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特表2024-517782近視を治療するための方法及び薬物組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】近視を治療するための方法及び薬物組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/416 20060101AFI20240416BHJP
   A61P 27/10 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 9/46 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61K31/416
A61P27/10
A61K9/08
A61K9/20
A61K9/19
A61K9/48
A61K9/16
A61K9/06
A61K9/46
A61K9/12
A61K9/70
A61K9/107
A61K45/00
A61K9/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566974
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 CN2022090230
(87)【国際公開番号】W WO2022228546
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】202110485864.7
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523409429
【氏名又は名称】▲遠▼大医▲薬▼(中国)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】周 翔天
(72)【発明者】
【氏名】潘 妙珍
(72)【発明者】
【氏名】瞿 佳
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ ▲欽▼元
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 昊
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA48
4C076AA49
4C076AA53
4C076AA71
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB17
4C076BB24
4C076CC10
4C076FF70
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA13
4C084MA17
4C084MA21
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA28
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA44
4C084MA52
4C084MA58
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA33
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC37
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA21
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA28
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA44
4C086MA52
4C086MA58
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA33
(57)【要約】
本出願は、近視及びその関連症状を治療、予防又は制御するための方法及び医薬組成物に関する。本出願の医薬組成物または方法は、近視を効果的に予防および制御することができ、安全であり、明らかな副作用がなく、良好な臨床応用の見通しを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)近視及びその関連症状を予防及び/又は治療するための使用;
(b)屈折異常に関連する眼球の異常な発育を遅延、軽減又は治療するための使用;
(c)個体がフレーム型近視用メガネ又はオルソケラトロジーレンズなどのレンズに依存せず又はそれを交換せずに、又は屈折手術などの他の視力矯正手段に依存しない条件下で、より鮮明な遠視視力を得るための使用;
(d)近視個体又は近視発症傾向のある個体の屈折度の持続的なマイナス化過程の速度を制御、抑制、遅延又は減速するための使用;
(e)屈折矯正手術、近視角膜レーザー手術、水晶体手術などの手術又は角膜コンタクトレンズなどの他の視力矯正手段と組み合わせて近視及びその関連症状を予防及び/又は治療するための使用;
(f)1つ又は複数の他の薬物と組み合わせて使用して近視及び近視関連症状を予防及び/又は治療するための使用;
(g)網膜と水晶体との間の距離を低減し、好ましくは近視個体又は近視傾向のある個体の網膜と水晶体との間の距離を低減するための使用;
(h)近視度数を小さくすること、又は近眼の治療、又は近眼の治療、又は近視の進行制御、又は近視矯正、又は近視の緩和、又は青少年の近視予防のための使用;
(i)水晶体病変による近視を抑制又は治療するための使用;
(j)上記(a)~(i)のうちの少なくとも1つの使用を実現する薬物組成物、製剤又はデバイスを製造するための使用;
上記(a)~(j)のうちの1つであり、又は少なくとも2つを同時に満たす使用であることを特徴とする、
ベンダザックリシン又はベンダザック、又はその光学異性体又はそのラセミ体、又はその溶媒和物、又はその薬学的に許容可能な塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝生成物、又はその類似体又はその誘導体、又はその結晶型化合物、又はこれらの物質の組み合わせの使用。
【請求項2】
前記ベンダザックリシン又はベンダザック、又はその光学異性体又はそのラセミ体、又はその溶媒和物、又はその薬学的に許容可能な塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝生成物、又はその類似体又はその誘導体、又はその結晶型化合物、又はこれらの物質の組み合わせは、唯一の活性成分又は主な活性成分として使用される、
ことを特徴とする前記請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記唯一の活性成分又は主な活性成分の含有量は、百分率で全ての活性成分の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は100%であり、前記百分率は質量比又はモル数の比である、
ことを特徴とする前記請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記これらの物質又はそれらの組み合わせと、前記1つ又は複数の他の薬物とを、投与する形態は、連続的に投与する形態、又は同時に投与する形態、又は順に投与する形態、又は交互に投与する形態、又は間隔をおいて投与する形態、又は個別で投与する形態として調製又は設計される、
ことを特徴とする前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記屈折異常に関連する眼球の異常な発育は、個体の幼少期段階(例えば、人間の2-28歳)で、主に環境要素で誘発され、又は主に人為的要素(例えば、長時間・近業作業の読書、電子スクリーンの頻繁的な使用、継続的に近方を見ることにより遠方を見る機会の欠如、屈折矯正メガネの不適当な使用、薬物による副作用、肥満、外傷、学習環境の照明の不十分、アウトドア運動の欠如)で引き起こされたものであり、遺伝学的要素は、二次要素・随伴要素・協同要素であり、もしくは、前記異常な発育は、調整リラックス状態下で、平行光線が目の屈折系を通過して屈折した後、網膜の前に焦点が結ばれることを主な特徴とする遺伝学的要素と完全に無関係な屈折発育異常である、
ことを特徴とする前記請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
全身投与(例えば、経口、点滴静脈注射)、又は局所投与(例えば、点眼、硝子体内注射、皮膚塗擦剤又は軟膏の塗布)、又は胃腸外投与(例えば、粘膜投与、経皮投与、マイクロニードルによる投与)の方式、又は非侵襲投与方式(例えば、目薬軟膏を角膜に塗布するか、又は押して下瞼を引いてなる嚢内につける)、又は無侵襲投与方式(例えば、眼薬スプレーによる投与)を使用する、
ことを特徴とする前記請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記皮膚塗擦剤又は軟膏の塗布は、百分率で3%の皮膚塗擦剤又は眼軟膏を使用した塗布であり、前記百分率(%)が質量/体積濃度の比又は質量比又はモル数の比として表される、
ことを特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記点眼、経口などの投与方式は、同時に使用し、又は組み合わせて使用し、又は交互に使用し、又は間隔をおいて使用し、若しくは単独して使用し、又はそのいずれかを選択して使用する、
ことを特徴とする前記請求項6または7に記載の使用。
【請求項9】
前記局所投与に用いられる製剤は、水性剤、油性剤又は懸濁液剤を含むが、それらに限定されず、当該製剤には、薬理活性及び/又は生理活性を有する成分が添加されてもよく、このような成分は、例えば、散瞳成分、充血除去成分、眼筋(例えば、毛様筋)調整成分、抗炎剤成分、アストリンゼン成分、抗ヒスタミン剤成分、抗アレルギー剤成分、肝庇護類(肝毒性を回避又は軽減する)成分、血液網膜関門を増強する成分(即ち、化合物が該生理関門を浸透して通過することをより困難にする成分)、ビタミン、アミノ酸、抗菌剤成分、糖類、重合物又はその誘導体、セルロース又はその誘導体、局所麻酔剤成分、緑内障治療成分、白内障治療成分等である、
ことを特徴とする前記請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記これらの物質又はそれらの組み合わせの、前記薬物組成物、製剤又はデバイスにおける濃度又は比率は、百分率で少なくとも0.01%以上であり、好ましくは0.01%~0.8%であり、好ましくは0.05%~0.5%であり、より好ましくは0.1%であり、又は前記これらの物質又はそれらの組み合わせの濃度又は比率は、0.01%未満であり、前記百分率は、質量/体積濃度の比又は質量比又はモル数の比として表される、
ことを特徴とする前記請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記薬物組成物又は製剤は、注射液、錠剤、凍結乾燥注射剤、カプセル剤、発泡錠、咀嚼錠、トローチ、顆粒剤、軟膏、シロップ、内服液、噴霧剤、点鼻剤、外用剤、内用製剤等であってもよく、好ましくは眼用剤形であり、点眼液、目薬軟膏、アイスプレー、インプラントシート、眼用ゲル、アイパック、眼用マイクロスフェア、眼用徐放製剤、眼周注射剤又は眼内注射剤を含むが、それらに限定されず、さらに自由溶液、油水混合液、懸濁液、擦剤、ローション、クリーム、滴剤、顆粒製剤、スプレー、軟膏、貼付剤、ペースト剤、丸剤、座薬又は乳剤であってもよい、
ことを特徴とする前記請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記近視個体又は近視発症傾向のある個体は、人間であり、児童、青少年、中年者又は高齢者であり得、好ましくは3から26歳の人であり、より好ましくは6から18歳の人であり、もしくは、成年又は未成年であり、好ましくは目の眼球が成長、発育段階にある人であり、又は学齢期の人であり、好ましくは一年生から十二年生の人である、
ことを特徴とする前記請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記近視は、屈折性近視又は軸性近視;先天近視(生まれてから又は就学前に近視になっている)、早発性近視(即ち、14歳以下)、遅発性近視(即ち、16~18歳)、晩発性近視(即ち、成年以降);弱度近視(即ち、軽度近視)、中等度近視、強度近視(即ち、重度近視);仮性近視、真性近視、半真性半仮性(即ち、混合)近視;児童及び/又は青少年近視(好ましくは3-26歳の人であり、より好ましくは6-18歳の人である)、未成年近視、青少年近視、成年近視、高齢者近視;単純近視、病的近視;軸性単純近視、単純軸性近視;児童及び/又は青少年の軸性近視(好ましくは3-26歳の人であり、より好ましくは6-18歳の人である);学齢期及び就学前の人群れの軸性近視;原発性近視、続発性近視;児童及び/又は青少年の原発性近視(好ましくは3-26歳の人であり、より好ましくは6-18歳の人である);児童及び/又は青少年の進行性近視(好ましくは3-26歳の人であり、より好ましくは6-18歳の人である);屈折性近視、指数性近視、屈折媒介の前向き変移による近視、屈曲性近視;近業作業で長時間の目の使用による近視、疲れ眼による近視及び仮性近視、薬物副作用による負の屈折率、近眼、読書による近視、携帯電話等の電子製品の使用による近視、目の屈折媒体(成分)の不整合による近視、屈折近視、屈折発育の異常による近視、眼球の過剰な成長による近視、目の不衛生による近視、様々な要因で遠方物体の結像焦点が網膜の前にあり、アトロピンの治療効果が低い又は無効である近視、アウトドア運動不足による近視、調節緊張性近視、児童近視、環境要素での近視である、
ことを特徴とする前記請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記近視関連症状は、例えば、強度近視の併発症、飛蚊症、緑内障、後部ブドウ腫、網膜剥離、網膜裂孔、弱視、黄斑下出血、脈絡膜新生血管、脈絡膜萎縮、黄斑変性又は黄斑病変、視野欠損、ゆるやかな又は突然の視力(特に近視力)低下、目の膨張感及び/又は痛み、夜盲、乱視、屈折率バラツキ、失明、硝子体液化、硝子体混濁、斜視、頻繁なまばたき、よく目をこすること、屈折率バラツキ、遠方物体を見る時に視界がぼやけ、遠方物体をはっきり見えるために目を細め又は上瞼の一部を閉じる必要があること、眼疲労による頭痛、運転中の、特に夜間(夕方近視)の視困難、網膜萎縮変性(出血や裂孔)、網膜下新生血管、及び眼球萎縮などの近視併発症を含む、
ことを特徴とする前記請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記薬物組成物、製剤又はデバイスは、医療用製剤又は薬物をさらに含み、前記医療用製剤又は薬物は、近視治療薬(例えば、アトロピン、ベンダゾール、ピレンゼピン(pirenzepine)、ムスカリン拮抗薬、7-メチルキサンチン(7MX)、アミノベンジルアミン、マレイン酸チモロール(Timolol maleate)、アドレナリン、ピレンゼピン、ペラジン、ペルラピン(Perlapine)、ペルラピン、ピレンゼピン、メチルアミン、クロリソンダミン、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、ドーパミンアゴニスト、γ-アミノ酪酸、ナロキソン、グルカゴン、レチノイン酸など)、M受容体遮断薬(例えば、M3受容体を対象とする遮断薬又は拮抗薬又は阻害剤)、ベンダザック又はその様々な塩の形態、ベンダザックリシン又はその様々な塩の形態、多不飽和脂肪酸(例えば、DHA、EPA)、サリドロシド、ホルモノネチン、プラゾシン、ホマトロピン、アニソダミン(ラセミ体)、トロピカミド、ニコチン酸、ピラセタム(Piracetam)、タンジン抽出物、紅花抽出物、魚油、熊胆抽出物、ビタミン、アデノシン三リン酸(ATP)、非選択的アデニル酸拮抗薬、血管拡張薬、散瞳薬、平滑筋拡張薬、血管痙攣防止薬、コラーゲン代謝調整薬、抗アレルギー薬、抗炎症薬、肝庇護薬、眼科疾患治療成分、眼用局所麻酔薬、又は眼科用剤を含むが、それらに限定されない、
ことを特徴とする前記請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
前記1つ又は複数の他の薬物は、近視治療薬(例えば、アトロピン、ベンダゾール、ピレンゼピン、ムスカリン拮抗薬、7-メチルキサンチン(7MX)、ピレンゼピン、アミノベンジルアミン、マレイン酸チモロール、アドレナリン、ペラジン、ペルラピン、ペルラピン、ピレンゼピン、メチルアミン、クロリソンダミン、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、ドーパミンアゴニスト、γ-アミノ酪酸、ナロキソン、グルカゴン、レチノイン酸など)、M受容体遮断薬(例えば、M3受容体を対象とする遮断薬又は拮抗薬又は阻害剤)、ベンダザック又はその様々な塩の形態、ベンダザックリシン又はその様々な塩の形態、多不飽和脂肪酸(例えば、DHA、EPA)、サリドロシド、ホルモノネチン、プラゾシン、ホマトロピン、アニソダミン(ラセミ体)、トロピカミド、ニコチン酸、ピラセタム(Piracetam)、タンジン抽出物、紅花抽出物、魚油、熊胆抽出物、ビタミン、アデノシン三リン酸(ATP)、非選択的アデニル酸拮抗薬、血管拡張薬、平滑筋拡張薬、血管痙攣防止薬、コラーゲン代謝調整薬、抗アレルギー薬、抗炎症薬、肝庇護薬、眼科疾患治療成分、眼用局所麻酔薬、散瞳薬、又は眼科用剤又は薬物を含むが、それらに限定されない、
ことを特徴とする前記請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
前記製剤は、さらに健康品、食品、サプリメント、栄養物、飲料等の経口製品又は化粧品であってもよく、そのうち、前記化粧品は、自由溶液、油水混合液、懸濁液(剤)、擦剤、ローション、スプレー、クリーム、滴剤、顆粒製剤、軟膏、ペースト剤、丸剤、座薬、乳剤、貼付剤のうちの1つ又は複数の組み合わせであってもよい、
ことを特徴とする前記請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
前記デバイスは、薬物を放出することができ、又は薬物送達機能又は潜在的薬物送達能力を備える機器、デバイス、消費品、システム、医療器械、健康関連商品又は眼部外観を変更するものであり、例えば、角膜コンタクトレンズ、メガネ、眼内レンズ、縫合糸、オルソケラトロジーレンズ洗浄(メンテナンス)システム、アイパック、明目パック、カラコン、マイクロニードル、眼用スプレーシステム、アイマッサージャー(近視用マッサージャー)、眼用燻蒸機器、眼表面薬物送達デバイス、眼内薬物送達デバイス、眼底薬物送達デバイス、インプラントポンプ、ウェアラブルデバイス、ツボマッサージャー、眼リラックスデバイス、近視治療器又は近視予防制御のための薬剤・デバイス併用製品である、
ことを特徴とする前記請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、近視及びその関連症状を治療、予防又は制御するための方法及び薬物に関する。
【背景技術】
【0002】
紀元前350年に、アリストテレスは始めて「近視」を使用して(Paulus T V M de Jong, BRJ Ophthalmol. 2018 Aug; 102 (8):1021-102)屈折異常現象を指した。現在では、近視は既に世界中に最も深刻な公共衛生問題の1つとなっている。早期の文献には、2010年時点で世界中に近視罹患者の数が18.4億近く、当時世界総人口の27%を占め、そのうち強度近視者が1.7億で、2.8%を占め、特に中国、日本、韓国やシンガポールなどの東アジア地域では、近視罹患率が50%近くで、オーストラリア、ヨーロッパやアメリカよりも遥かに超えたことが記載されている。2050年までに、世界中の近視罹患率が50%以上と高くなると予測されている(Brien A Holden,Ophthalmology. 2016 May; 123(5): 1036-42)。中国では、6~18歳の児童と青少年の近視発病率が特に高い。2016年、57904例のサンプルによる疫学調査では、中国の華北、華東、華南、西南及び西北地区から抽出された6つの省・市の小中学生の近視罹患率が55.7%であり、そのうち、6~8歳グループ、10~12歳グループ、13~15歳グループ及び16~18歳グループの近視罹患率は、それぞれ35.8%、58.9%、73.4%及び81.2%である(周佳,馬迎華,馬軍etal.中国の6つの省・市の小中学生の近視流行現状及びその影響要素の分析.中華疫学雑誌2016; 37: 29-34.)ことが示された。疫学データによると、世界中に近視や強度近視の罹患率が増えている。社会、生活及び環境要素の顕著な変化は近視罹患率の絶えず増加、近視の低年齢化、重度化に影響を与える重要な要因の1つであり(Susan Vitale,Arch Ophthalmol. 2009 Dec; 127(12): 1632-9)、このような傾向は、短時間内で明らかに改良しないようである。
【0003】
近視の危害は非常に多い。遠距離視界不良に加えて、近視、特に強度近視の場合、さらに緑内障、白内障、網膜剥離、網膜裂孔、後部ブドウ腫、黄斑下出血又は近視黄斑変性、脈絡膜新生血管等の深刻な併発症を引き起こす可能性があり、視力に関わる生活の質を損ない、視力に関わる仕事の難易度を高めて視力を損ない、ひいては盲目になる場合もある(Chen-Wei Pan,OphthalmiCPhysiol Opt.2012 Jan; 32(1): 3-16.和Seang-Mei Saw,Ophthalmic Physiol Opt.2005 Sep; 25(5): 381-91.)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Chen-Wei Pan,OphthalmiCPhysiol Opt.2012 Jan; 32(1): 3-16
【非特許文献2】Seang-Mei Saw,Ophthalmic Physiol Opt.2005 Sep; 25(5): 381-91
【非特許文献3】1Lu F,Zhou X,Zhao H,et al.Axial myopia induced by a monocularly-deprived facemask in guinea pigs:A non-invasive and effective model.Exp Eye Res 2006;82:628-636.
【非特許文献4】2Lu F,Zhou X,Jiang L,et al.Axial myopia induced by hyperopic defocus in guinea pigs:A detailed assessment on susceptibility and recovery.Exp Eye Res 2009;89:101-108.
【非特許文献5】3Wu H,Chen W,Zhao F,et al.Scleral hypoxia is a target for myopia control.Proc Natl Acad Sci U S A 2018;115:E7091-E7100.
【非特許文献6】4Pan M,Zhao F,Xie B,et al.Dietary omega-3polyunsaturated fatty acids are protective for myopia.Proc Natl Acad Sci U S A 2021;118.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記技術的課題に鑑み、本出願は、ベンダザックリシン又はベンダザック、又はその光学異性体又はそのラセミ体、又はその溶媒和物、又はその薬学的に許容可能な塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝生成物、又はその類似体又はその誘導体、又はその結晶型化合物、又はこれらの物質の組み合わせの使用を提供し、その特徴は、前記使用が次のうちの1つであるか、又は少なくとも2つを同時に満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(a)近視及びその関連症状を予防及び/又は治療するために用いられる。
【0007】
(b)屈折異常に関連する眼球の異常な発育を遅延、軽減又は治療するために用いられる。
【0008】
(c)個体がレンズ(例えば、フレーム型近視用メガネ又はオルソケラトロジーレンズ)に頼らない又はそれを交換しない、若しくは、他の視力矯正手段(例えば、屈折手術)に頼らない条件下でより鮮明な遠視視力を得るために用いられる。
【0009】
(d)近視個体又は近視発症傾向のある個体の屈折度の(持続的な)マイナス化過程(速度)を制御、抑制、遅延又は減速するために用いられる。
【0010】
(e)手術(例えば、屈折矯正手術、近視角膜レーザー手術、水晶体手術)又は他の視力矯正手段(例えば、角膜コンタクトレンズ)と組み合わせて近視及びその関連症状を予防及び/又は治療するために用いられる。
【0011】
(f)1つ又は複数の他の薬物と組み合わせて使用して近視及び近視関連症状を予防及び/又は治療するために用いられる。
【0012】
(g)網膜と水晶体との間の距離を低減し、好ましくは近視個体又は近視傾向のある個体の網膜と水晶体との間の距離を低減するために用いられる。
【0013】
(h)近視度数を小さくすること、又は近眼の治療、又は近眼の治療、又は近視の進行制御、又は近視矯正、又は近視の緩和、又は青少年の近視予防のために用いられる。
【0014】
(i)水晶体病変による近視を抑制又は治療するために用いられる。
【0015】
(j)上記(a)~(i)のうちの少なくとも1つの使用を実現する薬物組成物、製剤又はデバイスを製造するために用いられる。
【0016】
いくつかの実施形態において、ベンダザックリシン又はベンダザック、又はその光学異性体又はそのラセミ体、又はその溶媒和物、又はその薬学的に許容可能な塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝生成物、又はその類似体又はその誘導体、又はその結晶型化合物、又はこれらの物質の組み合わせは、唯一の活性成分又は主な活性成分として使用される。
【0017】
いくつかの実施形態において、唯一の活性成分又は主な活性成分とは、全ての活性成分に占められるその含有量が50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は100%のものであり、前記百分率は質量比又はモル数の比である。
【0018】
いくつかの実施形態において、これらの物質又はそれらの組み合わせと前記1つ又は複数の他の薬物とは、連続的に投与する形態、又は同時に投与する形態、又は順に投与する形態、又は交互に投与する形態、又は間隔をおいて投与する形態、又は個別で投与する形態として調製又は設計される。
【0019】
いくつかの実施形態において、屈折異常に関連する眼球の異常な発育は、個体の幼少期段階(例えば、人間の2-28歳)で、主に環境要素で誘発され、又は主に人為的要素(例えば、長時間・近業作業の読書、電子スクリーンの頻繁的な使用、継続的に近方を見ることにより遠方を見る機会の欠如、屈折矯正メガネの不適当な使用、薬物による副作用、肥満、外傷、学習環境の照明の不十分、アウトドア運動の欠如)で引き起こされたものであり、遺伝学的要素は、二次要素・随伴要素・協同要素であり、もしくは、前記異常な発育は、調整リラックス状態下で、平行光線が眼の屈折系を通過して屈折した後、網膜の前に焦点が結ばれることを主な特徴とする遺伝学的要素と完全に無関係な屈折発育異常である。
【0020】
いくつかの実施形態において、全身投与(例えば、経口、点滴静脈注射)、又は局所投与(例えば、点眼、硝子体内注射、皮膚塗擦剤又は軟膏の塗布)、又は胃腸外投与(例えば、粘膜投与、経皮投与、マイクロニードルによる投与)の方式、又は非侵襲投与方式(例えば、目薬軟膏を角膜に塗布するか、又は押して下瞼を引いてなる嚢内につける)、又は無侵襲投与方式(例えば、眼薬スプレーによる投与)を採用する。
【0021】
いくつかの実施形態において、皮膚塗擦剤又は軟膏の塗布には、3%皮膚塗擦剤又は眼軟膏を使用して塗布する。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記投与方式(例えば、点眼、経口)は、同時に使用し、又は組み合わせて使用し、若しくは交互に使用し、又は間隔をおいて使用し、若しくは単独して使用し、又はそのいずれかを選択して使用する。
【0023】
いくつかの実施形態において、局所投与に用いられる製剤は、水性剤、油性剤又は懸濁液剤を含むが、それらに限定されない。当該製剤には、薬理活性及び/又は生理活性を有する成分が添加されてもよく、このような成分は、例えば、散瞳成分、充血除去成分、眼筋(例えば、毛様筋)調整成分、抗炎剤成分、アストリンゼン成分、抗ヒスタミン剤成分、抗アレルギー剤成分、肝庇護類(肝毒性を回避又は軽減する)成分、血液網膜関門を増強する成分(化合物が該生理関門を浸透して通過させにくいもの)、ビタミン、アミノ酸、抗菌剤成分、糖類、重合物又はその誘導体、セルロース又はその誘導体、局所麻酔剤成分、緑内障治療成分、白内障治療成分等である。
【0024】
いくつかの実施形態において、これらの物質又はそれらの組み合わせの、前記薬物組成物、製剤又はデバイスにおける濃度又は比率は、少なくとも0.01%以上であり、好ましくは0.01%~0.8%であり、好ましくは0.05%~0.5%であり、より好ましくは0.1%であり、又は前記これらの物質又はそれらの組み合わせの濃度又は比率は、0.01%未満であり、前記百分率は、質量/体積濃度(比)又は質量比又はモル(数)比として表される。
【0025】
いくつかの実施形態において、薬物組成物又は製剤は、注射液、錠剤、凍結乾燥注射剤、カプセル剤、発泡錠、咀嚼錠、トローチ、顆粒剤、軟膏、シロップ、内服液、噴霧剤、点鼻剤、外用剤、内用製剤等であってもよく、好ましくは眼用剤形であり、点眼液(目薬)、目薬軟膏、アイスプレー、インプラントシート、眼用ゲル、アイパック、眼用マイクロスフェア、眼用徐放製剤、眼周注射剤又は眼内注射剤を含むが、それらに限定されず、さらに自由溶液、油水混合液、懸濁液(剤)、擦剤、ローション、クリーム、滴剤、顆粒製剤、スプレー、軟膏、貼付剤、ペースト剤、丸剤、座薬又は乳剤であってもよい。
【0026】
いくつかの実施形態において、近視個体又は近視発症傾向のある個体は、人間であり、児童、青少年、中年者又は高齢者であり得、好ましくは3から26歳の人であり、より好ましくは6から18歳の人であり、もしくは、成年又は未成年であり、好ましくは目(眼球)が成長、発育段階にある人であり、又は学齢期の人であり、好ましくは一年生から十二年生の人である。
【0027】
いくつかの実施形態において、近視は、屈折性近視又は軸性近視;先天近視(生まれてから又は就学前に近視になっている)、早発性近視(14歳以下)、遅発性近視(16~18歳)、晩発性近視(成年以降);弱度近視(軽度近視)、中等度近視、強度近視(重度近視);仮性近視、真性近視、半真性半仮性(混合)近視;児童及び/又は青少年近視(好ましくは3-26歳の人であり、より好ましくは6-18歳の人である)、未成年近視、青少年近視、成年近視、高齢者近視;単純近視、病的近視;軸性単純近視、単純軸性近視;児童及び/又は青少年の軸性近視(好ましくは3-26歳の人であり、より好ましくは6-18歳の人である);学齢期及び就学前の人群れの軸性近視;原発性近視、続発性近視;児童及び/又は青少年の原発性近視(好ましくは3-26歳の人であり、より好ましくは6-18歳の人である);児童及び/又は青少年の進行性近視(好ましくは3-26歳の人であり、より好ましくは6-18歳の人である);屈折性近視、指数性近視、屈折媒介の前向き変移による近視、屈曲性近視;近業作業で長時間の目の使用による近視、疲れ眼による近視及び仮性近視、薬物副作用による負の屈折率、近眼、読書による近視、携帯電話等の電子製品の使用による近視、屈折媒体(成分)の不整合による近視、屈折近視、屈折発育の異常による近視、眼球の過剰な成長による近視、目の不衛生による近視、様々な要因で遠方物体の結像焦点が網膜の前にあり、アトロピンの治療効果が低い又は無効である近視、アウトドア運動不足による近視、調節緊張性近視、児童近視、環境要素での近視である。
【0028】
いくつかの実施形態において、近視関連症状は、例えば、強度近視の併発症、飛蚊症、緑内障、後部ブドウ腫、網膜剥離、網膜裂孔、弱視、黄斑下出血、脈絡膜新生血管、脈絡膜萎縮、黄斑変性又は黄斑病変、視野欠損、ゆるやかな又は突然の視力(特に近視力)低下、目の膨張感及び/又は痛み、夜盲、乱視、屈折率バラツキ、失明、硝子体液化、硝子体混濁、斜視、頻繁なまばたき、よく目をこすること、屈折率バラツキ、遠方物体を見る時に視界がぼやけ、遠方物体をはっきり見えるために目を細め又は上瞼の一部を閉じる必要があること、眼疲労による頭痛、運転中、特に、夜間(夕方近視)の視困難、網膜萎縮変性(出血や裂孔)、網膜下新生血管、及び眼球萎縮などの近視併発症を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、薬物組成物、製剤又はデバイスは、医療用製剤又は薬物をさらに含み、前記医療用製剤又は薬物は、近視治療薬(例えば、アトロピン、ベンダゾール、ピレンゼピン(pirenzepine)、ムスカリン拮抗薬、7-メチルキサンチン(7MX)、アミノベンジルアミン、マレイン酸チモロール(Timolol maleate)、アドレナリン、ピレンゼピン、ペラジン、ペルラピン(Perlapine)、ペルラピン、ピレンゼピン、メチルアミン、クロリソンダミン、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、ドーパミンアゴニスト、γ-アミノ酪酸、ナロキソン、グルカゴン、レチノイン酸など)、M受容体遮断薬(例えば、M3受容体を対象とする遮断薬又は拮抗薬又は阻害剤)、ベンダザック又はその様々な塩の形態、ベンダザックリシン又はその様々な塩の形態、多不飽和脂肪酸(例えば、DHA、EPA)、サリドロシド、ホルモノネチン、プラゾシン、ホマトロピン、アニソダミン(ラセミ体)、トロピカミド、ニコチン酸、ピラセタム(Piracetam)、タンジン抽出物、紅花抽出物、魚油、熊胆抽出物、ビタミン、アデノシン三リン酸(ATP)、非選択的アデニル酸拮抗薬、血管拡張薬、散瞳薬、平滑筋拡張薬、血管痙攣防止薬、コラーゲン代謝調整薬、抗アレルギー薬、抗炎症薬、肝庇護薬、眼科疾患治療成分、眼用局所麻酔薬、又は眼科用剤を含むが、それらに限定されない。
【0030】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数の他の薬物は、近視治療薬(例えば、アトロピン、ベンダゾール、ピレンゼピン、ムスカリン拮抗薬、7-メチルキサンチン(7MX)、ピレンゼピン、アミノベンジルアミン、マレイン酸チモロール、アドレナリン、ペラジン、ペルラピン、ペルラピン、ピレンゼピン、メチルアミン、クロリソンダミン、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、ドーパミンアゴニスト、γ-アミノ酪酸、ナロキソン、グルカゴン、レチノイン酸など)、M受容体遮断薬(例えば、M3受容体を対象とする遮断薬又は拮抗薬又は阻害剤)、ベンダザック又はその様々な塩の形態、ベンダザックリシン又はその様々な塩の形態、多不飽和脂肪酸(例えば、DHA、EPA)、サリドロシド、ホルモノネチン、プラゾシン、ホマトロピン、アニソダミン(ラセミ体)、トロピカミド、ニコチン酸、ピラセタム(Piracetam)、タンジン抽出物、紅花抽出物、魚油、熊胆抽出物、ビタミン、アデノシン三リン酸(ATP)、非選択的アデニル酸拮抗薬、血管拡張薬、平滑筋拡張薬、血管痙攣防止薬、コラーゲン代謝調整薬、抗アレルギー薬、抗炎症薬、肝庇護薬、眼科疾患治療成分、眼用局所麻酔薬、散瞳薬、又は眼科用剤又は薬物を含むが、それらに限定されない。
【0031】
いくつかの実施形態において、製剤は、さらに健康品、食品、サプリメント、栄養物、飲料等の経口製品又は化粧品であってもよく、そのうち、前記化粧品は、自由溶液、油水混合液、懸濁液(剤)、擦剤、ローション、スプレー、クリーム、滴剤、顆粒製剤、軟膏、ペースト剤、丸剤、座薬、乳剤、貼付剤のうちの1つ又は複数の組み合わせであってもよい。
【0032】
いくつかの実施形態において、デバイスは、薬物を放出することができ又は薬物送達機能又は潜在的薬物送達能力を備える機器、デバイス、消費品、システム、医療器械、健康関連商品又は眼部外観を変更するものであり、例えば、角膜コンタクトレンズ、メガネ、眼内レンズ、縫合糸、オルソケラトロジーレンズ洗浄(メンテナンス)システム、アイパック、明目パック、カラコン、マイクロニードル、眼用スプレーシステム、アイマッサージャー(近視用マッサージャー)、眼用燻蒸機器、眼表面薬物送達デバイス、眼内薬物送達デバイス、眼底薬物送達デバイス、インプラントポンプ、ウェアラブルデバイス、ツボマッサージャー、眼リラックスデバイス、近視治療器又は近視予防制御のための薬剤・デバイス併用製品である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】ベンダザックリシンによる近視の進行制御を示す図である。
図2】ベンダザックリシン点眼液の治療安全性を示す図である。
図3】異なる濃度のベンダザックリシン点眼液による近視予防制御を示す図である。
図4】異なる濃度のベンダザックリシンの治療安全性を示す図である。
図5】ベンダザックリシンによる近視個体の脈絡膜厚の増加を示す図である。
図6】ベンダザックリシン点眼液の点眼投与及び眼部へのベンダザック膏薬塗布の治療効果を示す図である。
図7】ベンダザックリシン点眼液の点眼投与及び眼部へのベンダザック膏薬塗布の安全性を示す図である。その中、図1-5において、*は、ベンダザックリシン(ベンダザック)投与群と陰性対照群との統計的差異を示す。#は、アトロピン投与群と陰性対照群の統計的差異を示す。*はp<0.05を表し、**はp<0.01を表し、***はp<0.001を表し、#はp<0.05を表し、##はp<0.01を表し、###はp<0.001を表す。図6図7において、*は、ベンダザックリシン点眼液と生理食塩水群の差異を示し、#は、アトロピン投与群と生理食塩水群の統計的差異を示し、$は、ベンダザック膏薬と生理食塩水群の差異を示す。*はp<0.05を表し、***はp<0.001を表し、#はp<0.05を表し、##はp<0.01を表し、$はp<0.05を表す。
図8】単一のリジンでは近視を治療できないことを示す図であり、#はBDLと生理食塩水溶媒群の差異を示し、#はp<0.05を表し、##はp<0.01を表し、###はp<0.001を表す。
図9】単一のベンダザック目薬がベンダザックリシン目薬に一致する近視治療効果を備えることを示す図である。ここで、#はBDLと生理食塩水溶媒群の差異を示し、*はbendazacとvehicle溶媒群の差異を示す。*はp<0.05を表し、***はp<0.001を表し、##はp<0.01を表し、###はp<0.001を表す。
図10】単一のベンダザックの治療安全性を示す図である。
図11】単一のリジンの治療安全性を示す図である。
図12】ベンダザックが近視個体の脈絡膜厚の減少を抑制する図であり、*はp<0.05を表す。
図13】SorbinilとZopolrestatは近視を治療できないことを示す図である。
図14】アルドース還元酵素阻害剤の投与安全性評価を示す図である。
図15】メタヒドロキシメチルアニリンが近視を治療できないことを示す図である。#は、アトロピン投与群と陰性対照群の統計的差異を示し、##はp<0.01を表す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下において、図面を参照しながら本出願の技術的解決手段の実施例を詳しく説明する。以下の実施例は、本出願の技術的解決手段をより明確に説明するためのものに過ぎなく、一例としてのみに使用される。これによって本出願の保護範囲を制限するものではない。
【0035】
下記実施例に用いられる実験方法は、特に説明しない限り、従来の方法である。下記実施例に用いられる材料、試薬等は、特に説明しない限り、商業的経路で得られるものである。
【0036】
近視は、最も一般的な屈折異常であり、調整リラックス状態で、平行光線が眼の屈折系で屈折した後に、網膜の前に焦点が結ばれる屈折状態を指す。一般的な近視は、次の4つの分類方法があり、即ち、(1)屈折度の大きさに基づき、軽度(弱度)近視、中等度近視及び強度(重度)近視に分ける、(2)屈折成分が異常であるか否かに基づき、屈折性近視と軸性近視に分ける、(3)病理学的変化が発生したか否かに基づき、病的近視と単純近視に分ける、(4)成因に基づき、原発性近視と併発性/続発性近視に分ける。どの種類の近視が発症して進行するかに関わらず、屈折系(即ち、角膜、水晶体及び硝子体等を含む屈折媒体である)の各成分の間の不整合は近視の形成と重症度を決めるキーポイントである。屈折性近視を例とすると、他の屈折成分が正常である前提で、個体の角膜の曲率が異常である場合、平行光線が該角膜を通過した後の焦点が網膜上の元の位置からずれ、それで屈折度の変化を引き起こす。この場合、円錐角膜による近視が一般的なものである。さらに、特定の病変による水晶体屈折指数の変化も、平行光線の網膜での投射位置に直接影響を与える。この場合、平行光線が網膜の前に焦点が結ばれると、水晶体病変による近視と呼ばれる。屈折成分が不整合の状況にはさらに、硝子体腔が大きすぎて網膜位置が後ろへ移動し、遠方物体の眼内での結像焦点が網膜の前にあり、負の屈折度が示されることが含まれている。よって、上記近視分類方法は実際の臨床においてさらに具体的な状況に応じて細別されることが分かる。しかし、屈折度は、全ての近視タイプを判定し、その重症度を判断し、近視治療効果を評価する唯一の指標と公認されている。『近視進行制御薬物の臨床研究技術指導原則』と学界の見解によると、児童と青少年(特に6-18歳)において最も一般的な近視タイプは、軸性単純近視(Paul N Baird,Nat Rev Dis Primers. 2020 Dec 17; 6(1): 99.及びA J Adams, Am J Optom Physiol Opt. 1987 Feb; 64(2): 150-2並びにSeang-Mei Saw, Ophthalmic Physiol Opt.2005 Sep; 25(5): 381-91.)であり、眼軸延長が発生する主な部分は眼球の後極部であることが認められている。現在、哺乳類動物(例えば、リス、アイアイ、モルモット)の長時間の実験性近眼モデルにも眼軸延長、強膜薄化及び強膜コラーゲン繊維の細化現象が現れることが発見されて、これは人間の近視表現と一致している(Neville A McBrien,Prog Retin Eye Res.2003 May; 22(3): 307-38.)。実際の薬物臨床投入前の開発段階において、研究者らは、ほとんど形態剥奪(form-deprivation,FD)又はレンズ誘導(lens induced,LI)、この2種類の代表的な近視疾患モデルを使用して近視の予防制御薬効を評価していた(D A Goss,Am J Optom Physiol Opt. 1981 Oct; 58(10): 859-69.及びHao Wu,Proc Natl Acad Sci U S A. 2018 Jul 24; 115(30): E7091-E7100.並びにSen Zhang, Invest Ophthalmol Vis Sci. 2019 Jul 1; 60(8): 3074--3083.)。この2つの近視モデルに対して治療と予防制御効果を同時に備える化合物は、薬として製造できる可能性が最も高いものと考えられている。
【0037】
近視の発病メカニズムは依然として完全に明らかにされていない。現在、環境要素は近視が多発する主な誘因であると考えられ、近視罹患率と重症度に影響を与えるが、遺伝に起因する近視症例が比較的に珍しい。環境要素は過度の調整、周辺部網膜の遠視性デフォーカス、採光照明(光照射の異常)、形態剥奪等を含む。近視を誘発するその具体的なメカニズムは、網膜が近視を誘発する近方の視覚情報を認識した後、これらのシグナルを脈絡膜を介して強膜に伝達することによって強膜細胞外マトリックス成分の変化を引き起こし、最終的に、屈折度が負になるまで屈折度の低下を引き起こし、近視を形成する。これは、光学デフォーカスがデフォーカス特異的シグナルをトリガして、眼の屈折発育を調整して制御すると簡単に概括することもできる(Wen-Yi Wang,Biomed Pharmacother. 2021 Jan; 133: 111092.及びTatiana V Tkatchenko,Trends Pharmacol Sci.2019Nov; 40(11): 833-852.並びにDavid Troilo,Invest Ophthalmol Vis Sci.2019 Feb 28; 60(3): M31-M88.)。正常に発育する個体において、目の大きさも体の他の部位と共に成長する。人間は生まれてから幼少期までの段階が他の哺乳動物と一致しており、いずれも遠視を表現する。以降の成長段階では、眼球における各屈折成分のさらなる発育と眼軸の適度な延長に伴い、平行光線の結像焦点は網膜と位置が重なり(即ち、焦点が網膜上に結ばれる)、正視になる。この発育過程では、近方の視覚情報が長時間に持続的に現れると、眼軸の過度延長等の一連の屈折成分の不整合を含む病症が現れ、平行光線の結像焦点が網膜の前にあるようになり、近視が形成される。したがって、眼球の発育過程で各屈折成分が相互に整合することをどのように保証し、眼球の過度成長を阻止するかは、近視を予防制御するキーポイントとなる。従来の研究によると、近視個体における屈折発育の異常は、強膜の再生、結合組織の合成の減少に起因する強膜組織の流失及び1型コラーゲン(COL1)の分解増加に関係しており、ドーパミン、インスリン、一酸化窒素が関与する可能性もあることが発見されている。
【0038】
現在、フレーム型メガネは、児童や青少年の近視を矯正する主な方式となっており、成年患者の場合、レーザー手術を採用して近視を矯正し得る。近視は、メガネ、コンタクトレンズ又は屈折手術で矯正することが多いが、その進行を遅らせることができない。どのような近視でも、一旦強度近視まで発展すると、網膜、脈絡膜や強膜併発症を引き起こす高いリスクがあるので、非常に危険性のある視力問題となっている。このため、近視矯正は近視治療と簡単に理解してはならない。臨床的な近視治療は主に近視の進行の抑制又は遅らせと体現され、関連する方法は光学と薬理学の2種類がある。角膜整形レンズは児童や青少年の近視の進行を遅らせることができるが、このような治療手段による効果には個体差が大きく、且つ専門的な検眼医の精密な補助を必要としている(Jinhai Huang,Ophthalmology.2016 Apr; 123(4): 697-708.)。近視を制御する薬理学的選択肢は十分に制限され(Tatiana V Tkatchenko,Trends Pharmacol Sci.2019 Nov; 40(11): 833-852.)、例えば、アトロピン点眼液は、非常に多くの研究において近視治療効果が示されているが、臨床的には、投与中止すると、近視程度が反発し、使用過程で散瞳や羞明等の深刻な副作用があることも見られ(Prema Ganesan,Expert Rev Ophthalmol.2010 DeC1; 5(6): 759-787.)、中国では、国家薬品監督管理局がその使用を許可していない。また、7-メチルキサンチンは、別の研究中の近視制御薬物であり、その安全性と有効性について、更により多くのデータで裏付ける必要がある(Klaus Trier,J Ocul Biol Dis Infor.2008 Dec; 1(2-4): 85-93.及びTatiana V Tkatchenko,Trends Pharmacol Sci.2019 Nov; 40(11): 833-852.)。したがって、現在、治療効果と安全性が明確にされた近視の進行を制御する薬物はまだ不足しており、この疾患の分野では、満たされていない臨床要件が存在している。
【0039】
ベンダザックリシン(Bendazac Lysine,BDL)又はベンダザックは、痛みを抑え、かゆみを止め、ネクローシスを阻害し、胆嚢の働きを良くし、血脂の異常を治療する役割を有することは既知である。臨床的には、ベンダザックリシンは、水晶体タンパク質変性を防止することにより白内障を治療するものである。
【0040】
発明者が研究したところ、ベンダザック又はベンダザックリシンは、近視及びその関連症状に対する治療、予防又は軽減の役割があることを意外に発見し、該類化合物は近視の進行を効果的に制御、抑制、遅延、又は遅らせることができると表現された。最終的に、近視を予防、治療するための製剤又は薬物組成物の調製に用いられたところ、該類化合物は投与安全性が高く、副作用が少ない等の優位性を有している。
【0041】
上記発見に鑑み、本出願は、ベンダザックリシン又はベンダザック、又はその光学異性体又はそのラセミ体、又はその溶媒和物、又はその薬学的に許容可能な塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝生成物、又はその類似体又はその誘導体、又はその結晶型化合物、又はこれらの物質の組み合わせの使用を提供し、それは、前記使用が次の1つであるか、又は少なくとも2つを同時に満たすことを特徴とする。
【0042】
(a)近視及びその関連症状を予防及び/又は治療するために用いられる。
(b)近視個体又は近視発症傾向のある個体の眼軸延長及び/又はその目の硝子体腔の長さ(深さ)の増加を抑制、軽減するために用いられる。
(c)近視個体又は近視発症傾向のある個体の脈絡膜の厚さを増加させ、及び/又はその脈絡膜の厚さの減少を抑制に用いられる。
(d)屈折異常に関連する眼球の異常な発育を遅延、軽減又は治療するために用いられる。
(e)個体がレンズ(例えば、フレーム型近視用メガネ又はオルソケラトロジーレンズ)に頼らず又はレンズを交換せず、又は他の視力矯正手段(例えば、屈折手術)に依存しない条件下でより鮮明な遠視視力が得られるために用いられる。
(f)近視個体又は近視発症傾向のある個体の屈折度の(持続的な)マイナス化過程(速度)を制御、抑制、遅延又は減速するために用いられる。
(g)手術(例えば、屈折矯正手術、近視角膜レーザー手術、水晶体手術)又は他の視力矯正手段(例えば、角膜コンタクトレンズ)と組み合わせて近視及びその関連症状を予防及び/又は治療するために用いられる。
(h)1つ又は複数の他の薬物と組み合わせて使用して近視及び近視関連症状を予防及び/又は治療するために用いられる。
(i)網膜と水晶体との間の距離を低減し、好ましくは近視個体又は近視傾向のある個体の網膜と水晶体との間の距離を低減するために用いられる。
(j)近視度数を小さくすること、又は近眼の治療、又は近視の進行制御、又は近視矯正、又は近視の緩和、又は青少年の近視予防のために用いられる。
(k)水晶体病変による近視を抑制又は治療するために用いられる。
(l)発育段階にある個体の眼球が安定的な屈折度を維持し、特に、眼軸延長速度を屈折媒体との整合性を維持するように制御するために用いられ、好ましくは、前記整合性は正視を維持し、又は正視をできるだけ維持することができる。
(m)発育段階にある個体の眼球が安定的な屈折度を維持し、特に、眼軸延長速度を屈折媒体との整合性を維持するように制御するために用いられ、好ましくは、前記整合性は近視の発生を回避し又は近視度数の増加を抑制することができる。
(n)上記(a)~(m)のうちの少なくとも1つの使用を実現する薬物組成物、製剤又はデバイスを製造するために用いられる。
【0043】
いくつかの実施形態において、ベンダザックリシン又はベンダザック、又はその光学異性体又はそのラセミ体、又はその溶媒和物、又はその薬学的に許容可能な塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝生成物、又はその類似体又はその誘導体、又はその結晶型化合物、又はこれらの物質の組み合わせは、唯一の活性成分又は主な活性成分として使用される。
【0044】
いくつかの実施形態において、唯一の活性成分又は主な活性成分とは、その含有量は全ての活性成分の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は100%を占めることであり、前記百分率は質量比又はモル数の比である。
【0045】
いくつかの実施形態において、これらの物質又はそれらの組み合わせと前記1つ又は複数の他の薬物とは、連続的に投与する形態、又は同時に投与する形態、又は順に投与する形態、又は交互に投与する形態、又は間隔をおいて投与する形態、又は個別で投与する形態として調製又は設計される。
【0046】
いくつかの実施形態において、屈折異常に関連する眼球の異常な発育は、個体の幼少期段階(例えば、人間の2-28歳)で、主に環境要素で誘発され、又は主に人為的要素(例えば、長時間・近業作業の読書、電子スクリーンの頻繁的な使用、継続的に近方を見ることにより遠方を見る機会の欠如、屈折矯正メガネの不適当な使用、薬物による副作用、肥満、外傷、学習環境の照明の不十分、アウトドア運動の欠如)で引き起こされたものであり、遺伝学的要素は、二次要素・随伴要素・協同要素であり、もしくは、前記異常な発育は、遺伝学的要素と完全に無関係な屈折発育異常であり、調整リラックス状態下で、平行光線が目の屈折系を通過して屈折した後、網膜の前に焦点が結ばれることを主な特徴とする。
【0047】
いくつかの実施形態において、ベンダザックリシン又はベンダザックの類似体(analogues)又はその誘導体(derivatives)は次の化合物(a)-(c)のうちの1つである。
【0048】
(a)
【化1】
R1は、H、P(軽水素、Protium)、D(重水素、Deuterium)、T(三重水素、Tritium)、p-CH3、m-F、m-Cl、又はp-Clであり、R2は、H、P(軽水素、Protium)、D(重水素、Deuterium)、T(三重水素、Tritium)、K又はNaである。
【0049】
(b)
【化2】
ここで、R1は、H、P(軽水素、Protium)、D(重水素、Deuterium)、T(三重水素、Tritium)、p--CH3、m-F、m-Cl、又はp-Clであり、R2は、H、P(軽水素、Protium)、D(重水素、Deuterium)、T(三重水素、Tritium)、K又はNaである。
【0050】
(c)
【化3】
ここで、R1は、H、P(軽水素、Protium)、D(重水素、Deuterium)、T(三重水素、Tritium)、p-CH3、m-F、m-Cl、又はp-Clであり、R2は、H、P(軽水素、Protium)、D(重水素、Deuterium)、T(三重水素、Tritium)、K又はNaである。
【0051】
いくつかの実施形態において、全身投与(例えば、経口、点滴静脈注射)、又は局所投与(例えば、点眼、硝子体内注射、皮膚塗擦剤又は軟膏の塗布であり、好ましくは、3%皮膚塗擦剤又は眼軟膏塗布)、又は胃腸外投与(例えば、粘膜投与、経皮投与、マイクロニードルによる投与)方式、又は非侵襲投与方式(例えば、目薬軟膏を角膜に塗布するか、又は押して下瞼を引いてなる嚢内につける)、又は無侵襲投与方式(例えば、眼薬スプレーによる投与)を採用する。
【0052】
いくつかの実施形態において、投与方式(例えば、点眼、経口)としては、同時に使用し、又は組み合わせて使用し、又は交互に使用し、又は間隔をおいて使用し、又は単独して使用し、又はそのいずれかを選択して使用する。
【0053】
いくつかの実施形態において、局所投与に用いられる製剤は、水性剤、油性剤又は懸濁液剤を含むが、それらに限定されない。当該製剤には、薬理活性及び/又は生理活性を有する成分が添加されてもよく、このような成分は、例えば、散瞳成分、充血除去成分、眼筋(例えば、毛様筋)調整成分、抗炎剤成分、アストリンゼン成分、抗ヒスタミン剤成分、抗アレルギー剤成分、肝庇護類(肝毒性を回避又は軽減する)成分、血液網膜関門を増強する成分(化合物が該生理関門を浸透して通過させにくいもの)、局所麻酔剤成分、緑内障治療成分、白内障治療成分等である。
【0054】
いくつかの実施形態において、これらの物質又はそれらの組み合わせの、前記薬物組成物、製剤又はデバイスにおける濃度又は比率は、少なくとも0.01%以上であり、好ましくは0.01%~0.8%であり、好ましくは0.05%~0.5%であり、より好ましくは0.1%であり、又は前記これらの物質又はそれらの組み合わせの濃度又は比率は、0.01%未満であり、前記百分率は、質量/体積濃度(比)又は質量比又はモル(数)比として表され、好ましくは、前記濃度が使用濃度又は保存濃度である。
【0055】
いくつかの実施形態において、これらの物質又はそれらの組み合わせの濃度は、例えば、0.01%-0.05%、0.05%-0.1%、0.1%-0.5%であり、前記百分率は質量/体積濃度(比)として表され、好ましくは、前記濃度が使用濃度又は保存濃度である。
【0056】
いくつかの実施形態において、薬物組成物又は製剤は、注射液、錠剤、凍結乾燥注射剤、カプセル剤、発泡錠、咀嚼錠、トローチ、顆粒剤、軟膏、シロップ、内服液、噴霧剤、点鼻剤、外用剤、内用製剤等であってもよく、好ましくは眼用剤形であり、点眼液(目薬)、目薬軟膏、アイスプレー、インプラントシート、眼用ゲル、アイパック、眼用マイクロスフェア、眼用徐放製剤、眼周注射剤又は眼内注射剤を含むが、それらに限定されず、さらに自由溶液、油水混合液、懸濁液(剤)、擦剤、ローション、クリーム、滴剤、顆粒製剤、スプレー、軟膏、貼付剤、ペースト剤、丸剤、座薬又は乳剤であってもよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、近視個体又は近視発症傾向のある個体は、人間であり、児童、青少年、中年者又は高齢者であり得、好ましくは3から26歳の人であり、より好ましくは6から18歳の人であり、もしくは、成年又は未成年であり、好ましくは目(眼球)が成長、発育段階にある人であり、又は学齢期の人であり、好ましくは一年生から十二年生の人である。
【0058】
いくつかの実施形態において、近視は、屈折性近視又は軸性近視;先天近視(生まれてから又は就学前に近視になっている)、早発性近視(14歳以下)、遅発性近視(16~18歳)、晩発性近視(成年以降);弱度近視(軽度近視)、中等度近視、強度近視(重度近視);仮性近視、真性近視、半真性半仮性(混合)近視;児童及び/又は青少年近視(好ましくは3-26歳の人であり、より好ましくは6-18歳の人である)、未成年近視、青少年近視、成年近視、高齢者近視;単純近視、病的近視;軸性単純近視、単純軸性近視;児童及び/又は青少年の軸性近視(好ましくは3-26歳の人であり、より好ましくは6-18歳の人である);学齢期及び就学前の人群れの軸性近視;原発性近視、続発性近視;児童及び/又は青少年の原発性近視(好ましくは3-26歳の人であり、より好ましくは6-18歳の人である);児童及び/又は青少年の進行性近視(好ましくは3-26歳の人であり、より好ましくは6-18歳の人である);屈折性近視、指数性近視、屈折媒介の前向き変移による近視、屈曲性近視;近業作業で長時間の目の使用による近視、疲れ眼による近視及び仮性近視、薬物副作用による負の屈折率、近眼、読書による近視、携帯電話等の電子製品の使用による近視、屈折媒体(成分)の不整合による近視、屈折近視、屈折発育の異常による近視、眼球の過剰な成長による近視、目の不衛生による近視、様々な要因で遠方物体の結像焦点が網膜の前にあり、アトロピンの治療効果が低い又は無効である近視、アウトドア運動不足による近視、調節緊張性近視、児童近視、環境要素での近視である。
【0059】
いくつかの実施形態において、前記近視は、水晶体病変による近視又は近視症状を含むか、又は含まない。
【0060】
いくつかの実施形態において、近視関連症状又は身体的兆候は、例えば、強度近視の併発症、飛蚊症、緑内障、後部ブドウ腫、網膜剥離、網膜裂孔、弱視、黄斑下出血、脈絡膜新生血管、脈絡膜萎縮、黄斑変性又は黄斑病変、視野欠損、ゆるやかな又は突然の視力(特に近視力)低下、目の膨張感及び/又は痛み、夜盲、乱視、屈折率バラツキ、失明、硝子体液化、硝子体混濁、斜視、頻繁なまばたき、よく目をこすること、屈折率バラツキ、遠方物体を見る時に視界がぼやけ、遠方物体をはっきり見えるために目を細め又は上瞼の一部を閉じる必要があること、眼疲労による頭痛、運転中の、特に夜間(夕方近視)の視困難、網膜萎縮変性(出血や裂孔)、網膜下新生血管、及び眼球萎縮などの近視併発症を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、薬物組成物、製剤又はデバイスは、医療用製剤又は薬物をさらに含み、前記医療用製剤又は薬物は、近視治療薬(例えば、アトロピン、ベンダゾール、ピレンゼピン、ムスカリン拮抗薬、7-メチルキサンチン(7MX)、アミノベンジルアミン、マレイン酸チモロール、アドレナリン、ピレンゼピン、ペラジン、ペルラピン、ペルラピン、ピレンゼピン、メチルアミン、クロリソンダミン、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、ドーパミンアゴニスト、γ-アミノ酪酸、ナロキソン、グルカゴン、レチノイン酸など)、M受容体遮断薬(例えば、M3受容体を対象とする遮断薬又は拮抗薬又は阻害剤)、多不飽和脂肪酸(例えば、DHA、EPA)、サリドロシド、ホルモノネチン、プラゾシン、ホマトロピン、アニソダミン(ラセミ体)、トロピカミド、ニコチン酸、ピラセタム(Piracetam)、タンジン抽出物、紅花抽出物、魚油、熊胆抽出物、ビタミン、アデノシン三リン酸(ATP)、非選択的アデニル酸拮抗薬、血管拡張薬、散瞳薬、平滑筋拡張薬、血管痙攣防止薬、コラーゲン代謝調整薬、抗アレルギー薬、抗炎症薬、肝庇護薬、眼科疾患治療成分、眼用局所麻酔薬、又は眼科用剤を含むが、それらに限定されない。
【0062】
いくつかの実施形態において、薬物組成物、製剤又はデバイスは、医療用製剤又は薬物をさらに含み、前記医療用製剤又は薬物は、ベンダザック又はその様々な塩の形態、又はベンダザックリシン又はその様々な塩の形態を含む。これは、これらの薬物組成物、製剤又はデバイスに、最終的に「ベンダザック又はその様々な塩の形態」とベンダザックリシン、又はその光学異性体又はそのラセミ体、又はその溶媒和物、又はその薬学的に許容可能な塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝生成物、又はその類似体又はその誘導体、又はその結晶型化合物との組み合わせ形態を形成することを意味し、又はこれらの薬物組成物、製剤又はデバイスに、最終的に「ベンダザックリシン又はその様々な塩の形態」とベンダザック、又はその光学異性体又はそのラセミ体、又はその溶媒和物、又はその薬学的に許容可能な塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝生成物、又はその類似体又はその誘導体、又はその結晶型化合物との組み合わせ形態を形成することを意味する。
【0063】
いくつかの実施形態において、医療用製剤又は薬物は、前記薬物組成物、製剤又はデバイスと同期して投与してもよく、例えば、具体的には、1回の投与(治療)過程で、同時に又は前後に投与、同一日に投与、同一週に投与、同一月に投与、同一年に投与するか、又は間隔をおいて交互に投与し、例えば、4時間おきに交互に投与、12時間おきに交互に投与、一日おきに交互に投与、一週おきに交互に投与、一月おきに交互に投与、一年おきに交互に投与する。
【0064】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数の他の薬物は、近視治療薬(例えば、アトロピン、ベンダゾール、ピレンゼピン、ムスカリン拮抗薬、7-メチルキサンチン(7MX)、ピレンゼピン、アミノベンジルアミン、マレイン酸チモロール、アドレナリン、ペラジン、ペルラピン、ペルラピン、ピレンゼピン、メチルアミン、クロリソンダミン、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、ドーパミンアゴニスト、γ-アミノ酪酸、ナロキソン、グルカゴン、レチノイン酸など)、M受容体遮断薬(例えば、M3受容体を対象とする遮断薬又は拮抗薬又は阻害剤)、多不飽和脂肪酸(例えば、DHA、EPA)、サリドロシド、ホルモノネチン、プラゾシン、ホマトロピン、アニソダミン(ラセミ体)、トロピカミド、ニコチン酸、ピラセタム(Piracetam)、タンジン抽出物、紅花抽出物、魚油、熊胆抽出物、ビタミン、アデノシン三リン酸(ATP)、非選択的アデニル酸拮抗薬、血管拡張薬、平滑筋拡張薬、血管痙攣防止薬、コラーゲン代謝調整薬、抗アレルギー薬、抗炎症薬、肝庇護薬、眼科疾患治療成分、眼用局所麻酔薬、散瞳薬、又は眼科用剤又は薬物を含むが、それらに限定されない。
【0065】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数の他の薬物は、ベンダザック又はその様々な塩の形態、又はベンダザックリシン又はその様々な塩の形態を含んでもよい。これは、本出願に係るこれらの物質がこれらの薬物と組み合わせて使用する時、最終的に「ベンダザック又はその様々な塩の形態」とベンダザックリシン、又はその光学異性体又はそのラセミ体、又はその溶媒和物、又はその薬学的に許容可能な塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝生成物、又はその類似体又はその誘導体、又はその結晶型化合物との共同使用形態を採用することができることを意味し、又は本出願に係るこれらの物質とこれらの薬物が組み合わせて使用する時、最終的に「ベンダザックリシン又はその様々な塩の形態」とベンダザック、又はその光学異性体又はそのラセミ体、又はその溶媒和物、又はその薬学的に許容可能な塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝生成物、又はその類似体又はその誘導体、又はその結晶型化合物との共同使用形態を採用することができるのを意味する。
【0066】
いくつかの実施形態において、共同使用とは、前記1つ又は複数の他の薬物が同期して投与することであり、例えば、具体的には、1回の投与(治療)過程で、同時に又は前後に投与、同一日に投与、同一週に投与、同一月に投与、同一年に投与するか、又は間隔をおいて交互に投与し、例えば、4時間おきに交互に投与、12時間おきに交互に投与、一日おきに交互に投与、一週おきに交互に投与、一月おきに交互に投与、一年おきに交互に投与する。
【0067】
いくつかの実施形態において、製剤は、さらに健康品、食品、サプリメント、栄養物、飲料等の経口製品又は化粧品であってもよく、そのうち、前記化粧品は、自由溶液、油水混合液、懸濁液(剤)、擦剤、ローション、スプレー、クリーム、滴剤、顆粒製剤、軟膏、ペースト剤、丸剤、座薬、乳剤、貼付剤のうちの1つ又は複数の組み合わせであってもよい。
【0068】
いくつかの実施形態において、デバイスは、薬物を放出することができる、又は薬物送達機能又は潜在的薬物送達能力を備える機器、デバイス、消費品、システム、医療器械、健康関連商品又は眼部外観を変更するものであり、例えば、角膜コンタクトレンズ、メガネ、眼内レンズ、縫合糸、オルソケラトロジーレンズ洗浄(メンテナンス)システム、アイパック、明目パック、カラコン、マイクロニードル、眼用スプレーシステム、アイマッサージャー(近視用マッサージャー)、眼用燻蒸機器、眼表面薬物送達デバイス、眼内薬物送達デバイス、眼底薬物送達デバイス、インプラントポンプ、ウェアラブルデバイス、ツボマッサージャー、眼リラックスデバイス、近視治療器又は近視予防制御のための薬剤・デバイス併用製品である。いくつかの実施形態において、デバイスは眼科用デバイスと呼ばれてもよい。
【0069】
用語と定義
特に定義されていない限り、本明細書に用いられる全ての技術及び科学用語は、本出願の技術分野に属する技術人員が通常理解される意味と同じである。本明細書に用いられる用語は、具体的な実施例の目的を説明するためのものに過ぎず、本出願を制限するためのものではない。本出願の明細書と特許請求の範囲及び上記図面の説明における用語「含む」及び「有する」及びそれらの任意の変形は、非排他的の包含を意図とする。
本明細書で言及されている「1つ又は複数」は、該要素の少なくとも1つが存在することを意味し、特に明確な具体的限定がない限り、このような要素が複数存在してもよい。
【0070】
本出願の記載において、用語「及び/又は」は、関連対象の関連関係を説明するためのものに過ぎず、3種類の関係があってもよいと意味する。例えば、A及び/又はBは、Aが単独して存在する場合、AとBが同時に存在する場合、Bが単独して存在する場合を含んでもよい。また、本明細書における符号の「/」は、一般的には前後の関連対象が「又は」という関係にあることを意味する。
【0071】
本明細書で言及されている「実施例」又は「実施形態」は、実施例(又は「実施形態」)に記載された特定の特徴、構造又は特性が本出願の少なくとも1つの実施例(又は「実施形態」)に含まれることが可能であるのを意味する。明細書の各箇所で出現した当該用語は必ず同じ実施例(又は「実施形態」)を指すというわけでなく、他の実施例(又は「実施形態」)に対して排他的に独立した又は代替的な実施例(又は「実施形態」)であってもない。本明細書に記載の実施例(又は「実施形態」)を他の実施例(又は「実施形態」)と組み合わせてよいことが当業者に明示的又は暗示的に理解される。
【0072】
本明細書と添付の特許請求の範囲において、単数形の「一(a)」、「一つ(an)」及び「当該/その/前記(the)」は、文脈に特に明確に示されていない限り、それらが指示する用語の複数の指示物も特に含むことを意図する。また、本明細書に用いられるように、用語「又は/又は」は、特に断らない限り、「及び/又は」の「包含性」を意味し、「排他的」意味ではない。
【0073】
本明細書に用いられるように、変数の値の範囲の参照は、本出願がこの範囲内の任意の値に等しい変数を使用して実施できることを伝えることを目的とする。したがって、内在の不連続的な変数の場合、前記変数は、前記範囲の端点を含む前記値の範囲内の任意の整数の値に等しくてもよい。同様に、内在的に連続的な変数の場合、前記変数は、前記範囲の端点を含む前記値の範囲内の任意の実値に等しくてもよい。一例として、0から2の間の値を有すると記述される変数は、内在的に不連続的な変数に対して、0、1又は2であってもよく、内在的に連続的な変数に対して、0.0、0.1、0.01、0.001又は他の任意の実値であってもよい。
【0074】
本明細書に用いられる「約」は、当業者であれば理解されるものであり、それを使用するコンテキストに応じて、ある程度変化する。この用語の使用は当業者が不明である場合、この用語を使用するコンテキストにおいて、「約」は挙げられた値に10%を加算又は10%を減算した範囲内の値を表す。
【0075】
用語「個体」、「被験者」は、人間及び人間以外の動物を含み、例えば、ヒツジ、ブタ、ウシやウマなどの農場動物、犬や猫などのペット動物、マウス、ラットや非ヒト霊長類などの実験室用動物を含む。好ましい実施形態において、前記哺乳動物はヒトである。
【0076】
本明細書に用いられる化合物、製剤、被験品又は薬物を対象に「投与」することは、化合物を対象に導入又は送達してその予期機能を実行するあらゆる経路を含む。任意の適切な経路で「投与」を実施することができ、経口、眼内、鼻内、胃腸外(静脈内、筋肉内、腹腔内又は皮下)又は局所投与を含むが、それらに限定されない。「投与」は自己投与と他人投与を含む。
【0077】
本明細書における投与方式において、「単独使用」は、投与過程全体の各段階で1つの投与方式しか使用しないが、投与過程における異なる段階で投与方式を変換してもよい(しかし、交互に投与しない)ことを表す。
【0078】
本明細書における投与方式において、「いずれかを選択して使用する」ことは、投与過程全体で1つの投与経路しか使用せず、変更しないことを表す。
【0079】
本明細書に用いられる用語「アミノ酸」は、天然に存在しているアミノ酸、合成のアミノ酸、アミノ酸類似体、及び天然に存在しているアミノ酸と同様な形態で作用するアミノ酸擬似物質を含む。天然に存在しているアミノ酸は、遺伝的暗号でエンコードされたアミノ酸及び後で変性されたアミノ酸であり、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸及びO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体とは、天然に存在しているアミノ酸と同じ基本化学構造を有する化合物であり、例えば、前記基本化学構造は、即ち、水素に結合されたα-炭素、カルボキシル基、アミノ基及びR基であり、前記アミノ酸類似体は、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニン・スルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムである。このような類似体は、変性したR基(例えば、ノルロイシン)又は変性したペプチド主鎖を有するが、天然に存在しているアミノ酸と同じ基本化学構造が維持されている。アミノ酸擬似物質とは、アミノ酸の共通化学構造と異なる構造を有するが、天然に存在しているアミノ酸と同様の方式で機能する化学化合物である。本明細書において、IUPAC-IUB生化学命名委員会が提案した一般的に知られている3文字符号又は1文字符号に従って、アミノ酸を指すことができる。
【0080】
本明細書に用いられる用語「有効量」とは、所望の治療及び/又は予防効果が得られるための十分な量であり、例えば、眼科疾患に関連する病症を予防又は軽減する量である。対象に投与する組成物の量は、疾患のタイプ、重症度及び個体の性質、例えば、通常の健康状況、年齢、性別、体重、民族、近視の程度、近視の進行速度や薬物に対する耐性に応じて決められる。前記量は、さらに疾患の程度、重症度及びタイプ、及び専門者(例えば、医師)が決定した治療方法に応じて決められる。専門的な技術者は、これらの要素及び他の要素によって適切な用量を決定することができる。前記薬物組成物は、さらに1つ又は複数の他の治療化合物、生物学的製剤及び治療的分子(例えば、ポリペプチド)と組み合わせて投与してもよい。本明細書に記載された方法において、ベンダザック、ベンダザックリシン化合物又はそれを含有する薬物組成物は、眼科疾患の1つ以上の症状又は症候群を有する対象に投与することができる。例えば、ベンダザックリシンの「治療有効量」とは、眼科疾患の生理的作用を最小限に軽減するための平均レベルであり、好ましくは近視進行の生理的作用を最小限に制御するための平均レベルである。
【0081】
本明細書に用いられる用語「製剤」、「薬物組成物」及び「組成物」は、相互に交換して使用可能であり、2つ以上の化合物、元素又は分子の混合物を指すことができる。いくつかの態様では、用語「製剤」、「薬物組成物」及び「組成物」は1つ以上の活性剤(活性成分)と担体又は他の賦形剤との混合物を指すために使用され得る。組成物は、ほとんど固体、液体(例えば溶液)又はガスを含む任意の物理的形態を採用することができる。
【0082】
用語「剤形」は、被験者に投与する形態で提供されるための1つ以上の製剤又は組成物を含んでもよい。例えば、注射剤形は、注射による投与に適した方式で製造された製剤又は組成物であってもよい。
【0083】
本明細書に用いられる用語「薬学的に許容可能」とは、動物、好ましくはヒトへの使用が、管理部門、例えば、CFDA(中国)、EMEA(ヨーロッパ)及び/又はFDA(US)及び/又は任意の他の国の管理部門で許可されることを意味する。
【0084】
本明細書に用いられるように、「眼科的に許容可能な担体」とは、被験者の眼部への薬物組成物の使用が眼科的に許容可能な溶媒、懸濁剤又は媒体である。前記担体は固体又は液体であってもよい。前記担体は、ある意味で「眼科的に許容可能」なものであり、即ち、担体は、いずれかの大きな副作用も起こさずに眼部に投与することに好適である。
【0085】
本明細書に用いられる用語「同時」とは、治療のために投与する時、同一又は異なる経路(例えば、経口や点眼)を通じて、同じ時間又は実質的に同じ時間に少なくとも2つの活性成分を投与するか、又は同じ時間又は実質的には同じ時間に投与し且つ手術を行うか、又は同じ時間又は実質的には同じ時間に投与し、治療デバイスを使用することである。
【0086】
本明細書に用いられる用語「単独」とは、治療のために投与する時、同じ時間又は実質的に同じ時間に、1つの方式で投与するか、又は1つの有効成分のような1つの物質で投与することである。
【0087】
本明細書に用いられる用語「順序」とは、治療のために投与する時、異なる時間に少なくとも2つの活性成分を投与することであり、投与経路が同一でも異なってもよい。より具体的には、「順に投与」とは、他の活性成分の投与を開始する前に、前記活性成分のうちの1つの活性成分を完全に投与することである。したがって、他の活性成分を投与する前の数秒、数分間、数時間又は数日の前に、1つの活性成分を投与することができる。
【0088】
本明細書に用いられる用語「治療」、「制御」、「抑制」、「遅らせ」、「低減」、「予防制御」、「予防」、又は「減速」とは、治療処理措置や予防又は防止措置であり、対象となる病症又は失調を防止又は緩和(軽減)し、さらにそれを解消又は逆転することを目的とする。例えば、本明細書に記載の方法に係る治療量のベンダザックリシン化合物又はそれを含有する薬物組成物を受けた後、対象は、眼科疾患の1つ以上の症状及び症候群の観察可能な及び/又は測定可能な回避、低減や消失、又は病状進行の減速を示した場合、対象の眼科疾患の治療が成功したことになる。さらに理解すべきこととして、本明細書に記述された医学的病症を治療又は予防する様々なパターンは、完全な治療又は予防、及び特定の生物学的関連又は医学的関連結果が達成された非完全な治療又は予防を含む「顕著」を示すことを意図する。例えば、いくつかの実施形態において、「治療」は、近視又は近視症状を100%解消又は防止する必要がない。いくつかの実施形態において、本出願に係る組成物又は方法が存在しない場合(例えば、本出願に係る組成物又は本出願に係る方法の化合物に暴露していない生物学的に整合する対照被験者、個体又は標本)に観察されたレベルと比較し、本出願に係る方法による近視又は近視関連症状の「治療」には、例えば、少なくとも約5%、少なくとも約10%又は少なくとも約20%軽減、抑制、阻止、予防及び/又は逆転された。いくつかの実施形態において、本出願に係る方法の化合物が存在しない時の近視又は近視関連症状と比較し、近視又は近視関連症状は、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%又は少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%又はそれ以上(約100%)治療された。
【0089】
明細書に使用される用語「近視発症傾向のある(個体)」は、屈折度レベルの低下が既に発生したが、負の値になっていない状況であってもよいし、権威のある機構又は専門的な医師が近視になりやすいと予測し又は考えられた体質又はハイリスク群であってもよいし、さらに近視家族既往歴のある個体であってもよいし、さらに、近方の視覚情報が多く受けられるが遠方を見る機会に欠ける個体状況を含んでもよく、さらに、近視発生(罹患)率、又は一旦近視になると、その重症度が平均レベルを下回らない状況を指してもよく、さらに投与後の副作用又は手術を行った後のリスクに屈折度の低下を含む状況を指してもよく、さらに薬物又は他の近視治療(予防制御)手段を用いて介入しないと、該個体が近視になり又はその屈折度が0以下に低下する状況を指してもよい。
【0090】
「眼科用組成物」又は「眼用製剤」又は「眼科用剤」とは、眼科用組成物、又は眼科用薬物組成物、又は眼科薬物製品であり、又は眼部疾患の予防及び/又は治療、視力保護、維持、向上、視力障害の回避、軽減又は逆転のための薬物、製剤、化粧品、健康品、薬剤・デバイス併用製品又はデバイスの薬学的部分である。
【0091】
「魚油」とは、高等動物、特に魚類(例えば、タラ、サケ)、イカ、アザラシに由来する脂類物質であり、特に、その中の多不飽和脂肪酸を指し、オメガ-3不飽和脂肪酸、DHA、EPA、DPA、ALA、nisinic acid、stearidonic acid、eicosatetraenoic acid又はこれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0092】
「類似体」とは、親化合物(例えば、本出願で言及するベンダザック又はベンダザックリシン)の構造誘導体を指し、親化合物と比較して、1つの元素(同位体を含む)のみが異なる。
【0093】
本明細書に用いられる化合物の「誘導体」という用語は、この化合物の酸、アミド、エステル、エーテル、アセチル化変異体、ヒドロキシル化変異体又はアルキル化(C1-C6)変異体、ハロゲン化物、重水素化物など、前記化合物の機能及び/又は構造に関連する任意の分子を含む。誘導体は、親薬物と0.4超え、好ましくは0.5超え、より好ましくは0.6超え、より好ましくは0.7超えのTanimoto係数を有すべきである。Tanimoto係数は、2つの分子の間の構造の類似度を測定するために広範囲に用いられる。Tanimoto係数は、オンラインで入手可能なSmall Molecule Subgraph Detector(http://www.ebi.ac.uk/thornton-srv/software/SMSD/)のようなソフトウェアで算出可能である。好ましい誘導体は、構造と機能上で親化合物と関連すべきであり、即ち、それらはさらに親薬物の活性の少なくとも一部を維持すべきであり、例えば、参照文献Synthesis and biological evaluations of novel bendazac lysine analogues as potent anticataract agentsに記載されているベンダザックリシン誘導体又は類似体(Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters, 20, 2115-2118, 2010)であり、より好ましくは、それらは屈折発育に対して調整作用を有すべきである。また、「誘導体」は、薬物の代謝物をさらに含み、例えば、有機体に当該分子を投与した後、通常、専門的な触媒系によって前記薬物の(生化学的)変性又は加工により生成され、薬物の生物学的活性を示す又は保持する。代謝物は親薬物の治療効果の大部分を果たすものであることが既に開示されている。
【0094】
本明細書に用いられる「代謝物」とは、親薬物の少なくとも一部の活性を保留し、好ましくはアルドース・レダクターゼ(Aldose Reductase,AR)の活性に対して抑制作用を有するか、又は近視及び関連症状に対して治療、予防又はその進行を減速する作用を有する変性又は加工された薬物である。
【0095】
本明細書に用いられるように、用語「治療的に許容可能な塩」は、本明細書に開示された化合物の塩又は両性イオンの形態を表し、本明細書で定義されるように、それは水溶性又は油溶性のものであるか、又は分散可能で、治療的に許容可能なものである。塩は、化合物の最終的な分離と精製中に調製可能であり、又は適切な遊離塩基形態の化合物と適切な酸との反応により単独して調製することができる。代表的な酸付加塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、L-アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(benzenesulfonate,besylate)、硫酸水素塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、グルカル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ゲンチシン酸塩、グルタル酸塩、グリセロールリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、DL-マンデル酸塩、メシチレンスルホン酸塩(Mesitylenesulfonate)、メタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモエート塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ホスホン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ピログルタミン酸塩、コハク酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、L-酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、炭酸水素塩、パラトルエンスルホン酸塩(para-toluenesulfonate,p-tosylate)及びウンデカン酸塩を含む。また、本明細書に開示された化合物における塩基性基は、メチル、エチル、プロピル及びブチルの塩化物、臭化物やヨウ化物;硫酸ジメチル、ジエチルエステル、ジブチル及びジアミル;デシル基、ラウリル基、ミリスチル基及びステロール基の塩化物、臭化物やヨウ化物;及びベンゼル基とフェニルエチルの臭化物を用いて第四級アンモニウム化することができる。治療的に許容可能な付加塩の形成に用いることができる酸の例として、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸)及び有機酸(例えば、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸及びクエン酸)を含む。化合物とアルカリ金属又はアルカリ土類金属イオンとの配位作用によって塩を形成することができる。したがって、本出願は、本明細書に開示された化合物のナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウム塩等を含む。
【0096】
本出願に記載されている「これらの物質」とは、ベンダザックリシン又はベンダザック、又はその光学異性体又はそのラセミ体、又はその溶媒和物、又はその薬学的に許容可能な塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝生成物、又はその類似体(analogues)又は誘導体(derivatives)、その結晶型化合物である。
【0097】
「近視」とは、調整リラックス状態下で、平行光線が眼球屈折系を通過した後、網膜の前に焦点が結ばれることである。屈折要因に応じて、屈折性近視及び軸性近視に分けられ、それらの臨床的表現は、いずれも遠距離の視界が悪くてぼやけ、近距離の視力が良いことである。近視は、初期に遠距離視力がよく変動し、近方を見る時に調整不要又は少し調整するため、集中機能が対応して弱められ、外斜位又は外斜視を引き起こしやすい。近視関連症状はさらに夜間視力の低下、飛蚊症、閃輝暗点などを含み、且つ異なる程度の眼底変化が発生することがあり、コーヌス、黄斑部出血又は網膜下新生血管腫の形成、不規則的形状の白い萎縮斑の発生、又は色素沈着による円形の黒い斑(Fuchs斑)、網膜周辺の格子状変性、嚢状変性が発生することもあり、若い頃には硝子体の液化、混濁や後部硝子体剥離などが発生し、網膜裂孔や剥離が発生するリスクは通常の人よりも高い。眼球の前後径が長く、眼球が突出し、眼球の後極が拡張するので、強膜ブドウ腫を形成し、上記の臨床症状を有するものは病的近視と呼ばれる。
【0098】
近視は、目をひどく弱める疾患であるかもしれない。近視の潜在的な欠陥(リスク)として、眼球がわずかに長くなり、水晶体が遠物からの光線を網膜の少し前に焦点が結ばれる。したがって、近視は、通常、視力短縮又は視力接近と呼ばれる。深刻な場合には、眼球のこのような延長により、目の内部のある部分を伸ばして薄化し、網膜剥離、白内障、緑内障、失明等のリスクが高かまる。したがって、近視は純粋な視力短縮に比べてはるかに深刻である。
【0099】
近視には眼の軸方向の伸長が存在し、大部分の人に影響を与える。近視の発病は、通常小学生年齢の期間に起こり、眼の成長が終了するまで進行する。矯正レンズが使用できるとしても、近視の進行は依然として視覚的欠陥を増加させることができる。本出願開示は、近視の発生と進行の治療、予防、予防制御、抑え、抑制、減速、遅らせ、遅延、低減、スローダウン及び/又は軽減のための薬物組成物と治療法の重要性を認識し、特に、投与又は実施を簡単化することにより、潜在的な副作用を低減し、治療の効き目又はそれらの組み合わせを提供する薬物組成物、前記薬物組成物を含有又は送達するデバイス及びそれらの使用方法である。
【0100】
学界には、様々な近視の要因、例えば、遺伝的感受性、延長した書類作業又は画面作業時間、十分に明るくない光線への暴露等について検討した。所定の状況での近視の潜在的な要因に関わらず、それは、上記に挙げられた要因のうちのいずれか又は複数である可能性があり、このような症状で影響された全ての人であれば、近視に関連する伸ばした眼球が弱められる。幼児期と就学期に目は成長し、近視は、通常、学齢児童と青少年に発症し且つこれらの個体と一生伴う。したがって、例えば、学齢児童と青少年などの個体への積極的な投与介入治療によって、これらの個体の若い頃と残りの生命中の生活の質を高めることができる。
【0101】
「近視個体」又は「近視傾向のある個体」は、児童、青少年、中年者又は高齢者であり、好ましくは3から26歳の人であり、より好ましくは6から18歳の人であり、又は未成年人であり、好ましくは目(眼球)が成長、発育段階にある人であり、又は学齢期の人であり、好ましくは一年生から十二年生の人である。
【0102】
本明細書において、用語「近視」と「近眼」で表される概念には区別がなく、両者が相互に交換可能である。本分野の研究者は、それが存在するコンテキストに基づき、本出願における「近視」又は「近眼」で表される意味を正確に理解すべきである。
【0103】
「近視」の具体的なタイプには、屈折性近視又は軸性近視、先天近視(生まれてから又は就学前に近視になっている)、早発性近視(14歳以下)、遅発性近視(16~18歳)、晩発性近視(成年以降);弱度近視(軽度近視)、中等度近視、強度近視(重度近視);仮性近視、真性近視;児童及び/又は青少年近視(好ましくは3-26歳の人であり、より好ましくは6-18歳の人である)、未成年近視、成年近視、高齢者近視;単純近視、病的近視;軸性単純近視、単純軸性近視;児童及び/又は青少年の軸性近視(好ましくは3-26歳の人であり、より好ましくは6-18歳の人である);学齢期及び就学前の人群れの軸性近視;原発性近視、続発性近視;児童及び/又は青少年の原発性近視(好ましくは3-26歳の人であり、より好ましくは6-18歳の人である);又は児童及び/又は青少年の進行性近視(好ましくは3-26歳の人であり、より好ましくは6-18歳の人である);近業作業で長時間の目の使用による近視、疲れ眼による近視及び仮性近視、薬物副作用による負の屈折率、近眼がある。
【0104】
「軸性近視」とは、眼球の前後径が長すぎ(眼軸の長さが正常な範囲を超えるため、他の屈折成分と不整合になる)、屈折力(角膜や水晶体等の目の他の屈折成分の屈折性能)が基本的に正常な範囲にある近視である。
【0105】
「屈折性近視」とは、軸長が基本的に正常な範囲内にあるが、主に屈折成分の屈折性能の変化による近視である。
【0106】
「病的近視」とは、変性近視とも呼ばれ、眼底の退行性病変である。患者は近視の屈折度数が通常高く(一般的に600度より大きい)、視機能が明らかに障害され、遠視視力がより悪い。また、視野、光覚、コントラスト感覚などにも異常がよく見られ、夜間視力差(夜盲)、飛蚊症、浮遊物、閃輝暗点等が常に随伴する。このような近視は、患者の眼底における網膜色素上皮の薄化及び萎縮、脈絡膜新生血管と網膜剥離、黄斑変性等の症状を含む明らかな病理学的変化が発生し、重症度が高い場合、盲目につながることもあることを特徴とする。
【0107】
「単純近視」とは、学齢期に発病することが多く、発育が停止すると、徐々に安定的になり、近視度数が600度以下で、眼底に一般的に明らかな病理学的変化がない近視であり、獲得性近視(眼)とも呼ばれる。このような進行的に発展している近視は適切なレンズで視力を正常に矯正することができ、他の視機能指標の多くが正常である。
【0108】
「原発性近視」は、特に、既存の診断技術を用いて病因及び発症メカニズム等を特定できない原因不明な近視であり、その発症・進行過程において、近視特異性を示す非一過性の機能-構造が変化すると表現される。先天近視及び後天単純近視を含む。
【0109】
「併発性/続発性近視」とは、内外要素の作用による目の調節機能障害、又は屈折指数の異常に起因する一過性近視(例えば、中毒性近視、薬物性近視、外傷性近視、糖尿病による近視及び早期白内障による近視)などであり、このような近視は、大部分が明確な誘発要素があり、視力の変化が繰り返すことがその特徴になる。このような近視は、高齢者群に多発している。
【0110】
「軸性単純近視」は、単純軸性近視と呼ばれることもある。単純近視に属し、眼軸の延長及び/又は硝子体腔の深さの増加により、結像の焦点が網膜の前にあることを特徴とする単純近視である。このような近視は、眼部の屈折組織(例えば、角膜曲率)が基本的に正常であり、児童及び青少年に最もよく見られる近視タイプであり、2から30歳の人に多発する。
【0111】
「進行性近視」とは、屈折度が時間又は個体年齢の増加に伴って持続的に低下する近視の一つであり、このような近視は、介入しなければ、一般的に、最終的に強度近視に進行する。
【0112】
「中等度近視」は、通常、300度以上600度以下の近視である。
【0113】
「屈折性近視」は、単に角膜や水晶体の曲率の増加による近視である。
【0114】
「指数性近視」は、主に房水、水晶体の屈折指数の増大による屈折力の増加に起因して形成された近視であり、屈折性近視に属する。
【0115】
「調節緊張性近視」は、重すぎる眼球の近方を見るときの負荷、毛様筋等の過度調整に起因した調節緊張又は調節痙攣による近視である。
【0116】
「水晶体病変による近視」とは、水晶体タンパク質の変性により、水晶体の構造パラメータ又は内部構造が変化し、それに伴って、厚さ、硬度、屈折率のようないくつかの物理的性質が変化し、さらに平行光線が該病変水晶体を通過した後、網膜の前に焦点が結ばれる近視の一つである。
【0117】
「遠視視力」は、裸眼遠視視力とも呼ばれ、医学的には、視力表から水平に5m離れた位置で、正常に目を開けて真ん前を見つめて、メガネや視力を高める作用を有するあらゆる補助デバイス(例えば、フレーム型メガネ、コンタクトレンズ、カラコン、細隙眼鏡など)をかけずに測定した視力である。
【0118】
「近視関連症状」とは、例えば、強度近視の併発症、飛蚊症、緑内障、後部ブドウ腫、網膜剥離、網膜裂孔、弱視、黄斑下出血、脈絡膜新生血管、脈絡膜萎縮、黄斑変性又は黄斑病変、視野欠損、ゆるやかな又は突然の視力(特に近視力)低下、目の膨張感及び/又は痛み、夜盲、乱視、屈折率バラツキ、失明、硝子体液化、硝子体混濁、斜視、頻繁なまばたき、よく目をこすること、屈折率バラツキ、遠方物体を見る時に視界がぼやけ、遠方物体をはっきり見えるために目を細め又は上瞼の一部を閉じる必要があること、眼疲労による頭痛、運転中、特に夜間(夕方近視)の視困難、網膜萎縮変性(出血や裂孔)、網膜下新生血管、及び眼球萎縮などの近視併発症を含む。
【0119】
「眼球の異常な発育」とは、児童及び青少年段階(例えば、3-26歳)で眼球の大きさの発育が異常であることである。眼軸が長すぎることにより平行光線が眼部の正常な屈折系を通過した後に結像焦点が網膜の前にあるか、又は主に環境要素で誘発されるか、又は主に人為的要素(例えば、長時間・近業作業の読書、電子スクリーンの頻繁的な使用、継続的に近方を見ることにより遠方を見る機会の欠如、屈折矯正メガネの不適当な使用)で引き起こされた発育の異常が主な特徴であり、その遺伝学的要素は、二次要素・随伴要素・協同要素であり、もしくは、前記異常な発育は遺伝学的要素に完全に無関係であることを主な特徴とする。
【0120】
「ベンダザックリシン」に関して、L-リジン(1-ベンゼル-1H-インダゾール-3-オキシ)酢酸塩がその化学名であり、分子式は、C6H14N2O2・C16H14N2O3であり、分子量は428.49であり、構造式は、次のとおりである。
【0121】
【化4】
【0122】
「ベンダザック」は、構造式が次のとおりである。
【0123】
【化5】
【0124】
「ベンダザック又はベンダザックリシンの誘導体」は、光学異性体又はそのラセミ体又はその代謝生成物(例えば、5-hydroxybendazac)などを含み、具体的には、Hong Shenら(Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters, 20, 2115-2118, 2010)が挙げられたものをさらに含んでもよいが、それらに限定されない。商品化したベンダザックリシン含有点眼液(例えば、国薬準字H20063847)を使用してもよく、当業者によく知られているプロセスを使用してベンダザックリシン及びその誘導体を調製してもよい。例示的な調製方法の一つとして、以下の3つのステップを含む。フェニルヒドラジンを開始原料とし、塩化ベンジルとベンゼル基化反応を行い、α-ベンゼルフェニルヒドラジンを得る第1の合成ステップと、α-ベンゼルフェニルヒドラジンを用いて尿素と高温条件下で環として反応させ、3-ヒドロキシ-1-ベンゼルインダゾールを得る第2の合成ステップと、3-ヒドロキシ-1-ベンゼルインダゾールを用いてクロロ酢酸とカルボキシメチル化反応を行い、ベンダザック、即ち、α-[(1-ベンゼル-1H-インダゾール-3-イル)オキソ]酢酸を得る第3の合成ステップと、ベンダザックとL-リジンをテトラヒドロフランに塩化反応を行い、続いてエタノールで再結晶し、最終生成物のベンダザックリシンを得る第4の合成ステップと、を含む。
【0125】
「ベンダザックリシン又はベンダザックの類似体(analogues)又はその誘導体(derivatives)」は、例えば、以下の(a)-(c)のことである。
【0126】
(a)
【化6】
、ここで、R1は、H、P(軽水素、Protium)、D(重水素、Deuterium)、T(三重水素、Tritium)、p-CH3、m-F、m-Cl、又はp-Clであり、R2は、H、P(軽水素、Protium)、D(重水素、Deuterium)、T(三重水素、Tritium)、K又はNaである。
【0127】
(b)
【化7】
ここで、R1は、H、P(軽水素、Protium)、D(重水素、Deuterium)、T(三重水素、Tritium)、p-CH3、m-F、m-Cl、又はp-Clであり、R2は、H、P(軽水素、Protium)、D(重水素、Deuterium)、T(三重水素、Tritium)、K又はNaである。
【0128】
(c)
【化8】
ここで、R1は、H、P(軽水素、Protium)、D(重水素、Deuterium)、T(三重水素、Tritium)、p-CH3、m-F、m-Cl、又はp-Clであり、R2は、H、P(軽水素、Protium)、D(重水素、Deuterium)、T(三重水素、Tritium)、K又はNaである。
【0129】
「製剤」は、健康品、食品、サプリメント、栄養物、飲物等の経口製品又は化粧品であり、そのうち、前記化粧品は自由溶液、油水混合液、懸濁液(剤)、擦剤、ローション、スプレー、クリーム、滴剤、顆粒製剤、軟膏、ペースト剤、丸剤、座薬、乳剤、貼付剤のうちの1つ又は複数の組み合わせであってもよい。
【0130】
「デバイス」は、薬物を放出することができる又は薬物送達機能又は潜在的薬物送達能力を備える機器、デバイス、消費品、システム、医療器械、健康関連商品又は眼部外観変更用品であり、例えば、角膜コンタクトレンズ、メガネ、眼内レンズ、縫合糸、オルソケラトロジーレンズ洗浄(メンテナンス)システム、アイパック、明目パック、カラコン、マイクロニードル、眼用スプレーシステム、アイマッサージャー(近視用マッサージャー)、眼用燻蒸機器、眼表面薬物送達デバイス、眼内薬物送達デバイス、眼底薬物送達デバイス、インプラントポンプ、ウェアラブルデバイス又は近視予防制御のための薬剤・デバイス併用製品である。
【0131】
本出願に言及されている「唯一の活性成分又は主な活性成分」とは、ベンダザックリシン又はベンダザック、又はその光学異性体又はそのラセミ体、又はその溶媒和物、又はその薬学的に許容可能な塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝生成物、又はその類似体(analogues)又は誘導体(derivatives)、又はその結晶型化合物、又はこれらの物質の組み合わせ以外、近視を治療するための他の活物質を含まないか、又は少量しか含まないものである。例えば、ベンダザックリシン又はベンダザック、又はその光学異性体又はそのラセミ体、又はその溶媒和物、又はその薬学的に許容可能な塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝生成物、又はその類似体(analogues)又は誘導体(derivatives)、又はその結晶型化合物、又はこれらの物質の組み合わせの含有量が全ての活性成分において50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は100%占められ、前記百分率が質量比又はモル数の比のものであるか、又はベンダザックリシン又はベンダザック、又はその光学異性体又はそのラセミ体、又はその溶媒和物、又はその薬学的に許容可能な塩、又はそのプロドラッグ、又はその代謝生成物、又はその類似体(analogues)又は誘導体(derivatives)、又はその結晶型化合物、又はこれらの物質の組み合わせが投与過程で50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は100%の近視治療薬効を貢献するものである。
【0132】
薬物組成物療法は、医学的に広く使用される強力な策略であり、相乗治療効果を実現し、用量や毒性を低減し、薬剤耐性の誘導を最大限に小さくし又は遅延することを目的とする(Chou TC.,「Drug combination studies and theiRsynergy quantification using the Chou-Talalay method,」CanceRRes.(2010)70: 440-6)。本出願開示は、近視及びその関連症状の治療、予防又は軽減のためのベンダザックリシンなどの化合物を同定し、近視(度数)の低下又は近視(過程)の減速効果を高めるとともに、アトロピン療法で観察されたそれらの副作用のような副作用を回避又は最大限に低減した。本出願の薬物組成物は、近視及びその関連症状の治療、予防又は軽減にアトロピンより優れる技術的効果を有し、屈折度指標の改善以外、実験中に羞明、瞳孔散大等の副作用が観察されていなかった。実験中に、全ての投与した動物には、いかなる不快症状又は眼部の異常な現象も観察されておらず、さらにベンダザックリシン又はベンダザックの既存の臨床応用に基づき、それを近視及びその関連症状の治療、防止又は改善のための臨床治療過程に用いることに良好な薬物安全性を有すると考えられる。
【0133】
実験によると、ベンダザック及びベンダザックリシンは、形態剥奪モルモットと凹レンズ誘導モルモット近視モデルの屈折度マイナス化過程を顕著に遅らせることができ、且つ眼軸の延長を顕著に抑制できることが意外に発見された。これに基づき、ベンダザック及びその塩形態の化合物は、動物、特に人間、例えば、学齢期の児童、青少年又は若い成年の近視に対して、近視の進行を治療、防止又は制御する効果を有することが証明された。
【0134】
本出願は、被験者に治療有効量のベンダザック、ベンダザックリシン及び/又はこれらの治療的に許容可能な塩及びその誘導体を投与することを含む被験者の近視及びその関連症状を治療又は予防する方法を提供している。好ましくは、前記ベンダザック又はベンダザックリシンを単独で投与し、好ましくは、前記ベンダザック及び/又はベンダザックリシンを他の薬物と同時に又は順に投与し、好ましくは、前記ベンダザック及び/又はベンダザックリシンを薬物組成物の形態で投与し、好ましくは、前記薬物組成物を眼用製剤に製造し、好ましくは、前記眼用製剤は薬学的に許容可能な担体をさらに含み、好ましくは、前記担体は眼科的に許容可能な担体である。
【0135】
本出願は、眼軸の伸長を抑制することにより、軸性近視の進行を抑制する技術及び方法を同時に提供し、前記技術及び方法は、被験者に治療有効量のベンダザック、ベンダザックリシン及び/又はこれらの治療的に許容可能な塩及びその誘導体を投与することを含む。好ましくは、前記ベンダザック又はベンダザックリシンを単独で投与し、好ましくは、前記ベンダザック及び/又はベンダザックリシンを他の薬物と同時に又は順に投与し、好ましくは、前記ベンダザック及び/又はベンダザックリシンを薬物組成物の形態で投与し、好ましくは、前記薬物組成物を眼用製剤に製造し、好ましくは、前記眼用製剤は薬学的に許容可能な担体をさらに含み、好ましくは、前記担体は眼科的に許容可能な担体である。
【0136】
本出願は、被験者に治療有効量のベンダザック、ベンダザックリシン及び/又はこれらの治療的に許容可能な塩及びその誘導体を投与することを含む近視度数を低減する技術及び方法を同時に提供している。好ましくは、前記ベンダザック又はベンダザックリシンを単独で投与し、好ましくは、前記ベンダザック及び/又はベンダザックリシンを他の薬物と同時に又は順に投与し、好ましくは、前記ベンダザック及び/又はベンダザックリシンを薬物組成物の形態で投与し、好ましくは、前記薬物組成物を眼用製剤に製造し、好ましくは、前記眼用製剤は薬学的に許容可能な担体をさらに含み、好ましくは、前記担体は眼科的に許容可能な担体である。
【0137】
本出願は、遠方物体の眼部での結像焦点と網膜の間の距離を小さくすることにより、近視個体の遠視視力を改善できる近視個体の遠視向上剤を同時に提供している。当該遠視向上剤は、ベンダザック、ベンダザックリシン及び/又はこれらの治療的に許容可能な塩及びその誘導体を含む。好ましくは、上記近視個体は屈折性近視である。好ましくは、上記近視個体は軸性近視である。
【0138】
本出願も、個体、例えば、幼児、学齢期の児童、青少年又は若い成年において近視及びその関連症状を治療、予防又は制御する薬物組成物又は方法に関する。いくつかの実施形態において、本出願の技術的解決手段の治療対象は青少年となり、年齢が6-28歳であり、好ましくは6-18歳であり、最も好ましくは12-18歳である。いくつかの実施形態において、本出願の技術的解決手段の治療対象は成年人となる。いくつかの例において、近視及びその関連症状の治療、予防又は制御は、治療有効量の薬物組成物又は剤形を必要とする被験者に使用することを含んでもよい。
【0139】
一実施形態において、薬物組成物は、治療有効量のベンダザック化合物又はその塩及びその誘導体、例えば、軽水素、重水素、三重水素置換物を含む。
【0140】
他の実施形態において、任意の一つ又は複数の薬物組成物、デバイス又は治療方法では、前記薬物組成物は、ベンダザック又はその治療的に許容可能な塩(例えば、ベンダザックリシン)又はその誘導体のうちの少なくとも1つの物質を含み、又は、前記薬物組成物は、ベンダザックリシン又はその治療的に許容可能な塩又はその誘導体を含み、好ましくは、ベンダザック及びベンダザックリシンを同時に含み、好ましくは、ベンダザックリシン及びベンダゾリン酸水素カルシウムを同時に含み、好ましくは、ベンダゾリン酸水素カルシウムを含み、好ましくは、薬学的に許容可能な担体をさらに含み、好ましくは、前記デバイスは徐放方式で前記薬物組成物を送達する。
【0141】
本明細書に開示された薬物組成物、デバイス又は治療方法のいくつかの実施形態において、前記治療対象(患者)に対して、約0.5ヶ月から20年間の一定の時間の治療を行い、例えば、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも5年、少なくとも9年又は少なくとも13年の一定の時間である。
【0142】
他の実施形態において、以上の実施形態におけるいずれか一つ、及び本明細書における他の実施形態におけるいずれか一つ又は複数の前記薬物組成物、デバイス又は治療方法によれば、前記薬物組成物は、水性組成物であり、好ましくは、前記水性組成物は涙液に近い又は一致する浸透圧を有し、又は前記薬物組成物は眼科用組成物(例えば、眼科用局所用組成物)又は眼科用製剤であり、好ましくは、前記眼科用製剤は眼科用水性製剤、眼科用ゲル製剤、眼科用乳剤、眼科用リポソーム、眼科用軟膏(好ましくは、前記眼科用軟膏は目薬軟膏であり、好ましくは、前記眼科用軟膏にワセリン又は流動パラフィンが含まれる)であり、又は前記薬物組成物は点眼剤製剤、眼用噴霧製剤、局所用製剤、ナノ顆粒懸濁剤、又はナノウェイハー、徐放製剤又は結膜下貯留槽などである。
【0143】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるような薬物組成物は、点眼剤形態などの眼科用水性製剤であってもよい。例えば、本明細書に記載のような眼科用水性製剤は、点眼瓶に入れて滴剤として投与することができる。いくつかの実施形態において、眼科用水性製剤は、単回投薬(即ち、単回の用量)として投与することができ、患者の目に滴下する1滴、2滴、3滴又はそれ以上の滴を含んでもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の眼科用水性製剤の一つの用量とは、前記点眼瓶からの1滴の水性組成物である。
【0144】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるような薬物組成物は眼科用ゲル製剤であってもよい。例えば、前記眼科用ゲル製剤は、点眼瓶に入れて滴剤として投与することができる。いくつかの実施形態において、眼科用ゲル製剤は、単回投薬(即ち、単回の用量)として投与することができ、患者の目に滴下する1滴、2滴、3滴又はそれ以上の滴を含んでもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の眼科ゲルの一つの用量とは、前記点眼瓶からの1滴のゲル組成物である。
【0145】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるような薬物組成物は眼科用軟膏製剤であってもよい。例えば、前記眼科用軟膏製剤は、管又は他の押圧可能な容器に入れることができ、前記管又は他の押圧可能な容器は、それによって条状軟膏を送達するための分配ノズルを有する。いくつかの実施形態において、眼科用軟膏製剤は、単回投薬(即ち、単回の用量)として投与することができ、患者の目に入る一本又は複数本を含んでもよい。いくつかの実施形態において、眼科用軟膏の一つの用量とは、分配ノズルによって分配された一本の軟膏組成物である。
【0146】
他の実施形態において、薬物組成物は、コンタクトレンズブリスターパック内に含まれる眼部用薬物組成物である。
【0147】
他の実施形態において、薬物組成物は、無侵襲投与経路で投与されるものである。
【0148】
以上の実施形態におけるいずれか1つ、及び本明細書において他の実施形態におけるいずれか1つ又は複数の前記薬物組成物、デバイス又は治療方法によれば、他の実施形態において、前記デバイスは、好ましくは眼科用デバイスであり、例えば、眼上に配置し又は眼内に存在するものであると理解可能である。前記デバイスは、光学矯正を提供することができる。デバイスは、カラコン、コンタクトレンズ、眼挿入物、角膜上張り(corneal onlay)、角膜インレー(corneal inlay)、ナノウェイハー(nano wafers)、リポソーム、ナノ顆粒、涙点プラグ(punctal onlay)又はマイクロ流体貯留庫(micro fluid reservoirs)を有するヒドロゲルマトリックスを含むが、これらに限定されない。
【0149】
他の実施形態において、薬物組成物は、デバイス内に含まれる徐放製剤である。
【0150】
他の実施形態において、薬物組成物は、デバイス内に含まれる。
【0151】
他の実施形態において、薬物組成物は眼科用組成物であり、且つ前記眼科用組成物はデバイス内に含まれる。
【0152】
他の実施形態において、デバイスは、薬物組成物を含む必要があり、又は薬物組成物を近視治療のための対応する標的組織に送達できるものである。
【0153】
他の実施形態において、デバイスは、徐放方式で前記薬物組成物を送達する。
【0154】
他の実施形態において、前記薬物組成物は、眼科疾患又は病状の治療のための眼科用組成物として調製される。
【0155】
他の実施形態において、前記薬物組成物は、前近視、近視(眼)又は近視進行の治療のための眼科用組成物として調製される。
【0156】
他の実施形態において、前記薬物組成物は、強度近視、中等度近視又は弱度近視の治療のための眼科用組成物として調製される。
【0157】
他の実施形態において、前記薬物組成物は、軸性近視又は屈折性近視の治療のための眼科用組成物として調製される。
【0158】
他の実施形態において、前記薬物組成物は、前近視(又は近視が発症するリスクがある、又は近視発症傾向がある)と診断された個体(患者)の治療のための眼科用組成物として調製される。
【0159】
他の実施形態において、薬物組成物は、基本的にデバイス全体に均一に分布する。
【0160】
他の実施形態において、デバイスはコンタクトレンズブリスターパック内に含まれる。
【0161】
他の実施形態において、薬物組成物は、コンタクトレンズブリスターパック内のデバイス内に浸漬する。
【0162】
当業者に知られているいずれかの方法を用いて、細胞、器官又は組織をベンダザック又はベンダザックリシンなどの化合物と接触させることができる。適切な方法は、インビトロ法、間接インビボ法又はインビボ法を含む。インビボ法は、通常、本出願のベンダザック又は/及びベンダザックリシン化合物又はそれを含有する薬物組成物を哺乳動物に投与し、好ましくは人間に投与することを含む。体内に用いられて治療する場合、ベンダザック又は/及びベンダザックリシン化合物又はそれを含有する薬物組成物は、有効な量(即ち、望ましい治療有効量)で対象に投与することができる。用量及び投与形態は、対象の眼科疾患の重症度、該対象及び該対象の既往歴に応じて決められる。
【0163】
本明細書に開示された化合物は、Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism: Chemistry, Biochemistry, and Enzymology(Testa, Bernard and Mayer, Joachim M.Wiley-VHCA, Zurich, Switzerland 2003)に記載されるように、プロドラッグとして存在してもよい。本明細書に記載の化合物のプロドラッグとは、生理条件下で化学変化が容易に発生して該化合物を得るための変形形態である。また、プロドラッグは、化学又は生化学的方法で体外環境において該化合物に変換することができる。例えば、適切な酵素又は化学試薬を有する経皮貼付剤リザーバ(reservoir)に入った場合、プロドラッグは化合物に徐々に変換することができる。プロドラッグは通常有用なものであり、場合によって、化合物又は親薬物より容易に投与する可能性があるからである。例えば、それは、経口投与可能であることにより生物利用性を有する一方で、親薬物は不可能である。プロドラッグは、薬物組成物での溶解度が親薬物より高くてもよい。プロドラッグ誘導体の多くは、プロドラッグの加水分解又は酸化活性化に依存するプロドラッグ誘導体のように、本分野で知られているものである。プロドラッグの非制限的な1つの例としては、エステル(「プロドラッグ」)として投与するが、続いて代謝してカルボン酸(活性エンティティ)に加水分解された化合物がある。
【0164】
本明細書に開示された化合物は、酸付加塩を含む治療的に許容可能な塩として存在可能である。適切な塩は、有機酸及び無機酸とからなる塩を含み、このような酸付加塩は、通常、薬学的に許容可能なものであり、アルカリ付加塩として形成してもよく、且つ薬学的に許容可能なものでもある。塩の調製及び選択をより全面的に検討するために、Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use(Stahl, P.Heinrich.Wiley-VCHA, Zurich, Switzerland, 2002)を参照されたい。
【0165】
化合物の最終的な分離と精製中に、カルボキシル基を適切なアルカリ(例えば、金属カチオンの水酸化物、炭酸塩又は炭酸水素塩)、又はアンモニア又は有機第1級アミン、第2級アミン又は第3級アミノと反応させることにより、アルカリ付加塩を調製することができる。治療的に許容可能な塩のカチオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びアルミニウム、並びにアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N-ジベンジルフェニルエチルアミン、1-エフェナミン及びN,N’-ジベンジルエチレンジアミンなどの無毒の第4級アンモニウムカチオンを含む。アルカリ付加塩の形成に適用される他の代表的な有機アミンは、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン及びピペラジンを含む。
【0166】
本出願の化合物を粗製化学品として投与することが可能であるが、それらを薬物製剤として提供することも可能である。したがって、本明細書は、1つ又は複数の本明細書に開示された特定の化合物、又は1つ又は複数のその薬学的に許容可能な塩、エステル、プロドラッグ、アミド又は溶媒和物を含む薬物製剤、1つ又は複数のその薬学的に許容可能な担体及び任意選択的な1つ又は複数の他の治療成分を提供する。担体が必ず「許容可能なもの」とは、製剤の他の成分と適合し、且つ受容者に無害であることを意味する。適切な製剤は選択された投与経路によって決められる。適切で且つ本分野で理解される任意の公知の技術、担体及び賦形剤を使用することができ、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciencesを参照されたい。通常の混合、溶解、粒化、糖衣コーティング、細挽き、乳化、カプセル封入、包埋又は加圧成形処理などの本分野で知られている任意の方法で本明細書に開示された薬物組成物を生産することができる。
【0167】
製剤は、経口、胃腸外(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、関節内及び髄内を含む)、腹膜内、粘膜経由、経皮、直腸及び局所(皮膚、口腔、舌下、眼部、鼻内及び眼内を含む)投与に適する製剤を含み、最適な経路は、例えば、受容者の病状及び病症に応じて決めることができる。単位剤形で容易に製剤を供給することができ、且つ薬学の分野に公知のいずれかの方法で調製することができる。通常、これらの方法は、本出願の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、エステル、アミド、プロドラッグ又は溶媒和物(「活性成分」)と1つ又は複数の補助成分を構成する担体と結合するステップを含む。一般的には、活性成分を均一且つ緊密に液状担体又は微細な固状担体又はその両者と結合し、さらに必要であれば製品を所望の製剤に成形することにより、製剤を調製する。
【0168】
本明細書に開示された経口投与に適する化合物の製剤は、成分が分離した単位、例えば、それぞれが所定量の活性成分を含むカプセル剤、カシェ剤や錠剤として供給することができ、粉剤や顆粒として供給することができ、水性液体や非水液体にある溶液剤又は懸濁剤として供給することができ、又は水中油型エマルジョンや油中水型エマルジョンとして供給することができる。活性成分は、さらにボーラス、シロップ、練り薬又はペースト剤として供給することができる。
【0169】
経口使用可能な薬物製剤は、錠剤、ゼラチンで製造された押し込み式配合カプセル、及びゼラチンと可塑剤(例えば、グリセロール又はソルビトール)からなる密封ソフトカプセルを含む。任意に選択して1つ又は複数の補助成分と加圧成形又はモールディングを行うことにより錠剤を製造することができる。接着剤、不活性希釈剤又は潤滑剤、界面活性剤又は分散剤と混合した自由流動形態の任意選択的な活性成分(例えば、粉末又は顆粒)を適切な機器内で加圧成形することにより、加圧成形した錠剤を製造することができる。不活性液体希釈剤で湿潤化された粉状化合物の混合物を適切な機器内でモールディングすることにより、モールディングした錠剤を製造することができる。錠剤は、その中の活性成分の徐放又は放出制御を提供するために、コーティング又は刻印を任意に選択して製造することができる。経口投与のための全ての製剤の用量は、このような投与に適合すべきである。押し込み式配合カプセルは、充填剤(例えば、乳糖)、接着剤(例えば、デンプン)及び/又は潤滑剤(例えば、タルク又はステアリン酸マグネシウム)及び任意選択の安定剤と混合する活性成分を含んでもよい。ソフトカプセルにおいて、活性化合物は、適切な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィン又は液体ポリエチレングリコール)に溶解又は懸濁することができる。また、安定剤を添加してもよい。適切なコーティングを有する糖衣丸核を提供する。この目的のために、濃い糖溶液を使用することができ、それは、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール及び/又は二酸化チタン、塗料溶剤及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物を任意に選択して含むことができる。染料又は顔料は、活性化合物の用量の様々な組み合わせを識別する又は特徴づけるために、錠剤又は糖衣丸コーティングに添加することができる。
【0170】
経口薬物製剤(例えば、カプセル及び錠剤)に用いられる充填剤又は希釈剤の例としては、乳糖、マンニトール、キシリトール、右旋性グルコース、スクロース、ソルビトール、圧縮性糖、微結晶性セルロース(MCC)、粉状セルロース、トウモロコシデンプン、予備ゼラチン化デンプン、グルコース結合剤(dextrate)、デキストラン、デキストリン、右旋性グルコース、マルトデキストリン、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ポロキサマー(例えば、ポリエチレンオキシド)及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むが、それらに限定されない。充填剤は、例えば、使用している乳糖が乳糖一水和物である場合、錯体化した溶媒分子を有してもよい。
【0171】
経口薬物製剤(例えば、カプセル及び錠剤)に用いられる崩壊剤の例としては、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、クロスポビドン(ポリビニルポリピロリドン)、メチルセルロース、微結晶性セルロース、粉状セルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、予備ゼラチン化デンプン及びアルギン酸ナトリウムを含むが、それらに限定されない。
【0172】
また、経口薬物製剤は、混合時に賦形剤の均一なブレンドを確保するために、流動促進剤及び潤滑剤を使用してもよい。潤滑剤の例としては、ステアリン酸カルシウム、グリセリンステアリン酸エステル、パルミチン酸グリセリルステアリン酸エステル、水素化植物油、軽質鉱物油、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアロイルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、タルク及びステアリン酸亜鉛を含むが、それらに限定されない。流動促進剤の例としては、二酸化ケイ素(SiO2)、タルクトウモロコシデンプン及びポロキサマーを含むが、それらに限定されない。ポロキサマー(又はBASF Corporationから由来可能である)は、A-B-Aブロック共重合体であり、そのうち、Aブロックは、親水性ポリエチレングリコールホモポリマーであり、Bブロックは疎水性ポリプロピレングリコールホモポリマーである。
【0173】
錠剤接着剤の例としては、アラビアガム、アルギン酸、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グアーガム、水素化植物油、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コポリビドン(copolyvidone)、メチルセルロース、液体グルコース、マルトデキストリン、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、予備ゼラチン化デンプン、アルギン酸ナトリウム、デンプン、スクロース、トラガントゴム及びトウモロコシタンパク質を含むが、それらに限定されない。
【0174】
化合物を調製して注射を介した胃腸外投与に用いることができ、例えば、弾丸注射又は連続的な輸液である。注射のための製剤は、例えば、防腐剤を添加したアンプル又は多用量容器内の単位剤形として提供することができる。組成物は、油性又は水性媒体内にあるような懸濁液、溶液又はエマルジョンの形態を使用してもよく、且つ懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤などの調製剤を含んでもよい。製剤は、密封したアンプルや小瓶などの単位用量又は多用量容器に提供されてもよく、且つ粉末形態又は冷凍乾燥(フリーズドライ)状態で保存可能であり、使用直前に、生理食塩水又は無菌パイロジェンフリー水などの無菌液体担体を添加すればよい。前述したタイプの無菌粉末、顆粒及び錠剤で、使用する注射溶液及び懸濁液を調製することができる。好ましい一実施形態において、本出願の薬物組成物は、注射剤、特に注射器の形態である。好ましくは眼内注射、より好ましくは硝子体への硝子体内注射で薬物組成物を投与する。
【0175】
胃腸外投与のための製剤は、酸化防止剤、緩衝剤、抗菌剤、及び、製剤と所定の受容者の血液を等張化する溶質を含んでもよい活性化合物の水性及び非水性(油性)無菌注射溶液;懸濁剤及び増粘剤を含んでもよい水性及び非水性無菌懸濁液を含む。適切な親油性溶媒又は媒体は、脂肪油(例えば、ごま油)又は合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチル又はトリグリセリド)又はリポソームを含む。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランなどの懸濁液の粘度を向上させる物質を含んでもよい。任意選択的に、例えば、オレイン酸エチル又はトリグリセリド又はリポソームである。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランなどの懸濁液の粘度を向上させる物質を含んでもよい。任意選択的に、懸濁液は、高濃度の溶液を調製できるように、適切な安定剤又は化合物の溶解度を向上させる試薬をさらに含んでもよい。
【0176】
前述した製剤以外、さらに化合物を保存製剤として調製することもできる。このような持効性製剤は、埋め込み(例えば皮下又は筋肉内)又は筋肉内注射によって投与することができる。したがって、一例として、化合物は、適切な重合材料又は疎水性材料(例えば、許容可能な油中のエマルジョンとする)又はイオン交換樹脂を用いて調製することができ、又は難溶性の誘導体として調製することができ、例えば難溶性の塩である。
【0177】
口腔又は舌下投与の場合、組成物は、通常の方式で調製された錠剤、糖衣錠、タブレット又はゲルの形態を採用することができる。このような組成物は、味のあるマトリックス(例えば、スクロース及びアラビアガム又はトラガントゴム)に活性成分を含んでもよい。
【0178】
化合物は、直腸用組成物、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール又は他のグリセロールエステルなどの通常の座薬マトリックスを含む座薬又は停留浣腸剤として調製してもよい。
【0179】
本明細書に開示されたいくつかの化合物は、局所的に投与可能であり、即ち、非全身的に投与可能である。これは、本明細書に開示された化合物を、明らかに血液に入れないように、眼、表皮、口腔の外部、耳及び/又は鼻内に投与することを含む。逆に、全身投与とは、経口、静脈内、腹膜内及び筋肉内投与である。
【0180】
局所投与のための活性成分は、製剤の例えば0.001%~10%w/w(重量)を占めることができる。いくつかの実施形態において、活性成分は、10%w/wを高く占めてもよい。他の実施形態において、5%w/w未満であってもよい。いくつかの実施形態において、活性成分は2%w/w~5%w/wを占めてもよい。他の実施形態において、製剤の0.1%~2%w/w、好ましくは0.1%~0.5%w/wを占めてもよい。いくつかの実施形態において、製剤の0.01%w/w、0.05%w/w、0.1%w/w、0.25%w/w、0.5%w/wを占めてもよい。
【0181】
いくつかの実施形態において、局所投与のための活性成分は、製剤の例えば0.001%w/v~10%w/v(重量/体積で、単位:g/100ml)を占めてもよい。いくつかの実施形態において、活性成分は10%w/vを高く占めてもよい。他の実施形態において、5%w/v未満であってもよい。いくつかの実施形態において、活性成分は0.2%w/v~0.5%w/vを占めてもよい。他の実施形態において、製剤の0.1%w/v~2%w/v、好ましくは0.1%~0.5%w/vを占めてもよい。いくつかの実施形態において、製剤の0.01%w/v、0.05%w/v、0.1%w/v、0.25%w/v、0.5%w/vを占めてもよい。
【0182】
好ましい態様では、水溶液又は懸濁液における眼又は耳への局所投与のための製剤は、滴剤の形態のものである。水溶液又は懸濁液における鼻への局所投与のための製剤は、滴剤、噴霧剤又はエアロゾル形態のものである。用語「水性」は、通常、重量で製剤が>50%、より好ましくは>75%、特に>90%の水を含む水性製剤を示す。これらの滴剤は、単一用量のアンプルによって送達することができ、前記アンプルは、好ましくは無菌のものであってもよいため、製剤に抗菌成分がなくてもよい。又は、滴剤は、多用量瓶で送達することができ、前記多用量瓶は、好ましくは製剤を送達する際にその中から任意の防腐剤を抽出するデバイスを含んでもよく、このようなデバイスは本分野で知られているものである。溶液及び懸濁液製剤は、霧化器を使用して鼻部投与を行うことができる。推進剤に基づくエアロゾル系によって溶液、懸濁液又は粉末剤の鼻内送達を促進することもでき、前記推進剤は、ハイドロフルオロアルカンに基づく推進剤を含むが、それらに限定されない。又は粉末剤の形態で活性薬物成分を送達することができる。
【0183】
特定の実施形態において、本出願に係る製剤は、1日2回投与する。しかし、製剤を任意の投与頻度で投与するものとして調製してもよく、1週1回、5日ごとに1回、3日ごとに1回、2日ごとに1回、1日1回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回、1日8回、1時間ごとに投与するか、又はそれ以上のいずれかの頻度で投与することを含む。治療法に応じて、さらにこのような投与頻度は異なる持続時間維持する。特定の治療法の持続時間は、1回の投与から数ヶ月又は数年まで延長することができる。
【0184】
口中(例えば口腔又は舌下)への局所投与のための製剤は、味のあるマトリックス(例えば、スクロース及びアラビアガム又はトラガントゴム)に活性成分を含む糖衣錠、及び、ゼラチンとグリセロール又はスクロースとアラビアガムのようなマトリックスに活性成分を含むタブレットを含む。
【0185】
吸入による投与に対して、吹きつけ器、霧化器加圧バッグ又は他のエアロゾル噴霧剤を送達する利便性のあるデバイスは、化合物を容易に送達することができる。加圧バッグは、ハイドロフルオロアルカン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切なガスなどの適切な推進剤を含んでもよい。エアロゾルを加圧した場合、バルブを提供して計った量を送達することにより用量単位を確定することができる。又は、吸入又は吹き入れ投与の場合、本出願に係る化合物は、粉末組成物の形態、例えば、化合物と適切な粉末マトリックス(例えば、乳糖又はデンプン)との粉末混合物を使用することができる。粉末組成物は、例えば、カプセル、カートリッジ、ゼラチン又はブリスターパック内の単位剤形で提供することができ、粉末は、吸入器又は吹きつけ器によって上記から投与することができる。
【0186】
好ましい単位用量の製剤とは、以下に本明細書に記載されるような有効な用量又はその適切な占有率の活性成分を含む製剤である。
【0187】
理解すべきこととして、上記に特別に記載された成分以外、上記製剤は、本分野で注目される製剤タイプが通常の他の試薬をさらに含んでもよく、例えば、経口又は鼻内投与に適する製剤は、調味剤を含んでもよい。
【0188】
1日あたりに0.01から300mg/kgの用量で化合物を経口又は注射投与することができる。成人の用量範囲は、一般的に、0.1mgから50mg/日である。別個の単位で提供される錠剤又は他の表現形態は、一定量の1つ又は複数の化合物を容易に含んでもよく、それは、このような用量又は複数のこの用量の場合に有効であり、例えば、0.05mg~100mg、通常、約1mg~50mg、好ましくは5mgを含む。
【0189】
様々な方式で化合物を投与することができ、例えば、経口投与、局所投与又は注射投与である。患者に投与される化合物の正確な量は巡回診療医者が決める。任意の特定の患者を対象とする具体的な用量は、使用される具体的な化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康状況、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、薬物の組み合わせ、治療のための正確な病症及び治療される適応症又は病状の重症度を含む様々な要素によって決められる。また、投与経路は異なってもよく、病状及びその重症度によって決められる。
【0190】
場合によっては、本明細書に記載の少なくとも1つの化合物(又はその薬学的に許容可能な塩、エステル又はプロドラッグ)を投与して別の治療剤と組み合わせることが好適であり得る。単に一例として、患者は、本明細書における化合物の1つを受容して、副作用の1つである肝臓損傷が発生した場合、肝庇護薬を投与して初期の治療剤と組み合わせることが好適であり得る。又は、単に一例として、アジュバントを投与することにより、本明細書に記載の化合物の1つの治療効果を強化することができる(即ち、アジュバント自体は、最小の治療上のメリットしか有していないかもしれないが、別の治療剤と組み合わせると、患者に対する治療上のメリットが強化される)。又は、単に一例として、本明細書に記載の化合物の1つを、治療上のメリットも有する別の治療剤(それは治療法をさらに含む)とともに投与することにより患者へのメリットを強化することもできる。単に一例として、本明細書に記載の化合物の1つを投与する近視治療に関し、患者にさらに別の近視治療剤(例えば、アトロピン)を供給することにより治療上のメリットを強化することができる。いずれかの場合においても、治療される疾患、病症又は病状に関わらず、患者へのメリットは、いずれも簡単な2つの治療剤の加算であってもよく、又は患者への相乗したメリットであってもよい。
【0191】
乾燥又は液体形態の薬物組成物は単一用量又は多用量の薬物組成物の形態で供給可能である。
【0192】
本出願の一実施形態において、液状又は乾燥の薬物組成物が単一用量で供給されることは、それを供給する容器が一つの薬物用量を含むことを意味する。又は、液状又は乾燥の薬物組成物が多用量薬物組成物であることは、それを供給する容器が一つの治療用量を超えるものを含み、即ち、多用量組成物が少なくとも2つの用量を含むことを意味する。このような多用量組成物は、それを必要とする異なる患者に用いることができ、又は1人の患者に用いてもよく、この場合、第1の用量を適用した後、使用する必要があるまで残りの用量を貯蔵する。
【0193】
本出願の他の態様では、薬物組成物は容器内にある。液状又は乾燥の薬物組成物用の容器は、例えば、注射器、小瓶、栓や密封物を有する小瓶、アンプル及びカートリッジがある。特に、液状又は乾燥の薬物組成物は注射器に供給される。薬物組成物が乾燥薬物組成物である場合、容器は、好ましくはダブルチャンバー注射器である。当該実施形態において、前記乾燥薬物組成物は、ダブルチャンバー注射器の第1のチャンバーに供給され、再構成溶液はダブルチャンバー注射器の第2のチャンバーに供給される。
【0194】
乾燥組成物を必要とする患者に乾燥組成物を適用する前に、乾燥組成物を再構成する。再構成は、前記乾燥組成物を供給する容器内で行うことができ、例えば、小瓶、注射器、ダブルチャンバー注射器、アンプル及びカートリッジ内で行う。乾燥組成物に所定量の再構成溶液を加えることにより、再構成を行う。再構成溶液は、水などの無菌液体又は緩衝液であり、防腐剤などの他の添加剤及び/又は抗微生物剤、例えば、ベンザルアルコールとクレゾールを含んでもよい。好ましくは、再構成溶液は無菌水である。乾燥組成物が再構成された場合、それは、「再構成された薬物組成物」又は「再構成された組成物」と呼ばれる。
【0195】
本出願の薬物組成物は、眼用製剤の形態で投与されてもよく、本出願の眼用製剤は眼科的に許容可能な担体を含む。
【0196】
担体材料と組み合わせて単一剤形を生成できる活性成分の量は異なり、治療される宿主及び具体的な投与方式によって決められる。
【0197】
本出願に係る薬物組成物の活物質の含有量。薬物を混合する時、薬物の濃度は、各薬物の有効な適量を選択することができる。
【0198】
本出願に係る製剤及び方法は、すでに本出願の製剤及び方法からメリットが得られる任意の被験者に用いられていた。被験者は、通常、哺乳動物であり、さらに一般的にはヒトである。しかし、本出願は、ヒトの治療に限定されず、獣医の使用にも適用可能である。
【0199】
別の態様では、本出願は、薬物組成物を含むデバイスを提供した。前記薬物組成物は、ベンダザック又はその治療的に許容可能な塩(例えば、ベンダザックリシン)又はその誘導体を含み、好ましくは、前記デバイスは、徐放方式で前記薬物組成物を送達する。
【0200】
本明細書に開示された薬物組成物、デバイス又は治療方法のいくつかの実施形態において、前記デバイスは、徐放方式で前記薬物組成物を送達し、好ましくは、前記徐放は昼夜リズム性を有する。
【0201】
本明細書に開示された薬物組成物、デバイス又は治療方法のいくつかの実施形態において、前記薬物組成物は、眼科用組成物として調製され、例えば、眼科疾患又は病状の治療のための眼科用組成物として調製される。
【0202】
本明細書に開示された薬物組成物、デバイス又は治療方法のいくつかの実施形態において、前記薬物組成物は、前近視、近視又は近視進行の治療のための眼科用組成物として調製される。
【0203】
本明細書に開示された薬物組成物、デバイス又は治療方法のいくつかの実施形態において、前記薬物組成物は、強度近視、中等度近視又は弱度近視の治療のための眼科用組成物として調製される。
【0204】
本明細書に開示された薬物組成物、デバイス又は治療方法のいくつかの実施形態において、前記薬物組成物は、前近視(又は近視が発症するリスクがあるか、又は近視発症傾向がある)と診断された患者の治療のための眼科用組成物として調製される。
【0205】
本明細書に開示された薬物組成物、デバイス又は治療方法のいくつかの実施形態において、前記薬物組成物は、前記患者の目に眼科的に投与され、好ましくは、前記目は近眼である。
【0206】
本明細書に開示された薬物組成物、デバイス又は治療方法のいくつかの実施形態において、前記薬物組成物は局所的に投与される。
【0207】
本明細書に開示された薬物組成物、デバイス又は治療方法のいくつかの実施形態において、前記薬物組成物は、デバイスによって患者の目に眼科的に投与される。
【0208】
本明細書に開示された薬物組成物、デバイス又は治療方法のいくつかの実施形態において、前記薬物組成物は、1日に1、2、3、4又は5回投与される。
【0209】
動物試験を行う標準的な薬学的プロセスで治療薬物の用量、毒性及び治療効率を確定することができ、例えば、LD50(合計50%の致命的な用量)及びED50(合計50%における有効な治療用量)を確定するために用いる。毒性と治療効果との用量比は治療指数であり、比率LD50/ED50と表すことができる。高い治療指数を示す化合物は好ましい。毒性副作用を有する化合物は使用可能であるが、このような化合物を対応する組織又は病巣位置にターゲティングし、無関係な細胞又は組織に対する可能な損傷を最小化することによって副作用を低減する伝達システム又は適切な投与方式の設計を考慮する必要がある。
【0210】
動物研究から得られたデータは、人間への使用用量の範囲の配合に用いることができる。使用される製剤タイプ及び利用する投与経路に応じて、用量は、この範囲内に変化可能であり、この範囲を超えることもある。動物モデルにおいて一連の異なる用量を定めることによって、最低効果発揮濃度、一回投与及び複数回投与後の循環血中薬物濃度範囲、薬物暴露量等を含む指標を取得することができる。このような結果は、体表面積換算で人間における有用な用量の確定をより正確に助けることができる。
【0211】
対象を効果的に治療するための用量及び時間に影響を与えることができる要素はいくつかあり、疾患又は失調の重症度、該対象が治療に完全に協力するか否か、以前の治療、健康状況及び/又は対象の年齢並びに存在している他の疾患を含むが、それらに限定されないと、当業者は認識する。また、本明細書に記述された治療有効量の治療組成物を使用して対象を治療することは、単一回の治療又は一連の治療を含んでもよい。
【0212】
本出願の方法の使用による治療対象患者の近視進行の制御、減速、低減、遅延及び/又は軽減は、未治療に対して、約5-95%、約5-90%、約5-80%、約5-70%、約5-60%、約5-50%、約5-40%、約5-30%の間,約5-20%、約10-100%、約20-90%、約30-90%、約40-90%、約50-90%、又は約75-90%の範囲にある。
【0213】
薬物組成物、デバイス又は治療方法の使用により、投与対象の眼の屈折度マイナス化程度は約1.0-6.0D、1.0-5.0D、1.0-4.0D、1.0-3.0D、1.0-2.0D、6.0D未満、5.0D未満、4.0D未満、3.0D未満、2.0D未満及び1.0D未満に制限される。
【0214】
いくつかの実施例において、本出願の方法の使用により、治療対象患者の近視進行は中止又は逆転された。これらの患者は強度近視、中等度近視又は弱度近視に罹患するか、又は前近視(又は近視に進行するリスクがある)である。
【0215】
いくつかの実施例において、本出願の方法の使用により、治療対象患者の目の軸方向(又は縦方向)成長は予防、制御、減速、緩和、遅延及び/又は軽減された。
【0216】
いくつかの実施例において、本出願の方法の使用により、近視に罹患するか、又は近視に進行するリスクがあると診断された患者の近視進行は制御、減速、低減、遅延及び/又は軽減され、前記患者の目(例えば、近眼、前近眼又は近視が発症するリスクがある眼)の脈絡膜の厚さが増加し(choroidal thickness,ChT)、及び/又は前記患者の目(例えば、近眼、前近眼又は近視が発症するリスクがある眼)の軸方向(又は縦方向)成長速度が低減された。
【0217】
いくつかの実施例において、本出願の方法の使用により、治療対象患者の目の軸方向(又は縦方向)成長は、未治療に対して、約5-95%、約5-90%、約5-80%、約5-70%、約5-60%、約5-50%、約5-40%、約5-30%、約5-20%、約10-100%、約20-90%、約30-90%、約40-90%、約50-90%、又は約75-90%制御、減速、低減、遅延及び/又は軽減された。
【0218】
いくつかの実施例において、本出願の方法の使用により、アトロピンの単一療法に対して、小さな瞳孔サイズが増加し、又は散瞳現象が発生しなかった。
【0219】
いくつかの実施形態において、経口製剤は、錠剤、カプセル、顆粒剤及び粉末製剤などの固形製剤、及びシロップと飲料製剤などの液体製剤であり、任意に選択できることとして(a)、固形製剤において、賦形剤、潤滑剤、接着剤、崩壊剤などを調製することができ、好ましくは、防腐剤、酸化防止剤、着色剤及び甘味剤を調製することができ、より好ましくは、添加剤を使用することができる。任意に選択できることとして(b)、液体製剤は、溶媒、溶解助剤、懸濁剤及び等張剤を含み、好ましくは、試薬、緩衝剤、無痛剤等と混合してもよく、より好ましくは、防腐剤、酸化防止剤、着色剤、甘味剤等などの添加剤を使用することができる。
【0220】
いくつかの実施形態において、薬物は、注射液、錠剤、凍結乾燥注射剤、カプセル剤、発泡錠、咀嚼錠、トローチ、顆粒剤、軟膏、シロップ、内服液、噴霧剤、点鼻剤、外用剤、内用製剤等であってもよく、好ましくは、眼用剤形であり、点眼液(目薬)、目薬軟膏、アイスプレー、インプラントシート、眼用ゲル、アイパック、眼用マイクロスフェア、眼用徐放製剤、眼周注射剤、眼内注射剤を含むが、それらに限定されず、さらに自由溶液、油水混合液、懸濁液(剤)、擦剤、ローション、クリーム、滴剤、顆粒製剤、スプレー、軟膏、貼付剤、ペースト剤、丸剤、座薬、乳剤であってもよい。
【0221】
いくつかの実施形態において、「眼科用剤又は薬物」は、本出願の薬物組成物又は製剤と同期して投与され、例えば、具体的には、1回投与(治療)過程で、同時に又は前後に投与、同一日に投与、同一週に投与、同一月に投与、同一年に投与するか、又は間隔をおいて交互に投与し、例えば、4時間おきに交互に投与、12時間おきに交互に投与、一日おきに交互に投与、一週おきに交互に投与、一月おきに交互に投与、一年おきに交互に投与する。
【0222】
以下において、本出願の特定の実施例を詳しく説明する。本出願は、これらの特定の実施形態と組み合わせて説明されたが、このような特定の実施形態に限定される意図がないことが理解されたい。
【0223】
実施例1 主な試薬又は製剤(薬物組成物)の調製方法及び供給源
【0224】
ベンダザックリシン製剤は、商品化された売薬と、ベンダザックリシン化合物だけを有効な薬学的成分として使用され発明者が自らで調製した薬物組成物と、この2つを含む。ベンダザックリシン売薬(BDL(S))は、中国国内で市販された0.5%ベンダザックリシン点眼液(国薬準字H20063847)であり、この剤形製剤はモルモット近視モデルの眼部局所投与に直接用いられた。ベンダザックリシン化合物は、MedChemExpressから購入された。他の薬学的補助材料又は他の化合物を添加しない条件で、ベンダザックリシン化合物粉剤は、0.9%生理食塩水に直接完全に溶解されて5mg/ml(11.669mM)製剤(BDL)として調製された。室温で該製剤は、全体的に澄んで、透明且つ均一な外観を有し、肉眼で見える懸濁物質がなく、被験個体に投与する時、直接眼部局所投与を行うか、又は使用の前に、用量要求に応じて0.9%生理食塩水で対応して希釈してから投与した。
【0225】
ベンダザック製剤は、直接購入された商品化した売薬と、発明者がベンダザック化合物を純粋で使用して自らで調製されるものと、この2つを含む。市販された売薬は、3%ベンダザック膏薬であり、発明者により日本岩城製薬株式会社から購入され、ベンダザック化合物はMedChemExpressから購入された。ベンダザックをDMSOに完全に溶解して330mg/ml(1166.9mM)の母液を調製し、-20度で保存した。実験開始前に、母液:PEG300:Tween80:0.9%生理食塩水=1:45:5:49の割合で作動液の調製を行い、ベンダザック製剤の最終的な濃度が3.3mg/ml(11.669mM)となる。全ての調製操作は暗室で行われた。
【0226】
リジンはMedChemExpressから購入され、0.9%生理食塩水に完全に溶解することができ、1.7mg/ml(11.669mM)の被験製剤として調製された。
【0227】
M-hydroxy-methylanilineは上海畢得医薬科技股フン有限公司から購入された。Hydroxy-methylanilineを0.9%生理食塩水に完全に溶解して250mMの母液として調製し、-20度で保存した。実験開始前に、0.9%生理食塩水で希釈し、実施例で使用されるhydroxy-methylaniline製剤の最終的な濃度が5mMとなる。全ての調製操作は暗室で行われた。
【0228】
アルドース還元酵素阻害剤(Aldose Reductase Inhibitor,ARI)Sorbinilは、MedChemExpressから購入された。Sorbinil粉剤をDMSOに溶解して4.8mg/ml(20mM)の母液として調製し、-20度で保存した。実験開始前に、0.9%生理食塩水で希釈し、実施例で使用されるSorbinil製剤の最終的な濃度が24μg/ml(100μM)となり、全ての操作は暗室で行われた。
【0229】
アルドース還元酵素阻害剤Zopolrestatは、MedChemExpressから購入された。Zopolrestat粉剤をDMSOに溶解して84mg/ml(1M)の母液として調製し、-20度で保存した。実験開始前に、生理食塩水で希釈し、実施例で使用されるZopolrestat製剤の最終的な濃度が420μg/ml(1mM)となり、全ての操作は暗室で行われた。
【0230】
アトロピン粉剤はStanford Chemicalsから購入され、0.9%生理食塩水で完全に溶解した後、1mg/ml、即ち0.1%の製剤(陽性対照)として調製した。全ての操作は暗室で行われた。
【0231】
言及していない他の製剤又は薬物組成物は、すべて実験室の通常の方法及び標準に従って調製と保存を行った。全ての製剤調製プロセスは、場合によって、加熱、撹拌、PH調整等の通常の物理化学的助溶手段を使用することが可能であり、全ての製剤は投与前に化合物析出状況が現れなかった。
【0232】
実施例2 動物モデルの構築及び実験方法
【0233】
形態剥奪とレンズ誘導モルモット近視モデルは、本分野で代表的で且つ公認された近視動物モデルであり、近視治療薬の治療効果及び安全性評価に用いることができ、その構築方法は当業者によく知られている。モルモット形態剥奪近視モデル(Form deprivation myopia,FDM)及びレンズ誘導近視モデル(lens induced myopia,LIM)のモールディング、投与及びデータ分析は、すべて発明者の実験室が発表した文献[1-4]に従って操作及び実行を行った。本出願の実施例は、健康モルモット(即ち、高血圧、高血糖、眼部疾患又は異常などの基礎疾患がない)を採用し、且つ雌雄とも採用した。本出願の動物実験は既に温州医科大学実験動物倫理委員会の審議を通過した。以下の実施例3に用いられる形態剥奪とレンズ誘導モルモット近視モデルの構築方式は次のとおりである。
【0234】
温州医科大学実験動物室で飼育した3週齢の三色モルモットを採用し、12時間の光照射(400-500lux)/12時間の暗い環境で、自由に水を飲み、摂食させた。近視モデルは、単眼形態剥奪(FD)及びレンズ誘導(LI)モールディング方式を採用した。形態剥奪には、光透過率1%、自動的に脱落しない特製のアイマスクを使用して動物の右眼を完全に覆うが、他方の目(左眼)の視覚が正常である。レンズ誘導には、-4Dレンズを用いて動物の右眼の前に固定するが、左眼の視覚が正常である。レンズのぼやけを防止するために、1日2回でレンズを洗浄した。毎日午前9:00-9:30に薬を投与した。投与時、対照群及び実験群の動物をそれぞれ赤色光の下でアイマスク又はレンズを取り外し、右眼の眼球周囲結膜下に0.1mlの溶媒対照又は5mg/mLの被験薬物又は陽性対照を注射し、注射後に動物への投与が成功し且つ創傷がないことが確定されたら、直ちにアイマスクやレンズを戻した。各動物への投与プロセスを10秒程度に制御した。モールディング当日から投与を開始し、形態剥奪動物に1日1回で連続的に2週投与し、レンズ誘導動物に1日1回で連続的に1週投与した。
【0235】
動物の群分け
【0236】
1、形態剥奪群:
【0237】
溶媒を注射する形態剥奪群:片眼にアイマスクを付け、アイマスク付け眼に溶媒の生理食塩水を2週間注射した。サンプル量=11。
【0238】
薬物を注射する形態剥奪群:片眼にアイマスクを付け、アイマスク付け眼にベンダザックリシン(0.5mg/日)を2週間注射した。サンプル量=14。
【0239】
形態剥奪の陽性対照群:片眼にアイマスクを付け、アイマスク付け眼に0.1%アトロピンを2週間注射した。サンプル量=12。
【0240】
2、レンズ誘導群:
【0241】
溶媒を注射するレンズ誘導群:片眼に-4Dレンズを付け、レンズ付け眼に溶媒の生理食塩水を1週間注射した。サンプル量=14。
【0242】
薬物を注射するレンズ誘導群:片眼に-4Dレンズを付け、レンズ付け眼にベンダザックリシン(0.5mg/日)を1週間注射した。サンプル量=14。
【0243】
動物眼球のパラメータ測定
【0244】
同一のモデルの薬効実験において、全ての動物を同じ時間帯内に測定した。第1回の測定は3週齢の時である。実験の前、実験1週間及び実験2週間(FDのみ)の時に、それぞれ上記動物に対して屈折度及び眼軸パラメータの測定を行った。屈折度の測定においては本実験室に建てられた赤外偏心検眼鏡(eccentric infrared photoretin oscope,EIR)を採用し、眼ごとに3回測定して平均値をとって最終的な結果とした。モルモット眼軸パラメータの測定には、CinescanA/B超音波診断装置(QuantelMedical,Aviso,France)のA超音波プローブを採用し、超音波周波数が11MHzであり、眼球の異なる屈折媒体における超音波伝播速度は、それぞれ前房1557.5m/s、水晶体1723.3m/s、硝子体1540m/sに設定した。測定内容には、前房の深さ(anteriorchamberdepth,ACD)、結晶の厚さ(lensthickness,LT)、硝子体腔の深さ(vitrouschamberdepth,VCD)及び眼軸の長さ(axiallength,AL)を含む。測定の2分間前の頃に0.5%プロキシメタカイン塩酸塩点眼液(Alcon,Belgium)を用いて測定するモルモットの眼の表面麻酔を行い、眼ごとに6回測定し、その平均値を最終的な結果とした。
【0245】
実施例3 ベンダザックリシンのインビボ治療効果実験
【0246】
実験動物は、3週齢の三色モルモットであり、形態剥奪群(FD)及びレンズ誘導群(LI)という2群に分けられた。形態剥奪群は、毎日にモールディング眼球近傍に100μLの生理食塩水を注射する陰性対照群と、毎日にモールディング眼球近傍に同じ体積のベンダザックリシン0.5mgを注射する実験群と、毎日にモールディング眼に0.1%アトロピン100μLを投与する陽性対照群と、この3つのサブ群に分けられた。レンズ誘導群は、毎日にモールディング眼球近傍に生理食塩水100μLを注射する陰性対照群と、毎日にモールディング眼球近傍に同じ体積のベンダザックリシン0.5mgを注射する実験群と、この2つのサブ群に分けられた。第1回投与の前、1週間投与及び2週間投与(FDのみ)の時に、それぞれ全ての被験動物に対して両眼の屈折、硝子体腔及び眼軸のパラメータを測定した。
【0247】
実験結果:
【0248】
FD群では、1週間投与後、生理食塩水注射群の誘導近視が-3.75±1.76Dとなり、2週間後、誘導近視が-6.17±1.52Dとなった。ベンダザックリシン注射群では、1週間投与後、誘導近視が-2.15±1.09Dとなり、生理食塩水群と比較して、42.6%の近視が抑制された。0.1%アトロピンで誘導された近視が-2.98±1.54Dとなり、近視抑制率が20.5%であった。ベンダザックリシンを2週間投与した後、誘導近視が-3.46Dとなり、生理食塩水群と比較して、43.9%の近視が抑制された。0.1%アトロピンで誘導された近視は-3.93Dとなり、近視抑制率が36.4%であった。対応的に、硝子体腔の深さ及び眼軸長さの延長は、いずれもベンダザックリシンによって抑制された(図1を参照)。つまり、生理食塩水群と比較して、ベンダザックリシン投与群は、形態剥奪近視に罹患したモルモットの屈折度のマイナス化、硝子体腔の深さの延長及び眼軸長さの延長が明らかに抑制された。
【0249】
LI群では、1週間投与後、生理食塩水注射群の誘導近視が-4.42±0.95Dとなった。ベンダザックリシン注射群では、1週間投与後、誘導近視が-3.49±1.15Dとなり、生理食塩水群と比較して、21.0%の近視が抑制された(図1)。以上から分かるように、生理食塩水群と比較して、ベンダザックリシン投与群は、レンズ誘導近視に罹患したモルモットの屈折度のマイナス化が明らかに抑制されたとともに、硝子体腔の深さ及び眼軸長さの延長もベンダザックリシンによって抑制された。
【0250】
また、全てのベンダザックリシン治療群の動物は、実験期間全体において眼部の異常な状況及び個体の毒性反応が見られておらず、角膜曲率(RCC)、前房深さ(ACD)及び結晶厚さ(LT)の関連指標も被験薬物による影響が受けられなかった(図2を参照)。
【0251】
以上の実験から分かるように、ベンダザックリシンは近視個体の屈折度のマイナス化過程を顕著に減速することができるとともに、その眼軸延長を顕著に抑制し、形態剥奪及びレンズ誘導モルモットの近視関連症状を顕著に改善することができるため、ベンダザックリシンは近視の予防制御に適用でき、特に屈折性近視又は軸性近視及びその関連症状の治療、防止又は改善に適応できることを示した。本出願の上記実験結果は、ベンダザックリシンが人間、特に児童及び青少年の近視に対して非常に高い予防、緩和及び治療効果を有することが証明された。
【0252】
実施例4 ベンダザックリシン点眼液製品(0.5%、BDL(S))による近視進行の抑制
【0253】
明らかな眼部疾患又は異常がある個体を取り除いた後の健康な3週齢の三色モルモットに対して、屈折度(赤外線偏心撮影検眼鏡)及び眼軸(A超音波)を測定し、屈折力が3-8diopter(D)であり且つ両眼の屈折率バラツキが2D以下の動物を選択し、それらを、形態剥奪(FD)+溶媒対照(NS)群、FD+0.5%ベンダザックリシン点眼液(BDL(S))群、FD+0.1%アトロピン、レンズ誘導(LI)+溶媒対照(NS)群、LI+0.5%ベンダザックリシン(BDL(S))群の5群にランダムに分けた。実験初日の午前8時からモルモットに対して形態剥奪(FD)又はレンズ誘導(LI)近視のモールディングを行った。形態剥奪近視モデルはマスク法を採用し、発明者が10寸の乳白色の無毒のラテックス風船を使用して製造されたかぶり物を、モルモットモールディング個体の右眼に(実験対象眼)付け、左眼にかぶり物(対側眼)を付けなかった。レンズ誘導近視モデルは温州欣視界科技有限公司から購入された-4Dレンズを使用し、具体的なパラメータは、中央度数-4D、ベースカーブ16mm、直径11.8mmである。前記レンズは、モルモットの右眼の前(実験対象眼)に固定され、左眼(対側眼)を処理しなかった。FD及びLI誘導は、ベンダザックリシン薬効の実験期間全体において持続的に行われ、投与又は眼部測定(例えば、屈折度測定)の時のみにかぶり物又はレンズを一時的に取り外した。薬効実験開始後の毎日の早8時、昼12時、夜7時及び投与前にかぶり物の位置を検出又はレンズを拭き、かぶり物又はレンズが3回以上外した個体を淘汰した。モールディング当日から毎日の午前の9-10時にFDMモデルの実験対象眼に対応する溶媒又は薬物を投与し、投与方式を眼球近傍結膜下注射にし、注射体積を100μlにし、1日1回で2週間連続的に投与した。当該モデルが薬効実験を開始する時、1週間行った時及び2週間行った時、被験動物の屈折度及び眼軸パラメータを測定し、全てのデータ収集及び処理方式は発明者の実験室が発表した文献[4]と同じである。同一の被験個体の実験対象眼と対側眼との差を統計根拠とした。レンズ誘導近視モデルについて、モールディング当日から毎日の午前の9-10時に、レンズ誘導群個体に溶媒(陰性対照)又は薬物(ベンダザックリシン)を投与し、投与方式を眼部の眼球近傍結膜下注射にし、注射体積を100μlにし、1日1回で1週間連続的に投与した。実験開始と終了の時、全ての被験動物の屈折度及び眼軸パラメータを測定し、全てのデータ収集及び処理方式は形態剥奪群を参照にした。以上の全ての薬効実験は少なくとも2回繰り返した。本実施例に係る被験薬物(0.5%ベンダザックリシン点眼液,国薬準字H20063847)及び溶媒対照(陰性対照群)は、同一の商品化されたベンダザックリシン点眼液メーカーで生産して発明者に供給されたものである。
【0254】
結果によると、実施例3に一致する結論が得られた。陰性対照群の動物の屈折度及び眼軸パラメータの変化は近視モデルの予想通りであり、且つ陽性対照薬物のアトロピンは実験中に有すべき薬効を示し、これらは、今回の実験で2つの近視モデルのモールディングが成功し、被験薬物の薬効評価に用いることができることを証明した。中国国内の市販された0.5%ベンダザックリシン点眼液は、形態剥奪近視モデル及び凹レンズ誘導近視モデルの近視進行(発展)を顕著に抑制及び減速することができ、即ち、近視個体の屈折度のマイナス化過程はベンダザックリシン点眼液によって成功的に遅らせ及び効果的に制御され、さらにベンダザックリシン治療群の個別の動物において、その近視過程がほとんど被験薬物によって完全に終止することが発明者により発見された。FDM群の屈折度指標の観点から、1週間投与する場合、0.5%ベンダザックリシン点眼液による近視治療効果は0.1%アトロピン点眼液よりも高いが、両者間に統計的差異がなく、2週間投与する場合、0.5%ベンダザックリシン点眼液による近視治療効果は0.1%アトロピン点眼液に近く、両者の薬効は陰性対照群と比較して差異が非常に顕著であった。LIM群では、ベンダザックリシンも同様に近視程度の重症化を効果的に阻止した。薬物介入群の動物の屈折度のマイナス化速度は対照群よりも明らかに遅く、且つ実験終了時、両者の屈折度に有意差が存在し、ベンダザックリシンは、同様に凹レンズで誘導された近視を効果的に治療した。具体的な結果として、同一の近視視覚情報が入力された条件下で(すべて-4Dである)、同じ測定時点(1週間投与)で薬物介入群の屈折度は溶媒群よりも大きい(いずれも負値であり、陰性対照群の屈折度の平均値が-4Dに達していたが、薬物介入群の場合、それに達していなかった)ため、ベンダザックリシンが近視の進行を効果的に制御できることが説明された。同時に、上記2つの近視研究に関する代表的な疾患モデルは、ベンダザックリシンで治療された後、動物の硝子体腔の深さ(VCD)の増加及び眼軸長さ(AL)の延長も対応して効果的に抑制され(陰性対照群と統計学的差異が存在する)、且つ形態剥奪実験において、市販されたベンダザックリシン群は、2つの測定時点での上記対応する指標がアトロピン群よりも優れている。また、全てのベンダザックリシン治療群は、動物実験期間全体において眼部の異常な状況及び個体の毒性反応が見られておらず、角膜曲率(RCC)、前房深さ(ACD)及び結晶厚さ(LT)の関連指標も被験薬物による影響が受けられていなかった。陽性対照群では、アトロピン投与後、動物の瞳孔散大が現れた。
【0255】
以上により、薬物による副作用が明らかに発生していない前提で、ベンダザックリシン点眼液製品は、哺乳動物(人間を含む)の近視を効果的に予防制御及び治療することができ、特に近視程度の重症化を軽減及び制御し、近視疾患モデルの関連症状を顕著に改善することができ、ベンダザックリシンが近視又は近視傾向のある個体の眼軸長さの延長を効果的に低減(抑制)し、ベンダザックリシンがその硝子体腔の深さの増加を効果的に低減(抑制)したという表現があった。よって、ベンダザックリシン点眼液製品は屈折性近視又は軸性近視への適用及びその関連症状の治療、防止又は改善を含む近視の予防制御に適用できることが示されていた。したがって、商品化されたベンダザックリシン点眼液は近視(眼)治療に用いることができ、特に強度近視による併発症及び盲目のリスクを軽減し、特に児童及び青少年段階で介入治療を行うように、その病状進行速度を制御することができる。
【0256】
実施例5 異なる濃度のベンダザックリシンによる近視治療における用量と効果の関係実験(0.01%、0.05%、0.1%及び0.5%)
【0257】
明らかな眼部疾患又は異常のある個体を取り除いた後の健康な3週齢の三色モルモットに対して、屈折度(赤外線偏心撮影検眼鏡)及び眼軸(A超音波)測定を行い、屈折力が3-8diopter(D)の間で且つ両眼の屈折率バラツキが2D以下である動物を選択し、それらをFD+生理食塩水群(陰性対照)、FD+0.01%ベンダザックリシン、FD+0.05%ベンダザックリシン、FD+0.1%ベンダザックリシン、FD+0.5%ベンダザックリシン(実験群で、FDMモデル個体に0.5%ベンダザックリシンを投与するもの)、FD+0.1%アトロピン(陽性対照)の6群にランダムに分けた。より直感的にするために、図を作る時、百分率を対応してミリグラム単位に換算した。実験初日の午前8時からモルモットに対して形態剥奪(FD)近視のモールディングを行った。形態剥奪近視モデルはマスク法を採用し、発明者が10寸の乳白色の無毒のラテックス風船を使用して製造されたかぶり物を、モルモットモールディング個体は右眼に(実験対象眼)付け、左眼にかぶり物(対側眼)を付けなかった。FD誘導は、ベンダザックリシン薬効の実験期間全体において持続的に行われ、投与又は眼部測定(例えば、屈折度測定)の時のみにかぶり物を一時的に取り外した。薬効実験開始後の毎日の早8時、昼12時、夜7時及び投与前にかぶり物の位置を検出し、かぶり物が3回以上外した個体を淘汰した。モールディング当日から毎日の午前の9-10時にFDMモデルの実験対象眼に対応する溶媒(陰性対照)又は薬物を投与し、投与方式を眼球近傍結膜下注射にし、注射体積を100μlにし、1日1回で2週間連続的に投与した。当該モデル薬効実験を開始する時、1週間行った時及び2週間行った時それぞれ、被験動物の屈折度及び眼軸パラメータを測定し、全てのデータ収集及び処理方式は発明者の実験室が発表した文献[4]と同じであり、同一の被験個体の実験対象眼と対側眼との差を統計根拠とした。以上の全ての薬効実験は少なくとも3回繰り返した。前記ベンダザックリシン製剤は発明者が生理食塩水を使用して自らで調製されたものである。
【0258】
実験結果によると、陰性対照群の動物の屈折度及び眼軸パラメータの変化は近視モデルの予想通りであり、且つ陽性対照薬物のアトロピンは実験中に有すべき薬効を示し、これらはいずれも今回の実験のための近視モデルのモールディングが成功し、ベンダザックリシンの薬効評価に用いることができることが証明された。陰性対照群と比較して、ベンダザックリシン(0.9%生理食塩水を溶媒とする以外、他の薬学的補助材料を含まない)は、被験個体の近視程度の重症化が用量依存で軽減された。ベンダザックリシン投与量の増加に伴い、屈折度を指標とする近視抑制率(計算式は(薬物群屈折度-溶媒群屈折度)/溶媒群屈折度である)も対応して増加し、よって、ベンダザックリシンの投与が多いほど、近視(眼)予防制御効果が高くなることが説明された。屈折度指標の観点から、発明者が生理食塩水のみを使用して自らで調製されたベンダザックリシン製剤は、ベンダザックリシン市販薬と一致した薬効が示され、即ち、1週間投与すると、0.5%ベンダザックリシンは近視治療効果が0.1%アトロピンよりも高いが、アトロピンとベンダザックリシンとの両者に統計学的差異がなかった。2週間投与する時、0.5%ベンダザックリシンは近視治療効果が0.1%アトロピン点眼液と同様であり、両者の薬効は陰性対照群と比較して差異が非常に顕著であった。これは、ベンダザックリシンが主な活性成分又は唯一の活性成分である場合、近視に対する治療や予防制御役割を果たすことができることが示された。統計学的には、0.05%及び0.1%の2群のベンダザックリシン製剤も顕著な近視治療効果を示し(屈折度マイナス化過程を効果的に抑制する)、低濃度群の0.01%ベンダザックリシンは、屈折度指標の点で、1週間測定する時には陰性対照群と同様であり、2週間測定する時には陰性対照群よりも少し優れるが、統計学的差異がなかった。0.05%、0.1%及び0.5%の3つの濃度のベンダザックリシンは、近視個体の硝子体腔の深さ(VCD)の増加及び眼軸長さ(AL)の延長も対応して抑制した。ここで、最低濃度の0.01%ベンダザックリシン実験群以外、より高い濃度の他のベンダザックリシンはアトロピンと同様で、いずれも被験個体の眼後節(硝子体腔の深さ及び眼軸長さ)の延長を効果的に抑制できるとともに、近視個体又は近視発症傾向のある個体の屈折度の(持続的な)マイナス化過程を効果的に制御、抑制、遅延又は減速することができ、溶媒群と比較して、上記抑制効果は有意差が存在するか、又は両者間の差異が非常に顕著であった(図3を参照)。投与期間中にすべての濃度のベンダザックリシン実験群では、動物眼部への刺激現象及び眼部での任意の異常な現象が見られておらず、前房深さ、結晶厚さ及び瞳孔等の関連指標はベンダザックリシンの投与による影響が受けられておらず、陽性対照アトロピン群の全ての動物では、投与後の瞳孔の散大が見られ且つ溶媒群と統計学的差異が存在することが観察され(図4を参照)、これは臨床試験報告における該薬物による副作用に一致している。
【0259】
本実施例の結果によると、ベンダザックリシンを単に使用するだけで、近視(眼)を予防制御及び治療することができることが証明され、又はベンダザックリシンを製剤又は薬物組成物の調製に用いることができ、前記製剤又は薬物組成物を近視(眼)予防制御及び治療に用いることができることが証明された。好ましくは、上記製剤又は薬物組成物において、ベンダザックリシンの濃度が0.01%以上であり、0.05%-1%のベンダザックリシンであってもよい。ベンダザックが人体に深刻な肝毒性をもたらす可能性があるというFDA(Food and Drug Administration)の考え、近視治療薬が長時間持続的に投与する必要があること、監督部門からの小児科への安全な投与の3つの専門的な要求を総合的に考慮すれば、発明者は、0.1%-0.25%濃度のベンダザックリシン点眼液が臨床的に近視の予防制御に用いられる合理的な配合成分であり、即ち、製剤又は薬物組成物におけるベンダザックリシンの濃度は、好ましくは0.1%~0.25%であると考えられる。また、ベンダザックリシン製剤を調製する時にその濃度を高める以外に、近視人群れ又は近視傾向のある人群れがベンダザックリシンを使用してその近視予防制御効果を達成する、又は高める方式は、ベンダザックリシンの眼部での生物学的利用率の増加、薬物投与頻度の増加、他の近視治療薬との共同使用、及びベンダザックリシン製剤の配合成分の最適化等をさらに含む。つまり、前述したベンダザックリシン製剤又は薬物組成物は、近視又は近視傾向のある個体の眼軸長さの延長を効果的に低減(抑制)し、近視又は近視傾向のある個体の硝子体腔の深さの増加を効果的に低減(抑制)することができ、前記ベンダザックリシン製剤又は薬物組成物は近視を治療(予防制御)することができ、特に6から18歳の人の近視を治療することができる。
【0260】
実施例6 ベンダザックリシンが脈絡膜の厚さを顕著に増加することができる
【0261】
(一)ベンダザックリシンはFDM及びLIMモルモットモデルの脈絡膜の薄肉化を効果的に抑制する
【0262】
明らかな眼部疾患又は異常のある個体を取り除いた後の3週齢の三色モルモットに対して、屈折度(赤外線偏心撮影検眼鏡)及び眼軸(A超音波)測定を行い、屈折力が3-8diopter(D)の間にあり且つ両眼の屈折率バラツキが2D以下である動物を選択し、それらを形態剥奪(FD)+溶媒対照(NS)群、FD+0.5%ベンダザックリシン点眼液(BDL(S))群、レンズ誘導(LI)+溶媒対照(NS)群、LI+0.5%ベンダザックリシン(BDL(S))群の4群にランダムに分けた。実験初日の午前8時からモルモットに対して形態剥奪(FD)又はレンズ誘導(LI)近視モールディングを行った。形態剥奪近視モデルはマスク法を採用し、発明者が10寸の乳白色の無毒のラテックス風船を使用して製造されたかぶり物を、モルモットモールディング個体は右眼に(実験対象眼)付け、左眼にかぶり物(対側眼)を付けなかった。レンズ誘導近視モデルは-4Dレンズを使用し、レンズは温州欣視界科技有限公司から購入され、具体的なパラメータは、中央度数-4D、ベースカーブ16mm、直径11.8mmである。前記レンズはモルモットの右眼の前(実験対象眼)に固定され、左眼(対側眼)を処理しない。FD及びLI誘導はベンダザックリシンの薬効実験期間全体において持続的に行われ、投与又は脈絡膜の厚さ測定の時のみにかぶり物又はレンズを一時的に取り外した。薬効実験開始後の毎日の早6時、昼12時、夜6時及び投与前にかぶり物の位置を検出又はレンズを拭き、かぶり物又はレンズが3回以上外した個体を淘汰した。モールディング当日から毎日の午前の9-10時にFDMモデルの実験対象眼に対応する溶媒又は薬物を投与し、投与方式を実験対象眼の球近傍結膜下注射にし、注射体積を100μlにし、1日1回で2週間連続的に投与した。レンズ誘導近視モデルについて、モールディング当日から毎日の午前の9-10時に、レンズ誘導群個体に溶媒(陰性対照)又は薬物(ベンダザックリシン)を投与し、投与方式を実験対象眼の眼部球近傍結膜下注射にし、注射体積を100μlにし、1日1回で1週間連続的に投与した。上記2つの近視モデルは、最後1回の投与後の30-60min時にSpectralis HRA+OCT(Heidelberg Engineering,Heidelberg,Germany)を使用して全ての眼脈絡膜の厚さを測定し、全てのデータ収集及び処理方式は発明者の実験室が発表した文献[4]と同じであり、同一の被験個体の実験対象眼と対側眼との差を統計根拠とし、統計方法は独立サンプルT検定である。以上の全ての薬効実験は少なくとも2回繰り返し、被験薬物(0.5%ベンダザックリシン点眼液)及び溶媒対照(陰性対照群)は、同一の商品化されたベンダザックリシン点眼液メーカーで生産して発明者に供給されたものである。
【0263】
結果によると、FDMでもLIMモデルでも、溶媒対照群と比較して、ベンダザックリシンはいずれもFDM及びLIMモデルにおけるモルモットの脈絡膜の厚さを効果的に増加することができ、且つ両者間に統計学的差異が存在する(LIMモデルの溶媒対照群及び薬物群の差異が非常に顕著である)ことが示された。具体的な薬効表現形態として、FDM及びLIMモデルの溶媒群のモルモットの実験対象眼は、いずれも脈絡膜の厚さが小さくなるが、ベンダザックリシンが近眼脈絡膜の厚さの減少を抑制することができる。ここで、FDMモデルでは、実験対象眼と対側眼の脈絡膜の厚さの差の平均値が-17.51マイクロメートルであるが、ベンダザックリシン介入後、近視個体の実験対象眼と対側眼の脈絡膜の厚さの差の平均値が-9.20マイクロメートルであり、よって、実験対象眼の脈絡膜の厚さは、薬物介入後、同一の個体の正常の眼の脈絡膜の厚さに近づける(両者の差が小さくなる)ことが明らかになった。LIMモデルでは、実験対象眼と対側眼の脈絡膜の厚さの差の平均値は-23.38マイクロメートルであるが、ベンダザックリシン介入後、近視個体の実験対象眼と対側眼の脈絡膜の厚さの差の平均値は-6.31マイクロメートルとなり、個別の動物において、実験対象眼の脈絡膜の厚さは、投与後、さらに正常の眼のレベルまでに完全に回復した(図5を参照)。角膜曲率(RCC)、前房深さ(ACD)及び結晶厚さ(LT)指標も被験薬物による影響が受けられていなかった。以上により、ベンダザックリシンは近視個体又は近視傾向のある個体の脈絡膜の薄肉化を顕著に抑制し、その脈絡膜の薄肉化傾向を軽減することができる。
【0264】
近視個体において、平行光線は調整リラックス眼の屈折系で屈折した後、網膜の前に焦点が結ばれる。ベンダザックリシンが当該近視個体の脈絡膜の厚さを増加する場合、網膜は水晶体方向へ移動し、最終的に近眼結像焦点と網膜の間の距離が短縮され、さらに両者が都合よく一致するようになる。結像焦点と網膜の間の距離は、つまり近視の度数であり、ベンダザックリシンは近視個体において両者の距離を短縮し又は両者の距離の増加を抑制することができ、つまり、近視度数が低減される。近視個体にベンダザックリシンを投与した場合、投与した眼は鮮明性のより高い遠視視力が得られ、その遠視視力が向上することを含む近視屈折状態が効果的に低減される(近視が治療され、近視度数が低下する)。したがって、本出願において、ベンダザックリシンで体現されたこのような近視治療(予防制御)効果は軸性近視、屈折性近視、病的近視、単純近視、仮性近視又は真性近視に限定されず、投与対象の年齢、性別、近視程度、近視の進行速度、民族及び近視発症年齢等の要素にも無関係であり、即ち、ベンダザックリシンは全ての近視タイプに対して治療及び予防制御作用を有する。
【0265】
実施例7 ベンダザックリシン点眼液を使用した点眼投与及びベンダザック膏薬の眼部塗布の治療効果(非侵襲投与方式又は無侵襲投与方式)
【0266】
明らかな眼部疾患又は異常のある個体を取り除いた後の3週齢の三色モルモットに対して、屈折度(赤外線偏心撮影検眼鏡)及び眼軸(A超音波)測定を行い、屈折力が3-8diopter(D)の間にあり且つ両眼の屈折率バラツキが2D以下である動物を選択し、FD+生理食塩水群、FD+0.5%ベンダザックリシン点眼液(自らで調製されたもの)、FD+0.1%アトロピンの3群にランダムに分けた。実験初日の午前8時にモルモットに対して形態剥奪を行い、マスク法を採用し、マスクを右眼(実験対象眼)に付け、左眼(対側眼)に付けなかった。FD誘導は、ベンダザックリシン薬効の実験期間全体において持続的に行われ、投与又は眼部測定(例えば、屈折度測定)の時のみにかぶり物を一時的に取り外した。薬効実験開始後の毎日の早8時、昼12時、夜7時及び投与前にかぶり物の位置を検出し、かぶり物が3回以上外した個体を淘汰した。モールディング当日から毎日の午前の9-10時に実験対象眼に対応する溶媒又は薬物を投与し、直接点眼を行い、午後2:30-3:30に2回目の点眼投与を行い、即ち1日2回で投与し、1回ごとに投与体積を25μlにし、連続的に2週間投与した。該モデルが薬効実験を開始する時、1週間及び2週間行った時、被験動物の屈折度及び眼軸パラメータを測定し、全てのデータ収集及び処理方式は発明者の実験室が発表した文献[4]と同じであり、同一の被験個体の実験対象眼と対側眼との差を統計根拠とする。以上の全ての薬効実験は少なくとも2回繰り返した。
【0267】
モールディング方式、モルモットの眼部構造(眼球が人間に対して突出し、且つ眼を自発的に閉じることができない)及び動物の正常のまばたきにより、各被験眼が実際に得られた薬物の効果的な治療用量はいずれも同じ体積での眼部の眼球周囲注射投与量よりも低く、且つ被験動物の1日の点眼液投与総体積も実施例5の注射投与体積よりも小さかった。したがって、本実施例において、ベンダザックリシン点眼液でも0.1%アトロピンでも、直接点眼投与による点眼液の薬効はすべて眼球周囲注射投与による近視治療効果よりも低かった。陰性対照群の動物の屈折度及び眼軸パラメータの変化は近視モデルの予想通りであり、且つ陽性対照薬物のアトロピンは実験中に有すべき薬効を示し、これらはいずれも今回の実験のための近視モデルのモールディングが成功し、ベンダザックリシンの薬効評価に用いることができることを証明した。眼軸パラメータの点で、生理食塩水溶媒群と比較して、ベンダザックリシン及び0.1%アトロピンは形態剥奪近視モデルの眼軸延長(統計学的差異が存在する)を顕著に抑制することができ、両者は近視個体の眼軸長さ及び硝子体腔の深さの増加に対してほとんど同じ抑制作用を示し、ベンダザックリシンの1週間点眼と2週間点眼後、近視抑制率は0.1%アトロピン点眼群と比較して薬効が近かったが(それぞれ35.5%VS.28.1%及び33.9%VS.36.9%であり、両者の薬効はいずれも陰性対照溶媒群と統計学的差異が存在する)(図6を参照)、アトロピン群の投与中に瞳孔散大の副作用が発生した。ベンダザックリシン群に明らかな眼部異常が見られなかった。アトロピンでもベンダザックリシンでも、近視に介入した場合、被験個体の角膜曲率、前房、結晶関連指標はすべて影響が受けられていなかった(図7を参照)。発明者の実験室では、現在、臨床試験において濃度0.01%のアトロピン点眼液が多く使用され、本実施例の同じ投与条件で(近視モデル、投与方式、投与頻度及び投与体積などが一致を維持する)、該濃度のアトロピンは、屈折度指標でも眼軸パラメータ指標でもモルモット近視モデルに対していかなる治療効果も観察されていなかった。これは点眼液剤形の動物への点眼投与後に眼球表面に保持する時間が短いことと関係がある可能性がある。したがって、薬効及び安全性の観点から評価した結果、ベンダザックリシンは、近視個体治療上のリスク利益率がアトロピンよりも優れ(例えば、昼にベンダザックリシンを使用した場合、近視治療と同時に、アトロピンによる散瞳に起因する羞明と同様の現象が現れない)、特に児童及び青少年の人群れの近視治療及び就学年齢段階の人群れの近視の予防制御に適用される。
【0268】
用いられる3%ベンダザック膏薬は日本国内で市販されている商品であり、発明者が該製品に対応するベンダザックを含まない製剤を取得することができないので、本実施例では、軟膏型の被験薬物について対照群が設けられておらず、同じ補助材料を含むアトロピン薬膏も同様の原因で除外された。しかし、この剤形のベンダザックによる近視治療の薬効評価について、発明者は、本出願における同様に非侵襲投与実験中の同じバッチの同一モデルの対照群指標を依然として参照することができる。具体的な実験過程は次のとおりである。ベンダザック膏薬を本出願に説明されたモルモット形態剥奪近視モデルの被験眼(実験対象眼)の角膜表面及び眼周皮膚に塗布し、眼瞼を手動で迅速に10回閉じ、しかし、膏薬を迅速に吸収できないことと、アイマスク付け及び動物の正常のまばたきにより、次回投与の時に、アイマスクの内面にも一定のベンダザック膏薬が付いていることは発明者が発見した。ベンダザック膏薬は、1回ごとの投与量が18mg±2mgとなり、モールディング当日から毎日の午前の9-10時に剥奪眼に投与し、午後の2:30-3:30に2回目で投与し、即ち1日2回で、連続的に2週間投与した。該モデルが薬効実験を開始する時、1週間及び2週間行った時、被験動物の屈折度及び眼軸パラメータを測定し、全てのデータ収集及び処理方式は発明者の実験室が発表した文献[4]と同じであり、同一の被験個体の実験対象眼と対側眼との差を統計根拠とした。
【0269】
3%のベンダザック膏薬を1週間及び2週間投与すると、近視抑制率はそれぞれ17.7%及び25.9%となり、治療効果が同じバッチの0.5%ベンダザックリシン又は0.1%アトロピンよりも僅かに低いが、同じバッチの形態剥奪近視モデルの非治療群よりも遥かに高かった。可能な原因として、モールディング上の遮蔽物が眼部の薬膏内のベンダザックへの吸収に影響を与え、又は該剤形が主に皮膚投与経路を対象とするため、モルモット眼部に対するベンダザック薬物の生物学的利用能に対して配合成分が合理的ではなかった。しかし、ベンダザック(薬膏)は依然として近視に対する効果的な予防制御作用を示し、近視個体の屈折度マイナス化過程を抑制できる以外、近視個体の硝子体腔の深さの増加及び眼軸長さの延長も、投与後、いずれも対応して抑制され、具体的には、2週間投与すると、ベンダザック膏薬による近視治療群では、硝子体腔の深さの増加平均値が0.09mm、眼軸長さの延長平均値が0.09mmとなり、同じバッチの近視非介入群では、対応する指標が0.13mm及び0.12mmであった(図6を参照)。以上により、近視個体の眼軸延長は主に硝子体腔の深さの増加によるものであり、ベンダザックは近視個体の硝子体腔の深さの増加及び眼軸長さの延長を同時に低減することができる。ベンダザック投与後、動物には、眼部の明らかな異常が見られておらず、被験個体の瞳孔、角膜曲率、前房及び結晶関連指標も薬物による影響が受けられていなかった(図7を参照)。
【0270】
以上により、眼部注射投与方式以外、他の非侵襲的(無侵襲的)投与方式を利用した場合、ベンダザック及びその塩形態(例えば、リジン塩)は同様に近視を効果的に治療及び予防制御でき、近視個体又は近視傾向のある個体の屈折度マイナス化過程を遅延することができる。具体的には、ベンダザックリシン点眼液の直接点眼投与又はベンダザック眼用膏薬の眼部投与によって近視を治療して、近視個体又は近視傾向のある個体の眼軸延長を抑制し、その硝子体腔の深さの増加を低減できる。
【0271】
実施例8 近視に対する単一のリジン及び単一のベンダザック目薬の作用
【0272】
明らかな眼部疾患又は異常のある個体を取り除いた後の3週齢の三色モルモットに対して、屈折度(赤外線偏心撮影検眼鏡)及び眼軸(A超音波)測定を行い、屈折力が3-8diopter(D)の間にあり且つ両眼の屈折率バラツキが2D以下である動物を選択し、それらをFD+生理食塩水群(NS)、FD+リジン(L-lysine)、FD+0.5%ベンダザックリシン(BDL)、FD+DMSO(ベンダザックに対して設けられた溶媒対照群、vehicle)、FD+ベンダザック(実験群で、FDMモデル個体にベンダザックを投与したものであり、bendazac)の5群にランダムに分けた。実験初日の午前8時にモルモットに対して形態剥奪を行い、マスク法を採用し、マスクを右眼(実験対象眼)に付け、左眼(対側眼)に付けなかった。FD誘導は薬効実験期間全体において持続的に行われ、投与又は眼部測定(例えば、屈折度測定)の時のみにかぶり物を一時的に取り外した。薬効実験開始後の毎日の早8時、昼12時、夜7時及び投与前にかぶり物の位置を検出し、かぶり物が3回以上外した個体を淘汰した。モールディング当日から毎日の午前の9-10時に実験対象眼の対応群に溶媒又は薬物を投与し、球近傍結膜下注射を行い、注射体積を100μlにし、1日1回で2週間連続的に投与した。薬効実験の開始時、1週間及び2週間実験を行った時、屈折度及び眼軸パラメータを測定し、全てのデータ収集及び処理方式は発明者の実験室が発表した文献[4]と同じであり、同一の被験個体の実験対象眼と対側眼との差を統計根拠とした。以上の全ての薬効実験は少なくとも3回繰り返し、前記薬物製剤はいずれも発明者が自らで調製されたものである。
【0273】
実験結果によると、生理食塩水でもDMSO溶媒でも、陰性対照群の動物の屈折度及び眼軸パラメータの変化は近視モデルの予想通りであり、且つ陽性対照薬物の0.5%ベンダザックリシンは実験中に有すべき薬効を示した。これらはいずれも今回の実験のための近視モデルのモールディングが成功し、ベンダザック及びリジンの薬効評価に用いることができることを証明した。0.5%ベンダザックリシンと同じモルのリジンの単一使用は、近視進行に対して、屈折度マイナス化も硝子体腔の深さ及び眼軸長さの延長も抑制作用がなかった。投与中に1週間及び2週間時の屈折度指標について、リジン介入群の近視度数は生理食塩水群よりも高い一方で、同じモルのベンダザックリシンはいずれも投与した個体の屈折度のマイナス化過程を効果的に抑制することができ、且つ生理食塩水群と統計学的差異が存在している(図8を参照)。したがって、リジンはいかなる近視治療又は予防制御の薬効も有しておらず、ベンダザックリシンが近視治療薬効を発揮することは、その分子中のリジン成分と直接な因果関係がなく、ベンダザックの薬学的に許容可能ないかなる塩も近視の治療及び予防に用いることができる。
【0274】
単一のベンダザックは、そのDMSO溶媒対照群と比較して、1週間及び2週間の時に近視抑制率が33.4%及び30.1%となり、その近視治療効果が同じバッチの等モルのベンダザックリシン陽性対照群に一致し、且つ両者はそれぞれの対応する陰性対照と統計学的差異が存在している。よって、ベンダザックこそがベンダザックリシン分子で近視治療に薬効を発揮するキーポイント及び唯一の部分であり、近視個体の屈折度のマイナス化過程を効果的に抑制及び減速することができることが証明された。DMSO溶媒群と比較して、ベンダザック投与後、近視個体の眼軸延長を顕著に抑制し、その硝子体腔の深さの増加を低減することもでき、且つ陰性対照群と統計学的差異が存在し、その効果が同じバッチの等モルのベンダザックリシン実験群と同様である(図9を参照)。
【0275】
ベンダザックリシン、ベンダザック又はリジンは、投与後、動物に眼部の明らかな異常が見られておらず、被験個体の瞳孔、角膜曲率、前房深さ及び結晶厚さの関連指標も薬物による影響が受けられていなかった(図10-11を参照)。
【0276】
上記実験において、ベンダザック及びその対応する溶媒陰性対照は、本出願に記載の解決手段に従って、2週間投与する時に、脈絡膜の厚さを測定した。結果によると、ベンダザック(目薬形態)の単一使用により、近眼の脈絡膜の厚さの減少を抑制し、近視個体の実験対象眼と対側眼の脈絡膜の厚さの差の平均値が-18.82マイクロメートルとなる一方で、ベンダザック介入後、近視個体の実験対象眼と対側眼の脈絡膜の差の平均値が-8.47マイクロメートルとなり、ベンダザック薬物群及びDMSO溶媒群の両者間に統計学的差異が存在している(図12を参照)。したがって、近視個体又は近視傾向のある個体の脈絡膜の厚さの減少を抑制することにおいて、ベンダザック及びベンダザックリシンは薬効の一致性を示し、ベンダザックは近視個体又は近視傾向のある個体の脈絡膜の厚さの減少を顕著に抑制し、その脈絡膜の厚さの減少傾向を軽減することができる。
【0277】
上記結果によると、ベンダザック及びそのいずれか1つの塩形態の対応する化合物(例えば、ベンダザックリシン)は、近視を効果的に治療することができ、それらは、眼軸延長を抑制し、硝子体腔深さの増加を軽減することにより、近視個体又は近視傾向のある個体の屈折度のマイナス化過程を遅延することが証明された。また、ベンダザック及びその薬学的に許容可能な塩(例えば、ベンダザックリシン)は、脈絡膜の厚さを効果的に増加し、近視度数を小さくすることができる。上記ベンダザック及びその薬学的に許容可能な塩(例えば、ベンダザックリシン)は近視治療及び予防のための剤形が点眼液であってもよく、目薬軟膏、眼薬スプレー、眼用注射液及び眼用ゲルであってもよく、このような化合物(薬物)を含むデバイス、製剤又は薬物組成物は近視進行の制御に用いることができる。
【0278】
実施例9 モルモット形態剥奪近視モデルに対するSorbinil及びZopolrestatの治療効果
【0279】
明らかな眼部疾患又は異常のある個体を取り除いた後の3週齢の三色モルモットに対して、屈折度(赤外線偏心撮影検眼鏡)及び眼軸(A超音波)測定を行い、屈折力が3-8diopter(D)の間にあり且つ両眼の屈折率バラツキが2D以下である動物を選択し、FD+DMSO、FD+Sorbinil、FD+Zopolrestatの3群にランダムに分けた。化合物データベース情報に基づいて、zopolrestatのIC50=3.1nMであり、sorbinilのIC50=3.14±0.02μMであり、発明者が実験中に実際に使用したZopolrestat製剤の最終的な濃度は1mMであり、Sorbinil製剤の最終的な濃度は100μMである。実験初日の午前8時にモルモットに対して形態剥奪近視モールディングを行った。形態剥奪近視モデルはマスク法を採用し、発明者が10寸の乳白色の無毒のラテックス風船を用いたかぶり物を、モルモットモールディング個体は右眼に(実験対象眼)付け、左眼にかぶり物(対側眼)を付けなかった。FD誘導はベンダザックリシン薬効の実験期間全体において持続的に行われ、投与又は眼部測定(例えば、屈折度測定)の時のみにかぶり物を一時的に取り外した。薬効実験開始後の毎日の早8時、昼12時、夜7時及び投与前にかぶり物の位置を検出し、かぶり物が3回以上外した個体を淘汰した。モールディング当日から毎日の午前9-10時にFDMモデルの実験対象眼に対応する溶媒又は薬物を1日1回の投与頻度で投与し、投与頻度は1日1回であり、投与方式を眼球近傍結膜下注射とし、注射体積を100μlにし、連続的に2週間投与した。該モデル薬効実験を開始する時、1週間及び2週間行った時、被験動物の屈折度及び眼軸パラメータを測定し、全てのデータ収集及び処理方式は発明者の実験室が発表した文献[4]と同じであり、同一の被験個体の実験対象眼と対側眼との差を統計根拠とする。以上の全ての薬効実験は少なくとも3回繰り返して実行した。本実施例では、被験薬物及び溶媒対照(陰性対照群)はすべて発明者が自らで調製されたものである。
【0280】
結果によると、Sorbinil及びZopolrestatは投与後、近視治療効果がなく、近視の進行を制御することができなかった。この2つのアルドース還元酵素阻害剤は、FD誘導による屈折度マイナス化過程を抑制し、近視個体の眼軸延長の進行を減速することができなかった。実験期間全体において、各測定時点でSorbinil及びZopolrestatの2つの薬物は、溶媒群と比較して、屈折度指標も眼軸パラメータ指標も有意差がなかった(図13)。また、Sorbinil及びZopolrestatは、投与後、被験個体の角膜曲率、前房深さ及び結晶厚さの関連指標にも影響を与えなかった(図14を参照)。以上により、アルドース・レダクターゼは近視治療薬の開発ターゲットではなく、全てのアルドース還元酵素阻害剤が近視予防制御の薬効を備えるわけではない。
【0281】
実施例10 モルモット形態剥奪近視モデルに対するメタヒドロキシメチルアニリン(m-hydroxy-methylaniline)の治療効果
【0282】
本出願に説明されたモルモット形態剥奪近視モデルを利用して薬効を評価し、全ての個体は屈折度及び眼軸の測定を行い、条件に合致しない動物を取り除いた後、FD+0.9%生理食塩水(NS)、FD+メタヒドロキシメチルアニリン(化合物A)及びFD+0.1%アトロピン(陽性対照)の3群にランダムに分けた。実験初日の午前8時にモルモットに対して形態剥奪を行い、マスク法を採用し、マスクを右眼(実験対象眼)に付け、左眼(対側眼)に付けなかった。モールディング当日から毎日の午前9-10時に実験対象眼の対応群に溶媒又は薬物を投与し、投与方式を眼球近傍結膜下注射にし、注射体積を100μlにし、1日1回で1週間連続的に投与した。薬効実験の開始時と終了後、屈折度及び眼軸パラメータを測定し、全てのデータ収集及び処理方式は本出願の他の実施例と同じであり、同一の被験個体の実験対象眼と対側眼との差を統計根拠とする。
【0283】
今回の実験で陰性対照群の動物の屈折度及び眼軸パラメータの変化は近視モデルの予想通りであり、且つ陽性対照薬物のアトロピンは実験中に有すべき薬効を示し、これらはいずれも今回の実験のための近視モデルのモールディングが成功し、被験薬物の薬効評価に用いることができることを証明した。実験結果は、図15に示すように、メタヒドロキシメチルアニリン投与後、屈折度のマイナス化も硝子体腔の深さ又は眼軸長さの増加も抑制されていなかった。メタヒドロキシメチルアニリンは近視予防又は治療の効果がないことを示している。メタヒドロキシメチルアニリン投与後、被験個体の眼軸パラメータ及び屈折度はいずれも陰性対照群との統計学的差異を示しておらず、該薬物は近視個体の眼軸延長に対して抑制作用がなく、硝子体腔の深さの増加にも減速作用がなかった。本実施例において、アトロピンは正常の近視治療効果を示しているが、この群の全ての被験動物は、瞳孔散大が現れず、前房の深さ及び水晶体の厚さは投与介入後にも影響が受けられていなかった(図15)。以上により、実験結果によると、白内障治療効果を備える全ての化合物(薬物)が近視の治療に用いることができるわけではなく、酸化防止活性を備える又はBLOA(Biological Liquid Oxidant Activity)を低減できる全ての化合物が近視予防制御薬効を有するわけではないことが証明された。
【0284】
最後に説明すべきこととして、以上の各実施例は、本出願の技術的解決手段を説明するためのものに過ぎず、それを限定するものではない。前記の各実施例を参照して本出願を詳しく説明したが、依然として前記の各実施例に記載の技術的解決手段を修正したり、その一部又は全ての技術的特徴を同等に置き換えたりすることができ、これらの修正又は置き換えは、対応する技術的解決手段の本質を本出願の各実施例の技術的解決手段の範囲から逸脱させるものではなく、いずれも本出願の請求項及び明細書の範囲内に含まれるべきであることが当業者であれば理解すべきである。特に、構造的衝突が存在しない限り、各実施例に記載されている各技術的特徴はいずれも任意の方式で組み合わせることができる。本出願は明細書に開示された特定の実施例に限定されず、特許請求の範囲内にある全ての技術的解決手段を含む。
【0285】
参照文献:
【0286】
1Lu F,Zhou X,Zhao H,et al.Axial myopia induced by a monocularly-deprived facemask in guinea pigs:A non-invasive and effective model.Exp Eye Res 2006;82:628-636.
【0287】
2Lu F,Zhou X,Jiang L,et al.Axial myopia induced by hyperopic defocus in guinea pigs:A detailed assessment on susceptibility and recovery.Exp Eye Res 2009;89:101-108.
【0288】
3Wu H,Chen W,Zhao F,et al.Scleral hypoxia is a target for myopia control.Proc Natl Acad Sci U S A 2018;115:E7091-E7100.
【0289】
4Pan M,Zhao F,Xie B,et al.Dietary omega-3polyunsaturated fatty acids are protective for myopia.Proc Natl Acad Sci U S A 2021;118.
図1
図2
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【国際調査報告】