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特表2024-517694インターロイキン-1受容体アンタゴニストの組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】インターロイキン-1受容体アンタゴニストの組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/02 20060101AFI20240416BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240416BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240416BHJP
【FI】
A61K38/02
A61P43/00 111
A61K9/08
A61P11/00
A61P29/00
A61P9/12
A61K47/18
A61K47/02
A61K9/72
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565516
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 US2022025738
(87)【国際公開番号】W WO2022226177
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/178,062
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/244,807
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】324003440
【氏名又は名称】オンスピラ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、ケネス、ベイカー、ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】カドゥリチュ、ナニ、プトゥリ
(72)【発明者】
【氏名】リー、エルヴィン、サンファン
(72)【発明者】
【氏名】リング、スティーヴン、エー.
(72)【発明者】
【氏名】ハシュテット、ジェイン、イー.
(72)【発明者】
【氏名】パラシオス、ミッシェル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB22
4C076CC04
4C076CC15
4C076DD23
4C076DD26
4C076DD38
4C076DD42
4C076DD46
4C076DD51
4C076DD60
4C076DD67
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA03
4C084BA44
4C084MA16
4C084MA57
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZB11
(57)【要約】
タンパク質又はペプチドであるインターロイキン-1受容体アンタゴニスト、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト、緩衝剤、並びに、所望により、安定剤及び浸透圧調整剤からなる群からそれぞれ選択される1又は複数の追加の構成成分を含み、吸入による投与に適している医薬組成物が開示される。ヒト対象における下気道の炎症性障害を治療するための、前記医薬組成物を含むキット、及び前記医薬組成物を用いる方法もまた、開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質又はペプチドである、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト、
緩衝剤、並びに
所望により(optionally)、安定剤及び浸透圧調整剤からなる群からそれぞれ選択される1又は複数の追加の構成成分
を含み、
吸入による投与に適している、
医薬組成物。
【請求項2】
前記緩衝剤が、アミノ酸又はリン酸塩を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記緩衝剤が、正に帯電したアミノ酸を含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記正に帯電したアミノ酸が、リジン、アルギニン、及びヒスチジンからなる群から選択される、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記正に帯電したアミノ酸が、ヒスチジンである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記緩衝剤が、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン、リジン、アルギニン、グルタミン酸塩、ピロリン酸塩、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記緩衝剤が、ヒスチジン又はリン酸塩を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
約5mM~約50mMの濃度でヒスチジンを含む液体組成物である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記ヒスチジンの濃度が、約5mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、又は約45mMである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記ヒスチジンの濃度が、約10mMである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
約1mM~約50mM濃度でリン酸塩を含む液体組成物である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記リン酸塩の濃度が、約5mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、又は約45mMである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記リン酸塩の濃度が、約10mMである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
界面活性剤、キレート剤、糖、及びこれらの組合せからなる群から選択される安定剤をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記安定剤が、非還元糖である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記非還元糖が、トレハロース、スクロース、グリセロール、ソルビトール、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記非還元糖が、トレハロースである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
液体組成物であり、前記非還元糖の濃度が、約5%(w/v)を超える、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項19】
約100mM~約350mMの濃度でトレハロースを含む液体組成物である、請求項14~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記トレハロースの濃度が、約115mMである、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記安定剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムであるキレート剤である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項22】
約0.05mM~約1mMの濃度でエチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムを含む液体組成物である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の濃度が約0.53mMである、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記安定剤が、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(Brij(商標)35)、ソルビタントリオレエート(Span(商標)85)、及びこれらの組合せからなる群から選択される界面活性剤である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項25】
約0.001%(w/v)~約1%(w/v)の濃度でポリソルベート80を含む液体組成物である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記ポリソルベート80の濃度が、約0.05%(w/v)~約0.035%(w/v)である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
浸透圧調整剤をさらに含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記浸透圧調整剤が、塩化ナトリウム、マンニトール、タウリン、ヒドロキシプロリン、プロリン、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
約10mM~約50mMの濃度で塩化ナトリウムを含む液体組成物である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記塩化ナトリウムの濃度が、約20mMである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項31】
アミノ酸又はリン酸塩を含む緩衝剤、及び非還元糖を含む安定剤を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項32】
ヒスチジン又はリン酸塩を含む緩衝剤、及びトレハロースを含む安定剤を含む、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記組成物が、ヒスチジン、トレハロース、塩化ナトリウム、ポリソルベート80、及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムを含む、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
リン酸塩、トレハロース、塩化ナトリウム、ポリソルベート80、及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記液体組成物のpHが、約6~約8である、請求項1~34のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記液体組成物のpHが、約6.5である、請求項1~35のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記液体組成物の重量オスモル濃度が、約200mOsm/kg~400mOsm/kgである、請求項1~36のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記液体組成物の重量オスモル濃度が、約300mOsm/kgである、請求項1~37のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項39】
約1mg/mL~約30mg/mLの濃度で前記インターロイキン-1受容体アンタゴニストを含む液体組成物である、請求項1~37のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記インターロイキン-1受容体アンタゴニストの濃度が、約5mg/mLである、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記インターロイキン-1受容体アンタゴニストの濃度が、約20mg/mLである、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記インターロイキン-1受容体アンタゴニストが、アナキンラである、請求項1~41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項43】
請求項1~42のいずれか一項に記載の医薬組成物、及び患者の呼吸器への前記医薬組成物の直接投与に好適な送達装置を含む、キット。
【請求項44】
前記呼吸器が、下気道を含む、請求項43に記載のキット。
【請求項45】
前記送達装置が、吸入によって有効量の前記医薬組成物を送達するように構成される、請求項44に記載のキット。
【請求項46】
前記送達装置が、ネブライザー、吸入器、及びエアロゾル化装置からなる群から選択される、請求項43~45のいずれか一項に記載のキット。
【請求項47】
前記送達装置が、ジェットネブライザー、メッシュネブライザー、超音波ネブライザー、定量吸入器、及び乾燥粉末吸入器からなる群から選択される、請求項46に記載のキット。
【請求項48】
前記ネブライザーが、Aerogen Soloネブライザー及びAeroEclipse IIネブライザーからなる群から選択される、請求項47に記載のキット。
【請求項49】
前記ネブライザーが、Aerogen Soloである、請求項48に記載のキット。
【請求項50】
前記送達装置によって生成された前記液体組成物の液滴サイズが、直径約0.5μm~約10μmである、請求項44~49のいずれか一項に記載のキット。
【請求項51】
前記送達装置によって生成された前記液体組成物の液滴サイズが、直径約2.5μm~約4μmである、請求項50に記載のキット。
【請求項52】
前記送達装置によって生成された前記液体組成物の液滴サイズが、直径約3.5μmである、請求項51に記載のキット。
【請求項53】
前記呼吸器の炎症性障害を治療する方法であって、投与を必要とする患者に、請求項1~42のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項54】
前記呼吸器の炎症性障害が、下気道の炎症性障害である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記炎症性障害が、毒物吸入性肺傷害、肺ランゲルハンス細胞組織球症、非嚢胞性線維症性気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、反応性気道機能不全症候群(RADS)、閉塞性細気管支炎性器質化肺炎(BOOP)、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)、間質性肺疾患(ILD)、特発性肺線維症(IPF)、間質性肺炎、原発性移植片機能不全(PGD)、拘束性移植片症候群(RAS)、肺動脈高血圧症(PAH)、及び再灌流傷害からなる群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記毒物吸入性肺傷害が、1又は複数の化学兵器剤の吸入によって引き起こされる、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記化学兵器剤が、塩素ガス及び硫黄マスタードからなる群から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記毒物吸入性肺傷害が、塩素誘発性閉塞性細気管支炎症候群(BOS)及び硫黄マスタード誘発性閉塞性細気管支炎症候群(BOS)である、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記毒物吸入性肺傷害が、1又は複数の環境毒物及び/又は産業毒物の吸入によって引き起こされる、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記環境毒物及び産業毒物が、イソシアネート、窒素酸化物、モルホリン、硫酸、アンモニア、ホスゲン、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、フライアッシュ(fly ash)、繊維ガラス、シリカ、炭塵、アスベスト、シアン化水素、カドミウム、アクロレイン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アルミニウム、ベリリウム、鉄、綿、酸化スズ、ボーキサイト、水銀、二酸化硫黄、塩化亜鉛、ポリマーヒューム(polymer fume)、及び金属ヒューム(metal fume)からなる群から選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記毒物吸入性肺傷害が、塵肺症又は閉塞性細気管支炎である、請求項55に記載の方法。
【請求項62】
前記毒物吸入性肺傷害が、ベイピング関連肺傷害である、請求項55に記載の方法。
【請求項63】
前記ベイピング関連肺傷害が、ジアセチル、α-トコフェリルアセテート、2,3-ペンタンジオン、ニコチン、カルボニル、ベンゼン、トルエン、金属、菌体内毒素、及び真菌グルカンからなる群から選択される、1又は複数の薬剤の吸入によって引き起こされる、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
下気道の炎症性障害の治療を必要とするヒト対象における下気道の炎症性障害を治療するための方法であって、有効量のアナキンラをヒト対象の下気道へ直接投与することを含み、前記アナキンラの有効量が、1日当たり約0.1mg~約200mgであり、
前記炎症性障害が、毒物吸入性肺傷害、肺ランゲルハンス細胞組織球症、非嚢胞性線維症性気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、反応性気道機能不全症候群(RADS)、閉塞性細気管支炎性器質化肺炎(BOOP)、間質性肺疾患(ILD)、特発性肺線維症(IPF)、拘束性移植片症候群(RAS)、肺動脈高血圧症(PAH)、及び間質性肺炎からなる群から選択される、方法。
【請求項65】
前記毒物吸入性肺傷害が、1又は複数の化学兵器剤の吸入によって引き起こされる、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記化学兵器剤が、塩素ガス及び硫黄マスタードからなる群から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記毒物吸入性肺傷害が、1又は複数の環境毒物及び/又は産業毒物の吸入によって引き起こされる、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
前記環境毒物及び産業性毒物が、イソシアネート、窒素酸化物、モルホリン、硫酸、アンモニア、ホスゲン、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、フライアッシュ(fly ash)、繊維ガラス、シリカ、炭塵、アスベスト、シアン化水素、カドミウム、アクロレイン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アルミニウム、ベリリウム、鉄、綿、酸化スズ、ボーキサイト、水銀、二酸化硫黄、塩化亜鉛、ポリマーヒューム(polymer fume)、及び金属ヒューム(metal fume)からなる群から選択される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記毒物吸入性肺傷害が、塵肺症又は閉塞性細気管支炎である、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記毒物吸入性肺傷害が、ベイピング関連肺傷害である、請求項65に記載の方法。
【請求項71】
前記ベイピング関連肺傷害が、ジアセチル、α-トコフェリルアセテート、2,3-ペンタンジオン、ニコチン、カルボニル、ベンゼン、トルエン、金属、菌体内毒素、及び真菌グルカンからなる群から選択される、1又は複数の薬剤の吸入によって引き起こされる、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記炎症性障害が、肺ランゲルハンス細胞組織球症、非嚢胞性線維症性気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、反応性気道機能不全症候群(RADS)、閉塞性細気管支炎性器質化肺炎(BOOP)、拘束性移植片症候群(RAS)、肺動脈高血圧症(PAH)、間質性肺疾患(ILD)、特発性肺線維症(IPF)、及び間質性肺炎からなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項73】
前記炎症性障害が、肺の炎症性障害である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
アナキンラが、ネブライザー、吸入器、及び超小型エアロゾル化装置からなる群から選択される送達装置によって投与される、請求項64に記載の方法。
【請求項75】
前記送達装置が、メッシュネブライザーである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記メッシュネブライザーが、Aerogen Soloである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記メッシュネブライザーが、Aerogen Soloネブライザーである、請求項76に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年9月16日に出願された米国特許第63/244,807号、及び2021年4月22日に出願された米国特許出願第63/178,062号に対する35 U.S.C.§119(e)の利益及び優先権を主張し、これらのそれぞれの内容は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0002】
本明細書で引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。これらの刊行物の開示は、その全体が参照により本出願に取り込まれる。
【0003】
本特許開示は、著作権保護の対象となる資料を含む。著作権者は、米国特許商標庁の特許ファイル又は記録に記載されているので、特許文書又は特許開示のファクシミリ複製に異議を唱えないが、一方で、ありとあらゆる著作権を留保する。
【0004】
参照による取り込み
本明細書で引用される全ての文献は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0005】
技術分野
本発明は、概して、薬学の分野に関する。より詳細には、本発明は、様々な下気道障害を治療するための医薬品として有用な化合物及び組成物に関する。
【背景技術】
【0006】
閉塞性細気管支炎症候群
閉塞性細気管支炎症候群(BOS)とは、気流を妨げる小気道の閉塞を特徴とする、不可逆的な肺疾患である。BOSは、肺移植又は造血幹細胞移植後の最も一般的な合併症の一つであり、また、吸入された毒素及びガスへの曝露後にも起こり得る。BOS患者は、息切れ、日常活動への参加能力の低下、疲労、及び咳を経験する。BOSは、肺機能検査(FEV1)における低下で診断され、イメージングで(例えば、CT、X線)確認される。BOS疾患の進行は、同種免疫応答、自然免疫刺激、及び免疫細胞の浸潤の活性化を伴う。さらに、肺修復経路が異常に活性化されることで、線維芽細胞増殖、気道を取り囲む平滑筋の活性化、及び終末細気管支及び遠位細気管支内の管腔の狭窄が引き起こされる。BOSについて米国食品医薬品局(FDA)によって現在承認されている治療法はない。後期臨床開発段階にある他の薬物(例えば、吸入シクロスポリン)は、いくつかの欠点、失敗の履歴を有し、かつ最適な機構を有しない可能性がある(例えば、患者は、通常、既にカルシニューリン阻害剤を投与されている)。
【0007】
慢性閉塞性肺疾患
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、世界中における罹患率及び死亡率の主な原因である。全体的な健康状態及び死亡率は、気流閉塞の重症度と密接に関連している。COPDは炎症状態であり、好中球エラスターゼは長い間、この疾患の重要なメディエーターであると考えられてきた。多くの場合、対象は、現在の治療法に対して不適切に治療されているか、抵抗性であるか、又は難治性である。COPDは、末梢気道に影響を及ぼし、かつ呼気流の慢性的な不可逆的閉塞に付随する。この小気道の炎症性障害には、慢性気管支炎(杯細胞及び粘膜下腺過形成を伴う、粘液過剰分泌)、並びに線維症及び組織損傷に付随する気腫(気道実質の破壊)が含まれる。
【0008】
毒物吸入性肺傷害
毒物吸入性肺傷害は、下気道に運ばれる毒物、例えば化学物質及び刺激物によって引き起こされる肺への損傷が関与する。毒物吸入性肺傷害は、様々な程度の紅斑、炭素質沈着物、気管支漏、重度の炎症、多量の炭素質沈着物、及び/又は気管支閉塞をもたらし得る。最も重篤な症例では、粘膜の脱落、壊死、及び管腔内閉塞のエビデンスが存在する。毒物吸入性肺傷害は、吸入された毒物に応じて、広範囲の呼吸器障害に付随し得る。
【0009】
異なる溶解度及び粒径を有する毒物は、呼吸器系の異なる部分に対して異なる効果を有する。水溶性が高い吸入毒素は上気道に局在し得るが、一方で、水溶性が低い吸入毒素は下気道により頻繁に局在する傾向がある。より大きな粒径の毒素は上気道に局在する傾向があるが、一方で、より小さな粒径の毒素は下気道に侵入する。
【0010】
毒物吸入性肺傷害の現在の治療戦略は、関与する毒物の具体的な種類、曝露の期間、及び結果として生じる傷害の程度に応じて異なる。治療選択肢としては、皮膚移植片置換を伴う火傷組織の切除、常圧酸素の投与、機械的換気、蘇生、及び/又は様々な医薬品の投与が挙げられ得る。Dries et al., J. Trauma. Resuscitation. Emerg. Med., 2013, 21, 31-45を参照されたい。
【0011】
ジアセチル(Kreiss, K., et al., N. Engl. J. Med., 2002, 347, 330-338; Akpinar-Elci, M., et al., European Respiratory Journal, 2004, 24, 298-302)、アセトアルデヒド、及びホルムアルデヒド、並びに他の揮発性化合物の吸入は、閉塞性細気管支炎(BO)の原因として実証されている。より近年の米国では、これらの化合物への吸入曝露は、コーヒー加工施設及びポップコーン製造プラントなどの商業規模プラントで発生しており、ここでは、加工作業者は、BOに結合している大気中のジアセチル(2,3-ブタンジオン)、2,3-ペンタンジオン、及び/又は2,3-ヘキサンジオン化合物に曝露するリスクがあり得る。
【0012】
ベイピング関連肺傷害
ベイピング関連肺傷害とは、毒物吸入性肺傷害の一般的なカテゴリーの下で新たに認識された特定の症候群群である。既存の症例研究は、急性好酸球性肺炎、器質化肺炎、リポイド肺炎、びまん性肺胞損傷、びまん性肺胞出血、過敏性肺炎、及び/又は巨細胞性間質性肺炎を含む、間質性肺炎パターンの不均一な集合を実証している。特定の間質性肺炎パターンにかかわらず、ベイピング関連肺傷害の病態生理学としては、概して、炎症、気道の浮腫、及び急性肺損傷が挙げられる。Butt et al., N. Engl. J. Med., 2019, 318, 1780-1781を参照されたい。
【0013】
ベイピング製品において、いくつかの毒性化合物、すなわち、香味料(例えば、ジアセチル)、ニコチン、カルボニル、揮発性有機化合物(例えば、ベンゼン及びトルエン)、微量金属元素、α-トコフェリルアセテート、並びに菌体内毒素、及び真菌グルカンが同定されている。Christiani, D., N. Engl. J. Med., Online Editorial, September 6,2019;(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMe1912032#article_citing_articlesで入手可能)を参照されたい。現在、ベイピング関連肺傷害の治療の標準的なガイドラインはない。入院が認められた患者は、通常、抗生物質又はステロイドで治療されるが、多くは短期間の追跡期間で異常を示し続ける。Blagev et al., The Lancet, November 8, 2019;(https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(19)32679-0/fulltextよりオンラインで入手可能)を参照されたい。
【0014】
肺ランゲルハンス細胞組織球症(PLCH)
肺ランゲルハンス細胞組織球症(PLCH)とは、主に喫煙者に影響を及ぼすまれな疾患である。PLCHは、小気道におけるランゲルハンス(抗原提示細胞)及び他の炎症細胞の蓄積を特徴とし、結節性炎症性病変の形成をもたらす、特定のタイプの組織球性症候群である。より進行した段階は、嚢胞性肺破壊、気道の瘢痕化、及び肺血管リモデリングを特徴とする。PLCHは、呼吸不全又は悪性腫瘍に起因して、数年の期間での死亡をもたらすことが多い。現在の治療としてはコルチコステロイドが挙げられるが、これが有効な治療選択肢であるかどうかは不明のままである。Murakami et al., Cell Communication and Signaling, 2015, 13, 1-15を参照されたい。
【0015】
非嚢胞性線維症性気管支拡張症
気管支拡張症とは、再発性の咳、痰生成、及び再発性呼吸器感染症を特徴とする、不均一な慢性肺障害である。気管支拡張症の95%超が非嚢胞性線維症型である。死亡率は有意であり、およそ4年間の観察期間にわたって10~16%の範囲である。この疾患の病態としては、気道炎症及び慢性細菌定着をもたらす気管支の拡張が挙げられる。治療は、通常は、気道クリアランス、抗炎症剤、及び吸入抗生物質を含む、多峰性アプローチが関与する。一部の患者は、現在認識されている一切の治療アプローチに充分に応答せず、肺葉切除術又は区域切除術を必要とし得る。Chalmers et al., Molecular Immunology, 2013, 55, 27-34を参照されたい。
【0016】
びまん性汎細気管支炎
びまん性汎細気管支炎は、慢性副鼻腔気管支感染症、気管支周囲炎症、及び空気流の有意な減少を特徴とする。症状としては、湿性ラ音、喘鳴、湿性咳嗽、及び慢性副鼻腔炎が挙げられる。びまん性汎細気管支炎は、主に気管支拡張薬に対して抵抗性である。一番有望である治療は、細菌増殖を効果的に阻害し、かつ炎症を軽減するが、いくつかの有害な副作用をもたらし得るマクロライドの投与を伴う。Scambler et al., Immunology, 2018, 154, 563-573を参照されたい。
【0017】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)とは、進行性の動脈低酸素血症、呼吸困難、及び/又は息切れを伴う、急性呼吸不全の症候群である。ARDSの病因は、有意な炎症に加えて、タンパク質が豊富でありかつ好中球性である肺における肺水腫の蓄積を伴う。ARDSは生命を脅かすものであり、肺不全を予防するために即時の気管内挿管及び陽圧換気を必要とする。グルココルチコイド、界面活性剤、吸入一酸化窒素、酸化防止剤、プロテアーゼ阻害剤、及び種々の他の抗炎症剤の使用など、換気と併用した薬理学的治療の潜在的な役割が存在する。しかしながら、ARDSの現在利用可能な治療選択肢は、充分に有効であることは示されていない。Park et al., Am. J.Respir. Crit. Care. Med., 2001, 164, 1896-1903を参照されたい。
【0018】
反応性気道機能不全症候群(RADS)
反応性気道機能不全症候群(RADS)とは、吸入刺激物への単一の急性曝露後に突然発症する、持続性喘息様障害である。RADSに関連する化学刺激物質としては、塩素、トルエンジイソシアネート(TDI)、窒素酸化物、モルホリン、硫酸、アンモニア、及びホスゲンが挙げられ得る。コルチコステロイド及び気管支拡張薬を含む従来の喘息治療をRADSで使用することができる。しかしながら、現在のところ、持続性RADSを有する患者に有効な治療選択肢はない。Shakeri et al., Occupational Med., 2008, 58, 205-211を参照されたい。
【0019】
閉塞性細気管支炎性器質化肺炎(BOOP)
閉塞性細気管支炎性器質化肺炎(BOOP)とは、亜急性又は慢性の呼吸器疾患によって総体的に特徴付けられる症候群である。BOOP患者は、持続性の非湿性咳嗽、労作時呼吸困難、低度の発熱、及び/又は倦怠感を示し得る。病理学的に、BOOPを有する患者は、様々な程度の炎症を伴って、細気管支管腔、肺胞管、及び肺胞に肉芽組織を有し得る。BOOPの現在の治療選択肢は限られており、通常、経口コルチコステロイド療法が関与する。標準的な治療に応答しない少数の患者は、肺移植を必要とする場合がある。Al-Ghanem et al., Ann. Thorac. Med. ,2008, 3, 67-75を参照されたい。
【0020】
肺動脈高血圧症(PAH)
肺動脈高血圧症(PAH)とは、右心不全を引き起こし、治療しなければ最終的に死に至る慢性及び進行性の疾患である。右心不全は、体液貯留、肝臓鬱血、腹水、及び末梢浮腫を引き起こし得る。平滑筋及び内皮細胞の増殖を介した小肺動脈のリモデリングは、PAHの病因において主な役割を果たす可能性がある。この異常な増殖としては、中膜及び内膜の肥大、並びに肺動脈分岐部の領域における内皮細胞からの腫瘍様病変(叢状病変)の形成が挙げられる。
【0021】
拘束性移植片症候群(RAS)
拘束性移植片症候群(RAS)とは、肺移植後の慢性肺移植片機能不全(CLAD)の一形態である。RASの主な特徴には、肺機能の持続的かつ説明できない低下、及び持続性の実質浸潤物が含まれる。RASの診断後の生存期間中央値は6ヶ月~18ヶ月であり、CLADの他の形態よりも有意に短い。BOSに使用される治療法は、通常、疾患進行を停止させるのに無効であるため、治療選択肢は限られている。
【0022】
間質性肺疾患(ILD)
間質性肺疾患(ILD)とは、進行性に肺の瘢痕化/線維症を引き起こす肺組織の炎症を特徴とする慢性肺障害を指すために使用される、包括的な用語である。線維症は、肺の硬直を徐々に引き起こすことで、空気嚢が酸素を捕捉して血流へ運ぶ能力を低下させ、最終的に呼吸する能力の永久的な喪失を引き起こす可能性がある。
【0023】
特発性肺線維症(IPF)
特発性肺線維症(IPF)とは、治療選択肢がほとんどなく、疾患の進行を遅らせるだけの、原因不明の加齢性慢性進行性肺疾患である。IPFは、主に肺基底部に影響を及ぼすX線写真上明らかな間質性浸潤、並びに進行性の呼吸困難及び肺機能の悪化を特徴とする。
【0024】
IL-1Ra
アナキンラとは、大腸菌(E.coli.)で発現される17.2kDaのタンパク質である、組換えヒトインターロイキン1受容体アンタゴニスト(rhIL-1Ra)である。これは、N末端に追加のメチオニンアミノ酸を有するヒトIL-1Raタンパク質と配列が同一である。このタンパク質は、IL-1線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーに属し、炎症を調節する天然に存在するIL-1遮断薬である。このタンパク質構造は、11本の逆平行β鎖からなるβトレフォイルとして知られており、そのうち6本は、別の6本のβ鎖によって末端が閉じられたβバレルの形態で配置されている。Murzin, A. G., Lesk, A. M., and Chothia, C. (1992) beta-Trefoil fold. Patterns of structure and sequence in the Kunitz inhibitors interleukins-1 beta and 1 alpha and fibroblast growth factors, J. Mol. Biol. 223, 531-543; Vigers ,G. P. A., Caffes, P., Evans, R. J., Thompson, R. C., Eisenberg, S. P., and Brandhuber, B. J. (1994) X-ray structure of interleukin-1 receptor antagonist at 2.0-A resolution, J. Biol. Chem. 269, 12874-12879; Stockman, B. J., Scahill, T. A., Strakalaitis, N. A., Brunner, D. P., Yem, A. W., and Deibel, M. R., Jr. (1994) Solution structure of human interleukin-1 receptor antagonist protein, FEBS Lett. 349, 79-83; Schreuder, H. A., Rondeau, J. M., Tardif, C., Soffientini, A., Sarubbi, E., Akeson, A., Bowlin, T. L., Yanofsky, S., and Barrett, R. W. (1995). Refined crystal structure of the interleukin-1 receptor antagonist. Presence of a disulfide link and a cis-proline, Eur. J. Biochem. 227, 838-847を参照されたい。主なβ鎖二次構造を有するタンパク質は、一般に凝集しやすい。タンパク質内のIL-1Ra正電荷部位との相互作用は、その自己会合経路との干渉を介してタンパク質凝集を制御/抑制することができることが実証されている。研究者らは、クエン酸塩がリン酸塩よりも低い凝集速度を有することを示した。Raibekas, A. A.; Bures, E. J.; Siska, C. C.; Kohno, T.; Latypov, R. F.; Kerwin, B. A. Anion Binding and Controlled Aggregation of Human Interleukin-1 Receptor Antagonist. Biochemistry 2005, 44(29), 9871-9879を参照されたい。
【0025】
rhIL-1Raの一般名はアナキンラ(anakinra)であり、皮下(SC)製剤は、中程度から重度の活動性関節リウマチの徴候及び症状の軽減を含む適応症について、FDAによって承認されている(Kineret(商標))。rhIL-1Raを用いる呼吸器適応症に対するFDA承認の治療はなく、吸入送達のためのrhIL-1RaのFDA承認の製剤はない。したがって、種々の下気道障害を治療するための安全で効果的なrhIL-1Raの吸入(例えば、噴霧、乾燥粉末を介した送達等)製剤を開発することが依然として大いに必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0026】
ある態様では、本明細書には、タンパク質又はペプチドである、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト、緩衝剤、並びに所望により(optionally)、安定剤及び浸透圧調整剤からなる群からそれぞれ選択される1又は複数の追加の構成成分を含み、吸入による投与に適している、医薬組成物が記載される。
【0027】
いくつかの実施形態では、緩衝剤は、アミノ酸又はリン酸塩を含む。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、正に帯電したアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、正に帯電したアミノ酸は、リジン、アルギニン、及びヒスチジンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、正に帯電したアミノ酸は、ヒスチジンである。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン、リジン、アルギニン、グルタミン酸塩、ピロリン酸塩、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、及びこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、ヒスチジン又はリン酸塩を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約5mM~約50mMの濃度でヒスチジンを含む液体組成物である。いくつかの実施形態では、ヒスチジンの濃度は、約5mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、又は約45mMである。いくつかの実施形態では、ヒスチジンの濃度は、約10mMである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1mM~約50mMの濃度でリン酸塩を含む液体組成物である。いくつかの実施形態では、リン酸塩の濃度は、約5mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、又は約45mMである。いくつかの実施形態では、リン酸塩の濃度は、約10mMである。
【0028】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、界面活性剤、キレート剤、糖、及びこれらの組合せからなる群から選択される安定剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、安定剤は、非還元糖である。いくつかの実施形態では、非還元糖は、トレハロース、スクロース、グリセロール、ソルビトール、及びこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、非還元糖は、トレハロースである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は液体組成物であり、非還元糖の濃度は、約5%(w/v)を超える。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約100mM~約350mMの濃度でトレハロースを含む液体組成物である。いくつかの実施形態では、トレハロースの濃度は、約115mMである。いくつかの実施形態では、安定剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムであるキレート剤である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.05mM~約1mMの濃度でエチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムを含む液体組成物である。いくつかの実施形態では、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の濃度は、約0.53mMである。いくつかの実施形態では、安定剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(Brij(商標)35)、ソルビタントリオレエート(Span(商標)85)、及びこれらの組合せからなる群から選択される界面活性剤である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.001%(w/v)~約1%(w/v)の濃度でポリソルベート80を含む液体組成物である。いくつかの実施形態では、ポリソルベート80の濃度は、約0.05%(w/v)~約0.035%(w/v)である。
【0029】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、浸透圧調整剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、浸透圧調整剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、タウリン、ヒドロキシプロリン、プロリン、及びこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約10mM~約50mMの濃度で塩化ナトリウムを含む液体組成物である。いくつかの実施形態では、塩化ナトリウムの濃度は、約20mMである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、アミノ酸又はリン酸塩を含む緩衝剤、及び非還元糖を含む安定剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、ヒスチジン又はリン酸塩を含む緩衝剤、及びトレハロースを含む安定剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、ヒスチジン、トレハロース、塩化ナトリウム、ポリソルベート80、及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、リン酸塩、トレハロース、塩化ナトリウム、ポリソルベート80、及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、液体組成物のpHは、約6~約8である。いくつかの実施形態では、液体組成物のpHは、約6.5である。いくつかの実施形態では、液体組成物の重量オスモル濃度は、約200mOsm/kg~約400mOsm/kgである。いくつかの実施形態では、液体組成物の重量オスモル濃度は、約300mOsm/kgである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1mg/mL~約30mg/mLの濃度でインターロイキン-1受容体アンタゴニストを含む液体組成物である。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体アンタゴニストの濃度は、約5mg/mLである。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体アンタゴニストの濃度は、約20mg/mLである。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体アンタゴニストは、アナキンラである。
【0030】
別の態様では、本明細書には、先行請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物、及び患者の呼吸器への医薬組成物の直接投与に好適な送達装置を含む、キットが記載される。
【0031】
いくつかの実施形態では、呼吸器は、下気道を含む。いくつかの実施形態では、送達装置は、吸入によって有効量の医薬組成物を送達するように構成される。いくつかの実施形態では、送達装置は、ネブライザー、吸入器、及びエアロゾル化装置からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、送達装置は、ジェットネブライザー、メッシュネブライザー、超音波ネブライザー、定量吸入器、及び乾燥粉末吸入器からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ネブライザーは、Aerogen Soloネブライザー及びAeroEclipse IIネブライザーからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ネブライザーは、Aerogen Soloである。いくつかの実施形態では、送達装置によって生成された液体組成物の液滴サイズは、直径約0.5μm~約10μmである。いくつかの実施形態では、送達装置によって生成された液体組成物は、直径約2.5μm~約4μmである。いくつかの実施形態では、送達装置によって生成された液体組成物の液滴サイズは、直径約3.5μmである。
【0032】
別の態様では、本明細書には、呼吸器の炎症性障害を治療する方法であって、投与を必要とする患者へ、本明細書に記載の実施形態のいずれかの医薬組成物を投与することを含む方法が記載される。
【0033】
いくつかの実施形態では、呼吸器の炎症性障害は、下気道の炎症性障害である。いくつかの実施形態では、炎症性障害は、毒物吸入性肺傷害、肺ランゲルハンス細胞組織球症、非嚢胞性線維症性気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、反応性気道機能不全症候群(RADS)、閉塞性細気管支炎性器質化肺炎(BOOP)、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)、間質性肺疾患(ILD)、特発性肺線維症(IPF)、間質性肺炎、原発性移植片機能不全(PGD)、拘束性移植片症候群(RAS)、肺動脈高血圧症(PAH)、及び再灌流傷害からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、1又は複数の化学兵器剤の吸入によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、化学兵器剤は、塩素ガス及び硫黄マスタードからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、塩素誘発性閉塞性細気管支炎症候群(BOS)及び硫黄マスタード誘発性閉塞性細気管支炎症候群(BOS)である。いくつかの実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、1又は複数の環境毒物及び/又は産業毒物の吸入によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、環境毒物及び産業毒物は、イソシアネート、窒素酸化物、モルホリン、硫酸、アンモニア、ホスゲン、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、フライアッシュ(fly ash)、繊維ガラス、シリカ、炭塵、アスベスト、シアン化水素、カドミウム、アクロレイン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アルミニウム、ベリリウム、鉄、綿、酸化スズ、ボーキサイト、水銀、二酸化硫黄、塩化亜鉛、ポリマーヒューム(polymer fume)、及び金属ヒューム(metal fume)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、塵肺症又は閉塞性細気管支炎である。いくつかの実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、ベイピング関連肺傷害である。いくつかの実施形態では、ベイピング関連肺傷害は、ジアセチル、α-トコフェリルアセテート、2,3-ペンタンジオン、ニコチン、カルボニル、ベンゼン、トルエン、金属、菌体内毒素、及び真菌グルカンからなる群から選択される、1又は複数の薬剤の吸入によって引き起こされる。
【0034】
別の態様では、本明細書には、下気道の炎症性障害の治療を必要とするヒト対象における下気道の炎症性障害を治療する方法が記載され、この方法は、有効量のアナキンラをヒト対象の下気道へ直接投与することを含み、アナキンラの有効量が、1日当たり約0.1mg~約200mgであり、炎症性障害が、毒物吸入性肺傷害、肺ランゲルハンス細胞組織球症、非嚢胞性線維症性気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、反応性気道機能不全症候群(RADS)、閉塞性細気管支炎性器質化肺炎(BOOP)、間質性肺疾患(ILD)、特発性肺線維症(IPF)、拘束性移植片症候群(RAS)、肺動脈高血圧症(PAH)、及び間質性肺炎からなる群から選択される。
【0035】
いくつかの実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、1又は複数の化学兵器剤の吸入によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、化学兵器剤は、塩素ガス及び硫黄マスタードからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、1又は複数の環境毒物及び/又は産業毒物の吸入によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、環境毒物及び産業毒物は、イソシアネート、窒素酸化物、モルホリン、硫酸、アンモニア、ホスゲン、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、フライアッシュ(fly ash)、繊維ガラス、シリカ、炭塵、アスベスト、シアン化水素、カドミウム、アクロレイン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アルミニウム、ベリリウム、鉄、綿、酸化スズ、ボーキサイト、水銀、二酸化硫黄、塩化亜鉛、ポリマーヒューム(polymer fume)、及び金属ヒューム(metal fume)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、塵肺症又は閉塞性細気管支炎である。いくつかの実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、ベイピング関連肺傷害である。いくつかの実施形態では、ベイピング関連肺傷害は、ジアセチル、α-トコフェリルアセテート、2,3-ペンタンジオン、ニコチン、カルボニル、ベンゼン、トルエン、金属、菌体内毒素、及び真菌グルカンからなる群から選択される、1又は複数の薬剤の吸入によって引き起こされる。
【0036】
いくつかの実施形態では、炎症性障害は、肺ランゲルハンス細胞組織球症、非嚢胞性線維症性気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、反応性気道機能不全症候群(RADS)、閉塞性細気管支炎性器質化肺炎(BOOP)、拘束性移植片症候群(RAS)、肺動脈高血圧症(PAH)、間質性肺疾患(ILD)、特発性肺線維症(IPF)、及び間質性肺炎からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、炎症性障害は、肺の炎症性障害である。いくつかの実施形態では、アナキンラは、ネブライザー、吸入器、及び超小型エアロゾル化装置からなる群から選択される送達装置によって投与される。いくつかの実施形態では、送達装置は、メッシュネブライザーである。いくつかの実施形態では、メッシュネブライザーは、Aerogen Soloである。いくつかの実施形態では、メッシュネブライザーは、Aerogen Soloネブライザーである。
【0037】
本明細書に開示された実施形態のいずれかは、本明細書に開示された他の任意の実施形態と適切に組み合わせられてもよい。本明細書に開示される実施形態のいずれかと本明細書に開示される任意の他の実施形態との組合せが、明示的に企図される。具体的には、ある特定の実施形態からの1又は複数の非薬効成分(excipient)の選択は、他の実施形態からの1又は複数の他の特定の非薬効成分の選択と適切に組み合わせられ得る。そのような組合せは、本明細書に記載の出願の任意の1若しくは複数の実施形態、又は本明細書に記載の任意の製剤若しくは組成物で行われ得る。
【0038】
以下の図は、本発明の例示的な実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】IL-1シグナル伝達によって媒介される自然免疫応答及び適応免疫応答の両方を標的とする、rhIL-1Raの作用機序を示す。
図2】噴霧のためのALTA-2530溶液の調製手順を示す。
図3】噴霧用のALTA-2530溶液を作製するための予備製剤試験に使用される、段階的アプローチを示す。
図4】3つの異なる濃度のアナキンラ(2.5mg/mL、20mg/mL、及び50mg/mL)での、様々な対照製剤及びALTA-2530製剤の粘度結果を示すグラフである。
図5】3つの異なる濃度のアナキンラ(2.5mg/mL、20mg/mL、及び50mg/mL)での、様々な対照製剤及びALTA-2530製剤についてのX50(又は、MMADの推定値としてのMMD)を示すプロットである。
図6】3つの異なる濃度のアナキンラ(2.5mg/mL、20mg/mL、及び50mg/mL)での、様々な対照製剤及びALTA-2530製剤についての、粘度によるX50(又は、MMADの推定値としてのMMD)を示すプロットである。
図7】様々な対照製剤及びALTA-2530製剤についてのX50(又は、MMADの推定値としてのMMD)を示すプロットである。
図8】様々な対照及びALTA-2530製剤の噴霧サイクル数にわたる液体排出速度(LOR、g/分)を示すプロットである。
図9】様々な対照製剤及びALTA-2530製剤の噴霧サイクル数にわたる総タンパク質(μg)排出量を示すプロットである。
図10A】様々な対照製剤及びALTA-2530製剤の、10分間、20分間、及び30分間での代用方法(振盪)を用いた試験中における、光強度(%)によるタンパク質直径(nm)のプロットを示す。
図10B】様々な対照製剤及びALTA-2530製剤の、10分間、20分間、及び30分間での代用方法(振盪)を用いた試験中における、光強度(%)によるタンパク質直径(nm)のプロットを示す。
図10C】様々な対照製剤及びALTA-2530製剤の、10分間、20分間、及び30分間での代用方法(振盪)を用いた試験中における、光強度(%)によるタンパク質直径(nm)のプロットを示す。
図10D】様々な対照製剤及びALTA-2530製剤の、10分間、20分間、及び30分間での代用方法(振盪)を用いた試験中における、光強度(%)によるタンパク質直径(nm)のプロットを示す。
図10E】様々な対照製剤及びALTA-2530製剤の、10分間、20分間、及び30分間での代用方法(振盪)を用いた試験中における、光強度(%)によるタンパク質直径(nm)のプロットを示す。
図10F】様々な対照製剤及びALTA-2530製剤の、10分間、20分間、及び30分間での代用方法(振盪)を用いた試験中における、光強度(%)によるタンパク質直径(nm)のプロットを示す。
図11】ラットへの単回投与後のELF及び血清中におけるrhIL-1Raについての濃度対時間プロファイル示すプロットである。
図12A】市販の抗IL-1Ra抗体を用いて実施した、rh-IL-1Raに対する非ヒト霊長類肺の免疫組織化学染色画像である。図12Aは、生理食塩水が投与された非ヒト霊長類の肺の免疫組織化学染色画像である。
図12B】市販の抗IL-1Ra抗体を用いて実施した、rh-IL-1Raに対する非ヒト霊長類肺の免疫組織化学染色画像である。図12Bは、噴霧ALTA-2530(0.86mg/g)が投与された非ヒト霊長類の肺の免疫組織化学染色画像である。
図13】非特異的染色が減少された新規抗体を用いた、ラット肺組織の免疫組織化学染色画像である。画像は、噴霧ビヒクルへの曝露後(図13(A)、8倍の拡大;図13(B)、20倍の拡大)、低用量のALTA-2530への曝露後(図13(C)、8倍の拡大;図13(D)、20倍の拡大)、及び高用量のALTA-2530への曝露後(図13(E)、8倍の拡大;図13(F)、20倍の拡大)のラット肺を示す。
図14A】生理食塩水処置ラット及びALTA-2530処置ラットの呼吸上皮の壊死を示すグラフである。
図14B】生理食塩水処置ラット及びALTA-2530処置ラットの気管支上皮の壊死を示すグラフである。
図15A】ヒトの血液についての、最大IL-6放出の割合によるALTA-2530の濃度を示すグラフである。
図15B】、NHPの血液についての、最大IL-6放出の割合によるALTA-2530の濃度を示すグラフである。
図15C】ラットの血液についての、最大IL-6放出の割合によるALTA-2530の濃度を示すグラフである。
図16】健常志願者及びBOS患者におけるALTA-2530の単回用量及び/又は複数回漸増用量(SAD/MAD)を用いた、第1相試験プロトコルを示す。
図17】12週間の概念実証中間を有するBOS患者におけるALTA-2530の第2b/3相試験デザインを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
定義
以下は、本明細書で使用される用語の定義である。本明細書において群又は用語について提供される初期定義は、特に明記しない限り、本明細書全体を通してその群又は用語に個別に又は別の群の一部として適用される。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0041】
「インターロイキン1受容体アンタゴニスト」又は「IL-1Ra」という用語は、インターロイキン-1受容体(例えば、1型IL-1受容体)の活性を(競合的又は非競合的に)阻害又は遮断する任意のペプチド又はタンパク質を指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「アナキンラ」という用語は、N末端に追加的なメチオニンアミノ酸を有するヒトIL-1Raタンパク質と同一の配列である、組換えヒトインターロイキン1受容体アンタゴニスト(rhIL-1Ra)を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ALTA-2530」という用語は、IL-1Ra(例えば、アナキンラ、又はペプチドIL-1Rアンタゴニスト)を含む、任意の吸入(例えば、噴霧)医薬組成物を指すか、又は記載する。いくつかの実施形態では、ALTA-2530は、約50アミノ酸長以下のペプチドであるIL-1Raを含む。
【0044】
本明細書で使用される場合、「上気道(upper airways)」又は「上部呼吸器(upper respiratory tract)」という用語は、フレア(flares)又は外鼻孔から軟口蓋への通路を含む、肺の中心気道又は誘導気道を指すか又は表し、これは副鼻腔を含む。
【0045】
「下気道(lower airways)」又は「下部呼吸器(lower respiratory tract)」という用語は、本明細書で使用される場合、気管及び肺を含む喉頭の下の、肺の末梢領域又は肺胞領域を指すか、又は説明する。
【0046】
本明細書で使用される「治療すること」、「治療」、及び「療法」という用語は、障害の進行、重症度、及び/又は持続期間の低減若しくは改善の試み、又は1又は複数のモダリティ(例えば、本明細書に記載の化合物又は組成物などの、1又は複数の治療剤)の投与に起因するその1又は複数の症状の改善の試みを指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、「予防する」、「予防すること」、及び「予防」という用語は、治療法の実施(例えば、予防剤又は治療剤の投与)、又は治療法の組合せの実施(例えば、予防剤又は治療剤の組合せの投与)に起因する、対象における障害又はその症状の再発、発症、又は発生の予防又は阻害を指す。
【0048】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」又は「有効量」とは、所望の結果を達成又は促進するために必要又は充分な任意の量を指す。場合によっては、有効量は、治療有効量である。治療有効量とは、対象において所望の生物学的応答を促進又は達成するために必要又は充分な任意の量である。任意の特定の適用のための有効量は、治療される疾患若しくは状態、投与される特定の薬剤、対象のサイズ、又は疾患若しくは状態の重症度などの要因に応じて変動し得る。当業者は、過度の実験を必要とすることなく、特定の薬剤の有効量を経験的に決定することができる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用される。「対象」及び「対象群」という用語は、動物、好ましくは非霊長類及び霊長類(例えば、カニクイザルなどのサル、チンパンジー、及びヒト)を含む哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。「動物」という用語には、ネコ及びイヌなどのコンパニオンアニマル;動物園動物;野生動物;反芻動物、非反芻動物、家畜、及び家禽(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、シチメンチョウ、アヒル、及びニワトリ)などの農場動物又はスポーツ動物;並びに、齧歯類(例えば、マウス、ラット)、ウサギなどの実験動物;及びモルモット、並びに遺伝的に又はその他の方法で、クローン化又は改変された動物(例えば、トランスジェニック動物)も含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、「対象」又は「患者」という用語は、ヒトを指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「a」又は「an」とは、特に明記しない限り、少なくとも1つを意味する。「約」という用語は、特に明記しない限り、この用語によって修飾される値の、±10%以下又は±5%以下の値を指す。したがって、いくつかの実施形態では、「約5%(w/w)」という用語は、4.5%(w/w)~5.5%(w/w)の範囲を意味する。他の実施形態では、「約5%(w/w)」という用語は、4.75%(w/w)~5.25%(w/w)の範囲を意味する。
【0051】
本明細書で使用される場合、特に指示しない限り、「組成物」及び「本発明の組成物」という用語は、互換的に使用される。特に明記しない限り、この用語は、これらに限定されないが、医薬組成物、及び原薬(例えば、アナキンラ)を含有する栄養補助食品組成物を包含することを意味する。組成物はまた、疾患の診断、治癒、緩和、治療、若しくは予防における、又はヒトの構造若しくは任意の機能に影響を及ぼすような、薬理活性又は他の直接的な効果を欠く不活性成分又は不活性化合物である、1又は複数の「非薬効成分(excipient)」を含有し得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、「ビヒクル」という用語は、本発明の化合物又は組成物が、それと共に保存、輸送、及び/又は投与される、希釈剤、プラセボ、アジュバント、非薬効成分、担体、又は賦形剤を指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という語句は、本発明の化合物の薬学的に許容される有機塩又は無機塩を指す。
【0054】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される溶媒和物」という用語は、1又は複数の溶媒分子と本発明の化合物との会合物を指す。薬学的に許容される溶媒和物を形成する溶媒の例としては、これらに限定されないが、水、生理食塩水、水-塩混合物、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸、ポリエチレングリコール、及びエタノールアミンが挙げられる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、動物、より具体的にはヒトでの使用について、連邦政府若しくは州政府の規制機関によって承認されていること、又は米国薬局方若しくは他の一般的に認識されている薬局方に記載されていることを意味する。
【0056】
タンパク質の吸入送達に関連した課題
現在、呼吸器適応症に対するFDA承認の静脈内(IV)又はSCのIL1-Ra(例えば、アナキンラ)は不足している。これは、非経口経路によって送達された場合の肺へのアナキンラなどのIL1-Raの不充分な分布、及びペプチド又はタンパク質を肺に送達する上での多くの他の課題に起因し得る。Cawthorne et al.British J.Pharmacology 2010;Cawthorne et al.J.Pharmaceutical Sciences 1995を参照されたい。液体Kineret(商標)SC製剤は、医薬としての使用と合致する低温流通安定性が実証されているが、タンパク質生物製剤として、rhIL-1Raは経口吸入のための噴霧による送達のための多くの製剤上の課題を提示する。現在、呼吸器送達用(例えば、吸入又は噴霧)のFDA承認IL1-Ra組成物は存在しない。
【0057】
これらの課題としては、タンパク質が効力を保持するためにサイズの完全性及び適切な立体構造を維持しなければならない吸入製剤中での保存中における、化学的安定性及び立体構造安定性が挙げられる。別の課題とは、剪断及び温度勾配を含む噴霧中のタンパク質安定性の維持である。Kineret(商標)製剤は10mMクエン酸塩緩衝剤中で調製される。クエン酸塩は吸入溶液に使用されるが、約140mMを超える濃度で咳誘発剤であることが示されている。Kineret(商標)製剤はまた、緩衝剤としてのクエン酸塩も含む。Kaiser C,Knight A,Nordstrom D,Pettersson T,Fransson J,Florin-Robertsson E,Pilstrom B.Injection-site reactions upon Kineret(anakinra)administration:experiences and explanations.Rheumatol.Int.2012 Feb;32(2):295-9を参照されたい(以下「Kaiser 2012」、その全体が参照により本明細書に取り込まれる)。クエン酸緩衝剤は、現在、呼吸器送達のためのFDA不活性成分(IIG)データベース上の唯一の緩衝剤であるが、クエン酸塩は、SC送達時の疼痛及び肥満細胞脱顆粒からの組織刺激に関連しており、したがって肺では忍容性が低い可能性がある。Kaiser 2012を参照されたい。Kineret(商標)製剤はまた、現在のFDA IIGデータベースに基づいた許容レベルよりも高いレベルの吸入送達用のポリソルベート-80を含有し、これは、治療された患者に毒性をもたらし得る。さらに、手持ち式の個人用ネブライザー装置、病院環境で使用されるネブライザー装置、及びジェットネブライザーを用いた吸入送達に対する適合性の課題がある。適合性の課題としては、吸着、浸出物の可能性、大きな残留体積、噴霧時間にわたるリザーバー内の溶液の濃縮、及びネブライザー内の露光を含む物理的条件に起因する劣化が挙げられる。さらに、噴霧プロセス中に、タンパク質に対する酸化ストレス、剪断ストレス、及び温度ストレスも存在する。Hertel,S.;Pohl,T.;Friess,W.;Winter,G.Prediction of Protein Degradation during Vibrating Mesh Nebulization via a High Throughput Screening Method.Eur.J.Pharm.Biopharm.2014,87(2),386-394を参照されたい。酸化に加えて、これらのネブライザーによって誘発される熱ストレス又は剪断ストレスは、IL-1Ra(例えば、アナキンラ)の化学的不安定性をもたらし得るか、又はIL-1Ra(例えば、アナキンラ)が活性についての適切な確証を失う原因となり得る。タンパク質が効力を保持するためにサイズ及び立体構造の完全性を維持しなければならない場合、噴霧中及び噴霧後における化学的安定性及び立体構造安定性に関するさらなる課題が存在する。
【0058】
さらに、下方(より遠位)領域が細気管支及び肺胞嚢を含む場合、上部呼吸器及び下部呼吸器をにわたる分布に必要な噴霧粒径を達成及び維持することは、依然として困難である。これは、肺の疾患領域における薬物の治療曝露レベルを確実にするためには重要である。アナキンラの製剤及び選択されたネブライザーは、噴霧サイクル全体を通して適切なサイズのアナキンラ粒子(液滴)を産生する必要があり、アナキンラ液滴は、噴霧後及び吸入中に安定性を保持する必要があり、かつ治療効果をもたらすために細気管支及び肺胞に達するように肺の複雑な通路全体に充分に分布する必要がある。アナキンラの有効性を維持するために、ネブライザーから産生される一定の送達用量、及び肺への送達用量の一定の沈着用量を確実にすることが重要である。製剤、例えば非薬効成分は、呼吸器疾患適応症に関連した標的細胞型にタンパク質が確実に分布するように慎重に選択する必要がある。例えば、BOS、RAS、又は慢性肺移植片機能不全(CLAD)の場合、より一般的には、製剤が、具体的な適応症に応じて、タンパク質が気管支上皮細胞及び肺胞、好ましくは肺胞マクロファージに入ることを確実にすることが重要である。
【0059】
製剤はまた、インビボで充分に忍容される必要がある。例えば、選択される非薬効成分は、理想的には、臨床用量で有害事象を引き起こさない。特に、最も高い非有害用量(通常、毒物学試験で決定される)と、患者を治療するための臨床的に有効な用量との間の、安全マージン(また、治療濃度域とも称される)が必要とされる。そうでなければ、有害作用に耐えるためには、患者に投与するための許容可能なリスク利益が存在する必要がある。例としては、許容される有害作用としては、肺における治療有効用量よりも低い用量で起こり得る咳が挙げられ得る。製剤中のタンパク質はまた、臨床試験薬物バッチ及び承認された製品バッチの製造のための手順を満たす/完了させるのに適している必要がある。最後に、FDA承認の小分子噴霧製品が存在するが、噴霧によるタンパク質の投与はまれであり、現在までに、嚢胞性線維症の治療に使用される組換えヒトDNアーゼである噴霧タンパク質薬物であるドルナーゼアルファ(Pulmozyme(登録商標))の1種類のみがFDAによって承認されている。
【0060】
新規なタンパク質又はペプチドインターロイキン-1受容体アンタゴニスト組成物
本明細書には、驚くべきことに、下気道の炎症性障害を含む炎症性障害の治療に有利であることが分かったタンパク質又はペプチドイであるンターロイキン-1受容体アンタゴニスト(例えば、IL1-Ra;その組成はALTA-2530と称される)の新規な吸入/噴霧組成物が記載される。いくつかの実施形態では、タンパク質又はペプチドIL-1Ra(例えば、アナキンラ)は、低タンパク質凝集(例えば、実施例8及び図10、表10を参照)、下部呼吸器への効果的な送達に好適な噴霧液滴サイズ(例えば、実施例6~実施例7、表7~表9、及び表11~表12、並びに図5図7を参照)、及びタンパク質安定性(例えば、実施例6~実施例7を参照)などの、驚くほど有利な特性を有する吸入組成物(例えば、噴霧組成物)に含まれる。いくつかの実施形態では、タンパク質又はペプチドIL-1Ra(例えば、アナキンラ)組成物は、PARI eFlow(登録商標)、InnoSpire GO、又はAerogen Solo(例えば、実施例7を参照)などの好適な振動メッシュネブライザーと組み合わせた場合、これらの有利な特性を有する。いくつかの実施形態では、ネブライザーは、PARI eFlow(登録商標)ネブライザー(例えば、実施例7を参照)である。
【0061】
ある態様では、タンパク質又はペプチドインターロイキン-1受容体アンタゴニスト、緩衝剤、並びに所望により、安定剤及び浸透圧調整剤からなる群からそれぞれ選択される1又は複数の追加の構成成分を含む、医薬組成物(例えば、ALTA-2530)が記載される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、噴霧に好適な液体組成物である。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、アミノ酸又はリン酸塩を含む。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、又はこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、正に帯電したアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、正に帯電したアミノ酸は、ヒスチジン、アルギニン、又はリジンである。いくつかの実施形態では、正に帯電したアミノ酸は、ヒスチジンである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約5mM~50mMの濃度で正に帯電したアミノ酸(例えば、ヒスチジン)を含む。いくつかの実施形態では、ヒスチジンの濃度は、約10mMである。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、リン酸塩を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約5mM~約50mMの間の濃度でリン酸塩を含む。いくつかの実施形態では、リン酸塩の濃度は、約10mMである。
【0062】
いくつかの実施形態では、医薬組成物(例えば、ALTA-2530)は、安定剤を含む。いくつかの実施形態では、安定剤は、非還元糖である。いくつかの実施形態では、非還元糖は、トレハロース、スクロース、グリセロール、ソルビトール、又はこれらの組合せである。いくつかの実施形態では、非還元糖は、トレハロースである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約50mM~約350mMの濃度で非還元糖(例えば、トレハロース)を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約50mM~約100mMの濃度で非還元糖(例えば、トレハロース)を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約100mM~約200mMの濃度で非還元糖(例えば、トレハロース)を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約100mM~約300mMの濃度で非還元糖(例えば、トレハロース)を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約300mM~約350mMの濃度で非還元糖(例えば、トレハロース)を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約100mM~約150mMの濃度で非還元糖(例えば、トレハロース)を含む。いくつかの実施形態では、トレハロースの濃度は、約115mMである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、前記安定剤として、又は他の添加された安定剤(群)に加えて安定剤として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.05mM~約1mMの濃度でEDTAを含む。いくつかの実施形態では、EDTAの濃度は、約0.53mMである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、前記安定剤として、又は他の添加された安定剤(群)に加えて安定剤として、タウリンを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約50mM~約150mMの濃度でタウリンを含む。いくつかの実施形態では、タウリンの濃度は、約80mMの濃度である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、浸透圧調整剤を含む。いくつかの実施形態では、浸透圧調整剤は、塩化ナトリウムである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約10mM~約160mMの濃度で塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、塩化ナトリウムの濃度は、約90mMである。
【0063】
いくつかの実施形態では、医薬組成物(例えば、ALTA-2530)は、約0.5mg/mL~約50mg/mLの濃度でインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(例えば、アナキンラ又は別のタンパク質若しくはペプチド)を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約20mg/mLの濃度でインターロイキン-1受容体アンタゴニストを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約6~約8のpHを有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、スプレー乾燥に好適である。
【0064】
ある実施形態では、医薬組成物(例えば、ALTA-2530)は、約20mg/mLの濃度でインターロイキン-1受容体アンタゴニスト、約10mMの濃度でヒスチジン、及び約115mMの濃度でトレハロースを含む、噴霧に好適な液体組成物である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約20mMの濃度で塩化ナトリウム、約0.53mMの濃度でEDTA、約0.05%(w/v)~約0.1%(w/v)(例えば、0.0125%又は0.035%)の濃度でポリソルベート80をさらに含み、医薬組成物は、約6.5のpHを有する。
【0065】
別の実施形態では、医薬組成物(例えば、ALTA-2530)は、約20mg/mLの濃度でインターロイキン-1受容体アンタゴニスト、約10mMの濃度でリン酸塩、及び約115mMの濃度でトレハロースを含む、噴霧に好適な液体組成物である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約20mMの濃度で塩化ナトリウム、約0.53mMの濃度でEDTA、約0.05%(w/v)~約0.1%(w/v)(例えば、0.0125%又は0.035%)の濃度でポリソルベート80をさらに含み、医薬組成物は、約6.5のpHを有する。
【0066】
驚くべきことに、アミノ酸(例えば、ヒスチジン;又はリジン若しくはアルギニンなどの他のもの)又はリン酸塩を含む緩衝剤は、クエン酸塩などの多電荷緩衝剤と比較して、タンパク質又はペプチドインターロイキン-1受容体アンタゴニスト組成物におけるタンパク質凝集に対する保護(例えば、凝集なしでより多くの噴霧サイクルを達成する能力)を与えることが見出された。例えば、緩衝剤としてヒスチジンを含有するALTA-2530製剤は、タンパク質直径の時間依存性増加を示さず、これは、代わりにクエン酸緩衝剤を含有した異なる製剤と比較して(例えば、実施例8参照;図8及び図9において製剤1(ヒスチジン)と製剤2(クエン酸塩)とを比較)、噴霧した場合に時間依存性凝集体形成がなかったことを示唆していた。クエン酸塩及びリン酸塩の両方を含む製剤であっても、噴霧を繰り返すと液体排出速度の低下を示し、これは、タンパク質の凝集に潜在的に起因するネブライザーの目詰まりを示唆していた(例えば、実施例8参照;図8及び図9において製剤1(ヒスチジン)と製剤3(クエン酸塩及びリン酸塩)とを比較)。いくつかの実施形態では、緩衝剤としてヒスチジンを使用する製剤は、代わりに緩衝剤としてクエン酸塩を含有する製剤よりも優れている(図8及び図9参照)。さらに、いくつかの実施形態では、アミノ酸又はリン酸塩を含む緩衝剤を用いることにより、目詰まりすることなく、より大量のタンパク質(IL1-Ra)の送達もまた可能になる(例えば、実施例7~実施例8、並びに表9及び表21、図8及び図9を参照されたい)。驚くべきことに、アミノ酸又はリン酸塩を含む緩衝剤は緩衝能を増加させ、凍結解凍サイクルに伴うpHのシフトを減少させることもまた見出された(例えば、実施例8を参照のこと)。さらに驚くべきことに、約0.01%(w/v)の濃度でポリソルベート80を含むことにより、代用方法(振盪+熱、例えば、実施例8及び図10を参照)を用いた場合、タンパク質又はペプチドインターロイキン-1受容体アンタゴニストの粒子形成が緩和されることが見出された。
【0067】
驚くべきことに、いくつかの実施形態では、本明細書中に記載のタンパク質又はペプチドインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(例えば、アナキンラ)組成物は、粘度が増加し、生理食塩水中でのインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(例えば、アナキンラ)の希釈に対して、肺の遠位領域への送達とより合致するサイズまでの、より小さい粒径の噴霧タンパク質又はペプチドインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(例えば、アナキンラ)を生成することもまた見出された(例えば、実施例6及び図4図6を参照)。いくつかの実施形態では、噴霧組成物の液滴サイズは、直径(例えば、空気動力学的中央粒子径(MMAD)又は質量中央径(MMD又はX50))が約2.5μm~約4μmである。いくつかの実施形態では、噴霧組成物の液滴サイズは、直径(例えば、MMAD、MMD)が約4μm未満である(例えば、実施例7及び図7を参照のこと)。いくつかの実施形態では、噴霧ALTA-2530の液滴サイズは、直径(例えば、MMD、MMAD)が約3.5μmである(例えば、実施例7及び表9、図7を参照のこと)。驚くべきことに、タンパク質と糖の組合せを最適化して粘度を調節し、遠位肺送達に合致するMMAD値又はMMD値を達成できることが見出された。例えば、粘度はALTA-2530中のタンパク質濃度と共に増加し、ALTA-2530中の非還元糖又は高ガラス転移糖(例えば、トレハロース)もまた粘度を増加させることが分かった(例えば、実施例6及び図4図6を参照のこと)。いくつかの実施形態では、より高い粘度及びより高いタンパク質濃度は、ALTA-2530が噴霧された場合、より小さい空気力学的粒径を生じる(例えば、実施例6及び図4図7を参照されたい)。驚くべきことに、ALTA-2530中の非還元糖又は高ガラス転移糖(例えば、トレハロース)もまた、IL-1Raタンパク質を安定化することが見出された(例えば、実施例6を参照のこと)。いくつかの実施形態では、高ガラス転移糖は、高いガラス転移温度(Tg)、例えば無水基準で90℃を超える高いガラス転移温度(Tg)を有する糖を指す。いくつかの実施形態では、最高保存温度より50℃高いTg値は、高Tg糖と見なすことができる。例えば、25℃で保存された乾燥粉末では、製剤は75℃以上のTgを有することができる。Ohtake,S.;Wang,Y.J.Trehalose:Current Use and Future Applications.J.Pharm.Sci.2010,1-34を参照されたい。
【0068】
驚くべきことに、ALTA-2530は、肺の遠位領域への送達のための噴霧後に、適切な送達効率、安定性、並びにIL-1Ra効力及び完全性でネブライザーを介して送達され得ることもまた見出された(例えば、実施例7、実施例9~実施例10、図11図14を参照されたい)。これは、噴霧した場合の変性に起因するタンパク質完全性の喪失を受けやすい、大きな分子(例えば、IL-1Raなどのタンパク質又はペプチド)の噴霧に関連した多くの課題のため、驚くべきことである。いくつかの実施形態では、インタクトなタンパク質の1%未満の喪失が、ALTA-2530の噴霧後に起こる(例えば、実施例7及び表13~表14を参照されたい)。いくつかの実施形態では、噴霧されたALTA-2530のこれらの有利な結果は、ALTA-2530が、PARI eFlow(登録商標)ネブライザー、Philips InnoSpire GOネブライザー、又はAerogen Soloネブライザーなどの振動メッシュネブライザーを用いて噴霧される場合に達成することができる。いくつかの実施形態では、噴霧ALTA-2530のこれらの有利な結果は、AeroEclipse IIネブライザー、PARI LC Plus(登録商標)、又はPARI LC Sprint(登録商標)などのジェットネブライザーを用いてALTA-2530を噴霧した場合に達成することができる。いくつかの実施形態では、ALTA-2530は、繰り返しの使用でネブライザー装置を目詰まりさせることなく噴霧することができる(例えば、実施例7を参照のこと)。いくつかの実施形態では、驚くべきことに、メッシュネブライザーを用いたALTA-2530の送達は、ジェットネブライザーを用いた送達と比較して、送達されるタンパク質の量を増加させ、より一定でより高い送達用量をもたらす(例えば、改変されたPARI eFlow(登録商標)ネブライザーを用いた14回のサイクルの最後に、ヒスチジンを含有する製剤1の高いタンパク質排出を示す、実施例8及び図9を参照されたい)。いくつかの実施形態では、メッシュネブライザーを用いたALTA-2530の送達は、ジェットネブライザーを用いる送達よりもタンパク質に対して穏やかであり(単一パス対溶液再循環)、したがって、タンパク質凝集を減少させることができる。
【0069】
ある特定の実施形態では、IL1-Raを含む新規な医薬組成物が記載される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、吸入を介して、標的組織へ直接送達され、これにより、LT後患者の灌流障害が解決され、全身性副作用が制限される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、BOSにおける自然免疫応答を標的とする、新規な作用機序を有する(例えば、図1を参照のこと)。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、成功した早期の非臨床経験に基づく強い安全性プロファイルを示す(例えば、実施例9~実施例10及び実施例12を参照されたい)。
【0070】
ある特定の実施形態では、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト、並びに、緩衝剤、安定剤、及び浸透圧調整剤からなる群からそれぞれ選択される1又は複数の追加の構成成分を含む、医薬組成物が記載される。
【0071】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体アンタゴニストは、アナキンラである。他のインターロイキン-1受容体アンタゴニストが企図される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、噴霧送達用のアナキンラの製剤の例である。
【0072】
ある特定の実施形態では、緩衝剤は、正に帯電したアミノ酸を含む。
【0073】
ある特定の実施形態では、緩衝剤は、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン、リジン、アルギニン、グルタミン酸塩、ピロリン酸塩、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、及びこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.5mM~約20mMの濃度でクエン酸塩を含む液体組成物である。
【0074】
いくつかの実施形態では、クエン酸塩の濃度は、約20mMである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1mM~約50mM、又は約10mMの濃度でリン酸塩を含む液体組成物である。
【0075】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約5mM~約50mM、又は約10mMの濃度でヒスチジンを含む液体組成物である。
【0076】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1mM~約50mMの濃度でグルタミン酸塩を含む液体組成物である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1mM~約50mMの濃度でピロリン酸塩を含む液体組成物である。
【0077】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約10mM~約50mM、又は約10mMの濃度で4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)を含む液体組成物である。
【0078】
いくつかの実施形態では、安定剤は、界面活性剤、キレート剤、糖、及びこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(Brij(商標)35)、ソルビタントリオレエート(Span(商標)85)、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0079】
いくつかの実施形態では、糖は、非還元糖であり、ここで、非還元糖は、トレハロース、スクロース、グリセロール、ソルビトール、及びこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約100nM~約350nMの濃度でトレハロースを含む液体組成物である。いくつかの実施形態では、トレハロースの濃度は、約115nMである。
【0080】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.01%(w/v)~約1%(w/v)、又は約0.05%(w/v)~約0.1%(w/v)(例えば、0.0125~0.035%w/v)の濃度でポリソルベート80を含む液体組成物である。
【0081】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.00001%(w/v)~約1%(w/v)、又は約0.00001%(w/v)~約0.01%(w/v)の濃度でポリソルベート20を含む液体組成物である。本明細書に記載のいずれかの実施形態では、医薬組成物は、0.00001%(w/v)、0.0001%(w/v)、又は0.001%(w/v)の濃度でポリソルベート20を含む液体組成物である。
【0082】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.00001%(w/v)~約0.01%(w/v)の濃度でポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(Brij(商標)35)を含む液体組成物である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.1%~約5.0%(w/v)、約0.8(w/v)、約0.85(w/v)、又は約0.86%(w/v)の濃度でソルビタントリオレエート(Span(商標)85)を含む液体組成物である。
【0083】
いくつかの実施形態では、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムであるキレート剤である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.05mM~約1mM、又は0.53mMの濃度でエチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムを含む液体組成物である。
【0084】
いくつかの実施形態では、糖は、トレハロース、スクロース、グリセロール、ソルビトール、及びこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は液体組成物であり、糖の濃度は、約1%(w/v)~約5%(w/v)、約5%(w/v)~約10%(w/v)、約10%(w/v)~約15%(w/v)、約10%(w/v)~約20%(w/v)、約20%(w/v)~約30%(w/v)、又は約30%(w/v)~約40%(w/v)である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、液体組成物であり、糖の濃度は、約4%(w/v)である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、液体組成物であり、糖の濃度は、約12%(w/v)である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、液体組成物であり、糖の濃度は、約40%(w/v)を超える。
【0085】
いくつかの実施形態では、浸透圧調整剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、タウリン、ヒドロキシプロリン、プロリン、及びこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約10mM~約160mM、又は約90mMの濃度で塩化ナトリウムを含む液体組成物である。
【0086】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約5mg/mL~約50mg/mL、又は約10mg/mLの濃度でマンニトールを含む液体組成物である。
【0087】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約5mg/mL~約50mg/mL、又は約10mg/mLの濃度でタウリンを含む液体組成物である。
【0088】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.2mg/mL~約50mg/mL、又は約3mg/mLの濃度でヒドロキシプロリンを含む液体組成物である。
【0089】
いくつかの実施形態では、追加の構成成分は、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、追加の構成成分は、リン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、追加の構成成分は、リン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、及び塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、追加の構成成分は、リン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、追加の構成成分は、リン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート20、及び塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、追加の構成成分は、リン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ソルビタントリオレエート(Span(商標)85)、及び塩化ナトリウムを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、追加の構成成分は、リン酸塩、トレハロース、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、追加の構成成分は、リン酸塩、スクロース、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、追加の構成成分は、リン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、浸透圧調整剤、及び塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、追加の構成成分は、リン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、浸透圧調整剤、及び塩化ナトリウムを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、追加の構成成分は、リン酸塩、トレハロース、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート20、浸透圧調整剤、及び塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、追加の構成成分は、リン酸塩、スクロース、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ソルビタントリオレエート(Span(商標)85)、浸透圧調整剤、及び塩化ナトリウムを含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、追加の構成成分は、リン酸塩、浸透圧調整剤、及び塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、浸透圧調整剤は、タウリン、ヒドロキシプロリン、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0096】
いくつかの実施形態では、追加の構成成分は、クエン酸塩、リン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、追加の構成成分は、グルタミン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、追加の構成成分は、クエン酸塩、トレハロース、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、追加の構成成分は、グルタミン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、追加の構成成分は、リン酸塩、マンニトール、及び塩化ナトリウムを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、追加の構成成分は、ヒスチジン、トレハロース、塩化ナトリウム、及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムを含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、追加の構成成分は、リン酸塩、トレハロース、塩化ナトリウム、及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムを含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、液体組成物のpHは、約6.5である。
【0102】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、液体組成物である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、固体組成物である。
【0103】
いくつかの実施形態では、固体組成物は、乾燥粉末を含む。いくつかの実施形態では、固体組成物は、トレハロースなどの非還元糖を含む、乾燥粉末を含む。いくつかの実施形態では、固体組成物は、凍結乾燥物である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、凍結乾燥粉末から再構成される。
【0104】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1mg/mL~約50mg/mLの濃度でインターロイキン-1受容体アンタゴニストを含む液体組成物である。
【0105】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体アンタゴニストの濃度は、約5mg/mLである。
【0106】
いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体アンタゴニストの濃度は、約20mg/mLである。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体アンタゴニストの濃度は、約10mg/mLである。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体アンタゴニストの濃度は、約30mg/mLである。いくつかの実施形態では、インターロイキン-1受容体アンタゴニストの濃度は、約10~約30mg/mLである。
【0107】
キット
別の態様では、本明細書に開示された実施形態のいずれかに記載の医薬組成物、及び患者の呼吸器への医薬組成物の直接投与に好適な送達装置を含む、キットが記載される。
【0108】
別の態様では、本明細書に記載された実施形態のいずれかに記載の医薬組成物、及び患者の呼吸器への医薬組成物の直接投与に好適な送達装置を含む、キットが開示される。
【0109】
いくつかの実施形態では、呼吸器は、下気道又は上気道を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、送達装置は、吸入によって有効量の前記医薬組成物を送達するように構成される。いくつかの実施形態では、送達装置は、直接の滴下を介した吸入によって有効量の前記医薬組成物を送達するように構成される。
【0111】
いくつかの実施形態では、送達装置は、ネブライザー、吸入器、及びエアロゾル化装置からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、送達装置は、ジェットネブライザー、超音波ネブライザー、定量吸入器、及び乾燥粉末吸入器からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ネブライザーは、振動メッシュネブライザーである。いくつかの実施形態では、ネブライザーは、ジェットネブライザーである。いくつかの実施形態では、ネブライザーは、Philips InnoSpire GO、PARIネブライザー(例えば、PARI eFlow(登録商標)、PARI LC Plus(登録商標)、又はPARI LC Sprint(登録商標))、Aerogen Solo、及びAeroEclipse IIからなる群から選択される。
【0112】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、Philips InnoSpire GO振動メッシュ(VM)ネブライザーを用いて送達される、噴霧用溶液である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、前臨床ネブライザーを用いて送達される噴霧用溶液である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、前臨床試験施設及び臨床試験施設で生成することができ、かつ投与期間及び24時間の最小使用期間にわたち噴霧について安定である、噴霧用の即時調製された溶液製剤である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、冷蔵温度で保存された噴霧用溶液である。いくつかの実施形態では、優良試験所基準(GLP)毒物学及び優良医薬品製造基準(GMP)臨床試験のために開発された医薬組成物は、好ましくは、任意のブリッジング試験(例えば、非薬効成分は異ならず、かつ比率はGLP適格性レベルを超えない)を回避するために、同じ又は同等である。いくつかの実施形態では、噴霧GMP臨床製剤の医薬組成物の不純物プロファイルは、GLP前臨床試験で適格とされた不純物限界に類似し、かつそれを超えない。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、例えばPARI eFlow(登録商標)ネブライザー又はPhilips InnoSpire GOネブライザーを用いて、15分未満、理想的には10分未満、最適には5分未満、又は2~3分以内に、VMネブライザー(ネブライザーへの薬剤充填(公称用量)として表される)から5mg~80mgを送達するのに適した濃度を有する、臨床製剤溶液である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、再現性よく送達され、肺用量は、使用期間及び予想される投与期間にわたる化学物質及びエアロゾルの性能安定性によって実証されるように、臨床プログラムを支持する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、凍結/解凍試験で適格とされた許容閾値と同様又はそれを超える安定性を有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ストレス安定性試験(例えば、インビトロ試験又はCMC試験)に基づいて安定である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、フィルター適合性試験に基づく純度基準を満たす。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、フィルター適合性試験に基づく含有量喪失の閾値を超えない。いくつかの実施形態では、噴霧GMP臨床製剤の医薬組成物の安定性は、CMC製品開発試験で適格とされた安定性閾値と同様であるか、又はそれを超える。いくつかの実施形態では、噴霧GMP臨床製剤の医薬組成物の使用期間は、CMC製品開発試験で適格とされた使用期間と同様である。いくつかの実施形態では、噴霧GMP臨床製剤の医薬組成物の保存条件は、CMC製品開発試験で適格とされた保存条件と同様である。いくつかの実施形態では、医薬組成物のpH、重量オスモル濃度、及び外観は、CMC製品開発試験で適格とされた測定値と同様である。いくつかの実施形態では、医薬組成物のタンパク質濃度は、CMC製品開発試験で適格とされた濃度と同様である。いくつかの実施形態では、医薬組成物の純度は、RP-HPLC、SE-HPLC、還元CE-SDS及び非還元CE-SDS、並びにIEX-HPLC CMC製品開発試験で適格とされた測定値と同様である。いくつかの実施形態では、医薬組成物中の異物及び粒子状物質、並びに不溶性凝集体(subvisible particle)のレベルは、CMC製品開発試験で適格とされたレベルと同様である。いくつかの実施形態では、医薬組成物中の異物及び粒子状物質、並びに不溶性凝集体のレベルは、CMC製品開発試験で適格とされたレベルと同様である。いくつかの実施形態では、医薬組成物のエアロゾル粒径分布は、NGI(次世代インパクタ)によって、米国薬局方協会(例えば、USP601及びUSP1601)に従って測定される。いくつかの実施形態では、呼吸シミュレータを用いた医薬組成物の送達用量は、投与の全期間にわたり、USP1601及びUSP601に記載されている用量によって測定される。いくつかの実施形態では、医薬組成物の効力は、インビトロの細胞ベースバイオアッセイ試験で適格とされた効力と同様である。いくつかの実施形態では、粘度、表面張力、製剤密度、液滴サイズ、及び分布(例えば、Malvern Spraytec又はNGI又は同等物によって測定される場合)、動的光散乱(DLS)、及び濁度の医薬組成物の測定値は、CMC開発試験で適格とされた測定値と同様である。いくつかの実施形態では、非臨床試験及びインビトロ試験に使用されたAerogen Soloで得られたALTA-2530製剤の液滴サイズ分布、及び他のネブライザーで得られた液滴サイズ分布は、肺組織で同等の分布を達成する。
【0113】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、液体組成物であり、送達装置は、液体組成物を送達するように構成される。いくつかの実施形態では、液体組成物のpHは、約5~約8である。
【0114】
いくつかの実施形態では、液体組成物の重量オスモル濃度は、約200mOsm/kg~約500mOsm/kgである。いくつかの実施形態では、重量オスモル濃度は、約300mOsm/kgである。
【0115】
いくつかの実施形態では、送達装置によって生成された液体組成物の空気力学液滴サイズは、直径約0.5μm~約10μmである。いくつかの実施形態では、送達装置によって生成された液体組成物のMMADは、直径約2.5μm~約4μmである。いくつかの実施形態では、送達装置によって生成された液体組成物の空気力学液滴サイズは、直径約3.5μmである。いくつかの実施形態では、送達装置によって生成された液体組成物の空気力学液滴サイズは、下気道を優先的に標的とするのに好適である。
【0116】
いくつかの実施形態では、送達装置によって生成された液体組成物の空気力学液滴サイズは、直径約5μm~約50μmである。いくつかの実施形態では、送達装置によって生成された液体組成物の空気力学液滴サイズは、上気道を優先的に標的とするのに好適である。いくつかの実施形態では、液体組成物の導電率は、2.5μS/cm未満である。
【0117】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される液体製剤は、固体製剤又は凍結乾燥物をもたらすための、乾燥、例えばスプレードライ、又は凍結乾燥に適している。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、固体組成物であり、送達装置は、固体組成物を送達するように構成される。いくつかの実施形態では、固体組成物は、約0.1μm~約20μmのMMAD又はMMDを有する粒子を含む。いくつかの実施形態では、粒子のMMDのMMADは、約5μm未満である。いくつかの実施形態では、粒子のMMDのMMADは、約3.5μm未満である。
【0118】
いくつかの実施形態では、固体組成物は、約1μm~約10μmのMMAD又はMMDを有する粒子を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、固体組成物は、約1g/cm未満のタップ密度を有する。いくつかの実施形態では、固体組成物は、約1~約6の粗度(rugosity)を有する。
【0120】
いくつかの実施形態では、固体組成物は、多孔質粒子を含む。いくつかの実施形態では、固体組成物は、膨潤性粒子を含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、多孔質粒子は、生分解性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、固体組成物は、脂肪酸の塩又はその誘導体をさらに含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、前記塩は、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、乳酸ステアリルナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、及びこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、固体組成物は、均一な粒径分布を有する粒子を含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、固体組成物は、不均一な粒径分布を有する粒子を含む。いくつかの実施形態では、固体組成物は、二峰性粒径分布を有する粒子を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、固体組成物中のインターロイキン-1アンタゴニストの質量パーセントは、約1%~約40%、約40%~約70%、又は70%超である。
【0125】
いくつかの実施形態では、固体組成物は、複数のレセプタクル(receptacle)に封入された複数の粒子を含む。いくつかの実施形態では、レセプタクルは、カプセル、ブリスター(blister)、及びフィルム被覆容器からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、送達装置は、細気管支への医薬組成物の直接投与に好適である。いくつかの実施形態では、送達装置は、肺胞組織への医薬組成物の直接投与に好適である。
【0126】
炎症性障害を治療する方法
ある態様では、炎症性障害を治療する方法が記載される。ある特定の実施形態では、本方法は、有効量のアナキンラを、ヒト対象の下気道へ直接投与することを含む。アナキンラは、ヒトインターロイキン-1受容体アンタゴニストタンパク質(IL-1Ra)の組換え及び改変バージョンである。いくつかの実施形態では、本方法は、有効量のタンパク質又はペプチドインターロイキン-1受容体アンタゴニスト吸入形成物、例えば、本明細書に記載のIL-1Raの新規製剤であるALTA-2530を投与することを含む。いくつかの実施形態では、ALTA-2530は、アナキンラの吸入製剤である。
【0127】
1型IL-1受容体活性(アゴニズム)は、プロスタグランジン、サイトカイン、及びケモカインを含む、無数の二次炎症性メディエーターを誘発する。アナキンラは、1型インターロイキン-1受容体(IL-1RI)へのIL-1α及びIL-1βの結合を競合的に阻害することによって、インターロイキン-1ファミリー(「IL-1」)の一部である内在性のIL-1αサイトカイン及びIL-1βサイトカインの生物学的活性を遮断する。
【0128】
驚くべきことに、アナキンラを、本明細書中に開示される炎症性障害を有するヒト対象における下気道、例えば肺に直接投与して、炎症性障害を効果的に治療することができることが見出された。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される炎症性障害は、下気道に関連するか、又は少なくとも部分的に関連する。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、本明細書中に開示される炎症性障害を有するヒト対象において、IL-1α及びIL-1βは、炎症を引き起こす1型インターロイキン-1受容体に結合し、そのアナキンラは、これらIL-1サイトカインの活性を下気道で局所的に遮断し、それによって炎症及び炎症性障害を効果的に治療するものと考えられる。
【0129】
したがって、ある態様では、下気道の炎症性障害の治療を必要とするヒト対象における下気道の炎症性障害を治療する方法であって、有効量のアナキンラをヒト対象における下気道へ直接投与することを含み、炎症性障害は、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、毒物吸入性肺傷害、肺ランゲルハンス細胞組織球症、非嚢胞性線維症性気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、反応性気道機能不全症候群(RADS)、閉塞性細気管支炎性器質化肺炎(BOOP)、拘束性移植片症候群(RAS)、肺動脈高血圧症(PAH)、間質性肺疾患(ILD)、特発性肺線維症(IPF)、及び間質性肺炎からなる群から選択される、方法が記載される。いくつかの実施形態では、炎症性障害は、肺の炎症性障害である。いくつかの実施形態では、炎症性障害は、間質性肺炎又は塵肺症である。いくつかの実施形態では、アナキンラ又はALTA-2530の有効量は、1日当たり約0.1mg~約200mgである。
【0130】
本明細書で使用される場合、毒物吸入性肺傷害は、1又は複数の外来薬剤及び/又は毒物の吸入の結果として、肺に対する任意の傷害(例えば、炎症又は損傷)を含む。いくつかの実施形態では、毒物吸入性肺傷害を有する対象はIL-1α及びIL-1βによって媒介される炎症を患っており、ALTA-2530はこれらのサイトカインの活性を上気道及び下気道で局所的に遮断し、それによって、炎症及び毒物吸入性肺傷害を効果的に治療する。いくつかの実施形態では、ALTA-2530は、上部呼吸器及び下部呼吸器の壊死を軽減する(例えば、図14A図14Bを参照されたい)。
【0131】
いくつかの実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、1又は複数の化学兵器剤の吸入によって引き起こされる。化学兵器剤の非限定的な例としては、塩素ガス及び硫黄マスタードが挙げられる。硫黄マスタード吸入傷害に対して承認された治療は存在しない。マスタードガスは、肺の出血/水疱形成、粘膜の損傷、及び肺水腫などの急性の影響、並びに実質線維症及びBOSなどの慢性の影響を引き起こす。当技術分野で公知の化学兵器剤の他の例が企図される。塩素ガス及び硫黄マスタードガスは、細胞死、急性肺水腫、気道過敏症、及びインフラマソーム活性化などの急性の影響、並びに気道過敏症及びBOSなどの慢性の影響を引き起こす。いくつかの実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、塩素誘発性BOSである。いくつかの実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、硫黄マスタード誘発性BOSである。
【0132】
他の実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、1又は複数の環境毒物及び/又は産業毒物の吸入によって引き起こされる。環境(天然又は人工)及び工業環境には様々な毒物が存在する。ヒト対象は、(例えば、作業中)これらの薬剤と接触して吸入し、炎症を引き起こす肺の傷害に罹患し得る。環境毒物及び産業毒物の非限定的な例としては、イソシアネート(例えば、トルエンジイソシアネート)、窒素酸化物、硫酸、アンモニア、ホスゲン、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、フライアッシュ、繊維ガラス、シリカ、炭塵、アスベスト、シアン化水素、カドミウム、アクロレイン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アルミニウム、ベリリウム、鉄、綿、酸化スズ、ボーキサイト、水銀、二酸化硫黄、塩化亜鉛、ポリマーヒューム、及び金属ヒューム(例えば、銅、マグネシウム、ニッケル、銀、又は亜鉛によって生成されるヒューム)が挙げられる。いくつかの具体的な実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、塵肺症である。本明細書で使用される場合、塵肺症は、様々な固体粒子の吸入によって引き起こされる、間質性肺疾患のクラスを指す。いくつかの具体的な実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、一般に「ポップコーン肺」と称される、閉塞性細気管支炎である。いくつかの具体的な実施形態では、閉塞性細気管支炎は、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、及び2,3-ヘキサンジオンからなる群から選択される、1又は複数の産業毒物の吸入によって引き起こされる。
【0133】
さらに他の実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、ベイピング関連肺傷害である。ベイピング、又は電子タバコの使用は、ユーザに有害な化学物質を吸入させ、肺傷害を引き起こす可能性がある。近年、米国で報告されたベイピング関連肺傷害の症例数が有意に増加している。いくつかの実施形態では、電子タバコユーザは、電子タバコ液中に見出される、肺への傷害、例えば火傷、炎症を引き起こす有害な化学物質、例えばジアセチルを吸入する。ベイピング関連肺傷害を引き起こす電子タバコ中の有害化学物質の他の非限定的な例としては、2,3-ペンタンジオン、ニコチン、カルボニル、揮発性有機化合物(例えば、ベンゼン及びトルエン)、微量金属元素、α-トコフェリルアセテート、並びに菌体内毒素及び真菌グルカンが挙げられる。いくつかの実施形態では、ベイピング関連肺傷害は、間質性肺炎である。いくつかの具体的な実施形態では、ベイピング関連肺傷害は、一般に「ポップコーン肺」と称される、閉塞性細気管支炎である。
【0134】
さらに他の実施形態では、炎症性障害は、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺ランゲルハンス細胞組織球症、非嚢胞性線維症性気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、反応性気道機能不全症候群(RADS)、閉塞性細気管支炎性器質化肺炎(BOOP)、拘束性移植片症候群(RAS)、肺動脈高血圧症(PAH)、間質性肺疾患(ILD)、特発性肺線維症(IPF)、及び間質性肺炎からなる群から選択される。
【0135】
肺ランゲルハンス細胞組織球症は、喫煙者においてより一般的に生じる肺疾患である。いくつかの実施形態では、肺ランゲルハンス細胞組織球症を有する対象は、IL-1によって媒介される炎症を患っており、アナキンラは、IL-1α及びIL-1βの活性を下気道で局所的に遮断し、それによって肺ランゲルハンス細胞組織球症を効果的に治療する。
【0136】
非嚢胞性線維症性気管支拡張症及びびまん性汎細気管支炎疾患では、肺の炎症を誘発する、様々な生物学的経路が活性化される。いくつかの実施形態では、下気道の非嚢胞性線維症性気管支拡張症を有する対象は、IL-1によって媒介される炎症を患っており、アナキンラは、IL-1α、IL-1βの活性を下気道で局所的に遮断し、それによって非嚢胞性線維症性気管支拡張症を効果的に治療する。他の実施形態では、下気道のびまん性汎細気管支炎を有する対象は、IL-1によって媒介される炎症を患っており、アナキンラは、IL-1α、IL-1βの活性を下気道で局所的に遮断し、それによってびまん性汎細気管支炎を効果的に治療する。
【0137】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は生命を脅かす疾患であり、肺不全を予防するためには即時の機械的換気を必要とし得る。いくつかの実施形態では、ARDSは、SARS-CoV-2、SARS-CoV、MERS-CoV、229E、NL63、OC43、及びHKU1によって引き起こされる、ウイルス感染から生じる合併症に付随する。いくつかの実施形態では、ARDSを有する対象は、IL-1によって媒介される炎症を患っており、アナキンラは、IL-1α、IL-1βの活性を下気道で局所的に遮断し、それによってARDSを効果的に治療する。
【0138】
いくつかの実施形態では、治療されるヒト対象は、反応性気道機能不全症候群(RADS)を患っており、これは、吸入された刺激物への単一の急性曝露によって引き起こされる持続性喘息様障害を指す。いくつかの実施形態では、RADSを有する対象は、IL-1によって媒介される炎症を患っており、アナキンラは、下気道に局所的なIL-1α、IL-1βの活性を遮断し、それによってRADSを効果的に治療する。
【0139】
いくつかの実施形態では、本方法は、肺の細気管支(肺を通る小気道)及び肺胞(小さな空気嚢)に侵入する器質化肺炎に起因する肺疾患の一種である、閉塞性細気管支炎性器質化肺炎(BOOP)に罹患しているヒト対象を治療することを含む。BOOPは、肺の細気管支及び肺胞の炎症を引き起こす。いくつかの実施形態では、BOOPを有する対象は、IL-1によって媒介される炎症を患っており、アナキンラは、IL-1α、IL-1βの活性を下気道で局所的に遮断し、それによってBOOPを効果的に治療する。
【0140】
いくつかの実施形態では、本方法は、肺移植後の慢性肺移植片機能不全(CLAD)の一形態である、拘束性移植片症候群(RAS)を罹患しているヒト対象を治療することを含む。RASの主な特徴としては、肺機能の持続的かつ説明できない低下、及び持続性の実質浸潤物が挙げられる。RASの診断後の生存期間中央値は6ヶ月~18ヶ月であり、CLADの他の形態よりも有意に短い。BOSに使用される治療法は、通常、疾患進行を停止させるのに無効であるため、治療選択肢は限られている。
【0141】
いくつかの実施形態では、本方法は、右心不全及び最終的には未治療の場合には死に至る、慢性及び進行性の疾患である、肺動脈高血圧症(PAH)に罹患しているヒト対象を治療することを含む。右心不全は、体液貯留、肝臓鬱血、腹水、及び末梢浮腫を引き起こし得る。平滑筋及び内皮細胞の増殖を介した小肺動脈のリモデリングは、PAHの病因において主な役割を果たす可能性がある。この異常な増殖には、中膜及び内膜の肥大、並びに肺動脈分岐部の領域における内皮細胞からの腫瘍様病変(叢状病変)の形成が含まれる。
【0142】
間質性肺疾患(ILD)
いくつかの実施形態では、本方法は、肺組織の炎症を特徴とする数百の慢性肺障害を指すために使用される包括的な用語である、間質性肺疾患(ILD)に罹患しているヒト対象を治療することを含む。場合によっては、進行性の肺瘢痕化/線維症を引き起こす。線維症は、肺の硬直を徐々に引き起こすことで、空気嚢が酸素を捕捉して血流へ運ぶ能力をの低下させ、最終的は呼吸する能力の永久的な喪失を引き起こす。
【0143】
特発性肺線維症(IPF)
いくつかの実施形態では、本方法は、治療選択肢がほとんどない原因不明の加齢性の慢性肺疾患及び進行性肺疾患である、特発性肺線維症(IPF)に罹患しているヒト対象を治療することを含む。IPFは、主に肺基底部に影響を及ぼすX線写真上明らかな間質肥厚、並びに進行性の呼吸困難及び肺機能の悪化を特徴とする。
【0144】
いくつかの実施形態では、治療されるヒト対象は、BOSに罹患している。BOSでは、宿主T細胞は外来抗原を認識し、肺に浸潤して急性拒絶を誘発する。BOSは、T細胞、B細胞、及び自然免疫細胞の慢性的な拒絶及び浸潤の後に起こる。免疫細胞は線維症及び気道閉塞を促進する。傷害は、インフラマソーム活性化及びIL-1放出を誘発するDAMP/PAMPを活性化する。IL-1は、マクロファージ、樹状細胞、及び肥満細胞による炎症性サイトカイン生成を増加させる、自然免疫応答を駆動する。IL-1はまた、好中球の動員及びエフェクタ機能を増加させ、NK細胞からのIFN-yの放出を刺激する。IL-1はまた、CD8+T細胞の産生及び細胞傷害性グランザイムBの放出の促進を含む、適応免疫を刺激する。適応免疫におけるIL-1の役割はまた、CD4+T細胞集団及びTh17ヘルパーT細胞への分化を増強し、メモリーT細胞機能及びT細胞のプライミングを助け、細胞傷害性サイトカイン放出を促進する。
【0145】
いくつかの実施形態では、BOSに罹患しているヒト対象に、アナキンラなどのrhIL-1Raを下気道へ投与する。いくつかの実施形態では、ALTA-2530の製剤は、IL-1Raとしてアナキンラを含む。いくつかの実施形態では、rhIL-1Raは、IL-1シグナル伝達を阻害し、IL-αシグナル伝達及びIL-1βシグナル伝達の両方を遮断する。図1は、自然免疫反応及び適応免疫反応の両方がIL-1シグナル伝達(IL-αシグナル伝達及びIL-1βシグナル伝達の両方)によって媒介される、ALTA-2530などの組成物におけるrhIL-1Raの作用機序を示す。
【0146】
いくつかの実施形態では、アナキンラは、吸入によって、又は下気道への直接滴下注入によって投与される。ある特定の実施形態では、送達装置を使用して、アナキンラを下気道へ直接投与する。送達装置の非限定的な例には、ネブライザー、吸入器、及び超小型エアロゾル化装置が含まれる。いくつかの具体的な実施形態では、送達装置は、乾燥粉末吸入器である。いくつかの具体的な実施形態では、送達装置は、振動メッシュネブライザーである。
【0147】
さらに別の態様では、呼吸器の炎症性障害を治療する方法であって、投与を必要とする患者へ、本明細書に記載の実施形態のいずれかの医薬組成物を投与することを含む方法が開示される。
【0148】
いくつかの実施形態では、呼吸器の炎症性障害は、上気道の炎症性障害である。いくつかの実施形態では、炎症性障害は、毒物吸入性肺傷害、肺ランゲルハンス細胞組織球症、非嚢胞性線維症性気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、反応性気道機能不全症候群(RADS)、閉塞性細気管支炎性器質化肺炎(BOOP)、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)、拘束性移植片症候群(RAS)、肺動脈高血圧症(PAH)、特発性肺線維症(IPF)、間質性肺疾患(ILD)、間質性肺炎、原発性移植片機能不全(PGD)、及び再灌流傷害からなる群から選択される。
【0149】
いくつかの実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、1又は複数の化学兵器剤の吸入によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、化学兵器剤は、塩素ガス及び硫黄マスタードからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、塩素誘発性閉塞性細気管支炎症候群(BOS)及び硫黄マスタード誘発性閉塞性細気管支炎症候群(BOS)である。
【0150】
いくつかの実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、1又は複数の環境毒物及び/又は産業毒物の吸入によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、環境毒物及び産業毒物は、イソシアネート、窒素酸化物、モルホリン、硫酸、アンモニア、ホスゲン、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、フライアッシュ、繊維ガラス、シリカ、炭塵、アスベスト、シアン化水素、カドミウム、アクロレイン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アルミニウム、ベリリウム、鉄、綿、酸化スズ、ボーキサイト、水銀、二酸化硫黄、塩化亜鉛、ポリマーヒューム、及び金属ヒュームからなる群から選択される。
【0151】
いくつかの実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、塵肺症又は閉塞性細気管支炎である。いくつかの実施形態では、毒物吸入性肺傷害は、ベイピング関連肺傷害である。いくつかの実施形態では、ベイピング関連肺傷害は、ジアセチル、α-トコフェリルアセテート、2,3-ペンタンジオン、ニコチン、カルボニル、ベンゼン、トルエン、金属、菌体内毒素、及び真菌グルカンからなる群から選択される、1又は複数の薬剤の吸入によって引き起こされる。
【0152】
いくつかの実施形態では、炎症性障害は、肺の炎症性障害である。いくつかの実施形態では、呼吸器の炎症性障害は、下気道の炎症性障害である。
【0153】
いくつかの実施形態では、肺上皮被覆液(lung epithelial lining fluid)における医薬組成物の持続的曝露は、約15時間~約100時間である。いくつかの実施形態では、肺上皮被覆液における医薬組成物の持続的曝露は、少なくとも約24時間である。
【0154】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1週間に1回~1日当たり約3回で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、毎日約1回又は毎日約2回投与される。
【0155】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約3分間~約20分間、吸入によって投与される。
【0156】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.1mg/kg~約2mg/kgの用量で投与される。
【0157】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1型IL-1受容体に対する内在性のIL-1βリガンド又はIL-1αリガンドと実質的に同様の親和性で結合する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、内在性のIL-1βリガンド又はIL-1αリガンドと比較して、約100を超える、約1000を超える、又は10,000を超える親和性で1型IL-1受容体に結合する。
【0158】
第2の治療剤
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される方法は、タンパク質又はペプチドインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(例えば、アナキンラ)と組み合わせた第2の治療剤を、下気道の炎症性障害を罹患しているヒト対象に投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗生物質、抗真菌化合物、アミロライド、抗ヒスタミン剤、抗コリン剤、粘液溶解剤、及びステロイドからなる群から選択される。いくつかの具体的な実施形態では、第2の治療剤は、ロダトリスタットエチルである。いくつかの具体的な実施形態では、第2の治療剤は、治療される適応症のための標準治療又は治験薬と見なされる、吸入、経口投与、又は非経口投与薬物である。
【0159】
ある実施形態では、タンパク質又はペプチドインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(例えば、アナキンラ)はまた、他の活性薬剤又は薬理学的薬剤、例えば、UTP、アミロライド、抗生物質、抗ヒスタミン剤、抗コリン剤、抗炎症剤、及び粘液溶解薬(例えば、n-アセチル-システイン)などと共に投与されてもよい。タンパク質又はペプチドインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(例えば、アナキンラ)を、セリン及び他のプロテアーゼ阻害剤、γ-インターフェロン、エンケファリナーゼ、ヌクレアーゼ、コロニー刺激因子、アルブミン、及び抗体を含むがこれらに限定されない、他の治療用ヒトタンパク質と共に投与することもまた有用であり得る。タンパク質又はペプチドインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(例えば、アナキンラ)は、1又は複数他の薬理学的薬剤と連続して又は同時に投与され得る。タンパク質又はペプチドインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(例えば、アナキンラ)及び薬理学的薬剤の量は、例えば、使用される薬物の種類、治療される下気道炎症性障害の種類、並びに投与のスケジュール及び経路に依存する。タンパク質又はペプチドインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(例えば、アナキンラ)を哺乳動物(例えば、ヒト)へ投与した後、その哺乳動物の生理学的状態は、当業者に周知の様々な方法でモニタリングされ得る。
【0160】
別の実施形態では、下気道の障害を治療するために使用される組成物は、タンパク質又はペプチドインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(例えば、アナキンラ、又はいくつかの実施形態ではアナキンラを含む組成物であるALTA-2530)、並びに、粘膜調節化合物(mucoregulatory compound)、コルチコステロイド、界面活性剤、抗コリン作動性化合物、気管支拡張薬、ヌクレアーゼ、抗生物質、抗ウイルス剤、及び抗血管新生薬を含むがこれらに限定されない、他の化合物を含み得る。第2の治療剤の追加的な例は、米国特許第8,940,683号、第23欄~第32欄及び第47欄~第51欄に開示されており、その内容は参照により本明細書に明示的に取り込まれる。
【0161】
医薬組成物
本開示はまた、タンパク質又はペプチドインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(例えば、アナキンラ)及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0162】
いくつかの実施形態では、アナキンラは、アナキンラ及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物中で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、スプレー、エアロゾル、ゲル、溶液、エマルジョン、又は懸濁液である。
【0163】
組成物は、好ましくは、薬学的に許容される担体中で哺乳動物に投与される。通常、いくつかの実施形態では、製剤を等張性にするために、製剤中で適切な量の薬学的に許容される塩が使用される。
【0164】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及びこれらの組合せからなる群から選択される。当技術分野で公知の他の好適な薬学的に許容される担体が企図される。好適な担体及びこれらの製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 2005, Mack Publishing Co.に記載されている。溶液のpHは、好ましくは約5~約8、より好ましくは約7~約7.5である。製剤はまた、凍結乾燥粉末を含み得る。さらなる担体としては、固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの持続放出調製物が挙げられ、このマトリックスは、成形物品、例えばフィルム、リポソーム、又は微粒子の形態である。例としては、投与経路及び投与されるアナキンラの濃度に応じて、ある特定の担体がより好ましい場合があることは、当業者には明らかであろう。
【0165】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という語句は、ある臓器又は身体の一部から別の臓器又は身体の一部への、対象医薬品の運搬又は輸送に関与する、液体又は固体の充填剤、希釈剤、非薬効成分、溶媒、又は封入材料などの薬学的に許容される材料、組成物、又はビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性であり、かつ患者に有害ではないという意味で、「許容される」。薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例としては、ラクトース、グルコース、及びスクロースなどの糖;トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、及び酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体;トラガント粉末;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバター及び坐剤ワックスなどの非薬効成分;ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及び大豆油などの油;ブチレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチル、ラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝剤;並びに医薬製剤に採用される他の非毒性適合性物質が挙げられる。「担体」という用語は、適用を容易にするために活性成分が組み合わされる、天然又は合成の有機成分又は無機成分を示す。医薬組成物の構成成分はまた、所望の医薬効率を実質的に損なう相互作用がないように、本発明の化合物と、及び互いに、混合することができる。組成物はまた、等張性剤、防腐剤、界面活性剤、及び二価カチオン、好ましくは亜鉛などの追加の薬剤を含んでもよい。
【0166】
組成物はまた、非薬効成分、又は少なくとも1種類の炎症促進性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)組成物の安定化のための薬剤、例えば緩衝剤、還元剤、バルクタンパク質、アミノ酸(例えば、ヒスチジン、グリシン、又はプロリンなど)、又は炭水化物を含み得る。少なくとも1種類の炎症促進性サイトカイン阻害剤組成物タンパク質を製剤化するのに有用なバルクタンパク質としては、アルブミンが挙げられる。アナキンラを製剤化するのに有用な典型的な炭水化物としては、スクロース、マンニトール、ラクトース、トレハロース、又はグルコースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
界面活性剤はまた、組成物に含まれるタンパク質の可溶性及び不溶性の凝集及び/又は沈殿を予防するために使用され得る。好適な界面活性剤としては、ソルビタントリオレエート、大豆レシチン、及びオレイン酸が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の場合では、エタノールなどの溶媒を用いた溶液エアロゾルが好ましい。したがって、アナキンラを含む製剤はまた、エアロゾルを形成する際の溶液の霧化によって引き起こされるアナキンラの表面誘発凝集を低減又は予防することができる、界面活性剤を含み得る。ポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン脂肪酸アルコール、並びにポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどの、様々な従来の界面活性剤が採用され得る。量は、一般に、製剤の0.001重量%~4重量%の範囲にわたる。本発明の目的のための特に好ましい界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリソルベート80、ポリソルベート20である。当技術分野で公知の追加的な薬剤もまた組成物に含まれ得る。
【0168】
いくつかの実施形態では、医薬組成物及び剤形は、活性成分を崩壊させる速度を低下させるか、又は組成物が特性変化する速度を低下させる、1又は複数の化合物をさらに含む。いわゆる「安定剤」又は「防腐剤」としては、アミノ酸、酸化防止剤、pH緩衝剤、又は塩緩衝剤が挙げられ得るが、これらに限定されない。酸化防止剤の非限定的な例としては、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸及びその誘導体、トコフェロール及びその誘導体、ブチル化ヒドロキシアニソール、並びにシステインが挙げられる。防腐剤の非限定的な例としては、p-ヒドロキシ安息香酸メチル又はプロピル及び塩化ベンザルコニウムなどのパラベンが挙げられる。アミノ酸の追加の非限定的な例としては、グリシン又はプロリンが挙げられる。
【0169】
本発明はまた、二価カチオンの存在下又は非存在下、室温で安定であるか又は医薬投与に好ましい透明又はほぼ透明な溶液が得られる、プロリン又はグリシンを含むアミノ酸の使用による、中性pH又は中性pH未満での炎症促進性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)を含有する、液体溶液の安定化(阻害剤タンパク質の熱的又は機械的に誘発された可溶性又は不溶性の凝集及び/又は沈殿の予防又は最小化)を開示する。
【0170】
ある実施形態では、組成物は、単一単位剤形又は複数単位剤形の剤形の医薬組成物である。本発明の単一単位剤形又は複数単位剤形の医薬組成物は、予防有効量又は治療有効量である1又は複数の組成物(例えば、本発明の化合物、又は他の予防剤若しくは治療剤)、通常、1又は複数のビヒクル、担体、又は非薬効成分、安定化剤、及び/又は防腐剤を含む。好ましくは、ビヒクル、担体、非薬効成分、安定剤、及び防腐剤は薬学的に許容される。
【0171】
いくつかの実施形態では、医薬組成物及び剤形は、無水医薬組成物及び剤形を含む。本発明の無水医薬組成物及び剤形は、無水成分又は低水分含有成分、及び低水分条件又は低湿度条件を用いて調製することができる。無水医薬組成物は、その無水性が維持されるように調製及び保存されるべきである。したがって、無水組成物は、好ましくは、好適な製剤キットに含まれ得るように、水への曝露を予防することが知られている材料を用いて包装される。好適な包装の例としては、密封された箔、プラスチック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスターパック、及びストリップパックが挙げられるが、これらに限定されない。
【0172】
好適なビヒクルは薬学の当業者に周知であり、好適なビヒクルの非限定的な例としては、グルコース、スクロース、デンプン、ラクトース、ゼラチン、米、シリカゲル、グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、プロピレングリコール、水、ステアリン酸ナトリウム、エタノール、及び当技術分野で周知の同様の物質が挙げられる。生理食塩水溶液並びにデキストロース溶液及びグリセロール水溶液もまた、液体ビヒクルとして採用され得る。特定のビヒクルが医薬組成物又は剤形に組み込むのに好適であるかどうかは、これらに限定されないが、剤形が患者に投与される方法、及び剤形中の特定の活性成分を含む、当技術分野で周知の種々の要因に依存する。医薬ビヒクルは、水及び油など(石油起源、動物起源、植物起源、又は合成起源の油を含み、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、及びゴマ油など)の滅菌液体であり得る。
【0173】
本発明の医薬組成物は、その意図された投与経路と適合するように製剤化される。下気道内の投与経路の例としては、これらに限定されないが、経口吸入又は経鼻吸入(例えば、下気道内に明確に沈着するほど充分に小さい粒子の吸入)が挙げられる。様々な実施形態では、医薬組成物又は単一単位剤形は無菌であり、対象、好ましくは動物対象、より好ましくは哺乳動物対象、最も好ましくはヒト対象への投与に好適な形態である。
【0174】
本発明の組成物、形状、及び剤形の種類は、通常、それらの使用に応じて変化する。剤形の非限定的な例としては、粉末;溶液;エアロゾル(例えば、スプレー、定量噴霧器又は非定量噴霧器、定量吸入器(MDI)を含む経口吸入器又は経鼻吸入器);懸濁液(例えば、水性液体懸濁液又は非水性液体懸濁液、水中油型エマルジョン、又は油中水型液体エマルジョン)、溶液、及び固体(例えば、結晶性固体又は非晶質固体)を含む、患者への粘膜投与に好適な液体剤形が挙げられ、これらは、下気道投与に好適な液体剤形を提供するように再構成することもできる。粉末又は顆粒の形態の製剤は、例えば、ミキサ、流動床装置又はスプレードライ装置を用いて、従来の様式で上述した成分を用いて調製してもよい。
【0175】
本発明はまた、アンプル(例えば、成形同時充填(BFS)容器)又はサシェなどの密封された容器で包装可能な医薬組成物を提供する。ある実施形態では、医薬組成物は、患者の下気道への投与に好適な送達装置内の乾燥滅菌凍結乾燥粉末として供給され得る。ある実施形態では、医薬組成物は、スプレードライされ、乾燥粉末として供給され得る。医薬組成物は、必要に応じて、活性成分を含有する1又は複数の単位剤形を含有することができる、パック又はディスペンサー装置で提示され得る。パックは、例えばブリスターパックなどの金属箔又はプラスチック箔を含み得る。パック又はディスペンサー装置は、投与のための説明書を伴い得る。
【0176】
これらの製剤又は組成物を調製する方法は、本発明の化合物を、担体、及び所望により、1又は複数の補助成分と会合させる工程を含む。一般に、製剤は、本発明の化合物を、液体担体若しくは粉砕された固体担体、又はその両方と、均一かつ密接に会合させ、次いで、必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0177】
投与に好適な本発明の製剤は、粉末の形態、顆粒の形態、水性液体若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として、水中油型液体エマルジョン若しくは油中水型液体エマルジョンとして、エリキシル若しくはシロップとして、又はトローチ剤としてで(ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアなどの不活性基剤を用いる)などあってもよく、そのそれぞれが、活性成分として所定量の本発明の化合物(例えば、アナキンラ)を含有する。
【0178】
本明細書における液体組成物は、送達装置と共にそのままで使用することができるか、又は、例えばスプレードライの方法によって調製されるアナキンラを含む薬学的に許容される製剤の調製に使用することができる。Maa et al., Curr. Pharm. Biotechnol., 2001, 1, 283-302に開示された医薬投与用のスプレー凍結乾燥タンパク質の方法が本明細書に取り込まれる。別の実施形態では、本明細書の液体溶液を凍結スプレードライし、スプレードライ生成物を、個体の下気道に投与した場合に治療上有効である分散性アナキンラ含有粉末として収集する。
【0179】
本発明の化合物及び医薬組成物は、併用療法で採用され得、すなわち、化合物及び医薬組成物は、1又は複数の他の所望の治療法又は医療手順と同時に、その前に、又はその後に投与され得る。併用レジメンで採用する治療法(治療薬又は手順)の特定の組合せは、所望の治療薬及び/又は手順の適合性、及び達成される所望の治療効果を考慮に入れる。採用される治療法は、同じ障害に対して所望の効果を達成し得ることもまた理解されよう(例えば、本発明の化合物は、別の抗がん剤と同時に投与されてもよい)。
【0180】
本発明はまた、本発明の医薬組成物の成分の1又は複数で充填された1又は複数の容器を含む、医薬パック又はキットを提供する。所望により、そのような容器には、医薬品又は生物学的製品の製造、使用、又は販売を規制する政府機関によって規定された様式の通知が関連付けられ得、その通知は、ヒト投与のための製造、使用、又は販売の機関による承認を反映する。
【0181】
剤形
本発明は、上気道及び下気道内の炎症性障害を治療するのに好適な炎症促進性阻害剤(例えば、アナキンラ)を含む剤形を提供する。剤形は、例えば、スプレー、エアロゾル、ナノ粒子、リポソーム、又は当業者に公知の他の形態として製剤化され得る。例えば、上記のRemington’s Pharmaceutical Sciences; Remington: The Science and Practice of Pharmacy; Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems by Howard C., Ansel et al., Lippincott Williams & Wilkins; 7th edition (Oct.1,1999)を参照されたい。
【0182】
概して、障害の急性治療に使用される剤形は、同じ疾患の慢性治療に使用される剤形よりも、それが含む活性成分の1又は複数を大量に含有し得る。さらに、予防的及び治療的に有効な剤形は、異なる種類の障害の間で異なり得る。例えば、治療上有効な剤形は、細菌感染に関連した下気道障害を治療することを意図する場合、適切な抗菌作用を有する化合物を含有し得る。本発明に包含される特定の剤形が互いに異なるこれらの方法及び他の方法は、当業者には容易に明らかであろう。例えば、その全体が参照により本明細書に取り込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 2005, Mack Publishing Co.; Remington: The Science and Practice of Pharmacy by Gennaro, Lippincott Williams&Wilkins; 20th edition(2003); Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems by Howard C.Ansel et al., Lippincott Williams & Wilkins; 7th edition (Oct.1,1999);及びEncyclopedia of Pharmaceutical Technology, edited by Swarbrick, J. & J. C. Boylan, Marcel Dekker, Inc., New York, 1988を参照されたい。
【0183】
本発明に包含される剤形を提供するために使用され得る好適な非薬効成分(例えば、担体及び希釈剤)及び他の材料は、薬学の当業者に周知であり、所与の医薬組成物又は剤形が適用される特定の組織に依存する。これを念頭に置いて、典型的な非薬効成分としては、これらに限定されないが、非毒性であり、薬学的に許容される、ローション、チンキ、クリーム、エマルジョン、ゲル、又は軟膏を形成するための、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油、及びこれらの混合物が挙げられる。乳化剤、防腐剤、酸化防止剤、ゲル形成剤、キレート剤、保湿剤、又は保水剤もまた、必要に応じて医薬組成物及び剤形に添加され得る。そのような追加の成分の例は当技術分野で周知である。例えば、上記のRemington’s Pharmaceutical Sciences; Remington: The Science and Practice of Pharmacy; Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systemsを参照されたい。
【0184】
粉末及びスプレーは、本発明の化合物(例えば、アナキンラ)に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物などの非薬効成分を含有し得る。スプレーは、クロロフルオロ炭化水素、並びにブタン及びブタンなどの揮発性非置換炭化水素などの慣用的な噴霧剤を追加的に含有し得る。
【0185】
具体的な実施形態では、本発明は、下気道への投与のための製剤を提供する。通常、組成物は、ビヒクルと組み合わせて活性化合物(群)を含むか、又は活性化合物は好適な担体系に組み込まれる。組成物を調製するための薬学的に不活性なビヒクル及び/又は非薬効成分としては、例えば、ホウ酸又はホウ酸塩などの緩衝剤、活性化合物の最適な安定性又は溶解度を得るためのpH調整剤、担体としてのラクトース、塩化ナトリウム又はホウ酸塩などの浸透圧調整剤、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、又はポリアクリルアミドなどの粘度調整剤、ピーナッツ油、ヒマシ油、及び/又は鉱油を含むビヒクルなどの油性ビヒクルが挙げられる。活性原薬のエマルジョン及び懸濁液もまた組成物中に存在し得る。これらの場合、組成物は、安定化剤、分散剤、湿潤剤、乳化剤、及び/又は懸濁化剤をさらに含み得る。
【0186】
追加の構成成分は、本発明の活性成分(例えば、アナキンラ)による処置の前に、処置と同時に、又は処置に続いて使用され得る。例えば、浸透促進剤を使用して、活性成分を組織に送達するのを助けることができる。好適な浸透促進剤としては、これらに限定されないが、アセトン;エタノール、オレイル、及びテトラヒドロフリルなどの様々なアルコール;ジメチルスルホキシドなどのアルキルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドンなどのピロリドン;Kollidonグレード(Povidone、Polyvidone);並びに尿素が挙げられる。
【0187】
医薬組成物又は剤形のpHはまた、1又は複数の活性成分の送達及び/又は安定性を改善するために調整され得る。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度、又は浸透圧を調整して、送達を改善することができる。ステアリン酸塩などの化合物を医薬組成物又はまた、剤形に添加して、1又は複数の活性成分の親水性又は親油性を有利に変化させて送達を改善することもできる。これに関して、ステアリン酸塩はまた、乳化剤又は界面活性剤として、製剤のための脂質ビヒクルとしても役立ち得る。活性成分の異なる塩、水和物、又は溶媒和物を使用して、得られる組成物の特性をさらに調整することができる。
【0188】
対象への投与
特定の方法と組み合わせて有効となる本発明の化合物又は組成物の量は、例えば、障害の性質及び重症度、並びに活性成分(群)を投与する装置によって変化する。頻度及び投与量はまた、年齢、体重、応答、及び対象の過去の病歴などの、各対象に固有の要因に従って変動する。有効用量は、インビトロ試験系又は動物モデル試験系に由来する用量応答曲線から外挿され得る。好適なレジメンは、そのような要因を考慮し、かつ例えば文献に報告され、the Physician’s Desk Reference (60th ed., 2006)に推奨されている投与量に従うことによって当業者によって選択され得る。
【0189】
一般に、本明細書に記載の状態に対する本発明の化合物の推奨される1日用量範囲は、好ましくは1日1回用量として、又は1日を通して分割用量として与えられる、1日当たり約0.01mg~約200mgの範囲内である。ある実施形態では、1日用量は、1日2回又は1日3回の等分用量で投与される。具体的には、1日用量範囲は、1日当たり約100マイクログラム~約150ミリグラム、より具体的には1日当たり約50ミリグラム~約80ミリグラムであるべきである。当業者には明らかであるように、場合によっては、本明細書に開示される範囲外の活性成分の投与量の使用が必要とされる場合がある。さらに、臨床医又は治療医が関与する場合、臨床医又は治療医は、個々の対象の応答と併せて治療を中断、調整、又は終了する方法及び時期を知っていることに留意されたい。
【0190】
いくつかの実施形態では、IL-1Ra(例えば、アナキンラ)の有効量は、1日当たり約0.1mg~約100mg、1日当たり約0.1mg~約150mg、又は1日当たり約01mg~約80mgである。組成物を投与するための有効な投与量及びスケジュールは経験的に決定されてもよく、そのような決定を行うことは当業者の技術の範囲内である。当業者は、投与されなければならない任意の組成物の投与量が、例えば、組成物を投与される哺乳動物、投与経路、使用される特定の組成物(他の薬物、及び哺乳動物に投与される他の薬物の同時投与を含む)に応じて変化することを理解するであろう。
【0191】
あるいは、投与される投与量(例えば、IL-1Ra)は、既知の因子、例えば、特定の薬剤の薬力学的特性など、並びにその投与様式及び投与経路;レシピエントの年齢及び健康状態;症状の性質及び程度、併用治療の種類、治療の頻度、及び所望の効果に依存して変動し得る。一例として、哺乳動物の治療は、1日当たり、0.01~200mg、又は0.01mg~100mg、例えば、0.025mg、0.05mg、0.075mg、0.1mg、0.125mg、0.25mg、0.50mg、0.75mg、1.0mg、1.125mg、1.25mg、1.5mg、2mg、2.5mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、21mg、22mg、23mg、24mg、25mg、26mg、27mg、28mg、29mg、30mg、40mg、45mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mgなどのIL-1Ra(例えば、アナキンラ)の1回投与量又は周期的投与量を、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、14日目、15日目、16日目、17日目、18日目、19日目、20日目、21日目、22日目、23日目、24日目、25日目、26日目、27日目、28日目、29日目、30日目、31日目、32日目、33日目、34日目、35日目、36日目、37日目、38日目、39日目、若しくは40日目のうちのいずれかの日に、又は代替的若しくは追加的に、1週目、2週目、3週目、4週目、5週目、6週目、7週目、8週目、9週目、10週目、11週目、12週目、13週目、14週目、15週目、16週目、17週目、18週目、19週目、20週目、21週目、22週目、23週目、24週目、25週目、26週目、27週目、28週目、29週目、30週目、31週目、32週目、33週目、34週目、35週目、36週目、37週目、38週目、39週目、40週目、41週目、42週目、43週目、44週目、45週目、46週目、47週目、48週目、49週目、50週目、51週目、若しくは52週目のうちのいずれかの週に、又は代替的若しくは追加的に、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、11年、12年、13年、14年、15年、16年、17年、18年、19年、若しくは20年のうちのいずれかの年に、又はこれらの任意の組合せで、単回注入用量又は反復用量を用いて提供され得る。特定の組成物の治療有効量は、対象に関連する因子を充分に考慮して当業者によって決定することができることがさらに理解されよう。いくつかの具体的な実施形態では、IL-1Ra(例えば、アナキンラ)の有効量は、1日当たり約5mg~約80mgである。
【0192】
当業者によって容易に知られているように、特定の組成物の異なる治療有効量は、異なる疾患に適用可能であり得る。同様に、対象の疾患に応じて、異なる治療有効化合物が特定の組成物に含まれ得る。同様に、そのような障害を予防、管理、治療、又は改善するのに充分であるが、しかし本発明の化合物に関連した有害作用を引き起こすには不充分であるか、又は低減するのに充分な量もまた、上記の投与量及び投与頻度スケジュールに包含される。さらに、対象が複数用量の本発明の化合物又は組成物を投与される場合、全ての用量が同じである必要はない。例えば、対象に投与される用量は、化合物の予防効果又は治療効果を改善するために増加されてもよく、又は特定の対象が経験している1又は複数の副作用を低減するために減少されてもよい。
【0193】
様々な実施形態では、治療剤(例えば、予防剤又は治療剤)は、5分間未満の間隔、30分間未満の間隔、1時間の間隔、約1時間の間隔、約1時間~約2時間の間隔、約2時間~約3時間の間隔、約3時間~約4時間の間隔、約4時間~約5時間の間隔、約5時間~約6時間の間隔、約6時間~約7時間の間隔、約7時間~約8時間の間隔、約8時間~約9時間の間隔、約9時間~約10時間の間隔、約10時間~約11時間の間隔、約11時間~約12時間の間隔、約12時間~18時間の間隔、18時間~24時間の間隔、24時間~36時間の間隔、36時間~48時間の間隔、48時間~52時間の間隔、52時間~60時間の間隔、60時間~72時間の間隔、72時間~84時間の間隔、84時間~96時間の間隔、又は96時間~120時間の間隔で投与される。ある特定の実施形態では、医師訪問又は臨床訪問が関与する場合、2種類以上の治療剤(例えば、予防剤又は治療剤)が同じ対象訪問内で投与される。治療法は同時に投与され得る。
【0194】
ある特定の実施形態では、本発明の1又は複数の化合物及び1又は複数の治療剤(例えば、予防剤又は治療剤)は、周期的に投与される。周期的治療法は、第1の治療剤(例えば、第1の予防剤又は治療剤)を一定期間投与し、続いて第2の治療剤(例えば、第2の予防剤又は治療剤)を一定期間投与し、続いて第3の治療剤(例えば、第3の予防剤又は治療剤)を一定期間投与することなどに関与し、薬剤のうち1種類に対する耐性の発生を減少させて、薬剤のうち1種類の副作用を回避若しくは減少させ、及び/又は治療の有効性を改善するために、この連続投与、すなわちサイクルの繰り返しに関与する。
【0195】
ある特定の実施形態では、本発明の同じ化合物の投与が繰り返されてもよく、この投与は、少なくとも1日間、2日間、3日間、5日間、10日間、15日間、30日間、45日間、2ヶ月間、75日間、3ヶ月間、又は6ヶ月間の間隔が空けられてもよい。他の実施形態では、同じ予防剤又は治療剤の投与を繰り返してもよく、この投与は、少なくとも1日間、2日間、3日間、5日間、10日間、15日間、30日間、45日間、2ヶ月間、75日間、3ヶ月間、又は6ヶ月間の間隔が空けられてもよい。
【0196】
具体的な実施形態では、本発明は、障害を予防又は治療する方法(例えば、下気道炎症性障害又はその症状)であって、投与を必要とする対象に、100マイクログラム以上、好ましくは250マイクログラム以上、500マイクログラム以上、1000マイクログラム以上、10ミリグラム以上、20ミリグラム以上、30ミリグラム以上、40ミリグラム以上、50ミリグラム以上、60ミリグラム以上、70ミリグラム以上、80ミリグラム以上、又はそれ以上の用量の本発明の化合物の1又は複数を、3日に1回、好ましくは4日に1回、5日に1回、6日に1回、7日に1回、8日に1回、10日に1回、2週間に1回、3週間に1回、又は1ヶ月に1回投与することを含む、方法を提供する。
【0197】
製造品
本発明は、製造品を包含する。本発明の典型的な製造品は、本発明の組成物又は化合物の単位剤形を含む。ある実施形態では、単位剤形は、有効量の本発明の組成物又は化合物、及び薬学的に許容される担体又は非薬効成分を含有する容器、好ましくは滅菌容器である。製造品は、予防、治療、又は問題の障害に関連する有益な結果を導出する方法について、医師、技術者、消費者、対象、又は患者にアドバイスする、組成物又は化合物又は他の情報材料の使用に関するラベル又は印刷された説明書をさらに含み得る。製造品は、これらに限定されないが、実際の用量、モニタリング手順、及び他のモニタリング情報を含む、投与レジメンを示すか又は示唆する説明書を含むことができる。製造品はまた、別の予防剤又は治療剤の単位剤形、例えば、有効量の別の予防剤又は治療剤を含有する容器をさらに含み得る。具体的な実施形態では、製造品は、有効量の本発明の組成物又は化合物、及び薬学的に許容される担体又は非薬効成分を含有する容器、並びに有効量の別の予防剤又は治療剤、及び薬学的に許容される担体又は非薬効成分を含有する容器を含む。他の予防剤又は治療剤の例としては、これらに限定されないが、上に列挙したものが挙げられる。好ましくは、製造品に含まれる包装材料及び容器は、保存及び輸送中の製品の安定性を保護するようにデザインされる。
【0198】
本発明の製造品は、単位剤形を投与するのに有用な装置をさらに含み得る。そのような装置の例としては、これらに限定されないが、シリンジ、乾燥粉末吸入器、定量吸入器及び非定量吸入器、並びにネブライザーが挙げられる。
【0199】
本発明の製造品は、1又は複数の活性成分(例えば、本発明の化合物)を投与するために使用することができる、薬学的に許容されるビヒクル又は消耗性ビヒクルをさらに含み得る。例えば、活性成分が、下気道投与のために再構成される固体形態で提供される場合、製造品は、活性成分が溶解され得る好適なビヒクルの密封容器を含み得る。下気道投与には、微粒子を含まない滅菌溶液が好ましい。薬学的に許容されるビヒクルの例としては、これらに限定されないが、注入用USP水;これらに限定されないが、塩化ナトリウム注入液、リンゲル注入液、デキストロース注入液、デキストロース及び塩化ナトリウム注入液、並びに乳酸加リンゲル注入液などの水性ビヒクル;これらに限定されないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールなどの水混和性ビヒクル;並びに、これらに限定されないが、トウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジルなどの非水性ビヒクルが挙げられる。
【0200】
本発明の別の実施形態では、本明細書に記載され問題に関連する病理学的状態を治療するのに有用な材料を含有する、製造品及びキットが提供される。製造品はラベルを有する容器を含む。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、及び試験管が挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの種々の材料から形成されてもよい。容器は、例えば炎症性障害を治療するのに有効な少なくとも1種類の活性化合物を有する組成物を保持する。組成物中の活性剤は炎症促進性サイトカイン阻害剤であり、組成物は1又は複数の作用できる活性剤を含有し得る。容器上のラベルは、組成物が、例えば、下気道炎症性障害を治療するために使用されることを示し、上述のものなどのインビボでの使用のための指示を示し得る。
【0201】
いくつかの実施形態では、吸入器を具体的に組み込む製造品及びキットが提供される。吸入器は、好ましくは、咽頭及び上気道への薬物分布を最小限に抑えながら、本発明の化合物又は組成物を下気道内の特定の部位に送達するのに有効である。送達装置は、これらに限定されないが、フィルター、針、シリンジ、バルブ、噴霧器、鼻アダプタ、電子ネブライザー、メーター、発熱体、リザーバー、電源、及び使用説明書付きの添付文書を含む、ある特定の部品を組み込み得る。
【0202】
本発明のキットは、上記の容器を含み、薬学的に許容される担体若しくは緩衝剤を含む第2の容器又は第3の容器、投与リザーバー、又は界面活性剤もまた含み得る。キットは、他の緩衝剤、希釈剤、及びフィルター、針、シリンジ、バルブ、噴霧器を組み込んだ、特に下気道に送達するための装置;並びに使用説明書付きの添付文書を含む、商業的観点及びユーザの観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0203】
送達装置
本発明の一般的な態様は、特に下気道への組成物の局所送達、及び当該投与を達成する送達装置である。本発明の送達装置は、組成物の局所送達のための方法を提供し、それにより、組成物の1又は複数の薬理学的な活性剤又は局所治療は、特に下気道の粘膜付近において局所効果を有し得る。局所疾患に対する局所療法の利点としては、活性成分の全身曝露に起因する有害作用の欠如が挙げられる。
【0204】
肺投与の場合、好ましくは、少なくとも1種類の炎症促進性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)が、下気道に到達するのに有効な粒径で送達される。本発明の炎症促進性サイトカイン阻害剤及び組成物を投与するための吸入装置のいくつかの望ましい特徴がある。具体的には、吸入装置による送達は、一般に信頼性があり、再現性があり、かつ正確である。吸入装置は、所望により、良好な呼吸性のために、例えば約10ミクロン未満、好ましくは約3ミクロン~約5ミクロンの小さな乾燥粒子、又は小さなストークス半径を有する乾燥粒子を送達することができる。
【0205】
本発明によれば、少なくとも1種類の炎症促進性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)が、吸入による治療剤の投与のための当該分野で公知の種々の吸入装置のいずれかによって送達され得る。エアロゾル化された製剤を患者の下気道に沈着させることができるこれらの装置としては、これらに限定されないが、定量吸入器、スプレー、ネブライザー、及び乾燥粉末生成器が含まれる。炎症促進性サイトカイン阻害剤を含む、タンパク質及び小分子の肺投与に好適な他の装置もまた、当技術分野で公知である。全てのそのような装置は、エアロゾル中の炎症促進性サイトカイン阻害剤の分散に好適な製剤を使用することができる。そのようなエアロゾルは、ナノ粒子、微粒子、溶液(水性及び非水性の両方)、又は固体粒子を含み得る。
【0206】
AERx Aradigm、Ultraventネブライザー(Mallinckrodt)、及びAcorn IIネブライザー(Marquest Medical Products)(その全体が参照により本明細書に取り込まれる、米国特許第5,404,871号、国際公開第WO1997/22376号)のようなネブライザーは、溶液からエアロゾルを生成する。いくつかの実施形態では、ネブライザーは、Monaghan Aeroeclipse II Breath Activated Jet Nebulizer、又は振動メッシュネブライザーであるPhilips InnoSpire GOである。いくつかの実施形態では、ネブライザーは、メッシュを使用する、iNeb AAD及びiNeb Advanceなどの次世代Philips装置である。iNeb AADは、米国ではVentavis(Actelion)について承認適応されており、欧州ではPromixin(CFについてはコリスチン)について承認適応されており、その両方は適応症内で排他的であり、かつ適応内である。他の実施形態では、ネブライザーは、PARI eFlow(登録商標)又はAerogen Soloである。
【0207】
いくつかの実施形態では、当技術分野で知られているような(その全体が参照により本明細書に完全に取り込まれる、米国特許第4,668,218号、欧州特許第237507号、国際公開第WO1997/25086、国際公開第WO1994/08552、米国特許第5,458,135号、及び国際公開第WO1994/06498号)混合粉末の呼吸作動を使用する任意の好適な乾燥粉末吸入器を使用し得る。
【0208】
市販の吸入装置のこれらの特定の例は、本発明の実施に好適な特定の装置の代表であることを意図しており、かつ本発明の範囲を限定することを意図していない。いくつかの実施形態では、少なくとも1種類の炎症促進性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)を含む組成物は、乾燥粉末吸入器又はスプレーによって送達される。他の実施形態では、少なくとも1種類の炎症促進性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)を含む組成物は、エアロゾル化ネブライザーによって送達されるエアロゾル化された製剤である。
【0209】
再度、本発明の組成物は、送達装置によって(例えば、経口吸入器又は経鼻吸入器、エアロゾル生成器、経口乾燥粉末吸入器、光ファイバースコープを介して、又は外科的介入中にシリンジを介して)哺乳動物の下気道に局所スプレー又は粉末として投与され得る。下気道への薬物分布が可能なこれらの多数の薬物送達装置には、液体組成物、半固体組成物、及び固体組成物の組成物が使用され得る。研究者らは、下気道における沈着部位及び沈着領域が、投与様式、製剤の粒径、及び送達される粒子の速度などの送達装置に関連するいくつかのパラメータに依存することを見出した。これらは、下気道に送達された治療薬の分布及びクリアランスを試験するために当業者によって使用され得るいくつかのインビトロ及びインビボでの方法を記載しており、これらは全て、その全体が本明細書に取り込まれる。したがって、特定の指示、技術、及び主題に対する1又は複数の利点を考慮して、これらの装置のいずれかを本発明で使用するために選択することができる。これらの送達装置としては、これらに限定されないが、エアロゾルを生成する装置、ネブライザー、並びに他の定量吸入器及び非定量吸入器が挙げられる。
【0210】
一般に、吸入スプレー薬生成のための現在の容器閉鎖システムのデザインとしては、スプレープルームの生成のための機械的補助若しくは動力補助及び/又は患者の吸気からのエネルギーを用いて、予め定量された提示と装置で定量された提示の両方が挙げられる。予め定量された提示は、製造中又は使用前に患者によってその後装置に挿入される、ある種のユニット(例えば、単一のブリスター、複数のブリスター、又は他の空洞)で事前に測定された用量又は用量画分を含有し得る。典型的な装置定量ユニットは、患者によって活性化された場合に装置自体によって定量スプレーとして送達される、複数回投与に充分な製剤を含有するリザーバーを有する。
【0211】
本発明のある実施形態は、そのような治療を必要とする対象の特に下気道の粘膜に組成物を分布可能である、送達装置の使用である。いくつかの実施形態では、送達装置は、そのような治療を必要とする対象の特に下気道の粘膜に組成物を分布可能であり、少量の組成物が咽頭及び上気道に到達する。いくつかの実施形態では、送達装置は、そのような治療を必要とする対象の特に下気道の粘膜に組成物を分布さ可能であり、最小量が咽頭後部及び上気道に分布される。いくつかの実施形態では、送達装置は、そのような治療を必要とする対象の特に下気道の粘膜に組成物を分布可能であり、無視できる量が咽頭後部及び上気道に分布される。
【0212】
本発明はまた、反復投与に特に適しており、かつ安定剤及び防腐剤と共に、又は伴わずに、多くの用量(通常は、60回~最大約130回までの用量、又はそれを超える用量)を提供することができる、複数用量定量吸入器又は非定量吸入器を組み込む。
【0213】
スプレーとしての炎症促進性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)を含む組成物の投与は、少なくとも1種類の炎症促進性サイトカイン阻害剤の懸濁液又は溶液を、加圧下においてノズルに通すことによって生成され得る。ノズルのサイズ及び構成、印加圧力、及び液体供給速度は、所望の排出及び粒径を達成して、特に下気道における沈着を最適化するように選択され得る。エレクトロスプレーは、例えば、キャピラリー供給又はノズル供給に関連する電界によって生成され得る。有利には、スプレーによって送達される少なくとも1種類の炎症促進性サイトカイン阻害剤組成物の粒子は、約20ミクロン未満、好ましくは約10ミクロン未満、最も好ましくは約3ミクロン~約5ミクロンの範囲の粒径を有するが、装置、組成物、及び対象の必要性に応じて他の粒径が適切であり得る。
【0214】
ジェットネブライザー及び超音波ネブライザーを含む液体製剤用の市販のネブライザーもまた、下気道への投与に有用であり得る。液体製剤を直接噴霧し、再構成後に凍結乾燥粉末を噴霧してもよい。さらに、組成物の液体製剤を、患部に直接配置した気管支鏡を通して滴下してもよい。
【0215】
当業者は、本発明の方法が、本明細書中に記載されていない装置を介した少なくとも1種類の炎症促進性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)組成物の下気道投与によって達成され得ることを認識するであろう。本発明にはまた、単回投与に特に適した単位用量定量スプレー装置及び非定量スプレー装置がを組み込まれる。これらの装置は、通常、急性短期処置(すなわち、急性増悪)及び単回用量送達(すなわち、長時間作用性組成物)に使用され、かつ組成物の液体製剤、粉末製剤、又は両方の製剤の混合物を収容することができる。しかしながら、ある特定の状況では、これらの単位用量装置は、特定の方法で繰り返し使用される場合、複数用量装置よりも好ましい場合がある。
【0216】
本発明の別の実施形態は、対象の下気道炎症性疾患を治療するのに適切な組成物を予め充填した、単回投与シリンジを提供する。当該事前充填シリンジは滅菌又は非滅菌であり得、下気道療法を必要とする対象への手順中の用量投与に使用され得る。シリンジが好ましい用途の例としては、これに限定されないが、内視鏡を介した組成物の分布が含まれる。これらの例は限定することを意図するものではなく、当業者は、組成物を特に下気道に送達するための他の選択肢が存在し、これらが本明細書に取り込まれることを理解するであろう。
【0217】
本発明のある実施形態では、本明細書に記載の1又は複数の治療剤を含有する組成物が、下気道へ直接投与される。そのような投与は、組成物を含有するエアロゾルを作製し、下気道に直接設置され得る、肺内エアロゾル化装置の使用を介して行ってもよい。例示的なエアロゾル化装置は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる、米国特許第5,579,578号;同第6,041,775号;同第6,029,657号;同第6,016,800号、及び同第5,594,987号に開示されている。このようなエアロゾル化装置はサイズが充分に小さいため、下気道に、例えば気管内チューブに、又はさらには気管に直接挿入することができる。ある実施形態では、エアロゾル化装置は、肺の気管分岐部、又は第1の分岐部の近くに配置されてもよい。別の実施形態では、エアロゾル化装置は、肺の特定の領域、例えば個々の気管支、細気管支、又は肺葉を標的とするように配置される。装置のスプレーが肺に直接導入されるため、鼻腔、口、喉、及び気管の壁への沈着に起因するエアロゾルの沈着に起因する損失が回避される。最適には、このような好適なエアロゾル化装置によって生成される液滴サイズは、超音波ネブライザーによって生成される液滴サイズよりも幾分大きい。したがって、液滴が吐き出されにくくなり、したがって送達効率は実質的に100%になる。さらに、組成物の送達は、非常に均一な分布パターンを有する。
【0218】
ある実施形態では、そのような肺内エアロゾル化装置は、エアロゾルとして液体を送達するために圧力生成器に取り付けられたエアロゾル化装置を含み、このエアロゾル化装置は、気管内に直接挿入されるか、又は気管内に配置された気管内チューブ若しくは気管支鏡に挿入されることによって、肺に近接して配置することができる。そのようなエアロゾル化装置は、最大約2000psiの圧力で動作してもよく、12μmの中程度の粒径を有する粒子を生成する。
【0219】
代替的な実施形態では、そのような肺内エアロゾル化装置は、実質的に細長いスリーブ部材と、実質的に細長いインサートと、実質的に細長い本体部材とを含む。スリーブ部材は、対応するねじ付き部材であるインサートを受けるように適合された、ねじ山を備えた内面を含む。ねじ付きインサートは実質的に螺旋状のチャネルを提供する。本体部材は、その第1の端部に空洞を含み、この空洞は、その第2の端部において端壁によって終端する。端壁は、端壁を通して延びるオリフィスを含む。本体部材は、スリーブ部材と接続されて、本発明のエアロゾル化装置を提供する。エアロゾル化剤は、アナキンラを含有する組成物の投与のための対象の気管への挿入に対応する大きさである。装置の動作のために、エアロゾル化装置は、好適なチューブによって液圧駆動器具と接続される。液圧駆動器具は、エアロゾル化装置からスプレーされる液体材料(例えば、1又は複数の炎症促進性サイトカイン阻害剤を含有する組成物)をそこから通過させるように適合されている。装置が気管の奥深くに配置されていることに起因して、液体材料は肺に近接してスプレーされることで、結果として、スプレーされた材料の肺への浸透及び分布が改善される。
【0220】
代替的な実施形態では、気管内挿入用のサイズのそのようなエアロゾル化剤は、アナキンラを含有する組成物を下気道に(例えば、肺に近接して)直接スプレーするために適合されている。エアロゾル化装置は、液体組成物を送達するための液圧駆動器具と接続して配置される。エアロゾル化装置は、第1の端部及び第2の端部を画定し、かつ長手方向に延伸する開口部を含む、一般に細長いスリーブ部材を含む。スリーブ部材の第1の端部は、液圧駆動器具に接続して配置される。一般に細長いインサートもまた提供される。一般に細長いインサートは、第1の端部及び第2の端部を画定し、かつスリーブ部材の長手方向に延びる開口部の少なくとも一部内に受け入れられる。インサートは、第1の端部から第2の端部まで延在するその外面を取り囲むように設けられた、少なくとも1つの実質的に螺旋状のチャネルを有する外面を含む。インサートの実質的に螺旋状のチャネルは、液体材料を通過させるように適合されており、液体材料はスリーブ部材で受け入れられる。スリーブ部材に接続された一般に細長い本体部材も含まれる。本体部材は、その第1の端部に設けられた空洞を含み、この空洞は、その第2の端部に隣接する端壁で終端する。端壁は、液体材料をスプレーするためのオリフィスを内部に有するように設けられており、液体材料はインサートから受け入れられる。スリーブ部材、インサート、及び本体部材の部分は、組み合わせて、気管内挿入を可能にするのに充分なサイズである。そのようなエアロゾル化装置を用いる方法は、エアロゾル化装置を中空チューブ部材の第1の端部に接続する工程、及び中空管部材の第2の端部を液圧駆動器具に接続する工程を含む。本方法は、エアロゾル化装置を気管内に、又は気管内に設けられた部材内に設ける工程、次いで、1又は複数の炎症促進性サイトカイン阻害剤を含有する組成物をそこからスプレーするために液圧駆動器具を作動させる工程をさらに含む。
【0221】
代替的な実施形態では、1又は複数の炎症促進性サイトカイン阻害剤を含有する粉末用量組成物を、粉末ディスペンサーの使用を介して下気道へ直接投与する。例示的な粉末ディスペンサーは、その全体が本明細書に取り込まれる、米国特許第5,513,630号、同第5,570,686号、及び同第5,542,412号に開示されている。そのような粉末ディスペンサーは、アクチュエータと接続されるように適合されており、アクチュエータは粉末用量を分布させるためのある量のガスを導入する。ディスペンサーは、粉末用量を受け取るためのチャンバ、及びアクチュエータがガスをディスペンサーに導入する場合にのみ粉末用量の通過を可能にするためのバルブを含む。粉末用量は、ディスペンサーからチューブを介して対象の下気道に送られる。粉末用量は気管分岐部の近くで気管内に送達されてもよく、これにより、例えば口、喉、及び気管などへの粉末用量の大きな損失の可能性が迂回される。さらに、動作中、アクチュエータから送られるガスは、肺にわずかに送気する働きをし、これにより粉末浸透が増加する。気管内挿入のために、チューブは、動物若しくはヒトの患者を含む麻酔された換気対象において、又は意識のある対象において、気管内チューブを介して行うことができ、このチューブは、「催吐(gag)」反射を最小限に抑えるために、好ましくは喉への少用量の局所麻酔薬及び/又はチューブの先端上の少量の麻酔薬を用いて、気管に直接挿入される。
【0222】
ある実施形態では、本明細書に記載の1又は複数の治療剤を含有する組成物を、下気道へ直接投与する。そのような投与は、組成物を含有するエアロゾルを作製し、下気道に直接設置され得る、エアロゾル化装置の使用を介して行ってもよい。例示的なエアロゾル化装置は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる、米国特許第5,579,758号;同第6,041,775号;同第6,029,657号;同第6,016,800号;同第5,606,789号;及び同第5,594,987号に開示されている。したがって、本発明は、1又は複数の炎症促進性サイトカイン阻害剤を含有する組成物を、エアロゾル化装置によって下気道へ直接投与する方法を提供する。
【0223】
特に、本発明のある実施形態は、「気管内エアロゾル化」装置の新しい用途であり、この方法論は、気管への挿入に好適な長く比較的細いチューブの先端で微細なエアロゾルを産生することに関与する。したがって、本発明は、下気道障害の予防、治療、及びケアにおいて下気道で使用するための、本明細書で適合されたマイクロカテーテルにおけるこのエアロゾル化技術の新しい使用方法を提供する。
【0224】
本発明の別の実施形態では、エアロゾル化マイクロカテーテルが、炎症促進性サイトカイン阻害剤を含有する組成物を投与するために使用される。気管への挿入に好適な長く比較的細いチューブの先端で微細なエアロゾルを産生することに関与する、「気管内エアロゾル化」と呼ばれるそのようなカテーテル及びその使用の例は、米国特許第5,579,758号;同第5,594,987号;同第5,606,789号;同第6,016,800号;及び、同第6,041,775号に開示される。
【0225】
さらなる実施形態では、マイクロカテーテルエアロゾル化装置(米国特許第6,016,800号及び同第6,029,657号)の新しい用途は、鼻腔及び副鼻腔送達のために適合されており、下気道障害の治療、予防、及び診断において生物活性剤(例えば、アナキンラ)を送達するために使用される。このマイクロカテーテルエアロゾル化装置の1つの利点は、潜在的に小さいサイズ(直径0.014インチ)であり、したがってヒトの軟性内視鏡(直径1mm~2mm)又は硬性内視鏡の作業チャネルに容易に挿入することができ、それによって、副鼻腔の小孔に部分的又は完全に誘導することができる。
【0226】
当業者は、本発明の方法が、本明細書に記載されていない装置を介したアナキンラ組成物の下気道投与によって達成され得ることを認識するであろう。
【0227】
本発明の組成物及び化合物の使用
本発明は、本発明の化合物(例えば、アナキンラ)又は組成物を、別のモダリティ、例えば障害の予防、治療、管理、若しくは改善に有用であることが知られているか、又はそれまで使用されてきているか若しくは現在使用されている、又は障害に付随する不快感若しくは疼痛の軽減に使用されている、予防剤若しくは治療剤などと組み合わせて用いて、障害(例えば、下気道の炎症性障害)を予防、管理、治療、又は改善する方法を提供する。組成物又は化合物の使用様式に応じて、本発明を、別のモダリティと同時投与することができるか、又は本発明の組成物又は化合物を、混合し、次いで単一の組成物として対象に投与することができる。当然のことながら、本発明の方法は、外科的切除及び肺移植などのさらに他の治療的使用と組み合わせて採用され得るものと企図される。
【0228】
本方法において、組成物は、下気道の炎症性障害(群)を有すると診断された哺乳動物に投与される。当然のことながら、本発明の方法は、内視鏡モニタリング技術及び治療技術、外科的切除、及び肺移植などのさらに他の治療技術と組み合わせて採用され得るものと企図される。
【0229】
本明細書には、下気道炎症性障害に関する有益な効果を達成し、そのような障害又はその1若しくは複数の症状に関する有益な効果を提供するための、本発明の化合物及び組成物の使用が記載される。本方法は、投与を必要とする対象に、予防有効量又は治療有効量の1又は複数の本発明の化合物又は組成物(群)を投与することを含む。例えば、そのような化合物の投与は、本発明の医薬組成物の1又は複数を介して行うことができる。当然のことながら、本発明の方法は、経口吸入装置又は経鼻吸入装置と組み合わせて用いられ得るものと企図される。重要なことに、本発明の方法は、炎症促進性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)の皮下若しくは静脈内注入、又は他の全身投与経路と組み合わせて用いられ得るものと企図される。しかしながら、内視鏡手技及び処置技術、外科的切除及び肺移植などのさらに他の治療技術は全て本明細書に含まれる。
【0230】
ある実施形態では、障害又はその症状の予防、治療、管理、又は改善を必要とする対象は、障害を有する対象、障害のリスクがあることが知られている対象、障害であると診断されている対象、障害から以前に回復している対象、又は現在の治療に抵抗性である対象である。特定の実施形態では、対象は、遺伝的要因、環境的要因、又はこれらの組合せのために障害を発生しやすい及び/又は発生のリスクがある、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。さらに別の実施形態では、対象は、障害に対する1又は複数の他の治療に対して難治性又は非応答性である。さらに別の実施形態では、対象は、免疫低下した又は免疫抑制された哺乳動物、例えばヒトなどである。
【0231】
同等物
以下の代表的な実施例は、本発明を説明するのを助けることを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図しておらず、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでもない。実際、本明細書に示され記載されたものに加えて、本発明の様々な修正及びその多くのさらなる実施形態は、以下の実施例及び本明細書に引用された科学文献及び特許文献への参照を含むこの文書の全内容から当業者に明らかになるであろう。これらの引用された参考文献の内容は、最新技術を例示することを助けるために参照により本明細書に取り込まれることをさらに理解されたい。以下の実施例は、本発明の様々な実施形態及びその均等物における本発明の実施に適合させることができる重要な追加情報、例示、及びガイダンスを含む。
【実施例
【0232】
本発明のより完全な理解を容易にするために、実施例を以下に提供する。以下の実施例は、本発明を作製及び実施する例示的な様式を示す。しかしながら、同様の結果を得るために代替的な方法を利用することができるので、本発明の範囲は、例示のみを目的とするこれらの実施例に開示された、特定の実施形態に限定されない。
【0233】
実施例1:ALTA-2530標的製品属性(GLP/GMP)
いくつかの実施形態では、ALTA-2530製剤は、本明細書に記載の製品属性を有する。いくつかの実施形態では、ALTA-2530は、手持ち式ネブライザーを用いて送達される噴霧用溶液である。いくつかの実施形態では、ALTA-2530は、Philips InnoSpire GO振動メッシュ(VM)ネブライザーを用いて送達される、噴霧用溶液である。いくつかの実施形態では、ALTA-2530は、前臨床ネブライザー(例えば、Aerogen Solo VMネブライザー)を用いて送達される噴霧用溶液である。いくつかの実施形態では、ALTA-2530は、前臨床施設及び臨床試験施設で生成することができ、かつ投与期間及び24時間の最小使用期間にわたり噴霧に対して安定である、噴霧用の即時調製された溶液製剤である。いくつかの実施形態では、ALTA-2530は、冷蔵を必要とする噴霧保存条件を有する。いくつかの実施形態では、GLP毒物学試験及びGMP臨床試験のために開発されたALTA-2530は、好ましくは、任意のブリッジング試験(例えば、非薬効成分は異ならず、かつ比率はGLP適格性レベルを超えない)を回避するために、同じ又は同等である。いくつかの実施形態では、噴霧GMP臨床製剤の不純物プロファイルは、GLP前臨床試験で適格とされた不純物限界に類似し、かつそれを超えない。いくつかの実施形態では、臨床製剤溶液濃度は、PARI eFlow(登録商標)又はPhilips InnoSpire GOネブライザーを用いて、VMネブライザーから、5分未満で、理想的には2分~3分以内に10mg~40mg(ネブライザーへの薬物電荷として表される)を送達するのに好適である。いくつかの実施形態では、ALTA-2530は、使用期間及び予想される投与期間にわたる化学物質及びエアロゾルの性能安定性によって実証されるような臨床プログラムを支援するための再現性のある送達肺用量及び肺用量を有する。
【0234】
表1は、重要なCMCアクティビティ及び成果物(deliverable)の概要を示す。
【表1】
【0235】
実施例2:ALTA-2530製剤
表2は、ALTA-2530製剤(例えば、アナキンラを含む)の異なる可能な実施形態を示す。

【表2】
【0236】
表3は、ALTA-2530製剤の様々な実施形態についての異なる可能な非薬効成分を示す。
【表3】
【0237】
表4は、ALTA-2530製剤の様々な実施形態に対するチェッカーボードを示す。図2は、噴霧試験のためのALTA-2530溶液の調製手順を示す。
【表4】
【0238】
表5は、ALTA-2530製剤(例えば、アナキンラを含む)の追加の実施形態を示す。
【表5】
【0239】
実施例3:分析開発
いくつかの実施形態では、重要な成果物は、噴霧用ALTA-2530溶液のGLP前臨床プログラム及びGMPフェーズ1臨床プログラムを支援するための開発/最適化及び認定/検証フェーズの適切な分析方法を含む。全ての認定/検証試験はICHガイドラインに従って行われることになる。
【0240】
いくつかの実施形態では、製品の仕様/安定性のための属性及び方法としては、外観、pH、重量オスモル濃度;ペプチドマッピングによる同定;A280によるタンパク質濃度;RPHPLC、SE-HPLC、還元CE-SDS及び非還元CE-SDS、並びにIEX-HPLCによる純度;異物及び粒子状物質並びに不溶性凝集体(subvisible particle);適切な試験期間を用いた、USP601に列挙されている噴霧溶液に対する、NGIによるエアロゾル粒径分布;USP1601及びUSP601に列挙されている呼吸シミュレータを用いた、投与の全期間にわたる、送達された用量;バイオバーデン及び菌体内毒素;効力についての細胞ベースのバイオアッセイが挙げられる。
【0241】
いくつかの実施形態では、製剤開発を支援するための情報のみの試験方法としては、円二色性、粘度、表面張力、製剤密度、Malvern Spraytec又は同等物による液滴サイズ及び分布、動的光散乱(DLS)、DSC、及び濁度が挙げられる。いくつかの実施形態では、即時型の有効成分及びプラセボの支援仕様が得られる。いくつかの実施形態では、全ての検証された方法活性の検証概要レポートが作成される。
【0242】
実施例4:吸入製剤スクリーニング
吸入製剤をスクリーニングするために、肺投与経路のための許容される標的化溶液製剤のpHは、pH5~8である。溶液の重量オスモル濃度は生理学的範囲内(約300mOsm/kg)である。使用される非薬効成分は、肺経路によって「許容される」又は「充分に特徴付けられる」ものであり、承認された肺製品についてFDA不活性成分リストに列挙された濃度範囲/用量内である。非経口グレードの非薬効成分(入手可能な場合)、及び/又は米国、欧州、及び日本を含む主要市場で吸入用の市販製品において現在使用されている吸入グレードの非薬効成分のいずれかが好ましい。物理的安定性スクリーニング試験、ストレス安定性スクリーニング試験、及び製剤濾過試験を含む予備製剤を評価するために段階的アプローチが使用される。予備製剤スクリーニングのために、エアロゾルの性質決定試験に使用される噴霧用の製剤マトリックス及び安定なALTA-2530溶液を同定するための試験が行われる。対照製剤(Kineret)は、これらの試験を通して参照として使用される。
【0243】
予備製剤試験は、図3に示す段階的アプローチに従って行われる。予備製剤試験を行う際に、スクリーニング試験を実施して、エアロゾル性質決定試験で使用される噴霧のための製剤マトリックス及び安定なALTA-2530(例えば、アナキンラを含む)溶液を同定する。いくつかの実施形態では、ALTA-2530(以前はOSP-101)は、承認されたネブライザーを介して送達されるIL-1Raの新規な吸入組成物である。対照製剤(Kineret)を参照として使用する。Kineretは、関節リウマチ(米国、欧州、カナダ、オーストラリア等)及びクリオピリン関連周期性症候群(最大100mg/日、皮下注入)について承認されている。製剤構成成分としては、これらに限定されないが、緩衝剤、安定剤、及び浸透圧調整剤が挙げられる(表4参照)。緩衝剤としては、ヒスチジン、リン酸塩、コハク酸塩、グルタミン酸塩、クエン酸塩、PBS、及びピロリン酸塩が挙げられる。安定剤としては、ポリソルベート20及びポリソルベート80、並びに他の適合性非イオン性界面活性剤、EDTA二ナトリウム、グリセリン、マンニトール、及びトレハロースが挙げられる。浸透圧調整剤としては、塩化ナトリウム及びデキストロースが挙げられる。
【0244】
物理的安定性スクリーニング試験を行う際に、ストレス条件(例えば、凍結/解凍、撹拌)を用いたおよそ10種類の製剤(様々なマトリックス+ALTA-2530+Kineret対照)をスクリーニングして、前臨床忍容性試験に使用される、潜在的なタンパク質製剤マトリックスを同定する。性質決定及びアウトプットとしては、1~2回の凍結/解凍曝露及び撹拌サイクル後の、(ALTA-2530を含む)およそ10種類の製剤の物理的性質決定分析及び化学的性質決定分析(すなわち、外観、関連物質、SEC、DSC、濁度、DLS)が挙げられる。
【0245】
ストレス安定性スクリーニング試験を実施する際、GLP試験で使用するための溶液製剤は、短期温度/時間ストレスベースの安定性を用いて評価される。
【0246】
製剤濾過試験の実施において、リード製剤及びバックアップ製剤が、ストレス試験スクリーニング試験において同定される(最大4種類の組成物;2種類のマトリックス×2種類の濃度)。最大2×0.2μmのフィルタタイプを用いたフィルター適合性試験(すなわち、不純物及び含有量の損失)を行う。結果は、単回濾過及び二重濾過を用いて生成される。
【0247】
物理的安定性スクリーニング試験のために、重要な成果物は、対照としてのKineretマトリックスを用いた前臨床忍容性試験で使用される潜在的なタンパク質製剤マトリックスを同定するために、ストレス条件(例えば、凍結/解凍、撹拌)を用いて、およそ10種類の製剤(様々なマトリックス+ALTA-2530、Kineret対照)をスクリーニングすることを含む。
【0248】
いくつかの実施形態では、性質決定及びアウトプットとしては、1~2回の凍結/解凍曝露及び撹拌サイクル後の、(ALTA-2530を含む)およそ10種類の製剤の物理的性質決定分析及び化学的性質決定分析(すなわち、外観、関連物質、SEC、DSC、濁度、DLS)が挙げられる。いくつかの実施形態では、データを使用して、前臨床忍容性試験で使用される、及び/又は短期安定性試験で使用される、(ALTA-2530を含まない)4種類~6種類のマトリックスを同定する。同定された(IL-1Raを含まない)マトリックス組成物の調製説明書及び製剤構成成分は、前臨床試験施設に提供される。
【0249】
ストレス安定性スクリーニング試験のために、重要な成果物は、前臨床忍容性試験からの結果と組み合わされると共に、短期温度/時間ストレスベースの安定性を評価することによってGLP試験で使用するための溶液製剤を同定する。この製剤の希釈物は第1相臨床試験で使用されると予想される。いくつかの実施形態では、2種類~3種類の保存条件及び(以前に行われていない場合)凍結/解凍による4種類~6種類の製剤(例えば、2種の濃度の2種類~3種類の製剤)が含まれ、初期時間及び3つのプルポイント(pull point)(例えば、T=0、24時間、48時間、7日間)が含まれる。いくつかの実施形態では、ストレス試験条件は、既存のデータ(文献及び物理的安定性スクリーニング試験結果)に基づいて決定される。
【0250】
製剤濾過試験のために、重要な成果物としては、ストレス試験スクリーニング試験で同定されたリード製剤及びバックアップ製剤(最大4種類の組成物;2種類のマトリックス×2種類の濃度)を用いること、最大2×0.2μmのフィルタタイプを用いてフィルター適合性試験(すなわち、不純物及び含有量の損失)を行うことが含まれる。結果は、単回濾過及び二重濾過を用いて生成される。
【0251】
実施例5:エアロゾル性質決定
実施例4の予備製剤スクリーニング試験で同定された製剤を用いて、Philips InnoSpire GOネブライザーを用いて臨床投与をシミュレートするための使用期間(T=0及びT=24時間)並びに投与期間にわたる噴霧に対する安定性を決定する。これらの試験のための単一のネブライザー投入量もまた決定される。前臨床試験施設での操作から試料を評価して、前臨床ネブライザー(Aerogen Solo)を用いて、予想される投与期間(すなわち、前臨床試験のための投薬期間(例えば、0時間、1時間、3時間))にわたる噴霧に対する安定性を評価する。
【0252】
噴霧に対する安定性試験を行うために、(異なる場合)臨床ネブライザー及び前臨床ネブライザーの両方を用いた(製剤スクリーニング試験中に同定されるような)噴霧のための最小2種類及び最大4種類の溶液が特徴付けられる。意図された投与期間及び使用期間にわたって前臨床ネブライザーから生成される不純物プロファイル(試料は前臨床試験施設で行われた工学的操作から提供される)を決定する。意図された投与期間及び使用期間にわたって、臨床用ネブライザー(例えば、改変されたPARI eFlow(登録商標)又はPhilips InnoSpire GO)から生成された不純物プロファイルもまた決定される。溶液粘度、密度、濁度、及び表面張力のデータの噴霧前評価を収集し、分析する。T=0時間及びT=24時間での各製剤(冷蔵条件で保存した溶液)の両方のネブライザーについてのデータを収集して、アッセイ及び不純物(SEC及びRP-HPLCによる噴霧前及び噴霧後);物理的性質決定(収集された噴霧溶液及びネブライザー内に残っている溶液としての、噴霧前及び噴霧後の外観及び濁度);Spraytec(商標)によるVMD及びGSD;液体排出速度(LOR);並びに、ネブライザーを空にする、ネブライザーをスパッタする、又はネブライザーを目詰まりさせるまでの報告時間及びこの時点でのネブライザー内のおおよその残量を決定する。
【0253】
最大2種類の製剤(低溶液濃度及び高溶液濃度、同じマトリックス)についての使用期間にわたり、かつ2種類のネブライザー充填体積での、最小3種類の改変されたPARI eFlow(登録商標)又はPhilips InnoSpire GOネブライザーユニットを用いた肺用量及び用量変動は、3種類のネブライザーからAPSD及びGSDを産生すること;USP1601を用いて固定期間(スパッタするための所定の時間)でDDデータ(n=10)を産生すること;肺用量(DD、並びに5μm及び3.5μmのAPSDのカットオフを使用)及び用量変動を推定すること;そして、各固定されたネブライザー充填体積に対する複数のネブライザー充填の関数として肺用量を推定することと、によって推定される。
【0254】
追加の特性評価試験では、ストレス条件(凍結/解凍及び噴霧)を用いて10種類の製剤(+1種類の対照製剤)を試験して、前臨床忍容性試験で使用される2種類~3種類のカスタム希釈剤を同定する(表6参照)。ストレス条件としては、臨床用ネブライザー及びRTに保持され光から保護された関連製剤対照を用いた、2回の凍結/解凍サイクル及び噴霧が挙げられる。各凍結解凍サイクルは1日である。RTでの保存のために5日間のプル(pull)を加え、製剤を光から保護して安定性計画にする。性質決定及び出力としては、各凍結/解凍曝露サイクル及び噴霧の前後の11種類の製剤の外観、pH、A280、RP-HPLC、及びSECについての物理的性質決定分析及び化学的性質決定分析が挙げられる。追加の噴霧前分析としては、粘度、表面張力、及び重量オスモル濃度が挙げられる。データは、前臨床忍容性試験で使用するための(IL-1Raを含まない)2種類~3種類のプラセボマトリックスを同定するために使用され、及び/又は短期安定性試験に使用される。同定された(IL-1Raを含まない)マトリックス組成物の調製物は前臨床試験施設に提供される。
【表6】
【0255】
実施例6:ALTA-2530製剤のエアロゾル性能に対する粘度及びタンパク質濃度
レオロジーを使用して、種々の対照製剤及びALTA-2530製剤の粘度の差を実証した。製剤1~製剤8を粘度について試験した(製剤情報については表5を参照されたい)。図4は、3つの異なる濃度のアナキンラ(2.5mg/mL、20mg/mL、及び50mg/mL;20mg/mL濃度は製剤5についてのみ試験したことに留意されたい)での、8種類の製剤の粘度結果を示す。図4は、アナキンラ濃度が増加するにつれて粘度が増加することを示す。粘度は、50mg/mL濃度の製剤中の糖の存在下でも増加する。EDTA及びヒスチジンは粘度に影響を与えないようであった。
【0256】
表7は、3つの異なるアナキンラ濃度での同様の8種類の製剤についての表面張力、粘度、X50(MMADについての推定値)、Span、LOR、及びFPFについての結果を示す(20mg/mL濃度は製剤5についてのみ試験したことに留意されたい)。表7は、粘度が高いほど、対象の深部気道を標的とするために重要な製剤の液滴サイズが小さくなることを示す。

【表7】
【0257】
表8は、追加のALTA-2530製剤の結果を要約する。表8は、製剤3及び製剤4がより良好に機能する製剤であり、これらは両方ともトレハロースを含んでいたことを示す。
【表8】
【0258】
図5は、Philips InnoSpire GOネブライザーを用いた3つの異なるアナキンラ濃度(2.5mg/mL、20mg/mL、及び50mg/mL;20mg/mL濃度は製剤5についてのみ試験したことに留意されたい)での8種類の製剤(表5参照)についてのX50(MMADの推定値)を示す。図5はアナキンラ濃度の増加がMMADを減少させることを実証する。
【0259】
図6は、エアロゾル性能に対する糖対タンパク質の効果を調べるために、Philips InnoSpire GOネブライザーを用いた、3つの異なるアナキンラ濃度(2.5mg/mL、20mg/mL、及び50mg/mL;20mg/mL濃度はヒスチジン+EDTA+トレハロース製剤についてのみ試験したことに留意されたい)での8種類の異なる製剤(表5参照)の粘度によるX50(MMADの推定値)を示す。図6は、製剤の粘度が増加するにつれてX50が減少することを実証している。粘度はタンパク質濃度の増加と共に増加し、糖もまた粘度に影響を与えることで、糖を含む製剤は粘度を増加させ、それによってX50を減少させる(液滴サイズを小さくする)。
【0260】
図7は、50mg/mLのタンパク質濃度での表5に示す8種類の製剤のX50(MMADの推定値)を示す。噴霧は、Philips InnoSpire GOネブライザーを用いて行った。図7は、ALTA-2530製剤(製剤4~製剤8)が、生理食塩水ベースの対照製剤(製剤1~製剤3)と比較して減少したX50(より小さい粒径)を示したことを示す。
【0261】
したがって、驚くべきことに、トレハロースはALTA-2530製剤の粘度を増加させる(及び液滴サイズを減少させる)ことが見出された。いくつかの実施形態では、トレハロースは、IL-1raタンパク質を安定化し得る。特定の理論に束縛されるものではないが、トレハロースは非還元糖であるため、第一級アミンとの相互作用を排除し、水素結合する能力に起因してタンパク質を安定化することがあり得る。いくつかの実施形態では、トレハロースの代わりに、他の非還元糖をALTA-2530製剤に使用してもよい。いくつかの実施形態では、スクロースを、ALTA-2530製剤中の非還元糖として使用し得る。いくつかの実施形態では、ALTA-2530が乾燥粉末として調製される場合、分子移動度が低いことに起因してスクロースよりも安定性が高くなる可能性があるため、トレハロースがスクロースよりも好ましい場合がある。
【0262】
いくつかの実施形態では、ALTA-2530製剤は、約50mM~約100mM、約100mM~約150mM、約150mM~約200mM、約200mM~約250mM、約250mM~約300mM、約300mM~約350mM、約350mM~約400mM、約3400mM~約450mM、約450mM~約500mM、約500mM~約550mM、又は約550mM超での非還元糖を含む。いくつかの実施形態では、ALTA-2530製剤は、約115mMの非還元糖を含む。いくつかの実施形態では、非還元糖は、トレハロースである。
【0263】
実施例7:振動メッシュネブライザーにわたるALTA-2530製剤の性質決定
改変されたPARI eFlow(登録商標)振動メッシュ(VM)ネブライザー
エアロゾル性能試験は、20mg/mL及び50mg/mLのALTA-2530吸入溶液を噴霧するために、改変されたPARI eFlow(登録商標)振動メッシュ(VM)ネブライザー及び標準的なPARI eFlow(登録商標)コントローラを用いて、ドイツのPARIによって行われた。同様のネブライザー構成及びコントローラ、並びに製品用に開発された分析方法を用いて、5mg/mL及び20mg/mLのALTA-2530吸入溶液のエアロゾル性能並びに噴霧に対する安定性を評価するために確認試験を実施した。調製した製剤は、ALTA-2530吸入溶液中5mg/mL及び20mg/mLのアナキンラ、及びビヒクル対照(20mg/mL活性に相当するカスタム希釈剤で希釈されたプラセボ)を含んでいた。以下の材料、すなわち、ALTA-2530原薬(150mg/mL)、塩化ナトリウム、USP/FCC/EP/BPヒスチジン、USP EDTA二ナトリウム、USPトレハロース、吸入グレードクエン酸一水和物、USP/FCCポリソルベート80(HX2)、USP/NF/EP/JP PARI eFlow(登録商標)振動メッシュ(VM)ネブライザー、PARI eFlow(登録商標)コントローラ、0.2μmPESフィルタアセンブリ、シンチレーションバイアル、ホウケイ酸ガラス、及び尿素スクリューキャップ付き20mLを製剤調製に使用した。カスタム希釈剤及びプラセボを調製して、5mg/mLのアナキンラ(ALTA-2530組成物)、20mg/mLのアナキンラ(ALTA-2530組成物)、及びビヒクル対照を製剤化した。カスタム希釈剤は、ヒスチジン、EDTA二ナトリウム、及びトレハロースから構成されていた。タンパク質供給はKineretに対して後発生物製剤であったが、より大きなPS80濃度を含有していた。プラセボは、EDTA二ナトリウム、ポリソルベート80、クエン酸(無水)、及び塩化ナトリウムで構成された。プラセボは、IL1-Raタンパク質を含まないバルク原薬(150mg/mLのALTA-2530)の組成と一致する。20mg/mLの活性製剤と一致するようにプラセボをカスタム希釈剤で希釈することによって、ビヒクル対照を調製した。全ての製剤を0.2μmのPESフィルタアセンブリを用いて滅菌ボトルに濾過した後に、無菌充填技術下において尿素スクリューキャップを閉鎖した20mLホウケイ酸ガラスシンチレーションバイアルに充填した。
【0264】
改変されたPARI eFlow(登録商標)VMで使用されるALTA-2530のエアロゾル性能を、以下の表9に示す。

【表9】
【0265】
表10は、改変されたPARI eFlow(登録商標)振動VMネブライザーを用いた噴霧ALTA-2530の分析結果を示す。
【表10】
【0266】
【表11】
【0267】
さらに、改変されたPARI eFlow(登録商標)VMネブライザーを用いた場合、ALTA-2530製剤の温度は、安定性を促進するタンパク質Tm(rhIL-1raについては64℃~65℃)より低いままであった。エアロゾル時間全体の最高温度は、約42℃を超えることはなかった。
【0268】
150mg/mLのALTA-2530原薬を-80℃で保存し、光から保護した。ALTA-2530原薬を、凍結した材料が融解して透明な液体になるまで、暗所にて2℃~8℃で一晩解凍した。加速解凍は行わなかった。原薬及び希釈剤を室温に約1時間平衡化させた後、希釈した。カスタム希釈剤(WFI中にトレハロース、EDTA二ナトリウム及びヒスチジンを含有すること)を用いて、20mg/mL及び50mg/mLのALTA-2530吸入溶液の希釈を完了した。箔で覆われた透明ガラスデュランボトルを使用して、吸入溶液を光から保護した。希釈した吸入溶液は、光から保護して2~8℃で保存し、8時間より長くベンチトップに保存しなかった。
【0269】
Philips InnoSpire GOネブライザー
噴霧された20mg/mLのALTA-2530吸入溶液を、Philips InnoSpire GO(ISG)振動メッシュネブライザーによって送達した。試験は、レーザ回折による液滴サイズ分布(DSD)、重量送達用量(DD)、並びに重量排出、及び残留質量からなる非薬物特異的方法によって行った。試験には3つのISG装置を使用した。DSを2℃~8℃から除去し、光から保護し、室温に30分間平衡化させた。WFI中のトレハロース、EDTA二ナトリウム、及びヒスチジンを含有するカスタム希釈剤(CD)を用いてDSを20mg/mLに希釈してATLA-2530溶液を調製した。製剤を2~8℃で保存し、光から保護した。
【0270】
表11は、InnoSpire GOにおけるALTA-2530の噴霧結果を要約する。
【表12】
【0271】
表12は、2種類のネブライザー、すなわち、改変されたPARI eFlow(登録商標)及びPhilips InnoSpire GOを用いた、ALTA-2530(この実施形態ではIL-1Raとしてアナキンラを含む)の噴霧の結果を要約する。

【表13】
【0272】
Aerogen Soloネブライザー
表13及び表14は、Aerogen Soloネブライザーで噴霧したALTA-2530の試験結果を示す。ALTA-2530は、50mg/mLのタンパク質濃度で、通常の生理食塩水、NaCl、154mM[群3;希釈剤2]又は0.53mMのEDTA二ナトリウム、300mMトレハロース、及び15mMヒスチジン[群5;希釈剤1]を含有する、カスタム希釈剤を用いて調製した。表13及び表14は、ALTA-2530の噴霧後のインタクトなタンパク質の損失が1%未満であることを示す。

【表14】

【0273】
【表15】
【0274】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のネブライザーのいずれか(例えば、改変されたPARI eFlow(登録商標))を用いる場合、ALTA-2530製剤温度は、安定性を促進するタンパク質Tm(rhIL-1Raについては64℃~65℃)より低いままである。いくつかの実施形態では、エアロゾル時間全体の最高温度は、約42℃を超えることはない。
【0275】
実施例8:ALTA-2530製剤の例
いくつかの実施形態では、改変されたPARI eFlow(登録商標)振動メッシュ(VM)を用いて、噴霧ALTA-2530吸入溶液の反復サイクル(最大14)をシミュレートした。性質決定には、ネブライザーのエアロゾルヘッド(AH)の関数として、製剤の液体排出速度(LOR)及び噴霧時間、送達された累積タンパク質、噴霧前及び噴霧後の外観、pH、生理食塩水LORが含まれた。表15~表20は、試験した対照及びALTA-2530製剤を示す。
【0276】
【表16】
【0277】
【表17】
【0278】
【表18】
【0279】
【表19】

【0280】
【表20】
【0281】
【表21】
【0282】
図8は、改変されたPARI eFlow(登録商標)振動メッシュ(VM)を用いた、サイクル数(1~14)での製剤1~製剤6についての液体排出速度(LOR、重量質量=g/分)を示す(表15~表20を参照)。ALTA-2530製剤1(EDTA二ナトリウム、ポリソルベート80、塩化ナトリウム、トレハロース、及びヒスチジンを含有)が最も良好な性能の製剤であり、陰性対照(製剤6、タンパク質なし)と同様の性能であった。一方で、ヒスチジンを含まない(しかし、他の緩衝剤を使用した)製剤2~製剤4は、製剤1よりも悪い性能を示した。図8及び図9に示すように、異なるLORを有するAHの影響を評価するために、2種類の異なるエアロゾルヘッド(AH1及びAH2)を用いて製剤3試験を実施した。
【0283】
図9は、改変されたPARI eFlow(登録商標)振動メッシュ(VM)を用いたサイクル数(1~14)での製剤1~製剤6についての総タンパク質(μg)排出を示す(表15~表20参照)。図9は、ALTA-2530製剤1(EDTA二ナトリウム、ポリソルベート80、塩化ナトリウム、トレハロース、及びヒスチジンを含有)が、サイクル14の終わりに最高の総タンパク質排出を有する最も性能の良い製剤であったことを示す。
【0284】
図10A図10Fは、製剤1~製剤6における10分、20分、及び30分での代用方法(振盪)を用いた、試験中の光強度(%)によるタンパク質直径(nm)を示す(表15~表20参照)。図10A図10Fは、製剤1(EDTA二ナトリウム、ポリソルベート80、塩化ナトリウム、トレハロース、及びヒスチジンを含有)について、凝集体の時間依存性増加がなかったことを示す。製剤6(陰性対照)もまた、タンパク質凝集体の時間依存的な増加は一切なかった。
【0285】
表21は、表15~表20の製剤のエアロゾル性能の概要を示す。いくつかの実施形態では、ALTA-2530製剤(製剤1)は、pH6.5で、20mg/mLのIL-1Ra、約10mMのヒスチジン緩衝剤、260mMのトレハロース、20mMのNaCl、0.53nMのEDTA、約0.01%w/vのポリソルベート80の組成を有する。いくつかの実施形態では、ALTA-2530の組成物は、pH6.5で、20mg/mLのIL-1ra、約10mMのヒスチジン緩衝剤、115mMのトレハロース、20mMのNaCl、0.53nMのEDTA、約0.01%w/vのポリソルベート80を含む。

【表22】
【0286】
したがって、驚くべきことに、ALTA-2530製剤中のヒスチジン緩衝剤を用いると、リン酸塩、クエン酸リン酸塩、又はクエン酸塩などの他の緩衝剤と比較して、凝集を伴わずに(及び目詰まりを伴わずに)、より多くの噴霧サイクルが達成されることが見出された。いくつかの実施形態では、緩衝能を増加させ、凍結/解凍サイクルでpHのシフトを減少させるために、ヒスチジンの濃度を増加させる。いくつかの実施形態では、ヒスチジンの代わりに、別の正に帯電したアミノ酸をALTA-2530製剤に使用してもよい。他の好適な正に帯電したアミノ酸としては、リジン及びアルギニンが挙げられる。さらに、驚くべきことに、低い(約0.01%w/v)ポリソルベート80を有する製剤が、噴霧中の凝集体の形成を軽減することが示されたこともまた分かった。
【0287】
いくつかの実施形態では、ALTA-2530製剤は、正に帯電したアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ALTA-2530製剤中の正に帯電したアミノ酸は、約5mM~約10mM、約10mM~約15mM、約15mM~約20mM、又は約20mMを超える濃度である。いくつかの実施形態では、ALTA-2530製剤中の正に帯電したアミノ酸は、約10mMの濃度である。いくつかの実施形態では、ALTA-2530製剤中の正に帯電したアミノ酸は、約15mMの濃度である。いくつかの実施形態では、ALTA-2530製剤中の正に帯電したアミノ酸は、ヒスチジンである。
【0288】
実施例9:ALTA-2530の吸入送達は、ボーラスIV注入後の低レベル及び一過性曝露と比較して、rhIL-1raの広範囲かつ長期の肺曝露を達成する
いくつかの実施形態では、ALTA-2530は、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)のために開発中の組換えヒトIL-1受容体アンタゴニスト(rhIL-1Ra)の新規吸入製剤である。BOSにおけるIL-1過剰発現は、慢性炎症及び線維芽細胞活性化を駆動し、気道リモデリング及び酸素移動障害をもたらす。内在性IL-1Raは、IL-1に応答して上方制御されてサイトカインシグナル伝達を制限するが、発現はBOSを予防するには不充分である。薬理学的IL-1遮断は、生理学的免疫調節の回復に似ていると考えられる。
【0289】
目的:
ALTA-2530が噴霧中に安定しているかどうか、遠位気道への分布及びBOSの治療に見合った肺曝露に合致するエアロゾル粒径を達成するかどうかを決定する。
【0290】
方法:
Aerogen Solo又はPhilips InnoSpire GO振動メッシュネブライザーを用いて、エアロゾル化及びインビボ試験を行った。ラット(1時点当たり、n=4/群)は、鼻のみの吸入(肺1g当たり、0.63mg、1.3mg、及び2.1mg)によってALTA-2530を投与された。LC-MSMSによる分析のために、血清及び気管支肺胞洗浄(BAL)試料を収集した。肺上皮被覆液(ELF)中のALTA-2530を、BALF希釈係数を用いて計算した。BALF希釈係数は、Rennard SI、Basset G、Lecossier D、O’Donnell KM、Pinkston P、Martin PG、Crystal RGのEstimation of volume of epithelial lining fluid recovered by lavage using urea as marker of dilution. Journal of Applied Physiology. 1986 Feb 1;60(2):532-8に開示されている方法に基づいて計算した。
【0291】
ALTA-2530の吸入送達は、曝露が一過性かつ20分未満であるボーラスIV送達後の曝露とは対照的に、齧歯類では24時間を著しく超える肺上皮被覆液において広範で安定した持続的曝露を達成する。肺は、これらに限定されないが、BOS、原発性移植片機能不全(PGD)、再灌流傷害、感染関連ARDS、又は化学的肺傷害を含む症状の治療のための標的器官である。肺組織において薬理学的に妥当なレベルのrhIL-1Raを達成するには、一部の患者において腎障害及び好中球減少症をもたらすrhIL-1Raによる高用量のSC又はIV治療が必要である。IV送達は、肺組織への低レベル及び一過性の曝露を提供する。吸入送達は、臨床的に重要な臓器を標的とし、長期間持続する高曝露レベルを達成する。
【0292】
組換えヒトIL-1受容体アンタゴニスト(rhIL-1Ra)曝露を、雄及び雌のSprague Dawleyラットへの吸入送達後の気管支肺胞洗浄液(BALF)中で決定した。
【0293】
Sprague Dawley雄(M)及び雌(F)ラットを秤量し、試験群に無作為化した(表22)。1つの群を未処置のままとし、他の全ての動物を、ビヒクル(通常の生理食塩水、0.9%塩化ナトリウム)、又はALTA-2530試験品(TA)組換えヒトIL-1受容体アンタゴニスト(rhIL-1Ra)のいずれかの単回用量に、鼻のみの吸入によって曝露した。rhIL-1Raの標的用量レベルを、1.5mg/Lの標的エアロゾル濃度での曝露期間によって調節した。
【表23】
【0294】
血液(血清)及びBALFを、曝露後の予定された剖検中に、毒物動態(TK)分析のために全てのTK動物から収集した。
【0295】
rhIL-1Raの血清レベル及びBALFレベルを親和性捕捉LC-MSMSによって決定した。rhIL-1RAを、抗ヒトIL-1RA抗体でコーティングし、トリプシンによる「オンビーズ」タンパク質分解、変性、還元、及びアルキル化を行ったストレプトアビジン磁気ビーズを用いて、血清及びBALF試料から捕捉することで、rhIL-1RAに由来する特徴的なペプチド断片を得た。選択された特徴的なペプチドを、試料中のALTA-2530濃度の代用として定量化した。
【0296】
BALF中のrhIL-1Raの濃度を、Rennard et al.,J.Applied Physiol.,1986に記載されているように、BALF及び血漿尿素の正規化を用いて、上皮内層液(ELF)の収集中に導入された希釈係数について補正した。BALF中の尿素レベルは定量下限(LLOQ)未満であったため、LLOQ値(1mg/dL)を用いて正規化係数を計算した。したがって、ELF中のrhIL-1Raについて報告された値は、真の濃度の過小評価である可能性が高い。平均血漿尿素濃度は、血漿尿素の平均値を組み合わせた性別群に基づいて使用した。
【0297】
上皮内層液(ELF)濃度を、血清尿素補正された気管支肺胞洗浄液濃度から計算された。
【0298】
結果:
ALTA-2530の吸入送達は、ボーラスIV注入後20分未満の一過性曝露と比較して、ラットにおいて24時間を超えるrhIL-1Raの長期肺曝露を達成する。これは、肺病変の治療に必要な1日複数回のIV投与と比較して、1日1回若しくは1日2回、又はさらに頻度の低い投与を臨床的に予測する。対照的に、IV投与は一過性の肺曝露のみを提供することが知られている。したがって、ALTA-2530を用いて達成された24時間を超える長期肺曝露(例えば、48時間)は驚くべきことであり、予想外である。さらに、ラットにおける肺上皮被覆液の血漿曝露に対する比は、5時間のIV注入後の肺組織:血漿についての0.44倍と比較して、2500倍超であった。
【0299】
噴霧ALTA-2530は、小細気管支への送達に合致して、約2.5μm~約4μmの空気動力学的中央粒子径を有するrhIL-1Ra粒子を送達した。HPLC-UV法及びHPLC-SEC法及びインビトロ効力アッセイによる不純物プロファイリングは、rhIL-1Raタンパク質が噴霧中に安定であり、完全な効力を保持していることを実証した。
【0300】
血清及びELF中のrhIL-1Raについての記述的薬物動態学パラメータを表23に提示する。図11は、Aerogen Soloネブライザーを用いたラットへの単回投与後のELF及び血清中のrhIL-1Raの濃度対時間プロファイルを示す。
【表24】
【0301】
PathHunter(登録商標)Anakinra Bioassay Kitによって決定されたIC50値は、0.6μg/mL(又は600ng/mL)であった。これに基づいて、ラットにおける単回投与後の肺曝露は、ALTA-2530のIC50の29倍超であった。これらの値は、尿素がBALFで1mg/dL未満であったため、過小評価を表す可能性が高い。これらの値は、尿素がBALFで1mg/dL未満であったため、過小評価を表す可能性が高い。7日間の反復投与後、投与24時間後のELF曝露は、ALTA-2530のIC50の6倍~18倍(曝露時間に依存)であった。
【0302】
ラットにおける全血IL-6放出アッセイは、IC50が399ng/mLであることを示した。これに基づいて、7日間の試験の低用量結果は、ALTA-2530のIC50より9倍高いELF曝露を示し、7日間の高用量結果は、ALTA-2530のIC50より26倍高いELF曝露を示した。
【0303】
考察:
ALTA-2530の吸入送達は、ボーラスIV注入後20分未満の一過性曝露と比較して、ラットにおいて24時間を超えるrhIL-1Raの長期肺曝露を達成した。
【0304】
ALTA-2530の吸入送達後の肺におけるrhIL-1Raの長期曝露は、肺曝露が一過性である肺病変の治療に必要とされる可能性が高い複数回の1日IV用量と比較して、1日1回若しくは1日2回、又はより少ない頻度での投与を臨床的に予測する。
【0305】
AUCとしての肺上皮被覆液と血清曝露との比率は、5時間のIV注入後の肺組織:血漿についての0.44倍と比較して、全吸入用量にわたって2500倍超であった。
【0306】
IL-1Raは、IL-1βと同程度の親和性でIL-1RI受容体に結合する。したがって、同等のrhIL-1Raレベルであれば、肺組織における薬理学的レベルのために約100倍レベルが必要である。表24は、(ALTA-2530組成物中の)rhIL1-RaがIL-1βより約100倍高い親和性、及びIL-1αより約10,000倍高い親和性で1型IL-1受容体に結合することを示す、表面プラズモン共鳴結合試験を示す。ヒト等価用量(肺1g当たりのmgに基づく)で、ラットBALFのrhIL-1ra濃度は、BOS患者のBALで報告されたIL-1βの濃度を1000倍超上回った。
【表25】
【0307】
いくつかの実施形態では、噴霧ALTA-2530は、肺の小気道への送達のための粒径、及びBOSにおける1日1回の治療的投与を予測する曝露期間において、安定かつ活性なrhIL-1Raタンパク質を送達する。
【0308】
インビボ試験からの有効動物用量(例えば、上記の表2を参照)は、当該分野で公知の変換方法(例えば、Tepper et al,Breath in,breath out,it’s easy:What you need to know about developing inhaled drugs”,Int J of Tox,2016 35(4)376-392を参照されたい)を用いて適切なヒト用量に変換され得る。いくつかの実施形態では、ラット用量は、肺重量1g当たりのALTA-2530のmgに基づいてヒト用量に変換され得る。いくつかの実施形態では、ヒト患者に、吸入ALTA-2530を、約0.5mg/kg~約2mg/kgの用量で投与する。
【0309】
実施例10:動物試験における肺の標的領域へのIL-1Raの吸入ALTA-2530送達
図12A図12Bは、市販の抗IL-1Ra抗体を用いて実施したrh-IL-1Raに対する、非ヒト霊長類肺の免疫組織化学染色画像を示す。画像は、細気管支の上皮、肺胞中隔、及び動脈の平滑筋層の陽性染色を示す(4倍の拡大)。非ヒト霊長類(カニクイザル)に、生理食塩水又はALTA-2530(肺重量1g当たり0.86mg)のいずれかを、7日間にわたり1日1回、噴霧(Aerogen Soloを使用)によって投与した。図12Aは、生理食塩水を投与した非ヒト霊長類の肺組織の免疫組織化学染色を示し、図12Bは、噴霧ALTA-2530(肺重量1g当たり0.86mg)を投与した非ヒト霊長類の肺組織の免疫組織化学染色を示す。図12Bは、ALTA-2530が肺の奥深くの細気管支に到達し(製剤化された粒径が有効であることを示唆)、細気管支(標的組織)を効果的に被覆することを示す。非ヒト霊長類の肺の小気道に送達された噴霧ALTA-2530は、薬理学的に関連するレベルのrhIL-1Raタンパク質を持続させ、かつ急性用量及び7日間反復用量毒性試験において充分に忍容性であったことで、慢性肺移植片機能不全における治療的投与の見込みを実証した。ALTA-2530 rhIL-1Raは、安定であり、噴霧後に効力を保持することが示された。ALTA-2530 rhIL-1Raは、肺ELFにおいて安定であることが示された。ALTA-2530製剤は、ELF中で広範かつ長期の曝露を達成し、これは投与後24時間のトラフで、rhIL-1RaのIC50の29倍超であった(市販のIL-1Ra効力アッセイをIC50決定に使用した)。齧歯類試験からの空気動力学的中央粒子径(MMAD)は、2.18μm~3.19μmの範囲にわたる。したがって、吸入されたALTA-2530は、BOSの治療標的に合致する非ヒト霊長類においてIL-1Raを小気道に送達した。単回曝露後から約0.4時間で、ELF曝露レベルは、DiscoverXキットを用いた場合にIC50より540倍高く、全血IL-6アッセイを用いた場合にIC50より46,500倍高かった。
【0310】
別の試験では、ラットを、Aerogen Soloネブライザーを介して生理食塩水又はALTA-2530に、7日間にわたり1日1回曝露した。最後の投与の24時間後に組織を収集した(トラフ曝露)。図13(A)~図13(F)は、ラット組織における非特異的染色を減少させた新規抗体を用いた、ラット肺組織の免疫組織化学染色画像を示す。画像は細気管支及び肺胞マクロファージ(AM)における曝露を確認する。画像は、噴霧ビヒクルへの曝露後(図13(A)、8倍の拡大;図13(B)、20倍の拡大)、低用量のALTA-2530への曝露後(提示用量20.4±7.5mg/kg;(沈着用量2.04±0.75mg/kg))(図13(C)、8倍の拡大;図13(D)、20倍の拡大)、及び高用量のALTA-2530への曝露後(56.4±6.1(5.64±0.61))(図13(E)、8倍の拡大;図13(F)、20倍の拡大)のラット肺を示す。ビヒクルに曝露した肺は免疫陽性細胞を示さず(例えば、肺胞マクロファージ)、低用量ALTA-2530に曝露した肺はいくつかの免疫陽性細胞を示し(例えば、肺胞マクロファージ)、高用量ALTA-2530に曝露した肺は多くの免疫陽性細胞を示した(例えば、肺胞マクロファージ)。
【0311】
実施例11:ラットにおけるALTA-2530硫黄マスタード暴露試験
ラット試験には、生理食塩水群及び噴霧ALTA-2530処置群が含まれ、ここでは、用量期間は毎日60分であった。暴露後28日目に50%の死亡率を目標とするために、過去のデータに基づいて硫黄マスタード(SM)用量を選択した。代わりに、10日目にLD50に達したことから、この試験における硫黄マスタードの用量はLD50よりも大きいようであり、又はより深い投与は効果を高めたことが示唆される。他の要因、例えば、ノーズコーン投与のストレスは、既に虚弱な動物の罹患率を悪化させた。10日間にわたり処置したラットの組織病理データは、ALTA-2530の処置利益を示唆している。データには、生存、パルスオキシメトリ、SM用量分析、及び組織病理学が含まれる。表25は、全分析セット及び統計分析セットについて、治療群間で比較した死亡率を示す(カプラン・マイヤー生存プロット)。総分析セットは全ての予定外の死亡を含むが、肺傷害の進行を特徴付けるために含まれた予定内の死亡は含まない。表25において、総分析セットは群1~群7を含み、統計分析セットは群6及び群7を含む。

【表26】
【0312】
SMチャレンジ動物は全て、チャレンジ後の回復のエビデンスなしに重度の低酸素血症(酸素飽和度の著しい低下)を示した。90%未満の値は、深刻な劣化につながる可能性があり、70%が生命を脅かす。したがって、試験は10日目に終了した。いずれの場合も、組織病理学は、壊死を評価するための複数のエンドポイントを有していた(試験は修復及び線維症を評価するには早すぎて終了した)。驚くべきことに、ALTA-2530の処置効果は、壊死の減少において観察された。図14A図14Bは、Aerogen Soloネブライザーを用いた生理食塩水処置ラット及びALTA-2530処置ラット(図14ではSM:2530として示される)についての、呼吸上皮(図14A)及び気管支上皮(図14B)の壊死(0=壊死なし、5=0~5の半定量的測定スケールに基づく重度の壊死)を示す。図14は、呼吸上皮及び気管支上皮の両方について、ALTA-2530処置ラットは、生理食塩水処置対照ラットと比較して壊死が少なかったことを示す。
【0313】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、ALTA-2530は、カスパーゼの発現又は活性を制御することによって壊死を遮断すると考えられる。IL-1RaはIL-1α及びIL-1βを遮断する。IL-1αはカスパーゼ1発現に関与しており、カスパーゼ1は壊死を駆動する。ALTA-2530は、IL-1R1の遮断によって細胞外IL-1αを中和し、これがプロカスパーゼ-1発現の誘発を著しく低下させる可能性がある。
【0314】
実施例12:吸入rhIL-1RaであるALTA-2530は、閉塞性細気管支炎症候群の治療としての開発に合致する、肺の遠位領域への分布及び高親和性IL-1受容体遮断を実証する
目的
インターロイキン-1(IL-1)及び下流のサイトカインの発現調節不全は、閉塞性細気管支炎症候群の発生及び進行に関与している。1型IL-1受容体(IL-1R1)の遮断を介したIL-1シグナル伝達の休止は、生理学的な免疫調節を回復させるために提案されている。本明細書では、(i)エアロゾル化投与後の齧歯類及び非ヒト霊長類(NHP)肺組織におけるALTA-2530の分布、(ii)IL-1R1への結合親和性、並びに(iii)受容体遮断の可能性、及びインビボ試験のためのガイド用量選択に対する曝露応答の発生を評価するための下流IL-6発現の抑制を特徴付ける。
【0315】
方法
Aerogen Soloネブライザーを用いてALTA-2530の用量を7日間吸入した後、ラット及びNHPから、気管支肺胞洗浄(BAL)及び肺組織試料を収集した。親和性捕捉LC-MSMSによってBAL中でALTA-2530を決定した。組織を免疫組織化学のために処理し、rhIL-1Raを、市販品(NHP)又は親和性精製された(ラット)ポリクローナル抗体のいずれかを用いて局在化させた。親和性精製を行って、内在性タンパク質よりもrhIL-1Raに対する選択性を高めた。ヒトIL-1R1に対するrhIL-1Raの結合動態を、表面プラズモン共鳴によって決定し、IL-1α及びβと比較した。種にわたる全血におけるIL-6発現のALTA-2530媒介性阻害を、IL-1βによる刺激後に決定した。
【0316】
結果
ALTA-2530の1日1回の投与は、BALにおいて24時間超の曝露を提供した。用量の24時間後の健康なラット及びNHPからの肺の免疫組織化学は、肺胞及び気管支上皮細胞へのALTA-2530の用量依存的送達を実証した。初期のデータはまた、肺胞マクロファージとの関連も示している。ラット細気管支への分布は、BOSの処置のための標的組織であるヒト細気管支における、治療的に関連する分布を支持する。ALTA-2530 IL-1Raは、内在性IL-1アゴニストであるIL-1α(K約10-1、k約10-1、k約10-1-1)及びIL-1β(K約1010-1、k約10-1、k約10-1-1)よりも100倍超の親和性(K約1012-1、k約10-1、k約10-1-1)でIL-1R1に結合した(表24参照)。
【0317】
新鮮な全血におけるIL-1R1遮断の機能的効力は、rhIL-1RaがIL-1β刺激後のIL-6発現を阻害し、BOSを含むIL-1及びIL-6駆動病変の治療を支持することを実証した。健常ヒトドナー、NHPドナー、及びラットドナー(n=3、ラットについてはn=6)からの全血をIL-11βと共に、IL-6放出を誘発するために24時間にわたりインキュベートした(ELISAを用いて定量化)。図15A図15Cは、ヒト(図15A)、NHP(図15B)、及びラット(図15C)についてのIC50値(最大IL-6放出%によるALTA-2530の濃度)を決定するために滴定したALTA-2530を示す。図15A図15Cは、ALTA-2530がヒト及びNHPの全血におけるIL-6放出を阻害することを示す。
【0318】
結論
ALTA-2530は、BOSの治療に合致して、強力なrhIL-1Raを肺の遠位領域に送達する。
【0319】
実施例13:健康な喫煙者における噴霧アナキンラの安全性、薬理学的、及び生化学的効果の評価
探索性の単回投与用量漸増第1相試験を18人の健常喫煙者で実施した。18人の対象全員がアナキンラの噴霧吸入を受けた。対象を3つの用量群に分け、アナキンラの剤形を以下のように投与した:6人の対象が0.75mgの投与量レベルを受け、6人の対象が3.75mgの投与量レベルを受け、6人の対象が7mgの投与量レベルを受けた。連続する各用量群の間には14日間の間隔があり、それによって、前の用量群の4人の対象の安全性を評価した。安全性評価には、身体検査、生体情報測定、臨床検査評価、AEの文書化、心電図(ECG)評価、及び肺機能(FEV)、25~75%の強制呼気流量(FEF)、及び強制肺活量(FVC)が含まれた。薬理学的エンドポイント及び生化学的エンドポイントのための気管支鏡検査を、各用量群における4人の対象を安全性について分析した後で、各用量群における2人の対象に対して行った。気管支鏡分析は、安全性分析とは無関係に行った。試験の総期間は2.5ヶ月であった。
【0320】
実施例14:含有量均一性
この試験は、バッチからの容器の適切な数(開始からn=約10及び終了からn=約10)のアクチュエータ又はマウスピースから排出されることになる、ラベル表示と一致する、スプレー当たりの薬剤の均一性(又は最小用量)を実証するようにデザインされている。主な目的は、同じ容器内及びバッチの複数の容器間でスプレー含有量の均一性を確保することである。アクチュエータ又はマウスピースから放出されたスプレーを原薬含有量について完全に分析するための技術としては、容器間、及び薬物製品のバッチ間で、個々の容器の開始から終了までの複数のスプレーが挙げられる。この試験は、バッチの全体的な性能評価を提供することで、製剤化、製造プロセス、及びポンプを評価する。製品ラベルに記載されている最小投与量当たりのスプレー回数が1回である場合を除いて、1回の決定当たり最大2回の噴霧が使用される。再現可能なインビトロ用量の収集を確実にするために、手順は作動パラメータ(例えば、ストローク長さ、作動力)のための制御を有する。試験は、ラベルの指示に従ってプライミングされたユニットを用いて実施される。アクチュエータ又はマウスピースから送達される原薬の量は、実際の量及びラベル表示の割合の両方として表される。
【0321】
以下の合格基準を用いる。しかしながら、スプレー含有量の均一性を同等以上に保証するために、代替的なアプローチ(例えば、統計的)を使用してもよい。一般に、バッチを受け入れるためには、(1)10個の容器から20回の定量(開始から10回、及び終了から10回)のうち2回以上について、定量当たりの活性成分の量がラベル表示の80~120%を超えず、(2)定量のいずれもラベル表示の75~125%の範囲外ではなく、及び(3)最初と最後の測定のそれぞれの平均がラベル表示の85~115%の範囲外ではない。
【0322】
実施例15:BOSにおけるALTA-2530の提案された臨床試験
図16は、健常志願者及びBOS患者におけるALTA-2530の単回投与/複数回漸増投与(SAD/MAD)を用いた、第1相試験を示す。提案された試験は、健常志願者及びBOS患者において7日間のMAD限界を有する単一の治験として実施される。
【0323】
図17は、12週間の概念中間報告を有する、BOS患者におけるALTA-2530の第2b/3相検証的試験(pivotal study)を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図16
図17
【国際調査報告】