(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】画像化された組織において病変を特徴づけるために3D形状及びテクスチャ特徴の記述子によってマイクロ波医用画像を処理するための医療機器及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0507 20210101AFI20240416BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240416BHJP
G06V 10/25 20220101ALI20240416BHJP
【FI】
A61B5/0507 100
G06T7/00 612
G06V10/25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568070
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 FR2022050864
(87)【国際公開番号】W WO2022234234
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515337763
【氏名又は名称】エムブイジー インダストリーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ファソウラ,アガチ
【テーマコード(参考)】
4C127
5L096
【Fターム(参考)】
4C127AA10
4C127CC06
4C127KK03
4C127KK05
5L096BA06
5L096CA18
5L096CA24
5L096DA01
5L096FA06
5L096FA34
5L096FA66
5L096FA69
5L096GA30
(57)【要約】
本発明は、マイクロ波医用画像処理装置によって、患者の体のゾーン、特に乳房のヒト組織の医用画像を処理する方法に関し、当該方法は、医用画像処理装置の処理ユニットにおいて実施される以下のステップ:- 患者の体のゾーンの少なくとも1つの初期のマイクロ波画像を使用して、少なくとも1つの関心領域を特定するステップ;- 少なくとも第1の形状特徴、好ましくは、各関心領域の固体性を決定するように、各関心領域のテクスチャに関連して少なくとも第2及び第3の特徴を決定するように、画像において特定された各関心領域を処理するステップであり、第1、第2、及び第3の特徴は、各関心領域を特徴づける座標である、ステップ;- 少なくとも3つの次元の空間において、その座標に基づき各関心領域を位置づけるステップであり、これらの次元は、それぞれ、少なくとも第1、第2、及び第3の特徴であり、上記の空間は、決定超曲面によって2つの連続的且つ別個の部分空間に分割され、その中に位置する関心領域が良性病変と関連するように1つの部分空間、及び、その中に位置する関心領域が悪性病変と関連するようにもう1つの部分空間に分割される、ステップ;を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって実施される、患者の体のゾーン、特に乳房のヒト組織のマイクロ波医用画像を処理する方法であって、
- 患者の体のゾーンの少なくとも1つの初期のマイクロ波画像から、少なくとも1つの関心領域を特定するステップと、
- 前記関心領域に関する3から5の特徴のみを決定するために、画像において特定された各関心領域を処理するステップであり、前記特徴は、
- 各関心領域の固体性に関するものを含む、少なくとも第1の形状特徴、
- 各関心領域のテクスチャに関する少なくとも第2及び第3の特徴であり、そのうちの2つは相関性及び忙しさである、少なくとも第2及び第3の特徴、
であり、第1、第2、及び第3の特徴は、各関心領域を特徴づける座標である、ステップと、
少なくとも3つの次元の空間において、その座標に基づき各関心領域を位置づけるステップであり、前記次元は、それぞれ、少なくとも第1、第2、及び第3の特徴であり、前記空間は、決定超曲面によって2つの連続的且つ別個の部分空間に分割され、その中に位置する関心領域が良性病変と関連するように1つの部分空間、及び、その中に位置する関心領域が悪性病変と関連するようにもう1つの部分空間に分割される、ステップ、
を含む方法。
【請求項2】
各関心領域に対して分類スコアを決定するステップを含み、悪性病変の確率に対応するスコアは、悪性病変のクラスに属する関心領域の事後確率である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記悪性病変の確率が50%以下の場合、関心領域は良性病変と関連し、前記悪性病変の確率が50%を超える場合、悪性病変と関連している、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の特徴は、特定の方向における関心領域の画素の強度間の空間関係の測定値である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第3の特徴は、前記関心領域の3つ以上の隣接画素群の強度間の空間関係の測定値である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
決定面が、関心領域の訓練について事前に訓練された単純ベイズ分類器によって又は二次判別分析分類器によって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
各関心領域の輪郭を精緻化するように各関心領域の処理ステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
画像化されることになるゾーンの少なくとも1つの初期画像を得るステップと、関心領域を特定するために各初期画像の形態学的処理を行うステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
複数の形態学的画像にわたって前記関心領域の持続性を評価することによって、前記関心領域を検証するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法を実施するように構成された処理ユニットを含む、医用画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波周波数帯域の電磁波を使用した医用画像処理の分野に関し、より具体的には、電磁波を透過するヒトの組織又は臓器の分析のための医用画像処理に関する。本発明は、特に乳房画像処理及び乳房病態の検出に適用される。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波画像処理技術は、電磁波を透過するヒト臓器の画像処理を可能にし、乳房画像処理及び乳がん等の病態検出の分野において有望な技術である。
【0003】
マイクロ波画像処理は、電磁波によって画像化されることになる臓器の全て又は一部を照射するように構成された放射プローブを使用する。放射波は、画像化されることになるゾーンを通過し、受信プローブによって受信される。プローブは、同時に放射及び受信を行うために相補的な様式で構成することができる。受信された波は、誘電コントラストの位置(例えば、乳房組織に位置するがん病変)で、遭遇した障害物における反射を経て画像化されることになるゾーンを通過している。このようにして、放射プローブと受信プローブとの間で測定された透過係数のセットは、病変に対応し得る関心領域が見られる臓器のゾーンのマイクロ波画像が再構成されるのを可能にする。
【0004】
再構成される画像の処理の質は、可能な限り最も信頼性の高い病変の検出を保証するために最も重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、マイクロ波画像処理の質を改善する必要性に取り組んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明は、第1の態様によると、マイクロ波医用画像処理装置によって、患者の体のゾーン、特に乳房からのヒト組織の医用画像を処理する方法を提案し、当該方法は、医用画像処理装置の処理ユニットにおいて実施される以下のステップ:
- 患者の体のゾーンの少なくとも1つの初期のマイクロ波画像から、少なくとも1つの関心領域を特定するステップ;
- 少なくとも1つの第1の形状特徴、好ましくは、各関心領域の固体性(solidity)を決定するように;
- 各関心領域のテクスチャに関する少なくとも1つの第2及び第3の特徴を決定するように;
画像上で特定された各関心領域を処理するステップであり、第1、第2、及び第3の特徴は、各関心領域を特徴づける座標である、ステップ;
- 少なくとも3つの次元を有する空間において、その座標から各関心領域を位置づけるステップであり、これらの次元は、それぞれ、少なくとも第1、第2、及び第3の特徴であり、上記の空間は、決定超曲面によって2つの連続的且つ別個の部分空間に分割され、その中に位置する関心領域が良性病変と関連するように1つの部分空間、及び、その中に位置する関心領域が悪性病変と関連するようにもう1つの部分空間に分割される、ステップ;
を含む。
【0007】
本発明は、有利に、個別に又はそれらのあり得る技術的組み合わせのいずれかにおいて採用される、以下の特徴によって補われる:
- 当該方法は、各関心領域に対して分類スコアを決定するステップを含み、悪性病変の確率に対応する上記のスコアは、悪性病変のクラスに属する関心領域に対する事後確率である;
- 悪性病変の確率が50%以下の場合、関心領域は良性病変と関連し、悪性病変の確率が50%を超える場合、悪性病変と関連している;
- 第2の特徴は、特定の方向における関心領域の画素の強度間の空間関係の測定値である;
- 第3の特徴は、関心領域の3つ以上の隣接画素群の強度間の空間関係の測定値である;
- 決定面が、関心領域の訓練について事前に訓練された単純ベイズ分類器によって又は二次判別分析分類器によって得られる;
- 当該方法は、各関心領域の輪郭を精緻化(refine)するように各関心領域の処理ステップを含む;
- 当該方法は、画像化されることになるゾーンの少なくとも1つの初期画像を得るステップと、関心領域を特定するために各初期画像の形態学的処理を行うステップとを含む;
- 当該方法は、複数の形態学的画像にわたって関心領域の持続性を評価することによって、関心領域を検証するステップを含む。
【0008】
本発明は、第2の態様によると、本発明の第1の態様による方法が少なくとも1つのプロセッサによって実行されるときに当該方法のステップを実行するためのプログラムコード命令を含むコンピュータプログラムプロダクトを提案する。
【0009】
本発明は、第3の態様によると、本発明の第1の態様による方法を実施するように構成された処理ユニットを含む医用画像処理装置を提案する。
【0010】
本発明は、組織のゾーンのマイクロ波画像において、良性型病変と悪性病変とを分離することを可能にする。
【0011】
この分離は、形状及びテクスチャに基づく特徴と、マイクロ波画像処理への適用との組み合わせによって可能になる。
【0012】
本発明は、マイクロ波画像上で特定された関心領域に適用される、少なくとも1つの形状抽出器(特に固体性)及び2つのテクスチャ特徴(特に相関性(correlation)及び忙しさ(busyness))を含む限られた数の特徴に基づいている。
【0013】
加えて、本発明は、低次元性空間を利用し:例えば3から5ほどの限られた数の特徴が、利用可能な限られた数のデータに関連して抽出されるが、基礎となる物理現象(関心領域の形状(少なくとも1つ)及び不均一性(少なくとも2つ))をより良く理解するためにも抽出される。少ない数の特徴を考慮すると、それらの選択は重要であり、本発明において使用される異なる特徴の組み合わせは、画像処理を改善することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の他の特徴、目的、及び利点が、以下の説明から明らかになり、この説明は、純粋に例示として与えられており、限定的なものではなく、添付の図面を参照して読まれるべきである。
【0015】
図全てにおいて、類似の要素は同一の参照符号を有している。
【
図1】本発明の一実施形態によるマイクロ波医用画像処理システムを示した概略図である。
【
図2】本発明による3Dマイクロ波画像の関心領域を処理する方法のステップを示した図である。
【
図3】3a、3b、3c、3d、3eは、乳房の3Dマイクロ波画像を示した図であり、画像上では関心領域が特定され、本発明による処理方法への入力データとしての役割を果たしている。
【
図4a】本発明による3D空間で表された決定面を示した図である。
【
図4b】本発明による3D空間で表された決定面を示した図である。
【
図4c】本発明による3D空間で表された決定面を示した図である。
【
図4d】本発明による3D空間で表された決定面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、患者12が横たわる診察台11を含むマイクロ波医用画像処理装置1を示している。特に、患者12は腹臥位で横たわっている。診察台11は、好ましくは円形の開口部13を含み、生体適合性遷移液体(a biocompatible transition liquid)で満たされた容器15に患者の乳房14が浸漬するのを可能にしており、生体適合性遷移液体の誘電特性は、乳房への電磁波の透過を改善するために最適化されている。
【0017】
マイクロ波放射/受信プローブ161(以下、ハイフンによって表される)のアレイ16が容器15の周囲に配置され、観察される媒体が放射モードで照射され、その場から反射された信号が画像化されて受信モードで受信されるのを可能にしている。プローブ161は、有利に、容器の周囲に規則的に分布され、好ましくは、
図1において例示されているように容器を取り囲むよう環状に分布される。有利に、プローブは、0.5~6GHz周波数帯域の信号を放射するように構成される。
【0018】
より一般的には、画像処理システムは、マルチスタティック様式で動作し、いくつかの放射プローブ及びいくつかの受信プローブを使用することによって、及び、画像化されることになる媒体の周囲の様々な構成で、画像化されることになる媒体が照射されるのを可能にしている。プローブは、同時に放射及び受信を行うために、相補的な様式で構成することができる。
【0019】
各マルチスタティック取得において、画像化されることになる媒体の全て又は一部が、放射モードで動作する予め選択されたプローブによって連続的に照射される。アレイのうち放射モードのプローブ及びその数は、画像化されることになる乳房のゾーンに従って選ばれる。放射するプローブごとに、信号が、受信モードで動作する予め選択されたプローブによって受信される。アレイのうち受信モードのプローブ及びその数は、画像化されることになる乳房のゾーンに従って選ばれる。次に、各マルチスタティック取得は、決定された構成に従ったプローブによる一連の放射/信号の受信に対応すると考えられる。
【0020】
ここで、構成とは、乳房の全て又は一部のマルチスタティック取得が実行されるのを可能にする放射プローブのセットを定めること及び受信プローブのセットを定めることを意味するものとし、これらのプローブは、乳房の周囲の空間において特定の様式で配置されている。
【0021】
1つの構成から別の構成に切り替えるため、及び、様々なマルチスタティック取得を制御するために、当該システムは、制御及び処理ユニット18(例えば、プロセッサ及び/又はコンピュータ)に接続されたプローブのアレイの駆動ユニット17を含む。そのような制御及び処理ユニット18は、アレイを駆動し、取得を実行し、取得したデータの格納を確実にし、画像処理を実行し、さらに、以下に記載される画像処理方法を実施するように構成される。格納ユニット19は、取得したマルチスタティックデータのセットと、画像処理ステップに使用することができるか又は画像処理によって生成することができる特定の数のデータとを格納する。加えて、表示ユニット20が、得られた画像を表示及び可視化することができる。制御及び処理ユニット18、格納ユニット19、及び表示ユニット20は、画像処理装置に直接組み込むことができるか、又は、物理的にオフセットすることができる。画像処理は、事後に(オフラインで)実行することができる。
【0022】
理解されるように、乳房全体を画像化するために、放射プローブ及び受信プローブのいくつかの連続した構成が定められる。放射プローブ及び受信プローブのこれらの構成は、画像化されることになる乳房の様々なゾーンをカバーし、画像化されることになる乳房全体を究極的には包含するように選ばれる。
【0023】
様々な構成に対して実行される放射プローブと受信プローブとの間の透過係数のマルチスタティック取得から、2D又は3Dの乳房のマイクロ波画像が得られる。
【0024】
2D又は3Dのマイクロ波画像の再構成を可能にするマルチスタティック放射/受信信号の処理については、以下の文献:
- Fear, E.C.; Li, X.; Hagness, S.C.; Stuchly, M.A. Confocal microwave imaging for breast cancer detection: Localization of tumours in three dimensions. IEEE Trans. Biomed. Eng. 2002, 49, 812-822
- E.J. Bond, X. Li, S.C. Hagness, B.D. Van Veen, Microwave imaging via space-time beamforming for early detection of breast cancer, IEEE Trans. Antennas Propag. 51 (2003). doi:10.1109/TAP.2003.815446
- Grzegorczyk, T.M.; Meaney, P.M.; Kaufman, P.A.; Paulsen, K.D. Fast 3-D tomographic microwave imaging for breast cancer detection. IEEE Trans. Med. Imaging 2012, 31, 1584-1592
- A. Fasoula, B.M. Moloney, L. Duchesne, J.D.G. Cano, B.L. Oliveira, J. Bernard, M.J. Kerin, Super-resolution radar imaging for breast cancer detection with microwaves: the integrated information selection criteria, in: 41st Annu. Int. Conf. IEEE Eng. Med. Biol. Soc., 2019
を参照することができる。
【0025】
装置1によって得られたマイクロ波画像は、有利に、以下に記載される処理方法に関連して使用される。そのような方法は、有利に、医用画像処理装置1の処理ユニットにおいて実施される。
【0026】
上記の装置によって、ヒト臓器のゾーン、特に乳房の1つ以上のマイクロ波画像が得られる(ステップE1)。この段階では、初期のマイクロ波画像と呼ばれる、画像化されることになるゾーンの1つ以上の画像が所有される。
【0027】
少なくとも1つの初期のマイクロ波画像から、関心領域が存在する場合は、1つ以上の関心領域が特定される(ステップE2)。
【0028】
一実施形態によると、これらの関心領域は、1つ以上の初期のマイクロ波画像上で専門家によって「手で」特定され得る(ステップE21)。
【0029】
別の実施形態によると、これらの関心領域は、有利に、各初期のマイクロ波画像上で形態学的処理を適用することによって特定される(ステップE22)。得られた結果は、ゼロの又は1つ以上の特定された関心領域を有する1つ以上のいわゆる形態学的マイクロ波画像である。関心領域は、疑わしい画像の領域であることが明示される。
【0030】
そのような形態学的処理は、特に、閾値処理法を使用することによって画像において関係する対象を特定し、形態学的特徴のセット、特に、関係する対象の体積サイズ、関係する対象の固体性の程度、関係する対象の内側の強度レベル、関係する対象の内側の強度と、同じ画像において潜在的に特定された他の関係する対象の内側の強度との間のコントラストレベル等に対応する選択された対象を関心領域として保持することに本質的な点がある。複数の形態学的マイクロ波画像を使用することによって、関心領域の特定を確認することが可能になる(ステップE23)が、当然ながら、その後の処理のためには、単一の画像で十分であり得;これに戻ることになる。
【0031】
ここでの目標は、後のステップの対象となる調査を必要とする疑わしい関心領域を特定することである。後の処理ステップは、少なくとも1つの特定された関心領域に適用される。
【0032】
図3a、3b、3c、3d、及び3eは、初期の3Dマイクロ波画像から得られた5つの形態学的画像を示しており、これらの画像においては、上記の形態学的処理(ステップE22)が適用され、且つ、特定された関心領域ROIa、ROIb、ROIc、ROId、ROIeを区別することができる。
図3a、3b、3c、3d、及び3eの形態学的画像は、乳房の冠状面で示されている。
【0033】
記載されることになるステップの課題は、画像化されたゾーンの画像において特定された関心領域に基づき、良性病変から悪性病変を識別することができるということである。
【0034】
相補的な様式で、画像に存在する各関心領域の輪郭は、病変の物理的輪郭により良く対応させることを目的として精緻化される(ステップE3)。各関心領域の輪郭を精緻化するために、いわゆる「アクティブ」セグメンテーションが適用される。この目的のために、例えば、T.F.Chan, L.A.Vese, Active contours without edge, IEEE Trans. Image Process. (2001). doi:10.1109/83.902291による文献を参照することができる。
【0035】
関心領域ごとに、3から5ほどの限られた数の特徴が抽出され(ステップE4)、これらの特徴には、特に以下:
- 形状に関する特徴:固体性(ステップE41);
- テクスチャに関する少なくとも2つの特徴:相関性(ステップE42)及び忙しさ(ステップE43);
が含まれる。
【0036】
固体性に言及する特徴(ステップE41)は、対象の密度又は凸性(convexity)を測定する。特に、固体性は、対象の体積と対象の凸包絡の体積との比として計算される。一般に、関心領域の固体性がその最大値である100%に近づくほど、この関心領域はより規則的で明確な凸の輪郭を有し、良性病変に対応する確率が高くなる。この良性病変に対応する固体塊の規則的な輪郭の概念は、例えば、以下の文献:
- T.F. de Brito Silva, A.C. de Paiva, A.C. Silva, G. Braz Junior, J.D.S. de Almeida, Classification of breast masses in mammograms using geometric and topological feature maps and shape distribution, Res. Biomed. Eng. (2020). doi:10.1007/s42600-020-00063-x
- N. Safdarian, M. Hedyezadeh, Detection and Classification of Breast Cancer in Mammography Images Using Pattern Recognition Methods, Multidiscip. Cancer Investig. (2019). doi:10.30699/acadpub.mci.3.4.13
において説明されている。
【0037】
例えば、凸性、偏心度、緊密さ等、様々な形状の固体性に関係する他の特徴も、不規則な形状を識別するために使用することができる。この目的のために、文献D.A. Khusna, H.A. Nugroho, I. Soesanti, Analysis of shape features for lesion classification in breast ultrasound images, in: AIP Conf. Proc., 2016. Doi:10.1063/1.4958602を参照することができる。
【0038】
いわゆる相関性特徴(ステップE42)は、グレーレベル同時生起行列(GLCM)という名前で知られるファミリーに属する関心領域の強度の統計学的処理によって得られる。そのような処理によって、関心領域のテクスチャに関する情報を得ること、及び、特定の方向におけるピクセルの強度間の空間的関係を測定して、処理された関心領域の強度の一様性、均一性、ランダム特徴、及び線形依存性の特性を強調することが可能になる。そのような処理は、特に、以下の文献:
- R.M. Haralick, I. Dinstein, K. Shanmugam, Textural Features for Image Classification, IEEE Trans. Syst. Man Cybern. (1973). doi:10.1109/TSMC.1973.4309314
- M. Vallieres, C.R. Freeman, S.R. Skamene, I. El Naqa, A radiomics model from joint FDG-PET and MRI texture features for the prediction of lung metastases in soft-tissue sarcomas of the extremities, Phys. Med. Biol. (2015). doi:10.1088/0031-9155/60/14/5471
において記載されている。
【0039】
例えばコントラスト、非類似度等、GLCMファミリーの他の特徴も使用することができる。
【0040】
忙しさと呼ばれる特徴(ステップE43)は、近傍グレートーン差行列(NGTDM)の名前で知られるファミリーに属する関心領域の強度の統計学的処理によって得られる。そのような処理は、関心領域のテクスチャに関する情報を提供し、3つ以上の隣接画素間の空間的関係を測定し、処理された領域の画像のヒトの知覚に密接に近似している。相関性に相補的な様式で、忙しさの特徴は、関心領域の不均一性に関係してもよく、関心領域が不均一であるほど、悪性病変に対応する確率が大きくなることを知らせている。そのような処理は、特に、以下の文献:
- M. Amadasun, R. King, Textural Features Corresponding to Textural Properties, IEEE Trans. Syst. Man Cybern. (1989). doi:10.1109/21.44046
- V. Parekh, M.A. Jacobs, Radiomics: a new application from established techniques, Expert Rev. Precis. Med. Drug Dev. (2016). doi:10.1080/23808993.2016.1164013
において記載されている。
【0041】
例えば、粗さ、複雑さ等、NGTDMファミリーの他の特徴も使用することができる。
【0042】
有利に、関心領域が良性病変又は悪性病変と一致する確率が高いかどうかを決定するのを可能にするのは、少なくともこれら3つの特徴(固体性、相関性、忙しさ)の組み合わせである。初期のマイクロ波画像から特定された良性病変と悪性病変とを区別するための、形状及びテクスチャのこれらの特定の3つの特徴の選択の背後にある物理的な推論は、以下の通り:
- 他の疑わしい病変とは対照的に、規則的な形状例の単純嚢胞等の良性病変に対するより高い固体性の観点からの区別可能性;
- 類似のレベルの固体性を有するがん病変とは対照的に、例えば線維腺腫等の良性病変に対するテクスチャ特徴の観点からの区別可能性;
- 悪性病変の場合に高くなる傾向がある相関性及び忙しさ特徴の値であって、その強度図は、一様性が低く且つ不均一性が高く、使用されるこの2つのテクスチャ特徴は、非構造の強度モデルの特定という点で相補的な役割を果たす、相関性及び忙しさ特徴の値;
- 例えば浸潤性小葉がん等、分布した非広範型のがん病変を示すことができる、急速な空間的変動を伴う非常に不均一な病変の図と関連する傾向がある高い忙しさの値;
である。
【0043】
これらの少なくとも3つの特徴(固体性、相関性、忙しさ)は、関心領域ごとに抽出され、少なくとも3次元(3D)の特徴空間で関心領域を表すことができる(ステップE5)。
【0044】
特に、関心領域が疑わしいものであるかどうかを決定するために、この3D空間に位置する(各次元は、各特徴:固体性、相関性、及び忙しさに対応する)。
【0045】
特に、この空間では、悪性病変又は良性病変に関連する関心領域に対応するかどうかがすでに知られている訓練データを使用して3D特徴空間において事前に訓練された分類器モデルによって、3D決定超曲面が決定される(ステップE6)。
【0046】
有利に、単純ベイズ分類器(NB)又は二次判別分析分類器(QDA)が使用され、3D特徴空間において訓練される。これらの分類器は、その決定超曲面が3D空間を2つの連続的且つ別個の空間に分割するように選択される。1つの部分空間は良性病変に対応し:従って、そのような部分空間に位置する関心領域は、良性病変に関連すると考えられる。第2の部分空間は悪性病変に対応し:従って、そのような部分空間に位置する関心領域は、悪性病変に関連すると考えられる。
図4aは、これら2つの分類子の各々に対する決定面を示している。
図4b及び4cは、(相関性及び固体性の軸の様々な配置に対する)様々な角度から見た二次判別分析分類器(QDA)の決定面を示している。複数の患者グループに対する訓練データもこれらの図に示されている。
【0047】
3D特徴空間における決定面に対する関心領域の位置及び距離に応じて、いわゆる悪性病変確率に対応する分類スコアが計算される(ステップE7)。この悪性病変確率は、関心領域が悪性病変のクラスに属する確率(事後確率)である。この悪性病変確率は、決定面に位置する関心領域に対して50%に等しい。良性病変に対応する部分空間に位置する関心領域の場合、この関心領域が決定面から離れるほど、その悪性病変確率は低くなる。悪性病変に対応する部分空間に位置する関心領域の場合、この関心領域が決定面から離れるほど、その悪性病変確率は高くなる。悪性病変確率が50%未満である場合、関心領域は良性病変と関連している。この悪性病変確率が50%を超える場合、関心領域は悪性病変と関連している。
【0048】
図4dは、様々な患者における複数のタイプの病変に対応する関心領域に対するスコアを示している。この図は、より高い固体性の観点から単純良性嚢胞(グループ2)の明確な区別可能性を示している。良性線維腺腫(グループ3)及び2つの悪性がん病変(グループ1)は類似した固体性レベルを有するが、この良性病変とこれら2つの悪性病変とは、テクスチャ特徴の観点から明確に区別され、相関性及び忙しさの値は2つの悪性病変の場合に増加し、その増加は忙しさに関してより著しい。特に、有意な忙しさの値が、より不均一なタイプの病変と関連しており、これは、浸潤性小葉がん(グループ1)等のより分布した形状と関係していることがある。
【0049】
マイクロ波レーダー画像から事前に特定された少なくとも1つの関心領域の持続性基準に基づく検証
ここでは、マイクロ波レーダー画像において事前に特定された関心領域を形態学的に検証するための特定の実施形態が記載される。
【0050】
特に、ここでは、ステップE1の最後に、画像化される体のゾーンの複数のマイクロ波レーダー画像を得ることが含まれる。
【0051】
画像化されることになる乳房全体を包含すること、及び、その後に乳房の3Dレーダー画像を再構成することができるように、ステップE1における取得は、P>1構成のプローブのアレイに対して実施される。
【0052】
特に、各構成に対して、放射プローブと受信プローブとの間で測定される透過係数のマルチスタティック取得が行われる。次に、複数のマルチスタティック取得が利用可能である(P>1のマルチスタティック取得)。
【0053】
次に、構成ごとに取得した信号を処理して、構成の各々に対する基本のマイクロ波レーダー画像が得られる。
【0054】
特に、これらの信号を処理するためには、いくつかのセット(N>1セット)のpcfibパラメータのAi値(Ai>1の値、1≦i≦N)を考慮する必要がある。
【0055】
従って、構成ごとにpcfibパラメータの
【0056】
【数1】
の値がある。
従って、各マルチスタティック取得の信号
【0057】
【数2】
から、基本のマイクロ波レーダー画像が得られ、各々がpcfibパラメータの1つの値に対して得られている。ここでのアイデアは、電磁波が通過する媒体に関する様々な仮説に従って基本画像を得ることである。
【0058】
実際に、そのようなpcfibパラメータは、誘電率の観点から、乳房(又は、より一般的には、画像化ゾーン)において電磁波が通過する媒体の平均構成に関する仮説に対応することが明示される。このpcfibパラメータは、乳房の線維腺組織と脂肪組織との混合物の割合に対応している。例えば、pcfib=30%は、線維腺組織30%及び脂肪組織70%を有する媒体に対応する。次に、乳腺組織の誘電特性は、線維腺組織及び脂肪組織の誘電特性の加重平均(pcfibでによって重み付け)として定義される。乳房の線維腺組織及び脂肪組織の誘電率の値の例については、例えば以下の文献:
- T. Sugitani, S.I. Kubota, S.I. Kuroki, K. Sogo, K. Arihiro, M. Okada, T. Kadoya, M. Hide, M. Oda, T. Kikkawa, Complex permittivities of breast tumor tissues obtained from cancer surgeries, Appl. Phys. Lett. (2014). doi:10.1063/1.4885087;
- M. Lazebnik, L. McCartney, D. Popovic, C.B. Watkins, M.J. Lindstrom, J. Harter, S. Sewall, A. Magliocco, J.H. Booske, M. Okoniewski, S.C. Hagness, A large-scale study of the ultrawideband microwave dielectric properties of normal breast tissue obtained from reduction surgeries, Phys. Med. Biol. (2007). Doi:10.1088/0031-9155/52/10/001;
を参照することができる。
【0059】
有利に、pcfibパラメータの値のセットは、変動の観点及び/又は値の観点から全体的又は部分的に重複する。
【0060】
例えば、値10%、20%を含む1つのセットと、値5%、15%、25%を含む別のセットとがあり得る。この例では、値が10%から20%の間で変わる1つのセットと、値が5%から25%の間で変わる別のセットとがある。従って、これら2つのセットは、10%から20%の共通の変動範囲を有している。
【0061】
別の例では、値10%、20%を含む1つのセットと、値20%、25%、30%を含む別のセットとがあり得る。この例では、セットは、1つの値20%を共通に有している。
【0062】
さらに別の例では、値10%、20%、25%を含む1つのセットと、値5%、10%、30%を含む別のセットとがあり得る。この例では、これら2つのセットは、10%から25%の共通の変動範囲と、1つの共通の値10%とを有している。
【0063】
pcfibパラメータの値の少なくとも2つのセットが考慮され、1つのセットは、もう1つのセットの変動範囲よりも広いpcfibパラメータの値の変動範囲を有し得る。ここで、広い及び狭いという用語は、変動範囲を比較することによって理解される相対的な用語である。ここでのアイデアは、値のセット間に重複を有することである。
【0064】
様々なセットに対するpcfibパラメータの変動範囲の選択は、乳房の組成と密度に関する既存の変動性に関連して行われる。
【0065】
有利に、広い変動範囲は、関心領域のより完全な表現を含む画像につながり、狭い変動範囲は、潜在的に、検出可能な病変の部分的な表現につながる。
【0066】
例えば、乳房の画像処理に関連して、N=5セットの変動を選ぶことが可能である:
- 変動範囲が狭い3つのセット:
- 10%から20%の間で、pcfibパラメータは、例えば、この範囲の以下の値を取る:10%、15%、20%
- 30%から40%の間で、pcfibパラメータは、例えば、この範囲の以下の値を取る:30%、35%、40%
- 50%から60%の間で、pcfibパラメータは、例えば、この範囲の以下の値を取る:50%、55%、60%
- 変動範囲が広い2つのセット:
- 20%から50%の間で、pcfibパラメータは、例えば、この範囲の以下の値を取る:20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%
- 10%から60%の間で、pcfibパラメータは、例えば、この範囲の以下の値を取る:10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%。
【0067】
各構成に対して、基本のマイクロ波レーダー画像がセットごとに選択され、セットのパラメータ(pcfib)の値の1つに対応し;従って、各構成に対して、セットごとに1つの基本画像が選択される。前の例では、構成ごとに5つの基本画像(セットごとに1つの基本画像)があり、これらは、再構成に使用されることになる。
【0068】
そのような選択は、特に、例えば以下の文献:
- S. Pertuz, D. Puig, M.A. Garcia, Analysis of focus measure operators for shape-from-focus, Pattern Recognit. (2013). doi: 10.1016/j.patcog.2012.11.011
- O’loughlin, D.; Krewer, F.; Glavin, M.; Jones, E.; O’halloran, M. Focal quality metrics for the objective evaluation of confocal microwave images. Int. J. Microw. Wirel. Technol. 2017, 9, 1365-1372. Doi:10.1017/S1759078717000642
において記載されているメトリック等の画像フォーカシングメトリックを使用することに本質的な点がある。
【0069】
ある構成から他の構成へ、同じセットに対する基本画像の選択は、このセットに属するpcfibパラメータの異なる値で実行され得ることに留意されたい。
【0070】
様々な構成に対して得られた基本画像から、画像化されるゾーンの2D又は3Dのレーダー画像が、セットの各々に対して再構成される。従って、pcfibの値のセットごとに1つの再構成されたレーダー画像がある。従って、この段階では、複数の初期画像があり、pcfibの値のセットごとに1つある。
【0071】
このようにして構成される画像化されるゾーンの各マイクロ波レーダー画像では、関心領域が存在する場合は、それらを検出するように形態学的処理が適用される(上記のステップE22を参照されたい)。
【0072】
得られた結果は、ゼロの又は1つ以上の特定された関心領域を有する、いわゆる形態学的なマイクロ波画像である。この段階では、複数の乳房の形態学的画像があり、各形態学的画像は、pcfibの値のセットごとに得られ;各形態学的画像は、ゼロの又は1つ以上の特定された関心領域を有している。
【0073】
好ましくは、形態学的処理は、固体性基準(上記の定義を参照されたい)に基づく。実際には、関心領域の固体性は、この関心領域が所与のセットの形態学的画像において特定され得るように、所与のレベルを超えなければならない。
【0074】
次に、以前に特定された各関心領域の持続性が、様々な形態学的画像において評価される(ステップE23)。目的は、電磁波が通過する媒体にわたる複数の仮説に対して持続する関心領域を形態学的に検証することである。持続性の評価は、複数の形態学的画像にわたって、同じゾーン内に3Dで位置する関心領域が存在するという事実を意味する。ここで、形態学的処理によって特定された関心領域が、同じゾーンにおいて複数の画像にわたって位置するかどうかが評価されることになる。そのような評価は、特に、例えば、空間クラスタリング等の基準を使用して、検出された関心領域を互いに関連付けることに本質的な点がある。
【0075】
次に、持続性は、特定された関心領域を形態学的に検証することを可能にし、言い換えると、これらの関心領域が、決定された形態学的画像の数の割合で存在する場合、物理的な対象とのそれらの関連付けを検証することを可能にする。
【0076】
従って、持続性は、複数の形態学的画像を使用して、以前に特定された関心領域を検証することを可能にする。形態学的画像上の、持続性によって検証された以前に特定された関心領域は、次に、その後の処理ステップを実施するために使用される。
【0077】
次に、上述のステップE3乃至E7が、持続性によって検証された以前に特定された関心領域に適用される。
【国際調査報告】