(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】新規なナノ粒子合金、及びそれを含む排気ガス制御用触媒組成物
(51)【国際特許分類】
B22F 1/054 20220101AFI20240416BHJP
B01J 35/45 20240101ALI20240416BHJP
B01J 23/89 20060101ALI20240416BHJP
B01J 23/656 20060101ALI20240416BHJP
C22C 5/04 20060101ALI20240416BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240416BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20240416BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20240416BHJP
【FI】
B22F1/054
B01J35/45 ZAB
B01J23/89 A ZNM
B01J23/656 A
C22C5/04
B22F1/00 K
B82Y30/00
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563808
(86)(22)【出願日】2022-04-15
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 US2022024947
(87)【国際公開番号】W WO2022221617
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】カルニェロ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,アン-チー
(72)【発明者】
【氏名】ターシニ,ナディア
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユエチン
【テーマコード(参考)】
4G169
4K018
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA11
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC16A
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC42A
4G169BC42B
4G169BC62B
4G169BC67B
4G169BC68B
4G169BC69A
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CA03
4G169CA07
4G169CA08
4G169CA09
4G169CA15
4G169DA06
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EA18
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EB19
4G169EC25
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB43
4G169FC08
4K018BA01
4K018BB05
4K018BD10
4K018KA70
(57)【要約】
白金族金属及び卑金属を含むナノ粒子、そのようなナノ粒子及び担体材料を含む触媒組成物、及びそのようなナノ粒子及び触媒組成物の製造方法が開示される。触媒物品及び排気ガス処理システム、及びこれらの触媒物品及び排気ガス処理システムを用いて、汚染物質を含む排ガス流を処理する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子であって、
PGMのモル百分率が、PGMとBMの合計モル数に基づいて計算して、25%~95%の範囲であり;
前記ナノ粒子が、PGMとBMの合金を含み;
前記ナノ粒子の粒径が1nm~5nmの範囲である、ナノ粒子。
【請求項2】
PGMのモル百分率が25%~75%の範囲である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記粒径が2.5nm~3.5nmの範囲である、請求項1又は2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子であって、
PGMのモル百分率が、PGMとBMの合計モル数に基づいて、50%~95%の範囲であり;
前記ナノ粒子が、PGMとBMの合金を含み;
前記ナノ粒子の粒径が4nm~7nmの範囲である、ナノ粒子。
【請求項5】
PGMのモル百分率が65%~90%の範囲である、請求項4に記載のナノ粒子。
【請求項6】
前記粒径が4nm~6nmの範囲である、請求項4又は5に記載のナノ粒子。
【請求項7】
PGMがPtである、請求項1から6のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項8】
BMがCuである、請求項1から7のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項9】
前記合金が少なくとも15at%のBMを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のナノ粒子、及び
担体材料
を含む、触媒組成物。
【請求項11】
前記担体材料がAl
2O
3又はランタン安定化ジルコニアである、請求項10に記載の触媒組成物。
【請求項12】
全長を規定する入口端及び出口端を有する基材;及び
前記基材の全長の一部に配置されたウォッシュコートを含む触媒コーティングであって、前記ウォッシュコートが請求項10又は11に記載の触媒組成物を含む、触媒コーティング
を含む、触媒物品。
【請求項13】
請求項12に記載の触媒物品を含む排気ガス処理システムであって、前記触媒物品が、内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している、排気ガス処理システム。
【請求項14】
汚染物質を含む排気ガス流を処理する方法であって、前記排気ガス流を、請求項12に記載の触媒物品、又は請求項13に記載の排気ガス処理システムに通すことを含む、方法。
【請求項15】
前記排気ガス流が、100℃~150℃の範囲の温度で前記触媒物品又は前記排気ガス処理システムに通される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示されるのは、白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子、そのようなナノ粒子及び担体材料を含む触媒組成物、及びそのようなナノ粒子及び触媒組成物の製造方法である。触媒物品及び排気ガス処理システム、並びに汚染物質を含む排気ガス流を処理する方法も開示される。
【背景技術】
【0002】
世界中の規制当局は、自動車の排出ガス規制をますます厳しくしている。リーンバーンエンジン、例えばディーゼルエンジンは、燃料が希薄な条件下で高い空燃比で標準的に運転されるため、自動車ユーザーに優れた燃費を提供する。しかし、これらのエンジンは、粒子状物質(PM)、未燃炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などの汚染物質を含む排気ガスを排出する。
【0003】
白金族金属(PGM)は、汚染物質の放出を低減するために自動車の排気制御システムに使用される最も活性の高い触媒成分の一つである。しかし、運転中に高温にさらされると、金属粒子の焼結によってPGM触媒の活性が著しく低下し、それによって触媒の比表面積が減少し、触媒効率が低下する。一般的に使用されるPGM白金(Pt)は、高温及びリーン(酸化)条件下で特に脆弱である。例えば、三元触媒(TWC)上のPGM分散体(さらされる金属の割合)は、典型的なガソリン型のエージング後に5%未満に低下し、それによってPGMの非効率的な利用、コストの増加、及び有害排出物の増加をもたらす。
【0004】
エンジン冷間始動時の排出制御は、規制が厳しくなるにつれてますます重要になっている。内燃機関の排気を処理するために使用される多くの触媒は、エンジンの排気が有害な成分を効率的に触媒変換できるほど十分に高温ではないため、比較的低温で運転している間は効果が低い。例示すると、最新のPGM触媒でさえ、その固有の活性は、例えばエンジンの冷間始動時に使用される低い排気温度で効果を発揮するにはまだ低すぎるため、低温運転時に排出が増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、低温でのPGM効率が優れた新規な触媒組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示されるのは、白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子であり、ここで:
PGMのモル百分率が、PGMとBMの合計モル数に基づいて、25%~95%の範囲であり、
前記ナノ粒子が、PGM及びBMの合金を含み、
前記ナノ粒子の粒径が、1nm~5nmの範囲である。
【0007】
いくつかの実施形態において、PGMは、Pd、Pt、及び前述の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、PGMはPtである。
【0008】
いくつかの実施形態において、BMは、Cu、Co、Mn、Ni、及び前述の任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、BMはCuである。いくつかの実施形態において、BMはCoである。いくつかの実施形態において、BMはMnである。いくつかの実施形態において、BMはNiである。
【0009】
いくつかの実施形態において、合金は少なくとも2at%のBMを含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、PGMのモル百分率は25%~75%の範囲である。いくつかの実施形態において、PGMのモル百分率は25%~67%の範囲である。いくつかの実施形態において、PGMのモル百分率は25%~65%の範囲である。いくつかの実施形態において、PGMのモル百分率は33%~65%の範囲である。
【0011】
いくつかの実施形態において、粒径は2.5nm~3.5nmの範囲である。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記ナノ粒子は本質的にPGM及びBMからなる。
【0013】
また、本明細書で開示されるのは、白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子であり、ここで:
PGMのモル百分率が、PGMとBMの合計モル数に基づいて計算して、50%~95%の範囲であり、
前記ナノ粒子が、PGM及びBMの合金を含み、
前記ナノ粒子の粒径が、4nm~7nmの範囲である。
【0014】
いくつかの実施形態において、PGMは、Pd、Pt、及び前述の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、PGMはPtである。
【0015】
いくつかの実施形態において、BMは、Cu、Co、Mn、Ni、及び前述の任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、BMはCuである。いくつかの実施形態において、BMはCoである。いくつかの実施形態において、BMはMnである。いくつかの実施形態において、BMはNiである。
【0016】
いくつかの実施形態において、合金は少なくとも2at%のBMを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、PGMの百分率は60%~95%の範囲である。いくつかの実施形態において、PGMのモル百分率は65%~90%の範囲である。いくつかの実施形態において、PGMのモル百分率は67%~88%の範囲である。
【0018】
いくつかの実施形態において、粒径は4nm~6nmの範囲である。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記ナノ粒子は本質的にPGM及びBMからなる。
【0020】
また、本明細書で開示されるのは、以下の工程:
白金族金属(PGM)の種を有機溶媒に分散させて、第1混合物を製造する工程と;
前記第1混合物に卑金属(BM)前駆体を添加して、第2混合物を製造する工程と;
前記第2混合物に配位性溶媒(coordinating solvent)を添加して、第3混合物を製造する工程と;
前記第3混合物を高温まで急速に加熱する工程と;
前記第3混合物を高温で一定時間保持する工程と;
混合物を室温まで急速に冷却する工程と;
ナノ粒子を分離する工程と
を含む方法で調製されるナノ粒子である。
【0021】
また、本明細書で開示されるのは、
本明細書に開示されたナノ粒子;及び
担体材料
を含む触媒組成物である。
【0022】
いくつかの実施形態において、担体材料は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、又は前述の任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、担体材料はAl2O3である。いくつかの実施形態において、担体材料はランタン安定化ジルコニアである。いくつかの実施形態において、担体材料は、少なくとも1つのナノ粒子の電子構造を実質的に変化させない。
【0023】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、触媒組成物の総質量に対して0.2質量%~0.4質量%含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、触媒組成物は、0.01m2/g触媒~0.1m2/g触媒の範囲の露出金属表面積(exposed metal surface area)を有する。
【0025】
また、本明細書で開示されるのは、以下の工程:
本明細書に開示されているナノ粒子を第1有機溶媒に分散させて、第1分散液を製造する工程と;
担体材料を第2有機溶媒に分散させて、第2分散液を製造する工程と;
前記第1分散液の一部を前記第2分散液に添加して、混合物を製造する工程と;
前記混合物を一定時間撹拌する工程と;
触媒組成物を分離する工程と
を含む方法で調製される触媒組成物である。
【0026】
また、本明細書で開示されるのは:
全長を規定する入口端及び出口端を有する基材;及び
基材の全長の少なくとも一部に配置されたウォッシュコートを含む触媒コーティングであって、ウォッシュコートが本明細書に開示される触媒組成物を含む、触媒コーティング
を含む触媒物品である。
【0027】
また、本明細書で開示されるのは、本明細書に開示される触媒物品を含む排気ガス処理システムであり、ここで、前記触媒物品が内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している。
【0028】
また、本明細書で開示されるのは、汚染物質を含む排気ガス流を処理する方法であり、この方法は、排気ガス流を、本明細書に開示される触媒物品、又は本明細書に開示される排気ガス処理システムに通すことを含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、汚染物質は炭化水素を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、排気ガス流は、低温で触媒物品又は排気ガス処理システムに通される。いくつかの実施形態において、低温は100℃~150℃の範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1A~Eは、約2nmのPt(
図1A)、Pt/Co(
図1B)、Pt/Mn(
図1C)、Pt/Ni(
図1D)、及びPt/Cu(
図1E)ナノ粒子の代表的な透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示し、
図1Fは、Pt及び二金属Pt/Mのナノ粒子の粒径分布を示す。
【
図2】
図2A~Dは、約5nmのPt、Pt
86Cu
14(「低Cu」)、Pt
69Cu
31(「中Cu」)、及びPt
44Cu
56(「高Cu」)ナノ粒子の代表的なTEM画像及び粒径分布を示す。
【
図3】
図3A~Dは、約2nmのPt、Pt
63Cu
37(「低Cu」)、Pt
49Cu
51(「中Cu」)、及びPt
37Cu
63(「高Cu」)ナノ粒子の代表的なTEM画像を示す。
図3E~Hは、約5nmのPt、Pt
86Cu
14(「低Cu」)、Pt
69Cu
31(「中Cu」)、及びPt
44Cu
56(「高Cu」)ナノ粒子の代表的なTEM画像を示す。
【
図4】
図4A~Dは、約5nmのPt、Pt
86Cu
14(「低Cu」)、Pt
69Cu
31(「中Cu」)、及びPt
44Cu
56(「高Cu」)ナノ粒子の代表的なTEM及びエネルギー分散型X線分光法(EDS)画像を示している。
【
図5】
図5は、約2nmのPt及び二金属Pt/Mのナノ粒子(MはNi、Mn、Co又はCuである)の代表的なX線回折(XRD)スペクトルを示す。
【
図6】
図6A、Bはそれぞれ、Al
2O
3又はランタン安定化ジルコニア(LSZ)に担持された約2nmのPt
49Cu
51ナノ粒子の代表的なTEM画像を示している。
図6Cは、Al
2O
3又はLSZに担持した約2nmのPt
63Cu
37、Pt
49Cu
51、及びPt
37Cu
63のNPの反応速度論測定を示す。
【
図7】
図7A~Dは、Al
2O
3に担持した約2nmの単金属Pt及び二金属Pt/Mのナノ粒子の触媒試験結果、すなわちライトオフ曲線(
図7A)、反応速度論測定(
図7B)、活性化エネルギー(
図7C)、及び回転頻度(
図7D)を示す。
【
図8】
図8は、約5nmのPtCuナノ粒子とPt及びCuの参照サンプル(5nm)の反応温度の関数としてのプロペン転化率を示す。
【
図9】
図9A、Bはそれぞれ、Al
2O
3に担持した約2nmのPt/Cuのナノ粒子と、Al
2O
3に担持した約5nmのPt/Cuのナノ粒子の反応速度論測定を示す。
図9C、Dはそれぞれ、Al
2O
3に担持した約2nmのPt/Cuのナノ粒子及びAl
2O
3に担持した約5nmのPt/Cuのナノ粒子の回転頻度(TOF)を示す。
【
図10】
図10A、Bは、それぞれPd及びPdCuナノ粒子の代表的なTEM画像を示し、
図10Cは、Pd及びPdCuナノ粒子の粒径分布を示す。
図10D、Eはそれぞれ、Al
2O
3担持したモノリス型Pdナノ粒子及び二金属Pd/Cuナノ粒子、及びモノリス型Ptナノ粒子及び二金属Pt/Cuナノ粒子の反応速度論測定と活性化エネルギーを示す。
【
図11】
図11は、実施例6、表4に示した触媒のCOのT50を示す。
【
図12】
図12は、実施例6、表4に示した触媒のHC(プロペン)のT50を示す。
【
図13】
図13は、実施例6、表4に示した触媒の250℃におけるNO
2の収率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
定義:
本明細書で使用される「a」又は「an」実体は、その実体の1つ以上を指し、例えば、「a」「化合物」は、特に明記しない限り、1つ以上の化合物又は少なくとも1つの化合物を指す。このように、用語「a」(又は「an」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用される。
【0033】
本明細書で使用される「[X]は[A]~[Z]の範囲である」とは、[X]が、[A]又は[Z]を含む、[A]~[Z]の範囲内の任意の値であり得ることを意味する。
【0034】
本明細書で使用される「合金」という用語は、2種以上の金属元素を組み合わせて作られた金属を指す。
【0035】
本明細書で使用される「[X]と[Y]の合計モル数に基づいて計算される[X]のモル百分率」とは、例えばナノ粒子の文脈では、以下のように計算される百分率を指す。
【0036】
【0037】
本明細書で使用される「関連する」という用語は、すなわち、「備える」、「接続される」、又は「連通する」、例えば、「電気的に接続される」、又は「流体連通する」、又はそうでなければ機能を実行するように接続されることを意味する。本明細書で使用される「関連する」という用語は、直接的に関連すること、又は間接的に関連すること、すなわち、1つ以上の他の物品又は要素を介して関連することを意味することができる。
【0038】
本明細書で使用される「平均粒径」という用語は、粒子の直径を平均的に示す粒子の特性を指す。
【0039】
本明細書で使用される「卑金属」という用語は、遷移金属又はランタニド(例えば、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、Au、又はSn)、又はそれらの酸化物を指す。本明細書では、参照を容易にするために、卑金属又は卑金属酸化物材料の濃度は、酸化物の形態ではなく、元素金属濃度で報告される。いくつかの実施形態において、卑金属は、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、前述の任意の酸化物、及び前述の任意の混合物から選択されてもよい。
【0040】
本明細書で使用される「焼成」という用語は、例えば、固体から不純物又は揮発性物質を除去するため、又はある物質を別の物質に固定するために、空気又は酸素中で固体を高温(すなわち、常温を超え)に加熱することを指す。
【0041】
本明細書で使用される「触媒」又は「触媒組成物」という用語は、化学反応を促進する材料を指す。触媒又は触媒組成物は、触媒活性種、及び触媒活性種を持つ又は担持する担体を含んでもよい。例えば、触媒活性種は、会合、分散、含浸、又は他の適切な方法によって、担体材料中又は担体材料上に配置されてもよく、担体材料の表面上に存在してもよいし、担体材料全体に分布してもよい。
【0042】
本明細書で使用される「触媒物品」という用語は、触媒コーティング組成物を有する基材を含む成形品を指す。
【0043】
本明細書で使用される「配位性溶媒」という用語は、溶解したイオンと配位することができる溶媒を指す。配位性溶媒の非限定的な例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(CH3CN)、ニトロメタン(CH3NO2)、及びニトロベンゼン(C6H5NO2)が挙げられる。
【0044】
本明細書で使用される「排気流」又は「排気ガス流」という用語は、固体又は液体の粒子状物質を含有することができる流動ガスの任意の組み合わせを指す。この流れは、ガス状成分、例えば、液体液滴、固体微粒子などの特定の非ガス状成分を含有することができるリーンバーンエンジンの排気を含んでもよい。燃焼エンジンの排気ガス流は、燃焼生成物(CO2及びH2O)、不完全燃焼生成物(一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC))、窒素酸化物(NOx)、可燃性及び/又は炭素質の粒子状物質(すす)、及び/又は未反応の酸素及び窒素をさらに含むことができる。
【0045】
本明細書で使用される「上流」及び「下流」という用語は、エンジンからテールパイプに向かうエンジン排気ガス流の流れに従った相対的な方向を指し、エンジンは上流に位置し、テールパイプ、及び汚染軽減物品、例えばフィルター及び触媒はエンジンから下流に位置する。基材の入口端は、「上流」端又は「前」端と同義である。出口端は、「下流」端又は「後」端と同義である。上流ゾーンは下流ゾーンの上流である。いくつかの実施形態において、上流ゾーンはエンジン又はマニホールドに近く、下流ゾーンはエンジン又はマニホールドから遠い。
【0046】
本明細書で使用される「流体連通する」という用語は、同じ排気ラインに配置された物品を指す。例示的には、共通の排気流は、互いに流体連通している物品を通過する。流体連通する物品は、排気ラインで互いに隣接していてもよい。あるいは、流体連通する物品は、「ウォッシュコートモノリス」と呼ばれる1つ以上の物品によって分離されていてもよい。
【0047】
本明細書で使用される「含浸された」又は「含浸」という用語は、担体材料の多孔質構造への触媒材料の浸透を意味する。
【0048】
本明細書で使用される「材料」という用語は、何かを構成する又は作ることができる要素、構成要素、又は物質を指す。
【0049】
本明細書で使用される「ナノ粒子」という用語は、長さが1nm~999nmの範囲である少なくとも1つの寸法を有する粒子を指す。
【0050】
本明細書で使用される、コーティング層に関する用語「に」及び「上に」は、同義に使用される。例示的には、「直接上に」という用語は、直接接触していることを意味する。いくつかの実施形態において、開示された物品は、第2コーティング層「上」に1つのコーティング層を含むものと呼ばれる。このような表現は、コーティング層間の直接接触が必要とされなく、介在層を有する実施形態を包含することを意図している。
【0051】
本明細書で使用される「粒径」という用語は、粒子を完全に包囲する球体の最小直径を指し、この測定は、2つ以上の粒子の凝集体とは対照的に、個々の粒子に関するものである。粒径は、例えばASTM法D4464に従って、分散液又は乾燥粉末を用いてレーザー光散乱技術により測定することができる。粒径はまた、サブミクロンサイズの粒子については走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)によって、担体含有粒子(ミクロンサイズ)については粒径分析器によって測定することもできる。TEMに加えて、一酸化炭素(CO)化学吸着法を用いて平均PGM粒径を決定することもできる。この技術は、様々なPGM種(例えば、XRD、TEM、SEMと比較して、Pt、Pdなど)を区別せず、平均粒径のみを決定する。
【0052】
本明細書で使用される「白金族金属」(PGM)という用語は、白金族金属又はその酸化物、例えば白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、前述の任意の酸化物、及び前述の任意の混合物を指す。いくつかの実施形態において、PGMは、任意の原子価状態であってもよい。
【0053】
本明細書で使用される「室温」又は「周囲温度」という用語は、15℃~25℃、例えば20℃~25℃の範囲の温度を指す。
【0054】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、統計的出現率が75%を超える特性を指す。
【0055】
本明細書で使用される「基材」という用語は、触媒組成物、例えば触媒コーティングが、例えばウォッシュコートの形態で配置されるモノリス材料を指す。いくつかの実施形態において、基材は、フロースルーモノリス及びモノリス型ウォールフローフィルターから選択される。本明細書で使用される「フロースルー基材」という用語は、軸方向に延びる平行チャネルを含む基材を指す。本明細書で使用される「ウォールフロー基材」という用語は、隣接するチャネルを含む基材を指し、ここで、隣接するチャネルが、それぞれの端部で交互に塞がれている。フロースルー基材及びウォールフロー基材は、当該技術分野において公知であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれるPCT国際出願公開第WO2016/070090号において教示されている。本明細書で使用される「モノリス型基材」とは、入口から出口まで均質かつ連続的な一体構造を指す。
【0056】
本明細書で使用される「担体」という用語は、触媒成分が適用される高表面積材料、例えば耐火性金属酸化物材料を指す。
【0057】
本明細書で使用される「ウォッシュコート」という用語は、基材に適用される材料の薄い付着性コーティングを指す。ウォッシュコート層は、基材の表面又は下層のウォッシュコート層上に配置された組成的に異なる材料の層を含む。基材は、1つ以上のウォッシュコート層を含有することができ、各ウォッシュコート層は、何らかの点で異なっていてもよく(例えば、粒径などの物理的特性が異なっていてもよい)、及び/又は化学触媒機能が異なっていてもよい。
【0058】
実施形態:
限定するものではないが、本開示のいくつかの実施形態には以下のものが含まれる。
【0059】
1.白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子であって、
PGMのモル百分率が、PGMとBMの合計モル数に基づいて計算して、25%~95%の範囲であり;
前記ナノ粒子が、PGMとBMの合金を含み;
前記ナノ粒子の粒径が1nm~5nmの範囲である、ナノ粒子。
【0060】
2.PGMのモル百分率が25%~75%の範囲である、実施形態1に記載のナノ粒子。
【0061】
3.PGMのモル百分率が25%~67%の範囲である、実施形態1に記載のナノ粒子。
【0062】
4.PGMのモル百分率が25%~65%の範囲である、実施形態1に記載のナノ粒子。
【0063】
5.PGMのモル百分率が33%~65%の範囲である、実施形態1に記載のナノ粒子。
【0064】
6.PGMのモル百分率が60%~66%の範囲である、実施形態1に記載のナノ粒子。
【0065】
7.PGMのモル百分率が45%~55%の範囲である、実施形態1に記載のナノ粒子。
【0066】
8.PGMのモル百分率が33%~40%の範囲である、実施形態1に記載のナノ粒子。
【0067】
9.前記粒径が2.5nm~3.5nmの範囲である、実施形態1から8のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0068】
10.白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子であって、
PGMのモル百分率が、PGMとBMの合計モル数に基づいて、50%~95%の範囲であり;
前記ナノ粒子が、PGMとBMの合金を含み;
前記ナノ粒子の粒径が4nm~7nmの範囲である、ナノ粒子。
【0069】
11.PGMのモル百分率が60%~95%の範囲である、実施形態10に記載のナノ粒子。
【0070】
12.PGMのモル百分率が65%~90%の範囲である、実施形態10に記載のナノ粒子。
【0071】
13.PGMのモル百分率が67%~88%の範囲である、実施形態10に記載のナノ粒子。
【0072】
14.PGMのモル百分率が80%~90%の範囲である、実施形態10に記載のナノ粒子。
【0073】
15.PGMのモル百分率が65%~75%の範囲である、実施形態10に記載のナノ粒子。
【0074】
16.前記粒径が4nm~6nmの範囲である、実施形態10から15のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0075】
17.PGMが、Pd、Pt、及び前述の組み合わせから選択される、実施形態1から16のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0076】
18.PGMがPtである、実施形態1から17のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0077】
19.BMが、Cu、Co、Mn、Ni、及び前述の任意の組み合わせから選択される、実施形態1から18のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0078】
20.BMがCuである、実施形態1から19のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0079】
21.前記合金が、少なくとも2at%(例えば、少なくとも5at%、10at%、15at%、20at%、25at%、30at%)のBMを含む、実施形態1から20のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0080】
22.以下の工程:
白金族金属(PGM)の種を有機溶媒に分散させて、第1混合物を製造する工程と;
前記第1混合物に卑金属(BM)前駆体を添加して、第2混合物を製造する工程と;
前記第2混合物に配位性溶媒を添加して、第3混合物を製造する工程と;
前記第3混合物を高温まで急速に加熱する工程と;
前記第3混合物を高温で一定時間保持する工程と;
混合物を室温まで急速に冷却して、ナノ粒子を形成する工程と;
前記ナノ粒子を分離する工程と
を含む方法で調製される、ナノ粒子。
【0081】
23.PGMが、Pd、Pt、及び前述の組み合わせから選択される、実施形態22に記載のナノ粒子。
【0082】
24.PGMがPtである、実施形態22又は23に記載のナノ粒子。
【0083】
25.前記PGMの種が1.5nm~3.5nmの範囲の粒径を有する、実施形態42に記載のナノ粒子。
【0084】
26.前記第2混合物におけるPGMの百分率が、前記第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して、25%~95%の範囲である、実施形態43に記載のナノ粒子。
【0085】
27.前記第2混合物におけるPGMの百分率が、前記第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して63%である、実施形態43又は44に記載のナノ粒子。
【0086】
28.前記第2混合物におけるPGMの百分率が、前記第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して49%である、実施形態43又は44に記載のナノ粒子。
【0087】
29.前記第2混合物におけるPGMの百分率が、前記第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して37%である、実施形態43又は44に記載のナノ粒子。
【0088】
30.前記PGMの種が4nm~6nmの範囲の粒径を有する、実施形態42に記載のナノ粒子。
【0089】
31.前記第2混合物におけるPGMの百分率が、前記第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して、50%~95%の範囲である、実施形態30に記載のナノ粒子。
【0090】
32.前記第2混合物におけるPGMの百分率が、前記第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して69%である、実施形態30又は31に記載のナノ粒子。
【0091】
33.前記第2混合物におけるPGMの百分率が、前記第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して86%である、実施形態30又は31に記載のナノ粒子。
【0092】
34.PGMがPdである、実施形態22又は23に記載のナノ粒子。
【0093】
35.前記PGMの種が2.5nm~4.5nmの範囲の粒径を有する、実施形態34に記載のナノ粒子。
【0094】
36.前記有機溶媒が、ヘキサン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ヘプタン、テトラヒドロフラン、及びアセトニトリルから選択される、実施形態22から35のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0095】
37.前記有機溶媒がヘキサンである、実施形態22から36のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0096】
38.前記BM前駆体が、Co(acac)2、Mn(acac)3、Ni(acac)2、Cu(acac)2、及び前述の任意の組み合わせから選択される、実施形態22から37のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0097】
39.前記BM前駆体がCu(acac)2である、実施形態22から38のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0098】
40.前記配位性溶媒が非ホスフィン溶媒から選択される、実施形態22から39のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0099】
41.前記配位性溶媒が、オレイルアミン、オレイン酸、1-オクタデセン、トリオクチルアミン、及び前述の任意の組み合わせから選択される、実施形態22から40のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0100】
42.前記配位性溶媒がオレイルアミンである、実施形態22から41のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0101】
43.急速に加熱することが、40℃分-1の速度で加熱することを含む、実施形態22から42のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0102】
44.前記高温が250℃~300℃の範囲である、実施形態22から43のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0103】
45.前記高温が280℃である、実施形態22から44のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0104】
46.前記一定時間が30分間である、実施形態22から45のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0105】
47.前記ナノ粒子を分離することが、少なくとも1種の逆溶媒(antisolvent)を用いる少なくとも1回の沈殿を含む、実施形態22から46のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0106】
48.前記少なくとも1種の逆溶媒が、トルエン、イソプロパノール、エタノール、及び前述の任意の組み合わせから選択される、実施形態47に記載のナノ粒子。
【0107】
49.前記ナノ粒子を分離することが、2回の沈殿を含む、実施形態47又は48に記載のナノ粒子。
【0108】
50.前記ナノ粒子を分離することが、遠心分離をさらに含む、実施形態47から49のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0109】
51.以下の工程:
実施形態1から50のいずれか一項に記載のナノ粒子を第1有機溶媒に分散させて、第1分散液を製造する工程と;
担体材料を第2有機溶媒に分散させて、第2分散液を製造する工程と;
前記第1分散液の一部を前記第2分散液に添加して、混合物を製造する工程と;
前記混合物を一定時間撹拌する工程と;
触媒組成物を分離する工程と
を含む方法で調製される、触媒組成物。
【0110】
52.前記ナノ粒子が、前記ナノ粒子と前記担体材料の総質量の0.3質量%を含む、実施形態51に記載の触媒組成物。
【0111】
53.前記第1有機溶媒が、ヘキサン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ヘプタン、テトラヒドロフラン、及びアセトニトリルから選択される、実施形態51又は52に記載の触媒組成物。
【0112】
54.前記第1有機溶媒がヘキサンである、実施形態51から53のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0113】
55.前記担体材料が、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、又は前述の任意の組み合わせを含む、実施形態51から54のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0114】
56.前記担体材料がAl2O3である、実施形態51から55のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0115】
57.前記担体材料がランタン安定化ジルコニアである、実施形態51から55のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0116】
58.前記担体材料が、前記ナノ粒子の電子構造を実質的に変化させない、実施形態51から57のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0117】
59.前記第2有機溶媒が、ヘキサン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ヘプタン、テトラヒドロフラン、及びアセトニトリルから選択される、実施形態51から58のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0118】
60.前記第2有機溶媒がヘキサンである、実施形態51から59のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0119】
61.前記一定時間が少なくとも8時間である、実施形態51から60のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0120】
62.前記触媒組成物を分離することが、前記混合物を遠心分離して触媒固体を分離することを含む、実施形態51から61のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0121】
63.前記混合物を遠心分離することが、前記混合物を8000rpmで3分間遠心分離して触媒固体を分離することを含む、実施形態62に記載の触媒組成物。
【0122】
64.前記触媒組成物を分離することが、前記触媒固体を乾燥することをさらに含む、実施形態62又は63に記載の触媒組成物。
【0123】
65.前記触媒固体を乾燥することが、前記触媒固体を80℃で少なくとも8時間乾燥することを含む、実施形態64に記載の触媒組成物。
【0124】
66.前記触媒組成物を分離することが、前記触媒固体をふるいにかけて触媒組成物を分離することをさらに含む、実施形態64又は65に記載の触媒組成物。
【0125】
67.実施形態1から50のいずれか一項に記載のナノ粒子、及び
担体材料
を含む、触媒組成物。
【0126】
68.前記担体材料が、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、又は前述の任意の組み合わせを含む、実施形態67に記載の触媒組成物。
【0127】
69.前記担体材料がAl2O3である、実施形態67又は68に記載の触媒組成物。
【0128】
70.前記担体材料がランタン安定化ジルコニアである、実施形態67から69のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0129】
71.前記担体材料が、前記ナノ粒子の電子構造を実質的に変化させない、実施形態67から70のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0130】
72.前記ナノ粒子が、前記触媒組成物の総質量の0.2質量%~0.4質量%を含む、実施形態51から71のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0131】
73.前記触媒組成物が0.01m2/g触媒~0.1m2/g触媒の範囲の露出金属表面積を有する、実施形態51から72のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0132】
74.全長を規定する入口端及び出口端を有する基材;及び
前記基材の全長の少なくとも一部に配置されたウォッシュコートを含む触媒コーティングであって、前記ウォッシュコートが実施形態51から73のいずれか一項に記載の触媒組成物を含む、触媒コーティング
を含む、触媒物品。
【0133】
75.実施形態74に記載の触媒物品を含む排気ガス処理システムであって、前記触媒物品が、内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している、排気ガス処理システム。
【0134】
76.汚染物質を含む排気ガス流を処理する方法であって、前記排気ガス流を、実施形態74に記載の触媒物品、又は実施形態75に記載の排気ガス処理システムに通すことを含む、方法。
【0135】
77.前記汚染物質が炭化水素を含む、実施形態76に記載の方法。
【0136】
78.前記排気ガス流が、低温で前記触媒物品又は前記排気ガス処理システムに通される、実施形態76又は77に記載の方法。
【0137】
79.前記低温が100℃~150℃の範囲である、実施形態78に記載の方法。
【0138】
80.白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子を調製する方法であって、以下の工程:
PGMの種を有機溶媒に分散させて、第1混合物を製造する工程と;
前記第1混合物にBM前駆体を添加して、第2混合物を製造する工程と;
前記第2混合物に配位性溶媒を添加して、第3混合物を製造する工程と;
前記第3混合物を高温まで急速に加熱する工程と;
前記第3混合物を高温で一定時間保持する工程と;
混合物を室温まで急速に冷却する工程と;
前記ナノ粒子を分離する工程と
を含む、方法。
【0139】
81.PGMが、パラジウム族元素、白金族元素、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態80に記載の方法。
【0140】
82.PGMが、Pd、Pt、及び前述の組み合わせから選択される、実施形態80又は81に記載の方法。
【0141】
83.PGMがPtである、実施形態80から82のいずれか一項に記載の方法。
【0142】
84.前記PGMの種が1.5nm~3.5nmの範囲の粒径を有する、実施形態83に記載の方法。
【0143】
85.前記第2混合物におけるPGMの百分率が、前記第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して、25%~95%の範囲である、実施形態84に記載の方法。
【0144】
86.前記第2混合物におけるPGMの百分率が、前記第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して63%である、実施形態84又は85に記載の方法。
【0145】
87.前記第2混合物におけるPGMの百分率が、前記第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して49%である、実施形態84又は85に記載の方法。
【0146】
88.前記第2混合物におけるPGMの百分率が、前記第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して37%である、実施形態84又は85に記載の方法。
【0147】
89.前記PGMの種が4nm~6nmの範囲の粒径を有する、実施形態83に記載の方法。
【0148】
90.前記第2混合物におけるPGMの百分率が、前記第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して、50%~95%の範囲である、実施形態89に記載の方法。
【0149】
91.前記第2混合物におけるPGMの百分率が、前記第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して69%である、実施形態89又は90に記載の方法。
【0150】
92.前記第2混合物におけるPGMの百分率が、前記第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して86%である、実施形態89又は90に記載の方法。
【0151】
93.PGMがPdである、実施形態80から82のいずれか一項に記載の方法。
【0152】
94.前記PGMの種が2.5nm~4.5nmの範囲の粒径を有する、実施形態93に記載の方法。
【0153】
95.前記有機溶媒が、ヘキサン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ヘプタン、テトラヒドロフラン、及びアセトニトリルから選択される、実施形態80から94のいずれか一項に記載の方法。
【0154】
96.前記有機溶媒がヘキサンである、実施形態80から95のいずれか一項に記載の方法。
【0155】
97.前記BM前駆体が、Co(acac)2、Mn(acac)3、Ni(acac)2、Cu(acac)2、及び前述の任意の組み合わせから選択される、実施形態80から96のいずれか一項に記載の方法。
【0156】
98.前記BM前駆体がCu(acac)2である、実施形態80から97のいずれか一項に記載の方法。
【0157】
99.前記配位性溶媒が非ホスフィン溶媒から選択される、実施形態80から98のいずれか一項に記載の方法。
【0158】
100.前記配位性溶媒が、オレイルアミン、オレイン酸、1-オクタデセン、トリオクチルアミン、及び前述の任意の組み合わせから選択される、実施形態80から99のいずれか一項に記載の方法。
【0159】
101.前記配位性溶媒がオレイルアミンである、実施形態80から100のいずれか一項に記載の方法。
【0160】
102.急速に加熱することが、40℃分-1の速度で加熱することを含む、実施形態80から101のいずれか一項に記載の方法。
【0161】
103.前記高温が250℃~300℃の範囲である、実施形態80から102のいずれか一項に記載の方法。
【0162】
104.前記高温が280℃である、実施形態80から103のいずれか一項に記載の方法。
【0163】
105.前記一定時間が30分間である、実施形態80から104のいずれか一項に記載の方法。
【0164】
106.前記ナノ粒子を分離することが、逆溶媒を用いる1回の沈殿を含む、実施形態80から105のいずれか一項に記載の方法。
【0165】
107.前記逆溶媒が、トルエン、イソプロパノール、エタノール、及び前述の任意の組み合わせから選択される、実施形態106に記載の方法。
【0166】
108.前記ナノ粒子を分離することが、2回の沈殿を含む、実施形態106又は107に記載の方法。
【0167】
109.前記ナノ粒子を分離することが、遠心分離をさらに含む、実施形態106から108のいずれか一項に記載の方法。
【0168】
110.以下の工程:
実施形態1から50のいずれか一項に記載のナノ粒子を第1有機溶媒に分散させて、第1分散液を製造する工程と;
担体材料を第2有機溶媒に分散させて、第2分散液を製造する工程と;
前記第1分散液の一部を前記第2分散液に添加して、混合物を製造する工程と;
前記混合物を一定時間撹拌する工程と;
触媒組成物を分離する工程と
を含む、触媒組成物の製造方法。
【0169】
111.前記ナノ粒子が、前記ナノ粒子と前記担体材料の総質量の0.3質量%を含む、実施形態110に記載の触媒組成物。
【0170】
112.前記第1有機溶媒が、ヘキサン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ヘプタン、テトラヒドロフラン、及びアセトニトリルから選択される、実施形態110又は111に記載の触媒組成物。
【0171】
113.前記第1有機溶媒がヘキサンである、実施形態110から112のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0172】
114.前記担体材料が、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、又は前述の任意の組み合わせを含む、実施形態110から113のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0173】
115.前記担体材料がAl2O3である、実施形態110から114のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0174】
116.前記担体材料がランタン安定化ジルコニアである、実施形態110から114のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0175】
117.前記担体材料が、前記ナノ粒子の電子構造を実質的に変化させない、実施形態110から116のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0176】
118.前記第2有機溶媒が、ヘキサン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ヘプタン、テトラヒドロフラン、及びアセトニトリルから選択される、実施形態110から117のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0177】
119.前記第2有機溶媒がヘキサンである、実施形態110から118のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0178】
120.前記一定時間が少なくとも8時間である、実施形態110から119のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0179】
121.前記触媒組成物を分離することが、前記混合物を遠心分離して触媒固体を分離することを含む、実施形態110から120のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【0180】
122.前記混合物を遠心分離することが、前記混合物を8000rpmで3分間遠心分離して触媒固体を分離することを含む、実施形態121に記載の触媒組成物。
【0181】
123.前記触媒組成物を分離することが、前記触媒固体を乾燥することをさらに含む、実施形態121又は122に記載の触媒組成物。
【0182】
124.前記触媒固体を乾燥することが、前記触媒固体を80℃で少なくとも8時間乾燥することを含む、実施形態123に記載の触媒組成物。
【0183】
125.前記触媒組成物を分離することが、前記触媒固体をふるいにかけて触媒組成物を分離することをさらに含む、実施形態123又は124に記載の触媒組成物。
【0184】
1nm~5nmの範囲の粒径を有するナノ粒子
本開示のいくつかの実施形態は、白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子に関し、ここで:
PGMのモル百分率が、PGMとBMの合計モル数に基づいて、25%~95%の範囲であり、
前記ナノ粒子が、PGM及びBMの合金を含み、
前記ナノ粒子の粒径が、1nm~5nmの範囲である。
【0185】
いくつかの実施形態において、前記粒径は2.5nm~3.5nmの範囲である。
【0186】
いくつかの実施形態において、PGMは、Pd、Pt、及び前述の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、PGMはPtである。
【0187】
いくつかの実施形態において、BMは、Cu、Co、Mn、Ni、及び前述の任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、BMはCuである。いくつかの実施形態において、BMはCoである。いくつかの実施形態において、BMはMnである。いくつかの実施形態において、BMはNiである。
【0188】
いくつかの実施形態において、BMは面心立方(FCC)構造を有する。いくつかの実施形態において、BMは六方最密充填(HCP)構造を有する。いくつかの実施形態において、BMは体心立方(BCC)構造を有する。
【0189】
いくつかの実施形態において、合金は少なくとも2at%のBMを含む。いくつかの実施形態において、合金は少なくとも5at%のBMを含む。いくつかの実施形態において、合金は少なくとも10at%のBMを含む。いくつかの実施形態において、合金は少なくとも15at%のBMを含む。いくつかの実施形態において、合金は少なくとも20at%のBMを含む。いくつかの実施形態において、合金は少なくとも25at%のBMを含む。いくつかの実施形態において、合金は少なくとも30at%のBMを含む。
【0190】
いくつかの実施形態において、PGMのモル百分率は25%~75%の範囲である。いくつかの実施形態において、PGMのモル百分率は25%~67%の範囲である。いくつかの実施形態において、PGMのモル百分率は25%~65%の範囲である。いくつかの実施形態において、PGMのモル百分率は33%~65%の範囲である。
【0191】
いくつかの実施形態において、PGMのモル百分率は60%~66%の範囲である。いくつかの実施形態において、PGMのモル百分率は45%~55%の範囲である。いくつかの実施形態において、PGMのモル百分率は33%~40%の範囲である。
【0192】
いくつかの実施形態において、前記ナノ粒子は本質的にPGM及びBMからなる。
【0193】
4nm~7nmの範囲の粒径を有するナノ粒子
本開示のいくつかの実施形態は、白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子に関し、ここで:
PGMのモル百分率が、PGMとBMの合計モル数に基づいて、50%~95%の範囲であり、
前記ナノ粒子が、PGM及びBMの合金を含み、
前記ナノ粒子の粒径が、4nm~7nmの範囲である。
【0194】
いくつかの実施形態において、前記粒径は4nm~6nmの範囲である。
【0195】
いくつかの実施形態において、PGMは、パラジウム族元素、白金族元素、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、PGMは、Pd、Pt、及び前述の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、PGMはPtである。
【0196】
いくつかの実施形態において、BMは、Cu、Co、Mn、Ni、及び前述の任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、BMはCuである。いくつかの実施形態において、BMはCoである。いくつかの実施形態において、BMはMnである。いくつかの実施形態において、BMはNiである。
【0197】
いくつかの実施形態において、BMはFCC構造を有する。いくつかの実施形態において、BMはHCP構造を有する。いくつかの実施形態において、BMはBCC構造を有する。
【0198】
いくつかの実施形態において、合金は少なくとも2at%のBMを含む。いくつかの実施形態において、合金は少なくとも5at%のBMを含む。いくつかの実施形態において、合金は少なくとも10at%のBMを含む。いくつかの実施形態において、合金は少なくとも15at%のBMを含む。いくつかの実施形態において、合金は少なくとも20at%のBMを含む。いくつかの実施形態において、合金は少なくとも25at%のBMを含む。いくつかの実施形態において、合金は少なくとも30at%のBMを含む。
【0199】
いくつかの実施形態において、PGMのモル百分率は60%~95%の範囲である。いくつかの実施形態において、PGMのモル百分率は65%~90%の範囲である。いくつかの実施形態において、PGMのモル百分率は67%~88%の範囲である。いくつかの実施形態において、PGMのモル百分率は80%~90%の範囲である。いくつかの実施形態において、PGMのモル百分率は65%~75%の範囲である。
【0200】
いくつかの実施形態において、前記ナノ粒子は本質的にPGM及びBMからなる。
【0201】
触媒組成物
本開示のいくつかの実施形態は、
本明細書に開示されるナノ粒子、及び
担体材料
を含む触媒組成物に関する。
【0202】
いくつかの実施形態において、担体材料は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、又は前述の任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、担体材料はAl2O3である。いくつかの実施形態において、担体材料はランタン安定化ジルコニアである。いくつかの実施形態において、担体材料は少なくとも1つのナノ粒子の電子構造を実質的に変化させない。
【0203】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、触媒組成物の総質量の0.2質量%~0.4質量%を含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、触媒組成物の総質量の0.3質量%を含む。
【0204】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、会合又は分散によって少なくとも1種の担体材料中又は上に配置される。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、会合によって少なくとも1種の担体材料中又は上に配置される。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、分散によって少なくとも1種の担体材料中又は上に配置される。
【0205】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、少なくとも1種の担体材料中又は上に含浸される。
【0206】
いくつかの実施形態において、触媒組成物は、0.01m2/g触媒~0.1m2/g触媒の範囲の露出金属表面積を有する。
【0207】
触媒物品
本開示のいくつかの実施形態は、
全長を規定する入口端及び出口端を有する基材;及び
基材の全長の少なくとも一部に配置されたウォッシュコートを含む触媒コーティングであって、ウォッシュコートが本明細書に開示される触媒組成物を含む、触媒コーティング
を含む触媒物品に関する。
【0208】
いくつかの実施形態において、触媒物品はゾーン構成を有する。
【0209】
いくつかの実施形態において、触媒物品は層状構成を有する。
【0210】
いくつかの実施形態において、基材はフロースルー基材及びウォールフロー基材から選択される。いくつかの実施形態において、基材はフロースルー基材から選択される。いくつかの実施形態において、基材はウォールフロー基材から選択される。
【0211】
いくつかの実施形態において、基材はモノリス型基材から選択される。いくつかの実施形態において、基材はフロースルーモノリス及びモノリス型ウォールフローフィルターから選択される。いくつかの実施形態において、基材はフロースルーモノリスから選択される。いくつかの実施形態において、基材はモノリス型ウォールフローフィルターから選択される。
【0212】
排気ガス処理システム
本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に開示される触媒物品を含む排気ガス処理システムに関し、ここで、触媒物品が、内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している。
【0213】
いくつかの実施形態において、内燃機関はディーゼルエンジンである。いくつかの実施形態において、内燃機関は、化学量論的燃焼に必要な空気よりも過剰な空気を用いた燃焼条件、すなわちリーン条件で運転されるディーゼルエンジンである。
【0214】
いくつかの実施形態において、内燃機関はガソリンエンジン(例えば、希薄燃焼ガソリンエンジン)又は固定源(例えば、発電機又はポンプ場)に関連するエンジンである。いくつかの実施形態において、内燃機関はガソリンエンジンである。いくつかの実施形態において、内燃機関は希薄燃焼ガソリンエンジンである。いくつかの実施形態において、内燃機関は、固定源に関連している。いくつかの実施形態において、内燃機関は発電機に関連している。いくつかの実施形態において、内燃機関はポンプ場に関連している。
【0215】
本明細書に開示される排気ガス処理システムは、排気ガス流と流体連通して内燃機関の下流に配置された1つ以上の触媒物品を含有することができる。
【0216】
いくつかの実施形態において、排気ガス処理システムは、煤煙フィルター及び/又はアンモニア酸化触媒をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、煤煙フィルターは無触媒であってもよい。いくつかの実施形態において、煤煙フィルターは触媒付きであってもよい。
【0217】
排気ガス処理システム内に存在する様々な触媒成分の相対的な配置は、異なることができる。いくつかの実施形態において、排気ガス流は、上流端に入り、下流端から出ることによって、触媒物品(単数又は複数)又は排気ガス処理システム(単数又は複数)に受け入れられる。
【0218】
ナノ粒子の調製方法
本開示のいくつかの実施形態は、白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子を調製する方法に関し、この方法は、以下の工程:
白金族金属(PGM)の種を有機溶媒に分散させて、第1混合物を製造する工程と;
前記第1混合物に卑金属(BM)前駆体を添加して、第2混合物を製造する工程と;
前記第2混合物に配位性溶媒を添加して、第3混合物を製造する工程と;
前記第3混合物を高温まで急速に加熱する工程と;
前記第3混合物を高温で一定時間保持する工程と;
混合物を室温まで急速に冷却する工程と;
前記ナノ粒子を分離する工程と
を含む。
【0219】
いくつかの実施形態において、PGMは、パラジウム族元素、白金族元素、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、PGMは、Pd、Pt、及び前述の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、PGMはPtである。
【0220】
いくつかの実施形態において、PGMの種は、1.5nm~3.5nmの範囲の粒径を有する。いくつかの実施形態において、第2混合物におけるPGMの百分率は、第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して、25%~95%の範囲である。いくつかの実施形態において、第2混合物におけるPGMの百分率は、第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して63%である。いくつかの実施形態において、第2混合物におけるPGMの百分率は、第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して49%である。いくつかの実施形態において、第2混合物におけるPGMの百分率は、第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して37%である。
【0221】
いくつかの実施形態において、PGMの種は4nm~6nmの範囲の粒径を有する。いくつかの実施形態において、第2混合物におけるPGMの百分率は、第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して、50%~95%の範囲である。いくつかの実施形態において、第2混合物におけるPGMの百分率は、第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して69%である。いくつかの実施形態において、第2混合物におけるPGMの百分率は、第2混合物におけるPGMとBMの合計モル数に基づいて計算して86%である。
【0222】
いくつかの実施形態において、PGMはPdである。いくつかの実施形態において、PGMの種は2.5nm~4.5nmの範囲の粒径を有する。
【0223】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、ヘキサン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ヘプタン、テトラヒドロフラン、及びアセトニトリルから選択される。いくつかの実施形態において、有機溶媒はヘキサンである。
【0224】
いくつかの実施形態において、BM前駆体は、Co(acac)2、Mn(acac)3、Ni(acac)2、Cu(acac)2、及び前述の任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、BM前駆体はCo(acac)2である。いくつかの実施形態において、BM前駆体はMn(acac)3である。いくつかの実施形態において、BM前駆体はNi(acac)2である。いくつかの実施形態において、BM前駆体はCu(acac)2である。
【0225】
いくつかの実施形態において、配位性溶媒は非ホスフィン溶媒から選択される。いくつかの実施形態において、配位性溶媒は、オレイルアミン、オレイン酸、1-オクタデセン、トリオクチルアミン、及び前述の任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、配位性溶媒はオレイルアミンである。
【0226】
いくつかの実施形態において、急速に加熱することは、40℃分-1の速度で加熱することを含む。
【0227】
いくつかの実施形態において、高温は250℃~300℃の範囲である。いくつかの実施形態において、高温は280℃である。
【0228】
いくつかの実施形態において、一定時間は30分間である。
【0229】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子を分離することは、少なくとも1種の逆溶媒を用いる1回の沈殿を含む。いくつかの実施形態において、逆溶媒は、トルエン、イソプロパノール、エタノール、及び前述の任意の組み合わせから選択される。
【0230】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子を分離することは2回の沈殿を含む。
【0231】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子を分離することは遠心分離をさらに含む。
【0232】
本開示のいくつかの実施形態は、合金ロッド、混合金属粉末、又は2つの単金属ターゲットのレーザー蒸着(laser vaporization)を含む、白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子の調製方法に関する。
【0233】
本開示のいくつかの実施形態は、液体中でのパルスレーザーアブレーションを含む、白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子の調製方法に関する。
【0234】
本開示のいくつかの実施形態は、二金属ターゲットに強力な放電を通過させることによる二金属ターゲットの蒸着を含む、白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子の調製方法に関する。
【0235】
本開示のいくつかの実施形態は、マイクロ波合成の工程を含む、白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子の調製方法に関する。
【0236】
本開示のいくつかの実施形態は、原子層堆積の工程を含む、白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子の調製方法に関する。
【0237】
本開示のいくつかの実施形態は、電気化学合成の工程を含む、白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子の調製方法に関する。
【0238】
本開示のいくつかの実施形態は、金属錯体の熱分解を含む、白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子の調製方法に関する。
【0239】
本開示のいくつかの実施形態は、溶液中の塩の混合物の化学還元を含む、白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子の調製方法に関する。
【0240】
本開示のいくつかの実施形態は、化学錯体の連続的な還元を含む、白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子の調製方法に関する。
【0241】
本開示のいくつかの実施形態は、化学錯体の共還元を含む、白金族金属(PGM)及び卑金属(BM)を含むナノ粒子の調製方法に関する。
【0242】
また、本明細書で開示されるのは、本明細書に記載の方法によって調製されたナノ粒子である。
【0243】
触媒組成物の調製方法
本開示のいくつかの実施形態は、以下の工程:
本明細書に開示されるナノ粒子を第1有機溶媒に分散させて、第1分散液を製造する工程と;
担体材料を第2有機溶媒に分散させて、第2分散液を製造する工程と;
前記第1分散液の一部を前記第2分散液に添加して、混合物を製造する工程と;
前記混合物を一定時間撹拌する工程と;
触媒組成物を分離する工程と
を含む、触媒組成物の製造方法に関する。
【0244】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、ナノ粒子と担体材料の総質量の0.3質量%を含む。
【0245】
いくつかの実施形態において、第1有機溶媒は、ヘキサン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ヘプタン、テトラヒドロフラン、及びアセトニトリルから選択される。いくつかの実施形態において、第1有機溶媒はヘキサンである。
【0246】
いくつかの実施形態において、担体材料は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、又は前述の任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、担体材料はAl2O3である。いくつかの実施形態において、担体材料はランタン安定化ジルコニアである。いくつかの実施形態において、担体材料は少なくとも1つのナノ粒子の電子構造を実質的に変化させない。
【0247】
いくつかの実施形態において、第2有機溶媒は、ヘキサン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ヘプタン、テトラヒドロフラン、及びアセトニトリルから選択される。いくつかの実施形態において、第2有機溶媒はヘキサンである。
【0248】
いくつかの実施形態において、一定時間は少なくとも8時間である。
【0249】
いくつかの実施形態において、触媒組成物を分離することは、合物を遠心分離して触媒固体を分離することを含む。いくつかの実施形態において、触媒組成物を分離することは、混合物を8000rpmで3分間遠心分離して触媒固体を分離することを含む。
【0250】
いくつかの実施形態において、触媒組成物を分離することは、触媒固体を乾燥することをさらに含む。いくつかの実施形態において、触媒固体を乾燥することは、触媒固体を80℃で少なくとも8時間乾燥することを含む。
【0251】
いくつかの実施形態において、触媒組成物を分離することは、触媒固体をふるいにかけて触媒組成物を分離することをさらに含む。
【0252】
また、本明細書で開示されるのは、本明細書に記載の方法によって調製された触媒組成物である。
【0253】
排気ガス流の処理方法
本開示のいくつかの実施形態は、汚染物質を含む排気ガス流を処理する方法に関し、この方法は、排気ガス流を、本明細書に開示される触媒物品、又は本明細書に開示される排気ガス処理システムに通すことを含む。
【0254】
いくつかの実施形態において、汚染物質は炭化水素を含む。いくつかの実施形態において、汚染物質はプロペンを含む。
【0255】
いくつかの実施形態において、排気ガス流は、低温で触媒物品又は排気ガス処理システムに通される。いくつかの実施形態において、低温は100℃~150℃の範囲である。
【0256】
群の少なくとも1つのメンバーの間に「又は」又は「及び/又は」を含む請求項又は明細書の記載は、特に明記されていない限り、又は文脈から明らかでない限り、群のメンバーの1つ、2つ以上、又はすべてが、所定の生成物又は方法において存在するか、採用されるか、又は他の方法で関連する場合に、満足されるとみなされる。本開示は、群の正確に1つのメンバーが、所定の生成物又は方法において存在するか、採用されるか、又は他の方法で関連する実施形態を含む。本開示は、1つ超、又は全ての群のメンバーが、所定の生成物又は方法において存在する、採用される、又は他の方法で関連する実施形態を含む。
【0257】
さらに、本開示は、記載された請求項の少なくとも1つからの少なくとも1つの限定、要素、項目、及び記述用語が別の請求項に導入される全ての変形、組み合わせ、及び置換を包含する。例えば、他の請求項に従属する請求項は、同じベースの請求項に従属する他の請求項に見出される少なくとも1つの限定を含むように修正することができる。要素が、例えば、マーカッシュ群の形式などのリストとして存在する場合、要素の各サブグループも開示され、任意の要素(単数又は複数)を群から削除することができる。一般に、本開示又は本開示の態様が特定の要素及び/又は特徴を含むと言及される場合、本開示の実施形態又は本開示の態様は、そのような要素及び/又は特徴を含むか、又は本質的にそのような要素及び/又は特徴からなることを理解されたい。簡略化のために、それらの実施形態は、本明細書において、文字通りに具体的に記載されていない。範囲が言及される場合(例えば、[X]~[Y])、特に明記されていない限り、端点(例えば、「[X]~[Y]」という表現における[X]及び[Y])は含まれる。さらに、特に明記されていない限り、又は文脈及び当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈が明確に別段を指示しない限り、本開示の異なる実施形態において、範囲の下限の単位の10分の1まで、記載された範囲内の任意の特定の値又はサブ範囲を想定することができる。
【0258】
当業者であれば、本明細書に記載された本開示の特定の実施形態に相当する多くの均等物を、日常的な実験以上のことを行わずに認識するか、又は確認することができるであろう。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【実施例】
【0259】
以下の実施例は例示を意図したものであり、本開示の範囲を限定するものでは決してない。
【0260】
略語
% 百分率
~ 約
< 未満
> 超
acac アセチルアセトナート
amu 原子質量単位
at% 原子百分率
FTIR 四変換赤外分光法
g グラム
h 時間(単数又は複数)
HAADF-STEM 高角度環状暗視野走査透過電子顕微鏡
HC 炭化水素
ICP-OES 誘導結合プラズマ光学発光分光分析
m2 平方メートル
M 卑金属
mg ミリグラム
min 分(単数又は複数)
mL ミリリットル(単数又は複数)
mm ミリメートル(単数又は複数)
NP ナノ粒子
rpm 毎分回転数
s 秒(単数又は複数)
SCR 選択的触媒還元
TGA 熱重量分析
TEM 透過型電子顕微鏡
体積% 体積百分率
質量% 質量百分率
XRD 粉末X線回折
μL マイクロリットル(単数又は複数)。
【0261】
実施例1:Ptナノ粒子(NP)の合成
すべての合成は、空気を使用しない標準的なシュレンク技術を用いて行った。0.20mmolの白金(II)アセチルアセトナート(Pt(acac)2、97%、Sigma-Aldrich)を、10mLのトリオクチルアミン(TOA、97%、Acros Organics)、2.5mLのオレイン酸(OLAC、90%、Sigma-Aldrich)、及び0.66mLのオレイルアミン(OLAM、70%、Sigma-Aldrich)と3つ口フラスコで組み合わせ、磁気攪拌下に置いた。混合物を室温で15分間排気した後、トリオクチルホスフィン(TOP、97%、Sigma-Aldrich)を適量(2nmのNPの場合は50μL、5nmのNPの場合は220μL)添加した。その後、低沸点の不純物を除去するために、混合物を120℃でさらに30分間排気した。この時点で、反応混合物は半透明の淡黄色溶液であった。その後、反応容器を窒素でフラッシュし、高温(2nmのNPの場合は250℃、2nmのNPの場合は350℃)まで急速に加熱した(~40℃分-1)。高温で30分間反応させた後、溶液を室温まで急速に冷却した。逆溶媒としてイソプロパノール、エタノール、アセトン、及びメタノールを用いた2回の沈殿により粒子を単離し、遠心分離(8000rpm、3分間)により分離した。その後、粒子をヘキサン中に分散させた。
【0262】
実施例2:二金属Pt/MのNPの合成
異なるPt/M比を有するPtxM100-xナノ粒子(NP)を、種媒介合金化アプローチを用いて合成した。3つ口フラスコで、ヘキサン中に分散させたPt種(0.1mmolのPt)を可変量の特定の金属アセチルアセトナート前駆体と組み合わせて、2つの異なるPt種サイズを使用して特定のPt/M比を達成した(表1)。表1では、ICP-OESにより、指定された材料組成(PtxM100-x)を決定した。
【0263】
OLAM(8mL)をフラスコに転化し、混合物を磁気攪拌下に置き、70℃で30分間排気してヘキサン及び低沸点不純物を除去した。その後、反応混合物を窒素でフラッシュし、280℃まで急速に加熱した(~40℃分-1)。高温で30分間反応させた後、溶液を室温まで急速に冷却した。その後、逆溶媒としてトルエン、イソプロパノール、及びエタノールを用いた2回の沈殿により粒子を単離し、遠心分離(8000rpm、3分間)により分離した。最後に、粒子をヘキサン中に分散させた。NPからの卑金属の溶出を防ぐため、NPを担体に迅速に含浸させた。
【0264】
図1のA~F、
図2のA~D、及び及び
図3のA~Hは、この種媒介合金化アプローチによって合成したNPの代表的なTEM画像及び粒径分布を示している。
図4には、Pt及びPt/MのNP(2nm)の代表的なXRDスペクトルも示している。「2nm」のPt種を用いて合成されたPt/MのNPでは、Pt、PtCo、PtMn、PtNi、PtCuのNPにおいて観察された粒径は、それぞれ2.6±0.2nm、2.6±0.3nm、2.5±0.4nm、2.7±0.3nm、3.0±0.4nmであった(
図1F)。Pt/MのNPの粒径は、卑金属元素の組み込みにより、対照のPtのNPに比べてわずかに増大した。さらに、「5nm」のPt種を用いて合成したPt/MのNPでは、Pt、Pt86Cu14(「低Cu」)、Pt
69Cu
31(「中Cu」)、及びPt
44Cu
56(「高Cu」)において観察された粒径は、それぞれ5.1±0.3nm、5.0±0.4nm、5.1±0.3nm、及び5.9±0.4nmであった(
図2A~D)。
【0265】
【0266】
実施例3:担持した触媒の調製
熱重量分析(TGA)によって、
コロイド状NP溶液中の金属濃度を測定した。300μLのNP溶液をアルミパンに滴下し、ホットプレート上で溶媒を蒸発させた。このパンを静止空気炉に移し、500℃で20分間加熱してリガンドを完全に除去した。生成物の最終質量を最初の溶液体積で除して、金属濃度を得た。0.3質量%になるように適切な量の金属NPを、ヘキサン中の攪拌された担体の分散液に添加した。この混合物を一晩攪拌しておき、担体材料上へのNPの完全な吸着を確実にした。その後、遠心分離(8000rpm、3分間)により固体を回収した。最終粉末を80℃で一晩乾燥させ、粒径180μm未満になるようにふるいにかけた。コロイド合成からリガンドを除去するために、通常の手順に従って、すべてのサンプルを炉内で700℃で30秒間高速処理した。
【0267】
Pt/Cu比の影響を評価するため、合成時に3つの異なるPt/Cu比(3/1、1/1、1/3)を用いた。さらに、NPサイズの影響を調べるため、2種類のPtのNPサイズ(2.6nm(「2nm」)、及び5.1nm(「5nm」))を出発種として使用した。
図3A~Hは、Pt/Cu比とサイズが異なるPt/CuのNPの代表的なTEM画像を示している。Pt/CuのNPの最終的なサイズと形状は、いずれも出発Pt種のサイズに近かった。
【0268】
Pt/MのNPをAl2O3担体上に堆積した後、ICP-OES分析とCO化学吸着を用いて、Pt/M比及び露出金属表面積を求めた(表2)。表2では、ICP-OESを用いて材料組成と合計(Pt+M)質量%を決定し、CO化学吸着を用いて露出金属表面積を評価した。最終的なPt/M組成は、合成に用いたPt種/M前駆体比とほぼ一致した。さらに、Cu含有量が増加するにつれて、露出金属面積が減少することが観察され、NP中にCuが多く存在するほど、表面がCuによって濃縮されることが実証された。
【0269】
【0270】
EDSマッピングを用いて、Al
2O
3上に担持された5nmのPt/CuのNPのPtとCuの存在を決定した(
図5のA~D)。モノリス型PtのNPにはCu信号は見られなかった(
図5A)。二金属Pt/Cuサンプルでは(
図5のB~D)、PtとCuの信号がHAADF-STEM画像の輝点と均一に重なっており、PtとCuがNP中に一緒に存在し、担体上には存在せず、脱合金化されなく、相分離されていない可能性が高いことが実証された。さらに、Pt/Cu信号強度の比は、異なるPt/Cuサンプル間で異なっており、サンプルのPt/Cu組成が様々であることを裏付けている。
【0271】
合成したPt/MのNPの合金化の程度を調べるため、顕微鏡スライド上に滴下したNPの微小角入射XRDスペクトルを測定した。Pt上のFCC(111)ピークのシフトから、合金化の程度を決定した(表3)。表3では、(a)を使用して、Cu/MとNi/Mとの原子番号の差から理論FCC格子定数を算出したことを示す。
【0272】
【0273】
CuとNiは両方ともFCC構造を持っているため、Ptと合金化したCu又はNiの量はベガード則を用いて決定した。PtCuの場合、33at%のCuがPtと合金化したと計算され、これはICP-OESで決定した値(Pt63Cu37)と一致した。PtNiの場合、4at%のNiがPtと合金化した。PtCoとPtMnのXRDパターンはFCC格子構造に似ていたため、CoとMnの理論FCC格子定数は、ベガード則を用いて、Cu、Niと、ターゲット金属との間の原子番号の差を使用して計算した(表3)。
【0274】
別の担体であるランタン安定化ジルコニア(LSZ)も担持した触媒の調製に使用した。具体的には、LSZ上に2nmのPt/CuのNPを堆積した。Al
2O
3及びLSZに担持したPt49Cu51のNPの代表的なTEM画像を
図6A、Bに示している。これらのサンプルでは、両方の担体上の堆積後の粒径は同様であった(2.5±0.3nm)。
【0275】
実施例4:Al2O3に担持したNPの触媒試験
触媒床内の熱勾配と質量勾配を避けるため、触媒試験では以下の差動条件を維持した:Pt/Mナノ粒子をAl2O3粉末(<180μm)で希釈し、反応物を高度に希釈した(不活性ガスが>90%)。異なる空間速度での触媒試験により、速度が厳密な速度制御の下で得られることが確認された。ライトオフ曲線では、8~40mgの触媒をアルミナ(900℃で24時間焼成)で希釈して、各試験において合計200mgの粉末を得た。200mgの触媒を、高温炉内に取り付けた内径10mmの石英製反応管内の酸洗浄した珪砂層の間に充填した。O2(5体積%)/Ar雰囲気下300℃で、サンプルを30分間前処理した。触媒をAr下で50℃まで冷却し、反応混合物を導入した。反応混合物は、C3H6(0.15体積%)/Ar、O2(3体積%)/Ar、H2O(10体積%)/Arからなった。ガス時間空間速度(GHSV)を100,000mL g触媒-1 h-1に維持し、総流速は50 mL min-1であった。水飽和器を47度に加熱し、そこにAr担体を流すことにより、H2Oの導入を行った。その後、触媒を10℃ min-1で300℃まで加熱し、反応混合物中で室温まで冷却した。質量分析計(Hiden HPR20)を用いて、C3H6(41amu)、C3H8(29amu)、O2(32amu)、CO2(44amu)、及びH2O(18amu)の親分子イオンに従って、ガスの組成をモニターした。
【0276】
反応速度論実験では、各試験で合計200mgの粉末を得るため、10~40mgの触媒をアルミナで希釈した。反応速度論測定は、ライトオフ実験と同じ前処理条件で行った。ただし、差動条件を確保するため、最終転化率は10%未満に抑えた。反応混合物は、C3H6(0.15体積%)/Ar、O2(3体積%)/Ar、H2O(10体積%)/Arで構成した。液体の水の凝縮を避けるため、反応速度論測定値を100℃超で収集した。メタナイザーを備えた炎イオン化検出器、及びキャリアガスとしてArを用いた熱伝導率検出器を使用するガスクロマトグラフ(Buck Scientific model 910)で、ガスの組成を測定した。
【0277】
図7のA~Dは、Al
2O
3上に担持したPt/MのNP(2nm)の触媒結果を示している。ライトオフ測定(
図7A)では、各試験で同じ量のPtを担持した。反応速度論測定(
図7B)では、すべての二金属Pt/Mサンプルが、純Ptよりも2~3倍高いPt質量正規化率を示した。露出した利用可能なサイトによって反応速度論速度を正規化することによって、回転頻度(
図7D)を計算した。二金属Pt/M触媒の回転頻度は、純Ptサンプルの9~10倍であった。
【0278】
図8はさらに、PtCu触媒、及びPtとCuの参照サンプル(5nm)の反応温度の関数としてのプロペン転化率を示している。
【0279】
Pt質量ベースでは、すべての2nmのPt/Cuサンプルは、2nmの純Ptサンプルに対して2倍高いCO
2形成速度を示したが(
図9A)、5nmのPt
86Cu
14及びPt
69Cu
31サンプルは、5nmの純Ptサンプルに対して4倍高い速度を示した(
図9B)。さらに、露出した表面サイト(露出したPt原子)の数で反応速度論測定値を正規化すると、活性の傾向をさらに差別化できた(
図9C、D)。
【0280】
図6Cは、Al
2O
3又はLSZに担持した2nmのPt/Cuサンプル(Pt
63Cu
37、Pt
49Cu
51、及びPt
37Cu
63)の反応速度論測定の結果を比較したものである。LSZ上で観察された活性は、Al
2O
3上で観察された活性と同様であった。
【0281】
実施例5:Pdベースの二金属NP
Pd/Cu比が3のPdCuのNPも同様に、あらかじめ形成された均一なPd種を用いて合成した。均一性はPdCuのNP上で維持し(
図10A、B)、PdのNP(3.2±0.3nm)とPdCuのNP(3.4±0.4nm)のサイズは同様であった(
図10C)。次に、0.3質量%のPdCuのNPをAl
2O
3担体上に堆積した。ICP-OESによるPd/Cu比は3.0であった。Pd
75Cu
25/Al
2O
3の活性化エネルギーは、Pd/Al
2O
3と同程度であったが(
図10E)、Pd
75Cu
25/Al
2O
3は、反応速度論測定において、Pd/Al
2O
3よりも活性が低いことが判明した(
図10D)。
【0282】
実施例6:Pt/Cu二金属及びPt単金属のAl2O3に担持したNPの触媒試験
表4は、評価したアルミナ担持したPt/Cu二金属のNP触媒、PtのNP触媒、及びPt参照触媒のリストをまとめたものである。Pt及びPt/Cuナノ粒子を、実施例1及び2に記載された手順に従って合成し、実施例3に記載された手順に従ってアルミナ担体に担持した。これらの触媒は、平均金属粒径に基づいて、さらに2つのサブグループ(それぞれ2nm及び5nm)のサンプルに分類した。これらのサンプルの総金属濃度は1質量%であった。二金属サンプルの実際のPt濃度はICP-OESで測定し、表4に示している。これらの触媒を従来のPt触媒と比較するため、初期湿潤技術により、Pt濃度がそれぞれ1質量%、0.8質量%、及び0.6質量%の3つの参照Pt試料を調製した。
【0283】
【0284】
一酸化炭素、炭化水素、及び一酸化窒素の変換効果を測定するため、これら2つの群の触媒とPt参照触媒を模擬自動車排気ガス流で評価した。活性測定の前に、反応器内の圧力損失を最小にするため、粉末サンプルを成形した。まず粉末サンプルを脱イオン水に分散させて、固形分が約30%のスラリーを形成した。約5質量%のアルミナベースバインダーをこのスラリーに添加した。このスラリーを乾燥するまで100℃で撹拌し続けた。乾燥したスラリーを空気中550℃で1時間焼成した。焼成した粉末を粉砕し、250~500マイクロメートルの画分にふるいにかけた。得られたサンプルをフレッシュサンプルとした。得られたサンプルの一部を、10%水蒸気/空気混合気中650℃で50時間水熱エージングし、これをエージングしたサンプルとした。
【0285】
表4のサンプルは、実施例4に記載した反応器とは別の反応器で、異なる反応条件で試験した。供給ガスは、500ppmのCO、167ppmのプロペン(C
3H
6)、200ppmのNO、10%のCO
2、10%のH
2O及び残りのN
2からなるディーゼル駆動車の排気ガス流をシミュレートした。供給ガス中の全成分の濃度は、それらの体積(又はモル)濃度を基準として表した。コランダムで1mLに希釈した100mgの試料を反応器に装入した。これは、2g/in3のウォッシュコート担持量を仮定した場合、モノリス空間速度50,000h
-1に相当する。定常状態の活性測定は、125~350℃の温度で25℃刻みで行った。FTIR及びHCアナライザーを使用して、CO、C
3H
6及びNOの転化率を得た。このタイプの測定では、
図7Aに示すような、転化-温度プロット(又はライトオフ曲線)を作成することができる。ライトオフ曲線から、ライトオフ温度を求めることができ、この温度は、50%の転化率に達するのに必要な温度(T50)として定義される。T50が低いほど、触媒は活性が高い。
【0286】
図11は、表4に示された触媒のCOのT50を示している。フレッシュ触媒の性能では、全てのNP触媒が、対応する参照触媒よりも低いCOのT50を示した。エージングした2nmのNP触媒では、Pt含有量が低い(0.84、0.75、0.64%)にもかかわらず、3つのPt/Cu二金属触媒は、Pt(2nm)/Al
2O
3(1%のPt)よりも低いCOのT50を示した。これらのPt/CuのNP触媒は、同じPt含有量の参照触媒よりもはるかに活性が高い。例えば、Pt
1Cu
1(2nm)/Al
2O
3(0.75%のPt)は、エージング後に200℃のCOのT50を有するが、0.8%のPt/Al
2O
3参照は213℃であった。5nmの金属粒径を有する触媒は、一般的に2nmの対応する触媒よりも活性が高く(より低いT50)、同じPt含有量の参照触媒よりもはるかに活性が高い。CO転化において最も活性の高いPt/Cu触媒は、Pt
3Cu
1(5nm)/Al
2O
3(0.95%のPt)及びPt
1Cu
3(5nm)/Al
2O
3(0.71%のPt)であり、いずれもCOのT50は196℃である。これらは、エージング後のCOのT50では、参照1(1%のPt/Al
2O
3)及び参照2(0.8%のPt)を上回った(それぞれ12℃と17℃)。
【0287】
図12は、表4に示した触媒のHC(プロペン)のT50を示している。フレッシュ触媒の性能では、全ての触媒、例えば5nmのNP触媒は、対応する参照触媒よりも低いHCのT50を示している。エージング後は、Pt(2nm)/Al
2O
3を除くすべてのNP触媒は、1%のPt/Al
2O
3の参照触媒よりもはるかに低いHCのT50を示した。つまり、Pt/CuのNP触媒は、Ptの少ない参照触媒を上回った。
【0288】
図13は、表4に示した触媒の250℃におけるNO
2の収率を示す。NO
2の収率は、NOの酸化反応(NO+1/2O
2⇒NO
2)の効率を表す。0.5のNO
2/NO
xの比(又は50%のNO2収率)が最も望ましい。これは、下流のNO
x還元触媒(例えば、NH
3-SCR触媒)において、より効率的なNO
x還元が可能になるためである。すべての触媒も、フレッシュな状態では、3つの参照触媒のNO
2の収率(1%~22%)よりもはるかに高いNO
2の収率(37%~47%)を示した。エージング後、Pt
3Cu
1(5nm)/Al
2O
3(0.95%のPt)、Pt
3Cu
1(2nm)/Al
2O
3(0.84%のPt)、Pt
1Cu
3(2nm)/Al
2O
3(0.64%のPt)は、参照触媒よりも活性が高い。Pt/Cu触媒の利点は、Pt
1Cu
3(2nm)/Al
2O
3(0.64%のPt)で観察され、エージング後のNO
2の収率が29%であるのに対し、参照触媒3(0.6%のPt)ではNO
2の収率が2%であった。
【国際調査報告】