムが可能になる。それはまた、コンセントから状態および異常情報を収集および報告する能力も提供する。
【0003】
電力制限環境内で様々な負荷の異なる電力要件を満たす必要性から、特定の課題が提起される。そういった課題は、電源装備のサイズ、重量およびコストを最小化することも望まれる、例えば航空機などのような環境において、特に喫緊となり得る。
【0004】
民間旅客機の客室の電力要件は、乗客の行動によって変化する。例えば、ラップトップを充電および使用していて外付けバッテリバックアップを充電しているビジネス渡航者は、100ワットの電力を消費し得る一方、機内エンターテイメント(IFE)システムで映画を鑑賞していてスマートフォンを充電している休暇渡航者は、数ワットの電力しか使用しないと思われる。従来のシステムにおいては、システム電力バスがすべての座席グループの負荷に動作電力を同時に供給できる十分な容量を有していない場合、特に、各座席のコンセントが、コンセントで利用可能な最大量の電力を消費し得ると想定される場合に、問題が生じる。
【0005】
本発明ではない以前の設計では、USBタイプCコンセントの再ネゴシエーションによって(例えば、Pablo Vadilloによる“USB Power Management and Load Distribution System”と題された米国特許第9,914,548号であり、その内容は参照によりその全体が本明細書に援用される)、または他の負荷との相対的な重要性を示す優先値を各DC負荷に割り当てることによって(例えば、Jeffrey Jouperによる“Multi-Mode Power Converter Power Supply System”と題された米国特許公開第2016/0072293号であり、その内容は参照によりその全体が本明細書に援用される)、コンセント電力を制御することができたし、あるいは、電力管理が座席内電源によって制御され得る、「先入れ後出し」の優先順位でのオン/オフ制御下にコンセント電力を置くことができた。
【0006】
ある実施形態において、本発明は、そのような先行設計に対する改良である。なぜなら本発明は、PDCを採用して(例えば読書灯、換気口、IFEシステム、および乗務員呼び出しボタンおよび照明などの)サブシステム間の電力共有を可能にし、より小さく、より軽量で且つより低コストの電力システムをもたらし得るためである。しかしながら、米国特許第9,914,548号および米国特許公開公報第2016/0072293号とは異なり、本発明のある実施形態では、電力管理回路は、PDCの一部であって、プログラム可能な電源に接続される必要がなく、PDCは、それが取り付けられた各コンセント、照明、IFE、または他の装備に供給される電力を、ゼロ値に低減し得る。本発明のある実施形態の別の利点は、PDCと電力源との間の通信無しに、PDCをDC電力バスまたは電力源に接続できることである。PDC自体は、その統合された電力管理回路によって、各コンセントまたは負荷を別の遠隔にある電力管理回路に接続する必要なく、多数のコンセントおよび他の負荷への電力供給を管理することが可能である。これにより、コンセントのより近傍にPDCを配置することが可能になり、それによってケーブルの総重量を低減できる。PDCを有する電力システムはまた、電力管理のない電力システムに対しても利点を有する。先行品よりも高い定格電力を特徴とするタイプCのUSBコンセント以前では、ほとんどの電力供給システムは、電力需要が大きくなりすぎた場合に客室全体のDC電力バスを遮断することになる集中型の電力制御しか採用していなかった。このような動作は、通常、「電力管理」というよりも「過負荷保護」と称される。集中型の電源制御の欠点は、取り付けられたすべての機器に最大電力を供給するようにシステムを大きくする必要があり、そうでなければ、客室全体の電力が遮断されるリスクがあるということである。したがって、このような集中型の電力制御システムは、乗客の使用のためのコンセントおよびエンターテイメントシステムを提供する民間機上での使用には不利だが、席および頭上照明にのみ電力を供給する特定の低価格航空会社では時折見られることがある。しかしながら、スマートPDCシステムは、航空機の主要発電機または航空機DC電力バスのサイズを大きくする必要なしに乗客座席にコンセントを追加する能力を、航空会社に与える。
【0007】
電力管理を支援するためにPDCを使用することで、1つのより大きな電力変換器がより多数のコンセントに電力を供給する「ウルトラライト」タイプのシステムの実装が可能になる。これは、その全てが民間旅客機において重要な特徴であるサイズ、重量、およびコストの削減という利点を有する。
【0008】
本開示の主題は、配電コンポーネントおよび配線のコストおよびサイズを低減しつつも、乗客の体験に著しい妥協を強いることなく、システムによって供給される全定格電力を低減することに向けられている。
[開示の概要]
航空機座席電力のための電力管理に対する従来のアプローチと共に上述の欠陥を克服および軽減するために、本開示は、限られた電力の供給から電力を管理および分配するシステムおよび方法を説明する。複数のUSBコンセントおよび他のDC負荷は、複数の相互接続機器(PDC)を介して、複数の電力ユニットに接続される。本開示は、利用可能な全電力を共有し且つシステムの状態と健全性を監視するための電源システムの設計、スマートPDCの機能、および通信プロトコルを用いた電力管理のための方法、の概要を説明する。
【0009】
本発明の例示的な実施形態は、複数のコンセントと1つのPDCとを含む。他の実施形態も、航空機システム電力バスに接続された1つのPDCを含んでもよい。このシステムもまた、座席グループに見られる、例えば、シート作動、照明、IFE、および他の機器などの他の低電力DC負荷を含んでもよい。本明細書で使用されるように、低電力DC負荷とは、100W以下の電力を引き込む負荷である。例えば、システム電力バスが、すべての座席グループの負荷に同時に動作電力を供給するには不十分な容量しか有していない場合、または、十分な容量を有しているものの、局所的な電流制限および制御を用いて、必要なワイヤのゲージを減少させるのが望ましく、また、達成可能である場合には、このような実施形態は有用であろう。
【0010】
電力要件が変化する複数の負荷がある環境においては、開示されたシステムおよび方法によって、その完全な能動状態要件を供給可能な個別の電源を各コンポーネントが持つ必要なく、効果的な電力管理が可能になる。したがって、システムの全体重量、サイズ、および複雑さが低減され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の特徴および利点は、添付の図を併用したときに、以下の、より詳細な説明を参照して、より十分に理解されるであろう。
図1】航空機客室座席電源システムの従来の実施形態のブロック図である。
図2】本開示による航空機客室座席電源システムのある実施形態のブロック図である。
図3図2の実施形態におけるPDCを図示している部分模式図である。
図4】航空機内における、変圧整流器を介したDC電力バスへのAC発電機の典型的な接続を示す概念ブロック図である。
図5】航空機内における、AC発電機から変圧整流器を介してDC電力バスに至る典型的な接続を示す模式図である。
図6】PDCのある実施形態の模式的なブロック図である。
図7】LINバスに接続されたPDCのある実施形態の回路の模式図である。 様々な図面における同様の参照番号および指定は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[詳細な説明]
ここで、添付の図面に図示されている本開示の例示的な実施形態の説明について詳細に言及する。本明細書に開示された具体的な詳細は、限定として解釈されるべきではなく、むしろ請求項の基礎として、また、あらゆる適切に詳述されたシステム、構造、または方法において本発明がどのように採用され得るかを当業者に教示するものとして、解釈されるべきものである。同一の参照番号は、図面全体を通して、同一または同様のコンポーネント、回路、または機能を参照するために使用されることになる。
【0013】
開示されているのは、電力を共有または遮断し、システムの状態を監視することが可能な電源システムである。
図1は、乗客座席のための従来の航空機電源のブロック図である。この従来の実施態様にみられるように、電源は、各電流制限回路2が単一のコンセントユニット(OU)3に接続された状態で、単一の座席グループへ電力を供給するように設計されているだけである。
【0014】
図2は、ゾーン電力のPDCシステム概念を図示しているブロック図であり、これにより、単一の電源がゾーン内の複数の座席グループに電力を供給するのに使用される。この実施形態では、電源からの電流が制限された28Vの各出力は、1つ以上のPDC60に電力を供給することができ、各PDC60は、座席グループ内の最大3基のコンセントユニット(OU)3に電力を分配する。図2に図示された具体的な実施形態は、少なくとも1つのPDC60に接続された電流制限回路2からの電流が制限された出力と、少なくとも2つのPDC60に接続された別の電流制限回路2からの電流が制限された別の出力とを示す。
【0015】
理解の助けとなる一例として、各コンセントが15W定格である100基のコンセントに順に接続される1つ以上のPDC60に接続された150Wを供給可能な電源の場合を考える。10基のコンセントがそれぞれ15Wの最大定格電力を引き込んでいる場合、1つ以上のPDCは、システムが150Wの制限を超えないように、未使用の残りの90基のコンセントを使用不能にし得る。または、30基のコンセントがそれぞれ5Wを引き込んでいる場合、1つ以上のPDCは、未使用の残りの70基のコンセントを使用不能にし得る。150Wの電力供給制限を有する実際のアプリケーションの一実施形態では、全ての乗客が自席のコンセントから少なくともいくらかの電力を確実に受けることができるように、2つのPDC60がそれぞれ3~4基のコンセントに接続され得る。
【0016】
図3は、航空機電源システム10のある実施形態の模式図である。この実施形態は、グループごとに3つの座席からなる複数の組を備えた、複数の座席グループの典型的な構成を例示している。
【0017】
ここで図3を参照すると、DCPS15は、航空機発電機(図4参照)または他の航空機電力バス(図5参照)である電力源から電力を受けている。
背景として、図4に描かれているように、通常、民間機は、固定された400Hzまたは可変周波数の出力のいずれかでAC115Vを生成する、2つのAC発電機(GEN1およびGEN2)を有する。大きな電気負荷を有するさらに大型の民間機上では、航空機全体にAC115Vを伝送して、必要に応じてAC電圧をDC電圧に変換することが有利となり得る。例えばビジネスジェット機などのさらに小型の航空機上では、変圧整流器(TR)を用いている発電機でAC電圧をDC28Vに変換し、客室全体に28Vを伝送することに利点がある。このDC28Vバスは、「航空機電力バス」または「航空機DC電力バス」(図4におけるDC1およびDC2)と称される。すべての民間機は、DC電力バスを有していて、少なくとも、そのバスは、バッテリを充電するために、またはコックピットのセクションに電力を供給するために、使用される。現在の航空機上では28Vバスが標準ではあるものの、ケーブルの重量を増やすことなく航空機上で必要とされる電力の増加を相殺するための努力の一環として、28VバスをDC48VまたはDC270Vにまで高めるための開発努力が、航空機製造業者によって行われている。本開示のこの主題は、より高い電圧の「航空機DC電力バス」を有する将来の航空機にも適用可能である。本明細書で使用されるように、「航空機電力バス」、「航空機DC電力バス」、および「航空機客室DC電力バス」という用語は、互いに交換可能である。
【0018】
より大型の航空機上では、客室電力バスは、電流を低減してケーブルサイズを低減するために高AC電圧を伝送する。上述したように、その高AC電圧は必要に応じて低DC電圧に変換される。そして、低DC電圧は、照明、コンセント、エンターテイメントシステム、および他の低電力装備に電力を供給するのに必要とされる。AC電圧からDC電圧への変換は「電力変換器」によって行われる。コンセントに電力を供給する場合、この「電力変換器」は、ISPS、DCPS、またはDC電力変換器と呼称されることが多い。ISPSまたはDCPSは、通常、乗客座席の下のボックス内に設置される。そのボックスは、400HzのAC115Vを28DC電圧に変換する電力変換器を収納する。より新しいDCPSは、以前のモデルよりも物理的な空間を取らず、乗客の足元の空間を阻害することなく乗客座席の下に収まる。
【0019】
図5は、ボーイング737における、AC発電機(GEN1およびGEN2)からDC電力バス(DC BUS 1およびDC BUS 2)の接続をより詳細に示している。AC発電機とDC電力バスとの間にあるのは、AC115Vを伝送するAC伝送バス(X FER BUS 1およびX FER BUS 2)、および、115Vを28Vに降圧し且つACをDCに変換する変圧整流器(TR1およびTR2)である。図5は、第3の変圧整流器TR No.3がTR No.2のバックアップとして設けられている例を示している。
【0020】
図3の実施形態に戻ると、DCPS15は、ローカル相互接続ネットワーク(LIN)バス20を介して、1クラスタあたり最大6つの座席ノードの最大6つのクラスタにDC28Vを供給するように、電力を変換および調整する。図に示すように、各座席ノードには、3基のコンボUSBタイプC/Aコンセント30、使用中ライト(IUL)40、および、例えば、シートアクチュエータ、無線送信機/受信機、照明、センサ、または他の電子機器などの補助負荷(「Aux Load」)50が設けられている。DCPS15と各座席ノードとの間に配置された中間機器であるスマートPDC60は、複数の電力コンセント30、IUL40および補助負荷50の間で電力を分配する。DCPS15から各PDC60への接続は、電力と通信とを含む。クラスタ、ノードおよびUSBコンセントの数がより多いまたはより少ない他の実施形態も考えられる。DCPSに接続され得るクラスタおよびノードの総数は、DCPSの電力能力、および通信バスによって課せられる(ノードまたは距離のどちらかにおける)任意の制限によってのみ制限される。
【0021】
電力は、DCPS15からPDC60に伝送され、PDC60は、データ能力のある各負荷に電力と通信とを分配し、必要に応じてIULのステータスを提供する。一実施形態では、各PDC60は、最大3つの60W USB OUユニット30、1つの84W、28Vの補助負荷50、および1つのIUL40に、電力を供給することができる。PDC60内のマイクロコントローラ65は、電源システムの機能を監督し、通信バス20を介して様々なコンポーネントと通信する。図6および図7を参照されたい。好ましくは、マイクロコントローラ65はまた、電力使用量、電力要求、電力供給、システムステータス、システム健全性、を監視し、航空機情報システムへの通信のためにコンセント30、システム負荷またはDCPS15のいずれかへ必要に応じて送信される信号を生成する。
【0022】
図6は、マイクロコントローラ65を組み込んだPDC60のある実施形態を示す。この実施形態では、PDC60は、1つのIUL40、3つのOU30および1つのAUX負荷50に接続するように構成されている。マイクロコントローラ65は、メモリを有し、例えば最大電力制限または電力優先レベルの1つ以上のOU30への割り当てなどのために、ユーザにより構成され得るソフトウェアを実行する。
【0023】
図7は、PDC60のある実施形態の回路図であり、各出力チャネルへの通信リンクを示している。この実施形態では、PDC60は、通信バス、より具体的にはLINバス20と調和するように構成されている。
【0024】
PDC60は、一部または全ての負荷、さらには、本実施形態ではDCPS15である電力変換器と、接続されていて、且つ、任意には、バス20を介してこれらと通信する。(図3および図7の実施形態においてLINバスとして示されている)通信接続20は、コンセントと他のスマート機器とを管理し、且つ、それらに関する情報を通信する能力を提供する。PDC電力管理機能は、システムステータスを報告すること、または、電力変換器からもしくは航空機レベル電力コマンドから送信された命令を実行すること、を含み得る。各OU30は、バス20を介して、PDC60へ各々のステータスを返信する。タイプC USB規格で規定されているように、タイプCコンセントに接続された機器の情報を送信する能力もある。通信バス20は、データが破損していないことを確実にするためのエラーチェック能力も有する。
【0025】
各PDC60は最大電力制限を予め設定されており、PDC全出力電力がその最大制限に達している場合か、または超えている場合でさえも、PDCのマイクロコントローラ65は、スマートコンセント30と通信して、スマートコンセント30に、それらの電力供給能力を制限、つまり低減または遮断するように指示し、且つ必要に応じて新たな電力コントラクトを再ネゴシエートするように指示することになる。「電力コントラクト」とは、USBパワーデリバリ(PD)の機能を説明するためにUSB標準規格で用いられる用語である。この用語は、USBタイプCのコンセントおよび機器に特有であって、電力源と電力受信側との間でネゴシエートされた電圧および電流のことを単に指している。USB PDでは、電力源は機器へ能力(電圧および電流)のリストを送信し、機器は、当該機器が引き込もうとする最大電流と共に、当該機器が使用したい選択された能力を応答する。電力源は、確認して、機器へOKを送る。この能力の合意が「電力コントラクト」と称される。
【0026】
一実施形態では、PDC60は、電力分配のための「先入れ後出し」デフォルト優先順位設定で構成されてもよいが、例外的に、AUX負荷50に最優先順位が割り当てられる。PDC60内のマイクロコントローラ65上で実行されているソフトウェアは、例えば、窓側の座席に最も低い優先順位を割り当てて、その窓側の座席に供給される電力を最初に制限するなど、特定の航空機のニーズに従って変更され得る。他の実施形態は、頻繁な利用者に、またはより高い電力のために追加料金を支払っている乗客に、より高い電力制限を設定することを考慮する。
【0027】
航空機電力システム要件に基づき、前述した最大電力制限は、電源への通信リンクを介して、電力変換器からのコマンド、(航空機DCシステム電力バスを介しての航空機レベル電力コマンド、または例えば電力支払いシステムからなどの別の制御入力によって、外部から設定、制御、変更、またはオーバーライドされ得る。どの負荷が電力制限されるべきか決定および変更し、および特定の負荷に優先順位を割り当てるこの能力は、PDCシステムの利点の1つである。
【0028】
マイクロコントローラを様々なコンポーネントと接続している通信バス20の構造に関しては、負荷状態に対して十分な反応ができるあらゆる通信バス構造が採用され得ることを理解すべきである。そのようなバス構造は、制限なしに、LIN、CANバス、イーサネット、RS-485、またはシリアル通信を含む他の通信形態を採用してもよい。通信バス20を通じて、様々な種類の情報が交換されてもよい。例えば、コンポーネントは、それらの電力もしくは電圧の要件、異常状態、または現在の動作状態を示し得る。
【0029】
一実施形態では、USBタイプC/Aコンセント30は、スマートコンセントであり、スマートコンセントは、例えば、ラップトップや携帯電話などの携帯電子機器(PED)での使用のために、航空機客室内のユーザに電力を供給するための、消費者向け電気コンセントである。
【0030】
他の実施形態は、これらのコンポーネントに関して異なるアーキテクチャを採用してもよい。例えば、ある代替的な実施形態では、PDC60は、DC航空機発電機への接続を通じて、直接的に電力を受けてもよい。
【0031】
さらに他の代替的な実施形態では、PDCは、離着陸中のコンセントの遮断または電力支払いシステム上で電力を制限する方法などといった理由で、コンセントを制御するのに使用されてもよい。
【0032】
開示された主題は、その実施形態に関して説明され、図示されたが、本発明の範囲内で追加の実施形態を生成するために、開示された実施形態の特徴が組み合わせられたり再構成されたりなどされ得ること、および、本発明の精神および範囲から離れることなく、本発明内および本発明に対して様々な他の変更、省略、および追加がなされ得ることが当業者によって理解されるはずである。例えば、記載された実施形態は、航空機および特定の負荷の種類に関しているものの、他の環境設定において他の数および種類の負荷を有する様々な実施形態が本開示の範囲内であることは理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】