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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】歯内治療装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/40 20170101AFI20240416BHJP
   A61C 3/025 20060101ALI20240416BHJP
   A61C 17/028 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61C5/40
A61C3/025
A61C17/028
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564086
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2022061638
(87)【国際公開番号】W WO2022243016
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】21174535.1
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522164112
【氏名又は名称】オドネ エージー
【氏名又は名称原語表記】Odne AG
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】バブケヴィッチ,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】シュモッカー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ビスピンホフ,マーク
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA16
4C052BB12
4C052DD01
4C052GG11
4C052GG21
(57)【要約】
歯科用装置(1)および方法、例えば歯内治療装置および方法が開示される。当該装置は、流体の供給源(12)と、加圧下で供給源(12)から流体を送達するポンプ(14)と、ポンプ(14)と流体連通するハンドピース20とを備える。ハンドピース(20)は、ハンドピースの近位の後端からハンドピースから遠位の前方先端まで延びる針(30)を備え、針のルーメンは、ポンプから受け取った流体を歯に送達するために、先端の開口部まで延びている。針の寸法および流体の送達圧力は、針を通る流体の流れによって慣性キャビテーションのクラウドが針の先端の前方に形成されるように選択される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯内治療装置であって、前記装置は、
洗浄流体の供給源と、
加圧下で前記供給源から洗浄流体を送達するポンプと、
前記ポンプと流体連通しかつ針を備えたハンドピースであって、前記針は、前記ハンドピースの近位の後端から前記ハンドピースから遠位の前方先端まで延び、前記針のルーメンは、前記ポンプから受け取った流体を歯の空洞内に送達するために、前記先端の開口部まで延びているハンドピースと、を備え、
前記針は、その後端からその先端まで延びる長さが少なくとも3mmであり、かつ前記針の先端が根管の一部内に位置決めできるように、前記先端における外径が520μm以下であり、
前記針を通る洗浄剤の流れにより、前記針の先端の前方の前記根管内の前記洗浄流体内に慣性キャビテーション(inertial cavitation)のクラウドが形成されるように、前記ルーメンの先端の直径は少なくとも50μmであり、前記ポンプは閾値キャビテーション圧を超える送達圧力で洗浄剤を送達する、歯内治療装置。
【請求項2】
前記送達圧力が、5~300バールである、請求項1に記載の歯内治療装置。
【請求項3】
前記針の長さが、10~30mmである、請求項1または2に記載の歯内治療装置。
【請求項4】
前記送達圧力が、前記針の先端における前記洗浄剤の最小流出速度が少なくとも20m/秒となるように選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の歯内治療装置。
【請求項5】
前記針を通る洗浄剤の流速が、75ml/分未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の歯内治療装置。
【請求項6】
前記針の少なくとも遠位端が、30Gと34Gとの間の針ゲージサイズを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の歯内治療装置。
【請求項7】
前記針が、開放した前記前方先端を含む遠位部分と、前記遠位部分の近位端に接続された近位部分とを備え、前記近位部分の直径が増大している、請求項1~6のいずれか1項に記載の歯内治療装置。
【請求項8】
前記洗浄流体が、生理食塩水である、請求項1~7のいずれか1項に記載の歯内治療装置。
【請求項9】
前記洗浄流体が、消毒剤をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の歯内治療装置。
【請求項10】
前記洗浄流体が、研磨粒子をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の歯内治療装置。
【請求項11】
前記針の開放した前記前方先端が、前方を向いた軸開口部を備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の歯内治療装置。
【請求項12】
前記装置が、前記送達圧力を制御するための調整器を備える、請求項1~11のいずれか1項に記載の歯内治療装置。
【請求項13】
前記装置が、前記洗浄流体の温度を制御するためのヒーターをさらに備える、請求項1~12のいずれか1項に記載の歯内治療装置。
【請求項14】
前記装置が、前記洗浄流体の供給をパルスで行うためのパルス発生器をさらに備える、請求項1~13のいずれか1項に記載の歯内治療装置。
【請求項15】
少なくとも5mmの長さおよび520μm以下の先端外径を有する針を根管の一部内に配置することと、
洗浄流体を圧力下で前記針に供給して、流体が前記針の先端から前記根管内に排出されるようにすることと、
前記針を通る洗浄剤の流れにより、前記針の先端の前方の前記根管内の前記洗浄流体内に慣性キャビテーション(inertial cavitation)のクラウドが形成されるように、前記針の先端の圧力が閾値キャビテーション圧力を超えるように前記洗浄流体の送達圧力を選択することと、を含む、歯内洗浄方法。
【請求項16】
前記送達圧力が、5~300バールである、請求項14に記載の歯内洗浄方法。
【請求項17】
前記洗浄流体を加熱することをさらに含む、請求項14~16のいずれか1項に記載の歯内洗浄方法。
【請求項18】
前記針が前記管に挿入される深さに応じて前記圧力を調整することをさらに含む、請求項14~17のいずれか1項に記載の歯内洗浄方法。
【請求項19】
前記洗浄流体の供給をパルスで行うことさらに含む、請求項14~18のいずれか1項に記載の歯内洗浄方法。
【請求項20】
歯科用装置であって、前記装置は、
流体の供給源と、
加圧下で前記供給源から流体を送達するポンプと、
前記ポンプと流体連通しかつ針を備えたハンドピースであって、前記針は、前記ハンドピースの近位の後端から前記ハンドピースから遠位の前方先端まで延び、前記針のルーメンは、前記ポンプから受け取った流体を歯に送達するために、前記先端の開口部まで延びているハンドピースと、を備え、
前記針の寸法および前記流体の送達圧力は、前記針を通る流体の流れによって慣性キャビテーションのクラウドが前記針の先端の前方に形成されるように選択される、歯科用装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、歯科用装置および方法、特に歯内デブライドメント、洗浄、および/または消毒のための歯内治療装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
根管治療は、重度の感染症が発生した場合に歯を保存するために使用される。典型的な根管治療手順には次の手順を含む:(i)空洞を開いて歯髄と根管にアクセスすること;(ii)機械器具の使用とヤスリにより拡大すること、(iii)次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤、NaOCl)、EDTAおよび/またはその他の化学薬品による化学洗浄(注射器を使用)、通常は数回繰り返されること、(iv)超音波洗浄デバイスによるNaOCl/化学薬品の任意選択的な活性化、ならびに(iv)根管の閉塞(または充填)し歯の閉鎖すること。このような複数のステップの手順は非常に手間がかかり、完了するまでに約60分かかり得る。
【0003】
このような手順は一般的に行われているが(世界中で年間約5,500万件の手順)、手間と時間がかかり、失敗率が比較的高くなる(症例の約30%)。その結果、費用がかかり複雑な再治療、抜歯、または高価なインプラントの埋入が必要になる。このような失敗の主な原因は、細菌の除去が不完全であったり、または機械的なヤスリによる歯の構造が弱くなったりすることである。前者は、機械的なヤスリと注射器洗浄の組み合わせの限界の結果であり、非常に小さく(例えば300または100μm未満)歯の複雑な管構造のすべてにアクセスすることができず、細菌が取り残され、後で再感染を引き起こす。後者は、NaOClへのアクセスを改善するために管を拡張することによって生じる。これにより象牙質の構造が弱くなり、歯根に亀裂が入りやすくなる。
【0004】
根管治療手順を行う際に歯科医が直面する一般的な問題のいくつかには、次の1つ以上が含まれる:管を拡張するにはかなりの時間と労力が必要であること;管のヤスリによる歯の構造の弱化の危険性;小さな管を通した再感染を避けるために、最も小さな管内の細菌を除去できなかった場合、発見されなかったり、洗浄剤が管に到達しなかったりする危険性;管内でのヴェイパーロックの発生および/または検出(空気が閉じ込められて脱出できず、上の液体を通過できず、洗浄剤による管の頂端3分の1の消毒が妨げられている場合);NaOClが尖部を越えて軟組織と硬組織に押し出される危険性;ならびに/あるいは歯の外側からの血液の流入。
【0005】
根管の洗浄を改善し、上記の問題の少なくとも一部に対処または軽減することを目的としたいくつかのシステムが市販されている。このようなシステムは、洗浄剤の流体力学的作用を強化して、洗浄デブリードマンおよび/または消毒を改善することを目的としている。
【0006】
このようなシステムの1つは、陰圧吸引を使用してヴェイパーロックの発生を防止するシステムであり、その一例はEndoVacシステム(米国カリフォルニア州カルバーシティのDiscus Dentalから入手可能)である。このようなシステムでは、新鮮な洗浄剤が上部から大きな針でゆっくりと歯髄室に注入される、連続的な根尖陰圧洗浄が使用される。これは管の底にあるカニューレに吸引される。このようなシステムの問題は、2本の洗剤針が収まるほど管を拡張するためにかなりの器具が必要であることである。
【0007】
さらなるタイプのシステムは、根管に挿入される振動するプラスチックまたは金属の先端を使用する音波または超音波システムである。通常、振動周波数は100Hz~20kHzである。振動によりエアロックの形成が防止され、特により大きな管におけるデブリードマンおよび/または消毒のパフォーマンスが向上し得る。このようなシステムの例としては、EDDYシステム(ドイツ、ミュンヘンのVDWから入手可能)、Endoactivatorシステム(米国ペンシルバニア州ヨークのDentsply Sironaから入手可能)、およびIrrisafeシステム(英国、ノリッジのActeon Groupから入手可能)が挙げられる。しかし、そのようなシステムは一般に、事前に大規模な器具の設置および管のヤスリがけを行わない限り、非常に限られた範囲でしか機能しない。
【0008】
さらなるタイプのシステムは、Gentlewaveシステム(米国、カリフォルニア州ラグーナヒルズのSonendo,Incから入手可能)および米国特許第4,993,947号に開示されているシステムを含む閉鎖流体力学的活性化システムである。閉鎖システムでは、冠状頭などの部分が歯髄室内に配置され、しっかりと取り付けられて歯との閉鎖システムを形成する。歯とシステムとの間の流体密接続の要件には、歯科手順の一部として追加の作業が必要である。ポンプは根管に交互の流れを供給し、徐々に破片を除去する。歯管内での洗浄剤の流体力学的作用を強化するために、米国特許第4,993,947号は、歯に送達する前にキャビテーションを発生させるベンチュリノズルに流体を通し、根管(狭い管を含む)の全容積を洗浄し、根組織への浸透を増加させる。Gentlewaveシステム(米国カリフォルニア州ラグーナヒルズのSonendo,Incから入手可能)では、流体力学的作用の強化は、コロナヘッドの一部として形成されたプラットフォームに衝突するウォータージェットの相互作用によってもたらされる。しかし、歯に固定するのが面倒でしっかりとしたものになるという大きな欠点のほかに、交互流システムでは、尖部の陰圧(または不十分な高さ)に重大な問題があり、これにより血液が流入し、尖部領域の非効率な消毒とデブリードマンが発生する。
【0009】
開放流体力学的活性化システム、例えばRinsEndoシステム(ドイツ、ビッティッヒハイム-ビッシンゲンのDuerr-Dentalから入手可能)ならびに米国特許第4,247,288号および第6,224,378号に示されているシステムも提案されている。例えば、RinsEndoシステムは、洗浄剤を根管により深く供給できるようにすることを目的とした特別な使い捨てカニューレを使用する。米国特許第6,224,378号は、歯内の軟組織を除去することを目的とした高圧、高速水または他の液体のハイドロジェットを使用しているが、硬い石灰化した歯組織を切断または侵食する能力は限られている。
【0010】
最後に、Photon Induced Photoacoustic Streaming (PIPS)またはSWEEPS(Shock Wave Enhanced Emission Photo-acoustic Streaming)などのレーザー活性化システム(スロベニア、リュブリャナのFotonaから入手可能)は、歯髄室内に光ファイバーシステムを挿入して洗浄を強化することができる。このようなシステムでは、水を過熱してキャビテーションを発生させるためにレーザーが使用される。
【0011】
多くの根管活性化システムは効率的な根管消毒を保証するために「キャビテーション」を生成すると主張しているが、出願人はこれが実際には十分ではないことを発見した。例えば、多くのシステムでは、生成されるキャビテーションは限定的であり、流体内の気泡のサイズおよび/または形状が単に振動する非慣性キャビテーションであるように見える。非慣性キャビテーションは、慣性キャビテーションで見られるような強力な衝撃波を引き起こすバブルの崩壊を引き起こさない。さらに、出願人は、既存の解決策の多くが、効果的な洗浄、デブリードマンおよび/または消毒に必要な歯の細い(1mm未満、500μm未満、さらには300または100μm未満の寸法の場合)管部分内にキャビテーションを発生させることができないことも発見した。最後に、既存のデバイスはどれも、歯根破折の主な原因である機械的ヤスリの必要性を除去したり軽減したりするために使用することはできない。これらは、洗浄剤の消毒力を向上させる洗浄剤活性化デバイスとしてのみ機能する。
【0012】
したがって、壊死組織、破片、および細菌性バイオフィルムの根管を迅速かつ確実に洗浄するための改良された装置および方法が依然として必要とされている。特に、機械的ヤスリの必要性を排除または軽減し、例えば必要な処理時間を大幅に短縮することができる装置および方法が必要とされている。本発明の実施形態は、これらのニーズに対処し、根管治療手順の既知の問題の少なくとも一部を克服する。
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、歯内治療装置(例えば、歯内デブリードマン、洗浄、および消毒装置)が提供され、当該装置は、洗浄流体の供給源と、加圧下で供給源から洗浄流体を送達するポンプと、ポンプと流体連通しかつ針を備えたハンドピースであって、針は、ハンドピースの近位の後端からハンドピースから遠位の前方先端まで延び、針のルーメンは、ポンプから受け取った洗浄流体を歯の空洞内に送達するために、先端の開口部まで延びているハンドピースと、を備え、針は、その後端からその先端まで延びる長さが少なくとも3mmであり、かつ針の先端が根管の一部内に位置決めできるように、先端における外径が520μm以下であり、針を通る洗浄剤の流れにより、針の先端の前方の根管内の洗浄流体内に慣性キャビテーション(inertial cavitation)のクラウドが形成されるように、ルーメンの先端の直径は少なくとも50μmであり、ポンプは閾値キャビテーション圧を超える送達圧力で洗浄剤を送達する。
【0014】
出願人は、効果的なデブリードマンおよび/または消毒を行うためには、根管内で慣性キャビテーションが発生することが重要であることを認識した。このようなキャビテーションが発生するには、針の先端が十分な長さであり、十分に大きな内径が必要である。外径が520μm未満の針は、根管の少なくとも冠状部分に入るのに十分小さいので、針が単に歯髄室に挿入される多くの従来技術の装置とは対照的である。
【0015】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、出願人は、根管を効果的に洗浄するキャビテーションクラウドを生成し、尖部における実質的な流出を回避するには、根管内で逆流を起こすことが望ましい-このような逆流では、針の側面と根管の側面の間を流出流が通過できるように根管内に十分な隙間を設ける必要があると考える。逆流により、根管内の洗浄剤内に大きなせん断層が形成される。せん断層により、根管内の内向きの流れと外向きの流れの境界面で強い渦が生成される。渦内部では、(動的)圧力が大幅に低下し、このような圧力低下によりキャビテーションがより起こりやすくなる。さらに、キャビテーションは管のデブリードマン、洗浄、および消毒を行うだけでなく、流れは破片または細菌を除去する非常に効率的なメカニズムとして機能する。
【0016】
針が根管内に(逆流が生じるような方法で)配置されると、慣性キャビテーションのクラウドを生成するために必要な特定の圧力を、特定の針と根管の形状に基づいて選択し得る。このような閾値圧力は、例えば、さまざまな針サイズに対して決定され得る。
【0017】
出願人はまた、先端に少なくとも50μmの直径を有するルーメンを設けることにより、洗浄剤が針のルーメンを通過する際の摩擦圧力損失によって制限されることなく、針の先端での十分な流れを確保するのに役立つことを確認した。(例えば、特定の針および根形状に基づく)閾値キャビテーション圧を超える送達圧力の選択は、針を出る洗浄剤の流れが、ノズル先端の前方の洗浄流体内に慣性キャビテーションのクラウドを形成させる速度を有することを保証することができる。
【0018】
ポンプは機械式ポンプであってもよいし、圧縮ガス加圧システムであってもよい。ポンプは、5~300バールの送達圧力を提供し得る。例えば、送達圧力は5~100バールの間であってもよい。出願人は、選択された針のサイズおよび長さに応じて、実施形態における閾値キャビテーション圧が5~80バールであり得ることを発見した。
【0019】
針の長さは少なくとも5mmであり得る。長さは、例えば、10mm~30mmの間であってもよい(例えば、針の長さは、10mm~20mmの間であってもよい)。適切な針の長さを選択すると、先端が根管内に適切に配置され、針内の摩擦流量損失が許容されることを保証するという要件のバランスが取れ得る。
【0020】
送達圧力は、針の先端での洗浄剤の最小流出速度が少なくとも20m/秒(例えば、少なくとも40m/秒、60m/秒、80m/秒、100m/秒、150m/秒、200m/秒、または300m/秒)になるように選択され得る。針を通る洗浄剤の流量は、175ml/分未満(例えば、75ml/分、50ml/分、25ml/分、10ml/分、または5ml/分未満)である。対照的に、従来技術のシステムは、1ml/秒もの流量でNaOClの流れを使用して管を洗浄し得、本発明の実施形態よりも痛みまたは損傷を誘発する危険性がはるかに高かった。
【0021】
針は、バーミンガムゲージシステムに従って25Gと34Gの間(例えば、30Gと34Gの間)の針ゲージを有し得る。針の遠位端の針のゲージが30Gと34Gの間になるように、針のゲージを指定して針の先端で測定され得る。
【0022】
針の寸法(すなわち、外径および/またはルーメン直径)は一般に、(それらが針の長さに沿って一定ではない可能性があるため)針の先端の特性に基づいて定義されることが理解されるであろう。
【0023】
本発明の実施形態は、キャビテーションクラウドの流体力学的作用を利用してデブリードマンおよび/または消毒作用を提供するので、洗浄のためにNaOClなどの化学消毒剤を使用する必要はない。したがって、本発明の実施形態は、洗浄流体として水または食塩水を使用することが有利である。生理食塩水、特に生理的食塩水(例えば、0.9%のNaCl)は、一般に尖部を超えて押し出された場合でも身体の許容性が高く、NaOClなどの化学消毒剤よりも患者に重大な痛みまたは不快感を引き起こす可能性が低くなる。
【0024】
実施形態では、キャビテーションクラウドのサイズは針の遠位端から1mm、3mm、5mm、7mm、10mm、15mm、または20mmまで広がり、その位置とサイズは針のサイズ、流出速度、および/または流量を変更することによって適応される。
【0025】
実施形態では、複雑な管をナビゲートするために、針は柔軟であり、横方向に曲げることができる必要がある。
【0026】
洗浄流体、例えば生理食塩水には、1つ以上の添加剤が含まれていてもよい。例えば、洗浄流体はさらに消毒剤を含んでもよい。消毒剤は洗浄剤の殺菌効果を高め得る。洗浄剤は、より低い圧力および/または温度でキャビテーションがより容易に発生するように、低表面張力液体とすることができ、例えば、消毒剤でもあるエタノールを低表面張力液体として使用することができる。このような低粘度の流体が洗浄剤として選択される可能性があるため、液体の粘度は洗浄剤のキャビテーション状態の変数でもある。低表面張力および/または低粘度流体は、そのような特性を備えて選択された洗浄剤であってもよく、またはその特性を低下させる添加剤を含む洗浄剤であってもよい。
【0027】
洗浄剤はまた、その研磨効果を高めるために選択または調整され得る。例えば、洗浄剤の密度を増加させることができ、および/または洗浄流体は研磨粒子(例えば、流体中に懸濁した固体粒子)をさらに含むことができる。
【0028】
実施形態による装置は、前方を向いた軸開口部を有する針を使用することができる。このような先端が前方に開いた針は、通常、洗浄剤の前方へのより良い流れを生成するが、本発明の実施形態とは対照的に、多くの従来技術の構成は、NaOClなどの攻撃的な洗浄剤を歯の尖部を越えて押し出し、重大な痛みおよび重篤な合併症を引き起こす危険性があるため、そのような針の使用を回避している。
【0029】
この装置は、送達圧力を制御するための調整器を含んでもよい。これにより、オペレータは、例えば、歯または根管の異なる形状を考慮して送達圧力を調整することが可能になり得る。
【0030】
実施形態では、装置は、洗浄剤の温度を制御するためのヒーターをさらに備え得る。ヒーターは供給源の一部として設けることができる(その結果、洗浄剤を一括加熱するか、ポンプによる送達前に洗浄剤を加熱するかのいずれかになる)。あるいは、洗浄剤がハンドピースを流れるときにそれを加熱するように、ヒーターをハンドピースの一部として設け得る。洗浄剤の相境界は温度と圧力の両方に依存し、任意の温度に対して洗浄剤の温度を上昇させると、キャビテーションにとってより好ましい条件が提供される。例えば、温度は20℃を超えるまで上昇し得る。洗浄剤の温度は、任意の痛みの反応を避けるように選択することもでき、そのため、温度は60℃未満(または50℃未満)であり得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、装置は、洗浄流体の流れをパルスで行うためのパルス発生器をさらに備え得る。パルス発生器は、例えば、シングルピストンポンプ、ポンプとニードルの間の制御可能な圧力解放バルブ、またはポンプとニードルの間の開閉バルブであってもよい。
【0032】
本発明の別の態様によれば、歯内洗浄の方法が提供され、当該方法は、少なくとも5mmの長さおよび520μm以下の先端外径を有する針を根管の一部内に配置することと、洗浄流体を圧力下で針に供給して、流体が針の先端から根管内に排出されるようにすることと、針を通る洗浄剤の流れにより、針の先端の前方の根管内の洗浄流体内に慣性キャビテーション(inertial cavitation)のクラウドが形成されるように、針の先端の圧力が閾値キャビテーション圧を超えるように洗浄流体の送達圧力を選択することと、を含む。
【0033】
送達圧力は5~300バールの範囲から選択され得る。特に、送達圧力は5~100バールの範囲から選択され得る。
【0034】
方法はさらに、洗浄流体を加熱することを含んでもよい。例えば、洗浄流体は20~57℃に加熱され得る。
【0035】
方法はさらに、針が管に挿入される深さに応じて圧力を調整することを含む。
【0036】
いくつかの実施形態は、洗浄流体の供給をパルスで行うことを含んでもよい。(連続流ではなく)パルスで行うと、衝撃時に流れのバーストが反動し、その結果、洗浄剤の衝撃(運動量の変化率)が増加する。これにより、流れの浸食の可能性が増加し、したがってデブリードマンおよび/または消毒の効率がさらに増加する。パルス流には、使用する洗浄剤の総量を削減できるという利点もある。
【0037】
本発明のさらなる態様によれば、流体の供給源と、加圧下で供給源から流体を送達するポンプと、ポンプと流体連通しかつ針を備えたハンドピースであって、針は、ハンドピースの近位の後端からハンドピースから遠位の前方先端まで延び、針のルーメンは、ポンプから受け取った流体を歯に送達するために、先端の開口部まで延びているハンドピースと、を備え、針の寸法および流体の送達圧力は、針を通る流体の流れによって慣性キャビテーションのクラウドが針の先端の前方に形成されるように選択される、歯科用装置が提供される。
【0038】
針の寸法は、例えば、必要な手順に応じて選択され得る。例えば、手順は、空洞のデブリードマンおよび/または消毒、歯の外側または歯肉縁下の外面からの歯垢の除去、歯の組織(象牙質、エナメル質)への穴あけ、軟組織の切断、あるいは根管への入り口の発見のうちの1つ以上を含み得る。針の長さは、使用時に針の先端が適切に配置されるように選択され得る。針の寸法は、針の先端が適切に配置され得ることも保証しながら、針を通る十分な流れが可能であることを保証するように選択され得る。寸法はまた、針から射出される流体の流れの近位に流体の逆流が確実に形成されるように選択され得る。
【0039】
特に明記しない限り、当業者には理解されるように、説明される整数のそれぞれは、他の任意の整数と組み合わせて使用され得る。さらに、本発明のすべての態様は、その態様に関連して説明された特徴を「含む」ことが好ましいが、それは、特許請求の範囲に概説された特徴から「なる」または「本質的にからなる」とすることができることが特に想定される。さらに、本明細書で特に定義しない限り、すべての用語には、当技術分野で一般に理解されているそれらの意味が与えられることを意図している。
【0040】
さらに、本発明の議論においては、別段の記載がない限り、パラメータの許容範囲の上限または下限の代替値の開示は、選択肢の小さい方と大きい方の間にある前記パラメータの各中間値自体もパラメータの可能な値として開示されるという暗黙の記述として解釈されるべきである。
【0041】
さらに、別段の記載がない限り、本出願に記載されるすべての数値は、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。
【0042】
以上、本発明を説明したが、本発明は、上記または以下の説明または図面に記載された特徴の任意の発明の組み合わせにまで及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明の実施形態は様々な方法で実行することができ、添付の図面を参照しながら、その実施形態を単なる例として説明する:
【0044】
図1】本発明の一実施形態による装置の概略図を示す。
図2】歯内の針の位置を示す図1の概略図の詳細を示す。
図3図3(A)、図3(B)、図3(C)および図3(D)は、本発明の実施形態の背後にある動作原理を表す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(発明の詳細な説明)
本明細書では、近位および遠位という用語は、典型的な使用時の向きにあるデバイスを便宜的に指すために使用されることに留意されたい。したがって、近位とは一般に、使用中にオペレータの手に近い表面、構成要素、または方向を意味し、遠位とは一般に、オペレータの手に対して遠位(したがって、根管の近位になる)の表面、構成要素、または方向を意味するために使用され得ることが理解される。同様に、前方は、近位端から遠ざかり遠位端に向かう方向に関して使用されると理解される(そして後方は逆方向であると理解される)。しかしながら、そのような参照は限定を意図するものではなく、デバイスは使用時にいかなる向きをとってもよいことが理解されるであろう。
【0046】
歯内洗浄装置1が図1に概略的に示されている。装置は、洗浄流体の供給源を収容するリザーバ12と、加圧下で供給源から可撓性導管16を介して洗浄流体を送達するポンプ14とを含むベースユニット10を備える。ベースユニット10はまた、(任意の便利なフォーマットであり得る)ユーザーインターフェース18を含むことができ、オペレータがポンプ14の圧力出力などの動作パラメータを調整できるようにすることができる。
【0047】
ハンドピース20は、例えば従来の取り外し可能なコネクタによって可撓性導管16の遠位端に接続され、ハンドピース20がベースユニット10と流体連通し、ポンプ14を介して供給源12から洗浄流体を受け取ることができるようにする。ハンドピース20は、近位端のグリップ部22と、ネック23を介してグリップ部22に接続されたヘッド24とを含む。ヘッド24は通常、ヘッド24内に交換可能に取り付けられ得る針30まで延びている。本明細書で使用される場合、「針」という用語は、内部を貫通し、使用時に流体の供給を受ける近位端から使用時に流体を送達する遠位端の開口部まで延びる孔(針の「ルーメン」)を有する細い細長い導管を広く指す。図2で最もよくわかるように、針は近位端33から遠位先端34まで軸方向に延び、長さlを有する。ルーメン32は針30の長さを通って延び、洗浄剤の通路を提供する。針34の先端は、前方を向いた軸方向の開口部で終わっており、洗浄剤がルーメンから前方の軸方向の流れで排出されるようになっている。
【0048】
使用時、針30は、歯髄室120へのアクセスを提供する(例えばドリルによる任意の都合の良い方法によって形成される)空洞110を介して歯100に挿入される。本発明の実施形態によれば、針は、方向lで測定した長さが少なくとも5mmであり、方向dで測定した外径が520μm以下であり、その結果、針の先端34が根管130の一部内に配置され得る。このような方法で針を配置すると、出願人は、驚くべきことに、針の先端34の前方に慣性キャビテーションのクラウドを生成する方法で洗浄剤を供給すれば、それがNaOClベースの洗浄剤を必要とせずに効果的なデブリードマンおよび/または消毒を提供できることを発見した。対照的に、多くの従来技術のシステムは、根管自体に到達するには短すぎる(代わりに単に先端を空洞100または歯髄室120内に配置する)、および/または根管に入るには直径が大きすぎる針を使用する。
【0049】
さらに、本発明の実施形態は、機械的ヤスリを必要とせずに根管治療を実行できるようにし(少なくとも、最も困難なケースを除くすべてのケースにおいて-例えば、管が石灰化して狭くなった高齢の患者)、その結果、本発明の装置を使用する前に、根管への最初のアクセスのみを行う必要がある。このような慣性キャビテーションのクラウドを提供するために、出願人は、閾値圧力キャビテーション圧を超える針の内径(すなわちルーメンの直径)および送達圧力(を特定の歯と針の組み合わせの形状に応じて)選択する必要があり、それにより針を通る洗浄剤の流れによって、針の先端の前方の根管内の洗浄流体内に慣性キャビテーションのクラウドが形成されることを発見した。例えば、ルーメン直径は少なくとも25μm、例えば少なくとも50μmであってもよい。この効果を理解していなければ、内径が小さすぎる(例えば、根管に確実に適合するために50μm未満)針を選択するのは自然なことかもしれないが、出願人は、そのような針が摩擦損失をもたらすことが重要であることを認識し、これは、たとえ非常に高い送達圧力であっても、効果的なキャビテーションを生成する針から出る流れを提供しないことを意味する。対照的に、本発明の実施形態では、キャビテーションは、流体内で急速に崩壊する蒸気泡によって引き起こされる衝撃波から生じる周知の浸食効果により、強力なデブリードマン、消毒、および/または破片もしくは細菌の除去を提供する。
【0050】
図3(A)の16,000fpsの高速写真に示されているように、(例えば内径1.2または0.6mmを有する)ガラス製マイクロピペットを使用して根管をシミュレートし得る。適切なサイズの針330が管350に挿入され、キャビテーション閾値を超える圧力で流れが提供されると、針の下流にキャビテーションクラウド360が明確に形成される。管350内の流れを図3(B)に概略的に示す。重要なことは、針のサイズ(520μm以下)により、管(または実際には根管)内の流体の流れには、針からの流入と管の壁と針の外側の間を通過する流出の両方が含まれることが保証される。
【0051】
キャビテーションは、液体が相境界を越えて急速に気体に変化する適切な条件下で発生する。特定の理論に囚われることなく、出願人は、図3(C)に示すように、根管内で逆流を発生させることができる針を選択すると、内向きの流れと外向きの流れとの間に強いせん断層効果が形成されることを認識した。このせん断層により流れ内の渦が増加し、キャビテーションの発生が大幅に増加する。結果として生じる条件は、非常に強い渦が根管内の流入流と流出流の界面で生成され得ることを意味する。渦の内部では、(動的)圧力が大幅に低下する。圧力の低下により、キャビテーションがより有利になる(開始点が相境界に近づく)。この効果の結果、開放環境ではキャビテーションが発生しない流れ条件(圧力、速度、および流量)で根管などの通路内にキャビテーションクラウドが生成され得る。液体が存在する速度を増加させると、針は渦の増加にも役立ち、特定のチャネルについては、キャビテーションが発生しない最小ノズル流出速度が存在する。針の内径が過度に狭くなければ、送達圧力を使用して針の流出速度を制御し得る。
【0052】
実施形態によるデバイスの性能を試験するために、歯の内部の組織をシミュレートするために使用される着色ゼラチンが充填された現実的な根管構造を有する透明なプラスチック歯(RepliDens下顎臼歯部、透明タイプ03.2.1、Medcem GmbH、ヴァインフェルデン、スイス)に対して試験が実施された。さまざまなデバイスを試験し、画像分析とピクセルカウントを使用して洗浄前後のゼラチンの量を測定した。一実施形態による装置は、長さ20mm、ゲージ30G(内径0.16mm、および外径0.31mmに相当)の針を使用した。送達圧力は60バールに設定された。洗浄剤は生理食塩水であり、針が配置され、180秒間管を上下に移動した。複数の根管システムの結果を、洗浄前後のゼラチンの量に基づいて比較し、除去された材料の%を決定した。市販の超音波およびレーザーベースの洗浄剤活性化システムを使用して、同じ試験が実行された。超音波(EDDY、VDW GmbH、ミュンヘン、ドイツ)の場合、振動チップを各管に挿入し、120秒間作動させた。レーザーシステム(LiteTouch Er:YAG Laser、Orcos Medical AG、キュスナハト、スイス)では、プラスチック製の歯髄室を水で満たし、その中にレーザー先端を置き、120秒間作動させた。結果は以下の表1に示されており、本発明の実施形態は、市販のシステム(超音波システム(計測器/ヤスリがけなし)、レーザーシステム(計測器/ヤスリがけなし)、および器具を装着している機械的ヤスリがけ(ProTaper、Dentsply、バレーグ、スイス)、その後の注射器洗浄よりも器具を装着していない歯(我々の発明)のデブリードマンを大幅に改善した。実験では、従来の超音波およびレーザー活性化システムでは、管の内部から物質を適切に除去できないことが判明した。したがって、それらは活性化のみに使用でき、器具を装着していない管の処置には適しておらず、機械的なヤスリの必要性を減らすことはできない。超音波システムの場合、根管が狭いため先端が左右に振動できず、振動が減衰する。レーザーシステムの場合、十分な流れが生成されないため、根管からゼラチンが出てこないことが観察された。機械的なヤスリと水で満たされた注射器を使用するフラッシングを併用すると、より良好な性能が得られるが、本発明の実施形態よりも効果が低く、かなり時間がかかる。
【0053】
【表1】
【0054】
重要なことは、出願人はまた、開放端領域と閉鎖/限定領域(歯根が閉じている状態)との間の条件を比較したことである。これは予期せぬ結果を示しており、キャビテーションにおける歯管と針の形状の重要性を示す。従来のシステムはこれを要因として考慮できなかったと考えられており、これはそのようなシステムが真に効果的なキャビテーションを提供できない理由を反映していると考えられる。
【0055】
この効果を実証するために、さまざまな形状、直径、および長さの針に接続された60バールの送達圧力を使用して実験を実行した。針から出る水は、(i)水浴、(ii)開放端のガラス製マイクロピペット、または(iii)一端が完全に密閉されたガラス製マイクロピペットのいずれかに排出された。試験された針には、標準ゲージサイズの針が含まれていた。閾値圧力は、キャビテーションの安定したクラウドが最初に見える点として記録された。発達したキャビテーションを生成する上流圧力の閾値は一般に、自由水浴と比較して、閉鎖端の狭い管内でははるかに低かった。実験データから、20mmまたは15mmの30G(針ゲージ)針はマイクロピペット内でのみキャビテーションを生成し、オープンバス(open bath)内ではキャビテーションを生成せず、オープンバス内でキャビテーションを生成するには、より高い圧力が必要であることを確認することができた。長さ10mmまたは5mmの30G針を含む他のすべての針サイズは、開水域でキャビテーションを起こす。ただし、マイクロピペット内でそれら使用すると、必要な上流圧力が15バールから40バール低下する。25G針と0.6mm管には例外が見つかった(表2;閉鎖端マイクロピペット d=0.6mm、25G)-この場合、針自体が逆流をブロックし、それゆえマイクロピペットの端を閉じた後にキャビテーション閾値が増加した(針の外径がピペット管の内径に非常に近かったため)。したがって、出願人は、キャビテーションを効率的に誘発するには流路内の逆流が必要であることを確認することができた。
【0056】
【表2】
【0057】
針を通過する体積流量は、上流圧力と針の直径に大きく依存する。したがって、キャビテーションを発生させるためにより低い圧力が必要な場合、流れの体積は減少する。これは、流量および/または圧力を下げると、流量が高くなってジェットが歯に望ましくない損傷を引き起こす危険性を軽減できるため、実際には有利である。実験の結果、最大流量は針の最大直径25Gの場合であり、最小流量は最小直径34Gの場合であることがわかった。キャビテーションの最低圧力閾値は、長さ10mmの25G針で発生し、-これは、72ml/分で6バールであった。これらの結果は、狭い閉端管の内部では、キャビテーションの閾値が大幅に低下することを示した。したがって、本発明の実施形態は、より低い流量でより低い上流圧力で効果的なキャビテーションを生成することができる。このような流れは、根管の尖部での減圧とより少ない流量という大きな利点をもたらし、その両方とも根尖突出(apical extrusion)の危険性を最小限に抑える。
【0058】
したがって、結果は、針の特性(直径、および長さなど)が閾値キャビテーション圧に大きな影響を与えることを確認した。さらに、実験により、逆流流体の効果が非常に重要であることが確認され、-相対速度と渦の形成が増加し、それによってキャビテーションの発生に必要な圧力が大幅に減少する。
【0059】
針の長さがキャビテーション閾値に及ぼす影響は単純である。針が長いほどキャビテーションに必要な圧力が増加するが、これは針が短いほど流れ抵抗が少なくなるという事実と一致すると考えられる。しかしながら、実際の実施形態では、これは一般に、針の長さの選択が、閾値圧力の増加と、キャビテーションを送達して根管を効率的にデブリードするために先端を根管内に十分に配置するのに必要な長さとの間の妥協点であることを意味する。
【0060】
本発明を好ましい実施形態を参照して説明してきたが、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更または修正を行うことができることが理解される。
【0061】
例えば、本発明のいくつかの実施形態は、洗浄剤の温度を上昇させる(これにより、洗浄剤を所定の圧力の相境界に近づけ、さらにキャビテーションをより有利にする)ヒーター15を含んでもよい。ヒーター15は、ベースユニット10の一部として含まれていてもよいし、ハンドピースに組み込まれていてもよい。いくつかの実施形態では、ポンプ14またはベースユニットは圧力調整器を含んでもよい。
【0062】
ユーザーインターフェース18に加えて、またはその代わりとして、ハンドピース20は、ハンドピース上の(または、例えばフットペダル上のハンドピースに関連付けられた)スイッチなどの制御装置を含んでもよい。例えば、システムを通る流れを活性化するためにトリガーが提供され得る。
【0063】
本発明の実施形態は、水または生理食塩水などの単純な洗浄剤の使用を可能にするので、実施形態が使用時にさまざまなオプションを提供できることが理解され得る。例えば、洗浄剤は、低表面張力液体または高粘度液体であり得る。洗浄剤には研磨粒子などの添加物も含まれ得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、装置は、管感知システムを含み得る。例えば、液体が歯根尖を通過しないことを保証するために、実施形態は、根尖までの距離を測定し、歯科医がデバイスを操作するのを助けるための根尖ロケータを含んでもよい。
【0065】
実施形態の歯内洗浄装置の主な目的は根管治療手順であり得るが、それはまたキャビテーション流のデブリードマンおよび/または消毒効果は歯科診療内の他の用途にも適用できることも理解され得る。例えば、デバイスは、歯の外側または歯肉縁下の表面から歯垢を除去するために使用することができる。実施形態はまた、歯組織(象牙質、エナメル質)を穿孔するため、または軟組織を切断するために使用することもできる。装置は、根管への入口を見つけるために利用することもできる。

図1
図2
図3
【国際調査報告】