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特表2024-517824鋼板及び高強度プレス硬化鋼部品並びにその製造方法
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  • 特表-鋼板及び高強度プレス硬化鋼部品並びにその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】鋼板及び高強度プレス硬化鋼部品並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20240416BHJP
   C22C 38/54 20060101ALI20240416BHJP
   C21D 1/18 20060101ALI20240416BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20240416BHJP
   C21D 9/46 20060101ALN20240416BHJP
   C21C 5/46 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
C22C38/00 301S
C22C38/00 301T
C22C38/00 301Z
C22C38/00 301W
C22C38/54
C21D1/18 C
C21D9/00 A
C21D9/46 G
C21D9/46 J
C21D9/46 T
C21C5/46 103E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567985
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 IB2022053986
(87)【国際公開番号】W WO2022234413
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2021/053731
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コボ,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】スツビノ,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】リュカ,エマニュエル
【テーマコード(参考)】
4K037
4K042
4K070
【Fターム(参考)】
4K037EA01
4K037EA02
4K037EA06
4K037EA09
4K037EA11
4K037EA15
4K037EA17
4K037EA18
4K037EA19
4K037EA20
4K037EA23
4K037EA25
4K037EA27
4K037EA31
4K037EB05
4K037EB09
4K037EB11
4K037EB12
4K037FA02
4K037FA03
4K037FC03
4K037FC04
4K037FE01
4K037FE02
4K037FE03
4K037FG01
4K037FJ05
4K037GA05
4K037JA06
4K042AA25
4K042BA01
4K042BA02
4K042BA05
4K042CA02
4K042CA03
4K042CA06
4K042CA08
4K042CA09
4K042CA10
4K042CA12
4K042DA01
4K042DB07
4K042DC02
4K042DC03
4K042DD01
4K042DE02
4K070CD00
(57)【要約】
C:0.3~0.4%、Mn:0.5~1.0%、Si:0.4~0.8%、Cr:0.1~1.0%、Mo:0.1~0.5%、Nb:0.01~0.1%、Al:0.01~0.1%、Ti:0.008~0.03%、B:0.0005~0.003%、P≦0.020%、Ca≦0.001%、S≦0.004%、N≦0.005%を含み、任意に、Ni<0.5%を含む組成を有する鋼で作製された鋼板であって、表面分率で60%~95%のフェライトを含み、残余が、マルテンサイト-オーステナイト島、パーライト又はベイナイトである微細組織を有し、バルクと、バルクのそれぞれの面で厚さの最も外側の10%を占めるスキン層とを備え、前記スキン層が、酸化物の表面分率が60*10-6以下であるスキン層介在物集団を有する、鋼板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板であって、重量パーセントで、
C:0.3~0.4%
Mn:0.5~1.0%
Si:0.4~0.8%
Cr:0.1~1.0%
Mo:0.1~0.5%
Nb:0.01~0.1%
Al:0.01~0.1%
Ti:0.008~0.03%
B:0.0005~0.003%
P≦0.020%
Ca≦0.0010%
S≦0.004%
N≦0.005%、を含み、
且つ、任意に、
Ni<0.5%、を含む組成を有する鋼から作製され、
前記組成の残りが、鉄及び製錬から生じる不可避不純物であり、
前記鋼板が、表面分率で60%~95%のフェライトを含み、残余がマルテンサイト-オーステナイト島、パーライト又はベイナイトである微細組織を有し、
前記鋼板が、被覆鋼板のバルクから表面方向に、以下のものを備え:
-バルク、
-そのようなバルクが、前記バルクのそれぞれの面で、厚さの最も外側の10%を占めるスキン層によって覆われ、前記スキン層が、酸化物の表面分率が60*10-6以下であるスキン層介在物集団を有する、鋼板。
【請求項2】
少なくとも片面に金属コーティングをさらに含む、請求項1に記載の鋼板。
【請求項3】
プレス硬化鋼部品であって、前記鋼部品が、重量パーセントで、
C:0.3~0.4%
Mn:0.5~1.0%
Si:0.4~0.8%
Cr:0.1~0.4%
Mo:0.1~0.5%
Nb:0.01~0.1%
Al:0.01~0.1%
Ti:0.008~0.03%
B:0.0005~0.003%
P≦0.020%
Ca≦0.001%
S≦0.004%
N≦0.005%、を含み、
且つ、任意に、
Ni<0.5%、を含む組成を有し、
前記組成の残りが、鉄及び製錬から生じる不可避不純物であり、
前記鋼部品が、表面分率で95%を超えるマルテンサイト及び最大5%のベイナイト又はフェライトを含む微細組織を有し、
前記鋼部品が、前記鋼部品のバルクから表面方向に、以下のものを備え:
-バルク
-そのようなバルクが、前記バルクのそれぞれの面で、厚さの最も外側の10%を占めるスキン層によって覆われ、前記スキン層が、酸化物の表面分率が60*10-6以下であるスキン層介在物集団を有する、プレス硬化鋼部品。
【請求項4】
プレス硬化鋼部品が、少なくとも1800MPaの引張強度TS及び少なくとも50°の、1.5mmに正規化された圧延方向の曲げ角度を有する、請求項3に記載のプレス硬化鋼部品。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のプレス硬化鋼部品を製造するための方法であって、以下の連続したステップ:
-請求項1又は2に記載の鋼板を提供するステップ、
-鋼ブランクを得るために、前記鋼板を所定の形状に切断するステップ、
-前記鋼ブランクを880℃~950℃の温度に10秒~15分間加熱して、加熱された鋼ブランクを得るステップ、
-前記加熱されたブランクを成形プレスに移送するステップ、
-前記成形プレス中で前記加熱されたブランクを熱間成形して、成形部品を得るステップ、
-前記成形部品をダイクエンチするステップ、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板及び良好な曲げ特性を有する高強度プレス硬化鋼部品に関する。
【背景技術】
【0002】
高強度プレス硬化部品は、侵入防止又はエネルギー吸収機能のための自動車車両における構造要素として使用することができる。
【0003】
そのような種類の用途では、高い機械的強度と高い耐衝撃性とを組み合わせた鋼部品を生産することが望ましい。さらに、自動車産業における主要な課題のうちの1つは、安全要件を無視することなく、地球環境保全の観点から車両の燃費を改善するために車両の重量を減少させることである。
【0004】
この重量減少は、特に、主にマルテンサイト微細組織を有する鋼部品の使用のおかげで達成することができる。
【0005】
曲げ下での亀裂の形成に対する良好な耐性も有する非常に高強度の鋼を生産することは困難である。実際、非常に高強度の鋼は、曲げ荷重を受けたときに早期に亀裂が生じる傾向がある。これは、材料がその高い引張強度のおかげで非常に高い荷重に耐えることができるにもかかわらず、いったん部品に亀裂が現れ始めると、これらの亀裂が連続荷重下で急速に伝播し、部品が早期に故障するため、そのような高強度鋼で生産された部品の衝突耐性に有害である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述の課題に対処し、高い機械的特性と、1800MPa以上のホットスタンピング後の引張強度と、VDA-238規格によって測定される50°以上の1.5mmに正規化された圧延方向の曲げ角度との組み合わせを有するプレス硬化鋼部品を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、熱間成形によってそのようなプレス硬化鋼部品に変態することができる鋼板を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、請求項2の特徴を任意に有する、請求項1に記載の鋼板を提供することによって達成される。本発明の別の目的は、請求項3に記載のプレス硬化鋼部品を提供することによって達成される。鋼部品は、請求項4に記載の特性を備えることもできる。別の目的は、請求項5に記載の方法を提供することによって達成される。
【0009】
ここで、本発明を、本発明による鋼板の概略断面図である図1を参照して、限定を導入することなく、実施例によって詳細に説明し、例示する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による鋼板の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
鋼のブランクは、その使用に好適な任意の形状に切断された鋼の平鋼を指す。ブランクは、上面及び下面を有し、上側面及び下側面又は上表面及び下表面とも呼ばれる。前記面の間の距離は、ブランクの厚さとして指定される。厚さは、例えばマイクロメータを使用して測定することができ、そのスピンドル及びアンビルは、上面及び下面に配置される。同様に、厚さは、成形部品上で測定することもできる。
【0012】
ホットスタンピングは、鋼の微細組織が少なくとも部分的にオーステナイトに変態する温度までブランクを加熱することと、ブランクをスタンピングすることによって高温でブランクを形成することと、成形部品を急冷して非常に高い強度を有する微細組織を得ることと、を伴う成形技術である。ホットスタンピングは、複雑な形状を有する非常に高強度の部品を得ることを可能にし、多くの技術的利点を提示する。部品が受ける熱処理は、ホットスタンピング工程自体の上述の熱サイクルだけでなく、場合によっては、部品が塗装された後に塗料を焼付けるために実行される、例えば塗料焼付ステップなどの他の後続の熱処理サイクルも含むことを理解されたい。以下のホットスタンプされた部品の機械的特性は、例えば、塗料焼付が実際に実行された場合の塗料焼付ステップを任意に含む完全な熱サイクル後に測定されたものである。
【0013】
極限引張強度は、2009年10月に発行されたISO規格ISO6892-1に従って測定される。引張試験片は、ホットスタンプされた部品の平坦領域から切り出される。必要に応じて、小サイズの引張試験サンプルを採取して、部品上の利用可能な全平坦領域を収容する。
【0014】
曲げ角度は、VDA-238曲げ規格に従って測定される。同じ材料の場合、曲げ角度は、厚さに依存する。簡単にするために、本発明の曲げ角度値は、1.5mmの厚さを指す。厚さが1.5mmと異なる場合、以下の計算によって曲げ角度値を1.5mmに正規化する必要があり、式中、α1.5は1.5mmで正規化された曲げ角度であり、tは厚さであり、αtは厚さtに対する曲げ角度である:
α1.5=(αt×√t)/√1.5
本発明では、曲げ角度は、圧延方向、すなわち熱間圧延ステップ中に鋼板が移動した方向で測定した。曲げ角度は、レーザ測定装置を使用して測定した。ホットスタンプされた部品に対して曲げ試験を実行するとき、サンプルは、部品の平坦領域から切り出される。必要に応じて、小サイズのサンプルを採取して、部品上の利用可能な全平坦領域を収容する。ホットスタンプされた部品上の圧延方向が分からない場合、走査型電子顕微鏡(SEM)でサンプルの断面にわたって電子後方散乱回折(EBSD)分析を使用して決定することができる。圧延方向は、φ2=45°での主繊維を表す配向分布関数(ODF)の強度に従って決定され、式中、φ2は「H.-J.Bunge:Texture Analysis in Materials Science-Mathematical Methods.1st English Edition by Butterworth Co(Publ.)1982」で定義されるオイラー角である(φ2の定義については図2.2及び図2.3を参照)。
【0015】
部品の曲げ角度は、部品が亀裂を形成することなく変形に耐える能力を表す。
【0016】
次に、本発明による鋼の組成を説明するが、含有量は、重量パーセントで表される。化学組成は、組成範囲の下限及び上限に関して与えられ、前記限界は、本発明による可能な組成範囲内に含まれる。
【0017】
本発明によれば、炭素は、満足のいく強度を確保するために0.3%~0.4%の範囲である。炭素が0.4%を超えると、鋼板の溶接性及び曲げ性が低下する場合がある。炭素含有量が0.3%未満であると、引張強度が目標値に達しない。
【0018】
マンガン含有量は、0.5%~1.0%の範囲である。添加量が1.0%を超えると、MnS形成のリスクが、曲げ性の損失を増加させる。0.5%未満では、鋼板の焼入れ性が低下する。
【0019】
ケイ素含有量は、0.4%~0.8%の範囲である。ケイ素は、固溶体中の硬化に関与する元素である。ケイ素は、炭化物の形成を制限するために添加される。0.8%を超えると、酸化ケイ素が表面に形成され、これは鋼の被覆性を損なわせる。また、鋼板の溶接性が低下する場合がある。
【0020】
クロム含有量は、0.1%~1.0%の範囲である。クロムは、固溶体中の硬化に関与する元素であり、十分な強度を確保するために0.1%より高くなければならない。クロム含有量は、加工性の問題及びコストを制限するために、好ましくは、0.4%未満である。好ましくは、クロム含有量は、0.1%~0.4%の範囲である。
【0021】
モリブデン含有量は、0.1%~0.5%の範囲である。モリブデンは、鋼の焼入れ性を改善する。0.1%未満では、引張強度に達しない。モリブデンは、コストを制限するために、好ましくは、0.4%以下である。
【0022】
ニオブは、0.01%~0.1%の範囲である。ニオブは、鋼の延性を改善する。0.1%を超えると、NbC又はNb(C、N)炭化物の形成のリスクが、曲げ性の損失を増加させる。好ましくは、ニオブ含有量は、0.03%~0.06%の範囲である。
【0023】
本発明によれば、アルミニウム含有量は、製錬中に液相中の鋼を脱酸素するための非常に有効な元素であるため、0.01%~0.1%の範囲である。アルミニウムは、チタン含有量が十分でない場合、ホウ素を保護することができる。アルミニウム含有量は、プレス硬化中の酸化問題及びフェライト形成を回避するために0.1%未満である。好ましくは、アルミニウム含有量は、0.03%~0.05%の範囲である。
【0024】
本発明によれば、チタン含有量は、BN析出物内に捕集されるホウ素を保護するために0.008%~0.03%の範囲である。チタン含有量は、過剰なTiN形成を回避するために、0.03%に制限される。さらにより詳細に説明するように、Tiを添加する前に溶鋼のNレベルを測定することによって、残留N含有量を捕捉するために適切な量のTiを添加することが可能である。
【0025】
本発明によれば、ホウ素含有量は、0.0005%~0.003%の範囲である。ホウ素は、鋼の焼入れ性を改善する。ホウ素含有量は、連続鋳造中のスラブ破壊の問題を回避するために、0.003%以下である。
【0026】
リンは、脆弱性及び溶接性の問題をもたらすので、0.020%未満に制御される。
【0027】
溶鋼中のカルシウムの存在は、曲げ性に有害な粗い析出物の形成をもたらす可能性があるので、カルシウムは、0.001%未満に制御される。
【0028】
溶鋼中の硫黄の存在は、曲げ性に有害なMnS析出物の形成をもたらす可能性があるので、硫黄は、0.004%未満に制御される。
【0029】
窒素は、0.005%未満、優先的には、0.004%未満、さらにより優先的には、0.003%未満に制御される。窒素の存在は、曲げ性に有害なTiN又はTiNbCNなどの析出物の形成をもたらす可能性がある。
【0030】
ニッケルは、任意に、0.5%のレベルまで添加される。ニッケルは、鋼を遅延亀裂から保護するために使用することができる。
【0031】
鋼の組成の残りは、鉄及び製錬に起因する不純物である。
【0032】
次に、本発明による被覆鋼板の微細組織について説明する。
【0033】
鋼板は、表面分率で60%~95%のフェライトを含み、残余は、マルテンサイト-オーステナイト島、パーライト又はベイナイトである微細組織を有する。
【0034】
フェライトは、冷延鋼板の変態区間焼鈍中に形成される。微細組織の残余は、均熱の終わりのオーステナイトであり、これは鋼板の冷却中にマルテンサイト-オーステナイト島、パーライト又はベイナイトに変態する。
【0035】
鋼板微細組織中のフェライトの総量は、化学組成、焼鈍温度TA及び均熱時間tAの関数である。700℃~850℃の範囲の焼鈍温度TAが最も高く、10秒~20分の範囲の時間tAの時間が最も長い場合、焼鈍中により多くのオーステナイトが形成される。焼鈍後、形成されたオーステナイトのマルテンサイト、ベイナイト又はフェライトへの変態は、主に冷却速度に依存する。好ましくは、可能な限り多くの軟質相(フェライト、ベイナイト)を形成するために、冷却速度は10℃/s未満であるこれにより、ホットスタンピング前の鋼板の良好な加工性が可能になる。
【0036】
図1を参照すると、本発明による鋼板1は、バルク部分3と、上部及び下部スキン層2とを備える。前記鋼板1の総厚は、t0であり、前記スキン層2の厚さtsは、ts=t0*10%になるようなものである。言い換えれば、前記スキン層2は、前記バルクのそれぞれの面で、前記厚さの最も外側の10%を占める。
【0037】
前記スキン層2は、酸化物の表面分率が60*10-6以下であるスキン層介在物集団を有する。前記介在物集団を測定するために使用される方法を以下にさらに詳述する。
【0038】
本発明者らは、曲げ角度とスキン層介在物集団、特に酸化物集団との間に相関関係があることを見出した。前記スキン介在物集団を制御することにより、例えば引張強度などの他の製品特性に悪影響を及ぼすことなく曲げ角度を改善することが可能である。
【0039】
以下は、鋼板及び鋼部品中の介在物を特徴付けるために使用された方法論の説明である。これは、1つの可能な方法論にすぎず、他のプロトコルも実装できることを理解されたい。
【0040】
鋼板中に存在する介在物は、電界効果銃(FEG)を備えた走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して特徴付けられている。Tescan Mira 3 SEMを14kVの電力設定で使用した。さらに、介在物は、エネルギー分散分光法(EDS)を使用して分析した。120mmのBruker EDSプローブを使用した。
【0041】
サンプルを3つの領域(前述のような上部スキン、下部スキン、バルク)に分割する。各領域は、フィールドに分割される。各フィールドにおいて、介在物が検出される。各介在物にズームを行って形態学的特徴を捕らえ、EDS分析を実行する。粒子を捕らえるために二重階調閾値が設定される(0~255までのスケールで、0は黒であり、255は白である):
-<150の階調を有する酸化物などの古典的な暗い粒子
-階調が>220のNbC粒子などの明るい粒子
EDSプローブの情報、形状及び輝度レベルを使用して、各粒子は、次いで、以下のTiN、NbC、TiNbCN、アルミナ、複合酸化物、硫化物、MnSのカテゴリのうちの1つに分類される。
【0042】
次のステップは、一連の介在物全体及び各粒子ファミリーについて、以下の特性を算出することである:
-ミクロン単位の平均直径
-介在物の数の密度/mm
-所与の介在物ファミリーによって占有される表面積のすべての分析フィールド上の総合計をすべての分析領域の全表面で割ったものとして定義される、介在物の表面分率。介在物の表面分率は、以下の式(ここでは「X」と呼ばれる種類の粒子について)を使用して計算することができる:
【0043】
【数1】
【0044】
介在物の表面分率は、粒子の密度レベル及びそれらの平均サイズの両方に関する単一のパラメータ情報を組み合わせる。本発明者らは、介在物の表面分率が清浄度の良好な指標であり、特定の介在物の場合、曲げ角度などのいくつかの重要な使用時特性と良好に相関することを見出した。
【0045】
本発明による被覆鋼板は、任意の適切な製造方法によって生産することができ、当業者は、これを定義することができる。しかしながら、以下に記載されるステップを含む本発明による方法を使用することが好ましい。
【0046】
以下の説明において、取鍋という用語は、精錬工程中に溶鋼を収容するために使用される容器を指す。タンディッシュという用語は、鋳型に鋳造する前に溶鋼が注入される容器を指す-タンディッシュは、連続鋳造に使用される:それは、1つの取鍋を注入し終えてから次の取鍋を開くまでの間に鋳造に利用可能な溶鋼の緩衝材を有することを可能にする。
【0047】
さらに熱間圧延することができる半製品には、上述の鋼組成が提供される。介在物集団を管理するために、前記半製品の精錬、特に液相及び鋳造中に特に注意を払うべきである。
【0048】
第1の実施形態では、溶鋼精錬工程は、以下のステップを含む:
-酸素吹込によって転炉で銑鉄が脱炭された後、この段階で粗鋼を脱酸するAl又はSi若しくはMnなどの他のいかなる脱酸元素も添加することなく、溶鋼を取鍋に出銑する。これにより、その後の溶鋼の窒素ピックアップを最小限に抑えることが可能になる。
【0049】
-主な合金元素、特にTiではなくMn、Si、Cr、Mo、Nb及びBは、例えば、Ruhrstahl Heraeus(RH)真空脱ガス系又は真空タンク脱ガス装置(VTD)を使用して、真空下で溶鋼中に組み込まれる。これにより、他の利点の中でも、低い窒素含有量を確保することが可能になる。
【0050】
-所望の非常に低い硫黄レベルに達するために、前記真空脱ガスステップの後に脱硫ステップが実行される。脱硫ステップは、溶鋼と、例えばCaO系フラックスなどの熱にフラックスを添加することによって形成されたスラグとの間の交換を伴う。これらのフラックスは、脱硫ステップの前に、例えば転炉後の出銑中に添加することができる。
【0051】
-脱硫ステップ後にTiを添加する。Tiは、例えば、半製品中にTiNの形態のNを沈殿させるのにちょうど良い量のTiを添加するために、測定された窒素組成を使用することによって添加される。例えば、添加されたTiの量は、重量パーセントで、脱硫後に測定された窒素の量の3.42倍に等しいか、又はそれを少し上回る。
【0052】
-プレス硬化部品の曲げ性能に有害となる可能性があるアルミン酸カルシウムの量を最小限に抑えるために、Ca含有添加(例えば、SiCa、FeCa又は純粋なCaなど)は、実行しない。目標とする組成及び方法を使用して達成される非常に低いSレベルのおかげで、生産された鋼は、低いMnS集団を含有する。
【0053】
-介在物の浮選を促進するために最小時間が提供される。介在物浮選は、鋼よりも密度が低いおかげで、溶鋼中の介在物が溶鋼を覆うスラグに浮上する現象を呼ぶ。介在物がスラグに捕集されると、それらは、溶鋼から除去され、半製品に鋳造されず、それによって介在物集団が減少する。本発明者らは、前記介在物浮選時間が鋼板のスキン層中の酸化物の表面分率と相関することを見出した。前記介在物浮選時間の決定は、鋼を製造するために使用される特定の工程経路及び設備に依存する。例えば、真空脱ガス装置を使用してMn、Si、Cr、Mo、Nb及びBの添加を行い、真空脱ガス装置の後に溶鋼をさらに脱硫する上記の場合、介在物浮選時間は:
-Mn、Si、Cr、Mo、Nb及びBを添加した後に真空脱ガス装置で費やされる時間(前記元素の添加自体がスラグに浮遊する必要がある介在物粒子を核生成させる可能性があるため、合金元素を添加した後に時間が測定される)、
-脱硫ステップに費やされる時間、
-脱硫ステップと連続鋳造作業自体との間の保持時間、の合計である。前記保持は、脱硫後の制御された不活性ガス注入を使用する緩やかな撹拌、脱硫ステーションと連続鋳造作業との間の取鍋輸送ステップ、連続鋳造ステップでの待ち時間などを含むことができる。連続鋳造ステップは、取鍋が開放されて鋳造タンディッシュへの注入を開始するときに開始する。
【0054】
第2の実施形態では、溶鋼精錬工程は、以下のステップを含む:
-酸素吹込によって転炉で銑鉄が脱炭された後、溶鋼は取鍋に出銑される。任意に、この段階で、合金元素の一部を添加することができ、例えば鋼のMo、Cr及びMn含有量の少なくとも一部を添加することができる。
【0055】
-次いで、所望の非常に低い硫黄レベルに達するために、脱硫ステップが実行される。脱硫ステップは、溶鋼と、例えばCaO系フラックスなどの熱にフラックスを添加することによって形成されたスラグとの間の交換を伴う。これらのフラックスは、脱硫ステップの前に、例えば転炉後の出銑中に添加することができる。
【0056】
-主な合金元素、特にMn、Si、Cr、Mo、Nb及びBは、この段階ではTiではなく、真空下で、例えばRH真空脱ガス系又はVTDを使用して、溶鋼に組み込まれる。主合金元素を添加した後、鋼は、真空下で撹拌され、これは撹拌ステップとして知られている。例えば、RH真空脱ガス系を使用する場合、真空容器のシュノーケル内の溶鋼の循環によって系中で撹拌が自然に誘発される。VTDを使用する場合、撹拌は、例えば、溶鋼の内部にアルゴンをバブリングすることによって誘発することができる。この撹拌ステップは、溶鋼内に合金元素を均一に分配する役割及び介在物の浮選を促進する役割の両方を果たす。
【0057】
-Tiは、真空脱ガス工程の終わりに添加される。例えば、ちょうど良い量のTiを添加して半製品中にTiNの形態のNを沈殿させるために、測定された窒素組成を使用して添加された量のTiが添加される。例えば、添加されるTiの量は、重量パーセントで、撹拌ステップの終わりに測定された窒素の量の3.42倍に等しいか、又はそれを少し上回る。
【0058】
-プレス硬化部品の曲げ性能に有害となる可能性があるアルミン酸カルシウムの量を最小限に抑えるために、Ca含有添加(例えば、SiCa、FeCa又は純粋なCaなど)は、実行しない。目標とする組成及び方法を使用して達成される非常に低いSレベルのおかげで、生産された鋼は、低いMnS集団を含有する。本発明者らは、そのような低いMnS含有量では、MnS集団を球状化するためにCaを添加しなくても曲げ性能が非常に良好であることを見出した。
【0059】
-第1の実施形態と同様に、介在物の浮選を促進するために最小限の時間が提供される。真空下で主合金元素を添加する前に溶鋼が脱硫されるこの第2の実施形態では、介在物浮選時間は:
-Mn、Si、Cr、Mo、Nb及びBを添加した後に真空脱ガス装置に費やされる時間、
-真空脱ガス装置と連続鋳造作業自体との間の保持時間、の合計である。前記保持は、真空脱ガス装置と連続鋳造作業との間の取鍋輸送ステップ、連続鋳造ステップでの待機時間などを含むことができる。連続鋳造ステップは、取鍋が開放されて鋳造タンディッシュへの注入を開始するときに開始される。
【0060】
より一般的には、例えば真空脱ガス装置を使用して、真空下でMn、Si、Cr、Mo、Nb及びBの主添加を実行することによって鋼を精錬することが好ましい。これにより、鋼中の窒素含有量を低くすることが可能になり、ひいては鋼中の窒素含有介在物をより良好に制御することが可能になる。
【0061】
より一般的には、介在物浮選時間は、Mn、Cr、Si、Mo、Nb及びBが添加された後かつ鋳造ステップが開始する前に溶鋼が費やす時間の総量として定義される。
【0062】
鋼板のスキン中の介在物表面分率を制御するために、介在物浮選時間は、最小介在物浮選時間tfを超えて制御されるべきである。tfの値は、鋼を生産するために使用される特定の工業用セットアップに依存する。それは、製鋼所における生産経路及び溶鋼を加工するために使用される取鍋の幾何学的構成に依存する。介在物浮選時間は、溶鋼内の流体力学及び小粒子の移動に関連するため、鋼のスキン中の特定の介在物の所望のレベルに達するのに必要な最小介在物浮選時間は、取鍋のサイズ、その直径、高さ、体積などに依存する。例えば、最小介在物浮選時間は、60分である。例えば、最小介在物浮選時間は、53分である。
【0063】
所与の鋼組成並びに所与の産業設備及び生産経路の最小介在物浮選時間tfを決定するために、以下の方法を適用することが推奨される:
-同じ化学組成目標を使用していくつかの加熱を実行する
-前記熱は、異なる介在物浮選時間を使用して生産される。例えば、工業的経路の最小実現可能な介在物浮選時間に対応する最小介在物浮選時間からの範囲の介在物浮選時間を使用して一連の加熱が実行され、次いで、例えば10分の時間増分を使用して、増分的により長い介在物浮選時間が適用される。例えば、5つの異なる介在物浮選時間が5つの異なる熱に適用される。
【0064】
-前記熱は、以下に記載される工業的経路に従って加工され、鋼の介在物集団は、上述の方法を使用して特徴付けられる。
【0065】
-スキン層酸化物の表面分率及びそれぞれの介在物浮選時間を記録する。本発明者らは、前記スキン層酸化物表面分率と前記介在物浮選時間との間に相関関係があることを見出した。介在物浮選時間が長いほど、スキン層酸化物の表面分率は低くなる。最小介在物浮選時間tfは、それを超えるとスキン層酸化物表面分率が60*10-6以下になる介在物浮選時間として決定される。例えば、本発明者らは、本発明者らが利用可能であった特定の産業設備を使用し、第1の実施形態の加工経路を適用する場合、最小介在物浮選時間は、60分、優先的には53分であったことを見出した。これを以下の実施例に示す。
【0066】
溶鋼精錬ステップの後、本発明による鋼板を製造するための方法は、好ましくは以下のステップを含む:
-熱間圧延するのに好適な半製品への溶鋼の連続鋳造。鋳造工程中、酸素ピックアップ、したがって半製品中のより高い酸化物レベルを回避するために特に注意を払うべきである。例えば、半製品がタンディッシュに注がれた複数の熱の生成物を金型内で鋳造することによって連続的な順序で生産されたスラブである連続鋳造工程の場合、タンディッシュ中で特定の耐火物及びライニングを使用することができ、順序の最初のスラブ及び2つの異なる加熱の間の過渡スラブなどに特定の割当規則を使用することができる。
【0067】
-次いで、半製品を任意に1150℃~1300℃を含む温度で再加熱する。
【0068】
-次いで、鋼板は、800℃~950℃を含む仕上げ熱間圧延温度で熱間圧延される。
【0069】
-次いで、熱間圧延鋼を冷却し、670℃未満の温度Tcoilで巻き取り、任意に酸洗して酸化を除去する。
【0070】
-次いで、コイル状鋼板を任意に冷間圧延して、冷間圧延鋼板を得る。冷間圧延圧下率は、好ましくは、20%~80%の範囲である。20%未満では、その後の熱処理中の再結晶は、有利ではなく、これは鋼板の延性を損なう場合がある。80%を超えると、冷間圧延中にエッジ割れするリスクがある。
【0071】
-本発明の一実施形態では、焼鈍鋼板は、700℃~850℃を含む焼鈍温度TAに加熱され、10秒~20分を含む保持時間tAにわたって前記温度TAに維持される。
【0072】
-本発明の実施形態では、前記焼鈍鋼板は、400℃~700℃の温度範囲に冷却され、金属コーティングでさらに被覆される。
【0073】
要約すると、上記の方法は、好ましくは以下の連続するステップ:
-上記の化学組成を有する溶鋼を生産するステップであって、溶鋼精錬段階中に、真空脱ガス装置を使用してMn、Si、Cr、Mo、Nb及びBを添加し、最小介在物浮選時間tfが確保され、前記介在物浮選時間が、Mn、Si、Cr、Mo、Nb及びBを添加した後、かつ鋳造ステップが開始される前に溶鋼が費やす時間の総量であり、前記最小介在物浮選時間tfが、60*10-6以下のスキン層酸化物表面分率に達するのに必要な最小介在物浮選時間として定義される、ステップと、
-前記溶鋼を鋳造して、熱間圧延することができる半製品を得るステップと、
-任意に、半製品を1100℃~1300℃を含む温度Treheatで再加熱するステップと、
-800℃~950℃を含む仕上げ熱間圧延温度で半製品を熱間圧延するステップと、
-熱間圧延鋼板を670℃未満の巻取温度Tcoilで巻き取り、コイル状鋼板を得るステップと、
-任意に、コイル状鋼板を酸洗するステップと、
-任意に、コイル状鋼板を冷間圧延して、冷間圧延鋼板を得るステップと、
-任意に、熱間圧延鋼板又は冷間圧延鋼板を700℃~850℃を含む焼鈍温度Tまで加熱し、鋼板を前記温度Tで10秒~20分を含む保持時間tにわたって維持して、焼鈍鋼板を得るステップと、
-任意に、前記焼鈍鋼板を400℃~700℃の温度範囲に冷却するステップと、
-任意に、焼鈍鋼板を金属コーティングで被覆するステップと、
-任意に、被覆鋼板を室温に冷却するステップと、を含む。
【0074】
次に、プレス部品の製造工程及びその後のプレス部品の特性について詳述する。
【0075】
本発明による鋼板から鋼ブランクを切り出し、焼鈍炉内で加熱する。好ましくは、鋼ブランクを、880℃~950℃を含む温度まで10秒~15分間加熱して、加熱された鋼ブランクを得る。次いで、加熱されたブランクは、熱間成形され、ダイクエンチされてプレス部品を得る前に成形プレスに移送される。
【0076】
プレス部品の微細組織は、表面分率で、95%を超えるマルテンサイト及び5%未満のベイナイト+フェライトを含む。さらに、本発明によるプレス部品は、バルク部分と、上部及び下部スキン層とを備え、前記スキン層は、前記バルクのそれぞれの面で、前記厚さの最も外側の10%を占める。前記スキン層は、酸化物の表面分率が60*10-6以下であるスキン層介在物集団を有する。
【0077】
本発明によるプレス部品は、少なくとも50°の1.5mmに正規化された圧延方向の曲げ角度及び少なくとも1800MPaの引張強度TSを有する。そのような高い引張強度及び曲げ角度は、特に衝突の場合に非常に良好な機械的抵抗を前記部品に付与する。それらは、非常に良好なエネルギー吸収容量及び耐侵入容量を提供し、それによって車両の安全性を高める。
【実施例
【0078】
本発明を以下の実施例によって説明するが、これらは決して限定的なものではない。
【0079】
工業生産経路を使用して生産された鋼の8つの異なる熱A、B、C、D、E、F、G、Hに由来する8つの異なるサンプルを試験した。サンプルI1、I2、I3、I4、I5及びI6は、本発明によるものであり、サンプルR1、R2は参照サンプルである。
【0080】
表1-サンプル組成
試験した組成を以下の表にまとめ、元素含有量を重量パーセントで表す:
【0081】
【表1】
【0082】
表2-製鋼所工程パラメータ及びスキン層介在物
以下の工程パラメータを製鋼所で適用し、以下のスキン層介在物表面分率を観察した-下線の値は本発明によるものではない:
【0083】
【表2】
*RH=Mn、Si及びCrを添加した後のRH真空脱ガス装置工程時間
**DS=脱硫工程時間
***CC=脱硫の終わりと連続鋳造の開始との間に費やされた時間(=鋳造タンディッシュに注ぐための取鍋開口)。
【0084】
表3-さらなる工程条件
以下の工程パラメータを生産経路に沿って適用した:
【0085】
【表3】
【0086】
表4-微細組織、曲げ角度及び引張強度
以下の微細組織、曲げ角度及び引張強度をサンプルで測定したが、下線の値は本発明によるものではない:
【0087】
【表4】
【0088】
表4は、本発明によるサンプル(参照I1、I2、I3、I4、I5及びI6)が、それらの特定の組成及びスキン層介在物のおかげで、1800MPaを超える引張強度及び50°を超える1.5mmに正規化された圧延方向の曲げ角度を有することを示す。
【0089】
表2を参照すると、介在物浮選時間とスキン層酸化物表面分率との間には関係がある。介在物浮選時間は、Mn、Cr、Si、Mo、Nb及びBを添加した後、かつ連続鋳造ステップが開始する前に溶鋼が費やす時間の総量を表す。
【0090】
本発明者らは、本発明の特定の組成物を使用する場合、及び最小介在物浮選時間tfを超えて介在物浮選時間を増加させる場合、良好な耐曲げ性を確保する臨界レベル未満にスキン層酸化物分率を制御することが可能であることを見出した。本実施例に示すサンプルを生産するために使用した工業的構成では、最小介在物浮選時間tfは、53分である。tfの値は、鋼を生産するために使用される特定の工業用セットアップに依存する。
【0091】
介在物浮選時間がtf=60分以上である場合、スキン層酸化物表面分率は、60*10-6以下である。介在物浮選時間がtf=53分未満である場合、スキン層酸化物表面分率は、60*10-6を超える。
【0092】
本発明者らは、鋼が曲げ負荷を受けると、スキン層中の介在物表面分率が、亀裂形成に対する材料の耐性を改善するのに重要な役割を果たすことを見出した。驚くべきことに、これは、すべてのタイプの介在物に当てはまるわけではない。例えば、NbC介在物は、鋼の曲げ特性に大きな影響を与えないようである。一方、酸化物表面分率が曲げ性能に重要な役割を果たすことが見出された。酸化物表面分率の低減は、曲げ性能の改善に役立つ。
【0093】
表4を参照すると、すべてが60*10-6以下のスキン層酸化物表面分率を有する本発明によるサンプル(I1、I2、I3、I4、I5及びI6)は、すべて少なくとも50°の1,5mmに正規化された圧延方向の曲げ角度及び少なくとも1800MPaの引張強度を有する。一方、引張強度を1800MPa超に維持しながら、参照サンプル(R1、R2)はすべて、50°未満の1,5mmに正規化された圧延方向の曲げ角度を有する。したがって、本発明に従って生産された鋼は、非常に高い引張強度を示しながら、荷重を受けたときに亀裂形成に対してより良好な耐性を示し、これにより、前記材料を使用して生産された部品の耐衝撃性及び安全性が改善される。
図1
【国際調査報告】