(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】「モードS」及び他の通信アプリケーションのための定包絡線2位相シフトキーイング(CE-BPSK)変調
(51)【国際特許分類】
H04L 27/18 20060101AFI20240416BHJP
H03C 3/00 20060101ALI20240416BHJP
H03C 3/04 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H04L27/18 C
H03C3/00 A
H03C3/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565486
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 US2022024089
(87)【国際公開番号】W WO2022260749
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】アンドリューズ,マクドナルド ジェイ.
(57)【要約】
方法は、直交変調器(204)において同相(I)入力信号(310、310’)及び直交(Q)入力信号(312、312’)を取得すること(606)を含む。本方法はまた、直交変調器を使用して定包絡線2位相シフトキーイング(CE-BPSK)変調を行って(608~618)、変調出力信号を生成すること(332、332’、336)を含む。I及びQ入力信号は、変調出力信号の実質的に一定の振幅を維持しながら変調出力信号の周波数を変える相補的な遷移を含む。Q入力信号の遷移は、変調出力信号上にエンコードされるデータ(302)に関係付けられており、変調出力信号は、2つの位相を使用してデータを表し、2つの位相の間に位置する位相反転を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
直交変調器において同相(I)入力信号及び直交(Q)入力信号を取得することと、
前記直交変調器を使用して定包絡線2位相シフトキーイング(CE-BPSK)変調を行って、変調出力信号を生成することと、
を含み、
前記I及びQ入力信号は、前記変調出力信号の実質的に一定の振幅を維持しながら前記変調出力信号の周波数を変える相補的な遷移を含み、
前記Q入力信号の前記遷移は、前記変調出力信号上にエンコードされるデータに関係付けられており、前記変調出力信号は、2つの位相を使用して前記データを表し、前記2つの位相の間に位置する位相反転を有する、
方法。
【請求項2】
前記変調出力信号上にエンコードされる前記データを受け取ることと、
前記受け取ったデータに基づいて、実質的に一定の振幅のベクトル信号を表す前記I及びQ入力信号を生成することと、
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CE-BPSK変調を行うことは、
第1のローカル発振器(LO)信号と前記I入力信号とを混合して、第1の混合信号を生成することと、
第2のLO信号と前記Q入力信号とを混合して、第2の混合信号を生成することと、
前記第1の混合信号と前記第2の混合信号とを結合して、前記変調出力信号を生成することと、
を含み、
前記第2のLO信号は、前記第1のLO信号と位相が90°ずれている、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記Q入力信号における前記遷移は、余弦信号、平方根二乗余弦信号、ランプ信号、またはステップ信号の部分を含み、
前記I入力信号における前記遷移は、正弦信号、平方根二乗正弦信号、または台形信号の部分を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記I及びQ入力信号における前記相補的な遷移は、前記変調出力信号の前記実質的に一定の振幅を維持しながら、前記位相反転中に前記変調出力信号の前記位相を変えるために、前記変調出力信号の前記周波数を加速または減速させる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
狭帯域フィルターを使用して前記変調出力信号をフィルタリングして、フィルタリングされた変調出力信号を生成すること
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
飽和電力増幅器を使用して前記フィルタリングされた変調出力信号を増幅して、増幅されたフィルタリングされた変調出力信号を生成することと、
前記増幅されたフィルタリングされた変調出力信号の振幅を制限することと、
のうちの少なくとも一方をさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
装置であって、
同相(I)入力信号及び直交(Q)入力信号を取得するように構成された直交変調器であって、定包絡線2位相シフトキーイング(CE-BPSK)変調を行って変調出力信号を生成するように構成されている直交変調器、
を含み、
前記直交変調器は、前記変調出力信号の実質的に一定の振幅を維持しながら前記変調出力信号の周波数を変える相補的な遷移を有する前記I及びQ入力信号に基づいて、実質的に一定の包絡線を有する前記変調出力信号を生成するように構成されており、
前記Q入力信号の前記遷移は、前記変調出力信号上にエンコードされるデータに関係付けられており、前記変調出力信号は、2つの位相を使用して前記データを表し、前記2つの位相の間に位置する位相反転を有する、
装置。
【請求項9】
前記直交変調器は、前記変調出力信号上にエンコードされる前記データを受け取ってデジタル値を生成するように構成されたI-Qエンコーダであって、前記I及びQ入力信号は前記デジタル値に基づく、前記I-Qエンコーダを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記直交変調器は、
前記I入力信号と第1のローカル発振器(LO)信号とを混合して第1の混合信号を生成するように構成された第1の混合器と、
前記Q入力信号と第2のLO信号とを混合して第2の混合信号を生成するように構成された第2の混合器と、
前記第1及び第2の混合信号を使用して前記変調出力信号を生成するように構成された結合器と、
を含み、
前記第2のLO信号は前記第1のLO信号と位相が90°ずれている、
請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記Q入力信号における前記遷移は、余弦信号、平方根二乗余弦信号、ランプ信号、またはステップ信号の部分を含み、
前記I入力信号における前記遷移は、正弦信号、平方根二乗正弦信号、または台形信号の部分を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記I及びQ入力信号における前記相補的な遷移は、前記変調出力信号の前記実質的に一定の振幅を維持しながら、前記位相反転中に前記変調出力信号の前記位相を変えるために、前記変調出力信号の前記周波数を加速または減速させる、請求項8に記載の装置。
【請求項13】
前記直交変調器は、前記変調出力信号の前記実質的に一定の振幅を維持しながら、前記変調出力信号に、各位相反転中に複数の位相を通って進ませるように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項14】
前記直交変調器は、前記変調出力信号の前記実質的に一定の振幅を維持しながら、前記変調出力信号の前記位相に、各位相反転中に回転させるように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項15】
システムであって、
同相(I)入力信号及び直交(Q)入力信号を取得するように構成された直交変調器であって、定包絡線2位相シフトキーイング(CE-BPSK)変調を行って変調出力信号を生成するように構成されている直交変調器と、
前記変調出力信号をフィルタリングして、フィルタリングされた変調出力信号を生成するように構成されたフィルターと、
前記フィルタリングされた変調出力信号を増幅して、増幅されたフィルタリングされた変調出力信号を生成するように構成された飽和電力増幅器と、
を含み、
前記直交変調器は、前記変調出力信号の実質的に一定の振幅を維持しながら前記変調出力信号の周波数を変える相補的な遷移を有する前記I及びQ入力信号に基づいて、実質的に一定の包絡線を有する前記変調出力信号を生成するように構成されており、
前記Q入力信号の前記遷移は、前記変調出力信号上にエンコードされるデータに関係付けられており、前記変調出力信号は、2つの位相を使用して前記データを表し、前記2つの位相の間に位置する位相反転を有する、前記システム。
【請求項16】
前記直交変調器は、
前記変調出力信号上にエンコードされる前記データを受け取ってデジタル値を生成するように構成されたI-Qエンコーダであって、前記I及びQ入力信号は前記デジタル値に基づく、I-Qエンコーダと、
前記I入力信号と第1のローカル発振器(LO)信号とを混合して第1の混合信号を生成するように構成された第1の混合器と、
前記Q入力信号と第2のLO信号とを混合して第2の混合信号を生成するように構成された第2の混合器と、
前記第1及び第2の混合信号を使用して前記変調出力信号を生成するように構成された結合器と、
を含み、
前記第2のLO信号は前記第1のLO信号と位相が90°ずれている、
請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記Q入力信号における前記遷移は、余弦信号、平方根二乗余弦信号、ランプ信号、またはステップ信号の部分を含み、
前記I入力信号における前記遷移は、正弦信号、平方根二乗正弦信号、または台形信号の部分を含む、
請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記I及びQ入力信号における前記相補的な遷移は、前記変調出力信号の前記実質的に一定の振幅を維持しながら、前記位相反転中に前記変調出力信号の前記位相を変えるために、前記変調出力信号の前記周波数を加速または減速させる、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記直交変調器は、前記変調出力信号の前記実質的に一定の振幅を維持しながら、前記変調出力信号に、各位相反転中に複数の位相を通って進ませるように構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
前記直交変調器は、前記変調出力信号の前記実質的に一定の振幅を維持しながら、前記変調出力信号の前記位相に、各位相反転中に回転させるように構成されている、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は全般的に、変調システムに関する。より具体的には、本開示は、「モードS」及び他の通信アプリケーションのための定包絡線2位相シフトキーイング(CE-BPSK)変調に関する。
【背景技術】
【0002】
2位相シフトキーイング(バイナリ位相シフトキーイングとしても知られている)(BPSK)は、バイナリ値「0」及び「1」が、互いに180°離れた異なる搬送波位相によって表されるデジタル変調技術である。データ値が「0」から「1」に遷移すると(またはその逆)、変調データ信号はある位相から他の位相に(たとえば、0°から180°または180°から0°に)遷移する。この位相変化は、多くの場合に「位相反転」と言われる。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、「モードS」及び他の通信アプリケーションのための定包絡線2位相シフトキーイング(CE-BPSK)変調に関する。
【0004】
第1の実施形態では、方法は、直交変調器において同相(I)入力信号及び直交(Q)入力信号を取得することを含む。本方法はまた、直交変調器を使用してCE-BPSK変調を行って変調出力信号を生成することも含む。I及びQ入力信号は、変調出力信号の実質的に一定の振幅を維持しながら、変調出力信号の周波数を変える相補的な遷移を含む。Q入力信号の遷移は、変調出力信号上にエンコードされているデータに関係付けられ、変調出力信号は、2つの位相を使用してデータを表し、2つの位相の間に位置する位相反転を有する。
【0005】
第2の実施形態では、装置は、I入力信号及びQ入力信号を取得するように構成された直交変調器を含む。直交変調器はまた、CE-BPSK変調を行って、変調出力信号を生成するようにも構成されている。直交変調器は、変調出力信号の実質的に一定の振幅を維持しながら変調出力信号の周波数を変える相補的な遷移を有するI及びQ入力信号に基づいて、実質的に一定の包絡線を有する変調出力信号を生成するように構成されている。Q入力信号の遷移は、変調出力信号上にエンコードされているデータに関係付けられており、変調出力信号は、2つの位相を使用してデータを表し、2つの位相の間に位置する位相反転を有する。
【0006】
第3の実施形態では、システムは、I入力信号及びQ入力信号を取得するように構成された直交変調器を含む。直交変調器はまた、CE-BPSK変調を行って、変調出力信号を生成するようにも構成されている。システムはまた、変調出力信号をフィルタリングして、フィルタリングされた変調出力信号を生成するように構成されたフィルターも含む。システムはさらに、フィルタリングされた変調出力信号を増幅して、増幅されたフィルタリングされた変調出力信号を生成するように構成された飽和電力増幅器も含む。直交変調器は、変調出力信号の実質的に一定の振幅を維持しながら変調出力信号の周波数を変える相補的な遷移を有するI及びQ入力信号に基づいて、実質的に一定の包絡線を有する変調出力信号を生成するように構成されている。Q入力信号の遷移は、変調出力信号上にエンコードされているデータに関係付けられており、変調出力信号は、2つの位相を使用してデータを表し、2つの位相の間に位置する位相反転を有する。
【0007】
他の技術的特徴は、以下の図、説明、及び特許請求の範囲から、当業者には容易に明らかとなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示をより完全に理解するために、次に以下の説明を添付図面とともに参照する。
【0009】
【
図1A】本開示による定包絡線2位相シフトキーイング(CE-BPSK)変調をサポートするシステム例を例示する図である。
【
図1B】本開示による定包絡線2位相シフトキーイング(CE-BPSK)変調をサポートするシステム例を例示する図である。
【
図2】本開示によるCE-BPSK変調をサポートする送信経路例の一部を例示する図である。
【
図3A】本開示によるCE-BPSK変調器例を例示する図である。
【
図3B】本開示によるCE-BPSK変調器例を例示する図である。
【
図4】本開示によるCE-BPSK変調を使用して生成される波形例を例示する図である。
【
図5】本開示によるCE-BPSK変調中の位相反転に関係付けられるプロット例を例示する図である。
【
図6】本開示によるCE-BPSK変調に対する方法例を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下で説明する
図1~6、及び本開示の原理を説明するために使用される種々の実施形態は単に例としてであり、本開示の範囲を限定するものと決して解釈してはならない。当業者であれば分かるように、本開示の原理は、任意のタイプの好適に配列されたデバイスまたはシステムにおいて実現され得る。
【0011】
前述したように、2位相シフトキーイング(バイナリ位相シフトキーイングとしても知られている)(BPSK)は、バイナリ値「0」及び「1」が、互いに180°離れた異なる搬送波位相によって表されるデジタル変調技術である。データ値が「0」から「1」に遷移すると(またはその逆)、変調データ信号はある位相から他の位相に(たとえば、0°から180°または180°から0°に)遷移する。この位相変化は、多くの場合に「位相反転」と言われる。
【0012】
従来のBPSK変調は、ビット遷移時に無線周波数(RF)波形の位相を単純に反転する2位相変調を使用している。別の場合では、RF波形の位相を瞬時に変えるのではなくて、整形(shaping)された遷移(たとえば、ルートレイズドコサイン整形)を使用して、規定されたチャネル帯域幅内にスペクトルエネルギーを含むことを助ける。しかし、これらの場合の両方において、RF波形の振幅はゼロまで低下し、そして位相反転中に全振幅まで再び増加する。この結果、位相反転中にRF波形が「ドロップアウト」する可能性がある。
【0013】
BPSK変調は潜在的に、多くの用途で使用される可能性がある。たとえば、「モードS」の二次監視レーダー(SSR)が、航空機に質問して、たとえば、航空機を特定し、航空機から情報を取得するために開発されている。この用途例では、BPSK変調を使用して、質問されている異なる航空機に送信される信号に情報をエンコードし得る。たとえば、BPSK変調信号を使用して、質問モードを特定し、選択された航空機にアドレス指定して、選択された航空機とのデータ通信を行い得る。このプロセスの一部として、特定のパルス間隔及び位相反転を使用して、航空機からの応答を開始または抑制し得る。また、これらのタイプのレーダーは典型的に、その送信経路においてフィルター及び飽和電力増幅器(振幅制限器を組み込み得る)を採用して、航空機に送信される質問波形を生成する。別の用途例では、BPSK変調を使用して、物理的または無線データ通信リンクを介してあるステーションから他のステーションに送られるRF信号上にデータをエンコードし得る。この特定の例として、MIL-188-165B規格では、BPSK変調を平方根二乗余弦ベースバンドフィルタリング及び線形増幅とともに使用して、許容可能な変調品質及び許容可能なスペクトル閉じ込め性能を有する通信波形を生成し得ることを示している。
【0014】
従来のBPSK変調は典型的に、線形増幅器及び規定のベースバンドマッチドフィルタリングを有するシステムにおいて使用される。変調されたデータを送信するいくつかのシステム、たとえば、SSRシステムまたはデジタル無線機は、その非常に高い電力効率により飽和電力増幅器を使用し、指定された時間応答を有するフィルターを使用する。しかし、残念ながら、従来のBPSK変調における固有の振幅変動が、これらのタイプのシステムにおいて使用されるときに様々な望ましくない効果を引き起こし得る。たとえば、振幅変化が非線形(飽和)増幅器を通過すると、スペクトル再成長(広がり)、振幅変調-位相変調変換(コンステレーション歪み)、及び振幅整定時間効果(リンギング)のような望ましくないアーチファクトが生成される可能性がある。狭いフィルターを振幅変化が通過していると、振幅整定及びときには位相整定が生じる可能性がある。とりわけ、これらのアーチファクトは、振幅変調及び位相変調されたBPSK信号の非線形歪みによって生じるスペクトル成分を形成する可能性がある。特に、BPSK波形における位相反転は、スペクトル放出と増幅位相及び振幅整定性能との両方に深刻な悪影響を及ぼす可能性がある。
【0015】
本開示では、定包絡線BPSK(CE-BPSK)変調に対する技術を提供する。標準的なBPSK変調では、周波数が実質的に一定で振幅が変わる波形を生成するが、CE-BPSK変調では、振幅が実質的に一定(包絡線が実質的に一定)で、位相の加速及び/または減速によって周波数が変わる波形を生成する。以下に詳細に説明するように、変調波形を生成するためにI-Q直交変調器を使用して2位相変調が達成される。変調波形は、位相反転中に変調波形の位相が遷移しても実質的に一定の振幅を有し、このことは、変調波形の振幅を実質的に変えるというよりはむしろ実質的に一定の包絡線が維持されることを意味する。
【0016】
CE-BPSK変調の間に、I-Q直交変調器を使用して、0°から180°及び180°から0°の位相変調を、I及びQ信号を使用して生成する。変調波形に関係付けられる信号ベクトルを極平面上でゼロを通過させるのではなくて、変調波形の位相が0°から180°及びその逆に遷移するときに、変調波形の振幅が実質的に一定の電力レベルを維持するように、I及びQ信号の両方を制御する。いくつかの実施形態では、CE-BPSK変調波形において180°位相変化を行うために、直交変調器への同相(I)入力の電圧が半サイクル正弦波形に続くことができ、直交変調器への直交(Q)入力の電圧が半サイクル余弦波形に続くことができる。これにより、標準的なBPSKにおいて行われるような位相の「フリッピング」ではなく、CE-BPSK変調波形において位相の「回転」が可能になる。したがって、記載したCE-BPSK変調技術は、直交位相変調器(多くの場合に、QPSK、8-PSK、及び16-QAMなどの変調技術とともに使用される)を利用することができるが、直交位相変調器へのI及びQ入力を使用して、振幅が変化しながら原点を横断する(標準的なBPSKの場合のように)ことなく、実質的に一定の振幅(実質的に一定の包絡線)で極平面の辺りで信号ベクトルを操縦することができる。
【0017】
飽和電力増幅器を使用して、飽和を保ちながら変調波形を増幅することができ、結果として振幅回復時間を有さない。I-Q直交変調器と飽和電力増幅器との間のフィルター(通常は振幅時間応答を有する)は、(振幅遷移及び位相遷移の両方ではなく)位相遷移に起因して整定するだけでよく、振幅遷移及び位相遷移を低減することができる。振幅制限器(典型的に、変調波形振幅の印加及び除去に起因してターンオン時間または回復時間を有する)は、その「オン」及び制限モードの動作を維持することができる。なぜならば、変調波形は位相反転中に振幅のドロップアウトがないからである。
【0018】
このようにして、CE-BPSK変調は、標準的なBPSK変調と同じ情報エンコーディング能力及びデータレートを提供することができるが、標準的なBPSKにおける位相反転に関係付けられる振幅のドロップアウトは取り除かれる。このため、CE-BPSK変調は、飽和電力増幅器と、フィルター及び振幅制限器などの振幅に敏感なコンポーネントとともに使用することができる。また、CE-BPSKは、レーダー送信器、デジタル無線機、及び飽和電力増幅器を使用する他のデバイスまたはシステムとともに使用することができるため、この結果、デバイスまたはシステムは、より優れた振幅整定特性を達成し、位相反転時間要件を満たし、振幅のドロップアウトを取り除くことができ得る。
【0019】
以下の説明では、CE-BPSKは、飽和電力増幅器を備えたレーダーシステム及び通信システムにおいて使用されるものとして記載する。しかし、CE-BPSK変調は、正確な変調コンステレーションポイント及び実質的に一定の振幅の維持を助けるためにCE-BPSK変調を使用し得る任意の他の好適なデバイスまたはシステムにおいて使用してもよく、その結果、隣接する周波数への振幅歪み及びスペクトル再成長の可能性が減り得る。また、以下の説明では、「実質的に一定の」値(たとえば、「実質的に一定の振幅」または「実質的に一定の包絡線」)は、公称値の正確または約20%以内に留まる値を指す。したがって、「実質的に一定の振幅」または「実質的に一定の包絡線」は、正確または約±2dBを超えない変動を受ける振幅または包絡線を指す。ただし、他のパーセンテージの変動を、「実質的に一定」、たとえば20%未満の任意の整数または他のパーセンテージと考えてもよい。
【0020】
図1A及び1Bに、本開示によるCE-BPSK変調をサポートするシステム例を例示する。詳細には、
図1Aに、レーダー目的のためのCE-BPSK変調をサポートするシステム例100を例示し、
図1Bに、通信目的のためのCE-BPSK変調をサポートするシステム例150を例示する。なお、これらは単なる例であり、CE-BPSK変調は、任意の他の好適なシステムにおいて、また任意の他の好適な目的のために使用し得る。
【0021】
図1Aに示したように、システム100は、レーダーシステム102の周りの様々な航空機104を特定してそれらと相互に作用するために使用されるレーダーシステム102を含む。様々な無線通信106が、レーダーシステム102と航空機104との間で行われる。たとえば、レーダーシステム102は、すべての航空機104または特定の航空機104に対して質問信号を送信してもよく、航空機104のうちの1つ以上が、リクエストされた情報をレーダーシステム102に送信することによって応答してもよい。レーダーシステム102は、航空機104に向けて無線信号を送信し、航空機104から無線信号を受信するように構成された任意の好適な構造を含む。各航空機104には、任意の好適なタイプの航空機が含まれる。この例では、航空機104は商用飛行機という形態を取るが、航空機104はさらにまたは代替的に、軍用機、ドローン、もしくは他の無人航空機(UAV)、または空中を飛行できる他の物体を表してもよい。別の場合では、レーダーシステム102を使用して、地上車両もしくは他の地上ベースの物体、または軍艦もしくは他の水上艦艇を検出してもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、レーダーシステム102は、「モードS」タイプの動作をサポートする二次監視レーダーを表すことができる。「モードS」動作を使用して特定の航空機104に質問することを、たとえば特定の航空機104を特定し、特定の航空機104から情報を取得することによって行う。前述したように、「モードS」動作の一部は、特定のパルス間隔及び位相反転を使用して航空機104からの応答を開始または抑制するレーダーシステム102を含み得る。
【0023】
「モードS」動作または他のモードの動作において機能しているときに、レーダーシステム102に据えられる非常に厳密なタイミング要件が存在し得る。たとえば、無線通信106を形成する送信信号における位相反転中に、レーダーシステム102は、極めて高速な方法で位相反転を行うことが要求される場合がある。特別の例として、国際民間航空機関(ICAO)規格では、0°から180°への位相反転の間に、送信信号は10°の位相から170°の位相へと80ナノ秒以内に遷移すべきであると示している。これらのタイプの要件は、標準的なBPSK変調アプローチを使用して満たすことは難しいかまたは不可能であり得る。
【0024】
以下に詳細に説明するように、レーダーシステム102は、I-Q直交変調器を使用するCE-BPSK変調の使用をサポートする。ここで、直交変調器は、無線通信106における0°から180°及び180°から0°の位相変調を生成するために使用される。CE-BPSK変調の利点または利益により、様々な要件(たとえば、上述の80ナノ秒の要件)を、レーダーシステム102においてより簡単に満たすことができる。これは、CE-BPSK変調により、CE-BPSK変調波形における振幅のドロップアウトの存在が減るかまたはなくなるからである。
【0025】
図1Bに示したように、システム150は、通信リンク156を介して互いに通信するように構成された複数のデジタル無線機152、154を含む。この例では、デジタル無線機152、154は、無線通信リンク156を介して通信することができる無線通信機を表す。しかし、デジタル無線機152、154はさらにまたは代替的に、物理通信リンク156を介して通信するように構成してもよい。また、この例では、デジタル無線機152、154は双方向通信をサポートするものとして示しているが、一方向通信をデジタル無線機152、154の間で行ってもよい。加えて、2つのデジタル無線機152、154をここでは示しているが、システム150は、任意の好適な数のデジタル無線機を任意の好適な構成で含んでいてもよく、デジタル無線機は任意の好適な通信リンクを介して通信してもよい。デジタル無線機152、154は、通信リンク156を介して、データ-変調された無線信号の連続的なまたはパルス状のストリームを交換するなど、任意の好適な通信に関与してもよい。
【0026】
以下に詳細に説明するように、デジタル無線機152、154は、I-Q直交変調器を使用するCE-BPSK変調の使用をサポートする。ここで、直交変調器は、デジタル無線機152、154間の通信に使用される0°から180°及び180°から0°の位相変調を生成するために使用される。再び、CE-BPSK変調により、デジタル無線機152、154間で送信されるCE-BPSK変調波形における振幅のドロップアウトの存在が減るかまたはなくなる。
【0027】
図1A及び1Bは、CE-BPSK変調をサポートするシステム100、150の例を例示しているが、種々の変更を
図1A及び1Bに行ってもよい。たとえば、CE-BPSK変調を、BPSK変調が必要とされ得るかまたは望まれ得る任意の他の好適なシステムにおいて使用してもよい。CE-BPSK変調を使用するシステムは、航空機を特定してそれらと相互に作用するためにレーダー信号を使用してもよいし使用しなくてもよく、通信目的のためにデジタル無線機を使用してもよいし使用しなくてもよい。CE-BPSK変調を使用して、物理媒体または無線媒体を介して任意の好適なコンポーネントを含む任意の所望の通信をサポートすることができる。
【0028】
図2に、本開示によるCE-BPSK変調をサポートする送信経路例200の一部を例示する。送信経路200は、たとえば、
図1Aのレーダーシステム102内で使用して、レーダーシステム102と航空機104との間の無線通信106の少なくとも一部に使用される信号を生成してもよいし、または
図1Bのデジタル無線機152、154内で使用して、通信リンク156を介した通信に使用される信号を生成してもよい。ただし、送信経路200は、任意の他の好適なシステムにおいて、任意の他の好適な目的のために使用してもよい。
【0029】
図2に示したように、送信経路200は、CE-BPSK変調器204において入力データ信号202を受信する。入力データ信号202は、変調されるRF信号上にエンコードすべき情報を規定してもよい。たとえば、レーダーシステム102とともに使用するとき、入力データ信号202は、使用すべき質問モードの特定と、質問に応答する選択された航空機のアドレスとを含んでいてもよい。デジタル無線機152、154とともに使用するとき、入力データ信号202は、他のデジタル無線機に送信すべきデータを含んでいてもよい。入力データ信号202は、任意の好適な送信元(複数可)から受信してもよく、データを任意の好適な方法で表してもよい。CE-BPSK変調器204は、RF波形を変調して入力データ信号202からの情報をRF波形上にエンコードするためにCE-BPSK変調を行い、それによって変調波形を生成する。CE-BPSK変調器204は、以下で説明する技術を使用して、CE-BPSK変調を行うことができる。
【0030】
CE-BPSK変調器204によって生成された変調波形は、フィルター206に提供される。フィルター206は、変調波形をフィルタリングして、フィルタリングされた変調波形を生成する。フィルター206は、RF信号をフィルタリングするように構成された任意の好適な構造を含む。いくつかの実施形態では、フィルター206は、送信すべき変調されたデータを含む狭い範囲内の周波数を除いて、フィルタリングされた変調波形からのすべての周波数を実質的にブロックするように設計された狭帯域フィルターを表す。
【0031】
フィルタリングされた変調波形は電力増幅器(パワーアンプ)208に提供される。電力増幅器208は、フィルタリングされた変調波形を増幅して、増幅された変調波形を生成する。いくつかの実施形態では、電力増幅器208は飽和電力増幅器を表している。すなわち、電力増幅器は飽和モードで動作し、したがって実質的に一定の電力レベルを有する増幅された変調波形を生成することを意味する。電力増幅器208は、RF信号を増幅するように構成された任意の好適な構造を含む。この例における電力増幅器208は、振幅制限器210を含む。振幅制限器210は、増幅された変調波形の振幅を制限することによって、実質的に一定の振幅の出力変調信号212を生成する。たとえば、振幅制限器210を使用して、出力変調信号212が所与の用途に対して過剰に大きな振幅または包絡線を有するのを防止することを助けることができる。振幅制限器210は、RF信号の振幅を制限するか他の方法で制御して、実質的に一定のレベルを維持するように構成された任意の好適な構造を含む。これは、意図的に行ってもよいし(波形ダイナミクスを制限するなどして)または自然に行ってもよい(増幅器飽和を使用するなどして)。
【0032】
出力変調信号212は、用途に応じて任意の好適な方法で使用してもよい。たとえば、物理媒体を介して通信が行われる実施形態では、出力変調信号212は、1つ以上の導電体または他の伝送媒体を介して1つ以上の宛先に提供してもよい。無線通信が空中を介してまたは何もない空間を通して行われる実施形態では、出力変調信号212は、無線送信のために1つ以上のアンテナに提供してもよい。
【0033】
図2では、CE-BPSK変調をサポートする送信経路200の一例の一部を例示しているが、種々の変更を
図2に行ってもよい。たとえば、CE-BPSK変調は、BPSK変調が必要とされ得るかまたは望まれ得る任意の他の好適な送信経路において使用してもよい。また、CE-BPSK変調は、コンポーネント間の任意の所望の通信をサポートするために使用することができる。加えて、いくつかの送信経路は、たとえば、送信経路が複数の飽和電力増幅器、フィルター、振幅制限器、及び/または利得もしくはレベル制御を含むときには、ここで示した簡略化されたバージョンよりもはるかに複雑となる可能性がある。CE-BPSK変調を、これらの送信経路のいずれかにおいて使用して、データをRF波形上に変調してもよい。
【0034】
図3A及び3Bに、本開示によるCE-BPSK変調器例204を例示する。これらのCE-BPSK変調器204のそれぞれは、たとえば、
図1Aのレーダーシステム102または
図1Bのデジタル無線機152、154内の
図2の送信経路200において使用してもよい。ただし、CE-BPSK変調器204は、任意の他の好適なデバイスにおいて、任意の他の好適なシステムにおいて、及び任意の他の好適な目的のために使用してもよい。
【0035】
図3Aに示したように、CE-BPSK変調器204の一実施形態例は、CE-BPSK変調器204によって変調すべきデータを含むデジタル入力データ信号302を受信する。入力データ信号302は、たとえば、
図2の入力データ信号202を表すかまたはこれに基づいてもよい。実施形態に応じて、入力データ信号302は、変調すべき一定のデータ源を表してもよいし、または入力データ信号302は、変調すべきデータを断続的に含んでもよい。
【0036】
入力データ信号302はI-Qエンコーダ304に提供される。I-Qエンコーダ304は、入力データ信号302に含まれるデータをエンコードするために使用される。全般的に、I-Qエンコーダ304は、入力データ信号302に含まれるデータを同相(I)成分と直交(Q)成分とにエンコードする。ここで、正規化された成分振幅は、I(x)2+Q(x)2=1として規定することができる。I-Qエンコーダ304は、データをI及びQ成分にエンコードするように構成された任意の好適な構造を含む。たとえば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ、またはディスクリート回路コンポーネントである。
【0037】
この例では、I-Qエンコーダ304は、送信すべきデータのI及びQ成分を表すデジタル値を生成する。こうして、I-Qエンコーダ304からの出力は、デジタル/アナログ(D/A)変換器306及び308に提供される。これらは、I-Qエンコーダ304からのデジタル値をアナログ値に変換するように構成されている。ここでは図示しないが、I-Qエンコーダ304からの出力は、アナログ領域に変換する前に、ベースバンド、アンチエイリアス、または他のフィルタリングもしくは他の演算に供してもよい。各D/Aコンバータ306、308は、デジタル信号をアナログ信号に変換するように構成された任意の好適な構造を含む。
【0038】
D/Aコンバータ306はここでは、I入力信号310を生成し、D/Aコンバータ308はここでは、Q入力信号312を生成する。I及びQ入力信号310及び312は一括して、可変の位相を有する実質的に一定の振幅ベクトルを表す。すなわち、I及びQ入力信号310及び312は、RF波形上に変調すべき振幅及び位相情報を表す電圧を規定することを意味する。I及びQ入力信号310及び312は、I-Qエンコーダ304の出力に基づいている。I-Qエンコーダ304は、波形テーブル、数学的計算、または他の技術を使用して、I及びQ入力信号310及び312を生成するために使用されるデジタル値を生成することができる。I及びQ入力信号310及び312はそれぞれ、D/Aコンバータ306、308のアナログ出力によって形成される波形314及び316に関係付けられる。たとえば、I入力信号310は、IS1-ISx-ISXに対するデジタル値を、対応するアナログ値に変換することによって形成することができる。Q入力信号312は、QS1-QSx-QSXに対するデジタル値を、対応するアナログ値に変換することによって形成することができる。なお、入力信号310、312を生成するために使用されるデジタル値の数はここでは、単に説明のためである。
【0039】
CE-BPSK変調器204は、ローカル発振器(LO)信号318も受信する。LO信号318は、ローカル発振器によって生成される固定周波数RF信号を表す。LO信号318は位相シフタ320に提供される。位相シフタ320は、LO信号318を2つのLO信号322a~322bに分割する。LO信号322a~322bの少なくとも一方は、LO信号322a~322bが90°互いに位相がずれるように、他方に対して位相がシフトされる。位相シフタ320は、RF信号を分割してRF信号の少なくとも一部の位相をシフトして、RF信号の異なる部分が90°互いに位相がずれるように構成された任意の好適な構造を含む。
【0040】
第1の混合器324は、LO信号322aをI入力信号310と混合し、第2の混合器326は、LO信号322bをQ入力信号312と混合する。この結果、2つの混合信号328a~328bが生成される。これらは、等位相信号結合器330によって結合されて、CE-BPSK変調信号332を生成する。各混合器324、326は、RF信号を混合するように構成された任意の好適な構造を含む。信号結合器330は、I及びQ信号の単一の側波帯表現が直交変調器からのCE-BPSK変調信号332として形成されるように、RF信号を同相で結合するように構成された任意の好適な構造を含む。
【0041】
前述したように、I及びQ入力信号310及び312は、波形314及び316に関係付けられ、I及びQ入力信号310及び312に対する波形314及び316の部分例を
図3Aに示す。より具体的には、波形314及び316のこれらの部分は、どのようにI及びQ入力信号310及び312が位相反転中に0°から180°に変化し得るかを表す。同様の波形314及び316を、180°から0°への位相反転中に使用してもよいが、波形316は、180°から0°への位相反転中に逆にするかまたは反転(低から高への遷移)させることができる。同様に、波形314は、逆にするかまたは反転(低から高への遷移)させることができるか、または180°から0°への位相反転中に正ではなくて負の電圧を使用することができる。
【0042】
図3Aにおいて分かるように、波形316は、比較的高い値から比較的低い値に遷移する。これは、ビット遷移が起きていることを示しており、すなわち、CE-BPSK変調信号332上に変調すべきビット値が、「1」から「0」(またはその逆)に切り替わっていることを意味する。波形316は、高値と低値との間の任意の好適な遷移を使用して、エンコードされているデータビットを表し得る。場合によっては、波形316は、余弦信号の一部、平方根二乗余弦信号、ランプ信号、ステップ信号、または他の好適な信号を表し得る。
【0043】
波形316における遷移により、位相反転がCE-BPSK変調信号332において起きる。I入力信号310が位相反転中に一定に保持される場合、CE-BPSK変調信号332の振幅は、指定されたレベルからゼロまたは実質的にゼロ振幅まで減少し、そして指定されたレベルまで再び増加する(ただし、信号は逆位相である)。しかし、I入力信号310を一定に保つのではなく、I入力信号310は、ここでは、位相反転中に振幅を増加して次に減少させることによって変化する(ただし、反対のことも起こり得る)。波形314は、位相反転中に任意の好適な遷移を使用してもよい。場合によっては、波形314は、正弦信号の一部、平方根二乗正弦信号、台形信号、または他の好適な信号を表してもよい。
【0044】
位相反転中にI及びQ入力信号310及び312の両方をこのように変えることによって、CE-BPSK変調信号332の周波数(振幅ではなくて)を変えることができる。すなわち、I及びQ入力信号310及び312の波形314及び316は、CE-BPSK変調信号332の実質的に一定の振幅を維持しながらCE-BPSK変調信号332の周波数を変える相補的な遷移を含む。その結果、CE-BPSK変調信号332の振幅は、位相反転中に実質的に不変のままであることができるが、CE-BPSK変調信号332の周波数は、CE-BPSK変調信号332の位相を調整するために、増加(加速)または減少(減速)させることができる。その結果、このアプローチは、CE-BPSK変調信号332の周波数の変化を使用して、CE-BPSK変調信号332の振幅を実質的に一定に保ちながら、位相反転中に180°位相シフトを達成する。このようにして、CE-BPSK変調信号332は、位相反転中でも実質的に一定の包絡線を維持する。
【0045】
図3Bに示したように、CE-BPSK変調器204の別の実施形態例は、デジタル領域において完全に実現される直交変調器を含む。ここで、デジタル入力データ信号302はI/Qエンコーダ304’に提供される。I/Qエンコーダ304’は、NビットのI及びQデジタル値I
1-I
N及びQ
1-Q
Nを生成することができる。NビットI値はここでは、一連のNビットデジタル値I’
S1-I’
Sx-I’
SXを使用するI入力信号310’の波形314’の一部を規定し、NビットQ値はここでは、一連のNビットデジタル値Q’
S1-Q’
Sx-Q’
SXを使用するQ入力信号312’の波形316’の一部を規定する。デジタルLO信号318’は位相シフタ320’に提供される。位相シフタ320’は、(たとえば、デジタルLO信号318’をコピーして、コピーのうちの1つを遅延させることによって)90°互いに位相がずれている2つのデジタルLO信号322a’~322b’を生成する。I及びQ入力信号310’及び312’は、アップサンプリングされ、デジタル混合器324’及び326’によって、所望の出力中心周波数において、デジタルLO信号322a’~322b’によってデジタル的に乗算される。結果として得られたデジタル混合信号328a’~328b’を、デジタル加算器などの結合器330’によって結合して、デジタルCE-BPSK信号332’を生成する。デジタルCE-BPSK信号332’に含まれる異なるデジタル値S
1-S
Nを、D/Aコンバータ334に提供することができる。D/Aコンバータ334は、デジタル値をアナログCE-BPSK信号336に変換し得る。なお、波形314及び316における遷移を制御して実質的に一定の包絡線を有するCE-BPSK出力信号を生成するために前述で使用した同一または類似のプロセスを、
図3Bで使用して、波形314’及び316’における遷移を制御することができる。
【0046】
図3A及び3Bは、CE-BPSK変調器204の例を例示しているが、種々の変更を
図3A及び3Bに行ってもよい。たとえば、前述したように、I及びQ入力信号310、312、310’、312’の波形314、316、314’、316’は、
図3A及び3Bに示すものとは異なることができる。また、I及びQ入力信号310、312、310’、312’を、任意の他の好適な方法で生成してもよく、CE-BPSK変調信号332、332’、336を、任意の好適な宛先(複数可)に提供して、任意の好適な方法で使用してもよい。
【0047】
図4に、本開示によるCE-BPSK変調を使用して生成される波形例400を例示する。波形400は、たとえば、
図3Aまたは3BにおけるCE-BPSK変調器204によって生成されるCE-BPSK変調信号332または336を表してもよい。ただし、CE-BPSK変調器204は、任意の他の好適な波形を有するCE-BPSK変調信号を生成してもよい。
【0048】
図4に示したように、波形400は、複数の連続する時間間隔402a~402eの範囲にわたって生成される。時間間隔402a及び402eの間、波形400は0°の位相を有する。時間間隔402cの間、波形400は180°の位相を有する。したがって、波形400は、波形400の異なる位相に基づいて「0」及び「1」のデジタル値をエンコードすることができる。
【0049】
時間間隔402b及び402dは、波形400において位相反転が起こる時間を表す。この特定の例では、波形400の周波数は、時間間隔402b及び402dの間に増加するため、時間間隔402b及び402dは、波形400の周波数加速に関係付けられる。振動数の増加により、時間間隔402a、402cの間と時間間隔402c、402eの間で、波形400の位相が180°シフトする。なお、同様の結果が、時間間隔402b及び402dの間に波形400の周波数を減少させる波形400の周波数減速を使用して得られ得る。周波数の減少により、時間間隔402a、402cの間と時間間隔402c、402eの間で、波形400の位相が再び180°シフトする。ここで分かるように、振幅(波形400におけるピークの上部から谷の底部まで測定される)は、位相回転中でも実質的に一定のままである。
【0050】
図4は、CE-BPSK変調を使用して生成される波形400の一例を例示しているが、種々の変更を
図4に行ってもよい。たとえば、時間間隔402a~402eの長さは、単に説明のためであり、必要または所望に応じて変えることができる。また、波形400が0°位相及び180°位相を有する時間の長さは、波形400においてエンコードされている特定のデータに基づいて変わることができる。
【0051】
図5に、本開示によるCE-BPSK変調中の位相反転に関係付けられるプロット例を例示する。詳細には、
図5に、周波数プロット例500、振幅プロット例502、及びCE-BPSK変調波形に関係付けられる極性プロット例504を例示する。CE-BPSK変調波形は、
図3Aまたは3BにおけるCE-BPSK変調器204によって生成してもよく、
図4に示す形態を有してもよい。ただし、CE-BPSK変調器204は、任意の他の好適な波形を有するCE-BPSK変調信号を生成してもよい。
【0052】
図5に示したように、周波数プロット500は、3つの連続する時間間隔の間のCE-BPSK変調波形の周波数を例示する。これらの時間間隔は、第1のデータ値(論理「1」)に関係付けられる第1の時間間隔と、第2のデータ値(論理「0」)に関係付けられる第3の時間間隔とを含む。これらの時間間隔はまた、180°から0°への位相シフトをサポートするために位相反転を行うために周波数加速または減速が使用される第2の時間間隔を含む(ただし、論理「0」から論理「1」へ切り替えるときに逆の反転が行われ得る)。振幅プロット502は、CE-BPSK変調波形の振幅(したがって包絡線)が、位相反転の前、最中、後に実質的に一定のままであることを示す。
【0053】
極性プロット504では、2つの直交軸が規定されている。すなわち、CE-BPSK変調器204のQ入力に関係付けられる水平軸506、CE-BPSK変調器204のI入力に関係付けられる垂直軸508である。ベクトル510は、位相反転中の時間にわたるCE-BPSK変調波形の大きさ(振幅)と方向(位相)を表す。ベクトル510は、電圧V1-Vx-VXに関係づけられる。これは、アナログ値IS1-ISx-ISX及びQS1-QSx-QSX、またはデジタル値I’S1-I’Sx-I’SX及びQ’S1-Q’Sx-Q’SXによって規定される電圧を表す。極性プロット504において分かるように、複数のベクトル510は、CE-BPSK変調器204が、位相反転中に、0°~180°または180°~0°の複数の位相512または514を通って進むことができ、その間、ベクトル510の長さが実質的に一定のままであることを示す。このことは、CE-BPSK変調波形の振幅が位相反転中に実質的に一定のままであることを示す。しかしベクトル510は、位相反転中に方向がシフトするかまたは回転し、ここでは、0°から180°の位相シフトの場合には右から左(位相512)で起こり、180°から0°の位相シフトの場合には左から右(位相514)で起こる。
【0054】
従来のBPSKを使用すると、0°を指す水平ベクトルは、ゼロに達するまで時間とともに短くなり、そして180°を指しながら時間とともに延びる(逆位相フリップも起こり得る)。これは、BPSK信号の振幅がゼロまたは実質的にゼロまで低下して、前述した様々な問題を引き起こす可能性がある振幅のドロップアウトが形成されるからである。しかし、ここで示したように、ベクトル510は、実質的に一定のままであり、位相反転中に回転する。これは、CE-BPSK変調波形が、前述した振幅のドロップアウトに関係付けられる問題を回避することを示す。
【0055】
図5では、CE-BPSK変調中の位相反転に関係付けられるプロット500、502、504の例を例示しているが、種々の変更を
図5に行ってもよい。たとえば、ベクトル510の数は位相反転中に変わることができる。また、0°位相及び180°位相と論理「0」値及び「1」値との間の関連性は、必要または所望に応じて変わることができる。さらに、CE-BPSK変調波形の振幅は、ここでは実質的に一定のままであり得るが、回路製造及び動作における理想的でない挙動または他の不完全性に起因して、CE-BPSK変調波形の振幅に対する多少の変動が予想され得る。加えて、CE-BPSK変調波形自体の振幅は実質的に一定のままであり得るが、フィルター206及び/または飽和電力増幅器208は、フィルタリングされ増幅されたバージョンのCE-BPSK変調波形に何らかの非一定レベルを与え得る。
【0056】
図6に、本開示によるCE-BPSK変調に対する方法例600を例示する。説明を簡単にするために、方法600は、
図1Aのシステム100または
図1Bのシステム150において使用し得る
図2の送信経路200を使用して行われるものとして説明する。しかし、方法600は、任意の他の好適なデバイスを使用して、任意の他の好適なシステムにおいて行ってもよい。
【0057】
図6に示したように、ステップ602において入力データを受け取る。これには、たとえば、送信経路200が好適な送信元から入力データ信号202を受信することが含まれていてもよく、入力データ信号202は、RF信号上にエンコードすべきデータを特定する。ステップ604において、CE-BPSK変調を行って入力データをRF信号上に変調する。これには、たとえば、CE-BPSK変調器204が、エンコードされたデータを含む変調されたRF信号を生成することが含まれていてもよく、変調されたRF信号は、2つの位相を使用してデジタル値を表し、位相反転を含む。
【0058】
この例では、ステップ606において、CE-BPSK変調は、変調すべき第1のデータ値に基づいてI-Q直交変調器へのI及びQ入力信号を生成することを含む。これには、たとえば、I-Qエンコーダ304、304’が、第1のデータ値をエンコードするための所望値をI及びQ入力信号310、312、310’、312’に達成させる値を出力することが含まれていてもよい。ステップ608において、I-Q直交変調器を使用して第1のデータ値を表す第1の位相において変調信号を生成する。これには、たとえば、CE-BPSK変調器204が、あるデータ値に対して0°位相を有するかまたは他のデータ値に対して180°位相を有するCE-BPSK変調信号332、336を生成することが含まれていてもよい。ステップ610において、変調すべき次のデータ値を選択し、ステップ612において、入力データ信号202に基づいてビット遷移が存在するか否かを判定することなどにより、位相回転が必要であるか否かを判定する。必要でない場合は、ステップ614において、現在の位相を使用して変調信号の生成を継続し、プロセスはステップ610に戻って、エンコードすべき次のデータ値を選択する。ステップ612において位相回転が必要である場合には、ステップ616において、I-Q直交変調器のための整形されたI及びQ入力信号を使用して位相回転を行う。これには、たとえば、I-Qエンコーダ304、304’が、I及びQ入力信号310、312、310’、312’において相補的な遷移を生成するさらなる値を出力することが含まれていてもよい。相補的な遷移は、CE-BPSK変調信号332、336の実質的に一定の振幅を維持しながら、CE-BPSK変調信号332、336の周波数を変える。ステップ618において、新しい(逆)位相を使用して変調信号の生成を継続し、プロセスはステップ610に戻って、エンコードすべき次のデータ値を選択する。
【0059】
変調信号を、ステップ620においてフィルタリングし、ステップ622において増幅する。これには、たとえば、フィルター206が、CE-BPSK変調信号332、336をフィルタリングし、飽和電力増幅器208が、フィルタリングされたバージョンのCE-BPSK変調信号332、336を増幅することが含まれていてもよい。ステップ624において、増幅信号の振幅を制限することができる。これには、たとえば、電力増幅器208の振幅制限器210が、増幅されたバージョンのCE-BPSK変調信号332、336の振幅を制限することが含まれていてもよい。ステップ626において、増幅信号を1つ以上の宛先に送信することができる。これには、たとえば、増幅されたバージョンのCE-BPSK変調信号332、336を、出力変調信号212として、1つ以上の宛先に送信することが含まれていてもよい。
【0060】
図6では、CE-BPSK変調に対する方法600の一例を例示しているが、種々の変更を
図6に行ってもよい。たとえば、一連のステップとして示しているが、
図6における様々なステップを、重ねてもよいし、並列に行ってもよいし、異なる順番で行ってもよいし、または任意の回数行ってもよい。また、
図6における1つ以上のステップを、必要または所望に応じて、繰り返してもよし、省略してもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、この特許文献に記載した種々の機能は、コンピューター可読プログラムコードから形成されてコンピューター可読媒体において具体化されるコンピュータープログラムによって実装またはサポートされる。語句「コンピューター可読プログラムコード」は、ソースコード、オブジェクトコード、及び実行可能コードを含む任意のタイプのコンピューターコードを含む。語句「コンピューター可読媒体」は、コンピューターによってアクセス可能な任意のタイプの媒体、たとえば、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)、コンパクトディスク(CD)、デジタルビデオディスク(DVD)、または任意の他のタイプのメモリを含む。「非一時的」コンピューター可読媒体は、一時的な電気または他の信号を伝送する有線、無線、光、または他の通信リンクを除外する。非一時的コンピューター可読媒体は、データを永続的に記憶できる媒体及びデータを記憶して後で上書きできる媒体、たとえば、書き換え可能な光ディスクまたは消去可能な記憶デバイスを含む。
【0062】
この特許文献の全体を通して使用される特定の用語及び語句の定義を述べることは有利であり得る。用語「アプリケーション」及び「プログラム」は、好適なコンピューターコード(ソースコード、オブジェクトコード、または実行可能コードを含む)での実装に適応された、1つ以上のコンピュータープログラム、ソフトウェアコンポーネント、命令セット、手続き、機能、オブジェクト、クラス、インスタンス、関連データ、またはそれらの一部を参照する。用語「通信する」ならびにその派生語は、直接通信及び間接通信の両方を包含する。用語「含む(include)」及び「含む(comprise)」ならびにそれらの派生語は、限定することなく含めること(inclusion)を意味する。用語「または」は包含的であり、及び/またはを意味する。語句「関係付けられる」ならびにその派生語は、含む、含まれる、相互接続する、収容する、収容される、接続する、結合する、通信できる、協働する、インターリーブする、並置する、近接する、結び付けられる、有する、特性を有する、関係を有するなどを意味し得る。語句「少なくとも1つ」は、項目のリストと使用される場合、列挙された項目のうちの1つ以上の異なる組み合わせを使用してもよく、リストにおけるただ1つの項目が必要とされ得ることを意味する。たとえば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」は、A、B、C、A及びB、A及びC、B及びC、ならびにA及びB及びCの組み合わせのうちのいずれかを含む。
【0063】
本開示における説明は、任意の特定の要素、ステップ、または機能が、特許請求の範囲に含まれなければならない必須のまたは重大な要素であることを意味するものとして解釈すべきではない。特許された主題の範囲は、認められた特許請求の範囲によってのみ規定される。さらに、いずれの請求項も、添付の特許請求の範囲または請求項の要素のいずれに関して、正確な語句「のための手段(means for)」または「のためのステップ(step for)」が特定の請求項において明示的に使用されて、その後に機能を特定する特定の語句が続かない限り、米国特許法第112条(f)を行使するものではない。請求項内の(限定することなく)「メカニズム」、「モジュール」、「デバイス」、「ユニット」、「コンポーネント」、「要素」、「メンバー」、「装置」、「マシン」、「システム」、「プロセッサ」、または「コントローラ」などの用語を使用することは、請求項自体の特徴によってさらに変更または強化される当業者に知られた構造を参照することが理解及び意図されており、米国特許法第112条(f)を行使することは意図されていない。
【0064】
本開示は、ある実施形態及び全般的に関連する方法について説明してきたが、これらの実施形態及び方法の変更及び並べ換えが当業者には明らかである。したがって、実施形態例の上述の説明によって本開示が規定されることも制約されることもない。以下の特許請求の範囲によって規定される本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の変形、置換、及び変更も可能である。
【国際調査報告】