(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】吸入器システム
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20240416BHJP
A61B 5/087 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61B10/00 L
A61B5/087
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567143
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2022061541
(87)【国際公開番号】W WO2022233738
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512297125
【氏名又は名称】ノートン (ウォーターフォード) リミテッド
【住所又は居所原語表記】Unit 301 IDA, Industrial Park, Cork Road, Waterford, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サフィオーティ,ギルエルメ
(72)【発明者】
【氏名】ミルトン‐エドワーズ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ライヒ,マイケル
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SS04
(57)【要約】
現時点での対象の呼吸器疾患評価を生成する方法が提供される。方法は、ベースライン期間内の吸入器の使用に関するベースライン統計値を計算するステップを有する。吸入器は、対象に救急薬を投与するように構成され、さらに、対象による吸入器の使用を測定するように構成された使用測定システムを有する。方法は、さらに、現時点を含む現在期間内の吸入器の使用に関する現在統計値を計算するステップを有する。方法は、さらに、比較変数を生成するステップを有する。比較変数を生成するステップは、現在統計値とベースライン統計値を比較するステップを有する。呼吸器疾患の評価は比較変数に基づいている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現時点での対象の呼吸器疾患評価を生成する方法であって、
ベースライン期間内の吸入器の使用に関するベースライン統計値を計算するステップを有し、前記吸入器は、前記対象に救急薬を投与するように構成され、さらに、前記対象による前記吸入器の使用を測定するように構成された使用測定システムを有しており、さらに、
前記現時点を含む現在期間内の前記吸入器の使用に関する現在統計値を計算するステップを有し、中間期間が前記現在期間を前記ベースライン期間から分離しており、さらに、
前記現在統計値と前記ベースライン統計値を比較することを含む、比較変数を生成するステップと、
前記比較変数を1つの入力として学習済み機械学習モデルに適用するステップと、
前記学習済み機械学習モデルの出力として、前記対象の前記呼吸器疾患評価を生成するステップと、を有していることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記呼吸器疾患の前記評価は前記対象による将来の前記吸入器の使用の予測を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象による前記将来の吸入器の使用の前記予測は、前記対象が前記吸入器を用いて行った吸入の間の気流に関する1または2以上のパラメータに係る予測からなっていることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記気流に関する1または2以上のパラメータは、最大吸入流量、吸入量、時間対最大吸入流量および吸入継続時間のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記対象による前記将来の吸入器の使用の前記予測は、過剰な救急吸入器の使用を示す過剰救急吸入器使用基準を後に満たす前記対象に係る予測からなっていることを特徴とする請求項2~請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記呼吸器疾患評価は、前記対象の呼吸器疾患の状態に関する臨床的に測定された指標の近似であることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記呼吸器疾患評価は、後に呼吸器疾患の増悪を被る前記対象に係る予測であることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記機械学習モデルは、複数の学習対象のそれぞれに関する履歴比較変数およびラベル付きデータからなる学習データを用いて学習せしめられ、および/または初期機械学習モデルから当該学習データを用いて適合せしめられることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記履歴比較変数は、履歴ベースライン期間内の前記吸入器の使用に関する履歴ベースライン統計値と、後続の期間内の前記吸入器の使用に関するその後の統計値とを比較することによって生成され、前記後続の期間が前記履歴ベースライン期間の後に続くものであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ラベル付きデータは、前記後続の期間の経過後に測定された前記学習対象のそれぞれによる前記吸入器の使用の度合からなっていることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記後続の期間経過後に測定された前記学習対象のそれぞれの前記度合は、前記学習対象のそれぞれが過剰な救急吸入器の使用を示す過剰救急吸入器使用基準を満たしたかどうかの評価からなっていることを特徴とする請求項5および請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記機械学習モデルは、前記初期機械学習モデルから、複数の臨床的に評価された対象のそれぞれの呼吸器疾患の状態に関する臨床的に測定された指標からなる別のラベル付きデータを用いて適合せしめられることを特徴とする請求項8~請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記別のラベル付きデータは、複数の臨床的に評価された対象のそれぞれの、自己の呼吸器疾患の増悪を被るかどうかに関する指標からなっていることを特徴とする請求項7および請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ユーザーインターフェイスを制御して、呼吸器疾患に関する生成された評価に基づく通知を行うステップを有していることを特徴とする請求項1~請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ベースライン統計値は、前記ベースライン期間にわたって計算された、単位時間当たりの前記吸入器を用いた救急吸入の回数のベースライン平均値、単位時間当たりの前記吸入器を用いた救急吸入の回数のベースライン標準偏差、および単位時間当たりの救急吸入の回数のベースライン変動係数のうちの1または2以上からなっていることを特徴とする請求項1~請求項14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記単位時間当たりの救急吸入の回数の前記ベースライン平均値は、前記ベースライン期間にわたって計算された、単位時間当たりの前記吸入器を用いた吸入吸入の回数の平均値、中央値および/または最頻値であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記現在統計値を1つの入力として前記学習済み機械学習モデルに適用するステップを有していることを特徴とする請求項1~請求項16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記ベースライン統計値を1つの入力として前記学習済み機械学習モデルに適用するステップを有していることを特徴とする請求項1~請求項17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記ベースライン期間は10~30日であることを特徴とする請求項1~請求項18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記ベースライン期間は12~20日であることを特徴とする請求項1~請求項19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記対象は、前記ベースライン期間内に自己の呼吸器疾患の増悪を経験しなかったことを特徴とする請求項1~請求項20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記中間期間内の前記吸入器の使用に関する中間統計値を計算するステップを有していることを特徴とする請求項1~請求項21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記中間統計値および/または前記中間統計値から導出されたデータを1つの入力として前記学習済み機械学習モデルに適用するステップを有していることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記比較変数を生成するステップは、前記中間統計値を前記現在統計値および/または前記ベースライン統計値と比較するステップをさらに有していることを特徴とする請求項22または請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記中間統計値を計算するステップは、前記中間期間にわたって合計された救急吸入の回数の中間の総数を計算するステップを有していることを特徴とする請求項22~請求項24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記中間統計値を計算するステップは、前記救急吸入の中間総数を前記中間期間内の所定の救急吸入回数しきい値と比較するステップを有していることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記中間統計値は、前記中間期間にわたって計算された、単位時間当たりの前記吸入器を用いた救急吸入の回数の中間平均値、単位時間当たりの前記吸入器を用いた救急吸入の回数の中間標準偏差、および単位時間当たりの前記吸入器を用いた救急吸入の回数の中間変動係数のうちの1または2以上からなっていることを特徴とする請求項22~請求項26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記単位時間当たりの救急吸入の回数の前記中間平均値は、前記中間期間にわたって計算された、単位時間当たりの前記吸入器を用いた救急吸入の回数の平均値、中央値および/または最頻値であることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記中間期間は3~15日であることを特徴とする請求項1~請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記中間期間は約7日であることを特徴とする請求項1~請求項29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記現在統計値を計算するステップは、前記現在期間にわたって合計された救急吸入の現在の総数を計算するステップを有していることを特徴とする請求項1~請求項30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記現在統計値は、前記現在期間にわたって計算された、単位時間当たりの前記吸入器を用いた救急吸入の回数の現在平均値、単位時間当たりの前記吸入器を用いた救急吸入の回数の現在標準偏差、および単位時間当たりの前記吸入器を用いた救急吸入の回数の現在変動係数のうちの1または2以上からなっていることを特徴とする請求項1~請求項31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記単位時間当たりの救急吸入の回数の前記現在平均値は、前記現在期間にわたって計算された、単位時間当たりの前記吸入器を用いた救急吸入の回数の平均値、中央値および/または最頻値であることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記現在統計値と前記ベースライン統計値を比較するステップは、前記ベースライン平均値と前記現在平均値を比較するステップを有していることを特徴とする請求項32または請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記現在統計値と前記ベースライン統計値を比較するステップは、前記ベースライン平均値および前記現在平均値間の差をとるステップを有していることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記現在統計値と前記ベースライン統計値を比較するステップは、前記ベースライン平均値および前記現在平均値間の差を所定の差しきい値と比較するステップを有していることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記現在統計値と前記ベースライン統計値を比較するステップは、前記現在平均値の前記ベースライン平均値に対する比を計算するステップを有していることを特徴とする請求項34~請求項36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記現在統計値と前記ベースライン統計値を比較するステップは、前記比を所定の比しきい値と比較するステップを有していることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
救急吸入の回数の前記ベースライン平均値、救急吸入の回数の前記ベースライン標準偏差および/または救急吸入の回数の前記ベースライン変動係数の計算に用いられた単位時間は、救急吸入の回数の前記現在平均値、救急吸入の回数の前記現在標準偏差および/または救急吸入の回数の前記変動係数の対応する計算に用いられた単位時間と同じであることを特徴とする請求項34~請求項38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記現在期間は24~120時間であることを特徴とする請求項1~請求項39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記現在期間は約48時間であることを特徴とする請求項1~請求項40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
時間とともに繰り返し実行されることを特徴とする請求項1~請求項41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記繰り返しのそれぞれにおいて、前記中間期間が固定されていることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記方法の連続した繰り返しは、救急吸入の回数のベースライン平均値、救急吸入の回数のベースライン標準偏差および/または救急吸入の回数のベースライン変動係数の計算に用いられた単位時間の1単位または2単位以上互いに時間的に離れていることを特徴とする請求項42または43および請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項45】
前記現在期間内に、前記対象が吸入器を用いて実行した吸入の間の気流に関する測定されたパラメータから現在吸入パラメータ統計値を計算するステップをさらに有していることを特徴とする請求項1~請求項44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記現在吸入パラメータ統計値および/または前記現在吸入パラメータ統計値から導出されたデータを1つの入力として前記学習済み機械学習モデルに適用するステップをさらに有していることを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記比較変数を生成するステップが、前記現在吸入パラメータ統計値を用いて、前記ベースライン統計値、前記現在統計値および/または前記ベースライン統計値と前記現在統計値との比較を修正するステップをさらに有していることを特徴とする請求項45または請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ベースライン期間内に、前記対象が吸入器を用いて実行した吸入の間の気流に関する測定されたパラメータからベースライン吸入パラメータ統計値を計算するステップをさらに有し、選択的に、前記ベースライン吸入パラメータ統計値および/または前記ベースライン吸入パラメータ統計値から導出されたデータを1つの入力として前記学習済み機械学習モデルに適用するステップを有していることを特徴とする請求項45~請求項47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記比較変数を生成するステップが、前記現在吸入パラメータ統計値と前記ベースライン吸入パラメータ統計値を比較するステップをさらに有していることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記気流に関するパラメータは、最大吸入流量、吸入量、時間対最大吸入流量および吸入継続時間のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項45~請求項49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
前記救急薬は、アルブテロール、フォルモテロール、フォルモテロールと組み合わされたブデソニド、アルブテロールと組み合わされたベクロメタゾンおよびアルブテロールと組み合わされたフルチカゾンのうちから選択されたものであることを特徴とする請求項1~請求項50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
対象の呼吸器疾患評価を生成するのに使用される機械学習モデルを学習させる方法であって、
複数の学習対象のそれぞれに対し、
ベースライン期間内の吸入器の使用に関するベースライン統計値を計算するステップを有し、前記吸入器は前記学習対象に救急薬を投与するように構成され、さらに、前記学習対象による前記吸入器の使用を測定する使用測定システムを有しており、さらに、
後続の期間内の前記吸入器の使用に関する後続統計値を計算するステップを有し、中間期間が前記後続の期間を前記ベースライン期間から分離し、さらに、
比較変数を生成するステップを有し、前記比較変数を生成するステップは前記後続統計値と前記ベースライン統計値を比較するステップを有し、さらに、
ラベル付きデータを得るステップを有し、前記ラベル付きデータを得るステップは前記学習対象の呼吸器疾患に関する評価を有し、さらに、
前記比較変数および前記ラベル付きデータを含む学習データを生成するステップと、
前記学習データおよび前記ラベル付きデータを用いて前記機械学習モデルを学習させるステップと、を有し、前記学習データが入力データとして前記機械学習モデルに適用されたとき、前記機械学習モデルは前記ラベル付きデータを近似するように学習せしめられることを特徴とする方法。
【請求項53】
前記呼吸器疾患評価は、前記後続の期間の経過後に測定された前記学習対象のそれぞれの前記吸入器の使用の度合からなっていることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記学習対象のそれぞれの前記吸入器の使用の前記度合は、前記対象が前記吸入器を使用して行った吸入の間の気流に関する1または2以上のパラメータを有し、選択的に、前記気流に関する1または2以上のパラメータは、最大吸入流量、吸入量、時間対最大吸入流量および吸入継続時間のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記学習対象のそれぞれの前記吸入器の使用の前記度合は、過剰な救急吸入器の使用を示す過剰救急吸入器使用度合が満たされたかどうかに関する指標からなっていることを特徴とする請求項53または請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記呼吸器疾患評価は、前記対象の呼吸器疾患の状態に関する臨床的に決定された指標を有し、選択的に、前記臨床的に決定された指標は、前記後続の期間の経過後に決定された前記対象の呼吸器疾患の増悪に関するものであることを特徴とする請求項52~請求項55のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
複数の臨床的評価対象のそれぞれに対して、
前記ベースライン統計値を計算するステップと、
前記後続統計値を計算するステップと、
前記後続統計値と前記ベースライン統計値を比較することを含む、前記比較変数を生成する前記ステップと、
前記複数の臨床的評価対象のそれぞれの呼吸器疾患の状態に関する臨床的に決定された指標を有する別のラベル付きデータを取得するステップと、
前記比較変数および前記別のラベル付きデータを有する別の学習データを生成するステップと、
適合せしめられた機械学習モデルを前記別の学習データを用いて学習させるステップと、を有していることを特徴とする請求項52~請求項56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
前記別のラベル付きデータは、前記評価対象毎の、前記評価対象が自己の呼吸器疾患の増悪を被るか否かに関する指標を有していることを特徴とする請求項57に記載の方法。
【請求項59】
現時点での対象の呼吸器疾患評価を生成する方法であって、
ベースライン期間内の吸入器の使用に関するベースライン統計値を計算するステップを有し、前記吸入器は前記対象に救急薬を投与するように構成され、さらに、前記対象による前記吸入器の使用を測定するように構成された使用測定システムを有しており、さらに、
前記現時点を含む現在期間内の前記吸入器の使用に関する現在統計値を計算するステップを有し、中間期間が前記現在期間を前記ベースライン期間から分離しており、さらに、
前記現在統計値と前記ベースライン統計値を比較することを含む、比較変数を生成するステップと、
前記比較変数に基づいて前記評価を生成するステップと、を有していることを特徴とする方法。
【請求項60】
機械学習モデルに学習させて、対象の呼吸器疾患評価を生成する方法であって、
複数の学習対象のそれぞれに対して、
前記学習対象による吸入器の使用に関するデータを含む測定データを取得するステップを有し、前記吸入器は前記学習対象に救急薬を投与するように構成され、さらに、前記学習対象による前記吸入器の使用を測定するように構成された使用測定システムを有しており、さらに、
ベースライン期間内の前記吸入器の使用に関するベースライン統計値を計算するステップと、
後続の期間内の前記吸入器の使用に関する後続統計値を計算するステップと、を有し、中間期間が前記後続の期間を前記ベースライン期間から分離しており、さらに、
前記後続統計値と前記ベースライン統計値を比較することを含む、比較変数を生成するステップと、
前記比較変数が所定のしきい値を超えたか否かに従って前記測定データをラベル付けするステップと、
前記機械学習モデルを前記学習対象毎の前記ラベル付けされた測定データを用いて学習させ、それによって、前記機械学習モデルに前記呼吸器疾患評価を生成させるステップと、を有していることを特徴とする方法。
【請求項61】
1または2以上の物理的計算装置上において実行されたとき、前記1または2以上の物理的計算装置に請求項1~請求項60のいずれかに記載の方法を実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードを有することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項62】
1または2以上の物理的計算装置上において実行されたとき、前記1または2以上の物理的計算装置に請求項1~請求項60のいずれかに記載の方法を実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードを有するコンピュータプログラムを備えたものであることを特徴とする1または2以上の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項63】
現時点での対象の呼吸器疾患評価を生成するシステムであって、
前記対象に救急薬を投与するための吸入器を備え、前記吸入器は前記対象によって前記吸入器を用いて実行された救急吸入を測定するように構成された使用測定システムを有し、さらに、
ベースライン期間内の前記吸入器の使用に関するベースライン統計値を計算し、
前記現時点を含む現在期間内の前記吸入器の使用に関する現在統計値を計算するように構成された1または2以上のプロセッサーを有し、中間期間が前記現在期間を前記ベースライン期間から分離しており、前記1または2以上のプロセッサーは、さらに、
前記現在統計値と前記ベースライン統計値を比較することを含む、比較変数の生成を行い、
前記比較変数を1つの入力として学習済み機械学習モデルに適用し、
前記学習済み機械学習モデルからの出力として、前記対象の呼吸器疾患の前記評価を生成するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項64】
現時点での対象の呼吸器疾患評価を生成するシステムであって、
前記対象に救急薬を投与するための吸入器を備え、前記吸入器は前記対象によって前記吸入器を用いて実行された救急吸入を測定するように構成された使用測定システムを備え、さらに、
ベースライン期間内の前記吸入器の使用に関するベースライン統計値を計算し、
前記現時点を含む現在期間内の前記吸入器の使用に関する現在統計値を計算するように構成された1または2以上のプロセッサーを有し、中間期間が前記現在期間を前記ベースライン期間から分離しており、前記1または2以上のプロセッサーは、さらに、
前記現在統計値と前記ベースライン統計値を比較することを含む、比較変数の生成を行い、
前記比較変数に基づいて前記評価を生成するように構成されていることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入器システム、特に、対象の呼吸器疾患評価を生成するシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)等の多くの呼吸器疾患は、治療が、対象の症状の管理と、回復不能な病変のリスクを減らすための薬剤の生涯にわたる投与とを含む、生涯にわたる病気である。現在、喘息およびCOPDのような病気に対する治療法は存在しない。
治療は2つの形態をとる。第1に、維持管理的な治療の側面では、気道の炎症を減らし、その結果、将来的に症状をコントロールすることが意図されている。維持管理的治療は、典型的に、吸入コルチコステロイドを単独で、あるいは長時間作用性気管支拡張剤および/またはムスカリン拮抗薬と組み合わせて処方することによって行われる。第2に、治療は救急(または救援)治療の側面も有し、この場合、対象は、喘息、咳、胸部圧迫および呼吸困難の激しい発作を緩和するための即効性の気管支拡張剤を投与される。
喘息またはCOPDのような呼吸器疾患を患った対象は、また、呼吸器疾患の症状をより悪化させる一時的な再燃あるいは増悪を経験するかもしれない。最悪の場合、増悪は対象の生命を脅かし得る。
【0003】
切迫した呼吸器疾患増悪を特定することができれば、行動計画を改善し、対象の症状が要求する前に、例えば、医師へのまたは医師からの予定外の訪問、入院およびステロイドの全身投与のような先行的治療の機会をもたらすことが可能になる。
【0004】
それ故、従来技術においては、対象の呼吸器疾患を評価する改善された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明は、現時点での対象の呼吸器疾患評価を生成する方法を提供するものである。
【0006】
本発明の1実施例による方法は、ベースライン期間内の吸入器の使用に関するベースライン統計値を計算するステップを有している。吸入器は、対象に救急薬を投与するように構成されており、さらに、対象による吸入器の使用を測定するように構成された使用測定システムを有している。この方法は、さらに、現時点を含む現在期間内の吸入器の使用に関する現在統計値を計算するステップを有している。
【0007】
この方法は、さらに、比較変数を生成するステップを有している。比較変数を生成するステップは、現在統計値とベースライン統計値を比較するステップを有している。呼吸器疾患評価は比較変数に基づいている。
【0008】
この実施例では、方法は、さらに、比較変数を1つの入力として学習済み機械学習モデルに適用するステップを有している。かかる実施例では、対象の呼吸器疾患評価は、機械学習モデルからの出力として生成される。
【0009】
中間期間が現在期間をベースライン期間から分離する。かかる実施例では、現在期間とベースライン期間は不連続であるとみなされる。現在期間とベースライン期間のこのような明確な分離によって、例えば、当該期間が連続的である、または重なり合った場合と比較して、比較変数がベースラインからの何らかの偏差を示すより明確なシグナルとしてふるまうことが支援される。
【0010】
すなわち、比較変数は、中間期間と組み合わされることによって、対象の呼吸器疾患を評価し得る特に有益な入力を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の1実施例によるシステムのブロック図である。
【
図2】本発明の別の実施例によるシステムを示す図である。
【
図3】本発明の第1実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図4】本発明の第2実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図5】本発明の第3実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図6】本発明の第4実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図7】本発明の第5実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図8】本発明の第6実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図9】本発明の第7実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図10】本発明の第8実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図11】本発明の第9実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図12】本発明の第10実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図13】本発明の第11実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図14】本発明の第12実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図15】本発明の第13実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図16】本発明の第14実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図17】本発明の第15実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図18】本発明の第16実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図19】本発明の第17実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図20】本発明の第18実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図21】本発明の第19実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図22】本発明の第20実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図23】本発明の第21実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図24】本発明の第22実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図25】本発明の第23実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図26】本発明の第24実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図27】本発明の第25実施例による呼吸器疾患評価を生成する方法のフロー図である。
【
図28】本発明の1実施例による機械学習モデルを構成するプロセスを概略的に示す図である。
【
図29】本発明の別の実施例による機械学習モデルを構成するプロセスを概略的に示す図である。
【
図30】本発明の1実施例による機械学習モデルを学習させる方法のフロー図である。
【
図31】本発明の別の実施例による機械学習モデルを学習させる方法のフロー図である。
【
図32】異なる対象毎の吸入器の使用の間の吸入回数対時間のグラフである。
【
図33】異なる対象毎の吸入器の使用の間の吸入回数対時間のグラフである。
【
図34】異なる対象毎の吸入器の使用の間の吸入回数対時間のグラフである。
【
図35】異なる対象毎の吸入器の使用の間の吸入回数対時間のグラフである。
【
図36】異なる対象毎の吸入器の使用の間の吸入回数対時間のグラフである。
【
図37】異なる対象毎の吸入器の使用の間の吸入回数対時間のグラフである。
【
図38】異なる対象毎の吸入器の使用の間の吸入回数対時間のグラフである。
【
図39】1集団の対象の救急の吸入器使用を示す図である。
【
図43】
図40に示した吸入器の上部キャップおよび電子モジュールの分解斜視図である。
【
図44】
図40に示した吸入器の空気流量対圧力のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
装置、システムおよび方法を例示しつつなされる詳細な説明および具体例は、単に本発明の説明を目的としたものであって、本発明の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。本発明の装置、システムおよび方法のそれらのおよび別の特徴、態様および長所が、明細書の以下の説明、添付の特許請求の範囲および図面からより良く理解されるだろう。図面は概略的なものにすぎず、実際の寸法に合わせて描かれていないことが理解されるべきである。また、全図面を通じて同一または類似の構成要素には同一の番号が付されていることが理解されるべきである。
【0013】
喘息およびCOPDは気道の慢性炎症性疾患である。それらは共に気道閉塞および気管支麻痺の変化しやすく、再発する症状によって特徴づけられる。症状は、喘鳴、咳、胸部圧迫および呼吸困難の発作を含んでいる。
【0014】
症状は、トリガーを回避することおよび薬剤、特に吸入薬を使用することによってコントロールされる。薬剤は、吸入コルチコステロイドおよび吸入気管支拡張剤を含んでいる。
【0015】
吸入コルチコステロイド(ICS)は、呼吸器疾患を長期間コントロールする場合に使用されるステロイドホルモン剤である。それらは、気道炎症を弱めることで機能する。吸入コルチコステロイドは、例えば、ブデソニド、ベクロメタゾン(ジプロピオン酸ベクロメタゾン)、フルチカゾン(フルチカゾンプロピオン酸エステル)、モメタゾン(モメタゾンフランカルボン酸エステル)、シクレソニドおよびデクサメタゾン(デクサメタゾンナトリウム)を含んでいる。括弧は、好ましい塩またはエステルの形態を表す。
【0016】
分類が異なる気管支拡張剤は、気道内の異なる受容体をターゲットにしている。一般に使用される2つの分類は、β2刺激薬と抗コリン薬である。
【0017】
β2アドレナリン刺激薬(β2刺激薬)は円滑な筋肉弛緩を誘発するアドレナリン受容体に作用し、気道を拡張させる。長時間作用性β2刺激薬(LABA)は、例えば、ホルモテロール(フマル酸ホルモテロール)、サルメテロール(サルメテロールキシナホ酸塩)、インダカテロール(インダカテロールマレイン酸塩)、バンブテロール(バンブテロール塩酸塩)、クレンブテロール(クレンブテロール塩酸塩)、オロダテロール(オロダテロール塩酸塩)、カルモテロール(カルモテロール塩酸塩)、ツロブテロール(ツロブテロール塩酸塩)およびビランテロール(ビランテロールトリフェニル酢酸塩)を含んでいる。短時間作用性β2刺激薬(SABA)は、例えば、アルブテロール(硫酸アルブテロール)を含んでいる。
【0018】
典型的に、短時間作用性気管支拡張剤は、急性気管支収縮からの迅速な救援を提供する(しばしば、「救急薬」または「リリーバー薬」と呼ばれる)一方、長時間作用性気管支拡張剤は、長時間にわたる症状のコントロールおよび予防を支援する。
しかしながら、ホルモテロール(フマル酸ホルモテロール)のような発現が早く、長時間作用性気管支拡張剤のいくつかは、救急薬として使用され得る。すなわち、救急薬は急性気管支収縮からの救援を提供する。救急薬は必要に応じて服用される。救急薬は、また、例えば、ICS-ホルモテロール(フマル酸ホルモテロール)、典型的にはブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩水和物吸入剤のようなコンビネーション製品の形態をとり得る。こうして、救急薬は、好ましくは、SABAまたは発現が速いLABA、より好ましくは、アルブテロール(硫酸アルブテロール)またはホルモテロール(フマル酸ホルモテロール)、さらに好ましくは、アルブテロール(硫酸アルブテロール)からなっている。
【0019】
アルブテロール(サルブタモールとしても知られる)は、典型的に硫酸塩として投与され、本発明における好ましい救急薬である。
【0020】
抗コリン作用薬(抗ムスカリン薬)は、神経伝達物質アセチルコリンを、神経細胞内のその受容体を選択的にブロックすることでブロックする。局所適用に際し、抗コリン作用薬は、主に、気道内に位置するM3ムスカリン授与体に作用し、円滑な筋肉弛緩を生じさせ、気管支拡張を生じさせる。
長時間作用性ムスカリン拮抗薬(LAMA)は、例えば、チオトロピウム(チオトロピウム臭化物)、オキシトロピウム(オキシトロピウム臭化物)、アクリジニウム(アクリジニウム臭化物)、イプラトピウム(イプラトピウム臭化物)、グリコピロニウム(臭化グリコピロニウム)、オキシブチニン(オキシブチニン塩酸塩またはオキシブチニン臭化水素酸塩)、トルテロジン(トルテロジン酒石酸塩)、トロスピウム(トロスピウム塩化物)、ソリフェナシン(ソリフェナシンコハク酸塩)、フェソテロジン(フェソテロジンフマル酸塩)およびダリフェナシン(ダリフェナシン臭化水素酸塩)を含んでいる。
【0021】
これまで、ドライパウダー吸入器(DPI)、圧力式定量吸入器(pMDI)およびネブライザー等を用いた吸入による投与のためにそれらの薬剤を準備し、処方する際に多数のアプローチがなされてきている。
【0022】
GINA(Global Initiative for Asthma:喘息管理に関する国際指針)のガイドラインによれば、段階的アプローチが喘息の治療のためにとられる。
軽症型の喘息を表す第1段階では、対象は硫酸アルブテロール等の必要に応じたSABAを与えられる。対象は、また、SABAが処方されるときはいつも、必要に応じた低用量のICS-ホルモテロールまたは低用量のICSを与えられるかもしれない。第2段階では、通常の低用量のICSがSABAまたは必要に応じた低用量のICS-ホルモテロールと一緒に与えられる。第3段階では、LABAが加えられる。第4段階では、各薬剤の用量が増やされ、第5段階では、さらに、抗コリン作用薬または低用量の経口コルチコステロイド等の追加の治療が含まれる。つまり、各段階は治療計画とみなすことができ、治療はそれぞれ、呼吸器疾患の急性重症度の程度に応じて構成される。
【0023】
COPDは世界中の主要な死因である。COPDは、慢性気管支炎や肺気腫、さらには狭気道を含む異質の長期間にわたる病気である。COPDを患った対象における病変は、主に、気道、肺実質および肺血管系に限定される。それらの病変は、肺のガスを吸い込み、吐き出す健全な能力を低下させる。
【0024】
気管支炎は長期間にわたる気管の炎症によって特徴づけられる。一般的な症状は、喘鳴、呼吸困難、咳および喀痰の喀出を含み、これらの症状はすべて対象の生活の質にとって厄介かつ有害である。気腫はまた長期間にわたる気管支炎症に関係し、この場合、炎症に対する反応によって、肺組織の破壊および進行性の気道狭窄が生じる。やがて、肺組織はその自然な弾力性を失い、拡張する。そうなると、ガス交換機能が低下し、呼吸されたガスがしばしば肺に閉じ込められる。これは、局所化された低酸素症を引き起こし、1回の吸気当たりに対象の血流中に供給される酸素量を減少させる。そして、対象は呼吸困難を経験する。
【0025】
COPDとともに生活する対象は、日々、それらの様々の症状を、一部かもしれないが経験する。病気の重症度は種々の要因によって決定されるが、最も一般的には、病気の進行度と相関がある。それらの症状は、病気の重症度とは無関係に、安定したCOPDを表し、この病状が維持され、種々の薬剤の投与を通じてコントロールされる。治療法は変更され得るが、しばしば、吸入気管支拡張剤、抗コリン作用薬、長時間作用性および短時間作用性β2刺激薬および吸入コルチコステロイドを含んでいる。薬剤はしばしば単一治療としてまたは併用治療として投与される。
【0026】
対象は、GOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease, Inc.:慢性閉塞性肺疾患のためのグローバルイニシアティブ)ガイドラインに定められたカテゴリーを用いて、対象のCOPDの重症度によって分類される。カテゴリーはA~Dからなり、治療法の推奨される最初の選択肢はカテゴリー毎に変わる。対象グループAは、必要に応じて、短時間作用性ムスカリン拮抗薬(SAMA)または短時間作用性β2刺激薬(SABA)を処方される。対象グループBは、長時間作用性ムスカリン拮抗薬(LAMA)または長時間作用性β2刺激薬(LABA)を処方される。対象グループCは、吸入コルチコステロイド(ICS)+LABA、またはLAMAを処方される。対象グループDは、ICS+LABA、および/またはLAMAを処方される。
【0027】
喘息またはCOPD等の呼吸器疾患を患った対象は、日々の基本的な病状の変化の範囲を超えた周期的な増悪に苦しむ。増悪は、追加の治療、つまり維持管理的治療の範囲を超えてなされる治療を必要とする急性の病状悪化である。
【0028】
喘息については、中程度の増悪に対する追加の治療は、SABAおよび経口コルチコステロイドの反復投与および/またはコントロールされた酸素吸入(後者は入院を必要とする)からなる。tに対しては、抗コリン作用薬(典型的にイプラトピウム臭化物)、噴霧SABAまたは硫酸マグネシウムが追加される。
【0029】
COPDについては、中程度の増悪に対する追加の治療は、SABA、経口コルチコステロイドおよび/または抗生物質の反復投与からなる。重大な増悪に対しては、コントロールされた酸素吸入および/または呼吸サポート(いずれも入院を必要とする)が加えられる。
【0030】
本明細書中では、用語「増悪」は中程度の増悪と重大な増悪の両方を含んでいる。
【0031】
本発明によれば、現時点での対象の呼吸器疾患評価を生成する方法が提供される。この方法は、ベースライン期間内の吸入器の使用に関するベースライン統計値を計算するステップを有している。吸入器は、対象に救急薬を投与するように構成されており、さらに、対象による吸入器の使用を測定するように構成された使用測定システムを有している。この方法は、さらに、現時点を含む現在期間内の吸入器の使用に関する現在統計値を計算するステップを有している。
【0032】
呼吸器疾患は、例えば、喘息、COPDまたは嚢胞性線維症である。
【0033】
救急薬は、上述したようなものであり、典型的には、SABA、またはホルモテロール(フマル酸ホルモテロール)等の発現が速いLABAからなっている。救急薬は、また、例えば、ICS-ホルモテロール(フマル酸ホルモテロール)、典型的にはブデソニド・ホルモテロール(ブデソニド・ホルモテロールフタル酸塩)等のコンビネーション製品の形態を有している。
このようなアプローチは「MART」(maintenance and rescue therapy:維持療法および救済療法)と呼ばれる。しかしながら、救急薬が存在することは、本明細書中ではそれが第1の吸入器であることを表している。なぜなら、救急薬の存在は重みづけされたモデルにおいて決定的だからである。したがって、それは、救急薬、および救急薬と維持管理薬の組み合わせの両方をカバーする。これに対し、第2の吸入器は、使用された場合、治療の維持管理的な面において使用されるだけであり、救急目的では使用されない。重要な違いは、第1の吸入器が必要に応じて使用されるのに対し、第2の吸入器は、定期的に、所定の時間に使用される点にある。
【0034】
いくつかの実施例において、吸入器は、アルブテロール(硫酸塩)、フォルモテロール(フマル酸塩)、フォルモテロール(フマル酸塩)と組み合わされたブデソニド、アルブテロール(硫酸塩)と組み合わされたベクロメタゾン(ジプロピオン酸塩)、およびアルブテロール(硫酸塩)と組み合わされたフルチカゾン(プロピオン酸塩またはフロ酸エステル)のうちから選択された救急薬を投与するように構成されている。
【0035】
使用測定システムは、例えば、対象によって実行された救急薬の吸入を検出するセンサー、および/または吸入器の使用前、使用中または使用後に作動せしめられるように構成されたスイッチを有している。こうして、使用測定システムによって、吸入器の実際の使用または試みられた使用のそれぞれを記録することが可能になる。
【0036】
センサーは、例えば、絶対圧センサーまたは差圧センサーのような圧力センサーからなっている。
【0037】
吸入器は、例えば、それを通じてユーザーが吸入を行うマウスピース、およびマウスピースカバーを備えている。このような実施例では、スイッチは、マウスピースカバーが移動せしめられてマウスピースが露出したときに作動せしめられるように構成される。
【0038】
非限定的な実施例において、吸入器は、薬剤タンクと、薬剤タンクから1回分の救急薬を計量するように構成された計量アッセンブリーとを備えている。この実施例において、使用測定システムは計量アッセンブリーによる薬の計量を記録するように構成されている。それによって、各計量動作は、対象による吸入器を用いた救急吸入に関する指標となる。
【0039】
いくつかの実施例において、使用測定システムは、センサーをスイッチと組み合わせて使用する。センサーからの信号は、例えば、スイッチによって検出された薬の計量のような吸入器の使用が、救急薬の吸入に伴うものか否かを検証するために用いられる。
【0040】
かかる非限定的な実施例において、本発明の方法で用いられた測定された吸入器の使用は、スイッチによって測定されたもの、および/またはスイッチおよびセンサーによって測定され、検証されたものを有し、またはそれらからなる。
【0041】
少なくともいくつかの実施例において、本発明の方法は、現在統計値とベースライン統計値を比較するステップを含む、比較変数を生成するステップを有している。そのとき、呼吸器疾患評価は比較変数に基づいている。
【0042】
中間期間が、現在期間をベースライン期間から分離する。かかる実施例において、現在期間およびベースライン期間は不連続であるとみなされる。現在期間とベースライン期間のこのような明確な分離によって、例えば、当該期間が連続的である、または重なり合った場合と比較して、比較変数がベースラインからの何らかの偏差を示すより明確なシグナルとしてふるまうことが支援される。
【0043】
中間期間は固定された継続期間である。いくつかの実施例において、中間期間は3~15日、好ましくは約7日である。かかる中間期間は、ベースライン統計値が現在統計値からの十分な独立性を維持することを可能にし、また、ベースライン統計値が、対象のベースライン/「普段の」救急吸入器使用に関する関連指標を維持するための十分直近の使用データによって影響を受けることが保証されることを支援する。
【0044】
少なくともいくつかの実施例において、本発明の方法は時間の経過とともに繰り返し実行される。本発明の方法のこの反復は、その反復の期間が、実行されるべきベースライン統計値の最新の計算のために必要とされる単位時間、例えば1日と少なくとも同じ長さであるならば、反復の各期間毎のベースライン統計値の更新に帰する。すなわち、ベースライン統計値は救急吸入器使用の動的ベースラインを提供するものとみなされ得る。
【0045】
べークライン期間は固定された継続期間である。いくつかの実施例において、ベースライン期間は、10~30日、好ましくは12~20日、最も好ましくは約20日である。かかるベースライン期間は、対象のベースライン/「普段の」救急吸入器使用を確立するのに十分な長さであり、ベースライン統計値に潜在的な診断上のずれが生じるリスクが目立たなくなる程度まで延長されることはない。
【0046】
ベースライン期間は、対象の呼吸器疾患の増悪が生じる期間を除外するように規定される。かかる除外された期間は、増悪の前(対象の状態が増悪に先立って悪化し始めていることが観察される時点)から対象が増悪から回復したとみなされた時点までである。言い換えれば、対象は、ベースライン期間内では自己の呼吸器疾患の増悪を経験することがない。これは、対象のベースライン/「普段の」救急吸入器使用の追跡におけるベースライン統計値の役割を反映している。
【0047】
もし増悪が生じているならば、増悪が生じる前および生じた後の適切な期間の使用データが、例えば、ベースライン統計値の計算から除外されて、ベースライン統計値およびそれに対応して対象の呼吸器疾患評価が影響を受けないようにされる。
【0048】
いくつかの実施例において、現在期間は、24~120時間、好ましくは約48時間である。かかる現在期間は、適当な量の吸入器使用データが収集されるのに十分な長さであり、現在統計値が現時点での吸入器使用状態を代表しなくなる程度まで延長されることはない。
【0049】
より一般的には、用語「現在期間」は、現時点から近接過去まで時間的に後方にのびる時間間隔をいうことに留意されたい。すなわち、現在期間内に吸入器使用データをサンプリングすることによって、現在統計値を計算することができる。現在期間は現時点を越えて未来へのびることはない。なぜなら、現在統計値の計算のために必要とされる吸入器使用データは未だ利用可能でないからである。
【0050】
比較変数に基づく対象の呼吸器疾患評価の生成は、任意の適当な方法で実行され得る。少なくともいくつかの実施例において、比較変数は1つの入力として学習済み機械学習モデルに適用される。
【0051】
教師あり機械学習モデル等の適当な機械学習モデルが考慮され得る。非限定的な実施例において、モデルは決定木分析技術を用いて構成される。ニューラルネットワークまたはディープラーニングモデルを構成する等の別の適当な技術がまた熟慮され得る。機械学習モデルの構成およびトレーニングについて、以下でより詳細に説明されるだろう。
【0052】
ベースライン統計値が、ベースライン期間内の対象による吸入器の使用に関する指標である場合には、任意の適当なベースライン統計値が考慮され得る。
【0053】
いくつかの実施例において、ベースライン統計値は、それぞれベースライン期間にわたって計算された、単位時間当たりの吸入器を使用した救急吸入の回数のベースライン平均値、単位時間当たりの吸入器を使用した救急吸入の回数のベースライン標準偏差、および単位時間当たりの吸入器を使用した救急吸入の回数のベースライン変動係数のうちの1つまたは2つ以上を含んでいる。
【0054】
ベースライン期間にわたって計算された、単位時間当たりの吸入器を用いた救急吸入の回数の平均値、中央値および/または最頻値等の、単位時間当たりの救急吸入の回数の任意の適当なベースライン平均値が考慮され得る。特に言及されるのは、ベースライン期間内の救急吸入の1日平均回数である。
【0055】
ここで使用される用語「変動係数」は、単位時間当たりの吸入器を使用した救急吸入の回数の標準偏差を、単位時間当たりの救急吸入の回数の平均値で割り算したものとして定義されることに留意されたい。
【0056】
より一般的には、例えば、機械学習モデルに対して1つ以上の入力が適用される。言い換えれば、比較変数を含む複数の入力が機械学習モデルに適用される。いくつかの実施例において、ベースライン統計値はそれ自体1つの入力として学習済み機械学習モデルに適用される。
【0057】
任意の適当な現在統計値が現在期間内の対象の吸入器の使用の指標となる場合には、当該現在統計値が考慮され得る。
【0058】
いくつかの実施例において、現在統計値を計算するステップは、現在期間にわたって総和がとられた救急吸入の現在総数を計算するステップを有している。
【0059】
選択的にまたは付加的に、現在統計値は、それぞれ現在期間にわたって計算された、単位時間当たりの吸入器を使用した救急吸入の回数の現在平均値、単位時間当たりの吸入器を使用した救急吸入の回数の現在標準偏差、および単位時間当たりの吸入器を使用した救急吸入の回数の現在変動係数のうちの1つまたは2つ以上を含んでいる。
【0060】
現在期間にわたって計算された、単位時間当たりの吸入器を用いた救急吸入の回数の平均値、中央値および/または最頻値等の、単位時間当たりの救急吸入の回数の任意の適当な現在平均値が考慮され得る。特に言及されるのは、現在期間内の救急吸入の1日平均回数である。
【0061】
いくつかの実施例において、現在統計値はそれ自体(比較変数と同様に)、例えばベースライン統計値の代わりにまたはそれに加えて、1つの入力として学習済み機械学習モデルに適用される。例えば、対象の呼吸器疾患評価は、部分的に、現在期間内の救急吸入の1日平均回数が、3以上等の所定のしきい値に達した、またはそれを超えたか否かに基づいている。
【0062】
ここで使用される文言「対象の呼吸器疾患評価が部分的に~に基づく」は、評価がそれに部分的に基づく関連する特徴またはパラメータが、1つの入力として学習済み機械学習モデルに適用されることを意味することに留意されたい。
【0063】
いくつかの実施例において、本発明の方法は中間期間内の吸入器の使用に関する中間統計値を計算するステップを有している。
【0064】
いくつかの実施例において、本発明の方法は、さらに、中間統計値および/または中間統計値から導出されたデータを1つまたは複数の入力として学習済み機械学習モデルに適用するステップを有している。選択的にまたは付加的に、本発明の方法は、中間統計値を現在統計値および/またはベースライン統計値と比較することを含む、比較変数を生成するステップを有している。すなわち、対象の呼吸器疾患評価は、ベースライン統計値によって提供されるよりも、吸入器使用に関してより最新の傾向によって付加的にガイドされる。
【0065】
任意の適当な中間統計値が中間期間内の対象の吸入器の使用に関する指標となる場合には、当該中間統計値が考慮され得る。
【0066】
いくつかの実施例において、中間統計値を計算するステップは、中間期間にわたって総和がとられた救急吸入の中間総数を計算するステップを有している。
【0067】
非限定的な実施例において、中間統計値を計算するステップは、救急吸入の中間総数を中間期間内の救急吸入の回数の所定のしきい値と比較するステップを有している。
【0068】
例えば、対象の呼吸器疾患評価は、部分的に、所定のしきい値以下の救急吸入の中間総数に基づいている。
【0069】
例えば、対象の呼吸器疾患評価は、部分的に、救急吸入の総数が中間期間内、例えば7日の中間期間内にゼロになるか否かに関する評価に基づいている。
【0070】
選択的にまたは付加的に、中間統計値は、それぞれ中間期間にわたって計算された、単位時間当たりの吸入器を使用した救急吸入の回数の中間平均値、単位時間当たりの吸入器を使用した救急吸入の回数の中間標準偏差、および単位時間当たりの吸入器を使用した救急吸入の回数の中間変動係数のうちの1つまたは2つ以上を含んでいる。
【0071】
中間期間にわたって計算された、単位時間当たりの吸入器を用いた救急吸入の回数の平均値、中央値および/または最頻値等の、単位時間当たりの救急吸入の回数の任意の適当な中間平均値が考慮され得る。特に言及されるのは、中間期間内の救急吸入の1日平均回数である。
【0072】
いくつかの実施例において、現在統計値とベースライン統計値を比較するステップは、例えば、ベースライン期間にわたって計算された単位時間当たりの救急吸入の回数のベースライン平均値と現在期間にわたって計算された単位時間当たりの救急吸入の回数の現在平均値を比較することによって、ベースライン平均値と現在平均値を比較するステップを有している。
【0073】
ベースライン統計値の計算に用いられる単位時間は、例えば、現在統計値の計算に用いられる単位時間と同じであり、これは中間統計値の計算においても適用され得る。それによって、各統計値間の比較が容易になる。
【0074】
特に、救急吸入の回数のベースライン平均値、救急吸入の回数のベースライン標準偏差、および/または救急吸入の回数のベースライン変動係数の計算に用いられる単位時間は、救急吸入の回数の現在平均値、救急吸入の回数の現在標準偏差、および救急吸入の回数の現在変動係数の対応する計算に用いられる単位時間と同じである。
【0075】
方法が時間の経過とともに繰り返される実施例において、当該方法の連続した繰り返しは、ベースライン統計値の計算に用いられた単位時間の1単位または複数単位分だけ互いに分離される。
【0076】
いくつかの実施例において、現在統計値とベースライン統計値を比較するステップは、例えば、ベースライン平均値および現在平均値間の差を計算することによって、ベースライン平均値と現在平均値の差を計算するステップを有している。
【0077】
非限定的な実施例において、現在統計値とベースライン統計値を比較するステップは、ベースライン平均値および現在平均値間の差を所定の差しきい値と比較するステップを有している。
【0078】
所定のしきい値は、特定の数を用いること、または、例えばベースライン期間内の救急吸入器使用の標準偏差を用いた有効/一般的統計的検定等の統計的検定を用いること等の任意の適当な方法において規定され得る。
【0079】
対象の呼吸器疾患評価は、例えば、ベースライン平均値よりも、所定の差しきい値に達したまたはそれを超えた差の分だけ大きい現在平均値に基づいている。
【0080】
例えば、対象の呼吸器疾患評価は、部分的に、現在期間内の救急吸入の1日平均値回数が、ベースライン期間内の救急吸入の1日平均回数よりも少なくとも3だけ大きいか否かに関する評価に基づいている。
【0081】
選択的にまたは付加的に、現在統計値とベースライン統計値を比較するステップは、例えば、現在期間内の救急吸入の1日平均回数のベースライン期間内の救急吸入の1日平均回数に対する比を計算することによって、現在平均値のベースライン平均値に対する比を計算するステップを有している。
【0082】
非限定的な実施例において、現在統計値とベースライン統計値を比較するステップは、ベースライン平均値に対する現在平均値の比を所定の比しきい値と比較するステップを有している。
【0083】
所定の比しきい値は、特定の数を用いること、あるいは有効/一般的統計検定等の統計的検定を用いること等の、任意の適当な方法において規定され得る。
【0084】
例えば、対象の呼吸器疾患評価は、部分的に、現在期間内の救急吸入の1日平均回数が、ベースライン期間内の救急吸入の1日平均回数の少なくとも2倍であるか否かに関する指標に基づいている。
【0085】
比較変数を生成するステップは、例えば、上述の差の計算および比の計算の両方を含んでいる。それによって、比を用いずに差を用いること、または差を用いずに比を用いることをしのぐ一定の利益がもたらされる。
【0086】
ベースライン期間内の救急吸入器使用の1日平均回数が比較的多いユーザーに対して、現在期間内の救急吸入器使用の回数の増加は、現在平均値のベースライン平均値に対する比からよりも現在平均値およびベースライン平均値間の差から、より明白となる。反対に、ベースライン期間内の救急吸入器使用の1日平均回数が比較的少ないユーザーに対して、救急吸入器使用の回数の増加は、差からよりも現在平均値のベースライン平均値に対する比から、より明白となる。
【0087】
非限定的な実施例において、対象の呼吸器疾患評価は、部分的に、現在期間内の救急吸入の1日平均回数が、ベースライン期間内の救急吸入の1日平均回数の少なくとも2倍であるか否かに関する評価に基づき、また、現在期間内の救急吸入の1日平均回数が、ベースライン期間内の救急吸入の1日平均回数よりも少なくとも3回以上多いか否かに関する指標に基づいている。
【0088】
過剰な救急吸入器使用の度合は「SABAバースト」と呼ばれ、次のもののうちの1または2以上によって定義される。すなわち、所定のしきい値に達するまたはそれを超える現在平均値、所定の比しきい値に達するまたはそれを超える現在平均値のベースライン平均値に対する比、ベースライン平均値よりも、所定の差しきい値に達するまたはそれを超える差の分だけ大きい現在平均値、および所定のしきい値以下の救急吸入の中間総数。
【0089】
非限定的な実施例において、過剰な救急吸入器使用の度合、例えばSABAバーストは、ここ2日間(現在期間内)の吸入の1日平均回数が少なくとも3回であり、かつ吸入の1日平均回数の増加が生じていること、すなわち、
・ここ2日間(現在期間内)の吸入の1日平均回数が、ここ1週間の前の2週間((-8)~(―20)日間;ベースライン期間内)の吸入の1日平均回数よりも2回以上多いこと、
・ここ2日間(現在期間内)の吸入の1日平均回数が、ここ1週間の前の2週間((-8)~(―20)日間;ベースライン期間内)の吸入の1日平均回数よりも3回以上多いこと、
・ここ2日間(現在期間内)の吸入の1日平均回数が少なくとも3回で、かつここ7日間(中間期間内)の吸入が0回であること
のうちのいずれか1つによって定義される。
【0090】
過剰な救急吸入器使用の定義は、任意の適当な統計検定、例えば、有効または一般的統計検定を含み得ることが繰り返し言及される。したがって、上で定義されたSABAバースト判定基準の代わりにまたはそれに加えて、またはその全てとして、対象が1日当たりX回のベースライン吸入器使用を行う場合、救急吸入器使用のベースライン1日平均回数は、標準偏差Sを伴って1日当たりX回であり、現在期間内に対象が1日当たりX+1.5×S回以上の吸入を行った場合にSABAバーストが定義されるという規則が成立する。
【0091】
より一般的には、評価は、現在統計値、ベースライン統計値および/または比較変数の任意の組み合わせに基づいている。
【0092】
いくつかの実施例において、方法は、現在期間内に対象によって吸入器を用いて実行された吸入の間の気流に関する測定されたパラメータから現在吸入パラメータ統計値を計算するステップを有している。
【0093】
気流に関するパラメータが測定される吸入器は、救急薬を投与するように構成された上述の吸入器等の任意の適当な吸入器からなっていう。
【0094】
選択的にまたは付加的に、気流に関するパラメータは、対象によって、普段の吸入の間に対象に維持薬を投与するように構成された別の吸入器を用いて実行された吸入から測定され得る。
【0095】
別の吸入器は、例えば、ブデソニド、ベクロメタゾン(ジプロピオン酸塩)、フルチカゾン(プロピオン酸塩またはフロ酸エステル)、およびフルチカゾン(プロピオン酸塩またはフロ酸エステル)と組み合わされたサルメテロール(キシナホ酸塩)から選択された維持薬を投与するように構成されている。
【0096】
センサーシステムが、例えば、上述の吸入器および/または別の吸入器等の吸入器に含まれ、気流に関するパラメータを測定するように構成されている。
【0097】
すなわち、センサーシステムは、対象によって吸入器を用いて実行された救急薬の救急吸入の間、および/または対象によって別の吸入器を用いて実行された維持薬の普段の吸入の間にパラメータを検出するように構成されている。
【0098】
吸入の間の気流に関するパラメータは、対象の肺の状態の代理としてふるまう。気流に関する任意の適用なパラメータが考慮され得る。非限定的な実施例において、パラメータは、最大吸入流量、吸入量、時間対最大吸入流量および吸入継続時間のうちの少なくとも1つを含み、またはそれらのうちの1つからなっている。
【0099】
センサーシステムは、絶対圧センサーまたは差圧センサー等の、気流に関すパラメータを検出するための任意の適当なセンサーを有している。
【0100】
使用測定システムが、(例えば、上述のスイッチを介して検出された試みられた使用事象を証明するために)吸入を検出するためのセンサーを有している実施例において、当該センサーは、気流に関するパラメータを検出するためのセンサーシステムに含まれたセンサーと同一であり、あるいはそれとは異なっている。
【0101】
いくつかの実施例において、現在吸入パラメータ統計値および/または現在吸入パラメータ統計値から導出されたデータは、例えば学習済み機械学習モデルに1つまたは複数の入力として適用されることによって、例えば、対象の呼吸器疾患評価を生成するために用いられる。
【0102】
選択的にまたは付加的に、比較変数を生成するステップは、現在吸入パラメータ統計値を用いてベースライン統計値、現在統計値および/またはベースライン統計値と現在統計値との比較を変更するステップをさらに有している。
【0103】
いくつかの実施例において、本発明の方法は、ベースライン期間内に対象によって吸入器を用いて実行された吸入の間の気流にかんする測定されたパラメータからベースライン吸入パラメータ統計値を計算するステップを有している。
【0104】
かかるベースライン吸入パラメータ統計値および/またはベースライン吸入パラメータ統計値から導出されたデータは、例えば、学習済み機械学習モデルに1つまたは複数の入力として適用される。
【0105】
非限定的な実施例において、比較変数を生成するステップは、現在吸入パラメータ統計値とベースライン吸入パラメータ統計値を比較するステップをさらに有している。
【0106】
より一般的には、本発明の方法は、学習済み機械学習モデルからの出力として、対象の呼吸器疾患評価を生成するステップを有している。
【0107】
機械学習モデルの構成は分類問題を解くこと含んでいる。かかる分類問題は、1または2以上のラベル、言い換えれば、応答変数の既知の値に基づいて定義される。応答変数の値は、例えば、例えば、臨床的評価によって診断されたときに、今後の定義された期間および/または今後の定義された期間内の過剰な救急吸入器使用を示す過剰救急吸入器使用度合を満たす対象等々において生じる対象の呼吸器疾患の増悪に対するはい/いいえである。可能なラベル(および機械学習モデルの出力)のさらなる説明が以下に与えられる。
【0108】
比較変数、およびいくつかの実施例における上述の現在統計値、ベースライン統計値、中間統計値、現在吸入パラメータ統計値および/またはベースライン吸入パラメータ統計値は、入力として、言い換えれば特徴として機械学習モデルに適用される。機械学習モデルを学習させるために使用される学習用データは、複数の学習対象のそれぞれに対する入力およびラベルである。
【0109】
最適化アルゴリズムは、適当な損失関数を最小化するためのデータを使用する。損失関数は、応答変数の予測値と正解値との間の差の関数である。最適化アルゴリズムは応答変数の既知の値と損失関数の予測値を最小化するための対応する入力値を使用する。
【0110】
非限定的な実施例において、教師あり機械学習技術、すなわち、勾配ブースティング決定木が、機械学習モデルを構成するために使用される。かかる勾配ブースティング決定木技術は、任意の適当なソフトウェアを用いて実行される。特に言及されるのは、XGブースト・オープンソース・ソフトウェアライブラリーである。
【0111】
勾配ブースティング決定木技術は、従来技術においてよく知られている。例えば、J.H. Friedman(フリードマン)、「Computational Statistics & Data Analysis」、2002年、38(4)巻、367~378ページ および、J.H. Friedman (フリードマン)他 「The Annals of Statistics」、2000年、28(2)巻、337~407ページを参照されたい。勾配ブースティング決定木技術は、決定木(決定およびその可能な結果からなる木のようなモデルである基本予測モデルのアンサンブル(マルチ学習アルゴリズム)の形態の予測モデルを生成する。上述の最適化アルゴリズムは、適当な損失関数を最小化し、反復的な方法で単一の強力な学習者モデルを形成する。応答変数の既知の値からなる学習データの組(例えば、来る期間内の増悪に関するはい/いいえ、および例えば比較変数を含む対応する入力値)が、損失関数の予測値を最小化するために用いられる。学習の手順は連続的に新たなモデルに適用され、応答変数のより正確な計算を与える。
【0112】
第1の実施例の組において、呼吸器疾患評価は、対象の未来の吸入器使用に関する予測を含んでいる。
【0113】
かかる予測は、現時点から時間的に前に進んだ予測期間内における対象の未来の吸入器使用に関するものである。例えば、予測期間は現時点の直ぐあとに続く一定の期間である。予測期間の長さは、例えば、1~14日、好ましくは3~10間、最も好ましくは約5日である。
【0114】
予測期間は、モデルの、当該期間内の対象の未来の吸入器使用を予測し得る能力に基づいて選択される。この場合、予測期間は、必要な場合に適当な治療ステップがとられるのに十分長いことがまた保証される。
【0115】
対象の未来の吸入器使用の予測は、例えば、対象によって吸入器を用いて実行される吸入の間の気流に関する1または2以上のパラメータの値の予測を含んでいる。
【0116】
気流に関する1または2以上のパラメータは、最大吸入流量、吸入量、時間対最大吸入流量および吸入継続時間のうちの少なくとも1つを含み、または当該少なくとも1つからなっている。
【0117】
非限定的な実施例において、呼吸器疾患評価は、対象の最大吸入流量(PIF)、またはいくつかの場合には、最大呼気流量(PEF)および/または呼気流量に関するいくつかの別の測定値の予測を含んでいる。PIF等の吸入の間の気流に関するパラメータ、またはPEF等の呼気の間の気流に関するパラメータは対象の肺機能の測定値を提供する。
【0118】
かかる測定値は、対象の吸入器が気流に関するパラメータの測定のための適当なセンサーシステムを有していない場合のような、一定の場合、取得することは非現実的である。それにもかかわらず、吸入器の測定された使用はパラメータを予測し、対象の肺機能を予測するために使用される。
【0119】
特定の非限定的な実施例において、応答変数の値は、吸入量が所定のしきい値(例えば、ベースライン吸入量に対し20%減)以下に減少したか否かに関するはい/いいえ、および/または最大吸入流量が所定のしきい値(例えば、ベースライン吸入流量に対し5%減、および当該減少が最大吸入流量の標準偏差に対し統計的に十分意味がある)以下に減少したか否かに関するはい/いいえを含み、あるいはそれからなっている。
【0120】
選択的にまたは付加的に、対象の未来の吸入器使用の予測は、対象が後に過剰な救急吸入器使用を示す過剰救急吸入器使用度合を満たすかどうかの予測を含んでいる。かかる過剰救急吸入器使用度合は、例えば、ここで与えられた「SABAバースト」に対応している。
【0121】
上述の実施例の第1の組の代わりの、またはそれと組み合わせた実施例の第2の組において、呼吸器疾患評価は、対象の呼吸器疾患の状態の診断上決定された指標への近似を含んでいる。
【0122】
用語「診断上決定された指標への近似」は、「診断上決定された指標」と、前者が学習済み機械学習モデルによって計算された出力であって、医師によって決定された出力ではない点で異なっている。言い換えれば、モデルは診断上の評価を近似するように学習せしめられる。
【0123】
呼吸器疾患評価は、対象が後に自己の呼吸器疾患の増悪をこうむるか否かの予測を含んでいる。
【0124】
かかる予測は、現時点から時間的に前に進んだ増悪予測期間内に対象が自己の呼吸器疾患の増悪をこうむるか否かに関するものである。例えば、増悪予測期間は、現時点の直ぐあとに続く一定期間である。増悪予測期間の長さは、例えば1~14日であり、好ましくは3~10日であり、最も好ましくは約5日である。
【0125】
増悪予測期間は、モデルがかかる期間内に増悪の発生を予測する能力に基づいて選択される。この場合、予測期間は、必要な場合に適当な治療ステップがとられるのに十分長いことがまた保証される。
【0126】
いくつかの実施例において、機械学習モデルは、複数の学習対象のそれぞれに関する履歴比較変数およびラベル付きデータからなる学習データを用いて学習せしめられ、あるいは初期機械学習モデルから適合せしめられる。
【0127】
履歴比較変数は、履歴ベースライン期間内の吸入器使用に関する履歴ベースライン統計値と、履歴ベースライン期間に続く後続の期間内の吸入器使用に関する後続統計値を比較することによって生成される。
【0128】
ラベル付きデータは、例えば、後続の期間経過後に測定された各学習対象の吸入器使用の度合を含んでいる。
【0129】
かかる非限定的な実施例において、後続の期間経過後に測定された各学習対象の吸入器使用の度合は、例えば、各学習対象が、過剰救急吸入器使用を示す上述の過剰救急吸入器使用度合を満たすか否か、例えばSABAバーストを経験するか否かに関する評価を含んでいる。
【0130】
別の特定の非限定的な実施例において、応答変数の値は、
・救急吸入器使用なく7日間が経過した後2日連続していくつかの救急吸入器使用があったか否かに関するはい/いいえ
・救急吸入器使用の1日平均回数が絶対的なしきい値(例えば1日当たり1.5回)以上となり、かつ救急吸入器使用のベースライン1日平均回数を参照して定義されたしきい値以上となった(例えば、救急吸入器使用のベースライン1日平均回数よりも少なくとも2回多い)か否かに関するはい/いいえ
・統計的に意味のある直線回帰によってモデル化され得る時間経過につれての救急吸入器使用の増加が生じ、かつ頻度が頻度しきい値(例えば1日当たり1回の救急吸入)以上となったか否かに関するはい/いいえ
・一定の日数(例えば0~3日間)の間夜間救急吸入器使用がなかった後、夜間(例えば00:00~5:00の間の)救急吸入器使用があったか否かに関するはい/いいえのうちの少なくとも1つを含み、あるいは当該少なくとも1つからなっている。
【0131】
いくつかの実施例において、機械学習モデルは、複数の臨床評価対象のそれぞれの呼吸器疾患の状態に関する臨床的に測定された指標を含む別のラベル付きデータを用いて、所期機械学習モデルから適合せしめられる。
【0132】
かかる実施例において、別のラベル付きデータは、例えば、複数の臨床評価対象のそれぞれに対し、各臨床評価対象が自己の呼吸器疾患の増悪をこうむったか否かに関する指標を含んでいる。
【0133】
かかる2段階機械学習モデル学習プロセスの実施例が、以下においてより詳細に記載されるだろう。
【0134】
より一般的には、方法は、ユーザーインターフェイスを制御して、対象の呼吸器疾患評価に基づく通知を発出するステップを有している。
【0135】
通知は、例えば、警告および/または勧告、例えば対象に医師の診察を受けるようにおよび/またはいくつかの別の先制的ステップをとるように勧告することを含んでいる。かかる警告および/または勧告は、例えば、対象の呼吸器疾患の生成された評価が、切迫した増悪を示す急性悪化のような、対象の呼吸器疾患の悪化を示している場合に、ユーザーインターフェイスを通じて発出される。
【0136】
選択的にまたは付加的に、通知は、対象に自己の呼吸器疾患の状態に関する指標を提供するように指示するためのプロンプトの形態を有している。
【0137】
こうして、吸入器使用データは対象からの追加の状態の入力によって補足される。ユーザー入力された指標は、生成された評価を確認するまたは変更する情報を提供する。
【0138】
さらに、この生成された評価に基づく指標のユーザー入力を促すアプローチは、例えば、ユーザーが吸入器の使用に関係なく日常的に指標の入力を促される場合に比べて、ユーザーの負担を軽減する。これは、順次、対象がそれを促されたときに指標を入力する可能性を高める。すなわち、対象の呼吸器疾患の改善されたモニタリングが実現される。
【0139】
さらに、対象の呼吸器疾患の増悪を治療する方法が提供され、本発明の方法は、上述のような方法を実行し、生成された評価に基づいて呼吸器疾患を治療するステップを有する。
【0140】
治療するステップは、現存する治療法を変更するステップを有している。現存する治療法は、第1の治療計画を有し、呼吸器疾患の現存する治療法を変更するステップは、生成された評価に基づいて第1の治療計画から第2の治療計画に変更するステップを有している。ここで、第2の治療計画は、第1の治療計画で想定されるよりも対象の呼吸器疾患の状態が悪化している場合、例えば呼吸器疾患の増悪のより高いリスクがある場合に対処すべく構成されている。
【0141】
すなわち、生成された評価は、呼吸器疾患がより良く治療され得る対象に対する仲介に導く可能性を有している。第2の治療計画を実行するステップは、例えば、対象をGINAまたはGOLDガイドラインにおいて指定されたより高度なステップに進ませるステップを含んでいる。かかる先制介入は、例えば、対象が増悪を被る必要がなく、それに関係したリスクにさらされる必要もなく、第2の治療計画への移行が正当化されることを意味する。
【0142】
1実施例において、第2の治療計画は、対象に生物学的製剤を処方するステップを有している。生物学的製剤が相対的に高コストであることは、対象の治療法を生物学的製剤が含まれたものにステップアップすることが慎重な検討と正当性を必要としがちであることを意味する。生成された評価は、生物学的製剤の処方を正当化できる信頼性のある指標を提供する。
【0143】
用語「生物学的製剤」は、生物源によって製造された、またはそれから導出された1または2以上の活性物質を含んだ薬剤を参照している。
【0144】
生物学的製剤は、オマリズマブ、メポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブおよびデュピルマブのうちの1つまたはそれらの2以上の組み合わせからなっている。
【0145】
呼吸器疾患の現存する治療法を変更するステップは、生成された評価に基づいて、第1の治療計画から第3の治療計画に変更するステップを有している。第3の治療計画は、呼吸器疾患の増悪のリスクが第1の治療計画よりも低くなるように構成されている。
【0146】
非限定的な実施例において、生成された評価は、現存する治療計画のダウングレード化、あるいはそれの除外を正当化するガイダンスとして用いられる。これは、例えば、対象をGINAまたはGOLDガイダンスにおいて指定されたより低レベルのステップに進めるステップを含んでいる。
【0147】
すなわち、生成された評価は、対象の回復をモニターするために使用され、例えば、経口ステロイドその他の薬剤の使用中止を正当化するために使用される。これは、病院/医療施設への再入院のリスクを教えることを支援する。
【0148】
さらに、対象の呼吸器疾患評価を生成する際に使用される機械学習モデルを学習させるための方法が提供される。学習済み機械学習モデルは、例えば、対象の呼吸器疾患評価を生成する上述の方法において使用される。
【0149】
機械学習モデルを学習させる方法は、複数の学習対象のそれぞれに対し、ベースライン期間内の吸入器使用に関するベースライン統計値を計算するステップを有している。既に説明したように、吸入器は、学習対象に救急薬を投与するように構成されていて、学習対象による吸入器使用を測定するように構成された使用測定システムを備えている。
【0150】
機械学習モデルを学習させる方法は、さらに、複数の学習対象のそれぞれに対し、後続の期間内の吸入器使用に関する後続統計値を計算するステップを有している。
【0151】
ベースライン期間が中間期間によって現在期間から分離される、対象の呼吸器疾患評価を生成する方法に関する上述の実施例と同様に、中間期間はベースライン期間から後続の期間を分離する。
【0152】
この学習させる方法において、比較変数が複数の学習対象のそれぞれに対して生成される。比較変数を生成するステップは、後続統計値とベースライン統計値を比較するステップを有している。
【0153】
複数の学習対象のそれぞれに対し、各学習対象の呼吸器疾患評価を含むラベル付きデータが取得される。
【0154】
本発明の方法は、さらに、比較変数およびラベル付きデータを含む学習データを生成し、学習データを用いて機械学習モデルを学習させるステップを有している。機械学習モデルは、学習データが入力データとして機械学習モデルに適用されたときに、ラベル付きデータに近似させるように学習せしめられる。
【0155】
機械学習モデルを学習させるステップは、適当な損失関数を最小化するための学習データを用いる最適化アルゴリズムを用いる等の適当な方法で実行される。ここで、損失関数は、既に説明したように、応答変数の予測値および正解値の間の差、言い換えればラベル付きデータの関数である。
【0156】
ラベル付きデータに関し、いくつかの実施例において、呼吸器疾患評価は、後続の期間の経過後、言い換えれば、後続期間に続く一定期間内に測定された各学習対象の吸入器使用の度合を含んでいる。
【0157】
非限定的な実施例において、後続の期間の経過後に測定された各学習対象の吸入器使用の度合は、例えば、各学習対象が、後続の期間の経過後の過剰救急吸入器使用を示す上述の過剰救急吸入器度合を満たすか否かに関する評価からなっている。
【0158】
すなわち、学習済み機械学習モデルは、ベースライン救急吸入器使用および現在/後続救急吸入器使用を比較すること、例えば、不連続なベースライン期間および現在期間内のベースライン救急吸入器使用および現在/後続救急吸入器使用を比較することに基づいて、未来の救急吸入器使用を予測するために用いられ得る。
【0159】
過剰救急吸入器使用は、例えば、対象の呼吸器疾患の悪化を示している。したがって、未来の救急吸入器使用を予測する能力は、例えば、切迫した増悪に関する警告を与える。少なくともいくつかの実施例において、臨床的評価は、機械学習モデルを学習させるために必要とされない。なぜなら、救急吸入器使用に基づくラベル付きデータは、後続の期間の経過後に測定された各学習対象の吸入器使用の度合を含んでいるからである。
【0160】
選択的にまたは付加的に、各学習対象の吸入器使用は、各学習対象によって吸入器を用いて実行された吸入の間の気流に関する1また2以上のパラメータを含んでいる。気流に関する1または2以上のパラメータは、最大吸入流量、吸入量、時間対最大吸入流量および吸入継続時間のうちの少なくとも1つを含み、あるいは当該少なくとも1つからなっている。既に説明したように、測定された吸入器使用は、パラメータを予測するため、すなわち、ユーザーの肺機能を予測するために使用される。
【0161】
選択的にまたは付加的に、呼吸器疾患評価は、対象の呼吸器疾患の状態に関する臨床的に測定された指標の近似、例えば、ここで定義されたような「緩やかな」または「深刻な」増悪を含んでいる。用語「臨床的に測定された指標」は、例えば医療従事者によって、吸入器使用データとは無関係になされた対象の臨床的評価を参照している。
【0162】
機械学習モデルを学習させる方法のいくつかの実施例は、複数の臨床的評価対象のそれぞれに対し、ベースライン統計値を計算するステップと、後続統計値を計算するステップと、後続統計値とベースライン統計値を比較することを含む、比較変数を生成するステップとを有している。方法は、さらに、各臨床評価対象の呼吸器疾患の状態に関する臨床的に測定された指標を含む別のラベル付きデータを取得するステップを有している。そして、比較変数および別のラベル付きデータを含む別の学習データが生成され、適合せしめられた機械学習モデルが当該別の学習データを用いて学習せしめられる。
【0163】
非限定的な実施例において、機械学習モデルを学習させるための学習データに含まれたラベル付きデータは、後続の期間の経過後に測定された各学習対象の吸入器使用の度合を含んでいるが、臨床的に測定された指標は含まれない。
【0164】
このラベル付きデータを用いて機械学習モデルが学習せしめられ、学習済み機械学習モデルは、別のラベル付きデータを含む上述の別の学習データを用いて、適合、例えば、有効化せしめられる。別のラベル付きデータは、各臨床評価対象の呼吸器疾患の状態に関する臨床的に測定された指標を含んでいるので、適合せしめられた機械学習モデルを学習させるステップは、対象の呼吸器疾患の増悪を予測するように構成された適合せしめられた機械学習モデルを提供する。
【0165】
適合せしめられた機械学習モデルは(初期の)機械学習モデルを学習させるために使用された少なくともいくつかの入力に対応する、例えば当該入力と同一の、比較変数を含む入力を有している。
【0166】
臨床的評価が複数の学習対象のいずれかに対してなされるか否かに応じて、複数の学習対象と複数の臨床評価対象との間に少なくともいくつかのオーバーラップが存在することに留意されたい。かかるオーバーラップが存在する場合、ベースライン統計値を計算するステップ、後続統計値を計算するステップおよび比較変数を生成するステップは反復される必要がない。
【0167】
別の非限定的な実施例において、機械学習モデルに学習させる方法は、例えば、複数の臨床評価対象のそれぞれに対し、1または2以上の過剰救急吸入器使用、例えば、上述の実施例のいくつかにおいて定義されたSABAバーストのような、1または2以上の過剰救急吸入器使用の度合を提供するステップを有している。方法は、さらに、各臨床評価対象の呼吸器疾患の状態に関する臨床的に測定された指標を含む別のラベル付きデータを取得するステップを有している。1または2以上の過剰救急吸入器使用の度合、および別のラベル付きデータを含む学習データが生成され、別の機械学習モデルが当該別の学習データを用いて学習せしめられる。別の機械学習モデルは、別の学習データが入力データとしてっ回学習モデルに適用されたとき、当該別のラベル付きデータを近似するように学習せしめられる。
【0168】
かかる実施例において、臨床的に測定された指標は、対象の呼吸器疾患の臨床的に確認された増悪を含んでおり、あるいはそれからなっている。すなわち、過剰救急吸入器使用の度合はさらに別の機械学習モデルに適用され、例えば、(かかる臨床的に測定された増悪を近似するように学習せしめられた別の機械学習モデルのせいで)増悪を予測するようになっている。かかる予測は、既に説明したように、増悪予測期間内に自己の呼吸器疾患の増悪をこうむる対象に関するものである。
【0169】
いくつかの実施例において、現時点での対象の呼吸器疾患評価を生成する方法は、ベースライン期間内の吸入器使用に関する上述のベースライン統計値を計算するステップを有している。この場合、吸入器は、対象に救急薬を投与するように構成されており、対象による吸入器使用を測定するように構成された使用測定システムを備えている。方法は、さらに、現時点を含む現在期間内の吸入器使用に関する上述の現在統計値を計算するステップを有している。現在期間は中間期間によってベースライン期間から分離されている。比較変数を生成するステップは、現在統計値とベースライン統計値を比較するステップを有している。方法は、さらに、比較変数に基づいて評価を生成するステップを有している。
【0170】
かかる実施例において、モデル、例えば適当な線形または非線形モデルが、評価を生成するために使用されるが、このモデルは機械学習モデルである必要がない。かかるモデルは、例えば、それ自体が機械学習技術によって構成されるよりもむしろ、1または2以上の上述の機械学習モデルに基づいており、あるいはそれから導出される。
【0171】
さらに、対象の呼吸器疾患評価を生成する際に使用するための機械学習モデルを学習させる方法が提供される。この方法は、複数の学習対象のそれぞれに対し、学習対象の吸入器使用に関するデータを含む測定データを取得するステップを有している。既に説明したように、吸入器は、学習対象に救急薬を投与するように形成されており、学習対象による吸入器使用を測定するように構成された使用測定システムを備えている。
【0172】
ベースライン期間内の吸入器使用に関するベースライン統計値が計算される。後続の期間内の吸入器使用に関する後続統計値がまた計算される。上述した対象の呼吸器疾患評価を生成する方法の実施例において、ベースライン期間が中間期間によって現在期間から分離されるのと同様に、中間期間は後続の期間をベースライン期間から分離する。
【0173】
比較変数が各学習対象に対して生成される。比較変数を生成するステップは、後続統計値とベースライン統計値を比較することを含んでいる。
【0174】
方法は、さらに、比較変数が所定のしきい値を超えたか否かに応じて測定データにラベル付けするステップと、複数の学習対象に対するラベル付け測定データを用いて機械学習モデルを学習させるステップを有している。それによって、機械学習モデルは、呼吸器疾患評価を生成するように学習せしめられる。
【0175】
また、本発明は、1または2以上の物理的計算装置上で実行されたとき、当該物理的計算装置に1または2以上の上述の方法を実行せしめるように構成されたコンピュータプログラムコードを有するコンピュータプログラムを提供する。
【0176】
同様に、本発明は、1または2以上の物理的計算装置上において実行されたとき、当該物理的計算装置に1または2以上の上述の方法を実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードを有するコンピュータプログラムを備えた1または2以上の非一時的なコンピュータ可読媒体を提供する。
【0177】
現時点における対象の呼吸器疾患評価を生成するシステムがまた提供される。システムは、対象に救急薬を投与するための吸入器を備え、吸入器は、対象により吸入器を用いて実行された救急吸入を測定するように構成された使用測定システムを備えている。システムは、さらに、ベースライ期間内の吸入器使用に関するベースライン統計値を計算し、現時点を含む現在期間内の吸入器使用に関する現在統計値を計算するように構成された1または2以上のプロセッサーを備えている。1または2以上のプロセッサーは、比較変数を生成するように構成されている。既に説明したように、比較変数を生成するステップは、現在統計値とベースライン統計値を比較することを含んでいる。
【0178】
方法の少なくともいくつかの実施例において説明したように、中間期間は現在期間をベースライン期間から分離する。
【0179】
1または2以上のプロセッサーは比較変数に基づいて評価を生成するように構成されている。
【0180】
1または2以上のプロセッサーは適当な方法で実行せしめられ、例えば、汎用プロセッサー、専用プロセッサー、DSP、マイクロコントローラ、集積回路、および/または、ハードウェアおよび/またはソフトウェアを用いて1または2以上のプロセッサーに対してここで記載された機能を実行するように構成されたそれらに類するものを含んでいる。1または2以上のプロセッサーは、部分的にまたは全体的に、吸入器、ユーザー装置および/またはサーバーに含まれる。
【0181】
1または2以上のプロセッサーは、例えば、電源、例えば電池およびメモリ等の別の電子装置とともにシステム内に備えられる。
【0182】
非限定的な実施例において、1または2以上のプロセッサーは、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータおよび/またはスマートフォン等のユーザー装置内に含まれた第1の処理モジュール内に少なくとも部分的に含まれる。別の非限定的な実施例において、1または2以上のプロセッサーは、ユーザー装置内に含まれない。1または2以上のプロセッサー(または少なくともその一部)は、例えば、サーバー、例えばリモートサーバー内に備えられる。例えば、1または2以上のプロセッサーは、吸入器、ユーザー装置および/またはリモートサーバーの任意の組み合わせ上において実行される。それ故に、1または2以上のプロセッサーを参照して記述された機能または処理の任意の組み合わせは、吸入器、ユーザー装置および/またはサーバー上にあるプロセッサーによって実行される。
【0183】
いくつかの実施例において、1または2以上のプロセッサーは、比較変数を1つの入力として学習済み機械学習モデルに適用するように構成されている。かかる学習済み機械学習モデル、および当該機械学習モデルの学習方法が上で方法との関連で説明されている。1または2以上のプロセッサーは、学習済み機械学習モデルの1つの出力として、対象の呼吸器疾患評価を生成するように構成されている。
【0184】
いくつかの実施例において、システムはユーザーインターフェイスを備え、1または2以上のプロセッサーは、ユーザーインターフェイスを制御し、生成された評価に基く通知を発出させるように構成されている。
【0185】
通知は、例えば、警告および/または勧告、例えば対象に医師の診察を受けるようにおよび/またはいくつかの別の先制的ステップをとるように勧告することを含んでいる。選択的にまたは付加的に、既に説明したように、通知は、対象に自己の呼吸器疾患の状態の指標を提供するよう促すためのプロンプトの形態を有している。
【0186】
ユーザーインターフェイスは、例えば、指標の使用入力を有効にするように構成された第1のユーザーインターフェイスと、1または2以上のプロセッサーによって制御されたとき、通知、例えば警告および/またはプロンプトを出力するように構成された第2のユーザーインターフェイスとを備えている。
【0187】
第1のおよび第2のユーザーインターフェイスは、例えば、同一のユーザー装置内に含まれる。
【0188】
非限定的な実施例において、ユーザーインターフェイスはタッチスクリーンを有している。かかる実施例において、第2のユーザーインターフェイスはタッチスクリーンのディスプレイを有し、第1のユーザーインターフェイスはタッチスクリーンのタッチ入力システムを有している。かかるタッチスクリーンはユーザー入力とプロンプティングを容易にし、特に、対象の呼吸器疾患が、生成された評価に示されるように悪化しつつある場合に、特に有益である。
【0189】
タッチスクリーンを介して発出されるプロンプトに代えて、またはそれに加えて、第2のユーザーインターフェイスは、1または2以上のプロセッサーによって制御されたとき、音響的な通知、プロンプトおよび/または警告を発出するためのラウドスピーカーを備えている。
【0190】
1実施例において、ユーザーインターフェイス、例えば第1のユーザーインターフェイスは、複数のユーザーが選択可能な呼吸器疾患の病状の選択肢を提供するように構成される。この場合、指標は少なくとも1つの病状の選択肢のユーザーによる選択によって決定される。
【0191】
ユーザーインターフェイスは、例えば、ユーザーまたは対象に、ポップアップ通知リンクを通じて、指標を提供し、短いアンケートに記入するように促す。
【0192】
非限定的な実施例において、ユーザーインターフェイスは、それぞれの回答が指標に対応する複数の質問からなるアンケートを表示する。ユーザー、例えば対象または対象を担当する医療従事者がユーザーインターフェイスを使用して質問に対する回答を入力する。
【0193】
いくつかの実施例において、システムは、メモリ、例えば、ユーザーインターフェイスを通じて入力された各指標を記憶するためのメモリを有している。指標は、その後、例えば、対象および対象を担当する医療従事者間の対話を支援するために読み出される。こうして、対象は、対話の目的のために自己の呼吸器疾患の以前の状態を思い出す必要がない。
【0194】
アンケートは、対象の負担を最小にすべく、比較的短く、つまり比較的少数の質問から構成される。それにもかかわらず、質問の数および内容は、指標によって増悪の確率の計算が、指標が全く入力されない場合よりも確かなものになるように設定される。
【0195】
6つのポイントと6つの質問からなるアンケートの形態で指標を入力することが特に言及される。なぜなら、十分な臨床的情報に対する要求は、特に、生成された評価によって示されるような、対象の症状が悪化しつつあるときに、対象に過度の負担をかけないようにすることとバランスされるからである。
【0196】
より一般的には、アンケートの目的は、比較的素早く回答される少数の時機得た質問によって、対象の(呼吸器疾患に関する)生活状態を即座に理解するために、目下のまたは比較的最近の(例えば直近の24時間以内の)指標を確認することにある。アンケートは対象の地方の言語に翻訳される。
【0197】
一般的なコントロールアンケート、特に喘息に関するACQ/T(Asthma Control Questionnaire/Test:喘息コントロールアンケート/テスト)、あるいはCOPDに関するCAT(COPD Assessment Test:COPDアセスメントテスト)は、対象の過去の病状の想起に焦点が当てられがちであり、現在ではなく過去に焦点を当てると、予測的分析の目的の価値に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0198】
次に、このようなアンケートの非限定的な例を説明する。対象は、各質問に対して、状況を示す選択肢、いつも(5)、たいてい(4)、ときどき(3)、まれ(2)およびなし(1)のうちから1つを選ぶ。
1.あなたは呼吸困難をどれくらい頻繁に経験しますか、あるいはあなたの呼吸困難が発症する割合は?
2.あなたは咳をどれくらい頻繁に経験しますか、あるいはあなたの咳の発症する割合は?
3.あなたは喘鳴をどれくらい頻繁に経験しますか、あついはあなたの喘鳴の発症する割合は?
4.あなたはどれくらい頻繁に胸部圧迫を経験しますか、あるいはあなたの胸部圧迫の発症する割合は?
5.あなたはどれくらい頻繁に夜間の発症/睡眠への影響を経験しますか、あるいはあなたの夜間の発症/睡眠への影響の割合は?
6.あなたはどれくらい頻繁に職場、学校または家庭での活動の制限を経験しますか、あるいはあなたの職場、学校または家庭での活動の制限の割合は?
【0199】
アンケートの別の例は、次のようなものである。
1.あなたは普段よりも多くの胸部圧迫または呼吸困難を経験していますか(はい/いいえ)?
より多くの咳を経験していますか(はい/いいえ)?
より多くの喘鳴を経験していますか(はい/いいえ)?
2.あなたはよく眠れていますか(はい/いいえ)?
3.あなたは、形はどうあれ、日常の活動を制限していますか(はい/いいえ)?
4.あなたは、感染症またはアレルゲン(例えば、猫、花粉)への曝露を経験したことがありますか(はい/いいえ)
【0200】
さらに別のアンケートの例は、次のようなものである。
1.あなたは普段よりも多くの胸部圧迫または呼吸困難を経験していますか(はい/いいえ)?
より多くの咳を経験していますか(はい/いいえ)?
より多くの喘鳴を経験していますか(はい/いいえ)?
2.あなたはよく眠れていますか(はい/いいえ)?
3.あなたは、家庭/職場/学校で可t同を制限していますか(はい/いいえ)?
4.あなたは感染症を経験したことがありますか(はい/いいえ)?
「はい」の場合、抗生物質および/またはステロイドを服用しましたか(はい/いいえ)?
5.あなたは、最近、あれ具現への曝露を経験したことがありますか(はい/いいえ)?
6.(任意)あなたの直近の病院不安抑うつ尺度(HADS)のスコアはいくらですか?
【0201】
これらの質問に対する回答は、例えば、スコアを計算するために使用され、スコアは、対象が患った呼吸器疾患の病状を表す指標に含まれ、または対応する。
【0202】
いくつかの実施例において、ユーザーインターフェイスは、選択可能なアイコン、例えば絵文字型のアイコンおよび/またはチェックボックスおよび/またはスライダおよび/またはダイアルの形態の、状況を示す選択肢を提供するように構成される。こうして、ユーザーインターフェイスは、対象が患った呼吸器疾患の病状を表す指標を入力するための直接的かつ直感的な方法を提供する。このような直感的な入力法は、対象自身が自己に関する指標を入力する際に特に有利である。なぜなら、比較的に容易に行えるユーザー入力は、対象の呼吸器疾患の悪化によってもほとんど妨げられないからである。
【0203】
適当なユーザーインターフェイスは、対象が患った呼吸器疾患の病状を表す指標のユーザー入力を可能にする目的のために使用される。例えば、ユーザーインターフェイスはユーザー装置のユーザーインターフェイスを備え、またはそれからなっている。ユーザー装置は、例えば、パソコン、タブレットコンピュータおよび/またはスマートフォンである。既に説明したように、ユーザー装置がスマートフォンであるとき、ユーザーインターフェイスは、例えば、当該スマートフォンのタッチスクリーンに対応する。
【0204】
いくつかの非限定的な実施例において、システムは、さらに、ユーザーが指標を入力するとき、指標がユーザーインターフェイスを通じて入力され得るように構成されている。すなわち、ユーザー、例えば対象は、指標を入力するためのプロンプトを待つ必要がない。
【0205】
選択的にはまた付加的に、1または2以上のプロセッサーは、所定期間、例えば7日間に対象の症状の悪化を示すフラグが全くトリガーされなかったことに基づいてプロンプトを発出するように構成されている。
【0206】
これは、a)使用測定システム(使用および/または吸入パラメータ)が見逃している患者の症状は全く存在しないことを保証すること、および/またはb)患者が良好か否か(上述のアンケートの質問に対する回答がすべて「いいえ」であること)、および、指標、救急吸入器使用および吸入パラメータデータが互いに一致していることを捕捉すること、および/またはc)患者が回復しているか否かおよび回復しているときを捕捉することを支援する。
【0207】
より一般的には、ここで方法、コンピュータプログラム、および非一時的なコンピュータ可読媒体に関して説明された実施例は、ここで説明されたシステムに適用可能であり、ここでシステムに関して説明された実施例は、方法、コンピュータプログラムおよび非一時的なコンピュータ可読媒体に適用可能である。
【0208】
図1は、本発明の1実施例によるシステム10のブロック図である。システム10は吸入器100および1または2以上のプロセッサー14を備えている。吸入器100は、例えば、対象にSABA等の救急薬を投与するための第1の吸入器を有している。SABAは、例えばアルブテロールを含んでいる。吸入器100は、使用測定システム12B、および選択的にセンサーシステム12Aを有している。
【0209】
システム10は、例えば選択的に「吸入器アッセンブリー」と呼ばれる。
【0210】
センサーシステム12Aはパラメータを測定するように構成される。センサーシステム12Aは、例えば、1または2以上の圧力センサーおよび/または温度センサーおよび/または湿度センサーおよび/または方向センサーおよび/または音響センサーおよび/または光学センサー等の1または2以上のセンサーを有している。圧力センサーは、気圧センサー(例えば、大気圧センサー)、差圧センサーおよび絶対圧センサー等々を含んでいる。センサーは、微小電気機械システム(MEMS)および/またはナノ電気機械システム(NEMS)の技術を使用する。
【0211】
圧力センサーは特にパラメータの測定に適している。なぜなら、対象による吸入の間の気流は、それ関係する圧力変化を測定することによってモニターされるからである。以下で
図40~
図44を参照しつつより詳細に説明されるように、圧力センサーは、例えば、それを通じて空気および薬剤が吸入の間に対象によって吸入される流路内に、またはこの流路に連通して配置される。適当なフローセンサーを使用するもの等のパラメータの別の測定法がまた当業者には明らかであろう。
【0212】
選択的または付加的に、センサーシステム12Aは、差圧センサーを備えている。差圧センサーは、例えばそれを通じて対象が吸入する空気流路の一部を横切る圧力差を測定するためのデュアルポート型センサーからなっている。あるいは、シングルポートゲージ型センサーが使用される。後者は吸入の間と気流が存在しないときとの空気流路内の圧力差を測定する。測定値の差は吸入に関係する圧力の低下に対応する。
【0213】
図1には示されないが、システム10は、さらに、対象に維持管理薬を投与するための別の吸入器を備えている。この別の吸入器は、それぞれ選択的なセンサーシステム12A、および吸入器100の使用測定システム12Bとは別のセンサーシステム12Aおよび選択的に使用測定システム12Bを有している。別の吸入器のセンサーシステム12Aは、対象によって当該別の吸入器を用いて実行された吸入から吸入パラメータの値を測定するように構成されている。例えば、当該別の吸入器のセンサーシステム12Aは、維持管理薬の吸入の間に吸入パラメータを測定するための別の微小電気機械システム圧力センサーまたは別のナノ電気機械システム圧力センサー等の別の圧力センサーを有している。
【0214】
各吸入は、吸入が行われないときと比較して、空気流路内の圧力を低下させる。圧力がその最低となる点は最大吸入流量に対応する。圧力センサーシステム12Aは吸入時にこの点を検出する。最大吸入流量は吸入毎に異なり、対象の病状に依存する。時間経過につれて減少する最大吸入流量は、対象の呼吸器疾患が悪化しつつあることを示す。
【0215】
各吸入に関係する圧力変化は、選択的にまたは付加的に、吸入量を測定するために用いられる。これは、例えば、センサーシステム12Aによって測定された吸入の間の圧力変化を用いて、吸入の間の流量をまず測定し、それから総吸入量を導出することによって達成される。時間経過につれての吸入量の減少は、対象の呼吸器疾患が悪化しつつあることを示す。
【0216】
各吸入に関係する圧力変化は、選択的にまたは付加的に、吸入継続時間を測定するために用いられる。例えば、吸入開始に一致してセンサーシステム12Aによって測定された最初の圧力の減少から、吸入の終了に対応する圧力の回復までの時間が記録される。時間経過につれての吸入継続時間の減少は、肺機能の低下、よって対象の呼吸器疾患が悪化しつつあることを示す。
【0217】
1実施例において、パラメータは、最大吸入流量および/または吸入量および/または吸入継続時間の代わりとしてまたはそれに加えて、時間対最大吸入流量を含んでいる。この時間対最大吸入流量は、例えば、吸入の開始に一致して圧力センサーシステム12Aによって測定された最初の圧力低下から、圧力が最大流量に対応する最小値に達するまでに記録される。病状が悪化しつつある患者は、最大吸入流量に達するまでにより長い時間を必要とする傾向がある。
【0218】
非限定的な実施例において、吸入器および/または別の吸入器は、通常吸入の間に、それぞれの薬剤が吸入の開始に続く約0.5秒間に投与されるように構成される。約1.5秒後等の、当該0.5秒が経過した後に最大吸入流量に達する対象の吸入は、対象の肺機能が低下しつつあることを部分的に示す。
【0219】
図1に示した非限定的な実施例では、使用測定システム12Bは、対象による吸入を記録するように構成されている。対象に救急薬を投与するように構成された吸入器100に対し、使用測定システムは、対象によって吸入器10を用いて実行された救急吸入のそれぞれを測定するように構成されている。
【0220】
非現定的な実施例において、吸入器100は、薬剤タンク(
図1では示されない)と、薬剤タンクから1回分の薬剤を計量するように構成された計量アッセンブリー(
図1では示されない)とを備えている。使用測定システム12Bは、計量アッセンブリーによる1回分の薬剤の計量を記録するように構成され、各計量は対象が吸入器100を用いて行った救急吸入を表す。したがって、吸入器100は薬剤の救急吸入の回数をモニターするように構成される。なぜなら、1回分の薬剤は対象によって吸入される前に計量アッセンブリーによって計量されねばならないからである。計量のための構成の1つの非限定的な例が、
図40~
図43を参照してより詳細に説明されるだろう。
【0221】
選択的にまたは付加的に、使用測定システム12Bは、種々の方法でおよび/または当業者には明らかな付加的または選択的なフィードバックに基づいて各吸入を登録する。例えば、使用測定システム12Bは、センサーからのフィードバックが、ユーザーによる吸入が発生していることを示すとき(例えば、圧力測定値または流量が成功した吸入に関係する予め決定された閾値を超えているとき)、対象による吸入を登録するように構成される。さらに、いくつかの実施例において、使用測定システム12Bは、吸入器の切り替えまたは外部装置のユーザー入力(例えば、スマートフォンのタッチスクリーン)が、吸入前または吸入の間または吸入後に対象によって手動的に行われたときに吸入を登録するように構成される。
【0222】
センサー(例えば圧力センサー)は、例えば、各吸入を登録するために使用測定システム12Bに含まれる。かかる例において、使用測定システム12Bおよびセンサーシステム12Aは、それぞれのセンサー(例えば圧力センサー)、または使用の検出および吸入パラメータの検出の両方の機能を実行できるように構成された共通のセンサー(例えば共通の圧力センサー)を使用する。
【0223】
センサーが使用測定システム12Bに含まれるとき、当該センサーは、例えば、
図40~
図43を参照してより詳細に説明されるように、計量アッセンブリーによって計量された1回分の薬剤がユーザーによって吸入されたことを確認し、あるいは当該吸入の程度を評価するために使用される。
【0224】
1実施例において、センサーシステム12Aおよび/または使用測定システム12Bは音響センサーを有している。この実施例における音響センサーは、対象がそれぞれの吸入器を用いて吸入を行うときに発生するノイズを検出するように構成される。音響センサーは、例えばマイクロフォンからなっている。
【0225】
非限定的な実施例において、吸入器100は、対象が吸入器を用いて吸入するときに回転するように配置されたカプセルを有している。カプセルの回転は音響センサーによって検出可能なノイズを発生する。すなわち、カプセルの回転は、例えばカタカタ音等の使用および/または吸入パラメータのデータに導くための適当に解釈可能なノイズを提供する。
【0226】
アルゴリズムが、例えば、音響データを解釈して使用のデータを測定するために(音響センサーが使用測定システム12Bに含まれるとき)および/または吸入の間の気流に関するパラメータを測定するために(音響センサーがセンサーシステム12Aに含まれるとき)使用される。
【0227】
例えば、Colthorpe(コルソープ)他、「Adding Electronics to the Breezhler; Satisfying the Needs of Patients(ブリーズヘラー(登録商標)への電子機器の追加;対象の要求を満足させること)」、Respiratory Drug Delivery(呼吸器ドラッグデリバリー)、2018年、71~79頁に記載されたようなアルゴリズムが使用される。一旦発生した音が検出されると、アルゴリズムは生の音響データを処理し、使用および/または吸入パラメータのデータを生成する。
【0228】
システム10に含まれた1または2以上のプロセッサー14は種々の構成を有している。
図1において、センサーシステム12Aおよびプロセッサー14間の矢印によって概略的に示されるように、プロセッサー14は、選択的なセンサーシステム12Aから吸入パラメータを受信する。同様にして、1または2以上のプロセッサー14は使用測定システム12Bから使用データを受信する
【0229】
1実施例において、1または2以上のプロセッサー14は、ベースライン期間内の吸入器100の使用に関するベースライン統計値を計算し、現時点を含む現在期間内の吸入器100の使用に関する現在統計値を計算するように構成されている。1または2以上のプロセッサー14は、さらに、比較変数を生成するように構成されている。比較変数を生成することは、現在統計値とベースライン統計値を比較することを含んでいる。1または2以上のプロセッサー14は、既に説明したように、比較変数に基づいて評価を生成するように構成されている。
【0230】
上で方法の少なくともいくつかの実施例に関して説明したように、中間期間が現在期間をベースライン期間から分離する。
【0231】
少なくともいくつかの実施例において、1または2以上のプロセッサー14は、比較変数を1つの入力として学習済機械学習モデルに適用するように構成されている。かかる学習済機械学習モデルの例、およびかかる機械学習モデルを学習させる方法は、既に上で方法に関して説明されている。1または2以上のプロセッサーは、学習済機械学習モデルからの出力として、対象の呼吸器疾患の評価を生成するように構成されている。
【0232】
図1には示されないが、システム10は、ユーザーインターフェイスと、ユーザーインターフェイスを制御して、生成された評価に基づき通知を発出させるように構成された1または2以上のプロセッサーとを備えている。
【0233】
通知は、例えば、警告および/または勧告、例えば対象に医師の診察を受けるようにおよび/またはいくつかの別の先制的ステップをとるように勧告することを含んでいる。選択的にまたは付加的に、通知は、既に説明したように、対象に自己の呼吸器疾患の状態の指標を提供するよう促すためのプロンプトの形態を有している。
【0234】
より一般的には、システム10の1または2以上のプロセッサー14は、適当な方法で備えられ、実装される。非限定的な実施例において、1または2以上のプロセッサー14は、各吸入器から分離して備えられる。この場合、1または2以上のプロセッサー14は、使用測定システム12Bから送信された救急吸入の回数を受信し、任意で、センサーシステム12Aから送信された吸入パラメータデータを受信する。外部処理ユニット、外部装置の処理ユニットまたはサーバー、例えばリモートサーバー等においてデータを処理することによって、吸入器の電池の寿命が延びる。
【0235】
別の非限定的な実施例において、1または2以上のプロセッサー14は吸入器100の一部をなし、例えば、吸入器100のメインハウジングまたは上部キャップ(
図1には示されない)内に含まれている。かかる実施例では、外部装置への接続を考慮する必要がない。
【0236】
1または2以上のプロセッサー14の機能のいくつかが、吸入器100に含まれた内部処理ユニットによって実行され、1または2以上のプロセッサー14の他の機能が外部処理ユニット(例えば第1のプロセッサー)によって実行されることも考慮される。
【0237】
より一般的には、システム10は、例えば、生成された評価を対象および/または医師等の医療従事者に知らせるように構成された(
図1には示されない)通信モジュールを有している。そして、対象および/または医師は、生成された評価に基づいて適切なステップをとる。例えばスマートフォン処理ユニットがプロセッサーに含まれるとき、SMS、Eメール、ブルートゥース(登録商標)等の、スマートフォンの通信機能が生成された評価を医療従事者に知らせるために使用される。
【0238】
図2は、システム10の非限定的な実施例を示している。システム10は、吸入器100、外部装置15(例えばモバイル機器)、公共のおよび/または専用のネットワーク16(例えばインターネット、クラウドネットワーク等)およびパーソナルデータ記憶装置17を有している。外部装置15は、例えば、スマートフォン、パソコン、ラップトップパソコン、ワイヤレスメディア装置、メディアストリーミング装置、タブレット装置、ウェアラブル装置、Wi-Fiまたはワイヤレス通信可能なテレビ、または他の適当なインターネットプロトコルで接続可能な装置を含んでいる。例えば、外部装置15は、Wi-Fi通信リンク、Wi-MAX通信リンク、ブルートゥース(登録商標)またはブルートゥース(登録商標)スマート通信リンク、近距離無線通信(NFC)リンク、携帯電話通信リンク、またはテレビ用ホワイトスペース(TVWS)通信リンクまたはそれらの2以上の組み合わせを通じてRF信号を送信および/または受信するように構成されている。外部装置15はデータを公共および/または専用ネットワーク16を通じてパーソナルデータ記憶装置17に送信する。
【0239】
吸入器100は、外部装置15にデータを送信するための、ブルートゥース(登録商標)ラジオ等の通信回路を有している。データは上述した吸入の回数およびパラメータのデータを含んでいる。
【0240】
吸入器100は、また、例えば外部装置15から、例えばプログラム命令、オペレーティングシステムの変更、1回分の投薬量に関する情報、警告または通知、承認等のデータを受信する。
【0241】
外部装置15は、1または2以上のプロセッサー14の少なくとも一部を含み、それによって、吸入の回数およびパラメータのデータを処理し、分析する。例えば、外部装置15は、ブロック18Aによって表されるように、使用データを処理し、現在およびベースライン統計値を計算し、比較変数を生成し、評価尺度を生成する。かかる情報は、自動的な記憶のためのパーソナルデータ記憶装置17に供給される。
【0242】
いくつかの非限定的な実施例において、外部装置15は、また、ブロック18Bによって表されるように、データを処理することによって、無吸入事象および/または低吸入事象および/または良好吸入事象および/または過吸入事象および/または呼気事象を特定する。外部装置15は、また、ブロック18Cによって表されるように、データを処理することによって、不十分な使用、過度の使用および最適の使用を特定する。外部装置15は、データを処理することによって、例えば、与えられたおよび/または残された1回分の投薬の回数を見積もり、対象が計量アッセンブリーによって計量された1回分の投薬量の吸入を怠ったことを表すタイムスタンプエラーフラグに関係するエラー状態等のエラー状態を特定する。外部装置15は、ディスプレイ、およびディスプレイ上にGUIを通じて使用パラメータを視覚的に表示するためのソフトウェアを有している。
【0243】
いくつかの実施例では、パーソナルデータ記憶装置17に記憶されるものとして説明されたが、生成された評価のうちの少なくともいくつか、および、ブロック18Aによって示されたような無吸入事象、低吸入事象、良好吸入事象、過剰吸入事象および/または呼気事象、および/またはブロック18Cによって示されたような不十分使用事象、過度使用事象および最適使用事象は、外部装置15にも記憶される。
【0244】
図3は、本発明の1実施例による方法20のフロー図である。方法20は、現時点での対象の呼吸器疾患の評価を生成するためのものである。方法20は、ベースライン期間内の吸入器使用に関するベースライン統計値を計算するステップ22を有している。既に説明したように、吸入器は、対象に救急薬を投与するように構成されており、対象による吸入器使用を測定するように構成された使用測定システムを有している。
【0245】
方法20は、さらに、現時点を含む現在期間内の吸入器使用に関する現在統計値を計算するステップ24を有している。
【0246】
既に説明したように、中間期間が現在期間をベースライン期間から分離し、ベースライン期間と現在期間は不連続になっている。中間期間は固定された長さを有している。いくつかの実施例において、中間期間の長さは3~15日、好ましくは約7日である。
【0247】
方法20は、さらに、比較変数を生成するステップ26を有している。比較変数を生成するステップ26は、この実施例では、現在統計値とベースライン統計値を比較するステップを有している。呼吸器疾患の評価はステップ28において生成される。呼吸器疾患の評価は比較変数に基づいて生成される。
【0248】
図3に示された各ステップの実行順序は限定されず、方法20は、現在統計値を計算するステップ24がベースライン統計値を計算するステップ22よりも前に実行される等のように、任意の適当な順序で実行され得ることに留意されたい。これと同じことが、本発明による方法の他のフローチャートにも適用される。いくつかの場合に破線で描かれたボックスおよび/または矢印によって示されるように、種々の選択的なステップがフローチャートに示されている。
【0249】
呼吸器疾患評価を生成するステップ28は、任意の適当な方法で実行され得る。少なくともいくつかの実施例において、モデル、例えば適当な線形または非線形モデルが評価を生成するために用いられるが、このモデルはそれ自体機械学習モデルである必要はない。かかるモデルは、例えば、機械学習技術によって構成されるよりもむしろ、上述のような1または2以上の機械学習モデルに基づいており、あるいはそれらから導出される。
【0250】
しかしながら、
図4に示される方法は、さらに、比較変数を学習済機械学習モデルに適用するステップ30を有している。この場合、呼吸器疾患評価を生成するステップ28は、学習済機械学習モデルの出力として生成された評価を含んでいる。
【0251】
ベースライン統計値は、既に説明したように、それぞれベースライン期間にわたって計算された、単位時間当たりの吸入器を使用した救急吸入の回数のベースライン平均値、単位時間当たりの吸入器を使用した救急吸入の回数のベースライン標準偏差、および単位時間当たりの吸入器を使用した救急吸入の回数のベースライン変動係数のうちの1つまたは2つ以上を含み、または当該1つまたは2つ以上からなっている。
【0252】
図5は、ベースライン統計値を計算するステップ22が、救急吸入の回数のベースライン期間にわたる総和をとるステップ22Aと、当該総和をベースライン期間の長さで割り算するステップ22Bとを有する例示的な方法20を示している。例えば、ベースライン期間の長さは、10~30日、好ましくは約10日または約11日または約12日または約13日または約14日または約15日または約16日または約17日または約18日または約19日または約20日または約21日または約22日または約23日または約24日または約25日、最も好ましくは約13日または約20日等の一定の日数である。すなわち、この非限定的な実施例におけるベースライン統計値を計算するステップ22は、ベースライン期間内の救急吸入の1日平均回数を計算するステップ22A、22Bを有している。
【0253】
複数の入力が、評価を生成するステップ28を可能にするために方法20において使用される。
図6に示された例示的な方法20は、比較変数を学習済機械学習モデルに適用するステップ30だけでなく、現在統計値を学習済機械学習モデルに適用するステップ32も有している。すなわち、評価を生成するステップ28は、現在統計値および比較変数に基づいている。
【0254】
図7は、評価を生成するステップ28が、複数の入力に基づいている別の実施例を示している。非限定的な実施例において、方法20は、現在統計値を学習済機械学習モデルに適用するステップ32と、ベースライン統計値を学習済機械学習モデルに適用するステップ34と、比較変数を学習済機械学習モデルに適用するステップ30とを有している。すなわち、学習済機械学習モデルは、現在統計値とベースライン統計値の比較によって生成された比較変数に加えて、現在統計値およびベースライン統計値を入力として適用される。
【0255】
中間期間がベースライン期間および現在期間を分離するために与えられる場合、方法20は、
図8に示されるように、中間期間内の吸入器使用に関する中間統計値を計算するステップ36を有している。
【0256】
中間統計値および/または中間統計値から導出されたデータが、例えば、
図9に示されるように、1つの入力として機械学習モデルに適用される(ステップ38)。選択的にまたは付加的に、比較変数を生成するステップ26は、さらに、
図10に示されるように、中間統計値を現在統計値および/またはベースライン統計値と比較するステップ26Aを有している。方法20が中間統計値を含むことによって、評価は、ベースライン統計値によってもたらされるよりも、吸入器使用のより直近の傾向によって付加的に改善される。
【0257】
中間統計値が中間期間内の対象の吸入器使用を示していれば、中間統計値は適当な方法で計算される(ステップ36)。
図11に示された例示的な方法20において、中間統計値を計算するステップ36は、中間期間にわたって総和がとられた中間総救急吸入回数を計算するステップ36Aを有している。
【0258】
中間期間にわたって総和がとられた中間総救急吸入回数は、それ自体、例えば、上で
図9および10を参照して説明された種々の方法において評価を生成するときに使用される。選択的に、中間統計値を計算するステップ36は、
図12に示されるように、中間期間にわたって総和がとられた中間総救急吸入回数w計算するステップ36Aと、当該総和を所定のしきい値と比較するステップ36Bとを有している。かかる実施例において、中間統計値は当該総和が所定のしきい値に達したか、それを超えたか、またはそれより少ないか否かを示す値を含んでいる。
【0259】
選択的にまたは付加的に、中間統計値は、既に説明したように、それぞれ中間期間にわたって計算された、単位時間当たりの吸入器を使用した救急吸入の回数の中間平均値、単位時間当たりの吸入器を使用した救急吸入の回数の中間標準偏差、および単位時間当たりの吸入器を使用した救急吸入の回数の中間変動係数のうちの1つまたは2つ以上を含み、または当該1つまたは2つ以上からなっている。
【0260】
図13に示された非限定的な実施例において、中間統計値を計算するステップ36は、中間期間にわたって総和がとられた中間総救急吸入回数を計算するステップ36Aと、当該総和を中間期間の長さで割り算するステップ36Cとを有している。例えば、中間期間の長さは、3~15日、好ましくは約7日等の一定の日数である。すなわち、この非限定的な実施例における中間統計値を計算するステップ36は、中間期間内の救急吸入の1日平均回数を計算するステップ36A、36Cを有している。
【0261】
現在統計値を計算するステップ24は、例えば、
図14に示されるように、現在期間にわたって総和がとられた現在総救急吸入回数を計算するステップ24Aを有している。現在総救急吸入回数は、例えば、例えば
図7に示されるように、それ自体、入力として機械学習モデルに適用され得る(ステップ32)。
【0262】
現在統計値は、既に説明したように、それぞれ現在期間にわたって計算された、単位時間当たりの吸入器を使用した救急吸入の回数の現在平均値、単位時間当たりの吸入器を使用した救急吸入の回数の現在標準偏差、および単位時間当たりの吸入器を使用した救急吸入の回数の現在変動係数のうちの1つまたは2つ以上を含み、または当該1つまたは2つ以上からなっている。
【0263】
図15に示された非限定的な実施例において、現在統計値を計算するステップ24は、現在期間にわたって総和がとられた現在総救急吸入回数を計算するステップ24Aと、当該総和を現在期間の長さで割り算するステップ24Bとを有している。例えば、現在期間の長さは、1~5日、好ましくは約2日等の一定の日数である。すなわち、この非限定的な実施例における現在統計値を計算するステップ24は、現在期間内の救急吸入の1日平均回数を計算するステップ24A、24Bを有している。
【0264】
図16に示された例示的な方法20において、現在統計値を計算するステップ24は、現在期間内の救急吸入の1日平均回数を計算するステップ24A、24Bを有し、中間統計値を計算するステップ36は、中間期間にわたって総和がとられた中間総救急吸入回数を計算するステップ36Aを有している。
【0265】
図17に示された非限定的な実施例では、ベースライン統計値w計算するステップ22が、ベースライン期間にわたって救急吸入の回数の総和をとるステップ22Aと、当該総和をベースライン期間の長さで割り算するステップ22Bとを有し、現在統計値を計算するステップ24は、現在期間にわたって総和がとられた現在総救急吸入回数を計算するステップ24Aと、当該総和を現在期間の長さで割り算するステップ24Bとを有している。
【0266】
この場合、比較変数を生成するステップ26は、ベースライン平均値と現在平均値を比較するステップ26Aを有している。
【0267】
ベースライン期間および現在期間の日数は、例えば、割り算するステップ22B、24Bに対して、比較するステップ26Aが、ベースライン1日平均吸入回数と現在1日平均吸入回数を比較することを含むように用いられる。
【0268】
図18を参照して、ベースライン平均値と現在平均値を比較するステップ26Aは、ベースライン期間内の1日平均吸入回数と現在期間内の1日平均吸入回数との差を計算するステップ26Bを有している。この差は、例えば、
図19に示されるように、所定の差しきい値と比較される(ステップ26C)。
【0269】
選択的にまたは付加的に、ベースライン平均値と現在平均値を比較するステップ26Aは、
図20に示されるように、現在平均値のベースライン平均値に対する比を計算するステップ26Dを有している。この比は、例えば、
図21に示されるように、ステップ26Eにおいて所定の比しきい値と比較される。
【0270】
図22に示されるように、方法20は、ユーザーインターフェイスを制御して、対象の呼吸器疾患の生成された評価に基づく通知を発出させるステップ38を有している。通知は、例えば、警告および/または勧告、例えば対象に医師の診察を受けるようにおよび/またはいくつかの別の先制的ステップをとるように勧告することを含んでいる。選択的にまたは付加的に、既に説明したように、通知は、対象に自己の呼吸器疾患の状態の指標を提供するよう促すためのプロンプトの形態を有している。
【0271】
図23に示された例示的な方法20は、現在期間内に対象によって実行された吸入の間の気流に関する測定されたパラメータ40から現在吸入パラメータ統計値を計算するステップ42を有している。現在吸入パラメータ統計値および/または現在吸入パラメータ統計値から導出されたデータは、例えば、
図24に示されるように、1つまたは複数の入力として学習済機械学習モデルに適用される。
【0272】
選択的にまたは付加的に、比較変数を生成するステップ26は、
図25に示されるように、現在吸入パラメータ統計値を用いて、ステップ26Eにおいてベースライン統計値を変更し、ステップ26Fにおいて現在統計値を変更し、および/またはステップ26Gにおいてベースラインおよび現在統計値を変更するステップを有している。
【0273】
すなわち、評価は現在吸入パラメータ統計値を考慮して生成され(ステップ28)、後者は対象の現在の肺機能に関する付加的な情報を付け加える。
【0274】
図26を参照して、図示された例示的な方法20は、ベースライン期間内に対象によって吸入器を用いて実行された吸入の間の気流に関する測定されたパラメータ46からベースライン吸入パラメータ統計値を計算するステップ48を有している。この非限定的な実施例において、方法20は、さらに、現在および/またはベースライン吸入パラメータ統計値および/または現在/ベースライン吸入パラメータ統計値から導出されたデータを1つまたは複数の入力として機械学習モデルに適用するステップ50を有している。すなわち、評価は、部分的に、対象のベースライン肺機能を示す対象のベースライン吸入データに基づいている。
【0275】
選択的にまたは付加的に、比較変数を生成するステップ26は、さらに、
図27に示されるように、現在吸入パラメータ統計値とベースライン吸入パラメータ統計値を比較するステップ26Hを有している。すなわち、評価を生成するステップ28は、部分的に、対象の現在吸入データと対象のベースライ吸入データの比較に基づいている。
【0276】
図28は、プロセス60を有する機械学習モデルのブロック図である。ブロック62および64はそれぞれ現在統計値およびベースライン統計値に対応している。ブロック66は現在統計値とベースライン統計値を比較するステップを含む比較変数を生成するステップを示している。比較変数は、1つの入力として学習済機械学習モデル68に適用される。モデルに対する入力は、
図28においてブロック70によって示されている。機械学習モデル68は、ブロック72において出力を与える。ブロック74は、対象の呼吸器疾患の生成された評価を示している。
【0277】
図29は、比較変数66および種々の別の統計値および/またはデータが入力70として学習済機械学習モデル68に適用されるプロセス60を有する機械学習モデルのより精密なブロック図である。特に、既に説明したように、上述の現在統計値、ベースライン統計値、中間統計値および/または中間統計値から導出されたデータ、現在吸入パラメータ統計値および/または群剤吸入パラメータ統計値から導出されたデータ、およびベースライン吸入パラメータ統計値および/またはベースライン吸入パラメータ統計値から導出されたデータのうちの1つまたは2つ以上が、追加の入力として学習済機械学習モデル68に適用され得る。
【0278】
図30は、機械学習モデルを学習させる方法200を示したものである。学習済機械学習モデルは、例えば、かかる学習済機械学習モデルを対象の呼吸器疾患の評価を生成するために使用する上述の方法20のいずれかにおいて使用される。
【0279】
機械学習モデルを学習させる方法200は、複数の学習対象202のそれぞれに対し、ベースライン期間内の吸入器使用に関するベースライン統計値を計算するステップ204を有している。既に説明したように、吸入器は、学習対象に救急薬を投与するように構成され、学習対象による吸入器使用を測定するように構成された使用測定システムを備えている。
【0280】
方法200は、さらに、複数の学習対象202のそれぞれに対し、後続の期間内の吸入器使用に関する後続統計値を計算するステップ206を有している。
【0281】
対象の呼吸器疾患の評価を生成する方法の上述の実施例において、ベースライン期間が中間期間によって現在期間から分離されるのと同様に、中間期間は、後続の期間をベースライン期間から分離する。
【0282】
機械学習モデルを学習させる方法200において、比較変数が、複数の学習対象のそれぞれに対して生成される(ステップ208)。比較変数を生成するステップ208は、後続統計値とベースライン統計値を比較するステップを有している。
【0283】
各学習対象に対し、各学習対象の呼吸器疾患の評価を含む、ラベル付きデータがステップ210において取得される。
図30に示された方法200の各ステップは、例えば、ラベル付きデータを取得するステップ210がベースライン統計値を計算するステップ204の前に実行されること等々によって、適当な任意の順序で実行され得る。さらに、オペレーションの順序は、異なる学習対象間で同じである必要がない。
【0284】
方法200は、さらに、比較変数およびラベル付きデータ含む学習データを生成するステップ212と、学習データを用いて機械学習モデルを学習させるステップ214とを有している。
【0285】
機械学習モデルを学習させるステップ214は、適当な損失関数を最小化するための学習データを用いる最適化アルゴリズムを用いる等の適当な方法で実行される。ここで、損失関数は、既に説明したように、応答変数の予測値および正解値の間の差、言い換えればラベル付きデータの関数である。
【0286】
ラベル付きデータを取得するステップ210に関し、いくつかの実施例において、呼吸器疾患の評価は、後続の期間の経過後、言い換えれば、後続の期間に続く一定期間内に測定された各学習対象の吸入器使用の度合を含んでいる。
【0287】
非限定的な実施例において、後続の期間の経過後に測定された各学習対象の吸入器使用の度合は、例えば、各学習対象が、後続の期間の経過後の過剰救急吸入器使用を示す上述の過剰救急吸入器使用度合を満たすか否かに関する評価を含んでいる。
【0288】
すなわち、学習済機械学習モデルは、ベースラインおよび現在/後続救急吸入器使用、例えば、それぞれ不連続なベースラインおよび現在期間内のベースライおよび現在/後続救急吸入器使用に基づいて未来の救急吸入器使用を予測し得る。過剰救急吸入器使用は、例えば、対象の呼吸器疾患が悪化しつつあることを示している。未来の救急吸入器使用を予測する能力は、それに応じて、例えば切迫した増悪に関する警告を与える。臨床的評価は、少なくともいくつかの実施例において、機械学習モデルを学習させるためには必要とされない。なぜなら、ラベル付きデータは、後続の期間の経過後に測定された各学習対象の吸入器使用の度合を含み得るからである。
【0289】
選択的にまたは付加的に、各学習対象の吸入器使用の度合は、各学習対象によって吸入器を用いて実行された吸入の間の気流に関する1または2以上のパラメータを含んでいる。既に説明したように、気流に関する1または2以上のパラメータは、最大吸入流量、吸入量、時間対最大吸入流量および吸入継続時間のうちの少なくとも1つを含み、または当該少なくとも1つからなっている。
【0290】
選択的にまたは付加的に、既に説明したように、呼吸器疾患の評価は、対象の呼吸器疾患の状態、例えば、ここで定義された「中程度の」または「重大な」増悪に関する臨床的に測定された指標の近似を含んでいる。
【0291】
図31は、別の実施例による、機械学習モデルを、対象の呼吸器新刊の評価を生成する際に使用するために学習させる方法300を示している。この方法300は、複数の学習対象302のそれぞれに対し、学習対象の吸入器使用に関するデータを含む測定データを取得するステップ304を有している。既に説明したように、吸入器は、学習対象に救急薬を投与するように構成され、学習対象による吸入器使用を測定するように構成された使用測定システムを備えている。
【0292】
ベースライン期間内の吸入器使用に関するベースライン統計値が、ステップ306において計算される。後続の期間内の吸入器使用に関する後続統計値が、ステップ308において計算される。上述の対象の呼吸器疾患の評価を生成する方法の実施例と同様に、中間期間が後続の期間をベースライン期間から分離する。
【0293】
比較変数が、複数の学習対象のそれぞれに対し、ステップ310において生成される。比較変数を生成するステップ310は、後続統計値とベースライン統計値を比較するステップを有している。
【0294】
方法300は、さらに、比較変数が所定のしきい値を超えたか否かに応じて測定データをラベル付けするステップ312と、ラベル付けされた測定データを含む学習データを生成するステップ314と、複数の学習対象に対するラベル付けされた測定データを用いて機械学習モデルを学習させるステップ316とを有している。それによって、機械学習モデルは、呼吸器疾患の評価を生成するように学習せしめられる。
【0295】
臨床試験が、喘息の増悪の可能性に影響を及ぼす因子を評価するために行われた。次の実施例は、例示的かつ非限定的な実施例とみなされるべきである。
【0296】
試験の結果は、より一般的には、別の形式の装置を用いて投与された別の救急薬に適用可能であるにもかかわらず、テバ・ファーマシューティカルズ・インダストリー(Teva Pharmaceutical Industries)によって市販されているプロエアー・ディジハラー(ProAir Digihalaer)(登録商標)を用いて投与されたアルブテロールが、12週間の非盲検試験において使用された。
【0297】
悪化しやすい喘息を患った対象(18歳以上)が試験に採用された。対象は、喘息コントロール質問票5(ACQ-5)のスコアが1.5以上であり、試験前の12カ月間に1回以上の増悪を経験し、試験前の少なくとも3カ月間に維持管理薬を安定して服用し、中用量ICSおよび/または別の維持管理薬を服用中であった。
【0298】
対象は、必要に応じてプロエアー・ディジハラーを使用した(乳糖担体を含む硫酸塩としての90mcgのアルブテロールを、4時間毎に1~2回吸入した)。プロエアー・ディジハラーは、対象の別の救急薬に交換された。
【0299】
プロエアー・ディジハラーの電子モジュールは、各使用、すなわち各吸入および各吸入の間の気流に関するパラメータ、すなわち最大吸入流量、吸入量、時間対最大吸入流量および吸入継続時間を記録した。データが、吸入器から、臨床データとともにダウンロードされ、切迫した増悪を予測するためのモデルを開発するための機械学習アルゴリズムに適用された。
【0300】
この実施例における臨床喘息増悪(CAE)の診断は、American Thoracic Society/European Respiratory Society statement(アメリカ胸部医学会/ヨーロッパ呼吸器学会公式ステートメント) (H.K. Reddel et al.(H.K.ラッデル他), Am J Respir Crit Care Med. 2009年、第180(1)巻、59~99頁)に基づくものであった。それは、「重大なCAE」および「並みのCAE」の両方を含んでいる。
【0301】
重大なCAEは、経口ステロイド(プレドニゾンまたはその同等物)の少なくとも3日間の投与および入院を必要とする悪化した喘息を含むCAEとして規定される。
並みのCAEは、経口ステロイド(プレドニゾンまたはその同等物)の少なくとも3日間の投薬または入院を必要とする。
【0302】
試験の目的およびプライマリーエンドポイントは、ディジハラーによって捕捉された、CAEに先行するアルブテロールの使用パターンおよび使用量を単独で、またはCAEに先行する吸入の間の気流、身体活動および睡眠等々に関するパラメータのような他の試験データとの組み合わせにおいて調べることであった。この試験は、統合センサーを備え、吸入パラメータを測定可能な救急薬吸入装置の使用から導出される、CAEの予測のためのモデルを開発するための最初に成功した試みを提供する。
【0303】
360人の対象が、ディジハラーから1以上の有効な吸入を行ったことがわかった。これら360人の対象が分析に含まれた。これらの対象のうち、64人の対象が総数78例のCAEを経験した。合計32970回の救急吸入が記録された。
【0304】
対象の平均年齢は50.0歳であり、そのうちの80.6%が女性であった。
【0305】
試験の全期間にわたって、最大吸入流量の平均値(標準偏差)および吸入量の平均値
標準偏差)はそれぞれ71.8(23.2)L/minおよび1.44(0.77)Lであった。
【0306】
「SABAバースト」が、この試験において、おそらく未確認の増悪の代わりとして使用された。
図32~38は、臨床的には診断されなかった可能な増悪を示す対象の試験の例を示している。
【0307】
この試験の結果を用いることで、「SABAバースト」が、ここ2日間に1日平均で少なくとも3回の吸入があり、かつ、ここ2日間の1日平均の吸入回数が前の2週間と比べて増加している場合として定義された。
【0308】
ここ2日間の1日平均吸入回数が前の2週間と比べて増加したことは、次のことによって測定される。
・ここ2日間(現在期間)の1日平均吸入回数が、前の2週間の1日平均吸入回数よりも2回以上多いこと
・ここ2日間(現在期間)の1日平均吸入回数が、前の2週間の1日平均吸入回数の+3以上であること
【0309】
7日間の複数回のSABAバーストは、1回のバーストとして計数される。言い換えれば、連続したSABAバースト間の日数が7日以内の一連のSABAバーストは、1回のSABAバーストとして計数される。
【0310】
図38に示された実施例を参照して、34日~47日の期間内(直線400と直線402の間の領域)に、1日平均吸入回数は3.5回であった。48日~49日の期間内(直線402と直線404の間の領域)の1日平均吸入回数は14回であった。この場合、1日平均吸入回数の増加は10.5である。3以上となる1日平均吸入回数と組み合わされたこの増加は、この試験に対して定義されたSABAバーストを構成している。すなわち、この例では、未確認/未診断の増悪が発生する可能性が高いと判断される。
【0311】
図39は、対象の集団の救急吸入器使用を示した図である。特に、この図は、全対象のうち、28.9%が継続的なSABA過剰使用を示し、SABA過剰使用者の大多数が、SABA非過剰使用者(62.5%)に比べてSABAバーストを経験していた。SABA過剰使用者は、さらに、対象1人当たりのSABAバーストの平均数がSABA非過剰使用者よりも多かった(2.07対1.02)。
【0312】
すなわち、救急吸入器の使用、および、特に、短時間作用型β刺激薬(SABA)の使用のパターンの変化は、症状の悪化または増悪の進行を示す。救急吸入器の使用回数が増加した期間を特定し、および当該期間に基づいて行動することは、増悪の進行を半減させ、臨床的アウトカムを改善することを支援する。
【0313】
これらのデータは、ディジハラーの性能を裏付け、連続的な過剰使用を含むSABA使用のパターン、および吸入パラメータに関する価値ある情報を提供する。かかる情報は、症状コントロールの悪化または臨床的増悪の発現を明らかにする。これらの事象のより良い理解は、喘息の管理を改善し、臨床的アウトカムを改善する。
【0314】
図40~
図43はシステム10に含まれた吸入器100の非限定的な例を示している。
【0315】
図40は、非限定的な例に係る吸入器100の斜視図である。吸入器100は、例えば自己吸入式吸入器である。吸入器100は、上部キャップ102、メインハウジング104および/またはマウスピース106および/またはマウスピースカバー108および/または電子モジュール120および/または換気口126を有している。マウスピースカバー108は蝶番によってメインハウジング104に結合され、マウスピースカバーの開閉によってマウスピース106が露出しまたは収納されるようになっている。この例では蝶番による結合が用いられるが、マウスピースカバー108は別の形式の結合によっても吸入器100に結合され得る。さらに、この例では、電子モジュール120がメインハウジング104の上部において上部キャップ102内に収容されているが、電子モジュール120は、吸入器100のメインハウジング104と一体化されおよび/またはメインハウジング104の内部に収容されてもよい。
【0316】
図41は、例示的な吸入器100の内部の断面斜視図である。吸入器100は、メインハウジング104の内側に、薬剤タンク110(例えば、ホッパー)、ベローズ112、ベローズスプリング114、ヨーク(図示されない)、投薬カップ116、投薬チャンバ117、解砕器121および流路119を有している。薬剤タンク110は、対象に投与するための、ドライパウダー薬剤等の薬剤を有している。マウスピースカバー108が閉位置から開位置まで動かされたとき、ベローズ112が薬剤タンクから1回分の薬剤を投薬カップ116に供給する。その後、対象は、マウスピース106を通じて吸入を行い、1回分の薬剤を吸引する。
【0317】
対象の吸入によって生じた気流によって、解砕器121は、投薬カップ116内の薬剤の凝集体を粉砕することによって1回部の薬剤をエアロゾル化する。解砕器121は、流路119を通る気流が特定の速度に達しまたはこれを超えたとき、または特定の範囲内の速度を有するとき、薬剤をエアロゾル化するように構成されている。エアロゾル化されたとき、1回分の薬剤は投薬カップ116から流路119を通って投薬チャンバ117内に流入し、その後、マウスピース106から対象に供給される。流路119を通る気流が特定の速度に達しないかまたはそれを超えず、あるいは速度が特定の範囲内にないとき、薬剤は投薬カップ116内に残ったままとなる。投薬カップ116内の薬剤が解砕器121によってエアロゾル化されなかった場合、マウスピースカバー108がその後に開放されたときに薬剤の次の1回分は薬剤タンク110から供給されない。すなわち、1回分の薬剤が解砕器121によってエアロゾル化されるまで当該1回分の薬剤は投薬カップ内に残ったままとなる。1回分の薬剤が投与されたとき、投薬が行われたことの確認が吸入器100において、投薬確認情報としてメモリに記憶される。
【0318】
対象がマウスピース106を通じて吸入しているとき、空気が換気口から進入し、薬剤を対象に供給するための気流が発生する。流路119は投薬チャンバ117からマウスピース106の端までのび、投薬チャンバ117およびマウスピース106の内側部分を含んでいる。投薬カップ116は、投薬チャンバ117の内部にありまたはこれに隣接している。さらに、吸入器100は、最初、薬剤タンク110内の薬剤の総投薬回数がセットされ、マウスピースカバー108が閉位置から開位置まで動かされるたびに当該総投薬回数から1回ずつ減じられるように構成された投薬回数カウンタ111を有している。
【0319】
上部キャップ102はメインハウジング104に取り付けられている。上部キャップ102は、例えば、メインハウジング104の凹部に係合し得る1または2以上のクリップを用いてメインハウジング104に取り付けられている。上部キャップ102は、結合されたとき、メインハウジング104の一部と重なり合い、例えば、上部キャップ102とメインハウジング104の間に実質的な気密シールが生じるようになっている。
【0320】
図42は、例示的な吸入器100の分解斜視図であり、上部キャップ102が取り外されて電子モジュール120が露出した状態を示した図である。
図42に示されるように、メインハウジング104の上面は1または2以上(例えば2つ)のオリフィス146を有している。1つのオリフィス146はスライダ140を受け入れ可能に構成されている。例えば、上部キャップ102がメインハウジング104に取り付けられたとき、スライダ140が1つのオリフィス146を通ってメインハウジング104の上面から突出する。
【0321】
図43は、例示的な吸入器100の上部キャップ102および電子モジュールの分解斜視図である。
図43に示されるように、スライダ140は、腕142、ストッパー144および遠位端145を形成している。遠位端145はスライダ140の底部を形成している。スライダ140の遠位端145は、(例えば、マウスピースカバー108が閉位置または部分的に開位置にあるとき)メインハウジング104の内部にあるヨークに当接するように構成されている。遠位端145は、ヨークが半径方向のいずれかにあるとき、ヨークの上面に当接するように構成されている。例えば、ヨークの上面は複数のアパーチャ(図示されない)を有し、スライダ140の遠位端145は、例えば、1つのアパーチャがスライダ140と1列に並ぶかどうかにかかわらず、ヨークの上面に当接するように構成されている。
【0322】
上部キャップ102は、スライダスプリング146およびスライダ140を受けるように構成されたスライダガイド148を有している。スライダスプリング146はスライダガイド内部に位置している。スライダスプリング146は、上部キャップ102の内面に係合し、スライダ140の上部(例えば、近位端)に係合する。スライダ140がスライダガイド148の内部に配置されるとき、スライダスプリング146はスライダ140の上部と上部キャップ102の内面との間において部分的に圧縮される。例えば、スライダスプリング146は、マウスピースカバー108が閉じられているとき、スライダ140の遠位端145がヨークに接触しているように構成されている。スライダ145の遠位端145は、また、マウスピースカバー108が開かれまたは閉じられている間、ヨークに接触しているように構成される。スライダ140のストッパー144は、スライダガイド148に対し、例えば、スライダ140がマウスピースカバー108の開閉またはその逆を通してスライダガイド148内に保持されるように係合している。ストッパー144およびスライダガイド148は、スライダ140の上下方向(例えば軸方向)の運動を制限するように構成されている。この制限された運動距離は、ヨークの上下方向の運動の制限距離よりも短い。すなわち、マウスピースカバー108が完全に開いた位置まで動かされるとき、ヨークは上下方向にマウスピース106に向けて動き続けるが、ストッパー144がスライダ140の上下方向の運動を制止し、それによって、スライダ140の遠位端145はもはやヨークに接触しなくなる。
【0323】
より一般的には、ヨークはマウスピースカバー108に機械的に結合されていて、マウスピースカバー108が閉位置から開かれるときにベローズスプリングを圧縮し、その後、マウスピースカバー108が開位置に達したときに当該圧縮されたベローズスプリング114を開放し、それによって、ベローズ112に1回分の薬剤を薬剤タンク110から投薬カップ116に供給させるように構成されている。ヨークは、マウスピースカバー108が閉位置にあるとき、スライダ140に接触している。スライダ140は、マウスピースカバー108が閉位置から開かれるとき、ヨークによって動かされ、マウスピースカバー108が完全に開いた位置をとるとき、ヨークから離されるように設けられている。この構成は、上で既に説明された計量アッセンブリーの非限定的な例とみなされる。なぜなら、マウスピースカバー108が開かれることによって、薬剤の1回分の計量がなされるからである。
【0324】
薬剤の計量の間のスライダ140の運動によって、スライダ140はスイッチ130に係合してスイッチ130を作動させる。スイッチ130は、電子モジュール120を起動し、薬剤の計量を記録させる。スライダ140およびスイッチ130は、電子モジュール120とともに、上で説明された使用測定システム12Bの非限定的な例に対応している。この例において、スライダ140は、それによって使用測定システム12Bが計量アッセンブリーによる1回分の薬剤の計量を記録するように構成される手段とみなされ、それによる各計量は対象が吸入器100を用いて行った吸入を表す。
【0325】
スライダ140によるスイッチ130の作動によって、例えば、電子モジュール120が第1の電力状態から第2の電力状態に遷移し、対象によるマウスピース108からの吸入を検出する。
【0326】
電子モジュール120は、プリント回路基板(PCB)アッセンブリー122および/またはスイッチ130および/または電源(例えば、電池126)および/または電池ホルダー124を有している。PCBアッセンブリー122は、センサーシステム128および/または無線通信回路129および/またはスイッチ130および/または、1または2以上の発光ダイオード(LED)のような(図示されない)インディケータ等の表面実装部品を有している。電子モジュール120は、コントローラ(例えば、プロセッサー)および/またはメモリを有している。コントローラおよび/またはメモリは、PCB122の部品とは物理的に異なる。あるいは、コントローラおよびメモリは、PCB122に実装された別のチップセットの一部からなり、例えば、無線通信回路129は電子モジュール120に対するコントローラおよび/またはメモリを含んでいる。電子モジュール120のコントローラは、マイクロコントローラ、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、マイクロプロセッサー、アプリケーションスペシフィックインテグレイティッドサーキット(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または任意の適当な処理装置またはコントロール回路を含んでいる。
【0327】
コントローラは、メモリからデータを読み出し、メモリにデータを記録する。メモリは、取り外し不可能なメモリおよび/または取り外し可能なメモリのような、任意の形式の適当なメモリを含んでいる。取り外し不可能なメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、ハードディスク、またはその他の任意の形式の記憶装置を含んでいる。取り外し可能なメモリは、加入者IDモジュール(SIM)カード、メモリスティック、セキュアディジタル(CD)メモリカードおよびそれらに類するものを含んでいる。メモリは、コントローラの内部に配置される。コントローラは、また、サーバーまたはスマートフォン上等の、電子モジュール120の内部には物理的に配置されないメモリからデータを読み出し、それにデータを記録する。
【0328】
センサーシステム128は、1または2以上のセンサーを有している。センサーシステム128はセンサーシステム12Aの1例である。センサーシステム128は、例えば、1または2以上の圧力センサーおよび/または温度センサーおよび/または湿度センサーおよび/または方向センサーおよび/または音響センサーおよび/または光学センサー等の1または2以上の異なる形式のセンサーを有している。1または2以上の圧力センサーは、気圧センサー(例えば、大気圧センサー)および/または差圧センサーおよび/または絶対圧センサーおよび/またはそれらに類するものを含んでいる。センサーは、微小電気機械システム(MEMS)および/またはナノ電気機械システム(NEMS)の技術を使用する。センサーシステム128は、電子モジュール120のコントローラに対し、瞬間的な測定値(例えば、圧力測定値)および/または一定時間にわたって集計された測定値(例えば、圧力測定値)を与えるように構成されている。
図19および
図20に示されるように、センサーシステム128は、吸入器100の流路119の外部に配置されるが、流路と空気圧的に結合されている。
【0329】
電子モジュール120のコントローラは、センサーシステム128から測定値に対応する信号を受信する。コントローラは、センサーシステム128から受信した信号を用いて気流に関するメトリックスを計算し、または決定する。気流に関するメトリックスは、吸入器100の流路119を通る気流のプロファイルを表す。例えば、センサーシステム128が0.3キロパスカル(kPa)の気圧変化を記録したとき、電子モジュール120は、その気圧変化が流路119を通じた約45リットル/分(Lpm)の空気流量に対応していると計算する。
【0330】
図44は、空気流量対圧力のグラフである。
図44に示された空気流量およびプロファイルは単なる例示であり、測定された速度は、吸入器100およびその部品のサイズ、形状およびデザインに依存する。
【0331】
1または2以上のプロセッサー14は、センサーシステム128から受信した信号および/または計算された気流に関するメトリックスを1または2以上の閾値または数値範囲と比較することによって、リアルタイムでのパーソナライズされたデータを、吸入器100がどのように使用されたのか、および/またはその使用が結果として薬剤の完全な投与を生じる可能性があるかどうかに関する評価の一部として生成する。例えば、計算された気流に関するメトリックスが特定の閾値より低い空気流量を伴った吸入に対応するとき、1または2以上のプロセッサー14は、吸入器100のマウスピース106からの吸入が全くないか、または当該マウスピース106からの吸入が不十分であると判定する。また、計算された気流に関するメトリックスが特定の閾値を超える空気流量を伴った吸入に対応するとき、1または2以上のプロセッサー14は、吸入器100のマウスピース106からの吸入が過剰であると判定する。また、計算された気流に関するメトリックスが特定の範囲内にある空気流量を伴った吸入に対応するとき、1または2以上のプロセッサー14は、吸入が良好であると、あるいは、結果的に完全な投薬が生じた可能性があると判定する。
【0332】
圧力測定値および/または計算された気流に関するメトリックスは、吸入器100からの吸入の質または強さを表す。例えば、特定の閾値または数値範囲と比較されたとき、測定値および/またはメトリックスは、関係する吸入を、良好吸入事象、低吸入事象、無吸入事象または過剰吸入事象等の一定の事象タイプに分類するために使用される。吸入の分類は、対象のパーソナライズされたデータとして記録された有益なパラメータである。
【0333】
無吸入事象は、30Lpmより小さい空気流量等の、特定の閾値より低い圧力測定値および/または気流に関するメトリックスに関係づけられる。無吸入事象は、対象が、マウスピースカバー108を開いた後であって測定サイクルの間に、マウスピース106から吸入を行わなかったときに生じる。また、無吸入事象は、対象による吸入が、解砕器121を作動させる、すなわち投薬カップ116内で薬剤をエアロゾル化するのには不十分な気流しか発生させられなかったとき等の、対象の吸入が流路119を通じた薬剤の適切な投与を保証するのには不十分であるときに生じる。
【0334】
低吸入事象は、30Lpm~45Lpm等の特定の数値範囲内にある圧力測定値および/または気流に関するメトリックスに関係づけられる。低吸入事象は、対象がマウスピースカバー108を開いた後にマウスピース106から吸入を行い、対象の吸入によっても、1回分の薬剤のうちの少なくとも1部のみが流路119を通じて投与されただけであるときに生じる。すなわち、吸入は、解砕器121を作動させて少なくとも1部の薬剤を投薬カップ116からエアロゾル化するのには不十分である。
【0335】
良好吸入事象は、45Lpm~200Lpm等の低吸入事象より上の圧力測定値および/または気流に関するメトリックスに関係づけられる。良好吸入事象は、対象がマウスピースカバー108を開いた後にマウスピース106から吸入を行い、対象の努力によって、解砕器121を作動させて投与カップ116内において1回分の薬剤の全てをエアロゾル化するのに十分な気流を発生させたとき等の、対象の努力によって、流路119を通じた薬剤の適切な投与が保証されるのに十分な吸入がなされたときに生じる。
【0336】
過剰吸入事象は、200Lpmを超える空気流量等の、良好吸入事象より上の圧力測定値および/または気流に関するメトリックスに関係づけられる。過剰吸入事象は、対象が吸入器100の正常な作動パラメータを超えた吸入を行ったときに生じる。過剰吸入事象は、また、たとえ対象が正常な範囲内の吸入を行ったとしても、吸入器100が使用中に適切な位置に配置または保持されていないときにも生じる。例えば、計算された空気流量は、対象がマウスピース106から吸入を行っている間に、(例えば、1本の指または親指によって)換気口が塞がれまたは遮られたときに200Lpmを超える。
【0337】
任意の適当な閾値または数値範囲が特定の事象を分類するために使用される。いくつかの事象またはすべての事象が使用される。例えば、無吸入事象は45Lpmより低い空気流量に関係づけられ、良好吸入事象は45Lpm~200Lpmの範囲内の空気流量に関係づけられる。よって、低吸入事象は、場合によっては、全く使用されない。
【0338】
圧力測定値および/または計算された気流に関するメトリックスは、また、吸入器100の流路119を通じた気流の向きも表す。例えば、圧力測定値が負の圧力変化を反映するとき、圧力測定値は流路119を通じてマウスピース106から出ていく気流を表す。圧力測定値が正の圧力変化を反映するとき、圧力測定値は流路119を通じてマウスピース106内に入ってくる気流を表す。したがって、圧力測定値および/または気流に関するメトリックスは、対象がマウスピース106内に空気を吐き出しているかどうかを判定するために使用され、それによって、対象が吸入器100を正しく使用していないことを知らせる。
【0339】
吸入器100の使用から収集された、または吸入器100の使用に基づいて測定されたパーソナライズされたデータ(例えば、圧力に関するメトリックス、気流に関するメトリックス、肺機能に関するメトリックス、投薬確認情報等々)は、さらに、(部分的にまたは全体的に)外部装置によって計算されおよび/または評価される。
より一般的には、電子モジュール120の無線通信回路129は、送信器および/または受信器(例えば、トランシーバー)だけでなく付加的な電気回路もまた有している。例えば、無線通信回路129は、ブルートゥース(登録商標)チップセット(例えば、ブルートゥース(登録商標)低電力チップセット)、ジグビーチップセット、スレッドチップセット等々を有している。よって、電子モジュール120は、圧力測定値および/または気流に関するメトリックスおよび/または肺機能に関するメトリックスおよび/または投薬確認情報および/または吸入器100の使用に関するその他の状況等のパーソナライズされたデータを、スマートフォンを含む外部装置に対し無線で提供する。パーソナライズされたデータは外部装置に対しリアルタイムで提供され、それによって、吸入器100からの、使用回数および吸入器100がどのように使用されたのかを示すリアルタイムデータ、および対象の肺機能および/または治療に関するリアルタイムデータ等の、吸入器のユーザーに関するパーソナライズされたデータに基づいて、上述の評価を生成することが可能となる。外部装置は、受信した情報を処理し、吸入器100のユーザーに対してグラフィックユーザーインターフェイス(GUI)を介して順守フィードバックを提供するためのソフトウェアを有している。
【0340】
気流に関するメトリックスは、吸入/吐出の平均流量および/または吸入/吐出の最大流量(例えば、受信された最大吸入流量)および/または吸入/吐出量および/または時間対吸入/吐出最大および/または吸入/吐出の継続時間のうちの1または2以上等の、吸入器100からリアルタイムで収集されたパーソナライズされたデータを含んでいる。気流に関するメトリックスは、また、流路119を通る気流の向きを表す。すなわち、負の圧力変化はマウスピース106からの吸入に対応する一方、正の圧力変化はマウスピース106への吐き出しに対応する。気流に関するメトリックスの計算に際し、電子モジュール120は、環境条件によって引き起こされる歪みを除去しまたは最小限にするように構成される。例えば、電子モジュール120は、気流に関するメトリックスを計算する前または計算した後、大気圧の変化を考慮に入れるための計算を行う。1または2以上の圧力測定値および/または気流に関するメトリックスは、タイムスタンプを押された後、電子モジュール120のメモリに記録される
【0341】
気流に関するメトリックスに加えて、吸入器100または別の計算装置は、気流に関するメトリックスを用いて付加的なパーソナライズされたデータを生成する。例えば、吸入器100の電子モジュール120のコントローラは、気流に関するメトリックスを、例えば、最大吸気流量および/または最大呼気流量および/または1秒間努力呼気肺活量(FEV1)等の医療パラメータであると解される対象の肺機能および/または肺の健康を表す他のメトリックスに翻訳する。吸入器100の電子モジュール120は、回帰モデル等の数学的モデルを用いて対象の肺機能および/または肺の健康の度合を計算する。数学的モデルは、全吸入量およびFEV1間の相関関係を特定する。数学的モデルは、最大吸入流量およびFEV1間の相関関係を特定する。数学的モデルは、全吸入量および最大呼気流量間の相関関係を特定する。数学的モデルは、最大吸入流量および最大呼気流量間の相関関係を特定する。
【0342】
電池126はPCB122の部品に電力を供給する。電池126は、例えば、コイン電池等の、電子モジュール120に電力を供給するための任意の適当な電源からなっている。電池126は再充電可能または再充電不可能である。電池126はバッテリーホルダー124内に収納されている。バッテリーホルダー124はPCB122に取り付けられ、電池126が持続的にPCB122に接触するようにおよび/またはPCB122の部品に電気的に接触するようになっている。電池126は、電池126の寿命に影響を及ぼす特定のバッテリー容量を有している。以下にさらに説明するように、電池126からPCB122の1または2以上の部品への電力の分配は、電池126が吸入器100の耐用年数および/またはその内部に含まれた薬剤の有効期間にわたって電子モジュール120に電力供給を行うことが保証されるように管理される。
【0343】
接続された状態で、通信回路およびメモリが電源オンされ、電子モジュール120は、スマートフォン等の外部装置とペアリングされる。コントローラはメモリからデータを検索し、そのデータを外部装置に対し無線で送信する。コントローラはメモリに最新に記憶されたデータを検索し、送信する。コントローラは、また、メモリに最新に記憶されたデータの一部を検索し、送信する。例えば、コントローラはデータのどの部分が既に外部装置に送信されているかを判定し、次いで、まだ送信されていないデータの部分を送信することができる。あるいは、外部装置は、コントローラから、特定の時間の後あるいは外部装置への最新の送信の後に電子モジュール120によって収集されたデータ等の、特定のデータを要求する。コントローラは、もしあれば、メモリからその特定のデータを検索し、検索したデータを外部装置に送信する。
【0344】
電子モジュール120のメモリに記憶されたデータ(例えば、スイッチによって生成された信号および/またはセンサーシステム128によって取得された圧力測定値および/またはPCB122のコントローラによって計算された気流に関するメトリックス)が外部装置に送信される。外部装置は、そのデータを処理、分析し、吸入器100に関係づけられた有益なパラメータを計算する。さらに、モバイルデバイス上にあるモバイルアプリケーションは、電子モジュール120から受信したデータに基づき、ユーザーに対するフィードバックを生成する。例えば、モバイルアプリケーションは、日報、月報、年報を生成しおよび/または対象に対してエラー事象の確認または通知を行いおよび/または対象に対して有益なフィードバックを提供しおよび/またはそれらと同様のことを行う。
【0345】
上で説明された実施例は、本発明の構成を説明するための1例にすぎず、よって本発明の構成を限定するものではない。上で説明された実施例の別の変形例が、当業者によって、本発明の実施において図面、明細書および添付の請求の範囲を研究することからから、理解され、もたらされ得る。特定の手段が互いに異なる引用形式請求項に規定されているという事実は、それらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示しているわけではない。
【国際調査報告】