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特表2024-517672近接結合エンジン用途の白金含有三元触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】近接結合エンジン用途の白金含有三元触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20240416BHJP
   B01J 35/57 20240101ALI20240416BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240416BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240416BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B01J23/63 A
B01J35/57 L ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565247
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2022060545
(87)【国際公開番号】W WO2022223688
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】21170236.0
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ドゥンブヤ,カリファラ
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ,トマス
(72)【発明者】
【氏名】チー,チュンシン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルツ,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ジームント,シュテファン
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA17
3G091AB03
3G091BA07
3G091GB01W
3G091GB01X
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4G169BC43B
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4G169BC72B
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4G169BC75B
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4G169EE09
4G169FA06
4G169FB23
4G169FB30
4G169FC08
(57)【要約】
本発明は、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を含む排気ガス流を処理するための三元変換触媒(TWC)であって、白金族金属(PGM)、耐火性金属酸化物支持体、及び担体を含み、白金族金属(PGM)が白金、パラジウム及びロジウムを含むことを特徴とする三元変換触媒、その方法及び使用方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を含む排気ガス流を処理するための三元変換触媒(TWC)であって、白金族金属(PGM)、耐火性金属酸化物支持体、及び担体を含み、前記白金族金属(PGM)が白金、パラジウム及びロジウムを含むことを特徴とする、三元変換触媒(TWC)。
【請求項2】
前記三元変換触媒(TWC)が近接結合位置にある、請求項1に記載の三元変換触媒(TWC)。
【請求項3】
前記三元変換触媒(TWC)が、ボトムウォッシュコート層及びトップウォッシュコート層が含まれる複数のウォッシュコート層を含む、請求項1又は2に記載の三元変換触媒(TWC)。
【請求項4】
前記複数のウォッシュコート層が、2つのウォッシュコート層、1つのボトムウォッシュコート層及び1つのトップウォッシュコート層からなる、請求項3に記載の三元変換触媒(TWC)。
【請求項5】
前記ボトムウォッシュコート層が、白金族金属(PGM)として白金とパラジウムの組み合わせを含む、請求項3又は4に記載の三元変換触媒(TWC)。
【請求項6】
前記トップウォッシュコートが、白金族金属(PGM)としてパラジウムとロジウムの組み合わせを含む、請求項3から5のいずれか一項に記載の三元変換触媒(TWC)。
【請求項7】
前記ボトムウォッシュコート層が、唯一の白金族金属(PGM)として白金及びパラジウムを含み、及び/又は前記トップウォッシュコートが、唯一の白金族金属(PGM)としてロジウム、好ましくはパラジウム及びロジウム、そしてより好ましくは白金、パラジウム及びロジウムを含む、請求項3から6のいずれか一項に記載の三元変換触媒(TWC)。
【請求項8】
前記耐火性金属酸化物支持体が、セリアとアルミナの混合物又は混合酸化物、又はランタナをドープしたアルミナであってその質量に対して10質量%以下の量でランタナを含むランタナをドープしたアルミナから選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の三元変換触媒(TWC)。
【請求項9】
前記耐火性金属酸化物支持体が、10:90~90:10の質量比を有するセリアとアルミナの混合物又は混合酸化物から選択される、請求項8に記載の三元変換触媒(TWC)。
【請求項10】
前記白金が前処理される、請求項1から9のいずれか一項に記載の三元変換触媒(TWC)。
【請求項11】
酸素貯蔵成分(OSC)及び/又は促進剤をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の三元変換触媒(TWC)。
【請求項12】
白金対パラジウムの質量比1未満:1を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の三元変換触媒(TWC)。
【請求項13】
ガソリンエンジンからの排気ガス流を処理する方法であって、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を含むガソリンエンジンからの排気ガス流を提供する工程、及び前記排気ガス流を請求項1から12のいずれか一項に記載の三元変換触媒(TWC)と接触させる工程を含む方法。
【請求項14】
ガソリンエンジンの排気ガス流からの窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を浄化するための、請求項1から13のいずれか一項に記載の三元変換触媒(TWC)の使用方法。
【請求項15】
1000℃を超えるエンジンベッド温度を含むガソリンエンジンの排気ガス流を浄化することを含む、請求項14に記載の三元変換触媒(TWC)の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用途で生じる排気ガス流を処理するための触媒に関するものである。本発明の触媒は三元変換触媒(TWC)である。本発明はまた、三元変換触媒を用いて排気ガス流を処理する方法、及びその触媒の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の効果的な排ガス処理システムが開発されており、現在広く使用されている。燃料エンジンからの三大汚染物質には、窒素酸化物(NOx)、未燃炭化水素(HC)、及び一酸化炭素(CO)が含まれる。これら3つの汚染物質は、いわゆる三元変換触媒(TWC)を使用することによって、排気ガス流からパージされる。
【0003】
三元変換触媒(TWC)は通常、排気ガス流から汚染物質を効率よく且つ完全に除去するために高温を必要とする。しかし、高温は触媒の安定性と性能に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、高温は、触媒の表面積を減少させる焼結プロセスにつながる可能性がある。この結果、触媒性能は悪化する。
【0004】
この問題に対処する1つの方法は、白金族金属(PGM)と支持体材料との特定の組み合わせを選択することにより、触媒の機能を長期にわたって維持し、そして高温への暴露に対する触媒の安定性を高めることである。例えば、従来の近接結合三元変換触媒(TWC)のほとんどは、白金族金属(PGM)としてパラジウムとロジウムのみを含有している。
【0005】
白金族金属(PGM)は貴金属であり、高い費用でしか入手できない。特に、パラジウムの費用は、白金の費用よりも50%高い。従って、既存の触媒配合において、パラジウムを部分的に白金に置き換えることは、既に莫大な費用削減の可能性があろう。しかし、特に白金は、エンジン温度が高いと焼結プロセスが見られることから、三元変換触媒において非常に限られた安定性しか有しないことが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、白金族金属(PGM)として使用できる白金の量がより多く、そしてより高価な他の白金族金属(PGM)を回避するか又は少なくとも部分的に白金で置き換えることができる、高温での安定性が改善された三元変換触媒(TWC)を設計することが目的である。
【0007】
本発明は、比較的多量の白金が、より高価な他の白金族金属(PGM)に置き換えて含まれる三元変換触媒(TWC)用の改良された配合物を提供することによってこの課題を解決するものであり、一方、本発明の三元変換触媒(TWC)は、非常に良好な安定性及び高いエンジン温度における優れた性能を示す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を含む排気ガス流を処理するための三元変換触媒(TWC)であって、白金族金属(PGM)、耐火性金属酸化物支持体、及び担体を含み、その白金族金属(PGM)が白金、パラジウム及びロジウムを含むことを特徴とする、三元変換触媒(TWC)に関する。
【0009】
好ましい実施形態では、三元変換触媒(TWC)は近接結合位置にある。
【0010】
別の好ましい実施形態では、三元変換触媒(TWC)は、ボトムウォッシュコート層及びトップウォッシュコート層が含まれる複数のウォッシュコート層を含む。
【0011】
別の好ましい実施形態では、複数のウォッシュコート層は、2つのウォッシュコート層、1つのボトムウォッシュコート層及び1つのトップウォッシュコート層からなる。
【0012】
別の好ましい実施形態では、ボトムウォッシュコート層は、白金族金属(PGM)として白金とパラジウムの組み合わせを含む。
【0013】
別の好ましい実施形態では、トップウォッシュコートは、白金族金属(PGM)としてパラジウムとロジウムの組み合わせを含む。
【0014】
別の好ましい実施形態では、ボトムウォッシュコート層は、唯一の白金族金属(PGM)として白金及びパラジウムを含み、及び/又はトップウォッシュコートは、唯一の白金族金属(PGM)としてロジウム、好ましくはパラジウム及びロジウム、そしてより好ましくは白金、パラジウム及びロジウムを含む。
【0015】
別の好ましい実施形態では、耐火性金属酸化物支持体は、セリアとアルミナの混合物又は混合酸化物、又はランタナをドープした(Lドープ)アルミナであってその総質量に対して10質量%以下の量でランタナを含むランタナをドープしたアルミナから選択される。
【0016】
別の好ましい実施形態では、耐火性金属酸化物支持体は、10:90~90:10の質量比を有するセリアとアルミナの混合物又は混合酸化物から選択される。
【0017】
別の好ましい実施形態では、白金は前処理される。
【0018】
別の好ましい実施形態では、三元変換触媒(TWC)は、酸素貯蔵成分(OSC)及び/又は促進剤成分をさらに含む。
【0019】
別の好ましい実施形態では、三元変換触媒(TWC)は、白金対パラジウムの質量比1未満:1を有する。
【0020】
本発明の第2の態様は、ガソリンエンジンからの排気ガス流を処理する方法に関し、該方法は、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を含むガソリンエンジンからの排気ガス流を提供する工程、及びその排気ガス流を本発明の三元変換触媒(TWC)と接触させる工程を含む。
【0021】
本発明の第3の態様は、ガソリンエンジンの排気ガス流からの窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を浄化するための本発明の三元変換触媒(TWC)の使用方法に関する。
【0022】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態では、三元変換触媒(TWC)の使用方法は、1000℃を超えるエンジンベッド温度を含むガソリンエンジンの排気ガス流を浄化することを含む。
【0023】
ここで使用する「触媒」、「触媒機能」、「触媒成分」、「触媒材料」などの用語は、1つの反応又は複数の反応を促進する材料を指す。
【0024】
最も重要なこととして、排気ガス処理システムは、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を含む、典型的なガソリンエンジンから生じる三大汚染物質を除去できなければならない。よってこれら3つの最も重要な汚染物質の除去は、本発明において、三元変換触媒(TWC)によって達成される。
【0025】
「三元変換触媒」(TWC)という用語は、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)が実質的に同時に変換される三元変換の機能を指す。例えば、ガソリンエンジンは通常、燃料リッチと燃料リーンの空燃比(A/F比)(λ=1±~0.01)の間を0.5~2Hzの摂動周波数でわずかに振動又は摂動する、ほぼ化学量論的な反応条件下で作動する。ここで使用する「化学量論」は、化学量論付近のA/F比の振動又は摂動を考慮して、ガソリンエンジンの条件を指す。三元変換触媒(TWC)は、好適な耐火性金属酸化物支持体と、任意に、空燃比が変化する条件下で酸素を保持及び放出させる多価の状態を有する酸素貯蔵成分(OSC)とを含み得る。窒素酸化物(NOx)が還元されるリッチ条件下では、酸素貯蔵成分(OSC)は少量の酸素を供給して未反応の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を消費する。同様に、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)が酸化されるリーン条件下では、酸素貯蔵成分(OSC)は過剰の酸素及び/又はNOxと反応する。その結果、燃料リッチと燃料リーンの空燃比の間で振動する雰囲気の存在下でさえも、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)がすべて同時に(又は本質的にすべて同時に)変換される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、900℃で4時間のオーブンエイジング(蒸気が10%、Oが10%)後の、様々な支持体材料に固定された複数のモデル触媒(1×4”コア)による、炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物排出の転化率を示す、1.4LのGDIエンジントレースのNEDC GSSデータに関する図である。
図2図2は、850℃で50時間及び950℃の入口温度で50時間(900℃で50時間及び1000℃の床温度で50時間)の二段階エージング後、選択した支持体材料に支持された様々な白金族金属を含む多層三元変換触媒(同一のPdRhボトム層、Pd/アルミナ又はPt/アルミナのいずれかであるトップ層を有するあらゆる触媒の二重コーティング設計及び同一の組成)による精製後の、炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物のWLTCテールパイプ排出量(Chasis Dyno 1.4L TGI車両)を示す図である。
図3図3は、980℃の床温度で50時間のエージング後、様々な支持体材料上の様々な白金族金属を含む複数の多層三元変換触媒(多層設計;SMSI支持体上のPt;4.0×5.35”、900/2.5)による精製後の、炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物のWLTCテールパイプ排出量(2L GDIエンジン)を比較した図である。
図4図4は、1030℃の床温度で101時間のエージング後、様々な白金族金属を含む多層三元変換触媒(多層設計;Lドープアルミナである支持体A上のPt;PdRh0/70/10標準;4.66×4.5”、600/4)による精製後の、炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物のWLTCテールパイプ排出量(2L GDIエンジン)を比較した図である。
図5図5は、1030℃の床温度で100時間のエージング後、三元変換触媒(多層設計、Lドープアルミナ上のPt対セリアドープアルミナ上のPt;PdRh0/72/8標準;4.66×4.5”、600/4セラミック基材)による精製後の、炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物のWLTCテールパイプ排出量(2L、GDIエンジン)を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の三元変換触媒を以下でさらに詳述する。
【0028】
このように三元層状触媒(TWC)は、複数の必須触媒成分を含む。好ましくは、三元変換触媒コーティングの組成は、炭化水素(HC)酸化成分、一酸化炭素(CO)酸化成分、及び窒素酸化物(NOx)還元成分を含み、そして排気ガス流からのNOx、HC及びCOをパージできるように選択される。
【0029】
本発明の三元変換触媒には、白金族金属(PGM)成分が含まれる。白金族金属(PGM)成分は、触媒中で好適な支持体材料、典型的には耐火性金属酸化物支持体と組み合わされるが、白金族金属(PGM)と耐火性金属酸化物支持体との組み合わせは、高温でのエージングの観点から、高い触媒性能と優れた安定性を達成するために重要である。
【0030】
三元変換触媒(TWC)全体は、自動車の排気ガス処理ラインに三元変換触媒(TWC)を最適な方法で配置することを可能にする好適な担体材料上に配置される。担体材料を以下でさらに詳細に定義する。
【0031】
三元変換触媒は、好ましくは排気ガス処理ラインの下流に、そして典型的には近接結合位置に配置される。「近接結合」という用語は、エンジン出口、好ましくはガソリンエンジン出口と流体連通し、そしてそのすぐ下流に位置する、好ましくはエンジン出口から50cm以内、より好ましくは30cm以内、及び最も好ましくは20cm以内の位置を示す。従って本発明の文脈において、「近接結合」位置とは、当該技術分野において一般的に理解されているように理解され、例えば、従来の「床下」位置(車両の床の下である)よりも実質的にエンジンに近い位置である。一般に、限定するものではないが、このような「近接結合」位置は、好ましくはエンジンコンパートメント内にあり、通常、車両のフードの下にあり、そして排気マニホールドに隣接している。従って、「近接結合」位置に配置された触媒は、一般に、エンジンが暖機された後、エンジンを出た直後の高温の排気ガスに曝されるため、典型的には周囲条件からエンジンを始動した直後の期間である冷間始動時に、炭化水素排出を低減する役割を果たすことが多い。
【0032】
このように、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を含む排気ガス流を処理するための本発明の好ましい三元変換触媒(TWC)は、白金族金属(PGM)、耐火性金属酸化物支持体、及び担体を含み、その白金族金属(PGM)が白金、パラジウム及びロジウムを含むことを特徴とし、三元変換触媒(TWC)における白金対パラジウムの質量比が、白金族金属(PGM)の総質量に対して5:95~45:55であり、そして耐火性金属酸化物支持体は、セリアとアルミナの混合物又は混合酸化物、又はランタナをドープしたアルミナであってその質量に対して10質量%以下の量でランタナを含むランタナをドープしたアルミナから選択され、より好ましくは、このような三元変換触媒(TWC)は、エンジン出口の近接結合位置にある。
【0033】
さらにより好ましくは、三元変換触媒(TWC)は、エンジン出口、好ましくはガソリンエンジン出口と流体連通し、そしてそのすぐ下流に位置する。最も好ましくは、本発明の三元変換触媒(TWC)は、エンジン出口から50cm以内、より好ましくは30cm以内、及び最も好ましくは20cm以内に位置する。三元変換触媒(TWC)が、床下位置、すなわち車両の床の下にないことが特に好ましい。
【0034】
換言すれば、三元変換触媒(TWC)は、エンジンコンパートメント内の近接結合位置に、好ましくは車両のフードの下にあり、且つ排気マニホールドに隣接している。従って、「近接結合」位置に配置された三元変換触媒(TWC)は、一般に、エンジンが暖機された後、エンジンを出た直後の高温の排気ガスに曝されるため、典型的には周囲条件からエンジンを始動した直後の期間である冷間始動時に、炭化水素排出を低減する役割を果たすことが多い。
【0035】
よって本発明は、エンジン、好ましくはガソリンエンジンと、本発明の三元変換触媒(TWC)との組み合わせ、或いは、エンジン、好ましくはガソリンエンジンを本発明の三元変換触媒と組み合わせて含む排気ガス処理ラインに関する。換言すれば、本発明は、エンジン、好ましくはガソリンエンジンを本発明の三元変換触媒(TWC)と組み合わせて含む排気処理システムにも関する。好ましい実施形態では、エンジン、好ましくはガソリンエンジン、及び三元変換触媒(TWC)を含む排気処理システムは、上で定義したように、三元変換触媒をエンジンのエンジン出口の近接結合位置に有する。換言すれば、三元変換触媒(TWC)は、エンジン出口と三元変換触媒(TWC)との間に配置されたさらなる装置又は触媒なしに、エンジン出口に直接接続されている。すなわち、本発明の三元変換触媒(TWC)は、上述したように、エンジン出口と流体連通し、そしてエンジン出口のすぐ下流に位置する。
【0036】
三元変換触媒(TWC)が追加の微粒子フィルタと結合して排気ガス処理ライン中に四元変換触媒(FWC)を形成する場合、四元変換触媒(FWC)もまた、三元変換触媒(TWC)が最も好ましくはそうであるように、最も好ましくは「近接結合」して配置される。
【0037】
本発明の三元変換触媒には、様々な異なる担体材料を使用することができる。これについては以下でさらに詳細に論じる。
【0038】
三元変換触媒(TWC)には、好ましくは、追加の酸素貯蔵成分(OSC)及び/又は促進剤成分がさらに含まれる。
【0039】
三元変換触媒コーティングは、白金族金属(PGM)成分を含む。本発明では、三元変換触媒(TWC)が少なくとも3つの白金族金属白金、パラジウム及びロジウムの存在を組み合わせることが必須である。さらに、白金、パラジウム及びロジウム以外の追加の白金族金属(PGM)も任意に存在してよい。例えば、ルテニウム、オスミウム及び/又はイリジウムのようなさらなる白金族金属(PGM)を、白金、パラジウム及びロジウムに加えて、本発明の三元変換触媒(TWC)中に任意に存在させることができるが、後者3つの担持量は本発明において必須である。
【0040】
本発明者らは、特に、本発明の三元変換触媒(TWC)における通常のパラジウム成分を、少なくとも部分的に白金で置き換えるのが可能であることを見出した。よって、先行技術で知られている従来の三元変換触媒(TWC)が大抵は白金族金属(PGM)成分としてパラジウム及びロジウムをベースとしているのとは対照的に、本発明の三元変換触媒(TWC)は、パラジウム及びロジウムを含有するが、パラジウム成分を部分的に置き換える実質的な量の白金も含有する。
【0041】
本発明の三元変換触媒(TWC)において、白金族金属(PGM)の総質量に対して、白金/パラジウム/ロジウムの質量あたりの相対比は、好ましくは5/103/10~54/54/10、より好ましくは10/98/10~45/63/10、及びさらにより好ましくは25/83/10~35/73/10である。加えて、又は代替的に、白金対パラジウムの質量比は、好ましくは5:95~50:50、より好ましくは15:85~45:55、及びさらにより好ましくは27:73~40:60である。
【0042】
本発明の三元変換触媒(TWC)における白金族金属(PGM)成分の総担持量は、白金、パラジウム及びロジウムを必須成分として含む。より好ましくは、三元変換触媒(TWC)は、耐火性金属酸化物支持体に支持された白金族金属(PGM)成分を、1~200g/ftの範囲、より好ましくは20~180g/ftの範囲、さらにより好ましくは50~150g/ftの範囲、及び最も好ましくは70~125g/ftの範囲の担持量で含む。一般に、当業者は触媒コーティング上の白金族金属(PGM)の担持量を測定することに精通しているであろう。例えば、白金族金属(PGM)の触媒担持量の測定には、XRF(X線蛍光)及び誘導結合プラズマ原子発光分光(ICP-AES)を用いることができる。
【0043】
本発明の好ましい一実施形態では、三元変換触媒(TWC)の白金成分は、追加的に前処理することができる。本発明の白金成分の前処理とは、本発明のパラジウム、又はロジウム、及び/又は任意の他の白金族金属(PGM)を対応する耐火性金属酸化物支持体上に含浸させ、本発明のパラジウム、又はロジウム、又は任意の他の白金族金属(PGM)を含む耐火性金属酸化物支持体を焼成し、次いで、本発明のパラジウム、又はロジウム、及び/又は任意の他の白金族金属(PGM)を含む焼成した耐火性金属酸化物支持体上に白金を含浸させ、そして本発明のパラジウム、又はロジウム、又は任意の他の白金族金属(PGM)を含む白金含有耐火性金属酸化物支持体を焼成することによって、前処理された白金成分を得る成分及び/又は調製方法を指す。
【0044】
本発明の三元変換触媒(TWC)において、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)及び一酸化炭素(CO)をパージする触媒の能力を実質的に低下させることなくパラジウムを部分的に白金に置き換えることは、驚くべきことであり、予想外のことである。なぜなら白金は、エンジン温度が高いと焼結挙動を示し、それによって三元転換(TWC)触媒の表面積及び全体的な性能が悪化することが知られているからである。さらに、白金はパラジウムよりも実質的に安価であるので、これは商業的観点からも重要な発見である。
【0045】
本発明者らは、触媒の機能を実質的に損なうことなくパラジウムを部分的に白金に置き換えるのは、本発明で選択した白金族金属(PGM)を選択した耐火性金属酸化物支持体材料と組み合わせると特に達成できることを見出した。
【0046】
本発明の三元変換触媒(TWC)は、耐火性金属酸化物支持体を含む。耐火性金属酸化物支持体は本発明に必須であり、本発明の触媒中の白金族金属(PGM)成分と組み合わされる。好ましくは、耐火性金属酸化物支持体は非ゼオライト性である。特許請求する技術的効果を達成するために、本発明の三元変換触媒(TWC)に使用できる特に好ましい耐火性金属酸化物支持体材料が複数ある。
【0047】
好ましい耐火性金属支持体材料の1つは、セリウムオキシドとアルミニウムオキシドの混合物又は混合酸化物を含む。好ましくは、セリウムオキシドとアルミニウムオキシドの混合物又は混合酸化物は、セリア対アルミナの質量比10:90~90:10、又は25:75~75:25、又は30:70~70:30、より好ましくは40:60~60:40、及びさらにより好ましくは45:55~55:45を有する。
【0048】
別の好ましい耐火性金属支持体材料は、ランタナ(Laなど)をドープしたアルミニウムオキシドを含む。ランタナをドープしたアルミナは、ランタナをドープしたアルミナの質量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらにより好ましくは5質量%以下、及び最も好ましくは4質量%以下のやや少量のランタナを含有するアルミナを指す。Laドープしたアルミナ(Lドープアルミナ)は、ランタナをドープしたアルミナの質量に対して、少なくとも0.5質量%、より好ましくは少なくとも1質量%、及び最も好ましくは少なくとも2質量%のランタナを含有する。
【0049】
本発明の耐火性金属酸化物支持体材料に使用されるアルミニウムオキシドは、好ましくは安定化アルミニウムオキシドとすることができる。耐火性金属酸化物支持体のアルミニウムオキシドは、好ましくはガンマアルミニウムオキシドとすることもできる。本発明の三元変換触媒(TWC)の耐火性金属酸化物支持体は、任意に、ジルコニア、セリア、バリア及び/又はネオジミアのような追加の金属酸化物を含むことができる。
【0050】
本発明の三元変換触媒(TWC)における耐火性金属酸化物支持体の総担持量は、好ましくは0.2~6.0g/inの範囲、より好ましくは0.5~5.0g/inの範囲、より好ましくは1.0~4.0g/inの範囲、及びさらにより好ましくは2.5~3.5g/inの範囲である。
【0051】
本発明の三元変換触媒(TWC)中のセリア含有量は、好ましくは0.4~4.0g/inの範囲、より好ましくは0.7~3.0g/inの範囲、さらにより好ましくは0.9~2.0g/inの範囲、又は最も好ましくは1.0~1.5g/inの範囲である。
【0052】
より好ましくは、耐火性金属酸化物支持体は、0.05~1.5ml/gの範囲、より好ましくは0.1~1.0ml/gの範囲、より好ましくは0.15~0.8ml/gの範囲の気孔率を有する。耐火性金属酸化物支持体の気孔率は、Nの物理吸着及びDIN66134によるBJH(Barett、Joyner、Halenda)分析を介した物理吸着等温線の分析によって決定される。
【0053】
本発明の三元変換触媒(TWC)には、好ましくは、追加の酸素貯蔵化合物が含まれる。このような酸素貯蔵化合物は、本発明の三元変換触媒(TWC)において複数のウォッシュコートが適用される場合、ボトムウォッシュコート中又はトップウォッシュコート中、又はボトムウォッシュコート及びトップウォッシュコート中に存在させることができる。
【0054】
より好ましくは、酸素貯蔵化合物はセリウムを含み、さらにより好ましくは、セリウムオキシド、セリウムオキシドを含む酸化物の混合物、及びセリウムを含む混合酸化物のうちの1つ以上を含み、セリウムを含む混合酸化物は、好ましくは、ジルコニウム、イットリウム、ネオジニウム、及びプラセオジムのうちの1つ以上を追加的に含み、より好ましくは、ジルコニウム、イットリウム、ネオジニウム及びランタンのうちの1つ以上を追加的に含み、より好ましくは、ジルコニウム、イットリウム、ネオジニウム及びランタンを追加的に含む。さらに、セリウムを含む酸素貯蔵化合物は、2つ以上の異なる混合酸化物からなっていてもよく、これらの混合酸化物の各々は、セリウムと、ジルコニウム、イットリウム、ネオジニウム、ランタン、及びプラセオジムのうちの1つ以上とを含んでもよい。セリウムオキシドとジルコニウムオキシドの混合物又は混合酸化物は、1つの好ましい酸素貯蔵成分である。
【0055】
任意の酸素貯蔵化合物は、0.05~1.5ml/gの範囲、より好ましくは0.1~1.0ml/gの範囲、より好ましくは0.15~0.8ml/gの範囲の好ましい気孔率を有する。酸素貯蔵化合物の気孔率は、Nの物理吸着及びDIN66134によるBJH(Barett、Joyner、Halenda)分析を介した物理吸着等温線の分析によって決定される。
【0056】
三元変換触媒(TWC)は、好ましくは追加の促進剤成分を含む。本発明の文脈で使用される「促進剤」という用語は、全体的な触媒活性を促進する化合物に関する。
【0057】
本発明の三元変換触媒(TWC)が、複数のコーティング、すなわち、例えばボトムウォッシュコート及びトップウォッシュコートが含まれる複数のウォッシュコートを含む層状触媒である場合、促進剤成分は、好ましくはボトムウォッシュコート又はトップウォッシュコートのいずれか一方に、又はさらにより好ましくはボトムウォッシュコート及びトップウォッシュコートの両方に含まれてよい。促進剤成分は、好ましくは、ジルコニウム、バリウム、ストロンチウム、ランタン、ネオジム、イットリウム、及びプラセオジムのうちの1つ以上を含む。1つの好ましい促進剤成分は、バリウム、ジルコニウム及びネオジムの混合物、又はバリウム、ジルコニウム及びネオジムの混合酸化物によって定義される。バリウムオキシド、ジルコニウムオキシド及びネオジムオキシドの三元混合物が促進剤成分として使用される場合、バリウムオキシド対ジルコニウムオキシド対ネオジムオキシドの質量比は、好ましくは2:1:1~7:1:1、より好ましくは3:1:1~6:1:1、及びさらにより好ましくは4:1:1~5:1:1である。別の好ましい促進剤成分は、ジルコニウム及びバリウムの1つ以上を含む。一実施形態では、促進剤は、バリウムオキシドとストロンチウムオキシドの混合物、及びバリウムとストロンチウムの混合酸化物のうちの1つ以上を含み、より好ましくはそれらである。別の非常に好ましい促進剤は、バリウムオキシドとジルコニウムオキシドの混合物であり、或いは、バリウムオキシド又はジルコニウムオキシドのいずれかである。バリウムオキシドとジルコニウムオキシドの混合物が促進剤成分として使用される場合、バリウムオキシドのジルコニウムオキシドに対する質量比は、好ましくは0.5~5、より好ましくは1~3、さらにより好ましくは1.2~2.5である。本発明の三元変換触媒(TWC)における、又はボトムウォッシュコート又はトップウォッシュコートのようなウォッシュコートの1つにおける、促進剤成分の好ましい量は、0.01~0.5g/in、より好ましくは0.02~0.25g/inの範囲、又はさらにより好ましくは0.05~0.12g/inの範囲の担持量によって定義される。
【0058】
本発明では、三元変換触媒が層状設計を有することが好ましい。すなわち、本発明の三元変換触媒は、好ましくは、種々の触媒機能又は触媒成分を、コーティング又は複数のコーティング(一般に、ウォッシュコート(単数又は複数)と呼ばれる)の形態で担体に適用することによって調製される。
【0059】
ここで使用され、Heck,Ronald and Robert Farrauto,Catalytic Air Pollution Control,New York:Wiley-Interscience、2002年、第18~19頁に記載されているように、ウォッシュコート層は、モノリシック基材の表面に配置された、又は任意に下にあるウォッシュコート層の上に配置された、組成的に異なる材料の層を含む。ウォッシュコートは、典型的には、高い表面積を有する耐火性金属酸化物支持体と、白金族金属(PGM)を含むさらなる触媒活性材料と、任意に酸素貯蔵成分及び/又は促進剤のようなさらなる材料から構成される。好ましくは、結合剤のような添加剤も含むことができる。
【0060】
好ましくは、三元変換触媒(TWC)は、好ましくは1つ又は複数のウォッシュコートの形態で、0.5~5g/inの範囲、より好ましくは1.5~4.5g/inの範囲、さらに好ましくは2.0~4.0g/in、最も好ましくは2.7~3.5g/inの範囲の総担持量で担体上に存在する。
【0061】
本発明の三元変換触媒は、1つの単一のウォッシュコート層を有することができるが、2つ以上のウォッシュコート層、特にボトムウォッシュコート及びトップウォッシュコートを含む2つのウォッシュコート層がより好ましい。各ウォッシュコート層は、その厳密な組成に応じて固有の化学触媒機能を有することができる。ボトムウォッシュコート(又は第1のコーティング)が基材上に適用され、そしてトップウォッシュコート(又は第2のコーティング)がボトムウォッシュコート上に適用されることが特に好ましい。
【0062】
ボトムウォッシュコート又は第1のウォッシュコート(又は第1のコーティング)に関する限り、パラジウムと白金の組み合わせは、白金族金属(PGM)として、より好ましくはロジウムの非存在下で好ましくは添加される。ルテニウム、オスミウム及び/又はイリジウムのような他の白金族金属は、パラジウム及び白金と共に、任意に存在することができる。好ましい一実施形態では、ボトムウォッシュコートは、唯一の白金族金属(PGM)として、白金及びロジウムが存在しない状態でパラジウムを含むことができる。或いは、白金及びパラジウムは、任意の他の白金族金属(PGM)が存在しない状態でボトムウォッシュコートにおいて組み合わされている。
【0063】
任意に、パラジウムは、白金及びロジウムの非存在下で、ルテニウム、オスミウム及び/又はイリジウムのような他の白金族金属(PGM)とボトムウォッシュコートにおいて組み合わせることができる。
【0064】
ボトムウォッシュコートの白金族金属(PGM)成分は、耐火性金属酸化物支持体に支持される。好ましくは、ボトムウォッシュコートの耐火性金属酸化物支持体は非ゼオライト性である。ボトムウォッシュコートの耐火性金属酸化物支持体は、好ましくは、アルミニウムオキシドとセリウムオキシドの混合物を含む。ボトムウォッシュコートの別の好ましい耐火性金属支持体材料は、ランタンがドープされたアルミニウムオキシドを含む。耐火性金属酸化物支持体材料に使用されるアルミニウムオキシドは、好ましくは安定化アルミニウムオキシドとすることができる。ボトムウォッシュコートの耐火性金属酸化物支持体のアルミニウムオキシドはまた、好ましくはガンマアルミニウムオキシドとすることもできる。ボトムウォッシュコートの耐火性金属酸化物支持体は、任意に、ジルコニア、セリア、バリア及び/又はネオジミアのような追加の金属酸化物を含むことができる。
【0065】
ボトムウォッシュコートの別の好ましい耐火性金属支持体材料は、セリウムオキシドとアルミニウムオキシドの混合物又は混合酸化物を含む。好ましくは、セリアとアルミナの混合物又は混合酸化物は、セリアのアルミナに対する質量比10:90~90:10、25:75~75:25、又は30:70~70:30、より好ましくは40:60~60:40、及びさらにより好ましくは45:55~55:45を有する。
【0066】
ボトムウォッシュコートの別の好ましい耐火性金属支持体材料は、ランタナ(Laなど)をドープしたアルミニウムオキシドを含む。ランタナをドープしたアルミナは、ランタナをドープしたアルミナの総質量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらにより好ましくは5質量%以下、及び最も好ましくは4質量%以下のやや少量のランタナを含有するアルミナを指す。Laドープしたアルミナ(Lドープアルミナ)は、ランタナをドープしたアルミナの総質量に対して、少なくとも0.5質量%、より好ましくは少なくとも1質量%、及び最も好ましくは少なくとも2質量%のランタナを含有する。
【0067】
ボトムウォッシュコートの耐火性金属酸化物支持体材料に使用されるアルミニウムオキシドは、好ましくは安定化アルミニウムオキシドとすることができる。耐火性金属酸化物支持体のアルミニウムオキシドはまた、好ましくはガンマアルミニウムオキシドとすることもできる。本発明の三元変換触媒の耐火性金属酸化物支持体は、任意に、ジルコニア、セリア、バリア及び/又はネオジミアのような追加の金属酸化物を含むことができる。
【0068】
トップウォッシュコート又は第2のウォッシュコート(又は第2のコーティング)に関する限り、ロジウムとパラジウムの組み合わせは、白金族金属(PGM)として、より好ましくは白金の非存在下で好ましくは添加される。ルテニウム、オスミウム及び/又はイリジウムのような他の白金族金属は、ロジウム及びパラジウムと共に、任意に存在することができる。好ましい一実施形態では、トップウォッシュコートは、唯一の白金族金属(PGM)として、白金及びパラジウムが存在しない状態でロジウムを含むことさえできる。別の好ましい実施形態では、トップウォッシュコートにはロジウム、パラジウム及び白金が含まれる。任意に、ロジウムは、白金及びパラジウムの非存在下で、ルテニウム、オスミウム及び/又はイリジウムのような他の白金族金属(PGM)とトップコートにおいて組み合わせることができる。
【0069】
トップウォッシュコートの白金族金属(PGM)成分は、耐火性金属酸化物支持体に支持される。好ましくは、トップウォッシュコートの耐火性金属酸化物支持体は非ゼオライト性である。トップウォッシュコートの耐火性金属酸化物支持体は、好ましくは、アルミニウムオキシドとセリウムオキシドの混合物を含む。トップウォッシュコートの別の好ましい耐火性金属支持体材料は、ランタンがドープされたアルミニウムオキシドを含む。耐火性金属酸化物支持体材料に使用されるアルミニウムオキシドは、好ましくは安定化アルミニウムオキシドとすることができる。トップウォッシュコートの耐火性金属酸化物支持体のアルミニウムオキシドはまた、好ましくはガンマアルミニウムオキシドとすることもできる。本発明のトップウォッシュコートの耐火性金属酸化物支持体は、任意に、ジルコニア、セリア、バリア及び/又はネオジミアのような追加の金属酸化物を含むことができる。
【0070】
トップウォッシュコートの1つの好ましい耐火性金属支持体材料は、セリウムオキシドとアルミニウムオキシドの混合物又は混合酸化物を含む。好ましくは、セリウムオキシドとアルミニウムオキシドの混合物又は混合酸化物は、セリア対アルミナの質量比10:90~90:10、30:70~70:30、より好ましくは40:60~60:40、及びさらにより好ましくは45:55~55:45を有する。
【0071】
トップウォッシュコートの別の好ましい耐火性金属支持体材料は、ランタナ(Laなど)のようなランタンをドープしたアルミニウムオキシドを含む。ランタナをドープしたアルミナは、ランタナをドープしたアルミナの質量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらにより好ましくは5質量%以下、及び最も好ましくは4質量%以下のやや少量のランタナを含有するアルミナを指す。Laドープしたアルミナは、ランタナをドープしたアルミナの質量に対して、少なくとも0.5質量%、より好ましくは少なくとも1質量%、及び最も好ましくは少なくとも2質量%のランタナを含有する。
【0072】
耐火性金属酸化物支持体材料に使用されるアルミニウムオキシドは、好ましくは安定化アルミニウムオキシドとすることができる。耐火性金属酸化物支持体のアルミニウムオキシドはまた、好ましくはガンマアルミニウムオキシドとすることもできる。本発明の三元変換触媒(TWC)の耐火性金属酸化物支持体は、任意に、ジルコニア、セリア、バリア及び/又はネオジミアのような追加の金属酸化物を含むことができる。
【0073】
Euro6cのような厳しい排出粒子数の排出規制の観点において、燃焼エンジンからの粒子状物質の除去は、排気ガス流の処理における重要な要件となっている。従って、本発明の三元変換触媒(TWC)は、粒子フィルタ、例えば、ガソリンエンジンの排気流の浄化に用いられるガソリン微粒子フィルタ(GPF)と組み合わせることができる。三元変換触媒(TWC)が追加の微粒子フィルタ機能と組み合わされる場合、得られる触媒は、典型的にはいわゆる「四元変換触媒」(FWC)と定義される。
【0074】
ここで使用する用語「微粒子フィルタ」とは、好ましくはガソリンエンジンからの排気ガス流において生成された微粒子を捕捉するようにサイズ化及び構成された基材を指す。粒子状物質の捕捉は、例えば微粒子(又は煤)フィルタの使用、微粒子の流れる方向の変化によって微粒子を排気流から落とすような内部の蛇行した経路を有するフロースルー基材の使用、波形金属担体などの金属基材の使用、又は当業者に既知の他の方法によって、行うことができる。好適な基材を以下でさらに詳述するが、他のフィルタ装置、例えば排気流から微粒子を叩き出すことができる粗面化された表面を有するパイプも好適である。屈曲のあるパイプも好適な場合がある。
【0075】
本発明の三元変換触媒(TWC)を微粒子フィルタ構成要素と組み合わせる場合、排気ガス流から粒子状物質をさらに除去するために複数の選択肢がある。微粒子除去機能を三元変換触媒(TWC)に含めるための1つの好ましい選択肢は、追加の触媒機能によってコーティングされていない別個の微粒子フィルタを加えることである。例として、このようなむき出しの微粒子フィルタは、三元変換触媒(TWC)、又は排気ガス流から粒子状物質をパージできるフィルタ機能以外の如何なる他の触媒機能でもコーティングされていない。最初の微粒子除去機能には、三元変換触媒(TWC)の下流に位置するコーティングされていないガソリン微粒子フィルタ(GPF)が含まれていた。微粒子フィルタ機能に関する別の好ましい選択肢は、本発明の三元変換触媒(TWC)でコーティングされた微粒子フィルタである。言い換えれば、微粒子フィルタはコーティングされた微粒子フィルタである。この実施形態では、微粒子フィルタは、微粒子フィルタの表面又は細孔に本発明の三元変換触媒(TWC)がコーティングされた基材として使用される。上記でさらに詳述したように、三元変換触媒(TWC)は、微粒子フィルタ上に存在する場合、1つの単一ウォッシュコート又は複数のウォッシュコート(例えば2つの異なるウォッシュコート又はコーティング、すなわちトップウォッシュコートとボトムウォッシュコートを含む)の形態で、存在することができる。微粒子フィルタのコーティングは、様々な様式で存在することができる。1つの選択肢は、いわゆる「壁内コーティング」によってフィルタ基材に三元変換触媒(TWC)を提示することである。別の選択肢は、このような壁内コーティングを、ウォールフローフィルタ基材上の追加の「壁上コーティング」と組み合わせることである。
【0076】
本発明の三元変換触媒(TWC)は、適切な基材(又は担体)上に配置される。好適な基材は3次元であり、円柱のように長さ、直径及び体積を有する。形状は必ずしも円柱と一致する必要はない。長さは、入口端及び出口端によって定義される軸方向の長さである。本発明の基材は、自動車用触媒の調製に典型的に使用される任意の材料で構成されていてよく、そして典型的には金属又はセラミックのハニカム構造を含む。好ましくは、基材は、その上にウォッシュコート組成物(単数又は複数)が適用されて付着する複数の壁表面を提供し、それによって触媒組成物の基材として機能する。
【0077】
基材は、自動車用触媒の調製に典型的に使用される任意の材料で構成することができ、そして典型的には金属又はセラミックのハニカム構造を含む。基材は、典型的には、ウォッシュコート組成物が適用されて付着する複数の壁面を提供し、それによって触媒組成物の基材として機能する。
【0078】
本発明の三元変換触媒の基材は、基材の入口又は出口面から、そこを通る流体の流れに対して通路が開放されるように延びる、微細で平行なガス流通路を有するタイプの典型的なモノリス基材(「フロースルー基材」)とすることができる。
【0079】
フロースルー基材は、フロースルーハニカムモノリシック基材を含むモノリシック基材とすることができる。当業者はフロースルー基材に精通しており、フロースルー基材は一般的に、基材の入口端から出口端まで延びる微細で平行なガス流通路を有し、通路は流れる流体に対して開放されている。通路は、その流体入口からその流体出口まで本質的に直線路であり、通路を流れるガスが触媒材料に接触するように触媒コーティングを配置できる壁によって画定される。フロースルー基材の流路は薄壁のチャンネルであり、これは、台形、長方形、正方形、正弦形、六角形、楕円形、円形など、任意の好適な断面形状及びサイズである。フロースルー基材は、以下にさらに記載するように、セラミック製又は金属製とすることができる。フロースルー基材は、例えば、約50in~約1200inの体積、約60セル/平方インチ(cpsi)~約1200cpsi又は約200~約900cpsi、又は例えば約300~約600cpsiのセル密度(入口開口部)及び約50~約400ミクロン又は約100~約200ミクロンの壁厚を有することができる。
【0080】
好適な基材は、任意の好適な耐火性材料、例えばコージエライト、コージエライト-α-アルミナ、アルミニウムチタネート、シリコンチタネート、シリコンカーバイド、シリコンニトライド、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ-シリカ-マグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、ペタライト、α-アルミナ、アルミノシリケートなどで作られたセラミック基材とすることができる。
【0081】
本発明において好適な基材は、1つ以上の金属又は金属合金を含む金属とすることもできる。金属基材には任意の金属基材、例えば開口部又は「型抜き部分」をチャネル壁に有するものなどが含まれてよい。金属基材は様々な形状、例えばペレット、波形シート又はモノリスフォームで用いてよい。金属基材の具体的な例には、耐熱性の卑金属合金、特に鉄が実質的な又は主要な成分であるものが含まれる。そのような合金は、ニッケル、クロム及びアルミニウムの1つ以上を含有し得、これら金属の合計は、有利には、各場合とも基材の質量に対して、少なくとも約15質量%の合金、例えば、約10~25質量%のクロム、約1~8質量%のアルミニウム及び約0~約20質量%のニッケルを含み得る。金属基材の例には、直線状のチャネルを有するもの、軸方向のチャネルに沿って突出したブレードを有し、ガスの流れを妨害し、チャネル間のガスの流れの連通を開くものなどがある。
【0082】
本発明において最も好ましい基材は、ウォールフローフィルタ基材である。ウォールフローフィルタ基材は、当業者の理解では、基材の縦軸に沿って延びる複数の微細で実質的に平行なガス流路を有し、典型的には、各流路は基材本体の一端で遮断され、交互の流路は反対側の端面で遮断される(「ウォールフローフィルタ」)。好適なフロースルー及びウォールフロー基材についても、例えば、国際出願公開第WO2016/070090号において教示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0083】
本発明の三元変換触媒は、好ましくは、種々の触媒機能又は触媒成分をコーティング又は複数のコーティングの形態で基材に適用して層状触媒(一般にウォッシュコート(単数又は複数)と呼ばれる)を形成することによって調製される。
【0084】
例えば、三元変換触媒(TWC)の触媒成分を含有する組成物のウォッシュコート層は、白金、パラジウム及び/又はロジウム、任意にいくつかの追加の貴金属群元素から選択される白金族金属(PGM)前駆体の混合物又は溶液を、好適な溶媒、例えば水中に調製することによって形成することができる。一般に、経済的及び環境的側面の観点から、白金、パラジウム及び/又はロジウムを含む白金族金属の可溶性化合物又は錯体の水溶液が好ましい。典型的には、白金族金属前駆体は、支持体上の前駆体の分散を達成するために、化合物又は錯体の形態で利用される。本発明の目的において、「白金族金属前駆体」という用語は、焼成又はその使用の初期段階で分解するか、又は触媒活性形態に変換する任意の化合物、錯体又は類似物を意味する。好適な錯体又は化合物には、好ましくは、限定するものではないが、塩化白金(例えば[PtCl4]2-、[PtCl2-の塩)、白金水酸化物(例えば[Pt(OH)2-の塩)、白金アミン(例えば[Pt(NH2+、Pt(NH4+の塩)、白金水和物(例えば[Pt(OH2+の塩)、白金ビス(アセチルアセトネート)、及び混合化合物又は錯体(例えば、[Pt(NH(Cl)])が、白金の場合に含まれる。代表的な市販の白金源は、Strem Chemicals Inc.社製の99%アンモニウムヘキサクロロプラチネートであり、これは他の白金族金属(PGM)を微量に含有し得る。
【0085】
しかしながら、本発明は、特定の種類、組成、又は純度の白金前駆体に限定されないことが理解されよう。類似の白金前駆体を適用することができる。さらに、パラジウム及びロジウムに関する限り、当業者は、上記の白金前駆体のように適用することができる類似のパラジウム及びロジウム族金属(PGM)前駆体にも精通しているであろう。
【0086】
白金族金属(PGM)前駆体の混合物又は溶液は、複数の化学的手段の1つによって支持体に添加される。これには、前駆体の溶液を支持体に含浸させる手段があり、その後に酸性成分(例えば酢酸)又は塩基性成分(例えば水酸化アンモニウム)を組み込む固定工程を続けてよい。この湿潤固体は、化学的に還元又は焼成するか、そのまま使用することができる。或いは、支持体を好適な媒体(例えば水)に懸濁させて、溶液中で前駆体と反応させてもよい。追加の処理工程には、酸性成分(例えば酢酸)又は塩基性成分(例えば水酸化アンモニウム)による固定、化学還元、又は焼成が含まれてよい。含浸プロセスにおいて、所望であれば、任意の酸素貯蔵成分(OSC)及び/又は促進剤、及び他の添加剤の適量を、基材の含浸のためのスラリーに添加することができる。
【0087】
既に上記で示した通り、白金成分は、対応するウォッシュコート層の形成時に前処理することができる。
【0088】
三元変換触媒(TWC)(例えばそこからのウォッシュコート層)を適用するために、三元変換触媒(TWC)の微細に分離した粒子を、適切な媒体、例えば水に懸濁させてスラリーを形成する。他の促進剤及び/又は安定剤及び/又は界面活性剤を、水又は水混和性の媒体中の混合物又は溶液としてスラリーに添加してよい。1つ以上の実施形態では、スラリーを粉砕し、実質的に全固体が平均直径で約10ミクロン未満、すなわち約0.1~8ミクロンの範囲の粒度を有する結果とする。粉砕は、ボールミル、連続型Eigerミル、又は他の類似の装置で行ってよい。1つ以上の実施形態では、懸濁液又はスラリーは、約2~約7未満のpHを有する。スラリーのpHは、必要に応じて適量の無機酸又は有機酸をスラリーに添加することによって調整してよい。スラリーの固形分は、例えば約20~60質量%、及びより具体的には約35~45質量%でよい。次いで基材をスラリー中に浸漬するか、又はスラリーを基材上にコーティングして基材上に三元変換触媒(TWC)層の所望の担持量が堆積されるようにしてもよい。その後、コーティングされた基材を約100℃で乾燥させ、そして例えば300~650℃で約1~約3時間加熱することによって焼成する。乾燥及び焼成は、典型的には空気中で行う。コーティング、乾燥及び焼成プロセスは、支持体上の三元変換触媒(TWC)(例えばそこからのウォッシュコート層)の最終的な所望の重量を達成するために、必要に応じて繰り返してよい。いくつかの場合においては、三元触媒(TWC)が使用下に置かれ、運転の間に遭遇する高温に供されるまで、液体及び他の揮発性成分の完全な除去は起こらない場合がある。
【0089】
焼成後、三元変換触媒(ウォッシュコート)担持量は、基材のコーティングされた質量とコーティングされていない質量の差を計算することによって決定できる。当業者には明らかであるように、三元変換触媒(TWC)担持量は、コーティングスラリーの固形分及びスラリー粘度を変えることによって変えることができる。或いは、コーティングスラリーに基材を繰り返し浸漬し、続いて上述のように過剰なスラリーを除去することもできる。
【0090】
本発明はまた、好ましくはガソリンエンジンからの排気ガス流を処理する方法に関するものであり、該方法は、好ましくはガソリンエンジンからの、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を含む排気ガス流を提供する工程、及び排気ガス流を本発明の三元変換触媒(TWC)と接触させる工程を含む。
【0091】
本発明はまた、本発明の三元変換触媒(TWC)を、好ましくはガソリンエンジンから生成された排気ガス流からの窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を浄化するために使用する方法にも関するものである。
【0092】
好ましい実施形態では、ガソリンエンジンからの排気ガス流を浄化するための三元変換触媒(TWC)の使用方法は、1000℃を超える、より好ましくは1020℃を超えるエンジンベッド温度を含む。
【0093】
本発明では、三元変換触媒(TWC)を約1000℃の典型的なエンジンベッド温度に供することに由来する典型的なエージング条件下で、本発明の三元変換触媒(TWC)が優れた安定性及び浄化性能を提供できることが示されている。
【0094】
この結果は、3つの白金族金属(PGM)である白金、パラジウムとロジウムの組み合わせが含まれる本発明の三元変換触媒(TWC)によって達成された。従来技術から既知の三元変換触媒(TWC)の観点では、パラジウムをかなりの程度まで白金に置き換えることに成功している。実際に、本発明の好ましい層状三元変換触媒(TWC)において、実質的な量の白金を追加の白金族金属(PGM)成分として使用することができ、白金よりも費用が高い可能性のある他の白金族金属(PGM)の量を減らすのに役立つ。好ましい一実施形態では、白金は、ボトムウォッシュコート中の実質的な量のパラジウムを置き換えて、白金族金属(PGM)成分としてパラジウムと白金の混合物を含むボトムウォッシュコートを形成するために使用することができる。或いは、又は追加的に、本発明の三元変換触媒(TWC)のトップウォッシュコートは、パラジウムとロジウムの組み合わせ、又は白金、パラジウム及びロジウムの三元組み合わせさえを含むことができる。
【0095】
本発明において、本発明の白金含有三元変換触媒(TWC)の安定性が高温でのエージングに対して、白金を含む白金族金属(PGM)成分によって予想外に改善されることが見出された。さらに、選択された耐火性金属酸化物支持体、最も好ましくはセリアアルミナ又はランタンをドープしたアルミナの混合物又は混合酸化物が追加的に使用される場合、三元変換触媒(TWC)のエージングに対する安定性が改善される。このアプローチによって、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)に関する排出の低減は、エージング下における触媒性能の維持のために白金が基本的に回避された、又は少なくとも低減された三元変換触媒(TWC)と比較して、少なくとも維持されるか、又はさらに低減さえされる。本発明の三元変換触媒の性能が、1000℃を超える極めて高温のエンジンエージング温度、例えば1020℃を超えるベッド温度においても維持できたことは、特に注目すべきことである。
【0096】
本発明のさらに好ましい実施形態は、以下のとおりである。
【0097】
さらに好ましい実施形態1:
窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を含む排気ガス流を処理するための三元変換触媒(TWC)であって、白金族金属(PGM)、耐火性金属酸化物支持体、及び担体を含み、前記白金族金属(PGM)が白金、パラジウム及びロジウムを含むことを特徴とし、三元変換触媒(TWC)における白金対パラジウムの質量比が、白金族金属(PGM)の総質量に対して5:95~45:55であり、そして耐火性金属酸化物支持体が、セリアとアルミナの混合物又は混合酸化物、又はランタナをドープしたアルミナであってその質量に対して10質量%以下の量でランタナを含むランタナをドープしたアルミナから選択される、三元変換触媒(TWC)。
【0098】
さらに好ましい実施形態2:
三元変換触媒がエンジン出口の近接結合位置にある、好ましい実施形態1による排気ガス流を処理するための三元変換触媒(TWC)。
【0099】
さらに好ましい実施形態3:
三元変換触媒が、エンジン出口、好ましくはガソリンエンジン出口と流体連通し、そしてそのすぐ下流に位置する、好ましい実施形態1又は2による排気ガス流を処理するための三元変換触媒(TWC)。
【0100】
さらに好ましい実施形態4:
三元変換触媒が、エンジン出口から50cm以内、より好ましくは30cm以内、及び最も好ましくは20cm以内に位置する、好ましい実施形態1から3のいずれか1つによる排気ガス流を処理するための三元変換触媒(TWC)。
【0101】
さらに好ましい実施形態5:
三元変換触媒が、床下位置、すなわち車両の床の下にない、好ましい実施形態1から4のいずれか1つによる排気ガス流を処理するための三元変換触媒(TWC)。
【0102】
さらに好ましい実施形態6:
三元変換触媒が、エンジンコンパートメント内の近接結合位置に、好ましくは車両のフードの下にあり、且つ排気マニホールドに隣接している、好ましい実施形態1から5のいずれか1つによる排気ガス流を処理するための三元変換触媒(TWC)。
【0103】
従って、「近接結合」位置に配置された触媒は、一般に、エンジンが暖機された後、エンジンを出た直後の高温の排気ガスに曝されるため、典型的には周囲条件からエンジンを始動した直後の期間である冷間始動時に、炭化水素排出を低減する役割を果たすことが多い。
【0104】
さらに好ましい実施形態7:
エンジン及び好ましい実施形態1から6のいずれか1つによる三元変換触媒(TWC)を含み、その三元変換触媒(TWC)がエンジンのエンジン出口の近接結合位置にある、排気処理システム。
【実施例
【0105】
触媒調製の記述
実施例1/図1:アルミナ又は支持体A上のPd又はPt、112g/ft(モデル触媒)
この技術は、高気孔率アルミナに含浸させたPd又はPtを、単一スラリー単層設計中総ウォッシュコート担持量1.53g/inで含有した。スラリーの主成分は高気孔率アルミナであり、これにPdをパラジウムニトレートの水溶液で含浸させ、最終的な乾燥Pd含有量を112g/ftとした。このプロセスでは、アルミナにPdを含浸させた後、アルミナ-PGMフリット(固体60~75%)を400~600℃で2~4時間熱固定した。
【0106】
焼成したPGM含有フリットを、蒸留水及びn-オクタノールなどの界面活性剤を用いて、一定撹拌下でスラリーにした。pH及び粘度の測定と湿式粉砕を向上させるために、スラリー固形分を調整した(35~40%)。粉砕後、硝酸でpHを調整した(3.2~4.5)。粉砕前後にスラリー粒度分布(D90)も測定した(12~17μm)。
【0107】
セラミックハニカムフロースルー基材コア(1×4”、600/4)それぞれを、コーティングし、空気中で乾燥(120~180℃)及び焼成(400~600℃)した。支持体A(セリア-アルミナ50/50)上のPd及びPtは、両方とも上述の方法工程に類似して調製した。
【0108】
実施例2/図2:3.5g/inのウォッシュコート、0/112/8又は56/56/8のPt/Pd/Rhフルサイズ触媒、120g/ft
この技術は、Pd及びRhをボトム層に有する二層設計を含有し、Pd及び/又はRhを特定の支持体(セリア-ジルコニア、アルミナ、又はその両方のいずれかとすることができる)上に含浸させ、次いでPGM含有フリットを高固形分(60~75%)で400~600℃の焼成炉で2~4時間熱固定することによって調製された。
【0109】
予め蒸留水及びn-オクタノールを入れた容器中で焼成フリットを撹拌してスラリーを調製した。バリウム及びランタンなどの促進剤(アセテート又はニトレート前駆体)を十分に混合しながら添加した。スラリー固形分は、pH、粘度測定及び湿式粉砕ができるように35~40%に設定した。硝酸で初期pHを調整した後(3.2~4.5)、スラリーを所望の粒度(D90が12~17μm)に粉砕し、その後最終pHを調整した。
【0110】
セラミック基材(4.66×4”600/4)へのスラリーコーティングは、それぞれ空気中で乾燥(120~180℃)及び焼成(400~600℃)して行った。高気孔率アルミナ上のPd又はPtを含有するトップ層は、同様の含浸、熱固定、及びスラリー工程で調製した。後者は、乾燥/焼成したボトム層に、所望のウォッシュコート担持量までコーティングし、その後、乾燥と最終焼成を行った。総WCは2.8~4.5g/inであった(BC及びTC)。
【0111】
実施例3/図3:0/45/10又は22.5/22.5/10のPt/Pd/Rhフルサイズ、55g/ft
この技術も二層設計を含有したが、Pd及び/又はPtを特定の支持体(セリア-ジルコニア、ドープしたアルミナ、又はその両方のいずれかとすることができる)上に湿式含浸することによって調製されたPtPdボトム層を有していた。含浸工程に続き、PGM含有フリットを高固形分(60~75%)で400~600℃の焼成炉で2~4時間熱固定した。
【0112】
予め蒸留水及びn-オクタノールを入れた容器で焼成フリットを撹拌してスラリーを調製した。他の触媒材料成分、例えばバリウム、ランタン及びジルコニウム(アセテート又はニトレート又はスルフェート前駆体)を十分に混合しながら添加した。スラリー固形分は、pH、粘度測定及び湿式粉砕ができるように35~40%に設定した。硝酸で初期pHを調整した後(3.2~4.5)、スラリーを所望の粒度(D90が12~17μm)に粉砕し、その後最終pHを調整した。
【0113】
セラミックハニカム基材(4.0×5.36”、900/2.5)へのスラリーコーティングは、それぞれ空気中でコーティング、乾燥(120~180℃)及び焼成(400~600℃)して行った。適切な支持体(セリア-ジルコニア及び/又はLドープアルミナ)を用いたPd及びRhを含有するトップ層は、同様の含浸、熱固定、及びスラリー工程で調製した。後者は、乾燥/焼成したボトム層に、所望のウォッシュコート担持量までコーティングし、その後、乾燥と焼成を行った。総WCは2.8~4.5g/inであった(BC及びTC)。
【0114】
比較例Aは支持体A(Laドープしたアルミナ)上にPtを使用し、比較例Bは支持体B(セリアドープアルミナ)上にPtを使用した。
【0115】
実施例4/図4:0/70/10又はX/70~X/10(X=Pt)のPt/Pd/Rhフルサイズ、80g/ft
実施例4のスラリープロセス及び各層のPGM分布は実施例3と同じであった。しかし、ウォッシュコートの厚さ及び総PGM担持量、及びそれぞれの層におけるセリア-ジルコニア(組成物)、ドープしたアルミナ及びその他の材料成分の種類及び量に起因する違いがあった。さらに、この技術では1つのPt支持体材料(支持体AはLドープアルミナ)のみを使用した。
【0116】
実施例5/図5:0/72/8又はX/72-X/8(X=Pt)のPt/Pd/Rhフルサイズ、80g/ft
実施例5のスラリープロセス及び各層のPGM分布は実施例4と同じであった。主な違いは、標準PdRhと比較して、トリ金属の各層における異なるPt支持体であった。参考例及び発明例は、それぞれ、ボトムコート及びトップコートに同じウォッシュコート担持量を含有した。
【0117】
触媒性能評価
実施例1に記載した触媒を、1×4”フロースルーセラミック基材コア(400/4;CPSI/wt)にウォッシュコートした。
【0118】
オーブンでのエージングを、制御されたフロー条件下で複数のガスを同時に供給するための複数のガスラインを備えた社内オーブンで行った。あらゆる触媒を一緒にオーブン中900℃の熱水(10%のO2及び10%の水蒸気)で4時間エージングした。
【0119】
燃料カットのエージングは、5本脚の五徳型に配置され、ガソリンエンジンベンチのCC1位置に可能な限り近づけて取り付けられたモノリス缶を使用して行った。エンジン出口位置に熱電対を配置し、そしてすべての缶にテールパイプ位置と同様にベッドTCも取り付けた。上流(エンジン出口)及び下流(テールパイプ)のラムダセンサーは、エージングサイクルのリーン/リッチの状態を厳密に実施することを確実とした。
【0120】
あらゆるエージングしたコアの個別評価を、CNGモードの実車から実装されたNEDC試験サイクルを使用して運転されるガソリンシステムシミュレータ(GSS)リアクターを使用して行った。様々な技術に対する熱水エージングの影響を評価するため、オーブンエージング前の新鮮な状態で同じリアクターで同じコアを評価した。
【0121】
燃料カットのエージングは、5本脚の五徳型に配置され、ガソリンエンジンベンチのCC1位置に可能な限り近づけて取り付けられたモノリス缶を使用して行った。エンジン出口位置に熱電対を配置し、そしてすべての缶にテールパイプ位置と同様にベッドにもTCを取り付けた。上流(エンジン出口)及び下流(テールパイプ)のラムダセンサーは、エージングサイクルのリーン/リッチの状態を厳密に実施することを確実とした。
【0122】
動的試験(WLTC)は、Euro6用に校正されたガソリンエンジンで実施した。エージングしたモノリス及び缶モノリスは、ラムダ1適用基準に準拠してCC1位置で評価し、リーン/リッチ状態及び温度は、排気ラインの前(入口)位置及び後(出口)位置でモニターした。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】