(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】動的造影磁気共鳴断層撮影を使用した肝臓における病変の特性決定
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
A61B5/055 383
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567939
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2022061289
(87)【国際公開番号】W WO2022233689
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】313006625
【氏名又は名称】バイエル・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】シュッツ,グンナー
(72)【発明者】
【氏名】クノーブロッホ,ゲジネ
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA11
4C096AC05
4C096AD06
4C096AD14
4C096DC18
4C096DC22
4C096DC32
(57)【要約】
本発明は、動的造影磁気共鳴断層撮影を用いて肝臓の病変の特性決定を行う技術分野に関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ実行方法であって、
-複数の画像を受信する段階であって、
〇前記複数の画像が、
■患者の肝臓又は前記患者の肝臓の一部、及び
■前記患者の参照組織
を表し、
〇動的造影磁気共鳴画像検査の門脈相時に、前記複数の画像の少なくとも一つの画像が、
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表し、
〇前記動的造影磁気共鳴画像検査の移行相時に、前記複数の画像の少なくとも一つの画像が、
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表す段階、
-前記肝臓における1以上の領域であって、
〇造影剤が前記門脈相及び/又は前記移行相で前記参照組織より低いコントラスト増強をもたらし、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相における前記コントラスト増強が前記参照組織より急速に低下し、前記参照組織は肝細胞を含まず、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相での低下するコントラスト増強の勾配の絶対値が、健常肝臓組織での上昇するコントラスト増強の勾配の絶対値より大きい、
前記肝臓における1以上の領域を識別する段階、
-前記肝臓又は前記肝臓の一部の画像を出力する段階であって、前記画像において、識別された領域が強調表示され、又は複数の識別された領域が強調表示される段階
を含むコンピュータ実行方法。
【請求項2】
前記造影剤が肝胆道造影剤、好ましくはガドキセト酸の二ナトリウム塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記参照組織が筋肉組織である、請求項1及び2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
-前記複数の画像を受信する段階であって、
〇前記複数の画像のうちの少なくとも二つの画像が、前記門脈相時に
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表し、
〇前記複数の画像のうちの少なくとも二つの画像が、前記移行相時に
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表す段階、
-受信した前記複数の画像を分析し、そうする際に、
〇前記門脈相及び/又は前記移行相での前記コントラスト増強が前記参照組織より急速に低下し、前記参照組織が肝細胞を含まず、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相での低下するコントラスト増強の勾配の絶対値が、健常肝臓組織での上昇するコントラスト増強の勾配の絶対値より大きい、
前記肝臓における一つの領域又は複数の領域を識別する段階、
-前記肝臓又は前記肝臓の一部の画像を出力する段階であって、その画像において、識別された領域が強調表示される、又は複数の識別された領域が強調表示される段階
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
-少なくとも一つの画像を受信する段階であって、
〇前記少なくとも一つの画像が、前記動的造影磁気共鳴画像検査の動脈相時に
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■第1の及び/又は第2の参照組織
を表す段階、
-前記肝臓における1以上の領域を識別する段階であって、前記領域/複数領域が、次の特徴:
〇造影剤が前記動脈相において第1の参照組織より高いコントラスト増強をもたらし、前記第1の参照組織が健常肝臓組織又は筋肉組織である、及び
〇造影剤が前記門脈相及び/又は前記移行相において第2の参照組織より低いコントラスト増強をもたらし、前記第2の参照組織が筋肉組織である、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相での前記コントラスト増強が前記第2の参照組織より急速に低下する、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相での低下するコントラスト増強の勾配の絶対値が健常肝臓組織での上昇するコントラスト増強の勾配の絶対値より大きい
によって特徴付けられる段階、
-前記肝臓又は前記肝臓の一部の画像を出力する段階であって、前記画像において、識別された領域が強調表示される、又は複数の識別された領域が強調表示される段階
をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
●受信ユニット、
●制御・計算ユニット及び
●出力ユニット
を含むコンピュータシステムであって、
-前記制御・計算ユニットが、前記受信ユニットに、複数の画像を受信させるように構成されており、
〇前記複数の画像が、
■患者の肝臓又は前記患者の肝臓の一部、及び
■前記患者の参照組織
を表し、
〇動的造影磁気共鳴画像検査の門脈相時に、前記複数の画像の少なくとも一つの画像が、
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表し、
〇前記動的造影磁気共鳴画像検査の移行相時に、前記複数の画像の少なくとも一つの画像が、
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表し、
-前記制御・計算ユニットが、前記肝臓における1以上の領域であって、
〇造影剤が前記門脈相及び/又は前記移行相において前記参照組織より低いコントラスト増強をもたらし、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相での前記コントラスト増強が前記参照組織より急速に低下し、前記参照組織が肝細胞を含まず、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相での低下するコントラスト増強の勾配の絶対値が健常肝臓組織での上昇するコントラスト増強の勾配の絶対値より大きい、
前記肝臓における1以上の領域を識別するよう構成されており、
-前記制御・計算ユニットが、前記出力ユニットに、前記肝臓又は前記肝臓の一部の画像を出力させるように構成されており、前記画像において、識別された領域が強調表示される、又は複数の識別された領域が強調表示される、コンピュータシステム。
【請求項7】
コンピュータのメモリーにロードできるコンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品であって、当該プログラムが、前記コンピュータに、次の段階:
-複数の画像を受信する段階であって、
〇前記複数の画像が、
■患者の肝臓又は前記患者の肝臓の一部、及び
■前記患者の参照組織
を表し、
〇動的造影磁気共鳴画像検査の門脈相時に、前記複数の画像の少なくとも一つの画像が、
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表し、
〇前記動的造影磁気共鳴画像検査の移行相時に、前記複数の画像の少なくとも一つの画像が、
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表す段階、
-前記肝臓における1以上の領域であって、
〇造影剤が前記門脈相及び/又は前記移行相において前記参照組織より低いコントラスト増強をもたらし、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相での前記コントラスト増強が前記参照組織より急速に低下し、前記参照組織が肝細胞を含まず、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相での低下するコントラスト増強の勾配の絶対値が健常肝臓組織での上昇するコントラスト増強の勾配の絶対値より大きい、
前記肝臓における1以上の領域を識別する段階、
-前記肝臓又は前記肝臓の一部の画像を出力する段階であって、前記画像において、識別された領域が強調表示される、又は複数の識別された領域が強調表示される段階
を行うようにさせる、コンピュータプログラム製品。
【請求項8】
動的造影磁気共鳴画像検査方法での造影剤の使用であって、前記検査方法が、次の段階:
-前記造影剤を投与する段階、
-複数の画像を生成する段階であって、
〇前記複数の画像が、
■患者の肝臓又は前記患者の肝臓の一部、及び
■前記患者の参照組織
を表し、
〇前記検査方法の門脈相時に、前記複数の画像の少なくとも一つの画像が、
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表し、
〇前記検査方法の移行相時に、前記複数の画像の少なくとも一つの画像が、
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表す段階、
-前記肝臓における1以上の領域であって、
〇造影剤が前記門脈相及び/又は前記移行相において前記参照組織より低いコントラスト増強をもたらし、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相での前記コントラスト増強が前記参照組織より急速に低下し、前記参照組織が肝細胞を含まず、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相での低下するコントラスト増強の勾配の絶対値が健常肝臓組織での上昇するコントラスト増強の勾配の絶対値より大きい、
前記肝臓における1以上の領域を識別する段階、
-前記肝臓又は前記肝臓の一部の画像を出力する段階であって、前記画像において、識別された領域が強調表示される、又は複数の識別された領域が強調表示される段階
を含む使用。
【請求項9】
動的造影磁気共鳴画像検査方法で使用するための造影剤であって、前記検査方法が、次の段階:
-前記造影剤を投与する段階、
-複数の画像を生成する段階であって、
〇前記複数の画像が、
■患者の肝臓又は前記患者の肝臓の一部、及び
■前記患者の参照組織
を表し、
〇前記検査方法の門脈相時に、前記複数の画像の少なくとも一つの画像が、
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表し、
〇前記検査方法の移行相時に、前記複数の画像の少なくとも一つの画像が、
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表す段階、
-前記肝臓における1以上の領域であって、
〇造影剤が前記門脈相及び/又は前記移行相において前記参照組織より低いコントラスト増強をもたらし、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相での前記コントラスト増強が前記参照組織より急速に低下し、前記参照組織が肝細胞を含まず、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相での低下するコントラスト増強の勾配の絶対値が健常肝臓組織での上昇するコントラスト増強の勾配の絶対値より大きい、
前記肝臓における1以上の領域を識別する段階、
-前記肝臓又は前記肝臓の一部の画像を出力する段階であって、前記画像において、識別された領域が強調表示される、又は複数の識別された領域が強調表示される段階
を含む造影剤。
【請求項10】
造影剤及び請求項7に記載のコンピュータプログラム製品を含むキット。
【請求項11】
前記造影剤が肝胆道造影剤である、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
前記造影剤がガドキセト酸の二ナトリウム塩である、請求項10に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動的造影磁気共鳴画像法による肝臓における病変の特性決定の技術分野を扱うものである。
【背景技術】
【0002】
肝臓は複数の良性腫瘍の影響を受ける可能性があり、肝実質内に嚢胞性又は充実性の限局性病変として現れ得る。しかしながら、肝臓はまた、肝外型のがんや肝臓自体に起源を持つ原発型のがんの転移などの悪性腫瘍に対して脆弱でもある。世界的に、悪性肝腫瘍の最も一般的な二つのタイプは、転移、特に大腸がんの転移と肝細胞癌(HCC)である。大腸がん患者のほぼ20%に診断時に肝転移があり、大腸がん患者の50%超がその疾患の経過中に肝転移を発症する。肝細胞癌(HCC)は、最も一般的な原発性肝臓がんである。それはまた、世界的には6番目に多いがんであり、がん関連死の原因の4番目に多いがんでもある。
【0003】
初期疾患段階での局所肝病変の正確かつ信頼性の高い検出及び特性決定は、それらが適切な治療計画にとって根本的に重要なものであり、候補の治療選択肢の適性を決定するものであることから、特に肝転移又は原発性肝がんのリスクがある患者の場合、臨床的に非常に重要である。
【0004】
磁気共鳴画像法(MRI)は、肝臓病変の放射線検査にとって特に重要である。それは、患者を電離放射線やヨウ素化造影剤に曝露することなく、軟組織の優れたコントラストと高い空間分解能で他と区別される。
【0005】
MRIで最も一般的に使用される造影剤は、ガドリニウム系の常磁性造影剤である。これらの薬剤は、静脈(iv)ボラス注射によって投与される。それらの造影効果には、キレート錯体の中心のガドリニウムイオン(Gd-III)が介在する。MRIでT1強調(w)スキャンシーケンスを使用すると、励起された原子核のスピン格子緩和時間(T1)がガドリニウムイオンによって短縮されるため、信号強度が増加し、したがって検査される組織の画像コントラストが高まる。
【0006】
組織内での広がりのパターンから、ガドリニウム系造影剤は細胞外造影剤と細胞内造影剤に大別できる。
【0007】
細胞外造影剤とは、静脈投与後に血管及び間質腔内に広がる低分子量の水溶性化合物を指す。血液循環系で一定の比較的短期間循環した後、それは腎臓を介して排泄される。細胞外MRI造影剤には、例えば、ガドリニウムキレートであるガドブトロール(Gadovist(登録商標))、ガドテリドール(Prohance(登録商標))、ガドテリン酸(Dotarem(登録商標))、ガドペンテチン酸(Magnevist(登録商標))及びガドジアミド(Omnican(登録商標))などがある。
【0008】
細胞内造影剤は組織の細胞にある程度取り込まれ、その後排泄される。例えば、ガドキセチン酸系の細胞内MRI造影剤は、肝臓細胞、すなわち肝細胞によって比例して特異的に取り込まれ、機能性組織(実質)に蓄積し、健常な肝組織でコントラストを増強してから、胆嚢を通って便中に排泄されるという点で他と区別される。ガドキセチン酸系のそのような造影剤の例が、US6,039,931Aに記載されており、それらは、例えば商品名Primovist(登録商標)及びEovist(登録商標)で市販されている。肝細胞への取り込みがより低い別のMRI造影剤は、ガドベン酸ジメグルミン(Multihance(登録商標))である。
【0009】
ガドキセテート二ナトリウム(GD、Primovist(登録商標))は細胞内造影剤の群に属する。それについては、限局性肝疾患があることがわかっている又は疑われる患者の病変を検出及び特性決定するための肝臓のMRIでの使用が認可されている。親油性エトキシベンジル単位を有するGDは、2段階の拡散を示し、まず、ボラス注射後の血管内及び間質腔に拡散し、続いて肝細胞によって選択的に取り込まれる。GDは、ほぼ同量で、腎臓及び肝胆道経路(50:50の二重排泄機序)を介して、変化することなく体から排泄される。健常な肝臓組織に選択的蓄積のために、GDは、肝胆道造影剤とも呼ばれる。
【0010】
GDは、0.1mL/kg体重(BW)(0.025mmol/kgBWGd)の用量で認可されている。推奨されるGDの投与は、約2mL/秒の流量での未希釈静脈ボラス注射と、その後の生理食塩水による静脈カニューレのフラッシングを含む。GDを使用する肝臓撮像の標準プロトコールは、複数のプランニングシーケンスとプレコントラストシーケンスで構成される。造影剤の静脈ボラス注射後、通常、動脈相(注射後約30秒)、門脈相(注射後約60秒)、及び移行相(注射後約2~5分)に動的画像を取得する。代表的には、肝細胞への薬剤の初期取り込みにより、移行期ではすでに肝臓シグナル強度の一定の上昇が見られる。追加のT2強調及び拡散強調(DWI)画像を、動的相の後、及び後期肝胆道相の前に得ることができる。
【0011】
動脈相、門脈相、移行相からの造影動的画像は、時間の経過とともに変化し、特定の肝臓病変の特性決定に寄与する病変強化(血管新生)のパターンに関する重要な情報を提供する。代表的な動脈相高増強(APHE)と静脈相での造影剤のウォッシュアウトを伴う肝細胞癌は、動的相撮像時に観察される特有の血管新生パターンのみに基づいて診断でき、患者は結果的に、侵襲性で恐らく高リスクの肝生検から保護される。
【0012】
他の病変も、動的造影MRIによって特性決定することができる。
【0013】
肝臓病変の診断において、肝胆道造影剤の細胞外造影剤に対する利点は、感度がより高いため、特に比較的小さい癌(carinoma)をより良好に検出できることである(例えば、R.F. Hanna et al.: Comparative 13-year meta-analysis of the sensitivity and positive predictive value of ultrasound, CT, and MRI for detecting hepatocellular carcinoma, Abdom Radiol 2016, 41, 71-90; Y.J. Lee et al.: Hepatocellular carcinoma: diagnostic performance of multidetector CT and MR imaging-a systematic review and meta-analysis, Radiology 2015, 275, 97-109; D.K Owens et al.: High-value, cost-conscious health care: concepts for clinicians to evaluate the benefits, harms, and costs of medical interventions, Ann Intern Med 2011, 154, 174-180を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】R.F. Hanna et al.: Comparative 13-year meta-analysis of the sensitivity and positive predictive value of ultrasound, CT, and MRI for detecting hepatocellular carcinoma, Abdom Radiol 2016, 41, 71-90.
【非特許文献2】Y.J. Lee et al.: Hepatocellular carcinoma: diagnostic performance of multidetector CT and MR imaging-a systematic review and meta-analysis, Radiology 2015, 275, 97-109.
【非特許文献3】D.K Owens et al.: High-value, cost-conscious health care: concepts for clinicians to evaluate the benefits, harms, and costs of medical interventions, Ann Intern Med 2011, 154, 174-180.
【発明の概要】
【0016】
そして、問題は、肝臓病変におけるコントラストの動的な増加及び/又は減少が、一般的には、放射線科医による肉眼検査(肝臓組織と肝臓病変の間のコントラストの相対的な変化の主観的評価)によって評価され、その結果として誤った解釈が生じる可能性があることである。
【0017】
肉眼検査による評価の場合、細胞外造影剤を用いるか細胞内造影剤を用いるかによって違いが生じる。たとえば、肝胆道造影剤を使用する場合、健常肝組織でのシグナルの増加は、隣接する肝病変からの造影剤のウォッシュアウト(肝組織と肝病変の間のコントラストの相対的な増加)として誤って解釈される可能性がある。
【0018】
したがって、欧州肝臓研究協会(European Association for the Study of 肝臓)は、そのガイドライン(EASL Clinical Practice Guidelines: Management of hepatocellular carconima)の中で、使用する造影剤に応じて肝細胞癌を同定するための異なる特徴を指定した(Journal of Hepatology, 2018, Vol. 69, pages 182-236参照)。
【0019】
・細胞外造影剤を使用する場合:後期動脈相における血管過剰増生と門脈相及び/又は遅延相におけるウォッシュアウトの組み合わせ。
【0020】
・肝胆道造影剤を使用する場合:後期動脈相における血管過剰増生と門脈相におけるウォッシュアウトの組み合わせ。
【0021】
したがって、肝細胞癌の検出に細胞外造影剤を使用するには、門脈相とその後の遅延相の両方を使用する必要があるが、肝胆道造影剤の使用には、ウォッシュアウトの検出に門脈相のみを使用し、ウォッシュアウトの検出には門脈相のみを使用し、門脈相に続く相は使用しない。
【0022】
すでに説明したように、その理由は、肝胆管造影剤が(細胞外造影剤とは対照的に)肝細胞に取り込まれ、それが蓄積してから、胆嚢を介して糞便中に排泄される。したがって、肝胆道造影剤を使用する場合、動脈相での最初の比較的急速な血管のコントラスト増強に続いて、健常な肝臓組織のコントラスト増強があり、それがさらにゆっくりと継続的に増加する。放射線科医が病変のコントラスト増強を健常な肝臓組織のコントラスト増強と肉眼的に比較すると、健常肝臓組織で継続的に増加するコントラスト増強が病変からの造影剤のウォッシュアウトであると誤解される可能性がある。
【0023】
したがって、欧州肝臓研究協会は、肝胆道造影剤を使用する場合、肝細胞癌の確認のためのMRI画像の分析を動脈と門脈に限定することを明確に推奨している(造影剤の静脈投与後最長60秒)。
【0024】
しかしながら、問題は、一部の病変が、後の相での動的挙動によってのみ明確に特性決定できることである。
【0025】
一部の肝細胞癌の場合、ウォッシュアウトは、たとえば門脈相後でのみ明らかになる(例えば、C. J. Zech et al.: Consensus report from the 8th International Forum for Liver Magnetic Resonance Imaging, European Radiology 2020, 30, 370-382参照)。
【0026】
欧州肝臓研究協会が推奨するように、門脈相後の期間がウォッシュアウトの検出に考慮されていない場合、たとえば、ウォッシュアウトが検出可能になる肝細胞癌は検出されないまま残る。その結果、病変が良性病変か悪性腫瘍かを確認するために、より多くの生検を実施する必要があり得る(特に、Journal of Hepatology, 2018, Vol. 69, page 194の
図2を参照する。)。生検は医療従事者にとって単なる追加の労力ではない。それは患者にとってのリスクも意味する。
【0027】
このような生検の数を減らすことができれば望ましいと考えられる。肝胆道造影剤を使用する場合、健常な肝組織のシグナル上昇のリスクが肝病変からの造影剤のウォッシュアウトと誤って解釈されるリスクを冒すことなく、肝病変を高い信頼性で確認及び特性決定できることが望ましいと考えられる。
【0028】
これは本発明によって達成される。
【0029】
本発明は、第1の態様において、動的造影磁気共鳴画像検査時に患者の肝臓の領域からの増粘剤のウォッシュアウトを確認するコンピュータ実行方法であって、
-複数の画像を受信する段階であって、
〇前記複数の画像が、
■前記患者の肝臓又は前記患者の肝臓の一部、及び
■前記患者の参照組織
を表し、
〇前記動的造影磁気共鳴画像検査の門脈相時に、前記複数の画像の少なくとも一つの画像が、
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表し、
〇前記動的造影磁気共鳴画像検査の移行相時に前記複数の画像の少なくとも一つの画像が、
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表す段階、
-前記肝臓における1以上の領域であって、
〇造影剤が前記門脈相及び/又は前記移行相で前記参照組織より低いコントラスト増強をもたらし、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相における前記コントラスト増強が前記参照組織より急速に低下し、前記参照組織は肝細胞を含まず、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相での前記低下するコントラスト増強の勾配の絶対値が、健常肝臓組織における前記上昇するコントラスト増強の勾配の絶対値より大きい、
前記肝臓における1以上の領域を識別する段階、
-前記肝臓又は前記肝臓の一部の画像を出力する段階であって、前記画像において、前記識別された領域が強調表示され、又は複数の前記識別された領域が強調表示される段階
を含む方法を提供する。
【0030】
本発明はさらに、
●受信ユニット、
●制御・計算ユニット及び
●出力ユニット
を含むコンピュータシステムであって、
-前記制御・計算ユニットが、前記受信ユニットに、複数の画像を受信させるよう構成されており、
〇前記複数の画像が、
■患者の肝臓又は前記患者の肝臓の一部、及び
■前記患者の参照組織
を表し、
〇動的造影磁気共鳴画像検査の門脈相時に、前記複数の画像の少なくとも一つの画像が、
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表し、
〇動的造影磁気共鳴画像検査の移行相時に前記複数の画像の少なくとも一つの画像が、
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表し、
-前記制御・計算ユニットが、前記肝臓における1以上の領域であって、
〇造影剤が前記門脈相及び/又は前記移行相で前記参照組織より低いコントラスト増強をもたらし、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相における前記コントラスト増強が前記参照組織より急速に低下し、前記参照組織は肝細胞を含まず、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相での前記低下するコントラスト増強の勾配の絶対値が、健常肝臓組織における前記上昇するコントラスト増強の勾配の絶対値より大きい、
前記肝臓における1以上の領域を識別するよう構成されており、
-前記制御・計算ユニットが、前記出力ユニットに、前記肝臓又は前記肝臓の一部の画像を出力させるように構成されており、前記画像において、前記識別された領域が強調表示され、又は複数の前記識別された領域が強調表示される
コンピュータシステムを提供する。
【0031】
本発明はさらに、コンピュータのメモリーにロードできるコンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品であって、当該プログラムが、前記コンピュータに、次の段階:
-複数の画像を受信する段階であって、
〇前記複数の画像が、
■患者の肝臓又は前記患者の肝臓の一部、及び
■前記患者の参照組織
を表し、
〇動的造影磁気共鳴画像検査の門脈相時に、前記複数の画像の少なくとも一つの画像が、
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表し、
〇動的造影磁気共鳴画像検査の移行相時に前記複数の画像の少なくとも一つの画像が、
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表す段階
-前記肝臓における1以上の領域であって、
〇造影剤が前記門脈相及び/又は前記移行相で前記参照組織より低いコントラスト増強をもたらし、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相における前記コントラスト増強が前記参照組織より急速に低下し、前記参照組織は肝細胞を含まず、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相での前記低下するコントラスト増強の勾配の絶対値が、健常肝臓組織における前記上昇するコントラスト増強の勾配の絶対値より大きい、
前記肝臓における1以上の領域を識別する段階
-前記肝臓又は前記肝臓の一部の画像を出力する段階であって、前記画像において、前記識別された領域が強調表示され、又は複数の前記識別された領域が強調表示される段階
を実行させるコンピュータプログラム製品を提供する。
【0032】
本発明はさらに、動的磁気共鳴画像検査方法での造影剤の使用であって、次の段階:
-前記造影剤を投与する段階、
-複数の画像を生成する段階であって、
〇前記複数の画像が、
■患者の肝臓又は前記患者の肝臓の一部、及び
■前記患者の参照組織
を表し、
〇前記検査方法の門脈相時に、前記複数の画像の少なくとも一つの画像が、
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表し、
〇前記検査方法の移行相時に前記複数の画像の少なくとも一つの画像が、
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表す段階
-前記肝臓における1以上の領域であって、
〇造影剤が前記門脈相及び/又は前記移行相で前記参照組織より低いコントラスト増強をもたらし、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相における前記コントラスト増強が前記参照組織より急速に低下し、前記参照組織は肝細胞を含まず、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相での前記低下するコントラスト増強の勾配の絶対値が、健常肝臓組織における前記上昇するコントラスト増強の勾配の絶対値より大きい、
前記肝臓における1以上の領域を識別する段階
-前記肝臓又は前記肝臓の一部の画像を出力する段階であって、前記画像において、前記識別された領域が強調表示され、又は複数の前記識別された領域が強調表示される段階
を含む使用を提供する。
【0033】
本発明はさらに、動的造影磁気共鳴画像検査方法での使用のための造影剤、次の段階:
-前記造影剤を投与する段階、
-複数の画像を生成する段階であって、
〇前記複数の画像が、
■患者の肝臓又は前記患者の肝臓の一部、及び
■前記患者の参照組織
を表し、
〇前記検査方法の門脈相時に、前記複数の画像の少なくとも一つの画像が、
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表し、
〇前記検査方法の移行相時に前記複数の画像の少なくとも一つの画像が、
■前記肝臓又は前記肝臓の一部、及び
■前記参照組織
を表す段階
-前記肝臓における1以上の領域であって、
〇造影剤が前記門脈相及び/又は前記移行相で前記参照組織より低いコントラスト増強をもたらし、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相における前記コントラスト増強が前記参照組織より急速に低下し、前記参照組織は肝細胞を含まず、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相での前記低下するコントラスト増強の勾配の絶対値が、健常肝臓組織における前記上昇するコントラスト増強の勾配の絶対値より大きい、
前記肝臓における1以上の領域を識別する段階
-前記肝臓又は前記肝臓の一部の画像を出力する段階であって、前記画像において、前記識別された領域が強調表示され、又は複数の前記識別された領域が強調表示される段階
を含む造影剤を提供する。
【0034】
本発明はさらに、本発明による造影剤及びコンピュータプログラム製品を含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】動的造影MRI検査における肝動脈(A)、肝静脈(V)、及び健常肝細胞(L)において肝胆道造影剤によって引き起こされる信号強度Iの時間的プロファイル(t=時間)を模式的に示す図である。
【
図2】高増強及び低増強という用語をグラフを使用して説明する図である。
【
図3】例として及び模式的に、患者の肝臓を示す図である。
【
図4】
図3(a)、3(b)、3(c)、3(d)、及び3(e)に示されている画像を、より小さい縮尺でもう一度描く図である。
【
図5】本発明によるコンピュータシステムの1実施形態を、模式的にそして例として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明のさらなる主題及び本発明の好ましい実施形態が、従属項、本明細書及び図面にある。
【0037】
以下においては、本発明の主題(方法、コンピュータシステム、コンピュータプログラム製品、使用、使用のための造影剤、キット)間で区別することなく、本発明について、より具体的に説明する。それどころか、以下の説明は、どの文脈(方法、コンピュータシステム、コンピュータプログラム製品、使用、使用のための造影剤、キット)で起こっているかに関係なく、本発明のすべての主題に対して同様に適用されることを意図している。
【0038】
本発明は、動的造影磁気共鳴画像検査時に患者の肝臓領域からの造影剤のウォッシュアウトを自動的に識別する手段を提供する。言い換えれば、本発明は、造影剤のウォッシュアウトを特徴とする肝臓内の一つの領域又は複数の領域を自動的に識別することを可能にするものである。
【0039】
ウォッシュアウトとは、動的造影磁気共鳴画像検査の門脈相及び/又は移行相における肝臓の領域でのコントラスト増強が、周囲の(健常な)肝臓組織よりも急速に低下するという所見を指す。
【0040】
このようなウォッシュアウトは、肝臓病変を特定するための特徴的な特徴として使用されることが多い(例えば、Y. I. Liu et al.: Quantitatively Defining Washout in Hepatocellular Carcinoma, American Journal of Roentgenology 2013 200:1, 84-89; Journal of Hepatology, 2018, Vol. 69, pages 182-236を参照する。)。
【0041】
磁気共鳴画像法、略してMRIは、特に医療診断において、人体内の又は動物の体内の、組織や臓器の構造及び機能を描写するために使用される画像診断法である。
【0042】
MRIでは、検査対象物内の陽子の磁気モーメントが、基本磁場内において整列し、その結果、縦方向に沿って巨視的な磁化が発生する。これは、その後、高周波パルスの照射(励起)により、静止位置から偏向される。次に、励起状態から静止位置への復帰(緩和)又は磁化ダイナミクスは、1以上の高周波受信器コイルによって、緩和信号として検出される。
【0043】
空間的エンコードの場合、高速スイッチング磁気勾配場が、基本磁場上に重畳される。捕捉された緩和信号は、すなわち、検出されて空間的に分解されたMRIデータは、初期的には空間周波数空間内の生データとして存在し、その後のフーリエ変換によって実空間(画像空間)内へと変換することができる。
【0044】
ネイティブMRIの場合には、組織のコントラストは、異なる緩和時間(T1及びT2)及び陽子密度によって生成される。
【0045】
T1緩和は、縦方向の磁化が平衡状態へと遷移することを説明するものであり、T1は、共鳴励起前の平衡磁化の63.21%へと到達するのに要する時間である。これは、また、縦緩和時間又はスピン-格子緩和時間とも称される。
【0046】
T2緩和は、同様に、横方向の磁化が平衡状態への遷移を説明するものである。
【0047】
動的造影磁気共鳴画像検査の第1段階では、MRI造影剤を検査対象に投与する。
【0048】
「検査対象」は、通常、生物であり、好ましくは哺乳動物であり、非常に特に好ましくはヒトである。本明細書では「患者」という用語も使用される。
【0049】
造影剤は、細胞外造影剤又は細胞内造影剤であることができる。好ましいものは肝胆道造影剤である。
【0050】
肝胆道造影剤は、健常肝臓細胞、すなわち肝細胞によって特異的に取り込まれる造影剤を意味するものと理解される。
【0051】
肝胆道造影剤の例は、ガドキセト酸系の造影剤である。それらは例えば、US6,039,931Aに記載されている。これらは、例えばPrimovist(登録商標)又はEovist(登録商標)という商標名で市販されている。
【0052】
Primovist(登録商標)/Eovist(登録商標)の造影効果には、安定なガドリニウム錯体Gd-EOB-DTPA(ガドリニウム・エトキシベンジル・ジエチレントリアミン五酢酸)が介在している。DTPAは、常磁性ガドリニウムイオンとともに、非常に高い熱力学的安定性を有する錯体を形成する。エトキシベンジル(EOB)ラジカルは、造影剤の肝胆道取り込みのメディエータである。
【0053】
特に好ましい実施形態では、使用される造影剤は、造影活性物質としてガドキセト酸を有した又はガドキセト酸塩を有する物質又は物質混合物である。非常に特に好ましいものは、ガドキセト酸の二ナトリウム塩(Gd-EOB-DTPA二ナトリウム)である。
【0054】
肝胆道造影剤を、腕の静脈内へとボラスの形態で静脈内投与した後には、造影剤は、最初に動脈を経由して肝臓へと到達する。これらは、対応するMRI画像内において、コントラストを増強して描出される。MRI画像において肝臓動脈がコントラストを増強して描出される相は、「動脈相」と称される。
【0055】
その後、造影剤は、肝臓静脈を経由して肝臓へと到達する。肝臓動脈でのコントラストが既に低下しているのに対して、肝臓静脈におけるコントラストは、最大値へと到達している。MRI画像内において肝臓静脈がコントラストを増強して描出される相は、「門脈相」と称される。この相は、動脈相時に既に始まることができ、動脈相とオーバーラップすることができる。
【0056】
門脈相の後には、「移行相」が続き、この移行相では、肝臓動脈でのコントラストがさらに低下するとともに、肝臓静脈でのコントラストも同様に低下する。肝胆道造影剤を使用した場合には、健常肝臓細胞でのコントラストは、移行相で徐々に上昇する。
【0057】
動脈相、門脈相、及び移行相は、総称して「動的相」とも称される。
【0058】
注入から10分後~20分後において、肝胆道造影剤は、健常肝実質内で明確なシグナル増強をもたらす。この相は、「肝胆道相」と称される。造影剤は、肝臓細胞からゆっくりとしか排出されないので、肝胆道相は、2時間以上にわたって続き得る。
【0059】
記載された相は、例えば、次の刊行物でより詳細に説明されている:J. Magn. Reson. Imaging, 2012, 35(3): 492-511, doi:10.1002/jmri.22833; Clujul Medical, 2015, Vol. 88 no. 4: 438-448, DOI: 10.15386/cjmed-414; Journal of Hepatology, 2019, Vol. 71: 534-542, http://dx.doi.org/10.1016/j.jhep.2019.05.005)。
【0060】
図1は、動的造影MRI検査における肝動脈(A)、肝静脈(V)、及び健常肝細胞(L)において肝胆道造影剤によって引き起こされる信号強度Iの時間的プロファイル(t=時間)を模式的に示している。シグナル強度Iは、指定された領域における造影剤濃度と正の相関を有する。静脈内ボラス注射すると、まず肝動脈(A)で造影剤の濃度が上昇する(破線の曲線)。濃度は最大値を超えてから低下する。肝静脈(V)における濃度は、肝動脈内と比較して、より遅れて上昇し、遅れて最大値へと到達する(破線の曲線)。肝細胞(L)における造影剤濃度は、ゆっくり上昇し(実線の曲線)、かなり遅れた時点で最大値に到達する(
図1には、最大値は描かれていない)。いくつかの特徴的な時点を規定することができる。つまり、時点TP0で、造影剤を、ボラスとして静脈内に投与する。造影剤の投与自体が一定の期間を要することから、時点TP0は好ましくは、投与が完了した時点、すなわち造影剤が検査対象内に完全に導入された時点を規定するものである。時点TP1で、肝動脈(A)での造影剤のシグナル強度が最大値に到達する。時点TP2で、肝動脈(A)に関するシグナル強度曲線と肝静脈(V)に関するシグナル強度曲線が交差する。時点TP3で、肝静脈(V)での造影剤のシグナル強度が、最大値を通過する。時点TP4で、肝動脈(A)に関するシグナル強度曲線と健常肝細胞(L)に関するシグナル強度曲線とが交差する。時点T5で、肝動脈(A)及び肝静脈(V)での濃度が、もはや測定可能なコントラスト増強を引き起こさないレベルにまで低下している。
【0061】
造影磁気共鳴画像検査時に、患者の肝臓又は患者の肝臓の一部の複数の磁気共鳴画像が生成される。このような磁気共鳴画像は、本明細書では画像と称される。これらは、造影剤投与の前及び/又は後の患者の肝臓又は肝臓の一部を表す。その画像は、実空間での画像であっても、周波数空間での画像であってもよい。
【0062】
磁気共鳴画像法では、その測定方法のため、生データは通常、いわゆるk空間データとして生成される。前記k空間データは、周波数空間における検査領域の描写(画像)である。このようなk空間データは、逆フーリエ変換によって実空間での画像に変換できる。逆に、実空間での画像は、フーリエ変換によって周波数空間での画像(空間周波数空間、又はフーリエ空間、又は周波数ドメイン又はフーリエ画像とも称される)に変換できる。
【0063】
本明細書に記載される作業は、実空間での画像で実行されることが好ましい。
【0064】
実空間における検査領域(肝臓などの)の画像が、ヒトにとってより馴染みのある画像である。それはヒトにとってより容易に把握できる(より理解しやすい)ものである。このような実空間での画像については、通常「像(画像)」という用語も使用される。
【0065】
本発明の文脈における画像は、2次元、3次元、又はより高次元の画像とすることができる。通常、2次元断層写真(スライス画像)が存在するか、多数の2次元断層写真(スライス画像)が存在する。
【0066】
画像は通常、デジタル形式で存在する。「デジタル」という用語は、その画像が機械、一般的にはコンピュータシステムによって処理できることを意味する。「処理」とは、既知の電子データ処理(EDP)方法を意味すると理解される。デジタル画像の一般的フォーマットの1例としては、医療画像データ管理における情報の保存と交換のためのオープン標準であるDICOM形式(DICOM:Digital Imaging and Communications in Medicine)がある。
【0067】
説明を簡単にするために、本明細書のいくつかの箇所で本発明を2次元画像の存在に基づいて説明するが、それは本発明を2次元画像に限定することを望むものではない。多数の2次元画像、3次元画像、又は周波数空間の画像に、それぞれ説明した内容をどのように適用できるかは、当業者には明らかである(例えば、M. Reisler, W. Semmler: Magnetresonanztomographie [Magnetic resonance imaging], Springer Verlag, 3rd edition, 2002, ISBN: 978-3-642-63076-7を参照する。)。
【0068】
デジタル画像は、様々なフォーマットで存在することができる。例えば、デジタル画像は、ラスターグラフィックとしてコード化することができる。ラスターグラフィックは、いわゆるピクチャエレメント(ピクセル)又はボリュームエレメント(ボクセル)の格子配置からなり、それぞれの場合で、色値又は濃淡値が割り当てられる。2Dラスターグラフィックの主な特徴は、画像サイズ(ピクセルで測定された幅及び高さ、非公式には画像解像度とも称される)と色深度である。色は、通常、デジタル画像ファイルのピクチャエレメントに割り当てられる。ピクチャエレメントに関して使用される色コード化は、とりわけ、色空間及び色深度に関して規定される。最も単純なケースは2値画像であり、この場合、ピクチャエレメントには、黒白値が保存される。いわゆるRGB色空間(RGBは、赤、緑及び青という主要色を表す)に関して色が規定された画像の場合には、各ピクチャエレメントは、赤色に関するサブピクセル、緑色に関するサブピクセル、及び青色に関するサブピクセルという3つのサブピクセルからなる。ピクチャエレメントの色は、サブピクセルの色値の重ね合わせ(加法混色)により発生する。サブピクセルの色値は、例えば、色調値と称されて通常は0~255と範囲である256色の色調へと分割することができる。各色チャネルの色調「0」は、最も暗い。3つのチャネル全てが色調値0を有していれば、対応するピクチャエレメントは黒色に見え、3つのチャネル全てが色調値255を有していれば、対応するピクチャエレメントは白色に見える。本発明を実施する時には、デジタル画像は、所定の操作を受ける。これに関連して、操作は、主にピクチャエレメント又は個々のピクチャエレメント(ピクセル又はボクセル)の色調値に影響を与える。可能なデジタル画像フォーマット及び色コード化は多種多様である。簡略化のため、本明細書では、本画像が、特定の数のピクチャエレメントを有したグレースケールラスターグラフィックであり、各ピクチャエレメントには画像のグレー値を示す色調値が割り当てられていると仮定している。しかしながら、この仮定は、決して限定として理解されるべきではない。本説明の教示を、他の画像フォーマットで存在する画像ファイルに対して、及び/又は色値が異なってコード化されている画像ファイルに、どのようにして適用し得るかは、画像処理の当業者には明らかである。
【0069】
造影磁気共鳴画像検査の際、患者の肝臓又は肝臓の一部の複数の画像が発生する。
【0070】
前記複数の画像は、門脈相時の肝臓又は肝臓の一部を表す少なくとも一つの画像及び移行相時の肝臓又は肝臓の一部を表す少なくとも一つの画像を含む。
【0071】
肝胆道造影剤投与前(TP0前)の肝臓又は肝臓の一部の少なくとも一つの画像(ネイティブ画像)及び/又は動脈相における肝臓又は肝臓の一部の少なくとも一つの画像をさらに生成することが好ましい。
【0072】
好ましい実施形態では、少なくとも以下の画像が生成される。
【0073】
-少なくとも一つの第1の画像。この少なくとも一つの第1の画像は、TP1からTP3までの期間中の肝臓又は肝臓の一部を表す。
【0074】
-少なくとも一つの第2の画像。この少なくとも一つの第2の画像は、TP3からTP5までの期間中の肝臓又は肝臓の一部を表す。
【0075】
ここで、時点TP0が
図1に示されており、
図1に関連する説明で説明されている。
【0076】
さらなる好ましい実施形態では、少なくとも以下の画像が生成される。
【0077】
-少なくとも一つの第1の画像。この少なくとも一つの第1の画像は、TP0からTP3までの期間における患者の肝臓又は肝臓の一部を表す。
【0078】
-少なくとも第2の画像。この少なくとも一つの第2の画像は、TP2からTP5までの期間における患者の肝臓又は肝臓の一部を表す。
【0079】
-少なくとも第3の画像。この少なくとも一つの第3の画像は、TP4からTP0の5分後の期間中の患者の肝臓又は肝臓の一部を表す。
【0080】
ここで、時点TP0は
図1に示されており、
図1に関連する説明で説明されている。
【0081】
特に好ましい実施形態では、少なくとも以下の画像が生成される。
【0082】
-少なくとも一つの第1の画像。その少なくとも一つの第1の画像は、TP0からTP1までの時間範囲中の患者の肝臓又は肝臓の一部を表す。
【0083】
-少なくとも一つの第2の画像。この少なくとも一つの第2の画像は、TP1からTP2までの時間範囲中の患者の肝臓又は肝臓の一部を表す。
【0084】
-少なくとも一つの第3の画像。少なくとも一つの第3の画像は、TP2からTP3までの期間中の患者の肝臓又は肝臓の一部を表す。
【0085】
-少なくとも一つの第4の画像。ここで少なくとも一つの第4の画像は、TP3からTP4までの期間中の患者の肝臓又は肝臓の一部を表す。
【0086】
-少なくとも一つの第5の画像。ここで少なくとも一つの第5の画像は、TP0からTP4秒後からTP5秒までの期間中の患者の肝臓又は肝臓の一部を表す。及び/又は
-少なくとも一つの第6の画像。ここで少なくとも一つの第6の画像は、TP5からTP0の5分後の時間範囲中の患者の肝臓又は肝臓の一部を表す。
【0087】
ここで、時点TP0は
図1に示されており、
図1に関連する説明で説明されている。
【0088】
生成された画像は、本発明によるコンピュータシステムに送られ、そのシステムはその画像を自動的に分析するように構成されている。
【0089】
「自動的に」という用語は、人間の支援を必要としないことを意味する。
【0090】
この分析により、門脈相及び/又は移行相で造影剤のウォッシュアウトが存在する患者の肝臓の領域又は複数領域が特定される。
【0091】
ウォッシュアウトは各種方法で確認することができる。
【0092】
1実施形態では、特定されるのは、造影剤が門脈相及び/又は移行相において参照組織よりも低いコントラスト増強をもたらす肝臓内の領域である。門脈相及び/又は移行相におけるより低いコントラスト増強は、低増強とも称される。低増強とは、参照組織と比較してシグナル強度が低いことである。この実施形態において、使用される参照組織は好ましくは、肝細胞を含まない組織である。好適な参照組織は、例えば筋肉組織である。細胞外造影剤又は肝胆管造影剤をコントラスト増強に使用することができる。肝胆道造影剤を使用することが好ましい。
【0093】
さらなる実施形態では、特定されるのは、門脈相及び/又は移行相におけるコントラスト増強が参照組織よりも急速に低下する肝臓内の領域である。この実施形態においても、使用される参照組織は好ましくは、肝細胞を含まない組織である。好適な参照組織は、例えば筋肉組織である。確認されるのは、シグナル強度の時間的勾配であり、識別されるのは、シグナル強度の時間的勾配が負(経時的にシグナル強度が減少)であり、時間的勾配の絶対値が参照組織におけるシグナル強度の負の時間勾配の絶対値よりも大きい領域である。使用される造影剤は、細胞外造影剤又は肝胆管造影剤であることができる。肝胆道造影剤を使用することが好ましい。
【0094】
さらなる実施形態において、特定されるのは、門脈相及び/又は移行相におけるコントラスト増強の低下の勾配の絶対値が、健常肝臓組織におけるコントラスト増強の上昇の勾配よりも大きい肝臓内の領域である。この実施形態では、使用される参照組織は健常肝臓組織である。使用される造影剤は好ましくは、肝胆道造影剤であり、それは健常肝組織に選択的に取り込まれ、門脈相及び/又は移行相においてシグナル強度を徐々に上昇させる。そうして健常肝臓組織に存在するものは、門脈相及び/又は移行相におけるシグナル強度の正の時間勾配である。識別されるのは、門脈相及び/又は移行相でシグナル強度が低下する領域であり、低下の絶対値(減少の絶対速度)が健常肝臓組織におけるシグナル強度の上昇の絶対値よりも大きい。
【0095】
記載された実施形態を互いに組み合わせることが考えられる。造影剤が門脈相及び/又は移行相において第1の参照組織よりも低いコントラスト増強に導く肝臓における領域、及び門脈相及び/又は移行相におけるコントラスト増強が第2の参照領域より急速に低下する及び/又は門脈相及び/又は移行相におけるコントラスト増強の低下の勾配の絶対値が健常肝臓組織におけるコントラスト増強上昇の勾配より大きい肝臓における領域の識別が行われることが想到される。第1及び/又は第2の参照組織は、例えば、筋肉組織又は健常肝臓組織であり得る。
【0096】
特に好ましい実施形態では、本発明は肝細胞癌を識別するのに使用される。この実施形態では、動脈相における高増強と門脈相及び/又は移行相におけるウォッシュアウトの両方を示す一つの領域又は複数の領域が確認される。
【0097】
領域が参照組織と比較してより高いシグナル強度を示す場合、高増強が存在する(たとえば、M. Kim et al.: Identification of Arterial Hyperenhancement in CT and MRI in Patients with Hepatocellular Carcinoma: Value of Unenhanced Images, Korean Journal of Radiology 2019, 20(2), 236-245)。動脈相における過剰増強を検出するために使用される参照組織は、好ましくは健常肝臓組織である。使用される造影剤は、細胞外造影剤又は肝胆管造影剤であり得る。肝胆道造影剤を使用することが好ましい。好ましくは、肝細胞癌を識別するための実施形態は、以下の段階を含む。
【0098】
-患者の肝臓又は肝臓の一部の複数の画像を受信する段階であって、
〇前記画像が肝臓又は肝臓の一部の造影磁気共鳴画像検査の結果であり、
〇少なくとも一つの第1の画像が動脈相時の肝臓又は肝臓の一部を表し、少なくとも一つの第2の画像が門脈相時の肝臓又は肝臓の一部を表し、少なくとも一つの第3の画像が移行相時の肝臓又は肝臓の一部を表す段階、
-少なくとも一つの第1、第2、及び第3の画像を分析する段階であって、造影剤が動脈相において第1の参照組織より高いコントラスト増強をもたらす肝臓の領域又は複数領域を識別し、造影剤が前記門脈相及び/又は移行相において第2の参照組織より低いコントラスト増強をもたらす段階、
-肝臓又は肝臓の一部の画像を出力する段階であって、その画像において、前記識別された領域が強調表示されるか、前記識別された複数領域が強調表示される段階。
【0099】
すでに説明したように、第1の参照組織は好ましくは健常肝臓組織であり、第2の参照組織は好ましくは筋肉組織である。
【0100】
さらなる好ましい実施形態において、肝細胞癌を識別する方法は、
-患者の肝臓又は肝臓の一部の複数の画像を受信する段階であって、
〇前記画像が肝臓又は肝臓の一部の造影磁気共鳴画像検査の結果であり、
〇少なくとも一つの第1の画像が動脈相時の肝臓又は肝臓の一部を表し、少なくとも一つの第2の画像が門脈相時の肝臓又は肝臓の一部を表し、少なくとも一つの第3の画像が移行相時の肝臓又は肝臓の一部を表す段階、
-受信した画像を分析する段階であって、次の特徴:
〇造影剤が前記動脈相において、第1の参照組織より大きいシグナル上昇をもたらし、及び
〇前記門脈相及び/又は前記移行相におけるコントラスト増強が第2の参照組織より急速に低下し、前記第2の参照組織が肝細胞を含まず、及び/又は
〇前記門脈相及び/又は前記移行相において低下するコントラスト増強の勾配の絶対値が、健常肝臓組織における上昇するコントラスト増強の勾配の絶対値より大きい
によって特徴付けられる前記肝臓の1領域又は複数領域を識別する段階
を含む。
【0101】
第1の参照組織は好ましくは健常肝臓組織であり、第2の参照組織は好ましくは筋肉組織である。
【0102】
図2(a)及び
図2(b)では、高増強及び低増強という用語がグラフを使用して説明されている。
図2(a)及び
図2(b)では、MRI検査時に測定された患者の肝臓の二つの異なる領域のシグナルの強度Iが時間tの関数として描かれている。参照符号HCCが付された実線の曲線はそれぞれ、肝細胞癌の強度Iの動的プロファイルを示し;参照符号Lが付された破線の曲線は、健常肝臓組織の強度Iの動的プロファイルを示す。参照符号AP、PVP及びTPは、動脈相(AP)、門脈相(PVP)及び移行相(TP)を示す。時点TP0は、それぞれの場合において、肝胆道造影剤の投与の完了の時点を示す。投与後、肝細胞癌に起因するMRIシグナルの強度が急激に上昇する。健常肝臓組織に起因するMRIシグナルの強度も同様に、それほど急激ではないが上昇する。動脈相APでは、健常肝臓組織と比較してHCC組織の場合で高増強がある。
【0103】
最大値を通過した後、肝細胞癌の組織に起因するMRIシグナルの強度は低下する。
図2(a)の曲線の場合の方が、
図2(b)の曲線の場合より急速である。健常肝組織に起因するMRIシグナルの強度は、動脈相APの終了後でもさらに上昇するが、動脈相より遅い。これは、肝細胞での造影剤の取り込みを示している。
【0104】
図2(a)では、実線の曲線(HCC)は門脈相PVPで点線の曲線(L)より下に低下しており、肝細胞癌におけるシグナルの増強は、健常肝臓組織におけるシグナルの増強よりも低い。門脈相では、HCC組織の場合の方が健常肝臓組織と比較して増強が低い。
【0105】
図2(b)の肝細胞癌の場合、低増強は後になるまで起こらない。
図2(b)の実線が
図2(b)の破線の下になるのは、門脈相の終了後のみである。低増強は、門脈相の終了後まで起こらない。
【0106】
本発明によれば、肝細胞癌の存在は、動脈相において第1の参照組織と比較して病変に高増強が存在する場合、及び門脈相又は移行相において第2の参照組織と比較して病変に低造影が存在する場合に、又は門脈相及び/又は移行相におけるコントラスト増強が第2の参照組織よりも急速に低下する場合に示され、第2の参照組織は肝細胞を含まず、及び/又は、門脈相及び/又は移行相での低下するコントラスト増強の低下の勾配の絶対値が、健常肝臓組織での上昇するコントラスト増強の勾配より大きい。
【0107】
高増強及び/又は低増強が存在するかどうかを評価するために、病変及び参照組織の実空間画像(2D画像又は3D画像)のピクセル又はボクセルのグレー値を分析することができる。
【0108】
ある領域が、ある期間では高増強を示し、別の期間では低増強を示すか否かに関して、領域についての説明を行うことができるようにするには、多様な期間で、その領域を表す画像において、その領域を明確に識別し、取得する必要がる。換言すれば、ある領域に過剰増強が存在するか否かに関する評価は、動脈相における造影剤の投与後のその領域を表す少なくとも一つの第1の画像に基づいて行われ;ある領域に低増強が存在するか否かに関する評価は、門脈相及び/又は移行相における造影剤の投与後のその領域を表す少なくとも一つの第2の画像に基づいて行われる。したがって、その領域は第1の画像と第2の画像の両方で明確に決定可能でなければならず、少なくとも一つの第1の画像と少なくとも一つの第2の画像の領域は同じでなければならない。
【0109】
この目的を達成するために、生成された画像を画像登録することができる。画像登録(「共同登録」とも称される)はデジタル画像処理におけるプロセスであり、同じシーン、又は少なくとも類似したシーンの2以上の画像を可能な限り最良の方法で互いに調和させる役割を果たす。画像のうちの一つは参照画像と定義され、他の画像はオブジェクト画像と呼ばれる。前記オブジェクト画像を基準画像と至適に一致させるために、補償変換を計算する。登録される画像は、異なる位置、異なる時点、又は異なるセンサーで取得されたため、互いに異なる。
【0110】
本発明の画像の場合、それらは異なる時点で取得されたものである。
【0111】
したがって、画像登録の目標は、与えられたオブジェクト画像を可能な限り最善の方法で参照画像と調和させる変換を見出すことである。その目標は、可能な場合、画像の各ピクセル/ボクセルが、同じ座標を持つ異なる(同時登録された)画像のピクセル/ボクセルと患者の体内の同じ領域を表すことである。
【0112】
画像登録の方法は先行技術に記載されている(例えば、E.H. Seeley et al.: Co-registration of multi-modality imaging allows for comprehensive analysis of tumor-induced bone disease, Bone 2014, 61, 208-216; C. Bhushan et al.: Co-registration and distortion correction of diffusion and anatomical images based on inverse contrast normalization, Neuroimage 2015, 15, 115: 269-80; US20200214619; US20090135191; EP3639272Aを参照する。)。
【0113】
共同登録は、画像全体(画像内に取り込まれたすべての解剖学的特徴を含む画像全体)ごとに行うことができる。また、共同登録を病変に限定すること、すなわち、個々の画像における少なくとも病変が対応するピクセル/ボクセルによって表されるように、変換によって個々の画像を変えることも考えられる(ここで、対応するピクセル/ボクセルは、同じ座標を有する)。
【0114】
さらに、各画像に、画像内の病変を検出し、そのようにそれにマークを付けるセグメント化方法を適用することも考えられる。
【0115】
病変を検出及びセグメント化する方法は、従来技術に記載されている(例えば、C. Krishnamurthy et al.: Snake-based liver lesion segmentation, 6th IEEE Southwest Symposium on Image Analysis and Interpretation 2004 pp. 187-191, doi: 10.1109/IAI.2004.1300971; F.-A. Maayan et al.: GAN-based synthetic medical image augmentation for increased CNN performance in liver lesion classification, Neurocomputing 2018, 321, 321-331; WO2005/106773; EP3629898A; WO2012/040410を参照する。)。
【0116】
参照組織を表す画像内の領域又は複数領域は、放射線科医によって、又は自動的に定義/決定され得る。
【0117】
したがって、放射線科医が肝臓又は肝臓の一部の画像において、参照領域として機能する1以上の領域をマークすることが考えられる。
【0118】
1以上の参照領域を自動的に決定するために、例えば、画像内の筋肉組織及び/又は肝臓組織を検出し、筋肉組織及び/又は肝臓組織を表す参照領域を定義するセグメンテーション方法(例えば、WO2020/144134を参照)を使用することもできる。
【0119】
本発明の教示によれば、動脈相内の領域を表すピクセル/ボクセルのグレー値が参照組織を表すピクセル/ボクセルのグレー値よりも大幅に高い場合、領域(病変)に高増強が存在する。
【0120】
動脈相内の領域を表すピクセル/ボクセルのグレー値が、参照組織を表すピクセル/ボクセルのグレー値よりも大幅に高い場合、領域(病変)に低増強が存在する。
【0121】
「著しく」という用語は、より高い又はより低いグレー値が、測定システムの誤差限界を超えた測定結果であることを意味する。
【0122】
基本的には、高増強の検出には、その領域を表すピクセル/ボクセルのグレー値を、参照組織を表すピクセル/ボクセルのグレー値と比較するだけで十分である。領域のピクセル/ボクセルのグレー値が参照領域のピクセル/ボクセルのグレー値より大きい場合(より高いシグナル増強)、高増強が存在し、それ以外の場合は存在しない。同様に、基本的には、低増強の検出には、その領域を表すピクセル/ボクセルのグレー値を、参照組織を表すピクセル/ボクセルのグレー値と比較するだけで十分である。領域のピクセル/ボクセルのグレー値が参照領域のピクセル/ボクセルのグレー値より小さい場合(シグナル増強が低い)、低増強が存在し、それ以外の場合は存在しない。
【0123】
領域及び参照領域の複数のピクセル/ボクセルを評価することが好ましい。好ましくは、複数のピクセル/ボクセルが、一つの画像又は複数の画像において連続領域を規定する。換言すれば、複数のピクセル/ボクセルが、好ましくは患者の体内の連続した領域を表す。複数のピクセル/ボクセルが使用される場合、グレー値(又はシグナル強度を示す何らかの他の値)の平均を計算することができる(たとえば、算術平均)。次に、ある領域と参照領域の間の比較を、それぞれの平均に基づいて行う。複数の局所的に隣接するピクセル/ボクセルの平均化に代えて、又はそれに加えて、時間的に互いに続く画像から複数のピクセル/ボクセルの平均化を実行することも可能である。
【0124】
好ましい実施形態では、シグナル強度に加えて、シグナル強度の勾配も確認される。
【0125】
領域の場合、そのような勾配は、たとえば、互いに時間間隔を置いて領域を表す二つの画像から取得できる。時間間隔は、たとえば、1秒~30秒の範囲内であることができる。時間間隔が短いほど、シグナル強度の変化(勾配)をより正確に判断できる。好ましくは、相内の勾配は、その相(動脈相、門脈相、移行相)時の肝臓又は肝臓の一部を表す2~5個の画像を生成することによって決定される。領域のシグナル強度が時間的に一つの画像から次の画像へと上昇する場合、勾配は正である。対照的に、シグナル強度が低下すると、勾配は負である。勾配の大きさは、シグナル強度の上昇又はシグナル強度の低下がどの程度強い(急速)かに関する情報を提供する。動脈相に続く1以上の勾配を決定することによって、例えば、ある領域における門脈相及び/又は移行相での造影剤のウォッシュアウトがどれほど速いかを確認することが可能である。この情報は、例えば、1以上の第2の(又はさらなる)画像を取得するための1以上の時点を定義するのに使用することができる。
【0126】
図3は、例として及び模式的に、患者の肝臓を示している。
図3(a)、3(b)、3(c)、3(d)、3(e)、及び3(f)では、肝臓を通過して同じ断面が常に異なる時点で描かれている。肝臓に加えて、参照組織(R)も描かれており、たとえば、それは筋肉組織であることができる。
図3(a)及び3(f)で入力された参照符号は、
図3(a)、3(b)、3(c)、3(d)、3(e)、及び3(f)のすべてに適用される。わかりやすくすることのみを目的として、それらはそれぞれ1回のみ入力されている。
【0127】
図3(a)は、肝胆道造影剤の静脈投与前の肝臓を通過する断面図を示す(生画像)。
図3(a)と3(b)によって描かれた時点の間の時点で、肝胆道造影剤をボラスとして静脈(例えば、腕の静脈に)投与した。これは
図3(b)で肝動脈(A)を通って肝臓に到達する。したがって、肝動脈(A)はシグナル増強して描かれている(動脈相)。主に動脈を介して血液が供給される病変も同様に、より明るい(シグナル増強された)領域として健常肝細胞組織(L)及び参照組織(R)から浮き出ている。
図3(c)に描かれた時点で、造影剤は静脈(V)を介して肝臓に到達する。
図3(d)では、静脈血管(V)が明るい(シグナル増強)領域(門脈相)として肝臓組織(L)及び参照組織(R)から浮き出ている。同時に、主に静脈を介して造影剤が供給される健常肝細胞(L)のシグナル強度は連続的に上昇する(
図3(c)→3(d)→3(e)→3(f))。
図3(f)に描かれた肝胆道相では、肝細胞(L)がシグナル増強されて描かれており、血管、参照組織及び病変には造影剤がないため、暗く描かれている。
【0128】
図3の病変(HCC)が肝細胞癌であるか否かという疑問が生じる。
【0129】
図4では、
図3(a)、3(b)、3(c)、3(d)、及び3(e)に示されている画像が、より小さい縮尺でもう一度描かれている。それらには、参照符号(a)、(b)、(c)、(d)、及び(e)が付けられている。
【0130】
シグナル強度SBは、病変を表す画像内の領域について確認することができる。確認できるものは、画像(a)のシグナル強度SB
(a)、画像(b)のシグナル強度SB
(b)、画像(c)のシグナル強度SB
(c)、画像(d)のシグナル強度SB
(d)、及び画像(e)のシグナル強度SB
(e)である。シグナル強度は、例えば、領域を表すピクセル/ボクセルのグレー値又はカラー値であり得る。
【0131】
同様に、シグナル強度SRは、参照組織を表す画像内の領域について確認することができる。確認できるものは、画像(a)のシグナル強度SR
(a)、画像(b)のシグナル強度SR
(b)、画像(c)のシグナル強度SR
(c)、画像(d)のシグナル強度SR
(d)及び画像(e)のシグナル強度SR
(e)である。シグナル強度は、例えば、領域を表すピクセル/ボクセルのグレー値又はカラー値であり得る。
【0132】
病変が肝細胞癌であるか否かの問題を解決するために、病変を表す領域のシグナル強度を、具体的には動脈相AP時に少なくとも一つの画像について、そして門脈相PVP時に少なくとも一つの画像について及び/又は移行相TP時に少なくとも一つの画像について、参照組織を表す領域でのシグナル画像と比較する。病変を表す領域のシグナル強度SB
(b)が参照組織を表す領域のシグナル強度SR
(b)より大きいか否かに関してチェックを行う。もしそうであれば、その病変が肝細胞癌であることを示す第1の兆候がある。そうでない場合は、さらにシグナル強度をチェックする必要はなく、肝細胞癌は除外できる。
【0133】
画像(d)は門脈相PVPを表す。病変を表す領域のシグナル強度SB
(d)が基準組織を表す領域のシグナル強度SR
(d)より小さいか否かをチェックする。もしそうであれば、その病変が肝細胞癌であるという第2の兆候がある。第1及び第2の兆候が存在する場合、本発明によれば、その病変は肝細胞癌であることが示される。第1の兆候のみが存在し、第2の兆候が存在しない場合は、移行相TPを見る。画像(e)は移行相TPを表す。病変を表す領域のシグナル強度SB
(e)が参照組織を表す領域のシグナル強度SR
(e)より小さいか否かをチェックする。SB
(e)がSR
(e)より小さく、第1の兆候も存在する場合、本発明によって示されるものは、その病変が肝細胞癌であるということである。
【0134】
病変が肝細胞癌であることが本発明に従ってその病変について確認された場合、肝細胞癌の指標が存在するというメッセージを出力することができる。好ましく出力されるのは、肝細胞癌の指標が存在する病変がマークされている、患者の肝臓又は肝臓の一部の画像である。たとえば、関連する病変を色でマークすることができる。
【0135】
本発明は、コンピュータシステムを利用して実行することができる。
【0136】
「コンピュータシステム」とは、プログラム可能な計算規則によってデータを処理する電子的データ処理システムである。そのようなシステムは通常、論理演算を実行するためのプロセッサを含むユニットである「コンピュータ」と周辺機器も含む。
【0137】
コンピュータ技術では、「周辺機器」とは、コンピュータに接続されていて、コンピュータを制御するために使用される及び/又は入出力デバイスとして使用される全てのデバイスを指す。その例は、モニタ(スクリーン)、プリンタ、スキャナ、マウス、キーボード、ドライブ、カメラ、マイクロホン、スピーカ等である。内部ポート及び拡張カードもまた、コンピュータ技術では周辺機器と見なされる。
【0138】
今日のコンピュータシステムは一般に、デスクトップPC、ポータブルPC、ラップトップ、ノートブック、ネットブック及びタブレットPC、及びいわゆるハンドヘルド(例えば、スマートフォン)に細分類され、そのようなシステムは全て、本発明の実施に使用することができる。
【0139】
コンピュータシステムへの入力は、例えば、キーボード、マウス、マイクロホン、タッチセンサ式ディスプレイ及び/又は等などの入力手段を介して達成される。
【0140】
出力は、モニタ、プリンタ又はデータ記憶媒体上で達成することができる。
【0141】
図5は、本発明によるコンピュータシステムの1実施形態を、模式的にそして例として示すものである。コンピュータシステム(10)は、受信ユニット(11)、制御・計算ユニット(12)、及び出力ユニット(13)を含む。
【0142】
本発明によるコンピュータシステム(10)は、患者の肝臓又は肝臓の一部の画像を受信し、肝細胞癌を示す画像内の1以上の領域を識別するように構成されている。
【0143】
制御・計算ユニット(12)は、受信ユニット(11)及び出力ユニット(13)の制御、各種ユニット間のデータ及びシグナルフローの調整、画像の処理及びシグナル強度の比較の確認に役立つ。複数の制御・計算ユニットが存在することが考えられる。
【0144】
受信ユニット(11)は、画像を受信する機能を行う。その画像は、たとえば、磁気共鳴画像法システムから送信されたり、データ記憶媒体から読み取ったりすることができる。磁気共鳴画像法システムは、本発明によるコンピュータシステムの構成要素であることができる。しかしながら、本発明によるコンピュータシステムが磁気共鳴画像法システムの構成要素であることも考えられる。画像は、ネットワーク接続又は直接接続を介して送信することができる。画像は、無線通信(WLAN、ブルートゥース、モバイル通信及び/又はなど)及び/又はケーブルを介して送信することができる。受信ユニットが複数存在することが考えられる。データ記憶媒体も、本発明によるコンピュータシステムの構成要素であることができ、例えばネットワークを介してコンピュータシステムに接続されていることができる。複数のデータ記憶媒体が存在することが考えられる。
【0145】
画像の可能であればさらなるデータ(例えば、検査対象に関する情報、画像取得パラメータなど)が受信ユニットによって受信され、制御・計算ユニットに送信される。
【0146】
制御・計算ユニットは、受信したデータに基づいて、肝細胞癌を示す領域を特定するように構成されている。
【0147】
出力ユニット(13)を介して、分析結果は、表示(例えばモニタ上)、出力(例えばプリンタを介して)、又はデータ記憶媒体に記憶させることができる。複数の出力ユニットが存在することが考えられる。
【0148】
本発明のさらなる実施形態は次のものである。
【0149】
1.
-造影磁気共鳴画像検査を受けた患者の肝臓又は肝臓の一部の複数の画像を受信する段階であって、少なくとも一つの画像が門脈相時に患者の肝臓又は肝臓の一部を表し、少なくとも一つの画像が移行相時に肝臓又は肝臓の一部を表す段階、
-肝臓における1以上の領域であって、造影剤が門脈相及び/又は移行相で、参照組織より低いコントラスト増強をもたらし、及び/又は門脈相及び/又は移行相でのコントラスト増強が参照組織より急速に低下し、参照組織が肝細胞を含まず、及び/又は門脈相及び/又は移行相において低下するコントラスト増強の勾配の絶対値が健常肝臓組織で上昇するコントラスト増強の勾配の絶対値より大きい、肝臓における1以上の領域を識別する段階、
-肝臓又は肝臓の一部の画像を出力する段階であって、前記識別された領域が強調表示される、又は前記複数の識別された領域が強調表示される段階
を含むコンピュータ実行方法。
【0150】
2.前記造影剤が肝胆道造影剤、好ましくはガドキセト酸の二ナトリウム塩である、実施形態1による方法。
【0151】
3.前記参照組織が筋肉組織である実施形態1及び2のいずれかによる方法。
【0152】
4.
-患者の肝臓又は肝臓の一部の前記複数の画像を受信する段階であって、少なくとも二つの画像が門脈相時の肝臓又は肝臓の一部を表し、少なくとも二つの画像が移行相時の肝臓又は肝臓の一部を表す段階、
-前記複数の受信した画像を分析し、そうする際に、門脈相及び/又は移行相でのコントラスト増強が参照組織より急速に低下し、参照組織が肝細胞を含まず、及び/又は門脈相及び/又は移行相において低下するコントラスト増強の勾配の絶対値が健常肝臓組織で上昇するコントラスト増強の勾配の絶対値より大きい肝臓における一つの領域又は複数の領域を識別する段階、
-肝臓又は肝臓の一部の画像を出力する段階であって、前記識別された領域が強調表示される、又は前記複数の識別された領域が強調表示される段階
を含む、実施形態1~3のいずれか一つによる方法。
【0153】
5.
-動脈相時に肝臓又は肝臓の一部を表す肝臓又は肝臓の一部の少なくとも一つの画像を受信する段階、
-肝臓における1以上の領域を識別する段階であって、前記領域/複数領域が、次の特徴:
〇造影剤が動脈相において第1の参照組織より高いコントラスト増強をもたらし、前記第1の参照組織が健常肝臓組織又は筋肉組織である、及び
〇造影剤が門脈相及び/又は移行相において第2の参照組織より低いコントラスト増強をもたらし、前記第2の参照組織が筋肉組織である、及び/又は
〇門脈相及び/又は移行相でのコントラスト増強が前記第2の参照組織より急速に低下する、及び/又は
〇門脈相及び/又は移行相での低下するコントラスト増強の勾配の絶対値が健常肝臓組織での上昇するコントラスト増強の勾配の絶対値より大きい
によって特徴付けられる段階、
-肝臓又は肝臓の一部の画像を出力する段階であって、前記識別された領域が強調表示される、又は前記複数の識別された領域が強調表示される段階
をさらに含む、実施形態1~4のいずれか一つによる方法。
【0154】
6.
●受信ユニット、
●制御・計算ユニット及び
●出力ユニット
を含むコンピュータシステムであって、
-前記制御・計算ユニットが、前記受信ユニットに、患者の肝臓又は肝臓の一部の複数の画像を受信させるように構成されており、少なくとも一つの画像が門脈相時における肝臓又は肝臓の一部を表し、少なくとも一つの画像が移行相時における肝臓又は肝臓の一部を表し、
-前記制御・計算ユニットが、造影剤が門脈相及び/又は移行相において参照組織より低いコントラスト増強をもたらし、及び/又は門脈相及び/又は移行相でのコントラスト増強が参照組織より急速に低下し、参照組織が肝細胞を含まず、及び/又は門脈相及び/又は移行相での低下するコントラスト増強の勾配の絶対値が健常肝臓組織での上昇するコントラスト増強の勾配の絶対値より大きい、肝臓における1以上の領域を識別するよう構成されており、
-前記制御・計算ユニットが、前記出力ユニットに、肝臓又は肝臓の一部の画像を出力させるように構成されており、前記識別された領域が強調表示される、又は前記複数の識別された領域が強調表示される、コンピュータシステム。
【0155】
7.コンピュータのメモリーにロードできるコンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品であって、当該プログラムが、前記コンピュータに、次の段階:
-患者の肝臓又は肝臓の一部の複数の画像を受信する段階であって、少なくとも一つの画像が門脈相時における肝臓又は肝臓の一部を表し、少なくとも一つの画像が移行相時における肝臓又は肝臓の一部を表す段階、
-造影剤が門脈相及び/又は移行相において参照組織より低いコントラスト増強をもたらし、及び/又は門脈相及び/又は移行相でのコントラスト増強が参照組織より急速に低下し、参照組織が肝細胞を含まず、及び/又は門脈相及び/又は移行相での低下するコントラスト増強の勾配の絶対値が健常肝臓組織での上昇するコントラスト増強の勾配の絶対値より大きい、肝臓における1以上の領域を識別する段階、
-肝臓又は肝臓の一部の画像を出力する段階であって、前記識別された領域が強調表示される、又は前記複数の識別された領域が強調表示される段階
を実行させるコンピュータプログラム製品。
【0156】
8.放射線検査方法での造影剤の使用であって、前記放射線検査方法が、次の段階:
-造影剤を投与する段階、
-患者の肝臓又は肝臓の一部の複数の画像を生成する段階であって、少なくとも一つの画像が門脈相時における肝臓又は肝臓の一部を表し、少なくとも一つの画像が移行相時における肝臓又は肝臓の一部を表す段階、
-造影剤が門脈相及び/又は移行相において参照組織より低いコントラスト増強をもたらし、及び/又は門脈相及び/又は移行相でのコントラスト増強が参照組織より急速に低下し、参照組織が肝細胞を含まず、及び/又は門脈相及び/又は移行相での低下するコントラスト増強の勾配の絶対値が健常肝臓組織での上昇するコントラスト増強の勾配の絶対値より大きい、肝臓における1以上の領域を識別する段階、
-肝臓又は肝臓の一部の画像を出力する段階であって、前記識別された領域が強調表示される、又は前記複数の識別された領域が強調表示される段階
を含む使用。
【0157】
9.放射線検査方法で使用するための造影剤であって、前記放射線検査方法が、次の段階:
-造影剤を投与する段階、
-患者の肝臓又は肝臓の一部の複数の画像を生成する段階であって、少なくとも一つの画像が門脈相時における肝臓又は肝臓の一部を表し、少なくとも一つの画像が移行相時における肝臓又は肝臓の一部を表す段階、
-造影剤が門脈相及び/又は移行相において参照組織より低いコントラスト増強をもたらし、及び/又は門脈相及び/又は移行相でのコントラスト増強が参照組織より急速に低下し、参照組織が肝細胞を含まず、及び/又は門脈相及び/又は移行相での低下するコントラスト増強の勾配の絶対値が健常肝臓組織での上昇するコントラスト増強の勾配の絶対値より大きい、肝臓における1以上の領域を識別する段階、
-肝臓又は肝臓の一部の画像を出力する段階であって、前記識別された領域が強調表示される、又は前記複数の識別された領域が強調表示される段階
を含む造影剤。
【0158】
10.造影剤及び請求項7に記載のコンピュータプログラム製品を含むキット。
【0159】
11.前記造影剤がガドキセト酸の二ナトリウム塩である、実施形態10によるキット。
【国際調査報告】