(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ペプチドタグ化組換え感染性因子を使用する微生物のマルチ検出のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 7/01 20060101AFI20240416BHJP
C12Q 1/70 20060101ALI20240416BHJP
C12Q 1/66 20060101ALI20240416BHJP
C12Q 1/42 20060101ALI20240416BHJP
C12Q 1/28 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240416BHJP
C12N 15/53 20060101ALN20240416BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C12Q1/70
C12Q1/66
C12Q1/42
C12Q1/28
C12N15/62 Z
C12N15/53
C12N15/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566520
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 US2022027139
(87)【国際公開番号】W WO2022232651
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】511172461
【氏名又は名称】ラボラトリー コーポレイション オブ アメリカ ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン, スティーブン イー.
(72)【発明者】
【氏名】ギル, ホセ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン, マシュー ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ03
4B063QQ06
4B063QQ16
4B063QR02
4B063QR13
4B063QR48
4B063QR59
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4B063QX02
4B065AA88Y
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4B065AA98X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA27
4B065CA46
(57)【要約】
目的の微生物の迅速検出のための方法、組成物、キット、およびシステムが、本明細書で開示される。捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物をコードする組換えバクテリオファージは、表面上でインジケータータンパク質の捕捉を可能にする。組換えバクテリオファージのカクテル組成物は、潜在的に有害な細菌を検出するために使用され得る。微生物への結合に対する組換えバクテリオファージの特異性は、目的の微生物の標的化されかつ非常に特異的な検出を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含む組換えバクテリオファージであって、ここで前記遺伝子構築物は、インジケーター遺伝子および捕捉部分を含む、組換えバクテリオファージ。
【請求項2】
前記遺伝子構築物は、外因性プロモーターをさらに含む、請求項1に記載のバクテリオファージ。
【請求項3】
前記インジケーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、またはアルカリホスファターゼである、請求項1に記載のバクテリオファージ。
【請求項4】
前記インジケーター遺伝子および捕捉部分は、捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物をコードする、請求項1に記載のバクテリオファージ。
【請求項5】
前記捕捉部分は、ペプチドタグまたはタンパク質タグである、請求項1に記載のバクテリオファージ。
【請求項6】
少なくとも2種の異なる組換えバクテリオファージを含むインジケーターカクテル組成物であって、ここで前記組換えバクテリオファージは各々、請求項1に記載の遺伝子構築物を含む、カクテル組成物。
【請求項7】
前記少なくとも2種の異なる組換えバクテリオファージは、同じ目的の細菌に特異的である、請求項6に記載のカクテル組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の少なくとも2種のインジケーターカクテル組成物を含むマルチカクテル組成物であって、ここで第1のインジケーターカクテル組成物は、第1の目的の細菌に特異的であり、第2のカクテル組成物は、第2の目的の細菌に特異的である、マルチカクテル組成物。
【請求項9】
サンプル中で目的の細菌を検出する方法であって、前記方法は、
(i)前記サンプルを得る工程;
(ii)前記サンプルを、少なくとも1種のインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする工程であって、ここで前記組換えバクテリオファージは、前記バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含み、ここで前記遺伝子構築物は、インジケータータンパク質生成物をコードするインジケーター遺伝子を含む工程;
(iii)前記インジケータータンパク質生成物を捕捉する工程;および
(iv)前記捕捉されたインジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで前記捕捉されたインジケータータンパク質生成物の検出は、前記目的の細菌が前記サンプルに存在することを示す工程、
を包含する方法。
【請求項10】
サンプル中で目的の細菌を検出する方法であって、前記方法は、
(i)前記サンプルを得る工程;
(ii)前記サンプルを、少なくとも1種のインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする工程であって、ここで前記組換えバクテリオファージは、前記バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含み、前記遺伝子構築物は、捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物をコードするインジケーター遺伝子および捕捉部分を含む工程;
(iii)前記捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物を捕捉する工程;ならびに
(iv) detecting 前記捕捉されたインジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで前記捕捉されたインジケータータンパク質生成物の検出は、前記目的の細菌が前記サンプルに存在することを示す工程、
を包含する方法。
【請求項11】
前記目的の細菌は、細菌の属、種、株、またはタイプである、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記遺伝子構築物は、外因性プロモーターをさらに含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
前記インジケーター遺伝子は、酵素をコードする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項14】
前記酵素は、ルシフェラーゼまたはアルカリホスファターゼである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記インジケーターカクテル組成物は、前記目的の同じ細菌に特異的な少なくとも2種の組換えバクテリオファージを含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプルを、少なくとも2種のインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする工程をさらに包含し、ここで第1のインジケーターカクテル組成物は、第1の目的の細菌に特異的なバクテリオファージを含み、第2のインジケーターカクテル組成物は、第2の目的の細菌に特異的なバクテリオファージを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のインジケーターカクテル組成物のバクテリオファージは各々、第1の捕捉部分を含み、前記第2のインジケーターカクテル組成物のバクテリオファージは、第2の捕捉部分を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記捕捉部分は、ペプチドタグである、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記インジケーターカクテル組成物とのインキュベーション後に、前記サンプル中の細菌を溶解するための工程をさらに包含する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項20】
前記インジケータータンパク質生成物を捕捉する工程は、前記サンプルと、前記インジケータータンパク質生成物を捕捉し得る結合パートナーを含む表面とを接触させる工程を包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
前記結合パートナーは、抗体またはそのフラグメントである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物を捕捉する工程は、前記サンプルと、前記捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物を捕捉し得る結合パートナーを含む表面と接触させる工程を包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項23】
前記表面は、第1の捕捉部分に特異的な第1の結合パートナーおよび第2の捕捉部分に特異的な第2の結合パートナーを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記サンプルを、前記少なくとも1種のインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする工程の前に、前記サンプルを抗生物質とともにインキュベートする工程によって、前記サンプル中で検出した前記目的の細菌の抗生物質耐性を決定するための工程をさらに包含する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項25】
前記サンプルは、生物学的サンプル、食品サンプル、環境サンプル、水サンプル、または商業的サンプルである、請求項9または10に記載の方法。
【請求項26】
前記生物学的サンプルは、血液、血清、または血漿である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
プロテインAが、前記サンプルに添加される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記食品サンプルは、食肉、魚肉、野菜、フルーツ、卵、酪農製品、ドライフード製品、または乳児用調製粉乳を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記目的の細菌は、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Klebsiella Pneumoniae、Acinetobacter baumanni、Pseudomonas aeruginosa、Salmonella spp.、Cronobacter spp.、Campylobacter spp.、Listeria spp.、Enterobacter spp.またはE.coliのうちの少なくとも1つである、請求項9または10に記載の方法。
【請求項30】
目的の細菌を検出するためのキットであって、前記キットは、
(i)バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含む組換えバクテリオファージであって、ここで前記組換えバクテリオファージは、前記バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含み、ここで前記遺伝子構築物は、捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物をコードするインジケーター遺伝子および捕捉部分を含む、組換えバクテリオファージ;ならびに
(ii)前記捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物を捕捉するための表面であって、ここで前記表面は、前記捕捉部分に特異的な結合パートナーを含む、表面、
を含むキット。
【請求項31】
検出試薬、溶解緩衝液、マイクロタイタープレート、ラテックス粒子、ラテラルフローストリップ、ミクロスフェア、またはディップスティックのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
目的の細菌を検出するためのシステムであって、前記システムは、
(a)バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含む組換えバクテリオファージであって、ここで前記組換えバクテリオファージは、前記バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含み、ここで前記遺伝子構築物は、捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物をコードするインジケーター遺伝子および捕捉部分を含む、組換えバクテリオファージ;
(b)捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物を捕捉するための表面であって、ここで前記表面は、前記捕捉部分に特異的な結合パートナーを含む、表面;ならびに
(c)前記インジケータータンパク質生成物を検出するための構成要素、
を含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、感染性因子を使用する、微生物の検出のための組成物、方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
生物学的サンプル、食品サンプル、水サンプル、および臨床サンプル中の細菌、ウイルス、および他の微生物の検出のための速度および感度を改善することには、強い重要性がある。微生物病原体は、ヒトおよび飼いならされた動物において実質的な病的状態、ならびに莫大な経済的損失を引き起こし得る。また、微生物の検出は、ある種の微生物(例えば、Escherichia coli、Cronobacter spp.、Salmonella spp.、Listeria spp.、またはStaphylococcus spp.)で汚染された食品の摂取によって引き起こされる生命を脅かすもしくは致命的な病気の大流行を考慮すると、米国食品医薬品局(FDA)および疾病対策センター(CDC)、ならびに米国農務省(USDA)にとっての優先順位は高い。
【0003】
細菌を検出するための旧来からの微生物学的試験は、非選択的および選択的な富化培養、続いて、選択培地にプレートし、さらに試験して、疑わしいコロニーを確認することに依拠する。このような手順は、数日間を要し得る。種々の迅速方法が研究されてきており、時間要件を低減するために、実務に導入されてきた。しかし、これらの方法には欠点がある。例えば、直接的イムノアッセイまたは遺伝子プローブを要する技術は、一般に、適切な感度を得るために、一晩の富化工程を要する。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)試験は、増幅工程をも含み、従って、非常に高い感度および選択性の両方が可能である;しかし、経済的に、PCR試験に供され得るサンプルサイズは、制限される。薄い細菌懸濁物を用いると、大部分の小さな副次サンプルには、細胞がなく、従って、精製および/もしくは長々とした富化工程がなお必要とされる。
【0004】
旧来の生物学的富化のために必要とされる時間は、上記サンプルの標的細菌集団の増殖速度によって、上記サンプルマトリクスの効果によって、および必要とされる感度によって、規定される。実際には、大部分の高感度方法は、一晩のインキュベーションを採用し、全体的に約24時間かかる。培養のために必要とされる時間に起因して、これらの方法は、同定される予定の生物および上記サンプルの供給源に依存して、最大で3日間かかり得る。この遅延時間(lag time)は、一般に、汚染された食品、水、もしくは他の生成物は既に、家畜もしくはヒトの中へと入り込んでしまっている可能性があるので、不適切である。さらに、抗生物質耐性細菌および生体防御の懸念事項の増加により、水サンプル、食品サンプルおよび臨床サンプル中の細菌病原体の迅速同定が、世界的に欠くことのできない優先事項になっている。
【0005】
従って、微生物(例えば、細菌および他の潜在的に病原性の微生物)のより迅速で簡単かつ感度の高い検出および同定が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
要旨
本開示の実施形態は、微生物の検出のための組成物、方法、システムおよびキットを含む。本開示は、種々の方法で具現化され得る。
【0007】
本開示の第1の局面には、バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含む組換えバクテリオファージであって、ここで上記遺伝子構築物は、インジケーター遺伝子および捕捉部分を含む組換えバクテリオファージがある。本開示の1つの実施形態は、少なくとも2種の組換えバクテリオファージを含むインジケーターカクテル組成物であって、ここで上記組換えバクテリオファージは、各々、上記バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含み、ここで上記遺伝子構築物は、インジケーター遺伝子および捕捉部分を含む、インジケーターカクテル組成物である。上記捕捉部分は、ペプチドタグまたはタンパク質タグであり得る。別の実施形態は、少なくとも2種のインジケーターカクテル組成物を含むマルチカクテル組成物であって、ここで第1のインジケーターカクテル組成物は、第1の目的の細菌に特異的であり、第2のカクテル組成物は、第2の目的の細菌に特異的である、マルチカクテル組成物である。
【0008】
本開示の第2の局面には、サンプル中で目的の細菌を検出する方法であって、上記方法は、(i)上記サンプルを得る工程;(ii)上記サンプルを、少なくとも1種のインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする工程であって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含み、ここで上記遺伝子構築物は、インジケータータンパク質生成物をコードするインジケーター遺伝子を含む工程;(iii)上記インジケータータンパク質生成物を捕捉する工程;および(iv)上記捕捉されたインジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記捕捉されたインジケータータンパク質生成物の検出は、上記目的の細菌が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する方法がある。
【0009】
本開示の第3の局面には、サンプル中で目的の細菌を検出する方法であって、上記方法は、(i)上記サンプルを得る工程;(ii)上記サンプルを、少なくとも1種のインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする工程であって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含み、ここで上記遺伝子構築物は、捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物をコードするインジケーター遺伝子および捕捉部分を含む工程;(iii)上記捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物を捕捉する工程;ならびに(iv)上記捕捉されたインジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記捕捉されたインジケータータンパク質生成物の検出は、上記目的の細菌が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する方法がある。
【0010】
本開示の第4の局面には、目的の細菌を検出するためのキットであって、上記キットは、(i)バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含む組換えバクテリオファージであって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含み、ここで上記遺伝子構築物は、捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物をコードするインジケーター遺伝子および捕捉部分を含む、組換えバクテリオファージ;ならびに(ii)上記捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物を捕捉するための表面であって、ここで上記表面は、結合パートナーを含む表面を含むキットがある。上記捕捉部分は、ペプチドタグまたはタンパク質タグであり得る。
【0011】
本開示の第5の局面には、目的の細菌を検出するためのシステムであって、上記システムは、(a)バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含む組換えバクテリオファージであって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含み、ここで上記遺伝子構築物は、捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物をコードするインジケーター遺伝子および捕捉部分を含む、組換えバクテリオファージ;(b)捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物を捕捉するための表面であって、ここで上記表面は、結合パートナーを含む、表面;ならびに(c)上記インジケータータンパク質生成物を検出するための構成要素を含むシステムがある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示は、以下の非限定的な図面を参照することによってよりよく理解され得る。
【0013】
【
図1】
図1は、ルシフェラーゼ遺伝子と、N末端またはC末端いずれかのペプチドタグ、バクテリオファージ後期遺伝子プロモーター、およびリボソーム結合部位(RBS)とを含む遺伝子構築物を図示する、本発明の一実施形態に従う相同組換え挿入物を示す。描写された上記プロモーターは、内因性後期遺伝子(例えば、主要カプシドタンパク質(MCP)の遺伝子)の上流に、内因性後期遺伝子プロモーターに加えてあるか、またはそれとは別個にある。
【0014】
【
図2】
図2は、組換えバクテリオファージを使用する、全血中でのEnterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumannii、Pseudomonas aeruginosaおよびEnterobacter種(ESKAPE病原体)の検出のためのマルチラテラルフローストリップアッセイのフロー図を示す、本明細書で開示される方法の1つの実施形態を示す。
【0015】
【
図3】
図3は、組換えバクテリオファージを使用する、全血中でのESKAPE病原体の検出のためのマイクロタイタープレートを使用するマルチアッセイのフロー図を示す、本明細書で開示される方法の1つの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
種々の試験サンプル(例えば、生物学的、食品、水、表面、および環境)中で、目的の細菌のマルチ検出のための驚くべき感度を実証する組成物、方法、キットおよびシステムが、本明細書で開示される。本開示は、マルチアッセイにおいて遺伝子改変された感染性因子の使用を記載する
【0017】
検出は、富化のための培養なしに、またはいくつかの実施形態では、最小限の富化期間を伴って行われるアッセイにおいて、遺伝子改変された感染性因子を使用して以前に可能と考えられた時間枠より短い時間枠で達成され得る。また、試験サンプルとともにインキュベートするために、潜在的に高い感染多重度(MOI)、または高濃度のプラーク形成単位(PFU)を使用することの成功は、驚くべきである。このような高いファージ濃度(PFU/mL)は、細菌検出アッセイにおいて有害であると以前に主張された。なぜならそれらは、「非感染溶菌(lysis from without)」を引き起こすと主張されたからである。しかし、高濃度のファージは、少数の標的細胞の発見、結合および感染を容易にし得る。
【0018】
本開示の組成物、方法、システムおよびキットは、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumanni、Pseudomonas aeruginosa、Salmonella spp.、Cronobacter spp.、Campylobacter spp.、Listeria spp.、Enterobacter spp.およびE.coliなどの微生物の検出において使用するための感染性因子を含み得る。本開示の1つの局面において、組換えインジケーターバクテリオファージは、遺伝子構築物を含む。ある種の場合には、上記遺伝子構築物は、野生型バクテリオファージゲノムに挿入される。ある種の実施形態において、上記遺伝子構築物は、上記バクテリオファージの後期遺伝子(すなわち、クラスIII)領域に挿入され得る。いくつかの実施形態において、上記遺伝子構築物は、インジケーター遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、インジケータータンパク質をコードする。場合によっては、上記遺伝子構築物は、捕捉部分をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記遺伝子構築物は、融合されたインジケータータンパク質-捕捉部分タンパク質の遺伝子を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、本開示は、サンプル中で特定の目的の細菌を検出するための方法であって、上記方法は、上記サンプルを、インジケーター遺伝子および捕捉部分を含む組換えインジケーターバクテリオファージとともにインキュベートする工程であって、ここで上記インジケーター遺伝子は、インジケータータンパク質をコードする工程を包含する方法を包含する。上記目的の細菌が上記サンプルに存在する場合、上記組換えバクテリオファージは、上記細菌に感染し、それによって、上記インジケーター遺伝子を発現する。従って、いくつかの実施形態において、上記方法は、上記インジケータータンパク質生成物または上記捕捉部分-インジケータータンパク質生成物融合物を捕捉する前に、上記組換えバクテリオファージに感染した細菌を溶菌するために、溶解緩衝液での処理を含む。いくつかの実施形態において、上記捕捉部分は、ペプチドまたはタンパク質タグである。
【0020】
従って、本開示のいくつかの実施形態は、細菌の存在を示す検出可能なシグナルを増幅するためのバクテリオファージベースの方法を使用することによって、要求を解決する。ある種の実施形態において。1個程度の少ない細菌が検出される。本明細書で適用される原理は、種々の微生物の検出に適用され得る。微生物の表面上に感染性因子のための多くの結合部位、感染の間に100またはこれより多くの因子の子孫を生成する能力、およびコードされたインジケーター部分の高レベル発現の潜在能力があるので、上記感染性因子もしくはインジケーター部分は、上記微生物自体より容易に検出可能であり得る。このようにして、本開示の実施形態は、実に単一感染細胞からの非常に大きなシグナル増幅を達成し得る。
【0021】
本開示の局面は、サンプル中の特異的微生物を検出および/定量する手段として、感染性因子の結合構成要素などの、特定の微生物に結合し得る結合因子の高い特異性を利用する。いくつかの実施形態において、本開示は、感染性因子(例えば、バクテリオファージ)の高い特異性を利用する。
【0022】
本開示の方法およびシステムの実施形態は、臨床サンプル、獣医学的サンプル、食品サンプル、水サンプルおよび商業サンプルからの病原体の検出があげられるが、これらに限定されない種々の環境における種々の微生物(例えば、細菌)の検出および定量に適用され得る。本開示の方法は、迅速に、高い検出感度および特異性を提供する。いくつかの実施形態において、検出は、上記バクテリオファージの単一の複製サイクル内で可能であり、このことは、驚くべきことである。
【0023】
次の説明は、好ましい例示的実施形態を提供するに過ぎず、本開示の範囲、利用可能性または構成を限定することは意図されない。むしろ、好ましい例示的実施形態の次の説明は、種々の実施形態を実行するために実施可能な説明を当業者に提供する。添付の特許請求の範囲に示されるとおりの趣旨および範囲から逸脱することなく、要素の機能および配置において種々の変更が行われ得ることが理解される。
【0024】
具体的詳細は、実施形態の完全な理解を提供するために、以下の説明の中に示される。しかし、実施形態が、これらの具体的な詳細なしに実施され得ることは、理解される。例えば、回路、システム、ネットワーク、プロセスおよび他の構成要素は、上記実施形態を不必要に詳細にして不明瞭にしないように、ブロック図において構成要素として示され得る。他の場合には、周知の回路、プロセス、アルゴリズム、構造、および技術は、実施形態を不明瞭にすることを回避するために、不必要な詳細なしに示され得る。
【0025】
定義
本明細書において別段の定義がない限り、本発明に関連して使用される科学用語および専門用語は、当業者が一般に理解する意味を有するべきである。さらに、他に状況によって必要とされない限り、単数の用語は、複数を含むべきであり、複数の用語は、単数を含むべきである。一般に、本明細書に記載されている細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学およびタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションとの関連で使用される命名法、ならびにこれらの技術は、当技術分野で周知であり、一般に使用されるものである。公知の方法および技術は、他に示さない限り、当技術分野で周知の通常の方法によって、および本明細書を通して考察される様々な一般のおよびより特定の参考文献において記載されているように一般に行われる。酵素反応および精製技術は、当技術分野で一般に達成されるように、または本明細書に記載のように、製造元の仕様によって行われる。本明細書に記載されている実験室の手順および技術に関連して使用される命名法は当技術分野で周知のものであり、一般に使用される。
【0026】
本開示の広い範囲を示す数値範囲およびパラメーターは近似値であるにもかかわらず、具体例において示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、任意の数値は、それらそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じるある特定の誤差を本質的に含む。さらに、本明細書で開示される全ての範囲は、その中に包含される任意のおよび全ての部分範囲を包含することが理解されるべきである。例えば、「1~10」という示された値は、最小値1から最大値10の間の(およびその両端を含む)任意のおよび全ての部分範囲;すなわち、1もしくはこれより大きい最小値(例えば、1~6.1)で始まりかつ10もしくはこれより小さい最大値(例えば、5.5~10)で終わる全ての部分範囲を包含すると見做されるべきである。さらに、「本明細書で参考として援用される」といわれる任意の参考文献は、その全体が援用されるものとして理解されるべきである。
【0027】
下記の用語は、他に示さない限り、下記の意味を有すると理解すべきである:
【0028】
本明細書において使用する場合、「a」、「an」、および「the」という用語は、他に特に留意しない限り、1つまたは複数を指すことができる。
【0029】
「または」という用語の使用は、代替物のみを言及することが明確に示されない限り、または代替物が相互排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみおよび「および/または」を指す定義を支持する。本明細書において使用する場合、「別の」は、少なくとも第2またはそれ超を意味することができる。
【0030】
本出願を通して、「約」という用語は、その値が、値を決定するために用いられているデバイス、方法についての固有の誤差の変動、または試料の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0031】
本明細書で使用される場合、「固体支持体」または「支持体」は、その上に生体分子が結合し得る基材および/または表面を提供する構造物を意味する。例えば、固体支持体は、アッセイウェル(すなわち、例えば、マイクロタイタープレートまたはマルチウェルプレート)であり得、または固体支持体は、フィルター、アレイ、または移動性の支持体(例えば、ビーズ)または膜(例えば、フィルタープレート、ラテックス粒子、常磁性粒子またはラテラルフローストリップ)上の位置であり得る。
【0032】
本明細書で使用される場合、「結合因子」または「結合パートナー」は、第2の(すなわち、異なる)対象分子に特異的および選択的に結合することができる分子を指す。相互作用は、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、または静電相互作用もしくは疎水的相互作用の結果として非共有結合性であり得、あるいは相互作用は共有結合性であり得る。「可溶性結合因子」という用語は、固体支持体に会合(すなわち、共有結合または非共有結合)していない結合因子を指す。「固定化された結合パートナー(immobilized binding partner)」という用語は、固体支持体と会合した(すなわち、共有結合により、または共有結合によらずに結合した)結合因子をいう。
【0033】
本明細書で使用される場合、「生物発光(bioluminescence)」という用語は、酵素、タンパク質、タンパク質複合体、または他の生体分子(例えば、生物発光複合体)によって触媒されるかまたは可能にされる化学反応によって、光を生成し、放射することをいう。代表的実施形態において、生物発光性の実体(例えば、生物発光性のタンパク質または生物発光性の複合体)の基質は、上記生物発光性の実体によって不安定な形態へと変換される;上記基質は、その後、光を放射する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「相補的(complementary)」という用語は、互いとハイブリダイズするか、ダイマー化するか、または別の方法で複合体を形成することができる2またはこれより多くの構造エレメント(例えば、ペプチド、ポリペプチド、核酸、低分子など)の特徴に言及する。例えば、「相補的ペプチドおよびポリペプチド(complementary peptide and polypeptide)」は、一緒になって複合体を形成し得る。相補的エレメントは、複合体を(例えば、相互作用エレメントから)形成するために、例えば、上記エレメントを相補性のための適切なコンホメーションに配置するために、相補的エレメントを共存させるために、相補性のための相互作用エネルギーを下げるなどのために、補助を必要とし得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、「複合体(complex)」という用語は、互いと直接的および/または間接的に接触した状態での分子(例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質など)の集合( assemblage)または凝集(aggregate)に言及する。1つの局面において、「接触(contact)」、またはより詳細には、「直接的接触(direct contact)」とは、2またはこれより多くの分子が誘因力のある(attractive)非共有結合的相互作用(例えば、ファン・デル・ワールス力、水素結合、イオン性相互作用および疎水性相互作用など)が、上記分子の相互作用を支配するように十分に近くにあることを意味する。このような局面において、分子(例えば、ペプチドおよびポリペプチド)の複合体は、その複合体が熱力学的に有利である(例えば、凝集していないか、または複合体化していない、その構成要素分子の状態と比較して)ようなアッセイ条件下で形成される。本明細書で使用される場合、「複合体」という用語は、別段記載がなければ、2またはこれより多くの分子(例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはこれらの組み合わせ)の集合に言及する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「非発光性の(non-luminescent)」という用語は、可視光スペクトルにおける光の検出可能な量を(例えば、基質の存在下で)放射しないという特徴を示す実体(例えば、ペプチド、ポリペプチド、複合体、タンパク質など)に言及する。例えば、ある実体は、所定のアッセイにおいて検出可能な発光を示さない場合に、非発光性といわれ得る。本明細書で使用される場合、「非発光性の」という用語は、「実質的に非発光性の(substantially non-luminescent)」という用語と同義である。例えば、非発光性のポリペプチドは、実質的に非発光性であり、非発光性のポリペプチドとその非発光性の補完ペプチド(complement peptide)との複合体と比較して、発光において例えば、10倍またはこれより大きい(例えば、100倍、200倍、500倍、1×103倍、1×104倍、1×105倍、1×106倍、1×107倍など)低減を示す。いくつかの実施形態において、ある実体は、任意の光の放射が、特定のアッセイの干渉バックグラウンドを生じないように十分に最小である場合に、「非発光性」である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「非発光性のペプチド」および「非発光性のポリペプチド」という用語は、標準的な条件(例えば、生理学的条件、アッセイ条件など)下で、および代表的な機器類(例えば、ルミノメーターなど)での顕著なシグナル(例えば、発光性の複合体)と比較した場合、(例えば、基質の存在下で)実質的に発光を示さないか、あるいはノイズを下回る、または10倍もしくはより大きく(例えば、100倍、200倍、500倍、1×103倍、1×104倍、1×105倍、1×106倍、1×107倍など)下回る、ペプチドおよびポリペプチドに言及する。いくつかの実施形態において、このような非発光性のペプチドおよびポリペプチドは、本明細書で記載される基準に従ってアセンブルして、生物発光性の複合体を形成する。本明細書で使用される場合、「非発光性のエレメント」は、非発光性のペプチドまたは非発光性のポリペプチドである。「生物発光性の複合体(bioluminescent complex)」という用語は、2またはこれより多くの非発光性のペプチドおよび/または非発光性のポリペプチドのアセンブルされた複合体に言及する。上記生物発光性の複合体は、生物発光性の複合体の基質を不安定な形態へと変換することを触媒するまたは可能にする;上記基質は、その後、光を放射する。複合体化されない場合、生物発光性の複合体を形成する2つの非発光性のエレメントは、「非発光性の対」といわれ得る。生物発光性の複合体が、3またはこれより多くの非発光性のペプチドおよび/または非発光性のポリペプチドによって形成される場合、上記生物発光性の複合体の複合体化されない成分は、「非発光性のグループ」といわれ得る。
【0038】
本明細書で使用される場合、「分析物」とは、測定されている分子、化合物もしくは細胞をいう。目的の分析物は、ある種の実施形態において、結合因子と相互作用し得る。本明細書で記載される場合、用語「分析物」とは、目的のタンパク質もしくはペプチドをいい得る。分析物は、アゴニスト、アンタゴニスト、もしくはモジュレーターであり得る。あるいは、分析物は、生物学的効果を有しなくてもよい。分析物としては、低分子、糖、オリゴサッカリド、脂質、ペプチド、ペプチド模倣物、および有機化合物などが挙げられ得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、「検出可能な部分」もしくは「検出可能な生体分子」もしくは「レポーター」もしくは「インジケーター」もしくは「インジケーター部分」とは、定量的アッセイにおいて測定され得る分子をいう。例えば、インジケーター部分は、基質を、測定され得る生成物に変換するために使用され得る酵素を含み得る。インジケーター部分は、生物発光の放射を生じる反応を触媒する酵素(例えば、ルシフェラーゼ)であり得る。あるいは、インジケーター部分は、定量され得る放射性同位体であり得る。あるいは、インジケーター部分は、発蛍光団であり得る。あるいは、他の検出可能な分子が使用され得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、「バクテリオファージ」もしくは「ファージ」とは、複数の細菌のウイルスのうちの1種またはそれより多くを含む。本開示において、用語「バクテリオファージ」および「ファージ」は、生きている細菌、真菌、マイコプラズマ、原生動物、酵母、および他の顕微鏡レベルの生存している生物に侵入し得るウイルスであって、そして上記生物を使用して、該ウイルス自体を複製するウイルスを指す、マイコバクテリオファージ(例えば、TBおよびパラTBに関する)、マイコファージ(mycophage)(例えば、真菌に関する)、マイコプラズマファージ、および任意の他の用語などのウイルスを含む。ここで、「顕微鏡レベルの」とは、最大寸法が1ミリメートルまたはそれ未満であることを意味する。バクテリオファージは、それらを複製する手段として、天然において細菌を使用するように進化したウイルスである。ファージは、このことを、ファージ自体を細菌に付着させ、そのDNA(もしくはRNA)をその細菌の中に注入し、上記ファージを数百倍もしくはさらには数千倍も複製するようにその細菌を誘導することによって行う。これは、ファージ増幅ともいわれる。
【0041】
本明細書で使用される場合、「後期遺伝子領域」とは、ウイルス生活環において後期に転写されるウイルスゲノムの領域をいう。上記後期遺伝子領域は、代表的には、最も豊富に発現される遺伝子(例えば、上記バクテリオファージ粒子へとアセンブルされる構造タンパク質)を含む。後期遺伝子は、クラスIII遺伝子と同義であり、構造およびアセンブリ機能を有する遺伝子を含む。例えば、上記後期遺伝子(クラスIIIと同義)は、ファージT7では、例えば、感染後8分から溶解するまでに、クラスI(例えば、RNAポリメラーゼ)は、早期に4~8分に、およびクラスIIは、6~15分に転写されるので、IIおよびIIIのタイミングは重なり合っている。後期プロモーターは、天然に位置し、このような後期遺伝子領域において活性であるプロモーターである。
【0042】
本明細書で使用される場合、「富化のための培養」とは、旧来からの培養(例えば、微生物繁殖に都合のよい培地中でのインキュベーション)をいい、語句「富化」の他の考えられる使用(例えば、サンプルの液体構成要素を取り出して、その中に含まれる上記微生物を濃縮することによる富化)、または微生物繁殖の旧来の促進を含まない富化の他の形態と混同されるべきではない。ある期間にわたる富化のための培養は、本明細書で記載される方法のいくつかの実施形態において使用され得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「組換え(recombinant)」とは他の方法では見いだされない遺伝的物質を一緒にするために、通常は実験室で行われる場合、遺伝的な(すなわち、核酸)改変をいう。この用語は、本明細書において用語「改変された」と交換可能に使用される。
【0044】
本明細書において使用する場合、「RLU」は、ルミノメーター(例えば、GLOMAX(登録商標)96)または光を検出する類似の機器によって測定される、相対発光量を指す。例えば、ルシフェラーゼと適当な基質(例えば、NANOLUC(登録商標)とNANO-GLO(登録商標))の間の反応物の検出が、検出されるRLUでしばしば報告される。
【0045】
本明細書で使用される場合、「結果までの時間(time to results)」とは、サンプルインキュベーションの開始から結果が生成されるまでの時間総量をいう。結果までの時間は、いかなる確認試験時間も含まない。データ収集は、結果が生成された後の任意の時間で行われ得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「レポーター遺伝子(reporter gene)」または「インジケーター遺伝子(indicator gene)」とは、完全な遺伝子または遺伝子の一部に言及し得る。例えば、本明細書でのインジケーター遺伝子またはレポーター遺伝子の使用は、より小さなペプチドサブユニットをコードする、すなわち転写されかつ部分的なタンパク質へと翻訳されるヌクレオチド配列を含み得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、「捕捉部分(capture moiety)」とは、標的を捕捉するために使用され得る任意の化合物または部分に言及する。例えば、以下のうちのいずれかが、捕捉部分として使用され得る: アルブミン結合タンパク質(ABP)、アルカリホスファターゼ(AP)、AU1エピトープ、AU5エピトープ、バクテリオファージT7エピトープ(T7-タグ)、バクテリオファージV5エピトープ(V5-タグ)、ビオチン-カルボキシキャリアタンパク質(BCCP)、ブルータングウイルスタグ(B-タグ)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、セルロース結合ドメイン(CBP)、キチン結合ドメイン(CBD)、コリン結合ドメイン(CBD)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、E2エピトープ、FLAGエピトープ、ガラクトース結合タンパク質(GBP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、Glu-Glu(EE-タグ)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、ヒトインフルエンザヘマグルチニン(HA)、HaloTag(登録商標)、ヒスチジンアフィニティータグ(HAT)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、HSVエピトープ、ケトステロイドイソメラーゼ(KSI)、KT3エピトープ、LacZ、ルシフェラーゼ、マルトース結合タンパク質(MBP)、Mycエピトープ、NusA、PDZドメイン、PDZリガンド、ポリアルギニン(Arg-tag)、ポリアスパラギン酸(Asp-タグ)、ポリシステイン(Cys-タグ)、ポリヒスチジン(His-タグ)、ポリフェニルアラニン(Phe-タグ)、Profinity eXact、プロテインC、S1-タグ、S-タグ、ストレプトアビジン結合ペプチド(SBP)、ブドウ球菌プロテインA(プロテインA)、ブドウ球菌プロテインG(プロテインG)、Strep-タグ、ストレプトアビジン、低分子ユビキチン様修飾因子(Small Ubiquitin-like Modifier)(SUMO)、タンデムアフィニティー精製(Tandem Affinity Purification)(TAP)、T7エピトープ、チオレドキシン(Trx)、TrpE、ユビキチン、Universal、またはVSV-G。
【0048】
本明細書で使用される場合、「構築物(construct)」または「遺伝子構築物(genetic construct)」とは、組換えバクテリオファージを生成するために、バクテリオファージゲノムに(例えば、組み換え技術を介して)付加され得る遺伝的物質に言及する。
【0049】
サンプル
本開示の組成物、方法、キット、およびシステムの実施形態の各々は、微生物の迅速かつ高感度の検出を可能にし得る。例えば、本開示に従う方法は、短縮された期間において優れた結果を伴って実行され得る。本明細書で開示される組成物、方法、キットおよびシステムによって検出可能な目的の微生物としては、細菌またはマイコバクテリアが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本発明の方法およびシステムによって検出される微生物としては、天然の、商業的な、医学的な、または獣医学的な懸念のある病原体が挙げられる。このような病原体としては、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、およびマイコプラズマが挙げられる。特定の微生物に特異的である感染性因子が同定された任意の微生物は、本発明の方法によって検出され得る。当業者は、必要な特異的感染性因子/微生物の対の利用可能性以外に、本発明の方法の適用に制限がないことを理解する。
【0051】
上記サンプルは、医療用サンプル、獣医学的サンプル、薬学的サンプル、臨床サンプル、実験サンプル、食品サンプル、環境サンプル、もしくは水サンプル、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。医療用サンプルおよび獣医学的サンプルは、生物学的サンプル、例えば、尿、鼻、粘液、唾液、血液、喀痰、脳脊髄液、および糞便のサンプルであり得る。ある種の実施形態において、上記血液サンプルは、全血、血清、または血漿であり得る。医療用サンプルおよび獣医学的サンプルは、ヒトまたは動物から得られ得る。
【0052】
食品サンプルは、食肉、家禽肉、加工食品、乳、チーズ、他の酪農製品、飲料、および産物すすぎ液(produce rinsates)のサンプルであり得る。食品サンプルは、調理済みであっても、調理されていなくてもよい。水サンプルは、環境の水源、飲水、およびボトル詰めされた水を含む任意の水源から得られ得る。環境サンプルは、産業プラント(例えば、床、壁、天井、エアフィルター、装置)、食品調製または処理領域、医療設備、研究室、および動物用施設の表面または土壌源および水源から得られ得る。
【0053】
ある特定の実施形態において、上記サンプルは、表面から得られる。上記表面は、任意の装置、機器、またはデバイスの一部(医療用デバイス、実験装置、食品加工装置、および商業的な表面(commercial surface)が挙げられるが、これらに限定されない)を含み得る。
【0054】
医療用デバイスとしては、医療用の移植物、医療実験装置、外科手術機器、全身検査装置、医療電子装置、医療用光学装置、機器および内視鏡装置、医療用レーザー装置、高周波医療装置、手術室および診察室のための装置および電気機器、ならびに歯科用の装置および装置が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
ある特定の実施形態において、食品加工表面は、製造工程中であろうが、食品取り扱い工程中であろうが、食品と接触した状態になる任意の表面である。食品加工装置とは、食品および食品製品を取り扱う、準備する、調理する、貯蔵する、およびパッケージングするために使用される構成要素、処理機械、およびシステムをいう。食品加工表面としては、食品生産、加工、準備、もしくは貯蔵活動の一部として使用される道具、機械、装置、または構造の表面が挙げられるが、これらに限定されない。食品加工表面の例としては、食品加工または準備する装置の、および食品加工が行われる構造の床、壁、または備品の表面が挙げられる。
【0056】
サンプルは、液体、固体、または半固体であり得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、表面から得られ得る。例えば、サンプルは、表面を拭う、すすぐ、灌注する、洗浄する、清掃する、またはすすぐことによって、固体表面から得られ得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、固体表面(例えば、医療用デバイスまたは食品加工装置)のスワブであり得る。他の実施形態において、灌注法(irrigation)が、サンプルを収集するために使用され得る。灌注法は、表面にわたる溶液(例えば、食塩水)の流れである。従って、いくつかの実施形態において、上記サンプルは、表面灌注液である。
【0057】
いくつかの実施形態において、サンプルは、本開示の検出方法において、調製、濃縮、希釈、精製、または単離なしに、直接使用され得る。例えば、液体サンプル(生物学的液体(例えば、全血)、表面灌注物、水、乳、およびジュースが挙げられ得るが、これらに限定されない)は、直接アッセイされ得る。サンプルは、溶液(これらとしては、緩衝化溶液または細菌培養培地が挙げられるが、これらに限定されない)中で希釈または懸濁されてもよい。いくつかの実施形態において、サンプルは、本開示の検出方法において、調製、濃縮、または希釈なしに、直接使用され得る。例えば、液体サンプル(乳およびジュースが挙げられるが、これらに限定されない)は、直接アッセイされ得る。サンプルは、溶液(これらとしては、緩衝化溶液または細菌培養培地が挙げられ得るが、これらに限定されない)中で希釈または懸濁されてもよい。固体もしくは半固体であるサンプルは、液体中の固体を細かく刻むか、混合するかもしくは浸軟することによって、液体中に懸濁され得る。サンプルは、上記宿主細菌細胞へのバクテリオファージ付着を促進するpH範囲内に維持されるべきである。サンプルはまた、2価カチオンおよび1価カチオン(Na+、Mg2+、およびCa2+が挙げられるが、これらに限定されない)の適切な濃度を含むべきである。好ましくは、サンプルは、上記サンプル内に含まれる任意の病原体細胞の生存性を維持する温度で維持される。
【0058】
検出アッセイのいくつかの実施形態では、上記サンプルは、上記サンプルに存在する任意の病原体細胞の生存性を維持する温度で維持される。例えば、バクテリオファージが細菌細胞に付着している工程の間に、上記サンプルを、バクテリオファージ付着を促進する温度で維持することは、好ましい。バクテリオファージが感染細菌細胞内で複製されているかもしくはこのような感染細胞を溶解する工程の間に、上記サンプルを、バクテリオファージ複製および上記宿主の溶解を促進する温度で維持することは好ましい。このような温度は、少なくとも約25摂氏度(C)、より好ましくは、約45℃以下、最も好ましくは約37℃である。場合によっては、上記サンプルは、バクテリオファージ結合、複製および細胞溶解の間に、穏やかな混合または振盪に供され得る。
【0059】
微生物の存在の検出は、いくつかの産業にわたって重要である。例えば、医学的な表面での微生物の検出は、医療関連感染(healthcare associated infection)(HAI)の防止において重要である。同様に、食品加工表面での微生物の検出は、食品由来の病気の防止において重要である。表面の汚染は、不十分な清掃、消毒剤の不適切な選択、推奨される清掃、消毒、および/もしくは滅菌手順に従っていないこと、ならびに滅菌プロセスを使用できないことの結果として起こり得る。
【0060】
本開示によって検出可能な細菌細胞としては、高病原性細菌、例えば、Salmonellaの全ての種、Escherichia coliの全ての株、Cronobacter、Staphylococcus、Listeriaの全ての種(L.monocytogenesが挙げられるが、これらに限定されない)、およびCampylobacterの全ての種が挙げられるが、これらに限定されない。本発明によって検出可能な細菌細胞としては、医療的にまたは獣医学的に重要な病原体である細菌細胞が挙げられるが、これらに限定されない。このような病原体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Bacillus spp.、Acinetobacter baumanii、Enterococcus faecium、Shigella flexneri、Bordetella pertussis、Camplyobacter jejuni、Chlamydia pneumoniae、Clostridium perfringens、Enterobacter spp.、Klebsiella pneumoniae、Mycoplasma pneumoniae、Salmonella typhi、Shigella sonnei、Staphylococcus aureus、およびStreptococcus spp。細菌病原体の中での薬物耐性の出現は、感染処置に関する重大な困難を表す。従って、ある種の実施形態において、本発明によって検出可能な細菌細胞としては、抗生物質耐性細菌(例えば、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA))が挙げられる。本開示によって検出可能な細菌細胞としては、食品または水に由来する病原体である細菌細胞が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な食品に由来する病原体としては、E.coli、Salmonella spp.、およびListeria spp.が挙げられる。水に由来する病原体としては、E.coli、Salmonella spp.、Campylobacter spp.、Mycobacterium spp.が挙げられる。
【0061】
本開示によって検出可能なさらなる細菌細胞としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない: Staphylococcusの全ての種(S.aureusが挙げられるが、これに限定されない)、Salmonella spp.、Klebsiella spp.、Pseudomonas spp.、Streptococcus spp.、Escherichia coliの全ての株、Listeria spp.(L.monocytogenesが挙げられるが、これに限定されない)、Campylobacter spp.、Bacillus spp.、Bordetella pertussis、Campylobacter jejuni、Chlamydia pneumoniae、Clostridium perfringens、Enterobacter spp.、Klebsiella pneumoniae、Mycoplasma pneumoniae、Salmonella typhi、Shigella sonnei、およびStreptococcus spp.。いくつかの実施形態において、本開示によって検出可能な細菌細胞は、公知の感染原因因子であるものである。
【0062】
さらなる微生物(その抗生物質耐性が、特許請求される組成物、方法、キットおよびシステムを使用して決定され得る)としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない: Abiotrophia adiacens、Acinetobacter baumanii、Actinomycetaceae、Bacteroides、CytophagaおよびFlexibacter phylum、Bacteroides fragilis、Bordetella pertussis、Bordetella spp.、Campylobacter jejuniおよびC.coli、Candida albicans、Candida dubliniensis、Candida glabrata、Candida guilliermondii、Candida krusei、Candida lusitaniae、Candida parapsilosis、Candida tropicalis、Candida zeylanoides、Candida spp.、Chlamydia pneumoniae、Chlamydia trachomatis、Clostridium spp.、Corynebacterium spp.、Cronobacter spp、Crypococcus neoformans、Cryptococcus spp.、Cryptosporidium parvum、Entamoeba spp.、Enterobacteriaceae群、Enterococcus casseliflavus-flavescens-gallinarum群、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Enterococcus gallinarum、Enterococcus spp.、Escherichia coliおよびShigella spp.群、Gemella spp.、Giardia spp.、Haemophilus influenzae、Klebsiella pneumoniae、Legionella pneumophila、Legionella spp.、Leishmania spp.、Mycobacteriaceae科、Mycoplasma pneumoniae、Neisseria gonorrhoeae、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonads群、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus hominis、Staphylococcus saprophyticus、Staphylococcus spp.、Streptococcus agalactiae、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、ならびにStreptococcus spp.。
【0063】
場合によっては、本明細書で記載される組成物、方法、キット、およびシステムは、Shiga毒素を生成するE.coli(STEC)感染を検出し得る。E.coli O157:H7は、STECの最も一般的な株である;しかし、E.coliのいくつかの他の株はまた、Shiga毒素を生成し得る。従って、いくつかの実施形態において、本明細書で記載される組成物、方法、キット、およびシステムは、1つのサンプル中でE.coliの複数の株を検出し得る。ある種の場合には、本明細書で記載される組成物、方法、キット、およびシステムは、E.coliの非Shiga毒素生成株を排除すると同時に、STEC株を検出し得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、本明細書で記載される組成物、方法、キット、およびシステムは、ESKAPE病原体を検出し得る。ESKAPE病原体は、薬物耐性特性を有する院内感染を一般に引き起こす病原体の一群である。その6種のESKAPE病原体は、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumannii、Pseudomonas aeruginosaおよびEnterobacter種である。
【0065】
インジケーター組換えバクテリオファージ
本明細書で詳細に記載されるように、本開示の組成物、方法、システム、およびキットは、微生物の検出における使用のための感染性因子を含み得る。ある種の実施形態において、本開示は、組換えインジケーターバクテリオファージを含む組成物であって、ここで上記バクテリオファージゲノムは、インジケーター遺伝子を含む遺伝子構築物を含むように遺伝子改変された組成物を含み得る。本開示の組成物は、種々の方法で具現化され得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、組換えバクテリオファージは、特定の目的の細菌に特異的なバクテリオファージから構築される。従って、いくつかの実施形態において、上記組換えインジケーターファージは、以下の細菌のうちの1つに特異的な野生型バクテリオファージから構築される:Staphylococcusの全ての種(S.aureusが挙げられるが、これに限定されない)、Salmonella spp.、Klebsiella spp.、Pseudomonas spp.、Streptococcus spp.、Escherichia coliの全ての株、Listeria spp.(L.monocytogenesが挙げられるが、これに限定されない)、Campylobacter spp.、Bacillus spp.、Bordetella pertussis、Campylobacter jejuni、Chlamydia pneumoniae、Clostridium perfringens、Enterobacter spp.、Klebsiella pneumoniae、Mycoplasma pneumoniae、Salmonella typhi、Shigella sonnei、およびStreptococcus spp.。いくつかの実施形態において、本明細書で記載される組換えバクテリオファージは、感染の既知の原因因子である、細菌に特異的な野生型バクテリオファージから構築される。
【0067】
いくつかの実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、抗生物質耐性微生物に特異的な野生型バクテリオファージから構築される。例えば、ESKAPE病原体は、院内感染を一般に引き起こす薬物耐性特性を有する病原体の一群である。その6種のESKAPE病原体は、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumannii、Pseudomonas aeruginosaおよびEnterobacter種である。従って、いくつかの実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、少なくとも1種のESKAPE病原体に特異的な野生型バクテリオファージから構築される。いくつかの実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、STEC株に特異的であるが、E.coliの非Shiga毒素生成株に特異的でない野生型バクテリオファージから構築される。
【0068】
本明細書で記載される組成物、方法、キット、およびシステムにおいて使用され得るさらなる野生型バクテリオファージは、以下が挙げられるが、これらに限定されない抗生物質耐性に対して特異的である: Abiotrophia adiacens、Acinetobacter baumanii、Actinomycetaceae、Bacteroides、CytophagaおよびFlexibacter phylum、Bacteroides fragilis、Bordetella pertussis、Bordetella spp.、Campylobacter jejuniおよびC.coli、Candida albicans、Candida dubliniensis、Candida glabrata、Candida guilliermondii、Candida krusei、Candida lusitaniae、Candida parapsilosis、Candida tropicalis、Candida zeylanoides、Candida spp.、Chlamydia pneumoniae、Chlamydia trachomatis、Clostridium spp.、Corynebacterium spp.、Cronobacter spp、Crypococcus neoformans、Cryptococcus spp.、Cryptosporidium parvum、Entamoeba spp.、Enterobacteriaceae群、Enterococcus casseliflavus-flavescens-gallinarum群、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Enterococcus gallinarum、Enterococcus spp.、Escherichia coliおよびShigella spp.群、Gemella spp.、Giardia spp.、Haemophilus influenzae、Klebsiella pneumoniae、Legionella pneumophila、Legionella spp.、Leishmania spp.、Mycobacteriaceae科、Mycoplasma pneumoniae、Neisseria gonorrhoeae、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonads群、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus hominis、Staphylococcus saprophyticus、Staphylococcus spp.、Streptococcus agalactiae、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、ならびにStreptococcus spp.。
【0069】
本明細書で考察されるように、このようなファージは、細菌の内部で複製して、数百もの子孫ファージを生じ得る。上記ファージに挿入されたインジケーター遺伝子の検出は、上記サンプル中の細菌の尺度として使用され得る。本明細書で記載される組成物、方法、キット、およびシステムとともに使用される野生型バクテリオファージは、目的の細菌に対する特異性に基づいて選択され得る。
【0070】
いくつかの実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、ファージのCaudovirales目に由来する。Caudoviralesは、2本鎖DNA(dsDNA)ゲノムを有するテールのあるバクテリオファージの目である。Caudovirales目の各ビリオンは、ビリオンゲノムおよび可撓性テールを含む正二十面体ヘッドを有する。Caudovirales目は、5つのバクテリオファージ科を含む:Myoviridae(長い収縮性のあるテール)、Siphoviridae(長い非収縮性のテール)、Podoviridae(短い非収縮性のテール)、Ackermannviridae、およびHerelleviridae。用語マイオウイルスは、正二十面体ヘッドおよび長い収縮性のあるテールを有する任意のバクテリオファージを記載するために使用され得、これは、Myoviridae科、Ackermannviridae科およびHerelleviridae科の両方の範囲内のバクテリオファージを含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、上記選択された野生型ファージは、1種またはこれより多くのListeria spp.に特異的である。いくつかの実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Myoviridae科のメンバー(例えば、ListeriaファージB054、T4およびT4様ウイルス(tequatrovirusとしても公知))である。他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Herelleviridae科のメンバー(ListeriaファージLMTA-94、P100ウイルスおよびA511など)である。Ackermannviridaeは、Kuttervirus(別名(Vil様)を含む。いくつかの実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Listeria spp.に感染する。他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、LMA4およびLMA8である。Herelleviridae科の下にあるPecentumvirus属は、バクテリオファージ(例えば、ListeriaファージLMSP-25、ListeriaファージLMTA-148、ListeriaファージLMTA-34、ListeriaファージLP-048、ListeriaファージLP-064、ListeriaファージLP-083-2、ListeriaファージLP-125、ListeriaウイルスP100、ListeriaファージList-36、ListeriaファージWIL-1、ListeriaファージvB_LmoM_AG20、およびListeriaウイルスA511)を含む。LMA4およびLMA8はまた、Herelleviridae科の下にあるPecentumvirus属の中にあるようである。Siphoviridae科は、ListeriaファージA006、A118、A500、B025、LP-026、LP-030-2、LP-030-3、LP-037、LP-101、LP-110、LP-114、P35、P40、P70、PSA、vB_LmoS_188、およびvB_Lmos_293を含む。
【0072】
S.aureusファージとしては、ファージK、SA1、SA2、SA3、SA11、SA77、SA 187、Twort、NCTC9857、Ph5、Ph9、Ph10、Ph12、Ph13、U4、U14、U16およびU46が挙げられるが、これらに限定されない。E.coliの十分に研究されたファージとしては、T1、T2、T3、T4、T5、T7、およびlambdaが挙げられる;ATCCコレクションにおいて入手可能な他のE.coliファージは、例えば、phiX174、S13、Ox6、MS2、phiV1、PR772、およびZIK1が挙げられる。Pseudomonas aeruginosaファージは、ATCCファージPa2、phiKZ、PB1または近縁のファージを含み得る。あるいは、天然のファージは、種々の環境供給源から単離され得る。ファージ単離の供給源は、目的の微生物が見出されると予測される場所に基づいて選択され得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、上記ファージは、T7、T4、T4様、ファージK、MP131、MP115、MP112、MP506、MP87、Rambo、SAP-JV1、SAP-BZ2、PAP-WH2、PAP-WH3、PAP-JP1、PAP-JP2または上記で開示されるファージと少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78,%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、または70% 相同性を有するゲノムを有する別の天然に存在するファージに由来する。いくつかの局面において、本発明は、ファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含む組換えファージを含む。いくつかの実施形態において、上記ファージは、Tequatrovirus属またはKayvirus属の中にある。1つの実施形態において、上記組換えファージは、ファージK、SAP-JV1、SAP-BZ2、またはMP115に由来する。ある特定の実施形態において、上記組換えファージは、特定の細菌に対して非常に特異的である。例えば、ある特定の実施形態において、上記組換えファージは、Staphylococcus aureusに対して非常に特異的である。一実施形態において、上記組換えファージは、少なくとも100の他のタイプの細菌からStaphylococcus aureusを区別し得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、サンプルは、少なくとも1種のバクテリオファージを含むインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートされる。ある種の場合には、上記インジケーターカクテル組成物は、目的の細菌に特異的な少なくとも1種のバクテリオファージを含む。いくつかの実施形態において、上記インジケーターカクテル組成物は、上記目的の同じ細菌に特異的な、2種またはこれより多くの組換えバクテリオファージを含む。いくつかの実施形態において、上記目的の細菌は、細菌の属、種、株またはタイプであり得る。場合によっては、インジケーターカクテル組成物は、細菌の特定の属(例えば、Listeria種)、特定の種(例えば、Listeria monocytogenes)、株(E.coli O157:H7)またはタイプ(例えば、グラム陽性)に特異的であり得る。例えば、インジケーターカクテル組成物は、Listeria monocytogenesに特異的な2種またはこれより多くの組換えバクテリオファージを含み得る。場合によっては、上記インジケーターカクテル組成物は、上記目的の細菌に特異的な少なくとも1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、または10種の異なる組換えバクテリオファージを含む。
【0075】
さらなる実施形態において、マルチカクテル組成物は、少なくとも2種のインジケーターカクテル組成物を含み、ここで第1のインジケーターカクテル組成物は、第1の目的の細菌に特異的であり、第2のインジケーターカクテル組成物は、第2の目的の細菌に特異的である。ある種の実施形態において、上記マルチカクテル組成物は、少なくとも2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、または10種のインジケーターカクテル組成物を含む。例えば、任意のESKAPE病原体がサンプルに存在するか否かを決定するために、Enterococcus faeciumに特異的な第1のインジケーターカクテル、Staphylococcus aureusに特異的な第2のインジケーターカクテル、Klebsiella pneumoniaeに特異的な第3のインジケーターカクテル、Acinetobacter baumanniiに特異的な第4のインジケーターカクテル、Pseudomonas aeruginosaに特異的な第5のインジケーターカクテルおよびEnterobacter種に特異的な第6のインジケーターカクテルを含むマルチカクテル組成物が、使用され得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、インジケータータンパク質生成物をコードするインジケーター遺伝子を含む遺伝子構築物は、上記バクテリオファージゲノムに挿入される。遺伝的改変は野生型遺伝子の欠失を回避することができ、したがって、改変されたファージは多くの市販のファージよりも野生型感染性因子に類似のままでいることができる。環境に由来するバクテリオファージは、環境中で見いだされる細菌に対し、より特異的であり得、このように、市販のファージとは遺伝子的に異なり得る。
【0077】
インジケーター遺伝子は、種々の生体分子を発現し得る。上記インジケーター遺伝子は、検出可能な生成物を発現する遺伝子もしくは検出可能な生成物を生成する酵素である。例えば、一実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、ルシフェラーゼ酵素などのインジケータータンパク質生成物をコードする。種々のタイプのルシフェラーゼが使用され得る。代替の実施形態において、および本明細書でより詳細に記載されるように、ルシフェラーゼは、Oplophorusルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、Luciaルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼまたは工学技術で作製された(engineered)ルシフェラーゼのうちの1種である。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼ遺伝子はOplophorusに由来する。いくつかの実施形態において、インジケーター遺伝子は、NANOLUC(登録商標)などの遺伝子改変されたルシフェラーゼ遺伝子である。
【0078】
さらに、非必須であると考えられるファージ遺伝子は、認識されていない機能を有し得る。例えば、見かけは非必須の遺伝子は、アセンブリにおける巧妙な切断、適合、もしくはトリミング機能など、バーストサイズを上昇させることにおいて重要な機能を有し得る。それゆえ、遺伝子を欠失させてインジケーター遺伝子を挿入することは、有害であり得る。大部分のファージは、それらの天然のゲノムより数パーセント大きいDNAをパッケージし得る。この考察では、より小さなインジケーター遺伝子は、バクテリオファージ(特に、より小さなゲノムを有するバクテリオファージ)を改変するためのより適切な選択であり得る。OpLucおよびNANOLUC(登録商標)タンパク質は、わずか約20kDa(コードするのに約500~600bp)である一方で、FLucは、約62kDa(コードするのに約1,700bp)である。さらに、インジケーター遺伝子は細菌によって内因的に発現されるべきでなく(すなわち、細菌ゲノムの一部でない)、高いシグナル対バックグラウンド比を生成するべきであり、タイムリーに容易に検出可能であるべきである。PromegaのNANOLUC(登録商標)は、改変されたOplophorus gracilirostris(深海エビ)ルシフェラーゼである。いくつかの実施形態において、PromegaのNANO-GLO(登録商標)、イミダゾピラジノン基質(フリマジン)と組み合わせたNANOLUC(登録商標)は、低いバックグラウンドで頑健なシグナルを提供し得る。
【0079】
感染性因子に対する遺伝的改変は、核酸の小さなフラグメント、遺伝子の実質的部分、もしくは遺伝子全体の挿入、欠失、もしくは置換を含み得る。いくつかの実施形態において、挿入もしくは置換された核酸は、非天然の配列を含む。いくつかの実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、融合タンパク質をコードする。非天然のインジケーター遺伝子は、外因性バクテリオファージプロモーターの制御下にあるように、バクテリオファージゲノムへと挿入され得る。従って、いくつかの実施形態において、上記非天然のインジケーター遺伝子は、融合タンパク質の一部ではない。すなわち、いくつかの実施形態において、遺伝的改変は、上記インジケータータンパク質生成物が上記野生型のバクテリオファージのポリペプチドを含まないように構成され得る。いくつかの実施形態において、上記インジケータータンパク質生成物は、可溶性である。
【0080】
いくつかの実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、捕捉または固定化され得るインジケータータンパク質をコードする。場合によっては、上記インジケーター遺伝子は、結合パートナーに特異的なインジケータータンパク質をコードする。従って、ある種の実施形態において、上記インジケータータンパク質生成物は、固定化された結合パートナーを使用して捕捉され得る。上記結合パートナーは、上記インジケータータンパク質に特異的でありかつ結合し得る任意の分子であり得る。本明細書で記載される組成物、方法、システム、およびキットとともに使用するための適切な結合パートナーとしては、ペプチド、抗体、アプタマー、リガンド、タンパク質、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ある種の実施形態において、上記固定化された結合パートナーは、捕捉抗体である。いくつかの実施形態において、上記インジケータータンパク質生成物は、上記インジケータータンパク質生成物に特異的な固定化された抗体またはそのフラグメントを使用して捕捉され得る。例えば、上記インジケータータンパク質は、ルシフェラーゼであってもよく、上記ルシフェラーゼは、抗ルシフェラーゼ抗体に特異的であってもよい。
【0081】
他の実施形態において、上記遺伝子構築物は、インジケータータンパク質および捕捉部分に関する遺伝子を含み、ここで上記インジケータータンパク質および捕捉部分の遺伝子は、融合タンパク質をコードする。ある種の場合には、上記インジケーター遺伝子および捕捉部分は、インジケータータンパク質-捕捉部分融合タンパク質をコードする。場合によっては、上記捕捉部分は、固定化された結合パートナーを使用して捕捉され得る。上記結合パートナーは、上記インジケータータンパク質に特異的かつ結合し得る任意の分子であり得る。本明細書で記載される組成物、方法、システム、およびキットとともに使用するための適切な結合パートナーとしては、抗体、アプタマー、リガンド、または任意のこれらの一部が挙げられるが、これらに限定されない。ある種の実施形態において、上記固定化された結合パートナーは、捕捉抗体である。従って、いくつかの実施形態において、上記捕捉部分は、上記捕捉部分に特異的な、固定化された抗体またはそのフラグメントを使用して捕捉され得る。
【0082】
ある種の実施形態において、上記捕捉部分は、ペプチドタグである。上記ペプチドタグは、50個未満のアミノ酸残基、例えば、50個未満、40個未満、30個未満、20個未満、10個未満、または5個未満のアミノ酸残基を含み得る。ある種の実施形態において、上記ペプチドタグは、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、または2個のアミノ酸残基を含み得る。上記ペプチドタグの比較的小さなサイズは、上記ペプチドタグがその標識されたタンパク質の機能または活性に干渉することを妨げ得るという点において有利である。従って、上記ペプチドタグ化インジケータータンパク質生成物は、その折りたたみおよび機能する能力を維持する。いくつかの実施形態において、上記捕捉部分(例えば、ペプチドタグ)は、固定化された結合パートナーに対する高い結合活性および特異性を示す。上記捕捉部分は、上記結合パートナーに特異的であり、かなりのパーセンテージの非標的結合パートナーへの結合を回避する。いくつかの実施形態において、捕捉部分は、非標的結合パートナーの約90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、95%超、96%超、97%超、98%超、99%超、結合を回避する。当該分野で公知であり、市販されているくつかのペプチドタグシステムが存在し、これらとしては、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、c-myc、FLAG、HA、6ヒスチジン(His6)、T7-タグ、Strep-Tag、およびAvi-Tagが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
上記組換えインジケーターファージのいくつかの実施形態において、上記遺伝子構築物は、外因性プロモーターをさらに含む。上記さらなる外因性後期プロモーター(例えば、ファージKまたはT7またはT4に由来するクラスIIIプロモーター)は、上記ファージ粒子へとアセンブルされる構造タンパク質の遺伝子を転写する同じ天然のファージ(例えば、それぞれ、ファージKまたはT7またはT4)のRNAポリメラーゼに対して高い親和性を有する。これらのタンパク質は、各ファージ粒子がこれらの分子の数十または数百ものコピーを含むことから、ファージによって作られる存在量の最も多いタンパク質である。ウイルス後期プロモーターの使用は、インジケータータンパク質生成物の高レベルの発現を最適に確実にし得る。上記インジケーターファージが由来する元の野生型ファージに由来するか、またはこれに対して特異的かまたはその下で活性である後期ウイルスプロモーター(例えば、ファージKまたはT4またはT7ベースのシステムでのファージKまたはT4またはT7後期プロモーター)の使用は、上記酵素の最適な発現をさらに確実にし得る。標準的な細菌(非ウイルス/非ファージ)プロモーターの使用は、ある場合には、発現にとって有害であり得る。なぜならこれらのプロモーターはしばしば、ファージ感染の間に(ファージが、ファージタンパク質生成のために細菌のリソースを優先するために)ダウンレギュレートされるからである。従って、いくつかの実施形態において、上記ファージは、インジケータータンパク質生成物をコードし、これを高いレベルで発現するように操作される。
【0084】
いくつかの実施形態において、宿主細菌の感染後の子孫バクテリオファージにおけるインジケーター遺伝子の発現は、遊離の可溶性タンパク質生成物をもたらす。いくつかの実施形態において、上記非天然のインジケーター遺伝子は、ファージ構造タンパク質をコードする遺伝子と連結していないので、融合タンパク質を生じない。ファージ構造タンパク質へのインジケータータンパク質生成物の融合物(すなわち、融合タンパク質)を使用するシステムとは異なり、本発明のいくつかの実施形態は、可溶性または遊離のインジケーター(例えば、可溶性または遊離のルシフェラーゼ)を発現する。いくつかの実施形態において、上記インジケータータンパク質は、理想的には、上記バクテリオファージ構造を含まない。すなわち、上記インジケーターまたはレポーターは、上記ファージ構造タンパク質に結合されず、繋がれてもいない。よって、上記インジケーターの遺伝子は、上記組換えファージゲノムにおける他の遺伝子と融合されない。これは、上記アッセイの感度を大いに増大させ得(単一の細菌まで)、上記アッセイを単純化し得、上記アッセイが、検出可能な融合タンパク質を生成する構築物で必要とされるさらなる精製工程に起因する数時間とは対照的に、いくつかの実施形態に関しては、2時間もしくはこれより短い時間で完了することを可能にする。明確にするために、インジケーターとペプチドタグまたはタンパク質タグとの融合物は、生成される上記インジケーター-ペプチド融合物またはインジケーター-タンパク質融合物が上記バクテリオファージへの構造的結合を含まない(すなわち、繋がれていない)場合、遊離または可溶性のインジケーターである。
【0085】
他の実施形態において、宿主細菌の感染後の子孫バクテリオファージにおける上記インジケーター遺伝子の発現は、インジケータータンパク質-捕捉部分融合タンパク質生成物を生じる。いくつかの実施形態において、上記融合インジケータータンパク質は、いかなるバクテリオファージ構造タンパク質にも融合されない。定義によるインジケータータンパク質-バクテリオファージ構造タンパク質融合タンパク質(例えば、ルシフェラーゼ-カプシドタンパク質融合タンパク質)は、上記バクテリオファージにおけるタンパク質のサブユニットに付着される部分の数を制限する。例えば、融合タンパク質のためのプラットフォームとして働くように設計された市販のシステムを使用すると、各T7バクテリオファージ粒子において遺伝子10Bカプシドタンパク質の約415コピーに相当する、融合部分の約415コピーが生じる。この制約がなければ、感染した細菌は、上記バクテリオファージに適合し得るより多くの上記インジケータータンパク質生成物(例えば、ルシフェラーゼ)のコピーを発現すると予測され得る。さらに、大きな融合タンパク質(例えば、カプシド-ルシフェラーゼ融合物)は、上記バクテリオファージ粒子のアセンブリを阻害し得、そのようにして、より少ないバクテリオファージ子孫を生じる。従って、いくつかの実施形態において、上記融合インジケータータンパク質-捕捉部分融合生成物は、バクテリオファージ構造タンパク質を含まない。
【0086】
いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、検出可能な酵素などのインジケータータンパク質をコードする。上記インジケーター遺伝子産物は、光を生じ得、そして/または色の変化によって検出可能であり得る。種々の適切な酵素は、市販されている(例えば、アルカリホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、もしくはルシフェラーゼ(Luc))。いくつかの実施形態において、これらの酵素は、上記インジケータータンパク質生成物として働き得る。いくつかの実施形態において、ホタルルシフェラーゼは、上記インジケータータンパク質生成物である。いくつかの実施形態において、Oplophorusルシフェラーゼは、上記インジケータータンパク質生成物である。いくつかの実施形態において、NANOLUC(登録商標)は、上記インジケーター部分である。他の工学技術で作製されたルシフェラーゼもしくは検出可能なシグナルを生成する他の酵素もまた、適切なインジケーター部分であり得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、非インジケータータンパク質-バクテリオファージ構造タンパク質融合タンパク質生成物の使用は、汚染しているストックファージを、上記感染したサンプル細胞の溶解物から除去する必要性を排除する。構造バクテリオファージ融合タンパク質システムを用いると、サンプル細胞に感染させるために使用される任意のバクテリオファージは、付着されるインジケータータンパク質生成物を有し、上記インジケータータンパク質生成物も含む娘バクテリオファージから区別できない。サンプル細菌の検出は、新たに作り出された(デノボ合成された)インジケータータンパク質生成物の検出に依拠するので、構造バクテリオファージ融合タンパク質構築物の使用は、古い(ストックファージ)インジケーターを新たに合成されたインジケーターから分離するためにさらなる工程を要する。これは、上記バクテリオファージの生活環の完了の前に、上記感染した細胞を複数回洗浄する工程、物理的もしくは化学的手段によって感染後に過剰なストックファージを不活性化する工程、および/または上記ストックバクテリオファージを結合部分(例えば、ビオチン)で化学的に改変する工程(これは、次いで、結合および分離され得る(例えば、ストレプトアビジン被覆セファロースビーズによって))によって達成され得る。しかし、除去時にすべてのこれら試みを使用したとしても、ストックファージは、少ない数のサンプル細胞の感染を保証するために高濃度のストックファージが使用される場合に残存することができ、感染した細胞の子孫ファージからのシグナルの検出を不明確にし得るバックグラウンドシグナルを作り出す。
【0088】
対照的に、本発明のいくつかの実施形態において発現される可溶性非構造バクテリオファージ融合タンパク質生成物を用いると、最終溶解物からの上記ストックファージの精製は不要である。なぜなら上記ストックファージ組成物は、付着されるいかなるインジケータータンパク質生成物をも有しないからである。従って、感染後に存在する任意のインジケータータンパク質生成物は、感染した1個もしくは複数の細菌の存在を示して、新たに作り出されていなければならない。この利益を利用するために、ファージの生成および調製は、細菌培養物中での組換えバクテリオファージの生成の間に生成された任意の遊離インジケータータンパク質生成物からの上記ファージの精製を含み得る。標準的なバクテリオファージ精製技術は、本発明に従うファージのいくつかの実施形態を精製するために使用され得る(例えば、スクロース密度勾配遠心分離、塩化セシウム等密度(isopycnic)密度勾配遠心分離、HPLC、サイズ排除クロマトグラフィー、および透析または派生技術(例えば、Amiconブランドの濃縮器 - Millipore, Inc.)。塩化セシウム等密度超遠心分離は、ストックファージ粒子を、上記細菌宿主中のファージの増殖の際に生成される汚染するルシフェラーゼタンパク質から分離するために、本開示の組換えファージの調製の一部として用いられ得る。このようにして、本発明の組換えバクテリオファージは、上記細菌における生成の間に生成される任意のルシフェラーゼが実質的ない。上記ファージストックに存在する残りのルシフェラーゼの除去は、上記組換えバクテリオファージが試験サンプルとともにインキュベートされる場合に観察されるバックグラウンドシグナルを実質的に低減し得る。
【0089】
改変された組換えバクテリオファージのいくつかの実施形態において、後期プロモーター(クラスIIIプロモーター)は、バクテリオファージ粒子へとアセンブルされる構造タンパク質の遺伝子を転写する同じバクテリオファージのRNAポリメラーゼに対して高い親和性を有する。これらのタンパク質は、上記ファージによって作製される最も豊富なタンパク質である。なぜなら各バクテリオファージ粒子は、これら分子の数十または数百ものコピーを含むからである。ウイルス後期プロモーターの使用は、最適には、ルシフェラーゼインジケータータンパク質生成物の高レベルの発現を確実にし得る。野生型バクテリオファージに由来する後期ウイルスプロモーター、その下で特異的または活性である派生する上記インジケーターファージの使用は、インジケータータンパク質生成物の最適な発現をさらに確実にし得る。例えば、MRSAに対して特異的なインジケーターファージは、S.aureusファージISPに由来するコンセンサス後期遺伝子プロモーターを含み得る。他の場合では、上記SAP-BZ2は、グラム陽性/SigAプロモーターコンセンサス領域を含み得る。標準的な細菌(非ウイルス/非バクテリオファージ)プロモーターの使用は、いくつかの場合では、発現に有害であり得る。なぜならこれらのプロモーターは、バクテリオファージ感染の間に(上記バクテリオファージがファージタンパク質生成のための細菌資源を優先するために)しばしばダウンレギュレートされるからである。従って、いくつかの実施形態において、上記ファージは、好ましくは、発現をファージ構造構成要素のサブユニットの数に制限しないゲノム内での配置を用いて、可溶性(遊離)インジケータータンパク質または可溶性(遊離)捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物をコードし、高レベルで発現するように操作されている。
【0090】
図1に示されるように、遺伝子構築物は、インジケーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ遺伝子)を含む相同組換え挿入物を含み得る。上記遺伝子構築物は、上記インジケーター遺伝子のN末端またはC末端に配置されたペプチドタグを含み得る。いくつかの実施形態において、上記構築物はまた、バクテリオファージ後期遺伝子プロモーターおよびリボソーム結合部位(RBS)を含み得る。示されるプロモーターは、内因性後期遺伝子(例えば、主要カプシドタンパク質(MCP)の遺伝子)の上流に、内因性後期遺伝子プロモーターに付加された状態であり得るか、または分離した状態にある。
【0091】
本開示の組成物は、1種または複数種の野生型または遺伝子改変された感染性因子(例えば、バクテリオファージ)および1種または複数種のインジケーター遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態において、組成物は、同じまたは異なるインジケータータンパク質をコードおよび発現し得る、異なるインジケーターファージのカクテルを含み得る。いくつかの実施形態において、インジケーターバクテリオファージのカクテルは、少なくとも2種の異なるタイプの組換えバクテリオファージを含む。
【0092】
いくつかのインジケーターファージ実施形態において、上記遺伝的構築物は、野生型ファージ遺伝子を無傷のままにして、機能的遺伝子の破壊を回避するために非翻訳領域へと挿入され、これは、非実験室株の細菌に感染させる場合に、より大きな適合をもたらし得る。さらに、3つ全てのリーディングフレームに終止コドンを含めることは、リードスルー(発現漏れ(leaky expression)としても公知)を低減することによって、発現を増加させる一助になり得る。この戦略はまた、構造的バクテリオファージ融合タンパク質が低レベルで作製され。ファージから分離できないバックグラウンドシグナル(例えば、ルシフェラーゼ)として現れる可能性を排除し得る。
【0093】
従って、いくつかの実施形態において、本発明は、後期(クラスIII)遺伝子領域中に非バクテリオファージインジケーター遺伝子を含む遺伝子構築物を含む遺伝子改変されたバクテリオファージを含む。いくつかの実施形態において、上記遺伝子構築物は、結合パートナーに特異的な捕捉部分をさらに含む。場合によっては、上記遺伝子構築物は、上記インジケーター遺伝子および上記捕捉部分が後期プロモーターの制御下にあるように、外因性の後期プロモーターをさらに含む。ウイルス後期遺伝子プロモーターを使用することは、上記インジケーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ)がウイルスカプシドタンパク質のように、高レベルで発現されるのみならず、内因性細菌遺伝子もしくはさらには初期ウイルス遺伝子のように停止もされないことを確実にする。
【0094】
いくつかの実施形態は、上記主要カプシドタンパク質遺伝子の下流に相同組換えのための配列を設計する(および、任意選択で調製する)ことを含む。他の実施形態は、主要カプシドタンパク質遺伝子の上流に相同組換えのための配列を設計する工程(および必要に応じて調製する工程)を含む。いくつかの実施形態において、上記配列は、非翻訳領域の後にコドン最適化インジケーター遺伝子を含む。非翻訳領域は、ファージ後期遺伝子プロモーターおよびリボソーム進入部位を含み得る。
【0095】
細菌の検出のためにバクテリオファージを使用する方法
本明細書で注記されるように、ある種の実施形態において、本発明は、微生物を検出するために改変された感染性因子を使用する方法を包含し得る。本開示の方法は、種々の方法において具現化され得る。
【0096】
1つの局面において、サンプル中で目的の細菌を検出する方法は、(i)上記サンプルを得る工程; (ii)上記サンプルを、少なくとも1種のインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする工程であって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含み、ここで上記遺伝子構築物は、インジケータータンパク質生成物をコードするインジケーター遺伝子を含む工程;(iii)上記インジケータータンパク質生成物を捕捉する工程;および(iv)上記捕捉されたインジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記捕捉されたインジケータータンパク質生成物の検出は、上記目的の細菌が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する。
【0097】
別の局面において、サンプル中で目的の細菌を検出する方法は、(i)上記サンプルを得る工程;(ii)上記サンプルを、少なくとも1種のインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする工程であって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含み、ここで上記遺伝子構築物は、捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物をコードするインジケーター遺伝子および捕捉部分を含む工程;(iii)上記捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物を捕捉する工程;および(iv)上記捕捉されたインジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記捕捉されたインジケータータンパク質生成物の検出は、上記目的の細菌が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する。
【0098】
ある種の実施形態において、目的の細菌を検出するための方法は、少なくとも1種の目的の細菌を検出する工程を包含する。一実施形態において、サンプル中で少なくとも1種の目的の細菌を検出するための上記方法は、上記サンプルを得る工程を包含する。上記サンプルは、上記で詳細に記載されるように、医療用サンプル、獣医学的サンプル、薬学的サンプル、臨床サンプル、実験サンプル、環境サンプル、食品サンプル、もしくは水サンプル、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、上記サンプルにおける細菌の富化は、試験前に必要とされない。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、成長を助長する条件でのインキュベーションによる試験の前に富化することができる。このような実施形態では、富化期間は、サンプルのタイプおよびサイズに応じて、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間もしくは24時間またはそれより長くてもよい。
【0100】
いくつかの実施形態において、上記サンプルは、生物学的サンプル(尿、鼻、粘液、唾液、血液、喀痰、脳脊髄液、および糞便のサンプルが挙げられるが、これらに限定されない)および種々のタイプのスワブである。ある種の実施形態において、上記血液サンプルは、全血、血清、または血漿であり得る。場合によっては、上記生物学的サンプルは、細菌を検出する前に、さらなる処理工程を必要としない。いくつかの実施形態において、上記生物学的サンプルは、細菌を検出する前に、さらに富化され得る。場合によっては、上記サンプルは、比較的短時間、富化される。例えば、全血サンプルは、8時間未満、7時間未満、6時間未満、5時間未満、4時間未満、3時間未満、2時間未満、1時間未満、または0.5時間未満、富化され得る。いくつかの実施形態において、全血は培地中で希釈される。例えば、全血サンプルは、25:75(全血:培地)へと希釈され得る。
【0101】
ある種の実施形態において、サンプル中で少なくとも1種の目的の細菌を検出するための方法は、上記サンプルを、少なくとも1種の組換えバクテリオファージを含むインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする工程を包含する。ある種の場合には、上記インジケーターカクテル組成物は、目的の細菌に特異的な少なくとも1種のバクテリオファージを含む。いくつかの実施形態において、上記インジケーターカクテル組成物は、上記目的の同じ細菌に特異的な、2種またはこれより多くの組換えバクテリオファージを含む。いくつかの実施形態において、上記目的の細菌は、本明細書で詳細に記載されるように、細菌の属、種、株またはタイプであり得る。場合によっては、上記インジケーターカクテル組成物は、上記目的の細菌に特異的な少なくとも1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、または10種の異なる組換えバクテリオファージを含む。
【0102】
さらなる実施形態において、マルチカクテル組成物は、少なくとも2種のインジケーターカクテル組成物を含み、ここで第1のインジケーターカクテル組成物は、第1の目的の細菌に特異的であり、第2のインジケーターカクテル組成物は、第2の目的の細菌に特異的である。ある種の実施形態において、上記マルチカクテル組成物は、本明細書で詳細に記載されるように、少なくとも2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、または10種のインジケーターカクテル組成物を含む。
【0103】
上記バクテリオファージは、上記ファージの複製中に、可溶性(非構造的バクテリオファージ融合物)ルシフェラーゼを発現するように操作され得る。ルシフェラーゼの発現は、ウイルスカプシドプロモーター(例えば、上記バクテリオファージ PecentumvirusまたはT4後期プロモーター)によって駆動され、高発現を生じる。ストックファージは、それらがルシフェラーゼを含まないように調製されるので、上記アッセイにおいて検出されるルシフェラーゼは、細菌細胞の感染の間に、子孫ファージの複製に由来しなければならない。従って、上記親ファージを上記子孫ファージから分離する必要は、一般にはない。
【0104】
いくつかの実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、インジケータータンパク質生成物をコードするインジケーター遺伝子を含む遺伝子構築物を含む。インジケーター遺伝子は、種々の生体分子を発現し得る。例えば、1つの実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、ルシフェラーゼ酵素をコードする。本明細書で詳細に記載されるように、種々のタイプのルシフェラーゼが使用され得る。
【0105】
いくつかの実施形態において、上記遺伝子構築物は、捕捉部分をさらに含む。他の実施形態において、上記遺伝子構築物は、インジケータータンパク質および捕捉部分に関する遺伝子を含み、ここで上記インジケータータンパク質および捕捉部分は、融合タンパク質をコードする。場合によっては、上記捕捉部分は、固定化された結合パートナーを使用して捕捉され得る。上記結合パートナーは、上記インジケータータンパク質に特異的でありかつ結合し得る任意の分子であり得る。本明細書で記載される組成物、方法、システム、およびキットとともに使用するための適切な結合パートナーとしては、ペプチド、抗体、アプタマー、リガンド、またはこれらの任意の部分が挙げられるが、これらに限定されない。ある種の実施形態において、上記固定化された結合パートナーは、捕捉抗体である。従って、いくつかの実施形態において、上記捕捉部分は、上記捕捉部分に特異的な、固定化された抗体またはそのフラグメントを使用して捕捉され得る。
【0106】
いくつかの実施形態において、上記固定化された結合パートナー(例えば、抗体)は、表面に共有結合により連結される。ある種の場合には、上記表面は、アミノ基またはカルボキシル基を含む。アミノ基またはカルボキシル基は、上記固定化された結合パートナーを上記表面に共有結合により連結するために使用され得る。
【0107】
ある種の実施形態において、上記捕捉部分は、ペプチドタグである。上記ペプチドタグは、500個未満のアミノ酸残基、例えば、500個未満、450個未満、400個未満、350個未満、300個未満、250個未満、200個未満、100個未満、50個未満、40個未満、30個未満、20個未満、10個未満または5個未満のアミノ酸残基を含み得る。ある種の実施形態において、上記ペプチドタグは、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、または2個のアミノ酸残基を含み得る。上記ペプチドタグの比較的小さなサイズは、上記ペプチドタグがその標識されたタンパク質の機能または活性に干渉することを妨げ得るという点において有利である。従って、上記ペプチドタグ化インジケータータンパク質生成物は、その折りたたみおよび機能する能力を維持する。
【0108】
いくつかの実施形態において、上記遺伝子構築物は、さらなる外因性プロモーターをさらに含む。上記さらなる外因性後期プロモーター(例えば、ファージKまたはT7またはT4に由来するクラスIIIプロモーター)は、本明細書で詳細に記載されるように、ファージ粒子へとアセンブルされる構造タンパク質の遺伝子を転写する同じ天然のファージ(例えば、それぞれ、ファージKまたはT7またはT4)のRNAポリメラーゼに対して高い親和性を有する。
【0109】
従って、いくつかの実施形態において、サンプル中で少なくとも1種の目的の細菌を検出するための方法は、上記サンプルを、少なくとも1種の組換えバクテリオファージを含むインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする工程であって、ここで上記組換えバクテリオファージは、(i)インジケータータンパク質生成物をコードするインジケーター遺伝子;(ii)捕捉部分;および(iii)外因性プロモーターを含む遺伝子構築物を含む工程を包含する。
【0110】
いくつかの実施形態において、上記サンプルは、上記インジケーターカクテル組成物とともに、少なくとも0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、または10時間にわたってインキュベートされる。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、上記マルチカクテル組成物とともに、少なくとも0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、または10時間にわたってインキュベートされる。上記目的の細菌が上記サンプルに存在する場合、上記組換えバクテリオファージは、上記細菌に感染し、それによって、上記インジケーター遺伝子を発現する。従って、いくつかの実施形態において、上記方法は、上記インジケータータンパク質生成物または上記捕捉部分-インジケータータンパク質生成物融合物を捕捉する前に、上記組換えバクテリオファージに感染した細菌を溶解するために溶解緩衝液での処理を包含する。
【0111】
いくつかの実施形態において、上記表面は、固定化された結合パートナーを含み得る。例えば、1種またはこれより多くの特異的認識エレメントは、分析物認識のためのアレイを生成するために、表面の別個の領域において固定化され得る。上記インジケータータンパク質生成物は、上記固定化された結合パートナーを含む表面と接触した状態にされ得る。いくつかの実施形態において、いくつかの異なる結合パートナーは、1つの表面に同時に固定化され得る。いくつかの実施形態において、上記固定化された結合パートナーは、抗体またはそのフラグメントである。
【0112】
いくつかの実施形態において、1種またはこれより多くの異なる固定化された結合パートナーは、上記インジケータータンパク質生成物を捕捉するための表面(例えば、プレート)上に沈着され得る(例えば、ピペットで移され得る(pipetted))。いくつかの局面において、上記表面は、固定化された結合パートナーを配向することによって、上記インジケータータンパク質生成物のアクセス可能性および捕捉を改善し得る。例えば、抗体は、プレート上に沈着され得、ある期間にわたってインキュベートされ得る。いくつかの実施形態において、上記抗体は、ウサギ抗体またはヤギ抗体であり得る。必要に応じて、上記プレートは、インキュベーション後に洗浄され得る。その後、NANOLUC(登録商標)抗体は、コーティングされたプレート上に沈着され得る。いくつかの局面において、固定化された結合パートナーで表面上に沈着されるべき上記インジケータータンパク質生成物の量が、固体支持体としての上記表面上の単層の形成のために固定化された結合パートナーの量に等しいかまたはこれより少ないことは、有利である。例えば、上記固定化された結合パートナーは、固体支持体の上記表面上の層に結合され、それらの特異的結合エピトープのアクセス可能性を生じる抗体であり得る。
【0113】
いくつかの実施形態において、上記方法は、バクテリオファージによる感染を促進するために上記抗体に対するタンパク質を添加する工程を包含する。細菌(例えば、S.aureus)は、血中の抗体(例えば、IgG)に結合し、バクテリオファージが細胞に感染するのを妨げる。いくつかの実施形態において、プロテインAは、血中の抗体に結合し、それによって、上記抗体が細菌に結合するのを妨げるために添加される。細菌細胞がプロテインAの存在下で分裂する場合、上記抗体は、娘細胞に結合できず、上記バクテリオファージによる上記細胞の感染を可能にする。いくつかの実施形態において、プロテインAは、ファージカクテルに添加される。例えば、プロテインAは、感染の前に、上記カクテルファージと混合され得る。
【0114】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、感度を増大させるために種々の他の工程を包含し得る。目的の細菌を検出する方法の感度は、1回またはこれより多くの洗浄工程によって増大され得る。例えば、上記方法は、上記捕捉されたインジケータータンパク質生成物を洗浄して、過剰なバクテリオファージおよび/またはルシフェラーゼもしくはバクテリオファージ調製物を汚染する他のインジケータータンパク質を除去する工程を包含し得る。さらに、捕捉された微生物は、抗生物質および上記感染性因子とのインキュベーション後であって、溶解緩衝液および基質を添加する前に洗浄され得る。これらのさらなる洗浄工程は、過剰な親ファージおよび/もしくはルシフェラーゼ、またはファージ調製を汚染する他のインジケータータンパク質の除去を補助する。いくつかの実施形態において、微生物は、捕捉され得、洗浄され得、次いで、上記バクテリオファージに感染させ得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、サンプル中で少なくとも1種の目的の細菌を検出するための方法は、上記インジケータータンパク質生成物を捕捉する工程を包含する。ある種の実施形態において、上記インジケータータンパク質生成物を捕捉する工程は、上記サンプルと表面とを接触させる工程を包含する。例えば、上記表面は、マイクロタイタープレート、ラテックス粒子、ラテラルフローストリップ、ビーズ、磁性粒子、ディップスティック、ミクロスフェアまたは上記インジケータータンパク質生成物を捕捉し得る任意の他の表面であり得る。ある種の場合には、上記インジケータータンパク質生成物は、上記捕捉工程の間に上記表面に接着または結合し得る。
【0116】
いくつかの実施形態において、上記表面は、固定化された結合パートナーを含む捕捉領域を含む。いくつかの実施形態において、上記結合パートナーは、上記インジケータータンパク質生成物に特異的である。他の実施形態において、上記結合パートナーは、上記インジケータータンパク質に融合した捕捉部分に対して特異的である。
【0117】
いくつかの実施形態において、上記結合パートナーは、上記表面上に直接的に固定化される。例えば、上記捕捉領域は、結合パートナーを含み得、ここで上記結合パートナーは、上記捕捉部分に特異的な抗体である。他の実施形態において、上記結合パートナーは、上記表面上に間接的に固定化される。例えば、上記捕捉領域は、上記捕捉部分に特異的な二次抗体である結合パートナーに特異的な一次抗体を含み得る。上記結合パートナーを上記表面上に間接的に固定化する工程は、上記結合パートナーが、上記捕捉部分の結合および捕捉を促進するような方法で配向されることを可能にし、それによって、アッセイの感度を増大させるという点において有利であり得る。
【0118】
上記結合パートナーは、上記インジケータータンパク質または上記捕捉部分-インジケータータンパク質融合物に特異的でありかつ捕捉し得る任意の分子であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、上記表面は、プロテインAでコーティングされ得る。他の実施形態において、上記表面は、ストレプトアビジンまたはアビジンでコーティングされ得る。
【0119】
上記結合パートナーは、上記捕捉部分に特異的であり、かなりのパーセンテージの非標的捕捉部分に結合することを回避する。いくつかの実施形態において、結合パートナーは、非標的捕捉部分のうちの約90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、95%超、96%超、97%超、98%超、99%超またはこれより大きい結合を回避する。
【0120】
いくつかの実施形態において、上記固定化された結合パートナーは、タンパク質(上記捕捉部分に特異的な抗体、リガンド、および核酸が挙げられるが、これらに限定されない)であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、固定化結合パートナーは、ペプチドタグに特異的な抗体であり得る。
【0121】
いくつかの実施形態において、上記結合パートナーは、抗体またはそのフラグメントである。抗体は、特定の抗原に特異的に結合する免疫グロブリンである。本明細書で記載される方法、システム、およびキットとともに使用される抗体は、天然でもしくは合成して生成されていてもよいし、操作されていてもよい。いくつかの実施形態において、上記抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。抗体は、以下のヒトのクラスのうちのいずれかを含む任意の免疫グロブリンクラスのメンバーであり得る:IgG、IgM、IgA、およびIgD。いくつかの実施形態において、抗体は、化学合成によって生成される。いくつかの実施形態において、抗体は、哺乳動物に由来する。いくつかの実施形態において、抗体は、マウス、ラット、ウマ、ブタ、ウサギまたはヤギが挙げられるが、これらに限定されない動物に由来する。いくつかの実施形態において、抗体は、組換え細胞培養システムを使用して生成される。いくつかの実施形態において、抗体は、精製された抗体(例えば、免疫アフィニティークロマトグラフィーによって)であり得る。いくつかの実施形態において、上記抗体は、ビオチン化される。
【0122】
いくつかの実施形態において、上記表面は、1個より多くの捕捉領域を含み、それによって、細菌のマルチ検出を可能にする。いくつかの実施形態において、上記表面は、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、50個、75個、または100個の捕捉領域を含む。ある種の場合には、上記1個またはこれより多くの捕捉領域の各々は、異なる固定化結合パートナーを含む。例えば、上記表面がラテラルフローストリップである場合、各試験ライン(すなわち、捕捉領域)は、異なる固定化された結合パートナーを含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、上記表面は、コントロール領域をさらに含み得る。上記コントロール領域は、アッセイ試薬が機能することを担保するために使用される。上記コントロール領域は、陽性コントロール領域または陰性コントロール領域であり得る。
【0124】
いくつかの実施形態において、サンプル中で少なくとも1種の目的の細菌を検出するための方法は、上記捕捉されたインジケータータンパク質生成物を検出する工程を包含する。場合によっては、上記捕捉されたインジケータータンパク質生成物を検出する工程は、色または生物発光における変化を検出する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記組換えインジケーターバクテリオファージによってコードされる上記インジケータータンパク質生成物は、上記バクテリオファージの複製の間もしくは後に検出可能であり得る。インジケータータンパク質としての使用に適した検出可能な生体分子の多くの異なるタイプが、当該分野で公知であり、多くは市販されている。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、酵素をコードするインジケーターを含み、これは上記インジケータータンパク質として働く。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージのゲノムは、可溶性タンパク質をコードするように改変される。他の実施形態において、上記インジケーターファージのゲノムは、インジケータータンパク質-捕捉部分融合タンパク質をコードするように改変される。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、検出可能な酵素をコードする。種々の適切な酵素は、市販されている(例えば、アルカリホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、もしくはルシフェラーゼ(Luc))。いくつかの実施形態において、これらの酵素は、上記インジケーター部分として働き得る。いくつかの実施形態において、ホタルルシフェラーゼは、インジケータータンパク質である。いくつかの実施形態において、深海エビ(Oplophorus)ルシフェラーゼは、インジケータータンパク質である。いくつかの実施形態において、NANOLUC(登録商標)は、インジケータータンパク質である。他の操作されたルシフェラーゼまたは検出可能なシグナルを生成する他の酵素はまた、適切なインジケータータンパク質であり得る。
【0125】
いくつかの実施形態において、インジケーター遺伝子は、内因性シグナルを放射するタンパク質、例えば、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質など)をコードする。上記インジケーターは光を放射し得る、および/または色の変化によって検出可能であり得る。いくつかの実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、基質と相互作用してシグナルを発生する酵素(例えば、ルシフェラーゼ)をコードする。いくつかの実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、ルシフェラーゼ遺伝子である。いくつかの実施形態において、上記ルシフェラーゼ遺伝子は、Oplophorusルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、External Gaussiaルシフェラーゼ、Luciaルシフェラーゼまたは工学技術で作製されたルシフェラーゼ、例えばNANOLUC(登録商標)、Rluc8.6-535またはオレンジナノ-ランタンのうちの1つである。従って、場合によっては、上記捕捉されたインジケータータンパク質生成物を検出するための工程は、基質と上記インジケータータンパク質とを反応させる工程をさらに包含する。例えば、NANOLUC(登録商標)は、PromegaのNANO-GLO(登録商標)(イミダゾピラジノン基質(フリマジン))と組み合わられて、低いバックグラウンドを有する頑健なシグナルを提供し得る。
【0126】
上記捕捉されたインジケータータンパク質の検出は、光の放射を検出する工程を包含し得る。いくつかの実施形態において、上記インジケータータンパク質生成物(例えば、ルシフェラーゼ)は、検出可能なシグナルを生成するために、基質と反応される。上記シグナルの検出は、当該分野で概して公知の任意の機械またはデバイスで達成され得る。いくつかの実施形態において、上記シグナルは、In Vivo Imaging System(IVIS)を使用して検出され得る。上記IVISは、CCDカメラまたはCMOSセンサーを使用して、全フラックスによる光の放射を測定する。全フラックス=ラジアンス(光子/秒)。平均ラジアンスは、光子/秒/cm2/ステラジアンとして測定される。他の実施形態において、上記シグナルの検出は、ルミノメーター、分光光度計、CCDカメラ、またはCMOSカメラで達成され得、色の変化および他の光の放射を検出し得る。いくつかの実施形態において、上記シグナルは、絶対RLUとして測定される。さらなる実施形態において、単一細胞または少数の細胞が確実に検出されるためにはシグナル対バックグラウンド比が高い(例えば、>2.0、>2.5または>3.0)ことが必要である。
【0127】
ある種の場合には、上記捕捉されたインジケータータンパク質生成物の検出は、上記サンプルに存在する細菌の属、種、株またはタイプを示す。サンプル中での特定の目的の細菌の検出は、上記組換えバクテリオファージまたは組換えバクテリオファージのカクテルの特異性に依存する。例えば、組換えバクテリオファージインジケーターカクテル組成物は、細菌の特定の属(例えば、Listeria種)、特定の種(例えば、Listeria monocytogenes)、特定の株(E.coli O157:H7)または特定のタイプ(例えば、グラム陽性細菌)に特異的であり得る。従って、組換えバクテリオファージインジケーターカクテル組成物を使用するインジケータータンパク質の検出は、どの目的の細菌がサンプルに存在するかを示す。上記インジケーターカクテル組成物のバクテリオファージは、部分的に、上記目的の細菌の特異性を確実にするために、各バクテリオファージの包括性および排他性に基づいて選択され得る。
【0128】
いくつかの実施形態において、生物学的サンプルのうちの少なくとも1つのアリコートは、ある量のインジケーターバクテリオファージカクテル組成物と接触される。ある特定の場合では、上記インジケーターカクテル組成物は、目的の特定の微生物に対して特異的な少なくとも1種の組換えバクテリオファージを含む。他の実施形態において、上記インジケーターカクテル組成物は、目的の特定の微生物に対して特異的な、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、または少なくとも10種のタイプの組換えバクテリオファージを含む。ある特定の実施形態において、上記方法は、上記生物学的サンプルのうちの複数のアリコートと、複数のインジケーターカクテル組成物とを接触させる工程をさらに包含する。場合によっては、各インジケーターカクテル組成物は、目的の異なる微生物に対して特異的である。例えば、第1のアリコートは、Enterococcus faecalisに対して特異的な組換えバクテリオファージカクテル組成物と接触され得、第2のアリコートは、Staphylococcus aureusに対して特異的な組換えバクテリオファージカクテル組成物と接触され得、第3のアリコートは、Staphylococcus epidermidisに対して特異的な組換えバクテリオファージカクテル組成物と接触され得、第4のアリコートは、Streptococcus viridansに対して特異的な組換えバクテリオファージカクテル組成物と接触され得、第5のアリコートは、Escherichia coliに対して特異的な組換えバクテリオファージカクテル組成物と接触され得、第6のアリコートは、Klebsiella pneumoniaeに対して特異的な組換えバクテリオファージカクテル組成物と接触され得、第7のアリコートは、Proteus mirabilisに対して特異的な組換えバクテリオファージカクテル組成物と接触され得、第8のアリコートは、Pseudomonas aeruginosaに対して特異的な組換えバクテリオファージカクテル組成物と接触され得る。いくつかの実施形態において、上記生物学的サンプルのうちの少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、または25個のアリコートは、少なくとも1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種、14種、15種、16種、17種、18種、19種、20種、21種、22種、23種、24種、または25種の異なるインジケーターカクテル組成物と接触される。いくつかの実施形態において、上記カクテル組成物は、同じ目的の微生物に特異的な2種またはこれより多くのバクテリオファージを含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、上記方法は、サンプル中で1種より多くの目的の細菌を検出し得る。場合によっては、本明細書で記載される方法は、マルチアッセイのために使用される。マルチアッセイは、サンプルに存在する細菌の多数の属、種、株、またはタイプの同時検出を可能にする。
【0130】
例えば、任意のESKAPE病原体がサンプルに存在するか否かを決定するために、上記サンプルは、Enterococcus faeciumに特異的な第1のインジケーターカクテル、Staphylococcus aureusに特異的な第2のインジケーターカクテル、Klebsiella pneumoniaeに特異的な第3のインジケーターカクテル、Acinetobacter baumanniiに特異的な第4のインジケーターカクテル、Pseudomonas aeruginosaに特異的な第5のインジケーターカクテル、およびEnterobacter種に特異的な第6のインジケーターカクテルを含むマルチカクテル組成物とともにインキュベートされ得、ここで各インジケーターカクテル組成物のバクテリオファージは、特有のタグを含む(すなわち、Enterococcus faeciumファージカクテルは、タグAを有し、Staphylococcus aureusファージカクテルは、タグBを有し、Klebsiella pneumoniaeファージカクテルは、タグCを有し、Acinetobacter baumanniiファージカクテルは、タグDを有し、Pseudomonas aeruginosaファージカクテルは、タグEを有し、Enterobacter種ファージカクテルは、タグFを有する)。上記マルチカクテル組成物とのインキュベーションの後に、上記サンプルは溶解され得、次いで、ラテラルフローストリップに添加され得る。ここで上記ラテラルフローストリップは、6個の捕捉領域を含み、ここで各捕捉領域は、上記特有のタグ(すなわち、捕捉部分)の各々に特異的な結合パートナーを含む。従って、特定の細菌が上記サンプルに存在する場合、上記捕捉部分-インジケータータンパク質融合物は、上記目的の細菌に相当する捕捉部分に特異的な捕捉領域の中に捕捉される。次いで、上記インジケータータンパク質は、本明細書で詳細に記載されるように検出され得、従って、どの細菌が上記サンプルに存在するかを示す。
【0131】
ある種の実施形態において、異なるサンプルタイプまたはサイズおよびアッセイフォーマットに適合するように改変し得る一般的な概念を利用して、アッセイが行われ得る。本発明の組換えバクテリオファージ(すなわち、インジケーターバクテリオファージ)を使用する実施形態は、サンプルタイプ、サンプルサイズ、およびアッセイ形式に応じて、0.5時間、1.0時間、1.5時間、2.0時間、2.5時間、3.0時間、3.5時間、4.0時間、4.5時間、5.0時間、5.5時間、6.0時間、6.5時間、7.0時間、7.5時間、8.0時間、8.5時間、9.0時間、9.5時間、10.0時間、10.5時間、11.0時間、11.5時間、12時間、12.5時間、13.0時間、13.5時間、14.0時間、14.5時間、15.0時間、15.5時間、16.0時間、16.5時間、17.0時間、17.5時間、18.0時間、18.5時間、19.0時間、19.5時間、20.0時間、21.0時間、21.5時間、22.0時間、22.5時間、23.0時間、23.5時間、24.0時間、24.5時間、25.0時間、25.5時間または26.0時間未満の合計アッセイ時間で、特定の細菌株の迅速検出を可能にし得る。例えば、必要とされる時間量は、バクテリオファージの株およびこのアッセイで検出される細菌の株、試験されるサンプルのタイプおよびサイズ、標的の生存性のために必要とされる条件、物理的/化学的環境の複雑性、ならびに「内因性」の非標的混在細菌の濃度に応じて、若干より短いかまたは長くてもよい。例えば、グラム陰性株(例えば、E.coli、Klebsiella、Shigella)の存在の検出は、抗生物質耐性の検出なしで0.5時間、1.0時間、1.5時間、2.0時間、2.5時間、もしくは3.0時間を下回る総アッセイ時間で、または抗生物質耐性の検出ありで、1.5時間、2.0時間、2.5時間、3.0時間、3.5時間、4.0時間、もしくは4.5時間を下回る総アッセイ時間で、完了され得る。グラム陽性株の存在の検出は、抗生物質耐性の検出なしで1.0時間、1.5時間、2.0時間、2.5時間、3.0時間、3.5時間、4.0時間、もしくは4.5時間を下回る総アッセイ時間で、または抗生物質耐性の検出ありで、4.0時間、4.5時間、5.0時間、5.5時間、6.0時間、6.5時間、7時間、7.5時間もしくは8時間を下回る総アッセイ時間で、完了され得る。
【0132】
いくつかの実施形態において、インジケーターバクテリオファージは検出可能なインジケータータンパク質生成物を含み、単一の病原細胞(例えば、細菌)の感染は、インジケータータンパク質生成物を介して生成される増幅されたシグナルによって検出され得る。従って、本方法は、ファージ複製の間に生成されるインジケータータンパク質生成物を検出することを含み得、ここで、インジケーターの検出は、目的の細菌がサンプル中に存在することを示す。
【0133】
一実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の細菌を検出するための方法であって、上記サンプルを、目的の細菌に感染する組換えバクテリオファージとともにインキュベートする工程であって、ここで、上記組換えバクテリオファージは上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含み、その結果、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる工程、および上記インジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記インジケータータンパク質生成物の陽性検出は上記目的の細菌が上記サンプル中に存在することを示す工程を含む、方法を含み得る。いくつかの実施形態において、検出されるインジケータータンパク質生成物の量は、上記サンプル中に存在する目的の細菌の量に相当する。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージ検出アッセイは、上記サンプル中に存在する、生きている微生物を検出し得、そしてその数を定量し得る。
【0134】
本明細書により詳細に記載されるように、本開示の組成物、方法、キットおよびシステムは、サンプルに存在する細菌に感染させるために、一連の濃度の親のインジケーターバクテリオファージを利用することができる。いくつかの実施形態において、上記インジケーターバクテリオファージは、10細胞などの上記サンプル中に非常に少ない数で存在する標的細菌を迅速に見いだし、標的細菌に結合し、感染するのに十分な濃度で上記サンプルに加えられる。いくつかの実施形態において、ファージ濃度は、1時間未満で標的細菌を見いだし、標的細菌に結合し、感染するのに十分であり得る。他の実施形態において、これらの事象は、上記サンプルへのインジケーターファージの添加の後、2時間未満、または3時間未満、または4時間未満に起こることができる。例えば、ある種の実施形態において、上記インキュベートする工程のためのバクテリオファージ濃度は、1×102PFU/mLより高いか、1×103PFU/mLより高いか、1×104PFU/mLより高いか、1×105PFU/mLより高いか、1×106PFU/mLより高いか、または1×107PFU/mLより高いか、または1×108PFU/mLより高い。
【0135】
ある種の実施形態において、上記組換えストックファージ組成物は、上記ファージストックの生産の際に生成され得るいかなる残留インジケータータンパク質も含まないように、精製され得る。従って、ある種の実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、上記サンプルとともにインキュベートする前に、スクロース勾配または塩化セシウム等密度密度勾配遠心分離を使用して精製され得る。上記感染性因子がバクテリオファージである場合、この精製は、DNAを有しないバクテリオファージ(すなわち、空のファージまたは「ゴースト」)を除去するという、追加の利点を有し得る。
【0136】
本発明の方法のいくつかの実施形態において、上記微生物はサンプルからの上記微生物のいかなる単離または精製もなしに、検出され得る。例えば、ある種の実施形態において、1または数個の目的の微生物を含むサンプルは、アッセイ容器(例えば、スピンカラム、チューブ、マイクロタイターウェル、またはフィルター)に直接適用され得、上記アッセイはそのアッセイ容器の中で行われる。このようなアッセイの種々の実施形態は、本明細書に開示される。
【0137】
試験サンプルアリコートは、マルチウェルプレートのウェルへと直接分配され得、インジケーターファージが添加され得、そして感染のための十分な期間の後、溶解緩衝液は、インジケーター部分のための基質(例えば、ルシフェラーゼインジケーターのためのルシフェラーゼ基質)と同様に添加され得、インジケーターシグナルの検出のためにアッセイされ得る。本方法のいくつかの実施形態は、フィルタープレートまたは96ウェルプレートの上で行うことができる。本方法のいくつかの実施形態は、インジケーターファージによる感染の前のサンプルの濃縮の有りまたはなしで行われ得る。
【0138】
いくつかの実施形態において、マルチウェルプレートは、上記アッセイを行うために使用される。プレート(もしくは検出する工程が行われ得る任意の他の容器)の選択は、上記検出する工程に影響を及ぼし得る。例えば、いくつかのプレートは、光の放射の検出に影響を及ぼし得る、着色したもしくは白色のバックグラウンドを含み得る。概して、白色のプレートは、より高い感度を有するが、より高いバックグラウンドシグナルをも生じる。プレートの他の色は、より低いバックグラウンドシグナルを生成し得るが、わずかにより低い感度をも有し得る。さらに、バックグラウンドシグナルに関する1つの理由は、1つのウェルから別の隣接するウェルへの光の漏れである。白色のウェルを有するいくつかのプレートがあるが、上記プレートの残りは黒色である。これは、上記ウェルの内部での高いシグナルを可能にするが、ウェルからウェルへの光の漏れを防止し、従って、バックグラウンドを低減し得る。従って、プレートもしくは他のアッセイ容器の選択は、上記アッセイのための感度およびバックグラウンドシグナルに影響を与え得る。
【0139】
本開示の方法は、感度を増加させるための種々の他の工程を包含し得る。例えば、本明細書でより詳細に考察されるように、上記方法は、過剰なバクテリオファージおよび/または上記バクテリオファージ調製物を汚染するルシフェラーゼもしくは他のインジケータータンパク質を除去するために、上記バクテリオファージを添加した後であるが、インキュベートする前に、上記捕捉されかつ感染した細菌を洗浄する工程を包含し得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、上記組換えバクテリオファージとのインキュベーションおよび上記インジケータータンパク質または捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物の捕捉の後に洗浄されて、結合されない、汚染化合物が除去され得る。
【0140】
いくつかの実施形態において、上記目的の微生物の検出は、上記微生物の集団を増加させる方法としての、上記サンプルを培養する必要性なしに、完了し得る。例えば、ある種の実施形態において、検出に必要とされる合計時間は、28.0時間、27.0時間、26.0時間、25.0時間、24.0時間、23.0時間、22.0時間、21.0時間、20.0時間、19.0時間、18.0時間、17.0時間、16.0時間、15.0時間、14.0時間、13.0時間、12.0時間未満、11.0時間、10.0時間、9.0時間、8.0時間、7.0時間、6.0時間、5.0時間、4.0時間、3.0時間、2.5時間、2.0時間、1.5時間または1.0時間未満である。結果までの時間を最小にすることは、診断試験において重大である。
【0141】
当該分野で公知のアッセイと対照的に、本開示の方法は、個々の微生物を検出し得る。従って、ある種の実施形態において、上記方法は、サンプルに存在する上記微生物の10個程度の少ない細胞を検出し得る。例えば、ある種の実施形態において、組換えインジケーターバクテリオファージは、Staphylococcus spp.、E. coli株、Shigella spp.、Klebsiella spp.、Cutibacterium acnes、Proteus mirabalis、Enterococcus spp.、またはPseudomonas spp.に高度に特異的である。一実施形態において、組換えインジケーターバクテリオファージは、他のタイプの細菌の存在下で、目的の細菌を区別し得る。ある種の実施形態において、組換えバクテリオファージは、サンプル中の特異的タイプの単一細菌を検出するために使用することができる。ある種の実施形態において、組換えインジケーターバクテリオファージは、サンプル中の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個または100個程度の少なさの特異的細菌を検出する。さらなる実施形態において、上記組換えインジケーターバクテリオファージアッセイは、上記サンプル中に存在する、目的の生きている微生物の数を定量するために使用され得る。
【0142】
従って、本開示の局面は、インジケータータンパク質生成物を介して試験サンプル中の微生物の検出のための方法を提供する。いくつかの実施形態において、上記目的の微生物が細菌である場合、上記インジケータータンパク質生成物は、感染性因子(例えば、インジケーターバクテリオファージ)と関連づけられ得る。上記インジケータータンパク質生成物は、基質と反応して、検出可能なシグナルを放射してもよいし、内因性のシグナル(例えば、生体発光タンパク質)を放射してもよい。いくつかの実施形態において、上記検出感度は、試験サンプル中の上記目的の微生物の50個、20個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、もしくは2個程度の少なさの細胞の存在を明らかにし得る。いくつかの実施形態において、上記目的の微生物の実に1個の細胞が、検出可能なシグナルを生じ得る。
【0143】
いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、上記ファージが特異的に認識しかつ感染する細菌の感染の際にのみ生成される酵素(例えば、ルシフェラーゼ)の遺伝子を含むように遺伝子操作される。いくつかの実施形態において、上記インジケーター部分は、ウイルス生活環において後期に発現される。いくつかの実施形態において、本明細書で記載される場合、上記インジケーターは、可溶性タンパク質(例えば、可溶性ルシフェラーゼ)であり、そのコピー数を制限するファージ構造タンパク質と融合されない。
【0144】
いくつかの実施形態において、細菌を含む試験サンプルのアリコートをスピンカラムに適用し得、組換えバクテリオファージでの感染および任意の過剰なバクテリオファージを除去するための任意選択の洗浄後に、検出される可溶性インジケーターの量は、感染した細菌によって生成されるバクテリオファージの量に比例する。
【0145】
上記細菌の溶解の際に周囲の液体へと放出された可溶性インジケーター(例えば、ルシフェラーゼ)は、次いで、測定および定量され得る。一実施形態において、上記溶液は、フィルターを通して遠心され、その濾液はアッセイ(例えば、ルミノメーターでの)のために新しい容器に収集され、その後、上記インジケーター酵素のための基質(例えば、ルシフェラーゼ基質)が添加される。
【0146】
種々の実施形態において、上記精製されたファージストックインジケーターファージは、上記検出可能なインジケーター自体を含まない。なぜなら上記親ファージは、これが試験サンプルとともにインキュベーションするために使用される前に精製され得るからである。後期(クラスIII)遺伝子の発現は、ウイルス生活環において後期に起こる。本発明のいくつかの実施形態において、親ファージは、いかなる存在するインジケータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ)をも排除するために精製され得る。いくつかの実施形態において、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる。いくつかの実施形態において、上記可溶性のインジケータータンパク質生成物は、捕捉部分(例えば、ペプチドタグ)に融合される。多くの実施形態において、上記検出工程の前に親ファージを子孫ファージから分離することは必須ではない。一実施形態において、上記微生物は、細菌であり、上記インジケーターファージは、バクテリオファージである。一実施形態において、上記インジケータータンパク質生成物は、遊離、可溶性ルシフェラーゼであり、これは、上記宿主微生物の溶解の際に放出される。いくつかの実施形態において、上記遊離、可溶性ルシフェラーゼは、捕捉部分(例えば、ペプチドタグ)に融合される。例えば、捕捉部分は、ペプチドタグ(例えば、HAタグ)であり得る。
【0147】
上記アッセイは、種々の方法で行われ得る。1つの実施において、上記サンプルは、ファージとともにインキュベートされ、溶解され、次いで、結合パートナーでコーティングされた96ウェルプレートに添加され、基質っともにインキュベートされ、次いで読み取られる。他の実施形態において、上記サンプルは、96ウェルフィルタープレートに添加され、そのプレートは遠心分離にかけられ、ファージとともにインキュベートされる前に、そのフィルター上に収集された細菌に培地が添加される。さらに他の実施形態において、上記サンプルは、抗体を使用して96ウェルプレートの少なくとも1個のウェルに捕捉され、培地で洗浄されて、ファージとともにインキュベートされる前に過剰な細胞が除去される。
【0148】
別の実施形態において、上記サンプルは、ファージとともにインキュベートされ、溶解され、次いで、結合パートナーを含むラテラルフローストリップに添加され、基質とともにインキュベートされ、次いで読み取られる。
【0149】
いくつかの実施形態において、上記細菌の溶解は、上記検出工程の前もしくはその間に起こり得る。実験は、感染した溶解されていない細胞が、いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼ基質の添加の際に検出可能であり得ることを示唆する。おそらくは、ルシフェラーゼは、完全な細胞溶解なしに、細胞から出ていき得る、および/またはルシフェラーゼ基質が細胞に入り得る。例えば、いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼの基質は、細胞透過性である(例えば、フリマジン)。従って、スピンフィルターシステムを利用する実施形態のために、上記溶解物へと放出されルシフェラーゼのみ(かつルシフェラーゼはさらに無傷の細菌の中にない)が、上記ルミノメーターにおいて分析される場合、溶解は、検出のために必要とされる。しかし、溶液もしくは懸濁物のサンプルとともにフィルタープレートもしくは96ウェルプレートを利用する実施形態のために、無傷の細胞および溶解した細胞で満ちている元のプレートが上記ルミノメーターにおいて直接アッセイされる場合、溶解は、検出に必須ではない。
【0150】
いくつかの実施形態において、インジケータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ)と基質との反応は、60分またはそれより長くにわたって続き得、種々の時点での検出は、感度を最適化するために望ましいことであり得る。例えば、上記固体支持体として96ウェルフィルタープレートを、および上記インジケーターとしてルシフェラーゼを使用する実施形態において、ルミノメーター読み取りは、最初に、および10分もしくは15分の間隔で、上記反応が完了するまで行われ得る。
【0151】
驚くべきことに、試験サンプルに感染させるために利用される高濃度のファージは、非常に短い時間枠で、標的微生物の非常に少数の検出を成功裏に達成した。ファージを試験サンプルとともにインキュベートすることは、いくつかの実施形態において、単一のファージ生活環にとって十分長いことのみを必要とする。いくつかの実施形態において、このインキュベートする工程のためのバクテリオファージの濃度は、1.0×106、2.0×106、3.0×106、5.0×106、6.0×106、7.0×106、8.0×106、9.0×106、1.0×107、1.1×107、1.2×107、1.3×107、1.4×107、1.5×107、1.6×107、1.7×107、1.8×107、1.9×107、2.0×107、3.0×107、4.0×107、5.0×107、6.0×107、7.0×107、8.0×107、9.0×107、もしくは1.0×108 PFU/mLより高い。
【0152】
ファージのこのような高濃度での成功は驚くべきことである。なぜならファージの多数が、「非感染溶菌」と以前に関連しており、これは、標的細胞を死滅させ、それによって、より早期のファージアッセイからの有用なシグナルの生成を妨げたからである。本明細書で記載される調製されたファージストックの浄化(clean-up)は、この問題を軽減する助けとなると考えられる(例えば、スクロース勾配または塩化セシウム等密度密度勾配超遠心分離による浄化)。なぜなら上記ファージと関連付けられたいかなる汚染するルシフェラーゼをも除去する工程に加えて、この浄化はまた、ゴースト粒子(ghost particle)(DNAを失った粒子)を除去し得るからである。上記ゴースト粒子は、「非感染溶菌」を介して細菌細胞を溶解し得、上記細胞を早期に死滅させ、それによってインジケーターシグナルの生成を防止することができる。電子顕微鏡法は、粗製のファージ溶解物(すなわち、塩化セシウム浄化前)が50%より多いゴーストを有し得ることを明らかに示す。これらのゴースト粒子は、細胞膜に穴をあける多くのファージ粒子の作用を通じて、上記微生物の早期の死滅に寄与し得る。従って、ゴースト粒子は、高いPFU濃度が有害であると報告された以前の問題の一因であった可能性がある。さらに、非常にきれいなファージ調製物は、上記アッセイが洗浄工程なしで行われることを可能にし、このことは、初期濃縮工程なしで上記アッセイが行われることを可能にする。いくつかの実施形態は初期濃縮工程を含み、いくつかの実施形態において、この濃縮工程はより短い富化インキュベーション時間を可能にする。
【0153】
試験方法のいくつかの実施形態は、確認アッセイをさらに含み得る。種々のアッセイは、最初の結果を、通常は、後の時点で確認するために当該分野で公知である。例えば、上記サンプルが培養され得(例えば、選択的色素生成平板培養)、PCRは、微生物DNAの存在を確認するために利用され得るか、または他の確認アッセイが、最初の結果を確認するために使用され得る。
【0154】
ある種の実施形態において、本開示の方法は、感染性因子での検出に加えて、上記サンプルから目的の微生物(例えば、Staphylococcus spp.)を精製および/または濃縮するために、結合剤(例えば、抗体)の使用を組み合わせ得る。例えば、ある種の実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の微生物を検出するための方法を包含し、上記方法は、上記微生物を上記サンプルから、上記目的の微生物(例えば、Staphylococcus spp.)に特異的な捕捉抗体を使用して、先の支持体上に捕捉する工程;上記サンプルを、Staphylococcus spp.に感染する組換えバクテリオファージとともにインキュベートする工程であって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含み、その結果、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製に間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる工程;および上記インジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記インジケータータンパク質生成物の陽性検出は、Staphylococcus spp.が上記サンプル中に存在することを示す工程を含む。
【0155】
いくつかの実施形態において、合成ファージは、病原体検出アッセイにおける使用のための望ましい形質を最適化するために設計される。いくつかの実施形態において、遺伝的改変のバイオインフォマティクスおよび以前の分析は、望ましい形質を最適化するために使用される。例えば、いくつかの実施形態において、ファージテールタンパク質をコードする遺伝子は、特定の種の細菌を認識しかつこれに結合するために最適化され得る。他の実施形態において、ファージテールタンパク質をコードする遺伝子は、細菌の属全体、または属内の特定の種のグループを認識しかつこれらに結合するために最適化され得る。このようにして、上記ファージは、病原体のより広いまたはより狭いグループを検出するために最適化され得る。いくつかの実施形態において、上記合成ファージは、上記インジケーター遺伝子の発現を改善するために設計され得る。さらにおよび/または代わりに、場合によっては、上記合成ファージは、検出を改善するために上記ファージのバーストサイズを増大させるために設計され得る。
【0156】
いくつかの実施形態において、上記ファージの安定性は、貯蔵期間を改善するために最適化され得る。例えば、酵素生命的溶解度(enzybiotic solubility)は、その後のファージ安定性を増大させるために、増大され得る。さらにおよび/または代わりに、ファージ熱安定性が最適化され得る。熱安定性ファージは、貯蔵の間の機能的活性をより良好に保存し、それによって、貯蔵寿命を増大させる。従って、いくつかの実施形態において、上記熱安定性および/またはpH寛容性は、最適化され得る。
【0157】
抗生物質感受性を決定する
本明細書で記載される組成物および方法を使用して特定の目的の細菌の抗生物質感受性を決定するために、上記インジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする前に、上記サンプルは、抗生物質とともにおよび抗生物質なしで先ずインキュベートされる。
【0158】
本出願において言及される抗生物質は、静菌性(微生物の増殖を阻害し得る)または殺菌性(微生物を殺滅し得る)任意の薬剤であり得る。従って、ある特定の実施形態において、上記方法は、サンプルと抗生物質とを接触させる工程、および抗生物質と接触させた上記サンプルを、上記目的の微生物に感染する組換えバクテリオファージとともにインキュベートする工程によって、サンプル中の目的の微生物の抗生物質に対する耐性の検出を包含し得る。これは、抗生物質耐性を付与し得る遺伝子の存在を検出する(例えば、PCR)またはタンパク質の存在を検出する(例えば、抗体)が、それらの機能性を試験しないアッセイとは異なる。従って、本アッセイは、遺伝子型検出とは対照的に、表現型検出を可能にする。
【0159】
場合によっては、上記目的の細菌は、抗生物質耐性に関して試験する前に、上記サンプルから単離されない。ある特定の実施形態において、上記サンプルは、培養されていないかまたは富化されていないサンプルである。いくらかの場合では、抗生物質耐性を検出する方法は、5時間以内に完了し得る。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記インジケータータンパク質を検出する前に、上記感染性因子に感染した細菌を溶解するために溶解緩衝液での処理を含み得る。
【0160】
本明細書で開示される方法は、目的の微生物が抗生物質に対して感受性であるかまたは耐性であるかを検出するために使用され得る。特定の抗生物質は、これが殺滅または阻害する微生物のタイプに対して特異的であり得る;上記抗生物質は、上記抗生物質に対して感受性である微生物を殺滅するかまたはその増殖を阻害し、上記抗生物質に対して耐性である微生物を殺滅もその増殖を阻害もしない。いくらかの場合には、以前は感受性であった微生物株が、耐性になることはあり得る。抗生物質に対する微生物の耐性は、多くの異なる機序によって媒介され得る。例えば、いくつかの抗生物質は、微生物において細胞壁合成を妨害する;このような抗生物質に対する耐性は、上記抗生物質の標的、すなわち、細胞壁タンパク質を変化させることによって媒介され得る。いくつかの場合には、細菌は、上記細菌に達する前に、抗生物質を不活性化し得る化合物を生成することによって、上記抗生物質に対する耐性を作り出す。例えば、いくつかの細菌は、βラクタマーゼを生成し、これは、ペニシリンまたは/およびカルバペネムのβラクタムを切断し得、従って、これらの抗生物質を不活性化し得る。いくらかの場合には、上記抗生物質は、特異的ポンプによって上記標的に達する前に、上記細胞から除去される。例は、RNDトランスポーターである。いくらかの場合には、いくつかの抗生物質は、リボソームRNA(rRNA)に結合することによって作用し、上記微生物におけるタンパク質生合成を阻害する。このような抗生物質に対して耐性の微生物は、上記抗生物質に対して低減した結合能力を有するが、リボソーム内の本質的に正常な機能を有する変異rRNAを含み得る。他の場合には、細菌は、耐性を付与し得る遺伝子を有する。例えば、いくらかのMRSAは、mecA遺伝子を有する。上記mecA遺伝子生成物は、細菌細胞壁形成に必要とされるトランスペプチダーゼに代表的には結合するある特定の抗生物質の環様構造に対して低親和性を有する代替のトランスペプチダーゼである。従って、抗生物質(βラクタムを含む)は、これらの細菌における細胞壁合成を阻害できない。いくらかの細菌は、遺伝子または調節の変異(これは、従来の核酸による方法(例えば、PCR)で抗生物質耐性として誤って検出され得るが、機能的方法(例えば、抗生物質とともにプレートするもしくは培養する、またはこの方法)によって検出され得ない)に恐らく起因して、非機能的である抗生物質耐性遺伝子を有する。
【0161】
本発明において使用され得る抗生物質の非限定的な例としては、アミノグリコシド、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、糖ペプチド、マクロライド、モノバクタム、ペニシリン、βラクタム抗生物質、キノロン、バシトラシン、スルホンアミド、テトラサイクリン、ストレプトグラミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、およびリンコサミド、セファマイシン、リンコマイシン、ダプトマイシン、オキサゾリジノン、ならびに糖ペプチド抗生物質が挙げられる。
【0162】
本明細書で注記されるように、ある特定の実施形態において、本発明は、抗生物質に対する微生物の耐性を検出するために、または別の言い方をすると、微生物に対する抗生物質の有効性を検出するために感染性粒子を使用する方法を包含し得る。別の実施形態において、本発明は、感染の処置のために抗生物質を選択するための方法を包含する。さらに、上記方法は、サンプル中の抗生物質耐性細菌を検出するための方法を包含し得る。本発明の方法は、種々の方法において具現化され得る。
【0163】
上記方法は、上記微生物を含むサンプルと、上記抗生物質および上記のとおりの感染性因子とを接触させる工程を包含し得る。いくつかの実施形態において、本開示は、目的の細菌を殺滅するまたはその成長を抑制するにあたって抗生物質の有効用量を決定する方法を提供し、上記方法は、(a)抗生物質溶液のうちの1種またはこれより多くのものの各々を別個に、上記細菌を含む1またはこれより多くのサンプルとともにインキュベートする工程であって、ここで抗生物質溶液のうちの上記1またはこれより多くのものの濃度は、異なりかつ範囲を規定する工程、(b)サンプルのうちの上記1またはこれより多くのものの中の細菌を、インジケーター遺伝子を含む組換えバクテリオファージとともにインキュベートする工程であって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記目的の細菌に対して特異的である工程、および(c)サンプルのうちの上記1またはこれより多くのものの中の組換えバクテリオファージによって生成されるインジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記複数のサンプルのうちの1またはこれより多くのものの中での上記インジケータータンパク質生成物の検出は、サンプルの上記1またはこれより多くのものを処理するために使用される抗生物質溶液の濃度が有効でないことを示し、上記インジケータータンパク質の検出がないことは、上記抗生物質が有効であることを示し、それによって、上記抗生物質の有効用量を決定する工程を包含する。
【0164】
他の実施形態において、上記抗生物質および上記感染性因子は、順次添加され、例えば、上記サンプルは、上記サンプルが上記感染性因子と接触させられる前に、上記抗生物質と接触させられる。ある特定の実施形態において、上記方法は、上記サンプルと上記感染性因子とを接触させる前に、上記サンプルを上記抗生物質とともに一定期間にわたってインキュベートする工程を包含し得る。上記インキュベーション時間は、上記抗生物質および上記微生物の性質に依存して、例えば、上記微生物の倍加時間に基づいて変動し得る。いくつかの実施形態において、上記インキュベーション時間は、24時間未満、18時間未満、12時間未満、6時間未満、5時間未満、4時間未満、3時間未満、2時間未満、1時間未満、45分未満、または30分未満である。微生物と上記感染性因子とのインキュベーション時間はまた、特定の感染性因子の生活環に依存して変動し得、いくらかの場合には、上記インキュベーション時間は、4時間未満、3時間未満、2時間未満、1時間未満、45分未満、30分未満である。上記抗生物質に対して耐性である微生物は、生き残り、増殖し得、上記微生物に対して特異的な感染性因子は複製し、上記インジケータータンパク質生成物(例えば、ルシフェラーゼ)の生成を生じる;逆に、上記抗生物質に対して感受性である微生物は殺滅され、従って、上記感染性因子は複製しない。さらに、静菌性抗生物質は、細菌を殺滅しない;しかし、それらは、細菌の増殖および/または富化を停止させる。場合によっては、静菌性抗生物質は、細菌タンパク質合成に干渉し得、バクテリオファージがインジケーター分子(例えば、ルシフェラーゼ)を生成することを防止すると予測される。この方法に従う感染性因子は、インジケータータンパク質を含み、その量は、上記抗生物質で処理されているサンプルに存在する微生物の量に相当する。よって、上記インジケータータンパク質の陽性検出は、上記微生物が上記抗生物質に対して耐性であることを示す。
【0165】
いくつかの実施形態において、上記方法は、抗生物質耐性微生物が臨床サンプルに存在するか否かを決定するために使用され得る。例えば、上記方法は、患者が、特定の抗生物質に対して耐性または感受性であるStaphylococcus aureusに感染しているか否かを決定するために使用され得る。次いで、患者から得られた臨床サンプルは、S.aureusに対して特異的な抗生物質とともにインキュベートされ得る。次いで、上記サンプルは、S.aureusに対して特異的な組換えファージとともに一定期間にわたってインキュベートされ得る。上記抗生物質に対して耐性のS.aureusを有するサンプル中では、上記組換えファージによって生成されるインジケータータンパク質の検出は、陽性である。上記抗生物質に対して感受性のS.aureusを有するサンプル中では、上記インジケータータンパク質の検出は陰性である。いくつかの実施形態において、抗生物質耐性を検出するための方法は、病原性細菌が感受性である有効な治療剤を選択するために使用され得る。
【0166】
ある特定の実施形態において、検出に必要とされる合計時間は、6.0時間未満、5.0時間未満、4.0時間未満、3.0時間未満、2.5時間未満、2.0時間未満、1.5時間未満、または1.0時間未満である。検出に必要とされる合計時間は、目的の細菌、ファージのタイプ、および試験される抗生物質に依存する。
【0167】
必要に応じて、上記方法は、上記インジケーター部分を検出する前に、上記微生物を溶解する工程をさらに包含する。上記ルシフェラーゼの活性に影響を及ぼさない任意の溶液が、細胞を溶解するために使用され得る。いくらかの場合には、上記溶解緩衝液は、非イオン性洗浄剤、キレート剤、酵素または種々の塩および薬剤の所有権のある組み合わせを含み得る。溶解緩衝液はまた、Promega、Sigma-Aldrich、またはThermo-Fisherから市販されている。実験は、感染した溶解していない細胞が、いくつかの実施形態においてルシフェラーゼ基質の添加の際に検出可能であり得ることを示唆する。おそらく、ルシフェラーゼは、細胞を出ることもある、および/またはルシフェラーゼ基質は、完全な細胞溶解なしに細胞に入ることもある。例えば、いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼの基質は、細胞透過性である(例えば、フリマジン)。従って、スピンフィルターシステムを利用する実施形態に関しては、溶解物へと放出されたルシフェラーゼのみ(無傷の細菌内部になお存在するルシフェラーゼではない)が、ルミノメーターにおいて分析される場合、溶解は、検出のために必要とされる。しかし、フィルタープレートまたは96ウェルプレートを、以下で記載されるように溶液または懸濁物中でファージに感染したサンプルとともに利用する実施形態に関しては、無傷のおよび溶解した細胞が、ルミノメーターにおいて直接アッセイされ得る場合、溶解は、検出のために必要でないこともある。従って、いくつかの実施形態において、抗生物質耐性を検出する上記方法は、上記微生物を溶解することを伴わない。
【0168】
上記アッセイの実施形態の驚くべき局面は、サンプル中の微生物を感染性因子とともにインキュベートする工程が、上記感染性因子(例えば、ファージ)の1つの生活環にとって充分長いことしか必要としない。ファージを使用することの増幅力は、ファージがいくつかのサイクルにわたって複製するように、より多くの時間を必要とすると以前は考えられていた。インジケーターファージの1回の複製は、本発明のいくつかの実施形態に従う高感度の迅速検出を容易にするために十分であり得る。上記アッセイの実施形態の別の驚くべき局面は、試験サンプルを感染させるために利用されるファージの高濃度(すなわち、高MOI)が、抗生物質で処理された非常に少ない数の抗生物質耐性標的微生物の検出を成功裡に達成したことである。要因(ファージのバーストサイズが挙げられる)は、ファージ生活環の数、従って、検出のために必要とされる時間量に影響を及ぼし得る。大きなバーストサイズ(およそ100 PFU)を有するファージは、1回の検出サイクルしか必要とし得ないのに対して、より小さなバーストサイズ(例えば、10 PFU)を有するファージは、多数回のファージ検出サイクルを要求し得る。いくつかの実施形態において、ファージと試験サンプルとのインキュベーションは、1回のファージ生活環に十分長いことしか必要としない。他の実施形態において、ファージと試験サンプルとのインキュベーションは、1回の生活環より長い時間量のものである。上記インキュベーション工程のためのファージ濃度は、使用されるファージのタイプに応じて変動する。いくつかの実施形態において、このインキュベーション工程のためのファージ濃度は、1.0×106、2.0×106、3.0 106、5.0×106、6.0×106、7.0×106、8.0×106、9.0×106、1.0×107、1.1×107、1.2×107、1.3×107、1.4×107、1.5×107、1.6×107、1.7×107、1.8×107、1.9×107、2.0×107、3.0×107、4.0×107、5.0×107、6.0×107、7.0×107、8.0×107、9.0×107、または1.0×108 PFU/mLより高い。このような高濃度のファージでの成功は驚くべきことである。なぜならこのような多数のファージが、「外因性溶菌(lysis from without)」と以前に関連しており、これは、標的細胞を直ぐに死滅させ、それによって、より早期のファージアッセイからの有用なシグナルの生成を妨げたからである。本明細書で記載されるファージストックの精製は、この問題を軽減する助けとなる可能性がある(例えば、スクロース勾配 塩化セシウム等密度密度勾配超遠心分離による精製)。なぜなら上記ファージと関連付けられたいかなる夾雑ルシフェラーゼをも除去する工程に加えて、この精製はまた、ゴースト粒子(DNAを失った粒子)を除去し得るからである。上記ゴースト粒子は、「外因性溶菌」を介して細菌細胞を溶解し得、上記細胞を早期に死滅させ、それによってインジケーターシグナルの生成を防止することができる。電子顕微鏡法は、粗製の組換えファージ溶解物(すなわち、塩化セシウム精製前)が50%より多いゴーストを有し得ることを実証する。これらのゴースト粒子は、細胞膜に穴をあける多くのファージ粒子の作用を通じて、上記微生物の早期の死滅に寄与し得る。従って、ゴースト粒子は、高いPFU濃度が有害であると報告された以前の問題の一因であった可能性がある。
【0169】
本開示で記載されるとおりのインジケーター部分のうちのいずれも、抗生物質処理後の微生物の生存度を検出し、それによって、抗生物質耐性を検出するために使用され得る。いくつかの実施形態において、上記感染性因子と関連付けられたインジケーター部分は、上記感染性因子の複製中または複製後に検出され得る。例えば、上記のように、いくらかの場合には、上記インジケーター部分は、固有のシグナルを発するタンパク質(例えば、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質など))であり得る。上記インジケーターは、光を発し得る、および/または色の変化によって検出可能であり得る。いくつかの実施形態において、ルミノメーターは、インジケーター(例えば、ルシフェラーゼ)を検出するために使用され得る。しかし、他の機械またはデバイスがまた、使用され得る。例えば、分光光度計、CCDカメラ、またはCMOSカメラは、色の変化および他の発光を検出し得る。
【0170】
いくつかの実施形態において、抗生物質への上記サンプルの曝露は、5分またはそれより長く継続し得、種々の時点での検出が、最適な感度のために所望され得る。例えば、抗生物質で処理された一次サンプルのアリコートは、異なる時間間隔で(例えば、5分、10分、または15分で)採取され得る。次いで、種々の時間間隔からのサンプルは、ファージに感染させられ得、基質の添加後にインジケータータンパク質が測定され得る。
【0171】
いくつかの実施形態において、シグナルの検出は、抗生物質耐性を決定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、上記サンプルによって生成されるシグナルは、実験的に決定された値と比較される。さらなる実施形態において、その実験的に決定された値は、コントロールサンプルによって生成されたシグナルである。いくつかの実施形態において、バックグラウンド閾値が、微生物なしのコントロールを使用して決定される。いくつかの実施形態において、ファージなしもしくは抗生物質なしのコントロール、または他のコントロールサンプルがまた、適切な閾値を決定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、上記実験的に決定された値は、平均バックグラウンドシグナル+平均バックグラウンドシグナルの1~3倍の標準偏差から計算されたバックグラウンド閾値であるか、またはこれより大きい。いくつかの実施形態において、上記バックグラウンド閾値は、平均バックグラウンドシグナル+平均バックグラウンドシグナルの2倍の標準偏差から計算され得る。他の実施形態において、上記バックグラウンド閾値は、平均バックグラウンドシグナル×数倍(例えば、2または3)から計算され得る。上記バックグラウンド閾値より大きいサンプルシグナルの検出は、上記サンプル中に1種またはこれより多くの抗生物質耐性微生物が存在することを示す。例えば、上記平均バックグラウンドシグナルは、250 RLUであり得る。上記閾値のバックグラウンド値は、平均バックグラウンドシグナル(例えば、250)に3をかけて、750 RLUの値と計算されることによって、計算され得る。750 RLUより大きいシグナル値を有する細菌を有するサンプルは、抗生物質耐性細菌を含むことに関して陽性であると決定される。
【0172】
あるいは、上記実験的に決定された値は、コントロールサンプルによって生成されたシグナルである。アッセイは、種々の適切なコントロールサンプルを含み得る。例えば、上記微生物に対して特異的な感染性因子を含まないサンプル、または感染性因子を含むが微生物のないサンプルは、バックグラウンドシグナルレベルのためのコントロールとしてアッセイされ得る。いくらかの場合には、上記抗生物質で処理されていない微生物を含むサンプルが、上記感染性因子を使用して抗生物質耐性を決定するためのコントロールとしてアッセイされる。
【0173】
いくつかの実施形態において、上記サンプルシグナルは、抗生物質耐性微生物が上記サンプルに存在するか否かを決定するために、コントロールシグナルと比較される。上記感染性因子と接触させているが、上記抗生物質とは接触させていないコントロールサンプルと比較した場合、上記シグナルの検出の変化なしは、上記微生物が上記抗生物質に対して耐性であることを示し、感染性因子と接触させているが、上記抗生物質とは接触させていないコントロールサンプルと比較した場合、上記インジケータータンパク質の検出の低減は、上記微生物が上記抗生物質に対して感受性であることを示す。検出の変化なしとは、上記抗生物質および感染性因子で処理したサンプルからの検出されたシグナルが、上記抗生物質で処理されていないコントロールサンプルからのシグナルの少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%であることに言及する。検出の低減とは、上記抗生物質および感染性因子で処理したサンプルからの検出されたシグナルが、上記抗生物質で処理されていないコントロールサンプルからのシグナルの80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、または少なくとも30%未満であることに言及する。
【0174】
必要に応じて、上記目的の微生物を含むサンプルは、培養されていないサンプルである。上記で記載されるように、上記方法において使用される組成物の各々の特徴は、上記目的の微生物の抗生物質耐性を検出するための方法において利用され得る。
【0175】
微生物を殺滅するための抗生物質の有効用量を決定する方法がまた、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、上記抗生物質は、Staphylococcus種を殺滅するにあたって有効である。例えば、上記抗生物質は、セフォキシチンであり得、これは、大部分のメチシリン耐性S.aureus(MSSA)に対して有効である。代表的には、異なる濃度を有する1種またはこれより多くの抗生物質溶液は、上記溶液の異なる濃度が範囲を規定するように調製される。いくらかの場合には、最小濃縮抗生物質溶液 対 最大濃縮抗生物質溶液の濃度比は、1:2~1:50、例えば、1:5~1:30、または1:10~1:20の範囲に及び得る。いくらかの場合には、1またはこれより多くの抗生物質溶液の最低濃度は、少なくとも1μg/mL、例えば、少なくとも2μg/mL、少なくとも5μg/mL、少なくとも10μg/mL、少なくとも20μg/mL、少なくとも40μg/mL、少なくとも80μg/mL、または少なくとも100μg/mLである。上記1またはこれより多くの抗生物質溶液の各々は、上記目的の微生物を含むサンプルの1つのアリコートとともにインキュベートされる。いくらかの場合には、上記微生物に対して特異的な感染性因子(例えば、バクテリオファージ)は、上記抗生物質溶液と同時に添加される。いくらかの場合には、サンプルの上記アリコートは、上記感染性因子を添加する前に、上記抗生物質溶液とともに一定期間にわたってインキュベートされる。上記インジケータータンパク質生成物が検出され得、陽性検出は、上記抗生物質溶液が有効でないことを示し、陰性検出は、上記抗生物質溶液が有効であることを示す。上記抗生物質溶液の濃度は、有効な臨床的用量に相関すると予測される。よって、いくつかの実施形態において、目的の微生物を殺滅するにあたって抗生物質の有効用量を決定する上記方法は、1またはこれより多くの抗生物質溶液の各々を別個に、サンプル中の目的の微生物とともにインキュベートする工程であって、ここで上記1またはこれより多くの抗生物質溶液の濃度は、異なりかつ範囲を規定する工程;上記1またはこれより多くのサンプル中の微生物を、インジケーター部分を含む感染性因子とともにインキュベートする工程;上記1またはこれより多くのサンプル中の感染性因子のインジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記1またはこれより多くのサンプル中のインジケータータンパク質生成物の陽性検出は、上記1またはこれより多くのサンプルを処理するために使用される抗生物質溶液の濃度が有効でないことを示し、上記インジケータータンパク質の検出がないことは、上記抗生物質が有効であることを示し、それによって、上記抗生物質の有効用量を決定する工程を包含する。
【0176】
いくつかの実施形態において、上記方法は、抗生物質耐性に関するカテゴリー割り当ての決定を可能にする。例えば、本明細書で開示される方法は、抗生物質のカテゴリー割り当て(例えば、感受性、中間、および耐性)を決定するために使用され得る。感受性の抗生物質は、病原性微生物をおそらく阻害するが、その保証はなく;処理の適切な選択肢であり得るものである。中間の抗生物質は、より高い投与量、もしくはより頻繁な投与では有効であり得るか、または上記抗生物質が浸透して適切な濃度を提供する特定の身体部位においてのみ有効であり得るものである。耐性の抗生物質は、実験室検査において生物の増殖を阻害するにあたって有効ではなく;処理の適切な選択肢ではない可能性があるものである。いくつかの実施形態において、2種またはこれより多くの抗生物質溶液が試験され、上記1またはこれより多くの抗生物質溶液における最小濃縮溶液および最大濃縮溶液の濃度比は、1:2~1:50、例えば、1:5~1:30、または1:10~1:20の範囲に及ぶ。いくらかの場合には、上記1またはこれより多くの抗生物質溶液の最低濃度は、少なくとも1μg/mL、例えば、少なくとも2μg/mL、少なくとも5μg/mL、少なくとも10μg/mL、少なくとも20μg/mL、少なくとも40μg/mL、少なくとも80μg/mL、または少なくとも100μg/mLである。
【0177】
いくつかの実施形態において、本発明は、抗生物質感受性微生物の存在下で抗生物質耐性微生物を検出するための方法を包含する。ある特定の場合では、抗生物質耐性細菌の検出は、ヘルスケア環境における感染の拡がりを防止するために使用され得る。次いで、防止的手段が、抗生物質耐性細菌の拡がりを防止するために実行され得る。
【0178】
抗生物質耐性微生物を検出するための方法のいくつかの実施形態において、サンプルは、抗生物質耐性細菌および抗生物質感受性細菌の両方を含み得る。例えば、サンプルは、MRSAおよびMSSAの両方を含み得る。いくつかの実施形態において、MRSAは、上記サンプルからMRSAを単離する必要性なしに、MSSAの存在下で検出され得る。抗生物質の存在下では、MSSAは、閾値を上回るシグナルを生成しないが、上記サンプルに存在するMRSAは、上記閾値を上回るシグナルを生成し得る。従って、両方がサンプル内に存在する場合、上記閾値を上回るシグナルは、抗生物質耐性株(例えば、MRSA)の存在を示す。
【0179】
当該分野で公知の多くのアッセイとは対照的に、微生物の抗生物質耐性の検出は、事前の単離なしに達成され得る。多くの方法は、サンプルが、アガープレート上で細菌の個々のコロニーを精製/単離するために、予め培養されることを必要とする。本明細書で開示される方法の増大した感度は、多数の特異的感染性因子、例えば、ファージが単一微生物に結合する能力に一部起因する。上記ファージの感染および複製後に、標的微生物は、ファージ複製中に生成されるインジケータータンパク質生成物を介して検出され得る。
【0180】
従って、ある特定の実施形態において、上記方法は、≦10個の細胞の微生物(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の微生物)を含むサンプル中の微生物の抗生物質耐性を検出し得る。ある特定の実施形態において、上記組換えファージは、上記抗生物質で処理したサンプル中の特異的タイプの単一細菌の検出によって、抗生物質耐性を検出するために使用され得る。ある特定の実施形態において、上記組換えファージは、上記抗生物質と接触させたサンプル中の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個または100個程度の少なさの特異的細菌の存在を検出する。
【0181】
本明細書で開示されるとおりの抗生物質耐性を検出する方法の感度は、上記抗生物質とともにインキュベートする前に、捕捉および感染した微生物を洗浄することによってさらに増大され得る。標的細菌の単離は、評価されている抗生物質が他の細菌種によって分解されることが公知である場合に必要とされ得る。例えば、ペニシリン耐性は、精製なしに評価することが困難である。なぜならサンプルに存在する他の細菌が、上記抗生物質を分解し得(β-ラクタマーゼ分泌)、偽陽性をもたらし得るからである。さらに、捕捉された微生物は、抗生物質および上記感染性因子とのインキュベーション後であって、溶解緩衝液および基質を添加する前に洗浄され得る。これらのさらなる洗浄工程は、過剰な親ファージおよび/もしくはルシフェラーゼ、またはファージ調製を汚染する他のインジケータータンパク質の除去を補助する。よって、いくつかの実施形態において、上記抗生物質耐性を検出する方法は、ファージを添加した後であって、インキュベートする前に、捕捉および感染した微生物を洗浄する工程を包含し得る。
【0182】
従って、本発明のいくつかの実施形態は、検出可能なシグナルを増幅し、それによって、微生物が抗生物質に対して耐性であるか否かを示すための感染性因子ベースの方法を使用し得ることによって、要求を解決する。本発明は、ユーザーが、精製または単離されていないサンプルに存在する微生物の抗生物質耐性を検出することを可能にする。ある特定の実施形態において、1個程度の少ない細菌が検出される。この原理は、微生物表面レセプターの特異的認識に基づいて1個または数個の細胞からのインジケーターシグナルの増幅を可能にする。例えば、微生物の単一細胞を複数のファージに曝露し、その後、ファージの増幅および複製中のコードされたインジケーター遺伝子生成物の高レベル発現を可能にすることによって、上記インジケーターシグナルは、上記単一微生物が検出可能であるように増幅される。本発明は、検出前に微生物の単離を要求しないことによって、微生物の検出のための迅速試験として優れている。いくつかの実施形態において、検出は、ファージまたはウイルスの1~2回の複製サイクル以内で可能である。
【0183】
本発明のシステムおよびキット
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書で開示される方法を行うための構成要素を含むシステム(例えば、自動化システムもしくはキット)を含む。いくつかの実施形態において、本発明によるシステムまたはキットにはインジケーターファージが含まれる。本明細書に記載される方法は、このようなインジケーターファージシステムまたはキットも利用し得る。本明細書で記載されるいくつかの実施形態は、上記方法を行うために必要とされる試薬および材料の最小限の量を考慮すると、自動化もしくはキットに特に適している。ある種の実施形態において、上記キットの構成要素の各々は、第1の部位から第2の部位へと送達可能である自己充足式ユニットを含み得る。
【0184】
いくつかの実施形態において、本開示は、サンプル中で目的の微生物の迅速検出のためのシステムまたはキットを含む。1つの局面において、目的の細菌を検出するためのキットは、(i)上記バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含む組換えバクテリオファージであって、ここで上記遺伝子構築物は、インジケータータンパク質生成物をコードするインジケーター遺伝子を含む組換えバクテリオファージ;および(ii)上記インジケータータンパク質生成物を捕捉するための表面であって、ここで上記表面は、結合パートナーを含む表面を含む。いくつかの実施形態において、上記キットは、検出試薬をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記キットは、溶解緩衝液をさらに含む。
【0185】
上記システムまたはキットは、ある種の実施形態において、上記サンプルをインキュベートするための構成要素;本明細書で詳細に記載される1種またはこれより多くのインジケーターバクテリオファージ組成物;本明細書で詳細に記載されるインジケータータンパク質を捕捉するための構成要素、および上記インジケータータンパク質生成物を検出するための構成要素を含む。
【0186】
他の実施形態において、本開示は、1種またはこれより多くのインジケーターカクテル組成物を含む、サンプル中で目的の微生物の迅速検出のためのシステムまたはキットを含む。本明細書で記載される場合、各インジケーターカクテル組成物は、目的の細菌に特異的であり、ここで上記組換えバクテリオファージは、遺伝子構築物を含み、ここで上記遺伝子構築物は、インジケータータンパク質生成物をコードする遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、上記遺伝子構築物は、捕捉部分および外因性プロモーターをさらに含む。
【0187】
ある特定の実施形態において、各インジケーターカクテル組成物は、特定の細菌に対して高度に特異的である。一実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、100より多くの他のタイプの細菌の存在下で、目的の細菌を区別し得る。ある特定の実施形態において、システムまたはキットは、上記サンプル中の特異的タイプの単一細菌を検出する。ある特定の実施形態において、システムまたはキットは、上記サンプル中の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個または100個程度の生きている特異的細菌を検出および定量する。
【0188】
いくつかの実施形態において、上記システムおよび/またはキットは、上記目的の微生物を収集するための構成要素をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、固体表面(例えば、医療用デバイスまたは食品加工装置)のスワブを使用して収集され得る。従って、いくつかの実施形態において、上記システムおよび/またはキットは、スワブをさらに含み得る。他の実施形態において、サンプルは、上記サンプルを収集するために使用され得る灌注法を使用して収集され得る。灌注法は、表面にわたる溶液(例えば、食塩水)の流れである。従って、いくつかの実施形態において、上記システムおよび/またはキットは、灌注溶液(例えば、食塩水)をさらに含み得る。
【0189】
いくつかの実施形態において、上記システムおよびキットは、上記で詳細に記載されるインジケータータンパク質生成物を捕捉するための表面をさらに含む。例えば、上記表面は、マイクロタイタープレート、ラテックス粒子、ラテラルフローストリップ、ビーズ、磁性粒子、ディップスティック、ミクロスフェアまたは上記インジケータータンパク質生成物を予測し得る任意の他の表面であり得る。いくつかの実施形態において、上記表面は、固定化された結合パートナーを含む捕捉領域を含む。いくつかの実施形態において、上記結合パートナーは、上記インジケータータンパク質生成物に特異的である。他の実施形態において、上記結合パートナーは、上記インジケータータンパク質に融合される捕捉部分に特異的である。
【0190】
ある種の実施形態において、上記システムおよび/もしくはキットは、上記捕捉されたサンプルを洗浄するための構成要素をさらに含み得る。さらにもしくは代わりに、上記システムおよび/もしくはキットは、上記インジケータータンパク質生成物の量を決定するための構成要素をさらに含み得、ここで検出されるインジケータータンパク質生成物の量は、上記サンプル中の微生物の量に相当する。例えば、ある種の実施形態において、上記システムもしくはキットは、ルシフェラーゼ酵素活性を測定するための、ルミノメーターもしくは他のデバイスを含み得る。いくつかの実施形態において、上記ルミノメーターは、携行式デバイスである。
【0191】
いくつかのシステムおよび/またはキットにおいて、同じ構成要素は、複数工程(multiple steps)のために使用され得る。いくつかのシステムおよび/またはキットにおいて、上記工程は、ユーザーによってコンピューター入力を介して自動化もしくは制御され、そして/または液体取り扱いロボットが少なくとも1つの工程を行う。
【0192】
従って、ある種の実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の微生物の迅速検出のためのシステムまたはキットを包含し得、上記システムまたはキットは、上記サンプルを上記目的の微生物に特異的な組換えバクテリオファージとともにインキュベートするための構成要素であって、ここで上記組換えバクテリオファージはインジケータータンパク質生成物をコードする遺伝子を含む構成要素;上記微生物を上記サンプルから固体支持体上に捕捉するための構成要素;上記捕捉された微生物サンプルを洗浄して、結合されていない感染性因子を除去するための構成要素;および上記インジケータータンパク質生成物を検出するための構成要素を含む。いくつかの実施形態において、同じ構成要素は、捕捉する工程および/またはインキュベートする工程および/または洗浄する工程のために使用され得る(例えば、フィルター構成要素)。いくつかの実施形態は、上記サンプル中の上記目的の微生物の量を決定するための構成要素であって、ここで検出されるインジケータータンパク質生成物の量は、上記サンプル中の微生物の量に相当する構成要素をさらに含む。このようなシステムは、微生物の迅速検出のための方法に関して上記に記載されるものに類似の種々の実施形態および下位実施形態を含み得る。一実施形態において、上記微生物は、細菌であり、上記感染性因子は、バクテリオファージである。コンピューター化システムにおいて、上記システムは、完全に自動化されていても、半自動化されていても、もしくはコンピューターを介してユーザーによって指示されてもよい(もしくはこれらのいくつかの組み合わせ)。
【0193】
一実施形態において、本開示は、目的の微生物を検出するための構成要素を含むシステムまたはキットであって、上記システムまたはキットは、上記少なくとも1種の微生物に複数の組換えバクテリオファージを感染させるための構成要素;上記少なくとも1種の感染した微生物を溶解するための構成要素;および上記組換えバクテリオファージによってコードされかつ発現される可溶性インジケータータンパク質生成物を検出するための構成要素であって、ここで上記感染性因子の可溶性タンパク質生成物の検出は、上記微生物が上記サンプルに存在することを示す構成要素を含むシステムまたはキットを包含する。
【0194】
いくつかの実施形態において、本開示のシステムおよびキットは、上記目的の細菌の抗生物質感受性を決定するための抗生物質をさらに含む。
【0195】
本開示のこれらのシステムおよびキットは、種々の構成要素を含む。本明細書で使用される場合、用語「構成要素」とは、広く定義され、記載される方法を実施するための任意の適した装置もしくは適した装置の集まりを含む。上記構成要素は、いかなる特定の方法においても互いに関して一体的に接続される必要も据え付けられる必要もない。本発明は、互いに関して上記構成要素の任意の適切な配置を含む。例えば、上記構成要素は、同じ空間の中に存在する必要はない。しかしいくつかの実施形態において、上記構成要素は、一体ユニットにおいて互いに接続される。いくつかの実施形態において、同じ構成要素は、複数機能を実行し得る。
【0196】
1つの局面において、目的の細菌を検出するためのシステムは、(a)上記バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含む組換えバクテリオファージであって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含み、ここで上記遺伝子構築物は、捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物をコードするインジケーター遺伝子および捕捉部分を含む組換えバクテリオファージ;(b)捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物を捕捉するための表面であって、ここで上記表面は、結合パートナーを含む表面;および(c)上記インジケータータンパク質生成物を検出するための構成要素を含む。
【0197】
上記システムは、現在の技術もしくはその構成要素のうちのいずれかにおいて記載されるように、コンピューターシステムの形態で具現化され得る。コンピューターシステムの代表例としては、汎用コンピューター、プログラムされたマイクロプロセッサ、マイクロコントローラー、周辺集積回路素子、および本技術の方法を構成する工程を実装し得る他のデバイスもしくはデバイスの配置が挙げられる。
【0198】
コンピューターシステムは、コンピューター、入力デバイス、ディスプレイユニット、および/もしくはインターネットを含み得る。上記コンピューターは、マイクロプロセッサをさらに含み得る。上記マイクロプロセッサは、通信バスへと接続され得る。上記コンピューターはまた、メモリを含み得る。上記メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)およびリードオンリーメモリ(ROM)を含み得る。上記コンピューターシステムは、記憶デバイスをさらに含み得る。上記記憶デバイスは、ハードディスクドライブもしくはリムーバル記憶デバイス(例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、光学ディスクドライブなど)であり得る。上記記憶デバイスはまた、コンピュータープログラムもしくは他の指示を上記コンピューターシステムへとロードするための他の類似の手段であり得る。上記コンピューターシステムはまた、通信ユニットを含み得る。上記通信ユニットは、I/Oインターフェイスを通じて、上記コンピューターが他のデータベースおよびインターネットに接続することを可能にする。上記通信ユニットは、他のデータベースへの転送、ならびに他のデータベースからのデータの受領を可能にする。上記通信ユニットは、モデム、Ethernet(登録商標)カード、もしくは上記コンピューターシステムをデータベースおよびネットワーク(例えば、LAN、MAN、WANおよびインターネット)に接続することを可能にする任意の類似のデバイスを含み得る。上記コンピューターシステムは、従って、I/Oインターフェイスを介して上記システムへとアクセス可能な入力デバイスを通じてユーザーからの入力を容易にし得る。
【0199】
コンピューティングデバイスは、代表的には、そのコンピューティングデバイスの一般管理およびオペレーションのための実行可能なプログラム指示を提供するオペレーティングシステムを含み、代表的には、サーバーのプロセッサによって実行される場合に、上記コンピューティングデバイスにその意図された機能を行わせる指示を記憶するコンピューター可読記憶媒体(例えば、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ、リードオンリーメモリなど)を含む。上記オペレーティングシステムに適した実装および上記コンピューティングデバイスの一般的な機能性は、公知であるかもしくは市販されており、当業者によって、特に本明細書の開示に鑑みて、容易に実装される。
【0200】
上記コンピューターシステムは、入力データを処理するために、1以上の記憶素子の中に記憶される一群の指示を実行する。上記記憶素子はまた、記載されるとおりのデータもしくは他の情報を保持し得る。上記記憶素子は、処理機械に存在する情報ソースもしくは物理的メモリ素子の形態にあり得る。
【0201】
環境は、上記で考察されるとおりの種々のデータストアならびに他のメモリおよび記憶媒体を含み得る。これらは、種々の位置に存在し得る(例えば、上記コンピューターのうちの1以上にローカルな(および/もしくは中に存在する)、またはネットワーク全体にわたって記コンピューターのうちのいずれかもしくはすべてから遠隔にある記憶媒体において)。実施形態の特定の一群において、情報は、当業者が精通しているストレージエリアネットワーク(「SAN」)に存在し得る。同様に、上記コンピューター、サーバー、もしくは他のネットワークデバイスに帰した機能を行うための任意の必須のファイルは、適切な場合、ローカルにおよび/もしくは遠隔に保存され得る。システムが、コンピューティングデバイスを含む場合、各々のこのようなデバイスは、バスを介して電気的に連結され得るハードウェア要素を含み得、上記要素は、例えば、少なくとも1つの中央処理装置(CPU)、少なくとも1つの入力デバイス(例えば、マウス、キーボード、コントローラー、タッチスクリーン、もしくはキーパッド)、および少なくとも1つの出力デバイス(例えば、ディスプレイデバイス、プリンター、もしくはスピーカー)を含む。このようなシステムはまた、1つ以上の記憶デバイス(例えば、ディスクドライブ、光学記憶デバイス、およびソリッドステート記憶デバイス(例えば、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)もしくはリードオンリーメモリ(「ROM」)、ならびにリムーバブルメディアデバイス、メモリカード、フラッシュカードなどを含み得る。
【0202】
このようなデバイスはまた、コンピューター可読記憶媒体リーダー、通信デバイス(例えば、モデム、ネットワークカード(無線もしくは有線)、赤外線通信デバイスなど)、および上記のとおりのワーキングメモリを含み得る。上記コンピューター可読記憶媒体リーダーは、遠隔、ローカル、固定、および/もしくはリムーバブル記憶デバイスを代表するコンピューター可読記憶媒体、ならびにコンピューター可読情報を一時的におよび/もしくはより恒久的に含む、記憶する、伝達する、および検索するための記憶媒体と接続され得るかまたはこれらを受容するように構成され得る。上記システムおよび種々のデバイスはまた、代表的には、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラム(例えば、クライアントアプリケーションもしくはウェブブラウザ)を含む、少なくとも1つのワーキングメモリデバイス内に位置した多くのソフトウェアアプリケーション、モジュール、サービス、もしくは他の要素を含む。代替の実施形態が、上記のものからの多くのバリエーションを有し得ることは認識されるべきである。例えば、カスタマイズされたハードウェアがまた使用され得る、および/または特定の要素が、ハードウェア、ソフトウェア(ポータブルソフトウェア(例えば、アプレット)を含む)、または両方において実装され得る。さらに、他のコンピューティングデバイス(例えば、ネットワーク入力/出力デバイス)への接続が使用され得る。
【0203】
コード、もしくはコードの一部を含むための非一時的な記憶媒体およびコンピューター可読媒体としては、当該分野で公知であるかもしくは使用される任意の適切な媒体(記憶媒体および通信媒体(例えば、コンピューター可読の指示、データ構造、プログラムモジュール、もしくは他のデータなどの情報の記憶および/または伝達のための任意の方法または技術において実装される、揮発性および不揮発性、リムーバブルおよび非リムーバブルの媒体が挙げられるが、これらに限定されない)を含む)が挙げられ得、これらとしては、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリもしくは他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多目的ディスク(DVD)もしくは他の光学記憶、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶もしくは他の磁気記憶デバイス、または所望の情報を記憶するために使用され得、上記システムデバイスによってアクセスされ得る任意の他の媒体が挙げられる。上記開示および本明細書に提供される教示に基づいて、当業者は、上記種々の実施形態を実装するための他のやり方および/または方法を認識する。
【0204】
コンピューター可読媒体は、プロセッサにコンピューター可読指示を提供することができる電子式、光学式、磁気、もしくは他の記憶デバイスを含み得るが、これらに限定されない。他の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:フロッピー(登録商標)ディスク、CD-ROM、DVD、磁気ディスク、メモリチップ、ROM、RAM、SRAM、DRAM、連想メモリ(「CAM」)、DDR、フラッシュメモリ(例えば、NANDフラッシュもしくはNORフラッシュ、ASIC、構成されたプロセッサ、光学記憶媒体、磁気テープもしくは他の磁気記憶媒体、またはコンピュータープロセッサが指示を読み得る任意の他の媒体。一実施形態において、上記コンピューティングデバイスは、コンピューター可読媒体(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM))の単一タイプを含み得る。他の実施形態において、上記コンピューティングデバイスは、コンピューター可読媒体(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ディスクドライブ、およびキャッシュ)のうちの2またはそれより多くのタイプを含み得る。上記コンピューティングデバイスは、1またはそれより多くの外付けのコンピューター可読媒体(例えば、外付けハードディスクドライブ、または外付けDVDもしくはブルーレイドライブ)と通信状態にあり得る。
【0205】
上記で考察されるように、上記実施形態は、コンピューター実行可能なプログラム指示を実行および/またはメモリに記憶された情報にアクセスするように構成されているプロセッサを含む。上記指示は、任意の適切なコンピュータープログラミング言語(例えば、C、C++、C#、Visual Basic、Java(登録商標)、Python、Perl、JavaScript(登録商標)、およびActionScript(Adobe Systems, Mountain View, Calif.)が挙げられる)で書かれたコードから、コンパイラおよび/もしくはインタープリターによって生成されたプロセッサ特異的指示を含み得る。一実施形態において、上記コンピューティングデバイスは、単一のプロセッサを含む。他の実施形態において、上記デバイスは、2またはそれより多くのプロセッサを含む。このようなプロセッサは、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および状態機械を含み得る。このようなプロセッサは、プログラマブル電子デバイス(例えば、PLC)、プログラマブル割り込みコントローラー(PIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電子的にプログラム可能なリードオンリーメモリ(electronically programmable read-only memory)(EPROMもしくはEEPROM)、または他の類似のデバイスをさらに含み得る。
【0206】
上記コンピューティングデバイスは、ネットワークインターフェイスを含む。いくつかの実施形態において、上記ネットワークインターフェイスは、有線もしくは無線の通信リンクを介して通信するように構成されている。例えば、上記ネットワークインターフェイスは、Ethernet(登録商標)、IEEE 802.11(Wi-Fi)、802.16(Wi-Max)、Bluetooth(登録商標)、赤外線などを介して、ネットワーク上での通信を可能にし得る。別の例として、ネットワークインターフェイスは、ネットワーク(例えば、CDMA、GSM(登録商標)、UMTS、もしくは他の携帯通信ネットワーク(cellular communication network))上での通信を可能にし得る。いくつかの実施形態において、上記ネットワークインターフェイスは、別のデバイスでの、例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)、1394 FireWire(登録商標)、シリアル接続もしくはパラレル接続、または類似のインターフェイスを介したポイントツーポイント接続を可能にし得る。適切なコンピューティングデバイスのいくつかの実施形態は、1以上のネットワーク上での通信のための2以上のネットワークインターフェイスを含み得る。いくつかの実施形態において、上記コンピューティングデバイスは、ネットワークインターフェイスに加えてもしくはその代わりに、データストアを含み得る。
【0207】
適切なコンピューティングデバイスのいくつかの実施形態は、多くの外付けもしくは内部デバイス(例えば、マウス、CD-ROM、DVD、キーボード、ディスプレイ、オーディースピーカー、1以上のマイクロフォン、または任意の他の入力もしくは出力デバイス)を含み得るかまたはこれらと通信状態にあり得る。例えば、上記コンピューティングデバイスは、種々のユーザーインターフェイスデバイスおよびディスプレイと通信状態にあり得る。上記ディスプレイは、任意の適切な技術(LCD、LED、CRTなどが挙げられるが、これらに限定されない)を使用し得る。
【0208】
上記コンピューターシステムによる実行のための指示セットは、特定のタスク(例えば、本技術の方法を構成する工程)を行うための処理機械を指示する種々のコマンドを含み得る。上記指示セットは、ソフトウェアプログラムの形態にあり得る。さらには、上記ソフトウェアは、本技術におけるように、別個のプログラムの集まり、より大きなプログラムを有するプログラムモジュールもしくはプログラムモジュールの一部の形態にあり得る。上記ソフトウェアはまた、オブジェクト指向プログラミングの形態でのモジュラープログラミングを含み得る。処理機械による入力データの処理は、ユーザーコマンド、以前の処理の結果、もしくは別の処理機械によって作成されたリクエストに応じ得る。
【0209】
本発明は、ある種の実施形態を参照して開示されてきた一方で、記載される実施形態に対する多くの改変、変化および変更は、添付の特許請求の範囲で定義されるように、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく可能である。よって、本発明は、上記記載される実施形態に限定されないことは意図されるが、以下の特許請求の範囲の文言およびその均等物によって定義される全範囲を有する。
【実施例】
【0210】
以下の実施例は、当業者に本開示の主題の代表的実施形態を実施するためのガイダンスを提供するために含められている。本開示および当該分野の技術レベルに鑑みて、当業者は、以下の実施例が例示に過ぎないことが意図され、多くの変更、改変および代替が本開示の主題の範囲から逸脱することなく使用され得ることを認識し得る。
【0211】
実施例1. 抗インジケータータンパク質抗体での中程度タンパク質結合プレートおよび高タンパク質結合プレートの直接的コーティング
マウス抗NANOLUC(登録商標)ルシフェラーゼ精製モノクローナルIgG抗体(MsXNanoluc)を、200μLのPBS中で再構成して、0.5mg/mL MsXNanoluc抗体溶液を生成し、次いで、これをPBS中で1μg/mLへと希釈した。100μLを、中程度(Greiner bio-one - Strips Plate 12xF8, PS, F-Bottom, White, Lumitrac, Med Binding, Ref # 762075)または高(Greiner bio-one -High Binding Ref # 762074)タンパク質結合プレートの各ウェルにピペットで移し、2~8℃において一晩、22時間にわたってインキュベートした。次いで、上記プレートを、300μLの1XPBS/ウェルで洗浄した。次いで、上記プレートを、PBS中5% BSA 300μLで、室温において2時間にわたってブロックし、次いで、300μLのPBS/ウェル/洗浄で3回洗浄した。次いで、上記プレートを、室温において1時間、PBS中5% スクロース 300μLでオーバーコーティングした。次いで、上記オーバーコートを廃棄し、プレートを、4~8℃において長期貯蔵のために容器中で貯蔵した。
【0212】
実施例2. ヒト血液中でのStaphylococcus aureusの検出
S.aureus(ATCC 12600)を、トリプティックソイブロス(TSB)中で対数期(OD
600 0.41)まで増殖させた。培養物をTSB中で希釈して所望の負荷を得、これを、コロニー形成単位(CFU)のためにTSBアガー上にプレートすることによって確認した。各希釈物の12.5μLを、96ウェルプレート(高結合)において37.5μLのTSBまたはヒト血液に直接添加した。示される場合、いくつかのプレートは、捕捉のために結合した抗NANOLUC(登録商標)抗体を含んだ。ヒト血液を、1名のドナーから、抗凝固剤としてヘパリンナトリウムを使用して収集した。血液サンプルに関しては、ポリアネトールスルホン酸ナトリウム(sodium polyanethole sulfonate)(SPS)を含むTSB 100μLを添加して、25% ヒト血液マトリクスを達成した。ウェル(150μL 容積)中のSPSの最終濃度は、0.05%であった。TSBサンプルに関しては、100μLのTSBを添加して、同じ150μL 容積を達成した。次いで、試験ストリップを、カバーフィルムでシールし、37℃において30分間インキュベートした。この短時間の富化の後、20μLのファージ作業ストックを、TSBマトリクスを含むウェルに添加した。ファージ作業ストックは、MP115.NLおよびSAPJV1.NL両方の1mLあたり8×10
7 プラーク形成単位を含んだ。血液マトリクスを含むウェルにおける感染を可能にするために、1ウェルあたり0.5mgの組換えブドウ球菌プロテインA(pro-356、Prospec, Ness-Ziona, Israel)を、20μLのファージ作業ストック内で示されるように含めた。アッセイストリップを、もう一度カバーフィルムでシールし、37℃で3時間インキュベートした。感染後、これらのストリップを、300μL PBS-T(10mM リン酸ナトリウム、150mM NaCl、0.05% Tween(登録商標) 20、pH7.4)で3回洗浄した。自動プレート洗浄機(AccuWash, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)を使用して洗浄を行った。1μLのNanoGlo基質(Promega, Madison, WI, USA)を含む100μLのNanoGlo緩衝液(Promega, Madison, WI, USA)を、各ウェルに添加した。3分間の待機期間の後に、相対発光量(RLU)として各サンプルのシグナル出力を、GloMax Navigator(Promega, Madison, WI, USA)を使用して決定した。バックグラウンドに対するシグナル(S/B)を、各サンプルからのRLUをその試験マトリクスに関する培地コントロール中で観察されるRLUで除算することによって計算した(表1)。
【表1】
【0213】
これらの例において、抗NANOLUC(登録商標)抗体は、固定化された結合パートナーである。表1は、上記インジケータータンパク質が固定化された結合パートナーによって結合される場合に、シグナル検出の実質的な増大を明らかに示す。例えば、S.aureusの低負荷または高負荷を伴うサンプルにおいて、そのRLUは、上記サンプルがコントロールストリップを使用して補足されない場合よりも、上記インジケータータンパク質が上記抗NANOLUC(登録商標)抗体によって補足される場合の方が有意に高い。驚くべきことに、S.aureusの感染は、S.aureusがIgGを結合した場合に起こり得ない。プロテインAの添加は、S.aureusに感染することを可能にする。赤血球および他の血清タンパク質は、発現されるインジケータータンパク質の捕捉に干渉しない。さらに、赤血球によってコントロール中で認められるシグナルのクエンチは排除され、バックグラウンドに対するシグナルは、維持されるかまたは増大される。従って、上記インジケータータンパク質は、上記サンプル中の他の構成要素(例えば、タンパク質)からの最小限の干渉で、全血サンプルを使用して検出され得る。従来どおり、血清または血漿は、上記インジケータータンパク質生成物の信頼性の高い検出のために血液から単離される。有利なことには、上記例は、上記検出方法が、この捕捉工程を使用することによって患者から直接採取される全血サンプルに対して行われ得ることを明らかに示す。
【0214】
実施例3. ヒト血液での抗生物質感受性試験
メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)株(ATCC BAA-1720, CDC AR0480)およびメチシリン感受性Staphylococcus aureus(MSSA)株(ATCC 12600)を、トリプティックソイブロス(TSB)中で対数期まで増殖させた(OD
600の範囲は0.16~0.4)。培養物をTSB中で希釈して所望の負荷を得、これを、コロニー形成単位(CFU)のためにTSBアガー上にプレートすることによって確認した。各希釈物の50μLを、試験ストリップに添加した。示される場合、いくつかのストリップは、捕捉に関して中程度結合プレート上に結合した抗NANOLUC(登録商標)抗体を含んだ。TSBまたはTSBおよびポリアネトールスルホン酸ナトリウム(SPS)で希釈したヒト血液のいずれか85μLを添加した。ヒト血液を、1名のドナーから、抗凝固剤としてヘパリンナトリウムを使用して収集した。次いで、各ウェルは、TSBまたはTSB中22μg/mL セフォキシチン(FOX)のいずれか15μLを受容した。上記ウェル(150μL 容積)中の各構成要素の最終濃度は、25% ヒト血液、0.0375% SPS、および2.2μg/mL FOXであった。次いで、試験ストリップを、カバーフィルムでシールし、37℃において2時間インキュベートした。この選択的富化の後に、20μLのファージ作業ストックを、TSBマトリクスを含むウェルに添加した。ファージ作業ストックは、8×10
7 プラーク形成単位/mL(pfu/mL)のMP115.NLおよび6.9×10
8 pfu/mLのSAPJV1.NLを含んだ。血液マトリクスを含むウェルに関しては、1ウェルあたり0.5mgの組換えブドウ球菌プロテインA(pro-356, Prospec, Ness-Ziona, Israel)を、20μLのファージ作業ストック内に含めた。アッセイストリップをもう一度カバーフィルムでシールし、37℃において3時間インキュベートした。感染後に、抗NanoLuc捕捉ストリップおよびコントロールストリップを、300μL PBS-T(10mM リン酸ナトリウム、150mM NaCl、0.05% Tween(登録商標) 20、pH7.4)で3回洗浄した。自動プレート洗浄機(AccuWash, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)を使用して洗浄を行った。1μLのNanoGlo基質(Promega, Madison, WI, USA)を含む100μLのNanoGlo緩衝液(Promega, Madison, WI, USA)を、各ウェルに添加した。「洗浄なし+捕捉なし」ストリップは洗浄されず、代わりに50μL NanoGlo緩衝液、15μL TSB、および1μL NanoGlo基質を含む65μLのマスターミックスを受容した。3分間の待機期間の後に、相対発光量(RLU)として各サンプルのシグナル出力を、GloMax Navigator(Promega, Madison, WI, USA)を使用して決定した。バックグラウンドに対するシグナル(S/B)を、各サンプルからのRLUをその試験マトリクスに関する培地コントロール中で観察されるRLUで除算することによって計算した(表2)。
【表2】
【0215】
表2において、「捕捉なし+洗浄なし」に関する例は、生成される全シグナルおよびアッセイが単なる培地(TSB)中で行われる場合に、セフォキシチンに起因するシグナルの低下を明らかに示す。血液の存在下で行われる場合、シグナルはクエンチされる。捕捉ストリップが使用される場合、血液によって行われるクエンチングの除去に起因して、シグナルの実質的な増大が存在する。5% BSAでブロックしたストリップ(ウシ血清アルブミン、Sigma Life Science Product #A9647)は、非特異的結合を示すことになる。繰り返しになるが、上記例は、上記インジケータータンパク質が全血サンプルに関して固定化された結合パートナーによって補足された場合に、シグナル検出の実質的な増大を明らかに示す。さらに、上記シグナル検出は、抗生物質を含んだ全血サンプルに関する捕捉工程によって顕著に改善された。驚くべきことに、上記インジケータータンパク質は、上記サンプル中の他の構成要素からの最小限の干渉で、全血サンプルを使用して検出され得る。
【0216】
実施例4. 抗インジケータータンパク質抗体での中程度タンパク質結合および高タンパク質結合プレートの間接的コーティング
ウサギ抗マウスIgG(Abcam, Catalog # 46540)またはヤギ抗マウスIgG(Abcam, Catalog # 6708)を、PBS中で10μg/mLへと希釈した。次いで、100μLの希釈したウサギ抗マウスIgGまたはヤギ抗マウスIgGを、中程度(Greiner bio-one - Strips Plate 12xF8, PS , F-Bottom, White, Lumitrac, Med Binding, Ref # 762075)または高(Greiner bio-one -High Binding Ref # 762074)タンパク質結合プレートの各ウェルへとピペットで移し、一晩2~8℃において、18~20時間インキュベートした。次いで、上記プレートを、300μLの1×PBS/ウェル/洗浄で3回洗浄した。マウス抗NANOLUC(登録商標)ルシフェラーゼ精製モノクローナルIgG抗体(MsXNANOLUC(登録商標))を、PBS中で1μg/mLへと希釈した。100μLを、ウサギまたはヤギ抗マウスIgGでコーティングした各ウェルへとピペットで移し、2~8℃において18~20時間インキュベートした。次いで、上記プレートを、300μLの1×PBS/ウェル/洗浄で3回洗浄した。次いで、上記プレートを、PBS中5% BSA 300μLで、2時間、室温においてブロックし、次いで、300μLのPBS/ウェル/洗浄で3回洗浄した。次いで、上記プレートを、PBS中5% スクロース 300μLで1時間、室温においてオーバーコーティングした。次いで、上記オーバーコートを廃棄し、プレートを一晩乾燥させ、その後、プラスチックバッグに移し、2~8℃において貯蔵した。
【0217】
実施例5. コーティングしたプレート上でのNANOLUC(登録商標)の滴定
1.5mg/mLの精製NANOLUC(登録商標)のストック溶液を、PBS中で1ng/mLへと希釈した。PBS中での10倍系列希釈物を、1ng/mLから0.001pg/mLまで作製した。各希釈物100μLを、MsxNANOLUC(登録商標)、GtxMsIgG/MsxNANOLUC(登録商標)、RbxMsIgG/MsxNANOLUC(登録商標)でコーティングしたストリップ(中程度結合および高結合)のウェルへと移した。5% BSAでブロックしたストリップは、NSB決定のために含め、NANOLUC(登録商標)活性測定のためのコーティングしていないストリップを含めた。アッセイストリップをカバーフィルムでシールし、37℃で3時間インキュベートした。抗体でコーティングしたストリップを、300μL/ウェル PBS-T(10mM リン酸ナトリウム、150mM NaCl、0.05% Tween(登録商標) 20、pH7.4)で3回洗浄した。自動プレート洗浄機(AccuWash, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)を使用して洗浄を行った。1μLのNANOGLO(登録商標)基質(Promega, Madison, WI, USA)を含む100μLの NanoGlo緩衝液(Promega, Madison, WI, USA)を、各ウェルに添加した。3分間の待機期間の後に、相対発光量(RLU)として各サンプルのシグナル出力を、GloMax Navigator(Promega, Madison, WI, USA)を使用して決定した。バックグラウンドに対するシグナル(S/B)を、各サンプルからのRLUをその試験に関するPBSコントロールで観察されるRLUで除算することによって計算した(表3)。
【表3A】
【表3B】
【0218】
表3A~3Bは、ウサギ抗マウスIgGまたはヤギ抗マウスでコーティングしたプレートが、改善された捕捉/結合表面のためにマウス抗NANOLUC(登録商標)の改善された配向を提供したことを明らかに示す。実際に、ウサギ抗マウスIgGまたはヤギ抗マウスIgGでコーティングしたプレートは、インジケータータンパク質生成物を結合するためのより高い利用可能性を提供する。上記プレートの間接的コーティングは、改善されたシグナル検出を示した。これは、マウス抗nanolucルシフェラーゼの配向および上記インジケータータンパク質への結合部位の利用可能性に起因し得る。
【0219】
実施例6. 全血中でのE.coli O157:H7の検出
E.coli O157:H7(ATCC 43888)を、0.05% ポリアネトールスルホン酸ナトリウムを有するトリプティックソイブロス(TSB/SPS)中で一晩増殖させた。一晩の増殖物を、新鮮なTSB/SPSへと希釈し、対数期(OD
600 0.2)まで増殖させた。対数期の細胞を、20000CFU/mL、8000CFU/mL、4000CFU/mL、2000CFU/mL、400CFU/mL、200CFU/mL、および80CFU/mLへと希釈した。各希釈物200μLを、200μL ヒト血液を有する400μL TSB/SPSへと直接添加して、5000CFU/mL、2000CFU/mL、1000CFU/mL、500CFU/mL、100CFU/mL、50CFU/mL、および20CFU/mLの最終濃度を与えた。ヒト血液を、1名のドナーから、抗凝固剤としてクエン酸ナトリウムを使用して収集した。TSB陽性コントロールを、600μL TSBに直接添加した各希釈物200μLで作製して、5000CFU/mL、2000CFU/mL、1000CFU/mL、500CFU/mL、100CFU/mL、50CFU/mL、および20CFU/mLの最終濃度を与えた。その接種したTSBおよびTSB/SPS/血液サンプルを、37℃において2時間インキュベートした後、各希釈物100μLを、ウェルに移した。1.2×10
7プラーク形成単位/mLの、10μLのファージCBA120.NLを、各ウェルに添加した。アッセイストリップをカバーフィルムでシールし、37℃において3時間感染を行った。感染後、これらのストリップを、300μL PBS-T(10mM リン酸ナトリウム、150mM NaCl、0.05% Tween(登録商標) 20、pH7.4)で3回洗浄し、TSBコントロールは洗浄しなかった。自動プレート洗浄機(AccuWash, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)を使用して洗浄を行った。1μLのNanoGlo基質(Promega, Madison, WI, USA)を含む100μLのNanoGlo緩衝液(Promega, Madison, WI, USA)を、各ウェルに添加した。3分間の待機期間の後に、相対発光量(RLU)として各サンプルのシグナル出力を、GloMax Navigator(Promega, Madison, WI, USA)を使用して決定した。バックグラウンドに対するシグナル(S/B)を、各サンプルからのRLUをその試験に関する培地コントロールで観察されるRLUで除算することによって計算した(表4)。
【表4】
【0220】
実施例7. ラテラルフローストリップ/ディップスティックを使用する細菌のペプチドタグ化インジケーターファージ検出
図2に示されるように、75% 培地(例えば、ポリアネトールスルホン酸ナトリウム)中の25% 全血培養物のうちの1mL サンプルを、5~6時間にわたって富化する。マルチファージカクテル(例えば、以下の各々に関するインジケーターファージカクテルを含む: Pseudomonasファージ、Enterobacterファージ、Enterococcusファージ、Klebsiellaファージ、S.aureusファージ、およびA.baumanniiファージ)を、富化した血液に添加し、2時間インキュベートする。血液マトリクスを含むウェル中での感染を可能にするために、1ウェルあたり0.5mgの組換えブドウ球菌プロテインA(pro-356, Prospec, Ness-Ziona, Israel)を、20μLのマルチファージカクテル作業ストック内に含める。各インジケーターファージカクテルは、特有の捕捉タグを有するバクテリオファージを含む(すなわち、Pseudomonasファージカクテルは、タグAを有し、Enterobacterファージカクテルは、タグBを有し、Enterococcusファージカクテルは、タグCを有し、Klebsiellaファージカクテルは、タグDを有し、S.aureusファージカクテルは、タグEを有し、A.baumanniiファージカクテルは、タグFを有する)。3時間のインキュベーション後、溶解緩衝液を添加する。100μLの溶解した組換えバクテリオファージサンプルを、上記特有の捕捉タグの各々に特異的な結合パートナーでコーティングしたラテラルフローストリップ上に載せる。次いで、基質を上記ラテラルフローストリップに添加し、上記ストリップを、携行式ルミノメーターを使用して読み取る。
【0221】
実施例8. マイクロタイタープレートを使用する細菌のペプチドタグ化インジケーターファージ検出
図3に示されるように、75% 培地(例えば、ポリアネトールスルホン酸ナトリウム)中での25% 全血培養物のうちの1mL サンプルを、5~6時間にわたって富化する。マルチファージカクテル(例えば、以下の各々に関するインジケーターファージカクテルを含む: Pseudomonasファージ、Enterobacterファージ、Enterococcusファージ、Klebsiellaファージ、S.aureusファージ、およびA.baumanniiファージ)を、富化した血液に添加し、2時間インキュベートする。血液マトリクスを含むウェル中での感染を可能にするために、1ウェルあたり0.5mgの組換えブドウ球菌プロテインA(pro-356, Prospec, Ness-Ziona, Israel)を、20μLのマルチファージカクテル作業ストック内に含める。各インジケーターファージカクテルは、特有の捕捉タグを有するバクテリオファージを含む(すなわち、Pseudomonasファージカクテルは、タグAを有し、Enterobacterファージカクテルは、タグBを有し、Enterococcusファージカクテルは、タグCを有し、Klebsiellaファージカクテルは、タグDを有し、S.aureusファージカクテルは、タグEを有し、A.baumanniiファージカクテルは、タグFを有する)。2時間のインキュベーション後、溶解緩衝液を添加する。100μLの溶解した組換えバクテリオファージサンプルを、上記特有の捕捉タグの各々に特異的な結合パートナーでコーティングしたマイクロタイタープレートの各ウェルに装填する。各ウェルを、異なるモノクローナル抗体でタグ化する。例えば、Enterobacter特異的バクテリオファージがタグBでタグ化される場合、マウス抗タグBでコーティングされたウェルが、インジケータータンパク質を捕捉し得る。上記サンプルを、60分間インキュベートし、次いで、上記プレートを洗浄する。次いで、基質を各ウェルに添加し、ルミノメーターを使用して発光を測定する。
【0222】
実施例9. E.coli O157:H7からのHAタグ化Nanolucの捕捉
ペプチドタグ化したインジケーター、HA(ヘマグルチニン)タグ化NANOLUCを、バクテリオファージJG04ゲノムに添加し、捕捉実験において使用した。ヒトインフルエンザヘマグルチニンは、YPYDVPDYAの配列を有する9アミノ酸のペプチドである。上記HAタグを、NanolucのC末端に融合し(リンカーGSSGを、NanolucとHAとの間に置いた)、組換えファージJG04.NL-HAを作製し、単離した。E.coli O157:H7の感染後、Nanoluc-HAは、ファージ複製の間に発現した。ウサギ抗HAでコーティングしたプレートを使用して、その発現されたNanoluc-HAを捕捉した。感染および捕捉の両方が、上記3時間の感染の間に起こった。基質を、PBS/Tween(登録商標)での上記ウェルの洗浄後に添加した。
【0223】
捕捉プレート
捕捉プレートを調製するために、RbxHA抗体(Invitrogen, Catalog # 71-5500)を、PBS(Sigma PBS(pH7.6) Catalog # P3744)中で1μg/mLまたは10μg/mLへと希釈した。希釈した抗体(100μL)またはPBS(陰性コントロール)を、Greiner Bio-One Strip Plates、Catalog # 762075(Lumitrac - 白色中程度結合)の各ウェルへと移した(希釈物あたり4枚のストリップ(0.1μg/ウェルまたは1.0μg/ウェル)。プレートをフィルムでシールし、4℃で一晩貯蔵した。抗体を吸引し、プレートを300μLのPBSで1回洗浄した。PBS中5% BSA(Sigma BSA, Catalog # A9647)のブロッキング溶液(300μL)を各ウェルに添加し、プレートをフィルムでシールし、2時間、室温でインキュベートした。ブロッキング溶液を吸引し、ウェルを300μLのPBSで1回洗浄した。PBS中5% スクロース(Fisher BioReagents D-Sucrose, Catalog # BP220-1)のオーバーコート溶液(300μL)を、各ウェルに添加した。プレートをフィルムでシールし、1時間、室温でインキュベートした。オーバーコート溶液を吸引し、オーバーコートおよびプレートを逆さにし、一晩室温で乾燥させた。翌日、プレートを、密封バッグに入れて使用するまで4℃で貯蔵した。
【0224】
タグ化Nanoluc捕捉 - アッセイプロトコール
E.coli O157:H7(ATCC 43888)の一晩培養物を、TSB中で約1000CFU/mLおよび100000CFU/mLへと希釈した。細菌希釈物またはTSB(100μL、細菌なしのコントロール)を各ウェルに添加した。コーティングした捕捉ストリップおよびコーティングしていないストリップの両方を、比較のために使用した。ファージ作業ストックを添加した(10μLの、SM緩衝液中1.1×107pfu/mL)。プレートをフィルムでシールし、37℃において感染のために3時間インキュベートした。上記サンプルを除去し、ウェルを、300μLの1×PBS-T(Seracare 10 X PBS-Tween(登録商標), Catalog # 5460-0027)で5回洗浄した。検出マスターミックス(100μL)(50μLのNanoGlo緩衝液(Promega Catalog # N112B)、50μLのPBS、および1μLのNanoGlo基質(Promega Catalog # N113B))を各ウェルに添加した。プレートを、GloMax Navigator(3分遅延、1秒統合、2回読み取り)で読み取った。
【0225】
E.coli O157:H7からのHA-Nanolucの捕捉
定常期のE.coli O157:H7 ATCC 43888を、100000CFU/mLおよび1000CFU/mLへと希釈し、100μLを1ウェルあたりに使用し、3時間にわたってインジケーター組換えファージに感染させた。JG04.NLは、HAタグを含まず、JG04.NL.NAは、タグを含む。コーティングされていない/洗浄されていないストリップまたはPBSコーティングされた洗浄ストリップを使用して、いずれのファージからも一貫したシグナルの差異は観察されなかった。抗HA捕捉ストリップを使用して、タグ化したJG04.NL-HAで一貫してより高いシグナルが観察された(10,000CFU負荷においてタグ化されていないものより10倍の増大)。Nanolucの非特異的結合は、10000CFUにおいておよそ1,000RLUのシグナルバックグラウンド、およびブロッキングされたプレートにおいて100CFUに関しては<100RLUを生じる。プレートされたCFUおよびRLU結果は、以下の表5および表6で示され、複製ウェルの平均を表す。
【表5】
【表6】
【0226】
以下の段落は、さらなる説明を含む:
【0227】
いくつかの実施形態は、バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含む組換えバクテリオファージであって、ここで上記遺伝子構築物が、インジケーター遺伝子および捕捉部分を含む、組換えバクテリオファージを含む。いくつかの実施形態において、上記遺伝子構築物は、外因性プロモーターをさらに含む。上記インジケーター遺伝子は、酵素(例えば、ルシフェラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、またはアルカリホスファターゼ)であり得る。
【0228】
いくつかの実施形態において、上記インジケーター遺伝子および捕捉部分は、捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物をコードする。上記捕捉部分は、例えば、ペプチドタグまたはタンパク質タグであり得る。
【0229】
いくつかの実施形態において、インジケーターカクテル組成物は、少なくとも2種の異なる組換えバクテリオファージを含み、ここで上記組換えバクテリオファージは各々、それらのバクテリオファージゲノムに挿入されたインジケーター遺伝子および捕捉部分を含む遺伝子構築物を含む。上記2種の異なる組換えバクテリオファージは、上記目的の同じ細菌、または異なる細菌に特異的であり得る。
【0230】
いくつかの実施形態は、上記に記載の少なくとも2種のインジケーターカクテル組成物を含むマルチカクテル組成物であって、ここで第1のインジケーターカクテル組成物が、第1の目的の細菌に特異的であり、第2のカクテル組成物は、第2の目的の細菌に特異的である、マルチカクテル組成物を含む。
【0231】
いくつかの局面において、サンプル中で目的の細菌を検出する方法が提供され、上記方法は、(i)上記サンプルを得る工程;(ii)上記サンプルを、少なくとも1種のインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする工程であって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含み、ここで上記遺伝子構築物は、インジケータータンパク質生成物をコードするインジケーター遺伝子を含む工程;(iii)上記インジケータータンパク質生成物を捕捉する工程;および(iv)上記捕捉されたインジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記捕捉されたインジケータータンパク質生成物の検出は、上記目的の細菌が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する。
【0232】
他の局面においては、サンプル中で目的の細菌を検出する方法が提供され、上記方法は、(i)上記サンプルを得る工程;(ii)上記サンプルを、少なくとも1種のインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする工程であって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含み、ここで上記遺伝子構築物は、捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物をコードするインジケーター遺伝子および捕捉部分を含む工程;(iii)上記捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物を捕捉する工程;ならびに(iv)上記捕捉されたインジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記捕捉されたインジケータータンパク質生成物の検出は、上記目的の細菌が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する。記載される方法において、上記目的の細菌は、細菌の属、種、株、またはタイプであり得る。上記遺伝子構築物は、外因性プロモーターをさらに含み得る。上記インジケーター遺伝子は、酵素(例えば、ルシフェラーゼまたはアルカリホスファターゼ)をコードし得る。
【0233】
いくつかの局面においては、上記の方法は、上記サンプルを、少なくとも2種のインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする工程をさらに包含し得、ここで第1のインジケーターカクテル組成物は、第1の目的の細菌に特異的なバクテリオファージを含み、第2のインジケーターカクテル組成物は、第2の目的の細菌に特異的なバクテリオファージを含む。上記第1のインジケーターカクテル組成物のバクテリオファージは各々、第1の捕捉部分を含み得、上記第2のインジケーターカクテル組成物のバクテリオファージは各々、第2の捕捉部分を含み得る。上記捕捉部分は、ペプチドタグまたはタンパク質タグであり得る。上記の方法は、上記インジケーターカクテル組成物とのインキュベーション後に、上記サンプル中の細菌を溶解するための工程をさらに包含し得る。
【0234】
いくつかの実施形態において、上記インジケータータンパク質生成物を捕捉する工程は、上記サンプルと、上記インジケータータンパク質生成物を捕捉し得る結合パートナーを含む表面とを接触させる工程を包含する。上記結合パートナーは、抗体またはそのフラグメントであり得る。いくつかの実施形態において、上記捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物を捕捉する工程は、上記サンプルと、上記捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物を捕捉し得る結合パートナーを含む表面と接触させる工程を包含する。上記表面は、第1の捕捉部分に特異的な第1の結合パートナーおよび第2の捕捉部分に特異的な第2の結合パートナーを含み得る。上記方法は、上記サンプルを、上記少なくとも1種のインジケーターカクテル組成物とともにインキュベートする工程の前に、上記サンプルを抗生物質とともにインキュベートする工程によって、上記サンプル中で検出した上記目的の細菌の抗生物質耐性を決定するための工程をさらに包含し得る。
【0235】
試験されるサンプルは、生物学的サンプル、食品サンプル、環境サンプル、水サンプル、または商業的サンプルであり得る。生物学的サンプルは、例えば、血液、血清、または血漿であり得る。プロテインAは、上記サンプルに添加され得る。食品サンプルは、例えば、食肉、魚肉、野菜、フルーツ、卵、酪農製品、ドライフード製品、または乳児用調製粉乳であり得る。
【0236】
いくつかの方法では、上記目的の細菌は、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Klebsiella Pneumoniae、Acinetobacter baumanni、Pseudomonas aeruginosa、Salmonella spp.、Cronobacter spp.、Campylobacter spp.、Listeria spp.、Enterobacter spp.またはE.coliのうちの少なくとも1つである。
【0237】
目的の細菌を検出するためのキットもまた提供され、上記キットは、(i)バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含む組換えバクテリオファージであって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含み、ここで上記遺伝子構築物は、捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物をコードするインジケーター遺伝子および捕捉部分を含む、組換えバクテリオファージ;ならびに(ii)上記捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物を捕捉するための表面であって、ここで上記表面は、上記捕捉部分に特異的な結合パートナーを含む表面を含む。キットは、検出試薬、溶解緩衝液、マイクロタイタープレート、ラテックス粒子、ラテラルフローストリップ、ミクロスフェア、またはディップスティックのうちの少なくとも1つをさらに含み得る。
【0238】
目的の細菌を検出するためのシステムもまた提供され、上記システムは、(a)バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含む組換えバクテリオファージであって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝子構築物を含み、ここで上記遺伝子構築物は、捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物をコードするインジケーター遺伝子および捕捉部分を含む、組換えバクテリオファージ;(b)捕捉部分-インジケータータンパク質融合生成物を捕捉するための表面であって、ここで上記表面は、上記捕捉部分に特異的な結合パートナーを含む、表面;ならびに(c)上記インジケータータンパク質生成物を検出するための構成要素を含む。
【国際調査報告】