(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】対象の眼の両眼検査のための検眼装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/08 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
A61B3/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566667
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2022060762
(87)【国際公開番号】W WO2022229033
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルタ・エルナンデス-カスタニェーダ
(72)【発明者】
【氏名】セシール・プティグノー
(72)【発明者】
【氏名】ジルダ・マラン
(72)【発明者】
【氏名】ロイク・バイヨン
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ・ペロ
(72)【発明者】
【氏名】ドニ・ルソー
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA16
4C316FA01
4C316FA03
4C316FB11
4C316FC21
4C316FY02
4C316FY05
4C316FZ03
(57)【要約】
本発明は、対象の眼の両眼検査のための検眼装置であって、-第1の光軸に沿って異なる視力矯正度数を提供するように適合された第1の光屈折要素と、第2の光軸に沿って異なる視力矯正度数を提供するように適合された第2の光屈折要素とを備えた両眼屈折検査ユニット、-第1及び第2の検査画像を提供するための表示システムであって、第1の検査画像は、第1の光路に沿って第1の光屈折要素に伝達され、及び第2の検査画像は、第2の光路に沿って第2の光屈折要素に伝達される、表示システムを含み、前記第1及び第2の検査画像は、水平方向における少なくとも8°の視野にわたり、1分角よりも小さい細部を設けられ、前記第1及び第2の光路は、25~100センチメートルに含まれる長さを有し、近方視及び/又は中間視で対象の眼を検査することを可能にする、検眼装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の眼の両眼検査のための検眼装置(1、2)であって、
- 第1の光軸(OA1)に沿って異なる視力矯正度数を提供するように適合された第1の光屈折要素(11)と、第2の光軸(OA2)に沿って異なる視力矯正度数を提供するように適合された第2の光屈折要素(12)とを備えた両眼屈折検査ユニット(10)、
- 第1及び第2の検査画像(I11、I12;I21、I22)を提供するための表示システム(20)であって、前記第1の検査画像は、第1の光路(OP1)に沿って前記第1の光屈折要素(11)に伝達され、及び前記第2の検査画像は、第2の光路(OP2)に沿って前記第2の光屈折(12)要素に伝達される、表示システム(20)
を含み、
前記第1及び第2の検査画像には、水平方向における少なくとも8°の視野にわたり、1分角よりも小さい細部が設けられ、
前記第1及び第2の光路(OP1、OP2)は、25~100センチメートルに含まれる長さを有し、近方視及び/又は中間視で前記対象の前記眼を検査することを可能にする、検眼装置(1、2)。
【請求項2】
前記両眼屈折検査ユニット(10)は、前記第1及び第2の屈折要素(11、12)の前記第1及び第2の光軸(OA1、OA2)が下方に傾斜している斜方視検査構成を提示する、請求項1に記載の検眼装置(1、2)。
【請求項3】
前記表示システム(20)は、前記両眼屈折検査ユニット(10)と一体となるように前記両眼屈折検査ユニット(10)に機械的に連結される、請求項1又は2に記載の検眼装置(1)。
【請求項4】
前記両眼屈折検査ユニット(10)は、少なくとも2つの検査構成:前記第1及び第2の光軸(OA1、OA2)が水平方向に延びる第1の位置に前記第1及び第2の光屈折要素(11、12)が位置決めされる水平視検査構成と、前記第1の位置と比較して前記第1及び第2の光屈折要素(11、12)が傾斜しており、それにより、前記第1及び第2の光軸(OA1、OA2)が下方に傾斜している斜方視検査構成との間で移動可能である、請求項1~3のいずれか一項に記載の検眼装置。
【請求項5】
前記両眼屈折検査ユニット(10)は、前記第1及び第2の光屈折要素(11、12)の平均平面(MP)に平行な水平方向軸(H)を中心に全体として回転移動可能であり、前記水平方向軸(H)は、前記対象の眼が前記屈折検査要素を通して見るとき、前記対象の前記眼(E1、E2)の一方の回転中心(ERC1)が位置する場所にある所定の点を通る、請求項4に記載の検眼装置。
【請求項6】
前記表示システム(20)内の前記第1及び第2の検査画像(I11、I12、I21、I22)の位置は、前記第1及び第2の画像が前記第1又は第2の光路(OP1、OP2)と位置合わせされるように調整可能である、請求項1~5のいずれか一項に記載の検眼装置。
【請求項7】
前記表示システム(20)は、前記第1及び第2の検査画像が両方とも生成される単一の表示領域と、前記第1又は第2の光路(OP1、OP2)に沿って前記第1及び第2の検査画像を前記第1又は第2の光屈折要素(11、12)に選択的に伝達するための画像選択ユニットとを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の検眼装置。
【請求項8】
前記画像選択ユニットは、所定の波長範囲に含まれる波長を有する光を選択的に透過及び/若しくは反射するように適合されたフィルタ又は所定の軸に沿って配向された偏光を有する光を選択的に透過及び/若しくは反射するように適合された偏光子を含む、請求項7に記載の検眼装置(1、2)。
【請求項9】
前記表示システム(20)は、前記第1及び第2の検査画像を前記表示領域において同時に生成し、及び前記画像選択ユニットは、複数のマイクロレンズ(50)を含み、前記マイクロレンズ(50)の各々は、前記単一の表示領域の一部にマッピングされ、且つ前記単一の表示領域の前記部分によって放射された前記光を少なくとも2つの異なる方向に伝達するように適合される、請求項7又は8に記載の検眼装置(1、2)。
【請求項10】
- 前記表示システム(20)は、前記第1及び第2の検査画像を前記単一の表示領域において交互に生成し、及び
- 前記画像選択ユニットは、2つのシャッタ(41、42)を含み、前記2つのシャッタ(41、42)の各々は、前記第1及び第2の光路(OP1、OP2)の一方に関連付けられ、且つ2つの状態:前記シャッタ(41、42)が、前記対応する第1又は第2の光路(OP1、OP2)内の光の伝播を選択的に遮断する作動状態と、前記シャッタ(41、42)が、前記同じ第1又は第2の光路(OP1、OP2)内の光の伝播を選択的に可能にする作動停止状態とを提示し、
- 同期装置は、両方のシャッタ(41、42)の状態変化と、前記第1及び第2の検査画像(I11、I12;I21、I22)の生成とを同期させるために設けられる、請求項7又は8に記載の検眼装置(1、2)。
【請求項11】
各シャッタ(41、42)は、前記表示システム(20)及び/又は前記屈折検査ユニット(10)に関連付けられた電子シャッタを含む、請求項10に記載の検眼装置(1、2)。
【請求項12】
前記表示システム(20)は、前記第1及び第2の検査画像を2つの分離された表示領域(Z1、Z2)において生成し、前記検眼装置は、前記第1及び第2の経路に沿って前記第1及び第2の画像を前記第1及び第2の眼に伝達する光伝達ユニットを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の検眼装置(1、2)。
【請求項13】
前記光伝達ユニットは、前記第1及び第2の検査画像を前方で交互に回転させる偏光子回転子を含む、請求項12に記載の検眼装置(1、2)。
【請求項14】
前記表示システム(20)は、2つの別個の画面(S1、S2)を含み、前記別個の画面(S1、S2)の各々は、前記第1及び第2の画像の一方を表示し、及び前記光伝達ユニットは、ビームスプリッタ(31)を含む、請求項12又は13に記載の検眼装置(1、2)。
【請求項15】
前記表示システムは、
- 2つの別個のマイクロディスプレイであって、前記別個のマイクロディスプレイの各々は、前記第1及び第2の画像の一方を表示する、2つの別個のマイクロディスプレイ、又は
- 前記2つの分離された表示領域を提供する1つの画面であって、前記分離された表示領域の各々は、前記第1及び第2の画像の一方を表示する、1つの画面
を含み、及び前記光伝達ユニットは、前記分離された表示領域の一方で放射された前記光を前記対象の前記眼の一方に向けてそれぞれ伝達する2つの光ガイドを含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の検眼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象の眼の両眼検査のための検眼装置に関する。
【0002】
本発明による装置は、特に、精密に制御され得る自然な又は人間工学的且つ快適な条件で近方視及び/又は中間視状態における対象の眼を検査するために使用され得る。
【背景技術】
【0003】
対象の眼の両眼検査のための既知の装置及び方法は、通常、遠方視状態における眼の検査のみに使用される。遠方視状態では、対象の両眼遠方視を検査するために対象に示される画像は、通常、対象の眼から1メートル超離れて配置される。
【0004】
しかしながら、近方視及び/又は中間視状態における眼の屈折特徴は、遠方視における屈折特徴と異なり得る。これは、とりわけ、近方視及び/又は中間視状態における眼の遠近調節及び輻輳が異なるという事実に起因し得る。
【0005】
近方視及び/又は中間視における対象の眼を検査するための既知の方法は、対象の直線の注視方向を確保する視覚目標を用いて又は対象が試用フレームを装着して実施され、近方視及び/又は中間視の不自然な姿勢につながる。近方視及び/又は中間視検査の状態は、患者にとって快適ではなく、眼科医療従事者にとって制御が容易ではない。
【0006】
これらの既知の方法は、例えば、屈折計(フォロプタとも呼ばれる)を用いて、提供される視覚補正をシミュレートする。
【0007】
そのようなフォロプタは、個人の頭部を受けて屈折検査ユニットに対して所定の位置に保持するように設計された支持要素を含む。
【0008】
この屈折検査ユニットは、異なる矯正を提供する試用レンズを収容し、試用レンズは、適切な矯正値が見つかるまで個人の眼の前に連続的に配置され得る。
【0009】
フォロプタにおいて、試用レンズは、自由に回転できるように取り付けられた2つのディスク上に位置する。結果として、このディスクの試用レンズは、対応する患者の眼の前に連続して位置決めされ得る。
【0010】
かかるフォロプタは、正面測定のみを可能にし、個人の両眼視力及び遠近調節を精密に制御することができない。
【0011】
水平方向注視での近方視及び下方注視での近方視で必要な視覚矯正が同じでないことが知られている。
【0012】
遠近調節が両眼視と単眼視とで同じではなく、注視の向き及び使用される視覚(単眼又は両眼)の関数として遠近調節が変化することも知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の1つの目的は、近方視及び/又は中間視状態における対象の眼の両眼屈折特徴を精度よく判定することを可能にする新たな装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的は、本発明に従い、対象の眼の両眼検査のための検眼装置であって、
- 第1の光軸に沿って異なる視力矯正度数を提供するように適合された第1の光屈折要素と、第2の光軸に沿って異なる視力矯正度数を提供するように適合された第2の光屈折要素とを備えた両眼屈折検査ユニット、
- 第1及び第2の検査画像を提供するための表示システムであって、第1の検査画像は、第1の光路に沿って第1の光屈折要素に伝達され、及び第2の検査画像は、第2の光路に沿って第2の光屈折要素に伝達される、表示システム
を含み、
前記第1及び第2の検査画像には、水平方向における少なくとも8°の視野にわたり、1分角よりも小さい細部が設けられ、
前記第1及び第2の光路は、25~100センチメートルに含まれる長さを有し、近方視及び/又は中間視で対象の眼を検査することを可能にする、検眼装置を提供することによって達成される。
【0015】
好ましくは、近方視及び/又は中間視における対象の眼の屈折特徴を正確に判定するために、本発明による装置は、第1及び第2の屈折要素の第1及び第2の光軸が下方に傾斜している斜方視検査構成を前記両眼屈折検査ユニットが提示するようなものである。したがって、近方視及び/又は中間視における屈折特徴を判定するための満足のいく人間工学的条件が提供される。
【0016】
本発明のさらなる目的は、一方の構成から他方の構成に切り替える簡単且つ迅速な方法を用いて、水平視構成及び斜方視構成の両方で対象の眼の両眼屈折特徴を精度よく判定することを可能にする装置を提供することである。これにより、特に、近方視又は中間視から遠方視に及び遠方視から近方視又は中間視に状態を変更する簡単な方法を用いて、遠方視並びに近方視及び/又は中間視状態における眼を検査することが可能となる。
【0017】
この目的のために、前記表示システムは、好ましくは、前記両眼屈折検査ユニットと一体となるように両眼屈折検査ユニットに機械的に連結される。
【0018】
さらに、前記両眼屈折検査ユニットは、有利には、少なくとも2つの検査構成:前記第1及び第2の光軸が水平方向に延びる第1の位置に第1及び第2の光屈折要素が位置決めされる水平視検査構成と、前記第1の位置と比較して第1及び第2の光屈折要素が傾斜しており、それにより、前記第1及び第2の光軸が下方に傾斜している斜方視検査構成との間で移動可能である。
【0019】
好ましくは、本発明による前記検眼装置では、前記両眼屈折検査ユニットは、第1及び第2の光屈折要素の平均平面に平行な水平方向の回転軸を中心に全体として回転移動可能であり、前記水平方向の回転軸は、対象の眼が屈折検査要素を通して見るとき、対象の一方の眼の回転中心が位置する場所にある所定の点を通る。
【0020】
したがって、前記第1及び第2の検査画像によって放射された光の光路との対象の眼の位置合わせを2回確認する必要なしに水平視検査から斜方視検査に容易に切り替わることが可能である。
【0021】
本発明による装置の他の有益且つ非限定的な特徴によれば、
- 前記表示システム内の前記第1及び第2の検査画像の位置は、前記第1及び第2の検査画像が前記第1又は第2の光路と位置合わせされるように調整可能であり、
- 前記装置は、対象の眼に向けられたカメラ又は視線追跡装置を少なくとも含む、対象の各眼に対する前記第1及び第2の光路の位置合わせを確認するための位置合わせ検証装置を含み、
- 対象の視覚の鮮明度の大きさをこの大きさの直接測定で判定するために、前記装置の前記表示システムは、対象に向けて前方若しくは後方に又は対象から離れて移動され得、
- 前記表示システムによって提供される前記第1及び第2の検査画像は、対象の眼の一方で前記検査画像の各々を視認する対象によって3次元で見られるように適合された、複数の立体周縁画像成分を有する、近方視又は中間視で行われる現実の活動の画像を含み、
- 前記複数の立体画像成分の少なくとも2つの画像成分は、異なる両眼視差値で表示され、
- 前記表示システムは、前記第1及び第2の検査画像が両方とも生成される単一の表示領域と、前記第1又は第2の光路に沿って前記第1及び第2の検査画像を第1又は第2の光屈折要素に選択的に伝達するための画像選択ユニットとを含み、
- 前記画像選択ユニットは、所定の波長範囲に含まれる波長を有する光を選択的に透過及び/若しくは反射するように適合されたフィルタ又は所定の軸に沿って配向された偏光を有する光を選択的に透過及び/若しくは反射するように適合された偏光子を含み、この場合、前記表示システムは、前記第1及び第2の検査画像を前記表示領域において好ましくは同時に生成し、
- 前記表示システムは、前記第1及び第2の検査画像を前記表示領域において同時に生成し、及び前記画像選択ユニットは、複数のマイクロレンズを含み、マイクロレンズの各々は、単一の表示領域の一部にマッピングされ、且つ単一の表示領域のこの部分によって放射された光を少なくとも2つの異なる方向に伝達するように適合され、
- 前記表示システムは、前記第1及び第2の検査画像を前記単一の表示領域において交互に生成し、
- 前記画像選択ユニットは、2つのシャッタを含み、2つのシャッタの各々は、前記第1及び第2の光路の一方に関連付けられ、且つ2つの状態:各シャッタが、対応する第1又は第2の光路内の光の伝播を選択的に遮断する作動状態と、各シャッタが、同じ第1又は第2の光路内の光の伝播を選択的に可能にする作動停止状態とを提示し、
- 前記装置は、両方のシャッタの状態変化と、第1及び第2の検査画像の生成とを同期させるために設けられた同期装置を含み、
- 各シャッタは、表示システム及び/又は屈折検査ユニットに関連付けられた電子シャッタを含み、
- 前記表示システムは、前記第1及び第2の検査画像を2つの分離された表示領域において生成し、前記検眼装置は、前記第1及び第2の経路に沿って前記第1及び第2の検査画像を前記第1及び第2の眼に伝達する光伝達ユニットを含み、
- 前記光伝達ユニットは、前記第1及び第2の検査画像を前方で交互に回転させる偏光子回転子を含み、
- 前記光伝達ユニットは、前記第1及び第2の光路間の光の透過を遮断する壁を含み、
- 前記光伝達ユニットは、可動偏光子又は可変偏光子を含み、
- 前記表示システムは、2つの別個の画面を含み、前記別個の画面の各々は、前記第1及び第2の検査画像の一方を表示し、
- 前記光伝達ユニットは、ビームスプリッタを含み、
- 前記表示システムは、
- 2つの別個のマイクロディスプレイであって、前記別個のマイクロディスプレイの各々は、前記第1及び第2の検査画像の一方を表示する、2つの別個のマイクロディスプレイ、又は
- 前記2つの分離された表示領域を提供する1つの画面であって、前記分離された表示領域の各々は、前記第1及び第2の検査画像の一方を表示する、1つの画面
を含み、
- 前記光伝達ユニットは、前記分離された表示領域の一方で放射された光を対象の眼の一方に向けてそれぞれ伝達する2つの光ガイドを含む。
【0022】
添付図面を参照する以下の説明により、本発明を構成するもの及びそれを達成し得る方法が明らかになるであろう。本発明は、図面に示される実施形態に限定されない。したがって、請求項で言及された特徴に参照記号が続く場合、そのような記号は、請求項の理解度を高める目的のためにのみ含まれ、請求項の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】対象の眼の両眼検査のための斜方視構成における、本発明による検眼装置の第1の実施形態の概略図である。
【
図2】対象の眼の両眼検査のための水平視構成における、
図1の検眼装置の概略図である。
【
図3】対象の眼の両眼検査のための斜方視構成における、本発明による検眼装置の第2の実施形態の概略図である。
【
図4】屈折検査ユニットを通る水平方向の注視の位置における対象の眼の前の、
図1又は
図2の検眼装置のための屈折検査ユニットの概略図である。
【
図5】屈折検査ユニットの中間位置における対象の眼の前の、
図1又は
図2の検眼装置のための屈折検査ユニットの概略図である。
【
図6】屈折検査ユニットを通る斜めの注視の位置における対象の眼の前の、
図1又は
図2の検眼装置のための屈折検査ユニットの概略図である。
【
図7】特に対象の一方の眼の回転中心である所定の点を通る水平方向の回転軸を中心に旋回するように構成される、
図1又は
図2の検眼装置のための屈折検査ユニットの異なる実施例の概略図である。
【
図8】特に対象の一方の眼の回転中心である所定の点を通る水平方向の回転軸を中心に旋回するように構成される、
図1又は
図2の検眼装置のための屈折検査ユニットの異なる実施例の概略図である。
【
図9】
図1又は
図2の検眼装置のための表示システムの第1の実施例の概略上面図である。
【
図10】
図1又は
図2の検眼装置のための表示システムの第2の実施例の概略上面図である。
【
図11】
図9に示す表示システムの部分概略図である。
【
図12】
図9に示す表示システムの部分概略図である。
【
図13】
図9に示す表示システムの部分概略図である。
【
図14】
図1又は
図2の検眼装置のための表示システムの第3の実施例の画面の概略正面図である。
【
図16】検眼装置の第4の実施例における表示システムの画面及び2つのシャッタの同期データの概略図である。
【
図17】
図1又は
図2の検眼装置のための表示システムの前記第4の実施例の概略上面図である。
【
図18】
図1又は
図2の検眼装置の表示システムによって表示された検査画像の例である。
【
図19】
図18に示す画像を提示されたときに対象が両眼視で見る画像の例である。
【
図20】
図1又は
図2の検眼装置の表示システムによって表示された検査画像の例である。
【
図21】
図20に示す画像を提示されたときに対象が両眼視で見る画像の例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1、
図2、
図3及び
図13は、両眼検眼装置1の2つの実施形態、両眼方式で対象の第1の眼E1及び/又は第2の眼E2の少なくとも1つの屈折特徴を判定するための2つの主要な要素を斜視図で概略的に示す。
【0025】
この両眼での眼の屈折特徴の判定は、対象が両眼E1、E2を開いており、且つ遮るものがない状態で実施される両眼測定に基づく。
【0026】
より正確には、前記両眼測定中、対象の各眼E1、E2に検査画像が提供される。両眼に提供される検査画像は、対象の脳による2つの検査画像の融合が行われ得るように構成される。好ましくは、2つの検査画像は、対象に対して少なくとも部分的に3次元の表現I1、I2(
図19及び
図21)を提供する立体画像である。
【0027】
この目的を達成するために、各検査画像は、対象の対応する眼と正確に位置合わせされるように構成される。
【0028】
本発明による検眼装置1、2は、第1の光軸OA1に沿って異なる視力矯正度数を提供するように適合された第1の光屈折要素11と、第2の光軸OA2に沿って異なる視力矯正度数を提供するように適合された第2の光屈折要素12とを備えた両眼屈折検査ユニット10を含む(
図1~
図6及び
図11)。
【0029】
前記第1の光屈折要素11は、対象の第1の眼E1に第1の矯正度数を提供するように構成され、及び前記第2の光屈折要素12は、対象の第2の眼E2に第2の矯正度数を提供するように構成される。
【0030】
矯正度数とは、球面度数、円柱度数及び円柱軸、プリズム度数及びプリズム軸など、対象の眼の屈折異常を矯正することを可能にするジオプトリ度数を意味する。
【0031】
検眼装置1及び2は、第1及び第2の検査画像を提供するための表示システム20であって、第1の検査画像は、第1の光路OP1に沿って第1の光屈折要素11に伝達され、第2の検査画像は、第2の光路OP2に沿って第2の光屈折要素12に伝達される、表示システム20も含む(
図9及び
図11)。
【0032】
したがって、画像表示システム20は、対象の第1の眼E1に第1の検査画像I11、I21を提供し、且つ同時に対象の第2の眼E2に第2の検査画像I12、I22を提供するように構成され、第2の検査画像は、第1の検査画像と異なる。
【0033】
第1の検査画像I11、I21は、第1の光屈折要素11を通して対象の第1の眼E1によって見られ、第2の検査画像I12、I22は、第2の光屈折要素12を通して対象の第2の眼E2によって見られる。
【0034】
注目すべき方法で、前記第1及び第2の検査画像は、水平方向における少なくとも約8°の視野にわたり、1分角よりも小さい細部を設けられ、前記第1及び第2の光路OP1、OP2は、25~100センチメートルに含まれる長さを有し、近方視及び/又は中間視における対象の眼を検査することを可能にする。
【0035】
第1の光屈折要素11及び第2の光屈折要素12の各々は、調整可能な屈折力特徴を有するか又は光学構成要素の回転若しくは並進によって屈折力を調整することを可能にする、レンズ若しくはミラー若しくはプリズム又はそのような光学構成要素のセットを含む。
【0036】
各光路の長さは、対象の眼に向けられるように意図された、レンズ、プリズム又は光屈折要素の光学構成要素のセットの外面に表示される検査画像から測定される。実際には、光路の長さは、例えば、ここでは、光が画面から光学構成要素のセットの外面に伝達される距離に等しい。
【0037】
添付図面に示し、以下に説明する検眼装置1、2の実施形態では、前記第1の光屈折要素11及び前記第2の光屈折要素12の各々は、可変度数を有するレンズを含む。レンズは、ここでは、調整可能な形状を有する変形可能な液体レンズを含む。したがって、前述の光軸OA1、OA2は、対応するレンズの光軸と一致する。
【0038】
代替として又は加えて、光屈折要素は、異なる光学力を有する非変形レンズの集合と、これらのレンズのいくつかを選択して対象がそれを通して見ることができるレンズのセットを形成するためにそれらをグループ化することを可能にする機械システムとを含み得る。この最後の場合において、レンズのセットの屈折力を調整するために、レンズのセットの1つ又は複数のレンズが、屈折検査ユニットに格納された他のレンズによって置換される。したがって、前述の光軸は、対象の眼の前に配置されたレンズの光軸と一致する。
【0039】
特に、各光屈折要素11、12は、可変球面度数を有するレンズと、可変円柱度数及び可変円柱軸を有する光学構成要素とを含み得る。各光屈折要素11、12は、対象の眼にプリズム度数を提供するように適合された光学構成要素も含み得る。結果として得られる光学構成要素のセットは、レンズ11A、12Aによって図に概略的に示されている。
【0040】
光屈折要素11、12の各々は、対象の一方の眼2、3の前に、この眼に近接して配置されるように意図されている。光屈折要素11、12の各々は、例えば、眼から、5~25ミリメートルに含まれる距離に配置される。例えば、この距離は、眼に向けられた光屈折要素の光学構成要素11A、12Aのセットの外面と光屈折要素の前に置かれた眼との間、光学構成要素11A、12Aのセットの外面の曲率頂点と眼の角膜の曲率頂点との間で測定される。
【0041】
対象の眼E1、E2の各々は、前記表示システム20によって表示された前記第1又は第2の検査画像I11、I12;I21、I22を、光屈折要素11、12の光学構成要素のセットを通して、レンズを通して若しくはレンズのセットを通して又は代替的な実装形態では光屈折要素のミラーへの反射によって見ることができる。
【0042】
以下では、各光屈折要素が、可変球面度数を有するレンズと、可変円柱度数及び可変円柱軸を有する光学構成要素と、任意選択的に、参照記号11A、12Aを有するレンズによって図に示す、プリズムとを備えた光学構成要素11A、12Aのセットを含む場合の検眼装置について説明する。
【0043】
光学セットは、ジオプトリ単位で表現される、球面屈折力に対応する全体の球面度数Sを有する。光学セットは、ジオプトリ単位で表現される円柱度数Cと、角度Aで示す向きとを有する。対応する光屈折要素11、12によって提供される第1の屈折矯正及び第2の屈折矯正の各々は、これら3つの屈折力パラメータS、C及びAの値によって特徴付けられ得る。
【0044】
前記光屈折要素11、12は、水平である長手方向軸H(
図1~
図3)に沿って光屈折要素の上で光屈折要素間に延びる共通の支持体13上に取り付けられる。
【0045】
この支持体13は、テーブル上又は地上にある全体的な支持構造(図示しないか又は図に部分的にのみ示す)に連結される。
【0046】
後に説明するように、光屈折要素11、12の各々は、前記長手方向軸Hに垂直な軸V1、V2を中心に回転移動可能となるように、支持体13上に取り付けられる。第1及び第2の光屈折要素11、12の平均平面MPは、これらの軸V1、V2を通る(
図10)。
図10に示すように、光屈折要素のこの可動性により、近方視及び/又は中間視状態における眼の輻輳を考慮に入れて、対象の眼との光軸OA1、OA2の位置合わせを調整することが可能となる。
【0047】
好ましくは、前記光屈折要素の一方が回転移動可能である各軸V1、V2は、対象の眼が屈折検査要素を通して見るとき、対象の対応する眼の回転中心が位置する場所にある所定の点を通る(図示せず)。これにより、遠方視検査(輻輳なし)から近方視及び/若しくは中間視検査に又は近方視及び/若しくは中間視検査から遠方視検査に移行するとき、2つの光屈折要素間の距離を修正せずに光屈折要素の中心に注視を保つことが可能となる。
【0048】
前記表示システム20は、前記第1及び第2の検査画像を提供するように適合され、前記第1及び第2の検査画像の例は、以下で、近視及び/又は中間視状態において、水平方向における少なくとも8°の視野にわたり、1分角よりも小さい細部を設けられる。
【0049】
ここでは、近方視及び中間視状態が、光屈折要素11、12と表示システム20によって表示される検査画像との間の、25~100センチメートルに含まれる、光路に対応する距離に光屈折要素と眼との間の距離を加えた距離をおいて配置された目標の見え方を包含することが考えられる。
【0050】
この距離は、固定され得るか又は可変であり得る。表示システムによって表示される検査画像と光屈折要素との間の距離の変化は、表示システム全体と屈折検査ユニットとの間の距離を変化させるか、又は表示システム20内のミラーなどの可動光学構成要素を使用することによって得ることができる。
【0051】
表示システムによって表示される検査画像と光屈折要素との間の距離が可変である場合、この距離は、例えば25cm~6若しくは8メートル又は無限大の、より広い範囲にわたって変化させることができる。その後、遠方視状態又は近方視若しくは中間視状態における対象の視力を検査するために、本発明による検眼装置が使用され得る。
【0052】
1分角よりも小さい細部を有する検査画像により、10分の10(10/10)又は0logMARよりも良好な、理想的には15/10(-0.18logMAR)又はさらに20/10(-0.3logMAR)までの、対象の視力を検査することが可能となる。
【0053】
このような検査画像を得るために、前記表示システムは、15/10又は20/10の視力を測定するために画像の表示を可能にする大きさを有する、例えば80~20マイクロメートルに含まれる大きさを有する画素を備えた少なくとも1つの画面を含み得る。
【0054】
水平方向における少なくとも8°の視野の使用は、より容易な遠近調節及び融合を確実にし、近方視状態をより良好に制御しながら対象の快適性を向上させる。好ましくは、表示システム20の視野は、垂直方向及び水平方向において8°である。
【0055】
このような検査画像を得るために、前記表示システムは、かかる視野を与えるように適合された寸法を有する、各検査画像に対する表示領域を備えた少なくとも1つの画面を含み得る。40センチメートル(cm)の視距離に対する少なくとも56ミリメートルの寸法により、8°の視野が得られる。好ましくは、35~147ミリメートルに含まれる寸法を有する画面は、それぞれ25~105センチメートルに含まれる視距離に対して使用され得る。
【0056】
有利には、ここでは、前記屈折検査ユニットは、第1及び第2の屈折要素の第1及び第2の光軸が下方に傾斜している斜方視検査構成を提示する。
【0057】
例えば、光軸は、水平面に対して角度ADだけ傾斜している(
図2及び
図3)。この角度ADは、好ましくは、10~50度に含まれる。これにより、近方視状態における対象の眼を検査するとき、人間工学に基づく近方視姿勢を対象にとらせることが可能となる。この人間工学に基づく近方視姿勢では、対象は、光屈折要素を通して下方を注視する。
【0058】
この人間工学に基づく近方視姿勢は、例えば、対象の自然な読書姿勢に近い。
【0059】
近方視について判定された屈折特徴の値は、対象がそのような人間工学的位置に置かれたときにより正確になる。実際に、対象の遠近調節及び輻輳は、読書などの自然な近方視状況における遠近調節及び輻輳に近い。
【0060】
本発明による検眼装置1、2のこの斜方視検査構成は、異なる方式で得られ得る。
【0061】
図1及び
図2の第1の好ましい実施形態では、前記表示システム20は、両眼屈折検査ユニット10と一体となるように、前記両眼屈折検査ユニット10に機械的に連結される。
【0062】
換言すれば、前記表示システム20及び前記両眼屈折検査ユニット10は、相対移動の可能性が全くなく、一緒にのみ移動できるように取り付けられる。
【0063】
この取り付けは、永久的であり得る。代替的に、表示システム20及び両眼屈折検査ユニット10は、視覚検査を実施する前に表示システム20と両眼屈折検査ユニット10との相対位置を修正するために、一時的に結合解除され得る。
【0064】
例えば、以下に説明するように、いくつかの実施形態では、前記表示システム20と前記屈折検査ユニット10との間の距離は、修正され得る一方、前記表示システム20及び前記屈折検査ユニット10は、一体として一緒にのみ旋回することができる。
【0065】
図1及び
図2に示し、以下により詳細に説明するように、表示システム20は、レール26上に取り付けられたボックス21内に収容される。前記レール26は、光屈折要素11、12のための前記共通の支持体13に取り付けられる。レール26は、前記光屈折要素11、12の平均平面に対して全体的に垂直に延びる。
【0066】
図3の第2の実施形態では、前記表示システム20は、両眼屈折検査ユニット10とは独立しており、別個である。表示システム20は、光路OP1、OP2が水平面に対して前記角度ADだけ傾斜している固定された位置において、テーブルなどの水平面上に配置される。第2の実施形態の表示システム20は、例えば、表示システム20がレール上に取り付けられないが、水平面上に配置されることを除いて、第1の実施形態の表示システムと同様である。
【0067】
両方の実施形態では、前記両眼屈折検査ユニット10は、第1の光屈折要素11及び第2の光屈折要素12の平均平面に平行な水平方向の回転軸を中心に全体として回転移動可能である。第1の好ましい実施形態の場合、前記表示システム20は、両眼屈折検査ユニット10と一体に回転する。
【0068】
さらに、両方の実施形態では、前記両眼屈折検査ユニット10は、好ましくは、少なくとも2つの検査構成:前記第1の光軸OA1及び前記第2の光軸OA2が水平方向に延びる第1の位置に第1の光屈折要素11及び第2の光屈折要素12が位置決めされる水平視検査構成と、第1の位置と比較して第1の光屈折要素11及び第2の光屈折要素12が傾斜しており、それにより、前記第1の光軸OA1及び前記第2の光軸OA2が下方に傾斜している斜方視検査構成との間で移動可能である。
【0069】
斜方視検査構成は、好ましくは、近方視状態における対象の眼の屈折特徴を判定するために使用される。
【0070】
水平視検査構成は、近方視及び/又は中間視状態における眼の屈折特徴を判定するために使用され得るが、好ましくは、遠方視状態における眼の屈折特徴を判定するために使用される。
【0071】
遠方視状態において視覚目標を表示するために、ここで説明する第1の実施形態の表示システム20は、前述したように、屈折検査ユニットから可変の距離をおいて検査画像を表示する光学構成要素を有し得る。代替的に、ここで説明する、近方視及び/又は中間視検査に使用される表示システム20は、取り外し可能な表示ユニットであり得る。次に、表示システム20が屈折検査ユニット10から取り外され、遠方視状態において目標を表示するために、追加の表示装置が使用され得る。
【0072】
第2の実施形態の場合、遠方視状態において目標を表示するために、追加の表示装置が使用され得る。
【0073】
第1の可能性によれば、屈折検査ユニット10の前記水平方向の回転軸は、前記光屈折要素11、12の上方で、前記光屈折要素11、12の共通の支持体13を通過する。この水平方向の回転軸は、例えば、屈折検査ユニットの支持体13の長手方向軸Hと一致する。この場合、両眼屈折検査ユニット10は、垂直方向に沿って並進移動可能でもある。
【0074】
この場合の対象の眼の前の光屈折ユニット10の動きが
図4~
図6に示されている。
【0075】
屈折検査ユニットの水平視構成(
図4)から斜方視構成(
図6)に移行するとき、屈折検査ユニット10を、対象の眼E1、E2向けて旋回させ(
図5)、その後、垂直下方に移動させる。
図5の光屈折要素11は、下方への並進なしに屈折検査ユニットを中間視角度で旋回させる、中間視位置に示されている。
【0076】
屈折検査ユニット10の下方への移動は、垂直方向に対する屈折検査ユニットの最終傾斜角A3と、光屈折要素11、12の光軸OA1と屈折検査ユニット10の水平方向の回転軸Hとの間の距離Lと、眼の回転中心ERC1と対応する光屈折要素11の光学構成要素のセットの中心との間の距離ERCLens(
図4及び
図5)とに応じた垂直距離D(
図5)に沿った移動である。ここで、傾斜角A3は、
図2及び
図3で定められた角度ADに対応する。
【0077】
距離Dは、
図5に示すように、dZ1とdZ2の合計に等しい。
【0078】
距離dZ1は、光屈折要素11を角度A3だけ旋回させたときの光屈折要素11の光学構成要素11A、12Aのセットの中心と、光屈折要素11が垂直に配向されたときの光屈折要素11の光学構成要素11A、12Aのセットの中心との間の垂直距離である。
【0079】
距離dZ2は、光屈折要素11が垂直に配向されたときの光屈折要素11の光学構成要素11A、12Aのセットの中心と、対象の注視方向を角度A3だけ下方に傾斜させたときのこの対応する眼の注視方向との間の垂直距離である。
【0080】
距離dZ1及びdZ2は、以下の式:
dZ1=L*(sin(A3))2
dZ2=ERClens*sin(A3)
で計算され得る。
【0081】
次に、屈折検査ユニットを、垂直方向に沿って距離D=L*(sin(A3))2+ERClens*sin(A3)だけ下方に移動させる。
【0082】
屈折検査ユニットはまた、好ましくは、眼と、光屈折要素11、12の光学構成要素のセットとの間の同様の距離を維持するために、並進dx=L*sin(A3)-ERClens(1-cos(A3))の軸xに沿って移動させるべきである。
【0083】
この計算に基づいて、屈折検査ユニット10の自動調整を行うことができる。電動式屈折検査ユニットを用いて、屈折検査ユニット10の位置を自動的に調整するように検眼装置をプログラムすることができる。
【0084】
近方視及び/又は中間視状態において、屈折検査ユニット10が傾斜構成で使用される場合、好ましくは、光屈折要素11、12間の水平距離PDが短縮される。短縮量dPDは、dPD=PD*(1-Dist/(Dist+ERCLens))であり、Distは、表示された検査画像と、光屈折要素の光学構成要素のセットの光学中心との間の距離であり、ERCLensは、眼の回転中心と、光屈折要素の光学構成要素のセットの中心との間の距離(典型的には25.5~27ミリメートル(mm))である。
【0085】
この計算に基づいて、近方視及び/又は中間視状態における眼の輻輳を考慮に入れて、屈折検査ユニット10の2つの光屈折要素11、12間の水平距離の自動調整を行うことができる。
【0086】
好ましくは、前記両眼屈折検査ユニット10が回転移動可能である前記水平方向の回転軸は、対象の眼が屈折検査要素を通して見るとき、対象の一方の眼E1の回転中心ERC1が位置する場所にある所定の点を通る(
図7及び
図8)。好ましくは、前述のように、各光屈折要素が旋回し得る軸V1、V2も、対象の眼が屈折検査要素を通して見るとき、対象の一方の眼E1の回転中心ERC1が位置する場所にある前記所定の点を通る。
【0087】
実際には、前記両眼屈折検査ユニット10が回転移動可能である前記水平方向の回転軸は、好ましくは、対象の眼が屈折検査要素11、12を通して見るとき、対象の眼E1、E2の回転中心ERC1が位置する場所にある2つの所定の点を通る。
【0088】
2つの可能な構造が
図7及び
図8に概略的に示されている。これらの図の各々は、対象の眼O1の前の両眼屈折検査ユニット10の概略側面図を示している。
【0089】
図7の第1の構造では、両眼屈折検査ユニット10には、側方に延びて円形溝17内に受け入れられるピン16が設けられる。この円形溝17は、例えば、両眼屈折検査ユニット10の前記支持構造の垂直パネルに設けられる。円形溝17は、対象の眼E1、E2の回転中心の予測位置を通る水平方向軸に属する点を中心とする。これらの回転中心の位置は、例えば、対象の頭部、例えば顎及び前頭部を受け入れるための装置によって制御される。この配置により、眼E1、E2の回転中心を通る前記水平方向軸を中心に両眼屈折検査ユニット10を旋回させ得る。
図7は、水平視検査構成における両眼屈折検査ユニット10を実線で示している。
図7は、斜方視検査構成を破線で示している。ここでは、屈折検査ユニットを30度回転させており、水平方向よりも下方に30度傾斜した、下向きの注視方向が対象に提供されている。
【0090】
図8の第2の構造では、屈折検査ユニット10は、屈折検査ユニット10を回転板19に連結するアーム18と一体である。回転板19は、例えば、屈折検査ユニット10の前記支持構造の一部として設けられる。回転板19は、対象の眼E1、E2の回転中心の予測位置を通る水平方向軸を中心に回転する。これらの回転中心の位置は、例えば、対象の頭部、例えば顎及び前頭部を受け入れるための装置によって制御される。
【0091】
この配置により、眼E1、E2の回転中心ERC1を通る前記水平方向軸を中心に光屈折ユニットを旋回させ得る。
図8は、水平視検査構成における屈折検査ユニット10を実線で示している。
図8は、斜方視検査構成を破線で示している。ここでは、屈折検査ユニットを30度回転させており、水平方向よりも下方に30度傾斜した、下向きの注視方向が対象に与えられている。
【0092】
構造のこれらの例のいずれかにより、眼が可変レンズなどの各光屈折要素の光学構成要素と位置合わせされたままであるため、屈折検査ユニットの水平視構成から斜方視構成への移行が非常に容易である。追加の調整は必要ない。
【0093】
さらに、表示システム20が屈折検査ユニット10と一体に回転する場合、検眼装置のこれらの2つの部分の相対位置は、固定されており、さらなる調整も必要ない。
【0094】
前述のように、眼の屈折特徴の両眼測定が正確であるように、表示システム20によって対象の眼に提供される2つの検査画像を、できるだけ完全に重なって対象に見えるように正確に位置決めする必要がある。
【0095】
2つの光屈折要素11、12の可動性により、対象の瞳孔間距離と、光学構成要素のこれらのセットの向きとに応じて、近方視及び/又は中間視状態における対象の輻輳に応じて、光屈折要素11、12の光学構成要素のセット間の距離を調整するために、平均平面内で且つ軸V1、V2を中心に光屈折要素11、12を移動させることが可能となる(
図4、
図11)。
【0096】
さらに、屈折検査ユニット10と表示システム20とが互いに一体である第1の実施形態では、検眼装置1の2つの部分の位置合わせは、固定されるとともに正確である。第2の実施形態の場合、この位置合わせは、屈折検査ユニット10又は表示システム20の一方が移動するたびに調整される。
【0097】
対象の眼の前における検眼装置1、2の一部のこれらの可能な正確な位置決めに加えて、前記表示システム内の前記第1及び第2の検査画像の位置は、前記第1及び第2の検査画像が前記第1又は第2の光路と位置合わせされるように調整可能である。
【0098】
実際には、前記第1及び第2の検査画像は、後により詳細に説明するように、例えば1つ又は2つの画面上に提供される。
【0099】
各画面は、プロジェクタに関連付けられた能動画面又は受動画面を含み得る。
【0100】
したがって、能動画面は、画素を含むLCD画面、OLED画面又はマイクロディスプレイを含み得る。受動画面は、検査画像が投影され得る表面も含み得る。受動画面は、例えば、ホログラフィックフィルムを含み得る。
【0101】
次いで、各検査画像の位置は、2つの検査画像と対象の眼に対する検査画像の正確な相対的位置決めを確実にするために、画面上で画素ごとに両方向に調整され得る。その後、検査画像は、対象の脳による適切な融合を確実にするために、正確に重ね合わされ得る。
【0102】
この調整は、各対象に対して実施され得るか、又は各対象に対して較正ステップを実施する必要なしに、検眼装置を使用する前のこの較正ステップで実施され得る。
【0103】
検眼装置1、2は、好ましくは、対象の眼に向けられたカメラ又は視線追跡装置を少なくとも含む、対象の各眼E1、E2に対する前記第1の光路OP1及び前記第2の光路OP2の位置合わせを確認するための位置合わせ検証装置も含む。
【0104】
カメラは、好ましくは、瞳孔位置などの眼の特徴を容易に捉えるために近赤外線カメラである。
【0105】
特に、位置合わせ検証装置は、位置合わせを検証するために、対象の前に、例えば一方の画面の中央の前に配置され、眼の検査時に取り外されるように適合された、(
図13に示すような)格納式カメラ28を含み得る。実際に、カメラは、作動時に、眼の位置合わせを確認するときの視差誤差を避けるために、検査画像の中心に近接する光軸を有することが好ましい。不使用時に、カメラは、画面によって放射される光の光路から退避させる。
【0106】
位置合わせ検証装置は、視線追跡装置又はセンサも含み得る。視線追跡装置は、例えば、光学構成要素11A、12Aのセットに近接する、眼の近傍の屈折検査ユニット10上に固定され得る。センサは、表示システム20の画面の1つに一体化されるか又は表示システム20に追加され得る。視線追跡装置又はセンサによって生成されたデータは、眼の向き及び注視方向が推定され得る指標を与え得る。センサからのデータは、眼と対応する検査画像又は画面との間の距離を決定するためにも使用され得る。位置合わせ検証装置は、屈折検査ユニットの傾きを測定するために屈折検査ユニットに取り付けられたセンサも含み得る。
【0107】
眼の位置合わせ検証は、瞳孔中心の位置と屈折検査ユニット光学系の中心又は光屈折要素11、12の各々の光軸とを比較することによって行うことができる。光学系の光軸又は中心及び瞳孔の位置は、例えば、光学系の丸みを帯びた縁部及び瞳孔の円形状を検出することにより、画像処理から決定することができる。代替的に、屈折検査ユニット光学系の丸みを帯びた縁部を検出する代わりに、既知のパターンを使用することができ、例えば光屈折検査要素のレンズの中心に印刷された小さい×印を識別する。
【0108】
最後に、カメラは、近方視距離及び/又は中間視距離を決定するためにも使用され得る。既知の大きさを有する屈折検査ユニットの要素(印字、フォロプタ光学系の端部など)は、カメラによって撮影された画像上で識別され得る。したがって、カメラから屈折検査ユニット10までの距離は、これらの要素の画像の画素サイズから導出され得る。
【0109】
ここで、画像表示システム20に関して、考慮される検眼装置の実施形態にかかわらず、画像表示システム20は、以下で詳細に説明するように、前記第1及び第2の画像を表示するための少なくとも1つの画面及び1つの領域を含む。
【0110】
より正確には、
図9~
図16に示すように、表示システム20の異なる実施例を以下に説明する。一般に、ここで説明する異なる実施例では、2つの検査画像は、
図9の場合と同様に、2つの異なる別個の画面S1、S2上に生成されるか、又は例えば
図10、
図14、
図15及び
図17に示すように単一の画面S0上に生成される。
【0111】
さらに、2つの検査画像は、2つの異なる別個の画面S1、S2(
図9)若しくは単一の画面S0(
図10)に属する、2つの異なる分離された表示領域において生成され得るか、又は単一の画面S0の単一の表示領域において生成され得る(
図16、
図15及び
図17)。
【0112】
一般に、前記表示システム20が2つの分離された表示領域において前記第1及び第2の検査画像I11、I12、I21、I22を生成する場合、前記検眼装置1、2は、前記第1の経路OP1及び前記第2の経路OP2に沿って前記第1及び第2の画像を前記第1の眼E1及び前記第2の眼E2に伝達する光伝達ユニットを含む。
【0113】
図9に示すように、異なる別個の画面S1、S2によって各検査画像が生成される場合、前記光伝達ユニットは、ビームスプリッタ及び/又は可動偏光子及び/又は切り替え可能な偏光子及び/又は波長フィルタを含み得る。
【0114】
図9に示す表示システム20の第1の実施例では、表示システム20の光学構成要素は、前記ボックス21内に収容される。
【0115】
ボックス21は、2つの画面S1、S2を含む。このボックス21は、対象が各画面S1、S2の全てを見ることを可能にする大きい開口部22を設けられる。
【0116】
図9の第1の実施例では、2つの画面S1、S2は、互いに対して垂直に配向され、前記光伝達ユニットはビームスプリッタ31を含む。
【0117】
ビームスプリッタ31は、好ましくは、偏光依存ビームスプリッタであり、画面S1、S2は、好ましくは、偏光を放射する。
【0118】
偏光依存ビームスプリッタ31は、任意の偏光の入射ビームを2つの偏光ビームに分割する。一方は第1の直線偏光で透過され、他方は第1の直線偏光に垂直な第2の直線偏光で反射される。入射ビームは、ビームスプリッタの第1又は第2の直線偏光に沿って既に直線偏光されている場合、完全に透過又は反射される。
【0119】
2つの画面によって放射された光の偏光は、ここでは、
図9に示すように、ビームスプリッタの第1の直線偏光及び第2の直線偏光に直交し、これらに対応する。さらに、屈折検査ユニット10の光屈折要素11、12は、好ましくは、対応する画面によって放射された光の偏光方向に各々対応する垂直方向に配向された偏光子を含む。実際には、それは、2つの直交偏光子を含み、偏光子の各々は、対象の眼E1、E2の一方の前に配置される。
【0120】
偏光子は、所定の直線偏光を有する光のみが偏光子を通過することを可能にするフィルタとして機能する。光の他の全ての偏光は、フィルタで除去される。直交偏光子又は垂直方向に配向された偏光子とは、2つの偏光子によって許容される偏光が垂直方向に配向されることを意味する。
【0121】
図9に概略的に示すように、第1の画面S1によって放射された光は、偏光を変えずにビームスプリッタ31によって第1の光路OP1上を伝送される。光は、この第1の光屈折要素11の偏光に平行な偏光で第1の光屈折要素11に到達し、したがって光屈折要素11を通して対象の第1の眼E1に透過される。
【0122】
第2の画面S2から放射された光は、偏光を変えずにビームスプリッタ31によって第2の光路OP2上で反射される。光は、この第2の光屈折要素12の偏光に平行な偏光(第1の光屈折要素11の偏光に直交する)で第2の光屈折要素11に到達し、したがって光屈折要素12を通して対象の第2の眼E2に透過される。
【0123】
第1及び第2の光路上を伝達される光の直交偏光と、光屈折要素の対応する偏光とにより、対象の各眼は、表示システム20によって表示される2つの画像の一方のみを見る。さらに、眼に透過される光の強度は、偏光無依存ビームスプリッタと無偏光画面とを用いて同じ設定が使用された場合よりも高くなる。
【0124】
実際には、この第1の実施例は、
図11~
図13に示すように実現され得る。
【0125】
対象が両眼視で検査画像を見ることができるように、対象の脳は、2つの眼E1、E2が見る2つの検査画像を合成しなければならない。この目的のために、前述のように、画面の位置及び向き、画面上の検査画像の位置並びにビームスプリッタの位置を良好に調整しなければならない。
【0126】
図11、
図12及び
図13に示す機械設計により、異なる要素の相対位置を精密に制御することが可能となる。
【0127】
表示システム20は、ここでは、板23に垂直な2つの受け入れスロット24が取り付けられた正方形又は矩形の板23を含む。
【0128】
2つの受け入れスロット24は、板23の隅部に直角に配向される。2つの受け入れスロット24は、画面S1を受け入れるように適合され、例えばスマートフォンを受け入れるようにそれぞれ適合される。スロット24は、画面が固定位置で止められるように、画面に密着するように適合される。前記隅部を通る板の対角線において、ビームスプリッタは、板に垂直で且つ各画面に対して45°をなす、固定位置でビームスプリッタを止める溝25内に受け入れられる。
【0129】
受け入れスロット24及び溝25の各々は、例えば画面又はビームスプリッタに孔を開けるための少なくとも1つの締め付けねじを含む。
【0130】
図13に示すように、固定された画面及びビームスプリッタを備えた板23は、レール26上に取り付けられたボックス21内に収容される。ボックス21は、レール26に沿った異なる位置における締め付けねじ27によって固定され得る。
【0131】
図1、
図2及び
図13に示すように、レール26は、屈折検査ユニット10上に取り付けられる。この取り付けは、取り外し可能な取り付け又は永久的な取り付けであり得る。
【0132】
変形形態では、前記画面、及び/又は前記ビームスプリッタ、及び/又は前記光屈折要素は、偏光無依存性であり得る。追加の偏光子は、画面の前に且つ光屈折要素の前に追加され得る。別の変形形態では、前記画面及び前記ビームスプリッタは、偏光無依存性である。
【0133】
変形形態では、表示ユニットは、前記第1及び第2の検査画像を前方で交互に回転させる1つの偏光回転子を含み、第1及び第2の光屈折要素はそれぞれ、第1の偏光子と、第1の偏光子と異なる偏光軸を有する第2の偏光子とを含む。この場合、偏光回転子は、第1の光路上の偏光軸及び第2の光路上の偏光軸を交互に回転させるために、画像と光屈折要素との間の経路上に配置され得る。例えば、偏光子は、画面上に配置され得る。このように、偏光回転子の回転に従い、第1の検査画像が第1の眼によって見られ、次いで第2の眼が第2の眼によって見られる。偏光回転子の回転周波数は、少なくとも60Hzに等しくてもよい。
【0134】
偏光回転子は、ファラデー回転子、電子液晶偏光子などの複屈折回転子又はプリズム回転子であり得る。
【0135】
図示しない、他の実施例では、伝達ユニットは、所定の波長範囲に含まれる波長を有する光を選択的に透過及び/又は反射するように適合されたフィルタも含み得る。第1の画面S1によって生成された第1の検査画像I11、I21は、例えば、440、550及び600ナノメートルの第1のセットの波長で放射され、第2の画面S2によって生成された第2の検査画像I12、I22は、例えば、第1のセットの波長と比較して20ナノメートルだけずらされた、例えば460、570及び620ナノメートルの第2のセットの波長で放射される。対応する波長の2つの三色フィルタが前記第1及び第2の経路上に配置される。そのようなフィルタを得るために、ホログラフィ技術又は当業者に既知の他の任意の適切な技術が使用され得る。
【0136】
図10に示すように、2つの表示領域Z1、Z2に分割された単一の画面S0によって各検査画像が生成される第2の実施例では、画像を表示しない不使用領域Z0は、好ましくは、2つの表示領域Z1、Z2間にある。
【0137】
この不使用領域Z0は、2つの表示領域Z1、Z2を離隔して、対象の各眼が見る画像を分離された状態に保つのに役立つ。
【0138】
さらに、対象の各眼が対応する関連の画像のみを見ることを確実するために、前記光伝達ユニットは、
図10に示す表示システムの第2の実施例の場合と同様に、前記第1の光路OP1と前記第2の光路OP2との間の光の透過を遮断する壁30を含み得る。
【0139】
この場合、光屈折要素11、12は傾いており、球面/円柱度数だけでなく、ある程度のプリズム度数も提供する。プリズム度数を提供する光学構成要素は、画面の2つの表示領域によって放射された光に作用して、対象の眼に光を届ける。プリズム値は、近方視距離及び/又は中間視距離に依存し、眼が所与の距離で輻輳するように算出することができる。
【0140】
変形形態では、前記光伝達ユニットは、前記分離された表示領域Z1、Z2の一方で放射された光を対象の眼E1、E2の一方に向けてそれぞれ伝達する2つの光ガイドも含み得る。
【0141】
別の実施例では、前記表示システムは、2つの別個のマイクロディスプレイも含み得、前記別個のマイクロディスプレイの各々は、前記第1及び第2の画像の一方を表示し、前記光伝達ユニットは、前記マイクロディスプレイの一方で放射された光を対象の眼E1、E2の一方にそれぞれ伝達する2つの光ガイドを含む。各マイクロディスプレイは、マイクロLED又はマイクロOLED技術を使用している場合がある。各マイクロディスプレイは、幅が10ミリメートル程度の小さいものであり、一方の眼の前に配置され得る。機械装置又は光学装置は、マイクロディスプレイ間の距離を変更して、遠方視又は近方視状態をシミュレートすることができる。
【0142】
2つの検査画像I11、I12、I21、I22が同じ単一の表示領域に生成される場合、2つの検査画像は、前記単一の表示領域において同時に生成され得るか(
図14、
図15)、又は交互に生成され得る(
図16、
図17)。
【0143】
いずれの場合にも、表示システム20は、前記第1又は第2の光路OP1、OP2に沿って前記第1及び第2の検査画像を第1又は第2の光屈折要素11、12に選択的に伝達するための画像選択ユニットを含む。換言すれば、表示システム20ユニットは、第1の検査画像I11、I21を対象の第1の眼E1に、且つ第2の検査画像I12、I22を対象の第2の眼E2に伝達することを可能にする。
【0144】
第3の実施例では、2つの検査画像は、例えば、単一の画面S0の同じ表示領域にインターレース方式で同時に表示される。実際には、2つの検査画像の各々は、単一の画面の別々の部分を使用して表示されるいくつかの部分に分割される。各検査画像の部分を互い違いに配置して、これらの部分を画面の表面に広がる画面の部分に表示することにより、対象は、画面の表面全体で表示されるように2つの検査画像の各々を知覚し得る。
【0145】
各検査画像は、例えば、画面の画素群に表示される。画素は、例えば、正方形又は六角形の基本面上で、行、列ごとにグループ化され得る。使用される画素群は、例えば、ベイヤーマトリックスを使用して、画素の色に基づいても定められ得る。第1の検査画像は、画素群のいくつかを使用して表示され、第2の検査画像は、他の群を使用して表示される。
【0146】
例えば、
図14又は
図15に示すように、2つの検査画像は、画面S0の1列おき又は1行おきの画素を使用して表示される。換言すれば、各検査画像は、画素の列又は行の大きさの部分に分割され、これらの部分は、第1の検査画像の列又は行と第2の検査画像の列又は行とを互い違いに配置することによって表示される。2列ごとに、一方の列は、第1の検査画像を表示するために使用され、他方の列は、第2の検査画像を表示するために使用される。同様に、2行ごとに、一方の行は、第1の検査画像を表示するために使用され、他方の行は、第2の検査画像を表示するために使用される。
【0147】
第1の検査画像I11、I21は、例えば、画面の画素の第1の列及び奇数列を使用して表示される一方、第2の検査画像I12、I22は、画素の第2の列及び偶数列を使用して表示される(
図14、15)。
【0148】
画像選択ユニットにより、対象の第1の眼E1は、第2の検査画像I12、I22を見ることなく、第1の検査画像I11、I21のみを見て、対象の第2の眼E2は、第1の検査画像I11、I21を見ることなく、第2の検査画像I12のみを見る。
【0149】
前記画像選択ユニットは、複数のマイクロレンズを含み得、マイクロレンズの各々は、単一の表示領域の一部にマッピングされ、且つ単一の表示領域のこの部分によって放射された光を少なくとも2つの異なる方向に伝達するように適合される。マイクロレンズと画面の画素との間の距離は、マイクロレンズの焦点距離にほぼ等しい。
【0150】
マイクロレンズは、例えば、上記で定義した隣り合う2つの画素群の対に関連付けられ、各々は、異なる検査画像の一部を表示する。
【0151】
2つの検査画像が、画面S0の1列おきの列を使用して生成される、ここで説明する例では、マイクロレンズは、隣り合う2つの列をカバーし、2つの列の一方によって放射された光を第1の眼E1に、他方によって放射された光を第2の眼E2に伝達するように適合させることができる(
図15)。
【0152】
画素群の異なる対に使用されるマイクロレンズは、同一であるか又は異なり得る。マイクロレンズは、例えばマイクロプリズムを含むか又は含まない、異なる焦点距離のマイクロレンズ又は異なる特性のマイクロレンズを含み得る。
【0153】
変形形態によれば、画像選択ユニットは、所定の波長範囲に含まれる波長を有する光を選択的に透過及び/又は反射するように適合されたフィルタを含み得る。画面の奇数列によって生成された第1の検査画像I11、I21は、例えば、440、550及び600ナノメートルの第1のセットの波長で放射され、画面の偶数列によって生成された第2の検査画像I12、I22は、例えば、第1のセットの波長と比較して20ナノメートルだけずらされた、例えば460、570及び620ナノメートルの第2のセットの波長で放射される。対応する波長の2つの三色フィルタが画面S0の前で使用される。画面S0又はフィルタは、高周波で前後にフィルタ又は画面に平行に並進移動する移動板上に取り付けられ得る。そのようなフィルタを得るために、ホログラフィ技術又は当業者に既知の他の任意の適切な技術が使用され得る。
【0154】
画像選択ユニットは、代替的に、所定の軸に沿って配向された偏光を有する光を選択的に透過及び/又は反射するように適合された偏光子を含み得る。したがって、画面S0の奇数列及び偶数列は、異なる偏光、特に互いに直交する偏光を有する光を放射するように構成され得る。)。
【0155】
別の可能性は、2つの検査画像I11、I12、I21、I22が、画面の全ての表示領域を使用して前記単一の画面S0の同じ単一の表示領域に交互に、すなわち順々に生成されることである。表示システム20の第4の実施例では、各検査画像は、同期型電子シャッタ41、42が、検査画像を伝達すべきではない眼の光路を完全に又は少なくとも部分的に遮断している間に、高周波で交互に表示される(
図17)。
【0156】
単一の画面は、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)若しくはマイクロLEDを用いた画面又は当業者に既知である任意の他の適合した画面であり得る。
【0157】
この場合、前記画像選択ユニットは、2つのシャッタ41、42を含み、2つのシャッタの各々は、前記第1及び第2の光路OP1、OP2の一方に関連付けられ、且つ2つの状態:シャッタが、対応する第1又は第2の光路内の光の伝播を選択的に遮断する作動状態と、前記シャッタが、同じ第1又は第2の光路内の光の伝播を選択的に可能にする作動停止状態とを提示する。
【0158】
したがって、表示装置20は、両方のシャッタの状態変化と第1及び第2の検査画像の生成とを同期させるための同期装置43も含む。このように、対象の第1の眼E1のための検査画像が表示されるとき、第1の光路OP1上に配置されたシャッタ41は、作動停止状態にあり、第2の光路OP2上に配置されたシャッタ42は、作動状態にある。対象の第2の眼E2のための検査画像が表示されるとき、第2の光路OP2上に配置されたシャッタ42は、作動停止状態にあり、第1の光路OP1上に配置されたシャッタ41は、作動状態にある。
【0159】
各シャッタ41、42は、例えば、表示システム20及び/又は屈折検査ユニット10に関連付けられた電子シャッタを含む。
【0160】
各電子シャッタ41、42は、例えば、LCD画面を含み得る。
【0161】
代替的に、シャッタは、光を部分的にのみ遮断し得る。シャッタは、高分子分散液晶層を含む構成要素などの能動拡散器を含み得る。
【0162】
各LCD画面は、第1の光路OP1及び第2の光路OP2の一方に配置される。各LCD画面は、好ましくは、対象の眼に近接して配置される、例えば屈折検査ユニット10上に取り付けられる。作動状態は、LCD画面が不透明(黒色)であり且つ光の伝播を完全に遮断する状態に対応し、作動停止状態は、LCD画面が透明であり、したがって光がLED画面を通過することを可能にする状態(
図17)に対応する。
【0163】
両方のシャッタの状態変化と第1及び第2の検査画像の生成との同期が
図16に概略的に示されている。
【0164】
この図の上のグラフは、例えば動画の連続フレームに対応する、単一の画面S0によって表示される連続する検査画像を概略的に示している。各検査画像は、同じ時間にわたって表示される。
【0165】
この図の下の2つのグラフは、第1及び第2の光路OP1、OP2上に配置された各シャッタの光透過Tを示す。グラフに示すように、第1の検査画像が表示されたとき、第1の光路OP1上に配置されたシャッタ41は、光の透過を許容する一方、第2の光路OP2上に配置されたシャッタ42は、光を遮断する。それに応じて、第1の検査画像は、第2のグラフで分かるように、第1の眼E1に伝達される一方、第3のグラフで分かるように、第2の眼E2には画像が伝達されない。
【0166】
画面S0によって第2の検査画像(「フレーム2」)が表示されている間に状況が逆転し、第2の光路OP2上に配置されたシャッタ42は、光の透過を許容する一方、第1の光路OP1上に配置されたシャッタ41は、光を遮断する。それに応じて、第2の検査画像は、第3のグラフで分かるように、第2の眼E2に伝達される一方、第2のグラフで分かるように、第1の眼E1には画像が伝達されない。
【0167】
下の2つのグラフに示すように、各シャッタの状態は、新たな検査画像が画面に表示されるたびに変更される。
【0168】
表示システム20の同期を示す
図16の上の3つのグラフでは、検査画像が画面上に瞬時に表示されないことが考慮されていない。各検査画像の表示及び消去には時間がかかる。表示システムを最適化するために、検査画像の表示時間と検査画像の消去(残光)時間とを最小限に抑える必要がある。
【0169】
この例で使用される画面は、以下の追加の仕様で選択される。
- 画面の周波数は、少なくとも60Hz、可能であれば90Hz、120Hz又は240Hzに等しくなければならない。
- 画面上の検査画像の残光は、最小限でなければならない。検査画像の残光のタイミングは、好ましくは、画像表示時間の1/5よりも短い。可能であれば、残光時間及び画像表示時間は、画像表示時間の1/10よりも短い。
【0170】
例えば、周波数F=60Hzである場合、
- 検査画像の各々の表示時間は、T=(1/60)s=16.6ミリ秒(ms)であり、
- したがって、各検査画像の残光時間dAfterglowは、dAfterglow<T/5=16.6/5=3msであるため、好ましくは3ms未満である。好ましくは、各検査画像の残光時間dAfterglowは、dAfterglow<T/10=16.6/10=1.66であるため、1.66ms未満である。
【0171】
例えば、適合した画面は、以下の仕様を有する。
- 56mm以上の水平方向寸法及び任意選択で垂直方向寸法、
- 40センチメートルでの、20/10(-0.3LogMar)の視力を測定するための50ミクロン未満又は15/10((-0.2LogMar)の視力を測定するための74ミクロン未満の画素寸法、
- 少なくとも60Hzの画面周波数、
- 3ミリ秒(ms)未満の残光時間。
【0172】
スマートフォン画面は、この目的で使用され得る。
【0173】
仮想現実ヘッドセットの画面などの他の種類の画面も使用することができる。
【0174】
使用されるシャッタは、例えば、スウェーデンのLC-Tec(登録商標)社のX-FOS(G2)(登録商標)シャッタであり得る。
【0175】
表示システム20の同期装置43は、各シャッタが作動状態から作動停止状態に及びその逆に変化するように、各シャッタに信号を送信する。
【0176】
同期装置43は、異なる方法で実現され得る。
【0177】
同期装置43は、画面S0の特定部分の前に配置された光受容体を含み得る。
【0178】
したがって、同期装置43は、前記画面S0によって表示される各検査画像の一部も含む。所定の眼、例えば対象の第1の眼E1に対して表示される各検査画像は、画面S0の前記特定部分に表示される白色領域であって、その前に光受容体が配置される、白色領域と、他方の眼、例えば対象の第2の眼E2に対して表示される全ての検査画像上の黒色領域とを含む。
【0179】
黒色領域を有する検査画像が表示されるとき、光受容体は、白色領域を有する検査画像が表示されるときに受信される信号と全く異なる信号を受信する。次いで、光受容体は、この信号をシャッタのための入力信号に変換するために、電気回路に接続される。
【0180】
画面S0の2つの異なる特定部分の前に配置された2つの異なる光受容体を使用する同期装置など、光受容体を使用する他の同期装置も使用され得る。次いで、一方の眼に関連付けられた各検査画像は、画面の2つの特定部分の第1の部分に位置決めされた白色領域を設けられ、他方の眼に関連付けられた検査画像は、画面S0の第2の特定部分に位置決めされた白色領域を設けられる。
【0181】
代替的に、ケーブルは、例えば、携帯電話150の主ソケットに接続されたUSBケーブルである。この解決策にはほぼ瞬時に行われるという利点があるため、このようなケーブルの使用が望ましい。
【0182】
代替的に、例えばスマートフォンの画面を使用する場合、前記同期装置は、画像に完全に同期した音声信号を送信するために使用されるスマートフォンの音声システムを含み得る。次いで、音声信号は、この信号をシャッタ41、42のための入力信号に変換するために電気回路に接続される。
【0183】
第1の眼E1のための画像が表示されると、電気的な音声信号が生成される。電気信号は、同期装置43のマイクロコントローラに送信される。マイクロコントローラは、この信号をシャッタ41、42のための入力信号に変換する。
【0184】
シャッタ41、42がこの信号を受信すると、第1の光路OP1上に配置されたシャッタ41が作動停止状態になり、他方のシャッタ42が作動状態になる。
【0185】
画面の周波数Fに対応するタイミング後、第2の眼E2のための画像が表示され、電気的な音声信号が生成される。電気信号は、マイクロコントローラに送信され、マイクロコントローラは、この信号をシャッタ41、42のための入力信号に変換する。
【0186】
シャッタ41、42がこの信号を受信すると、第2の光路OP2上に配置されたシャッタ42が作動停止状態になり、他方のシャッタ41が作動状態になる。
【0187】
同期装置43は、Bluetooth、Wi-Fi又はIR信号による、画面S0とシャッタ41、42との間の無線通信手段を含み得る。
【0188】
電子シャッタは、前記第1及び第2の光路OP1、OP2の各々に配置された2つの偏光子も含み得る。2つの偏光子のうちの第1の偏光子は、一定の偏光を有し、他方の第2の偏光子の偏光の向きは、第2の偏光子の偏光を作動停止状態では第1の偏光子の偏光に平行に又は作動状態では第1の偏光子の偏光に直交して選択的に配置できるように制御され得る。
【0189】
例えば、前記シャッタは、シャッタの前の画面S0上に配置された能動偏光回転板を含み得る。この能動偏光回転板は、画面の直線偏光が変化しない第1の状態と、画面S0の直線偏光が90°傾いた第2の状態とを有する。
【0190】
次に、2つの能動偏光子は、対象の各眼の前の、屈折検査ユニット10上に位置し、直交する偏光軸を有し、一方は、画面の変化しない直線偏光に平行であり、他方は、能動偏光回転板によって90°傾いた画面の直線偏光に平行である。
【0191】
この場合、同期装置は、単に能動偏光板を画面S0と同期させる。
【0192】
この表示システムの実施例は、例えば、スマートフォン画面など、45°の直線偏光を有する画面を含む。
【0193】
能動偏光板は、画面の上に位置決めされ、非作動時には、入射光の偏光を90°回転させる。次いで、画面と能動偏光板との組立体によって放射される光の偏光が、135°に配向される。作動時には、回転がゼロである。次に、画面と能動偏光板との組立体によって放射される光の偏光は、45°に配向される。
【0194】
能動偏光板は、作動/作動停止信号と電源の両方を提供するUSBコネクタから、スマートフォンによって制御される。
【0195】
代替的に、前記表示システム20が前記第1及び第2の検査画像を単一の表示領域において交互に生成する場合、前記画像選択ユニットは、それぞれ2つの別々の所定の波長範囲に含まれる波長を有する光を選択的に透過及び/若しくは反射するように適合された2つのフィルタ又は異なる所定の軸に沿って配向された異なる偏光を有する光を選択的に透過及び/若しくは反射するように適合された2つの偏光子を含み得る。
【0196】
2つのフィルタ又は偏光子の一方が対象の各眼の前に配置される。2つの検査画像は、フィルタの2つの別々の所定の波長範囲に属する波長又は前記異なる所定の軸に平行な偏光で交互に表示される。
【0197】
各眼は、この眼に関連付けられた検査画像のみを見る。同期は必要でない。ここで説明する検眼装置は、近方視又は中間視での視覚検査中に視覚刺激として使用することができる。
【0198】
検査画像は、対象の眼から例えば40センチメートルの近方視距離又は例えば60センチメートルの中間視距離をおいて配置することができる。
【0199】
以下で詳細に提示されるように、表示される第1及び第2の検査画像の各々は、
- 視標若しくは任意の視覚目標を表示するための又は空白のままであるための中心部分111、112;121、122と、
- 中心部分111、112;121、122を取り囲む周縁部分131、132;141、142と
を含み、対象の左右の視経路間のバランスの取れた融合プロセスに寄与する。
【0200】
2つの画像は、対象に立体視を提供するように設計された、立体画像である。
【0201】
前記中心部分に視標又は他の視覚目標を含む被検眼検査画像は、対象の前記第1の眼に提供される。一方で、ここでは、同じく前記中心部分に視標又は視覚目標を含む非検眼検査画像が対象の第2の眼に提供される。
【0202】
非検眼検査画像の中心部分に表示される視標又他の視覚目標は、被検眼検査画像の対応する視標又他の視覚目標のコントラストよりも低いコントラストで表示される。非検眼検査画像の中心部分に表示される視標又は他の視覚目標は、被検眼検査画像の対応する視標又は視覚目標のコントラストよりも低いコントラストのみを有する、被検眼検査画像に表示されるものと同じ視標又は視覚目標であり得る。
【0203】
次に、対象の第2の眼の屈折異常を判定するために、視標又は他の視覚目標を有する被検眼検査画像がこの第2の眼に提供される一方、対象の第1の眼には、より低いコントラストの中心部分を有する非検眼検査画像が提供される。
【0204】
図18及び
図20に示す検査画像では、右側に示す、検査画像の一方は、左側に示す、同じ図の他方の検査画像よりも低いコントラストを有する。
【0205】
対象の中には、優位眼と呼ばれる、対象の眼の1つによって知覚される画像が強く優位を占める両眼視を有する者もいる。換言すれば、そのような対象は、両眼画像融合の神経プロセスにおいて、他の視覚経路よりも強い優位性を持つ1つの視覚経路を有する。このような対象の場合、上記で説明した両眼屈折手順中、完全空白画像が対象の優位眼に提供される場合、対象の左及び右の視覚経路間の視野闘争に起因して「抑制」現象が発生することがある。この場合、対象によって知覚される画像は、完全に空白である。
【0206】
知覚される画像における視標のそのような抑制は、当然ながら、非優位眼の屈折異常の判定を困難にするか又はさらに不可能にする。対象の眼球優位性がそのような抑制を引き起こすほど十分強くないとしても、それは、多くの場合、対象によって知覚される画像の明滅又は点滅を引き起こす。さらに、そのような両眼屈折手順中、対象によって知覚される画像の点滅も、眼球輻輳に関連する対象の視力の問題によって引き起こされ得る。これらの悪影響により、両眼屈折手順の正確性又は対象にとっての快適性が低下し、実行される時間が長くなる。
【0207】
検査画像の周縁部分は、対象の脳による2つの検査画像の融合を安定させ、「抑制」現象を低減する。このように、視覚検査は、対象にとってより快適であり、より正確な結果を提供する。
【0208】
前記検査画像I11、I12;I21、I22又は検査画像の少なくとも周縁部分131、132;141、142は、料理、読書など、近方視で通常行われる現実の活動を示している。
【0209】
有利には、前述のように、前記検眼装置1、2を用いて対象の眼に提供される検査画像は、少なくとも部分的に異なるコントラストを有し得る。例えば、被検眼に提供される被検眼検査画像のコントラストは、80%超であり、好ましくは90%超であり、好ましくは100%に等しい。他方の眼に提供される非検眼検査画像のコントラストは、15%未満であり、好ましくは10%未満であり、好ましくは5%に等しい。一般に、他方の眼に提供される非検眼検査画像のコントラストは、被検眼に提供される被検眼検査画像のコントラストの50%未満である。
【0210】
コントラストは、(Loptotype-Lbackground)/(Loptotype+Lbackground)と定義されることがあり、Loptotypeは、視標の輝度であり、Lbackgroundは、背景の輝度である。
【0211】
代替的に、被検眼に提供される被検眼検査画像の周縁部分と、他方の眼に提供される非検眼検査画像の周縁部分は、同じコントラストを有する。被検眼検査画像の中心部分と、他方の眼に提供される非検眼検査画像の中心部分のみは、異なるコントラストを有する。例えば、被検眼検査画像の中心部分のコントラストは、80%超であり、好ましくは90%超であり、好ましくは100%に等しい。非検眼検査画像の中心部分のコントラストは、15%未満であり、好ましくは10%未満であり、好ましくは5%に等しい。一般に、非検眼検査画像の中心部分のコントラストは、被検眼検査画像の中心部分のコントラストの50%未満である。
【0212】
さらに、対象の快適性を向上させ、抑制効果をさらに低減するために、各検査画像の周縁部分は、異なる両眼視差を有する成分を含む。
【0213】
現実には、眼の水平方向の分離のため、対象の2つの眼は、対象によって観察される任意のシーン上で異なる視点を有している。眼の視点の違いは、脳が2つの2次元網膜画像の組み合わせから奥行き情報を抽出するために用いる両眼視差を生じさせる。
【0214】
両眼視差とは、物体の両眼観察中に左右の眼が見るこの物体の位置の差を指す。実際には、両眼視差は、ステレオペアの左右の画像における2つの対応する点間の距離を表し、眼の水平方向の分離と対象の眼と物体との間の距離とから生じる左右の眼が見る物体の画像位置の差を反映している。
【0215】
同様の視点の差は、所定の視差に対応する視点の差だけ互いに異なる2つの画像を生成することによって立体視3D表現においてシミュレートされ、それらの各々を対象の一方の眼に表示する。
【0216】
前記検査画像の任意の成分の立体視3D表現の視差は、実生活における対象のこの物体と対象の瞳孔間距離との間の実際の距離に基づいて特定される。視差は典型的には、画面よりも対象に近接する物体に対して大きくなり、画面よりも近接する物体に対しては負(交差)であり、画面から遠く離れた物体に対しては正(非交差)である。それは、成分が見られる視角として表現され得る。
【0217】
図18及び
図20に示す例の検査画像では、検査画像の周縁部分の成分は果物である。果物の種類ごとに異なる視差で表示される。例えば、検査画像の周縁部分の成分は、1600’’、800’’、400’’、340’’、280’’、200’’、160’’、120’’、100’’、80’’の視差を有する。視差は、ここでは、分角の角度として表現される。
【0218】
図18及び
図20に示す例の検査画像I11、I12;I21、I22の中心部分111、112;121;122は、ある場合には第1の眼及び第2の眼の球面検査のための視覚目標(
図18)であり、他の場合には第1の眼及び第2の眼の円柱検査のための視覚目標(
図20)である。
【0219】
いずれの場合にも、非検眼に対して表示される第2の検査画像の視覚目標112、122は、被検眼に対して表示される第1の検査画像の視覚目標111、121と同一であり、低いコントラストを有する。
【0220】
【0221】
最後に、本発明による検眼装置1、2は、検査画像を適切なタイミングで表示するようにプログラムされたコンピュータなどの制御ユニットも含む。
【0222】
第1及び第2の眼のための検査画像のセットは、制御ユニットのメモリに入れられ得る。使用される画面がスマートフォンに属する場合、制御ユニットは、スマートフォンを含み得る。ある検査画像から次の検査画像への変更は、検眼装置の操作者により、例えば操作者が画像を変更することを望むときに画面をクリックすることによって手動でトリガされ得る。
【0223】
代替的に、好ましい実施形態では、制御ユニットは、画面を提供するために表示システムで使用される1つ又は2つのスマートフォンと異なるスマートフォンを含み得る。
【0224】
全てのスマートフォンが、同じWi-Fiネットワークに接続され、TCP-IPプロトコルで通信する。これらのスマートフォンは、NearbyAPIプロトコルを使用して通信することもできる。
【0225】
操作者は、実施することを望む検査、例えば球面度数、円柱度数、乱視軸、左眼の視力、右眼の視力又は両眼の視力の判定を選択する。
【0226】
いずれの検査を実施すべきかを示すメッセージが、表示システム20の各スマートフォンに送信される。
【0227】
表示システムの各スマートフォンは、メッセージを受信し、この検査に対応する全ての検査画像のリストを含むファイルを開く。このファイルが開くと、そのリストの第1の画像は、対応するスマートフォンの画面に表示される。
【0228】
操作者は、装着者及び検査から離れたままであり得る。
【符号の説明】
【0229】
1 検眼装置
2 検眼装置
10 両眼屈折検査ユニット
11 光屈折要素
12 第2の光屈折要素
20 表示システム
31 ビームスプリッタ
41 シャッタ
42 シャッタ
50 マイクロレンズ
【手続補正書】
【提出日】2023-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の眼の両眼検査のための検眼装置(1、2)であって、
- 第1の光軸(OA1)に沿って異なる視力矯正度数を提供するように適合された第1の光屈折要素(11)と、第2の光軸(OA2)に沿って異なる視力矯正度数を提供するように適合された第2の光屈折要素(12)とを備えた両眼屈折検査ユニット(10)、
- 第1及び第2の検査画像(I11、I12;I21、I22)を提供するための表示システム(20)であって、前記第1の検査画像は、第1の光路(OP1)に沿って前記第1の光屈折要素(11)に伝達され、及び前記第2の検査画像は、第2の光路(OP2)に沿って前記第2の光屈折(12)要素に伝達される、表示システム(20)
を含み、
前記第1及び第2の検査画像には、水平方向における少なくとも8°の視野にわたり、1分角よりも小さい細部が設けられ、
前記第1及び第2の光路(OP1、OP2)は、25~100センチメートルに含まれる長さを有し、近方視及び/又は中間視で前記対象の前記眼を検査することを可能にする、検眼装置(1、2)。
【請求項2】
前記両眼屈折検査ユニット(10)は、前記第1及び第2の屈折要素(11、12)の前記第1及び第2の光軸(OA1、OA2)が下方に傾斜している斜方視検査構成を提示する、請求項1に記載の検眼装置(1、2)。
【請求項3】
前記表示システム(20)は、前記両眼屈折検査ユニット(10)と一体となるように前記両眼屈折検査ユニット(10)に機械的に連結される、請求項
1に記載の検眼装置(1)。
【請求項4】
前記両眼屈折検査ユニット(10)は、少なくとも2つの検査構成:前記第1及び第2の光軸(OA1、OA2)が水平方向に延びる第1の位置に前記第1及び第2の光屈折要素(11、12)が位置決めされる水平視検査構成と、前記第1の位置と比較して前記第1及び第2の光屈折要素(11、12)が傾斜しており、それにより、前記第1及び第2の光軸(OA1、OA2)が下方に傾斜している斜方視検査構成との間で移動可能である、請求項
1に記載の検眼装置。
【請求項5】
前記両眼屈折検査ユニット(10)は、前記第1及び第2の光屈折要素(11、12)の平均平面(MP)に平行な水平方向軸(H)を中心に全体として回転移動可能であり、前記水平方向軸(H)は、前記対象の眼が前記屈折検査要素を通して見るとき、前記対象の前記眼(E1、E2)の一方の回転中心(ERC1)が位置する場所にある所定の点を通る、請求項4に記載の検眼装置。
【請求項6】
前記表示システム(20)内の前記第1及び第2の検査画像(I11、I12、I21、I22)の位置は、前記第1及び第2の画像が前記第1又は第2の光路(OP1、OP2)と位置合わせされるように調整可能である、請求項
1に記載の検眼装置。
【請求項7】
前記表示システム(20)は、前記第1及び第2の検査画像が両方とも生成される単一の表示領域と、前記第1又は第2の光路(OP1、OP2)に沿って前記第1及び第2の検査画像を前記第1又は第2の光屈折要素(11、12)に選択的に伝達するための画像選択ユニットとを含む、請求項
1に記載の検眼装置。
【請求項8】
前記画像選択ユニットは、所定の波長範囲に含まれる波長を有する光を選択的に透過及び/若しくは反射するように適合されたフィルタ又は所定の軸に沿って配向された偏光を有する光を選択的に透過及び/若しくは反射するように適合された偏光子を含む、請求項7に記載の検眼装置(1、2)。
【請求項9】
前記表示システム(20)は、前記第1及び第2の検査画像を前記表示領域において同時に生成し、及び前記画像選択ユニットは、複数のマイクロレンズ(50)を含み、前記マイクロレンズ(50)の各々は、前記単一の表示領域の一部にマッピングされ、且つ前記単一の表示領域の前記部分によって放射された前記光を少なくとも2つの異なる方向に伝達するように適合される、請求項
7に記載の検眼装置(1、2)。
【請求項10】
- 前記表示システム(20)は、前記第1及び第2の検査画像を前記単一の表示領域において交互に生成し、及び
- 前記画像選択ユニットは、2つのシャッタ(41、42)を含み、前記2つのシャッタ(41、42)の各々は、前記第1及び第2の光路(OP1、OP2)の一方に関連付けられ、且つ2つの状態:前記シャッタ(41、42)が、前記対応する第1又は第2の光路(OP1、OP2)内の光の伝播を選択的に遮断する作動状態と、前記シャッタ(41、42)が、前記同じ第1又は第2の光路(OP1、OP2)内の光の伝播を選択的に可能にする作動停止状態とを提示し、
- 同期装置は、両方のシャッタ(41、42)の状態変化と、前記第1及び第2の検査画像(I11、I12;I21、I22)の生成とを同期させるために設けられる、請求項
7に記載の検眼装置(1、2)。
【請求項11】
各シャッタ(41、42)は、前記表示システム(20)及び/又は前記屈折検査ユニット(10)に関連付けられた電子シャッタを含む、請求項10に記載の検眼装置(1、2)。
【請求項12】
前記表示システム(20)は、前記第1及び第2の検査画像を2つの分離された表示領域(Z1、Z2)において生成し、前記検眼装置は、前記第1及び第2の経路に沿って前記第1及び第2の画像を前記第1及び第2の眼に伝達する光伝達ユニットを含む、請求項
1に記載の検眼装置(1、2)。
【請求項13】
前記光伝達ユニットは、前記第1及び第2の検査画像を前方で交互に回転させる偏光子回転子を含む、請求項12に記載の検眼装置(1、2)。
【請求項14】
前記表示システム(20)は、2つの別個の画面(S1、S2)を含み、前記別個の画面(S1、S2)の各々は、前記第1及び第2の画像の一方を表示し、及び前記光伝達ユニットは、ビームスプリッタ(31)を含む、請求項
12に記載の検眼装置(1、2)。
【請求項15】
前記表示システムは、
- 2つの別個のマイクロディスプレイであって、前記別個のマイクロディスプレイの各々は、前記第1及び第2の画像の一方を表示する、2つの別個のマイクロディスプレイ、又は
- 前記2つの分離された表示領域を提供する1つの画面であって、前記分離された表示領域の各々は、前記第1及び第2の画像の一方を表示する、1つの画面
を含み、及び前記光伝達ユニットは、前記分離された表示領域の一方で放射された前記光を前記対象の前記眼の一方に向けてそれぞれ伝達する2つの光ガイドを含む、請求項
12に記載の検眼装置。
【国際調査報告】