(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ヒトのミトコンドリアゲノムを標的とする操作されたメガヌクレアーゼ
(51)【国際特許分類】
C12N 15/55 20060101AFI20240416BHJP
C12N 9/16 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240416BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240416BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20240416BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20240416BHJP
A61K 47/66 20170101ALI20240416BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240416BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240416BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240416BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240416BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20240416BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240416BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240416BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240416BHJP
C12N 5/079 20100101ALN20240416BHJP
C12N 5/077 20100101ALN20240416BHJP
C12N 5/078 20100101ALN20240416BHJP
C12N 5/04 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
C12N15/55
C12N9/16 Z ZNA
C12N15/861 Z
C12N15/867 Z
C12N15/864 100Z
C12N7/01
C12N5/10
C12N15/88 Z
A61K38/46
A61K47/66
A61K35/76
A61P27/02
A61P25/00
A61P25/08
A61P3/10
A61P27/16
A61P25/02
A61K31/7088
C07K19/00
C12N5/079
C12N5/077
C12N5/078
C12N5/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564420
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 US2022025945
(87)【国際公開番号】W WO2022226303
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】508117721
【氏名又は名称】プレシジョン バイオサイエンシズ,インク.
(71)【出願人】
【識別番号】522247703
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ マイアミ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モラエス,カルロス ティー.
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ジェームス ジェファーソン
(72)【発明者】
【氏名】ジャンツ,デレック
(72)【発明者】
【氏名】トンバーリン,ジンジャー エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】モリス,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】シュープ,ウェンディ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA31
4B065CA44
4C076AA31
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC10
4C076CC21
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF34
4C076FF68
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA59
4C084DC22
4C084MA41
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA061
4C084ZA062
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4C084ZA332
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4C084ZA342
4C084ZC351
4C084ZC352
4C086AA01
4C086AA02
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4C086MA01
4C086MA04
4C086MA41
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA06
4C086ZA21
4C086ZA33
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4C086ZC35
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
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4C087ZA21
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4C087ZA34
4C087ZC35
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書では、ヒトミトコンドリアDNA(mtDNA)に存在する認識配列を認識および切断するように操作された組換えメガヌクレアーゼが開示される。本開示はさらに、遺伝子改変真核細胞を作製するための方法におけるミトコンドリア移行ペプチドと組み合わせたそのような組換えメガヌクレアーゼの使用、およびmtDNAが改変または編集されている遺伝子改変真核細胞の集団に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真核細胞のミトコンドリアゲノム内の認識配列に結合して切断するミトコンドリアを標的とした操作されたメガヌクレアーゼ(MTEM)であって、ミトコンドリア移行ペプチド(MTP)に結合した操作されたメガヌクレアーゼを含む、MTEM。
【請求項2】
前記操作されたメガヌクレアーゼが、第1のサブユニットおよび第2のサブユニットを含み、該第1のサブユニットが前記認識配列の第1の認識半部位に結合し、第1の超可変(HVR1)領域を含み、該第2のサブユニットが前記認識配列の第2の認識半部位に結合し、第2の超可変(HVR2)領域を含み、該第1のサブユニットおよび該第2のサブユニットがそれぞれ、配列番号1に示される配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のMTEM。
【請求項3】
前記第1のサブユニットおよび前記第2のサブユニットがそれぞれ、配列番号1の残基7~153と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1または請求項2のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項4】
前記操作されたメガヌクレアーゼが、配列番号2に示される配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項5】
前記認識配列が配列番号3を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項6】
前記HVR1領域が、配列番号4の残基215~270に対応するアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項7】
前記HVR1領域が、配列番号4の残基215、217、219、221、223、224、229、231、233、235、237、259、261、266および268に対応する1つ以上の残基を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項8】
前記HVR1領域が配列番号4の残基215~270を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項9】
前記第1のサブユニットが、配列番号4の残基198~344と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項10】
前記第1のサブユニットが、配列番号4の残基271に対応する残基を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項11】
前記第1のサブユニットが配列番号4の残基198~344を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項12】
前記HVR2領域が、配列番号4の残基24~79に対応するアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項13】
前記HVR2領域が、配列番号4の残基24、26、28、30、32、33、38、40、42、44、46、68、70、75、および77に対応する1つ以上の残基を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項14】
前記HVR2領域が、配列番号4の残基36に対応する残基を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項15】
前記HVR2領域が配列番号4の残基24~79を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項16】
前記第2のサブユニットが、配列番号4の残基7~153と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項17】
前記第2のサブユニットが配列番号4の残基7~153を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項18】
前記操作されたメガヌクレアーゼが、リンカーを含む単鎖メガヌクレアーゼであり、該リンカーが前記第1のサブユニットと前記第2のサブユニットとを共有結合する、請求項1から17のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項19】
前記操作されたメガヌクレアーゼが、配列番号4と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項20】
前記操作されたメガヌクレアーゼが配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項21】
前記操作されたメガヌクレアーゼが、配列番号5の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる、請求項1から20のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項22】
前記操作されたメガヌクレアーゼが、配列番号5の核酸配列によってコードされる、請求項1から21のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項23】
前記MTPが、配列番号6~8のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から22のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項24】
前記MTPが、配列番号6~8のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項1から23のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項25】
前記MTPが前記操作されたメガヌクレアーゼのC末端に結合している、請求項1から24のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項26】
前記MTPが前記操作されたメガヌクレアーゼのN末端に結合している、請求項1から24のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項27】
前記MTPが前記操作されたメガヌクレアーゼに融合している、請求項1から26のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項28】
前記MTPがポリペプチドリンカーによって前記操作されたメガヌクレアーゼに結合している、請求項1から26のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項29】
前記操作されたメガヌクレアーゼが、第1のMTPおよび第2のMTPに結合している、請求項1から24のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項30】
前記第1のMTPおよび/または前記第2のMTPが、配列番号6~8のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項29に記載のMTEM。
【請求項31】
前記第1のMTPおよび/または前記第2のMTPが、配列番号6~8のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項29または請求項30に記載のMTEM。
【請求項32】
前記第1のMTPおよび前記第2のMTPが同一である、請求項29から31のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項33】
前記第1のMTPおよび前記第2のMTPが同一ではない、請求項29から31のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項34】
前記第1のMTPおよび/または前記第2のMTPが前記操作されたメガヌクレアーゼに融合している、請求項29から33のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項35】
前記第1のMTPおよび/または前記第2のMTPが、ポリペプチドリンカーによって前記操作されたメガヌクレアーゼに結合している、請求項29から33のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項36】
前記MTEMが核外移行配列(NES)に結合している、請求項1から35のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項37】
前記NESが、配列番号9または10に示される配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から36のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項38】
前記NESが、配列番号9または10に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1から37のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項39】
前記NESが前記MTEMのN末端に結合している、請求項1から38のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項40】
前記NESが前記MTEMのC末端に結合している、請求項1から38のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項41】
前記NESが前記MTEMに融合している、請求項1から40のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項42】
前記NESがポリペプチドリンカーによって前記MTEMに結合している、請求項1から40のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項43】
前記MTEMが、第1のNESおよび第2のNESを含む、請求項1から36のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項44】
前記第1のNESが前記MTEMのN末端に結合し、前記第2のNESが前記MTEMのC末端に結合している、請求項43に記載のMTEM。
【請求項45】
前記第1のNESおよび/または前記第2のNESが、配列番号9または10に示される配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項43または請求項44に記載のMTEM。
【請求項46】
前記第1のNESおよび/または前記第2のNESが、配列番号9または10に示されるアミノ酸配列を含む、請求項43から45のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項47】
前記第1のNESおよび前記第2のNESが同一である、請求項43から46のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項48】
前記第1のNESおよび前記第2のNESが同一ではない、請求項43から46のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項49】
前記第1のNESおよび/または前記第2のNESが前記MTEMに融合している、請求項43から48のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項50】
前記第1のNESおよび/または前記第2のNESが前記MTEMに結合している、請求項43から48のいずれか一項に記載のMTEM。
【請求項51】
請求項1から50のいずれか一項に記載のMTEMをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項52】
前記ポリヌクレオチドがmRNAである、請求項51に記載のポリヌクレオチド。
【請求項53】
請求項1から50のいずれか一項に記載のMTEMをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む組換えDNA構築物。
【請求項54】
前記ポリヌクレオチドを含む組換えウイルスをコードする、請求項53に記載の組換えDNA構築物。
【請求項55】
前記組換えウイルスが、組換えアデノウイルス、組換えレンチウイルス、組換えレトロウイルス、または組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)である、請求項54に記載の組換えDNA構築物。
【請求項56】
前記組換えウイルスが組換えAAVである、請求項54または請求項55に記載の組換えDNA構築物。
【請求項57】
前記ポリヌクレオチドが、前記MTEMをコードする前記核酸配列に作動可能に連結されたプロモータを含む、請求項54から56のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【請求項58】
前記プロモータが構成的プロモータまたは組織特異的プロモータである、請求項57に記載の組換えDNA構築物。
【請求項59】
前記構成的プロモータが、CMVプロモータ、CAGプロモータ、EF1αプロモータもしくはUbCプロモータであり、または前記組織特異的プロモータが、ニューロン特異的プロモータ、アストロサイト特異的プロモータ、ミクログリア特異的プロモータ、筋肉特異的プロモータ、骨格筋特異的プロモータ、筋管特異的プロモータ、筋サテライト細胞特異的プロモータ、心筋細胞特異的プロモータ、眼特異的プロモータ、網膜特異的プロモータ、網膜神経節細胞特異的プロモータ、網膜色素上皮特異的プロモータ、白血球特異的プロモータ、前駆細胞特異的プロモータ、血液前駆細胞特異的プロモータ、膵臓特異的プロモータ、膵β細胞特異的プロモータ、内皮細胞特異的プロモータ、内耳毛細胞特異的プロモータ、骨髄細胞特異的プロモータもしくは腎臓特異的プロモータである、請求項58に記載の組換えDNA構築物。
【請求項60】
請求項1から50のいずれか一項に記載のMTEMをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む組換えウイルス。
【請求項61】
組換えアデノウイルス、組換えレンチウイルス、組換えレトロウイルス、または組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)である、請求項60に記載の組換えウイルス。
【請求項62】
組換えAAVである、請求項60または請求項61に記載の組換えウイルス。
【請求項63】
前記ポリヌクレオチドが、前記MTEMをコードする前記核酸配列に作動可能に連結されたプロモータを含む、請求項60から62のいずれか一項に記載の組換えウイルス。
【請求項64】
前記プロモータが構成的プロモータまたは組織特異的プロモータである、請求項63に記載の組換えウイルス。
【請求項65】
前記構成的プロモータが、CMVプロモータ、CAGプロモータ、EF1αプロモータもしくはUbCプロモータであり、または前記組織特異的プロモータが、ニューロン特異的プロモータ、アストロサイト特異的プロモータ、ミクログリア特異的プロモータ、筋肉特異的プロモータ、骨格筋特異的プロモータ、筋管特異的プロモータ、筋サテライト細胞特異的プロモータ、心筋細胞特異的プロモータ、眼特異的プロモータ、網膜特異的プロモータ、網膜神経節細胞特異的プロモータ、網膜色素上皮特異的プロモータ、白血球特異的プロモータ、前駆細胞特異的プロモータ、血液前駆細胞特異的プロモータ、膵臓特異的プロモータ、膵β細胞特異的プロモータ、内皮細胞特異的プロモータ、内耳毛細胞特異的プロモータ、骨髄細胞特異的プロモータもしくは腎臓特異的プロモータである、請求項64に記載の組換えウイルス。
【請求項66】
ポリヌクレオチドを含む脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子組成物であって、前記ポリヌクレオチドが、請求項1から50のいずれか一項に記載のMTEMをコードする核酸配列を含む、脂質ナノ粒子組成物。
【請求項67】
前記ポリヌクレオチドがmRNAである、請求項66に記載の脂質ナノ粒子組成物。
【請求項68】
薬学的に許容される担体と請求項1から50のいずれか一項に記載のMTEMとを含む医薬組成物。
【請求項69】
薬学的に許容される担体と請求項51または請求項52に記載のポリヌクレオチドとを含む医薬組成物。
【請求項70】
薬学的に許容される担体と、請求項53から59のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物とを含む医薬組成物。
【請求項71】
薬学的に許容される担体と請求項60から65のいずれか一項に記載の組換えウイルスとを含む医薬組成物。
【請求項72】
薬学的に許容される担体と請求項66または請求項67に記載の脂質ナノ粒子組成物とを含む医薬組成物。
【請求項73】
請求項51または請求項52に記載のポリヌクレオチドを含む、遺伝子改変真核細胞。
【請求項74】
前記遺伝子改変真核細胞が遺伝子改変哺乳動物細胞である、請求項73に記載の遺伝子改変真核細胞。
【請求項75】
前記遺伝子改変真核細胞が遺伝子改変ヒト細胞である、請求項73に記載の遺伝子改変真核細胞。
【請求項76】
前記遺伝子改変真核細胞が遺伝子改変植物細胞である、請求項73に記載の遺伝子改変真核細胞。
【請求項77】
遺伝子改変真核細胞を作製するための方法であって、真核細胞に、
(a)該真核細胞中で発現する請求項1から50のいずれか一項に記載のMTEMをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド、または
(b)該真核細胞のミトコンドリアゲノム中の前記認識配列に切断部位を生成する請求項1から50のいずれか一項に記載のMTEM
を導入することを含む、方法。
【請求項78】
前記切断部位が、前記認識配列が挿入または欠失を含むように非相同末端結合によって修復される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記認識配列を含む前記ミトコンドリアゲノムが、前記遺伝子改変真核細胞中で分解される、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記ミトコンドリアゲノムが突然変異ミトコンドリアゲノムである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムの約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%が前記遺伝子改変真核細胞中で分解される、請求項79または請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムに対する野生型ミトコンドリアゲノムの比が、前記遺伝子改変真核細胞中で増加する、請求項79から81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記比が、約5:95、約10:90、約15:85、約20:80、約25:75、約30:70、約35:65、約40:60、約45:55、約50:50、約55:45、約60:40、約65:35、約70:30、約75:25、約80:20、約85:15、約90:10、約95:5、約20:1、約50:1、約100:1、約150:1、約200:1、約250:1、約300:1、約350:1、約400:1、約450:1、約500:1、約550:1、約600:1、約650:1、約700:1、約750:1、約800:1、約850:1、約900:1、約950:1、約1000:1またはそれ以上まで増加する、請求項79から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記遺伝子改変真核細胞中の野生型ミトコンドリアゲノムの割合が、前記遺伝子改変真核細胞中の全ミトコンドリアゲノムの約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上である、請求項79から83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記遺伝子改変真核細胞における前記認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムの割合が、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上減少する、請求項79から84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記遺伝子改変真核細胞における細胞呼吸が、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%またはそれ以上増加する、請求項79から85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記遺伝子改変真核細胞における細胞呼吸が、約30~40%、約40~50%、約50~60%、約60~70%、約70~80%、約80~90%、約90~100%またはそれ以上増加する、請求項79から86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
複数の遺伝子改変細胞を含む真核細胞の集団を作製する方法であって、前記集団中の複数の真核細胞に、(a)前記複数の真核細胞中で発現する請求項1から50のいずれか一項に記載のMTEMをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド、または(b)前記複数の真核細胞のミトコンドリアゲノム中の前記認識配列に切断部位を生成する請求項1から50のいずれか一項に記載のMTEMを導入することを含む、方法。
【請求項89】
前記切断部位が、前記認識配列が挿入または欠失を含むように非相同末端結合によって修復される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記認識配列を含む前記ミトコンドリアゲノムが、前記複数の遺伝子改変真核細胞中で分解される、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記ミトコンドリアゲノムが突然変異ミトコンドリアゲノムである、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムの約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%が前記複数の遺伝子改変真核細胞中で分解される、請求項90または請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムに対する野生型ミトコンドリアゲノムの比が、前記複数の遺伝子改変真核細胞中で増加する、請求項90から92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムに対する野生型ミトコンドリアゲノムの比が、前記真核細胞の集団において増加する、請求項90から93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記比が、約5:95、約10:90、約15:85、約20:80、約25:75、約30:70、約35:65、約40:60、約45:55、約50:50、約55:45、約60:40、約65:35、約70:30、約75:25、約80:20、約85:15、約90:10、約95:5、約20:1、約50:1、約100:1、約150:1、約200:1、約250:1、約300:1、約350:1、約400:1、約450:1、約500:1、約550:1、約600:1、約650:1、約700:1、約750:1、約800:1、約850:1、約900:1、約950:1、約1000:1またはそれ以上まで増加する、請求項90から94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記複数の遺伝子改変真核細胞中の野生型ミトコンドリアゲノムの割合が、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上増加する、請求項90から95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記真核細胞の集団中の野生型ミトコンドリアゲノムの割合が、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上増加する、請求項90から96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記複数の遺伝子改変真核細胞における前記認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムの割合が、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上減少する、請求項90から97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記真核細胞の集団中の前記認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムの割合が、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上減少する、請求項90から98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記複数の遺伝子改変真核細胞における細胞呼吸が、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%またはそれ以上増加する、請求項90から99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記複数の遺伝子改変真核細胞における細胞呼吸が、約30~40%、約40~50%、約50~60%、約60~70%、約70~80%、約80~90%、約90~100%またはそれ以上増加する、請求項90から100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記真核細胞の集団における細胞呼吸が、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%またはそれ以上増加する、請求項90から101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
前記真核細胞の集団における細胞呼吸が、約30~40%、約40~50%、約50~60%、約60~70%、約70~80%、約80~90%、約90~100%またはそれ以上増加する、請求項90から102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記方法がインビボで行われる、請求項77から103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
前記方法がインビトロで行われる、請求項77から103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
前記ポリヌクレオチドがmRNAである、請求項77から105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
前記ポリヌクレオチドが請求項52に記載のmRNAである、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記ポリヌクレオチドが組換えDNA構築物である、請求項77から105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
前記ポリヌクレオチドが請求項53から59のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物である、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記ポリヌクレオチドが、脂質ナノ粒子によって前記真核細胞に導入される、請求項77から105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
前記ポリヌクレオチドが組換えウイルスによって前記真核細胞に導入される、請求項77から105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
前記組換えウイルスが、請求項60から65のいずれか一項に記載の組換えウイルスである、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記組換えウイルスが組換えAAVである、請求項111または請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記ポリヌクレオチドが、前記MTEMをコードする前記核酸配列に作動可能に連結されたプロモータを含む、請求項77から113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
前記プロモータが構成的プロモータまたは組織特異的プロモータである、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記構成的プロモータが、CMVプロモータ、CAGプロモータ、EF1αプロモータもしくはUbCプロモータであり、または前記組織特異的プロモータが、ニューロン特異的プロモータ、アストロサイト特異的プロモータ、ミクログリア特異的プロモータ、筋肉特異的プロモータ、骨格筋特異的プロモータ、筋管特異的プロモータ、筋サテライト細胞特異的プロモータ、心筋細胞特異的プロモータ、眼特異的プロモータ、網膜特異的プロモータ、網膜神経節細胞特異的プロモータ、網膜色素上皮特異的プロモータ、白血球特異的プロモータ、前駆細胞特異的プロモータ、血液前駆細胞特異的プロモータ、膵臓特異的プロモータ、膵β細胞特異的プロモータ、内皮細胞特異的プロモータ、内耳毛細胞特異的プロモータ、骨髄細胞特異的プロモータもしくは腎臓特異的プロモータである、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記真核細胞が哺乳動物細胞である、請求項77から116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項118】
前記真核細胞がヒト細胞である、請求項77から117のいずれか一項に記載の方法。
【請求項119】
前記真核細胞が、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、筋細胞、骨格筋細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、心筋細胞、眼の細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、白血球、前駆細胞、血液前駆細胞、膵臓細胞、膵臓β細胞、内皮細胞、内耳毛細胞、骨髄細胞、または腎臓細胞である、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記真核細胞が植物細胞である、請求項77から116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項121】
請求項77から120のいずれか一項に記載の方法によって作製される、遺伝子改変真核細胞または遺伝子改変真核細胞の集団。
【請求項122】
対象の標的細胞または対象の標的細胞の集団の突然変異ミトコンドリアゲノムを分解する方法であって、該標的細胞または該標的細胞の集団に、
(a)該標的細胞または該標的細胞の集団中で発現する請求項1から50のいずれか一項に記載のMTEMをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド、または
(b)請求項1から50のいずれか一項に記載のMTEM
を送達することを含み、
該MTEMが認識配列において該突然変異ミトコンドリアゲノムに切断部位を生成し、該突然変異ミトコンドリアゲノムが分解される、方法。
【請求項123】
前記対象が哺乳動物である、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
前記対象がヒトである、請求項122または請求項123に記載の方法。
【請求項125】
前記標的細胞が、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、筋細胞、骨格筋細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、心筋細胞、眼の細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、白血球、前駆細胞、血液前駆細胞、膵臓細胞、膵臓β細胞、内皮細胞、内耳毛細胞、もしくは腎臓細胞であり、または前記標的細胞の集団が、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、筋細胞、骨格筋細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、心筋細胞、眼の細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、白血球、前駆細胞、血球前駆細胞、膵臓細胞、膵臓β細胞、内皮細胞、内耳毛細胞、もしくは腎臓細胞の集団である、請求項122から124のいずれか一項に記載の方法。
【請求項126】
前記ポリヌクレオチドがmRNAである、請求項122から125のいずれか一項に記載の方法。
【請求項127】
前記ポリヌクレオチドが請求項52に記載のmRNAである、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記ポリヌクレオチドが組換えDNA構築物である、請求項122から125のいずれか一項に記載の方法。
【請求項129】
前記ポリヌクレオチドが請求項53から59のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物である、請求項128に記載の方法。
【請求項130】
前記ポリヌクレオチドが、脂質ナノ粒子によって前記標的細胞または前記標的細胞の集団に送達される、請求項122から125のいずれか一項に記載の方法。
【請求項131】
前記ポリヌクレオチドが、組換えウイルスによって前記標的細胞または前記標的細胞の集団に送達される、請求項122から125のいずれか一項に記載の方法。
【請求項132】
前記組換えウイルスが、請求項60から65のいずれか一項に記載の組換えウイルスである、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
前記組換えウイルスが組換えAAVである、請求項130または請求項131に記載の方法。
【請求項134】
前記ポリヌクレオチドが、前記MTEMをコードする前記核酸配列に作動可能に連結されたプロモータを含む、請求項122から133のいずれか一項に記載の方法。
【請求項135】
前記プロモータが構成的プロモータまたは組織特異的プロモータである、請求項134に記載の方法。
【請求項136】
前記構成的プロモータが、CMVプロモータ、CAGプロモータ、EF1αプロモータもしくはUbCプロモータであり、または前記組織特異的プロモータが、ニューロン特異的プロモータ、アストロサイト特異的プロモータ、ミクログリア特異的プロモータ、筋肉特異的プロモータ、骨格筋特異的プロモータ、筋管特異的プロモータ、筋サテライト細胞特異的プロモータ、心筋細胞特異的プロモータ、眼特異的プロモータ、網膜特異的プロモータ、網膜神経節細胞特異的プロモータ、網膜色素上皮特異的プロモータ、白血球特異的プロモータ、前駆細胞特異的プロモータ、血液前駆細胞特異的プロモータ、膵臓特異的プロモータ、膵β細胞特異的プロモータ、内皮細胞特異的プロモータ、内耳毛細胞特異的プロモータ、骨髄細胞特異的プロモータもしくは腎臓特異的プロモータである、請求項135に記載の方法。
【請求項137】
前記認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムの約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%が、前記標的細胞または前記標的細胞の集団中で分解される、請求項122から136のいずれか一項に記載の方法。
【請求項138】
前記認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムに対する野生型ミトコンドリアゲノムの比が、前記標的細胞または前記標的細胞の集団において増加する、請求項122から137のいずれか一項に記載の方法。
【請求項139】
前記比が、約5:95、約10:90、約15:85、約20:80、約25:75、約30:70、約35:65、約40:60、約45:55、約50:50、約55:45、約60:40、約65:35、約70:30、約75:25、約80:20、約85:15、約90:10、約95:5、約20:1、約50:1、約100:1、約150:1、約200:1、約250:1、約300:1、約350:1、約400:1、約450:1、約500:1、約550:1、約600:1、約650:1、約700:1、約750:1、約800:1、約850:1、約900:1、約950:1、約1000:1またはそれ以上まで増加する、請求項122から138のいずれか一項に記載の方法。
【請求項140】
前記標的細胞または前記標的細胞の集団中の野生型ミトコンドリアゲノムの割合が、前記標的細胞または前記標的細胞の集団中の全ミトコンドリアゲノムの約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上である、請求項122から139のいずれか一項に記載の方法。
【請求項141】
前記遺伝子改変真核細胞における前記認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムの割合が、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上減少する、請求項122から140のいずれか一項に記載の方法。
【請求項142】
前記標的細胞または前記標的細胞の集団における細胞呼吸が、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%またはそれ以上増加する、請求項122から141のいずれか一項に記載の方法。
【請求項143】
前記標的細胞または前記標的細胞の集団における細胞呼吸が、約30~40%、約40~50%、約50~60%、約60~70%、約70~80%、約80~90%、約90~100%またはそれ以上増加する、請求項122から142のいずれか一項に記載の方法。
【請求項144】
対象のミトコンドリア障害に関連する状態を処置する方法であって、該対象に、
(a)治療有効量の、対象の標的細胞または標的細胞の集団に送達される、該標的細胞または該標的細胞の集団で発現する請求項1から50のいずれか一項に記載のMTEMをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド、または
(b)該対象の標的細胞もしくは標的細胞の集団に送達される、治療有効量の請求項1から50のいずれか一項に記載のMTEM
を投与することを含み、
該MTEMが認識配列において突然変異ミトコンドリアゲノムに切断部位を生成し、該突然変異ミトコンドリアゲノムが分解される、方法。
【請求項145】
請求項68から72のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することを含む、請求項144に記載の方法。
【請求項146】
前記対象が哺乳動物である、請求項144または請求項145に記載の方法。
【請求項147】
前記対象がヒトである、請求項144から146のいずれか一項に記載の方法。
【請求項148】
前記標的細胞が、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、筋細胞、骨格筋細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、心筋細胞、眼の細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、白血球、前駆細胞、血液前駆細胞、膵臓細胞、膵臓β細胞、内皮細胞、内耳毛細胞、もしくは腎臓細胞であり、または前記標的細胞の集団が、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、筋細胞、骨格筋細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、心筋細胞、眼の細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、白血球、前駆細胞、血球前駆細胞、膵臓細胞、膵臓β細胞、内皮細胞、内耳毛細胞、もしくは腎臓細胞の集団である、請求項144から147のいずれか一項に記載の方法。
【請求項149】
前記状態が、筋肉、心臓、中枢神経系、眼、骨髄、腎臓、膵臓、白血球、血管または内耳の状態である、請求項144から148のいずれか一項に記載の方法。
【請求項150】
前記状態が、ピアソン症候群、進行性外眼筋麻痺、カーンズ・セイアー症候群(KSS)、赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌス癲癇(MERRF)、神経障害、運動失調、網膜色素変性(NARP)、レーベル遺伝性視神経症(LHON)、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、母遺伝性リー症候群(MILS)、母遺伝性糖尿病および難聴(MIDD)、または重複症状を伴うミトコンドリア障害である、請求項144から149のいずれか一項に記載の方法。
【請求項151】
前記ポリヌクレオチドがmRNAである、請求項144から150のいずれか一項に記載の方法。
【請求項152】
前記ポリヌクレオチドが請求項52に記載のmRNAである、請求項151に記載の方法。
【請求項153】
前記ポリヌクレオチドが組換えDNA構築物である、請求項144から150のいずれか一項に記載の方法。
【請求項154】
前記ポリヌクレオチドが請求項53から59のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物である、請求項153に記載の方法。
【請求項155】
前記ポリヌクレオチドが、脂質ナノ粒子によって前記標的細胞または前記標的細胞の集団に送達される、請求項144から150のいずれか一項に記載の方法。
【請求項156】
前記ポリヌクレオチドが、組換えウイルスによって前記標的細胞または前記標的細胞の集団に送達される、請求項144から150のいずれか一項に記載の方法。
【請求項157】
前記組換えウイルスが、請求項60から65のいずれか一項に記載の組換えウイルスである、請求項156に記載の方法。
【請求項158】
前記組換えウイルスが組換えAAVである、請求項156または請求項157に記載の方法。
【請求項159】
前記ポリヌクレオチドが、前記MTEMをコードする前記核酸配列に作動可能に連結されたプロモータを含む、請求項144から158のいずれか一項に記載の方法。
【請求項160】
前記プロモータが組織特異的プロモータである、請求項159に記載の方法。
【請求項161】
前記認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムの約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%が、前記標的細胞または前記標的細胞の集団中で分解される、請求項144から160のいずれか一項に記載の方法。
【請求項162】
前記認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムに対する野生型ミトコンドリアゲノムの比が、前記標的細胞または前記標的細胞の集団において増加する、請求項144から161のいずれか一項に記載の方法。
【請求項163】
前記比が、約5:95、約10:90、約15:85、約20:80、約25:75、約30:70、約35:65、約40:60、約45:55、約50:50、約55:45、約60:40、約65:35、約70:30、約75:25、約80:20、約85:15、約90:10、約95:5、約20:1、約50:1、約100:1、約150:1、約200:1、約250:1、約300:1、約350:1、約400:1、約450:1、約500:1、約550:1、約600:1、約650:1、約700:1、約750:1、約800:1、約850:1、約900:1、約950:1、約1000:1またはそれ以上まで増加する、請求項144から162のいずれか一項に記載の方法。
【請求項164】
前記標的細胞または前記標的細胞の集団中の野生型ミトコンドリアゲノムの割合が、前記標的細胞または前記標的細胞の集団中の全ミトコンドリアゲノムの約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上である、請求項144から163のいずれか一項に記載の方法。
【請求項165】
前記遺伝子改変真核細胞における前記認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムの割合が、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上減少する、請求項144から164のいずれか一項に記載の方法。
【請求項166】
前記標的細胞または前記標的細胞の集団における細胞呼吸が、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%またはそれ以上増加する、請求項144から165のいずれか一項に記載の方法。
【請求項167】
前記標的細胞または前記標的細胞の集団における細胞呼吸が、約30~40%、約40~50%、約50~60%、約60~70%、約70~80%、約80~90%、約90~100%またはそれ以上増加する、請求項144から166のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分子生物学および組換え核酸技術の分野に関する。特に、本開示は、ヒトミトコンドリアゲノムに見出される認識配列を認識および切断するように操作された組換えメガヌクレアーゼに関する。本開示はさらに、遺伝子改変真核細胞を作製するための方法におけるそのような組換えメガヌクレアーゼの使用、およびミトコンドリアDNAが改変されている遺伝子改変真核細胞の集団に関する。
【0002】
EFS-WEBを介してテキストファイルとして提出された配列表の参照
本出願は、EFS-Webを介してASCII形式で提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2022年4月21日に作成されたASCIIコピーの名称はP89339_0137_9_SeqList_4-21-22.txtであり、サイズは20.0kbである。
【背景技術】
【0003】
すべての生物において、ミトコンドリアは、正常な成長および発達の下で、ならびにストレスに応答して、細胞のエネルギーおよび代謝を調節する。これらの役割で機能するタンパク質の多くは、ミトコンドリアゲノムにコードされている。したがって、ミトコンドリアゲノムの編集は、動物および植物の両方において多様な用途を有する。ヒトにおいて、有害なミトコンドリア突然変異は、遺伝子編集療法を適用することができるいくつかの障害の原因である。
【0004】
病原性ミトコンドリアDNA(mtDNA)突然変異には、タンパク質コード、トランスファーRNA(tRNA)またはリボソームRNA(rRNA)遺伝子における大規模再編成および点突然変異が含まれる。mtDNA関連疾患診断の有病率は5,000人に約1人であるが、10の最も一般的な病原性mtDNA突然変異の集団頻度ははるかに高く、200人に1人に近く、多くの「正常な」個体が低レベルの突然変異ゲノムを保有していることを意味する(非特許文献1)。
【0005】
突然変異mtDNAは、ほとんどの場合、患者の細胞中で野生型mtDNAと共存する(mtDNAヘテロプラスミー)。いくつかの研究は、野生型mtDNAが強い保護効果を有することを示し、突然変異mtDNAのレベルが80~90%より高い場合にのみ生化学的異常が観察された(非特許文献1)。突然変異負荷が80%を超える場合にのみ筋線維がOXPHOS欠陥を発症することが示されている(非特許文献2)。したがって、このバランスを野生型に向かってわずかな割合でもシフトさせることができる任意のアプローチは、強い治療可能性を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Schonら、Nat Rev Gen 13:878-890(2012)
【非特許文献2】Sciaccoら、Hum Mol Genet、3:13-19(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、mtDNA操作は、mtDNAを高効率で標的化し、正確な編集を生成することができないため、依然としてあまり研究されていない科学領域である。ミトコンドリアゲノムは、予測可能な修復機構およびこの細胞小器官への編集技術の送達を必要とするため、編集が困難である。ミトコンドリアゲノム編集に関連する困難さおよび予測不可能性を考慮すると、mtDNAの正確な編集に対する満たされていない必要性があり、これは、生命科学における調査および機会の分野全体を切り開くであろう。ミトコンドリアゲノムの定義された領域(好ましくはただ1つの遺伝子に限定される)をより予測可能な様式で標的化および編集する能力は、現在利用可能なシステムを超える明らかな利点であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ミトコンドリアゲノムの正確な編集のための組成物および方法が本明細書で提供される。これまで、ミトコンドリアゲノム編集における他のすべての試みは、大規模かつ予測不可能な欠失/再編成をもたらした。本発明は、ホーミングエンドヌクレアーゼがミトコンドリアDNA(mtDNA)の正確な編集を可能にすることを初めて実証し、それにより、生命科学における調査および機会の分野全体を切り開く。本明細書で提供される組成物および方法は、周囲領域に影響を与えることなく、1つの特定のミトコンドリア遺伝子を編集するために使用することができる。
【0009】
一態様では、本発明は、真核細胞のミトコンドリアゲノム内の認識配列に結合して切断するミトコンドリアを標的とした操作されたメガヌクレアーゼ(MTEM)であって、ミトコンドリア移行ペプチド(MTP)に結合した操作されたメガヌクレアーゼを含むMTEMを提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは、第1のサブユニットおよび第2のサブユニットを含み、第1のサブユニットは認識配列の第1の認識半部位(half-site)に結合し、第1の超可変(HVR1)領域を含み、第2のサブユニットは認識配列の第2の認識半部位に結合し、第2の超可変(HVR2)領域を含み、第1のサブユニットおよび第2のサブユニットはそれぞれ、配列番号1に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のサブユニットおよび第2のサブユニットはそれぞれ、配列番号1の残基7~153と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは、配列番号2に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、認識配列は配列番号3を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、HVR1領域は、配列番号4の残基215~270に対応するアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、HVR1領域は、配列番号4の残基215、217、219、221、223、224、229、231、233、235、237、259、261、266および268に対応する1つ以上の残基を含む。いくつかの実施形態では、HVR1領域は、配列番号4の残基215、217、219、221、223、224、229、231、233、235、237、259、261、266および268に対応する残基を含む。いくつかの実施形態では、HVR1領域は、配列番号4の残基257に対応する残基にY、R、KまたはDを含む。いくつかの実施形態では、HVR1領域は、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11個のアミノ酸置換を有する配列番号4の残基215~270を含む。いくつかの実施形態では、HVR1領域は、配列番号4の残基215~270を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、第1のサブユニットは、配列番号4の残基198~344と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のサブユニットは、配列番号4の残基271に対応する残基を含む。いくつかの実施形態では、第1のサブユニットは、配列番号4の残基210に対応する残基にG、SまたはAを含む。いくつかの実施形態では、第1のサブユニットは、配列番号4の残基271に対応する残基にE、QまたはKを含む。いくつかの実施形態では、第1のサブユニットは、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個のアミノ酸置換を有する配列番号4の残基198~344を含む。いくつかの実施形態では、第1のサブユニットは、配列番号4の残基198~344を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、HVR2領域は、配列番号4の残基24~79に対応するアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、HVR2領域は、配列番号4の残基24、26、28、30、32、33、38、40、42、44、46、68、70、75、および77に対応する1つ以上の残基を含む。いくつかの実施形態では、HVR2領域は、配列番号4の残基24、26、28、30、32、33、38、40、42、44、46、68、70、75、および77に対応する残基を含む。いくつかの実施形態では、HVR2領域は、配列番号4の残基36に対応する残基を含む。いくつかの実施形態では、HVR2領域は、配列番号4の残基66に対応する残基にY、R、KまたはDを含む。いくつかの実施形態では、HVR2領域は、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11個のアミノ酸置換を有する配列番号4の残基24~79を含む。いくつかの実施形態では、HVR2領域は、配列番号4の残基24~79を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、第2のサブユニットは、配列番号4の残基7~153と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のサブユニットは、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個のアミノ酸置換を有する配列番号4の残基7~153を含む。いくつかの実施形態では、第2のサブユニットは、配列番号4の残基19に対応する残基にG、SまたはAを含む。いくつかの実施形態では、第2のサブユニットは、配列番号4の残基80に対応する残基にE、QまたはKを含む。いくつかの実施形態では、第2のサブユニットは、配列番号4の残基7~153を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは、リンカーを含む単鎖メガヌクレアーゼであり、リンカーは第1のサブユニットと第2のサブユニットとを共有結合する。いくつかの実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは、配列番号4と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは、配列番号5の核酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは、配列番号5の核酸配列によってコードされる。
【0018】
いくつかの実施形態では、MTPは、配列番号6~8のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、MTPは、配列番号6~8のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、MTPは、操作されたメガヌクレアーゼのC末端に結合している。いくつかの実施形態では、MTPは、操作されたメガヌクレアーゼのN末端に結合している。いくつかの実施形態では、MTPは、操作されたメガヌクレアーゼに融合している。いくつかの実施形態では、MTPは、ポリペプチドリンカーによって操作されたメガヌクレアーゼに結合している。いくつかの実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは、第1のMTPおよび第2のMTPに結合している。いくつかの実施形態では、第1のMTPおよび/または第2のMTPは、配列番号6~8のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のMTPおよび/または第2のMTPは、配列番号6~8のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のMTPおよび第2のMTPは同一である。いくつかの実施形態では、第1のMTPおよび第2のMTPは同一ではない。いくつかの実施形態では、第1のMTPおよび/または第2のMTPは、操作されたメガヌクレアーゼに融合している。いくつかの実施形態では、第1のMTPおよび/または第2のMTPは、ポリペプチドリンカーによって操作されたメガヌクレアーゼに結合している。
【0019】
いくつかの実施形態では、MTEMは、核外移行配列(NES)に結合している。いくつかの実施形態では、NESは、配列番号9または10に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、NESは、配列番号9または10に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、NESは、MTEMのN末端に結合している。いくつかの実施形態では、NESは、MTEMのC末端に結合している。いくつかの実施形態では、NESはMTEMに融合している。いくつかの実施形態では、NESは、ポリペプチドリンカーによってMTEMに結合している。いくつかの実施形態では、MTEMは、第1のNESおよび第2のNESを含む。いくつかの実施形態では、第1のNESはMTEMのN末端に結合し、第2のNESはMTEMのC末端に結合している。いくつかの実施形態では、第1のNESおよび/または第2のNESは、配列番号9または10に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のNESおよび/または第2のNESは、配列番号9または10に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のNESおよび第2のNESは同一である。いくつかの実施形態では、第1のNESおよび第2のNESは同一ではない。いくつかの実施形態では、第1のNESおよび/または第2のNESは、MTEMに融合している。いくつかの実施形態では、第1のNESおよび/または第2のNESは、MTEMに結合している。いくつかの実施形態では、第1のNESおよび/または第2のNESは、MTEMに結合している。
【0020】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のMTEMをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはmRNAである。
【0021】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のMTEMをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む組換えDNA構築物を提供する。いくつかの実施形態では、組換えDNA構築物は、ポリヌクレオチドを含む組換えウイルスをコードする。いくつかの実施形態では、組換えウイルスは、組換えアデノウイルス、組換えレンチウイルス、組換えレトロウイルス、または組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスは組換えAAVである。いくつかの実施形態では、組換えAAVは、AAV2、AAV9、またはAAVHSCカプシドを有する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、MTEMをコードする核酸配列に作動可能に連結されたプロモータを含む。いくつかの実施形態では、プロモータは構成的プロモータまたは組織特異的プロモータである。いくつかの実施形態では、構成的プロモータはCMVプロモータ、CAGプロモータ、EF1αプロモータもしくはUbCプロモータであり、または組織特異的プロモータはニューロン特異的プロモータ、アストロサイト特異的プロモータ、ミクログリア特異的プロモータ、筋肉特異的プロモータ、骨格筋特異的プロモータ、筋管特異的プロモータ、筋サテライト細胞特異的プロモータ、心筋細胞特異的プロモータ、眼特異的プロモータ、網膜特異的プロモータ、網膜神経節細胞特異的プロモータ、網膜色素上皮特異的プロモータ、白血球特異的プロモータ、前駆細胞特異的プロモータ、血液前駆細胞特異的プロモータ、膵臓特異的プロモータ、膵β細胞特異的プロモータ、内皮細胞特異的プロモータ、内耳毛細胞特異的プロモータ、骨髄細胞特異的プロモータもしくは腎臓特異的プロモータである。
【0022】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の組換えDNAを含むプラスミドを提供する。
【0023】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のMTEMをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む組換えウイルスを提供する。いくつかの実施形態では、組換えウイルスは、組換えアデノウイルス、組換えレンチウイルス、組換えレトロウイルス、または組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスは組換えAAVである。いくつかの実施形態では、組換えAAVは、AAV2、AAV9、またはAAVHSCカプシドを有する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、MTEMをコードする核酸配列に作動可能に連結されたプロモータを含む。いくつかの実施形態では、プロモータは構成的プロモータまたは組織特異的プロモータである。いくつかの実施形態では、構成的プロモータはCMVプロモータ、CAGプロモータ、EF1αプロモータもしくはUbCプロモータであり、または組織特異的プロモータはニューロン特異的プロモータ、アストロサイト特異的プロモータ、ミクログリア特異的プロモータ、筋肉特異的プロモータ、骨格筋特異的プロモータ、筋管特異的プロモータ、筋サテライト細胞特異的プロモータ、心筋細胞特異的プロモータ、眼特異的プロモータ、網膜特異的プロモータ、網膜神経節細胞特異的プロモータ、網膜色素上皮特異的プロモータ、白血球特異的プロモータ、前駆細胞特異的プロモータ、血液前駆細胞特異的プロモータ、膵臓特異的プロモータ、膵β細胞特異的プロモータ、内皮細胞特異的プロモータ、内耳毛細胞特異的プロモータ、骨髄細胞特異的プロモータもしくは腎臓特異的プロモータである。
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のMTEMをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子組成物を提供する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはmRNAである。
【0024】
別の態様では、本発明は、薬学的に許容される担体と本明細書に記載のMTEMとを含む医薬組成物を提供する。
【0025】
別の態様では、本発明は、薬学的に許容される担体と本明細書に記載の任意のポリヌクレオチドとを含む医薬組成物を提供する。
【0026】
別の態様では、本発明は、薬学的に許容される担体と本明細書に記載の任意の組換えDNA構築物とを含む医薬組成物を提供する。
【0027】
別の態様では、本発明は、薬学的に許容される担体と本明細書に記載の任意の組換えウイルスとを含む医薬組成物を提供する。
【0028】
別の態様では、本発明は、薬学的に許容される担体と本明細書に記載の任意の脂質ナノ粒子組成物とを含む医薬組成物を提供する。
【0029】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の任意のポリヌクレオチドを含む遺伝子改変真核細胞を提供する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変真核細胞は遺伝子改変哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変真核細胞は遺伝子改変ヒト細胞である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変真核細胞は遺伝子改変植物細胞である。
【0030】
別の態様では、本発明は、遺伝子改変真核細胞を作製する方法であって、真核細胞に、(a)真核細胞中で発現する本明細書に記載のMTEMをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド、または(b)真核細胞のミトコンドリアゲノム中の認識配列に切断部位を生成する本明細書に記載のMTEMを導入することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、切断部位は、認識配列が挿入または欠失を含むように非相同末端結合によって修復される。いくつかの実施形態では、認識配列を含むミトコンドリアゲノムは、遺伝子改変真核細胞中で分解される。いくつかの実施形態では、ミトコンドリアゲノムは突然変異ミトコンドリアゲノムである。いくつかの実施形態では、認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムの約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%が遺伝子改変真核細胞中で分解される。いくつかの実施形態では、認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムに対する野生型ミトコンドリアゲノムの比は、遺伝子改変真核細胞で増加する。いくつかの実施形態では、比は、約5:95、約10:90、約15:85、約20:80、約25:75、約30:70、約35:65、約40:60、約45:55、約50:50、約55:45、約60:40、約65:35、約70:30、約75:25、約80:20、約85:15、約90:10、約95:5、約20:1、約50:1、約100:1、約150:1、約200:1、約250:1、約300:1、約350:1、約400:1、約450:1、約500:1、約550:1、約600:1、約650:1、約700:1、約750:1、約800:1、約850:1、約900:1、約950:1、約1000:1またはそれ以上まで増加する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変真核細胞中の野生型ミトコンドリアゲノムの割合は、遺伝子改変真核細胞中の全ミトコンドリアゲノムの約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変真核細胞中の認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムの割合は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上減少する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変真核細胞における細胞呼吸は、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%またはそれ以上増加する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変真核細胞における細胞呼吸は、約30~40%、約40~50%、約50~60%、約60~70%、約70~80%、約80~90%、約90~100%またはそれ以上増加する。
【0031】
別の態様では、本発明は、複数の遺伝子改変細胞を含む真核細胞の集団を作製する方法であって、集団中の複数の真核細胞に、(a)複数の真核細胞中で発現する本明細書に記載のMTEMをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド、または(b)複数の真核細胞のミトコンドリアゲノム中の認識配列に切断部位を生成する本明細書に記載のMTEMを導入することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、切断部位は、認識配列が挿入または欠失を含むように非相同末端結合によって修復される。いくつかの実施形態では、認識配列を含むミトコンドリアゲノムは、複数の遺伝子改変真核細胞中で分解される。いくつかの実施形態では、ミトコンドリアゲノムは突然変異ミトコンドリアゲノムである。いくつかの実施形態では、認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムの約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%が、複数の遺伝子改変真核細胞中で分解される。いくつかの実施形態では、認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムに対する野生型ミトコンドリアゲノムの比は、複数の遺伝子改変真核細胞で増加する。いくつかの実施形態では、認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムに対する野生型ミトコンドリアゲノムの比は、真核細胞の集団で増加する。いくつかの実施形態では、比は、約5:95、約10:90、約15:85、約20:80、約25:75、約30:70、約35:65、約40:60、約45:55、約50:50、約55:45、約60:40、約65:35、約70:30、約75:25、約80:20、約85:15、約90:10、約95:5、約20:1、約50:1、約100:1、約150:1、約200:1、約250:1、約300:1、約350:1、約400:1、約450:1、約500:1、約550:1、約600:1、約650:1、約700:1、約750:1、約800:1、約850:1、約900:1、約950:1、約1000:1またはそれ以上まで増加する。いくつかの実施形態では、複数の遺伝子改変真核細胞中の野生型ミトコンドリアゲノムの割合は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上増加する。いくつかの実施形態では、真核細胞の集団中の野生型ミトコンドリアゲノムの割合は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上増加する。いくつかの実施形態では、複数の遺伝子改変真核細胞中の認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムの割合は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上減少する。いくつかの実施形態では、真核細胞の集団中の認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムの割合は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上減少する。いくつかの実施形態では、複数の遺伝子改変真核細胞における細胞呼吸は、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%またはそれ以上増加する。いくつかの実施形態では、複数の遺伝子改変真核細胞における細胞呼吸は、約30~40%、約40~50%、約50~60%、約60~70%、約70~80%、約80~90%、約90~100%またはそれ以上増加する。いくつかの実施形態では、真核細胞の集団における細胞呼吸は、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%またはそれ以上増加する。いくつかの実施形態では、真核細胞の集団における細胞呼吸は、約30~40%、約40~50%、約50~60%、約60~70%、約70~80%、約80~90%、約90~100%またはそれ以上増加する。
【0032】
いくつかの実施形態では、方法はインビボで行われる。いくつかの実施形態では、方法はインビトロで行われる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはmRNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の任意のmRNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは組換えDNA構築物である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の任意の組換えDNA構築物である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、脂質ナノ粒子によって真核細胞に導入される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、組換えウイルスによって真核細胞に導入される。いくつかの実施形態では、組換えウイルスは、本明細書に記載の任意の組換えウイルスである。いくつかの実施形態では、組換えウイルスは組換えAAVである。いくつかの実施形態では、組換えAAVは、AAV2、AAV9、またはAAVHSCカプシドを有する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、MTEMをコードする核酸配列に作動可能に連結されたプロモータを含む。いくつかの実施形態では、プロモータは構成的プロモータまたは組織特異的プロモータである。いくつかの実施形態では、構成的プロモータはCMVプロモータ、CAGプロモータ、EF1αプロモータもしくはUbCプロモータであり、または組織特異的プロモータはニューロン特異的プロモータ、アストロサイト特異的プロモータ、ミクログリア特異的プロモータ、筋肉特異的プロモータ、骨格筋特異的プロモータ、筋管特異的プロモータ、筋サテライト細胞特異的プロモータ、心筋細胞特異的プロモータ、眼特異的プロモータ、網膜特異的プロモータ、網膜神経節細胞特異的プロモータ、網膜色素上皮特異的プロモータ、白血球特異的プロモータ、前駆細胞特異的プロモータ、血液前駆細胞特異的プロモータ、膵臓特異的プロモータ、膵β細胞特異的プロモータ、内皮細胞特異的プロモータ、内耳毛細胞特異的プロモータ、骨髄細胞特異的プロモータもしくは腎臓特異的プロモータである。いくつかの実施形態では、真核細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、真核細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、真核細胞は、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、筋細胞、骨格筋細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、心筋細胞、眼の細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、白血球、前駆細胞、血液前駆細胞、膵臓細胞、膵臓β細胞、内皮細胞、内耳毛細胞、骨髄細胞、または腎臓細胞である。いくつかの実施形態では、真核細胞は植物細胞である。
【0033】
別の態様では、本発明は、遺伝子改変真核細胞を作製するための任意の方法または複数の遺伝子改変細胞を含む真核細胞の集団を作製するための任意の方法によって作製される、遺伝子改変真核細胞または遺伝子改変真核細胞の集団を提供する。
【0034】
別の態様では、本発明は、対象の標的細胞または対象の標的細胞の集団において突然変異ミトコンドリアゲノムを分解する方法であって、標的細胞または標的細胞の集団に、(a)標的細胞または標的細胞の集団で発現する本明細書に記載のMTEMをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド、または(b)本明細書に記載のMTEMを送達することを含み、MTEMが認識配列において突然変異ミトコンドリアゲノムに切断部位を生成し、突然変異ミトコンドリアゲノムが分解される、方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、標的細胞は、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、筋細胞、骨格筋細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、心筋細胞、眼の細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、白血球、前駆細胞、血液前駆細胞、膵臓細胞、膵臓β細胞、内皮細胞、内耳毛細胞、もしくは腎臓細胞であり、または標的細胞の集団は、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、筋細胞、骨格筋細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、心筋細胞、眼の細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、白血球、前駆細胞、血球前駆細胞、膵臓細胞、膵臓β細胞、内皮細胞、内耳毛細胞、もしくは腎臓細胞の集団である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはmRNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の任意のmRNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは組換えDNA構築物である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の任意の組換えDNA構築物である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、脂質ナノ粒子によって標的細胞または標的細胞の集団に送達される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、組換えウイルスによって標的細胞または標的細胞の集団に送達される。いくつかの実施形態では、組換えウイルスは、本明細書に記載の任意の組換えウイルスである。いくつかの実施形態では、組換えウイルスは組換えAAVである。いくつかの実施形態では、組換えAAVは、AAV2、AAV9、またはAAVHSCカプシドを有する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、MTEMをコードする核酸配列に作動可能に連結されたプロモータを含む。いくつかの実施形態では、プロモータは構成的プロモータまたは組織特異的プロモータである。いくつかの実施形態では、構成的プロモータはCMVプロモータ、CAGプロモータ、EF1αプロモータもしくはUbCプロモータであり、または組織特異的プロモータはニューロン特異的プロモータ、アストロサイト特異的プロモータ、ミクログリア特異的プロモータ、筋肉特異的プロモータ、骨格筋特異的プロモータ、筋管特異的プロモータ、筋サテライト細胞特異的プロモータ、心筋細胞特異的プロモータ、眼特異的プロモータ、網膜特異的プロモータ、網膜神経節細胞特異的プロモータ、網膜色素上皮特異的プロモータ、白血球特異的プロモータ、前駆細胞特異的プロモータ、血液前駆細胞特異的プロモータ、膵臓特異的プロモータ、膵β細胞特異的プロモータ、内皮細胞特異的プロモータ、内耳毛細胞特異的プロモータ、骨髄細胞特異的プロモータもしくは腎臓特異的プロモータである。いくつかの実施形態では、認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムの約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%が、標的細胞または標的細胞の集団で分解される。いくつかの実施形態では、認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムに対する野生型ミトコンドリアゲノムの比は、標的細胞または標的細胞の集団で増加する。いくつかの実施形態では、比は、約5:95、約10:90、約15:85、約20:80、約25:75、約30:70、約35:65、約40:60、約45:55、約50:50、約55:45、約60:40、約65:35、約70:30、約75:25、約80:20、約85:15、約90:10、約95:5、約20:1、約50:1、約100:1、約150:1、約200:1、約250:1、約300:1、約350:1、約400:1、約450:1、約500:1、約550:1、約600:1、約650:1、約700:1、約750:1、約800:1、約850:1、約900:1、約950:1、約1000:1またはそれ以上まで増加する。いくつかの実施形態では、標的細胞または標的細胞の集団中の野生型ミトコンドリアゲノムの割合は、標的細胞または標的細胞の集団中の全ミトコンドリアゲノムの約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変真核細胞中の認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムの割合は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上減少する。いくつかの実施形態では、標的細胞または標的細胞の集団における細胞呼吸は、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%またはそれ以上増加する。いくつかの実施形態では、標的細胞または標的細胞の集団における細胞呼吸は、約30~40%、約40~50%、約50~60%、約60~70%、約70~80%、約80~90%、約90~100%またはそれ以上増加する。
【0035】
別の態様では、本発明は、対象のミトコンドリア障害に関連する状態を処置する方法であって、対象に、(a)治療有効量の、対象の標的細胞もしくは標的細胞の集団に送達される、標的細胞または標的細胞の集団で発現する本明細書に記載のMTEMをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド、または(b)治療有効量の本明細書に記載のMTEMを投与することを含み、MTEMが対象の標的細胞もしくは標的細胞の集団に送達され、MTEMが認識配列において突然変異ミトコンドリアゲノムに切断部位を生成し、突然変異ミトコンドリアゲノムが分解される、方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に記載の任意の医薬組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、標的細胞は、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、筋細胞、骨格筋細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、心筋細胞、眼の細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、白血球、前駆細胞、血液前駆細胞、膵臓細胞、膵臓β細胞、内皮細胞、内耳毛細胞、もしくは腎臓細胞であり、または標的細胞の集団は、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、筋細胞、骨格筋細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、心筋細胞、眼の細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、白血球、前駆細胞、血球前駆細胞、膵臓細胞、膵臓β細胞、内皮細胞、内耳毛細胞、もしくは腎臓細胞の集団である。いくつかの実施形態では、状態は、筋肉、心臓、中枢神経系、眼、骨髄、腎臓、膵臓、白血球、血管または内耳の状態である。いくつかの実施形態では、状態は、ピアソン症候群、進行性外眼筋麻痺、カーンズ・セイアー症候群(KSS)、赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌス癲癇(MERRF)、神経障害、運動失調、網膜色素変性(NARP)、レーベル遺伝性視神経症(LHON)、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、母遺伝性リー症候群(MILS)、母遺伝性糖尿病および難聴(MIDD)、または重複症状を伴うミトコンドリア障害である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはmRNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の任意のmRNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは組換えDNA構築物である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の任意の組換えDNA構築物である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、脂質ナノ粒子によって標的細胞または標的細胞の集団に送達される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、組換えウイルスによって標的細胞または標的細胞の集団に送達される。いくつかの実施形態では、組換えウイルスは、本明細書に記載の任意の組換えウイルスである。いくつかの実施形態では、組換えウイルスは組換えAAVである。いくつかの実施形態では、組換えAAVは、AAV2、AAV9、またはAAVHSCカプシドを有する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、MTEMをコードする核酸配列に作動可能に連結されたプロモータを含む。いくつかの実施形態では、プロモータは構成的プロモータまたは組織特異的プロモータである。いくつかの実施形態では、構成的プロモータはCMVプロモータ、CAGプロモータ、EF1αプロモータもしくはUbCプロモータであり、または組織特異的プロモータはニューロン特異的プロモータ、アストロサイト特異的プロモータ、ミクログリア特異的プロモータ、筋肉特異的プロモータ、骨格筋特異的プロモータ、筋管特異的プロモータ、筋サテライト細胞特異的プロモータ、心筋細胞特異的プロモータ、眼特異的プロモータ、網膜特異的プロモータ、網膜神経節細胞特異的プロモータ、網膜色素上皮特異的プロモータ、白血球特異的プロモータ、前駆細胞特異的プロモータ、血液前駆細胞特異的プロモータ、膵臓特異的プロモータ、膵β細胞特異的プロモータ、内皮細胞特異的プロモータ、内耳毛細胞特異的プロモータ、骨髄細胞特異的プロモータもしくは腎臓特異的プロモータである。いくつかの実施形態では、認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムの約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%が、標的細胞または標的細胞の集団で分解される。いくつかの実施形態では、認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムに対する野生型ミトコンドリアゲノムの比は、標的細胞または標的細胞の集団で増加する。いくつかの実施形態では、比は、約5:95、約10:90、約15:85、約20:80、約25:75、約30:70、約35:65、約40:60、約45:55、約50:50、約55:45、約60:40、約65:35、約70:30、約75:25、約80:20、約85:15、約90:10、約95:5、約20:1、約50:1、約100:1、約150:1、約200:1、約250:1、約300:1、約350:1、約400:1、約450:1、約500:1、約550:1、約600:1、約650:1、約700:1、約750:1、約800:1、約850:1、約900:1、約950:1、約1000:1またはそれ以上まで増加する。いくつかの実施形態では、標的細胞または標的細胞の集団中の野生型ミトコンドリアゲノムの割合は、標的細胞または標的細胞の集団中の全ミトコンドリアゲノムの約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変真核細胞中の認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムの割合は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上減少する。いくつかの実施形態では、標的細胞または標的細胞の集団における細胞呼吸は、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%またはそれ以上増加する。いくつかの実施形態では、標的細胞または標的細胞の集団における細胞呼吸は、約30~40%、約40~50%、約50~60%、約60~70%、約70~80%、約80~90%、約90~100%またはそれ以上増加する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】MTEM構築物およびミトコンドリア発現を示す図である。
【
図1A】ミトコンドリア切断検出のための戦略を記載する図である。(マウスmtDNA tRNA-Ala突然変異[MIT 11-12]に対する)操作されたヌクレアーゼの認識配列切断を試験するために、一対の操作されたCHO株を、核DNA中に野生型(WT)または突然変異mtDNA標的部位のいずれかを有するように作製した。標的部位の切断が反復領域間の相同組換え事象を促進して機能的GFPを生じるように、標的部位をGFP遺伝子の直接反復の間に配置した。さらに、操作されたヌクレアーゼ標的部位の隣に組み込まれた陽性対照ヌクレアーゼ(「CHO 23-24」)の標的部位がある(左パネル)。細胞株の各々をMIT 11-12またはCHO 23-24(対照)をコードするmRNAでトランスフェクトし、トランスフェクションの48時間後に細胞をフローサイトメトリーによってGFP+細胞の割合についてアッセイした(右パネル)。
【
図1B】CMVプロモータ、Cox8またはCox8/Su9のミトコンドリア移行ペプチド(MTP)、免疫学的検出のためのFlagタグ、操作されたメガヌクレアーゼ(MTEM)配列、およびPolyA尾部を含む、エクスビボ発現のためのMTEM遺伝子構築物を示す図である。
【
図1C】MTEMによるトランスフェクションの24時間後にHeLa細胞に対して行われた免疫蛍光を示す図である。MitoTrackerはミトコンドリアを赤色に染色し、FlagはMTEMを緑色に染色し、合成画像はミトコンドリアへのMTEMの共局在(黄色)を示す。40倍の倍率で撮影された画像。
【
図1D】CFまたはCSF構築物のいずれかによるトランスフェクションの24時間後のHEK293T細胞におけるMTEM発現(FLAG)を示すウエスタンブロットの結果を報告する図である。CF+GFPレーンおよびCSF+GFPレーンは、GFP配列が付加されたMTEM構築物でトランスフェクトされた細胞におけるタンパク質発現を示す。Untレーンはトランスフェクトされていない細胞を表す。GFPレーンは、GFPのみでトランスフェクトされた細胞を表す。チューブリン(Tub)発現を負荷対照として使用した。
【
図2】tRNA
Ala突然変異(m.5024C>T)を有するヘテロプラスミー細胞に対するMTEMの効果を示す図である。
【
図2A】FACS細胞選別ゲーティングの例を報告する図である。細胞をGFP共発現の存在によって選別した。「黒色」細胞(底部ゲート)および「緑色」細胞(上部ゲート)。
【
図2B】50%のm.5024C>T突然変異を有するヘテロプラスミー細胞の、2つの独立したトランスフェクションおよび細胞選別実験のRFLP-HOT PCR分析を報告する図である。緑色細胞集団(Gr)における突然変異レベルをトランスフェクトされていない細胞(U)と比較した。
【
図2C】
図2Bに記載される50%の突然変異を有する細胞における2つの細胞選別実験からのヘテロプラスミーシフトの定量化を示す図である。結果をトランスフェクトされていない細胞のヘテロプラスミーと比較した。
【
図2D】経時的にMTEMでトランスフェクトされた高ヘテロプラスミー突然変異負荷量(90%)を有するヘテロプラスミー細胞のRFLP「最終サイクルホット」PCR分析を示す図である。
【
図2E】
図2Dの結果の定量化を示す図である。値をトランスフェクトされていない細胞に対して正規化する。黒色細胞をBlkと命名する(n=4)。
【
図2F】MTEMでトランスフェクトした高度に突然変異した細胞でチェックし、トランスフェクションの24時間後にトランスフェクトされていない細胞と比較し、トランスフェクション後3週間追跡した全mtDNAレベルを報告する(n=3)図である。
【
図2G】MTEMでトランスフェクトし、3週間成長させた高レベルのヘテロプラスミー突然変異mtDNAを有する細胞中で推定された酸素消費率(OCR)を示す(n=3~7)図である。データは平均±SEMである。両側スチューデントt検定を用いて統計分析を行った。p≦0.05*、p≦0.01**、p>0.001***
【
図3】処置された幼若マウスにおけるAAV9-MTEMの効果を報告する図である。
【
図3A】AAV9-MTEM試料についてはFlag抗体およびAAV-GFP試料についてはGFP抗体を有するホモジネートの代表的なウエスタンブロット(WB)を示す図である(上のパネル)。PI 6週、12週および24週での同じ注射動物由来のDNA試料のRFLP「最終サイクルホット」PCR分析(RFLP、下のパネル)。
【
図3B】脳組織に対して正規化されたPI 6週、12週、または24週での全組織にわたるヘテロプラスミーのパーセント変化として示されるヘテロプラスミーシフトの定量化を示す図である。心臓(H)、前脛骨筋(TA)、大腿四頭筋(Q)、腓腹筋(G)、腎臓(K)、肝臓(L)および脾臓(Sp)のヘテロプラスミーレベルを、脳(B)(MTEMの発現について陰性)と比較した。
【
図3C】18S(核DNA)に対して正規化されたND1およびND5ミトコンドリアプライマー/プローブを使用した、PI 6週および24週での骨格筋、肝臓および脳における全mtDNAレベルのRT-PCRによる定量化を示す図である。データは、n=3~5の平均±SEMである。両側スチューデントt検定を用いて統計分析を行った。p≦0.05*、p≦0.01**、p≦0.001***、p≦0.0001****
【
図4】処置した成体マウスにおけるAAV9-MTEMの影響を示す。
【
図4A】AAV9-MTEM試料についてはFlag抗体およびAAV-GFP試料についてはGFP抗体を有するホモジネート(上のパネル)の代表的なウエスタンブロット(W.B.)を示す。PI 6週、12週および24週での同じ注射動物由来のDNA試料のRFLP「最終サイクルホット」PCR分析(RFLP、下のパネル)。
【
図4B】脳組織に対して正規化されたPI 6週、12週、および24週での全組織にわたるヘテロプラスミーのパーセント変化として示されるヘテロプラスミーシフトの定量化を示す図である。心臓(H)、前脛骨筋(TA)、大腿四頭筋(Q)、腓腹筋(G)、腎臓(K)、肝臓(L)および脾臓(Sp)のヘテロプラスミーを、脳(MTEMの発現について陰性)と比較した。
【
図4C】18S(核DNA)に対して正規化されたND1およびND5ミトコンドリアプライマー/プローブを使用して、PI 6週および24週で骨格筋、肝臓、および脳(B)において全mtDNAレベルのqPCRによる定量化を測定したことを示す図である。データは、n=3~4の平均±SEMである。両側スチューデントt検定を用いて統計分析を行った。p≦0.05*、p≦0.01**、p≦0.001***、p≦0.0001****
【
図5】肝臓におけるmt-tRNA
AlaのMTEM誘発性増加を報告する図である。
【
図5A】mt-tRNA
Alaおよび全RNA負荷(28Sおよび18S)についてプローブしたPI 24週での幼若マウス肝臓のノーザンブロット分析を示す図である。
【
図5B】28S rRNAに対して正規化された
図5Aのノーザンブロットにおけるmt-tRNA
Alaの定量化を示す図である。
【
図5C】幼若マウス肝臓におけるmt-tRNA
Valのレベルと比較した、qPCRによるmt-tRNA
Alaの定量化を示す図である。AAV9-MTEM処置動物由来のRNA試料を、AAV9-GFP対照およびWT肝臓試料と比較した。
【
図5D】成体マウス肝臓におけるmt-tRNA
Valのレベルと比較したmt-tRNA
Alaの定量化を報告する図である。PI 24週で、AAV9-MTEM処置動物由来のRNA試料を、AAV9-GFP対照およびWT肝臓試料と比較した。データは、n=3~4の平均±SEMである。両側スチューデントt検定を用いて統計分析を行った。p<0.05*
【
図6】配列番号10の核局在化シグナル(NLS)、ミトコンドリア移行ペプチド(MTP)またはMTPおよび核外移行配列(NES)に融合した操作されたメガヌクレアーゼによるインデル形成を示す図である。MRC-5細胞を操作されたメガヌクレアーゼ構築物でヌクレオフェクト(nucleofect)し、APC 11-12結合部位でのインデル形成を2日後に分析した。
【
図7】配列番号9の核局在化シグナル(NLS)、ミトコンドリア移行ペプチド(MTP)またはMTPおよびMVMp NS2核外移行配列(NES)に融合した操作されたメガヌクレアーゼによるインデル形成を示す図である。MRC-5細胞を操作されたメガヌクレアーゼ構築物でヌクレオフェクト(nucleofect)し、APC 11-12結合部位でのインデル形成を2日後に分析した。
【0037】
配列の簡単な説明
配列番号1は、野生型I-CreI配列を示す。
【0038】
配列番号2は、野生型I-CreIサブユニットを有するMTEMメガヌクレアーゼを示す。
【0039】
配列番号3は、MIT 11-12認識配列(センス)を示す。
【0040】
配列番号4は、MIT 11-12x40メガヌクレアーゼアミノ酸配列を示す。
【0041】
配列番号5は、MIT 11-12x.40メガヌクレアーゼ核酸配列を示す。
【0042】
配列番号6は、COX VIII MTPを示す。
【0043】
配列番号7は、SU9 MTPを示す。
【0044】
配列番号8は、COX VIII-SU9 MTPを示す。
【0045】
配列番号9は、MVMp NS2 NES配列を示す。
【0046】
配列番号10は、NES配列を示す。
【0047】
配列番号11は、MIT 11-12認識配列(アンチセンス)を示す。
【0048】
配列番号12は、m.5024C>Tフォワードプライマを示す。
【0049】
配列番号13は、m.5024C>Tリバースプライマを示す。
【0050】
配列番号14は、ND1フォワードプライマを示す。
【0051】
配列番号15は、ND1リバースプライマを示す。
【0052】
配列番号16は、ND1プローブを示す。
【0053】
配列番号17は、ND5フォワードプライマを示す。
【0054】
配列番号18は、ND5リバースプライマを示す。
【0055】
配列番号19は、ND5プローブを示す。
【0056】
配列番号20は、18sフォワードプライマを示す。
【0057】
配列番号21は、18sリバースプライマを示す。
【0058】
配列番号22は、18sプローブを示す。
【0059】
配列番号23は、ミトコンドリアtRNAalaを検出するためのビオチン化プローブを示す。
【0060】
配列番号24は、C57BL6J第2染色体部位1を示す。
【0061】
配列番号25は、C57BL6J第2染色体部位2を示す。
【0062】
配列番号26は、C57BL6J第5染色体部位3を示す。
【0063】
配列番号27は、C57BL6J第6染色体部位4を示す。
【0064】
配列番号28は、C57BL6J第2染色体部位5を示す。
【0065】
配列番号29は、APC 11-12結合部位に対するプローブを示す。
【0066】
配列番号30は、APC 11-12結合部位に対するフォワードプライマを示す。
【0067】
配列番号31は、APC 11-12結合部位に対するリバースプライマを示す。
【0068】
配列番号32は、参照結合部位に対するプローブを示す。
【0069】
配列番号33は、参照結合部位用のフォワードプライマを示す。
【0070】
配列番号34は、参照結合部位のためのリバースプライマを示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
発明の詳細な説明
1.1(定義)
本明細書で言及される特許および科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書に引用される発行された米国特許、許可された出願、公開された外国出願、およびGenBankデータベース配列を含む参考文献は、それぞれが参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
本発明は、異なる形態で具体化することができ、本明細書に示される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完璧かつ完全であり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。例えば、一実施形態に関して示された特徴は、他の実施形態に組み込むことができ、特定の実施形態に関して示された特徴は、その実施形態から削除することができる。さらに、本明細書で提案される実施形態に対する多数の変形および追加は、本開示に照らして当業者には明らかであり、本発明から逸脱しない。
【0073】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書における本発明の説明で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0074】
本明細書で引用されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の文献は、その全体が参照により組み込まれる。
【0075】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、または「その(the)」は、1つ以上を意味することができる。例えば、「1つの(a)」細胞は、単一の細胞または多数の細胞を意味し得る。
【0076】
本明細書で使用される場合、「5’キャップ」(RNAキャップ、RNA 7-メチルグアノシンキャップまたはRNA m7Gキャップとも呼ばれる)という用語は、転写開始直後に真核生物メッセンジャーRNAの「フロント」または5’末端に付加されている改変グアニンヌクレオチドである。5’キャップは、第1の転写されたヌクレオチドに連結された末端基からなる。その存在は、リボソームによる認識およびRNaseからの保護にとって重要である。キャップ付加は転写と共役しており、それぞれが他方に影響を及ぼすように共転写的に起こる。転写の開始直後に、合成されているmRNAの5’末端は、RNAポリメラーゼに会合するキャップ合成複合体によって結合される。この酵素複合体は、mRNAキャッピングに必要な化学反応を触媒する。合成は多段階生化学反応として進行する。キャッピング部分は、その安定性または翻訳効率などのmRNAの機能性を調節するように改変することができる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「対立遺伝子」という用語は、遺伝子の2つ以上の変異形態のうちの1つを指す。
【0078】
本明細書で使用される場合、「構成的プロモータ」という用語は、遺伝子産物をコードまたは指定するポリヌクレオチドと作動可能に連結されると、細胞のほとんどまたはすべての生理学的条件下で遺伝子産物を細胞内で作製させるヌクレオチド配列を指す。
【0079】
本明細書で使用される場合、「対照」または「対照細胞」という用語は、遺伝子改変細胞の遺伝子型または表現型の変化を測定するための基準点を提供する細胞を指す。対照細胞は、例えば、(a)野生型細胞、すなわち、遺伝子改変細胞をもたらす遺伝子改変のための出発物質と同じ遺伝子型の野生型細胞、(b)遺伝子改変細胞と同じ遺伝子型であるが、ヌル構築物で(すなわち、目的の形質に既知の影響を有しない構築物で)形質転換された細胞、または(c)遺伝子改変細胞と遺伝的に同一であるが、変化した遺伝子型もしくは表現型の発現を誘導する条件もしくは刺激もしくはさらなる遺伝子改変に曝露されていない細胞を含み得る。例えば、本発明の対照または対照細胞は、MTEMもMTEMをコードするアミノ酸配列を有するポリヌクレオチドも含まない細胞または細胞集団であり得る。
【0080】
本明細書で使用される場合、2つのタンパク質またはアミノ酸配列の改変に関する「に対応する」という用語は、第1のタンパク質の特定の改変が第2のタンパク質の改変と同じアミノ酸残基の置換であること、および2つのタンパク質が(例えば、BLASTpプログラムを使用して)標準的な配列アラインメントに供される場合、第1のタンパク質の改変のアミノ酸位置が第2のタンパク質の改変のアミノ酸位置に対応するか整列することを示すために使用される。したがって、第1のタンパク質における残基「X」のアミノ酸「A」への改変は、残基XおよびYが配列アラインメントにおいて互いに対応する場合、XおよびYが異なる数であり得るという事実にもかかわらず、第2のタンパク質における残基「Y」のアミノ酸「A」への改変に対応する。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「破壊された」または「破壊する」または「発現を破壊する」または「標的配列を破壊する」とは、遺伝子機能を妨害し、それによってコードされるポリペプチド/発現産物の発現および/または機能を妨げる突然変異(例えばフレームシフト突然変異)の導入のことを指す。例えば、遺伝子のヌクレアーゼ媒介破壊は、切断型タンパク質の発現および/または野生型機能を保持しないタンパク質の発現をもたらし得る。さらに、遺伝子へのドナー鋳型の導入は、コードされたタンパク質の発現、切断型タンパク質の発現、および/または野生型機能を保持しないタンパク質の発現をもたらさない可能性がある。
【0082】
本明細書で使用される場合、「コードする」という用語は、定義されたヌクレオチドの配列(例えば、rRNA、tRNAおよびmRNA)または定義されたアミノ酸の配列のいずれかを有する生物学的プロセスにおける他のポリマーおよび巨大分子の合成のための鋳型として機能する、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性、およびそれから生じる生物学的特性を指す。したがって、遺伝子、cDNAまたはRNAは、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物系においてタンパク質を作製する場合、タンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常は配列表に提供されるコード鎖と、遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖との両方を、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードすると呼ぶことができる。
【0083】
本明細書で使用される場合、ヌクレオチド配列またはタンパク質に関して「内因性」という用語は、細胞内に天然に含まれるかまたは細胞によって発現される配列またはタンパク質を意味することを意図している。
【0084】
本明細書で使用される場合、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列に関して「外因性」または「異種」という用語は、純粋に合成されているか、外来種に由来するか、または同じ種に由来する場合、意図的なヒトの介入によって組成および/またはゲノム遺伝子座においてその天然の形態から実質的に改変されている配列を意味することを意図している。
【0085】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、プロモータによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳を指す。
【0086】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」という用語は、発現されるヌクレオチド配列に作動可能に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現に十分なシス作用性エレメントを含み、発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって、またはインビトロ発現系において供給され得る。発現ベクターには、組換えポリヌクレオチドを組み込むコスミド、プラスミド(例えば、裸の、またはリポソームに含まれる)およびウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)を含む、当技術分野で公知のすべてのものが含まれる。
【0087】
本明細書で使用される場合、「遺伝子改変」という用語は、ゲノムDNA配列が組換え技術によって意図的に改変されている、またはその先祖においてゲノムDNA配列が組換え技術によって意図的に改変されている細胞または生物を指す。本明細書で使用される場合、「遺伝子改変」という用語は、「トランスジェニック」という用語を包含する。例えば、本明細書で使用される場合、「遺伝子改変」細胞は、ミトコンドリアDNAが組換え技術によって意図的に改変されている細胞を指し得る。
【0088】
本明細書で使用される場合、「相同組換え」または「HR」という用語は、修復鋳型として相同DNA配列を使用して二本鎖DNA切断が修復される天然の細胞プロセスを指す(例えば、Cahillら(2006)、Front.Biosci.11:1958-1976を参照のこと。)。相同DNA配列は、内因性染色体配列または細胞に送達された外因性核酸であり得る。
【0089】
本明細書で使用される場合、「相同アーム」または「ヌクレアーゼ切断部位に隣接する配列に相同な配列」という用語は、ヌクレアーゼによって生成された切断部位への核酸分子の挿入を促進する、核酸分子の5´および3´末端に隣接する配列を指す。一般に、相同アームは、少なくとも50塩基対、好ましくは少なくとも100塩基対、最大2000塩基対またはそれ以上の長さを有することができ、ゲノム中のそれらの対応する配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%またはそれ以上の配列相同性を有することができる。いくつかの実施形態では、相同アームは、約500塩基対である。
【0090】
本明細書で使用される場合、「インビトロ転写RNA」という用語は、インビトロで合成されたRNA、好ましくはmRNAを指す。一般に、インビトロ転写RNAは、インビトロ転写ベクターから作製される。インビトロ転写ベクターは、インビトロ転写RNAを生成するために使用される鋳型を含む。
【0091】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、天然の状態から変化または除去されたことを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離され」ていないが、その天然状態の共存物質から部分的または完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離され」ている。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在し得るか、または例えば宿主細胞などの非天然環境に存在し得る。
【0092】
本明細書で使用される場合、「レンチウイルス」という用語は、レトロウイルス(Retroviridae)科の属を指す。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染することができるという点でレトロウイルスの中で独特であり、宿主細胞のDNAにかなりの量の遺伝情報を送達することができるので、それらは遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法の1つである。HIV、SIV、およびFIVはすべてレンチウイルスの例である。
【0093】
本明細書で使用される場合、「脂質ナノ粒子」という用語は、10~1000ナノメートルの平均直径を有する典型的には球形の構造を有する脂質組成物を指す。いくつかの製剤では、脂質ナノ粒子は、少なくとも1つのカチオン性脂質、少なくとも1つの非カチオン性脂質、および少なくとも1つのコンジュゲート脂質を含むことができる。mRNAなどの核酸をカプセル化するのに適した当技術分野で公知の脂質ナノ粒子が、本発明における使用のために企図される。
【0094】
本明細書で使用される場合、組換えタンパク質に関する「改変」という用語は、参照配列(例えば、野生型配列または天然配列)に対する組換え配列内のアミノ酸残基の任意の挿入、欠失、または置換を意味する。
【0095】
本明細書で使用される場合、「非相同末端結合」または「NHEJ」という用語は、二本鎖DNA切断が2つの非相同DNAセグメントの直接結合によって修復される天然の細胞プロセスを指す(例えば、Cahillら(2006)、Front.Biosci.11:1958-1976を参照のこと。)非相同末端結合によるDNA修復は間違いを起こしやすく、修復部位でのDNA配列の鋳型なしの付加または欠失を頻繁にもたらす。いくつかの例では、標的認識配列での切断は、標的認識部位でNHEJをもたらす。遺伝子のコード配列中の標的部位のヌクレアーゼ誘導切断とそれに続くNHEJによるDNA修復は、遺伝子機能を破壊するフレームシフト突然変異などの突然変異をコード配列に導入することができる。したがって、操作されたヌクレアーゼを使用して、細胞集団中の遺伝子を効果的にノックアウトすることができる。
【0096】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」という用語は、互いに縮退バージョンであり、同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という語句はまた、タンパク質をコードするヌクレオチド配列があるバージョンでは1つ以上のイントロンを含み得る程度にイントロンを含み得る。
【0097】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、2つ以上のエレメント間の機能的連結を意味することを意図している。例えば、本明細書に開示されるヌクレアーゼをコードする核酸配列と調節配列(例えば、プロモータ)との間の作動可能な連結は、ヌクレアーゼをコードする核酸配列の発現を可能にする機能的連結である。作動可能に連結されたエレメントは、連続していても不連続であってもよい。2つのタンパク質コード領域の結合を指すために使用される場合、作動可能に連結されることは、コード領域が同じリーディングフレーム内にあることを意図する。
【0098】
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「または」という単語は、「および/または」の包括的な意味で使用され、「いずれか/または」の排他的な意味では使用されない。
【0099】
本明細書で使用される場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は互換的に使用され、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基で構成される化合物を指す。タンパク質またはペプチドは少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成し得るアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドは、ペプチド結合によって互いに結合した2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質を含む。本明細書で使用される場合、この用語は、例えば、当技術分野で一般にペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとも呼ばれる短鎖と、当技術分野で一般にタンパク質と呼ばれる長鎖の両方を指し、これらには多くの種類がある。「ポリペプチド」には、例えば、とりわけ、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変異体、改変ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドは、天然ペプチド、組換えペプチド、またはそれらの組み合わせを含む。
【0100】
本明細書で使用される場合、「低減した」または「減少した」という用語は、対照細胞の集団と比較した場合の突然変異ミトコンドリアゲノムを含む細胞の集団における細胞の割合または細胞の比の低減を指す。いくつかの実施形態では、「低減した」または「減少した」は、単一細胞または細胞集団における突然変異ミトコンドリアゲノムの割合または野生型ミトコンドリアゲノムに対する突然変異ミトコンドリアゲノムの比の低減を指す。そのような低減は、最大5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または最大100%である。したがって、「低減した」という用語は、突然変異mtDNAの部分的な低減および完全な低減の両方を包含する。
【0101】
本明細書で使用される場合、アミノ酸配列および核酸配列の両方に関する用語である、「パーセント同一性」、「配列同一性」、「割合類似性(percentage similarity)」、「配列類似性」などの用語は、整列したアミノ酸残基またはヌクレオチド間の類似性を最大にする配列のアラインメントに基づく2つの配列の類似性の程度の尺度を指し、これは同一または類似の残基またはヌクレオチドの数、残基またはヌクレオチドの総数、ならびに配列アラインメントにおけるギャップの存在および長さの関数である。標準的なパラメータを使用して配列類似性を決定するために、様々なアルゴリズムおよびコンピュータプログラムが利用可能である。本明細書で使用される場合、配列類似性は、アミノ酸配列についてはBLASTpプログラムを、および核酸配列についてはBLASTnプログラムを使用して測定され、これらは両方ともNational Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov/)から入手可能であり、例えばAltschulら(1990)、J.Mol.Biol.215:403-410、GishおよびStates(1993)、Nature Genet.3:266-272、Maddenら(1996)、Meth.Enzymol.266:131-141、Altschulら(1997)、Nucleic Acids Res.25:33 89-3402)、Zhangら(2000)、J.Comput.Biol.7(1-2):203-14に記載されている。本明細書で使用される場合、2つのアミノ酸配列のパーセント類似性は、BLASTpアルゴリズムについての以下のパラメータに基づくスコアである。ワード長=3、ギャップオープニングペナルティ=-11、ギャップ伸長ペナルティ=-1、およびスコア行列=BLOSUM62。本明細書で使用される場合、2つの核酸配列のパーセント類似性は、BLASTnアルゴリズムについての以下のパラメータに基づくスコアである。ワード長=11、ギャップオープニングペナルティ=-5、ギャップ伸長ペナルティ=-2、マッチ・リワード=1、およびミスマッチペナルティ=-3。
【0102】
本明細書で使用される場合、「ポリ(A)」という用語は、ポリアデニル化によってmRNAに結合している一連のアデノシンである。一過性発現のための構築物の好ましい実施形態では、ポリAは50~5000、好ましくは64超、より好ましくは100超、最も好ましくは300または400超である。ポリ(A)配列を化学的または酵素的に改変して、mRNAの機能性、例えば局在化、安定性または翻訳の効率を調節することができる。
【0103】
本明細書で使用される場合、「ポリアデニル化」という用語は、ポリアデニリル部分またはその改変変異体のメッセンジャーRNA分子への共有結合を指す。真核生物では、ほとんどのメッセンジャーRNA(mRNA)分子は3´末端でポリアデニル化されている。3’ポリ(A)尾部は、酵素ポリアデニル酸ポリメラーゼの作用によってプレ-mRNAに付加されたアデニンヌクレオチド(多くの場合数百)の長い配列である。高等真核生物では、ポリ(A)尾部は、特定の配列、ポリアデニル化シグナルを含む転写物に付加される。ポリ(A)尾部およびそれに結合したタンパク質は、エキソヌクレアーゼによる分解からmRNAを保護するのを助ける。ポリアデニル化は、転写終了、核からのmRNAの移行、および翻訳にとっても重要である。ポリアデニル化は、DNAがRNAに転写された直後に核内で起こるが、さらに後に細胞質内で起こることもできる。転写が終了した後、mRNA鎖は、RNAポリメラーゼに会合するエンドヌクレアーゼ複合体の作用によって切断される。切断部位は、通常、切断部位付近の塩基配列AAUAAAの存在を特徴とする。mRNAが切断された後、切断部位の遊離3’末端にアデノシン残基が付加される。
【0104】
本明細書で使用される場合、「プロモータ/調節配列」という用語は、プロモータ/調節配列に作動可能に連結された遺伝子産物の発現に必要な核酸配列を指す。いくつかの例では、この配列はコアプロモータ配列であり得、他の例では、この配列はまた、遺伝子産物の発現に必要なエンハンサー配列および他の調節エレメントを含み得る。プロモータ/調節配列は、例えば、組織特異的様式で遺伝子産物を発現するものであり得る。
【0105】
本明細書で使用される場合、タンパク質に関して「組換え」または「操作された」という用語は、タンパク質をコードする核酸およびタンパク質を発現する細胞または生物への遺伝子工学技術の適用の結果として変化したアミノ酸配列を有することを意味する。核酸に関して、「組換え」または「操作された」という用語は、遺伝子工学技術の適用の結果として変化した核酸配列を有することを意味する。遺伝子工学技術には、PCRおよびDNAクローニング技術、トランスフェクション、形質転換および他の遺伝子移入技術、相同組換え、部位特異的突然変異誘発および遺伝子融合が含まれるが、これらに限定されない。この定義によれば、天然に存在するタンパク質と同一のアミノ酸配列を有するが、異種宿主でのクローニングおよび発現によって作製されるタンパク質は、組換えまたは操作されていると見なされない。
【0106】
本明細書で使用される場合、「組換えDNA構築物」、「組換え構築物」、「発現カセット」、「発現構築物」、「キメラ構築物」、「構築物」、および「組換えDNA断片」という用語は、本明細書で互換的に使用され、単鎖または二本鎖ポリヌクレオチドである。組換え構築物は、天然には一緒に見られない調節配列およびコード配列を含むがこれらに限定されない核酸断片の人工的な組み合わせを含む。例えば、組換えDNA構築物は、異なる供給源に由来する調節配列およびコード配列、または同じ供給源に由来し、天然に見られるものとは異なる様式で配置された調節配列およびコード配列を含み得る。そのような構築物は、単独で使用されてもよく、またはベクターと組み合わせて使用されてもよい。
【0107】
本明細書で使用される場合、「組織特異的プロモータ」という用語は、遺伝子をコードするかまたは遺伝子によって指定されるポリヌクレオチドと作動可能に連結された場合、細胞がプロモータに対応する組織型の細胞である場合にのみ、実質的に細胞内で遺伝子産物を作製させるヌクレオチド配列を指す。
【0108】
本明細書で使用される場合、「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」または「ヌクレオフェクトされた」という用語は、外因性核酸が宿主細胞に移入または導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞は、外因性核酸でトランスフェクト、形質転換または形質導入された細胞である。細胞は、初代対象細胞およびその子孫を含む。
【0109】
本明細書で使用される場合、「移入ベクター」という用語は、単離された核酸を含み、単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用することができる物質の組成物を指す。線状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物に会合するポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスを含むがこれらに限定されない多数のベクターが当技術分野で公知である。したがって、「移入ベクター」という用語は、自律複製プラスミドまたはウイルスを含む。この用語はまた、例えば、ポリリジン化合物、リポソームなどの、細胞への核酸の移入を促進する非プラスミドおよび非ウイルス化合物をさらに含むと解釈されるべきである。ウイルス移入ベクターの例としては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
本明細書で使用される場合、「一過性」という用語は、数時間、数日または数週間の期間にわたる非組み込み導入遺伝子の発現を指し、発現期間は、ゲノムに組み込まれているかまたは宿主細胞中の安定なプラスミドレプリコン内に含まれている場合、遺伝子の発現期間よりも短い。
【0111】
本明細書で使用される場合、「ベクター」または「組換えDNAベクター」という用語は、所与の宿主細胞中でポリペプチドをコードする配列の転写および翻訳が可能な複製系および配列を含む構築物であり得る。ベクターが使用される場合、ベクターの選択は、当業者に周知のように、宿主細胞を形質転換するために使用される方法に依存する。ベクターとしては、プラスミドベクターおよび組換えAAVベクター、または遺伝子を標的細胞に送達するのに適した当技術分野で公知の任意の他のベクターが挙げられ得るが、これらに限定されない。当業者は、本発明の単離されたヌクレオチドまたは核酸配列のいずれかを含む宿主細胞を首尾よく形質転換、選択および増殖させるためにベクター上に存在しなければならない遺伝的エレメントを十分に認識している。
【0112】
いくつかの実施形態では、「ベクター」はまた、ウイルスベクター(すなわち、組換えウイルス)を指す。ウイルスベクターには、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0113】
本明細書で使用される場合、「野生型」という用語は、野生型対立遺伝子によってコードされるポリペプチドがその元の機能を有する、同じタイプの遺伝子の対立遺伝子集団における最も一般的な天然に存在する対立遺伝子(すなわち、ポリヌクレオチド配列)を指す。「野生型」という用語はまた、野生型対立遺伝子によってコードされるポリペプチドを指す。野生型対立遺伝子(すなわち、ポリヌクレオチド)およびポリペプチドは、野生型配列と比較して1つ以上の突然変異および/または置換を含む突然変異体または変異体の対立遺伝子およびポリペプチドとは区別可能である。野生型対立遺伝子またはポリペプチドは生物において正常な表現型を付与することができるが、突然変異体または変異体の対立遺伝子またはポリペプチドは、いくつかの例では、変化した表現型を付与することができる。野生型ヌクレアーゼは、組換えヌクレアーゼまたは天然に存在しないヌクレアーゼと区別可能である。「野生型」という用語はまた、特定の遺伝子の野生型対立遺伝子を有する細胞、生物、および/もしくは対象、または比較目的で使用される細胞、生物、および/もしくは対象を指すことができる。
【0114】
本明細書で使用される場合、ヌクレアーゼに言及する場合の「特異的に変化した」という用語は、ヌクレアーゼが、生理学的条件下で参照ヌクレアーゼ(例えば、野生型)に結合せず切断されない認識配列に結合して切断すること、または認識配列の切断速度が、参照ヌクレアーゼと比較して生物学的に有意な量(例えば、少なくとも2×、または2×~10×)だけ増加または減少することを意味する。
【0115】
本明細書で使用される場合、「中心配列」という用語は、メガヌクレアーゼ認識配列の半部位を分離する4つの塩基対を指す。これらの塩基には+1~+4の番号を付す。中心配列は、メガヌクレアーゼ切断後に3´一本鎖オーバーハングになる4つの塩基を含む。「中心配列」は、センス鎖またはアンチセンス(反対)鎖の配列を指すことができる。メガヌクレアーゼは対称性であり、中心配列のセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方で等しく塩基を認識する。例えば、センス鎖上の配列A+1A+2A+3A+4は、メガヌクレアーゼによってアンチセンス鎖上のT+1T+2T+3T+4として認識され、したがって、A+1A+2A+3A+4およびT+1T+2T+3T+4は機能的に等価である(例えば、両方が所与のメガヌクレアーゼによって切断され得る)。したがって、配列C+1T+2G+3C+4は、メガヌクレアーゼがその認識配列に対称ホモ二量体として結合するという事実に起因して、その反対鎖配列G+1C+2A+3G+4と等価である。
本明細書で使用される場合、「切断する」または「切断」という用語は、本明細書で「切断部位」と呼ばれる、標的配列内の二本鎖切断をもたらす標的配列内の認識配列の骨格内のホスホジエステル結合の加水分解を指す。
【0116】
本明細書で使用される場合、「DNA結合親和性」または「結合親和性」という用語は、ヌクレアーゼが参照DNA分子(例えば、認識配列または任意の配列)と非共有結合する傾向を意味する。結合親和性は、解離定数Kdによって測定される。本明細書で使用される場合、参照認識配列に対するヌクレアーゼのKdが、参照ヌクレアーゼに対して統計的に有意なパーセント変化だけ増加または減少する場合、ヌクレアーゼは「変化した」結合親和性を有する。
【0117】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」という用語は、比較的高い可変性を有するアミノ酸を含むメガヌクレアーゼモノマーまたはサブユニット内の局在配列を指す。超可変領域は、約50~60個の連続残基、約53~57個の連続残基、または好ましくは約56個の残基を含むことができる。いくつかの実施形態では、超可変領域の残基は、配列番号2または4のいずれか1つの24~79位または215~270位に対応し得る。超可変領域は、認識配列中のDNA塩基と接触する1つ以上の残基を含むことができ、モノマーまたはサブユニットの塩基選択性を変化させるように改変することができる。超可変領域はまた、メガヌクレアーゼが二本鎖DNA認識配列と会合する場合にDNA骨格に結合する1つ以上の残基を含むことができる。そのような残基は、DNA骨格および標的認識配列に対するメガヌクレアーゼの結合親和性を変化させるように改変することができる。本発明の異なる実施形態では、超可変領域は、可変性を示し、塩基選択性および/またはDNA結合親和性に影響を及ぼすように改変することができる1~20残基を含むことができる。特定の実施形態では、超可変領域は、可変性を示し、塩基選択性および/またはDNA結合親和性に影響を及ぼすように改変することができる約15~20個の残基を含む。いくつかの実施形態では、超可変領域内の可変残基は、配列番号2の24、26、28、30、32、33、38、40、42、44、46、68、70、75、および77位の1つ以上に対応する。他の実施形態では、超可変領域内の可変残基は、配列番号2の215、217、219、221、223、224、229、231、233、235、237、259、261、266および268位の1つ以上に対応する。
【0118】
本明細書で使用される場合、「リンカー」という用語は、2つのヌクレアーゼサブユニットを単一のポリペプチドに結合するために使用される外因性ペプチド配列を指す。リンカーは、天然タンパク質に見られる配列を有していてもよく、または天然タンパク質には見られない人工配列であってもよい。リンカーは、可撓性であり、二次構造を欠いていてもよく、または生理学的条件下で特定の三次元構造を形成する傾向を有していてもよい。リンカーは、限定されないが、米国特許第8,445,251号、第9,340,777号、第9,434,931号および第10,041,053号に包含されるものを含むことができ、これらの各々は参照によりその全体が組み込まれる。
【0119】
本明細書で使用される場合、「メガヌクレアーゼ」という用語は、12塩基対を超える認識配列で二本鎖DNAに結合するエンドヌクレアーゼを指す。いくつかの実施形態では、本開示のメガヌクレアーゼの認識配列は22塩基対である。メガヌクレアーゼは、I-CreI(配列番号1)に由来するエンドヌクレアーゼであり得、例えば、DNA結合特異性、DNA切断活性、DNA結合親和性、または二量体化特性に関して天然のI-CreIに対して改変された、I-CreIの操作された変異体を指し得る。I-CreIのそのような改変された変異体を作製するための方法は、当技術分野で公知である(例えば、参照によりその全体が組み込まれる国際公開第2007/047859号)。本明細書で使用されるメガヌクレアーゼは、ヘテロ二量体として二本鎖DNAに結合する。メガヌクレアーゼはまた、一対のDNA結合ドメインがペプチドリンカーを使用して単一のポリペプチドに結合している「単鎖メガヌクレアーゼ」であり得る。「ホーミングエンドヌクレアーゼ」という用語は、「メガヌクレアーゼ」という用語と同義である。本開示のメガヌクレアーゼは、本明細書に記載の標的細胞で発現させた場合、本明細書に記載の方法を使用して測定した場合に細胞生存率への有害な影響またはメガヌクレアーゼ切断活性の有意な低下を観察することなく細胞をトランスフェクトし、37℃で維持できるように、実質的に非毒性である。
【0120】
本明細書で使用される場合、「ミトコンドリアを標的とした操作されたメガヌクレアーゼ」または「MTEM」という用語は、操作されたメガヌクレアーゼがミトコンドリア細胞小器官内のミトコンドリアDNAに結合して切断することができるように、操作されたメガヌクレアーゼをミトコンドリアに指向させることができるペプチドまたは他の分子に結合した操作されたメガヌクレアーゼを指す。本明細書で使用される場合、MTEMという用語は、本明細書の他の箇所で定義されるMTENの例である。
【0121】
本明細書で使用される場合、「ミトコンドリア移行ペプチド」または「MTP」という用語は、ミトコンドリア内で分子を輸送するために別個の分子に結合することができるペプチドまたはアミノ酸の断片を指す。例えば、MTPは、操作されたメガヌクレアーゼをミトコンドリアに輸送するために、操作されたメガヌクレアーゼなどのヌクレアーゼに結合することができる。MTPは、疎水性アミノ酸と正に帯電したアミノ酸の交互パターンからなり、いわゆる両親媒性ヘリックスを形成することができる。
【0122】
本明細書で使用される場合、「ヌクレアーゼ」および「エンドヌクレアーゼ」という用語は互換的に使用され、ポリヌクレオチド鎖内のホスホジエステル結合を切断する天然に存在するまたは操作された酵素を指す。
【0123】
本明細書で使用される場合、「認識半部位」、「認識配列半部位」または単に「半部位」という用語は、ホモ二量体もしくはヘテロ二量体メガヌクレアーゼのモノマーまたは単鎖メガヌクレアーゼの1つのサブユニットによって認識および結合される二本鎖DNA分子内の核酸配列を意味する。
【0124】
本明細書で使用される場合、「認識配列」または「認識部位」という用語は、ヌクレアーゼによって結合および切断されるDNA配列を指す。メガヌクレアーゼの場合、認識配列は、4塩基対によって分離された逆方向9塩基対の「半部位」の対を含む。単鎖メガヌクレアーゼの場合、タンパク質のN末端ドメインは第1の半部位と接触し、タンパク質のC末端ドメインは第2の半部位と接触する。メガヌクレアーゼによる切断は、4塩基対の3’オーバーハングを生じる。「オーバーハング」または「粘着末端」は、二本鎖DNA配列のエンドヌクレアーゼ切断によって作製することができる短い一本鎖DNAセグメントである。I-CreI由来のメガヌクレアーゼおよび単鎖メガヌクレアーゼの場合、オーバーハングは、22塩基対の認識配列の塩基10~13を含む。本明細書で使用される場合、「単鎖メガヌクレアーゼ」という用語は、リンカーによって結合された一対のヌクレアーゼサブユニットを含むポリペプチドを指す。単鎖メガヌクレアーゼは、N末端サブユニット-リンカー-C末端サブユニットという構成を有する。2つのメガヌクレアーゼサブユニットは、一般に、アミノ酸配列が同一ではなく、同一ではないDNA配列に結合する。したがって、単鎖メガヌクレアーゼは、典型的には、擬似パリンドロームまたは非パリンドローム認識配列を切断する。単鎖メガヌクレアーゼは、実際には二量体ではないが、「単鎖ヘテロ二量体」または「単鎖ヘテロ二量体メガヌクレアーゼ」と呼ばれることがある。明確にするために、特に明記しない限り、「メガヌクレアーゼ」という用語は、二量体または単鎖メガヌクレアーゼを指すことができる。
【0125】
本明細書で使用される場合、「特異性」という用語は、ヌクレアーゼが認識配列と呼ばれる塩基対の特定の配列でのみ、または認識配列の特定のセットでのみ二本鎖DNA分子に結合して切断する能力を意味する。認識配列のセットは、ある特定の保存された位置または配列モチーフを共有するが、1つ以上の位置で縮退し得る。高度に特異的なヌクレアーゼは、1つのみまたはごく少数の認識配列を切断することができる。特異性は、当技術分野で公知の任意の方法によって決定することができる。
【0126】
本明細書で使用される場合、「標的部位」または「標的配列」という用語は、ヌクレアーゼの認識配列を含む細胞の染色体DNAの領域を指す。
【0127】
本明細書で使用される場合、「処置」または「対象を処置する」という用語は、本発明の操作されたヌクレアーゼ、または本発明の操作されたヌクレアーゼをコードする核酸の投与を指す。いくつかの態様では、本発明の操作されたヌクレアーゼまたはそれをコードする核酸は、処置中に本発明の医薬組成物の形態で投与される。
【0128】
本明細書で使用される場合、「ベクター」はウイルスベクター(すなわち、組換えウイルス)を指すこともできる。ウイルスベクターには、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0129】
本明細書で使用される場合、「血清型」または「カプシド」という用語は、ウイルス細胞表面抗原に基づいて決定されるウイルスの種内の別個の変異体を指す。AAVの既知の血清型としては、とりわけ、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11およびAAVHSC(WeitzmanおよびLinden(2011)In Snyder and Moullier Adeno-associated virus methods and protocols.Totowa,NJ:Humana Press)が挙げられる。
【0130】
本明細書で使用される場合、「対照」または「対照細胞」は、遺伝子改変細胞の遺伝子型または表現型の変化を測定するための基準点を提供する細胞を指す。対照細胞は、例えば、(a)野生型細胞、すなわち、遺伝子改変細胞をもたらす遺伝子改変のための出発物質と同じ遺伝子型の野生型細胞、(b)遺伝子改変細胞と同じ遺伝子型であるが、ヌル構築物で(すなわち、目的の形質に既知の影響を有しない構築物で)形質転換された細胞、または(c)遺伝子改変細胞と遺伝的に同一であるが、変化した遺伝子型もしくは表現型の発現を誘導する条件、刺激もしくはさらなる遺伝子改変に曝露されていない細胞を含み得る。
【0131】
本明細書で使用される場合、「有効量」または「治療有効量」という用語は、有益または望ましい生物学的および/または臨床的結果をもたらすのに十分な量を指す。治療有効量は、使用される製剤または組成物、疾患およびその重症度、ならびに処置される対象の年齢、体重、体調および応答性に応じて変化する。いくつかの具体的な実施形態では、有効量のMTEMは、約1×1010gc/kg~約1×1014gc/kg(例えば、1×1010gc/kg、1×1011gc/kg、1×1012gc/kg、1×1013gc/kg、または1×1014gc/kg)のMTEMをコードする核酸または鋳型核酸を含む。特定の実施形態では、本明細書に開示される有効量のMTEMをコードする核酸および/もしくは鋳型核酸、またはMTEMをコードする核酸および/もしくは鋳型核酸を含む医薬組成物は、対象における疾患の少なくとも1つの症状を低減する。
【0132】
本明細書で使用される場合、本明細書で使用される「有効用量」、「有効量」、「治療有効用量」、または「治療有効量」という用語は、有益または望ましい生物学的および/または臨床的結果をもたらすのに十分な量を指す。
【0133】
本明細書で使用される場合、「gc/kg」または「遺伝子コピー/キログラム」という用語は、MTEMをコードする核酸および/または鋳型核酸を投与される対象の体重1キログラム当たりの、本明細書に記載のMTEMをコードする核酸のコピー数または鋳型核酸のコピー数を指す。
【0134】
本明細書で使用される場合、「予防する」という用語は、患者の疾患または状態の予防を指す。
【0135】
本明細書で使用される場合、「予防法」という用語は、疾患または疾患状態の予防または保護的処置を意味する。
【0136】
本明細書で使用される場合、「低減した」という用語は、疾患の症状または重症度の任意の低減を指す。そのような低減は、最大5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または最大100%であり得る。したがって、「低減した」という用語は、疾患状態の部分的な低減および完全な低減の両方を包含する。
【0137】
本明細書で使用される場合、変数の数値範囲の列挙は、その範囲内の値のいずれかに等しい変数で本開示が実施され得ることを伝えることを意図している。したがって、本質的に離散的な変数の場合、変数は、範囲の終点を含む数値範囲内の任意の整数値に等しくなり得る。同様に、本質的に連続的な変数の場合、変数は、範囲の終点を含む数値範囲内の任意の実数値に等しくなり得る。一例として、0と2との間の値を有すると記載されている変数は、その変数が本質的に離散的である場合、0、1または2の値をとることができ、その変数が本質的に連続的である場合、0.0、0.1、0.01、0.001の値、または0以上2以下の任意の他の実数値をとることができるが、これらに限定されない。
【0138】
2.1 発明の原理
ミトコンドリアは、正常な成長および発達の下で、ならびにストレスに応答して、細胞のエネルギーおよび代謝を調節する。したがって、ミトコンドリアゲノムの編集は、動物および植物の両方において多様な用途を有する。ヒトにおいて、有害なミトコンドリア突然変異は、遺伝子編集療法を適用することができるいくつかの障害の原因である。しかしながら、治療用途のためにミトコンドリアゲノム編集を使用する可能性はあるが、ミトコンドリアDNA(mtDNA)を効率的に標的化し、正確な編集を生成することができないため、これは依然としてあまり研究されていない科学領域である。ミトコンドリアゲノムは、編集技術をこの細胞小器官に送達する必要があるため、編集が困難である。また、ミトコンドリアは、予測可能な修復機構を欠いている。ミトコンドリアゲノムを編集する以前の試みは、大規模かつ予測不可能な欠失/再編成をもたらした。したがって、ミトコンドリアゲノムの所定の領域(好ましくは、ただ1つの遺伝子に限定される)をより予測可能な様式で標的化および編集することを可能にする組成物および方法が望まれる。
【0139】
本開示は、ミトコンドリアゲノム内の周囲領域に影響を与えることなく、ミトコンドリアゲノム上の認識配列に結合して切断するための組成物および方法を提供する。本明細書には、操作されたヌクレアーゼ、例えばDSBがmtDNAにおいて生成され得るようにMTPに結合した操作されたメガヌクレアーゼが開示される。本発明は、操作されたメガヌクレアーゼがミトコンドリア細胞小器官に指向させられ、mtDNAの正確な編集を容易にすることができ、したがって、生命科学における展望および機会の分野全体を開くことができることを実証する。
【0140】
2.2 ヒトミトコンドリアDNA内の認識配列を認識および切断するためのミトコンドリアを標的とした操作されたメガヌクレアーゼ
ミトコンドリア移行ペプチド(MTP)に結合した操作されたメガヌクレアーゼから構築されたミトコンドリアを標的とした操作されたメガヌクレアーゼ(MTEM)は、真核細胞の細胞質からミトコンドリアに効果的に輸送することができる。ミトコンドリア細胞小器官内に入ると、MTEMは、ミトコンドリアゲノム内の認識配列に結合して切断することができる。部位特異的ヌクレアーゼを使用して生細胞のゲノム内でDNA切断を行うことが可能であり、そのようなDNA切断は、突然変異誘発性NHEJ修復を介して、またはトランスジェニックDNA配列との相同組換えを介してゲノムの永久的な改変をもたらし得ることが当技術分野で公知である。NHEJは、切断部位で突然変異誘発を生じさせ、対立遺伝子の不活性化をもたらすことができる。NHEJ関連突然変異誘発は、初期終止コドンの生成、異常な非機能性タンパク質を作製するフレームシフト突然変異を介して対立遺伝子を不活性化し得るか、またはナンセンス突然変異媒介mRNA分解などの機構を誘因し得る。NHEJを介して突然変異誘発を誘導するヌクレアーゼの使用は、特定の突然変異または野生型対立遺伝子に存在する配列を標的とするために使用することができる。さらに、標的遺伝子座において二本鎖切断を誘導するためのヌクレアーゼの使用は、特にゲノム標的に相同な配列に隣接するトランスジェニックDNA配列の相同組換えを刺激することが知られている。このようにして、外因性核酸配列を標的遺伝子座に挿入することができる。そのような外因性核酸は、目的の任意の配列またはポリペプチドをコードすることができる。
【0141】
本発明を実施するために使用されるヌクレアーゼはメガヌクレアーゼである。特定の実施形態では、本発明を実施するために使用されるメガヌクレアーゼは、単鎖メガヌクレアーゼである。単鎖メガヌクレアーゼは、リンカーペプチドによって結合されたN末端サブユニットおよびC末端サブユニットを含む。2つのドメインの各々は、認識配列の半分(すなわち、認識半部位)を認識して結合し、DNA切断の部位は、2つのサブユニットの界面付近の認識配列の中央にある。DNA鎖切断は、メガヌクレアーゼによるDNA切断が一対の4塩基対の3’一本鎖オーバーハングを生成するように、4塩基対によって埋め合わせられる。
【0142】
いくつかの実施形態では、本発明の操作されたメガヌクレアーゼは、MIT 11-12認識配列(配列番号3)に結合して切断するように操作されている。そのような操作されたメガヌクレアーゼは、本明細書では「MIT 11-12メガヌクレアーゼ」または「MIT 11-12ヌクレアーゼ」と呼ばれる。
【0143】
本発明の操作されたメガヌクレアーゼは、第1の超可変(HVR1)領域を含む第1のサブユニットと、第2の超可変(HVR2)領域を含む第2のサブユニットとを含むことができる。さらに、第1のサブユニットは、認識配列中の第1の認識半部位に結合することができ、第2のサブユニットは、認識配列中の第2の認識半部位に結合することができる。操作されたメガヌクレアーゼが単鎖メガヌクレアーゼである実施形態では、第1および第2のサブユニットは、HVR1領域を含み第1の半部位に結合する第1のサブユニットがN末端サブユニットとして配置され、HVR2領域を含み第2の半部位に結合する第2のサブユニットがC末端サブユニットとして配置されるように配向され得る。代替の実施形態では、第1および第2のサブユニットは、HVR1領域を含み第1の半部位に結合する第1のサブユニットがC末端サブユニットとして配置され、HVR2領域を含み第2の半部位に結合する第2のサブユニットがN末端サブユニットとして配置されるように配向され得る。
【0144】
様々な実施形態では、MTEMに含まれる操作されたメガヌクレアーゼの第1および/または第2のサブユニットは、配列番号1に示される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、MTEMに含まれる操作されたメガヌクレアーゼの第1および/または第2のサブユニットは、配列番号1の残基7~153と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、MTEMに含まれる操作されたメガヌクレアーゼは、配列番号2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明の特定の実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは、ミトコンドリアゲノム内の配列番号3を含む認識配列に結合して切断し、操作されたメガヌクレアーゼは、第1のサブユニットおよび第2のサブユニットを含み、第1のサブユニットは、認識配列の第1の認識半部位に結合し、第1の超可変(HVR1)領域を含み、第2のサブユニットは、認識配列の第2の認識半部位に結合し、第2の超可変(HVR2)領域を含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、HVR1領域は、配列番号2の残基24~79に対応するアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかのそのような実施形態では、HVR1領域は、配列番号2の残基24、26、28、30、32、33、38、40、42、44、46、68、70、75および77に対応する1つ以上の残基を含む。いくつかのそのような実施形態では、HVR1領域は、配列番号2の残基24、26、28、30、32、33、38、40、42、44、46、68、70、75および77に対応する残基を含む。いくつかのそのような実施形態では、HVR1領域は、配列番号2の残基66に対応する残基にY、R、KまたはDを含む。いくつかのそのような実施形態では、HVR1領域は、配列番号2の残基24~79を含む。いくつかのそのような実施形態では、HVR2領域は、配列番号2の残基215~270に対応するアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかのそのような実施形態では、HVR2領域は、配列番号2の残基215、217、219、221、223、224、229、231、233、235、237、259、261、266および268に対応する1つ以上の残基を含む。いくつかのそのような実施形態では、HVR2領域は、配列番号2の残基215、217、219、221、223、224、229、231、233、235、237、259、261、266および268に対応する残基を含む。いくつかのそのような実施形態では、HVR2領域は、配列番号2の残基257に対応する残基にY、R、KまたはDを含む。いくつかのそのような実施形態では、HVR2領域は、配列番号2の残基215~270を含む。いくつかのそのような実施形態では、第1のサブユニットは、配列番号2の残基7~153に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、第2のサブユニットは、配列番号2の残基198~344に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかのそのような実施形態では、第1のサブユニットは、配列番号2の残基19に対応する残基にG、SまたはAを含む。いくつかのそのような実施形態では、第1のサブユニットは、配列番号2の残基80に対応する残基にE、QまたはKを含む。いくつかのそのような実施形態では、第2のサブユニットは、配列番号2の残基210に対応する残基にG、SまたはAを含む。いくつかのそのような実施形態では、第2のサブユニットは、配列番号2の残基271に対応する残基にE、QまたはKを含む。いくつかのそのような実施形態では、第1のサブユニットは、配列番号2の残基80に対応する残基を含む。いくつかのそのような実施形態では、第2のサブユニットは、配列番号2の残基271に対応する残基を含む。いくつかのそのような実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは、リンカーを含む単鎖メガヌクレアーゼであり、リンカーは第1のサブユニットと第2のサブユニットとを共有結合する。いくつかのそのような実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは、配列番号2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかのそのような実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは、配列番号3に示される核酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる。いくつかのそのような実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは、配列番号3に示される核酸配列によってコードされる。
【0146】
操作されたメガヌクレアーゼをミトコンドリアに指向させるためのMTPは、10~100アミノ酸長であり得る。特定の実施形態では、MTPは、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100またはそれ以上のアミノ酸長である。MTPは、続いてミトコンドリアマトリックスなどのミトコンドリアの異なる領域にタンパク質を標的化する追加のシグナルを含み得る。本明細書に開示される組成物および方法で使用するためのMTPの非限定的な例としては、アカパンカビ(Neurospora crassa)F0 ATPアーゼサブユニット9(SU9)MTP、ヒトチトクロムcオキシダーゼサブユニットVIII(CoxVIIIまたはCox8)MTP、ヒトATPシンターゼMTPのサブユニットcのP1アイソフォーム、アルデヒドデヒドロゲナーゼ標的化配列MTP、グルタレドキシン5 MTP、ピルビン酸デヒドロゲナーゼMTP、ペプチジル-プロリルイソメラーゼMTP、アセチルトランスフェラーゼMTP、イソクエン酸デヒドロゲナーゼMTP、チトクロムオキシダーゼMTP、ならびにATPシンターゼMTPのFA部分のサブユニット、CPN60/No GGリンカーMTP、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)MTP、スーパーオキシドジスムターゼ二倍(2SOD)MTP、スーパーオキシドジスムターゼ改変型(SODmod)MTP、スーパーオキシドジスムターゼ改変型(2SODmod)二倍MTP、L29 MTP、gATPアーゼガンマサブユニット(FAγ51)MTP、CoxIVツインstrep(ABM 97483)MTPおよびCoxIV 10xHis MTPが挙げられる。
【0147】
特定の実施形態では、MTPは、少なくとも2つのMTPの組み合わせを含む。MTPの組み合わせは、同一のMTPの組み合わせであってもよいし、異なるMTPの組み合わせであってもよい。特定の実施形態では、MTPは、CoxVIII MTP(配列番号6)およびSU9 MTP(配列番号7)を配列番号8によって表される単一のMTPに含む。
【0148】
MTEMを形成するために、MTPは、本明細書に開示される操作されたメガヌクレアーゼに任意の適切な手段によって結合され得る。特定の実施形態では、MTPは、操作されたメガヌクレアーゼのN末端に結合することができる。他の実施形態では、MTPは、操作されたメガヌクレアーゼのC末端に結合することができる。いくつかの実施形態では、複数のMTPを単一の操作されたメガヌクレアーゼに結合させてMTEMを形成することができる。例えば、第1のMTPを操作されたメガヌクレアーゼのN末端に結合させることができ、第2のMTPをMTPのC末端に結合させることができる。いくつかの実施形態では、第1および第2のMTPは同一であり、他の実施形態では、第1および第2のMTPは同一ではない。MTPは、操作されたメガヌクレアーゼの細胞のミトコンドリアへの輸送を可能にする任意の手段によって結合させることができる。特定の実施形態では、MTPは、MTPを操作されたメガヌクレアーゼのN末端またはC末端に融合することによって結合している。MTPはまた、ペプチドリンカーによって操作されたメガヌクレアーゼに結合させることができるリンカーは、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15または20個のアミノ酸であり得る。特定の実施形態では、MTPは、操作されたメガヌクレアーゼのN末端またはC末端でペプチドリンカーに結合している。
【0149】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物および方法で使用するためのMTEMは、MTEMが核ゲノムを切断するのを防ぐのを助けるために、核外移行配列(NES)に結合している。いくつかのそのような実施形態では、NESは、配列番号9または10のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、NESは、配列番号9または10のアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、NESは、操作されたメガヌクレアーゼのN末端に結合している。他の実施形態では、NESは、操作されたメガヌクレアーゼのC末端に結合している。ある特定の実施形態では、NESは操作されたメガヌクレアーゼに融合している。ある特定の実施形態では、NESは、ポリペプチドリンカーによって操作されたメガヌクレアーゼに結合している。
【0150】
特定の実施形態では、MTEMは複数のNESに結合している。例えば、本明細書に開示される操作されたメガヌクレアーゼは、第1のNESおよび第2のNESを含むことができる。いくつかのそのような実施形態では、第1のNESはMTEMのN末端に結合し、第2のNESはMTEMのC末端に結合している。いくつかのそのような実施形態では、第1のNESおよび/または第2のNESは、配列番号9または10に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、第1のNESおよび/または第2のNESは、配列番号9または10に示されるアミノ酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、第1のNESおよび第2のNESは同一である。他の実施形態では、第1のNESおよび第2のNESは同一ではない。NESは、当技術分野で公知の任意の適切な手段によってMTEMに結合させることができる。例えば、第1のNESおよび/または第2のNESをMTEMに融合することができる。いくつかの実施形態では、第1のNESおよび/または第2のNESは、ポリペプチドリンカーによってMTEMに結合している。
【0151】
NESを有するMTEMは、NESを有しない操作されたメガヌクレアーゼと比較して、標的細胞または標的細胞集団(例えば、真核細胞または真核細胞集団)の核への輸送が低減または減少し得る。例えば、NESを有するMTEMの核輸送は、NESを有しないMTEMよりも約5~10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、90~100%またはそれ以上少ないものであり得る(例えば、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%またはそれ以上)。いくつかの実施形態では、NESを有する操作されたメガヌクレアーゼは、NESを含まないMTEMと比較して、より少ない核インデル(すなわち、標的細胞または標的細胞集団の核ゲノムにおけるより少ない切断および結果として生じる欠失)を誘導し得る。例えば、NESを有するMTEMによって誘導される核インデルは、NESを有しないMTEMによって誘導される核インデルよりも約5~10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、90~100%またはそれ以上少ないものであり得る。
【0152】
2.3 医薬組成物
いくつかの実施形態では、本発明は、薬学的に許容される担体と本発明のMTEMとを含む、または薬学的に許容される担体と本発明のMTEMをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドとを含む、医薬組成物を提供する。特に、薬学的に許容される担体と、治療有効量のMTEMをコードする核酸とを含む医薬組成物が提供され、MTEMの操作されたメガヌクレアーゼは、ヒトmtDNAなどのmtDNA内の認識配列に対して特異性を有する。
【0153】
他の実施形態では、本発明は、薬学的に許容される担体と本発明の遺伝子改変細胞とを含む医薬組成物を提供する。
【0154】
そのような医薬組成物は、公知の技術に従って調製することができる。例えば、Remington,The Science And Practice of Pharmacy(第21版、Philadelphia,Lippincott,Williams&Wilkins,2005)を参照されたい。本発明による医薬製剤の製造では、ヌクレアーゼポリペプチド(またはそれをコードするDNA/RNAもしくはそれを発現する細胞)は典型的には薬学的に許容される担体と混合され、得られた組成物は対象に投与される。担体は、製剤中の任意の他の成分と適合性であるという意味で許容されなければならず、対象に有害であってはならない。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、対象の疾患の処置に有用な1つ以上の追加の薬剤または生物学的分子をさらに含むことができる。同様に、追加の薬剤および/または生物学的分子は、別個の組成物として同時投与することができる。
【0155】
本発明の特定の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載のMTEMをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド(例えば、ウイルスゲノム)を含む組換えウイルス(すなわち、ウイルスベクター)を含む。そのような組換えウイルスは当技術分野で公知であり、組換えレトロウイルス、組換えレンチウイルス、組換えアデノウイルス、および組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)が含まれる(Vannucciら(2013 New Microbiol.36:1-22において概説されている)。本発明で有用な組換えAAVは、標的細胞型へのウイルスの形質導入および標的細胞によるMTEMの発現を可能にする任意のカプシドまたは血清型を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、組換えAAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、またはAAVHSCの血清型を有する。いくつかの実施形態では、組換えウイルスは標的組織に直接注入される。代替の実施形態では、組換えウイルスは、循環系を介して全身送達される。異なるAAVが異なる組織に局在する傾向があり、特定の組織への優先的送達のために適切なAAVカプシド/血清型を選択することができることは当技術分野で公知である。したがって、いくつかの実施形態では、AAV血清型はAAV2である。代替の実施形態では、AAV血清型はAAV6である。他の実施形態では、AAV血清型はAAV8である。さらに他の実施形態では、AAV血清型はAAV9である。さらなる実施形態では、AAV血清型はAAHSCである。AAVベクターはまた、宿主細胞中で第2鎖DNA合成を必要としないように自己相補的であり得る(McCartyら(2001)Gene Ther.8:1248-54)。組換えAAVベクターによって送達される核酸は、左(5’)および右(3’)逆方向末端反復を含み得る。
【0156】
本発明の特定の実施形態では、医薬組成物は、脂質ナノ粒子内に製剤化された本明細書に記載の1つ以上のmRNA(例えば、MTEMをコードするmRNA)を含む。
【0157】
脂質ナノ粒子を含むカチオン性脂質、非カチオン性脂質および/または脂質コンジュゲート、ならびにそのような脂質の互いに対する相対モル比の選択は、選択された脂質の特徴、意図された標的細胞の性質、および送達されるmRNAの特徴に基づく。さらなる考慮事項には、例えば、アルキル鎖の飽和、ならびに選択された脂質のサイズ、電荷、pH、pKa、融合原性および毒性が含まれる。したがって、個々の成分のモル比はそれに応じて調整することができる。
【0158】
本発明の方法で使用するための脂質ナノ粒子は、当技術分野で現在知られている様々な技術によって調製することができる。核酸-脂質粒子およびそれらの調製方法は、例えば、その開示があらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第20040142025号および第20070042031号に記載されている。
【0159】
脂質ナノ粒子の適切なサイズの選択は、標的細胞の部位および脂質ナノ粒子が作製されている用途を考慮しなければならない。一般に、脂質ナノ粒子は、約25~約500nmの範囲内のサイズを有する。いくつかの実施態様では、脂質ナノ粒子は、約50nm~約300nmまたは約60nm~約120nmのサイズを有する。脂質ナノ粒子のサイズは、参照により本明細書に組み込まれるBloomfield,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.,10:421^150(1981)に記載されているように、準電気光散乱(quasi-electric light scattering)(QELS)によって決定することができる。特定のサイズ範囲の脂質ナノ粒子の集団を作製するための様々な方法、例えば超音波処理または均質化が当技術分野で公知である。そのような方法の1つは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,737,323号に記載されている。
【0160】
本発明での使用が企図されるいくつかの脂質ナノ粒子は、少なくとも1つのカチオン性脂質、少なくとも1つの非カチオン性脂質、および少なくとも1つのコンジュゲート脂質を含む。より特定の例では、脂質ナノ粒子は、約50mol%~約85mol%のカチオン性脂質、約13mol%~約49.5mol%の非カチオン性脂質、および約0.5mol%~約10mol%の脂質コンジュゲートを含むことができ、非ラメラ(すなわち、非二重層)の形態を有するような方法で作製される。他の特定の例では、脂質ナノ粒子は、約40mol%~約85mol%のカチオン性脂質、約13mol%~約49.5mol%の非カチオン性脂質、および約0.5mol%~約10mol%の脂質コンジュゲートを含み得、非ラメラ(すなわち、非二重層)形態を有するような方法で作製される。
【0161】
カチオン性脂質は、例えば、以下の1つ以上を含むことができる。パルミトイル-オレオイル-ノル-アルギニン(PONA)、MPDACA、GUADACA、((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート)(MC3)、LenMC3、CP-LenMC3、γ-LenMC3、CP-γ-LenMC3、MC3MC、MC2MC、MC3エーテル、MC4エーテル、MC3アミド、Pan-MC3、Pan-MC4およびPan MC5、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C2-DMA、「XTC2」)、2,2-ジリノレイル-4-(3-ジメチルアミノプロピル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C3-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(4-ジメチルアミノブチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C4-DMA)、2,2-ジリノレイル-5-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキサン(DLin-K6-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-N-メチルペピアジノ(pepiazino)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-MPZ)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレイオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジo(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、N,N-ジオレイルN,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DSDMA)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、3-(N-(N´,N´-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-yl)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチル アンモニウムブロミド(DMRIE)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミン-カルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、3-ジメチルアミノ-2-(コレスタ-5-エン-3-β-オキシブタン-4-オキシ)-1-(cis,cis-9,12-オクタデカジエノキシ)プロパン(CLinDMA)、2-[5´-(コレスタ-5-エン-3-β-オキシ)-3´-オキサペントキシ)-3-ジメチ(dimethy)-1-(cis,cis-9´,1-2´-オクタデカジエノキシ)プロパン(CpLinDMA)、N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルアミン(DMOBA)、1,2-N,N´-ジオレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DOcarbDAP)、1,2-N,N´-ジリノレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLincarbDAP)またはそれらの混合物。カチオン性脂質はまた、DLinDMA、DLin-K-C2-DMA(「XTC2」)、MC3、LenMC3、CP-LenMC3、γ-LenMC3、CP-γ-LenMC3、MC3MC、MC2MC、MC3エーテル、MC4エーテル、MC3アミド、Pan-MC3、Pan-MC4、Pan MC5、またはそれらの混合物であり得る。
【0162】
様々な実施形態において、カチオン性脂質は、粒子に存在する全脂質の約50mol%~約90mol%、約50mol%~約85mol%、約50mol%~約80mol%、約50mol%~約75mol%、約50mol%~約70mol%、約50mol%~約65mol%、または約50mol%~約60mol%を含む。
【0163】
他の実施形態では、カチオン性脂質は、粒子に存在する全脂質の約40mol%~約90mol%、約40mol%~約85mol%、約40mol%~約80mol%、約40mol%~約75mol%、約40mol%~約70mol%、約40mol%~約65mol%、または約40mol%~約60mol%を含む。
【0164】
非カチオン性脂質は、例えば、1つ以上のアニオン性脂質および/または中性脂質を含み得る。特定の実施形態では、非カチオン性脂質は、以下の中性脂質成分の1つを含む。(1)コレステロールまたはその誘導体、(2)リン脂質、または(3)リン脂質とコレステロールもしくはその誘導体との混合物。コレステロール誘導体の例としては、コレスタノール、コレスタノン、コレステノン、コプロスタノール、コレステリル-2’-ヒドロキシエチルエーテル、コレステリル-4’-ヒドロキシブチルエーテル、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。リン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、パルミトイルオレイル-ホスファチジルグリセロール(POPG)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、ステアロイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、およびそれらの混合物であり得るが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、リン脂質は、DPPC、DSPC、またはそれらの混合物である。
【0165】
いくつかの実施形態では、非カチオン性脂質(例えば、1つ以上のリン脂質および/またはコレステロール)は、粒子に存在する全脂質の約10mol%~約60mol%、約15mol%~約60mol%、約20mol%~約60mol%、約25mol%~約60mol%、約30mol%~約60mol%、約10mol%~約55mol%、約15mol%~約55mol%、約20mol%~約55mol%、約25mol%~約55mol%、約30mol%~約55mol%、約13mol%~約50mol%、約15mol%~約50mol%または約20mol%~約50mol%を含む。非カチオン性脂質がリン脂質とコレステロールまたはコレステロール誘導体との混合物である場合、混合物は、粒子中に存在する全脂質の最大約40、50または60mol%を含み得る。
【0166】
粒子の凝集を阻害するコンジュゲート脂質は、例えば、以下の1つ以上を含み得る。ポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲート、ポリアミド(ATTA)-脂質コンジュゲート、カチオン性ポリマー-脂質コンジュゲート(CPL)、またはそれらの混合物。1つの特定の実施形態では、核酸-脂質粒子は、PEG-脂質コンジュゲートまたはATTA-脂質コンジュゲートのいずれかを含む。ある特定の実施形態では、PEG-脂質コンジュゲートまたはATTA-脂質コンジュゲートは、CPLと一緒に使用される。粒子の凝集を阻害するコンジュゲート脂質は、例えば、PEG-ジアシルグリセロール(DAG)、PEGジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド(Cer)、またはそれらの混合物を含むPEG-脂質を含み得る。PEG-DAAコンジュゲートは、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)、PEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)、またはそれらの混合物であり得る。
【0167】
本発明での使用に適した追加のPEG-脂質コンジュゲートには、mPEG2000-1,2-ジ-O-アルキル-sn3-カルボモイルグリセリド(PEG-C-DOMG)が含まれるが、これらに限定されない。PEG-C-DOMGの合成は、PCT出願第PCT/US 08/88676号に記載されている。本発明での使用に適したなおさらなるPEG-脂質コンジュゲートには、1-[8’-(1,2-ジミリストイル-3-プロパノキシ)-カルボキサミド-3’,6’-ジオキサオクタニル]カルバモイル-ω-メチル-ポリ(エチレングリコール)(2KPEG-DMG)が含まれるが、これらに限定されない。2KPEG-DMGの合成は、米国特許第7,404,969号に記載されている。
【0168】
いくつかの場合、粒子の凝集を阻害するコンジュゲート脂質(例えば、PEG-脂質コンジュゲート)は、粒子に存在する全脂質の約0.1mol%~約2mol%、約0.5mol%~約2mol%、約1mol%~約2mol%、約0.6mol%~約1.9mol%、約0.7mol%~約1.8mol%、約0.8mol%~約1.7mol%、約1mol%~約1.8mol%、約1.2mol%~約1.8mol%、約1.2mol%~約1.7mol%、約1.3mol%~約1.6mol%、約1.4mol%~約1.5mol%、または約1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9もしくは2mol%(またはその任意の画分もしくは範囲)を含み得る。典型的には、そのような場合、PEG部分は約2,000ダルトンの平均分子量を有する。他の場合では、粒子の凝集を阻害するコンジュゲート脂質(例えば、PEG-脂質コンジュゲート)は、粒子に存在する全脂質の約5.0mol%~約10mol%、約5mol%~約9mol%、約5mol%~約8mol%、約6mol%~約9mol%、約6mol%~約8mol%、または約5mol%、6mol%、7mol%、8mol%、9mol%、もしくは10mol%(またはその任意の画分もしくは範囲)を含み得る。典型的には、そのような場合、PEG部分は約750ダルトンの平均分子量を有する。
【0169】
他の実施形態では、組成物は、正電荷担体とは異なる、少なくとも1つの正電荷担体および少なくとも1つの負電荷担体を含有する両性リポソームを含み、リポソームの等電点は4~8である。この目的は、リポソームがpH依存性の変化する電荷を用いて調製されるという事実によって達成される。
【0170】
所望の特性を有するリポソーム構造は、例えば、膜形成または膜ベースのカチオン性電荷担体の量が低pHではアニオン性電荷担体の量を超え、高pHでは比が逆転する場合に形成される。これは、イオン化可能な成分が4~9のpKa値を有する場合に常に当てはまる。媒体のpHが低下すると、すべてのカチオン性電荷担体がより多く帯電し、すべてのアニオン性電荷担体が電荷を失う。
【0171】
両性リポソームに有用なカチオン性化合物としては、本明細書で前述したカチオン性化合物が挙げられる。強カチオン性化合物は、例えば、限定されないが、以下を含み得る。DC-Chol 3-β-[N-(N’、N’-ジメチルメタン)カルバモイル]コレステロール、TC-Chol 3-β-(N’,N’,N’-トリメチルアミノエタン)コレステロール、BGSCビスグアニジニウム-スペルミジン-コレステロール、BGTCビス-グアニジニウム-トレン-コレステロール、DOTAP(1,2-ジオレオイルオキシプロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、DOSPER(1,3-ジオレオイルオキシ-2-(6-カルボキシ-スペルミル)-プロピルアルニド、DOTMA(1,2-ジオレオイルオキシプロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド)(Lipofectin(登録商標))、DORIE 1,2-ジオレオイルオキシプロピル)-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、DOSC(1,2-ジオレオイル-3-スクシニル-sn-グリセリルコリンエステル)、DOGSDSO(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-スクシニル-2-ヒドロキシエチルジスルフィドオミチン)、DDABジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、DOGS((C18)2GlySper3+)N,N-ジオクタデシルアミド-グリコール-スペルミン(Transfectam(登録商標))(C18)2Gly+N,N-ジオクタデシルアミド-グリシン、CTABセチルトリメチルアルモニウムブロミド、CpyCセチルピリジニウムクロリド、DOEPC、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリンまたは他のO-アルキル-ホスファチジルコリンまたはエタノールアミン、リジン、アルギニンまたはオルニチンからのアミドおよびホスファチジルエタノールアミン。
【0172】
弱カチオン性化合物の例としては、限定されないが、以下が挙げられる。His-Chol(ヒスタミニル-コレステロールヘミスクシネート)、Mo-Chol(モルホリン-N-エチルアミノ-コレステロールヘミスクシネート)、またはヒスチジニル-PE。
【0173】
中性化合物の例としては、コレステロール、セラミド、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、テトラエーテル脂質、またはジアシルグリセロールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0174】
両性リポソームに有用なアニオン性化合物には、本明細書で前述した非カチオン性化合物が含まれる。弱アニオン性化合物の例としては、限定されないが、以下を挙げることができる。CHEMS(コレステロールヘミスクシネート)、炭素数8から25のアルキルカルボン酸、またはジアシルグリセロールヘミスクシネート。さらなる弱アニオン性化合物は、アスパラギン酸またはグルタミン酸およびPEのアミド、ならびにPSおよびグリシン、アラニン、グルタミン、アスパラギン、セリン、システイン、トレオニン、チロシン、グルタミン酸、アスパラギン酸または他のアミノ酸もしくはアミノジカルボン酸を有するそのアミドを含むことができる。同様の原理により、ヒドロキシカルボン酸またはヒドロキシジカルボン酸とPSとのエステルも弱アニオン性化合物である。
【0175】
いくつかの実施形態では、両性リポソームは、本明細書中上記で記載されるものなどのコンジュゲート脂質を含有する。有用なコンジュゲート脂質の特定の例には、PEG改変ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジン酸、PEG-セラミドコンジュゲート(例えば、PEG-CerC14またはPEG-CerC20)、PEG改変ジアルキルアミンおよびPEG改変1,2-ジアシルオキシプロパン-3-アミンが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの特定の例は、PEG改変ジアシルグリセロールおよびジアルキルグリセロールである。
【0176】
いくつかの実施形態では、中性脂質は、粒子に存在する全脂質の約10mol%~約60mol%、約15mol%~約60mol%、約20mol%~約60mol%、約25mol%~約60mol%、約30mol%~約60mol%、約10mol%~約55mol%、約15mol%~約55mol%、約20mol%~約55mol%、約25mol%~約55mol%、約30mol%~約55mol%、約13mol%~約50mol%、約15mol%~約50mol%または約20mol%~約50mol%を含む。
【0177】
いくつかの場合、粒子の凝集を阻害するコンジュゲート脂質(例えば、PEG-脂質コンジュゲート)は、粒子に存在する全脂質の約0.1mol%~約2mol%、約0.5mol%~約2mol%、約1mol%~約2mol%、約0.6mol%~約1.9mol%、約0.7mol%~約1.8mol%、約0.8mol%~約1.7mol%、約1mol%~約1.8mol%、約1.2mol%~約1.8mol%、約1.2mol%~約1.7mol%、約1.3mol%~約1.6mol%、約1.4mol%~約1.5mol%、または約1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9もしくは2mol%(またはその任意の画分もしくは範囲)を含む。典型的には、そのような場合、PEG部分は約2,000ダルトンの平均分子量を有する。他の場合では、粒子の凝集を阻害するコンジュゲート脂質(例えば、PEG-脂質コンジュゲート)は、粒子に存在する全脂質の約5.0mol%~約10mol%、約5mol%~約9mol%、約5mol%~約8mol%、約6mol%~約9mol%、約6mol%~約8mol%、または約5mol%、6mol%、7mol%、8mol%、9mol%、もしくは10mol%(またはその任意の画分もしくは範囲)を含み得る。典型的には、そのような場合、PEG部分は約750ダルトンの平均分子量を有する。
【0178】
中性脂質およびコンジュゲート脂質の総量を考慮すると、両性リポソームの残りの残部は、様々な比率で製剤化されたカチオン性化合物とアニオン性化合物の混合物を含むことができる。カチオン性脂質対アニオン性脂質の比は、核酸カプセル化、ゼータ電位、pKa、または帯電した脂質成分の存在に少なくとも部分的に依存する他の物理化学的特性の所望の特性を達成するために選択され得る。
【0179】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)などの真核細胞における送達および取り込みを特異的に増強する組成物を有する。ある特定の実施形態では、脂質ナノ粒子は、肝臓または特に肝細胞における送達および取り込みを特異的に増強する組成物を有する。ある特定の実施形態では、脂質ナノ粒子は、神経細胞における送達および取り込みを特異的に増強する組成物を有する。
【0180】
2.4 組換えウイルスの作製方法
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の方法で使用するための組換えウイルス(例えば、組換えAAV)を提供する。組換えAAVは、典型的には、HEK-293などの哺乳動物細胞株で作製される。ウイルスのcap遺伝子およびrep遺伝子は、その自己複製を防止して治療遺伝子(例えば、ヌクレアーゼ遺伝子)を送達する余地を作るためにベクターから除去されるので、これらをパッケージング細胞株にトランスで提供する必要がある。さらに、複製を支持するのに必要な「ヘルパー」(例えば、アデノウイルス)成分を提供する必要がある(Cotsら(2013)、Curr.Gene Ther.13(5):370-81)。多くの場合、組換えAAVは、「ヘルパー」成分をコードする第1のプラスミド、cap遺伝子およびrep遺伝子を含む第2のプラスミド、ならびにウイルスにパッケージングされる介在DNA配列を含むウイルスITRを含む第3のプラスミドで細胞株をトランスフェクトするトリプルトランスフェクションを使用して作製される。次いで、カプシドに包まれたゲノム(目的のITRおよび介在遺伝子)を含むウイルス粒子を、凍結融解サイクル、超音波処理、界面活性剤、または当技術分野で公知の他の手段によって細胞から単離する。次いで、粒子を塩化セシウム密度勾配遠心法またはアフィニティークロマトグラフィを用いて精製し、続いて目的の遺伝子に細胞、組織またはヒト患者などの生物に送達する。
【0181】
組換えAAVは典型的には細胞内で作製される(製造される)ので、MTEMがパッケージング細胞内で発現されないことを確実にするために、本発明を実施する際に注意を払わなければならない。本発明のウイルスゲノムはヌクレアーゼの認識配列を含み得るので、パッケージング細胞株で発現される任意のヌクレアーゼは、ウイルス粒子にパッケージングされ得る前にウイルスゲノムを切断することができ得る。これは、パッケージング効率の低減および/または断片化されたゲノムのパッケージングをもたらす。パッケージング細胞におけるヌクレアーゼ発現を防止するために、いくつかのアプローチを使用することができる。
【0182】
MTEMは、MTEMの発現に適した任意のプロモータの制御下に置くことができる。いくつかの実施形態では、プロモータは構成的プロモータであるか、またはプロモータは組織特異的プロモータ、例えば筋細胞特異的プロモータ、骨格筋特異的プロモータ、筋管特異的プロモータ、筋サテライト細胞特異的プロモータ、ニューロン特異的プロモータ、アストロサイト特異的プロモータ、ミクログリア特異的プロモータ、眼細胞特異的プロモータ、網膜細胞特異的プロモータ、網膜神経節細胞特異的プロモータ、網膜色素上皮特異的プロモータ、膵臓細胞特異的プロモータ、または膵臓β細胞特異的プロモータである。いくつかの実施形態では、構成的プロモータは、CMVプロモータ、CAGプロモータ、EF1αプロモータ、またはUbCプロモータである。
【0183】
特定の実施形態では、MTEMは、パッケージング細胞中で活性でない組織特異的プロモータの制御下に置くことができる。例えば、筋肉組織へのヌクレアーゼ遺伝子の送達のためにウイルスベクターを開発する場合、筋肉特異的プロモータを使用することができる。筋肉特異的プロモータの例には、C5-12(Liuら、(2004)Hum Gene Ther.15:783-92)、筋肉特異的クレアチンキナーゼ(MCK)プロモータ(Yuasaら、(2002)Gene Ther.9:1576-88)、または平滑筋22(SM22)プロモータ(Haaseら、(2013)BMC Biotechnol.13:49-54)が含まれる。CNS(ニューロン)特異的プロモータの例としては、NSE、シナプシンおよびMeCP2プロモータ(Lentzら(2012)Neurobiol Dis.48:179-88)が挙げられる。肝臓特異的プロモータの例としては、アルブミンプロモータ(Palbなど)、ヒトα1-アンチトリプシン(Pa1ATなど)およびヘモペキシン(Phpxなど)(Kramerら、(2003)Mol.Therapy 7:375-85)、ハイブリッド肝臓特異的プロモータ(ApoE遺伝子由来の肝臓遺伝子座制御領域(ApoE-HCR)および肝臓特異的α1-アンチトリプシンプロモータ)、ヒトチロキシン結合グロブリン(TBG)プロモータおよびアポリポタンパク質A-IIプロモータが挙げられる。眼特異的プロモータの例には、オプシン、および角膜上皮特異的K12プロモータが含まれる(Martinら、(2002)Methods(28):267-75)(Tongら、(2007)J Gene Med,9:956-66)。これらのプロモータ、または当技術分野で公知の他の組織特異的プロモータは、HEK-293細胞中で高度に活性ではなく、したがって、本発明のウイルスベクターに組み込まれた場合、パッケージング細胞中で有意なレベルのヌクレアーゼ遺伝子発現を生じることは予想されない。同様に、本発明のウイルスベクターは、適合しない組織特異的プロモータ(すなわち、周知のHeLa細胞株(ヒト上皮細胞)および肝臓特異的ヘモペキシンプロモータの使用)の使用を伴う他の細胞株の使用を企図する。組織特異的プロモータの他の例としては、滑膜肉腫PDZD4(小脳)、C6(肝臓)、ASB5(筋肉)、PPP1R12B(心臓)、SLC5A12(腎臓)、コレステロール調節APOM(肝臓)、ADPRHL1(心臓)、および一遺伝子性奇形症候群TP73L(筋肉)が挙げられる。(Jacoxら、(2010)、PLoS One v.5(8):e12274)。
【0184】
あるいは、組換えウイルスは、ヌクレアーゼが発現される可能性が低い異なる種由来の細胞にパッケージングすることができる。例えば、ウイルス粒子は、非哺乳動物パッケージング細胞では活性ではない周知のサイトメガロウイルスまたはSV40ウイルス初期プロモータなどの哺乳動物プロモータを使用して、微生物、昆虫または植物細胞で作製することができる。特定の実施形態では、ウイルス粒子は、Gaoら(Gaoら、(2007)、J.Biotechnol.131(2):138-43)によって記載されているバキュロウイルス系を使用して昆虫細胞中で作製される。哺乳動物プロモータの制御下にあるヌクレアーゼは、これらの細胞で発現される可能性は低い(Airenneら(2013)、Mol.Ther.21(4):739-49)。さらに、昆虫細胞は、哺乳動物細胞とは異なるmRNAスプライシングモチーフを利用する。したがって、ヒト成長ホルモン(HGH)イントロンまたはSV40ラージT抗原イントロンなどの哺乳動物イントロンをヌクレアーゼのコード配列に組み込むことが可能である。これらのイントロンは昆虫細胞内のプレmRNA転写物から効率的にスプライシングされないので、昆虫細胞は機能的ヌクレアーゼを発現せず、全長ゲノムをパッケージングする。対照的に、得られた組換えAAV粒子が送達される哺乳動物細胞は、プレmRNAを適切にスプライシングし、機能的ヌクレアーゼタンパク質を発現する。Haifeng Chenは、昆虫パッケージング細胞における毒性タンパク質バルナーゼおよびジフテリア毒素断片Aの発現を減弱させるためのHGHおよびSV40ラージT抗原イントロンの使用を報告しており、これらの毒素遺伝子を有する組換えAAVベクターの作製を可能にしている(Chen,Hら(2012)Mol Ther Nucleic Acids.1(11):e57)。
MTEM遺伝子は、小分子誘導物質がヌクレアーゼ発現に必要とされるように、誘導性プロモータに作動可能に連結され得る。誘導性プロモータの例としては、Tet-On系(Clontech、Chenら、(2015)、BMC Biotechnol.15(1):4))およびRheoSwitch系(Intrexon、Sowaら(2011)、Spine、36(10):E 623~8)が挙げられる。両方の系、ならびに当技術分野で公知の同様の系は、小分子活性化因子(それぞれドキシサイクリンまたはエクジソン)に応答して転写を活性化するリガンド誘導性転写因子(それぞれTetリプレッサーおよびエクジソン受容体の変異体)に依存する。そのようなリガンド誘導性転写活性化因子を使用して本発明を実施することは、1)転写因子に対する(1つまたは複数の)結合部位を有するヌクレアーゼ遺伝子を、対応する転写因子に応答するプロモータの制御下に置くこと、および2)転写因子をコードする遺伝子をパッケージ化されたウイルスゲノムに含めることを含む。後者の工程は、転写活性化因子も同じ細胞に提供されない場合、組換えAAV送達後にヌクレアーゼが標的細胞または組織で発現されないので必要である。次いで、転写活性化因子は、同族小分子活性化因子で処理された細胞または組織においてのみヌクレアーゼ遺伝子発現を誘導する。このアプローチは、小分子誘導物質がいつどの組織に送達されるかを選択することによって、ヌクレアーゼ遺伝子発現を時空間的に調節することを可能にするので有利である。しかしながら、ウイルスゲノムに誘導物質を含める必要性は、運搬能力が著しく制限され、このアプローチに欠点をもたらす。
【0185】
別の特定の実施形態では、組換えAAVは、ヌクレアーゼの発現を妨げる転写リプレッサーを発現する哺乳動物細胞株で作製される。転写リプレッサーは当技術分野で公知であり、Tetリプレッサー、Lacリプレッサー、Croリプレッサーおよびλリプレッサーが挙げられる。エクジソン受容体などの多くの核ホルモン受容体は、それらの同族ホルモンリガンドの非存在下で転写リプレッサーとしても作用する。本発明を実施するために、パッケージング細胞は、転写リプレッサーをコードするベクターでトランスフェクト/形質導入され、ウイルスゲノム中のヌクレアーゼ遺伝子(パッケージングベクター)は、リプレッサーがプロモータをサイレンシングするように、リプレッサーに対する結合部位を含むように改変されたプロモータに作動可能に連結される。転写リプレッサーをコードする遺伝子は、様々な位置に配置することができる。これは、別個のベクター上でコードすることができ、ITR配列の外側のパッケージングベクターに組み込むことができ、cap/repベクターまたはアデノウイルスヘルパーベクターに組み込むことができ、または構成的に発現されるようにパッケージング細胞のゲノムに安定に組み込まれ得る。転写リプレッサー部位を組み込むように一般的な哺乳動物プロモータを改変する方法は、当技術分野で公知である。例えば、ChangおよびRoninsonは、強力な構成的CMVおよびRSVプロモータを、Lacリプレッサーのオペレーターを含むように改変し、改変されたプロモータからの遺伝子発現がリプレッサーを発現する細胞中で大きく減弱されることを示した(ChangおよびRoninson(1996)、Gene 183:137~42)。非ヒト転写リプレッサーの使用は、ヌクレアーゼ遺伝子の転写が、リプレッサーを発現するパッケージング細胞中でのみ抑制され、得られた組換えAAVベクターで形質導入された標的細胞または組織では抑制されないことを確実にする。
【0186】
2.5 遺伝子改変細胞の作製方法
本発明は、ヒトmtDNAなどのmtDNA内に見出される認識配列に結合して切断する操作されたメガヌクレアーゼを含むMTEMを使用して、インビトロおよびインビボの両方で遺伝子改変細胞を作製する方法を提供する。そのような認識配列での切断は、切断部位でのNHEJ、相同組換えによる外因性配列の挿入、またはmtDNAの分解を可能にし得る。
【0187】
本発明は、本発明のMTEM、またはMTEMをコードする核酸が、真核細胞(例えば、ヒト細胞)などの細胞に送達され得る(すなわち、導入される)ことを含む。
【0188】
本発明のMTEMは、タンパク質の形態で、または好ましくはMTEMをコードする核酸として細胞に送達することができる。そのような核酸は、DNA(例えば、環状または線状プラスミドDNAまたはPCR産物)またはRNA(例えば、mRNA)であり得る。したがって、本明細書に開示されるMTEMをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドが本明細書で提供される。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドはmRNAである。本明細書に開示されるMTEMをコードするポリヌクレオチドは、プロモータに作動可能に連結され得る。特定の実施形態では、本明細書に開示されるMTEMをコードする核酸配列を有するポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモータを含む発現カセットが提供される。
【0189】
MTEMコード配列は、DNA形態で送達される実施形態の場合、MTEMコード配列の転写を促進するためにプロモータに作動可能に連結されるべきである。本発明に適した哺乳動物プロモータには、サイトメガロウイルス初期(CMV)プロモータ(Thomsenら、(1984)、Proc Natl Acad Sci USA.81(3):659-63)、SV40初期プロモータ(Benoist and Chambon(1981)、Nature.290(5804):304-10)、CAGプロモータ、EF1αプロモータ、またはUbCプロモータなどの構成的プロモータ、ならびにテトラサイクリン誘導性プロモータ(Dingermannら(1992)、Mol Cell Biol.12(9):4038-45)などの誘導性プロモータが含まれる。本発明のMTEMはまた、合成プロモータに作動可能に連結され得る。合成プロモータとしては、JeTプロモータ(国際公開第2002/012514号)を挙げることができるが、これに限定されない。特定の実施形態では、本発明のMTEMをコードする核酸配列は、組織特異的プロモータ、例えば筋細胞特異的プロモータ、骨格筋特異的プロモータ、筋管特異的プロモータ、筋サテライト細胞特異的プロモータ、ニューロン特異的プロモータ、アストロサイト特異的プロモータ、ミクログリア特異的プロモータ、眼細胞特異的プロモータ、網膜細胞特異的プロモータ、網膜神経節細胞特異的プロモータ、網膜色素上皮特異的プロモータ、膵臓細胞特異的プロモータ、または膵臓β細胞特異的プロモータに作動可能に連結される。
【0190】
特定の実施形態では、MTEMをコードする核酸配列は、組換えDNA構築物または発現カセット上に送達される。例えば、組換えDNA構築物は、プロモータおよび本明細書に記載の操作されたヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む発現カセット(すなわち、「カセット」)を含むことができる。
【0191】
いくつかの実施形態では、操作されたヌクレアーゼをコードする遺伝子が細胞のゲノムに組み込まれる可能性を低減するので、METMをコードするmRNAは細胞に送達される。
【0192】
METMをコードするそのようなmRNAは、インビトロ転写などの当技術分野で公知の方法を使用して作製することができる。いくつかの実施形態では、mRNAは、7-メチル-グアノシン、アンチリバースキャップ類似体(ARCA)(米国特許第7,074,596号)、CLEANCAP(登録商標)類似体、例えばCap 1類似体(Trilink、San Diego、CA)を用いて5’キャップされるか、またはワクシニアキャッピング酵素などを用いて酵素的にキャップされる。いくつかの実施形態では、mRNAはポリアデニル化され得る。mRNAは、コードされたMTEMの発現および/またはmRNA自体の安定性を高めるために、様々な5’および3’非翻訳配列エレメントを含有し得る。そのようなエレメントには、例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス翻訳後調節エレメントなどの翻訳後調節エレメントが含まれ得る。mRNAは、シュードウリジン、5-メチルシチジン、N 6-メチルアデノシン、5-メチルウリジンまたは2-チオウリジンなどのヌクレオシド類似体または天然に存在するヌクレオシドを含有し得る。さらなるヌクレオシド類似体としては、例えば、米国特許第8,278,036号に記載されているものが挙げられる。
【0193】
精製されたMTEMを細胞に送達して、本明細書でさらに詳述されるものを含む、当技術分野で公知の様々な異なる機構によってミトコンドリアDNAを切断することができる。
【0194】
別の特定の実施形態では、本発明のMTEMをコードする核酸は、一本鎖DNA鋳型を使用して細胞に導入される。一本鎖DNAは、MTEMをコードする配列の上流および/または下流に5’および/または3’AAV逆方向末端反復(ITR)をさらに含むことができる。一本鎖DNAは、MTEMをコードする配列の上流および/または下流に5’および/または3’相同アームをさらに含むことができる。
【0195】
別の特定の実施形態では、本発明のMTEMをコードする遺伝子は、線状化DNA鋳型を使用して細胞に導入される。そのような線状化DNA鋳型は、当技術分野で公知の方法によって作製することができる。例えば、ヌクレアーゼをコードするプラスミドDNAは、環状プラスミドDNAが細胞に導入される前に線状化されるように、1つ以上の制限酵素によって消化することができる。
【0196】
精製されたMTEM、またはMTEMをコードする核酸を細胞に送達して、本明細書で以下にさらに詳述するものを含む、当技術分野で公知の様々な異なる機構によってミトコンドリアDNAを切断することができる。
【0197】
いくつかの実施形態では、MTEM、MTEMをコードするDNA/mRNA、またはMTEMを発現する細胞は、既知の技術に従って、薬学的に許容される担体中で全身投与または標的組織への投与のために製剤化される。例えば、Remington,The Science And Practice of Pharmacy(第21版、Philadelphia,Lippincott,Williams&Wilkins,2005)を参照されたい。本発明による医薬製剤の製造において、タンパク質/RNA/mRNA/細胞は、典型的には薬学的に許容される担体と混合される。担体は、当然のことながら、製剤中の任意の他の成分と適合性であるという意味で許容されなければならず、患者に有害であってはならない。担体は、固体もしくは液体、またはその両方であり得、単位用量製剤として化合物と共に製剤化され得る。
【0198】
いくつかの実施形態では、MTEM、またはMTEMをコードするDNA/mRNAは、細胞取り込みを促進するために細胞透過性ペプチドまたは標的化リガンドに結合される。当該分野で公知の細胞透過性ペプチドの例としては、ポリアルギニン(Jearawiriyapaisarnら(2008)Mol Ther.16:1624-9)、HIVウイルス由来のTATペプチド(Hudeczら(2005)、Med.Res.Rev.25:679-736)、MPG(Simeoniら(2003)Nucleic Acids Res.31:2717-2724)、Pep-1(Deshayesら(2004)Biochemistry 43:7698-7706、およびHSV-1 VP-22(Deshayesら(2005)Cell Mol Life Sci.62:1839-49が挙げられる。代替的な実施形態では、MTEM、またはMTEMをコードするDNA/mRNAは、MTEMタンパク質/DNA/mRNAが標的細胞に結合し、標的細胞によって内在化されるように、標的細胞上に発現される特定の細胞表面受容体を認識する抗体に共有結合または非共有結合される。あるいは、MTEMタンパク質/DNA/mRNAは、そのような細胞表面受容体の天然リガンド(または天然リガンドの一部)に共有結合または非共有結合され得る。(McCallら(2014)Tissue Barriers.2(4):e 944449、Dindaら(2013)Curr Pharm Biotechnol.14:1264-74、Kangら(2014)Curr Pharm Biotechnol.15(3):220-30、Qianら(2014)Expert Opin Drug Metab Toxicol.\10(11):1491-508)。
【0199】
いくつかの実施形態では、MTEM、またはMTEMをコードするDNA/mRNAは、生分解性ヒドロゲル内にカプセル化される。ヒドロゲルは、頻繁な注射を必要とせずに標的組織の所望の領域への治療ペイロードの持続的かつ調節可能な放出を提供することができ、刺激応答性材料(例えば、温度およびpH応答性ヒドロゲル)は、環境的または外部から加えられたキューに応答してペイロードを放出するように設計することができる(Kang Derwentら(2008)Trans Am Ophthalmol Soc.106:206-214)。
【0200】
いくつかの実施形態では、MTEM、またはMTEMをコードするDNA/mRNAは、当技術分野で公知の方法(Sharmaら(2014)Biomed Res Int.2014)を使用して、ナノ粒子に共有結合もしくは好ましくは非共有結合されるか、またはそのようなナノ粒子内にカプセル化される。ナノ粒子は、長さスケールが1μm未満、好ましくは100nm未満であるナノスケール送達システムである。そのようなナノ粒子は、金属、脂質、ポリマー、または生物学的巨大分子で構成されたコアを使用して設計することができ、複数コピーのヌクレアーゼタンパク質、mRNA、またはDNAをナノ粒子コアに結合またはカプセル化することができる。これは、各細胞に送達されるタンパク質/mRNA/DNAのコピー数を増加させ、したがって、各MTEMの細胞内発現を増加させて、標的認識配列が切断される可能性を最大にする。そのようなナノ粒子の表面は、ポリマーまたは脂質(例えば、キトサン、カチオン性ポリマーまたはカチオン性脂質)でさらに改変されて、その表面が細胞送達およびペイロードの取り込みを増強するための追加の機能性を付与するコア-シェルナノ粒子を形成し得る(Jianら(2012)Biomaterials.33(30):7621-30)。ナノ粒子は、ナノ粒子を適切な細胞型に指向させるために、および/または細胞取り込みの可能性を高めるために、標的化分子にさらに有利に結合され得る。そのような標的化分子の例としては、細胞表面受容体に特異的な抗体および細胞表面受容体の天然リガンド(または天然リガンドの一部)が挙げられる。
【0201】
いくつかの実施形態では、MTEMまたはMTEMをコードするDNA/mRNAは、リポソーム内にカプセル化されるか、カチオン性脂質(例えば、LIPOFECTAMINE(商標)、Life Technologies Corp.、Carlsbad、CA、Zurisら(2015)Nat Biotechnol.33:73-80、Mishraら(2011)、J Drug Deliv.、2011:863734を参照のこと)を使用して複合体化される。リポソームおよびリポプレックス製剤は、ペイロードを分解から保護し、標的部位での蓄積および保持を増強し、標的細胞の細胞膜との融合および/または破壊を通じて細胞取り込みおよび送達効率を促進することができる。
【0202】
いくつかの実施形態では、MTEM、またはMTEMをコードするDNA/mRNAは、ポリマー足場(例えば、PLGA)内にカプセル化されるか、またはカチオン性ポリマー(例えば、PEI、PLL)を使用して複合体化される(Tamboliら(2011)、Ther Deliv.2(4):523~536)。ポリマー担体は、ポリマー侵食および薬物拡散の制御によって調整可能な薬物放出速度を提供するように設計することができ、高い薬物カプセル化効率は、所望の標的細胞集団への細胞内送達まで治療ペイロードの保護を提供することができる。
【0203】
いくつかの実施形態では、MTEM、またはMTEMをコードするDNA/mRNAは、ミセルに自己集合する両親媒性分子と組み合わされる(Tongら(2007)J Gene Med.9(11):956-66)。ポリマーミセルは、凝集を防止し、電荷相互作用をマスクし、非特異的相互作用を低減することができる親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)で形成されたミセルシェルを含み得る。
【0204】
いくつかの実施形態では、MTEM、またはMTEMをコードするDNA/mRNAは、標的細胞への投与および/または送達のためにエマルジョンまたはナノエマルジョン(すなわち、1nm未満の平均粒径を有する)に製剤化される。「エマルジョン」という用語は、水不混和性相が水相と混合された場合に、無極性残基(例えば、長い炭化水素鎖)を水から遠ざけ、極性頭部基を水に向ける疎水力の結果として形成することができる脂質構造を含む、任意の水中油型、油中水型、水中油中水型、または油中水中油型の分散液または液滴を指すが、これらに限定されない。これらの他の脂質構造には、単層、少層(paucilamellar)、および多層の脂質小胞、ミセル、およびラメラ相が含まれるが、これらに限定されない。エマルジョンは、水相および親油性相(典型的には油および有機溶媒を含有する)から構成される。エマルジョンはまた、1つ以上の界面活性剤を含むことが多い。ナノエマルジョン製剤は、例えば、米国特許第6,015,832号、同第6,506,803号、同第6,635,676号、同第6,559,189号および同第7,767,216号に記載されているように周知であり、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0205】
いくつかの実施形態では、MTEM、またはMTEMをコードするDNA/mRNAは、多機能ポリマーコンジュゲート、DNAデンドリマー、およびポリマーデンドリマーに共有結合または非共有結合する(Mastorakosら(2015)Nanoscale.7(9):3845-56;Chengら(2008)J Pharm Sci.97(1):123-43)。デンドリマー生成は、ペイロード容量およびサイズを制御することができ、高いペイロード容量を提供することができる。さらに、複数の表面基の表示を利用して、安定性を改善し、非特異的相互作用を低減し、細胞特異的標的化および薬物放出を増強することができる。
【0206】
いくつかの実施形態では、MTEMをコードする核酸配列を有するポリヌクレオチドは、組換えウイルスを使用して細胞に導入される。そのような組換えウイルスは当技術分野で公知であり、組換えレトロウイルス、組換えレンチウイルス、組換えアデノウイルス、および組換えAAVが含まれる(Vannucciら(2013)New Microbiol.36:1-22において概説されている)。本発明で有用な組換えAAVは、標的細胞型へのウイルスの形質導入および標的細胞によるMTEMの発現を可能にする任意のカプシドまたは血清型を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、組換えAAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、またはAAVHSCの血清型を有する。いくつかの実施形態では、組換えウイルスは標的組織に直接注入される。代替の実施形態では、組換えウイルスは、循環系を介して全身送達される。異なるAAVが異なる組織に局在する傾向があり、特定の組織への優先的送達のために適切なAAVカプシド/血清型を選択することができることは当技術分野で公知である。したがって、いくつかの実施形態では、AAV血清型はAAV2である。代替の実施形態では、AAV血清型はAAV6である。他の実施形態では、AAV血清型はAAV8である。さらに他の実施形態では、AAV血清型はAAV9である。AAVはまた、宿主細胞中で第2鎖DNA合成を必要としないように自己相補的であり得る(McCartyら(2001)Gene Ther.8:1248-54)。組換えAAVベクターによって送達されるポリヌクレオチドは、左(5’)および右(3’)逆方向末端反復を含み得る。
【0207】
一実施形態では、MTEMをコードする核酸配列を有するポリヌクレオチドの送達に使用される組換えウイルスは、自己制限組換えウイルス(self-limiting recombinant virus)である。自己制限組換えウイルスは、ウイルスゲノム内に操作されたメガヌクレアーゼの認識配列が存在するため、細胞または生物において限られた持続時間を有することができる。したがって、自己制限組換えウイルスを、プロモータ、本明細書に記載のMTEM、およびITR内のメガヌクレアーゼ認識部位のコードを提供するように操作することができる。自己制限組換えウイルスは、MTEMが発現され、ゲノム内の内因性認識配列で細胞のゲノムを切断することができるように、メガヌクレアーゼ遺伝子を細胞、組織、または生物に送達する。送達されたメガヌクレアーゼはまた、自己制限組換えウイルス自体の中にその標的部位を見つけ、この標的部位でウイルスゲノムを切断する。切断されると、ウイルスゲノムの5’および3’末端が露出され、エキソヌクレアーゼによって分解され、したがってウイルスが死滅し、MTEMの作製が停止する。
【0208】
MTEMをコードする核酸配列を有するポリヌクレオチドがDNA形態(例えば、プラスミド)で、および/またはウイルスベクター(例えばAAV)を介して送達される場合、それらはプロモータに作動可能に連結されなければならない。いくつかの実施形態では、これは、ウイルスベクター由来の内因性プロモータ(例えばレンチウイルスベクターのLTR)または本明細書の他の箇所に記載されている構成的もしくは組織特異的プロモータなどのウイルスプロモータであり得る。特定の実施形態では、MTEMをコードする核酸配列を有するポリヌクレオチドは、神経細胞、筋細胞、膵臓細胞、眼細胞などの標的細胞中で遺伝子発現を優先的に駆動するプロモータに作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、標的細胞は、筋細胞、骨格筋細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、眼細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、膵臓細胞、もしくは膵臓β細胞であり、または標的細胞の集団は、筋細胞、骨格筋細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、眼細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、膵臓細胞、もしくは膵臓β細胞の集団であり、または標的細胞の集団は、筋細胞、骨格筋管細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、眼細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、膵臓細胞もしくは膵臓β細胞の集団であり、または標的細胞の集団は、筋細胞、骨格筋細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、眼細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、膵臓細胞もしくは膵臓β細胞の集団である。
【0209】
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチド、例えば上記の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを真核細胞または真核細胞集団に導入することによって、遺伝子改変真核細胞または遺伝子改変真核細胞集団を作製する方法が本明細書で提供される。真核細胞または真核細胞集団で発現すると、操作されたメガヌクレアーゼはミトコンドリアに局在し、ミトコンドリアゲノム内の認識配列に結合し、切断部位を生成する。操作されたメガヌクレアーゼによって生成された切断部位は、切断部位での核酸の挿入または欠失をもたらし得るNHEJ修復経路によって修復され得る。追加的または代替的に、真核細胞または真核細胞集団のミトコンドリアゲノム内の操作されたメガヌクレアーゼによって生成された切断部位は、代替非相同末端結合(Alt-NHEJ)またはマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)によって修復され得る。NHEJまたはAlt-NHEJ/MMEJは、切断部位での核酸の挿入および/または欠失をもたらし得る。特に、NHEJまたはAlt-NHEJ/MMEJは、切断部位に1~1000(例えば、1~10、10~100、100~200、200~300、300~400、400~500、500~600、600~700、700~80、800~900または900~1000)ヌクレオチド、例えば約1、5、10、15、20、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975または1000ヌクレオチドの挿入および/または欠失をもたらし得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される遺伝子改変真核細胞または本明細書に開示される遺伝子改変真核細胞集団中のミトコンドリアゲノムを分解することができる。いくつかのそのような実施形態では、認識配列を含むミトコンドリアゲノムの割合は、対照細胞と比較して、約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%低下するか、または約30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、90~100%もしくはそれ以上分解されることができる。特定の実施形態では、配列番号3のMTEM認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムが分解される。MTEM認識配列を有する突然変異ミトコンドリアゲノムを分解することにより、突然変異ミトコンドリアゲノムに対する野生型ミトコンドリアゲノムの全体的な比は、本明細書に開示されるMTEMの投与または発現後に増加する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される単一の遺伝子改変真核細胞または集団の遺伝子改変真核細胞における突然変異ミトコンドリアゲノムに対する野生型ミトコンドリアゲノムの比は、約5:95、約10:90、約15:85、約20:80、約25:75、約30:70、約35:65、約40:60、約45:55、約50:50、約55:45、約60:40、約65:35、約70:30、約75:25、約80:20、約85:15、約90:10、約95:5、約20:1、約50:1、約100:1、約150:1、約200:1、約250:1、約300:1、約350:1、約400:1、約450:1、約500:1、約550:1、約600:1、約650:1、約700:1、約750:1、約800:1、約850:1、約900:1、約950:1、約1000:1またはそれ以上まで増加する。
【0210】
特定の実施形態では、本明細書に開示される単一の遺伝子改変真核細胞または本明細書に開示される遺伝子改変真核細胞の集団における野生型ゲノムの割合は、配列番号3を含む突然変異ミトコンドリアゲノムがMTEMによって認識され、切断され、分解されるにつれて増加し得る。本明細書に開示される遺伝子改変真核細胞または遺伝子改変細胞集団における野生型ミトコンドリアゲノムの割合は、本明細書に開示されるMTEMを発現しない真核細胞または真核細胞集団と比較した場合、遺伝子改変真核細胞または遺伝子改変細胞集団における全ミトコンドリアゲノムの約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上であり得る。同様に、遺伝子改変真核細胞または遺伝子改変細胞集団における配列番号3の認識配列を含む突然変異ミトコンドリアゲノムの割合は、本明細書に開示されるMTEMを発現しない真核細胞または真核細胞集団と比較した場合、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上減少し得る。
【0211】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される遺伝子改変真核細胞または遺伝子改変真核細胞集団におけるミトコンドリア呼吸は、本明細書に開示されるMTEMを発現しない真核細胞と比較した場合、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%またはそれ以上増加し得る。本明細書に開示される遺伝子改変真核細胞または遺伝子改変真核細胞集団におけるミトコンドリア呼吸は、本明細書に開示されるMTEMを発現しない真核細胞または真核細胞集団と比較した場合、約30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、90~100%またはそれ以上増加し得る。
【0212】
ある特定の場合において、認識配列は、ミトコンドリア障害に関連するミトコンドリアゲノムの領域内にある。
【0213】
正常なmtDNAおよび突然変異したmtDNAの両方が同じ細胞に存在することができ、これはヘテロプラスミーとして知られる状況である。欠損ミトコンドリアの数は、正常ミトコンドリアの数よりも多くてもよい。突然変異が有意な割合のmtDNAに影響を及ぼすまで、症状は所与の世代では現れない可能性がある。異なる組織における正常および突然変異mtDNAの不均一な分布は、同じファミリーのメンバーにおける異なる器官に影響を及ぼし得る。これは、罹患したファミリーに様々な症状をもたらし得る。
【0214】
特定の実施形態では、真核細胞または真核細胞集団のミトコンドリアゲノムに本明細書に開示される認識配列は、ミトコンドリアゲノムのヌクレオチド8470と13,447との間に位置する。特定の実施形態では、真核細胞または真核細胞集団のミトコンドリアゲノム内の認識配列は、ヌクレオチド8460と8580との間またはヌクレオチド13,437と13,457との間に位置する。特定の実施形態では、配列番号3の認識配列は、突然変異ミトコンドリアゲノム上にのみ位置する。遺伝子改変真核細胞または遺伝子改変真核細胞集団で発現すると、MTEMはミトコンドリアに局在し、ミトコンドリアゲノム内の認識配列に結合し、切断部位を生成することができる。したがって、変異ゲノム上にのみ位置する認識配列を標的とすることによって、ゲノムを切断し、続いて分解することができる。突然変異ミトコンドリアゲノムのこの特異的分解は、ミトコンドリア障害(例えば、ミトコンドリア共通欠失障害(mitochondrial common deletion disorder)またはMELAS)の症状の処置または緩和を助けるために使用することができる。
【0215】
したがって、本明細書に開示されるMTEMをコードする核酸配列またはMTEMを含むポリヌクレオチドを標的細胞または集団に送達することによって、標的細胞または標的細胞の集団中の突然変異ミトコンドリアゲノムを分解するための方法が本明細書に提供される。特定の実施形態では、標的細胞または標的細胞の集団は突然変異ミトコンドリアゲノムを含み、MTEMはMTEM認識配列(例えば、配列番号3)を認識および切断する。標的細胞または標的細胞集団は、ヒト対象などの哺乳動物対象であり得る。いくつかの実施形態では、標的細胞は、筋細胞、骨格筋細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、眼細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、膵臓細胞、もしくは膵臓β細胞であり、または標的細胞の集団は、筋細胞、骨格筋細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、眼細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、膵臓細胞、もしくは膵臓β細胞の集団であり、または標的細胞の集団は、筋細胞、骨格筋管細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、眼細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、膵臓細胞もしくは膵臓β細胞の集団であり、または標的細胞の集団は、筋細胞、骨格筋細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、眼細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、膵臓細胞もしくは膵臓β細胞の集団である。
【0216】
対象のミトコンドリア障害に関連する状態を処置する方法が本明細書に開示される。そのような方法は、本明細書に開示される治療有効量のMTEMをコードする核酸配列を有するポリヌクレオチド、または治療有効量のMTEMを対象に投与することを含み、MTEMは、ミトコンドリア欠失を有する突然変異ミトコンドリアゲノム中の配列番号3の認識配列の切断部位を生成する。突然変異ミトコンドリアゲノムで生成された切断部位は、突然変異ミトコンドリアゲノムの分解をもたらし得る。特定の実施形態では、処置することは、ミトコンドリア障害に関連する状態の少なくとも1つの症状を低減または緩和することを含む。例えば、mtDNA共通欠失の症状には、ミオパシー、アルツハイマー病、ピアソン症候群、皮膚の光老化、カーンズ・セイアー症候群(KSS)、または慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)の任意の症状が含まれるが、これらに限定されない。具体的には、mtDNA共通欠失の症状には、色素性網膜症、およびPEO、小脳性運動失調、知能障害(知的障害、認知症、またはその両方)、感音性難聴、下垂症、中咽頭および食道機能障害、運動不耐性、筋力低下、心伝導ブロック、内分泌障害、鉄芽球性貧血および膵臓外分泌機能障害、下垂症、外眼筋の麻痺による眼球運動障害(眼筋麻痺)、中咽頭脱力、または運動不耐性を伴う様々な重度の近位肢脱力が含まれ得る。いくつかの実施形態では、状態は、骨髄、膵臓、筋肉、骨格筋、中枢神経系、眼または耳の状態である。いくつかの実施形態では、状態は、ピアソン症候群、カーンズ・セイアー症候群(KSS)、進行性外眼筋麻痺(PEO)、糖尿病または腎機能障害である。
【0217】
いくつかの実施形態では、対象に、MTEMをコードする核酸の約1×1010gc/kg~約1×1014gc/kg(例えば、1×1010gc/kg、1×1011gc/kg、1×1012gc/kg、1×1013gc/kg、または1×1014gc/kg)の用量で本明細書に開示される医薬組成物を投与する。いくつかの実施形態では、対象に、MTEMをコードする核酸の少なくとも約1×1010gc/kg、少なくとも約1×1011gc/kg、少なくとも約1×1012gc/kg、少なくとも約1×1013gc/kg、または少なくとも約1×1014gc/kgの用量で医薬組成物を投与する。いくつかの実施形態では、対象に、MTEMをコードする核酸の約1×1010gc/kg~約1×1011gc/kg、約1×1011gc/kg~約1×1012gc/kg、約1×1012gc/kg~約1×1013gc/kg、または約1×1013gc/kg~約1×1014gc/kgの用量で医薬組成物を投与する。ある特定の実施形態では、対象に、MTEMをコードする核酸の約1×1012gc/kg~約9×1013gc/kg(例えば、約1×1012gc/kg、約2×1012gc/kg、約3×1012gc/kg、約4×1012gc/kg、約5×1012gc/kg、約6×1012gc/kg、約7×1012gc/kg、約8×1012gc/kg、約9×1012gc/kg、約1×1013gc/kg、約2×1013gc/kg、約3×1013gc/kg、約4×1013gc/kg、約5×1013gc/kg、約6×1013gc/kg、約7×1013gc/kg、約8×1013gc/kg、または約9×1013gc/kg)の用量で医薬組成物を投与する。
【0218】
いくつかの実施態様では、対象に、MTEMをコードするmRNAの約0.1mg/kg~約3mg/kgの用量で脂質ナノ粒子製剤を投与する。いくつかの実施態様では、対象に、MTEMをコードするmRNAの少なくとも約0.1mg/kg、少なくとも約0.25mg/kg、少なくとも約0.5mg/kg、少なくとも約0.75mg/kg、少なくとも約1.0mg/kg、少なくとも約1.5mg/kg、少なくとも約2.0mg/kg、少なくとも約2.5mg/kg、または少なくとも約3.0mg/kgの用量で脂質ナノ粒子製剤を投与する。いくつかの実施態様では、対象に、MTEMをコードするmRNAの約0.1mg/kg~約0.25mg/kg、約0.25mg/kg~約0.5mg/kg、約0.5mg/kg~約0.75mg/kg、約0.75mg/kg~約1.0mg/kg、約1.0mg/kg~約1.5mg/kg、約1.5mg/kg~約2.0mg/kg、約2.0mg/kg~約2.5mg/kg、または約2.5mg/kg~約3.0mg/kg内の用量で脂質ナノ粒子製剤を投与する。
【0219】
本発明のMTEMまたは本発明のMTEMをコードする核酸の送達のための標的組織には、神経組織、筋肉組織、神経筋組織、膵臓組織、および眼/網膜組織が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、送達のための標的細胞は、筋細胞、骨格筋細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、眼細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、膵臓細胞、もしくは膵臓β細胞であり、または標的細胞の集団は、筋細胞、骨格筋細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、眼細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、膵臓細胞、もしくは膵臓β細胞の集団であり、または標的細胞の集団は、筋細胞、骨格筋管細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、眼細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、膵臓細胞もしくは膵臓β細胞の集団であり、または標的細胞の集団は、筋細胞、骨格筋細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、眼細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、膵臓細胞もしくは膵臓β細胞の集団である。
【0220】
本明細書に記載の方法の様々な実施形態では、本明細書に記載の1つ以上のMTEM、そのようなMTEMをコードするポリヌクレオチド、またはそのようなMTEMをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む組換えウイルスは、当技術分野で公知の任意の適切な投与経路を介して投与することができる。したがって、本明細書に記載される1つ以上のMTEM、そのようなMTEMをコードするポリヌクレオチド、またはそのようなMTEMをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む組換えウイルスは、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、肝臓内、経粘膜、経皮、動脈内、および舌下を含む投与経路によって投与され得る。いくつかの実施形態では、MTEM、またはmRNA、またはDNAベクターMTEMは、標的組織への直接注射を介して標的細胞(例えば、神経細胞、筋細胞、膵臓細胞、眼細胞など)に供給される。いくつかの実施形態では、真核細胞は、幹細胞、CD34+HSC、筋細胞、骨格筋細胞、筋管細胞、筋サテライト細胞、ニューロン、アストロサイト、ミクログリア細胞、眼細胞、網膜細胞、網膜神経節細胞、網膜色素上皮細胞、膵臓細胞、膵臓β細胞、腎臓細胞、骨髄細胞、または耳毛細胞である。MTEM、そのようなMTEMをコードするポリヌクレオチド、またはそのようなMTEMをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む組換えウイルスの他の適切な投与経路は、必要に応じて処置医によって容易に決定され得る。
【0221】
いくつかの実施形態では、治療有効量の本明細書に記載のMTEMを、それを必要とする対象に投与する。必要に応じて、MTEMの投与量または投与頻度は、投与する医師の判断に基づいて、処置の経過にわたって調整され得る。適切な用量は、他の要因の中でも、選択される任意のAAVの詳細(例えば、血清型など)、投与経路、処置される対象(すなわち、対象の年齢、体重、性別および全身状態)、および投与様式に依存する。したがって、適切な投与量は患者によって異なり得る。適切な有効量は、当業者によって容易に決定され得る。投薬処置は、単回用量スケジュールまたは複数回用量スケジュールであり得る。さらに、対象は、適切な用量数だけ投与され得る。当業者は、適切な用量数を容易に決定することができる。投与量は、代替的な投与経路を考慮に入れるか、または治療上の利益となんらかの副作用とのバランスをとるように調整する必要があり得る。
【0222】
本発明の外因性核酸分子は、前述の手段のいずれかによって細胞に導入され、および/または対象に送達され得る。特定の実施形態では、外因性核酸分子は、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、または組換えAAVなどの組換えウイルスによって導入される。外因性核酸分子を導入するのに有用な組換えAAVは、本明細書で前述した血清型/カプシドを含む、ウイルスの細胞への形質導入および外因性核酸分子配列の細胞ゲノムへの挿入を可能にする任意の血清型を有することができる。組換えAAVはまた、宿主細胞中で第2鎖DNA合成を必要としないように自己相補的であり得る。組換えAAVを使用して導入された外因性核酸分子は、5´(左)および3´(右)逆方向末端反復に隣接することができる。
【0223】
別の特定の実施形態では、外因性核酸分子は、一本鎖DNA鋳型を使用して細胞に導入することができる。一本鎖DNAは、外因性核酸分子を含むことができ、特定の実施形態では、相同組換えによってヌクレアーゼ切断部位への核酸配列の挿入を促進するために5’および3’相同アームを含むことができる。一本鎖DNAは、5’相同アームの5’上流に5’AAV逆方向末端反復(ITR)配列、および3’相同アームの3’下流に3’AAV ITR配列をさらに含むことができる。
【0224】
別の特定の実施形態では、本発明のMTEMをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドおよび/または本発明の外因性核酸分子は、線状化DNA鋳型によるトランスフェクションによって細胞に導入することができる。MTEMおよび/または外因性核酸分子をコードするプラスミドDNAは、例えば、環状プラスミドDNAが細胞へのトランスフェクションの前に線状化されるように、1つ以上の制限酵素によって消化することができる。
【0225】
細胞に送達される場合、本発明の外因性核酸は、前述の哺乳動物プロモータおよび誘導性プロモータを含む、細胞におけるコードされたポリペプチドの発現に適した任意のプロモータに作動可能に連結され得る。本発明の外因性核酸はまた、合成プロモータに作動可能に連結され得る。合成プロモータとしては、JeTプロモータ(国際公開第2002/012514号)を挙げることができるが、これに限定されない。
【0226】
2.6 変異体
本発明は、本明細書に記載のポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列の変異体を包含する。
【0227】
本明細書で使用される場合、「変異体」は、実質的に類似の配列を意味することを意図している。「変異体」ポリペプチドは、天然タンパク質の1つ以上の内部部位での1つ以上のアミノ酸の欠失もしくは付加、および/または天然ポリペプチドの1つ以上の部位での1つ以上のアミノ酸の置換による、「天然」ポリペプチドに由来するポリペプチドを意味することを意図している。本明細書で使用される場合、「天然」ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、変異体が由来する親配列を含む。実施形態に包含される変異体ポリペプチドは、生物学的に活性である。すなわち、それらは天然タンパク質の所望の生物学的活性、例えば、mtDNA(例えば、ヒトmtDNA)に見られる認識配列、例えばMIT 11-12認識配列(配列番号3)に結合して切断する能力を保持し続ける。そのような変異体は、例えば、人間の操作から生じ得る。いくつかの実施形態では、実施形態の天然ポリペプチドの生物学的に活性な変異体(例えば、配列番号2または4)、または本明細書に記載の認識半部位結合サブユニットの生物学的に活性な変異体は、本明細書の他の箇所に記載の配列アラインメントプログラムおよびパラメータによって決定される場合、天然ポリペプチド、天然サブユニット、天然HVR1、または天然HVR2のアミノ酸配列と少なくとも約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有する。実施形態のポリペプチドまたはサブユニットの生物学的に活性な変異体は、わずか約1~40アミノ酸残基、わずか約1~20アミノ酸残基、わずか約1~10アミノ酸残基、わずか約5アミノ酸残基、わずか4アミノ酸残基、3アミノ酸残基、2アミノ酸残基、またはさらには1アミノ酸残基だけ、そのポリペプチドまたはサブユニットと異なり得る。
【0228】
実施形態のポリペプチドは、アミノ酸の置換、欠失、切断および挿入を含む様々な方法で変化し得る。そのような操作のための方法は、当技術分野で一般的に知られている。例えば、アミノ酸配列突然変異体は、DNA中の突然変異によって調製することができる。突然変異誘発およびポリヌクレオチド変化のための方法は、当技術分野で周知である。例えば、Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488-492、Kunkelら(1987)Methods in Enzymol.154:367-382、米国特許第4,873,192号、WalkerおよびGaastra編(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company、New York)およびそこに引用されている参考文献を参照されたい。目的のタンパク質の生物学的活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関する指針は、Dayhoffら(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.、Washington,D.C.)のモデルに見出すことができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。1つのアミノ酸を類似の特性を有する別のアミノ酸と交換するなどの保存的置換が最適であり得る。
【0229】
いくつかの実施形態では、本発明の操作されたメガヌクレアーゼは、本明細書に開示されるHVR1およびHVR2領域の変異体を含むことができる。親HVR領域は、例えば、例示の操作されたメガヌクレアーゼの残基24~79または残基215~270を含むことができる。したがって、変異体HVRは、変異体HVR領域が操作されたメガヌクレアーゼの生物学的活性(すなわち、認識配列への結合および切断)を維持するように、本明細書に例示される操作されたメガヌクレアーゼの残基24~79または残基215~270に対応するアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。さらに、本発明のいくつかの実施形態では、変異体HVR1領域または変異体HVR2領域は、親HVR内の特定の位置に見られるアミノ酸残基に対応する残基を含むことができる。この文脈において、「に対応する」とは、変異体HVR中のアミノ酸残基が、同じ相対位置で(すなわち、親配列中の残りのアミノ酸に関して)親HVR配列中に存在する同じアミノ酸残基(すなわち、別個の同一の残基)であることを意味する。例として、親HVR配列が位置26にセリン残基を含む場合、残基26に「対応する残基を含む」変異型HVRはまた、親の位置26に対して相対的な(すなわち、対応する)位置にセリンを含む。
【0230】
特定の実施形態では、本発明の操作されたメガヌクレアーゼは、配列番号2または4の残基215~270に対応するアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはそれ以上の配列同一性を有するHVR1を含む。
【0231】
ある特定の実施形態では、本発明の操作されたメガヌクレアーゼは、配列番号2または4の残基24~79に対応するアミノ酸配列と80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはそれ以上の配列同一性を有するHVR2を含む。
【0232】
野生型I-CreIメガヌクレアーゼのDNA認識ドメインに対する相当数のアミノ酸改変が以前に同定されており(例えば、米国特許第8,021,867号)、これは単独でまたは組み合わせて、DNA認識配列半部位内の個々の塩基で特異性が変化した操作されたメガヌクレアーゼをもたらし、その結果、得られた合理的に設計されたメガヌクレアーゼは、野生型酵素とは異なる半部位特異性を有する。表1は、認識半部位の各半部位位置(-1から-9)に存在する塩基に基づいて特異性を高めるために操作されたメガヌクレアーゼモノマーまたはサブユニットにおいて行われ得る潜在的な置換を提供する。そのような置換は、本明細書に開示されるメガヌクレアーゼの変異体に組み込まれる。
【0233】
【0234】
太字のエントリは野生型接触残基であり、本明細書で使用される「改変」の構成要素とはならない。アスタリスクは、残基がアンチセンス鎖上の塩基と接触することを示す。
【0235】
DNA結合親和性および/または活性を調節するために、操作されたメガヌクレアーゼモノマーまたはサブユニットにおいてある特定の改変を行うことができる。例えば、本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼモノマーまたはサブユニットは、配列番号1(国際公開第2009001159号)のI-CreIの位置19に対応する残基にG、SまたはA、I-CreIの位置66に対応する残基にY、R、KまたはD、および/またはI-CreIの位置80に対応する残基にE、QまたはKを含むことができる(米国特許第8021867号)。
【0236】
ポリヌクレオチドの場合、「変異体」は、天然ポリヌクレオチド内の1つ以上の部位における1つ以上のヌクレオチドの欠失および/または付加を含む。当業者は、実施形態の核酸の変異体が、オープンリーディングフレームが維持されるように構築されることを認識するであろう。ポリヌクレオチドの場合、保存的変異体は、遺伝暗号の縮退のために、実施形態のポリペプチドの1つのアミノ酸配列をコードする配列を含む。変異体ポリヌクレオチドには、例えば部位特異的突然変異誘発を使用することによって生成されるが、依然として実施形態の操作されたメガヌクレアーゼまたは外因性核酸分子または鋳型核酸をコードするものなどの合成由来ポリヌクレオチドが含まれる。一般に、実施形態の特定のポリヌクレオチドの変異体は、本明細書の他の箇所に記載の配列アラインメントプログラムおよびパラメータによって決定される場合、その特定のポリヌクレオチドに対する少なくとも約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはそれ以上の配列同一性を有する。実施形態の特定のポリヌクレオチドの変異体(すなわち、参照ポリヌクレオチド)もまた、変異体ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと参照ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドとの間のパーセント配列同一性の比較によって評価することができる。
【0237】
本明細書に包含されるタンパク質配列の欠失、挿入および置換は、ポリペプチドの特徴に根本的な変化をもたらすとは予想されない。しかしながら、そうする前に置換、欠失または挿入の正確な効果を予測することが困難である場合、当業者は、MIT 11-12認識配列(配列番号3)などのヒトmtDNA内に見出される認識配列に優先的に結合して切断するその能力についてポリペプチドをスクリーニングすることによって効果が評価されることを理解するであろう。
【0238】
表2は、本明細書に開示される配列の概要である。
【0239】
【実施例】
【0240】
本開示は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらは限定として解釈されるべきではない。当業者は、日常的な実験のみを使用して、本明細書に記載の特定の物質および手順に対する多数の等価物を認識するか、または確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の実施例に続く特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【0241】
実施例1;ミトコンドリアを標的とした操作されたメガヌクレアーゼ(MTEM)構築物設計
【0242】
インシリコ予測および指向性進化法を使用して、m.5024C>T点突然変異を認識するためにI-CreIを操作した(例えば、各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第8,445,251号および米国特許出願第20200109383号を参照されたい)。ペプチドリンカーを使用して、両方のホモ二量体を単量体構造に融合した。ミトコンドリアが標的とされた操作されたメガヌクレアーゼ(MTEM)の特異性を、
図1Aに記載される操作されたスプリットGFPアッセイを使用して、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で最初に確認した。
【0243】
突然変異(m.5024C>T)マウスmtDNA配列(ATAAGGATTGTAAGACTTCATC、配列番号3)を認識する操作されたメガヌクレアーゼを作製した。CHO細胞における緑色蛍光タンパク質(GFP)ベースの二本鎖切断(DSB)組換えアッセイを使用した操作されたメガヌクレアーゼの分析は、特定の操作されたメガヌクレアーゼ(本明細書ではMIT 11-12と呼ばれる)が、意図された(変異)標的部位に対して試験した場合、約80%のGFP+細胞をもたらしたが、野生型標的部位に対して試験した場合、5%未満のGFP+細胞をもたらしたことを示した(
図1A)。
【0244】
エクスビボ発現のために、ミトコンドリア局在化配列(MLS)が異なる2つの変異体(CFおよびCSF)を設計した。構築物の5´末端にミトコンドリア移行ペプチド(MTP)を用いて、Cox8[Candasら(2016)J Vis Exp 108,p.53417に記載されているようなCF構築物]またはCox8/Su9[Bacman(2018)Nat Med.24(11):p.1696-1700およびPereiraら(2018)EMBO Mol Med.10(9)に記載されているようなCSF構築物]を構築した。FLAGタグもまた、MTPと操作されたメガヌクレアーゼとの間に付加した(
図1B)。
【0245】
HeLa細胞をカバーガラス上に播種し、MTEMで24時間トランスフェクトした。細胞を200nMのMITOTRACKER(商標)Red CMXRos(M7512、Invitrogen)と共に37℃で1時間インキュベートし、光から保護した。細胞を室温(RT)で15分間、2%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定した。細胞を、リン酸生理食塩水緩衝液(PBS)中0.2% Triton X-100を用いてRTで2分間透過処理した。3% BSA/PBS溶液をブロッキング剤としてRTで1時間使用した。2% BSA/PBS中1:200の濃度のFLAGに対する一次抗体(F3165、Sigma-Aldrich)を、RTで1時間インキュベーションした。洗浄後、細胞を3% BSA/PBS中1:200の濃度でヤギ抗ウサギIgG(A-11008、Invitrogen)二次抗体と共にRTで1時間インキュベートし、光から保護した。次いで、カバーガラスをPBSで洗浄し、DAPI含有封入剤(EVERBRITE封入剤、Biotium)を用いてスライドに封入した。Zeiss LSM510共焦点顕微鏡を使用して画像を撮影した。
【0246】
HeLa細胞における一過性トランスフェクションは、両方のMTEM構築物がミトコンドリアに局在するタンパク質を合成したことを示した(CSF構築物の代表的な細胞を示す、
図1C)。ウエスタンブロットにより、CF構築物およびCSF構築物の両方が、HEK293T細胞のトランスフェクション後に予想サイズのタンパク質を発現することが確認された(
図1D)。ウエスタンブロットのパターンは、CSFトランスフェクト細胞に偽バンド(spurious band)を示さなかったので、CSF変異体をその後の実験のために選択した。
【0247】
実施例2;動物モデルおよび線維芽細胞
【0248】
tRNAAla遺伝子にm.5024C>T点突然変異を有するヘテロプラスミーマウスモデルを使用して、MTEM構築物の有効性を評価した。このマウスモデルは以前に特徴付けられており(Bacmanら(2018)Nat Med.24(11):p.1696-1700、Kauppilaら(2016)Cell Rep.16(11):p.2980-2990、およびGammageら(2018)Nat Med.24(11):p.1691-1695)、突然変異レベルが組織内で50%を超える場合に、2歳で軽度の心筋症、ならびに低減したmt-tRNAAlaレベルを示す。このマウスに由来するマウス胚性線維芽細胞(MEF)を、突然変異mtDNAのレベルについて特徴付け、ヒトパピローマウイルスのE6-E7遺伝子で不死化した(Bacman、2018、前出)。対照として使用した野生型動物および野生型肺線維芽細胞は、C57BL/6Jバックグラウンドを有するマウスに由来した。高レベルの突然変異を有するMEF株を作製するために、WT mtDNAを標的とするmitoTALENを設計した。MEFにmitoTALENをトランスフェクトし、選別し、クローンを成長させ、高レベルの突然変異mtDNAについて試験した(Bacman、2018、前出)。
【0249】
製造業者のプロトコルを使用して、GENJET(商標)DNAインビトロトランスフェクション試薬(第II版、SL 100489、SignaGen Laboratories)を使用して、ヘテロプラスミーMEFをトランスフェクトした。80%コンフルエンスのT75フラスコに播種した細胞を、MTEM CFまたはCSFプラスミド(20μg)と緑色蛍光タンパク質(GFP)プラスミド(10μg)との2:1の比の30μgのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、FACS Aria IIUを用いて選別を行い、GFP発現のために488nmレーザーおよび505LP、530/30フィルターセットを用いて単一細胞蛍光にゲーティングした。本明細書で黒色として示されるGFP発現を示さない集団、および本明細書で緑色として示されるGFP発現を示す集団に基づいて細胞を選別した。トランスフェクトされていない細胞を対照として使用した。
【0250】
トランスフェクション効率は比較的低かったため、MTEM発現プラスミドを、GFPを発現するプラスミドと同時トランスフェクトした(2 MTEM:1 GFP比)。GFP陽性細胞は、トランスフェクション後の全細胞集団の11~20%を構成していた。同時トランスフェクト細胞を、24時間後にトランスフェクトされていない(黒色)集団とトランスフェクト(緑色)集団とにFACS選別した(
図2A)。PCR/RFLPを使用して、2つの独立した実験のトランスフェクトされていない細胞集団およびトランスフェクト細胞集団におけるmtDNAヘテロプラスミー変化を決定した(
図2B)。定量化は、トランスフェクトされていない集団と比較した場合、トランスフェクト集団ではヘテロプラスミーに大きなシフト(50~60%)があることを示した。GFPプラスミドのみでトランスフェクトされた細胞は、ヘテロプラスミーの変化を示さなかった。GFP同時トランスフェクタントプラスミドを組み込んでいないが、MTEMプラスミドを組み込んだ可能性がある集団に起因し得る、トランスフェクトされていない細胞集団にわずかなシフトがあった(10~20%)(
図2C)。
【0251】
ヘテロプラスミー変化の生物学的有意性を決定するために、高レベル(90%)の突然変異mtDNAを有するMEF細胞株を使用した(Bacman、2018、前出)。細胞を、MTEMおよびGFPを発現するプラスミドで同時トランスフェクトし、以下に記載されるように選別した。mtDNAを、トランスフェクションの1、7、14および21日後にPCR/RFLPによって分析した。GFP陽性細胞は、トランスフェクション後の全細胞集団の11~20%を構成していた。トランスフェクション後24時間で、トランスフェクト細胞中でヘテロプラスミーの有意なシフト(約25%)があり、これは2週間にわたって維持された(
図2Dおよび
図2E)。トランスフェクション後24時間でトランスフェクト集団の全mtDNAレベルが枯渇し、次いで21日後にベースラインに戻った(
図2F)。トランスフェクトされていない集団は、おそらく先に論じたように、MTEMを受けるいくつかの細胞に起因して、非常に軽度の減少を有した。
【0252】
3週間成長させた細胞をそれらの酸素消費率(OCR)について分析した。OCRは、Seahorse XFp細胞外フラックスアナライザー(Seahorse Bioscience)を用いて測定した。アッセイの前日に、細胞をウェルB~Gに20,000細胞/ウェルの密度で播種した(ウェルAおよびHは培地のみを含有した)。XFpセンサーカートリッジを較正緩衝液で37℃で一晩較正した。翌日、細胞培養培地を、10mMのグルコース、1mMのピルビン酸および2mMのグルタミンを補充した低緩衝Seahorse培地と交換し、37℃で少なくとも1時間インキュベートした。1μMのオリゴマイシン、0.5μMのFCCP、および1μMのロテノン+アンチマイシンAの各添加後に内因性呼吸の測定を行った。結果をSeahorse試験後の1ウェル当たりのμgタンパク質に対して正規化し、DCタンパク質アッセイを使用してタンパク質を定量した(Pereira 2018、前出)。
【0253】
トランスフェクトされていない細胞は、野生型対照と比較して呼吸障害を有した。トランスフェクト細胞集団は、OCRを有意に改善した(
図2G)。トランスフェクトされていない細胞におけるOCRのわずかな改善も観察され(
図2G)、これは、本明細書の他の箇所で論じられているようなヘテロプラスミーの軽度の変化に起因する可能性がある。
【0254】
実施例3;マウスにおけるMTEMの発現
【0255】
MTEMをコードするDNAをAAV2/9プラスミドにクローニングし、University of Iowa Viral Core Facilityに送ったところ、AAV-MTEMについて1.6×1013vg/mlの力価、および5.9×1013vg/mlのAAV9-GFPを有するウイルスが作製された。幼若マウス(2.5週齢)および成体マウス(6週齢)の両方に、記載のように[Bacman 2018およびYardeniら(2011)Lab Anim(NY)40(5):p.155-60]後眼窩に注射した。幼若マウスに、6.67×1013vgs/kgのAAV9-MTEMまたは6.15×1013vgs/kgのAAV9-GFPを左後眼窩洞に投与した。成体には、4.0×1013vgs/kgのAAV9-MTEMまたは3.69×1013vgs/kgのAAV9-GFPを左後眼窩洞に投与した。対照動物に、それぞれ年齢が一致する実験動物の同様の力価のAAV9-GFPを注射した。つま先生検(Toe biopsy)を6日齢で収集して、ベースヘテロプラスミーレベルを決定した。注射後(PI)6週、12週および24週に、マウスをケタミンおよびキシラジンで麻酔し、PBSで灌流した。心臓、前脛骨筋、大腿四頭筋、腓腹筋、腎臓、肝臓および脾臓を収集した。試料を液体窒素中で急速凍結し、次いで、さらに使用するまで-80℃で保存した。
【0256】
AAV9-MTEM注射動物は、すべての時点、注射後(PI)6週、12週および24週で、構築物に対する抗Flag抗体を使用したウエスタンブロット分析によって示されるように、心臓、骨格筋、および一部の動物では肝臓におけるMTEMの一貫した発現を示した。(
図3A)。AAV9-GFP注射動物は、同じ組織でGFP発現を示したが、注射後6週および12週で肝臓でより高い発現を示した(
図3A)。対応するRFLP分析は、AAV9-MTEM注射動物においてPI 6週で肝臓および前脛骨筋試料の突然変異mtDNAの有意な減少を示した(
図3A)。ヘテロプラスミーシフトは経時的に大きくなり、PI 24週で、心臓、骨格筋、腎臓、肝臓および脾臓の突然変異mtDNAが有意に減少した(
図3B)。AAV9-GFP注射対照は、注射後にすべての組織にわたって同様のレベルの突然変異を有した(
図3A~
図3B)。AAV9-MTEMまたはAAV9-GFPのいずれの注射後にも脳で発現が観察されなかったので(
図3A)、ヘテロプラスミーの変化を正規化するために脳組織を陰性対照として使用した。PI 6週、12週、または24週で分析した組織のいずれにおいてもmtDNAレベルの有意な枯渇は見られず(
図3C)、非特異的mtDNA効果が最小限であるか、または全くないことが示唆された。マウスの体重は、すべての時点でMTEM処置動物と対照動物との間で異ならなかった。
【0257】
ヘテロプラスミーm.5024C>Tマウスにも、2.5週齢と比較してAAV媒介発現を許容しない6週齢でAAV9-MTEMを全身注射した。それでも、心臓および肝臓では強い発現が観察され、骨格筋では発現が弱かった(
図4A)。AAV9-GFP注射マウスは、心臓、前脛骨筋、および肝臓で強い発現を示し、大腿四頭筋および腓腹筋ではより弱い発現を示した(
図4A)。RFLP分析は、MTEM処置動物における注射の6週間後という早期に肝臓における突然変異mtDNAの本質的に完全な排除を示し、これは経時的に持続した(
図4B)。一部の骨格筋は、突然変異mtDNAの減少傾向を示した(PI 24週での前脛骨筋、腓腹筋)が、結果は有意性に達しなかった(
図4B)。AAV9-GFP注射動物は、すべての組織にわたってヘテロプラスミーレベルの変化を示さなかった(
図4Aおよび
図4B)。脳を使用して変化を正規化した。全mtDNAレベルは、AAV9-MTEM処置動物の肝臓中、PI 6週でわずかに減少したが、PI 12週または24週には減少しなかった(
図4C)。
【0258】
MTEMは、PI 6週、12週、または24週では検出されなかった。2.5週で注射し、PI 5日および10日に屠殺した動物では、MTEM発現は肝臓でのみ検出された。しかしながら、GFP発現は、おそらくこの構築物の発現がより高いために、心臓、骨格筋および肝臓で可視であった。PI 5日および10日のヘテロプラスミー変化は肝臓でのみ観察された。PI 5日で突然変異mtDNAの平均22%の低減があり、これはPI 10日で55%に増加した。アポトーシスがこれらの変化において役割を果たしたかどうかを決定するために、PCNA(肝臓再生のマーカー)、カスパーゼ3および切断型カスパーゼ3の発現を肝臓試料において分析した。いずれの時点においても、MTEM処置動物と対照動物との間に差は観察されなかった。同様のレベルの非切断型カスパーゼ3が処置動物および対照動物で観察されたが、切断型カスパーゼ3は観察されなかった。さらに、PI 5日または10日の全mtDNAレベルの枯渇は、肝臓または前脛骨筋では観察されなかった。さらに、肝臓H&E染色は、AAV9-MTEM注射、AAV9-GFP注射、および非注射対照の間にいかなる形態学的差異も示さなかった。
【0259】
結果は、MTEMがミトコンドリアにのみ局在したことを示したが、核オフターゲット編集を評価した。そうするために、標的化アンプリコンシーケンシングを、GUIDESeqに基づくインビトロ、ゲノムワイド、不偏オフターゲティングアッセイから同定された部位の選択に対して行った。PI 24週目の若齢マウスの前脛骨筋(TA)および肝臓(L)組織からのDNAを標的化アンプリコンシーケンシングによって評価した。この分析方法は、挿入/欠失(インデル)などのアンプリコン内の任意の遺伝的変異を検出する。いずれの動物について分析した部位のいずれにも、インデルは検出されなかった。
【0260】
Mt-tRNA
Alaレベルは、m.5024C>T tRNA
Alaマウスにおいて高レベルの突然変異mtDNAを有する組織において減少する(Bacman 2018およびKauppilaら(2016)Cell Rep.16(11):p.2980-2990]。PI 24週の幼若マウスの肝臓におけるmt-tRNA
Alaレベルをノーザンブロットにより測定した。結果は、28S rRNAに対して正規化した場合に、AAV9-GFP注射対照と比較して、AAV9-MTEM注射動物において増加した量のmt-tRNA
Alaを示した(
図5Aおよび
図5B)。定量的PCRを使用して、mt-tRNA
Valに対するmt-tRNA
Alaの比を決定した。これらの結果は、ノーザンブロットの結果を裏付けた(
図5Cおよび
図5D)。qPCRにより、AAV9-MTEM処置幼若動物は、対照(AAV9-GFP)、さらには野生型動物と比較して、有意に高いレベルのmt-tRNA
Alaを有することが示された(
図5C)。AAV9-MTEMを注射した成体動物はまた、対照(AAV9-GFP)と比較して肝臓のmt-tRNA
Alaレベルが増加した(
図5D)。
【0261】
実施例4;ミトコンドリア局在化および核外移行配列の付加を伴うヌクレアーゼ活性
【0262】
この実験の目的は、操作されたメガヌクレアーゼへの核外移行シグナル(NES)の付加が核インデルを排除するかどうかを決定することであった。
図6で使用されるNESは、Kosugiら2008 Traffic 12:2053-62からのデータに基づいて合理的に設計された。操作されたメガヌクレアーゼのC末端に融合したNESアミノ酸配列は、LGAGLGALGL(配列番号10)であった。
図7で使用されるNESは、Minczukら、2006 Proc Natl Acad Sci USA 103(52):19689-19694から入手した。操作されたメガヌクレアーゼのC末端に融合したNESアミノ酸配列は、VDEMTKKFGTLTIHDTEK(配列番号9)であった。
【0263】
図6および
図7で使用した操作されたメガヌクレアーゼは、核標的部位を有するAPC 11-12L.330であった。6e5 MRC-5細胞を、Lonza 4D-Nucleofector(SE緩衝液、条件CM-150)を使用して同数の操作されたメガヌクレアーゼmRNAコピーでヌクレオフェクトした。4つのメガヌクレアーゼ構築物を
図6で比較した。1つはNLSを有し、1つは標的化配列を有さず、1つはミトコンドリア移行ペプチド(MTP)を有し、1つはMTPおよびNESを有する。4つの操作されたメガヌクレアーゼ構築物を
図7で比較した。1つはNLSを有し、1つはMTPを有し、1つはMTPおよびNESを有し、1つはMTPおよびMVMp NS2 NESを有する。NLSおよびMTPは両方ともそれらのそれぞれのタンパク質のN末端に融合し、NESはC末端に融合した。これらの異なる構築物は異なる長さのmRNAを生じるので、mRNAコピー数はトランスフェクション間で一定に保たれた(
図6のデータの5.8e11コピー、
図7のデータの2.88e11コピー)。gDNA抽出のためのヌクレオフェクションの2日後に細胞を回収し、Beckman Coulter CytoFlex Sサイトメーターを使用してトランスフェクション効率について評価した。トランスフェクション効率は95%を超えた。Macherey Nagel NucleoSpin Blood QuickPureキットを用いてgDNAを単離した。
【0264】
デジタル液滴PCR(ddPCR)を利用して、P1、F1およびR1(それぞれ配列番号29、30および31)を使用してAPC 11-12結合部位におけるインデル頻度を決定して、結合部位を取り囲むアンプリコンを生成し、P2、F2、R2(それぞれ配列番号32、33および34)を使用して、ゲノムカウンターとして作用する参照アンプリコンを生成した。2つのアンプリコンの比は、未処理集団では等しく、処理試料の結合部位でのインデル形成に対して低下するはずである。増幅を、プローブ用の1x ddPCR Supermix(dUTPなし、BioRad)、250nMの各プローブ、900nMの各プライマー、20U/μLのHind-III HF(NEB)および120ngの細胞gDNAを含有する24μLの反応液中で多重化した。QX100液滴ジェネレータ(BioRad)を使用して液滴を生成した。サイクル条件は以下の通りであった:1サイクルの95℃(2℃/sランプ)10分、45サイクルの94℃(2℃/sランプ)10秒、57.5℃(2℃/sランプ)30秒、72C(2/sランプ)1分、1サイクルの98℃ 10分、4℃保持。液滴をQX 200液滴リーダー(BioRad)を使用して分析し、QuantaSoft分析ソフトウェア(BioRad)を使用してデータを取得および分析した。
【0265】
P1:AGCCCCGGGTACTCCTTGTT(配列番号14)
F1:TTCCTTGCAGGAACAGAG(配列番号15)
R1:CTGCTTGACCACCCATT(配列番号16)
P2:CCAGCAGGCCAGGTACACC(配列番号17)
F2:ACCGCCAAGGATGCAC(配列番号18)
R2:GCGGGTGGGAATGGAG(配列番号19)
【0266】
APC 11-12L.330へのNESの付加は、核インデルの有病率をわずかに減少させるようであり(
図6)、MVMp NS2 NESの付加は、核インデルを完全に排除するようであった(
図7)。
【0267】
MVMp NS2 NESは、潜在的に問題となる核オフターゲット編集を軽減する、ミトコンドリアが標的とされた操作されたメガヌクレアーゼへの非常に効果的な付加である。
【0268】
一般的な方法論
MTEM発現
全タンパク質ホモジネートを急速凍結組織から調製し、タンパク質を、DCタンパク質アッセイ(5000116、BioRad)を製造者の説明書に従って使用して定量した。試料あたり40マイクログラムの全タンパク質を、10% Mini-PROTEAN TGX Stain-Freeタンパク質ゲル(4568034、BioRad)に入れ、次いで、TransBlot Turboシステム(1704155、BioRad)を製造者の指示に従って使用して、フッ化ポリビニリデン膜(1620260、BioRad)に移した。TGX Stain-Freeタンパク質ゲルにより、BioRad Chemidocシステムを用いたゲル活性化による全タンパク質負荷の可視化が可能になる。ブロットを、5%の乳を用いてRTで1時間ブロッキング処理した。使用した抗体は、マウスモノクローナルFlag(F 3165、Sigma-Aldrich)(1:1000)、マウスモノクローナルGFP(75-131、UC Davis)(1:1000)、マウスモノクローナルMTCO1(ab 14705、abcam)(1:1000)、マウスモノクローナルNDUFB8(ab110242、abcam)(1:750)、マウスモノクローナルTubulin(T9026,Sigma-Aldrich)(1:20,000)、ウサギポリクローナルカスパーゼ-3(#9662、Cell Signaling)(1:1000)、およびマウスモノクローナルPCNA(PC10#2586、Cell Signaling)(1:2000)であった。利用した二次抗体は、IgGホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合マウス(7076、Cell Signaling)(1:5000)またはウサギ(7074、Cell Signaling)(1:5000)であった。一次抗体を4℃で一晩インキュベートし、二次抗体をRTで1時間インキュベートした。膜をSUPERSIGNAL(商標)West Pico化学発光基質(34080、Thermo Scientific)で展開し、BioRad CHEMIDOC(商標)イメージャで画像化した。
【0269】
DNA抽出、「ラストサイクルホット(last-cycle HOT)」PCRによる定量、およびRFLP
【0270】
フェノール-クロロホルムを使用して急速凍結組織から、およびNucleoSpin Tissue XSキット(740901.50、Takara)を使用してFACS選別細胞から全DNAを抽出した。DNA濃度を分光光度的に決定した(BioTek Synergy H1ハイブリッド)。m.5024C>T突然変異のレベルを、「ラストサイクルホット」PCRによって決定し、PCRのラストサイクルを、放射性標識ヌクレオチドを使用して実行する。この方法は、初期アンプリコンの可視化のみを可能にすることによって、以前の融解およびアニーリング工程によって形成されたヘテロ二重鎖からの干渉を除去する。PCRアンプリコンは、以下のプライマーを用いて得られた:F-5’CCACCCTAGCTATCATAAGCACA-3’(配列番号12)およびB-5’-AAGCAATTGATTTGCATTCAATAGATGTAGGATGAAGTCCTGCA-3’(配列番号13)。アンプリコンをPstI-HF(R3140S、New England BioLabs)で消化することによってRFLP分析を行ったが、これは野生型mtDNAを消化するが、m.5024C>T点突然変異を有する突然変異mtDNAは消化しない。消化後、生成物を12%ポリアクリルアミドゲル中で泳動し、Cyclone蛍光体イメージングシステム(Perkin Elmer)およびOptiQuantソフトウェアバージョン5.0(Perkin Elmer)を用いてシグナルを検出した。
【0271】
全mtDNAレベルを決定するための定量的PCR
試料中に存在するmtDNAの全レベルを決定するために、以下のBacman 2018に記載されているように、TaqMan試薬(PrimeTime Std qPCRアッセイ、Integrated DNA Technologies)を使用する定量的PCR(qPCR)を行った。試料をBio-Rad CFX 96/C1000 qPCR装置で実行した。比較サイクル閾値(Ct)法を使用して相対読み取り値を決定し、mtDNA(ND1およびND5)をゲノムDNA(18S)と比較することによって全mtDNAレベルを決定した。以下のプライマー/プローブセットを使用した。
【0272】
mtDNA
ND1=フォワード:GCC TGA CCC ATA GCC ATA AT(NC_005089;mtDNA 3282-3301;配列番号14)、リバース:CGG CTG CGT ATT CTA CGT TA(mtDNA 3402-3383;配列番号15。
【0273】
プローブ:/56-FAM/TCT CAA CCC/ZEN/TAG CAG AAA CAA CCG G/3IABkFQ/(mtDNA 3310-3334;配列番号16)。
【0274】
ND5=フォワード:CCC ATG ACT ACC ATC AGC AAT AG(mtDNA 12432-12454;配列番号17);リバース:TGG AAT CGG ACC AGT AGG AA(mtDNA 12533-12514;配列番号18)。
【0275】
プローブ:/5 TET/AGT GCT/ZEN/GAA CTG GTG TAG GGC/3 IABkFQ/(mtDNA 12482-12458;配列番号19)。
【0276】
ゲノムDNA
18s=フォワード:GCC GCT AGA GGT GAA ATT CT(RefSeq NR_046233.2;chr 17:39984253-39984272;配列番号20;リバース:TCG GAA CTA CGA CGG TAT CT(RefSeq NR_046233.2;chr 17:39984432-39984412;配列番号21)。
【0277】
プローブ:/5Cy5/AAG ACG GAC CAG AGC GAA AGC AT/3IAbRQSp/(RefSeq NR_046233.2;chr17:39984285-39984305;配列番号22)
【0278】
RNA抽出、ノーザンブロット分析、およびmt-tRNAの定量
RNAを、TRIzol(Ambion)を用いて製造業者の標準プロトコルに従って急速凍結組織から単離した。分光光度定量の前に、試料をDNase(AM 1907、Invitrogen)で処理した。ノーザンブロット分析を、20%ホルムアルデヒドおよび1×MOPSを含有する1.2%アガロースゲルにおいて、試料あたり4μgの全肝臓RNAを泳動することによって行った。1×MOPS溶液中、80Vで15分間、続いて120Vで2.5時間電気泳動を行った。この時点で、ゲルを臭化エチジウム(EtBr)で染色して、全RNA負荷を可視化した。次いで、ゲルを水中で10分間2回洗浄してEtBrを除去した。RNAをナイロン膜(Amersham Hybond-NX、#RPN203T)上に一晩転写した。目的の転写物を、非放射性ビオチン化プローブを用いて50℃で一晩検出した。翌日、膜を洗浄し、シグナルを、IRDye 800CWストレプトアビジン(926-32230、Li-COR)により検出した。ビオチン化プローブを使用して、ノーザンブロットによってミトコンドリアtRNAAlaを検出した:
【0279】
[Btn]GACTTCATCCTACATCTATTG(配列番号23)
【0280】
製造業者の指示に従って、Custom TaqMan Small RNAアッセイ(4398987、ThermoFisher)を使用して、mt-tRNAAlaおよびmt-tRNAValのレベルを検出した。Ct値をmt-tRNAVal Ct値で割ることによって、mt-tRNAAlaの相対レベルを計算した。
【0281】
核オフターゲットの検出
このアッセイは、操作されたメガヌクレアーゼ誘導二本鎖切断の検出においてより高感度である、「オリゴ捕捉」として知られるGUIDE-seq[Tsaiら(2015)Nature Biotechnology 33(2):187-197]の改変である。表3に示すように、5つのC57BL6J核ゲノム配列をこのヌクレアーゼの推定オフターゲット部位として同定し、インデルの存在について試験した。FL83Bマウス細胞にMTEMをエレクトロポレーションし、形質転換のx日後にオリゴ捕捉によって分析した。
【0282】
【0283】
統計分析
すべてのデータ分析は、GraphPad Prism 7および8を用いて行った。すべての統計は平均±SEMとして提示している。対応のない両側スチューデントt検定を用いて、ペアワイズ比較を行った。2つを超える群間の比較を、1元配置ANOVAによって行った。0.05以下のP値を有意とみなした。各条件につきN=4匹のマウスに注射した(処置対対照、および各時点)。すべての測定は、別個の試料から得た。
【配列表】
【国際調査報告】