(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】複合材料の成形方法における剥離フィルムとしてのフルオロポリマーの使用
(51)【国際特許分類】
B29C 70/42 20060101AFI20240416BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B29C70/42
B29C43/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565312
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 EP2022060618
(87)【国際公開番号】W WO2022223731
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キー, ロス
(72)【発明者】
【氏名】ゴファン, アンヌ-リーズ
【テーマコード(参考)】
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F204AC03
4F204AD16
4F204AJ03
4F204FA01
4F204FA15
4F204FB01
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ38
4F205AC03
4F205AD16
4F205AJ03
4F205HA08
4F205HA25
4F205HA45
4F205HB01
4F205HK03
4F205HK04
4F205HM13
4F205HT20
(57)【要約】
本発明は、複合材料を成形する方法での剥離フィルムとしてのエチレンテトラフルオロエチレンフィルム及びポリテトラフルオロエチレンフィルムから選択される単層フルオロポリマーフィルムの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料を成形する方法での剥離フィルムとしての、エチレンテトラフルオロエチレンフィルム及びポリテトラフルオロエチレンフィルムから選択される単層フルオロポリマーフィルムの使用であって、前記方法が、
(a)複合材料を収容するポケットを上方フルオロポリマーフィルムと下方フルオロポリマーフィルムとの間に生み出すことによって、前記フィルムの間に実質的に平面の前記複合材料を置く工程、
(b)前記上方フルオロポリマーフィルム及び前記下方フルオロポリマーフィルムを前記複合材料と密接に接触させ、それによって層状構造体を形成し、ここで、前記層状構造体に熱又は力が加えられるまで前記複合材料が前記上方フルオロポリマーフィルムと前記下方フルオロポリマーフィルムとの間に動かない状態で保持される工程;
(c)任意選択的に、前記複合材料の粘度を下げるためにか又は前記フィルムを柔らかくするためにかのどちらかに十分な温度で、加熱装置中で前記層状構造体を予熱する工程;
(d)雄型と、隙間によって隔てられた対応する雌型とを含むプレスツール中に前記層状構造体を配置する工程であって、前記雄型及び前記雌型は、それぞれ独立して、非平面の成形面を有する、工程、
(e)前記雄型と前記雌型との間の前記隙間を閉じることによって、前記雄型と前記雌型との間の前記層状構造体を圧縮する工程;並びに
(f)前記層状構造体の粘度が成形された形状を維持するために十分なレベルに達するまで、前記雄型及び前記雌型を閉位置で維持する工程
を含む
使用。
【請求項2】
前記フルオロポリマーフィルムは、
- 約240℃以上の溶融温度(T
溶融)、
- 約10ミクロン~約200ミクロンの、特に約20ミクロン~約150ミクロン、とりわけ約30ミクロン~約100ミクロンの範囲の厚さ(t)、
- 約300~約950MPaの、好ましくは約350~約900MPaの範囲の弾性率(E)、
- 約30~約90MPaの、好ましくは約35~約80MPaの範囲の引張強度(σ)、及び
- 周囲条件下で、約8mm/秒の速度で縦方向か又は横方向かのどちらかに約400~約700%の、特に約450~約650%の範囲の破断点伸び(ε)
を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記上方フルオロポリマーフィルム及び前記下方フルオロポリマーフィルムは、同じフィルムである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記フルオロポリマーフィルムは、エチレンテトラフルオロエチレンフィルムである、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記フルオロポリマーフィルムは、ポリテトラフルオロエチレンフィルムである、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記エチレンテトラフルオロエチレンフィルムは、
- 約240℃以上の溶融温度(T
溶融)、
- 約30ミクロン~約100ミクロン、好ましくは50ミクロン~約80ミクロンの範囲の厚さ(t)、
- 約500~約900MPaの、好ましくは約550~約800MPaの範囲の弾性率(E)、
- 約45~約90MPaの、好ましくは約50~約65MPaの範囲の引張強度(σ)、及び
- 周囲条件下で、約8mm/秒の速度で縦方向か又は横方向かのどちらかに約400~約700%の、特に約450~約600%の範囲の破断点伸び(ε)
を有する、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
前記ポリテトラフルオロエチレンフィルムは、
- 約300℃以上の溶融温度(T
溶融)、
- 約30ミクロン~約100ミクロンの範囲の厚さ(t)、
- 約300~約500MPaの、好ましくは約350~約450MPaの範囲の弾性率(E)、
- 約30~約55MPaの、好ましくは約35~約50MPaの範囲の引張強度(σ)、及び
- 周囲条件下で、約8mm/秒の速度で縦方向か又は横方向かのどちらかに約400~約700%の、特に約450~約650%の範囲の破断点伸び(ε)
を有する、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
工程(e)は、より小さな隙間が前記雄型と前記雌型との間に形成されるように、前記雄型と前記雌型との間の前記隙間を部分的に閉じることを含み、より小さな隙間は、その後、特定の時間又は粘度に到達した後に閉じられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記雄型及び前記雌型は、周囲温度よりも上の温度で維持される、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記雄型及び前記雌型は、100℃よりも上の温度で維持される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
工程(e)は、前記雄型及び前記雌型を前記複合材料の軟化点よりも上の温度で維持しながら、前記雄型と前記雌型との間の前記隙間を約0.7mm/秒~約400mm/秒の速度で閉じることを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記上方フィルム及び前記下方フィルムは、最上部フレーム、中央フレーム及び底部フレームを含む構造フレームによって一体に保持され、ここで、
前記下方フィルムは、前記底部フレームと前記中央フレームとの間に保持され、
前記上方フィルムは、前記中央フレームと前記最上部フレームとの間に保持される、
請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記中央フレームは、真空源を前記アセンブリに供給する、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記上方フィルム及び前記下方フィルムは、最上部フレーム及び底部フレームを含む構造フレームによって一体に保持され、前記下方フィルム及び前記上方フィルムの両方は、前記底部フレームと前記最上部フレームとの間に保持される、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記層状構造体は、自動化手段によって前記プレスツールの中に及び前記任意選択的な加熱装置の中に配置される、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記複合材料は、アラミド、高弾性ポリエチレン(PE)、ポリエステル、ポリ-p-フェニレン-ベンゾビスオキサゾール(PBO)、炭素、ガラス、石英、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、玄武岩、天然繊維及びそれらの組み合わせから選択される材料の構造繊維を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記複合材料は、熱可塑性ポリマー、熱硬化性樹脂、及びそれらの組み合わせから選択されるバインダー又はマトリックス材料を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
繊維強化ポリマー複合材料は、多くの産業(航空宇宙、自動車、船舶、工業、建設、及び多様な消費者製品を含む)で広く使用されており、特に過酷な環境で、高い強度及び耐食性を依然として示しながら軽量であるため、好まれることが多い。繊維強化ポリマー複合材料は、典型的には、予め含浸された材料からか又は樹脂注入プロセスからかのいずれかで製造される。
【0002】
予め含浸された材料、又は「プリプレグ」は、一般に、硬化性マトリックス樹脂(エポキシなど)で含浸された繊維(炭素繊維など)を指す。プリプレグ中の樹脂の含有率は、比較的高く、典型的には40体積%~65体積%である。プリプレグの複数のプライは、積層するためのサイズに切断され、次いで引き続き組み立てられ、成形ツールで成形され得る。プリプレグを成形ツールの形状に容易に合わせることができない場合には、成形面の形状にそれを徐々に変形させるために、プリプレグに熱が加えられてもよい。繊維強化ポリマー複合材料はまた、樹脂注入技術を含む液体成形プロセスによって製造され得る。典型的な樹脂注入プロセスでは、バインダーで結合した乾燥繊維が、プレフォームとして鋳型内に配置され、その後液体マトリックス樹脂がその場で直接注入(injection、又はinfusion)される。注入(injection、又はinfusion)後に、樹脂を注入されたプレフォームが硬化されて完成した複合物品が得られる。
【0003】
両方のタイプの材料に関して、複合材料の三次元成形(shaping)(又は成形(molding))のプロセスは、最終的な成形製品の外観、特性及び性能にとって極めて重要である。ハンドレイアッププロセスを使用してプレフォームを精緻な形状へ成形することは依然として通例であり、これは、時間がかかり、有意な部品ごとのばらつきをもたらすことが多い。複合材料を成形するための他の、それほど手作業ではない、方法(部品形成を助けるためのピン、ロボット及び/又はアクチュエータを用いる場合もある真空形成法など)も存在するものの、そのような方法は、独自の欠点及び短所を有する。加えて、そのような方法は、時間がかかることが多く、複合材料のレオロジー挙動及び硬化特性を考慮に入れていない。加えて、そのようなプロセスの製品は、依然として、皺及び他の欠陥を有する傾向がある。
【0004】
処理時間、部品ごとのばらつき及び製品汚染などの、複合材料処理の潜在的な欠点を考慮して、より速い、改善された及びより信頼性の高いアセンブリ及びプロセスを開発する必要性が依然として存在する。レオロジー挙動及び硬化特性を考慮すること、並びに、可能であれば、既存の装置(例えば、金属スタンプ又はプレス)を最大限に活用できるプロセスを提供することがまた望ましい。
【0005】
複合材料を環境汚染物質から隔離するためのアセンブリ、並びに当技術分野で公知の他の方法の欠点及び短所に対処するだけでなく、複合材料のレオロジー挙動及び硬化特性をも考慮し、且つまた既存の基盤設備及び装置を使用する可能性を持たせる成形プロセスを提供することを目的として、ダブルダイアフラム機械的熱成形プロセスを実施する複合材料を成形する方法が成功裏に開発された。この方法は、複雑な三次元複合構造体を自動的に製造するための効果的な及び効率的な手段を提供する。このように、三次元複合構造体は、迅速に、繰り返して及び大規模で製造することができる。
【0006】
例えば、これは、いかにしてこのダブルダイアフラム形成技術が急速に発達してきて、フルスケール自動車生産のために利用されることを可能にしたかである。
【0007】
一連の自動車市場における複合材量は、異なる部品の軽量化の必要性がますます増加しているために増え続けている。それ故に、相手先商標製品の製造会社(OEM)は、将来速度及び重量目標を満たすために圧縮成形などの速度能力がある製造技術にますます方向変換しつつある。
【0008】
しかしながら、現在の解決策は、多くの場合、必要とされる硬化温度範囲及び構成部品の表面品質の両方を達成できない。従って、とりわけ視覚用途又はクラスA用途向けの、複合構成部品は、自動車業界によって期待される標準を満たすために追加の手直しを必要とする。
【0009】
ダブルダイアフラム機械的プロセスを用いる方法は、ダイアフラムを実装する。これに関連して、「ダイアフラム」という用語は、2つの異なる物理的領域を分割する又は分離する任意の障壁を指す。外部空間及び隔離内部空間、例えば、封入ポケット内の領域及び封入ポケットの外部の領域を画定する1つ以上のダイアフラムのアセンブリを指す、「ダイアフラム構造体」という用語も使用される。一般に、ダイアフラムを製造するために使用される材料は、特に限定されず、例えば、ゴム、シリコーン、プラスチック、熱可塑性樹脂、又は類似の材料であることができるか、又は可塑性層若しくは弾性層から選択されるフィルムを含むことができる。ダイアフラムは、単一の材料から構成されていてもよく、或いは例えば層状に配置された複数の材料を含んでいてもよい。
【0010】
ダイアフラムとして使用されるフィルムは、存在し、1つ以上の層を含む。しかしながら、これらのフィルムは、かなりの制約があり得、それらの使用を阻み得るより低い性能を有し得る。とりわけ、これらには、制限された硬化温度範囲(<150℃)及び構成部品の達成可能な表面品質の両方と、それ故に、特に、一連の自動車又は航空宇宙応用などの、大量製造のための硬化速度と、高温硬化(<190℃)によりいくつかの速硬化エポキシ系の速度能力を十分に利用することができないこととが含まれる。例えば、これは、約150~約200℃を含む所与のT硬化での複合構成部品の形成中にフィルムの溶融及び/又は破損を引き起こし得る。
【0011】
更に、特定の剥離層は、その溶融温度よりも上で処理されるときに柔らかくなり、硬化部品表面へのプリントスルー及び/又はオレンジピール効果の可能性を高くする。フィルムのいくつかのバランスを失した多層組成物はまた、フィルムカールを組み立て中に生じさせ、プロセスロバスト性及び使い勝手の良さを制限する。
【0012】
更に、多層フィルムは、使い勝手があまり良くない。特に、バランスを失した多層組成物を有する特定の既存のフィルムはまた、フィルムカールを組み立て中に生じさせ、プロセスロバスト性及び使い勝手の良さを制限する。更に、多層フィルムの使用は、これらのフィルムをリサイクルする可能性を制限するか、又はより複雑な及び費用のかかるプロセスがセットアップされることを少なくとも要求する。
【0013】
それ故に、構造複合構成部品の形成の高温ダブルダイアフラム機械的プロセスで使用される幅広い温度範囲を示す、直接鋳型からの部品見栄えを同時に改善しながら、より高温の部品硬化(≦200℃)、著しく減少したプロセスタクトタイムの両方を可能にするフィルムを持っている必要性が依然として存在する。結果は、断続的再加工及び修理に関連した全体部品製造サイクル時間及びコストの削減である。
【0014】
これらの要件に加えて、これらのフィルムの所望の特性の一つは、自己剥離する能力である。しかしながら、高温で、フィルムは、複合構成部品にくっつく不利点を有し得、それは、悪化した表面仕上げに特につながり得る。
【0015】
本開示は、-個別に及びまとめての両方で-複合材料を成形するための、ダブルダイアフラム機械的熱成形プロセスを用いる方法において特定のフィルムの使用を提供してこれらの欠点に対処する。
【0016】
出願人は、高温ダブルダイアフラム形成(DDF)のための剥離フィルムとしての、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)フィルム及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムから選択される単層フルオロポリマーフィルムの使用が、複雑な構造の複合構成部品を得ることを可能にし、それが幅広い温度範囲にわたって用いることができ、それ故にダイアフラムとして使用できることを発見した。加えて、ETFEフィルム及びPTFEフィルムから選択されるこのフルオロポリマーフィルムは、直接鋳型からの部品見栄えを同時に改善しながら、より高温の部品硬化、著しく減少したプロセスタクトタイムの両方を可能にする。
【0017】
更に、ETFEフィルム及びPTFEフィルムから選択されるこのフルオロポリマーフィルムは、硬化後に複合材料からフィルムへの及び/又はフィルムから複合材料への移動及び/又は汚染がないことを可能にする容易に自己剥離性である利点を有する。
【0018】
従って、本発明は、複合材料を成形する方法での剥離フィルムとしての、ETFEフィルム及びPTFEフィルムから選択される単層フルオロポリマーフィルムの使用であって、前記方法が、
(a)複合材料を収容するポケットを上方フルオロポリマーフィルムと下方フルオロポリマーフィルムとの間に生み出すことによって、フィルム間に実質的に平面の複合材料を置く工程、
(b)上方フルオロポリマーフィルム及び下方フルオロポリマーフィルムを複合材料と密接に接触させ、それによって層状構造体を形成し、ここで、層状構造体に熱又は力が加えられるまで複合材料が上方フルオロポリマーフィルムと下方フルオロポリマーフィルムとの間に動かない状態で保持される工程;
(c)任意選択的に、複合材料の粘度を下げるためにか、又はフィルムを柔らかくするためにかのどちらかに十分な温度で、加熱装置中で層状構造体を予熱する工程;
(d)雄型と、隙間によって隔てられた対応する雌型とを含むプレスツール中に層状構造体を配置する工程であって、雄型及び雌型は、それぞれ独立して、非平面の成形面を有する、工程、
(e)雄型と雌型との間の隙間を閉じることによって、雄型と雌型との間の層状構造体を圧縮する工程;並びに
(f)層状構造体の粘度が成形された形状を維持するために十分なレベルに達するまで、雄型及び雌型を閉位置で維持する工程
を含む
使用に関する。
【0019】
上方フルオロポリマーフィルム及び下方フルオロポリマーフィルムは、ETFEフィルム及びPTFEフィルムから独立して選ぶことができる。例えば、いくつかの実施形態では、下方フィルムはETFEフィルムであってもよく、上方フィルムはPTFEフィルムであってもよい。同じように、例えば、いくつかの実施形態では、下方フィルムはPTFEフィルムであってもよく、上方フィルムはETFEフィルムであってもよい。しかしながら、好ましい実施形態では、上方フィルム及び下方フィルムのために使用されるフルオロポリマーは、同じもの、すなわちETFEフィルムか又はPTFEフィルムかのどちらかである。いくつかの実施形態では、ETFEフィルムが、上方フィルム及び下方フィルムとして使用される。他の実施形態では、PTFEフィルムが、上方フィルム及び下方フィルムとして使用される。
【0020】
本発明によれば、ETFEフィルム及びPTFEフィルムから選択されるフルオロポリマーフィルムは、自己剥離性である。すなわち、フィルムを最終成形複合部品から容易に剥離することができる及び/又は成形されたアセンブリをツーリングから容易に剥離することができる。これは、ツール摩耗の減少などの、ツーリングの保護、及び成形品間の鋳型封入剤又は剥離剤適用のゼロ要求 接触仕事及び最終部品コストの削減、並びにそれ故にフルスケール複合構造体生産を容易にすることの明白な利点を提供する。
【0021】
典型的には、本発明に使用されるETFEフィルムは、少なくとも約99重量%、特に少なくとも約99.5重量%のエチレンテトラフルオロエチレンを含む。このETFEフィルムはまた、熱安定剤又は加工安定剤、帯電防止剤、潤滑剤のようなポリマー添加剤を含んでいてもよい。
【0022】
典型的には、本発明に使用されるPTFEフィルムは、少なくとも約99重量%、特に少なくとも約99.5重量%のポリテトラフルオロエチレンを含む。このPTFEフィルムはまた、熱安定剤又は加工安定剤、帯電防止剤、潤滑剤のようなポリマー添加剤を含んでいてもよい。
【0023】
本発明によれば、ETFEフィルム及びPTFEフィルムから選択されるフルオロポリマーフィルムが、プレスを用いる複雑な複合構造体の高温ダブルダイアフラム形成(DDF)のために使用される。このフィルムは、広い硬化温度範囲、すなわち、自動車市場規格に対応する約120~約200℃、とりわけ約120~約170℃、特に120~約150℃の並びに航空宇宙及びUAM市場規格に対応する、約150~約190℃、特に約160~約190℃の硬化温度T硬化範囲にわたって使用できる利点を有する。
【0024】
このように、本発明において剥離フィルムとして使用されるETFEフィルム及びPTFEフィルムから選択されるフルオロポリマーフィルムは、特有の特性を示す。
【0025】
約120~約200℃を含む所与の硬化温度T硬化で、フィルムは、複合構成部品を形成している間中、溶融及び/又は破損なし並びに適切な剥離性能を確実にすることができる。それ故に、いくつかの実施形態では、ETFEフィルム及びPTFEフィルムから選択されるフルオロポリマーフィルムは、約240℃以上の溶融温度を有する。いくつかの実施形態では、特にETFEフィルムは約240℃以上の溶融温度を有する。いくつかの実施形態では、特にPFTEフィルムは約300℃以上の溶融温度を有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、複合構成部品の形状に依存する、ETFEフィルム及びPTFEフィルムから選択されるフルオロポリマーフィルムの厚さ(t)は、約10ミクロン~約200ミクロン、特に、約20ミクロン~約150ミクロンの範囲である。好ましくは、フィルムは、約30ミクロン~約100ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態では、特に、ETFEフィルムの厚さ(t)は、約30ミクロン~約100ミクロン、好ましくは約50ミクロン~約80ミクロンの範囲である。いくつかの実施形態では、特に、PTFEフィルムの厚さ(t)は、約30ミクロン~約100ミクロンの範囲である。この厚さは、フィルムの所望の機械的性能を得ること、予熱中のフィルム皺及び複合構成部品形成中の破損を防ぐことを可能にする。
【0027】
いくつかの実施形態では、ETFEフィルム及びPTFEフィルムから選択されるフルオロポリマーフィルムは、約300~約950MPaの、好ましくは約350~約900MPaの範囲の弾性率(E)を有し、及び約30~約90MPaの、好ましくは約35~約80MPaの範囲の引張強度(σ)を有する。いくつかの実施形態では、特に、ETFEフィルムは、約500~900MPaの、好ましくは約550~約800MPaの範囲の弾性率(E)、及び約45~約90MPaの、好ましくは約50~約65MPaの範囲の引張強度(σ)を有する。いくつかの実施形態では、特に、PTFEフィルムは、約300~500MPaの、好ましくは約350~約450MPaの範囲の弾性率(E)、及び約30~約55MPaの、好ましくは約35~約50MPaの範囲の引張強度(σ)を有する。これは、複合構成部品形成中のフィルム破損を防ぐのに役立つことができる。
【0028】
所望の構成部品の形状を確実にすることは、約120~約200℃を含む所与のT硬化で形成中にフィルムの破損なしに達成することができ、本発明に用いられるフィルムは、特定の破断点伸び(ε)を有する。いくつかの実施形態では、ETFEフィルム及びPTFEフィルムから選択されるフルオロポリマーフィルムは、周囲条件下で約8mm/秒の速度で縦方向か又は横方向かのどちらかに約400~約700%の、特に約450~約650%の範囲の破断点伸び(ε)を示し、ここで、典型的には、周囲温度T周囲は、約20~約25℃である。いくつかの実施形態では、特に、ETFEフィルムは、周囲条件下で、約8mm/秒の速度で縦方向か又は横方向かのどちらかに約400~約700%の、特に約450~約600%の範囲の破断点伸び(ε)を示す。いくつかの実施形態では、特に、PTFEフィルムは、周囲条件下で、約8mm/秒の速度で縦方向か又は横方向かのどちらかに約400~約700%の、特に約450~約650%の範囲の破断点伸び(ε)を示す。
【0029】
複合構成部品のサイズを制限しないために、そのようなフィルムは、十分に大きい幅を有する。いくつかの実施形態では、ETFEフィルム及びPTFEフィルムから選択されるフルオロポリマーフィルムの製品幅は、約1.2m以上である。好ましくは、この製品幅は約1.5m以上である。
【0030】
このように、好ましい実施形態では、本発明に従って使用されるETFEフィルム及びPTFEフィルムから選択されるフルオロポリマーフィルムは、
- 約240℃以上の溶融温度(T溶融)、
- 約10ミクロン~約200ミクロンの、特に約20ミクロン~約150ミクロン、とりわけ約30ミクロン~約100ミクロンの範囲の厚さ(t)、
- 約300~約950MPaの、好ましくは約350~約900MPaの範囲の弾性率(E)、
- 約30~約90MPaの、好ましくは約35~約80MPaの範囲の引張強度(σ)、及び
- 周囲条件下で、約8mm/秒の速度で縦方向か又は横方向かのどちらかに約400~約700%の、特に約450~約650%の範囲の破断点伸び(ε)
を有する。
【0031】
別の好ましい実施形態では、本発明に従って使用されるETFEフィルムは、
- 約240℃以上の溶融温度(T溶融)、
- 約30ミクロン~約100ミクロン、好ましくは50ミクロン~約80ミクロンの範囲の厚さ(t)、
- 約500~約900MPaの、好ましくは約550~約800MPaの範囲の弾性率(E)、
- 約45~約90MPaの、好ましくは約50~約65MPaの範囲の引張強度(σ)、及び
- 周囲条件下で、約8mm/秒の速度で縦方向か又は横方向かのどちらかに約400~約700%の、特に約450~約600%の範囲の破断点伸び(ε)
を有する。
【0032】
別の好ましい実施形態では、本発明に従って使用されるPTFEフィルムは、
- 約300℃以上の溶融温度(T溶融)、
- 約30ミクロン~約100ミクロンの範囲の厚さ(t)、
- 約300~約500MPaの、好ましくは約350~約450MPaの範囲の弾性率(E)、
- 約30~約55MPaの、好ましくは約35~約50MPaの範囲の引張強度(σ)、及び
- 周囲条件下で、約8mm/秒の速度で縦方向か又は横方向かのどちらかに約400~約700%の、特に約450~約650%の範囲の破断点伸び(ε)
を有する。
【0033】
溶融温度などのフィルム熱特性は、例えば、TA Instruments Q2000などの、示差走査熱量計を使用することによって、ASTM D3418に従った示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定することができる。
【0034】
引張強度、引張弾性率及び破断点伸びなどのフィルムの機械的特性は、例えばZwick Z250試験機を使用することによって、ASTM D882-09に従ったThin Film Tensile Strength & Elongation testing(薄膜引張強度及び伸び試験)(ZM45)を用いて測定することができる。
【0035】
典型的には、ETFE及びTFEは、当技術分野において公知の方法によって得ることができる熱可塑性フルオロポリマーである。例えば、ETFEは、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、回転成形、押出、及びワイヤコーティングなどの標準熱可塑性樹脂加工方法を用いて加工することができる。更に、例えば、ETFEフィルムは、ブロー成形又は押出積層技術によって得ることができる。加えて、例えば、PTFEフィルムは、キャスティング、ダイ押出又はスカイビングによって得ることができる。そのような方法は、当業者に公知である。
【0036】
本発明の実施形態によれば、ETFEフィルムは、リサイクルし、本発明に特許請求されるような複合材料を成形する方法で再使用することができる。例えば、いったん使用されたETFEフィルムが最終複合材料から剥離されると、このフィルムは、粒状にし、次いで、典型的には当技術分野において公知の押出機で押し出して新しいフィルムを得ることができ、それは、複合材料を成形する方法で、とりわけ上記のような方法で使用され得る。
【0037】
本明細書で用いるところでは、「実質的に平面の」という用語は、他の2つの平面よりも明らかに大きい(例えば、少なくとも2、3、4、又は5倍、又はそれ以上大きい)1つの平面を有する材料を指す。いくつかの実施形態では、実質的に平面の材料は、最も大きい平面に沿って厚さの変動を有する。例えば、複合材料は、パッドアップ(すなわち、プライの量の局所的な増加)又はプライドロップ(すなわち、プライの量の局所的な減少)、材料の変化、及び/又は複合材が、例えば、布に移行する領域などの強化材料を含んでいてもよい。他の実施形態では、実質的に平面の材料は、複合材料の領域に沿って最小限の厚さの変動を示す。例えば、実質的に平面という用語は、複合材料が、面積の90%超で±15%以下の全体的な厚さの変動を有することを意味し得る。いくつかの実施形態では、厚さの変動は、面積の90%超で±10%以下である。実質的に平面は、完全に平らな材料を意味することを意図しておらず、凹面及び/又は凸面にわずかな変動を有する材料も含む。
【0038】
本発明との関連で、複合材料を成形する方法は、フレームありのアセンブリか又はフレームなしのアセンブリかのどちらかを使用することができる。いくつかの実施形態では、本方法は、フレームありのアセンブリの使用を含む。上方フィルム及び下方フィルムは、最上部フレーム、中央フレーム及び底部フレームを含む構造フレームによって一体に保持され、ここで、
下方フィルムは、底部フレームと中央フレームとの間に保持されており、
上方フィルムは、中央フレームと最上部フレームとの間に保持されている。
【0039】
好ましい実施形態では、本方法は、フレームありのアセンブリの使用を含む。
【0040】
特定の実施形態では、複合材料を収容するポケットは、フィルム間に保持された複合材料を収容する構造フレームによって画定される。特定の実施形態では、実質的に平面の複合材料は、上方フィルムと下方フィルムとの間に置かれる。これは、複合材料を収容するフィルム間にポケットを生み出す。例えば、上面と底面とを有する下方ファイルは、その底面が底部フレームの外周の最上部に接触するように置くことができる。複合材料を、その後、下方フィルムの最上部上に置くことができ;中央フレームを、次いで下方フィルム上面上に、続いて上方フィルム及び最後に上方フィルムに接触して最上部フレームを置くことができる。この配置は、複合材料層を収容する下方フィルムと上方フィルムとの間にポケットを形成する。いくつかの実施形態では、中央フレームは除かれてもよい。最上部、中央(存在する場合)及び底部フレームは、例えば、外周周りに所定の間隔でのクランプ又は他の締結手段の配置によって、本発明によるフルオロポリマーフィルムの形状を維持する外周を画定する。そのような最上部、中央、及び底部フレームは、成形される複合材料のサイズ及び形状に基づいて製造することができる。任意選択的に、予め製造された構造支持フレームが、従来の金属又は複合材プレスツール(例えば、Langzauner又はSchubertなどの製造業者製の)と一緒の使用に関して当技術分野において公知である。
【0041】
いくつかの実施形態では、中央フレームは、空気を除去するための手段、例えば真空口又は他のバルブを含んでいてもよい。真空口は、存在する場合、真空源(例えば真空ポンプ)に接続される。いくつかの実施形態では、複合材を収容するポケットは、封入ポケット、例えば、気密封入ポケットであってもよく、それによって構造フレームは、複合材料の全体周囲周りに配置され、空気又は汚染物質がポケットに入るのを妨げる。
【0042】
上方フィルム及び下方フィルムは、層状構造体を形成するために、複合材料と密接接触させられる。これは、例えば上方フィルムと下方フィルムとの間に真空圧力を加えることによって達成され得る。他の実施形態では、これは、空気を除去するために、上方及び/又は下方フィルムに圧力を(例えば、手作業で又は機械的手段で)物理的に加えることによって達成され得る。真空圧力は、特定の場合に、例えば、成形性能を妨げる可能性がある残留空気の大部分を抜き出すために望まれ、こうして複合材料(又はその構成部品)の変形又は皺を最小限にし得る。真空はまた、フィルム皺を防ぎ、且つ全体アセンブリに安定性を加える。真空圧力の使用はまた、繊維整列を維持するのに役立ち、プロセス中及び成形中の材料を支持し、及び/又は高温での所望の厚さを維持し得る。本明細書で用いられるような「真空圧力」という用語は、1気圧未満(又は1013mbar未満)の真空圧力を指す。いくつかの実施形態では、フィルム間の真空圧力は、約1気圧未満、約800mbar未満、約700mbar未満、又は約600mbar未満に設定される。いくつかの実施形態では、フィルム間の真空圧力は約670mbarに設定される。この時点で、真空によろうと、又は例えば機械的手段などの、他の手段によろうと、複合材料は、熱及び/又は力が加えられるまでそれが動かない状態であるように、フィルム間にしっかりと保持される。そのような動かない状態の層状構造体は、例えば、層状構造体内に保持された複合材料がX軸及びY軸を横切って十分な張力を持ったその位置で動かない状態で維持されるだけでなく、それがまたインデックスを付けられるので、有利であることができる。すなわち、複合材料は、動かない状態の層状構造体内のフィルム間の特定の位置に(例えば、自動化手段によって)置かれてもよい。次いで、このインデックスを付けられた動かない状態の層状構造体は、プレスツールが複合材料の所定の領域に一貫して関与するように、プレスツールの(本明細書で以下でより詳細に説明されるような)特定の位置に(例えば、自動化手段によって)置かれてもよい。それ故に、動かない状態の層状構造体は、各複合材料ブランクに個別にインデックスを付ける必要なしに成形製品の複数のコピーを製造するために、信頼性を持って使用され得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、複合材料は、工程(a)の前にパターンに応じて機械加工することができる。
【0044】
層状構造体は、いくつかの場合に、加熱装置中で予熱され得る。層状構造体は、手作業で又は、例えば、自動化シャトルを使用する、自動化手段によって、加熱装置中に置くことができる。この加熱装置は、金属又は複合材料製品の形成又は成形で使用できる任意のヒーター、例えば、接触式ヒーター又は非接触式ヒーター(すなわちセラミックヒーター若しくは赤外線(IR)ヒーター)であることができる。いくつかの場合に、この予熱は、上方フィルム及び下方フィルムを、例えば、それらが最終成形製品の形成中により柔軟であるように、軟化させる。いくつかの場合に、この予熱は、層状構造体内に保持された複合材料を所望の粘度又は温度にして複雑な形状が平らな最初のレイアップから形成されることを可能にする。予熱は、約75℃、100℃、125℃、150℃、175℃、190℃よりも上の温度に加熱された加熱装置中で起こり得る。この温度は、例えば、複合材料中の成分のアイデンティティに応じて、調整することができる。そのような予熱は、例えば、プレスツールの加熱を最小限にすること及び/又は層状構造体がプレスツール内にある時間量を最小限にすることが望まれる場合には、有利である。
【0045】
最終成形製品を形成するために、層状構造体は、プレスツール中に配置される。いくつかの実施形態では、プレスツールのどの部分にも真空圧力は加えられない。他の実施形態では、例えば層状構造体とツールとの間に閉じ込められている空気を除去するために、局所的な真空がツール表面に加えられる。しかしながら、そのような実施形態では、真空は、典型的には最終成形製品の形状を形成するための力としては使用されない。層状構造体は、手作業で、又は、例えば、自動化シャトルを使用する、自動化手段によってプレスツール中に置くことができる。このプレスツールは、一般に、隙間によって隔てられている、雄型と雌型とを含む。各鋳型は、非平面の成形面を有する。いくつかの実施形態では、離型剤が、雄型、雌型、又は両方に添加され得る。そのような離型剤は、例えば、依然として周囲温度よりも上の温度にある間に成形部品を鋳型から取り出すために、有用であり得る。いくつかの実施形態では、離型剤は必要とされない。成形面は、固定されている、すなわち、再構成可能ではない。成形面はまた、典型的にはマッチしている、すなわち、雄型は雌型の逆にほぼ対応しており;いくつかの実施形態では完全にマッチし得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、雄型及び雌型は、閉じたときに、それらの間の厚さが変わるようなものである。特定の実施形態では、層状構造体は、雄型と雌型との間の特定の、所定の距離で隙間に配置される。
【0046】
次いで、層状構造体は、鋳型間の隙間を閉じることによって、雄型と雌型との間で圧縮される(工程(e))。いくつかの実施形態では、これは、雄型と雌型との間の隙間を部分的に閉じてより小さい隙間を鋳型間に形成することによって達成される。このより小さい隙間は、その後、特定の時間又は粘度が達せられた後に閉じられる。「隙間を閉じる」は、Z軸に沿って所定の最終キャビティ厚が鋳型間で得られるように鋳型を圧縮することを指すと理解される。最終キャビティ厚は、例えば、鋳型が互いに対して停止する場所を制御することによって調整することができ、厚さの選択は、鋳型の操作者が行うことができ、最終成形製品の性質に依存するであろう。いくつかの実施形態では、最終キャビティ厚は、実質的に均一である、すなわち、プロセスは、厚さが5%未満しか変わらない両面成形の最終製品を製造する。いくつかの実施形態では、プロセスは、約4%未満、例えば、約3%未満、約2%未満又は更には約1%未満だけ変わる厚さを持った最終成形製品を製造する。他の実施形態では、雄及び雌ツールは、X軸及びY軸を横切って意図的に変わるキャビティ厚を与えるように配置構成されていてもよい。
【0047】
特定の実施形態では、雄型及び雌型は、周囲温度よりも上の温度で維持される。例えば、それらは、約75℃、100℃、125℃、150℃、175℃、200℃又はさらにそれ以上よりも上の温度で、特に、例えば約120~約200℃の温度で維持されてもよい。この温度は、複合材料中の成分のアイデンティティ(並びに粘度及び反応性)に応じて、調整することができる。鋳型は、例えば、複合材料に使用されるバインダー又はマトリックス材料の軟化点よりも上の温度で維持することができる。いくつかの実施形態では、複合材料は熱硬化性材料を含み、鋳型は約100℃~200℃の温度で維持される。複合材料中のバインダー又はマトリックス材料は、周囲温度(20℃~25℃)で固相にあるが、加熱すると軟化するであろう。この軟化は、プレスツールでの複合材料の成形及び最終構成部品形状への平らなプレフォームの適合を可能にする。
【0048】
いくつかの実施形態では、雄型及び雌型は、成形構造体を形成するために所定の時間、閉位置で維持される。例えば、いくつかの実施形態では、鋳型は加熱され、望まれる粘度又は温度に達するまで閉位置で維持される。いくつかの実施形態では、鋳型は、複合材料の粘度が約1.0×108mPa未満になるまで閉位置で維持される。いくつかの実施形態では、鋳型は、加熱され、バインダー又はマトリックス材料が架橋し始めるまで閉位置で維持される。他の実施形態では、鋳型は、加熱されないが、材料が成形された形状を維持するのに十分な時間閉位置で維持される。鋳型は、1分~約60分、例えば、約5~約20分間又は例えば、約1~約10分間閉位置で維持されてもよい。鋳型が閉位置で維持される時間の長さは、複合材料のアイデンティティ及び鋳型の温度などの、多くの因子に依存するであろう。
【0049】
特定の実施形態では、雄型は、層状構造体を通って動かされ、一方、雌型は動かないままである。他の特定の実施形態では、雌型は、層状構造体を通って動かされ、一方、雄型は動かないままである。他の実施形態では、雌型は動かないままではなく、雄型よりも遅い速度で移動する(雄型が形成面として主に依然として機能するように)。更に他の実施形態では、両方の鋳型がほぼ同じスピードで移動して鋳型間の隙間を閉じる。鋳型は、複合材料を所望の形状に変形する/成形するのに十分な速度で及び最終圧力まで動かされる。例えば、鋳型は、約0.4mm/秒~約500mm/秒、例えば、約0.7mm/秒~約400mm/秒、とりわけ約1mm/秒~約350mm/秒、例えば5mm/秒~350mm/秒又は約50mm/秒~300mm/秒の速度で動かされてもよい。その上、鋳型は、約30psi~約1000psi、特に約100psi~約800psi、又は約250psi~約750psiの最終圧力まで動かされてもよい。いくつかの実施形態では、鋳型は、皺の形成及び構造繊維のひずみを回避しながら最終成形製品の厚さを制御するために選択された速度で及び最終圧力まで動かされる。加えて、鋳型は、最終成形部品の迅速な形成を可能にするために選択された速度で及び最終圧力まで動かされてもよい。
【0050】
次いで、雄型と雌型との間の隙間は開けられる。成形された構造体がプレスツール上に残っている間に、成形された構造体は、バインダー又はマトリックス材料のガラス転移温度よりも下に冷却されてもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、成形された構造体は、バインダー又はマトリックス材料のガラス転移温度よりも下に冷却される前にプレスツールから取り出される。成形された構造体は、全て、本発明のフルオロポリマー剥離フィルムの使用のおかげでプレスツールからより容易に取り出される。バインダー又はマトリックス材料がそのガラス転移温度よりも下に冷える場合、バインダー又はマトリックス材料は固相に戻り、複合材料は、その新たに形成された形状を保持する。複合材料がプレフォームである場合、そのようなプレフォームは、その後の樹脂注入のためにその望ましい形状を保持するであろう。
【0051】
いったん成形された構造体が得られると、クリップ及び/又は締め具が緩められ、異なるフレームがフィルムから取り外される。次いで、フィルム及び硬化複合部品が取り出され、フィルムが硬化した複合構成部品から剥離される。
【0052】
本発明によれば、ETFEフィルム及びPTFEフィルムから選択されるフルオロポリマーフィルムは、自己剥離性である。こうして、フィルムは、次いで、布プリントスルー及びオレンジピール効果を合理的に実用可能であるほどに多く同時に制限しながら表面多孔性又はウィーブひずみの兆候なしに、硬化後に硬化した複合部品の優れた表示面仕上げを得るために最終成形部品から容易に剥離することができる。
【0053】
更に、必要ならば、フィルムは、最終成形製品上に一時的に維持することができる。例えば、一時的なフィルムは、構成部品を、更に処理する、すなわち、仕上げる/塗装する前に、例えば、汚染などの環境から保護するために望ましいことがあり得る。
【0054】
本明細書で用いるところでは、「複合材料」という用語は、構造繊維とバインダー又はマトリックス材料とのアセンブリを指す。構造繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維(例えば、ケブラー)、高弾性ポリエチレン(PE)繊維、ポリエステル繊維、ポリ-p-フェニレン-ベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、石英繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、炭化ケイ素繊維、他のセラミック繊維、玄武岩、天然繊維及びそれらの混合物などの市販の構造繊維を例えば含む、有機繊維、無機繊維又はそれらの混合物であってもよい。高強度複合構造体を必要とする最終用途は、典型的には高い引張強度(例えば、≧3500MPa又は≧500ksi)を有する繊維を用いるであろうことが指摘される。そのような構造繊維は、例えば、一方向テープ(ユニテープ)ウェブ、不織マット又はベール、織布、編布、非捲縮布、繊維トウ及びそれらの組み合わせなどの、任意の従来の構成での繊維材料の1つ以上の層を含んでいてもよい。構造繊維は、複合材料の全て若しくは一部にわたる1つ以上のプライとして、又はパッドアップ若しくはプライドロップの形態で、厚さの局所的な増加/減少を伴って、含まれていてもよいことが理解されるべきである。
【0055】
繊維質材料は、繊維質材料の配列が維持され、ほころび、ほつれ、引き裂け、座屈、皺又はさもなければ繊維質材料の完全性の低下なしに、安定化された材料を保管する、輸送する及び取り扱う(例えば、成形する若しくはさもなければ変形する)ことができるように、バインダー又はマトリックス材料によって所定の位置で保持され、安定化される。少量の(例えば、典型的には約10重量%未満の)バインダーによって保持された繊維質材料は、典型的には繊維質プレフォームと言われる。そのようなプレフォームは、RTMなどの、樹脂注入用途に適しているであろう。繊維質材料はまた、多量のマトリックス材料によって保持されていてもよく(マトリックスを含浸させた繊維を指す場合、一般に「プリプレグ」と呼ばれる)、このように樹脂の更なる添加なしに最終製品形成に適しているであろう。特定の実施形態では、バインダー又はマトリックス材料は、少なくとも約30%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、又は少なくとも約45%の量で複合材料中に存在する。
【0056】
バインダー又はマトリックス材料は、一般に、熱可塑性ポリマー、熱硬化性樹脂、及びそれらの組み合わせから選択される。プレフォームを形成するために使用される場合、そのような熱可塑性ポリマー及び熱硬化性樹脂は、粉末、スプレー、液体、ペースト、フィルム、繊維、及び不織ベールなどの、様々な形態で導入され得る。これらの様々な形態を利用する手段は、一般に、当技術分野において公知である。
【0057】
熱可塑性材料としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ芳香族化合物、ポリエステルアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアラミド、ポリアリーレート、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアクリレート、ポリ(エステル)カーボネート、ポリ(メチルメタクリレート/ブチルアクリレート)、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、それらのコポリマー及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、熱可塑性材料はまた、エポキシド又は硬化剤に反応する、アミン又はヒドロキシル基などの、1つ以上の反応性末端基も含んでいてもよい。
【0058】
熱硬化性材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ホルムアルデヒド縮合樹脂(ホルムアルデヒド-フェノール樹脂を含む)、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、フェノール樹脂及びそれらの混合物が挙げられる。エポキシ樹脂は、芳香族ジアミン、芳香族モノ一級アミン、アミノフェノール、多価フェノール、多価アルコール、及びポリカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物のモノ又はポリグリシジル誘導体であってもよい。エポキシ樹脂は、多官能性(例えば、二官能性、三官能性、及び四官能性エポキシ)であってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーと熱硬化性樹脂との組み合わせが複合材料に使用される。例えば、特定の組み合わせは、流動制御及び可撓性に関して相乗効果で動作し得る。このような組み合わせでは、熱可塑性ポリマーは、ブレンドに対して流動制御及び可撓性を提供し、典型的には低い粘度、脆い熱硬化性樹脂より優位に立つであろう。
【0060】
上記の特定のフルオロポリマーフィルムの使用は、例えば、そのX軸及びY軸を横切る十分な張力で複合材料を固定位置で維持することによって、複合材料の成形に役立つだけでなく、重要な追加の機能的利点も提供する。例えば、この配置は、空気中の又はツーリング機械上の不純物などの、環境汚染物質から複合材料ブランクを保護する。この保護は、三次元の複雑な形状への二次元プレフォームの加工のための、従来のプレスツールの(さもなければ扱いにくい)使用を可能にし、このように、それは、真空形成か又は再構成可能なツール技術かのどちらかよりも著しくより複雑な三次元形状を可能にする。更に、ダブルダイアフラム配置の使用は、離型プロセスが全体プロセスから排除されることを可能にすることできる。
【0061】
本明細書で記載されるダブルダイアフラム機械的熱成形プロセスは、それ故に、複雑な三次元複合構造体を二次元の平らなプレフォームから自動的に製造する効果的な及び効率的な手段を提供し、これは、自動車、UAM及び航空宇宙市場の両方向けである。三次元複合構造体は、迅速に、繰り返して、及び大規模で製造することができる。例えば、三次元複合構造体は、所望の部品及び複合材料のアイデンティティに応じて1~10分サイクルで又は5~20分、若しくは10~30分サイクル、若しくは20~60分サイクルで実質的に平面の複合材料ブランクから形成することができる。そのような迅速な、繰り返し可能なプロセスは、ボンネット、トランク、ドアパネル、フェンダー及びホイールウェルなどの、自動車部品及びパネル用材の製造に適している。
【実施例】
【0062】
以下の実施例は、例示目的のためであるにすぎず、添付のクレームの範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0063】
実施例1:高温ETFEフィルム及び速硬化自動車エポキシプリプレグを使用する、フレームありの、ダブルダイアフラム機械的熱成形
52ミクロンのETFEフィルムでできた下方可撓性ダイアフラムを、底部フレームを保持する台板上へ配置した。このフィルムは、表1に報告される特徴を示す。
【0064】
【0065】
炭素繊維強化エポキシ(Solvay、旧Cytec Industries、MTM58B)からなる複合材料ブランク及び表面フィルム(Solvay、旧Cytec Industries、VTF266)を下方可撓性ダイアフラムの最上部上に置き、続いて真空口を有する中央フレームを置いた。次いで、下方可撓性ダイアフラムと同じフィルムでできた上方可撓性ダイアフラムを、それが中央フレーム及び複合材料ブランクを覆うように置いた。最上部、中央及び底部フレームを一緒に固定し、それによって、真空気密シールと、下方可撓性ダイアフラム、上方可撓性ダイアフラム及び中央フレームで囲まれた封入ポケットとを生み出した。次いで、真空圧力が最大で670mbarに達するまで真空引きして、上方可撓性ダイアフラムと下方可撓性ダイアフラムとの間から空気を除去した。その時点で、複合材料ブランクは、両方のダイアフラムによってしっかりと支持され、動かない状態の層状構造体を生み出した。
【0066】
次いで、層状構造体を非接触式加熱装置中へシャトルで動かし、そこで140℃まで加熱した。外側フィルム温度が最高で120℃に達したらすぐに、それを、構造自動車クラスAデモンストレータ構成部品の形状に構成された、マッチした雄型と雌型とを含むプレスツール中へシャトルで動かした。次いで、雌型を雄型に向かっておよそ4mm/秒(250mm/秒)の速度で動かした。雌型を動かないままにし、両方の鋳型を架橋が開始するまで150℃で保持した。成形された構造体を、まだ熱いうちにプレスツールから取り出し、取り出し後に放冷した。複合材料ブランクを成形するプロセスは、開始から終了まで(すなわち、下方可撓性ダイアフラムの最初の配置から最終形状の確立まで)15分であった。
【0067】
離型及び冷却後に、52ミクロンのETFE最上部フィルムを使用して製造された部品を目視検証し、短波及び長波走査技術(Visuol)を用いて走査してそれぞれオレンジピール(微細な)及び布プリントスルー(粗い)のレベルを確認した。結果から、ETFE最上部フィルムの向上した熱性能及びフィルム剛性が、測定されるプリントスルー及びオレンジピールの重要な減少を可能にしたことが明らかである。
【0068】
フィルムの熱特性は、ASTM 3418についてTA Q2000 DSC機)を使用する示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定した。加熱/冷却/加熱手順を適用し、10℃/分の冷却及び加熱速度で-30℃~300℃の温度範囲をスクリーニングした。
【0069】
フィルムの機械的特性は、Zwick Z250試験機を用いてASTM D882-09に従って測定した。23℃及び50%相対湿度の周囲条件下で約8mm/秒(500mm/分)の試験速度で縦方向及び横方向の両方にフィルムを試験した。
【国際調査報告】