(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ステレオシリン二重ベクター系を使用して感音性難聴を治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/63 20060101AFI20240416BHJP
C12N 15/90 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240416BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240416BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240416BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240416BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240416BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240416BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/90 104Z
C12N15/12
C12N15/864 100Z
C12N5/10
C12N5/071
C12P21/02 C
A61K35/76
A61K31/7088
A61K48/00
A61P27/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568104
(86)(22)【出願日】2022-05-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 US2022027870
(87)【国際公開番号】W WO2022235933
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520299511
【氏名又は名称】デシベル セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DECIBEL THERAPEUTICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】シュワンダー、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ウー、シュドン
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー、ラーズ
(72)【発明者】
【氏名】ギブソン、タイラー
(72)【発明者】
【氏名】パン、ニン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA13
4C084MA56
4C084NA14
4C084ZA34
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA56
4C086NA14
4C086ZA34
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087CA20
4C087MA56
4C087NA14
4C087ZA34
(57)【要約】
本開示は、外有毛細胞特異的なプロモーターの調節性制御下にあるステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチド、と同様に外有毛細胞にて特異的にステレオシリンの発現を促進するのに使用することができる、前記ポリヌクレオチドを含有する2ベクター系を含有する組成物を提供する。さらに、本明細書に記載されている組成物は、ステレオシリンの突然変異に関連する難聴のような難聴を有する対象または難聴を発症するリスクがある対象の治療に使用されてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2ベクター系であって、
a)ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする第1のポリヌクレオチドに操作可能に連結された配列番号1~3のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有するオンコモジュリン(OCM)プロモーターを含む第1の核酸ベクターと;
b)ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする第2のポリヌクレオチドを含む第2の核酸ベクターと、を含む、前記2ベクター系。
【請求項2】
前記第1のポリヌクレオチドが前記第2のポリヌクレオチドと部分的に重複する、請求項1に記載の2ベクター系。
【請求項3】
前記第1のポリヌクレオチド及び前記第2のポリヌクレオチドが、少なくとも200塩基(b)の長さを有する重複領域を有する、請求項1または2に記載の2ベクター系。
【請求項4】
前記第1の核酸ベクターが配列番号43のヌクレオチド225~4574の配列を含むポリヌクレオチドを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項5】
前記第2の核酸ベクターが配列番号44のヌクレオチド211~4219の配列を含むポリヌクレオチドを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項6】
哺乳類細胞に導入されると、前記第1の核酸ベクター及び前記第2の核酸ベクターが相同組換えを受け、完全長ステレオシリンタンパク質をコードする組換えポリヌクレオチドを形成する、請求項1~5のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項7】
前記第1の核酸ベクターが前記第1のポリヌクレオチドの3’末端に位置するスプライスドナーシグナル配列を含み、前記第2の核酸ベクターが前記第2のポリヌクレオチドの5’末端に位置するスプライスアクセプターシグナル配列を含む、請求項1に記載の2ベクター系。
【請求項8】
前記第1の核酸ベクターが前記第1のポリヌクレオチドの3’末端に位置するスプライスドナーシグナル配列と、前記スプライスドナーシグナル配列の3’に位置する第1の組換え誘導領域とを含み、前記第2の核酸ベクターが第2の組換え誘導領域と、前記組換え誘導領域の3’でのスプライスアクセプターシグナル配列と、前記スプライスアクセプターシグナル配列の3’での前記第2のポリヌクレオチドとを含む、請求項1に記載の2ベクター系。
【請求項9】
前記第1及び第2のポリヌクレオチドが重複しない、請求項1、7及び8のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項10】
前記第1の核酸ベクターが配列番号45のヌクレオチド225~4454の配列を含むポリヌクレオチドを含み、前記第2の核酸ベクターが配列番号46のヌクレオチド257~3597の配列を含むポリヌクレオチドを含む、請求項8または9に記載の2ベクター系。
【請求項11】
前記第1の核酸ベクターがさらに、前記組換え誘導領域の3’に位置する分解シグナル配列を含み、前記第2の核酸ベクターがさらに、前記組換え誘導領域と前記スプライスアクセプターシグナル配列との間に位置する分解シグナル配列を含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項12】
前記第2の核酸ベクターがさらに、前記第2のポリヌクレオチドに操作可能に連結された配列番号1~3のいずれか1つの核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するOCMプロモーターを含み、前記プロモーターは前記第2のポリヌクレオチドの5’に位置する、請求項1に記載の2ベクター系。
【請求項13】
前記第1の核酸ベクターがさらに、前記第1のポリヌクレオチドの3’に位置するN末端インテイン(N-インテイン)をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1または12に記載の2ベクター系。
【請求項14】
前記第2の核酸ベクターがさらに、前記OCMプロモーターと前記第2のポリヌクレオチドとの間に位置するC末端インテイン(C-インテイン)をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項12または13に記載の2ベクター系。
【請求項15】
前記N-インテイン及び前記C-インテインが分割インテイントランススプライシングシステムの構成成分である、請求項12~14のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項16】
前記分割インテイントランススプライシングシステムが1以上の細菌のDnaE遺伝子に由来する、請求項15に記載の2ベクター系。
【請求項17】
前記OCMプロモーターが配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項18】
前記2ベクター系が、哺乳類の外有毛細胞(OHC)にて完全長ステレオシリンタンパク質の蝸牛OHC特異的な発現を指示する、請求項1~17のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項19】
前記ステレオシリンタンパク質が、配列番号4に対して少なくとも85%の配列同一性を有するヒトのステレオシリンタンパク質であり、前記ヒトのステレオシリンタンパク質が、配列番号6に対して少なくとも85%の配列同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる、請求項1~18のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項20】
前記第1及び第2のベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであり、前記AAVベクターがAAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eb、またはPHP.Sのカプシドを有する、請求項1~19のいずれか1項に記載の2ベクター系。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の2ベクター系と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項22】
請求項1~20のいずれか1項に記載の2ベクター系または請求項21に記載の医薬組成物を含む、ヒトOHC。
【請求項23】
ヒトOHCにてステレオシリンタンパク質を発現させる方法であって、ヒトOHCを請求項1~20のいずれか1項に記載の2ベクター系または請求項21に記載の医薬組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項24】
前記細胞が対象にある、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
感音性難聴を有する、または感音性難聴を発症するリスクがある対象を治療する方法であって、治療有効量の請求項1~20のいずれか1項に記載の2ベクター系または請求項21に記載の医薬組成物を前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【請求項26】
前記感音性難聴が、遺伝性の感音性難聴であり、任意で、前記遺伝性の感音性難聴が常染色体劣性難聴である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
STRCの発現を増やすことを必要とする対象にてSTRCの発現を増やす方法であって、治療有効量の請求項1~20のいずれか1項に記載の2ベクター系または請求項21に記載の医薬組成物を前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【請求項28】
OHCの損傷または死滅を防止するまたは軽減することを必要とする対象にてOHCの損傷または死滅を防止するまたは軽減する方法であって、有効量の請求項1~20のいずれか1項に記載の2ベクター系または請求項21に記載の医薬組成物を前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【請求項29】
OHCの生存を増やすことを必要とする対象にてOHCの生存を増やす方法であって、有効量の請求項1~20のいずれか1項に記載の2ベクター系または請求項21に記載の医薬組成物を前記対象の内耳に投与することを含む、前記方法。
【請求項30】
前記対象がSTRCに突然変異を有する、請求項25~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記対象がSTRCに突然変異を有するとして特定されている、請求項25~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記方法がさらに、前記2ベクター系または組成物を投与する前に、STRCに突然変異を有するものとして前記対象を特定することを含む、請求項25~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記方法がさらに、前記2ベクター系または前記組成物を投与する前にまたは投与した後で、前記対象の聴力を評価することを含む、請求項25~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記2ベクター系または前記組成物が耳に局所性に投与される、請求項25~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記2ベクター系における前記ベクターが同時にまたは順次、投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記2ベクター系または前記医薬組成物が、難聴を予防もしくは軽減する、難聴の発症を遅延させる、難聴の進行を遅らせる、聴力を改善させる、語音弁別を改善する、有毛細胞機能を改善する、有毛細胞の損傷を予防もしくは軽減する、有毛細胞死を予防もしくは軽減する、有毛細胞生存を促進もしくは増加させる、または、有毛細胞にてSTRCの発現を増やすのに十分な量で投与される、請求項25~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記対象がヒトである、請求項25~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
請求項1~20のいずれか1項に記載の2ベクター系または請求項21に記載の医薬組成物を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願はASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。2022年5月4日に作成されたASCIIコピーの名称は51471-011WO2_Sequence_Listing_5_4_22_ST25であり、サイズは113,251バイトである。
【0002】
技術分野
本明細書に記載されているのは、難聴、特にステレオシリン(STRC)遺伝子治療による、STRCにおける突然変異に関連する疾患の形態の治療のための組成物及び方法であり、その際、STRC遺伝子の発現はオンコモジュリン(OCM)プロモーターの調節性制御下にある。本開示は、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドを含有する第1の核酸ベクターと、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドを含有する第2の核酸ベクターとを含む2ベクター発現系を提供する。これらのベクターを使用して、細胞または対象、例えば、難聴(例えば、感音性難聴)を患う対象に対して野生型STRCの発現を増やす、または野生型STRCを提供することができる。
【背景技術】
【0003】
感音性難聴は、内耳の細胞の欠陥、または内耳から脳に張り出す神経経路の欠陥によって引き起こされる種類の難聴である。感音性難聴は後天性であることが多く、騒音、感染症、頭部外傷、耳毒性薬物、または加齢によって引き起こされ得るが、常染色体劣性突然変異に関連する感音性難聴の先天性形態もある。そのような常染色体劣性感音性難聴の形態の1つはステレオシリン(STRC)遺伝子の突然変異と関連している。ステレオシリンは、染色体15q15におけるSTRC遺伝子によってコードされた大きなタンパク質であり、約19kbのゲノムにまたがる29のエクソンを含有する。STRC遺伝子は直列に複製され、その際、2番目のコピーは、エクソン20内に早期停止コドンを含有し、それによってSTRC偽遺伝子が生成される。以前の研究では、常染色体劣性非症候群性感音性難聴がある家族にてSTRCにおける突然変異が同定されている(Verpy等,Nat.Genet.29:345-9(2001))ステレオシリンタンパク質の発現は内耳有毛細胞の毛束中の不動毛に限定される。ステレオシリンタンパク質は、聴覚装置の正常な機能に必要とされる水平上部コネクタ及び蓋膜取り付けクラウンを形成すると考えられる(Avan等,PNAS 116:25948-57(2019);Verpy等,J. Comp.Neurol.519:194-210 (2011))。ステレオシリンを欠いたマウスは、凝集不良を伴う異常な有毛細胞束及び聴覚障害を呈することが示されている(Verpy等,Nature,456:255-8(2008))。
【0004】
近年、難聴を治療するための取り組みは、可能な解決策として遺伝子治療にますます注目が集まっている;しかしながら、STRC遺伝子は大きすぎて標準的な遺伝子治療の手法を使用する治療を可能にできない。STRC関連の感音性難聴を治療するための新しい治療法が求められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、対象、例えば、ヒト対象における感音性難聴を治療するための組成物及び方法を提供する。本開示の組成物及び方法は、感音性難聴を有する対象、または感音性難聴を発症するリスクがある対象(例えば、STRCに突然変異を有する対象)にステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドを送達するための二重ベクター系に関する。例えば、本明細書に記載されている組成物及び方法を使用して、それぞれが機能的なステレオシリンタンパク質の一部をコードする、第1の核酸ベクター及び第2の核酸ベクターがウイルス遺伝子治療によって対象に送達されてもよい。本明細書に記載されている組成物及び方法は、蝸牛有毛細胞(例えば、外有毛細胞)における野生型ステレオシリンタンパク質の発現を増加させるために使用されてもよい。
【0006】
第1の態様では、本発明は、(a)ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする第1のポリヌクレオチドと操作可能に連結された配列番号1~3のいずれか1つと少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するオンコモジュリン(OCM)プロモーターを含む第1の核酸ベクターと、(b)ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする第2のポリヌクレオチドを含む第2の核酸ベクターと、を含む2ベクター系を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは第2のポリヌクレオチドと部分的に重複する。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチド及び第2のポリヌクレオチドは、少なくとも200塩基(b)(例えば、少なくとも200b、300b、400b、500b、600b、700b、800b、900b、1.0キロ塩基(kb)、1.1kb、1.2kb、1.3kb、1.4kb、1.5kb以上)の長さを有する重複領域を有する。これらの実施形態では、哺乳類細胞に導入されると、第1及び第2の核酸ベクターは相同組換えを受け、完全長ステレオシリンタンパク質をコードする組換えポリヌクレオチドを形成する。いくつかの実施形態では、第1の核酸ベクターは配列番号43のヌクレオチド225~4574の配列を含むポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、第2の核酸ベクターは配列番号44のヌクレオチド211~4219の配列を含むポリヌクレオチドを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1の核酸ベクターは第1のポリヌクレオチドの3’末端に位置するスプライスドナーシグナル配列を含み、第2の核酸ベクターは第2のポリヌクレオチドの5’末端に位置するスプライスアクセプターシグナル配列を含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2のポリヌクレオチドは重複しない。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1の核酸ベクターは、第1のポリヌクレオチドの3’末端に位置するスプライスドナーシグナル配列と、当該スプライスドナーシグナル配列の3’に位置する第1の組換え誘導領域とを含み、第2の核酸ベクターは、第2の組換え誘導領域と、当該組換え誘導領域の3’でのスプライスアクセプターシグナル配列と、当該スプライスアクセプターシグナル配列の3’での第2のポリヌクレオチドとを含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2のポリヌクレオチドは重複しない。いくつかの実施形態では、第1の組換え誘導領域及び第2の組換え誘導領域は同じである。いくつかの実施形態では、第1の組換え誘導領域及び第2の組換え誘導領域はAP遺伝子断片である。いくつかの実施形態では、AP遺伝子断片は配列番号47~52のうちのいずれか1つの配列を含む、またはそれから成る。いくつかの実施形態では、AP遺伝子断片は配列番号50の配列を含む、またはそれから成る。いくつかの実施形態では、第1の核酸ベクターはさらに、組換え誘導領域の3’に位置する分解シグナル配列を含み、第2の核酸ベクターはさらに、組換え誘導領域とスプライスアクセプターシグナル配列との間に位置する分解シグナル配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の核酸ベクターは配列番号45のヌクレオチド225~4454の配列を含むポリヌクレオチドを含み;第2の核酸ベクターは配列番号46のヌクレオチド257~3597の配列を含むポリヌクレオチドを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、第2の核酸ベクターはさらに、第2のポリヌクレオチドに操作可能に連結された配列番号1~3のいずれか1つの核酸配列と少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するOCMプロモーターを含み、当該プロモーターは第2のポリヌクレオチドの5’に位置する。いくつかの実施形態では、第2の核酸ベクターにおけるOCMプロモーターは第1の核酸ベクターにおけるOCMプロモーターと同じである(すなわち、同じヌクレオチド配列を有する)。いくつかの実施形態では、第2の核酸ベクターにおけるOCMプロモーターは第1の核酸ベクターにおけるOCMプロモーターとは異なるヌクレオチド配列を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1の核酸ベクターはさらに、第1のポリヌクレオチドの3’に位置するN末端インテイン(N-インテイン)をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、第2の核酸ベクターはさらに、OCMプロモーターと第2のポリヌクレオチドとの間に位置するC末端インテイン(C-インテイン)をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、N-インテイン及びC-インテインは分割インテイントランススプライシングシステムの構成成分である。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1のベクター及び/または第2のベクターはインテイン分解シグナルを含む。いくつかの実施形態では、分解シグナルはN-デグロン及び/またはC-デグロンである。いくつかの実施形態では、N-デグロン及び/またはC-デグロンは独立してCL1、PB29、SMN、CIITAまたはODCのデグロンである。いくつかの実施形態では、分解シグナルはE.coliのジヒドロ葉酸還元酵素(ecDHFR)分解シグナルである。いくつかの実施形態では、分解シグナルはFKBP12の分解ドメインである(Banaszynski等,Cell,126:995-1004,2006)。いくつかの実施形態では、分解シグナルはPESTの分解ドメインである(Rechsteiner及びRogers,Trends Biochem.Sci.21:267-271,1996)。いくつかの実施形態では、分解シグナルはUbRタグユビキチン化シグナルである(Chassin等,Nat.Commun.10:2013,2019)いくつかの実施形態では、分解シグナルはヒトELRBDの不安定化突然変異である(Miyazaki等,J.Am.Chem.Soc.,134:3942-3945,2012)。
【0013】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のベクターは、哺乳類細胞に導入されると、それぞれ第1及び第2の融合タンパク質を産生し、その際、第1の融合タンパク質はステレオシリンのN末端部分とそれに対して3’に位置するN-インテインとを含み、第2の融合タンパク質は、C-インテインとそれ対して3’に位置するステレオシリンのC末端部分とを含む。いくつかの実施形態では、第1の融合タンパク質のN-インテインのC末端と第2の融合タンパク質のC-インテインのN末端とはペプチド結合を形成することができ、それによって、N末端からC末端に向かって、ステレオシリンのN末端部分と、N-インテインと、C-インテインと、ステレオシリンのC末端部分とを含むポリペプチドを生成し、その際、結合したN-インテイン及びC-インテインは、ステレオシリンのN末端部分のC末端及びステレオシリンのC末端部分のN末端を自己切除し、且つ連結し、それによって完全長ステレオシリンタンパク質を生成することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、分割インテイントランススプライシングシステムは1以上の細菌のDnaE遺伝子に由来する。いくつかの実施形態では、1以上の細菌は、Nostoc punctiforme(Npu)、Synechocystis sp.PCC6803(Ssp)、Fischerella sp.PCC9605(Fsp)、Scytonema tolypothrichoides(Sto)、Cyanobacteria bacterium SW_9_47_5、Nodularia spumigena(Nsp)、Nostoc flagelliforme(Nfl)、Crocosphaera watsonii(Cwa)WH8502、Chroococcidiopsis cubana(Ccu)CCALA043、Trichodesmium erythraeum(Ter)、Rhodothermus marinus(Rma)、Saccharomyces cerevisiae(Sce)、Saccharomyces castellii (Sca)、Saccharomyces unisporus(Sun)、Zygosaccharomyces bisporus(Zbi)、Torulaspora pretoriensis(Tpr)、Mycobacteria tuberculosis(Mtu)、Mycobacterium leprae(Mle)、Mycobacterium smegmatis(Msm)、Pyrococcus abyssi(Pab)、Pyrococcus horikoshii(Pho)、Coxiella burnetti(Cbu)、Coxiella neoformans(Cne)、Coxiella gattii(Cga)、Histoplasma capsulatum(Hca)、及びPorphyra purpurea chloroplast(Ppu)から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、分割インテイントランススプライシングシステムは、望ましい安定性及び活性を持つ分割インテインを設計するためにコンセンサス設計(例えば、Cfa)を特定するためのDnaEの複数の配列アライメント研究に由来する。
【0015】
いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号8、10、13、15、17~22、27、29、31、33、35、37及び39のいずれか1つの配列を有し、且つC-インテインは配列番号9、11、12、14、16、23~26、28、30、32、34、36,38及び40のいずれか1つの配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号8の配列を有し、C-インテインは配列番号9の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号8の配列を有し、C-インテインは配列番号11の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号8の配列を有し、C-インテインは配列番号12の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号10の配列を有し、C-インテインは配列番号9の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号10の配列を有し、C-インテインは配列番号11の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号10の配列を有し、C-インテインは配列番号12の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号13の配列を有し、C-インテインは配列番号14の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号15の配列を有し、C-インテインは配列番号16の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号17の配列を有し、C-インテインは配列番号23の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号20の配列を有し、C-インテインは配列番号24の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号21の配列を有し、C-インテインは配列番号25の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号22の配列を有し、C-インテインは配列番号26の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号27の配列を有し、C-インテインは配列番号28の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号29の配列を有し、C-インテインは配列番号30の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号31の配列を有し、C-インテインは配列番号32の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号33の配列を有し、C-インテインは配列番号34の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号35の配列を有し、C-インテインは配列番号36の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号37の配列を有し、C-インテインは配列番号38の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号39の配列を有し、C-インテインは配列番号40の配列を有する。いくつかの実施形態では、N-インテインは配列番号17~22のいずれか1つの配列を有し、C-インテインは配列番号23~26のいずれか1つの配列を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、分割インテイントランススプライシングシステムは、リガンドとの接触時のみタンパク質のトランススプライシングを行う1以上のインテインを含む。いくつかの実施形態では、リガンドは4-ヒドロキシタモキシフェン、ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、アミノ酸、またはヌクレオチドから成る群から選択される。
【0017】
いくつかの実施形態では、第1の核酸ベクターはさらに、シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’に配置される。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの3’に配置される。いくつかの実施形態では、第2の核酸ベクターはさらに、シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’に配置される。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの3’に配置される。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドも第2のポリヌクレオチドも完全長のステレオシリンタンパク質をコードしない。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチド及び第2のポリヌクレオチドのそれぞれは、ステレオシリンタンパク質配列の約半分をコードする。
【0019】
いくつかの実施形態では、第2の核酸ベクターはさらに、第2のポリヌクレオチドの3’にポリ(A)配列を含む。
いくつかの実施形態では、第1及び第2の核酸ベクターはSTRCの非翻訳領域(UTR)を含まない。いくつかの実施形態では、第1及び第2の核酸ベクターはSTRCのUTRを含む。いくつかの実施形態では、第1の核酸ベクターは第1のポリヌクレオチドの5’にSTRCの5’UTRを含む。いくつかの実施形態では、第2の核酸ベクターは第2のポリヌクレオチドの3’にSTRCの3’UTRを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質をコードする第1及び第2のポリヌクレオチドは、イントロンを含まない(例えば、第1及び第2のポリヌクレオチドはSTRCのcDNAの部分である)。いくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質をコードする第1及び第2のポリヌクレオチドはイントロンを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、OCMプロモーターは、配列番号1に対して少なくとも85%(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、OCMプロモーターは、配列番号2に対して少なくとも85%(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、OCMプロモーターは、配列番号3に対して少なくとも85%(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)の配列同一性を有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、2ベクター系は、哺乳類の蝸牛外有毛細胞(OHC)にて完全長ステレオシリンタンパク質の蝸牛OHC特異的な発現を指示することができる。いくつかの実施形態では、哺乳類OHCはヒトOHCである。いくつかの実施形態では、哺乳類OHCはマウスOHCである。
【0023】
いくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質は、配列番号4に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するヒトのステレオシリンタンパク質である。いくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質は、配列番号4の配列を有する。いくつかの実施形態では、ヒトのステレオシリンタンパク質は、配列番号6に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの実施形態では、配列番号6に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するポリヌクレオチドは配列番号4のステレオシリンタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、ヒトのステレオシリンタンパク質は配列番号6の配列を有するポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの実施形態では、STRCタンパク質は、配列番号5に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の)の配列同一性を有するマウスのステレオシリンタンパク質である。いくつかの実施形態では、マウスのステレオシリンタンパク質は配列番号5の配列を有する。いくつかの実施形態では、マウスのステレオシリンタンパク質は、配列番号7に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの実施形態では、配列番号7に対して少なくとも85%(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれを以上)の配列同一性を有するポリヌクレオチドは配列5のステレオシリンタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、マウスのステレオシリンタンパク質は、配列番号7の配列を有するポリヌクレオチドによってコードされる。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のベクターはウイルスベクター、プラスミド、コスミド、または人工染色体である。いくつかの実施形態では、第1及び第2のベクターはウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、第1及び第2のベクターはAAVベクターである。いくつかの実施形態では、第1及び第2のAAVベクターのそれぞれはAAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eb、またはPHP.Sのカプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターのそれぞれはAAV1カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターのそれぞれはAAV9カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターのそれぞれはAAV6カプシドを含む。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターのそれぞれはAAV8カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターのそれぞれはAnc80カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターのそれぞれはAnc80L65カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターのそれぞれはDJ/9カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターのそれぞれは7m8カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターのそれぞれはAAV2カプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターのそれぞれはPHP.Bカプシドを有する。いくつかの実施形態では、第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターのそれぞれはAAV2quad(Y-F)カプシドを有する。
【0025】
別の態様では、本発明は前述の態様及び実施形態の2ベクター系を含有する医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本組成物はさらに、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む。
【0026】
別の態様では、本発明は、前述の態様及び実施形態のいずれかの2ベクター系を含む細胞(例えば、哺乳類細胞、例えば、OHC、例えば、STRC遺伝子に病原性の突然変異を有するOHCのようなヒト細胞)を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は哺乳類OHCである。いくつかの実施形態では、哺乳類OHCはヒトOHCである。
【0027】
別の態様では、本開示は、前述の態様及び実施形態の2ベクター系または医薬組成物と細胞を接触させることによって、哺乳類細胞にてステレオシリンタンパク質を発現させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は蝸牛有毛細胞である。いくつかの実施形態では、細胞はOHCである。いくつかの実施形態では、細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は対象に存在する(例えば、接触は生体内で生じる)。
【0028】
別の態様では、本発明は、治療有効量の前述の態様及び実施形態の2ベクター系または医薬組成物を対象の内耳に投与することによって、感音性難聴を有する、または感音性難聴を発症するリスクがある対象を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、感音性難聴は遺伝性の感音性難聴である。いくつかの実施形態では、遺伝性難聴は常染色体劣性難聴である。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、難聴はOHCの喪失またはOHCの機能不全に関連している。いくつかの実施形態では、難聴は、OHC不動毛束の異常な偏向またはOHC毛束と蓋膜との間の連結性障害に関連する。
【0029】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象にてSTRC発現を増加させる(例えば、野生型STRCの発現、例えば、野生型ステレオシリンタンパク質を産生させる)方法を提供し、当該方法は、前述の態様及び実施形態の2ベクター系または医薬組成物の治療有効量を対象の内耳に投与することを含む。
【0030】
別の態様では、本発明は、前述の態様及び実施形態の2ベクター系または医薬組成物の有効量を対象の内耳に投与することを含む、それを必要とする対象にてOHCの損傷または死滅を防止する、または軽減する方法を提供する。
【0031】
別の態様では、本発明は、前述の態様及び実施形態の2ベクター系または医薬組成物の有効量を対象の内耳に投与することを含む、それを必要とする対象にてOHC生存を増加させる方法を提供する。
【0032】
別の態様では、本発明は、前述の態様及び実施形態の2ベクター系または医薬組成物の有効量を対象の内耳に投与することを含む、それを必要とする対象にて蓋膜へのOHC毛束の付着を増やす、または改善する方法を提供する。
【0033】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、対象はSTRCに突然変異を有する。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、対象はSTRCに突然変異を有すると特定されている。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、本方法はさらに、2ベクター系または医薬組成物を投与する前に、STRCに突然変異を有するものとして対象を特定することを含む。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、対象は常染色体劣性難聴16(DFNB16)を有する。前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、対象はDFNB16を有すると特定されている。
【0034】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、方法はさらに、2ベクター系または医薬組成物を投与する前に、対象の聴力を評価すること(例えば、聴力検査、聴性脳幹反応(ABR)、蝸電図検査(ECOG)、または耳音響放射のような標準的な検査を使用して聴力を評価すること)を含む。
【0035】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、方法はさらに、2ベクター系または医薬組成物を投与した後に、対象の聴力を評価すること(例えば、聴力検査、ABR、ECOG、または耳音響放射のような標準的な検査を使用して聴力を評価すること)を含む。
【0036】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、2ベクター系または医薬組成物は局所に投与される。いくつかの実施形態では、2ベクター系または医薬組成物は、対象の耳に投与される(例えば、内耳に、例えば、外リンパまたは内リンパ内に、例えば、卵円窓、正円窓もしくは水平半規管にもしくはそれを介して、または経鼓膜注入または鼓室内注入によって投与される)。いくつかの実施形態では、2ベクター系におけるベクターは同時に投与される。いくつかの実施形態では、2ベクター系におけるベクターは順次投与される。
【0037】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、核酸ベクターまたは組成物は、難聴を予防もしくは軽減する、難聴の発症を遅延させる、難聴の進行を遅らせる、聴力を改善する、語音弁別を改善する、有毛細胞の機能を改善する、有毛細胞の損傷を予防もしくは軽減する、有毛細胞死を予防もしくは軽減する、有毛細胞の生存を促進もしくは増加させる、OHC毛束の蓋膜への付着を改善する、または有毛細胞におけるSTRC発現を増加させるのに十分な量で投与される。
【0038】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、対象はヒトである。
別の態様では、本発明は、前述の態様及び実施形態の2ベクター系または医薬組成物を含有するキットを提供する。
【0039】
定義
本明細書で使用されるとき、「約」という用語は記載されている値から10%以内で上回る、または下回る値を指す。
【0040】
本明細書で使用されるとき、「投与」とは、任意の有効な経路によって、対象に治療剤(例えば、ステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されたオンコモジュリン(OCM)プロモーターを含有する2ベクター系)を提供すること、または付与することを指す。例示的な投与経路は本明細書で以下に記載されている。
【0041】
本明細書で使用されるとき、「内耳に投与する」という表現は、内耳細胞の形質導入を可能にする任意の経路によって、本明細書に記載されている治療剤を対象に提供すること、または付与することを指す。内耳への例示的な投与経路には、外リンパまたは内リンパへの、例えば、卵円窓、正円窓、もしくは半規管(例えば、水平半規管)への、もしくはそれを介した、または経鼓膜注入もしくは鼓室内注入による投与、例えば、OHCへの投与が含まれる。
【0042】
本明細書で使用されるとき、「細胞型」という用語は遺伝子発現データに基づいて統計的に分離可能である表現型を共有する細胞の群を指す。例えば、一般的な細胞型の細胞は、同様の構造的特徴及び/または機能的特徴、例えば、同様の遺伝子活性化パターン及び抗原提示特性を共有している場合がある。一般的な細胞型の細胞には、生体内の一般的な組織(例えば、上皮組織、神経組織、結合組織、または筋肉組織)及び/または一般的な臓器、組織系、血管、または他の構造及び/または領域から分離された細胞が含まれ得る。
【0043】
本明細書で使用されるとき、用語「蝸牛有毛細胞」とは、音の感知に関与する内耳内の特殊な細胞群を指す。蝸牛有毛細胞には、内有毛細胞と外有毛細胞の2種類がある。蝸牛有毛細胞への損傷と蝸牛有毛細胞の機能を破壊する遺伝子変異は、難聴及び聴覚消失に関係している。
【0044】
本明細書で使用されるとき、「保存的変異」、「保存的置換」、及び「保存的アミノ酸置換」という用語は、1以上のアミノ酸から、極性、静電荷、及び立体的容量のような同様の物理化学的特性を示す1以上の異なるアミノ酸への置換を指す。20種の天然に存在するアミノ酸のそれぞれについて、これらの特性を以下の表1に要約する。
【0045】
【0046】
この表については、保存的アミノ酸のファミリーには(i)G、A、V、L及びI;(ii)D及びE;(iii)C、S及びT;(iv)H、K及びR;(v)N及びQ;ならびに(vi)F、Y及びWが含まれる。したがって、保存的変異または保存的置換とは、あるアミノ酸を同じアミノ酸ファミリーのメンバーと置き換えるものである(例えば、SerをThrに、LysをArgに置き換える)。
【0047】
本明細書で使用されるとき、「分解シグナル配列」という用語は、それが含まれるポリペプチドの分解に介在する配列(例えば、アミノ酸配列に翻訳することができるヌクレオチド配列)を指す。分解シグナル配列を本発明の核酸ベクターに含めて、組換え及び/またはスプライシングを受けていないステレオシリンタンパク質の部分の発現を低減する、または防止することができる。
【0048】
本明細書で使用されるとき「由来する」及び「誘導体」という用語は、対応する完全長野生型の核酸、ペプチド、またはタンパク質と比較して、1以上の突然変異及び/または化学修飾を含む核酸、ペプチド、またはタンパク質、またはその変異型もしくは類似体を指す。核酸が関与する化学修飾の非限定的な例には、例えば、塩基部分、糖部分、リン酸部分、リン酸-糖骨格、またはそれらの組み合わせへの修飾が挙げられる。
【0049】
本明細書で使用されるとき、本明細書に記載されている組成物、ベクター構築物、またはウイルスベクターの「有効量」、「治療有効量」、及び「十分な量」という用語は、哺乳類、例えば、ヒトを含む対象に投与する場合に、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果を達成するのに十分な量を指し、したがって、「有効量」またはその同義語はそれが適用されている状況に依存する。例えば、感音性難聴を治療する文脈では、それは、組成物、ベクター構築物、またはウイルスベクターを投与せずに得られる応答と比較して、治療応答を達成するのに十分な組成物、ベクター構築物、またはウイルスベクターの量である。そのような量に対応する本明細書に記載されている所与の組成物の量は、例えば、所与の薬剤、医薬製剤、投与経路、疾患もしくは障害の種類、対象の独自性(例えば、年齢、性別、体重)または治療されている宿主などのような種々の因子に応じて変化するであろうが、それにもかかわらず、当業者によって日常的に決定することができる。また、本明細書で使用されるとき、本開示の組成物、ベクター構築物、またはウイルスベクターの「治療有効量」は、対照と比較して対象にて有益なまたは所望の結果をもたらす量である。本明細書で定義されているように、本開示の組成物、ベクター構築物、またはウイルスベクターの治療有効量は、当該技術分野で既知の日常的な方法によって当業者が容易に決定してもよい。投与計画を調整して最適な治療応答を提供してもよい。
【0050】
本明細書で使用されるとき、「内在性」という用語は、特定の生物(例えば、ヒト)または生物内の特定の位置(例えば、器官、組織、または細胞、例えば、ヒト細胞、例えば、OHC)にて自然に見いだされる分子(例えば、ポリペプチド、核酸、または補因子)を指す。
【0051】
本明細書で使用されるとき、「発現する」という用語は、以下の事象(1)DNA配列からのRNA鋳型の生成(例えば、転写による)、(2)RNA転写産物のプロセシング(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、及び/または3’末端プロセシングによる)、(3)RNAからポリペプチドまたはタンパク質への翻訳、及び(4)ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾のうちの1以上を指す。
【0052】
本明細書で使用されるとき、「外来性」という用語は、特定の生物(例えば、ヒト)または生物内の特定の位置(例えば、器官、組織、または細胞、例えば、ヒト細胞、例えば、ヒトOHC)にて天然には見いだされない分子(例えば、ポリペプチド、核酸、または補因子)を表す。外来性物質には、生物またはそこから抽出された培養物に対して外部供給源から提供される物質が含まれる。
【0053】
本明細書で使用されるとき、「エクソン」という用語は、そのヌクレオチド配列が、対応するタンパク質のアミノ酸配列を決定する遺伝子のコード領域内の領域を指す。エクソンという用語はまた、遺伝子から転写されたRNAの対応する領域を指す。エクソンは、mRNA前駆体に転写され、遺伝子の選択的スプライシングに応じて成熟mRNAに含まれてもよい。プロセシング後の成熟mRNAに含まれるエクソンは、タンパク質に翻訳されるが、その際、エクソンの配列がタンパク質のアミノ酸組成を決定する。
【0054】
本明細書で使用されるとき、「異種の」という用語は天然に存在しない要素の組み合わせを指す。例えば、異種導入遺伝子とは、それが操作可能に連結されているプロモーターによって自然に発現されない導入遺伝子を指す。
【0055】
本明細書で使用されるとき、「増加する」及び「減少する」という用語は、それぞれ、基準値に対する測定指標の機能、発現、または活性の、さらに多い、またはさらに少ない量をもたらす調節を指す。例えば、本明細書に記載されている方法での組成物の投与に続いて、本明細書に記載されている測定指標(例えば、導入遺伝子の発現)のマーカーの量を、対象にて投与前のマーカー量と比べて、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは98%またはそれ以上、増加または減少させてもよい。一般に、測定指標は、投与後、例えば、治療レジメン開始後少なくとも1週間、1ヵ月、3ヵ月、または6ヵ月など、投与が前述の効果を発揮した時点で測定される。
【0056】
本明細書で使用されるとき、「タンパク質イントロン」とも呼ばれる「インテイン」という用語は、通常100~900のアミノ酸残基長であり、且つ隣接タンパク質断片(「エクステイン」)の自己切除及びペプチド結合による連結が可能であるタンパク質の一部を指す。タンパク質スプライシングの際にインテインが生成される。「インテイン」という用語は、マキシインテイン、ミニインテイン、トランススプライシングインテイン及びアラニンインテインを含む4つの異なるクラスのインテインを包含する。マキシインテインとは、エンドヌクレアーゼドメインを含有するタンパク質のN末端及びC末端のスプライシング領域を指す。「ホーミングエンドヌクレアーゼ遺伝子」または「HEG」としても知られているエンドヌクレアーゼドメインは、イントロン内の単独で動作する遺伝子として、他のタンパク質とのタンパク質融合として、または自己スプライシングインテインとしてコードされるエンドヌクレアーゼのクラスを指す。HEGは一般に、非常に僅かな、且つ標的とされることが多いDNA領域を加水分解する。HEGがDNAの小片を加水分解すると、HEGをコードする遺伝子は通常、切断部位にそれ自体組み込まれ、それによってその対立遺伝子の頻度を高める。ミニインテインとは、エンドヌクレアーゼドメインを欠くN末端及びC末端のスプライシングドメインを指す。トランススプライシングインテインは、さらにN末端とC末端とに分割される2以上のドメインに分割されるインテインを指す。アラニンインテインとは、システインまたはセリンの代わりにアラニンのスプライシングジャンクションを有するインテインを指す。前駆体タンパク質のインテインは2つの遺伝子に分けられてもよく;そのような場合、インテインは分割「インテイン」と呼ばれる。
【0057】
本明細書で使用されるとき、「イントロン」という用語は、そのヌクレオチド配列が、対応するタンパク質のアミノ酸配列に翻訳されない遺伝子のコード領域内の領域を指す。イントロンという用語はまた、遺伝子から転写されたRNAの対応する領域も指す。イントロンはmRNA前駆体に転写されるが、プロセシング中に除去され、成熟mRNAには含まれない。
【0058】
本明細書で使用されるとき、「外有毛細胞特異的な発現」または「OHC特異的な発現」という用語は、蝸牛の他の細胞型(例えば、らせん神経節ニューロン、グリアまたは他の蝸牛細胞型)と比較したとき、主に蝸牛OHC内でのRNA転写物またはポリペプチドの産生を指す。導入遺伝子のOHC特異的な発現は、任意の標準的な技術(例えば、定量的RT PCR、免疫組織化学、ウェスタンブロット分析、またはプロモーターに操作可能に連結されたレポーター(例えば、GFP)の蛍光測定)を使用して、蝸牛の種々の細胞型の間で(例えば、OHC対非OHC)、導入遺伝子の発現(例えば、RNAまたはタンパク質の発現)を比較することによって確認することができる。OHC特異的なプロモーターは、それが操作可能に連結されている導入遺伝子の発現(例えば、RNAまたはタンパク質の発現)を誘導し、その誘導される発現は、以下の内耳細胞型:内有毛細胞、境界細胞、内指節細胞、内柱細胞、外柱細胞、第1列目のダイテルス細胞、第2列目のダイテルス細胞、第3列目のダイテルス細胞、ヘンゼン細胞、クラウディウス細胞、内溝細胞、外溝細胞、らせん隆起細胞、根細胞、歯間細胞、血管条の基底細胞、血管条の中間細胞、血管条の辺縁細胞、らせん神経節ニューロン、シュワン細胞のうち少なくとも2つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)と比べてOHCにて、少なくとも50%(例えば、50%、75%、100%、125%、150%、175%、200%以上)大きい。OHC特異的プロモーターは、それが操作可能に連結されている導入遺伝子の発現(例えば、RNAまたはタンパク質の発現)を誘導し、その誘導される発現は、蝸牛の他の細胞と比べて、蝸牛のOHCにて少なくとも50%(例えば、50%、75%、100%、125%、150%、175%、200%以上)大きい。
【0059】
本明細書で使用されるとき、「局所的」または「局所的投与」とは、全身的効果ではなく局所的効果を目的とした身体の特定の部位での投与を意味する。局所投与の例は、対象の皮膚上、吸入、関節内、髄腔内、膣内、硝子体内、子宮内、病変内投与、リンパ節投与、腫瘍内投与、内耳への投与、及び粘膜への投与であり、その場合、投与は、全身的効果ではなく、局所的効果をもたらすことを目的とする。
【0060】
本明細書で使用されるとき、用語「操作可能に連結された」とは、第1の分子が第2の分子に結合されることを指し、その場合、この第1の分子は、第1の分子が第2の分子の機能に影響を与えるように配置される。2つの分子は、単一の切れ目のない分子の一部であってもよく、そうでなくてもよく、隣接していても、隣接していなくてもよい。例えば、プロモーターが細胞内の目的の転写可能なポリヌクレオチド分子の転写を調節するならば、そのプロモーターは転写可能なポリヌクレオチド分子に操作可能に連結されている。さらに、転写調節エレメントの2つの部分は、一方の部分の転写活性化機能が他方の部分の存在により悪影響を受けないようにそれらが結合している場合、互いに操作可能に連結している。2つの転写調節エレメントは、リンカーポリヌクレオチド(例えば、介在非コードポリヌクレオチド)を介して互いに操作可能に連結されるか、または介在ヌクレオチドが存在せずに互いに操作可能に連結されてもよい。
【0061】
本明細書で使用されるとき、用語「プラスミド」とは、追加のDNAセグメントをライゲートし得る染色体外環状二本鎖DNA分子を指す。プラスミドとは、ベクターのタイプであり、連結している別の核酸を輸送することができる核酸分子である。特定のプラスミドは、それらが導入される宿主細胞において自己複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌プラスミド及びエピソーム性哺乳類プラスミド)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳類ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれることが可能であり、それにより、宿主ゲノムとともに複製される。特定のプラスミドは、それらが操作可能に連結された遺伝子の発現を指示することができる。
【0062】
本明細書で使用されるとき、用語「ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオシドのポリマーを指す。一般に、ポリヌクレオチドは、ホスホジエステル結合によって結合した、DNAまたはRNAに天然に見いだされるヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン)から構成される。この用語には、天然の核酸に見いだされるかどうかにかかわらず、化学的または生物学的に修飾された塩基、修飾された骨格などを有するヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体を含む分子が包含され、そのような分子は特定の用途に好ましい場合がある。本出願がポリヌクレオチドに言及する場合、DNA、RNAの両方と、それぞれの場合における一本鎖及び二本鎖形態の両方(及び各一本鎖分子の相補体)が提供されることが理解される。本明細書中で使用する「ポリヌクレオチド配列」とは、ポリヌクレオチド物質自体及び/または特定の核酸を生化学的に特徴付ける配列情報(すなわち、塩基の略語として使用される一連の文字)を指し得る。本明細書中に提示するポリヌクレオチド配列は、特に明記しない限り、5’から3’の方向で示される。
【0063】
本明細書で使用されるとき、用語「プロモーター」とは、RNAポリメラーゼが結合するDNA上の認識部位を指す。ポリメラーゼは導入遺伝子の転写を促進する。本開示の代表的なプロモーターは、オンコモジュリン(OCM)プロモーター、例えば、配列番号1~3のいずれか1つの核酸配列を有するOCMプロモーター、または配列番号1~3のいずれか1つの核酸配列と少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するその変異型である。
【0064】
参照ポリヌクレオチド配列または参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性の割合(%)」とは、配列を並べ、必要に応じてギャップを導入して、最大の配列同一性の割合を達成した後、参照ポリヌクレオチド配列または参照ポリペプチド配列における核酸またはアミノ酸と同一である候補配列における核酸またはアミノ酸の割合として定義される。核酸またはアミノ酸配列同一性割合を測定する目的のアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、またはMegalignソフトウェアのような、一般に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当業者の能力の範囲内の様々な方法で達成することができる。当業者は、比較されている配列の完全長にわたる最大のアライメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列を並べるのに適切なパラメータを決定することができる。例えば、配列同一性割合の値は、配列比較コンピュータプログラムBLASTを使用して生成されてもよい。一例として、所与の核酸配列またはアミノ酸配列Bについての、との、に対する所与の核酸配列またはアミノ酸配列Aの配列同一性パーセント(これは代わりに、所与の核酸配列またはアミノ酸配列Bについての、との、に対する特定のパーセントの配列同一性を有する所与の核酸配列またはアミノ酸配列Aと言い換えることができる)は、以下のように計算される:
100×(分数X/Y)
式中、Xは、AとBとのプログラムのアラインメントにおいて、配列アラインメントプログラム(例えば、BLAST)によって同一の一致としてスコアリングされたヌクレオチドまたはアミノ酸の数であり、Yは、Bの核酸の総数である。核酸配列またはアミノ酸配列Aの長さが核酸配列またはアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAの配列同一性割合は、Aに対するBの配列同一性割合と等しくないと考えられる。
【0065】
本明細書で使用されるとき、「医薬組成物」という用語は、対象に影響を与える、または対象に影響を与える可能性がある特定の疾患または病態を予防、治療または制御するために、任意で、1以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、及び/または担体と組み合わせて、哺乳類、例えばヒトのような対象に投与される治療剤を含有する混合物を指す。
【0066】
本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容される」という用語は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応及び他の問題となる合併症がなく、妥当な利益/リスク比がある、哺乳類(例えば、ヒト)のような対象の組織との接触に好適である化合物、物質、組成物、及び/または剤形を指す。
【0067】
本明細書で使用されるとき、「組換え誘導領域」という用語は2つの異なる配列間の組換えに介在する相同性の領域を指す。
本明細書で使用されるとき、「調節配列」という用語は、STRCをコードするポリヌクレオチドの転写または翻訳を制御する、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む。そのような調節配列は、例えば、Goeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology185(Academic Press,サンディエゴ,カリフォルニア州,1990)に記載されており、それは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0068】
本明細書で使用されるとき、「試料」という用語は、対象から単離された検体(例えば、血液、血液成分(例えば、血清または血漿)、尿、唾液、羊水、脳脊髄液、組織(例えば、胎盤または皮膚)、膵液、絨毛膜絨毛試料、及び細胞)を指す。
【0069】
本明細書で使用されるとき、「ステレオシリン」及び「STRC」(DFNB16としても知られている)という用語はそれぞれ、STRC遺伝子によってコードされるタンパク質、及びこのタンパク質をコードする遺伝子を指す。ヒトでは、STRCは直列に複製され、その際、2番目のコピーは、エクソン20内に早期停止コドンを含有し、それによってSTRC偽遺伝子が生成される。本開示の文脈では、STRCはSTRC偽遺伝子を指さない。以前の研究では、常染色体劣性非症候群性感音性難聴があるヒト患者にてSTRCの完全長コピーにおける突然変異が同定されている(Verpy等,Nat.Genet.29:345-9(2001))ステレオシリンタンパク質の発現は有毛細胞の毛束における不動毛に限定される。ステレオシリンは、聴覚装置の正常な機能に必要である水平上部コネクタ及び蓋膜取り付けクラウンを形成すると考えられる(Avan等,PNAS,116:25948-57(2019);Verpy等,J.Comp.Neurol.519:194-210(2011))。ステレオシリンを欠いたマウスは、凝集不良を伴う異常な有毛細胞束及び聴覚障害を呈することが示されている(Verpy等,、Nature,456:255-8(2008))。本開示は、本明細書に記載されているベクター系に組み込まれると、それを必要とする対象にて難聴(例えば、感音性難聴)を治療するための治療剤として使用されてもよい、完全長ステレオリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。「ステレオシリン」及び「STRC」という用語は、野生型ステレオシリンタンパク質及びそれをコードする核酸のそれぞれ変異型、例えば、野生型ステレオシリンタンパク質(例えば、配列番号4または5)のアミノ酸配列に対して少なくとも85%(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.9%、またはそれ以上)の配列同一性を有する変異型タンパク質、または野生型STRC遺伝子の核酸配列(例えば、配列番号6または7)に対して少なくとも85%(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは99.9%の同一性またはそれ以上)の配列同一性を有するポリヌクレオチドも指し、ただし、コードされるSTRC類似体が野生型STRCの治療機能を保持していることを条件とする。
【0070】
本明細書で使用されるとき、「転写調節エレメント」という用語は、目的の遺伝子の転写を少なくとも部分的に制御するポリヌクレオチドを指す。転写調節エレメントは、遺伝子転写を制御するか、または制御するのを支援するプロモーター、エンハンサー、及び他のポリヌクレオチド(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含み得る。転写調節エレメントの例は、例えば、Lorence,Recombinant Gene Expression:Reviews and Protocols(Humana Press,ニューヨーク,ニューヨーク州,2012)に記載されている。
【0071】
本明細書で使用されるとき、「対象」及び「患者」という用語は動物(例えば、ヒトのような哺乳類)を指す。本明細書に記載されている方法に従って治療される対象は、難聴(例えば、STRCにおける突然変異に関連する難聴)と診断されている対象、またはこの病態を発症するリスクがある対象であってもよい。診断は、当該技術分野で既知の任意の方法または技法によって実施されてもよい。当業者は、本開示に従って治療される対象が、標準検査を受けていてもよく、または検査を受けていないが疾患もしくは病態に関連する1以上のリスク因子の存在に起因するリスクを有する対象として特定されていてもよいことを理解するであろう。
【0072】
本明細書で使用されるとき、用語「形質導入」及び「形質導入する」とは、ベクター構築物またはその一部を細胞に導入する方法を指す。ベクター構築物が、例えば、AAVベクターのようなウイルスベクターに含まれる場合、形質導入とは、細胞のウイルス感染、及びその後のベクター構築物またはその一部の細胞ゲノムへの移入及び組み込みを指す。
【0073】
本明細書で使用されるとき、疾患または病態に関連した「治療」及び「治療すること」とは、有益な、または所望の結果、例えば臨床結果を得るためのアプローチを指す。有益な、または所望の結果としては、検出可能であるか検出不可能であるかにかかわらず、1以上の症状または病態の緩和または改善;疾患または病態の程度の減少;疾患、障害、または病態の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと);疾患または病態の拡大の予防;疾患または病態の進行の遅延または減速;疾患または病態の改善または一時的軽減;及び、(部分的または完全)寛解を挙げることができるが、これらに限定されない。疾患または病態を「改善すること」または「一時的に軽減すること」とは、治療がない場合の程度または時間経過と比較して、疾患、障害、または病態の程度及び/または望ましくない臨床発現を減少させ、及び/または進行の時間経過を減速または延長させることを意味する。「治療」はまた、治療を受けていなかった場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することも意味し得る。治療を必要とする者としては、病態もしくは障害を既に有する者、及び病態もしくは障害を有する傾向にある者、または病態もしくは障害を予防する必要がある者が挙げられる。
【0074】
本明細書で使用されるとき、用語「ベクター」とは、核酸ベクター、例えば、プラスミド、コスミド、または人工染色体のようなDNAベクター、RNAベクター、ウイルス、または任意の他の適切なレプリコン(例えば、ウイルスベクター)を指す。外来性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを原核細胞または真核細胞に送達するために、様々なベクターが開発されてきた。そのような発現ベクターの例は、例えば、Gellissen,Production of Recombinant Proteins:Novel Microbial and Eukaryotic Expression Systems(John Wiley & Sons,マーブルヘッド,マサチューセッツ州,2006)に記載されている。本明細書に記載されている組成物及び方法での使用に好適な発現ベクターは、ポリヌクレオチド配列、と同様に、例えば、タンパク質の発現及び/または哺乳類細胞のゲノムへのこれらのポリヌクレオチド配列の組み込みに使用される追加の配列要素を含有する。本明細書に記載されているSTRCの発現に使用することができる特定のベクターには、遺伝子転写を指示するプロモーター及びエンハンサーの領域のような調節配列を含有するベクターが含まれる。STRCの発現に有用な他のベクターは、STRCの翻訳速度を高める、または遺伝子転写から生じるmRNAの安定性もしくは核外輸送を向上させるポリヌクレオチド配列を含有する。これらの配列要素には、例えば、5’及び3’非翻訳領域、及び発現ベクターに搭載された遺伝子の効率的な転写を指示するポリアデニル化シグナル部位が含まれる。本明細書に記載されている組成物及び方法での使用に好適な発現ベクターはまた、そのようなベクターを含有する細胞を選択するためのマーカーをコードするポリヌクレオチドも含有してもよい。好適なマーカーの例には、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、またはノーセオスリシンのような抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子が挙げられる。
【0075】
本明細書で使用されるとき、用語「野生型」とは、所与の生物における特定の遺伝子について最も出現頻度が高い遺伝子型を指す。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1A】遍在性サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下にて緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターで形質導入したマウス蝸牛の一連の蛍光画像である。ネイティブのGFP蛍光を示す。遍在性プロモーターを使用して、AAV-CMV-GFPは内有毛細胞(IHC)、外有毛細胞(OHC)、らせん神経節ニューロン、間葉細胞、及びグリアを含む蝸牛内の多くの細胞型でGFP発現を誘導した。
【
図1B】オンコモジュリン(OCM)プロモーターの制御下にてGFPを発現するAAVベクター(配列番号1)で形質導入したマウス蝸牛の一連の蛍光画像である。ネイティブのGFP蛍光を示す。OHC特異的プロモーターを使用して、AAV-OCM(配列番号1)-GFPはOHCでのみGFP発現を誘導した。
【
図2A】配列番号1のOCMプロモーターの制御下でH2B-GFPを発現するAAVベクターを投与した2匹の非ヒト霊長類(Macaca fascicularis)の蝸牛の基底回転からの単一パラフィン切片の一連の顕微鏡写真を示す。Aは、第1の動物由来の単一パラフィン切片の顕微鏡写真であり、Bは第2の動物由来の単一パラフィン切片の顕微鏡写真である。AのパネルA及びBのパネルB(上の画像)は、元々は青色でヘマトキシリン染色された核及び元々は赤色で染色されたH2B-GFP抗体を伴うコルチ器の周囲の領域のグレースケールの変換を示す。AのパネルA’及びBのパネルB’(下の画像)は、青色ヘマトキシリンのシグナルを除去した後の残りのシグナルを示し、H2B-GFP陽性(赤色)の核はグレースケール変換後、さらに暗い色として見えるままである。スケールバーは100μmを表す。内有毛細胞(IHC)及び外有毛細胞(OHC)は配向のために強調表示されている。
【
図2B】配列番号1のOCMプロモーターの制御下でH2B-GFPを発現するAAVベクターを投与した2匹の非ヒト霊長類(Macaca fascicularis)の蝸牛の基底回転からの単一パラフィン切片の一連の顕微鏡写真を示す。Aは、第1の動物由来の単一パラフィン切片の顕微鏡写真であり、Bは第2の動物由来の単一パラフィン切片の顕微鏡写真である。AのパネルA及びBのパネルB(上の画像)は、元々は青色でヘマトキシリン染色された核及び元々は赤色で染色されたH2B-GFP抗体を伴うコルチ器の周囲の領域のグレースケールの変換を示す。AのパネルA’及びBのパネルB’(下の画像)は、青色ヘマトキシリンのシグナルを除去した後の残りのシグナルを示し、H2B-GFP陽性(赤色)の核はグレースケール変換後、さらに暗い色として見えるままである。スケールバーは100μmを表す。内有毛細胞(IHC)及び外有毛細胞(OHC)は配向のために強調表示されている。
【
図3A】16kHzでの200μm
2のROIにおけるマウスのコルチ器でのステレオシリン発現の一連の蛍光画像である。Aは、野生型CBA/CaJマウスにおける外有毛細胞(OHC)の不動毛の先端部で染色しているステレオシリン抗体を示す。Bに示すように、塩基対232のSTRCノックアウト(KO)動物は抗体についてのシグナルを欠いていた。Cは、二重Anc80ベクターを投与された塩基対232のSTRCのKOマウスにおけるステレオシリン抗体の染色を示し、その際、第1のベクターはCMVプロモーターとマウスSTRCのcDNAのヌクレオチド1~3200を保有し、第2のベクターはヌクレオチド2201~5430を保有し、2つのベクターにおける2つのcDNA間で1000塩基対の重複を作り出した。処理された塩基対232のSTRCのKOマウスにてOHC不動毛の先端で、及びコルチ器の内有毛細胞の本体内で新たなステレオシリンタンパク質の発現を観察することができた。
【
図3B】16kHzでの200μm
2のROIにおけるマウスのコルチ器でのステレオシリン発現の一連の蛍光画像である。Aは、野生型CBA/CaJマウスにおける外有毛細胞(OHC)の不動毛の先端部で染色しているステレオシリン抗体を示す。Bに示すように、塩基対232のSTRCノックアウト(KO)動物は抗体についてのシグナルを欠いていた。Cは、二重Anc80ベクターを投与された塩基対232のSTRCのKOマウスにおけるステレオシリン抗体の染色を示し、その際、第1のベクターはCMVプロモーターとマウスSTRCのcDNAのヌクレオチド1~3200を保有し、第2のベクターはヌクレオチド2201~5430を保有し、2つのベクターにおける2つのcDNA間で1000塩基対の重複を作り出した。処理された塩基対232のSTRCのKOマウスにてOHC不動毛の先端で、及びコルチ器の内有毛細胞の本体内で新たなステレオシリンタンパク質の発現を観察することができた。
【
図3C】16kHzでの200μm
2のROIにおけるマウスのコルチ器でのステレオシリン発現の一連の蛍光画像である。Aは、野生型CBA/CaJマウスにおける外有毛細胞(OHC)の不動毛の先端部で染色しているステレオシリン抗体を示す。Bに示すように、塩基対232のSTRCノックアウト(KO)動物は抗体についてのシグナルを欠いていた。Cは、二重Anc80ベクターを投与された塩基対232のSTRCのKOマウスにおけるステレオシリン抗体の染色を示し、その際、第1のベクターはCMVプロモーターとマウスSTRCのcDNAのヌクレオチド1~3200を保有し、第2のベクターはヌクレオチド2201~5430を保有し、2つのベクターにおける2つのcDNA間で1000塩基対の重複を作り出した。処理された塩基対232のSTRCのKOマウスにてOHC不動毛の先端で、及びコルチ器の内有毛細胞の本体内で新たなステレオシリンタンパク質の発現を観察することができた。
【
図4A】Anc80-CMV-mStrcで処理した塩基対232のSTRCのKOマウスにおける聴覚機能の改善及びOHCのSTRC発現との相関を示す一連のグラフである。未処理の反対側耳は、DPOAEがほぼ存在せず、OHC機能の喪失を示すABR閾値が非常に高いことを(
図4A~4B、白丸)示した一方で、処理された塩基対232のSTRCのKO動物は聴力の閾値の回復が示した(
図4A~4B、黒丸)。処理した動物の最良の応答者(
図4A~
図4B、黒い四角形)は、野生型(
図4A~
図4B、三角形)の聴力閾値に近いことを示した。AAV-Anc80-CMV-mStrcによる処理の後にステレオシリンを発現している塩基対232のSTRCのKOマウスのOHCの高い割合は聴覚回復を促進することが見いだされた(
図4C)。
【
図4B】Anc80-CMV-mStrcで処理した塩基対232のSTRCのKOマウスにおける聴覚機能の改善及びOHCのSTRC発現との相関を示す一連のグラフである。未処理の反対側耳は、DPOAEがほぼ存在せず、OHC機能の喪失を示すABR閾値が非常に高いことを(
図4A~4B、白丸)示した一方で、処理された塩基対232のSTRCのKO動物は聴力の閾値の回復が示した(
図4A~4B、黒丸)。処理した動物の最良の応答者(
図4A~
図4B、黒い四角形)は、野生型(
図4A~
図4B、三角形)の聴力閾値に近いことを示した。AAV-Anc80-CMV-mStrcによる処理の後にステレオシリンを発現している塩基対232のSTRCのKOマウスのOHCの高い割合は聴覚回復を促進することが見いだされた(
図4C)。
【
図4C】Anc80-CMV-mStrcで処理した塩基対232のSTRCのKOマウスにおける聴覚機能の改善及びOHCのSTRC発現との相関を示す一連のグラフである。未処理の反対側耳は、DPOAEがほぼ存在せず、OHC機能の喪失を示すABR閾値が非常に高いことを(
図4A~4B、白丸)示した一方で、処理された塩基対232のSTRCのKO動物は聴力の閾値の回復が示した(
図4A~4B、黒丸)。処理した動物の最良の応答者(
図4A~
図4B、黒い四角形)は、野生型(
図4A~
図4B、三角形)の聴力閾値に近いことを示した。AAV-Anc80-CMV-mStrcによる処理の後にステレオシリンを発現している塩基対232のSTRCのKOマウスのOHCの高い割合は聴覚回復を促進することが見いだされた(
図4C)。
【
図5】HEK293T細胞の2ベクター分割インテインシステムによる形質移入が完全長ステレオシリンの再構成に繋がることを示す画像及びグラフである。Aはステレオシリンタンパク質及びβ-アクチンに対するウェスタンブロットの代表的な画像である。Bは、アクチンに対する完全長ステレオシリンのバンド強度の濃度測定の定量であり、陰性(GFP)対照、陽性の完全長対照、及びNpuインテイン構築物に関する完全長ステレオシリンタンパク質の相対発現を示す。
【
図6A】マウスOCMプロモーターの制御下でステレオシリン(STRC)を発現させるための重複二重ベクター系を作り出すのに使用されるそれぞれプラスミドP959及びP724のマップである。
【
図6B】マウスOCMプロモーターの制御下でステレオシリン(STRC)を発現させるための重複二重ベクター系を作り出すのに使用されるそれぞれプラスミドP959及びP724のマップである。
【
図7A】マウスOCMプロモーターの制御下でSTRCを発現させるための二重ハイブリッドベクター系を作り出すのに使用されるそれぞれプラスミドP960及びP726のマップである。
【
図7B】マウスOCMプロモーターの制御下でSTRCを発現させるための二重ハイブリッドベクター系を作り出すのに使用されるそれぞれプラスミドP960及びP726のマップである。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本明細書に記載されているのは、オンコモジュリン(OCM)プロモーターのようなプロモーターと、ステレオシリン(STRC)タンパク質(例えば、野生型(WT)STRCタンパク質)のN末端部分をコードするポリヌクレオチドと含有する第1の核酸ベクターと、STRCタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドとポリアデニル化(poly(A))配列とを含有する第2の核酸ベクターとを投与することによって、対象(哺乳類対象、例えば、ヒト)にて感音性難聴を治療するための組成物及び方法である。蝸牛外有毛細胞(OHC)のような哺乳類細胞に導入されると、2つの核酸ベクターによってコードされるポリヌクレオチドが結合して、完全長STRCタンパク質をコードするポリヌクレオチドを形成することができる。本開示はまた、前述のポリヌクレオチドを含有する2ベクター発現系(例えば、重複二重ベクター、トランススプライシングベクター、二重ハイブリッドベクター、及び分割トランススプライシングベクター)も特徴とする。本明細書に記載されている組成物及び方法を使用して、OHCにてSTRCをコードするポリヌクレオチドを特異的に発現させることができるので、本明細書に記載されている組成物は対象(例えば、哺乳類対象、例えば、ヒト)に投与されて、難聴(例えば、感音性難聴)及び聴覚神経障害のようなOHCの機能不全が原因の障害を治療することができる。
【0078】
ステレオシリン
ステレオシリン(DFNB16としても知られる)は、染色体15q15におけるSTRC遺伝子によってコードされたタンパク質であり、約19kbのゲノムにまたがる29のエクソンを含有する。STRC遺伝子は直列に複製され、その際、2番目のコピーはエクソン20内に早期停止コドンを含有し、それによってSTRC偽遺伝子が生成される。以前の研究では、常染色体劣性非症候群性の感音性難聴がある2つの家族にて2つのフレームシフト突然変異とSTRCの完全長コピーにおける大きな欠失とが確認されている(Verpy等,Nat.Genet.29:345-9(2001))。ステレオシリンタンパク質の発現は、内耳有毛細胞の毛束における不動毛に限定されており、聴覚装置の正常な機能に必要な水平上部コネクタ及び蓋膜取り付けクラウンを形成すると考えられる(Avan等,PNAS,116:25948-57(2019);Verpy等,J.Comp.Neurol.519:194-210(2011))。ステレオシリンを欠いたマウスは、凝集不良を伴う異常な有毛細胞束及び聴覚障害を呈することが示されている(Verpy等,Nature,456:255-8(2008))。
【0079】
本明細書に記載されている組成物及び方法を使用して、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドを含有する第1の核酸ベクターと、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドを含有する第2の核酸ベクターとを投与することによって感音性難聴を治療することができる。完全長STRCのコード配列は大きすぎて、遺伝子治療に一般に使用されるベクターの種類(例えば、5kbのパッケージング制限があると考えられているアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター)に含めることはできない。本明細書に記載されている組成物及び方法は、完全長のSTRC配列が細胞にて再構成することができるように、STRCのコード配列を2つの異なる核酸ベクターに分割することによってこの課題を克服する。これらの組成物及び方法を使用して、STRC遺伝子に1以上の突然変異、例えば、STRC発現を低下させる、STRC機能を低下させる、または難聴に関連する(例えば、DFNB16を有する対象)STRCの突然変異を有する対象を治療することができる。第1の核酸ベクター及び第2の核酸ベクターが組成物で投与される場合、ステレオシリンのN末端部分及びC末端部分をコードするポリヌクレオチドは、細胞(例えば、ヒト細胞、例えば、蝸牛有毛細胞)内で結合して、完全長のSTRCコード配列を含有する単一のポリヌクレオチドを(例えば、相同組換え及び/またはスプライシングを介して)形成することができる。
【0080】
本明細書に記載されている組成物及び方法に使用される核酸ベクターは、野生型ステレオシリンまたはその変異型をコードするポリヌクレオチド配列を含み、例えば、結合すると、野生型哺乳類(例えば、ヒトまたはマウス)のステレオシリンのアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性)を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む。本明細書に記載されている核酸ベクターに使用されるポリヌクレオチドは、以下の表2のステレオシリンアミノ酸配列のN末端部分及びC末端部分(例えば、結合すると、表2に列挙されている完全長のステレオシリンアミノ酸配列、例えば、配列番号4または配列番号5をコードする2つの部分)をコードする。
【0081】
本明細書に記載されている方法によれば、対象には、配列番号4もしくは配列番号5のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列、または、配列番号4もしくは配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列、または配列番号4もしくは配列番号5に対して1以上の保存的アミノ酸置換(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、またはそれ以上の保存的アミノ酸置換)を含有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列のそれぞれN末端部分及びC末端部分を含有する第1の核酸ベクターと第2の核酸ベクターとを含有する組成物を投与することができ、ただし、コードされるステレオシリン類似体は野生型STRCの治療機能を保持するという条件がある。いくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質のN末端部分のアミノ酸の10%以下、及びステレオシリンタンパク質のC末端部分のアミノ酸の10%以下を保存的アミノ酸置換で置き換えてもよい。ステレオシリンタンパク質は、配列番号5または配列番号6の配列を有するポリヌクレオチドによってコードされてもよい。ステレオシリンタンパク質はまた、ヒト対象では非病原性であることが分かっている、一塩基変異型(SNV)を有するポリヌクレオチドによってコードされてもよい。ステレオシリンタンパク質はヒトのステレオシリンタンパク質であってもよく、または別の哺乳類種(例えば、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ネコ、イヌ、ウサギ、モルモット、または他の哺乳類)からのヒトのステレオシリンタンパク質の相同体であってもよい。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
哺乳類細胞でのステレオシリンの発現
STRCでの突然変異は感音性難聴に関連付けられている。本明細書に記載されている組成物及び方法を使用して、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドを含有する第1の核酸ベクターと、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドを含有する第2の核酸ベクターとを対象に投与する、または細胞に接触させることによって、WTステレオシリンの発現を誘導する、または増加させることができる。感音性難聴の治療での治療用途について核酸ベクターを利用するために、それらを細胞の内部、特に特定の細胞型に向けることができる。タンパク質を哺乳類細胞に送達するための、及び哺乳類細胞にてタンパク質をコードする遺伝子を安定的に発現させるための幅広い方法が確立されている。
【0093】
ステレオシリンをコードするポリヌクレオチド
哺乳類細胞にてステレオシリンの治療上有効な細胞内濃度を到達するのに使用することができるプラットフォームの1つは、ステレオシリンをコードする遺伝子を安定的に発現させる(例えば、哺乳類細胞の核ゲノムもしくはミトコンドリアゲノムへの組み込みによって、または哺乳類細胞の核におけるエピソーム鎖状体形成によって)ことによる。遺伝子は対応するタンパク質の一次アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。哺乳類細胞内に外来性遺伝子を導入するために、遺伝子をベクター内に組み込むことができる。ベクターは、形質転換、形質移入、形質導入、直接取り込み、粒子衝撃法、及びリポソームへのベクターのカプセル化を含む、様々な方法によって、細胞内に導入することができる。細胞を形質移入または形質転換する適切な方法の例として、リン酸カルシウム沈殿、電気穿孔法、マイクロインジェクション、感染、リポフェクション、及び直接取り込みが挙げられる。そのような方法は、例えば、Green,等,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Fourth Edition(Cold Spring Harbor University Press,New York2014)、及びAusubel,等,Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley&Sons,New York,2015)にさらに詳細に記載されており、それぞれの開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0094】
ステレオシリンタンパク質をコードする遺伝子の一部を含有するベクターを細胞膜リン脂質に向けることによって、STRCを哺乳類細胞内に導入することもできる。例えば、すべての細胞膜リン脂質に親和性を持つウイルスタンパク質であるVSV-Gタンパク質にベクター分子を結合させることによって、ベクターを細胞膜の細胞外表面上のリン脂質に向けることができる。そのような構築物は、当業者に周知の方法を使用して生成することができる。
【0095】
ステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドが哺乳類RNAポリメラーゼによって認識され、結合されることは、遺伝子発現にとって重要である。したがって、RNAポリメラーゼを動員し、転写開始部位での転写複合体の集合を促進する転写因子に対して高い親和性を示す配列要素をポリヌクレオチド内に含めてもよい。そのような配列要素には、例えば、哺乳類プロモーターが挙げられ、その配列は、特定の転写開始因子、そして最終的にはRNAポリメラーゼによって認識され、結合され得る。哺乳類プロモーターの例は、Smith,等,Mol.Sys.Biol.,3:73(オンライン公開)に記載されており、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0096】
本明細書に記載されている組成物及び方法での使用に好適なポリヌクレオチドには、哺乳類プロモーターの下流でステレオシリンタンパク質をコードするもの(例えば、哺乳類プロモーターの下流でステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチド)が含まれる。哺乳類細胞におけるステレオシリンタンパク質の発現に有用なプロモーターには、オンコモジュリン(OCM)プロモーターのようなOHC特異的なプロモーター(例えば、表3の列挙されたOCMプロモーター配列のいずれか1つ(配列番号1~3のいずれか1つ)と少なくとも85%の配列同一性(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するポリヌクレオチド)が挙げられる。
【0097】
オンコモジュリンプロモーター
本発明者らは、OHCにおける遺伝子発現を駆動するのに十分であるOCM翻訳開始部位の上流に位置する1,140塩基対(bp)の領域を発見した。したがって、本明細書に記載されている組成物及び方法を使用して、難聴(例えば、DFNB16のようなSTRCにおける突然変異に関連する感音性難聴)を有する対象またはそれを発症するリスクがある対象を治療するために、OHCにてステレオリニンを発現させることができる。本明細書に記載されているOCMプロモーター(例えば、配列番号1と少なくとも85%の配列同一性を有するOCMプロモーター)を使用してOHC特異的な遺伝子発現を誘導することができるので、他の内耳細胞(例えば、OHC以外の細胞)における的外れの発現を低減する、または排除することができ、それによって、STRCが内在性に発現される細胞をSTRC発現の標的にし、的外れの発現に関連する毒性を低減することにより遺伝子治療の安全性及び有効性を改善する。
【0098】
本明細書に記載されている組成物及び方法は、配列番号1~3のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性)を有するポリヌクレオチド配列のような、OHCにてステレオシリンを特異的に発現することができる表3に挙げたOCMプロモーター(例えば、配列番号1~3のいずれか1つ)を含む。
【0099】
例示的なOCMプロモーター配列を表3に列挙する。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
前述のポリヌクレオチドを核酸ベクターに含め、導入遺伝子に操作可能に連結させて、OHCにて導入遺伝子を特異的に発現させることができる。本明細書に記載されているベクターでは、導入遺伝子はステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードすることができる。本明細書に記載されている方法によれば、対象には、例えば、難聴の治療のために、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号4または配列番号5のN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されている前述のポリヌクレオチド(例えば、表3に列挙されるポリヌクレオチド配列(例えば、配列番号1~3)のいずれか1つ、またはそれと少なくとも85%の配列同一性(例えば、配列番号1~3のいずれか1つと85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性)を有するポリヌクレオチド配列の1つ)を含有する組成物を投与することができる。
【0105】
ステレオシリンをコードするポリヌクレオチドが哺乳類細胞の核DNAに組み込まれると、このポリヌクレオチドの転写は、当該技術分野にて既知の方法によって誘導することができる。例えば、哺乳類プロモーターへの転写因子及び/またはRNAポリメラーゼの結合を調節し、したがって遺伝子発現を調節する薬剤のような外部化学試薬に哺乳類細胞を曝露することによって、発現を誘導することができる。化学試薬は、例えば、プロモーターに結合したリプレッサータンパク質を除去することによって、哺乳類プロモーターへのRNAポリメラーゼ及び/または転写因子の結合を促進するように機能することができる。あるいは、化学試薬は、化学試薬の存在下でプロモーターの下流に位置する遺伝子の転写速度を高めるようにRNAポリメラーゼ及び/または転写因子に対する哺乳類プロモーターの親和性を高めるのに役立つことができる。上記のメカニズムによってポリヌクレオチド転写を増強する化学試薬の例としては、テトラサイクリン及びドキシサイクリンが挙げられる。これらの試薬は市販されており(Life Technologies,カールスバッド,カリフォルニア州)、確立されたプロトコールに従って遺伝子発現を促進するために哺乳類細胞に投与することができる。
【0106】
本明細書に記載されている組成物及び方法で使用するためのポリヌクレオチドに含めてもよい他のDNA配列要素としては、エンハンサー配列が挙げられる。エンハンサーは、DNAが転写開始部位での転写因子及びRNAポリメラーゼの結合に有利な三次元配向をとるように、目的の遺伝子を含有するポリヌクレオチドの立体構造変化を誘導する別のクラスの調節エレメントを表す。したがって、本明細書に記載されている組成物及び方法で使用するためのポリヌクレオチドには、STRCをコードするポリヌクレオチドが含まれ、さらに哺乳類のエンハンサー配列が含まれる。今や、哺乳類遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が知られており、例には、哺乳類のグロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、及びインスリンをコードする遺伝子由来のエンハンサーが挙げられる。本明細書に記載されている組成物及び方法で使用するためのエンハンサーには、真核細胞に感染することができるウイルスの遺伝物質に由来するエンハンサーも含まれる。例としては、複製起点の後半側のSV40エンハンサー(bp100~270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後半側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。真核生物の遺伝子転写の活性化を誘導するさらなるエンハンサー配列としては、CMVエンハンサー及びRSVエンハンサーが挙げられる。エンハンサーは、目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクター内に、例えば、この遺伝子の5’または3’の位置にてスプライシングされてもよい。好ましい配向では、エンハンサーはプロモーターの5’側に配置され、次いでプロモーターはステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドに対して5’側に配置される。
【0107】
本明細書に記載されている核酸ベクターには、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)が含まれてもよい。WPREは、mRNAレベルで作用し、転写産物の核外輸送を促進することによって、及び/または新生の転写産物のポリアデニル化の効率を高めることによって、細胞内のmRNAの総量を増加させる。ベクターへのWPREの付加は、試験管内及び生体内の両方で、いくつかの異なるプロモーターからの導入遺伝子発現のレベルの実質的な改善をもたらすことができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている核酸ベクターはレポーター配列を含み、これは、例えば、細胞及び組織(例えば、OHCでの)でのステレオシリンの発現を検証するのに有用であることができる。導入遺伝子にて提供されてもよいレポーター配列には、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、及び当該技術分野で周知の他のレポーターをコードするDNA配列が挙げられる。レポーター配列は、それらの発現を駆動するOHC特異的プロモーターのような調節エレメントに関連付けられる場合、酵素アッセイ、放射線アッセイ、比色アッセイ、蛍光アッセイまたは他の分光アッセイ、蛍光活性化細胞選別アッセイ、ならびに酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放射性免疫アッセイ(RIA)、及び免疫組織化学を含む免疫学的アッセイを含む、従来の手段によって検出可能なシグナルを提供する。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子である場合、シグナルを保有するベクターの存在はβ-ガラクトシダーゼ活性のアッセイによって検出される。導入遺伝子が緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼである場合、シグナルを保有するベクターはルミノメーターにおける発色または光の生成によって視覚的に測定されてもよい。
【0109】
二重ベクター発現系
重複二重ベクター
哺乳類細胞内で大きなタンパク質を発現させるための1つのアプローチには重複する二重ベクターの使用が含まれる。このアプローチは、そのそれぞれが目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドの一部を含有し、且つ他のポリヌクレオチドとの配列重複の規定された領域を有する2つの核酸ベクターの使用に基づく。相同組換えは、重複領域で生じることができ、目的の完全長タンパク質(例えば、ステレオシリンタンパク質)をコードする単一ポリヌクレオチドの形成につながることができる。
【0110】
本明細書に記載されている方法及び組成物で使用するための重複二重ベクターは、少なくとも200塩基の重複する配列(例えば、少なくとも200b、300b、400b、500b、600b、700b、800b、900b、1.0キロ塩基(kb)、1.1kb、1.2kb、1.3kb、1.4kb、1.5kb以上の重複する配列)を含有する。重複する領域がステレオシリンをコードするポリヌクレオチドの長さの約半分に相当するステレオシリンをコードするポリヌクレオチド内の位置またはその近傍の位置を中心とし、上記中心位置の両側で等量の重複があるように、核酸ベクターを設計する。プロモーターのサイズと、ステレオシリンをコードするポリヌクレオチドにおける目的の配列要素の位置とに基づいて、重複する領域の中心を選択することもできる。いくつかの実施形態では、ステレオシリンをコードするポリヌクレオチドはいくつかの程度の重複(例えば、50b、100b、150b、200b、250b、300b、350b、400b、450b、500b、600b、700b、800b、900b、1kb、1.1kb、1.2kb、1.3kb、1.4kb、1.5kbまたはそれ以上)を伴って、ほぼ等しい長さの2つの半部に分割されるが、その際、ポリヌクレオチドの5’半分がステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードし、且つポリヌクレオチドの3’半分がステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする。本明細書に記載されている方法及び組成物で使用するための核酸ベクターはまた、ステレオシリンをコードするポリヌクレオチドの約半分が各ベクター内に含有されるようにも設計される(例えば、各ベクターはステレオシリンタンパク質の約半分をコードするポリヌクレオチドを含有する)。
【0111】
いくつかの実施形態では、第1の核酸ベクターはステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする。いくつかの実施形態では、第2の核酸ベクターはステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする。いくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質は配列番号4の配列を有する、またはそれに対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)の配列同一性の配列を有する。いくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質は配列番号5の配列を有する、またはそれに対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)の配列同一性の配列を有する。いくつかの実施形態では、ヒトの完全長ステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号6の配列を有する、または配列番号6と少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するその変異型である。いくつかの実施形態では、マウスの完全長ステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号7の配列を有する、または配列番号7と少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するその変異型である。
【0112】
1つの例示的な重複二重ベクター系は、中心位置として選択された位置のすぐ3’に500塩基を含むステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号4または配列番号5のN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結された上記に記載されているOCMプロモーター(例えば、配列番号1~3のいずれか1つと少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するOCMプロモーター)を含有する第1の核酸ベクターと、中央位置として選択された位置のすぐ5’に500塩基を含むステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドのC末端部分とポリ(A)配列(例えば、ウシ成長ホルモン(bGH)ポリ(A)シグナル配列)とを含有する第2の核酸ベクターとを含む。核酸ベクターは任意で、STRC非翻訳領域(UTR)を含有することができる。いくつかの実施形態では、OCMプロモーターは配列番号1の配列を有するポリヌクレオチド、または配列番号1に対して少なくとも85%(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)の配列同一性を有する変異型である。いくつかの実施形態では、OCMプロモーターは配列番号2の配列を有するポリヌクレオチド、または配列番号2に対して少なくとも85%(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)の配列同一性を有する変異型である。いくつかの実施形態では、OCMプロモーターは配列番号3の配列を有するポリヌクレオチド、または配列番号3に対して少なくとも85%(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)の配列同一性を有する変異型である。
【0113】
いくつかの実施形態では、二重ベクター系の第1のメンバーは、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするヌクレオチドに操作可能に連結された、配列番号1(配列番号43のヌクレオチド225~1364によっても表される)のOCMプロモーターを含む。特定の実施形態では、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするヌクレオチド配列は配列番号43のヌクレオチド1375~4574である。ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするヌクレオチド配列は、発現のために部分的にまたは完全にコドン最適化することができる。特定の実施形態では、二重ベクター系の第1のメンバーは、逆方向末端反復によって5’側及び3’側のそれぞれに隣接する配列番号43のヌクレオチド225~4574を含む。いくつかの実施形態では、隣接する逆方向末端反復は、AAV2 Rep遺伝子を保有するプラスミドによってカプシド形成され得る、AAV2逆方向末端反復の任意の変異型である。特定の実施形態では、5’隣接逆方向末端反復は、配列番号43のヌクレオチド1~130に対応する配列、またはそれに対して少なくとも80%の配列同一性(少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する配列を有し;且つ3’隣接逆方向末端反復は、配列番号43のヌクレオチド4662~4791に対応する配列、またはそれに対して少なくとも80%の配列同一性(少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する配列を有する。ウイルスベクターを作り出す(通常、ウイルスベクター形成に必要なAAV遺伝子を保有する他のプラスミドとともにそのプラスミドを細胞に形質移入することによって)のに使用される伝達プラスミドにおける逆方向末端反復配列の所与の対について(例えば、配列番号43)、組換え時にITRが「フリップ」または「フロップ」の配向をとるため、ウイルスベクターにおける対応する配列が変化し得ることは、当業者によって理解されるであろう。したがって、伝達プラスミドにおけるITRの配列は、それから調製されたウイルスベクターに見られる配列と必ずしも同じではない。しかしながら、いくつかの非常に特定の実施形態では、二重ベクター系の第1のメンバーは配列番号43のヌクレオチド1~4791を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、二重ベクター系の第2のメンバーは、直後に停止コドンが続くステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、ステレオシリンタンパク質のC末端アミノ酸をコードするヌクレオチド配列は配列番号44のヌクレオチド211~3440である。STRCタンパク質のC末端部分をコードするヌクレオチド配列は、発現のために部分的にまたは完全にコドン最適化することができる。いくつかの実施形態では、二重ベクター系の第2のメンバーは、配列番号44のヌクレオチド3452~3999に対応するWPRE配列を含む。いくつかの実施形態では、二重ベクター系の第2のメンバーは、配列番号44のヌクレオチド4012~4219に対応するポリ(A)配列を含む。特定の実施形態では、二重ベクター系の第2のメンバーは逆方向末端反復によって5’側及び3’側のそれぞれに隣接する配列番号44のヌクレオチド211~4219を含む。いくつかの実施形態では、隣接する逆方向末端反復は、AAV2 Rep遺伝子を保有するプラスミドによってカプシド形成され得る、AAV2逆方向末端反復の任意の変異型である。特定の実施形態では、5’隣接逆方向末端反復は、配列番号44のヌクレオチド1~130に対応する配列、またはそれに対して少なくとも80%の配列同一性(少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する配列を有し;且つ3’隣接逆方向末端反復は、配列番号44のヌクレオチド4307~4436に対応する配列、またはそれに対して少なくとも80%の配列同一性(少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する配列を有する。ウイルスベクターを作り出す(通常、ウイルスベクター形成に必要なAAV遺伝子を保有する他のプラスミドとともにそのプラスミドを細胞に形質移入することによって)のに使用される伝達プラスミドにおける逆方向末端反復配列の所与の対について(例えば、配列番号44)、組換え時にITRが「フリップ」または「フロップ」の配向をとるため、ウイルスベクターにおける対応する配列が変化し得ることは、当業者によって理解されるであろう。したがって、伝達プラスミドにおけるITRの配列は、それから調製されたウイルスベクターに見られる配列と必ずしも同じではない。しかしながら、いくつかの非常に特定の実施形態では、二重ベクター系の第1のメンバーは配列番号44のヌクレオチド1~4436を含む。
【0115】
本明細書に記載されている組成物及び方法で使用するための核酸ベクターを産生するのに使用されてもよい伝達プラスミドを表4及び表5に提供する。伝達プラスミド(例えば、核酸ベクターによって送達される、例えば、AAVによって送達されるDNA配列を含有するプラスミド)は、ヘルパープラスミド(例えば、AAV製造に必要なタンパク質を提供するプラスミド)及びrep/capプラスミド(例えば、AAVカプシドタンパク質とカプシドシェルに伝達プラスミドDNA配列を挿入するタンパク質を提供するプラスミド)とともに産生細胞内に同時送達されて、投与用の核酸ベクター(例えば、AAVベクター)を生成する。ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドを含有する核酸ベクター(例えば、核酸ベクター(例えば、AAVベクター)、及びステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドを含有する核酸ベクター(例えば、AAVベクター))は投与前に(例えば、単一の製剤に)組み合わせることができる。
【0116】
重複二重ベクター系における同時処方または同時投与(例えば、同時のまたは逐次の投与)のための核酸ベクター(例えば、AAVベクター)を生成するのに使用されてもよい伝達プラスミドは表4(配列番号43及び配列番号44)に提供されている。
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
トランススプライシング二重ベクター
哺乳類細胞で大きなタンパク質を発現するための第2のアプローチはトランススプライシング二重ベクターの使用を含む。このアプローチでは、別個の核酸配列を含有する2つの核酸ベクターを使用し、目的タンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドと目的タンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドとは重複しない。その代わりに、第1の核酸ベクターは、目的タンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの3’にスプライスドナー配列を含み、且つ第2の核酸ベクターは、目的タンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’にスプライスアクセプター配列を含む。第1及び第2の核酸が同じ細胞内に存在する場合、それらのITRは連結して、連結されたITRがスプライスドナーとスプライスアクセプターとの間に配置される単一の核酸構造を形成することができる。その後、転写中にトランススプライシングが発生し、目的タンパク質のN末端部分及びC末端部分をコードするポリヌクレオチドが隣接している核酸分子が生成され、それによって完全長コード配列が形成される。
【0128】
本明細書に記載されている方法及び組成物で使用するためのトランススプライシング二重ベクターは、ステレオシリンのコード配列の約半分が各ベクター内に含有されるように設計される(上記で議論したように、例えば、各ベクターはステレオシリンタンパク質の約半分をコードするポリヌクレオチドを含有する)。2つの核酸ベクター間でポリヌクレオチド配列をどのように分割するかの決定は、プロモーターのサイズと、ステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチド(例えば、STRC遺伝子のエクソン)中の目的の配列要素の位置とに基づいて行われる。トランススプライシング二重ベクター系における第1のベクターは、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’にプロモーター配列を含有することができる。核酸ベクターは任意でSTRCのUTR(例えば、5’及び3’の両方のSTRCのUTR、例えば、完全長UTR)を含有することができる。本明細書に記載されている組成物及び方法で使用するための1つの例示的なトランススプライシング二重ベクター系は、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、ヒトのステレオシリンタンパク質のN末端部分、例えば、配列番号4のN末端部分)をコードするポリヌクレオチドと操作可能に連結されているOCMプロモーター(例えば、配列番号1~3のいずれか1つ)と当該ポリヌクレオチド配列の3’でのスプライスドナー配列とを含有する第1の核酸ベクターと、ステレオシリンタンパク質のC末端部分(例えば、ヒトのステレオシリンのC末端部分、例えば、配列番号4のC末端部分)をコードするポリヌクレオチドの5’でのスプライスアクセプター配列とポリ(A)配列とを含有する第2の核酸ベクターとを含む。代替的なトランススプライシング二重ベクター系は、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、マウスのステレオシリンタンパク質のN末端部分、例えば、配列番号5のN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されているOCMプロモーター(例えば、配列番号1~3のいずれか1つ)と当該ポリヌクレオチド配列の3’でのスプライスドナー配列とを含有する第1の核酸ベクターと、ステレオシリンタンパク質のC末端部分(例えば、マウスのステレオシリンのC末端部分、例えば、配列番号5のC末端部分)をコードするポリヌクレオチドの5’でのスプライスアクセプター配列とポリ(A)配列とを含有する第2の核酸ベクターとを含む。いくつかの実施形態では、OCMプロモーターは、配列番号1の配列を有するポリヌクレオチド、または配列番号1に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上)の配列同一性を有する変異型である。いくつかの実施形態では、OCMプロモーターは、配列番号2の配列を有するポリヌクレオチド、または配列番号2に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する変異型である。いくつかの実施形態では、OCMプロモーターは、配列番号3の配列を有するポリヌクレオチドまたは配列番号3に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する変異型である。これらの核酸ベクターはまた、第1及び第2の核酸ベクターにてそれぞれ完全長5’及び/または3’STRCのUTRを含有することもできる(例えば、第1の核酸ベクターは、ヒトのステレオシリンをコードする二重ベクター系にて5’ヒトSTRCのUTRまたはマウスのステレオシリンをコードする二重ベクター系にて5’マウスUTRを含有することができ、第2の核酸ベクターは、ヒトのステレオシリンをコードする二重ベクター系にて3’ヒトSTRCのUTRまたはマウスのステレオシリンをコードする二重ベクター系にて3’マウスSTRCのUTRを含有することができる)。STRCのUTRに対応するために、ステレオシリンのコード配列は、プロモーター配列及びステレオシリンのN末端部分をコードする配列の長さに対応するような位置で分割することができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、ヒトの完全長ステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号6の配列を有する、または配列番号6と少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するその変異型である。いくつかの実施形態では、マウスの完全長ステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号7の配列を有する、または配列番号7と少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するその変異型である。
【0130】
二重ハイブリッドベクター
哺乳類細胞で大きなタンパク質を発現させるための第3のアプローチは二重ハイブリッドベクターの使用を含む。このアプローチは、相同組換えが起こり得る重複する領域と、スプライスドナー及びスプライスアクセプターの配列との双方を特徴とするという点で、重複二重ベクター戦略及びトランススプライシング戦略の要素を兼ね備えている。二重ハイブリッドベクター系では、重複領域は、目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の一部ではなく、第1及び第2の核酸ベクターの両方に含有される組換え誘導領域であり、目的のタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドと目的タンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドとはこのアプローチでは重複しない。組換え誘導領域は第1の核酸ベクターのスプライスドナー配列の3’であり、第2の核酸ベクターのスプライスアクセプター配列の5’である。次に、第1の核酸配列及び第2の核酸配列が結合して、2つのメカニズム:1)重複領域での組換え、または2)ITRのコンカテマー化のうちの1つに基づいて単一の配列を形成することができる。残りの組換え誘導領域(複数可)及び/またはコンカテマー化されたITRは、スプライシングによって除去することができ、目的の完全長タンパク質をコードする隣接したポリヌクレオチド配列の形成をもたらす。本明細書に記載されている組成物及び方法に使用され得る組換え誘導領域、スプライスドナー配列及びスプライスアクセプター配列には当業者に周知のものが含まれる。例示的な組換え誘導領域には、米国特許第10,494,645号及び同第8,236,557号に記載されているようなF1ファージAK遺伝子及びアルカリホスファターゼ(AP)遺伝子の断片が挙げられ、これらは参照によって本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、AP遺伝子断片は以下の配列を有する:
CCCCGGGTGCGCGGCGTCGGTGGTGCCGGCGGGGGGCGCCAGGTCGCAGGCGGTGTAGGGCTCCAGGCAGGCGGCGAAGGCCATGACGTGCGCTATGAAGGTCTGCTCCTGCACGCCGTGAACCAGGTGCGCCTGCGGGCCGCGCGCGAACACCGCCACGTCCTCGCCTGCGTGGGTCTCTTCGTCCAGGGGCACTGCTGACTGCTGCCGATACTCGGGGCTCCCGCTCTCGCTCTCGGTAACATCCGGCCGGGCGCCGTCCTTGAGCACATAGCCTGGACCGTTTCCGTATAGGAGGACCGTGTAGGCCTTCCTGTCCCGGGCCTTGCCAGCGGCCAGCCCGATGAAGGAGCTCCCTCGCAGGGGGTAGCCTCCGAAGGAGAAGACGTGGGAGTGGTCGGCAGTGACGAGGCTCAGCGTGTCCTCCTCGCTGGTGAGCTGGCCCGCCCTCTCAATGGCGTCGTCGAACATGATCGTCTCAGTCAGTGCCCGGTAAGCCCTGCTTTCATGATGACCATGGTCGATGCGACCACCCTCCACGAAGAGGAAGAAGCCGCGGGGGTGTCTGCTCAGCAGGCGCAGGGCAGCCTCTGTCATCTCCATCAGGGAGGGGTCCAGTGTGGAGTCTCGGTGGATCTCGTATTTCATGTCTCCAGGCTCAAAGAGACCCATGAGATGGGTCACAGACGGGTCCAGGGAAGCCTGCATGAGCTCAGTGCGGTTCCACACGTACCGGGCACCCTGGCGTTCGCCGAGCCATTCCTGCACCAGATTCTTCCCGTCCAGCCTGGTCCCACCTTGGCTGTAGTCATCTGGGTACTCAGGGTCTGGGGTTCCCATGCGAAACATGTACTTTCGGCCTCCA(配列番号47)。
【0131】
いくつかの実施形態では、AP遺伝子断片は以下の配列を有する:
CCCCGGGTGCGCGGCGTCGGTGGTGCCGGCGGGGGGCGCCAGGTCGCAGGCGGTGTAGGGCTCCAGGCAGGCGGCGAAGGCCATGACGTGCGCTATGAAGGTCTGCTCCTGCACGCCGTGAACCAGGTGCGCCTGCGGGCCGCGCGCGAACACCGCCACGTCCTCGCCTGCGTGGGTCTCTTCGTCCAGGGGCACTGCTGACTGCTGCCGATACTCGGGGCTCCCGCTCTCGCTCTCGGTAACATCCGGCCGGGCGCCGTCCTTGAGCACATAGCCTGGACCGTTTCCGTATAGGAGGACCGTGTAGGCCTTCCTGTCCCGGGCCTTGCCAGCGGCCAGCCCGATGAAGGAGCTCCCTCGCAGGGGGTAGCCTCCGAAGGAGAAGACGTGGGAGTGGTCGGCAGTGACGAGGCTCAGCGTGTCCTCCTCG CTGGTGA(配列番号48)。
【0132】
いくつかの実施形態では、AP遺伝子断片は以下の配列を有する:
GCTGGCCCGCCCTCTCAATGGCGTCGTCGAACATGATCGTCTCAGTCAGTGCCCGGTAAGCCCTGCTTTCATGATGACCATGGTCGATGCGACCACCCTCCACGAAGAGGAAGAAGCCGCGGGGGTGTCTGCTCAGCAGGCGCAGGGCAGCCTCTGTCATCTCCATCAGGGAGGGGTCCAGTGTGGAGTCTCGGTGGATCTCGTATTTCATGTCTCCAGGCTCAAAGAGACCCATGAGATGGGTCACAGACGGGTCCAGGGAAGCCTGCATGAGCTCAGTGCGGTTCCACACGTACCGGGCACCCTGGCGTTCGCCGAGCCATTCCTGCACCAGATTCTTCCCGTCCAGCCTGGTCCCACCTTGGCTGTAGTCATCTGGGTACTCAGGGTCTGGGGTTCCCATGCGAAACATGTACTTTCGGCCTCCA(配列番号49)。
【0133】
いくつかの実施形態では、AP遺伝子断片は以下の配列を有する:
CCCCGGGTGCGCGGCGTCGGTGGTGCCGGCGGGGGGCGCCAGGTCGCAGGCGGTGTAGGGCTCCAGGCAGGCGGCGAAGGCCATGACGTGCGCTATGAAGGTCTGCTCCTGCACGCCGTGAACCAGGTGCGCCTGCGGGCCGCGCGCGAACACCGCCACGTCCTCGCCTGCGTGGGTCTCTTCGTCCAGGGGCACTGCTGACTGCTGCCGATACTCGGGGCTCCCGCTCTCGCTCTCGGTAACATCCGGCCGGGCGCCGTCCTTGAGCACATAGCCTGGACCGTTTC(配列番号50)。
【0134】
いくつかの実施形態では、AP遺伝子断片は以下の配列を有する:
CGTATAGGAGGACCGTGTAGGCCTTCCTGTCCCGGGCCTTGCCAGCGGCCAGCCCGATGAAGGAGCTCCCTCGCAGGGGGTAGCCTCCGAAGGAGAAGACGTGGGAGTGGTCGGCAGTGACGAGGCTCAGCGTGTCCTCCTCGCTGGTGAGCTGGCCCGCCCTCTCAATGGCGTCGTCGAACATGATCGTCTCAGTCAGTGCCCGGTAAGCCCTGCTTTCATGATGACCATGGTCGATGCGACCACCCTCCACGAAGAGGAAGAAGCCGCGGGGGTGTCTGCTCAGCAGG(配列番号51)。
【0135】
いくつかの実施形態では、AP遺伝子断片は以下の配列を有する:
CGCAGGGCAGCCTCTGTCATCTCCATCAGGGAGGGGTCCAGTGTGGAGTCTCGGTGGATCTCGTATTTCATGTCTCCAGGCTCAAAGAGACCCATGAGATGGGTCACAGACGGGTCCAGGGAAGCCTGCATGAGCTCAGTGCGGTTCCACACGTACCGGGCACCCTGGCGTTCGCCGAGCCATTCCTGCACCAGATTCTTCCCGTCCAGCCTGGTCCCACCTTGGCTGTAGTCATCTGGGTACTCAGGGTCTGGGGTTCCCATGCGAAACATGTACTTTCGGCCTCCA(配列番号52)。
【0136】
本明細書に記載されている方法及び組成物で使用するための二重ハイブリッドベクターは、ステレオシリンのコード配列の約半分が各ベクター内に含有されるように設計される(例えば、各ベクターはステレオシリンタンパク質の約半分をコードするポリヌクレオチドを含有する)。2つの核酸ベクター間でポリヌクレオチド配列をどのように分割するかの決定は、プロモーターのサイズと、ステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチド(例えば、STRC遺伝子のエクソン)中の目的の配列要素の位置とに基づいて行われる。トランススプライシング二重ベクター系における第1のベクターは、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’にプロモーター配列を含有することができる。核酸ベクターは任意で、STRCのUTR(例えば、完全長5’及び3’UTR)を含有することができる。
【0137】
1つの例示的な二重ハイブリッドベクター系は、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、ヒトのステレオシリンタンパク質のN末端部分、例えば、配列番号4のN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されているOCMプロモーター(例えば、配列番号1~3のいずれか1つ)と当該ポリヌクレオチド配列の3’でのスプライスドナー配列とスプライスドナー配列の3’での組換え誘導領域とを含有する第1の核酸ベクターと、組換え誘導領域(例えば、第1の核酸ベクターに含まれる同じ組換え誘導領域)と当該組換え誘導領域の3’でのスプライスアクセプター配列とステレオシリンタンパク質のC末端部分(例えば、ヒトのステレオシリンのC末端部分、例えば、配列番号4のC末端部分)をコードするスプライスアクセプター配列の3’でのポリヌクレオチドとポリ(A)配列とを含有する第2の核酸ベクターとを含む。いくつかの実施形態では、OCMプロモーターは、配列番号1の配列を有するポリヌクレオチドまたは配列番号1に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上)の配列同一性を有する変異型である。いくつかの実施形態では、OCMプロモーターは、配列番号2の配列を有するポリヌクレオチド、または配列番号2に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する変異型である。いくつかの実施形態では、OCMプロモーターは、配列番号3の配列を有するポリヌクレオチドまたは配列番号3に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する変異型である。第1及び第2の核酸ベクターはそれぞれ完全長の5’及び/または3’STRCのUTRを含有することもできる(例えば、ヒトSTRCの5’UTRは第1の核酸ベクターに含まれ、ヒトSTRCの3’UTRは第2の核酸ベクターに含まれ得る)。別の例示的な二重ハイブリッドベクター系は、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、マウスのステレオシリンタンパク質のN末端部分、例えば、配列番号5のN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されているOCMプロモーター(例えば、配列番号1~3のいずれか1つ)と当該ポリヌクレオチド配列の3’でのスプライスドナー配列とスプライスドナー配列の3’での組換え誘導領域とを含有する第1の核酸ベクターと、組換え誘導領域(例えば、第1のベクターに含まれる同じ組換え誘導領域)と当該組換え誘導領域の3’でのスプライスアクセプター配列とステレオシリンタンパク質のC末端部分(例えば、マウスのステレオシリンのC末端部分、例えば、配列番号5のC末端部分)をコードするスプライスアクセプター配列の3’でのポリヌクレオチドとポリ(A)配列とを含有する第2の核酸ベクターとを含む。第1核酸ベクター及び第2の核酸ベクターはまた、それぞれ完全長の5’及び/または3’STRCのUTRも含有することができる(例えば、マウスSTRCの5’UTRは第1の核酸ベクターに含まれ、マウスSTRCの3’UTRは第2の核酸ベクターに含まれ得る)。STRCのUTRに対応するために、ステレオシリンのコード配列は、STRCのUTRを含まない二重ハイブリッドベクター系にてとは異なる位置で分割することができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、ヒトの完全長ステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号6の配列を有する、または配列番号6と少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するその変異型である。いくつかの実施形態では、マウスの完全長ステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号7の配列を有する、または配列番号7と少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するその変異型である。
【0139】
本明細書に記載されている方法及び組成物で使用される二重ハイブリッドベクターは任意で、第1及び第2の核酸ベクターの両方にて分解シグナル配列を含むことができる。分解シグナル配列は、組換え及び/またはスプライシングに失敗したポリヌクレオチドからのステレオシリンタンパク質の部分の発現を防止または低減するために含まれ得る。分解シグナル配列は、第1の核酸ベクターでは組換え誘導領域の3’に位置し、第2の核酸ベクターでは組換え誘導領域とスプライスアクセプターの間に位置する。本明細書に記載されている組成物及び方法で使用することができる好適な分解シグナル配列は、当該技術分野で既知であり、例えば、国際出願公開第WO2016/139321号に記載されており、これは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0140】
いくつかの実施形態では、二重ベクター系の第1のメンバーは、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするヌクレオチドに操作可能に連結された、配列番号1のOCMプロモーター(配列番号45のヌクレオチド225~1364によっても表される)を含む。特定の実施形態では、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするヌクレオチド配列は配列番号45のヌクレオチド1378~4077である。ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするヌクレオチド配列は、発現のために部分的にまたは完全にコドン最適化することができる。いくつかの実施形態では、二重ベクター系の第1のメンバーは配列番号45のヌクレオチド4078~4161に対応するスプライスドナー配列を含む。いくつかの実施形態では、二重ベクター系の第1のメンバーは配列番号45のヌクレオチド4168~4454に対応するAPヘッド配列を含む。特定の実施形態では、二重ベクター系の第1のメンバーは、逆方向末端反復によって5’側及び3’側のそれぞれに隣接する配列番号45のヌクレオチド225~4454を含む。いくつかの実施形態では、隣接する逆方向末端反復は、AAV2 Rep遺伝子を保有するプラスミドによってカプシド形成され得る、AAV2逆方向末端反復の任意の変異型である。特定の実施形態では、5’隣接逆方向末端反復は、配列番号45のヌクレオチド1~130に対応する配列、またはそれに対して少なくとも80%の配列同一性(少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する配列を有し;且つ3’隣接逆方向末端反復は、配列番号45のヌクレオチド4548~4677に対応する配列、またはそれに対して少なくとも80%の配列同一性(少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する配列を有する。ウイルスベクターを作り出す(通常、ウイルスベクター形成に必要なAAV遺伝子を保有する他のプラスミドとともにそのプラスミドを細胞に形質移入することによって)のに使用される伝達プラスミドにおける逆方向末端反復配列の所与の対について(例えば、配列番号45)、組換え時にITRが「フリップ」または「フロップ」の配向をとるため、ウイルスベクターにおける対応する配列が変化し得ることは、当業者によって理解されるであろう。したがって、伝達プラスミドにおけるITRの配列は、それから調製されたウイルスベクターに見られる配列と必ずしも同じではない。しかしながら、いくつかの非常に特定の実施形態では、二重ベクター系の第1のメンバーは配列番号45のヌクレオチド1~4677を含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、二重ベクター系の第2のメンバーは、直後に停止コドンが続くステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするヌクレオチド配列は配列番号46のヌクレオチド615~3344である。ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするヌクレオチド配列は、発現のために部分的にまたは完全にコドン最適化することができる。いくつかの実施形態では、二重ベクター系の第2のメンバーは配列番号46のヌクレオチド566~614に対応するスプライスアクセプター配列を含む。いくつかの実施形態では、二重ベクター系の第2のメンバーは配列番号46のヌクレオチド257~543に対応するAPヘッド配列を含む。いくつかの実施形態では、二重ベクター系の第2のメンバーは配列番号46のヌクレオチド3376~3597に対応するポリ(A)配列を含む。特定の実施形態では、二重ベクター系の第2のメンバーは逆方向末端反復によって5’側及び3’側のそれぞれに隣接する配列番号46のヌクレオチド257~3597を含む。いくつかの実施形態では、隣接する逆方向末端反復は、AAV2 Rep遺伝子を保有するプラスミドによってカプシド形成され得る、AAV2逆方向末端反復の任意の変異型である。特定の実施形態では、5’隣接逆方向末端反復は、配列番号46のヌクレオチド12~141に対応する配列、またはそれに対して少なくとも80%の配列同一性(少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する配列を有し;且つ3’隣接逆方向末端反復は、配列番号46のヌクレオチド3685~3814に対応する配列、またはそれに対して少なくとも80%の配列同一性(少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する配列を有する。ウイルスベクターを作り出す(通常、ウイルスベクター形成に必要なAAV遺伝子を保有する他のプラスミドとともにそのプラスミドを細胞に形質移入することによって)のに使用される伝達プラスミドにおける逆方向末端反復配列の所与の対について(例えば、配列番号46)、組換え時にITRが「フリップ」または「フロップ」の配向をとるため、ウイルスベクターにおける対応する配列が変化し得ることは、当業者によって理解されるであろう。したがって、伝達プラスミドにおけるITRの配列は、それから調製されたウイルスベクターに見られる配列と必ずしも同じではない。しかしながら、いくつかの非常に特定の実施形態では、二重ベクター系の第1のメンバーは配列番号46のヌクレオチド12~3814を含む。
【0142】
二重ハイブリッドベクター系における同時処方または同時投与(例えば、同時のまたは逐次の投与)のための核酸ベクター(例えば、AAVベクター)を産生するのに使用されてもよい伝達プラスミドは表5(配列番号45及び配列番号46)に提供されている。
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
重複、トランススプライシング、及び二重ハイブリッドベクターの他の例示的なペアを以下の表6に記載する。
【0152】
【0153】
インテイン発現系
哺乳類細胞で大きなタンパク質を発現させるための別の遺伝子治療アプローチはインテインの使用を含む。「タンパク質イントロン」としても知られているインテインは通常、100~900アミノ酸残基長であり、且つ隣接するタンパク質断片(「エクステイン」)のN末端及びC末端の残基の自己切除及び連結が可能であるタンパク質の一部である。インテインは、マキシインテイン、ミニインテイン、及び分割インテインを含む3つの異なるクラスに分けることができる。マキシインテインは、ホーミングエンドヌクレアーゼドメイン(HEG)によって中断されたタンパク質のN末端及びC末端のスプライシング領域を指す。HEGは、イントロン内の独立した遺伝子として、他のタンパク質とのタンパク質の融合体として、または自己スプライシングインテインとしてコードされるエンドヌクレアーゼのクラスを指す。HEGは一般に非常に少量を加水分解し、DNA領域を選択する。HEGがDNAの小片を加水分解すると、HEGをコードする遺伝子は通常、切断部位にそれ自体組み込まれ、それによってその対立遺伝子の頻度を高める。「ミニインテイン」は、HEGドメインを欠くN末端及びC末端のスプライシングドメインを指す。「分割インテイン」は、転写され、エクステインと連結される2つの別個のポリペプチドとして翻訳されるインテインを指す。アラニンインテインは、システインまたはセリンの代わりにアラニンのスプライシングジャンクションを有する別のクラスのインテインである。
【0154】
インテインのスプライシングドメインは、2つのサブドメイン、すなわち、N末端スプライシング領域及びC末端スプライシング領域を含有し、これらは、スプライシング活性に介在する保存された残基による保存されたモチーフを含有する。N末端スプライシング領域はA、N2、B、N4の構造モチーフを含有するのに対して、C末端スプライシング領域はF及びGのモチーフを含有する。Aモチーフは保存された残基としてCys/SerまたはThrを含有し、BモチーフはHis及びThrの残基を含有し、FモチーフはAsp及びHisの残基を含有し、Gモチーフは最後から2番目のHis及び最後のAsnを含む2つの保存された残基を保有する。C、D、E、及びHのモチーフは一般に、マキシインテインのHEGドメインに関連する。
【0155】
インテインスプライシングは3つの異なる戦略:1)(a)N末端のスプライスジャンクションのペプチド結合をチオ(エステル)結合に変換する(N-S/N-O)アシルシフト、(b)分岐した中間体を形成するトランスエステル化反応、(c)C末端のスプライスジャンクションを切断することによって分岐した中間体を除去するAsn環化反応、及び(d)アミド結合形成を介して隣接するエクステインセグメントを連結する第2の(S-N/O-N)アシルシフトを含むクラス1(または古典的/標準的な)インテインスプライシング;2)古典的スプライシング反応の工程(a)を迂回するクラス2インテイン(アラニンインテインとも知られる);ならびに3)2つの分岐中間体の形成を伴うクラス3のメカニズムに分類される。
【0156】
上述の種々のインテインシステムの中でも、従来の遺伝子治療ベクターのサイズ制限(例えば、AAV:約5kbの最大サイズ制限)をうまく克服するために、分割インテイントランス-スプライシングのアプローチが実証されている。例えば、Subramanyam等,(PNAS,110:15461-6(2013))は、心筋細胞内のL型カルシウムチャネルのα1Cサブユニットを2つに分けた半部から再構成するために分割インテインシステムを採用した。同様に、Truong等,(Nucleic Acids Res.43:6450-8(2015)には分割インテインシステムを使用したCas9タンパク質の2つの半部の再構成の成功が示されている。したがって、本開示は、OCMプロモーターに操作可能に連結されているステレオシリンコード配列をパッケージングし、送達するための分割インテイントランス-スプライシングシステムを提供する。この方法は、それぞれSTRC遺伝子の約半分を含有し、N-インテイン断片またはC-インテイン断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む2つの別々のポリヌクレオチドが、2つの別々の発現ベクター(例えば、本明細書に開示されている核酸ベクターのいずれか1つ)から発現され、翻訳後再構成されて完全長のステレオシリンタンパク質を生成することを可能にする。そのようなシステムは、例えば、rAAVベクターのような、本明細書に開示されている核酸発現ベクターに組み込まれてもよい。
【0157】
一例では、本開示は、a)ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする配列がその3’末端にN-インテインをコードするポリヌクレオチド配列を含む、ヒトのステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号4のN末端部分)をコードする配列を含むポリヌクレオチドを含む第1の核酸ベクターと;b)ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする配列がその5’末端にC-インテインをコードするポリヌクレオチド配列を含む、ヒトのステレオシリンタンパク質のC末端部分(例えば、配列番号4のC末端部分)をコードする配列を含むポリヌクレオチドを含有する第2のベクターと、を含有する2ベクター分割インテインシステムを提供する。
【0158】
別の例では、本開示は、a)ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードする配列がその3’末端にN-インテインをコードするポリヌクレオチド配列を含む、マウスのステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号5のN末端部分)をコードする配列を含むポリヌクレオチドを含有する第1のベクターと;b)ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードする配列がその5’末端にC-インテインをコードする核酸配列を含む、マウスのステレオシリンタンパク質のC末端部分(例えば、配列番号5のN末端部分)をコードする配列を含むポリヌクレオチドを含有する第2のベクターと、を含有する2ベクター分割インテインシステムを提供する。
【0159】
いくつかの実施形態では、第1のベクター及び第2のベクターの両方はさらに、第1の融合タンパク質(N-インテインに融合したステレオシリンタンパク質のN末端部分)をコードするポリヌクレオチドの5’末端及び/または第2の融合タンパク質(C-インテインに融合したステレオシリンタンパク質のC末端部分)をコードするポリヌクレオチドの5’末端に操作可能に連結されたOCMプロモーター配列(例えば、配列番号1~3のいずれか1つのOCMプロモーター配列)のようなプロモーター配列を含む。いくつかの実施形態では、OCMプロモーターは配列番号1の配列、または配列番号1に対して少なくとも85%(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)の配列同一性を有する変異型を有する。いくつかの実施形態では、OCMプロモーターは配列番号2の配列、または配列番号2に対して少なくとも85%(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)の配列同一性を有する変異型を有する。いくつかの実施形態では、OCMプロモーターは配列番号3の配列、または配列番号3に対して少なくとも85%(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)の配列同一性を有する変異型を有する。
【0160】
いくつかの実施形態では、N-インテイン及びC-インテインは同じインテイン又は分割されたインテイン遺伝子に由来する。あるいは、N-インテイン及びC-インテインの配列は、タンパク質トランススプライシングを行って完全長のステレオシリンタンパク質を再構成することができる2つの異なるインテイン遺伝子に由来する。いくつかの実施形態では、同じ遺伝子は同じ生物または異なる生物に由来する。一般的に使用されている分割インテインは種々の生物由来のDnaE遺伝子に由来する。いくつかの実施形態では、ステレオシリンタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、2つの部分に分割され、各部分は完全長遺伝子の全コード配列の約半分に相当し、すなわち、N末端部分とC末端部分に相当する。ステレオシリンのN末端部分をコードするポリヌクレオチドはその3’末端でN-インテインをコードするポリヌクレオチドとインフレームで融合されるのに対して、ステレオシリンのC末端部分をコードするポリヌクレオチドはその5’末端でC-インテインをコードするポリヌクレオチドとインフレームで融合される。
【0161】
いくつかの実施形態では、第1のベクター及び第2のベクターは、細胞(例えば、感音性難聴、例えば、DFNB16を有する対象のような対象の細胞)に導入されると、第1の融合タンパク質及び第2の融合タンパク質を生成する。いくつかの実施形態では、第1の融合タンパク質はそのC末端でN-インテインと融合したステレオシリンタンパク質のN末端部分を含有する。いくつかの実施形態では、第2の融合タンパク質はそのN末端でC-インテインと融合したステレオシリンタンパク質のC末端部分を含有する。いくつかの実施形態では、第1の融合タンパク質のN-インテインと第2の融合タンパク質のC-インテインとが選択的に結合し、N末端からC末端に向かって:ステレオシリンタンパク質のN末端部分と、そのC末端にてC-インテインに結合したN-インテインと、ステレオシリンタンパク質のC末端部分とを含有する第3の融合タンパク質を生成する。いくつかの実施形態では、C-インテインに結合したN-インテインは、N-インテイン及びC-インテインを切除し、ステレオシリンタンパク質のN末端部分のC末端とC末端部分のN末端を連結するトランススプライシング反応を行うことができる。
【0162】
本明細書に記載されている分割インテインシステムは、その後、日常的な方法を使用して操作されて2つの別個のインテイン断片(例えば、分割インテイン)をコードする1つの遺伝子によってコードされる分割インテインを含んでもよい。いくつかの実施形態では、分割インテインは2つの別個の遺伝子によってコードされる。
【0163】
開示されている組成物及び方法の分割インテインは、例えば、とりわけ、Nostoc pentrtiforme(Npu)、Synechocystis sp.PCC6803(Ssp)、Fischerella sp.PCC9605(Fsp)、Scytonema tolypothrichoides(Sto)、Cyanobacteria bacterium SW_9_47_5、Nodularia spumigena(Nsp)、Nostoc flagelliforme(Nfl)、Crocosphaera watsonii(Cwa)WH8502、Chroococcidiopsis cubana(Ccu) CCALA043、Trichodesmium erythraeum(Ter)、Rhodothermus marinus(Rma)、Saccharomyces cerevisiae(Sce)、Saccharomyces castellii(Sca)、Saccharomyces unisporus(Sun)、Zygosaccharomyces bisporus(Zbi)、Torulaspora pretoriensis(Tpr)、Mycobacteria tuberculosis(Mtu)、Mycobacterium leprae(Mle)、Mycobacterium smegmatis(Msm)、Pyrococcus abyssi(Pab)、Pyrococcus horikoshii(Pho)、Coxiella burnetti(Cbu)、Coxiella neoformans(Cne)、Coxiella gattii(Cga)、Histoplasma capsulatum(Hca)、及びPorphyra purpurea chloroplast(Ppu)のようなシアノバクテリア由来のDnaE遺伝子(例えば、DNAポリメラーゼIIIサブユニットアルファ)に由来してもよい。いくつかの実施形態では、分割は、望ましい安定性及び活性を持つ分割インテイン(例えば、分割インテインはCfaインテインである)を設計するためにコンセンサス設計(例えば、Cfa)を特定するためのDnaEの複数の配列アライメント研究に由来する。現在開示されている組成物及び方法と共に使用するのに好適な他の分割インテインシステムには、国際特許出願公開番号第WO2017/132580号、同第WO2020/079034号、同第WO2018/071868号、同第WO2020/249723号、同第WO2021/099607号、同第WO2021/040703号、同第WO2013/045632号、同第WO2020/146627号、及び同第WO2021/047558号、ならびに米国特許第10,066,027号、同第10,526,401号、及び同第8,394,604号に記載されているものが挙げられ、そのそれぞれが、分割インテインシステムに関するものとして参照によって本明細書に組み込まれる。
【0164】
いくつかの実施形態では、第1のベクター及び第2のベクターはさらに、その5’末端にて5’逆方向末端反復(ITR)及び3’末端にて3’ITRを含む。いくつかの実施形態では、5’ITR及び3’ITRはAAVのITRである。いくつかの実施形態では、AAVのITRはAAV2のITRである。
【0165】
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは:a)5’から3’に向かって:i)任意で5’ITR(例えば、AAV2の5’ITR)と;ii)OCMプロモーター(例えば、配列番号1~3のいずれか1つのOCMプロモーター)を含有するポリヌクレオチドと;iii)ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号4または配列番号5のステレオシリンタンパク質のN末端部分)をコードするポリヌクレオチドと;iv)N-インテインをコードするポリヌクレオチドと;v)任意でポリ(A)配列と;vi)任意で3’ITR(例えば、AAV2の3’ITR)と、を含有する第1のベクターと、b)5’から3’に向かって:i)任意で5’ITR(例えば、AAV2の5’ITR)と;ii)OCMプロモーター(例えば、配列番号1~3のいずれか1つのOCMプロモーター)を含有するポリヌクレオチドと;iii)C-インテインをコードするポリヌクレオチドと;iv)ステレオシリンタンパク質のC末端部分(例えば、配列番号4または配列番号5のSTRCタンパク質のC末端部分)をコードするポリヌクレオチドと;(v)任意でポリ(A)配列と;(vi)任意で3’ITR(例えば、AAV2の3’ITR)とを含有する第2のベクターとを含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、以下に示すような配列番号8のアミノ酸配列を有する、または配列番号8に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0167】
CLSYDTEILTVEYGFLPIGKIVEERIECTVYTVDKNGFVYTQPIAQWHNRGEQEVFEYCLEDGSIIRATKDHKFMTTDGQMLPIDEIFERGL(配列番号8)
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、以下に示すような配列番号9のアミノ酸配列を有する、または配列番号9に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するC-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0168】
VKIISRKSLGTQNVYDIGVEKDHNFLLKNGLVASN(配列番号9)
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、以下に示すような配列番号10のアミノ酸配列を有する、または配列番号10に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0169】
CLSYDTEILTVEYGFLPIGKIVEERIECTVYTVDKNGFVYTQPIAQWHNRGEQEVFEYCLEDGSIIRATKDHKFMTTDGQMLPIDEIFERGLDLKQVDGLP(配列番号10)
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、以下に示すような配列番号11のアミノ酸配列を有する、または配列番号11に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するC-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0170】
MVKIISRKSLGTQNVYDIGVEKDHNFLLKNGLVASN(配列番号11)
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、以下に示すような配列番号12のアミノ酸配列を有する、または配列番号12に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するC-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0171】
VKIISRKSLGTQNVYDIGVGEPHNFLLKNGLVASN(配列番号12)
いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテインシステムは、配列番号8または配列番号10のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの3’に位置する)を含む第1のベクターと、配列番号9、配列番号11または配列番号12のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’に位置する)を含む第2のベクターと、を含む。いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテインシステムは、配列番号8のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターと、配列番号9のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターとを含む。いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテインシステムは、配列番号8のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターと、配列番号11のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターとを含む。いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテインシステムは、配列番号8のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターと、配列番号12のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターとを含む。いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテインシステムは、配列番号10のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターと、配列番号9のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターとを含む。いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテインシステムは、配列番号10のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターと、配列番号11のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターとを含む。いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテインシステムは、配列番号10のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターと、配列番号12のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターとを含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、以下に示すような配列番号13のアミノ酸配列を有する、または配列番号13に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0173】
CLSYETEILTVEYGLLPIGKIVEKRIECTVYSVDNNGNIYTQPVAQWHDRGEQEVFEYCLEDGSLIRATKDHKFMTVDGQMLPIDEIFERELDLMRVDNLPN(配列番号13)
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、以下に示すような配列番号14のアミノ酸配列を有する、または配列番号14に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するC-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0174】
MIKIATRKYLGKQNVYDIGVERDHNFALKNGFIASN(配列番号14)
いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテインシステムは、配列番号13のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの3’に位置する)を含む第1のベクターと、配列番号14のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’に位置する)を含む第2のベクターとを含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、以下に示すような配列番号15のアミノ酸配列を有する、または配列番号15に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0176】
CLSYDTEILTVEYGFLPIGKIVEERIECTVYTVDKNGFVYTQPIAQWHNRGEQEVFEYCLEDGSIIRATKDHKFMTTDGQMLPIDEIFERGLDLKQVDGLP(配列番号15)
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、以下に示すような配列番号16のアミノ酸配列を有する、または配列番号16に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するC-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0177】
MKRTADGSEFESPKKKRKVKIISRKSLGTQNVYDIGVEKDHNFLLKNGLVASN(配列番号16)
いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテインシステムは、配列番号15のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの3’に位置する)を含む第1のベクターと、配列番号16のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’に位置する)を含む第2のベクターとを含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、CFSGDTLVALTD(配列番号17)のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、CLAGDTLITLA(配列番号18)のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、CLQNGTRLLR(配列番号19)のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、CLTGDSQVLTR(配列番号20)のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、CLTYETEIMTV(配列番号21)のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、CLSGNTKVRFRY(配列番号22)のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、配列番号17~22に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、GVFVHN(配列番号23)のアミノ酸配列を有するC-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、GLLVHN(配列番号24)のアミノ酸配列を有するC-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、GLIASN(配列番号25)のアミノ酸配列を有するC-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、GLVVHN(配列番号26)のアミノ酸配列を有するC-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、配列番号23~26に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するC-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテインシステムは、配列番号17のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの3’に位置する)を含む第1のベクターと、配列番号23のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’に位置する)を含む第2のベクターとを含む。いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテインシステムは、配列番号20のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの3’に位置する)を含む第1のベクターと、配列番号24のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’に位置する)を含む第2のベクターとを含む。いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテインシステムは、配列番号21のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの3’に位置する)を含む第1のベクターと、配列番号25のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’に位置する)を含む第2のベクターとを含む。いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテインシステムは、配列番号22のアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの3’に位置する)を含む第1のベクターと、配列番号26のアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’に位置する)を含む第2のベクターとを含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、本開示の2ベクター分割インテインシステムは、以下に示すような表7に記載されているN-インテイン及びC-インテインのペアをコードする1以上のポリヌクレオチド、または表7に記載されているN-インテイン及びC-インテインのペアに対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するN-インテイン及びC-インテインのペアをコードする1以上のポリヌクレオチドをまとめて含む。いくつかの実施形態では、2ベクター分割インテインシステムは、表7に列挙されるアミノ酸配列を有するN-インテインペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドの3’に位置する)を含む第1のベクターと、N-インテインのアミノ酸配列として表7の行に列挙されるアミノ酸配列を有するC-インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドの5’に位置する)を含む第2のベクターと、を含む。
【0182】
【0183】
配列番号27のNpu N-インテインは、以下に示すような配列番号41のDNA配列を有するポリヌクレオチドによってコードされてもよい。
TGCCTGAGCTACGAGACCGAGATCCTGACCGTGGAGTACGGCCTGCTGCCCATCGGCAAGATCGTGGAGAAGAGAATCGAGTGCACCGTGTACAGCGTGGACAACAACGGCAACATCTACACCCAGCCCGTGGCCCAGTGGCACGACAGAGGCGAGCAGGAGGTGTTCGAGTACTGCCTGGAGGACGGCAGCCTGATCAGAGCCACCAAGGACCACAAGTTCATGACCGTGGACGGCCAGATGCTGCCCATCGACGAGATCTTCGAGAGAGAGCTGGACCTGATGAGAGTGGACAACCTGCCCAAC(配列番号41)
配列番号28のNpu C-インテインは、以下に示すような配列番号42のDNA配列を有するポリヌクレオチドによってコードされてもよい。
【0184】
ATCAAGATCGCCACAAGAAAGTACCTGGGCAAGCAGAACGTGTACGACATCGGCGTGGAGAGAGACCACAACTTCGCCCTGAAGAACGGCTTCATCGCCAGCAAT(配列番号42)
本開示の分割インテイン(すなわち、N-インテイン及びC-インテイン)は、トランススプライシング反応を行うことができるそのN末端またはC末端にまたはその近傍に求核性アミノ酸を含むことができる。いくつかの実施形態では、求核性アミノ酸はセリン、スレオニン、システインまたはアラニンから選択される。
【0185】
いくつかの実施形態では、第1のベクター及び/または第2のベクターはさらに、例えば、とりわけ、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、エンハンサー配列、ポリ(A)配列、ターミネーター配列、または分解シグナルのような1以上の追加の調節配列を含む。
【0186】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている分割インテインシステムは、リガンド(例えば4-ヒドロキシタモキシフェン、ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、アミノ酸、ヌクレオチド等のような小分子)との接触時にタンパク質スプライシングを行うリガンド依存性のインテインを含む。種々のリガンド依存性のインテインは、米国特許出願公開第2014/0065711号に記載されており、その開示はリガンド依存性のインテインに関して参照によって本明細書に組み込まれる。
【0187】
本開示は、ユビキチン-プロテアソーム系及び/またはオートファジー-リソソーム経路によるタンパク質分解に介在する、インテイン(例えば、N-インテインまたはC-インテイン)ポリペプチド(複数可)内に1以上の分解シグナルを含有するベクターを提供する。そのような配列を本開示のベクター系に組み込んで、標的細胞内での切除されたインテインタンパク質の蓄積を回避または低減してもよい。例示的な分解シグナルには、N-デグロン及びC-デグロンが含まれ、これらは、ポリユビキチン化し、その後分解を標的とすることができるリジン残基を含有するモチーフを含有するペプチド配列である。いくつかの実施形態では、デグロンは、タンパク質配列のN末端にもC末端にも存在しないタンパク質配列(例えばインテイン配列)内に位置する分解シグナルである。いくつかの実施形態では、N-インテインタンパク質は1以上の(例えば2、3、4、5またはそれ以上の)デグロンを含む。いくつかの実施形態では、C-インテインタンパク質は1以上の(例えば2、3、4、5またはそれ以上の)デグロンを含む。いくつかの実施形態では、デグロンはCL1デグロンであり、これは、誤って折り畳まれたタンパク質と構造類似性を共有し、且つユビキチン化系によって認識されるC末端不安定化ペプチドである。いくつかの実施形態では、デグロンはPB29、SMN、CIITAまたはODCのデグロンである。そのような分解シグナルは、国際公開第WO2016/13932号に記載されており、これは、分解シグナルに関するものとして参照によって本明細書に組み込まれる。分解シグナルの別の例には、WO2020/079034(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されているようなE.coliのジヒドロ葉酸還元酵素(ecDHFR)由来のデグロンが挙げられる。追加の分解シグナルには、FKBP12分解ドメイン(Banaszynski等,Cell,126:995-1004,2006)、PEST分解ドメイン(Rechsteiner及びRogers、Trends Biochem Sci.21:267-271,1996)、UbR タグユビキチン化シグナル(Chassin等,Nat.Commun.10:2013,2019)、及びヒトELRBDの不安定化突然変異(Miyazaki等,J.Am.Chem.Soc.,134:3942-3945,2012)が挙げられる。
【0188】
ステレオシリンの発現のためのベクター
高速の転写及び翻訳を達成することに加えて、哺乳類細胞での外来性遺伝子の安定した発現は、その遺伝子を含有するポリヌクレオチドを哺乳類細胞の核ゲノムに組み込むことによって達成することができる。ステレオシリンをコードするポリヌクレオチドを哺乳類細胞の核DNAに送達し、組み込むための種々のベクターが開発されてきた。発現ベクターの例は、例えば、Gellissen,Production of Recombinant Proteins:Novel Microbial and Eukaryotic Expression Systems(John Wiley & Sons,マーブルヘッド,マサチューセッツ州,2006)に記載されている。本明細書に記載されている組成物及び方法で使用するための発現ベクターは、ステレオシリンタンパク質の一部(例えば、配列番号4または配列番号5の一部)をコードするポリヌクレオチド配列に操作可能に連結されたOCMプロモーター(例えば、表3に挙げたプロモーター配列のいずれか1つ(例えば、配列番号1~3のいずれか1つ)に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性)を有するポリヌクレオチド)、と同様に、例えば、これらの作用物質の発現及び/またはこれらのポリヌクレオチド配列の哺乳類細胞ゲノムへの組み込みに使用される追加の配列要素を含有する。ステレオシリンタンパク質の一部をコードする導入遺伝子に操作可能に連結されたOCM特異的プロモーターを含有することができるベクターには、プラスミド(例えば、細胞内で自律的に複製できる環状DNA分子)、コスミド(例えば、pWEベクターまたはsCosベクター)、人工染色体(例えば、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはP1由来人工染色体(PAC))、及びウイルスベクターが挙げられる。ステレオシリンの発現に使用できる特定のベクターには、遺伝子転写を指示するエンハンサー領域のような調節配列を含有するプラスミドが挙げられる。ステレオシリンタンパク質の発現に有用な他のベクターは、この遺伝子の翻訳速度を高める、または遺伝子転写から生じるmRNAの安定性もしくは核外輸送を向上させるポリヌクレオチド配列を含有する。これらの配列要素には、例えば、発現ベクターが保有する遺伝子の効率的な転写を指示するための、5’及び3’非翻訳領域、内部リボソーム侵入部位(IRES)、及びポリアデニル化シグナル部位が含まれる。本明細書に記載されている組成物及び方法での使用に好適な発現ベクターはまた、そのようなベクターを含有する細胞を選択するためのマーカーをコードするポリヌクレオチドも含有してもよい。好適なマーカーの例には、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、またはノーセオスリシンのような抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子が挙げられる。
【0189】
ポリヌクレオチド送達用のウイルスベクター
ウイルスゲノムは、STRCを標的細胞(例えば、ヒト細胞のような哺乳類細胞)のゲノムに効率的に送達するために使用することができるベクターの豊富な供給源を提供する。ウイルスゲノムは、そのようなゲノム内に含有されるポリヌクレオチドが通常、一般化された形質導入または特殊な形質導入によって哺乳類細胞の核ゲノムに組み込まれるので、遺伝子送達のための特に有用なベクターである。これらのプロセスは、天然のウイルス複製サイクルの一部として発生し、遺伝子の組み込みを誘導するためにタンパク質や試薬を追加する必要がない。ウイルスベクターの例としては、レトロウイルス(例えば、Retroviridae科ウイルスベクター)、アデノウイルス(例えば、Ad5、Ad26、Ad34、Ad35、及びAd48)、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えば、オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス及び水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹及びセンダイ)、プラス鎖RNAウイルス、例えば、ピコルナウイルス及びアルファウイルス、ならびにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型及び2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)、及びポックスウイルス(例えば、ワクシニア、変異ワクシニアアンカラ(MVA)、鶏痘及びカナリア痘)を含む二本鎖DNAウイルスが挙げられる。他のウイルスとしては、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポーバウイルス、ヘパドナウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒト泡沫状ウイルス、及び肝炎ウイルスが挙げられる。レトロウイルスの例には:トリ白血病肉腫、トリC型ウイルス、哺乳類C型、B型ウイルス、D型ウイルス、オンコレトロウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、アルファレトロウイルス、ガンマレトロウイルス、スプーマウイルスが挙げられる(Coffin,J.M.,Retroviridae:The viruses and their replication,Virology,Third Edition(Lippincott-Raven,フィラデルフィア,1996))。他の例としては、マウス白血病ウイルス、マウス肉腫ウイルス、マウス乳腺腫瘍ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒヒ内在性ウイルス、テナガザル白血病ウイルス、マソン-ファイザーサルウイルス、サル免疫不全ウイルス、サル肉腫ウイルス、ラウス肉腫ウイルス及びレンチウイルスが挙げられる。ベクターの他の例は、例えば、米国特許第5,801,030号に記載されており、その開示は、それが遺伝子治療で使用するためのウイルスベクターに属するため、参照により本明細書に援用される。
【0190】
ポリヌクレオチド送達用のAAVベクター
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物及び方法のポリヌクレオチドは、細胞へのそれらの導入を促進するためにrAAVベクター及び/またはrAAVウイルス粒子に組み込まれる。本明細書に記載されている組成物及び方法で有用なrAAVベクターは、(1)本明細書に記載されているOCMプロモーター(例えば、表3に挙げたプロモーター配列のいずれか1つ(例えば、配列番号1~3のいずれか1つ)に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性))を有するポリヌクレオチド)と、(2)発現される異種配列(例えば、ステレオシリンタンパク質のN末端部分またはC末端部分をコードするポリヌクレオチド)と、(3)異種遺伝子の組み込み及び発現を促進するウイルス配列とを含む組み換えポリヌクレオチド構築物である。ウイルス配列は、DNAの複製及びウイルス粒子へのパッケージング(例えば、機能的ITR)のためにシスで必要とされるAAVの配列を含んでもよい。典型的な応用では、導入遺伝子は、難聴または聴覚障害と関連する突然変異(例えば、DFNB16)を保有する対象にて聴力を改善するのに有用であってもよい遺伝性難聴の形態での対象にて変異しているタンパク質(例えば、ステレオシリン)の野生型形態をコードする。そのようなrAAVベクターはまた、マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子も含有してもよい。有用なrAAVベクターでは、1以上のAAVのWT遺伝子の全体または一部が欠失しているが、機能的な隣接ITR配列は保持されている。AAVのITRは特定の応用に好適な任意の血清型であってもよい。本明細書に記載されている方法及び組成物で使用するために、ITRはAAV2のITRであり得る。rAAVベクターの使用方法は、例えば、Tal等,J.Biomed.Sci.7:279(2000)、及びMonahan and Samulski,Gene Delivery 7:24(2000)に記載されており、それらの各開示は、それらが遺伝子送達用のAAVベクターに属するため、参照により本明細書に援用される。
【0191】
本明細書に記載されているポリヌクレオチド及びベクター(例えば、ステレオシリンタンパク質のN末端部分、またはいくつかの実施形態ではC末端部分をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されたOCMプロモーター)は、ポリヌクレオチドまたはベクターの細胞への導入を容易にするために、rAAVウイルス粒子に組み込むことができる。AAVのカプシドタンパク質はウイルス粒子の外部の非核酸部分を構成し、AAVキャップ遺伝子によってコードされる。cAP遺伝子は、ウイルス粒子アセンブリに必要な3つのウイルスコートタンパク質VP1、VP2、及びVP3をコードする。rAAVウイルス粒子の構築は、例えば、US5,173,414;US5,139,941;US5,863,541;US5,869,305;US6,057,152;及びUS6,376,237;ならびにRabinowitz等,J.Virol.76:791(2002)及びBowles等,J.Virol.77:423(2003)に記載されており、それらの各開示は、それらが遺伝子送達用のAAVベクターに属するため、参照により本明細書に援用される。
【0192】
本明細書に記載されている組成物及び方法と組み合わせて有用なrAAVウイルス粒子としては、AAV1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eb、及びPHP.Sを含む様々なAAV血清型に由来するウイルス粒子が挙げられる。有毛細胞を標的とする場合、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV6、AAV8、AAV9、Anc80、Anc80L65、DJ/9、7m8、及びPHP.Bが特に有用であり得る。網膜の形質導入のために進化させた血清型もまた、本明細書に記載されている方法及び組成物において使用されてもよい。異なる血清型のAAVベクター及びAAVタンパク質の構築及び使用は、例えば、Chao等,Mol.Ther.2:619(2000);Davidson等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97:3428(2000);Xiao等,J.Virol.72:2224(1998);Halbert等,J.Virol.74:1524(2000);Halbert等,J.Virol.75:6615(2001);及びAuricchio等,Hum.Molec.Genet.10:3075(2001)に記載されており、それらの各開示は、それらが遺伝子送達用のAAVベクターに属するため、参照により本明細書に援用される。
【0193】
本明細書に記載されている組成物及び方法と併せて有用なものは偽型rAAVベクターである。偽型ベクターには、所与の血清型(例えば、AAV9)のAAVベクターが、所与の血清型以外の血清型(例えば、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8など)に由来するカプシド遺伝子で偽型化されたものが含まれる。偽型rAAVウイルス粒子の構築及び使用を含む技術は当該技術分野で既知であり、例えば、Duan等,J.Virol.75:7662(2001);Halbert等,J.Virol.74:1524(2000);Zolotukhin等,Methods,28:158(2002);及びAuricchio等,Hum.Molec.Genet.10:3075(2001)に記載されている。
【0194】
ウイルス粒子のカプシド内に変異を有するAAVウイルス粒子を使用して、変異していないカプシドウイルス粒子よりも効果的に特定の細胞型に感染させ得る。例えば、適切なAAV変異型は、AAVを特定の細胞型に標的化することを容易にするためのリガンド挿入変異を有し得る。挿入変異型、アラニンスクリーニング変異型、及びエピトープタグ変異型を含むAAVカプシド変異型の構築及び特徴決定は、Wu等,J.Virol.74:8635(2000)に記載されている。本明細書に記載されている方法で使用することができる他のrAAVウイルス粒子としては、ウイルスの分子育種によって、及びエクソンシャッフリングによって生成されるカプシドハイブリッドが挙げられる。例えば、Soong等,Nat.Genet.,25:436(2000)及びKolman及びStemmer,Nat.Biotechnol.19:423(2001)を参照されたい。
【0195】
医薬組成物
本明細書に記載されている核酸ベクターは、感音性難聴を患っているヒト患者のような患者に投与するための媒体内に組み込まれてもよい。ステレオシリンタンパク質の一部をコードするポリヌクレオチドを含有するウイルスベクターのようなベクターを含有する医薬組成物は、当該技術分野で既知の方法を使用して調製することができる。例えば、そのような組成物は、例えば、生理学的に許容される担体、賦形剤または安定剤(Remington:The Science and Practice of Pharmacology 22nd edition,Allen,L.Ed.(2013);参照によって本明細書に組み込まれる)を使用して、所望の形態、例えば、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製することができる。
【0196】
本明細書に記載されている核酸ベクター(例えば、ウイルスベクター)の混合物は、1以上の賦形剤、担体、または希釈剤と好適に混合された水中で調製されてもよい。分散系もまた、グリセロール、液状ポリエチレングリコール、及びこれらの混合物中で、及び油中で調製されてもよい。これらの製剤は、通常の保存条件下及び使用条件下で、微生物の増殖を防止するための保存剤を含有してもよい。注射用途に好適な医薬形態として、注射可能な無菌溶液または無菌分散液を即時調製するための無菌水溶液または無菌分散液及び無菌粉末が挙げられる(US5,466,468に記載されており、その開示は参照により本明細書に援用される)。任意の場合において、製剤は、無菌であってもよく、容易に注射できる程度の流動性を有していてもよい。製剤は、製造及び保管条件下で安定であってもよく、細菌及び真菌のような微生物の混入作用から保護され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液状ポリエチレングリコールなど)、その好適な混合物、及び/または植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用によって、分散系の場合には必要とされる粒度の維持によって、また界面活性剤の使用によって、維持されてもよい。微生物の作用の抑制は、種々の抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の吸収の延長は、吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中で使用することによってもたらされ得る。
【0197】
例えば、本明細書に記載されている医薬組成物を含有する溶液は、必要に応じて好適に緩衝化され、液体希釈液は先ず十分な生理食塩水またはグルコースで等張性にする。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内の投与に特に好適である。これに関して、採用することができる無菌水性媒体は本開示に照らして当業者に知られているであろう。例えば、1用量を1mlのNaCl等張液中に溶解し、1000mlの皮下注射液に加えるか、または注入予定部位に注射してもよい。治療する対象の状態に応じて、用量にはいくらかの変動が必然的に生じる。内耳への局所投与のために、組成物を、合成外リンパ溶液を含有するように製剤化してもよい。例示的な合成外リンパ溶液は、20~200mMのNaCl、1~5mMのKCl、0.1~10mMのCaCl2、1~10mMのグルコース、及び2~50mMのHEPESを含有し、約6と9の間のpH、及び約300mOsm/kgのオスモル濃度を有する。いずれにしても、投与を担当する者が個々の対象に適切な用量を決定する。さらに、ヒトへの投与の場合、製剤は、FDA Office of Biologics基準によって要求される無菌性、発熱性、一般的安全性、及び純度の基準を満たしていてもよい。
【0198】
治療方法
本明細書に記載されている組成物は、感音性難聴を有する、または感音性難聴を発症するリスクがある対象に、内耳への局所投与(例えば、外リンパまたは内リンパへの投与、例えば、卵円窓、正円窓、または半規管(水平半規管)へのまたはそれを介した,あるいは経鼓膜注入または鼓室内注入による投与、例えば、OHCへの投与)、静脈内、非経口、皮内、経皮、筋肉内、鼻腔内、皮下、経皮、気管内、腹腔内、動脈内、血管内、吸入、灌流、洗浄、及び経口での投与のような種々の経路によって投与されてもよい。所与の場合における投与に最も好適な経路は、投与される特定の組成物、患者、医薬製剤化方法、投与方法(例えば、投与時間及び投与経路)、患者の年齢、体重、性別、治療される疾患の重症度、患者の食事、及び患者の排泄率に依存するであろう。組成物は1回、または2回以上(例えば、年1回、年2回、年3回、隔月、または毎月)投与されてもよい。いくつかの実施形態では、第1の核酸ベクター及び第2の核酸ベクターは、同時に(例えば、1つの組成物にて)投与される。いくつかの実施形態では、第1の核酸ベクター及び第2の核酸ベクターは順次投与される(例えば、第2の核酸ベクターは、第1の核酸ベクターの直後、または第1の核酸ベクターから5分後、10分後、15分後、20分後、25分後、30分後、45分後、1時間後、2時間後、8時間後、12時間後、1日後、2日後、7日後、2週間後、1ヵ月後、またはそれ以上後に投与される)。第1の核酸ベクター及び第2の核酸ベクターは同じカプシドまたは異なるカプシド(例えば、AAVカプシド)を有することができる。
【0199】
本明細書に記載されているように治療されてもよい対象は、感音性難聴を有する、またはそれを発症するリスクがある対象である。本明細書に記載されている組成物及び方法は、STRCに突然変異(例えば、STRCの機能もしくは発現を低下させる突然変異、もしくはDFNB16を有する対象のような感音性難聴に関連するSTRC突然変異)を有する対象、常染色体劣性感音性難聴もしくは聴覚障害の家族歴(例えば、STRC関連の難聴の家族歴)を有する対象、またはSTRCの変異状態及び/またはSTRCの活性レベルが不明である対象を治療するのに使用することができる。本明細書に記載されている方法は、本明細書に記載されている組成物による治療または組成物の投与の前に、STRCでの突然変異について対象をスクリーニングする工程を含んでもよい。当業者に既知の標準的な方法(例えば、遺伝子検査)を使用して、対象をSTRCの突然変異についてスクリーニングすることができる。本明細書に記載されている方法はまた、本明細書に記載されている組成物による治療または組成物の投与の前に対象にて聴覚を評価する工程を含んでもよい。聴力検査、聴性脳幹反応(ABR)、蝸電図検査(ECOG)、及び耳音響放射のような標準的な検査を使用して聴力を評価することができる。本明細書に記載されている組成物及び方法はまた、難聴または聴覚神経障害を発症するリスクのある患者、例えば、遺伝性難聴の家族歴を有する患者、またはまだ難聴もしくは聴覚障害を示していないSTRC突然変異を保有する患者への予防的治療として投与されてもよい。
【0200】
治療は、種々の単位用量で本明細書に記載されている核酸ベクター(例えば、AAVウイルスベクター)を含有する組成物の投与を含んでもよい。各単位用量は通常、所定の量の治療用組成物を含有するであろう。投与される量、ならびに特定の投与経路及び製剤化は臨床技術分野の当業者の技術の範囲内である。単位用量は単回注射として投与される必要はないが、設定された期間にわたる持続注入を含んでもよい。投与は、内耳(例えば、蝸牛)への損傷を最小限に抑えるために、シリンジポンプを使用して実施して注入速度を制御してもよい。核酸ベクターがAAVベクター(例えば、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eb、またはPHP.Sベクター)である場合、ウイルスベクターは、例えば、約1×109ベクターゲノム(VG)/mL~約1×1016VG/mL(例えば、1×109VG/mL、2×109VG/mL、3×109VG/mL、4×109VG/mL、5×109VG/mL、6×109VG/mL、7×109VG/mL、8×109VG/mL、9×109VG/mL、1×1010VG/mL、2×1010VG/mL、3×1010VG/mL、4×1010VG/mL、5×1010VG/mL、6×1010VG/mL、7×1010VG/mL、8×1010VG/mL、9×1010VG/mL、1×1011VG/mL、2×1011VG/mL、3×1011VG/mL、4×1011VG/mL、5×1011VG/mL、6×1011VG/mL、7×1011VG/mL、8×1011VG/mL、9×1011VG/mL、1×1012VG/mL、2×1012VG/mL、3×1012VG/mL、4×1012VG/mL、5×1012VG/mL、6×1012VG/mL、7×1012VG/mL、8×1012VG/mL、9×1012VG/mL、1×1013VG/mL、2×1013VG/mL、3×1013VG/mL、4×1013VG/mL、5×1013VG/mL、6×1013VG/mL、7×1013VG/mL、8×1013VG/mL、9×1013VG/mL、1×1014VG/mL、2×1014VG/mL、3×1014VG/mL、4×1014VG/mL、5×1014VG/mL、6×1014VG/mL、7×1014VG/mL、8×1014VG/mL、9×1014VG/mL、1×1015VG/mL、2×1015VG/mL、3×1015VG/mL、4×1015VG/mL、5×1015VG/mL、6×1015VG/mL、7×1015VG/mL、8×1015VG/mL、9×1015VG/mL、または1×1016VG/mL)の用量で1μL~200μL(例えば、1、2、3、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200μL)の容量にて患者に投与してもよい。AAVベクターは、約1×107VG/耳~約2×1015VG/耳(例えば、1×107VG/耳、2×107VG/耳、3×107VG/耳、4×107VG/耳、5×107VG/耳、6×107VG/耳、7×107VG/耳、8×107VG/耳、9×107VG/耳、1×108VG/耳、2×108VG/耳、3×108VG/耳、4×108VG/耳、5×108VG/耳、6×108VG/耳、7×108VG/耳、8×108VG/耳、9×108VG/耳、1×109VG/耳、2×109VG/耳、3×109VG/耳、4×109VG/耳、5×109VG/耳、6×109VG/耳、7×109VG/耳、8×109VG/耳、9×109VG/耳、1×1010VG/耳、2×1010VG/耳、3×1010VG/耳、4×1010VG/耳、5×1010VG/耳、6×1010VG/耳、7×1010VG/耳、8×1010VG/耳、9×1010VG/耳、1×1011VG/耳、2×1011VG/耳、3×1011VG/耳、4×1011VG/耳、5×1011VG/耳、6×1011VG/耳、7×1011VG/耳、8×1011VG/耳、9×1011VG/耳、1×1012VG/耳、2×1012VG/耳、3×1012VG/耳、4×1012VG/耳、5×1012VG/耳、6×1012VG/耳、7×1012VG/耳、8×1012VG/耳、9×1012VG/耳、1×1013VG/耳、2×1013VG/耳、3×1013VG/耳、4×1013VG/耳、5×1013VG/耳、6×1013VG/耳、7×1013VG/耳、8×1013VG/耳、9×1013VG/耳、1×1014VG/耳、2×1014VG/耳、3×1014VG/耳、4×1014VG/耳、5×1014VG/耳、6×1014VG/耳、7×1014VG/耳、8×1014VG/耳、9×1014 VG/耳、1×1015VG/耳、または2×1015 VG/耳)の用量で対象に投与されてもよい。
【0201】
本明細書に記載されている組成物は、聴力を改善する、ステレオシリンタンパク質(例えば、配列番号4または5の配列を有するステレオリシンタンパク質などの、WTステレオシリンタンパク質、例えば、蝸牛有毛細胞、例えば、外有毛細胞における発現)の発現を増やす、ステレオシリン機能を高める、OHC構造を改善する、OHC機能を改善する、OHCの損傷または死滅を防止するもしくは減らす、蓋膜へのOHC毛束の付着を改善する、またはOHCの生存率を改善するのに十分な量で投与される。聴力は、標準的な聴力検査(例えば、聴力検査、ABR、蝸電図検査(ECOG)、及び耳音響放射)を使用して評価されてもよく、治療前に得られた聴力測定と比較して5%以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%以上)改善されてもよい。いくつかの実施形態では、組成物は対象の発話を理解する能力を改善するのに十分な量で投与される。本明細書に記載されている組成物はまた、感音性難聴(例えば、難聴に関連するSTRC遺伝子の遺伝子変異を保有する、または難聴の家族歴(例えば、常染色体劣性難聴)を有するが、聴覚障害を示さない対象、または軽度から中等度の難聴を示す対象にて)の発症または進行を遅らせる、または防止するのに十分な量で投与されてもよい。ステレオシリンの発現は、免疫組織化学、ウェスタンブロット分析、定量的リアルタイムPCR、またはタンパク質もしくはmRNAを検出するための当該技術分野で既知の他の方法を使用して評価されてもよく、本明細書に記載されている組成物の投与前のステレオシリンの発現と比べて5%以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%またはそれ以上)増えてもよい。OHCの機能、または対象に投与される核酸ベクターによってコードされるステレオシリンタンパク質の機能は、聴力検査に基づいて間接的に評価されてもよく、またそれらは、本明細書に記載されている組成物の投与前のOHCの機能、またはタンパク質の機能と比べて5%以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%またはそれ以上)向上してもよい。これらの効果は、本明細書に記載されている組成物の投与後、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、15週間、20週間、25週間以内、またはそれ以上の間に生じてもよい。治療に使用される用量及び投与経路に応じて、組成物を投与してから、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月後またはそれ以上後に患者を評価してもよい。評価の結果に応じて、患者は追加の治療を受けてもよい。
【0202】
キット
本明細書に記載されている組成物は、例えば、STRC遺伝子の突然変異に関連する感音性難聴のような感音性難聴がある対象を治療するのに使用するためのキットで提供することができる。組成物は、本明細書に記載されているポリヌクレオチド(例えば、ステレオシリンタンパク質のN末端部分をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結された、本明細書に記載されているポリヌクレオチド(例えば、表3に列挙されるOCMプロモーター配列のいずれか1つ(例えば、配列番号1~3のいずれか1つ)と少なくとも85%の配列同一性(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するポリヌクレオチドと、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチド)と、そのようなポリヌクレオチドを含有する核酸ベクター系(例えば、本明細書に記載されている2ベクター系)とを含んでもよい。核酸ベクターは、AAVウイルスカプシド(例えば、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV6、AAV8、AAV9、Anc80、Anc80L65、DJ/9、7m8、またはPHP.B)にパッケージングされてもよい。キットはさらに、キットのユーザー、例えば、医師に、本明細書に記載されている方法を実施するように指示する添付文書を含むことができる。キットには、場合により、組成物を投与するための注射器または他の器具を含ませてもよい。
【0203】
実施例
以下の実施例は、本明細書に記載されている組成物及び方法をどのように使用し、製造し、評価し得るかについての説明を当業者に提供するために提示し、純粋に本開示を例示することを意図するものであり、発明者らが自身の開示と見なすものの範囲を限定することを意図しない。
【0204】
実施例1:OCMプロモーター配列は生体内でマウスの蝸牛におけるOHCにて導入遺伝子の発現を誘導する。
生体内でOHCにて導入遺伝子を誘導することにおける構築されたOCMプロモーター(配列番号1)の有効性を判定するために、マウス蝸牛に、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下でGFPを発現するAAVベクターまたはOCMプロモーターの制御下でGFPを発現するAAVベクターのいずれかで形質導入した。具体的には、AAV-OCM-GFPウイルスを、後半規管を介して2日齢のCBA/CaJマウスに片耳あたり7.7E+9ベクターゲノムの用量で注入した。マウスを手術から回復させ、19日後に安楽死させ、10%中性緩衝ホルマリンで灌流した。内耳側頭骨を採取し、8%EDTA中で3日間脱灰した。脱灰した側頭骨から蝸牛を取り出し、有毛細胞すべてを標識するミオシン7a(Myo7a)抗体で免疫染色し、共焦点画像解析のためにスライドに載せた。ネイティブのGFP蛍光を示す。ユビキタスプロモーターを使用して、AAV-CMV-GFPは内有毛細胞、外有毛細胞、らせん神経節ニューロン、間葉細胞、及びグリアを含む蝸牛内の多くの細胞型でGFP発現を誘導した(
図1A)。外有毛細胞特異的プロモーターを使用して、AAV-OCM(配列番号1)-GFPは外有毛細胞でのみGFP発現を誘導した(
図1B)。
【0205】
実施例2.OCMプロモーター駆動のGFP発現は非ヒト霊長類のコルチ器にて外有毛細胞で高められる。
非ヒト霊長類にて生体内での配列番号1のOCMプロモーターの特異性を調べるために、非ヒト霊長類(Macaca fascicularis)の耳に、配列番号1のOCMプロモーターに操作可能に連結された、核を標的とするH2B-eGFPを含むAAVベクターを注射した。成獣非ヒト霊長類に、正円窓膜、手順の間での外リンパの流出を可能にする外側半規管の開窓を介して配列番号1のOCMプロモーターの制御下でH2B-eGFPを発現するAAVベクターについて40μlのベクター(3.41×1013/ml)を注入した。
【0206】
生後4週間で、動物を屠殺し、10%のNBF中で心灌流を介して固定した後、それらの側頭骨を採取し、10%のNBF中でさらに4~10日間保持した。耳をギ酸(Immunocal)中で6日間脱灰し、パラフィンに埋め込み、5μm切片に切断した。
【0207】
切片をGFPに対する抗体で標識し、アルカリホスファターゼと結合した二次抗体で染色し、高速赤色染料と二次抗体のアルカリホスファターゼとの反応によって赤色の色染色を発色させた。切片を青色のヘマトキシリンで対比染色して、すべての核を視覚化し、20倍の倍率にてカラーカメラで撮像して、グレースケールに変換した(
図2A~
図2B、上の画像(それぞれパネルA及びB)。
図2Aは第1の動物からの単一のパラフィン切片の顕微鏡写真であり、
図2Bは第2の動物からの単一のパラフィン切片の顕微鏡写真である)。色付き抗GFP染色の赤色シグナルを視覚化するために、選択した色ツールを利用する画像処理ソフトウェアGIMPを使用して、カラー画像からすべての青色(ヘマトキシリン)の色を抽出し、その後グレースケールに変換した。赤色シグナルの核H2B-GFPを持つ核のみが見えたままであった(
図2A~
図2B、下の画像(それぞれパネルA’及びB’))。スケールは100μmを示す。内有毛細胞(IHC)及び外有毛細胞(OHC)は配向のために強調表示されている。
【0208】
実施例3.Anc80-CMV-mStrc重複二重ベクター系はステレオシリン欠損マウスにて聴覚を救済した。
CRISPR-Cas9技術を使用して、STRCの塩基対位置232でフレームシフトを作り出すことによって、CBA/CaJ背景系統にてステレオシリン欠損マウスを生成した。CBA/CaJ背景系統の野生型動物は、外有毛細胞(OHC)の不動毛の先端部で明確なステレオシリン抗体染色を示した(
図3A、下パネル)一方で、塩基対232のStrc-KO動物は抗体のシグナルを欠いた(
図3B、下パネル)。マウスSTRCを二重Anc80ベクターにて被包し、その際、第1のベクターはCMVプロモーターとマウスSTRCのcDNAヌクレオチド1~3200とを保有し、第2のベクターはアミノ酸2201~5430を保有し、完全長cDNAの2つの半部間に1000塩基対の重複を生じた。生後早期の塩基対232のStrc-KOマウスの蝸牛に、両ベクターを1E10vg/耳の濃度で後三半規管を介して送達した後、処理した塩基対232のStrc-KOマウスでは、OHCの先端及びコルチ器の内有毛細胞の本体にて、新たなステレオシリンタンパク質の発現が観察された(
図3C、下パネル)。Anc80-CMV-mStrc(重複)による処理の4週間後に、OHC機能の直接的な指標として歪成分耳音響放射(DPOAE)を評価し、無傷の上行性聴覚経路の指標として聴性脳幹反応(ABR)を測定した。塩基対232のStrc-KO動物における未処理の反対側耳(「未処理耳」)は、DPOAEがほぼ存在せず、OHC機能の喪失を示すABR閾値が非常に高いことを(
図4A~4B、白丸)示した一方で、処理された塩基対232のStrc-KO動物(「処理耳」)は聴力閾値の回復を示した(
図4A~4B、黒丸)。処理した塩基対232のStrc-KO動物の最良の応答者(
図4A~
図4B、黒四角)は野生型(「CBA/CaJ」)(
図4A~
図4B、三角)の聴力閾値に近いことを示した。AAV-Anc80-CMV-mStrcによる処理の後にステレオシリンを発現する塩基対232のStrc-KOマウスのOHCの高い割合が聴力回復を促進することが見いだされた(
図4C)。
【0209】
実施例4.2ベクター分割インテインシステムは試験管内で完全長ステレオシリンを再構成した。
実験的なプラスミドを生成するために、ステレオシリンのアミノ酸1~746をコードするDNA(「N-Strc」)を、Npu N-インテイン断片(配列番号27のNpu N-インテインをコードする配列番号41)と遺伝子融合させ、構成的に活性があるCMVプロモーターを含有するプラスミドにクローニングしてCMV.N-Strc-N-Npuを生成した。ステレオシリンのアミノ酸747~1809をコードするDNA(「C-Strc」)を、Npu C-インテイン断片(配列番号28のNpu C-インテインをコードする配列番号42)の下流で遺伝子融合させ、CMVプロモーターを含有するプラスミドにクローニングしてCMV.C-Npu-C-Strcを生成した。対照として、完全長ステレオシリンコード配列(「FL-Strc」)もCMVプラスミドにクローニングし、CMV.FL-Strcを生成した。陰性対照としてCMV.GFPを使用した。
【0210】
HEK293T細胞に、リポフェクタミン3000キット(Life Technologies)を使用して、対照プラスミドまたはN-StrcプラスミドとC-Strcプラスミドとの組み合わせのいずれかで形質移入し、標準的な細胞培養条件下で3日間インキュベートした。細胞培養物をPBSで洗浄し、細胞を溶解してタンパク質を抽出した。タンパク質溶解物の濃度はBCAアッセイを使用して測定し、ベータアクチン及びステレオシリンに対する抗体を使用したウェスタンブロッティングのために一定質量のタンパク質を負荷した。タンパク質バンドの強度のデンシトメーター測定を使用して試料に由来する完全長ステレオシリンの相対量を決定した。
【0211】
図5A~
図5Bに示すように、調べたインテインの設計により完全長ステレオシリンのバンドが生成された。
実施例5.OCMプロモーター駆動のステレオシリン発現のためのAAV二重ベクター系。
【0212】
相同組換えのためにステレオシリンのコード配列の重複を使用するAAV二重ベクター系を、2つのプラスミドを使用して設計した。第1のプラスミドは、コード配列の最初の3200ヌクレオチドによってコードされるマウスSTRCのN末端部分に操作可能に連結され、且つ5’及び3’のITR配列が隣接する配列番号1のマウスOCMプロモーターを含有した(プラスミドP959;配列番号43;
図6A)。第2のプラスミド(P724;配列番号44;
図6B)は、5’から3’の順に、第1のプラスミドによってコードされるSTRC配列の500ヌクレオチドの重複と、それに続くマウスSTRCの残りのC末端部分をコードする2730ヌクレオチドと、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)と、ウシ成長ホルモン(bGH)のポリアデニル配列とを含有した。第2のプラスミドにおけるこれらの要素にも5’及び3’のITR配列が隣接した。
【0213】
AAVウイルスベクターは、標準的なプロトコールを使用してHEK293T細胞に、rep/cap含有プラスミド及びアデノウイルスヘルパープラスミドと一緒にこれらのプラスミドの1つで形質移入することによって合成する。標準的な方法を使用してプラスミドをAAV8血清型ベクターにパッケージングし、市販業者から入手する。細胞培養培地と細胞をその後回収して、AAVを抽出し、精製する。細胞からのAAVを3サイクルの凍結融解を経て細胞から放出させ、細胞培養培地を採取して分泌されたAAVを得る。PEG8000を溶液に添加することによって細胞培養培地からのAAVを濃縮し、4℃でインキュベートし、遠心分離してAAV粒子を回収する。全てのAAVをヨードキサノール密度勾配遠心分離に通してAAV粒子を精製し、精製したAAVと緩衝液を100kDaの分子量カットオフの遠心分離カラムに通すことによって、緩衝液を0.01%のプルロニックF68を伴うPBSに交換する。2つのプラスミドのそれぞれから得られたAAVベクターは、マウスの耳に投与(例えば、内耳への局所投与)することによって組み合わせて使用される。
【0214】
AAV二重ベクター系の代替的な設計は、5’から3’の順序で5’ITR配列と、マウスのステレオシリンのN末端部分をコードする2700ヌクレオチドに操作可能に連結された配列番号1のマウスOCMプロモーターと、APスプライスドナーと、APヘッド配列と、3’ITR配列とを含有する第1のプラスミド(P960;配列番号45;
図7A)を利用した。この系の第2のプラスミドは、5’から3’の順序で、5’ITR配列と、第1のプラスミドにおけるAPヘッド配列と相同なAPヘッド配列と、APスプライスアクセプターと、マウスのステレオシリンの残りのC末端部分をコードする2730ヌクレオチドと、bGHポリA配列と3’ITRとを含有した(P726;配列番号46;
図7B)。これら2つのプラスミドの一部を組み込んだAAVウイルスベクターは上記のように合成される。
【0215】
実施例6.感音性難聴がある対象へのステレオシリンのコード配列に操作可能に連結されたOCMプロモーターを含有する2ベクター系を含有する組成物の投与。
本明細書に開示されている方法によれば、当該技術分野の医師は、聴力を改善または回復させるように、感音性難聴(例えば、DFNB16のようなSTRCの突然変異に関連する感音性難聴)がある患者、例えば、ヒト患者を治療することができる。この目的のために、当該技術分野の医師は2ベクター核酸発現系を含有する組成物をヒト患者に投与することができ、そのような系は、STRC導入遺伝子に操作可能に連結されたOCMプロモーター(例えば、配列番号1~3のいずれか1つの配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するポリヌクレオチド)をあわせて含む、2つのAAVベクター(例えば、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV6、AAV9、Anc80、Anc80L65、DJ/9、7m8、またはPHP.Bベクター)を利用する。
【0216】
2ベクター系は、第1及び第2のAAVベクターを含有する重複二重ベクター系であってもよい。重複二重ベクター系は、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号4のN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されたOCMプロモーターを含む第1のAAVベクターと、ステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドを含む第2のAAVベクターとを含んでもよく、その際、第1のベクターにおけるステレオシリンのコード配列の3’末端は第2のベクターにおけるステレオシリンのコード配列の5’末端と重複する。別の例では、2ベクター系は、第1及び第2のAAVベクターを含有するトランススプライシング二重ベクター系であってもよい。トランススプライシング二重ベクター系は、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号4のN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されたOCMプロモーターと当該ポリヌクレオチドの3’でのスプライスドナーシグナル配列とを含む第1のAAVベクターと、ステレオシリンタンパク質のC末端部をコードするポリヌクレオチドの5’でのスプライスアクセプターシグナル配列を含む第2のAAVベクターとを含んでもよい。別の例では、2ベクター系は第1及び第2のAAVベクターを含有する二重ハイブリッドベクター系であってもよい。二重ハイブリッドベクター系は、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号4のN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されたOCMプロモーターと、当該ポリヌクレオチドの3’でのスプライスドナーシグナル配列と、当該スプライスドナーシグナル配列の3’での第1の組換え誘導領域とを含む第1のAAVベクターと、第2の組換え誘導領域と、当該組換え誘導領域の3’でのスプライスアクセプターシグナル配列と、当該スプライスアクセプターシグナル配列の3’のステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドと、を含む第2のAAVベクターとを含んでもよい。さらに別の例では、2ベクター系は第1のAAVベクター及び第2のAAVベクターを含む分割インテイントランススプライシングシステムであってもよい。分割インテイントランススプライシング2ベクター系は、ステレオシリンタンパク質のN末端部分(例えば、配列番号4のN末端部分)をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されたOCMプロモーターと、その3’のN末端インテイン(N-インテイン)をコードするポリヌクレオチドとを含む第1のAAVベクターと、C末端インテイン(C-インテイン)をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されたOCMプロモーターと、その3’のステレオシリンタンパク質のC末端部分をコードするポリヌクレオチドと、を含む第2のAAVベクターと、を含んでもよい。前述の2ベクター系はさらに、例えば、エンハンサー、ポリ(a)配列、及び非翻訳領域(UTR、例えば、5’UTR及び3’UTR)のような調節配列を含んでもよい。
【0217】
AAVベクターを含有する組成物を、例えば、内耳への局所投与(例えば、外リンパへの注射、または正円窓膜を介して)によって患者に投与して、感音性難聴を治療してもよい。
【0218】
組成物を患者に投与した後、当該技術分野の医師は、導入遺伝子によってコードされる治療用タンパク質の発現、及び治療に応答した患者の改善を種々の方法によってモニターすることができる。例えば、医師は、組成物の投与後に、聴力検査、ABR、蝸電図検査(ECOG)、及び耳音響放射のような標準的な検査を実施することによって患者の聴力をモニターすることができる。組成物の投与前の聴力検査結果に比べて、組成物の投与後に1以上の検査にて患者が聴力の改善を示すという知見は、患者が治療に対して良好に応答していることを示している。その後の用量を必要に応じて決定し、投与することができる。
【0219】
他の実施形態
本開示に記載されている種々の改変及び変形が、本開示の範囲及び精神から逸脱することなく当業者に明らかであろう。本開示を特定の実施形態に関連して記載してきたが、特許請求される本開示はそのような特定の実施形態に必要以上に限定されるべきではないことを理解すべきである。実際、当業者には明らかである、本開示を実施するために記載されている様式の種々の改変は本開示の範囲内にあることが意図される。他の実施形態は特許請求の範囲にある。
【配列表】
【国際調査報告】