(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】免疫細胞の遺伝子改変および治療的使用のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20240416BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/19 20060101ALI20240416BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240416BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240416BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20240416BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240416BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61K35/17
C12N15/09 110
C12N15/19 ZNA
C12N5/0783
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12N15/12
C12N15/13
C12N5/078
A61P35/00
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564111
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 US2022025612
(87)【国際公開番号】W WO2022226101
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】イー キャシアン
(72)【発明者】
【氏名】シュエ ヨンミン
(72)【発明者】
【氏名】ハサン ファラー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA03
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087DA31
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
本開示の局面は、TGF-β1を分泌しない免疫細胞を生成するための免疫細胞の遺伝子改変のための方法および組成物に関する。がんの処置のための免疫療法的方法を含む、このような遺伝子改変免疫細胞の使用のための方法もまた、開示される。本開示のさらなる局面は、細胞がTGF-β1を分泌するのを防止する遺伝子改変を含むヒトCD8+ T細胞に向けられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを有する対象を処置するための方法であって、対象に、TGF-β1を分泌しないヒトCD8
+ T細胞を投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
ヒトCD8
+ T細胞が、TGF-β1を発現しない、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ヒトCD8
+ T細胞が、変異型TGF-β1タンパク質を発現する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ヒトCD8
+ T細胞が、対象からのCD8+ T細胞に由来したものである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
対象からのヒトCD8
+ T細胞が、腫瘍浸潤リンパ球である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ヒトCD8
+ T細胞が、TGFB1の変異を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
変異が、フレームシフト変異である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
変異が、ナンセンス変異である、請求項6記載の方法。
【請求項9】
変異が、TGFB1のエクソン1の領域の改変である、請求項6記載の方法。
【請求項10】
エクソン1の領域が、SEQ ID NO:1の配列を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
がんが黒色腫である、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
がんが再発がんである、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
対象が、前処置によりがんを前処置された、請求項1~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
対象が、前処置に抵抗性であると決定された、請求項13記載の方法。
【請求項15】
対象に、ヒトCD8
+ T細胞を含むヒトCD8
+ T細胞の集団を投与する工程を含み、ヒトCD8
+ T細胞の集団の各細胞が、TGF-β1を分泌しない、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
追加的ながん療法を施す工程をさらに含む、請求項1~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
追加的ながん療法が、化学療法、放射線療法、または免疫療法である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
細胞内に、Casヌクレアーゼと、TGFB1を標的指向するガイドRNAとを導入する工程を含む、ヒトCD8
+ T細胞を遺伝子改変するための方法。
【請求項19】
ガイドRNAが、TGFB1のエクソン1の領域を標的指向する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
エクソン1の領域が、SEQ ID NO:1の配列を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
Casヌクレアーゼが、Cas9である、請求項18~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
Casヌクレアーゼが、Cas12aである、請求項18~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
変異が、細胞におけるTGFB1に生成される、請求項18~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
変異が、Casヌクレアーゼを使用して生成される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
変異が、フレームシフト変異である、請求項23または24記載の方法。
【請求項26】
変異が、ナンセンス変異である、請求項23または24記載の方法。
【請求項27】
CasヌクレアーゼおよびガイドRNAが、トランスフェクションを介して細胞内に導入される、請求項18~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
CasヌクレアーゼおよびガイドRNAが、エレクトロポレーションを介して細胞内に導入される、請求項18~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
対象からヒトCD8
+ T細胞を得る工程をさらに含む、請求項18~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
ヒトCD8
+ T細胞が、腫瘍浸潤リンパ球である、請求項18~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
がんを有する対象を処置するための方法であって、
(a)TGF-β1を分泌しない遺伝子改変免疫細胞を生成するために、対象からの免疫細胞を改変する工程;および
(b)対象に遺伝子改変免疫細胞を投与する工程
を含む、方法。
【請求項32】
遺伝子改変免疫細胞が、TGF-β1を発現しない、請求項31記載の方法。
【請求項33】
遺伝子改変免疫細胞が、変異型TGF-β1タンパク質を発現する、請求項31記載の方法。
【請求項34】
TGF-β1の分泌が、遺伝子改変免疫細胞において検出不能である、請求項31記載の方法。
【請求項35】
TGF-β1の分泌が、対照または参照細胞の集団と比較して遺伝子改変免疫細胞において少なくとも80%減少している、請求項31記載の方法。
【請求項36】
TGF-β1の分泌が、対照または参照細胞の集団と比較して遺伝子改変免疫細胞において少なくとも90%減少している、請求項31記載の方法。
【請求項37】
TGF-β1の発現が、遺伝子改変免疫細胞において検出不能である、請求項31記載の方法。
【請求項38】
TGF-β1の発現が、対照または参照細胞の集団と比較して遺伝子改変免疫細胞において少なくとも80%減少している、請求項31記載の方法。
【請求項39】
TGF-β1の発現が、対照または参照細胞の集団と比較して遺伝子改変免疫細胞において少なくとも90%減少している、請求項31記載の方法。
【請求項40】
免疫細胞が、ナチュラルキラーT細胞である、請求項31~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
免疫細胞が、クローニングされたT細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように改変されている、請求項31~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
免疫細胞が、操作されたCAR-T細胞または操作されたTCR-T細胞である、請求項31~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
免疫細胞が、T細胞である、請求項31~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
T細胞が、CD4
+ T細胞である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
T細胞が、CD8
+ T細胞である、請求項43記載の方法。
【請求項46】
免疫細胞が、腫瘍浸潤リンパ球である、請求項31~45のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
免疫細胞を改変する工程が、TGFB1に変異を生成することを含む、請求項31~46のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
変異が、フレームシフト変異である、請求項47記載の方法。
【請求項49】
変異が、ナンセンス変異である、請求項47記載の方法。
【請求項50】
変異が、TGFB1のエクソン1における変異である、請求項47~49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
免疫細胞を改変する工程が、CasヌクレアーゼおよびガイドRNAを使用してTGFB1のエクソン1の領域を標的指向することを含む、請求項31~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
エクソン1の領域が、SEQ ID NO:1を含む、請求項51記載の方法。
【請求項53】
対象が、ヒト対象である、請求項31~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
(a)の前に、対象から免疫細胞を得る工程をさらに含む、請求項31~53のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
がんが、黒色腫である、請求項31~54のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
がんが、再発がんである、請求項31~55のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
対象が、前処置によりがんを前処置された、請求項31~56のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
対象が、前処置に抵抗性であると決定された、請求項57記載の方法。
【請求項59】
追加的ながん療法を施す工程をさらに含む、請求項31~58のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
追加的ながん療法が、化学療法、放射線療法、または免疫療法である、請求項59記載の方法。
【請求項61】
細胞が、TGF-β1を分泌するのを防止する遺伝子改変を含む、ヒト免疫細胞。
【請求項62】
免疫細胞が、T細胞である、請求項61記載の細胞。
【請求項63】
T細胞が、CD8
+ T細胞である、請求項62記載の細胞。
【請求項64】
T細胞が、CD4
+ T細胞である、請求項62記載の細胞。
【請求項65】
免疫細胞が、ナチュラルキラーT細胞である、請求項61記載の細胞。
【請求項66】
免疫細胞が、クローニングされたTCRまたはCARを発現する、請求項61記載の細胞。
【請求項67】
免疫細胞が、操作されたCAR-T細胞または操作されたTCR-T細胞である、請求項61記載の細胞。
【請求項68】
遺伝子改変が、TGFB1のフレームシフト変異である、請求項61~67のいずれか一項記載の細胞。
【請求項69】
遺伝子改変が、TGFB1のナンセンス変異である、請求項61~67のいずれか一項記載の細胞。
【請求項70】
遺伝子改変が、TGFB1の欠失である、請求項61~67のいずれか一項記載の細胞。
【請求項71】
遺伝子改変が、TGFB1のエクソン1の領域の改変を含む、請求項61~67のいずれか一項記載の細胞。
【請求項72】
エクソン1の領域が、SEQ ID NO:1を含む、請求項71記載の細胞。
【請求項73】
腫瘍浸潤リンパ球である、またはそれに由来したものである、請求項61~72のいずれか一項記載の細胞。
【請求項74】
請求項61~73のいずれか一項記載のヒト免疫細胞を含む、ヒト免疫細胞の集団。
【請求項75】
TGF-β1の分泌が、ヒト免疫細胞の集団において検出不能である、請求項74のヒト免疫細胞の集団。
【請求項76】
TGF-β1の分泌が、対照または参照細胞の集団と比較して、ヒト免疫細胞の集団において少なくとも80%減少している、請求項74記載のヒト免疫細胞の集団。
【請求項77】
TGF-β1の分泌が、対照または参照細胞の集団と比較して、ヒト免疫細胞の集団において少なくとも90%減少している、請求項74記載のヒト免疫細胞の集団。
【請求項78】
TGF-β1の発現が、ヒト免疫細胞の集団において検出不能である、請求項74~77のいずれか一項記載のヒト免疫細胞の集団。
【請求項79】
TGF-β1の発現が、対照または参照細胞の集団と比較して、ヒト免疫細胞の集団において少なくとも80%減少している、請求項74~77のいずれか一項記載のヒト免疫細胞の集団。
【請求項80】
TGF-β1の発現が、対照または参照細胞の集団と比較して、ヒト免疫細胞の集団において少なくとも90%減少している、請求項74~77のいずれか一項記載のヒト免疫細胞の集団。
【請求項81】
(a)請求項61~73のいずれか一項記載のヒト免疫細胞または請求項74~80のいずれか一項記載のヒト免疫細胞の集団と、(b)薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項82】
対象に、請求項61~73のいずれか一項記載のヒト免疫細胞、請求項74~80のいずれか一項記載のヒト免疫細胞の集団、または請求項81記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、がんを有する対象を処置するための方法。
【請求項83】
がんが、黒色腫である、請求項82記載の方法。
【請求項84】
がんが、再発がんである、請求項82または83記載の方法。
【請求項85】
対象が、前処置によりがんを前処置された、請求項82~84のいずれか一項記載の方法。
【請求項86】
対象が、前処置に抵抗性であると決定された、請求項82~85のいずれか一項記載の方法。
【請求項87】
ヒト免疫細胞が、対象からの細胞に由来したものである、請求項82~86のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その内容が参照により本明細書に組み入れられる、2021年4月20日に出願された米国特許仮出願第63/177,053号の優先権を主張するものである。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で提出された、その全体が参照により本明細書に組み入れられる配列表を含む。2022年4月19日に作成された該ASCIIコピーは、名称がMDAC_P1296WO_Sequence_Listing.txtであり、サイズが558バイトである。
【背景技術】
【0003】
背景
I. 発明の分野
本発明の局面は、少なくとも、免疫学、がん生物学、および医学の分野に関するものである。
【0004】
II. 背景
腫瘍反応性Tリンパ球が末梢血または腫瘍組織から単離され、遺伝子操作され、インビトロで拡大増殖され、患者に注入される養子T細胞療法(ACT)は、白血病、リンパ腫、転移性黒色腫、および他の悪性疾患を有する患者において臨床応答を誘導することが示されている。細胞傷害性Tリンパ球(CTL)のエフェクター機能は、TGF-β1を含む複数の因子によって抑制される。CTLのエフェクター機能に対するTGF-β1の抑制的な役割を克服しようとして、TGF-β受容体(TGFBRII-DNR)のドミナントネガティブ形態を発現するように、またはTGF-β受容体をノックアウトしてTGF-β1の認識を遮断するように、T細胞が操作されてきた。これらのアプローチは、高TGF-β1微小環境におけるCTLの抗腫瘍有効性を維持しようとするものである。しかし、CD8+ T細胞は、ACTの長期抗腫瘍効果に重要であり得る定住メモリーT細胞(TRM)を形成するために、TGF-β1の認識を必要とする。現行の戦略は、CD8+ T細胞がTRMを形成する能力を打ち消し、ACTの有効性を低下させる。したがって、TRM形成能を保持する治療用CD8+ T細胞を含む、強化された有効性を有する優れたACT組成物および方法が依然として必要である。
【発明の概要】
【0005】
概要
本開示の局面は、TGF-β1を分泌しない免疫細胞(例えば、CD8+ T細胞などのT細胞)(例えば、TGFB1ノックアウト細胞)を提供することによって当技術分野における特定の必要性に取り組む。本明細書に開示される場合のこのような細胞は、腫瘍細胞の標的化および死滅に有効であり得、定住メモリーT細胞(TRM)形成能を保持し得る。このような細胞を含む組成物、このような細胞の生成のための方法、およびがんの処置のためのこのような細胞の使用方法もまた、開示される。
【0006】
本開示の態様は、免疫細胞(例えば、CD8+ T細胞、CD4+ T細胞、ナチュラルキラー細胞、CAR-T細胞、およびTCR-T細胞などのT細胞)、腫瘍浸潤リンパ球、遺伝子改変細胞、核酸(例えば、gRNAなどのRNA)、ベクター、酵素(例えば、Cas9ヌクレアーゼなどのCasヌクレアーゼ)、薬学的組成物、がんを有する対象を処置するための方法、細胞を遺伝子改変するための方法、およびTGFB1変異を生成するための方法を含む。本開示の細胞(例えば、免疫細胞、腫瘍浸潤リンパ球、細胞傷害性T細胞、その他)は、以下:TGFB1の遺伝子改変、TGFB1のフレームシフト変異、TGFB1のナンセンス変異、TGFB1の欠失、TGFB1のエクソン1の領域の改変、TGFB1のエピジェネティック改変、およびTGFB1の発現を制御する調節領域(例えば、プロモーター、エンハンサー、その他)の遺伝子改変のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、またはそれ以上を含むことができる。本開示の方法は、以下の段階:対象から免疫細胞を得ること、対象から腫瘍浸潤リンパ球を得ること、対象からCD8+ T細胞を得ること、対象から得られた細胞を拡大増殖させること、対象から得られた細胞を培養すること、ヒトCD8+ T細胞を遺伝子改変すること、免疫細胞を改変して、TGF-β1を分泌しない遺伝子改変免疫細胞を生成すること、Casヌクレアーゼと、TGFB1を標的指向するガイドRNAとをヒトCD8+ T細胞に導入すること、対象に遺伝子改変免疫細胞を投与すること、対象に、TGF-β1を分泌しないヒトCD8+ T細胞を投与すること、がんについて対象を診断すること、がん療法を対象に施すこと、および対象ががん療法に抵抗性であると決定することのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上を含むことができる。本開示の組成物は、以下の構成成分:免疫細胞、ヒトCD8+ T細胞、腫瘍浸潤リンパ球、遺伝子改変免疫細胞、Casヌクレアーゼ、ガイドRNA、ベクター、プラスミド、トランスフェクション試薬、賦形剤、およびがん治療薬のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上を含み得る。記載された段階および/または構成成分のうちの1つまたは複数が本開示の特定の態様から排除され得ることが、具体的に企図される。
【0007】
いくつかの局面では、がんを有する対象を処置するための方法であって、対象に、TGF-β1を分泌しないヒトCD8+ T細胞を投与する工程を含む方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、ヒトCD8+ T細胞は、TGF-β1を発現しない。いくつかの態様では、ヒトCD8+ T細胞は、変異型TGF-β1タンパク質を発現する。いくつかの態様では、ヒトCD8+ T細胞は、対象からのCD8+ T細胞に由来したものである。いくつかの態様では、対象からのヒトCD8+ T細胞は腫瘍浸潤リンパ球である。いくつかの態様では、ヒトCD8+ T細胞は、TGFB1の変異を含む。いくつかの態様では、変異はフレームシフト変異である。いくつかの態様では、変異はナンセンス変異である。いくつかの態様では、変異は、TGFB1のエクソン1の領域の改変(例えば、領域中の変異)を含む。いくつかの態様では、エクソン1の領域は、SEQ ID NO:1の配列を含む。いくつかの態様では、がんは黒色腫である。いくつかの態様では、がんは再発がんである。いくつかの態様では、対象は、前処置によりがんを前処置された。いくつかの態様では、対象は、前処置に抵抗性であると決定された。いくつかの態様では、方法は、対象に、ヒトCD8+ T細胞を含むヒトCD8+ T細胞の集団を投与する工程を含む。いくつかの態様では、ヒトCD8+ T細胞の集団の各細胞は、TGF-β1を分泌しない。いくつかの態様では、方法は、追加的ながん療法を施す工程をさらに含む。いくつかの態様では、追加的ながん療法は、化学療法、放射線療法、または免疫療法である。
【0008】
ヒトCD8+ T細胞を含むCD8+ T細胞の集団もまた、開示される。いくつかの態様では、CD8+ T細胞の集団の各細胞は、TGF-β1を分泌しない。いくつかの態様では、CD8+ T細胞の集団の一部は、TGF-β1を分泌しない。いくつかの態様では、TGF-β1の分泌は、CD8+ T細胞の集団において検出不能である。いくつかの態様では、TGF-β1の分泌は、対照細胞の集団と比較してCD8+ T細胞の集団において実質的に減少している。いくつかの態様では、TGF-β1の分泌は、対照細胞の集団と比較して、CD8+ T細胞の集団において少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、最大で50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、もしくは約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、またはその中から導出可能な任意の範囲もしくは値だけ減少している。いくつかの態様では、CD8+ T細胞の集団の一部は、TGF-β1を発現しない。いくつかの態様では、TGF-β1の発現は、CD8+ T細胞の集団において検出不能である。いくつかの態様では、TGF-β1の発現は、対照細胞(例えば、野生型細胞、未処理細胞、対照遺伝子編集試薬で処理された細胞、その他)の集団と比較して、CD8+ T細胞の集団において実質的に減少している。いくつかの態様では、TGF-β1の発現は、少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、最大で50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、もしくは約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、またはその中から導出可能な任意の範囲もしくは値だけ減少している。いくつかの態様では、TGF-β1の発現は、少なくとも80%、90%、95%、または99%減少している。いくつかの態様では、TGF-β1の発現は、少なくとも90%減少している。
【0009】
いくつかの態様では、細胞内に、Casヌクレアーゼと、TGFB1を標的指向するガイドRNAとを導入する工程を含む、ヒトCD8+ T細胞を遺伝子改変するための方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、ガイドRNAは、TGFB1のエクソン1の領域を標的指向する。いくつかの態様では、エクソン1の領域は、SEQ ID NO:1の配列(またはその一部)を含む。いくつかの態様では、CasヌクレアーゼはCas9である。いくつかの態様では、CasヌクレアーゼはCas12aである。いくつかの態様では、変異は、細胞におけるTGFB1に生成される。いくつかの態様では、変異は、Casヌクレアーゼを使用して生成される。いくつかの態様では、変異はフレームシフト変異である。いくつかの態様では、変異はナンセンス変異である。いくつかの態様では、CasヌクレアーゼおよびガイドRNAは、トランスフェクションを介して細胞内に導入される。いくつかの態様では、CasヌクレアーゼおよびガイドRNAは、エレクトロポレーションを介して細胞内に導入される。いくつかの態様では、方法は、対象からヒトCD8+ T細胞を得る工程をさらに含む。いくつかの態様では、ヒトCD8+ T細胞は腫瘍浸潤リンパ球である。
【0010】
いくつかの態様では、がんを有する対象を処置するための方法もまた、本明細書に開示され、該方法は、(a)対象からの免疫細胞を改変して、TGF-β1を分泌しない遺伝子改変免疫細胞を生成する工程;および(b)対象に遺伝子改変免疫細胞を投与する工程を含む。いくつかの態様では、免疫細胞は、TGF-β1を発現しない。いくつかの態様では、免疫細胞は、変異型TGF-β1タンパク質を発現する。いくつかの態様では、免疫細胞はナチュラルキラーT細胞である。いくつかの態様では、免疫細胞は、クローニングされたT細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように改変されている。いくつかの態様では、免疫細胞は、操作されたCAR-T細胞または操作されたTCR-T細胞である。いくつかの態様では、免疫細胞はT細胞である。いくつかの態様では、T細胞はCD4+ T細胞である。いくつかの態様では、T細胞はCD8+ T細胞である。いくつかの態様では、免疫細胞は腫瘍浸潤リンパ球である。いくつかの態様では、免疫細胞を改変する工程は、免疫細胞におけるTGFB1に変異を生成することを含む。いくつかの態様では、変異はフレームシフト変異である。いくつかの態様では、変異はナンセンス変異である。いくつかの態様では、変異は、TGFB1のエクソン1における変異である。いくつかの態様では、免疫細胞を改変する工程は、CasヌクレアーゼおよびガイドRNAを使用してTGFB1のエクソン1の領域を標的指向することを含む。いくつかの態様では、エクソン1の領域は、SEQ ID NO:1の配列を含む。いくつかの態様では、対象はヒト対象である。
【0011】
特定の局面では、細胞がTGF-β1を分泌するのを防止する遺伝子改変を含むヒト免疫細胞が、さらに開示される。いくつかの態様では、免疫細胞はT細胞である。いくつかの態様では、T細胞はCD8+ T細胞である。いくつかの態様では、T細胞はCD4+ T細胞である。いくつかの態様では、免疫細胞はナチュラルキラーT細胞である。いくつかの態様では、免疫細胞は、クローニングされたTCRまたはCARを発現する。いくつかの態様では、免疫細胞は、操作されたCAR-T細胞または操作されたTCR-T細胞である。いくつかの態様では、遺伝子改変は、TGFB1のフレームシフト変異である。いくつかの態様では、遺伝子改変は、TGFB1のナンセンス変異である。いくつかの態様では、遺伝子改変は、TGFB1の欠失である。いくつかの態様では、遺伝子改変は、TGFB1のエクソン1の領域の改変(例えば、該領域における変異)を含む。いくつかの態様では、エクソン1の領域は、SEQ ID NO:1の配列を含む。いくつかの態様では、ヒト免疫細胞は、腫瘍浸潤リンパ球である、またはそれに由来したものである。本開示の細胞と、場合により、薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物もまた、開示される。ヒト免疫細胞を含むヒト免疫細胞の集団もまた、開示される。いくつかの態様では、TGF-β1の分泌は、ヒト免疫細胞の集団において検出不能である。いくつかの態様では、TGF-β1の分泌は、対照細胞の集団(例えば、遺伝子改変されていない免疫細胞の集団)と比較して、少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、最大で50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、もしくは約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、またはその中から導出可能な任意の範囲もしくは値だけ減少している。
【0012】
本出願にわたり、「約」という用語は、値が測定または定量法についての誤差の固有の変動を含むことを示すために使用される。
【0013】
「含んでいること(comprising)」という用語と共に使用される場合の「1つの(a)」または「1つの(an)」という語の使用は、「1つの」を意味し得るが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1つよりも多い」の意味とも一致する。
【0014】
「および/または」という語句は、「および」または「または」を意味する。例証すると、A、B、および/またはCは、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBとの組み合わせ、AとCとの組み合わせ、BとCとの組み合わせ、またはAとBとCとの組み合わせを含む。言い換えると、「および/または」は、包括的なまたはとして機能する。
【0015】
「含むこと(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの含むこと(comprising)の任意の形態)、「有すること(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの有すること(having)の任意の形態)、「含むこと(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」などの含むこと(including)の任意の形態)または「含有すること(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの含有すること(containing)の任意の形態)という語は、包括的または非限定的であって、追加的な記載されない要素も方法段階も排除しない。
【0016】
組成物およびその使用のための方法は、本明細書にわたり開示された成分または段階のいずれか「を含む」、「から本質的になる」、または「からなる」ことができる。開示された成分または段階のいずれか「から本質的になる」組成物および方法は、請求された発明の基本的で新規な特徴に著しくは影響しない特定の材料または段階の範囲を限定する。本明細書および特許請求の範囲に使用される場合、「含むこと(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの含むこと(comprising)の任意の形態)、「有すること(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの有すること(having)の任意の形態)、「含むこと(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」などの含むこと(including)の任意の形態)または「含有すること(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの含有すること(containing)の任意の形態)という語は、包括的または非限定的であって、追加的な記載されていない要素も方法段階も排除しない。「含むこと(comprising)」という用語に関連して本明細書に記載される態様はまた、「からなること(consisting of)」または「から本質的になること(consisting essentially of)」という用語に関連して実施され得ることが企図される。
【0017】
「個体」、「対象」、および「患者」は、互換的に使用され、ヒトまたは非ヒトを指すことができる。
【0018】
治療的、診断的、または生理的な目的または効果に関連する任意の方法はまた、記載された治療的、診断的、または生理的な目的または効果を達成または実施するための本明細書に述べられる任意の化合物、組成物、または作用物質「の使用」などの、「使用」の請求項言語を用いて記載され得る。
【0019】
本発明の1つの態様に関して述べられる任意の限定が、本発明の任意の他の態様に適用され得ることが具体的に企図される。さらに、本発明の任意の組成物は、本発明の任意の方法に使用される場合があり、本発明の任意の方法が、本発明の任意の組成物を産生または利用するために使用される場合がある。本明細書に記載される方法における任意の段階を、任意の他の方法に適用することができる。そのうえ、本明細書に記載される任意の方法は、任意の段階または段階の組み合わせの排除を有し得る。実施例の項における態様は、本明細書に記載される技術のすべての局面に適用可能な態様であると理解される。
【0020】
1つまたは複数の配列または組成物の使用は、本明細書に記載される方法のいずれかに基づき採用され得る。他の態様は、本出願にわたり述べられている。本開示の一局面に関して述べられる任意の態様は、本開示の他の局面にも適用され、逆の場合も同じである。
【0021】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および具体的な例は、本発明の具体的な態様を示すものの、本発明の精神および範囲内の様々な変更および改変がこの詳細な説明から当業者に明らかになるので、単に例証として示されるものであることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
以下の図面は、本明細書の一部を形成するものであり、本発明の特定の局面をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書に提示される具体的な態様の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つまたは複数を参照することによって、より十分に理解され得る。
【0023】
【
図1A】
図1A~1Dは、CRISPR/Cas9 RNPがCD8
+ T細胞におけるTGFB1遺伝子を効率的に枯渇させることを実証するデータを示す。
図1Aは、TGFB1 gRNAの配列(SEQ ID NO:1)、位置、インデル率およびノックアウトスコアを示す。
図1Bは、非標的(NT)対照およびTGFB1ノックアウトCD8
+ T細胞におけるgRNAの標的配列に隣接するTGFB1遺伝子断片のSangerシーケンシングの結果を示す。
図1Cは、α-CD3/α-CD28ビーズを用いた刺激後2日目の蛍光マイナスワン(Fluorescence Minus One)(FMO)対照、NT対照およびTGFB1ノックアウトCD8
+ T細胞の膜TGF-β1(LAP)およびCD8レベルの代表的なプロットを示す。
図1Dは、α-CD3/α-CD28ビーズを用いた刺激後2日目のNT対照およびTGFB1ノックアウトCD8
+ T細胞の総分泌TGF-β1のレベルを示す。
【
図2A】
図2A~2Dは、ポリクローナル活性化CD8
+ T細胞におけるTGFB1ノックアウトが、サイトカイン産生を強化し、TRM形成に影響しないことを実証するデータを示す。
図2Aは、再刺激後の対照およびTGFB1枯渇CD8
+ T細胞の細胞内TNF-α、IFN-γ、グランザイムBおよびIL-2レベルの代表的なプロットを示す。
図2Bは、再刺激後のIFN-γ
+、TNF-α
+、IFN-γ
+ TNF-α
+およびIL-2
+ CD8
+ T細胞の率を示す。
図2Cは、再刺激後の細胞内グランザイムBの平均蛍光強度(MFI)レベルを示す。結果を、スチューデントのt検定を使用して実験群間で比較した。n=3。統計的有意性をN.S.、p≧0.05、* p<0.05、** p<0.01として表示する。
図2Dは、低酸素条件下で外因性TGF-β1と培養後の対照およびTGFB1枯渇CD8
+ T細胞のCD103およびCD69レベルの代表的なプロットを示す。エラーバーは、平均の標準誤差(SEM)を表す。
【
図3】急速拡大増殖プロトコル(REP)後のNT対照およびTGFB1枯渇TCR-T細胞のフローサイトメトリーデータを示す。
【
図4A】
図4A~4Cは、TGFB1のノックアウトがTCR-T細胞のサイトカイン産生を強化することを実証するデータを示す。
図4Aは、Mel526細胞と16時間共培養(E:T比=5:1)後の対照およびTGFB1ノックアウトTCR-T細胞の細胞内TNF-α、IFN-γ、グランザイムBおよびIL-2レベルの代表的なプロットを示す。
図4Bは、IFN-γ+、TNF-α+、IFN-γ+ TNF-α+およびIL-2+ TCR-T細胞の率を示す。
図4Cは、細胞内グランザイムBの平均蛍光強度(MFI)レベルを示す。結果を、スチューデントのt検定を使用して実験群間で比較した。n=3。統計的有意性をN.S.、p≧0.05、* p<0.05、** p<0.01として表示する。エラーバーは、SEMを表す。
【
図5A】
図5A~5Cは、TGFB1のノックアウトがTCR-T細胞の細胞傷害活性を強化することを実証するデータを示す。
図5Aは、Mel526細胞と様々なE:T比で共培養され、クロム放出アッセイによって測定されたNT対照およびTGFB1ノックアウトTCR-T細胞の細胞傷害性を示す。
図5Bは、Mel526細胞と様々なE:T比で共培養されたNT対照およびTGFB1ノックアウトTCR-T細胞の細胞傷害性を示す。クロム放出アッセイの前にTCR-T細胞を10ng/mL TGF-β1で4日間処理した。
図5Cは、
図5Aおよび
図5Bに示されたデータの組み合わせを示す。結果を、スチューデントのt検定を使用して実験群間で比較した。n=4。統計的有意性をN.S.、p≧0.05、* p<0.05、** p<0.01として表示する。エラーバーは、SEMを表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本開示は、少なくとも一部には、細胞におけるTGF-β1の発現を低減または排除する遺伝子改変を有する免疫細胞(CD8+ T細胞などのT細胞を含む)の発生に、ならびにさらには、このような改変細胞が強化された抗腫瘍有効性を有し、定住メモリーT細胞(TRM)形成能を保持するという発見に基づく。本開示の特定の局面は、TGFB1にノックアウト変異を有する遺伝子改変免疫細胞(例えば、ヒトCD8+ T細胞)に、およびがんの処置のためのこのような細胞の使用方法に向けられる。CRISPR/Casベースの遺伝子編集を含む、遺伝子編集技術を使用する、免疫細胞におけるTGFB1の遺伝子改変のための方法もまた、開示される。
【0025】
I. 遺伝子編集システム
本開示の特定の局面は、細胞における1つまたは複数の遺伝子改変の生成に有用な遺伝子編集(「遺伝子操作」ともいう)のための方法および組成物に関する。本明細書に使用される場合、「遺伝子改変」は、そのネイティブな(すなわち、内因性)配列から変更された、細胞ゲノムの領域をいう。遺伝子改変は、遺伝子または他の遺伝物質の人工的な編集を介して作製され得る。いくつかの態様では、遺伝子改変は、遺伝子の変異である。様々な種類の遺伝子変異が当技術分野において認識されており、本明細書において企図される。いくつかの態様では、変異は、挿入、欠失、点変異、フレームシフト変異、またはナンセンス変異である。これらの変異の1つまたは複数は、本開示の態様から除外され得る。いくつかの態様では、変異は、遺伝子の発現を防止する(すなわち、ノックアウト変異である)。いくつかの態様では、変異は、変異型タンパク質の産生を引き起こす。いくつかの態様では、本開示の遺伝子改変はTGFB1の変異である。いくつかの態様では、TGFB1の変異は、TGFB1のエクソン1、2、3、4、5、6、または7の領域内の変異である。いくつかの態様では、変異は、TGFB1のエクソン1の領域内の変異である。いくつかの態様では、本開示の遺伝子改変は、TGFB2の変異である。いくつかの態様では、TGFB2の変異は、TGFB2のエクソン1、2、3、4、5、6、または7の領域内の変異である。いくつかの態様では、変異は、TGFB2のエクソン1の領域内の変異である。いくつかの態様では、本開示の遺伝子改変は、TGFB3の変異である。いくつかの態様では、TGFB3の変異は、TGFB3のエクソン1、2、3、4、5、6、または7の領域内の変異である。いくつかの態様では、変異は、TGFB3のエクソン1の領域内の変異である。
【0026】
本開示の特定の態様は、細胞集団における遺伝子にノックアウト変異を生成するための遺伝子編集技術の使用に向けられる。開示された技術は、集団中の細胞の一部またはすべてにおける遺伝子の発現を排除し得る。いくつかの態様では、遺伝子の発現は、細胞集団から検出不能である(例えば、mRNAおよび/またはタンパク質発現によって測定)。いくつかの態様では、遺伝子の発現は、ノックアウト変異を有しない細胞と比較して細胞集団において実質的に減少している。いくつかの態様では、遺伝子の発現(例えば、mRNAおよび/またはタンパク質発現によって測定)は、少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、最大で50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、もしくは約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、またはその中から導出可能な任意の範囲もしくは値だけ減少している。いくつかの態様では、遺伝子の発現は、少なくとも80%、90%、95%、または99%減少している。いくつかの態様では、遺伝子の発現は、少なくとも90%減少している。
【0027】
遺伝子編集のための様々な方法およびシステムは、当技術分野において公知であり、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)ベースの遺伝子編集、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)ベースの遺伝子編集、およびCRISPR/Casベースの遺伝子編集を含む。いくつかの態様では、本開示の方法は、CRISPRシステムの構成成分、例えば、ガイドRNA(gRNA)およびCasヌクレアーゼの使用を含む、CRISPR/Casベースの遺伝子編集を含む。
【0028】
一般に、「CRISPRシステム」は、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現に関与する、またはその活性を方向付ける転写物および他のエレメントをまとめて指し、これは、Cas遺伝子、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えば、tracrRNAまたは活性部分的tracrRNA)、tracr-メイト配列(内因性CRISPRシステムに関連して「ダイレクトリピート」およびtracrRNAでプロセシングされた部分的ダイレクトリピートを包含する)、ガイド配列(内因性CRISPRシステムに関連して「スペーサー」とも呼ばれる)、ならびに/またはCRISPR座位からの他の配列および転写物をコードする配列含む。
【0029】
CRISPR/CasヌクレアーゼまたはCRISPR/Casヌクレアーゼシステムは、配列特異的にDNAに結合するノンコーディングRNA分子(ガイド)RNA、およびヌクレアーゼの機能性(例えば、2つのヌクレアーゼドメイン)を有するCasタンパク質(例えば、Cas9)を含むことができる。CRISPRシステムの1つまたは複数のエレメントは、I型、II型、またはIII型CRISPRシステム、例えば、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)などの、内因性CRISPRシステムを含む特定の生物に由来することができる。
【0030】
いくつかの局面では、CasヌクレアーゼおよびgRNA(標的配列に特異的なcrRNAと固定されたtracrRNAとの融合体を含む)は細胞内に導入される。CasヌクレアーゼおよびgRNAは、Casヌクレアーゼおよび/またはgRNAをコードする1つまたは複数の核酸(例えば、ベクター)の導入を介して間接的に細胞内に導入することができる。CasヌクレアーゼおよびgRNAは、Casヌクレアーゼタンパク質およびgRNA分子の導入によって直接的に細胞内に導入することができる。一般に、gRNAの5'末端の標的部位は、相補的塩基対形成を使用してCasヌクレアーゼを、標的部位に、例えば遺伝子に対して、標的指向させる。標的部位は、そのプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列、例えば典型的にはNGGまたはNAGの直接5'側の位置に基づき選択され得る。これに関して、gRNAは、ガイドRNAの最初の20、19、18、17、16、15、14、14、12、11、または10ヌクレオチドを、標的DNA配列に対応するように改変することによって、所望の配列に対して、標的指向し得る。一般に、CRISPRシステムは、標的配列の部位でのCRISPR複合体の形成を促進するエレメントによって特徴付けられる。典型的には、「標的配列」は、一般に、標的配列とガイド配列とのハイブリダイゼーションがCRISPR複合体の形成を促進する相補性を有するように、それに対するガイド配列が設計される配列を指す。完全な相補性は必ずしも必要ないが、但し、ハイブリダイゼーションを引き起こし、CRISPR複合体の形成を促進する十分な相補性があることを条件とする。
【0031】
CRISPRシステムは、標的部位での二本鎖切断(DSB)に続き、本明細書に述べられるように破壊を誘導することができる。他の態様では、「ニッカーゼ」と見なされるCas9バリアントが、標的部位で一本鎖に切れ目を入れるために使用される。対になったニッカーゼを使用して、例えば特異性を改善することができ、そのそれぞれは、ニックの導入と同時に5'オーバーハングが導入されるように、異なるgRNA標的指向配列の対によって方向付けられる。他の態様では、触媒不活性なCas9は、転写抑制因子または活性化因子などの異種エフェクタードメインと融合されて、遺伝子発現を引き起こす。
【0032】
標的配列は、DNAまたはRNAポリヌクレオチドなどの任意のポリヌクレオチドを含み得る。標的配列は、細胞の核または細胞質中に、例えば細胞のオルガネラ内に位置し得る。一般に、標的配列を含む、標的化座位への組み換えのために使用され得る配列またはテンプレートは、「編集テンプレート」または「編集ポリヌクレオチド」または「編集配列」と称される。いくつかの局面では、外因性テンプレートポリヌクレオチドが、編集テンプレートと称され得る。いくつかの局面では、組み換えは相同組み換えである。
【0033】
典型的に、内因性CRISPRシステムに関連して、CRISPR複合体(標的配列にハイブリダイズし、1つまたは複数のCasタンパク質と複合体を形成するガイド配列を含む)の形成は、結果として、標的配列中またはその近く(例えば、標的配列から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、またはそれ以上の塩基対内)の一方または両方の鎖の切断をもたらす。野生型tracr配列のすべてまたは一部(例えば、野生型tracr配列の約20、26、32、45、48、54、63、67、85、もしくはそれ以上、または約20、26、32、45、48、54、63、67、85、もしくはそれ以上よりも多いヌクレオチド)を含む、またはそれからなり得るtracr配列はまた、tracr配列の少なくとも一部に沿った、ガイド配列に機能的に連結されるtracrメイト配列のすべてまたは一部とのハイブリダイゼーションなどにより、CRISPR複合体の一部分を形成し得る。tracr配列は、ハイブリダイズし、CRISPR複合体の形成に関与するのに十分なtracrメイト配列との相補性を、例えば、最適にアライメントされた場合にtracrメイト配列の長さに沿って少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%の配列相補性を有する。
【0034】
CRISPRシステムの1つまたは複数のエレメントの発現を推進する1つまたは複数のベクターを、CRISPRシステムのエレメントの発現が1つまたは複数の標的部位でCRISPR複合体の形成を指示するように細胞内に導入することができる。構成成分は、また、タンパク質および/またはRNAとして細胞に送達することができる。例えば、Cas酵素、tracr-メイト配列に連結されるガイド配列、およびtracr配列は、各々、別々のベクター上で別々の調節エレメントに機能的に連結されていてもよい。あるいは、同じまたは異なる調節エレメントから発現されたエレメントのうちの2つ以上は、第1のベクターに含まれないCRISPRシステムの任意の構成成分を提供する1つまたは複数の追加的なベクターと共に単一のベクター内に組み合わされ得る。ベクターは、制限エンドヌクレアーゼ認識配列などの1つまたは複数の挿入部位(「クローニング部位」とも称される)を含み得る。いくつかの態様では、1つまたは複数の挿入部位は、1つまたは複数のベクターの1つまたは複数の配列エレメントの上流および/または下流に位置する。複数の異なるガイド配列が使用された場合、CRISPR活性を細胞内の複数の異なる対応する標的配列に対して標的指向させるために、単一の発現構築物が使用され得る。
【0035】
ベクターは、Casタンパク質(「Casヌクレアーゼ」ともいう)をコードする酵素コード配列に機能的に連結される調節エレメントを含み得る。Casタンパク質の比限定的な例は、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても知られる)、Cas10、Cas12a(Cpf1)、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csfl、Csf2、Csf3、Csf4、それらのホモログ、またはそれらの改変されたバージョンを含む。これらの酵素は公知であり;例えば、化膿連鎖球菌(S. pyogenes)Cas9タンパク質のアミノ酸配列は、SwissProtデータベース中にアクセッション番号Q99ZW2で見出され得る。
【0036】
Casヌクレアーゼは、Cas9(例えば、化膿連鎖球菌または肺炎連鎖球菌(S. pneumonia))であることができる。CasヌクレアーゼはCas12aであることができる。Casヌクレアーゼは、標的配列の位置で、例えば、標的配列内および/または標的配列の相補体内で一方または両方の鎖の切断を指示することができる。ベクターは、変異型Casヌクレアーゼが、標的配列を含有する標的ポリヌクレオチドの一方または両方の鎖の切断能を欠如するように、対応する野生型酵素に対して変異が加えられたCasヌクレアーゼをコードすることができる。例えば、化膿連鎖球菌由来のCas9のRuvC I触媒ドメインにおけるアスパラギン酸からアラニンへの置換(D10A)は、Cas9を、両方の鎖を切断するヌクレアーゼから、ニッカーゼ(一本鎖を切断する)へと変換する。いくつかの態様では、Cas9ニッカーゼは、それぞれDNA標的のセンスおよびアンチセンス鎖を標的指向するガイド配列、例えば、2つのガイド配列と組み合わせて使用され得る。この組み合わせは、両方の鎖に切れ目を入れ、NHEJまたはHDRを誘導するために使用することを可能にする。
【0037】
いくつかの態様では、CRISPR酵素をコードする酵素コード配列は、真核細胞などの特定の細胞における発現のためにコドン最適化される。真核細胞は、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、または非ヒト霊長類を含むが、それに限定されるわけではない、哺乳動物などの特定の生物の細胞であり得る、またはそれに由来したものであり得る。一般に、コドン最適化は、ネイティブなアミノ酸配列を維持しながら、ネイティブな配列の少なくとも1つのコドンを、宿主細胞の遺伝子においてより頻繁にまたはもっとも頻繁に使用されるコドンで置換することによって、関心対象の宿主細胞における強化された発現のために核酸配列を改変するプロセスを指す。様々な種は、特定のアミノ酸の特定のコドンについて特定のバイアスを示す。コドンバイアス(生物間のコドン使用頻度における差異)は、しばしば、メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳効率と相関し、これは今度は、とりわけ、コドンが翻訳される特性および特定の転移RNA(tRNA)分子の入手性に依存すると考えられる。細胞における選択されたtRNAの優位は、一般に、ペプチド合成にもっとも頻繁に使用されるコドンの反映である。したがって、コドン最適化に基づき所与の生物における最適な遺伝子発現のために遺伝子をオーダーメイドすることができる。
【0038】
一般に、ガイド配列は、標的配列とハイブリダイズし、CRISPR複合体の標的配列への配列特異的結合を指示するのに十分な標的ポリヌクレオチド配列との相補性を有する任意のポリヌクレオチド配列である。いくつかの態様では、ガイド配列とその対応する標的配列との相補度は、適切なアライメントアルゴリズムを使用して最適にアライメントされた場合に、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%、もしくはそれ以上である、または50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%、もしくはそれ以上よりも大きい。
【0039】
最適なアライメントは、配列をアライメントするのに適切な任意のアルゴリズムの使用により決定される場合があり、その非限定的な例は、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズム、Burrows-Wheeler変換に基づくアルゴリズム(例えば、Burrows Wheeler Aligner)、Clustal W、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies、ELAND(Illumina, San Diego, Calif.)、SOAP(soap.genomics.org.cnから入手可能)、およびMaq(maq.sourceforge.netから入手可能)を含む。
【0040】
Casヌクレアーゼは、1つまたは複数の異種タンパク質ドメインを含む融合タンパク質の一部分であり得る。Casヌクレアーゼ融合タンパク質は、任意の追加的なタンパク質配列と、任意で、任意の2つのドメインの間のリンカー配列とを含み得る。Casヌクレアーゼと融合され得るタンパク質ドメインの例は、非限定的に、エピトープタグ、レポーター遺伝子配列、ならびに以下の活性:メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写放出因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性および核酸結合活性のうちの1つまたは複数を有するタンパク質ドメインである。エピトープタグの非限定的な例は、ヒスチジン(His)タグ、V5タグ、FLAGタグ、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タグ、Mycタグ、VSV-Gタグ、およびチオレドキシン(Trx)タグを含む。レポーター遺伝子の例は、グルタチオン-5-トランスフェラーゼ(GST)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)ベータガラクトシダーゼ、ベータ-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、HcRed、DsRed、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、および青色蛍光タンパク質(BFP)を含む自己蛍光タンパク質を含むが、それに限定されるわけではない。Casヌクレアーゼは、DNA分子と結合する、またはマルトース結合タンパク質(MBP)、Sタグ、Lex A DNA結合ドメイン(DBD)融合体、GAL4A DNA結合ドメイン融合体、および単純ヘルペスウイルス(HSV)BP16タンパク質融合体を含むが、それに限定されるわけではない他の細胞性分子と結合する、タンパク質またはタンパク質の断片をコードする遺伝子配列と融合され得る。Casヌクレアーゼを含む融合タンパク質の一部分を形成し得る追加的なドメインは、参照により本明細書に組み入れられるUS 20110059502に記載されている。
【0041】
II. 治療法
本開示の局面は、治療的使用のための組成物および方法に向けられる。本開示の組成物は、インビボ、インビトロ、またはエクスビボ投与のために使用され得る。組成物の投与経路は、例えば、腫瘍内、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、関節内、滑液嚢内、くも膜下腔内、経口、外用、吸入によるもの、または2つ以上の投与経路の組み合わせによるものであり得る。
【0042】
A. がん療法
いくつかの態様では、開示された方法は、対象または患者にがん療法を施す工程を含む。がん療法は、発現レベルのみの測定値、または対象について計算された臨床リスクスコアと組み合わせた該測定値に基づき選ばれ得る。いくつかの態様では、がん療法は、局所がん療法を含む。いくつかの態様では、がん療法は、全身がん療法を除外する。いくつかの態様では、がん療法は、局所療法を除外する。いくつかの態様では、がん療法は、全身がん療法を施さない局所がん療法を含む。いくつかの態様では、がん療法は、チェックポイント阻害剤療法または養子細胞療法であり得る免疫療法を含む。いくつかの態様では、がん療法は養子T細胞療法(ACT)である。これらのがん療法のいずれかもまた除外され得る。これらの治療法の組み合わせもまた施され得る。
【0043】
本明細書に使用される場合の「がん」という用語は、固形腫瘍、転移がん、または非転移がんを記載するために使用され得る。特定の態様では、がんは、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、十二指腸、小腸、大腸、結腸、直腸、肛門、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頸部、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、または子宮起源であり得る。
【0044】
がんは、具体的には以下の組織型であり得るが、これらに限定されるわけではない:悪性新生物;がん腫;未分化がん;巨細胞および紡錘細胞がん;小細胞がん;乳頭状がん;扁平上皮がん;リンパ上皮がん;基底細胞がん;毛母がん;移行上皮がん;乳頭状移行上皮がん;腺がん;悪性ガストリノーマ;胆管がん;肝細胞がん;混合型肝がん(combined hepatocellular carcinoma and cholangiocarcinoma);索状腺がん;腺様嚢胞がん;腺腫様ポリープの腺がん;家族性大腸ポリポーシス腺がん;固形がん;悪性カルチノイド腫瘍;細気管支肺胞がん;乳頭状腺がん;嫌色素性がん;好酸性がん;好酸性腺がん;好塩基性がん;明細胞腺がん;顆粒細胞がん;濾胞状腺がん;乳頭状濾胞状腺がん;非被包性硬化性がん;副腎皮質がん;類内膜がん;皮膚付属器がん;アポクリン腺がん;皮脂腺がん;耳垢腺がん;粘膜類表皮がん;嚢胞腺がん;乳頭状嚢胞腺がん;乳頭状漿液性嚢胞腺がん;粘液性嚢胞腺がん;粘液性腺がん;印環細胞がん;浸潤性乳管がん;髄様がん;小葉がん;炎症性がん;乳房パジェット病;腺房細胞がん;腺扁平上皮がん;扁平上皮化生を伴う腺がん;悪性胸腺腫;悪性卵巣間質腫瘍;悪性莢膜細胞腫;悪性顆粒膜細胞腫;悪性アンドロブラストーマ;セルトリ細胞がん;悪性ライディッヒ細胞腫瘍;悪性脂質細胞腫瘍;悪性傍神経節腫;乳房外悪性傍神経節腫;褐色細胞腫;グロムス血管肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表在性拡大型黒色腫;巨大色素性母斑内悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;悪性青色母斑;肉腫;線維肉腫;悪性線維性組織球腫;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎芽性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質肉腫;悪性混合腫瘍;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;がん肉腫;悪性間葉腫;悪性ブレンナー腫瘍;悪性葉状腫瘍;滑膜肉腫;悪性中皮腫;未分化胚腫;胎芽性がん;悪性奇形腫;悪性卵巣甲状腺腫;絨毛がん;悪性中腎腫;血管肉腫;悪性血管内皮腫;カポジ肉腫;悪性血管外皮腫;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;悪性軟骨芽腫;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫瘍;ユーイング肉腫;悪性歯原性腫瘍;エナメル上皮歯牙肉腫;悪性エナメル上皮腫;エナメル上皮線維肉腫;悪性松果体腫;脊索腫;悪性グリオーマ;上衣腫;アストロサイトーマ;原形質性アストロサイトーマ;原線維性アストロサイトーマ;星芽腫;膠芽腫;乏突起膠腫;乏突起芽腫;原始神経外胚葉腫瘍;小脳肉腫;神経節神経芽腫;神経芽腫;網膜芽腫;嗅神経原腫瘍;悪性髄膜腫;神経線維肉腫;悪性神経鞘腫;悪性顆粒細胞腫;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン側肉芽腫;悪性小リンパ球性リンパ腫;悪性びまん性大細胞型リンパ腫;悪性濾胞性リンパ腫;菌状息肉症;その他の明示された非ホジキンリンパ腫;悪性組織球症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;および有毛細胞白血病。いくつかの態様では、がんは黒色腫である。
【0045】
いくつかの態様では、がんは再発がんである。いくつかの態様では、がんは、ステージIのがんである。いくつかの態様では、がんは、ステージIIのがんである。いくつかの態様では、がんは、ステージIIIのがんである。いくつかの態様では、がんは、ステージIVのがんである。
【0046】
がんの処置が、本明細書に記載されるがんの処置のうちのいずれかを除外し得ることが企図される。さらに、本開示の態様は、本明細書に記載される治療法で以前に処置されたことがある患者、および本明細書に記載される治療法で現在処置されている患者、または本明細書に記載される治療法で処置されたことがない患者を含む。いくつかの態様では、患者は、本明細書に記載される治療法に抵抗性であると決定されている患者である。いくつかの態様では、患者は、本明細書に記載される治療法に感受性であると決定されている患者である。
【0047】
B. がん免疫療法
いくつかの態様では、方法は、がん免疫療法を施すことを含む。がん免疫療法(IOと省略される免疫オンコロジーと呼ばれるときがある)は、がんを処置するために免疫システムを使用することである。免疫療法は、能動的、受動的またはハイブリッド(能動的および受動的)に分類することができる。これらのアプローチは、がん細胞がしばしば、腫瘍関連抗原(TAA)として知られる、免疫システムによって検出することができる分子をその表面に有するという事実を活用し;それらの分子は、しばしば、タンパク質または他の高分子(例えば、炭水化物)である。能動免疫療法は、TAAを標的化することによって腫瘍細胞を攻撃するよう免疫システムに指示する。受動免疫療法は、既存の抗腫瘍応答を強化し、モノクローナル抗体、リンパ球およびサイトカインの使用を含む。様々な免疫療法が、当技術分野において公知であり、例を下に記載する。
【0048】
1. チェックポイント阻害剤および併用処置
本開示の態様は、免疫チェックポイント阻害剤の投与を含む場合があり、その例は、下にさらに記載される。本明細書に開示される場合、「チェックポイント阻害剤療法」(「免疫チェックポイント遮断療法」、「免疫チェックポイント療法」、「ICT」、「チェックポイント遮断免疫療法」、または「CBI」ともいう)は、がんを患うまたはがんを有する疑いのある対象に1つまたは複数の免疫チェックポイント阻害剤を提供することを含むがん療法を指す。
【0049】
a. PD-1、PDL1、およびPDL2阻害剤
PD-1は、T細胞が感染または腫瘍に遭遇する腫瘍微小環境中で作用することができる。活性化T細胞は、PD-1をアップレギュレートし、それを末梢組織中で発現し続ける。IFN-ガンマなどのサイトカインは、上皮細胞および腫瘍細胞上にPDL1の発現を誘導する。PDL2は、マクロファージおよび樹状細胞上に発現される。PD-1の主な役割は、末梢におけるエフェクターT細胞の活性を制限し、免疫応答の間に組織への過度の損傷を防止することである。本開示の阻害剤は、PD-1および/またはPDL1活性の1つまたは複数の機能を遮断し得る。
【0050】
「PD-1」の代替名は、CD279およびSLEB2を含む。「PDL1」の代替名は、B7-H1、B7-4、CD274、およびB7-Hを含む。「PDL2」の代替名は、B7-DC、Btdc、およびCD273を含む。いくつかの態様では、PD-1、PDL1、およびPDL2は、ヒトPD-1、PDL1およびPDL2である。
【0051】
いくつかの態様では、PD-1阻害剤は、PD-1のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の局面では、PD-1リガンド結合パートナーは、PDL1および/またはPDL2である。別の態様では、PDL1阻害剤は、PDL1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の局面では、PDL1結合パートナーは、PD-1および/またはB7-1である。別の態様では、PDL2阻害剤は、PDL2のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の局面では、PDL2結合パートナーはPD-1である。阻害剤は、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドであり得る。例示的な抗体は、米国特許第8,735,553号、同第8,354,509号、および同第8,008,449号に記載されており、これらのすべては、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書に提供される方法および組成物への使用のための他のPD-1阻害剤は、米国特許出願公開第2014/0294898号、同第2014/022021号、および同第2011/0008369号に記載されているように当技術分野において公知であり、これらのすべては、参照により本明細書に組み入れられる。
【0052】
いくつかの態様では、PD-1阻害剤は抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの態様では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、およびピディリズマブからなる群より選択される。いくつかの態様では、PD-1阻害剤はイムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域に融合された、PDL1またはPDL2の細胞外またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの態様では、PDL1阻害剤は、AMP-224を含む。MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558、およびOPDIVO(登録商標)としても知られるニボルマブは、WO2006/121168に記載される抗PD-1抗体である。MK-3475、Merck 3475、ランブロリズマブ、KEYTRUDA(登録商標)、およびSCH-900475としても知られるペムブロリズマブは、WO2009/114335に記載される抗PD-1抗体である。CT-011、hBAT、またはhBAT-1としても知られるピディリズマブは、WO2009/101611に記載される抗PD-1抗体である。B7-DCIgとしても知られるAMP-224は、WO2010/027827およびWO2011/066342に記載されるPDL2-Fc融合可溶性受容体である。追加的なPD-1阻害剤は、AMP-514およびREGN2810としても知られるMEDI0680を含む。
【0053】
いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、MEDI4736としても知られるデュルバルマブ、MPDL3280Aとしても知られるアテゾリズマブ、MSB00010118Cとしても知られるアベルマブ、MDX-1105、BMS-936559、またはそれらの組み合わせなどのPDL1阻害剤である。特定の局面では、免疫チェックポイント阻害剤は、rHIgM12B7などのPDL2阻害剤である。
【0054】
いくつかの態様では、阻害剤は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、またはピディリズマブの重鎖および軽鎖CDRまたはVRを含む。したがって一態様では、阻害剤は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、またはピディリズマブのVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメイン、ならびにニボルマブ、ペムブロリズマブ、またはピディリズマブのVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の態様では、抗体は、PD-1、PDL1、またはPDL2上の、上述の抗体と同じエピトープとの結合を競合し、かつ/またはそれに結合する。別の態様では、抗体は、上述の抗体と、少なくとも約70、75、80、85、90、95、97、または99%(またはその中から導出可能な任意の範囲)の可変領域アミノ酸配列同一性を有する。
【0055】
b. CTLA-4、B7-1、およびB7-2
本明細書に提供される方法において標的化することができる別の免疫チェックポイントは、CD152としても知られる細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)である。ヒトCTLA-4の完全cDNA配列は、GenBankアクセッション番号L15006を有する。CTLA-4は、T細胞表面に見出され、抗原提示細胞表面のB7-1(CD80)またはB7-2(CD86)に結合した場合に「オフ」スイッチとして作用する。CTLA4は、ヘルパーT細胞表面に発現された免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであって、抑制シグナルをT細胞に伝達する。CTLA4は、T細胞共刺激タンパク質、CD28に類似し、両方の分子は、抗原提示細胞上のB7-1およびB7-2に結合する。CTLA-4は、抑制シグナルをT細胞に伝達し、一方でCD28は、刺激シグナルを伝達する。細胞内CTLA-4はまた、制御性T細胞に見出され、それらの機能に重要であり得る。T細胞受容体およびCD28を介するT細胞活性化は、B7分子の抑制受容体であるCTLA-4の発現増加につながる。本開示の阻害剤は、CTLA-4、B7-1、および/またはB7-2活性の1つまたは複数の機能を遮断し得る。いくつかの態様では、阻害剤は、CTLA-4とB7-1との相互作用を遮断する。いくつかの態様では、阻害剤は、CTLA-4とB7-2との相互作用を遮断する。
【0056】
いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、もしくはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。
【0057】
本方法における使用に適した抗ヒトCTLA-4抗体(またはそれに由来するVHおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を使用して生成することができる。あるいは、当技術分野において承認されている抗CTLA-4抗体を使用することができる。例えば、米国特許第8,119,129号、WO2001/014424、WO98/42752;WO20000/37504(CP675,206、トレメリムマブとしても知られる;以前のチシリムマブ)、米国特許第6,207,156号;Hurwitzら、1998年に開示された抗CTLA-4抗体を本明細書に開示された方法に使用することができる。前述の刊行物の各々の教示は、参照により本明細書に組み入れられる。CTLA-4に結合するためのこれらの当技術分野において承認されている抗体のいずれかと競合する抗体もまた使用することができる。例えば、ヒト化CTLA-4抗体は、国際特許出願番号WO2001/014424、WO2000/037504、および米国特許第8,017,114号に記載されており;これらのすべては、参照により本明細書に組み入れられる。
【0058】
本開示の方法および組成物においてチェックポイント阻害剤として有用なさらなる抗CTLA-4は、イピリムマブ(10D1、MDX-010、MDX-101、およびYervoy(登録商標)としても知られる)またはその抗原結合断片およびバリアントである(例えば、WO2001/014424を参照されたい)。
【0059】
いくつかの態様では、阻害剤は、トレメリムマブまたはイピリムマブの重鎖および軽鎖のCDRまたはVRを含む。したがって一態様では、阻害剤は、トレメリムマブまたはイピリムマブのVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメイン、ならびにトレメリムマブまたはイピリムマブのVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の態様では、抗体は、PD-1、B7-1、またはB7-2上の上述の抗体と同じエピトープとの結合を競合し、かつ/またはそれに結合する。別の態様では、抗体は、上述の抗体と少なくとも約70、75、80、85、90、95、97、または99%(またはその中から導出可能な任意の範囲)の可変領域アミノ酸配列同一性を有する。
【0060】
c. LAG3
本明細書に提供される方法において標的化することができる別の免疫チェックポイントは、CD223およびリンパ球活性化3としても知られるリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)である。ヒトLAG3の完全mRNA配列は、GenBankアクセッション番号NM_002286を有する。LAG3は、活性化T細胞、ナチュラルキラー細胞、B細胞、および形質細胞様樹状細胞の表面に見出される免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。LAG3の主リガンドはMHCクラスIIであって、これは、CTLA-4およびPD-1と類似の方法でT細胞の細胞増殖、活性化、および恒常性の負の調節を行い、Tregの抑制機能に役割を果たすと報告されている。LAG3はまた、CD8+ T細胞を寛容原性状態に維持することを助け、PD-1と共に働いて、慢性ウイルス感染の間にCD8の消耗を維持することを助ける。LAG3はまた、樹状細胞の成熟および活性化に関与することが知られている。本開示の阻害剤は、LAG3活性の1つまたは複数の機能を遮断し得る。
【0061】
いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗LAG3抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。
【0062】
本方法における使用に適した抗ヒト-LAG3抗体(またはそれに由来するVHおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を使用して生成することができる。あるいは、当技術分野において承認されている抗LAG3抗体を使用することができる。例えば、抗LAG3抗体は、GSK2837781、IMP321、FS-118、Sym022、TSR-033、MGD013、BI754111、AVA-017、またはGSK2831781を含むことができる。米国特許第9,505,839号(レラトリマブ(relatlimab)としても知られるBMS-986016);米国特許第10,711,060号(LAG525としても知られるIMP-701);米国特許第9,244,059号(H5L7BWとしても知られるIMP731);米国特許第US10,344,089号(LAG3.1としても知られる25F7);WO2016/028672(28G-10としても知られるMK-4280);WO2017/019894(BAP050);Burova E., et al., J. ImmunoTherapy Cancer, 2016; 4(Supp. 1):P195(REGN3767);Yu, X., et al., mAbs, 2019;11:6(LBL-007)に開示された抗LAG3抗体を、本明細書に開示された方法に使用することができる。特許請求された発明に有用なこれらおよび他の抗LAG-3抗体は、例えば:WO2016/028672、WO2017/106129、WO2017062888、WO2009/044273、WO2018/069500、WO2016/126858、WO2014/179664、WO2016/200782、WO2015/200119、WO2017/019846、WO2017/198741、WO2017/220555、WO2017/220569、WO2018/071500、WO2017/015560;WO2017/025498、WO2017/087589、WO2017/087901、WO2018/083087、WO2017/149143、WO2017/219995、US2017/0260271、WO2017/086367、WO2017/086419、WO2018/034227、およびWO2014/140180に見出すことができる。前述の刊行物の各々の教示は、参照により本明細書に組み入れられる。LAG3に結合するための当技術分野において承認されているこれらの抗体のいずれかと競合する抗体もまた、使用することができる。
【0063】
いくつかの態様では、阻害剤は、抗LAG3抗体の重鎖および軽鎖のCDRまたはVRを含む。したがって一態様では、阻害剤は、抗LAG3抗体のVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメイン、ならびに抗LAG3抗体のVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の態様では、抗体は、上述の抗体と少なくとも約70、75、80、85、90、95、97、または99%(またはその中から導出可能な任意の範囲)の可変領域アミノ酸配列同一性を有する。
【0064】
d. TIM-3
本明細書に提供される方法において標的化することができる別の免疫チェックポイントは、A型肝炎ウイルス細胞受容体2(HAVCR2)およびCD366としても知られるT細胞免疫グロブリン-ムチンドメイン含有3(TIM-3)である。ヒトTIM-3の完全mRNA配列は、GenBankアクセッション番号NM_032782を有する。TIM-3は、IFNγ産生CD4+ Th1およびCD8+ Tc1細胞表面に見出される。TIM-3の細胞外領域は、膜遠位単一可変免疫グロブリンドメイン(IgV)および膜近くに位置する可変長グリコシル化ムチンドメインからなる。TIM-3は免疫チェックポイントであり、PD-1およびLAG3を含む他の抑制受容体と一緒になって、これは、T細胞消耗を媒介する。TIM-3はまた、マクロファージ活性化を調節するCD4+ Th1特異的細胞表面タンパク質として示されている。本開示の阻害剤は、TIM-3活性の1つまたは複数の機能を遮断し得る。
【0065】
いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗TIM-3抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。
【0066】
本方法における使用に適した抗ヒト-TIM-3抗体(またはそれに由来するVHおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を使用して生成することができる。あるいは、当技術分野において承認されている抗TIM-3抗体を使用することができる。例えば、MBG453、TSR-022(コボリマブ(Cobolimab)としても知られる)、およびLY3321367を含む抗TIM-3抗体を、本明細書に開示される方法に使用することができる。特許請求された発明に有用なこれらおよび他の抗TIM-3抗体は、例えば、米国特許第9,605,070号、米国特許第8,841,418号、US2015/0218274、およびUS2016/0200815に見出すことができる。上述の刊行物の各々の教示は、参照により本明細書に組み入れられる。LAG3に結合するための、当技術分野において承認されているこれらの抗体のうちのいずれかと競合する抗体もまた、使用することができる。
【0067】
いくつかの態様では、阻害剤は、抗TIM-3抗体の重鎖および軽鎖CDRまたはVRを含む。したがって一態様では、阻害剤は、抗TIM-3抗体のVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメイン、ならびに抗TIM-3抗体のVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の態様では、抗体は、上述の抗体と少なくとも約70、75、80、85、90、95、97、または99%(またはそれから導出可能な任意の範囲)の可変領域アミノ酸配列同一性を有する。
【0068】
2. 共刺激分子の活性化
いくつかの態様では、免疫療法は、共刺激分子の活性化因子(すなわち、アゴニスト)を含む。いくつかの態様では、活性化因子は、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、CD28、ICOS、OX40(TNFRSF4)、4-1BB(CD137;TNFRSF9)、CD40L(CD40LG)、GITR(TNFRSF18)、およびそれらの組み合わせの活性化因子を含む。活性化因子は、アゴニスト抗体、ポリペプチド、化合物、および核酸を含む。
【0069】
3. 樹状細胞療法
樹状細胞療法は、樹状細胞にリンパ球へと腫瘍抗原を提示させることによって抗腫瘍応答を誘発し、抗腫瘍応答は、リンパ球を活性化し、抗原を提示する他の細胞を死滅させるようにリンパ球をプライミングする。樹状細胞は、哺乳動物免疫システムにおける抗原提示細胞(APC)である。がんの処置では、樹状細胞はがん抗原への標的指向を助ける。樹状細胞ベースの細胞性がん療法の一例は、シプロイセル-Tである。
【0070】
樹状細胞を誘導して腫瘍抗原を提示する一方法は、自己腫瘍溶解物または短鎖ペプチド(がん細胞上のタンパク質抗原に対応するタンパク質の小部分)のワクチン接種による。これらのペプチドは、免疫応答および抗腫瘍応答を増加させるために、しばしば、アジュバント(高免疫原性物質)と組み合わせて与えられる。他のアジュバントは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などの、樹状細胞を誘引および/または活性化するタンパク質または他の化学物質を含む。
【0071】
また、腫瘍細胞にGM-CSFを発現させることによってインビボで樹状細胞を活性化することができる。これは、GM-CSFを産生するために腫瘍細胞を遺伝子操作すること、または腫瘍細胞を、GM-CSFを発現する腫瘍溶解性ウイルスに感染させることのいずれかによって達成することができる。
【0072】
別の戦略は、患者の血液から樹状細胞を取り出し、それらを体外で活性化することである。樹状細胞は、腫瘍抗原の存在下で活性化され、腫瘍抗原は、単一の腫瘍特異的ペプチド/タンパク質または腫瘍細胞溶解物(壊れた腫瘍細胞の溶液)であり得る。これらの細胞(任意選択のアジュバントを伴う)が注入され、免疫応答を誘発する。
【0073】
樹状細胞療法は、樹状細胞の表面の受容体に結合する抗体の使用を含む。抗原を抗体に添加することができ、樹状細胞を成熟するよう誘導し、腫瘍に対する免疫を提供することができる。樹状細胞受容体、例えば、TLR3、TLR7、TLR8またはCD40は、抗体標的として使用されている。
【0074】
4. CAR-TおよびCAR-NK細胞療法
キメラ抗原受容体(CAR、キメラ免疫受容体、キメラT細胞受容体または人工T細胞受容体としても知られる)は、新たな特異性を、がん細胞を標的化するための免疫細胞と組み合わせる、操作された受容体である。典型的には、これらの受容体は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、または他の免疫細胞にモノクローナル抗体の特異性を移植する。該受容体は、異なる起源からの部分を融合したものであるので、キメラと呼ばれる。CAR-T細胞療法は、がん療法のためにこのような形質転換細胞を使用する処置であって、形質転換細胞がT細胞である処置を指す。類似の治療法は、例えば、形質転換NK細胞を使用するCAR-NK細胞療法を含む。
【0075】
CAR-T細胞設計の基本原理は、抗原結合機能をT細胞活性化機能と組み合わせる組み換え受容体を必要とする。CAR-T細胞の一般的前提は、がん細胞上に見出されるマーカーを標的指向するT細胞を人工的に生成することである。科学者は、人間からT細胞を取り出し、それらを遺伝的に変更し、T細胞ががん細胞を攻撃するようにそれらを患者に戻すことができる。T細胞は、CAR-T細胞になるように操作された後、「生きた薬物」として作用する。CAR-T細胞は、細胞外リガンド認識ドメインから細胞内シグナル伝達分子へのリンクを生み、続いて、細胞内シグナル伝達分子がT細胞を活性化する。細胞外リガンド認識ドメインは、通常、一本鎖可変断片(scFv)である。CAR-T細胞療法の安全性の重要な局面は、正常細胞でなくがん性腫瘍細胞だけが標的とされることを、いかにして確実にするかである。CAR-T細胞の特異性は、標的とされる分子の選択によって決定される。
【0076】
CAR-T療法の例は、チサゲンレクルユーセル(キムリア)およびアキシカブタゲン シロルユーセル(イエスカルタ)を含む。
【0077】
5. サイトカイン療法
サイトカインは、腫瘍内に存在する多種の細胞によって産生されるタンパク質である。それらは、免疫応答をモジュレートすることができる。腫瘍はしばしば、腫瘍を成長させ免疫応答を低減するために、サイトカインを利用する。これらの免疫モジュレート効果は、免疫応答を誘発するための薬物としてサイトカインを使用できるようにする。2つの一般に使用されるサイトカインは、インターフェロンおよびインターロイキンである。
【0078】
インターフェロンは、免疫システムによって産生される。それらは通常、抗ウイルス応答に関与するが、がんのための用途も有する。それらは、3つの群:I型(IFNαおよびIFNβ)、II型(IFNγ)およびIII型(IFNλ)に入る。
【0079】
インターロイキンは、一連の免疫システム効果を有する。IL-2は、インターロイキンサイトカイン療法の例である。
【0080】
6. 養子T細胞療法
養子T細胞療法(ACT)は、T細胞の輸注(養子細胞移入)による受動免疫の形態である。それらは、血液および組織中に見出され、通常、それらが外来病原体を見つけたときに活性化する。特にそれらは、T細胞の表面受容体が、表面抗原上に外来タンパク質の部分を提示する細胞と遭遇した場合に活性化し得る。これらは、感染細胞または抗原提示細胞(APC)のいずれかであることができる。T細胞は、正常組織および腫瘍組織中に見出され、それらは、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)として知られる。それらは、腫瘍抗原を提示する樹状細胞などのAPCの存在によって活性化される。これらの細胞は腫瘍を攻撃することができるものの、腫瘍内の環境は高度に免疫抑制的であり、それにより、免疫が媒介する腫瘍死滅が制限または防止される場合がある。
【0081】
腫瘍を標的指向するT細胞を産生し、それを得るための複数の方法が開発されている。腫瘍抗原に特異的なT細胞は、腫瘍試料(腫瘍浸潤リンパ球もしくは「TIL」)から取り出すこと、または血液から濾過することができる。活性化に続いて、培養がエクスビボで行われる場合があり、結果として生じた細胞が対象に投与される。活性化は、遺伝子療法を経て、および/またはT細胞を腫瘍抗原に曝露することによって行うことができる。T細胞は、1つまたは複数の特性、例えば、治療有効性の強化を変更するように遺伝子改変することができる。いくつかの態様では、T細胞は、対象に投与される前に遺伝子改変される。いくつかの態様では、TGF-β1を分泌しないT細胞が、養子T細胞療法のために使用される。いくつかの態様では、TGF-β1を発現しないT細胞(例えば、TGFB1のノックアウト変異を含むT細胞)が、養子T細胞療法のために使用される。遺伝子改変T細胞、およびこのような細胞を生成するための方法は、本明細書の他の箇所にさらに述べられる。
【0082】
C. 腫瘍溶解性ウイルス
いくつかの態様では、追加的な治療法は、腫瘍溶解性ウイルスを含む。腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞に優先的に感染し、それを死滅させるウイルスである。感染したがん細胞は腫瘍溶解によって破壊されるので、それらは、残りの腫瘍の破壊を助けるために新しい感染性ウイルス粒子またはビリオンを放出する。腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞の直接破壊を引き起こすだけでなく、長期免疫療法のための宿主抗腫瘍免疫応答も刺激すると考えられている。
【0083】
D. 多糖
いくつかの態様では、追加的な治療法は、多糖を含む。キノコに見出される特定の化合物、主に多糖は、免疫システムをアップレギュレートすることができ、抗がん特性を有し得る。例えば、レンチナンなどのベータ-グルカンは、実験室研究でマクロファージ、NK細胞、T細胞および免疫システムサイトカインを刺激することが示されており、免疫アジュバントとして臨床試験で調査されている。
【0084】
E. ネオ抗原
いくつかの態様では、追加的な治療法は、ネオ抗原の投与を含む。多くの腫瘍は、変異を発現する。これらの変異は、T細胞免疫療法における使用のための、新しい標的指向可能な抗原(ネオ抗原)を潜在的に生み出す。RNAシーケンシングデータを使用して特定された場合のがん病変でのCD8+ T細胞の存在は、高い遺伝子変異量(mutational burden)を有する腫瘍においてより高い。ナチュラルキラー細胞およびT細胞の細胞溶解活性に関連する転写物のレベルは、多数のヒト腫瘍における変異荷重(mutational load)と正の相関を示す。
【0085】
F. 化学療法
いくつかの態様では、追加的な治療法は、化学療法を含む。化学療法剤の適切なクラスは、(a)アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミン、チオテパ)、スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン)ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、ロムスチン、クロロゾトシン、ストレプトゾシン)およびトリアジン(例えば、ジカルバジン)、(b)代謝拮抗薬、例えば葉酸類似体(例えば、メトトレキサート)、ピリミジン類似体(例えば、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、アザウリジン)ならびにプリン類似体および関連物質(例えば、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、ペントスタチン)、(c)天然物、例えば、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン)、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド、テニポシド)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシンおよびミトキサントロン)、酵素(例えば、L-アスパラギナーゼ)、および生体応答修飾物質(例えば、インターフェロン-α)、ならびに(d)種々の作用物質、例えば白金配位錯体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、置換尿素(例えば、ヒドロキシ尿素)、メチルヒドラジン誘導体(例えば、プロカルバジン)、および副腎皮質抑制剤(例えば、タキソールおよびミトタン)を含む。いくつかの態様では、シスプラチンは、特に適切な化学療法剤である。
【0086】
シスプラチンは、例えば、転移性精巣または卵巣がん、進行膀胱がん、頭頸部がん、子宮頸がん、肺がんまたは他の腫瘍などのがんを処置するために広く使用されている。シスプラチンは、経口的に吸収されず、したがって、例えば、静脈内、皮下、腫瘍内または腹腔内注射などの他の経路を介して送達されなければならない。シスプラチンは、単独で、または他の作用物質と組み合わせて使用することができ、臨床適用において約15mg/m2~約20mg/m2の有効用量が5日間、3週間毎に合計3クール使用されることが、特定の態様で企図される。いくつかの態様では、治療用ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されるEgr-1プロモーターを含む構築物と共に細胞および/または対象に送達されるシスプラチンの量は、シスプラチン単独を使用した場合に送達されるであろう量よりも少ない。
【0087】
他の適切な化学療法剤は、抗微小管剤、例えば、パクリタキセル(「タキソール」)およびドキソルビシン塩酸塩(「ドキソルビシン」)を含む。アデノウイルスベクターを介して送達されるEgr-1プロモーター/TNFα構築物と、ドキソルビシンとの組み合わせは、化学療法および/またはTNF-αに対する抵抗性を克服するのに有効であると判定されたが、これは、構築物とドキソルビシンとの併用処置が、ドキソルビシンおよびTNF-αの両方に対する抵抗性を克服することを示唆している。
【0088】
ドキソルビシンは、難吸収性であり、好ましくは静脈内投与される。特定の態様では、成人に適した静脈内用量は、約60mg/m2~約75mg/m2の約21日間隔、または2もしくは3日間連日の約25mg/m2~約30mg/m2の約3週~約4週間隔での繰り返し、または約20mg/m2の週1回を含む。事前の化学療法もしくは新生物の骨髄浸潤によって引き起こされた事前の骨髄抑制がある場合、または薬物が他の骨髄造血抑制薬と組み合わされる場合、高齢患者に最低用量を使用すべきである。
【0089】
ナイトロジェンマスタードは、本開示の方法に有用な別の適切な化学療法剤である。ナイトロジェンマスタードは、メクロレタミン(HN2)、シクロホスファミドおよび/またはイホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)、ならびにクロラムブシルを含み得るが、それに限定されるわけではない。シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))は、Mead Johnsonから入手可能であり、NEOSTAR(登録商標)は、Adriaから入手可能である)は、別の適切な化学療法剤である。成人に適した経口用量は、例えば、約1mg/kg/日~約5mg/kg/日を含み、静脈内用量は、例えば、最初に約40mg/kg~約50mg/kgを分割用量で約2日~約5日間、または約10mg/kg~約15mg/kgを約7日~約10日毎、または約3mg/kg~約5mg/kgを週2回、または約1.5mg/kg/日~約3mg/kg/日を含む。消化管に有害作用があることから、静脈内経路が好ましい。この薬物は、筋肉内に、浸潤によって、または体腔内に投与されるときもある。
【0090】
追加的な適切な化学療法剤は、ピリミジン類似体、例えば、シタラビン(シトシンアラビノシド)、5-フルオロウラシル(フルオウラシル;5-FU)およびフロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン;FudR)を含む。5-FUは、対象に、約7.5~約1000mg/m2のいずれかの薬用量で投与され得る。さらに、5-FUの投薬スケジュールは様々な期間であり得、例えば最大6週間の場合も、本開示が属する技術分野の当業者によって決定されるような期間である場合もある。
【0091】
別の適切な化学療法剤であるゲムシタビン二リン酸(GEMZAR(登録商標)、Eli Lilly & Co.、「ゲムシタビン」)は、進行および転移性膵臓がんの処置のために推奨されており、したがって、本開示においてこれらのがんにも有用であろう。
【0092】
患者に送達される化学療法剤の量は、可変であり得る。適切な一態様では、化学療法が構築物を用いて施される場合、化学療法剤は、宿主におけるがんの抑止または退縮を引き起こすのに有効な量で投与され得る。他の態様では、化学療法剤は、化学療法剤の化学療法的有効用量よりも2~10,000倍少ないいずれかの量で投与され得る。例えば、化学療法剤は、化学療法剤の化学療法的有効用量よりも約20倍少ない、約500倍少ない、またはさらには約5000倍少ない量で投与され得る。本開示の化学療法薬は、構築物と組み合わせて所望の治療活性のためにのみならず、有効投薬量の決定のために、インビボで検査することができる。例えば、このような化合物は、ヒトにおいて検査する前に、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギ、その他を含むが、それに限定されるわけではない適切な動物モデルシステムで検査することができる。インビトロ検査はまた、実施例に記載されるように適切な組み合わせおよび投薬量を決定するために使用され得る。
【0093】
G. 手術
がんを有する人間のおよそ60%は、予防的、診断または病期分類的、治癒的、および姑息的手術を含む、ある種の手術を受ける。治癒的手術は、がん性組織のすべてまたは一部が物理的に除去、切除、および/または破壊される切除を含み、本態様の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法、および/または代替療法などの他の治療法と共に使用され得る。腫瘍の切除は、腫瘍の少なくとも一部分の物理的除去を指す。腫瘍の切除に加えて、手術による処置は、レーザー手術、凍結手術、電気手術、および顕微鏡下手術(microscopically-controlled surgery)(モース氏手術)を含む。
【0094】
がん性細胞、組織、または腫瘍の一部またはすべてを切除すると体内に空洞が形成される場合がある。処置は、追加的な抗がん療法を用いたその領域の灌流、直接注射、または局所適用によって達成され得る。このような処置は、例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7日毎に、または1、2、3、4、および5週毎に、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12ヶ月毎に繰り返され得る。これらの処置もまた、様々な投薬量であり得る。
【0095】
H. 他の作用物質
処置の治療有効性を改善するために本態様の特定の局面と組み合わせて、他の作用物質が使用され得ることが企図される。これらの追加的な作用物質は、細胞表面受容体およびギャップ結合のアップレギュレーションに影響する作用物質、細胞分裂停止および分化作用物質、細胞接着阻害剤、アポトーシス誘導物質に対する過剰増殖細胞の感受性を増大させる作用物質、または他の生物学的作用物質を含む。ギャップ結合の数を増加させる細胞間シグナル伝達における増大は、隣接する過剰増殖細胞集団への抗過剰増殖効果を増大させる。他の態様では、細胞分裂停止または分化作用物質は、処置の抗過剰増殖有効性を改善するために本態様の特定の局面と組み合わせて使用することができる。細胞接着の阻害剤は、本態様の有効性を改善することが企図される。細胞接着阻害剤の例は、接着斑キナーゼ(FAK)阻害剤およびロバスタチンである。処置の有効性を改善するために、抗体c225などのアポトーシスに対する過剰増殖細胞の感受性を増大させる他の作用物質を、本態様の特定の局面と組み合わせて使用することもできることが、さらに企図される。
【0096】
III. 治療用組成物の投与
本明細書に提供される治療法は、第1のがん療法(例えば、TGF-β1を発現しない遺伝子改変T細胞などの免疫療法薬)および第2のがん療法(例えば、化学療法薬、追加的な免疫療法薬、その他)などの治療剤の併用投与を含み得る。治療法は、当技術分野において公知の任意の適切な方法で施され得る。例えば、第1および第2のがん処置は、順次に(異なる時間に)または同時に(同じ時間に)投与され得る。いくつかの態様では、第1および第2のがん処置は、別々の組成物の状態で投与される。いくつかの態様では、第1および第2のがん処置は同じ組成物の状態である。
【0097】
本開示の態様は、治療用組成物を含む組成物および方法に関する。異なる治療法は、1つの組成物の状態で、または2つの組成物、3つの組成物、もしくは4つの組成物などの1つよりも多い組成物の状態で投与され得る。作用物質の様々な組み合わせが採用され得る。
【0098】
本開示の治療剤は、同じ投与経路によって、または異なる投与経路によって投与され得る。いくつかの態様では、がん療法は、静脈内、筋肉内、皮下、外用、経口、経皮、腹腔内、眼窩内に、埋め込みにより、吸入により、くも膜下腔内、脳室内、または鼻腔内に施される。いくつかの態様では、抗生物質は、静脈内、筋肉内、皮下、外用、経口、経皮、腹腔内、眼窩内に、埋め込みにより、吸入により、くも膜下腔内、脳室内、または鼻腔内に施される。適切な投薬量は、処置されるべき疾患の種類、疾患の重症度および経過、個体の臨床状態、個体の臨床歴および処置への応答、ならびに担当医の判断に基づき決定され得る。
【0099】
処置は、様々な「単位用量」を含み得る。単位用量は、治療用組成物の予定された量を含有することとして定義される。投与されるべき量、ならびに詳細な経路および製剤は、臨床専門家の決定技能の範囲内である。単位用量は、単回注射として投与される必要はないが、設定期間にわたる連続注入を含み得る。いくつかの態様では、単位用量は、単回投与可能な用量を含む。
【0100】
処置の数および単位用量の両方により投与されるべき量は、所望の処置効果に依存する。有効用量は、特定の効果を達成するために必要な量を指すと理解される。特定の態様における実施では、10mg/kg~200mg/kgの範囲の用量が、これらの作用物質の防御能力に影響することができることが企図される。したがって、用量は、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、および200、300、400、500、1000μg/kg、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、および200、300、400、500、1000mg/kg、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、および200、300、400、500、1000μg/日、もしくは約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、および200、300、400、500、1000mg/日、またはそれから導出可能な任意の範囲の用量を含むことが企図される。さらに、このような用量は、1日複数回、および/または複数の日、週、もしくは月に投与することができる。
【0101】
特定の態様では、薬学的組成物の有効用量は、約1μM~150μMの血中レベルを提供することができる用量である。別の態様では、有効用量は、約4μM~100μM;または約1μM~100μM;または約1μM~50μM;または約1μM~40μM;または約1μM~30μM;または約1μM~20μM;または約1μM~10μM;または約10μM~150μM;または約10μM~100μM;または約10μM~50μM;または約25μM~150μM;または約25μM~100μM;または約25μM~50μM;または約50μM~150μM;または約50μM~100μM(またはそれから導出可能な任意の範囲)の血中レベルを提供する。他の態様では、用量は、対象に投与されている治療剤の結果として以下の作用物質の血中レベルを提供することができる:約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしく100μM、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしく100μM、または最大で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしく100μMまたはそれから導出可能な任意の範囲。特定の態様では、対象に投与される治療剤は、体内で代謝された治療剤に代謝され、その場合、血中レベルは、その作用物質の量を指し得る。あるいは、治療剤が対象によって代謝されない程度に、本明細書に述べられる血中レベルは、未代謝の治療剤を指し得る。
【0102】
治療用組成物の正確な量はまた、専門家の判断に依存し、個体毎に独特である。用量に影響する要因は、患者の身体および臨床状態、投与経路、意図された処置の目標(症状の軽減に対して治癒)、ならびに対象が受けている場合がある特定の治療物質または他の治療法の効力、安定性および毒性を含む。
【0103】
μg/kg体重またはmg/kg体重の投薬単位をμg/mlまたはmM(血中レベル)の同等の濃度単位、例えば4μM~100μMに変換および表現できることが、当業者によって理解され、認識される。取り込みが種および器官/組織に依存することも理解されている。取り込みおよび濃度測定に関して行うべき適用可能な換算係数および生理学的仮定は周知であり、当業者が1つの濃度測定値を別のものに換算し、本明細書に記載される用量、効力および結果に関して合理的な比較および断定を行うことができるようにする。
【0104】
IV. タンパク質
本明細書に使用される場合、「タンパク質」または「ポリペプチド」は、少なくとも5つのアミノ酸残基を含む分子を指す。本明細書に使用される場合、「ペプチド」は、少なくとも3つのアミノ酸残基を含む分子を指す。本明細書に使用される場合、「野生型」という用語は、生物中に自然に存在する内因性バージョンの分子を指す。いくつかの態様では、野生型バージョンのタンパク質またはポリペプチドが採用されるが、本開示の多くの態様では、改変されたタンパク質またはポリペプチドが採用される。上記用語は、互換的に使用され得る。「改変されたタンパク質」または「改変されたポリペプチド」または「バリアント」は、その化学構造、特にそのアミノ酸配列が野生型のタンパク質またはポリペプチドと比べて変更されているタンパク質またはポリペプチドを指す。いくつかの態様では、改変された/バリアントのタンパク質またはポリペプチドは、少なくとも1つの改変された活性または機能を有する(タンパク質またはポリペプチドが複数の活性または機能を有し得ると認識する)。改変された/バリアントのタンパク質またはポリペプチドは、1つの活性または機能に関して変更されている場合があるが、それでも他の点で野生型の活性または機能を保持することが具体的に企図される。
【0105】
本明細書においてタンパク質が具体的に言及される場合、これは、一般に、ネイティブな(野生型の)もしくは組み換えのタンパク質、または任意で、任意のシグナル配列が除去されたタンパク質への参照である。タンパク質は、該タンパク質がネイティブである生物から直接単離される、組み換えDNA/外因性発現方法によって産生される場合、または固相ペプチド合成(SPPS)もしくは他のインビトロ方法によって産生される場合がある。特定の態様では、ポリペプチド(例えば、抗体またはその断片)をコードする核酸配列を組み入れている単離された核酸セグメントおよび組み換えベクターがある。「組み換え」という用語は、ポリペプチドまたは特定のポリペプチド名と共に使用され得、これは、一般に、インビトロで操作された核酸分子、またはこのような分子の複製産物である核酸分子から産生されたポリペプチドを指す。
【0106】
A. TGF-β1
本開示の局面は、形質転換成長因子ベータ-1(TGF-β1)に関する。TGF-β1(NCBI Protein RefSeq NP_000651)は、遺伝子TGFB1(NCBI mRNA Refseq NM_000660)によってコードされるサイトカインである。いくつかの態様では、TGFB1遺伝子に遺伝子操作された1つまたは複数の変異を有する細胞が開示される。
【0107】
B. TGF-β2
本開示の局面は、形質転換成長因子ベータ-2(TGF-β2)に関する。TGF-β2(NCBI Protein RefSeq NP_001129071)は、遺伝子TGFB2(NCBI mRNA Refseq NM_001135599)によってコードされるサイトカインである。いくつかの態様では、TGFB2遺伝子に遺伝子操作された1つまたは複数の変異を有する細胞が開示される。
【0108】
C. TGF-β3
本開示の局面は、形質転換成長因子ベータ-1(TGF-β3)に関する。TGF-β3(NCBI Protein RefSeq NP_003230)は、遺伝子TGFB3(NCBI mRNA Refseq NM_003239)によってコードされるサイトカインである。いくつかの態様では、TGFB3遺伝子に遺伝子操作された1つまたは複数の変異を有する細胞が開示される。
【0109】
V. 細胞および製剤
特定の態様は、本開示のポリペプチドまたは核酸を含む細胞に関する。いくつかの態様では、細胞は免疫細胞である。本明細書において企図される免疫細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞などを含むが、それに限定されるわけではない。いくつかの態様では、免疫細胞はT細胞である。「T細胞」は、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、細胞傷害性T細胞、制御性T細胞(Treg)、およびガンマ-デルタT細胞を含む、CD3を発現しているすべての種類の免疫細胞を含む。T細胞は、CD4+ T細胞またはCD8+ T細胞を指し得る。本明細書において企図される免疫細胞は、1つまたは複数の外因性タンパク質を発現するように操作された免疫細胞を含む、操作された免疫細胞を含む。
【0110】
適切な哺乳動物細胞は、初代細胞および不死化細胞株を含む。適切な哺乳動物細胞株は、ヒト細胞株、非ヒト霊長類細胞株、齧歯類(例えば、マウス、ラット)細胞株などを含む。適切な哺乳動物細胞株は、HeLa細胞(例えば、アメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(ATCC)番号CCL-2)、CHO細胞(例えば、ATCC番号CRL9618、CCL61、CRL9096)、ヒト胚腎臓(HEK)293細胞(例えば、ATCC番号CRL-1573)、Vero細胞、NIH 3T3細胞(例えば、ATCC番号CRL-1658)、Huh-7細胞、BHK細胞(例えば、ATCC番号CCL10)、PC12細胞(ATCC番号CRL1721)、COS細胞、COS-7細胞(ATCC番号CRL1651)、RATI細胞、マウスL細胞(ATCC番号CCLI.3)、HLHepG2細胞、Hut-78、Jurkat、HL-60、NK細胞株(例えば、NKL、NK92、およびYTS)などを含むが、それに限定されるわけではない。
【0111】
場合によっては、細胞は不死化細胞株ではなく、その代わりに、個体から得られた細胞(例えば、初代細胞)である。例えば場合により、細胞は、個体から得られた免疫細胞である。例として、細胞は、個体から得られたTリンパ球である。別の例として、細胞は、個体から得られた細胞傷害性細胞である。別の例として、細胞は、個体から得られた幹細胞(例えば、末梢血幹細胞)または前駆細胞である。
【0112】
特定の態様では、本開示の細胞は特異的に製剤化される場合があり、かつ/または特定の培地中で培養される場合がある。細胞は、有害作用なしにレシピエントへの送達に適した方法で製剤化される場合がある。
【0113】
特定の局面では、培地は、基本培地として動物細胞を培養するために使用される培地、例えば、AIM V、X-VIVO-15、NeuroBasal、EGM2、TeSR、BME、BGJb、CMRL 1066、Glasgow MEM、改良MEM Zinc Option、IMDM、199培地、Eagle MEM、αMEM、DMEM、Ham、RPMI-1640、およびFischer培地のいずれかのみならず、それらの任意の組み合わせを使用して調製することができるが、培地は、動物細胞を培養するために使用できるかぎり、それに特に限定されない場合がある。特に、培地は、異種成分不含有の場合または化学的に定義されている場合がある。
【0114】
培地は、血清含有もしくは無血清培地、または異種成分不含有培地であることができる。異種動物由来構成成分の混入を防止する局面から、血清は、幹細胞と同じ動物に由来することができる。無血清培地は、未処理血清も未精製血清も有しない培地を指し、したがって、精製された血液由来構成成分または動物組織由来構成成分(成長因子など)を有する培地を含むことができる。
【0115】
培地は、任意の血清代替物を含有する場合または含有しない場合がある。血清代替物は、アルブミン(例えば脂質に富むアルブミン、ウシアルブミン、組み換えアルブミンまたはヒト化アルブミンなどのアルブミン代用物、植物デンプン、デキストランおよびタンパク質加水分解物)、トランスフェリン(または他の鉄輸送体)、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆物質、微量元素、2-メルカプトエタノール、3'-チオールグリセロール、またはそれらの等価物を適切に含有する物質を含むことができる。血清代替物は、例えば、国際公開公報第98/30679号(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に開示された方法によって調製することができる。あるいは、任意の市販物質を、より大きな便宜のために使用することができる。市販物質は、ノックアウト血清代替物(KSR)、化学的に定義された濃縮脂質(Gibco)、およびGlutamax(Gibco)を含む。
【0116】
特定の態様では、培地は、以下のうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ以上を含み得る:ビタミン、例えば、ビオチン;酢酸DLアルファトコフェロール;DLアルファ-トコフェロール;ビタミンA(酢酸エステル);タンパク質、例えばBSA(ウシ血清アルブミン)もしくはヒトアルブミン、脂肪酸フリーフラクションV;カタラーゼ;ヒト組み換えインスリン;ヒトトランスフェリン;スーパーオキシドジスムターゼ;他の構成成分、例えば、コルチコステロン;D-ガラクトース;エタノールアミンHCl;グルタチオン(還元型);L-カルニチンHCl;リノール酸;リノレン酸;プロゲステロン;プトレシン2HCl;亜セレン酸ナトリウム;および/またはT3(トリヨードトリヨード-I-チロニン)。具体的な態様では、これらのうちの1つまたは複数は、明示的に除外され得る。
【0117】
いくつかの態様では、培地は、さらにビタミンを含む。いくつかの態様では、培地は、以下:ビオチン、酢酸DLアルファトコフェロール、DLアルファ-トコフェロール、ビタミンA、塩化コリン、パントテン酸カルシウム、パントテン酸、葉酸ニコチンアミド、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、イノシトール、ビタミンB12のうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、もしくは13個(およびそれから導出可能な任意の範囲)を含み、または培地は、それらの組み合わせまたはそれらの塩を含む。いくつかの態様では、培地は、ビオチン、酢酸DLアルファトコフェロール、DLアルファ-トコフェロール、ビタミンA、塩化コリン、パントテン酸カルシウム、パントテン酸、葉酸ニコチンアミド、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、イノシトール、およびビタミンB12を含む、またはそれらから本質的になる。いくつかの態様では、ビタミンは、ビオチン、酢酸DLアルファトコフェロール、DLアルファ-トコフェロール、ビタミンA、またはそれらの組み合わせもしくは塩を含む、またはそれから本質的になる。いくつかの態様では、培地は、タンパク質をさらに含む。いくつかの態様では、タンパク質は、アルブミンもしくはウシ血清アルブミン、BSAの画分、カタラーゼ、インスリン、トランスフェリン、スーパーオキシドジスムターゼ、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、培地は、以下:コルチコステロン、D-ガラクトース、エタノールアミン、グルタチオン、L-カルニチン、リノール酸、リノレン酸、プロゲステロン、プトレシン、亜セレン酸ナトリウム、もしくはトリヨード-I-チロニン、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数をさらに含む。いくつかの態様では、培地は、以下:B-27(登録商標)サプリメント、異種成分不含有のB-27(登録商標)サプリメント、GS21(商標)サプリメント、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む。いくつかの態様では、培地は、アミノ酸、単糖、無機イオンを含む、またはそれらをさらに含む。いくつかの態様では、アミノ酸は、アルギニン、シスチン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、グルタミン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、チロシン、もしくはバリン、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、無機イオンは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、窒素、もしくはリン、またはそれらの組み合わせもしくは塩を含む。いくつかの態様では、培地は、以下:モリブデン、バナジウム、鉄、亜鉛、セレン、銅、もしくはマンガン、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数をさらに含む。特定の態様では、培地は、本明細書に記載された1つもしくは複数のビタミンおよび/または本明細書に記載された1つもしくは複数のタンパク質、および/または以下:コルチコステロン、D-ガラクトース、エタノールアミン、グルタチオン、L-カルニチン、リノール酸、リノレン酸、プロゲステロン、プトレシン、亜セレン酸ナトリウム、もしくはトリヨード-I-チロニン、B-27(登録商標)サプリメント、異種成分不含有のB-27(登録商標)サプリメント、GS21(商標)サプリメント、アミノ酸(例えば、アルギニン、シスチン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、グルタミン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、チロシン、もしくはバリン)、単糖、無機イオン(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、窒素、および/もしくはリン)もしくはそれらの塩、および/またはモリブデン、バナジウム、鉄、亜鉛、セレン、銅、もしくはマンガンのうちの1つもしくは複数を含む、またはそれから本質的になる。具体的な態様では、これらのうちの1つまたは複数は、明示的に除外され得る。
【0118】
培地はまた、外部から添加された1つまたは複数の脂肪酸もしくは脂質、アミノ酸(非必須アミノ酸など)、ビタミン、成長因子、サイトカイン、抗酸化物質、2-メルカプトエタノール、ピルビン酸、緩衝化剤、および/または無機塩を含有することができる。具体的な態様では、これらのうちの1つまたは複数は、明示的に除外され得る。
【0119】
1つまたは複数の培地構成成分は、少なくとも0.1、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、180、200、250ng/L、少なくとも0.1、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、180、200、250ng/ml、少なくとも0.1、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、180、200、250μg/ml、少なくとも0.1、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、180、200、250mg/ml、最大で0.1、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、180、200、250ng/L、最大で0.1、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、180、200、250ng/ml、最大で0.1、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、180、200、250μg/ml、最大で0.1、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、180、200、250mg/ml、もしくは約0.1、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、180、200、250ng/L、約0.1、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、180、200、250ng/ml、約0.1、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、180、200、250μg/ml、約0.1、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、180、200、250mg/ml、またはそれらから導出可能な任意の範囲の濃度で添加され得る。
【0120】
具体的な態様では、本開示の細胞は、特異的に製剤化される。それらは、細胞懸濁液として製剤化される場合または製剤化されない場合がある。特定の場合、それらは、単回剤形として製剤化される。それらは、全身または局所投与のために製剤化され得る。場合により、細胞は、使用前に貯蔵するために製剤化され、細胞製剤は、1つまたは複数の凍結保存剤、例えば、DMSO(例えば、5% DMSO中)を含み得る。細胞製剤は、ヒトアルブミンを含むアルブミンを含む場合があり、特定の製剤は、2.5% ヒトアルブミンを含む。細胞は、静脈内投与のために特異的に製剤化される場合があり;例えば、それらは、1時間未満にわたる静脈内投与のために製剤化される。特定の態様では、細胞は、解凍時間から室温で1、2、3、もしくは4時間またはそれ以上安定な、製剤化された細胞懸濁液中にある。
【0121】
特定の態様では、本開示の細胞は、定義された抗原特異性であり得る外因性T細胞受容体(TCR)を含む。いくつかの態様では、TCRは操作されたTCRである。いくつかの態様では、TCRは、意図されるレシピエントに対するアロ反応性が存在しない、または低減していることに基づき選択することができる(例は、特定のウイルス特異的TCR、異種特異的TCR、またはがん精巣抗原特異的TCRを含む)。外因性TCRが非アロ反応性である例では、T細胞分化の間に外因性TCRは、対立遺伝子排除と呼ばれる発生過程を経て内因性TCR座位の再配列および/または発現を抑制し、その結果、非アロ反応性外因性TCRだけを発現し、したがって、非アロ反応性である、T細胞を生じる。いくつかの態様では、外因性TCRの選択は、必ずしもアロ反応性の欠如に基づき定義される訳ではない場合がある。いくつかの態様では、内因性TCR遺伝子は、タンパク質を発現しないようにゲノム編集によって改変されている。CRISPR/Cas9システムを使用する方法などの遺伝子編集方法は、当技術分野において公知であり、本明細書に記載されている。
【0122】
いくつかの態様では、本開示の細胞は、1つまたは複数のキメラ抗原受容体(CAR)を含む。CARが方向付けられ得る腫瘍細胞抗原の例は、例えば、少なくとも5T4、8H9、αvβ6インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CA9、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、ErbB2(HER2)、EGFRvIIIを含むEGFRファミリー、EGP2、EGP40、ERBB3、ERBB4、ErbB3/4、EPCAM、EphA2、EpCAM、葉酸受容体-a、FAP、FBP、胎児AchR、FRα、GD2、G250/CAIX、GD3、グリピカン-3(GPC3)、Her2、IL-13Rα2、ラムダ、Lewis-Y、カッパ、KDR、MAGE、MCSP、メソセリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSC1、PSCA、PSMA、ROR1、SP17、サバイビン、TAG72、TEM、がん胎児性抗原、HMW-MAA、AFP、CA-125、ETA、チロシナーゼ、MAGE、ラミニン受容体、HPV E6、E7、BING-4、カルシウム活性化塩素イオンチャネル2、サイクリン-B1、9D7、EphA3、テロメラーゼ、SAP-1、BAGEファミリー、CAGEファミリー、GAGEファミリー、MAGEファミリー、SAGEファミリー、XAGEファミリー、NY-ESO-1/LAGE-1、PAME、SSX-2、Melan-A/MART-1、GP100/pmel17、TRP-1/-2、P.ポリペプチド、MC1R、前立腺特異抗原、β-カテニン、BRCA1/2、CML66、フィブロネクチン、MART-2、TGF-βRII、またはVEGF受容体(例えば、VEGFR2)を含む。CARは、第1、2、3、またはそれ以上の生成CARであり得る。CARは、任意の2つの同一でない抗原に特異的な場合があり、または2つよりも多い、同一でない抗原に特異的であり得る。
【0123】
VI. キット
本開示の特定の局面はまた、本発明の組成物を含有するキット、または本発明の方法を実施するための組成物に関する。いくつかの態様では、キットは、1つまたは複数のバイオマーカーを評価するために使用することができる。特定の態様では、キットは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、100、500、1,000もしくはそれ以上のプローブ、プライマーもしくはプライマーセット、合成分子もしくは阻害剤、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、100、500、1,000もしくはそれ以上のプローブ、プライマーもしくはプライマーセット、合成分子もしくは阻害剤、または最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、100、500、1,000もしくはそれ以上のプローブ、プライマーもしくはプライマーセット、合成分子もしくは阻害剤、またはそれらから導出可能な任意の値もしくは範囲および組み合わせを含有する。いくつかの態様では、細胞におけるバイオマーカー活性を評価するためのキットがある。
【0124】
キットは、容器、例えばチューブ、ボトル、バイアル、シリンジ、または他の適切な容器手段中に個別にパッケージされるまたは入れられる場合がある構成成分を含み得る。
【0125】
個別の構成成分はまた、濃縮された量でキット中に提供される場合があり;いくつかの態様では、構成成分は、他の構成成分と共に溶液中に存在するものと同じ濃度で個別に提供される。構成成分の濃度は、1×、2×、5×、10×、もしくは20×、またはそれ以上として提供され得る。
【0126】
予後予測または診断適用のために本開示のプローブ、合成核酸、非合成核酸、および/または阻害剤を使用するためのキットが、本開示の一部として含まれる。本明細書に特定された任意のバイオマーカーに対応する任意のこのような分子が具体的に企図され、それは、バイオマーカーのすべてまたは一部と同一または相補的である核酸プライマー/プライマーセットおよびプローブを含み、それは、バイオマーカーのノンコーディング配列のみならず、バイオマーカーのコーディング配列を含み得る。
【0127】
特定の局面では、陰性および/または陽性対照の核酸、プローブ、および阻害剤が、いくつかのキットの態様に含まれる。加えて、キットは、1つまたは複数のバイオマーカーのメチル化のための陰性または陽性対照である試料を含み得る。
【0128】
特定のバイオマーカーの名前を伴う本開示の任意の態様は、配列が特定の核酸の成熟配列と少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%同一であるバイオマーカーを伴う態様も包含することが企図される。
【0129】
本開示の態様は、適切な容器手段中に2つ以上のバイオマーカープローブを含む、試料についてのバイオマーカープロファイルを評価することによる病理試料の分析のためのキットを含み、その際、バイオマーカープローブは、本明細書に特定された1つまたは複数のバイオマーカーを検出する。キットは、試料中の核酸を標識するための試薬をさらに含むことができる。キットはまた、アミン改変ヌクレオチド、ポリ(A)ポリメラーゼ、およびポリ(A)ポリメラーゼ緩衝液のうちの少なくとも1つを含む標識試薬を含み得る。標識試薬は、アミン反応性色素を含むことができる。
【0130】
本明細書に記載される任意の方法または組成物は、本明細書に記載される任意の他の方法または組成物に関して実施できること、および異なる態様が組み合わされ得ることが企図される。最初に出願された請求項は、任意の出願された請求項または出願された請求項の組み合わせに多重に従属する請求項を網羅することが企図される。
【実施例】
【0131】
本発明の特定の態様を実証するために、以下の実施例が含まれる。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施においてうまく機能することが本発明者によって発見された技術を表し、したがって、その実施のための特定の様式を構成すると考えることができることを、当業者は認識するべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示された特定の態様に多くの変更を加え、それでも本発明の精神および範囲から逸脱せずに同様または類似の結果を得ることができることを認識すべきである。
【0132】
実施例1 - TGFB1のノックアウトを介したCD8
+ T細胞における内因性TGF-β1の枯渇
結果
CD8
+ T細胞におけるTGF-β1をコードする遺伝子TGFB1を枯渇させるために、CRISPR-Cas9遺伝子編集技術を使用した。α-CD3/α-CD28ビーズで刺激されたナイーブT細胞において複数のgRNAの効率を検査し、最高のノックアウト効率を有するgRNAを選択した。選択されたgRNAは、GGCCGACUACUACGCCAAGG(SEQ ID NO:1)のガイド標的配列を有していた。このgRNAは、開始コドンの下流の、TGFB1遺伝子の第1エクソンの3'領域を標的指向していた(
図1A)。非標的(NT)対照gRNA-トランスフェクトT細胞と、TGFB1 gRNAトランスフェクトT細胞とのSangerシーケンシング結果の比較は、TGFB1 DNA配列がこのgRNAによって高い挿入/欠失率およびノックアウトスコアで、効率的に破壊されたことを示した(
図1Aおよび1B)。ビーズ刺激後2日目に、膜結合型TGF-β1レベルは、NT対照と比較してTGFB1ノックアウトCD8
+細胞において大きく低減された(
図1C)。同様に、ELISAデータは、総分泌TGF-β1レベルもTGFB1ノックアウトによって大きく減少したことを示した(
図1D)。これらのデータはすべて、DNAおよびタンパク質レベルの両方でTGFB1 gRNAがCD8
+ T細胞におけるTGFB1を効率的に枯渇させたことを明らかにした。
【0133】
TGFB1のノックアウトが、ポリクローナルに活性化されたCD8
+ T細胞のエフェクター機能に影響したかを決定するために、再刺激後の対照およびノックアウトCD8
+ T細胞において細胞内サイトカイン染色を行った。TGFB1ノックアウトT細胞は、NT対照と比較してずっと多くのTNF-αおよびIFN-γ(
図2Aおよび2B)、ならびにわずかにより多くのグランザイムB(
図2Aおよび2C)を産生したのに対し、IL-2レベルは、著しく影響されるわけではなかった(
図2Aおよび2B)。これらの結果は、CD8
+ T細胞におけるTGFB1ノックアウトがサイトカイン産生を強化したことを示唆した。次に、定住メモリーT細胞(T
RM)を形成する能力をNT対照細胞とノックアウト細胞との間で比較した。T
RM形成を誘導するのに十分な条件である低酸素および外因性TGF-β1に応答して、CD103
+CD69
+ T
RM集団の率は、対照とTGFB1ノックアウトT細胞との間でおよそ類似していたが、これは、CD8
+ T細胞からの内因性TGF-β1の枯渇が、T
RM形成に劇的には影響しなかったことを示す。
【0134】
抗原特異的状況におけるTGFB1ノックアウトの効果を決定するために、gp100特異的なHLA-A*0201拘束性TCRを安定発現するようにT細胞を操作した(TCR-T)。選別されたテトラマー
+ CD8
+ TCR-T細胞においてノックアウトを行い、次いで、迅速拡大増殖プロトコル(REP)を使用して細胞を拡大増殖させた(
図3)。gp100
+腫瘍細胞株Mel526と共培養後の対照およびTGFB1ノックアウトTCR-T細胞において細胞内サイトカイン染色を行い、TGFB1ノックアウトTCR-T細胞が対照細胞よりもずっと多いIFN-γ、TNF-αおよびグランザイムBを産生したことが見出され、これは、ポリクローナル刺激されたCD8
+ T細胞からの結果と一致した(
図4A~4C)。加えて、IL-2レベルはまた、NT対照よりもノックアウトTCR-T細胞においてわずかに高かった(
図4Aおよび4B)。Mel526細胞と共培養されたNT対照およびTGFB1ノックアウトTCR-T細胞の細胞傷害性をクロム放出アッセイによって測定した。TGFB1ノックアウトTCR-T細胞は、対照細胞と比較して様々なE:T比でMel526細胞に対して増大した細胞溶解活性を示した(
図5A)。高い外因性-TGF-β1条件で対照およびTGFB1ノックアウトTCR-T細胞の細胞溶解活性を比較するために、クロム放出アッセイの前にTCR-T細胞を4日間高用量TGF-β1で前処理した。興味深いことに、高用量外因性TGF-β1の存在下であっても、TGFB1ノックアウトTCR-T細胞は依然、標的細胞を死滅させるのにNT対照よりも効率的であった(
図5B)。加えて、対照およびTGFB1ノックアウトTCR-T細胞の両方は、外因性TGF-β1の存在下で、外因性TGF-β1の非存在下の同じ細胞と比較して減少した細胞傷害活性を示した(
図5C)。要約すると、TGFB1ノックアウトは、CD8
+ T細胞の抗腫瘍エフェクター機能を劇的に強化し、これは、がん患者の処置のための養子T細胞療法(ACT)の有効性を改善する大きな可能性を示す。
【0135】
方法
細胞および試薬
健康なドナー末梢血単核細胞(PBMC)を白血球アフェレーシスによって収集し、使用まで液体窒素中で貯蔵した。すべてのヒト試料収集を、インフォームドコンセントを得て行い、UT MD Anderson Cancer Centerの施設内審査委員会(IRB)によって承認された。組み換えCas9酵素およびヒトTGFB1ガイドRNAをSynthegoから購入した。すべてのフローサイトメトリー抗体およびヒトTGF-β1 ELISAキットをBiolegendから購入した。MHC-I-gp100テトラマーは、Fred Hutchinson Cancer Research Centerからのものであった。
【0136】
CD8+ T細胞のポリクローナル刺激
ナイーブCD8+ T細胞(CD8+CD45RA+CCR7+)をフローサイトメトリーで選別し、フローサイトメトリーによって決定された場合、ナイーブCD8+ T細胞の純度は99%よりも大きかった。T細胞拡大増殖および活性化のためのDynabeads(登録商標)ヒトT-Activator CD3/CD28(Life Technologies)を使用して1:4のビーズ:細胞比でCD8+ T細胞を活性化した。
【0137】
定住メモリーT細胞のインビトロ誘導
選別されたナイーブCD8+ T細胞(CD8+CD45RA+CCR7+)を、T細胞拡大増殖および活性化のためのDynabeads(登録商標)ヒトT-活性化因子CD3/CD28(Life Technologies)を使用して、1:4のビーズ:細胞比で、2% O2中で活性化した。4日後、1.25ng/mL 組み換えTGF-β1を添加した。さらに2日後、T細胞を回収し、下流の分析の前に磁石を使用してビーズを取り出した。
【0138】
レトロウイルス感染
293GPパッケージング細胞株においてレトロウイルス上清を産生した。簡潔には、Lipofectamine 3000を使用して、70%コンフルエントの293GP 10cmプレートにMSGVベクタープラスミド 10μgおよびRD114エンベローププラスミドDNA 5μgを共トランスフェクトした。トランスフェクション後1日目に培地を交換した。3日目に、ウイルス上清を収集し、遠心分離して、細胞デブリを除去し、将来使用するために-80℃で凍結した。健康なドナーのPBMC(HLA-A*0201)を解凍し、30ng/mL 抗CD3(OKT3)および300U/ml IL-2を用いて同じ日に活性化した。3日後に、活性化T細胞に32℃および2,000gで2hの遠心分離によってレトロウイルス上清を形質導入し、次いで、テトラマー陽性CD8+ T細胞について選別する前にさらに3日間培養した。
【0139】
CRISPR-Cas9のノックアウト
P3 Primary Cell 4D-Nucleofector X Kit S(Lonza)を使用する一過性Cas9/gRNAリボ核タンパク質(RNP)複合体エレクトロポレーションによってCRISPR-Cas9遺伝子ノックアウトを行った。選別されたTCR-Tまたは活性化ナイーブCD8+ T細胞を洗浄し、反応物20μlあたり細胞1×106個でP3緩衝液中に再懸濁した。反応あたり40pmolの組み換えSpCas9タンパク質および80pmolの化学修飾された合成sgRNA(2:1モル比のgRNA:Cas9)を室温で15分間予備複合体化して、RNP複合体を作製した。細胞懸濁液20μlをRNPと混合し、16ウェルキュベットストリップにおいてEH-115プロトコルを使用してエレクトロポレーションした。細胞を37℃で15分間回収し、次いで、300U/ml IL-2中で培養した。
【0140】
細胞培養および迅速拡大増殖プロトコル(REP)
CD8+ T細胞のための培地は、RPMI1640、10% FBS、4mM グルタミン、および2-メルカプトエタノールであった。REPのために、30ng/mL 抗CD3(OKT3)を使用してCTL株を拡大増殖させ、フィーダー細胞としての同種PBMCまたはLCLは、200x照射した。培養物に50U/mlのIL-2を3日毎に供給した。14日後に、拡大増殖された細胞をさらなる分析に供した。Mel526細胞をRPMI1640、10% FBS、4mM グルタミン、1×非必須アミノ酸、1mM ピルビン酸ナトリウム、および1% ペニシリン/ストレプトマイシン中で培養した。PCRベースの検査を使用してマイコプラズマについてすべての細胞を検査し、1ヶ月以内に、凍結保存された保存バイアルを解凍後に使用した。
【0141】
フローサイトメトリー
培養中の特定の時点で、CD8、LAP、CD103、CD69、IL-2、IFN-γ、TNF-αもしくはグランザイムBに対する抗体またはMHC-I-gp100ペプチドテトラマーを用いて細胞を染色した。細胞内サイトカイン染色のために、ブレフェルジンAの存在下、抗CD3/CD28ビーズで細胞を16時間再刺激し、染色前に固定し、透過処理した。NovocyteフローサイトメータですべてのFACSデータを取得し、FlowJoソフトウェア(Tree Star, Inc.)で解析した。
【0142】
クロム放出アッセイ
腫瘍標的細胞を100μCi 51Crで2時間標識した。洗浄後、標識された腫瘍標的細胞を96ウェルV底プレートに2,000個/ウェルで蒔き(4回の繰り返し)、20,000個のTCR-T細胞と共に様々なエフェクター:腫瘍(E:T)比で4時間インキュベートした。陰性対照は、エフェクターT細胞を有しない標識腫瘍標的細胞であり、陽性対照は、トリパン溶解緩衝液(0.4% トリパンブルー、10% ノニデットP40)と共にインキュベートされた腫瘍標的細胞であった。次いで、各ウェルからの上清30μlを収集し、上清中の51Crの量をMicroBeta Microplateカウンター(PerkinElmer)で測定し、死滅効率を、%死滅=100%×(試料平均-陰性対照の平均)/(陽性対照の平均-陰性対照の平均)として計算した。
【0143】
統計解析
GraphPad Prism(バージョン7, GraphPad software, San Diego, CA)およびExcelを使用してデータのグラフ表示および統計解析を行った。平均およびSTDとしてデータを表示した。スチューデントのt検定を使用して実験群間の結果を比較した。p<0.05を統計的に有意と見なした。統計的有意性を、* p<0.05、** p<0.01として表示する。
【0144】
本明細書において開示および請求された方法のすべては、本開示に照らして過度の実験なしに作製および実行することができる。本発明の組成物および方法を特定の態様により説明したが、本発明の概念、精神および範囲から逸脱せずに、本明細書に記載される方法および方法の段階または段階の順序に変更が適用され得ることが、当業者に明らかであろう。より具体的には、化学的および生理学的の両方で関係する特定の作用物質が、本明細書に記載される作用物質の代わりにされる場合があり、それでも同じまたは類似の結果が達成されることが明らかである。当業者に明らかなこのような類似の置換および改変は、すべて、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲および概念内であるとみなされる。
【0145】
参考文献
本明細書に開示される参考文献は、それらが本明細書に示されるものを補足する例示的な手順の詳細またはその他の詳細を提供する程度に、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
【配列表】
【国際調査報告】