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特表2024-517850電動オートバイ用の電気式の駆動モータを動作制御する方法、制御装置およびオートバイシステム
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  • 特表-電動オートバイ用の電気式の駆動モータを動作制御する方法、制御装置およびオートバイシステム 図1
  • 特表-電動オートバイ用の電気式の駆動モータを動作制御する方法、制御装置およびオートバイシステム 図2
  • 特表-電動オートバイ用の電気式の駆動モータを動作制御する方法、制御装置およびオートバイシステム 図3
  • 特表-電動オートバイ用の電気式の駆動モータを動作制御する方法、制御装置およびオートバイシステム 図4
  • 特表-電動オートバイ用の電気式の駆動モータを動作制御する方法、制御装置およびオートバイシステム 図5
  • 特表-電動オートバイ用の電気式の駆動モータを動作制御する方法、制御装置およびオートバイシステム 図6
  • 特表-電動オートバイ用の電気式の駆動モータを動作制御する方法、制御装置およびオートバイシステム 図7
  • 特表-電動オートバイ用の電気式の駆動モータを動作制御する方法、制御装置およびオートバイシステム 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(54)【発明の名称】電動オートバイ用の電気式の駆動モータを動作制御する方法、制御装置およびオートバイシステム
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/08 20160101AFI20240416BHJP
   B60T 7/10 20060101ALI20240416BHJP
   H02P 31/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H02P6/08
B60T7/10 F
H02P31/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568171
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-03
(86)【国際出願番号】 EP2022057404
(87)【国際公開番号】W WO2022242930
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】102021204984.2
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】クルーク,ジラス
(72)【発明者】
【氏名】モイア,アレッサンドロ
【テーマコード(参考)】
3D124
5H501
5H560
【Fターム(参考)】
3D124AA13
3D124BB01
3D124BB17
3D124CC13
3D124DD05
5H501AA20
5H501AA30
5H501CC04
5H501FF04
5H501FF05
5H501JJ03
5H501JJ24
5H501JJ26
5H501LL01
5H560AA08
5H560DB00
5H560DC03
5H560HB02
5H560SS02
5H560TT08
5H560TT15
5H560XA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、電動オートバイ(102)用の電気式の駆動モータ(104)を動作制御する方法に関する。
【解決手段】本方法は、電動オートバイ(102)のスロットルグリップ(109)の目下の変位を表示する変位値(108)と、電動オートバイ(102)の目下の速度を表示する速度値(112,120,122)とを受信し;スロットルグリップ(109)のための可能な変位値を有する変位値範囲を回生領域および駆動領域に区分し、この区分は、速度値(112,120,122)と、割り当て規則であって、それぞれ異なる速度値(112,120,122)に、変位値範囲の、回生領域および駆動領域へのそれぞれ異なる区分を割り当てる割り当て規則とを用いて行い;トルク目標値を変位値(108)に応じて決定し、変位値(108)が駆動領域内にあるときは、駆動モーメント値をトルク目標値として決定し、変位値(108)が回生領域内にあるときは、回生モーメント値をトルク目標値として決定し;かつ電気式の駆動モータ(104)を動作制御する制御信号(115)をトルク目標値に基づいて生成する、ことを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動オートバイ(102)用の電気式の駆動モータ(104)を動作制御する方法であって、前記方法は:
スロットルグリップセンサ(106)を用いて提供される、前記電動オートバイ(102)のスロットルグリップ(109)の目下の変位を表示する変位値(108)と、速度センサ(110,110a,110b)を用いて提供される、前記電動オートバイ(102)の目下の速度を表示する速度値(112,120,122)とを受信し;
前記スロットルグリップ(109)のための可能な変位値を有する変位値範囲(206)を回生領域(208)および駆動領域(210)に区分し、前記区分は、前記速度値(112,120,122)と、割り当て規則(214)であって、それぞれ異なる速度値(112,120,122)に、前記変位値範囲(206)の、前記回生領域(208)および前記駆動領域(210)へのそれぞれ異なる区分を割り当てる割り当て規則(214)とを用いて行い;
トルク目標値(205,205a,205b)を前記変位値(108)に応じて決定し、前記変位値(108)が前記駆動領域(210)内にあるときは、駆動モーメント値(205a)を前記トルク目標値(205)として決定し、前記変位値(108)が前記回生領域(208)内にあるときは、回生モーメント値(205b)を前記トルク目標値(205)として決定し;かつ
前記電気式の駆動モータ(104)を動作制御する制御信号(115)を前記トルク目標値(205,205a,205b)に基づいて生成する、
ことを含む、電動オートバイ用の電気式の駆動モータを動作制御する方法。
【請求項2】
前記駆動領域(210)が、前記電動オートバイ(102)の速度の増加とともに縮小し、かつ/または前記回生領域(208)が、前記電動オートバイ(102)の速度の増加とともに拡大するように、前記変位値範囲(206)を区分する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記変位値範囲(206)を、前記速度値(112,120,122)と前記割り当て規則(214)とを用いて、付加的に中立の領域(212)に区分し、前記割り当て規則(214)は、それぞれ異なる前記速度値(112,120,122)に、前記変位値範囲(206)の、前記回生領域(208)、前記駆動領域(210)および前記中立の領域(212)へのそれぞれ異なる区分を割り当て;
前記変位値(108)が前記中立の領域(212)内にあるときは、前記トルク目標値(205,205a,205b)を、予め与えられた最小値にセットする、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記中立の領域(212)は、前記回生領域(208)の上側の限界(320;602)と、前記駆動領域(210)の下側の限界(304;600)との間の変位値を有する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記回生領域(208)の下側の限界(324)は、前記速度値(112,120,122)によらず、0%の前記スロットルグリップ(109)の変位に相当し;かつ/または
前記駆動領域(210)の上側の限界(308)は、前記速度値(112,120,122)によらず、100%の前記スロットルグリップ(109)の変位に相当する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記駆動モーメント値(205a)の前記決定は:
前記駆動領域(210)における最小の変位値(304)を前記変位値(108)から減算することで、第1の間隔(302)を決定し;
前記第1の間隔(302)を、前記最小の変位値(304)と、前記駆動領域(210)における最大の変位値(308)との間の第2の間隔(306)により除算することで、駆動モーメント係数(312)を決定し;
前記駆動モーメント係数(312)を、予め与えられた最大の駆動モーメント値(316)と乗算することで、前記駆動モーメント値(205a)を決定する、
ことを含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記回生モーメント値(205b)の前記決定は:
前記変位値(108)を前記回生領域(208)における最大の変位値(320)から減算することで、第3の間隔(318)を決定し;
前記第3の間隔(318)を、前記回生領域(208)における最小の変位値(324)と前記最大の変位値(320)との間の第4の間隔(322)により除算することで、回生モーメント係数(326)を決定し;
前記回生モーメント係数(326)を、予め与えられた最大の回生モーメント値(328)と乗算することで、前記回生モーメント値(205b)を決定する、
ことを含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
さらに、前記電動オートバイ(102)を停止状態に保持するブレーキ補助機能が作動されるとき、前記速度値(112,120,122)および/または前記電気式の駆動モータ(104)の目下の回転数(218)に応じて、保持モーメント値(220)を決定し;
前記電動オートバイ(102)が停止状態に保持されるように、前記電気式の駆動モータ(104)を動作制御すべく、前記制御信号(115)をさらに前記保持モーメント値(220)に基づいて生成する、
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
さらに、第1のホイール回転数センサ(110a)を用いて提供される、前記電動オートバイ(102)のフロントホイール(116)の目下の速度を表示するフロントホイール速度値(120)と、第2のホイール回転数センサ(110b)を用いて提供される、前記電動オートバイ(102)のリヤホイール(118)の目下の速度を表示するリヤホイール速度値(122)とを受信し;
前記フロントホイール速度値(120)と前記リヤホイール速度値(122)とから差を形成することで、スリップ値(402)を決定し、かつ前記スリップ値(402)とスリップ目標値(406)との間のスリップ偏差(408)を決定し;
前記スリップ偏差(408)が減少されるように、前記電気式の駆動モータ(104)を動作制御すべく、前記制御信号(115)をさらに前記スリップ偏差(408)に基づいて生成する、
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記スリップ偏差(408)に応じてトルク限界値(412)を決定し;
前記トルク限界値(412)と前記トルク目標値(205,205a,205b)とを互いに比較し;
前記トルク目標値(205,205a,205b)が、数値的に前記トルク限界値(412)より大きいときは、前記トルク目標値(205,205a,205b)を前記トルク限界値(412)に制限する、
請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記速度値(112,120,122)に応じて修正値(502)を決定し;
前記修正値(502)を用いて前記トルク目標値(205,205a,205b)を修正することで、修正されたトルク目標値(508)を決定し;
前記修正されたトルク目標値(508)に基づいて前記制御信号(115)を生成する、
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
制御装置(114)であって、プロセッサ(202)を備え、前記プロセッサ(202)は、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実施すべく、構成されている、制御装置。
【請求項13】
オートバイシステム(100)であって:
電動オートバイ(102)を駆動する電気式の駆動モータ(104)と;
前記電動オートバイ(102)のスロットルグリップ(109)の目下の変位を表示する変位値(108)を提供するスロットルグリップセンサ(106)と;
前記電動オートバイ(102)の目下の速度を表示する速度値(112,120,122)を提供する速度センサ(110,110a,110b)と;
請求項12記載の制御装置(114)と、
を備える、オートバイシステム。
【請求項14】
コンピュータプログラムであって、プロセッサ(202)に、前記プロセッサ(202)による前記コンピュータプログラムの実行時、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実施させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14記載のコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読な媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動オートバイ用の電気式の駆動モータを動作制御する方法に関する。さらに本発明は、このような方法を実施する制御装置、コンピュータプログラムおよびコンピュータ可読な媒体、ならびにこのような制御装置を装備したオートバイシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近のオートバイは、アンチロックシステムを装備していることがあり、アンチロックシステムは、オートバイの1つまたは複数のホイールのホイール周速度を監視し、ホイール周速度に応じて液圧式のブレーキ圧力を調節する。
【0003】
さらに、オートバイ用の、ブレーキ圧力をベースとするコンビネーションブレーキ機能が存在し、コンビネーションブレーキ機能は、フロントホイール速度とリヤホイール速度とを強い制動時に自動で互いに合わせることができる。
【0004】
電気式の駆動モータを装備している電動オートバイの場合、スロットルグリップは、電動オートバイの加速のためにも、付加的な制動のためにも使用可能である。例えば、電気式の駆動モータは、スロットルグリップがその初期位置にあるとき、回生モーメントを発生させ得る。回生モーメントは、通例、運転者によっては調節不能であるか、またはごく限られた範囲でしか調節可能でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これを背景として、ここで紹介するアプローチでもって、独立請求項に記載の電動オートバイ用の電気式の駆動モータを動作制御する方法、相応の制御装置、相応のオートバイシステム、相応のコンピュータプログラムおよび相応のコンピュータ可読な媒体を紹介する。ここで紹介するアプローチの有利な発展形および改良は、明細書から看取可能であり、かつ従属請求項に記載されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施の形態は、電動オートバイの簡単かつ快適な制御を可能にする。特に、電動オートバイのスロットルグリップが、電動オートバイを狙い通りに加速するだけでなく、狙い通りに制動、場合によっては停止状態まで制動するためにも使用され得ることが可能とされる。この種の電気式のブレーキ機能は、電動オートバイが、液圧式のブレーキ装置を操作しなくても、確実かつ快適に制動され得るように、設計されていることができる。加えて、走行安全性、走行快適性および/またはエネルギ効率を向上させる1つまたは複数のドライバアシスタンス機能の実現が、このために付加的なハードウェアコンポーネントが後付けされる必要なく、電気式の駆動モータの動作制御のみで可能とされる。
【0007】
本発明の第1の態様は、コンピュータに実装される、電動オートバイ用の電気式の駆動モータを動作制御する方法に関する。本方法は、少なくとも以下のステップ:スロットルグリップセンサを用いて提供される、電動オートバイのスロットルグリップの目下の変位を表示する変位値と、速度センサを用いて提供される、電動オートバイの目下の速度を表示する速度値とを受信し;スロットルグリップのための可能な変位値を有する変位値範囲を回生領域および駆動領域に区分し、この区分は、速度値と、割り当て規則であって、それぞれ異なる速度値に、変位値範囲の、回生領域および駆動領域へのそれぞれ異なる区分を割り当てる割り当て規則とを用いて行い;トルク目標値を変位値に応じて決定し、変位値が駆動領域内にあるときは、駆動モーメント値をトルク目標値として決定し、変位値が回生領域内にあるときは、回生モーメント値をトルク目標値として決定し;かつ電気式の駆動モータを動作制御する制御信号をトルク目標値に基づいて生成する、ステップを含んでいる。
【0008】
本方法は、自動でプロセッサ、例えば電動オートバイの制御装置のプロセッサにより実施され得る。
【0009】
電動オートバイとは、概して、電気式の駆動モータ、または電気式の駆動モータと内燃機関とからなる組み合わせを有するオートバイと解され得る。電気式の駆動モータは、モータとして機能するだけでなく、ジェネレータとしても、例えば、電気的なエネルギを回収して電動オートバイの駆動バッテリに給電すべく、機能することができ、このことは、回生と称呼されることもある。
【0010】
電動オートバイは、シングルトラックまたはマルチトラックの車両であり得る。例えば電動オートバイは、電動スクータまたは電動自転車であってもよい。しかし、オートバイに類似した四輪の車両(クアッドともいう)または水上オートバイ(ジェットスキーともいう)の形態の電動オートバイも考えられる。
【0011】
スロットルグリップとは、電動オートバイの運転者により操作可能な操作要素と解されてもよく、操作要素を操作することで、電動オートバイの速度は、制御可能である。例えばスロットルグリップは、電動オートバイのハンドルに装着されていることができる。スロットルグリップは、例えばツイストグリップとして構成されていてもよい。この場合、変位値は、例えばスロットルグリップの目下の回転角度を表示し得る。電動オートバイのタイプ次第で、スロットルグリップは、しかし、電動オートバイの別の箇所に装着され、かつ/または異なって構成、例えばスロットルレバーもしくはスロットルペダルとして構成されていてもよい。
【0012】
変位値は、スロットルグリップの目下の変位を測定する好適なスロットルグリップセンサにより提供され、かつ/またはスロットルグリップセンサにより提供されるセンサデータから決定されていてもよい。スロットルグリップセンサは、例えばポテンショメータ、誘導式のセンサまたは容量式のセンサとして構成されていてもよい。
【0013】
速度値は、電動オートバイの目下の速度を測定する速度センサにより提供され、かつ/または速度センサにより提供されるセンサデータから決定されていてもよい。速度値は、例えば電動オートバイのフロントホイールおよび/もしくはリヤホイールのホイール周速度および/もしくはホイール回転数を表示することができ、またはホイール周速度および/もしくはホイール回転数から決定されていてもよい。これに応じて、速度センサは、例えばホイール回転数センサであり得る。しかし、レーダセンサもしくはライダセンサまたはオートバイの衛星支援型の測位のための測位センサの形態の速度センサも可能である。
【0014】
割り当て規則は、例えば1つもしくは複数の数学的な関数の形態で、かつ/またはルックアップテーブルの形態で電動オートバイの制御装置内に格納されていてもよい。
【0015】
例えば割り当て規則は、それぞれ異なる速度値に回生領域および/または駆動領域のためのそれぞれ異なる限界を割り当てる1つまたは複数の特性線を有していてもよい。
【0016】
割り当て規則により、それぞれ異なる速度またはそれぞれ異なる速度範囲に、それぞれ異なる大きさの駆動領域あるいはそれぞれ異なる大きさの回生領域が割り当てられ得る。しかし、駆動領域が、所定の速度範囲内で一定であることも可能である。代替的または付加的に、回生領域は、所定の速度範囲内で一定であってもよい。
【0017】
例えば割り当て規則は、上側のゼロ線を有していてもよく、上側のゼロ線は、駆動領域の下側の限界を電動オートバイの速度に応じて規定する。付加的または代替的に、割り当て規則は、下側のゼロ線を有していてもよく、下側のゼロ線は、回生領域の上側の限界を電動オートバイの速度に応じて規定する。
【0018】
上側のあるいは下側のゼロ線上に位置する変位値には、それぞれ、ゼロのトルク目標値が割り当てられていてもよい。
【0019】
上側のゼロ線と、下側のゼロ線とは、その延びが互いに異なっていてもよい。例えば上側のゼロ線と、下側のゼロ線とは、同じ原点から出発し、それ以外に共通の交点を有しないことが可能である。
【0020】
上側のゼロ線により上方で、かつ下側のゼロ線により下方で制限された変位値範囲は、中立の領域に相当することができ、中立の領域において、電動オートバイは、転動すべきであり、すなわち、電気式の駆動モータによって、知覚できるほど加速されるべきでも、知覚できるほど制動されるべきでもない(後述を参照)。
【0021】
駆動モーメント値は、例えば正の値であるか、またはゼロに等しくてもよい。回生モーメント値は、例えば負の値であるか、ゼロに等しくてもよい。
【0022】
駆動モーメント値の数値は、例えば、駆動モーメント値の、駆動領域の上側および/または下側の限界に対する間隔に応じて、またはこの間隔の、駆動領域の上側の限界と下側の限界との間の総間隔に対する比から、決定され得る。
【0023】
回生モーメント値の数値は、例えば、回生モーメント値の、回生領域の上側および/または下側の限界に対する間隔に応じて、またはこの間隔の、回生領域の上側の限界と下側の限界との間の総間隔に対する比から、決定され得る。
【0024】
制御信号を用いた電気式の駆動モータの動作制御により、電気式の駆動モータにより発生されるトルクは、トルク目標値に近付けられ得る。
【0025】
変位値は、電動オートバイの許容最高速度を考慮して評価されることが可能である。例えばトルク目標値は、電動オートバイが、許容最高速度に到達するか、または上回るとき、変位値によらず変更され得る。例えば電動オートバイは、電気式の駆動モータの相応の動作制御により、変位値によらず、許容最高速度まで制動されることが可能である。
【0026】
要約すると、ここでかつ以下に説明するアプローチは、電気式のブレーキ機能であって、スロットルグリップが、駆動モーメント、すなわち正のトルクの調節のためにも、回生モーメント、すなわち負のトルクの調節のためにも使用され得る、電気式のブレーキ機能の実現を可能にする。換言すれば、回生モーメントは、電動オートバイの目下の速度次第で、スロットルグリップがその初期位置外に程度の差こそあれ強く変位されることにより、発生され、またはその値が変更され得る。
【0027】
このことは、電動オートバイを確実に制動するために、付加的に手動で(液圧式の)ブレーキ装置を操作することが、必ずしも必要でないという効果を有している。こうして走行快適性は、このような電気式のブレーキ機能なしの従来慣用の解決手段と比較して大幅に向上され得る。
【0028】
それに加え、本発明の異なる実施の形態によれば、自動のトルク制御のための機能も可能である。
【0029】
例えば、ここでかつ以下に説明するアプローチをベースに、従来慣用の、ブレーキ圧力をベースとするブレーキ(補助)機能は、少なくとも部分的に、相応の、トルクをベースとする、すなわち電気式の、ブレーキ(補助)機能によって置換され得る。このことは、相応のブレーキ圧力センサの使用を完全にまたは少なくとも部分的に省略することができ、このことは、製造コストを引き下げるという利点を有している。
【0030】
本発明の第2の態様は、制御装置に関する。制御装置は、プロセッサを備え、プロセッサは、本発明の第1の態様の一実施の形態による方法を実施すべく、構成されている。本発明の第1の態様の一実施の形態による方法の特徴は、制御装置の特徴でもあり、その逆もまた然りである。
【0031】
制御装置は、ハードウェアモジュールおよび/またはソフトウェアモジュールを備えていてもよい。プロセッサに加えて、制御装置は、記憶装置と、周辺装置とのデータ通信用のデータ通信インタフェースとを備えていてもよい。
【0032】
本発明の第3の態様は、オートバイシステムに関する。オートバイシステムは、電動オートバイを駆動する電気式の駆動モータと、電動オートバイのスロットルグリップの目下の変位を表示する変位値を提供するスロットルグリップセンサと、電動オートバイの目下の速度を表示する速度値を提供する速度センサと、本発明の第2の態様の一実施の形態による制御装置と、を備えている。このようなオートバイシステムは、電動オートバイの速度の、確実な、快適なかつ/またはエネルギ効率のよい制御を可能にする。
【0033】
本発明の第4の態様は、コンピュータプログラムに関する。コンピュータプログラムは、プロセッサに、プロセッサによるコンピュータプログラムの実行時、本発明の第1の態様の一実施の形態による方法を実施させる命令を含んでいる。
【0034】
本発明の第5の態様は、本発明の第4の態様の一実施の形態によるコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読な媒体に関する。コンピュータ可読な媒体は、揮発性または不揮発性のデータ記憶装置であり得る。例えばコンピュータ可読な媒体は、ハードディスク、USBメモリ装置、RAM、ROM、EPROMまたはフラッシュメモリであってもよい。コンピュータ可読な媒体は、プログラムコードのダウンロードを可能にするデータ通信ネットワーク、例えばインターネットまたはデータクラウド(Cloud)であってもよい。
【0035】
本発明の第1の態様の一実施の形態による方法の特徴は、コンピュータプログラムおよび/またはコンピュータ可読な媒体の特徴でもあり、その逆もまた然りである。
【0036】
本発明の実施の形態に対する観念は、とりわけ、以下に説明する考えや認識に基づくものと見なされ得る。
【0037】
一実施の形態によれば、駆動領域が、電動オートバイの速度の増加とともに縮小し、かつ/または回生領域が、電動オートバイの速度の増加とともに拡大するように、変位値範囲を区分する。こうして回生モーメントは、より高い速度時、より良好に調量されることができ、これに対して駆動モーメントの調量は、より高い速度時、高められた走行抵抗に基づいてそれほど精細にはなり得ない。
【0038】
一実施の形態によれば、変位値範囲を、速度値と割り当て規則とを用いて、付加的に中立の領域に区分する。その際、割り当て規則は、それぞれ異なる速度値に、変位値範囲の、回生領域、駆動領域および中立の領域へのそれぞれ異なる区分を割り当てる。変位値が中立の領域内にあるときは、トルク目標値を、予め与えられた最小値にセットする。駆動領域あるいは回生領域に類似して、中立の領域は、電動オートバイの速度次第で様々な大きさになり得る。しかし、中立の領域は、所定の速度範囲内で一定であることも可能である。例えば最小値は、ゼロ、または数値的に極めて小さな値であり得る。中立の領域が、より小さい速度に向かって、電動オートバイタイプまたは許容最高速度次第で、例えば約20km/hからますます縮小すると、合目的的である。変位値が、中立の領域内にある場合、トルク目標値は、変位値の、中立の領域の上側の限界および/下側の限界に対する間隔によらず、予め与えられた最小値にセットされ得る。本実施の形態により、電動オートバイは、スロットルグリップの操作により転動、すなわち、能動的に加速も、能動的に制動もされない動的走行状態へ移行され得る。
【0039】
一実施の形態によれば、中立の領域は、回生領域の上側の限界と、駆動領域の下側の限界との間の変位値を有している。換言すれば、中立の領域は、回生領域と駆動領域との間に位置し得る。このことは、駆動領域と回生領域との間の切り換わり時、常に中立の領域が横断されるという効果を有している。これにより、駆動領域と回生領域との間の直接的な切り換わり時に発生し得るような、走行快適性に対する負の影響は、回避され得る。
【0040】
前述の3つの領域、回生領域、駆動領域および中立の領域の少なくとも1つの領域は、電動オートバイの目下の速度次第で、1つの変位値しか有しないか、または変位値を有しないことが可能である。
【0041】
一実施の形態によれば、回生領域の下側の限界は、速度値によらず、0%のスロットルグリップの変位に相当する。付加的または代替的に、駆動領域の上側の限界は、速度値によらず、100%のスロットルグリップの変位に相当し得る。こうして、スロットルグリップの初期位置あるいは最終位置は、駆動モーメントあるいは回生モーメントの調節のための固定の参照として利用されることができ、このことは、操作快適性に有利に働く。
【0042】
一実施の形態によれば、駆動モーメント値の決定は:駆動領域における最小の変位値を変位値から減算することで、第1の間隔を決定し;第1の間隔を、上記最小の変位値と、駆動領域における最大の変位値との間の第2の間隔により除算することで、駆動モーメント係数を決定し;駆動モーメント係数を、予め与えられた最大の駆動モーメント値と乗算することで、駆動モーメント値を決定する、ことを含んでいる。第2の間隔は、例えば駆動領域における最大の変位値から最小の変位値を減算することで決定されていることができる。こうして、スロットルグリップの目下の変位に相当する駆動モーメントは、電動オートバイの所与の速度のために効率的かつ精緻に算出され得る。
【0043】
一実施の形態によれば、回生モーメント値の決定は:変位値を回生領域における最大の変位値から減算することで、第3の間隔を決定し;第3の間隔を、回生領域における最小の変位値と上記最大の変位値との間の第4の間隔により除算することで、回生モーメント係数を決定し;回生モーメント係数を、予め与えられた最大の回生モーメント値と乗算することで、回生モーメント値を決定する、ことを含んでいる。第4の間隔は、例えば回生領域における最大の変位値から最小の変位値を減算することで決定されていることができる。最小の変位値がゼロに等しい場合、第4の間隔は、単純に、最大の変位値の数値に等しくてもよい。こうして、スロットルグリップの目下の変位に相当する回生モーメントは、電動オートバイの所与の速度のために効率的かつ精緻に算出され得る。
【0044】
上記において、「最小の変位値」とは、それぞれ、該当する領域の下側の限界と解され、「最大の変位値」とは、それぞれ、上側の限界と解され得る。
【0045】
一実施の形態によれば、さらに、電動オートバイを停止状態に保持するブレーキ補助機能が作動されるとき、速度値および/または電気式の駆動モータの目下の回転数に応じて、保持モーメント値を決定する。その際、電動オートバイが停止状態に保持されるように、電気式の駆動モータを動作制御すべく、制御信号をさらに保持モーメント値に基づいて生成する。保持モーメント値は、例えば、電動オートバイの目下の速度および/または電気式の駆動モータの目下の回転数が制御量として使用される閉ループ制御回路内の操作量であり得る。保持モーメント値は、電動オートバイの目下の速度および/または電気式の駆動モータの目下の回転数をゼロに閉ループ制御するために使用され得る。ブレーキ補助機能は、1つまたは複数の作動条件が満たされているか、例えば、スロットルグリップが初期位置にあるか、すなわち、変位値が、0%のスロットルグリップの変位を表示しているか、または電動オートバイが停止しているか、すなわち、速度値が、所定の最低値を下回っているかもしくはゼロに等しいか、に応じて、作動され得る。本実施の形態により、電動オートバイは、自動で、(液圧式の)ブレーキ装置を操作する必要なしに、停止状態に保持され得る。このような必要なときにオンに切り換え可能な電気式のブレーキ補助機能は、例えば坂道発進補助手段として用いられ得る。
【0046】
一実施の形態によれば、さらに、第1のホイール回転数センサを用いて提供される、電動オートバイのフロントホイールの目下の速度を表示するフロントホイール速度値と、第2のホイール回転数センサを用いて提供される、電動オートバイのリヤホイールの目下の速度を表示するリヤホイール速度値とを受信する。その上で、フロントホイール速度値とリヤホイール速度値とから差を形成することで、スリップ値を決定し、かつスリップ値とスリップ目標値との間のスリップ偏差を決定する。その際、スリップ偏差が減少されるように、電気式の駆動モータを動作制御すべく、制御信号をさらにスリップ偏差に基づいて生成する。フロントホイール速度値あるいはリヤホイール速度値は、フロントホイールあるいはリヤホイールの周速度および/または回転速度を表示し得る。本実施の形態は、電気式の、すなわち、ブレーキ圧力をベースとしないスリップ制限機能、例えば電気式のアンチロック機能および/または電気式のコンビネーションブレーキ機能の形態のスリップ制限機能の実現を可能にする。こうして走行快適性および/または走行安全性は、この種の電気式のスリップ制限機能なしの電動オートバイと比較して、特に、強い制動時、強い加速時および/または滑りやすい走路において、改善され得る。電気式のブレーキ機能(前述を参照)は、1つまたは複数の電気式のスリップ制限機能および/または電気式のブレーキ補助機能と組み合わされて使用可能である。
【0047】
非常制動を認めたとき、例えば電気式のコンビネーションブレーキ機能により、リヤホイールの速度を自動でフロントホイールの速度に合わせてもよい。これにより、リヤホイールにおけるスリップは、少なくとも近似的にフロントホイールにおけるスリップに相当する。
【0048】
他方、スリップ目標値は、電気式のアンチロック機能によりリヤホイールの最大で許容可能なスリップに応じて設定してもよい。これにより、電気式の駆動モータにより発生されるトルクを相応に調節するだけで、効き目の高いABS機能が実現され得る。
【0049】
一実施の形態によれば、スリップ偏差に応じてトルク限界値を決定する。その上で、トルク限界値とトルク目標値とを互いに比較する。その際、トルク目標値が、数値的にトルク限界値より大きいときは、トルク限界値をトルク目標値に制限する。トルク限界値は、正または負であることができ、すなわち、駆動モーメントまたは回生モーメントに関し得る。トルク限界値は、例えば電気式のアンチロック機能により、電動オートバイのタイヤの、その走路に関する、できる限り上回るべきでない静摩擦限界に応じて、確定され得る。これにより、リヤホイールにおける過度に大きなスリップは、回避され得る。特にこれにより、リヤホイールのロックまたは空転は、防止され得る。
【0050】
一実施の形態によれば、速度値に応じて修正値を決定する。その上で、修正値を用いてトルク目標値を修正することで、修正されたトルク目標値を決定する。その際、修正されたトルク目標値に基づいて制御信号を生成する。修正値は、例えばトルク目標値が乗算され得る0~1の間の係数であることができ、ここで、修正値は、速度値が大きくなるにつれ、大きくなり得る。こうして、特に徐行速度のとき、電動オートバイのジャーク状の制動および/または加速は、回避され得る。
【0051】
制御装置の、トルクをベースとする種々異なる制御機能、例えば電気式のブレーキ(補助)機能、電気式のアンチロック機能または電気式のコンビネーションブレーキ機能によって求められる種々異なるトルク要求は、制御装置により、好適な形式で、例えば種々異なるトルク要求からある特定のトルク要求を選択することで、調和され得る。
【0052】
以下に、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら説明する。図面も、明細書も、本発明を限定するものと解すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明の一実施例によるオートバイシステムを示す図である。
図2図1に示す制御装置を示す図である。
図3図2に示す制御装置の様々なモジュールを示す図である。
図4図2に示す制御装置の様々なモジュールを示す図である。
図5図2に示す制御装置の様々なモジュールを示す図である。
図6】本発明の一実施例による方法で使用する割り当て規則を示すグラフである。
図7】本発明の一実施例による方法のステップを実施する制御器のブロック線図である。
図8】本発明の一実施例による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図面は、概略図にすぎず、正しい縮尺のものではない。同じ符号は、図中、同じまたは同一作用の特徴を指している。
【0055】
図1は、電動オートバイ102用のオートバイシステム100を示している。オートバイシステム100は、電動オートバイ102を駆動する電気式の駆動モータ104と、スロットルグリップ109の目下の変位を表示する変位値108を提供するスロットルグリップセンサ106と、電動オートバイ102の目下の速度を表示する速度値112を提供する速度センサ110と、電気式の駆動モータ104を制御信号115により動作制御する制御装置114と、を備え、制御信号115は、変位値108を速度値112とともに、追って図2ないし図8を基に詳しく説明する方法において処理することで生成される。
【0056】
本例では、電動オートバイ102は、電気式の駆動モータ104によって駆動される、1つのフロントホイール116と1つのリヤホイール118とを有するシングルトラックの車両である。電気式の駆動モータ104により発生されるトルクの作用方向は、双方向矢印によりマークしてある。
【0057】
スロットルグリップ109は、ここではツイストグリップとして構成されている。代替的には、スロットルグリップ109は、スロットルレバーまたはスロットルペダルとして構成されていてもよい。
【0058】
速度センサ110は、例えば、フロントホイール116および/またはリヤホイール118のホイール回転数を測定し、このホイール回転数から速度値112を決定するように、構成されていてもよい。
【0059】
例えば速度センサ110は、フロントホイール116のホイール回転数を測定する第1のホイール回転数センサ110aと、リヤホイール118のホイール回転数を測定する第2のホイール回転数センサ110bとを有し、速度値112に対して付加的または代替的に、第1のホイール回転数センサ110aを用いて提供される、フロントホイール116の目下の速度を表示するフロントホイール速度値120と、第2のホイール回転数センサ110bを用いて提供される、リヤホイール118の目下の速度を表示するリヤホイール速度値122とを提供してもよい。
【0060】
図2は、制御装置114の可能なコンポーネントを示している。
【0061】
制御装置114は、コンピュータプログラムを記憶する記憶装置200と、コンピュータプログラムを実行するプロセッサ202とを備えていてもよく、電気式の駆動モータ104を動作制御する方法は、以下に説明するように、コンピュータプログラムをプロセッサ202により実行することで実施され得る。
【0062】
制御装置114の以下に説明するモジュールは、ハードウェアモジュールおよび/またはソフトウェアモジュールであってもよい。
【0063】
以下に説明する方法ステップは、図8にフローチャートにより示してある。
【0064】
本例では、ステップS10において、変位値108および速度値112を変換モジュール204において受信する。変換モジュール204において、変位値108および速度値112をトルク目標値205に変換する。
【0065】
変換モジュール204は、トルク目標値205を付加的にフロントホイール速度値120および/またはリヤホイール速度値122に基づいて決定するように、構成されていてもよい。
【0066】
ステップS20において、変換モジュール204は、0%~100%の間で可能な変位値を有する変位値範囲206を、電動オートバイ102の目下の速度次第で、例えば回生領域208、駆動領域210および中立の領域212に区分する。
【0067】
この変位値範囲206の、回生領域208、駆動領域210および中立の領域212への区分は、速度値112に応じて可変であり、割り当て規則214であって、電動オートバイ102のそれぞれ異なる速度または速度範囲に、変位値範囲206のそれぞれ異なる区分を割り当てる、割り当て規則214に応じて実施される(図6も参照)。
【0068】
この割り当て規則214は、例えば、数学的な関数またはルックアップテーブルの形態で記憶装置200内に格納されていてもよい。
【0069】
中立の領域212は、図2では例示的に回生領域208と駆動領域210との間に配置されている。中立の領域212は、ここではつまり、回生領域208の上側の限界と、駆動領域210の下側の限界との間の変位値を有している。しかし、中立の領域212の別の位置および/または分割も可能である。
【0070】
この場合、回生領域208の下側の限界は、0%の変位に相当し、駆動領域210の上側の限界は、100%の変位に相当する。
【0071】
ステップS30において、変換モジュール204は、変位値108を、トルク目標値205として、変位値108が駆動領域210内にあるときは、(正の)駆動モーメント値205aに変換し、反対に、変位値108が回生領域208内にあるときは、(負の)回生モーメント値205bに変換する。
【0072】
変位値108が、駆動領域210内にも回生領域208内にもないとき、すなわち、中立の領域212内にあるとき、変換モジュール204は、トルク目標値205を、ステップS30において、例えば、予め与えられた最小値、例えばゼロにセットしてもよい。
【0073】
ステップS40において、駆動モーメント値205a、回生モーメント値205bまたは予め与えられた最小値に等しいことがあるトルク目標値205を、最終的に制御信号生成モジュール216により制御信号115に転換する。
【0074】
この種の電気式のブレーキ機能は、運転者に、ブレーキレバーを操作することなく、電動オートバイ102を電気式の駆動モータ104により停止状態まで制動させることを可能にする。
【0075】
制御装置114内には、付加的に電気式のブレーキ補助機能が統合されていてもよく、電気式のブレーキ補助機能によって、例えば電動オートバイ102が斜面に停まっているとき、所望するのであれば、電動オートバイ102を自動で停止状態に保持することが可能である。
【0076】
このために変換モジュール204は、ステップS10において、例えば、付加的に電気式の駆動モータ104の目下のモータ回転数218を受信し、かつ任意選択的なステップS50において、電動オートバイ102を停止状態に保持する相応の保持モーメント値220に変換することができる。保持モーメント値220は、ステップS50において、例えば、モータ回転数218をゼロに閉ループ制御するという目標をもって、決定され得る(図7も参照)。
【0077】
ステップS40において、制御信号115を、その上で、トルク目標値205,205a,205bおよび/または保持モーメント値220に基づいて生成することができる。
【0078】
例えば制御信号生成モジュール216は、制御信号115を、トルク目標値205,205a,205bおよび保持モーメント値220のその都度の数値および/またはその都度の符号次第で、トルク目標値205,205a,205bから、または電動オートバイ102を停止状態に保持すべく、保持モーメント値220から、生成することができる。代替的には、トルク目標値205,205a,205bおよび保持モーメント値220は、好適な形式で互いに交えて計算されてもよく、制御信号115は、この計算の結果から生成されてもよい。
【0079】
オートバイが、速度0km/hで傾斜した走路上にあるとき、運転者は、通常、オートバイが転動してしまわないように、ブレーキレバーを操作しなければならない。電気式のブレーキ機能を前述のような電気式のブレーキ補助機能と組み合わせることで、電動オートバイ102は、これに対して自動で、運転者がブレーキレバーを操作する必要なしに、停止状態に保持され得る。このことは、大幅に快適性およびエネルギ効率を向上させる。
【0080】
図3は、ステップS30において駆動モーメント値205aあるいは回生モーメント値205bを決定する1つの可能な方法を示している(図6も参照)。
【0081】
駆動モーメント値205aは、例えば以下により決定し得る。すなわち、減算モジュール300において、駆動領域210における最小の変位値304を、受信した変位値108から減算することで、第1の間隔302を算出し、かつ駆動領域210における最小の変位値304を、駆動領域210における最大の変位値308から減算することで、第2の間隔306を算出する。
【0082】
その上で、除算モジュール310において、第1の間隔302を第2の間隔306により除算することで、駆動モーメント係数312を算出し得る。
【0083】
最終的に、乗算モジュール314において、駆動モーメント係数312を、予め与えられた最大の駆動モーメント値316と乗算することで、駆動モーメント値205aを算出し得る。
【0084】
これと同様に、回生モーメント値205bは、例えば以下により決定し得る。すなわち、減算モジュール300において、変位値108を、回生領域208における最大の変位値320から減算することで、第3の間隔318を算出し、かつ回生領域208における最小の変位値324を、回生領域208における最大の変位値320から減算することで、第4の間隔322を算出する。
【0085】
その上で、除算モジュール310において、第3の間隔318を第4の間隔322により除算することで、回生モーメント係数326を算出し得る。
【0086】
最終的に、乗算モジュール314において、回生モーメント係数326を、予め与えられた最大の回生モーメント値328と乗算することで、回生モーメント値205bを算出し得る。
【0087】
前述のモジュール300,310,314は、変換モジュール204内に統合されていてもよい。
【0088】
制御装置114内には、任意選択的に、電気式のスリップ制限機能が統合されていてもよく、電気式のスリップ制限機能によって、リヤホイール118の速度とフロントホイール116の速度との間の偏差を自動で減少させることができる。図4は、電気式のスリップ制限機能の原理的な機能形式を示している。
【0089】
このために、ステップS10において、付加的に、フロントホイール速度値120およびリヤホイール速度値122をスリップ算出モジュール400において受信し得る。
【0090】
任意選択的なステップS60において、その後、スリップ算出モジュール400において、フロントホイール速度値120とリヤホイール速度値122とから差を形成することで、スリップ値402を算出し得る。
【0091】
その上で、任意選択的なステップS70において、スリップ値402を、比較モジュール404内でスリップ目標値406と比較し得る。その際、例えば、スリップ値402とスリップ目標値406とから差を形成することで、スリップ偏差408を算出し得る。
【0092】
これに応じて、最終的にステップS40において、制御信号生成モジュール216内で、トルク目標値205,205a,205bおよびスリップ偏差408に基づいて、スリップ偏差408が最小化されるように、制御信号115を生成し得る。
【0093】
最大の回生モーメントを確実に実現することができるように、電気式のスリップ制限機能は、トルク制限モジュール410による電気式のアンチロック機能を有していてもよく、トルク制限モジュール410は、任意選択的なステップS80において、スリップ偏差408に応じて、駆動されるリヤホイール118のロックおよび/または空転を防止するために、上回られるべきでないトルク限界値412を算出する。
【0094】
その際、任意選択的なステップS90において、トルク目標値205,205a,205bを制御信号生成モジュール216内でトルク限界値412と比較し得る。
【0095】
トルク目標値205,205a,205bが、数値的にトルク限界値412より大きいときは、その上で、ステップS40において、トルク目標値205,205a,205bの代わりに、トルク限界値412に基づいて、制御信号115を生成することができ、その結果、電気式の駆動モータ104は、トルク限界値412に応じて制限されたトルクを発生させる。
【0096】
換言すれば、電気式のアンチロック機能は、電気式のブレーキ機能により要求される回生モーメントが、走路の摩擦係数に応じて最大で許容可能なトルクを数値的に上回るときは、リヤホイール118のスリップが、予め規定された値に制限されるように、電気式の駆動モータ104により発生されるトルクを調節するように、構成されていてもよい。リヤホイール118のスリップは、その際、制動されないフロントホイール116の速度と、駆動されるリヤホイール118の速度とからの差として決定され得る。
【0097】
電気式のアンチロック機能は、ラムダともいうスリップ値402をスリップ目標値406に制限するように、構成されていてもよい。このことは、例えば、図7に示す制御器に類似の、アンチワインドアップを有するPI制御器により実現され得る。
【0098】
電気式のアンチロック機能が、電気式のブレーキ機能より少ないトルクを要求するとき、回生モーメントは、トルク限界値412により制限され得る。
【0099】
運転者が付加的に(液圧式の)リヤホイールブレーキを操作し、かつリヤホイール118がロックしたとき、電気式のアンチロック機能により、例えば(正の)駆動モーメントが電気式の駆動モータ104によって発生されることもでき、これにより、リヤホイールブレーキにより発生されるブレーキモーメントに反対作用し、リヤホイール118を再び安定な運転点へ閉ループ制御することが可能である。
【0100】
電気式のブレーキ機能を電気式のアンチロック機能および付加的に電気式のブレーキ補助機能と組み合わせることで、運転者は、ブレーキレバーを操作する必要なしに、任意の区間を走行することができ、このとき、リヤホイール118のスリップが、安定なスリップ領域内で推移することが保証される。
【0101】
電気式のスリップ制限機能は、電気式のアンチロック機能に対して付加的または代替的に、電気式のコンビネーションブレーキ機能を有していてもよく、コンビネーションブレーキ機能は、運転者が、通例、(液圧式の)フロントホイールブレーキを極めて強く操作することになる非常制動を認めたとき、リヤホイール118の速度を、電気式の駆動モータ104の相応の動作制御により、フロントホイール116の速度に合わせるように、構成されている。
【0102】
スリップ推定は、フロントホイール116の強い制動時、それほど正確でないことがある。この問題を避けるために、リヤホイール118の速度は、電気式のコンビネーションブレーキ機能により、フロントホイール116の速度に従うように閉ループ制御され得る。こうして制動距離は、大幅に短縮され得る。
【0103】
その際、電動オートバイ102は、付加的に、フロントホイール116用の、ブレーキ圧力をベースとする1系統ABSシステムを装備していてもよい。
【0104】
電気式のコンビネーションブレーキ機能は、パーシャルブレーキング時に加速プロセスを補助するように、構成されていてもよい。
【0105】
電気式のブレーキ機能と、電気式のコンビネーションブレーキ機能とが、同時にアクティブであるとき、例えば、数値的に最大の値は、両機能の、結果として生じるトルク目標値205,205a,205bから、場合によっては、電気式のアンチロック機能によりトルク限界値412に制限されて、選択され得る。
【0106】
図5に示すように、トルク目標値205,205a,205bを、電動オートバイ102の目下の速度に応じて修正モジュール500内で付加的に修正することが可能である。
【0107】
例えば、この場合、回生モーメント値205bを約7km/hまでの徐行速度範囲において数値的に減少させることができる。これにより、走行快適性および走行安全性は、向上され得る。
【0108】
このために修正モジュール500は、任意選択的なステップS100において、速度値112、フロントホイール速度値120および/またはリヤホイール速度値122を用いて、速度に応じた修正値502を決定し得る。修正値502は、それぞれ異なる速度にそれぞれ異なる修正値502を割り当てる好適な修正関数504に応じて決定され得る。例えば修正値502は、0と1との間、または図5に略示するように、0より大きい値と1との間にあってもよい。
【0109】
修正関数504は、例えばまず、所定の速度閾値506まで、線形にかつ/または指数関数的に上昇し、続いて一定に延びることができる。速度閾値506を上回る速度では、修正値502は、例えば常に1に等しくてもよい。しかし、別の修正関数も可能である。
【0110】
任意選択的なステップS110において、修正モジュール500は、最終的に、修正されたトルク目標値508を、修正値502とトルク目標値205,205a,205bとから、例えば修正値502をトルク目標値205,205a,205bと乗算することで、算出する。
【0111】
これに応じて、制御信号生成モジュール216は、制御信号115をステップS40において、トルク目標値205,205a,205bの代わりに、修正されたトルク目標値508に基づいて生成するように、構成されていてもよい。
【0112】
図6は、制御装置114内に格納される割り当て規則214をグラフで示している。
【0113】
例えば割り当て規則214は、図6に示すように、駆動領域210の下側の限界を規定する上側のゼロ線600と、回生領域208の上側の限界を規定する下側のゼロ線602とをマッピングし得る。
【0114】
上側のゼロ線600は、下側のゼロ線602に対して相対的に、より大きな変位値方向に、上方にシフトされていることができる。この場合、中立の領域212は、上方では上側のゼロ線600により、かつ下方では下側のゼロ線602により制限されていることができる。
【0115】
速度次第で両ゼロ線600,602の一方のゼロ線上にある変位値に関し、トルク目標値205,205a,205bは、例えばゼロに等しくてもよい。
【0116】
100%の駆動モーメントは、上側の水平の破線により示してある。100%の回生モーメントは、下側の水平の破線により示してある。
【0117】
例示的に、速度が20km/hのときの、スロットルグリップ109の互いに異なる変位に関し、互いに異なるパーセント値が、駆動モーメント係数312と回生モーメント係数326とに対し記入してある。
【0118】
2本の鉛直の点線は、電動オートバイ102のための可能な許容最高速度を示している。
【0119】
電気式の駆動モータ104の回生ポテンシャルを利用し尽くすことができるように、電動オートバイ102の運転者のために、運転者が回生モーメントを良好に調量し得る直観的なHMIコンセプトを開発することが必要である。
【0120】
図6に示すように、このためにゼロモーメント要求線を速度に応じてシフトさせてもよい。上側のゼロ線600および下側のゼロ線602は、それぞれ0Nmのトルク要求に相当する。
【0121】
スロットルグリップ109が、上側のゼロ線600と、100%の変位との間の任意の位置にあるとき、本例では、スロットルグリップ位置と、上側のゼロ線600と、100%の駆動モーメントとの間の相対的な間隔に応じたトルク要求が生成される。例えば、図6において、20km/hのときの75%のスロットルグリップ位置は、50%の駆動モーメントのトルク要求に相当する。
【0122】
スロットルグリップ109が、下側のゼロ線602と、100%の回生モーメントとの間の任意の位置にあるとき、これに対して、スロットルグリップ位置と、下側のゼロ線602と、100%の回生モーメントとの間の相対的な間隔に応じたトルク要求が生成される。
【0123】
電動オートバイ102が、0km/hの速度に達すると直ちに、システムが、(正の)駆動モーメント値205aのみを要求すると、合目的的である。
【0124】
上側のゼロ線600と、下側のゼロ線602との間において、回生モーメント要求は、ここではゼロに等しく、このことは、中立の領域212に相当し、運転者は、電動オートバイ102を空走状態に移行させるために、この中立の領域212を利用することができる。
【0125】
速度が低いときに電気式のブレーキ機能のソフトな挙動を得るために、結果として生じるトルク要求は、任意選択的に、前に図5を基に説明したように、速度に応じた係数と乗算され得る。
【0126】
図7は、前に例えば図2を基に説明したような電気式のブレーキ補助機能を実現する制御器700を例示的に示している。
【0127】
本例では、制御器700は、フィルタリングすべきモータ回転数信号703からモータ回転数218を提供するローパスフィルタ702と、制御偏差ブロック704であって、モータ回転数218と目標回転数との間の制御偏差がその中で算出される制御偏差ブロック704と、制御偏差を処理するP成分706およびI成分708と、操作量制限ブロック710であって、P成分706およびI成分708の出力から決定される制限すべき操作量がその中で制限され、かつそこから、制限された操作量として保持モーメント値220が生じる操作量制限ブロック710と、を有している。
【0128】
制限すべき操作量と、制限された操作量とは、付加的にアンチワインドアップブロック712内で、例えば両操作量から差を形成することにより、処理され得る。
【0129】
アンチワインドアップブロック712の出力は、I成分708に入り、そこで制御偏差とともに処理され得る。
【0130】
制御器700は、例えば、電動オートバイ102の速度が0km/hに近付き、または0km/hに等しく、運転者がスロットルグリップ109を操作せず、かつ電気式のブレーキ補助機能がオンにされているときは、常に作動され得る。制御器700は、その後、電動オートバイ102の速度を0km/hに閉ループ制御する。
【0131】
これに対して、制御器700は、トルク目標値205,205a,205b,508が数値的に目下の保持モーメント値220より大きく、かつスロットルグリップ109の変位が所定の変位閾値を上回るときは、常に再び作動停止され得る。
【0132】
電気式のアンチロック機能と、電気式のコンビネーションブレーキ機能とは、それぞれ、図7に示す制御器700に類似の、固有の制御器により、制御装置114内に実装されていてもよい。
【0133】
最後に付言すると、「有する、含む等(aufweisend,umfassend等)」の概念は、その他の要素またはステップを排除するものではなく、また「不定冠詞(eineまたはein等)」の概念は、複数を排除するものではない。特許請求の範囲における符号は、限定と見なすべきものではない。
【符号の説明】
【0134】
100 オートバイシステム
102 電動オートバイ
104 駆動モータ
106 スロットルグリップセンサ
108 変位値
109 スロットルグリップ
110 速度センサ
110a 第1のホイール回転数センサ
110b 第2のホイール回転数センサ
112 速度値
114 制御装置
115 制御信号
116 フロントホイール
118 リヤホイール
120 フロントホイール速度値
122 リヤホイール速度値
200 記憶装置
202 プロセッサ
204 変換モジュール
205 トルク目標値
205a 駆動モーメント値
205b 回生モーメント値
206 変位値範囲
208 回生領域
210 駆動領域
212 中立の領域
214 割り当て規則
216 制御信号生成モジュール
218 モータ回転数
220 保持モーメント値
300 減算モジュール
302 第1の間隔
304 最小の変位値
306 第2の間隔
308 最大の変位値
310 除算モジュール
312 駆動モーメント係数
314 乗算モジュール
316 最大の駆動モーメント値
318 第3の間隔
320 最大の変位値
322 第4の間隔
324 最小の変位値
326 回生モーメント係数
328 最大の回生モーメント値
400 スリップ算出モジュール
402 スリップ値
404 比較モジュール
406 スリップ目標値
408 スリップ偏差
410 トルク制限モジュール
412 トルク限界値
500 修正モジュール
502 修正値
504 修正関数
506 速度閾値
508 修正されたトルク目標値
600 上側のゼロ線
602 下側のゼロ線
700 制御器
702 ローパスフィルタ
703 モータ回転数信号
704 制御偏差ブロック
706 P成分
708 I成分
710 操作量制限ブロック
712 アンチワインドアップブロック
S10 ステップ
S20 ステップ
S30 ステップ
S40 ステップ
S50 ステップ
S60 ステップ
S70 ステップ
S80 ステップ
S90 ステップ
S100 ステップ
S110 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】