(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】てんかんによって誘発された脳損傷診断用マーカーとしてのネオゲニンの用途
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240416BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240416BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20240416BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
G01N33/53 D
A61K45/00 ZNA
A61P25/00
A61P25/08
A61K38/05
C12N15/115 Z
C07K16/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563085
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 KR2022003085
(87)【国際公開番号】W WO2022220403
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0050037
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】510058863
【氏名又は名称】ザ カトリック ユニバーシティ オブ コリア インダストリー-アカデミック コーオペレイション ファウンデーション
(71)【出願人】
【識別番号】519137394
【氏名又は名称】チャ ユニバーシティ インダストリー-アカデミック コオペレーション ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ギョン-オク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジェ ホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、イン-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】シム、ジェ ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミ-ヘ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユ ジン
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA14
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA06
4H045AA11
4H045DA76
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、てんかんによって誘発された脳損傷診断用マーカーとしてのネオゲニン(neogenin)の用途に関する。てんかんにより脳損傷が誘発された場合、切断されたネオゲニンが増加するので、本発明による組成物を用いててんかんによって誘発された脳損傷を容易かつ迅速に診断でき、脳損傷に起因する疾患の治療剤の開発のための標的として活用できる。
【選択図】
図1c
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定できる製剤を有効成分として含むてんかんによって誘発された脳損傷診断用組成物。
【請求項2】
前記切断されたネオゲニンは、てんかんによって誘発された脳損傷の発生時にレベルが増加することを特徴とする、請求項1に記載の診断用組成物。
【請求項3】
前記てんかんは、てんかん重積状態(status epilepticus;SE)であることを特徴とする、請求項1に記載の診断用組成物。
【請求項4】
前記切断されたネオゲニンのレベルを測定できる製剤は、前記切断されたネオゲニンに特異的な抗体またはアプタマーであることを特徴とする、請求項1に記載の診断用組成物。
【請求項5】
てんかん患者群を対象とするてんかんによって誘発された脳損傷診断のための組成物であって、
前記組成物は、切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定できる製剤を有効成分として含むことを特徴とする、てんかんによって誘発された脳損傷診断のための組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物を有効成分として含む、てんかんによって誘発された脳損傷診断用キット。
【請求項7】
被検体から分離された生物学的試料において切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定する段階を含む、てんかんによって誘発された脳損傷診断に必要な情報を提供する方法。
【請求項8】
前記被験体は、ヒトを含む哺乳類であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記生物学的試料は、海馬由来試料であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、測定した前記切断されたネオゲニンのレベルが対照群の切断されたネオゲニンのレベルと比較して増加した場合、てんかんによって誘発された脳損傷であると判定する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記対照群は、正常人またはてんかん重積状態(status epilepticus;SE)を伴わないてんかん患者から分離された生物学的試料であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記切断されたネオゲニンのレベルは、ウェスタンブロット、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)、放射免疫分析(RIA:radioimmunoassay)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)及び免疫沈降分析法(immunoprecipitation assay)からなる群から選ばれる1つ以上の方法で測定されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
(a)てんかん重積状態(status epilepticus;SE)患者から分離された生物学的試料に候補物質を処理する段階、
(b)前記試料の切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定する段階、及び
c)候補物質非処理群に比べて切断されたネオゲニンのレベルを減少させる場合、前記物質は、てんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用物質であると判定する段階を含む、てんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用物質をスクリーニングする方法。
【請求項14】
前記試料は、海馬由来試料であることを特徴とする、請求項13に記載のスクリーニングする方法。
【請求項15】
前記(b)段階の測定は、ウェスタンブロット、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)、放射免疫分析(RIA:radioimmunoassay)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)及び免疫沈降分析法(immunoprecipitation assay)からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項13に記載のスクリーニングする方法。
【請求項16】
ネオゲニン(neogenin)切断抑制剤を有効成分として含むてんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項17】
前記抑制剤は、DAPT(N-[N-(3,5-Difluorophenacetyl)-L-alanyl]-S-phenylglycinet-butyl ester)であることを特徴とする、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
ネオゲニン(neogenin)切断抑制剤を有効成分として含む組成物を、これを必要とする個体に投与する段階を含む、てんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療方法。
【請求項19】
ネオゲニン(neogenin)切断抑制剤を有効成分として含む組成物のてんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用途。
【請求項20】
てんかんによって誘発された脳損傷治療用薬剤を製造するためのネオゲニン(neogenin)切断抑制剤の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、てんかんによって誘発された脳損傷を診断するための組成物、これを含む診断用キット、これを用いたてんかんによって誘発された脳損傷の診断に必要な情報を提供する方法及びてんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用物質をスクリーニングする方法などに関する。
【0002】
本発明は、2021年4月16日付で出願された大韓民国特許出願第10-2021-0050037号に基づく優先権を主張し、前記出願の明細書及び図面に開示されたすべての内容は、本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
てんかん(epilepsy)は、神経細胞の一部が短時間で過度な電気を発生させて繰り返し発作が発生する慢性化した疾患群で、神経生物学的、精神的、認知的、社会的変化を伴う深刻な神経疾患である。
【0004】
てんかんは、アルツハイマー病(Alzheimer)及び脳卒中(Stroke)に続いて3番目に一般的な神経系疾患で、世界人口の約0.5~2%がてんかんを患っている。また、世界中で毎年10万人当たり45人程度で新しい患者が発生しており、国内には約30~40万人のてんかん患者がいると推定されている。
【0005】
一方、ニューロンの死を主な特徴とする海馬硬化症(Hippocampal sclerosis)は、側頭葉てんかん患者でよく観察される病変で、長期間の繰り返し発作を原因とみなすことができる。
【0006】
海馬硬化症は、海馬のサイズが小さくなる疾患であるため、てんかんの後遺症として記憶喪失の他にもうつ病や不安症など精神科的疾患が現れることもあり、ひどい場合は死亡に至ることもある。
【0007】
したがって、てんかんによる過度な発作からニューロンを保護することにより、海馬の機能喪失と誤配線(miswiring)を防止できる方法を発見する必要性がある。
【0008】
また、海馬ニューロンの死の基礎となるメカニズムは、興奮毒性壊死(excitotoxic necrosis)及び遺伝子依存的な(gene-dependent)アポトーシス信号(apoptotic signaling)を介してプログラミングされる細胞死(programmed cell death)の特徴をすべて有しているので、発作の抑制とともに興奮毒性によるニューロンの死を防御できる薬物が患者に提供されれば、より効果的にてんかんを治療できるだろう。
【0009】
一方、IgGスーパーファミリーに属する受容体であるネオゲニンは、4つのタイプ(Ig-like loopドメイン、fibronectin IIIドメイン、Transmembraneドメイン及び細胞内ドメインであるP seriesドメイン)の主なドメインを有しており、多様な信号経路のスプライス酵素(splice enzyme)によって多様な切断形態を持つことができるように複数のスプライス部位(splice site)を有しており、ニューロン幹細胞の分化、肝臓のイオン機能媒介体、乳房形態形成因子としての役割まで、非常に多様な機能を持つことができることが知られている(Cole SJ,Bradford D and Cooper HM、2007;Wilson NH and Key B,2007)。
【0010】
現在、海馬のCA3下位領域(subfield)と粒細胞下帯(subgranular zone)でネオゲニンが発現するので、ニューロン幹細胞と顆粒ニューロン(granule neuron)でもネオゲニンが発現すると考えられる。
【0011】
しかし、これまでネオゲニンが脳損傷と関連があるという内容については知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、てんかんによって誘発される脳損傷を早期に診断する方法及びこれを予防又は治療できる製剤を開発するために鋭意研究した結果、てんかんにより脳損傷が誘発される場合、切断された形態のネオゲニンが増加し、ネオゲニンの切断を抑制する場合、海馬においてネクロトーシスが減少することを確認することにより、本発明を完成した。
【0013】
そこで、本発明の目的は、切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定できる製剤を有効成分として含むてんかんによって誘発された脳損傷診断用組成物を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、てんかん患者群を対象とするてんかんによって誘発された脳損傷診断のための組成物であって、前記組成物は、切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定できる製剤を有効成分として含むことを特徴とする組成物を提供することである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、前記本発明の組成物を有効成分として含むてんかんによって誘発される脳損傷診断用キットを提供することである。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、被検体から分離された生物学的試料において切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定する段階を含む、てんかんによって誘発された脳損傷診断に必要な情報を提供する方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、(a)てんかん重積状態(status epilepticus;SE)患者から分離された生物学的試料に候補物質を処理する段階、(b)前記試料の切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定する段階、(c)候補物質非処理群に比べて切断されたネオゲニンのレベルを減少させる場合、前記物質は、てんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用物質であると判定する段階を含む、てんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用物質をスクリーニングする方法を提供することである。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、ネオゲニン(neogenin)切断抑制剤を有効成分として含むてんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用薬学的組成物を提供することである。
【0019】
しかし、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は、以下の記載から当業者が明確に理解できるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記目的を達成するため、本発明は、切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定できる製剤を有効成分として含むてんかんによって誘発された脳損傷診断用組成物を提供する。
【0021】
本発明の一実施例において、前記切断されたネオゲニンは、てんかんによって誘発された脳損傷の発生時にレベルが増加するものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0022】
本発明の他の実施例において、前記てんかんは、てんかん重積状態(status epilepticus;SE)であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0023】
本発明のさらに他の実施例において、前記切断されたネオゲニンのレベルを測定できる製剤は、前記切断されたネオゲニンに特異的な抗体またはアプタマーであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0024】
また、本発明は、てんかん患者群を対象とするてんかんによって誘発された脳損傷診断のための組成物であって、前記組成物は、切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定できる製剤を有効成分として含むことを特徴とする組成物を提供する。
【0025】
また、本発明は、本発明による組成物を有効成分として含むてんかんによって誘発された脳損傷診断用キットを提供する。
【0026】
また、本発明は、被検体から分離された生物学的試料において切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定する段階を含む、てんかんによって誘発された脳損傷診断に必要な情報を提供する方法を提供する。
【0027】
また、本発明は、被検体から分離された生物学的試料において切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定する段階を含む、てんかんによって誘発された脳損傷診断方法を提供する。
【0028】
本発明の一実施例において、前記被験体は、ヒトを含む哺乳類であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0029】
本発明の他の実施例において、前記生物学的試料は、海馬由来試料であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0030】
本発明のさらに他の実施例において、前記方法は、測定した前記切断されたネオゲニンのレベルが対照群の切断されたネオゲニンのレベルと比較して増加した場合、てんかんによって誘発された脳損傷であると判定する段階をさらに含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0031】
本発明のさらに他の実施例において、前記対照群は、正常人またはてんかん重積状態(status epilepticus;SE)を伴わないてんかん患者から分離された生物学的試料であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0032】
本発明のさらに他の実施例において、前記切断されたネオゲニンのレベルは、ウェスタンブロット、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)、放射免疫分析(RIA:radioimmunoassay)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)及び免疫沈降分析法(immunoprecipitation assay)からなる群から選ばれる1つ以上の方法で測定されるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0033】
また、本発明は、切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定できる製剤の、てんかんによって誘発された脳損傷診断用途を提供する。
【0034】
また、本発明は、(a)てんかん重積状態(status epilepticus;SE)患者から分離された生物学的試料に候補物質を処理する段階、(b)前記試料の切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定する段階、及び(c)候補物質非処理群に比べて切断されたネオゲニンのレベルを減少させる場合、前記物質は、てんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用物質であると判定する段階を含む、てんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0035】
本発明の一実施例において、前記試料は、海馬由来試料であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0036】
本発明のさらに他の実施例において、前記(b)段階の測定は、ウェスタンブロット、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)、放射免疫分析(RIA:radioimmunoassay)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)、及び免疫沈降分析法(immunoprecipitation assay)からなる群から選ばれてもよいが、これに制限されるものではない。
【0037】
また、本発明は、ネオゲニン(neogenin)切断抑制剤を有効成分として含むてんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0038】
本発明の一実施例において、前記抑制剤は、DAPT(N-[N-(3,5-Difluorophenacetyl)-L-alanyl]-S-phenylglycinet-butyl ester)であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0039】
また、本発明は、ネオゲニン(neogenin)切断抑制剤を有効成分として含む組成物を、これを必要とする個体に投与する段階を含む、てんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療方法を提供する。
【0040】
また、本発明は、ネオゲニン(neogenin)切断抑制剤を有効成分として含む組成物のてんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用途を提供する。
【0041】
また、本発明は、てんかんによって誘発された脳損傷治療用薬剤を製造するためのネオゲニン(neogenin)切断抑制剤の用途を提供する。
【発明の効果】
【0042】
本発明は、てんかんによって誘発された脳損傷を診断するためのネオゲニンの用途に関し、本発明による診断用組成物を用いて脳損傷を早期に迅速かつ正確に診断及び予測できる効果があり、さらにてんかんによって誘発された脳損傷治療剤の開発のための標的として活用できる効果がある。
【0043】
さらに、γ―セクレターゼ抑制剤であるDAPTは、てんかん発作によって誘発される切断されたネオゲニンの生成とネクロトーシス(necroptosis)を効果的に抑制するので、てんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用薬学的組成物の有効成分として有用に使用できるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図1は、ピロカルピン(pilocarpine)により誘導されたSE(status epilepticus)発生後、3日、7日目の海馬におけるネオゲニンの発現態様を示す図である。 具体的には、
図1aは、ピロカルピン誘導SE発生後のネオゲニン及びGFAPに対して二重免疫蛍光を行った結果を示す図である(スケールバー=50μm)。
図1bは、ピロカルピン誘導SE発生後、3日、7日目の全長(full-length)ネオゲニンと切断された(truncated)ネオゲニンに対するウェスタンブロット結果を示す図である(全長ネオゲニン:240kDa;切断されたネオゲニン:160kDa)。
図1cは、ピロカルピン誘導SE発生後、3日、7日目の全長ネオゲニン(左)と切断されたネオゲニン(右)を定量化した結果を示す図である。
【
図2】
図2は、海馬においてネオゲニンの発現態様をin vitro SE(status epilepticus)モデルにおいて確認した結果を示す図である。 具体的には、
図2aは、培養した海馬細胞にカイニン酸を24時間処理した後、ニューロンにおいてネオゲニン及びMAP2に対して二重免疫蛍光を行った結果を示す図である(スケールバー=20μm)。
図2bは、培養した海馬細胞にカイニン酸を24時間処理した後、ニューロンにおいてネオゲニン及びMAP2の発現レベルを定量化した図である。
図2cは、培養した海馬細胞にカイニン酸を24時間処理した後、星状膠細胞においてネオゲニン及びGFAPに対して二重免疫蛍光を行った結果を示す図である(スケールバー=50μm)。
図2dは、培養した海馬細胞にカイニン酸を24時間処理した後、星状膠細胞においてネオゲニン及びGFAPの発現レベルを定量化した図である。
【
図3】
図3は、ピロカルピン誘導SE発生後の海馬内のネクロトーシス(necroptosis)を示す図である。 具体的には、
図3aは、SE発生後、3日、7日目に海馬のCA3領域と歯状回門に対するクレシルバイオレット染色結果を示す図である(スケールバー=100μm)。
図3bは、SE発生後、3日、7日目にネクロトーシスの分子マーカーであるpMLKLに対してウェスタンブロットを行った結果を示す図である。
図3cは、SE発生後、3日、7日目にネクロトーシスの分子マーカーであるpMLKLの発現を定量化した図である。
【
図4】
図4は、ネオゲニン切断の抑制と海馬損傷との関連性を示す図である。 具体的には、
図4aは、培養した海馬細胞にNMDA及び/又はDAPT1(ネオゲニン切断抑制剤)を処理した後、ネオゲニン及びMAP2に対して二重免疫蛍光を行った結果を示す図である(スケールバー=20μm)。
図4bは、培養した海馬細胞にNMDA及び/又はDAPT1を処理した後、MTT分析を行った結果を示す図である(
*p<0.05、
**p<0.01 vs 対照群;#p<0.05 vs NMDA処理群)。
図4cは、培養した海馬細胞にNMDA及び/又はDAPT1を処理した後、MLKL及びネクロトーシス抑制剤であるpMLKLに対するウェスタンブロットの結果(左)及びこれを定量化した(右)図である。
【
図5】
図5は、急性発作後、ネクロトーシスにつながるネオゲニン下流の信号経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明者らは、てんかんによって誘発される脳損傷を早期に診断する方法及びこれを予防又は治療できる製剤を開発するために鋭意研究した結果、てんかんにより脳損傷が誘発される場合、切断された形態のネオゲニンが増加し、ネオゲニンの切断を抑制する場合、海馬においてネクロトーシスが減少することを確認することにより、本発明を完成した。
【0046】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0047】
本発明の一実施例によれば、ピロカルピン(pilocarpine)を投与しててんかんを誘導した動物モデルの海馬において切断された形態のネオゲニンが増加したことを確認した(実験例1参照)。
【0048】
本発明の他の実施例によれば、培養したラットの海馬にカイニン酸を処理しててんかん発作を誘導した結果、ニューロンと星状膠細胞の両方でネオゲニンの発現が減少したことを確認した(実験例2参照)。
【0049】
本発明のさらに他の実施例によれば、ピロカルピンを投与しててんかんを誘導した動物モデルの海馬においててんかん発作によりネクロトーシスが誘導され、海馬が損傷することを確認した(実験例3参照)。
【0050】
本発明のさらに他の実施例によれば、ネオゲニンの切断を抑制することにより神経毒性からニューロンを保護でき、てんかん発作により誘導されるネクロトーシスを減少させることができることを確認した(実験例4参照)。
【0051】
これらの結果により、本発明者らは、てんかんにより脳損傷が誘発された場合、そうでない場合に比べて細胞内での切断されたネオゲニンが増加していることを確認することにより、ネオゲニンを脳損傷の発症の有無を診断できる診断用マーカーとして使用できるという事実を確認した。
【0052】
さらに、本発明者らは、ネオゲニン切断抑制剤であるDAPTを処理する場合、SE発生後のネクロトーシス(necroptosis)のマーカーであるpMLKLの発現が減少したことを確認することにより、切断された形態のネオゲニン生成抑制を通じて脳損傷の程度を予防、改善、または治療できることを確認した。
【0053】
そこで、本発明は、切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定できる製剤を有効成分として含むてんかんによって誘発された脳損傷診断用組成物を提供しうる。
【0054】
本明細書で使用される用語の「ネオゲニン(neogenin)」は、NEO 1遺伝子によって暗号化されるタンパク質で、海馬領域で高く発現されるもので、ヒトの場合、GenBank:AAC51287.1,GenBank:AAB17263.1のような配列を有することが知られているタンパク質であり、ヒト以外にもこれに対応する多様な個体由来のネオゲニンをすべて制限なく含んでもよい。
【0055】
本発明において特に説明がない限り、ネオゲニンは切断されていない状態の全長(full-length)ネオゲニンを意味する。
【0056】
本明細書で使用される用語の「切断されたネオゲニン(truncated neogenin)」は、多様な信号経路のスプライス酵素(splice enzyme)による複数の切断形態のうち1つであってもよく、好ましくは、ネオゲニンにある4つの切断位置のうちPドメインを標的とし、タンパク質分解酵素であるγ-セクラターゼ(gamma-secretase)によりPドメインが切断された形態であってもよい。
【0057】
前記「Pドメイン」は、ネオゲニンの細胞内ドメイン(intracellular domain)で、P1、P2及びP3ドメインからなり、ヒト以外にもこれに対応する多様な個体由来ネオゲニンでのconserved domainで、例えば、Pドメインは、配列番号1または2の配列を有するドメインであってもよい。
【0058】
本発明の一実施例によれば、切断されたネオゲニンは、PドメインのP1ドメイン部分が切断されたもので、全長ネオゲニンの分子量は、240kDaであったが、P1ドメイン部分が切断されたネオゲニンの分子量は、160kDaであった(
図5参照)。
【0059】
本発明において、前記切断されたネオゲニンは、てんかんによって誘発された脳損傷の発生時にレベルが増加するものであってもよい。
【0060】
本明細書で使用される用語の「てんかん(epilepsy)」は、脳の異常な過興分と過同期化によって神経細胞の一部が短時間で過度な電気を発生させ、繰り返し発作(seizure)が発生する慢性化した疾患群で、神経生物学的、精神的、認知的、社会的変化を伴う深刻な神経疾患を意味する。てんかんにより神経細胞の異常過剰興奮性(hyperexcitability)による興奮毒性(excitotoxicity)が誘発され、てんかんによる病理学的損傷がよく現れる大脳部位のうち、海馬(hippocampus)内で海馬硬化症(hippocampal sclerosis)、膠質化(gliosis)、異常神経発生(abnormal neurogenesis)と歯状回顆粒細胞異常細胞構築(cytoarchitectural abnormality of dentate granule cells)及び異常シナプス回路形成(aberrant synpatic circuit)などが現れることがあり、前記のような海馬内の病理学的現象が進行することにより、慢性てんかん発作(chronic epileptic seizure)が発生し、認知及び記憶障害だけでなく、薬物治療にも反応しない製剤不応性難治性てんかんが発生する。
【0061】
本発明において、前記てんかんは、てんかん重積状態(status epilepticus;SE)であってもよい。
【0062】
前記「てんかん重積状態(status epilepticus;SE)」とは、てんかん発作が30分以上持続するか、意識が回復していない状態で繰り返し発作が発生する状態を意味する。
【0063】
本発明において、前記てんかんは、ヒトを含む哺乳類で発症するものであってもよく、例えば、前記哺乳類は、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ウサギ、ウマ、ヒツジ、ハムスター、ハリネズミ、フェレット(ferret)、またはギニアピグ(guinea pig)であってもよい。
【0064】
本明細書で使用される用語の「ネクロトーシス(necroptosis)」とは、プログラミングされて現れる細胞壊死(programmed necrosis)を意味するもので、ネクロトーシスは、アポトーシス(apoptosis)とは異なり、カスパーゼ(caspase)活性化なしに起こる細胞死で、主に病的な状況で起こる細胞死である。
【0065】
本発明において、前記切断されたネオゲニンのレベルを測定できる製剤は、前記切断されたネオゲニンに特異的な抗体またはアプタマーであってもよい。
【0066】
本明細書で使用される用語の「抗体」とは、抗原性部位に対して指示される特異的なタンパク質分子を意味する。本発明の目的上、抗体はマーカータンパク質に対して特異的に結合する抗体を意味し、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体及び組換え抗体をすべて含む。また、抗原-抗体結合性を有するものであれば、全抗体の一部も本発明の抗体に含まれ、本発明の切断されたネオゲニンに特異的に結合するすべての種類の免疫グロブリン抗体が含まれる。例えば、2つの全長の軽鎖及び2つの全長の重鎖を有する完全な形態の抗体だけでなく、抗体分子の機能的な断片、すなわち、抗原結合機能を有するFab、F(ab’)、F(ab’)2及びFvなどを含む。さらに、本発明の抗体には、本発明のネオゲニンに特異的に結合できるものであれば、ヒト化抗体、キメリック抗体などの特殊抗体と組換え抗体も含まれる。
【0067】
本明細書で使用される用語の「アプタマー(aptamer)」とは、試料内の検出しようとする分析物質と特異的に結合できる物質で、それ自体で安定した3次構造を有する一本鎖核酸(DNA、RNA、または変形核酸)を意味することで、特異的に試料内の標的タンパク質の存在を確認しうる。アプタマーの製造は一般的なアプタマーの製造方法により、確認しようとする標的タンパク質に対して選択的であり、高い結合力を有するオリゴヌクレオチドの配列を決定して合成した後、オリゴヌクレオチドの5’末端や3’末端をアプタマーチップの官能基に結合できるように、-SH、-COOH、-OHまたはNH2に変更させることにより行われてもよいが、これに制限されるものではない。
【0068】
前記ネオゲニンに特異的な抗体を含む本発明の組成物は、公知のタンパク質を感知する方法に必要な製剤をさらに含んでもよく、本組成物を用いて公知のタンパク質を感知する方法を制限なく使用して被検体(本発明では被検体から得た生物学的試料)でネオゲニンのレベルを測定してもよい。
【0069】
本明細書で使用される用語の「診断」とは、特定の疾病または疾患に対する対象(subject)の感受性(susceptibility)を判定すること、対象が特定の疾病または疾患を現在有しているか否かを判定すること、特定の疾病または疾患にかかった対象の予後(prognosis)を決定すること、またはテラメトリクス(therametrics)(例えば、治療効能に対する情報を提供するためにオブジェクトの状態をモニタリングすること)を含む。
【0070】
また、本発明は、てんかん患者群を対象とするてんかんによって誘発された脳損傷診断のための組成物であって、前記組成物は、切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定できる製剤を有効成分として含むことを特徴とする組成物を提供しうる。
【0071】
本発明において、前記患者群は、てんかん重積状態(status epilepticus;SE)を患った患者群であってもよい。
【0072】
また、本発明は、本発明によるてんかんによって誘発された脳損傷診断用組成物を含むてんかんによる脳損傷診断用キットを提供しうる。
【0073】
前記本発明のキットには、標的タンパク質をマーカーとして認識する抗体だけでなく、分析方法に適した1種類またはそれ以上の他の構成成分組成物、溶液または装置が含まれてもよい。
【0074】
また、本発明は、被検体から分離された生物学的試料において切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定する段階を含む、てんかんによって誘発された脳損傷診断に必要な情報を提供する方法を提供しうる。
【0075】
また、本発明は、被検体から分離された生物学的試料において切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定する段階を含む、てんかんによって誘発された脳損傷診断方法を提供する。
【0076】
本発明によるてんかんによって誘発された脳損傷診断方法は、脳損傷による症状が現れる前に迅速に診断でき、これにより脳損傷が悪化する前に治療剤投与などのように即時対応が可能である。
【0077】
そこで、本発明によるてんかんによって誘発された脳損傷診断方法は、てんかんによって誘発された脳損傷の治療に効果的に使用されてもよい。
【0078】
本発明において、前記被検体は、ヒトを含む哺乳類であってもよく、てんかんによって誘発された脳損傷を有するか、またはあると疑われる個体であってもよい。
【0079】
本発明において、前記生物学的試料は、海馬由来試料であってもよい。
【0080】
本発明において、測定した前記切断されたネオゲニンのレベルが対照群の切断されたネオゲニンのレベルと比較して増加した場合、てんかんによって誘発された脳損傷であると判定する段階をさらに含んでもよい。
【0081】
本発明において、対照群とは、正常人またはてんかん重積状態(status epilepticus;SE)を伴わないてんかん患者から分離された生物学的試料を意味する。
【0082】
本発明において、前記切断されたネオゲニンのレベル測定は、当業界で公知のタンパク質発現測定方法によるものであれば、測定方法が特に制限されないが、例えば、ウェスタンブロット、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)、放射免疫分析(RIA,radioimmunoassay)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)及び免疫沈降分析法(immunoprecipitation assay)からなる群から選ばれる1つ以上であってもよい。
【0083】
本明細書で使用される用語の「測定」とは、所望の物質(本発明におけるマーカータンパク質)の存在(発現)の有無を測定及び確認すること、または所望の物質の存在レベル(発現レベル)の変化を測定及び確認することをすべて含む意味である。すなわち、前記タンパク質の発現レベルを測定することは、発現の有無を測定すること(すなわち、発現の有無を測定すること)、または前記タンパク質の質的、量的変化レベルを測定することを意味する。前記測定は、定性的方法(分析)と定量的方法の両方を含めて制限なく行われてもよい。タンパク質レベルの測定において定性的方法と定量的方法の種類は、当業界でよく知られており、本明細書に記載の実験法がこれに含まれる。各方法ごとに具体的なタンパク質レベル比較方式は、当業界でよく知られている。したがって、前記目的タンパク質の検出は、切断されたネオゲニンの存在有無の検出、または前記タンパク質発現量の増加(上向き調節)または減少(下向き調節)を確認することを含む意味である。
【0084】
本発明において、前記生物学的試料は、てんかんによって誘発された脳損傷を診断するために被検体から採取されたものであれば制限なく使用されてもよく、例えば、組織、細胞、血液、血清、血漿、唾液、及び尿などが含まれてもよく、好ましくは、生物学的組織試料または細胞試料、例えば、病変組織に由来する細胞、組織、器官、微細針吸引検体、コア針生検(core needle biopsy)検体及び真空吸入生検検体からなる群から選ばれた1つ以上で測定されてもよい。前記生物学的試料は、検出または診断に使用する前に前処理してもよい。例えば、均質化(homogenization)、濾過、蒸留、抽出、濃縮、妨害成分の不活性化、試薬の添加などを含んでもよい。前記試料は、タンパク質マーカーの探知感度を増加させるために用意できるが、例えば、被験体から得られた試料は、アニオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography)、液体クロマトグラフィー、連続抽出(sequential extraction)またはゲル電気泳動などの方法を用いて前処理されてもよい。
【0085】
また、本発明は、下記段階を含むてんかんによって誘発された脳損傷の治療方法を提供しうる。
【0086】
(a)被験体から分離された生物学的試料において切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定する段階、
【0087】
(b)切断されたネオゲニンのレベルが対照群の切断されたネオゲニンのレベルと比較して増加した場合、てんかんによって誘発された脳損傷であると判定する段階、及び
【0088】
(c)てんかんによって誘発された脳損傷を治療する段階。
【0089】
本発明において、前記(c)段階において治療は、薬物治療、手術治療、迷走神経刺激術、ケトン食療法などの方法を使用してもよい。
【0090】
本発明において、前記薬物は、抗けいれん剤、例えば、テグレトール(Tegretol)、ジランチン(Dilantin)、マイソリン(Mysolin)、オルホイール(Orfil)、フェノバビタール(phenobarbital)、リボトリール(Rivotril)、ザロンチン(Zarontin)、サブリル(Sabril)、ラミクタル(Lamictal)、ゾニサミド(Zonisamide)、トパマックス(Topamax)、トリレプタル(Trileptal)、及びニューロンチン(Neurontin)からなる群から選ばれた1つ以上の抗けいれん剤であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0091】
本発明において、前記薬物は、本発明によるネオゲニン切断抑制剤を有効成分として含む薬学的組成物であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0092】
本発明において、前記手術治療は、側頭葉切除術、てんかん発生病変除去術、局所的脳皮質切除術、てんかん路遮断術、及び大脳半球切除術からなる群から選ばれる1つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0093】
また、本発明は、(a)てんかん重積状態(status epilepticus;SE)患者から分離された生物学的試料に候補物質を処理する段階、(b)前記試料の切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定する段階、及び(c)候補物質非処理群に比べて切断されたネオゲニンのレベルを減少させる場合、前記物質は、てんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用物質であると判定する段階を含む、てんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用物質をスクリーニングする方法を提供しうる。
【0094】
本発明において、前記試料は、海馬由来試料であってもよい。
【0095】
本発明において、前記(b)段階の測定は、ウェスタンブロット、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)、放射免疫分析(RIA、radioimmunoassay)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)、免疫沈降分析法(immunoprecipitation assay)からなる群から選ばれるものであってもよい。
【0096】
また、本発明は、ネオゲニン(neogenin)切断抑制剤を有効成分として含むてんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用薬学的組成物を提供しうる。
【0097】
本発明において、前記抑制剤は、γ-セクラターゼ抑制剤(gamma-secretase inhibitor)であり、例えば、(5S)-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-6-フェニル-(4R)-ヒドロキシ-(2R)-ベンジルヘキサオニル)-L-ロイシル-L-フェニルアラニンアミド((5S)-(tertbutoxycarbonylamino)-6-phenyl-(4R)-hydroxy-(2R)-benzylhexanoyl)-L-leu-L-phe-amide,L-685,458),(S,S)-2-[2-(3,5-ジフルオロフェニル)-アセチルアミノ]-N-(1-メチル-2-オキソ-5-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン-3-イル)-プロピオンアミド((S,S)-2-[2-(3,5-difluorophenyl)-acetylamino]-N-(1-methyl-2-oxo-5-phenyl-2,3-dihydro-1H-benzo[e][1,4]diazepin-3-yl)-propionamide,compound E)、及びDAPT(N-[N-(3,5-Difluorophenacetyl)-L-alanyl]-S-phenylglycinet-butyl ester)からなる群から選ばれてもよく、好ましくは、DAPT(N-[N-(3,5-Difluorophenacetyl))-L-alanyl]-S-phenylglycinet-butyl ester)であってもよいが、これに制限されず、ネオゲニンの切断を抑制できるものであれば、すべて含まれてもよい。
【0098】
本発明において「薬学的組成物」とは、疾患の予防または治療を目的として製造されたものを意味し、それぞれ通常の方法によって多様な形態で剤形化して使用されてもよい。例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップなどの経口型剤形で剤形化してもよく、外用剤、坐剤及び滅菌注射用液の形態で剤形化して使用されてもよい。
【0099】
本発明による薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常使用される適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含んでもよい。前記賦形剤は、例えば、希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、吸着剤、保湿剤、フィルム-コーティング物質、及び制御放出添加剤からなる群から選ばれる1つ以上であってもよい。
【0100】
本発明による薬学的組成物は、それぞれ通常の方法により散剤、顆粒剤、徐放性顆粒剤、腸溶性顆粒剤、液剤、点眼剤、エルシリック剤、乳剤、懸濁液剤、酒精剤、トローチ剤、芳香水剤、リモナーデ剤、錠剤、徐放性錠剤、腸溶性錠剤、舌下錠、硬質カプセル剤、軟質カプセル剤、徐放性カプセル剤、腸溶性カプセル剤、丸剤、チンキ剤、軟調エキス剤、乾燥エキス剤、流動エキス剤、注射剤、カプセル剤、灌流液、硬膏剤、ローション剤、パスタ剤、噴霧剤、吸入剤、パッチ剤、滅菌注射液、またはエアロゾルなどの外用剤などの形態で剤形化して使用されてもよく、前記外用剤は、クリーム、ジェル、パッチ、噴霧剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、パスタ剤またはカタプラズマ剤などの剤形を有してもよい。
【0101】
本発明による薬学的組成物に含まれてもよい担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、オリゴ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェイト、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、非晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。
【0102】
製剤化する場合は、通常、使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製される。
【0103】
本発明による錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤の添加剤として、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、乳糖、白糖、ブドウ糖、果糖、D-マンニトール、沈降炭酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸一水素カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、精製ラノリン、微結晶セルロース、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カオリン、尿素、コロイド状シリカゲル、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMC1928、HPMC2208、HPMC2906、HPMC2910、プロピレングリコール、カゼイン、乳酸カルシウム、プリモゼルなどの賦形剤、ゼラチン、アラビアゴム、エタノール、寒天粉、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ブドウ糖、精製水、カゼインナトリウム、グリセリン、ステアリン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、微結晶セルロース、デキストリン、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシメチルセルロース、精製シェラック、デンプン糊、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの結合剤が使用されてもよく、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トウモロコシデンプン、寒天粉、メチルセルロース、ベントナイト、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クエン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、無水ケイ酸、1-ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン、イオン交換樹脂、酢酸ポリビニル、ホルムアルデヒド処理カゼイン及びゼラチン、アルギン酸、アミロース、グアルゴム(Guar gum)、重曹、ポリビニルピロリドン、リン酸カルシウム、ゲル化澱粉、アラビアゴム、アミロペクチン、ペクチン、ポリリン酸ナトリウム、エチルセルロース、白糖、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、D-ソルビトール液、硬質無水ケイ酸などの崩壊剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、水素化植物油(Hydrogenated vegetable oil)、タルク、石松子、カオリン、ワセリン、ステアリン酸ナトリウム、カカオ脂、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸マグネシウム、ポリチレングリコールPEG4000、PEG6000、流動パラフィン、水素添加大豆油(Lubri wax)、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリル硫酸ナトリウム、酸化マグネシウム、マクロゴール(Macrogol)、合成ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油、パラフィン油、ポリエチレングリコール脂肪酸エーテル、デンプン、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、dl-ロイシン、硬質無水ケイ酸などの滑沢剤が使用されてもよい。
【0104】
本発明による液剤の添加剤としては、水、希塩酸、希硫酸、クエン酸ナトリウム、モノステアリン酸スクロース類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(ツインエステル)、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル類、ラノリンエーテル類、ラノリンエステル類、酢酸、塩酸、アンモニア水、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、プロルアミン、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが使用されてもよい。
【0105】
本発明によるシロップ剤には白糖の溶液、他の糖類または甘味剤などが使用されてもよく、必要に応じて芳香剤、着色剤、保存剤、安定剤、懸濁化剤、乳化剤、粘稠剤などが使用されてもよい。
【0106】
本発明の乳剤には精製水が使用されてもよく、必要に応じて乳化剤、保存剤、安定剤、芳香剤などが使用されてもよい。
【0107】
本発明による懸濁剤には、アカシア、トラガカンタ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMC1828、HPMC2906、HPMC2910など懸濁化剤が使用されてもよく、必要に応じて界面活性剤、保存剤、安定剤、着色剤、芳香剤が使用されてもよい。
【0108】
本発明による注射剤には、注射用蒸留水、0.9%塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース+塩化ナトリウム注射液、ピーイージー(PEG)、ラクトリンゲル注射液、エタノール、プロピレングリコール、不揮発性油-ごま油、綿実油、落花生油、大豆油、トウモロコシ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンゼンなどの溶剤、安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、尿素、ウレタン、モノエチルアセトアミド、ブタゾリジン、プロピレングリコール、ツイン類、ニジョンチン酸アミド、ヘキサミン、ジメチルアセトアミドなどの溶解補助剤、弱酸及びその塩(酢酸と酢酸ナトリウム)、弱塩基及びその塩(アンモニア及び酢酸アンモニウム)、有機化合物、タンパク質、アルブミン、ペプトン、ガム類などの緩衝剤、塩化ナトリウムなどの等張化剤、亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)二酸化炭素ガス、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na2S2O5)、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、窒素ガス(N2)、エチレンジアミンテトラ酢酸などの安定剤、ソジウムビスルフィド0.1%、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオウレア、エチレンジアミンテトラ酢酸ジナトリウム、アセトンソジウムビスルファイトなどの硫酸化剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、塩酸プロカイン、ブドウ糖、グルコン酸カルシウムなどの無痛化剤、CMCナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ツイン80、モノステアリン酸アルミニウムなどの懸濁化剤を含んでもよい。
【0109】
本発明による坐剤には、カカオ脂、ラノリン、ウイテプゾール、ポリエチレングリコール、グリセロゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸とオレイン酸の混合物、スバナル(Subanal)、綿実油、落花生油、ヤシ油、カカオバター+コレステロール、レシチン、ラネットワックス、モノステアリン酸グリセロール、ツインまたはスパン、イムハウゼン(Imhausen)、モノレン(モノステアリン酸プロピレングリコール)、グリセリン、アデプスソリダス(Adeps solidus)、ブチラムテゴ-G(Buytyrum Tego-G)、セベスパマ16(Cebes Pharma 16)、ヘキサライドベース95、コトマ(Cotomar)、ヒドロコートSP、S-70-XXA、S-70-XX75(S-70-XX95)、ヒドロコート(Hydrokote)25、ヒドロコート711、イドロポスタール(Idropostal)、マサエストラリウム(Massa estrarium、A、AS、B、C、D、E、I、T)、マサ-MF、マスポール、マスポール-15、ネオスポスタル-エン、パラマウンド-B、スポシロ(OSI、OSIX、A、B、C、D、H、L)、坐剤基剤IVタイプ(AB、B、A、BC、BBG、E、BGF、C、D、299)、スポスタル(N、Es)、ウェコビ(W、R、S、M、Fs)、テゼスタートリグリセリド基剤(TG-95、MA、57)などの基剤が使用されてもよい。
【0110】
経口投与用固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記抽出物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混合して調製される。また、単純な賦形剤の他に、マグネシウムスチレートタルクなどの潤滑剤も使用される。
【0111】
経口投与用液状製剤としては、懸濁剤、内容液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、リキドパラフィンの他に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよい。非経口投与用製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、エチルオレートなどの注射可能なエステルなどが使用されてもよい。
【0112】
本発明による薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素及びその他の医学分野においてよく知られている要素によって決定されてもよい。
【0113】
本発明による薬学的組成物は、個別治療剤として投与するか、または他の治療剤と併用して投与されてもよく、従来の治療剤とは順次的または同時に投与されてもよく、単一または多重投与されてもよい。前記要素をすべて考慮し、副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは本発明が属する技術分野において通常の技術者によって容易に決定されてもよい。
【0114】
本発明の薬学的組成物は、個体に様々な経路で投与されてもよい。投与のすべての方式は、予想できるが、例えば、経口服用、皮下注射、腹腔投与、静脈注射、筋肉注射、脊髄周囲空間(硬膜内)注射、舌下投与、頬粘膜投与、直腸内挿入、膣内挿入、眼球投与、耳投与、鼻腔投与、吸入、口または鼻による噴霧、皮膚投与、経皮投与などによって投与されてもよい。
【0115】
本発明の薬学的組成物は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別、体重及び疾患の重症度などの様々な関連因子とともに、活性成分である薬物の種類によって決定される。
【0116】
また、本発明は、ネオゲニン(neogenin)切断抑制剤を有効成分として含む組成物を、これを必要とする個体に投与する段階を含む、てんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療方法を提供する。
【0117】
また、本発明は、ネオゲニン(neogenin)切断抑制剤を有効成分として含む組成物のてんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用途を提供する。
【0118】
また、本発明は、てんかんによって誘発された脳損傷治療用薬剤を製造するためのネオゲニン(neogenin)切断抑制剤の用途を提供する。
【0119】
本発明において、「個体」とは、てんかんによって誘発された脳損傷の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒトまたは非-ヒトの霊長類、マウス(mouse)、ラット(rat)、イヌ、ネコ、ウマ、及びウシなどの哺乳類を意味する。
【0120】
本発明において「投与」とは、任意の適切な方法で個体に所定の本発明の組成物を提供することを意味する。
【0121】
本明細書で使用される用語の「予防」とは、てんかんによって誘発される脳損傷の発生前に先制的に本発明による薬学的組成物の投与により、てんかんによって誘発される脳損傷を抑制させるか、または遅延させるすべての行為を意味するもので、てんかん発作によってニューロンに起こる細胞死であるネクロトーシス(necroptosis)を抑制することにより、ニューロンを保護することを含む。
【0122】
本明細書で使用される用語の「治療」とは、本発明による薬学的組成物の投与によっててんかんによって誘発された脳損傷の症状が好転するか、または有利に変更させるすべての行為を意味する。
【0123】
また、本発明は、ネオゲニン(neogenin)切断抑制剤を有効成分として含むてんかんによって誘発された脳損傷の予防または改善用食品組成物を提供しうる。
【0124】
本発明のネオゲニン切断抑制剤を食品添加物として使用する場合、前記ネオゲニン切断抑制剤をそのまま添加するか、または他の食品や食品成分とともに使用してもよく、通常の方法によって適宜使用してもよい。有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康または治療的処置)に応じて適宜決定されてもよい。一般に、食品または飲料の製造時、本発明のネオゲニン切断抑制剤は、原料に対して15重量%以下、または10重量%以下の量で添加されてもよい。しかし、健康及び衛生を目的とするか、または健康調節を目的とする長期間の摂取の場合、前記量は前記範囲以下であってもよく、安全性の面で何の問題もないため、有効成分は、前記範囲以上の量で使用されてもよい。
【0125】
前記食品の種類には特に制限はない。前記物質を添加できる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディー類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤などがあり、通常の意味での健康機能食品をすべて含む。
【0126】
本発明による健康飲料組成物は、通常の飲料のように、様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有してもよい。上述した天然炭水化物は、ブドウ糖および果糖などのモノサッカライド、マルトース及びスクロースなどのジサッカライド、デキストリン及びシクロデキストリンなどのポリサッカライド、及びキシリトール、ソルビトール及びエリトリトールなどの糖アルコールである。甘味剤としては、タウマチン、ステビア抽出物などの天然甘味剤や、サッカリン、アスパルテームなどの合成甘味剤などが使用されてもよい。前記天然炭水化物の割合は、本発明の組成物100mLあたり一般に約0.01~0.20g、または約0.04~0.10gである。
【0127】
前記に加えて、本発明の組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有してもよい。その他に、本発明の組成物は、天然フルーツジュース、フルーツジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有してもよい。これらの成分は独立してまたは組み合わせて使用してもよい。このような添加剤の割合はあまり重要ではないが、本発明の組成物100重量部当たり0.01~0.20重量部の範囲から選ばれるのが一般的である。
【0128】
本発明において、前記食品組成物は、健康機能性食品組成物であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0129】
本明細書において、「健康機能性食品」とは、特定保健用食品(food for special health use,FoSHU)と同じ用語で、栄養供給の他にも生体調節機能が効率的に現れるように加工された医学、医療効果の高い食品を意味するが、前記食品は、肥満の予防または改善に有用な効果を得るために錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状、丸剤などの多様な形態で製造されてもよい。
【0130】
本発明の健康機能性食品は、当業界で通常使用される方法により製造可能であり、前記製造時には、当業界で通常添加する原料及び成分を添加して製造してもよい。また、一般薬品とは異なり、食品を原料として薬品の長期服用時に発生しうる副作用などのないという長所があり、携帯性に優れている。
【0131】
本発明で使用される用語は、本発明における機能を考慮しながら、可能な限り現在広く使用されている一般的な用語を選択したが、これは当分野に従事する技術者の意図または判例、新技術の出現などによって変わり得る。また、特定の場合には、出願人が任意に選定した用語もあり、この場合、該当する発明の説明部分で詳細にその意味を記載する。したがって、本発明で使用される用語は、単なる用語の名称ではなく、その用語が有する意味と本発明の全般にわたる内容に基づいて定義されるべきである。
【0132】
本発明の明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とすると、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。本発明の明細書の全体で使用される程度の用語の「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値またはその数値に近い意味で使用され、本発明の理解を助けるために正確かつ絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。
【0133】
本発明の明細書全体において、マルクーシュ形式の表現に含まれる「これらの組み合わせ」という用語は、マルクーシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群から選ばれる1つ以上の混合または組み合わせを意味するもので、前記構成要素からなる群から選ばれる一つ以上を含むことを意味する。
【0134】
(発明の実施のための形態)
【0135】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、下記の実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0136】
[実施例]
実施例1.実験動物
6週齢のC57BL/6Nオスマウス(大韓民国、京畿道、Koatech)とSprague-Dawleyラット(18日目胚;大韓民国、京畿道、Samtako)を標準温度22±1℃及び照明時間12時間(8:00点灯~20:00消灯)の環境で自由に飼料と水を摂取できるように飼育した。動物実験は、カトリック大学校の倫理委員会(CUMS-2020-0103-01)と檀国大学校動物研究所の動物管理委員会(DKU-16-024)の承認を受けており、実験動物の管理及び使用に対する国立保健院の指針(NIH発行番号,80-23,1996年改訂)に従って行った。
【0137】
実施例2.てんかん誘導マウスモデルの作製
ピロカルピン(pilocarpine)誘導てんかんモデルは、以前に報告されているように(Cho KO et al.,2015;Jang HJ et al.,2019;Jeong KH et al.,2011;Kim JE and Cho KO,2018)作製した。具体的には、マウスにスコポラミンメチルナイトレート(scopolamine methyl nitrate;catalog no.S2250;ミズーリ,セントルイス,Sigma-Aldrich)2mg/kgとターブタリンヘミサルフェート塩(terbutaline hemisulfate salt;catalog no.P6503;カリフォルニア、Sigma-Aldrich)2mg/kgをそれぞれ腹腔内に投与し、30分後にピロカルピン塩酸塩(pilocarpine hydrochloride;catalog no.P6503;ミズーリ,セントルイス、Sigma-Aldrich)280mg/kgを投与した。ピロカルピン投与後、約3時間行動発作の重症度と長さをモニタリングした。発作段階は、Racine Scale(Racine RJ,1972)によって決定した(段階1:facial clonus、段階2:head nodding、段階3:forelimb clonus、段階4:rearing、段階5:rearing及びfalling)。持続的な全身けいれん発作(段階3~段階5)のあるマウスをSE(Status Epilepticus;てんかん重積状態)を示すものとみなし、さらなる実験のために選別した。SE発生後3時間が経過した後、ジアゼパム(diazepam)10mg/kgを腹腔内に投与して発作を終結させた。発作終結後、回復を促進するため、温度が30℃に設定されたインキュベーター(incubator)で2日間または正常体温を維持できるまで水に濡らした飼料(chow)を提供して回復を助けた。次に、犠牲前まで前記実施例1の飼育環境で飼育した。
【0138】
実施例3.1次細胞培養(Primary cell culture)
ラットの海馬ニューロンは、Hong N,Kim MH,Min CK,Kim HJ and Lee JH,2017に開示された方法を一部変形して培養した。16.5%ウレタンで母体Sprague-Dawleyラットを麻酔し、子宮から18日目のラット胎児を得た。立体顕微鏡の下でフォーセプスを用いてラット胎児の脳から海馬を分離し、HEPES-buffered Hanks’salt solution(20mM HEPES,137mM NaCl,1.3mM CaCl2,0.4mM MgSO4,0.5mM MgCl2,5.0mM KCl,0.4mM KH2PO4,0.6mM Na2HPO4,3.0mM NaHCO3及び5.6mM Glucose,pH7.4)に入れた。細胞を5mlのピペット及びflame-narrowedパスツールピペットで粉砕して解離し、遠心分離でペレット化し、2%B-27supplement、0.25%Glutamax I、及びペニシリン、ストレプトマイシン、及びアンホテリシンB(amphotericin B)をそれぞれ100U/ml、100μg/ml、及び0.025μg/mlで含み、L-グルタミンを含まないpH7.4のneurobasal培地に再懸濁した。解離した細胞を0.2mg/mlのマトリゲル(Matrigel)(米国、マサチューセッツ、ベッドフォード、BD Bioscience)でプレコート(precoated)された25mm円形カバーガラス当たり110,000cellsの密度でプレーティングし、10%CO2及び90%airの加湿化された大気で37℃の条件で成長させた。培地の75%を交換する方式で新鮮な培地を3、7及び10日に供給した。実験に使用した細胞は、少なくとも12日間、有糸分裂阻害剤(mitotic in hibitor)を含まずに培養した。
【0139】
海馬星状膠細胞(astrocyte)は、Min JO et al.,2015に開示された方法を一部変更して培養した。解離した細胞を3,500,000cells/T25 flaskの密度でプレーティングし、10%CO2及び90%airの加湿化された大気で37℃の条件で成長させた。以後、細胞が合流(confluence)に達するまで3~4日ごとに新鮮な培地を供給した。星状膠細胞は、0.5×trypsin/EDTA(catalog no.T4174;ミズーリ,セントルイス,Sigma-Aldrich)に分離し、1:9に希釈した後にプレーティングし、使用前まで約80-90%合流(confluence)に達するまで成長させた。分離された細胞は、~95%の純粋な星状膠細胞で、GFAP(glial fibrillary acidic protein)に対する抗体に免疫陽性(immunepositivity)を示したが、ニューロンや希突起膠細胞(oligodendrocyte)のマーカーに免疫反応性(immunereactivity)を示さなかった。
【0140】
実施例4.MTT assay
ラットの海馬ニューロンを96well-plateに1.4×104cells密度でシーディング(seeding)した。37℃で24時間、100μM NMDA(N-methyl-D-aspartate;catalog no.M3262;ミズーリ、セントルイス、Sigma-Aldrich)及び/又は1μM DAPT(N-[N-(3,5)-Difluorophenacetyl)-L-alanyl]-S-phenylglycine t-butyl ester;catalog no.D5942;ミズーリ,セントルイス,Sigma-Aldrich)を処理したニューロンを4時間0.5mg/mlの最終濃度でMTT(3-[4,5-dimethylthiazol-2-yl-2,5-dipheyltetrazolium bromide;catalog no.M5655;ミズーリ,セントルイス,Sigma-Aldrich)でインキュベーション(incubation)した。次に、溶液を除去し、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)を添加して不溶性の紫色のホルマザン(Formazan)生成物を溶解させた。吸光度は、microplate readerを用いて570nmの波長で測定した。対照群(nontreated cell)においてホルマザンの吸光度は、100%生存率(viability)を示す。
【0141】
実施例5.免疫蛍光法と組織学的評価(Immunofluorescence and histologic assessment)
SE発生後、3日または7日目のマウスを麻酔し、pH7.4の0.1M phosphate bufferでsalineと4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)で経心灌流(transcardially perfusion)させた。脳を摘出し、24時間パラホルムアルデヒドで固定した後、3日間30%スクロース(sucrose)溶液で抗凍結(cryoprotect)した。次に、Tissue-Tek(日本,東京,Sakura Finetechnical)に挿入して液体窒素で急速凍結した。次に、一連のcoronal section(30μm厚さ)をクライオスタット(cryostat)で切断し、染色のためにさらに処理した。
【0142】
二重免疫蛍光(double immunofluorescence)を行うため、組織切片を1時間0.01M PBSで10% normal goat serumとともにインキュベーションした後、4℃で一晩ネオゲニン(1:200;コロラド州、リトルトン、Novus Biologics)及びGFAP(1:400;カリフォルニア、テメキュラ、Chemicon Internation,Inc.)抗体とインキュベーションした。翌日、組織切片を室温で2時間、Alexa Fluor 488-conjugated anti-rabbit IgG(1:300;カリフォルニア、カールスバッド,Invitrogen)及びCy3-conjugated anti-mouse IgG(1:500;ペンシルベニア、ウエストグローブ,Jackson ImmunoResearch)とともにインキュベーションした。最後に、共焦点顕微鏡(confocal microscope)(LSM 700;ドイツ,イェーナ,Carl Zeiss,Co.,Ltd.)に組織切片を取り付けて観察した。
【0143】
組織学的評価のため、組織をスライドの上に載置し、100%、95%、90%、80%、及び70%エタノールとtap waterでそれぞれ3分ずつ再水和した後、15分間0.1%クレシルバイオレット(cresyl violet staining)溶液(catalog no.C5042;ミズーリ,セントルイス、Sigma-Aldrich)でインキュベーションした。過度な染色は、95%エタノールと0.1%氷酢酸(glacial acetic acid)で除去した後、スライドは、100%エタノール、50%エタノール/キシレン(xylene)及び100%キシレンの溶液で脱水した。組織切片をDPX mountant(catalog no.06522;ミズーリ,セントルイス,Sigma-Aldrich)で取り付け、upright microscope(BX51;日本,東京,Olympus Corp.)で視覚化した。
【0144】
実施例6.免疫細胞化学(Immunocytochemistry)
海馬ニューロンを10分間-20℃でメタノール(methanol)で固定し、5分間0.3%Triton X-100を細胞に透過させた後、1.5時間PBSで10%bovine serum albuminでブロッキング(blocking)した。次に、0.2%bovine serum albuminで補充された溶液でmouse anti-MAP2(catalog no.M9942;ミズーリ,セントルイス,Sigma-Aldrich)またはanti-GFAP(マサチューセッツ,バーリントン,Millipore)及びrabbit anti-neogen(テキサス,ダラス,Santa Cruz Biotechnology,Inc.)抗体(1:100希釈)とともに一晩4℃でインキュベーションした。PBSで洗浄した後、細胞をAlexa Fluor 488-conjugated anti-rabbit IgG(Invitrogen)及びAlexa Fluor 555-conjugated anti-mouse IgG(Invitrogen)とともに室温で1.5時間インキュベーションした。PBSで洗浄した後、細胞核をDAPIで対比染色(counterstain)した。次に、カバースリップ(coverslip)をVectashield mounting medium(カリフォルニア,バーリンゲーム,Vector Laboratories,Inc.)のあるスライドに取り付けた。Alexa Fluor 488(励起、488nm;放出、>519nm)及びAlexa Fluor 555(励起、555nm;放出、>565nm)で標識されたニューロンを共焦点顕微鏡(LSM 700;Carl Zeiss,Co.,Ltd.)で観察した。
【0145】
実施例7.ウェスタンブロット
脳組織を冷却した(chilled)ProEXTMCETi lysis buffer(大韓民国,大田,TransLab Biosciences)で溶解した。溶解物を遠心分離により精製してタンパク質を抽出するために上清液を収集した。各サンプルから同量(30~40μg)のタンパク質を8%SDS-polyacrylamide gelから分離し、ポリビニリデンジフルオリド膜(polyvinylidene difluoride membrane)に移した。次に、膜を室温で1時間、0.1%Tween-20を含むTris-buffered salineで3%bovine serum albuminでブロッキング(blocking)した後、anti-neogenin(1:2,000;Novus Biolocicals)、anti-MLKL(mixed lineage kinase domain-like pseudokinase)(1:1,000;マサチューセッツ,ダンバース,Cell Signaling Technology)、及びanti-pMLKL(phosphorylated MLKL)(1:1,000;Cell Signaling Technology)抗体とともに4℃で一晩中インキュベーションした。次に、膜を1時間室温でhorseradish peroxidase-conjugated secondary anti-rabbitまたはanti-mouse抗体(1:2,000;Novus Biologicals)とともに1時間インキュベーションした。enhanced chemiluminescence detection kit(大韓民国,大田,Elpis Biotech,Inc.)を使用してバンドを検出した後、積載対照群(loading control)でmouse monoclonal anti-β(1:2,000;Santa Cruz Biotechnology,Inc.)またはanti-α tubulin antibody(1:2,000;Santa Cruz Biotechnology,Inc.)を使用してブロットを再探索(reprobe)した。バンド免疫反応性の相対的定量化は、ImageQuant LAS 4000(日本,東京,Fujifilm)を使用して濃度計分析により行われた。
【0146】
実施例8.統計分析
すべてのデータは、平均±SEMで表記した。すべての統計分析は、Prism 9(カリフォルニア,ラホヤ,GraphPad Software,Inc.)を使用して行った。in vivoウェスタンブロット分析のため、ROUT test(Q=1%)に基づいてoutlierを除去した後、Kolmogorov-SmirnovまたはShapiro-Wilk normality testを行った。正規性検定(normality test)を通過できなかった(切断された形態のネオゲニン)データセットの場合、Kruskal-Wallis test後にDunn’s post hoc testを行った。正規性検定を通過したデータセットの場合、同じSDs(standard deviations)のassumptionに従ってone-way(MLKL及びpMLKL)またはBrown-Forsythe(全長ネオゲニン)ANOVAを行った後、Benjamini,Krieger,及びYekutieliのpost hoc two-stage step-up方法を行った。In vitro実験の場合、統計分析は、単一比較にはStudent’s t-testまたは複数の統計的比較にはBonferroni post-testを用いたone-way ANOVAを使用して行った。p-value<0.05の場合、統計的に有意性があるとみなした。
【0147】
[実験例]
実験例1.ピロカルピン誘導SE発生後の海馬においてネオゲニンの発現
ピロカルピンによる急性発作後、海馬においてネオゲニンの発現を確認した。二重免疫蛍光の結果、
図1aに示すように、sham群の海馬においてニューロン及びGFAP-陽性星状膠細胞(astrocyte)細胞の両方においてネオゲニン免疫反応性を示し、これはピロカルピン投与後、最大7日まで持続した。ウェスタンブロットの結果、
図1b及び1cに示すように、ピロカルピン投与後、3日目に全長(full-length)ネオゲニンのレベルが減少したことが示され、これはsham群のレベルと比較したとき、7日後に回復したことが確認できた。一方、ピロカルピン誘導SE発生後、3日及び7日目に切断された形態のネオゲニンのレベルで著しく上昇を示したが、これはsham群では明らかではなかった。前記結果は、ピロカルピンによって誘導された急性発作が海馬でネオゲニンの切断を誘発させることを示す。
【0148】
実験例2.in vitro発作モデルで培養した海馬細胞におけるネオゲニンの発現
in vitroで発作モデルを作製するため、SEモデルの作製に一般的に使用される(BeN-Ari Y,1985;Nadler JV,1979)カイニン酸(kainic acid)を培養したラット海馬細胞に24時間150μMで処理した。150μMカイニン酸またはビヒクル(対照群)で24時間処理した後、
図2a及び
図2bに示すように、共焦点顕微鏡でニューロンにおけるネオゲニン及びMAP2発現、及び星状膠細胞におけるネオゲニン及びGFAP発現を視覚化した。
図2b及び
図2dに示すように、カイニン酸の処理は、ニューロンと星状膠細胞の両方においてネオゲニンの発現を有意に減少させた(P<0.05 vs 対照群)。また、カイニン酸は、MAP2の発現は有意に減少させたが(P<0.01 vs 対照群)、GFAPの発現は増加させており(P<0.05 vs 対照群)、これは反応性星状膠細胞の誘導を示す。以上の結果から、in vitro発作モデルにおいてニューロンと星状膠細胞の両方でネオゲニンの発現が減少したことが確認できた。
【0149】
実験例3.ピロカルピン誘導SE発生後の海馬損傷及びネクロトーシス(necroptosis)
SE発生に誘導された海馬の損傷を確認するため、クレシルバイオレット染色(cresyl violet staining)を行った。その結果、
図3aに示すように、対照群(sham群)の海馬は、CA3ピラミッド細胞層(pyramidal cell layer)及び歯状回門(hilus of dentate gyrus)で完全な形態の細胞を示した。しかし、ピロカルピンによって誘導されたSE発生後、3日目にCA3ピラミッド細胞層(pyramidal cell layer)及び歯状回門(hilus of dentate gyrus)において核濃縮細胞(pyknotic cell)が観察され、7日目にピラミッド細胞(pyramidal cell)及び歯状回細胞(dentate hilar cell)の両方において、
図1b及び
図1cに示した切断されたネオゲニンの増加に対応する明確な核濃縮形態(pyknotic morphology)が観察された。SEによって誘導されたアポトーシスのタイプを評価するため、ネクロトーシスの重要な分子マーカーであるpMLKLに対してウェスタンブロットを行った。その結果、
図3b及び
図3cに示すように、sham群と比較して海馬においてpMLKL発現は、ピロカルピンにより誘導されたSE発生後、3日目に増加したが、急性発作後、7日目に対照群レベルに減少した。前記結果は、SE発生後、3日以内に海馬ネクロトーシスが誘導されることを意味する。
【0150】
実験例4.ネオゲニン切断の抑制がニューロンの生存に及ぼす影響
興奮毒性(excitotoxicity)がネオゲニンの発現に同様に影響を及ぼすかを確認するため、培養された海馬ニューロンに100μM NMDAを処理した。共焦点顕微鏡で観察した結果、
図4aに示すように、NMDAは、MAP2-陽性ラット海馬ニューロンにおいてネオゲニンの発現を有意に減少させることが示された(P<0.05 vs 対照群)。特に、
図4bに示すように、このようなネオゲニン発現の減少は、ネオゲニン切断抑制剤であるDAPT 1μMを24時間細胞に処理することにより改善されたことが確認できた(P<0.05 vs 対照群)。このような効果が神経保護効果があるかどうかを確認するため、MTT分析を行った。その結果、
図4bに示すように、NMDAは、海馬ニューロンの死を誘導するのに対し、1μM DAPT処理は、細胞生存を有意に改善した(P<0.01 vs 対照群)。前記結果は、海馬ニューロンがネオゲニンの切断を抑制することにより、NMDAによって誘導される神経毒性から保護できることを意味する。
【0151】
さらに、DAPT1がネクロトーシスを抑制できるかどうかを確認するため、ウェスタンブロットでpMLKLの発現程度を比較した結果、
図4cに示すように、DAPT1処理でNMDAによって誘導されたネクロトーシスが減少したことが確認できた。
【0152】
前述したように、てんかんによる急性発作によって海馬で損傷が誘発された場合、全長ネオゲニンのレベルは減少するのに対し、切断された形態のネオゲニンのレベルは、増加することが示された。また、ネオゲニン切断抑制剤を処理した場合、ネクロトーシスマーカーであるpMLKLの発現が減少することが示されており、これを通じてネオゲニン切断抑制剤をてんかんによる脳損傷の予防、改善または治療物質の有効成分として使用できることが確認された。
【0153】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解できるだろう。したがって、前述した実施例はすべての点で例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明は、てんかんによって誘発された脳損傷を診断するためのネオゲニンの用途に関し、本発明による診断用組成物を用いて脳損傷を早期に迅速かつ正確に診断及び予測できる効果があり、さらにてんかんによって誘発された脳損傷治療剤の開発のための標的として活用できる。また、γ―セクレターゼ抑制剤であるDAPTは、てんかん発作によって誘発される切断されたネオゲニンの産生とネクロトーシス(necroptosis)を効果的に抑制するので、てんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用薬学的組成物の有効成分として有用に使用でき、産業上利用可能性がある。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-12-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定できる製剤を有効成分として含むてんかんによって誘発された脳損傷
判定用組成物。
【請求項2】
前記切断されたネオゲニンは、てんかんによって誘発された脳損傷の発生時にレベルが増加することを特徴とする、請求項1に記載の
判定用組成物。
【請求項3】
前記てんかんは、てんかん重積状態(status epilepticus;SE)であることを特徴とする、請求項1に記載の
判定用組成物。
【請求項4】
前記切断されたネオゲニンのレベルを測定できる製剤は、前記切断されたネオゲニンに特異的な抗体またはアプタマーであることを特徴とする、請求項1に記載の
判定用組成物。
【請求項5】
てんかん患者群を対象とするてんかんによって誘発された脳損傷
判定のための組成物であって、
前記組成物は、切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定できる製剤を有効成分として含むことを特徴とする、てんかんによって誘発された脳損傷
判定のための組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物を有効成分として含む、てんかんによって誘発された脳損傷
判定用キット。
【請求項7】
被検体から分離された生物学的試料において切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定する段階を含む、てんかんによって誘発された脳損傷
判定に必要な情報を提供する方法。
【請求項8】
前記被験体は、ヒトを含む哺乳類であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記生物学的試料は、海馬由来試料であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、測定した前記切断されたネオゲニンのレベルが対照群の切断されたネオゲニンのレベルと比較して増加した場合、てんかんによって誘発された脳損傷であると判定する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記対照群は、正常人またはてんかん重積状態(status epilepticus;SE)を伴わないてんかん患者から分離された生物学的試料であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記切断されたネオゲニンのレベルは、ウェスタンブロット、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)、放射免疫分析(RIA:radioimmunoassay)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)及び免疫沈降分析法(immunoprecipitation assay)からなる群から選ばれる1つ以上の方法で測定されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
(a)てんかん重積状態(status epilepticus;SE)患者から分離された生物学的試料に候補物質を処理する段階、
(b)前記試料の切断されたネオゲニン(truncated neogenin)のレベルを測定する段階、及び
c)候補物質非処理群に比べて切断されたネオゲニンのレベルを減少させる場合、前記物質は、てんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用物質であると判定する段階を含む、てんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用物質をスクリーニングする方法。
【請求項14】
前記試料は、海馬由来試料であることを特徴とする、請求項13に記載のスクリーニングする方法。
【請求項15】
前記(b)段階の測定は、ウェスタンブロット、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)、放射免疫分析(RIA:radioimmunoassay)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)及び免疫沈降分析法(immunoprecipitation assay)からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項13に記載のスクリーニングする方法。
【請求項16】
ネオゲニン(neogenin)切断抑制剤を有効成分として含むてんかんによって誘発された脳損傷の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項17】
前記抑制剤は、DAPT(N-[N-(3,5-Difluorophenacetyl)-L-alanyl]-S-phenylglycinet-butyl ester)であることを特徴とする、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
てんかんによって誘発された脳損傷治療用薬剤を製造するためのネオゲニン(neogenin)切断抑制剤の使用。
【国際調査報告】