IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタの特許一覧

特表2024-517761磁気共鳴映像法における無線周波数(RF)ベースの空間符号化のためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】磁気共鳴映像法における無線周波数(RF)ベースの空間符号化のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
A61B5/055 311
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566752
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 US2022027319
(87)【国際公開番号】W WO2022232695
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】63/333,452
(32)【優先日】2022-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/182,355
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
(71)【出願人】
【識別番号】305023366
【氏名又は名称】リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ガーウッド,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】トレス,エフレイン
(72)【発明者】
【氏名】フレーリッヒ,タイラー
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AD06
4C096BA05
4C096BB03
4C096CC19
4C096CC24
4C096CC26
4C096CC29
(57)【要約】
磁気共鳴映像法(MRI)に基づく無線周波数(「RF」)勾配は、周波数変調RFパルスを用いてRF送信(B)磁場に勾配を確立することにより提供される。周波数変調RFパルスの時間-帯域幅の積の差分は、磁気共鳴信号に異なる位相を付与するように変更されることができ、この場合、これら異なる位相は、取得されたデータの位相符号化を行う。時間-帯域幅の積の差分が、生成され、パルスの帯域幅を一定に保持しながら、1つの周波数変調RFパルスのパルス持続時間を他に対して変更することにより変更される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴映像法のための方法であって、
(a)磁気共鳴映像法(MRI)システムでもってパルスシーケンスを生成して、前記MRIシステムでもって、磁気共鳴データを取得することにより、前記MRIシステムを用いて対象物から磁気共鳴データを取得し、
前記パルスシーケンスは、
無線周波数(RF)励起パルスと、
第1の時間-帯域幅の積を有し、前記RF励起パルスの後に生成される第1の周波数変調RFパルスと、
第2の時間-帯域幅の積を有し、前記第1の周波数変調RFパルスの後に生成される第2の周波数変調RFパルスとを含み、
前記MRIシステムでもって、磁気共鳴データを取得することは、
前記RF励起パルスに応じて生じた磁気共鳴信号をサンプリングすることにより行われ、その値の位相は、前記第1の時間-帯域幅の積および前記第2の時間-帯域幅の積に依存し、前記RF励起パルスに応じて生じた磁気共鳴信号に付与され、前記第1の時間-帯域幅の積と前記第2の時間-帯域幅の積の差分は、前記磁気共鳴データを位相符号化するために前記パルスシーケンス内で又は前記パルスシーケンスの繰り返しの中での少なくとも一方で変更され、
(b)前記取得された磁気共鳴データから映像を再構成すること、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の周波数変調RFパルス及び前記第2の周波数変調RFパルスは、断熱全通過RFパルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の周波数変調RFパルス及び前記第2の周波数変調RFパルスは、双曲線正割(HS)RFパルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の時間-帯域幅の積と前記第2の時間-帯域幅の積の差分は、前記パルスシーケンスの繰り返しの中で前記第1の周波数変調RFパルス又は前記第2の周波数変調RFパルスの少なくとも1つのパルス持続時間を変更することにより、変更される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記パルスシーケンスの繰り返しの中で前記第1の周波数変調RFパルス又は前記第2の周波数変調RFパルスの少なくとも1つのパルス持続時間を変更することは、前記パルス持続時間を増加させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記パルスシーケンスの繰り返しの中で前記第1の周波数変調RFパルス又は前記第2の周波数変調RFパルスの少なくとも1つのパルス持続時間を変更しながら、前記第1の周波数変調RFパルス及び前記第2の周波数変調RFパルスの帯域幅が一定に保持される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の時間-帯域幅の積は、前記第2の時間-帯域幅の積と異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記パルスシーケンスの少なくとも1つの繰り返しにおいて、前記第1の時間-帯域幅の積は、前記第2の時間-帯域幅の積に等しくなるように設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
磁気共鳴映像法のための方法であって、
(a)磁気共鳴映像法(MRI)システムを用いて対象物から磁気共鳴データを取得し、前記MRIシステムは、前記対象物に周波数変調無線周波数(RF)パルスを印加することによって磁気共鳴信号に位相を付与することにより、前記磁気共鳴データを位相符号化するパルスシーケンスを生成し、前記周波数変調RFパルスは、可変の時間-帯域幅の積を有し、それにより前記周波数変調RFパルス間にR差分値が定義され、そのR差分値により、前記位相が前記磁気共鳴信号に付与され、
(b)前記取得された磁気共鳴データから映像を再構成すること、を含む、方法。
【請求項10】
前記パルスシーケンスは、異なる位相が異なるR差分値のそれぞれでもって前記磁気共鳴信号に付与されるように、前記磁気共鳴データを取得しながら、前記R差分値を変更することにより前記磁気共鳴データを位相符号化する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記R差分値は、前記周波数変調RFパルスの帯域幅を一定に保持しながら、前記周波数変調RFパルスの1つのパルス持続時間を増加することにより、変更される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記R差分値は、前記周波数変調RFパルスの帯域幅を一定に保持しながら、前記周波数変調RFパルスの1つのパルス持続時間を増加することにより、増加される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記パルスシーケンスは、マルチショット・パルスシーケンスであり、前記R差分値は、前記マルチショット・パルスシーケンスの各ショットに対して変更される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記周波数変調RFパルスは、断熱全通過RFパルスを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記断熱全通過RFパルスは、双曲線正割RFパルスを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記周波数変調RFパルスは、チャープRFパルスを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記R差分値は、前記パルスシーケンスの少なくとも1つの繰り返しにおいてゼロに設定される、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
磁気共鳴映像法のための方法であって、
(a)周波数変調RFパルスを用いて無線周波数(RF)勾配を生成するパルスシーケンスを生成するために磁気共鳴映像法(MRI)システムを用いて対象物から磁気共鳴データを取得し、前記RF勾配は前記磁気共鳴データの空間符号化を提供し、
(b)前記取得された磁気共鳴データから映像を再構成すること、を含む、方法。
【請求項19】
前記RF勾配は、前記磁気共鳴データの位相符号化を提供する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記取得された磁気共鳴データから映像を再構成することは、信号展開シミュレーションに基づいた空間符号化をモデル化する反復モデルベースの映像再構成を用いることを含む、請求項1、9又は18の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記信号展開シミュレーションは、完全ブロッホ・シミュレーションを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記反復モデルベースの映像再構成は、追加の入力として受信機コイルの感度データを利用する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記反復モデルベースの映像再構成は、正規化線形反転問題を反復的に解決することを含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2021年4月30日に出願され、「SYSTEMS AND METHODS FOR RADIOFREQUENCY (RF) GRADIENT ENCODING IN MAGNETIC RESONANCE IMAGING USINGFREQUENCY-MODULATED RF PULSES」と題する米国仮特許出願第63/182355号、及び2022年4月21日に出願され、「SYSTEMS AND METHODS FOR RADIOFREQUENCY (RF) GRADIENT ENCODING IN MAGNETIC RESONANCE IMAGING USINGFREQUENCY-MODULATED RF PULSES」と題する米国仮特許出願第63/333452号の優先権を主張しており、それらの双方は、参照により全体として本明細書に援用される。
【0002】
連邦支援研究に関する声明
本発明は、(米国)国立衛生研究所により授与されたEB025153及びEB027061の下で政府支援を用いて行われた。政府は、本発明の特定の権利を有する。
【0003】
背景
磁気共鳴映像法(「MRI」)は、イオン化放射線のない、調節可能な映像コントラストと共に、ロバストな高解像度イメージングを可能にし、それによりMRIを臨床医学および生物医学研究における必須のツールにしている。しかしながら、係る技術を購入して維持する経済的負担は、先進国における裕福な施設の大部分に対してMRIのアクセスを制限する注目すべき欠点である。近年、研究者は、これら課題に対処するために低コスト及び/又は持ち運びできる(可搬式)MRIシステムの開発に重点的に取り組んでいる。これらの研究の大部分は、MRIシステムの様々な構成要素を再設計することに重点を置いていた。他の手法は、静的な磁場B勾配システムの厳格な要件を対象にした。従来の線形B勾配(傾斜)磁場コイルは、磁石ボア内の貴重な空間を消費し、動作するために大電力と水冷を必要とし、メンテナンスを必要とし、及び大きな音響ノイズを発生し、当該大きな音響ノイズは、患者のよくある不満であり、潜在的に患者の聴力にダメージを与える。B勾配システムの排除は、MRIのインフラのニーズ及び経済的負担を大幅に低減すると同時に、静かなMRIを可能にする。
【0004】
本開示の概要
本開示は、磁気共鳴映像法のための方法を提供することにより、前述の欠点に対処し、この場合、磁気共鳴データは、MRIシステムでもってパルスシーケンスを生成することにより、MRIシステムを用いて対象物から取得され、ここで、パルスシーケンスは、無線周波数(RF)励起パルス;第1の時間-帯域幅の積を有する第1の周波数変調RFパルス;及び第2の時間-帯域幅の積を有する第2の周波数変調RFパルスを含む。第1の周波数変調RFパルスはRF励起パルスの後に生成され、第2の周波数変調RFパルスは、第1の周波数変調RFパルスの後に生成される。磁気共鳴データは、RF励起パルスに応じて生じた磁気共鳴信号をサンプリングすることにより、MRIシステムでもって取得され、ここで、その値の位相は、第1の時間-帯域幅の積および第2の時間-帯域幅の積に依存し、RF励起パルスに応じて生じた磁気共鳴信号に付与される。第1の時間-帯域幅の積と第2の時間-帯域幅の積の差分は、磁気共鳴データを位相符号化するためにパルスシーケンスの繰り返しの中で変更される。次いで、映像は、取得された磁気共鳴データから再構成される。
【0005】
本開示の別の態様は、磁気共鳴映像法のための方法を提供し、この場合、磁気共鳴データは、パルスシーケンスを生成するMRIシステムを用いて対象物から取得され、当該MRIシステムは、対象物に周波数変調RFパルスを印加することによって磁気共鳴信号に位相を付与することにより、磁気共鳴データを位相符号化し、ここで、周波数変調RFパルスは、異なる時間-帯域幅の積を有し、それにより周波数変調RFパルス間にR差分値が定義され、そのR差分値により、位相が磁気共鳴信号に付与される。次いで、映像が、取得された磁気共鳴データから再構成される。
【0006】
本開示の更に別の態様は、磁気共鳴映像法のための方法を提供し、この場合、周波数変調RFパルスを用いて無線周波数(RF)勾配を生成するパルスシーケンスを生成するためにMRIシステムを用いて対象物から磁気共鳴データが取得され、RF勾配は磁気共鳴データの空間符号化を提供する。次いで、映像は、取得された磁気共鳴データから再構成される。
【0007】
本開示の別の態様では、映像は、モデルベースの映像再構成フレームワークを用いて、本開示で説明される取得技術を用いて取得されるデータから再構成され得る。
【0008】
本開示の上述の及び他の態様および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。当該説明において、その一部を形成する添付図面を参照し、その添付図面において、好適な実施形態が例示として示される。しかしながら、本実施形態は、必ずしも本発明の全範囲を表わしておらず、それ故に本発明の範囲を解釈するために特許の請求の範囲および本明細書を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】周波数変調された無線周波数(RF)パルス(周波数変調無線周波数パルス又は周波数変調RFパルスと称する)を用いて、RF勾配を生成することにより磁気共鳴信号の空間符号化を提供する例示的なパルスシーケンスを示し、例示的なマルチショット・パルスシーケンスを示す。
図1B】周波数変調RFパルスを用いて、RF勾配を生成することにより磁気共鳴信号の空間符号化を提供する例示的なパルスシーケンスを示し、例示的なシングルショット・パルスシーケンスを示す。
図1C】周波数変調RFパルスを用いて、RF勾配を生成することにより磁気共鳴信号の空間符号化を提供する例示的なパルスシーケンスを示し、別のマルチショット・パルスシーケンスを示す。
【0010】
図2A】基準の第1(x’、y’、z’)及び第2(x”、y”、z’)の回転フレームにおける断熱全通過(adiabatic full passage)の全体にわたる任意の磁化ベクトル(M)及びその位相蓄積の軌跡を示す図である。
図2B】基準の第1(x’、y’、z’)及び第2(x”、y”、z’)の回転フレームにおける断熱全通過の全体にわたる任意の磁化ベクトル(M)及びその位相蓄積の軌跡を示す図である。
図2C】基準の第1(x’、y’、z’)及び第2(x”、y”、z’)の回転フレームにおける断熱全通過の全体にわたる任意の磁化ベクトル(M)及びその位相蓄積の軌跡を示す図である。
【0011】
図3】RF振幅(ω max)及びショット数の関数として、磁化位相が周波数変調ラビ符号化エコーFREEにおいてどのように変化するかを示すプロパゲータ分析計算を示す。当該計算は、二重スピンエコー・シーケンスにおいて2つのAFPを記述するプロパゲータ(伝播関数)に基づいている。1つのAFPの持続時間Tはショットの全体にわたって一定に保持(T=10ms)されたが、他のものは連続ショットにおいてΔT=0.15msだけインクリメントされ、T=9.4msで開始した。双方のパルスのBWは5kHzであった。ショットにわたって、位相は線形的に蓄積されたが、増加するω maxにわたって、変化率も同様に線形的に増加した。
【0012】
図4】本開示の幾つかの実施形態において説明されるような周波数変調ラビ符号化エコー(frequency-modulated Rabi encoded echoes:「FREE」)技術を用いる磁気共鳴映像法の例示的な方法のステップを記述する流れ図である。
【0013】
図5】本開示の幾つかの実施形態において説明されるようなFREE技術を実施する例示的なマルチショット二重スピンエコー・パルスシーケンスを示す図である。
【0014】
図6A】FREEベースのパルスシーケンス用いて取得された例示的な映像を示す図である。
図6B】従来の位相符号化によるパルスシーケンスを用いて取得された例示的な映像を示す図である。
図6C】従来の位相符号化によるパルスシーケンスを用いて取得された例示的な映像を示す図である。
【0015】
図7】本開示の幾つかの実施形態のために実施され得る、例示的な磁気共鳴映像法(「MRI」)システムのブロック図である。
【0016】
図8】本開示の幾つかの実施形態において説明される方法を実施することができる例示的なモデルベースの映像再構成システムのブロック図である。
【0017】
図9図8のシステムを具現化することができる例示的な構成要素のブロック図である。
【0018】
詳細な説明
磁気共鳴映像法(Magnetic Resonance Imaging:「MRI」)に基づいた無線周波数(「RF」)勾配のためのシステム及び方法が、本明細書および添付の付属書に説明される。特に、勾配は、B符号化スピンエコー・パルスシーケンスのような、B符号化パルスシーケンスを可能にするためにB1 RF磁場(フィールド)において確立される。制限しない例として、B磁場勾配は、周波数変調ラビ符号化エコー(「FREE」)技術を用いて確立され得る。幾つかの実施形態において、本開示において説明されるFREE技術を用いて取得された又は別な方法で符号化されたデータから映像(イメージ、画像)を再構成するために、モデルベースの映像再構成フレームワークが実施され得る。
【0019】
有利な点は、本開示で説明されるシステム及び方法は、従来のMRIの高コスト及び低い利用しやすさの問題に対処する。一般に、本開示で説明されるシステム及び方法は、MRIスキャナの主磁界Bにおいて磁場勾配を確立するために勾配磁場コイルを用いる代わりに、B磁場勾配に基づいた位相符号化のような、空間符号化を可能にする。有利な点は、本開示で説明されるFREE技術は、スピンエコー、勾配エコー又は他の係る原理に基づいたパルスシーケンスを含む、任意の適切なパルスシーケンスと共に使用されるように適合され得る。
【0020】
位相符号化は、ほぼ全てのMRI技術において空間符号化に使用される。本開示で説明されるシステム及び方法は、ハードウェア固有の勾配磁場コイルに依存する従来の及び持ち運びできるMRIの現在の方法とは異なり、RFコイルのみを用いる位相符号化を可能にする。有利な点は、本開示で説明されるFREE技術は、勾配磁場コイルを取り除くことを可能にし、勾配磁場コイルを用いずに磁気共鳴データを空間符号化する可能性を開く。勾配磁場コイルの必要性を取り除くことは、MRIシステムの開発および維持費のコストを大幅に低減することができる。
【0021】
本開示で説明されるFREE技術により、MRIシステムは、より広範囲にわたって分布することができる。有利な点は、システム及び方法は、低磁場(例えば、0.2T~1.5T)MRIシステム及び/又は持ち運びできるMRIシステムと共に具現化され得る。更に、本開示で説明されるFREE技術は、静かなMRIを容易にすることができ、その理由は、FREE技術が、従来のMRIにおいてかなりの騒音をもたらす構成要素である勾配磁場コイルを用いずに、イメージング(画像化、映像化)を可能にするからである。静かなMRIは、小児画像診断および一般集団に好都合である。
【0022】
上述のように、本開示で説明されるシステム及び方法は、空間依存するRF磁場を用いて磁気共鳴信号を空間符号化することを可能にし、それにより、MRIにおいて従来使用されていた1つ又は複数のB勾配磁場コイルを完全に取り除くことが可能になる。以前のRF撮像(「RFI」)技術は、同じような目標を企てていたが、様々な理由に起因して、成功は限られていた。特に、回転フレーム・ズーグマトグラフィ及び他の初期のRFI手法は、共鳴オフセットΔω=ω-ωRF、に影響されやすいことにより制限され、ここで、ωは、ラーモア周波数であり、ωRFはBキャリア周波数である。これらの方法を用いて、空間的情報は、有効磁界Beffの回りのスピンを展開することにより符号化される。即ち、回転フレーム(x’、y’、z’)において、
【数1】
【0023】
ここで、γは、磁気回転比である。つい最近の手法(送信アレイ空間符号化(Transmit Array Spatial Encoding:「TRASE」))は、類似した問題に直面し、複雑なパルス状パターンを有する特殊コイルを必要とする。別の手法、ブロッホ-シーガート(Bloch-Siegert)シフト符号化は、結果を約束することを実証したが、依然として共鳴オフセット効果に影響されやすいと同時に、非共鳴(off-resonant)パルスから位相シフトを追加するために高電力を有するパルスを必要とする。
【0024】
本開示で説明されるFREEシステム及び方法は、スピンエコー又は他のパルスシーケンスにおいて、断熱全通過(adiabatic full passage:「AFP」)パルス(例えば、双曲線正割(Hyperbolic Secant:「HS」)パルス、チャープパルス)を用いて空間符号化を成し遂げる周波数変調(「FM」)RFI方法を用いることにより、これら以前のRFI技術の問題を克服する。一例として、180度周波数掃引RFパルスが使用されることができ、当該RFパルスは有利には、余分な電力を必要とせず(即ち、低下した電力堆積)、且つより効率的である。FREEにおいて、空間的情報は、空間的に変化するRF磁場振幅B(r)と共にAFPが送信される際に結果として生じる磁化の位相において符号化される。
【0025】
スピンエコー・シーケンスにおいて再焦点(リフォーカス)パルスとしてAFPを用いる場合、磁化は、使用されるB(r、t)関数に依存する位相と共に残される。このB依存性位相因子は、FM掃引の時間依存性によって生じるΔω依存性二次位相に対する付加物である。結果としての磁化位相のB依存性は、B依存性位相符号化を達成するために利用される。
【0026】
制限しない例として、二重スピンエコー・シーケンスにおいて、同じ時間帯域幅積Rを有する2つのAFPパルスの応用形態は、全てのB依存性位相因子およびB依存性位相因子を除去する、リフォーカス磁化につながる。AFPパルスを用いて、帯域幅は、位相変調を比例してスケーリングすることによってパルス持続時間を増大させる際に、一定に保持され得る。このプロセスを制御するための関係変数は、時間-帯域幅の積Rであり、それは、AFPパルス長T及びその帯域幅BWの単位のない積である。異なる時間-帯域幅の積を有する2つのAFPの応用形態は、Δωへの何らかの依存性を有する、残留B依存性位相につながる。例えば、生成されたパルスパターンのR値(即ち、時間-帯域幅の積)は、パルスの帯域幅を一定に保持しながら、パルス持続時間を増加することにより増大され得る。FREEにおいて、このB依存性位相は、二重スピンエコー・シーケンスにおいてAFPで位相符号化を行うために、Bコイルマップと連係して利用される。
【0027】
断熱状態で実行される場合、AFPは、スピンが周波数掃引の範囲のどこかでラーモア周波数を有する場合に、磁化ベクトルが、ベクトルBeff(t)とほぼ同一線上に留まるように、ベクトルBeff(t)の低速掃引を実行する。AFPパルスは、それらの振幅変調関数および周波数変調関数、ω=γB(t)及びωRF(t)の項で記述されることができ、双方の単位は、rad/sである。注目すべきは、ωは、ラビ周波数と呼ばれ得る。
【0028】
双曲線正割(例えば、「HSn」)パルスは、AFPパルスの1つの例示的なクラスであり、広帯域にわたって均一な反転プロファイルを伝えることができる。HS1パルスに関して、AM関数およびFM関数は、以下のように書かれ得る、即ち
【数2】

【数3】
【0029】
ここで、0≦t≦Tの場合、τ=2t/T-1であり、ω maxは、FREEにおいて空間的に変化するラビ周波数のピークであり、ωはFM掃引における中心周波数である。Aは、周波数掃引カットオフ(例えば、0.5BW)であり、βは、単位のない切り捨て(打ち切り)因子である。制限しない例として、βは、sech-1(β)=0.01のように設定されることができ、そのため、パルスは、振幅がそのピーク値の1%に達する際に終了する。幾つかの具現化形態において、周波数変調は、以下の式4によるFM関数に関連した位相変調(「PM」)関数を通じて実施され得る。
【数4】
【0030】
横方向磁化から始める際、HS1パルスから生じるB依存性位相は、以下により与えられる。
【数5】

【数6】
【0031】
変数Ωは、例えば、化学シフト及び/又はB不均一性から生じる任意の一定のオフセットを表わすために使用される。式5により表わされた位相をΩ成分およびω max成分へ分解する場合、下記が得られる。
【数7】
【0032】
ここで、
【数8】

【数9】
【0033】
式5及び式9において、ω max依存性(従属)を利用することにより、ほぼ線形のB磁場を生成するRFコイルは、磁化が断熱方式で反転される限り、物体を横切るほぼ線形の位相を符号化することができる。磁化位相(式9)のω max依存性が線形である近似値内で、スピンエコーFREE方法は、MRIにおける従来の位相符号化に類似する。双方の方法を用いて、完全にサンプリングされたフーリエ符号化は、ナイキスト基準が満たされ得るように、磁化位相を線形的に変化させる必要がある。
【0034】
本開示で説明されるFREE技術は任意の数の異なるパルスシーケンスと共に利用され得るが、1つの実例および制限しない例として、FREEは、図1Aに示されるように、マルチショット二重スピンエコー・シーケンスで実施され得る。この例示的なパルスシーケンスは、ハードパルスのようなRF励起パルス102による横方向磁化の励起に続く、2つの周波数変調RFパルス(例えば、HSn RFパルス)を含む。このFREE二重スピンエコー・シーケンスにおいて、所与のR値の第1の周波数変調RFパルス104により誘導される位相は、同じ又は異なるR値の第2の周波数変調RFパルス106により線形的に変更される。
【0035】
第1と第2の周波数変調RFパルス(例えば、R及びR)104、106との間のR値に差分(ΔR)を付与することにより、位相は、その後のエコー108において符号化されることが可能になる。エコー(例えば、磁気共鳴信号)をサンプリングし且つマルチショット手法において二重スピンエコー・シーケンスを利用することは、デカルト位相符号化を可能にする。
【0036】
二重スピンエコー・シーケンス又は他の適切なパルスシーケンスにおいてAFPパルスのR値を変化させる場合、B不均一性の影響(式5におけるΩによって説明される)は無効にされると同時に、ω maxでの線形依存性のみが残る。異なるR値で生じる二重エコーに関するω maxでのφHSの依存性は、伝播関数の分析に関連して後述される。直接的関係は、R値の差分(ΔR)と達成される位相符号化の量との間に存在する。所与の視界(「FOV」)及び既知のB勾配に関して、ナイキスト基準を満たすR差分の値(即ち、ΔR)が求められ得る。かくして、k空間の軌跡は、ΔRの繰り返される増分により達成され得る。
【0037】
複数のショットを用いて、k空間は、パルスの1つのR値を一定に保ち且つΔRの整数倍だけ残りを変化させることにより、サンプリングされ得る。幾つかの具現化形態において、第1のショットは、R値において最も大きい差分を有する場合がある(R-Rmin)。収集されるべきサンプルの数としてNを定義し、変化しないパルスのR値としてRを定義すると、以下の通りである。
【数10】
【0038】
図1Bは、単一(シングル)ショット手法を具現化する別の例示的なFREEパルスシーケンスを示す。この例において、第1の二重スピンエコー対は、最も大きいR値の差分を有する。後続の再焦点(即ち、π)パルス対は、取得される各エコーにおいて位相を増分的に加える正確なΔRの差分を有する。
【0039】
図1Cは、全(奇数および偶数)エコーが取得される別のマルチショットのバージョンを具現化する更に別の例示的なFREEパルスシーケンスを示す。この例において、第1のパルスを除いた全パルスは、Rbase+ΔRを有し、Rbaseは、任意の断熱R値である。更なるショットは、ΔRの整数値だけ第1のパルスのR値(R)を低減する。k空間行列が、データ列(ショット数)をエコー数としての行と連結させることにより、作成される。
【0040】
ΔRだけ1つのAFPのR値をインクリメントすることは、ω max及びωeffでのそのほぼ線形の依存性に起因して、磁化位相をインクリメントすることに相当する。また、それは、従来のMRIに類似して、Δkをインクリメントすることにも相当する。従来の位相符号化との更なる類推に対して、ΔkとΔRの関係がここで明らかにされる。ΔTのパルス持続時間の差に関して、空間に関してωeff(t、r)を区別し、次いで時間に関して積分し、以下を生じる。
【数11】
【0041】
ここで、関心のある変数は、ΔR=ΔT・BW、及びGPE=BWRabi/FOVにより定義される線形勾配であり、ここで、BWRabiはFOVにわたって符号化するために使用されるBコイルの帯域幅であり、BWRabi=B(rmin)-B(rmax)である。従って、式Δk及び式ΔRは、以下の通りである。
【数12】

【数13】
【0042】
ここで、
【数14】
【0043】
式12及び式13は、空間においてBWRabiを包含するFOVに適切に従ってk空間をサンプリングするためにΔk及びΔRのステップサイズを設定する。FOVは、Bマップの符号化フィールド及びその勾配により設定される。名称R及びRはそれぞれ、第1及び第2のAFPパルスに使用される(図1)。RをRminからRmaxまで掃引し且つRを一定に保持し、ここで、
【数15】

【数16】
【0044】
サンプリングされるべきポイントの数として定義されたNを用いて、-kmaxから+kmaxまでのk空間の適切なΔkによるサンプリングが可能になる。この例示的なシーケンスにおいて、k空間は、-kmaxをサンプリングすることから始まり、式(13)及び式(14)において定義されたΔkだけインクリメントし、+kmaxに達するまで、複数のショットを通じてサンプリングされる。Δkを変更するために、BコイルのBWRabiは、式(12)に従って変更され得る。
【0045】
マルチショット・シーケンスが、使用される最大値Tを最小化するように最適化された。定常パルスを一定に保持し且つ変調パルスのR値をΔRだけRminからRmaxまでインクリメント(増分)せずに、変調パルスは、RminがRに等しくなるまで、ΔRだけインクリメントされ得る。次いで、パルスの順序が変更され、変調パルスがRからRminに戻るようにインクリメントされ得る。この変化は、T=Rmax/BWとは対照的に、T=R/BWを効果的に最大にする。
【0046】
FREEが、全ての横方向磁化成分に対して、HS1パルス(式(9))で得られたω max依存性位相を利用する場合、定位相が、式(8)により与えられるような各ΔTを用いて加えられる。この定位相は、映像(イメージ、画像)において物体を適切に位置決めするように映像再構成において補償され得る。HS1パルスのオフレゾナンス(非共鳴)成分を記述する以下の2つの式の分析は、定義され得るこの追加の位相変調を可能にする。
【数17】

【数18】
【0047】
Ω=0の場合を用いて、及びこれらの独立位相成分(式(17)及び式(18))を合計すると、正味のオフセット位相は以下のように定義される。
【数19】
【0048】
シーケンスにおいて2つのAFPを記述するために、式(19)は、FREEシーケンスにおけるパルスの長さの差を含むように展開され得る。即ち
【数20】

【数21】
【0049】
式(21)は、復調され得る搬送波周波数を記述する。
【0050】
断熱条件が完全に満たされ且つBeffの正味の回転がπに近づくと仮定することにより、二重スピンエコーFREEシーケンスの分析的表現は、伝播関数分析を用いて得られ得る。
【数22】
【0051】
ここで、Ψは、以下により定義されるBeffに関する展開(evolution:発生、開方)の全角度である。
【数23】
【0052】
Δαは正味のBeff掃引角度であり、φはパルスの最初のパルスである。断熱条件が満たされると仮定すると、磁化ベクトルの成分に適用される変換は、分析的に記述され得る。
【数24】

【数25】

【数26】
【0053】
この一般的な伝播関数を用いて、Beffの反転(Δα=π)は、以下のような回転行列の形態で表わされ得る。
【数27】
【0054】
図1Aに示されたFREEシーケンスにおいて、2つのAFPパルスの1つのパルス長Tが1つのショットから次ぎのショットまでに増減される際に、BWは一定に保持される。各ショットで時間-帯域幅の積(ΔR=ΔT・BW)に差(差分)を有することにより、位相における増加の比例量(2φ-Ψ)がその後のエコーに刻み込まれる。
【0055】
図2A図2Cは、基準の第1(x’、y’、z’)及び第2(x”、y”、z’)の回転フレームにおいて、AFPの全体にわたる磁化ベクトル(M)の軌跡およびその位相累積(蓄積)を示す。AFPパルスの最初に(図2A)、Mは、横断面にあり、全ての回転フレームは整列する。AFP中(図2B)、Mは、有効磁界がα(t)だけ回転する際、有効周波数(ωeff)で発生(evolve:展開する、発達する)し、反転した横方向磁界で終了する(図2C)。位相Ψ(t)は、AFPの持続時間にわたって生じる。パルスの終了時に、第2の回転フレームが第1のフレームに対して反転され、生じた最終の位相はΨ(T)である。
【0056】
2つのAFPパルスを等しいパルス・パラメータ(図1に関して、R=R)で連結することは、恒等変換につながり、例えば、以下の通りである。
【数28】
【0057】
φ=0及び同一のBWの場合について、異なるT設定で2つのAFPの場合の評価を可能にする伝播関数分析から生成される回転行列は、以下の通りである。
【数29】
【0058】
図1Aに示された二重スピンエコーFREEシーケンスにおいて、第1のAFP(変調パルスと呼ばれる場合がある)の持続時間は、ショット毎に増分的に変化するが、第2のAFP(定常パルスと呼ばれる場合がある)の全パラメータは、一定のままである。断熱全通過パルスのこの伝播関数分析は、B(r)勾配に基づいた位相符号化が実現可能であることを示す(図3)。
【0059】
ここで、MRIシステムのB勾配磁場コイルの完全な除去を促進し、特に、位相符号化の勾配を目的にする新たなイメージング方法が説明される。マルチショット二重スピンエコーFREEシーケンス、及びFREE技術を具現化する他のパルスシーケンスは、Bの不均一性に極めて影響を受けないように断熱条件を利用する。このレジリエンスは、パルスの帯域幅に一致して存在する。不均一性(不均等性)に対するより大きな耐性が必要とされる場合、パルスのBWが増大されることができ、低コストのシステムにおける予想されるB不均一性に対してFREEを極めて頑強にする。
【0060】
従前のRFI手法は、大きな共鳴オフセットの存在下で不十分である。従来(一定周波数)のパルスを用いて、共鳴オフセットは、横断面から外へBeffを傾ける効果を有し、結果として、磁化を効果的に回転させるための能力は、パルス持続時間が増加するにつれて減少する。
【0061】
実験に基づいて、FREEは、4Tから一定の比率で減らされ且つ高次のシミングが行われていないという事実に起因した低いB均一性を有する1.5T磁石を用いて試験された。表面コイルのBマップにおける非線形性は、FREEの再構成で看取される歪みに影響を及ぼし、当該再構成をコイルの非線形領域の方へ伸ばして圧縮する。FREEがスピン上に有する効果は、標準的なMRI位相符号化と同等であり、そのため、歪み補正、パラメータ最適化、又は後処理に関する標準的なMRIに利用可能な手法の多くは、より低いB値で看取されるわずかなピクセル歪みに取り組むために合理的にここで適用され得る。実験的に及びシミュレーションで示されるように、再構成を改善するための1つの条件は、より高いB値および線形コイルマップと共にFREEを利用することであった。FREEの予期せぬ利点は、視界(「FOV」)が勾配により設定するのとは対照的に、コイルの磁場の出発点から画定される点である。RFコイルが被験者(対象物)に取付けられ得る応用形態において、FREEは、FOVがコイルと共に移動する際に、動きアーチファクトに対するより高い耐性につながることができる。
【0062】
本開示で説明される例の幾つかにおいて、FREEは、パルスのBWを一定に保持し且つパルスの1つの長さを増加または低減することにより、実施された。次いで、B勾配、及び異なるパルス長を有する2つのAFPを用いることにより、磁化位相が空間情報を符号化することができる。他のRFIはFMパルスを利用せず、AMパルスだけを用いて、パルスの長さを増加または低減することにより、パルスのBWが変更される。これは、等色曲線の位相符号化可変範囲の効果を有する。FREEを利用する際、BWを一定に保持することにより、等色曲線の同じ範囲の位相符号化が可能にされた。
【0063】
本開示で説明されるシステム及び方法は、FM関数およびほぼ線形に変化するBマップを使用する。本開示で説明されるFREEシーケンス及び実験結果は、制限しない例である。FREEは、実験においてHS8パルスの使用を通じて示されるように、FM関数をHS1パルスに制限しない。更に、FREEは、まだ調査されていない他のパルスに適合することが企図され、当該他のパルスは、それら自体の利点(例えば、チャープ)を担う場合がある。上述された例示的なシーケンスは、マルチショット手法であり、それによりk空間の1つの点がショット毎に取得されるが、1つのショットで又はより複雑なk空間軌跡においてk空間の全てを取得するためにスピンエコー列を利用するもののような、より複雑なFREEシーケンスが開発され得る。パルスシーケンスがスピンエコー又は他のエコー列を実施する場合、R差分値は、パルスシーケンス内で追加的に又は代替的に変更され得る。
【0064】
さて、図4を参照すると、流れ図が、被験者からデータを取得するためにFREE技術を用いて被験者を磁気共鳴映像化するための例示的な方法のステップを説明するように示される。より詳細に上述されたように、FREE技術において、データは、磁気共鳴信号の空間符号化(例えば、位相符号化)を提供するためにB RF磁場における勾配を用いて取得される。このように、FREE技術は、磁場勾配コイルを必要とせずに、磁気共鳴データが被験者から取得されることを可能にする。
【0065】
方法は、ステップ402において示されるように、FREE技術を用いて被験者から磁気共鳴データを取得することを含む。上述されたように、磁気共鳴データは一般に、FREE技術を用いて取得されることができ、この場合、磁気共鳴信号の空間符号化は、磁場勾配コイルを用いて磁場勾配(例えば、主磁場における勾配)を確立するのとは対照的に、B RF磁場を適切に変調することにより、少なくとも部分的に提供される。
【0066】
一般に、磁気共鳴データは、2つ以上の周波数変調されたRFパルス(周波数変調RFパルスと称する)を含むパルスシーケンス用いて取得され得る。パルスシーケンス(及び/又はマルチショット・パルスシーケンスの異なるショット)の異なる繰り返し(反復)において、周波数変調RFパルスの時間-帯域幅の積を変化させることにより、様々な位相が磁気共鳴信号に付与され、それにより磁気共鳴信号の異なる空間的符号化が提供される。例えば、パルスシーケンスの1つの繰り返し及び/又はショットにおける2つの周波数変調RFパルスの時間-帯域幅の積の差分は、1つの位相値を付与し、そのため、時間-帯域幅の積のその差分を調整することにより、様々な位相値が後続の繰り返し及び/又はショットに付与され得る。
【0067】
例えば、磁気共鳴データは、一般にRF励起パルス及び少なくとも第1及び第2の周波数変調RFパルスを含むパルスシーケンスを用いて、取得され得る。制限しない例として、第1の周波数変調RFパルスが第1の時間-帯域幅の積を有することができ、第2の周波数変調RFパルスが第1の時間-帯域幅の積と異なる第2の時間-帯域幅の積を有することができる。周波数変調RFパルスは、断熱全通過RFパルス、HSn RFパルス、及びチャープRFパルスなどのような、様々な異なるタイプの周波数変調RFパルスを含むことができる。
【0068】
第1の時間-帯域幅の積と第2の時間-帯域幅の積の差分は、位相がRF励起パルスに応じて生じる磁気共鳴信号に付与されるように、選択される又は別な方法で設計される。第1の時間-帯域幅の積と第2の時間-帯域幅の積のこの差分を変更することにより、異なる位相値が磁気共鳴信号に付与され、それにより磁気共鳴信号を空間的に符号化するためのメカニズムが提供される。幾つかの具現化形態において、第1の時間-帯域幅の積と第2の時間-帯域幅の積の差分は、1つ又は複数の周波数変調RFパルスの持続時間を調整することにより、変更され得る。例えば、1つ又は複数の周波数変調RFパルスのパルス持続時間は、パルスシーケンスの後続の繰り返し時間(「TR」)期間において増加され得る。場合によっては、RFパルス持続時間を調整しながら、第1の周波数変調RFパルス及び/又は第2の周波数変調RFパルスの帯域幅は一定に保持され得る。パルスシーケンスの幾つかの繰り返しにおいて、第1の時間-帯域幅の積は、第2の時間-帯域幅の積に等しく設定され得る。
【0069】
磁気共鳴データは、RF励起パルスに応じて生じた磁気共鳴信号をサンプリングすることにより取得され、周波数変調RFパルス間の時間-帯域幅の積の差分の結果として空間的に符号化される。
【0070】
ステップ404で示されるように、磁気共鳴データが取得された後、1つ又は複数の映像が当該データから再構成される。幾つかの実施形態において、フーリエ変換ベースの映像再構成を用いて、従来の再構成技術と同様に、磁気共鳴データから映像を再構成することができる。他の実施形態において、並列映像再構成技術、反復再構成技術、及び機械学習ベースの映像再構成技術など含む他の再構成技術が、使用され得る。
【0071】
1つの制限しない例として、モデルベースの映像再構成技術が、FREE技術を用いて取得された映像を再構成するために使用され得る。例えば、反復一次近位勾配方法を用いて、FREE符号化技術のモデルに基づいている正規化線形反転問題を解決することができる。一例として、以下の正規化線形反転問題が解決され得る、即ち
【数30】
【0072】
ここで、Aは、符号化行列を表わし、当該符号化行列は、既知の磁場不均一性および受信コイルの感度を用いた完全ブロッホ・シミュレーションによって求められ得る。例えば、制限しない例として、符号化行列を生成するために、ブロッホ方程式が、2D並列化ブロッホ・シミュレータを用いてシミュレートされ得る。シミュレーションは、連続した物体を再現するために双方の寸法に沿って、サブボクセル平均化係数(例えば、8のサブボクセル平均化係数)を用いて実行され得る。符号化行列が生成された状態で、受信コイルの感度プロファイルは、各コイルが同じ符号化を被る際に、コイルの感度から行列を構築することにより、モデルへ組み込まれ得る。この手法は、複数の受信コイルへ容易に拡張され、アンダーサンプリングされたデータ、又は加速データ取得技術を用いて取得された他のデータから映像を再構成するために使用され得る。有利な点は、モデルベースの映像再構成を用いることは、FREE符号化が如何にして具現化され得るかにおいてより多くのバリエーションを可能にする。例えば、モデルベースの映像再構成を用いて、非線形勾配を有するBコイルが使用され得る際、非線形B磁場の歪みがモデルベースの映像再構成を用いるために適切に修正され得るからである。
【0073】
例示的な考察において、データは、2つのTx/Rxチャネルのために構成され且つ臨床勾配システムと共に1.5T、90cmの磁石に相互作用する磁気共鳴スペクトロメータを用いて取得された。当該磁石は4Tで動作するように設計されたが、再シミングなしで、1.5Tまで減らされ、比較的不均一なBを残している。単一ループの10cmコイルが、全ての実験においてRF送信および受信のために利用された。映像に基づいて、7.7kHzのピークのω max/2π値は、表面コイルループの中央付近で達成可能であった。
【0074】
図5に示されるように、最適化されたマルチショットFREE二重スピンエコー・シーケンスが、HS8パルスと共に利用された。FREEイメージングに関して、G勾配は使用されず、位相符号化はB勾配を用いて行われた。FREEシーケンスに関して、この例で使用される特定のMRIスキャナと達成できる最も短い繰り返し時間は、TR=24sであった。T重み付けを最小限にするために、TR=2.4sが、従来の(位相符号化)MRIスキャンのために選択された。軸方向スライス(10mmの厚さ)が、3msの持続時間のシンク(sync)パルス(5ローブ)を用いて励起された。全パルスは、3.9kHzのBWを有した。FREEにおいて、R値は、Rmin=20からΔR=0.44を用いてRmax=43.66までインクリメントされた。全映像に関して、10cmのFOVが利用された。FREEに関して、FOVは、使用されているBコイルのBWrabiを所与として、ΔR値を適切に選択することにより設定された(式(12)及び式(13)を参照)。標準的なMRIに関して、Δkが、従来のB勾配磁場コイルにわたって設定された。映像行列サイズは、64(位相符号化)×128(読み出し)であった。
【0075】
図6A図6Cは、この例示的な考察において得られた例示的な映像を示す。FREE及び従来のMRI位相符号化が、参加者の後頭部のイメージングを通じて比較された。図6Aは、y方向において実行されたFREE位相符号化を用いて得られた映像を示す。非線形性が、低いB値およびコイルマップの非線形領域の双方で存在した。最適化されたFREE二重スピンエコー列マルチショット・シーケンスが位相符号化のために利用され、再構成がフーリエ変換を通じて行われた。図6Bは、二重スピンエコー・シーケンスを用いる標準的なMRI位相符号化を用いて得られた映像を示す。図6Cは、RF振幅ω maxの空間的変動の大まかな推定を可能にするために、シンク(sinc)励起パルスに使用されるRF電力がHS8パルスに使用されるものまで増加されたことを除いて、図6Bと同様に得られた映像を示す。
【0076】
さて、特に図7を参照すると、本明細書で説明される方法を具現化することができる磁気共鳴映像法(「MRI」)システム700の一例が示される。MRIシステム700は、ディスプレイ704、1つ又は複数の入力装置706(例えば、キーボード、マウス)、及びプロセッサ708を含む場合がある操作者ワークステーション702を含む。プロセッサ708は、市販のオペレーティングシステムを実行する市販のプログラム可能マシンを含む場合がある。操作者ワークステーション702は、走査(スキャン)パラメータをMRIシステム700へ入力することを容易にする操作者インターフェースを提供する。操作者ワークステーション702は、例えば、パルスシーケンス・サーバ710、データ収集サーバ712、データ処理サーバ714、及びデータ記憶サーバ716を含む、様々なサーバに結合され得る。操作者ワークステーション702及びサーバ710、712、714及び716は、有線または無線ネットワーク接続を含む場合がある通信システム740を介して接続され得る。
【0077】
パルスシーケンス・サーバ710は、無線周波数(RF)システム720、及び必要に応じて勾配システム718を動作させるために、操作者ワークステーション702により提供される命令に応じて機能する。幾つかの構成において、MRIシステム700は、勾配システム718を含まない場合があり、代わりに空間符号化が、RFシステム720を用いてB勾配を生成するために、本開示で説明されたFREE技術を用いることにより提供され得る。勾配システム718が存在し且つ部分的空間符号化(例えば、スライス符号化)のために具現化される場合、所定のスキャンを実行するための勾配波形が生成され、勾配システム718に印加され、次いでアセンブリ722における勾配磁場コイルが励起されて、本開示で説明されるFREE技術を用いて符号化されない空間次元に沿って磁気共鳴信号を空間的に符号化するために使用される磁場勾配が生成される。これら構成において、勾配磁場コイルアセンブリ722は、分極磁石726及び全身RFコイル728を含む磁石アセンブリ724の一部を形成することができる。
【0078】
RF波形が、所定の磁気共鳴パルスシーケンスを実行するために、RFシステム720によりRFコイル728に、又は別個の局所的コイルに印加される。RFコイル728又は別個の局所的コイルにより検出された応答性磁気共鳴信号は、RFシステム720により受け取られる。応答性磁気共鳴信号は、パルスシーケンス・サーバ710により生成されたコマンドの命令に従って、増幅され、復調され、フィルタリングされ、デジタル化され得る。RFシステム720は、MRIパルスシーケンスで使用される多種多様のRFパルスを生成するためのRF送信機を含む。RF送信機は、所望の周波数、位相、及びパルス振幅波形のRFパルスを生成するために、所定のスキャン及びパルスシーケンス・サーバ710からの命令に応答する。生成されたRFパルスは、全身RFコイル728、或いは1つ又は複数の局所的コイル又はコイルアレイに印加され得る。
【0079】
また、RFシステム720は、1つ又は複数のRF受信機チャネルも含む。RF受信機チャネルは、RF前置増幅器および検出器を含み、RF前置増幅器は、それが接続されたコイル728により受け取られた磁気共鳴信号を増幅し、検出器は、受け取られた磁気共鳴信号のI及びQ直交成分を検出してデジタル化する。従って、受け取られた磁気共鳴信号の大きさは、I成分とQ成分の2乗の和の平方根により、サンプリングされる点において求められ得る。即ち、
【数31】
【0080】
また、受け取られた磁気共鳴信号の位相は、以下の関係に従って、求められ得る。即ち、
【数32】
【0081】
パルスシーケンス・サーバ710は、生理的収集コントローラ730から患者データを受け取る場合がある。例として、生理的収集コントローラ730は、患者に接続された多数の異なるセンサから信号を受け取る場合があり、当該信号は、電極からの心電図(「ECG」)信号、或いは呼吸検出用ベローズ又は他の呼吸モニタリング装置からの呼吸に関する信号を含む。これら信号は、スキャンの実施を被験者の心拍または呼吸と同期させる又は「ゲート制御する」ために、パルスシーケンス・サーバ710により使用され得る。
【0082】
また、パルスシーケンス・サーバ710は、患者および磁気システムの状態と関連した様々なセンサから信号を受け取るスキャンルーム・インターフェース回路732に接続する場合がある。スキャンルーム・インターフェース回路732を介して、患者位置決めシステム734は、スキャン中に所望の位置へ患者を移動するためのコマンドを受け取ることができる。
【0083】
RFシステム720により生成されたデジタル化磁気共鳴信号サンプルは、データ収集サーバ712により受け取られる。データ収集サーバ712は、操作者ワークステーション702からダウンロードされた命令に応じて動作して、リアルタイム磁気共鳴データを受け取り且つバッファ記憶を行い、その結果、データは、データオーバーランにより失われない。幾つかのスキャンにおいて、データ収集サーバ712は、取得された磁気共鳴データをデータ処理サーバ714に送る。スキャンの更なる実施を制御するために、取得された磁気共鳴データから導出される情報を必要とするスキャンにおいて、データ収集サーバ712は、係る情報を生成してそれをパルスシーケンス・サーバ710に伝達するようにプログラミングされ得る。
【0084】
データ処理サーバ714は、操作者ワークステーション702により提供される命令に従って、データ収集サーバ712から磁気共鳴データを受け取り、磁気共鳴データを処理する。係る処理は、例えば、未加工のk空間データのフーリエ変換を実行することにより、二次元映像又は三次元映像を再構成すること、他の映像再構成アルゴリズム(例えば、反復または逆投影法再構成アルゴリズム)を実行すること、未加工のk空間データ又は再構成された映像にフィルタを適用すること、機能的磁気共鳴映像を生成すること、或いは動画または流れ画像を計算することを含む場合がある。
【0085】
データ処理サーバ714により再構成された映像は、記憶のために操作者ワークステーション702に戻るように伝達される。リアルタイム映像がデータベース・メモリキャッシュに格納される場合があり、リアルタイム映像はそこから、操作者ディスプレイ704又はディスプレイ736に出力され得る。バッチモード映像又は選択されたリアルタイム映像は、ディスク記憶装置738のホスト・データベースに格納され得る。係る映像が再構成されて記憶装置に転送される場合、データ処理サーバ714は、操作者ワークステーション702のデータ記憶サーバ716に通知する場合がある。操作者ワークステーション702は、映像をアーカイブし、フィルムを作成し、又はネットワークを介して映像を他の施設へ送るために、操作者により使用され得る。
【0086】
また、MRIシステム700は、1つ又は複数のネットワーク接続ワークステーション742も含む場合がある。例えば、ネットワーク接続ワークステーション742は、ディスプレイ744、1つ又は複数の入力装置(例えば、キーボード、マウス)746、及びプロセッサ748を含む場合がある。ネットワーク接続ワークステーション742は、操作者ワークステーション702と同じ施設内に、又は異なる健康管理機関または外来診療所のような、異なる施設内に位置する場合がある。
【0087】
ネットワーク接続ワークステーション742は、通信システム740を介して、データ処理サーバ714又はデータ記憶サーバ716に対する遠隔アクセスを獲得する場合がある。従って、複数のネットワーク接続ワークステーション742は、データ処理サーバ714及びデータ記憶サーバ716にアクセスできる場合がある。このように、磁気共鳴データ、再構成された映像、又は他のデータは、データ処理サーバ714又はデータ記憶サーバ716とネットワーク接続ワークステーション742との間で交換される場合があり、データ又は映像は、ネットワーク接続ワークステーション742により遠隔的に処理され得るようになっている。
【0088】
さて、図8を参照すると、本開示で説明されるシステム及び方法の幾つかの実施形態に従って、映像再構成(場合によっては、モデルベースの映像再構成フレームワークである場合がある)を用いるFREE技術を用いて取得されたデータから映像を再構成するためのシステム800の一例が示される。図8に示されるように、コンピューティング装置850は、データソース802から1つ又は複数のタイプのデータ(例えば、k空間データ、受信機コイル感度データ)を受け取ることができる。幾つかの実施形態において、コンピューティング装置850は、FREE技術を用いて取得された磁気共鳴データ(例えば、k空間データ)から映像を再構成するために映像再構成システム804の少なくとも一部を実行することができる。幾つかの実施形態において、映像再構成システム804は、上述されたように、モデルベースの映像再構成を実施することができる。
【0089】
更に又は代案として、幾つかの実施形態において、コンピューティング装置850は、データソース802から受け取られたデータに関する情報をサーバ852へ通信ネットワーク854を介して伝えることができ、当該サーバ852は、映像再構成システム804の少なくとも一部を実行することができる。係る実施形態において、サーバ852は、映像再構成システム804の出力を示す情報をコンピューティング装置850(及び/又は任意の他の適切なコンピューティング装置)に戻すことができる。
【0090】
幾つかの実施形態において、コンピューティング装置850及び/又はサーバ852は、デスクトップコンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、ウェアラブル・コンピュータ、サーバコンピュータ、及び物理的コンピューティング装置により実行されている仮想マシンなどのような、任意の適切なコンピューティング装置または装置の組み合わせであることができる。また、コンピューティング装置850及び/又はサーバ852は、データから映像を再構成することもできる。
【0091】
幾つかの実施形態において、データソース802は、MRIシステム、別のコンピューティング装置(例えば、測定データ、測定データから再構成された映像、処理された映像データを記憶するサーバ)などのような、データ(例えば、測定データ、測定データから再構成された映像、処理された映像データ)の任意の適切なソースであることができる。幾つかの実施形態において、データソース802は、コンピューティング装置850に局所的であることができる。例えば、データソース802は、コンピューティング装置850と統合され得る(例えば、コンピューティング装置850は、測定、記録、予測、取得、又は別な方法でデータを収集または格納するための装置の一部として構成され得る)。別の例として、データソース802は、ケーブル、及び直接無線リンクなどにより、コンピューティング装置850に接続され得る。更に又は代案として、幾つかの実施形態において、データソース802は、コンピューティング装置850から局所的に及び/又は遠隔的に位置することができ、通信ネットワーク(例えば、通信ネットワーク854)を介して、データをコンピューティング装置850(及び/又はサーバ852)に伝えることができる。
【0092】
幾つかの実施形態において、通信ネットワーク854は、任意の適切な通信ネットワーク又は通信ネットワークの組み合わせであることができる。例えば、通信ネットワーク854は、Wi-Fiネットワーク(1つ又は複数の無線ルータ、1つ又は複数のスイッチなどを含むことができる)、ピアツーピア・ネットワーク(例えば、ブルートゥース・ネットワーク)、セルラーネットワーク(例えば、CDMA、GSM、LTE、LTEアドバンスト、WiMAXなどのような、任意の適切な規格に準拠する3Gネットワーク、4Gネットワークなど)、他のタイプの無線ネットワーク、及び有線ネットワークなどを含むことができる。幾つかの実施形態において、通信ネットワーク854は、ローカルエリア・ネットワーク、広域ネットワーク、公共ネットワーク(例えば、インターネット)、私的ネットワーク又は半私的ネットワーク(例えば、企業イントラネット又は大学イントラネット)、任意の他の適切なタイプのネットワーク、又はネットワークの任意の適切な組み合わせであることができる。図8に示された通信リンクはそれぞれ、有線リンク、光ファイバリンク、Wi-Fiリンク、ブルートゥース・リンク、及びセルラーリンクなどのような、任意の適切な通信リンク又は通信リンクの組み合わせであることができる。
【0093】
さて、図9を参照すると、本開示で説明されるシステム及び方法の幾つかの実施形態に従って、データソース802、コンピューティング装置850、及びサーバ852を具現化するために使用され得るハードウェア900の一例が示される。
【0094】
図9に示されるように、幾つかの実施形態において、コンピューティング装置850は、プロセッサ902、ディスプレイ904、1つ又は複数の入力装置906、1つ又は複数の通信システム908、及び/又はメモリ910を含むことができる。幾つかの実施形態において、プロセッサ902は、中央処理装置(「CPU」)、及びグラフィック処理ユニット(「GPU」)などのような、任意の適切なハードウェア・プロセッサ又はプロセッサの組み合わせであることができる。幾つかの実施形態において、ディスプレイ904は、液晶ディスプレイ(「LCD」)画面、発光ダイオード(「LED」)ディスプレイ、有機LED(「OLED」)ディスプレイ、電気泳動ディスプレイ(例えば、「e-link」ディスプレイ)、コンピュータモニタ、タッチスクリーン、及びテレビ受像機などのような、任意の適切なディスプレイ装置を含むことができる。幾つかの実施形態において、入力装置906は、キーボード、マウス、タッチスクリーン、及びマイクロホンなどのような、ユーザ入力を受け取るために使用され得る任意の適切な入力デバイス及び/又はセンサを含むことができる。
【0095】
幾つかの実施形態において、通信システム908は、通信ネットワーク854及び/又は任意の他の適切な通信ネットワークを介して情報を伝えるための任意の適切なハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。例えば、通信システム908は、1つ又は複数のトランシーバ、1つ又は複数の通信チップ及び/又はチップセットなどを含むことができる。より具体的な例において、通信システム908は、Wi-Fi接続、ブルートゥース接続、セルラー接続、及びイーサネット(登録商標)接続などを確立するために使用され得るハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。
【0096】
幾つかの実施形態において、メモリ910は、例えば、ディスプレイ904を用いてコンテンツを呈示するために、通信システム(単数または複数)908などを介してサーバ852と通信するためにプロセッサ902により使用され得る命令、値、データ又は同種のものを格納するために使用され得る任意の適切な記憶装置(単数または複数)を含むことができる。メモリ910は、任意の適切な揮発性メモリ、不揮発性メモリ、記憶装置、又はそれらの任意の適切な組み合わせを含むことができる。例えば、メモリ910は、ランダムアクセス・メモリ(「RAM」)、読み出し専用メモリ(「ROM」)、電気的プログラム可能ROM(「EPROM」)、電気的消去可能PROM(「EEPROM」)、他の形態の揮発性メモリ、他の形態の不揮発性メモリ、1つ又は複数の形態の準揮発性メモリ、1つ又は複数のフラッシュ・ドライブ、1つ又は複数のハードディスク、1つ又は複数の半導体ドライブ、及び1つ又は複数の光ドライブなどを含むことができる。幾つかの実施形態において、メモリ910は、それに符号化された又は別な方法で内部に格納された、コンピューティング装置850の動作を制御するためのコンピュータ・プログラムを有することができる。係る実施形態において、プロセッサ902は、コンテンツ(例えば、映像、ユーザインターフェース、グラフィックス、表)を呈示する、サーバ852からコンテンツを受け取る、及び情報をサーバ852に送るなどのためにコンピュータ・プログラムの少なくとも一部を実行することができる。例えば、プロセッサ902及びメモリ910は、本明細書で説明される方法を実行するように構成され得る。
【0097】
幾つかの実施形態において、サーバ852は、プロセッサ912、ディスプレイ914、1つ又は複数の入力装置916、1つ又は複数の通信システム918、及び/又はメモリ920を含むことができる。幾つかの実施形態において、プロセッサ912は、CPU、及びGPUなどのような、任意の適切なハードウェア・プロセッサ又はプロセッサの組み合わせであることができる。幾つかの実施形態において、ディスプレイ914は、LCD画面、LEDディスプレイ、OLEDディスプレイ、電気泳動ディスプレイ、コンピュータモニタ、タッチスクリーン、及びテレビ受像機などのような、任意の適切なディスプレイ装置を含むことができる。幾つかの実施形態において、入力装置916は、キーボード、マウス、タッチスクリーン、及びマイクロホンなどのような、ユーザ入力を受け取るために使用され得る任意の適切な入力デバイス及び/又はセンサを含むことができる。
【0098】
幾つかの実施形態において、通信システム918は、通信ネットワーク854及び/又は任意の他の適切な通信ネットワークを介して情報を伝えるための任意の適切なハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。例えば、通信システム918は、1つ又は複数のトランシーバ、1つ又は複数の通信チップ及び/又はチップセットなどを含むことができる。より具体的な例において、通信システム918は、Wi-Fi接続、ブルートゥース接続、セルラー接続、及びイーサネット(登録商標)接続などを確立するために使用され得るハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。
【0099】
幾つかの実施形態において、メモリ920は、例えば、ディスプレイ914を用いてコンテンツを呈示するために、1つ又は複数のコンピューティング装置850などと通信するためにプロセッサ912により使用され得る命令、値、データ又は同種のものを格納するために使用され得る任意の適切な記憶装置(単数または複数)を含むことができる。メモリ920は、任意の適切な揮発性メモリ、不揮発性メモリ、記憶装置、又はそれらの任意の適切な組み合わせを含むことができる。例えば、メモリ920は、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、他のタイプの揮発性メモリ、他のタイプの不揮発性メモリ、1つ又は複数のタイプの準揮発性メモリ、1つ又は複数のフラッシュ・ドライブ、1つ又は複数のハードディスク、1つ又は複数の半導体ドライブ、及び1つ又は複数の光ドライブなどを含むことができる。幾つかの実施形態において、メモリ920は、それに符号化された、サーバ852の動作を制御するためのサーバ・プログラムを有することができる。係る実施形態において、プロセッサ912は、情報および/またはコンテンツ(例えば、データ、映像、ユーザインターフェース)を1つ又は複数のコンピューティング装置850に送る、1つ又は複数のコンピューティング装置850から情報および/またはコンテンツを受け取る、及び1つ又は複数の装置(例えば、パーソナル・コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォン)から命令を受け取るなどのためにサーバ・プログラムの少なくとも一部を実行することができる。
【0100】
幾つかの実施形態において、サーバ852は、本開示で説明される方法を実行するように構成される。例えば、プロセッサ912及びメモリ920は、本明細書で説明される方法を実行するように構成され得る。
【0101】
幾つかの実施形態において、データソース802は、プロセッサ922、1つ又は複数のデータ収集システム924、1つ又は複数の通信システム926、及び/又はメモリ928を含むことができる。幾つかの実施形態において、プロセッサ922は、CPU、及びGPUなどのような、任意の適切なハードウェア・プロセッサ又はプロセッサの組み合わせであることができる。幾つかの実施形態において、1つ又は複数のデータ収集システム924は一般に、データ、映像又は双方を取得するように構成され、MRIシステムを含むことができる。更に又は代案として、幾つかの実施形態において、1つ又は複数のデータ収集システム924は、MRIシステムに結合する及び/又はMRIシステムの動作を制御するための任意の適切なハードウェア、ファームウェア、及び/又はソフトウェアを含むことができる。幾つかの実施形態において、データ収集システム(単数または複数)924の1つ又は複数の部分は、着脱可能および/または交換可能であることができる。
【0102】
留意すべきは、図示されていないが、データソース802は、任意の適切な入力装置および/または出力装置を含むことができる。例えば、データソース802は、キーボード、マウス、タッチスクリーン、マイクロホン、トラックパッド、及びトラックボールなどのような、ユーザ入力を受け取るために使用され得る入力デバイス及び/又はセンサを含むことができる。別の例として、データソース802は、LCD画面、LEDディスプレイ、OLEDディスプレイ、電気泳動ディスプレイ、コンピュータモニタ、タッチスクリーン、及びテレビ受像機などのような、任意の適切なディスプレイ装置、1つ又は複数のスピーカなどを含むことができる。
【0103】
幾つかの実施形態において、通信システム926は、(幾つかの実施形態において、通信ネットワーク854及び/又は任意の他の適切な通信ネットワークを介して)情報をコンピューティング装置850に伝えるための任意の適切なハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。例えば、通信システム926は、1つ又は複数のトランシーバ、1つ又は複数の通信チップ及び/又はチップセットなどを含むことができる。より具体的な例において、通信システム926は、任意の適切なポート及び/又は通信規格(例えば、VGA、DVIビデオ、USB、RS-232など)、Wi-Fi接続、ブルートゥース接続、セルラー接続、及びイーサネット(登録商標)接続などを用いて、有線接続を確立するために使用され得るハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。
【0104】
幾つかの実施形態において、メモリ928は、例えば、1つ又は複数のデータ収集システム924を制御する及び/又は1つ又は複数のデータ収集システム924からデータを受け取るために、データから映像を生成するために、ディスプレイを用いてコンテンツ(例えば、データ、映像、ユーザインターフェース)呈示するために、及び1つ又は複数のコンピューティング装置850と通信するためにプロセッサ922により使用され得る命令、値、データ又は同種のものを格納するために使用され得る任意の適切な記憶装置(単数または複数)を含むことができる。メモリ928は、任意の適切な揮発性メモリ、不揮発性メモリ、記憶装置、又はそれらの任意の適切な組み合わせを含むことができる。例えば、メモリ928は、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、他のタイプの揮発性メモリ、他のタイプの不揮発性メモリ、1つ又は複数のタイプの準揮発性メモリ、1つ又は複数のフラッシュ・ドライブ、1つ又は複数のハードディスク、1つ又は複数の半導体ドライブ、及び1つ又は複数の光ドライブなどを含むことができる。幾つかの実施形態において、メモリ928は、それに符号化された又は別な方法で内部に格納された、医用画像データソース802の動作を制御するためのプログラムを有することができる。係る実施形態において、プロセッサ922は、映像(イメージ、画像)を生成する、情報および/またはコンテンツ(例えば、データ、映像、ユーザインターフェース)を1つ又は複数のコンピューティング装置850に送る、1つ又は複数のコンピューティング装置850から情報および/またはコンテンツを受け取る、及び1つ又は複数の装置(例えば、パーソナル・コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォンなど)から命令を受け取るなどのためにプログラムの少なくとも一部を実行することができる。
【0105】
幾つかの実施形態において、任意の適切なコンピュータ可読媒体が、本明細書で説明される機能および/またはプロセスを実行するための命令を格納するために使用され得る。例えば、幾つかの実施形態において、コンピュータ可読媒体は、一時的または非一時的であることができる。例えば、非一時的(持続性)コンピュータ可読媒体は、磁気媒体(例えば、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク)、光媒体(例えば、コンパクト・ディスク、DVD、ブルーレイ・ディスク(登録商標))、半導体媒体(例えば、RAM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM)、一過性でない又は伝送中に何らかのうわべだけの永続性を欠いてない任意の適切な媒体、及び/又は任意の適切な有形の媒体のような、媒体を含むことができる。別の例として、一時的コンピュータ可読媒体は、ネットワーク上の信号、ワイヤ、導体、光ファイバ、回路における信号、又は一過性である及び伝送中に何らかのうわべだけの永続性を欠いている任意の適切な媒体、及び/又は任意の適切な無形の媒体を含むことができる。
【0106】
コンピュータ具現化形態の文脈において本明細書で使用される際、特別の定めのない限り又は制限されない限り、用語「構成要素(コンポーネント)」、「システム」、「モジュール」、「フレームワーク」、及び同類のものは、ハードウェア、ソフトウェア、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ、又は実行中のソフトウェアを含むコンピュータ関連システムの一部または全てを包含することが意図されている。例えば、構成要素は、以下に限定されないが、プロセッサ・デバイス、プロセッサ・デバイスにより実行されている(実行可能な)プロセス(処理)、オブジェクト、実行ファイル、実行のスレッド、コンピュータ・プログラム、又はコンピュータである場合がある。実例として、コンピュータで実行されているアプリケーション及びコンピュータの双方は、構成要素であることができる。1つ又は複数の構成要素(又はシステム、及びモジュールなど)は、プロセス又は実行のスレッド内に常駐する場合があり、1つのコンピュータに局所化され得る、2つ以上のコンピュータ又は他のプロセッサ・デバイス間に分散され得る、又は別の構成要素(又はシステム、及びモジュールなど)内に含まれ得る。
【0107】
幾つかの具現化形態において、本明細書で開示された装置(デバイス)又はシステムは、本開示の態様を具体化する方法を用いて、利用または実装され得る。それに応じて、特定の特徴、能力、或いは装置またはシステムの意図された目的に関する本明細書の説明は概して、意図された目的のために係る特徴要素を用いる方法、係る能力を具現化する方法、及びこれら目的または能力を支援するために開示された(又は別な方法で知られた)構成要素を実装する方法の開示を本質的に含むことが意図されている。同様に、別段の指示または制限がない限り、特定の装置またはシステムを製造または使用する(当該装置またはシステムを実装することを含む)何らかの方法に関する本明細書の考察は、係る装置またはシステムの利用される特徴および実現される能力の、本開示の実施形態としての開示を本質的に含むことが意図されている。
【0108】
本開示は、1つ又は複数の好適な実施形態を説明した。理解されるべきは、明確に言及されるものは別として、多くの等価物、代替案、変形態様、及び変更態様が可能であり、本発明の範囲内にある。
図1A
図1B
図1C
図2A-2C】
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
【国際調査報告】