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特表2024-517613エネルギー貯蔵デバイスの電極材料としてのグラフェンナノリボン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵デバイスの電極材料としてのグラフェンナノリボン
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20240416BHJP
   C01B 32/194 20170101ALI20240416BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240416BHJP
   H01M 4/52 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240416BHJP
   H01G 11/36 20130101ALI20240416BHJP
   H01G 11/46 20130101ALI20240416BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240416BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
C01B32/194
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/131
H01M4/133
H01M4/136
H01M4/134
H01M10/0565
H01M10/0562
H01M4/587
H01M4/485
H01M4/38 Z
H01M4/52
H01M4/58
H01M4/13
H01G11/36
H01G11/46
H01M10/052
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562974
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 US2022024650
(87)【国際公開番号】W WO2022221427
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】63/174,154
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517127045
【氏名又は名称】インサーマ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】NTHERMA CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】ヌウェン, カティエン, ブイ.
【テーマコード(参考)】
4G146
5E078
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB06
4G146AB07
4G146AC01A
4G146AC16B
4G146AC27A
4G146AC27B
4G146AD23
4G146BA01
4G146CB10
5E078AA03
5E078AA14
5E078AB02
5E078AB03
5E078BA15
5E078BA27
5H029AJ06
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM14
5H029AM16
5H029BJ12
5H029DJ06
5H029DJ15
5H029EJ04
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ05
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA09
5H050DA10
5H050EA08
5H050FA02
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
(57)【要約】
本明細書では、均一な長さ及び90%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む電極が提供される。本明細書では、電極が、均一な長さ及び90%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む、エネルギー貯蔵デバイスも提供される。エネルギー貯蔵デバイスは、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池又はウルトラキャパシタであり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
均一な長さ及び約90%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む電極。
【請求項2】
前記グラフェンナノリボンは、約95%を超える純度である、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記グラフェンナノリボンは、約98%を超える純度である、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記グラフェンナノリボンは、約99.5%を超える純度である、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
前記グラフェンナノリボンは、約99.9%を超える純度である、請求項1に記載の電極。
【請求項6】
前記グラフェンナノリボンの前記長さは、約20μMである、請求項1~5のいずれか一項に記載の電極。
【請求項7】
前記グラフェンナノリボンの前記長さは、約50μMである、請求項1~5のいずれか一項に記載の電極。
【請求項8】
前記グラフェンナノリボンの前記長さは、約100μMである、請求項1~5のいずれか一項に記載の電極。
【請求項9】
前記グラフェンナノリボンの前記長さは、約200μMである、請求項1~5のいずれか一項に記載の電極。
【請求項10】
カソード活物質をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の電極。
【請求項11】
前記カソード活物質は、コバルト酸リチウム、ニッケルマンガンコバルト、ニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム又はFe2Sである、請求項10に記載の電極。
【請求項12】
アノード活物質をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の電極。
【請求項13】
前記アノード活物質は、グラファイト、チタン酸リチウム、スズ/コバルト合金、シリコン又は固体リチウムである、請求項12に記載の電極。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか一項に記載の1つ又は2つの電極を含む電気化学セル。
【請求項15】
電極の数は、1つであり、及び前記電極は、アノードである、請求項14に記載の電気化学セル。
【請求項16】
電極の数は、1つであり、及び前記電極は、カソードである、請求項14に記載の電気化学セル。
【請求項17】
電極の数は、2つであり、及び1つの電極は、アノードであり、且つ第2の電極は、カソードである、請求項14に記載の電気化学セル。
【請求項18】
前記アノードは、アノード活物質をさらに含む、請求項15に記載の電気化学セル。
【請求項19】
前記カソードは、カソード活物質をさらに含む、請求項16に記載の電気化学セル。
【請求項20】
前記アノードは、アノード活物質をさらに含み、及び前記カソードは、カソード活物質をさらに含む、請求項17に記載の電気化学セル。
【請求項21】
カソード活物質は、コバルト酸リチウム、ニッケルマンガンコバルト、ニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム又はFe2Sであり、及びアノード活物質は、グラファイト、チタン酸リチウム、スズ/コバルト合金、シリコン又は固体リチウムである、請求項17に記載の電気化学セル。
【請求項22】
請求項1~9のいずれか一項に記載の1つ又は2つの電極と、
アノードとカソードとの間に配設された液体電解質と、
前記カソードと前記アノードとの間のセパレータと
を含む外装体を含むリチウムイオン電池。
【請求項23】
請求項1~9のいずれか一項に記載の1つ又は2つの電極と、
アノードとカソードとの間に配設されたポリマー電解質と、
微多孔質セパレータと
を含む外装体を含むリチウムイオンポリマー電池。
【請求項24】
前記ポリマー電解質は、ゲル化ポリマー電解質である、請求項23に記載のリチウムイオンポリマー電池。
【請求項25】
前記ポリマー電解質は、固体ポリマー電解質である、請求項23に記載のリチウムイオンポリマー電池。
【請求項26】
請求項1~9のいずれか一項に記載の1つ又は2つの電極と、
アノード層とカソード層との間に配設された固体電解質層と
を含む外装体を含む全固体電池。
【請求項27】
2つの集電体に取り付けられた電源であって、前記集電体の少なくとも1つは、請求項1~9のいずれか一項に記載の1つ又は2つの電極と接触している、電源と、
前記電極間に配設された液体電解質と、
前記電源電極間のセパレータと
を含むウルトラキャパシタ。
【請求項28】
擬似キャパシタである、請求項27に記載のウルトラキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、均一な長さ及び90%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む電極が提供される。本明細書では、電極が、均一な長さ及び90%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む、エネルギー貯蔵デバイスも提供される。エネルギー貯蔵デバイスは、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池又はウルトラキャパシタであり得る。
【背景技術】
【0002】
例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池及びウルトラキャパシタなどのエネルギー貯蔵デバイスは、例えば、コンピュータ、電気自動車、携帯電話などの多くの現代の電気製品のための電源である。上記のエネルギー貯蔵デバイスは、通常、1つ又は複数の電極を含む。
【0003】
グラフェンナノリボン(GNR)は、よく知られている炭素同素体黒鉛質炭素の単層又はいくつかの層であり、エネルギー貯蔵デバイスに有用であり得る非常に優れた電気的及び物理的特性を有する。GNRは、構造上、アスペクト比が高く、長さが幅又は厚さよりもはるかに長い。
【0004】
従来の研究により、GNRを含む電極を有するエネルギー貯蔵デバイスが、従来の電極のみを含むエネルギー貯蔵デバイスに比べて優れた性能を提供することが実証されている。しかし、GNRを含む電極を有するエネルギー貯蔵デバイスは、高価であり、GNRは、長さ及び純度が不十分である。
【0005】
GNRは、通常、化学的解凍によってカーボンナノチューブ(CNT)から調製され、GNRの品質は、CNT出発材料の純度に依存する。最近、良好な収率及び高純度でCNTをGNRに変換する方法が開発された(Hirsch,Angew Chem.Int.Ed.2009,48,2694)。しかし、これらのCNTから生成されるGNRの純度及び均一性は、CNTの製造方法によって決定される。
【0006】
現在のCNT製造方法は、通常、例えば金属触媒及び無定形炭素など、かなりの不純物を含むCNTを製造する。通常、大量の金属触媒及びアモルファス炭素で汚染されていない材料を提供するには、CNT合成後に精製ステップが必要とされる。CNT精製ステップは、大規模で高価な化学プラントを必要とし、90%を超える純度のCNTを大量生産するには、非常にコストがかかる。さらに、現在のCNT製造方法は、構造均一性が低いCNT(すなわち不均一な長さのCNT)を生成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、必要とされているのは、安価に製造され、均一な長さ及び高純度のエネルギー貯蔵デバイスに使用するための高純度及び均一な長さのGNRを含む電極である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これら及び他の必要性は、一態様において、均一な長さ及び90%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む電極を提供することによって満たされる。
【0009】
別の態様では、均一な長さ及び90%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む1つ又は2つの電極を組み込む電気化学セルが提供される。
【0010】
さらに別の態様では、リチウムイオン電池が提供される。リチウムイオン電池は、均一な長さ及び90%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む1つ又は2つの電極と、アノードとカソードとの間に配設された液体電解質と、カソードとアノードとの間のセパレータとを含む外装体を有する。
【0011】
さらに別の態様では、リチウムイオンポリマー電池が提供される。リチウムイオンポリマー電池は、均一な長さ及び90%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む1つ又は2つの電極と、アノードとカソードとの間に配設されたポリマー電解質と、カソードとアノードとの間のセパレータとを含むハウジングを有する。
【0012】
さらに別の態様では、リチウムイオンポリマー電池が提供される。リチウムイオンポリマー電池は、均一な長さ及び90%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む1つ又は2つの電極と、アノードとカソードとの間に配設されたポリマー電解質と、カソードとアノードとの間のセパレータとを含む外装体を有する。
【0013】
さらに別の態様では、全固体電池が提供される。全固体電池は、均一な長さ及び90%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む1つ又は2つの電極と、アノードとカソードとの間に配設された固体電解質とを含む外装体を有する。
【0014】
さらに別の態様では、ウルトラキャパシタが提供される。ウルトラキャパシタは、均一な長さ及び90%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む1つ又は2つの電極と接触する2つの集電体と、電極間に配設された液体電解質と、電流電極間のセパレータとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】基質に触媒を堆積するステップと、基質にカーボンナノチューブを形成するステップと、基質からカーボンナノチューブを分離するステップと、高い純度及び構造均一性のカーボンナノチューブを収集するステップとを含む、カーボンナノチューブの合成に関する例示的なフローチャートである。
【0016】
図2】基質にカーボンナノチューブを形成するステップと、基質からカーボンナノチューブを分離するステップと、高い純度及び構造均一性のカーボンナノチューブを収集するステップとを含む、カーボンナノチューブの合成に関する例示的なフローチャートである。
【0017】
図3】常に移動する基質に触媒を連続的に堆積させるステップと、移動する基質にCNTを形成するステップと、移動する基質からCNTを分離するステップと、高い純度及び構造均一性のカーボンナノチューブを収集するステップとを含む、カーボンナノチューブの連続合成に関する例示的なフローチャートである。
【0018】
図4】金属基質を含む移動する基質にCNTを形成するステップと、移動する基質からCNTを分離するステップと、高い純度及び構造均一性のカーボンナノチューブを収集するステップとを含む、カーボンナノチューブの連続合成に関する例示的なフローチャートである。
【0019】
図5】複数のモジュールを通して基質を前進させるための輸送モジュール、触媒モジュール、ナノチューブ合成モジュール、分離モジュール及び収集モジュールなど、順次配設された様々なモジュールを含む、カーボンナノチューブの連続合成のためのデバイスを概略的に示す。
【0020】
図6】複数のモジュールを通して基質を前進させるための輸送モジュール、触媒モジュール、ナノチューブ合成モジュール、分離モジュール及び収集モジュールなど、順次配設された様々なモジュールを含む、カーボンナノチューブの連続合成のための基質の閉ループ供給を伴うデバイスを概略的に示す。
【0021】
図7】例示的な分離モジュールを概略的に示す。
【0022】
図8】ナノチューブ合成モジュールで使用することができる、複数の基質を含む長方形の石英チャンバの概略的な水平図である。
【0023】
図9】ナノチューブ合成モジュールで使用することができる、複数の基質を含む長方形の石英チャンバの斜視図である。
【0024】
図10】本明細書で述べる方法及び装置によって製造されたMWCNTについて、99.4%を超える純度を示すTGAの結果を示す。
【0025】
図11】本明細書で述べる方法及び装置によって製造されたMWCNTが工業グレードの試料に比べて高い結晶性であることを示すラマンスペクトルを示す。
【0026】
図12】本明細書で述べた方法によって製造されたグラフェンナノリボンが工業用グレードの試料に比べて高い結晶性であることを示すラマンスペクトルを示す。
【0027】
図13】本明細書で述べる方法によって製造されたグラフェンナノリボンについて、99%を超える純度を示すTGAの結果を示す。
【0028】
図14】本明細書で述べる手順によって作製されたGNRのSEM画像を示す。
【0029】
図15】電気化学セルを示す。
【0030】
図16】全固体電池を示す。
【0031】
図17】ウルトラキャパシタを示す。
【0032】
図18】標準的な流動床反応器によって作製されたCNTのSEM画像を示す。
【0033】
図19A】本明細書で述べる手順によって作製されたCNTのSEM画像を示す。
【0034】
図19B】本明細書で述べる手順によって作製されたCNTのSEM画像を示す。
【0035】
図20】Si粒子(20%)とグラファイトアノードとのスラリのSEM画像を示す。
【0036】
図21】ニッケルマンガンコバルト粒子と、0.5%のGNR及びグラファイトアノードとのスラリのSEM画像を示す。
【0037】
図22】ニッケルマンガンコバルト粒子と、1.0%のGNR及びグラファイトアノードとのスラリのSEM画像を示す。
【0038】
図23】異なる導電性添加剤を含む20%のSi-グラファイト電極層のシート抵抗を示す。
【0039】
図24】0.5%のGNRを含む20%のSi-グラファイトの電極層のSEM画像を示す。
【0040】
図25】電極がGNRを含むときの、異なる電極層の厚さにおけるキャパシタンスの結果を示す。
【0041】
図26】電極がGNRを含まないときの、異なる電極層の厚さにおけるキャパシタンスの結果を示す。
【0042】
図27】GNRの添加がある場合及びない場合のキャパシタンスと層厚さとの関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で用語に複数の定義がある場合、特に明記しない限り、このセクションの定義が優先される。
【0044】
本明細書で使用するとき、「カーボンナノチューブ」とは、円筒状構造を有する炭素の同素体を表す。カーボンナノチューブは、C5及び/又はC7環構造を含むなどの欠陥を有することがあり、それにより、カーボンナノチューブは、直線ではなく、コイル状の構造を含むことがあり、C-C結合配列中にランダムに分布された欠陥部位を含むことがある。カーボンナノチューブは、1つ又は複数の同心円筒形の層を含むことがある。本明細書で使用される用語「カーボンナノチューブ」は、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブを、精製された形態において単独で又はそれらの混合物として含む。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは、多層である。他の実施形態では、カーボンナノチューブは、単層である。さらに他の実施形態では、カーボンナノチューブは、二層である。さらに他の実施形態では、カーボンナノチューブは、単層ナノチューブと多層ナノチューブとの混合物である。さらに他の実施形態では、カーボンナノチューブは、単層ナノチューブと二層ナノチューブとの混合物である。さらに他の実施形態では、カーボンナノチューブは、二層ナノチューブと多層ナノチューブとの混合物である。さらに他の実施形態では、カーボンナノチューブは、単層ナノチューブ、二層ナノチューブ及び多層ナノチューブの混合物である。
【0045】
本明細書で使用するとき、「多層カーボンナノチューブ」とは、グラファイトのように層間距離を有して同心状に入れ子になった複数のグラフェンシートから構成されたカーボンナノチューブを表す。
【0046】
本明細書で使用するとき、「二層カーボンナノチューブ」とは、同心状に入れ子になった2つのグラフェンシートを有するカーボンナノチューブを表す。
【0047】
本明細書で使用するとき、「単層カーボンナノチューブ」とは、単一の円筒状グラフェン層を有するカーボンナノチューブを表す。
【0048】
本明細書で使用するとき、「垂直に整列されたカーボンナノチューブ」とは、カーボンナノチューブの構造が物理的に基質に垂直に整列されている、基質に堆積されたカーボンナノチューブのアレイを表す。
【0049】
本明細書で使用するとき、「触媒」又は「金属触媒」とは、炭化水素ガスの分解に使用され、化学気相成長プロセスによるカーボンナノチューブの形成を支援するFe、Ni、Co、Cu、Ag、Pt、Pd、Auなどの金属又は金属の組合せを表す。
【0050】
本明細書で使用するとき、「化学気相成長」とは、プラズマ化学気相成長、熱化学気相成長、アルコール触媒CVD、気相成長、エアロゲルCVD及びレーザCVDを表す。
【0051】
本明細書で使用するとき、「プラズマ化学気相成長」とは、炭化水素ガス混合物を、表面にカーボンナノチューブを堆積する励起種に変換するためのプラズマ(例えば、グロー放電)の使用を表す。
【0052】
本明細書で使用するとき、「熱化学気相成長」とは、表面にカーボンナノチューブを堆積するために使用され得る触媒の存在下での炭化水素蒸気の熱分解を表す。
【0053】
本明細書で使用するとき、「物理気相成長」とは、気化された所望のフィルム材料をフィルム材料上に凝縮させることによって薄膜を堆積するために使用される真空蒸着法を表し、真空アーク蒸着、電子ビーム蒸着、蒸着堆積、パルスレーザ蒸着及びスパッタ蒸着などの技法を含む。
【0054】
本明細書で使用するとき、「カーボンナノチューブの形成」とは、反応チャンバ内で基質にカーボンナノチューブを形成するための、本明細書で述べる化学及び物理気相成長法を含む任意の気相成長プロセスを表す。
【0055】
本明細書で使用するとき、「ウルトラキャパシタ」は、電気化学キャパシタ、電気二重層キャパシタ及びスーパーキャパシタを含む。
【0056】
カーボンナノチューブは、優れた電流容量、高い熱伝導率、良好な機械的強度及び大きい表面積などの非常に優れた物理的特性を備えた比較的新しい材料であり、これらの特性は、多くの用途で有利である。カーボンナノチューブの熱伝導率は、ダイヤモンドより低いが、3000W/mKの高い値を有する非常に優れた熱伝導率を有する。カーボンナノチューブは、機械的に強く、雰囲気条件下で400℃よりも高い温度で熱的に安定しており、特に垂直に整列されたときに可逆の機械的柔軟性を有する。したがって、カーボンナノチューブは、この固有の柔軟性により、様々な表面形態に機械的に適合することができる。さらに、カーボンナノチューブは、低い熱膨張率を有し、高温下の限られた条件下でも柔軟性を維持する。
【0057】
実用的であり、単純な統合及び/又はパッケージングを伴って制御された方法でカーボンナノチューブを経済的に提供することは、多くのカーボンナノチューブ技術を実現するために不可欠である。非常に優れた純度及び均一な長さのカーボンナノチューブを大量に提供するデバイス及び方法が本明細書で提供される。本明細書で合成されるCNTは、コストのかかる合成後の精製を必要としない。
【0058】
簡単に述べると、この方法の全般的な特徴は、以下のとおりである。まず、基質が高温で加熱される。次いで、高温で基質の表面に触媒がコーティングされて、触媒のナノ粒子を基質上に提供し、これらのナノ粒子は、CNT合成のための開始剤として機能する。CNTは、触媒に炭素源を供給することによって合成される。したがって、炭素源とキャリアガスとの混合物は、触媒でコーティングされた加熱された基質を含むチャンバに流入され、CNTが付着した基質を提供する。最後に、合成されたCNTが基質から抽出されて収集される。任意で、触媒でコーティングされた基質が再生される。
【0059】
いくつかの実施形態では、触媒は、スパッタリング、蒸着、浸漬コーティング、プリントスクリーニング、エレクトロスプレー、スプレー熱分解又はインクジェット印刷によって基質に堆積される。次いで、触媒を化学的にエッチングするか又は熱アニーリングして、触媒粒子の核生成を誘導することができる。触媒の選択は、多層CNTよりも単層CNTの優先的な成長をもたらすことができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、触媒は、基質を触媒の溶液に浸漬することによって基質に堆積される。他の実施形態では、水性溶媒又は有機水溶媒中の触媒溶液の濃度は、約0.01%~約20%である。さらに他の実施形態では、水性溶媒又は有機水溶媒中の触媒溶液の濃度は、約0.1%~約10%である。さらに他の実施形態では、水性溶媒又は有機水溶媒中の触媒溶液の濃度は、約1%~約5%である。
【0061】
CNTが形成されるチャンバの温度は、基質の溶融温度よりも低く、炭素源の分解温度よりも低く、且つ触媒原材料の分解温度よりも高い温度にすべきである。多層カーボンナノチューブを成長させるための温度範囲は、約600℃~約900℃であり、単層CNTを成長させるための温度範囲は、約700℃~約1100℃である。
【0062】
いくつかの実施形態では、CNTは、成長のための金属触媒を含む基質に化学気相成長によって形成される。常に移動する基質への連続的なCNT形成により、CNTが均一の長さを有することに留意することが重要である。典型的な原料としては、限定されないが、一酸化炭素、アセチレン、アルコール、エチレン、メタン、ベンゼンなどが挙げられる。キャリアガスは、例えば、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガスであり、水素が典型的な還元ガスである。ガス混合物の組成及び基質露出の持続時間により、合成されるCNTの長さが調整される。例えば、上述した物理気相成長法、Nikolaev et al.,Chemical Physics Letter,1999,105,10249-10256の方法及び噴霧スプレー熱分解(Rao et al.,Chem.Eng.Sci.59,466,2004)の方法など、当業者に知られている他の方法を、本明細書で述べる方法及びデバイスに使用することもできる。当業者によく知られている条件を使用して、上記の方法の任意のものを使用してカーボンナノチューブを調製することができる。
【0063】
ここで、図1を参照すると、カーボンナノチューブを合成するための方法が提供される。この方法は、図1に示されるように、個別のステップで実施され得る。必要に応じて、ステップの任意の組合せを連続的にも実施できることが当業者に理解されるであろう。102では、基質に触媒が堆積され、104では、基質にカーボンナノチューブが形成され、106では、基質からカーボンナノチューブが分離され、108では、カーボンナノチューブが収集される。
【0064】
ここで、図2を参照すると、カーボンナノチューブを合成するための別の方法が提供される。この方法は、図2に示されるように、個別のステップで実施され得る。必要に応じて、ステップの任意の組合せを連続的にも実施できることが当業者に理解されるであろう。202では、すでに触媒を含む基質にカーボンナノチューブが形成され、204では、基質からカーボンナノチューブが分離され、206では、カーボンナノチューブが収集される。
【0065】
ここで、図3を参照すると、カーボンナノチューブを合成するための別の方法が提供される。この方法は、連続的に実施される。302では、移動する基質に触媒が連続的に堆積され、304では、移動する基質にカーボンナノチューブが連続的に形成され、306では、基質からカーボンナノチューブが連続的に分離され、308では、カーボンナノチューブが連続的に収集される。基質は、本明細書で述べるステップを1回又は任意で多数回、例えば50回よりも多く、1000回よりも多く又は100000回よりも多くサイクルされ得る。
【0066】
ここで、図4を参照すると、カーボンナノチューブを合成するための別の方法が提供される。この方法は、図示されているように連続的に実施される。402では、すでに触媒を含む移動する基質にカーボンナノチューブが連続的に形成され、404では、基質からカーボンナノチューブが連続的に分離され、406では、カーボンナノチューブが連続的に収集される。いくつかの実施形態では、基質は、堆積、形成及び分離のステップを通して、50回よりも多く、1000回よりも多く又は100000回よりも多くサイクルされる。
【0067】
移動する基質へのCNTの堆積は、高純度であり、且つ高い長さ均一性のCNTを提供する。さらに、プロセス条件を制御することにより、CNTの長さの調整が可能になる。例えば、移動する基質の速度が製造プロセスにわたって変化すると、CNTの長さが変わる。CNT堆積モジュールを通る速度が速いほど短いCNTが生成され、速度が遅いほど長いCNTが生成される。
【0068】
いくつかの実施形態では、基質は、金属箔によって完全に覆われる。これらの実施形態では、基質は、触媒堆積及びCNT合成の条件に対して安定な任意の材料であり得る。多くのそのような材料が当業者に知られており、例えば炭素繊維、炭素箔、シリコン、石英などが挙げられる。他の実施形態では、基質は、金属箔であり、本明細書で述べる方法の様々なステップを通して連続的に前進させることができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、金属箔の厚さは、10μMよりも大きい。他の実施形態では、金属箔の厚さは、約10μM~約500μMである。さらに他の実施形態では、金属箔の厚さは、約500μM~約2000μMである。さらに他の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.05μm~約100cmである。他の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.05μm~約100cmである。他の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.05mm~約5mmである。さらに他の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.1mm~約2.5mmである。さらに他の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.5mm~約1.5mmである。さらに他の実施形態では、金属箔の厚さは、約1mm~約5mmである。さらに他の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.05mm~約1mmである。さらに他の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.05mm~約0.5mmである。さらに他の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.5mm~約1mmである。さらに他の実施形態では、金属箔の厚さは、約1mm~約2.5mmである。さらに他の実施形態では、金属箔の厚さは、約2.5mm~約5mmである。さらに他の実施形態では、金属箔の厚さは、約100μM~約5mmである。さらに他の実施形態では、金属箔の厚さは、約10μM~約5mmである。さらに他の実施形態では、金属箔の厚さは、100μMよりも大きい。さらに他の実施形態では、金属箔の厚さは、100μM未満である。
【0070】
いくつかの実施形態では、金属箔は、鉄、ニッケル、アルミニウム、コバルト、銅、クロム、金、銀、白金、パラジウム又はそれらの組合せを含む。他の実施形態では、金属箔は、鉄、ニッケル、コバルト、銅、金又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、金属箔は、例えば、フェロセン、コバルトセン又はニッケロセンなどのオルガノメタロセンでコーティングされ得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、金属箔は、鉄、ニッケル、コバルト、銅、クロム、アルミニウム、金又はそれらの組合せの2つ以上の合金である。他の実施形態では、金属箔は、鉄、ニッケル、コバルト、銅、金又はそれらの組合せの2つ以上の合金である。
【0072】
いくつかの実施形態では、金属箔は、高温金属合金である。他の実施形態では、金属箔は、ステンレス鋼である。さらに他の実施形態では、金属箔は、カーボンナノチューブを成長させるための触媒が堆積される高温金属合金である。さらに他の実施形態では、金属箔は、カーボンナノチューブを成長させるための触媒が堆積されるステンレス鋼である。
【0073】
いくつかの実施形態では、金属箔は、400℃を超える温度で熱的に安定な金属又は金属の組合せである。他の実施形態では、金属箔は、500℃を超える、600℃を超える、700℃を超える又は1000℃を超える温度で熱的に安定な金属又は金属の組合せである。上記の実施形態のいくつかでは、金属の組合せは、ステンレス鋼である。
【0074】
いくつかの実施形態では、金属箔は、約100μM未満の厚さと、約250nm未満の表面二乗平均平方根粗さとを有する。いくつかの実施形態では、金属箔は、約100μMを超える厚さと、約250nm未満の表面二乗平均平方根粗さとを有する。さらに他の実施形態では、金属箔は、約100μM未満の厚さと、約250nm未満の表面二乗平均平方根粗さとを有し、鉄、ニッケル、コバルト、銅、金又はそれらの組合せを含む。さらに他の実施形態では、金属箔は、約100μMを超える厚さと、約250nm未満の表面二乗平均平方根粗さとを有し、鉄、ニッケル、コバルト、銅、金又はそれらの組合せを含む。さらに他の実施形態では、金属箔は、約100μM未満の厚さと、約250nm未満の表面二乗平均平方根粗さとを有し、触媒被膜を含む。さらに他の実施形態では、金属箔は、約100μMを超える厚さと、約250nm未満の表面二乗平均平方根粗さとを有し、触媒被膜を含む。上記の実施形態のいくつかでは、二乗平均平方根粗さは、約100nm未満である。
【0075】
いくつかの実施形態では、基質は、上記の方法のステップを通して、0.1cm/分を超える速度で連続的に前進する。他の実施形態では、基質は、上記の方法のステップを通して、0.05cm/分を超える速度で連続的に前進する。さらに他の実施形態では、基質は、上記の方法のステップを通して、0.01cm/分を超える速度で連続的に前進する。さらに他の実施形態では、基質は、堆積、形成、分離及び収集のステップを通して、10回よりも多く、50回よりも多く、1000回よりも多く又は100000回よりも多くサイクルされる。
【0076】
いくつかの実施形態では、基質は、約1cmよりも広い。他の実施形態では、基質は、1m、10m、100m、1000m又は10000mよりも長い。これらの実施形態のいくつかでは、基質は、金属箔である。
【0077】
いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは、基質の全ての面に形成される。他の実施形態では、カーボンナノチューブは、金属箔の両面に形成される。
【0078】
いくつかの実施形態では、基質に堆積された触媒の濃度は、約0.001%~約25%である。他の実施形態では、基質に堆積された触媒の濃度は、約0.1%~約1%である。さらに他の実施形態では、基質に堆積された触媒の濃度は、約0.5%~約20%である。
【0079】
いくつかの実施形態では、基質上のカーボンナノチューブの濃度は、1μM当たり約1ナノチューブ~1μM当たり約50ナノチューブである。他の実施形態では、基質上のカーボンナノチューブの濃度は、1μM当たり約10ナノチューブ~1μM当たり約500ナノチューブである。
【0080】
いくつかの実施形態では、CNTを基質の表面から機械的に除去することにより、CNTが基質から分離される。他の実施形態では、基質からのCNTの分離は、機械的ツール(例えば、ブレード、研磨面など)を用いて基質の表面からCNTを除去することを含み、それにより金属不純物がほとんど又は全くない高純度のCNTを生成し、これは、追加の精製を必要としない。さらに他の実施形態では、基質からのCNTの分離は、基質へのCNTの接着を破壊する化学的方法を含む。さらに他の実施形態では、超音波は、基質へのCNTの接着を破壊する。さらに他の実施形態では、加圧ガス流は、基質へのCNTの接着を破壊する。基質へのCNTの堆積と基質からのCNTの分離との組合せにより、触媒及びアモルファス炭素不純物を含まない均一な長さのCNT生成物が得られる。
【0081】
CNTは、例えば、開いた容器、ワイヤメッシュスクリーン、固体表面、濾過デバイスなど任意の好適な物体内又は上に収集することができる。収集デバイスの選択は、基質へのCNTの接着を破壊するために使用される方法と相関される。
【0082】
いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは、ランダムに整列される。他の実施形態では、カーボンナノチューブは、垂直に整列される。さらに他の実施形態では、均一な長さは、平均で約30μM、50μM、約100μM、約150μM又は約200μMである。さらに他の実施形態では、均一な長さは、50μM~2cmの範囲内であり得る。一般に、均一な長さは、指定された長さの約±10%である。したがって、約100μMの均一な長さを有する試料は、90μM~110μMの長さのナノチューブを含む。さらに他の実施形態では、カーボンナノチューブは、垂直に整列され、均一な長さである。
【0083】
いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブの密度は、約2mg/cm2~約1mg/cm2である。他の実施形態では、カーボンナノチューブの密度は、約2mg/cm2~約0.2mg/cm2である。
【0084】
いくつかの実施形態では、垂直に整列されたカーボンナノチューブは、約50W/mKを超える熱伝導率を有する。他の実施形態では、垂直に整列されたカーボンナノチューブは、約70W/mKを超える熱伝導率を有する。
【0085】
いくつかの実施形態では、垂直に整列されたカーボンナノチューブの厚さは、約100μm~約500μmである。他の実施形態では、垂直に整列されたカーボンナノチューブの厚さは、約100μm未満である。
【0086】
いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは、約90%、約95%、約99%、約99.5%又は約99.9%を超える純度である。他の実施形態では、カーボンナノチューブは、約90%、約95%、約99%、約99.5%又は約99.9%を超える純度であり、約10μM、約20μM、約30μM、約50μM、約100μM、約150μM又は約200μMの均一な長さである。さらに他の実施形態では、カーボンナノチューブは、垂直に整列され、約90%、約95%、約99%、約99.5%又は約99.9%を超える純度であり、約30μM、約50μM、約100μM、約150μM又は約200μMの均一な長さである。上記の実施形態は、純度と長さとの可能な全ての組合せを明示的に網羅していることに留意されたい。
【0087】
いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブの引張強度は、約11GPa~約63GPaである。他の実施形態では、カーボンナノチューブの引張強度は、約20GPa~約63GPaである。さらに他の実施形態では、カーボンナノチューブの引張強度は、約30GPa~約63GPaである。さらに他の実施形態では、カーボンナノチューブの引張強度は、約40GPa~約63GPaである。さらに他の実施形態では、カーボンナノチューブの引張強度は、約50GPa~約63GPaである。さらに他の実施形態では、カーボンナノチューブの引張強度は、約20GPa~約45GPaである。
【0088】
いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブの弾性率は、約1.3TPa~約5TPaである。他の実施形態では、カーボンナノチューブの弾性率は、約1.7TPa~約2.5TPaである。さらに他の実施形態では、カーボンナノチューブの弾性率は、約2.7TPa~約3.8TPaである。
【0089】
ここで、図5を参照すると、CNTを連続的に合成するためのデバイスが提供される。輸送モジュールは、基質506によって接続されたドラム501A及び501Bを含む。基質506は、ドラム501Aから触媒モジュール502、ナノチューブ合成モジュール503及び分離モジュール504を通してドラム501Bまで連続的に移動する。繊細な基質506Aは、触媒を含む基質506Bを提供するために触媒モジュール502によって修飾されることに留意されたい。いくつかの実施形態では、触媒モジュール502は、基質506Aが浸漬される触媒の溶液である。カーボンナノチューブは、ナノチューブ合成モジュール503を通過する間に基質506Bに連続的に形成され、カーボンナノチューブを含む基質506Cが得られる。いくつかの実施形態では、ナノチューブ合成モジュール503は、CVDチャンバである。基質506Cは、分離モジュール504によって連続的に処理され、付着したカーボンナノチューブが除去されて基質506Aが得られ、基質506Aは、次いで、ドラム501Bによって収集される。いくつかの実施形態では、分離モジュール504は、新たに形成されたCNTを基質506Cから機械的に剪断するブレードを含む。基質506Cから除去されたカーボンナノチューブは、プロセス506Dによって収集モジュール505で連続的に収集されることに留意されたい。いくつかの実施形態では、収集モジュール505は、単に、分離モジュール504によって基質表面から分離されたCNTを収集するために適切に配置された空の容器である。上記の実施形態では、基質506は、生産工程中にリサイクルされない。
【0090】
ここで、図6を参照すると、CNTを連続的に合成するための別のデバイスが概略的に示されている。輸送モジュールは、基質606によって接続されたドラム601A及び601Bを含む。基質606は、ドラム601Aから触媒モジュール602、ナノチューブ合成モジュール603及び分離モジュール604を通してドラム601Bまで連続的に移動する。繊細な基質606Aは、触媒を含む基質606Bを提供するために触媒モジュール602によって修飾されることに留意されたい。いくつかの実施形態では、触媒モジュール502は、基質606Aが浸漬される触媒の溶液である。カーボンナノチューブは、ナノチューブ合成モジュール603を通過する間に基質606Bに連続的に形成され、基質506Cが得られる。いくつかの実施形態では、ナノチューブ合成モジュール603は、CVDチャンバである。基質606Cは、分離モジュール604によって連続的に処理され、付着したカーボンナノチューブが除去されて基質606Aが得られ、基質606Aは、次いで、ドラム601Bによって収集される。いくつかの実施形態では、分離モジュール604は、新たに形成されたCNTを基質606Cから機械的に剪断するブレードを含む。基質606Cから除去されたカーボンナノチューブは、プロセス606Dによって収集モジュール605で連続的に収集されることに留意されたい。いくつかの実施形態では、収集モジュール605は、単に、分離モジュール604によって基質表面から分離されたCNTを収集するために適切に配置された空の容器である。上記の実施形態では、基質は、生産工程を通して少なくとも1回リサイクルされる。
【0091】
上記の実施形態の多くは、ナノチューブを連続的に合成するものとして述べてきたが、本明細書で述べる方法及びデバイスが不連続に実施され得ることが当業者に理解されるであろう。
【0092】
図7は、例示的な分離モジュールを概略的に示す。ドラム704は、触媒モジュール(図示せず)及びカーボンナノチューブ堆積モジュール(図示せず)によって処理されており、カーボンナノチューブで覆われた基質701をツール700に前進させ、ツール700は、カーボンナノチューブ702を除去して、カーボンナノチューブのない基質703を提供する。いくつかの実施形態では、ツール700は、切断ブレードである。基質703は、ドラム705によって収集される。カーボンナノチューブ702は、容器706に収集される。図示されるように、基質701は、片面のみがカーボンナノチューブでコーティングされている。ナノチューブを基質の両面に成長させることもでき、両面がコーティングされた基質を上述したのと同様に処理できることが当業者に理解されるであろう。
【0093】
図8は、触媒を含む複数の基質801を含む、ナノチューブ合成モジュールで使用することができる例示的な長方形の石英チャンバ800の水平図を示す。図9は、触媒を含む複数の基質901を含む、ナノチューブ合成モジュールで使用することができる例示的な長方形の石英チャンバ900の斜視図を示す。石英チャンバは、キャリアガス及び炭素原料のためのシャワーヘッド(図示せず)を含み、CNTを形成するのに十分な温度で加熱され得る。いくつかの実施形態では、チャンバは、0.2インチを超える内部チャンバ厚さを有する。他の実施形態では、複数の基質がチャンバによって同時に処理される。
【0094】
CNTは、例えば、ラマン分光法、紫外 可視 近赤外分光法、蛍光分公報及びX線光電子分光法、熱重量分析、原子間力顕微鏡法、走査型トンネル分光法、顕微鏡法、走査型電子顕微鏡及びトンネル電子顕微鏡を含む多数の技法によって特徴付けることができる。カーボンナノチューブを完全に特徴付けるには、上記の全てではないにせよ多くの組合せで十分である。
【0095】
いくつかの実施形態では、CNTは、約1.20未満のI/I比を有する。他の実施形態では、CNTは、約1.10未満のI/I比を有する。さらに他の実施形態では、CNTは、約1.00未満のI/I比を有する。さらに他の実施形態では、CNTは、約0.90未満のI/I比を有する。さらに他の実施形態では、CNTは、約0.85未満のI/I比を有する。さらに他の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約0.76~約0.54のI/I比を有する。
【0096】
いくつかの実施形態では、CNTは、約1.20未満且つ約0.76を超えるI/I比を有する。他の実施形態では、CNTは、約1.10未満且つ約0.76を超えるI/I比を有する。さらに他の実施形態では、CNTは、約1.00未満且つ約0.76を超えるI/I比を有する。さらに他の実施形態では、CNTは、約0.90未満且つ約0.76を超えるI/I比を有する。さらに他の実施形態では、CNTは、約0.85未満且つ約0.76を超えるI/I比を有する。
【0097】
変曲点は、熱劣化がその最大値に達する温度である。開始点は、高温により材料の約10%が劣化する温度である。いくつかの実施形態では、CNTは、約700℃を超える変曲点及び約600℃を超える開始点を有する。いくつかの実施形態では、CNTは、約710℃を超える変曲点及び約610℃を超える開始点を有する。いくつかの実施形態では、CNTは、約720℃を超える変曲点及び約620℃を超える開始点を有する。いくつかの実施形態では、CNTは、約730℃を超える変曲点及び約640℃を超える開始点を有する。いくつかの実施形態では、CNTは、約740℃を超える変曲点及び約650℃を超える開始点を有する。上記の実施形態のいくつかでは、開始点は、約800℃未満である。
【0098】
一般に、グラフェンナノリボンは、限定されないが、酸酸化(例えば、Kosynkin et al.,Nature,2009,458,872;Higginbotham et al.,ACS Nano,210,4,2596;Cataldo et al.,Carbon,2010,48,2596;Kang et al.,J.Mater.Chem.,2012,22,16283;及びDhakate et al.,Carbon 2011,49,4170)、プラズマエッチング(例えば、Jiao et al.,Nature,2009,458,877;Mohammadi et al.,Carbon,2013,52,451;及びJiao et al.,Nano Res 2010,3,387)、イオンインターカレーション(例えば、Cano-Marques et al.,Nano Lett.2010,10,366)、金属粒子触媒(例えば、Elias et al.,Nano Lett.Nano Lett.,2010,10,366;及びParashar et al.,Nanaoscale,2011,3,3876)、水素化(Talyzin et al.,ACS Nano,2011,5,5132)及び音響化学(Xie et al.,J.Am.Chem.Soc.2011,DOI:10.1021/ja203860)を含む方法によってCNTから調製することができる。上記の方法のいずれかを使用して、本明細書で述べるCNTからグラフェンナノリボンを調製することができる。ここで、図14を参照すると、SEM画像は、本明細書で述べる方法によって生成されたGNRの高純度及び構造均一性を示している。上記のように調製されたGNRの直線性は、このクラスの材料に関する構造均一性及び優れた物理的特性も示している。
【0099】
いくつかの実施形態では、グラフェンナノリボンの均一な長さは、平均で約10μM、約20μM、約30μM、約50μM、約100μM、約150μM又は約200μMである。他の実施形態では、均一な長さは、約30μM~約2cmの範囲内であり得る。一般に、均一な長さは、指定された長さの約±10%である。したがって、約100μMの均一な長さを有する試料は、約90μM~約110μMの長さのGNRを含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、グラフェンナノリボンは、平均で約10μM、約20μM、約30μM、約50μM、約100μM、約150μM又は約200μMである均一な長さのカーボンナノチューブから形成される。
【0101】
いくつかの実施形態では、グラフェンナノリボンは、約90%、約95%、約99%、約99.5%又は約99.9%を超える純度である。他の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約90%、約95%、99%、約99.5%又は約99.9%を超える純度であり、約10μM、約20μM、約30μM、約50μM、約100μM、約150μM又は約200μMの均一な長さである。さらに他の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約10μM、約20μM、約30μM、約50μM、約100μM、約150μM又は約200μMの均一な長さであり、99%を超える純度である。さらに他の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約20μMの均一な長さであり、99%を超える純度である。上記の実施形態は、純度と長さとの可能な全ての組合せを明示的に網羅していることに留意されたい。
【0102】
いくつかの実施形態では、グラフェンナノリボンは、約1.20未満のI2d/I比を有する。他の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約1.10未満のI2d/I比を有する。さらに他の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約1.20未満のI2d/I比を有する。さらに他の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約1.00未満のI2d/I比を有する。さらに他の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約0.90未満のI2d/I比を有する。さらに他の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約0.80未満のI2d/I比を有する。さらに他の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約0.70未満のI2d/I比を有する。さらに他の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約0.60未満のI2d/I比を有する。さらに他の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約0.60~約0.54のI2d/I比を有する。さらに他の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約0.54~約0.1のI2d/I比を有する。
【0103】
いくつかの実施形態では、グラフェンナノリボンは、約1.20未満且つ約0.60を超えるI2d/I比を有する。他の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約1.10未満且つ約0.60を超えるI2d/I比を有する。さらに他の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約1.00未満且つ約0.60を超えるI2d/I比を有する。さらに他の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約0.90未満且つ約0.60を超えるI2d/I比を有する。さらに他の実施形態では、グラフェンナノリボンは、約0.85未満且つ約0.60を超えるI2d/I比を有する。
【0104】
いくつかの実施形態では、GNRは、約700℃を超える変曲点及び約600℃を超える開始点を有する。いくつかの実施形態では、GNRは、約710℃を超える変曲点及び約610℃を超える開始点を有する。いくつかの実施形態では、GNRは、約720℃を超える変曲点及び約620℃を超える開始点を有する。いくつかの実施形態では、GNRは、約730℃を超える変曲点及び約640℃を超える開始点を有する。いくつかの実施形態では、GNRは、約740℃を超える変曲点及び約650℃を超える開始点を有する。上記の実施形態のいくつかでは、開始点は、約800℃未満である。
【0105】
本明細書では、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池又はウルトラキャパシタなどの様々なエネルギー貯蔵デバイスに使用することができるグラフェン電極が提供される。いくつかの実施形態では、電極は、均一な長さ及び約90%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む。他の実施形態では、電極は、均一な長さ及び約95%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む。さらに他の実施形態では、電極は、均一な長さ及び約99%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む。さらに他の実施形態では、電極は、均一な長さ及び約99.5%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む。さらに他の実施形態では、電極は、均一な長さ及び約99.9%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む。
【0106】
上記の実施形態のいくつかでは、グラフェンナノリボンの長さは、約20μMである。上記の実施形態の他のものでは、グラフェンナノリボンの長さは、約50μMである。上記の実施形態のさらに別のものでは、グラフェンナノリボンの長さは、約100μMである。上記の実施形態のさらに別のものでは、グラフェンナノリボンの長さは、約200μMである。さらに他の実施形態では、電極は、約10μM、約20μM、約30μM、約50μM、約100μM、約150μM又は約200μMの均一な長さ及び99%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む。さらに他の実施形態では、電極は、約20μMの均一な長さ及び99%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む。
【0107】
上記の実施形態のいくつかでは、電極は、カソード活物質も含み得る。カソード活物質としては、限定されないが、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、リチウム混合金属酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、コバルトマンガンリチウム、リン酸バナジウムリチウム、リチウム混合金属リン酸塩、金属硫化物、ニッケルマンガンコバルト及びそれらの組合せが挙げられる。カソード活物質は、例えば、二硫酸チタン若しくは二硫酸モリブデン又はそれらの組合せなどのカルコゲン化合物も含み得る。いくつかの実装形態では、カソード材料は、コバルト酸リチウム(例えば、LiCoO、0.8≦x≦1)、ニッケル酸リチウム(例えば、LiNiO)若しくはマンガン酸リチウム(例えば、LiMn及びLiMnO)、リン酸鉄リチウム又はそれらの組合せである。
【0108】
カソード材料は、微粉末、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノファイバ又はナノチューブの形態で調製することができる。いくつかの実施形態では、カソード活物質は、コバルト酸リチウム、ニッケルマンガンコバルト、ニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム又はFeSである。任意の知られているカソード活物質を、本明細書で述べるエネルギー貯蔵デバイスに採用することができる。
【0109】
上記の実施形態のいくつかでは、電極は、アノード活物質も含み得る。アノード活物質としては、限定されないが、リチウム金属、炭素、リチウムインターカレートカーボン、窒化リチウム、シリコンとのリチウム合金、ビスマス、ホウ素、ガリウム、インジウム、亜鉛、スズ、酸化スズ、アンチモン、アルミニウム、酸化チタン、モリブデン、ゲルマニウム、マンガン、ニオブ、バナジウム、タンタル、金、白金、鉄、銅、クロム、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、イットリウム、酸化モリブデン、酸化ゲルマニウム、酸化ケイ素、炭化ケイ素又はそれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、アノード活物質は、グラファイト、チタン酸リチウム、スズ/コバルト合金、シリコン又は固体リチウムである。任意の知られているアノード活物質を、本明細書で述べるエネルギー貯蔵デバイスに採用することができる。
【0110】
本明細書では、上記の実施形態のいくつかで述べた1つ又は2つの電極を含む電気化学セルも提供される。電気化学セルが図15に示されている。ここで、図15を参照すると、電気化学セル1500は、均一な長さ及び約90%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む少なくとも1つの電極を有する。いくつかの実施形態では、電極は、約10μM、約20μM、約30μM、約50μM、約100μM、約150μM又は約200μMの均一な長さ及び99%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む。他の実施形態では、電極は、約20μMの均一な長さ及び99%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む。アノード1506及びカソード1504は、液体電解質1502に浸漬され、セパレータ1508によって隔離されて、電気化学セル1500が提供される。
【0111】
本明細書では、リチウムイオン電池も提供される。リチウムイオン電池は、上記の実施形態のいくつかで述べた1つ又は2つの電極と、アノードとカソードとの間に配設された液体電解質と、カソードとアノードとの間のセパレータとを含む外装体を有する。
【0112】
リチウムイオン電池の例示的なセルも図15に示されている。リチウムイオン電池では、液体電解質1502は、リチウム塩を含まなければならない。少なくとも1つの電極は、均一な長さ及び約90%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む。いくつかの実施形態では、電極は、約10μM、約20μM、約30μM、約50μM、約100μM、約150μM又は約200μMの均一な長さ及び99%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む。
【0113】
本明細書では、リチウムイオンポリマー電池も提供される。リチウムイオンポリマー電池は、上記の実施形態のいくつかで述べた1つ又は2つの電極と、アノードとカソードとの間に配設されたポリマー電解質と、カソードとアノードとの間の微多孔質セパレータとを含む外装体を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー電解質はゲル化ポリマー電解質である。他の実施形態では、ポリマー電解質は固体ポリマー電解質である。
【0114】
リチウムイオンポリマー電池のセルも図15によって示されている。ここで、図15を参照すると、電解質1502は、リチウムイオンポリマーであり、セパレータ1508は、微多孔質セパレータである。少なくとも1つの電極は、均一な長さ及び約90%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む。いくつかの実施形態では、電極は、約10μM、約20μM、約30μM、約50μM、約100μM、約150μM又は約200μMの均一な長さ及び99%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む。
【0115】
本明細書では、全固体電池も提供される。全固体電池は、上記実施形態のいくつかで述べた1つ又は2つの電極と、アノードとカソードとの間に配設された固体電解質層とを含む外装体を有する。少なくとも1つの電極は、均一な長さ及び約90%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む。いくつかの実施形態では、電極は、約10μM、約20μM、約30μM、約50μM、約100μM、約150μM又は約200μMの均一な長さ及び99%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む。
【0116】
全固体電池が図16に示されている。ここで、図16を参照すると、全固体電池は層状に構成され、正極層1604と、負極層1608と、電極層間の固体電解質層1606とを含む。少なくとも1つの電極は、均一な長さ及び約90%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む。いくつかの実施形態では、電極は、約10μM、約20μM、約30μM、約50μM、約100μM、約150μM又は約200μMの均一な長さ及び99%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む。正極集電体1602及び負極集電体1610も示されている。
【0117】
本明細書では、ウルトラキャパシタも提供される。ウルトラキャパシタは、2つの集電体に取り付けられた電源であって、集電体の少なくとも1つが上記の実施形態のいくつかで述べた1つ又は2つの電極と接触する、電源と、電極間に配設された液体電解質と、電源電極間のセパレータとを有する。いくつかの実施形態では、ウルトラキャパシタは擬似キャパシタである。
【0118】
例示的なウルトラキャパシタのブロック図が図17に示されている。ここで、図17を参照すると、ウルトラキャパシタ1700は、電解膜7106によって分離された2つの電極1704を有する。少なくとも1つの電極は、均一な長さ及び約90%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む。いくつかの実施形態では、電極は、約10μM、約20μM、約30μM、約50μM、約100μM、約150μM又は約200μMの均一な長さ及び99%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む。
【0119】
電気リード線1710(例えば、細い金属ワイヤ)は、集電体1702に接触して電気接触を形成する。ウルトラキャパシタ1700は、電解質溶液中に浸漬され、キャパシタの動作を容易にするためにリード線1710は、溶液外に導かれる。クランプアセンブリ1708(例えば、コイン電池又はラミネート電池)は、金属基質1702に取り付けられたカーボンナノチューブ1704を近接して保持し、膜1706が電極分離(すなわち電気的絶縁)を維持し、ウルトラキャパシタ1700の体積を最小限に抑える。ウルトラキャパシタ1700は、集電体1702に取り付けられた電極1704と、従来の水性電解質(例えば、45%硫酸又はKOH)に浸漬された電解膜1706とからなる。
【0120】
いくつかの実施形態では、ウルトラキャパシタは、擬似キャパシタである。これらの実施形態のいくつかでは、電極に酸化物粒子(例えば、RuO、MnO、Fe、NiO、MgOなど)が装填される。これらの実施形態の他のものでは、電極は、導電性ポリマー(例えば、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンなど)でコーティングされる。いくつかの実施形態では、ウルトラキャパシタは、非対称キャパシタである(すなわちキャパシタ内の一方の電極が他方の電極と異なる)。
【0121】
エネルギー貯蔵デバイスの上記の実施形態のいくつかでは、電極の数は、1つであり、及び電極は、アノードである。上記の実施形態の他のものでは、電極の数は、1つであり、及び電極は、カソードである。上記の実施形態のさらに別のものでは、電極の数は、2つであり、及び1つの電極は、アノードであり、且つ第2の電極は、カソードである。
【0122】
上記の実施形態のいくつかでは、アノードは、アノード活物質をさらに含む。上記の実施形態の他のものでは、カソードは、カソード活物質をさらに含む。上記の実施形態のさらに別のものでは、アノードは、アノード活物質をさらに含み、及びカソードは、カソード活物質をさらに含む。上記の実施形態のいくつかでは、カソード活物質は、コバルト酸リチウム、ニッケルマンガンコバルト、ニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム又はFeSであり、アノード活物質は、グラファイト、チタン酸リチウム、スズ/コバルト合金、シリコン又は固体リチウムである。
【0123】
本明細書で述べる電極に使用することができる他の導電性添加剤としては、限定されないが、炭素微粒子、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェンナノシート、金属ファイバ、アセチレンブラック及び超微細グラファイト粒子又はそれらの組合せが挙げられる。一般に、適切な特性を有する任意の導電性材料を、本明細書で述べるエネルギー貯蔵デバイスで使用することができる。
【0124】
本明細書で述べる電極に使用できるバインダとしては、ポリ酢酸(ビニル)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、アルキル化ポリエチレンオキシド、架橋ポリエチレンオキシド、ポリビニルエーテル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデンのコポリマー(商品名:Kynar)、ポリ(アクリル酸エチル)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、ポリスチレン、カルボキシメチルセルロース、シロキサンベースのバインダ、例えばポリジメチルシロキサン、ゴムベースのバインダ(スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム及びスチレン-イソプレンゴムを含む)、エチレングリコールベースのバインダ(ポリエチレングリコールジアクリレートなど)並びにそれらの誘導体、それらのブレンド及びそれらのコポリマーが挙げられる。ポリフッ化ビニリデンのコポリマーのより具体的な例としては、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー及びポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレンコポリマーが挙げられる。一般に、適切な特性を有する任意のバインダを、本明細書で述べるエネルギー貯蔵デバイスで使用することができる。
【0125】
セパレータは、イオンを輸送する任意の膜である。いくつかの実施形態では、セパレータは、イオンを輸送する液体不透過膜である。他の実施形態では、セパレータは、電子の移動を防止しながら、カソード材料とアノード材料との間でイオンを往復させる液体電解質が注入された多孔質ポリマー膜である。さらに他の実施形態では、セパレータは、微多孔膜であり、正極及び負極を構成する粒子が膜を通過することを防止する。さらに他の実施形態では、セパレータは、単層又は多層の微多孔質セパレータであり、特定の温度よりも上で溶融してイオン移動を防止する。さらに他の実装形態では、セパレータは、リチウム塩が錯体化されたポリエチレンオキシド(PEO)ポリマー、Nafion、Celgard、Celgard 3400、ガラス繊維又はセルロースを含む。さらに他の実施形態では、微多孔質セパレータは、多孔質ポリエチレン又はポリプロピレン膜である。リチウムイオン電池で使用されている任意の既知のセパレータを、本明細書で述べるエネルギー貯蔵デバイスにおいて採用することができる。
【0126】
電解質としては、水性電解質(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、硫酸、塩化マグネシウムなど)、有機溶媒(例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドなど)、有機溶媒に可溶な電解質塩、テトラアルキルアンモニウム塩(例えば、(CNBF、(CCHNBF、(CNBF、(CNPFなど)、テトラアルキルホスホニウム塩(例えば、(CPBF、(CPBF、(C914PBFなど)、リチウム塩(例えば、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiClOなど、N-アルキル-ピリジニウム塩、1,3ビスアルキルイミダゾリウム塩など)などが挙げられる。例えば、LIPF、LiBF、LiCFSO、LiClOなどのリチウム塩は、典型的には、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、酢酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸メチル、トルエン、キシレン、酢酸メチル又はそれらの組合せなどの有機溶媒に溶解される。ウルトラキャパシタ及び電気化学セルで使用されている任意の知られている電解質及び/又は溶媒を、本明細書で述べるウルトラキャパシタ及び電気化学セルエネルギー貯蔵デバイスでも使用することができる。リチウムイオン電池で使用されている任意の知られている非水溶媒又は任意の知られている電解質を、本明細書で述べるリチウムイオンエネルギー貯蔵デバイスにも採用することができる。
【0127】
ゲルポリマー電解質及び固体ポリマー電解質などのポリマー電解質も有用である。ゲルポリマー電解質は、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタクリル酸メチル)及びポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー)を液体電解質と混合することで誘導される。固体ポリマー電解質としては、ポリエチレンオキシド、ポリカーボネート、ポリシロキサン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアルコール、フルオロポリマー、リギニン、キチン及びセルロースが挙げられる。リチウムイオン電池で使用されている任意の知られているゲルポリマー電解質又は任意の知られている固体ポリマー電解質を、本明細書で述べるエネルギー貯蔵デバイスにも採用することができる。
【0128】
全固体電池で使用される固体電解質としては、無機固体電解質(例えば、硫化物固体電解質材料(すなわちLiS-PS及びLiS-P-LiI)、酸化物固体電解質材料、窒化物固体電解質材料、ハロゲン化物固体電解質材料)及び固体ポリマー電解質(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリカーボネート、ポリシロキサン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアルコール、フルオロポリマー、リギニン、キチン及びセルロース)が挙げられる。他の例としては、NASICON型酸化物、ガーネット型酸化物及びペロブスカイト型酸化物が挙げられる。リチウムイオン電池で使用されている任意の固体電解質を、本明細書で述べるエネルギー貯蔵デバイスに使用することができる。
【0129】
全固体電池でのアノード層としては、上記で参照した他のアノード材料と共に、チタン酸リチウムなどのようなリチウム遷移金属酸化物、TiO、Nb及びWOなどのような遷移金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、グラファイト、ソフトカーボン及びハードカーボンなどのような炭素材料、金属リチウム、金属インジウム、リチウム合金などを挙げることができる。
【0130】
全固体電池でのカソード層としては、上記で参照した従来のカソード材料と共に、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、LiNiMnCo(p+q+r=1)、LiNiAlCo(p+q+r=1)、Li1+xMn2-x-y(x+y=2)を挙げることができ、ここで、Mは、Al、Mg、Co、Fe、Ni及びZn並びにリチウム金属リン酸塩LiMnPOの少なくとも1つであり、mは、Fe、Mn、Co及びNiの少なくとも1つである。
【0131】
集電体としては、Al、Cu、Ni、Tiなどの金属、ステンレス鋼及び炭素質材料が挙げられる。
【0132】
理論に束縛されることを望まないが、均一な長さで約90%を超える純度のグラフェンナノリボンを活物質(すなわちカソード活物質とアノード活物質との両方)と共に均一に分散させることは、最良の電極性能にとって重要であり得る。活物質中に均一に分散されたグラフェンナノリボンは、カソードとアノードとのいずれかで活性粒子との電気接続を形成し、これは、容量及び充電率を高めながら導電率を向上させ、抵抗を低下させることができる。カソード又はアノードのいずれかでのグラフェンナノリボンと活性粒子とのより広範な物理的接触は、電極層でのより良好な電気ネットワークを形成し、その結果、より低いシート抵抗を得ることができる。
【0133】
いくつかの実施形態では、活物質(すなわちカソード活物質とアノード活物質との両方)に対するグラフェンナノリボンの重量パーセントは、約5%である。他の実施形態では、活物質(すなわちカソード活物質とアノード活物質との両方)に対するグラフェンナノリボンの重量パーセントは、約2.5%である。いくつかの実施形態では、活物質(すなわちカソード活物質とアノード活物質との両方)に対するグラフェンナノリボンの重量パーセントは、約1%である。いくつかの実施形態では、活物質(すなわちカソード活物質とアノード活物質との両方)に対するグラフェンナノリボンの重量パーセントは、約0.5%である。

代表的な実施形態
【0134】
1.均一な長さ及び約90%を超える純度のグラフェンナノリボンを含む電極。
【0135】
2.グラフェンナノリボンは、約95%を超える純度である、実施形態1に記載の電極。
【0136】
グラフェンナノリボンは、約99%を超える純度である、実施形態1に記載の電極。
【0137】
グラフェンナノリボンは、約99.5%を超える純度である、実施形態1に記載の電極。
【0138】
グラフェンナノリボンは、約99.9%を超える純度である、実施形態1に記載の電極。
【0139】
グラフェンナノリボンの長さは、約20μMである、実施形態1~5に記載の電極。
【0140】
グラフェンナノリボンの長さは、約50μMである、実施形態1~5に記載の電極。
【0141】
グラフェンナノリボンの長さは、約100μMである、実施形態1~5に記載の電極。
【0142】
グラフェンナノリボンの長さは、約200μMである、実施形態1~5に記載の電極。
【0143】
カソード活物質をさらに含む、実施形態1~9に記載の電極。
【0144】
カソード活物質は、コバルト酸リチウム、ニッケルマンガンコバルト、ニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム又はFeSである、実施形態10に記載の電極。
【0145】
アノード活物質をさらに含む、実施形態1~9に記載の電極。
【0146】
アノード活物質は、グラファイト、チタン酸リチウム、スズ/コバルト合金、シリコン又は固体リチウムである、実施形態12に記載の電極。
【0147】
実施形態1~9に記載の1つ又は2つの電極を含む電気化学セル。
【0148】
電極の数は、1つであり、及び電極は、アノードである、実施形態14に記載の電気化学セル。
【0149】
電極の数は、1つであり、及び電極は、カソードである、実施形態14に記載の電気化学セル。
【0150】
電極の数は、2つであり、及び1つの電極は、アノードであり、且つ第2の電極は、カソードである、実施形態14に記載の電気化学セル。
【0151】
アノードは、アノード活物質をさらに含む、実施形態15に記載の電気化学セル。
【0152】
カソードは、カソード活物質をさらに含む、実施形態16に記載の電気化学セル。
【0153】
アノードは、アノード活物質をさらに含み、及びカソードは、カソード活物質をさらに含む、実施形態17に記載の電気化学セル。
【0154】
カソード活物質は、コバルト酸リチウム、ニッケルマンガンコバルト、ニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム又はFeSであり、アノード活物質は、グラファイト、チタン酸リチウム、スズ/コバルト合金、シリコン又は固体リチウムである、実施形態17に記載の電気化学セル。
【0155】
実施形態1~9に記載の1つ又は2つの電極と、アノードとカソードとの間に配設された液体電解質と、カソードとアノードとの間のセパレータとを含む外装体を含むリチウムイオン電池。
【0156】
実施形態1~9に記載の1つ又は2つの電極と、アノードとカソードとの間に配設されたポリマー電解質と、微多孔質セパレータとを含む外装体を含むリチウムイオンポリマー電池。
【0157】
ポリマー電解質は、ゲル化ポリマー電解質である、実施形態23に記載のリチウムイオンポリマー電池。
【0158】
ポリマー電解質は、固体ポリマー電解質である、実施形態23に記載のリチウムイオンポリマー電池。
【0159】
実施形態1~9に記載の1つ又は2つの電極と、アノード層とカソード層との間に配設された固体電解質層とを含む外装体を含む全固体電池。
【0160】
2つの集電体に取り付けられた電源であって、集電体の少なくとも1つは、実施形態1~9に記載の1つ又は2つの電極と接触している、電源と、電極間に配設された液体電解質と、電流電極間のセパレータとを含むウルトラキャパシタ。
【0161】
擬似キャパシタである、実施形態26に記載のウルトラキャパシタ。
【0162】
最後に、本発明を実施する代替の方法もあることに留意されたい。したがって、これらの実施形態は、例示とみなされるべきであり、限定とみなされるべきではなく、本発明は、本明細書に記載された詳細に限定されず、添付の特許請求の範囲の範疇及び均等物内において変更することができる。
【0163】
本明細書で引用される全ての刊行物及び特許は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0164】
以下の実施例は、例示目的でのみ提供され、本発明の範囲を限定することを意図されない。
実施例
【0165】
実施例1:多層CNTの熱重量分析
CNTの炭素純度及び熱安定性を、熱重量分析装置(TGA)であるTA instruments,Q500を使用して評価した。試料を空気雰囲気下において、10℃/分の速度で温度から900℃まで加熱し、900℃で10分間保持した後に冷却した(Praxair AI NDK)。炭素純度は、(全炭素質材料の重量)/(全炭素質材料の重量+触媒の重量)として定義される。図10は、本明細書で述べる方法及びデバイスによって作製した多層カーボンナノチューブに関する熱安定性データを示す。ここで作製した多層カーボンナノチューブは、約5nmの内径を有し、5~8枚の壁を有し、10μM~200μMのカスタマイズ可能な長さを有する。400℃未満の領域では、低い耐熱性を有するアモルファス炭素及び炭素質材料が劣化した。グラフからわかるように、本明細書で述べる方法及びデバイスによって作製した多層カーボンナノチューブには、アモルファス炭素及び炭素質材料がほとんど存在しない。本明細書で述べる方法及びデバイスによって作製したCNTの炭素純度は、99.3%を超え、市販のCNT(図示せず)では炭素純度が99.4%である。

実施例2:多層CNTのラマン分析
【0166】
10mgのCNTを約100mLのメタノールに懸濁して、黒っぽい溶液を形成した。ラマンスペクトルにはCNTの薄層が必要であるため、得られた懸濁液を約10分間超音波処理して、懸濁液中でCNTを均一に分散させた。次いで、懸濁液をSi基質上に広げて薄層を形成した。次いで、コーティングされたSi基質を130℃で10分間オーブンに入れて、試料から分散剤を蒸発させた。次いで、ラマンスペクトルを、532nmのレーザ放射、50秒の積算、10倍の対物レンズ及び24mWのレーザを備えたThermos Nicolet分散型XRラマン顕微鏡を用いて記録した。DバンドとGバンドとの強度の比は、CNTの構造完全性を検証するための診断ツールとしてよく使用される。
【0167】
図11は、本明細書で述べる方法及びデバイスによって作製した多層カーボンナノチューブのラマンスペクトル(実線)と、市販のCNTのラマンスペクトル(破線)とを示す。本明細書で述べる方法及びデバイスによって作製した多層カーボンナノチューブのI/I及びI/I’比は、それぞれ0.76及び0.44である一方、市販のCNTの同じ比は、それぞれ1.27及び0.4である。以上のことは、本明細書で述べる方法及びデバイスによって作製した多層カーボンナノチューブのより高い結晶化度が、他の方法によって製造されたものよりも優れており、熱安定性データに適合していることを示す。

実施例3:多層GNRの熱重量分析
【0168】
CNTの炭素純度及び熱安定性を、熱重量分析装置(TGA)であるTA instruments,Q500を使用して評価した。試料を空気雰囲気下において、10℃/分の速度で温度から900℃まで加熱し、900℃で10分間保持した後に冷却した(Praxair AI NDK)。炭素純度は、(全炭素質材料の重量)/(全炭素質材料の重量+触媒の重量)として定義される。図13は、本明細書で述べる方法によって作製したGNRに関する熱安定性データを示す。作製したGNRは、10μM~200μMでカスタマイズ可能な長さを有する。400℃未満の領域では、低い耐熱性を有する無定形炭素及び炭素質材料が劣化した。グラフからわかるように、本明細書で述べる方法及びデバイスによって作製したGNRには、無定形炭素及び炭素質材料がほとんど存在しない。炭素純度は、99.2%よりも高い。

実施例4:GNRのラマン分析
【0169】
10mgのCNTを約100mLのメタノールに懸濁して、黒っぽい溶液を形成した。ラマンスペクトルにはCNTの薄層が必要であるため、得られた懸濁液を約10分間超音波処理して、懸濁液中でCNTを均一に分散させた。次いで、懸濁液をSi基質上に広げて薄層を形成した。次いで、コーティングされたSi基質を130℃で10分間オーブンに入れて、試料から分散剤を蒸発させた。次いで、図に示されるラマンスペクトルを、532nmのレーザ放射、50秒の統合、10倍の対物レンズ及び24mWのレーザを備えたThermos Nicolet分散型XRラマン顕微鏡を用いて記録した。DバンドとGバンドとの強度の比は、CNTの構造完全性を検証するための診断ツールとしてよく使用される。
【0170】
図12は、本明細書で述べる方法によって作製したGNRのラマンスペクトルを示す(実線)。本明細書で述べる方法によって作製したGNRのI2D/I及びI/Iは、それぞれ0.6及び0.75であり、標準的なグラフェンシグネチャを示し、化学的解凍プロセスによる最小の欠陥を示す。

実施例5:グラフェンナノリボンの溶液分散液の調製
【0171】
1.0gのGNRをプラスチック又はガラスボトルに加え、続いて99.0gの溶媒(例えば、水、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチル酢酸など)を加えて液体分散液を形成し、ボトルを確実に密閉する。ボトルを振って、超音波処理装置に置き、30~60分間超音波処理する。上記のことを繰り返し、超音波処理の合計時間が約3時間になるようにする。超音波処理が完了した後、ボトル内に粘稠性のペーストが生じる。電極材料と混合する前に、ボトルの内容物をよく振るべきである。

実施例6:流動層反応器で調製されたCNTと、本出願で述べる方法及びデバイスで調製されたCNTとのSEM画像の比較
【0172】
走査型電子顕微鏡法(「SEM」)に関する標準手順を使用して、図18、19A及び19Bに示される画像を取得した。図18でのSEM画像は、標準的な流動床反応器手順によって調製したCNTの欠陥を示す。図18に示されるCNTの直線性の欠如は、C環構造に配置されていない炭素原子を有する欠陥部位を示す。本明細書で述べる方法及び手順によって調製したCNTを図19A及び19Bに示す。特に、図19A及び19Bは、本明細書で述べる方法及び手順によって調製したCNTがより直線的な構造であり、欠陥部位が少ないことを示す。したがって、本明細書で述べる方法及び手順によって調製したCNTは、標準的な手順によって調製したCNTよりも優れた電気及び熱伝導性並びに機械的強度を有する。

実施例7:電極の製造
【0173】
電極活物質(例えば、リチウム、ニッケル、複合材など)を含む粉末を、実施例4で調製したGNRの分散液及び結合材料と混合して、電極スラリを形成する。スラリを箔上に広げ、最高150℃の温度で維持された熱源に通して固体電極コーティングを形成する。ロールをより小さい断片に切断し、次いで打抜型によって打ち抜いて、個々の電池電極セグメントを提供する。個々の電極セグメントを絶縁層で包み、従来の方法によってアマルガム化して電極スタックを形成する。次いで、電極スタックを、従来の方法によって得られる耐湿性バリア材料に挿入してパウチセルを形成し、次いで電解質溶液を注入する。次いで、電解質が飽和したパウチセルを熱及び真空の印加によって封止する。

実施例8:Si粒子(20%)及びグラファイトアノードのスラリと、0.5%のGNRを含むニッケルマンガンコバルトカソード粒子のスラリ及び1.5%のGNRを含むニッケルマンガンコバルトアノード粒子のスラリとのSEM画像の比較
【0174】
活性粒子を含む電極スラリを実施例7で述べたように調製した。走査型電子顕微鏡法(「SEM」)に関する標準手順を使用して、図20、21及び22に示される画像を取得した。図20でわかるように、SEMでは、スラリ中のSi粒子(20%)間の電気的接続は、ほとんど見られない。対照的に、図21及び22では、0.5%のGNR(図21)及び1.5%のGNR(図22)のいずれかを含むスラリ中のニッケルマンガンコバルトカソード粒子間において、GNR(長さ20μM、純度>99%)によって媒介された広範な接続性を観察することができる。したがって、GNR添加剤は、活性電極粒子の均一な電気ネットワークの形成を支援することができ、これは、高い電子拡散を可能にし、これらの活性粒子がカソード及びアノードにイオンを蓄積する能力を高める。

実施例9:GNR添加剤によって媒介された電極層内の活性粒子のスラリの電子伝導性の向上
【0175】
活性粒子を含む電極スラリを実施例7で述べたように調製した。走査型電子顕微鏡法(「SEM」)に関する標準手順を使用して、図24に示される画像を取得した。図24に示されるように、0.5%のGNRを含むスラリ中のSiアノード粒子(20%)間において、GNR(長さ20μM、純度>99%)によって媒介される広範な接続性を観察することができる。
【0176】
次いで、電極の導電率に対するこの接続性の効果を、薄い電極層上でプローブとして鋭い針を使用する4点プローブ法によるシート抵抗の測定によって研究した。4点プローブは、一列に並んだ4つの電気プローブからなり、各プローブ間に等しい間隔があり、外側の2つのプローブに電流(I)を印加し、内側の2つのプローブ間で生じる電圧降下を測定することによって動作する。DC電流が外側の2つのプローブ間に強制的に流され、電圧計が内側の2つのプローブ間の電圧差を測定する。幾何学的因子、電源電流及び電圧測定値から抵抗率を計算する。このテストに使用される機器は、4点共線プローブの他に、DC電流源及び高感度電圧計を含む。制御ソフトウェアと共に複数のソースメジャーユニットを備えた統合パラメータアナライザを、非常に高い抵抗の半導体材料を含む幅広い材料抵抗に関して使用することができる。
【0177】
異なる導電性添加剤を含むシリコンアノード(20%のSi)のシート抵抗の測定が図23に示されている。これは、上述のように行われた。図23では、添加剤なし又は5%のカーボンブラックを含むシリコンアノード(20%のSi)のシート抵抗は、約0.10Ω/sqを超える。対照的に、0.5%のGNR又は1.0のGNR添加剤を含むシリコンアノード(20%のSi)のシート抵抗は、それぞれ0.05Ω/sq又は0.04Ω/sq未満である。図24でのSEM画像によって示されるGNRと活性電極粒子とのより大きい表面接触は、より低いシート抵抗をもたらし、したがって電極の導電率を向上させる。

実施例10:GNR添加剤を含むカソードを用いたパウチセルサイクリング
【0178】
サイクル寿命試験を以下のように実施した。実施例7で述べたように調製したカソードパウチセルを30℃で3時間かけて完全に充電した(C/3)。次いで、セルを30℃で3時間かけて完全に放電した。これらのステップを100サイクル繰り返し、全ての放電容量を記録した。各サイクルでの放電容量をステップ2での容量で割ることにより、容量維持率を計算した。表1に示されるように、1.0%のGNR(長さ20μM、純度>99%)を含むニッケルマンガンコバルトカソードと、グラファイトアノードとを備えた6つのセルに関するデータを、ニッケルマンガンコバルトカソード粒子と、カーボンブラックを含むグラファイトアノードとを備えた5つのセルに関するデータと比較した。
【表1】

上記で示したように、ニッケルマンガンコバルトカソードに1.0%のGNR(長さ20μM、純度>99%)が含まれたとき、容量の大幅な向上が観察された。

実施例11:GNR添加剤を含むアノードを用いたパウチセルサイクリング
【0179】
サイクル寿命試験を以下のように実施した。実施例7で述べたように調製したカソードパウチセルを30℃で3時間かけて完全に充電した(C/3)。次いで、セルを30℃で3時間かけて完全に放電した。これらのステップを100サイクル繰り返し、全ての放電容量を記録した。各サイクルでの放電容量をステップ2での容量で割ることにより、容量維持率を計算した。ニッケルマンガンコバルトカソード粒子と、1.0%のGNR(長さ20μM、純度>99%)を含むグラファイトアノードとを含む6つのセルに関するデータ及びニッケルマンガンコバルトカソードと、0.5%のGNR(長さ20μM、純度>99%)を含むグラファイトアノードとを含む6つのセルに関するデータを、ニッケルマンガンコバルトカソードと、カーボンブラックを含むグラファイトアノードとを備えた5つのセルに関するデータと比較した。この結果を表3に示す。
【表2】
上記で示したように、グラファイトアノードが0.5%のGNR(長さ20μM、純度>99%)又は1.0%のGNR(長さ20μM、純度>99%)を含んでいたとき、容量の大幅な向上が観察された。

実施例12:GNR添加剤を含むスーパーキャパシタの最適化
【0180】
スーパーキャパシタを従来の手段によって作製した。図25は、スーパーキャパシタのカーボンブラック電極の1つが1.0%のGNR(長さ20μM、純度>99%)を含むときのキャパシタンスの結果を示す。1.0%のGNRが含まれるとき、図26に示されるように、電極層の厚さが増加するにつれて、曲線の面積(すなわちキャパシタンス)が増加する。対照的に、GNRが電極に含まれていないとき、図26に示されるように、曲線内の面積(すなわちキャパシタンス)は、約200μmで横ばいになる。キャパシタンスと、電極層の厚さと、電極内のGNRの有無との関係を図27にまとめる。上記の結果は、スーパーキャパシタのカーボンブラック電極に1%のGNRを添加すると、1cm当たりのキャパシタンスが3倍増加することを示す。これらの結果により、キャパシタ当たりの金属層をより少なくし、且つ電極層をより厚くして、層当たりのキャパシタンスをより高くして、より高いエネルギー密度を実現することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
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【国際調査報告】