(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】細胞変換
(51)【国際特許分類】
C12N 15/86 20060101AFI20240416BHJP
C12P 19/34 20060101ALI20240416BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240416BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240416BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/88 20060101ALN20240416BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20240416BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240416BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
C12N15/86 Z ZNA
C12P19/34 A
A61K48/00
A61K35/76
A61P43/00 105
C12N15/88 Z
C12N7/01
C12N15/12
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023568125
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 GB2022051129
(87)【国際公開番号】W WO2022234268
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518224495
【氏名又は名称】モグリファイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ルイス・ドス・サントス,ロドリゴ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B064AF27
4B064CB30
4B064CC24
4B064CD12
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB211
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087CA11
4C087NA14
4C087ZB21
(57)【要約】
本明細書では、少なくとも1つの転写因子をコードする自己複製RNAを含有する方法および組成物、ならびに多能性幹細胞、複能性幹細胞または分化した起源細胞の所望の標的細胞への細胞変換におけるそれらの使用を記載する。方法および組成物を使用して、ヒト多能性または複能性幹細胞および様々なヒト体細胞型に自己複製RNAをトランスフェクトし、細胞をin vitro、in vivoまたはex vivoで変換することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多能性幹細胞、複能性幹細胞、または分化した起源細胞を、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す分化した標的細胞へと変換する、少なくとも1つの転写因子をコードする配列を含む自己複製RNAを含む、自己複製RNA組成物。
【請求項2】
2つのRNA分子:RNAの複製に必要な非構造タンパク質をコードする配列を含む第1の分子、および多能性幹細胞、複能性幹細胞、または分化した起源細胞を、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す分化した標的細胞へと変換する少なくとも1つの転写因子をコードする配列を含む第2の分子
を含む、自己複製RNA組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの転写因子が、POU5F1;SOX2;KLF4;MYC、MYCL、LIN28、NANOG;およびGLIS1からなる公知の多能性誘導転写因子のリストからの1つより多くの転写因子を含まない、請求項1または2に記載の自己複製RNA組成物。
【請求項4】
転写因子が、表1または2または3に列挙した転写因子から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の自己複製RNA組成物。
【請求項5】
自己複製RNAが2つ以上の転写因子をコードする、請求項1から4のいずれかに記載の自己複製RNA組成物。
【請求項6】
自己複製RNAが、
(a)細胞に送達された場合、自己複製RNAの複製を指示することができる非構造タンパク質をコードする配列;
(b)RNAの5’および3’端のcis活性複製配列;および
(c)外因性配列の発現を指示し得るプロモーター
を含む、請求項1から5のいずれかに記載の自己複製RNA組成物。
【請求項7】
RNAが、一本鎖RNAウイルス由来である、請求項1から6のいずれかに記載の自己複製RNA組成物。
【請求項8】
自己複製RNAが、アルファウイルス;ピコルナウイルス;フラビウイルス;ルビウイルス;ペスチウイルス;ヘパシウイルス;フィロウイルス;カリシウイルス;およびコロナウイルスからなる群から選択される一本鎖RNAウイルス由来である、請求項7に記載の自己複製RNA組成物。
【請求項9】
自己複製RNAが、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、およびベネズエラ馬脳炎ウイルスからなる群から選択されるアルファウイルス由来である、請求項7または8に記載の自己複製RNA組成物。
【請求項10】
自己複製RNAが、レポーター遺伝子、免疫制御遺伝子、ミクロRNA、長鎖非コードRNA、抗生物質耐性遺伝子、I型および/もしくはIII型インターフェロン応答の阻害剤をコードする配列またはこれらの組合せを含むリストから選択されるエレメントをさらに含む、請求項1から9のいずれかに記載の自己複製RNA組成物。
【請求項11】
I型および/またはIII型インターフェロン応答の阻害剤が、ワクシニアウイルスタンパク質E3、K3、およびB18R、インフルエンザウイルスタンパク質NS1、ならびに小分子阻害剤ルキソリチニブおよびウパダシチニブを含むリストから選択される、請求項10に記載の自己複製RNA組成物。
【請求項12】
請求項1から11のRNA組成物に記載の自己複製RNA。
【請求項13】
請求項12に記載の自己複製RNAをコードするDNA配列。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸を含む発現カセット。
【請求項15】
請求項12に記載の自己複製RNAを産生する方法であって、請求項13に記載のDNA配列を、RNAポリメラーゼの存在下で、in vitroで転写するステップを含む方法。
【請求項16】
請求項1から11のいずれかに記載の自己複製RNA組成物、請求項12に記載の自己複製RNA、または請求項13に記載のDNA配列、および脂質または脂質ナノ粒子を含む自己複製RNA製剤。
【請求項17】
起源細胞を分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す細胞へと変換する方法であって、起源細胞が分化した標的細胞の表現型特徴を示さず、方法が、請求項1から11のいずれかに記載の自己複製RNA組成物、請求項12に記載の自己複製RNA、請求項13に記載のDNA配列、または請求項16に記載の製剤を起源細胞に導入するステップを含む、方法。
【請求項18】
起源細胞の集団から分化した標的細胞の集団を生成する方法であって、少なくとも1つの転写因子をコードする自己複製RNAを前記起源細胞に導入し、それにより起源集団における少なくとも1つの転写因子の量を増加させるステップ、および少なくとも0.1%の起源細胞を分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す細胞へと変換させる条件下で起源細胞を維持するステップを含む方法。
【請求項19】
分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴が、いずれか1つまたは複数の分化した標的細胞マーカーの上方制御および/または分化した標的細胞によりよく似るように細胞形態が変化すること、および/または分化した標的細胞の個々の細胞機能を示すことである、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
起源細胞が生きた動物中にあり、方法が、請求項1から11のいずれかに記載の自己複製RNA組成物、請求項12に記載の自己複製RNA、請求項13に記載のDNA配列または請求項16に記載の製剤を動物に、好ましくは動物の細胞への局所投与により、投与するステップを含む、請求項17から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
動物が哺乳動物、好ましくはヒトである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
起源細胞がin vitroである、請求項17から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
請求項1から11のいずれかに記載の自己複製RNA組成物、請求項12に記載の自己複製RNA、請求項13に記載のDNA配列または請求項16に記載の製剤を、患者に投与するステップを含む、それを必要とする前記患者を処置する方法。
【請求項24】
疾患の処置のための、請求項1から11のいずれかに記載の自己複製RNA組成物、請求項12に記載の自己複製RNA、請求項13に記載のDNA配列または請求項16に記載の製剤の使用。
【請求項25】
医薬での使用のための、請求項1から11のいずれかに記載の自己複製RNA組成物、請求項12に記載の自己複製RNA、請求項13に記載のDNA配列または請求項16に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写因子をコードする自己複製RNAを含有する方法および組成物、ならびに多能性幹細胞、複能性幹細胞または分化した起源細胞の所望の標的細胞への細胞変換におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
臓器を移植する必要なく細胞を補充する代替手段の必要性がある。細胞ベースの再生療法は、傷害、疾患または年齢によって損傷した組織を補充する特定の細胞型の生成を必要とする。ヒト胚性幹細胞(hESC)は、ヒト体内の全ての細胞型に分化する能力を有し、したがって補充療法の供給源として熱心に研究されてきた。しかしながら、hESCは培養した胚盤胞から確立されるため、患者特異的な様式に生成できない。したがって、免疫拒絶および倫理的な懸念が、hESC技術の臨床応用への移行を妨害する主な障害である。2007年に、4つの転写因子を使用して、分化した細胞を多能性幹細胞状態へと変換し戻すことができることが報告された(Takahashiら、2007 Cell,131(5),861~872;doi.org/10.1016/j.cell.2007.11.019)。これらの転写因子は、Klf4、Sox2、Oct4およびcMycであり、多能性状態の誘導された性質により、これらの細胞は人工多能性幹細胞(iPSC)と呼ばれる。転写因子は、多能性状態、細胞変換、分化転換またはフォワードプログラミングとして公知のプロセスを通過せずに、1つの分化した細胞型から別の細胞型への変換を可能にすることも示された。したがって、in vitroおよび直接in vivoの両方で、1つの分化した細胞型の表現型を別の表現型へとスイッチすることが可能であるが、細胞変換に必要とされるエレメントの同定が困難であり、多くの場合未知である。
【0003】
本発明者らは、彼らの適切な技術を使用して1つの細胞型から別の細胞型へ変換する転写因子を効率的に同定することができる(WO2017/106932)。本発明に関する細胞変換の例は、線維芽細胞の筋芽細胞への変換であり、線維芽細胞においてMYODを外因的に発現することによって達成される。
【0004】
典型的には、起源細胞は、同定された転写因子をコードするように操作されたDNA、アデノ随伴ウイルス(AAV)またはレンチウイルスの使用によって標的細胞へと変換される。これらのアプローチによって成功はしたが、これらの方法の主な短所は、悪性腫瘍および他の望ましくない副作用をもたらし得る、宿主細胞ゲノムへのDNAインテグレーションの可能性である。in vitroで転写されたメッセンジャーRNA(mRNA)も、細胞変換研究に用いられ成功しているが、受容細胞中で急速に分解され、起源細胞への複数回トランスフェクションが変換の成功のために必要とされることが多い(Akiyamaら、2020 Stem Cells Translational Medicine;doi.org/10.1002/sctm.20~0302)。これは、細胞変換のためのその利用を制限する。
【0005】
自己複製RNAは、宿主細胞に導入されると、RNAに、それ自身を転写および複製させる配列およびタンパク質をコードするRNAエレメントである。示した配列およびタンパク質は、典型的にはウイルス起源であり、限定はされないが、アルファウイルス、ピコルナウイルス、フラビウイルス、ルビウイルス、ペスチウイルス、ヘパシウイルス、フィロウイルス、カリシウイルスおよびコロナウイルスを含む一本鎖RNAウイルスに由来する。特に、アルファウイルス セムリキ森林ウイルス(SFV)、シンドビスウイルス(SINV)およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)からのエレメントが、通常、自己複製RNAに組み込まれる。RNAエレメントを自己複製させるのに必要なアルファウイルスエレメントは、ウイルスの非構造タンパク質(nsP1~4)、5’ゲノムUTRエレメント、サブゲノムプロモーター、および3’ゲノムUTRエレメントを含む。機能的な使用のため、RNAの複製を可能にするエレメントは、標的タンパク質の発現も可能にしなければならない。
【0006】
公知の組合せの再プログラミング因子をコードする自己複製RNAを用いて、最終分化した細胞を多能性状態に変換し戻すことができることが実証された(Yoshiokaら、2013 Cell Stem Cell,13(2),246~254;doi.org/10.1016/j.stem.2013.06.001;YoshiokaおよびDowdy、2017 PLoS ONE,12(7),1~17;doi.org/10.1371/journal.pone.0182018)。成人線維芽細胞は、少なくとも4つの因子:POU5F1、SOX2、KLF4ならびにc-MYC、GLIS1およびLIN28からの少なくとも1つを含む再プログラミング因子の組合せをコードする自己複製RNAを使用してiPSCへと変換された(Yoshiokaら、2013;YoshiokaおよびDowdy 2017)。再プログラミング因子の自己複製RNAにより多能性状態に再プログラムし戻されると、新しく生成した多能性幹細胞は、続いて、標的の所望の細胞型へと分化され得る。さらに、分化した細胞の分化転換は、特定の標的細胞変換に必要とされる特定の増殖培地または転写因子と組み合わせて、上記に詳述した再プログラミング因子の組成物を一過性発現させることによって達成され得ることが実証された(Efeら、2011 Nature Cell Biology,13(3)、215~222;doi.org/10.1038/ncb2164)。再プログラミング因子媒介性分化転換のこの方法は、初期の再プログラミングプロセスを誘導し、エピジェネティックなメカニズムによって細胞のアイデンティティーを消し、細胞を標的細胞系列への分化により感受性にすると考えられる。
【発明の概要】
【0007】
細胞で発現され、1つの型から別の所望の標的細胞へと細胞の安定な形質転換または変換を可能にし得る遺伝子の効率的な送達の必要性がある。
【0008】
本発明は、細胞変換に必要な因子の発現のための自己複製RNA(repRNA)の使用に関する。第1の実施形態では、本発明は、多能性幹細胞(例えば、人工多能性幹細胞)、複能性幹細胞、または分化した起源細胞(例えば、線維芽細胞)を、分化した細胞の多能性状態への再プログラミングを促進することが公知の転写因子を使用せずに、分化した標的細胞(すなわち、起源細胞が分化した細胞である場合、異なる分化した標的細胞)の少なくとも1つの表現型特徴を示す細胞へと変換する、転写因子またはそのバリアントをコードする配列を含む自己複製RNA組成物を提供する。
【0009】
第2の実施形態では、多能性幹細胞、複能性幹細胞、または分化した起源細胞を、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現系特徴を示す細胞へと変換する方法であって、起源細胞が分化した標的細胞の表現系特徴を示さず、方法が、転写因子(1つまたは複数)をコードする自己複製RNAを、多能性幹細胞、複能性幹細胞、または分化した起源細胞へと導入することによって少なくとも1つの転写因子を発現するステップを含み、転写因子(1つまたは複数)が、分化した細胞の多能性状態への再プログラミングを促進することが公知の転写因子ではない、方法を提供する。多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞または胚性幹細胞である。複能性幹細胞は、神経幹細胞(NSC)、間葉系幹細胞(MSC)または造血幹細胞(HSC)である。分化した起源細胞は、任意の分化した細胞、典型的には、初代細胞、例えば筋細胞、脂肪細胞、メラニン形成細胞、骨芽細胞、オリゴデンドロサイト、ニューロン、内皮細胞、膵臓ベータ細胞、肝細胞、心筋細胞、線維芽細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、樹状細胞、上皮細胞、網膜色素上皮細胞、ミュラーグリア細胞、または筋芽細胞であり得る。T細胞、NK細胞、マクロファージおよび他のリンパ球は、末梢血単核細胞(PBMC)画分から単離された細胞、例えばCD4+リンパ球;CD8+リンパ球;CD56+NK細胞またはCD19+Bリンパ球であり得る。分化した標的細胞は、任意の所望の分化した標的細胞であり、典型的には、中でも治療細胞、例えば筋細胞、脂肪細胞、メラニン形成細胞、骨芽細胞、オリゴデンドロサイト、ニューロン、内皮細胞、膵臓ベータ細胞、肝細胞、心筋細胞、T細胞、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、上皮細胞、網膜色素上皮細胞、光受容細胞、筋芽細胞、または前駆細胞であり得る。
【0010】
特定の実施形態では、分化した標的細胞は、神経細胞、筋細胞、マクロファージまたは肝臓前駆細胞である。
【0011】
本発明の一態様では、自己複製RNAは、RNAウイルス構造遺伝子を欠く一本鎖RNAウイルス由来であり、それが発現されるように転写因子をコードする。
【0012】
本発明の一態様では、自己複製RNAは、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のオープンリーディングフレーム、例えば転写調節因子、蛍光受容体(例えば、GFP、mCherry、BFP、mKate等)、抗生物質耐性遺伝子(例えば、ピューロマイシン、ブラストシジン、ハイグロマイシン、ネオマイシン、ゼオマイシン)、またはI型および/もしくはIII型インターフェロン免疫応答の阻害剤(例えば、ワクシニアウイルスタンパク質E3、K3、およびB18Rならびにインフルエンザウイルスタンパク質NS1)(Beissert et al.、2017 Human Gene Therapy、28(12),1138~1146;doi.org/10.1089/hum.2017.121)をコードする1つまたは複数の配列(転写因子(1つまたは複数)に加えて)を含有する。一実施形態では、および分化した標的細胞への細胞変換を確実にする1つより多くの転写因子を必要とするそれらの起源細胞に有利には、自己複製RNAは1つより多くの転写因子をコードする。これは、2つ以上の転写因子が同じ細胞に送達されるのを確実にする。自己複製RNAは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つまたは少なくとも6つの転写因子をコードする。
【0013】
本発明のさらなる態様では、2つ以上の転写因子をコードする1つまたは複数の自己複製RNAは、細胞変換を達成するため、単一ステップで送達される。起源細胞への単一ステップトランスフェクションで導入された複数の転写因子は、転写因子のより効率的な送達を提供する。単一ステップトランスフェクションは、連続的な転写因子導入法において、トランスフェクションが成功した細胞のいずれの濃縮プロセスの必要性も除外する。
【0014】
有利には、本発明は、自己複製RNAをヒト多能性幹細胞および様々なヒト体細胞型にトランスフェクトする方法を提供する。有利には、細胞の集団において、本発明者らは、自己複製RNAによってコードされたオープンリーディングフレームの非常に高効率の発現を実証する。自己複製RNAにコードされた蛍光レポータータンパク質GFPの発現によって測定した場合、70%より多くの細胞がタンパク質を発現することが示された。実施例に示すように、GFPレポーターの発現は、2週間またはそれ以上まで検出され、それはGFPのプラスミドまたはmRNAベースの発現によって観察されたよりも実質的に長かった。
【0015】
有利には、この延長された発現期間は、細胞変換実験が、典型的には7日より長い転写因子の発現を必要とするため、効率的な細胞変換が達成され得るのを確実にする重要な要素である(Yoshiokaら、2013)。有利には、自己複製RNAの単一トランスフェクションによって観察されたこの発現期間の延長は、mRNAによる細胞変換に必要とされる、長期の遺伝子発現を達成するためのトランスフェクションの繰り返しの回避、およびそれらの遺伝子改変をもたらす宿主細胞DNAにインテグレートするレンチウイルスの使用の回避を可能にする。トランスフェクションの繰り返しは技術的に困難であり、細胞生存に有害なこともあり、遺伝子改変は治療細胞型において望ましくない。有利には、本発明者らは、細胞が、レンチウイルスまたはmRNAと比較して自己複製RNAをトランスフェクトされた場合、iPSCのより高効率な神経変換も実証した。本発明の方法および組成物を使用して、in vitro、in vivoまたはex vivoで細胞を変換することができる。
【0016】
ヒト多能性幹細胞の例は、人工多能性幹細胞(iPSC)および胚性幹細胞(hESC)である。
【0017】
有利には、本発明は、高効率で自己複製RNAをヒトの分化した細胞にトランスフェクトする方法を提供する。例えば、起源細胞がヒト皮膚線維芽細胞またはiPSCである場合、集団の50%、60%、または70%より多くが、自己複製RNAによってコードされたオープンリーディングフレームを発現する。これは、古典的なmRNAアプローチと比較して、自己複製RNAにコードされた蛍光レポータータンパク質GFPの発現によって実証された。ヒト初代細胞の例は、皮膚線維芽細胞、ヒト軟骨細胞、T細胞、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞等である。さらに、発現の期間は、2週間まで、またはそれ以上示された。オープンリーディングフレーム発現効率のそのような増加は、転写因子の発現が十分に強力であり、起源細胞の、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す細胞への効率的な形質転換を可能にすることを実証した。
【0018】
多能性誘導再プログラミング因子を使用して、分化転換のプロセスを駆動または開始することを可能にする(Efeら、2011)。再プログラミング因子媒介性分化転換のメカニズムは完全には理解されていないが、分化した起源細胞における再プログラミングプロセスの初期段階を誘導する多能性誘導因子の組合せの使用は、分化転換プロセスの直前またはその間のいずれかに、発がん細胞を生成する望ましくない可能性をもたらす。有利には、本発明は、自己複製RNAを使用して、転写因子を発現し、多能性誘導転写因子の組合せを使用せず、異なる分化した標的細胞に分化した起源細胞を直接分化転換する方法を提供する。これは、分化した起源細胞の異なる分化した標的細胞への細胞変換のため、多能性誘導転写因子の組合せ(例えば、POU5F1+SOX2+KLF4+MYC;POU5F1+SOX2+NANOG+LIN28A;POU5F1+SOX2+KLF4+MYCL+LIN28A+GLIS1;POU5F1+SOX2+KLF4+MYC/GLIS1)を除く転写因子をコードする自己複製RNAの使用によって実証される。好ましくは、転写因子は、POU5F1、SOX2、KLF4、MYC、MYCL、LIN28、NANOGおよびGLIS1からなる公知の多能性誘導転写因子のリストから1つより多くの転写因子を含まない。より好ましくは、転写因子は、POU5F1、SOX2、KLF4、MYC、MYCL、LIN28、NANOGおよびGLIS1からなる公知の多能性誘導転写因子のリストからいずれの転写因子も含まない。さらにより好ましくは、転写因子はGLIS1ではないか、またはOCT4、SOX2、KLF4、およびcMYCまたはGLIS1の組合せではない。
【0019】
一部の実施形態では、多能性幹細胞および分化した細胞への自己複製RNAのトランスフェクションの効率、および経時的な自己複製RNA発現の持続性は、細胞の抗ウイルス応答の阻害によって増強され得る。これらの細胞の抗ウイルス応答は、インターフェロン応答経路の小分子阻害剤、例えば小分子JAK1/2阻害剤ルキソリチニブの使用、組換えウイルスタンパク質、例えばワクシニアウイルス由来B18Rの使用により、または自己複製RNA自体内に遺伝的にコードされるウイルス由来タンパク質、例えばワクシニアウイルスタンパク質B18Rの配列の発現により弱められ得るI型および/またはIII型インターフェロン応答を含む(Blakneyら、2021 Molecular Therapy,29(3)、1174~1185;doi.org/10.1016/j.ymthe.2020.11.011)。インターフェロン応答経路の小分子またはタンパク質阻害剤は、限定はされないが、フェドラチニブ、ウパダシチニブ、フィルゴチニブ、バリシチニブ、デュークラバシチニブ、リトレシチニブ、デセルノチニブ、RIG011、BX795、MRT67307およびY136Rを含む。多能性幹細胞における自己複製RNA発現を増加させるために小分子、遺伝子ノックダウンまたは遺伝子過剰発現のいずれかにより操作され得る細胞の抗ウイルス応答は、RNAi経路、内因性発現されたPKR、OAS/RNaseL、抗ウイルスダイサーとして公知の幹細胞特異的DICERアイソフォーム、および内因性のレトロウイルスがコードする逆転写酵素を利用するメカニズムを含み得る。一部の実施形態では、細胞の抗ウイルス応答を調節するために利用される分子は自己複製RNA内にコードされ、限定はされないが、ウイルスタンパク質(例えば、ワクチンウイルスB18R、およびヤバウイルス様Y136R)、免疫応答経路タンパク質を標的化し、その発現の減少をもたらす、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)または短鎖干渉RNA(siRNA)、免疫応答経路の受容体(例えばPROTAC)またはシグナル伝達タンパク質を遮断もしくは分解するように操作された抗体、およびインターフェロン応答経路を破壊する手段としてタンパク質の天然または優性ネガティブバージョンを含む。
【0020】
さらなる実施形態では、自己複製RNA組成物は、26Sプロモーターを含む。
【0021】
別の態様では、自己複製RNAは、例えば、1つのRNA分子にコードされた5’ゲノムUTRエレメント、非構造タンパク質(nsP1~4)、および3’ゲノムUTR、ならびに第2のRNA分子にコードされた5’ゲノムUTRエレメント、サブゲノムプロモーター、標的ORF、例えば1つまたは複数の転写因子、および3’ゲノムUTRエレメントを有する2つの分子に分けられる。自己複製RNAの機能は、2つのRNA分子に分けられる:自己複製RNAの複製に必要な非構造タンパク質をコードする配列を含む第1の分子、ならびに複製を可能にし、5’ゲノムUTRエレメント、サブゲノムプロモーターおよび3’ゲノムUTRエレメントを含む、少なくとも1つの転写因子およびRNA内の構造エレメントをコードする配列を含む第2の分子。アルファウイルス由来自己複製RNAの非構造タンパク質は、アセンブルして多酵素レプリカーゼ複合体を生成し、自己複製RNAレプリコン内の配列エレメントを認識し、全RNA鋳型を複製することができる。レプリカーゼ複合体は、トランスで全長およびトランケートRNAを複製することもでき、それらの複製のためのこれらの「トランス-レプリコン」における一連の保存配列エレメントを最小限に必要とする(Beissertら、2019 Molecular Therapy、28(1)、119~128;doi.org/10.1016/j.ymthe.2019.09.009)。レプリカーゼ活性は、必要な非構造タンパク質をコードするプラスミド、mRNAまたは別々の自己複製RNAの送達によるものを含むいくつかの方法で供給され得る。有利には、このトランス複製RNAシステムは、発現される転写因子からのウイルス由来複製タンパク質の分離を付与し、治療安全性の向上および転写因子発現動態の調節の向上を可能にする。
【0022】
本発明の一部の実施形態では、多能性幹細胞、複能性幹細胞、または分化した細胞から選択される起源細胞を、標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す分化した細胞へと変換する方法であって、転写因子をコードする自己複製RNAによって起源細胞を形質転換またはトランスフェクトするステップを含む方法を提供する。一実施形態では、方法は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの転写因子をコードする自己複製RNAによって起源細胞を形質転換またはトランスフェクトするステップを含む。起源細胞は、多能性幹細胞、例えば人工多能性幹細胞、複能性幹細胞、または分化した細胞であり得る。例えば、分化した起源細胞(differentiated cell source cell)は、任意の分化した細胞であり得るが、典型的には、初代細胞、例えば線維芽細胞、例えば皮膚線維芽細胞、軟骨細胞、T細胞、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、内皮細胞、例えばヒト臍静脈内皮細胞、上皮細胞、または筋芽細胞である。T細胞、NK細胞、マクロファージおよび他のリンパ球は、末梢血単核細胞(PBMC)から単離された細胞、例えばCD4+リンパ球;CD8+リンパ球;CD56+NK細胞またはCD19+Bリンパ球であり得る。好ましくは、起源細胞は線維芽細胞または内皮細胞である。より好ましくは、起源細胞は皮膚線維芽細胞である。
【0023】
一部の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの転写因子をコードする自己複製RNAをトランスフェクトした起源細胞の集団から標的細胞の集団を生成する方法を提供する。
【0024】
有利には、本発明に記載の自己複製RNA組成物または自己複製RNA、および脂質または脂質ナノ粒子を含む自己複製RNA製剤を提供する。好ましくは、RNAは、脂質ナノ粒子中の製剤化される。脂質は、カチオン性脂質、またはカチオン性脂質N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-n,n,n-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(dioleoyl phophotidylethanolamine)(DOPE)のリポソーム製剤であり得る。好ましくは、自己複製RNA製剤は、カチオン性ナノエマルジョンである。
【0025】
一部の実施形態では、本発明は、転写因子Neurogenin-2(Aliases:NEUROG2、Atoh4、Math4A、NGN2、bHLHa8、ngn-2)をコードする自己複製RNAを多能性幹細胞に導入し、それにより多能性幹細胞集団のNeurogenin-2の量を増加させ、少なくとも0.1%の多能性幹細胞集団を、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴、例えばNCAM発現を示すニューロンへと変換させる条件下で多能性幹細胞を培養することにより、多能性幹細胞の集団から神経細胞の集団を生成する方法を提供する。好ましくは、少なくとも1%の多能性幹細胞集団が、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示すニューロンへと変換されるか、またはより好ましくは少なくとも10%の多能性幹細胞集団が変換される。
【0026】
別の実施形態では、本発明は、転写因子ASCL1、POU3F2、NEUROD1およびMYT1Lをコードする自己複製RNA(1つまたは複数)を線維芽細胞に導入し、それにより線維芽細胞集団の各転写因子の量を増加させ、少なくとも0.1%の線維芽細胞集団を、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴、例えばNCAM発現を示すニューロンへと変換させる条件下で線維芽細胞を培養することにより、線維芽細胞の集団から神経細胞の集団を生成する方法を提供する。好ましくは、少なくとも1%の線維芽細胞集団が、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示すニューロンへと変換されるか、またはより好ましくは少なくとも10%の線維芽細胞集団が変換される。
【0027】
別の実施形態では、本発明は、転写因子MYODをコードする自己複製RNAを多能性幹細胞または線維芽細胞に導入し、それにより多能性幹細胞または線維芽細胞集団のMYODの量を増加させ、少なくとも0.1%の起源細胞集団を、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴、例えばミオシン重鎖発現を示す筋芽細胞へと変換させる条件下で多能性幹細胞または線維芽細胞を培養することにより、多能性幹細胞または線維芽細胞の集団から筋芽細胞の集団を生成する方法を提供する。好ましくは、少なくとも1%の起源細胞集団が、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す筋芽細胞へと変換されるか、またはより好ましくは10%の起源細胞集団が変換される。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、転写因子SPI1およびCEBPAをコードする自己複製RNA(1つまたは複数)を線維芽細胞に導入し、それにより線維芽細胞集団の各転写因子の量を増加させ、少なくとも0.1%の線維芽細胞集団を、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴、例えばCD11b発現を示すマクロファージ様細胞へと変換させる条件下で線維芽細胞を培養することにより、線維芽細胞の集団からマクロファージ様細胞の集団を生成する方法を提供する。好ましくは、少なくとも1%の線維芽細胞集団が、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示すマクロファージ様細胞へと変換されるか、またはより好ましくは10%の線維芽細胞集団が変換される。
【0029】
別の実施形態では、本発明は、転写因子HNF1A、HNF4A、ONECUT1およびFOXA3をコードする自己複製RNA(1つまたは複数)を内皮細胞に導入し、それにより内皮細胞集団の各転写因子の量を増加させ、少なくとも0.1%の内皮細胞集団を、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴、例えばアルブミン発現を示す肝臓前駆細胞へと変換させる条件下で内皮細胞を培養することにより、内皮細胞の集団から肝臓前駆細胞の集団を生成する方法を提供する。好ましくは、少なくとも1%の内皮細胞集団が、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す肝臓前駆細胞へと変換されるか、またはより好ましくは10%の内皮細胞集団が変換される。
【0030】
一部の態様では、本発明は、起源細胞を、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す細胞へと変換させる方法であって、起源細胞が生きた動物中にあり、方法が、少なくとも1つの転写因子をコードする自己複製RNA組成物または自己複製製剤を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、生きた動物は、哺乳動物、好ましくはヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、VEEV 5’および3’cis活性非コード制御領域に隣接するVEEV非構造タンパク質nsP1~4、多重クローニング部位の上流に位置するT7プロモーターおよび26Sサブゲノムプロモーターを含む自己複製RNAの生成に使用されるプラスミドDNA鋳型の特徴を示す概略図である。
【
図2】
図2は、in vitro転写によるプラスミドDNA鋳型からの自己複製RNAの生成のプロトコールを示す図である。自己複製RNAレプリコンをコードするプラスミドは、MluI制限エンドヌクレアーゼによって線状にされ、次いで、T7 DNA依存性RNAポリメラーゼを使用するin vitro転写の鋳型として使用した。RNA沈降および再懸濁後、自己複製RNAはゲル電気泳動によって可視化することができる。
【
図3】
図3は、iPSCにおけるGFPをコードする自己複製RNAの発現を示す図である。iPSCは、GFP-IRES-Puro(登録商標)をコードする自己複製RNAによりヌクレオフェクトされ、トランスフェクションの24時間後に解析した。
図3Aは、GFP-IRES-Puro(登録商標)repRNAをトランスフェクトしたiPSCにおけるGFPの効率的な発現を示すフローサイトメトリープロット(右のパネル)を示し、repRNAをトランスフェクトしていないiPSC mock(対照)と比較して96.4%のiPSCがGFP陽性である。
図3Bは、repRNAをトランスフェクトしていないiPSC mock(対照)およびGFP-IRES-Puro(登録商標)repRNAをトランスフェクトしたiPSCの顕微鏡画像を示す。
【
図4】
図4は、自己複製RNA、従来のin vitroで転写されたmRNA、プラスミドまたはレンチウイルスとして送達されたGFPの発現キネティクスを示す図である。
図4Aは、GFP陽性細胞のパーセンテージを示し、
図4Bは、21日の時間経過にわたりフローサイトメトリーによって決定したGFP陽性細胞のGFP発現の強度を示すグラフである(MFI=平均蛍光強度)。
【
図5】
図5は、選択圧下での自己複製RNAの発現キネティクスを示すグラフである。データは、GFP-IRES-Puro(登録商標)repRNAのトランスフェクションと、続いてピューロマイシンおよび組換えB18Rによる細胞の処理後、さらなる処理をしない対照に対する、iPSCにおけるrepRNA媒介GFP発現の時間経過フローサイトメトロリーを要約する。GFP発現の時間経過は、レンチウイルスによって達成されたものと比較した。
【
図6】
図6は、iPSC、HEK293T、および初代ヒト皮膚線維芽細胞を含む多様な細胞型におけるGFP自己複製RNA機能の検証を示す図である。GFP-IRES-Puro(登録商標)をコードする自己複製RNAを、iPSC、HEK293TおよびHDFにトランスフェクトし、細胞をトランスフェクションの24時間後にフローサイトメトリーによって、repRNAをトランスフェクトしない対照細胞のmockと比較して解析した(
図6A)。GFP-IRES-Puro(登録商標)をコードする自己複製RNAをトランスフェクトし、組換えB18Rまたはルキソリチニブを補足した培地中で培養したHDFにおけるGFPの発現を14日間の時間経過にわたりフローサイトメトリーによって評価した(
図6B)。
【
図7】
図7は、自己複製RNAによる細胞変換を検証するための実験系を示す図である。
図7Aは、IRES配列によって分けられたNEUROG2転写因子およびPuro(登録商標)-T2A-GFP(NEUROG2-iPTG)をコードするreRNAのin vitro転写を可能にするプラスミドの概略図を示す。
図7Bは、iPSCの神経細胞への細胞変換のための実験の時系列を詳述する図解である。
【
図8】
図8は、自己複製RNAによってコードされるNEUROG2が、トランスフェクション後2日目および7日目に、iPSCにおいて神経形態を誘導することを示す画像である。左のパネルは、GFP-IRES-Puro(登録商標)repRNAをトランスフェクトしたiPSCを示し、右のパネルは、NEUROG2-iPTG repRNAをトランスフェクトしたiPSCを示す。
【
図9A】
図9は、自己複製RNAによってコードされるNEUROG2が、iPSCをニューロンに効率的に変換することを示す図である。iPSCは、対照GFP-IRES-Puro(登録商標)repRNAまたはNEUROG2-iPTG repRNAのいずれかをトランスフェクトし、トランスフェクション後7日まで培養を継続した。
図9Aは、qPCR発現データを示す図である。
図9Bは、フローサイトメトリー解析を示し、
図9Cは、神経マーカーの発現およびNEUROG2-iPTG repRNAを使用するiPSCの神経細胞への変換の成功を示す免疫細胞化学である。
【
図9B】
図9は、自己複製RNAによってコードされるNEUROG2が、iPSCをニューロンに効率的に変換することを示す図である。iPSCは、対照GFP-IRES-Puro(登録商標)repRNAまたはNEUROG2-iPTG repRNAのいずれかをトランスフェクトし、トランスフェクション後7日まで培養を継続した。
図9Aは、qPCR発現データを示す図である。
図9Bは、フローサイトメトリー解析を示し、
図9Cは、神経マーカーの発現およびNEUROG2-iPTG repRNAを使用するiPSCの神経細胞への変換の成功を示す免疫細胞化学である。
【
図9C】
図9は、自己複製RNAによってコードされるNEUROG2が、iPSCをニューロンに効率的に変換することを示す図である。iPSCは、対照GFP-IRES-Puro(登録商標)repRNAまたはNEUROG2-iPTG repRNAのいずれかをトランスフェクトし、トランスフェクション後7日まで培養を継続した。
図9Aは、qPCR発現データを示す図である。
図9Bは、フローサイトメトリー解析を示し、
図9Cは、神経マーカーの発現およびNEUROG2-iPTG repRNAを使用するiPSCの神経細胞への変換の成功を示す免疫細胞化学である。
【
図10】
図10は、ニューロンへのiPSCのNEUROG2駆動変換の効率が、自己複製RNAとして送達される場合により効率的であることを示す図である。レンチウイルスおよび自己複製RNAは、NEUROG2をiPSCに送達し、GFP-IRES-Puro(登録商標)repRNAをトランスフェクトした対照細胞と比較して、TUBB3免疫細胞化学(
図10A)およびNCAMフローサイトメトリー(
図10B)によって証明したように、それらを神経へと変換することができる。NEUROG2の自己複製RNA送達は、レンチウイルスと比較して、およそ3倍高い効率のiPSCの神経細胞変換をもたらす。
【
図11A】
図11は、自己複製RNAによってコードされたASCL1+POU3F2(BRN2)+MYT1L+NEUROD1の組合せが、皮膚線維芽細胞をニューロンに変換することを示す図である。ポリシストロニックなASCL1-POU3F2-NEUROD1 repRNAの概略図を示す(
図11A)。HDFは、ASCL1、POU3F2、NEUROD1およびMYT1Lをコードする個々のrepRMAまたはMYT1Lをコードする別のrepRNAと共にASCL1、POU3F2およびNEUROD1をコードするポリシストロニックrepRNAをトランスフェクトし、トランスフェクション後14日間培養を継続した。ニューロンへの変換は、TUBB3を検出する免疫細胞化学(
図11B)およびNCAMフローサイトメトリー(
図11C)によって、repRNAをトランスフェクトしない対照細胞のmockと比較して評価した。
【
図11B】
図11は、自己複製RNAによってコードされたASCL1+POU3F2(BRN2)+MYT1L+NEUROD1の組合せが、皮膚線維芽細胞をニューロンに変換することを示す図である。ポリシストロニックなASCL1-POU3F2-NEUROD1 repRNAの概略図を示す(
図11A)。HDFは、ASCL1、POU3F2、NEUROD1およびMYT1Lをコードする個々のrepRMAまたはMYT1Lをコードする別のrepRNAと共にASCL1、POU3F2およびNEUROD1をコードするポリシストロニックrepRNAをトランスフェクトし、トランスフェクション後14日間培養を継続した。ニューロンへの変換は、TUBB3を検出する免疫細胞化学(
図11B)およびNCAMフローサイトメトリー(
図11C)によって、repRNAをトランスフェクトしない対照細胞のmockと比較して評価した。
【
図11C】
図11は、自己複製RNAによってコードされたASCL1+POU3F2(BRN2)+MYT1L+NEUROD1の組合せが、皮膚線維芽細胞をニューロンに変換することを示す図である。ポリシストロニックなASCL1-POU3F2-NEUROD1 repRNAの概略図を示す(
図11A)。HDFは、ASCL1、POU3F2、NEUROD1およびMYT1Lをコードする個々のrepRMAまたはMYT1Lをコードする別のrepRNAと共にASCL1、POU3F2およびNEUROD1をコードするポリシストロニックrepRNAをトランスフェクトし、トランスフェクション後14日間培養を継続した。ニューロンへの変換は、TUBB3を検出する免疫細胞化学(
図11B)およびNCAMフローサイトメトリー(
図11C)によって、repRNAをトランスフェクトしない対照細胞のmockと比較して評価した。
【
図12】
図12は、自己複製RNAによってコードされたMYOD1が、iPSCおよび皮膚線維芽細胞を筋細胞に効率的に変換することを示す画像である。iPSC(
図12A)およびHDF(
図12B)は、MYOD1をコードするrepRNAをトランスフェクトし、トランスフェクション後7~10日間培養を継続し、筋細胞への変換を免疫細胞化学によって評価し、repRNAをトランスフェクトしない対照細胞のmockと比較してミオシン重鎖を検出した。
【
図13-1】
図13は、自己複製RNAによってコードされるSPI1+CEBPAの組合せが、皮膚線維芽細胞をマクロファージ様細胞へと変換することを示す図である。HDFは、SPI1およびCEBPAをコードするrepRNAをトランスフェクトし、トランスフェクション後10日間培養を継続し、マクロファージへの変換をフローサイトメトリー(
図13Aおよび13B)およびqPCR(
図13C)によって評価し、mock(repRNAなし)および対照(GFP repRNA)をトランスフェクトした細胞と比較した。
図13Bのフローサイトメトリープロットは、
図13Aの相当するプロットのCD45+細胞からゲートしたイベントを示す。
【
図13-2】
図13は、自己複製RNAによってコードされるSPI1+CEBPAの組合せが、皮膚線維芽細胞をマクロファージ様細胞へと変換することを示す図である。HDFは、SPI1およびCEBPAをコードするrepRNAをトランスフェクトし、トランスフェクション後10日間培養を継続し、マクロファージへの変換をフローサイトメトリー(
図13Aおよび13B)およびqPCR(
図13C)によって評価し、mock(repRNAなし)および対照(GFP repRNA)をトランスフェクトした細胞と比較した。
図13Bのフローサイトメトリープロットは、
図13Aの相当するプロットのCD45+細胞からゲートしたイベントを示す。
【
図14】
図14は、自己複製RNAによってコードされるHNF1A+HNF4A+ONECUT1+FOXA3の組合せが、内皮細胞を肝臓前駆細胞へと変換することを示す図である。ポリシストロニックHNF1A-HNF4A-ONECUT1 repRNAの概略図を示す(
図14A)。HUVECに、FOXA3をコードする別のrepRNAと共に、HNF1A、HNF4A、およびONECUT1をコードするポリシストロニックrepRNAをトランスフェクトし、トランスフェクション後14日間培養を継続した。肝臓前駆細胞への変換は、免疫細胞化学によって評価してアルブミンを検出し、repRNAをトランスフェクトしない対照細胞のmockと比較した(
図14B)。
【
図15】
図15は、複数の小分子および組換えタンパク質が、皮膚線維芽細胞において高レベルの自己複製RNA発現を支持できることを示す図である。
図15Aは、処理されないかまたはDMSO処理を受けたGFP repRNAをトランスフェクトした対照細胞と比較して、GFP repRNAのトランスフェクションおよび示した小分子または組換えタンパク質による処理後7日目の皮膚線維芽細胞におけるフローサイトメトリーによるGFP発現(GFP陽性細胞のパーセント)の検出を示す。
図15Bは、MYOD1 repRNAのトランスフェクション、続いて詳述した筋細胞変換条件での維持、および示した小分子または組換えタンパク質による処理後10日目に皮膚線維芽細胞におけるミオシン重鎖発現の免疫細胞化学検出の例を示す。対照は、MYOD1 repRNAをトランスフェクトし、DMSOによって処理した。
【
図16A】
図16は、iPSCにおけるGFP発現のトランス複製RNAシステムの検証を示す図である。
図16Aは、2つのトランケートしたトランス複製RNAベクター鋳型を生成する分子クローニングステップを詳述する概略図である。
図16Bは、単独で(対照)、またはmCherry発現repRNAを、もしくはnsp1~4発現mRNAとの組合せのいずれかでの、TR1-GFP repRNAのトランスフェクション後48時間での画像化および96時間でのフローサイトメトリーによるGFP発現の検出を示す。
【
図16B】
図16は、iPSCにおけるGFP発現のトランス複製RNAシステムの検証を示す図である。
図16Aは、2つのトランケートしたトランス複製RNAベクター鋳型を生成する分子クローニングステップを詳述する概略図である。
図16Bは、単独で(対照)、またはmCherry発現repRNAを、もしくはnsp1~4発現mRNAとの組合せのいずれかでの、TR1-GFP repRNAのトランスフェクション後48時間での画像化および96時間でのフローサイトメトリーによるGFP発現の検出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書で使用される場合、「転写因子」は、その機能が細胞内で特定の遺伝子(1つまたは複数)の発現を制御し、前記遺伝子のDNAからメッセンジャーRNAへの転写の割合を調節するタンパク質を指す。特定の転写因子は、細胞の表現型特徴を提供する遺伝子の発現を制御する。特定の関連転写因子の例は、表1、表2および表3に列挙する。一部の実施形態では、転写因子は、表1、表2または表3に列挙した転写因子のいずれか1つまたは複数である。他の実施形態では、転写因子は、表1、表2または表3の1列に列挙した転写因子のいずれか1つまたは複数である。一部の実施形態では、表1、表2または表3の1列に列挙した全ての転写因子が使用され得る。表1、表2または表3の「+」は、「および/または」を示す。場合により、転写因子は、表1、表2または表3に開示した転写因子の特定の組合せ由来である。一部の実施形態では、転写因子はGLIS1ではないか、または転写因子は、POU5F1、SOX2、KLF4、MYCL、NANOG、LIN28、c-MYCおよびGLIS1を含む公知の再プログラミング転写因子のリストから1つより多くの転写因子を含有する転写因子の組合せの一部ではない。
【0033】
本明細書で使用される場合、「転写調節因子」は、その機能が細胞内での特定の遺伝子(1つまたは複数)の発現の制御において転写因子の活性を捕捉することであるタンパク質を指す。これらのタンパク質は、ヒストンアセチル化およびメチル化ならびにDNAメチル化の改変を担うエピジェネティック修飾因子、ならびに遺伝子発現に影響するシグナル伝達カスケードに関与するタンパク質、例えば増殖因子およびタンパク質キナーゼを含む。転写改変因子(Transcriptional modifiers)は、構成的に活性なタンパク質の変異形態であり得る。特定の関連転写改変因子(transcriptional modifiers)の例は、表4に列挙する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「起源細胞」は、初めの細胞型を所望の分化した標的細胞型へと変換する細胞変換プロセスの初めの細胞型として使用される細胞である。起源細胞は、任意の型の細胞であり、限定はされないが、in vitroで培養されたかまたは生物の一部としてin vivoで同定された任意の幹細胞または分化した細胞を含み得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、「幹細胞」は、様々な型の細胞に分化し、無限に増殖してより多くの同じ幹細胞を産生し得る、未分化または部分的に分化した細胞である。幹細胞は、多能性幹細胞または複能性幹細胞を含む。
【0036】
本明細書で使用される場合、「多能性幹細胞」は、成体の全ての細胞型へと分化し得る細胞である。胚盤胞の内部細胞塊、初期の着床前胚、および人工多能性幹細胞に由来し、体細胞の再プログラミング転写因子の発現によって生成される胚性幹細胞は、多能性幹細胞の両型である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「複能性幹細胞」、例えば「成体幹細胞」は、規定された系列のわずかな異なる細胞型へと分化することができる複能性細胞である。成体幹細胞の例は、限定はされないが、脂肪由来幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞および神経幹細胞を含む。一代替では、本発明に記載の起源細胞は、成体幹細胞ではない。
【0038】
好ましくは、起源細胞は分化した細胞である。本明細書で使用される場合、「分化した細胞」または「分化した起源細胞」は、特定の表現型特徴によって規定された任意の分化した細胞型であり、成体細胞(例えば初代細胞)であってもよく、またはin vitro細胞培養を継続した成体細胞由来の細胞型(例えば、in vitro培養線維芽細胞または細胞株)、または成体の1つまたは複数の検出可能な表現型特徴を示す成体由来の細胞であってもよい。
【0039】
本明細書で使用される場合、「標的細胞」または「分化した標的細胞」は、特定の表現型特徴によって規定された任意の分化した細胞型であってもよく、成体細胞、前駆細胞、部分的に分化した細胞、または成体に見出されない分化したかまたは部分的に分化した細胞型であってもよい。用語「標的細胞」は、人工多能性幹細胞を包含しない。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「表現型特徴」は、細胞の異なるバリアントまたは特徴である。そのような特徴は、形態学的または生化学的であり、観察できる特性である。分化した標的細胞と組み合わせて使用される場合、表現型特性は、分化した標的細胞に表れるが、起源細胞にはない。例えば、ドーパミン作動性ニューロンの表現型特徴は、(i)長く、細い軸索および樹状突起を有する小さい細胞体からなる形態である、(ii)電気的に興奮性である、および(iii)遺伝子LRRK2、MAP2およびPITX3を発現する。NK細胞の表現型特徴は、(i)外見が顆粒の、小さくて丸い細胞である、(ii)細胞傷害性である(他の細胞を死滅させることができる)、および(iii)それらの細胞表面上にタンパク質CD56を発現するが、CD3は発現しない。心室心筋細胞の表現型特徴は、(i)電気刺激時に、収縮性である、(ii)細胞を収縮させる、筋節と呼ばれる組織されたタンパク質構造を有する、および(iii)遺伝子MYL2、NKX2-5およびMYH6を発現する。
【0041】
本明細書で使用される場合、「細胞変換」は、起源細胞型の表現型特徴が別の細胞型のものに変更されるように、起源細胞を標的細胞へと変更する方法を指す。
【0042】
用語「再プログラミング」は、分化した起源細胞を多能性標的細胞、例えば人工多能性幹細胞へと変更する方法を指す。
【0043】
用語「フォワードプログラミング」は、起源細胞型の表現型特徴が別の細胞型のものへと変更されるように、多能性起源細胞、例えば、胚性幹細胞または人工多能性幹細胞を分化した標的細胞へと変更する方法を指す。
【0044】
用語「分化転換」は、起源細胞型の表現型特徴が、中間多能性状態を通って転換せずに別の細胞型のものへと変更されるように、分化した起源細胞を異なる分化した標的細胞へと変更する方法を指す。
【0045】
用語「再プログラム因子媒介性分化転換」は、公知の多能性誘導転写因子のリストから取られた転写因子の組合せの使用を必要とし、分化した起源細胞における初期の再プログラミングプロセスを誘導し、それらを分化転換により許容性にする分化転換の方法を指す。公知の多能性誘導因子の組合せは、POU5F1+SOX2+KLF4+MYC;POU5F1+SOX2+NANOG+LIN28A;POU5F1+SOX2+KLF4+MYCL+LIN28A+GLIS1;およびPOU5F1+SOX2+KLF4+MYC/GLIS1を含む。
【0046】
用語「由来する」は、それにより第1の成分またはその第1の成分からの情報を使用して、異なる第2の成分を単離および作製するプロセスを指す。例えば、自己複製RNAは、RNAウイルスに由来し、ウイルスのRNAは操作され、構造ウイルスタンパク質遺伝子を除去される。
【0047】
用語「バリアント」は、全長ポリペプチドに対して少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一であるポリペプチドを指す。用語「転写因子またはそのバリアント」は、本明細書に記載の転写因子のバリアントの使用を指す。バリアントは、全長ポリペプチドのフラグメントまたは天然に存在するスプライスバリアントであり得る。バリアントは、ポリペプチドのフラグメントに対して少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一のポリペプチドであり、フラグメントは全長野生型ポリペプチドまたはそのドメインの少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の長さであり、目的の機能活性、例えば起源細胞型の分化した標的細胞型への変換を促進する能力を有する。一部の態様では、ドメインは、少なくとも100、200、300、または400アミノ酸長であり、配列中の任意のアミノ酸位置で開始し、C末端に伸長する。タンパク質の活性を除去するかまたは実質的に減少させる当技術分野で公知のバリエーションは、好ましくは回避される。一部の態様では、バリアントは、全長ポリペプチドのNおよび/またはC末端部分を欠損し、例えばいずれかの末端から10、20、または50アミノ酸までを欠損する。一部の態様では、ポリペプチドは、成熟(全長)ポリペプチドの配列を有し、それにより、1つまたは複数の部分、例えばシグナルペプチドを有するポリペプチドが、正常な細胞内タンパク質分解プロセシング中(例えば、同時翻訳または翻訳後プロセシング中)に除去されることを意味する。一部の態様では、自然にタンパク質を発現する細胞からタンパク質を精製する以外にタンパク質が産生され、タンパク質はキメラポリペプチドであり、それにより2つ以上の異なる種からの部分を含有することを意味する。一部の態様では、自然にタンパク質を発現する細胞からタンパク質を精製する以外にタンパク質が産生され、タンパク質は誘導体であり、それによりタンパク質が、その配列がタンパク質の生物活性を実質的に減少しない限りタンパク質に関連しないさらなる配列を含むことを意味する。当業者は、特定のポリペプチドバリアント、フラグメント、または誘導体が当技術分野で公知のアッセイを使用して機能的であるかどうか分かるか、または容易に確かめることができる。他の有用なアッセイは、検出可能なマーカー、例えばルシフェラーゼをコードする核酸配列に作動可能に連結された転写因子結合部位を含有するレポーター構築物の転写を活性化する能力を測定することを含む。本発明のある特定の態様では、機能性バリアントまたはフラグメントは、全長野生型ポリペプチドの活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上を有する。
【0048】
用語「外因性」は、細胞または生物内のタンパク質、遺伝子、核酸またはポリヌクレオチドに関して使用される場合、人工または自然の手段によって細胞または生物へと導入されるタンパク質、遺伝子、核酸、またはポリヌクレオチドを指すか;あるいは細胞に関して使用される場合、人工もしくは自然の手段によって単離されたかまたは他の細胞もしくは生物に続いて導入された細胞を指す。外因性細胞は、異なる生物に由来するか、または同じ生物に由来し得る。用語「外因性」は、用語「異所性」と交換可能に使用され得る。
【0049】
本明細書で参照する用語「オープンリーディングフレーム」は、タンパク質に翻訳される能力を有する核酸の配列である。転写因子を含む、本発明に関連する全ての目的のタンパク質は、オープンリーディングフレームとしてコードされる。用語「オープンリーディングフレーム」は、「ORF」と交換可能に使用され得る。
【0050】
本明細書で参照する用語「細胞培養培地」(本明細書では、「培養培地」または「培地」とも呼ばれる)は、細胞生存を維持し、増殖を支持する栄養を含有する細胞を培養または維持するための培地である。細胞培養培地は、任意の以下の適切な組合せを含有し得る:塩、緩衝液、アミノ酸、グルコースまたは他の糖、抗生物質、血清または血清代替物、および他の成分、例えばペプチド増殖因子、サイトカイン等。特定の細胞型に通常使用される細胞培養培地は、当業者に公知である。
【0051】
起源細胞に、自己複製RNAをトランスフェクトし、1つもしくは複数の転写因子、またはそのバリアントの発現または量を増加させる。用語「発現」は、機能性タンパク質および必要に応じて、限定はされないが、適用可能な例えば転写、フォールディング、修飾およびプロセシングを含む、分泌タンパク質の合成および産生に関与する細胞プロセスを指す。
【0052】
本明細書で使用される用語「自己複製RNA」、「自己増幅RNA」、「RNAレプリコン」、「自己増幅メッセンジャーRNA」、「saRNA」、「SAM」、「sa-mRNA」および「repRNA」は、交換可能に使用され得る。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【表5-2】
本発明は、起源細胞の、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す細胞への細胞変換を可能にする改善された方法、および材料を提供する。方法は、少なくとも1つの転写因子が発現され、細胞を培養して、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す細胞への細胞変換を可能にするように、少なくとも1つの転写因子をコードする少なくとも1つの自己複製RNAを起源細胞に導入するステップを含む。
【0061】
自己複製RNAは、宿主細胞に導入される場合、RNAを転写およびそれ自身複製させ、所望の遺伝子産物の発現を増幅させる配列およびタンパク質をコードするRNAウイルス由来のRNAエレメントである。哺乳動物細胞に導入される場合、自己複製RNA分子は宿主の翻訳機構によって翻訳され、RNAウイルスの非構造タンパク質を産生し、5’および3’端cis活性複製配列と一緒に作用し、RNAを複製させる。外因性タンパク質は、自己複製RNAによってコードされ、RNAウイルスの非構造タンパク質と一緒に発現を達成することができる。自己複製RNAが由来するRNAウイルスは、アルファウイルスであることが多く、研究した例は、シンドビスウイルス(SINV)、セムリキ森林ウイルス(SFV)、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)、およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)を含む。
【0062】
自己複製RNAは、mRNAの基本エレメント(cap、5’UTR、3’UTR、および様々な長さのポリ(A)テイル)を含有するが、4つのウイルス非構造タンパク質(nsP1~4)およびサブゲノムポロモーターをコードする5’端の大きなオープンリーディングフレームを有する。通常サブゲノムプロモーターの下流であり、ウイルス構造タンパク質をコードするウイルスゲノム中の遺伝子は、発現するのが好ましい外因性配列によって置き換えられる(Lundstrom 2020 International Journal of Molecular Sciences、21(14),1~29;doi.org/10.3390/ijms21145130)。所望であれば、外因性配列は、自己複製RNAの自己切断2Aペプチドを使用して他のオープンリーディングフレームにインフレームで融合され得る、および/または内部リボソーム進入部位(IRES)の調節下にあり得る。
【0063】
続いて、好ましい自己複製RNA分子は、(i)自己複製RNA分子からのRNAを転写および複製し得る、ウイルス非構造タンパク質(例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス由来のnsP1~4)および(ii)例えば表1~3に列挙した、転写因子をコードする所望のオープンリーディングフレームをコードする。一部の実施形態では、RNAは、例えばIRESの調節下にあり得るさらなる所望の遺伝子産物をコードする、さらなる(下流または上流)オープンリーディングフレームを有し得る。
【0064】
一態様では、少なくとも1つの自己複製RNA分子が、アルファウイルスに由来するかまたはアルファウイルスに基づく。他の態様では、自己複製RNA分子は、アルファウイルス以外のウイルス、好ましくは、プラス鎖RNAウイルス、およびより好ましくはピコルナウイルス、フラビウイルス、ルビウイルス、ペスチウイルス、ヘパシウイルス、カリシウイルス、またはコロナウイルスに由来するかまたはそれらに基づく。好適な野生型アルファウイルス配列は周知である。好適なアルファウイルスの代表的な例は、アウラウイルス、ベバルウイルス、カバソウ(Cabassou)ウイルス、チクングニアウイルス、東部ウマ脳脊髄炎ウイルス、フォートモーガン(Fort Morgan)ウイルス、ゲタウイルス、キジラガッチェ(Kyzylagach)ウイルス、マヤロウイルス、マヤロウイルス、ミデルブルグ(Middleburg)ウイルス、ムカンボウイルス、ヌドゥムウイルス、ピクスナウイルス、ロスリバーウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、トナテウイルス、Triniti、ウナウイルス、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス、西部ウマ脳脊髄炎ウイルス、ワタロアウイルス、およびY-62-33を含む。好ましくは、RNAレプリコンは、ベネズエラ馬脳炎ウイルス、セムリキ森林ウイルスおよびシンドビスウイルスからなる種の群から選択されるウイルスを含むかまたはそれらに由来する。他の態様では、自己複製RNA分子は:オルソミクソウイルス;パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)のウイルス;メタニューモウイルス(Metapneumovirus)およびモルビリウイルス;ニューモウイルス;パラミクソウイルス(Paramyxoviruses);ポックスウイルス科(Poxviridae);メタニューモウイルス(Metapneumoviruses);モルビリウイルス;ピコマウイルス(picomaviruses);エンテロウイルス;ブニヤウイルス;フレボウイルス;ナイロウイルス;ヘパマウイルス(Hepamaviruses);トガウイルス;アルファウイルス;アルテリウイルス;フラビウイルス;ペスチウイルス;ヘパドナウイルス;ラブドウイルス;カリシウイルス科(Caliciviridae);コロナウイルス;レトロウイルス;レオウイルス;パルボウイルス;デルタ肝炎ウイルス(HDV);E型肝炎ウイルス(HEV);ヒトヘルペスウイルス;およびパポバウイルスを含むリストからのウイルスに由来するかまたはそれに基づく。
【0065】
一態様では、自己複製RNAは、ゲノムまたはサブゲノムのいずれかの、少なくとも1つのプロモーターを含む。好ましくは、プロモーターは、サブゲノムプロモーターである。好ましくは、サブゲノムプロモーターは、アルファウイルス由来の26Sサブゲノムプロモーターである。好ましくは、サブゲノムプロモーターは、26Sサブゲノムプロモーターであり、本明細書では、以下:
GGGCCCCTATAACTCTCTACGGCTAACCTGAATGGACTACGACAT(配列番号1)
のように、配列番号1として提供される。
【0066】
一実施形態では、記載したプロモーターは、例えば表1~3の1つに列挙されるように、少なくとも1つの目的の転写因子をコードする配列に作動可能に連結される。別の実施形態では、第1のプロモーターは、少なくとも1つの目的の転写因子をコードする配列に作動可能に連結され、第2のプロモーターは、別の少なくとも1つの目的の転写因子をコードする配列に作動可能に連結される。
【0067】
自己複製RNAは、少なくとも2つの目的の転写因子をコードする配列間に配置されたリンカー配列をさらに含み得る。一実施形態では、リンカー配列は、それにより少なくとも2つの目的の転写因子を分けるように消化されるように構成されるペプチドスペーサーをコードする配列を含む。したがって、好ましくは、スペーサー配列は、少なくとも2つの目的の転写因子をコードする配列間に配置される。
【0068】
そのため、スペーサー配列は、好ましくは、切断可能なペプチド、例えば2Aペプチドである(WO2020/254804号)。好適な2Aペプチドは、ブタテッショウイルス-i 2A(P2A)-ATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号2)、thosea asignaウイルス2A(T2A)-QCTNYALLKLAGDVESNPGP(配列番号3)、ウマ鼻炎Aウイルス2A(E2A)、および口蹄疫ウイルス2A(F2A)VKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号4)を含む。
【0069】
一実施形態では、少なくとも2つの目的の転写因子をコードする配列は、終止コドンの後の内部リボソーム進入部位(IRES)配列によって分けられ、下流の配列の翻訳を開始することができる。典型的なIRES配列は、例えば脳心筋炎ウイルスまたは血管内皮増殖因子およびI型コラーゲン誘導タンパク質(VCIP)のIRES配列を含み、当業者に公知である。
【0070】
したがって、好ましくは、IRES配列は、少なくとも2つの目的の転写因子をコードする配列間に配置される。少なくとも2つの目的の転写因子をコードする複数の配列が使用される場合、スペーサー配列は、公知の切断配列および/またはIRES配列の組合せを含み得る。
【0071】
一実施形態では、IRESは、以下:
GCTAGCAATAAGGCCGGTGTGCGTTTGTCTATATGTTATTTTCCACCATATTGCCGTCTTTTGGCAATGTGAGGGCCCGGAAACCTGGCCCTGTCTTCTTGACGAGCATTCCTAGGGGTCTTTCCCCTCTCGCCAAAGGAATGCAAGGTCTGTTGAATGTCGTGAAGGAAGCAGTTCCTCTGGAAGCTTCTTGAAGACAAACAACGTCTGTAGCGACCCTTTGCAGGCAGCGGAACCCCCCACCTGGCGACAGGTGCCTCTGCGGCCAAAAGCCACGTGTATAAGATACACCTGCAAAGGCGGCACAACCCCAGTGCCACGTTGTGAGTTGGATAGTTGTGGAAAGAGTCAAATGGCTCTCCTCAAGCGTATTCAACAAGGGGCTGAAGGATGCCCAGAAGGTACCCCATTGTATGGGATCTGATCTGGGGCCTCGGTGCACATGCTTTACATGTGTTTAGTCGAGGTTAAAAAAACGTCTAGGCCCCCCGAACCACGGGGACGTGGTTTTCCTTTGAAAAACACGATAAT(配列番号5)
のように、配列番号5に規定するヌクレオチド配列によってコードされる。
【0072】
別の実施形態では、少なくとも2つの目的の転写因子をコードする配列は、終止コドンの後の、第1のサブゲノムプロモーター配列と同一かまたは異なり、下流の配列の転写を開始することができる、第2のサブゲノムプロモーター配列によって分けられる。
【0073】
別の実施形態では、自己複製RNAは、本発明に記載の少なくとも1つの目的の転写因子に加えて目的のタンパク質をコードする配列をさらに含み得る。これらの目的のタンパク質は、転写調節因子、蛍光レポーター(例えば、GFP、mCherry、BFP、mKate等)、抗生物質耐性遺伝子(例えば、ピューロマイシン、ブラスチシジン、ハイグロマイシン、ネオマイシン、ゼオマイシン)、またはI型およびIII型インターフェロン免疫応答の阻害剤(例えば、ワクシニアウイルスタンパク質B18R)であり得る。これらの目的のタンパク質は、本明細書内に記載の少なくとも1つの目的の転写因子から分けられ得る。
【0074】
好ましくは、自己複製RNAは、ポリ(A)テイルを含む。好ましくは、ポリ(A)テイルは、レプリコンの3’端に配置される。レプリコンは、5’capをさらに含み得る。本発明の文脈では、用語「5’-cap」は、RNA cap構造と似ており、そこに付加されている場合、細胞内で、RNAを安定化する、および/またはRNAの翻訳を増強する能力を持つように改変される5’-capアナログを含む。5’capは、当業者に公知のもの、例えば、7-メチルグアニル酸cap、またはアンチリバースcapアナログ3’-O-Me-m7G(5’)PPP(5’)Gもしくは別のアナログcap構造であり得る。
【0075】
一実施形態では、自己複製RNAは、好ましくは5’から3’に、5’cap、5’UTR、少なくとも1つの非構造タンパク質をコードする配列、サブゲノムプロモーター、少なくとも1つの転写因子をコードする配列、3’UTRおよびポリ(A)テイルを含む。
【0076】
本発明の自己複製RNAは、鋳型としてDNAプラスミドを使用して作製され得る。RNAコピーは、次いでポリメラーゼ、例えばT7ポリメラーゼを使用して、DNAプラスミド鋳型内のRNAレプリコン配列の5’端にコードされるT7プロモーターより、in vitro転写によって作製され得る。他のRNAポリメラーゼ、例えばSP6またはT3ポリメラーゼは、T7ポリメラーゼの代わりに使用され、その場合には、RNAレプリコンのDNAプラスミド鋳型は、代わりにSP6またはT3プロモーターを含み得る。
【0077】
一実施形態では、本発明の自己複製RNAは、自己複製RNAをコードする核酸配列を含むカセットで送達され得る。例えば、自己複製RNAは、DNAプラスミドまたはアデノウイルスもしくはレンチウイルスにコードされ得る。自己複製RNAをコードするDNAプラスミド鋳型は、他の機能性エレメントも含み得る。例えば、それらは、宿主細胞においてベクターの導入時に導入遺伝子発現を開始するための好適なプロモーターを含む様々な他の機能性エレメントをさらに含み得る。例えば、ベクターは、好ましくは、起源細胞の核で自主的に複製することができる。この場合、DNA複製を誘導または制御するエレメントは、組換えベクターに必要とされ得る。あるいは、DNAプラスミド鋳型は、宿主細胞のゲノムにインテグレートするように設計され得る。この場合、標的化インテグレーション(例えば、相同組換えによる)を好むDNA配列が想定される。
【0078】
好適なプロモーターは、SV40プロモーター、CMV、EF1a、PGK、ウイルスの長い末端反復配列、ならびに誘導性プロモーター、例えば、例のようにテトラサイクリン誘導性システムを含み得る。DNAプラスミド鋳型は、終結因子、例えば、ベータグロビン、SV40ポリアデニル化配列または合成ポリアデニル化配列も含み得る。DNAプラスミド鋳型は、プロモーターまたは制御因子またはエンハンサーも含み、必要に応じて核酸の発現を調節する。プロモーターまたは制御因子またはエンハンサーは、DNAプラスミド鋳型上のRNAレプリコンの組織特異性発現を付与し得る。
【0079】
したがって、本発明は、一実施形態において、少なくとも1つの転写因子が発現され、細胞を維持して、細胞の、標的の分化した細胞型の少なくとも1つの表現型特徴を示す細胞への変換を可能にするように、少なくとも1つの転写因子をコードする少なくとも1つの自己複製RNAを、前記起源細胞へと導入することによる、起源細胞の分化した標的細胞への変換のための方法を提供する。
【0080】
宿主細胞は、真核または原核宿主細胞であり得る。好ましくは、宿主細胞は、真核宿主細胞である。より好ましくは、宿主細胞は、哺乳動物宿主細胞である。
【0081】
本発明の方法では、自己複製RNA媒介細胞変換の効率は、自己複製RNAの導入に応答する起源細胞の免疫応答経路を阻害することにより改善され得る。好ましくは、起源細胞の免疫応答経路の阻害剤は、細胞のインターフェロン応答またはdsRNA応答経路の阻害剤である。例えば、細胞変換の効率は、組換えワクシニアウイルスB18Rタンパク質、I型インターフェロンデコイを含むことにより、またはルキソリチニブ、JAK1/2阻害剤を含むことにより改善され得る。インターフェロン応答経路の小分子またはタンパク質阻害剤は、限定はされないが、フェデラチニブ、ウパダシチニブ、フィルゴチニブ、バリシチニブ、デュークラバシチニブ、リトレシチニブ、デセルノチニブ、RIG011、BX795、MRT67307およびY136Rを含む。一実施形態では、起源細胞の免疫応答経路の阻害剤は、自己複製RNA内にコードされたORFであり得、起源細胞に導入された場合に発現される。例えば、細胞変換の効率は、所望の細胞変換に必要とされる少なくとも1つの転写因子をコードする少なくとも1つの自己複製RNAと同時に、ワクシニアウイルスタンパク質B18R、I型インターフェロンデコイをコードする自己複製RNAを起源細胞に導入することによって改善され得る。
【0082】
一実施形態では、自己複製RNAは、1つまたは複数の修飾された塩基を含む。例えば、骨格は、1つまたは複数のホスホロチオエート(phosphororthioate)修飾の導入によって安定化され得る。代替の実施形態では、5-メチルシトシン、シュードウリジンおよび1-メチルシュードウリジン。より詳細には、一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの転写因子をコードする自己複製RNAを含み、少なくとも1つの化学修飾を有する少なくとも1つのヌクレオシドを含む組成物であって、修飾されたヌクレオシドは、ヒポキサンチン、イノシン、8-oxo-アデニン、その7-置換誘導体、ジヒドロウラシル、シュードウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-アミノウラシル、5-(Cl~C6)-アルキルウラシル、5-メチルウラシル、5-(C2~C6)-アルケニルウラシル、5-(C2~C6)-アルキニルウラシル、5-(ヒドロキシメチル)ウラシル、5-クロロウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-ヒドロキシシトシン、5-(Cl~C6)-アルキルシトシン、5-メチルシトシン、5-(C2~C6)-アルケニルシトシン、5-(C2~C6)アルキニルシトシン、5-クロロシトシン、5-フルオロシトシン、5-ブロモシトシン、N2-ジメチルグアニン、7-デアザグアニン、8-アザグアニン、7-デアザ-7-置換グアニン、7-デアザ-7-(C2~C6)アルキニルグアニン、7-デアザ-8-置換グアニン、8-ヒドロキシグアニン、6-チオグアニン、8-オキソグアニン、2-アミノプリン、2-アミノ-6-クロロプリン、2,4-ジアミノプリン、2,6-ジアミノプリン、8-アザプリン、置換7-デアザプリン、7-デアザ-7-置換プリン、7-デアザ-8-置換プリン、水素(脱塩基残基)からなる群から選択される、組成物を提供する。自己複製RNAは、2つ以上の修飾されたヌクレオシドを有し、各修飾は、同じであるかまたは異なり得る。特定の実施形態では、少なくとも1つの化学修飾を含むヌクレオシドは、ジヒドロウリジン、メチルアデノシン、メチルシチジン、メチルグアノシン、メチルウリジン、メチルシュードウリジン、チオウリジン、デオキシシトジンおよびデオキシウリジンからなる群から選択されるか、または修飾ヌクレオチドは、これらからなる群から選択されるヌクレオシドを含む。
【0083】
一実施形態では、自己複製RNAは、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の修飾ヌクレオチドを有する。
【0084】
本発明の方法では、自己複製RNAは、in vitroまたはin vivoで起源細胞へと導入される。自己複製RNAは、化学もしくは非化学ベースの方法によってまたはネイキッドRNAとして、in vitroで細胞へと導入され得る。化学的な方法は、リン酸カルシウムトランスフェクション、カチオン性ポリマー、カチオン性脂質によるリポフェクション、Fugene、ポリエチレンイミンおよびデンドリマーを含む。非化学的な方法は、エレクトロポレーション(ヌクレオフェクションを含む)、細胞スクイージング(cell squeezing)、ソノポレーションおよびインペイルフェクションを含む。それは、静脈内または標的部位に局所的にネイキッドRNAまたはRNA脂質ナノ粒子の注射によってin vivoで細胞に導入されてもよい。
【0085】
in vitro適用のため、自己複製RNAは、好ましくは、カチオン性脂質製剤、例えばリポフェクタミン3000に製剤化される。in vitroで自己複製RNAを導入するためのカチオン性脂質製剤は、様々な比率の、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,Nトリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、および2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアンモニウム トリフルオロアセテート(DOSPA)の混合物に基づく様々な製剤を含み得る。これは、限定はされないが、リポフェクタミン3000、リポフェクタミン2000、リポフェクタミン MessengerMAXおよびトランスフェクチンを含む、市販の脂質トランスフェクション試薬を含む。自己複製RNAは、カチオン性ナノエマルジョン中に製剤化され得る。自己複製RNAは、ヌクレオフェクション、エレクトロポレーションまたは当技術分野で公知の任意の好適な手段によっても、起源細胞に導入され得る。
【0086】
自己複製RNAは、ネイキッドRNAとして(RNAの水溶液として)in vivoで送達され得るが、送達系ではRNAを製剤化することが好ましい。in vivoでの使用のため、RNAは、カチオン性脂質エマルジョンの一部、生分解性ポリマー粒子もしくは脂質ナノ粒子または細胞へのRNAの進入を促進し、RNAをヌクレアーゼから保護する他の材料として投与されることが好ましい。核酸の送達系は、当技術分野で公知である(Pardiら、2020.Current Opinion in Immunology、65、14~20;doi.org/10.1016/j.coi.2020.01.008)。
【0087】
カチオン性脂質は、典型的には、様々な組成物の正に荷電した頭部に続いて疎水性テイルを特徴とする。通常、不飽和であり、短い(<30の単量体)炭化水素鎖が最高の形質導入効率と関連する。水性製剤では、これらの脂質は正に荷電した表面を有するミセルを形成し、RNAと複合体化する(必ずしもカプセル化されない)。MF59の構成成分(スクアレン span85およびTween80)と乳化したカチオン性脂質DOTAP(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)が好ましい。
【0088】
ワクチン使用のための自己複製RNAの脂質ナノ粒子送達が公知である。典型的には、脂質ナノ粒子は、4つの成分、カチオン性またはイオン化脂質;コレステロール;ヘルパーリン脂質およびポリエチレングリコール(PEG)脂質で構成される。イオン化脂質は、酸性条件下および生理的pHでRNAをカプセル化させるが、製剤が細胞に進入すると、脂質をイオン化し、RNAを粒子から分けるため、好ましい。
【0089】
ある特定の実施形態では、自己複製RNAは、複製を可能にするcis活性配列をそれぞれ含有する2つの分子として起源細胞に送達され、第1の分子は非構造遺伝子を運び、第2の分子は少なくとも1つの目的の転写因子をコードし得る。
【0090】
したがって、本発明の一実施形態では、転写因子をコードする自己複製RNAを含む医薬組成物および群:脂質ナノ粒子、カチオン性脂質エマルジョンおよび生分解性ポリマー粒子から選択される送達系が提供される。
【0091】
したがって、本明細書に記載の本発明は、少なくとも1つの転写因子、および場合により、少なくとも1つの他のオープンリーディングフレーム配列をコードする自己複製RNAの組成物、例えば転写調節因子、抗生物質耐性、I型およびIII型インターフェロン応答の阻害剤、またはレポータータンパク質をコードするものならびに送達系を提供し、in vitroおよびin vivoの両方で所望の細胞変換を達成する。
【0092】
本発明は、起源細胞から分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す少なくとも1つの細胞を生成する方法であって、少なくとも1つの転写因子が発現されるように、転写因子をコードする自己複製RNAの導入によって起源細胞において1つまたは複数の転写因子の量を増加させるステップ、ならびに細胞を分化した標的細胞へと変換させる十分な時間および条件下で起源細胞を培養し、それにより起源細胞から分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す細胞を生成するステップを含む方法をさらに提供する。一実施形態では、方法は、自己複製RNAの導入によって起源細胞における2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、または6つ以上の転写因子の量を増加させるステップを含む。
【0093】
本発明は、起源細胞の集団から分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す少なくとも1つの細胞を生成する方法であって、起源細胞の集団の少なくとも1つの細胞における転写因子をコードする自己複製RNAの導入によって1つまたは複数の転写因子の量を増加させるステップ;ならびに細胞を分化した標的細胞へと変換させる十分な時間および条件下で起源細胞の集団を培養し、それにより起源細胞の集団から分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す細胞の集団を生成するステップを含む方法を提供する。
【0094】
起源細胞または起源細胞の集団は、人工多能性幹細胞、または分化した細胞を含む、本明細書に記載の任意の多能性細胞または分化した細胞型であり得る。一部の態様では、起源細胞集団は、異なる起源細胞の混合であり得る。分化した細胞は、成体細胞または、成体もしくは非胚細胞の1つまたは複数の検出可能な表現型特徴を示す成体由来の細胞であり得る。本発明の起源細胞または起源細胞の集団は、典型的には、哺乳動物細胞、例えばヒト細胞、霊長類細胞、げっ歯類細胞(例えば、マウスまたはラット)、ウマ細胞およびウシ細胞、好ましくはヒト細胞である。本発明に記載の分化した起源細胞または分化した標的細胞は、3つの胚葉、すなわち、内胚葉、中胚葉、および外胚葉の任意の細胞であり得る。分化した細胞の例は、心細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、赤血球、肺細胞、膵臓細胞、ニューロン細胞、軟骨細胞、T細胞、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、上皮細胞または筋芽細胞を含む。本明細書で使用される「分化した細胞」は、初代細胞(非不死化細胞)であってもよく、または細胞株(不死化細胞)由来細胞であってもよい。分化した細胞は、健常細胞または疾患細胞であり得る。
【0095】
一部の態様では、起源細胞は、多能性幹細胞であり得る。一部の態様では、起源細胞は、人工多能性幹細胞であり得る。一部の態様では、起源細胞は胚性幹細胞であり得る。
【0096】
一部の態様では、起源細胞は、複能性幹細胞であり得る。一部の態様では、起源細胞は、間葉系幹細胞であり得る。一部の態様では、起源細胞は、神経幹細胞であり得る。
【0097】
一部の態様では、起源細胞は、線維芽細胞であり得る。一部の態様では、起源細胞は、皮膚線維芽細胞であり得る。一部の態様では、起源細胞は、歯肉(口腔)線維芽細胞であり得る。一部の態様では、起源細胞は、包皮線維芽細胞であり得る。
【0098】
一部の態様では、起源細胞は、内皮細胞であり得る。一部の態様では、起源細胞は、血管内皮細胞であり得る。一部の態様では、起源細胞は、リンパ管内皮細胞であり得る。
【0099】
一部の態様では、起源細胞は、血液に由来し得る。一部の態様では、起源細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)から単離され得る。一部の態様では、起源細胞は、血液由来CD4+T細胞である。一部の態様では、起源細胞は、血液由来CD8+T細胞である。一部の態様では、起源細胞は、血液由来CD56+NK細胞である。一部の態様では、起源細胞は、血液由来CD19+B細胞である。
【0100】
本発明は、起源細胞の集団から分化した標的細胞の集団を生成する方法であって、少なくとも1つの転写因子をコードする自己複製RNAを導入することによって、起源細胞の集団の1つまたは複数の転写因子の量を増加させるステップ;ならびに細胞を分化した標的細胞の集団へと変換させる十分な時間および条件下で起源細胞の集団を維持するステップであって、分化した標的細胞の集団において少なくとも0.1%の細胞が分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示し;それにより、起源細胞の集団から分化した標的細胞の集団を生成するステップを含む方法を提供する。
【0101】
本発明の方法の一部の態様では、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも5%、もしくは少なくとも10%の分化した標的細胞または分化した標的細胞の集団は、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す。
【0102】
他の態様では、少なくとも10%から20%、好ましくは50%より多く、より好ましくは70%より多く、より好ましくは少なくとも85%、95%もしくは100%の分化した標的細胞または分化した標的細胞の集団が、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す。
【0103】
一部の態様では、分化した標的細胞は、ニューロン、マクロファージ、肝細胞または筋細胞である。
【0104】
本発明の方法は、オリジナルの非改変起源細胞と比較して、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上、1つまたは複数の転写タンパク質の量を増加させる。
【0105】
一部の態様では、分化した標的細胞の集団の少なくとも1%の細胞は、ニューロンの少なくとも1つの表現型特徴を示す。他の実施形態では、分化した標的細胞の集団は、筋細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す。典型的には、細胞変換に好適な条件は、十分な時間および好適な培地中で細胞を培養することを含む。培養の十分な時間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、または60日であり得る。
【0106】
本明細書に記載の任意の方法では、方法は、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す細胞を拡大し、その表現型特徴を示す集団の細胞の割合を増加させるステップをさらに含み得る。細胞を拡大するステップは、本明細書に記載の細胞の集団を生成するために十分な時間および条件下で培養され得る。本明細書に記載の任意の方法では、方法は、分化した標的細胞の少なくとも1つの表現型特徴を示す細胞、またはその細胞を含む細胞集団を投与するステップをさらに含む。
【0107】
本明細書に記載の細胞変換方法は、自家治療(すなわち、起源細胞が対象から単離され、本明細書に記載の自己複製RNAを使用して細胞変換され、分化した標的細胞を生成し、次いで同じ対象に注射し戻される)または他家治療(すなわち、起源細胞が対象から単離され、本明細書に記載の自己複製RNAを使用して細胞変換され、分化した標的細胞を生成し、次いで異なる対象に注射し戻される)に利用され得る。起源細胞の細胞変換の方法は、in vivo細胞変換法であり、それにより、少なくとも1つの転写因子をコードする自己複製RNAが対象に送達され、所望の分化した標的細胞への起源細胞の細胞変換はin vivoで生じる。
【実施例】
【0108】
実施例1
自己複製RNAのin vitro転写
アルファウイルスベースのレプリコンを含有するプラスミドDNAを鋳型として使用し、in vitro転写によって自己複製RNA(repRNA)を生成した。利用したアルファウイルスベースのレプリコンは、ベネズエラ馬脳炎ウイルス株TC-83ゲノムに由来した。それは、VEEVゲノムからの配列を直接コードするが、ウイルスの構造タンパク質コード配列は、感染性ウイルス粒子の産生を防ぐために除去した(
図1)。ウイルスの非構造タンパク質コード領域は、ウイルスの5’-および3’-cis活性配列、5’-端のT7プロモーターに隣接し、合成のポリアデニル化配列が続いた。プラスミド鋳型を改変し、ウイルスの26Sサブゲノムプロモーターの直後に、ウイルスゲノム配列内に多重クローニング部位を含み、標的オープンリーディングフレームの発現を可能にした。
【0109】
鋳型プラスミドは、MluI制限エンドヌクレアーゼ消化によって線状化された(
図2)。線状の鋳型を使用して、T7 DNA依存RNAポリメラーゼを用いるin vitro転写によってラン・オフ転写物を生成した。完全にcapされ、ポリアデニル化したrepRNA転写物は、RiboMAX Large Scale RNA Production System(Promega)およびCleanCap AU Cap 1 capping試薬(TriLink Biotechnologies)を使用する同時転写capping反応で産生された。in vitro転写は、0.5μgの線状化プラスミド鋳型と、ヌクレオチド三リン酸および7.5mMの最終濃度でCleanCap AU capping試薬により、2時間37℃で実施した。in vitro転写後、プラスミド鋳型は15分間37℃でのDNaseI処理によって除去された。RNAは、2.5M酢酸アンモニウムによって氷上で沈殿させ、70%エタノールによって洗浄し、水中で再構築した。RNAは、260nmでの吸光度を測定することによって解析して純度および濃度を評価し、アガロースゲル電気泳動により純度およびサイズをさらに評価した(
図2)。
図2のアガロースゲル画像は、内部リボソーム進入部位(IRES)配列によって分けられた、GFPおよびピューロマイシン n-アセチル化トランスフェラーゼ(Puro(登録商標))をコードするオープンリーディングフレームを有する11kbのin vitroで転写されたmRNAの生成の成功を示す。
【0110】
実施例2
GFP発現自己複製RNAの送達およびiPSCでのGFP発現の評価
プラスミド鋳型は、IRES配列によって分けられた、GFPおよびピューロマイシン n-アセチル化トランスフェラーゼ(Puro(登録商標))をコードする自己複製RNAベクターの多重クローニング部位に挿入された配列によって構築された(
図2)。このプラスミドを鋳型として使用して、in vitro転写によってGFP-IRES-Puro(登録商標)repRNAを生成した(
図2は、アガロースゲルで解析したこのRNAスプライスを示す)。人工多能性幹細胞(iPSC)は、通常、完全E8増殖培地(Termo Fisher)中、Vitronectin XF(STEMCELL Technologies)で維持し、ReLeSR(STEMCELL Technologies)によるコロニー解離によって4~5日ごとに継代した。iPSCのコンフルエントな培養は、ヌクレオフェクションの前に90分間、10μM Y-27632(STEMCELL Technologies)によって前処理した。ヌクレオフェクションのため、iPSCをTrypLE(Thermo Fisher)によって4分間処理し、単一細胞の懸濁液を作製し、回収および計数した。必要な数の細胞を300gで4分間遠心分離し、完全P3緩衝液(P3 Primary Cell Nucleofector Kit;Lonza)中に再懸濁した。iPSCは、1×10
6個の細胞当たり2μgのGFP-IRES-Puro(登録商標)repRNAによって、Lonza4Dシステムを使用してヌクレオフェクトした。ヌクレオフェクトした細胞を、10μM Y-27632を含む完全E8増殖培地中、1×10
5個の細胞/cm
2の密度で、Vitronectin XFコートした培養プレートにプレートした。ある特定の実験では、ピューロマイシン(Sigma)を、最終濃度500ng/mLで、組換えB18Rタンパク質(BioTechne)を、最終濃度200ng/mLで、細胞に添加した。GFP発現は、顕微鏡およびフローサイトメトリーによって評価した(
図3)。ライブセル蛍光顕微鏡を、GFPフィルターセットを使用してLeica DMi1倒立顕微鏡で実施した。フローサイトメトリーのため、細胞を、TrypLEと5分間インキュベートし、PBS+1% BSA中に回収した。次いで、細胞を300gで4分間遠心分離し、解析のため、PBS+1%BSA+0.1μg/mL DAPI中に再懸濁した。調製した細胞を、標準フィルターセットを使用するAttune NxT Flow Cytometer(Thermo Fisher)で解析した。
【0111】
データは、フローサイトメトリー(
図3A)と顕微鏡(
図3B)との両方によって観察されたGFP発現によって確認したように、GFP-IRES-Puro(登録商標)repRNAがiPSCで効率的に発現されたことを示す。フローサイトメトリー解析は、96.4%のiPSCがGFP陽性であることによって証明されたように、GFP-IRES-Puro(登録商標)repRNAが非常に高効率でiPSCにトランスフェクトされたことを示した。
【0112】
実施例3
iPSCにおける自己複製RNA、標準非複製mRNA、プラスミドDNAまたはレンチウイルスのいずれかによってコードされたGFPの発現キネティクス
標準mRNAのin vitro転写のための鋳型は、GFP-IRES-Puro(登録商標)repRNAプラスミド鋳型からのPCRに由来する。PCRは、鋳型として1ngのGFP-IRES-Puro(登録商標)repRNAプラスミドDNAと、GFP開始コドンの上流のT7プロモーター、5’UTRおよびカノニカルKozak配列、ならびにGFP終止コドンの下流の120残基のポリアデニル化配列を組み込むように設計されたプライマー(配列番号6および7)と、Q5(登録商標)High-Fidelity DNAポリメラーゼ(New Engrand Biolabs)を使用して実施した。
【0113】
【表6】
PCR産物は、GeneJET Gel Extraction Kit(Thermo Fisher)を使用して精製し、定量した。完全にcapされ、ポリアデニル化されたmRNA転写物は、HiScribe T7 High Yield RNA合成キット(New England Biolabs)およびCleanCap AG Cap1 capping試薬(TriLink Biotechnologies)を使用する同時転写capping反応で産生された。In vitro転写を、0.5μgのPCR産物鋳型と、それぞれ5mMおよび4mMの最終濃度でヌクレオチド三リン酸およびCleanCap AG capping試薬により、37℃で2時間実施した。in vitro転写反応では、UTRをシュードベースのN1-メチル-シュードウリジン(TriLink Biotechnologies)で完全に置換した。RNAは、Monarch RNA Cleanup Kit(New England Biolabs)を使用して精製した。
【0114】
GFPを発現するレンチウイルス粒子を生成するため、Lenti-X 293T(Takara Bio)は、10%ウシ胎仔血清およびピルビン酸ナトリウムを補足したDMEM高グルコース中で維持した。シーディング後、Lenti-X 293Tに、psPAX2パッケージングプラスミド、pMD2.GエンベローププラスミドおよびGFPの発現を駆動するEF1aプロモーターをコードするトランスファープラスミドを、リポフェクタミン2000を使用してトランスフェクトした。培地は、トランスフェクションの18時間後に注意深く置き換え、ウイルスを含有する上清をトランスフェクション後48時間に、PEG 6000(Sigma)を使用するウイルス濃縮の前に採取した。濃縮したウイルスをDMEM中で希釈し、使用前に-80℃で保存した。
【0115】
iPSCは、10μMのY-27632を補足した完全E8増殖培地中、6.5×104個の細胞/cm2でシードし、6時間後、最終濃度6.25μg/mLに、ポリブレンの添加によりMOI 2でレンチウイルスによって形質導入した。iPSCは、GFP-IRES-Puro(登録商標)repRMA、GFPmRNAまたはEF1aプロモーター-GFPプラスミドによってヌクレオフェクトした。形質導入およびヌクレオフェクトした細胞を複数回継代して培養を継続し、設定した時点でフローサイトメトリーによって解析した。GFP-IRES-Puro(登録商標)repRNAをヌクレオフェクトしたiPSCのサブセットは、500ng/mLのピューロマイシンを添加した標準増殖培地中で維持した(ヌクレオフェクション後24時間から)。
【0116】
データは、repRNAによって媒介されたGFP陽性細胞のパーセンテージ(
図4A)およびGFP発現の強度(
図4B)の両方が、相当する時点での標準mRNAおよびプラスミドDNAからのGFP発現と比較して上昇されることを示す。レンチウイルス形質導入細胞は、延長された高パーセンテージのGFP細胞を示す(
図4A)が、repRNAは、形質導入/ヌクレオフェクション後、最初の4日でのGFP発現のはるかにより高い強度を示す(
図4B)。さらに、ピューロマイシン選択を適用することによってIRES-Puro(登録商標)カセットの機能性の試験は、repRNA媒介GFP発現が、増殖するiPSC培養中において維持され、ヌクレオフェクション後3週間まで少なくとも80%のiPSCにおいてGFP発現が観察され、レンチウイルス形質導入iPSC培養で観察されたレベルと類似することを示した(
図5)。
【0117】
これらのデータを合わせると、repRNAがレンチウイルスと同等の効率で細胞に送達され、その発現のために宿主ゲノムへのインテグレーションを必要とするレンチウイルスとは違い、repRNAからの発現は、宿主細胞の遺伝子改変なく延長された期間細胞内で維持され得ることが実証された。さらに、repRNAからの発現レベルは、トランスフェクション後最初の4日で、任意の他の送達方法で達成されたよりも著しく高い。これは、外因性遺伝子発現のための現在の技術を超えるrepRNAの利点を示し、プラスミドおよびmRNAを超えて発現レベルを増加させるが、発現のためにレンチウイルスが必要とする宿主細胞の遺伝子改変を不要とする。
【0118】
実施例4
GFP発現自己複製RNAの送達ならびに皮膚線維芽細胞およびHEK293T細胞におけるGFP発現の評価
ヒト皮膚線維芽細胞(HDF;ATCC)およびHEK293T細胞(ATCC)は、通常、10%ウシ胎仔血清を補足したDMEM中で維持した。トランスフェクションのため、HDFおよびHEK293Tを、TrypLEによって5分間処理し、単一細胞の懸濁液を作製し、回収および計数した。必要な数の細胞を300gで4分間遠心分離し、緩衝液R(Neon Transfection Kit;Thermo Fisher)中に再懸濁した。細胞は、3×10
5個の細胞当たり1μgのGFP-IRES-Puro(登録商標)repRNAによって、Neon Electroporationシステムを使用して電気穿孔した。電気穿孔したHDFを3×10
4個の細胞/cm
2の密度で、HEK293Tを1×10
5個の細胞/cm
2の密度でプレートした。GFP発現は、トランスフェクション後72時間にフローサイトメトリーによって評価した(
図6A)。
【0119】
データは、iPSCと同様に、標準細胞株(HEK293T)および初代細胞(ヒト皮膚線維芽細胞)も効率的にトランスフェクトされ、repRNAを機能的に発現し得ることも示す(
図6A)。
【0120】
ワクシニアウイルス由来B18Rタンパク質および小分子JAK1/2阻害剤であるルキソリチニブは、細胞の抗ウイルス応答を阻害することにより、自己複製RNAの発現動態を改善することができることが以前に実証されている(Blakneyら、2021)。一部の実施形態では、組換えウイルスB18Rタンパク質(BioTechne)またはルキソリチニブ(Selleckchem)は、トランスフェクションの時点で、およびGFP-IRES-Puro(登録商標)repRNAからのGFPの発現を維持する試みで実験の時間経過にわたり維持培地に含まれる。トランスフェクション後、HDFは、標準培地中、または200ng/mL B18Rまたは10μMルキソリチニブを含有する標準培地により維持し、2~3日ごとに培地交換し、GFP発現を10日間経時的にフローサイトメトリーによって評価した(
図6B)。
【0121】
データは、インターフェロン応答経路ブロッカーB18Rまたはルキソリチニブの標準培養培地への添加は、14日間経時的に、in vitroでGFPのrepRNA媒介発現の維持をもたらすことを示す(
図6B)。
【0122】
実施例5
NEUROG2発現自己複製RNAを使用する、ニューロンへのiPSCの変換
iPSCのニューロンへの急速な変換は、単一の転写因子によって効率的に達成され、細胞変換を試験するための理想的なモデルシステムを提示し得る。NEUROG2の強制的な発現が7日未満にiPSCをニューロンに変換するのに十分であることを実証する多くの公開された報告がある(Zhangら、2013 Neuron,78(5)、785~798.https://doi.org/10.1016/j.neuron.2013.05.029)。NEUROG2発現後、iPSCは、樹状突起様突出および小さい細胞体により、古典的な神経形態を急速に取り入れる。変換された細胞は、それらの細胞表面にNCAM、ならびにニューロン特異的遺伝子TUBB3、MAP2およびPOU3F2(BRN2)も発現する。
【0123】
NEUROG2媒介細胞変換を促進するrepRNAの能力を試験するため、IRES配列によって分けられたNEUROG2およびPuro(登録商標)-T2A-GFPをコードする、自己複製RNAベクターの多重クローニング部位に挿入された配列により、プラスミド鋳型を構築した(
図7A)。このプラスミドを鋳型として使用して、in vitro転写によってNEUROG2-IRES-Puro(登録商標):T2A:GFP(NEUROG2-iPTG)repRNAを生成した。iPSCのニューロン変換実験のため、iPSCは、先に記載したように、NEUROG2-iPTG repRNAによってヌクレオフェクトされ、Geltrex(Thermo Fisher)コートした培養プレートにプレートした。ヌクレオフェクション後24時間に、培地を、DMEM:F12+N2サプリメント(Thermo Fisher)に交換し、2~3日ごとに半培地交換した(
図7B)。
【0124】
画像は、対照GFP-IRES-Puro(登録商標)repRNAまたはNEUROG2-iPTG repRNAのいずれかによるヌクレオフェクション後2日目および7日目のiPSC由来細胞の形態を示す(
図8)。GFP-IRES-Puro(登録商標)repRNAによってヌクレオフェクトしたiPSCは、2日目と7日目の両方で典型的なiPSC様形態を示した。2日目に、NEUROG2-iPTG repRNAによってヌクレオフェクトした細胞は、対照と比較して、それらの形態に明確な変化を示し、7日目には、複数の樹状突起様伸長および小さい細胞体による神経形態を示した。
定量的PCR(qPCR)による遺伝子発現解析
RNAは、PicoPure RNA単離キット(Thermo Fisher)を使用して培養細胞から単離された。細胞は、TrypLEによって4分間処理後、300gで4分間遠心分離によって回収し、RNAは、製造業者のプロトコールに従って単離され、カラム上でのDNase消化により夾雑DNAを除去した。cDNAは、製造業者のプロトコールに従って、1000ngの鋳型RNAにより、SensiFAST cDNA合成キット(Bioline)を使用して、精製したRNAから生成した。定量的PCRは、TaqMan Fast Advanced Master Mix(Thermo Fisher)を使用して、予め指定したTaqManアッセイ(Thermo Fisher)によって実施し、QuantStudio 5 Real Time PCR System(Thermo Fisher)を実行した。FBXL12およびSRP72を、ハウスキーピング遺伝子対照として使用した。相対遺伝子発現は、ΔΔCT法を使用して算出した。
NCAMのフローサイトメトリー
フローサイトメトリーのため、細胞を5分間TrypLEとインキュベートし、PBS+1%BSA中に回収した。次いで、細胞を300gで4分間遠心分離し、PBS+1%BSAおよびAlexa Fluor(登録商標)647コンジュゲート抗CD56(NCAM)マウスモノクローナル抗体(1:500;BioLegend)中に再懸濁し、4℃で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、PBS+1%BSA+0.1μg/mL DAPI中に再懸濁した。調製した細胞は、標準フィルターセットを使用してAttune NxT Cytometerで解析した。
TUBB3の免疫細胞化学(ICC)検出
細胞をPBSで洗浄し、PBS+4%パラホルムアルデヒドによって室温で15分間固定した。固定後、細胞をPBSで洗浄し、次いで、室温で15分間、PBS+4%正常ヤギ血清+0.1%Triton X-100により1ステップでブロックおよび透過処理した。細胞を、PBS+4%正常ヤギ血清中の精製した抗チューブリンβ3(TUBB3)抗体(1:100;BioLegend)と室温で1時間インキュベートし、次いで、PBS+4%正常ヤギ血清中のAlexa Fluor(登録商標)647コンジュゲート二次抗体(1:1000;Thermo Fisher)と室温で1時間インキュベートした。抗体ステップ後、細胞は、Leica DMi1倒立顕微鏡での画像化の前に、PBS+1%BSA中4℃で保存した。
【0125】
分化した培養の解析は、NEUROG2 iPTG repRNAがiPSCを神経細胞に効率的に変換したことを示した。トランスフェクション後7日目のqPCRによる神経細胞マーカー遺伝子発現の評価は、対照細胞と比較して、NEUROG2-iPTG repRNAによってヌクレオフェクトしたiPSCにおいて神経細胞特異的遺伝子発現の増加を示す(
図9A)。多能性関連遺伝子の発現は、NEUROG2-iPTG repRNAによってトランスフェクションされず、ニューロンに変換されなかった増殖性iPSCの存在によって維持された(最初の細胞集団のおよそ3%)。神経細胞表面マーカーNCAMを検出するフローサイトメトリーは、NEUROG2-iPTG repRNAをヌクレオフェクトした培養中、高パーセンテージのNCAM陽性細胞を示し、さらに、NEUROG2-iPTGからのGFP発現はNCAM発現を伴った(
図9B)。最後に、TUBB3発現のICC解析は、NEUROG2-iPTG repRNAをヌクレオフェクトした培養中の予想されるクラスIII β-チューブリン細胞内分布を有する神経細胞を検出するが、対照培養では検出されなかった(
図9C)。
【0126】
これらのデータを合わせると、NEUROG2をコードするrepRNAはiPSCへ送達され、それらのニューロンへの早く、高効率の変換を誘導し得ることが実証された。これは、repRNAが、細胞変換を駆動するための転写因子を送達する確かな様式であることを示す。
【0127】
実施例6
ニューロンへの変換のため、iPSCにNEUROG2を送達する異なる方法の比較
NEUROG2をiPSCに送達し、それらのニューロンへの変換を駆動する異なる方法の効率を試験するため、3つの異なるiPSC株を、NEUROG2-iPTG repRNAもしくはEF1aプロモーター-NEUROG2プラスミドのいずれかによってヌクレオフェクトするか、またはNEUROG2を発現するレンチウイルス粒子によって形質導入した。NEUROG2を発現するレンチウイルス粒子は、NEUROG2の発現を駆動するEF1aプロモーターをコードする移行プラスミドを使用して、先に記載したように生成した。ヌクレオフェクション後および形質導入後、細胞を維持し、先に記載したようにICCおよびフローサイトメトリーによって解析した。
【0128】
異なる培養の解析は、NEUROG2-iPTG repRNAは、プラスミドDNAまたはレンチウイルスよりも高効率で、3つ全てのiPSC株からのiPSCを神経細胞に変換したことを示した、TUBB3発現のICC解析は、NEUROG2レンチウイルスまたはNEUROG2-iPTG repRNAのいずれかでヌクレオフェクトした培養により、ニューロンに変換されたiPSCの培養における予想されるクラスIII β-チューブリンの細胞内分布を有する神経細胞を検出した(
図10A)。神経細胞表面マーカーNCAMを検出するフローサイトメトリーは、レンチウイルス形質導入した培養よりもNEUROG2-iPTG repRNAをヌクレオフェクトした培養において高パーセンテージのNCAM陽性細胞を示し、複数のiPSC株で確認した(
図10B)。
【0129】
これらのデータを合わせると、repRNAによる転写因子の送達は、プラスミドまたはレンチウイルス媒介送達よりも細胞変換の効率がよく、プロセス中に宿主細胞を遺伝的に改変しない利点を伴うことが実証される。データは、異なるドナーからの3つの異なるiPSC株からの細胞の高効率の神経変換によって証明されたように、プロトコールのロバスト性も強調する。
【0130】
実施例7
ASCL1、POU3F2(BRN2)、NEUROD1およびMYT1L発現自己複製RNAを使用する、ニューロンへの皮膚線維芽細胞の変換
ニューロンへの線維芽細胞の変換は、皮膚線維芽細胞における転写因子ASCL1、POU3F2(BRN2)、NEUROD1およびMYT1Lの発現によって達成され得る(Pangら、2011 Nature、476(7359)、220~223;doi.org/10.1038/nature10202)。細胞変換のための自己複製RNAの利用をさらに例示するため、ASCL1、POU3F2、NEUROD1およびMYT1Lを発現する自己複製RNAを、HDFをニューロンに変換するそれらの能力について試験した。
【0131】
皮膚線維芽細胞のニューロン変換実験のため、HDFに、先に記載したように、等モル量のASCL1、POU3F2、NEUROD1およびMYT1L repRNA、またはポリシストロニックASCL1-POU3F2-NEUROD1 repRNAとMYT1 repRNAを同時トランスフェクトし、Geltrex(Thermo Fisher)コートした培養プレート上にプレートした。ASCL1、POU3F2、NEUROD1およびMYT1L repRNAを得るため、自己複製RNAベクターの多重クローニング部位に挿入されたASCL1、POU3F2、NEUROD1またはMYT1Lのいずれかをコードする配列を有する別々のプラスミド鋳型を構築した。ASCL1-POU3F2-NEUROD1ポリシストロニックrepRNAを得るため、Gibsonアセンブリーによってプラスミド鋳型を構築し、自己複製RNAベクターの多重クローニング部位にASCL1-P2A-POU3F2-NEUROD1をコードする配列を挿入した(
図11A参照)。これらのプラスミドを鋳型として使用して、in vitro転写によってASCL1、POU3F2(BRN2)、NEUROD1、MYT1LおよびASCL1-POU3F2-NEUROD1ポリシストロニックrepRNAを生成した。同時トランスフェクション後、細胞は皮膚線維芽細胞増殖培地中にシードし、24時間で、DMEM:F12の1:1混合物、および2% B27サプリメント、0.5% N2サプリメント、500μM バルプロ酸、200nM L-アスコルビン酸、10μM Y-27632、+500μM dBcAMP、2μM CHIR99021、10μM SB431542、0.5μM LDN193189、100ng/mLノギン+10μMルキソリチニブを補足したNeurobasal Aからなる神経誘導培地によって完全に置き換え、2~3日ごとに培地交換した。NCAM1発現のフローサイトメトリーおよびTUBB3発現のICC解析を、先に記載したようにトランスフェクション後14日目に実施した(
図11)。
【0132】
分化した培養の解析は、ASCL1、POU3F2、NEUROD1およびMYT1Lが、個々のrepRNAとして導入されるかまたはポリシストロニックなrepRNAによって部分的にコードされる場合、皮膚線維芽細胞をニューロンに変換できることを示した。TUBB3発現のICC解析は、ASCL1、POU3F2、NEUROD1およびMYT1Lのいずれかの個々のrepRNAまたはポリシストロニックASCL1-POU3F2-NEUROD1 repRNAとMYT1L repRNAによって電気穿孔したHDFの培養中の予測されるクラスIII β-チューブリン細胞内分布を有する神経細胞を検出した(
図11B)。神経細胞表面マーカーNCAMを検出する例示的フローサイトメトリーは、変換されたHDFの培養において神経細胞マーカー発現を確認した(
図11C)。
【0133】
これらのデータは、特定の転写因子をコードするrepRNAが、皮膚線維芽細胞をニューロンに変換することができ、転写因子の組合せの少なくとも一部はポリシストロニックrepRNAにうまくコードされ得ることを実証する。これは、異なる開始起源細胞型にわたる細胞変換のためのrepRNAの使用の広範な適用可能性をさらに示す。
【0134】
実施例8
MYOD1発現自己複製RNAを使用する、筋細胞へのiPSCおよび皮膚線維芽細胞の変換
iPSCと線維芽細胞の両方の筋細胞への変換は、単一転写因子としてMyoD/MYOD1の発現によって達成され、細胞変換を駆動するrepRNAの能力を検証するさらなるモデルシステムを提示する(Abujarourら、2014 Stem Cells Translational Medicine、3(2)、149~160;doi.org/10.5966/sctm.2013~0095;Choiら、1990 PNAS、87(20),7988~7992;doi.org/10.1073/pnas.87.20.7988)。
【0135】
細胞変換を駆動するrepRNAの能力をさらに試験するため、自己複製RNAベクターの多重クローニング部位に挿入されたMYOD1をコードする配列を有するプラスミド鋳型を構築した。このプラスミドを鋳型として使用し、in vitro転写によってMYOD1 repRNAを生成した。iPSCの筋細胞への変換実験のため、先に記載したようにiPSCをMYOD1 repRNAによってヌクレオフェクトし、Geltrexコートした培養プレートにプレートした。ヌクレオフェクション後24時間で、培地をαMEM+5%Knockout Serum Replacement+1mMピルビン酸ナトリウム+50μM 2-メルカプトエタノール(Thermo Fisher)+1μMの全トランス型レチノイン酸(Sigma)に交換し、2~3日ごとに培地を交換した。線維芽細胞の筋細胞への変換実験のため、先に記載したようにHDFにMYOD1 repRNAをトランスフェクトし、Geltrexコートした培養プレートにプレートした。トランスフェクション後、細胞を、DMEM+10%ウシ胎仔血清+8μg/mLインスリン(Thermo Fisher)+0.1μM LDN-193189(Tocris)+1μM RN-1(Tocris)(Cacchiarelliら、2018 Cell Systems、7(3)、258~268.e3.https://doi.org/10.1016/j.cels.2018.07.006)+10μMルキソリチニブに直接シードし、2~3日ごとに培地を交換した。トランスフェクション後7~10日目に、細胞はICCによって解析した。先に記載したようにPBS洗浄、固定およびブロッキング後、細胞を、PBS+4%正常ヤギ血清中の精製した抗ミオシン重鎖(MyHC)抗体(1:100;R&D Systems)と、室温で3時間インキュベートし、次いで、PBS+4%正常ヤギ血清中のAlexa Fluor(登録商標)647コンジュゲート二次抗体(1:1000;Thermo Fisher社)と室温で1時間インキュベートした。抗体ステップ後、細胞は、Leica DMi1倒立顕微鏡での画像化の前に、PBS+1%BSA中4℃で保存した。
【0136】
解析は、MYOD1をコードするrepRNAが、iPSCとHDFの両方を高効率で筋細胞に変換し得ることを示した。MyHC ICCは、トランスフェクション後7~10日目に、MYOD1 repRNAをトランスフェクトしたiPSCおよびHDFの培養中の筋細胞の存在を示した(
図12Aおよび
図12B)。これは、異なる起源細胞型にわたる細胞変換および異なる分化した標的細胞型を得るためのrepRNAを使用する広範な適用可能性のさらなる例である。
【0137】
実施例9
SPI1およびCEBPAを発現する自己複製RNAを使用する、マクロファージ様細胞への皮膚線維芽細胞の変換
線維芽細胞のマクロファージ様細胞への変換は、皮膚線維芽細胞での転写因子SPI1およびCEPBAの発現によって達成され得る(Fengら、2008 PNAS、105(16)、6057~6062;doi.org/10.1073/pnas.0711961105)。細胞変換のための自己複製RNAの利用をさらに例示するため、SPI1およびCEPBAを発現する自己複製RNAを、HDFをマクロファージ様細胞に変換するそれらの能力について試験した。
【0138】
皮膚線維芽細胞のマクロファージ様細胞変換実験のため、HDFに、先に記載したように、等モル量のSPI1およびCEBPA repRNAを同時トランスフェクトし、Geltrex(Thermo Fisher)コートした培養プレート上にプレートした。SPI1およびCEBPA repRNAを得るため、自己複製RNAベクターの多重クローニング部位に挿入されたSPI1またはCEPBAのいずれかをコードする配列を有する別々のプラスミド鋳型を構築した。これらのプラスミドを鋳型として使用し、in vitro転写によってSPI1およびCEPBA repRNAを生成した。同時トランスフェクション後、細胞を、DMEM+10%ウシ胎仔血清+10ng/mL M-CSF(Peprotech)+10μMルキソリチニブに直接シードし、2~3日ごとに培地を交換した。先に記載したように、トランスフェクション後10日目に、フローサイトメトリーおよびqPCR解析を実施した。フローサイトメトリーのため、白血球共通抗原、CD45の発現を、Brilliant Violet 650(商標)コンジュゲート抗ヒトCD45マウスモノクローナル抗体(1:300;BioLegend)を使用して検出し、マクロファージ-1抗原(Mac-1)、CD11bの発現を、PEコンジュゲート抗ヒトCD11bマウスモノクローナル抗体(1:100、BioLegend)を使用して検出した。先に記載したように、CSF2RB、CSF1RおよびLYZに対する予め指定したTaqManアッセイを使用してqPCRを実施した。
【0139】
解析は、SPI1およびCEBPAをコードするrepRNAのHDFへの同時トランスフェクションが、皮膚線維芽細胞をマクロファージ様細胞に向けることができることを示した。フローサイトメトリー解析は、対照mockおよびCD45発現を示さないGFP repRNAをトランスフェクトした培養と比較して、SPI1およびCEBPA repRNAを同時トランスフェクトしたHDFにおいて、白血球共通抗原、CD45の顕著な発現を示した(
図13A)。SPI1およびCEPBA repRNAを同時トランスフェクトした細胞のCD45+陽性集団内で、ほとんどの細胞が、マクロファージが1つのサブタイプである抗原提示細胞のマーカーであるHLA-DRを発現した。細胞の集団は、マクロファージ特異的CD11bも発現する(
図13B)。さらに、qPCRによる遺伝子発現の評価は、SPI1およびCEBPA repRNAを同時トランスフェクトしたHDFが、CSF2RB、CSF1RおよびLYZを含むマクロファージ関連遺伝子を発現することを示した(
図13C)。これは、異なる分化した標的細胞型を得る細胞変換のためのrepRNAを使用する広範な適用可能性のさらなる例である。
【0140】
実施例10
HNF1A、HNF4A、ONECUT1およびFOXA3を発現する自己複製RNAを使用する、肝臓前駆細胞への内皮細胞の変換
内皮細胞の肝臓前駆細胞への変換は、内皮細胞での転写因子HNF1A、HNF4A、ONECUT1およびFOXA3の発現によって達成され得る(Inadaら、2020 Nature Communications、11(1)、1~17;doi.org/10.1038/s41467-020-19041-z)。細胞変換のための自己複製RNAの利用をさらに例示するため、HNF1A、HNF4A、ONECUT1およびFOXA3を発現する自己複製RNAを、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を肝臓前駆細胞に変換するそれらの能力について試験した。
【0141】
ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC;ATCC)は、通常、完全EGM2内皮増殖培地(Lonza)中で維持し、3~4日ごとに1:3~1:5の比で継代した。ヌクレオフェクションのため、HUVECをTrypLEによって5分間処理し、単一細胞の懸濁液を作製し、回収および計数した。必要な数の細胞を300gで4分間遠心分離し、完全P5緩衝液(P5 Primary Cell Nucleofector Kit;Lonza)中に再懸濁した。HUVECは、1×106個の細胞当たり5μgの全repRNAによって、Lonza4Dシステムを使用してヌクレオフェクトした。ヌクレオフェクトした細胞を、完全EGM2内皮増殖培地中にプレートした。
【0142】
内皮細胞の肝臓前駆細胞変換実験のため、HUVECに、等モル量のHNF1A-HNF4A-ONECUT1ポリシストロニックrepRNA、およびFOXA3 repRNAを同時トランスフェクトし、Geltrexコートした培養プレート上にプレートした。FOXA3 repRNAを得るため、自己複製RNAベクターの多重クローニング部位に挿入されたFOXA3をコードする配列を有するプラスミド鋳型を構築した。HNF1A-HNF4A-ONECUT1ポリシストロニックrepRNAを得るため、Gibsonアセンブリーによってプラスミド鋳型を構築し、自己複製RNAベクターの多重クローニング部位にHNF1A-P2A-HNF4A-T2A-ONECUT1をコードする配列を挿入した(
図14A参照)。これらのプラスミドを鋳型として使用して、in vitro転写によってFOXA3およびポリシストロニックHNF1A-P2A-HNF4A-T2A-ONECUT1 repRNAを生成した。同時トランスフェクション後、細胞は完全EGM2内皮増殖培地+200ng/mL B18R中にシードし、72時間で、100nMデキサメタゾン、10mMニコチンアミド、1μM A83-01、2μM SB431542、5μM Y-27632+200ng/mL B18Rを補足した肝細胞培養培地(Lonza)からなる肝細胞増殖培地によって完全に置き換え、2~3日ごとに培地交換した。ICCを、トランスフェクション後14日目に実施した。先に記載したように、PBS洗浄、固定およびブロッキング後、細胞を、PBS+4%正常ロバ血清中の精製した抗アルブミン抗体(1:500;Bethyl Laboratories)と、室温で終夜インキュベートし、次いで、PBS+4%ロバヤギ血清中のAlexa Fluor(登録商標)594コンジュゲート二次抗体(1:1000;Thermo Fisher)と室温で1時間インキュベートした。抗体ステップ後、細胞は、Leica DMi1倒立顕微鏡での画像化の前に、PBS+1%BSA中4℃で保存した(
図14B)。
【0143】
解析は、FOXA3、HNF1A、HNF4AおよびONECUT1をコードするrepRNAがHDFを肝臓前駆細胞に変換し得ることを示した。アルブミンICCは、トランスフェクション後14日目に、repRNAをトランスフェクトしたHDFの培養中の肝細胞の存在を示した(
図14B)。これは、異なる起源細胞型にわたる細胞変換のためにrepRNAを使用する広範な適用可能性のさらなる例であり、これは、前駆細胞を得るためにrepRNAを使用する適用可能性を確証する。
【0144】
実施例11
皮膚線維芽細胞において自己複製RNAの発現を改善し、細胞変換を増強する異なるアプローチ
先に述べたように、ワクシニアウイルス由来B18Rタンパク質および小分子JAK1/2阻害剤であるルキソリチニブは、自己複製RNAの発現動態を改善できることが以前に実証された(Blakneyら、2021)。自己複製RNAに対する細胞の抗ウイルス応答を阻害する、いくつかの可能性のある方法がある。
【0145】
細胞の抗ウイルス応答を阻害し、皮膚線維芽細胞において自己複製RNAの発現を改善する異なるアプローチは、GFP repRNAからのGFP発現を改善し、筋細胞へのHDFのMYOD1 repRNA媒介変換を増強するそれらの能力を評価することによって試験した。これらは、さらなる小分子JAK経路阻害剤(例えば、フェデラチニブ、ウパダシチニブ、フィルゴチニブ、バリシチニブ、デュークラバシチニブ、リトレシチニブ、デセルノチニブ)、RIG-I阻害剤(例えば、RIG012)、TBK1阻害剤(例えば、BX795、MRT67307)、ウイルス由来インターフェロンデコイ(例えば、Y136R)および自己複製RNA内に遺伝的にコードされる組換えタンパク質阻害剤を含んだ(例えば、遺伝的にコードされたB18R)。
【0146】
これらの実験のため、先に記載したように、GFP-IRES-Puro(登録商標)およびMYOD1 repRNAをHDFにトランスフェクトし、遺伝的にコードされたB18Rを試験するため、B18R repRNAを、GFP-IRES-Puro(登録商標)またはMYOD1 repRNAのいずれかと、等モル量で同時トランスフェクトした。B18R repRNAを得るため、自己複製RNAベクターの多重クローニング部位に挿入されたB18R遺伝子をコードする配列を有するプラスミド鋳型を構築した。このプラスミドを鋳型として使用して、in vitro転写によってB18R repRNAを生成した。
【0147】
GFP repRNAの維持への細胞の抗ウイルス応答の阻害剤の効果を評価するため、HDFに、GFP-IRES-Puro(登録商標)repRNAをトランスフェクトし、次いで、様々な小分子および組換えタンパク質を添加した増殖培地に直接シードした。細胞は、2~3日ごとに培地を交換し、トランスフェクション後7日目にフローサイトメトリーによってGFP発現を評価した。培地は、5μMルキソリチニブ、2μMフェデラチニブ、5μMウパダシチニブ、5μMフィルゴチニブ、5μMバリシチニブ、5μMデュークラバシチニブ、5μMリトレシチニブ、5μMデセルノチニブ、5μM BX795、5μM MRT67307(全てSelleckchem)、1μM RIG012(Axonmedchem)、200ng/mL B18Rまたは200ng/mL Y136R(BioTechne)を含む小分子を補足した。DMSOを補足した培地による条件は、対照として含めた。フローサイトメトリー解析は、いくつかの処理が対照処理(培地への添加なしまたはDMSO添加)よりもGFP陽性細胞のパーセンテージの増加を維持することができ、通常使用される阻害剤、ルキソリチニブおよびB18R組換えタンパク質と同等のレベルであることを示した(
図15A)。
【0148】
MYOD1 repRNAの維持への細胞の抗ウイルス応答の阻害剤の効果を評価するため、線維芽細胞の筋細胞変換実験を先に記載したように設定し、次いで、様々な小分子および組換えタンパク質を添加した増殖培地に直接シードした。小分子および組換えタンパク質の添加は、その後の全ての培地交換で維持され、トランスフェクション後7~10日目に、先に記載したように、MyHC ICCによって細胞変換を評価した。解析は、ルキソリチニブおよびB18Rと同様に、さらなる小分子(例えば、ウパダシチニブ)および細胞の抗ウイルス応答の組換えタンパク質(例えば、Y136R)阻害剤が、細胞変換を可能にするのに十分なレベルにrepRNA発現を維持できることを示した(
図15B)。先に観察されたように、MYOD1 repRNAをトランスフェクトし、細胞の抗ウイルス応答の阻害剤を補足しない標準培地中で維持した線維芽細胞の対照培養は、骨格筋細胞への変換が失敗した(
図15B-対照)。
【0149】
これらのデータを合わせると、repRNAに対する宿主の自然免疫応答を調節し、細胞変換を駆動するのに十分なレベルにrepRNA発現を延長する複数の異なる方法が実証された。
【0150】
実施例12
トランス-増幅RNA
自己複製RNAは、2つのRNA分子:RNAの複製に必要な非構造タンパク質をコードする配列を含む第1の分子、および少なくとも1つの転写因子をコードする配列を含む第2の分子を含み、トランス複製RNAシステムを提供し得る。
【0151】
アルファウイルス由来自己複製RNAの非構造タンパク質は、アセンブルして、自己複製RNAレプリコン内の配列エレメントを認識し、全RNA鋳型を複製することができる多酵素レプリカーゼ複合体を生成する。レプリカーゼ複合体は、全長およびトランケートRNAをトランスに複製することもでき、それらの複製のためのこれらの「トランス-レプリコン」における一連の保存配列エレメントの必要性を最小限にする(Beissertら、2019)。レプリカーゼ活性は、プラスミド、mRNAまたは必要な非構造タンパク質をコードする別々の自己複製RNAの送達を含む、いくつかの方法で供給され得る。
【0152】
トランス-複製RNAシステムの適用可能性を評価するため、トランス-レプリコン構築物を開発した。自己複製RNAプラスミドの非構造タンパク質内の制限酵素部位を利用して、2つの非構造タンパク質欠失構築物を生成した。TR1 GFPプラスミド鋳型は、BstZ17I+SwaI消化後の先に記載したGFP-IRES-Puro(登録商標)自己複製RNAベクターの再ライゲーションによって生成され、nsP1の5’503bpとnsP4の3’603bpとの間でトランス-レプリコンを欠失させた。TR2 GFPプラスミド鋳型は、BstZ17I+MscI消化後の再ライゲーションによって生成され、nsP1の5’503bpとnsP4の3’116bpとの間でトランス-レプリコンを欠失させた(
図16A)。これらのプラスミドを鋳型として使用して、in vitro転写によって、TR1 GFPおよびTR2 GFP repRNAを生成した。mCherry repRNAを得るため、自己複製RNAベクターの多重クローニング部位で挿入されたmCherryをコードする配列を有するプラスミド鋳型を構築した。このプラスミドを鋳型として使用して、in vitro転写によってmCherry repRNAを生成した。非構造タンパク質1~4のmRNAは、鋳型としてGFP-IRES-Puro(登録商標)自己複製RNAプラスミドDNAおよび詳述したプライマー(配列番号8および9)を使用することによって生成した、PCR鋳型により、先に記載したようにin vitro転写によって産生した。
【0153】
【表7】
iPSCは、mCherry repRNAまたはnsP1~4 mRNAと組み合わせて、等モル量のTR1 GFPまたはTR2 GFP repRNAのいずれかと同時ヌクレオフェクトし、先に記載したようにプレートおよび維持し、48時間で画像を撮り、ヌクレオフェクション後96時間にフローサイトメトリー解析を実施した。
【0154】
解析は、機能性レプリカーゼを欠損する、GFP発現トランス-レプリコンのみのiPSCへのトランスフェクションが、GFP発現をもたらさないことを示した(
図16B)。mCherry repRNAまたはnsP1~4 mRNAのいずれかによってコードされる、GFP発現トランスレ-プリコン、およびレプリカーゼの起源のiPSCへの同時トランスフェクションは、トランス-レプリコンからの機能性GFP発現をもたらし、機能性トランス-レプリコンシステムを実証する。48時間での画像化および96時間でのフローサイトメトリー解析は、TR1-GFPまたはTR2-GFP repRNAのいずれかを単独でトランスフェクトしたiPSCではGFP発現を示さなかったが、TR1-GFPまたはTR2-GFPがmCherry repRNAまたはnsP1~4 mRNAのいずれかと同時トランスフェクトされた場合、高レベルのGFP発現が観察された。
【0155】
これらのデータを合わせると、原則として、nsP1~4がコードするレプリカーゼによって駆動されるrepRNAの複製能は、2つの分子間で分けられ得ることが示される。これは、repRNAの短いトランス-レプリコンへのトランケーションを可能にし、別のrepRNAまたはnsP1~4をコードするmRNAからのレプリカーゼ活性の同時添加時に、複製されおよびそのカーゴが発現され得る。
【配列表】
【国際調査報告】