(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】流体を混合して混合流体を調製する装置および方法
(51)【国際特許分類】
B01F 25/42 20220101AFI20240416BHJP
B01F 23/60 20220101ALI20240416BHJP
B01F 33/301 20220101ALI20240416BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20240416BHJP
B01F 23/50 20220101ALI20240416BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240416BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240416BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240416BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240416BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240416BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240416BHJP
B01F 25/31 20220101ALI20240416BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20240416BHJP
B01F 101/22 20220101ALN20240416BHJP
B01F 101/06 20220101ALN20240416BHJP
B01F 101/44 20220101ALN20240416BHJP
B01F 101/21 20220101ALN20240416BHJP
【FI】
B01F25/42
B01F23/60
B01F33/301
B01J19/00 N
B01J19/00 321
B01F23/50
A61K48/00
A61K31/7105
A61K9/14
A61K9/127
A61K9/51
A61K47/44
B01F25/31
C12N15/11 Z
B01F101:22
B01F101:06
B01F101:44
B01F101:21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565203
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2022060609
(87)【国際公開番号】W WO2022223725
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】102021110094.1
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523399142
【氏名又は名称】エフデーイクス・フルイト・ディナーミクス・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】FDX FLUID DYNAMIX GMBH
(71)【出願人】
【識別番号】507210281
【氏名又は名称】フラウンホファー‐ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・アンゲヴァンテン・フォルシュング・エー・ファウ
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【氏名又は名称】古後 亜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100230248
【氏名又は名称】杉本 圭二
(72)【発明者】
【氏名】ボブシュ・ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ウィンテリング・イェンズ・ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】クリューガー・オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ウールマン・エッカルト
(72)【発明者】
【氏名】ハイン・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】デュレ・グレーゴア
(72)【発明者】
【氏名】ブレフマー・アニカ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4G035
4G036
4G075
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA29
4C076AA65
4C076EE52H
4C076FF70
4C084AA13
4C084MA24
4C084MA38
4C084MA43
4C084NA20
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA38
4C086MA43
4C086NA20
4G035AB37
4G035AB44
4G035AB49
4G035AC01
4G035AE13
4G036AC70
4G075AA14
4G075AA27
4G075AA35
4G075AA39
4G075AA52
4G075BB05
4G075BD15
4G075BD23
4G075BD24
4G075CA23
4G075CA57
4G075DA02
4G075EB50
4G075FB02
4G075FB04
4G075FB12
(57)【要約】
【課題】動作不良に陥り難く、所定の特性を有する混合流体や粒子の大量調製にも適した、流体を混合して混合流体を調製する装置および方法を提供する。
【解決手段】装置1は、第1流体7が導入されることが可能な第1入口開口部201、第2流体8が導入されることが可能な第2入口開口部2011、ならびに第1流体7及び第2流体8を含む混合流体9が排出されることが可能な出口開口部202を有する混合室20と、第1入口開口部201を介して混合室20に流体連結して第1流体7を第1流体流方向F1に沿って混合室20内に運ぶように構成されている第1供給部40と、第2入口開口部2011を介して混合室20に流体連結して第2流体8を第2流体流方向F2に沿って混合室20内に運ぶように構成されている第2供給部50と、を備える。第1供給部40は、流体部品10を有し、混合室20の第1入口開口部201に流体連結した出口開口部102、および流体部品10を流れる第1流体7の方向を、特には、該流体7の空間内揺動を出口開口部102にて発生させるように、特定の方向に変更する少なくとも1つの手段104a,104bを具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を混合して混合流体を調製する装置(1)であって、
-混合室(20)であって、
第1入口開口部(201)であって、前記第1入口開口部(201)を介して第1流体(7)が前記混合室(20)内に導入されることが可能な第1入口開口部(201)と、
第2入口開口部(2011)であって、前記第2入口開口部(2011)を介して第2流体(8)が前記混合室(20)内に導入されることが可能な第2入口開口部(2011)と、
出口開口部(202)であって、前記出口開口部(202)を介して前記第1流体(7)と前記第2流体(8)とを含む前記混合流体(9)が排出されることが可能な出口開口部(202)と、を有する混合室(20)と、
-前記第1入口開口部(201)を介して前記混合室(20)に流体連結して前記第1流体(7)を第1流体流方向(F
1)に沿って前記混合室(20)内に運ぶように構成されている第1供給装置(40)と、
-前記第2入口開口部(2011)を介して前記混合室(20)に流体連結して前記第2流体(8)を第2流体流方向(F
2)に沿って前記混合室(20)内に運ぶように構成されている第2供給装置(50)と、
を備え、前記第1供給装置(40)が流体部品(10)を有し、該流体部品(10)は、
-前記混合室(20)の前記第1入口開口部(201)に流体連結した出口開口部(102)、および
-前記流体部品(10)を流れる前記第1流体(7)の方向を、特には、該流体(7)の空間内揺動を前記出口開口部(102)にて発生させるように、特定の方向に変更する少なくとも1つの手段(104a,104b)、
を具備する、装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(1)において、前記流体部品(10)は、前記第1流体(7)が流れることが可能な通流室(100)を具備し、該通流室(100)が、前記流体部品(10)の入口開口部(101)と前記出口開口部(102)とを互いに接続する主流路(103)、および前記第1流体(7)の方向を特定の方向に変更する前記手段としての少なくとも1つの補助流路(104a,104b)を有することを特徴とする、装置(1)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置(1)において、前記第1供給装置(40)および前記混合室(20)の前記第1入口開口部(201)と、前記第2供給装置(50)および前記混合室(20)の前記第2入口開口部(2011)は、前記第1流体流方向(F
1)および前記第2流体流方向(F
2)が0°~90°、好ましくは35°~55°、極めて好ましくは45°の角度を挟むようにして相対的に配置されていることを特徴とする、装置(1)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(1)において、前記第1流体(7)の方向を特定の方向に変更する前記手段(104a,104b)が、前記第1流体(7)を揺動平面で揺動させるように構成されており、前記第2供給装置(50)と前記混合室(20)の前記第2入口開口部(2011)は、前記第2流体流方向(F
2)および前記第1流体(7)の前記揺動平面が前記第1流体流方向(F
1)を横切る平面視で30°~150°、好ましくは90°の角度(η)を挟むようにして配置されていることを特徴とする、装置(1)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(1)において、前記混合室(20)の長手方向軸心(L)が、前記第1流体流方向(F
1)に沿って延びており、該長手方向軸心(L)を横切るようにして定まる前記混合室(20)の断面積が、該長手方向軸心(L)に沿って変化することを特徴とする、装置(1)。
【請求項6】
請求項5に記載の装置(1)において、前記断面積が、前記混合室(20)のうちの、入口流路(206)を形成する上流端部分にて、前記混合室(20)の前記第1入口開口部(201)を起点として、該第1入口開口部(201)から離れるにつれて増加し、かつ/あるいは、前記断面積が、前記混合室(20)のうちの、出口流路(207)を形成する下流端部分にて、前記第1入口開口部(201)から離れるにつれて減少することを特徴とする、装置(1)。
【請求項7】
請求項6に記載の装置(1)において、前記第1流体(7)の方向を特定の方向に変更する前記手段(104a、104b)が、前記第1流体(7)を揺動平面で揺動させるように構成されており、前記揺動平面上で前記長手方向軸心(L)を横切る前記混合室(20)の延在範囲が、前記入口流路(206)にて、前記混合室(20)の前記第1入口開口部(201)を起点として、該第1入口開口部(201)から離れるにつれて増加し、あるいは、前記揺動平面上で前記長手方向軸心(L)を横切る前記混合室(20)の延在範囲が、前記出口流路(207)にて、前記第1入口開口部(201)から離れるにつれて減少することを特徴とする、装置(1)。
【請求項8】
請求項6または7に記載の装置(1)において、前記混合室(20)の前記第2入口開口部(2011)が、前記混合室(20)の前記第1入口開口部(201)に対して前記混合室(20)の前記長手方向軸心(L)に沿って偏位しており、かつ、前記入口流路(206)内に設けられていることを特徴とする、装置(1)。
【請求項9】
請求項8に記載の装置(1)において、前記長手方向軸心(L)に沿った前記第1および前記第2入口開口部(201,2011)間の距離が、前記混合室(20)の前記第1入口開口部(201)の幅であって、前記揺動平面と平行に前記長手方向軸心を横切るようにして定まる幅(b
201)の1/2以上に相当することを特徴とする、装置(1)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の装置(1)において、前記混合室(20)の容積が、前記流体部品(10)の容積または前記流体部品(10)の前記通流室(100)の容積よりも大きいことを特徴とする、装置(1)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の装置(1)において、前記第2供給装置(50)が、前記第2流体(8)を(準)定常流として前記混合室(20)内に運ぶように設けられて構成されており、あるいは、前記第2供給装置(50)が流体部品(10)を有し、該流体部品(10)が、
-前記混合室(20)の前記第2入口開口部(2011)に流体連結した出口開口部(102)、および
-前記流体部品(10)を流れる前記第2流体(8)の方向を、特には、該流体(8)の空間内揺動を前記出口開口部(102)にて発生させるように、特定の方向に変更する少なくとも1つの手段(104a,104b)、
を具備することを特徴とする、装置(1)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の装置(1)において、前記混合室(20)の前記出口開口部(202)の下流方向に第2混合室(20’)が隣接しており、該第2混合室(20’)が、第1入口開口部(201’)、第2入口開口部(2011’)および出口開口部(202’)を有し、前記第2混合室(20’)の前記第1入口開口部(201’)が、上流側の前記混合室(20)の前記出口開口部(202)に対応していることを特徴とする、装置(1)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の装置(1)において、前記混合室(20)又は前記第2混合室(20’)の前記出口開口部(202,202’)の下流方向に、少なくとも1つの屈曲部を有する相互作用流路(30)が隣接していることを特徴とする、装置(1)。
【請求項14】
流体を混合して混合流体を調製する方法であって、
-請求項1から13および請求項20のいずれか一項に記載の装置(1)、第1流体(7)ならびに第2流体(8)を用意する工程と、
-前記第1流体(7)を前記第1供給装置(40)から第1体積流量で前記混合室(20)内に導入すると同時に、前記第2流体(8)を前記第2供給装置(50)から第2体積流量で前記混合室(20)内に導入する工程と、
-前記第1流体(7)及び前記第2流体(8)を含む前記混合流体(9)を前記混合室(20)外へと前記出口開口部(202)から排出する工程と、
を備える、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記第1体積流量が前記第2体積流量よりも大きく、あるいは、前記第1体積流量と前記第2体積流量とが同規模であることを特徴とする、方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の方法において、前記第1流体(7)および前記第2流体(8)が、それぞれ、液体、あるいは、液体と該液体中に分散した粒子とを含有する懸濁液であることを特徴とする、方法。
【請求項17】
請求項14から16のいずれか一項に記載の方法において、前記混合室内への前記第1流体の導入および前記混合室内への前記第2流体の導入が、それぞれ、継続して生じることを特徴とする、方法。
【請求項18】
請求項14から17のいずれか一項に記載の方法において、前記第1流体(7)と前記第2流体(8)は、化学組成および/または個々の成分の濃度が異なることを特徴とする、方法。
【請求項19】
請求項14から18のいずれか一項に記載の方法において、前記第1流体(7)がRNA、特には、mRNAを含有し、前記第2流体(8)が脂質混合物を含有することを特徴とする、方法。
【請求項20】
請求項1から13のいずれか一項に記載の装置(1)において、前記第1供給装置(40)は、前記第1流体(7)の前記混合室(20)内での動きが経時的に可変となるように該第1流体(7)の方向を特定の方向に変化させるように構成されており、前記第1流体(7)は、前記第1流体流方向(F
1)に沿った運動成分および前記第1流体流方向(F
1)を横切る運動成分を有し、前記第1流体(7)の前記混合室(20)内での動きが、特には周期的に、経時的に可変であることを特徴とする、装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を混合して混合流体を調製する装置および対応する方法に関する。混合流体の調製は、例えば化学、微生物学、生化学、薬学、医療技術、食品技術等で重要な役割を担う。その際には、調製された混合流体が所定の特性となることが重要である。例えば(ナノメートル範囲の)粒子等を生じさせる混合処理では、所定の粒度分布と関連した所定の粒度が所望される場合がある。本発明に係る装置および本発明に係る方法は、(ナノ)粒子の調製に適している。
【背景技術】
【0002】
温度、滞留時間及び溶解物質濃度の精密な制御が必要なナノリットルスケールの混合流体や(ナノ)粒子を調製するマイクロ流体システムが、先行技術から知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなシステムでは、流路の長さが断面に対して長寸となるため、流動関連の抵抗が比較的大きくなる。このようなシステムは高価であるだけでなく詰まり易い。また、このようなシステムで大量調製を実施することは困難、さらには、不可能でさえもあり得る。
【0004】
本発明の目的は、動作不良に陥り難く、所定の特性を有する混合流体や粒子の大量調製にも適した、流体を混合して混合流体を調製する装置および方法を提供することである。具体的に言えば、実験室規模(すなわち、毎分数ナノリットル)、大量調製(すなわち、毎分数リットル)のいずれの場合の混合流体も、同じ混合技術で調製できるようにすることを目的としている。
【0005】
調製される混合流体は、例えば、静脈栄養用の溶液、経口投与用の医薬品、経皮投与用の医薬品等であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上記の目的が、請求項1の構成を備えた装置によって達成される。従属請求項で特定するのは、本発明の実施形態である。
【0007】
それによると、流体を混合して混合流体を調製する装置は、まず、第1流体が導入されることが可能な第1入口開口部、第2流体が導入されることが可能な第2入口開口部、ならびに前記第1流体及び前記第2流体を含む前記混合流体が排出されることが可能な出口開口部を有する混合室、を備える。同装置は、さらに、前記第1入口開口部を介して前記混合室に流体連結して前記第1流体を第1流体流方向に沿って前記混合室内に運ぶように構成されている第1供給装置と、前記第2入口開口部を介して前記混合室に流体連結して前記第2流体を第2流体流方向に沿って前記混合室内に運ぶように構成されている第2供給装置と、を備える。
【0008】
このとき、前記第1供給装置は流体部品からなり、該流体部品は、前記混合室の前記第1入口開口部に流体連結した出口開口部を具備する。具体的に述べると、前記流体部品の該出口開口部は、前記混合室の前記第1入口開口部に対応し得る。
【0009】
前記流体部品は、該流体部品を流れる前記第1流体の方向を特定の方向に変更する少なくとも1つの手段を具備することを特徴とする。方向の特定の方向への変更にあたっては、交番的な渦、すなわち、前記流体部品内の流体流同士の衝突によって形成される渦や、前記流体部品内の邪魔体によって形成される渦が用いられ得る。方向を特定の方向に変化させるというこの種の手段では、渦構造が発生してから消滅するまでの十分な空間が設けられていなければならない。具体的に言えば、前記第1流体の空間内揺動を発生させる前記少なくとも1つの手段は、前記出口開口部に設けられて形成される。
【0010】
つまり、前記第1流体は、(準)定常流ではなく揺動流体流として混合室内に運ばれる。前記第1流体は、長手方向の流動成分に加えて、経時的に変化する横方向の流動成分も有する。その結果、前記混合室内に乱流を発生させて、混合室内での混合品質を高めることができる。したがって、本装置は、前記第1供給装置から前記混合室へと前記第1流体が揺動的に又は動力学的に流入することを特徴とする。つまり、前記第1流体は、その主な流動方向を横切る流速成分が常に変化している。このとき、前記混合室に流入する揺動的な前記第1流体は、レイノルズ数が600超または約1000、さらには、1000超となり得る。揺動的な前記第1流体の揺動周波数は、100Hz以上、典型的には、2000Hz超であり得る。
【0011】
本発明に係る装置の利点は、流動抵抗が比較的小さいことである。よって、本発明に係る装置は、例えばマイクロリットル範囲のようなごく小量の混合処理にも、大量調製の混合処理(例えば、毎分数リットルのような混合処理)にも使用が可能である。
【0012】
一実施形態において、前記流体部品は、既述の出口開口部とともに入口開口部を有して前記第1流体が流れることが可能な通流室を具備しており、同流体は、前記入口開口部から該通流室に流入して前記出口開口部を通って該通流室から流出する。一実施形態において、前記流体部品の前記入口開口部と前記出口開口部は、幅が異なり得る。具体的に述べると、前記通流室は、該通流室(あるいは、前記流体部品)の前記入口開口部と該通流室(あるいは、前記流体部品)の前記出口開口部とを互いに接続する主流路、および前記第1流体の方向を特定の方向に変更する前記手段としての少なくとも1つの補助流路を有する。本発明に係る装置では、揺動を発生させる可動部品を省くことができるため、それに起因したコストや出費が発生しない。しかも、可動部品を省略することで、振動や騒音の発生が比較的小さくなる。
【0013】
前記通流室は、上記の少なくとも1つの補助流路を、前記第1流体の方向を特定の方向に変更する前記手段として有し得る。前記補助流路には、前記第1流体の一部である補助流が流れ得る。前記第1流体のうちの、前記補助流路に流入することなく前記流体部品から流出する部分のことを、主流と称する。前記少なくとも1つの補助流路は、前記流体部品の前記出口開口部近傍に位置した流入部、および前記流体部品の前記入口開口部近傍に位置した流出部を有し得る。前記少なくとも1つの補助流路は、(前記入口開口部から前記出口開口部まで)前記第1流体流方向に沿って前記主流路の(後方でも前方でもなく)傍に設けられ得る。具体的には、(前記第1流体流方向に沿って)前記主流路の横側で延びる2つの補助流路が設けられて、前記主流路が該2つの補助流路間に設けられ得る。好ましい一実施形態において、前記補助流路および前記主流路は、前記第1流体流方向を横切る列状に配置されると共に、それぞれ前記第1流体流方向に沿って延びる。
【0014】
好ましくは、前記少なくとも1つの補助流路と前記主流路とがブロックで隔てられている。このブロックの形状としては、様々な形状があり得る。例えば、該ブロックの断面は、(前記入口開口部から前記出口開口部まで)前記第1流体流方向に沿って先細り状であってもよい。ほかにも、該ブロックは、縁部が丸みを帯びていてもよい。該ブロックは、縁部が尖っていてもよく、特に、前記入口開口部付近および/または前記出口開口部付近の縁部が尖っていてもよい。
【0015】
一実施形態において、前記少なくとも1つの補助流路の深さは、前記主流路よりも浅いものとされても深いものとされてもよい(ここで、深さとは、前記第1流体の揺動平面を横切る延在範囲のことである)。これにより、前記流体部品から流出する前記第1流体の揺動数に影響を与えることが可能となる。前記部品のうち、前記少なくとも1つの補助流路の領域の深さを、それ以外の大部分のパラメータが同じままで(前記主流路に比べて)浅くしたとすると、揺動周波数は低くなる。同様に、前記部品のうち、前記少なくとも1つの補助流路の領域の深さを、それ以外の大部分のパラメータが同じままで(前記主流路に比べて)深くしたとすると、揺動周波数は高くなる。
【0016】
少なくとも1つの分流体も、前記流体部品から流出する前記第1流体の揺動周波数に影響を与えるのに用いられる他の選択肢の一つであり得る。好ましくは、該分流体は、前記少なくとも1つの補助流路の前記流入部に設けられる。該分流体は、前記補助流を前記第1流体の流れから分流させ易くする。ここで、分流体とは、前記少なくとも1つの補助流路の前記流入部で(前記補助流路内で生じる流れ方向を横切って)前記通流室内方に突出する部材のことであると解釈されたい。前記分流体は、前記補助流路の壁の変形物(特には、凹み)、またはその他の様式で形成された凸部として設けられ得る。例えば、前記分流体は、コーン(円錐)状またはピラミッド状に構成されたものであり得る。この種の分流体を用いることにより、前記揺動周波数に影響を与える以外に、揺動角度として知られるものも変化させることが可能となる。揺動角度とは、揺動する流体噴流の(2つの最大変位量間の)変動角度のことである。複数の補助流路が設けられている場合には、該補助流路のそれぞれに、あるいは、一部の該補助流路のみに分流体が設けられ得る。
【0017】
本装置の前記入口開口部および出口開口部のそれぞれの断面積は、例えば正方形状、長方形状、多角形状、円状、楕円状等の、どのような形状であってもよい。
【0018】
一実施形態において、前記第1供給装置および前記混合室の前記第1入口開口部と、前記第2供給装置および前記混合室の前記第2入口開口部は、前記第1流体流方向および前記第2流体流方向が0°~90°の角度を挟むようにして相対的に配置されている。好ましくは、該角度は、35°~55°の範囲内である。極めて好ましくは、実質45°の角度とされる。その結果、混合品質や混合経路長や混合時間に良好な影響が生じ得る。製造技術の理由から、前記角度は実質90°とされてもよい。
【0019】
前記第1流体の方向を特定の方向に変更する前記手段が、前記第1流体を揺動平面で揺動させるように構成されたものである場合、前記第2供給装置と前記混合室の前記第2入口開口部は、前記第2流体流方向および前記第1流体の前記揺動平面が前記第1流体流方向を横切る平面視で30°~150°の角度を挟むようにして配置され得る、好ましくは、該角度が実質90°とされる。
【0020】
前記混合室の長手方向軸心は、前記第1流体流方向に沿って延びるように定められ得る。一実施形態において、該長手方向軸心を横切る前記混合室の断面積は、該長手方向軸心に沿って変化する。例えば、該断面積は、前記混合室の前記長手方向軸心が進むにつれて大きく且つ/或いは小さくなり得る。この場合、前記混合室内に止水領域(Totwassergebiete)として知られるものが発生できないように、該断面積の寸法の変化を構成することが可能となる。例えば、該断面積は、前記混合室の上流端部分にて、前記混合室の前記第1入口開口部を起点として、該第1入口開口部から離れるにつれて増加し、かつ/あるいは、前記混合室の下流端部分にて、前記第1入口開口部から離れるにつれて減少するものとされ得る。これにより、前記上流端部分は、前記混合室の(下流方向に広がる)入口流路を形成し得て、前記下流端部分は、(下流方向に先細る)出口流路を形成し得る。このとき、該出口流路は該入口流路に直接隣接していてもよい。変形例として、該入口流路と該出口流路との間に、断面積が略一定となる前記混合室の中間部が設けられてもよい。
【0021】
前記第1流体の方向を特定の方向に変更する前記手段が、前記第1流体を揺動平面で揺動させるように構成されたものである場合、前記揺動平面上で前記長手方向軸心を横切る前記混合室の延在範囲は、前記入口流路にて、前記混合室の前記第1入口開口部を起点として、該第1入口開口部から離れるにつれて増加し得るか、あるいは、前記揺動平面上で前記長手方向軸心を横切る前記混合室の延在範囲は、前記出口流路にて、前記第1入口開口部から離れるにつれて減少し得る。つまり、好ましくは、前記入口流路にて、前記混合室の(前記揺動平面視の)境界壁同士が挟む角度は、揺動する前記第1流体の前記揺動平面に向いた角度となる。該角度は、前記揺動角度よりも最大で10°小さいものであり得るか又は最大で10°大きいものであり得て、あるいは、これら2つの数値の間の値を取り得る。極めて好ましくは、前記角度は、前記揺動角度よりも最大5°小さいか又は最大5°大きく、あるいは、これら2つの数値の間の値を取る。これにより、前記混合室内の前記第1流体の揺動に不都合な影響が加わるのを防ぐことができる。前記第1流体の前記揺動角度は、5°以上、好ましくは25°以上、極めて好ましくは40°以上であり得る。大概の用途では、25°~50°、特には30°~45°の揺動角度が適している。一般的に、前記揺動角度の最大値は、75°である。前記出口流路での、前記混合室の(前記揺動平面視の)境界壁同士が挟む角度は、前記入口流路での、前記混合室の境界壁間の前記角度よりも小さい。極めて好ましくは、前記出口流路の角度は、前記入口流路の前記角度よりも最大で15°小さい。また、前記揺動平面を横切る前記混合室の延在範囲は、前記入口流路にて、前記第1入口開口部から離れるにつれて増加し得るか、あるいは、前記揺動平面を横切る前記混合室の延在範囲は、前記出口流路にて、前記第1入口開口部から離れるにつれて減少し得る。
【0022】
前記混合室の前記入口流路と前記出口流路の(相対的な)大きさは、用途に応じて設定され得る。
【0023】
一実施形態において、前記混合室の前記第2入口開口部は、前記混合室の前記第1入口開口部に対して前記混合室の前記長手方向軸心に沿って偏位している。このとき、好ましくは、前記第2入口開口部が前記入口流路内(すなわち、前記入口流路の境界壁)に設けられている。前記長手方向軸心に沿った前記第1および前記第2入口開口部間の距離は、前記混合室の前記第1入口開口部の、前記第1流体の前記揺動平面と平行に前記混合室の前記長手方向軸心を横切るようにして定まる幅の1/2以上に相当するものとされ得る。
【0024】
前記混合室における前記第1入口開口部と前記出口開口部は、前記混合室のうちの互いに反対側に形成され得る。例えば、前記第1入口開口部が前記混合室の上流端を形成し得て、前記出口開口部が下流端を形成し得る。具体的には、前記第1入口開口部と前記出口開口部は前記長手方向軸心上に設けられ得る。
【0025】
また、前記混合室の容積は、前記流体部品の容積または前記流体部品の前記通流室の容積よりも大きくすることが考えられ得る。このとき、具体的には、前記混合室の幅(前記第1流体の前記揺動平面上で前記混合室の前記長手方向軸心を横切る延在範囲)および長さ(前記長手方向軸心に沿った延在範囲)は、それぞれ、前記流体部品の前記通流室の幅(前記第1流体の前記揺動平面上で前記第1流体流方向を横切る延在範囲)、長さ(前記第1流体流方向に沿った延在範囲)よりも大きいものとされ得る。このような容積比とすることにより、前記混合室内に望ましくない程の高圧が構築されないようにすることができる。変形例として、前記混合室の容積は、前記流体部品の前記通流室の容積よりも小さいものとされ得る。このとき、前記混合室の幅および/または長さは、前記流体部品の前記通流室の幅、長さよりも小さいものとされ得る。
【0026】
前記第2供給装置は、前記第2流体を(準)定常流として前記混合室内に運ぶように設けられて構成され得る。そのため、前記第2供給装置は、例えば、長手方向軸心(あるいは、下流側の細長い端部分)が前記流体の前記第2流体流方向を規定するパイプとして構成され得る。前記第2流体は、ポンプ装置により、前記パイプおよび前記第2入口開口部を通って前記混合室内に運ばれ得る。
【0027】
変形例として、前記第2供給装置も、(前記第1供給装置に関して既述したような)流体部品を含むものとされてもよい。該流体部品は、前記第1供給装置の前記流体部品と同じ原理で動作し得る。つまり、該流体部品は、該流体部品を流れる前記第2流体の方向を、特には、該流体の空間内揺動を前記出口開口部にて発生させるように、特定の方向に変更する少なくとも1つの手段を具備し得る。前記第1供給装置の前記流体部品のそれ以外の特徴についても、前記第2供給装置の前記流体部品に援用されてよい。このようにして、揺動する第1流体と揺動する第2流体が、前記混合室内で互いに合流する。前記第2供給装置の前記流体部品の揺動角度は、前記第1供給装置の前記流体部品よりも小さいものとされ得る。また、これら2つの揺動角度は同規模であってもよい。
【0028】
前記第1および第2流体は、ポンプ装置を用いて前記第1および前記第2供給装置にそれぞれ供給され得る。好ましくは、該ポンプ装置は、一定の体積流量を送り出すものである。例えば、該ポンプ装置は、シリンジポンプまたは輸送ポンプとして構成され得る。シリンジポンプに代えて、HPLCポンプやメンブレンポンプが用いられてもよい。
【0029】
さらなる実施形態では、本装置が、上記の(第1)混合室に加えて第2混合室を備える。該第2混合室は、(前記第1混合室に関して既述したように)第1入口開口部、第2入口開口部および出口開口部を有する。前記第2混合室は、前記第1混合室に流体連結している。具体的に述べると、前記第1混合室の前記出口開口部の下流方向に前記第2混合室が隣接している。このとき、前記第2混合室の前記第1入口開口部は、上流側の前記第1混合室の前記出口開口部に対応し得る。つまり、前記第1混合室と前記第2混合室は、追加の(例えば、管状の)遷移部材を用いることなく直接互いに連結している。前記第2混合室は、さらなる(第3)流体を前記第1混合室内で調製された前記混合流体中に導入する役割を果たし得る。本発明に係る装置による混合処理で粒子を調製する場合、該粒子は前記第2混合室で層状に構築されるものであり得て、例えば、前記第3流体が該粒子の最外層を形成する。(上流側の混合室である)前記第1混合室の前記第1及び第2入口開口部の相対的な配置構成や形状(入口流路、出口流路)に係る特徴についても、前記第2混合室に援用されてよい。前記第2混合室の容積(さらには、幅および長さ)は、前記第1混合室の場合よりも大きく設定され得る。
【0030】
さらなる実施形態では、前記第1混合室または前記第2混合室の出口開口部の下流方向に、少なくとも1つの屈曲部を有する相互作用流路が隣接している。該少なくとも1つの屈曲部により、止水領域として知られるものが発生しないようにすることができる。前記相互作用流路は、パイプの様式で構成され得る。前記相互作用流路は、前記混合室の前記出口開口部の下流側で引き続き混合処理を行う役割を果たし得る。同混合工程が粒子を調製するものである場合には、前記相互作用流路内で(該相互作用流路の長さに応じて)該粒子が成長し得る。
【0031】
本発明に係る装置によれば、混合対象の流体同士を、比較的コンパクトに且つ角度をもって互いに合流させることができる。この際、少なくとも前記第1流体が一平面上で局所的に前後に動くことで、前記第1流体が揺動と表現される様子になり得る。この運動(揺動)する流体に、前記第2流体が角度をもって衝突する。混合の制御性向上のほか、調製された混合流体の回収を行うには、比較的小さな容積空間で混合処理が実施されるのが有利である。
【0032】
本発明は、さらに、流体を混合して混合流体を調製する方法に関する。同方法は、本発明に係る装置を用いて実施される。同方法を実施するにあたっては、まず、本発明に係る装置、第1流体および第2流体が用意される。前記第1流体が、前記第1供給装置から第1体積流量で前記混合室内に導入される。それと同時に、前記第2流体が、前記第2供給装置から第2体積流量で前記混合室内に導入される。前記混合室内では、前記第1および第2流体の混合機会、場合によっては、その過程で粒子を形成する機会が設けられる。このとき、前記混合室内での各流体の滞留時間は、用途によって異なり得る。その後、前記第1流体及び前記第2流体を含む前記混合流体が、前記混合室外へと前記出口開口部から排出される。
【0033】
したがって、混合処理で粒子を調製する場合の粒度および粒度分布は、前記第1および第2流体の化学物質の選択、揺動する前記第1流体の揺動周波数、ならびに混合処理に使われる装置の幾何形状によって影響を及ぼすことができる。
【0034】
前記混合室の前記出口開口部の下流方向に相互作用流路が隣接している場合には、混合処理が該相互作用流路で引き続き行われ得る。混合処理で粒子を調製する場合には、同粒子が該相互作用流路内でさらに成長することになり得る。
【0035】
一実施形態において、前記第1体積流量は、前記第2体積流量よりも大きい。ただし、用途にもよるが、前記第1の体積流量と前記第2の体積流量は同規模とされてもよい。混合処理の期間のあいだ、前記第1の体積流量と前記第2の体積流量はそれぞれ一定とすることが考えられ得る。好ましくは、混合処理のあいだ、前記第1流体および前記第2流体は、それぞれ、前記混合室内に継続して導入される。
【0036】
前記第1および第2流体の体積流量は、該第1および第2流体をそれぞれ前記第1および第2供給装置から前記混合室内へと圧送するポンプ装置によって制御される。用途にもよるが、導入される流体の圧力は、(周囲圧力を基準として)数ミリバール(mbar)ないし数百バールの範囲内であり得る。大量調製の用途では、流入圧力が2バール超とされ得る。2バール~350バールの圧力範囲が好ましく、10バール~220バールが極めて好ましい。
【0037】
使用する各流体は、1種類の化学物質のみからなり得るか、あるいは、2種類以上の化学物質の混合物からなり得る。該混合物は、それ以外に、溶媒を含有していてもよい。本方法は、相異なる第1流体と第2流体を用いて実施され得る。これら2種類の相異なる流体は、化学組成および/または個々の成分の濃度が異なり得る。懸濁液の場合には、それら2種類の流体の粒度も異なり得る。ただし、前記第1流体と前記第2流体が同一であること、すなわち、上記の特性に違いがない場合も考えられ得る。(第1流体および第2流体として)同一の懸濁液であったとしても、前記混合室内で発生する乱流により、例えば懸濁液中の粒子の粒度を変化させることが可能である。この際には、粒子の粒度分布、または、カプセル化率として知られるものにも影響を与えることが可能である。
【0038】
一実施形態において、本方法は、前記第1流体として液体または懸濁液を用いて実施される。ここで、懸濁液とは、液体と該液体中に分散した粒子との混合物のことであると解釈されたい。さらに、前記第2流体も、液体または懸濁液とされる。ただし、これらの流体の少なくとも一方をガス状とすることも考えられ得る。
【0039】
前記第1流体は、例えば、溶媒と医薬成分又は治療成分とを含有し得る。前記第2流体は、混合処理で前記第1流体の前記医薬成分又は治療成分を取り囲み、こうして得られた混合流体中で前記医薬成分又は治療成分の担体又は賦形剤として機能するのに適した液体であり得る。前記第1流体を、核酸を含有する懸濁液とし、前記第2流体を、脂質混合物を含有するものとすることが考えられ得る。前記核酸は、DNA、RNAまたはmRNAであり得る。
【0040】
一般的に、本方法に使用される各流体は水溶液であり得る。ほかにも、親油性や親水性の添加剤(乳化剤、界面活性剤)および脂質類を使用することができ、例えば、トリグリセリド類、モノグリセリド類やジグリセリド類、部分グリセリド類、半合成ワックス類や合成ワックス類等も使用することが可能である。また、本装置は、前記第1または第2流体としてポリエチレングリコール(PEG)を使用するのにも適している。
【0041】
混合処理によっては、水溶性有機溶媒および/または非水溶性有機溶媒(例えば、エタノール等)の使用が必要な場合がある。このような溶媒は、前記第1または第2流体として使用されてもよいし、前記第1または第2流体中に含有させてもよい。調製された前記混合流体を精製する方法過程で、前記溶媒の大部分が再除去され得る。
【0042】
ここで、流体を混合する本提案の装置および該装置を用いた方法は、自己組織的構造形成処理や、多段階粒子形成処理や、結晶化処理や、多段階生化学構造形成処理や、多層粒子の形成および充填や、沈殿処理や、分散液(特には、懸濁液および乳濁液)の調製への適用が可能である。また、本装置および本方法は、キュボソームやヘキソソームなどの液晶ナノ粒子の調製にも適している。調製された物質は、例えば薬学、プロセスシステム工学、化粧品、食品製造等に使用され得る。
【0043】
本発明に係る装置は、切削製造法または機械加工製造法や、例えば射出成形法、付加的手法(3D造形)等による複製的手法によって製造が可能である。同じく、特定の刃物からなる方法(例えば、フライス加工等)または機械加工法(例えば、放電加工等)も製造に適している。
【0044】
本発明に係る装置は、様々な材料で製造されることが可能である。プラスチック材料(PEEK、PVDF、COC)、金属や合金(ステンレス鋼、アルミニウム)、ガラスまたはセラミックスが材料として可能である。
【0045】
本装置は、密封系統によって流体密性及び耐圧性を示すように構成され得る。該密封系統は、直接密封カバー構造、介設密封構造または輪郭追従型構造シールからなり得る。有利には、直接密封カバー構造や介設密封構造の密封面は、表面粗さRa≦200nmおよび平坦度E≦5μmの材料から作製されたものであり得る。表面粗さRa≦50nmおよび平坦度E≦1μmが、極めて有利である。所定の粗さや平坦度の密封面を設けるにあたっては、表面特性を直接作製することも、後処理(研削、研磨、超精密機械加工)で調節することも可能である。
【0046】
本装置の流体導通部品は、所定の微細表面形態を有し得る。このことは、該部品を流れる流体の流動挙動に有利な影響を及ぼす。例えば、該流体導通部品の材料は、該流体導通部品に流体の成分が蓄積しないように表面粗さRa≦0.5μm、極めて好ましくはRa≦0.38μmとされ得る。一実施形態において、前記流体導通部品の表面は、接触角β≦90°の親水性である。接触角とは、固体表面上の液滴が該表面に対して成す角度のことを指す。該流体導通部品の表面特性は、材料(ステンレス鋼、PEEKまたはCOC)の選択および表面機能化(プラズマ処理、化学的機能化または微細構造化)によって調節が可能である。
【0047】
以下では、本発明について、図面とともに実施形態を参考にしながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】流体を混合して混合流体を調製する装置の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】
図1の線A’-A’’に沿った同装置の断面図である。
【
図3】
図1の線B’-B’’に沿った同装置の断面図である。
【
図4】
図1の線C’-C’’に沿った同装置の断面図である。
【
図5】流体を混合して混合流体を調製する装置のさらなる実施形態を示す断面図である。
【
図6】流体を混合して混合流体を調製する装置のさらなる実施形態を示す断面図である。
【
図7】流体を混合して混合流体を調製する装置のさらなる実施形態を示す断面図である。
【
図8】流体を混合して混合流体を調製する装置の一部としての相互作用流路の一実施形態を示す概略図である。
【
図9】流体を混合して混合流体を調製する装置の混合室内に流入した、揺動する第1流体の変位量の時間変化を示す図である。
【
図10】流体を混合して混合流体を調製する方法の模式図である。
【
図11】a)~c)は、
図5の装置を用い、
図10の方法で得られる、様々な体積流量における混合流体の測定値を示した図である。
【
図12】流体を混合して混合流体を調製する装置のさらなる実施形態を示す断面図である。
【
図13】
図12の線D’-D’’に沿った同装置の断面図である。
【
図14】流体を混合して混合流体を調製する方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1に、流体を混合して混合流体を調製する装置1の本発明の一実施形態を概略的に示す。
図2~
図4は、それぞれ、線A’-A’’、線B’-B’’、線C’-C’’に沿った前記装置1の断面図である。
【0050】
装置1は、混合室20と、第1供給装置40と、第2供給装置50と、相互作用流路30と、を備える。
【0051】
このとき、混合室20は、装置1の中心的な構成要素を形成する。混合室20は、第1入口開口部201、第2入口開口部2011および出口開口部202を有する。第1流体7は、第1入口開口部201から混合室20内に導入されることが可能である。第2流体8は、第2入口開口部2011から同室内に導入されることが可能である。混合室20内にて、第1および第2流体7,8が混合流体9を形成する。混合流体9は、混合室20の出口開口部202から排出されることが可能である。
【0052】
第1供給装置40は、第1入口開口部201を介して混合室20に(流体)連結しており、第1流体7を混合室20内に導入する役割を果たす。第2供給装置50は、第2入口開口部2011を介して混合室20に(流体)連結しており、第2流体8を混合室20内に導入する役割を果たす。出口開口部202の下流方向には、相互作用流路30が隣接している。相互作用流路30については、あくまでも一例として
図8に一実施形態を例示するとともに後で説明する。
【0053】
第1供給装置40は、第1流体7に空間内及び/又は時間内の動きを生じさせる手段、特には、第1流体7の空間内揺動を発生させる手段としての2つの補助流路(フィードバック流路)104a,104bを具備した流体部品10を有する。
【0054】
流体噴流に空間内及び/又は時間内の動きを生じさせるためのエネルギーは、第1流体7(第1相Aとも称される)の流入圧力P10INから得られる。流体部品10を使用すると、追加のエネルギー源を用いなくてよいため、装置の複雑さや故障し易さを低減できるという利点がある。また、これにより、流体部品10を流れる流体7に対して外部エネルギーが確実に追加されないようにすることができる。エネルギーの混入は、防止されるのが望ましい。というのも、エネルギーが混入することで、流体中の繊細な成分(例えば、長鎖分子等)が破壊される可能性があるからである。
【0055】
図1に示す流体部品10は補助流路104a,104bを有しているが、これはあくまでも一例に過ぎない。原則として、それ以外の流体部品、例えば、フィードバックフリー部品として知られるものも使用可能である。
【0056】
流体部品10は、第1流体(流体流)7が流れることが可能な通流室100を具備する。流体部品10は、第1流体7の揺動を発生させて、該第1流体7が第1入口開口部201から混合室20に流入した際に該第1流体7を時間内で且つ/或いは局所的に揺動させるという役割を有する。
【0057】
通流室100は、第1流体流7が通流室100に流入するための入口幅b101の入口開口部101、第1流体流7が通流室100から流出するための出口幅b102の出口開口部102を具備する。入口開口部101および出口開口部102は、それぞれ、流体部品10のうちの、流体流が通流室100に流入する際や通流室100から再流出する際に通過する(流体流方向を横切る)断面積が最も小さくなる箇所に形成されている。入口開口部および出口開口部101,102のそれぞれの幅b101,b102は、(後述の)揺動平面上で流体流方向を横切る第1流体7の該入口開口部および該出口開口部101,102の延在範囲にそれぞれ相当する。
【0058】
このとき、流体部品10の通流室100の出口開口部102は、混合室20の第1入口開口部201に対応している。
【0059】
入口幅b101の寸法は、0.5μm~5000μmであり得る。装置1における流体部品10内の最も狭い断面積(出口開口部102の断面A102、あるいは、内部ブロック11a,11b間の主流路103の最も小さい断面積A11)の大きさは、所望の体積流量に応じて選択され得る。流入圧力P10INが一定であるとして、体積流量が多ければ多くなるほど、例えば入口幅b101および/または入口高さh101等の寸法を大きくする必要がある。一般的な寸法は、100μm~3500μm、好ましくは200μm~1500μmである。
【0060】
入口開口部101と出口開口部102は、流体部品10のうちの、流れからみて互いに反対側となる2つの側に設けられている。通流室100、厳密には、通流室100の主流路103が、入口開口部101と出口開口部102とを何の障害物もなく互いに接続している。図示しない一変形例では、入口開口部101と前記出口開口部が、障害物付きの通流室100で接続され得る。
【0061】
第1流体流7は、入口開口部101から出口開口部102にかけて、(入口開口部101と出口開口部102を互いに接続する)流体部品1の長手方向軸心Aに略沿って通流室10内を移動する。長手方向軸心Aは、流体部品1の対称軸を形成する。長手方向軸心Aは、流体部品1の鏡面対称性を規定する2つの互いに直交する対称平面S1,S2上に位置している。変形例として、流体部品1は非(鏡面)対称に構成されたものであってもよい。
【0062】
流体流方向を特定の方向に変更するために、通流室100は、主流路103に加えて2つの補助流路104a,104bを有する。主流路103および2つの補助流路104a,104bは、流体部品10の長手方向軸心Aに略沿って延びており、主流路103は、(長手方向軸心Aを横切って)2つの補助流路104a,104b間に設けられている。入口開口部101の真後で、通流室10は主流路103と2つの補助流路104a,104bに分岐した後、出口開口部102の真前で再び合体する。本実施形態では、2つの補助流路104a,104bが、対称平面S2(
図3)を基準として対称に配置されている。図示しない一変形例では、前記補助流路同士が非対称に配置される。前記補助流路は、図示の流動平面の外部に配置されてもよい。このような流路は、例えば、対称平面S1の外部に位置した管体によって実現されてもよいし、流動平面(対称平面S1)に対して角度を有して位置する流路で延在するものであってもよい。
【0063】
主流路103は、流体流7が流体部品10の長手方向軸心Aに略沿って流れるように入口開口部101と出口開口部102を略直線状に互いに接続する。一般的に、主流路103の容積は0.08mm3~260mm3と想定され得る。主流路103の容積は、0.3mm3~120mm3が極めて好ましい。図示の実施形態では、主流路103の容積が約0.67mm3である。流体部品10は、流体保持容積が0.5mm3~1.2mm3であると共に、出口開口部102の最小断面積A102が約0.09mm2となっている。図示の実施形態では、入口開口部101の断面積A101が約0.12mm2である。
【0064】
入口開口部101を起点として、補助流路104a,104bは、第1部分にて、長手方向軸心Aに対して実質90°の角度で反対方向にそれぞれ延出し始める。その後、補助流路104a,104bは、長手方向軸心Aと略平行に(出口開口部102に向かう方向へと)それぞれ延びるように分岐する(第2部分)。補助流路104a,104bと主流路103とを再び合体させるため、補助流路104a,104bは、第2部分の終わりにて再び向きを変えて長手方向軸心A側の方向へとそれぞれ実質向かう(第3部分)。
図1の実施形態では、補助流路104a,104bの方向が、前記第2部分から前記第3部分への遷移部にて約120°変わる。しかしながら、補助流路104a,104bのこれら2つの部分間での方向の変化に関しては、ここで述べた角度とは異なる角度にしてもよいし、さらに言えば、全く異なる軌道を辿らせるようにしてもよい。
【0065】
補助流路104a,104bは、通流室100を流れる第1流体流7の方向に影響を加えるための手段である。この目的のために、各補助流路104a、104bは、該補助流路104a、104bのうちの出口開口部102側の端部によって形成された流入部104a1,104b1を有すると共に、該補助流路104a,104bのうちの入口開口部101側の端部によって形成された流出部104a3,104b3を有する。第1流体流7のうちの少ない割合(補助流)が、流入部104a1,104b1から補助流路104a,104b内に流れる。第1流体流7のうちのそれ以外の(主流と称される)割合は、出口開口部102を通って流体部品10から流出する。前記補助流は、流出部104a3,104b3で補助流路104a,104bから流出し、入口開口部101から流入する第1流体流7に対して(長手方向軸心Aを横切る)側方衝撃を加えることができる。このとき、第1流体流7の方向には、出口開口部102で流出する前記主流が空間内揺動を引き起こすように、詳細には、主流路103および補助流路104a,104bが位置する平面で揺動を生じるように影響が加わる。前記主流の揺動が発生する平面は、揺動平面とも称され、対称平面S1と略合致するか、あるいは、対称平面S1と平行である。
【0066】
本実施形態では、各補助流路104a,104bの断面積が、該補助流路104a,104bの(流入部104a1,104b1から流出部104a2,104b2までの)全長にわたって略一定となっている。対照的に、主流路103の断面積の大きさは、前記主流の流れ方向(すなわち、入口開口部101から出口開口部102までの方向)において略一定に増加している。このとき、あくまでも一例であるが、主流路103の形状は対称平面S1,S2を基準として鏡面対称とされている。
【0067】
しかしながら、原則として、主流路103の断面積は下流方向に減少するものであってもよい。
【0068】
主流路103と各補助流路104a,104bは、ブロック11a,11bで隔てられている。本実施形態では、2つのブロック11a,11bが、鏡面S2を基準として対称となるように配置されている。しかしながら、原則としては、構成を変えて非対称な向きになるようにしてもよい。非対称な向きの場合には、主流路103の形状も鏡面S2を基準として同じく非対称となる。実施形態としては、2つのブロック11a,11bが対称となる実施形態が好ましい。
【0069】
図1に示すブロック11a,11bの形状はあくまでも例示に過ぎず、変更されてもよい。
図1のブロック11a,11bは、縁部が丸みを帯びている。尖った縁部も可能である。縁部が丸みを帯びている実施例のほうが好ましい。
【0070】
通流室100の入口開口部101の上流方向には、漏斗状の首部(Ansatz)106が繋がっている。該首部は、入口開口部101に向かう方向(下流方向)に先細っている。原則として、断面が略一定または断面積が部分的に幅広となる首部106も可能である。前記漏斗状の首部は、入口流路とも称され得る。通流室100も、内部ブロック11a,11bの下流側、特には、出口開口部102の領域において、先細りとなっている。該先細りは、出口流路107により形成され、前記補助流路の流入部104a1,104b1を起点としている。このとき、首部106および出口流路107は、幅のみ、すなわち、長手方向軸心Aと直交する対称平面S1上の延在範囲のみがそれぞれ下流側に減少するように先細っている。本実施形態では、首部106および出口流路107の深さ(すなわち、対称平面S2上で長手方向軸心Aと直交する延在範囲)に、該先細りによる影響が及んでいない(
図2)。変形例として、首部106および出口流路107は、幅および深さの両方を先細らせることも可能である。また、首部106のみについて深さ、幅のいずれかを先細らせると同時に、出口流路107については幅および深さの両方を先細らせることも可能であるし、出口流路107のみについて深さ、幅のいずれかを先細らせると同時に、首部106については幅および深さの両方を先細らせることも可能である。
図1に示す首部106および出口流路107の形状は、あくまでも一例に過ぎない。このときの幅の減少は、下流方向に直線的な減少を呈しており、首部106の境界壁同士および出口流路107の境界壁同士が(それぞれ前記揺動平面視で)角度ε、角度φをそれぞれ挟んでいる。前記先細りの形状としては、別の形状も可能である。本実施形態において、前記入口流路(本例では、漏斗状の首部106)の長さl
106は、入口幅b
101の1.5倍以上に相当する(l
106≧1.5×b
101)。好ましい一実施形態において、漏斗状の首部106の長さl
106は、幅b
101の3倍超とされる。幅b
101が所与の一定値であるとすると、角度εが小さければ小さいほど、入口流路106の長さは大きくするのが望ましい。
【0071】
入口開口部101及び出口開口部102の断面積は、それぞれ、理想的長方形となっている。いずれも深さ(対称平面S2上で長手方向軸心Aと直交する延在範囲)は同じである(
図2)が、幅b
101,b
102(対称平面S1上で長手軸心Aと直交する延在範囲)が異なる(
図2)。原則として、該断面積の角部は丸みを帯びていてもよいし、また、入口開口部101や出口開口部102を画定する対向面同士が平行に延びていなくてもよい。極端に言えば、入口開口部101や出口開口部102は、断面積が円状または楕円状とされてもよい。
【0072】
このとき、流体部品10の通流室100の出口開口部102は、混合室20の第1入口開口部201に対応している。一般的には(すなわち、どの実施形態においても)、出口開口部102の断面積A102が断面積A101、断面積A11及び断面積A102の中で最も小さい断面積であるか又は該最も小さい断面積に等しいのが有利である(A102≦min(A101,A11))。極めて有利には、出口開口部102の断面積A102が流体部品10の通流室100の中で最も小さい断面積である。出口開口部102の断面積A102および第1入口開口部201の断面積A201は同規模で、幅b102および幅b201も同規模であり、高さh102および高さh201も同規模である。出口開口部102、すなわち、第1入口開口部201では、流体部品10の先細り状の出口流路107と混合室20の後述する末広がり状の入口流路206とが互いに合体し、この遷移領域にて縁部が形成されている。該遷移領域は、丸みを帯びていてもよい。該丸みのR半径109は、b101(入口開口部101の幅)の最小幅およびb11(内部ブロック11a,11b間の主流路103の最小断面積A11に対応する幅)の最小幅よりも小さいものとされ得る。R半径=ゼロが、出口部102の縁部の形状が尖ることになる極限値である。機械的安定性を高くするのであれば、R半径109が存在するのが好ましい。
【0073】
混合室20の第1入口開口部201の下流側には、入口流路206が隣接している。入口流路206の(前記第1流体流方向または混合室20の長手方向軸心Lを横切る)断面積は、下流方向に増加する。このとき、具体的には、入口流路206の幅(前記揺動平面上で長手方向軸心Lを横切る延在範囲)が下流方向に増加する。この場合の幅の増加は、直線的な増加を示す。しかしながら、幅の増加は多項式に従うものであってもよい。前記揺動平面視で、入口流路206を画定する壁同士は角度δを挟んでいる。該角度δの寸法としては、様々なものがあり得る。有利には、角度δは、揺動角度αに応じて選択される。この際、揺動角度αからの変位としては+10°ないし-10°、すなわち、α-10°<δ<α+10°が可能である。角度δの数値としては、α-5°<δ<α+5°が極めて好ましい。ここで、揺動角度αとは、入口流路206や混合室20がない場合に生じる固有揺動角度に該当する。
【0074】
入口流路206では、混合室20の(長手方向軸心Lを横切る)断面積A200が常に増加する。このとき、入口開口部201の断面積は例えば0.09mm2であり、長手方向軸心Lに沿って第2入口開口部2011の中心点に至るまでに2倍超に増加する。第2入口開口部2011の該中心点では、断面積が0.26mm2になる。本実施例では、第2入口開口部2011の断面積A2011が第1入口開口部201の断面積よりも小さい0.07mm2となる。
【0075】
図1の実施形態では、混合室20の幅b
20が、流体部品10の幅b
10よりも小さい。さらに、混合室20の長さl
20は、流体部品10の長さl
10よりも短い。それぞれの幅は、第1流体7の前記揺動平面上で流体部品10の長手方向軸心Aまたは混合室20の長手方向軸心Lを横切る延在範囲のことである。それぞれの長さは、第1流体7の前記揺動平面上で流体部品10の長手方向軸心Aまたは混合室20の長手方向軸心Lに沿った延在範囲のことである。
【0076】
図示の本実施形態において、混合室20の幅b
20は、該混合室20の中間部の境界壁として機能する2つの略平行な面同士によって定まる。この中間部は、混合室20の入口流路20と出口流路207との間に第1流体流方向F
1に沿って形成された部分である。原則として、前記境界壁は、例えば
図6等に示すように(平坦や平行以外の)別の形状であってもよい。
【0077】
前記中間部の下流端には、出口流路207が隣接している。出口流路207の(前記第1流体流方向または混合室20の長手方向軸心Lを横切る)断面積は、長手方向軸心Lに沿って下流方向に減少する。このとき、具体的には、出口流路207の幅(前記揺動平面上で長手方向軸心Lを横切る延在範囲)が下流方向に減少する。この場合の幅の減少は、直線的な減少を示す。しかしながら、幅の減少は多項式に従うものであってもよい。前記揺動平面視で、出口流路207を画定する壁同士は角度ωを挟んでいる。角度ωは、角度δよりも小さいのが有利である。角度ωが角度δよりも最大で15°小さいのが、極めて有利である。出口流路207の下流端は、出口開口部202によって形成されている。第1および第2流体7,8の混合流体9は、出口開口202を通って混合室20から脱出する。
【0078】
出口開口部202の断面積A202は、本例ではあくまでも一例として長方形状であり、幅b202および高さh202を有する。原則として、出口開口部202の断面積は長方形状以外も可能である。断面積A202は、流体噴流10の空間内の動きを生じさせる前記手段の中で最も小さい断面積A1min(A101、A11またはA102であり、すなわち、A1min=min(A101,A11,A102))よりも大きい。断面積A202は、第2入口開口部2011の断面積A2011の1/2と断面積A1min全体との和と同規模又はそれを上回り、すなわち、A202≧A1min+0.5×A2011である。A202≧A1min+A2011が極めて好ましい。
【0079】
図示しない一実施形態では、別々の相互作用流路30に繋がる複数の出口開口部202が設けられ得る。また、前記複数の出口開口部202のうちの一部を、対応して設けられた相互作用流路に繋がるものとすると共に、それ以外については、相互作用流路なしで形成するということも可能である。複数の出口開口部202の場合には、上記の説明が断面積A202同士の和に対して適用される。
【0080】
図2は、
図1の線A’-A’’に沿った装置1の断面図である。同図によると、本実施形態の流体部品10、混合室20、および相互作用流路30の少なくとも上流端は、一定の高さhとなっている。高さ(深さとも称する)とは、第1流体7の前記揺動平面を横切る延在範囲のことである。図示しない一実施形態において、高さhは非一定とされ得る。具体的には、入口流路106,206や出口流路107,207の領域の高さhが、本装置のそれ以外の部分の高さと違っていてもよい。
【0081】
第2流体8を混合室20内に導入するために設けられる第2供給装置50は、パイプ204を具備する。パイプ204は、長手方向軸心に沿って延びて第2流体8の流体流方向F2を規定する。パイプ204は、混合室20の第2入口開口部2011を介して混合室20と連結している。パイプ204は、(対称平面S2視で、すなわち、前記揺動平面に直交して長手方向軸心Lに沿って延びる平面視で)流体部品10の該揺動平面、すなわち、対称平面S1に対して角度βを成す。本実施形態では、角度β=90°である。原則として、該角度は別の数値を取ってもよい。その結果、混合品質および/または混合経路長もしくは混合時間に影響が加わる。圧力損失を低減するために、角度βの数値は45°±10°が好ましい。混合処理で粒子を調製する場合、粒度を小さくするのであれば90°超の角度が有利である。
【0082】
図3は、
図1の線B’-B’’に沿った装置1の断面図である。同断面図では、流体部品10の主流路103及び補助流路104a、104bの断面積が可視化されている。本実施形態において、流路103,104a,104bの高さh
103,h
104a、h
104bは同一である。しかし、原則として、互いに違っていてもよい。
図3では、主流路103及び補助流路104a,104bの断面積が、縁部を尖らせた単純なものとして描かれている。しかしながら、角部にR部を設ける、すなわち、丸みを帯びたものとすることも可能である。
【0083】
図4は、
図1の線C’-C’’に沿った装置1の断面図である。同断面図では、混合室20の入口流路206の断面が可視化されている。ここでも、角部にR部のない単純なものが描かれているが、R部が存在していてもよい。入口流路206の側方境界壁間の(前記揺動平面と平行で長手方向軸心Lを横切る)距離は、高さh
206全体で一定となっている。しかしながら、該距離は、高さh
206に沿って可変であってもよい。
【0084】
図4では、さらに、混合室20の第2入口開口部2011が混合室20の入口流路206内に形成されている様子が見て取れる。長手方向軸心Lを横切る平面視で、前記パイプ(供給流路204)と前記揺動平面が角度ηを挟んでいる。図示の実施形態では、角度η=90°とされる。原則として、該角度は別の数値を取ってもよく、例えば30°~150°であり得る。特に、第2入口開口部2011が一つである実施例の場合には、角度η=90°が好ましい。しかしながら、前記混合室が複数の第2入口開口部を有し、該複数の第2入口開口部を介して前記混合室を対応する数の(パイプとして構成された)第2供給装置と連結させることも可能である。(図示しない)同実施形態では、それぞれの角度ηが90°以外の数値を取ることが有利であり得る。複数の第2入口開口部および対応する第2供給装置の入口流路204を有する有利な一変形例では、混合室20の(
図4で上側に描かれている)カバー面および該カバー面と反対側の(
図4で下側に描かれている)基面に、それらが交互に形成される。
【0085】
図5に、本発明のさらなる実施形態に係る装置1を示す。具体的に述べると、本実施形態は、流体部品10の構造、および流体部品10の通流室100と混合室20との容積比が、
図1~
図4の実施形態と異なる。
【0086】
混合室20の容積は、流体部品10の通流室100の容積よりも大きい。詳細に述べると、本実施形態では、混合室20の幅b20および混合室20の長さl20が、それぞれ、流体部品10の幅b10、流体部品10の長さl10よりも大きい。つまり、式:b20>b10およびl20>l10の比が当てはまる。好ましい一実施形態において、流体部品10の通流室100の流体導通容積V10は、混合室20の容積V20よりも遥かに小さい(V20>V10)。好ましくは、式:V20>2×V10が当てはまる。
【0087】
本実施形態では、第2入口開口部2011が第2流体流8(すなわち、相B)用に設けられている。しかしながら、原則として、混合室20に、相Bまたは別の相を該混合室内に導入するように設けられたさらなる第2入口開口部を設けることも可能である。
【0088】
本実施形態においても、第2流体流8(すなわち、相B)用の第2入口開口部2011は、混合室20の入口流路206内に設けられている。原則として、(1つ以上の)第2入口開口部2011は、混合室20内部で自由に配置されることが可能である。好ましくは、(1つ以上の)第2入口開口部2011は、混合室20の入口流路206内または出口流路207内に位置している。極めて好ましくは、1つ以上の第2入口開口部2011は、入口流路206内に位置している。
【0089】
図5では、1つ以上の第2入口開口部2011と第1入口開口部201との間の長手方向軸心Lに沿った距離が、長さl
2011で表されている。有利には、長さl
2011は、第1入口開口部201の幅b
201の1/2以上に相当し、すなわち、l
2011≧0.5×b
201が当てはまる。極めて有利には、長さl
2011は、第1入口開口部201の幅b
102の1/2と第2入口開口部2011の幅b
2011の1/2との和以上に相当する(l
2011≧0.5×(b
201+b
2011))。また、有利には、長さl
2011が、第1入口開口部201の幅b
201の5倍以下である。まとめると、5×b
201≧l
2011≧0.5×(b
102+b
2011)が当てはまる。
【0090】
図5の実施形態において、第2入口開口部2011は円状であり、円の直径に相当する幅b
2011を有する。原則として、円状と違う形状の第2入口開口部2011も可能である。本実施形態では、第2入口開口部2011の面積A
2011が、流体部品10の出口開口部102の面積A
102よりも若干小さい。(ここで、流体部品10の出口開口部102が混合室20の第1入口開口部201に対応していることから、第2入口開口部2011の面積A
2011は第1入口開口部201の面積A
201と比較しても若干小さい)。面積A
102は、出口幅b
102と出口深さとによって定まる。
図5の実施形態では、入口流路206において、混合室20の(長手方向軸心Lを横切る)断面積A
20が一定的に増加する。断面積A
20は、幅b
20と高さh
20(前記第1流体の前記揺動平面を横切る延在範囲)とによって定まる。入口流路206の領域における混合室20の断面積A
20は断面積A
206と称され得て、対応する幅および高さは幅b
206および高さh
206と称される。有利には、断面積A
20は、第1入口開口部201から(長手方向軸心Lに沿って)およそl
2011-(b
2011/2)の距離のところで大きさが急激に変化する。このとき、極めて有利には、該大きさの急激な変化が高さh
20の増加によって実現される。
【0091】
図5に示す流体部品10の場合、幅b
101、幅b
11および幅b
102はおよそ同規模とされる。例えば、それらは約0.3mmであり得る。このとき、出口開口部102のR半径109は、約0.025mmとされ得る。
【0092】
図6に、本発明のさらなる実施形態を示す。本実施形態は、特に、混合室が複数の部位で構成されているという点で、
図1~
図5の実施形態と異なる。つまり、混合室が、長手方向軸心Lに沿って前後に並んだ複数(本例では、あくまでも一例として2つ)の副室20,20’からなる。したがって、流体部品10及び第1流体流方向を基準として、流体部品10の出口開口部102に直接隣接する上流側副室20と、上流側副室20の出口開口部202に直接隣接する下流側副室20’が存在する。下流側副室20’の第1入口開口部は、上流側副室20の出口開口部に対応している。このとき、各副室20,20’は、長手方向軸心Lに沿って下流方向に大きくなる入口流路206,206’、および長手方向軸心Lに沿って下流方向に先細る出口流路207,207’を有する。また、前記下流側副室の前記入口流路には、第2入口開口部2012が形成されている。これら2つの副室は、狭窄部を間に有する混合室20とみなすこともできる。そのため、前記混合室20は、該混合室20の断面積A
20が第2入口開口部2011の前後にわたって下流方向に所定点まで増加した後、一定のままさらに進んでから、(局所的な)最小値まで再び減少するように構成されている。該(局所的な)最小値の下流側で、断面積A
20が再び増加に転じる。この領域に、さらなる入口開口部2012が位置している。その後の混合室20は、
図1や
図5の実施形態との関連で説明した構成となっている。断面積A
20を有する部分のうち、長手方向軸心Lに沿って一定となる部分は、有っても無くてもよい。
【0093】
極めて有利には、前記混合室(あるいは、上流側副室20)のうちの、第2入口開口部2011を含む第1部分が、第1流体7の動き、さらには、動く混合流体噴流9を増幅させるような交番的な渦を発生させることができるように構成されている。つまり、前記混合室(あるいは、上流側副室20)の前記第1部分の形状は、時間内で動きを示す第1流体7の噴流が交互に流通して交番的な渦を生じさせるためのポケット状の構造を、前記揺動平面視での両側にある2つの境界壁でそれぞれ形成するような形状となっている。
【0094】
図7に、装置1のさらなる実施形態を示す。本実施形態は、特に、混合室20の形状や第2入口開口部2011の数が、
図1、
図5及び
図6の実施形態と異なる。混合室20には、第2流体8(B相)用の1つの第2入口開口部2011aに加えて、さらなる第2入口開口部2011bが設けられている。原則として、該さらなる第2入口開口部2011bも、第2流体8を混合室20内に運ぶものとされ得る。変形例として、該さらなる第2入口開口部2011bは、さらなる相Cまたは第3流体を混合室20内に運ぶ役割を果たすものであってもよい。
図7では、2つの第2入口開口部2011が存在している。しかしながら、3つ以上の第2入口開口部が設けられることも可能である。
【0095】
2つの第2入口開口部2011a,2011bは、入口流路206のうちの共通する境界壁に形成されている。原則として、2つまたは2つ以上の第2入口開口部2011は、混合室20のうちの互いに反対側に形成されていてもよい。つまり、1つ以上の第2入口開口部2011が(
図4に示すように)装置1の上側に形成されると共に、1つ以上のさらなる第2入口開口部2011が装置1のうちの前記上側の反対側となる下側に形成される。
【0096】
図7では、2つの第2入口開口部2011が、隣合って設けられており、このとき、第1入口開口部201からの(長手方向軸心Lに沿った)距離l
2011は同一となる。変形例として、第2入口開口部2011同士は、距離l
2011が異なっていてもよい。
【0097】
有利には、第2入口開口部2011間の(長手方向軸心Lを横切る)距離b2013が小さくなるように選択される。有利には、2つの第2入口開口部2011a,2011b間の距離b2013が第1入口開口部201の幅b201よりも小さい。
【0098】
上記の実施形態の各装置は、混合室20の出口開口部202の下流側に相互作用流路30を備える。しかしながら、該相互作用流路は、有っても無くてもよい。本発明に係る装置は、このような相互作用流路なしでも問題ない。上記の実施形態の各装置は、所定数の(少なくとも1つの)第1/第2入口開口部、出口開口部および第1/第2供給装置を備えている。実際のところは、どれも2つ以上存在していてよい。
【0099】
第1流体7、第2流体8又は混合流体9と接触することになる装置1の境界面は、表面粗さが低いと有利である。装置1内に流体成分が堆積するリスクは、流体噴流の動力学的な動きによって既に極めて低くなっている。この効果は、表面粗さを低くすることで向上し、本装置の連続運転の安定性を高めることができる。該表面、特には、前記混合室の表面が、親油性であると、極めて有利である。
【0100】
様々な種類の流体部品を使用することが可能である。その際には、方向を特定の方向に変更する手段として、補助流路などの手段が設けられ得る。本明細書では、高さhおよび深さtという用語を、前記第1流体の前記揺動平面を横切る延在範囲と同義的に用いる。
【0101】
本発明に係る装置1では、第1流体7、第2流体8のそれぞれの体積流量として、例えば20ml/分~200ml/分の幅広い体積流量範囲を適用することが可能である。該体積流量は、混合室20内で粒子を調製する場合に粒度を大きく変えない体積流量である。結果として、装置1は、技術的な理由から起こり得る体積流量の変動に対して優れた堅牢性を示す。さらに、同システムは、実験室規模でも大量調製でも利用が可能である。
【0102】
図8に、相互作用流路30の一実施形態を、あくまでも一例として示す。相互作用流路30は、装置1の任意の構成要素である。設けられる場合には、相互作用流路30が混合室20の出口開口部202に連結される。相互作用流路30は、パイプ状であり、
図8では複数の屈曲部31を有する。
図8における該屈曲部の数とその曲げ半径は、あくまでも一例に過ぎない。一般的に、相互作用流路30は、止水領域が発生して制御不能な凝集が生じることのないような形状に形成される。出口開口部202から流出した混合流体9は、相互作用流路30を流れることでさらなる混合機会を与えられる。混合室20内の混合処理で粒子を調製した場合には、該相互作用流路によって該粒子が成長し得る。調製される混合流体9または粒子の滞留時間は、相互作用流路30の長さによって操作することが可能である。
【0103】
図9は、運動(揺動)する第1流体7の(流体部品10の出口開口部102での)変位量を経時的に概略図示したものである。前記第1流体は、2つの最大変位量(本例では、あくまでも一例として約±25°)間で周期的に揺動していることが分かる。ここで、破線は、運動する流体噴流の軌跡として、理想的正弦波の場合の軌跡を表している。混合室20内の混合品質を高めるのであれば、中間的揺動を付加するのが有利である。このような中間的揺動は実線で表され、約±5°で付与される。この種の(中間的揺動を含んだ)経時的軌跡は、例えば
図6、
図7等の流体部品10によって形成が可能である。
図9では、揺動角度αが約50°である。原則として、該揺動角度はこの数値と違っていてもよい。該揺動角度は、混合対象の流体同士の所望の混合品質および混合量に応じて選択される。
【0104】
図10に、各流体(本例では、あくまでも一例として2種の流体)を混合して該2種の流体を含む混合流体を調製する本発明に係る方法の時系列を模式的に示す。本方法を実施するにあたっては、本発明に係る装置が使用される。
【0105】
図10でP1.1,P2.1,P3.1と表示した最初の各方法工程は、第1流体7に関するものであり、第2流体8に関する各方法工程P1.2,P2.2,P3.2と並行して実施される。これらの方法工程のあいだ、第1流体7と第2流体8は互いに隔絶されている。
【0106】
まず、方法工程P1.1,P1.2にて、前記第1流体と前記第2流体の体積流量の設定がそれぞれ行われる。その結果、混合比を(さらには、混合処理で粒子を調製する場合、任意で粒度も)設定することができる。
【0107】
次の方法工程P2.1,P2.2にて、第1流体7の流入圧力P10INおよび第2流体8の流入圧力P20INが適切なポンプ装置(量にもよるが、例えば、シリンジポンプ、輸送ポンプ等)を用いて設定され、第1および第2流体7,8が第1供給装置40、第2供給装置50内にそれぞれ運ばれる。ここで、第1流体7の流入圧力P10INとは、前記第1流体が入口開口部101から流体部品10(第1供給装置40)の通流室100に流入する圧力のことである。ここで、第2流体8の流入圧力P20INとは、前記第2流体が第2供給装置50に流入する圧力のことである。
【0108】
適用される各流入圧力は、(周囲圧力を基準として)数ミリバールないし数百バールの範囲内とされる。大量調製では、例えば2バールを大きく超える流入圧力が適用される。該圧力は、600バールのような3桁の数値を取ってもよい。2バール~350バールの圧力範囲が好ましい。10バール~220バールの圧力範囲が極めて好ましい。
【0109】
第1および第2流体7,8がそれぞれの供給装置40,50内に導入された後は、方法工程P3.1,P3.2にて、該供給装置40、50によってそれぞれの流動特性が調節される。例えば、P3.1では、流体部品10によって第1流体7の揺動が発生する。一般的に、揺動周波数は100Hz超である。2000ヘルツのような数千ヘルツの運動周波数または揺動周波数が有利である。このようにして、受動的に揺動した第1流体7が流体部品10の出口開口部102にもたらされる。前記第1流体の揺動角度は、5°以上、好ましくは25°以上、極めて好ましくは40°以上であり得る。大概の用途では、25°~50°、特には30°~45°の揺動角度が好適である。一般的に、前記揺動角度の最大値は75°である。
【0110】
並行した方法工程P3.2にて、(準)定常の第2流体噴流8が、対応する前記ポンプ装置によって第2供給装置50で生成される。変形例として、方法工程P3.2にて、第2供給装置50によって第2流体8の揺動を発生させることも可能である。(この目的のために、第2供給装置50には、第1供給装置40と同様の流体部品10が設けられることになる)。
【0111】
方法工程P4にて、第1供給装置40によって用意された揺動する第1流体噴流7と、第2供給装置50によって用意された(準)定常の第2流体噴流8とが、それぞれ第1入口開口部201、第2入口開口部2011を通って混合室20内に運ばれてそこで合流する。この衝突は、装置1との関連で既に詳細に上述した角度βおよび角度ηをもって生じる。本方法が工業プロセス規模や大量調製で適用される場合には、流体7および/または流体8が途切れのない体積流で混合室20内に運ばれる。
【0112】
調製された混合流体9を装置1から取り出す方法工程P7が、方法工程P4の直後に行われてもよい。ほかにも、方法工程P7は、調製された混合流体に熱処理(冷却)を施すこと、および/または該混合流体から任意の成分(例えば、溶剤等)を分離させることを含み得る。
【0113】
しかしながら、P4とP7との間に、1つ以上の中間工程P5および/または中間工程P6が設けられてもよい。
【0114】
つまり、混合工程P4の終わりに出口開口部202を通って混合室20から流出する混合流体9が、方法工程P5にて、下流方向に隣接して混合流体9にさらなる混合機会を与える相互作用流路30内へと運ばれ得る。混合工程P4で粒子が形成された場合には、該粒子が相互作用流路30で成長し得る。相互作用流路30については、装置1との関連で既に詳細に上述したとおりである。
【0115】
任意で、方法工程P6が、方法工程P5の後に行われ得る。変形例として、方法工程P5の直後に、方法工程P7が行われてもよい。方法工程P6では、調製された(粒子を含有するか又は含有しない)混合流体が、例えば希釈等の目的でさらなる媒体(流体)と混合される。該媒体は、調製された混合流体の性質に応じて選択され得る。このことは、例えばナノ粒子を調製する場合等に、それ以降の処理で有益になり得る。
【0116】
本記載の方法は、化学分野で混合薬品を調製するのに利用することができる。本記載の方法は、その他にも、微生物学、生化学、薬学、医療技術および食品技術で利用が可能である。医薬用または治療用の微粒子を調製するにあたって、本方法は、医薬物質もしくは治療物質を混合させた溶媒および/または1種以上の粒子含有医薬物質もしくは治療物質を混合させた流体を前記第1および/または第2流体8に用いて実施され得る。
【0117】
よって、本方法は、所定の粒度のRNAを脂質層に封入させるのに利用が可能である。この場合、第1流体7はRNA(例えば、mRNA等)を含有する水溶液であり得て、第2流体8は脂質または脂質混合物であり得る。
【0118】
図11は、
図5の装置と
図10の方法を用いて調製された混合流体の測定値を示したものである。この混合流体は、混合処理で調製された粒子を含有する。具体的に述べると、ここでは、mRNAバッチを前記第1流体として使用し、脂質混合物を前記第2流体として使用した。混合処理により、脂質層で取り囲まれたmRNA粒子を形成した。同手順は、体積流量を変えて(13.3ml/分、40ml/分、60ml/分)複数回実施した。この際、前記第1流体の体積流量は、いずれの場合も、前記第2流体の体積流量の3倍の大きさとする。
図11で特定している体積流量は、いずれも、前記第1および第2流体の合計に相当する。体積流量は、例えば、脂質混合物の組成に左右される。
【0119】
図11は、3種類の異なる体積流量について、カプセル化効率(グラフa)、粒度(グラフb)および多分散性指数(略記:PDI)(グラフc)の各特性変数に関する測定値を、3つのグラフa)、b)、c)でそれぞれ示したものである。カプセル化効率は、粒子形態で存在するmRNAの割合を百分率で表したものである。多分散性指数は、mRNA粒子の粒度分布を表したものである。ここで、多分散性指数が0であるということは、全ての粒子が同じ粒度であることを意味する。各グラフのx軸の数値は、単に、異なる時点で採取された異なる試料のことを表している。
【0120】
グラフa)から、体積流量の設定値にかかわらず、カプセル化効率が常時95%~100%になることが分かる。(同様の効率は、体積流量が
図11に記載した数値を上回る場合や下回る場合にも得られる)。脂質層で取り囲まれたmRNA粒子を工業的に調製する場合には、85%を超える数値が標準として期待される。本発明に係る方法は、この標準を問題なく合格することができる。
【0121】
ここで、粒度(グラフb))に関しては、13.3ml/分と体積流量が少ない場合に約90nmの粒度が得られ、体積流量を40ml/分に増加させることで粒度が約70nmに減少するということが明らかである。反対に、体積流量をさらに60ml/分まで増加させたとしても、粒度はそれ以上減少しない。適切な体積流量を選択することで、脂質層に囲まれたmRNA粒子を、本発明に係る方法によって標準の粒度範囲(破線)内の粒度で調製することが可能である。このとき、体積流量の規模は、脂質混合物の組成に左右され得る。
【0122】
調製された粒子の粒度分布(グラフc))は比較的狭く、体積流量の規模による粒子の粒度分布への影響は無視可能な程度の小さなものでしかない。グラフc)から、脂質層に囲まれたmRNA粒子の粒度分布についても、本発明に係る方法によって業界標準の範囲内に収まることが分かる。
【0123】
図12及び13に、装置1のさらなる実施形態を示す。
図1~
図4の装置と同様に、装置1は、それぞれ混合室20に繋がる第1供給装置40および第2供給装置50、ならびに混合室20の出口開口部202と隣接した相互作用流路30を備えている。
【0124】
このとき、第1供給装置40は、第1流体7の方向を目標に向けて動的に変化させる手段として流体部品10を備える。これにより、第1流体7の流体流は、第1流体流方向F
1に沿った運動成分および第1流体流方向F
1を横切る運動成分を有しながら、混合室20内を移動する。ここで、第1流体流方向F
1は、混合室20内の主流方向F
H20に相当する。この際の第1流体7の動きは、経時的に可変であり得る。混合室20内の主流方向F
H20は、混合室20の第1入口開口部201から混合室20の出口開口部202に向かう方向である。混合室20内での第1流体7の流体流の動きを、経時的に可変な周期的運動とすることも考えられ得る。該運動は、流体流の揺動、振動、回転または脈動と見なされ得る。
図12の供給装置40は、流体部品10として、
図1の装置1の流体部品10を具備し得る。つまり、
図12の流体部品10(およびその構成要素)の寸法(長さ、幅、高さ、深さ、直径)は、
図1の流体部品10(およびその構成要素)に関して上述したとおりのものであり得る。
【0125】
図12の実施形態は、特に、流体部品10(第1供給装置40の一部)の入口開口部101の上流側の構造および混合室20の出口開口部202の下流側の構造が、
図1の実施形態とは異なる。
図1の実施形態では、漏斗状の首部106が、入口開口部101の上流側に設けられており、かつ、流体部品10内で第1流体7が動くことになる揺動平面上のみに延在していることから、第1流体7は、前記揺動平面上の第1流体流方向F
1だけに沿って流れてから入口開口部101に到達する。これに対し、
図12の実施形態では、入口流路1614が首部106の上流側に設けられている。入口流路1614は、前記揺動平面と略直交して、つまり、首部106と直交して延在している。このとき、首部106は、入口流路1614に直接隣接している。
図13では、入口流路1614(あるいは、入口流路1614の下流端)と首部106(あるいは、首部106の上流端)との遷移部が参照符号161で表されている。首部106と入口流路1614は、一体品として形成され得る。具体的に述べると、入口流路1614は、前記揺動平面と平行に延びて首部106を画定する境界壁に形成され、前記揺動平面を横切るようにして該境界壁を完全に貫通し得る。つまり、入口流路1614及び首部106を通って流れる第1流体7は、実質約90°方向転換することになる。
【0126】
図12の実施形態では、混合室20の出口開口部202の下流側においても、同じことが起こる。出口流路3024の下流方向は、相互作用流路30に直接隣接している。
図13では、相互作用流路30(あるいは、相互作用流路30の下流端)と出口流路3024(あるいは、出口流路3024の上流端)との遷移部が参照符号302で表されている。このとき、相互作用流路30は前記揺動平面上のみに延在し、出口流路3024は前記揺動平面と略直交に延在している。相互作用流路30と出口流路3024は、一体品として形成され得る。具体的に述べると、出口流路3024は、前記揺動平面に平行に延びて相互作用流路30を画定する境界壁に形成され、前記揺動平面を横切るようにして該境界壁を完全に貫通し得る。つまり、相互作用流路30及び出口流路3024を通って流れる調製された混合流体9は、実質約90°方向転換することになる。
【0127】
入口流路1614と出口流路3024は、それぞれ直径が一定であり、あくまでも一例として円筒状である。ここでは、入口流路1614の直径d161は0.45mmであり、出口流路3024の直径d302は0.5mmである。変形例として、これら2つの直径は同規模であってもよい。有利な一実施形態において、直径d302は、d161およびb2011(第2入口開口部2011の幅)の最大値以上である(d302≧max(b2011,d161))。d161とd302の適切な寸法比は、混合対象の各流体の性質、該流体同士の相互作用(例えば、衝突等)、該流体同士の化学反応、さらには、混合対象の各流体の量の比に依存する。
【0128】
有利な一実施形態では、入口流路1614と首部106との遷移部161や、相互作用流路30と出口流路3024との遷移部302に段差が形成されていない。このとき、入口流路1614(相互作用流路30)の壁は、首部106(出口流路3024)の壁へと直接、段差を有さずに遷移している。しかしながら、上記の遷移部161,302に段差が形成されていてもよい。よって、
図12では、あくまでも一例として、入口流路1614と首部106との遷移部161に段差を図示しており、入口流路1614の直径d
161が、首部106の幅b
106(前記揺動平面上で長手方向軸心Lを横切る延在範囲)よりも小さい。
図12では、これとは対照的に、出口流路3024の直径d
302と相互作用流路30の幅b
300(前記振動面平面上で長手方向軸心Lを横切る延在範囲)は同規模である。
【0129】
入口流路1614は、首部106を介して流体部品10の入口開口部101と流体連結している。有利な一実施形態において、首部106の長さl106(入口流路1614の直径d161の中心点から長手方向軸心Lに沿って入口開口部101までの延在範囲)は、幅b101の2倍と直径d161の2倍との和以上に相当する(l106≧2×b101+2×d161)。
【0130】
図12の実施形態では、入口開口部101の幅b
101と内部ブロック11a,11b間の主流路103の最小断面積A
11における幅b
11が同規模であり、数値はそれぞれ0.38mmである。
【0131】
混合室20の出口開口部202は、相互作用流路30を介して出口流路3024と流体連結している。相互作用流路30の少なくとも一部は、幅b
300(前記揺動平面上で前記流体流方向を横切る延在範囲)が一定である。
図12の実施形態では、幅b
300が相互作用流路30の全長にわたって約0.5mmの一定とされる。混合室20の出口開口部202と出口流路3024の直径d
302の中心点との間の長手方向軸心L(あるいは、流体流方向)に沿った長さを相互作用流路30の長さl
30とした場合、長さl
30は様々な数値を取り得る。好ましくは、長さl
30は、直径d
302の2倍の大きさである(l
30≧2×d
302)。本装置を用いて脂質ナノ粒子を調製する場合には、l
30≧5×d
302が有利である。
図8の実施形態のように相互作用流路30が直線状でない場合には、相互作用流路30の中心線に沿った長さが長さl
30とされる。
【0132】
図12の実施形態では、混合室20の第2入口開口部2011の断面が円状である。ここで、幅b
2011(前記揺動平面上で長手方向軸心Lを横切る延在範囲)はあくまでも一例として0.3mmであり、第2入口開口部2011の断面積が約0.07mm
2となっている。混合室20の第1入口開口部201と混合室20の第2入口開口部2011の中心点との間の長手方向軸心Lに沿った距離は、1.01mmである。有利には、混合室20のうちの、第1および第2入口開口部201,2011間の領域の部品深さh
206(前記揺動平面を横切る延在範囲)は、幅b
2011の3倍以下である(h
206≦3×b
2011)。極めて好ましくは、h
206≦2.75×b
2011である。
【0133】
第2入口開口部2011の中心点の高さでの、混合室20の(長手方向軸心Lを横切る)断面積A20,b2011mは、約0.25mm2である。混合室20内の(第1流体流方向F1を基準として)さらに上流側である、第2入口開口部2011直前の高さでの、混合室20の(長手方向軸心Lを横切る)断面積A20,b2011aは、約0.21mm2である。混合室20内の(第1流体流方向F1を基準として)さらに下流側である、第2入口開口部2011の直後の高さでの、混合室20の(長手方向軸心Lを横切る)断面積A20,b2011eは、約0.3mm2である。混合室20の深さについては、これら3つの領域で同一である。また、断面積A20,b2011aと断面積A20,b2011eが同規模であってもよいし、断面積A20,b2011aが断面積A20,b2011eよりも大きくてもよい。断面積A20,b2011mは、断面積A20,b2011aと断面積A20,b2011eとの間の任意の値を取り得る。具体的な大きさの比は、所望の用途に応じて設定され得る。有利な一実施形態において、混合室20の断面積A20,b2011eは、混合室20の第1および第2入口開口部201,2011の断面積A201と断面積A2011との和以上の大きさである(A20,b2011e≧A201+A2011)。条件:A20,b2011e≧A201+A2011に加えて、条件:A20,b2011e≦3.5×A201が適用されてもよい。両方の条件を満たすとともに混合室20の入口流路206の領域の部品深さh206(前記揺動平面を横切る延在範囲)を一定とすることにより、第1流体7と第2流体8との混合が最適なものになり得る。
【0134】
図12の実施形態では、流体部品10の容積V
10が約0.67mm
3である。容積V
10とは、流体部品10の入口開口部101と流体部品10の出口開口部102との間で第1流体7が流れることが可能な空間のことである。このとき、流体部品10の主流路103の容積V
103は約0.32mm
3である。混合室20の容積V
20は約1.68mm
3である。容積V
20は、混合室20の第1および第2入口開口部201,2011と混合室20の出口開口部202との間で第1流体7、第2流体8または調製された混合流体9が流れることが可能な空間のことである。入口開口部201,2011および出口開口部202は、それぞれ、混合室20のうちの、流入時、再流出時の流体流の(流体流方向を横切る)通過断面積が最も小さくなる箇所のことである。具体的に述べると、容積V
20は、混合室20の流体7,8の一方しか供給されない、上記の断面積が最も小さくなる箇所の上流側の空間を含まない。具体的に言えば、容積V
20は、混合流体9が排出される、上記の断面積が最も小さくなる箇所の下流側の空間も含まない。また、第1供給装置40全体の容積V
40は約1.017mm
3である。ここで、容積V
40とは、入口流路1614の上流端と流体部品10の出口開口部102との間で第1流体7が流れることが可能な空間のことである。混合室20の容積V
20を供給装置40の容積V
40よりも大きくすると、混合結果が有利なものになる(V
20>V
40、あるいは、V
20>V
40>V
10>V
103)。上記の具体的な容積の詳細は、
図12の装置1の一実施例に関するものである。所望の用途に応じて、同実施例について定めた容積比を維持しつつ、装置1の拡大縮小が行われてよい。
【0135】
図13は、
図12の線D’-D’’に沿った装置1の断面図である。同図には、さらに、それぞれ前記揺動平面と平行な平面上に延在するとともに装置1のうちの第2入口開口部2011とは反対側に配置された、カバー体60および任意の構成要素であるシール70が示されている。ここではカバー体60が断面しか図示されていないが、カバー体60は装置1全体にわたって延在している。分かり易くするために、カバー体60と、シール70と、装置1のうちの流体導通機能要素40,50,20,30が形成されている本体部2との間に隙間を図示しているが、これらの隙間は実際には存在しない。
【0136】
カバー体60は、流体導通機能要素40,20,30を外部から密封する。図示の実施形態では、流体部品10の入口開口部101の上流側の入口流路1614、混合室20の第2入口開口部2011に繋がる供給流路2014、および相互作用流路30の出口流路3024が、前記揺動平面と直交する穿孔として本体部2に形成されている。しかしながら、原則として、これらの穿孔は、カバー体60にも形成されてよいし、あるいは、カバー体60のみに形成されてもよい。
【0137】
図1~
図4の実施形態では、本体部2とカバー体60が一体品として形成されるとともに、前記流体導通機能要素が材料部分(Materialblock)に組み込まれている。原則として、この構造は、
図12及び
図13の実施形態でも可能である。同じく、前記構造(本体2とカバー体60とシール70とを別体とする構造)が
図1~
図4の実施形態に適用されてもよい。
【0138】
シール70は、弾性材料から作製され得る。特に、第1供給装置40(具体的には、入口流路1614)に5バールを超える流入圧力P
10INが加わる装置1の用途では、弾性材料を使用するのが有利である。
図12及び
図13に示す装置1の実施形態は、例えば、吸入流路1614の流入圧力P
10IN(第1流体7)を0.5バール~90バールとして、かつ、供給流路2014の流入圧力P
20IN(第2流体8)を0.5バール~90バールとして動作し得る。一般的には、0.75バール~65バールの範囲内の流入圧力とされる。
図12及び
図13の装置1が脂質ナノ粒子を調製する方法に使用された場合、流入圧力P
10IN,P
201Nとして1バール~30バールの流入圧力が同方法に採用され得る。一般的には、2バール~6バールの範囲内の流入圧力とされる。
【0139】
供給流路2014は、混合室20の第2入口開口部2011の(第2流体流方向F
2を基準として)直ぐ上流側に形成される。供給流路2014は、円筒状の穿孔として形成されており、その直径d
2014は第2入口開口部2011の幅b
2011と合致している。しかしながら、直径d
2014は、幅b
2011と異なっていてもよい。
図12及び
図13の実施形態では、第2入口開口部2011の縁部が尖っている。原則として、例えばC面取り部やR面取り部等の別の構成とされてもよい。しかしながら、第2入口開口部2011は、バリのない尖った縁部となるように構成されるのが極めて有利である。供給流路2014は、パイプ部材204または管体(
図13)と流体連結したものであり得る。このとき、パイプ部材204または該管体の直径は、供給流路2013の直径よりも大きい。この結果、遷移領域には段差2020が生じる。
図13において、段差2020は、縁部を尖らせて構成されている。しかしながら、パイプ部材204又は管体と供給流路2014との間の遷移部は、円滑に(段差なしで)構成されてもよいし、あるいは、段差2020に面取り部を形成するようにしてもよい。
図1~
図4の実施形態との関連で既述したように、供給流路2014(あるいは、供給流路2014と連結したパイプ部材204)と前記揺動平面は、角度βおよび角度ηを挟んでいる。ここで、角度βとは、長手方向軸心Lと平行に且つ前記揺動平面と直交して延びる平面上で測定された角度のことである。一方で、角度ηとは、長手方向軸心Lと直交して且つ前記揺動平面と直交して延びる平面上で測定された角度のことである。
図1~
図4の実施形態の角度β,ηの大きさの仕様は、
図12及び
図13の実施形態にも適用される。
【0140】
具体的に述べると、供給流路1614、供給流路2014および出口流路3024を含む、装置1の上述の幾何学的関係は、供給流路1614や供給流路2014と連結される流体供給手段や、出口流路3024を出た前記混合流体を回収するための装置を含まないものとする。
【0141】
図13には、供給流路2014の長さh
2014が示されている。長さh
2014は、幅b
2011の2.5倍以上である(h
2014≧2.5×b
2011)。極めて好ましくは、式:h
2014≧4.2×b
2011が適用される。
【0142】
図12及び
図13の実施形態において、流体部品10と混合室20は高さ(前記揺動平面を横切る延在範囲)が同じである(h
10=h
20)。高さh
10および高さh
20は、流体部品10または混合室20の延在範囲の全体にわたって0.3mmの一定とされる。つまり、流体部品10の出口開口部102の高さh
102も0.3mmである。その結果、寸法b
102,h
102の数値はいずれも0.3mmとなってA
1minを形成する。高さhおよび深さhという用語は、いずれも前記揺動平面を横切る延在範囲を指すことから、本願では同義的に用いる。
【0143】
上述の幾何学的仕様の場合、調製された混合流体9の(出口流路3024で測定可能な)総合的な体積V9は10ml/分~90ml/分となり得る。総合的な体積流量V9のうち、第1流体7が占める体積分率は75%となり得て、第2流体8の体積分率は25%となり得る。よって、入口流路161または供給流路2013の流入圧力P10INおよびP20INが2バールから6バールであると、総合的な体積流量V9が10ml/分~90ml/分となり、その逆も同様である。
【0144】
本発明に係る装置1であれば、第1流体7の体積流量、第2流体8の体積流量、前記混合流体の総合的な体積流量V
9、および流入圧力P
10IN,P
20INを、調製される混合流体9や調製される粒子の品質を大きく変えずに幅広いプロセス範囲にわたって調節することが可能となる。しかも、装置1は、前記第1および第2流体の圧力脈動の影響を比較的受け難い。つまり、装置1を用いて混合流体を調製する方法も、該圧力脈動の影響を比較的受け難い。例えば、
図10(
図15)の方法の方法工程P2.1,P2.2(V2.1,V2.2、さらには、任意でV2.3~V2.5)などで用いられる圧力増加手段等が、圧力脈動を引き起こす。
【0145】
前記第1流体および前記第2流体の体積流量は、流入圧力P
10IN,P
20INが定圧であるとして、流体部品10の出口開口部102の幅b
102および/または高さh
102を変えることによって変更が可能である。
図12及び
図13の実施形態では、式:E
102=b
102/h
102で定まる長さの比E
102が1となっている。しかしながら、E
102は1以外であってもよい。
【0146】
以上では、装置1の各種実施形態について説明するとともに、各実施形態ごとに所定の幾何学的寸法(長さ、幅、高さ、深さ、直径)を定めた。これらは、装置1の各実施形態の具体的な一実施例に関するものである。所望の用途に応じて、装置1は、特定の実施例について定めた基本的な幾何学的寸法の比を維持しつつ、拡大縮小が行われてもよい。つまり、混合タスクに応じて、個々の幾何学的寸法が調節され得る。
【0147】
図15に、2種以上の流体を混合して該2種以上の流体を含む混合流体9を調製する本発明に係る方法の時系列を模式的に示す。
図15の方法には(
図10の方法にも)、
図12及び
図13の実施形態の装置1を使用することが可能である。しかしながら、他のどの実施形態(
図1~
図8)の装置1を使用することも可能である。本方法で使用される各流入物質は、室温で絶対的に気体の形態で存在するもの、固体の形態で存在するもののいずれであってもよい。そして、該流入物質は、好ましくは混合室20および流体部品10内において液体の形態で混合処理を受けるように、温度制御、および/または、装置1前でのかつ/あるいは装置1内での流入圧力の調節によって所望の流体形態に変換され得る。
【0148】
図15において、点線で縁取られたボックス内の方法工程は、任意の方法工程である。
【0149】
第1の方法工程V1.1,V1.2、および、任意の方法工程V1.3,V1.4,V1.5は、並行して実施される。ここでは、第1流体7および第2流体8(あるいは、それらの成分)、ならびに(使用されるのであれば)3種類のさらなる流体が、別々に用意される。これらの方法工程では、使用される各流体の体積流量(および体積流量比)が調節される。これにより、混合比(混合処理で粒子を調製する場合には、任意で、さらに、粒度)が設定され得る。具体的に言えば、本発明に係る装置1を用いると、使用される流体同士の体積流量比を変更することで、得られる粒度分布の単分散性(すなわち、0に近い多分散性指数)を大きく変えることなく、調製される粒子の粒度を調節することができる。例えば、mRNAナノ粒子の調製にあたっては、工程V1.1で第1流体7の体積分率=75%とし、工程V1.2で第2流体8の体積分率=25%とすることにより、双方からなる混合比に設定することが可能である。このとき、第1流体7はmRNA水溶液であり得て、第2流体8は脂質混合物であり得る。mRNAナノ粒子を調製するにあたっては、総合的な体積流量V9を10ml/分とした場合、第1流体7の体積流量V7は7.5ml/分の一定に、第2流体8の体積流量V8は2.5ml/分の一定に設定され得る。前記3種のさらなる流体には、例えば、方法工程V1.4で体積流量が調節される有機溶媒が含まれ得る。該有機溶媒は、後の方法工程で再除去され得る。
【0150】
第2の方法工程V2.1,V2.2、および、任意の方法工程V2.3,V2.4,V2.5にて、第1流体7(あるいは、その成分)の流入圧力P10INおよび第2流体8(あるいは、その成分)の流入圧力P20INが適切なポンプ装置(量にもよるが、例えば、シリンジポンプ、輸送ポンプ等)を用いて設定される。ここで、第1流体7の流入圧力P10INとは、前記第1流体が入口開口部101から流体部品10(第1供給装置40)の通流室100に流入する圧力のことである。ここで、第2流体8の吸入圧力P20INとは、前記第2流体が第2供給装置50に流入する圧力のことである。
【0151】
第2の方法工程V2.1,V2.2、および、任意の方法工程V2.3,V2.4,V2.5では、必要に応じて、使用される流入物質の温度制御が行われ得る。また、必要な物性を該流入物質に付与するために、流入圧力の調節が行われ得る。これにより、例えば、流入物質の粘度を調節することができる。流入物質の種類にもよるが、温度および/または流入圧力により、混合比や混合処理の結果に影響を与えることが可能である。
【0152】
第3の方法工程V3は、任意の方法工程である。同工程では、V1.2,V1.3,V2.2,V2.3で処理された流体同士が(第1流体や第2流体に未だなっていないことを前提として)混合されることにより、第1流体7または第2流体8が調製され得る。方法工程V3には、本発明に係る装置が使用され得る。しかしながら、原則として、混合用の別の装置が方法工程V3に使用されてもよい。
【0153】
第4の方法工程V4.1,V4.2、および、任意の方法工程V4.3,V4.4にて、第1および第2流体7,8、そして、任意で、さらなる流体が、第1または第2供給装置40,50内にそれぞれ運び込まれる。方法工程V4.1,V4.2、および、任意の方法工程V4.3,V4.4では、供給装置40、50によって流動特性が調節される。つまり、V4.1では、流体部品10によって第1流体7の揺動が発生する。一般的に、揺動周波数は100Hz超である。2000ヘルツのような数千ヘルツの揺動周波数が有利である。このようにして、受動的に揺動する第1流体7が流体部品10の出口開口部102にもたらされる。前記第1流体の揺動角度は、5°以上、好ましくは25°以上、極めて好ましくは40°以上であり得る。大概の用途では、25°~50°、特には30°~45°の揺動角度が好適である。一般的に、前記揺動角度の最大値は75°である。
図1~
図7並びに
図12及び
図13の第1供給装置40(特には、流体部品10)を用いると、前記第2の方法工程で発生し得る望ましくない圧力変動を減衰することが可能となるので、本方法がそのような圧力変動の影響を比較的受け難くなるという利点がある。
【0154】
並行する方法工程V4.2にて、(準)定常の第2流体噴流8が、対応するポンプ装置によって第2供給装置50内にて加速状態で生じる。特定のタスクや所望の混合品質によっては、第2流体8の速度を下げたほうが有利な場合もある。変形例として、方法工程V4.2にて、第2供給装置50によって第2流体8の揺動を発生させることも可能である。(この目的のために、第2供給装置50には、第1供給装置40と同様の流体部品10が設けられることになる)。
【0155】
方法工程V5は、混合室20内で前記第1および第2流体を合流・相互作用させることを含むものであり、
図10の方法工程P4に対応している。方法工程V5では、混合流体9の成分同士が互いに作用し合い、例えば沈殿反応や(混合処理V5で粒子が形成された場合には)粒子成長をもたらす。任意で、V4.3などからの1種以上のさらなる流体を前記第1および第2流体と合流させて、例えば化学反応等を生じさせるということも可能である。この場合の本方法は、
図7の装置1を用いて実施することが可能である。調製された混合流体9を装置1から取り出す方法工程P9が、方法工程V5の直後に行われてもよい。
【0156】
方法工程V5と方法工程V9との間に、1つ以上の中間工程V6および/または中間工程V7および/または中間工程V8が設けられてもよい。
【0157】
任意の方法工程V6にて、混合流体9の各成分は、V5以降も互いに相互作用し得る。方法工程V6は、混合室20の下流方向に隣接する(同方法工程用に特別に設けられた)相互作用流路30内で行われる。相互作用流路30により、混合の向上および/または調製される粒子の粒度の調整を図ることができる。
【0158】
任意で、方法工程V7が、方法工程V5または方法工程V6の後に行われ得る。該方法工程では、調製された(粒子を含有するか又は含有しない)混合流体9が、例えば希釈等の目的で例えばV4.4等からのさらなる媒体(流体)と混合される。該媒体は、調製された混合流体の性質に応じて選択され得る。このことは、例えばナノ粒子を調製する場合等に、それ以降の処理で有益になり得る。
【0159】
任意で、調製された混合流体の後処理を行う方法工程V8が、方法工程V5、方法工程V6または方法工程V7の後に行われ得る。該後処理は、例えば、調製された粒子の計数、調製された粒子の粒度の測定、混合流体9中に形成された粒子の品質の確認等であり得る。透析(処理)および/またはろ過処理も考えられ得る。
【0160】
最後の方法工程V9では、調製された混合流体9が装置1から取り出される。
【国際調査報告】