(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ウイルスワクチン
(51)【国際特許分類】
C12N 15/50 20060101AFI20240416BHJP
C12N 7/04 20060101ALI20240416BHJP
C07K 14/165 20060101ALI20240416BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20240416BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240416BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240416BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C12N15/50 ZNA
C12N7/04
C07K14/165
A61K39/215
A61P31/14
A61P37/04
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564119
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2022060417
(87)【国際公開番号】W WO2022223617
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/060273
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522021206
【氏名又は名称】ビオンテック・ソシエタス・エウロパエア
【氏名又は名称原語表記】BioNTech SE
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】シャヒン,ウール
(72)【発明者】
【氏名】ムイク,アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA45
4C084AA13
4C084MA41
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB331
4C085AA03
4C085BA71
4C085CC08
4C085DD62
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、ウイルス感染予防または処置の分野に関し、特に、本開示は、ウイルス感染に対してワクチン接種し、抗体および/またはT細胞応答などの有効なウイルス抗原特異的免疫応答を誘導するための薬剤ならびにこのような薬剤を作製および使用する方法に関する。ここに開示するRNAなどの薬剤の対象への投与は、ウイルス感染にから該対象を保護し得る。具体的に、本開示は、ウイルスタンパク質の他のバリアントにおいて見出されるアミノ酸修飾を有するウイルスタンパク質の少なくとも一部分を含むアミノ酸配列に関する。アミノ酸配列のうち1つまたは複数をコードするRNAの投与は、多様なウイルスバリアントに対する保護を提供し得る。ここに記載する方法および薬剤は、特に、コロナウイルス感染、例えば、SARS-CoV-2感染の予防または処置にとって有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置と比較して修飾されている、親のSARS-CoV-2スパイクタンパク質(Sタンパク質)におけるアミノ酸位置を同定する工程、および
b)親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含み、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメント中のアミノ酸位置が、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、アミノ酸配列、または修飾されたアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を提供する工程
を含む方法。
【請求項2】
工程b)を反復して、修飾されたアミノ酸配列のうち2もしくはそれ以上、または修飾されたアミノ酸配列のうち2もしくはそれ以上をコードするヌクレオチド配列のうち2もしくはそれ以上を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2つまたはそれ以上の修飾されたアミノ酸配列が、同一の親のSARS-CoV-2 Sタンパク質に基づく、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
2つまたはそれ以上の修飾されたアミノ酸配列中のアミノ酸修飾が、少なくとも部分的に異なっている、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
ヌクレオチド配列を提供することが、
b’)親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列のコドンを、他のコドンと置換して、修飾されたアミノ酸配列をコードする変異されたヌクレオチド配列を得る工程であって、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメント中のアミノ酸位置が、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、工程
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程b’)を反復して、修飾されたアミノ酸配列のうち2またはそれ以上をコードする変異されたヌクレオチド配列のうち2またはそれ以上を提供することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
2つまたはそれ以上の修飾されたアミノ酸配列が、同一の親のSARS-CoV-2 Sタンパク質に基づく、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
2つまたはそれ以上の修飾されたアミノ酸配列中のアミノ酸修飾が、少なくとも部分的に異なっている、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
a)1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置と比較して修飾されている親のSARS-CoV-2スパイクタンパク質(Sタンパク質)中のアミノ酸位置を同定する工程、
b)親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする第1のヌクレオチド配列のコドンを、他のコドンと置換して、修飾されたアミノ酸配列をコードする第1の変異されたヌクレオチド配列を得る工程であって、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメント中のアミノ酸位置が、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、工程、および
c)親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする第2のヌクレオチド配列のコドンを、他のコドンと置換して、修飾されたアミノ酸配列をコードする第2の変異されたヌクレオチド配列を得る工程であって、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメント中のアミノ酸位置が、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、工程
を含み、
b)におけるアミノ酸修飾が、c)におけるアミノ酸修飾とは少なくとも部分的に異なっている、方法。
【請求項10】
第1のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列中に含まれる親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントと、第2のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列中に含まれる親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントが、同一である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第1のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と、第2のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列が、同一である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列が、同一である、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
第1の変異されたヌクレオチド配列によってコードされる修飾されたアミノ酸配列中の修飾されたアミノ酸位置のうち1つまたは複数が、第2の変異されたヌクレオチド配列によってコードされる修飾されたアミノ酸配列中の修飾されたアミノ酸位置とは異なる、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
第1の変異されたヌクレオチド配列によってコードされる修飾されたアミノ酸配列中の、および第2の変異されたヌクレオチド配列によってコードされる修飾されたアミノ酸配列中の、修飾された修飾アミノ酸位置中の1つまたは複数のアミノ酸が、互いに異なる、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列が、SARS-CoV-2 Sタンパク質のN末端ドメイン(NTD)および/または受容体結合ドメイン(RBD)のアミノ酸配列を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列が、全長SARS-CoV-2 Sタンパク質のアミノ酸配列を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
修飾されたアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供することをさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
修飾されたアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むワクチンを提供することをさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
核酸がRNAである、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
SARS-CoV-2ワクチンを生成する方法である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ワクチンがRNAワクチンである、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ワクチンが、免疫回避のリスクが低減している、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
修飾されたアミノ酸位置のうち1つまたは複数が、SARS-CoV-2 Sタンパク質のN末端ドメイン(NTD)および/または受容体結合ドメイン(RBD)内に位置する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
修飾されたアミノ酸位置が、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントのアミノ酸配列が親のSARS-CoV-2 Sタンパク質のアミノ酸配列とは異なっているアミノ酸位置である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
修飾されたアミノ酸位置が、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントのアミノ酸配列が野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質のアミノ酸配列とは異なっているアミノ酸位置である、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
修飾されたアミノ酸位置が、SARS-CoV-2の回避変異体の可能性のある部位である、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
SARS-CoV-2の回避変異体が、SARS-CoV-2の抗体回避変異体である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
SARS-CoV-2の回避変異体が、SARS-CoV-2 Sタンパク質に対する抗体による中和に対して耐性である、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
SARS-CoV-2の回避変異体のSARS-CoV-2 Sタンパク質が、抗体結合の低減を示す、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
抗体が、SARS-CoV-2に感染した患者の処置のために使用される、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
抗体が、SARS-CoV-2ワクチンを用いて処置された患者において生成される、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
親のSARS-CoV-2 Sタンパク質が、野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質と比較して修飾されている、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
修飾されたアミノ酸配列において、野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質と比較して修飾されている親のSARS-CoV-2 Sタンパク質中のアミノ酸位置が修飾されていない、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
親のSARS-CoV-2 Sタンパク質が、親のSARS-CoV-2株のSタンパク質である、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
親のSARS-CoV-2株が、天然単離株である、または親のSARS-CoV-2株が、天然単離株の変異体である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
親のSARS-CoV-2株が、流行しているまたは迅速に広がっているSARS-CoV-2バリアント株である、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
親のSARS-CoV-2株が、懸念されるバリアントであるSARS-CoV-2 バリアントである、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
親のSARS-CoV-2株が、B.1.1.7である、請求項34~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントが、野生型 SARS-CoV-2 Sタンパク質と比較して修飾されている、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントが、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質と比較して修飾されている、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
修飾されたアミノ酸配列において、野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質および/または親のSARS-CoV-2 Sタンパク質と比較して修飾されている1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアント中のアミノ酸位置が修飾されている、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントのうち1つまたは複数が、1つまたは複数の SARS-CoV-2株のSタンパク質である、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
1つもしくは複数のSARS-CoV-2株のうち1つもしくは複数が、天然単離株である、または1つもしくは複数のSARS-CoV-2株のうち1つもしくは複数が、天然単離株の変異体である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
1つまたは複数のSARS-CoV-2株のうち1つまたは複数が、流行しているまたは迅速に広がっているSARS-CoV-2バリアント株である、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
1つまたは複数のSARS-CoV-2株のうち1つまたは複数が、懸念されるバリアントであるSARS-CoV-2バリアント株である、請求項42~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
1つまたは複数のSARS-CoV-2株のうち1つまたは複数が、B.1.351、B.1.1.298、B.1.427/B.1.429、B.1.526およびP1からなる群から選択される、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
親のSARS-CoV-2株および1つまたは複数のSARS-CoV-2株が、流行しているまたは迅速に広がっているSARS-CoV-2バリアント株である、請求項42~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
親のSARS-CoV-2株および1つまたは複数のSARS-CoV-2株が、懸念されるバリアントであるSARS-CoV-2 バリアント株である、請求項42~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
親のSARS-CoV-2 Sタンパク質および1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントが、野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質と比較して修飾されている、請求項1~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
親のSARS-CoV-2株がB.1.1.7であり、1つまたは複数のSARS-CoV-2株が、B.1.351、B.1.1.298、B.1.427/B.1.429、B.1.526およびP1からなる群から選択される、請求項42~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントが、少なくとも2つのSARS-CoV-2株のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントを含む、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
b)における1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントが、c)における1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントとは異なっている、請求項9~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
b)における1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントが、B.1.427/B.1.429およびB.1.526のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントであり、c)における1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントが、B.1.351、P.1およびB.1.1.298のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントである、請求項9~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
修飾されたアミノ酸配列において、野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質と比較した親のSARS-CoV-2 Sタンパク質中のアミノ酸修飾が、修飾されたアミノ酸位置におけるアミノ酸修飾に干渉しない、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
修飾されたアミノ酸配列において、野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質と比較した親のSARS-CoV-2 Sタンパク質中のアミノ酸修飾は、修飾されたアミノ酸位置中のアミノ酸修飾に対して近接した空間距離にない、請求項1~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
修飾されたアミノ酸配列において、修飾されたアミノ酸位置における修飾が、大きな構造転位をもたらさない、請求項1~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
修飾されたアミノ酸位置におけるアミノ酸が、表面に露出している、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
修飾されたアミノ酸位置が、少なくとも2つのアミノ酸位置を含む、請求項1~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
b)およびc)における修飾されたアミノ酸位置が各々、少なくとも2つのアミノ酸位置を含む、請求項9~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
修飾されたアミノ酸位置が、
18、20、26、80、138、144、190、215、246、253、417、439、452、453、477、484、501、570、701、716、
140、345、346、352、378、406、420、440、441、444、445、446、450、455、460、475、478、485、486、487、489、490、493、494、499、
142、145、146、147、150、152、154、156、157、158、164、247、248、249、250、251、252、254、255、258、365、369、370、374、376、384、405、408、415、421、443、447、448、456、472、473、476、496、498、500、504
からなる群から選択される2つ以上を含む、請求項1~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
修飾されたアミノ酸位置における修飾が、
18F、20N、26S、80Y、138Y、144F、190S、215A、246I、253G、417N、439K、452R、453F、477N、484K、501Y、570D、701V、716I、
140L、345A、346K、352S、378N、406Q、420、440K、441F、444、445A、446V、450K、455F、460I、475V、478I、485V、486L、487D、489、490S、493L、494P、499H、
142S、145H、146Y、147N、150R、152C、154Q、156A、157L、158G、164T、247G、248H、249S、250N、251S、252V、254F、255F、258L、365D、369C、370S、374L、376I、384L、405Y、408I、415N、421、443A、447V、448Y、456L、472V、473F、476S、496C、498H、500I、504D
からなる群から選択される2つ以上を含む、請求項1~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
修飾されたアミノ酸位置における修飾が、
L18F、T20N、P26S、D80Y、D138Y、Y144F、R190S、D215A、R246I、D253G、K417N、N439K、L452R、Y453F、S477N、E484K、N501Y、A570D、A701V、T716I、
F140L、T345A、R346K、A352S、K378N、E406Q、D420、N440K、L441F、K444、V445A、G446V、N450K、L455F、N460I、A475V、T478I、G485V、F486L、N487D、Y489、F490S、Q493L、S494P、P499H、
G142S、Y145H、H146Y、K147N、K150R、W152C、E154Q、E156A、F157L、R158G、N164T、S247G、Y248H、L249S、T250N、P251S、G252V、S254F、S255F、W258L、Y365D、Y369C、N370S、F374L、T376I、P384L、D405Y、R408I、T415N、Y421、S443A、G447V、N448Y、F456L、I472V、Y473F、G476S、G496C、Q498H、T500I、G504D
からなる群から選択される2つ以上を含む、請求項1~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
a)親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする第1のヌクレオチド配列を含む核酸を提供する工程であって、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメント中のアミノ酸位置が、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、工程、および
b)親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする第2のヌクレオチド配列を含む核酸を提供する工程であって、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメント中のアミノ酸位置が、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、工程
を含み、
b)におけるアミノ酸修飾が、a)におけるアミノ酸修飾とは少なくとも部分的に異なっている、方法。
【請求項64】
核酸がRNAである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
a)親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする第1のヌクレオチド配列を含む核酸であって、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントにおけるアミノ酸位置が、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、核酸、および
b)親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする第2のヌクレオチド配列を含む核酸であって、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントにおけるアミノ酸位置が、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、核酸
を含み、
b)におけるアミノ酸修飾が、a)におけるアミノ酸修飾とは少なくとも部分的に異なっている、医薬製剤。
【請求項66】
核酸がRNAである、請求項65に記載の医薬製剤。
【請求項67】
RNAが、脂質ナノ粒子(LNP)に製剤化されている、請求項66に記載の医薬製剤。
【請求項68】
医薬組成物である、請求項65~67のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項69】
ワクチンである、請求項65~68のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項70】
キットである、請求項65~69のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項71】
SARS-CoV-2感染に対するワクチン接種のための医薬製剤の使用上の指示をさらに含む、請求項70に記載の医薬製剤。
【請求項72】
医薬用途のための、請求項65~71のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項73】
医薬用途が、SARS-CoV-2感染に対するワクチン接種を含む、請求項72に記載の医薬製剤。
【請求項74】
対象においてSARS-CoV-2に対する免疫応答を誘導する方法であって、対象に請求項65~73のいずれか一項に記載の医薬製剤を投与することを含む、方法。
【請求項75】
SARS-CoV-2感染に対する予防的処置のための方法である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
SARS-CoV-2感染に対するワクチン接種のための方法である、請求項74または75に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウイルス感染予防または処置の分野に関する。特に、本開示はウイルス感染に対してワクチン接種し、抗体および/またはT細胞応答などの有効なウイルス抗原特異的免疫応答を誘導するための薬剤ならびにこのような薬剤を作製および使用するための方法に関する。ここに開示するRNAなどの薬剤の対象への投与はウイルス感染に対して該対象を保護し得る。具体的に、本開示は、ウイルスタンパク質の他のバリアントにおいて見出されるアミノ酸修飾を有するウイルスタンパク質の少なくとも一部分を含むアミノ酸配列に関する。アミノ酸配列のうち1つまたは複数をコードするRNAの投与は、多様なウイルスバリアントに対する保護を提供し得る。ここに記載する方法および薬剤は、特に、コロナウイルス感染、例えば、SARS-CoV-2感染の予防または処置にとって有用である。
【0002】
ウイルスが複製するにつれ、その遺伝子はランダムな「コピーエラー」(すなわち、遺伝子変異)を起こす。経時的に、これらの遺伝子コピーエラーは、ウイルスに対する他の変化の中でも、ウイルスの表面タンパク質または抗原の変更につながる可能性がある。遺伝子変異によって、ウイルス抗原が「ドリフト」を引き起こす場合がある-変異ウイルスの表面が元のウイルスとは異なって見えることを意味する。ウイルスドリフトが十分である場合には、ウイルスの古い株に対するワクチンおよびこれまでのウイルス感染からの免疫性は、新しい、ドリフト株に対してもはや有効ではない場合がある。そのため、人々は、より新しい、変異されたウイルスに対して脆弱となる場合がある。
【背景技術】
【0003】
コロナウイルスはスパイクタンパク質、エンベロープタンパク質(E)、膜タンパク質(M)およびヌクレオカプシドタンパク質(N)の計4構造タンパク質をコードする、プラス鎖、一本鎖RNA((+)ssRNA)エンベロープウイルスである。スパイクタンパク質(Sタンパク質)は受容体認識、細胞への付着、エンドソーム経路を介する感染およびウイルスとエンドソーム膜の融合により駆動されるゲノム放出を担う。異なるファミリーメンバー間の配列は変わるが、Sタンパク質内に保存領域およびモチーフがあり、それによりSタンパク質をS1およびS2の2サブドメインに分割することが可能となる。S2はその膜貫通ドメインと共に、膜融合を担うが、S1ドメインはウイルス特異的受容体を認識し、標的宿主細胞と結合する。数コロナウイルス単離株内で、受容体結合ドメイン(RBD)が同定され、Sタンパク質の一般構造が定義された(
図1)。
【0004】
2019年12月、中国の武漢で原因不明の肺炎の大流行が起こり、新規コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2;SARS-CoV-2)が根本原因であることが明らかとなった。SARS-CoV-2の遺伝子配列はWHOで利用できるようになり、公開(MN908947.3)され、該ウイルスはベータコロナウイルスサブファミリーに分類された。配列分析により、系統樹はヒトに感染する他のコロナウイルスよりも重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス単離株、すなわち中東呼吸器症候群(MERS)ウイルスとの密接な関係を明らかにした。
【0005】
SARS-CoV-2感染およびその結果生じる疾患COVID-19は、世界的に広がり、ますます多くの国々に影響を及ぼしている。2020年3月11日に、WHOはCOVID-19大流行をパンデミックと特徴づけた。2020年12月1日の時点で、世界中で6300万人超がCOVID-19の症例と確認され、140万人超が死亡し、191の国/地域が影響を受けている。現在進行中のパンデミックは、依然として世界中の公衆衛生と経済の安定に対する重大な課題となっている。
【0006】
SARS-CoV-2に対する既存の免疫性はないので、すべての個体が感染のリスクにある。感染後、すべての個体ではなく一部は、中和抗体応答および細胞介在免疫性の観点から感染防御免疫を発生する。しかし、この保護がどの程度およびどれほど長く持続するかは現在知られていない。WHOによれば、感染個体の80%は、入院治療を必要とせずに回復するが、15%はより重症の疾患を発症し、5%は集中治療を必要とする。年齢が高いことおよび医学的状態下にあることは、重症の疾患を発症するリスク因子と考えられる。
【0007】
COVID-19の症状は、一般に、咳および発熱を伴い、胸部X線撮影ではすりガラス状の陰影や斑状の陰影を示す。しかし、多数の患者は発熱またはX線撮影変化を呈さず、感染は無症候性である場合があり、これは、伝播の制御に関連する。症候性の対象については、疾患の進行は、人工呼吸を必要とする急性呼吸窮迫症候群およびその後の多臓器不全および死亡につながる場合がある。入院患者における一般的な症状として(最高から最低頻度の順で)、発熱、乾性咳、息切れ、疲労、筋肉痛、悪心/嘔吐または下痢、頭痛、脱力感および鼻漏が挙げられる。嗅覚消失(嗅覚の喪失)または味覚消失(味覚の喪失)は、COVID-19を有する個体のおよそ3%における唯一の主症状であり得る。
【0008】
すべての年齢が疾患を呈し得るが、特に、致死率(CFR)は60歳を超える人では高い。心血管疾患、糖尿病、高血圧症および慢性呼吸器疾患を含む併存疾患もCFRの増大と関連する。感染患者に対する職業的曝露のためにCOVID-19患者の中では医療従事者が大きな比率を占めている。
【0009】
ほとんどの状況において、SARS-CoV-2を検出するため、および感染を確認するために分子検査が使用される。SARS-CoV-2ウイルスRNAを標的とする逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査法は、COVID-19の疑いのある症例を診断するための標準的なインビトロ法である。検査されるべき試料は、鼻および/または咽頭からスワブで収集される。
【0010】
SARS-CoV-2は、4つの構造タンパク質を有するRNAウイルスである。そのうち1つであるスパイクタンパク質は、宿主細胞上に存在するアンギオテンシン変換酵素2(ACE-2)に結合する表面タンパク質である。したがって、スパイクタンパク質は、ワクチン開発のための関連抗原と考えられている。
【0011】
BNT162b2は、COVID-19の予防のためのmRNAワクチンであり、COVID-19の予防で95%以上の有効性を実証した。ワクチンは、脂質ナノ粒子(LNP)中に封入された全長SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質(S)をコードする5’キャップmRNAでできている。最終生成物は、活性物質としてBNT162b2を含有する注射用分散物の濃縮物として提示される。他の成分として以下がある:ALC-0315(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)、ALC-0159(2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、コレステロール、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、塩化ナトリウム、リン酸二ナトリウム二水和物、スクロースおよび注射水。
【0012】
Sタンパク質の配列は、プログラムが開始される時点で入手可能であった「SARS-CoV-2単離株武漢-Hu-1」の配列:GenBank: MN908947.3(完全ゲノム)およびGenBank: QHD43416.1(スパイク表面糖タンパク質)に基づいて選択された。活性物質は、SARS-CoV-2のスパイク抗原に翻訳される、一本鎖の5’キャップコドン最適化mRNAからなる。タンパク質配列は、抗原的に最適な融合前確認を確実にする2つのプロリン変異(P2 S)を含有する。RNAは、ウリジンを全く含有せず、ウリジンの代わりにRNA合成において修飾N1-メチルシュードウリジンが使用される。RNAは、高いRNA安定性および翻訳効率を媒介するために最適化された一般的な構造要素を含有する。LNPは、RNAをRNAseによる分解から保護し、筋肉内(IM)デリバリー後の宿主細胞のトランスフェクションを可能にする。mRNAは宿主細胞においてSARS-CoV-2 Sタンパク質に翻訳される。次いで、Sタンパク質が細胞表面上に発現され、そこで、適応免疫応答を誘導する。Sタンパク質は、ウイルスに対する中和抗体の標的として同定されており、したがって、関連ワクチン構成成分と考えられる。BNT162b2は、21日空けて投与される2回の30μg用量の希釈ワクチン溶液で筋肉内に(IM)投与される。
【0013】
SARS-CoV-2の新規循環バリアントが最近出現したために、ワクチン介入の地域的および時間的有効性について重大な懸念が生じている。出現し、急速に世界的に優勢となった最も初期のバリアントの1つにD614Gがあった。さらに、英国における最近のゲノム調査によって、B.1.1.7と呼ばれる(VOC-202012/01または501Y.V1としても知られる)新規系統の急速な拡大増殖が示された。B.1.1.7は、スパイク中に、ACE2受容体結合ドメイン(RBD)中のD614GならびにN501Yを含む3つのアミノ酸の欠失および7つのミスセンス変異を有する。それは、複数の国において、本質的により感染性であり、他のSARS-CoV-2系統よりも40~70%高いと推定されている成長速度を有すると示されている(Volz et al., 2021, Nature, https://doi.org/10.1038/s41586-021-03470-x; Washington et al., 2021, Cell https://doi.org/10.1016/j.cell.2021.03.052)。
【0014】
研究によって、BNT162b2ワクチンによって誘発されたヒト血清がB.1.1.7バリアントを交差中和することが実証され、これは、以前の感染または野生型SARS-CoV-2を用いるワクチン接種が、B.1.1.7バリアントに対する保護を依然として提供し得ることを示唆した(Muik A. et al., 2021、Science 371(6534):1152-1153)。
【0015】
RBD中の2個のアミノ酸の欠失およびY453Fを含む4つのミスセンス変異を有する、ミンククラスター5またはB.1.1.298と呼ばれるバリアントによる、デンマークにおけるヒトとミンクとの間のSARS-CoV-2伝播のレポートもある。
【0016】
B.1.427/B.1.429と名付けられた、米国、カリフォルニア州において最近出現した他のバリアントは、スパイク中に4つのミスセンス変異を含有し、そのうちの1つは単一L452R RBD変異である。
【0017】
P.2(3つのスパイクミスセンス変異を有する)およびP.1(12のスパイクミスセンス変異を有する)と呼ばれるブラジルおよび日本において最初に記載されたB.1.1.28系統から生じている新規バリアントは、RBD中にE484K変異を含有し、これは、特に懸念されており、P.1はまた、特に、RBD中にK417TおよびN501Y変異を含有する。
【0018】
南アフリカで最初に報告され、その後世界中に広がったB.1.351系統(501Y.V2とも呼ばれる)の複数の株の出現は、大きな懸念となっている。この系統は、RBDの外側のいくつかの変異に加えて3つのRBD変異、K417N、E484KおよびN501Yを有する。BNT162b2によって誘発された血清を使用して、USA-WA1/2020株の中和と比較して、B.1.1.7-スパイクおよびP.1-スパイクウイルスの中和はおよそ同等であり、B.1.351-スパイクウイルスの中和は、頑強であるがより低いことが報告された(Liu Y. et al., 2021, N Engl J Med., doi: 10.1056/NEJMc2102017. Epub ahead of print. PMID: 33684280)。免疫応答を少なくとも部分的に回避すると思われる新規バリアントの出現を考慮して、SARS-CoV-2のバリアントに対して有効であるワクチンが必要がある。
【0019】
本開示は、多様なウイルスタンパク質バリアントのエピトープを含むワクチンおよびこのようなワクチンを提供する方法を提供する。既存のワクチンを異なるウイルスバリアントの多様なウイルスタンパク質配列またはコーディング核酸を含むように再製剤化する代わりに、ここに記載される戦略は、制限された数の分子上の異なるウイルスバリアントの多様なエピトープを組み合わせることに基づいている。これによって、有効な免疫応答を誘導する各エピトープの十分に高い用量を達成しながら、相対的に低用量の有効成分、特に、mRNAの投与が可能となる。ここに記載するワクチンは、広く中和する抗体を誘発することが可能であり、したがって、進行中のSARS-CoV-2パンデミックを解決するのに適しているということが想定される。
【発明の概要】
【0020】
概要
本発明は、一般に、ウイルスタンパク質の異なるバリアントのエピトープが単一分子上で組み合わされているワクチンに関する。このような分子は、ウイルスタンパク質の他のバリアント中に存在するアミノ酸修飾を含むウイルスタンパク質の少なくとも一部分を含む。修飾は、このような他のウイルスタンパク質バリアントに対して特異的である(さらなる)エピトープを生成する。したがって、ここに記載する修飾されたウイルスタンパク質配列は、多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列である。ある実施態様において、多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列は、修飾された全長ウイルスタンパク質である。ある実施態様において、多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列は、ウイルスタンパク質の修飾された部分である。
【0021】
一部の実施態様において、ここに提供される多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列は、複数(例えば、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10などを含む、例えば、少なくとも2以上)のウイルスタンパク質バリアントからの免疫反応性エピトープ((修飾された)アミノ酸残基)、例えば、親ウイルスタンパク質からの免疫反応性エピトープおよびさらに親ウイルスタンパク質とは異なっている1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントからの免疫反応性エピトープを含み得る。種々の実施態様において、ここに提供される多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列は、親ウイルスタンパク質とは異なっている1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントからのすべての免疫反応性エピトープ((修飾された)アミノ酸残基)またはその一部分を含み得る。種々の実施態様において、ここに提供される多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列は、親ウイルスタンパク質とは異なっている1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントからの複数(例えば、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10などを含む、例えば、少なくとも2以上)の免疫反応性エピトープ((修飾された)アミノ酸残基)を含み得る。
【0022】
一部の実施態様において、多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列を含むアミノ酸配列は、DNAまたはRNA、特に、RNAなどの核酸によってコードされる。一部の実施態様において、各々が多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列を含む複数のアミノ酸配列は、DNAまたはRNA、特に、RNAなどの核酸によってコードされる。一部の実施態様において、各々が多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列を含む複数のアミノ酸配列は、複数の核酸分子、例えば、DNAまたはRNA分子、特に、RNA分子によってコードされる。
【0023】
RNAウイルスなどのウイルスの遺伝的多様性を考慮すると、複数のウイルスバリアントに対する保護を提供するために、ここに記載する多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列を含むアミノ酸配列およびこれらのアミノ酸配列をコードする核酸は特に有用である。ここに記載する多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列を含むアミノ酸配列およびこれらのアミノ酸配列をコードする核酸は、多様なおよび/または他の点で頑強な(例えば、永続性、例えば、1回または複数回用量の投与後約5日、10日、15日、20日、25日、30日、35日、40日、45日、50日、55日、60日またはそれ以上検出可能な)中和抗体および/またはT細胞応答、例えば、TH1型T細胞(例えば、CD4+および/またはCD8+T細胞)応答を獲得する機会を提供し得る。制限された数の構築物中の、ここに記載する多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列を含むアミノ酸配列および該アミノ酸配列をコードする核酸は、複数(例えば、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10などを含む、例えば、少なくとも2以上)のウイルスバリアント株を広く、および特異的に中和し、さまざまなウイルスバリアント株に対する防御免疫応答を生成する可能性を有する免疫応答、特に、抗体応答を誘発すると予測される。一般に、制限された数の構築物は、異なるウイルスタンパク質バリアントの数よりも少ないいくつかの分子(タンパク質および/または核酸分子)、例えば、1、2、3または4分子を含み、その結果、各分子は、複数のウイルスタンパク質バリアントに対応するエピトープ配列を含む。一般に、ここに記載する多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列、すなわち、ワクチン抗原を含むアミノ酸配列およびこれらのアミノ酸配列をコードする核酸は、対象の免疫治療処置にとって有用である。ワクチン抗原は、複数のウイルスタンパク質バリアント、したがって、ウイルスバリアント株に由来する、および対象においてそれに対する免疫応答を誘導することについて特異的であるウイルスタンパク質エピトープを含む。ある実施態様において、本発明は、ここに記載するワクチン抗原のうち1つまたは複数をコードするRNAなどの核酸、すなわち、ワクチンRNAの投与を含む。ある実施態様において、本発明は、異なるワクチン抗原をコードするRNA分子などの核酸分子のうちの複数、例えば、2、3または4つの投与を含む。異なるワクチン抗原(同一の親ウイルスタンパク質配列に基づく可能性が高い)は、異なる修飾(異なるウイルス株に由来してもよい)、ひいては、異なる免疫原性スペクトルを含み得る。ワクチン抗原をコードするRNAは投与されると、標的抗原(ウイルスタンパク質、特に異なるウイルスタンパク質バリアント)またはその進行生成物に標的化される免疫応答、例えば、抗体および/または免疫エフェクター細胞の誘導、すなわち、刺激、プライミングおよび/または拡大増殖のための抗原を提供し得る(適切な標的細胞によるRNAの発現後)。ある実施態様において、本開示により誘導されるべき免疫応答はB細胞介在免疫応答、すなわち、抗体介在免疫応答である。これに加えてまたはこれとは別に、ある実施態様において、本開示により誘導されるべき免疫応答はT細胞介在免疫応答である。ある実施態様において、免疫応答は抗ウイルス免疫応答である。ある実施態様において、免疫応答は、複数のウイルス株に対して向けられる免疫応答である。
【0024】
ある態様において、本発明は、
a)1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置と比較して修飾される親ウイルスタンパク質中のアミノ酸位置を同定する工程、および
b)親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含み、親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメント中のアミノ酸位置が、1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、アミノ酸配列、または修飾されたアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を提供する工程
を含む方法に関する。
【0025】
ある実施態様において、方法は、工程b)を反復して、修飾されたアミノ酸配列のうち2もしくはそれ以上、または修飾されたアミノ酸配列のうち2もしくはそれ以上をコードするヌクレオチド配列のうち2もしくはそれ以上を提供することを含む。
【0026】
ある実施態様において、2つまたはそれ以上の修飾されたアミノ酸配列は、同一の親ウイルスタンパク質に基づく。
【0027】
ある実施態様において、2つまたはそれ以上の修飾されたアミノ酸配列中のアミノ酸修飾は、少なくとも部分的に異なっている。
【0028】
ある実施態様において、ヌクレオチド配列を提供することは、
b’)親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列のコドンを、他のコドンと置換して、修飾されたアミノ酸配列をコードする変異されたヌクレオチド配列を得る工程であって、親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメント中のアミノ酸位置が、1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、工程
を含む。
【0029】
ある実施態様において、方法は、工程b’)を反復して、アミノ酸配列のうち2もしくはそれ以上をコードする変異されたヌクレオチド配列のうち2もしくはそれ以上を提供することを含む。
【0030】
ある実施態様において、2つまたはそれ以上の修飾されたアミノ酸配列は、同一の親ウイルスタンパク質に基づく。
【0031】
ある実施態様において、2つまたはそれ以上の修飾されたアミノ酸配列中のアミノ酸修飾は、少なくとも部分的に異なっている。
【0032】
ある態様において、本発明は、
a)1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置と比較して修飾されている親ウイルスタンパク質中のアミノ酸位置を同定する工程、
b)親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする第1のヌクレオチド配列のコドンを、他のコドンと置換して、修飾されたアミノ酸配列をコードする第1の変異されたヌクレオチド配列を得る工程であって、親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメント中のアミノ酸位置が、1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、工程、および
c)親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする第2のヌクレオチド配列のコドンを、他のコドンと置換して、修飾されたアミノ酸配列をコードする第2の変異されたヌクレオチド配列を得る工程であって、親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメント中のアミノ酸位置が、1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、工程
を含み、
b)におけるアミノ酸修飾は、c)におけるアミノ酸修飾とは少なくとも部分的に異なっている、方法に関する。
【0033】
ある実施態様において、方法は、コドンを置換して少なくとも部分的に異なるアミノ酸修飾をコードする変異されたヌクレオチド配列を得る、1つまたは複数のさらなるこのような工程を含み得る。
【0034】
ある実施態様において、第1のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列中に含まれる親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメントと、第2のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列中に含まれる親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメントは、同一である。
【0035】
ある実施態様において、第1のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と、第2のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列は、同一である。
【0036】
ある実施態様において、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列は、同一である。
【0037】
ある実施態様において、第1の変異されたヌクレオチド配列によってコードされる修飾されたアミノ酸配列中の修飾されたアミノ酸位置のうち1つまたは複数は、第2の変異されたヌクレオチド配列によってコードされる修飾されたアミノ酸配列中の修飾されたアミノ酸位置とは異なる、すなわち、1つまたは複数の異なる位置が修飾される。
【0038】
ある実施態様において、第1の変異されたヌクレオチド配列によってコードされる修飾されたアミノ酸配列中の、および第2の変異されたヌクレオチド配列によってコードされる修飾されたアミノ酸配列中の、修飾された修飾アミノ酸位置中の1つまたは複数のアミノ酸は、互いに異なる、すなわち、同一位置の1つまたは複数が修飾されているが、異なるアミノ酸残基を有する。
【0039】
ある実施態様において、親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列は、全長ウイルスタンパク質のアミノ酸配列を含む。
【0040】
ある実施態様において、方法は、修飾されたアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供することをさらに含む。
【0041】
ある実施態様において、方法は、修飾されたアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むワクチンを提供することをさらに含む。
【0042】
ある実施態様において、核酸はRNAである。
【0043】
ある実施態様において、方法は、ワクチンを生成する方法である。
【0044】
ある実施態様において、ワクチンはRNAワクチンである。
【0045】
ある実施態様において、ワクチンは、免疫回避のリスクが低減している。
【0046】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸位置は、1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントのアミノ酸配列が、親ウイルスタンパク質のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸位置である。
【0047】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸位置は、1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントのアミノ酸配列が、野生型ウイルスタンパク質のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸位置である。
【0048】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸位置は、ウイルスの回避変異体の可能性のある部位である。
【0049】
ある実施態様において、ウイルスの回避変異体は、ウイルスの抗体回避変異体である。
【0050】
ある実施態様において、ウイルスの回避変異体は、ウイルスタンパク質に対する抗体の中和に対して耐性である。
【0051】
ある実施態様において、ウイルスの回避変異体のウイルスタンパク質は、抗体結合の低減を示す。
【0052】
ある実施態様において、抗体は、ウイルスに感染した患者の処置のために使用される。
【0053】
ある実施態様において、抗体は、ウイルスによる感染に対するワクチンを用いて処置されている患者において生成される。
【0054】
ある実施態様において、親ウイルスタンパク質は、野生型ウイルスタンパク質と比較して修飾されている。
【0055】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸配列において、野生型ウイルスタンパク質と比較して修飾されている親ウイルスタンパク質中のアミノ酸位置は修飾されていない。
【0056】
ある実施態様において、親ウイルスタンパク質は、親ウイルス株のウイルスタンパク質である。
【0057】
ある実施態様において、親ウイルス株は、天然単離株である、または親ウイルス株は、天然単離株の変異体である。
【0058】
ある実施態様において、親ウイルス株は、流行しているまたは迅速に広がっているウイルスバリアント株である。
【0059】
ある実施態様において、親ウイルス株は、懸念されるバリアントであるウイルスバリアントである。
【0060】
ある実施態様において、1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントは、野生型ウイルスタンパク質と比較して修飾されている。
【0061】
ある実施態様において、1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントは、親ウイルスタンパク質と比較して修飾されている。
【0062】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸配列において、野生型ウイルスタンパク質および/または親ウイルスタンパク質と比較して修飾されている、1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアント中のアミノ酸位置が修飾されている。
【0063】
ある実施態様において、1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントのうち1つまたは複数(例えば、すべて)は、1つまたは複数のウイルス株のウイルスタンパク質である。
【0064】
ある実施態様において、1つもしくは複数のウイルス株のうち1つまたは複数(例えば、すべて)は、天然単離株である、または1つまたは複数のウイルス株のうち1つもしくは複数(例えば、すべて)は、天然単離株の変異体である。
【0065】
ある実施態様において、1つまたは複数のウイルス株のうち1つまたは複数(例えば、すべて)は、流行しているまたは迅速に広がっているウイルスバリアント株である。
【0066】
ある実施態様において、1つまたは複数のウイルス株のうち1つまたは複数(例えば、すべて)は、懸念されるバリアントであるウイルスバリアント株である。
【0067】
ある実施態様において、親ウイルス株および1つまたは複数のウイルス株は、流行しているまたは迅速に広がっているウイルスバリアント株である。
【0068】
ある実施態様において、親ウイルス株および1つまたは複数のウイルス株は、懸念されるバリアントであるウイルスバリアント株である。
【0069】
ある実施態様において、親ウイルスタンパク質および1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントは、野生型ウイルスタンパク質と比較して修飾されている。
【0070】
ある実施態様において、1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントは、少なくとも2つのウイルス株のウイルスタンパク質バリアントを含む。
【0071】
ある実施態様において、b)における1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントは、c)における1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントとは異なっている。
【0072】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸配列において、野生型ウイルスタンパク質と比較した親ウイルスタンパク質中のアミノ酸修飾は、修飾されたアミノ酸位置におけるアミノ酸修飾に干渉しない。
【0073】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸配列において、野生型ウイルスタンパク質と比較した親ウイルスタンパク質中のアミノ酸修飾は、修飾されたアミノ酸位置または修飾されたアミノ酸位置中のアミノ酸修飾に対して近接した空間距離にない。
【0074】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸配列において、修飾されたアミノ酸位置における修飾は、大きな構造転位をもたらさない。
【0075】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸位置におけるアミノ酸は、表面に露出している。
【0076】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸位置は、1つまたは複数の、例えば、少なくとも2つのアミノ酸位置を含む。修飾は、1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアント/ウイルス株に対応する場合があり、親ウイルスタンパク質/ウイルス株またはその一部分と比較して1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアント/ウイルス株中に存在するすべての修飾を包含し得る。
【0077】
ある実施態様において、b)およびc)における修飾されたアミノ酸位置は各々、1つまたは複数の、例えば、少なくとも2つのアミノ酸位置を含む。
【0078】
ある態様において、本発明は、
a)親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする第1のヌクレオチド配列を含む核酸を提供する工程であって、親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメント中のアミノ酸位置が、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、工程、および
b)親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする第2のヌクレオチド配列を含む核酸を提供する工程であって、親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメント中のアミノ酸位置が、1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、工程
を含み、
b)におけるアミノ酸修飾は、a)におけるアミノ酸修飾とは少なくとも部分的に異なっている、方法に関する。
【0079】
ある実施態様において、方法は、少なくとも部分的に異なるアミノ酸修飾をコードする核酸を提供する、1つまたは複数のさらなるこのような工程を含み得る。
【0080】
ある実施態様において、核酸はRNAである。
【0081】
さらなる実施態様をここに記載する。
【0082】
ある態様において、本発明は、
a)親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする第1のヌクレオチド配列を含む核酸であって、親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメントにおけるアミノ酸位置が、1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、核酸、および
b)親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする第2のヌクレオチド配列を含む核酸であって、親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメントにおけるアミノ酸位置が、1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、核酸
を含み、
b)におけるアミノ酸修飾は、a)におけるアミノ酸修飾とは少なくとも部分的に異なっている医薬製剤に関する。
【0083】
ある実施態様において、医薬製剤は、少なくとも部分的に異なるアミノ酸修飾をコードする1つまたは複数のさらなる核酸を含み得る。
【0084】
ある実施態様において、核酸はRNAである。
【0085】
ある実施態様において、RNAは、脂質ナノ粒子(LNP)に製剤化されている。
【0086】
ある実施態様において、医薬製剤は医薬組成物である。
【0087】
ある実施態様において、医薬製剤はワクチンである。
【0088】
ある実施態様において、医薬製剤はキットである。
【0089】
ある実施態様において、医薬製剤は、ウイルスによる感染に対するワクチン接種のための医薬製剤の使用上の指示をさらに含む。
【0090】
ある態様において、本発明は、医薬用途のための医薬製剤に関する。
【0091】
ある実施態様において、医薬用途は、ウイルスによる感染に対するワクチン接種を含む。
【0092】
ある態様において、本発明は、対象に医薬製剤を投与することを含む、対象におけるウイルスに対する免疫応答を誘導する方法に関する。
【0093】
ある実施態様において、方法は、ウイルスによる感染に対する予防的処置のための方法である。
【0094】
ある実施態様において、方法は、ウイルスによる感染に対するワクチン接種のための方法である。
【0095】
上記の態様のさらなる実施態様は、ここに記載するとおりである。
【0096】
ある実施態様において、ここに記載するウイルスは、SARS-CoV-2である。ある実施態様において、ここに記載するウイルスタンパク質は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(Sタンパク質)である。
【0097】
ある態様において、本発明は、
a)1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置と比較して修飾されている、親のSARS-CoV-2スパイクタンパク質(Sタンパク質)におけるアミノ酸位置を同定する工程、および
b)親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含み、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメント中のアミノ酸位置が、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、アミノ酸配列、または修飾されたアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を提供する工程
を含む方法に関する。
【0098】
ある実施態様において、方法は、工程b)を反復して、修飾されたアミノ酸配列のうち2もしくはそれ以上、またはい修飾されたアミノ酸配列のうち2もしくはそれ以上をコードするヌクレオチド配列のうち2もしくはそれ以上を提供することを含む。
【0099】
ある実施態様において、2つまたはそれ以上の修飾されたアミノ酸配列は、同一の親のSARS-CoV-2 Sタンパク質に基づく。
【0100】
ある実施態様において、2つまたはそれ以上の修飾されたアミノ酸配列中のアミノ酸修飾は、少なくとも部分的に異なっている。
【0101】
ある実施態様において、ヌクレオチド配列を提供することは、
b’)親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列のコドンを、他のコドンと置換して、修飾されたアミノ酸配列をコードする変異されたヌクレオチド配列を得る工程であって、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメント中のアミノ酸位置が、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、工程
を含む。
【0102】
ある実施態様において、方法は、工程b’)を反復して、修飾されたアミノ酸配列のうち2またはそれ以上をコードする変異されたヌクレオチド配列のうち2またはそれ以上を提供することを含む。
【0103】
ある実施態様において、2つまたはそれ以上の修飾されたアミノ酸配列は、同一の親のSARS-CoV-2 Sタンパク質に基づく。
【0104】
ある実施態様において、2つまたはそれ以上の修飾されたアミノ酸配列中のアミノ酸修飾は、少なくとも部分的に異なっている。
【0105】
ある態様において、本発明は、
a)1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置と比較して修飾されている親のSARS-CoV-2スパイクタンパク質(Sタンパク質)中のアミノ酸位置を同定する工程、
b)親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする第1のヌクレオチド配列のコドンを、他のコドンと置換して、修飾されたアミノ酸配列をコードする第1の変異されたヌクレオチド配列を得る工程であって、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメント中のアミノ酸位置が、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、工程、および
c)親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする第2のヌクレオチド配列のコドンを、他のコドンと置換して、修飾されたアミノ酸配列をコードする第2の変異されたヌクレオチド配列を得る工程であって、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメント中のアミノ酸位置が、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、工程
を含み、
b)におけるアミノ酸修飾は、c)におけるアミノ酸修飾とは少なくとも部分的に異なっている、方法に関する。
【0106】
ある実施態様において、方法は、コドンを置換して少なくとも部分的に異なるアミノ酸修飾をコードする変異されたヌクレオチド配列を得る、1つまたは複数のさらなるこのような工程を含み得る。
【0107】
ある実施態様において、第1のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列中に含まれる親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントと、第2のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列中に含まれる親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントは、同一である。
【0108】
ある実施態様において、第1のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と、第2のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列は、同一である。
【0109】
ある実施態様において、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列は、同一である。
【0110】
ある実施態様において、第1の変異されたヌクレオチド配列によってコードされる修飾されたアミノ酸配列中の修飾されたアミノ酸位置のうち1つまたは複数は、第2の変異されたヌクレオチド配列によってコードされる修飾されたアミノ酸配列中の修飾されたアミノ酸位置とは異なる。
【0111】
ある実施態様において、第1の変異されたヌクレオチド配列によってコードされる修飾されたアミノ酸配列中の、および第2の変異されたヌクレオチド配列によってコードされる修飾されたアミノ酸配列中の、修飾された修飾アミノ酸位置中の1つまたは複数のアミノ酸は、互いに異なる。
【0112】
ある実施態様において、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列は、SARS-CoV-2 Sタンパク質のN末端ドメイン(NTD)および/または受容体結合ドメイン(RBD)のアミノ酸配列を含む。
【0113】
ある実施態様において、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列は、全長SARS-CoV-2 Sタンパク質のアミノ酸配列を含む。
【0114】
ある実施態様において、方法は、修飾されたアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供することをさらに含む。
【0115】
ある実施態様において、方法は、修飾されたアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むワクチンを提供することをさらに含む。
【0116】
ある実施態様において、核酸はRNAである。
【0117】
ある実施態様において、方法は、SARS-CoV-2ワクチンを生成する方法である。
【0118】
ある実施態様において、ワクチンはRNAワクチンである。
【0119】
ある実施態様において、ワクチンは、免疫回避のリスクが低減している。
【0120】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸位置のうち1つまたは複数は、SARS-CoV-2 Sタンパク質のN末端ドメイン(NTD)および/または受容体結合ドメイン(RBD)内に位置する。
【0121】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸位置は、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントのアミノ酸配列が親のSARS-CoV-2 Sタンパク質のアミノ酸配列とは異なっているアミノ酸位置である。
【0122】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸位置は、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントのアミノ酸配列が野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質のアミノ酸配列とは異なっているアミノ酸位置である。
【0123】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸位置は、SARS-CoV-2の回避変異体の可能性のある部位である。
【0124】
ある実施態様において、SARS-CoV-2の回避変異体は、SARS-CoV-2の抗体回避変異体である。
【0125】
ある実施態様において、SARS-CoV-2の回避変異体は、SARS-CoV-2 Sタンパク質に対する抗体による中和に対して耐性である。
【0126】
ある実施態様において、SARS-CoV-2の回避変異体のSARS-CoV-2 Sタンパク質は、抗体結合の低減を示す。
【0127】
ある実施態様において、抗体は、SARS-CoV-2に感染した患者の処置のために使用される。
【0128】
ある実施態様において、抗体は、SARS-CoV-2ワクチンを用いて処置された患者において生成される。
【0129】
ある実施態様において、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質は、野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質と比較して修飾されている。
【0130】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸配列において、野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質と比較して修飾されている親のSARS-CoV-2 Sタンパク質中のアミノ酸位置は修飾されていない。
【0131】
ある実施態様において、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質は、親のSARS-CoV-2株のSタンパク質である。
【0132】
ある実施態様において、親のSARS-CoV-2株は、天然単離株である、または親のSARS-CoV-2株は、天然単離株の変異体である。
【0133】
ある実施態様において、親のSARS-CoV-2株は、流行しているまたは迅速に広がっているSARS-CoV-2バリアント株である。
【0134】
ある実施態様において、親のSARS-CoV-2株は、懸念されるバリアントであるSARS-CoV-2 バリアントである。
【0135】
ある実施態様において、親のSARS-CoV-2株は、B.1.1.7である。
【0136】
ある実施態様において、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントは、野生型 SARS-CoV-2 Sタンパク質と比較して修飾されている。
【0137】
ある実施態様において、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントは、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質と比較して修飾されている。
【0138】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸配列において、野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質および/または親のSARS-CoV-2 Sタンパク質と比較して修飾されている1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアント中のアミノ酸位置が修飾されている。
【0139】
ある実施態様において、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントのうち1つまたは複数(例えば、すべて)は、1つまたは複数のSARS-CoV-2株のSタンパク質である。
【0140】
ある実施態様において、1つもしくは複数のSARS-CoV-2株のうち1つもしくは複数(例えば、すべて)は、天然単離株である、または1つもしくは複数のSARS-CoV-2株のうち1つもしくは複数(例えば、すべて)は、天然単離株の変異体である。
【0141】
ある実施態様において、1つまたは複数のSARS-CoV-2株のうち1つまたは複数(例えば、すべて)は、流行しているまたは迅速に広がっているSARS-CoV-2バリアント株である。
【0142】
ある実施態様において、1つまたは複数のSARS-CoV-2株のうち1つまたは複数(例えば、すべて)は、懸念されるバリアントであるSARS-CoV-2バリアント株である。
【0143】
ある実施態様において、1つまたは複数のSARS-CoV-2株のうち1つまたは複数は、B.1.351、B.1.1.298、B.1.427/B.1.429、B.1.526およびP1からなる群から選択される。
【0144】
ある実施態様において、親のSARS-CoV-2株および1つまたは複数のSARS-CoV-2株は、流行しているまたは迅速に広がっているSARS-CoV-2バリアント株である。
【0145】
ある実施態様において、親のSARS-CoV-2株および1つまたは複数のSARS-CoV-2株は、懸念されるバリアントであるSARS-CoV-2 バリアント株である。
【0146】
ある実施態様において、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質および1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントは、野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質と比較して修飾されている。
【0147】
ある実施態様において、親のSARS-CoV-2株はB.1.1.7であり、1つまたは複数のSARS-CoV-2株は、B.1.351、B.1.1.298、B.1.427/B.1.429、B.1.526、P1からなる群から選択される。
【0148】
ある実施態様において、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントは、少なくとも2つのSARS-CoV-2株のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントを含む。
【0149】
ある実施態様において、b)における1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントは、c)における1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントとは異なっている。
【0150】
ある実施態様において、b)における1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントは、B.1.427/B.1.429およびB.1.526のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントであり、c)における1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントは、B.1.351、P.1およびB.1.1.298のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントである。
【0151】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸配列において、野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質と比較した親のSARS-CoV-2 Sタンパク質中のアミノ酸修飾は、修飾されたアミノ酸位置におけるアミノ酸修飾に干渉しない。
【0152】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸配列において、野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質と比較した親のSARS-CoV-2 Sタンパク質中のアミノ酸修飾は、修飾されたアミノ酸位置または修飾されたアミノ酸位置中のアミノ酸修飾に対して近接した空間距離にない。
【0153】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸配列において、修飾されたアミノ酸位置における修飾は、大きな構造転位をもたらさない。
【0154】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸位置におけるアミノ酸は、表面に露出している。
【0155】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸位置は、1つまたは複数の、例えば、少なくとも2つのアミノ酸位置を含む。修飾は、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアント/SARS-CoV-2株に対応する場合があり、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質/SARS-CoV-2株またはその一部分と比較して1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアント/SARS-CoV-2株中に存在するすべての修飾を包含し得る。
【0156】
ある実施態様において、b)およびc)における修飾されたアミノ酸位置は各々、1つまたは複数の、例えば、少なくとも2つのアミノ酸位置を含む。
【0157】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸位置は、
18、20、26、80、138、144、190、215、246、253、417、439、452、453、477、484、501、570、701、716、
140、345、346、352、378、406、420、440、441、444、445、446、450、455、460、475、478、485、486、487、489、490、493、494、499、
142、145、146、147、150、152、154、156、157、158、164、247、248、249、250、251、252、254、255、258、365、369、370、374、376、384、405、408、415、421、443、447、448、456、472、473、476、496、498、500、504
からなる群から選択される2つ以上を含む。
【0158】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸位置における修飾は、
18F、20N、26S、80Y、138Y、144F、190S、215A、246I、253G、417N、439K、452R、453F、477N、484K、501Y、570D、701V、716I、
140L、345A、346K、352S、378N、406Q、420、440K、441F、444、445A、446V、450K、455F、460I、475V、478I、485V、486L、487D、489、490S、493L、494P、499H、
142S、145H、146Y、147N、150R、152C、154Q、156A、157L、158G、164T、247G、248H、249S、250N、251S、252V、254F、255F、258L、365D、369C、370S、374L、376I、384L、405Y、408I、415N、421、443A、447V、448Y、456L、472V、473F、476S、496C、498H、500I、504D
からなる群から選択される2つ以上を含む。
【0159】
ある実施態様において、修飾されたアミノ酸位置における修飾は、
L18F、T20N、P26S、D80Y、D138Y、Y144F、R190S、D215A、R246I、D253G、K417N、N439K、L452R、Y453F、S477N、E484K、N501Y、A570D、A701V、T716I、
F140L、T345A、R346K、A352S、K378N、E406Q、D420、N440K、L441F、K444、V445A、G446V、N450K、L455F、N460I、A475V、T478I、G485V、F486L、N487D、Y489、F490S、Q493L、S494P、P499H、
G142S、Y145H、H146Y、K147N、K150R、W152C、E154Q、E156A、F157L、R158G、N164T、S247G、Y248H、L249S、T250N、P251S、G252V、S254F、S255F、W258L、Y365D、Y369C、N370S、F374L、T376I、P384L、D405Y、R408I、T415N、Y421、S443A、G447V、N448Y、F456L、I472V、Y473F、G476S、G496C、Q498H、T500I、G504D
からなる群から選択される2つ以上を含む。
【0160】
ある態様において、本発明は、
a)親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする第1のヌクレオチド配列を含む核酸を提供する工程であって、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメント中のアミノ酸位置が、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、工程、および
b)親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする第2のヌクレオチド配列を含む核酸を提供する工程であって、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメント中のアミノ酸位置が、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、工程
を含み、
b)におけるアミノ酸修飾は、a)におけるアミノ酸修飾とは少なくとも部分的に異なっている、方法に関する。
【0161】
ある実施態様において、方法は、少なくとも部分的に異なるアミノ酸修飾をコードする核酸を提供する、1つまたは複数のさらなるこのような工程を含み得る。
【0162】
ある実施態様において、核酸はRNAである。
【0163】
さらなる実施態様は、ここに記載するとおりである。
【0164】
ある態様において、本発明は、
a)親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする第1のヌクレオチド配列を含む核酸であって、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントにおけるアミノ酸位置が、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、核酸、および
b)親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする第2のヌクレオチド配列を含む核酸であって、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも1つのフラグメントにおけるアミノ酸位置が、1つまたは複数のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、核酸
を含み、
b)におけるアミノ酸修飾は、a)におけるアミノ酸修飾とは少なくとも部分的に異なっている医薬製剤に関する。
【0165】
ある実施態様において、医薬製剤は、少なくとも部分的に異なるアミノ酸修飾をコードする1つまたは複数のさらなる核酸を含み得る。
【0166】
ある実施態様において、核酸はRNAである。
【0167】
ある実施態様において、RNAは、脂質ナノ粒子(LNP)に製剤化されている。
【0168】
ある実施態様において、医薬製剤は医薬組成物である。
【0169】
ある実施態様において、医薬製剤はワクチンである。
【0170】
ある実施態様において、医薬製剤はキットである。
【0171】
ある実施態様において、医薬製剤は、SARS-CoV-2感染に対するワクチン接種のための医薬製剤の使用上の指示をさらに含む。
【0172】
ある態様において、本発明は、医薬用途のための医薬製剤に関する。
【0173】
ある実施態様において、医薬用途は、SARS-CoV-2感染に対するワクチン接種を含む。
【0174】
ある態様において、本発明は、対象に医薬製剤を投与することを含む、対象においてSARS-CoV-2に対する免疫応答を誘導する方法に関する。
【0175】
ある実施態様において、方法は、SARS-CoV-2感染に対する予防的処置のための方法である。
【0176】
ある実施態様において、方法は、SARS-CoV-2感染に対するワクチン接種のための方法である。
【0177】
上記の態様のさらなる実施態様は、ここに記載するとおりである。
【0178】
ここに記載する核酸は、一本鎖RNAである場合があり、ここに記載する医薬製剤、例えば、ワクチンは、活性本体として一本鎖RNAを含み、これはレシピエントの細胞に侵入したら、各タンパク質に翻訳され得る。抗原配列をコードする野生型またはコドン最適化配列に加えて、RNAは安定性および翻訳効率に関するRNAの最大有効性について最適化された1以上の構造要素を含み得る(5’キャップ、5’UTR、3’UTR、ポリ(A)テイル)。ある実施態様において、RNAはこれらの要素すべてを含む。ある実施態様において、ベータ-S-ARCA(D1)(m2
7,2’-OGppSpG)またはm2
7,3’-OGppp(m1
2’-O)ApGはRNA薬物物質の5’末端の特異的キャッピング構造として利用され得る。5’-UTR配列として、所望により翻訳効率を上げるための最適化「コザック配列」(例えば、配列番号12)と共に、ヒトアルファ-グロビンmRNAの5’-UTR配列が使用され得る。3’-UTR配列として、高い最大タンパク質レベルおよびmRNAの長期持続を確実にするために、コード配列とポリ(A)-テイルの間に配置された「スプリット遺伝子のアミノ末端エンハンサー(amino terminal enhancer of split)」(AES)mRNA(Fと称される)およびミトコンドリアコード12SリボソームRNA(Iと称される)(例えば、配列番号13)由来の2つの配列要素(FI要素)の組み合わせが使用され得る。これらはRNA安定性および総タンパク質発現増強に寄与する配列のエクスビボ選択過程により同定された(引用により本明細書に包含させるWO2017/060314参照)。あるいは、3’-UTRはヒトベータ-グロビンmRNAの2個の反復3’-UTRであり得る。さらに、30アデノシン残基のストレッチ、続く10ヌクレオチドリンカー配列(ランダムヌクレオチドの)およびさらなる70アデノシン残基(例えば、配列番号14)からなる、110ヌクレオチド長のポリ(A)-テイルが使用され得る。このポリ(A)-テイル配列はRNA安定性および翻訳効率を高めるために設計された。
【0179】
さらに、分泌型シグナルペプチド(sec)を、好ましくはsecがN末端タグとして翻訳されるような方法で、抗原コード化領域に融合し得る。ある実施態様において、secはSタンパク質の分泌型シグナルペプチドに対応する。融合タンパク質で一般に使用されるとおり、大部分がアミノ酸グリシン(G)およびセリン(S)からなる短リンカーペプチドをコードする配列を、GS/リンカーとして使用し得る。
【0180】
ここに記載するRNAを、投与用RNA粒子を産生するために、タンパク質および/または脂質、好ましくは脂質と組み合わせ得る。種々のRNAの組み合わせを使用するならば、投与用RNA粒子を産生するためにこれらRNAを一緒にまたは別々にタンパク質および/または脂質と組み合わせてもよい。
【0181】
ある実施態様において、ここに記載する多特異性SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列を含むワクチン抗原は、多量体複合体、特に三量体複合体を形成できる。ある実施態様において、ここに記載する異なる多特異性SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列を含むワクチン抗原は、多量体複合体、特に三量体複合体を形成できる。したがって、例えば、異なる多特異性SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列を含むワクチン抗原をコードする異なる核酸を投与することによる、対象へのここに記載する異なる多特異性SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列を含むワクチン抗原の提供を含む本発明の実施態様において、異なる多特異性SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列は、多量体複合体、特に三量体複合体を形成できる場合がある。この目的のために、ここに記載する多特異性SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列は、多特異性SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列の多量体複合体、特に三量体複合体の形成を可能とするドメインを含み得る。ある実施態様において、多量体複合体の形成を可能とするドメインは、三量体化ドメイン、例えば、ここに記載するような三量体化ドメイン、例えば、SARS-CoV-2 Sタンパク質三量体化ドメインを含む。ある実施態様において、三量体化は、特に、多特異性SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列が、SARS-CoV-2 Sタンパク質三量体化ドメインを含まないSARS-CoV-2 Sタンパク質の一部分に対応する場合に、多特異性SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列への三量体化ドメイン、例えば、T4フィブリチン由来の「フォルド」)三量体化ドメイン(例えば、配列番号10)の付加によって達成される。
【0182】
ある実施態様において、ここに記載する多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列を含むワクチン抗原は、コドン最適化されているおよび/またはG/C含有量が野生型コード配列と比較して増加しているコード配列によりコードされ、コドン最適化および/またはG/C含有量の増加は好ましくはコードされるアミノ酸配列の配列を変えない。
【0183】
ある実施態様において、多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列を含むワクチン抗原は、RNAによってコードされる。特に好ましい実施態様において、多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列を含むワクチン抗原は、単離メッセンジャーリボ核酸(mRNA)ポリヌクレオチドによってコードされ、単離mRNAポリヌクレオチドは、ワクチン抗原を含むポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む。ある実施態様において、単離mRNAポリヌクレオチドは、少なくとも1つの脂質ナノ粒子に製剤化されている。例えば、ある実施態様において、このような脂質ナノ粒子は、20~60%イオン化可能カチオン性脂質、5~25%非カチオン性脂質(例えば、中性脂質)、25~55%ステロールまたはステロイドおよび0.5~15%ポリマーコンジュゲート脂質(例えば、PEG-修飾脂質)のモル比を含み得る。ある実施態様において、脂質ナノ粒子に含まれるステロールまたはステロイドはコレステロールであり得るまたはそれを含み得る。ある実施態様において、中性脂質は1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)であり得るまたはそれを含み得る。ある実施態様において、ポリマーコンジュゲート脂質はPEG2000 DMGであり得るまたはそれを含み得る。一部の実施態様において、免疫原性組成物は、約1mg~10mgまたは3mg~8mgまたは4mg~6mgの総脂質含有量を含み得る。一部の実施態様において、このような免疫原性組成物は、約5mg/mL~15mg/mLまたは7.5mg/mL~12.5mg/mLまたは9~11mg/mLの総脂質含有量を含み得る。ある実施態様において、このような単離mRNAポリヌクレオチドは、免疫原性組成物を少なくとも1回投与された対象における免疫応答の誘導のための有効量で提供される。ある実施態様において、免疫原性組成物において提供されるこのような単離mRNAポリヌクレオチドは自己複製RNAではない。
【0184】
ある実施態様において、ここに記載するRNAは、修飾RNA、特に安定化mRNAである。ある実施態様において、RNAは少なくとも1個のウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。ある実施態様において、RNAは各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドはシュードウリジン(ψ)、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)および5-メチル-ウリジン(m5U)から独立して選択される。
【0185】
ある実施態様において、RNAはウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。
【0186】
ある実施態様において、修飾ヌクレオシドはシュードウリジン(ψ)、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)および5-メチル-ウリジン(m5U)から選択される。
【0187】
ある実施態様において、RNAは5’キャップを含む。
【0188】
ある実施態様において、RNAは、配列番号12のヌクレオチド配列または配列番号12のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’UTRを含む。
【0189】
ある実施態様において、RNAは、配列番号13のヌクレオチド配列または配列番号13のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’UTRを含む。
【0190】
ある実施態様において、RNAは、ポリA配列を含む。
【0191】
ある実施態様において、ポリA配列は少なくとも100ヌクレオチド含む。
【0192】
ある実施態様において、ポリA配列は配列番号14のヌクレオチド配列を含むまたはそれからなる。
【0193】
ある実施態様において、RNAは液体、固体またはそれらの組み合わせとして製剤化されているまたは製剤化されるべきである。
【0194】
ある実施態様において、RNAは注射用に製剤化されているまたは製剤化されるべきである。
【0195】
ある実施態様において、RNAは筋肉内投与用に製剤化されているまたは製剤化されるべきである。
【0196】
ある実施態様において、RNAは粒子として製剤化されているまたは製剤化されるべきである。
【0197】
ある実施態様において、粒子は脂質ナノ粒子(LNP)またはリポプレックス(LPX)粒子である。
【0198】
ある実施態様において、LNP粒子は((4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンおよびコレステロールを含む。
【0199】
ある実施態様において、RNAリポプレックス粒子はRNAとリポソームの混合により得られ得る。ある実施態様において、RNAリポプレックス粒子はRNAと脂質の混合により得られ得る。
【0200】
ある実施態様において、RNAはコロイドとして製剤化されているまたは製剤化されるべきである。ある実施態様において、RNAはコロイドの分散相を形成する粒子として製剤化されているまたは製剤化されるべきである。ある実施態様において、RNAの50%以上、75%以上または85%以上が分散相に存在する。ある実施態様において、RNAはRNAおよび脂質を含む粒子として製剤化されているまたは製剤化されるべきである。ある実施態様において、粒子は、水相に溶解したRNAを有機相に溶解した脂質に曝すことにより形成される。ある実施態様において、有機相はエタノールを含む。ある実施態様において、粒子は、水相に溶解したRNAを水相に分散した脂質に曝すことにより形成される。ある実施態様において、水相に分散された脂質はリポソームを形成する。
【0201】
ある実施態様において、RNAはmRNAまたはsaRNAである。
【0202】
ある実施態様において、ここに記載する組成物または医薬製剤は医薬組成物である。
【0203】
ある実施態様において、ここに記載する組成物または医薬製剤はワクチンである。
【0204】
ある実施態様において、医薬組成物は1以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または添加物をさらに含む。
【0205】
ある実施態様において、ここに記載する組成物または医薬製剤はキットである。
【0206】
ある実施態様において、RNAおよび所望により粒子形成成分は個別のバイアルに封入される。
【0207】
ある実施態様において、キットは、対象におけるウイルス、例えば、コロナウイルスに対する免疫応答を誘導するための組成物または医薬製剤の使用上の指示をさらに含む。
【0208】
ある態様において、本発明は、医薬用途のためのここに記載する組成物または医薬製剤に関する。
【0209】
ある実施態様において、医薬用途は対象におけるウイルス、例えば、コロナウイルスに対する免疫応答の誘導を含む。
【0210】
ある実施態様において、医薬用途はウイルス感染、例えば、コロナウイルス感染の治療的または予防的処置を含む。
【0211】
ある実施態様において、ここに記載する組成物または医薬製剤はヒトへの投与用である。
【0212】
ある実施態様において、コロナウイルスはベータコロナウイルスである。
【0213】
ある実施態様において、コロナウイルスはサルベコウイルスである。
【0214】
ある実施態様において、コロナウイルスはSARS-CoV-2である。
【0215】
ある態様において、本発明は、対象にここに記載する組成物、例えば多特異性SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列を含むワクチン抗原またはワクチン抗原をコードする核酸、例えばRNAを投与することを含む、対象においてコロナウイルスに対する免疫応答を誘導する方法に関する。ある実施態様において、方法は、複数のこのようなワクチン抗原または核酸の投与を含む。
【0216】
ある実施態様において、方法はコロナウイルスに対するワクチン接種のための方法である。
【0217】
ある実施態様において、方法はコロナウイルス感染の治療的または予防的処置のための方法である。
【0218】
ある実施態様において、対象はヒトである。
【0219】
ある実施態様において、コロナウイルスはベータコロナウイルスである。
【0220】
ある実施態様において、コロナウイルスはサルベコウイルスである。
【0221】
ある実施態様において、コロナウイルスはSARS-CoV-2である。
【0222】
ここに記載する方法のある実施態様において、組成物はここに記載する組成物である。
【0223】
ある態様において、本発明はここに記載する方法に使用するためのここに記載する組成物または医薬製剤に関する。
【0224】
ある態様において、本発明は、ここに記載する方法を実行することによって得ることができる組成物、例えば、タンパク質または核酸組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0225】
【
図1】SARS-CoV-2 Sタンパク質のSタンパク質構成の概略説示。S1サブユニット内の配列は、シグナル配列(SS)および受容体結合ドメイン(RBD)からなり、RBDはヒト細胞受容体ACE2への結合に関連するSタンパク質内の重要なサブユニットである。S2サブユニットはS2プロテアーゼ開裂部位(S2’)、続く膜融合のための融合ペプチド(FP)、中央らせん(CH)ドメインを伴う7回反復領域(HR1およびHR2)、膜貫通ドメイン(TM)および細胞質テイル(CT)を含む。
【
図2】SARS-CoV-2ワクチン開発のための構築物。ここで記載する組成物は、完全および野生型Sタンパク質に基づいて設計されており、(1)中和感受性部位を保持する安定化変異を含む第一7回反復領域(HRP1)に近距離に変異を伴う完全タンパク質、(2)S1ドメインまたは(3)RBドメイン(RBD)のみを含む異なる構築物に基づいたものであり得る。さらに、タンパク質フラグメントを安定化するために、フィブリチンドメイン(F)をC末端に融合させた。全構築物を、細胞膜へのゴルジ輸送を確実とするためシグナルペプチド(SP)で開始した。
【
図3】ここに記載する構築物に基づいて設計され得るRNAの一般構造。5’キャップ、5’および3’非翻訳領域、内因性分泌型シグナルペプチドとGSリンカーを伴うコード配列およびポリ(A)テイルを備えたRNAワクチンの一般的構造の略図。個々の要素は、各配列長に対して真に正確な長さで記載されていないことに留意すること。UTR=非翻訳領域;sec=分泌型シグナルペプチド;RBD=受容体結合ドメイン;GS=グリシン-セリンリンカー。
【
図4】ここに記載する構築物に基づいて設計され得るRNAの一般構造。5’キャップ、5’および3’非翻訳領域、内因性分泌型シグナルペプチドとGSリンカーを伴うコード配列およびポリ(A)テイルを備えた薬物物質RNAの一般的構造の略図。個々の要素は、各配列長に対して真に正確な長さで記載されていないことに留意すること。GS=グリシン-セリンリンカー;UTR=非翻訳領域;Sec=分泌型シグナルペプチド;RBD=受容体結合ドメイン。
【
図5】ここに記載する構築物に基づいて設計され得るRNAの一般構造。5’キャップ、5’および3’非翻訳領域、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)RNA依存的RNAポリメラーゼレプリカーゼおよび内因性分泌型シグナルペプチドとGSリンカーを備えたSARS-CoV-2抗原のコード配列およびポリ(A)テイルのRNAワクチンの一般的構造の略図。個々の要素は、各配列長に対して真に正確な長さで記載されていないことに留意すること。UTR=非翻訳領域;Sec=分泌型シグナルペプチド;RBD=受容体結合ドメイン;GS=グリシン-セリンリンカー。
【
図6A】B.1.1.7系統スパイクタンパク質に基づく例示的新規二価ワクチン設計ワクチン配列(A)S-Seq1および(B)S-Seq2の表面に露出した変異部位を例示する、直立した1つのRBDを有するSARS-CoV-2スパイクタンパク質のクライオ-EM構造。SARS-CoV-2のフューリンによって切断されたスパイクタンパク質(PDB ID:6ZGG)の結晶構造を、RCSB PDBデータベースから得、PyMol v.2.4.1を使用して可視化した。黄色の部位は、系統B.1.1.7変異によって標的化されるアミノ酸残基を示す。赤色の部位は、さらなる非B.1.1.7系統変異によって標的化されるアミノ酸残基を示す。
【
図6B】B.1.1.7系統スパイクタンパク質に基づく例示的新規二価ワクチン設計ワクチン配列(A)S-Seq1および(B)S-Seq2の表面に露出した変異部位を例示する、直立した1つのRBDを有するSARS-CoV-2スパイクタンパク質のクライオ-EM構造。SARS-CoV-2のフューリンによって切断されたスパイクタンパク質(PDB ID:6ZGG)の結晶構造を、RCSB PDBデータベースから得、PyMol v.2.4.1を使用して可視化した。黄色の部位は、系統B.1.1.7変異によって標的化されるアミノ酸残基を示す。赤色の部位は、さらなる非B.1.1.7系統変異によって標的化されるアミノ酸残基を示す。
【
図7】HEK293T細胞におけるワクチン候補発現。それぞれ、BNT162b2およびBNT162b2(アルファ+SA)をコードする市販のトランスフェクション試薬を使用する0.15μg/mLのmodRNA(AおよびB)またはBNT162b2、BNT162b2(アルファ)およびBNT162b2(アルファ;L452R+E484Q)をコードする0.15μg/mLのLNP製剤化modRNA(CおよびD)のトランスフェクション後の、HEK293T細胞におけるRNAによってコードされたバリアントSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質の発現。バリアントSタンパク質の表面発現は、マウスFc-タグに融合したヒト組換えACE-2タンパク質および二次蛍光タグ付抗マウス抗体を使用するフローサイトメトリーによって検出された。ワクチン候補あたりのHEK293T集団のSタンパク質発現細胞のパーセンテージ(AおよびCにおいて)および中央値蛍光強度(MFI)(BおよびDにおいて)が表されている。示されたデータは、トリプリケートで実施されたHEK293Tトランスフェクションの平均+SDである。
【
図8】異なるSARS-CoV-2アルファバリアント由来のP2 S構築物をコードするmRNAワクチン候補で1回免疫化した後のBalb/Cマウスの血清における抗S1(B.1.1.7)IgG抗体応答の動態。免疫化7日A)、14日後(B)、21日(C)および28日(D)後の、BNT162b2(アルファ)、BNT162b2(アルファ+SA)をコードする1μg LNP製剤化modRNAおよび緩衝液対照としての0.9%塩化ナトリウムで1回免疫化した後の抗S1(B.1.1.7)IgG抗体力価。血清中の抗体応答の縦方向の軌跡がEに示されている。データは、デュプリケートで測定されたすべての動物の平均±SEMとして示されている(n=5)。異なる時点の統計分析が、表8に示されている。
【
図9】異なるSARS-CoV-2アルファバリアント由来のP2 S構築物をコードするmRNAワクチン候補で1回免疫化した後のBalb/Cマウスの血清における抗RBD(B.1.351)IgG抗体応答の動態。免疫化7日(A)、14日(B)、21日(C)および28日(D)後の、BNT162b2(アルファ)、BNT162b2(アルファ+SA)をコードする1μg LNP製剤化modRNAおよび緩衝液対照としての0.9%塩化ナトリウムで1回免疫化した後の抗RBD(B.1.351)IgG抗体力価。血清中の抗体応答の縦方向の軌跡がEに示されている。データは、デュプリケートで測定されたすべての動物の平均±SEMとして示されている(n=5)。異なる時点の統計分析が、表9に示されている。
【
図10】異なるSARS-CoV-2アルファバリアント由来のP2 S構築物をコードするmRNAワクチン候補で1回免疫化した28日後のBalb/Cマウスの血清における50%シュードウイルス中和(pVN
50)力価。免疫化28日後の、BNT162b2(アルファ)、BNT162b2(アルファ+SA)をコードする1μg LNP製剤化modRNAおよび緩衝液対照としての0.9%塩化ナトリウムで1回免疫化した後の50%シュードウイルス中和抗体(pVN
50)力価。分析に使用したVSV-SARS-CoV-2シュードウイルスは、先祖の武漢株(武漢)、B.1.1.7(アルファ)バリアントまたはB.1.351(ベータ)バリアントのいずれかに対して特異的なSARS-CoV-2 Sタンパク質を有する。各個体の血清(群あたりn=5)をデュプリケートで試験し、幾何平均pVN
50力価をプロットした。検出限界(LOD;12)未満の値については、LOD/2値をプロットする。95%信頼区間を伴う群幾何平均力価(水平線およびバーを越える値)が示されている。
【
図11】BNT16b2(アルファ)またはBNT162b2(アルファ;L452R+E484Q)で1回免疫化した28日後のBalb/Cマウスの血清における50%シュードウイルス中和(pVN
50)力価。免疫化28日後の、BNT162b2(アルファ)、BNT162b2(アルファ;L452R+E484Q)をコードする1μg LNP製剤化modRNAおよび緩衝液対照としての0.9%塩化ナトリウムで1回免疫化した後の50%シュードウイルス中和抗体(pVN
50)力価。分析に使用したVSV-SARS-CoV-2シュードウイルスは、B.1.1.7(アルファ)バリアント、B.1.617.1(カッパ)バリアントまたはB.1.617.2(デルタ)バリアントのいずれかに対して特異的なSARS-CoV-2 Sタンパク質を有する。各個体の血清(群あたりn=5)をデュプリケートで試験し、幾何平均pVN50力価をプロットした。検出限界(LOD;12)未満の値については、LOD/2値をプロットした。95%信頼区間を伴う群幾何平均力価(水平線およびバーを越える値)が示されている。
【
図12】マルチプレックス分析によって測定されたBNT16b2(アルファ)またはBNT162b2(アルファ;L452R+E484Q)で1回免疫化した、Balb/cマウスの血清における28日後での異なる組換えSタンパク質に対するIgG応答。免疫化28日後の、BNT162b2(アルファ)、BNT162b2(アルファ;L452R+E484Q)をコードする1μg LNP製剤化modRNAおよび緩衝液対照としての0.9%塩化ナトリウムで1回免疫化した後のECLシグナル。ECLシグナルを直線範囲について分析し(異なるグラフにおいて点線によって示される)、SARS-CoV-2 S(B.1.1.7;1:5400血清希釈)(A)、SARS-CoV-2 S(B.1.1.529;BA.1;1:1800血清希釈)(B)、SARS-CoV-2 S(BA.1+L452R;1:1800血清希釈)(C)に対する応答が示されている。示されたデータは、デュプリケートで測定された個々の動物からの血清を表し、水平線は、群平均±SEM(群あたりn=5;緩衝液群のみn=3)を示す。異なる時点の統計分析が表12に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0226】
詳細な記載
本発明を下に詳述するが、本発明は、特定の方法、プロトコールおよび試薬は変わり得るため、これらに限定されないことが理解される。ここで使用される用語は特定の実施態様を説明する目的しかなく、添付する特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定する意図はないことも理解される。特に断らない限り、ここで使用するすべての技術的および科学的用語は、当業者に一般に理解されているのと同じ意味を有する。
【0227】
好ましくはここで使用する用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)", H.G.W. Leuenberger, B. Nagel, and H. Koelbl, Eds., Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerland, (1995)に定義されるとおりである。
【0228】
本発明の実施は、特に断らない限り、当分野における文献で説明される、化学、生化学、細胞生物学、免疫学および組換えDNA技術の慣用の方法を使用する(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, J. Sambrook et al. eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor 1989参照)。
【0229】
下記において、本発明の要素が記載される。これらの要素は特定の実施態様と共に列記されるが、しかしながら、これらは何らかの方法で、何らかの数を組み合わされ、さらなる実施態様を作り得ると解釈されるべきである。種々に記載した例および実施態様は、明確に記載した実施態様にのみ本発明が限定されると解釈してはならない。この記載は、明確に記載した実施態様と何らかの数の開示された要素を組み合わせる実施態様を開示し、包含すると理解されるべきである。さらに、すべての記載した要素のあらゆる並べ替えおよび組み合わせが、文脈に反しない限り、この記載により開示されると考えられるべきである。
【0230】
いくつかの文献がこの明細書を通して引用されている。ここに引用される文献の各々(全特許、特許出願、科学的刊行物、製造者の仕様書、指示など)は、前記であれ後記であれ、引用によりその全体として本明細書に包含させる。本明細書のいかなる内容も、本開示がそのような開示に先行する権利を有していなかったことを認めたものと解釈されるものではない。
【0231】
定義
次に、本発明の全態様に適用される定義を提供する。次の用語は、特に断らない限り次の意味を有する。何らかの未定義の用語は、当分野で認識される意味を有する。
【0232】
用語「約」は、おおよそまたは近似を意味し、ここに示す数値または範囲の状況において、ある実施態様において、記載されるまたは請求される数値または範囲の±20%、±10%、±5%または±3%を意味する。
【0233】
本発明を記載する文脈(特に特許請求の範囲における文脈)における単数表現は、ここで特に断らない限りまたは文脈に明らかに反しない限り、単数および複数の両方を含むと解釈される。ここでの値の範囲の列挙は、単に該範囲内の各個々の値をいう省略方法として用いることが意図される。ここで特に断らない限り、各個々の値が、それが個々に本明細書に記載されているかのように本明細書に包含される。ここに記載するすべての方法は、ここで特に断らない限りまたは文脈に明らかに反しない限り、任意の適当な順番で実施し得る。ここに提供される任意かつすべての例または例示的用語(例えば、「など」)は、単に本発明をより良く説明することを意図し、特許請求の範囲の範囲に限定を付すものではない。本明細書のあらゆる用語は、本発明の実施に必要な何らかの特許請求されていない要素を示すと解釈してはならない。
【0234】
特に断らない限り、用語「含む」は、本明細書で、「含む」により導入される一覧のメンバーに加えて、さらなるメンバーが所望により存在し得ることを示すために使用される。しかしながら、用語「含む」がさらなるメンバーが存在する可能性を含まない本発明の特定の実施態様として考えられ、すなわち、この実施態様の目的で、「含む」は「からなる」または「から本質的になる」の意味を有するとして理解される。
【0235】
ここで使用する用語「1または複数の」または「少なくとも1の」とは、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10またはそれ以上を含む1またはそれ以上を指す。
【0236】
用語「2以上」、「少なくとも2」、「複数の」または「ポリ」とは、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10またはそれ以上を含む2以上を指す。ここで使用する「減少」、「低減」、「阻害」または「損なう」などの用語は、好ましくは少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも75%またはそれ以上のレベルの全体的減少または全体的減少を引き起こす能力に関する。これらの用語は、完全なまたは本質的に完全な阻害、すなわち、0へのまたは本質的に0への減少を含む。
【0237】
ウイルスタンパク質アミノ酸配列、例えば、SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列を指す場合の用語「多特異性」とは、ウイルスタンパク質の異なるバリアント、例えば、異なる天然に存在する株に正常に存在する複数のエピトープが単一アミノ酸配列中に存在するように組み合わされる前記ウイルスタンパク質に基づくアミノ酸配列を指す。
【0238】
「増加」、「増強」または「超える」などの用語は、好ましくは少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%またはそれ以上の増加または増強に関する。
【0239】
本開示により、用語「ペプチド」はオリゴおよびポリペプチドを含み、ペプチド結合により互いに結合した約2以上、約3以上、約4以上、約6以上、約8以上、約10以上、約13以上、約16以上、約20以上および最大約50、約100または約150の連続アミノ酸を含む、物質をいう。用語「タンパク質」または「ポリペプチド」は、大型ペプチド、特に少なくとも約150アミノ酸を有するペプチドをいうが、用語「ペプチド」、「タンパク質」および「ポリペプチド」は、ここでは通常同義で使用される。
【0240】
「治療タンパク質」は、対象に治療有効量で提供されたとき、対象の状態または疾患状態に正のまたは有利な効果を有する。ある実施態様において、治療タンパク質は治療的または緩和的性質を有し、疾患または障害の1以上の症状の改善、緩和、軽減、逆転、発症遅延または重症度低減のために投与し得る。治療タンパク質は予防的性質を有し得て、このような疾患の発症遅延またはこのような疾患または病態の重症度低減のために使用し得る。用語「治療タンパク質」はタンパク質またはペプチド全体を含み、その治療活性フラグメントも意味し得る。タンパク質の治療活性バリアントも含み得る。治療活性タンパク質の例は、ワクチン接種用抗原およびサイトカインなどの免疫刺激剤を含むが、これらに限定されない。
【0241】
アミノ酸配列(ペプチドまたはタンパク質)に関連する「フラグメント」または「部分」は、アミノ酸配列の一部、すなわちN末端および/またはC末端で短くなっているアミノ酸配列を表す配列をいう。C末端で短くなっているフラグメント(N末端フラグメント)は、例えばオープンリーディングフレームの3’末端を欠く切断オープンリーディングフレームの翻訳によって得られ得る。N末端で短くなっているフラグメント(C末端フラグメント)は、例えば、切断オープンリーディングフレームが翻訳開始に働く開始コドンを含む限り、オープンリーディングフレームの5’末端を欠く切断オープンリーディングフレームの翻訳によって得られ得る。アミノ酸配列のフラグメントは、アミノ酸配列の例えば少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%アミノ酸残基を含む。アミノ酸配列のフラグメントは、好ましくはアミノ酸配列の少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50または少なくとも100連続アミノ酸を含む。
【0242】
ここでの「バリアント」は、少なくとも1個のアミノ酸修飾により親アミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を意味する。親アミノ酸配列は、天然に存在するまたは野生型(WT)アミノ酸配列であってよくまたは野生型アミノ酸配列の修飾体であり得る。好ましくはバリアントアミノ酸配列は、親アミノ酸配列と比較して少なくとも1個のアミノ酸修飾、例えば、親と比較して1~約20アミノ酸修飾および好ましくは1~約10または1~約5アミノ酸修飾を有する。
【0243】
ここでの「野生型」または「WT」または「天然」は、アレルバージョンを含む、天然にみられるアミノ酸配列を意味する。野生型アミノ酸配列、ペプチドまたはタンパク質は、意図的に修飾されていないアミノ酸配列を有する。
【0244】
本発明の目的で、アミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)の「バリアント」は、アミノ酸挿入バリアント、アミノ酸付加バリアント、アミノ酸欠失バリアントおよび/またはアミノ酸置換バリアントを含む。用語「バリアント」は、全変異体、スプライスバリアント、翻訳後修飾バリアント、高次構造、アイソフォーム、アレルバリアント、種バリアントおよび種ホモログ、特に天然に存在するものを含む。用語「バリアント」は、特に、アミノ酸配列のフラグメントを含む。
【0245】
アミノ酸挿入バリアントは、特定のアミノ酸配列に1または2またはそれ以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列バリアントの場合、1以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列の特定部位に挿入されるが、ランダム挿入と得られた産物の適切なスクリーニングも可能である。アミノ酸付加バリアントは、1以上のアミノ酸、例えば1、2、3、5、10、20、30、50以上アミノ酸のアミノおよび/またはカルボキシ末端融合を含む。アミノ酸欠失バリアントは、配列の1以上のアミノ酸の除去、例えば1、2、3、5、10、20、30、50以上アミノ酸の除去により特徴づけられる。欠失はタンパク質のどの位置でもよい。タンパク質のN末端および/またはC末端に欠失を含むアミノ酸欠失バリアントは、N末端および/またはC末端短縮化バリアントとも称される。アミノ酸置換バリアントは、配列における少なくとも1個の残基が除去され、その位置に他の残基が挿入されることにより特徴づけられる。相同タンパク質またはペプチドで保存されていないアミノ酸配列の位置および/またはアミノ酸を類似の性質を有する他のものに置換する修飾が好ましい。好ましくはペプチドおよびタンパク質バリアントにおけるアミノ酸変化は保存的アミノ酸変化、すなわち、類似荷電または非荷電アミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化は、側鎖に関連するアミノ酸ファミリーの一つの置換を含む。天然に存在するアミノ酸は、一般に酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リシン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)および非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン)アミノ酸の4ファミリーに分類される。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは、まとめて芳香族アミノ酸と分類されることもある。ある実施態様において、保存的アミノ酸置換は、次のグループ内の置換を含む:
グリシン、アラニン;
バリン、イソロイシン、ロイシン;
アスパラギン酸、グルタミン酸;
アスパラギン、グルタミン;
セリン、スレオニン;
リシン、アルギニン;および
フェニルアラニン、チロシン。
【0246】
好ましくは、あるアミノ酸配列と該あるアミノ酸配列のバリアントであるアミノ酸配列の間の類似性、好ましくは同一性の程度は、少なくとも約60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%。類似性または同一性の程度は、好ましくは、対照アミノ酸配列の長さ全体の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または約100%であるアミノ酸領域に対して示される。例えば、対照アミノ酸配列が200アミノ酸からなるならば、類似性または同一性の程度は、好ましくは、少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180または約200アミノ酸、ある実施態様において、連続アミノ酸に対して示される。ある実施態様において、類似性または同一性の程度は、対照アミノ酸配列の長さ全体に対して示される。配列類似性、好ましくは配列同一性決定のためのアラインメントは、当分野で知られるツールで、好ましくは最良配列アラインメントを使用して、例えば、Alignを使用して、標準設定で使用して、好ましくはEMBOSS::needle, Matrix: Blosum62, Gap Open 10.0, Gap Extend 0.5で実施できる。
【0247】
「配列類似性」は、同一または保存的アミノ酸置換を表すアミノ酸のパーセンテージを示す。2個のアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを示す。2個の核酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるヌクレオチドのパーセンテージを示す。
【0248】
用語「%同一」、「%同一性」または類似の用語は、特に、比較する配列と最適アラインメントで同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸のパーセンテージをいう。該パーセンテージは純粋に統計であり、2配列間の差異は、必ずしも、比較する配列の全体にわたり、無作為に分布されているとは限らない。2つの配列の比較は、通常、対応する配列の局所領域を同定するために、セグメントまたは「比較ウィンドウ」に関して、最適アラインメント後、配列を比較することにより実施される。比較のための最適アラインメントは、手動でまたはSmith and Waterman, 1981, Ads App. Math. 2, 482の局所相同性アルゴリズムの助けを借りて、Neddleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48, 443による局所相同性アルゴリズムの助けを借りて、Pearson and Lipman, 1988, Proc. Natl Acad. Sci. USA 88, 2444による類似性サーチアルゴリズムの助けを借りてまたは該アルゴリズムを使用するコンピュータープログラム(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)の助けを借りて、実施し得る。ある実施態様において、2つの配列のパーセント同一性は、United States National Center for Biotechnology Information(NCBI)ウェブサイト(例えばblast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PAGE_TYPE=BlastSearch&BLAST_SPEC=blast2seq&LINK_LOC=align2seq)で利用可能なBLASTNまたはBLASTPアルゴリズムを使用して決定する。ある実施態様において、NCBIウェブサイトのBLASTNアルゴリズムで使用されるアルゴリズムパラメータは、(i)予測閾値設定10;(ii)ワードサイズ設定28;(iii)クエリー範囲の最大マッチ設定0;(iv)マッチ/ミスマッチスコア設定1、-2;(v)ギャップ・コスト設定線形;および(vi)低複雑性領域用フィルターの使用を含む。ある実施態様において、NCBIウェブサイトのBLASTPアルゴリズムで使用されるアルゴリズムパラメータは、(i)予測閾値設定10;(ii)ワードサイズ設定3;(iii)クエリー範囲の最大マッチ設定0;(iv)マトリクス設定BLOSUM62;(v)ギャップ・コスト設定 存在:11伸長:1;および(vi)条件的組成的スコアマトリクス調節を含む。
【0249】
パーセンテージ同一性は、比較する配列が対応する同一位置数を決定し、この数を比較する位置数(例えば、対照配列における位置数)で除し、この結果を100倍することにより得る。
【0250】
ある実施態様において、類似性または同一性の程度は、対照配列の長さ全体の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または約100%である領域に対して示される。例えば、対照核酸配列が200ヌクレオチドからなるならば、同一性の程度は、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180または約200ヌクレオチド、ある実施態様において、連続ヌクレオチドに対して示される。ある実施態様において、類似性または同一性の程度は対照配列の長さ全体に対して示される。
【0251】
相同アミノ酸配列は、本開示により、アミノ酸残基の少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%および好ましくは少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を示す。
【0252】
ここに記載するアミノ酸配列バリアントは、例えば、組換えDNA操作により、当業者により容易に調製され得る。置換、付加、挿入または欠失を有するペプチドまたはタンパク質を調製するためのDNA配列の操作は、例えば、Sambrook et al. (1989)に詳述される。さらに、ここに記載するペプチドおよびアミノ酸バリアントは、例えば、固相合成および類似の方法などにより、既知ペプチド合成技術の助けを借りて、容易に製造され得る。
【0253】
ある実施態様において、アミノ酸配列(ペプチドまたはタンパク質)のフラグメントまたはバリアントは、好ましくは「機能的フラグメント」または「機能的バリアント」である。アミノ酸配列の「機能的フラグメント」または「機能的バリアント」なる用語は、それが由来するアミノ酸配列と同一または類似の1以上の機能的性質を示すあらゆるフラグメントまたはバリアントに関し、すなわち、機能的に等価である。抗原または抗原性配列に関して、ある特定の機能は、フラグメントまたはバリアントが由来するアミノ酸配列により示される1以上の免疫原性活性である。ここで使用する用語「機能的フラグメント」または「機能的バリアント」は、特に親分子または配列のアミノ酸配列と比較して1以上のアミノ酸が変えられ、なお、親分子または配列の機能の1以上、例えば、免疫応答の誘導を満たすことができる、アミノ酸配列を含むバリアント分子または配列をいう。ある実施態様において、親分子または配列のアミノ酸配列の修飾は、分子または配列の特徴に顕著に影響しないまたは改変しない。異なる実施態様において、機能的フラグメントまたは機能的バリアントの機能は、減少していてよいが、なお顕著に存在し、例えば、機能的バリアントの免疫原性は、親分子または配列の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%であり得る。しかしながら、他の実施態様において、機能的フラグメントまたは機能的バリアントの免疫原性は親分子または配列と比較して増強され得る。
【0254】
指定のアミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)「由来の」アミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)は、最初のアミノ酸配列の起源をいう。好ましくは、特定のアミノ酸配列由来のアミノ酸配列は、特定の配列またはそのフラグメントに同一、本質的に同一または相同であるアミノ酸配列を有する。特定のアミノ酸配列由来のアミノ酸配列は、特定の配列またはそのフラグメントのバリアントであり得る。例えば、ここで使用するのに適する抗原は、天然配列の望ましい活性を維持しながら、それらが由来する天然に存在するまたは天然配列と配列が異なるように変えられ得ることは、当業者に理解される。
【0255】
ここで使用する「指示材」または「指示」は、本発明の組成物および方法の有用性の伝達に使用できる、刊行物、記録、ダイアグラムまたは表現のための何らかの他の媒体を含む。本発明のキットの指示材は、例えば、本発明の組成物を含む容器に添付されまたは組成物を含む容器と共に輸送され得る。あるいは指示材は、指示材と組成物がレシピエントにより協同的使用されることを意図して、容器と別々に輸送され得る。
【0256】
「単離」は、天然状態から変えられたまたは取り出されたことを意味する。例えば、生存動物に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離」されていないが、その天然状態で共存する物質から部分的にまたは完全に分離された同核酸またはペプチドは「単離」されている。単離核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在できまたは、例えば、宿主細胞などの非天然環境で存在できる。
【0257】
本発明の状況での「組換え」なる用語は、「遺伝子操作を介する製造」を意味する。好ましくは、本発明の状況での組換え核酸などの「組換え物体」は天然に存在しない。
【0258】
ここで使用する用語「天然に存在する」は、物体が天然に見られ得るとの事実をいう。例えば、生物(ウイルスを含む)に存在し、天然源から単離でき、実験室で人為的に修飾されていないペプチドまたは核酸は天然に存在する。
【0259】
ここで使用する「生理学的pH」は、約7.5のpHをいう。
【0260】
用語「遺伝子修飾」または単に「修飾」は、核酸での細胞のトランスフェクションを含む。用語「トランスフェクション」は、細胞への核酸、特にRNAの導入に関する。本発明の目的で、用語「トランスフェクション」はまた細胞への核酸の導入またはそのような細胞による核酸の取り込みも含み、ここで、細胞は対象、例えば、患者に存在し得る。故に、本発明により、ここに記載する核酸のトランスフェクションのための細胞はインビトロまたはインビボに存在でき、例えば、細胞は患者の臓器、組織および/または生命体の一部を形成し得る。本発明により、トランスフェクションは、一過性でも安定的でもよい。トランスフェクションのいくつかの適用に関して、トランスフェクトされた遺伝子材料が一過性にのみ発現されるならば、十分である。RNAを、そのコードするタンパク質を一過性に発現するように、細胞にトランスフェクトし得る。トランスフェクション過程で導入された核酸が通常核ゲノムに統合されないため、外来核酸は有糸分裂を介して希釈されるかまたは分解される。核酸のエピソーム増幅が可能である細胞は、希釈率が大きく減少する。トランスフェクトされた核酸が実際に細胞およびその娘細胞のゲノムに残ることが望まれるならば、安定なトランスフェクションを行うべきである。このような安定なトランスフェクションは、トランスフェクションのためのウイルスベースの系またはトランスポゾンベースの系を使用して達成され得る。一般に、抗原をコードする核酸は、細胞に一過性にトランスフェクトされる。RNAを、細胞がそのコードするタンパク質を一過性に発現するように、トランスフェクトし得る。
【0261】
コロナウイルス
コロナウイルスは、エンベロープ、プラス鎖、一本鎖RNA((+) ssRNA)ウイルスである。既知RNAウイルスの中で、最大のゲノム(26~32kb)を有し、系統学的に4属(α、β、γおよびΔ)に分類され、ベータコロナウイルスはさらに4分化系列(A、B、CおよびD)に細分される。コロナウイルスは、広範なトリおよびヒトを含む哺乳動物種に感染する。一部ヒトコロナウイルスは、一般に軽度呼吸器疾患を引き起こすが、重症度は乳児、高齢および免疫不全者で大きくなり得る。各々ベータコロナウイルス分化系列CおよびBに属する中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)および重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)は高度病原性である。両ウイルスとも、ここ15年以内に動物リザーバーからヒト集団に出現し、高致死率の大流行を引き起こした。非定型肺炎(コロナウイルス疾患2019;COVID-19)を引き起こす重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)の大流行が2019年12月半ばに中国で発生し、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態にまで発展した。SARS-CoV-2(MN908947.3)はベータコロナウイルス系統Bに属する。SARS-CoVと少なくとも70%配列類似性を有する。
【0262】
一般に、コロナウイルスは4構造タンパク質、すなわち、エンベロープ(E)、膜(M)、ヌクレオカプシド(N)およびスパイク(S)を有する。EおよびMタンパク質はウイルス集合に重要な機能を有し、Nタンパク質はウイルスRNA合成に必要である。重要な糖タンパク質は、ウイルス結合および標的細胞への侵入を担う。Sタンパク質は、一本鎖不活性前駆体として合成され、産生細胞でフューリン様宿主プロテアーゼにより2つの非共有結合的結合したサブユニット、S1およびS2に開裂される。S1サブユニットは、宿主細胞受容体を認識する受容体結合ドメイン(RBD)を含む。S2サブユニットは融合ペプチド、2つの7回反復領域および膜貫通ドメインを含み、そのすべて、大型高次構造再構成を行うことにより、ウイルスと宿主細胞膜の融合に介在するのに必要である。S1およびS2サブユニットは、大型融合前スパイクを形成するために三量体化する。
【0263】
SARS-CoV-2のS前駆体タンパク質は、S1(685 aa)およびS2(588 aa)サブユニットにタンパク分解的に開裂される。S1サブユニットは宿主アンギオテンシン-変換酵素2(ACE2)受容体を介して感受性細胞のウイルス侵入に介在する受容体結合ドメイン(RBD)を含む。
【0264】
抗原
ウイルスタンパク質、例えば、ウイルス表面タンパク質、例えば、SARS-CoV-2 Sタンパク質に由来する配列を含むアミノ酸配列をここに記載する。ウイルスタンパク質由来配列は、ウイルスタンパク質の他のバリアント、例えば、他の株のウイルスタンパク質バリアント中に存在するアミノ酸修飾を含有するウイルスタンパク質の少なくとも一部分に対応する。修飾によって、このような他のウイルスタンパク質バリアントに対して特異的である(さらなる)エピトープを生成する。したがって、ここで記載する修飾されたウイルスタンパク質配列は、複数のウイルスタンパク質バリアントおよび/またはウイルス株に特徴的である(修飾された)アミノ酸残基を含有するので、多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列である。また、ウイルスタンパク質由来配列を含むアミノ酸配列をコードする核酸、例えば、RNAもここで記載する。ここで記載するアミノ酸配列および核酸は、対象においてウイルスタンパク質、特に異なるウイルス株のウイルスタンパク質に対する免疫応答を誘導するのに有用である。ここで記載する多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列(すなわち、抗原性ペプチドまたはタンパク質)を含むアミノ酸配列はまたここで、「ワクチン抗原」、「ペプチドおよびタンパク質抗原」、「抗原分子」または簡単に「抗原」と称される。多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列はまたここで、「抗原性ペプチドまたはタンパク質」または「抗原性配列」と称される。
【0265】
SARS-CoV-2コロナウイルス全長スパイク(S)タンパク質は、1273アミノ酸からなり、配列番号1のアミノ酸配列を有する:
MFVFLVLLPLVSSQCVNLTTRTQLPPAYTNSFTRGVYYPDKVFRSSVLHSTQDLFLPFFSNVTWFHAIHVSGTNGTKRFDNPVLPFNDGVYFASTEKSNIIRGWIFGTTLDSKTQSLLIVNNATNVVIKVCEFQFCNDPFLGVYYHKNNKSWMESEFRVYSSANNCTFEYVSQPFLMDLEGKQGNFKNLREFVFKNIDGYFKIYSKHTPINLVRDLPQGFSALEPLVDLPIGINITRFQTLLALHRSYLTPGDSSSGWTAGAAAYYVGYLQPRTFLLKYNENGTITDAVDCALDPLSETKCTLKSFTVEKGIYQTSNFRVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNGLTGTGVLTESNKKFLPFQQFGRDIADTTDAVRDPQTLEILDITPCSFGGVSVITPGTNTSNQVAVLYQDVNCTEVPVAIHADQLTPTWRVYSTGSNVFQTRAGCLIGAEHVNNSYECDIPIGAGICASYQTQTNSPRRARSVASQSIIAYTMSLGAENSVAYSNNSIAIPTNFTISVTTEILPVSMTKTSVDCTMYICGDSTECSNLLLQYGSFCTQLNRALTGIAVEQDKNTQEVFAQVKQIYKTPPIKDFGGFNFSQILPDPSKPSKRSFIEDLLFNKVTLADAGFIKQYGDCLGDIAARDLICAQKFNGLTVLPPLLTDEMIAQYTSALLAGTITSGWTFGAGAALQIPFAMQMAYRFNGIGVTQNVLYENQKLIANQFNSAIGKIQDSLSSTASALGKLQDVVNQNAQALNTLVKQLSSNFGAISSVLNDILSRLDKVEAEVQIDRLITGRLQSLQTYVTQQLIRAAEIRASANLAATKMSECVLGQSKRVDFCGKGYHLMSFPQSAPHGVVFLHVTYVPAQEKNFTTAPAICHDGKAHFPREGVFVSNGTHWFVTQRNFYEPQIITTDNTFVSGNCDVVIGIVNNTVYDPLQPELDSFKEELDKYFKNHTSPDVDLGDISGINASVVNIQKEIDRLNEVAKNLNESLIDLQELGKYEQYIKWPWYIWLGFIAGLIAIVMVTIMLCCMTSCCSCLKGCCSCGSCCKFDEDDSEPVLKGVKLHYT(配列番号1)
【0266】
本開示の目的で、上記配列は、野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列と考えられる。ここで示されるSARS-CoV-2 Sタンパク質における位置番号付けは、配列番号1のアミノ酸配列との関連にあり、SARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントにおける位置に対応する。
【0267】
配列番号1の完全長スパイク(S)タンパク質は、プロトタイプ融合前高次構造が安定化されるような方法で修飾され得る。融合前高次構造の安定化は、完全長スパイクタンパク質のAS残基986および987の2連続プロリン置換の導入により得られ得る。特に、スパイク(S)タンパク質安定化タンパク質バリアントは、アミノ酸残基986位がプロリンに交換され、かつアミノ酸残基987位もプロリンに交換される方法で得られる。ある実施態様において、プロトタイプ融合前高次構造が安定化されるSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む:
MFVFLVLLPLVSSQCVNLTTRTQLPPAYTNSFTRGVYYPDKVFRSSVLHSTQDLFLPFFSNVTWFHAIHVSGTNGTKRFDNPVLPFNDGVYFASTEKSNIIRGWIFGTTLDSKTQSLLIVNNATNVVIKVCEFQFCNDPFLGVYYHKNNKSWMESEFRVYSSANNCTFEYVSQPFLMDLEGKQGNFKNLREFVFKNIDGYFKIYSKHTPINLVRDLPQGFSALEPLVDLPIGINITRFQTLLALHRSYLTPGDSSSGWTAGAAAYYVGYLQPRTFLLKYNENGTITDAVDCALDPLSETKCTLKSFTVEKGIYQTSNFRVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNGLTGTGVLTESNKKFLPFQQFGRDIADTTDAVRDPQTLEILDITPCSFGGVSVITPGTNTSNQVAVLYQDVNCTEVPVAIHADQLTPTWRVYSTGSNVFQTRAGCLIGAEHVNNSYECDIPIGAGICASYQTQTNSPRRARSVASQSIIAYTMSLGAENSVAYSNNSIAIPTNFTISVTTEILPVSMTKTSVDCTMYICGDSTECSNLLLQYGSFCTQLNRALTGIAVEQDKNTQEVFAQVKQIYKTPPIKDFGGFNFSQILPDPSKPSKRSFIEDLLFNKVTLADAGFIKQYGDCLGDIAARDLICAQKFNGLTVLPPLLTDEMIAQYTSALLAGTITSGWTFGAGAALQIPFAMQMAYRFNGIGVTQNVLYENQKLIANQFNSAIGKIQDSLSSTASALGKLQDVVNQNAQALNTLVKQLSSNFGAISSVLNDILSRLDPPEAEVQIDRLITGRLQSLQTYVTQQLIRAAEIRASANLAATKMSECVLGQSKRVDFCGKGYHLMSFPQSAPHGVVFLHVTYVPAQEKNFTTAPAICHDGKAHFPREGVFVSNGTHWFVTQRNFYEPQIITTDNTFVSGNCDVVIGIVNNTVYDPLQPELDSFKEELDKYFKNHTSPDVDLGDISGINASVVNIQKEIDRLNEVAKNLNESLIDLQELGKYEQYIKWPWYIWLGFIAGLIAIVMVTIMLCCMTSCCSCLKGCCSCGSCCKFDEDDSEPVLKGVKLHYT
(配列番号7)
【0268】
一部の実施態様において、ここで記載する組成物および/または方法は、ワクチン接種対象の血清がSARS-CoV-2スパイクバリアントのパネル(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15またはそれ以上)にわたり中和活性を示すことにより特徴づけられる。一部の実施態様において、このようなSARS-CoV-2スパイクバリアントは、N末端ドメイン(NTD)および/または受容体結合ドメイン(RBD)中に変異を含む。
【0269】
一部の実施態様において、ここで記載する組成物は、多特異性SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列を含むアミノ酸配列が、SARS-CoV-2スパイクバリアントのパネル(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15またはそれ以上)に特徴的である1つまたは複数のアミノ酸修飾(したがって、エピトープ)を含むことにより特徴づけられる。一部の実施態様において、SARS-CoV-2スパイクバリアントに特徴的であるこのような修飾は、N末端ドメイン(NTD)および/または受容体結合ドメイン(RBD)中に変異を含む。
【0270】
N末端ドメイン(NTD)中の修飾には、
18、20、26、80、138、144、190、215、246、253、
140、
142、145、146、147、150、152、154、156、157、158、164、247、248、249、250、251、252、254、255、258
からなる群から選択される位置の修飾が含まれる。
【0271】
N末端ドメイン(NTD)における特異的修飾には、
L18F、T20N、P26S、D80Y、D138Y、Y144F、R190S、D215A、R246I、D253G、
F140L、
G142S、Y145H、H146Y、K147N、K150R、W152C、E154Q、E156A、F157L、R158G、N164T、S247G、Y248H、L249S、T250N、P251S、G252V、S254F、S255F、W258L
からなる群から選択される修飾が含まれる。
【0272】
受容体結合ドメイン(RBD)中の修飾には、
417、439、452、453、477、484、501、
345、346、352、378、406、420、440、441、444、445、446、450、455、460、475、478、485、486、487、489、490、493、494、499、
365、369、370、374、376、384、405、408、415、421、443、447、448、456、472、473、476、496、498、500、504
からなる群から選択される位置の修飾が含まれる。
【0273】
受容体結合ドメイン(RBD)中の特異的修飾には、
K417N、N439K、L452R、Y453F、S477N、E484K、N501Y、
T345A、R346K、A352S、K378N、E406Q、D420、N440K、L441F、K444、V445A、G446V、N450K、L455F、N460I、A475V、T478I、G485V、F486L、N487D、Y489、F490S、Q493L、S494P、P499H、
Y365D、Y369C、N370S、F374L、T376I、P384L、D405Y、R408I、T415N、Y421、S443A、G447V、N448Y、F456L、I472V、Y473F、G476S、G496C、Q498H、T500I、G504D
からなる群から選択される修飾が含まれる。
【0274】
一部の実施態様において、ここで記載する組成物は、多特異性SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列を含むアミノ酸配列が、野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列と比較して、例えば、配列番号1と比較されるような1つまたは複数のアミノ酸修飾を含む親のSARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列(例えば、親のSARS-CoV-2株の)に基づいており、野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列と比較して、例えば、配列番号1と比較されるような1つまたは複数の他のSARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列(例えば、1つまたは複数の他のSARS-CoV-2株の)中に存在する1つまたは複数のさらなるアミノ酸修飾を含むことにより特徴づけられる。したがって、一部の実施態様において、ここで記載する組成物は、多特異性SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列を含むアミノ酸配が、野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列と比較して、例えば、配列番号1と比較されるような親のSARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列中に存在する1つまたは複数のアミノ酸修飾、および野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列と比較して、例えば、配列番号1と比較されるような1つまたは複数の他のSARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列中に存在する1つまたは複数のさらなるアミノ酸修飾を含み得ることにより特徴づけられる。
【0275】
例えば、一部の実施態様において、ここで記載する組成物は、多特異性SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列を含むアミノ酸配列が、親のSARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列として株B.1.1.7のSARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列に基づく場合があり、したがって、野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列と比較して、例えば、配列番号1と比較されるような親のSARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列中に存在するアミノ酸修飾、すなわち、H69/V70欠失、Y144欠失、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982AおよびD1118Hを含み得ることにより特徴づけられる場合もある。さらに、多特異性SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列を含むアミノ酸配列は、野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列と比較して、例えば、配列番号1と比較されるような1つまたは複数の他のSARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列中に存在する、例えば、親株以外の1つまたは複数の株のアミノ酸修飾のうち1つまたは複数を含み得る。例えば、親株以外のこのような1つまたは複数の株は、B.1.351、B.1.1.298、B.1.427/B.1.429、B.1.526およびP.1からなる群から選択され得る。
【0276】
ある実施態様において、多特異性SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列を含むアミノ酸配列は、(例えば、株B.1.1.7の親のSARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列中に存在するアミノ酸修飾に加えて)B.1.526(NY)中に存在するアミノ酸修飾のうち1つまたは複数およびB.1.427/B.1.429(CAL)中に存在するアミノ酸修飾のうち1つまたは複数を含み得る。B.1.526(NY)中に存在するアミノ酸修飾のうち1つまたは複数は、D253GおよびA701Vであり得る。B.1.427/B.1.429(CAL)中に存在するアミノ酸修飾のうち1つまたは複数は、L452Rであり得る。さらなる修飾は、L18F(例えば、B.1.351およびP.1中に存在するような)、N439KおよびS477Nを含み得る。
【0277】
ある実施態様において、多特異性SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列を含むアミノ酸配列は、(例えば、株B.1.1.7の親のSARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列中に存在するアミノ酸修飾に加えて)B.1.351(SA)中に存在するアミノ酸修飾のうち1つまたは複数を含み得る。B.1.351(SA)中に存在するアミノ酸修飾のうち1つまたは複数は、D80A、D215G、R246I、K417NおよびE484Kであり得る。
【0278】
多特異性SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列を含む上記の異なるアミノ酸配列(またはコーディング核酸)の両方を組み合わせて使用して、少なくとも株B.1.351、B.1.1.298、B.1.427/B.1.429、B.1.526およびP.1のSARS-CoV-2スパイクバリアントにわたって中和活性を誘導できる。
【0279】
当業者は、種々のスパイクバリアントおよび/またはそれを記載するリソースを認識している。例えば、以下の株、そのSARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列、特に、野生型SARS-CoV-2 Sタンパク質アミノ酸配列と比較した、例えば、配列番号1と比較されるようなその修飾がここで有用である。
【0280】
B.1.1.7(「懸念されるバリアント202012/01」(VOC-202012/01)
B.1.1.7は、SARS-CoV-2のバリアントであり、英国においてCOVID-19パンデミックの際に前月に採取されたサンプルから2020年10月に最初に検出され、12月中旬までに急速に広がり始めた。英国におけるCOVID-19感染率の大幅な増加と関連しており、この増加は、少なくとも一部は、ヒト細胞におけるACE2への結合にとって必要であるスパイク糖タンパク質の受容体結合ドメイン内の変化N501Yのためであると考えられている。B.1.1.7バリアントは、23の変異:13の非同義変異、4つの欠失および6つの同義変異によって定義される(すなわち、タンパク質を変更する17の変異および変更しない6つがある)。B.1.1.7におけるスパイクタンパク質変化には、欠失69~70、欠失144、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982AおよびD1118Hが含まれる。
【0281】
B.1.351(501.V2)
B.1.351系統であり、口語的に南アフリカCOVID-19バリアントとして知られる、SARS-CoV-2のバリアントである。予備的結果は、このバリアントが増加した感染性を有する可能性があることを示す。B.1.351バリアントは、L18F、D80A、D215G、欠失242~244、R246I、K417N、E484K、N501Y、D614GおよびA701Vを含む複数のスパイクタンパク質変化によって定義される。B.1.351ゲノムのスパイク領域中に特に目的のある3つの変異がある:K417N、E484K、N501Y。
【0282】
B.1.1.298(クラスター5)
B.1.1.298は、デンマーク、北ユランにおいて発見され、ミンク農場を介してミンクからヒトに広がったと考えられている。ウイルスのスパイクタンパク質中のいくつかの異なる変異は、確認されている。特異的変異には、欠失69~70、Y453F、D614G、I692V、M1229I、適宜S1147Lが含まれる。
【0283】
P.1(B.1.1.248)
系統B.1.1.248は、ブラジル(型)バリアントとして知られ、P.1系統と名付けられているSARS-CoV-2のバリアントの1つである。P.1は、いくつかのS-タンパク質修飾[L18F、T20N、P26S、D138Y、R190S、K417T、E484K、N501Y、D614G、H655Y、T1027I、V1176F]を有し、ある特定の重要なRBD位置(K417、E484、N501)において南アフリカからのバリアントB.1.351と類似する。
【0284】
B.1.427/B.1.429(CAL.20C)
系統B.1.427/B.1.429は、CAL.20Cとしても知られ、S-タンパク質中の以下の修飾によって定義される:S13I、W152C、L452RおよびD614G、そのうちL452R修飾は特に関心がある。CDCは、B.1.427/B.1.429を「懸念されるバリアント」としてリストアップした。
【0285】
B.1.525
B.1.525は、P.1およびB.1.351バリアントにおいて見出されるものと同一のE484K修飾を保持し、また、B.1.1.7およびB.1.1.298において見出されるものと同一のΔH69/ΔV70欠失を保持する。修飾D614G、Q677HおよびF888Lも保持する。
【0286】
B.1.526
B.1.526は、これまでに報告されたバリアントと変異を共有するニューヨーク地域におけるウイルス単離株の新興系統として検出された。この系統におけるスパイク変異の最も一般的なセットは、L5F、T95I、D253G、E484K、D614GおよびA701Vである。
【0287】
以下の表は、VOI/VOCである循環SARS-CoV-2株の概要を示す。
【0288】
【0289】
ある実施態様において、ここで記載するワクチン抗原は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質(S)の修飾されたバリアントであるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる。
【0290】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1もしくは7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1もしくは7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0291】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド49~3819のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド49~3819のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む、および/あるいは(ii)配列番号1もしくは7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1もしくは7のアミノ酸17~1273のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントをコードする。
【0292】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、SARS-CoV-2スパイクS1フラグメント(S1)の修飾されたバリアント(SARS-CoV-2のスパイクタンパク質(S)のS1サブユニット)であるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる。
【0293】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1のアミノ酸17~683のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸17~683のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0294】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド49~2049のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド49~2049のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含み、および/あるいは(ii)配列番号1のアミノ酸17~683のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸17~683のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントをコードする。
【0295】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0296】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド49~2055のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8もしくは9のヌクレオチド49~2055のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む、および/あるいは(ii)配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸17~685のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントをコードする。
【0297】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質(S)のS1サブユニットの受容体結合ドメイン(RBD)の修飾されたバリアントであるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる。配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列またはそのフラグメントはここでは「RBD」または「RBDドメイン」とも称する。
【0298】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0299】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド979~1584のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド979~1584のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。
【0300】
ある特定の実施態様によれば、シグナルペプチドは、SARS-CoV-2 Sタンパク質の修飾されたバリアントであるアミノ酸配列またはそのフラグメント、すなわち、抗原性ペプチドまたはタンパク質に直接的にまたはリンカーを介して融合される。従って、ある実施態様において、シグナルペプチドは、上記ワクチン抗原に含まれるSARS-CoV-2 Sタンパク質またはその免疫原性フラグメント(抗原性ペプチドまたはタンパク質)由来の上記アミノ酸配列に融合する。
【0301】
このようなシグナルペプチドは、一般に約15~30アミノ酸長を示し、好ましくは、限定されないが抗原性ペプチドまたはタンパク質のN末端に位置する配列である。ここに定義するシグナルペプチドは、好ましくは、RNAによりコードされる抗原性ペプチドまたはタンパク質の既定の細胞内コンパートメント、好ましくは細胞表面、小胞体(ER)またはエンドソーム-リソソームコンパートメントへの輸送を可能とする。ある実施態様において、ここで定義するシグナルペプチド配列は、SARS-CoV-2 Sタンパク質のシグナルペプチド配列、特に配列番号1のアミノ酸1~16または1~19のアミノ酸配列を含む配列またはその機能的バリアントを含むが、それらに限定されない。
【0302】
ある実施態様において、シグナル配列は、配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含む。ある実施態様において、シグナル配列は、配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列を含む。
【0303】
ある実施態様において、シグナル配列をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド1~48のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド1~48のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド1~48のヌクレオチド配列もしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド1~48のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、シグナル配列をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド1~48のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸1~16のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0304】
ある実施態様において、シグナル配列は、配列番号1のアミノ酸1~19のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸1~19のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~19のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸1~19のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含む。ある実施態様において、シグナル配列は、配列番号1のアミノ酸1~19のアミノ酸配列を含む。
【0305】
ある実施態様において、シグナル配列をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド1~57のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド1~57のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド1~57のヌクレオチド配列もしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド1~57のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸1~19のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸1~19のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~19のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸1~19のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、シグナル配列をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド1~57のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸1~19のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0306】
ここで定義するシグナルペプチド配列は、免疫グロブリンのシグナルペプチド配列、例えば、免疫グロブリン重鎖可変領域のシグナルペプチド配列をさらに含むが、それらに限定されず、ここで、免疫グロブリンはヒト免疫グロブリンであり得る。特に、ここで定義するシグナルペプチド配列は、配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列またはその機能的バリアントを含む配列を含む。
【0307】
ある実施態様において、シグナル配列は、配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列、配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列もしくは配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含む。ある実施態様において、シグナル配列は、配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列を含む。
【0308】
ある実施態様において、シグナル配列をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド54~119、配列番号32のヌクレオチド54~119のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号32のヌクレオチド54~119のヌクレオチド配列もしくは配列番号32のヌクレオチド54~119のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列、配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列もしくは配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、シグナル配列をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド54~119のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0309】
このようなシグナルペプチドは、好ましくはコードされる抗原性ペプチドまたはタンパク質の分泌を促進するために使用される。より好ましくはここに定義されるシグナルペプチドは、ここに定義されるコードされる抗原性ペプチドまたはタンパク質に融合される。
【0310】
従って、特に好ましい実施態様において、ここに記載するRNAは抗原性ペプチドまたはタンパク質およびシグナルペプチドをコードする少なくとも1個のコード領域を含み、該シグナルペプチドは、好ましくは抗原性ペプチドまたはタンパク質、より好ましくはここに記載する抗原性ペプチドまたはタンパク質のN末端に融合される。
【0311】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1または7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1または7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0312】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号1または7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1または7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。
【0313】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列のフラグメントを含む。
【0314】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号15、16、19、20、24または25のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号15、16、19、20、24または25のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列のフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。
【0315】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1のアミノ酸1~683のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~683のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0316】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド1~2049のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド1~2049のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸1~683のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~683のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。
【0317】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号1のアミノ酸1~685のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~685のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0318】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド1~2055のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド1~2055のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸1~685のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1~685のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。
【0319】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0320】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号4のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号4のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。
【0321】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号29のアミノ酸1~221のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸1~221のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0322】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号30のヌクレオチド54~716のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号30のヌクレオチド54~716のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号29のアミノ酸1~221のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸1~221のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。
【0323】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号31のアミノ酸1~224のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸1~224のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0324】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド54~725のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号32のヌクレオチド54~725のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含み、および/あるいは(ii)配列番号31のアミノ酸1~224のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸1~224のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントをコードする。
【0325】
ある特定の実施態様によれば、三量体化ドメインは、SARS-CoV-2 Sタンパク質の修飾されたバリアントであるアミノ酸配列またはそのフラグメント、すなわち、抗原性ペプチドまたはタンパク質に直接的にまたはリンカーを介して融合される。従って、ある実施態様において、三量体化ドメインは、上記ワクチン抗原(これは上記のとおり所望によりシグナルペプチドに融合し得る)に含まれる、SARS-CoV-2 Sタンパク質またはその免疫原性フラグメント(抗原性ペプチドまたはタンパク質)由来の上記アミノ酸配列に融合される。
【0326】
このような三量体化ドメインは、好ましくは抗原性ペプチドまたはタンパク質のC末端に位置するが、これに限定されない。ここに定義する三量体形成ドメインは、好ましくはRNAによりコードされる抗原性ペプチドまたはタンパク質の三量体化を可能とする。ここに定義する三量体化ドメインの例は、T4フィブリチンの天然三量体化ドメインであるフォルドンを含むが、これに限定されない。T4フィブリチン(フォルドン)のC末端ドメインはフィブリチン三量体構造の形成に必須であり、人工三量体化ドメインとして使用され得る。ある実施態様において、ここに定義する三量体化ドメインは、配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列またはその機能的バリアントを含む配列を含むが、それらに限定されない。ある実施態様において、ここに定義する三量体化ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列またはその機能的バリアントを含む配列を含むが、それらに限定されない。
【0327】
ある実施態様において、三量体化ドメインは、配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列、配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列もしくは配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含む。ある実施態様において、三量体化ドメインは、配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列を含む。
【0328】
ある実施態様において、三量体化ドメインをコードするRNAは、i)配列番号11のヌクレオチド7~87のヌクレオチド配列、配列番号11のヌクレオチド7~87のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号11のヌクレオチド7~87のヌクレオチド配列もしくは配列番号11のヌクレオチド7~87のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列、配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列もしくは配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、三量体化ドメインをコードするRNAは、i)配列番号11のヌクレオチド7~87のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0329】
ある実施態様において、三量体化ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号10のアミノ酸配列もしくは配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含む。ある実施態様において、三量体化ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0330】
ある実施態様において、三量体化ドメインをコードするRNAは、i)配列番号11のヌクレオチド配列、配列番号11のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号11のヌクレオチド配列もしくは配列番号11のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号10のアミノ酸配列、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号10のアミノ酸配列もしくは配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、三量体化ドメインをコードするRNAは、i)配列番号11のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号10のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0331】
このような三量体化ドメインは、好ましくはコードされる抗原性ペプチドまたはタンパク質の三量体化を促進するために使用される。より好ましくはここに定義する三量体化ドメインはここに定義する抗原性ペプチドまたはタンパク質に融合される。
【0332】
従って、特に好ましい実施態様において、ここに記載するRNAは抗原性ペプチドまたはタンパク質およびここに定義する三量体化ドメインをコードする少なくとも1個のコード領域を含み、該三量体化ドメインは、抗原性ペプチドまたはタンパク質、より好ましくは抗原性ペプチドまたはタンパク質のC末端に融合される。
【0333】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0334】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号6のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号6のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。
【0335】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号17、21または26のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号17、21または26のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。
【0336】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0337】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号29のアミノ酸1~257のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸1~257のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0338】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号30のヌクレオチド54~824のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号30のヌクレオチド54~824のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含み、および/あるいは(ii)配列番号29のアミノ酸1~257のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸1~257のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントをコードする。
【0339】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号31のアミノ酸1~260のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸1~260のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0340】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド54~833のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号32のヌクレオチド54~833のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含み、および/あるいは(ii)配列番号31のアミノ酸1~260のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸1~260のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントをコードする。
【0341】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号29のアミノ酸20~257のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸20~257のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0342】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号30のヌクレオチド111~824のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号30のヌクレオチド111~824のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含み、および/あるいは(ii)配列番号29のアミノ酸20~257のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸20~257のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントをコードする。
【0343】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号31のアミノ酸23~260のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸23~260のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0344】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド120~833のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号32のヌクレオチド120~833のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含み、および/あるいは(ii)配列番号31のアミノ酸23~260のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸23~260のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントをコードする。
【0345】
ある特定の実施態様によれば、膜貫通ドメインドメインは、SARS-CoV-2 Sタンパク質の修飾されたバリアントであるアミノ酸配列またはそのフラグメント、すなわち、抗原性ペプチドまたはタンパク質に直接的にまたはリンカー、例えば、グリシン/セリンリンカーを介して融合される。従って、ある実施態様において、膜貫通ドメインは、上記ワクチン抗原(これは上記のとおり所望によりシグナルペプチドおよび/または三量体化ドメインに融合していてよい)に含まれるSARS-CoV-2 Sタンパク質またはその免疫原性フラグメント(抗原性ペプチドまたはタンパク質)由来の上記アミノ酸配列に融合される。
【0346】
このような膜貫通ドメインは、好ましくは抗原性ペプチドまたはタンパク質のC末端に位置するが、これに限定されない。好ましくはこのような膜貫通ドメインは、存在するならば、三量体化ドメインのC末端に位置するが、これに限定されない。ある実施態様において、三量体化ドメインは、SARS-CoV-2 Sタンパク質の修飾されたバリアントであるアミノ酸配列またはそのフラグメント、すなわち、抗原性ペプチドまたはタンパク質と、膜貫通ドメインとの間に存在する。
【0347】
ここに定義する膜貫通ドメインは、好ましくは抗原性ペプチドまたはタンパク質の細胞膜への固定を可能とする。
【0348】
ある実施態様において、ここに定義する膜貫通ドメイン配列は、SARS-CoV-2 Sタンパク質の膜貫通ドメイン配列、特に配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列を含む配列またはその機能的バリアントを含むが、それらに限定されない。
【0349】
ある実施態様において、膜貫通ドメイン配列は、配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含む。ある実施態様において、膜貫通ドメイン配列は、配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列を含む。
【0350】
ある実施態様において、膜貫通ドメイン配列をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド3619~3762のヌクレオチド配列、配列番号2、8または9のヌクレオチド3619~3762のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号2、8または9のヌクレオチド3619~3762のヌクレオチド配列もしくは配列番号2、8または9のヌクレオチド3619~3762のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の機能的フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。ある実施態様において、膜貫通ドメイン配列をコードするRNAは、(i)配列番号2、8または9のヌクレオチド3619~3762のヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0351】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0352】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号30のヌクレオチド54~986のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む、および/あるいは(ii)配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸1~311のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントをコードする。
【0353】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号31のアミノ酸1~314のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸1~314のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0354】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド54~995のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号32のヌクレオチド54~995のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含み、および/あるいは(ii)配列番号31のアミノ酸1~314のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸1~314のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントをコードする。
【0355】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0356】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号30のヌクレオチド111~986のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含み、および/あるいは(ii)配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸20~311のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントをコードする。
【0357】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号31のアミノ酸23~314のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸23~314のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0358】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド120~995のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号32のヌクレオチド120~995のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含み、および/あるいは(ii)配列番号31のアミノ酸23~314のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸23~314のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントをコードする。
【0359】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号30のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号30のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。
【0360】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号32のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号32のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含む;および/または(ii)配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列をコードする。
【0361】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、配列番号28のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列または配列番号28のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントを含む。
【0362】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、(i)配列番号27のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列または配列番号27のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列のフラグメントを含み、および/あるいは(ii)配列番号28のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列または配列番号28のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列の免疫原性フラグメントをコードする。
【0363】
ある実施態様において、上記ワクチン抗原は、上記ワクチン抗原によって含まれるSARS-CoV-2 Sタンパク質またはその免疫原性フラグメント(抗原性ペプチドまたはタンパク質)に由来する上記アミノ酸配列からなる、または本質的にそれからなる、SARS-CoV-2コロナウイルススパイク(S)タンパク質の連続配列の修飾されたバリアントであるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、上記ワクチン抗原は、220アミノ酸、215アミノ酸、210アミノ酸または205アミノ酸を超えないSARS-CoV-2コロナウイルススパイク(S)タンパク質の連続配列の修飾されたバリアントであるアミノ酸配列を含む。
【0364】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、BNT162b1(RBP020.3)、BNT162b2(RBP020.1またはRBP020.2)としてここに記載されるRNAの修飾されたバリアントであるヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)である。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、ここでRBP020.2として記載されるRNAの修飾されたバリアントであるヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)である。
【0365】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAはヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)であり、(i)配列番号21のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0366】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAはヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)であり、(i)配列番号19または20のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む;および/または(ii)配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0367】
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、ヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)であり、(i)配列番号20のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するヌクレオチド配列を含み、および/または(ii)配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%もしくは80%同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0368】
ここで使用する用語「ワクチン」は、対象への接種により免疫応答を誘導する組成物をいう。ある実施態様において、誘導された免疫応答は防御免疫を提供する。
【0369】
ある実施態様において、抗原分子をコードするRNAは対象の細胞で発現され、抗原分子を提供する。ある実施態様において、抗原分子の発現は細胞表面または細胞外間隙内で生じる。ある実施態様において、抗原分子はMHCの状況で提示される。ある実施態様において、抗原分子をコードするRNAは対象の細胞で一過性に発現される。ある実施態様において、抗原分子をコードするRNAの投与後、特に抗原分子をコードするRNAの筋肉内投与後、筋肉における抗原分子をコードするRNAの発現が生じる。ある実施態様において、抗原分子をコードするRNAの投与後、脾臓における抗原分子をコードするRNAの発現が生じる。ある実施態様において、抗原分子をコードするRNAの投与後、抗原提示細胞、好ましくは特化された抗原提示細胞における抗原分子をコードするRNAの発現が生じる。ある実施態様において、抗原提示細胞は樹状細胞、マクロファージおよびB細胞からなる群から選択される。ある実施態様において、抗原分子をコードするRNAの投与後、肺および/または肝臓における抗原分子をコードするRNAの発現は生じないまたは本質的に生じない。ある実施態様において、抗原分子をコードするRNAの投与後、脾臓における抗原分子をコードするRNAの発現は、肺の発現量の少なくとも5倍である。
【0370】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤、例えば、mRNA組成物は、対象への投与後、特に筋肉内投与後は、リンパ節および/または脾臓へのワクチン抗原をコードするRNAの送達をもたらす。ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、投与後6時間以降および好ましくは最大6日までまたはそれ以上、リンパ節および/または脾臓で検出可能である。
【0371】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤、例えば、mRNA組成物は、対象への投与後、特に筋肉内投与後は、B細胞卵胞、被膜下洞および/またはT細胞帯、特にリンパ節のB細胞卵胞および/または被膜下洞へのワクチン抗原をコードするRNAの送達をもたらす。
【0372】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤、例えば、mRNA組成物は、対象への投与後、特に筋肉内投与後は、B細胞(CD19+)、被膜下洞マクロファージ(CD169+)および/またはT細胞帯の樹状細胞(CD11c+)およびリンパ節の中間洞、特にB細胞(CD19+)および/またはリンパ節の被膜下洞マクロファージ(CD169+)へのワクチン抗原をコードするRNAの送達をもたらす。
【0373】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤、例えば、mRNA組成物は、対象への投与後、特に筋肉内投与後は、脾臓白髄へのワクチン抗原をコードするRNAの送達をもたらす。
【0374】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤、例えば、mRNA組成物は、対象への投与後、特に筋肉内投与後は、B細胞、DC(CD11c+)、特にB細胞周囲の物および/または脾臓のマクロファージ、特にB細胞および/またはDC(CD11c+)へのワクチン抗原をコードするRNAの送達をもたらす。
【0375】
ある実施態様において、ワクチン抗原はリンパ節および/または脾臓、特に上記リンパ節および/または脾臓の細胞で発現される。
【0376】
抗原分子またはその進行産物、例えば、そのフラグメントは、免疫エフェクター細胞により運搬されるBCRまたはTCRなどの抗原受容体または抗体に結合し得る。
【0377】
例えば、ペプチドおよびタンパク質抗原、すなわち、ワクチン抗原をコードするRNAの投与により本発明により対象に提供されるペプチドおよびタンパク質抗原は、好ましくは、ペプチドまたはタンパク質抗原が提供される対象における免疫応答、例えば、液性および/または細胞性免疫応答の誘導をもたらす。該免疫応答は好ましくは標的抗原、特にコロナウイルスSタンパク質、特にSARS-CoV-2 Sタンパク質に対する。
【0378】
ワクチン抗原は標的抗原、そのバリアントまたはそのフラグメントを含み得る。ある実施態様において、このようなフラグメントまたはバリアントは標的抗原と免疫学的に等価である。用語「抗原のフラグメント」または「抗原のバリアント」は、免疫応答の誘導をもたらす薬剤を意味し、その免疫応答は抗原、すなわち標的抗原を標的とする。故に、ワクチン抗原は標的抗原に対応し得るまたは含み得る、標的抗原のフラグメントに対応し得るまたは含み得るまたは標的抗原またはそのフラグメントと相同である抗原に対応し得るまたは含み得る。ワクチン抗原は標的抗原の免疫原性フラグメントまたは標的抗原の免疫原性フラグメントと相同であるアミノ酸配列を含み得る。「抗原の免疫原性フラグメント」は、好ましくは標的抗原に対する免疫応答を誘導できる抗原のフラグメントに関する。ワクチン抗原は組換え抗原であり得る。
【0379】
用語「免疫学的に等価」は、例えば、免疫学的効果のタイプに関して、同じまたは本質的に同じ免疫学的性質を示すおよび/または同じまたは本質的に同じ免疫学的効果を発揮する、免疫学的に等価なアミノ酸配列などの免疫学的に等価な分子を意味する。本開示において、用語「免疫学的に等価」は、好ましくは免疫化に使用する抗原または抗原バリアントの免疫学的効果または性質に関して使用する。例えば、アミノ酸配列は、該アミノ酸配列が、対象の免疫系に曝されたとき、対照アミノ酸配列と反応する特異性を有する免疫反応を誘導するならば、該対照アミノ酸配列と免疫学的に等価である。
【0380】
ここで使用する「活性化」または「刺激」は、検出可能な細胞増殖を誘導するのに十分に刺激されている、T細胞などの免疫エフェクター細胞の状態をいう。活性化は、シグナル伝達経路の開始、誘導されるサイトカイン産生および検出可能なエフェクター機能とも関連し得る。用語「活性化免疫エフェクター細胞」は、数ある中で、細胞分裂を行っている免疫エフェクター細胞をいう。
【0381】
用語「プライミング」は、T細胞などの免疫エフェクター細胞がその特異的抗原と初めて接触し、エフェクターT細胞などのエフェクター細胞への分化が引き起こされる、過程をいう。
【0382】
用語「クローン増殖」または「増殖」は、特定の主体が繁殖する過程をいう。本発明において、本用語は、好ましくは免疫エフェクター細胞が抗原により刺激され、増殖し、該抗原を認識する特異的免疫エフェクター細胞が増幅される、免疫学的応答の状況で使用する。好ましくはクローン増殖は免疫エフェクター細胞の分化を誘導する。
【0383】
用語「抗原」は、免疫応答がそれに対して産生され得るエピトープを含む薬剤に関する。用語「抗原」は、特に、タンパク質およびペプチドを含む。ある実施態様において、抗原は、免疫系細胞、例えば樹状細胞またはマクロファージなどの抗原提示細胞により提示される。抗原またはT細胞エピトープなどのその進行産物は、ある実施態様において、T細胞またはB細胞受容体または抗体などの免疫グロブリン分子により結合される。従って、抗原またはその進行産物は、特に抗体またはTリンパ球(T細胞)と反応し得る。ある実施態様において、抗原はコロナウイルスSタンパク質、例えば、SARS-CoV-2 Sタンパク質などのウイルス抗原であり、エピトープはそのような抗原に由来する。
【0384】
用語「ウイルス抗原」は、抗原性性質を有する、すなわち個体に免疫応答を誘導できる、あらゆるウイルス成分をいう。ウイルス抗原はコロナウイルスSタンパク質、例えば、SARS-CoV-2 Sタンパク質であり得る。
【0385】
用語「細胞表面に発現される」または「細胞表面と結合する」は、抗原などの分子が細胞の原形質膜と結合し、位置し、ここで、該分子の少なくとも一部が該細胞の細胞外間隙に面し、例えば、該細胞の外側に位置する抗体により、該細胞外面から接近可能であることを意味する。この状況で、一部は、好ましくは少なくとも4、好ましくは少なくとも8、好ましくは少なくとも12、より好ましくは少なくとも20アミノ酸である。結合は直接的でも間接的でもよい。例えば、結合は、1以上の膜貫通ドメイン、1以上の脂質アンカーによる、または、細胞の原形質膜の外側小葉に見られ得る何らかの他のタンパク質、脂質、サッカリドまたは他の構造との相互作用によるものであり得る。例えば、細胞表面と結合する分子は、細胞外部分を有する膜貫通タンパク質であってよくまたは膜貫通タンパク質である他のタンパク質との相互作用により細胞表面と結合するタンパク質であってよい。
【0386】
「細胞表面」または「細胞の表面」は、当分野でのその通常の意味に従い使用され、故に、タンパク質および他の分子による結合のために接近可能である細胞の外側を含む。抗原は、細胞表面に位置するならば、該細胞の表面で発現され、例えば、該細胞に添加された、抗原特異的抗体による結合のために接近可能である。
【0387】
本発明における用語「細胞外部分」または「エキソドメイン」は、細胞の細胞外間隙に面し、好ましくは、例えば、該細胞の外側に位置する抗体などの結合分子により、該細胞の外側から接近可能である、タンパク質などの分子の一部をいう。好ましくは本用語は、1以上の細胞外ループまたはドメインまたはそのフラグメントをいう。
【0388】
用語「エピトープ」は、免疫系により認識される抗原などの分子の一部またはフラグメントをいう。例えば、エピトープは、T細胞、B細胞または抗体により認識され得る。抗原のエピトープは、抗原の連続または不連続部分を含み得て、約5~約100、例えば約5~約50、より好ましくは約8~約30、最も好ましくは約8~約25アミノ酸長であり得て、例えば、エピトープは好ましくは9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25アミノ酸長であり得る。ある実施態様において、エピトープは約10~約25アミノ酸長である。用語「エピトープ」はT細胞エピトープを含む。
【0389】
用語「T細胞エピトープ」は、MHC分子の状況で提示されたとき、T細胞により認識されるタンパク質の一部またはフラグメントをいう。用語「主要組織適合遺伝子複合体」および略語「MHC」はMHCクラスIおよびMHCクラスII分子を含み、全脊椎動物に存在する遺伝子の複合体をいう。MHCタンパク質または分子は、免疫反応におけるリンパ球と抗原提示細胞または罹患細胞のシグナル伝達に重要であり、ここで、MHCタンパク質または分子はペプチドエピトープと結合し、T細胞上のT細胞受容体により認識されるようにそれらを提示する。MHCによりコードされるタンパク質は、細胞表面に発現され、自己抗原(細胞自体からのペプチドフラグメント)および非自己抗原(例えば、侵入微生物のフラグメント)両者をT細胞に提示する。クラスI MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは一般に約8~約10アミノ酸長であるが、より長いまたは短いペプチドが有効であり得る。クラスII MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは一般に約10~約25アミノ酸長であり、特に約13~約18アミノ酸長であるが、より長いまたは短いペプチドが有効であり得る。
【0390】
ペプチドおよびタンパク質抗原は例えば、5アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸、30アミノ酸、35アミノ酸、40アミノ酸、45アミノ酸または50アミノ酸長を含む、2~100アミノ酸であり得る。ある実施態様において、ペプチドは50アミノ酸より大きくてよい。ある実施態様において、ペプチドは100アミノ酸より大きくてよい。
【0391】
ペプチドまたはタンパク質抗原は、ペプチドまたはタンパク質に対する抗体およびT細胞応答を進展させる免疫系の能力を誘導または増加できるあらゆるペプチドまたはタンパク質であり得る。
【0392】
ある実施態様において、ワクチン抗原は、免疫エフェクター細胞により認識可能である。好ましくは、ワクチン抗原は、免疫エフェクター細胞により認識されたら、適切な共刺激シグナル存在下、ワクチン抗原を認識する抗原受容体を運搬する免疫エフェクター細胞の刺激、プライミングおよび/または増殖を誘導できる。本発明の実施態様の状況において、ワクチン抗原は、好ましくは細胞表面、好ましくは抗原提示細胞に提示されているかまたは提示される。ある実施態様において、抗原は、ウイルス感染細胞などの罹患細胞により提示される。ある実施態様において、抗原受容体は、MHCの状況で提示される抗原のエピトープに結合するTCRである。ある実施態様において、TCRの結合は、T細胞により発現されたおよび/またはT細胞上で抗原提示細胞などの細胞により抗原に対して提示されたとき刺激、該T細胞のプライミングおよび/または増殖をもたらす。ある実施態様において、TCRの結合は、T細胞により発現されたおよび/または罹患細胞に提示される抗原に対してT細胞で提示されたとき、罹患細胞の細胞溶解および/またはアポトーシスをもたらし、ここで、該T細胞は、好ましくは細胞毒性因子、例えばパーフォリンおよびグランザイムを放出する。
【0393】
ある実施態様において、抗原受容体は、抗原におけるエピトープに結合する抗体またはB細胞受容体である。ある実施態様において、抗体またはB細胞受容体は抗原の天然エピトープに結合する。
【0394】
核酸
ここで使用する用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換えにより産生されたおよび化学合成された分子などのDNAおよびRNAを含むことを意図する。核酸は一本鎖でも二本鎖でもよい。RNAは、インビトロ転写RNA(IVT RNA)または合成RNAを含む。本発明では、ポリヌクレオチドは好ましくは単離されている。
【0395】
核酸はベクターに含まれ得る。ここで使用する用語「ベクター」は、プラスミドベクター、コスミドベクター、ラムダファージなどのファージベクター、レトロウイルス、アデノウイルスまたはバキュロウイルスベクターなどのウイルスベクターまたは細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)またはP1人工染色体(PAC)などの人工染色体ベクターを含む、当業者に知られるあらゆるベクターを含む。該ベクターは、発現およびクローニングベクターを含む。発現ベクターはプラスミドならびにウイルスベクターを含み、一般に所望のコード配列と、特定の宿主生物(例えば、細菌、酵母、植物、昆虫または哺乳動物)またはインビトロ発現系で操作可能に結合したコード配列の発現に必要な適切なDNA配列を含む。クローニングベクターは、一般にある所望のDNAフラグメントの操作および増幅に使用され、所望のDNAフラグメントの発現に必要な機能的配列を欠き得る。
【0396】
本発明の全態様のある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、該ワクチン抗原を産生するよう処理された、抗原提示対象の細胞などの細胞で発現される。
【0397】
ここに記載する核酸は組換えおよび/または単離分子であり得る。
【0398】
本発明において、用語「RNA」は、リボヌクレオチド残基を含む核酸分子に関する。好ましい実施態様において、RNAはリボヌクレオチド残基のすべてまたは大部分を含む。ここで使用する「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドをいう。RNAは、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNAなどの単離RNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換えにより産生されたRNAならびに1以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変により天然に存在するRNAと異なる修飾RNAを包含し、これらに限定されない。このような改変は、内部RNAヌクレオチドまたはRNAの末端への非ヌクレオチド物質の付加をいい得る。ここでは、RNAのヌクレオチドが化学合成されたヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドなどの非標準ヌクレオチドであり得ることもまた意図される。本発明に関して、これらの改変RNAは天然に存在するRNAのアナログと考慮される。
【0399】
本発明のある実施態様において、RNAは、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNA転写物に関連するメッセンジャーRNA(mRNA)である。当分野で確立されているとおり、mRNAは、一般に5’非翻訳領域(5’-UTR)、ペプチドコード領域および3’非翻訳領域(3’-UTR)を含む。ある実施態様において、RNAはインビトロ転写または化学合成により産生される。ある実施態様において、mRNAは、DNA鋳型を使用するインビトロ転写により産生され、ここで、DNAはデオキシリボヌクレオチドを含む核酸をいう。
【0400】
ある実施態様において、RNAはインビトロ転写RNA(IVT-RNA)であり、適切なDNA鋳型のインビトロ転写により得られ得る。転写制御用プロモーターは、あらゆるRNAポリメラーゼのあらゆるプロモーターであり得る。インビトロ転写のためのDNA鋳型は、核酸、特にcDNAのクローニングおよびインビトロ転写のための適切なベクターへのその導入を含む。cDNAは、RNAの逆転写により得られ得る。
【0401】
本発明のある実施態様において、RNAは「レプリコンRNA」または単に「レプリコン」、特に「自己複製RNA」または「自己増幅性RNA」である。ある特に好ましい実施態様において、レプリコンまたは自己複製RNAはssRNAウイルス、特にアルファウイルスなどのプラス鎖ssRNAウイルスに由来するまたはそれ由来の要素を含む。アルファウイルスは、プラス鎖RNAウイルスの典型的代表である。アルファウイルスは、感染細胞の細胞質で複製する(アルファウイルスライフサイクルのレビューのためにJose et al., Future Microbiol., 2009, vol. 4, pp. 837-856を参照のこと)。多くのアルファウイルスの総ゲノム長は、一般に11,000~12,000ヌクレオチドの範囲であり、ゲノムRNAは、一般に5’キャップおよび3’ポリ(A)テイルを有する。アルファウイルスのゲノムは、非構造タンパク質(ウイルスRNAの転写、修飾および複製ならびにタンパク質修飾に関与)および構造タンパク質(ウイルス粒子を形成)をコードする。ゲノムに一般に2つのオープンリーディングフレーム(ORF)がある。4非構造タンパク質(nsP1-nsP4)は、一般にゲノムの5’末端付近で始まる第一ORFにより一緒にコードされ、一方アルファウイルス構造タンパク質は、第一ORFの下流に見られ、ゲノムの3’末端付近に伸びる第二ORFにより一緒にコードされる。一般に、第一ORFは第二ORFより大きく、比はおおよそ2:1である。アルファウイルスに感染した細胞において、非構造タンパク質をコードする核酸配列のみがゲノムRNAから翻訳され、一方構造タンパク質をコードする遺伝子情報は、真核生物メッセンジャーRNA(mRNA;Gould et al., 2010, Antiviral Res., vol. 87 pp. 111-124)を模倣するRNA分子であるサブゲノム転写物から翻訳可能である。感染後、すなわちウイルスライフサイクル早期に、(+)鎖ゲノムRNAは、非構造ポリタンパク質(nsP1234)をコードするオープンリーディングフレームの翻訳のためにメッセンジャーRNAのように直接作用する。アルファウイルス由来ベクターは、外来遺伝子情報の標的細胞または標的生物への送達について提案されている。単純なアプローチで、アルファウイルス構造タンパク質をコードするオープンリーディングフレームは、目的のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームに置き換えられる。アルファウイルスベースのトランス複製系は、2つの別々の核酸分子上のアルファウイルスヌクレオチド配列要素に依存する:一方の核酸分子はウイルスレプリカーゼをコードし、他方の核酸分子は該レプリカーゼをトランスで複製できる(故に、トランス複製系と命名)。トランス複製は、ある宿主細胞におけるこれら核酸分子の両方の存在を必要とする。レプリカーゼによりトランスで複製されることができる核酸分子は、アルファウイルスレプリカーゼによる認識およびRNA合成を可能とするため、あるアルファウイルス配列要素を含まなければならない。
【0402】
ある実施態様において、ここに記載するRNAは修飾ヌクレオシドを有し得る。ある実施態様において、RNAは少なくとも1個の(例えば、全)ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。
【0403】
ここで使用する用語「ウラシル」は、RNAの核酸に出現し得る核酸塩基の一つをいう。ウラシルの構造は次のとおりである。
【0404】
【0405】
ここで使用する用語「ウリジン」は、RNAに存在し得るヌクレオシドの一つをいう。ウリジンの構造は次のとおりである。
【0406】
【0407】
UTP(ウリジン5’-三リン酸)は次の構造を有する。
【0408】
【0409】
シュード-UTP(シュードウリジン5’-三リン酸)は次の構造を有する。
【0410】
【0411】
「シュードウリジン」は、ウラシルが窒素-炭素グリコシド結合の代わりに炭素-炭素結合を介してペントース環に結合している、ウリジンの異性体である修飾ヌクレオシドの一例である。
【0412】
他の例示的修飾ヌクレオシドは、次の構造を有するN1-メチル-シュードウリジン(m1Ψ)である。
【0413】
【0414】
N1-メチル-シュード-UTPは次の構造を有する。
【0415】
【0416】
他の例示的修飾ヌクレオシドは、次の構造を有する5-メチル-ウリジン(m5U)である。
【0417】
【0418】
ある実施態様において、ここに記載するRNA中の1以上のウリジンは、修飾ヌクレオシドで置き換えられる。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドは修飾ウリジンである。
【0419】
ある実施態様において、RNAは少なくとも1個のウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。ある実施態様において、RNAは各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。
【0420】
ある実施態様において、修飾ヌクレオシドはシュードウリジン(ψ)、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)および5-メチル-ウリジン(m5U)から独立して選択される。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドはシュードウリジン(ψ)を含む。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドはN1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)を含む。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドは5-メチル-ウリジン(m5U)を含む。ある実施態様において、RNAは1を超えるタイプの修飾ヌクレオシドを含んでよく、修飾ヌクレオシドは独立してシュードウリジン(ψ)、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)および5-メチル-ウリジン(m5U)から選択される。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドはシュードウリジン(ψ)およびN1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)を含む。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドはシュードウリジン(ψ)および5-メチル-ウリジン(m5U)を含む。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドはN1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)および5-メチル-ウリジン(m5U)を含む。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドはシュードウリジン(ψ)、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)および5-メチル-ウリジン(m5U)を含む。
【0421】
ある実施態様において、RNA中の1以上の、例えば、すべてのウリジンを置き換える修飾ヌクレオシドは、3-メチル-ウリジン(m3U)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-アザ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ウリジン(s2U)、4-チオ-ウリジン(s4U)、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン(ho5U)、5-アミノアリル-ウリジン、5-ハロ-ウリジン(例えば、5-ヨード-ウリジンまたは5-ブロモ-ウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5-カルボキシメチル-ウリジン(cm5U)、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chm5U)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオ-ウリジン(mcm5s2U)、5-アミノメチル-2-チオ-ウリジン(nm5s2U)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnm5U)、1-エチル-シュードウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(mnm5s2U)、5-メチルアミノメチル-2-セレノ-ウリジン(mnm5se2U)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(cmnm5s2U)、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-ウリジン(τm5U)、1-タウリノメチル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオ-シュードウリジン)、5-メチル-2-チオ-ウリジン(m5s2U)、1-メチル-4-チオ-シュードウリジン(m1s4ψ)、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、3-メチル-シュードウリジン(m3ψ)、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロシュードウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチル-ジヒドロウリジン(m5D)、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-メトキシ-ウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、N1-メチル-シュードウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン(acp3ψ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオ-ウリジン(inm5s2U)、α-チオ-ウリジン、2’-O-メチル-ウリジン(Um)、5,2’-O-ジメチル-ウリジン(m5Um)、2’-O-メチル-シュードウリジン(ψm)、2-チオ-2’-O-メチル-ウリジン(s2Um)、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(mcm5Um)、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(ncm5Um)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチル-ウリジン(cmnm5Um)、3,2’-O-ジメチル-ウリジン(m3Um)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチル-ウリジン(inm5Um)、1-チオ-ウリジン、デオキシチミジン、2’-F-アラ-ウリジン、2’-F-ウリジン、2’-OH-アラ-ウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジンまたは当分野で知られるあらゆる他の修飾ウリジンの何れか1以上であり得る。
【0422】
ある実施態様において、RNAは他の修飾ヌクレオシドを含むまたはさらなる修飾ヌクレオシド、例えば、修飾シチジンを含む。例えば、ある実施態様において、RNAにおいて、5-メチルシチジンは、部分的にまたは完全に、好ましくは完全にシチジンの代わりとなる。ある実施態様において、RNAは5-メチルシチジンならびにシュードウリジン(ψ)、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)および5-メチル-ウリジン(m5U)から選択される1以上を含む。ある実施態様において、RNAは5-メチルシチジンおよびN1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)を含む。ある実施態様において、RNAは各シチジンの代わりに5-メチルシチジンおよび各ウリジンの代わりにN1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)を含む。
【0423】
ある実施態様において、本発明のRNAは5’キャップを含む。ある実施態様において、本発明のRNAはキャップされていない5’-三リン酸を有しない。ある実施態様において、RNAは5’-キャップアナログにより修飾され得る。用語「5’キャップ」は、mRNA分子の5’末端に見られる構造をいい、一般に5’-から5’-三リン酸結合を介してmRNAに結合したグアノシンヌクレオチドからなる。ある実施態様において、このグアノシンは7位でメチル化される。RNAに5’キャップまたは5’キャップアナログを付すことは、5’キャップがRNA鎖に共転写的に発現されるインビトロ転写により達成できまたはキャッピング酵素を使用して転写後RNAに付加し得る。
【0424】
ある実施態様において、RNAのための構成要素キャップは、次の構造を有するm2
7,3’-OGppp(m1
2’-O)ApG(m2
7,3’OG(5’)ppp(5’)m2’-OApGと称することもある)である。
【0425】
【0426】
下記は、RNAおよびm2
7,3’OG(5’)ppp(5’)m2’-OApGを含む例示的キャップ1 RNAである。
【0427】
【0428】
下記は他の例示的キャップ1 RNA(キャップアナログ無し)である。
【0429】
【0430】
ある実施態様において、RNAは、ある実施態様において、下記構造を有するキャップアナログ抗逆転キャップ(ARCAキャップ(m2
7,3’OG(5’)ppp(5’)G))を使用して、「キャップ0」構造で修飾される。
【0431】
【0432】
下記はRNAおよびm2
7,3’OG(5’)ppp(5’)Gを含む例示的キャップ0 RNAである。
【0433】
【0434】
ある実施態様において、「キャップ0」構造は、下記構造を有するキャップアナログベータ-S-ARCA(m2
7,2’OG(5’)ppSp(5’)G)を使用して、産生される。
【0435】
【0436】
下記はベータ-S-ARCA(m2
7,2’OG(5’)ppSp(5’)G)およびRNAを含む例示的キャップ0 RNAである。
【0437】
【0438】
ベータ-S-ARCAの「D1」ジアステレオマーまたは「ベータ-S-ARCA(D1)」は、ベータ-S-ARCAのD2ジアステレオマー(ベータ-S-ARCA(D2))と比較してHPLCカラムで最初に溶出する、故に保持時間が短い、ベータ-S-ARCAのジアステレオマーである(引用によりここに包含させるWO2011/015347参照)。
【0439】
特に好ましいキャップは、ベータ-S-ARCA(D1)(m2
7,2’-OGppSpG)またはm2
7,3’-OGppp(m1
2’-O)ApGである。
【0440】
ある実施態様において、本発明のRNAは5’-UTRおよび/または3’-UTRを含む。用語「非翻訳領域」または「UTR」は、DNA分子における転写されるが、アミノ酸配列に翻訳されない領域またはmRNA分子などのRNA分子における対応する領域に関する。非翻訳領域(UTR)はオープンリーディングフレームの5’(上流)(5’-UTR)および/またはオープンリーディングフレームの3’(下流)(3’-UTR)に存在し得る。5’-UTRは、存在するならば、タンパク質コード化領域の開始コドンの上流である5’末端に位置する。5’-UTRは、5’キャップ(存在するならば)の下流であり、例えば5’キャップに直接隣接する。3’-UTRは、存在するならば、タンパク質コード化領域の停止コドンの下流である3’末端に位置するが、用語「3’-UTR」は、好ましくはポリ(A)配列を含まない。故に、3’-UTRは、ポリ(A)配列(存在するならば)の上流であり、例えばポリ(A)配列に直接隣接する。
【0441】
ある実施態様において、RNAは配列番号12のヌクレオチド配列または配列番号12のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’-UTRを含む。
【0442】
ある実施態様において、RNAは配列番号13のヌクレオチド配列または配列番号13のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’-UTRを含む。
【0443】
特に好ましい5’-UTRは配列番号12のヌクレオチド配列を含む。特に好ましい3’-UTRは配列番号13のヌクレオチド配列を含む。
【0444】
ある実施態様において、本発明のRNAは3’-ポリ(A)配列を含む。
【0445】
ここで使用する用語「ポリ(A)配列」または「ポリAテイル」は、一般にRNA分子の3’末端に位置するアデニル酸残基の中断されていないまたは中断された配列をいう。ポリ(A)配列は当業者に知られ、ここに記載するRNAにおける3’-UTRに続き得る。中断されていないポリ(A)配列は、連続アデニル酸残基により特徴づけられる。本来は、中断されていないポリ(A)配列が典型的である。ここに開示するRNAは、転写後鋳型非依存的RNAポリメラーゼによりRNAの遊離3’末端に結合されたポリ(A)配列またはDNAによりコードされ、鋳型依存的RNAポリメラーゼにより転写されるポリ(A)配列を有し得る。
【0446】
約120個のAヌクレオチドのポリ(A)配列が、トランスフェクトされた真核生物細胞におけるRNAのレベルおよびポリ(A)配列の上流(5’)に存在するオープンリーディングフレームから翻訳されたタンパク質のレベルに有益に影響することが示されている(Holtkamp et al., 2006, Blood, vol. 108, pp. 4009-4017)。
【0447】
ポリ(A)配列はどんな長さでもよい。ある実施態様において、ポリ(A)配列は、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも80個または少なくとも100個および500個まで、400個まで、300個まで、200個までまたは150個までのAヌクレオチド、および、特に、約120個のAヌクレオチドを含む、本質的にそれからなるまたはそれからなる。この状況で、「本質的にからなる」は、ポリ(A)配列の大部分のヌクレオチド、一般に、ポリ(A)配列におけるヌクレオチド数の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%がAヌクレオチドであるが、残りのヌクレオチドがUヌクレオチド(ウリジル酸)、Gヌクレオチド(グアニル酸)またはCヌクレオチド(シチジル酸)などのAヌクレオチド以外のヌクレオチドであることが可能であることを意味する。この状況で、「からなる」は、ポリ(A)配列における全ヌクレオチド、すなわち、ポリ(A)配列のヌクレオチド数の100%がAヌクレオチドであることを意味する。用語「Aヌクレオチド」または「A」は、アデニル酸をいう。
【0448】
ある実施態様において、ポリ(A)配列はRNA転写中、例えば、インビトロ転写RNAの調製中、コード鎖に相補的な鎖における反復dTヌクレオチド(デオキシチミジル酸)を含むDNA鋳型に基づき、結合される。ポリ(A)配列をコードするDNA配列(コード鎖)はポリ(A)カセットと称される。
【0449】
ある実施態様において、DNAのコード鎖に存在するポリ(A)カセットは、dAヌクレオチドから本質的になるが、4ヌクレオチド(dA、dC、dGおよびdT)のランダム配列により中断される。このようなランダム配列は5~50、10~30または10~20ヌクレオチド長であり得る。このようなカセットは、引用によりここに包含させるWO2016/005324A1に開示される。WO2016/005324A1に開示されるあらゆるポリ(A)カセットが本発明において使用され得る。本質的にdAヌクレオチドからなるが、4ヌクレオチド(dA、dC、dG、dT)が等しく分布しているランダム配列で中断され、例えば、5~50ヌクレオチド長のポリ(A)カセットは、DNAレベルで、大腸菌中のプラスミドDNAの一定した増殖を示し、RNAレベルで、RNA安定性および翻訳効率の支持に関する有益な性質が含まれることにさらに関する。結果として、ある実施態様において、ここに記載するRNA分子に含まれるポリ(A)配列は、本質的にAヌクレオチドからなるが、4ヌクレオチド(A、C、G、U)のランダム配列で中断される。このようなランダム配列は5~50、10~30または10~20ヌクレオチド長であり得る。
【0450】
ある実施態様において、Aヌクレオチド以外のヌクレオチドは3’末端でポリ(A)配列に隣接せず、すなわち、ポリ(A)配列は3’末端でA以外のヌクレオチドでマスクされずまたは後続されていない。
【0451】
ある実施態様において、ポリ(A)配列は、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも80または少なくとも100および500まで、400まで、300まで、200までまたは150までヌクレオチドを含み得る。ある実施態様において、ポリ(A)配列は、本質的に少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも80または少なくとも100および500まで、400まで、300まで、200までまたは150までヌクレオチドからなり得る。ある実施態様において、ポリ(A)配列は、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも80または少なくとも100および500まで、400まで、300まで、200までまたは150までヌクレオチドからなり得る。ある実施態様において、ポリ(A)配列は少なくとも100ヌクレオチド含む。ある実施態様において、ポリ(A)配列は、約150ヌクレオチドを含む。ある実施態様において、ポリ(A)配列は、約120ヌクレオチドを含む。
【0452】
ある実施態様において、RNAは、配列番号14のヌクレオチド配列または配列番号14のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリ(A)配列を含む。
【0453】
特に好ましいポリ(A)配列は、配列番号14のヌクレオチド配列を含む。
【0454】
本開示により、ワクチン抗原は、好ましくは、一本鎖、5’キャップmRNAとして投与され、それは、該RNAを投与される対象の細胞に入ると、各タンパク質に翻訳される。好ましくはRNAは、安定性および翻訳効率に関してRNAの最大有効性を最適化する構造要素を含む(5’キャップ、5’-UTR、3’-UTR、ポリ(A)配列)。
【0455】
ある実施態様において、ベータ-S-ARCA(D1)は、RNAの5’末端で特異的キャッピング構造として利用される。ある実施態様において、m2
7,3’-OGppp(m1
2’-O)ApGは、RNAの5’末端で特異的キャッピング構造として利用される。ある実施態様において、5’-UTR配列はヒトアルファ-グロビンmRNAに由来し、所望により翻訳効率を高めるための最適化‘コザック配列’を有する。ある実施態様において、「分割のアミノ末端エンハンサー」(AES)mRNA(Fと称する)およびミトコンドリアコード12SリボソームRNA(Iと称する)由来の2つの配列要素(FI要素)の組み合わせが、高い最大タンパク質レベルおよびmRNAの長期持続を確実にするためにコード配列とポリ(A)配列の間に配置される。ある実施態様において、ヒトベータ-グロビンmRNA由来の2個の反復3’-UTRが、高い最大タンパク質レベルおよびmRNAの長期持続を確実にするために、コード配列とポリ(A)配列の間に配置される。ある実施態様において、30アデノシン残基のストレッチ、続く10ヌクレオチドリンカー配列および他の70アデノシン残基からなる110ヌクレオチド長のポリ(A)配列が使用される。このポリ(A)配列はRNA安定性および翻訳効率を高めるために設計された。
【0456】
本発明の全態様のある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、ワクチン抗原を提供するために処置される対象の細胞で発現される。本発明の全態様のある実施態様において、RNAは対象の細胞で一過性に発現される。本発明の全態様のある実施態様において、RNAはインビトロ転写RNAである。本発明の全態様のある実施態様において、ワクチン抗原の発現は細胞表面である。本発明の全態様のある実施態様において、ワクチン抗原はMHCの状況で発現され、提示される。本発明の全態様のある実施態様において、ワクチン抗原の発現は細胞外間隙においてであり、すなわち、ワクチン抗原は分泌される。
【0457】
本発明において、用語「転写」は、DNA配列でコードされる遺伝子がRNAに転写される過程に関する。その後、RNAはペプチドまたはタンパク質に翻訳され得る。
【0458】
本発明により、用語「転写」は「インビトロ転写」を含み、ここで、用語「インビトロ転写」は、RNA、特にmRNAが、無細胞系で、好ましくは適切な細胞抽出物を使用してインビトロ合成される過程に関する。好ましくはクローニングベクターが転写物の産生に適用される。これらのクローニングベクターは一般に転写ベクターと称され、本発明により用語「ベクター」に包含される。本発明により、本発明において使用されるRNAは、好ましくはインビトロ転写RNA(IVT-RNA)であり、適切なDNA鋳型のインビトロ転写により得られ得る。転写の制御のためのプロモーターは、あらゆるRNAポリメラーゼのあらゆるプロモーターであり得る。RNAポリメラーゼの具体例は、T7、T3およびSP6 RNAポリメラーゼである。好ましくは本発明によるインビトロ転写は、T7またはSP6プロモーターにより制御される。インビトロ転写のためのDNA鋳型は、核酸、特にcDNAのクローニングにより得て、それをインビトロ転写のための適切なベクターに導入することができる。cDNAはRNAの逆転写により得られ得る。
【0459】
RNAに関して、用語「発現」または「翻訳」は、細胞のリボソームにおける過程に関し、それにより、mRNA鎖がペプチドまたはタンパク質を製造するようアミノ酸配列の集合を指示する。
【0460】
ある実施態様において、例えば、RNA脂質粒子として製剤化された、ここに記載するRNAの投与後、該RNAの少なくとも一部は標的細胞に送達される。ある実施態様において、該RNAの少なくとも一部は標的細胞のサイトゾルに送達される。ある実施態様において、RNAは標的細胞により翻訳されて、それがコードするペプチドまたはタンパク質を産生する。ある実施態様において、標的細胞は脾細胞である。ある実施態様において、標的細胞は、脾臓における専門抗原提示細胞などの抗原提示細胞である。ある実施態様において、標的細胞は樹状細胞またはマクロファージである。ここに記載するRNA脂質粒子などのRNA粒子を、このような標的細胞のRNAへの送達に使用し得る。従って、本発明はまた、対象にここに記載するRNA粒子を投与することを含む、対象における標的細胞にRNAを送達する方法にも関する。ある実施態様において、RNAは、標的細胞のサイトゾルに送達される。ある実施態様において、RNAは、該RNAによりコードされるペプチドまたはタンパク質を産生するように、標的細胞により翻訳される。
【0461】
「コードする」は、ヌクレオチド(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)の既定の配列またはアミノ酸の規定配列およびそれ由来の生物学的性質を有する、生物学的過程における他のポリマーおよび巨大分子の合成のための鋳型として作用する、遺伝子、cDNAまたはmRNAなどのポリヌクレオチドにおけるヌクレオチドの特異的配列の固有の性質をいう。故に、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が、細胞または他の生物学的系においてタンパク質を生ずるならば、該タンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常配列表に提供されるコード鎖および遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖の両方をタンパク質またはその遺伝子もしくはcDNAの他の産物をコードするといい得る。
【0462】
ある実施態様において、ここで記載する核酸組成物、例えば、脂質ナノ粒子封入mRNAを含む組成物は、(例えば、対象に投与された場合に)コードされたポリペプチドの持続発現により特徴づけられる。例えば、一部の実施態様において、このような組成物は、ヒトに投与された場合に、このようなヒトからの生物学的サンプル(例えば、血清)における検出可能なポリペプチド発現を達成し、一部の実施態様において、例えば、少なくとも48時間、少なくとも60時間、少なくとも72時間、少なくとも96時間、少なくとも120時間、少なくとも148時間またはそれ以上を含む、少なくとも少なくとも36時間またはそれ以上である期間、このような発現が持続することにより特徴づけられる。
【0463】
ある実施態様において、本発明により投与されるワクチン抗原をコードするRNAは非免疫原性である。免疫刺激剤をコードするRNAは、本発明により投与されて、アジュバント効果を提供し得る。免疫刺激剤をコードするRNAは標準RNAまたは非免疫原性RNAであり得る。
【0464】
ここで使用する用語「非免疫原性RNA」は、例えば、哺乳動物への投与により免疫系による応答を誘導しないか、非免疫原性RNAに非免疫原性を与える修飾および処理を受けていない点でのみ異なる同じRNAにより誘導されるより、すなわち、標準RNA(stdRNA)により誘導されるより、弱い応答を誘導するRNAをいう。ある好ましい実施態様において、ここでは修飾RNA(modRNA)とも称する非免疫原性RNAは、自然免疫受容体のRNA介在活性化を抑制するための修飾ヌクレオシドのRNAへの取り込みおよび二本鎖RNA(dsRNA)の除去により、非免疫原性とされる。
【0465】
修飾ヌクレオシドを取り込むことにより非免疫原性RNAを非免疫原性にすることについて、あらゆる修飾ヌクレオシドを、RNAの免疫原性の低減または抑制する限り、使用し得る。特に好ましいのは、自然免疫受容体のRNA介在活性化を抑制する修飾ヌクレオシドである。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドは修飾核酸塩基を含むヌクレオシドでの1以上のウリジンの置換を含む。ある実施態様において、修飾核酸塩基は修飾ウラシルである。ある実施態様において、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドは、3-メチル-ウリジン(m3U)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-アザ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ウリジン(s2U)、4-チオ-ウリジン(s4U)、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン(ho5U)、5-アミノアリル-ウリジン、5-ハロ-ウリジン(例えば、5-ヨード-ウリジンまたは5-ブロモ-ウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5-カルボキシメチル-ウリジン(cm5U)、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chm5U)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcm5U)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオ-ウリジン(mcm5s2U)、5-アミノメチル-2-チオ-ウリジン(nm5s2U)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnm5U)、1-エチル-シュードウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(mnm5s2U)、5-メチルアミノメチル-2-セレノ-ウリジン(mnm5se2U)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnm5U)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(cmnm5s2U)、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-ウリジン(τm5U)、1-タウリノメチル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオ-シュードウリジン)、5-メチル-2-チオ-ウリジン(m5s2U)、1-メチル-4-チオ-シュードウリジン(m1s4ψ)、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、3-メチル-シュードウリジン(m3ψ)、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロシュードウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチル-ジヒドロウリジン(m5D)、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-メトキシ-ウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、N1-メチル-シュードウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン(acp3 ψ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオ-ウリジン(inm5s2U)、α-チオ-ウリジン、2’-O-メチル-ウリジン(Um)、5,2’-O-ジメチル-ウリジン(m5Um)、2’-O-メチル-シュードウリジン(ψm)、2-チオ-2’-O-メチル-ウリジン(s2Um)、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(mcm5Um)、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(ncm5Um)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチル-ウリジン(cmnm5Um)、3,2’-O-ジメチル-ウリジン(m3Um)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチル-ウリジン(inm5Um)、1-チオ-ウリジン、デオキシチミジン、2’-F-アラ-ウリジン、2’-F-ウリジン、2’-OH-アラ-ウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジンおよび5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジンからなる群から選択される。ある特に好ましい実施態様において、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドはシュードウリジン(ψ)、N1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)または5-メチル-ウリジン(m5U)、特にN1-メチル-シュードウリジンである。
【0466】
ある実施態様において、1以上のウリジンの修飾核酸塩基を含むヌクレオシドでの置換は、ウリジンの少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の置換を含む。
【0467】
T7 RNAポリメラーゼを使用するインビトロ転写(IVT)によるmRNAの合成中、二本鎖RNA(dsRNA)を含む相当量の異常産物が、酵素の非通常性活性により産生される。dsRNAは炎症性サイトカインを誘導し、タンパク質合成阻害に至るエフェクター酵素を活性化する。dsRNAは、例えば、非多孔性または多孔性C-18ポリスチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)マトリクスを使用するイオン対逆相HPLCにより、IVT RNAなどのRNAから除去され得る。あるいはssRNAではなくdsRNAを特異的に加水分解し、それによりIVT RNA調製物からdsRNA夾雑物を除去する大腸菌RNaseIIIを使用する酵素ベースの方法が使用され得る。さらに、dsRNAはセルロース物質を使用してssRNAから分離され得る。ある実施態様において、RNA調製物をセルロース物質と接触させ、ssRNAを、dsRNAのセルロース物質への結合を可能とし、ssRNAのセルロース物質への結合を可能としない条件下で、セルロース物質から分離する。
【0468】
ここで使用する用語「除去する(remove)」または「除去(removal)」は、dsRNAなどの第二物質の集団の近くから分離される非免疫原性RNAなどの第一物質の集団などの特徴をいい、ここで、第一物質の集団は必ずしも第二物質がないものではなく、第二物質の集団は必ずしも第一物質がないものではない。しかしながら、第二物質の集団の除去により特徴づけられる第一物質の集団は、第一および第二物質が分離されていない混合物と比較して、第二物質の含有量が測定できるほどに低い。
【0469】
ある実施態様において、非免疫原性RNAからのdsRNAの除去は、非免疫原性RNA組成物におけるRNAの10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.3%未満または0.1%未満がdsRNAであるようなdsRNAの除去を含む。ある実施態様において、非免疫原性RNAは、dsRNAがないまたは本質的にない。ある実施態様において、非免疫原性RNA組成物は、一本鎖ヌクレオシド修飾RNAの精製調製物を含む。例えば、ある実施態様において、一本鎖ヌクレオシド修飾RNAの精製調製物は、二本鎖RNA(dsRNA)が実質的にない。ある実施態様において、精製調製物は、他のすべての核酸分子(DNA、dsRNAなど)に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%または少なくとも99.9%一本鎖ヌクレオシド修飾RNAである。
【0470】
ある実施態様において、非免疫原性RNAは、同じ配列を有する標準RNAより効率的に細胞で翻訳される。ある実施態様において、翻訳は、非修飾対応物に対して2倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、3倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、4倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、5倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、6倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、7倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、8倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、9倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、10倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、15倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、20倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、50倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、100倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、200倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、500倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、1000倍の係数まで増強される。ある実施態様において、翻訳は、2000倍の係数まで増強される。ある実施態様において、係数は10~1000倍である。ある実施態様において、係数は10~100倍である。ある実施態様において、係数は10~200倍である。ある実施態様において、係数は10~300倍である。ある実施態様において、係数は10~500倍である。ある実施態様において、係数は20~1000倍である。ある実施態様において、係数は30~1000倍である。ある実施態様において、係数は50~1000倍である。ある実施態様において、係数は100~1000倍である。ある実施態様において、係数は200~1000倍である。ある実施態様において、翻訳は、任意の他の顕著な量または量の範囲まで増強される。
【0471】
ある実施態様において、非免疫原性RNAは、同じ配列を有する標準RNAより有意に低い自然免疫原性を示す。ある実施態様において、非免疫原性RNAは、非修飾対応物より2倍低い自然免疫応答を示す。ある実施態様において、自然免疫原性は、3倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、4倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、5倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、6倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、7倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、8倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、9倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、10倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、15倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、20倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、50倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、100倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、200倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、500倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、1000倍の因数まで低減される。ある実施態様において、自然免疫原性は、2000倍の因数まで低減される。
【0472】
用語「有意に低い自然免疫原性を示す」は、自然免疫原性の検出可能な低減をいう。ある実施態様において、本用語は、非免疫原性RNAの有効量が検出可能な自然免疫応答を誘発することなく投与できるような低減をいう。ある実施態様において、本用語は、非免疫原性RNAによりコードされるタンパク質の産生を検出可能に減少させるのに十分な自然免疫応答を誘発することなく、非免疫原性RNAを繰り返し投与できるような低減をいう。ある実施態様において、低減は、非免疫原性RNAが非免疫原性RNAによりコードされるタンパク質の出可能な産生を排除するのに十分な自然免疫応答を誘発することなく、繰り返し投与できるようなものである。
【0473】
「免疫原性」は、ヒトまたは他の動物の体内で免疫応答を誘発するRNAなどの外来物質の能力である。自然免疫系は、比較的非特異的および即時である免疫系の成分である。これは、適応免疫系と共に脊椎動物免疫系の二つの主成分の一つである。
【0474】
ここで使用する「内因性」は、生物、細胞、組織または系内からのまたはそこで産生されるあらゆる物質をいう。
【0475】
ここで使用する用語「外因性」は、生物、細胞、組織または系外からのまたはそこで産生されるあらゆる物質をいう。
【0476】
ここで使用する用語「発現」は、特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳として定義される。
【0477】
ここで使用する用語「結合」、「融合する」または「融合」は相互交換可能に使用される。これらの用語は、2以上の要素または成分またはドメインを一緒に合わせることをいう。
【0478】
コドン最適化/G/C含有量の増加
一部の実施態様において、ここで記載する多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列を含むアミノ酸配列は、コドン最適化されたおよび/またはG/C含有量が野生型コード配列と比較して増加されるコード配列によってコードされる。これはまた、コード配列の1以上の配列領域がコドン最適化されているおよび/またはG/C含有量が野生型コード配列の対応する配列領域と比較して増加している実施態様も含む。ある実施態様において、コドン最適化および/またはG/C含有量の増加は好ましくはコードされるアミノ酸配列の配列を変えない。
【0479】
用語「コドン最適化」は、好ましくは、核酸分子によりコードされるアミノ酸配列を変えることがない、宿主生物の典型的コドン使用頻度を反映するために核酸分子のコード領域におけるコドンの改変をいう。本発明において、コード領域は、好ましくは、ここに記載するRNA分子を使用して処置される対象における最適発現のためにコドン最適化される。コドン最適化は、細胞におけるtRNAの出現の異なる頻度によっても翻訳効率が決定されるとの発見に基づく。故に、RNAの配列は、しばしば存在するtRNAが「稀なコドン」の代わりに利用可能となるようにコドンを修飾し得る。
【0480】
本発明のある実施態様において、ここに記載するRNAのコード領域のグアノシン/シトシン(G/C)含有量は野生型RNAの対応するコード配列のG/C含有量と比較して増加しており、ここで、該RNAによりコードされるアミノ酸配列は、好ましくは野生型RNAによりコードされるアミノ酸配列と比較して修飾されない。RNA配列のこの修飾は、翻訳されるべき何らかのRNA領域の配列が、そのmRNAの効率的翻訳に重要であるとの事実に基づく。G(グアノシン)/C(シトシン)含有量が増加した配列は、A(アデノシン)/U(ウラシル)含有量が増加した配列より安定である。数コドンが一つのおよび同じアミノ酸をコードする(いわゆる遺伝子コードの縮重)との事実に関して、安定性のための最も都合よいコドンが決定され得る(いわゆる代替コドン使用頻度)。RNAによりコードされるアミノ酸に依存して、野生型配列と比較してRNA配列の修飾について種々の可能性がある。特に、Aおよび/またはUヌクレオチドを含むコドンは、同じアミノ酸をコードするが、Aおよび/またはUを含まないまたはAおよび/またはUヌクレオチドの含有量が低い他のコドンにこれらコドンを置換することにより修飾され得る。
【0481】
種々の実施態様において、ここに記載するRNAのコード領域のG/C含有量は、野生型RNAのコード領域のG/C含有量と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%またはそれ以上増加される。
【0482】
RNA投与の実施態様
一部の実施態様において、本開示は、SARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも一部分を含むポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むRNA(例えば、mRNA)を提供し、SARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも一部分は、他のSARS-CoV-2 Sタンパク質バリアントにおいて見出されたアミノ酸修飾を組み込むように修飾される。RNAは、前記修飾の異なるものを有するポリペプチドをコードする複数の異なるRNA分子を含み得る。RNAはポリペプチドの細胞内発現に適している。一部の実施態様において、このようなコードされるポリペプチドは、完全Sタンパク質に対応する配列を含まない。一部の実施態様において、コードされるポリペプチドは、受容体結合ドメイン(RBD)に対応する配列を含む。ある実施態様において、このようなRNA(例えば、mRNA)はポリカチオン性ポリマー、ポリプレックス、プロテインまたはペプチドにより複合体化され得る。ある実施態様において、このようなRNAは脂質ナノ粒子(例えば、ここに記載のもの)に製剤化され得る。ある実施態様において、このようなRNA(例えば、mRNA)は免疫原性組成物(例えば、ワクチン)としてまたはそれにおいて使用するのにおよび/またはここに記載する免疫学的効果(例えば、SARS-CoV-2中和抗体および/またはT細胞応答(例えば、CD4+および/またはCD8+ T細胞応答)の産生)の達成に特に有用および/または有効であり得る。ある実施態様において、このようなRNA(例えば、mRNA)は、ヒト(例えば、SARS-CoV-2への暴露および/または感染があることが知られているヒトおよび/またはSARS-CoV-2への暴露が知られていないヒトを含む)のワクチン接種に有用であり得る。
【0483】
ある実施態様において、ここに記載するmRNA構築物は、全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対応するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む(例えば、このようなコードされるアミノ酸配列がここに記載するような少なくとも1つまたは複数のアミノ酸置換、例えば、プロリン置換を含み得る実施態様および/またはmRNA配列が例えば、哺乳動物、例えば、ヒト、対象にコドン最適化されている実施態様を含む)。ある実施態様において、全長SARS-CoV-2 Sタンパク質に対応するアミノ酸配列をコードするmRNA構築物は、特定の対象集団(例えば、特定の年齢の集団、例えば、ここに記載するような年齢の集団)において免疫原性組成物(例えば、ワクチン)として、または免疫原性組成物(例えば、ワクチン)において使用するのに特に有用および/または有効であり得る。
【0484】
一部の実施態様において、ここで記載する組成物または医薬製剤は、SARS-CoV-2 Sタンパク質またはSARS-CoV-2 Sタンパク質の免疫原性フラグメントを含むアミノ酸配列の修飾されたバリアントであるアミノ酸配列をコードするRNAを含む。同様に、ここで記載する方法は、このようなRNAの投与を含む。
【0485】
ここで使用する活性プラットフォームは、好ましくは最小ワクチン用量で防御免疫化を達成するための、頑強な中和抗体および付随的/随伴性T細胞応答を誘導する抗原コードRNAワクチンに基づき得る。投与されるRNAは好ましくはインビトロ転写RNAである。
【0486】
3つの異なるRNAプラットフォーム、すなわち非修飾ウリジン含有mRNA(uRNA)、ヌクレオシド修飾mRNA(modRNA)および自己増幅性RNA(saRNA)が特に好ましい。ある特に好ましい実施態様において、RNAはインビトロ転写RNAである。
【0487】
以下で、これら3つの異なるRNAプラットフォームの実施態様を記載し、ここで、その要素を説明するとき使用されるある用語は次の意味を有する。
S1S2タンパク質/S1S2 RBD:SARS-CoV-2の各(修飾)抗原をコードする配列。
【0488】
nsP1、nsP2、nsP3およびnsP4:ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)RNA依存的RNAポリメラーゼレプリカーゼおよびサブゲノムプロモーターと複製および翻訳を支持する保存配列要素をコードする野生型配列。
【0489】
virUTR:サブゲノムプロモーターの部分ならびに複製および翻訳支持配列要素をコードするウイルス非翻訳領域。
【0490】
hAg-コザック:翻訳効率を高めるための最適化「コザック配列」を有するヒトアルファ-グロビンmRNAの5’-UTR配列。
【0491】
Sec:Secは、新生ポリペプチド鎖の小胞体への転座を導く内因性S1S2タンパク質分泌シグナルペプチド(sec)に対応する。
【0492】
グリシン-セリンリンカー(GS):短リンカーペプチドをコードする配列は、融合タンパク質で一般に使用されるとおり、大部分アミノ酸グリシン(G)およびセリン(S)からなる。
【0493】
フィブリチン:人工三量体化ドメインとして使用されるT4フィブリチン(フォルドン)の部分配列。
【0494】
TM:TM配列はS1S2タンパク質の膜貫通部分に対応する。
【0495】
FI要素:3’-UTRは、「分割のアミノ末端エンハンサー」(AES)mRNA(Fと称する)およびミトコンドリアコード12SリボソームRNA(Iと称する)由来の2つの配列要素の組み合わせである。これらは、RNA安定性に寄与し、総タンパク質発現を増強する配列のエクスビボ選択過程で同定された。
【0496】
A30L70:樹状細胞におけるRNA安定性および翻訳効率を増強するために設計されたs30アデノシン残基のストレッチ、続く10ヌクレオチドリンカー配列および他の70アデノシン残基からなる110ヌクレオチド長のポリ(A)テイル。
【0497】
一般に、ここに記載するワクチンRNAは、5’から3’で、次の構造の一つを含み得る。
キャップ-5’-UTR-ワクチン抗原コード化配列-3’-UTR-ポリ(A)
または
キャップ-hAg-コザック-ワクチン抗原コード化配列-FI-A30L70。
【0498】
一般に、ここに記載するワクチン抗原は、N末端からC末端で、次の構造の一つを含み得る。
シグナル配列-RBD-三量体形成ドメイン
または
シグナル配列-RBD-三量体形成ドメイン-膜貫通ドメイン。
【0499】
RBDおよび三量体形成ドメインはリンカー、特にアミノ酸配列GSPGSGSGSを有するリンカーなどのGSリンカーにより隔離され得る。三量体形成ドメインおよび膜貫通ドメインはリンカー、特にアミノ酸配列GSGSGSを有するリンカーなどのGSリンカーにより隔離され得る。
【0500】
シグナル配列はここに記載するシグナル配列であり得る。RBDはここに記載する(修飾)RBDドメインであり得る。三量体形成ドメインはここに記載する三量体化ドメインであり得る。膜貫通ドメインはここに記載する膜貫通ドメインであり得る。
【0501】
ある実施態様において、
シグナル配列は配列番号1のアミノ酸1~16または1~19のアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列またはこのアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列を含む、
RBDは、配列番号1のアミノ酸327~528のアミノ酸配列に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列を含む。
三量体形成ドメインは、配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列または配列番号10のアミノ酸配列またはこのアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列を含む;および
膜貫通ドメインは、配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列またはこのアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0502】
ある実施態様において、
シグナル配列は配列番号1のアミノ酸1~16または1~19のアミノ酸配列または配列番号31のアミノ酸1~22のアミノ酸配列を含む、
三量体形成ドメインは、配列番号10のアミノ酸3~29のアミノ酸配列または配列番号10のアミノ酸配列を含む;および
膜貫通ドメインは、配列番号1のアミノ酸1207~1254のアミノ酸配列を含む。
【0503】
ここで記載するRNAまたはここで記載するワクチン抗原をコードするRNAは、非修飾ウリジン含有RNA(uRNA)、ヌクレオシド修飾mRNA(modRNA)または自己増幅性RNA(saRNA)であり得る。ある実施態様において、ここで記載するRNAまたはここで記載するワクチン抗原をコードするRNAは、ヌクレオシド修飾mRNA(modRNA)である。
【0504】
非修飾ウリジンメッセンジャーRNA(uRNA)
非修飾メッセンジャーRNA(uRNA)薬物物質の活性本体は、細胞に挿入したとき翻訳される一本鎖mRNAである。ワクチン抗原をコードする配列(すなわちオープンリーディングフレーム)に加えて、各uRNAは、好ましくは安定性および翻訳効率に関するRNAの最大有効性のために最適化された共通構造要素(5’キャップ、5’-UTR、3’-UTR、ポリ(A)テイル)を含む。好ましい5’キャップ構造はベータ-S-ARCA(D1)(m2
7,2’-OGppSpG)である。好ましい5’-UTRおよび3’-UTRはそれぞれ配列番号12のヌクレオチド配列および配列番号13のヌクレオチド配列を含む。好ましいポリ(A)テイルは配列番号14の配列を含む。
【0505】
このプラットフォームの異なる実施態様は、以下に由来する配列および以下の修飾されたバリアントである配列である:
【表2】
【0506】
図3は抗原コード化RNAの一般的構造を模式化する。
【0507】
ヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)
ヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(modRNA)薬物物質の活性本体は、同様に細胞への挿入により翻訳される一本鎖mRNAである。ワクチン抗原をコードする配列(すなわちオープンリーディングフレーム)に加えて、各modRNAは、uRNAとしてRNAの最大有効性を最適化するための共通構造要素(5’キャップ、5’-UTR、3’-UTR、ポリ(A)テイル)を含む。URNAと比較して、modRNAはウリジンの代わりに1-メチル-シュードウリジンを含む。好ましい5’キャップ構造はm2
7,3’-OGppp(m1
2’-O)ApGである。好ましい5’-UTRおよび3’-UTRはそれぞれ配列番号12のヌクレオチド配列および配列番号13のヌクレオチド配列を含む。好ましいポリ(A)テイルは配列番号14の配列を含む。さらなる精製工程が、インビトロ転写反応中に産生されるdsRNA夾雑物を減少させるためにmodRNAに適用される。
【0508】
このプラットフォームの異なる実施態様は、以下に由来する配列および以下の修飾されたバリアントである配列である:
【表3】
【0509】
図4は抗原コード化RNAの一般的構造を模式化する。
【表4】
【0510】
自己増幅性RNA(saRNA)
自己増幅性mRNA(saRNA)薬物物質の活性本体は、細胞に侵入したとき自己増幅し、その後ワクチン抗原が翻訳される、一本鎖RNAである。好ましくは単一タンパク質をコードするuRNAおよびmodRNAとは対照的に、saRNAのコード領域は2つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。5’-ORFは、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)RNA依存的RNAポリメラーゼ(レプリカーゼ)などのRNA依存的RNAポリメラーゼをコードする。レプリカーゼORFが3’でサブゲノムプロモーターおよび抗原をコードする第二ORFに続く。さらに、saRNA UTRは、自己増幅に必要な5’および3’保存配列要素(CSE)を含む。saRNAは、uRNAとしてRNAの最大有効性を最適化するための共通構造要素(5’キャップ、5’-UTR、3’-UTR、ポリ(A)テイル)を含む。好ましくはsaRNAはウリジンを含む。好ましい5’キャップ構造はベータ-S-ARCA(D1)(m2
7,2’-OGppSpG)である。
【0511】
saRNAの細胞質送達はアルファウイルス様ライフサイクルを開始させる。しかしながら、saRNAはゲノムパッケージングまたは細胞侵入に必要であるアルファウイルス構造タンパク質をコードせず、それ故に複製コンピテントウイルス粒子の産生は、不可能である可能性は極めて低い。複製は、DNAを産生する何らかの中間工程に関与しない。saRNAの使用/取り込みは、それ故には、標的細胞内のゲノム組込みまたは他の永久遺伝子修飾のリスクがない。さらに、saRNA自体、dsRNA中間体の認識を介する自然免疫応答の効率的活性化により、その持続的複製を阻止する。
【0512】
このプラットフォームの異なる実施態様は、以下に由来する配列および以下の修飾されたバリアントである配列である:
【表5】
【0513】
図5は抗原コード化RNAの一般的構造を模式化する。
【0514】
一部の実施態様において、ここで記載するワクチンRNAは、配列番号15、16、17、19、20、21、24、25、26、27、30および32からなる群から選択されるヌクレオチド配列の修飾されたバリアントであるヌクレオチド配列を含む。ここで記載する特に好ましいワクチンRNAは、配列番号15、17、19、21、25、26、30および32からなる群から選択される、例えば、配列番号17、19、21、26、30および32からなる群から選択されるヌクレオチド配列の修飾されたバリアントであるヌクレオチド配列を含む。
【0515】
ここに記載するRNAは好ましくは脂質ナノ粒子(LNP)に製剤化される。ある実施態様において、LNPはカチオン性脂質、中性脂質、ステロイド、ポリマーコンジュゲート脂質;およびRNAを含む。ある実施態様において、カチオン性脂質はALC-0315、中性脂質はDSPC、ステロイドはコレステロールおよびポリマーコンジュゲート脂質はALC-0159である。好ましい投与方法は筋肉内投与、より好ましくは筋肉内投与用水性凍結保護物質緩衝液のそれである。製剤は好ましくは筋肉内投与用の水性凍結保護物質緩衝液中のRNA脂質ナノ粒子(LNP)に製剤化された防腐剤無添加、無菌分散体である。
【0516】
種々の実施態様において、製剤は、下記成分を、好ましくは下記割合または濃度で含む。
【0517】
【0518】
【0519】
【0520】
【0521】
【0522】
ある実施態様において、mRNA対総脂質の比(N/P)は6.0~6.5、例えば約6.0または約6.3である。
【0523】
核酸含有粒子
ワクチン抗原をコードするRNAなどのここに記載する核酸は、粒子として製剤化して投与され得る。
【0524】
本開示の文脈において、用語「粒子」は、分子または分子複合体により形成される構造化された主体に関する。ある実施態様において、用語「粒子」は、媒体に分散されたミクロまたはナノサイズ小型構造などのミクロまたはナノサイズ構造に関する。ある実施態様において、粒子は、DNA、RNAまたはそれらの混合物を含む粒子などの核酸含有粒子である。
【0525】
ポリマーおよび脂質などの正に荷電した分子と負に荷電した核酸の間の静電気的相互作用が粒子形成に関与する。これは、核酸粒子の複合体化および自発的形成をもたらす。ある実施態様において、核酸粒子はナノ粒子である。
【0526】
本明細書において使用する、「ナノ粒子」は、非経腸投与に適する平均直径を有する粒子をいう。
【0527】
「核酸粒子」を、核酸の目的の標的部位(例えば、細胞、組織、臓器など)への送達に使用できる。核酸粒子は、少なくとも1個のカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質、プロタミンなどの少なくとも1個のカチオン性ポリマーまたはそれらの混合物および核酸から形成され得る。核酸粒子は脂質ナノ粒子(LNP)ベースのおよびリポプレックス(LPX)ベースの製剤を含む。
【0528】
何らかの理論に拘束されることを意図しないが、カチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質および/またはカチオン性ポリマーは核酸と一体となって凝集体を形成し、この凝集がコロイド的に安定な粒子をもたらすと考えられる。
【0529】
ある実施態様において、ここに記載する粒子はカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質以外の少なくとも1個の脂質または脂質様物質、カチオン性ポリマー以外の少なくとも1個のポリマーまたはそれらの混合物をさらに含む。
【0530】
ある実施態様において、核酸粒子は1を超えるタイプの核酸分子を含み、ここで、核酸分子の分子パラメータはモル質量または分子構造、キャッピング、コード領域または他の特性などの基礎的構造要素に関して等、互いに類似しても異なってもよい。
【0531】
ここに記載する核酸粒子は、ある実施態様において、約30nm~約1000nm、約50nm~約800nm、約70nm~約600nm、約90nm~約400nmまたは約100nm~約300nmの範囲である平均直径を有し得る。
【0532】
ここに記載する核酸粒子は、約0.5未満、約0.4未満、約0.3未満または約0.2またはそれ未満の多分散性指数を示し得る。例として、核酸粒子は約0.1~約0.3または約0.2~約0.3の範囲の多分散性指数を示し得る。
【0533】
RNA脂質粒子に関して、N/P比は、脂質における窒素基対RNAにおけるリン酸基数の比を示す。これは、窒素原子(pHに依存して)が、通常正電荷であり、リン酸基が負電荷であるため、電荷比と相関する。N/P比は、荷電平衡が存在するとき、pHに依存する。脂質製剤は、正に荷電したナノ粒子がトランスフェクションに好都合であると考えられるため、しばしば4より大きく、12までのN/P比で形成される。この場合、RNAはナノ粒子に完全に結合すると考えられる。
【0534】
ここに記載する核酸粒子は、少なくとも1個のカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質および/または少なくとも1個のカチオン性ポリマーからコロイドを得て、核酸粒子を得るために該コロイドと核酸を混合することを含み得る、広範な方法を使用して、製造できる。
【0535】
ここで使用する用語「コロイド」は、分散した粒子が沈降しない均一混合物のタイプに関する。混合物中の不溶性粒子は顕微鏡的であり、粒子径は1~1000ナノメートルである。混合物はコロイドまたはコロイド性懸濁液と称し得る。用語「コロイド」は、混合物中の粒子のみをいい、懸濁液全体をいわないこともある。
【0536】
少なくとも1個のカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質および/または少なくとも1個のカチオン性ポリマーを含むコロイドの調製について、リポソーム小胞の調製に慣用的に使用される方法が適用され、適切に適合される。リポソーム小胞調製のために最も一般的に使用される方法は次の基礎的段階を共有する:(i)有機溶媒への脂質溶解、(ii)得られた溶液の乾燥および(iii)乾燥脂質の水和(種々の水性媒体を使用)。
【0537】
フィルム水和方法において、脂質をまず適当な有機溶媒に溶解し、フラスコの底に薄膜を生じるよう乾燥させる。得られた脂質フィルムを、リポソーム分散体を産生するのに適する水性媒体を使用して水和する。さらに、さらなる小型化工程が含まれ得る。
【0538】
水相と脂質を含む有機相の間の油中水型エマルジョンの形成を含む、逆相蒸発は、リポソーム小胞調製のためのフィルム水和の別の方法である。系均質化のために、この混合物の短時間音波処理が必要である。減圧下の有機相の除去により、乳状ゲルが生じ、これはその後リポソーム懸濁液に変わる。
【0539】
用語「エタノール注入技術」は、脂質を含むエタノール溶液を、針をとおして水溶液に迅速に注入する過程をいう。この行為は、脂質を溶液中に分散させ、脂質構造形成、例えばリポソーム形成などの脂質小胞形成を促進する。一般に、ここに記載するRNAリポプレックス粒子は、コロイド性リポソーム分散体へのRNAの付加により得られ得る。エタノール注入技術を使用して、このようなコロイド性リポソーム分散体は、ある実施態様において、次のとおり形成される:カチオン性脂質およびさらなる脂質などの脂質を含むエタノール溶液を、撹拌下水溶液に注入する。ある実施態様において、ここに記載するRNAリポプレックス粒子は、押し出しの工程を用いず得られ得る。
【0540】
用語「押し出す」または「押し出し」は、固定された、横断面プロファイルを有する粒子の製造をいう。特に、粒子を規定細孔のフィルターを篩過させる、粒子の小型化をいう。
【0541】
無有機溶媒特徴を有する他の方法も、コロイドの調製のために本発明により使用され得る。
【0542】
LNPは、一般に、イオン化可能カチオン性脂質、リン脂質などの中性脂質、コレステロールなどのステロイドおよびポリエチレングリコール(PEG)-脂質などのポリマーコンジュゲート脂質の4成分を含む。各成分は搭載物保護を担い、有効細胞内送達を可能とする。LNPは、エタノールに溶解した脂質を、水性緩衝液中の核酸と迅速に混合することにより調製され得る。
【0543】
用語「平均直径」は、いわゆるキュムラントアルゴリズムを使用してデータ分析した、動的レーザー光散乱法(DLS)により測定した粒子の平均流体力学的直径をいい、これは、結果として、長さ寸法および無次元である多分散性指数(PI)と共にいわゆるZ平均を提供する(Koppel, D., J. Chem. Phys. 57, 1972, pp 4814-4820, ISO 13321)。ここで粒子の「平均直径」、「直径」または「サイズ」は、Z平均のこの値と同義的に使用される。
【0544】
「多分散性指数」は、好ましくは「平均直径」の定義に記載したいわゆるキュムラント分析による動的光散乱法測定に基づいて計算される。ある前提下、ナノ粒子のアンサンブルのサイズ分布の指標として解釈され得る。
【0545】
種々のタイプの核酸含有粒子が以前に粒子形態の核酸の送達に適すると記載されている(例えばKaczmarek, J. C. et al., 2017, Genome Medicine 9, 60)。非ウイルス核酸送達媒体について、核酸のナノ粒子カプセル封入は核酸を分解から物理的に保護し、特定の化学により、細胞性取り込みおよびエンドソーム脱出を助け得る。
【0546】
本発明は、核酸、核酸粒子を形成するように核酸と結合した少なくとも1個のカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質および/または少なくとも1個のカチオン性ポリマーを含む粒子およびこのような粒子を含む組成物を記載する。核酸粒子は、該粒子に非共有結合相互作用により異なる形態で複合体化される核酸を含み得る。ここに記載する粒子はウイルス粒子、特に感染性ウイルス粒子ではない、すなわち、細胞にウイルス性に感染できない。
【0547】
適当なカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質およびカチオン性ポリマーは核酸粒子を形成するものであり、用語「粒子形成成分」または「粒子形成剤」に含まれる。用語「粒子形成成分」または「粒子形成剤」は、核酸粒子を形成するように核酸と結合するあらゆる成分に関する。このような成分は、核酸粒子の一部であり得る何らかの成分を含む。
【0548】
ここに記載する一部の実施態様は、1以上、例えば、2、3、4、5、6またはそれ以上の核酸種、例えば、RNA種、例えば、a)親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする第1のヌクレオチド配列を含む核酸であって、親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメント中のアミノ酸位置が、1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置に見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、核酸、およびb)親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードする第2のヌクレオチド配列を含む核酸であって、親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメント中のアミノ酸位置が、1つまたは複数のウイルスタンパク質バリアントの対応するアミノ酸位置において見出されるアミノ酸を含むように修飾されている、核酸を含む組成物、方法および使用に関する。
【0549】
一部の実施態様において、各々が親ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメントを含むアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含み、セットの各コードされるフラグメントは、循環ウイルスバリアント中に生じた親のコードされるフラグメントと比較した修飾がセットのコードされるフラグメント中に存在する点を除いて、セットの他のコードされるフラグメントに対して、および親のコードされるフラグメントに対して実質的に同一である核酸のセットが提供される。
【0550】
微粒子製剤では、各核酸種を個々の微粒子製剤として個別に製剤化することが可能である。その場合には、各個々の微粒子製剤は、1つの核酸種を含む。個々の微粒子製剤は、別個の実体として、例えば、別個の容器中に存在し得る。このような製剤は、各核酸種を別個に(通常、各々、核酸含有溶液の形態で)粒子形成剤と一緒に提供し、それによって、粒子の形成を可能にすることによって得ることができる。それぞれの粒子は、粒子が形成される(個々の微粒子製剤)時に提供されている特定の核酸種をもっぱら含有する。
【0551】
ある実施態様において、組成物、例えば、医薬組成物は、1を超える個々の粒子製剤を含む。それぞれの医薬組成物は、混合微粒子製剤と呼ばれる。本発明による混合微粒子製剤は、上記のように個々の微粒子製剤を個別に形成する工程、続いて、個々の微粒子製剤を混合する工程によって得ることができる。混合する工程によって、核酸含有粒子の混合集団を含む製剤を得ることができる。個々の粒子集団は、個々の微粒子製剤の混合集団を含む1つの容器中に一緒にしてもよい。
【0552】
あるいは、異なる核酸種が複合微粒子製剤として一緒に製剤化されることが可能である。このような製剤は、異なるRNA種の複合製剤(通常、複合溶液)を粒子形成剤と一緒に提供し、それによって粒子の形成を可能にすることによって得ることができる。混合微粒子製剤とは対照的に、複合微粒子製剤は通常、1を超えるRNA種を含む粒子を含む。複合粒子組成物では、異なるRNA種は通常、単一粒子中に一緒に存在する。
【0553】
カチオン性ポリマー
高度な化学柔軟性を考慮して、ポリマーは、ナノ粒子ベースの送達に一般に使用される物質である。一般に、カチオン性ポリマーは、負に荷電した核酸をナノ粒子に静電的に濃縮するために使用される。これらの正に荷電した基は、しばしば5.5~7.5のpH範囲でプロトン化の状態が変化し、エンドソーム破裂をもたらすイオン不均衡に至ると考えられるアミンからなる。ポリ-1-リシン、ポリアミドアミン、プロタミンおよびポリエチレンイミンならびにキトサンなどの天然に存在するポリマーなどのポリマーは、すべて核酸送達に適用され、ここでのカチオン性ポリマーとして適する。さらに、一部研究者らは、特に核酸送達のためのポリマーを合成している。ポリ(β-アミノエステル)は、特に、合成の容易さおよび生分解性により、核酸送達のために広範に使用されている。このような合成ポリマーも、ここでのカチオン性ポリマーとして適する。
【0554】
ここで使用する「ポリマー」は、その通常の意味を有し、すなわち、共有結合により結合した1以上の反復単位(単量体)を含む、分子構造である。反復単位は全で同一であってよくまたはある場合、1を超えるタイプの反復単位がポリマー内に存在してよい。ある場合、ポリマーは生物学的にもたらされ、すなわち、タンパク質などのバイオポリマーである。ある場合、さらなる部分、例えばここに記載するようなターゲティング部分もポリマーに存在できる。
【0555】
1を超えるタイプの反復単位がポリマーに存在するならば、ポリマーは「コポリマー」といい得る。ここで使用されるポリマーはコポリマーであり得ることは理解される。コポリマーを形成する反復単位は、任意の形式で配置される。例えば、反復単位は、無作為の順番で、交互の順番でまたは「ブロック」コポリマー、すなわち、各々第一反復単位(例えば、第一ブロック)を含む1以上の領域および各々第二反復単位(例えば、第二ブロック)を含む1以上の領域などを含むものとして配置され得る。ブロックコポリマーは、2(ジブロックコポリマー)、3(トリブロックコポリマー)またはそれ以上の数の異なるブロックを有し得る。
【0556】
ある実施態様において、ポリマーは生体適合性である。生体適合性ポリマーは、一般に適度な濃度で顕著な細胞死を引き起こさないポリマーである。ある実施態様において、生体適合性ポリマーは生分解性である、すなわち、ポリマーは、体内等の生理学的環境内で化学的および/または生物学的に分解できる。
【0557】
ある実施態様において、ポリマーはプロタミンまたはポリアルキレンイミン、特にプロタミンであり得る。
【0558】
用語「プロタミン」は、アルギニンに富み、種々の動物(魚等)の精子細胞で体性ヒストンの代わりに特にDNAと関係して見られる比較的低分子量の種々の何らかの強塩基性タンパク質をいう。特に、用語「プロタミン」は、強塩基性であり、水に可溶性であり、熱で凝固せず、加水分解により主にアルギニンを産生する、魚精子でみられるタンパク質をいう。精製された形態では、インスリン長時間作用型製剤でおよびヘパリンの抗凝血作用を中和するために使用される。
【0559】
本開示により、ここで使用する用語「プロタミン」は、天然または生物学的供給源から得られたまたはそれ由来のあらゆるプロタミンアミノ酸配列(そのフラグメントを含む)および該アミノ酸配列またはそのフラグメントの多量体形態ならびに人工であり、特に特別な目的で設計され、天然または生物学的供給源から単離され得ない(合成)ポリペプチドを含むことを意図する。
【0560】
ある実施態様において、ポリアルキレンイミンはポリエチレンイミンおよび/またはポリプロピレンイミン、好ましくはポリエチレンイミンを含む。好ましいポリアルキレンイミンはポリエチレンイミン(PEI)である。PEIの平均分子量は、好ましくは0.75・102~107Da、好ましくは1000~105Da、より好ましくは10000~40000Da、より好ましくは15000~30000Da、さらにより好ましくは20000~25000Daである。
【0561】
本発明により好ましいのは、直鎖状ポリエチレンイミン(PEI)などの直鎖状ポリアルキレンイミンである。
【0562】
ここでの使用が意図されるカチオン性ポリマー(ポリカチオン性ポリマーを含む)は、静電的に核酸と結合できるあらゆるカチオン性ポリマーを含む。ある実施態様において、ここでの使用が意図されるカチオン性ポリマーは、例えば核酸と複合体を形成することによりまたは核酸が封入または被包されている小胞を形成することにより、核酸が結合できる、あらゆるカチオン性ポリマーを含む。
【0563】
ここに記載する粒子は、カチオン性ポリマー以外のポリマー、すなわち、非カチオン性ポリマーおよび/またはアニオン性ポリマーも含み得る。まとめて、アニオン性および中性ポリマーがここでは非カチオン性ポリマーと称される。
【0564】
脂質および脂質様物質
用語「脂質」および「脂質様物質」は、1以上の疎水性部分または基および所望によりまた1以上の親水性部分または基を含む分子として、ここで広く定義される。疎水性部分および親水性部分を含む分子は、しばしば両親媒性物質とも称される。脂質は、通常水にほとんど溶けない。水性環境で、両親媒性質により、分子は組織化された構造および種々の相に自己集合可能となる。これらの相の一つは、水性環境で小胞、多重膜/単層リポソームまたは膜に存在するため、脂質二重層からなる。疎水性は、1以上の芳香族、シクロ脂肪族またはヘテロ環基で置換されている、長鎖飽和および不飽和脂肪族炭化水素基を含むが、これらに限定されない非極性基の包含により付与される。親水性基は、極性および/または荷電基であり、炭水化物、リン酸、カルボン酸、硫酸、アミノ、スルフヒドリル、ニトロ、ヒドロキシルおよび他の類似基を含み得る。
【0565】
ここで使用する用語「両親媒性」は、極性部分および非極性部分両方を有する分子をいう。しばしば、両親媒性化合物は、長い疎水性テイルに結合した極性頭部を有する。ある実施態様において、極性部分は水に可溶性であるが、非極性部分は水に不溶性である。さらに、極性部分は形式上正電荷または形式上負電荷を有し得る。あるいは極性部分は形式上陽性および負電荷両方を有し得て、双性イオンまたは分子内塩であり得る。本開示の目的で、両親媒性化合物は、1個または複数の天然または非天然脂質および脂質様化合物であり得るが、これらに限定されない。
【0566】
用語「脂質様物質」、「脂質様化合物」または「脂質様分子」は、構造的および/または機能的に脂質に関係するが、厳密な意味での脂質とは考えられ得ない物質に関する。例えば、本用語は、水性環境で小胞、多重膜/単層リポソームまたは膜に存在するため両親媒性層を形成でき、親水性部分および疎水性部分両方に界面活性剤または合成化合物を含む、化合物を含む。一般的にいうと、本用語は、脂質と類似してもしていなくてもよい、種々の構造構成の親水性部分および疎水性部分を含む、分子をいう。ここで使用する用語「脂質」は、ここで特に断らない限りまたは文脈に明らかに反しない限り、脂質および脂質様物質両方を包含すると考えられる。
【0567】
両親媒性層に包含され得る両親媒性化合物の具体例は、リン脂質、アミノ脂質およびスフィンゴ脂質を含み得るが、これらに限定されない。
【0568】
ある実施態様において、両親媒性化合物は脂質である。用語「脂質」は、水に不溶性であるが、多くの有機溶媒に可溶性であることにより特徴づけられる、有機化合物群をいう。一般に、脂質は脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、サッカロ脂質、ポリケチド(ケトアシルサブユニットの縮合由来)、ステロール脂質およびプレノール脂質(イソプレンサブユニットの縮合由来)の8カテゴリーに分割され得る。用語「脂質」は脂肪の同義語として使用されることもあるが、脂肪はトリグリセリドと称される脂質のサブグループである。脂質はまた脂肪酸およびその誘導体(トリ、ジ、モノグリセリドおよびリン脂質を含む)ならびにコレステロールなどのステロール含有代謝物などの分子も包含する。
【0569】
脂肪酸または脂肪酸残基は、カルボン酸基で終わる炭化水素鎖からなる多様な分子群である;この配置により、分子は極性、親水性末端および水に不溶性である非極性、疎水性末端を有する。一般に4~24炭素長の炭素鎖は飽和でも不飽和でもよく、酸素、ハロゲン、窒素および硫黄を含む官能基に結合し得る。脂肪酸が二重結合を含むならば、分子の配置に顕著に影響するcisまたはtrans幾何異性のいずれかの可能性がある。Cis-二重結合は脂肪酸鎖を屈曲させ、鎖に二重結合が多いほど、その影響は、複雑である。脂肪酸カテゴリーの他の主要な脂質クラスは、脂肪エステルおよび脂肪アミドである。
【0570】
グリセロ脂質は、一、二および三置換グリセロールであり、トリグリセリドと称されるグリセロールの脂肪酸トリエステルが最も知られる。用語「トリアシルグリセロール」は、「トリグリセリド」と同義的に使用されることがある。これらの化合物において、グリセロールの3個のヒドロキシル基は、一般に異なる脂肪酸により、各々エステル化される。グリセロ脂質のさらなるサブクラスは、グリコシド結合によりグリセロールに結合した1以上の糖残基の存在により特徴づけられる、グリコシルグリセロールである。
【0571】
グリセロリン脂質は、エステル結合により2個の脂肪酸由来「テイル」に結合したおよびリン酸エステル結合により1個の「頭部」基に結合したグリセロールコアを含む、両親媒性分子(疎水性と親水性両方の領域を含む)である。通常、リン脂質(スフィンゴミエリンもリン脂質として分類されるが)と称されるグリセロリン脂質の例は、ホスファチジルコリン(別名PC、GPChoまたはレシチン)、ホスファチジルエタノールアミン(PEまたはGPEtn)およびホスファチジルセリン(PSまたはGPSer)である。
【0572】
スフィンゴ脂質は、共通構造性質、スフィンゴイド塩基主鎖を共有する、化合物の複雑なファミリーである。哺乳動物における主要なスフィンゴイド塩基は一般にスフィンゴシンと称される。セラミド(N-アシル-スフィンゴイド塩基)は、アミド結合脂肪酸を有するスフィンゴイド塩基誘導体の主要なサブクラスである。脂肪酸は、一般に16~26炭素原子鎖長の飽和または単不飽和である。哺乳動物の主要なホスホスフィンゴ脂質はスフィンゴミエリン(セラミドホスホコリン)であり、一方昆虫は主にセラミドホスホエタノールアミンを有し、真菌はフィトセラミドホスホイノシトールおよびマンノース含有頭部基を有する。グリコスフィンゴ脂質は、スフィンゴイド塩基へのグリコシド結合により結合した1以上の糖残基からなる分子の多様なファミリーである。これらの例は、セレブロシドおよびガングリオシドなどの単純および複雑グリコスフィンゴ脂質である。
【0573】
コレステロールおよびその誘導体またはトコフェロールおよびその誘導体などのステロール脂質は、グリセロリン脂質およびスフィンゴミエリンと共に、膜脂質の重要な成分である。
【0574】
サッカロ脂質は、脂肪酸が糖主鎖に直接結合し、膜二重層と適合性である構造を形成する化合物をいう。サッカロ脂質において、単糖は、グリセロ脂質およびグリセロリン脂質に存在するグリセロール主鎖に置き換わる。最も知られるサッカロ脂質は、グラム陰性細菌のリポ多糖のリピドA成分のアシル化グルコサミン前駆体である。典型的リピドA分子は、7個もの脂肪-アシル鎖で誘導体化されるグルコサミンの二糖である。大腸菌の増殖に必要な最小リポ多糖は、2個の3-デオキシ-D-マンノ-オクツロソン酸(Kdo)残基でグリコシル化されたグルコサミンのヘキサ-アシル化二糖であるKdo2-リピドAである。
【0575】
ポリケチドは、古典的酵素ならびに脂肪酸シンターゼと機構的特性を共有する反復および多モジュール酵素によるアセチルおよびプロピオニルサブユニットの重合化により合成される。それらは、動物、植物、細菌、真菌および海洋供給源からの二次代謝物および天然産物の大部分を占め、構造多様性が大きい。多くのポリケチドは環状分子であり、その主鎖はしばしばグリコシル化、メチル化、ヒドロキシル化、酸化または他の過程によりさらに修飾される。
【0576】
本開示により、脂質および脂質様物質はカチオン性、アニオン性または中性であり得る。中性脂質または脂質様物質は、選択したpHで非荷電または中性双性イオン形態で存在する。
【0577】
カチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質
ここに記載する核酸粒子は、粒子形成剤として少なくとも1個のカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質を含み得る。ここでの使用が意図されるカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質は、静電的に核酸に結合できる、あらゆるカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質を含む。ある実施態様において、ここでの使用が意図されるカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質は、例えば核酸と複合体を形成することによりまたは核酸が封入または被包されている小胞を形成することにより、核酸と結合できる。
【0578】
ここで使用する「カチオン性脂質」または「カチオン性脂質様物質」は、正味の正電荷を有する脂質または脂質様物質をいう。カチオン性脂質または脂質様物質は、静電気的相互作用により負に荷電した核酸に結合する。一般に、カチオン性脂質は、ステロール、アシル鎖、ジアシルまたはそれ以上のアシル鎖などの親油性部分および一般に正電荷を有する脂質の頭部基を有する。
【0579】
ある実施態様において、カチオン性脂質または脂質様物質は、あるpH、特に酸性pHで正味の正電荷のみ有し、一方、生理学的pHなどの異なる、好ましくは高いpHで好ましくは正味の正電荷を有しない、好ましくは電荷を有しない、すなわち、中性である。このイオン化可能の挙動は、生理学的pHでカチオン性のままである粒子と比較して、エンドソーム脱出を助けることにより有効性が増強され、毒性が低減すると考えられる。
【0580】
本発明の目的で、このような「カチオンにイオン化可能な」脂質または脂質様物質は、状況に反しない限り、用語「カチオン性脂質または脂質様物質」に含まれる。
【0581】
ある実施態様において、カチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質は、正に荷電されまたはプロトン化され得る少なくとも1個の窒素原子(N)を含む頭部基を含む。
【0582】
カチオン性脂質の例は、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP);N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシプロピルアミン(DODMA)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、3-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB);1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP);1,2-ジアシルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン;1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン;ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DSDMA)、2,3-ジ(テトラデコキシ)プロピル-(2-ヒドロキシエチル)-ジメチルアザニウム(DMRIE)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DMEPC)、1,2-ジミリストイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DMTAP)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロマイド(DORIE)および2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、3-ジメチルアミノ-2-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシブタン-4-オキシ)-1-(cis,cis-9,12-オクタデカジエンオキシ)プロパン(CLinDMA)、2-[5’-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシ)-3’-オキサペントキシ)-3-ジメチル-1-(cis,cis-9’,12’-オクタデカジエンオキシ)プロパン(CpLinDMA)、N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルアミン(DMOBA)、1,2-N,N’-ジオレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DOcarbDAP)、2,3-ジリノレオイルオキシ-N,N-ジメチルプロピルアミン(DLinDAP)、1,2-N,N’-ジリノレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLincarbDAP)、1,2-ジリノレオイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinCDAP)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-XTC2-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA)、N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロマイド(DMRIE)、(±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(cis-9-テトラデセニルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロマイド(GAP-DMORIE)、(±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(ドデシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロマイド(GAP-DLRIE)、(±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロマイド(GAP-DMRIE)、N-(2-アミノエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロマイド(βAE-DMRIE)、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOBAQ)、2-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(オクチル-CLinDMA)、1,2-ジミリストイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DMDAP)、1,2-ジパルミトイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DPDAP)、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(MVL5)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DOEPC)、2,3-ビス(ドデシルオキシ)-N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチルプロパン-1-アンモニウムブロマイド(DLRIE)、N-(2-アミノエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)プロパン-1-アミニウムブロマイド(DMORIE)、ジ((Z)-ノナ-2-エン-1-イル) 8,8’-((((2(ジメチルアミノ)エチル)チオ)カルボニル)アザンジイル)ジオクタノエート(ATX)、N,N-ジメチル-2,3-ビス(ドデシルオキシ)プロパン-1-アミン(DLDMA)、N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)プロパン-1-アミン(DMDMA)、ジ((Z)-ノナ-2-エン-1-イル)-9-((4-(ジメチルアミノブタノイル)オキシ)ヘプタデカンジオエート(L319)、N-ドデシル-3-((2-ドデシルカルバモイル-エチル)-{2-[(2-ドデシルカルバモイル-エチル)-2-{(2-ドデシルカルバモイル-エチル)-[2-(2-ドデシルカルバモイル-エチルアミノ)-エチル]-アミノ}-エチルアミノ)プロピオンアミド(リピドイド98N12-5)、1-[2-[ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ]エチル-[2-[4-[2-[ビス(2ヒドロキシドデシル)アミノ]エチル]ピペラジン-1-イル]エチル]アミノ]ドデカン-2-オール(リピドイドC12-200)を含むが、これらに限定されない。
【0583】
ある実施態様において、カチオン性脂質は、粒子に存在する総脂質の約10mol%~約100mol%、約20mol%~約100mol%、約30mol%~約100mol%、約40mol%~約100mol%または約50mol%~約100mol%を構成し得る。
【0584】
さらなる脂質または脂質様物質
ここに記載する粒子はまたカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質以外の脂質または脂質様物質、すなわち、非カチオン性脂質または脂質様物質(非カチオン的にイオン化可能な脂質または脂質様物質を含む)も含み得る。まとめて、アニオン性および中性脂質または脂質様物質をここでは非カチオン性脂質または脂質様物質と称する。イオン化可能/カチオン性脂質または脂質様物質に加えて、コレステロールおよび脂質などの他の疎水性部分の付加による核酸粒子の製剤の最適化は、粒子安定性および核酸送達の有効性を増強し得る。
【0585】
核酸粒子の全体的電荷に影響してもしなくてもよいさらなる脂質または脂質様物質を取り込み得る。ある実施態様において、さらなる脂質または脂質様物質は非カチオン性脂質または脂質様物質である。非カチオン性脂質は、例えば、1以上のアニオン性脂質および/または中性脂質を含み得る。ここで使用する「アニオン性脂質」は、選択したpHで負に荷電したあらゆる脂質をいう。ここで使用する「中性脂質」は、選択したpHで非荷電または中性双性イオン形態で存在する多数の脂質種の何れかをいう。好ましい実施態様において、さらなる脂質は、(1)リン脂質、(2)コレステロールまたはその誘導体;または(3)リン脂質とコレステロールまたはその誘導体の混合物の中性脂質成分の一つを含む。コレステロール誘導体の例は、コレスタノール、コレスタノン、コレステノン、コプロスタノール、コレステリル-2’-ヒドロキシエチルエーテル、コレステリル-4’-ヒドロキシブチルエーテル、トコフェロールおよびその誘導体およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0586】
使用され得る具体的リン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリンまたはスフィンゴミエリンを含むが、これらに限定されない。このようなリン脂質は、特にジアシルホスファチジルコリン、例えばジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジトリコサノイルホスファチジルコリン(DTPC)、ジリグノセロイルフタチジルコリン(DLPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミスクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)およびホスファチジルエタノールアミン、特にジアシルホスファチジルエタノールアミン、例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジラウロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DLPE)、ジフィタノイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPyPE)およびさらに異なる疎水性鎖を有するホスファチジルエタノールアミン脂質を含む。
【0587】
ある好ましい実施態様において、さらなる脂質はDSPCまたはDSPCおよびコレステロールである。
【0588】
ある実施態様において、核酸粒子はカチオン性脂質およびさらなる脂質の両方を含む。
【0589】
ある実施態様において、ここに記載する粒子は、ペグ化脂質などのポリマーコンジュゲート脂質を含む。用語「ペグ化脂質」は、脂質部分およびポリエチレングリコール部分両方を含む分子をいう。ペグ化脂質は当分野で知られる。
【0590】
理論に拘束されることを願わないが、少なくとも1個のさらなる脂質の量と比較した少なくとも1個のカチオン性脂質の量は、核酸の荷電、粒子径、安定性、組織選択性および生物活性などの重要な核酸粒子特徴に影響し得る。従って、ある実施態様において、少なくとも1個のカチオン性脂質対少なくとも1個のさらなる脂質のモル比は約10:0~約1:9、約4:1~約1:2または約3:1~約1:1である。
【0591】
ある実施態様において、非カチオン性脂質、特に中性脂質(例えば、リン脂質および/またはコレステロールの1以上)は、粒子に存在する総脂質の約0mol%~約90mol%、約0mol%~約80mol%、約0mol%~約70mol%、約0mol%~約60mol%または約0mol%~約50mol%を構成し得る。
【0592】
リポプレックス粒子
本発明のある実施態様において、ここに記載するRNAはRNAリポプレックス粒子に存在し得る。
【0593】
本開示の文脈において、用語「RNAリポプレックス粒子」は、脂質、特にカチオン性脂質およびRNAを含む粒子に関する。正に荷電したリポソームと負に荷電したRNAの間の静電気的相互作用は複合体化およびRNAリポプレックス粒子の自発的形成をもたらす。正に荷電したリポソームは、一般にDOTMAなどのカチオン性脂質およびDOPEなどのさらなる脂質を使用して合成される。ある実施態様において、RNAリポプレックス粒子はナノ粒子である。
【0594】
ある実施態様において、RNAリポプレックス粒子はカチオン性脂質およびさらなる脂質の両方を含む。例示的実施態様において、カチオン性脂質はDOTMAであり、さらなる脂質はDOPEである。
【0595】
ある実施態様において、少なくとも1個のカチオン性脂質対少なくとも1個のさらなる脂質のモル比は約10:0~約1:9、約4:1~約1:2または約3:1~約1:1である。特定の実施態様において、モル比は約3:1、約2.75:1、約2.5:1、約2.25:1、約2:1、約1.75:1、約1.5:1、約1.25:1または約1:1であり得る。例示的実施態様において、少なくとも1個のカチオン性脂質対少なくとも1個のさらなる脂質のモル比は約2:1である。
【0596】
ここに記載するRNAリポプレックス粒子は、ある実施態様において、約200nm~約1000nm、約200nm~約800nm、約250~約700nm、約400~約600nm、約300nm~約500nmまたは約350nm~約400nmの範囲である平均直径を有する。特定の実施態様において、RNAリポプレックス粒子は、約200nm、約225nm、約250nm、約275nm、約300nm、約325nm、約350nm、約375nm、約400nm、約425nm、約450nm、約475nm、約500nm、約525nm、約550nm、約575nm、約600nm、約625nm、約650nm、約700nm、約725nm、約750nm、約775nm、約800nm、約825nm、約850nm、約875nm、約900nm、約925nm、約950nm、約975nmまたは約1000nmの平均直径を有する。ある実施態様において、RNAリポプレックス粒子は、約250nm~約700nmの範囲の平均直径を有する。他の実施態様において、RNAリポプレックス粒子は、約300nm~約500nmの範囲の平均直径を有する。例示的実施態様において、RNAリポプレックス粒子は、約400nmの平均直径を有する。
【0597】
ここに記載するRNAリポプレックス粒子およびRNAリポプレックス粒子を含む組成物は、非経腸投与後、特に静脈内投与後、標的組織へのRNAの送達に有用である。RNAリポプレックス粒子は、エタノール中の脂質溶液を水または適当な水相に注入することにより得られ得るリポソームを使用して調製され得る。ある実施態様において、水相は酸性pHを有する。ある実施態様において、水相は、例えば、約5mM量の酢酸を含む。リポソームは、リポソームとRNAの混合によるRNAリポプレックス粒子の調製に使用され得る。ある実施態様において、リポソームおよびRNAリポプレックス粒子は少なくとも1個のカチオン性脂質および少なくとも1個のさらなる脂質を含む。ある実施態様において、少なくとも1個のカチオン性脂質は1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)および/または1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)を含む。ある実施態様において、少なくとも1個のさらなる脂質は1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、コレステロール(Chol)および/または1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)を含む。ある実施態様において、少なくとも1個のカチオン性脂質は1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)を含み、少なくとも1個のさらなる脂質は1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む。ある実施態様において、リポソームおよびRNAリポプレックス粒子は1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)および1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む。
【0598】
脾臓ターゲティングRNAリポプレックス粒子は、参照により本明細書に包含させるWO2013/143683に記載される。正味の負電荷を有するRNAリポプレックス粒子を、脾臓組織または脾細胞、例えば抗原提示細胞、特に樹状細胞を優先的に標的とするために使用し得ることが判明している。従って、RNAリポプレックス粒子の投与後、脾臓におけるRNA蓄積および/またはRNA発現が生じる。故に、本発明のRNAリポプレックス粒子を、脾臓でのRNAの発現のために使用し得る。ある実施態様において、RNAリポプレックス粒子投与後、肺および/または肝臓へのRNA蓄積および/またはRNA発現は生じないまたは本質的に生じない。ある実施態様において、RNAリポプレックス粒子投与後、脾臓における専門的抗原提示細胞などの抗原提示細胞におけるRNA蓄積および/またはRNA発現が生じる。故に、本発明のRNAリポプレックス粒子を、このような抗原提示細胞でのRNAの発現のために使用し得る。ある実施態様において、抗原提示細胞は樹状細胞および/またはマクロファージである。
【0599】
脂質ナノ粒子(LNP)
ある実施態様において、ここに記載するRNAなどの核酸は脂質ナノ粒子(LNP)の形で投与される。LNPは、1以上の核酸分子が結合するまたは1以上の核酸分子が被包される粒子を形成できるあらゆる脂質を含み得る。
【0600】
ある実施態様において、LNPは1以上のカチオン性脂質および1以上の安定化脂質を含む。安定化脂質は中性脂質およびペグ化脂質を含む。
【0601】
ある実施態様において、LNPは、カチオン性脂質、中性脂質、ステロイド、ポリマーコンジュゲート脂質;および脂質ナノ粒子内に被包されたまたは結合したRNAを含む。
【0602】
ある実施態様において、LNPは、カチオン性脂質の40~55モルパーセント、40~50モルパーセント、41~49モルパーセント、41~48モルパーセント、42~48モルパーセント、43~48モルパーセント、44~48モルパーセント、45~48モルパーセント、46~48モルパーセント、47~48モルパーセントまたは47.2~47.8モルパーセントを構成する。ある実施態様において、LNPは、カチオン性脂質の約47.0モルパーセント、47.1モルパーセント、47.2モルパーセント、47.3モルパーセント、47.4モルパーセント、47.5モルパーセント、47.6モルパーセント、47.7モルパーセント、47.8モルパーセント、47.9モルパーセントまたは48.0モルパーセントを構成する。
【0603】
ある実施態様において、中性脂質は、5~15モルパーセント、7~13モルパーセントまたは9~11モルパーセントの範囲の濃度で存在する。ある実施態様において、中性脂質は約9.5モルパーセント、10モルパーセントまたは10.5モルパーセントの濃度で存在する。
【0604】
ある実施態様において、ステロイドは、30~50モルパーセント、35~45モルパーセントまたは38~43モルパーセントの範囲の濃度で存在する。ある実施態様において、ステロイドは、約40モルパーセント、41モルパーセント、42モルパーセント、43モルパーセント、44モルパーセント、45モルパーセントまたは46モルパーセントの濃度で存在する。
【0605】
ある実施態様において、LNPは、ポリマーコンジュゲート脂質の1~10モルパーセント、1~5モルパーセントまたは1~2.5モルパーセントを構成する。
【0606】
ある実施態様において、LNPは、40~50モルパーセントのカチオン性脂質;5~15モルパーセントの中性脂質;35~45モルパーセントのステロイド;1~10モルパーセントのポリマーコンジュゲート脂質;および脂質ナノ粒子内に被包されたまたは結合したRNAを含む。
【0607】
ある実施態様において、モルパーセントは、脂質ナノ粒子に存在する脂質の総モルに基づき、決定される。
【0608】
ある実施態様において、中性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPE、DOPG、DPPG、POPE、DPPE、DMPE、DSPEおよびSMからなる群から選択される。ある実施態様において、中性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPEおよびSMからなる群から選択される。ある実施態様において、中性脂質はDSPCである。
【0609】
ある実施態様において、ステロイドはコレステロールである。
【0610】
ある実施態様において、ポリマーコンジュゲート脂質はペグ化脂質である。ある実施態様において、ペグ化脂質は次の構造
【0611】
【化19】
〔式中、R
12およびR
13は各々独立して10~30炭素原子を含む直鎖状または分岐鎖状、飽和または不飽和アルキル鎖であり、ここで、アルキル鎖は所望により1以上のエステル結合で中断されており;そしてwは30~60の平均値を有する。〕
を有するまたはその薬学的に許容される塩、互変異性体もしくは立体異性体である。ある実施態様において、R
12およびR
13は各々独立して12~16炭素原子を含む、直鎖状、飽和アルキル鎖である。ある実施態様において、wは40~55の範囲の平均値を有する。ある実施態様において、平均wは約45である。ある実施態様において、R
12およびR
13は各々独立して約14炭素原子を含む、直鎖状、飽和アルキル鎖であり、wは約45の平均値を有する。
【0612】
ある実施態様において、ペグ化脂質は、例えば、下記構造を有する、DMG-PEG 2000である。
【0613】
【0614】
ある実施態様において、LNPのカチオン性脂質成分は、式(III)
【0615】
【化21】
〔式中、
L
1またはL
2の一方は-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)
x-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NR
aC(=O)-、-C(=O)NR
a-、NR
aC(=O)NR
a-、-OC(=O)NR
a-または-NR
aC(=O)O-であり、L
1またはL
2の他方は-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)
x-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NR
aC(=O)-、-C(=O)NR
a-、NR
aC(=O)NR
a-、-OC(=O)NR
a-または-NR
aC(=O)O-または直接結合であり;
G
1およびG
2は各々独立して非置換C
1-C
12アルキレンまたはC
1-C
12アルケニレンであり;
G
3はC
1-C
24アルキレン、C
1-C
24アルケニレン、C
3-C
8シクロアルキレン、C
3-C
8シクロアルケニレンであり;
R
aはHまたはC
1-C
12アルキルであり;
R
1およびR
2は各々独立してC
6-C
24アルキルまたはC
6-C
24アルケニルであり;
R
3はH、OR
5、CN、-C(=O)OR
4、-OC(=O)R
4または-NR
5C(=O)R
4であり;
R
4はC
1-C
12アルキルであり;
R
5はHまたはC
1-C
6アルキルであり;そして
xは0、1または2である。〕
の構造を有するまたはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグもしくは立体異性体である。
【0616】
式(III)の前記実施態様のいくつかにおいて、脂質は、次の構造(IIIA)または(IIIB)
【0617】
【化22】
〔式中、
Aは3~8員シクロアルキルまたはシクロアルキレン環であり;
R
6は、各々の場合、独立してH、OHまたはC
1-C
24アルキルであり;
nは1~15の範囲の整数である。〕
の一方を有する。
【0618】
式(III)の前記実施態様のいくつかにおいて、脂質は構造(IIIA)を有し、他の実施態様、脂質は構造(IIIB)を有する。
【0619】
式(III)の他の実施態様において、脂質は、構造(IIIC)または(IIID):
【0620】
【化23】
〔式中、yおよびzは各々独立して1~12の範囲の整数である。〕
の一つを有する。
【0621】
式(III)の前記実施態様の何れにおいても、L1またはL2の一方は-O(C=O)-である。例えば、ある実施態様において、L1およびL2の各々は-O(C=O)-である。前記の何れかのある異なる実施態様において、L1およびL2は各々独立して-(C=O)O-または-O(C=O)-である。例えば、ある実施態様において、L1およびL2の各々は-(C=O)O-である。
【0622】
式(III)のある異なる実施態様において、脂質は、構造(IIIE)または(IIIF)
【0623】
【0624】
式(III)の前記実施態様のいくつかにおいて、脂質は、構造(IIIG)、(IIIH)、(IIII)または(IIIJ)
【0625】
【0626】
式(III)の前記実施態様のいくつかにおいて、nは2~12、例えば2~8または2~4の範囲の整数である。例えば、ある実施態様において、nは3、4、5または6である。ある実施態様において、nは3である。ある実施態様において、nは4である。ある実施態様において、nは5である。ある実施態様において、nは6である。
【0627】
式(III)の前記実施態様のあるその他において、yおよびzは各々独立して2~10の範囲の整数である。例えば、ある実施態様において、yおよびzは各々独立して4~9または4~6の範囲の整数である。
【0628】
式(III)の前記実施態様のいくつかにおいて、R6はHである。前記実施態様のその他において、R6はC1-C24アルキルである。他の実施態様において、R6はOHである。
【0629】
式(III)のある実施態様において、G3は非置換である。他の実施態様において、G3は置換である。種々の異なる実施態様において、G3は直鎖状C1-C24アルキレンまたは直鎖状C1-C24アルケニレンである。
【0630】
式(III)のある他の前記実施態様において、R1またはR2または両方はC6-C24アルケニルである。例えば、ある実施態様において、R1およびR2は、各々独立して次の構造
【0631】
【化26】
〔式中、R
7aおよびR
7bは、各場合、独立してHまたはC
1-C
12アルキルであり;そして
aは2~12の整数であり、
ここで、R
7a、R
7bおよびaは、R
1およびR
2が各々独立して6~20炭素原子を含むように、選択される。〕
を有する。例えば、ある実施態様において、aは5~9または8~12の範囲の整数である。
【0632】
式(III)の前記実施態様のいくつかにおいて、少なくとも1回のR7aはHである。例えば、ある実施態様において、R7aは各場合Hである。前記の他の異なる実施態様において、少なくとも1回のR7bはC1-C8アルキルである。例えば、ある実施態様において、C1-C8アルキルはメチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、n-ヘキシルまたはn-オクチルである。
【0633】
式(III)の種々の実施態様において、R1またはR2または両方は、構造
【0634】
【0635】
式(III)の前記実施態様のいくつかにおいて、R3はOH、CN、-C(=O)OR4、-OC(=O)R4または-NHC(=O)R4である。ある実施態様において、R4はメチルまたはエチルである。
【0636】
種々の異なる実施態様において、式(III)のカチオン性脂質は、下表に示す構造の一つを有する。
【0637】
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【0638】
ある実施態様において、LNPは式(III)の脂質、RNA、中性脂質、ステロイドおよびペグ化脂質を含む。ある実施態様において、式(III)の脂質は化合物III-3である。ある実施態様において、中性脂質はDSPCである。ある実施態様において、ステロイドはコレステロールである。ある実施態様において、ペグ化脂質はALC-0159である。
【0639】
ある実施態様において、カチオン性脂質は、LPNに約40~約50モルパーセントの量で存在する。ある実施態様において、中性脂質は、LPNに約5~約15モルパーセントの量で存在する。ある実施態様において、ステロイドは、LPNに約35~約45モルパーセントの量で存在する。ある実施態様において、ペグ化脂質は、LPNに約1~約10モルパーセントの量で存在する。
【0640】
ある実施態様において、LNPは、約40~約50モルパーセントの量の化合物III-3、約5~約15モルパーセントの量のDSPC、約35~約45モルパーセントの量のコレステロールおよび約1~約10モルパーセントの量のALC-0159を含む。
【0641】
ある実施態様において、LNPは、約47.5モルパーセントの量の化合物III-3、約10モルパーセントの量のDSPC、約40.7モルパーセントの量のコレステロールおよび約1.8モルパーセントの量のALC-0159を含む。
【0642】
種々の異なる実施態様において、カチオン性脂質は下表に示す構造の一つを有する。
【0643】
【0644】
ある実施態様において、LNPは、上記表に示すカチオン性脂質、例えば、式(B)または式(D)のカチオン性脂質、特に式(D)のカチオン性脂質、RNA、中性脂質、ステロイドおよびペグ化脂質を含む。ある実施態様において、中性脂質はDSPCである。ある実施態様において、ステロイドはコレステロールである。ある実施態様において、ペグ化脂質はDMG-PEG 2000である。
【0645】
ある実施態様において、LNPは、イオン化可能脂質様物質(リピドイド)であるカチオン性脂質を含む。ある実施態様において、カチオン性脂質は次の構造を有する。
【0646】
【0647】
N/P値は好ましくは少なくとも約4である。ある実施態様において、N/P値は4~20、4~12、4~10、4~8または5~7の範囲である。ある実施態様において、N/P値は約6である。
【0648】
ここに記載するLNPは、ある実施態様において、約30nm~約200nmまたは約60nm~約120nm範囲の平均直径を有し得る。
【0649】
RNAターゲティング
本発明のある態様は、ここに開示するRNA(例えば、ワクチン抗原および/または免疫刺激剤をコードするRNA)の標的化送達を含む。
【0650】
ある実施態様において、本発明は、肺ターゲティングを含む。肺ターゲティングは、投与されるRNAがワクチン抗原をコードするRNAであるならば、特に好ましい。RNAは、例えば、ここに記載する粒子、例えば、脂質粒子として製剤化され得るRNAを、吸入により投与することにより、肺に送達され得る。
【0651】
ある実施態様において、本発明は、リンパ系、特に二次リンパ系臓器、より具体的には脾臓のターゲティングを含む。リンパ系、特に二次リンパ系臓器、より具体的には脾臓のターゲティングは、投与されるRNがワクチン抗原をコードするRNAであるならば、特に好ましい。
【0652】
ある実施態様において、標的細胞は脾細胞である。ある実施態様において、標的細胞は、脾臓における専門的抗原提示細胞などの抗原提示細胞である。ある実施態様において、標的細胞は脾臓における樹状細胞である。
【0653】
「リンパ系」は循環系の一部であり、リンパを運搬するリンパ管のネットワークを含む、免疫系の重要な部分である。リンパ系は、リンパ性臓器、リンパ管の伝導ネットワークおよび循環リンパからなる。一次または中枢リンパ系臓器は、未成熟前駆細胞細胞からリンパ球を産生する。胸腺および骨髄は一次リンパ系臓器を構成する。リンパ節および脾臓を含む二次または末梢リンパ系臓器は、成熟ナイーブリンパ球を維持し、適応免疫応答を開始させる。
【0654】
RNAは、RNAが注射用ナノ粒子製剤を形成するためのカチオン性脂質および所望によりさらなるまたはヘルパー脂質を含むリポソームに結合する、いわゆるリポプレックス製剤により、脾臓に送達され得る。リポソームは、エタノール中の脂質溶液を水または適当な水相に注入することにより得られ得る。RNAリポプレックス粒子は、リポソームとRNAの混合により調製され得る。脾臓ターゲティングRNAリポプレックス粒子は、参照により本明細書に包含させるWO2013/143683に記載される。正味の負電荷を有するRNAリポプレックス粒子を、脾臓組織または脾細胞、例えば抗原提示細胞、特に樹状細胞を優先的に標的とするために使用し得ることが判明している。従って、RNAリポプレックス粒子の投与後、脾臓におけるRNA蓄積および/またはRNA発現が生じる。故に、本発明のRNAリポプレックス粒子を、脾臓でのRNAの発現のために使用し得る。ある実施態様において、RNAリポプレックス粒子投与後、肺および/または肝臓へのRNA蓄積および/またはRNA発現は生じないまたは本質的に生じない。ある実施態様において、RNAリポプレックス粒子投与後、脾臓における専門的抗原提示細胞などの抗原提示細胞におけるRNA蓄積および/またはRNA発現が生じる。故に、本発明のRNAリポプレックス粒子を、このような抗原提示細胞でのRNAの発現のために使用し得る。ある実施態様において、抗原提示細胞は樹状細胞および/またはマクロファージである。
【0655】
本発明のRNAリポプレックス粒子の電荷は、少なくとも1個のカチオン性脂質に存在する電荷およびRNAに存在する電荷の和である。電荷比少なくとも1個のカチオン性脂質に存在する正電荷対RNAに存在する負電荷の比である。少なくとも1個のカチオン性脂質に存在する正電荷対RNAに存在する負電荷の電荷比は次の式により計算される:電荷比=[(カチオン性脂質濃度(mol))×(カチオン性脂質の正電荷の総数)]/[(RNA濃度(mol))×(RNAの負電荷の総数)]。
【0656】
ここに記載する脾臓ターゲティングRNAリポプレックス粒子は、生理学的pHで、好ましくは約1.9:2~約1:2または約1.6:2~約1:2または約1.6:2~約1.1:2の正電荷対負電荷の電荷比などの正味の負電荷を有する。特定の実施態様において、生理学的pHで、RNAリポプレックス粒子の正電荷対負電荷の電荷比は約1.9:2.0、約1.8:2.0、約1.7:2.0、約1.6:2.0、約1.5:2.0、約1.4:2.0、約1.3:2.0、約1.2:2.0、約1.1:2.0または約1:2.0である。
【0657】
免疫刺激剤を、対象に肝臓または肝臓組織へのRNAの優先的送達のための製剤の免疫刺激剤をコードするRNAを投与することにより、対象に投与し得る。特に、大量の免疫刺激剤の発現が望ましいおよび/または特に相当量での免疫刺激剤の全身における存在が望ましいまたは必要であるならば、このような標的臓器または組織へのRNAの送達は好ましい。
【0658】
RNA送達系は、肝臓に固有の優先度を有する。これは、脂質ベースの粒子、カチオン性および中性ナノ粒子、特に脂質ナノ粒子、例えばリポソーム、ナノミセルおよびバイオコンジュゲートの親油性リガンドに付随する。肝臓蓄積は、肝臓脈管構造または脂質代謝(リポソームおよび脂質またはコレステロールコンジュゲート)の不連続性質が原因である。
【0659】
肝臓へのインビボRNAの送達のために、薬物送達系を、RNAを、その分解を防止しながら肝臓に輸送するために使用し得る。例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)被覆表面およびmRNA含有コアからなるポリプレックスナノミセルが、生理学的条件下、ナノミセルがRNAの優れたインビボ安定性を提供するため、有用な系である。さらに、密集PEG柵からなるポリプレックスナノミセル表面により提供されるステルス性質は、宿主免疫防御を効率的に回避させる。
【0660】
肝臓ターゲティングのための適当な免疫刺激剤の例は、T細胞増殖および/または維持に関与するサイトカインである。適当なサイトカインの例は、IL2またはIL7、フラグメントおよびそのバリアントおよび延長PKサイトカインなどのこれらのサイトカイン、フラグメントおよびバリアントの融合タンパク質を含む。
【0661】
他の実施態様において、免疫刺激剤をコードするRNAを、リンパ系、特に二次リンパ系臓器、より具体的には脾臓に優先的にRNAを送達するための製剤により投与し得る。特に、この臓器または組織における免疫刺激剤の存在が望まれるが(例えば、免疫応答を誘導するため、特にサイトカインなどの免疫刺激剤がT細胞プライミング中または常在免疫細胞の活性化に必要であるとき)、特に相当量で免疫刺激剤が全身性に存在することが望まれない(例えば、免疫刺激剤が全身毒性を有するため)ならば、このような標的組織への免疫刺激剤の送達が好ましい。
【0662】
適当な免疫刺激剤の例は、T細胞プライミングに関与するサイトカインである。適当なサイトカインの例は、IL12、IL15、IFN-αまたはIFN-β、フラグメントおよびそのバリアントおよび延長PKサイトカインなどのこれらのサイトカイン、フラグメントおよびバリアントの融合タンパク質を含む。
【0663】
免疫刺激剤
ある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは非免疫原性であり得る。このおよび他の実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAは、免疫刺激剤または免疫刺激剤をコードするRNAと共投与され得る。ここに記載する方法および薬剤は、免疫刺激剤が薬物動態修飾基に結合している(以後「延長薬物動態(PK)」免疫刺激剤と称する)ならば、特に有効である。ここに記載する方法および薬剤は、免疫刺激剤が免疫刺激剤をコードするRNAの形態で投与されるであるならば、特に有効である。ある実施態様において、該RNAは、全身利用能のために肝臓に標的化される。肝細胞は効率的にトランスフェクトされ得て、大量のタンパク質を産生できる。
【0664】
「免疫刺激剤」は、免疫系の成分、特に免疫エフェクター細胞の何れかの活性化誘導または活性増加により、免疫系を刺激するあらゆる物質である。免疫刺激剤は炎症誘発性であり得る。
【0665】
ある態様により、免疫刺激剤はサイトカインまたはそのバリアントである。サイトカインの例は、インターフェロン-アルファ(IFN-α)またはインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)などのインターフェロン、IL2、IL7、IL12、IL15およびIL23などのインターロイキン、M-CSFおよびGM-CSFなどのコロニー刺激因子および腫瘍壊死因子を含む。他の態様により、免疫刺激剤はAPCトール様受容体アゴニストまたは共刺激/細胞付着膜タンパク質などのアジュバント型免疫刺激剤を含む。トール様受容体アゴニストの例は、CD80、CD86およびICAM-1などの共刺激/付着タンパク質を含む。
【0666】
サイトカインは、細胞シグナル伝達に重要な小タンパク質(約5~20kDa)のカテゴリーである。その放出は、それら周辺の細胞の挙動に影響する。サイトカインは、免疫調節因子として自己分泌シグナル伝達、傍分泌シグナル伝達および内分泌シグナル伝達に関与する。サイトカインは、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカインおよび腫瘍壊死因子を含むが、一般にホルモンまたは増殖因子は含まない(用語に一部重複はあるが)。サイトカインは、マクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球および肥満細胞などの免疫細胞ならびに内皮細胞、線維芽細胞および種々の間質細胞を含む広範な細胞により産生される。あるサイトカインは、1を超えるタイプの細胞により産生され得る。サイトカインは受容体を介して作用し、免疫系に特に重要である;サイトカインは液性および細胞ベースの免疫応答のバランスを調節し、特定の細胞集団の成熟、増殖および反応性を制御する。あるサイトカインは、複雑な方法で他のサイトカインの作用を増強または阻害する。
【0667】
本開示により、サイトカインは天然に存在するサイトカインまたは機能的フラグメントまたはそのバリアントであり得る。サイトカインはヒトサイトカインであってよく、かつ脊椎動物の何れか、特に哺乳動物の何れかに由来してよい。ある特に好ましいサイトカインはインターフェロン-αである。
【0668】
インターフェロン
インターフェロン(IFN)は、ウイルス、細菌、寄生虫およびまた腫瘍細胞などのいくつかの病原体の存在に応答して宿主細胞により産生および放出される、一群のシグナル伝達タンパク質である。典型的シナリオにおいて、ウイルス感染細胞はインターフェロンを放出し、近隣細胞の抗ウイルス防御を高めさせる。
【0669】
シグナル伝達で経る受容体のタイプにより、インターフェロンは一般にI型インターフェロン、II型インターフェロンおよびIII型インターフェロンの3クラスに分類される。
【0670】
全I型インターフェロンは、IFNAR1およびIFNAR2鎖からなるIFN-α/β受容体(IFNAR)として知られる特異的細胞表面受容体複合体に結合する。
【0671】
ヒトに存在するI型インターフェロンはIFNα、IFNβ、IFNε、IFNκおよびIFNωである。一般に、体が、侵入してきたウイルスを認識したとき、I型インターフェロンが産生される。それらは線維芽細胞および単球により産生される。放出されたら、I型インターフェロンは標的細胞の特異的受容体に結合し、それによりウイルスがそのRNAおよびDNAを産生し、複製することを阻止するタンパク質の発現に至る。
【0672】
IFNαタンパク質は、主に形質細胞様樹状細胞(pDC)により産生される。主にウイルス感染に対する自然免疫に関与する。その合成を担う遺伝子は、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNA8、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA16、IFNA17、IFNA21と称される13サブタイプに入る。これらの遺伝子は、染色体9上のクラスターに一緒に見られる。
【0673】
IFNβタンパク質は線維芽細胞により多量に産生される。主に自然免疫応答に関与する抗ウイルス活性を有する。IFNβ1およびIFNβ3の2タイプのIFNβが記載されている。天然および組換え形態のIFNβ1は抗ウイルス、抗細菌および抗癌性質を有する。
【0674】
II型インターフェロン(ヒトにおけるIFNγ)は免疫インターフェロンとしても知られ、IL12により活性化される。さらに、II型インターフェロンは、細胞毒性T細胞およびTヘルパー細胞により放出される。
【0675】
III型インターフェロンは、IL10R2(CRF2-4とも称される)およびIFNLR1(CRF2-12とも称される)からなる受容体複合体を介してシグナル伝達する。I型およびII型IFNよりも最近になって発見されたが、最近の情報は、あるタイプのウイルスまたは真菌感染におけるIII型IFNの重要性を示す。
【0676】
一般に、I型およびII型インターフェロンは免疫応答の制御および活性化を担う。
【0677】
本開示により、I型インターフェロンは好ましくはIFNαまたはIFNβ、より好ましくはIFNαである。
【0678】
本開示により、インターフェロンは天然に存在するインターフェロンまたは機能的フラグメントまたはそのバリアントであり得る。インターフェロンはヒトインターフェロンであってよく、かつ脊椎動物の何れか、特に哺乳動物の何れかに由来してよい。
【0679】
インターロイキン
インターロイキン(IL)は、顕著な構造特性に基づき、4つの主要な群に分割され得る、一群のサイトカイン(分泌型タンパク質およびシグナル分子)である。しかしながら、それらのアミノ酸配列類似性はむしろ弱い(一般に15~25%同一性)。ヒトゲノムは50を超えるインターロイキンおよび関連タンパク質をコードする。
【0680】
本開示により、インターロイキンは天然に存在するインターロイキンまたは機能的フラグメントまたはそのバリアントであり得る。インターロイキンはヒトインターロイキンであってよく、かつ脊椎動物の何れか、特に哺乳動物の何れかに由来してよい。
【0681】
延長PK基
ここに記載する免疫刺激剤ポリペプチドは、免疫刺激剤部分および異種ポリペプチド(すなわち、免疫刺激剤ではないポリペプチド)を含む融合またはキメラポリペプチドとして調製され得る。免疫刺激剤は、循環半減期を延長する延長PK基に融合させ得る。延長PK基の非限定的例は下に記載される。サイトカインなどの免疫刺激剤またはそのバリアントの循環半減期を延長させる他のPK基も本発明に適用可能であることは、理解されるべきである。ある実施態様において、延長PK基は血清アルブミンドメイン(例えば、マウス血清アルブミン、ヒト血清アルブミン)である。
【0682】
ここで使用する用語「PK」は「薬物動態」の略語であり、例として、対象による吸収、分布、代謝および排出を含む、化合物の性質を包含する。ここで使用する「延長PK基」は、生物学的活性分子に融合したときまたは一緒に投与されたとき、生物学的活性分子の循環半減期を延長させる、タンパク質、ペプチドまたは部分をいう。延長PK基の例は、血清アルブミン(例えば、HSA)、免疫グロブリンFcまたはFcフラグメントおよびそのバリアント、トランスフェリンおよびそのバリアントおよびヒト血清アルブミン(HSA)結合剤を含む(米国公開番号2005/0287153および2007/0003549に開示のとおり)。他の例示的延長PK基は、引用により全体として本明細書に包含させる、Kontermann, Expert Opin Biol Ther, 2016 Jul;16(7):903-15に開示される。ここで使用する「延長PK」免疫刺激剤は、延長PK基と組み合わせた免疫刺激剤部分をいう。ある実施態様において、延長PK免疫刺激剤は、免疫刺激剤部分が延長PK基に結合または融合した融合タンパク質である。
【0683】
ある実施態様において、延長PK免疫刺激剤の血清半減期は、免疫刺激剤単独(すなわち、延長PK基に融合していない免疫刺激剤)に対して延長している。ある実施態様において、延長PK免疫刺激剤の血清半減期は、免疫刺激剤単独の血清半減期に対して少なくとも20%、40%、60%、80%、100%、120%、150%、180%、200%、400%、600%、800%または1000%長い。ある実施態様において、延長PK免疫刺激剤の血清半減期は、免疫刺激剤単独の血清半減期より少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、10倍、12倍、13倍、15倍、17倍、20倍、22倍、25倍、27倍、30倍、35倍、40倍または50倍大きい。ある実施態様において、延長PK免疫刺激剤の血清半減期は少なくとも10時間、15時間、20時間、25時間、30時間、35時間、40時間、50時間、60時間、70時間、80時間、90時間、100時間、110時間、120時間、130時間、135時間、140時間、150時間、160時間または200時間である。
【0684】
ここで使用する「半減期」は、例えば、天然機構による分解および/または排除または隔離のため、ペプチドまたはタンパク質などの化合物の血清または血漿濃度がインビボで50%減少するのにかかる時間をいう。ここで使用するのに適する延長PK免疫刺激剤は、インビボで安定化され、その半減期が、例えば、分解および/または排除または隔離に耐える血清アルブミン(例えば、HSAまたはMSA)への融合により延長される。半減期は、薬物動態分析などのそれ自体知られるあらゆる方法で決定され得る。適当な技術は当業者には明らかであり、例えば、一般に適当な用量のアミノ酸配列または化合物を対象に適当に投与し;該対象から一定間隔で血液サンプルまたは他のサンプルを集め;該血液サンプル中のアミノ酸配列または化合物のレベルまたは濃度を決定し;そしてこうして得られたデータ(プロット)から、アミノ酸配列または化合物のレベルまたは濃度が投与時の初期レベルと比較して50%減少するまでの時間を計算する過程を含み得る。さらなる詳細は、例えば、Kenneth, A. et al., Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for Pharmacists and in Peters et al., Pharmacokinetic Analysis: A Practical Approach (1996)などの標準的手引きに提供される。Gibaldi, M. et al., Pharmacokinetics, 2nd Rev. Edition, Marcel Dekker (1982)にも言及し得る。
【0685】
ある実施態様において、延長PK基は、血清アルブミンまたはそのフラグメントまたは血清アルブミンもしくはそのフラグメントのバリアント(本発明の目的でそのすべては用語「アルブミン」に含まれる)を含む。ここに記載するポリペプチドは、アルブミン融合タンパク質を形成するようにアルブミン(またはそのフラグメントまたはバリアント)に融合され得る。このようなアルブミン融合タンパク質は、米国公開20070048282に開示される。
【0686】
ここで使用する「アルブミン融合タンパク質」は、少なくとも1分子の治療タンパク質、特に免疫刺激剤などのタンパク質への少なくとも1分子のアルブミン(またはそのフラグメントまたはバリアント)の融合により形成されたタンパク質をいう。アルブミン融合タンパク質は、治療タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、インフレームでアルブミンをコードするポリヌクレオチドに連結された核酸の翻訳により産生され得る。治療タンパク質およびアルブミンは、アルブミン融合タンパク質の一部として、各々アルブミン融合タンパク質の「部分」、「領域」または「成分」(例えば、「治療タンパク質部分」または「アルブミンタンパク質部分」)と呼ばれ得る。高度に好ましい実施態様において、アルブミン融合タンパク質は、少なくとも1分子の治療タンパク質(治療タンパク質の成熟形態を含むが、それに限定されない)および少なくとも1分子のアルブミン(アルブミンの成熟形態を含むが、それに限定されない)を含む。ある実施態様において、アルブミン融合タンパク質は、投与RNAの標的臓器の細胞、例えば肝細胞などの宿主細胞により処理され、循環に分泌される。RNAの発現のために使用される宿主細胞の分泌経路に出現する新生アルブミン融合タンパク質の処理は、シグナルペプチド開裂;ジスルフィド結合の形成;適切な折りたたみ;炭水化物の付加および処理(例えば、NおよびO結合グリコシル化など);特異的タンパク分解性開裂;および/または多量体タンパク質への集合を含み得るが、これらに限定されない。アルブミン融合タンパク質は、好ましくは、特にN末端にシグナルペプチドを有する、処理されていない形態でRNAによりコードされ、細胞による分泌後、好ましくは特にシグナルペプチドが開裂されている処理された形態で存在する。最も好ましい実施態様において、「処理された形態のアルブミン融合タンパク質」は、N末端シグナルペプチド開裂を受けたアルブミン融合タンパク質産物をいい、ここでまた「成熟アルブミン融合タンパク質」ともいう。
【0687】
好ましい実施態様において、治療タンパク質を含むアルブミン融合タンパク質は、アルブミンに融合していないときの同じ治療タンパク質の血漿安定性と比較して、高い血漿安定性を有する。血漿安定性は、一般に治療タンパク質がインビボで投与され、血流に運び込まれるときと、治療タンパク質が分解され、血流から最終的に体から治療タンパク質を浄化する腎臓または肝臓などの臓器に浄化されるときの間の期間をいう。血漿安定性は、血流中の治療タンパク質の半減期の観点で計算される。血流中の治療タンパク質の半減期は、当分野で知られる一般的アッセイにより容易に決定され得る。
【0688】
ここで使用する「アルブミン」は、まとめてアルブミンタンパク質またはアミノ酸配列またはアルブミンの1以上の機能的活性(例えば、生物学的活性)を有するアルブミンフラグメントもしくはバリアントをいう。特に、「アルブミン」は、ヒトアルブミンまたはそのフラグメントもしくはバリアント、特に成熟形態のヒトアルブミンまたは他の脊椎動物からのアルブミンまたはそのフラグメントまたはこれら分子のバリアントをいう。アルブミンは、脊椎動物の何れか、特に哺乳動物の何れか、例えばヒト、ウシ、ヒツジまたはブタに由来し得る。非哺乳動物アルブミンは、トリおよびサケを含むが、これらに限定されない。アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、治療タンパク質部分と異なる動物からでよい。
【0689】
ある実施態様において、アルブミンは、US5,876,969、WO2011/124718、WO2013/075066およびWO2011/0514789に記載のものなどヒト血清アルブミン(HSA)またはそのフラグメントもしくはバリアントである。
【0690】
用語、ヒト血清アルブミン(HSA)およびヒトアルブミン(HA)はここでは相互交換可能に使用される。用語「アルブミン」および「血清アルブミン」は広義であり、ヒト血清アルブミン(ならびにそのフラグメントおよびバリアント)ならびに他の種からのアルブミン(ならびにそのフラグメントおよびバリアント)を含む。
【0691】
ここで使用する、治療タンパク質の治療的活性または血漿安定性延長に十分なアルブミンのフラグメントは、非融合状態の血漿安定性と比較して、アルブミン融合タンパク質の治療タンパク質部分の血漿安定性が延長または拡張されるように、タンパク質の治療的活性または血漿安定性を安定化または延長するために長さまたは構造が十分であるアルブミンのフラグメントをいう。
【0692】
アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、アルブミン配列の完全長を含んでよく、または治療的活性または血漿安定性を安定化またはできる1以上のそのフラグメントを含んでよい。このようなフラグメントは10以上アミノ酸長であり得て、アルブミン配列からの約15、20、25、30、50以上連続アミノ酸であり得るかまたはアルブミンの特異的ドメインの一部またはすべてを含み得る。例えば、最初の2つの免疫グロブリン様ドメインにかかるHSAの1以上のフラグメントが使用され得る。好ましい実施態様において、HSAフラグメントは成熟形態のHSAである。
【0693】
一般的にいうと、アルブミンフラグメントまたはバリアントは少なくとも100アミノ酸長、好ましくは少なくとも150アミノ酸長である。
【0694】
本開示により、アルブミンは天然に存在するアルブミンまたはそのフラグメントもしくはバリアントであり得る。アルブミンはヒトアルブミンであってよく、かつ脊椎動物の何れか、特に哺乳動物の何れかに由来してよい。
【0695】
好ましくはアルブミン融合タンパク質は、N末端部分としてアルブミンおよびC末端部分として治療タンパク質を含む。あるいはC末端部分としてアルブミンおよびN末端部分として治療タンパク質を含むアルブミン融合タンパク質もまた使用され得る。他の実施態様において、アルブミン融合タンパク質は、アルブミンのN末端およびC末端両方に融合した治療タンパク質を有する。好ましい実施態様において、N末端およびC末端で融合した治療タンパク質は同じ治療タンパク質である。他の好ましい実施態様において、N末端およびC末端で融合した治療タンパク質は異なる治療タンパク質である。ある実施態様において、異なる治療タンパク質はいずれもサイトカインである。
【0696】
ある実施態様において、治療タンパク質は、ペプチドリンカーを介してアルブミンに連結される。融合部分間のリンカーペプチドは、部分間の大きな物理的分離を提供し、故に、例えば、その同族受容体への結合のための、治療タンパク質部分の利用可能性を最大化し得る。リンカーペプチドは、柔軟またはより硬いようにアミノ酸からなり得る。リンカー配列はプロテアーゼによりまたは化学的に切断可能であり得る。
【0697】
ここで使用する用語「Fc領域」は、天然免疫グロブリンの、その2つの重鎖の各Fcドメイン(またはFc部分)により形成される部分をいう。ここで使用する用語「Fcドメイン」は、単一免疫グロブリン(Ig)重鎖の部分またはフラグメントをいい、ここで、FcドメインはFvドメインを含まない。ある実施態様において、Fcドメインは、パパイン開裂部位のすぐ上流のヒンジ領域で開始し、抗体のC末端で終了する。従って、完全なFcドメインは、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む。ある実施態様において、Fcドメインは、ヒンジ(例えば、上部、中央および/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、CH4ドメインまたはバリアント、部分またはそのフラグメントの少なくとも1個を含む。ある実施態様において、Fcドメインは、完全なFcドメイン(すなわち、ヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメイン)を含む。ある実施態様において、Fcドメインは、CH3ドメイン(またはその一部)に融合したヒンジドメイン(またはその一部)を含む。ある実施態様において、Fcドメインは、CH3ドメイン(またはその一部)に融合したCH2ドメイン(またはその一部)を含む。ある実施態様において、Fcドメインは、CH3ドメインまたはその一部からなる。ある実施態様において、Fcドメインは、ヒンジドメイン(またはその一部)およびCH3ドメイン(またはその一部)からなる。ある実施態様において、Fcドメインは、CH2ドメイン(またはその一部)およびCH3ドメインからなる。ある実施態様において、Fcドメインは、ヒンジドメイン(またはその一部)およびCH2ドメイン(またはその一部)からなる。ある実施態様において、FcドメインはCH2ドメインの少なくとも一部(例えば、CH2ドメインのすべてまたは一部)を欠く。ここでのFcドメインは、一般に免疫グロブリン重鎖のFcドメインのすべてまたは一部を含む、ポリペプチドをいう。これは、CH1、ヒンジ、CH2および/またはCH3ドメイン全体ならびに、例えば、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインのみを含むこのようなペプチドのフラグメントを含むポリペプチドを含むが、これらに限定されない。Fcドメインは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgEまたはIgM抗体を含むが、これらに限定されない、あらゆる種および/またはあらゆるサブタイプの免疫グロブリンに由来し得る。Fcドメインは天然FcおよびFcバリアント分子を含む。ここに示すとおり、天然に存在する免疫グロブリン分子の天然Fcドメインからアミノ酸配列が変化するように、あらゆるFcドメインが修され得ることは、当業者に理解される。ある実施態様において、Fcドメインのエフェクター機能(例えば、FcγR結合)は減少している。
【0698】
ここに記載するポリペプチドのFcドメインは、種々の免疫グロブリン分子に由来し得る。例えば、ポリペプチドのFcドメインは、IgG1分子由来のCH2および/またはCH3ドメインおよびIgG3分子由来のヒンジ領域を含み得る。他の例では、Fcドメインは一部IgG1分子および一部IgG3分子に由来するキメラヒンジ領域を含み得る。他の例では、Fcドメインは一部IgG1分子および一部IgG4分子に由来するキメラヒンジを含み得る。
【0699】
ある実施態様において、延長PK基は、FcドメインまたはそのフラグメントまたはFcドメインもしくはそのフラグメントのバリアント(本発明の目的でそのすべては用語「Fcドメイン」に含まれる)を含む。Fcドメインは、抗原に結合する可変領域を含まない。本発明における使用に適するFcドメインは、多数の異なる供給源から得られ得る。ある実施態様において、Fcドメインは、ヒト免疫グロブリンに由来する。ある実施態様において、FcドメインはヒトIgG1定常領域由来である。しかしながら、Fcドメインが、例えば、齧歯類(例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット)または非ヒト霊長類(例えばチンパンジー、マカク)種を含む、他の哺乳動物種の免疫グロブリンに由来し得ることは、理解される。
【0700】
さらに、Fcドメイン(またはそのフラグメントまたはバリアント)は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含むあらゆる免疫グロブリンクラスおよびIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むあらゆる免疫グロブリンアイソタイプに由来し得る。
【0701】
多様なFcドメイン遺伝子配列(例えば、マウスおよびヒト定常領域遺伝子配列)が、公的に利用可能な受託機関の形で入手可能である。特定のエフェクター機能を欠くおよび/または免疫原性を減少させるための特定の修飾を有するFcドメイン配列を含む定常領域ドメインが選択され得る。抗体の多くの配列および抗体をコードする遺伝子は公開されており、適当なFcドメイン配列(例えばヒンジ、CH2および/またはCH3配列またはそのフラグメントもしくはバリアント)は、これら配列から、当分野で認識されている技術を使用してもらされ得る。
【0702】
ある実施態様において、延長PK基は、引用により全体として本明細書に包含させる、US2005/0287153、US2007/0003549、US2007/0178082、US2007/0269422、US2010/0113339、WO2009/083804およびWO2009/133208に記載されるもののような、血清アルブミン結合タンパク質である。ある実施態様において、延長PK基は、引用により全体として本明細書に包含させる、US7,176,278およびUS8,158,579に開示のトランスフェリンである。ある実施態様において、延長PK基は、引用により全体として本明細書に包含させる、US2007/0178082、US2014/0220017およびUS2017/0145062に開示されるもののような、血清免疫グロブリン結合タンパク質である。ある実施態様において、延長PK基は、引用により全体として本明細書に包含させる、US2012/0094909に開示のもののような、血清アルブミンに結合するフィブロネクチン(Fn)ベースの足場ドメインタンパク質である。フィブロネクチンベースの足場ドメインタンパク質の製造方法もUS2012/0094909に開示される。Fn3ベースの延長PK基の非限定的例は、Fn3(HSA)、すなわち、ヒト血清アルブミンに結合するFn3タンパク質である。
【0703】
ある態様において、本発明における使用に適する延長PK免疫刺激剤は、1以上のペプチドリンカーを用い得る。ここで使用する用語「ペプチドリンカー」は、ポリペプチド鎖の直鎖状アミノ酸配列における2以上のドメイン(例えば、延長PK部分および免疫刺激剤部分)を接続するペプチドまたはポリペプチド配列をいう。例えば、ペプチドリンカーを、免疫刺激剤部分のHSAドメインへの接続に使用し得る。
【0704】
延長PK基を例えば免疫刺激剤と融合するのに適するリンカーは当分野で周知である。例示的リンカーはグリシン-セリン-ポリペプチドリンカー、グリシン-プロリン-ポリペプチドリンカーおよびプロリン-アラニンポリペプチドリンカーを含む。ある実施態様において、リンカーはグリシン-セリン-ポリペプチドリンカー、すなわち、グリシン残基およびセリン残基からなるペプチドである。
【0705】
上記異種ポリペプチドに加えてまたはその代わりに、ここに記載する免疫刺激剤ポリペプチドは、「マーカー」または「レポーター」をコードする配列を含み得る。マーカーまたはレポーター遺伝子の例は、β-ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、ハイグロマイシン-B-ホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(TK)、β-ガラクトシダーゼおよびキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)を含む。
【0706】
医薬組成物
ここに記載する薬剤は医薬組成物または医薬で投与でき、何らかの適当な医薬組成物の形態で投与され得る。
【0707】
ある実施態様において、ここに記載する医薬組成物は、対象におけるウイルス、例えば、コロナウイルスに対する免疫応答の誘導のための免疫原性組成物である。例えば、ある実施態様において、免疫原性組成物はワクチンである。
【0708】
本発明の全態様のある実施態様において、ワクチン抗原をコードするRNAなどのここに記載する成分は、薬学的に許容される担体を含み得るおよび所望により1以上のアジュバント、安定化剤などを含み得る医薬組成物で投与され得る。ある実施態様において、医薬組成物は、治療的処置または予防的処置のため、例えば、ウイルス感染、例えば、コロナウイルス感染の処置または予防に使用するためである。
【0709】
用語「医薬組成物」は、好ましくは、薬学的に許容される担体、希釈剤および/または添加物と共に、治療上有効な薬剤を含む製剤に関する。該医薬組成物は、対象への該医薬組成物の投与により、疾患または障害の処置、予防または重症度低減に有用である。医薬組成物は当分野で医薬製剤としても知られる。
【0710】
本発明の医薬組成物は、1以上のアジュバントを含み得るまたは1以上のアジュバントと共に投与され得る。用語「アジュバント」は、免疫応答を延長、増強または加速する化合物に関する。アジュバントは、油エマルジョン(例えば、フロイントアジュバント)、鉱物化合物(例えばミョウバン)、細菌産物(例えば百日咳菌由来毒素)または免疫刺激複合体などの不均一な化合物群を含む。アジュバントの例は、LPS、GP96、CpG オリゴデオキシヌクレオチド、増殖因子およびサイトカイン、例えばモノカイン、リンホカイン、インターロイキン、ケモカインを含むが、これらに限定されない。サイトカインはIL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL12、IFNα、IFNγ、GM-CSF、LT-aであり得る。さらに知られるアジュバントは、水酸化アルミニウム、フロイントアジュバントまたはMontanide(登録商標)ISA51などの油である。本発明における使用に適する他のアジュバントは、Pam3Cysなどのリポペプチドを含む。
【0711】
本発明の医薬組成物は、一般に「薬学的有効量」および「薬学的に許容される製剤」で適用される。
【0712】
用語「薬学的に許容される」は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない物質の非毒性性をいう。
【0713】
用語「薬学的有効量」または「治療有効量」は、単独でまたはさらなる用量と共に、所望の反応または所望の効果を達成する量をいう。特定の疾患の処置の場合、所望の反応は、好ましくは疾患経過の阻止に関する。これは、疾患進行の減速および、特に、疾患進行妨害または逆転を含む。疾患の処置における所望の反応は、該疾患または該状態の発症遅延または発症予防でもあり得る。ここに記載する組成物の有効量は、処置される状態、疾患の重大さ、年齢、生理学的状態、体格および体重を含む患者の各個のパラメータ、処置の期間、付随的治療のタイプ(存在するならば)、具体的投与経路および類似の因子による。従って、ここに記載する組成物を投与する用量は、種々のこのようなパラメータにより得る。初期用量で患者の応答が不十分である場合、高用量(または異なる、より局在化された投与経路により達成される、効果としての高用量)が使用され得る。
【0714】
本発明の医薬組成物は、塩、緩衝液、防腐剤および所望により他の治療剤を含み得る。ある実施態様において、本発明の医薬組成物は1以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または添加物を含む。
【0715】
本発明の医薬組成物で使用するのに適する防腐剤は、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールを含むが、これらに限定されない。
【0716】
ここで使用する用語「添加物」は、本発明の医薬組成物に存在し得るが、活性成分ではない物質をいう。添加物の例は、担体、結合剤、希釈剤、滑沢剤、濃厚剤、界面活性剤、防腐剤、安定化剤、乳化剤、緩衝液、風味剤または着色剤を含むが、これらに限定されない。
【0717】
用語「希釈剤」は、希釈および/または菲薄化剤に関する。さらに、用語「希釈剤」は、流体、液体または固体懸濁液および/または混合媒体の何れか1以上を含む。適当な希釈剤の例は、エタノール、グリセロールおよび水を含む。
【0718】
用語「担体」は、医薬組成物の投与を促進、増強または可能にするために、活性成分が組み合わされる、天然、合成、有機、無機であり得る成分をいう。ここで使用する担体は、対象への投与に適する、適合性の固体または液体充填剤、希釈剤またはカプセル化物質の1以上であり得る。適当な担体は、無菌水、リンゲル、乳酸リンゲル、無菌塩化ナトリウム溶液、等張食塩水、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレンおよび、特に、生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマーまたはポリオキシエチレン/ポリオキシ-プロピレンコポリマーを含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、本発明の医薬組成物は等張食塩水を含む。
【0719】
治療的使用のための薬学的に許容される担体、添加物または希釈剤は医薬分野で周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R Gennaro edit. 1985)に記載される。
【0720】
医薬担体、添加物または希釈剤は、意図される投与経路および標準薬務に関して選択され得る。
【0721】
ある実施態様において、ここに記載する医薬組成物は静脈内、動脈内、皮下、皮内または筋肉内に投与され得る。ある実施態様において、医薬組成物局所投与または全身投与用に製剤化される。全身投与は、消化管を介する吸収が関与する経腸投与または非経腸投与を含み得る。ここで使用する「非経腸投与」は、静脈内注射によるなどの、消化管を介する以外の何らかの方法での投与をいう。好ましい実施態様において、医薬組成物は筋肉内投与用に製剤化される。他の実施態様において、医薬組成物は全身投与、例えば、静脈内投与用に製剤化される。
【0722】
ここで使用する用語「共投与」は、異なる化合物または組成物(例えば、異なるワクチン抗原をコードするRNA)が同じ患者に投与される過程を意味する。異なる化合物または組成物は、同時、本質的に同時または逐次的に投与され得る。
【0723】
処置
本発明は、有効量のここに記載する組成物、例えば、ワクチン抗原または核酸、例えば、ここに記載するワクチン抗原をコードするRNAを含む組成物を投与することを含む、対象におけるウイルス、特にウイルスの異なる株に対する適応免疫応答を誘導するための方法および薬剤を提供する。
【0724】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象にコロナウイルス、コロナウイルス感染またはコロナウイルスに関連する疾患もしくは障害に対する免疫を提供する。本発明は、故に、コロナウイルスに関連する感染、疾患または障害を処置または予防するための方法および薬剤を提供する。
【0725】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、ウイルスに関連する感染、疾患または障害を有する対象に投与される。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、ウイルスに関連する感染、疾患または障害の対象を発症するリスクがある対象に投与される。例えば、ここに記載する方法および薬剤は、ウイルスに接触するリスクがある対象に投与され得る。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、ウイルスが流行している地理的領域に居住している、そこに旅行するまたは旅行することが予測される対象に投与される。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、ウイルスが流行している地理的領域に居住している、そこに旅行するまたは旅行することが予測される他人と接触しているまたは接触が予測される対象に投与される。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、仕事を介してまたはその他接触によりウイルスに曝されていることが知られている対象に投与される。ある実施態様において、ウイルスは、コロナウイルス、例えば、SARS-CoV-2である。
【0726】
ワクチンとして有用である組成物について、組成物は、細胞、組織または対象(例えば、ヒト)でウイルス抗原に対する免疫応答を誘導しなければならない。ある実施態様において、組成物は、細胞、組織または対象(例えば、ヒト)でウイルス抗原に対する免疫応答を誘導する。いくつかの例で、ワクチンは哺乳動物における防御免疫応答を誘導する。本発明の治療的化合物または組成物は、疾患または障害を有するまたは発症するリスクがある(または疑われる)対象に予防的(すなわち、疾患または障害を予防するため)または治療的(すなわち、疾患または障害を処置するため)に投与され得る。このような対象は、標準臨床的方法を使用して同定され得る。本開示の文脈において、予防投与は、疾患または障害が予防されるあるいは進行が遅延されるように、疾患の明白な臨床的症状が顕在化する前に行う。医学分野の状況において、用語「予防」は、疾患による死亡または罹病の負担を減少させるあらゆる活性を含む。予防は一次、二次および三次予防レベルで生じ得る。一次予防は疾患の発症の回避であるのに対して、二次および三次レベルの予防は、疾患進行および症状出現の予防ならびに機能回復および疾患関連合併症軽減による既に確立された疾患の負の影響の軽減を目的とする活性を含む。
【0727】
ある実施態様において、本発明の免疫原性組成物またはワクチンの投与は単回投与で実施されまたは複数投与によりブーストされ得る。
【0728】
ある実施態様において、1回あたり、0.1μg~300μg、0.5μg~200μgまたは1μg~100μg、例えば約1μg、約3μg、約10μg、約30μg、約50μgまたは約100μgのここに記載するRNAの量が投与され得る。
【0729】
一部の実施態様において、ここに記載するレジメンは、少なくとも1回投与を含む。一部の実施態様において、レジメンは、最初の投与および少なくとも1回のその後の投与を含む。一部の実施態様において、最初の投与は、少なくとも1回のその後の投与と同じ量である。一部の実施態様において、最初の投与は、すべてのその後の投与と同じ量である。一部の実施態様において、最初の投与は、少なくとも1回のその後の投与と異なる量である。一部の実施態様において、最初の投与は、すべてのその後の投与と異なる量である。一部の実施態様において、レジメンは2回投与を含む。ある実施態様において、提供されるレジメンは2回投与からなる。
【0730】
ある実施態様において、本発明は、単回投与での投与を想起する。ある実施態様において、本発明は、プライミング用量、続く1以上のブースター用量での投与を想起する。ブースター投与または最初のブースター投与は、プライミング用量の投与7~28日または14~24日後に投与され得る。
【0731】
ある実施態様において、1回あたり、60μgまたはそれ以下、50μgまたはそれ以下、40μgまたはそれ以下または30μgまたはそれ以下のここに記載するRNAの量が投与され得る。
【0732】
ある実施態様において、1回あたり、少なくとも0.25μg、少なくとも0.5μg、少なくとも1μg、少なくとも2μg、少なくとも3μg、少なくとも4μg、少なくとも5μg、少なくとも10μg、少なくとも20μg、少なくとも30μgまたは少なくとも40μgのここに記載するRNAの量が投与され得る。
【0733】
ある実施態様において、1回あたり、0.25μg~60μg、0.5μg~55μg、1μg~50μg、5μg~40μgまたは10μg~30μgのここに記載するRNAの量が投与され得る。
【0734】
異なるRNA分子が投与される(例えば、異なる多特異性ウイルスタンパク質アミノ酸配列をコードする)場合には、ここで与えられるRNAの量または用量は、投与される異なるRNA分子の複合量に関する場合がある。異なるRNA分子は、同時にまたは本質的に同時に投与される場合がある。一部の実施態様において、対象に投与されるレジメンは、単一用量であり得るまたはそれを含み得る。ある実施態様において、対象に投与されるレジメンは複数回投与(例えば、少なくとも2回投与、少なくとも3回投与またはそれ以上)を含み得る。ある実施態様において、対象に投与されるレジメンは最初の投与および2回目の投与を含み得て、これらは少なくとも2週間離して、少なくとも3週間離して、少なくとも4週間離してまたはそれ以上離して与えられる。ある実施態様において、このような投与は少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも4か月、少なくとも5か月、少なくとも6か月、少なくとも7か月、少なくとも8か月、少なくとも9か月、少なくとも10か月、少なくとも11か月、少なくとも12か月またはそれ以上離し得る。一部の実施態様において、投与は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日、40日、41日、42日、43日、44日、45日、46日、47日、48日、49日、50日、51日、52日、53日、54日、55日、56日、57日、58日、59日、60日またはそれ以上離すなどの日数を離し得る。一部の実施態様において、投与は、約1~約3週間離して、または約1~約4週間離して、または約1~約5週間離して、または約1~約6週間離して、または約1~6週間以上離して行い得る。一部の実施態様において、投与は、約7~約60日、例えば、約14~約48日などといった期間離し得る。一部の実施態様において、投与間の最小日数は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21またはそれ以上であり得る。一部の実施態様において、投与間の最大日数は、約60、59、58、57、56、55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21またはそれ以下であり得る。一部の実施態様において、投与は、約21~約28日離し得る。ある実施態様において、投与は約19~約42日離し得る。ある実施態様において、投与は約7~約28日離し得る。ある実施態様において、投与は約14~約24日であり得る。ある実施態様において、投与は約21~約42日であり得る。
【0735】
一部の実施態様において、ワクチン接種レジメンは、最初の投与および2回目の投与を含む。一部の実施態様において、最初の投与および2回目の投与は、少なくとも21日離して投与される。一部の実施態様において、最初の投与および2回目の投与は、少なくとも28日離して投与される。
【0736】
ある実施態様において、最初の投与および2回目の投与(および/または他のその後の投与)は筋肉内注射により投与され得る。ある実施態様において、最初の投与および2回目の投与を三角筋に投与し得る。ある実施態様において、最初の投与および2回目の投与を同じ腕に投与し得る。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物は、21日離した一連の2回投与(例えば、各0.3mL)として投与される(例えば、筋肉内注射により)。ある実施態様において、各用量は約30μgである。ある実施態様において、各用量は30μgより高い、例えば、約40μg、約50μg、約60μgでよい。ある実施態様において、各用量は30μgより少ない、例えば、約20μg、約10μg、約5μgなどであり得る。ある実施態様において、各用量は約3μgまたはそれ以下、例えば、約1μgである。あるこのような実施態様において、ここに記載するmRNA組成物は16歳以上(例えば、16~85歳を含む)の対象に投与される。あるこのような実施態様において、ここに記載するmRNA組成物は18~55歳の対象に投与される。あるこのような実施態様において、ここに記載するmRNA組成物は56~85歳の対象に投与される。ある実施態様において、ここに記載するmRNA組成物は単回投与として投与される(例えば、筋肉内注射による)。
【0737】
ある実施態様において、1回あたり、約30μgのここに記載するRNAの量が投与される。ある実施態様において、このような用量の少なくとも2回が投与される。例えば、2回目は、1回目の投与約21日後に投与され得る。
【0738】
ある実施態様において、ここに記載するRNAワクチンの有効性(例えば、2回投与、ここで、2回目は、1回目の投与約21日後に投与され得て、例えば、1回あたり約30μgの量で投与される)は、2回目の投与7日後開始(例えば、2回目を1回目の投与21日後に投与したならば、1回目の投与28日後開始)して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90または少なくとも95%である。ある実施態様において、このような有効性は、少なくとも50歳、少なくとも55歳、少なくとも60歳、少なくとも65歳、少なくとも70歳またはそれ以上の集団で観察される。ある実施態様において、少なくとも65歳、例えば65~80歳、65~75歳または65~70歳の集団で2回目の投与7日後開始(例えば、2回目を1回目の投与21日後に投与したならば、1回目の投与28日後開始)するここに記載するRNAワクチンの有効性(例えば、2回投与、ここで、2回目は、1回目の投与約21日後に投与され得て、例えば、1回あたり約30μgの量で投与される)は、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%または少なくとも95%である。このような有効性は、最大1か月、2か月、3か月、6か月またはそれより長い期間にわたり観察され得る。
【0739】
一部の実施態様では、ここに記載する組成物および/または方法は、2回目の投与7日後、予防効果が少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90または少なくとも95%であることにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載する組成物および/または方法は、2回目の投与7日後、予防効果が少なくとも70%であることにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載する組成物および/または方法は、2回目の投与7日後、予防効果が少なくとも80%であることにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載する組成物および/または方法は、2回目の投与7日後、予防効果が少なくとも90%であることにより特徴づけられる。ある実施態様において、ここに記載する組成物および/または方法は、2回目の投与7日後、予防効果が少なくとも95%であることにより特徴づけられる。
【0740】
ある実施態様において、ワクチン有効性は、感染の証拠を有する対象数のパーセント減少として定義される(ワクチン接種した対象対ワクチン接種していない対象)。
【0741】
ある実施態様において、有効性を、COVID-19の潜在的症例についての調査を介して評価する。何らかの時点で、患者がここでの目的での急性呼吸器疾病を発症したならば、患者はCOVID-19疾病を有する可能性があると考えられ得る。評価は、SARS-CoV-2を検出するための逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)試験を使用して試験し得る、鼻腔(中鼻甲介)スワブを含み得る。さらに、地域の標準治療試験からの臨床情報および結果が評価され得る。
【0742】
ある実施態様において、有効性評価は、SARS-CoV-2関連症例の定義を利用でき、ここで:
・確認されたCOVID-19:症状がある期間中またはその前後4日以内の次の症状の少なくとも1つの存在およびSARS-CoV-2 NAAT(核酸増幅ベースの試験)陽性:発熱;今までになかった咳嗽またはその増加;今までになかった息切れまたはその増加;悪寒;今までになかった筋肉痛またはその増加;今までになかった味覚または嗅覚喪失;咽喉炎;下痢;嘔吐。
【0743】
これとは別にまたはこれに加えて、ある実施態様において、有効性評価は、SARS-CoV-2関連症例の定義を利用でき、ここで、CDCにより定義される次のさらなる症状の1以上が考慮され得る:疲労;頭痛;鼻閉または鼻汁;悪心。
【0744】
ある実施態様において、有効性評価は、SARS-CoV-2関連重症症例の定義を利用できる
・確認された重症COVID-19:確認されたCOVID-19および次の少なくとも1つの存在:安静時の重症全身疾病の臨床徴候(例えば、RR≧30呼吸/分、HR≧125心拍/分、室内気でsea levelでSpO2≦93%またはPaO2/FiO2<300mmHg);呼吸不全(高流酸素、非侵襲性人工呼吸、機械的人工呼吸またはECMOが必要として定義される);ショックの証拠(例えば、SBP<90mmHg、DBP<60mmHgまたは昇圧剤必要);顕著な急性腎臓、肝臓または神経性機能不全;ICU入院;死亡。
【0745】
これとは別にまたはこれに加えて、ある実施態様において、COVID-19の臨床症状がない患者には血清学的定義が使用され得る:例えば、確認されたCOVID-19がなく、SARS-CoV-2に対する抗体陽転確認:例えば、先にN結合抗体結果陰性であった患者のN結合抗体結果陽性。
【0746】
ある実施態様において、次のアッセイの何れかまたはすべてが血清サンプルで実施され得る:SARS-CoV-2中和アッセイ;S1結合IgGレベルアッセイ;RBD結合IgGレベルアッセイ;N結合抗体アッセイ。
【0747】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は小児集団に投与される。種々の実施態様において、小児集団は、18歳未満、例えば、5~18歳未満、12~18歳未満、16~18歳未満、12~16歳未満または5~12歳未満の対象を含むまたはそれからなる。種々の実施態様において、小児集団は、5歳未満、例えば、2~5歳未満、12~24か月齢未満、7~12か月齢未満または6か月齢未満の対象を含むまたはそれからなる。
【0748】
ある実施態様において、小児集団は、16~18歳未満対象および/または12~16歳未満対象を含む12~18歳未満の対象を含むまたはそれからなる。この実施態様において、処置は21日離れた2回ワクチン接種を含んでよく、ここで、ある実施態様において、ワクチンを、例えば、筋肉内投与により、1回あたり30μg RNA量で投与する。
【0749】
ある実施態様において、小児集団は、12~18歳未満対象および/または5~12歳未満対象を含む5~18歳未満の対象を含むまたはそれからなる。この実施態様において、処置は21日離れた2回ワクチン接種を含んでよく、ここで、種々の実施態様において、ワクチンを、例えば、筋肉内投与により、1回あたり10μg、20μgまたは30μg RNA量で投与する。
【0750】
ある実施態様において、小児集団は、2~5歳未満の対象、12~24か月齢未満の対象、7~12か月齢未満の対象、6~12か月齢未満の対象および/または6か月齢未満の対象を含む5歳未満の対象を含むまたはそれからなる。この実施態様において、処置は、例えば、21~42日離れた、例えば、21日離れた2回ワクチン接種を含んでよく、ここで、種々の実施態様において、ワクチンを、例えば、筋肉内投与により、1回あたり10μg、20μgまたは30μg RNA量で投与する。
【0751】
ある実施態様において、ここに記載するRNAで処置する集団は、少なくとも50歳、少なくとも55歳、少なくとも60歳または少なくとも65歳の対象を含む、本質的にそれからなるまたはそれからなる。ある実施態様において、ここに記載するRNAで処置する集団は、55~90歳、60~85歳または65~85歳の対象を含む、本質的にそれからなるまたはそれからなる。
【0752】
ある実施態様において、複数回の投与間の期間は少なくとも7日、少なくとも14日または少なくとも21日である。ある実施態様において、複数回の投与間の期間は7日~28日、例えば14日~23日である。
【0753】
ある実施態様において、5回を超えない、4回を超えないまたは3回を超えないここに記載するRNAが対象に投与され得る。
【0754】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象におけるコロナウイルス、コロナウイルス感染またはコロナウイルスに関連する疾患または障害に対する中和効果を提供する。
【0755】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象におけるコロナウイルスを遮断または中和する免疫応答を誘導する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象におけるコロナウイルスを遮断または中和するIgG抗体などの抗体の産生を誘導する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象におけるACE2へのコロナウイルスSタンパク質の結合を遮断または中和する免疫応答を誘導する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象におけるACE2へのコロナウイルスSタンパク質の結合を遮断または中和する抗体の産生を誘導する。
【0756】
ここで使用する用語「中和」は、抗体などの結合剤が受容体結合タンパク質などのウイルスの生物学的活性部位に結合し、それにより細胞のウイルス感染を阻害する、事象をいう。コロナウイルス、特にコロナウイルスSタンパク質に関して、ここで使用する用語「中和」は、抗体などの結合剤がSタンパク質のRBDドメインに結合し、それにより細胞のウイルス感染を阻害する、事象をいう。特に、用語「中和」は、結合剤が目的のウイルスの病原性(例えば細胞に感染する能力)を排除するまたは顕著に減少させる事象をいう。
【0757】
抗原性暴露に応答して産生される免疫応答のタイプは、一般に応答に関与するTヘルパー(Th)細胞のサブセットにより区別され得る。免疫応答は、広義にはTh1およびTh2の2タイプに分割され得る。Th1免疫活性化はウイルスなどの細胞内感染のために最適化され、一方Th2免疫応答は液性(抗体)応答のために最適化される。Th1細胞は、インターロイキン2(IL-2)、腫瘍壊死因子(TNFα)およびインターフェロンガンマ(IFNγ)を産生する。Th2細胞はIL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10およびIL-13を産生する。Th1免疫活性化は、多くの臨床的状況で最も高度に望まれる。Th2または液性免疫応答誘発に特化したワクチン組成物は、一般に大部分のウイルス疾患に有効ではない。
【0758】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象におけるTh1介在免疫応答を誘導または促進する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象におけるTh1介在免疫応答で典型的なサイトカインプロファイルを誘導または促進する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象におけるインターロイキン2(IL-2)、腫瘍壊死因子(TNFα)および/またはインターフェロンガンマ(IFNγ)の産生を誘導または促進する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象におけるインターロイキン2(IL-2)およびインターフェロンガンマ(IFNγ)の産生を誘導または促進する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象におけるTh2介在免疫応答を誘導または促進しないまたはTh1介在免疫応答の誘導または促進と比較して、顕著に低い程度で対象におけるTh2介在免疫応答を誘導または促進する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象におけるTh2介在免疫応答で典型的なサイトカインプロファイルを誘導または促進しないまたはTh1介在免疫応答で典型的なサイトカインプロファイルの誘導または促進と比較して、顕著に低い程度で対象におけるTh2介在免疫応答で典型的なサイトカインプロファイルを誘導または促進する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10および/またはIL-13の産生を誘導または促進しないまたは対象におけるインターロイキン2(IL-2)、腫瘍壊死因子(TNFα)および/またはインターフェロンガンマ(IFNγ)の誘導または促進と比較して、顕著に低い程度で対象におけるIL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10および/またはIL-13の産生を誘導または促進する。ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、IL-4の産生を誘導または促進しないまたは対象におけるインターロイキン2(IL-2)およびインターフェロンガンマ(IFNγ)の誘導または促進と比較して、顕著に低い程度で対象におけるIL-4の産生を誘導または促進する。
【0759】
ある実施態様において、ここに記載する方法および薬剤は、対象への投与後、対象における、SARS-CoV-2 Sタンパク質バリアント、特に天然に存在するSタンパク質バリアントなどの異なるSタンパク質バリアントのパネルを標的とする抗体応答、特に中和抗体応答を誘導する。ある実施態様において、異なるSタンパク質バリアントのパネルは、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15またはそれ以上のSタンパク質バリアントを含む。一部の実施態様において、このようなSタンパク質バリアントは、RBDドメイン中にアミノ酸修飾を有するバリアントおよび/またはRBDドメインの外側の、例えば、NTDドメイン中にアミノ酸修飾を有するバリアントを含む。このようなアミノ酸修飾をここに記載する。
【0760】
ある実施態様において、例えば、ここに記載する量およびレジメンで例えば、21日離して、投与される、例えば、1回あたり30μgの2回投与で、投与され得る、ここに記載するRNAを使用する、ここに記載するワクチン接種は、一定期間後、例えば、ウイルス感染に対する保護の減少が観察されたら、最初のワクチン接種に使用したのと同じまたは異なるワクチンを使用して繰り返し得る。このようなある期間は少なくとも6か月、1年、2年などであり得る。ある実施態様において、最初のワクチン接種に使用したとの同じRNAが2回目またはさらなるワクチン接種で使用されるが、低用量または低投与頻度である。例えば、最初のワクチン接種は投与あたり約30μgの用量を使用するワクチン接種を含んでよく、ここで、ある実施態様において、このような用量の少なくとも2回が投与され(例えば、2回目は、1回目の投与約21日後に投与され得る)、2回目またはさらなるワクチン接種は投与あたり約30μgより少ない用量を使用するワクチン接種を含んでよく、ここで、ある実施態様において、このような用量の一つのみが投与される。ある実施態様において、最初のワクチン接種で使用されたのと異なるRNAが2回目またはさらなるワクチン接種で使用される。ある実施態様において、BNT162b2が第1のワクチン接種のために使用され、第2のまたはさらなるワクチン接種の時点で流行している株に存在する修飾を有するここに記載するようなワクチン抗原が、第2のまたはさらなるワクチン接種のために使用される。ある実施態様において、第1のワクチン接種の時点で流行している株に存在する修飾を有するワクチン抗原が、第1のワクチン接種のために使用され使用され、第2のまたはさらなるワクチン接種の時点で流行している株に存在する修飾を有するワクチン抗原が、第2のまたはさらなるワクチン接種のために使用される。
【0761】
ある実施態様において、ワクチン接種レジメンは、少なくとも2回のここに記載のRNA、例えば、2回のここに記載のRNA(ここで、2回目の投与は1回目の投与後約21後に投与し得る)を使用する第1のワクチン接種および単回投与または複数回投与、例えば、2回のここに記載のRNAを使用する第2のワクチン接種を含む。種々の実施態様において、第2のワクチン接種を、第1のワクチン接種、例えば、最初の2回投与レジメンの投与3~24か月、6~18か月、6~12か月または5~7か月後に投与する。第2のワクチン接種の各回に使用するRNAの量は、第1のワクチン接種の各回に使用するRNAの量と異なっても等しくてもよい。ある実施態様において、第2のワクチン接種の各回に使用するRNAの量は第1のワクチン接種の各回に使用するRNAの量に等しい。ある実施態様において、第2のワクチン接種の各回に使用するRNAの量および第1のワクチン接種の各回に使用するRNAの量は約30μg/回である。ある実施態様において、第1のワクチン接種に使用したのと同じRNAを第2のワクチン接種に使用する。
【0762】
ある実施態様において、第2のワクチン接種は、免疫応答のブースト(boost)をもたらす。
【0763】
ある実施態様において、ここに記載するRNAは他のワクチンと共投与される。ある実施態様において、ここに記載するRNA組成物はインフルエンザワクチンと共投与される。ある実施態様において、ここに提供するRNA組成物および他の注射用ワクチンは別の時点で投与される。ある実施態様において、ここに提供するRNA組成物は他の注射用ワクチンと同時に投与される。あるこのような実施態様において、ここに提供するRNA組成物および少なくとも1個の他の注射用ワクチンは異なる注射部位に投与される。
【0764】
用語「疾患」は、個体の体に影響する異常状態をいう。疾患は、しばしば特定の症状および徴候に関連する医学的状態として解釈される。疾患は、感染性疾患などもともと外部起源からの因子により引き起こされる得るかまたは自己免疫性疾患など内部機能不全により引き起こされ得る。ヒトにおいて、「疾患」は、しばしば罹患している個体の疼痛、機能不全、窮迫、社会問題もしくは死亡または該個体と接している者に類似の問題を引き起こすあらゆる状態を指すようにより広義に使用される。この広義では、傷害、能力障害、障害、症候群、感染症、単発症状、異常な挙動ならびに構造および機能の異型のバリエーションを含むこともあるが、他の状況および他の目的で、これらは識別可能なカテゴリーと考えられ得る。疾患は、通常、多くの疾患の罹患および疾患を有しながらの生活が、人生観および人格を変え得るため、個体に身体的だけでなく、感情的にも影響する。
【0765】
本発明において、用語「処置」、「処置する」または「治療的介入」は、疾患または障害などの状態と戦うことを目的とする、対象の管理およびケアに関する。本用語は、症状または合併症の軽減、疾患、障害または状態の進行遅延、症状および合併症の軽減または緩和および/または疾患、障害または状態の治癒または排除ならびに状態の予防のための治療上有効な化合物の投与など、対象が有しているある状態のための処置の全スペクトラムを含むことを意図し、ここで、予防は、疾患、状態または障害と戦うことを目的とする個体の管理およびケアとして理解され、症状または合併症の発症を予防するための活性化合物の投与を含む。
【0766】
用語「治療的処置」は、個体の健康状態を改善するおよび/または寿命を延長(増加)させる、あらゆる処置に関する。該処置は、個体の疾患の排除、個体における疾患進展の停止または減速、個体における疾患進展の阻止または減速、個体における症状の頻度または重症度の低減および/または疾患を現在有するまたは先に有していた個体における再発低減であり得る。
【0767】
用語「予防的処置」または「防止的処置」は、個体での疾患の発症を予防することを意図する、あらゆる処置に関する。用語「予防的処置」または「防止的処置」は、ここで、相互交換可能に使用される。
【0768】
用語「個体」および「対象」は、ここで、相互交換可能に使用される。これらは疾患または障害を有し得るまたは感受性があるが、該疾患または障害を有しても有していなくてもよいヒトまたは他の哺乳動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマまたは霊長類)をいう。多くの実施態様において、個体はヒトである。特に断らない限り、用語「個体」および「対象」は特定の齢を意味せず、故に成人、高齢者、小児および新生児を含む。一部の実施態様において、ここに記載する対象は、より若い対象(例えば、25歳、20歳、18歳、15歳、10歳未満またはそれ以下)である。代替的または追加的に、一部の実施態様において、ここに記載する対象は、高齢対象(例えば、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳を超える、またはそれ以上)である。
【0769】
本発明の実施態様において、「個体」または「対象」は「患者」である。
【0770】
用語「患者」は、処置を意図する個体または対象、特に罹患個体または対象を意味する。
【0771】
本開示のある実施態様において、コロナウイルスなどの、ウイルスタンパク質の少なくとも1つのフラグメントが由来するウイルスに対する免疫応答の提供およびウイルス感染、例えば、コロナウイルス感染の予防または処置が目標である。
【0772】
あるエピトープを含むペプチドまたはタンパク質をコードするRNAを含む医薬組成物を、対象における該エピトープを含む抗原に対する免疫応答を誘導するために対象に投与でき、これは治療的または部分的にもしくは完全に予防的であり得る。当業者は、免疫療法およびワクチン接種の原理の一つは、疾患に対する免疫防御的反応が、処置する疾患に関して免疫学的に関連する抗原またはエピトープで対象を免疫化することにより生じるとの事実に基づくことを知っている。従って、ここに記載する医薬組成物は、免疫応答の誘導または増強のために適用可能である。ここに記載する医薬組成物は、故に、抗原またはエピトープが関与する疾患の予防的および/または治療的処置に有用である。
【0773】
SARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくとも一部分、例えば、SARS-CoV-2 Sタンパク質の少なくともRBD部分または全長もしくは本質的に全長のSARS-CoV-2によってコードされるSタンパク質の修飾されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするここに記載するRNA構築物は、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)として、もしくは免疫原性組成物(例えば、ワクチン)において使用するのに、および/またはここに記載する免疫学的効果(例えば、SARS-CoV-2中和抗体および/またはT細胞応答(例えば、CD4+および/またはCD8+ T細胞応答)の生成)を達成するのに特に有用および/または有効であり得る。
【0774】
ここで使用する「免疫応答」は、抗原または抗原を発現する細胞に対する統合された身体的応答をいい、細胞性免疫応答および/または液性免疫応答をいう。免疫系は、脊椎動物のより原始的な自然免疫系および獲得または適応免疫系に分けられ、その各々液性および細胞性成分を含む。
【0775】
「細胞介在免疫」、「細胞性免疫」、「細胞性免疫応答」または類似の用語は、抗原の発現により特徴づけられる、特にクラスIまたはクラスII MHCを伴う抗原の提示により特徴づけられる、細胞に向けられた細胞性応答を含むことを意味する。細胞性応答は、免疫エフェクター細胞、特に「ヘルパー」または「キラー」として作用するT細胞またはTリンパ球と呼ばれる細胞に関する。ヘルパーT細胞(CD4+T細胞とも称する)は、免疫応答の制御に中心的役割を有し、キラー細胞(細胞毒性T細胞、細胞溶解T細胞、CD8+T細胞またはCTLとも称される)は、ウイルス感染細胞などの罹患細胞を殺し、さらなる罹患細胞の発生を予防する。
【0776】
免疫エフェクター細胞は、ワクチン抗原に応答するあらゆる細胞を含む。このような応答性は、活性化、分化、増殖、生存および/または1以上の免疫エフェクター機能の指標を含む。細胞は、特に、溶解能を有する細胞、特にリンパ系細胞を含み、好ましくはT細胞、特に、好ましくは細胞毒性T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞およびリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞から選択される、細胞毒性リンパ球である。活性化により、これら細胞毒性リンパ球の各々は標的細胞の破壊を誘発する。例えば、細胞毒性T細胞は、次の手段の何れかまたは両方により標的細胞の破壊を誘発する。まず、活性化により、T細胞は、パーフォリン、グランザイムおよびグラニュライシンなどの細胞毒を放出する。パーフォリンおよびグラニュライシンは標的細胞に細孔を作り、グランザイムが細胞に入り、細胞質でカスパーゼカスケードを誘発し、細胞のアポトーシス(プログラム細胞死)を誘導する。第二に、アポトーシスは、T細胞と標的細胞間のFas-Fasリガンド相互作用により誘導され得る。
【0777】
本発明において用語「エフェクター機能」は、例えば、ウイルスなどの病原因子の中和および/またはウイルス感染細胞などの罹患細胞の死滅をもたらす、免疫系の成分が介在するあらゆる機能を含む。ある実施態様において、本発明のエフェクター機能は、T細胞介在エフェクター機能である。このような機能は、ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)の場合、サイトカインの放出および/またはCD8+リンパ球(CTL)および/またはB細胞の活性化、CTLの場合、例えば、アポトーシスまたはパーフォリン介在細胞溶解による細胞、すなわち、抗原の発現により特徴づけられる細胞の排出、IFN-γおよびTNF-αなどのサイトカインの産生および抗原発現標的細胞の特異的細胞溶解性死滅を含む。
【0778】
本発明において用語「免疫エフェクター細胞」または「免疫反応性細胞」は、免疫反応中エフェクター機能を発揮する細胞に関する。ある実施態様において、「免疫エフェクター細胞」は、細胞上にMHCの状況で提示されるまたは細胞表面に発現され、免疫応答に介在する抗原などの抗原と結合できる。例えば、免疫エフェクター細胞は、T細胞(細胞毒性T細胞、ヘルパーT細胞、腫瘍浸潤T細胞)、B細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球、マクロファージおよび樹状細胞を含む。本発明において、好ましくは「免疫エフェクター細胞」はT細胞、好ましくはCD4+および/またはCD8+T細胞、最も好ましくはCD8+T細胞である。本発明により、用語「免疫エフェクター細胞」は、適当な刺激で免疫細胞(例えばT細胞、特にTヘルパー細胞または細胞溶解T細胞)に成熟できる細胞も含む。免疫エフェクター細胞は、CD34+造血幹細胞、未成熟および成熟T細胞および未成熟および成熟B細胞を含む。抗原に暴露されたときのT細胞前駆体の細胞溶解T細胞への分化は、免疫系のクローン選択に類似する。
【0779】
「リンパ系細胞」は、細胞性免疫応答などの免疫応答を産生できる細胞またはこのような細胞の前駆細胞であり、リンパ球、好ましくはTリンパ球、リンパ芽球および形質細胞を含む。リンパ系細胞は、ここに記載する免疫エフェクター細胞であり得る。好ましいリンパ系細胞は、T細胞である。
【0780】
用語「T細胞」および「Tリンパ球」はここでは相互交換可能に使用され、Tヘルパー細胞(CD4+T細胞)および細胞溶解T細胞を含む細胞毒性T細胞(CTL、CD8+T細胞)を含む。用語「抗原特異的T細胞」または類似の用語は、該T細胞が標的とし、好ましくはT細胞のエフェクター機能が発揮される、抗原を認識するT細胞に関する。
【0781】
T細胞は、リンパ球として知られる白血球細胞群に属し、細胞介在免疫に中心的役割を有する。B細胞およびナチュラルキラー細胞などの他のリンパ球タイプと、T細胞受容体(TCR)と称される細胞表面上の特殊な受容体の存在により区別され得る。胸腺は、T細胞の成熟を担う主要な臓器である。T細胞のいくつかの異なるサブセットが発見されており、各々別個の機能を有する。
【0782】
Tヘルパー細胞は、数ある機能の中で、B細胞の形質細胞への成熟ならびに細胞毒性T細胞およびマクロファージの活性化を含む、免疫過程における他の白血球細胞を助ける。これらの細胞は、表面にCD4糖タンパク質を発現するため、CD4+T細胞としても知られる。ヘルパーT細胞は、抗原提示細胞(APC)表面に発現されるMHCクラスII分子により、ペプチド抗原と共に提示されたとき、活性化される。活性化されたら、迅速に分裂し、活性免疫応答を制御または支援するサイトカインと称される小タンパク質を分泌する。
【0783】
細胞毒性T細胞は、ウイルスに感染した細胞および腫瘍細胞を破壊し、移植片拒絶にも関与する。これらの細胞は、表面にCD8糖タンパク質を発現するため、CD8+T細胞としても知られる。これらの細胞は、体のほぼすべての細胞の表面に提示されるMHCクラスIに関連する抗原に結合することにより標的を認識する。
【0784】
大部分のT細胞は、数タンパク質の複合体として存在するT細胞受容体(TCR)を有する。T細胞のTCRは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合し、標的細胞表面に提示される、免疫原性ペプチド(エピトープ)と相互作用できる。TCRの特異的結合は、T細胞内でシグナルカスケードを誘発し、増殖および成熟エフェクターT細胞への分化に至る。実際のT細胞受容体は、独立したT細胞受容体アルファおよびベータ(TCRαおよびTCRβ)遺伝子から産生され、α-およびβ-TCR鎖と称される2つの別々のペプチド鎖からなる。γδ T細胞(ガンマデルタT細胞)は、表面に別個のT細胞受容体(TCR)を有するT細胞の小サブセットを表す。しかしながら、γδ T細胞において、TCRは1つのγ鎖および1つのδ鎖からなる。このT細胞群は、αβ T細胞ほど一般的ではない(総T細胞の2%)。
【0785】
「液性免疫」または「液性免疫応答」は、分泌型抗体、補体タンパク質およびある抗微生物ペプチドなどの細胞外流体でみられる巨大分子が介在する免疫の側面である。細胞介在免疫と対照的である。抗体を含むその側面は、しばしば抗体介在免疫と呼ばれる。
【0786】
液性免疫は、Th2活性化およびサイトカイン産生、胚中心形成およびアイソタイプスイッチング、親和性成熟および記憶細胞産生を含む、抗体産生およびそれに付随するアクセサリー過程をいう。これは病原体中和、古典的補体活性化ならびに食作用および病原体排出のオプソニン促進を含む、抗体のエフェクター機能とも称される。
【0787】
液性免疫応答において、まず、B細胞が骨髄で成熟し、細胞表面で多数提示されるB細胞受容体(BCR)が獲得される。これらの膜結合タンパク質複合体は、抗原検出に特異的な抗体である。各B細胞は、抗原と結合する特有の抗体を有する。成熟B細胞は骨髄からリンパ節または他のリンパ性臓器に遊走し、そこで、病原体と遭遇し始める。B細胞が抗原に遭遇したとき、抗原は受容体に結合し、エンドサイトーシスによりB細胞内部に取り込まれる。抗原はまたMHC-IIタンパク質により処理され、B細胞の表面に提示される。B細胞はヘルパーT細胞(TH)が複合体と結合するのを待つ。この結合はTH細胞を活性化し、次いで、サイトカインを放出し、B細胞の迅速な分裂を誘導し、B細胞の多数の同一クローンを産生する。これらの娘細胞は形質細胞または記憶細胞となる。記憶B細胞はここでは不活性のままである;後に、これら記憶B細胞が再感染により同じ抗原に遭遇したとき、分裂し、形質細胞を形成する。他方で、形質細胞は多数の抗体を産生し、これは、循環系に自由に放出される。これらの抗体は抗原と遭遇し、それらと結合する。これは、宿主と外来細胞の化学的相互作用を妨害するか、適切な機能を邪魔する抗原性部位間に架橋を形成でき、またはそれらの存在はそれらを攻撃および貪食するようにマクロファージまたはキラー細胞を誘引する。
【0788】
用語「抗体」は、ジスルフィド結合により相互接続された少なくとも2個の重(H)鎖および2個の軽(L)鎖を含む、免疫グロブリンを含む。各重鎖は重鎖可変領域(ここではVHと略す)および重鎖定常領域からなる。各軽鎖は軽鎖可変領域(ここではVLと略す)および軽鎖定常領域からなる。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分され得る。各VHおよびVLは、3個のCDRおよび4個のFRからなり、アミノ末端からカルボキシ末端で次の順番で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(Clq)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合に介在し得る。抗体は抗原と結合、好ましくは特異的に結合する。
【0789】
B細胞により発現される抗体は、BCR(B細胞受容体)または抗原受容体と称されることがある。タンパク質のこのクラスに含まれる5メンバーは、IgA、IgG、IgM、IgDおよびIgEである。IgAは、唾液、涙、母乳、消化器分泌物ならびに呼吸器および泌尿生殖器管の粘液分泌物などの身体分泌物に存在する一次抗体である。IgGは、最も一般的な循環抗体である。IgMは、大部分の対象の一次免疫応答で産生される主免疫グロブリンである。凝集、補体固定および他の抗体応答に最も効率的な免疫グロブリンであり、細菌およびウイルスに対する防御に重要である。IgDは、抗体機能が知られていないが、抗原受容体として役立ち得る免疫グロブリンである。IgEは、アレルゲンへの暴露により肥満細胞および好塩基球からメディエーターを放出させることにより、即時過敏症に介在する免疫グロブリンである。
【0790】
ここで使用する「抗体重鎖」は、天然に存在する高次構造の抗体分子に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖の大きいほうをいう。
【0791】
ここで使用する「抗体軽鎖」は、天然に存在する高次構造の抗体分子に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖の小さいほうをいい、κおよびλ軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプをいう。
【0792】
本発明は、保護的、防止的、予防的および/または治療的であり得る免疫応答を意図する。ここで使用する「免疫応答の誘導[または誘導する]」は、特定の抗原に対する免疫応答が誘導に存在しなかったことを示し、または誘導前特定の抗原に対する免疫応答が基底レベルで存在し、それが誘導後増強されたことを示し得る。それ故に、「免疫応答の誘導[または誘導する]」は、「免疫応答の増強[または増強する]」を含む。
【0793】
用語「免疫療法」は、免疫応答の誘導または増強による疾患または状態の処置に関する。用語「免疫療法」は、抗原免疫化または抗原ワクチン接種を含む。
【0794】
用語「免疫化」または「ワクチン接種」は、例えば、治療的または予防的理由のために、免疫応答を誘導する目的で個体に抗原を投与する過程をいう。
【0795】
用語「マクロファージ」は、単球の分化により産生される貪食細胞のサブグループをいう。炎症、免疫サイトカインまたは微生物産物により活性化されるマクロファージは外来病原体を非特異的に貪食し、病原体を分解させる加水分解性および酸化的攻撃により、マクロファージ内で殺す。分解タンパク質からのペプチドがマクロファージ細胞表面で提示され、そこで、T細胞により認識され得て、B細胞表面上の抗体と直接相互作用でき、T細胞およびB細胞活性化ならびに免疫応答のさらなる刺激をもたらす。マクロファージは、抗原提示細胞のクラスに属する。ある実施態様において、マクロファージは脾マクロファージである。
【0796】
用語「樹状細胞」(DC)は、抗原提示細胞のクラスに属する貪食細胞の他のサブタイプをいう。ある実施態様において、樹状細胞は造血骨髄前駆細胞に由来する。これらの前駆細胞はまず未成熟樹状細胞に形質転換される。これらの未成熟細胞は、高食作用性活性および低T細胞活性化能により特徴づけられる。未成熟樹状細胞は、常にウイルスおよび細菌などの病原体について周囲環境をサンプリングする。それらが提示可能抗原と遭遇したら、成熟樹状細胞に活性化され、脾臓またはリンパ節に移動し始める。未成熟樹状細胞は病原体を貪食し、タンパク質を小片に分解し、成熟したらこれらフラグメントをMHC分子を使用して細胞表面に提示させる。同時に、CD80、CD86およびCD40などのT細胞活性化における共受容体として作用する細胞表面受容体を上方制御し、T細胞を活性化させる能力が大きく増強される。それらはまた樹状細胞を血流を介する脾臓へのまたはリンパ系を介するリンパ節への移動を誘導する走化性受容体であるCCR7も上方制御する。ここで、それらは抗原提示細胞として働き、非抗原特異的共刺激シグナルと並行して、ヘルパーT細胞およびキラーT細胞ならびにB細胞を、それらに抗原を提示することにより活性化させる。故に、樹状細胞は、T細胞またはB細胞関連免疫応答を能動的に誘導できる。ある実施態様において、樹状細胞は脾樹状細胞である。
【0797】
用語「抗原提示細胞」(APC)は、細胞表面上(または表面で)少なくとも1個の抗原または抗原性フラグメントを表示、獲得および/または提示できる多様な細胞の細胞をいう。抗原提示細胞は専門抗原提示細胞と非専門抗原提示細胞に分けられ得る。
【0798】
用語「専門抗原提示細胞」は、ナイーブT細胞との相互作用に必要な主要組織適合遺伝子複合体クラスII(MHCクラスII)分子を構成的に発現する抗原提示細胞に関する。T細胞が抗原提示細胞の膜上でMHCクラスII分子複合体と相互作用するならば、抗原提示細胞はT細胞の活性化を誘導する共刺激分子を産生する。専門抗原提示細胞は、樹状細胞およびマクロファージを含む。
【0799】
用語「非専門抗原提示細胞」は、MHCクラスII分子を構成的に発現しないが、インターフェロン-ガンマなどのあるサイトカインにより刺激されたときに発現する抗原提示細胞に関する。例示的、非専門抗原提示細胞は、線維芽細胞、胸腺上皮細胞、甲状腺上皮細胞、グリア細胞、膵臓ベータ細胞または血管内皮細胞を含む。
【0800】
「抗原処理」は、抗原の、該抗原のフラグメントである進行産物への分解(例えば、タンパク質のペプチドへの分解)および特異的T細胞への抗原提示細胞などの細胞による提示のためのMHC分子とこれらのフラグメントの1以上の(例えば、結合による)会合をいう。
【0801】
用語「抗原が関与する疾患」は、抗原が関与するあらゆる疾患、例えば抗原の存在により特徴づけられる疾患をいう。抗原が関与する疾患は感染性疾患であり得る。上記のとおり、抗原はウイルス抗原などの疾患関連抗原であり得る。ある実施態様において、抗原が関与する疾患は、好ましくは、細胞表面に抗原を発現する細胞が関与する疾患である。
【0802】
用語「感染性疾患」は、個体間または生物間で伝染し得て、微生物病原体により引き起こされるあらゆる疾患(例えば感冒)をいう。感染症は当分野で知られ、例えば、それぞれウイルス、細菌および寄生虫が原因であるウイルス性疾患、細菌性疾患または寄生虫性疾患を含む。これに関連して、感染性疾患は、例えば、肝炎、性行為感染症(例えばクラミジアまたは淋病)、結核、HIV/後天性免疫不全症候群(AIDS)、ジフテリア、B型肝炎、C型肝炎、コレラ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザおよびインフルエンザであり得る。
【0803】
本開示のある実施態様において、ウイルスは、RNAウイルス、特に、感染性疾患を引き起こすRNAウイルスである。
【0804】
ここに記載する文献および試験の引用は、前記の何れかが関連する先行技術であることを認めることを意図するものではない。これらの文献の内容としてのすべての記載は、出願人が入手可能な情報に基づくものであり、これら文献の内容の正確性について承認するものではない。
【0805】
次の記載は、当業者が種々の実施態様を製造および使用することを可能とするために示す。特定のデバイス、技術および適用の記載は単なる例として提供される。ここに記載する例への種々の修飾が当業者には容易に認識され、ここに定義される一般的原理を、種々の実施態様の精神および範囲から逸脱することなく他の例および適用に適用し得る。故に、種々の実施態様は、ここに記載し、示す例に限定されることを意図せず、むしろ、特許請求の範囲を構成する範囲に従う。
【実施例】
【0806】
[実施例1]
【0807】
二価ワクチン設計
ウイルスの感染性を増加させ得る、またはプロトタイプ武漢株に対して有効である現在のワクチンの有効性を減少させ得る、複数の確立された、進化している懸念されるSARS-CoV-2バリアント株に対して広く中和する体液性免疫を生成するために、新規二価ワクチンアプローチを確立した。B.1.1.7バリアントは、世界中で優勢なSARS-CoV-2バリアントになりつつあるので、二価ワクチン設計の基礎によって、急速に広がる系統B.1.1.7[別名、懸念されるバリアント202012/01(VOC-202012/01)または20B/501Y.V1]のスパイク(S)糖タンパク質配列を形成する。B.1.1.7バリアントは、S糖タンパク質中にいくつかの変異を含有し(表4)、本質的により感染性であり、他のSARS-CoV-2系統よりも40~70%高いと推定されている増殖速度を有すると示されている(Volz et al., Nature, 2021; Washington et al., Cell, 2021)。循環する懸念されるバリアントまたは目的のバリアント、すなわち、系統B.1.351(別名、20H/501Y.V2)、P.1、B.1.427/B.1.429(別名、CAL.20C)、B.1.526(表4)において見出されるSARS-CoV-2 S受容体結合ドメイン(RBD)および/またはN末端ドメイン(NTD)へのスパイク変異ならびに中和モノクローナル抗体(nAb)またはヒトCOVID-19回復期血清のいずれかに対する免疫回避を付与するとわかっている高い有病率を有する他の変異を導入し、2つのB.1.1.7 S配列の中で分配した(表5、
図6)。一方、B.1.351系統において見出される重要な変異クラスターK417N、E484KおよびN501Yは、保存して維持した。他方、単一点変異は、アミノ酸交換が適度な距離を離れており、おそらくは、別々の高次構造エピトープをもたらす方法で導入した。例えば、クラス1 RBD標的化nAbの結合エピトープ中に位置するS477N変異は、クラス2またはクラス3 RBD標的化nAbのいずれかの結合エピトープ中に位置するL452RおよびN439K変異と組み合わせた(Barnes et al., Nature, 2020)。NTDについては、L18F、D80A、D215G、R246IおよびD253Gなど、表面に露出したアミノ酸残基を標的化するさらなる変異のみが企図された。やはり、これらの変異は、アミノ酸交換が合理的距離離れており、おそらくは、別々の高次構造エピトープをもたらす方法で導入した。
【0808】
【0809】
【0810】
インビトロ試験
HEK293T細胞を、市販のトランスフェクション試薬を使用して0.15μg/mLのmodRNAで、またはワクチン候補BNT162b2、BNT162b2(アルファ)、BNT162b2(アルファ+SA)およびBNT162b2(アルファ;L452R+E484Q)をコードする0.15μg/mLのLNP製剤化modRNAで、トリプリケートでトランスフェクトした。構築物の配列仕様については、表6を参照されたい。トランスフェクション後、細胞を、ワクチン候補によってコードされるSタンパク質を発現するように18時間インキュベートした。その後、細胞を回収し、マウス-Fcタグに融合されたヒト組換えACE-2(hACE2-mFc)および二次蛍光タグ付抗マウス抗体を用いて探索して、HEK293T細胞の細胞表面上で異所性に発現されたワクチン候補へのACE-2結合を検出した。ワクチンによってコードされるSARS-CoV-2バリアントSタンパク質構築物にわたる同等のACE-2親和性を仮定すると、FACSにおいて測定された中央値蛍光強度(MFI)は、バリアントSタンパク質表面発現の代わりとなる。
【0811】
【0812】
簡潔には、0.4×106個のHEK293T細胞を12ウェルプレートにトランスフェクションの6時間前に播種した。ワクチン候補をコードするmodRNAを、トランスフェクションの前にLipofectamine(商標)MessengerMAX(商標)(ThermoFisher Scientific)を製造業者の使用説明書に従って使用して製剤化した、または0.15μg/mLのmodRNAの濃度でワクチン候補をコードするLNP製剤化modRNAを使用して、細胞にトリプリケートでトランスフェクトした。細胞を37℃および5% CO2で18時間インキュベートし、その後染色した。その後、細胞を回収し、生死判定色素(eBioscience(商標)Fixable Viavility Dye eFluor(商標)450、ThermoFisher Scientific)およびhACE2-mFc(SinoBiological)と共にインキュベートし、その後、Alexa Fluor(登録商標)647 AffiniPureロバ抗マウスIgG(H+L)二次抗体(Jackson ImmunoResearch)を用いて染色し、その後、固定した(Fixation Buffer、BioLegend)。細胞をBD FACSCelesta 2(BD)を使用して取得し、データをFlowJo V10.8(BD)で分析した。
【0813】
検出試薬としてhACE2-mFcを使用して決定されたように(
図7)、すべてのワクチン候補によってコードされたSタンパク質が、細胞表面上で発現され、SARS-CoV-2-アンギオテンシン変換酵素(ACE-2)の宿主細胞侵入受容体へ結合できた。SARS-CoV-2 Sタンパク質発現細胞のパーセンテージおよびトランスフェクトされたHEK293T総集団のMFIで見られるように、LNP製剤化modRNA(
図7C、D)を用いて得られたものと比較して、Lipofectamine(商標)MessengerMAX(商標)製剤化modRNAについて(
図7A、B)発現レベルは低かった。しかし、同一方法でトランスフェクトされたワクチン候補は、ほぼ同等のSタンパク質表面発現レベルを示す[それぞれ、BNT162b2、BNT162b2(アルファ+SA)(
図7A、B)およびBNT162b2、BNT162b2(アルファ)、BNT162b2(アルファ;L452R+E484Q)(
図7C、D)]。
[実施例3]
【0814】
B.1.1.7(アルファ)骨格に基づいて複数のバリアント変異を使用するマウスにおける免疫原性研究
3群の5匹の雌BALB/cマウスに、1μg/動物のBNT162b2(アルファ)、BNT162b2(アルファ+SA)を用いて、または生理食塩水単独を用いて0日目に1回注射した。ワクチン配列は、SARS-CoV-2 バリアントB.1.351(ベータ、ここではSAと略される)由来の重要な変異を付加した、B.1.1.7(アルファ)株に基づいており、詳細は表7に示されている。筋肉内(i.m.)注射は、20μLの投与量で投与した。7日目、14日目、21日目および28日目にすべての個々のマウスから血液を収集して、血清サンプルを生成した。免疫化の前の事前出血(Pre)のために、5匹を無作為に選んだマウスを出血させた。
【0815】
【0816】
B.1.1.7またはB.1.351バリアントに由来する変異を含むいずれかのタンパク質を使用してすべての時点について酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を実施した。研究最後日の28日目に、VSV-SARS-CoV-2ベースのシュードウイルス中和試験を使用して収集された血清サンプルを中和抗体応答について試験した。
【0817】
ELISAのために、B.1.1.7またはB.1.351ウイルス株(Sino Biological; cat: 40591-V08H12 [S1(B.1.1.7)]; Sino Biological; cat: 40592-V08H86 [RBD(B.1.351)])のいずれかに由来する2つの組換えタンパク質を使用して、血清サンプルを96ウェルプレートにおいて試験して、SまたはRBDタンパク質特異的抗体濃度を評価した。簡潔には、MaxiSorpプレート(Thermo Fisher)の各ウェルを、100ngの組換えタンパク質またはアイソタイプ対照を用いてコーティングした。プレートを4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、プレートをPBS+0.01% Tween 20で3回洗浄し(洗浄工程)、ブロッキング緩衝液を用い、37℃で1時間ブロッキングした。洗浄工程後、サンプルまたは抗体対照を添加し、プレートを37℃で1時間再度インキュベートした。ウェルに二次抗体を添加する前に、さらなる洗浄工程を実施した。セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしている二次抗体を37℃で45分間インキュベートした。最終洗浄工程後、TMB ONE(Biotrend Chemikalien GmbH)基質をウェルに添加し、室温(RT)で8分間インキュベートした。HRPがコンジュゲートされた抗体がウェル中に存在する場合には、透明から青色への色の交換が観察され、25%硫酸を添加することによって反応を停止した(青色から黄色)。Epochマイクロプレートリーダー(450nm、参照620nm;BioTek)を使用してプレートの吸光度を測定した。
【0818】
すべての試験された構築物は、すべての異なる時点でS1(B.1.1.7)(
図8)およびRBD(B.1.351)に対して特異的なIgG抗体を誘導し(
図9)、力価は免疫化21日後でピークに達した。結果は、原則として1つのSタンパク質配列(ここでは:アルファ骨格)中に複数のバリアント変異が含まれていることが、ワクチン接種のための適した抗原であることを実証する。BNT162b2(アルファ)は、評価されるS1(B.1.1.7)組換えタンパク質に最も近い抗原をコードする構築物であり、骨格ワクチン構築物として使用されたので、ハイブリッド構築物BNT162b2(アルファ+SA)での免疫化がS1(B.1.1.7)に対する抗体力価の低下をもたらすかを理解するために非常に適切であった。抗S1(B.1.1.7)IgG抗体について試験する時点あたり単一のデータ点に注目すると(
図8)、両ワクチン候補が、緩衝液対照と比較して上昇した力価を誘導し、BNT162b2(アルファ+SA)を用いた場合、B.1.1.7由来S1タンパク質に対してより弱い応答を誘導した。BNT162b2(アルファ)での免疫化と比較して、BNT162b2(アルファ+SA)は、同様(7日目で)またはより低いB.1.1.7 S1特異的IgG力価を誘導した。免疫化群間の有意差(表8)に焦点を合わせると、BNT162b2(アルファ+SA)によって誘発されたIgG力価は、BNT162b2(アルファ)と比較して、研究14日目および28日目に有意に低かった。結果は、複数の非アルファ変異が含まれたとしても、ハイブリッドワクチン構築物は、依然として良好なワクチン候補であり、B.1.1.7(アルファ)骨格ウイルスタンパク質に対する結合抗体力価を誘発することを示す。
【0819】
【0820】
抗RBD(B.1.351)IgG抗体について試験する時点あたり単一のデータ点に注目すると(
図9)、すべてのワクチン候補が、緩衝液対照と比較してかなり上昇した力価を誘導した。BNT162b2(アルファ+SA)ワクチン候補はこのアッセイにおいて組換えB.1.351バリアントRBDに最も近く、抗原に対して最高の応答を誘導し(28日目を除く)、結果は、複数の変異を含めることによって対応するバリアントに対する免疫応答が駆動されることを実証する。BNT162b2(アルファ)での免疫化と比較して、BNT162b2(アルファ+SA)は、同様またはより高いIgG力価のいずれかを誘導した。免疫化群間の有意差(表9)に焦点を合わせると、BNT162b2(アルファ+SA)によって誘発された力価は、BNT162b2(アルファ)と比較して、研究7日目および21日目に有意に高く、B.1.1.7(アルファ)骨格にバリアント特異的変異を含めた場合に明確な有益な影響を示した。結果は、ハイブリッドワクチン構築物が良好なワクチン候補であることおよびさらなるウイルス株に向けられた実行されたバリアント特異的変異(ここでは、B.1.351特異的変異)が免疫学的な利益につながることを示す。
【0821】
【0822】
免疫化後に誘導された抗体の中和機能を分析して、免疫化28日後に収集された血液サンプルからのすべての血清を、VSV/SARS-CoV-2ベースのシュードウイルス中和試験(pVNT)を使用して試験した。pVNTアッセイのために、96ウェルV底プレート中でマウス血清サンプルをデュプリケートで段階希釈し、規定数のVSV/SARS-CoV-2シュードウイルス粒子とともにインキュベートし、シュードタイピングのために使用されるSタンパク質配列は、先祖のSARS-CoV-2武漢株(武漢)、B.1.1.7(アルファ)バリアント(変異:Δ69/70、Δ144、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982A、D1118H)およびB.1.351(ベータ)バリアント(変異:L18F、D80A、D215G、Δ242~244、R246I、K417N、E484K、N501Y、D614G、A701V)に由来した。インキュベーション後、抗体がシュードウイルスに結合することを可能にするために、96ウェル平底プレートに事前に播種されたVero-76細胞にシュードウイルス/血清希釈ミックスを添加した。プレートを37℃および5% CO2で16~24時間インキュベートした。マウス血清の不在下でシュードウイルスと共にインキュベートされたVero-76細胞を陽性対照として使用した。シュードウイルスを伴わずにインキュベートされたVero-76細胞を陰性対照として使用した。インキュベーション後、上清を除去し、細胞をルシフェラーゼ試薬(Promega)を用いて溶解した。発光をCLARIOstar(登録商標)Plusマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)で記録し、中和力価を、依然として発光の50%低減をもたらす最高血清希釈の逆数として算出した。中和が観察されなかった場合には、検出限界(LOD)の半分の任意の力価を報告した。
【0823】
BNT162b2(アルファ)およびBNT162b2(アルファ+SA)で免疫化されたすべてのマウスが、武漢シュードウイルスに対する検出可能な中和抗体力価を示した。しかし、群幾何平均50%シュードウイルス中和抗体(pVN
50)力価はかなり低く、BNT162b2(アルファ)免疫血清の48からBNT162b2(アルファ+SA)免疫血清の24の範囲であった(
図10A)。武漢力価と比較して、アルファシュードウイルスに対してかなり高いpVN
50力価が、特にBNT162b2(アルファ)で免疫化した動物から採取した血清サンプルにおいて(
図10B;182の幾何平均力価)観察され、BNT162b2(アルファ+SA)についてより小さい程度に(43の幾何平均力価)観察された。武漢シュードウイルス力価と比較してより高いアルファは、試験した両ワクチン候補が、アルファ骨格由来のスパイクタンパク質を抗原としてコードするという事実と一致する。BNT162b2(アルファ)と比較してBNT162b2(アルファ+SA)によって誘発されたより低いアルファシュードウイルス中和力価は、ハイブリッドワクチンがRBD中にさらなる「非アルファ」変異を有するという事実による可能性があり[表7;BNT162b2(アルファ+SA)のK417NおよびE484Kを参照されたい]、これらはB.1.1.7/アルファシュードウイルスに対してあまり有効ではない中和抗体応答を引き起こす可能性が高い。最も重要なことに、他方で、BNT162b2(アルファ+SA)ワクチンは、BNT162b2(アルファ)ワクチンと比較した場合にベータシュードウイルスに対してかなり高いpVN
50力価を誘導し(
図10C;18に対して96の群幾何平均)、これは、実行されたベータバリアント特異的変異がよりベータ特異的な抗体応答をもたらしたことを示す。
【0824】
まとめると、SARS-CoV-2 P2 Sワクチン構築物骨格中に複数のバリアント変異を使用することで、骨格において使用されたアミノ酸変化に対応してウイルス抗原に向けられる免疫応答がわずかに変更される。
[実施例4]
【0825】
B.1.1.7(アルファ)バックグラウンドに基づく最小バリアント変異を含むマウスにおける免疫原性研究
3群の5匹の雌BALB/cマウスに、1μg/動物のBNT162b2(アルファ)、BNT162b2(アルファ;L452R+E484Q)を用いて、または生理食塩水単独を用いて0日目に1回注射した。構築物の配列仕様については、表10を参照されたい。筋肉内(i.m.)注射は、20μLの投与量で投与した。28日目にすべての個々のマウスから血液を収集して、血清サンプルを生成した。
【0826】
【0827】
それぞれの免疫化によって誘発されたウイルス中和抗体応答を理解するために、VSV/SARS-CoV-2ベースのシュードウイルス中和試験(pVNT)を使用して血清サンプルを試験した。pVNTアッセイのために、96ウェルV底プレート中でマウス血清サンプルをデュプリケートで段階希釈し、規定数のVSV/SARS-CoV-2シュードウイルス粒子とともにインキュベートし、シュードタイピングのために使用されるSタンパク質配列は、SARS-CoV-2 B.1.1.7(アルファ)バリアント(変異:Δ69/70、Δ144、N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982A、D1118H)、B.1.617.1(カッパ)バリアント(変異:L452R、E484Q、D614G、P681R)またはB.1.617.2(デルタ)バリアント(変異:T19R、G142D、E156G、Δ157/158、K417N、L452R、T478K、D614G、P681R、D950N)に由来した。インキュベーション後、抗体がシュードウイルスに結合することを可能にするために、96ウェル平底プレートに事前に播種されたVero-76細胞にシュードウイルス/血清希釈ミックスを添加した。プレートを37℃および5% CO2で16~24時間インキュベートした。マウス血清の不在下でシュードウイルスと共にインキュベートされたVero-76細胞を陽性対照として使用した。シュードウイルスを伴わずにインキュベートされたVero-76細胞を陰性対照として使用した。インキュベーション後、上清を除去し、細胞をルシフェラーゼ試薬(Promega)を用いて溶解した。発光をCLARIOstar(登録商標)Plusマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)で記録し、中和力価を、依然として発光の50%低減をもたらす最高血清希釈の逆数として算出した。中和が観察されなかった場合には、検出限界(LOD)の半分の任意の力価を報告した。
【0828】
BNT162b2(アルファ)またはBNT162b2(アルファ;L452R+E484Q)でのマウスの免疫化によって、アルファシュードウイルスに対するほぼ同等の中和抗体力価が誘導された(それぞれ、291および221の幾何平均pVN50力価)。しかし、注目すべきことに、アルファスパイク抗原骨格をコードし、追加のカッパおよびデルタバリアント変異L452RおよびE484Qを有するBNT162b2(アルファ;L452R+E484Q)ワクチン候補は、BNT162b2(アルファ)ワクチンと比較した場合にカッパシュードウイルス(110に対して192の幾何平均力価)およびデルタシュードウイルス(84に対して127の幾何平均力価)に対してより高い中和活性を誘導する傾向を示した(
図11)。
【0829】
さらに、2種の候補を用いてワクチン接種後に生成された抗体の結合能を、マルチプレックス分析を実施して分析した。簡潔には、マルチプレックスアッセイを、サンドイッチイムノアッセイ技術(Meso Scale Diagnostics、LLC)を利用するCOVID-19血清学マウスキットの提供者の一般プロトコールに従って実施した。結合マウス抗体は、「スルホ-タグ」がコンジュゲートしている二次抗体を用いて検出できた。スルホ-タグから発光された光を測定する最終工程においてマルチプレックスリーダー機器MESO QuickPlex SQ 120(Meso Scale Diagnostics、LLC)を使用する。分析のために、マルチプレックスアッセイには、表11に列挙されるような組換えタンパク質が含まれた。
【0830】
【0831】
SARS-CoV-2 S(B.1.1.7)は、相同体検査システムを反映しており、これは、ワクチン候補骨格BNT162b2(アルファ)が読み取りのために使用された使用された組換えタンパク質標的と同一であることを意味するが、SARS-CoV-2 S(BA.1)組換えタンパク質を用いて試験することは、異種試験システムを表す。同様に、SARS-CoV-2 S(BA.1+L452R)組換えタンパク質は、異種試験システムを表すが、BNT162b2(アルファ;L452R+E484Q)ワクチン候補ともう1つの同一アミノ酸を共有する。
【0832】
電気化学発光(ECL)シグナルを分析し、BNT162b2(アルファ)またはBNT162b2(アルファ;L452R+E484Q)のいずれかで免疫化したすべての動物は、緩衝液対照動物と比較して有意に高い強力な抗体結合力価を発生させた(
図12、表12;一元ANOVAを使用する群平均比較;テューキーの多重比較検定)。BNT162b2(アルファ;L452R+E484Q)での免疫化は、すべての試験された抗原に対するより高い力価につながったが、L452R+E484Q変異を含めることによって、抗体結合に関連する1つの同一の変異を共有するSARS-CoV-2 S(BA.1+L452R)抗原への有意により高い抗体結合が誘導された。注目すべきことに、全体として、BA.1 Sタンパク質バリアントに対する抗体の結合は、骨格ワクチン抗原として機能するB.1.1.7 Sタンパク質と比較して大幅に減少した。
【0833】
【0834】
まとめると、結果は、ウイルスサブタイプにおいて生じた変異を骨格構築物中に含めることが、対応するウイルス骨格と同等の免疫原性ワクチン構築物をもたらすことを実証した。含まれるアミノ酸に向けられた変異を含む抗原を試験することによって、抗体結合においてわずかな利点が示され、この指向性抗原設計アプローチの実現可能性が主張された。
【配列表】
【国際調査報告】