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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】光電子素子用有機分子
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20240416BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20240416BHJP
   H10K 59/00 20230101ALI20240416BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240416BHJP
   H10K 85/30 20230101ALI20240416BHJP
   H10K 65/00 20230101ALI20240416BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240416BHJP
   H10K 101/70 20230101ALN20240416BHJP
   H10K 101/60 20230101ALN20240416BHJP
【FI】
C07F5/02 D CSP
H10K50/12
H10K59/00
H10K85/60
H10K85/30
H10K65/00
C09K11/06 660
C09K11/06 690
H10K101:70
H10K101:60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564053
(86)(22)【出願日】2022-04-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 EP2022060902
(87)【国際公開番号】W WO2022223839
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/060703
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21185253.8
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】弁理士法人PORT
(72)【発明者】
【氏名】ダンツ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】アルホナ エステバン,アルハマ
(72)【発明者】
【氏名】トーブス,ニコ-パトリック
【テーマコード(参考)】
3K107
4H048
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107AA03
3K107CC04
3K107CC07
3K107DD11
3K107DD21
3K107DD26
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD66
3K107DD67
3K107DD68
3K107DD69
3K107EE66
3K107FF13
3K107FF14
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB92
4H048VA32
4H048VA77
4H048VB10
(57)【要約】
本発明は、特に光電子素子に適用するための有機分子に関する。本発明によれば、前記有機分子は、化学式Iの構造を有する:
【化1】
・・・化学式I
は、水素、及び選択的に単環式脂肪族環系を形成する1以上のC-Cアルキル置換基で選択的に置換されたC-C12アリールからなる群から選択され、
は、それぞれの場合に、独立して、下記からなる群から選択され、
水素、重水素、N(R、OR、Si(R、B(OR、B(R、OSO、CF、CN、F、Cl、Br、I、C-C40アルキル、C-C40アルコキシ、C-C40チオアルコキシ、C-C40アルケニル、C-C40アルキニル、C-C60アリール及びC-C57ヘテロアリール、
は、それぞれの場合に、独立して、下記からなる群から選択される:
水素、重水素、N(R、OR、Si(R、B(OR、B(R、OSO、CF、CN、F、Br、I、C-C40アルキル、C-C40アルコキシ、C-C40チオアルコキシ、C-C40アルケニル、C-C40アルキニル、C-C60アリール及びC-C57ヘテロアリール。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式Iで表される構造を含む、有機分子:
【化1】
・・・化学式I
ここで、
は、水素、及び選択的に単環式脂肪族環系を形成する1以上のC-Cアルキル置換基で選択的に置換されたC-C12アリールからなる群から選択され、
は、それぞれの場合に、独立して、下記からなる群から選択され、
水素、重水素、N(R、OR、Si(R、B(OR、B(R、OSO、CF、CN、F、Br、Cl、I、
-C40アルキル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルコキシ、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40チオアルコキシ、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルケニル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルキニル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
選択的に1以上の置換基Rで置換されたC-C60アリール、及び
選択的に1以上の置換基Rで置換されたC-C57ヘテロアリール、
は、それぞれの場合に、独立して、下記からなる群から選択され、
水素、重水素、N(R、OR、Si(R、B(OR、B(R、OSO、CF、CN、F、Br、I、
-C40アルキル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルコキシ、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40チオアルコキシ、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルケニル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルキニル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
選択的に1以上の置換基Rで置換されたC-C60アリール、及び
選択的に1以上の置換基Rで置換されたC-C57ヘテロアリール、
は、それぞれの場合に、独立して、下記からなる群から選択され、
水素、重水素、OPh、CF、CN、F、
-Cアルキル、
ここで、選択的に1以上の水素原子は、独立して、重水素、CN、CFまたはFで置換され、
-Cアルコキシ、
ここで、選択的に1以上の水素原子は、独立して、重水素、CN、CFまたはFで置換され、
-Cチオアルコキシ、
ここで、選択的に1以上の水素原子は、独立して、重水素、CN、CFまたはFで置換され、
-Cアルケニル、
ここで、選択的に1以上の水素原子は、独立して、重水素、CN、CFまたはFで置換され、
-Cアルキニル、
ここで、選択的に1以上の水素原子は、独立して、重水素、CN、CFまたはFで置換され、
選択的に1以上のC-Cアルキル置換基で置換されたC-C18アリール、
選択的に1以上のC-Cアルキル置換基で置換されたC-C17ヘテロアリール、
N(C-C18アリール)
N(C-C17ヘテロアリール)、及び
N(C-C17ヘテロアリール)(C-C18アリール)、
ここで、置換基R、R及びRのうちいずれか1つは、独立して、1以上の置換基R、R及び/またはRと共に、単環または多環、脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族及び/またはベンゾ縮合環系を選択的に形成する。
【請求項2】
は、水素、またはメチル、プロピル及びブチルからなる群から選択された1以上の置換基で選択的に置換されたフェニルである、請求項1に記載の有機分子。
【請求項3】
化学式IIaの構造を含む、請求項1または2に記載の有機分子:
【化2】
・・・化学式IIa
ここで、Rは、それぞれの場合に、独立して、下記からなる群から選択される:
水素、
Me、
Pr、
Bu、
CN、
CF
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたPh、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたピリジニル、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたピリミジニル、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたカルバゾリル、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたトリアジニル、及び
N(Ph)
【請求項4】
化学式IIIの構造を含む、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の有機分子:
【化3】
・・・化学式III
ここで、T、V、W、X及びYは、下記からなる群から選択される:
水素、
Me、
Pr、
Bu、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたPh。
【請求項5】
化学式IVの構造を含む、請求項1~4のうちいずれか1項に記載の有機分子:
【化4】
・・・化学式IV
ここで、R、RII、RIII及びRIVは、下記からなる群から選択される:
水素、
Me、
Pr、
Bu、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたPh。
【請求項6】
化学式Vの構造を含む、請求項1~5のうちいずれか1項に記載の有機分子:
【化5】
・・・化学式V
ここで、Rは、それぞれの場合に、独立して、下記からなる群から選択される:
水素、
Me、
Pr、
Bu、
CN、
CF
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたPh、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたピリジニル、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたピリミジニル、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたカルバゾリル、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたトリアジニル、及び
N(Ph)
【請求項7】
化学式VIの構造を含む、請求項6に記載の有機分子:
【化6】
・・・化学式VI
ここで、Rは、それぞれの場合に、水素及びRからなる群から選択され、
ここで、Rは、それぞれの場合に、下記からなる群から選択される:
Me、
Pr、
Bu、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたPh。
【請求項8】
以下を含む、組成物:
(a)特にエミッタ形態の、請求項1~7のうちいずれか1項に記載の有機分子、
(b)前記有機分子と異なるホスト材料、及び
(c)選択的に、染料及び/または溶媒、
特に、前記組成物は、TADF材料及び燐光材料からなる群から選択された少なくとも1つの材料を含む。
【請求項9】
0.1~30重量%、好ましくは、0.8~15重量%、特に1.5~5重量%の前記有機分子を含み、特にTADF材料及び燐光材料からなる群から選択された少なくとも1つの材料を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ホスト材料は、化学式4で表される構造を含む、請求項8または9に記載の組成物:
【化7】
・・・化学式4
ここで、
それぞれのArは、互いに独立して、下記からなる群から選択され、
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C60アリール、及び
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C57ヘテロアリール、
それぞれのAは、互いに独立して、下記からなる群から選択される:
水素、
重水素、
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C60アリール、
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C57ヘテロアリール、及び
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C40(ヘテロ)アルキル。
【請求項11】
特に発光エミッタの、請求項1~7のうちいずれか1項に記載の有機分子、または請求項8~10のうちいずれか1項に記載の組成物を含む、光電子素子。
【請求項12】
前記光電子素子は、下記からなる群から選択される、請求項11に記載の光電子素子:
・有機ダイオード
・有機発光ダイオード(OLED)
・発光電気化学セル
・OLEDセンサ
・有機太陽電池
・有機トランジスタ
・有機電界効果トランジスタ
・有機レーザ、及び
・ダウンコンバージョン素子。
【請求項13】
化学式4で表される構造を含むホスト材料を含む、請求項11または12に記載の光電子素子:
【化8】
・・・化学式4
ここで、
それぞれのArは、互いに独立して、下記からなる群から選択され、
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C60アリール、及び
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C57ヘテロアリール、
それぞれのAは、互いに独立して、下記からなる群から選択される:
水素、
重水素、
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C60アリール、
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C57ヘテロアリール、及び
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C40(ヘテロ)アルキル。
【請求項14】
-基板、
-アノード、
-カソード、及び
-発光層を含み、
前記アノードまたは前記カソードは、前記基板上に配置され、
前記発光層は、前記アノードと前記カソードとの間に配置され、前記有機分子または前記組成物を含む、請求項11~13のうちいずれか1項に記載の光電子素子。
【請求項15】
(i)請求項11~14のうちいずれか1項に記載の光電子素子を提供する段階と、
(ii)前記光電子素子に電流を印加する段階と、を含む、440nm~470nmの波長範囲の光の発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光有機分子及び有機発光ダイオード(OLED)、並びにその他光電子素子におけるその用途に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明が解決しようとする課題は、光電子素子における使用に適した分子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0003】
そのような目的は、新規の有機分子を提供する本発明によって達成される。
【0004】
本発明によれば、前記有機分子は、純粋な有機分子であり、すなわち、光電子素子に使用されると知られている金属錯体とは異なり、いかなる金属イオンも含まない。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、前記有機分子は、青色または空色のスペクトル範囲において、最大発光を示す。前記有機分子は、特に420nm~520nm、好ましくは、440nm~495nm、より好ましくは、450nm~470nmにおいて、最大発光を示す。本発明による有機分子のフォトルミネセンス量子収率は、特に50%以上である。光電子素子、例えば、有機発光ダイオード(OLED)における本発明による分子の使用は、素子のより高い効率、または発光の半値幅(FWHM)で表されるより高い色純度をもたらす。対応するOLEDは、公知のエミッタ材料及び類似の色相を有するOLEDよりさらに高い安定性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の有機発光分子は、化学式Iの構造を含むか、あるいはそれからなる:
【化1】
・・・化学式I
ここで、
はC-C12アリールであり、これは、C-C12アリールにおいて単環式脂肪族環系を選択的に形成する1以上のC-Cアルキル置換基で選択的に置換され(その結果、例えば、化学式I-5またはI-6として表される構造が形成される)、
は、それぞれの場合に、独立して、下記からなる群から選択され、
水素、重水素、N(R、OR、Si(R、B(OR、B(R、OSO、CF、CN、F、Br、I、Cl、
-C40アルキル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルコキシ、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40チオアルコキシ、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルケニル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルキニル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
選択的に1以上の置換基Rで置換されたC-C60アリール、及び
選択的に1以上の置換基Rで置換されたC-C57ヘテロアリール、
は、それぞれの場合に、互いに独立して、下記からなる群から選択され、
水素、重水素、N(R、OR、Si(R、B(OR、B(R、OSO、CF、CN、F、Br、I、
-C40アルキル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルコキシ、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40チオアルコキシ、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルケニル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルキニル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
選択的に1以上の置換基Rで置換されたC-C60アリール、及び
選択的に1以上の置換基Rで置換されたC-C57ヘテロアリール、
は、それぞれの場合に、互いに独立して、下記からなる群から選択され、
水素、重水素、OPh(Ph=フェニル)、CF、CN、F、
-Cアルキル、
ここで、選択的に1以上の水素原子は、独立して、重水素、CN、CFまたはFで置換され、
-Cアルコキシ、
ここで、選択的に1以上の水素原子は、独立して、重水素、CN、CFまたはFで置換され、
-Cチオアルコキシ、
ここで、選択的に1以上の水素原子は、独立して、重水素、CN、CFまたはFで置換され、
-Cアルケニル、
ここで、選択的に1以上の水素原子は、独立して、重水素、CN、CFまたはFで置換され、
-Cアルキニル、
ここで、選択的に1以上の水素原子は、独立して、重水素、CN、CFまたはFで置換され、
選択的に1以上のC-Cアルキル置換基で置換されたC-C18アリール、
選択的に1以上のC-Cアルキル置換基で置換されたC-C17ヘテロアリール、
N(C-C18アリール)
N(C-C17ヘテロアリール)、及び
N(C-C17ヘテロアリール)(C-C18アリール)、
ここで、置換基R、R及びRのうちいずれか1つは、独立して、1以上の置換基R、R及び/またはRと共に、単環または多環、脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族及び/またはベンゾ縮合環系を形成することができる。例えば、1つの置換基Rは、他の置換基Rと環系を形成するか、あるいは、1つの置換基Rは、置換基Rと環系を形成することができる。
【0007】
特定実施形態において、本発明の前記有機分子は、化学式Ia、IbまたはIcの構造を含むか、あるいはそれからなる:
【化2】
・・・化学式Ia
【化3】
・・・化学式Ib
【化4】
・・・化学式Ic。
【0008】
好ましい実施形態において、本発明の前記有機分子は、化学式Iaの構造を含むか、あるいはそれからなる。
【0009】
一実施形態において、Rは、選択的に1以上のC-Cアルキルで置換されたフェニルである。
【0010】
一実施形態において、Rは、選択的にメチル、プロピル、シクロ-へキシル及びブチルから選択された1以上の置換基で置換されたフェニルである。
【0011】
一実施形態において、Rは、選択的にメチル、プロピル及びブチルから選択された1以上の置換基で置換されたフェニルである。
【0012】
一実施形態において、Rは、水素である。
【0013】
好ましい実施形態において、前記有機分子は、化学式I-1、化学式I-2、化学式I-3、化学式I-4、化学式I-5、化学式I-6、化学式I-7、化学式I-8、化学式I-9または化学式I-10の構造を含むか、あるいはそれからなる:
【化5】
・・・化学式I-1
【化6】
・・・化学式I-2
【化7】
・・・化学式I-3
【化8】
・・・化学式I-4
【化9】
・・・化学式I-5
【化10】
・・・化学式I-6
【化11】
・・・化学式I-7
【化12】
・・・化学式I-8
【化13】
・・・化学式I-9
【化14】
・・・化学式I-10。
【0014】
一実施形態において、前記有機分子は、化学式IIの構造を含むか、あるいはそれからなる:
【化15】
・・・化学式II。
【0015】
好ましい実施形態において、前記有機分子は、化学式IIaの構造を含むか、あるいはそれからなり、
【化16】
・・・化学式IIa
ここで、Rは、それぞれの場合に、互いに独立して、下記からなる群から選択される:
水素、
Me、
Pr、
Bu、
CN、
CF
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたPh、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたピリジニル、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたピリミジニル、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたカルバゾリル、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたトリアジニル、及び
N(Ph)
【0016】
好ましい実施形態において、前記有機分子は、化学式IIa-1または化学式IIa-2の構造を含むか、あるいはそれからなる:
【化17】
・・・化学式IIa-1
【化18】
・・・化学式IIa-2。
【0017】
一実施形態において、前記有機分子は、化学式IIIの構造を含むか、あるいはそれからなり、
【化19】
・・・化学式III
ここで、T、V、W、X及びYは、下記からなる群から選択される:
水素、
Me、
Pr、
Bu、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたPh。
【0018】
好ましい実施形態において、前記有機分子は、化学式IIIaまたは化学式IIIbの構造を含むか、あるいはそれからなる:
【化20】
・・・化学式IIIa
【化21】
・・・化学式IIIb。
【0019】
好ましい実施形態において、前記有機分子は、化学式III-1、化学式III-2、化学式III-3、化学式III-4、化学式III-5、化学式III-6、化学式III-7または化学式III-8の構造を含むか、あるいはそれからなる:
【化22】
・・・化学式III-1
【化23】
・・・化学式III-2
【化24】
・・・化学式III-3
【化25】
・・・化学式III-4
【化26】
・・・化学式III-5
【化27】
・・・化学式III-6
【化28】
・・・化学式III-7
【化29】
・・・化学式III-8。
【0020】
一実施形態において、前記有機分子は、化学式IVの構造を含むか、あるいはそれからなり、
【化30】
・・・化学式IV
ここで、R、RII、RIII及びRIVは、下記からなる群から選択される:
水素、
Me、
Pr、
Bu、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたPh。
【0021】
一実施形態において、前記有機分子は、化学式IVa、化学式IVbまたは化学式IVcの構造を含むか、あるいはそれからなる:
【化31】
・・・化学式IVa
【化32】
・・・化学式IVb
【化33】
・・・化学式IVc。
【0022】
好ましい実施形態において、前記有機分子は、化学式IVcの構造を含むか、あるいはそれからなる。
【0023】
好ましい実施形態において、前記有機分子は、化学式IV-1、化学式IV-2、化学式IV-3、化学式IV-4、化学式IV-5、化学式IV-6、化学式IV-7、化学式IV-8、化学式IV-9または化学式IV-10の構造を含むか、あるいはそれからなる:
【化34】
・・・化学式IV-1
【化35】
・・・化学式IV-2
【化36】
・・・化学式IV-3
【化37】
・・・化学式IV-4
【化38】
・・・化学式IV-5
【化39】
・・・化学式IV-6
【化40】
・・・化学式IV-7
【化41】
・・・化学式IV-8
【化42】
・・・化学式IV-9
【化43】
・・・化学式IV-10
【0024】
一実施形態において、前記有機分子は、化学式Vの構造を含むか、あるいはそれからなり、
【化44】
・・・化学式V
ここで、Rは、それぞれの場合に、互いに独立して、下記からなる群から選択される:
水素、
Me、
Pr、
Bu、
CN、
CF
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたPh、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたピリジニル、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたピリミジニル、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたカルバゾリル、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたトリアジニル、及び
N(Ph)
【0025】
一実施形態において、前記有機分子は、化学式Vaの構造を含むか、あるいはそれからなる:
【化45】
・・・化学式Va。
【0026】
好ましい実施形態において、前記有機分子は、化学式V-1または化学式V-2の構造を含むか、あるいはそれからなる:
【化46】
・・・化学式V-1
【化47】
・・・化学式V-2。
【0027】
本発明の一実施形態において、Rは、それぞれの場合に、互いに独立して、下記からなる群から選択される:
水素、
Me、
Pr、
Bu、
CN、
CF
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたPh、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたピリジニル、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたピリミジニル、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたカルバゾリル、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたトリアジニル、及び
N(Ph)
【0028】
好ましい実施形態において、本発明の前記有機発光分子は、化学式VIの構造を含むか、あるいはそれからなり、
【化48】
・・・化学式VI
ここで、Rは、それぞれの場合に、水素及びRの群から選択され、ここで、Rは、それぞれの場合に、下記からなる群から選択される:
Me、
Pr、
Bu、
Me、Pr、Bu、CN、CF及びPhからなる群から互いに独立して選択される1以上の置換基で選択的に置換されたPh。
【0029】
好ましい実施形態において、本発明の前記有機発光分子は、化学式VIの構造を含むか、あるいはそれからなり、ここで、正確に2、3、4、5または6個の置換基Rは、それぞれの場合に、互いに独立して、Rから選択される。
【0030】
定義
ここで、用語「層」は、広範囲な平面の幾何学的構造を有するボディを意味する。光電子素子が複数の層で構成されるということは、当業者の常識の一部を形成する。
【0031】
本発明の文脈において、発光層(EML)は、光電子素子の層であり、ここで、前記層からの発光は、素子に電圧及び電流を印加するときに観察される。当業者は、光電子素子からの発光が少なくとも1つのEMLからの発光に起因することを理解することができる。熟練された技術者は、EMLからの発光が典型的に(主に)前記EMLに含まれた全ての材料に起因せず、特定エミッタ材料に起因するということを理解することができる。
【0032】
本発明の文脈において、「エミッタ材料」(「エミッタ」ともいう)は、与えられた電圧及び電流の条件で光電子素子の発光層(EML)に含まれるときに光を放出する材料である(下記参照)。エミッタ材料が一般的に「発光性ドーパント」材料であるということを、当業者であれば、知っており、ドーパント材料(発光性如何にかかわらず)が、通常(本明細書において)ホスト材料というマトリックス材料に組み込まれた材料であるということは、当業者であれば、理解することができる。ここで、ホスト材料は、本発明による少なくとも1つの有機分子を含む光電子素子、好ましくは、OLEDに含まれるとき、一般的にHと称される。
【0033】
本発明の文脈において、用語「環状基」は、最も広い意味において、任意の単環式部分、二環式部分または多環式部分としても理解される。
【0034】
本発明の文脈において、化学構造を言及するとき、用語「環」は、最も広い意味において、任意の単環式部分としても理解される。同じ見地から、化学構造を言及するとき、用語「環」は、最も広い意味において、任意の二環式部分または多環式部分としても理解される。
【0035】
本発明の文脈において、用語「環系」は、最も広い意味において、任意の単環式部分、二環式部分または多環式部分としても理解される。
【0036】
本発明の文脈において、用語「環原子」は、環または環系の環状コアの一部であり、環状コアに選択的に結合された非環状置換基の一部ではない、任意の原子を称する。
【0037】
本発明の文脈において、用語「炭素環」は、最も広い意味において、環状コア構造が水素はいうまでもなく、本発明の特定実施形態において定義された任意の他の置換基で置換可能な炭素原子のみを含む任意の環状基としても理解される。用語「炭素環の」は、形容詞であり、環状コア構造が水素はいうまでもなく、本発明の特定実施形態において定義された任意の他の置換基で置換可能な炭素原子のみを含む環状基を称するものとも理解される。
【0038】
本発明の文脈において、用語「ヘテロ環」は、最も広い意味において、環状コア構造が炭素原子だけでなく、少なくとも1つのヘテロ原子を含む任意の環状基としても理解される。用語「ヘテロ環の」は、形容詞であり、環状コア構造が炭素原子だけでなく、少なくとも1つのヘテロ原子を含む環状基を称するものとも理解される。該ヘテロ原子は、特定実施形態において特に言及されない限り、それぞれの場合に、同一でもあり、あるいは異なってもおり、好ましくは、B、Si、N、O、S及びSe、より好ましくは、B、N、O及びS、最も好ましくは、N、O及びSからなる群から個別的に選択されうる。本発明の文脈においてヘテロ環に含まれた全ての炭素原子またはヘテロ原子はいうまでもなく、水素または本発明の特定実施形態において定義された任意の他の置換基で置換可能である。
【0039】
当業者は、任意の環状基(すなわち、任意の炭素環及びヘテロ環)が脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族であることを理解することができる。
【0040】
本発明の文脈において、環状基(すなわち、1つの環、複数の環、環系、炭素環、ヘテロ環)を言及するとき、用語「脂肪族」は、環状コア構造(選択的に結合された置換基は含まず)の芳香族またはヘテロ芳香族環または環系の一部ではない少なくとも1つの環原子を含む。好ましくは、脂肪族環状基内のほとんどの環原子、より好ましくは、全ての環原子は、芳香族またはヘテロ芳香族環または環系(例えば、シクロヘキサンまたはピペリジンにおいて)の一部ではない。ここで、一般的に脂肪族環または環系を言及するとき、炭素環基とヘテロ環基との間に区別が行われず、用語「脂肪族」は、脂肪族環状基内でヘテロ原子が含まれるか否かを示すために、炭素環またはヘテロ環を説明する形容詞としても使用される。
【0041】
熟練された技術者によって理解されるように、用語「アリール」及び「芳香族」は、最も広い意味において、任意の単環式芳香族部分、二環式芳香族部分または多環式芳香族部分、すなわち、全ての環原子が芳香族環系の一部である環基、好ましくは、同一芳香族環系の一部としても理解される。しかし、本出願の全体にわたって、用語「アリール」及び「芳香族」は、全ての芳香族環原子が炭素原子である単環式芳香族部分、二環式芳香族部分または多環式芳香族部分に制限される。対照的に、本願において、用語「ヘテロアリール」及び「ヘテロ芳香族」は、1以上の芳香族炭素環原子が、ヘテロ原子(すなわち、炭素ではない)によって置換された任意の単環式芳香族部分、二環式芳香族部分または多環式芳香族部分を称する。本発明の特定実施形態において特に言及されない限り、「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」内の少なくとも1つのヘテロ原子は、それぞれの場合に、同一でもあり、あるいは異なってもおり、N、O、S及びSe、より好ましくは、N、O及びSからなる群から個別的に選択されうる。当業者は、形容詞「芳香族」及び「ヘテロ芳香族」が任意の環状基(すなわち、任意の環系)を記述するのにも使用されることを理解する。すなわち、芳香族環状基(すなわち、芳香族環系)はアリール基であり、ヘテロ芳香族環状基(すなわち、ヘテロ芳香族環系)はヘテロアリール基である。
【0042】
本発明の特定実施形態において特に言及されない限り、本願において、アリール基は、好ましくは、6~60個の芳香族環原子、より好ましくは、6~40個の芳香族環原子、より一層好ましくは、6~18個の芳香族環原子を含む。本発明の特定実施形態において特に言及されない限り、本願において、ヘテロアリール基は、好ましくは、5~60個の芳香族環原子、より好ましくは、5~40個の芳香族環原子、より一層好ましくは、5~20個の芳香族環原子を含み、そのうち少なくとも1つはヘテロ原子であり、好ましくは、N、O、S及びSe、より好ましくは、N、O及びSから選択される。1以上のヘテロ原子がヘテロ芳香族基に含まれる場合、全てのヘテロ原子は、好ましくは、互いに独立して、N、O、S及びSe、より好ましくは、N、O及びSから選択される。
【0043】
本発明の文脈において、芳香族基及びヘテロ芳香族基(例えば、アリール置換基またはヘテロアリール置換基)の両方に対し、芳香族環炭素原子の数は、特定置換基の定義において下付き数字、例えば、「C-C60アリール」の形態に与えられる。これは、それぞれのアリール置換基が6~60個の芳香族炭素環原子を含むことを意味する。脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族の置換基であるか否かにかかわらず、全ての他の種類の置換基で許容される炭素原子の数を示すために、同一の下付き数字が使用される。例えば、「C-C40アルキル」という表現は、1~40個の炭素原子を含むアルキル置換基を意味する。
【0044】
アリール基の好ましい例は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ベンズアントラセン、ベンゾフェナントレン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレンまたはそれら基の組み合わせを含む。
【0045】
ヘテロアリール基の好ましい例は、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン;ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジノイミダゾール、キノキサリノイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、キノキサリン、ピラジン、フェナジン、ナフチリジン、カルボリン、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,2,3,4-テトラジン、1,2,4,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジン及びベンゾチアジアゾール、またはそれら基の組み合わせを含む。
【0046】
本明細書の全般にわたって使用されているように、用語「アリーレン」は、他の分子構造に対し、2つの結合部位を保有し、リンカー構造の役割を行う二価アリール置換基を意味する。同じ見地から、用語「ヘテロアリーレン」は、他の分子構造に対し、2つの結合部位を保有し、リンカー構造の役割を行う二価アリール置換基を意味する。
【0047】
本発明の文脈において、芳香族環系またはヘテロ芳香族環系を言及するとき、用語「縮合された」は、「縮合された」芳香族環またはヘテロ芳香族環が両方の環系の一部である少なくとも1つの結合を共有することを意味する。例えば、ナフタレン(または、置換基として言及されるとき、ナフチル)またはベンゾチオフェン(または、置換基として言及されるとき、ベンゾチオフェニル)は、本発明の文脈において縮合芳香族環系と見なされ、ここで、2つのベンゼン環(ナフタレンの場合)またはチオフェン及びベンゼン(ベンゾチオフェンの場合)は、1つの結合を共有する。また、そのような文脈において結合を共有することは、それぞれの結合を構成する2つの原子を共有することを含むものとも理解され、縮合芳香族環系またはヘテロ芳香族環系は、1つの芳香族系またはヘテロ芳香族系とも理解される。また、縮合芳香族環系またはヘテロ芳香族環系(例えば、ピレンで)を構成する芳香族環またはヘテロ芳香族環によって1以上の結合が共有されるものとも理解される。また、脂肪族環系も縮合され、これは、縮合脂肪族環系が芳香族ではないという点を除いては、芳香族環系またはヘテロ芳香族環系と同一の意味を有するものとも理解されるであろう。また、芳香族環系またはヘテロ芳香族環系は、脂肪族環系と縮合(すなわち、少なくとも1つの結合を共有)されうる。
【0048】
本発明の文脈において、用語「縮合(condensed)」環系は、「縮合(fused)」環系と同一の意味を有する。
【0049】
本発明の特定実施形態において、環または環系に結合された隣接した置換基は、前記置換基が結合された芳香族またはヘテロ芳香族環または環系に縮合された、更なる単環または多環、脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族環系を形成することができる。選択的にそのように形成された縮合環系は、隣接した置換基が結合された芳香族またはヘテロ芳香族環または環系よりさらに大きい(さらに多い環原子を含むことを意味する)ものとも理解される。その場合(及びそのような数字が提供される場合)、縮合環系に含まれた環原子の「総」数は、芳香族またはヘテロ芳香族環または環系に含まれた環原子の和と理解されなければならない。隣接した置換基は結合され、追加環系の環原子は、隣接した置換基によって形成されるが、縮合環によって共有される環原子は、二回ではなく一回に計算される。例えば、ベンゼン環は、ナフタレンコアが形成されるように、さらに他のベンゼン環を形成する2つの隣接した置換基を有することができる。当該ナフタレンコアは、2つの炭素原子が2つのベンゼン環によって共有され、二回ではなく、一回のみ計算されるので、10個の環原子を含むことになる。
【0050】
一般的に、本発明の文脈において、用語「隣接した置換基」または「隣接した基」は、同一のまたは隣接する原子に結合された置換基または基を意味する。
【0051】
本発明の文脈において、用語「アルキル基」は、最も広い意味において、任意の直鎖状、分枝状または環状のアルキル置換基としても理解される。特に、用語「アルキル」は、置換基である、メチル(Me)、エチル(Et)、n-プロピル(Pr)、i-プロピル(Pr)、シクロプロピル、n-ブチル(Bu)、i-ブチル(Bu)、s-ブチル(Bu)、t-ブチル(Bu)、シクロブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、t-ペンチル、2-ペンチル、ネオ-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、s-ヘキシル、t-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、ネオ-ヘキシル、シクロヘキシル、1-メチルシクロペンチル、2-メチルペンチル、n-へプチル、2-へプチル、3-へプチル、4-へプチル、シクロへプチル、1-メチルシクロヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、シクロオクチル、1-ビシクロ[2,2,2]オクチル、2-ビシクロ[2,2,2]オクチル、2-(2,6-ジメチル)オクチル、3-(3,7-ジメチル)オクチル、アダマンチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,1-ジメチル-n-ヘキス-1-イル、1,1-ジメチル-n-ヘプト-1-イル、1,1-ジメチル-n-オクト-1-イル、1,1-ジメチル-n-デス-1-イル、1,1-ジメチル-n-ドデス-1-イル、1,1-ジメチル-n-テトラデス-1-イル、1,1-ジメチル-n-ヘキサデス-1-イル、1,1-ジメチル-n-オクタデス-1-イル、1,1-ジエチル-n-ヘキス-1-イル、1,1-ジエチル-n-ヘプト-1-イル、1,1-ジエチル-n-オクト-1-イル、1,1-ジエチル-n-デス-1-イル、1,1-ジエチル-n-ドデス-1-イル、1,1-ジエチル-n-テトラデス-1-イル、1,1-ジエチル-n-ヘキサデス-1-イル、1,1-ジエチル-n-オクタデス-1-イル、1-(n-プロピル)-シクロヘキス-1-イル、1-(n-ブチル)-シクロヘキス-1-イル、1-(n-ヘキシル)-シクロヘキス-1-イル、1-(n-オクチル)-シクロヘキス-1-イル及び1-(n-デシル)-シクロヘキス-1-イルを含む。
【0052】
例えば、s-ブチル、s-ペンチル及びs-へキシルにおいて、「s」は「二次」を意味し、すなわち、s-ブチル、s-ペンチル及びs-へキシルは、それぞれsec-ブチル、sec-ペンチル及びsec-へキシルと同一である。例えば、t-ブチル、t-ペンチル及びt-へキシルにおいて、「t」は「三次」を意味し、すなわち、t-ブチル、t-ペンチル及びt-へキシルは、それぞれtert-ブチル、tert-ペンチル及びtert-へキシルと同一である。
【0053】
本明細書の全体にわたって使用されているように、用語「アルケニル」は、直鎖状、分枝状及び環状のアルケニル置換基を含む。用語「アルケニル基」は、例えば、置換基である、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニルまたはシクロオクタジエニルを含む。
【0054】
本明細書の全体にわたって使用されているように、用語「アルキニル」は、直鎖状、分枝状及び環状のアルキニル置換基を含む。用語「アルキニル基」は、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルまたはオクチニルを含む。
【0055】
本明細書の全体にわたって使用されているように、用語「アルコキシ」は、直鎖状、分枝状及び環状のアルコキシ置換基を含む。用語「アルコキシ基」は、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ及び2-メチルブトキシを含む。
【0056】
本明細書の全体にわたって使用されている用語「チオアルコキシ」は、直鎖状、分枝状及び環状のチオアルコキシ置換基を含み、ここで、例示的なアルコキシ基のOは、Sに代替される。
【0057】
本明細書の全体にわたって使用されている用語「ハロゲン」(または、化学命名法で置換基を示すとき、「ハロ」)は、最も広い意味において、元素周期律表の7番目の主要基(すなわち、17族)の元素の任意の原子、好ましくは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であるとも理解される。
【0058】
分子フラグメントが、置換基や、他の部分に結合していると記述されるとき、その名称は、まさしくそれがフラグメント(例えば、ナフチル、ジベンゾフリル)であるように、あるいは全体分子(例えば、ナフタレン、ジベンゾフラン)であるようにも記述される。本明細書に使用されているように、置換基、または結合されたフラグメントを記述する前記方式は、同等であると見なされる。
【0059】
また、本願において「C-C60アリール」または「C-C40アルキル」のような置換基がその置換基内の結合部位を示す名称なしに言及される度に、これは、それぞれの置換基が任意の原子を介して結合されることを意味する。例えば、「C-C60アリール」置換基は、任意の6~60個の芳香族炭素原子を介して結合され、「C-C40アルキル」置換基は、任意の1~40個の脂肪族炭素原子を介して結合される。一方、「2-シアノフェニル」置換基は、正確な化学命名法を許容するように、そのCN基が結合部位に隣接する方式のみによって結合される。
【0060】
本発明の文脈において、「ブチル」、「ビフェニル」または「ターフェニル」のような置換基が追加詳細なしに言及される度に、これは、それぞれの置換基の任意の異性質体が特定置換基として許容されることを意味する。これと係わり、例えば、置換基としての用語「ブチル」は、置換基として、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル及びイソ-ブチルを含む。同様に、置換基として、用語「ビフェニル」は、オルト-ビフェニル、メタ-ビフェニルまたはパラ-ビフェニルを含み、ここで、オルト、メタ及びパラは、ビフェニル置換基を有するそれぞれの化学的部分に対するビフェニル置換基の結合部位に係わって定義される。同様に、置換基として、用語「ターフェニル」は、3-オルト-ターフェニル、4-オルト-ターフェニル、4-メタ-ターフェニル、5-メタ-ターフェニル、2-パラ-ターフェニルまたは3-パラ-ターフェニルを含み、ここで、熟練された技術者に知られたように、オルト、メタ及びパラは、互いに対するターフェニル基内の2つのPh部分の位置を示し、「2-」、「3-」、「4-」及び「5-」は、ターフェニル置換基を有するそれぞれの化学的部分に対するターフェニル置換基の結合位置を示す。
【0061】
前記定義された全ての基及び実際に全ての化学的部分は、それらが環状または非環状、脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族であるか否かにかかわらず、本願に記載された特定実施形態によってさらに置換可能であるものと理解される。
【0062】
本願に言及された任意の構造に含まれた全ての水素原子(H)は、それぞれの場合に互いに独立して、具体的に述べられない限り、重水素(D)にも置換される。水素を重水素に置換することは、一般慣行であり、当業者には明白である。したがって、これを達成することができる多くの周知の方法と一部レビュー論文がある。
【0063】
実験または計算データを比較する場合、同一の方法論によって値を決定しなければならない。例えば、特定方法により、実験的なΔESTが0.4eV未満と決定されれば、同一条件を含む同一特定方法を使用する場合にのみ比較が有効である。具体的な例を挙げれば、異なる化合物のフォトルミネセンス量子収率(PLQY)の比較は、PLQYの決定が同一反応条件(例えば、室温、10% PMMAフィルムにおける測定)で行われた場合にのみ有効である。同様に、計算されたエネルギー値は、同一計算方法(同一関数及び同一基本セットと共に)によって決定される必要がある。
【0064】
少なくとも1つの本発明による有機分子を含む光電子素子
本発明の更なる態様は、少なくとも1つの本発明による有機分子を含む光電子素子に係わるものである。
【0065】
一実施形態において、少なくとも1つの本発明による有機分子を含む光電子素子は、下記からなる群から選択される:
・有機発光ダイオード(OLED)
・発光電気化学セル
・OLEDセンサ、特に、外部と完全に遮断されていないガスセンサ及び蒸気センサ
・有機ダイオード
・有機太陽電池
・有機トランジスタ
・有機電界効果トランジスタ
・有機レーザ
・ダウンコンバージョンダウンコンバージョン素子。
【0066】
発光電気化学セルは、カソード、アノード及び本発明による有機分子を含む活性層の3層からなる。
【0067】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの本発明による有機分子を含む光電子素子は、有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学セル(LEC)、有機レーザ及び発光トランジスタからなる群から選択される。
【0068】
より好ましい実施形態において、少なくとも1つの本発明による有機分子を含む光電子素子は、有機発光ダイオード(OLED)である。
【0069】
一実施形態において、少なくとも1つの本発明による有機分子を含む光電子素子は、下記層構造を有するOLEDである:
1.基板
2.アノード層A
3.正孔注入層(HIL)
4.正孔輸送層(HTL)
5.電子阻止層(EBL)
6.発光層(EML)
7.正孔阻止層(HBL)
8.電子輸送層(ETL)
9.電子注入層(EIL)
10.カソード層C
【0070】
ここで、該OLEDは、アノード層A、カソード層C及び発光層EMLを除いたそれぞれの層を選択的に含み、異なる層が併合され、該OLEDは、前述のところで定義された各層類型のうち1層以上の層を含むものでもある。
【0071】
また、本発明による少なくとも1つの有機分子を含む光電子素子は、例えば、水分、蒸気及び/またはガスを含む環境内の有害物質に対する損傷露出から素子を保護する1層以上の保護層を選択的に含んでもよい。
【0072】
一実施形態において、少なくとも1つの本発明による有機分子を含む光電子素子は、下記の逆積層(inverted layer)構造を有するOLEDである:
1.基板
2.カソード層C
3.電子注入層(EIL)
4.電子輸送層(ETL)
5.正孔阻止層(HBL)
6.発光層(EML)
7.電子阻止層(EBL)
8.正孔輸送層(HTL)
9.正孔注入層(HIL)
10.アノード層A
【0073】
ここで、該OLED(逆積層構造を有する)は、アノード層A、カソード層C及び発光層EMLを除いたそれぞれの層を選択的に含み、異なる層が併合され、該OLEDは、前述のところで定義された各層類型のうち1層以上の層を含むものでもある。
【0074】
本発明による有機分子(前述の実施形態による)は、特定の構造及び置換によって多様な層に使用可能である。使用される場合、光電子素子、特にOLEDのそれぞれの層において、本発明による有機分子の分率は、0.1重量%~99重量%、より好ましくは、1重量%~80重量%である。代案的な実施形態において、それぞれの層において、有機分子の割合は100重量%である。
【0075】
一実施形態において、少なくとも1つの本発明による有機分子を含む光電子素子は、積層構造を有することができるOLEDである。前記構造においては、OLEDが並んで配される一般配置とは異なり、個別ユニットが互いの上に積層される。混合光は、積層構造を示すOLEDによって生成され、特に、白色光は、青色OLED、緑色OLED及び赤色OLEDを積層して生成される。また、積層構造を示すOLEDは、選択的に電荷生成層(CGL)を含んでもよく、それは、一般的に、2つのOLEDサブユニット間に位置し、一般的に、n-ドープされた層及びp-ドープされた層として構成される。一般的に、1つのCGLのn-ドープされた層がアノード層により近く位置する。
【0076】
一実施形態において、少なくとも1つの本発明による有機分子を含む光電子素子は、アノードとカソードとの間に、2層以上の発光層を含むOLEDである。特に、いわゆるタンデムOLEDは、3層の発光層を含み、ここで、1層の発光層は、赤色光を放出し、1層の発光層は、緑色光を放出し、1層の発光層は、青色光を放出し、選択的に、個々の発光層間に、電荷生成層、電荷阻止層または電荷輸送層のような追加層を含んでもよい。更なる実施形態において、該発光層は、隣接するように積層される。更なる実施形態において、該タンデムOLEDは、それぞれの2層の発光層間に電荷生成層を含む。また、隣接した発光層、または電荷生成層によって分離した発光層が併合されうる。
【0077】
一実施形態において、少なくとも1つの本発明による有機分子を含む光電子素子は、本質的に白色光電子素子でもあり、これは、素子が白色光を放出するということを意味する。例えば、そのような白色光電子素子は、少なくとも1つの(深)青色エミッタ分子、及び緑色光及び/または赤色光を放出する1以上のエミッタ分子を含むものでもある。また、本文の後項で説明されたように、2以上の分子間に選択的にエネルギー伝達がありうる(下記参照)。
【0078】
少なくとも1つの本発明による有機分子を含む光電子素子の場合、少なくとも1つの本発明による有機分子は、光電子素子の発光層(EML)、最も好ましくは、OLEDのEMLに含まれる。しかし、本発明による有機分子は、例えば、電子輸送層(ETL)及び/または電子阻止層(EBL)または励起子阻止層及び/または正孔輸送層(HTL)及び/または正孔阻止層(HBL)でも使用される。使用される場合、光電子素子、特にOLEDのそれぞれの層において、本発明による有機分子の分率は、0.1重量%~99重量%、より好ましくは、0.5重量%~80重量%、特に0.5重量%~10重量%である。代案的な実施形態において、それぞれの層において、前記有機分子の割合は100重量%である。
【0079】
光電子素子、特にOLEDの個々の層に適している材料の選択基準は、当業者の常識である。最新技術は、個々の層に使用される多くの材料を示しており、どの材料が互いに共に使用するのに適しているかを知らせる。最新技術で使用される任意の材料が、本発明による有機分子を含む光電子素子にも使用可能であることが理解される。以下、個々の層に対する材料の好ましい例が与えられるであろう。これは、下記に列挙された全ての類型の層が、本発明による少なくとも1つの有機分子を含む光電子素子に存在すべきであることを意味しないものと理解される。さらに、本発明による少なくとも1つの有機分子を含む光電子素子は、例えば、2以上の発光層(EML)のように、下記に羅列されたそれぞれの層のうち1以上を含むものと理解される。同一類型の2以上の層(例えば、2以上のEML、または2以上のHTL)が、必ずしも同一材料、またさらに好ましくは、同一割合の同一材料を含むものではないとも理解される。また、本発明による少なくとも1つの有機分子を含む光電子素子は、下記に列挙された全ての類型の層を含む必要はなく、ここで、アノード層、カソード層及び発光層は、一般的に全ての場合に存在する。
【0080】
前記基板は、任意の材料、または該材料の組成物によっても形成される。ほとんど、ガラススライドが基板として使用される。代案としては、薄い金属層(例えば、銅、金、銀またはアルミニウムフィルム)、またはプラスチックフィルムやプラスチックスライドが使用されうる。それは、さらに高レベルの柔軟性を許容することができる。アノード層Aは、ほとんど(本質的に)透明なフィルムを得ることができる材料によって構成される。OLEDからの発光を許容するために、二電極のうち少なくとも一つは、(本質的に)透明ではなければならないので、アノード層Aまたはカソード層Cのうち一層は透明である。好ましくは、アノード層Aは、透明導電性酸化物(TCOs)を多量含むか、あるいはそれからなる。そのようなアノード層Aは、例えば、インジウムスズ酸化物、アルミニウム亜鉛酸化物、フッ素ドープされたスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、PbO、SnO、ジルコニウム酸化物、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、タングステン酸化物、黒鉛、ドープされたSi、ドープされたGe、ドープされたGaAs、ドープされたポリアニリン、ドープされたポリピロール及び/またはドープされたポリチオフェンを含むものでもある。
【0081】
好ましくは、アノード層Aは、(本質的に)インジウムスズ酸化物(ITO)(例えば、(InO0.9(SnO0.1)で構成される。透明導電性酸化物(TCO)によるアノード層Aの粗さは、正孔注入層(HIL)を使用することによっても緩和される。また、該HILは、TCOから正孔輸送層(HTL)への類似電荷キャリア(すなわち、正孔)の輸送が促進されるという点において、類似電荷キャリアの注入を容易にする。正孔注入層(HIL)は、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、MoO、V、CuPCまたはCuI、特に、PEDOT及びPSSの混合物を含むものでもある。正孔注入層(HIL)は、また、アノード層Aから正孔輸送層(HTL)に金属が拡散することを防止することができる。例えば、該HILは、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、4,4’,4”-トリス[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミン(mMTDATA)、2,2’,7,7’-テトラキス(n,n-ジフェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-TAD)、N1,N1’-(ビフェニル-4,4’-ジイル)ビス(N1-フェニル-N4,N4-ジ-m-トリルベンゼン-1,4-ジアミン(DNTPD)、N,N’-ニス-(1-ナフタレニル)-N,N’-ビス-フェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン(NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ-[4-(N,N-ジフェニルアミノ)フェニル]ベンジジン(NPNPB)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メトキシフェニル)ベンジジン(MeO-TPD)、1,4,5,8,9,11-ヘキサアザトリフェニレン-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)及び/またはN,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-(1-ナフチル)-9,9’-スピロビフルオレン-2,7-ジアミン(Spiro-NPD)によっても構成される。
【0082】
アノード層Aまたは正孔注入層(HIL)に隣接し、一般的に、正孔輸送層(HTL)が位置する。ここで、任意の正孔輸送化合物が使用されうる。例えば、トリアリールアミン及び/またはカルバゾールのような、電子が豊富なヘテロ芳香族化合物が、正孔輸送化合物としても使用される。該HTLは、アノード層Aと発光層(EML)との間のエネルギー障壁を低減させることができる。該正孔輸送層(HTL)は、また、電子阻止層(EBL)でもある。好ましくは、該正孔輸送化合物は、比較的高いエネルギー準位の三重項状態T1を有する。例えば、正孔輸送層(HTL)は、トリス(4-カルバゾリル-9-イルフェニル)アミン(TCTA)、ポリ(4-ブチルフェニル-ジフェニルアミン)(poly-TPD)、ポリ(4-ブチルフェニル-ジフェニルアミン)(α-NPD)、4,4’-シクロヘキシリデン-ビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)ベンゼンアミン](TAPC)、4,4’,4”-トリス[2-ナフチル(フェニル)-アミノ]トリフェニルアミン(2-TNATA)、2,2’,7,7’-テトラキス(n,n-ジフェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-TAD)、N1,N1’-(ビフェニル-4,4’-ジイル)ビス(N1-フェニル-N4,N4-ジ-m-トリルベンゼン-1,4-ジアミン(DNTPD)、N,N’-ビス-(1-ナフタレニル)-N,N’-ビス-フェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン(NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ-[4-(N,N-ジフェニルアミノ)フェニル]ベンジジン(NPNPB)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メトキシフェニル)ベンジジン(MeO-TPD)、1,4,5,8,9,11-ヘキサアザトリフェニレン-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)及び/または9,9’-ジフェニル-6-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(TrisPcz)のような星状のヘテロ環を含むものでもある。また、該HTLは、有機正孔輸送マトリックス内の無機または有機ドーパントによっても構成されるp-ドープされた層を含むものでもある。該無機ドーパントとしては、例えば、バナジウム酸化物、モリブデン酸化物またはタングステン酸化物のような遷移金属酸化物が使用されうる。該有機ドーパントとしては、例えば、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F-TCNQ)、銅-ペンタフルオロ安息香酸(Cu(I)pFBz)または遷移金属錯体が使用されうる。
【0083】
EBLは、例えば、1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン(mCP)、トリス(4-カルバゾイル-9-イルフェニル)アミン(TCTA)、4,4’,4”-トリス[2-ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(2-TNATA)、3,3-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル(mCBP)、9-フェニル-3,6-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール(tris-Pcz)、9-(4-tert-ブチルフェニル)-3,6-ビス(トリフェニルシリル)-9H-カルバゾール(CzSi)及び/またはN,N’-ジカルバゾリル-1,4-ジメチルベンゼン(DCB)を含むものでもある。
【0084】
正孔輸送層(HTL)または(存在する場合)電子阻止層(EBL)に隣接し、一般的に発光層(EML)が位置する。発光層(EML)は、少なくとも1つの発光分子(すなわち、エミッタ材料)を含む。一般的に、EMLは、1以上のホスト材料(マトリックス材料ともいう)をさらに含む。例えば、ホスト材料は、4,4’-ビス-(N-カルバゾリル)-ビフェニル(CBP)、1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン(mCP)、3,3-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル(mCBP)、ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イルトリフェニルシラン(Sif87)、9-(4-tert-ブチルフェニル)-3,6-ビス(トリフェニルシリル)-9H-カルバゾール(CzSi)、ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イル)ジフェニルシラン(Sif88)、ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキサイド(DPEPO)、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾチオフェン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾチオフェニル)フェニル]-9H-カルバゾール、2,4,6-トリス(ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン(T2T)、2,4,6-トリス(トリフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン(T3T)及び/または2,4,6-トリス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-1,3,5-トリアジン(TST)のうちから選択される。当業者に知られているように、ホスト材料は、一般的に、第1(すなわち、最低)励起三重項状態(T1)及び第1(すなわち、最低)励起一重項状態(S1)エネルギー準位を示すように選択されなければならず、これは、それぞれのホスト材料に組み込まれた少なくとも1つの発光分子の第1(すなわち、最低)励起三重項状態(T1)及び第1(すなわち、最低)励起一重項状態(S1)エネルギー準位よりもエネルギーが高い。
【0085】
前述のように、本発明の文脈において、光電子素子の少なくとも1つのEMLは、本発明による少なくとも1つの分子を含むことが好ましい。本発明による少なくとも1つの有機分子を含む光電子素子のEMLの好ましい組成は、本文の後項(以下参照)でさらに詳細に説明する。
【0086】
発光層(EML)に隣接し、電子輸送層(ETL)が位置しうる。ここで、任意の電子輸送体が使用されうる。例示的には、ベンズイミダゾール、ピリジン、トリアゾール、トリアジン、オキサジアゾール(例えば、1,3,4-オキサジアゾール)、ホスフィンオキシド及びスルホンのような電子不足化合物が使用されうる。該電子輸送体は、また、1,3,5-トリ(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)フェニル(TPBi)のような星状のヘテロ環でもある。該ETLは、例えば、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(NBphen)、アルミニウム-トリス(8-ヒドロキシキノリン)(Alq)、ジフェニル-4-トリフェニルシリルフェニル-ホスフィンオキサイド(TSPO1)、2,7-ジ(2,2’-ビピリジン-5-イル)トリフェニル(BPyTP2)、ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イルトリフェニルシラン(Sif87)、ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イル)ジフェニルシラン(Sif88)、1,3-ビス[3,5-ジ(ピリジン-3-イル)フェニル]ベンゼン(BmPyPhB)及び/または4,4’-ビス-[2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジニル)]-1,1’-ビフェニル(BTB)を含むものでもある。選択的に、該ETLは、8-ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)のような物質によってもドーピングされる。該電子輸送層(ETL)は、また、正孔を阻止することができる。または、一般的にEMLとETLとの間に正孔阻止層(HBL)が導入される。
【0087】
正孔阻止層(HBL)は、例えば、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン=バソクプロイン(BCP)、4,6-ジフェニル-2-(3-(トリフェニルシリル)フェニル)-1,3,5-トリアジン、9,9’-(5-(6-([1,1’-ビフェニル]-3-イル)-2-フェニルピリミジン-4-イル)-1,3-フェニレン)ビス(9H-カルバゾール)、ビス(8-ヒドロキシ-2-メチルキノリン)-(4-フェニルフェノキシ)アルミニウム(BAlq)、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(NBphen)、アルミニウム-トリス(8-ヒドロキシキノリン)(Alq)、ジフェニル-4-トリフェニルシリルフェニル-ホスフィンオキサイド(TSPO1)、2,4,6-トリス(ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン(T2T)、2,4,6-トリス(トリフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン(T3T)、2,4,6-トリス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-1,3,5-トリアジン(TST)及び/または1,3,5-トリス(N-カルバゾリル)ベンゾール/1,3,5-トリス(カルバゾール)-9-イル)ベンゼン(TCB/TCP)を含むものでもある。
【0088】
電子輸送層(ETL)に隣接し、カソード層Cが位置しうる。該カソード層Cは、例えば、金属(例えば、Al、Au、Ag、Pt、Cu、Zn、Ni、Fe、Pb、LiF、Ca、Ba、Mg、In、WまたはPd)または金属合金を含むか、あるいはそれからなる。実用的な理由により、該カソード層Cは、Mg、CaまたはAlのような(本質的に)不透明な金属によっても構成される。代案としてまたは追加的に、該カソード層Cは、また、黒鉛及び/またはカーボンナノチューブ(CNT)を含むものでもある。代案としては、カソード層Cは、また、ナノスケール銀ワイヤを含むか、あるいはそれから構成される。
【0089】
少なくとも1つの本発明による有機分子を含むOLEDは、選択的に、電子輸送層(ETL)とカソード層Cとの間に、保護層(電子注入層(EIL)とも称される)をさらに含んでもよい。該層は、フッ化リチウム、フッ化セシウム、銀、8-ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)、LiO、BaF、MgO及び/またはNaFを含むものでもある。
【0090】
選択的に、電子輸送層(ETL)及び/または正孔阻止層(HBL)は、また、1以上のホスト化合物を含むものでもある。
【0091】
本明細書に使用されているように、特定文脈において、さらに具体的に定義されない場合、放出及び/または吸収された光の色相指定は、下記の通りである:
紫色:>380~420nmの波長範囲
深青色:>420~480nmの波長範囲
空色:>480~500nmの波長範囲
緑色:>500~560nmの波長範囲
黄色:>560~580nmの波長範囲
オレンジ色:>580~620nmの波長範囲
赤色:>620~800nmの波長範囲。
【0092】
エミッタ分子(すなわち、エミッタ材料)と係わり、そのような色相は、主発光ピークの最大発光を示す。したがって、例えば、深青色エミッタは、>420~480nm範囲で最大発光を有し、空色エミッタは、>480~500nm範囲で最大発光を有し、緑色エミッタは、>500~560nm範囲で最大発光を有し、赤色エミッタは、>620~800nm範囲で最大発光を有する。
【0093】
深青色エミッタは、好ましくは、475nm未満、より好ましくは、470nm未満、より一層好ましくは、465nm未満、またさらに好ましくは、460nm未満の最大発光を有することができる。それは、一般的に、420nm超過、好ましくは、430nm超過、より好ましくは、440nm超過、またさらに好ましくは、450nm超過である。好ましい実施形態において、本発明による有機分子は、420~500nm、好ましくは、430~490nm、より好ましくは、440~480nm、最も好ましくは、450~470nmにおいて最大発光を示し、一般的に、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、mCBP内の1~5重量%、好ましくは、2重量%の本発明による有機分子でスピンコーティングされた膜、あるいは代案としては、有機溶媒、好ましくは、DCMまたはトルエン内の0.001mg/mLの本発明による有機分子から、室温(すなわち、(約)20℃)で測定される。
【0094】
さらに他の実施形態は、少なくとも1つの本発明による有機分子を含み、ITU-R Recommendation BT.2020(Rec.2020)によって定義されているような原色青色(CIEx=0.131及びCIEy=0.046)のCIEx(=0.131)及びCIEy(=0.046)の色座標に近いCIEx及びCIEyの色座標を有する光を放出するOLEDに係わるものであり、これは、UHD(Ultra High Definition)ディスプレイ、例えば、UHD-TVに使用するのに適している。したがって、本発明の更なる態様は、発光が、0.02~0.30、好ましくは、0.03~0.25、より好ましくは、0.05~0.20、より一層好ましくは、0.08~0.18、またさらに好ましくは、0.10~0.15のCIEx色座標、及び/または、0.00~0.45、好ましくは、0.01~0.30、より好ましくは、0.02~0.20、より一層好ましくは、0.03~0.15、またさらに好ましくは、0.04~0.10のCIEy色座標を示す、少なくとも1つの本発明による有機分子を含むOLEDに係わるものである。
【0095】
さらに他の実施形態は、1000cd/mにおいて、8%超過、好ましくは、10%超過、より好ましくは、13%超過、より一層好ましくは、15%超過、またさらに好ましくは、20%超過の外部量子効率を示し、及び/または、420nm~500nm、好ましくは、430nm~490nm、より好ましくは、440nm~480nm、より一層好ましくは、450nm~470nmの最大発光を示し、及び/または、500cd/mにおいて、100h超過、好ましくは、200h超過、より好ましくは、400h超過、より一層好ましくは、750h超過、またさらに好ましくは、1000h超過のLT80値を示す、少なくとも1つの本発明による有機分子を含むOLEDに係わるものである。
【0096】
緑色エミッタ材料は、好ましくは、500~560nm、より好ましくは、510~550nm、より一層好ましくは、520~540nmの最大発光を有することができる。
【0097】
さらに他の実施形態は、少なくとも1つの本発明による有機分子を含み、明確な色点で発光するOLEDに係わるものである。好ましくは、OLEDは、狭い発光帯域(小さい半値幅(full width at half maximum: FWHM))を有する光を放出する。好ましい実施形態において、少なくとも1つの本発明による有機分子を含むOLEDは、0.30eV未満、好ましくは、0.25eV未満、より好ましくは、0.20eV未満、より一層好ましくは、0.1eV未満、または0.17eV未満の、主発光ピークのFWHMを有する光を放出する。
【0098】
本発明によれば、少なくとも1つの本発明による有機分子を含む光電子素子は、例えば、ディスプレイ、照明応用分野の光源、並びに医療及び/または美容応用分野(例えば、光療法)の光源として使用可能である。
【0099】
本発明による有機分子と追加材料の組み合わせ
光電子素子(ここで、好ましくは、OLED)内の任意の層、特に発光層(EML)が単一材料または異なる材料の組み合わせからなるということは、当業者の一般知識の一部を形成する。
【0100】
例えば、当業者は、EMLが、電圧(及び電流)が前記素子に印加されるときに発光する単一材料で構成されることを理解する。しかし、当業者は、光電子素子(ここで、好ましくは、OLED)のEMLにおいて、異なる材料、特に1以上のホスト材料(すなわち、マトリックス材料;ここで、少なくとも1つの本発明による有機分子を含む光電子素子に含まれるとき、ホスト材料Hと称される)と、素子に電圧及び電流を印加するとき、そのうち少なくとも1つが発光する1以上のドーパント材料(すなわち、エミッタ材料)との結合が有利であることを理解する。
【0101】
光電子素子における本発明による有機分子の使用の好ましい実施形態において、前記光電子素子は、EML、またはEMLに直接隣接した層、またはそれら層の1以上の層に、少なくとも1つの本発明による有機分子を含む。
【0102】
光電子素子における本発明による有機分子の使用の好ましい実施形態において、前記光電子素子はOLEDであり、EML、またはEMLに直接隣接した層、またはそれら層の1以上の層に、少なくとも1つの本発明による有機分子を含む。
【0103】
光電子素子における本発明による有機分子の使用のより好ましい実施形態において、前記光電子素子はOLEDであり、EMLに少なくとも1つの本発明による有機分子を含む。
【0104】
少なくとも1つの本発明による有機分子を含む光電子素子、好ましくは、OLEDに係わる一実施形態において、本発明による少なくとも1つ、好ましくは、それぞれの有機分子は、発光層EMLにおいてエミッタ材料として使用され、これは、電圧(及び電流)が前記素子に印加されるときに発光する。
【0105】
当業者に知られているように、例えば、有機発光ダイオード(OLED)において、エミッタ材料(すなわち、発光性ドーパント)からの発光は、励起された一重項状態(一般的に、最低励起一重項状態S1)からの蛍光、及び励起された三重項状態(一般的に、最低励起三重項状態T1)からの燐光を含む。
【0106】
蛍光エミッタFは、電子励起(例えば、光電子素子において)時に室温(すなわち、(約)20℃)で発光することができ、発光励起状態は一重項状態である。蛍光エミッタは、一般的に、初期電子励起(例えば、電子正孔再結合による)がエミッタの励起一重項状態を提供するとき、ナノ秒の時間尺度で即時(すなわち、直接的な)蛍光を示す。
【0107】
本発明の文脈において、遅延蛍光材料は、逆項間交差(RISC;すなわち、アップ項間交差または逆項間交差)により、励起三重項状態(一般的に、最低励起三重項状態T1)から励起一重項状態(一般的に、最低励起一重項状態S1)に達することができ、また、そのように達した励起一重項状態(一般的に、S1)から電子基底状態に戻る時に発光することができる材料である。励起三重項状態(一般的に、T1)から励起一重項状態(一般的に、S1)へのRISC後に観察された蛍光発光が発生する時間尺度(一般的に、マイクロ秒範囲)は、直接的な(すなわち、即時)蛍光が発生する時間尺度(一般的に、ナノ秒範囲)より遅く、したがって、遅延蛍光(DF)という。励起三重項状態(一般的に、T1から)から励起一重項状態(一般的に、S1まで)へのRISCが熱活性化を介して発生し、そのように充填された励起一重項状態が発光する場合(遅延蛍光発光)、その過程を熱活性化遅延蛍光(TADF)という。したがって、TADF材料は、前述のように熱活性化遅延蛍光(TADF)を発光することができる材料である。蛍光エミッタFの最低励起一重項状態エネルギー準位E(S1)と最低励起三重項状態エネルギー準位E(T1)とのエネルギー差ΔESTが減少すれば、RISCによる最低励起一重項状態から最低励起三重項状態への切り替えが高効率で起こることは当業者に知られている。したがって、TADF材料が一般的に小さいΔEST値を有するということは、当業者の一般知識の一部を形成する(以下参照)。当業者に知られているように、TADF材料は、単純に前述のようにTADFの後続放出と共に、励起三重項状態から励起一重項状態へのそれ自体のRISCが可能な材料ではない。TADF材料は、事実上2種類の材料、好ましくは、2つのホスト材料H、より好ましくは、p-ホスト材料H及びn-ホスト材料Hから形成されるエキサイプレックスであることが当業者に知られている(以下参照)。
【0108】
(熱的に活性化された)遅延蛍光の発生は、例えば、時間分解(すなわち、過渡)フォトルミネセンス(PL)測定から得た減衰曲線に基づいて分析される。このために、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)内で、1~10重量%、特に10重量%の各エミッタ(すなわち、仮定されたTADF材料)のスピンコーティング膜がサンプルとして使用される。分析は、例えば、Edinburgh InstrumentsのFS5蛍光分光計を使用して行われる。サンプルPMMAフィルムをキュベットに入れて測定する間に、窒素雰囲気が維持される。データ収集は、よく確立された時間相関単一光子計数(TCSPC、以下参照)技術を使用して行われる。時間及び信号強度で複数の次数(order)の大きさにわたって全体減衰力学を収集するために、4個の時間領域(200ns、1μs、20μs及び>80μsのさらに長い測定期間)で測定を行って結合することができる(以下参照)。
【0109】
TADF材料は、好ましくは、前述の全体減衰力学と係わり、以下の2つの条件を満たす:
(i)減衰力学は、2つの時間領域を示し、1つはナノ秒(ns)範囲にあり、他の1つはマイクロ秒(μs)範囲にある、及び
(ii)2つの時間領域で発光スペクトルの形態が一致する。
【0110】
ここで、最初の減衰領域で放出された光の一部は即時蛍光と取られ、二番目の減衰領域で放出された光の一部は遅延蛍光と取られる。
【0111】
遅延蛍光と即時蛍光との割合は、いわゆるn値の形態に表され、これは、次の方程式により、それぞれのフォトルミネセンス減衰を経時的に積分して計算される:
【数1】
【0112】
本発明の文脈において、TADF材料は、好ましくは、0.05より大きいか(n>0.05)、より好ましくは、0.1より大きいか(n>0.1)、より一層好ましくは、0.15より大きいか(n>0.15)、特に好ましくは、0.2より大きいか(n>0.20)、またさらに好ましくは、0.25より大きい(n>0.25)。
【0113】
好ましい実施形態において、本発明による有機分子は、0.05より大きい(n>0.05)n値(即時蛍光に対する遅延蛍光の割合)を示す。
【0114】
本発明の文脈において、TADF材料Eは、最低励起一重項状態エネルギー準位E(S1)と最低励起三重項状態エネルギー準位E(T1)とのエネルギー差に該当するΔEST値を示すことを特徴とし、0.4eV未満、好ましくは、0.3eV未満、より好ましくは、0.2eV未満、より一層好ましくは、0.1eV未満、またさらに好ましくは、0.05eV未満の値を示す。TADF材料EのΔEST値を決定する方法は、本文の後項で説明されている。
【0115】
TADF材料設計のための1つの一般的なアプローチは、HOMOが分布された1以上の(電子)ドナー部分と、LUMOが分布された1以上の(電子)アクセプター部分とを、本願においてリンカー基と呼ばれる、同一のブリッジに共有結合することである。また、TADF材料Eは、例えば、同一のアクセプター部分に結合された2つまたは3つのリンカー基を含み、更なるドナー部分及びアクセプター部分がそれら2つまたは3つのリンカー基それぞれに結合されうる。
【0116】
また、1以上のドナー部分及び1以上のアクセプター部分は、(リンカー基の存在なしに)互いに直接結合されうる。
【0117】
典型的なドナー部分は、ジフェニルアミン、インドール、カルバゾール、アクリジン、フェノキサジン及び関連構造の誘導体である。特に、脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族環系は、例えば、インドロカルバゾールに達するために、前述のドナー前駆体に縮合される。
【0118】
ベンゼン、ビフェニル及びある程度までターフェニルの誘導体が一般的なリンカー基である。
【0119】
ニトリル基は、TADF材料において非常に一般的なアクセプター部分であり、その周知の例は、下記を含む:
(i)カルバゾリルジシアノベンゼン化合物
2CzPN(4,5-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)フタロニトリル)、DCzIPN(4,6-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリル)、4CzPN(3,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)フタロニトリル)、4CzIPN(2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリル)、4CzTPN(2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)テレフタロニトリル)及びその誘導体、
(ii)カルバゾリルシアノピリジン化合物
4CzCNPy(2,3,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)-4-シアノピリジン)及びその誘導体、
(iii)カルバゾリルシアノビフェニル化合物
CNBPCz(4,4’,5,5’-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)-[1,1’-ビフェニル]-2,2’-ジカルボニトリル)、CzBPCN(4,4’,6,6’-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3,3’-ジカルボニトリル)、DDCzIPN(3,3’,5,5’-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)-[1,1’-ビフェニル]-2,2’,6,6’-テトラカルボニトリル)及びその誘導体、
ここで、それら材料において、1以上のニトリル基は、アクセプター部分として、フッ素(F)またはトリフルオロメチル(CF)にも代替される。
【0120】
また、トリアジン、ピリミジン、トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ヘプタジン、1,4-ジアザトリフェニレン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、キノキサリン及びジアザフルオレン誘導体のような窒素ヘテロ環は、TADF分子構成に使用される周知のアクセプター部分である。例えば、トリアジンアクセプターを含むTADF分子の公知の例は、PIC-TRZ(7,7’-(6-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(5-フェニル-5,7-ジヒドロインドロ[2,3-b]カルバゾール))、mBFCzTrz(5-(3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル))フェニル)-5H-ベンゾフロ[3,2-c]カルバゾール)、及びDCzTrz(9,9’-(5-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1,3-フェニレン)ビス(9H-カルバゾール))を含む。
【0121】
TADF材料の他の一群は、ドナー部分(主に、カルバゾリル置換基)が結合されたアクセプター部分として、ベンゾフェノンのようなジアリールケトン、または4-ベンゾイルピリジン、9,10-アントラキノン、9H-キサンテン-9-オンのような(ヘテロアリール)アリールケトン及びその誘導体を含む。そのようなTADF分子の例は、BPBCz(ビス(4-(9’-フェニル-9H,9’H-[3,3’-ビカルバゾール]-9-イル)フェニル)メタノン)、mDCBP((3,5-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル)(ピリジン-4-イル)メタノン)、AQ-DTBu-Cz(2,6-ビス(4-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル)アントラセン-9,10-ジオン)、及びMCz-XT(3-(1,3,6,8-テトラメチル-9H-カルバゾール-9-イル)-9H-キサンテン-9-オン)をそれぞれ含む。
【0122】
また、スルホキシド、特にジフェニルスルホキシドは、TADF材料の構成のためのアクセプター部分として一般的に使用され、周知の例は、4-PC-DPS(9-フェニル-3-(4-(フェニルスルホニル)フェニル)-9H-カルバゾール)、DitBu-DPS(9,9’-(スルホニルビス(4,1-フェニレン))ビス(9H-カルバゾール))、及びTXO-PhCz(2-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-チオキサンテン-9-オン10,10-ジオキシド)を含む。
【0123】
蛍光エミッタFは、また、本明細書に定義されたようなTADFを示すことができ、さらには、本明細書に定義されたようなTADF材料Eであるものと理解される。結果として、本明細書に定義されたような小さいFWHMエミッタSは、本明細書に定義されたようなTADF材料Eであってもよく、そうでなくてもよい。
【0124】
燐光、すなわち、励起三重項状態(一般的に、最低励起三重項状態T1)からの発光は、スピン禁止過程である。当業者に知られているように、燐光は、(分子内)スピン軌道相互作用(いわゆる(内部)重原子効果)を利用して促進(向上)される。本発明の文脈において、燐光材料Pは、室温(すなわち、(約)20℃)で燐光を放出することができる燐光エミッタである。
【0125】
ここで、燐光材料Pは、カルシウム(Ca)の標準原子量より大きい標準原子量を有する元素のうち少なくとも1つの原子を含むことが好ましい。より好ましくは、本発明の文脈において、燐光材料Pは、遷移金属原子、特に亜鉛(Zn)の標準原子量より大きい標準原子量を有する元素の遷移金属原子を含む。燐光材料Pに好ましく含まれる遷移金属原子は、任意の酸化状態で存在する(及び各元素のイオンとして存在することもできる)。
【0126】
有機エレクトロルミネッセンス素子に使用される燐光材料Pは、Ir、Pd、Pt、Au、Os、Eu、Ru、Re、Ag及びCu、本発明の文脈において、好ましくは、Ir、Pt及びPd、より好ましくは、Ir及びPtの錯体ということが当業者に常識である。当業者は、光電子素子においていかなる材料が燐光材料Pとして適しているか、及びそれらを合成する方法が分かっている。また、当業者は、光電子素子において燐光材料として使用するための燐光錯体の設計原理に慣れ、構造的変化を介して錯体の放出を調整する方法が分かっている。
【0127】
当業者は、光電子素子に使用される燐光材料Pとしていかなる材料が適しているか、及びそれらを合成する方法が分かっている。これと関連し、当業者は、特に、光電子素子において燐光材料Pとして使用するための燐光錯体の設計原理に慣れ、構造的変化を介して錯体の放出を調整する方法が分かっている。
【0128】
本発明による有機分子と共に使用可能な燐光材料Pの例(例えば、組成物の形態または光電子素子のEMLにおいて、以下参照)は、最新技術に開示されている。例えば、以下の金属錯体は、本発明による有機分子と共に使用可能な燐光材料Pである:
【化49】
【0129】
本発明の文脈において、小さい半値幅(FWHM)エミッタSは、0.35eV以下(≦0.35eV)、好ましくは、0.30eV以下(≦0.30eV)、特に0.25eV以下(≦0.25eV)のFWHMを示す発光スペクトルを有する任意のエミッタ(すなわち、エミッタ材料)である。他に明示されない限り、これは、室温(すなわち、(約)20℃)で、各エミッタの発光スペクトルを基準に判断され、一般的に、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)またはmCBP内で、1~5重量%、特に2重量%のエミッタで測定される。あるいは、小さいFWHMエミッタSの発光スペクトルは、一般的に、室温(すなわち、(約)20℃)で、ジクロロメタンまたはトルエンに0.001~0.2mg/mLのエミッタSがある溶液で測定されうる。
【0130】
小さいFWHMエミッタSは、蛍光エミッタF、燐光エミッタ(例えば、燐光材料P)及び/またはTADFエミッタ(例えば、TADF材料E)である。前述のTADF材料E及び燐光材料Pの場合、発光スペクトルは、室温(すなわち、(約)20℃)で、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)内で10重量%のそれぞれの材料EまたはPのそれぞれのスピンコーティング膜から測定される。
【0131】
当業者に知られているように、エミッタ(例えば、小さいFWHMエミッタS)の半値幅(FWHM)は、それぞれの発光スペクトル(蛍光エミッタ用蛍光スペクトル及び燐光エミッタ用燐光スペクトル)から容易に決定される。記録された全てのFWHM値は、一般的に、主発光ピーク(すなわち、強度が最も高いピーク)を示す。FWHM(ここで、好ましくは、電子ボルトeVで記録される)を決定する手段は、当業者の常識の一部である。例えば、発光スペクトルの主発光ピークが、発光スペクトルからナノメートル(nm)で得られた2つの波長λ及びλにおいて最大発光の半分(すなわち、最大発光強度の50%)に達する場合、電子ボルト(eV)のFWHMは、一般的に(及び、ここで)、以下の方程式を使用して決定される:
【数2】
【0132】
本発明の文脈において、小さいFWHMエミッタSは、有機エミッタであり、これは、本発明の文脈において、いかなる遷移金属も含まないということを意味する。好ましくは、本発明の文脈において、小さいFWHMエミッタSは、主に水素(H)、炭素(C)、窒素(N)及びボロン(B)元素で構成されるが、例えば、酸素(O)、ケイ素(Si)、フッ素(F)及び臭素(Br)を含むこともできる。
【0133】
また、本発明の文脈において、小さいFWHMエミッタSは、さらにTADFを示してもよく、示さなくてもよい蛍光エミッタFであることが好ましい。
【0134】
好ましくは、本発明の文脈において、小さいFWHMエミッタSは、以下の要件のうち少なくとも1つを満たす:
(i)ボロン(B)含有エミッタであり、これは、それぞれの小さいFWHMエミッタS内の少なくとも1つの原子がボロン(B)であることを意味し、
(ii)多環の芳香族またはヘテロ芳香族コア構造を含み、ここで、少なくとも2つの芳香族環が共に縮合される(例えば、アントラセン、ピレンまたはそれらのアザ誘導体)。
【0135】
当業者に知られているように、EMLのホスト材料Hは、前記EMLを通過し、電子または正電荷を輸送することができ、ホスト材料Hにドープされた少なくとも1つのエミッタ材料に励起エネルギーを伝達することができる。当業者は、光電子素子(例えば、OLED)のEMLに含まれたホスト材料Hが、一般的に電圧及び電流を印加するとき、前記素子からの発光に大きく関与しないということを理解する。当業者は、また、任意のホスト材料Hが、高い正孔移動度を示すp-ホストH、高い電子移動度を示すn-ホストH、または高い正孔移動度及び高い電子移動度の両方を示す両極性ホスト材料HBPであるという事実が分かっている。
【0136】
当業者に知られているように、EMLは、また、少なくとも1つのp-ホストH及び1つのn-ホストHを有するいわゆる混合ホストシステムを含む。特に、EMLは、本発明による正確に1つのエミッタ材料、及びn-ホストHとしての2,4,6-トリス(ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン(T2T)、p-ホストHとしてのCBP、mCP、mCBP、4,6-ジフェニル-2-(3-(トリフェニルシリル)フェニル)-1,3,5-トリアジン、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾチオフェン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-9H-カルバゾール、及び9-[3,5-ビス(2-ジベンゾチオフェニル)フェニル]-9H-カルバゾールから選択されたホストを含む混合ホストシステムを含む。
【0137】
EMLは、少なくとも1つのp-ホストHと1つのn-ホストHを有するいわゆる混合ホストシステムを含む。ここで、n-ホストHは、ピリジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン及び1,2,3-トリアジンから誘導された基を含み、p-ホストHは、インドール、イソインドール、好ましくは、カルバゾールから誘導された基を含む。
【0138】
当業者は、どのような材料が有機エレクトロルミネッセンス素子に使用するのに適しているホスト材料であるかが分かっている。最新技術で使用される任意のホスト材料が、本発明の文脈における好適なホスト材料Hであるものと理解される。
【0139】
本発明の文脈におけるp-ホスト材料Hである材料Hの例は、下記に列挙されている:
【化50】

【化51】

【化52】

【化53】

【化54】

【化55】
【0140】
本発明の文脈におけるn-ホスト材料Hである材料Hの例は、下記に列挙されている:
【化56】

【化57】

【化58】
【0141】
当業者は、同一層、特に同一EMLに含まれた任意の材料だけでなく、隣接層にあり、それら隣接層間の界面で非常に近接した材料が共にエキサイプレックスを形成することができるものと理解する。当業者は、エキサイプレックスを形成する材料対、特にp-ホストH及びn-ホストHの対を選択する方法、並びにHOMO及び/またはLUMOエネルギー要求量を含む前記材料対の2つの成分に対する選択基準が分かっている。すなわち、エキサイプレックス形成が要求される場合、一成分、例えば、p-ホスト材料HのHOMOは、他の成分、例えば、n-ホスト材料HのHOMOよりエネルギーが少なくとも0.20eVさらに高く、一成分、例えば、p-ホスト材料HのLUMOは、他の成分、例えば、n-ホスト材料HのLUMOよりエネルギーが少なくとも0.20eVさらに高い。エキサイプレックスが光電子素子、特にOLEDのEMLに存在すれば、エキサイプレックスがエミッタ材料の機能を有し、電圧と電流が当該素子に印加されるときに発光することができるということは、当業者の常識に属する。最新技術から、かつ一般的に知られているように、エキサイプレックスは、非発光性でもあり、例えば、光電子素子のEMLに含まれる場合、エミッタ材料に励起エネルギーを伝達することができる。
【0142】
当業者に知られているように、TTA(三重項-三重項消滅)材料は、ホスト材料Hとしても使用される。TTA材料は、三重項-三重項消滅を可能にする。三重項-三重項消滅は、好ましくは、光子アップコンバージョンを起こすことができる。したがって、2つ、3つまたはそれ以上の光子が、TTA材料HTTAの最低励起三重項状態(T1TTA)から第1励起一重項状態(S1TTA)への光子アップコンバージョンを容易にする。好ましい実施形態において、2つの光子は、T1TTAからS1TTAへの光子アップコンバージョンを容易にする。したがって、三重項-三重項消滅は、多数のエネルギー伝達段階によって、2つ(または、選択的に2以上)の低周波数光子を1つの高周波数光子に結合することができる段階でもある。
【0143】
選択的に、TTA材料は、吸収部分、センシタイザー部分及びエミッタ部分(または、消滅部分)を含むものでもある。これと係わり、エミッタ部分は、例えば、ベンゼン、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、アズレンのような多環芳香族部分でもある。好ましい実施形態において、多環芳香族部分は、アントラセン部分またはその誘導体を含む。センシタイザー部分及びエミッタ部分は、2つの異なる化学的化合物(すなわち、分離した化学的実体)に位置するか、あるいは1つの化学的化合物に含まれた2つの部分でもある。
【0144】
本発明によれば、三重項-三重項消滅(TTA)材料は、三重項-三重項消滅により、第1励起三重項状態T1から第1励起一重項状態S1にエネルギーを変換する。
【0145】
本発明によれば、TTA材料は、最低励起三重項状態(T1)から三重項-三重項消滅を示して、三重項-三重項消滅した第1励起一重項状態S1を生成し、T1のエネルギーの最大2倍のエネルギーを有することを特徴とする。
【0146】
本発明の一実施形態において、TTA材料は、T1から三重項-三重項消滅を示して、S1を生成し、T1エネルギーの1.01~2倍、1.1~1.9倍、1.2~1.5倍、1.4~1.6倍、または1.5~2倍のエネルギーを有することを特徴とする。
【0147】
本明細書において、用語「TTA材料」及び「TTA化合物」は、互いに混用されうる。
【0148】
典型的な「TTA材料」は、Kondakov(Philosophical Transactions of the Royal Society A: Mathematical, Physical and Engineering Sciences, 2015, 373: 20140321)で説明したように、青色蛍光OLEDと関連した最新技術で見つけることができる。そのような青色蛍光OLEDは、EMLの主成分(ホスト)として、アントラセン誘導体のような芳香族炭化水素を使用する。
【0149】
好ましい実施形態において、TTA材料は、センシタイズされた三重項-三重項消滅を可能にする。選択的に、TTA材料は、1以上の多環芳香族構造を含んでもよい。好ましい実施形態において、TTA材料は、少なくとも1つの多環芳香族構造及び少なくとも1つの更なる芳香族残基を含む。
【0150】
好ましい実施形態において、TTA材料は、より大きい一重項・三重項エネルギー分割、すなわち、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.5倍、好ましくは、2倍以下の、第1励起一重項状態S1と最低励起三重項状態T1とのエネルギー差を有する。
【0151】
本発明の好ましい実施形態において、TTA材料HTTAは、アントラセン誘導体である。
【0152】
一実施形態において、前記TTA材料HTTAは、下記化学式4のアントラセン誘導体であり、
【化59】
・・・化学式4
ここで、
それぞれのArは、互いに独立して、下記からなる群から選択され、
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C60アリール、及び
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C57ヘテロアリール、
それぞれのAは、互いに独立して、下記からなる群から選択される:
水素、
重水素、
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C60アリール、
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C57ヘテロアリール、及び
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C40(ヘテロ)アルキル。
【0153】
一実施形態において、前記TTA材料HTTAは、下記化学式4のアントラセン誘導体であり、
ここで、
それぞれのArは、互いに独立して、下記からなる群から選択され、
-C20アリール、C-C20ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C210(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C20アリール、及び
-C20アリール、C-C20ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C10(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C20ヘテロアリール、
それぞれのAは、互いに独立して、下記からなる群から選択される:
水素、
重水素、
-C20アリール、C-C20ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C10(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C20アリール、
-C20アリール、C-C20ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C10(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C20ヘテロアリール、及び
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C10(ヘテロ)アルキル。
【0154】
一実施形態において、HTTAは、下記化学式4のアントラセン誘導体であり、ここで、少なくとも1つのAは水素である。一実施形態において、HTTAは、下記化学式4のアントラセン誘導体であり、ここで、少なくとも2つのAは水素である。一実施形態において、HTTAは、下記化学式4のアントラセン誘導体であり、ここで、少なくとも3つのAは水素である。一実施形態において、HTTAは、下記化学式4のアントラセン誘導体であり、ここで、全てのAはそれぞれ水素である。
一実施形態において、HTTAは、下記化学式4のアントラセン誘導体であり、ここで、少なくとも1つのArは、フェニル、ナフチル、フェナントリル、ピレニル、トリフェニレニル、ジベンゾアントラセニル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾナフトチオフェニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニルからなる群から選択された残基であり、これは、C-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されうる。
【0155】
一実施形態において、HTTAは、下記化学式4のアントラセン誘導体であり、ここで、2つのArは、それぞれ、互いに独立して、フェニル、ナフチル、フェナントリル、ピレニル、トリフェニレニル、ジベンゾアントラセニル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾナフトチオフェニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニルからなる群から選択された残基であり、これは、C-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されうる。
【0156】
一実施形態において、TTA材料HTTAは、下記から選択されるアントラセン誘導体である:
【化60】

【化61】

【化62】

【化63】

【化64】

【化65】

【化66】

【化67】

【化68】

【化69】

【化70】

【化71】

【化72】

【化73】

【化74】

【化75】

【化76】

【化77】

【化78】

【化79】

【化80】

【化81】

【化82】

【化83】

【化84】

【化85】

【化86】
【0157】
少なくとも1つの本発明による有機分子を含む組成物
本発明の一態様は、少なくとも1つの本発明による有機分子を含む組成物に係わるものである。本発明の一態様は、光電子素子、好ましくは、OLED、特に前記素子のEMLにおける前記組成物の用途に係わるものである。
【0158】
以下、前述の組成物を説明するとき、場合によって、それぞれの組成物のうち、特定材料の含量を百分率の形態に言及する。特定実施形態において特に言及されない限り、全ての百分率は、重量百分率を示し、これは、重量百分率または重量%((重量/重量)、(w/w)、wt%)と同一意味を有するという点に留意しなければならない。例えば、特定組成物において、本発明による1以上の有機分子の含量が例示的に30%と言及する場合、これは、本発明による1以上の有機分子の(すなわち、結合されたそれら全ての分子の)総重量が30重量%、すなわち、それぞれの組成物の総重量の30%を占めることを意味するものと理解される。成分の好ましい含量を重量%で提供することにより、組成物が特定される度に、全ての成分の総含量は、100重量%(すなわち、組成物の総重量)まで合算されるものと理解される。
【0159】
本発明による少なくとも1つの有機分子を含む組成物に係わる本発明の実施形態を説明する下記において、光電子素子、好ましくは、光電子素子のEMLにおいて、最も好ましくは、OLEDのEMLにおいて、前記組成物を使用するとき、それら組成物内の成分間で発生するエネルギー伝達工程を言及するであろう。当業者は、そのような励起エネルギー伝達工程が、光電子素子のEMLにおいて組成物を使用するときに発光効率を向上させることができるものと理解する。
【0160】
本発明による少なくとも1つの有機分子を含む組成物を記述するとき、特定材料が他の材料と「異なる」という点も指摘されるであろう。これは、互いに「異なる」材料が同一化学構造を有しないということを意味する。
【0161】
一実施形態において、前記組成物は、下記を含むか、あるいはそれからなる:
(a)本発明による1以上の有機分子、
(b)(a)の有機分子と異なる1以上のホスト材料H、及び
(c)選択的に1以上の溶媒。
【0162】
一実施形態において、前記組成物は、下記を含むか、あるいはそれからなる:
(a)本発明による1以上の有機分子、及び
(b)(a)の有機分子と異なる1以上のホスト材料H
ここで、前記組成物中のホスト材料Hの分率(重量%)は、本発明による有機分子の分率(重量%)より高く、好ましくは、前記組成物中のホスト材料Hの分率(重量%)は、本発明による有機分子の分率(重量%)より2倍以上高い。
【0163】
一実施形態において、前記組成物は、下記を含むか、あるいはそれからなる:
(a)0.1~30重量%、好ましくは、0.8~15重量%、特に1.5~5重量%の本発明による有機分子、及び
(b)下記化学式4によるホスト材料HとしてのTTA材料:
【化87】
・・・化学式4。
【0164】
一実施形態において、前記組成物は、下記を含むか、あるいはそれからなる:
(a)本発明による有機分子、
(b)(a)の有機分子と異なるホスト材料H、及び
(c)TADF材料E及び/または燐光材料P
【0165】
一実施形態において、前記組成物は、下記を含むか、あるいはそれからなる:
(a)0.1~20重量%、好ましくは、0.5~12重量%、特に1~5重量%の本発明による有機分子、
(b)0~98.8重量%、好ましくは、35~94重量%、特に60~88重量%の、本発明による有機分子と異なる1以上のホスト材料H
(c)0.1~20重量%、好ましくは、0.5~10重量%、特に1~3重量%の、(a)の有機分子と異なる1以上の燐光材料P
(d)1~99.8重量%、好ましくは、5~50重量%、特に10~30重量%の、(a)の有機分子と異なる1以上のTADF材料E、及び
(e)0~98.8重量%、好ましくは、0~59重量%、特に0~28重量%の1以上の溶媒。
【0166】
更なる態様において、本発明は、本明細書に記載された類型の有機分子または組成物を含む光電子素子、特に、有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学セル、OLEDセンサ、特に、外部と完全に遮断されていないガスセンサ及び蒸気センサ、有機ダイオード、有機太陽電池、有機トランジスタ、有機電界効果トランジスタ、有機レーザ及びダウンコンバージョン素子からなる群から選択された素子に係わるものである。
【0167】
好ましい実施形態において、前記光電子素子は、有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学セル(LEC)及び発光トランジスタからなる群から選択された素子である。
【0168】
本発明の光電子素子の一実施形態において、本発明による有機分子Eは、発光層EMLにおいてエミッタ材料として使用される。
【0169】
本発明の光電子素子の一実施形態において、発光層EMLは、本明細書に記載された本発明による組成物からなる。
【0170】
前記光電子素子がOLEDである場合、例えば、次のような層構造を有することができる:
1.基板
2.アノード層A
3.正孔注入層(HIL)
4.正孔輸送層(HTL)
5.電子阻止層(EBL)
6.発光層(EML)
7.正孔阻止層(HBL)
8.電子輸送層(ETL)
9.電子注入層(EIL)
10.カソード層C
【0171】
ここで、該OLEDは、HIL、HTL、EBL、HBL、ETL及びEILの群から選択された各層を選択的に含み、異なる層が併合され、該OLEDは、前述のところで定義された各層類型のうち1層以上の層を含むものでもある。
【0172】
また、一実施形態において、前記光電子素子は、例えば、水分、蒸気及び/またはガスを含む環境内の有害物質に対する損傷露出から素子を保護する1以上の保護層を選択的に含んでもよい。
【0173】
本発明の一実施形態において、前記光電子素子は、下記の逆積層(inverted layer)構造を有するOLEDである:
1.基板
2.カソード層
3.電子注入層(EIL)
4.電子輸送層(ETL)
5.正孔阻止層(HBL)
6.発光層B
7.電子阻止層(EBL)
8.正孔輸送層(HTL)
9.正孔注入層(HIL)
10.アノード層A
【0174】
ここで、該OLEDは、HIL、HTL、EBL、HBL、ETL及びEILの群から選択された各層を選択的に含み、異なる層が併合され、該OLEDは、前述のところで定義された各層類型のうち1層以上の層を含むものでもある。
【0175】
本発明の一実施形態において、前記光電子素子は、積層構造を有することができるOLEDである。前記構造においては、OLEDが並んで配される一般配置とは異なり、個別ユニットが互いの上に積層される。混合光は、積層構造を示すOLEDによって生成され、特に、白色光は、青色OLED、緑色OLED及び赤色OLEDを積層して生成される。また、積層構造を示すOLEDは、電荷生成層(CGL)を含んでもよく、それは、一般的に、2つのOLEDサブユニット間に位置し、一般的に、n-ドープされた層及びp-ドープされた層として構成される。一般的に、1つのCGLのn-ドープされた層がアノード層にさらに近く位置する。
【0176】
本発明の一実施形態において、前記光電子素子は、アノードとカソードとの間に、2層以上の発光層を含むOLEDである。特に、いわゆるタンデムOLEDは、3層の発光層を含み、ここで、1層の発光層は、赤色光を放出し、1層の発光層は、緑色光を放出し、1層の発光層は、青色光を放出し、選択的に、個々の発光層間に、電荷生成層、電荷阻止層または電荷輸送層のような追加層を含んでもよい。更なる実施形態において、該発光層は、隣接するように積層される。更なる実施形態において、該タンデムOLEDは、それぞれの2層の発光層間に電荷生成層を含む。また、隣接した発光層、または電荷生成層によって分離した発光層が併合されうる。
【0177】
前記基板は、任意の材料、または該材料の組成物によっても形成される。ほとんど、ガラススライドが基板として使用される。代案としては、薄い金属層(例えば、銅、金、銀またはアルミニウムフィルム)、またはプラスチックフィルムやプラスチックスライドが使用されうる。それは、さらに高レベルの柔軟性を許容することができる。アノード層Aは、ほとんど(本質的に)透明なフィルムを得ることができる材料によって構成される。OLEDからの発光を許容するために、二電極のうち少なくとも一つは、(本質的に)透明ではなければならないので、アノード層Aまたはカソード層Cのうち一層は透明である。好ましくは、アノード層Aは、透明導電性酸化物(TCOs)を多量含むか、あるいはそれからなる。そのようなアノード層Aは、例えば、インジウムスズ酸化物、アルミニウム亜鉛酸化物、フッ素ドープされたスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、PbO、SnO、ジルコニウム酸化物、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、タングステン酸化物、黒鉛、ドープされたSi、ドープされたGe、ドープされたGaAs、ドープされたポリアニリン、ドープされたポリピロール及び/またはドープされたポリチオフェンを含むものでもある。
【0178】
アノード層Aは、(本質的に)インジウムスズ酸化物(ITO)(例えば、(InO0.9(SnO0.1)で構成される。透明導電性酸化物(TCO)によるアノード層Aの粗さは、正孔注入層(HIL)を使用することによっても緩和される。また、該HILは、TCOから正孔輸送層(HTL)への類似電荷キャリア(すなわち、正孔)の輸送が促進されるという点において、類似電荷キャリアの注入を容易にする。正孔注入層(HIL)は、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、MoO、V、CuPCまたはCuI、特に、PEDOT及びPSSの混合物を含むものでもある。正孔注入層(HIL)は、また、アノード層Aから正孔輸送層(HTL)に金属が拡散することを防止することができる。例えば、該HILは、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、4,4’,4”-トリス[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミン(mMTDATA)、2,2’,7,7’-テトラキス(n,n-ジフェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-TAD)、N1,N1’-(ビフェニル-4,4’-ジイル)ビス(N1-フェニル-N4,N4-ジ-m-トリルベンゼン-1,4-ジアミン(DNTPD)、N,N’-ニス-(1-ナフタレニル)-N,N’-ビス-フェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン(NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ-[4-(N,N-ジフェニルアミノ)フェニル]ベンジジン(NPNPB)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メトキシフェニル)ベンジジン(MeO-TPD)、1,4,5,8,9,11-ヘキサアザトリフェニレン-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)及び/またはN,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-(1-ナフチル)-9,9’-スピロビフルオレン-2,7-ジアミン(Spiro-NPD)によっても構成される。
【0179】
アノード層Aまたは正孔注入層(HIL)に隣接し、一般的に、正孔輸送層(HTL)が位置する。ここで、任意の正孔輸送化合物が使用されうる。例えば、トリアリールアミン及び/またはカルバゾールのような、電子が豊富なヘテロ芳香族化合物が、正孔輸送化合物としても使用される。該HTLは、アノード層Aと発光層(EML)との間のエネルギー障壁を低減させることができる。該正孔輸送層(HTL)は、また、電子阻止層(EBL)でもある。好ましくは、該正孔輸送化合物は、比較的高いエネルギー準位の三重項状態T1を有する。例えば、正孔輸送層(HTL)は、トリス(4-カルバゾリル-9-イルフェニル)アミン(TCTA)、ポリ(4-ブチルフェニル-ジフェニルアミン)(poly-TPD)、ポリ(4-ブチルフェニル-ジフェニルアミン)(α-NPD)、4,4’-シクロヘキシリデン-ビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)ベンゼンアミン](TAPC)、4,4’,4”-トリス[2-ナフチル(フェニル)-アミノ]トリフェニルアミン(2-TNATA)、Spiro-TAD、DNTPD、NPB、NPNPB、MeO-TPD、HAT-CN及び/または9,9’-ジフェニル-6-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(TrisPcz)のような星状のヘテロ環を含むものでもある。また、該HTLは、有機正孔輸送マトリックス内の無機または有機ドーパントによっても構成されるp-ドープされた層を含むものでもある。該無機ドーパントとしては、例えば、バナジウム酸化物、モリブデン酸化物またはタングステン酸化物のような遷移金属酸化物が使用されうる。該有機ドーパントとしては、例えば、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F-TCNQ)、銅-ペンタフルオロ安息香酸(Cu(I)pFBz)または遷移金属錯体が使用されうる。
【0180】
EBLは、例えば、1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン(mCP)、TCTA、2-TNATA、3,3-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル(mCBP)、tris-Pcz、9-(4-tert-ブチルフェニル)-3,6-ビス(トリフェニルシリル)-9H-カルバゾール(CzSi)及び/または N,N’-ジカルバゾリル-1,4-ジメチルベンゼン(DCB)を含むものでもある。
【0181】
正孔輸送層(HTL)に隣接し、発光層(EML)が一般的に位置する。発光層(EML)は、少なくとも1つの発光分子を含む。特に、該EMLは、本発明による少なくとも1つの発光分子Eを含む。一実施形態において、発光層は、本発明による有機分子のみを含む。一般的に、EMLは、1以上のホスト材料Hをさらに含む。例えば、ホスト材料Hは、4,4’-ビス-(N-カルバゾリル)-ビフェニル(CBP)、mCP、mCBP、ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イルトリフェニルシラン(Sif87)、CzSi、ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イル)ジフェニルシラン(Sif88)、ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキサイド(DPEPO)、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾチオフェン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾチオフェニル)フェニル]-9H-カルバゾール、2,4,6-トリス(ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン(T2T)、2,4,6-トリス(トリフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン(T3T)及び/または2,4,6-トリス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-1,3,5-トリアジン(TST)のうちから選択される。ホスト材料Hは、一般的に、有機分子の第1三重項(T1)及び第1一重項(S1)エネルギー準位よりエネルギー的にさらに高い、第1三重項(T1)及び第1一重項(S1)エネルギー準位を示すように選択されなければならない。
【0182】
本発明の一実施形態において、EMLは、少なくとも1つの正孔支配ホスト及び1つの電子支配ホストを有する、いわゆる、混合ホストシステムを含む。特定実施形態において、該EMLは、正確に1つの本発明による発光有機分子、電子支配ホストとしてT2T、及び正孔支配ホストとして、CBP、mCP、mCBP、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾチオフェン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-9H-カルバゾール及び9-[3,5-ビス(2-ジベンゾチオフェニル)フェニル]-9H-カルバゾールのうちから選択されたホストを含む混合ホストシステムを含む。更なる実施形態において、該EMLは、50~80重量%、好ましくは、60~75重量%のCBP、mCP、mCBP、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾチオフェン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-9H-カルバゾール及び9-[3,5-ビス(2-ジベンゾチオフェニル)フェニル]-9H-カルバゾールから選択されたホスト、10~45重量%、好ましくは、15~30重量%のT2T、及び5~40重量%、好ましくは、10~30重量%の本発明による発光分子を含む。
【0183】
発光層(EML)に隣接し、電子輸送層(ETL)が位置しうる。ここで、任意の電子輸送体が使用されうる。例示的には、ベンズイミダゾール、ピリジン、トリアゾール、トリアジン、オキサジアゾール(例えば、1,3,4-オキサジアゾール)、ホスフィンオキシド及びスルホンのような電子不足化合物が使用されうる。該電子輸送体は、また、1,3,5-トリ(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)フェニル(TPBi)のような星状のヘテロ環でもある。該ETLは、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(NBphen)、アルミニウム-トリス(8-ヒドロキシキノリン)(Alq)、ジフェニル-4-トリフェニルシリルフェニル-ホスフィンオキサイド(TSPO1)、2,7-ジ(2,2’-ビピリジン-5-イル)トリフェニル(BPyTP2)、ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イルトリフェニルシラン(Sif87)、ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イル)ジフェニルシラン(Sif88)、1,3-ビス[3,5-ジ(ピリジン-3-イル)フェニル]ベンゼン(BmPyPhB)及び/または4,4’-ビス-[2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジニル)]-1,1’-ビフェニル(BTB)を含むものでもある。選択的に、該ETLは、Liqのような物質によってもドーピングされる。該電子輸送層(ETL)は、また、正孔を阻止することができる。または、正孔阻止層(HBL)が導入される。
【0184】
HBLは、例えば、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン=バソクプロイン(BCP)、ビス(8-ヒドロキシ-2-メチルキノリン)-(4-フェニルフェノキシ)アルミニウム(BAlq)、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(NBphen)、アルミニウム-トリス(8-ヒドロキシキノリン)(Alq)、ジフェニル-4-トリフェニルシリルフェニル-ホスフィンオキサイド(TSPO1)、2,4,6-トリス(ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン(T2T)、2,4,6-トリス(トリフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン(T3T)、2,4,6-トリス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-1,3,5-トリアジン(TST)及び/または1,3,5-トリス(N-カルバゾリル)ベンゾール/1,3,5-トリス(カルバゾール)-9-イル)ベンゼン(TCB/TCP)を含むものでもある。
【0185】
電子輸送層(ETL)に隣接し、カソード層Cが位置しうる。該カソード層Cは、例えば、金属(例えば、Al、Au、Ag、Pt、Cu、Zn、Ni、Fe、Pb、LiF、Ca、Ba、Mg、In、WまたはPd)または金属合金を含むか、あるいはそれからなる。実用的な理由により、該カソード層Cは、Mg、CaまたはAlのような(本質的に)不透明な金属によっても構成される。代案としてまたは追加的に、該カソード層Cは、また、黒鉛及び/またはカーボンナノチューブ(CNT)を含むものでもある。代案としては、カソード層Cは、また、ナノスケール銀ワイヤを含むか、あるいはそれから構成される。
【0186】
OLEDは、選択的に、電子輸送層(ETL)とカソード層Cとの間に、保護層(電子注入層(EIL)とも称される)をさらに含んでもよい。該層は、フッ化リチウム、フッ化セシウム、銀、8-ヒドロキシキノリンラトリチウム(Liq)、LiO、BaF、MgO及び/またはNaFを含むものでもある。
【0187】
選択的に、電子輸送層(ETL)及び/または正孔阻止層(HBL)は、また、1以上のホスト化合物Hを含むものでもある。
【0188】
発光層EMLの発光スペクトル及び/または吸収スペクトルを追加して修正するために、発光層EMLは、1以上の追加エミッタ分子Fをさらに含んでもよい。そのようなエミッタ分子Fは、当業界に公知された任意のエミッタ分子であってもよい。好ましくは、そのようなエミッタ分子Fは、本発明による分子Eの構造と異なる構造を有する分子である。エミッタ分子Fは、選択的に、TADFエミッタでもある。代案としては、エミッタ分子Fは、選択的に、発光層EMLの発光スペクトル及び/または吸収スペクトルをシフトさせることができる蛍光性及び/またはリン光性のエミッタ分子でもある。例えば、三重項及び/または一重項励起子が、基底状態Sに緩和される前に、本発明による有機エミッタ分子からエミッタ分子Fに伝達され、有機分子によって放出される光と比較し、典型的に、赤色偏移された光を放出することができる。選択的に、エミッタ分子Fは、また二光子効果(すなわち、最大吸収エネルギーの半分である2つの光子の吸収)を誘発することができる。
【0189】
選択的に、光電子素子(例えば、OLED)は、例えば、本質的に、白色光電子素子でもある。例えば、そのような白色光電子素子は、少なくとも1つの(深)青色エミッタ分子、及び緑色光及び/または赤色光を放出する1以上のエミッタ分子を含むものでもある。そして、選択的に、前述のように、2以上の分子間にエネルギー伝達がありうる。
【0190】
本明細書に使用されているように、特定文脈において、さらに具体的に定義されない場合、放出及び/または吸収された光の色相指定は、下記の通りである:
紫色:>380~420nmの波長範囲
深青色:>420~480nmの波長範囲
空色:>480~500nmの波長範囲
緑色:>500~560nmの波長範囲
黄色:>560~580nmの波長範囲
オレンジ色:>580~620nmの波長範囲
赤色:>620~800nmの波長範囲。
【0191】
エミッタ分子と係わり、そのような色相は最大発光を示す。したがって、例えば、深青色エミッタは、>420~480nm範囲で最大発光を有し、空色エミッタは、>480~500nm範囲で最大発光を有し、緑色エミッタは、>500~560nm範囲で最大発光を有し、赤色エミッタは、>620~800nm範囲で最大発光を有する。
【0192】
深青色エミッタは、好ましくは、480nm未満、より好ましくは、470nm未満、より一層好ましくは、465nm未満、またさらに好ましくは、460nm未満の最大発光を有することができる。それは、一般的に、420nm超過、好ましくは、430nm超過、より好ましくは、440nm超過、またさらに好ましくは、450nm超過でもある。
【0193】
緑色エミッタは、560nm未満、より好ましくは、550nm未満、より一層好ましくは、545nm未満、またさらに好ましくは、540nm未満の最大発光を有する。それは、一般的に、500nm超過、より好ましくは、510nm超過、より一層好ましくは、515nm超過、またさらに好ましくは、520nm超過でもある。
【0194】
したがって、本発明の更なる態様は、1000cd/mにおいて、8%超過、好ましくは、10%超過、より好ましくは、13%超過、より一層好ましくは、15%超過、またさらに好ましくは、20%超過の外部量子効率を示し、及び/または、420nm~500nm、好ましくは、430nm~490nm、より好ましくは、440nm~480nm、より一層好ましくは、450nm~470nmの最大発光を示し、及び/または、500cd/mにおいて、100h超過、好ましくは、200h超過、より好ましくは、400h超過、より一層好ましくは、750h超過、またさらに好ましくは、1000h超過のLT80値を示すOLEDに係わるものである。したがって、本発明の更なる態様は、発光が、0.45未満、好ましくは、0.30未満、より好ましくは、0.20未満、より一層好ましくは、0.15未満、またさらに好ましくは、0.10未満のCIEy色座標を示すOLEDに係わるものである。
【0195】
本発明の更なる態様は、明確な色点で光を放出するOLEDに係わるものである。本発明によれば、OLEDは、狭い発光帯域(小さい半値幅(FWHM))を有する光を放出する。一態様において、本発明によるOLEDは、0.25eV未満、好ましくは、0.20eV未満、より好ましくは、0.17eV未満、より一層好ましくは、0.15eV未満、またさらに好ましくは、0.13eV未満の、主発光ピークのFWHMを有する光を放出する。
【0196】
本発明の更なる態様は、ITU-R Recommendation BT.2020(Rec.2020)によって定義されているような原色青色(CIEx=0.131及びCIEy=0.046)のCIEx(=0.131)及びCIEy(=0.046)の色座標に近いCIEx及びCIEyの色座標を有する光を放出するOLEDに係わるものであり、これは、UHD(Ultra High Definition)ディスプレイ、例えば、UHD-TVに使用するのに適している。したがって、本発明の更なる態様は、発光が、0.02~0.30、好ましくは、0.03~0.25、より好ましくは、0.05~0.20、より一層好ましくは、0.08~0.18、またさらに好ましくは、0.10~0.15のCIEx色座標、及び/または、0.00~0.45、好ましくは、0.01~0.30、より好ましくは、0.02~0.20、より一層好ましくは、0.03~0.15、またさらに好ましくは、0.04~0.10のCIEy色座標を示すOLEDに係わるものである。
【0197】
本発明の更なる実施形態において、前記組成物は、室温で、20%超過、好ましくは、30%超過、より好ましくは、35%超過、より好ましくは、40%超過、より好ましくは、45%超過、より好ましくは、50%超過、より好ましくは、55%超過、より一層好ましくは、60%超過、またさらに好ましくは、70%超過のフォトルミネセンス量子収率(PLQY)を有する。
【0198】
一実施形態において、前記組成物は、以下を含む:
(a)特にエミッタ形態の、請求項1~7のうちいずれか1項に記載の有機分子、
(b)前記有機分子と異なるホスト材料、及び
(c)選択的に、染料及び/または溶媒。
【0199】
特に、少なくともTADF材料及び燐光材料からなる群から選択される材料を含む。
【0200】
本発明の更なる実施形態において、前記組成物は、0.1~30重量%、好ましくは、0.8~15重量%、特に1.5~5重量%の前記有機分子を含む。
【0201】
本発明の更なる実施形態において、前記組成物は、少なくともTADF材料及び燐光材料からなる群から選択される材料を含む。
【0202】
本発明の更なる実施形態において、前記組成物のホスト材料は、化学式4で表される構造を含み、
【化88】
・・・化学式4
ここで、
それぞれのArは、互いに独立して、下記からなる群から選択され、
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C60アリール、及び
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C57ヘテロアリール、
それぞれのAは、互いに独立して、下記からなる群から選択される:
水素、
重水素、
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C60アリール、
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C57ヘテロアリール、及び
-C60アリール、C-C57ヘテロアリール、ハロゲン及びC-C40(ヘテロ)アルキルからなる群から選択された1以上の残基で選択的に置換されたC-C40(ヘテロ)アルキル。
【0203】
更なる態様において、本発明は、光電子部品の製造方法に係わるものである。この場合、本発明の有機分子が使用される。
【0204】
更なる態様において、本発明は、下記段階を含む、440nm~470nmの波長範囲の光を発生させる方法に係わるものである:
(i)本発明の有機分子を含む光電子素子を提供する段階、及び
(ii)前記光電子素子に電流を印加する段階。
【0205】
光電子素子、特に、本発明によるOLEDは、任意の手段の気相蒸着及び/または液状工程によっても製造される。したがって、少なくとも1層は、
-昇華工程によって製造されるか、
-有機気相蒸着工程によって製造されるか、
-キャリアガス昇華工程によって製造されるか、
-溶液処理またはプリントされる。
【0206】
本発明による光電子素子、特にOLEDを製造するのに使用される方法は、当業界に公知されている。異なる層は、後続蒸着工程により、適切な基板上に、個々に連続して蒸着される。個々の層は、同一であるか、あるいは異なる蒸着方法を使用して蒸着されうる。
【0207】
例えば、該気相蒸着工程は、熱(共)蒸着、化学的気相蒸着及び物理的気相蒸着を含む。アクティブマトリックスOLEDディスプレイの場合、AMOLEDバックプレーンが基板として使用される。個々の層は、適切な溶媒を使用する溶液または分散液からも処理される。例えば、溶液蒸着工程には、スピンコーティング、ディップコーティング及びジェットプリンティングが含まれる。溶液処理は、選択的に、不活性雰囲気(例えば、窒素雰囲気)において実行され、該溶媒は、当業界に公知の手段により、完全にまたは部分的に除去される。
【0208】
さらに他の態様において、本発明は、また、下記化学式100の構造を含むか、あるいはそれからなる有機発光分子に係わるものである:
【化89】
・・・化学式100
ここで、
n=0または1であり、
Xは、それぞれの場合に独立して、直接結合、CR、C=CR、C=O、C=NR、NR、O、SiR、S、S(O)及びS(O)からなる群から選択され、
、R、R、R、R、RII、RIII、RIV及びRは、下記からなる群から選択され、
水素、重水素、N(R、OR、Si(R、B(OR、B(R、OSO、CF、CN、F、Br、I、
-C40アルキル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルコキシ、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40チオアルコキシ、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルケニル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルキニル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
選択的に1以上の置換基Rで置換されたC-C60アリール、及び
選択的に1以上の置換基Rで置換されたC-C57ヘテロアリール、
及びRは、独立して、下記からなる群から選択され、
水素、重水素、CF、CN、F、Br、I、
-C40アルキル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
選択的に1以上の置換基Rで置換されたC-C60アリール、及び
選択的に1以上の置換基Rで置換されたC-C57ヘテロアリール、
は、それぞれの場合に独立して、下記からなる群から選択され、
水素、重水素、N(R、OR、Si(R、B(OR、B(R、OSO、CF、CN、F、Br、I、
-C40アルキル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルコキシ、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40チオアルコキシ、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルケニル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルキニル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
選択的に1以上の置換基Rで置換されたC-C60アリール、及び
選択的に1以上の置換基Rで置換されたC-C57ヘテロアリール、
は、それぞれの場合に、互いに独立して、下記からなる群から選択され、
水素、重水素、N(R、OR、Si(R、B(OR、B(R、OSO、CF、CN、F、Br、I、
-C40アルキル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルコキシ、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40チオアルコキシ、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルケニル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
-C40アルキニル、
これは、選択的に1以上の置換基Rで置換され、
ここで、1以上の隣接しないCH基は、選択的にRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRで置換され、
選択的に1以上の置換基Rで置換されたC-C60アリール、及び
選択的に1以上の置換基Rで置換されたC-C57ヘテロアリール、
は、それぞれの場合に、互いに独立して、下記からなる群から選択され、
水素、重水素、OPh、CF、CN、F、
-Cアルキル、
ここで、選択的に1以上の水素原子は、独立して、重水素、CN、CFまたはFで置換され、
-Cアルコキシ、
ここで、選択的に1以上の水素原子は、独立して、重水素、CN、CFまたはFで置換され、
-Cチオアルコキシ、
ここで、選択的に1以上の水素原子は、独立して、重水素、CN、CFまたはFで置換され、
-Cアルケニル、
ここで、選択的に1以上の水素原子は、独立して、重水素、CN、CFまたはFで置換され、
-Cアルキニル、
ここで、選択的に1以上の水素原子は、独立して、重水素、CN、CFまたはFで置換され、
選択的に1以上のC-Cアルキル置換基で置換されたC-C18アリール、
選択的に1以上のC-Cアルキル置換基で置換されたC-C17ヘテロアリール、
N(C-C18アリール)
N(C-C17ヘテロアリール)、及び
N(C-C17ヘテロアリール)(C-C18アリール)、
ここで、置換基R、R、R及びRは、互いに独立して、1以上の置換基R、R、R及びRと共に、単環または多環、脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族及び/またはベンゾ縮合環系を選択的に形成し、
ここで、置換基R、R、R、R、R、R、RII、RIII、RIV及びRは、互いに独立して、1以上の置換基R、R、R、R、R、R、RII、RIII、RIV及びRと共に、単環または多環、脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族及び/またはベンゾ縮合環系を選択的に形成する。
【0209】
実施例
一般合成方式I
【化90】
【0210】
合成のための一般手順:
AAV1:トルエンと水の混合物(体積基準4:1)内で、I-1(1.3当量)、I-2(1.0当量)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)-パラジウム(0)(CAS-No.14221-01-3、0.05当量)及びKCO(CAS-No.584-08-7、2.0当量)の懸濁液を5時間還流下で撹拌した。室温に冷却した後、水性ワークアップを行った後、再結晶またはカラムクロマトグラフィによって粗生成物を精製した。所望の化合物I-3を固体として得た。
【0211】
AAV2:脱気されたキシレン内で、I-3(1.0当量)、I-4(1.0当量)、トリス(ジベンジリデンアセトン)-ジパラジウム(0)(CAS-No.51364-51-3、0.01当量)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(CAS-No.131274-22-1、0.04当量)及びナトリウムtert-ブトキシド(CAS-No.865-48-5、3.0当量)の懸濁液を130℃で24時間撹拌した。室温に冷却した後、水性ワークアップを行った後、再結晶またはカラムクロマトグラフィによって粗生成物を精製した。所望の化合物I-5を固体として得た。
【0212】
AAV3:トルエンと水の脱気された混合物(体積基準4:1)内で、I-5(1.0当量)、I-6(1.25当量)、トリス(ジベンジリデンアセトン)-ジパラジウム(0)(CAS-No.51364-51-3、0.01当量)、X-Phos(CAS-No.564483-18-7、0.04当量)及びKPO(CAS-No.7778-53-2、3.5当量)の懸濁液を5時間還流下で撹拌した。室温に冷却した後、水性ワークアップを行った後、再結晶またはカラムクロマトグラフィによって粗生成物を精製した。所望の化合物I-7を固体として得た。
【0213】
AAV4:0℃で、脱水tert-ブチルベンゼン(I-7 1mmol当たり30mL)内のI-7溶液をn-ブチルリチウム(ヘキサン中の2.5M、CAS-No.109-72-8、1.1当量)と15分間撹拌した。次いで、tert-ブチルリチウム(ペンタン中の1.6M、CAS-No.594-19-4、2.2当量)を0℃で注入した後、60℃で1時間撹拌した。リチウム化完了後、混合物を<-60℃に冷却し、三臭化ホウ素(99%、CAS-No.10294-33-4、1.5当量)を注入し、混合物を室温まで暖めた。室温で18時間撹拌した後、反応物を5% NH(aq)でクエンチングし、ジクロロメタンで抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。再結晶またはカラムクロマトグラフィによって精製し、目的の化合物P-1を固体として得た。
【0214】
一般合成方式II
【化91】
【0215】
合成のための一般手順:
AAV-5:I-8(1.0当量)、ビス(ピナコラート)ジボロン(CAS-No.73183-34-3、1.7当量)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド(CAS-No.72287-26-4、0.02当量)及び酢酸カリウム(KOAc、CAS-No.127-08-2、4.5当量)の懸濁液を、脱気されたジオキサン内で、18時間還流下で撹拌した。室温に冷却した後、水性ワークアップを行った後、再結晶またはカラムクロマトグラフィによって粗生成物を精製した。所望の化合物I-2を固体として得た。
【0216】
場合によって、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドの代わりに、トリス(ジベンジリデンアセトン)-ジパラジウム(0)(CAS-No.51364-51-3、0.01当量)及びX-Phos(CAS-No.564483-18-7、0.04当量)を触媒として使用することができる。
【0217】
一般合成方式III
【化92】
【0218】
合成のための一般手順:
AAV6:トルエンと水の脱気された混合物(体積基準4:1)内で、I-9(1.0当量)、I-10(2.2当量)、トリス(ジベンジリデンアセトン)-ジパラジウム(0)(CAS-No.51364-51-3、0.01当量)、X-Phos(CAS-No.564483-18-7、0.04当量)及びKPO(CAS-No.7778-53-2、3.0当量)の懸濁液を2時間還流下で撹拌した。室温に冷却した後、水性ワークアップを行った後、再結晶またはカラムクロマトグラフィによって粗生成物を精製した。所望の化合物I-4を固体として得た。
【0219】
サイクリックボルタンメトリー
サイクリックボルモグラムは、ジクロロメタン、または適する溶媒、及び適する支持電解質(例:0.1mol/Lのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート)において、有機分子の濃度が10-3mol/Lである溶液で測定される。該測定は、3電極アセンブリ(作用電極及びカウンター電極:Ptワイヤ、基準電極:Ptワイヤ)を使用し、窒素雰囲気において、室温で行い、内部標準として、FeCp/FeCp を使用して補正する。HOMOデータは、飽和カロメル電極(SCE)に係わる内部標準として、フェロセンを使用して修正された。
【0220】
密度関数理論計算
分子構造は、BP86関数及びRI(Resolution of Identity)アプローチを使用して最適化された。励起エネルギーは、(BP86)最適化された構造を使用して、TD-DFT(Time-Dependent DFT)方法でもって計算される。軌道エネルギー及び励起状態エネルギーは、B3LYP関数により計算される。数値積分のために、Def2-SVP基本セット及びm4-gridが使用される。Turbomoleプログラムパッケージは、全ての計算に使用される。
【0221】
光物理的測定
試料前処理:スピンコーティング
装置:Spin150、SPS euro
試料濃度は、適切な溶媒に溶解された10mg/mlである。
プログラム:1)400U/分で3秒、1000U/分で20秒(1000Upm/s)。3)4000U/分で10秒(1000Upm/s)。コーティング後、フィルムを70℃で1分間乾燥させた。
【0222】
フォトルミネセンス分光法及び時間相関単一光子計数(TCSPC)
定常状態発光分光法は、150Wのキセノン-Arcランプ、励起及び発光単色計、Hamamatsu R928光電子増倍管及び時間相関単一光子計数オプションが装着されたModel FluoroMax-4(Horiba Scientific)を使用して記録される。標準補正フィット(standard correction fits)を使用し、発光スペクトル及び励起スペクトルを補正する。
【0223】
励起状態寿命は、FM-2013装備及びHoriba Yvon TCSPCハブと共に、TCSPC方法を使用する同一システムを使用して決定される。
【0224】
励起光源:
NanoLED 370(波長:371nm、パルス持続時間:1.1ns)
NanoLED 290(波長:294nm、パルス持続時間:<1ns)
SpectraLED 310(波長:314nm)
SpectraLED 355(波長:355nm)
データ分析(指数フィット)は、ソフトウェア製品群DataStation及びDAS6分析ソフトウェアを使用して行われる。フィット(fit)は、カイ二乗検定(chi-squared-test)を使用して特定される。
【0225】
フォトルミネセンス量子収率測定
フォトルミネセンス量子収率(PLQY)測定のために、Absolute PL量子収率測定C9920-03Gシステム(浜松ホトニクス)が使用されている。量子収率及びCIE座標は、ソフトウェアU6039-05バージョン3.6.0を使用して決定された。
【0226】
最大発光は、nmで示され、量子収率Φは、%で示され、CIE座標は、x,y値で示される。
【0227】
PLQYは、次のプロトコルを使用して決定される:
1)品質保証:エタノール中におけるアントラセン(知られた濃度)を基準に使用する。
2)励起波長:有機分子の最大吸収が決定され、該波長を使用し、分子が励起される。
3)測定
量子収率は、窒素雰囲気において、溶液またはフィルム試料について測定される。収率は、次の方程式を使用して計算される:
【数3】

ここで、n光子は、光子数を示し、Intは、強度を示す。
【0228】
光電子素子の製造及び特性化
本発明による有機分子を含むOLED素子のような光電子素子は、真空蒸着方法によっても製造される。層が1以上の化合物を含む場合、1以上の化合物の重量百分率は、%で示される。総重量百分率値は100%であるので、値が指定されていない場合、該化合物の分率は、指定された値と、100%との差と同じである。
【0229】
完全に最適化されていないOLEDは、標準方法を使用してエレクトロルミネセンススペクトルを測定し、光ダイオードによって検出された光及び電流を使用して計算された、強度及び電流に依存する外部量子効率(%)を測定して特性化される。OLED素子の寿命は、一定電流密度で動作する間、輝度の変化から抽出される。LT50値は、測定輝度が、初期輝度の50%に低減した時間に該当し、同様に、LT80は、測定輝度が、初期輝度の80%に低減した時点に該当し、LT95は、測定輝度が、初期輝度の95%に低減した時点に該当する。
【0230】
加速寿命測定が行われる(例:増大した電流密度適用)。例えば、500cd/mにおいて、LT80値は、次の式を使用して決定される:
【数4】

ここで、Lは、印加された電流密度における初期輝度を示す。
値は、複数のピクセル(一般的に、2~8個)の平均に該当し、当該ピクセル間の標準偏差が提供される。
【0231】
HPLC-MS
HPLC-MS分析は、MS-検出器(Thermo LTQ XL)があるAgilentのHPLC(1100シリーズ)で行われる。
【0232】
例えば、典型的なHPLC方法は、次の通りである:Agilent(ZORBAX Eclipse Plus 95Å C18、4.6×150mm、3.5μm HPLCカラム)から、逆相カラム4.6mm×150mm、及び粒子サイズ3.5μmがHPLCに使用される。HPLC-MS測定は、下記の勾配により、室温(rt)で行われる。
【表1】

下記の溶媒混合物を使用した:
【表2】

0.5mg/mL濃度の分析物溶液から、注入体積5μLを測定のために取る。
プローブのイオン化は、陽(APCI)イオン化モードまたは陰(APCI)イオン化モードにおいて、APCI(大気圧化学イオン化)ソースを使用して行われる。
【0233】
実施例1
【化93】
【0234】
実施例1は、以下によって合成された:
AAV1(44%収率)、ここで、出発物質I-1及びI-2は、1,3-ジブロモ-2,5-ジクロロベンゼン(CAS-No.81067-41-6)及び8-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-7H-ベンゾ[c]カルバゾール(CAS-No.2259354-30-6)で表され、ここで、後者は、80%収率で、8-ブロモ-7H-ベンゾ[c]カルバゾール(CAS-No.1686099-80-8)からAAV5によって合成され、
AAV2(39%収率)、ここで、I-4は、4’-(1,1-ジメチルエチル)-N-[4’-(1,1-ジメチルエチル)[1,1’-ビフェニル]-4-イル]-[1,1’-ビフェニル]-4-アミン(CAS-No.1078705-10-8)で表され、ここで、後者は、90%収率で、ビス(4-ブロモフェニル)アミン(CAS-No.16292-17-4)及び4-tert-ブチルベンゼンボロン酸(CAS-No.123324-71-0)からAAV6によって合成され、
AAV3(57%収率)、ここで、化合物I-6は、4-tert-ブチルベンゼンボロン酸(CAS-No.123324-71-0)で表され、及び
AAV4(14%収率)。
MS(LC-MS、APPIイオンソース):rt:8.8分で866m/z。
【0235】
実施例1(mCBPにおいて2重量%)の最大発光は460nmであり、CIEx座標は0.14であり、CIEy座標は0.12である。フォトルミネセンス量子収率(PLQY)は64%である。
【0236】
本発明の有機分子の追加例
【化94】

【化95】

【化96】

【化97】

【化98】

【国際調査報告】