(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】レチノイドメタボロームを利用した早産の早期予測方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/49 20060101AFI20240416BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20240416BHJP
G01N 21/33 20060101ALI20240416BHJP
G01N 21/35 20140101ALI20240416BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G01N33/49 Z
G01N27/62 X
G01N27/62 V
G01N21/33
G01N21/35
G01N21/64 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565456
(86)(22)【出願日】2022-04-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 KR2022005190
(87)【国際公開番号】W WO2022225241
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0053232
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523223755
【氏名又は名称】イファ ユニヴァーシティー - インダストリー コラボレイション ファウンデイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン・ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ヨン‐ア
(72)【発明者】
【氏名】アンサリ,アブザール
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソ‐ミン
(72)【発明者】
【氏名】パク,スンファ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ガ‐イン
【テーマコード(参考)】
2G041
2G043
2G045
2G059
【Fターム(参考)】
2G041BA09
2G041CA01
2G041EA04
2G041FA10
2G041GA09
2G041HA01
2G043AA03
2G043BA16
2G043CA03
2G043EA01
2G043JA01
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045DA77
2G045FA33
2G045FB06
2G059AA02
2G059BB12
2G059BB13
2G059CC16
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE07
2G059HH01
2G059HH03
2G059JJ01
2G059KK01
(57)【要約】
本発明は、レチノイドメタボロームを利用した早産の早期予測方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的試料内で、全トランス-レチナール(all trans-retinal)、13-シス-レチノイン酸(13-cis-retinoic acid)、およびレチニルパルミテート(retinyl palmitate)からなる群より選択された1種以上のメタボロームを定量する段階を含む、早産予測のための情報提供方法。
【請求項2】
前記定量されたメタボロームのレベルを対照群と比較する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記定量されたメタボロームのレベルが対照群より高い場合、早産危険性があると予測する段階をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記対照群は、正常分娩産婦である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記生物学的試料は、妊産婦から分離されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的試料は、血液試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記生物学的試料は、全血、血漿、および血清からなる群より選択された1種以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記メタボロームを定量する段階は、液体クロマトグラフィー質量分析計、核磁気共鳴分光器、紫外線分光器、赤外線分光器、蛍光分光器、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)、および質量分析計からなる群より選択された1種以上で行われるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記早産は、肝機能障害によるものではない早産である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記生物学的試料は、肝機能障害を持たない産婦から分離されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
生物学的試料内で、全トランス-レチナール(all trans-retinal)、13-シス-レチノイン酸(13-cis-retinoic acid)、およびレチニルパルミテート(retinyl palmitate)からなる群より選択された1種以上のメタボロームを定量することができる製剤を含む、早産予測用組成物。
【請求項12】
前記製剤は、前記メタボロームレベルの増加を定量することができるものである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記生物学的試料は、妊産婦から分離されたものである、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記生物学的試料は、血液試料である、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記生物学的試料は、全血、血漿、および血清からなる群より選択された1種以上である、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
液体クロマトグラフィー質量分析計、核磁気共鳴分光器、紫外線分光器、赤外線分光器、蛍光分光器、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)、および質量分析計からなる群より選択された1種以上で前記メタボロームを定量するものである、請求項11に記載の組成物。
【請求項17】
生物学的試料内で、全トランス-レチナール(all trans-retinal)、13-シス-レチノイン酸(13-cis-retinoic acid)、およびレチニルパルミテート(retinyl palmitate)からなる群より選択された1種以上のメタボローム定量用製剤、または定量装置を含む、早産予測用キット。
【請求項18】
前記キットは、前記メタボロームレベルの増加を定量するものである、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記生物学的試料は、妊産婦から分離されたものである、請求項17に記載のキット。
【請求項20】
前記生物学的試料は、血液試料である、請求項17に記載のキット。
【請求項21】
前記生物学的試料は、全血、血漿、および血清からなる群より選択された1種以上である、請求項17に記載のキット。
【請求項22】
前記定量装置は、液体クロマトグラフィー質量分析計、核磁気共鳴分光器、紫外線分光器、赤外線分光器、蛍光分光器、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)、および質量分析計からなる群より選択された1種以上である、請求項17に記載のキット。
【請求項23】
試験対象の生物学的試料の入力を受ける入力部;
前記試料内で、全トランス-レチナール(all trans-retinal)、13-シス-レチノイン酸(13-cis-retinoic acid)、およびレチニルパルミテート(retinyl palmitate)からなる群より選択された1種以上のメタボロームを定量する定量部;
前記定量されたメタボロームのレベルを対照群と比較する演算部;および
前記比較結果に応じて、前記試験対象の早産危険の有無を示す結果を表示する表示部を含む、早産予測用システム。
【請求項24】
前記演算部で前記メタボロームのレベルが対照群より高いと演算される場合、前記表示部は、前記試験対象が早産危険性があると表示するものである、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記生物学的試料は、妊産婦から分離されたものである、請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
前記生物学的試料は、血液試料である、請求項23に記載のシステム。
【請求項27】
前記生物学的試料は、全血、血漿、および血清からなる群より選択された1種以上である、請求項23に記載のシステム。
【請求項28】
前記定量部は、液体クロマトグラフィー質量分析計、核磁気共鳴分光器、紫外線分光器、赤外線分光器、蛍光分光器、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)、および質量分析計からなる群より選択された1種以上でメタボロームを定量するものである、請求項23に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レチノイドメタボロームを利用した早産の早期予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
早産(Preterm birth;PTB)は、37週未満で出産することをいうが、近年、アジア地域107ヵ国の統計によれば、約10.6%の頻度で発生している。
【0003】
韓国の場合、2006年には早産率が約4.8%であったが、2016年には7.2%と約2倍近く増加して、早産率が増加傾向にある。早産は、短期的には新生児および5才以下の児童の死亡率が増加する危険性があり、神経発達などの問題が発生する確率が高くなり、長期的には2型糖尿病、肥満、高血圧などの有病率が増加する危険性がある。
【0004】
早産の発生機序は、まだ明確に解明されておらず、自然的陣痛とよく関連した危険因子は、生殖器系感染、多胎妊娠、第2、第3三半期出血、以前の早産歴などがある。また、早産の約75%は、早期陣痛と羊膜破水、そしてこれと関連する子宮頸管無力症と絨毛膜炎などを伴って発生する。
【0005】
韓国は低出産国であるにもかかわらず37週未満の早産率が着実に増加しており、産婦および新生児の健康を脅かし、さらに経済損失費用を招いている。これまで早産の克服のために胎児フィブロネクチン、CRP測定、子宮頸部の長さ測定などにより早産を予測しているが、未だ早産予測率の感度が低いのが現状である。
【0006】
したがって、早い週数に早産の兆候がきた時、適切な治療を通して分娩週数を遅らせ、新生児の成熟度を高めることは、産婦と新生児の健康と生活の質とコストに重大な鍵となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一例は、生物学的試料内のレチノイドメタボロームレベルを利用して早産を予測することができる、早産予測方法または早産予測のための情報提供方法を提供するためのものである。
【0008】
本発明の他の一例は、生物学的試料内のレチノイドメタボロームレベルを利用して早産を予測することができる、早産予測用組成物を提供するためのものである。
【0009】
本発明のさらに他の一例は、生物学的試料内のレチノイドメタボロームレベルを利用して早産を予測することができる、早産予測用キットに関する。
【0010】
本発明のさらに他の一例は、生物学的試料内のレチノイドメタボロームレベルを利用して早産を予測することができる、早産予測用システムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一例は、生物学的試料内でレチノイドメタボロームを定量する段階を含む、早産予測方法、または早産予測のための情報提供方法に関する。
【0012】
本発明の他の一例は、生物学的試料内でレチノイドメタボロームを定量することができる製剤を含む、早産予測用組成物に関する。
【0013】
本発明のさらに他の一例は、生物学的試料内でレチノイドメタボロームを定量する定量用製剤、または定量装置を含む、早産予測用キットに関する。
【0014】
本発明のさらに他の一例は、生物学的試料内でレチノイドメタボロームを定量する定量部を含む、早産予測用システムに関する。
【0015】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0016】
本発明の一例は、生物学的試料内でレチノイドメタボロームを定量する段階を含む、早産予測のための情報提供方法、早産予測方法、早産診断のための情報提供方法、または早産診断方法に関する。
【0017】
本明細書における用語「早産」、「premature birth」、「preterm birth」、「PTB」などは同じ意味を持ち、37週未満での胎児の出産を意味する。
【0018】
本願実施例によれば、本発明による早産に対するレチノイドメタボロームマーカーは、産婦の血液試料を利用して分析したもので、早産群と満期分娩群で有意差を示し、これにより、本発明の一例によるレチノイドメタボロームマーカーを利用すれば、早産を予測することができる。
【0019】
本発明で用語、「早産の危険性診断」または「早産の危険性予測」とは、妊産婦が早産をする可能性があるのか、早産の可能性が相対的に高いか、または早産の兆候を示す可能性があるか否かを判別することをいう。
【0020】
本発明は、早産危険性の高い妊産婦を特別かつ適切な管理のより早産を遅延させたり防止するために用いることができる。また、本発明は早産を早期に診断して最も適切な治療方式を選択することによって治療決定を行うために臨床的に用いることができる。
【0021】
本明細書で用語「または」は、明確に内容が特定されない限り、「および/または」を含む意味で使用される。
【0022】
本発明で用語、「マーカー」、「診断用マーカー」、「診断するためのマーカー」、「診断マーカー(diagnosis marker)」または「標識子」とは、早産妊産婦を予測して、正常分娩群と区分する基準となる物質で、前記対照群の試料に比べて早産と予測される妊産婦の試料で有意な差を示す生体有機分子を意味する。本発明の一例によれば、前記マーカーなどは、生物学的試料内のメタボロームを含むことができる。
【0023】
前記「メタボローム(metabolite)」は、生体内代謝の結果として生成される物質であって、代謝物質、中間代謝物質、代謝中間体などと表記することができ、主に細胞過程中発生する小分子の代謝産物全体(metabolome)を意味する。例えば、本発明の一例によれば、前記メタボロームはレチノイドメタボロームであってもよい。具体的に、前記メタボロームは、全トランス-レチナール(all trans-retinal)、13-シス-レチノイン酸(13-cis-retinoic acid)、およびレチニルパルミテート(retinyl palmitate)からなる群より選択された1種以上を含むものであってもよい。一例として、前記メタボロームは、全トランス-レチナール(all trans-retinal)および13-シス-レチノイン酸(13-cis-retinoic acid)からなる群より選択された1種以上を含むものであってもよい。
【0024】
本明細書で用語「生物学的試料」は、試験対象、または試験個体、例えば妊産婦から分離または採取された試料を意味する。前記生物学的試料は、妊産婦由来の試料、具体的に妊産婦の血液試料、例えば全血、血漿、および血清からなる群より選択された1種であってもよい。
【0025】
本発明の一例による早産予測のための情報提供方法、早産予測方法、早産診断のための情報提供方法、または早産診断方法は、前記定量されたメタボロームのレベルを対照群と比較する段階をさらに含むものであってもよい。
【0026】
例えば、前記メタボロームが全トランス-レチナール(all trans-retinal)、13-シス-レチノイン酸(13-cis-retinoic acid)、およびレチニルパルミテート(retinyl palmitate)からなる群より選択された1種以上であり、前記定量されたメタボロームのレベルが対照群より高い場合、前記生物学的試料が分離された妊産婦は、早産危険性があると予測する段階をさらに含むものであってもよい。前記対照群は、早産をせずに正常分娩した産婦、妊娠37週以上で分娩した産婦、または満期分娩した産婦であってもよい。
【0027】
本明細書で用語「増加」は、比較対照群、例えば、確立された対照群または標準対照群(例えば、正常分娩をした産婦の生物学的試料、または妊娠37週以上で分娩した産婦の生物学的試料に示されたマーカーメタボロームの平均レベル)から量(quantity)の増加、レベル(level)の増加、分布(distribution)の増加、分布比率の増加、または濃度(concentration)の増加などを意味する。具体的に、前記分布比率は、液体クロマトグラフィー質量分析計などの分析結果、生物学的試料内特定メタボロームの相対的含有量、または相対的濃度でありうる。
【0028】
例えば、前記増加は対照群値の1倍超、1.1倍以上、1.15倍以上、1.2倍以上、1.25倍以上、1.3倍以上、1.35倍以上、1.4倍以上、1.45倍以上、または1.5倍以上の増加または統計的に有意な増加であり得るが、通常の技術者なら絶対的な増加量が特定されなくても、対照群対比有意に増加された変化を明確に理解することができるであろう。前記対照群値は、例えば少なくとも2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、10個以上、15個以上、20個以上、25個以上、30個以上、または35個以上の対照群値の平均値であり得る。
【0029】
例えば、生物学的試料内全トランス-レチナール(all trans-retinal)の濃度が対照群値の1.5倍以上である時、前記生物学的試料が分離された妊産婦は、早産危険性があると予測することができる。
【0030】
例えば、生物学的試料内の13-シス-レチノイン酸(13-cis-retinoic acid)の濃度が、対照群値の1.4倍以上である時、前記生物学的試料が分離された妊産婦は、早産危険性があると予測することができる。
【0031】
例えば、生物学的試料内レチニルパルミテート(retinyl palmitate)の濃度が、対照群値の1.5倍以上である時、前記生物学的試料が分離された妊産婦は、早産危険性があると予測することができる。
【0032】
例えば、生物学的試料内全トランス-レチナール(all trans-retinal)の濃度が2.48ppb以上である時、前記生物学的試料が分離された妊産婦は、早産危険性があると予測することができる。
【0033】
例えば、生物学的試料内13-シス-レチノイン酸(13-cis-retinoic acid)の濃度が、5.56ppb以上である時、前記生物学的試料が分離された妊産婦は、早産危険性があると予測することができる。
【0034】
例えば、生物学的試料内レチニルパルミテート(retinyl palmitate)の濃度が、100.33ppb以上である時、前記生物学的試料が分離された妊産婦は、早産危険性があると予測することができる。
【0035】
前記増加を示す用語、例えば「高い」、「より」、「より高い」、「有意に高い」、「統計的に有意に高い」等の用語は、前記記述された通り同じ意味で使用される。対照的に、用語「有意しないように」、「同等に」、「実質的に同じ」、「実質的に変化がない」等は、標準対照群の±10%以内、±5%以内、±3%以内、または±2%以内など、標準対照群値から変化が殆どない、または有意ではない変化を示すことを意味する。
【0036】
本明細書で用語「対照群」は、早産を予測するために本発明によるメタボロームのレベルを比較するための対象で、比較対照群、標準対照群、または正常対照群などの用語と互換可能に使用することができる。例えば、前記対照群は、早産をしなかった産婦、正常分娩をした産婦、または妊娠37週以上で分娩した産婦であり得る。
【0037】
前記メタボロームを定量する段階は、液体クロマトグラフィー質量分析計(LC/MS)、核磁気共鳴分光器、紫外線分光器、赤外線分光器、蛍光分光器、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)、および質量分析計からなる群より選択された1種以上で行われるものであり得る。
【0038】
本発明の一例による早産は、肝機能障害(liver dysfunction)による早産ではないものであり得る。本願実施例によれば、本発明によるレチノイドメタボローム早産マーカーの有意差を示した早産群および正常対照群は、肝機能関連指標、具体的にアラニンアミノ基転移酵素(alanine aminotransferase;ALT)およびアスパラギン酸アミノ基転移酵素(aspartate aminotransferase;AST)等の肝細胞損傷因子レベルの有意差を示されず、より具体的に妊娠3期で前記肝細胞損傷因子レベルの有意差を示さなかった。従って、本発明の一例による早産は、肝機能障害による早産ではない可能性がある。
【0039】
即ち、本発明の一例により早産を予測する対象産婦は、肝機能障害を持たない産婦であり得る。具体的に、前記産婦は妊娠3期で肝機能障害を持たない産婦であり得る。
【0040】
例えば、前記産婦は、肝機能関連指標、または肝細胞損傷因子レベルが正常対照群と有意差がない産婦であり得る。具体的に、前記産婦は、妊娠3期で肝機能関連指標、または肝細胞損傷因子レベルが正常対照群と有意差がない産婦であり得る。
【0041】
例えば、前記産婦はアラニンアミノ基転移酵素(alanine aminotransferase;ALT)および/またはアスパラギン酸アミノ基転移酵素(aspartate aminotransferase;AST)レベルが正常対照群と有意差がない産婦であり得る。例えば、前記産婦は、AST 50U/L以下、45U/L以下、40U/L以下、35U/L以下、30U/L以下、25U/L以下、または20U/L以下である産婦であり得る。
【0042】
例えば、前記産婦は、ALT 50U/L以下、45U/L以下、40U/L以下、35U/L以下、30U/L以下、25U/L以下、20U/L以下、または15U/L以下である産婦であり得る。
【0043】
例えば、前記産婦はAST/ALT比率が、0.1~2、0.1~1.8、0.1~1.5、0.3~2、0.3~1.8、0.3~1.5、0.5~2、0.5~1.8、0.5~1.5、0.7~2、0.7~1.8、0.7~1.5、1~2、1~1.8、または1~1.5の産婦であり得る。
【0044】
本発明のさらに他の一例は、生物学的試料内でレチノイドメタボロームを定量することができる製剤を含む、早産予測用組成物に関する。
【0045】
前記レチノイドメタボロームは前述した通りであり、例えば全トランス-レチナール(all trans-retinal)、13-シス-レチノイン酸(13-cis-retinoic acid)、およびレチニルパルミテート(retinyl palmitate)からなる群より選択された1種以上を含むものであってもよい。例えば、前記メタボロームは、全トランス-レチナール(all trans-retinal)および13-シス-レチノイン酸(13-cis-retinoic acid)からなる群より選択された1種以上を含むものであってもよい。
【0046】
前記製剤は、生物学的試料内でメタボロームの量(quantity)、レベル(lever)、分布(distribution)、分布比率、または濃度(concentration)を定量するものであってもよい。
【0047】
例えば、前記製剤は、全トランス-レチナール(all trans-retinal)、13-シス-レチノイン酸(13-cis-retinoic acid)、およびレチニルパルミテート(retinyl palmitate)からなる群より選択された1種以上、一例として、全トランス-レチナール(all trans-retinal)および13-シス-レチノイン酸(13-cis-retinoic acid)からなる群より選択された1種以上の増加、例えば量、レベル、分布、分布比率、または濃度の増加を定量することができるものであってもよい。
【0048】
前記メタボロームは、液体クロマトグラフィー質量分析計(LC/MS)、核磁気共鳴分光器、紫外線分光器、赤外線分光器、蛍光分光器、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)、および質量分析計からなる群より選択された1種以上で定量されるものであるが、これに制限されるものではない。
【0049】
本発明のさらに他の一例は、生物学的試料内でレチノイドメタボロームを定量する定量用製剤、または定量装置を含む、早産予測用キットに関する。前記レチノイドメタボロームは前述した通りである。
【0050】
前記キットは、全トランス-レチナール(all trans-retinal)、13-シス-レチノイン酸(13-cis-retinoic acid)、およびレチニルパルミテート(retinyl palmitate)からなる群より選択された1種以上、一例として全トランス-レチナール(all trans-retinal)および13-シス-レチノイン酸(13-cis-retinoic acid)からなる群より選択された1種以上の増加、例えば、量、レベル、分布、分布比率、または濃度の増加を定量することができるものであってもよい。
【0051】
前記定量装置は、液体クロマトグラフィー質量分析計(LC/MS)、核磁気共鳴分光器、紫外線分光器、赤外線分光器、蛍光分光器、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)、および質量分析計からなる群より選択された1種以上であるが、これに制限されるものではない。
【0052】
本発明のさらに他の一例は、早産を予測または診断するための装置、装備、またはシステムに関する。具体的に、前記記述された早産予測方法、早産予測のための情報提供方法、早産診断方法、または早産診断のための情報提供方法の段階の全部または一部を行うことができる装置、装備、またはシステムに関する。前記装置、装備、またはシステムは、本発明の一例による早産予測用組成物、または早産予測用キットなどを使用して前記段階の全部または一部を行うものであってもよい。
【0053】
例えば、前記装置、装備、またはシステムは、試験対象の生物学的試料、例えば試験対象妊娠婦から分離された血液試料を得て、前記試料中本発明によるマーカーメタボロームの量または濃度を定量し、前記量または濃度を対照群、例えば正常分娩した対照群産婦の数値と比較して、前記比較結果に基づいて、前記試験対象の早産の危険性の有無を示す結果を表示するものであってもよい。そこで、本発明の一例による装置、装備、またはシステムは、生物学的試料内でレチノイドメタボロームを定量する定量部を含むものであってもよい。
【0054】
具体的に、前記装置、装備、またはシステムは、試験対象の生物学的試料の入力を受ける入力部;前記試料内で本発明によるマーカーメタボロームを定量する定量部;前記定量されたメタボロームのレベルを対照群の数値と比較する演算部;および前記比較結果に基づいて、前記試験対象の早産危険性の有無を示す結果を表示する表示部を含むものであってもよい。
【0055】
前記マーカーメタボロームは、前述した通りであり、例えば、全トランス-レチナール(all trans-retinal)、13-シス-レチノイン酸(13-cis-retinoic acid)、およびレチニルパルミテート(retinyl palmitate)からなる群より選択された1種以上を含むものであってもよい。一例として、前記マーカーメタボロームは、全トランス-レチナール(all trans-retinal)および13-シス-レチノイン酸(13-cis-retinoic acid)からなる群より選択された1種以上を含むものであってもよい。
【0056】
前記演算部において、全トランス-レチナール(all trans-retinal)、13-シス-レチノイン酸(13-cis-retinoic acid)、およびレチニルパルミテート(retinyl palmitate)からなる群より選択された1種以上のレベルが対照群より高いと演算される場合、前記表示部は、前記試験対象が早産の危険性があると表示するものであってもよい。
【0057】
前記生物学的試料は、妊産婦から分離されてものであってもよい。前記生物学的試料は、血液試料であってもよく、一例として、全血、血漿、および血清からなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0058】
前記定量部は、液体クロマトグラフィー質量分析計(LC/MS)、核磁気共鳴分光器、紫外線分光器、赤外線分光器、蛍光分光器、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)、および質量分析計からなる群より選択された1種以上にメタボロームを定量するものであるが、これに制限されるものではない。
【発明の効果】
【0059】
本発明の一例によるレチノイドメタボローム早産マーカーを利用すると、早産を早期に予測することができ、比侵襲的で精度高い早産予測が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】本発明の一例による試験対象を選定する過程を示すフローチャート(flowchart)である。
【
図2】RPC陽性でTBと比較してPTBに対して明確に区分された範疇を示す(Q2=0.072;R2=0.085)。
【
図3】経路影響分析の散布図(scatter plot)を示したもので、y軸はp-valueを示す。
【
図4】レチノイド代謝産物分析により、早産産婦の血漿試料で変化を示すレチノイドメタボロームを示した図面である(39TB、20PTB)。
【
図5】メタボロームに対するROC曲線分析を示した図面で、感度および特異度のROC曲線を利用した早産バイオマーカーの予測性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、本発明を下記の実施例によりさらに詳しく説明する。但し、これらの実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0062】
実験材料および方法
【0063】
実施例1.研究対象
梨花(イファ)女子大学医療院で産前検診および分娩のために来院した妊産婦を募集した。被験者をメタボロームプロファイルを分析するための探索グループ(discovery group)(10TBおよび11PTB)と、レチノイドメタボロームを分析するための検証グループ(validation group)(39TBおよび20PTB)に分けた。研究対象は、妊娠16週から35週5日の間の無症状単胎妊産婦(asymptomatic singleton pregnant women with asymptomatry)または早期陣痛(pretermlabor;PTL)および/または早期羊膜破水(premature rupture of membrane;pPROM)がある入院妊産婦であった。
【0064】
心電図検査で感知して、規則的な子宮収縮と20分内に4回以上の収縮、または60分内に8回以上の収縮がある患者を早期陣痛(PTL)と診断した。早期羊膜破水(pPROM)を診断するために、膣腔内羊水固着を感知するための滅菌検鏡検査と、膜破裂感知のためのニトラジン検査(nitrazine test)を実施した。在胎期間は、最後の月経の初日と超音波検査を使用して決定された。妊産婦が産前検診のために訪問したり分娩のために病院に入院した時、血液サンプルを採取してメタボローム分析を行う時まで-80℃で保管した。
【0065】
本研究は梨花女子大学病院機関審議委員会(EUMC2018-07-007-010)の承認を受けた。すべての実験は承認された指針に従って行われ、すべての被験者から事前同意を得た。
【0066】
実施例2.産婦血液サンプルの準備
200μLの血漿サンプルを600μLの溶媒混合物(アセトニトリル/メタノール/アセトン;1:1:1、v/v)で沈殿させた後、3分間のボルテックスミキサーで混合して30分間-20℃で保管した。沈殿されたサンプルを10,000g、4℃で10分間遠心分離した後、600μlの上澄み液を他の試験管に移し、緩やかな窒素ストリーム(gentle nitrogen stream)下で蒸発乾燥させた。残留物を200μlの50%メタノールに再構成した後、5μl(RPC分離モード)サンプルをUPLC-LTQ-Orbitrap MSで分析した。
【0067】
実施例3.LTQ-Orbitrap MSによるメタボロームプロファイリング
メタボロームプロファイリングは、ポジティブモード(ESI+)で作動する電気噴霧ソースが取り付けられたLTQ-OrbitrapVelos Proハイブリッド質量分析計(Thermo Fisher Scientific)と結合されたUltimate 3000 UHPLC システム(Thermo Fisher Scientific、米国、カリフォルニア州サンノゼ)を利用して行った。AcquityTM UPLC BEH C18カラム(2.1mm×100mm、1.7μm、Waters、Milford、MA、USA)UPLC分析カラムで逆相分離(reversed-phase separation)を行った。移動相溶媒は、95%水、5%ACNおよび0.1%ギ酸(移動相A)および95%ACN、5%水および0.1%ギ酸(移動相B)を使用した。溶出勾配は以下の通りであった:0~3分まで100%移動相A;3~10分まで50%移動相Bに線形増加(linear increase);10~12分まで移動相Bを50~90%まで線形増加(linear increase);12~15分まで100%移動相Aの線形増加維持;15~18分まで100%移動相Aに再平衡化(re-equilibration)。カラムは40℃に維持され;総実行時間は18分であった。分析のために、各サンプルの5μlの標本(aliquot)を注入した。サンプルは、分析中に自動サンプラ-(autosampler)で4℃に維持された。
【0068】
実施例4.レチノイドメタボローム検証のための標準原液の準備
TBとPTBの代謝経路を分析するために、レチノイドメタボロームを分析することにした。レチノール(retinol;ROH)、レチニルアセテート(retinyl acetate;RAc)、レチニルパルミテート(retinyl palmitate;RP)、全トランスレチナール(all-transretinal;at-RAL)、全トランスレチノイン酸(all-transretinoic acid;at-RA)、13シス-レチノイン酸(13cis-retinoic acid;13cis-RA)、レチニルアセテート-D6(retinyl acetate-D6;RAc-D6)、全トランスレチナール-D6(all-transretinal-D6;at-RAL-D6)、および全トランスレチノイン酸-D6(all-transretinoic acid-D6;at-RA-D6)に対して、レチノイドの全ての表示された分析参照標準(analytical reference standards)および内部標準(internal standards)の保存溶液を最終濃度が2000ppmになるようにメタノールに均一に溶解した。レチノール-D6(ROH-D6)は、例外的に1000ppmの最終濃度で製造した。溶液は使用するまで-20℃の温度で保管した。ターゲットレチノイドの最終定量化のための検量線(calibration curve)は、800~0.05ppb範囲で、このような標準ストック溶液(standardstocksolutions)を4倍連続希釈して製造した。ROH、RAc、at-RALおよびat-RA標準は、Cayman Chemicals,Inc.(Ann Arbor,Michigan)から入手し、RP、13cis-RAは、Sigma Aldrich Corp.(St.Louis,USA,Missouri)から入手した。前記で言及した4個の同位元素標識された内部標準(internal standards)は全てCambridge Isotopes Laboratories,Inc.(Tewksbury,USA,Massachusetts)から購入した。
【0069】
実施例5.サンプルの準備
血漿サンプルで標的レチノイドを効果的に抽出するために、液体-液体抽出方法を使用した。200μLの血漿サンプルそれぞれに、同位元素標識された内部標準混合物(internal standard mixture)を添加し、200μLのアセトニトリル(acetonitrile)で血清タンパク質を沈殿させる前に、しばらくボルテックスした。1分間ボルテックスした後、1.2mLのメチル-tert-ブチルエーテル(methyl-tert-butylether)を各チューブに追加で添加し、再び1分間ボルテックスした。次に、サンプルを13,000rpm、4℃で10分間遠心分離し、上部有機層を最終的に新らしい試験管に移した。移送された上澄み液(supernatant)を室温にて窒素ガスで乾燥して残留物をメタノール20μLで再構成した。5分間のボルテックスした後、上澄み液を最終的にきれいなガラスMSバイアルチューブに移して、追加LC-MS/MS分析のためにキャップを閉じた。
【0070】
実施例6.LC-MS/MS分析
血漿サンプル抽出物のクロマトグラフィー分離は、Accucore C18 カラム(2.1×100mm、2.6μmの粒子の大きさ、Thermo ScientificTM,USA)で行われ、温度は実験中ずっと30℃に維持した。サンプルの注入体積は2μLに固定された。標的レチノイドは、80%のアセトニトリル(A)および100%メタノール(B)で構成された移動相組成下で22分以内に分離し、二つとも0.1%のギ酸で変形された。移動相システムは、初期に相A(phase A)の100%で等溶媒モードで7分間維持され、流速を0.2mL/分から0.4mL/分に線形的に増加させた。その後、直ちに相B(phase B)100%に変更し、15分まで維持し、流速を0.4mL/分に維持した。さらに2分間、システムは、線形勾配を徐々に100%相A(phase A)に戻り、流速を0.2mL/分に再び減少させた。再平衡になるために、5分間条件を維持した。その後、ESI(electrospray ionization)源が取り付けられたAgilent 6460C Triple Quadrupole LC-MS/MSシステムを使用してカラム流出物を分析した。質量分析計は、窒素を噴霧ガスとして使用してカチオンモードで作動した。加熱されたアトマイザーの温度は、4,500のイオンスプレー電圧で300℃に設定された。レチノイドの定量化は、レチノール(ROH)、レチノール-D6(ROH-D6)、レチニルアセテート(RAc)、レチニルアセテート-D6(RAc-D6)およびレチニルパルミテート(RP)に対して[M+H-fatty acid-H2O]+の前駆体イオンを選択し、at-RAL、at-RAL-D6、at-RA、9cis-RA、13cis-RAおよびat-RA-D6に対して[M+H]+を選択して、多重反応モニタリング(MRM)モードで行った。前述のすべての分析物質の最適化したMRM遷移、MSパラメータおよびLC保持時間が表1に要約されている。最終定量化のために、標的レチノイドの各ピーク領域を当該内部標準の反応に対して正規化した(ROHの場合0.5ppm ROH-D6;RAcおよびRPの場合0.25ppm RAc-D6;at-RALの場合0.25ppm at-RAL-D6;at-RA、9cis-RA、13cis-RAの場合1ppm at-RA-D6)。
【0071】
【0072】
実施例7.統計的分析
研究グループの基本特性は、連続変数に対するStudent'st-testと範疇型変数に対するカイ二乗検定を使用して比較された。TBおよびPTBの妊産婦の血漿で代謝プロファイルの変異から変数のリストを得るために多変量分析を行った。
【0073】
多変量分析は、Umetrics(Umea,Sweden)のSIMCA-Pソフトウェアv14.0を使用して行った。
【0074】
経路影響分析およびヒートマップ視角化は、ウェッブベースのメタボロミクスデータ処理ツールおよび視角化メタボロミクスであるMetaboanalyst 3.0(Montreal,QC,Canada)によって行われた。
【0075】
経路マッピングおよび化学的類似性分析は、Rバージョン3.2.2、MetaMappおよびCytoScape3.4.0(Boston,MA,USA)によって生成された。
【0076】
LC-MS/MSを用いた検証では、サンプリング時間に在胎期間に合わせて調整された一般化された線形モデルを使用して、ディファレンシャルメタボロームレベルを分析した。
【0077】
PTBの診断精度は、ROC曲線のAUCを適用して要約された。統計的に、p<0.05は有意と見なされた。
【0078】
統計的分析には、社会科学のための統計パッケージ(SPSS、バージョン2.0 Chicago,IL,USA)とオンラインMEDCALCソフトウェアが使用された。
【0079】
実験結果
【0080】
1.実験対象の臨床的特性
早産(PTB)のメタボロミクス的特性を確認して(探索グループ;TB、n=10;PTB、n=11;表2)、標的メタボロームを検証するために(検証グループ;TB、n=39;PTB、n=20;表3)、妊娠16週から40週5日の間の妊産婦から末梢血液を収集した(
図1)。
図1は、試験対象を選定する過程を示すフローチャート(flowchart)である。探索グループの早産産婦および満期産婦の臨床学的特徴を表2に示し、検証グループの早産産婦および満期産婦の臨床学的特徴を表3および表4に示した。
【0081】
サンプリングおよび分娩時の在胎期間(gestational age)等の臨床的要因は、探索グループ(discovery group)および検証グループ(validation group)共に、早産群と満期群間で有意に異なっていた(p<0.05、表3)。表3は、検証グループの対象者(subjects for validation)の臨床的特性を示したものである。白血球数、およびC-反応性タンパク質(C-reactive protein)は、検証グループで二つのグループ間に有意差があった(p<0.05)。妊娠3期妊産婦のアラニンアミノ基転移酵素(alanineaminotransferase;ALT)およびアスパラギン酸アミノ基転移酵素(aspartateaminotransferase;AST)のような肝機能酵素と、脂質プロファイル(lipid profiles)は、早産グループ(Preterm birth)と満期グループ(Term birth)間有意差がなかった(表4)。満期分娩産婦では、絨毛羊膜炎(chorioamnionitis)がなかったが、早産女性では2人の患者が確認された。
【0082】
【0083】
データは中央値(四分位数範囲;IQR)で表示されている。
*Mann Whitney test,p<0.05;
†χ2test,p<0.05
GAS:サンプリング時在胎期間(gestational age at sampling);
PregBMI:分娩時体質量指数(body mass index at delivery);
GAD:分娩時在胎期間(gestational age at delivery)。
【0084】
【0085】
連続変数のデータは、平均±SEで表示した。
*Student’s t-test,p<0.05;
†χ2test,p<0.05
TB:満期分娩(term birth);
PTB:早産(preterm birth);
GAS:サンプリング時在胎期間(gestational age at sampling);
PreBMI:妊娠前体質量指数(body mass index beforepregnancy);
PregBMI:分娩時体質量指数(body mass index at delivery);
WBC:白血球(white blood cell);
GAD:分娩時在胎期間(gestational age at delivery);
APGAR:アプガースコア(Appearance,Pulse,Grimace,Activity,Respiration,Apgarscore)
【0086】
【0087】
データは平均±SEで示した。
*Student’s t-test
【0088】
2.産婦血漿サンプルのメタボロームプロファイリング
早産に特異的なメタボロームおよび代謝経路を解明するために、LTQ-Orbitrap Velos Pro hybrid質量分析計と結合された超高性能液体クロマトグラフィー(ultra-high performance liquid chromatography;UPLC)を使用して非標的メタボロームプロファイリングを行った。満期(TB)および早産(PTB)妊産婦の血漿で代謝プロファイルの変異から変数のリストを得るために多変量分析を行った。部分最小二乗判別分析(partial least-squares discriminant analysis;PLS-DA)の点数プロットを適用して、PTBとTBグループを区別するのに使用することができるメタボロミクスパターンを識別した。
図2は、RPC陽性でTBと比較してPTBに対して明確に区分された範疇を示している(Q2=0.072;R2=0.085)。
図2に示されているように、PLS-DA点数プロット(score plots)は、早産産婦(赤色)と満期分娩産婦(青色)の血漿メタボロームが異なって分類された。1より大きい変数重要尺度(variable importance in projection;VIP)値および0.05より小さいp-値に基づいて、235個の可変イオン(235 variable ions)中15個のメタボロームが決定された。具体的なデータは表5に示す。
【0089】
【0090】
3.代謝経路と関連する早産
母体血漿のメタボローム変化が早産とどのように関連しているかをよりよく理解するために、代謝経路を分析した。経路分析(pathway impact analysis)は、包括的な代謝データ分析、視角化および解釈のために、KEGGデータベースとMetaboAnalyst 3.0に基づいて行われた。経路分析(impact pathway analysis)の結果は
図3に示した。
図3は、経路影響分析の散布図(scatter plot)を示したもので、y軸はp-valueを示す。x軸は経路位相分析(pathway topology analysis)を示し、y軸は経路濃縮分析(pathway enrichment analysis)を示す。レチノール(retinol)代謝、リノール酸(linoleic acid)代謝、D-アルギニン(D-arginine)およびD-オルニチン(D-ornithine)代謝を含む代謝経路が早産と関連があるが示された。
【0091】
4.標的血漿メタボロームの分析
レチノイド代謝に関与するメタボロームを標的として分析し、早産の根底にある病理学的メカニズムを調査した。レチノイドメタボロームは、LC-MS(TB、n=39;PTB、n=20)を使用して妊産婦の血漿で分析された。在胎期間を調整した時、PTBのレチノイドメタボロームがTBに比べて顕著に変化した(
図4)。
図4は、レチノイド代謝産物分析により、早産産婦の血漿試料で変化を示すレチノイドメタボロームを示した図面である(39TB、20PTB)。レチノール数値は、TBに比べてPTBで有意に減少したが、レチニルパルミテート、全トランス(AT)-レチナールおよび13-シス-レチノイン酸(13cis-RA)は有意に増加した(p<0.05)。
【0092】
5.早産に対する予測性能
早産の診断精度は、ROC(receiver operating characteristic)曲線のAUC(area under the curve)を適用して検証した。レチノイドメタボロームは、早産予測に対して有意な(p<0.01;表6、
図5)0.6以上の予測値を示した。
図5は、メタボロームに対するROC曲線分析を示した図面で、感度および特異度のROC曲線を利用した早産バイオマーカーの予測性能を示す。メタボローム中、AT-レチナール(AT-retinal)(AUC0.808、95%CI:0.683-0.933)および13cis-RA(AUC0.826、95%CI:0.723-0.930)は、レチノールメタボローム中向上した予測能を示した。早産危険群と正常群を区分するメタボローム濃度値の基準であるCut-off valueは、感度と特異度を加えた値中最も高い値のデータ値に相当するメタボローム濃度値で導き出された。
【0093】
【0094】
統計的分析のために、ROC(Receiver Operating Characteristics)曲線分析を行い、p<0.05は有意であるとみなされた。
AUC:曲線下面積(Area under the curve);
SENS:感度(Sensitivity);
SPEC:特異度(Specificity);
PPV:陽性予測度(Positive predictive value);
NPV:陰性予測度(Negative predictive value);
OR:オッズ比(Odd ratio);
AT:全トランス(all trans);
RA:レチノイン酸(Retinoic acid);
Cut-off value:臨界値
【0095】
結論
本発明は、血漿メタボロームプロファイルと代謝経路を確認して、早産の病因メカニズムを裏付け、妊産婦の早産予測のためのバイオマーカーを解明した。本発明によれば、早産群のメタボロームプロファイルが満期出産群に比べて有意に異なり、全トランス-レチナール(AT-retinal)および13-シス-レチノイン酸(13cis-RA)がレチノールメタボローム中早産の向上した予測を示した。
【0096】
本発明で、妊娠2期または分娩時母体血液を収集した。調整された在胎期間にもかかわらず、早産群の血漿メタボロームプロファイルは、満期分娩群と異なっており、レチノイドメタボロームの変化が早産と関連していた。
【0097】
血液中ビタミンAは、レチノール結合タンパク質であるRBPと1:1複合体で血漿に運搬される。本発明によれば、血漿レチノール数値は、TBに比べてPTBで減少したが、AT-レチナール(AT-retinal)と13cis-RAレベルと関連するRBP数値は、PTBで増加し、これらのメタボロームは正の相関があった。RBPは、レチノールだけでなくAT-レチナール(AT-retinal)および13cis-RAと結合することができ、Stra6受容体を介して標的組織に伝達されることができる。高いレベルのレチノイン酸(ATRAおよび13cis-RA)の特定代謝産物は、重要な器官発生および胚発生期間の間、遺伝子活性に影響を与えて催奇性(teratogenicity)を誘発し得る。
【0098】
まとめると、本発明は、TBおよびPTB母体血漿間のメタボロームプロファイルおよびターゲットメタボロームの変化を解明した。特に、全トランス-レチナール(AT-retinal)および13cis-レチノイン酸(13cis-RA)は、早産に対する予測精度が優れていた。
【国際調査報告】